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1955-05-30 第22回国会 参議院 予算委員会 第17号 公式Web版

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  1. 昭和三十年度一般会計暫定予算補正 (会議録情報)

    昭和三十年五月三十日(月曜日)    午前十時三十四分開会     —————————————   委員の異動 本日委員久保等君辞任につき、その補 欠として吉田法晴君を議長において指 名した。     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     館  哲二君    理事           池田宇右衞門君            石原幹市郎君            西郷吉之助君            豊田 雅孝君            小林 孝平君            佐多 忠隆君            松澤 兼人君            堀木 鎌三君            木村禧八郎君    委員            秋山俊一郎君            伊能 芳雄君            泉山 三六君            小野 義夫君            左藤 義詮君            佐藤清一郎君            田中 啓一君            西岡 ハル君            堀  末治君            安井  謙君            吉田 萬次君            片柳 眞吉君            小林 政夫君            田村 文吉君            中山 福藏君            廣瀬 久忠君            溝口 三郎君            秋山 長造君            高田なほ子君            永岡 光治君            湯山  勇君            吉田 法晴君            曾祢  益君            永井純一郎君            松浦 清一君            石坂 豊一君            武藤 常介君            千田  正君   国務大臣    法 務 大 臣 花村 四郎君    外 務 大 臣 重光  葵君    大 蔵 大 臣 一萬田尚登君    文 部 大 臣 松村 謙三君    厚 生 大 臣 川崎 秀二君    農 林 大 臣 河野 一郎君    通商産業大臣  石橋 湛山君    労 働 大 臣 西田 隆男君    建 設 大 臣 竹山祐太郎君    国 務 大 臣 大麻 唯男君   国 務 大 臣 大久保留次郎君    国 務 大 臣 川島正次郎君    国 務 大 臣 杉原 荒太君    国 務 大 臣 高碕達之助君   政府委員    内閣官房長官  根本龍太郎君    内閣官房長官 松本 瀧藏君    警察庁次長   石井 栄三君    警察庁長官官房    長       柴田 達夫君    防衛庁次長   増原 恵吉君    防衛庁長官官房    長       門叶 宗雄君    防衛庁経理局長 石原 周夫君    経済審議庁次長 石原 武夫君    経済審議庁調整    部長      松尾 金蔵君    経済審議庁計画    部長      佐々木義武君    法務省刑事局長 井本 台吉君    外務省欧米局長 千葉  皓君    大蔵省主計局長 森永貞一郎君    文部政務次官  寺本 廣作君    文部大臣官房会    計課長     北岡 健二君    厚生省引揚援護    局長      田辺 繁雄君    農林大臣官房長 安田善一郎君    食糧庁長官   清井  正君    通商産業大臣官    房長      岩武 照彦君    建設省道路局長 富樫 凱一君   事務局側    常任委員会専門    員       野津高次郎君    常任委員会専門    会専門員    長谷川喜作君    常任委員会専門    員       正木 千冬君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十年度一般会計暫定予算補正  (第1号)(内閣提出衆議院送  付) ○昭和三十年度特別会計暫定予算補正  (特第1号)(内閣提出衆議院送  付) ○昭和三十年度政府関係機関暫定予算  補正(機第1号)(内閣提出、衆議  院送付)     —————————————
  2. 委員長(館哲二君)(館哲二)

    委員長館哲二君) それではこれから予算委員会を開きます。
  3. 左藤義詮君(左藤義詮)

    左藤義詮君 議事進行について。政府の大へん勉強と申しますか、不手ぎわと申しますか、予算案提出遅延をいたしまして、私どもに六月は暫定予算をしないと言いながら暫定に追い込まれたことは、まあ過ぎたことは及びませんが、非常に遺憾ですが、そういうふうに予算遅延をしておるほかに、これに伴う法案提出も大へん遷延をしております。実は、この特別国会としては会期が大幅に延びておりますのに、もうすでにあと一カ月に迫っております。いかにも国会が不勉強のような見当違いの印象を国民に与えて非常に迷惑なんですが、特に暫定予算と直接関係のある法案でいまだにまだ参議院へ回って来ていないものがありまして、それは現在衆議院特別委員会審議されているようでございますが、補助金整理臨時特例法、これの改正案がいまだにまだこちらに回って来ておりません。これがもし三十一日までに両院を通過いたしませんと、この法律で廃止をきめておるはずの各種の補助金が一斉に復活することになりまして、そうしますと、せっかく私どもがこの暫定予算審議いたしましても、これとマッチしないことになる。この暫定予算案のどうしても裏つけになるのでありまして、この補助金整理臨時特例法改正案政府はどういうふうに考えていらっしゃるか。今明日中に衆議院を通過してこちらにちゃんと来て、参議院を通すだけの見通しをつけていらっしゃるか、この点を一つ伺いたい。
  4. 国務大臣(一萬田尚登君)(一萬田尚登)

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えします。ただいまの法案は、ただいま衆議院で御審議を願っております。私といたしましては、ぜひともこの五月一ぱいに法案参議院を通過することをお願いいたしたいと、今極力努力を払っておるわけであります。大へん遅れて私も本当に相すまぬと思っておりますが、参議院へ参りましたら、ぜひとも御支援をいただいて御審議いただきたいと、かように考えております。
  5. 左藤義詮君(左藤義詮)

    左藤義詮君 この法律は、衆議院には特別委員会がございますが、参議院にはございませんので、どの委員会にかけるかということで相当議論があって、やっと大蔵委員会予備審査を始めるということにきまったようでございます、衆議院の方がいまだに見通しがついていない。しかも衆議院は、本日は本会議がないようでございます。明日もう一日しかないのでございますが、どういうようなスケジュールを考えておられるか。今、大蔵大臣は、極力努力してとおっしゃるが、どういう見通しをつけておられるのか。ここに裏づけがなければ、私ども暫定予算審議しても無意味になり、暫定予算がくずれてしまうと思いますが、どういうふうにスケジュールを考えていらっしゃるのか。
  6. 国務大臣(一萬田尚登君)(一萬田尚登)

    国務大臣(一萬田尚登君) あすの本会議、一番早い衆議院の本会議にかけるようにお願いをしまして、極力早く衆議院を通過して、明日は参議院の方に法案が回りますよう、そしてそれにつきまして、ただいま参議院の方に予備審査お願いをいたしているような次第でございます。私もこれははなはだ悪いことだと思っておりますが、どうぞ御支持を得たいと思います。
  7. 左藤義詮君(左藤義詮)

    左藤義詮君 補助金整理ということは、非常に民主党が選挙にも宣伝され、大蔵大臣もこれを予算編成方針として、非常に国民に公約せられた、あるいは大きく宣伝せられた。その始末をつける法律が非常に提出も遅れ、しかも衆議院与党の微弱な勢力でで来ていないということは、私ははなはだこれは政府の不手ぎわを露呈をしている。しかも率直に申し上げますと、自由党といたしましては、現在御提案になっている改正法に対しては、あくまで反対でございます。何らかの方法で、まあもっと申しますれば、明年三月末までとなっているのを本年六月までとでもお直しになるならば、あるいはそこに話がつくかもしれませんが、これはそういうふうに政府の方で修正をして、改めて御提案になるおつもりかどうか。あるいは政府の現在の衆議院勢力で、与党勢力でこれを原案通り押し切るつもりかどうか、その御方針を承わりたい。そうでなければ、私ども審議する見通しがつきません。
  8. 国務大臣(一萬田尚登君)(一萬田尚登)

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えを申し上げます。ただいま衆議院の方の御審議の結果を待っておるわけであります。
  9. 左藤義詮君(左藤義詮)

    左藤義詮君 もう私ども明日しか時間がないのでございますが、そういうときに衆議院審議の結果を待っておるというようなことでは、私どもはこの暫定予算審議をしている意味がないわけでございますから、われわれとしても衆議院審議の結果で、この暫定予算にぜひ裏づけになるべき法律方針がきまるまでこの暫定予算審議をとめなければならぬと思っております。政府としてはもう少し腹をきめて、方針をはっきりして、こういう方針自由党の協力を求めて、明日の本会議に必ずこうしてもらいたいということならば、そのように方針をおきめにならなくちゃならないと思うのです。そうでなければ衆議院審議の結果を一つ待って、それからきめるということでしたら、私ども衆議院補助金整理改正法案の成り行きを見るまでこの暫定予算審議はできないと思うのです。
  10. 国務大臣(一萬田尚登君)(一萬田尚登)

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えします。今衆議院のほうでも六月だけについて延長の法案とするかどうか、今御審議をして下さっておるわけであります。もうしばらくでそういうこともはっきりするであろうと私は考える次第であります。
  11. 左藤義詮君(左藤義詮)

    左藤義詮君 政府が、与党が微力で来年三月までと約束したけれども、とてもこれは通らない、だから六月までとりあえず一つそういうふうにして衆議院をぜひ通して来る、こういうふうにわれわれはやむを得ぬから自由党に相談をして、そういうふうにしてもらいたいのだということで腹をおきめになれば、あるいは見通しがつくかもしれません。それをはっきり予算を限れば、私はおそらく衆議院ではこのままでは政府の今の御提案のままではこの法律は通らない、そうしますれば、そういう裏づけのない私は暫定予算審議することは無意味になる、もしはっきり、政府としてはこの際こういう方針で必ず明日三十一日までにこの法案衆議院を通過して、参議院相当審議の時間を与え、明日の暫定予算とうらはらにしてこれを参議院お願いする、こういう見通しだということをはっきり私は御言明になるべきだ、そうでなければ審議意味がなくなってしまうと思うのです。
  12. 国務大臣(一萬田尚登君)(一萬田尚登)

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えを申し上げます。同じようなことになるかもしれませんが、私といたしましては、もう間もなく衆議院の御意向もはっきりいたすと思いますので、その御意向に基いて善処をいたしたいと考えております。
  13. 田中啓一君(田中啓一)

    田中啓一君 ただいま審議の対象になっておりますものは六月の暫定予算でございますが、いずれこれは三十年度の本予算に吸収されるものでございますので、その関連性におきまして政府経済計画予算との関係についてお伺いをいたしたいと思うのであります。  第一にお尋ねいたしたいことは、昭和三十年度経済計画大綱、こういうものを政府は四月十九日の閣議において御決定になっておるのでございまして、従ってこれと予算とは必ずや密接不可分関係にあるであろう、またあらねばならぬと私は考えまして、その見地からお尋ねするのありますが、これを見ますると「食糧増産その他国内自給度向上を図ることの緊要性に鑑み、三〇年度においては、自給度向上計画重点化効率化を図るとともに、」云々と、こうあるのでありまして、政府国内自給度向上を図っておられると思うのであります。また選挙以来、そういうことを政策として揚げておられたのであります。そこで経審長官にお伺いするのでございますが、三十年度には自給度はどれほど向上する計画になっておりますか、数字をもってお示しを願いたいと思います。
  14. 国務大臣(高碕達之助君)(高碕達之助)

    国務大臣(高碕達之助君) お答え申し上げます。大体から申しますというと、自給度向上につきましては農産物の方が主体だと思いまして、それについての向上数字で申し上げますが、それで明年度は六カ年の初年度でありますから、六カ年計画初年度でございまして、農林水産生産の水準は昭和二十五−二十七年の基準年次の一〇〇に対しまして一〇九と、こういうう伸びでございまして、前年に比較しますと三・六の増加になっております。戦前の昭和三年から十七年における生産伸び平均の年率の一・八に比しまして必ずしもこれは過少でないと、こう存じております。それで第一年次におきます農林水産物のおもなる生産額は次の通りでございます。ちょっと申上げます。米が昭和二十九年度が六千七十五万五千石ということでございますが、今度は六千四百八十四万三千石と、こういうことになっております。小麦は昭和二十九年度の千百七十五万石に対しまして、三十年度は千五十万石となっております。大麦は千百六十五万六千石に対しまして、これは幾らか減っておりますが、千百十万五千石になっております。裸麦が二十九年度が九百四十八万四千石、それに対しまして八百六十八万石になって、これも幾らか減っておりますが、繭が昭和二十九年の二千六百万に対しまして二千八百万になります。こういう予定でございます。牛乳が四千九百万石に対しまして五千三百七十万石と、こういうようになっております。なま卵のほうが六十一億に対しまして六十八億九千万と、ちょっとこれは数字は間違いありませんか……。
  15. 田中啓一君(田中啓一)

    田中啓一君 そんなことでございましょう。
  16. 国務大臣(高碕達之助君)(高碕達之助)

    国務大臣(高碕達之助君) それから用材が九千八百万石に対しまして一億二千万石、魚介類が十一億万貫に対しまして、十一億六百万貫、こういうふうに増加しております。まあそういうふうな数字でございます。これは農林大臣から答えるのが本当なんですけれども、私ちょっとかわってお答えいたしました。
  17. 田中啓一君(田中啓一)

    田中啓一君 実はいずれからお答え願ってもよろしいのでございますが、しかし経審長官はこの計画大綱作成者だと存じますので、また経済計画予算との最高調整者であろうと、こう存じますのでお伺いしておるのでありますが、まあ木材とか繭とかいうものは別といたしまして、食糧についてお尋ねをしたいのでありますが、食糧のうち、ただいま御説明通り、麦というものはあまり増加をしておらない、米が約三百万石くらいということは約五%になるのでありますが、それはおそらく二十九年の実績土台にしてお話しになっておると思うのであります。それから三十年度は増産分をお積み上げになったのでありますか、あるいは何年かの平均をお出しになったものでありますか、私はやはり増産計画というものは、基礎一つのまあ生産の傾向を現しておる、何年かの平均というものをもとにいたしまして、それがまあ天候等が普通であれば、こういうふうに増産努力によってふえるのだ、こういう数字でなければ、なるまいと思うのであります。でありますから、今のようにあまり好成績でなかった二十九年度の実績土台にして、そして増産数字をお示しになっても、それは増産数字と言えるかどうか、はなはだおかしいように思うのであります。でありますから、この点もう一ぺん経審長官から御見解を伺いたいと思います。
  18. 国務大臣(河野一郎君)(河野一郎)

    国務大臣河野一郎君) 私から先に申し上げておきたいと思います。これは決して今、田中さんのお話しになったようなことではないのでございまして、大体御承知通り三十年の生産予定として出て参りますのは、二十九年度施設影響と、三十年度においてたとえば農地の関係等によるものは、二十九年度の影響が出て参ります。三十年度につきましては、耕種改良の助長であるとか、ないしは健苗育成であるとかいうようなものが出てくるというようなものを換算いたしまして、そしてこれだけの生産はあるべきはずだ、それが御承知通り天候その他病虫害の発生とか、特殊の自然現象影響いたしまして、それがその通りになる、ならぬということは、これは別でございますけれども、一応計画としてはそういう計画を立てておるわけであります。
  19. 国務大臣(高碕達之助君)(高碕達之助)

    国務大臣(高碕達之助君) お答えを申し上げます。大体ただいま河野農林大臣が答えた通りでございますが、どうしてもやはり農産物増産根本計画というものは、一ぺんに非常に率を上げることはできないと思っております。逐次この六カ年計画にマッチするように、増産大綱に沿うように、基本的にこの計画を持って行きたいと、こういう所存であります。
  20. 田中啓一君(田中啓一)

    田中啓一君 そうしますと、一体六年計画の第一年には、水産物の方は五%ばかり増産数字を今お示しになったのでありますが、もっともこれも二十九年の実績に比較してこうなるのであろう、こういうことでありましたが、農業の方の食糧自給度向上ということについては、これには書いてございますが、どうも今両大臣からお伺いしますと、何も数字をお持ちになっておらぬようにしか見えないのであります。私はやはり二十九年において、普通の天候であればこの程度の生産があったはずだ、実質的に言えば何年かの平均になりましょう。そうしてそれに対してどれだけの増産になるのだということでなければ、自給度向上というものを計画におうたいになるということはおかしいんじゃないか。今お話し通り、毎年々々努力をして行ってこそ六カ年先になって計画に近い数字が実を結ぶわけなんでありまして、初年度はうやむやで済ましてしまうようなことで、私は六カ年先に実を結ばれようとはどうしても思われない。もう一ぺんその御見解をお伺いいたしたいと思います。
  21. 国務大臣(高碕達之助君)(高碕達之助)

    国務大臣(高碕達之助君) お答え申し上げます。ただいま申し上げましたごとく、なるほどお話しのごとく、三十年度は的確に自給度向上していないじゃないか、こういうことの御質問は、私はごもっともだと思いますが、しかし自給度向上ということは、私どもは六年計画を立てておりまして、それらのための基礎的の施設をするというふうなことにつきまして、三十年度はこれを考慮してやっておるのでありますから、この結果におきましては、あるいは来年、あるいは再来年という工合に、逐次増加して行く。その基礎的の施設につきましては、明年度相当やっておる考えでございます。(「口だけではだめだぞ」と呼ぶ者あり)
  22. 田中啓一君(田中啓一)

    田中啓一君 基礎的の施設をしておるとおっしゃったのでありますが、基礎的な施設はむろんしなければならん。これはこれまでも年々やってきたことなんであります。しかも今経審長官農林大臣もおっしゃったように、土地改良のごときものは、次の年にならなければ増産効果は現われないんだ、それはもう私どももその通りに存じます。そこで、今年の予算等を見ますれば、この計画大綱に書いてあります耕地の拡張改良耕種改善というようなものの予算はいずれも減っておる。そこで今年減らしたものは来年現われる、今年まあどうやらうやむやでも済んでいるのは、昨年一生懸命やったあれが現われておるわけなんです。来年は明瞭に減るということなんです。それで一体六年先になれば突如としてふえる、そんなうまいことが一体できますか。のみならず、私は六年先を問うておるんじゃない。今年はどうなりますかと聞いておるんです。しかも立派にこれは掲げておられるんです。予算閣議決定であれば、この計画大綱閣議決定なんです。私どもは同じ重要性を持ったものだと思うんです。その二つの間にこのような大きな違いがあっては、私ども一体いずれが政府の本心であるのか、迷わざるを得ない。だから自給度向上というものは、たとえ一石でも増産をはかるということが本音であるのか。これはもう作文であると、こういうふうにこの際もうかぶとを脱がれますか。いずれかこれをはっきりしていただかないと予算審議の進めようがありません。この点についてまあ農林大臣もさることながら、やはりこれは最高責任者経審長官だと私は思います。あとは総理しか仕方がないわけなんです。でありますから、一つ経審長官からこれはお答えを願いたいと思います。
  23. 国務大臣(河野一郎君)(河野一郎)

    国務大臣河野一郎君) お答えが足らぬ点がありますから、御了解いただく意味において、こういうことを一つ承知おきを願いたいと思います。(「聞こえない、聞こえない」と呼ぶ者あり)昭和二十九年度の基準となるべき生産は、今二十九年の実績で比較しているということでございますけれども、この数字を申し上げます。六千四百四十万石、これが基準になるべき米の数字でございます。これに対して昭和三十年度はただいま申し上げました通りに六千四百八十万石でありますということを予定にしております。
  24. 田中啓一君(田中啓一)

    田中啓一君 幾らの増加になりますか。
  25. 国務大臣(河野一郎君)(河野一郎)

    国務大臣河野一郎君) 四十万石の増加です。そういうことで、これはもう一つ私から申し上げておきたいことは、予算が減っているから先ほど私がお答えいたしましたことに矛盾がある、予算を減して、土地改良費を減しておいて、そうしてことし、三十年はいいが、それじゃ三十一年はどうなるかということでございますが、これはたびたび私申し上げますように、たとえばこの予算の中で特別に御留意いただきたいと思いますことは、小団地開墾をやります。小団地開墾は御承知通りことしやってすぐことしのうちにつまり完成するものであります。今までの土地改良は大規模のものでございますから、いずれも三年なり五年、十年、まあ三年、四年ということはありませんで、五年なり十年かかるものでありますから、その間に順次ずれて行っております。それを少い予算でやるのでありますから、特に小団地開墾でありますとか、幹線に対する支線に補助をつけて効果を上げるとかいうようなものを重点的にやって参ります。で、幹線について長期にわたって必要なものは来年度の予算においてこれを埋め合せて参りたい、こういうことにして、実際の効果の上においては決して減らないようにして、運用においてやって参るということにしているわけでございまして、今御指摘のように、年々積み上げなければいけない、それはその通りでございますが、年年積み上げる形式を、早急に効果の上るように金を余計出しまして、そうして長期にわたる分については私は少しこれを細めまして、来年においてそれを埋め合わして、完成年産においては変らなくして参る、こういうふうにしてやるつもりでございますので、この計画においては一向支障はなく、説明書にありまする通り所期の目的を達すると、こういうつもりであります。
  26. 国務大臣(高碕達之助君)(高碕達之助)

    国務大臣(高碕達之助君) お答え申し上げます。ただいま農林大臣が申し上げた通りでございますが、大体におきましてはなるたけ早く即効の上るものをもって、そうして三十年度の食糧増産をやり、長期にわたるものにつきましては、幾らかなんでございますが、予算関係上すぐに即効の上るものの方に重点を置いておりますが、たとえば愛知用水のごときもの、こういうふうなものに逐次増強して参りまして、長期における食糧自給態勢についての基礎は固めているつもりでございます。
  27. 池田宇右衞門君(池田宇右衞門)

    池田宇右衞門君 関連して……。ただいま農林大臣の御答弁をお聞きしておりましたし、また経審長官の御答弁を聞いておりましたが、大臣答弁によって小さなところから順次これを改良し、そしてそこにほんとうの計画を樹立する、まことにこの方針は非常に結構なことであります。事実これができ上るならば、日本の農家の方々及び地方の農村指導団体相当に協力するでありましょうが、大臣長官も知っている通り、現段階において赤字を出している三十九県において、もし交付金やその他の助成金の中にこれを織り込んでやった場合には、必ず他に利用されてしまう。これは農道なら農道、小土地改良なら小土地改良、あるいは客土なら客土傾斜地なら傾斜地方針をはっきりお示しをいただきまして、その計画に町村並びに団体委員会すべてが協力して、これを徹底するというようなことでありましたならば、初めてただいま御答弁のような方針がとれる。しかるに土地改良等においても、山間の地などの要望する五町歩以下のものはいまだ実現しない。ほとんど県単位の仕事は補助金交付金の減額によりまして頓挫している。農業政策の御方針は結構でありますけれども、仕事の上において頓挫しておりまして、ただいま田中委員が申しました通り、一年のおくれは二、三年かからなければとうてい回復いたしません。そういう過程にある農家に対しまして、一々ひも付きと申しますか、本省の指定の計画をお立てになっているかどうか。また経済審議庁で農林省と協力して五町歩以下の土地改良、その他の仕事に対しましても、これを助成し、育成するという方針は立てているかどうか、重ねて質問をいたします。
  28. 国務大臣(河野一郎君)(河野一郎)

    国務大臣河野一郎君) 池田さんのお話になりましたうちで、予算にもあります通り、従来手をつけることができませんで、しかも非常に農村側で要望のありました五町歩以上、二十町歩までは今回やることにしたのであります。私はこれによって、先ほどお答えしましたように、当面のものをやって行くことはいいだろう。ただ御指摘のような五町歩以下のものについてはまだその道が開けておりません。これについてはどうするかということは、今後研究して参りたい、こう思っております。ただ一年のおくれは三年のおくれになって取り返しがつかない、こういう御指摘でございますが、その点決して私はそうでないとは申しません。ないとは申しませんけれども、すでに今までは比較的に調査を、(「ずさんだろう」と呼ぶ者あり)それはいろいろあると思いますが、継ぎ合わせたきらいがある。手をつけたらあとばらばらしていることもありますので、私はことにことしは全国にわたって十分調査をやるということにして、ことしから手をつける予定であったものを、もう一年手をつけずに、これを十分やって、手をつけたならば、急げば間に合うだろうということなどを勘案いたしまして、実は多少、約八億減っておりますが、小団地と、いまの調査に十分道を開いてやることによって、補いがつく、こういう考えを持っておりまして、実はこの予算を編成した次第でございまして、御趣旨のほど十分了といたしまして、その方途について研究するつもりでございます。
  29. 田中啓一君(田中啓一)

    田中啓一君 ただいま自給度向上と申しますか、あるいは食糧増産計画についての数字は、経審長官のお示しになったものと、農林大臣のお示しになったものと全然違います。私は農林大臣の御説明の方を納得するのでございますが、それにしても一体、四十万石増加をする、こういうお見通しのようであります。そこでこの四十万石の基礎を伺いたい。
  30. 国務大臣(河野一郎君)(河野一郎)

    国務大臣河野一郎君) これは先ほど経済長官の御説明申し上げました数字は御承知通り実績によって比較して比較数を出した、出したことはそれはいかん、こういうことでございますから基準を申し上げたということでございます。その基礎になるべき数字については後刻書類で詳細を申し上げることにいたしたいと思います。手元に今その数字がございませんから、ここにはないのでございますから、すぐでございますから……。さもなければ取り寄せますが、いけませんか。
  31. 田中啓一君(田中啓一)

    田中啓一君 それでよろしゅうございます。ただいま速急には答えられないというお話でございますから、それでよろしゅうございますが、ともかく結論から申すと、四十万石米においてふえる、麦はあまり増減ないという数字であります。そこで一体人口の増加による年間の食糧の必要量の増加というのは、どれほどに見ておられるのでありますか。時間の節約上先に進んでいきますから、もう一ぺん申しますが、人口の増加による食糧の必要量の増加はどれほど見ておられますか。
  32. 国務大臣(河野一郎君)(河野一郎)

    国務大臣河野一郎君) お答えいたします。大体百万石と見ております。これはちょっとつけ加えさしていただきますが、私は従来の観念で申しますると、ここに非常な問題がございまして、実は粉食の奨励、粉食に移行いたしますので、米と麦との所要量が年々非常に移動しております。そういう関係がありますので今正確な数字……、前でございましたら御承知通り数字がぴちっと出ておりますが、今は違いますから、約百万石見込んでおります。なおこの際つけ加えて先ほどの数字を申し上げておきますが、百三十七万七千石の実は増加になりまして、そのうち五十七万七千石がつぶれ地その他で減る、差引して先ほどの数字になります。
  33. 田中啓一君(田中啓一)

    田中啓一君 重ねて資料をお出し下さらんでもけっこうでありますが、私も多分そうであろうと思います。増産分とつぶれ地を差引やると、結論として四十万石ぐらいしかふえない、こういう数字になるであろうと私もそれは了解いたします。同時に人口の増加による必要量の増加というのは、米換算で百万石ぐらい増加するであろうし、しなければならんということも、これまた常識でございまして、農林大臣の御所見も同じと思います。そこで自給度向上ということをうたっておられるのでありますから、人口の増加というのも勘定に入れて、一%とはいかないまでも、とにかく〇・五%まで自給度向上しなければ看板には私はあげられまいと思う、いかに小団地等で早いところをやってのける分も今年重視したからというお話ですが、足らんじゃないか。早いところやってのける分がやはりやれるのでありますから、人口の増加ということも、これもだれも彼もわかり切ったことでありまして、自給度向上国民の世論となっておるのは、それはもう当然人口の増加を考慮に入れた話なんであります。にもかかわらず、それから見ると自給度向上でなくて低下だ、こういう数字にしかならないことは明白なんであります。それでもなおこの経済計画というものをこのまま掲げて押し進めていかれるつもりでありますか、それとも逆にそれではいかんから予算の方を増加するというお考えになられるのでありますか、どちらかにはっきりしてもらいたい。そうでなからねば全く矛盾したものを閣議決定国会にお出しになっておる、そのままで国会は私は済ませるはずはないと思うのであります。これは一つやはり両大臣から明快に御答弁を願いたいと思います。
  34. 国務大臣(河野一郎君)(河野一郎)

    国務大臣河野一郎君) 御指摘の点は決して私はこれを否定するものではございませんけれども、まず国策といたしまして一兆の予算のうちでおさめていきたいということが今年の予算編成の基本方針でございましたので、それに対応して農林省予算も組むが、しかしこれはそれらを基礎にしてやって参ることの方が重要であり、しからば自給度向上というのはどうだ、こういうことになりますが、そこで六カ年計画におきまして、大体昭和三十五年には、今申し上げますように人口の増加と見合って増産する数字とバランスがとれるということに計画を持っていきたいということに案を立てておるわけであります。でございますから今申し上げますように、昭和三十年につきましてはこれは田中委員も御承知通り従来計画がおくれております。昨年にいたしましてもそういうことの結果からいたしまして、同一価格で一兆予算の結果、前年におきましても多少予定が狂っております。それをさらに今年もそういう傾向に参っておりますので、三十五年を目標にいたしまして、三十五年には人口の増加と国内生産とを大体合わせるというところに持っていっておるわけであります。
  35. 田中啓一君(田中啓一)

    田中啓一君 今の農林大臣の御答弁を伺いますると、どうやら食糧自給度向上ということはやりたいことではあるけれども、今年は別の見地からくる財政全般の関係から、それほど金を使うわけにはいかないのだ、従って向上でなくて何ぼか低下にはなるけれども今年一年はがまんをしていくのだ、こういう御答弁に私は伺うのであります。これもむろん論はありますけれども、筋はよく立つわけなんであります。それならそれでそのように三十年度の経済計画大綱というのはお直しになればよろしいのであります。国民は現政府はやはり自給度向上を目ざして予算案を組んでいるものと思っておるのです。そう思っております、あれだけ宣伝なさったのでありますから。そしてまた閣議決定で堂々と自給度向上をはかると書いておられる以上は、中身は知りはしませんから、そうなるのだと、こう思っているわけなんであります。ところがそうならない。ならないことが今明らかになったわけなんであります。おそらく農林大臣の御説明に対して、私は経審長官大蔵大臣も御異議がないだろうと思う。なからねば私は少くともこれが修正をして国会にもう一ぺんお出しになってしかるべきである。これは国会には別段経済計画審議するというようなそういったことはどこにもうたわれておりませんが、しかしこれはもう予算とうらはらの関係で、極めて重要な事項であることは申すまでもないのであります。もう一ぺんそこのところ、統一したところの御所信を明らかにしていただきたいと思います。
  36. 国務大臣(河野一郎君)(河野一郎)

    国務大臣河野一郎君) このお手元にありますものをお読みいただいてもわかりますように、総合的に自給度向上をはかるということになっておりまして、さればといって食糧も決して将来の目途としておるのでございまして、このまま今年は放ってあるというのではないというところで御了解願いたいのです。無理に自給度向上することに継続して先ほどからお話しいただいておりますように、農林の関係はその年一年できまるものではございませんから、これをその目途は目途として、計画はずっと続けていくのだ、こういうことで御了解願いたいと思いますし、これはここにもありますように、食糧増産その他国内の自給度向上をはかるということでありまして、これは経審長官から御説明があると思いますが、私の所管に関する限りそういうことで御了解願いたいと思います。
  37. 国務大臣(高碕達之助君)(高碕達之助)

