○永岡光治君 私は
日本社会党を代表いたしまして、
昭和三十年度
暫定予算案に反対するものであります。
一月二十四日解散、二月二十七日総選挙、三月十八日
国会召集という特殊
事情から考えまするならば、できるだけ本
暫定予算案に賛成いたしたいのでありまするが、今回
政府の
提出いたしておりまするところの
暫定予算案は、基本的な点につきまして、多くの賛成することのできない欠陥を持っておりまするので、われわれはとうていこれを承認することができないのであります。すなわち
政府原案第一の欠陥は、目下
アメリカ側と折衝の途上にありまする
防衛分担金の削減が未決定でありますにもかかわらず、これを二十九年度
予算の三カ月分に相当するものをそのまま盛り込んでおる、こういうことであります。この問題は三十年度
予算編成に当っての最も重大なる問題でありまして、今次総選挙を通じまして、現
鳩山総理みずからが
国民に訴えて参りました、いうところの
日本の独立への悲願に重大なる支障を来たすものでありますと同時に、この
国民に対するところの訴えのゆえに政権を取ることのできました
鳩山内閣の政治的生命にも関する問題でもあるわけであります。すなわち現在におきましては、この
交渉の成否こそが、
日本が独立へ一歩前進するか、あるいは依然として
アメリカの支配に押えつけられるかという重大な政治的意義を持つものであると考えられるのであります。もとよりこの問題に関しましては、不平等
条約を改廃いたしまして、
日本の完全なる独立を達成する、こういう建前に立つところのわが党といたしましては、
防衛分担金につきましても根本的に反対の
立場に立っているのでありまするが、この
暫定予算案におきましては、そういう根本的な
立場からの論議はおくといたしまして、かりに安保
条約を認めておらるる保守党諸君の苦しい現在の
立場に立つといたしましても、なおかつ先ほど申し上げました理由からいたしまして、二十九年度
予算の三カ月分に相当するものを計上することは絶対に認められないと思うのであります。さらに
政府がたびたび発表いたしておりまする
通り、すでに米軍一個師団引き揚げで、
日本側分担金も百八十億は必要がなくなる、こう申しております。さらに特需ドル払いの減少傾向についてみまするならば、一昨年から昨年、そうして本年の見通しから推定いたしまして申し上げまするならば、米軍側の分担金ドル払いは、実に円貨に換算いたしまして三百億
程度も減少して行くのではないか、こう推定されるのであります。これと見合いまして、当然
日本側の分担金も百八十億はおろか、さらに大幅な削減ができるはずであります。かような根拠からいたしまして日米折衝が目下行われておりまするやさき、
暫定予算におきましていち早く過大な支出を認めることは、どう考えましても納得できないのみならず、愚の骨頂と言わなければならないと思うのであります。なおまた当座の費用といたしまして、
政府は繰り越し明許費を持っていて、今日までいかようにもやみの操作をいたして来たのでありまするから、今日このような重大な時期を控えまして、これを大胆に全額削減することがきわめて当然と考えられるわけであります。
第二に、
防衛庁費の計上につきましてでありますが、これにつきましても同様なことが言えるわけであります。目下行われておりまする日米
交渉は、
防衛分担金の削減と、
防衛庁費の増額とが相からみ合わされまして、論議されておることは、周知の事実でありまするが、これにつきましてわが党は、憲法に違反するところのやみの再軍備を認めておりません。従って基本的にこの費目につきましても否定的
立場に立つものであります。
次に重要なる各費目について申し上げますると、先ず第一に、生活保護費の問題でありまするが、これも
昭和二十九年度
予算の三カ月分を
政府がまじめに計上しようといたしまするならば、約九億五千七百万円の増額を必要とするのであります。すでに生活保護費は、打ち続く
吉田内閣の悪政により、生活困窮者の増加によりまして、現行でも赤字は増大の一途をたどっておるのでありまして、二カ月分だけでもこの
程度の増額はぜひとも必要な経費として計上しなければならないものであります。
次に社会保険費についてでありますが、今までの
吉田内閣のもとにありまして、社会保障
関係費は極端な圧迫を受けまして、すでに健康保険の赤字は重大なる社会問題と相なっております。
政府で当然国庫負担として支出しなければならない健康保険の赤字ですら、約四十億に達しておりますが、すでに事務当局では、来年度はその額は九十億に達することは必至と見ているようであります。従いまして
民主党内閣が真に社会保障を、せめて現行を維持しようといたしましても、九十億の月割の二カ月分を追加計上すべきは当然と言わなければならなのいであります。
第三に失業対策の問題でありますが、すでに一萬田蔵相初めといたしまして、
鳩山内閣の経済政策の基調は、頑迷なるデフレ政策の堅持にあることは重ねて強調されておるところでありますが、このデフレ政策の犠牲となって、失業者は急激に増加して参りましたし、今後もさらに増加して参るでありましょう。これは重大な社会問題でありまして、毎日々々の
新聞の三面記事をにぎわしております読むに忍びないほどの悲劇の源泉は実にここにあるのであります。しかるにこれに対する
予算措置はきわめてずさんきわまるものであります。
昭和二十九年度の
予算では、この
関係の経費といたしましては、わずかに十七万人の吸収事業費しか計上されておらなかったのであります。現在では完全失業者だけで百万人に上っていますが、
政府の発表によりましても完全失業者は約七十万人もいるのであります。でありまするから、完全雇用を
公約された
鳩山内閣といたしましては、現行の失業対策事業費の三倍から四倍の増額を私は当然なされなければならぬのであると思うのでありますが、この点の考慮を怠っておるのであります。さらに失業保険費も同様でありまして、
昭和二十九年度の受給実人員が四十九万四千人では見積り過小でありまして、三十年度はどうしましても六十万人以上に増加を見込むべきが至当と考えるのであります。
さらに第四に、義務教育費の国庫負担金についてでありまするが、
政府は児童数が七十七万人増加すると言っておりまするが、これによって生ずるところの必要な教職員の数は約二万人になるのでありまするが、この増員は見込んでおりません。現に多くの府県におきまして、受け持ちの先生のきまらぬ子供がたくさんあるのであります。新学年がこのような状態で発足することは大きな失策であり、不幸と言わなければなりません。当然
政府は義務的に、半額国庫負担の建前よりいたしまして、これに要する二カ月分の経費、すなわち十一億円を追加計上すべきであると思うのであります。
以上のように、
政府が当然義務として増額しなければならない諸経費の増額に伴いまして、地方自治体の財政負担もまた若干の増加を来たしますが、御承知の
通り自治庁の発表によりましても、目下地方自治体の財政におきまして、全国で約四百六十億田に上るところの赤字を生じております。従いましてこれ以上地方財政に負担をかけることは不可能と思われまするので、当面これらの経費増額は国庫よりの交付税交付金の増額によりまして補てんする以外にないと考えるものであります。さらにまた当面地方財政の赤字のうち、緊急を要するものの補てんも、国の行政事務の円滑なる運営を期する上から、当然のことでありまするが、これらについては何らの考慮を払われていないということはきわめて遺憾であります。
以上申し述べましたような理由をもちまして、われわれこの
昭和三十年度
暫定予算案に断固反対するものであります。(拍手)