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1955-03-29 第22回国会 参議院 予算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年三月二十九日(火曜日)    午前十時三十一分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     館  哲二君    理事           池田宇右衞門君            石原幹市郎君            西郷吉之助君            豊田 雅孝君            佐多 忠隆君            成瀬 幡治君            松澤 兼人君            堀木 鎌三君            木村禧八郎君    委員            秋山俊一郎君            雨森 常夫君            伊能 芳雄君            泉山 三六君            植竹 春彦君            小野 義夫君            木村 守江君            左藤 義詮君            佐藤清一郎君            吉田 萬次君            片柳 眞吉君            小林 政夫君            田村 文吉君            高木 正夫君            中山 福藏君            廣瀬 久忠君            溝口 三郎君            秋山 長造君            小林 孝平君            永岡 光治君            湯山  勇君            吉田 法晴君            曾祢  益君            田中  一君            永井純一郎君            石坂 豊一君            武藤 常介君            千田  正君   国務大臣    内閣総理大臣  鳩山 一郎君    法 務 大 臣 花村 四郎君    外 務 大 臣 重光  葵君    大 蔵 大 臣 一萬田尚登君    文 部 大 臣 松村 謙三君    厚 生 大 臣 川崎 秀二君    農 林 大 臣 河野 一郎君    通商産業大臣  石橋 湛山君    運 輸 大 臣 三木 武夫君    郵 政 大 臣 松田竹千代君    労 働 大 臣 西田 隆男君    建 設 大 臣 竹山祐太郎君    国 務 大 臣 大麻 唯男君   国 務 大 臣 大久保留次郎君    国 務 大 臣 川島正次郎君    国 務 大 臣 杉原 荒太君   政府委員    内閣官房長官  根本龍太郎君    内閣官房長官 松本 瀧藏君    内閣官房長官 田中 榮一君    法制局長官   林  修三君    法制局次長   高辻 正己君    自治政務次官  永田 亮一君    警察庁長官   齋藤  昇君    大蔵省主計局長 森永貞一郎君    大蔵省理財局長 阪田 泰二君    外務省条約局長 下田 武三君    経済審議庁次長 石原 周夫君   事務局側    常任委員会専門    員       野津高次郎君    常任委員会専門    員       長谷川喜作君    常任委員会専門    員       正木 千冬君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事辞任及び補欠選任の件 ○昭和三十年度一般会計暫定予算(内  閣提出衆議院送付) ○昭和三十年度特別会計暫定予算(内  閣提出衆議院送付) ○昭和三十年度政府関係機関暫定予算  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 館哲二

    委員長館哲二君) ただいまから委員会を開会いたします。  まず、理事辞任及び補欠互選についてお諮りいたしたいと存じます。昨日、吉田法晴君から理由を付して理事辞任の申し出がありました。これを許可することに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 館哲二

    委員長館哲二君) 御異議ないと認めます。さように決定いたします。  次に補欠ですが、理事補欠互選につきましては先例によりまして委員長において指名することに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 館哲二

    委員長館哲二君) 御異議ないと認めます。それでは私から成瀬幡治君を理事に指名いたします。   —————————————
  5. 館哲二

    委員長館哲二君) 質問に入りますが、その前に申し上げておきます。高碕国務大臣がエカフェの議長になられました関係上、本日、明日、明後日が議長の職をとられるために差しつかえがある、ただ、明日の午後五時半からは都合がつくということでありますので、高碕国務大臣に対する質問は明日の午後五時半から一括して行ないたいと思うのであります。そういうことに御了承いただきたいと思います。それではこれから三十年度暫定予算質疑に入ります。
  6. 湯山勇

    湯山勇君 昨日衆議院におきまして本予算案に対しまして付帯決議がなされたのでありますが、その付帯決議趣旨に従ってこの暫定予算補正予算を御提案になられるかどうか、これをまず承わっておきたいと思います。
  7. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) あの決議趣旨を体しまして十分善処いたすのでありますが、どういうふうにいたすか、まだ昨日のことではっきり私ここで申し上げかねますが、私といたしましては、できるだけ三十年度の予算に組み入れていきたい、こう考えておるのでありますが、まだ確定したというわけにも参らないのであります。
  8. 館哲二

    委員長館哲二君) 質疑に入ります。
  9. 左藤義詮

    左藤義詮君 このたびの総選挙民主党公認候補者はもちろん、総理初め、各閣僚が恐らく前古未曾有のさまざまな公約を乱発せられたのでありますが、さて第一党として組閣せられた今日、その公約を完全に果すだけの確信がおありになるかどうか、又地方選挙が迫っておりますが、二度と国民が失望することのないように、この暫定予算審議を通じまして、本予算関連をいたしまして政府の所信を明らかにしたいと思います。現在議題となっておりますのは、政策を含まない暫定予算だと申しますが、しかし三十年度の本予算と別個にこの暫定予算審議することは不可能でございます。そこで現在編成中の本予算の大綱を資料として要求いたしましたところ、三月二十五日付け昭和三十年度予算骨格に関する大蔵大臣構想、こういうはなはだ粗末なゲラ刷りの三枚ほどのものが提出せられました。しかもこれにはわざわざ本件は閣議決定を経ていないものであるということが備考に書いてございます。さような無責任なものではわれわれ審議ができないということを先に申し上げましたところ、大蔵大臣は、閣議決定ではないが、閣議了解、もう一度は了承という言葉をお使いになりましたが、了解または了承を得ておる、こういうお答えでございましたが、そうしますれば、これは閣議において、総理はもちろん、各閣僚全部がこれを了解了承しておられるのであるかどうか、まずこの点をお伺いしたいと思います。
  10. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 了承いたしております。
  11. 左藤義詮

    左藤義詮君 さよういたしますと、この大蔵大臣骨格構想によって現在公約を盛り込んで予算編成せられておると了承するのでありますが、新聞の伝えるところによりますと、二十六日の午前に民主党福田政調会の副会長が、党の総務会で、本予算については、二十八日までに各省予算をとりまとめて来月五日までに本予算を組む、しかもこの予算説明にあたっては、事前に一萬田蔵相と協議をして意見の一致をみているので、二十七日の首脳部会議にかけて、この取扱いを正式に決定する、かようなことをご報告になっておるようであります。しかもこのわれわれの重大な予算委員会には、その後の本予算の進んでおる状態については、この前のゲラ刷り三枚きりで一向御報告をいただいていないのであります。さよういたしますと、あの二十五日付けでいただいた以後の本日までの本予算進行状態、その内容一つ承りたい。
  12. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) むろん、民主党政調会と常に緊密な連絡をとっていることは申すまでもないことでありますが、しかし今福田君のお話として申されたことについては私は何も存じませんし、また事実そういうものは話合いを私自身は福田君としたこともありません。
  13. 左藤義詮

    左藤義詮君 これは新聞相当内容についても、減税あるいは住宅その他の問題を織り込むのだということで御報告になって、党の総務会でお話合いになっておる、しかも大蔵大臣と十分お話し合いした上で——こういうことになっておるが、事実御承知がない、この政党内閣として与党とそういうような食い違いがあっていいものであるかどうか。この福田政調会会長の御報告がうそなのであるか、あるいは大蔵大臣は御了承になっておるけれども、何かの理由でここで御説明できないのか。
  14. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) いや、私は毛頭違ったことは申したことはないのでありまして、事実そういうことはないのであります。むろん、しかし予算編成その他につきまして、お示しのように、政調会と常に緊密な連絡をとっておるということはありますが、何もそういう決定的なことについて、そうというふうにきめた話し合いをしたことはないのであります。
  15. 左藤義詮

    左藤義詮君 ただいま総理閣議において、この大蔵大臣構想了承した、従ってここにいらっしゃる各閣僚は全部この構想によって本予算編成することを御了承になったものと心得るのでありますが、さよういたしますと、各閣僚が今まで公約せられたことが果してこの大蔵大臣構想の中に盛り込めるものであるかどうかということを順次お尋ねをいたしていきたいと思うのであります。念を押しておきますが、各閣僚は全部閣議でこの大蔵大臣が三月二十五日御提出になった構想は御了承になっておる、そういうことを再確認いたしまして、その上でお尋ねをするのであります。あまり公約が多過ぎるので、どれからお尋ねしていいか迷うのでございますが、一番よくアッピールしたというか、宣伝をせられました四十二万戸の住宅建設でございますが、まあ人のいい国民はこれは全部鳩山内閣建ててもらえるようにというふうに、のどを鳴らして飛びついたのでございます。まあ事実結婚をしたくても家がない、六畳の狭い所に何家族がおる、非常に国民が切望しておる問題を上手にお取り上げになったのでございますが、ところが実際だんだん内容を伺ってみますると、これは全部政府がお建てになるのでなくて、相当の部分が民間建設に待つものだ、これですでに国民は大分失望したのでございます。民間建設意欲を促進するためには、どういうような手段をおとりになるのであるか、また四十二万戸のうちどれくらいの数を民間に御要求になっておられるか、それに対して本予算においてどれだけの政府裏づけをなさるのであるか、減税その他いろいろな処置があると思うのでありますが、その内容一つ建設大臣から詳細に伺いたい。
  16. 竹山祐太郎

    国務大臣竹山祐太郎君) お答えを申し上げます。四十二万戸の計画につきましては、いろいろ困難な問題に対して簡単な方法で参るとは考えておりません。従って従来とって参りました公営住宅制度、公庫の金融をはかって家を建て制度、これは従来通りやって参るつもりでありますが、そのほかにそれだけでは十分でないと考えまして、新たに公社の制度考えて参りたい。なお、開拓者住宅あるいは厚生年金住宅、その他政府のいろいろな機関でなし得るものをすべてやりますほかに、今お話民間での住宅は従来もやって参りましたが、これも期待をいたしておるわけであります。それに住宅の問題については、宅地の問題が大きな問題でありますから、これについていろいろの施策を考えて参りたい。それで四十二万戸をいろいろ合せて実施をいたして参りたい、この内訳の戸数、予算等は今大蔵大臣お話通り予算編成に進んでおりますので、数字的にはまだ申し上げかねることをお許しをいただきたいと存じます。
  17. 左藤義詮

    左藤義詮君 民間に要望するその数字さえもまだ発表できない、新聞等にはいろいろ放送しておられるようですが、責任のある国会ではお答えができない。そういたしますと、まあこれはやむを得ませんが、一般及び財政投融資を通じてお建てになる公営住宅、あるいは住宅金融公庫等に対する財政資金は、この方はどれくらい増額なさるのであるか、昨年二百八十億でございますが、これを四十二万戸になさるためにどれだけのお見込みをお待ちになっているか、四月十五日には本予算ができるということでありますが、いまだにその数字が固まらないようなことでは、はなはだ私ども心もとないと思うのでありますが、その点についてどのくらいのお見通しをお立てになっておられるのでありますか。これも先日の新聞に、二十三日の予算省議で、大蔵省では政府公約の四十二万戸のうち、民間自力建設で二十三万戸、財政資金に対するもので十九万戸 こういうふうに省議で検討したということでありますが、これはすでに二十三日のことでありますが、それから一週間もたちまして、今どの段階に進んでいるのであるか、その段階をもう少し親切にお示しを願いたいと思います。
  18. 竹山祐太郎

    国務大臣竹山祐太郎君) 検討をいたしておりますことは、大蔵省とわれわれの方と随時事務的な交渉をいたしておることは事実であります。しかし今聞し上げましたように、財政資金及予算処置民間資金、それらが総合されて四十二万戸の計画に相なるのでありますから、予算がきまりませんと財政資金の方もきまらないわけでありまして、この点はそう長いことお待ちを願わなくとも、近いうちにきまりますので、きまりましたら詳しく御説明申し上げたいと思いますので、お許しを頂きたいと思います。
  19. 左藤義詮

    左藤義詮君 近いうちとおっしやいますが、三十一日には暫定予算成立政府は要望しておられるといいますが、三十一日までにおきまりになって、その内容を、民主党の一番大きな公約でありますので、一日も早くわれわれは、暫定予算がすめば自然休会云々の声もございますので、地方選挙国民民主党のお手並を拝見いたしますためにも、三十一日までに民主党公約の第一号である四十二万戸の詳細な内容大蔵省と十分財政的な裏づけをして、私どもに御説明ができるかどうか、それとも暫定予算だけはほおかぶりで通してくれというわけで、あとは地方選挙にあまり響かないようにゆっくりおやりになるのか、これは政治的な問題でございますから、責任をもって、すでに二十三日から大蔵省と御相談になっており、建設省はお話し合いになっておられるようでありますから、それが一週間たってもきまらないとすれば、そういたしますと、十五日に予算提出と申しますれば非常に私どもは時間的に無理があると思うのでありまして、これは三十一日までに、暫定予算審議しておる範囲内において、是非はっきりこの重大な項目の内容を財政的な十分な大蔵省話し合いをつけて御説明頂けるかどうか。
  20. 竹山祐太郎

    国務大臣竹山祐太郎君) われわれとしては一日も早く申し上げたいことは山々でありますが、住宅政策だけ取りきめるというわけにも、予算編成上いたしかねると考えますので、大蔵省十分連絡をとりまして、できる限り早い機会に申し上げたいと考えております。
  21. 左藤義詮

    左藤義詮君 どうも三十一日までにはお示しになることができないようでありますが、はなはだ遺憾でございまして、そうしてまた選挙には大鼓を叩いてどんどん裏づけのないことを御宣伝になる、また例の常套手段だと、かように私ども考えるほかないのでありまして、もしそうでなければ三十一日までに是非示しを願いたいと思うのであります。  大蔵大臣にお伺いいたしますが、四月の十五日に本予算を御提出になる、しかしただいまの住宅問題を一つとりましても、ことに最も大事な防衛分担金問題等の経過から考えましても、私どもはどうもこれは五月一ぱいで本予算成立はむずかしいのじやないか、十五日に御提出になりましても、衆議院は大体一カ月、私どもの従来の例でも参議院では本予算は一カ月は審議を要しておるのでありまして、ことにこういうたくさん公約を盛り込んだ重大な予算でございますので、私どもはどうしても時間的に見ましても六月の暫定予算ということも必至だと思うのでありますが、これについてどうお考えになっておりますか。
  22. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 今私は六月の暫定予算は出さない、是非とも皆さん方の御協力を得まして、五月で本予算成立するように、そのためにも予算提出を極力早くいたすようにあらゆる協力を払っているのであります。
  23. 左藤義詮