    国務大臣(高碕達之助君) お答え申し上げます。六年計画につきましては大体人口は七・七%ふえるのに対して、食糧は九・何%という工合にふやしていく予定でございますが、三十年度の計画におきましてはただいまお話のごとく食糧増産の方が努力していないじゃないか、こういう御質問でありますが、これは先ほどお答え申し上げました通り自給度向上をするための、前渡のために相当努力をいたしておるわけでございますが、そのほかといたしましては自給度向上のためには綿花の輸入をできるだけ減らしまして、合成繊維をもってかえるために化学工業の方の振興に来年度は特別な予算を組んで参る予定でございます。
  38. 田中啓一君(田中啓一)

    田中啓一君 衣料関係のことは後ほど御質疑をしたいと思っておるのであります。まず食糧であります。こうやって自給度向上のうちにそのまず第一に食糧をあげておられる。そうして食糧の方は自給度向上ではなくて低下にしか今年はならんということがもう御答弁で明らかになっておるのであります。それでも一体これをあくまでも掲げていくと言われるのは私はおかしいと思う。というのは、これは六カ年計画ではない、三十年度の計画なんです。私は六カ年計画を直せと言っているのではない。三十年度の計画をお直しになったらいいじゃないか。そうすれば予算とつじつまが合います。しかしこれはわれわれと行き方については意見を異にしておるのでありますからこれは別の論戦になるわけです。が、しかし矛盾のあるところは御修正になるのが当然でありまして、この文章から見ますればまあ一%でもとにかく自給度向上になるようにしておられるのだ、三十年度にそうしておられるのだということにしかだれも読むものはないし、またその前後に宣伝をされた調子からいえば明らかにそうであったと思う。あったが、財政的見地から今年は無理だ、こういうことからそうなったのでありましょうと私は思うのです。それも財政的見地からそういう論がないではないのでありまして、大蔵大臣一人でない、ほかにも私はそういう論者もあると思うのでありますから、それはそれで別の論戦にはなるが、筋は通らんことはない、こう思うのであります。やはり政府としては筋の通るようにおやりになるのがまず第一で閣内不統一を叫ばれるが、閣内どころじゃない、これは閣議が不統一なんです。それでは国民は帰趨に迷わざるを得ない。これは私は一番よくないことだと思う。でありますから、ここで一つ経審長官からこれは修正するならする、予算の方を修正するならする。いずれかのところを一つ明らかにしていただかなければ私は予算審議としては困ると、こう思うのであります。
  39. 国務大臣(河野一郎君)(河野一郎)

    国務大臣河野一郎君) 田中さんの御意見でございますが、私は先ほどお答えいたしました、六千四百万石と基準年度を申し上げましたのは、これはあらゆる施策をしてそうなるのでございます。これは御承知通りであります。それが基準通りに今までいっていないのであります。でありますから、去年は天候も決して十分ではございませんでした。ございませんでしたが、しかしまあ六千幾らとれた、その前の年のごときはああいう状態なんです。これは相当努力をし、予算措置を講じてもなかなかそうはいかないのでございますが、ただ御承知通り二十何年にわたって、昭和の初めから二十九年までの趨勢値を出して、その趨勢値がこうあるだろう、こうもっていきたいというところなんでございます。でございますから、これにするには相当政府としましては努力をしなければそこにいかないのでございます。それを、さらにわれわれとしましては、先ほど申し上げましたように、六千四百四十万石のものを六千四百八十万石までその趨勢値を上回っていくのだ、これは増産努力によって可能なのでありまして、さらに一方において人口が百万にふえるとか、百三十万にふえるとかいうことになると、その人口の増加と見合うようにしていかなければいかんじゃないかと、これは確かにそうしていくことが、それに追いついていくことが自給度向上でございましょう。しかし前年に比べ、前々年に比べ、最近の数年に比べてそれだけ人口の増加食糧増産率というのはこういう傾向になっております。それを少しでも近づけていくということは自給度向上だと私は思うのであります。でありますから、それが趨勢値の六千四百四十万石に比べて人口の増加率だけいかないじゃないか。それじゃ自給度向上にならんじゃないか。自給度向上というのは前年もしくは最近の傾向に比べて努力しておるところが自給度向上ということに私はなっていくと思うのであります。しかし結果は御承知通りいつでも自然が影響いたしますからそうはならん場合があります。従って昭和二十八年、九年というような現状があります。しかし今の予算の組み方としてはそういう傾向であり、その予算の運用におきまして今御説明申し上げたようなことがやり得る、これは私はやり得ることは御了承願えると思うのであります。今までのように大きなところの事業に持っていって大きく金を入れて、それが十年、十五年というようなところへ金を入れてもこれはなかなか実ってないのが全国にたくさんあることは御承知通りであります。予算がそのまま米にならんということは、数年を経なければならぬということは現在全国に展開いたしております農地改良事業で御承知いただけると思うのであります。でありますから予算のところだけでそれがその翌年の米にかわるということにはならぬのでございますが、これは当面の運用によって効果を上げることができるということは御了解願えると私は思うのであります。
  40. 池田宇右衞門君(池田宇右衞門)

    池田宇右衞門君 関連して……。ただいま農林大臣自給度向上の熱心の点、またよく精進した点は私ども承知しております。しかしながら事実において食糧産業対策費において四億八千九十二万も減額されておる。また農業災害からいっても三十五億八百二十三万も減額しておると、いかに熱心でも、自給度向上をはかるというけれども予算に削られてどこに自給度向上をはかる、これはまあ一口に農家方面から申しますれば農林大臣は精進して御熱心であったが、大蔵省によってこれを削られてしまったと、従って今日の農業政策は大霜にあったような気がする。この際食糧増産対策費を削った今日、農業災害に対するところの減額をした場合、災害県の現状につきいかなる処置をとるか、これは大蔵大臣及び経済審議長官からお答えを願うことにして、さらに私はこの際関連しておりますから福島県、長野県、岡山県、山梨県の凍霜害はすでに二十億にも達しておると、あるいは苗代を全滅され、あるいは穂を出した麦をたたかれ、大麻の地方には麻をくだかれ、蚕もやれない、たばこも出ない、こうした災害地に対しまして農業災害費を削って直ちにこれを役立たせる方法があるか、暫定予算暫定処置としてはどういう処置をするか、農林大臣相当の決意をもってこれを直ちに救済する方途を講じておるということを聞いたが、その詳細はまだ聞いておりません。従ってこの点は大蔵大臣が今年は災害はないだろうと思って災害費の総額は百二十九億も減らした、ところがことしは去年と違って、目の前に続々と災害が起きている。これが天候によって支配されるところの食糧は、災害によってさらに減額を見るという今日である。予算がなくてできるというのは、手品師や何かがあるいは手品の材料が少くてもできるだろうと思うけれども、農業の仕事はそう行くものではございません。天候と十分なる準備と、それから用意があって、肥料、消毒薬も全部そろって、初めて自給度向上を見ても、なかなか天候に支配される今日であるから、この点についてまず大蔵大臣が減額した原因を明らかにしてもらいたい。その次に、経済審議長官がこれに参加した。農林大臣は全く気の毒だ。今日だれも河野農林大臣の手腕を認めておるが、減額されたことだけは遺憾ながらと認めています。この点について。
  41. 国務大臣(河野一郎君)(河野一郎)

    国務大臣河野一郎君) 災害のことを先にお答えいたします。災害の点につきましては、今大体調査は完了いたしまして、融資、もしくは利子補給、その他は議会で必要な法律を作っていただくということについては、準備は大体でき上っておりまして、これは、しかるべく善処することにいたしております。そこでただ一点三十億農業保険の金を減したじゃないか、金がなくなって困るじゃないかということでございますが、これは御承知通り、まことに工合がよくありませんけれども、保険でございまして、国家が義務を負っているのですから、災害がたくさん出てくれば、その赤字は当然明年度に埋めてもらうということでございまして、ことしは予算が組んであってもなくても、災害が多ければどういう年でも翌年度に埋める、災害がなければ翌年度に繰り越すということでございますから、農林省予算が、この数字に関する限り、予算でございまして、災害があるなしによって、これは予算がないから払わぬというようなことは絶対にないのでございまして、仮払いでどんどん支払いをいたすことにいたしておりますから、この点は災害がなければ払いません、あれば幾らでも払いますから、これは御心配下さらぬでも、ちゃんとできるようになっておりますから。
  42. 池田宇右衞門君(池田宇右衞門)

    池田宇右衞門君 災害地には十分手を打つようになっておりますね。
  43. 国務大臣(河野一郎君)(河野一郎)

    国務大臣河野一郎君) 十分やりますから御心配なく。
  44. 国務大臣(一萬田尚登君)(一萬田尚登)

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えします。食糧増産対策費で、私の記憶では約九億程度減少いたしておるように思うのでありますが、これは同時に北海道地方に計上してあるのを加えますと、それほど私は減っていないので、大体資材等の値下り等を考えますると、農林大臣が十分やっていける、こういうふうに考えておるわけであります。  今、災害につきましては農林大臣から詳しくお話がありました。なお食糧増産、国内資源の開発ということが、日本経済自立の一方の柱であることは申すまでもありません。これは貿易と相並んで国内資源の開発、これは自立経済の柱であります。従いましてこれに政府が、私はどんな政府でも、日本の政府である以上、国内資源の開発に力を注がぬというような政府はあり得ないというふうに思っておるのであります。が、しかし、今回の予算は思うようにいかなかったことも、これは率直に認めなくてはいけません。しかし私は他面、できるだけ投融資の形、今回、私、世界銀行の借款も近いうちにできると思っております。これに余剰農産物関係もあり、調印もできました。それで相当の巨額の金額で大規模の農業開発ができるということを私は確信をいたしております。そういう関係もありますので、ぜひともそういう点からも御了承を得たいのであります。決して農業、ことは食糧増産、これを怠っておるとか、それを軽く見るということは絶対にありません。それだけ御了解を得たいと思います。
  45. 国務大臣(高碕達之助君)(高碕達之助)

    国務大臣(高碕達之助君) お答えを申し上げます。ただいま農林大臣及び大蔵大臣が申し上げました通りでございまして決して政府としては、食糧増産を等閑に附しておるわけじゃありませんで、特に六カ年計画におきましては、先ほどお答え申し上げました通りに、人口に対しましては、増加よりもより以上の増加を期する方針でございます。明年度におきましては、予算その他におきましては、われわれの予想通りではなかったことは事実でありますが、しかしながら長期計画が立つように、愛知用水につきましては、できるだけこの予算を交付することにいたしまして、長期計画に間違いのないようにいたしたいと思います。
  46. 池田宇右衞門君(池田宇右衞門)

    池田宇右衞門君 農林大臣のお説は、下部の零細化された農家を、何とかして下部に浸透さして、下部から食糧増産をいたし、自給度向上をはかるのが今日の建前だ、こう言っておる。経済審議長官は、愛知用水や九州、北海道などの大きなことをねらっておる。この間に相当、聞いておる私どもとしては食い違いがある。なお、この際、大蔵当局に一つよく農業方面を認識していただきたい。国民の四割五分も占めておる農家は、農産物価は決して農家がきめるものではございません。米価審議会があり、審議会において農産物価が決定される関係上、豊沃な、しかも耕作の便利な土地は生産費につり合います。しかし不便な、肥料がたくさんに要り、耕作上困難なところは、生産費が米価よりも上廻るところが今たくさんあるのであります。それでも国民の生活の大宗をなすところの食糧問題でありますから、農民は黙々として働いて、しかも、ごらんの通り、いささかの食糧の値段が上る際におきましては、所得税においても、その他住民税においても、また農地を持っておる固定資産税においても、えらくほかの人たちよりも上回って納めている。決してその農家の仕事というものは、本日種をまいて、十日や一月ですべての収益が上るものではございません。まして二回も三回も収益の上る土地は、多角経営以外にはありません。農林大臣は多角経営の方針をとって、農家に不断に現金が入る方途を講ずる。この方法は農家に対して非常に今日にふさわしい方針であることは間違いないのでありますけれども、翻って米麦という、日本の国民の主要食糧を預かっておる部門においては、決してそう税務署なり大蔵省が見るような利潤は生んでおりません。従ってこれは育成しなければならぬ。そこに国家の保護政策というように、相当なる増産対策費用を常に計上いたしまして、生産費に対して農産物の上回るようなものの補いをつけていくところに、日本農家の安定があり、日本農民の食糧増産に寄与する熱意が、そこから生まれてくるのであります。  従って今日の食糧増産対策費はわずかの減額であるからと言うけれども、わずかの減額だが、精神的にも、それから農家を顧みない点にも、大きな反動、影響があるのでありまして、従って農家の方々は、この予算を見たときに、だれ人も、こういう方針で大蔵当局が臨むならば、日本の農家はどうするのだということを今日心配しておるのでございます。こういう大多数の国民に不安を与え、生活をこれに対じまして同じ型に追い込むというようなことは、政治家のなすべきことではございません。もっとよく農林行政については農林大臣とよく折衝して、農林大臣計画はいいのだけれども、実際になって出てこなかったら、これはから手形になってしまうというと同じく、今後日本の農業を育成するならば、十分なる費用をそこに取り、補助費に対しまして、温床折衷苗代その他を計画されただけでも農民は愁眉を開いております。かような観点から、十分に、今後の農林行政にはそうした国民のために防波堤となって、常に業務にまじめに携わっておる農家の上に対して相当なる政策を、また政府方針を安定する方向に向くように、私はこの際要求します。重ねて大蔵大臣の御意見を問います。
  47. 国務大臣(一萬田尚登君)(一萬田尚登)

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えします。大へん有益といいますか、ありがたいお教えを受けまして感謝いたしております。私も実はこれは大蔵大臣として当然ではありますが、大蔵大臣としても日本農業の実態を一そう把握する、そうして日本の農業をよくするためにはどうすればいいかという政策の樹立に一そう最善を尽すことにいたします。
  48. 田中啓一君(田中啓一)

    田中啓一君 ただいま河野農林大臣は、絶対量が四十万石でも、傾向から見てふえるということでやっておるのだから、その努力は認めてこの辺でというお話なんでありますが、なかなかそうはできません。だから別の観点から、やはり経審長官農林大臣に主としてお伺いしたいと思います。  それは今年度の輸入計画であります。先だっても同僚委員から余剰農産物関係において、まあ要らざるものを買っているのではないか、そうして内地農業の圧迫になるのを無視しているのではないか、こういうような見地から御質問があったのでございますが、農林大臣は、アメリカから見れば余剰農産物で、日本から見れば必要輸入量だ、こういうお話であったのであります。そこで河野農林大臣からのお言葉によれば、必要輸入量であるのでありますが、その必要輸入量というものは二十九年度と三十年度ではだいぶ必要輸入量の量が増加しております。で、これがすなわち自給度向上どころか低下を来たしておるという私のゆえんなのであります。多分私は推測をいたしますると、なかなか米の値段は上げられないしも増産予算は付けられないし、これはどうしてもこの際輸入量をふやして、供給の方を増加しておかないと今年の食糧事情は危いぞ、こういう御見地でないかと、こう思うのであります。これもまあ為政者としては考えなきやならんことなので、この点はつじつまは合っておる、よくつじつまは合っておる。合っておるが、やはりこれも私は別の方面から自給度の低下ということを白状をされておることにほかならない。これほどつじつまを合わせて自給度の低下というものを実際においてはやっておられるなら、やはりもとに戻って、この計画というものはこれは看板であって、看板に偽りありだ、そんなに極端におっしゃらぬでもよろしいのでありますが、せめて今年は、今の日本経済の正常化並びに基礎づけ、基礎固めというような線からいって自分らの見解では、国内自給慶の向上を少くとも食糧の面においては……、あるいは牛乳やたばこはふえる傾向を持っておりますが、食糧ではないとおっしゃるかもしれませんが、何と言っても大きなものは主食なのであります。むろん私も主食ばかり増産しろということを言っておる見解ではないのでありますが、とにかく水産物なり、それから畜産物なりの増加というものと主食というものと、これは両方から見てちょうちんとつり鐘なんです。で、総合的に水産物や畜産物を増加しなければならぬということは言うまでもないのでありまして、大いにやらなければならぬが、しかし総合的に見て、主食を今のところ増加しなければやはり自給度向上にはならない。向上どころかかくのごとく、別の見地から、輸入量から見てもこれは自給度のもっと大きな……。私は今、人口増加と絶対量増加との差額の四十万石だけがへこむのだという一応お話はありましたけれども、そうでない。輸入量の方から勘定してごらんなさい、もっと大きな自給度の低下になっておりますよ。本年の自給計画というものはそれはそうでないのかどうか。御見解がありましようからまずお伺いしたいと思います。
  49. 国務大臣(河野一郎君)(河野一郎)

    国務大臣河野一郎君) これは田中さんの御議論に私は少し間違いがありはせぬかと思う。どこに違いがあるかと申しますると、どの数字基礎にしておとりになったかしれませんが、たとえば米の輸入量は昨年の予算で申しますると、昨年の予算の際には、国内で買い上げ数量を二千六百万石と予定しております。でありまするから予算のときには国内の買い上げ数量を二千六百万石に予定いたしまするから、それに見合った輸入量になっております。ところが実際にはどうかと申しますると、今御承知通り今日ただいまで二千二百九十万石ぐらいでございます。そういうことになりますから二千二百九十万石を引き当てにして輸入をしておるわけであります。輸入量が出て参ります。それでございまするから、これはどこまでも豊凶の影響が出て参るのでございまして、これは今申しまするように基本的な農業政策の理論として述べる場合の数字になってこない、あくまでも豊凶の影響が出てくるものが輸入の実数になる。われわれが予算を組みます場合には、今申しました通り、昨年は昨年の供出制度であれば二千六百万石を予定いたしましたが、実際の経過から申しまして、ことしは二千三百五十万石を予定しております。でありますから、そこでわれわれは二千三百五十万石の予約買付けを引き当てにして外米の輸入量を予算の上に出しておるということでございますから、これは結果から見れば豊凶が影響いたしまするし、予算を立てる場合にはそういうふうにして立てまするから、これを比較いたしまするのに、去年の予算と今年の予算を比べていただきますれば、去年は予算の上で二千六百万石を集荷するということで輸入量をきめまするし、実数量で申し上げますと、去年の実数が二千六百万余に対して、実際の米の買い上げ量は二千二百九十万石ということになっておりまするから、これは比較をしていただく基礎がそういうように不明確でございまするから、これによって今の御議論を立てていただいても、それはちょっと政府として了承いたしかねる点でございます。
  50. 田中啓一君(田中啓一)

    田中啓一君 食糧需給推算のことになりましたが、経審長官に先ほどの根本問題についてお答え願おうと思いますが、その前にもう一つ突っ込んで農林大臣にお尋ねしたいと思いますから……。私は農林大臣昭和二十九年度の米の買い上げの予定は二千六百万石であり、今年は二千三百五十万石である、この数字をお立てになりました基礎をお伺いいたしたい。
  51. 国務大臣(河野一郎君)(河野一郎)

    国務大臣河野一郎君) これは今までの供出制度のときにやって参りました数字で参りますると、予算の際に二千六百万石集荷をする目途を立てて、平年作の場合に、これから自家消費量を取ってそういう数字を出した、こういうことだと思うのであります。しかし予約買付制度をわれわれとりまする際に、過去の実績、傾向、これらを十分に尊重いたしまして、そうして数年の傾向等を考慮いたしまして、現在の配給量とにらみ合せて、この程度ならば平年作である場合に集荷の予定は可能だろうという可能量を予定いたしまして、二千三百五十万石、これがまず穏当な数字であろうということでやったわけでございます。
  52. 田中啓一君(田中啓一)

    田中啓一君 どうも、輸入量の基礎政府の期待供出量なり、あるいは予約集荷量、期待集荷量に置いておられるので、だんだんどうも私の本論からは枝道でありますけれども、触れて行かざるを得ないのでありますが、一体食糧、国内で生産されたものは、供出制度をとろうと、予約集荷制度をとろうと、どこへも行くものではない。国民が食っておるのです。またそう私は、貯蔵も、制度いかんによってされることもなかろう。まあ大体一年間に作ったものは、一年間で食ってしまうだろうと、こうまあ私の常識では思うておるのです。そうしますると、あるのでありますから、これは政府の握る量と申しますか、配給制度の関係で、ある程度その数字から、輸入量というものは、ことに外米においては影響されると思います。麦においては別段そういうことはしておられない。結局は国内の実際の生産量と輸入量とをもって一年間飯を食べていくという、その実際の需給関係から私は出てこなければならぬと思うのであります。そうであるならば、とにかく去年と、ことしとでは、四十万石しか違わない。麦はあまり違わんであろうと思うのであります。でありますから、少くとも四十万石は輸入量が減らせるのがほんとうでないのか。あるいはまあ、人口の増加に追いつきませんから、四十万石だけ米麦合せてふやすというのがほんとうでないかと私は思うのです。それを政府予算的な米の買付数量の二百五十万石の差に説明を持っていっておられるのは、はなはだ実体的の説明ではないのじゃないか。やっぱりこれは、いろいろ言ってはおられるけれども自給度の低下というものはやむを得ないのだ、こういうことをもう白状しておられるにほかならないのじゃないか。だから、あまりそうおっしゃらないで、この辺で一つ食糧の方はかぶとを脱いでいただきたいと思うのです。もう脱いでおられるじゃないですか。
  53. 国務大臣(河野一郎君)(河野一郎)

    国務大臣河野一郎君) かぶとを脱ぐとか脱がんとかいうことじゃありませんで、誤解を生ずるといけませんから申し上げておきたいと思いますが、もう一点つけ加えて申し上げたいと思いますことは、終戦以来非常に米穀政策の上において異常な状態にありますることは、御承知通りであります。極端なる早場奨励金を出して、早場米を食っていくということになっておりますので、ことしは為替を多少余計確保しまして、豊凶の関係はどういうことになるかしりませんが、平常であるならば、この持越量の方をふやしていきたいということの予算を組んでおる、この点も御留意いただきたいと思うのであります。そういう意味相当に含まれておるわけであります。
  54. 田中啓一君(田中啓一)

    田中啓一君 今の持越量を増加していきたいというお話しはよくわかりました。そういうもので若干輸入量を増しておこうということもよくわかります。それはよくわかりますが、しかしどうも大勢から申して、もう私はあまり数字は申しませんが、これはどうも生産量と消費量との数字からいっても、今度は逆に輸入量を含めたもののうちにおける生産量と全体の消費量との割合からいっても、この自給度は低下の実態を持つことはもう明白であろうと思うから、私はこの点は、もうこの経済計画大綱をお直しになってもならんでも、実際はもう直っておるもので、その点は御答弁によって明らかなものだと、自給度向上というものは念願はしておられるけれども、今年の予算の上から申しますれば、一時自給度向上というものは足踏みをさせて、そうして六カ年の間には取り返すと、こういう熱意を持っておられると、こう善意に了解をいたすほかはないと存じます。  次に、食糧ではございませんで、繊維についてお伺いしたいのでありますが、政府は、基礎産業における合理化、あるいは輸入の削減、あるいは輸出の増加というようなことに対して、相当まあ財政投融資をふやした、こういう御説明でございます。なるほど若干はふえておることはその通りでございます。大いに御努力は多とするのでありますが、そのうち、三十年度の計画大綱にもうたっておられます合成繊維、アセテート等の設備拡充であります。まあ御承知のように、綿、スフ、人絹、化学合成繊維、こういうものをわれわれは着ておるのでありますが、何分にも綿の消費量は非常に巨大なものであります。従って、これが日本の国際収支の関係で大きな圧迫になっておることは、食糧と並んで大宗であろうことについては御異論はなかろうと思うのでありますが、そこで何と申しても、化学合成繊維の急速なる増産ということは、日本の国際収支の改善なり、あるいは経済自立ということをしっかり考えるならば、非常な努力を集中すべきところでないかと思うのであります。ほかにもむろん、電気あるいは石炭、鉄鋼というものもございまして、相当にやらなくちゃならぬことは、これまた申すまでもありませんが、私はこの方面の努力はもう一歩進めるべきじゃないか。今のこの御計画通りの投資になっておりますか、実は私、米ほどは数字をよく調べてきておらないのでありますが、しかしどうも、これまで予算委員会、あるいは通産委員会等で御説明になっておりますところでは、心細いじゃないか。なかなか綿の輸入というもの、あるいは毛の輸入というものをぐんぐんと減らしていくというほどにはなっておらんじゃないか。これは衣、食、住でありまして、これはもう食糧自給度向上も相並んで、私は衣料の向上というものは何としても日本において必要不可欠だと思います。でありますから、一体どれほど計画を持っておられ、それに対して今年はどれほどのの投融資をなさるつもりでありますのか。あるいは、こっちがやらんでも民間で十分伸びていくのか、これを一つはっきり通産大臣から御説明を願いたいと存じます。
  55. 国務大臣(石橋湛山君)(石橋湛山)

    国務大臣(石橋湛山君) お話のように綿花の輸入をぐんぐん減らすようにして、急速に合成繊維を強化するということはなかなか困難であろうと思いますが、できるだけ一つ伸ばしていきたい。それには、今年はまあ財政投融資の上では開発銀行から機動的にやりたいと思いまして、石炭、鉄鋼、合成繊維、硫安、機械というようなものを一括して、それに大体百四十億円充てておるのでありますが、昨年は百億円であります、まあ四十億円だけふやしまして、相当多くの資金を必要に応じて合成繊維に投じたい、こう考えております。一つは、合成繊維が、今価格あるいは品質において、国内の綿花に代りますあるいは羊毛に代りますだけの需要を喚起することが非常に必要だと思うのです。需要がふえれば民間においてもそれだけの仕事がふえて参ります。でありますから、品質及び価格の点でまあ大いに改良することが必要であり、それには需要をふやす必要がある、かように考えまして、すでに政府関係の方面においてはできるだけ合成繊維を使うようにという指導をいたしておるわけであります。さようにいたしまして合成繊維の増産をはかっていきたいと思います。
  56. 委員長(館哲二君)(館哲二)

    委員長館哲二君) 田中君に申しますが、時間が超過しておりますから……。
  57. 田中啓一君(田中啓一)

    田中啓一君 簡単にいたしますから……。この合成繊維につきまして、およそどれくらいの計画で綿花なり羊毛なりというものをこの程度に減らすのだと……、これは相当減らしてもらわなければ経済的な意味はないのでありますが、どうも私は微温的だという気持がしてならないのであります。でありますから、一つ計画お答え願いたいと思います。数字がほしいのであります。
  58. 国務大臣(高碕達之助君)(高碕達之助)

    国務大臣(高碕達之助君) お答え申し上げます。合成繊維は、アセテートを合せまして二十九年度は二千二百万ポンドでございますが、三十年度はこれを三千万ポンドにふやしたいと思いまして、開銀その他の方におきましても十億乃至十五億円のこの方面に対する投資を認めておるわけであります。それで三十二年度におきましては合成繊維をさらに四千五百万ポンドにふやしまして、三十五年度にはこれを一億五千万ポンドに増加したいと考えております。こういう考えでございますから、お話のように、これはもう少し急速に伸ばしたいと、こう考えておりまして、これは非常に重大な問題であると思います。最近の合成繊維の形勢を見ましても、日本の合成繊維というものは非常に進んでおるようでありますから、これをもっと急速に伸ばして、単に自給度でなくて、これは重要なる輸出工業としてやっていきたい、こういう所存でございます。
  59. 中山福藏君(中山福藏)

    ○中山福藏君 それでは私は簡単なものから片づけてゆきたいと思いますが、まず石橋通産大臣にお伺いしたいと思います。  大体これまでの輸出貿易の主体をなしておりましたのは、御承知通り繊維製品ですね。また或る部分は雑貨類でしたね。ところが四囲の状況が相当に変化して参りまして、この頃は輸出体系の基本というものがぐらついてくるのじゃないかと私は見ておる。いわゆる重工業資材あるいは化学製品、こういうものが繊維製品なんかに代ってくるのじゃないかと思うのですが、通産省においてはどちらに重きを置いて推進せられる考えですか。それをまず承わっておきたい。
  60. 国務大臣(石橋湛山君)(石橋湛山)

    国務大臣(石橋湛山君) お説のように、たとえば東南アジアの需要を見ましても、建設的な資材、機械でありますとかいわゆるプラント輸出というようなものが非常に希望されておりますから、その方面に相当重点を置かなければならんということは、これは戦後の傾向でありまして、従って通産省としてもその方面に相当の力を置いておりますが、しかしながら、さりとて今の繊維製品ないし雑貨というものを閑却するということは間違いだろうと思う。一応はプラント輸出等が行きますが、しかしそれに伴ってまた雑貨類等の需要も相当に喚起ができるものと思っております。従ってこの間も申し上げたように、たとえばドミニカという割合小さな国でありますが、ドミニカ共和国でこの十二月から見本市をやりたい、日本にも参加してほしいということを申して参りましたから、あらゆるチャンスをつかまえて、日本の中小企業が作る雑貨類あるいは繊維品などの宣伝をしていきたいと思います。あるいはアメリカのメーシー百貨店と連合して、日本製品の見本市をアメリカの重要都市に数カ所開きたい計画をいたしております。これは重化学工業ではなくして繊維製品、おもに雑貨を出すつもりでおります。そういうふうになっていて、ただいまのところでは重化学工業が遅れておりますから、この重化学工業に相当力を入れておりますが、やはり繊維製品及び雑貨というものにも、今まで通りの、両てんびんのようになりますけれども、決してこれは閑却せずに大いに進めていきたいと考えております。
  61. 中山福藏君(中山福藏)

    ○中山福藏君 パキスタンなんかの綿業関係の工場を視察いたしてみますと、もう十年経てば、大体流れ作業で日本と紡績の面では競争することができるじゃないかということを、向うの商工大臣が私に申しておったのですが、私としても、先方の工場を実地に視察して、どうもあと十年位たつと、日本の綿製品または繊維製品というものが相当影響を受けるのではないかということを非常に気ずかっておるわけでございまするが、ただいま石橋通産大臣がおっしゃったように、宮本武蔵流の二刀流をやって、中南米諸邦という所に手足を延ばして行こうというお考えもそれは結構だと思いますが、それにつきましては、各方面における産業の合理化をやって、コストの切り下げが第一に必要になってくると思いますが、御承知のように、山際輸出入銀行総裁などは、金利の四分は高くないと言っておりますが、しかし業者というものは相当な犠牲を払って輸出を盛んにしなければならんということを言っておられるのです。ところが銀行だけは利息を下げん。四分というものは世界水準だからというようなことを言っておられるが、通産大臣はどうお考えですか。銀行利子というものを下げて、私は三分あるいは二分五厘ぐらいに下げた方がよいと思っておりますが、どうですか。   〔委員長退席、理事池田宇右衞門君着席〕
  62. 国務大臣(石橋湛山君)(石橋湛山)

    国務大臣(石橋湛山君) 申すまでもなく金利はできるだけ低いのがよろしゅうございますが、ただ無理に下げようといってもなかなか下げませんから、そこで全般の日本の市中金利をできるだけ下げるような施策をしなければならんと考えておるわけであります。これは通産省だけではやれないことでありますから、大蔵大臣ともよく打ち合せまして、できるだけ一つ金利の引き下げをいたしたい。殊に輸出に関する金利については特段の考慮を払う必要があると考えております。
  63. 中山福藏君(中山福藏)

    ○中山福藏君 今度お尋ねするのは、西田さんのところにも関連しておる問題だが、お尋ねいたします。御承知通り第一次産業革命時代——一七六七年時代の当時の状況をちょっと調べてみますと、いわゆる労働力というものを機械が駆逐したということになっている。そこで駆逐された労働者は失業した。ここにおいていわゆる社会主義、あるいはいろいろな社会政策をもくろまれるようになった。あるいは宗教的に、あるいは道徳的に、あるいは政治的な面からいかにして人々を救済するかということが、政治上の非常な動きになって現われてきたということは御承知通り。換言すれば、これは機械の発明が人間の労働力というものを駆逐したのです。今や第二次産業革命というのが目前に起らんとしておる。今度の産業革命というものは人間の頭脳的な働きを追い払おうとしている。これは五月二十五日の週刊朝日にも注目すべきオートメーションとして非常によく書いてある。私もこれを二カ月くらい前からいろいろと検討しておったのでありまするが、結局ある意味において機械文明なるものは失業者をたくさん作るということになる。だからこの失業者をたくさん作るということは失業対策という問題になって現われてくるのです。いわゆる経済六カ年計画なんかについても、この面が考慮せられていないように思う。ことに西田労働大臣の管掌になっておりまする失業対策ですね、それは現在六十六万人の失業者がおるというのですが、ここで経済六カ年計画政府でお立てになっても、機械の発明があなた方の予期しない失業者を必ず現わしてくるであろうと私は見ておる。だから失業対策というものは、機械が一つ発明されたら、この機械が何人分の労働力にかわるかということを政府が頭の中に入れなければ失策対策は立てられない。ことにただいま私が調べたところによると、たとえば自動車の部分品が千幾らですか、千二百ドルかかっておったものが九十セントでできると書いているのです、新しい機械が発明せられたために。コストが下る、そういうことにもいろいろ関連しておりまして、第二産業革命、すなわち機械の高度な、人間の頭脳にかわる機械がいろいろと生まれたときには、前の第一次産業革命のときのような少量の失業者じゃないと思う。想像もできないような失業者ができてくるんじゃないか、こういう点も考慮に入れて、労働対策を今からお立てになっておるか、お伺いしてみたいと思います。
  64. 国務大臣(西田隆男君)(西田隆男)

    国務大臣(西田隆男君) お答えいたします。中山さんからただいまお話のありましたことは、将来の問題としては考えなければならぬ問題と考えますが、早急の日本の経済実態から考えまして、経済六カ年計画想定に基いて計画を立てますということになりますということ、今あなたのおっしゃったような雄大な構想による失業者の救済、労働対策ということはちょっと現実の問題としては考えられませんので、経審の立てました六ケ年計画に基きまして、ふえていく労働人口、それから経済規模の拡大、生産の増強によって収容し得る人口、従って残っておる失業者をどうするかという問題を中心に現在の労働行政の面においては一応考えております。しかしながら、おっしゃるように機械の発明、企業の合理化等によって、現在のような経済規模の状態においても年々の失業者がある程度想定されますので、個々の企業におきましては、どうしても失業対策という見地から、これを収容し得るような段取りをつけなければならぬ、こういう観点に基きまして、三十年度の労働行政の面における失業対策は、まあ万全ではなくても、どうにか処置していけるという考え方で予算を計上しております。
  65. 中山福藏君(中山福藏)

    ○中山福藏君 これは夢物語みたようなことと御答弁になっておるが、現実にアメリカでそれをやっておる。もうすでに着手しておりますよ、この問題は。ことに石橋通産大臣が先日原子力の平和利用懇談会というようなものに御出席になっておるようですが、工業技術院に今度原子力課というのを創設されるということをちょっと承わっておるのですが、これなんかも原子力課なんという小さなものじゃなく、局ぐらいの私は大きなものにしておおきにならぬと時代おくれになると私は考えておる。今西田労働大臣なんかは、現在アメリカでやっておることをまだお読みになったかならないかしらないけれども、それはそんな空想的なものじゃない。すでにアメリカではやっておるのです。ですから通産大臣にお伺いするのですがね、あなたが原子力課をお設けになるのはけっこうなんです。これは時代向きなんです。しかし、その原子炉の大きさに従って人間の何人の力にこれがかわっていくかということをおきめにならなければ、下手すると政府が失業者を作ることになる。下手にまごつくとあとで救済々々と言って赤旗を立てて叫んでも追っつかぬ。だから原子炉に関する設備をするならするでいい。原子力課をこしらえるならこしらえるでいいですけれども、いかほどの大きさの原子炉というものが何人の失業者を出すかということを御研究になっておかぬというと、とんでもないことになる。ただ平和の利用価値があるからといってそれを世界並みに作るということだけでは政府の役割は果されぬと思いますが、どうでしょう、そういう点は。
  66. 国務大臣(石橋湛山君)(石橋湛山)

    国務大臣(石橋湛山君) お答え申し上げます。原子力課のことは、これを取り扱う中心がないと困りますので、とりあえず作りましたものでありまして、今後原子力問題をどういうふうな機構で日本が取り扱っていくかということは、目下経書等を中心にしまして研究をいたしております。その研究の結果によりまして、局にいたしますか、あるいは何人にいたしますか、どこに置くかというような問題を取り上げたいと考えます。それから原子力は将来非常に有望だと言われておりますが、それによってどれだけのレーバーが節約といいますか、要らなくなるかということは、これはやはり今後の研究問題であります。現状においては、日本の今の原子力は、今度作ろうという炉も実は研究的なものである。直ちに非常な大いなる利用がつくものとは考えておりません。ことに今問題になっております濃縮ウランの炉のごときは、ほんの全くの研究的なものでありまして、まだ労働力に関係をするような段階には当分来ないものと思っております。そうかといってそれを決して安心しておるわけではありませんが、しかしもし原子力というものがさような大いなる働きをするなら、これは日本の産業、あるいは経済として取り入れざるを得ないでありましょうから、そこで余ってくる労働力をどうするかということは、また別途にどうしても考えなければならねものと存じております。
  67. 中山福藏君(中山福藏)

    ○中山福藏君 時間がありませんから、この問題はこのくらいにして、もう一つ通産大臣にお尋ねしておきたい。それは四日市の燃料廠です。これをどう処置されるつもりか、一つ承わっておきたい。
  68. 国務大臣(石橋湛山君)(石橋湛山)

    国務大臣(石橋湛山君) 御承知のように、四日市の燃料廠の跡地というものは、なかなか前内閣以来、いろいろの問題が巻き起って容易に決定をしなかった。今度できれば、徳山、岩国、四日市という三つの旧燃料廠の跡がございますが、これを一括、現在の日本として最も経済的にどういうふうにやったらば一番利用度が高いかということを主眼といたしまして計画を立て、目下いろいろの関係者、あるいは政府内等において検討をいたしておる次第でございます。なるべく早い機会に一つこれを処分をいたしたい、かように考えております。
  69. 中山福藏君(中山福藏)

    ○中山福藏君 それでは川島国務大臣にお尋ねします。自治制度の改革については、現在政府ではどういうふうにやっておられますか。おやりになるつもりであるのですか。また現在の状態を持続していかれるつもりですか、それをお伺いしたい。
  70. 国務大臣(川島正次郎君)(川島正次郎)

    国務大臣川島正次郎君) 自治制度の改革については、ただいま地方制度調査会に諮問をいたしておりまして、いろいろ研究をいたしておるのであります。とりあえずこれまで答申のありました点を取り上げて、今国会提出して御審議を願うことになっております。根本問題であります府県の廃合、道州制の問題、それに伴った特別市制の問題につきましては、まだ答申がございません。これを諮問いたしておりますからして、答申のあり次第、これを適当に取り扱いたいと、かように考えております。
  71. 中山福藏君(中山福藏)

    ○中山福藏君 御承知通り、大阪というところは商工業の中心地として日本の斯界の中心をなしておる。従って商工都として特別の取扱い、すなわち大阪産業都としての体裁を作り上げるというお考えはありませんか、お尋ねいたします。
  72. 国務大臣(川島正次郎君)(川島正次郎)

    国務大臣川島正次郎君) 自治法の中にも、特別市を置き得る規定がございます。まだ適用はいたしておりませんが、ことに大阪市につきましては、数年前からこの問題が取り上げられまして、研究をいたしておるのでありまして、そういう意見が各方面にあることは事実でございます。従いまして、政府も地方制度調査会に特にこの点に関する諮問をいたしておるわけであります。まだ結論が出ないという段階でございます。
  73. 中山福藏君(中山福藏)

    ○中山福藏君 それでは杉原さんにお尋ねいたします。大体三十年度の防衛関係費は千三百二十七億ということになっておりますが、あなたの御承知通りに、あなたの所管に属しておりまするところに種々の問題がひんぴんとして起って、たとえば富士のすそ野の問題、あるいは群馬県の問題というようなあんばいに、いろいろな不愉快な事態が米軍並びに日本の自衛隊とその土地の住民の間に起っておる。これは要するにあなた方の趣旨というもの、あるいはその必要、あるいはそのよって来たるゆえんというものに関する徹底した浸透理解工作というものをやっていないんじゃないかという気がするんですが、あなたは宣伝費とか、あるいは啓蒙費とか、そういった広報に関する費用というものをどれくらい予算面にとっておられるのですか、それをお伺いいたします。
  74. 国務大臣(杉原荒太君)(杉原荒太)

    国務大臣(杉原荒太君) お答え申し上げます。私の方では特に宣伝というようなことは実は従来あまりしていないのでありますが、ただしかし、防衛庁の所掌事務につきまして、よく国民の御理解をいただく、そうしてまた私らの方で周知するように努力するという点は心がけております。ただこれの実際の手段方法といたしましては、募集の際になるべく、たとえば地方公共団体に委託いたしまして、自衛隊に関する巡回映画など見せる、こういうための経費は多少とっております。それからただいま御指摘になりました富士とか、その他の問題、これは御承知通り私の方の所管ではございませんが、しかしこういう点やはり御指摘の通り、またよく地元の人たちの御理解を得て、よくやるというための努力をしなければならぬことは当然と存じております。
  75. 中山福藏君(中山福藏)

    ○中山福藏君 そういう事柄を、宣伝するについての、たとえば宣伝費というのはないのでしょうか。また私は考えまするに、大体今日日本国においては、たとえば自衛隊を置かなきゃならぬ、しかしその必要はないんだ、あるいは共産党の志賀君のように、自衛軍というものは必要なんだ、しかしその時機ではないという意見も、まちまちなんです。だからたとえば一九五三年度の世界の軍事費の概算から見ましても、アメリカ十三兆億万円、ソ連が十兆三千億万円、イギリスが一兆五千億万円、フランスが一兆三千万円、イタリアが二千七百五十億万円であります。本年度のソ連の軍事費というものは一九五四年度のそれにより一〇・七%ふえている。これはソ連のスベエレフ財務相が発表しておる。そういう世界の事情をなぜ国民に教える方策をとられないか。われわれは経済的に非常に貧困な立場にあるけれども、これだけはどうしても最小限度必要であるということを、なぜあなたは、たとえば外務省なら外務省と一緒に、あるいは日米協定、あるいは行政協定というようないろいろな方面の官吏の方々と御相談なすって、なぜ世界の真の防衛情勢というものを国民に知らせる方策をおとりにならぬか。私はそのために、国民はただ軍に、戦争というのはいやだ、ああいうものをやるものはぶっこわせ、それ、むしろ旗を立てなきゃならぬ、こういうふうになって、実に不愉快千万きわまるものだ。だから国民にすべての今日の世界の情勢、世界の軍備というものをお知らせになって、とうしても自分のこの防衛庁、自衛隊というものには、これだけの経費が必要なんだということを知らしめなければ、これはとんでもないことになるのですよ。これは暴動なんか起きたときには、その場合にはどっち向くかわからぬというような今日のありさまでは、われわれは血税を払っておる手前こういう点は一つはっきりと輪廊を明らかにしていただきたいと、この場合お願いしておきます。
  76. 国務大臣(杉原荒太君)(杉原荒太)

    国務大臣(杉原荒太君) 世界の実情を、現実の事態というものをよく認識して、そしてまた、しかも将来の日本の方向を誤まらないというようにすることは非常に大切なことだと思います。これはひとり防衛関係ばかりではなく、みんな関係する、非常に関連することが多いと思いますが、この政府におきまして、政府の活動の部面として、どの程度これをやるか。あるいは党活動との関係、その他民間との関係、その辺のところをどういう区分をやるのが適当であるか、これはその党費の問題にしましても、また一方党費が決定しまして後も、予算等関係もございましょう。これは御意見の点はよく拝聴して、よく研究したいと思います。
  77. 中山福藏君(中山福藏)

    ○中山福藏君 御意見の点はもっともな点もありますが、ただいま私の申し上げたことをぜひやっていただきたいと、私お願いしておきます。  そこで杉原長官が考えておられますこの日本の防衛態勢について、あなたの抱いておられる構想というものを簡単に承わっておきたいと思います。
  78. 国務大臣(杉原荒太君)(杉原荒太)

    国務大臣(杉原荒太君) ただいま政府におきましては、すでに国会においても申し上げておりますように、経済六カ年計画に見合う長期計画というものを検討中でございます。
  79. 中山福藏君(中山福藏)

    ○中山福藏君 これはもう検討中検討中で、内閣がかわるごとに検討中をやられては、私どもはたまらぬのです。内閣はどれでもそう長くは持てぬのですから、自分の在任中は精一ぱいの仕事をしていただきたいということを特にお願いを申しておきます。  この際、ちょっと経審長官にお伺いしておきますがね。あなたはこの経済六カ年計画というものをお立てになっておりますが、対内的の問題はあなたの構想で、あるいは一つの目的を達することができるかもしらぬ。しかしながら対外的の問題をこれに牽連させて組み込んでおられますが、対外的に、その事情が、客観情勢の変化によって変ってきたらどうなさるつもりですか。それに対する対案がありますか。この場合念を押しておきます。ただいま防衛長官がおっしゃいました言葉に関連してですよ。これはそこも一つ押しておかにゃいかぬです、六カ年計画云々ということがありましたから。
  80. 国務大臣(高碕達之助君)(高碕達之助)

    国務大臣(高碕達之助君) お答え申し上げます。六カ年計画の策定に当りまして、前提条件として現在の国際情勢が現状を持続していることと、それから貿易等におきましては、順次各国とも輸出については力を注いで、競争が強くなるものだと、こういうふうな一つの前提においてやっておりますことでありますから、国際情勢が非常な変化をして、ここに大戦争が勃発したといったふうな場合の空気があれば、さらにこれは立て直さなければならぬことだと存じております。前提条件はそういうふうなわけでやっておるわけであります。  なお先ほど御質問で、私の答えなければならぬ点が一つございましたことは、日本の長期経済計画を立てます上におきましては、当然相当の失業者が出る。経済を合理化すれば出るということも考えなければならぬ。それで、といって、経済の、産業の合理化をやらずにおれば輸出も増進できない。どうしてもやはり産業の合理化を同時にやっていかなければならぬ、こういうことは当然考えなければならぬと思っております。それに対しては、ただ日本は比較的、イギリスだとか、そのほかの国とは楽なことは、われわれの農業政策及び中小工業、これは日本としては非常に大事なものと存じまして、これが実際の失業者以外に、潜在失業者を吸収している力は非常に大きなものです。これには相当な潜在失業者としての人口を吸収し得るのであります。従いまして、これは単に米が外国の方が安いから外国から買うのだとか、小麦が安いから買うのだとか、こういうふうなことには考えられない。そういう意味におきまして、失業者をどうして吸収するかというふうな意味から、農業政策、中小工業政策は立てなければならぬ。こういうことは、経済六カ年計画を立てます上において、非常な重要なるファクターとして私は考えております。
  81. 中山福藏君(中山福藏)

    ○中山福藏君 それでは防衛庁長官にもう一つお伺いしておきますが、あなたの所管になっておりまする留萌射的場建設というのがありますが、保安第二管区の統監部が、昭和二十八年の八月にここで射的場の請負工事をやらしておりますね。それが二十九年の一月に一千万円という金が払われておるのです。ところがこの一千万円という金は、一応工事が完成してから、請負工事ですから、お払いにならなければならぬ。しかるにその金を渡したのが昭和二十九年の一月で、昭和二十九年の九月まで工事が完成していない。これについてお取り扱い上、どうなすったか、あるいは経理官の処分というものがあったのかどうか、ちょっとお伺いしておきます。
  82. 国務大臣(杉原荒太君)(杉原荒太)

    国務大臣(杉原荒太君) ただいま御指摘のような遺憾なことがありましたのは事実でございます。ちょうど検査当時、非常に積雪が深く、一応検査したのでありまするけれども、さらに念書をとってやったのでありますが、しかしそういうことは決していいことではありません。これは確かに私の方の非常な手落ちに違いございません。それからさらにこれが九月になって完成したということも事実でございます。その後雪が解けました後、当時の保安庁でございますが、ずっとあそこを射的場に使っておりまして、そういう関係から工事の方をずっとやらせるということもできなくて、完成の日が延びたということであります。しかしこういうことは決して言いわけではございません。これは私の方も非常に遺憾なことだと存じております。そうしてその工事の検査がつまり十分でなかった、それからまたその検査に至るまでも工事の監督が十分でなかった、この二つの点も明らかに当を得ない措置でございました。その責任者に対しましては、それぞれその検査の責任者に対しては、懲戒処分をし、それから工事の監督者に対しては戒告処分をいたしております。
  83. 中山福藏君(中山福藏)

    ○中山福藏君 もう一つ、たくさんありますけれども、代表的なものを尋ねておきますが、関東地方建設局は、東京都の世田ケ谷区に、保安隊の三宿施設A地区というところに病院その他十三種別のいろいろな建築をやる。そのときにも二億六千七百万円という金が昭和二十九年三月二十五日と三十一日に渡って、これが昭和二十九年の九月までに着工していない。これは即日着工ということになっている。これについてはどういう御処置をなさったのですか。
  84. 国務大臣(杉原荒太君)(杉原荒太)

    国務大臣(杉原荒太君) 今の点も御指示の通りの事実がございます。これはあそこに当時の保安庁の方で計画を立てまして、病院を建て衛生学校を建てるということで、あそこの土地を取得したいということで、ほかにも例が非常にたくさんあることでございますが、工事を建設省の方にお願いしてやっているわけであります。二十九年の三月十五日だったと思いますが、あそこにおりました、当時耕作しておった人たちの離作については、三月十五日に承諾を求めまして、それからさらにあそこの問題といたしまして、緑地帯に指定されておったのですが、これが解除という必要がありますし、関係者の意見を総合しまするというと、あそこの緑地の解除についてはほとんど異論はないというような状態でありました。しかし正式に決定いたしまするのは都市計画審議会でございますので、そこの開会が普通四、五月ごろです。ところがちょうど昨年は改選の時期に当っておりまして、そうしてそういうことがおくれたことは事実あったのでございます。なお先ほど申し上げましたように、決して私の方の責任を回避する意味ではございませんが、支払い及び契約は建設省の方でやっております。
  85. 中山福藏君(中山福藏)

    ○中山福藏君 最後にもう一ぺん防衛庁長官に尋ねますが、防衛分担金に対する日米共同声明というこの声明書を読んでみますというと、二十九年度からの繰越金が二百二十七億円ということが書いてある。二十八年度の保安庁の関係支出総額を見てみますというと、六百二十八億五千万円、そうして二百五十七億一千万円というものを翌年度に繰り越しているのです。しかもそのうちの十四億八千五百余万円というものは不用額ということになっているのです。十四億というような大きな不用額が出るような予算をなぜ組まれたのですか。こういうふうになると、会計検査院の報告によりますと、批難さるべき不用額六百万円ということが書いてあるのです。だから、十四億何千万円というような不用額のようなものがあるから、こういう結果が生ずるのじゃないかと考えられるのですが、繰越金なんかも、できるだけ少く繰り越すような予算一つ組んでいただきたいと思うのですが、どうお考えですか、こういう点については。
  86. 国務大臣(杉原荒太君)(杉原荒太)

    国務大臣(杉原荒太君) この会計の独立の原則からいたしましても、繰り越しなどは、繰り越しそのものが例外に違いございません。これを少くするという方針をとらなくちゃならぬ。予算の編成に当っても、予算の執行に当っても、そういうことは十分注意していかなければならぬことだと思います。従いまして本三十年度の予算編成に当りましては、そういう点も極力留意いたしております。それから先ほどの不用額のことでございますが、これは一に人件費でございまして、欠員に基くものでございます。
  87. 中山福藏君(中山福藏)

    ○中山福藏君 それでは一つ外務大臣にお尋ねいたします。私は南極に対する権益を守らなければならぬという御質問を申し上げる。これは平和条約の第二章第二条というのに、領土の範囲というものがきまっているのです。(a)項から(f)まできまっているわけです。その(e)項に、日本というものは南極に対して何らの権利、権原、あるいは権利の要求をやることはできないということがきめられているのですね。これはまことに不可思議な平和条約の書き方だと考えております。なぜならば、大体平和条約というものは、原状回復というものを原則としておったのであります。もとある国が持っておった領土が日本領になったというその帰属せしめられた領土の原状回復を願ったのが、いわゆるサンフランシスコ平和条約というものと考えている。しかるに(e)項には、南極に対してまで日本の生存権を破壊するような条項がここに現われているのです。しかも捕鯨関係、あるいは一九一一年に白瀬大尉がここに大和雪原というものを発見して、日の丸の旗を立てたということになっている。しかも現在チリーとアルゼンチンには、英国の提訴によって国際司法裁判所でこの問題が取り扱われて、この領土というものはどこに帰属するかということが問題になっている。私は実に不思議でたまらぬ。こういう条約というものがなぜ結ばれたかということか、実際今もって不思議に考えます。こういう日本人の生命権を否定するようなこの条約というものは、当然改訂されて、私は日本の権益というものを守らなければならぬということを考えているのですが、こういう点はいかがなおぼしめしでございましょうか、  一つお伺いしておきます。
  88. 国務大臣(重光葵君)(重光葵)

    国務大臣(重光葵君) お話の通りに、今の条項は、平和条約の第二章、領域というところの第二条の第三項目にはっきりと書いてございます。これに関係していることだろうと思います。この平和条約を、私は今弁護する地位にはむろんございませんけれども、平和条約について、領土の問題について規定をするということは、何も間違った規定ではないように考えます。この領土権をはっきりと放棄したわけでございますから、これについて、今すぐ南極に対する、領土に対する権益を回復するような交渉をするという時期は、これは今日はまだその時期でないと、こう考えます。しかしながらお話の通りに、捕鯨権というような、南極方面の公海における漁業権の問題については、これは別に条約をもってわが方としても捕鯨上の権利が擁護されているわけでございますから、こういう権益を擁護する方面に努力を進めることが穏当じゃないかと考えます。
  89. 中山福藏君(中山福藏)

    ○中山福藏君 領土の放棄というものは、これはまあ第二条にこれはきまっているわけですが、これは持っておったものを放棄するということはできる。持たないものを放棄するということはできない。それで、この規定は、まことに変なものだと思いますけれども、時間がありませんから、そこまでは申し上げません。  ただもう一つ念をおしておきたいのです。南極の方は、そういうふうにきまっている。北極の方は何にも規定がない、北極に関しては。しかも現在世界の動きを見てみますると、北極というものがこれから従来の地中海に肩がわりをするだろうということが考えられている。それぐらい北極圏というものは重要な役割を世界各国に対して承わるということになってきておりますが、北極圏に対しては、あくまでも外務省としては、すべての権益を主張するということを実際しておられるのでしょうか、どうでしょうか。そこを一つ承わっておきたい。条約にはないのです、北極圏は。
  90. 国務大臣(重光葵君)(重光葵)

    国務大臣(重光葵君) 北極につきましては、従来日本のかかり合いがなかったというわけで、何も規定がなかったのだと思います。北極については、今日日本が北極に面した海面について直接領土的に関係を持っておらないことは、今現状でございます。がしかしながら、北極についていろいろ学術的の探検、もしくは研究等について、これは日本としてこういう研究を行なっても少しも差しつかえのないことであるのでありますから、必要に応じましてはその調査研究を進めていってもいいと考えます。しかし今日そこまで今手を伸ばす、実際上、手を伸ばすことになっていないということだけは事実でございますことを申し上げます。
  91. 中山福藏君(中山福藏)

    ○中山福藏君 これは、文化の程度がおくれているから手を伸ばすことはできないと私は見ているのです。だから政治家は、いろいろな現実の問題をかれこれ処理するということだけではなく、頭の開拓というものがまず第一に私は必要だと考えます。今日の日本の政治家の欠陥は、頭が少しも開拓されておりません。私は一つそこを特に重光外務大臣お願いいたしておきます。  今度は高碕さん、あなたに、外務大臣にかわって御答弁願いたい。アジア・アフリカ会議にあなたおいでになりましたが、約三千万円ぐらいの金をお使いになったのだと思いますが、一体どういう成果を得てお帰りになったのか、そこを一つ端的に表明していただきたいと思います。
  92. 国務大臣(高碕達之助君)(高碕達之助)

    国務大臣(高碕達之助君) お答え申し上げます。この結果につきましては、おのおの見方がありますから、批評する点はたくさんあると存じますが、私どもは、まずアジア、アフリカにおいて、あれだけの、二十数カ国が寄りまして、日本は今後、従前と違って、あくまでも平和主義に進んでいく、平和を愛好する国民である、どこまでも民主主義の国家であるということを厳粛に宣言しまして、彼らに相当の日本の決意がわかったと存じます。これが一点であります。もう一つ、経済的におきましては、従来日本の工業がどの程度に進んでいるかということについては、十分認識されていなかった点もあるようであります。この点につきましては、会議はもちろん、会議以外におきましても、いろいろな方法をもってこれをよく宣伝いたしまして、一例を申しますると、日本のカメラ、あるいは日本の時計、こういったものが日本にできている、こういったものを、実際のものを業者からちょうだいいたしまして、これを各代表に配付いたしましたところが、相当日本の工業力については進んでいるということがアジア、アフリカの各国に認識されまして、その結果、各方面からいろいろな使節がまた参りまして、それから日本の技術も導入する、同じ技術を導入するならば、ヨーロッパよりも、日本がこれだけ進んでいるから導入しょうというような、こういうこともありましたし、アフリカ付近におきましては、日本との通商条約、あるいは友好条約なり、そういったふうなものを締結いたしたい、こういう希望もあります。あるいはゴールド・コーストのごときは、直接申しまして、六人の留学生を日本に収容してもらいたい、こういうような申し入れもありましたように、経済的におきましても、相当日本の現状を知らしめて、そうしてお互いに措置するように相なったと存じております。
  93. 中山福藏君(中山福藏)

    ○中山福藏君 アジア・アフリカ会議の状況を見ますると、二十九カ国で平和十原則を発表しておられます。十原則はネール五原則を拡大敷衍したようなものと思う、私が読んでみますというと。一番重要な、私があなたに期待しておった問題は、戦前、戦後の日本の国情というものを述べる必要があると見ておった。その国情に関しては、何にも触れておらなかったように私は見ている。たとえば技術合作だとか、経済協力だとか、あるいは東亜の文明の復興だとか、こういうものについて、あなたはいろいろと御発言なさったということは承わっておりますが、ただ、ただいま承わったようなことでは、これは第二次的な問題だと思う。第一次的には、日本が再び侵略的な国になるかならぬかということの認識を、東南アジアの諸国に求めなければならぬのじゃないかと思います。それがきまらなければ、第二次的の工業の発展とか、技術の合作とかというようなものはできないはずだと思います。そういう点にはお触れになったでしょうか。それを一つ念をおしておきたいと思います。
  94. 国務大臣(重光葵君)(重光葵)

    国務大臣(重光葵君) 少し私が説明をしたいと思います。今お話の点は実際根本問題だと私は考えております。実は不幸なる戦争がありまして、その後に、いまだに日本の真意について誤解を受けている点がたくさんございまして、また今日でもまだあると思います。たとえば豪州あたりですら非常な誤解を持っておるということは、説明を申して上げるまでもございません。それからまた今日、東南アジアの経済開発、経済開発と、だれもかれも申します。その通りであります。しかしその東南アジア方面において、日本に対する誤解は相当深刻なものがずっと継続的にあることは、事実でございます。そこで、経済外交といい、経済開発と申しましても、まず第一に、日本の真意について誤解のないようにしなければならぬ、こういうことが一番の大きなことで、これはどうしてもそうやらなければならぬ。そこで、実は政府といたしましては、われわれが考えておることは、外国との間に日本の平和外交ということ、平和の意思ということを徹底せしめるために、最も努力いたしておる次第てございまして、外交上の議会における発言も、すべてそういうことについて外国の誤解をまずもって解きたいという意思に出ておることは、御推察にかたからぬところでございます。  そこで、バンドン会議でございます。バンドン会議におきましても、その日本の真意を徹底せしめることに主力を注いだわけでございます。今高碕代表の言われました第一点でございます日本の平和的意思を強調する、また実際そういう政策を運用しておるのだということでございます。それは平和外交と一言にして申しますが、しかし当時あれだけ緊迫いたしました台湾の問題もございました。そこで台湾の問題等につきましては、日本はあくまで武力によらずして平和的手段によって紛争を解決しなければならぬということを強力に主張しましたのも、さような実際の状態を顧慮して、発言をわが全権代表においていたしたわけでございます。そこで、今お話しの主眼点は全くわれわれもそう考えておるので、これはぜひともあらゆる場合においてさような日本の平和的意向を外国に徹底せしめて、そして経済発展の背景にしなければならぬと、こう考えておるのでありまして、その点において、バンドン会議においてのわが全権の活動は、私から見ましたならば、非常にこれは有意義であり、非常に私はその点においては効果的でもあったと満足しておるわけでございますから、以上お答えを申し上げます。
  95. 中山福藏君(中山福藏)

    ○中山福藏君 まあ、外務大臣が満足するとおっしゃれば、私、満足なさらぬとは言いませんが、私の知り得たところでは、まず懇親会程度のものだったろうと、こういうふうに解釈しているのです。しかしこれは時間がありませんから、いろいろな突っ込んだ話はいたしません。南洋からすべての情報を私はとっておる。ですけれども、時間の関係上、私は略します。  最後に、五月九日から始まっておりますシムラ会議、これは七月一日から施行されるアメリカの会計年度から出る特別援助資金の二億ドル、これについては十三カ国がシムラ州の議会でいろいろ相談をしておるが、外相は、どれくらいのその金の配分ですね、あるいは有効適切にこれをどういうふうに使用するか、あるいは有機的にアジア各国はどういうふうに協力していくかというその方針なんかについて、すでに判明したと思いますが、この場合承わっておきたいと思います。
  96. 国務大臣(重光葵君)(重光葵)