    左藤義詮君 不可能なことを法王の力でなさるようなお話でございますが、それではこの五月一ぱいで、必ず政府は、少数与党を持った政府責任をもって六月の暫定予算を出さない。もし五月一ばいに本予算成立しないことがあるならば、これに対しては、はっきり内閣として、特に大蔵大臣として、その責任をお負いになるのであるかどうか。
  24. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 皆様方ほんとう——誰が考えても暫定予算を出さないことが国のためにいいことは申すまでもないのであります。ですから、皆さん方ほんとうにお力添え下さいまして、五月に本予算が上ったということになりますれば、これはもう六月の暫定予算を出す必要がないのでありまして、このことは、一に国会審議の状況にかかると私は考える次第でございます。
  25. 左藤義詮

    左藤義詮君 はなはだ私の質問お答えになっていないので非常にあなたが誠意をもって努力なさることはもちろんでございますが、それでもなお絶対に六月の暫定予算を出さないか、もし五月一ぱいで本予算成立しなかったら、はっきり大蔵大臣責任を負うという意味でございますか。
  26. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 私はただいまのところ五月に、ぜひとも本予算成立を五月一ぱいにするという、これ以上今日申し上げることはできません。
  27. 左藤義詮

    左藤義詮君 これは国会政府との重大な問題でございまして、私どもはどうしてもこれは現在の政府進行状態では、五月一ぱいは困難だと思っているのですが、それを大蔵大臣誠意でやるとおっしゃいますが、それが誠意でもし通らなかったときには、やはり、政治家としてその責任をお負いになるべきであって、もしそうでなければ、場合によっては六月の暫定予算も、努力国会にお願いはするけれども、できないときにはやむを得んと、こういうことであるか。絶対に六月暫定予算は出さない。もしこれが六月暫定予算ということに追い込まれれば、自分ははっきり大蔵大臣として責任をとるつもりだというところまで決意なさっているのか。その誠意には決意の裏づけがなければならないと私は思います。その点はっきりと御言明を願いたい。
  28. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 大へんたびたび同じことを繰り返すようになって恐縮いたすのでありますが、ただいま私が御答弁申し上げ得ることは、先ほど申し上げた以上に出ないのであります。
  29. 左藤義詮

    左藤義詮君 どうも黙秘権を行使なさるようですからこれ以上はやむを得ませんが、私どもはおそらく六月の暫定予算は必至だと思っていますが、そうしますれば、ただいまの住宅問題にかえりますが、四十二万戸を、国民は本年度間に現実に四十二万戸の家が建つという政府公約を受け取っているのでございますが、かりに大蔵大臣誠意が通じまして、六月暫定でなくても、すでに二カ月は空費してしまっている。私の予想のごとく、六月暫定になりますれば、本予算がいよいよ通過して、この住宅問題に取り組むのは第二・四半期以後になってしまう。少くとも二カ月、私ども予想では三カ月はこの住宅問題については全く空費してしまう。それまで問題の寿命がもつかどうかも問題でありましょうが、残り九カ月、あるいは十カ月で果して四十二万戸が現実建設できるのかどうか。たとえば、公営住宅の問題でいいますれば、これが予算できまりまして、この財政資金地方自治体にお流しになって、その各巨体でこれを計画し、審議し、議決して、着工するまでにどれくらいかかるとお考えになっているのであるか。特にこれは補助金でありますれば、各地方自治体においての予算の問題がある。これに対する公債発行の問題がある。しかも、役所のセクショナリズムと申しますか、なかなかこういう手続が、はんこばかり押していまして、進んでいないことは御承知通りでございますが、住宅金融公庫に金をお流しになりましても、相当これは私は見通をつけて準備をしてやらなければならぬのに、二カ月、三カ月を空費して、さて、第二・四半期以後になって資金をお流しになりましても、さてこれを計画し、一般から公募し、これを審査して、いよいよ資金を出し、流して着工するまでにどれくらいかかるとお思いになっておるのでございますか。十分これは私どもは経験をいたしましたが、住宅金融公庫というのは、役人以上のいろいろな煩瑣な、保証人がどうとか、手続がどうとか、審査なんかに随分手間がかかっておりまして、事実上は半年も一年もかかっている。そうしますれば、たださえあれほど火のつくように公約せられてて、国民がもう焦眉の急で待っておるものが、こういうような私は緩慢な状態で果してできるものかどうか。大蔵大臣は日銀総表として金を借りに来る、頭を下げて来る人に会って、紙幣さえ回してやれば何でもできるとお考えになるかもしれませんが、紙幣をいくら積んでもその下に住むことはできないのでありまして、たとえば敷地の問題をどうするか、これにはいろいろ私は法律的な裏づけとか、困難な問題がたくさんあると思います。資材はどういうふうに計画されるのであるか。今伺って、まだ民営公営との割り振りさえもきまっていないというので、実に驚いたのでありますが、その実際の計画を、せっかく四十二万戸国民は本年からできると信じて待っているのでありますから、どういうふうにこれを計画して、どういうふうに実施なさるのか。ただ私は予算をきめて、金さえ出せばいいということでなしに、もっと親切に、現実国民が、この住宅に困っている者がすぐ四十二万戸に住めるようにするにはどういう一体信念をお持ちになっているのでありますか、これは一つ私は大蔵大臣にも、建設大臣にももっと御親切に国民の納得のいく、ほんとうに今のどから手を出して待っている国民に得心のいくように一つ説明願いたい。
  30. 竹山祐太郎

    国務大臣竹山祐太郎君) まことにごもっとものお話で、この仕事が決して容易な仕事であるとは考えておりません。しかし、国会の御決定を得る前にわれわれが具体的に進めるわけにもいきませんが、しかし準備といたしましては、建設省が中心になりまして、これは内閣全体の政策と心得ておりますので、各省のすべて関係のある方面との一体的な活動をすでに対策本部を作りまして着々と準備は進めております。今お話のありました資材の一部でありますが、北海道の風倒木を、農林省の林野庁長官もメンバーに入ってもらいまして、その輸送の計画も進めております。また土地の問題につきましても、先般一部の問題ではありますが、東京都内におきます緑地を五百万坪首都建設委員会の議を経まして宅地に開放する決定もいたしておるようなわけで、予算関連をもちません分につきましては、着々と準備は進めておりますので、お話通り、まことに時期の限られた間に四十二万戸の建設が容易であるとは考えておりませんけれども誠心誠意全力をあげてこの計画の実行はぜひともやり抜きたいと考えて、その準備を進めておるような次第であります。
  31. 左藤義詮

    左藤義詮君 非常な努力をしているようなお話でございますが、そうすると、現実昭和三十年度の終りには四十二万戸の住宅が、庶民がその屋根の下に住めるように現実にでき上る、こういう確信をお持ちになっているかどうか。対策本部はそういう計画をお立てになっているのであるかどうか。
  32. 竹山祐太郎

    国務大臣竹山祐太郎君) もちろんその目標で努力をいたしておるつもりであります。
  33. 左藤義詮

    左藤義詮君 私どもは、よほどこの内閣不可能事を可能とするようなことばかりおっしゃるのでありますが、私どもはどう考えましても、第二・四半期以後わずか九カ月、十カ月の間に四十二万戸、民営につきましてもずいぶん家主というものは長い間しいたげられて来ておるのでありますが、これを刺激してどんどん民営住宅ができるように一体どうしておやりになるのであるか。その法律的な、また経済的な裏づけ、それから只今申しましたような非常にセクショナリズムである各自治体や、あるいは住宅金融公庫その他公社をお作りになっても、私は公社をお作りになるそのこと自身についても、人事そのものについてもいろいろ問題があると思うのでありますが、そういうようなことをどういうふうにして克服しておやりになるのか。ただ北海道の風に倒れている木を今取っているとか、五百万坪大体話がついたとかいうことでなしに、私はもっとこれを現実に、この本年度内に完成する実施計画、その実施計画を見て私どもはこれに対する予算審議をいたすのでありますから、国会がきめないうちは発表できないできないとおっしゃらないで、国会がこれを審議するにも、なるほどこういうふうにわれわれが苦しい中から予算に協賛すれば四十二万戸現実にできるのだなと、国民が期待しておるのができるのだなということで、私どもは初めてこの予算に御協力ができるのでありまして、これをペーパー・プランでなしに、ペーパー・プランさえもお示しになっておらないのでありますが、そういう不親切なことでなしに、もう少し、四十二万戸という民主党の第一の公約でありますので、この際実施計画をお示しいただきたい。
  34. 竹山祐太郎

    国務大臣竹山祐太郎君) 決して計画をいたしておらんわけではありませんけれども、その基礎になりますものは予算でありますので、その予算数字的な基礎の上に立った御説明をいたさなければ、また問題が二度ぐるぐる回りになると思いますので、どうか予算決定をいたしました際に、われわれがいろいろ考えております構想を申し上げることに一つお許しをいただきたいと思います。
  35. 左藤義詮

    左藤義詮君 暫定予算審議するのにはやはり本予算との関連をはっきりしなければならないとこう申し上げて、大蔵大臣からこの構想をお示しになったのでありますが、その構想を私どもはもとにして、その構想を御了承になった建設大臣お尋ねしておるのであって、予算決定がしなければ実施計画が示せないということははなはだ不親切でございまして、計画があって、それに対する予算を御要求になるはずなのであります。どれだけの予算を、少くともここにもあるように大蔵省でも審議しているのですから、建設省としては省議で御決定になっているはずであって、それをなぜ国会でお隠しになるのか。堂々とお示しになって、あの民主党の重大な公約でありますから、ここまで努力しておると、国民とともに、われわれ国会とともに大蔵省にも要求をし、そういう世論を引き起して、この重大な問題を達成なさるべきはずであつて、なぜそんなに秘密になさるのであるか。
  36. 竹山祐太郎

    国務大臣竹山祐太郎君) 構想と申しますと、先ほど申し上げましたように、公営住宅制度につきましては従来の線を進めて参ります。その戸数等は予算によって決定をいたします。それから公庫の金融の制度につきましては、今お話のように、従来のいろいろ事務的な不十分な点等は極力改めて参りたいということはもちろんでありますが、原則的な筋道は従来の制度であります。なおこのやり方等についていろいろ改める点は、申し上げれば大変たくさんあろうかと思います。それから公社の制度につきましては、これは予算数字によって内容は変って参りますが、ねらいといたしましては、一つ宅地の造成でありますね。これらが難関の大きな問題でありますから、この宅地の造成を公社の手で直接やって参ることを一つのねらいといたしております。それからもう一つのねらいは、御承知のように、従来公営住宅等が行政機関がこれに当っております関係上、例をあげればこの首都における住宅建設が、都内だけでは十分でありませんので、隣接の千葉、埼玉、神奈川等へいわゆる衛星都市等の構想で拡げて参る場合におきまして、それぞれの県にこれをお願いをするということは、東京都民の住宅でありますのでなかなか思うように進みません。そういう関係から、この行政区域を越えた衛星都市の建設というような構想を進めますためには、どうしてもこの公社の制度をもってやることが一番よろしいと考えて、そのことを考えておるわけであります。なお、公社には今までの二つの建前でやっております公営及び公庫の制度で不十分と考えられるいろいろな新らしい構想をこれからもどんどん盛り込んでいくつもりでありますので、すべてが画一的な機械的な制度考えておりません。そのほか農林省関係の開拓地における住宅建設厚生年金等の諸制度、それから民間のいわゆる建設につきましては、金融措置等についてできるだけの対策を講じて参りたい。それから宅地の問題につきましては、今申し上げましたように、衛星都市として集団的な宅地の造成、また都内におきましてはなかなか新らしい宅地を多く求めることも決して無制限にはいきませんから、高層建築、アパートに相当のウエイトをおいて参りたいと考えますが、全体的に申しますれば、地方においては低家賃の家の要求もいたしておりますから、その割合はそれぞれの地方の実情に応じたように組み立てて参りたいと考えております。なお、宅地の問題につきましては、今申した緑地の問題のほかには、農地との関係等につきましても今事務的に話し合いを進めて、円滑に処理ができるようにいたして参りたい、かように考えておりますのが、大体の今日の構想でございます。
  37. 左藤義詮

    左藤義詮君 ここは予算委員会でございまして、建設委員会ではございませんので、私はさような抽象的なことを伺つておるのではありません。予算との関連においてこれを現実に三十年度に四十二万戸完成する、その実施計画を伺つておるのでありますが、一向数字一つもお示しにならない。残念ながら私どもは、今のところでは全然政府としては数字的な現実の見通しは立っていないということで、この質問を保留せざるを得ないのでありますが、ただ一つ最後に、それではいろいろこれから私ども考えますように第一・四半期を空費して、そして本予算でどういうものをお出しになるか、いずれにしても本年度内に四十二万戸は必ず完成して公約をお果しになる、現実に四十二万戸必ず本年度内には完成をしてみせると、こういう確信をお持ちになっておるかどうかであります。もしそれが昭和三十一年三月末になって四十二万戸ができていないときは、公約違反である、責任を大臣もお持ちになる、そういうお約束ができるかどうか、十分内容を私ども示していただきたい、実施計画をお示し願いたいと思うのですが、お示しになりませんから、最後の結論だけお伺いしておきますが、必ず三十一年三月末には国民の前に四十二万戸完成してみせる確信か承るかどうか。もしそれができない場合には、それは公約を破ったことになるので、国民の前に陳謝するなり、国民に対して十分な責任をおとりになるかどうか、その最後の結論を承わつておきたい。
  38. 竹山祐太郎

    国務大臣竹山祐太郎君) もちろんその目標のもとに努力いたして参るつもりであります。(「責任をとるかとらんかを言っておるんじゃないか、そんなこと誰だって努力するのだ」と呼ぶ者あり)
  39. 左藤義詮

    左藤義詮君 運輸大臣その他の閣僚にも伺いますが、私ども長い間与党でございまして、鉄道の新線の問題にはずいぶん各地から要求がありましたが、一兆円予算の中で非常に困難でございますので、ずいぶん苦しい思いをいたして来たのでございます。ところが初めて内閣をおとりになったので、その事情を御承知ないのか、今度の総選挙には至るところで新線のお約束を運輸大臣はじめ各地でぶっていらっしゃったのでありますが、これに対して一兆円予算の中でどのくらい今度新線の予算をお出しになるのですか、その点を一つ大蔵大臣から伺っておきたい。
  40. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 大変恐縮ですが、今騒がしくてちょっと質問を聞きにくかったのでありますが……。
  41. 左藤義詮

    左藤義詮君 鉄道の新線を各閣僚、各候補者、民主党をあげて非常に各地で国民に甘い約束をしていらっしゃるのですが、この鉄道の新線計画に対して……。
  42. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 何の計画ですか。
  43. 左藤義詮

    左藤義詮君 鉄道の新しい線を作る新線計画、あるいは新線計画があって、中止しておったのをこれる予算の中に盛り込んで実行するということについての非常なたくさんのお約束をしていらっしゃるのですが、大蔵大臣承知であるかどうか。そのしりぬぐいをどうなさるつもりであるか。
  44. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) そのことについてはただいま予算といたしましては審議中であるので、計画自体については当局からお聞きを願うことにいたします。
  45. 左藤義詮

    左藤義詮君 運輸大臣に。
  46. 館哲二

    委員長館哲二君) 運輸大臣は今すぐ参るそうでありますが。
  47. 左藤義詮

    左藤義詮君 保留しましょう。
  48. 館哲二

    委員長館哲二君) 保留して次の質問に移っていただきます。
  49. 左藤義詮

    左藤義詮君 非常に質問はたくさんあるのに、時間が十分でないのですが、次に文部省関係で伺います。これは文部大臣がかわられましたが、しかし内閣としては私は一貫した責任をお持ちになっていると思うのでありますが、文部大臣がたとえば教科書の無償配給あるいは私学予算については十五億ということをはっきり記者会見その他において公約をせられて、今度の選挙にも非常にこれを振り回しておられるのでありますが、これを今度の予算においてはどういうふうな折衝をしておられるのか、また現文部大臣になりましてからこの二十七日ですか、学術振興費は二十九年度予算が百億ほどですが、倍額以上を今度要求しておる。それから科学研究費の拡充は二十九年度の八十五億円を百億以上増すのだ。社会教育の振興についても、これも非常に増額するのだ。こういうようなことをお話になっているのでありますが、これも大蔵大臣のさっきのこの薄っぺらな構想を拝見いたしますと、一向それが出ていないのですが、大蔵大臣はこの構想は各閣僚了解を得たと言っておられるのでありますが、文部大臣も了解しておられるのであるかどうか。もしこれを了解して構想を練っておるとすると、三月二十五日に大蔵大臣が出されて、そして翌日の記者会見で文部大臣が言うておることは、全くこれはから証文ということになるのですが、この間の関係はどうなっておるのですか。文部予算の見通しについて、大蔵大臣並びに文部大臣につじつまの合うような御説明を願いたいと思います。
  50. 松村謙三

    国務大臣(松村謙三君) 前任大臣のお話のことが出ましたが、教科書の無償配付につきましては、これは暫定予算に計上することはできませんでした。すなわちこの四月の学期初めに間に合うことはできませんでした。これはすでに前任大臣がそのできないことを声明いたしておりまして、そういう経過になっておることを御了承願いたいと思います。それから私学振興のことに当りましては、これはぜひその目的を達成する予算を得たいと思うて、ただいま努力中でございます。その他のたとえば老朽校舎も早く、できれば四年間くらいに直しませんと(笑声)大へんなことになりますので、そういう予算努力、あるいは科学振興等のことについては、極力一つ予算を得てその実をあげたいと、ただいま努力をいたしておるところでございます。そこに大蔵大臣の文教の方面に対する構想も配付になっておりますが、その意味は相当に広いものと私どもは解釈いたしておるわけでございます。
  51. 左藤義詮

    左藤義詮君 この大蔵大臣構想には、ただいまお話の大部分が載っておりません。ただ児童、生徒数の増加に対応して国庫負担金を増額するということだけでございますが、そうすると、松村文相は非常に閣内に重要な力をお持ちになっておるので、閣議大蔵大臣了承を得たと言われるこの構想以上に、私学振興の費用とかあるいは給食の費用とか、今お話になった老朽校舎の問題、科学振興の非常に思いきった画期的な増額ということに対しては、十分確信をもって本予算に、私どもが今度拝見するときにお出しになる、こういう確信がおありになるかどうか。これに対して大蔵大臣のまたそれらに対する御意見を一つ。すでに文部省といろいろ折衝中と伺っておりますので、私の伺っているところでは、私学振興予算のごとき大蔵省は一文もまだ了解しておられないので、非常に私学関係のことについては心配しておるのであります。そういうわけで私学振興十五億ということを掲げて選挙をなさったのでございますから、早く安心させるように、その点に対してどこまで大蔵省裏づけしておられるか。その間における両大臣のお見通しを一つ伺いたい。
  52. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 私はやはり特に新しい日本というものの行き方としても、教育あるいはまた日本の今日の経済上の当面しておる問題から見ても、科学の振興、こういうことは財政の許す限りにおいてはやはり私は取り上げてゆくべき基本的なものだろう、そういう点がものの根本がどうも今まで政策的に取り上げられぬきらいがあったのじっないかという感じを持っておることは事実であります。従いましてもし財政が許す限りにおきましては、こういう方面については私は最善を尽してゆきたい、これが私の今日の考えでありますが、しかし御承知のように財政の本当にこれは苦しい先ほども一兆円ということはいかに困難であるかということをお説きになりましたが、その通りであります。従いまして私学は制約を自然その面から受けるということだけは、一つこれは常識で考えてもわかることですから、御了承を願いたいと思います。
  53. 左藤義詮

    左藤義詮君 私学予算はどうですか、私学振興の予算の問題です。
  54. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) これは全体について今考えておるので、まあ私学ということにもまたいろいろとこれは考えなくちゃならぬものがある。(笑声)単に財政だけでもゆきませんでして、これは……。(「聞えないよ」と呼ぶ者あり)
  55. 左藤義詮

    左藤義詮君 文部大臣は、前大臣以来私学の問題、ただいまの科学振興等についても非常な熱意を持ち、閣内において非常な重要な地位を持って、これを推進されておるように私ども国民了解しておるのですが、大蔵大臣とちっとも話がついてやしない。ただいま大蔵大臣のああいう態度で、先ほど文部大臣がここでおっしゃったような目標を達し得るのであるかどうか。まるで常識でわかる、常識でわかるとおっしゃいますが、あえてこの困難な一兆円予算で、民主党のあの選挙に対する公約を十分御承知の上で、大蔵大臣御就任になったのでございまして、はなはだ私は無責任なしかもあいまいな御答弁だと思う。文部大臣はこれに対してどういうふうに今後予算の折衝をなさるのであるか、もっとはっきりした文部大臣の確信のあるところの、特に教育の問題は一番重要で、科学振興等も非常にみんなが期待している。私学の問題もこれは民主党公約でございますが、これをどの程度まで御実現になるのか。この点だけはやるのだ、もしやれなければ職を賭してもやるのだという確信を持たなければ、ただ大蔵大臣ゲラ刷りのこういう構想を皆了承してしまって、大蔵大臣の前に皆無条件降伏してしまっているというようなことでは、私は意味がないと思うのでありまして、その点文部大臣としてはっきり、ただいま大蔵大臣の非常なあいまいもこたる御答弁に対して、文部省としてはぜひ責任をもってこれだけはやるのだという一つ限界をお示し願いたい。
  56. 松村謙三

    国務大臣(松村謙三君) ただいま申し上げました通りに、私学振興、科学の振興ということにはぜひ努力をいたしたいと考えておりますことは、すでに大蔵大臣の御意見の中にも書いてあります通りに、その他文教についての施策について重点的にやると、こう書いてあります。私どもはそういう意味合において大蔵大臣のお考えとわれわれの考えと違いはないと思っているわけであります。ただこういう緊縮を要するときでありますから、最小の費用で最大の効果をあげるということをお互いに考えなくちゃならぬことは当然でありますけれども、できるだけ所期の目的を達する予算を得たいと考えております。
  57. 左藤義詮

    左藤義詮君 文部大臣だけは閣内におする位置から申しましても、御経歴、御人格から申しましても、もう少し私は確信をもって予算の折衝をなさると思ったのでありますが、非常に私ども失望いたします。教科書無償配給はすでに消えましたが、その他一つ一つ公約を追及していきますると皆影が薄くなっていく、皆だんだんと消えていってしまう、これが私はこの内閣の実態であるというように認識せざるを得ないのでございまして、はなはだ今の御答弁私遺憾であります。  その他時間がございませんので……。いろいろな公約をお並べになりました。これがどういうふうに実際具体化しているか、たとえば競馬、競輪を休日以外は禁止する、これは非常にいいことでございまして、私ども競馬、競輪ということは一日も早くやめたい。しかしながら地方財政が非常に窮乏しておるのでやむを得ざる処置として涙をもってこれを今まで見のがして来た、それをただいま思い切っておやりになるというので、非常に期待したのでありますが、これも選挙宣伝で、何かこの頃聞きますると、三日にするとか四日にするとか、それも一番弊害の大きい大都市を中心にして四日間にするとか、三日にすれば月曜が入るか、土曜が入るか、休日ではないはずであります。私どもの常識では休日と申しますと日曜、祭日だけだと思うのであります。もうすでにそういうこともくずれて来てしまっている。公邸の廃止ということも小さいことでございますけれども、非常に国民にはアッピールしたのでございますが、これもどのくらい、今まで四カ月もかかっておやりになったのか、一方では公邸を廃止して、一方では会議等に使って、非常なむだがあるのではないか、これも差引きいたしまして、どれくらいの額になっておるか。護衛廃止の問題にいたしましても、あるいはマージャンやゴルフを業者と一緒にしないように。私ども承知しておる限りではちっとも変っておりません。ずいぶん裏でやっておるのであります。もし私どもその実態を申し上げましたら、これに対して政府は断固そういう、たとえ局長であろうと次官であろうと、これに対して政府公約通りこれを処分していくだけの確信をお持ちになっておるか。選挙の前にはああして風船を上げておいて、いつの間にか皆ああいうふうに消えていってしまう。これも一つ大蔵大臣にお伺いしておきますが、公邸を廃止して、護衛を廃止して、今日までどれくらいの節約の実をあげておられるか、その実態、数字等についても、御答弁の時間は質問の制約の時間に入りませんのでゆっくりでけっこうですから、具体的に一つ小さいことのようでありますけれども国民には非常に、今すぐにも日本の国が何もかもよくなるような印象を与えた。ここに官房長官もいらっしゃいますが、どんな構想をなさって、またその四カ月間の決算を一つ示し願いたい。
  58. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) ただいまの護衛等を廃止した経費の節約、これは私今わかりませんが、この狙いは私の考えではむろん経費の節約もありましょうが、それはそれほどない、しかし、いやしくも一国の政治をとるものが常に護衛を付けて歩かないといかんという、そこのあり方の問題において、私は非常に異議がある、そこが狙いである、これは私はあえて経費の節約のために護衛を廃する、そういう考え方は、むろんそれもいいでしょう、結果としてそういうこともありましようが、それは私考えておりません。
  59. 左藤義詮

    左藤義詮君 公邸は。(「公邸の問題は」「大臣の官邸」、「委員長注意しなさい」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
  60. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 私耳が悪いものですから大へん失礼いたしました。  公邸はむろん同じような趣旨から廃止したのでありますが、(「廃止してないじやないか」と呼ぶ者あり)しかし公邸のうちには非常に国有財産があるのであります。ですからしさいにやはり聞いてみると、大臣でも家のない人もずいぶんおりますし、それから雨戸をあけたりしてお掃除はしておりますが、使用しないというものもある。それで必要最小限度のものについてはみんなで共同にしたほうがよかろうというふうにいたしましたわけであります。これは別にいろいろの考えはありましょうが、こういう点はやはり一つの先べんなんであります。一ぺんはぽんとやめないといけないのでありますからやったのでありますが、今度やめて、そうしてまたやむを得ないものはやるというわけでありまして、いろいろ御議論もありますが、まあ私はいいことだろうと思うので、ごかんべんを願いたいと思います。
  61. 左藤義詮

    左藤義詮君 私は議論をしておるのではないので、実際を伺っているのですが、大蔵大臣は何も御存じない。一つこの問題を最初打ち出された官房長官にどういう御趣旨であって、どれだけ整理せられて、どれだけ節約になっておるか。あのとき公邸というものは全部やめるような印象を国民に与えられましたが、こういうふうに印象を受けた国民のほうがばかなんで、あなた方はだますつもりではなかったが、だまされた国民のほうがばかであったのか、どういうわけですか。
  62. 根本龍太郎

    政府委員根本龍太郎君) お答えいたします。公邸はすでに廃止しております。
  63. 左藤義詮

    左藤義詮君 全部。
  64. 根本龍太郎

    政府委員根本龍太郎君) 全部公邸は廃止しておりまして、ただ官庁におきまして庁内において会議をする場合において手ぜまのために困る場合がありますので、(「従来だってやっているじやないか」と呼ぶ者あり)これは四つに整理いたしまして、共同の会議所を設けておることは事実であります。公邸は全部廃止しておる次第でございます。なお、目黒の公邸はこれは借り上げておりましたので、これは全部返しまして、その経費は浮いておるのでございます。まだこれは計算はいたしておりませんが、月大体目黒の公邸だけで約五十万円程度かかっておったものでありますから、これは全部使っておりません。
  65. 左藤義詮