    国務大臣(重光葵君) 先ほども一言申し上げました東南アジアの開発、経済問題ということに関連して、シムラ会議には相当重きを置いたわけでございまして、そこで、これは御承知通りに、インドの主唱によるものでありまして、九月に今度はシンガポールでまた会議がございます。それはコロンボ・グループが集まって、アメリカの援助資金をどう実際使うかということを立案することに相なっております。それに提案をするアジア諸国の考え方をどう提案するかということを、相談することが主なる目的でございました。そしてその会議には、たとえば取りきめだとか条約だとかいうようなものはこしらえるつもりはない。意見の交換をやる、この次の会議に具体的な意見を出すための準備行為をやろう、こういうことでございました。  そこで、むろん日本側といたしましては、この会議に臨むためには、これらの地域相互の経済交流をなるべく円滑に、また便宜あるようなしかけをするようにすることを考えることが一番けっこうである。また、これらの地域とこれらの地域以外の貿易を盛んにする方法も考えなければいかぬ。それからまた、米国の援助資金については、これらの地域全域の開発に最も便利な有益な考案をすべきである、という考えをもって臨んだわけでございます。  そして意見の交換をやったのでございますが、これは御承知おき通りに、これは大体において意見が十分まとまらず、アジア各国における意見は、さような地域的に全体的に考えるよりも、やはり従来の通りに、双務的に、たとえばアメリカとパキスタン、アメリカとインド、アメリカとどこ、こういうように国々が個別的にアメリカの援助を幾ら受けるかというふうに処理することがいいということに、大体の意見がそういうふうに傾きました。そこでコロンボ・プランのように、全体としてどういう工合に考えるかということの意見がむしろ少数で、この会議は終ったわけでございますが、しかしこれはまだ、それでもって終りじゃありません。日本としてはやはり、全体的にこれをよくいかに組織して、これを効果的にやるかということを考えなければならぬ、こう思っております。しかしシムラ会議は大体そういうことで意見の交換は終ったようでございます。
  97. 中山福藏君(中山福藏)

    ○中山福藏君 それでは、文部大臣がお急ぎのようですから、文部大臣に質問したいと思います。  二十年度の文教費というものは七百三十七億円、こう書かれてありますね。そのうち、先だってあなたはこの予算委員会で、五千万円を使って新生活運動をやる、また七千万円を使って青少年の指導に関する方策を講ずる、こういうふうにおっしゃったと覚えておりますが、しからば、その盛り上る力というのは一体どの方面にあなたは求めるつもりですか。これを一つ承わっておきたい。
  98. 国務大臣(松村謙三君)(松村謙三)

    国務大臣(松村謙三君) 新生活運動につきましては、これは大体参衆両院の各派、それから宗教、教育、言論、あるいは婦人の団体等のうちから、代表的の方にこの新生活運動をお願い政府からいたしまして、これは全く白紙でお願いをいたしまして、そうしてそこで一つ新生活運動の本部を設けていただきまして、すべてをこれから発足していただきたい、こういう考え方を持っているわけでございます。すでに今日でも、新生活の運動をいたしておる団体相当な数がございます。もちろん、その本部ができましたらば、これらの団体とも連絡をして、そうしてともに新生活運動の徹底に協力するという形になることと私どもは期待をいたしておるわけでございます。
  99. 中山福藏君(中山福藏)

    ○中山福藏君 大体松村文部大臣は、私は非常に尊敬しておるのです、あなたを。  ほんとうは、打ちあけて言いますとね。ところが、非常にあなたは人格が立派過ぎて、この仕事をおやりにくいのじゃないかと実は考えておるのです。遠慮ぎみだと私は見ておるのです。私は先般、村田省蔵氏がシナから帰って、シナの一体教育の方針はどうなっておるのかと聞きました。ところが、公けに奉ずるということになっておる、それが教育の方針だと、こうなっておるというのです。それで、日本の一番問題となり重大な点は、指揮者というもの、指導者というものが、指導理念というものを旧憲法時代に持っておるのです。それで、外部に対しては新憲法の精神を説かなければならぬというようなジレンマに陥っておる。ここにすべての苦難というものが現われてきて、教育界は非常に迷っておらるると考えております。ソ連の状況を見ましても、大学から小学校まで一貫した教育の方針がある。共産主義確立のために一つ方針を定めて、国家がその方針に沿うた制度を立てておると、私は承わっております。それでこういうような共産主義の国でもそうでありますが、いわんや自由主義の諸国におきましては、必ず政府というものは、道徳の点において、あるいは指導理念において、一つ方針政府として持っておらなければいかんと思うのです。これを民間に押しつけるのじゃないのです。私の言うのは。しかし現在の政府というものはこういうような建前で、法律、道徳、宗教というものをこの目標に向って進むのだという、政府自体の一つ方針というものがなければいかぬと思う。日本にはそれがない。それがないから、中心を失った道徳であり、中心を失った法律であると私は見ておるのです。現在はその点をはっきり明確にさしておかなければ、この新体制運動は成り立たないと思います。(「新生活運動だ」と呼ぶ者あり)だから、私の考えでは、新生活運動というものの指導理念というものは、単に盛り上る力なんかというものを待っておるのではなくて、政府はこう考えるのだ、政府はこの方針を打ち立てていきたいということをなぜはっきり打ち出されないかということを、私は非常に遺憾に思うのであります。私は鳩山内閣の副総理格におられまする松村先生、私はあなたを尊敬しておるのです。私はあなたの全人格を一つ投げ出して、この問題を解決していただきたいと思いますが、どうでしょう。政府として、まず政府はこう考えるのだという方針をお立てになる決意はございませんでしょうか。
  100. 国務大臣(松村謙三君)(松村謙三)

    国務大臣(松村謙三君) 教育の根本に対する考え方は持っておりますが、この新生活運動のごとき大きな社会運動となりますと、もしも政府の理念で推していきますことになれば、これが、翼賛体制のような形になりますので、かえって国民のほんとうの共鳴を得ることは困難であり、実効を上げることは困難である。それでありますがゆえに、ただいま申し上げますように、民間の力によっておやりを願い、その手伝いを、文部省が下働きをその団体からせよと言われますならば、いろいろの計画などのことはもちろんそれはいたしますけれども、私はやはり今日では、大体日本の国民のこのだらしのない生活を規整していかなくてはならぬというのは一つ世論にもなっており、民間の有識の方々におまかせいたした方がかえってほんとうに効果を上げるゆえんであろうと、そしてそのこと一つ一つ実践の道は、それがすなわち精神の裏づけとなり、両者相待って今日の社会を締め直すという効果を得ることと、こういうふうに信じておるのございます。
  101. 中山福藏君(中山福藏)

    ○中山福藏君 大体風俗習慣というようなものは、その当時の権力の地位というものを擁護するためにできるものと私は見ているのです。法律でも、道徳でも、宗教でも。たとえば日本の皇室、これをどういうふうにして擁護するかというところに、すべての道徳、法律、宗教が生まれている。各国の例を見ても、皆そうです。これはそうなっております。ところで、新憲法ができたら、新憲法の魂を生かすために、すべての風俗習慣というものをこれに引きつけておかなければならぬ。それに対する努力が足らないのです。だから、ここに非常なジレンマが、政界でも、実際社会でも、生まれてきている。一体どこに国民は帆を上げていっていいかわからぬことになっている。かじなしに船が全部走っているのです。こういうふうなことでございますからして、私は松村文相にお願いするのです。やはり政府政府として、あの翼賛会の、近衛のぐうたらの先生のやったようなばかげたことをやらずに、そんなことを今考える人間はありません。だから、そんなことを憶せずして、あくまでも私は政治家として断行していただきたい。これはお願いしておきます。これが一番大事なんですよ。幾らほかの問題をかれこれ言ってみたところが、精神が確立しなければ日本というものはつぶれるのです。私は里見岸雄君のですね、これはここに耳の痛い方があるかも知れませんが、私は「日教組と共産主義」という書物を読んでみた。また日教組から脱退されたもとの相当の幹部の諸君の書物も読んでみた。これはしかし私はそれを非難するのじゃない。そういうすべての事柄を、この問題を解決すれば生まれてくるのです。一定の方針というものを政府はきめて、やはりおれはこう思うのだということを示さなければだめです。私はその方針を切におとり願うことをお願いいたします。私は道徳の実践に関する運動の主体というものを、十五、六調べて来ているのです。こんなものじゃだめですよ、あなた。政府が先んじてやらなければ、五千万円食われてしまう。五千万円は国民の血税です。くだらないぐうたらな倫理運動にこれを回していただきたくない。これを生かして運用していただきたいと思うのです。  それから河野農林大臣にお伺いいたします。まず第一に、昭和二十九年の九月には十三万八千トン、黄変米の不良外米がありましたね。それで二億円の倉敷料をお払いになった。この不良米はどういうふうに処理されたのですか。これはそのままにほうってあるのですか。これからまた処理されんとするのですか。ちょっとお尋ねしておきたいと思います。
  102. 国務大臣(河野一郎君)(河野一郎)

    国務大臣河野一郎君) 御承知通り食糧としては不適格なものでございまするし、これが処理につきましては、まだそれぞれ……。厚生省方面からも私は最近御意見を承わりましたが、これについてはなお御意見もあるようでございます。食糧でございますから、どこまでも国民諸君の安心感の上に立たなければなりませんので、食糧としての処置はそのままこれを進めようとは考えておりません。  ただ、そのままいたずらに金利、倉敷を浪費いたしますことも遺憾でございますので、一方、食糧としてこれが使うことは可能であるかどうかということについての研究をお急ぎいただきますとともに、他の方面におきまして、別途用途につきましてはそれぞれ必要に応じて、少量ではございますけれども、処分を進めております。
  103. 中山福藏君(中山福藏)

    ○中山福藏君 これは買入価格が一トン六万円から九万円、払い下げ価格を一万円から五万円というような、とんでもない数字になって現われておるのですね。だから私は、これだけ苦い経験、体験を持っておられるあなたは、これから外米の輸入についてどういうふうな予防措置、事前工作をなさるおつもりでございましょうか、一つ承わっておきたい。
  104. 国務大臣(河野一郎君)(河野一郎)

    国務大臣河野一郎君) これは今年、ただいま差し上げてありまする予算の中にも説明してありまする通り、買付方法も変更いたしまして、こちらの方に到着して倉の中に入れてから、検査をして政府は引き受けをするということに、一応着検制度に変えました。なおそれを、そう申しましてもいろいろ困難な事情が発生することもおそれまして、現地の方の検査等も十分にやるように民間の商社等に注意をして、そうして検査方法等も一応自発的に変えるようにいたしております。しかし政府といたしましては、今申し上げました通り、こちらの倉におさめてから買うということに、買い方を変更いたしました。ただ、御承知通り、非常に困難なことでございまして、途中で、船内で変質をする場合もあります。それから検査を十分にいたしませんと、わからぬ場合もあるようでございます。そういうことで困難でございますが、政府としては再びそういうことのないように、十分の処置をとるようにいたしておるわけでございますが、ただつけ加えて申し上げておきますが、そういう黄変米が出てから後にまた引き続きあるじゃないか、こういうことを御指摘いただくかもしれませんが、それはその以前に買付契約の済んだものがその後運んできた中にある、こういうことで御了解願いたいと思うのでありますが、現在は最善を期しておる次第でございます。
  105. 中山福藏君(中山福藏)

    ○中山福藏君 もう一つお尋ねしておきますがね、今度の産米が収獲された後に、大体米の売買予約をして前渡金、手付金といいますか、それを大体二割くらいお払いになるということを承わっておりますが、その金が、履行不能に陥る、また不可抗力によってただいま申し上げますように履行不能に陥ったり、あるいは故意、過失によって不履行になった場合には、その前渡金の回収はどういうふうになさるのですか。
  106. 国務大臣(河野一郎君)(河野一郎)

    国務大臣河野一郎君) 大体今の見当といたしましては、御指摘の通り、二割くらいの見当の予定で大蔵省と話し合いを大体まとめておるのでございます。ところが、今お話しのように、予約が不履行になった場合にその前渡金はどういうふうにするかということでございますが、これは何と申しましても、全体の二割でございます。だから、個々の農家にとりますと計算のめんどうな場合も起らぬことはないと思いまするけれども、そういう場合には、一応政府といたしましては協同組合を単位といたしておりますから、決してこれは協同組合の連帯責任制を確立して云々というやかましいことばかりも申しませんけれども、一応建前としては協同組合の連帯責任制ということで考えておるのでございます。
  107. 中山福藏君(中山福藏)

    ○中山福藏君 協同組合に連帯責任制を課すことができなんだ場合には、その金は国民の負担となって、結局国民の損、政府の損ということになりますか。
  108. 国務大臣(河野一郎君)(河野一郎)

    国務大臣河野一郎君) 天災でも起れば、一村が全部、何とか台風でも起きまして、全部供出不能に陥ったというようなことがあれば、これはまた政府としては別の方面から、援助、救済をしなければならぬ事態が起るのでございます。そういう場合でない限りにおきましては、全体の二割でございますから、供出もしくは予約の履行をするものがどんなに少くとも七割、八割もないということは、実は想像できないと思うのでございます。ただ、今申し上げました通りに、その中の特殊な農家がそういうような非常な災害があった場合には、どうするか。これについてはただいま申し上げました通り、一応政府としては、この契約は全販連を通じ、単位協同組合を通じて契約をするのでございまして、そこで今申し上げました通りに、共同連帯責任制をとってやるということで特別の場合の処置はつくということに考えておりまして、国家の負担になるようなことは、非常特別な天災その他あれば別でございますが、そうでない限りは、そういう事態が生まれるようには実はあまり想像しないのでございます。
  109. 中山福藏君(中山福藏)

    ○中山福藏君 時間がありませんから、法務大臣一つお尋ねします。
  110. 木村禧八郎君(木村禧八郎)

    木村禧八郎君 ちょっと関連して。病変米の処置について、簡単に一つお伺いしておきたい。聞くところによりますと、厚生省の方の答申については、ただいま、一割つき直せば無害であるという答申だけが採用されて、その他にまだこれは疑問がある、はっきりと有害か無害か結論を出すのはまだ早計であるというような研究も相当あるのであります。従って、一部のそういうつき直せば配給してもいいという答申だけを取り上げて配給するとなると、さっき農林大臣の言われた、不安を抱かせるということになりますので、そういう点については、農林大臣一つ十分考慮をいただきたいと思うのです。従って、この間予備審査のありましたときには、一部の病変米については結論が出たけれどもあと非常に多数のものについては結論が出ていない。この際はっきりと農林大臣は、そういう不安なものは食糧としては配給しない、一部の答申だけに基いたものは。そういう結論を早急に出さぬ、そのはっきりした結論が出なければ配給しない、こういうことをはっきりとここで言明されることを望むわけです。
  111. 国務大臣(河野一郎君)(河野一郎)

    国務大臣河野一郎君) ただいま木村委員の御質問にありましたように、私決算委員会で明瞭にお答えいたしてあるのでございますが、なお重ねてこの機会に申し上げますが、食糧のことでございまするから、国民大衆の安心感の上に立っていたさなければならぬことでございまするから、たとい一部であっても不安のあるものは絶対にいたしませんということを、はっきり言明申し上げます。  なおこの機会にごく簡単に申し上げますが、さればと申して、先ほど中山さんのお話のあります通りに、相当多量のものを今日のままにして、その研究の結果を待っておるのがいいか悪いか。他の用途に振り向けるとすれば、今までも用途によって非常に安い価格で出した場合もあるのでありますが、はなはだ遺憾の例もあるのであります。そういうことでございまするから、私は衆参両院の方に御参加を願いまして、これが処置についてどういうふうにしたらよろしいかということの委員会でも一つお作りいただいて、それの十分な御意見を承って、何とかこれを処置してしまうのがいいじゃないかというようにも考えるのでありますが、今せっかく考えておるのでありまして、いずれ衆参両院の農林委員会の皆様の御審議を得て、適当な方法を講じて、食糧ということではございません、他の用途にどういうふうにこれを処置してしまったらよろしいか、この処置についての方途を決定したいと、こう考えておる次第であります。
  112. 高田なほ子君(高田なほ子)

    高田なほ子君 ちょっと関連して。ただいま黄変米は絶対に配給をしないという言明をいただきまして、私も非常に安心したわけであります。ただ一つお伺いしたいことは、輸入先のタイ、ビルマに関するいわゆる今後の貿易についての問題が、若干政治的に、黄変米の問題とからんで、引っかかりがあるのではないか。従って黄変米の処理ということについては、研究の結果をかなり早急に急いでも、この処置をしなければならないという考え方が若干省内にあるやに伺っておりますが、この点についてはいかがでございましょうか、お伺いしたい。
  113. 国務大臣(河野一郎君)(河野一郎)

    国務大臣河野一郎君) ただいまお話になりました買付先について「若干」ということは、ちょっと私は了解しかねるのでございますが、これは先ほど私がお答えいたしました通りに、着地検査、すなわちこちらの港に入りまして、それを倉庫におさめまして、倉庫の中で検査をして適格品を買い上げるということに変えたわけでございます。ただ、先ほども申し上げました通りに、さればといって、輸入商社がこっちへ運んだものをまた持って帰る。事実はそうすることにいたしておりますが、またいろいろ問題が起るといけませんから、そういうことのないように、現地の検査を厳重にするように、自主的にそれぞれの機関を作って輸入商社がやっておるということを、つけ加えて申したのでございます。私たちといたしましては、そういうふうなことはただ別の意味で考慮するだけでございまして、なおまた今回は、タイ、ビルマにつきましては、もっと多量に米の買い上げ、売り込みに応ずるように、こういう御要望もずいぶんあちらの政府からあったのでございますが、これはただいままでわれわれといたしましては、量も前年より減りまして、その品質につきましては、非常に厳重な規定をつけ加えまして、そして一応契約をしておる、こういうことでございます。
  114. 中山福藏君(中山福藏)

    ○中山福藏君 法務大臣にお尋ねしますが、会計検査院の予算使途に関する報告を読んでみますと、驚いた。批難さるべき件数が昭和二十六年度は千百十八件、昭和二十七年度は千八百十三件、それから二十八年度に二千二百三十二件、金額にいたしまして昭和二十六年度が三十億五千八百余万円、二十七年度が百二億九千余万円、二十八年度が百四十八億余万円、こうなっておる。これはまことに憂慮すべき事柄であります。かかる次第でありますが、これは要するに厳罰主義をもってこの問題を処理しないからこういうふうな事態が現われるんじゃないかと見ておる。百十二億というものが御承知のように補助金、それから防衛庁の物資調達費が六億、輸入食糧関係が十億、こういうふうに、どこへ行ったかわからぬものが百四十八億余万円。これは大へんな問題だと思います。特別立法を考えておりませんか、その点どうですか。
  115. 国務大臣(花村四郎君)(花村四郎)

    国務大臣(花村四郎君) お答え申し上げます。ただいま中山委員の指摘された不当支出は、大体さようなことに相なっておろうと思います。思いますが、しかし、それが果して犯罪を構成しておるかどうか。もし犯罪を構成しておるものがありとするならば、これは直ちに検察官が捜査を進めて参りまして、万遺憾なきを期しておるのでありまするが、ただいま御指摘の問題は、要するに、不当支出に関する会計検査院の調査の結果であろうと思いますが、少くとも犯罪になる部分に対しては容赦なく厳重に検察権を行使いたしております。
  116. 中山福藏君(中山福藏)

    ○中山福藏君 これは私はいろいろ申し上げたいですけれどもあと二分しかありませんから、略しておきますが、法務委員会にこれは譲っておきます。そこで、あなたのおっしゃいますことは会計検査院法第三十三条にちゃんと書いてある。不正なものがあるときは検察庁に通告しろと、ちゃんと書いてある。私はそれを申すのじゃない。しかしながら千何百件、二千何百件というものがあって、一つも犯罪に触れ得ないということが、常識から考えてあり得ない。あなたのおっしゃる通りに、こういう犯罪は調べなければ出てきません。これは法務委員会に譲るから、言いません。  そこで会計検査院法第三十三条というものを改正して、通告するだけじゃなくて、検察官を会計検査院と兼任させるというような制度を、この法律をお作りになる、こういうような気持はございませんか。この三十三条を改正して……。
  117. 国務大臣(花村四郎君)(花村四郎)

    国務大臣(花村四郎君) お答え申し上げます。御承知のように検査院法第三十三条の通告は検察官の捜査権を剥奪した規定ではございませんから、従いまして、通告があろうがなかろうが、検察官はその捜査を断行して参り得ますることはこれは当然であります。が、しかし検査院法の三十三条によって、検査官がもし犯罪ありとして通告をして参りますれば、これは捜査権を発動いたしますることは当然でありまするが通告がないといたしましても、もし犯罪ありと思量した場合においては、捜査権を行使することにあえてちゅうちょするものではございません。従いまして、ここに特別なる規定を設けずとも、現在のままの法規によって何ら支障はないものであると認めてよろしいと思います。
  118. 中山福藏君(中山福藏)

    ○中山福藏君 意見の相違でありますから、略します。大麻国務大臣に関する質問は保留させていただきまして、これで私終ります。
  119. 理事(池田宇右衞門君)(池田宇右衞門)

    ○理事(池田宇右衞門君) お諮り申します。大麻国務大臣が出席ないので、中山君の質問は二分残すここにいたしまして、二時まで暫時休憩をいたします。    午後一時二十六分休憩      —————・—————    午後二時四十二分開会
  120. 委員長(館哲二君)(館哲二)

    委員長館哲二君) 休憩前に引き続き委員会を開催いたします。  中山君の質問につきまして大麻国務大臣答弁が留保されております。これは後ほどお願いすることにいたしまして、一応御了承いただいておきたいと思います。
  121. 永岡光治君(永岡光治)

    ○永岡光治君 大久保給与担当国務大臣にお尋ねいたしますが、私は暫定予算の中で給与問題を中心にいたしまして、若干質問を試みたいと思うわけでありますが、その第一点は、目下問題になっておりまするところの公務員に対する期末手当の問題でありますが、もちろんこれは勤勉手当を含めましたところのいわゆる夏季手当のことを指すものでありますが、昨日の朝日新聞の夕刊を拝見いたしましても、実は日本石油会社におきましては夏の期末手当といたしまして四万五千円の要求に対しまして四万四千円で妥結をいたしております。昭和石油におきましては四万二千円の支給と同時に基本給といたしまして一千円の賃上げを認めております。さらにまた三白、いわゆるセメント、砂糖、硫安の会社等の期末手当の例を見ましても同様に、セメント等におきましては昨年と同様約五、六万円が支給される、こういうことになっております。硫安にいたしましても三万五、六千円のものが支給される、あるいはまた製紙会社、デパート、土建の会社を見ましても、それぞれ土建のごときは五万円程度の夏季手当が支給される。銀行におきましてもまたすばらしい手当が出ております。しかもこれは年四回支給される、こういう事態になっております。さらにまた電気、ガス、あるいはその他数え上げればたくさん切りがないのでありまするけれども相当この夏季手当といたしましてはかなりのものが支給される状況になっておりまするけれども、ひとり公務員に対しましてはわずかに〇・七五しか支給されないということになっておりまするが、給与担当国務大臣といたしまして、これで十分とお考えでありましょうか、まずその点からお尋ねをいたしたいと思うのであります。
  122. 国務大臣(大久保留次郎君)(大久保留次郎)

    国務大臣大久保留次郎君) ただいま数字をあげて御質問がございました。決して十分とは思っておりませんが、本年度の予算の組み方は、御承知通り一兆円の予算であります。その以内に圧縮しておる関係、また一般の経済界からいたしますと、物価が大体において横ばいの状況になっております。これが一つの理由、もう一つ政府のただいま計画しておりまする減税計画、これは主として勤労階級の減税を目標としておるのであります。つまり減税をしたり、かつ物価の面から考えましても期末手当、ことにこの夏支給しまする手当は現状維持にいたしたいという考えを持っております。しかしこれをもって十分かといいますれば、十分とは存じませんがまことにやむを得ない措置であろうと考えております。
  123. 永岡光治君(永岡光治)

    ○永岡光治君 昨年も一昨年も同様に期末手当の問題については十分でない、できるだけ善処したい、こういう答弁でありましたが、従って大久保大臣が今答弁をされておりまする、物価が横ばいになっておるということは、昨年と同様だということになっております。これに対して善処するという問題についての責任を免れる理由には私はならんと思うのであります。これが第一点。  それからまた減税の問題を言われておりまするけれども、これまた同様に、ひとり公務員のみが減税の対象になるわけではございません。民間の給与者も全部これは減税の対象になるわけであります。これらに比べてあまりにもひどいじゃないか。一兆円以内のワク内といえども、ワク内においてそれぞれ重点の置き方があろうと思うのであります。私は一兆円そのものの総額についてとやかく申し上げておりません。問題は政府の誠意の示しどころであります。これについて依然として十分でないということを口にしながら、結果においては実行に表わしていないということです。この点についてどういうように考えておりますか。私はただいまの答弁では十分でないと思うのであります。
  124. 国務大臣(大久保留次郎君)(大久保留次郎)

    国務大臣大久保留次郎君) ですから、十分とは存じておりませんが、さっき申しましたいろいろの理由によってまことにやむを得ない、こう考えております。なお、また減税の問題でありますが、むろん減税の対象は決して公務員だけではございません。一般大衆でありますけれども、しかし減税も公務員の中に含まれておるのでありますから、公務員もその減税の恩典に浴することと信じます。
  125. 永岡光治君(永岡光治)

    ○永岡光治君 もちろん恩典には浴するでありましようけれども政府原案を見ますれば、これは大したことはないのでありまして、後ほどまたこの減税の問題については質問を続けたいと思っておりますけれども、片やこれだけの相当の額を支給されておるにもかかわらず、ベース・アップも依然として行われていない今日、しかも昨年の五月すでに地域給の是正の問題についても人事院から、公務員の生活と保護といたしまして勧告が出ておるにもかかわらず、依然としてこの問題は放置されております。その際において国家公務員がわずかな、この〇・七五でこのお盆を控えました、いわゆる暮とお盆とは日本で出費のかさむ時期でありますだけに、私はどうしてもこれは〇・七五では少い。承わりますれば公務員の要求も微々たるものでありまして、税込み一月にしてほしい、あと〇・二五つけ加えてほしいという、きわめて私は内輪目に見た、誠意のこもったところのささやかな要求と解釈いたしておるのでありまするが、この点について大臣は、あと〇・二五のつけ加えについてどのようにお考えでありましょうか。
  126. 国務大臣(大久保留次郎君)(大久保留次郎)

    国務大臣大久保留次郎君) ただいま申し上げました通り、決して現在の待遇をもって満足とは思っておりませんけれどもさっき申しました種々の理由によりまして、まことにやむを得ないと思っております。この点を一つ御了承をお願いしたいと思います。
  127. 永岡光治君(永岡光治)

    ○永岡光治君 まことにやむを得ないという理由が明確でないから私は追及いたしておるのでありまするが、何とか善処したいという気持があるとするならば、一昨年におきましても夏季手当に対する繰り上げ支給というものが行われましたが、政府は今年の場合でもそういうもし誠意があるとすれば、私はあると思うのです。十分でなければ、何とか善処したいという気持があると思うのでありますが、そういう方法を講じて何とか善処するという考えはございませんか。当然持つべきだと思うのですが、どうでしょうか。
  128. 国務大臣(大久保留次郎君)(大久保留次郎)

    国務大臣大久保留次郎君) 繰り上げ手当は確かに前例が一つございました。しかしその当時の事情を調べてみますると、やはり暮に増額するという前提のもとにやっておったようであります。(「増額すればいいじゃないか」と呼ぶ者あり)それからもう一つは、実を申せばこの手続には法律の改正を必要とします。これは国会の開会中であるから不可能ではありませんけれども法律の規定を改正してまでやる実況にないという考えを持っておりまするので、お気の毒でありますけれども、現状維持ということにした次第でございます。
  129. 永岡光治君(永岡光治)

    ○永岡光治君 そういう実情にないという実情は、具体的にどういうことでございましょうか。これはあと予算も控えておりますし、六月中会期一ぱいまだあるわけです。これはできないことはない、できないという具体的な理由、誠意があるけれどもできないという理由がどうもわからない。その点を明確にしてほしいと思うのであります。
  130. 国務大臣(大久保留次郎君)(大久保留次郎)

    国務大臣大久保留次郎君) いやできないということは、法律の改正は、それは国会の開会中ですからできますけれども、さっき申しました通り、物価の点から考えまして、また減税の点から考えまして、そういう点から推測して、今は時期でないじゃなかろうか、もう少しがまんしてもらいたい、こういう気持なんです。
  131. 永岡光治君(永岡光治)

    ○永岡光治君 いましばらく待ってほしいというのは、いつまで待つのか、それも明確でありませんけれども、物価の横ばいというのは、しかし、勤労階級に属する方々の生活に対しての物価の横ばいの、負担の軽減というものはごく微々たるものである。逆に物によっては非常に高くなっているものもあることは、すでに大臣承知通りです。従って今までの物価が非常に安くて、生活が十分であったというなら、これは私は問わない。しかし従来とも非常に困っておるのだ、何とかしたいということをしばしば口にされておりまするだけに、その物価が昨年と変っていないとすれば、やはりこの際には善処すべきである。事実一昨年においては善処したんですから、できないことはない。善処する誠意さえあるならば必ずできる。ぜひ一つこれはやってもらいたいと思うのですが、どうでしょうか。もう一度この点についてお尋ねいたします。
  132. 国務大臣(大久保留次郎君)(大久保留次郎)

    国務大臣大久保留次郎君) 物価は高くなっているものもあるというお話でありますが、その反対に物価は安くなっているものもあるのであります。平均しまして横ばいというのが、今日の常識であると思うのであります。従って待遇の問題については、しばしば申し上げました通り、お気の毒でありますけれども、まずこのままで当分はがまんしてもらいたい。機会がきたならば骨折りたいと存じます。
  133. 湯山勇君(湯山勇)

    ○湯山勇君 関連して。今の物価の問題との関係でお尋ねいたしたいと思います。昨年の当初予算が出されましたときに、政府の方では二十九年度においては物価は下る、CPIは下るという予想を立てて予算をお立てになりました。しかし実際には下っておりませんことは御承知通りです。上昇しております。ですから今大臣が言われましたように、上るものもある、下るものもあるとかいうようなことではなくて、具体的に出されたCPIによれば明らかに上っておる。しかも昨年は勧告しなければならない要素があったにもかかわらず人事院は勧告してない。そうしてまたその間地域給等の勧告があったけれども、これも無視しております。こういう事実を見て参りますと、今大臣がおっしゃったように上ったのもある、下ったものもあるでは済まされないと思うのですが、そういうはっきりした科学的な根拠に立って給与担当大臣らしい御答弁一つ願いたい。
  134. 国務大臣(大久保留次郎君)(大久保留次郎)

    国務大臣大久保留次郎君) ただいま申し上げました物価の問題、これはお話の通り、上ったものもありますけれども卸売物価は下ったものもあるのです。(「卸売物価じゃないよ」「CPI、CPI」と呼ぶ者あり)卸売物価を基礎としての議論ではありませんけれども、物価の問題については大体論です。大体論から見て、研究して、今日の状態では平均しては……(「CPI」と呼ぶ者あり)ですから、それは上ったものもあります。それは認めますけれども、大体において横ばいです。(「CPI」と呼ぶ者あり)ですからこの物価の状況のときにおいてするのは少しどうかと思いまして、〔永岡光治君「どうかじゃないよ、こんな切実な問題はないよ」と述ぶ〕けれども、この問題につきましては始終関心を払って、適当な機会において実現したいと思います。
  135. 永岡光治君(永岡光治)