    左藤義詮君 時間がないのでこんなことにこだわりたくないのでありますけれども、どうも政府の答弁がはなはだあいまいでございまして、私が尋ねておるのはどれだけ経費が節約になったか、今公邸は、各省会議には使っておるものは公邸ではないとおっしゃいますが、従来の公邸というものも大臣が実際住むようなものは、むしろ清貧な大臣で本当に住宅を持たない人が住んでいたのであって、大部分各省のそういう用事に使っておったのでありまして、四つ残すのは例外だ、国民に全部やめるといったのは少し宣伝をし過ぎたのであって、実情はこれだけだということをはっきりなさらなければならない。ただ名前が変ったから、公邸という名前をやめたけれども、実際同じことをやっているのじゃないか、こういう頭隠してしりを隠さぬような国民をだますようなことばかりやっていらっしゃると、国民はこの内閣公約というものはいかに薄っぺらなものであるか、その場限りのものであるか、私は今日だんだんお尋ねをして一つも納得ができないのです。もう少し官房長官、これは一番責任者ですから、今目黒の公邸の金額だけおっしゃいましたが、そのかわり帝国ホテルその他をお使いになつて、会議等において今までいわゆる公邸でやつたことをどんどんほかでやっていらっしゃる。そういうものを差し引かれまして、どれくらい節約になっておるか、どれくらい予算の上にそれが現われているか、それをはつきり一つ示しいただきたい。
  66. 根本龍太郎

    政府委員根本龍太郎君) まだこれは計算はいたしておりませんが、いずれ調査の上報告申し上げたいと存じます。公邸については従来多いところは各省三つくらいあったところもございます。従って総計しますというと約十七、八ございました。それを公邸は全部廃止いたしましたが、共同の会議所として四つを保留しているだけでございまして、あとは全部廃止する。そして国有財産についてはこの処分方を大蔵省で検討し、また民間から借り上げたものについては全部これはお返ししておる、こういう状況でございます。
  67. 左藤義詮

    左藤義詮君 数字等について、あれだけ宣伝しながら、どれだけ節約できたというようなことを国民にお示しなれない。とにかく宣伝するときは熱心だけれども、ちっとも跡始末しておらない。今四つというお話でございましたが、それ以外に公邸という名前でなくて、各省の別館その他の名前で使っておるものがたくさんあると思う。そういう点御答弁がはなはだあいまいだと思うのですが、時間がございませんから……。  競馬、競輪の問題でありますが、平日は全部中止するというお話でございましたが、何か最近では平日もおやりになるような御計画のようです。これもやはり国民えの公約と違いますので、どういうふうになっているのか、これも農林大臣に一つはっきりお示し願いたい。
  68. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) お答え申し上げます。競馬につきましては、農林省所管の分につきましては決定、直ちに平日開催を中止いたしまして、土曜、日曜、祭日に変更いたしました。地方で開催いたしておる分につきましては、行政指導によってこれを実行することに当時決定いたしているのでございまして、この四月が切りかえということになっておりますので、鋭意行政指導をいたしたのでございまするが、お話通り地方の財政事情等もありまして、その他また施設等の関係からいたしまして、政府の所期の目的通り今直ちに実行できない節もございます。しかしながら、われわれといたしましては、可能な限りにおいて実現するように努力中であります。お話通りだんだん折衝の結果、できるところは土曜、日曜、祭日、それに一日、金曜かまたは月曜日を加えて、その日は午後だけにしてほしいというような地方団体等の要望もございますので、これらと十分折衝いたしまして、順次政府了解事項の通りに所期の目的を達するように指導しておる次第でございます。お答え申し上げます。
  69. 左藤義詮

    左藤義詮君 これも発表以来四カ月になって、だんだんこれからということである。しかもそれは次第に影が薄くなっている。平日以外もだんだん午後とか金曜日とかいろいろなことをお認めになっておる。これもはなはだ羊頭を掲げて狗肉を売るの類であったというふうに了解をいたしておりますが、こういうような競馬、競輪等を必要悪といいますか、やむを得ず、地方財政が窮乏しておるものですから、まあこれを続けてきたわけですが、こういうものをおやめになることについて、今、河野農林大臣のお話がございましたが、自治庁と十分な御連絡があったかどうか、地方自治体はこれを突然発表せられて非常な困難をいたしておるわけでありますが、大体地方財政というものが、これは改進党当時、地方財政再建整備法ですか、非常に御熱心であったのですが、三百億乃至四百億という赤字、これが本年はいよいよふえていく、しかも競馬、競輪廃止等でいよいよそれに拍車をかけて行く。この地方財政の問題について、国の財政では健全財政で公債を許さないのに、地方では一割以上の公債を認めながらも、しかもこういう赤字がどんどん出ていっておる。こういう地方の実情に対して、本年度予算でどういう処置をなさるおつもりであるか。この大蔵大臣構想を拝見いたしましても、一向にそれに対する見通しがついていないが、これは自治庁並びに大蔵省でどういうふうな処置をなさるのでございますか。
  70. 館哲二

    委員長館哲二君) 自治庁長官はちょっと……。その間に、先ほど運輸大臣がこちらへおいでにならなかったが、今出席されましたから、運輸大臣の答弁をお聞き取り願いたい。
  71. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 鉄道新線、(「自治庁大臣から答えろ」と呼ぶ者あり)いいですか……、鉄道の新線建設について御質問があったようでございますが、衆議院の運輸委員会に出席をいたしておりましたので、ここにお答えをいたします。  鉄道の新線を経済スピードで継続いたしまするためには、六十五億円の資金が必要であるわけであります。鉄道建設審議会等においてもしばしば、六十五億円の資金を確保するようにという決議もあるわけで、私どもとしても、できる限り新線を今後継続していくための資金を確保したいとは考えておりますが、国鉄財政の現状とも睨み合し、今後新線建設の速度をどの程度でやっていくかということは、今後の予算折衝に待たなければ、今日数字を申し上げることは困難でございます。
  72. 左藤義詮

    左藤義詮君 蚊の涙ほどの予算、それすらも見通しがついていないで、先般の選挙では、日本中に鉄道を新設するような宣伝をなすって、これもつじつまが合っていないということになります。  自治庁の長官がお見えになるまで地方財政についてのどういう処置をするかという御答弁を保留いたします。  もう一つ、いろいろ問題がたくさんあるのですが、時間がないので、鳩山内閣が非常に選挙宣伝というか、公約をせられました対ソ、あるいは対中共外交に関する問題でございますが、私どもも世界各国と一日も早く平和善隣の関係を回復することは衷心望むところでございますが、まあドムニッキー書簡を取り上げるとか、外務省とのいろいろのいきさつとかにつきましては、今さら私申し上げませんが、こういうような、ソ連が日本に手を伸ばしてきたということについては、一体どういうソ連の真意であるか、どういう内情であるか、まあ戦争においては、敵を知りおのれを知らば百戦危うからず、外交においても、交渉相手としてのソ連、あるいは中共がいかなる性格の国であるか、また、日本に対して何をなさんとしているかということを十分見きわめなければ、うっかり友愛精神なんて言ってよだれをたらして飛びついて、かって松岡外務大臣がヒットラーにあやつられ、スターリンに肩を叩かれて、ついに日本を破滅に陥れたというような例もございます。ソ連のどういう意図でこういうふうに手を伸ばしてきたのであるか、西ヨーロッパとの関係とか、アメリカとの関係とか、そういう点について総理大臣はどういうようなお見通し、御見識をお持ちになっておやりになったか。
  73. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) ソ連がどういうような動機によってああいうビッドをしたかは私は知りません。けれどもこれを取り上げることが日本のためになると思いまして、動機はよくわかりませんけれども、取り上げた次第であります。
  74. 左藤義詮

    左藤義詮君 外務大臣のこれに対する御所見を一つ
  75. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) お話通りに、交渉をやる場合において相手方の意図その他を十分に検討するということは、これはやらなければならんことで、当然のことでございます。がしかし、その意図が那辺にあるかということよりも、今交渉に応ずることが、わが万の政策に合致しておるかどうかということをまず考えて、それで行かなければならんと思うのでございます。しかし交渉する場合に、交渉を進めていく場合に、向うの国情その他について十分考えをめぐらして交渉を進めていくということは、どうしてもやらなければならんことだと思います。しかし今向うの意図がわが方の目的に合しておる場合に、向うの意図を今いろいろなことに批判を加えることは、交渉を促進する上に果してどうかと思いますので、私はこの交渉に当りましては、誠心誠意交渉を進めるということが一番大切だ、こう考えてやっておるわけであります。
  76. 左藤義詮

    左藤義詮君 ほとんどめくらの手探りのように、相手のことを十分にお考えにならずに手をおつけになった。しかしやっているうちにだんだんお考えになるでしょうが、私ども国民として、かって反共親ソ、共産党には反対するが、ソ連とは仲よくするのだという宣伝思想がありましたが、どうもただいまの鳩山内閣考え方は、内政では反共だけれども、外交では平和共存というふうにお考えになっている。かっての日本帝国主義時代の国力と自信とに立ってそういう政策もやられた。しかもそれが松岡洋右のような失敗に終った。今、日本は非常に弱小国になっておる。ソ連、中共は非常に強い兵力を持っている。この弱小日本において、内政と外交というものを観念的には区別することができても、現実にはこれは重なり合っている。なかなかそう簡単には私は割り切れないと思うのでありますが、こういう点で非常な甘い、ただ平和がいいのだから、相手のこともよく調べずに、いずれあとから調べるのだからというようなことでは、これは国民が大へん心配をしていることでありますから、その点においても十分私は今後御注意を願いたい。ことにあの当時には、総選挙前に戦争終結宣言が出るような宣伝がございましたが、いまだに交渉の開始もできていない。これもやはり先ほどの、順次お尋ねしてきました選挙宣伝があわのように消えていった一つの例だと思うのであります。かって後藤新平等があっせんをして、第一次戦争後のソ連との国交回復も、これを計画して、数年を要してやっとものになっているのでありまして、非常に私は見通しが甘いというか、国内への宣伝であって、実際にはそんなに甘く考えていらっしゃらないかもしれないが、そんなことはないとおっしゃいますと、どうも三つの外務省があって、鳩山外務省、重光外務省、官僚外務省があって、官僚外務省ではそんなことは考えていらっしゃると思いますが、どうもそういう点は上滑りをして甘いのではないか、相手の国のことを、今までの私どもが、中立条約をじゅうりんして、ヤルタ協定も知らずにおったという苦い例にかんがみましても、もう少し私は国家の将来、国民の安危ということをよくお考えをいただきまして、もう少し慎重に願わないと、何もわからないが、いいことだから飛びつくのだというような御態度は、私は非常に国民とともに心配にたえないのでありますが、特に時間がありませんので、一つだけその点で、先日衆議院予算委員会鳩山総理大臣は、ヤルタ協定はサンフランシスコ条約で認められて、日本が千島、あるいは樺太は放棄しているから、歯舞、色丹の場合と違って、南樺太、千島列島については返還要求をすることはできないとお答えになっているのですが、どうもこの点は私は納得できないのでございます。いまだに総理大臣はそういうお考えをお持ちになっておるか。
  77. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は南樺太、千島列島の返還請求はできないとは予算委員会で申しておりません。歯舞、色丹の関係と南樺太、千島の関係は違うと言ったのであります。
  78. 左藤義詮

    左藤義詮君 いずれ速記録を調べまして、また御質問をいたしますが、それでは違うのだが、歯舞、色丹についてはこの交渉で返還を要求するが、千島、樺太については現実には要求はしない。さような御意図であるか。今後の交渉過程に要求をなさるのですか。
  79. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 要求はいたします。歯舞、色丹は当然でありますが、南樺太、千島列島に対しては、ソ連が持っておるという、領土権を持っておるということもないのであります。ですからしてその点について話し合いをするというのは当然だと思っております。
  80. 左藤義詮

    左藤義詮君 外務大臣に伺いますが、これは、話し合いをなさって、それに対するお見通しを伺いたいと思います。特に四月二十八日以前に日ソの話し合いがつくのか、あるいはそれ以後になるのかによって大分変ると思うのです。これは私はやはり四月二十八日以前というのは、ソ連が急にああいうことを申してきた意図にはそういうことがあったと思うのですが、そういうことをお考えにならずに、総選挙直前にはそういうことは話がつくようなお話だったのですが、現実には幸か不幸か、そういうことになったと思いますが、四月二十八日以後には、三カ年というあのサンフランシスコ条約の内容と条件が変って参りますので、強力に私は要請をいたす、要求をいたすべきものと、かように考えるのですが、その間の事情、またそれに対する外務大臣としての御決意をお伺いしたいと思います。
  81. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 御質問の点に四月二十八日ということを言われましたが、おそらくこういうことじやないかと思います。四月二十八日までは、ソ連としてはサンフランシスコ条約に加入することができるはずでございます。こう加入してくれば、もうそれでサンフランシスコ条約の体制に入ってくるわけでありますから、日本との関係はそれできまるわけでございます。そうなればしごく簡単なのでございます。しかしながら、ソ連は今までサンフランシスコ条約というものの体制に反対してきて、これは一切加入をしないという立場をとって参りました。そこでソ連が今回の日本との国交正常化の交渉に異存がない、交渉に入るという意向を表したことは、われわれとしては、サンフランシスコ条約に関係せずして、その体制外において別個の交渉をやる意図を持っておるのであると、実はこう考えて、その考えのもとに進めておるわけでございます。  従いまして、その交渉において、もしサンフランシスコ条約の体制の中に入るということを四月二十八日以前に意思表示が先方からあれば、これはきわめて簡単なことになります。そうでなければ、いろいろな問題がそこに起ります。日ソの間に調整をしなければならん、もしくは基礎的にも調整をしなければならん。私は何もかも一度に調整ができるとは思いませんが、しかし重要なことについては調整をしておかなければならん。その交渉が果して四月二十八日までに結末をつけるか、つけ得るかということも、これはちょっと申し上げかねます。もっともそういう私の解しておるような意味の交渉においては、四月二十八日という期限があまり意味が重要でなくなるわけでございますが、いずれにしても交渉を開始して、基礎的のことについては十分に立場を主張したいと、今のところではさような気持をもって準備を進めておる次第でございます。
  82. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 関連して。ただいま鳩山総理大臣は、千島、南樺太の返還の問題について話合いしたい。サンフランシスコ条約においては、なるほどそれの帰属の問題はきまっておりませんが、放棄をするということはサンフランシスコ条約でおきめになったように思うのですが、そうするとその問題をさらに取り上げて交渉をなさるという以上は、サンフランシスコ条約を改訂をするという決意をすでにお固めになっているのかどうか。そうでなければさきの言明がなされないはずだと思いますが、その点について明確に御答弁を一つ願いたいと思います。
  83. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) サンフランシスコ条約は変改する意思はございません。(「おかしいじやないか」「それじや話合いはできない」と呼ぶ者あり)放棄をしたと約束をしているのですが、それでも話し合う余地が全然ないとは思つておらないのであります。
  84. 館哲二