    ○永岡光治君 機会を見てというが、その機会が十分でないのでありますが、実に私は大臣としては誠意があると口に言いながら、誠意はないと思う。今日まで毎年何らかの方法で善処されたわけです。ことしもできないことはないのです。一つやってもらいたい。そういう熱意を一つ出してもらいたいと思うのですが、どうでしょうか。さらに努力を重ねていただきたいと思いますが、この私の要望をいれていただけましょうか。
  136. 国務大臣(大久保留次郎君)(大久保留次郎)

    国務大臣大久保留次郎君) ただいまの心境は、たびたび繰り返した通りでございます。機会がきましたならば必ず実現に努力いたします。
  137. 委員長(館哲二君)(館哲二)

    委員長館哲二君) 永岡君に申し上げますが、根本官房長官が今出席されましたが、事情が許せば、根本官房長官に対する質問をお願いしたいと思います。
  138. 永岡光治君(永岡光治)

    ○永岡光治君 やはりがまんしてもらいたいということに尽きるだけであって誠意が示されていないということは、私きわめて不満であります。生計費のことをいろいろ言っておりますが、問題は、実際に公務員の生活の実態というものは救われていない。しかも過去においてしばしば政府の方々が答弁していることは、これで十分でないのだから何とか努力したい。そういうことを口にはして参りました。従って物価が上ろうと下ろうと、そういう問題は総体して私は大きな問題でない。十分でない、今大久保大臣みずから認めておられますように、十分でないということでありますれば、これは当然私は繰り上げ支給とか、たとえば十二月におけるところの繰り上げ支給だとか、いろいろな方法によって何とかこれはもうこの危急を救って上げるという誠意がなければならんと思うのであります。この点についてはきわめて遺憾でありまするが、どうか一つあと支給期までには二週間以上残されておるのでありまするから、給与担当大臣として全力を上げて善処を一つ要望いたして、質問を次に進めたいと思うのでありまするが、ただいまも大久保大臣から答弁の中にありましたように、減税を行うということで非常に鬼の首でも取ったかのごとき発言をいたしておりまするが、しからばこの期末手当の問題について減税措置を講ずるという誠意を持っておられるかどうか。これは私たちはしばしば政府に対して今まで要求して参りました、きわめて少い額であります。税込み〇・七五というのでありまするから、手取りは〇・五を出るか出ないかのそのきわめて少い額でありまするだけに、せめて最低限五千円とか六千円ということを免除額の基準にいたしまして何とか措置を講じなければならんと思うのでありまするが、この点について政府はどうでしょうか、そういう熱意を持っておいでになりますか。この私の考えについて、期末手当の減税措置について大臣はどのように考えるか、その点を答弁願いたいと思います。
  139. 国務大臣(大久保留次郎君)(大久保留次郎)

    国務大臣大久保留次郎君) さっき申しました通り、あなたの誠意は感謝いたしますけれども、私はさっき申しました通り、ただいまのところ見合わせたいと考えております。適当な機会にあなたの主張の通りに実現のために尽します。
  140. 永岡光治君(永岡光治)

    ○永岡光治君 そういうことは、私の主張通り機会を得たならば実現を期したいという答弁でありますが、その機会というのはいつで、そうして私の主張というのは、この期末手当の問題と減税の問題と二つ考えておると、こういうことになるわけですか、念のために伺います。
  141. 国務大臣(大久保留次郎君)(大久保留次郎)

    国務大臣大久保留次郎君) その機会というのは、これは私もはっきり今いつということは申されません。
  142. 永岡光治君(永岡光治)

    ○永岡光治君 無責任だよ。
  143. 国務大臣(大久保留次郎君)(大久保留次郎)

    国務大臣大久保留次郎君) 無責任じゃない、そう考えております。今はまだその時期じゃないと思っております。
  144. 永岡光治君(永岡光治)

    ○永岡光治君 私はただいまの給与担当大臣の問題、きわめて不満であります。これだけ切実の問題がありまして、毎年々々同じようなことを繰り返されることはきわめて遺憾だと思う。従って減税の問題にいたしましても、民主党内閣の公約の一大政策の、大きな政策の一つに数えられておりますだけに、ぜひとも期末手当のわずか〇・七五しか支給されないこの公務員の問題を考えたときに、当然私は減税措置を講じてしかるべきだと考えておりますが、この点についてもう一度私は政府当局の責任ある答弁をいただきたいと思うのですが、給与担当大臣もそうでありましょうが、石橋通産大臣もおいでになりますが、あなたは閣僚で相当なウエートをお持ちになると私は考えておりますので、どういうふうに一つお考えでありましょうが。(国務大臣石橋湛山君「給与大臣一つ」と述ぶ)いや、閣僚の意見を一つ、遠慮しないでやって下さい。期末手当の減税措置について努力してもらいたいということについて。
  145. 国務大臣(石橋湛山君)(石橋湛山)

    国務大臣(石橋湛山君) 担当違いでありますから、どうもここで確たることは申し上げられませんが、しかし合理的でありますならば努力はいたします。
  146. 委員長(館哲二君)(館哲二)

    委員長館哲二君) 永岡君、時間の関係もあります。
  147. 永岡光治君(永岡光治)

    ○永岡光治君 合理的でありますから、これは当然努力すべきものでありますが、そこでこれは官房長官がおいでになりまするが、一つお尋ねいたしたいと思うのでありますが、先ほど私は繰り上げ支給の問題それから期末手当の減税の問題について、最低やはり五千円程度のものは免除する対象にしなければいかぬだろうということを要望申し上げているわけですが、ぜひ一つこの点は、あと残された十五日間くらいの期間がございます。最善の努力をして、これは過去におきましても実際その運用によってやられておるわけでありますから、鳩山内閣でできないという理由は私はないと思う。最善の努力をして実現を期していただきたいということを要望いたしておきます。  それと関連いたしまして、この六月の暫定予算にも計上されておると思うのでありますが、定員定率で定期昇給を認めないというような内容になっておるようでありますが、そういう制度をやはり政府は考えておるのでしょうか、その点を一つお尋ねいたしたいと思います。
  148. 政府委員(根本龍太郎君)(根本龍太郎)

    政府委員根本龍太郎君) あるいは私からお答えするのは筋違いかもしれません。これは給与担当大臣もおりますし、また大蔵大臣関係でもありまするが、せっかくのお申し出ででございますから私の意見を申し上げます。  今回の暫定予算につきましては、定期昇給ができないというわけにはなっておりません。ただし全額が組まれていないことは事実でございます。従いまして各省庁におきまして、運用によって大むねその目的が達成するように努力するというように、これは努力しておる次第でございます。従いまして、大ていのところにおいては運用によって定期昇給ができ得るものと信じておる次第でございます。
  149. 永岡光治君(永岡光治)

    ○永岡光治君 運用において大ていの官庁は定期昇給を実施し得るものと考えておるというのでありますが、この運用というのは、具体的にはどういうことをやるのでしょうか。
  150. 政府委員(根本龍太郎君)(根本龍太郎)

    政府委員根本龍太郎君) お答え申し上げます。各省によって事情が違うと思いますが、あるいは新規採用を差し控えるとか、そういうような方法が運用の一つの具体的な例だと思います。
  151. 委員長(館哲二君)(館哲二)

    委員長館哲二君) 永岡君、もう時間がありません。
  152. 永岡光治君(永岡光治)

    ○永岡光治君 これについてもまだ問題を追及したいのでありますが、いずれ本予算のときに明確にいたしたいと思うのでありますが、給与大臣に最後に一つだけお尋ねしたいと思うのです。  それは公務員の給与は十分でない、民間では相当給与の問題について困っておるところもある、たくさんもらっておるところもあるけれども、少いところがあるのだというようなお話でございますが、私は一つ大臣に、給与担当大臣としての一つはっきりした考え方、基準といいましょうか、根本方針といいますが、そういうものをお尋ねしておきたいと思うのですが、この公務員給与というものは一体どこに基準をおくか、五人、十人、あるいは二十人、三十人の中小企業が倒れているからそれと一緒にしろというのか。それとも大きな会社がたくさん、私が例に申し上げましたように、非常にこの夏、五万円、六万円と、どんどん支給されておる会社がたくさんございますが、そういう会社の基準か、一体どこに基準をおくということを、民主党内閣としては考えておるのでしょうか、公務員給与の基準をどこにおくかという、その点を一つお尋ねいたします。
  153. 国務大臣(大久保留次郎君)(大久保留次郎)

    国務大臣大久保留次郎君) 基準は公務員の生活の程度を基準としておるのであります。
  154. 永岡光治君(永岡光治)

    ○永岡光治君 公務員の生活の程度というのは、どういうものをさしておるのでしょうか、どういうものが生活の程度の基準になっておるのでしょうか。おそらく、たとえば文化生活はどういうようなことをし、どういうようなもので、あるかという、いろいろ考えがあると思いますが、公務員の生活の程度というようなばく然たることでは基準が示されない。その生活の程度という基準はどこにおくのでしょうか。
  155. 国務大臣(大久保留次郎君)(大久保留次郎)

    国務大臣大久保留次郎君) 生活の基準はいろいろの方面に分けることができます。けれどもこれは一々説明するとなかなか厄介と思います。一言にして言えば、一応生活の基準基準となると思います。
  156. 永岡光治君(永岡光治)

    ○永岡光治君 それはあまりにも国務大臣はふざけたあれだと思うのです。きわめて遺憾だと思うのです。(「法律を読んでない」と呼ぶ者あり)もう少し誠意のある答弁をしていただきたい。
  157. 国務大臣(大久保留次郎君)(大久保留次郎)

    国務大臣大久保留次郎君) もう一つ申し上げれば、人事院の基準一つ基準になると思います。勧告の基準基準になると思います。
  158. 永岡光治君(永岡光治)

    ○永岡光治君 その人事院の基準というのは、今民主党内閣は実施してないじゃありませんか。たとえば一つの例は、地域給にとってもそうです。勧告しているにもかかわらず、これだけの生計費が要るのだということで勧告しても、しかも一年棚ざらしになっております。それはあなたは実施をしないということで今日まできておりますが、どういう考えでそういう態度をとっておられるのでしょうか。
  159. 国務大臣(大久保留次郎君)(大久保留次郎)

    国務大臣大久保留次郎君) 人事院の勧告は確かに国会にもありますし、政府にもあります。これは尊重して、委員会にかけて討議しております。決してこれをないがしろにしてはおりません。ただ、今すぐ実行できない点がありますので、実行に移すのが困難であるということであります。
  160. 池田宇右衞門君(池田宇右衞門)

    池田宇右衞門君 関連して。給与担当大臣にこの際、一つしっかりした答弁を得たいのであります。それは国民生活の程度によってあるいは給与を定めるとか、あるいは地域給をきめるという答弁がありましたが、御承知のごとく、地域給は北海道、青森、岩手、秋田、山形、福島、長野、新潟、富山というような寒冷地の地域給はきわめて少いのであります。ことに県庁の所在地といたしましてこれらの、宮城を除いたあとは大てい一級地でありまして、生活の豊かと申しますか、きわめて冬期間など少しよい方の、東海とか中国とか、四国という方には相当二級、三級とついておるところがあるのであります。そこで府県としては今申し上げた府県が一級で、ただ県庁の所在地としては大てい二級、三級の程度に相なっておるのでございます。従って衆議院においても参議院においても、先の人事委員会でこの地域給の訂正をするべく、両委員会は全会一致をもって決定しておる。しかるに政府原案は、その後予算が一兆円のワク内にとどめてある関係上、予算裏づけがないというような結果、これらの地方における俸給者は、給与方面から見て、他と比較してきわめて生活困難の過程にあるのであります。かつて私ども参議院においてもまた衆議院においても、これを是正して、順次均衡のとれた、公平妥当なるところの給与方針を、また地域給に対するところの方針をとらせつつあったのであります。しかるに人事院の提案もありましたが、両院を通過したのを、予算裏づけがないといってそのままほっておくというところに、給与体制、地域給におけるところの不公平が生じてきております。これを何とかするというのであるが、何とかする間に一年たっておる。一年だけその地方の方々は生活上の困難を来たすという状態で、寒いところにこういう事件が生じて、政治が公平を欠く程度に相なっておるのであります。これに対する大臣答弁を得たいのであります。
  161. 国務大臣(大久保留次郎君)(大久保留次郎)

    国務大臣大久保留次郎君) ただいま御熱心な御質問がありました。地域給の問題につきましては、衆議院委員会において委員会の案を作りました。ところが議会が解散になりましたので、これはそのままになっておりました。で、新らしく議会ができましたので、内閣の委員会においては小委員会を作って、従来の委員会の案と人事院の勧告を受けました案と比較対照をして、今小委員会で練っております。私はこの成案も尊重しなければならぬと考えております。  同時に政府におきましては公務員制度の調査会を作っております。これは昨年の夏から出発しております。これは関係閣僚あるいは大学の教授、あるいは知識経験者をもって組織しております。ただいま一週一ぺんこれまた小委員会を開いて、原案の作成に努めております。今日においてはある程度進捗しております。この方の意向も参酌しまして、戦後ややもすれば乱れがちであった公務員制度の方針をはっきりきめたいと存じます。  なお北海道の問題がちょっと出ましたのでありますけれども、北海道にはなるほど地域給は少いのでありますが、あべこべに寒冷地手当が出ます。あるいは石炭手当が出ます。こういういろいろの手当がありますので、これらの手当をもあわせて同時に給与として解決したい、こういう気持を持っております。
  162. 池田宇右衞門君(池田宇右衞門)

    池田宇右衞門君 今大臣答弁を聞いておれば、調査研究、小委員会を作って、小田原評定であって、しかも調査研究と、委員会にすべての責任をなすりつける。これでは一年の日月は早急にたってしまう。もっと給与体制については、期末手当にしろ何にしろ、真剣に研究して、一日も国民生活の安定の上に公平妥当な方途を講ずる。そういうその場逃れの答弁はあまり感心しない。しっかりこれを実行されるという決意があるかどうか。
  163. 永岡光治君(永岡光治)

    ○永岡光治君 ただいま大臣答弁によりますと、公務員制度審議会をしきりに引き合いに出しております。あなたは先ほど私の質問に対しては、そうして今の答弁でもそうですが、尊重する尊重するとしきりに言っておるわけです。あなたは、人事院制度というものを今日認めて、その勧告を尊重する気があり、しかも大臣として、国民の意思の結集であるところの衆議院なり参議院の院議においてきめられましたところの、その国会の決議というものと、公務員制度審議会の意向というものと、どちらに重きを置こうとしておるのか。人事院の勧告は法律によってその権威は保証されております。それから国会は、国民の代表の意思の結集した機関であります。地域給を先ほど例にとりましたが、すでに勧告は昨年の五月に出ております。しかも院議においては一月の二十四日、衆議院委員会でしかも満場一致で通過しているのです。あなたの所属している民主党の諸君もこれは賛成したのです。あなたはまだこれを実施しない。公務員制度審議会を引き合いに出して、これの意見を聞いてああしよう、こうしようと言っておるのですが、あなたは一体どこに方向を向いておるのですか。公務員制度審議会という性格は、尊重さるべき性格ではないのですよ。一体どういうお考えですか。あなたは院議を尊重し、あるいは、人事院という、法律で権威づけられたところの勧告を尊重しようとしないのですか、どっちですか、はっきり答弁をしてもらいたい。
  164. 国務大臣(大久保留次郎君)(大久保留次郎)

    国務大臣大久保留次郎君) 人事委員会の決議の話が出ましたが、あれは人事委員、会できめただけでありまして、議会は解散になりました。従って解散後の衆議院の議員の顔ぶれが違っております。(「参議院は継続している」と呼ぶ者あり)従って新らしき議員によってこの前の案を検討しております。熱心に検討しております。(「公務員制度審議会とどちらを重んずるのか」と呼ぶ者あり)それは私も議会人ですから、やはり委員会の精神を尊重しなくちゃならぬと同時に、公務員制度調査会の結果のいいものはとらなければならぬと信じております。
  165. 永岡光治君(永岡光治)

    ○永岡光治君 私はいいものをとるとかとらぬという問題でなく、あなたの方向、民主党内閣としての方向は、法によって権威づけられたものを守ろうとしておるのか、あるいはあなた方の作ったところの公務員制度審議会という、政府部内に作られた単なる一機関の結論を尊重しようとしておられるのか、どちらか、これは今後の運営において重大な問題です。もしあなたが言うように公務員制度審議会と並列的に考えるというならば、これは院議も、それから法律によって定められた人事院の勧告というものも権威がなくなる。そういう考えだから、依然として一年間勧告をほったらかして、実施されていないというのが今日の状況です。国民はこういうものに大きな失望を感ずるとともに、まかせておけないという感じがします。法律を尊重する、そういう考えでもう一度はっきりした答弁を願いたい。その点念を押して質問いたします。
  166. 国務大臣(大久保留次郎君)(大久保留次郎)

    国務大臣大久保留次郎君) 議会の委員会決定は当然尊重しなければなりません。同様に私は決して公務員調査会の結果の答申も捨てるわけにはいかぬと思います。
  167. 委員長(館哲二君)(館哲二)

    委員長館哲二君) 永岡君、もう時間が来ておりますから……。
  168. 永岡光治君(永岡光治)

    ○永岡光治君 大臣は依然としてやはり公務員制度審議会の問題にこだわっておりますが、ここで私がお尋ねしたいのは、院議は尊重するという国務大臣答弁ですが、あなたと同じく鳩山内閣の閣僚であります川島自治庁長官、この方は当時の衆議院の人事委員会委員長です。そしてこの人の委員長のもとに各党満場一致、民主党も自由党も、それから社会党の左右両派も、つまり各党満場一致できめたその院議は、確かにあなたのおっしゃる通りに、本会議を通過しませんのでありまするから、法律としての効果はないでしょう。本会議を通過したなら、何もここであなたにやかましく言うことはない。本会議を通過しないから、今日法律として制定されていないのです。残念ながら解散という緊急事態になりましたので、これは法律にならなかったのですが、同じ閣僚の中に当時の責任者である川島さんを抱えておるところの民主党内閣、その民主党内閣の国務大臣として給与を担当しておりますところの大久保さん、あなたは、前の国会でありますけれども、その各党満場一致できめられたあの案を尊重しないということはないと思うのですが、これでもあなたは尊重しないんでしょうか。
  169. 国務大臣(大久保留次郎君)(大久保留次郎)

    国務大臣大久保留次郎君) 委員会の決議を尊重すると同時に、川島君とはしばしば打ち合せをしております。
  170. 永岡光治君(永岡光治)

    ○永岡光治君 川島さんとしばしば打ち合せをしておるということは、どういう打ち合せをやったのですか。あれは何とか実現しようじゃないか、責任があるから、おれもいろいろ一生懸命やるから、一つ鳩山内閣として実施しようという意味で交渉しておるのですか。それとも、あれをやめとけと、こういうことで話し合いしておるのですか。どちらでしょうか。  これをもって私の質問は終ります。
  171. 国務大臣(大久保留次郎君)(大久保留次郎)

    国務大臣大久保留次郎君) この実現にどういう工合にしたら一番いいかということを打ち合せしております。
  172. 吉田法晴君(吉田法晴)

    吉田法晴君 関連して。  発言に当って、大久保国務大臣に教育的な発言をしなきゃならぬのは、大変残念に思うのであります。今の民主的な公務員制度は、本来ありました公務員の争議権を剥奪し、そして団結権に制限を加えて、そのかわりに人事院というものをこしらえて、そうしてその権利を保護する、五%以上生計費に賃金に影響をすべき変化があったならば、これを勧告する——勧告の義務を与えておる。昨年はこの人事院の勧告の権限発動を押えたわけでありますが、先ほど問題になりましたCPI、CPS等は、これは政府としても、公務員制度の今の建前からいいますならば、当然政府が考えて給与改訂について措置をしなければならぬ責任を法律は与えておる。しかるに、人事院の発動を阻止し、あるいは勧告された勧告もこれを尊重しない、その後の国会における動きもこれを無視する、そうして今日に至っておる。CPI、CPSの上昇は依然としてある今日、政府はいかなる給与政策をとらんとしておるか。給与の点について措置ができないとするならば、それでは夏季手当その他について、あるいは昇給等について、あるいは減税等について、どういう処置を本年度においてしようとしておるのか、あるいは六月暫定予算審議するに当って、六月夏季手当は支給するんだが、この支給しようとする夏季手当について、政府はこの事態の中でいかなる法上の責任を果そうとするのか。これは永岡君の質問にあったと思うのですが、それに対して何ら回答らしい回答は国務大臣としてなされておりません。明確な現在の公務員制度あるいは法律の建前からして、どういう措置を国務大臣はやろうとしておるのか。法上の責任に従って明確な答弁を願いたいと思います。
  173. 国務大臣(大久保留次郎君)(大久保留次郎)

    国務大臣大久保留次郎君) 先ほど来、たびたび申し上げました通りに、衆議院の人事委員会におきまする申し合せと、それから人事院の勧告を受けましたものとは非常な懸隔がある、これをいかに調和するかということが一つの非常な問題であります。金額にして約百億違うんです。これを予算面に現わして具体化するのには、容易な問題じゃないのです。同時に、やはり一方におきましては、せっかくできました公務員の調査会でありますからして、この研究も進むに従って、これも尊重して参るのは当然だと思います。私はこの両方面のことをにらみ合せて、一方、先に申しました通り議会の意向を十分に尊重して、公務員の処遇を確立いたしたい。こう考えております。
  174. 曾祢益君(曾禰益)

    ○曾祢益君 ただいま永岡委員から提起されました公務員の給与に関する問題、私まことに永岡委員と全然同感でございますが、ここにわれわれが忘れてはならないことは、この公務員諸君よりも、同じく労働者でありながらもっともっと非常に気の毒なグループがあるということであります。すなわち特需産業に働いておる労働者でございまするが、最近新聞においても閣僚諸公が御承知になっておるように、富士自動車工業に働いております労働者が、五月の十八日に突如大量解雇、約七千五百人以上の労働者が三千八百人もいきなり解雇されるという通告を受け、従いましてこの労働者諸君が路頭に迷い、そうして家族を含めるならば、数万の労働者並びに下請契約の労働者、さらに、ひいてはこれらの労働者諸君のサービスをしております店舗の閉鎖というような大きな社会問題になっていることは、御承知通りであります。そこで私はこのアメリカ軍の軽車両の再生をやっておりますこの富士自動車の問題ばかりでなく、特需産業に働らく労働者が同様に非常な危機に追い込まれておると認められます今日、まず通産大臣に伺いたいのでありまするが、この特需産業が逐次注文が減少しているということは、これは政府としても当然御承知のことだと思うのであります。ことに昨年の九月十五日に、この特需関係の問題については、アメリカの座間の極東軍司令部の調達関係の責任者であるリンド准将が、特需関係の注文が減るであろう、こういうような警告を発しておったのであります。従いまして、自乗、特需関係全体の政府の窓口であり、責任者である通産大臣としては——通産省としては、いかなる特需産業に対する転換——民需転換あるいは中には保安隊のほうの転換もありましょう。少くともアメリカの軍需から民需その他に転換するような、いかなる対策をとったか。また対外的に、アメリカのこの特需の減少に対して、何とかそれを急カーブでなく漸減的にやってもらうというようなことについて、いかなる交渉をしておられたか。私は今日突然この問題を持ち上げるのではございません。この間、外務委員会でも政府当局に伺いました。その際の通産省の責任事務当局の企業局長の御答弁を聞いておると、全くこの問題の重大性に対処するまじめさも何もない。今まで何もしておらぬ。この問題が起ってからも、これから四、五日してから政府会議を開きます。四、五日たつならば、四千名の労働者が路頭に迷う。そういう社会問題が起っておる。それに対して全く感覚を持っておらない無責任きわまる答弁でありました。なお外務大臣にも、また通産大臣にも御質問申し上げたいのでありますが、外務大臣が出ておられないことについては委員長から何らかの説明があると思いますが、私はこの説明如何によりましては、これは今日了承いたしまして、またの機会に御質問いたしまするが、まず通産大臣に、今の特需対策に対する今日までとってきた通産省の処置について明確に責任のある御答弁を願いたいと思います。
  175. 国務大臣(石橋湛山君)(石橋湛山)

    国務大臣(石橋湛山君) 富士自動車の問題は、お話のようにまことに困ったことでありまして、これは昨年九月あらかじめ減少はするであろうという声明が向うからあったそうであります。そののち、特需に関する日米の会議があるたびに、一体減るといってもどれほどのことで減ってくるかという内容の質問をすると同時に、しばしば、減らすにしても漸減的にやってもらいたい、減らしてもらいたくないという意味の交渉は、日本側でも常に怠らずやっているということの報告は受けているわけであります。ところが、いよいよこの間、内容を具体的に申してきて、いきなり向うから追浜の労務者六割でありますか、を減らせというようなことを言ってきて、実は富士自動車自身も、ろうばいをしたし、私どもとしても実はろうばいしたわけであります。ただいま御承知通り特需産業でありまして、あれをアメリカに要求して、なお特需を継続するという要求をするのも、むろん必要でありましょうけれども、これは実際問題として、果してどれだけ向うに受け入れられるか、予算関係がありますから、わからない。それで、あれを何とか日本自体のものに引き直せないかということを現在研究をさせているのであります。また、神奈川県や横須賀市の当局者も、自分の地方の問題でありますから、これについて心配をしてくれるように申しておりますが、実際としては非常に困難である。設備の上から申しましても、あれほどの人数をいきなり内需に回すということは非常に困難である。どうしたものかと、実は具体的の措置がいまだ立っておりません。これが実情であります。  それから、そのほかのものにつきましては、一番今まで問題になっているのは例の砲弾関係、これは、これまた何とか国内の需要でやりたいというようなことでいろいろ計算をしてみましたが、日本の自衛隊といいますか、今のいわゆる国防軍の需要では、これは幾らも要り用がありませんから、それだけで今までのアメリカからの特需を全部埋めるほどの方策はないのでありますが、幸いこれは全部専業のものばかりでありませんから、兼業のものはその兼業のほかの仕事になるべく労務者を吸収する。それでも専業のものについては一部分やむを得ませんから、政府がその設備を引き受けて、そうして何とか継続をしていきたい、かような考えで、これは今具体案を、一応仮の案を立てまして協議を進めている次第であります。
  176. 曾祢益君(曾禰益)

    ○曾祢益君 ただいまのお話の中で、やや納得のできる点もありますし、またできない点もあるのですが、石橋さんは通産大臣になられてから……九月十五日からなっておったわけではないのですから、その点については免除すべき点がありますが、事務当局からの話をそのまま受けておられるようですが、一体この九月十五日頃は日米の特需対策委員会ができて、その後アメリカに幾ら催促をしても、具体的のものは予算関係で来年のことはわからないと返事が延びた。それで、それは日本当局では、通産省を初めとして、アメリカに対する督促のほうは実は怠っておって、特需委員会は事実上これは、あれどなきがごとき存在である最近に至るまでそういう何といいますか投げやりのやり方であった。アメリカが突然この問題で追浜にこういう問題を起したことはもちろん適当でありませんが、日本の当局が熱がなかったことも事実で、さらに渉外関係については、もとより外務省も労働省も関係があると思うのですが、特に国内対策においては、ただ、特需をアメリカのほうに頼んで食い延ばそうというだけではなくして、それこそ通産大臣の仕事というものは、今も御指摘になったように、そのことのよしあしは別として、あるいは自衛隊のほうに切りかえるものもありましよう。なし得るならば平和産業に切りかえるということを、各工場、各産業に即して具体的に何とかやっておられたかというと、通産省のやっておられたことは、ただひたすらにアメリカに、どうなるのだ、漸減してくれ、急カーブでは困る、どのくらいの生産量になるかということを聞いているだけで、いかにも通産省として、国内経済機構にどういうふうに振り入れていくのだ、どういうふうにしてこの工業を生かして労働者に職を与えていくかということについては、今日まで何もやっていない。はなはだこれは曠職のそしりを免れない。そこで、過去のことは過去といたしまして、ただいまのお話で、私は非常に示唆を受けた点は、砲弾の場合を例にとって言われましたが、今後の特需工業対策としては、これはいろいろ具体的に各工業の性質、またそれが、ある会社の個人の施設であるか、それとも富士自動車の場合、あるいは相模工業の場合のごとく、政府の……、元の軍の施設を使っている場合と、いろいろケースが違いましょう。しかし、これがアメリカの特需がなくなると、その産業がつぶれて、労働者が街に放り出されていいという問題じゃ断じてないと思うのであります。これは通産大臣も御同感であろうと思う。してみれば今あなたが砲弾の例について言われたように、設備を、一部の設備は政府が引き受けて、これは特に保安隊の場合については、そういう軍需の場合については、特にそういうことはお考えだろうと思うけれども、少くともこういった機械、設備を、本当は日本のものだ、政府のものだ、そういった必要な設備を政府が引き受けて、そうして企業を続けさせるということを、今から考えて、ただアメリカの特需を食い延ばすということだけでなく、政府が場合によっては引き受けることによって、産業を生かし、完全雇用に近いように努力するということを、もっと一般的に真剣にお考えがあるかどうか。その点を石橋さんからお答えを願いたい。
  177. 国務大臣(石橋湛山君)(石橋湛山)

    国務大臣(石橋湛山君) どこの工場をどういうふうにするという具体案になりますと、非常にむずかしい問題がたくさん出て参りますので、実は困っているのでありますが、しかし一般論としては、お説の通り、これはできるだけ平和産業に切りかえたい。富士産業のごときもそういう立場から一つ調べさせているのでありますが、これは今のお話のように、設備が国の財産であり、同時に、中にはアメリカの軍の設備が入っているそうです。そういう複雑な関係もありますので、一体これをどうしてほかのものに直せるか。そのままでは、あれだけの、今使っておったような古い車を修理するという、おそらく仕事が足りないだろうと思います。そこでこれは、ぜひとも今のように一ぺんに数千人の労務者が放り出されるということはまことに困りますから、何とかできるだけ切りかえをしたいということで、具体案を考えているわけであります。
  178. 曾祢益君(曾禰益)

    ○曾祢益君 大体の方向としては御同感になっていると思いますが、私は個人のことは申したくないけれども、実際この会社の経営者が、当時の特権に、軍というような特権だけに食いついて、そうして食い荒しをして、そうして、もうけたものは投資をして、それはみな失敗して、そうして自分は、アメリカから注文が来なくなったから、そのしわ寄せとして労働者の首切りをする、そういうけしからぬことは私はないと思うのでありまして、だからこういった会社の不誠意ということもありますが、それはそれとして、政府は、具体的に、今の通産相のような考えではなく、これらの産業をどういうふうに平和産業に生かしていくか、個々に御研究を願って、一方において、その間のつなぎとして、特需の減るにつれて生産量はスロー・ダウンしていく、これならば話はよくわかるが、いりまでも特需産業に頼っていくのは間違いだ。そういう意味から、具体的に場合によっては政府がそういう施設を生かしていくという強い積極的な線でお考えを願いたいと思うのであります。  それから、いま一つ通産大臣お願いしたいのは、これに関連してオープン・ビッドの問題なんであります。これもリンド声明に出ているのでありますが、なるほど理屈からいうと、特需産業は公開入札にするほうがいいのだ、ことにこういうけしからぬ、無能な経営者の場合には、それは経営者が変ってもいいじゃないかということは、理屈はその通り、しかし現実にはオープン・ビッドにして、また出血をしいられる、しかもこの工場に働いている労働者は、経営者が変れば、これは会社が自分の財産を持っていないのですから、いつ変えられたって経営者としては困らないでしょう。しかし、ここに働いていた労働者は、これは万歳、手を上げてしまう。ですから私はこういう不届きな経営者を救う意味じゃなくて、オープン・ビッドという単なる原則論でアメリカがやるということ、これは間違いである。そういう意味でアメリカにはっきり突っぱっていただきたい。そしてつなぎとしては、今あなたがおっしゃったように、とにかく生産量を急になくするということは困る、しかもこの会社の言っていることはインチキなんです。五月、六月、七月の現契約の残高が減るからという理由で、こういうことをアメリカが言って来ているのです。それを理由として、経営者は先がわからないから首切っちまおう、こんな不届きな経営者はありません。だからもしこの会社がいい会社ならば、来会計年度の仕事が取れるはずです。来会計年度の仕事がかりに八月から始まるとすれば、五、六、七はかりに六割しか人が使えなくても、その間だけは会社は自分で抱いて行く、そして次の年の発注を取る、そして労働者を路頭に迷わせないようにする、それくらいの能のある、仕事のできる、それぐらいするようにして、この経営者を大いにしかる、同時ここの労働者を安定さして、一年々々の契約ですから、非常に不安定ですから、そういうことのないように、仕事の継続性、来年度の生産高も計画的に、アメリカが急にぽかんとやらしてくるということのないように、そしてこの産業自体が動くようにしてやって、究極的には日本の平和産業の中に組み入れるように、ぜひ一つ努力願いたい。お願いいたします。何か伺うことがありましたら、もう一ぺん確認して下さい。
  179. 国務大臣(石橋湛山君)(石橋湛山)

    国務大臣(石橋湛山君) 御意見ごもっともです。さようにいたしたいと努力いたします。
  180. 曾祢益君(曾禰益)

    ○曾祢益君 通産大臣の御答弁は非常にけっこうな御答弁ですが、ぜひその意味で真剣に御努力を願いたいと思います。  次に労働大臣に伺いますが、労働省におかれても同様に、特需産業労働者に対する雇用の制限、減小、あるいは人員整理、こういう問題については前から重大な関心を持っておられたと思う。従いまして今日まで対内的には雇用量減少に対してどうする、あるいはアメリカに対していわゆる人員整理というようなことについて、困るとかあるいは漸減的にやってくれ、計画的にやれるようにしてくれと、こういうようなことで今までどういう措置をおとりになっていたか伺いたい。
  181. 国務大臣(西田隆男君)(西田隆男)

    国務大臣(西田隆男君) お答えいたします。私が労働大臣に就任いたしましてから、初めて富士自動車の問題が起きておるわけでして、実はびっくりいたしまして、早速山本社長を呼びまして、今までの契約の内容、現在の会社の実態、将来会社がどう対処するか等の問題についていろいろ御意見を聞いてみました。御意見を聞いてみますというと、さっきから曽祢委員のおっしゃるように、全く驚くべき内容、これではもうどうにもならぬということを考えましたので、まず第一に特調の福島君を呼びまして、アメリカとの交渉を側面的に進めるように命令をいたしました。通産大臣、経審庁長官等とも閣議の席で話し合いまして、国内的にアメリカ側と交渉する態度を決定しなくてはならない。現在の発注の状態が富士自動車と米車との間の直接の契約になっております。一応は山本社長を督励し、米車との交渉をさせよう、こういうことで、二十四日に呼びまして、二十七日の日にさっきおっしゃったリンド准将が山本社長に合わない、拒否しておりましたのを、外務省から交渉させて、二十七日に会見するという約束をいたしました。そして二十八日の午前中に山本社長をリンド准将と会見させました。そしてその際、会社側としては発注するものを今度のように急激に減らしてもらっては困る、減らすにしても漸減的に減らしてくれないかということが一つ、それからもし解雇するにしても現在のような五月二十八日に通知を出しておいて、そして六月一ぱいまだ仕事がされるにもかかわらずその間の解雇手当をやらないというようなことは困る、解雇手当を増額してくれということが一つ。それからもう一つの問題は、退職手当を増額してくれと、解雇予告手当の一カ月分の増額と退職手当の増額、それから現在の富士自動車は、御承知通りにアメリカ軍の施設と日本の国の施設を使ってそれ以外の一般の仕事ができない仕組みになっております。がしかしそれでは困るから、一般のものでも仕事をして、一人でも解雇者が小くなるような方法を講じてくれ、この四つの問題を山本社長からリンド准将に話をさせましたが、現在の段階ではこの問題はなかなかはかばかしく行っておりません。従って本日午前中通産省、外務省それから特調、労働省それから山本社長を呼びまして、二十八日の会談に基いてのいろいろの方法を研究いたしました。その結果、これはアメリカ軍のイニシアチブにより問題でありますが、内山神奈川県知事の奔走によりまして、来月の一日の日に再び会合する、その会合いたしまする人たちは富士モータースの山本社長それから内山神奈川県知事、特調の長官、セントラル・コマンドの契約担当者、JPAの代表者それからJOC、これはリンド准将だと思いますが、こういう人たち六人で会合いたしまして、再びこの問題について何らかの結論を出そうじゃないかというようなアメリカの申し出によって会合をすることになっております。従いまして、日本政府といたしまして、この会合の結果に基きまして、再び外務省の担当者とアメリカ側にどういう交渉をするかという問題を具体的に討検したい、こういうように考えておりますが、今日までの会合の結果を考えますと、そう日本側の要求が貫徹されそうには考えておりません。まあ最大の努力を尽すつもりでおります。
  182. 曾祢益君(曾禰益)

    ○曾祢益君 これは西田さんみたいな経営者としての経験もすぐれた方だからおわかりでしょうが、とにかくこの山本社長というのは非常に無能力であった、しかも不誠意であって、今申し上げましたように、アメリカから五、六、七の注文をやるのにこれしか生産量がないと、これにかこつけてもういきなり労働者を、来年どなるかということも知らないで首切ろうと、労働組合が当然立ち上って、一方的な解雇通告反対、スト権も確立したが、これは非常にそういう点は良識をもって行動して、とにかく団体交渉をした結果、一応その一方的な解雇通告は撤回しました。しかし、もしこのような経営者とアメリカとの間の話にまかしておくならば、これは私はアメリカでもあまり信用していないと思う、率直に言って。そんな者にまかしておくんではだめなんで、これはやはり政府が直接にも行ってアメリカと話をつけてやる。もちろんその場合には知事である内山氏もいいでしょう、しかしこれは何といっても労働大臣、通産大臣経審長官のような人が行かれて、そして日米合同委員会でもどこでもいい、大使館でもいいから、そしてこの話をつけてやらないと、元来労働者からもあるいは契約者のアメリカからもあまり信用のない人に、アメリカとの話をさせては私はだめだと思う。ぜひその点をお考え願いたい。さっそく一日のあとでもいいでしょう、三日はストの期限ですから、その前に適当な措置を強力に推し進めていただきたい、それから特に労働大臣お願いしたいことは、今おっしゃいましたこの解雇手当、私は解雇が一人もないことを希望します、任意でもやめる人もあるでしょう、解雇手当の問題もありましょう。それから退職金の問題、これは非常にアメリカとの契約によると、会社との……、今まで過去のだんだん労働者の給与が上って来ますですね、最終の給与の額に年月をかけた額が全部もらえるはずなんです。ところが会社とそれからアメリカとの契約では、上って来た分の、過去の累積分は、これは毎年心々の契約ですから、会社側がアメリカから金がもらえない、こういうところで、労働者としては、この特定の産業に当る労働者の解雇手当は非常に不利な条件に置かれておる。もとより労働組合としては、この会社との契約によればフルにもらえるはずである。会社が無能力であり、不誠意であるならば、アメリカさんからカバーとっていない金はもらえないから実は払えない、払わないということになる。第二には、日本の税法上の関係とアメリカの契約官との話し合いの食い違いで、やはりこれはその額よりさらに少い額しきゃもらえない。会社が税金としてとられる分については、これは労働者に払わないということになるわけです。こういうアメリカと会社との契約の問題からくる実質上の労働者の退職手当が不利である。たとえばアメリカ軍に直用の労働者に比べると非常なこれは不利になる。直用の労働者は御承知のように二年間働けば二年目からは一・二のワクでもらえ、五年働けば一・五の額、しかもフルに過去の分をもらえるわけです。そういうものは非常にこの特需労働組合、ことにこの特定の会社の場合には非常に契約上無理がある。会社が過去にもうけたのだから、そんなものまでとってやる必要はないじゃないか、その通りなんだけれども、そのしわが労働者にくるのですから、そういう点についても強力に、会社にまかせずに、まあ日本の労働三法の実質的に現実に労働者に有利に、当然の権利であるけれども、有利に適用ができるように、ぜひ労働大臣から直接にアメリカに交渉していただきたい、この点をお願いするのであります。その点契約の問題いかがですか。
  183. 国務大臣(西田隆男君)(西田隆男)

    国務大臣(西田隆男君) お答えいたします。私が承知しておりまするところでは、今曽祢委員が言われたように、会社側と組合側との団体協約によりますと、言葉の表現は適当かどうかわかりませんが、段差が設けてあるということです。そして現実に三千七百五十名かの失職分として給付する退職手当金額は二億二千万円程度だと、こういう話を聞いております。しかし富士モータースの内容を調べてみますというと、退職手当金の積立金が五億円弱ある。これは七千名からおるんですからそれくらいになるかもわかりませんが、しかもその内容とするところは、アメリカ側との折衝によって、この富士モータース自体の問題としてそうやっておったのかどうかよくわかりませんけれども、労働組合側と団体協約をしておりまする内容に基く金額よりも積立金額の方が多い、こういう実態になっておるように承わっております。従って富士モータース側として、今度の馘首の問題につきましては余裕のある積立金に全部退職手当に充当すべきである。会社の内部は会社の資金運営上担保に置かないでも見返りみたいな格好でやって、理由は何とかかんとか言っておりましたけれども、こういうことと、退職積立金をこの際必要であるからおろすということは別個の問題であるということを、厳重に山本社長には注意をいたしておきましたけれども、なお今後とも十分やれるように善処したいと考えております。
  184. 曾祢益君(曾禰益)

    ○曾祢益君 外務大臣はどうなさいましたか。私は外務大臣を要求しておったのですが……。
  185. 委員長(館哲二君)(館哲二)

    委員長館哲二君) 外務大臣は本日緊急な要務ができましたので、出席ができないと委員長にまで申し出がありました。委員長も事情を聴取しまして、やむを得ないと了承いたしました。明日十時から外務大臣に対する質疑は行っていただきたいと思います。
  186. 曾祢益君(曾禰益)

    ○曾祢益君 了承いたしました。では明日に外務大臣への質疑を留保いたしまして、私はこれで終ります。
  187. 委員長(館哲二君)(館哲二)

    委員長館哲二君) 大麻国務大臣が出席されました。先ほど留保されました中山福藏君の御発言を求めます。
  188. 中山福藏君(中山福藏)

    ○中山福藏君 大麻国務大臣にお伺いしますが、実は本予算においても、暫定予算においても、国家の治安を守るために警察費が相当計上されているということは御承知通りであます。しかるに、私この際確かめておきたいことは、四月十四日に逮捕された植野光彦という者が黙秘権を行使した。あるいはどうも人違いらしいというようなことで釈放された。しかしよく調べるというと指紋照合の結果全国に指名手配中の、しかも逮捕状が出ているところのメーデーの首謀者である玉井仁であるということがわかった。しかしそれでも人権に関する問題だからというのでこれを簡単に釈放したということが新聞に出ておるのですが、そういうことがあったのでございましょうか。またあったとすれば、その釈放の理由というものはどういうものでございましょうか。これは担当最高責任者として、一つ大麻国脇大臣の御答弁をわずらわしておきたいと思います。
  189. 国務大臣(大麻唯男君)(大麻唯男)

    国務大臣(大麻唯男君) おくれて失礼いたしました。  申し上げます。今御指摘の植野何がし君のことは御承知通りでございまして、慎重にやったつもりではありましたようでございますけれども、いろいろのことから確めてみますというと、植野その人ではなかったということが確認されましたので、これは大へんなことであると考えて警察では非常に恐縮いたしておるのでございます。で釈放いたしましたわけでございます。
  190. 中山福藏君(中山福藏)

    ○中山福藏君 私のお尋ねしたいのは、玉井仁という逮捕状の出ている人であったということがはっきりわかった。しかるにこれを釈放した。植野でなくても、玉井という者はすでに逮捕状が出ているということでありますれば、これは一応一つ相当の処置を講ぜられねばならぬ、これをお尋ねしているわけなんです。
  191. 国務大臣(大麻唯男君)(大麻唯男)

    国務大臣(大麻唯男君) 申し上げます。あの人が植野という人でなかったということだけははっきりとわかりました。それでこれはすみやかによくその事情を申し述べまして釈放することが適当であると考えました。その人がしきりに黙秘権を行使しておられますので、その何びとであるかただいまのところはちょっと申し上げることを差し控えさせていただきたいと思うのでございます。警察では万誤まりなきを期して諸種の関係からやってはおりますが、今黙秘権を行使しておる人を、他のことから今この席でもって直ちに何々であるということを申し上げることだけはどうぞしばらく御猶予を願いたいのでございます。
  192. 中山福藏君(中山福藏)

    ○中山福藏君 これは指紋照合の結果人違いでないということがはっきりしておるのですが、時間がありませんからその点はもうやめましょう。  もう一つ最後に聞いておきます。昨年警察改正法案が通って、七月の一日から市警が国警に移管せられた。しかるに現在これを五大都市の市警というものは持続しなければいかぬというので、猛烈な運動が開始されんとしている。一体政府はこれに対してどういうお考えを持っておられますか。これをお尋ねしておきます。
  193. 国務大臣(大麻唯男君)(大麻唯男)

    国務大臣(大麻唯男君) 申し上げます。市警、府県警の関係は、今中山さんの仰せの通りでございます。法律は前回の両院の決議を経ましてこの六月末日をもって市警、府県警が一緒になるというように定めております。それで警察といたしましては、これを忠実に守って行くということが自分たちの仕事だと考えております。いろいろ御危惧もあるようでございますけれども、今日の場合、私どもといたしましては、どうしてもそれは法律の趣旨から申しましても、七月一日から新らしい法律が施行されるものと考えまして、諸種の準備を進めておる次第でございます。
  194. 中山福藏君(中山福藏)

    ○中山福藏君 私は希望を述べまして私の質問を終りますが、先ほどの第一の質問でございますが、これは大へんな問題なんですよ。人違いであった者を釈放すると、しかもその釈放された者が全国で指名手配された逮捕状の出ておる人間であるということがはっきりしておる場合に、もし警視庁がこれを釈放したということになりますれば、将来全国の警察はこの例にならって、黙秘権を使い、あるいは人違いであるという場合には、全部釈放してもいいという先例になる。しかも東京都でこれが行われておる。私はこの点について、日本の警察権の権威の上から考えましても、これは十分担当大臣としてはお考えにならぬと、とんでもない悪例を残すものであるということを大麻国務大臣に申し上げて質問を終ります。
  195. 国務大臣(大麻唯男君)(大麻唯男)

    国務大臣(大麻唯男君) 中山委員の御注意につきましてはつつしんで承わっておきます。私といたしましては警察の権威を保持し、その職務を遺漏なく遂行する上において、常に心胆を砕いておる次第でございますからして、ただいまのお示しの点などはよく翫味いたしまして遺憾なきを期したいと考えております。
  196. 木村禧八郎君(木村禧八郎)

    木村禧八郎君 私は大蔵大臣暫定予算、特に六月の暫定予算の性格について質問したいのですが、その前にちょっと今曾祢君の特需の質問に関連して伺っておきたいことがあるのです。今曾祢君から特需の減少について質問があったのですが、通産大臣や労働大臣は、このごろ特需が減ってきてびっくりしたと、そうしてあわてていろいろなケースが出てきて措置しているようですが、こんな怠慢なことはないのです。私はあぜんとしました。大体MSA協定を結ぶときに、いわゆる域外調達というものを非常に当てにしておったのです。ところがアメリカの域外調達予算は激減して、昨年の九億ドルから三億ドルに減っているのです。もう明らかにわかっているのです。しかも本年度特需は四億二千万ドル、またこの間、ロスという人が来まして、直接兵器は一千万ドルしか発注がないと言っているのです。これはもう日本経済の今後盲点ですよ。この点に対する措置が全然できていない。今ごろになってあわててびっくりしたなんと言っておる。これは重大な問題です。これはMSA協定のときに、アメリカからいわゆるMSA援助というものは相当あるものと期待した。それが全く期待はずれになった。これは重大問題です。従って、今後この特需というものに対してどういう見通しにあるのか、それに対してどういう手を打とうとしておるのか、この点、関係大臣から伺いたい。
  197. 国務大臣(高碕達之助君)(高碕達之助)

    国務大臣(高碕達之助君) お答え申し上げます。特需は年々減少するものという計算でございまして、六年後には特需はなくなるという建前から六年計画を立てております。
  198. 木村禧八郎君(木村禧八郎)

    木村禧八郎君 この質問をしておりますと時間がなくなりますから……。一応そういう想定でありながら、何ら手当をしていないのです。こうなることはもう明らかなんです。それで、今ごろになっていろいろな問題が続出してきてあわてておる。今後さらにもつとどんどん起りますよ。どんどん起ってくるのです。これに対して民需に転換するとかしないとか言っておりますけれども、そうじゃないのです。これは国有として買い上げた、あるいは休んでおる温存補償料を与えたりして、そうしてこれは民需転換をはかりはしませんよ。私はこれはまた本予算のときに質問いたしたいと思います。  次に大蔵大臣に伺いたいのですが、この六月の暫定予算の性格について伺いたいのです。
  199. 国務大臣(一萬田尚登君)(一萬田尚登)

    国務大臣(一萬田尚登君) お答え申し上げます。四、五の暫定予算を御審議願った当時におきましては、まだ三十年度の本予算決定をいたしておりませんので、きわめて骨格的な予算でありました。今回の六月の暫定予算は、すでに本予算提出して御審議を仰いでおる関係もありまして、これは三十年度本予算の当該期間に該当するような、大体原則的にはそういう予算になっております。従いまして、公共事業等の経費もなるべく適当なものを計上しておると、こういうふうになっております。ただ、申すまでもありませんが、法律の制定または改正を必要とするものは、むろん除外してありますし、また六月に支出を必要としないものはむろん除外しておると、大体こういう性格に相なっております。
  200. 木村禧八郎君(木村禧八郎)

    木村禧八郎君 そのことは一応提案理由に書いてありますが、問題は、原則として暫定予算に六月については政策的な経費を盛り込む建前をとっております、この点ですね。暫定予算というものに対して原則として政策的な経費を織り込んでよろしいのかどうか。二十八年度の暫定予算のときにもこれは問題になったのです。二十八年度の暫定予算の説明のときには、そういう政策的な経費は織り込まぬということになっております。この点の違いです。鳩山内閣は原則として暫定予算には政策費を盛り込んでよいと考えておられるか、この点を伺いたいのです。
  201. 国務大臣(一萬田尚登君)(一萬田尚登)

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えいたします。原則として政策費を織り込むと考えております。六月という月、特に季節関係その他において六月にぜひとも支出をする、また支出をした方がよろしいと、こういうふうな範囲において組んであるわけであります。
  202. 木村禧八郎君(木村禧八郎)

    木村禧八郎君 この四、五はそういうものは組まなかったが、この六月において四、五の事務的経費に四、五の政策的なものを含めてこれは補正されておるようであります。従って、特に補助金に関して顕著であります。それで今、大蔵大臣は、原則として政策的な経費は盛り込んでよいというお考えである。そうして四、五の事務的経費にプラス政策というものが入っておるのです。だから、原則として政策的経費を今後鳩山内閣は織り込んでよいという原則をおとりになるのか、これは非常に重大な問題ですから、今までの原則をくつがえすものですし、新らしい原則を立のてるもですから、この際はっきり伺っておきたい。
  203. 国務大臣(一萬田尚登君)(一萬田尚登)

    国務大臣(一萬田尚登君) 暫定予算に原則として新規の政策的な費用を計上することは考えておりません。しておりませんが、公共事業にいたしましても、継続的なものについて計上いたしておる。また季節的なものについて、どうしてもこの際に計上しなくてはならぬものについて計上する、あるいはまた失業というような、こういうふうな関係から見て、ぜひ必要とする、こういうふうなものが計上されておるわけでございます。
  204. 木村禧八郎君(木村禧八郎)

    木村禧八郎君 今、主計局長から言われてそういう御答弁をしていますが、実際に提案理由にはっきり書いてあるじゃありませんか、四、五月については政策的なものを盛り込まなかったが、その内容は政策的なものを除外してあるが、原則として今度の六月のあれには、三十年度の本予算基礎としている。そうして一番具体的に表われているのは、補助金補助費について政策的なものが出ている。今補助費は自由党あるいはその他の政党との間に政策的に非常な問題があるのです。それについて三十年度の本予算の問題になる点を計上しているのですよ。ですからその点は今までの御答弁と実際とは違います。原則として政策費を組み込んでいます。
  205. 国務大臣(一萬田尚登君)(一萬田尚登)

    国務大臣(一萬田尚登君) これは四、五月分のときの暫定予算とは私は違った形をとっておると思います。これは全く骨格的な予算暫定予算になっているのですが、先ほども申しましたように、六月分はすでに三十年度の本予算が出ております、この本予算に基いてこの暫定予算を組んである。従いまして本予算に計上してあるもののうちにおいて、先ほど申しましたように、法律の制定、改正を要するものはむろん除外するが、それと六月に支出負担となる必要のないものを除外してある、こういうふうに御了解を願いたいと思います。補助金についてもむろんこれは四、五月分においては、先ほど申しました通り骨格的な予算、従って補助金については計上していない。この六月の暫定予算につきましては、補助金については、決議の趣旨もありますし、二十九年度に必要としなかった、必要としないようになったもの以外のものについて、四、五月の分を含めて第一四半期に支出を必要とする補助金を計上した、こういうふうになっております。
  206. 木村禧八郎君(木村禧八郎)

    木村禧八郎君 非常にはっきりしましたが、四、五月は骨格的予算である、しかし六月はそうでない、ですから政策的なものを含んでいるわけじゃないですか。三十年度の本予算をもとにしているといいますが、四、五月は本予算がわからなかったから骨格的予算を組んで、六月は本予算がわかったからその政策的なものを組み込んだ、こういうことになっていますが、そのそもそもの考え方が間違っているのじゃないか。暫定予算はあくまでも仮予算で、これに政策的な経費を組んではならないというのが原則だと思う。もしそうでなかったら、暫定予算の制度は、これは結局予算が不成立の場合を予定したものであって、予算不成立の場合には大体五つの場合が予定されているのです。第一は、衆議院が解散されて、国会としての機能を果し得ない場合、第二は、災害その他で召集の不可能な場合、第三は、衆議院予算案を否決し、または可決しない場合、第四は、憲法第六十条によって、参議院が可決しないで、衆議院の当初の議決が有効になるためには、参議院審議期間が三十日以上必要であるが、それ以下の審議期間であって、しかも予算が議決されない場合、第五は、国会予算審議中に新年度が開始される場合、それで、今の場合は第五でありますが、もし暫定予算に本予算の政策的な費用を盛り込んでいいとなれば、こういう五つの場合において、政府が、みな政策的な費用を盛り込んできた場合困るわけです。で、政策的な費用が含まれれば、議論が沸騰して暫定予算は成立しない場合が起ります。ですから政策的経費を盛り込むのならば、暫定予算が成立しない場合を予想されて作られていると思うのです。従って大蔵大臣に伺いたいことは、暫定予算が不成立の場合に対する措置はどうお考えになっているか、暫定予算が不成立の場合。
  207. 国務大臣(一萬田尚登君)(一萬田尚登)

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えいしまたす。暫定予算が不成立ということは全然考えておりません。
  208. 木村禧八郎君(木村禧八郎)

    木村禧八郎君 暫定予算が不成立であった場合、どういう措置をおとりになるかというのです。
  209. 国務大臣(一萬田尚登君)(一萬田尚登)

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えいたします。同じことを繰返してはなはだ悪いのですが、暫定予算が成立せねば困ることは申すまでもないので、ぜひとも成立を願わなければ……。
  210. 木村禧八郎君(木村禧八郎)

    木村禧八郎君 そういうことを伺っているのじゃないのです。これは憲法にも財政法にもはっきりした規定がないのです。ですからお答えがないのは当りまえです。なぜしかしそういう規定がないかといえば、暫定予算には政策的な費用をこれを織り込まない、織り込まないから暫定予算は事務的経費として一応これは通るわけです。不成立ということは予想されない、それに政策的経費を織り込めば、政策的論争が起り、対立して不成立の場合が起るのですから、政策的経費を織り込むのならば暫定予算の不成立のときを予想して、その措置を考えておかなければならぬ、ところが憲法にも財政法にも何も規定がないのです。この問題はこれは国会の今後の大きい問題だと思いますが、そこで、こういう政策的経費を組むということは大きな問題である、今後重大な問題を起すのです。その点を伺っているのです。
  211. 国務大臣(一萬田尚登君)(一萬田尚登)

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えしますが、この六月の暫定予算に、積極的に政策にわたるものを計上しておる趣旨ではむろんないのであります。従いまして新規のものは極力やはり避けております。ただ補助金とか補助費、公共事業、こういうものにつきまして、継続的なものでほとんどだれが考えてもこれはやむを得ないというような、真にこの六月において必要とする、そういうものを計上してあるのであります。
  212. 木村禧八郎君(木村禧八郎)

    木村禧八郎君 消極的でも積極的でも、政策的な予算を組み込むと、特にまた本年度の本予算は修正するかどうかわからないのじゃないですか。そういうような本予算基礎にして組むから問題が起って対立しますよ。本予算がきまらないうちに、この本予算の一部としての六月予算をここでわれわれが認めたら、本予算の一部を認め、実行することになるのです。そこでいつもわれわれ悩むことは、暫定予算として出て来た場合、これを不成立に終らせると国政が渋滞するから、われわれはやむを得ずこれを承認せざるを得ない立場にみんな追い込まれている、いつでもそういうときに大きな政策的な——消極的でも積極的でも政策的な経費が出て来たら、これは暫定予算が不成立になってもいいということを予想して、それに対する措置をやはり考えておかなければならない。これが憲法にも財政法にも何にもない、そういう事態のもとで、ことに補助金、公共事業費あるいは防衛費その他について非常に問題になる点が組み込まれておるのです。ことに補助金は今政策的に非常に大きく対立している問題じゃありませんか、そういう点は非常に無責任きわまる、これは今後重大な問題になりますよ。これで毎月暫定予算暫定予算と言いながら政策費をずっと組み込んで暫定予算でやって行ったらどうですか、暫定予算のうちにその政策費が組み込まれる。もちろんその中に法律的な裏づけのないものは実施できませんが、多くの部分において政策的な経費が暫定予算の形で実施されて行く可能性が出る。いつもわれわれが追い込まれてしまうのですよ、政策的な経費が出て来ると……。この点についてははっきり書いてある、四、五は政策的なものは含まなかったが、六月については三十年度予算ができたからこれを基礎にして組んでいるということは、はっきり政策的なものが入っているということですよ。これは今後暫定予算について重大な問題ですからこの点明らかにしていただきたい。それで大蔵大臣は、政策的なものを組んであるのですから、もしこの暫定予算があした成立しない、不成立になったときに、具体的にどういう措置をされますか、これはやはり考えておかなければならぬ問題ですよ、大蔵大臣としては……。この点伺っておきたいと思います。
  213. 国務大臣(一萬田尚登君)(一萬田尚登)

    国務大臣(一萬田尚登君) 先ほども申しましたように、本予算提出されておる場合に、暫定予算についてはこの本予算によるのが大体前例のようであります。こういう場合に政策的なものをやはり組むか組まないか、これは財政法上特に組んではならぬということもないかもしれませんが、しかしお説のように組まない方が明確であります。私もそう思います。従いまして新規の経費はできるだけ計上は差し控えておるわけです。ただ暫定予算という特殊の性格はありまするが、経済その他国民生活各般に及ぼす影響を考えまして、そしてある程度真にやむを得ないものについては私はやむを得ない、こういうふうに考えて六月の暫定予算が出ておるわけでありまして、ぜひとも成立いたしますように御審議を願いたいと考えております。
  214. 木村禧八郎君(木村禧八郎)

    木村禧八郎君 十分大蔵当局も研究しておいてもらたいのです。暫定予算不成立の場合どういうふうにするか、われわれも研究しなければならぬ問題です。特に政策費を織り込んで来ておりますから……。それでなるべく政策費を組まない方が明らかだろうというのですけれども、財政法を作ったときに大蔵当局はちゃんと知っているのです、事務当局は……。原則として政策費的なものを組まないということになっておる、組むとさっきお話したようなことが出て来るからこれは組まぬことになっておる、そうするとわれわれはいつも追い込まれないのです。事務的経費とすれば暫定予算は割合に審議しいいのですが、今度これが紛糾するのは、本予算を反映していますから、ここで暫定予算でもこれを認めたら本予算の一部をわれわれ認めることになるのです。時間がありませんからこの点十分あとで研究しておいてもらいたいと思うのです。私にも意見がありますけれども、それはまた本予算のときにしたいと思います。
  215. 政府委員(森永貞一郎君)(森永貞一郎)