    委員長館哲二君) 左藤君に申し上げますが、自治庁長官が出席されましたが……。
  85. 左藤義詮

    左藤義詮君 あとにしましょう。どうも私、これは衆議院の速記録を精密に調べませんとあれですが、新聞等では、総理は、千島、樺太の返還は不可能だというふうに犬養代議士には御答弁になっているように思うのでありますが、それが今日だいぶ話が変って参りました。しかもその内容については、佐多委員からも御質問がありまして、またあいまいになって参りましたので、こういう重要問題について、樺太もそうでありますが、千島もいわゆる戦争で取った領土ではないのでございまして、幕末以来非常な外交の先輩、私ども国民が涙のこぼれるような苦心をしたところでございますので、こういう問題に対してもう少し私ははっきりした御所信を持って、先のことがわからんから、まるでめくらの手探りのようなことをおっしゃいましたが、もう少し私は確信を持って、内閣の思想を統一して私は臨んでいただかなければ、大へんなことになるのであります。  もう一つ、最後に時間がございませんからお尋ねしておきます。一つだけお尋ねしておきますが、今、サンフランシスコ条約の改訂は要求しないというお話がございましたが、私は千島、樺太の返還を要求いたしますならば、沖繩、小笠原島についても、これはアメリカが真に日本の立場を了解して、またアメリカ自身も四大国会議を主張し、平和共存に非常に今力を入れている際でもありますので、日本がソ連と早く友好関係を持つようにという、私は積極的に日本を支持してくれるはずである。私はそういう点において、もしアメリカがこの際沖繩、小笠原の返還の問題について、私ども先年アメリカへ参りまして、沖繩の人がアメリカに来ておって、早く日本の同胞のもとに帰りたいという、涙のこぼれるような私ども話を聞いたのでありますが、こういう心持をアメリカが理解して、アメリカがこの際積極的に小笠原、沖繩に対して、日本に理解のある宣言をいたしますならば、これはソ連との領土問題の交渉に対しても非常な私は大きな援護射撃と申しますか、大きな私はサポートになると思うのでありますが、どうも私は両面外交ということが、あっちの顔色も見、こっちの顔色も見る。結局こうもりのように、どっちにも固執するのでなしに、私はもう少し筋の立った信念のある外交をしていただきたいと思います。  これも衆議院で問題になったガリオア、イロアの問題にしましても、これも私ども、もう少しアメリカが好意のある態度をこの際示しますならば、これは非常に日本に対する大きな支持になり、それがソ連に対する交渉に非常に私は有力な援護射撃になると思うのでありますが、そういう点はもう少しアメリカに対しても、私はソ連との問題をそんなに遠慮しないで、あるいはくそこそやらないで、もっと私は強く真に世界平和のために、日本が極東において真に善隣友好、善隣平和の使徒になり得るために、もう少し大きな構想をもってこの外交の事に臨んでいきたいと、かように私は思うのでありますが、これに対しまして、今佐多委員に対する御答弁とも関連いたしまして、総理大臣並びに大蔵大臣の所信を伺いたい。
  86. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 大蔵大臣ですか、外務大臣ですか。
  87. 左藤義詮

    左藤義詮君 総理大臣並びに外務大臣です。
  88. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 今、お示しの御精神は、私もほんとうにそういう精神、そういう趣旨を尊重して進んでいきたいと、私自身は非常にそう考えております。
  89. 左藤義詮

    左藤義詮君 総理大臣に御質問します。
  90. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は、ソ連や中共とは国交を調整したいと思うのですが、国交調整に努力いたしましても、アメリカとの基本の関係には少しも影響はないと思っております。(「そんなことじゃできやせんよ」と呼ぶ者あり)
  91. 左藤義詮

    左藤義詮君 どうもこの点、時間がないのですけれども、はなはだ私内閣の答弁の統一もできていないし、何も見通しがついていないように思うので、もう少し閣内の思想統一もせられ、よく研究せられて、あらためてこの問題について私は質疑をすることの留保をしたいと思いますが、ようございますか。
  92. 館哲二

    委員長館哲二君) また時間がありましたらお願いすることにいたします。(「委員長、今のは答弁ができていないのだ」「答弁をすることを約束さして下さい、ちゃんと意見を合して」「答弁がなっちゃいないのだ」と呼ぶ者あり)いかがでございますか、内閣の方からあらためて御答弁を願うことにいたしまして……。
  93. 左藤義詮

    左藤義詮君 はなはだ質問のしつぱなしで、何もそれに対するお答えがないのでございまして、これじゃ私ども委員会審議ができないわけでございますから……。
  94. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私自身としてはちゃんと要領を得たと思っております。
  95. 左藤義詮

    左藤義詮君 その要領を得た内容を、もう一ぺん外務大臣とよく思想統一をせられて、内閣の根本方針としてあらためて私は御答弁を要求いたします。(「異議なし」と呼ぶ者あり)
  96. 館哲二

    委員長館哲二君) 他の機会に一つ内閣としてあらためて御答弁を願うことにして……。
  97. 左藤義詮

    左藤義詮君 他の機会というのはこの審議過程においてです。それから自治庁長官の……。
  98. 館哲二

    委員長館哲二君) それから自治庁長官の御答弁を求めたいと思います。(「沖繩の返還要求についても答弁をしていないじゃないか」と呼ぶ者あり)
  99. 川島正次郎

    国務大臣川島正次郎君) ちょっとわきの会議へ出ておりまして、失礼いたしました。  先ほど御質問のありました競馬、競輪その他を自粛しまして、平日の開催をよしたために、どのくらい地方財政に影響があるかと申し上げますると、大体二十八年度におきまして六十二億純収入があります。そのうち幾ら減るかというのでありまするが、まだはっきりした計算はできておりませんけれども、二十億程度の減収になるのじゃないかと、かように考えます。それらの資金でもって災害復旧費、もしくは学校建設資金等に充てております府県もありますので、そうした府県に対しましては特に起債を許しまして、補充さしてやりたい、こういう考え方を持っております。
  100. 左藤義詮

    左藤義詮君 地方財政全体の再建の見通しです。
  101. 川島正次郎

    国務大臣川島正次郎君) 大体赤字が四百六十二億ほどあります。この赤字をどうするかということにつきましては、ただいま考究中でございまするが、大体地方財政再建促進の特別措置をするために、新たに法案を提出いたしまして御審議を願う予定でおります。内容といたしましては、四百六十二億の赤字を長期債に大体借りかえまして……。
  102. 左藤義詮

    左藤義詮君 全部ですね。
  103. 川島正次郎

    国務大臣川島正次郎君) 全部です。そうして七カ年程度で返却するようにいたしまして、利息もなるべく政府資金をよけい使うようにいたしまして、低利にいたしますし、政府資金を借りられない点は、市中銀行と政府資金との間の違った利息だけはこれを補給してやる、こういう案を今考えておりまして、関係省とも折衝をいたしております。ぜひこれは今議会に提案するつもりでおります。
  104. 左藤義詮

    左藤義詮君 本年度予算はそれがどのくらい出ますか、予算にどのくらいの裏づけが必要なんですか、その利子の差額とかその他。
  105. 川島正次郎

    国務大臣川島正次郎君) 本年度予算はちょっとまだ計算しておりません。
  106. 左藤義詮

    左藤義詮君 まだたくさん私、中共貿易の問題その他ございますが、時間がございませんのではなはだ、どうも政府がもう少し勉強をして、思想統一をせられて御答弁をいただきませんと、私の質問したことほとんど要領を得ておりません。特にいろいろ掲げられました公約について、だんだんお尋ねすればするほど、みんなあわのように消えて行ってしまう。私は一つこれは本予算にはうんと力を入れられるように、特にこの前の内閣選挙管理内閣でなくて選挙運動内閣とまで言われたのですが、また地方選挙が来るのでございますが、私ども予算はどうしても十五日には今の大蔵大臣のお約束通りお出しいただかなければならない。そうすればこの薄っぺらい大蔵大臣構想閣僚のあれだけたくさんな公約を盛ることは、先ほど常識でもあるとおっしゃったが、非常に困難でございます。ぜひこれをやっていただかなければならない。そういう際に、重大な国務を放棄せられて地方選挙閣僚が東奔西走せられないように、もしそういうようなことでこの予算ができなかったら、これこそ内閣は一体何をしているということになる。この前は衆議院選挙でございましたから、それぞれ候補者におなりになってやむを得ないと思いますが、地方選挙等には閣僚の足どめをして、連日でも閣議を開いて、この重要な予算をぜひ十五日までにされるように、その点総理大臣は各閣僚を督励して、その責任をお果しになる御意思があるかどうか、最後に一つ伺っておきたい。
  107. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 左藤君の希望せらるるように努力をいたします。
  108. 池田宇右衞門

    池田宇右衞門君 議事進行について。われわれは議事の進行についてきわめて平易に進行いたそうと協力しておるのであるが、今各閣僚の答弁を聞き、ことに外務大臣のごときは何を答弁しているのかちっともわからん。かようなことではせっかくの議事も進行しないと思うが、委員長からよろしく休憩の時間には総理以下閣僚諸君が答弁に当ってもっと誠意を披瀝するように注意を促すように、この際議事の進行上要求しておきます。(「異議なし」と呼ぶ者あり)
  109. 館哲二

    委員長館哲二君) ただいまお聞きの通りでありますから、各閣僚ともこの上とも一つ御注意をお願い申し上げたいと思います。  これにて休憩いたしまして、午後一時より再開いたします。   午後零時三分休憩    ————————   午後一時十六分開会
  110. 館哲二

    委員長館哲二君) それでは午前に引き続きまして昭和三十年度暫定予算質疑を続行いたします。
  111. 廣瀬久忠

    ○廣瀬久忠君 まず戦犯者釈放の問題につきましてお伺いをいたします。鳩山総理は一月の施政方針演説におきまして未帰還者及び戦犯について、それぞれ帰還並びに釈放について大いに努力するということを言われました。未帰還者につきましては中共及びソ連より多数の帰還者を得ましてまことに喜びにたえません。しかし戦争犯罪人につきましては、いまだ何らの朗報を聞かないのであります。つきましてはその後の経過及び将来の見通し等について外務大臣より御答弁を願いたい。
  112. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 戦犯の釈放の問題は単に外交交渉の問題だけでなくして、人道の上から言っても非常に重大な問題と思ってこれに対処しているわけでございます。特にお察しでもございましょうが、私といたしましては、この問題をどうしてもこれは早く解決しなければならん。戦後十年にしていまだに恩讐の感情が残っているわけはございません。戦争の傷は一刻も早く、一日も早くこれをいやさなければならん。これは単に国内問題だけではございません。今日われわれが民主諸国、特にアメリカとの協力を強調いたしておる今日、アメリカとの密接な協力関係が必要であると、こう申しておる際に、今なお戦争の創痍が残っておるということは、いかにも私どもは不自然に感じます。理屈はともかく早く一つ戦犯者の釈放について了解を進めていって、そしてそれらの不幸なる人人、私はあえて戦争の犠牲者と申したいのでありますが、この戦争の犠牲者を、一刻も早くあたたかい家庭に帰して、そして日本全国に散らばっておるこれらの家庭に喜ばれて、そしてその感情をもって直ちに旧敵国、すなわち今日ではわれわれが非常に協力を主張しておるこれらの国々との感情をも一そう良好にしたいと、こういう考えを持ってこれに接しておるわけでございます。御承知通りに、未帰還者は、ソ連、中共方面の未帰還者、これも相当多数帰還を許されて、その実現を見たわけでありますが、まだソ連においても、戦犯の名のもとに相当数の同胞、ざっとソ連には数千人のまだ抑留岩がある、こう推測せられるのでございます。これらも一日もすみやかに釈放されて帰還することを念願してやみません。今日まで戦犯を釈放したのは、戦争終結のときに、国民政府——台湾に今おる国民政府が、戦犯を全部釈放しました。それからフィリピンも、昭和二十八年七月及び十二月の両度にわたって、全戦犯を釈放しました。昭和二十八年七月から二十九年四年の間に、フランス政府もまたその全部を釈放いたしました。そこで残っておる国は、米、英、豪、オランダの四国になっておるわけであります。これらの国々に対しては、別々の立場もあるようでありますが、その各国の事情に応ずるように、釈放の促進を常に努力をいたしておる状況でございます。これは単に政府政府との交渉という以外に、ずいぶんアメリカの有力者も日本を訪れておるのでございますから、これらの有力なる人々に対して、そのつどこの問題を持ち出して解決を促進するように努力をいたしておるのでございます。その努力は今のところでは見込みがどうであるかと申しますというと、漸次実を結ぶのじゃないか、こう思っております。さような徴候は現われて参りましたことを申し上げます。今それではいつどういう工合に釈放されるかと、これは現に、いまだに巣鴨におる六百四十七名の人々が、それを聞きたいのに違いはございません。それを今はっきりと申し上げることのできないことを非常に遺憾としますが、しかし一日もすみやかにこれを実現させたい、そうしてその曙光は若干認められておるということを申し上げ得ると考えます。
  113. 廣瀬久忠

    ○廣瀬久忠君 サンフランシスコ条約の十一条においては、わが政府の勧告によっては釈放ができるという大体建前になっておりますが、現政府になりましてからこの種の勧告を発した事実があるかどうか、また近い将来において勧告を発するというような考え方があるかどうか、その点を簡単でよろしゅうございますからお伺いしたい。
  114. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) その勧告は一定の条件を備えたものにいたすことになっておるので、常にそのつどいたしております。そしてまた全面的にも勧告をいたしておるわけでございます。
  115. 廣瀬久忠