    政府委員森永貞一郎君) 事務当局にもただいまお話がございましたのですが、一言だけお答えいたします。  暫定予算でございますので、本予算審議をできるだけじゃましないように、政策的なものはこれをできるだけ組まないようにするというのが政治的な要請であると私ども考えております。そこで先ほどから大臣お答えになっておりますように、新規は原則として計上しない、法律を要するものはもちろんでございますが、法律を要しないものにつきましても原則として計上しない、ただどうしても六月までに支出をしなければその予算を組む意味がなくなるようなもの、たとえば一つの例を申し上げますが、健苗育成補助金、保温折衷苗代の油紙の補助をすべしという議員立法が通っております。この経費は三十年度予算に組んでおりますが、これは四、五、六月の間にこれを出さなければ意味がなくなるわけであります。そういうようなものは、新規ではございますが別に法律も通っておることでございますので、四、五、六の間に支出をしなくちゃならぬという意味で、六月の暫定予算に計上しておるわけでございます。そのほか、ある会合に対する補助金、その会の主催が五月であったというような場合には、これはやはり六月までに暫定予算に計上すべきであると思いまして、そういうような補助金を計上したこともございます。そういうふうに、ごく例外的に新規のもの、特に必要のものだけを計上しておるわけでございまして、その点は国会の本予算の御審議に対してじゃまにならないようにということを特に配慮いたしましたことを御了承いただきたいと思うのであります。  補助金、公共事業費のお話でございますが、これは四、五月のときに組まなかった点につきまして、むしろなぜ組まなかったかというようなおしかりも受けたわけでございますが、継続的な補助金、継続的な補助事業につきましては経済界に与える影響も考えまして、前例もございますので、六月の暫定予算にこれを計上したわけでございます。継続事業でございますので、本予算審議に対しましては格別の支障もないかと存じておる次第でございます。  暫定予算が成立いたしません場合には、これはもう国費を出す筋はないわけでありまして、私どもといたしましても暫定予算が早く成立いたしますようにさようないろいろな配慮をいたしましたことを申し上げまして、御了解を得たいと思います。
  216. 木村禧八郎君(木村禧八郎)

    木村禧八郎君 もう時間がなくなりましたから、最後に申し上げますが、われわれに出した提案理由では、今、森永主計局長が言われたようなふうに解釈できません。もう一度よく読み直してみて下さい。それからまた内容を見れば明らかになってくるのですが、政府が内容を具体的に検討して明らかになるような資料を出していないじゃありませんか。各日明細表をあれほど要求したのに、各日明細表を見なければ具体的に当って政策費であるかどうか検討できないじゃないですか。そういう予算の各日明細表にはこのごろはどういうものですか、これもあとで問題にしたいと思うのですが、単価とか人員が省いてあります。こんな各日明細表を出して、どうしてわれわれわかりますか。そういうわからぬようにしておいて今のような御説明をされてもこれは説明になりませんし、提案理由にははっきりと、四、五は政策的のものを組み込まないが、今度は三十年度の予算をもとにしたということは、政策的なものを組み込んだということのようにわれわれとるよりほかにない説明です。しかし具体的に調べてみれば明らかにそういうものが出てきます。これは時間がありませんから、本予算のときにまた検討しますが、最後に一つだけ、もとの樺太庁関係、終戦当時の樺太庁関係において、樺太庁の本庁の経理について終戦当時樺太庁が小切手を出しておる。ところが樺太における国鉄とか逓信、法務等、本省があった分についてはすでにもうそれは処理されておるけれども、樺太庁については内務省が解体されて、そうして本庁というものはなくなったので、その小切手を持っていてもまだ支払いが済んでいないという事例があるのです。大蔵省がこの事務は引き継いでおるそうですが、これはどうなっておるか、この経過を一つ伺っておきたい。これで私の質問を終ります。
  217. 政府委員(森永貞一郎君)(森永貞一郎)

    政府委員森永貞一郎君) ただいまお話のございました樺太庁につきまして、樺太庁長官が終戦当時発行した小切手がいまだに支払われないでおる、確かにそういう事例があるわけでございます。これは朝鮮総督府、台湾関係等についても実は同じような例がございまして、それらの案件はただいま大蔵省に持ち込まれておるわけでございます。法理論といたしましては、小切手を渡してしまえば政府の支出は落ちておるというような法理論になるかとも存じますが、あの当時の事情でその支払いの委託を受けました銀行のみにこれは責任があるというふうに言い切れないわけでございまして、何とかこれは解決をしなくちゃならぬわけでございます。その点につきましては、目下在外財産調査会というような審議会もできております。これもまあ一種の在外財産にほかならぬわけでございまして、在外財産の処理をどうするかという問題の一環として目下せっかく検討中でございます。樺太の問題につきましては確かに外務省からそういうお話を承わっておりますが、ただいま申し上げましたようなことで、在外財産処理の問題の一環として目下慎重にこれが処理について考究中である、さように御了承いただきたいと思います。
  218. 田村文吉君(田村文吉)

    ○田村文吉君 時間がありませんから簡単にお伺いいたしたいと思いますが、経審長官にまずお尋ねいたしたいのでありますが、経済六カ年計画をお立てになったのでありますが、この六カ年計画の性格であります。それは、すなわち計画なのでありますか、あるいは予想なのでありますか、あるいは希望なのでありますか、これを一つまず第一に承わりたいのであります。そこで計画であるとするならば、ある程度まで統制を用いていかないというと、なかなかこれの実行は困難だ。ちょうど絵にかいたぼたもちといいますか、そういうふうになってしまったんではそんな数字をなまなか見せていただいたことが迷惑です。こういうことなるのでございますので、大体これはこうかくもあるべしという希望のお考えでありますかどうかということをまず第一にお伺いします。
  219. 国務大臣(高碕達之助君)(高碕達之助)

    国務大臣(高碕達之助君) お答え申し上げます。経済六カ年計画は、これは経済に計画性を持たすということが主眼でございまして、六年後の日本の人口を基礎とし、それに対して完全雇用に近づけて、かつ経済を自立するためにはこれだけの生産をしなければならぬと、こういうふうに持っていかなければならぬという合理的な数字をもってこれを示しまして、これに近寄るようにすべての経済計画を立てていきたいと思います。従いまして、これは絵にかいたぼたもちじゃないか、こういう御意見もあるでしょうけれども、これは絵にかいたものでなく、これを実行するように進めるということが第一の主眼でございます。ただここに初めの計画はこれは全部金額で見積っておりますから、ここに欠陥があるとは存じますけれども、これを実際上に実行いたします場合においては、年々歳歳過去における実績、その当時における実情等に即しましてその経済計画に即応するように漸次年々予算を組んでいきたいと、こういう考えで進むわけでございます。で、これを実行に移しまするにつきましても、これの計画を立てまするにつきましても政府が独善で単独にこれをやるのでなくて、政府は大体の根本の方針を立てますが、これにつきましてはよく各方面の御意見を承わる、十分の意見も聞く、大きく言えば国民全体の御意見を承わって、その六カ年の計画を立てて、かくすることによって日本の国の経済が自立するということをよく国民に納得していただいて、そして納得ずくでこの計画を遂行いたしたいと思っておりますから、できるだけ政府の力を用いてやる、規制ということは避けたいと、で納得ずく、相談ずくで、そしてこうやろうじゃないかという相談ずくでこの計画を実行に移すのであります。こういうのが政府の六カ年計画を実行する方針でございます。
  220. 田村文吉君(田村文吉)

    ○田村文吉君 要は目標をお示しになったのであって、その目標に向って政府もいくが国民もともについて来いと、こういうようなお気持でお出しになっているのか、お立てになった目標は必ず実行しなければならないから従って必要なる立法措置もとることはとると、ここまでおいでになるのか、この点が一つ。どこでおとめになるのかということを伺いたい。
  221. 国務大臣(高碕達之助君)(高碕達之助)

    国務大臣(高碕達之助君) お答え申し上げます。ただいまのお話の通りでございますが、このどの程度に立法的措置をとるかと、こういう御質問でございますが、これはできるだけ避けたいと思っております。現在におきましては為替の管理だとか、あるいは資金の統制だとかそういうふうな面におきましてできるだけ業者と打ち合せましてその方針を進めるようにいたしておりますが、必要に応じましては、ある程度の規制を加えなければならぬ、それはそのときの状態によりまして、よく御相談を申し上げてきめたいと、こういうわけであります。
  222. 田村文吉君(田村文吉)

    ○田村文吉君 そういたしますと、大体ある目標をおいて、現在行われている法律並びに今後国会が納得するであろう法律であるならば、その程度においては規制する場合もあり得る、しかし大体は今日のままで希望を持ってその希望に到達するように努力する、かように了承いたしてよろしゅうございますか。
  223. 国務大臣(高碕達之助君)(高碕達之助)

    国務大臣(高碕達之助君) ただいま御質問の通りで、私どもはその方針で進んでいきたいと思っております。
  224. 田村文吉君(田村文吉)

    ○田村文吉君 次に伺いたのでありますが、これは総理大臣の施政方針の演説の中にあった言葉なんで、私はただ言葉じりをとがめる意味ではないのでありますけれども、独立の完成は経済の自立にあり、経済自立のためには国民生活の安定をはからねばならぬ。と、こう言って、その次に国民生活の安定のためには、まず産業の生産と貿易を盛んにするとともに、消費生活をできるだけ豊かにすることが肝要であることは言うまでもないと、きわめて、言うまでもないと、はっきりと経済自立の問題と消費生活を拡大することがさも両立するかのごとくに、しかも当然であると言われているところに私はイギリスやドイツあたりが過去においてとって来た道、日本が過去においてとって来なければならなかった道と非常に矛盾しておる。たとえばわれわれは経済自立をはかるために、輸入したいも一のがあっても輸入を抑制する、あるいは砂糖がほしくても、このくらいで砂糖はとめる、かようなある程度の耐乏生活があって、初めて国の自立というものはできる、経済の自立というものはできると思う。ところが、私はこの点を単に言葉じりをとがめたいという意味ではないのですが、ややもすると、安易な拡大生産の方向に向おうという御意図がこの中に含まれているようなかのごとくに私考えられるので、もしさようなことであるというと、今後の輸出貿易などは、お考えになっているほどには私は伸展は困難だ。なかなか容易ならない経済上の自立に対しては困難に遭遇する事態になっている。しかるにかかわらず、かような国民生活をできるだけ豊かにすることが経済の自立であるというような、三段論法から言いますと、非常に矛盾をしたことになる。こういう点については、経済閣僚が案をお作りになっていらっしゃると思うのでありますので、私はこの際国民が誤解をすると困る、こういう点から経審長官からはっきりとこの点に関して御所信を伺いたい。
  225. 国務大臣(高碕達之助君)(高碕達之助)

    国務大臣(高碕達之助君) お答え申し上げます。長期経済計画を立てるということは、経済の自立をいたしますとともに、失業者をなくすると同時に、終局の目的におきましては、国民の生活を向上せしめて、これを安定せしめるということがその趣旨でなければならぬと存じます。もちろんこれを達成いたしますためには、相当の期間は耐乏生活もしなければならぬ。お説のごとく、不急不要のものは、輸入も禁止する、こういうふうな為替の操作をもって実行いたしていくことはもちろんでございます。今すぐに拡大権衡をもって、すぐに国民の生活が非常によくなる、こういうふうなことも期待しておりません。従いまして総理の演説は、これはまさに国民の向うべき道を示されたのでございまして、特にこの経済六カ年計画におきましては、初めの三カ年におきましては、できるだけ地盤をならす、拡大均衡の地盤を作るということが趣旨でございますから、従いまして不用不急のものの輸入を禁止し、国民諸君の努力によって貯蓄を増進いたしまして、その金は必要な合理的な方面に投資に使って、貿易の増進のために生産の原価を下げるということのためには合理化ということをしなければならぬ、こういう方面に資金を回したい、さような所存でございます。
  226. 田村文吉君(田村文吉)

    ○田村文吉君 大体そういう御趣旨であろうと思うのですが、どうも世間に聞きまするところの総理の演説は、非常にイージー・ゴーイングにものを考えている。そして消費生活をきわめてぶんだんにするということは、かつてアメリカでフォードが自動車を売るために、賃金はできるだけ上げた方がいいのだ、賃金を上げて購買力を増進して国内の繁栄をはかろうじゃないか、こういうことを言ったことがある。私はアメリカのような資材に少しも不足のない国では、さようなことを言って少しも間違いがない、こう考えるのでありまするが、この資源の乏しい日本で、できるだけ消費生活を豊かにすることはすなわち経済自立になるというこの三段論法はどうしても私には納得ゆかないので、そこでその点がまだあなたの御表現では私は足りないと思う。本当に耐乏生活をやって、そして経済の自立をはかって、しかもその上でわれわれは豊かな生活をしたい、失業者のないようにしたい、こういう念願を持たなければならぬのに、のっけからこういうことを言われたのでは、はなはだそういう点について国民が誤解する、かように考えますので、なお恐れ入りますが、あなたからもっとその点についてはっきりと御表現を願いたい。
  227. 国務大臣(高碕達之助君)(高碕達之助)

    国務大臣(高碕達之助君) お答え申し上げます。ただいま田村さんのお説のごとく、国民生活を豊かにするというのが目標でございますが、それを達成するためには、ある時期にはお互いはこの耐乏生活に耐えなければならぬということはもちろんでございます。
  228. 佐多忠隆君(佐多忠隆)

    ○佐多忠隆君 委員長ちょっと関連して……。非常にいいかげんな御答弁としか考えられないのですが、総理の今のお話は、あくまでも消費水準を高めるということを前提にしておる。しかも先ほど田村委員のお話にあった経済計画、特に三十年度の計画におきましては、個人消費支出昭和二十九年度四兆六千六百二十億に対して、昭和三十年度は四兆七千六百九十億、消費支出もふえております。さらにこれを消費水準で見ると、昭和二十八年度を一〇〇として昭和二十九年度は一〇〇・六であったのを、三十年度には一〇三・二に引き上げる、従って三十年度は二十九年度に比較すると二・八%、約三%弱引き上げるということをはっきり数字的に計画をしておられるのです。耐乏生活とか何とかいうようないいかげんなごまかしでなくて、少くとも消費支出なり水準に関する限りは、これを目途として実現のためにあらゆる努力をすることこそ、はっきり言明をされるべき問題だと思うのですが、その点どうですか。
  229. 国務大臣(高碕達之助君)(高碕達之助)

    国務大臣(高碕達之助君) お答え申し上げます。ただいまお説のごとく、大体におきまして消費水準が幾らかずつ上っておることは事実であります。三十年度におきましては三・六くらい上る。ところが過去におきまして、これが非常な勢いで上っておるのであります。過去の上り方と比較いたしまして、これはよほど抑制を加えたものでありますが、これくらいの生活水準を向上させるということは、国民を幸福ならしめるのに当然なことだと思いまして、これは決してぜいたくとか何とかいうことではございません。これだけのことをやりつつ、そうして大体の方針に進むべきだと存じております。
  230. 田村文吉君(田村文吉)

    ○田村文吉君 今の問題はいろいろ見方によって議論が出るようでありますが、時間の関係もございまするから、その点にとどめておきまして、先般私が本会議で独占禁止法の全廃、あるいはまたカルテルの届出主義程度に改めるお考えがありませんかということをお伺いしたのです。それにつきましては、きわめて事務的な御答弁を、ちょうど長官はおいでなかったので、事務当局の答弁をそのままお読みになったので、少々私とすると、靴を隔ててかゆきをかいたようでもの足りない。そこで今日はあらためてお伺いしたいのですが、私は、今日本の経済の当面しております一番大きな問題は何かというと、昨年以来行われてきた、昨今やや緩和されました金融独走の問題、それから税金が重いということ、重税であるということ。それからもう一つは、現在残っておる独占禁止法、こういう三つの問題が今日の非常に経済の発展を阻害している問題であるのでありまして、御承知のように二十六年、七年くらいまでは、日本の生産というものはどんどん伸びる一方でございまして、それを十分に吸収するだけの力を持っておった。ところが二十九年になりますというと、もうすでに飽和状態に相なって参りまして、そこへ金融の独走が出て参りましたから、非常に品物によっては余る、こういうような状況になって参ったのでありますが、カルテルというものは、そう人が考えるほど悪質なものではないのでありまして、非常に余ってきたような場合に、おのずからこれを制約するという一つの落下傘の役目をする、またボイラーの安全弁の役目をする、これによって私ども明治から大正、今日に至るまで、われわれの自由主義経済においては、すべてのリストレイントをとりながら産業は発達してきた。こういうことは、ここに二人お残りになっていらっしゃる高碕長官あるいは労働大臣、お二人ともこれは実際の経験者でいらっしゃるので、私はお二人に特に残っていてお話いただきたかったのです。よくおわかりのはずです。石炭合理化法案というものが今度出るという話ですが、こういう問題も、今のカルテルという問題も、別におとめになっておかなければ、お互いに調整をして、こういうものはおのずから直す方法がある、病気をなおせる、また失業者も出さないで、ほんの一割二割の操短をする、その場合少しは遊んでいてもいいよという調子でもって、ある程度までそういう一時的に品物の余るものに対しては、これをコントロールする方法がある、失業者を出さないでゆくのであります。こういうように、経済というものは微妙な理があるにもかかわらず、こういう不都合な、落下傘の役目をするものがなかったり、あるいは安全バルブがないような方法をしておくと、日本経済は立つ道がない。こういうことを私は経審長官に申し上げて、そこで問題は——いやそれはそうだが、これに対しては不況カルテルというものを認めている、あるいは中小企業安定法というものもある、それから合理化によるカルテルも認めているんだ、こういうふうにすぐ御抗弁が出るかもしれませんが、これは、いわゆる六日のあやめ十日の菊といいますが、いわばそれが許可になる前には倒れてしまったあとだ、いわゆる落下傘が下に落ちてからあくのです、ボイラーが破裂してから安全バルブを抜くのです。そういうことでは、今重大な時期に立っている日本経済の立ちようがないと思うから、これは一日も早くやめてほしい、もしこれをいろいろの形にお変えになりまして、あるいは通産省がこれをコントロールする、こういう場合には、昔のやはり通産省のコントロールが入りまして、非常に実際の運用はまずくなる。これはやはり各同業者間でコントロールしながらいくということと、これによって失業者というものを少くもかりに一万人出すものならば千人で済む。こういうように過去におけるわれわれの経験はお二人も御承知のように、十分して来ているのでありまするから、今のような失業者をどうするかというような問題が非常に大きな問題になっているときには、まず第一にこういう点はお考えになって、アメリカの占領政策で無理に日本の経済をつぶそうと考えたようなふうにとられるこの独占禁止法は、この際一日も早くおやめにならなければいけない。また輸出については輸出入取引法のお話がございますけれども、輸出入取引法や何かで、特別に貿易関係のようなものにこういうものをお入れになると、むしろ外国の誤解を招くことが多い。だからいっそこれは全然おやめになるか、あるいはどうしてもやむを得なければ届出をする、届出をして著しく公安に害があると認めます場合には、何らかの機関においてこれをリストレイントというようなことをするというようなことが私は必要だと、これは私は日本の経済の現状から考えて、実際心配でならぬのであります。でありますから、これは失礼でございますが、ただ経済を御承知になっていらっしゃるという方じゃわからぬのです。実際に事業をおやりになってきたお二人でないと私はわからない。そこできょうは経審長官と西田労働大臣にその点についての一つお考えを伺って、何かほかに手がおありなすっての御自信があるのか、そうでなければ、これは一日も早く一つお改めにならないというと、いわゆる金融独走の問題と、もう一つ税金の重いという問題と、この三つの問題で日本の経済は参っちまう、こういうことを私は申し上げたいと存ずるのであります。
  231. 国務大臣(高碕達之助君)(高碕達之助)

    国務大臣(高碕達之助君) お答え申し上げます。ただいま田村さんの御説の通り、私どもアメリカのような国情の国が独禁法をとるということは、これはやむを得ない点があるだろうと存じまするが、これを日本の国にそのまま持ってくるということは、よほどそこに無理があることは同感でございます。特に私ども過去におきまして事業をいたしておりますというと、中小工業、大工業は別でございますが、中小工業者は黙っておっても一人で競争ばかりして、競争し過ぎて困るわけであります。で、むしろ私はこの競争を、不当競争をやめさそうではないか、こういうふうな、そうすることが日本の国の産業をよく導くゆえんだ、こういうふうな考えでもおったんでありますが、そういうわけでございますから、この独禁法というものにつきましては、よほど考慮する必要がありますが、とってただいま即刻にこれをやめるか、こういうことになりますというと、これはやはり中小工業でなくて、むしろ大工業の方におきましては合理化した、あるいはするとか、あるいはカルテルを作ったとかいうことのために物価が上るという、こういうふうな憂いが相当あるのでございまして、これをさしあたり今この独禁法を、政府といたしましては廃止するという考えはいたしておりませんです。しかしこれに対して手心を加えて、先ほどもお話のごとく合理化のためとか、あるいは輸出方を増進のためとかいうことのためには、カルテルと申しましょうか、あるいは輸出組合を作らしめるとか、あるいは協同組合組織によるとか、いろいろな方法を講じまして、各自が、業者自身が規制をして、そうしてむやみな、不当な競争をやめるというふうなことについては、政府もむしろこれを援助して行きたい、こういうふうな方針でございます。従いまして、私は今端的に申しますというと、合理化によってあるいは失業者がふえるという場合もございましょうが、そういう場合は失業者を適当に処分するとかいうことを考えて、そうして合理化ということは当然考えていかなければならないということでもある時期でございますから、これは今現在すぐに独禁法を廃止するということは少し無理かと存じます。
  232. 田村文吉君(田村文吉)

    ○田村文吉君 そういう御説も出ると考えたのでございますけれども、今日の日本の経済はそんななまやさしい事態ではないのでございますのと、最近に海外の市外の市場を、東南アジア方面を調べて参りました各業者の意見を聞きますと、非常に各国がえらい力をもって輸出にがんばっている、とうていわずかくらいのことに出血輸出をしてまで輸出をしなければならぬような状況下で、果して今後の輸出が継続するかということについて、きわめて悲観的な報告をもたらしているのであります。そういうような私は輸出の問題について特に力を入れるということは、誤解を招きますから言いたくありませんけれども、今日本の置かれているこれからの状態は、先刻佐多同僚議員からもお話がありましたが、来年は消費水準が上るとこうおっしゃるのですが、あの数字に書いたものはいわゆる生産指数がふえるということだけなんです。ところが生産指数というものは、買う力があってこそ初めて売れるのであります。そうでなければいわゆる国内が競争をいたしまして、生産価格でいうならば、逆に下るかもしらぬ、こういうような場合に陥っておりますことや、もう一つには小さな中小企業者が競争しましたあげくは、結局血みどろになって大きな企業に合併されるということなんです。それで今までいた従業員は皆解雇されてしまう、これを最も私ははっきりと言えば、石炭合理化法案というようなものも一つの現われなんです。そういうふうに出てくるから、これはよほど今のうちにそういう点をお考えになってなさらないといかぬ。  第一に私は長官に伺いたいのでありまするが、最近に銀行が金利を下げるという申し合せをしたことは、独禁法の違反にならぬとこう言うのですが、もし反対に下げ過ぎたから一厘上げるということは、一体独禁法に引っかかるのですか、引っかからないのですか。また保険会社が保険料の協定をすることは、これは火災保険料の協定をすることは引っかかるのですか、引っかからないのですか。また新聞社が新聞の販売値段を協定することは一体引っかかるのですか、引っかからないのですか。こういうふうにもう資本の強いものは皆これを守る方法があって、そういう守る力のないものが皆これをつぶされてしまう、こういう状況になっているから、私は経審長官にこの際思い切って一つおやりにならないといけないのじゃないか、もう時期がそこへ来ておりますよと、こう申し上げたいのでありまするが、今の各銀行の協定というものについては、一体どうお考えになっているのですか。
  233. 国務大臣(高碕達之助君)(高碕達之助)

    国務大臣(高碕達之助君) 今田村さんのお説のごとく、小さな連中は私そう独禁法をもって押えつけるという必要はないように存じますが、むしろ先ほど申しましたごとく、これはできるだけ共同歩調をとらすということが必要と存じますが、今御指摘のごとく大企業者が勝手に申し合せをしてあるいは金利を上げるとか、あるいはセメントの価格を上げるとか、あるいは鉄の価格を上げるとか、こういうふうな大きなことをやられるというと、これはそこに欠陥があると存じますから、そのときと場合によっては独禁法を使わなければならぬ。従いまして、独禁法をただいま捨てる考えはないというわけはそこにあるわけでございますが、お話しのごとく、どうも現在輸出産業を伸ばして行きます上においては、たとえば日本独特の養殖真珠のごときも何も値を下げる必要がないにもかかわらず、業者の価格が三百円が五百円になり千円になるというふうな結果、各自がいろいろな不当な競走をし、一万円で売れるものを五千円にし、さらに三千円に下げる、これくらいばからしいことはないのでありますから、こういうものについてはよく業者と打ち合せをいたしまして、これらに対する金融の道を講ずるとか、あるいは生産についての協議をし合うとか、こういうふうな努力をすべきであると存ずるのでございます。同様な工合に中小工業者が輸出をいたしております仕事については、何も外国において安くしたからといって外国の人は喜ばないにもかかわらず、だんだんだんだん尻安にする結果、日本の商品は売れて行かないというのが現状でございまして、これにつきましては独禁法を緩和するだけでなくて、進んで私はこれは政府といたしましては、カルテルを作らして実行に移して行きたい。もっともお話しのごとく輸出品についてはいろいろ外国との関係もございまするものですから、そういう場合にはいろいろな方法を講じてそういうふうな輸出を増進していきたい、こう存じております。
  234. 小野義夫君(小野義夫)

    ○小野義夫君 関連質問……。今審議長官は、鉄、セメントというようなものをその類例にして出されたのであります。製鉄に関しましては非常な大きな資金を、まあ政府資金ではなくても、いわゆる財政投融資が非常に大きな対象になっておることは御承知通りであります。セメントにおいても決して皆借金なしに事業を拡張しておるとは思わない。そこで、今この独禁法を解くか解かないかということについていろいろ考えられておることは、むしろ国内の問題ではなくて、これは外交上その他の諸問題があってやれないというのならば、あるいはそういうこともあり得るかとも考えるのでありますけれども、決して今例にされたようなものは、独禁法によらなくても、政府の今の投融資その他の観点から見ても、その価を適当に押えつけるということはやり得るではないか。現に肥料のごときは審議会をも無視して、現実に農林大臣一個の所見をもって異常なる何と申しますか、権力を乱用してそのことをやっておるのじゃないですか。事実できておるのじゃないですか。しかるに、なおあの破れたる法律をどこまでも保持して、そうして今それでなければある産業があなたのおっしゃることや、あるいは通産大臣の意見を聞かないなどということの実例が何かありますか。私はその今の御説明では納得いかない。
  235. 国務大臣(高碕達之助君)(高碕達之助)

    国務大臣(高碕達之助君) お答え申し上げます。ただいま小野さんの御質問に対しまして、政府はこういう基礎産業につきましては、これについて価格の相談に乗る、これは命令でどうこうというわけじゃありません。これは現在は業者とよくお話をして、話し合いで価格の暴騰を防ぐというふうな方針をとっております。しかし、これは独禁法でやっているというわけじゃありませんが、そういった場合に万一のことがあったときに独禁法というものをまた使えるということにして、政府の力を持っておきたい、こういう所存でございます。
  236. 田村文吉君(田村文吉)

    ○田村文吉君 私は経審長官があんまりお心持にもないようなことを御答弁なさらにやならぬ御苦衷は十分に察するのでありますけれども、どうもこれはもういわゆる産業をやっている人が皆はっきりわかっていることなんです。このくらいわかっていることはないのに、なぜ国際的の関係があってこういうことができないのか、こういう点を私は伺いたい。殊に鉄、石炭に対しては特殊の扱いをするということを一体おっしゃっている。こういうものに対しては莫大の金を出してやる、合理化資金も出してやる、いろいろのことをなすっている。それはある程度までお取り上げになるのもけっこうだ。しかし、一般の産業は、そんな政府のごりやくは何もいただいていませんよ。そういうものに対してみずから守る手を封じてしまうというところに非常に無理がある。こういうことをお考えになっていただいて、私はもうおわかりになっていることを二度も三度も繰り返して言うようなことも心もとないと存じますから、これは一つ経審長官から十分に御考慮いただいて、今日本の経済界が非常に苦境に立っている根本がそこにあるということだけをはっきりと知って、ただ中小企業だけじゃないのです。あらゆる産業がへたすりゃすぐ泣きついて来て金をくれとか、金を出してくれとか、皆そうです。そういうことにならないように、みずからはみずからを守れるような方法を講じてあげておやりなさい。そうすれば国民も税金の負担は軽くて済むんだ。こういうことを私は申し上げたい。これだけ申し上げて今の問題は打ち切ります。  あわせて私は今の問題について労働大臣から、実は失業問題に対しても御所見が承われればけっこうです。しかし高碕経審長官と意見が違っても工合が悪いからというのでお控えなされば、お控えになっても差しつかえございませんが、あわせてあなたに一つ伺いたいことは、現在の失業者が六十六万人とか言っておりますが、最近には八十四万人と聞いております。そこで、一体この計算はどこからお出しになっていらっしゃるのか、これを一つお聞きしたいことと、次に現在の職業紹介はすべて大体公立のものによって行われている傾向なんです。これはこれでよろしい。よろしいのですが、今のように人が余って職を何とかして探したいというような場合に、ある程度の制限を加えてもかまわないが、私設の職業紹介所というものを作って、一人でも多く就職のできるようなことを考えておあげになる必要があるのじゃないか。私は今の公設をやめろとは言わない。これはこれでよろしいが、私設の職業紹介所を考えてあげて失業者を一人でも減らす、こういうことをお考えにならないかどうか、これを一つお伺いしたい。
  237. 国務大臣(西田隆男君)(西田隆男)

    国務大臣(西田隆男君) 独禁法の問題に関する私の意見を申し上げます。田村委員のおっしゃるように、独禁法についてはいろいろ論議もされておりますが、鳩山内閣では閣内で議論をしておるという段階でございます。私は大正の末期と昭和の戦争前まであなたがおっしゃったように実業人として生きておりましたが、日本で過去において行われましたカルテルは、不況対策によるカルテルが大部分であって、独禁法で心配しておるようなカルテルは今まではあまりなかったと考えております。こういう観点からいたしますというと、日本経済が非常に基盤が脆弱になって、どんどん物を作らなくちゃいけないインフレ的な様相を帯びておる際には、このカルテルが不況カルテルでなくて価格のつり上げを意味するカルテルとしての悪い面が非常によけいに現われてくる場合があり得るという観点から、この独禁法もやむを得ないものと私個人は考えております。しかし、それなら現在すぐやめるべきか、こう申しますというと、いろいろ弊害はありますけれども、まだ日本の経済基盤そのものは大正末期やら昭和の戦争にはいりまする前までのような、それほどの資本主義的にかたい基盤はでき上っていないのじゃないか。従ってまず第一に日本の経済基盤がある程度でき上った場合においては、これはもう理論のはさむ余地はない、独禁法は廃止してもよろしい。従ってこれから先行われるカルテルは不況対策のカルテルが主になって日本経済の安定のために役立つであろう、こういうふうに私個人は考えております。従って、カルテルによって失業者が全く出ないとは考えておりませんけれども、不況カルテルを実施することによって失業者がある程度出る人たちが少くなるということも、これはあなたのお説の通りだと考えております。  それから職業あっせんの問題でございます。こは公共的な性格を帯びておりますので今は国がやっておりますが私としましてはだんだんに民間に無料有料の、職種にもよりますけれども、職業あっせん所を許可していく方針をとっております。現在有料無料で民間でやっておりまするのは、無料でやっておりますのが二十七カ所、それから有料でやっておりますのは九百八カ所、これだけの国家以外の機関による職業のあっせん所がやっております。だんだん職種等によりましては、拡大していきたいと考えております。
  238. 田村文吉君(田村文吉)

    ○田村文吉君 終ります。
  239. 小野義夫君(小野義夫)

    ○小野義夫君 関連質問……。ただいま労働大臣のカルテル、トラストに対する御答弁は、自己撞着に陥っておるのだろらと思います。と申しますのは、日本経済の基盤が非常に脆弱であるから何かトラスト、カルテルでその基盤を強固にする必要があるから、今撤廃ができないという御説明のように拝聴したのでありまするが、私どもは反対に、経済自立あるいは日本の経済基盤を強固にするためには、ああいう有害にして実利のない法律を一日も早くやめるべきであるということを申し上げておるのでありまして、今日本でカルテル、トラストの弊害の起るようなセメントである、鉄である、あるいは造船である、いわゆる日本の基本産業というものに対しては、政府のこれの統制力というものは、法律によらずして非常に唯々諾々とできるような情勢になっておる。民間の人は今政府にたてついて、そうして政府の命に反して、あるいは政治家の意図に反して横暴なることをやろうといっても、全然そういう余地はないのです。反対に、この独禁法があるために、中小企業ももちろんそうでありまするけれども、その他の産業も戦々きょうきょうとしておるのであります。それはあなた方の属僚が何か独禁法に触れるのおそれありといって呼び出したり、あるいは脅迫したりするからであります。従いまして、なかなかわれわれが自由に産業の話し合いをすることができないような状態になっておるのであります。従いまして私は、今の株式市場の現状をごらんなさい、これはおそるべき日本に恐慌来襲の前兆を示しておるのである。巷間伝えるところによれば、いわゆる今の株式市場はとうてい現在の手数料をもっては経費の三分の一も償わぬということを言っておるのであります。そうしてすべての産業の配当はだんだん低下の一途をたどってきております。従って株価はどんどん崩落の一途をたどらざるを得ない。かような状態になって来て、経済の中心に非常なおそるべき禍根を包蔵しておる現状に即しまして、あなた方が今言われているところの先ほどからの御議論は、全くこれは政治家の事務的答弁にすぎないのであって、ほんとうに日本の経済を建て直すというところの意気と気概はほとんど見ることができない。ほかの大臣が、いわゆる政治家大臣がそういうような答弁をされるのならこれは私も納得しますが、あなた方御両人は実業人、いわゆる苦労人であります。その苦労人が、われわれとただ位置を変えたということだけでそういう御答弁をなさるということは、私は断然承服できないのであります。両大臣の根本的な意気、そうしてこの独禁法を修正し撤廃するお考えであるかを一つ伺いたい。
  240. 国務大臣(高碕達之助君)(高碕達之助)

    国務大臣(高碕達之助君) お答え申し上げます。先ほどの田村さんの御意見といい、ただいまの小野さんの御意見といい、これはそういったふうな御意見が各方面、閣内にも相当あるのであります。私は、しかし現在におきましては、まだ独禁法は政府といたしましては廃止する考えはございませんが、御両者の御意見のごとくこれは十分考慮して進んでいきたいと考えております。
  241. 国務大臣(西田隆男君)(西田隆男)

    国務大臣(西田隆男君) お答えいたします。自己撞着を来たしておるというおしかりをこうむりましたが、私の言葉が足りなかったかもしれぬと思いますが、私は独禁法を廃止することに反対ではございません。が、私内閣の一員としておりまする限り、内閣で決定しないことを、ここで廃止することがよろしいという御返答を申し上げるわけには参りませんが、しかしさっき申しましたのも、私個人の意見としては廃止した方がいいと思うが、今のような日本の経済の実態の上では廃止した方がいい、しかし独禁法関係法律もたくさん出ております。そういうものも全体として始末をつけなければ、ただここで独禁法だけをポンと廃止してしまうということはそういうことは政治的になかなか困難がありますので、私としてはできるだけ早い適当な機会に、独禁法ば廃止したいと考えております。
  242. 委員長(館哲二君)(館哲二)

    委員長館哲二君) 高田君に申し上げますが、御要求になっている大臣のうち、文部、厚生、防衛、調達庁、それだけは出席されておりますが、外務大臣は先ほど曾祢君に申し上げた通りの事情で、本日……。
  243. 高田なほ子君(高田なほ子)

    高田なほ子君 外務大臣はよろしいのです。大蔵大臣は……。
  244. 委員長(館哲二君)(館哲二)

    委員長館哲二君) 大蔵大臣は、今衆議院の、先ほど問題になりました補助金等の整理の委員会を上げるのに行っておられます。間もなくこちらに出席されると思いますから、他の大臣の方から一つ御質問を始めて頂きます。
  245. 高田なほ子君(高田なほ子)

    高田なほ子君 文部大臣にお尋ねをいたします。最近再軍備体制が非常に進んで参りまして憲法の精神が全くじゅうりんされている状態でありますが、最近は憲法九条のみならず、義務教育無償の原則がきわめてくずれて来ている傾向にあると思うのですが、文部大臣は憲法二十六条に規定される義務教育の無償の原則に対して、現在の義務教育無償の原則がくずれている現状を、この憲法との矛盾をどういうふうに把握しておられますか、お伺いをしたいと存じます。
  246. 国務大臣(松村謙三君)(松村謙三)

    国務大臣(松村謙三君) お答えをいたしますが、これはできるだけ憲法の精神を広く解釈いたしたいことは、申すまでもないことでございます。しかしながら、ただいまのこの実情におきましては、無制限にこの無償ということを解釈することは、これは私は不可能でないかと考えます。大体お考え下さいますならば、六・三・三の制度というものは、端的に申し上げますならば、日本の国力に不相応であるということは、これは残念ながら申してよかろうと私は考えるものでございます。戦争前から教育審議会等において、六・三・三の制度を理想案として持っておりましたが、その当時でさえも、国力が足らぬということでそれは実行に至りませんでした。しかるに戦後になりまして、いくさに負けて、そうして六・三・三の制度がしかれたのでございまして、これは国力に不相応であるということは、これはどうも認めざるを得ないのでございます。しかしながら、すでに六・三・三の制度がしかれて八年にもなり、その間非常な苦心でここまで持って参りました以上は、今さらこれを政治的に見ましても、実際の教育の上から見ましても、これを後退せしめることはこれはできないと考えます。実際負けいくさをいたしたそのあとの状態、この八年で、どの町村に行っても小学校はもちろん、中学校までがまあ今日ようやくでき上ったという、その努力だけでもこれは非常な大きなことであったと思います。しかし、とにかく今さらそこまで来まして、後退を許しません。そこでどうしてもこの六・三・三の制度をもって、そうしてその実をあげようとしますのには、これはすべてを国だけに背負えといってもできるものではございません。教職におられる人たちも、それから父兄の人たちも、また学ぶ人たちの心がけも、みんなこれが何とかしてお互いに力を合せて、この六・三・三の制度をもっていこうという、そういうところの熱意があってこそ初めてこれは維持をし、そうして将来にいい実を結び得るのでございまして、それを、この負けいくさをいたしたあとの国力の乏しい国だけにすべての負担をもってきて、そうしてこの無償の原則を広義に解してやるということは、これは今日においては実際できないことであることを御了承下さいまして、今日教育のことをすべて考えます基礎はここに置かなくちゃならない、国力にふさわしからぬ制度を持って、それをどうしてこれを維持して、そしてほんとうによくして日本の国の教育を将来に確保することができるか、そうしてこれは国力がだんだんこれから増していくように努めてそうして国力の増進によって教育とのつり合いをできるだけ近くつり合っていくようにしなくちゃならぬとこう私は考えまして、その国力とのつり合いのとれるまではどうか一つできるだけお互いに努力をし、その考えでやっていくよりほかに道がないと、こういうふうに考えます。
  247. 高田なほ子君(高田なほ子)

    高田なほ子君 御趣旨はもっともだと思います。私もこうした新学制の完成のためには、すべての者が力を合わせなければならない、こういうことは大臣のおっしゃる通りだと思います。しかし現在のPTAの寄付にしろ、学校の給食費にしろ、その他学校の修繕費の強制的な寄付にしろ、現在の生活状態がきわめて悪い状態で、これはやはり協力の限界というものがあるだろうと思うのです。こういう限界の中から無償の原則はどうしたのかという声が必然的に出てくるのは、これはやむを得ないことだと私は思います。そこでお伺いしたいことは、大臣は無制限の無償ということはあり得ない、なるほど現状においてはそうだと思う。そこで経済六カ年計画もせっかく立てられておられるわけですから、日本の今日の現状に即した立場から、この経済六カ年計画の中に、この無償の原則をどのようにして生かしていくかという計画性というものを多分お持ちだと思う。それをはっきりさしていただくことと、もう一つは、戦争によって負けてできた学制、こういう表現をしておられるわけでありますが、それはどのようにでも表現できると思いますが、負けたからできた学制というような表現ではなくて、子供たちの教育の機会を均等に与えるための学制であるというふうに解釈していただくことはできないでしょうか、この二つの点……。
  248. 国務大臣(松村謙三君)(松村謙三)

    国務大臣(松村謙三君) 私の表現が悪かったかもしれませんが、もちろん均等に教育をすべての児童に与えさせるのが義務教育の本旨であろうと思います。負けいくさをいたしたという言葉は、国力が弱ったからして、それでそういう六・三・三の制度を国がすべて負担ができない、その事実も考えて、その根底の上に計画を定めねばならぬと、こういうふうに申したのでございまして、さよう御了承願います。
  249. 高田なほ子君(高田なほ子)

    高田なほ子君 ちょっと私の質問と違うわけですが、つまり現在の日本経済の中で、どういうふうにこの無償の原則を立てていくかというのです。なぜかというと、今度の予算を拝見しましても、昨年まで十四億あった児童の教材費が、これは二億ばかり減っております。さらに七十七万の児童増に対する施設費は当然増額しなければならないのに、約五億の減額がされております。これでは全く無計画ではないか。そうした無計画の中でしわ寄せされて大衆の負担がここに出てくるということが問題なので、計画がないのかあるのかということについて質問を申し上げているのです。
  250. 国務大臣(松村謙三君)(松村謙三)

    国務大臣(松村謙三君) やはりこの六カ年計画のうち、漸次今申したような理想の点へ達成できるように考えております。たとえて申しますならば、老朽校舎を解消する、戦災校舎の復旧をする、こういうようなことは今後三カ年間に大体完了いたしたいと考えております。もちろん予算の都合によって四年になるかもしれませんけれども、三カ年間くらいに解消をいたしたいと考えております。また、児童の給食の問題なども、漸次普遍的に、そうして欠食児童などのないような方向へ変えていきたい、こういうようなふうに施設等の点についていろいろ計画性を持ってやっております。なお、その上に計画を作ることはまだできませんけれども、たとえば化学の実験室などのごとき、中学校なんぞではほとんど持っているところはないというくらいのひどいものでございますが、これらも明年あたりからその予算の限りにおいて、できるだけ一つやって充実をいたしたい、こういうふうに考えてやっております。
  251. 高田なほ子君(高田なほ子)

    高田なほ子君 今年は教材費を減らしている。これは試験管のようなものも入るでしょう。今年はそういうように減らしておいて来年から新しく計画を立てるという意味ですか。また長期欠席のことも、それから欠食児童は非常に最近ふえております。これはもう大臣よくおわかりでしょうが、これらに対して応急措置というようなものもこの計画の中には入っておらないものでしょうか、いかかでしょうか。
  252. 国務大臣(松村謙三君)(松村謙三)

    国務大臣(松村謙三君) 今さきにお話しのをちょっと聞き漏らしましたが、危険校舎の予算が減ったということ……。
  253. 高田なほ子君(高田なほ子)

    高田なほ子君 いや、そうじゃなくて、施設費全般で約四億九千万円ですか、五億減っています。
  254. 国務大臣(松村謙三君)(松村謙三)

    国務大臣(松村謙三君) これにつきましては、一面全体にわたる節約の率を振ったのもございます。一割五分とかいう率を振って減ったというのもございまするし、必ず一様になにをいたしたわけじゃございませんけれども、私どもといたしまして決して前年より規模を狭くしたとは考えておりません。大体前年通りの成績は必ず確保し得るものと考えておりますので、その点については決して今年減らして来年増すということはないと考えております。
  255. 高田なほ子君(高田なほ子)

    高田なほ子君 いろいろ数字をあげてその矛盾を申し上げたいと思いますが、これは時間がありませんから、あとは文部委員会に譲りますが、私は文相に期待するところが非常に大きいのです。今まで文部省には一貫性とか、計画性というものがないのですね。それでそのつどばったりの中にだんだん追い込まれてきているというのが現状なんです。それで実は大臣に強く期待するところは、新学制を実施していく、しかも現在になってなお計画性を持たないというところにあなたに期待したいと、こういうわけです。しかしあとにこれは譲ります。  その次は、軍事基地周辺の教育環境の問題です。これは以前からたびたび問題になって参ったところです。しかし先般も本会議場ではっきりされたように、最近の再軍備政策は、ようやく日米共同声明に伴って飛行場が拡大してくる。しかも現実には軍事基地に使われている区域が昨年に比べると約一億万坪も一ふえている。こういうようなところでありますから、基地教育の再検討という時期は、もう十分にきているのではないかと思う。そこで具体的に申し上げますと、軍事基地をめぐる爆音、騒音の問題です。この爆音、騒音の問題で、子供たちが学習の障害になるということもありますが、それより大きな問題は、慢性的な不眠症に悩んでいる子供が上級学童の中にたくさん出ているというデーターを私は持っているのですが、これに対する文部省としての対策、大臣としてのこれに対する御見解、第二点は、基地の子供の不安感でございますが、最近の交通禍は単に軍用道路に限ったわけではありませんが、特に甲州街道、あるいは青梅街道というような主要幹線の無制限に走っている軍用車あるいはアメリカの車、こういうもので非常な交通禍が起っている。子供の不安感は調べたところによると九八%という高率を示している。こういう問題に対してこれは当然日米合同委員会の方に文部省からきつく申し入れられてこの災禍を防ぐことは当然だと思うのですが、今日までの日米合同委員会にこれらのことについてどういうような折衝をし、かつ大臣は今後どういう措置をされていこうとするのか。非常な重大な問題でありますから明確に御答弁を願いたいと思います。
  256. 国務大臣(松村謙三君)(松村謙三)

    国務大臣(松村謙三君) この基地付近の騒音の対策につきましては、昨年の春以来実施をいたしております防音の装置の試験工事の結果も大体明らかになりましたので、これを一つやろうと考えまして、調達庁におきまして昨年末以来全国的に実施に着手いたしておりまして、取りあえず昭和二十九年度の工事として全国で十一の防音工事を施行いたしまして、その結果は良好でございます。なおしかし、それでも移転をせねばならぬものにつきましては、目下調達庁と連絡いたしまして調査中でありますが、防音工事及び移転を実施する予定のものは三十年度以降約五十校に上っております。それから今の甲州街道、青梅街道等のこのいろいろの事故のことでございますが、これはここばかりではございません。市中における学童のそういうことの被害は相当にございますので、十分文部省といたしましては、これを未然に防ぐ方途を講じ、また講じようといたしております。もちろん今後ああいうアメリカの交通関係につきましては、十分の注意をいたし、とるべき措置は必ずとることを申し上げておきます。
  257. 高田なほ子君(高田なほ子)

    高田なほ子君 次に、この広島あるいは長崎の被爆児童に対する対策の問題、これは今まで表面に出てこなかった問題ですが、すでに原爆が落ちてから約十年にもなろうとしておりますが、二キロ以内で被爆した児童に、特に注目される疲労度及び知性の差が大きく出ているという問題であります。これは大へん重要な原爆が教育に及ぼす悪影響として、当然文部省はこれらに対する対策並びに調査というものに手を染めておられなければならなかったはずだと思うのですが、今まで文部省はこうした問題に対してどのような調査をされ、またこうした不幸な知能の差を持ち、あるいは疲労度のきびしい子供たち、これらに対する特に対策というものをお立てになろうとしているか、大臣の所見を承わりたいと思います。
  258. 国務大臣(松村謙三君)(松村謙三)

    国務大臣(松村謙三君) それにつきましては、その当時から厚生省とも連絡をいたしましてその調査研究を今日まで続いてやっておるわけでございます。厚生省が主として御研究になっておる、それに私どもは連絡をいたしております。詳しいことは申しませんが、だんだん調査の結果はただいままでのところでは、遺憾ながら被爆地帯におりました今日の学童の発育がやはり常人よりやや劣っている点が認められます。また今後後発症、すなわち白血病でありますとか、白内障でありますとかというようなものが起るおそれもないではないのでございまして、これらの点につきましては、厚生省と緊密に連絡をとりまして今後とも十分の注意をしていこうと、ただいまのところではそれを格段に差別をしてやるというところまでは参っておりませんのでございます。
  259. 高田なほ子君(高田なほ子)

    高田なほ子君 それに対する特殊学級の設置等については、当然考慮されるべきことと思うし、今度の予算にも若干の特殊学級の費用が組まれておると思うのですが、それらの予算を操作して、こうした被爆児童の対策について特段の措置を講ずる用意はないでしょうか。
  260. 国務大臣(松村謙三君)(松村謙三)

    国務大臣(松村謙三君) そういう必要が今後起りますときには、直ちにそれらの措置のできる予算的措置はでき得ると思うております。
  261. 高田なほ子君(高田なほ子)

    高田なほ子君 それから新生活運動の問題として、新生活の運動については先ほど中山委員からも御質問がございましたが、ばく然としてどうも私にわかりません。そこで項目を切って御質問申し上げますから、明快にお答えしていただきたいのです。それは新生活運動の目的とそれから対象、それを実施するための機構、そういうその三つの問題についてお答え願いたいと思います。
  262. 国務大臣(松村謙三君)(松村謙三)

    国務大臣(松村謙三君) それにつきましては、今朝中山さんにお答え申しました通り、白紙でその新生活運動をやっていただくように、各階級の識者にお願いをいたして、そうして本部を作ってそこでそれらの活動についての意見をまとめ、方針を定めてそうしてやっていただくと、こういう考えで進んでおるわけでございます。そのわけはすでにお聞き取りのわけでございまして、あまり翼賛体制のような形にはならないようにというつもりでやっているわけでございます。しかしながら政府といたしましては、今日の国民生活のうちで矯正すべきものに対して、ほんとうに盛り上る力でやって、効果を上げることを期待いたしておると、こういうことでございまして、具体的のことは予算が通って、そうしてそういう段階を経ていかなくちゃならないと、こういうふうに考えております。そうしていろいろの団体がございますが、それに無方針で助成を与えるなどというがごとき考えは、毛頭持っておりません。
  263. 高田なほ子君(高田なほ子)

    高田なほ子君 大へんばく然としたお答えでつかみどころがないわけです。私は特に心配していることは、無方針予算を出すということはないと思いますが、ただこの生活の改善ということになりますと、現在の生活でも相当に窮屈な生活をしている。その生活をさらに改善をするということは、裏を返して言うと、かなり婦人に忍従をしいてくるような結果になるおそれがあるということと、もう一つは生活の合理化ということを申しますと、これは合理化する余地のない階層が非常にたくさんあるわけです。つまり失業者とか、明日食べていけないとか、それから現在でも家庭の主婦が約九百五十万ですか、借金のある家庭が約五二・六%ですから、そういうようなところに生活の合理化ということをしいましても、なかなかうまくいかないように思う。結局一部の有閑婦人にこれが牛耳られてしまう新生活運動であったら意味がない、こういうことをおそれるわけです。それからもう一つの心配の点は、下から盛り上ってくる運動ということになりますと、行政措置を伴ってくると思うのです。たとえば特飲街の問題など、変な飲み屋さんですね。あんなものは生活環境にはなくたっていい、婦人には。そうするとこういうものがなくたっていいというときにどういう措置をされるのか。日本くらい酔っぱらいの多いところはありません。あんな酔っぱらいをかまわないでおくということは、とても私どもでさえ許せない。こういうときに一体行政措置としてどうするのか。排撃するといっても、それをどうすることもできないでしょう。結局いろいろな行政措置が要求されてくるわけです。暴力カフエーの問題もあるでしょう。こういったようなものはやはり行政措置が伴って参るわけでありますから、各省間に対する緊密な連絡というものが、計画として私は盛られていなければならないと思うわけです。ただ精神面だけの新生活運動であって、一旗振れば皆ついてくるというような形のものであったならば、これは先刻大臣が御心配になったような愛国婦人会の姿になってしまうのですから、こういう点については十分の御留意があるのではないかと思いますが、御意見を伺いたいのです。……大へん時間がなくなってしまって、大学の学生の就職問題についても用意をしてありますが、時間がないというお知らせをいただいて非常に残念ですが、大学卒業生の就職の問題、この就職問題をどういうふうに解決するのか。こういうような点についてあらましの数字と、それから見通しというものをはっきりとお知らせを願いたいのです。
  264. 国務大臣(松村謙三君)(松村謙三)

    国務大臣(松村謙三君) 先のお話から申し上げますが、この新生活運動が婦人に重い負担をかけ、また負債があるようなその他の人には、かえって迷惑をかける、こういうようなお話しでございましたが、私はそういうことは絶対にないと考えます。生活を規律せられても、なおかっこの貧困なお方には何ら無理をしいるわけではありません。そしてまた生活の貧困な方にも、いろいろ直せば、その貧困から救われ得る方々も中にはあるでしょうから決して富裕な人だけが新生活運動を牛耳って貧困な人を苦しめるというようなことは私は絶対にないと考えます。そのやりますことの内容等は今申したようなわけで、個々にはその会できめていただきますけれども、たとえて申しますと、近来青少年の間にきわめて蔓延をいたしておりますヒロポンの撲滅、この一つだけとりましても、新生活運動の意義は十分あると思います。食生活の改善ということを一つとりましても、これがもしも徹底いたしますならば、日本の食糧問題の解決ができるという大きな点へ触れて参りますので、やり方によりましては、私は日本の締め直しがこれによってできるものと考えておるわけでございます。行政措置の問題につきましては、これはそういうところと関連いたしまして、これは一つの社会運動では足りない。どうしても法を必要とするというものにつきましては、それはやはり立法その他の手段を講じなくてはならないと考えますが、それはそのときの必要に応じてやるべきだと心得ております。  それから大学生の就職のことでございますが、これは大体、ちょっと記憶違いあるかもしれませんが、ことしの卒業生が十二万人ほどだと思います。これは参議院の本会議でかつて報告いたしたことがございますからここに何しませんが……。現在残っておる末就職者はおよそ二万くらいのものと心得ておりまして、それを厚生省の方と連絡をいたして、そして職業紹介所その他で今日連絡をとって、少しでも就職をさせようと、国の方でもそれらの吸収をできるだけはかろうと、こういうふうにいたしておるわけでございまして、ただいまやっておりますところは、そのような次第でございます。
  265. 高田なほ子君(高田なほ子)

    高田なほ子君 もう時間がありませんから私は遠慮したいと思いますが、ただいまの就職の問題は、大臣の御答弁では非常に不満です。私もたくさんデーターを持っていますから、さらに御質問申し上げたいと思いますが、これは高碕長官とも十分に御連絡下さいまして、一刻も早く大学生が卒業して、就職のないために自殺をするというような、こんな残酷なことがないように早急に手を打って、これを解決していただきたいということを強く要望いたします。  さらに、厚生大臣にも御質問がありましたが、時間がなくなりましたから私は遠慮いたしましょう。あとでお許し願えれば……。厚生省の報告は大へんおかしいですよ。農林大臣が先ほど黄変米は配給せぬとここで言い切っておられる。しかし厚生省の学者の報告は、まことにおかしな報告ですよ。その報告をとり入れて食糧庁に度して、そしてまかり間違えば、学者方が黙っておれば、四月には私ら食べさせられるところだった。そんなことをやられては困るのですよ。  それから引き下がる前に、ちょっとお願いしておきたいことがございますが、これ一萬田大蔵大臣と、それから文部大臣に特にお願いしたいのですが、昨夜はからずも深夜私ラヂオのスイッチをひなりました。そうしましたら子供と一萬田大蔵大臣並びに文相との話し合いが出ておりましたが、私は悲しみましたです。大蔵大臣が二十六条の、義務教育の無償の憲法を御存じなかったということは、実に私悲しかった、子供も悲しかったと思います。さらに原水爆の戦争なんかはないと言い切られたことは、やはり子供に対して教育的でないと思う。さらに戦争がなくなるなんということはもうないので、みな神様にならなければなくならないのだというふうに大へんやさしい御説明なんですが、あれではいまの子供は納得できない。どうぞ大臣も子供の質問に対しては、もっと指導的な、ほんとうに真実を真実として知らせるだけの愛情を持ってやって下さい。これは文部大臣にもお願いします。日本は負けたのだから、仕方がないというような説明では、子供には負けた責任は私ないと思うのです。少くともおとながこういう問題についてはやはり責任を感じて、子供にはそういうことを頭から言わないで、もっと納得のいくような答え方をしてもらいたい。私はラジオを聞いて、子供のために涙した一人です。どうぞ今後大臣たちは、いろいろこういう問題にぶつかると思いますが、少くとも今後の子供たちは、正しい認識を求めようとしているのです。こういう点を認識して下さいまして、あやまちのない導きを与えて下さいますように、あの失望した子供たちにかわってお願いしたいと思います。
  266. 委員長(館哲二君)(館哲二)

    委員長館哲二君) 厚生大臣お答えになりますか。
  267. 国務大臣(川崎秀二君)(川崎秀二)

    国務大臣(川崎秀二君) 高田さんの御質問がもっと時間があれば、十分にされると思いますけれども、私はそのことも含めまして御答弁申し上げたいと思っておったのです。といいまするのは、厚生、農林両当局の間におきまして、黄変米の処理について食い違いがあるかのような御質問もあるように承わったのでありますが、実は何ら食い違いがないのでありまして、結論的に申せば、農林大臣が配給をしないということになりますれば、われわれとしてはむしろ願ったりかなったりであります。そこでこの経緯をちょっと申し上げますと、二月の二十日でありまするか、黄変米処理につきましての、食品衛生上の取扱いについて、前の鶴見大臣のときに、食品衛生調査会というものに対して答申をしてほしい、研究を依頼しておりましたのが、答申をされたのが、いわゆる現在在庫しておるうちの、変色してないタイ国の黄変米については、一〇%以上ぬかの取れるような再搗精をすれば、ほとんど人体に影響がなくなるということも発表いたしまして、これを配給するかいなかということについては、農林省の権限でありまするから、この調査だけを農林省の方に事務当局としては通告をいたしたのであります。その際に新聞紙上に載りました印象からすると、いかにも二〇%以上のぬかの取れるような再搗精をすればよいのだから、配給を進めているような、まあ厚生省としての印象が新聞紙上に載っておりましたので、実は私はあの新聞記事を見て驚きまして、一体これは大臣にも知らせずに通知をしたのかということを申したのであります。すると、これは省内におきましては、こういうことの手続は今までは次官決裁でやっておったということでありますから、それはひどい、こういう政治的な問題を惹起しようとするような問題について、大臣の耳に入れないで発表するということはいかぬということを申しまして、極力事務当局を戒めますとともに、それに対しては、農林大臣に対し、翌日の閣議並びに閣僚懇談会の二回にわたりまして、あれは配給しない方がいいと思うけれども、これは大臣としての見解であって、事務当局としては、一応調査結果だけを移牒したということを言っておるのだから、その点は十分考えてくれということを申しました。その後、河野農林大臣は、私どもの意見も十分参酌しまして、大体配給を避けたいということの結論に落ちついたようでありました。そのままでは今日では配給しないということの結論がついたように、ただいま農林大臣帰りましたが、そこで私聞いたわけであります。私としての考え方は、野党時代にやはりこの問題は、あなた方と同じように提起をした本人の一人でありますので、なるべく配給をしないようにしてくれということは申しておった次第であります。ただ、事務当局が私の耳に入れなかったことは、非常に私としても不満でありましたけれども、学者の意見が、とにもかくにも反対者の意見の、一人だけ反対の方が入っておりますが、その方も、一応再搗精すれば無害だという結論になったという学者の意見は、当然厚生省から農林省へ通達してしかるべきだというのでありますから、その点は私も認めたわけでございます。いずれにいたしましても、人体に非常な影響を与えることの、国民の心証の悪いことを断行いたすことは、われわれとしても差し控えるべきである、かように考えておりますので、農林大臣が配給しないということならば、われわれとしては、これは衛生保護の立場に立っておる厚生省としては、この間の学者の結論いかんにかかわらず、農林大臣と同意見であることをこの際明白にいたしておきます。
  268. 高田なほ子君(高田なほ子)

    高田なほ子君 大へん満足な御答弁をいただいて、ありがとうございました。
  269. 国務大臣(一萬田尚登君)(一萬田尚登)

    国務大臣(一萬田尚登君) ちょっとお答えいたします。子供が、中学校の子供が三人、女と男が来まして、ラジオのお話ですが、憲法の今の話が出ましたが、これは子供が、憲法で義務教育は何でも無償で受けられるはずなんだが、教科書を無償でどうしてくれないか、憲法違反じゃないか、こういう質問であったので、そこで私は、月謝はこれはもう払わなくてもいいということは知っていましたですけれども、教科書まではさあなあ、私よくわからぬなあという話であったのでありますが、そういうことで、ただ私はそのときに感じましたのは、またあまり子供に、何でもかんでも無償で無償でということを教え込む傾向があるのじゃなかろうか。こうなると、生活費も一切持たなくてはならぬように、国が富めばけっこうだが、あまりそういうことを早く教え込むと、国の力が及ばぬから、子供にかえって不平の心が起る、こういうような気持がしまして、子供と話したわけで、決して愛情がないというわけではないことだけは断わっておきます。
  270. 国務大臣(松村謙三君)(松村謙三)

    国務大臣(松村謙三君) 私も重大な誤解があってはいけませんから、一言申し上げておきます。私は、負けいくさをしたからやむを得ないと申したのではございません。負けいくさから起ち上るのには、こうしなければならぬと申したのでございます。それだけ申し上げておきます。
  271. 湯山勇君(湯山勇)

    ○湯山勇君 私は今のことをどうこう申し上げるのじゃありませんけれども、とにかくラジオの印象からいえば、やはり大蔵大臣も文部大臣も、非常に冷淡であったという印象を受けたことは事実だと思います。ことに予算のこととか政治のことは、あまり関心を持たない方がいいというような印象を受けさしたと思うのですが、これは御承知通り、中学校教育は完成教育ですから、文部大臣承知通りです。やはりそういうことも正しい認識を与えてやることがいいことなので、政治のことにも、予算のことにも、関心を持つように仕向けるようにする方がいいと私は思うのです。そういう点は、幾らか、きのうの放送では両大臣とも非常に勘違いをしておったのじゃないかという印象を受けました。そういう点についての御留意をいただけばけっこうだと思います。
  272. 委員長(館哲二君)(館哲二)

    委員長館哲二君) なお質疑の方は四名残っていられるのでありますが、これは明日午前中に終了をしていただくことにいたしまして、今日はこの程度で散会いたします。   午後五時五十七分散会