    ○廣瀬久忠君 戦犯釈放の問題はいつも大体同じようなひょうたんなまずのような返事を得ております。なお一段と政府努力を切望いたします。  次に私は総合経済六カ年計画について質問をいたしたいのでありますが、これは経審長官が本日は出られないそうでありますから、これは他日に譲ります。  次には総理に、憲法改正に関する鳩山総理構想について一つお伺いしてみたいと思います。総理は一月の施政方針演説で、国の基本法であるところの憲法については、制定当時の実情とこれが実施の結果にかんがみて、国情に即した修正を施す必要あることは、これを認めざるを得ないと断言しておられる。これによって私は日本の国情に沿うようにわが憲法を改正せんとするんだという総理の意思は明瞭に決定しておるんであって、これは内閣がかわっても動かないんだと私は思うが、さよう承知してよろしいか。  それからなお引き続いてお伺いします。きょう私はあなたのこの日本の国情に沿うように憲法を改正せんとするという意思決定は動かぬものと信じまして、なお引き続いて二つの点について質問をいたしておきます。  その一つは、総理はこの施政方針演説の中で、制定当時の実情と実施の結果にかんがみ、不適当なりとする点があるということを、明瞭に言つておるわけであります。施政方針演説の中で制定当時の実情ということと、実施の結果不適当なところがあるから改正するのだと言っておるのだから、それならば、総理は制定当時の実情というものを早く、また、実施の結果不適当であるという点があるならばその点をあげて、またそれも早く、ともにこれを国民にお示しにたるべきではないかと私は思う。もちろん日本の国情に沿うように憲法をどう改正するかということは、これはあなたのやはり言われておる審議会にかけて、慎重に研究をしなければならぬのは言うまでもありません。そう急ぐわけにはいきません。しかしながら今私があげた二点につきましては、これはもうきまっておることなんだ。きまっておらなければ施政方針演説でこういうことをあげることはできないはずだ。あげておるのだから、ぜひ早く国民にお示しなさい。私がこういうことをあなたに要求するのは、早くこういう事実を示さないと、つまり実行してみたらまずかった、それから憲法を作るときはこういう事情であったのだということを早く国民に示さないと、総理の意見と反対の、改正反対論者の意見のみが国民の中にびまんしてしまう。国民は判断をする材料がない。であるから、これは制定当時の実情はこうなんだ、それは実行してみたらこう工合が悪いのだ、ということを国民示してやれば、反対論者が幾ら反対をしても、それに対して国民は正しき判断ができると私は思う。そこであなたは、早くこれを国民に取りそろえて示したらいいじゃないか、示すべきではないかと思うのです。これが第二点です。  それから第三点を私は言うのでありますが、審議機関をお作りになるということを言うておるが、審議機関もけっこうでしょう。しかし私はこのほかに、審議機関のほかに、国民に対して憲法改正の必要なるゆえんを徹底せしむるための組織、特別な組織、私はそれは、幸いに民主党には憲法改正のベテランがたくさんおる。芦田顧問ですかも、むろんその一人だろうと思う。私はそういう組織を作ったらどうか。総理が総裁としてですよ、率いておる民主党の中に、それを中心として、民主党のこういうベテランを中心として一民間組織を作ったらどうか。総裁としてお作りになったらどうか。そしてこれによって総裁として持っておる意見はおそらく総理として持っておる意見と同じだろうと思う。その総裁として持っておる意見を国民の中に徹底せしめたらどうか。こういう努力をせずしておけば、国民は誤まった方向に導かれるというおそれが非常に多いのでありますから、私はこういう政党、民主党中心でよろしい、自由党に呼びかけたらよろしいでしょう。自由党にもその種の人がたくさんおる。そうしてあなたが憲法改正の意思決定をしておるのだから、これを何とかして実現すべき、最善の努力をすべきじゃないか。そういう三点をお伺いする。第一はあなたの意思決定は動かないのだ。次には制定当時の実情と、施行して見た結果、欠点があるということと、次にはあなたの率いる党派に、一定の組織を作って、国民にこれを徹底せしむるの決意があるのだ、この三点をお伺いいたします。
  116. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 廣瀬さんの御質問お答えをいたします。憲法改正をしたいという希望はまだ持っております。いかなる点を改正したいか、それから憲法改正当時の事情により、ということは何だという点につきましては、とにかくあの憲法は占領中にできた憲法でありまするから、元来、占領中にできた憲法を改正するということは、これは無効なものだとする、という規定を持っておる憲法を持っておる国はあります。かくのごとくに占領中に押しつけられた憲法というものは、本質的に無効のものであるべきはずなんであります。それが日本の国情に適しておるということはあり得ないのであります。ではいかなる点が憲法を改正する重点になっているのかという御質問に対しては、私がどうしても憲法を改正したいと思いましたのは、憲法九条であります。また、アメリカがこれを押しつけるについて、最も重点を置いたところの憲法も九条であったと思うんであります。あの九条は、確かに日本が軍隊、防衛力を持ってはいけないという趣旨でできたのであります。これは前文だの、後文だのを見れば、あの九条の趣旨は明瞭なんであります。一国が国をなして、防衛力を持っていないというようなことは、あるべきはずのものではないと思っております。どうしても日本の国を守る力は独立国である以上は持たなくてはならないと思っております。これが私が憲法を改正したいという最初の重点でありました。  そのほかにも、とにかく、そういう重点でできた憲法でありますから、日本の国情に反していると思う点がありますけれども、これは憲法改正について熱意を持っている人たちの知識あり、経験のある人を集めて、つぶさに研究いたしたいと思っております。そのために、憲法審議会というものを作りたいと思ったのでありますけれども、何分選挙の結果は、憲法改正をしようとする人の数が少いようでありまして、なかなか憲法改正委員会という機関を作るようなことができなくなってしまった。しかしながら自由党にも、最近友だち同士話し合いますと、憲法は改正したいという人がずいぶんありますから、この調子ならば、憲法の改正機関を作りたいという案も、議会を通りそうな情勢にあるからして、自由党と交渉して、保守党としては、こういうあり方でありたいという議論も、だんだんまとめて参りまして、憲法改正機関を作りたいと思います。そうして、日本の国民の多数の意思を、そういうように持って行くということは、非常に必要なことだと思つております。どうしてもこれを言わないと、平和憲法擁護というような、見当を少し間違えた論がなかなか、だんだん強くなって参りますから、これに対して防衛をしなくちゃならないと思っております。確かに平和憲法という名前は持っているかもしれませんが、あの憲法を守っていれば、日本の国が必ずしも平和だということにはならないと思うんでありまして、どうしても日本は防衛軍隊というものを持つべきものと確信しますので、そういう国民思想ができ上るように、われわれはどうしても努力しなくちゃならないと思います。近いうちに、そういうようなことを自由党とは少くとも早くこれを相談いたしまして憲法改正機関を、その法案が議会を通るようにいたしたいと考えております。
  117. 廣瀬久忠

    ○廣瀬久忠君 総理は私の質問を、少しまだ了解するのに足らないところがありますが、一月のあなたの施政方針演説の中で、私がここにあげたところを、もう一ぺん総理がお読み返しになったならばわかると思うのですが、あなたは、今憲法改正の希望は変えないと、希望は変えないなんて、そんな弱い意思ではなかったのです。もうはっきりと意思決定をしていることが明瞭であります。それでありますから、そんな、今さら希望を持っているんだ、というのじゃない、憲法改正するんだとあなたは決心している。それが明瞭に書いてある。そのつもりで私はけっこうだと思うんです。ただ、その決心ならば、国民に、早く政府が持っているところのその当時の資料なり、あるいはは施行した結果のまずい点なりというものを、国民示して、国民に判断の材料を与える、それと同時に国民に対してその改正の真意を徹底せしむる努力をしなくちゃならん、その組織をしなくちゃならん。それは私は民間の方がいいのではないかと思う。それをあなたの党派でもおやりなさいということを言っておるのですが、わかったようなわからんようなことですが、時間を急ぎますから、なおあと続けてやります。  あとはあなたのよく言われる、総理のよく言われる政治の信用回復ということについて私は一つ率直に質問をいたしてみたいと思います。私は保守系の人間です。ただ中立の人間です。与党でもありません、野党でもありません。思い切った私は中立の議員、人間として、あなたのいわゆる信用の回復なる問題について、私の思い切った所見を述べてみたいと思います。先輩である政治家にはなはだ非礼なことを言うかもしれませんが、私も国政を思うの余言うのであります。他意はございません。あらかじめお許しを願っておきます。総理に対してまず第一に、総理が信用の回復ということを常に政治の信用の回復ということを言われます。私は総理に対して政治の信用回復についてまず第一にお願いすること、聞きたいこと、希望すること、これはこういうことです。総理はもっと慎重であってほしいということなんです。これは第一です。わが国の政治が信用を失ったということはまことに遺憾です。総理がこの回復に対して努力するというのはまことにけっこうです。総理はしかし明朗な政治で信用を回復するんだということをよく言われるが、私はそうじゃないのです。あなたにはむしろ慎重な政治で政治の信用を回復してもらいたいのです。これをあなたに言いたい。ドムニツキー文書の問題にしても、それから二つの中国の問題にしても、ずいぶんあなたは衆議院においても参議院においてもあらゆる角度から質問を受けておられます。それはそうなるわけなんです。こういう大きな重大な外交問題の取扱いとして、ことに総理大臣の取扱いとしてこういう問題のまことに慎重を欠いたという感じが深い。それだから質問が出るのです。いわんや外国人記者団との原爆問題についての質疑応答というに至っては実にこれはよけいな波紋を平地に起したという感じが深いのです。私は総理は慎重に、慎重にと考えて初めてよいところに落ちつくのだと思うのです。(「その通り」と呼ぶ者あり)総理は持ち前として明朗性を持っています。それはけっこうです。けれどもそれだけじゃいけません。それにあなたは明朗の政治をやるのだということだけでいっている。あなたの性格が明朗なんです。それにあなたは明朗の政治をやるんだと力むというと明朗の行き過ぎになってしまう。明朗の行き過ぎになる。(「その通り」と呼ぶ者あり)それで私はあなたに慎重ということを言うのです。明朗とともに慎重を両立さしてもらいたい。そうしなければこの難局に善処はできません。実際今までの模様を見ますというと、総理が何らかの発表をやった、何らかの行動をやった、その後においてつじつまを合せるのに非常な苦心をしているのがありありとわれわれの目に見える。これは非常に困ったことです。国民総理の慎重性をここに疑います。こういうことがたび重なるというと国民総理の頼りなさを感ずるようになる。(「その通り」と呼ぶ者あり)そうなると政治の信用は回復どころじゃない、落ちてしまう。(「その通り、その通り」と呼ぶ者あり)今共産主義の諸国とわが国は初めて外交折衝に入らんとしております。その困難は想像以上であろうと私は思う。それとともにその影響は実に深刻なものがあるであろうと私は思うのです。いかに慎重に対策を練っても慎重過ぎることはないと思う。それくらいに考えられます。まあ私は今日までの総理衆議院及び参議院における質疑応答において多少はわかったような気もしますが、まあ総理の用意というもの、用意は相当はできておるとは思いますけれども、しかしながら国民の多数は非常に心配している、ああいう二元外交をやってアメリカとの関係はどうなるか、そうすると貿易上は困りはしないか、外交上は困りはしないか、また国内問題としては共産主義諸国と交際をやったならば共産主義がわが国に強くなって、かって破壊活動防止法を作った当時のように治安が乱されるような状況は起りはしないかということを国民は皆心配をしているのであります。でありますから慎重の上にも慎重でよろしい。どうか将来総理は発表その他の報道をやった後につじつまを合せるのに困るようなことをなさらんように一つ明朗もいいのですが、明朗の上に慎重であってほしい。いかがですか、どういうお考えでしょうか。私は明朗だけでは困る。この点を一つ御所見を伺っておきたい。
  118. 館哲二

    委員長館哲二君) 今御発言中なんでありますが、議事の進行についてちょっとお諮りしたいと思います。総理の答弁に一々お立ちを願いますことはかえって議事の進行にもいかがかと思いますので、御着席のまま総理から答弁をいただくことにしていかがと思いますが……。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  119. 館哲二

    委員長館哲二君) 御異議がないようでありますので御着席のまま答弁をいただきたいと思います。
  120. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) それでは失礼ですがお許しをいただきまして着席のままお答えさせていただきます。ただいまの御忠告はまことにごもっともと思います。私はつまり政治の信用の回復というものは、やはり国民に問題を示してそうして国民の声を聞いてガラス張りの中で政治をやっていくような気持を持ってやる方が政治の信用が回復できると思います。なにも秘密にして、独善の政治ではますます政治の信用がなくなると思います。性格が少しあけっぱなしでしゃべり過ぎるかもしれませんが、将来においては廣瀬君の御注意をよく服膺いたします。
  121. 廣瀬久忠

    ○廣瀬久忠君 私は明朗もけっこうだと思います。しかしこれは物にもよりけり、時にもよりけりだ、どうしても外交問題のごときについてはより一段の一つ慎重を希望して次の質問に移ります。  私は同じく政治の信用の回復について私の考えを申し上げてあなたの考えを伺いたい。政治の信用を高めるのには総理内閣国会に対する政治責任、連帯責任、これをかたく守るということが必要です。そのためには閣僚をみだりにかえてはいけませんということです。鳩山総理は今回の組閣に当って、もちろん今回の組閣は憲法に基いてやめて、それから組閣したのですか、らそれは組閣はいいのですが、その組閣の際の模様を私はみて大臣の大幅の更迭をやる、私はこれを見て特に感ずるところがある。吉田内閣のときから私はそれを感じておった。そこで私は今度の大臣の更迭を見て大臣のこの人事について将来のために総理の所見をただしたい。こう思うのです。前内閣は百人になんなんとする大臣を作った。もちろん吉田内閣は五次までも続いたので、六年も続いたのですから、これは期間は非常に長かったが、百人になんなんとする大臣を作った。これは何というても大臣の粗製乱造である。大臣の粗製乱造は大臣の地位を軽からしめる、大臣の地位を軽からしめることは政治の威信を失墜せしめる。わが国の政治がこういうところにも信用を失った原因があります。一体今度の新憲法は総理大臣に非常に大きい権限を与えておる。私は大き過ぎると思う。将来憲法を改正するときには総理大臣の権限をもう少し削らなければいかんのじゃないか。というのは、大臣の任免が総理の一存で、全くの自由でできるということになっておる。それだから総理の意のままで何でもできる。そういうことになると、総理が少しわがままだと総理総理の好む一部閣僚が残って、他の閣僚を自由にひんぱんに更迭するようなことが起きて来るのです。そういうことになったらそれは大へんなことです。その害毒おそるべしです。ここに側近政治も発生しますよ。独裁政治も発生しますよ。それからなおいけないことは、憲法の定めておる内閣国会に対する連帯責任制、こういうものがまるで雲散霧消してしまう。めちゃくちゃに大臣をかえてしまう。だから連帯責任なんてあり得ない。憲法第六十六条、連帯責任をきめた規定です。これは空文になってしまうのです。しかも実質的には議院内閣制の根本をぶちこわしてしまうのです。ここまで来ますというと、国民から見ると実に政権を持っておる内閣というものはわがままなことをするものだと思う。そういうようになると、政治は信用地を払ってしまう。それであるから私は内閣の重大なる政治責任、連帯責任というようなものをくずすような大臣人事は決して首相はやってはなりませんということを言うのです。今後鳩山内閣の更迭について、これは新聞が言うていることですよ、だからまさかほんとうじゃありますまいが、この更迭について、今度の更迭について鳩山系が何人とか、何系が何人なんということを言っておるのですが、もし万が一向系が何人、何系が何人なんということで大臣の人事の異動をやったならばそれこそ大へんなことになる。大臣の更迭をひんぱんにやらなければならんことになってしまう。そうなったら内閣は寄せ木組工みたいになってしまう。私は大臣の任命というものは、国政のために最適任者を適所に任命するにあるのだと思うのです。そうでなければ、国民に対して、主権者に対して申しわけない。最適任者というものはそうざらにあるものではありません。みだりに大臣をかえてはいけない。総理はどうかこれからいかにおやりになるかしらんが、連帯責任ということを終始一貫かたく守ってもらいたい。閣僚を軽んじてはいけません。閣僚諸公もまた自分と総理、他の閣僚と一体制である、寄せ木細工じゃないという確信のもとに連帯責任を痛感してもらいたい。私はこうなって初めて政治の信用は内閣自体から発すると思うのです。どうです、総理は大臣人事及び連帯責任について私の考えに御賛成でありますか、どうですか、伺いたい。
  122. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 廣瀬君のお話はもとより当然な事柄であります。私はあなたのような心持においてこのたびの内閣を組織いたしました。決して自分の党派である、自分と親疎を基礎として人選をしたということは断じてございません。
  123. 廣瀬久忠

    ○廣瀬久忠君 最後にもう一つ伺います。それはですね、政治の信用回復についてでありますが、政治の信用の回復については私はあなたが政局安定への最善の努力をすることである、すなわち政局の安定え総理努力がうんとある、その努力国民が納得するまでよく総理は政局安定に努力しておるのだ、努力したのだ、納得するまでおやりになればあなたの政治は信用がうんと高くなる、こう私は思うのです。このことをお話ししたいと思う。一体今日保守両大政党というものが協力できないような態勢になっておる、そのために政局が不安定である。このことについては私は鳩山総理吉田総理とともに深い関係があると思う。私は今こそこの御両人が政局安定、特に両大政党の協力について一段の努力をなすべき、国に対して、国に対する義務です、一段の努力をなすべきときだ、それを切望する。今日はこの点について私の思うところをあなたに申し上げ、鳩山総理に訴えて、あなたに訴えて御両人の善処を要望します。一体民主主義を基調とするところの政治というものは政治家相互の尊重から出発します。あなたは御自分がこの難局を担当するに足る政治家、大政治家だと自分を尊重しておられると思うのですが、それと同時に吉田前首相もまたあの敗戦後の難関を突破して今日の状態にわが国を置いたあの功績の大なるを認めて吉田総理をもあなたは尊重しておられると思う。自分を尊重するとともに吉田総理も尊重する、それで初めて立憲政治は実行できる。だからあなたは必ず尊重しておられるものと私は確信しておる。そうしてその両方ともの政治家はわが国の長老政治家だ、保守党の長老政治家だ。それぞれ一方は自由党に、一方は民主党にともに今日勢力を持っておられる。そこでなお考えていただきたいのは自由党と言い、あるいは民主党というけれども、それはともに保守政党であって、根本において私は協力のできないような差異はないと思う。個々の政策については違いますよ、それはまあ一方が野にあっては一千億円の減税を主張して(笑声)一方が朝にあっては五百億円の主張をするくらいの僅かの差はあるけれども、根本においては何ら両者に違いはない。資本主義を奉じ、民主主義を奉じ、社会主義を奉じ、政治形式は同じだ、協力にはちっとも差しつかえない政党なんです。そういう政党をあなたがた二人が非常な力のある、あなたがた二人が持っておられるのは、二人がこれに非常に深い勢力を持っておるわけです。そうして今日の国難に当ってあなたは国難を憂いて老躯をひっさげ国事に当っておられるので、吉田さんもそうです、代議士になられて事あらば国事の難関に当ろうというお考えだろうと思う。両方とも国難に処して行こうというお考えのわが国の長老大政治家である、そうして性質上協力し得る二大政党に勢力を持っておってどうしてこれが協力させるようにあなたがたがやることができないのでしょうか。私は実に残念に思う。しかも保守系国民の大部分というものは両党の協力合同を熱望しておる。この保守系国民の大部分の熱望をあなたはかなえさせることができない。私は国民とともにこれを深く憂うるのです。鳩山総理は昔から平和愛好者であります。私はよく知っておる。それだからあなたは軍閥盛んなりし時分にはあなたが非常に逆境にあった。これは私よく知っております。今もあなたは平和愛好者であられる。今世界の情勢をごらんなさい。世界の大政治家の動きというものは話し合いによって困難なる世界の平和を確保ぜんとしているではありませんか。アイゼンハワーしかり、チャーチルしかり、ブルガーニンしかり、話し合いによって平和を導かんとしているのが世界の大政治家の動きであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)あなたは平和愛好者ならこの際身を挺して、すべての行きがかりなんかを捨てなさい。すべての感情を水に流していただきたい。しこうして両大政党の平和のために吉田総理話し合いをやられたらどうですか。親しく吉田総理にお会いになる気持はないか。私はぜひとも会ってもらいたい。一体御両人は、おそらく前総理が外国から帰って来てから今日までひざ突き合せてお話しになったことは一度もありますまい。ともに国家を憂うる両長老政治家としてこの際こんなことでよろしいでしょうか。ことに今日の両大政党が協力し得る性質を持っているにかかわらず、協力し得ざる状況になっていることについては、あなた方お二人に相当深い関係がありますよ。それなのに今日までちっとも会わないでいる。そんなことでよろしいでしょうか。私は以上保守系に属する国民の両政党、両長老に対する希望、考え方を率直に申し述べたつもりです。はなはだ非礼の点もあるかもしれんが、右について一つ総理のお考えを聞きたい。  なお一つつけ加えておきたいことがあります。それは吉田総理鳩山総理との間の総理大臣としての国務の引き継ぎ、それがどういう工合に行われたかということを聞きたいんです。官房長官等の下僚のお作りになった文書、それにサインだけをやって国務の引き継ぎを済ましたんではないかと私は心配しているんです。そんなことでいいでしょうか。生きた国務ですよ。わが国の国務は今そんななまぬるいもんじやない。国際的事項についても、国内的事項についても、機密にわたる事項、機微にわたる事項が非常に多いだろうと思う。そういう生きた重大な国務が新旧両総理大臣が親しくひざ突き合せて話し合って、そうして引き継がれたというなら私は満足しますが、もし文書のサインのみによって行われた、そうしてそれでおしまいだということでは法律的にはいいかもしれんが、政治的には私はどうしても納得できない。御両人はどうしてもこの際政局の安定のために感情とか行きがかりを捨てて、そうして胸襟を開いて国家のためにお会い下さい。政局安定のためにお会い下さい。私はそれをお願いする。あなたが、鳩山総理がこの努力を払って……、それはあなたも忍びがたいこともあるだろうが、その努力を払って、そうしてその努力国民に納得を得たならば、そこであなたのやる政治は必ずやいよいよ高く信用をかち得ると思います。以上私の所見についてあなたのお考えを伺いたい、
  124. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 民主政治がお互いに相互の人格の尊厳を尊重するということが基礎になるという廣瀬君のお考えには全く同感です。全くその通りであります。互いの人格の尊厳を尊重せずして民主政治は成り立つものではありません。ですから、あなたのような御趣旨は当然な結論であるということは私は承服をいたします。ただしかしながら人間というものは情ないもので、そう理想通りにいかないのです。感情がときどきまじりまして、ほんとうの人格の重厳を尊重し合うということが、ときに個々に向ってできないことはまことに残念なことであります。ですが、それは間違いでありますから、その間違いをだんだんと薄いでいってほんとうの人格の尊厳を尊重し合うという世の中に持っていかなくちゃならんのでありますから、そういう点については廣瀬君の御注意により将来大いに努めるつもりであります。
  125. 館哲二

    委員長館哲二君) 廣瀬君に申し上げますが、時間が経過いたしております。
  126. 廣瀬久忠

    ○廣瀬久忠君 一言だけ言わして下さい。大体私の根本精神は御承知下さいました。ただあなたはそれでは努力が足りません。そんなことではだめであります。もっと努力をなさってはいかがですか。感情を捨てなさい。(笑声)それだけ申し上げて私の質問を終ります。
  127. 小林孝平

    小林孝平君 私は予算に直接関係した問題につきましては、先般来の閣僚の御説明を聞いておりますと、研究中であるとか、あるいは答えられないとかいうことで、ほとんど答弁になっておりませんので、これらにつきましてはいずれ本予算審議の際にお尋ねいたすことにいたしまして、本日は憲法に関する問題、防衛に関する問題並びに日本の自主独立に関する問題の三点について総理大臣にお尋ねをいたしたいと思います。  最初に憲法問題についてでありますが、総理は憲法改正について強い希望を持っておられます。この点についてお尋ねをいたしたいと思います。まず今回の総選挙の最大の結果は、申すまでもなくあなたを始めとする保守党の企図する憲法改正が現実に不可能になったということであります。すなわちわれわれは憲法改正反対を最大の目標としてこの選挙を戦つたのであります。民主党は当初この問題について相当強くこれを打ち出そうとしておられたのでありますが、これを打ち出すことによって選挙に不利とお考えになりまして、これを表面から隠されてしまいました。しかし選挙の結果は社会党両派のみで百五十六名の議席を獲得いたしまして、衆議院における三分の一以上の議席を獲得することによって、実質上憲法改正の発議を不可能ならしむるに至つたのであります。こういう事実にかんがみまして、首相は先般来国会で憲法改正の望みを捨てないと強くおっしゃっておられますけれども現実にこの選挙の結果、憲法改正が不可能になっておるのであります。これに対して総理大臣は望みを捨てないというのはどういうふうにしてこれを実現されようとしているのでありますか。近く再び衆議院を解散いたしまして、そうしてこの議席を、三分の二以上の保守党の議席を獲得することによって憲法改正をやろうと、されようとしているのであるかどうかという点をお尋ねいたします。
  128. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 憲法改正の必要性というものは、現在社会党の方が百五十六名をとったからできないといって捨てるほどさように軽い問題ではないのであります。憲法の改正の必要があるならば、幾たび戦ってもこれをやり遂げたいという熱望を持っているのであります。現在の実情だけを見て憲法改正の意思を捨てるというわけには参りません。
  129. 小林孝平

    小林孝平君 しかし今回の選挙によりまして、現実に社会党両派は百五十六名の議席を有したのでありまして、今総理のおっしゃったように何べんも戦うということは、四年後に戦うという意味でありますか、近くまた解散をやるという意味でありますか、どうでございますか。
  130. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) ただいまの考えは四年後のことを申しておるのであります。
  131. 小林孝平

    小林孝平君 これは総理大臣として私はいかにあなたがそういうことをお考えになりましても、常識的にこの鳩山内閣が四年間も続くと考えているものはだれもないわけなんです。そこでそういう現実状態にありながら強く憲法改正の望みを捨てないというのはこの現実を無視されている御議論ではないかと思うのであります。この点についてどういうふうにお考えになりますか。
  132. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 現実を離れた意見ではないと思っております。
  133. 吉田法晴

    吉田法晴君 関連質問総理は民主政治を確立するために努力しようという意図を、明朗政治を確立していと、こういうことで言っておられているわけですが、この選挙を通じて憲法の改正を許すか、あるいは憲法改悪を阻止するかという問題が総選挙の重大な問題であったということは御承知通りです。この国民の世論を通じて憲法改悪を阻止するという三分の一の議席が確保されたという現実は、これはお認めにならなければならないだろうと思います。これをお認めになりますかどうか。この現実をお認めになりますならば国民の意思に対して、憲法改正の意図を持っておったとしてもそれを放棄するという、総理として、あるいは政治家として国民の世論にこたえるところがなければならんだろうと思うのですが、それについてどういう工合にお考えになりますか、重ねてお伺いいたします。
  134. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 憲法改正はこの間の選挙において私は争点とはなっていないと思うのです。憲法改正する必要ありや否やということについて国民の世論を問うて、国民がひとしく憲法改正する必要なしという方が勝ちましたならばむろんその決議は尊重します。とにかく世界の情勢上直ちに軍隊を持つかどうかということを決定することは現在について非常にむずかしいのです。そこで日本が軍隊を持つということは、決して国際関係の紛争を軍の力によって解決する意思はないのだということを国民が信用するようになりましてから、国民に軍隊を持ってもいいかどうかということを問えば国民は正しい答えをしてくれるだろうと思うのです。ただ、今軍隊を作って、また軍閥ができるのかしらんということをおそれている現在の国民の感情においては直ちに憲法改正をしようとしてもそこに難点が生ずるわけでありますから、急に憲法を改正するということをこいねがうことは間違いだろうと思います。伊藤博文が憲法をこしらえるときには八年もかかってやったのでありますから、日本にそうりっぱな憲法を作るのには相当の時期の間熱意を続けて行くのが当然だろうと思っております。
  135. 小林孝平

    小林孝平君 今回の選挙に憲法改正の問題が争点になっておらないとおっしゃいますけれども、われわれは少くとも憲法改正反対ということで戦いまして、国民の三分の一の支持を得て、この選挙の結果は終ったのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)これを一方的に自分たちはそういう憲法改正の問題を出せば選挙には負けるということよりも、官邸を廃止するとか、あるいは競馬を平日にやらないとか、あるいはマージャンをやらないとかいうような問題を掲げればこれは選挙には勝つだろうと思っておやりになっただけの話で、今回の選挙はあらゆる言論機関の最大の争点は憲法改正の問題である、その最大の結果は革新陣営が三分の一以上の議席を占めたことであるといっておるのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)この点について鳩山総理大臣はどういうふうにお考えになりますか。私はこの際申し上げておきますが、先ほど廣瀬委員からきわめて慎重にやれという御意見があったので総理大臣は慎重におやりになって今後何でもしゃべらない方がいいというような態度をとられると困りますので念のため、われわれは廣瀬君とは意見が違いますから明瞭率直に御答弁を願いたいと思います。
  136. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私の憲法改正についての見解はただいままで申したことによって御了解をしていただきたいと思います。
  137. 小林孝平

    小林孝平君 これ以上この問題については申し上げてもむだでございますので、それならば首相は衆議院予算委員会で、自衛のためには軍隊を持ってもいいという国論になったと答弁しておられますが、一体国論というのはどういうことを意味するのですか。何によって国論というものは形成されるのかという点を一つよくわかるように御説明を願いたいと思います。
  138. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 自衛隊法が国会を通過したからして自衛隊法には直接または間接の侵略について防衛する任務を有すと、自衛隊法は自衛のためならば兵力を持ってもいいということをきめたのでありますから、それですから憲法第九条から見ますといかなる兵力も持ってはいけないように見えております。前文後文を見ればなおさらそういうふうに考えられるのであります。しかしながら自衛隊法には直接または間接の侵略に対しては防衛する任務を有す、と書いてあるから、それで私は自衛のためならば軍隊を持ってもいいということを申したのであります。なお憲法第九条には無抵抗主義をとったわけではないのであります。侵略があった場合にほこを持ってはいけない 兵力を持ってはいけない、侵略があれば直ちに降伏をすべしということは書いてないのであります。それですから、憲法第九条にも無抵抗主義を採用してない以上は自衛隊法が国会を通過した今日は自衛のためならば軍隊を持ってもいいと解釈すべきが当然だろうと私は思っているのであります。
  139. 小林孝平

    小林孝平君 この問題については後ほどやりますが、私はその前に国論というのは一体どういうことでございますかお伺いしたい。
  140. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 国論というのはいろいろなことに、国民全体の意見を問うても国論でありましょうし、国会決議があればそれも国論といえるだろうと思います。
  141. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 関連して……。ただいま総理大臣は非常に重大な御発言を下されたと思いますが、防衛のためであるならば軍隊を持ってもいいということが承認をされたというふうな御発言でありますが、自衛隊法をお通しになるときにはそういうことは言っておられない、軍隊ではないということによってそれを了承をしたと皆さん方はおっしゃっている、私たちは意見は違いますけれども。従って、また今総理自身がおっしゃるように憲法もそれを明瞭に否定をいたしておるにもかかわらず、その憲法が否定をしておることを自衛隊法は修正をするなり、改めるなりして防衛のためであるならば軍隊を持っていいということを規定したのだというふうに総理は御説明になりました。それは明らかに憲法に違反をするものだと思いますが、その点をどういうふうにお考えになりますか。
  142. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 軍隊という文字は、まあ昔は広く国際関係紛争のために兵力を持つ、そういうこともできるという意味であったのであります。今日の日本が持っている自衛隊という防衛力はそういう意味においては軍隊ではないでしょう。そういう意味においては軍隊とは言えないでしょうけれども、国を守るということも兵力だということは、これは認めたわけでありますから、それを軍隊と言って悪いというはずはないと思うのであります。
  143. 小林孝平

    小林孝平君 首相はかって自衛隊は憲法違反であると強調されたのであります。そのために自由党に復帰されるときも憲法改正を、条件ではありませんけれども、憲法改正を将来やると、そのために調査会を設けると、そういうことで自由党にお戻りになったわけであります。ところがそういうお考えになっておったにもかかわらず、自衛隊法の採決の際にはおそらく賛成をされたろうと思うのです。そうして今の総理大臣の御説明によると、自衛隊法は通ったのだから憲法改正の必要がないと、こういうお話でありますから、これは非常に矛盾しておりますよ、理論的に。自分で憲法違反であると、こう言いながら、自衛隊法に賛成して、これが通ったから今度は憲法の改正は必要としないというのは理論的に非常に矛盾をしていると思います。この点いかがお考えになりますか。
  144. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 言葉じりをつかまえて言うようではありますけれども、自衛隊法が通ったから憲法改正  の必要なしとは言わないのであります。第九条は、やはり国の名誉のためにも軍隊を持ってはいけないというのは非常に不都合なことだと思いますから、九条は改正したいと思います。改正すれば自衛隊法の兵力を軍隊を言ってもだれも疑う人はないのでありますけれども、あの第九条があれば自衛隊法に言うところの防衛力は軍隊にあらずという議論を言う人もありますから、それでそういうような不明瞭なあいまいな法規は改正すべきだと思うのであります。
  145. 小林孝平

    小林孝平君 私も総理大臣の言葉じりをとらえて議論をしたいとは思いませんけれども、先ほどからの議論では国民が納得しかねるのであります。先ほども申し上げたように自衛のためには軍隊を持ってもいいという国論になったから当分は第九条はそのままでいいだろう、こういうような御発言だったのです。そこで国民は一体国論とは何だ、こういうことでですね、どんどん国論を製造されて、そうして押しつけられてはたまったものではないということで、今非常に不安にみなが襲われておるのです。そこで私は総理のおっしゃった国論とは一体どういうことであるか、今後こういう言葉でもってわれわれがみんな縛られていってはたまらないからお尋ねをいたしておるのであります。一つはっきりとお教を願いたいと思います。
  146. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 先刻も申しました通りに憲法改正の問題を国民の投票に求めれば、一番それに対する国論はわかるのであります。しかしながら国会の解釈もまた一つの国論だと見ても差しつかえないと思うのであります。それで自衛隊法を出して御説明した次第であります。
  147. 湯山勇

    湯山勇君 ただいまのに関連してお尋ねしたいと思いますが、総理のおっしゃることは、憲法の条文字句の改正は、国会では三分の二、そうして国民投票という手続を経なければならない。けれども条文字句に関係のない実質的な政変というものは過半数の国会の力でできると、こういうふうにとられるのですが、そういうふうに解釈してよろしゅうございますか。
  148. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 憲法改正の動議は三分の二なければできませんが、しかしながら憲法改正の委員会を作るとか何とかということは過半数できると思っております。
  149. 湯山勇

    湯山勇君 違います。私がお尋ねをしておるのは、先ほど小林委員お尋ねしたように、憲法を改正しなければ軍隊は持てないというふうに自分は考えておったけれども、自衛隊法が成立したことによって憲法改正をしなくても、自衛のための軍隊は持ち得ると解釈して国論となったと、こういう御答弁があったわけです。
  150. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) そうです。
  151. 湯山勇

    湯山勇君 そういたしますと、憲法の字句の解釈ということは、三分の二の発議と国民投票という決議が要るけれども総理考えておられたように、憲法を改正しなければ軍隊は持てないとお考えになっておったのが、軍隊は自衛のためならば持てるという解釈に立ったということは、国会の過半数の決議によってなされたわけです。実質的にこういう改変は過半数でできて、形式的な字句の条文の改正はただいまのようなむずかしい手続をしなければできない、こういうようにとれるのですが、そうでございますか。
  152. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私はそういう意味ではないのであります。自衛隊法というものができて、九条の文字がありましても自衛隊を持つということは憲法違反にはならないというわけで、憲法改正にはならないという意味であります。
  153. 湯山勇

    湯山勇君 実質的な改正になる……。
  154. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) つまり憲法九条は無抵抗主義をとったということは明瞭でないわけであります。他国から侵略があった場合においては兵力は持ってはいけない、服従するより仕方がないという意味でできたのではない。(「兵力はないよ」と呼ぶ者あり)
  155. 小林孝平

    小林孝平君 私はただいま湯山君の質問をこれからしようと思っていたとところなんですけれども、私はこの憲法改正については非常に厳重な手続規定がある。ところがそれはその条文を削除するとか、あるいはなかったものをつけ加えるというようなときははっきりいたしております。しかしその条文の解釈はそういう新たなる条文をつけ加えるとか、削除するとかいうことと同じ意義を持つ場合が非常に多いのです。そういうような憲法の解釈のいかんによっては新たな条文の追加、あるいは削除と同じような意義があるわけです。その点を、この条文の解釈については、国会の過半数を得れば白も黒と言いくるめることができるということになったらこれは大へんであります。御承知通り自由党内閣のときは過半数をとっておりましたからどういうことでもできたわけなんです。かりに鳩山内閣が今後四年後に総選挙をやって、そうして過半数をとったとき今のような総理大臣のお考えであれば、これは憲法をどんどん勝手に解釈して、極端に言えば黒を白とも、白を黒とも言って、そうして勝手に憲法改正の手続なくしてこれを骨抜きにすることも私は可能であろうと思う。  そこで私はその点を総理大臣にお尋ねして国論という名前できわめてあいまい模糊としたこの言葉でもっておやりになることはどうかと思うので、国論とは何だということをお尋ねしておるのです。それを今お尋ねしておれば、国論とは国会において過半数をとることも国論であるというようなお説でありますので、もう少しはっきりしていただきたいと思うのであります。
  156. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 憲法の改正は、憲法の規定しておる通りに三分の二以上の発議がなければ憲法の改正の動議は出せません。けれども、そのいかなる意味を持っておるかという憲法の解釈は国会の多数でもって決定できると思います。
  157. 小林孝平

    小林孝平君 ところが憲法の解釈はたまたま自衛隊法の場合は国会にかけられたから、この法律によって憲法の解釈を逆にやるというようなこともできましたが、あなたの内閣におきましては閣僚の発言がまちまちではありませんか。たとえば十二月の二十二日に衆議院予算委員会で前の大村防衛庁長官は自衛隊は違憲でない、自衛隊は軍隊であると、こういうふうに答弁をされております。さらに三月八日の閣議後の記者会見で、同様に大村長官は戦力の拡大解釈を説明して、吉田内閣と違って必要なものはどんどん持つ、自衛のためなら憲法改正の必要はない、原爆攻撃には原爆で応戦してもいい、こういうことまで言っているのですよ。さらに杉原長官は二十六日の衆議院予算委員会で実質的には軍隊と言っても差しつかえない、けれども、軍隊と同じ実質を持つ分が非常に多い、そう言いながら公けには軍隊と呼ぶことができない、こういうようなことを言っている。それぞれ勝手の放言をやっておられるわけなんです。こういうことがいつの間にか積み重なってそのうちの都合のいいものをとって、これは国論であるとしうようなことをやられては、これはたまったものじゃないのです。一体こういうふうに閣僚が勝手の放言をされておるのについてどういうふうにお考えになりますか。大村長官はもう首になりましたが、こういうこと言ったからこれは罷免され新たに今度は新内閣には入らなかったのですか。原爆には原爆をもって応戦してもいいということをはっきり言っているのです。総理大臣の御答弁をお願いいたします。
  158. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 軍隊という文字の解釈でありまして、軍隊というものを非常に広義に解釈する人もあるし、狭義に防衛のためだけでも、それだけのものでも軍隊だというように解釈する人もありまして、いろいろに解釈されても仕方がありません。
  159. 小林孝平

    小林孝平君 これは一般責任のない人が解釈するなら差しつかえないわけなんです。これは閣僚が、しかも防衛庁の長官という責任の地位にある人が勝手のことを言っても仕方がないというのはこれは困ると思うのです。鳩山内閣というものは各閣僚が勝手の放言をしてもこれは仕方がないというふうに総理大臣はお考えになっているのですかどうですか。こういうことはお尋ねするまでもないと思いますけれども、今のお話だと各閣僚が勝手のことを言ってもそれは仕方がない、こうおっしゃっているように聞えますので念のために、これは失礼かとも思いますけれどもお尋ねいたします。
  160. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 現在できておる自衛隊が憲法違反で無効だというような問題ならば、軍隊という定義についても非常に重要性があるわけなんです。しかしながら今日現存する自衛隊を無効にしようとする考え方をしている人はないのでありますから、(「ないことはないよ」、「あるよ」と呼ぶ者あり)失礼しました。あるならばあるでしょう。けれども、私は自衛隊を現実の事実としてこれを認めている現状だと思いますので、それならば軍隊という文字を争ってもみても別に実益のないものですから、これは学者のなんというか、楽しみのようなものでしょうな。(「憲法問題ですよ」と呼ぶ者あり、(笑声)
  161. 小林孝平

    小林孝平君 こういうことは学者の楽しみのようなものであるというような総理大臣の御発言はどうかと思うのです。こういうことは先ほどの廣瀬委員の言われたように少しつつしんでいただきたい、(笑声)これはあまりに総理大臣としても明朗過ぎると思う。そこで私はさきも申上げたように、大村長官の言った原爆攻撃には原爆で応戦できる、こういうことを言っておられるのでありますけれども総理大臣もそういうふうにお考えになりますか。
  162. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私はそうは考えていません。原爆を所持するということは、そういうような兵力を持ってもいいというようには九条を解釈していないのです。あの九条にはずいぶん九条のできたときの模様、それから前後の文章を見て、原爆までも持ってもいいということは許していないと思います。(「軍隊も持っちゃいけない」と呼ぶ者あり)自衛のためなんですからね。自衛というもので制限せられていますから、原爆というものを持って自衛をするというようなことはちょっと考えられないと思います。(「アメリカも自衛のために持っているんだぜ」と呼ぶ者あり)
  163. 小林孝平

    小林孝平君 しかしこれを言ったのは、あなたの第一次鳩山内閣閣僚なんです。この閣僚がこういうことを言ったのに対して、これは三月の八日に言われているのでありますけれども総理大臣はこういうことに対しては責任をお持ちにならぬのですか。
  164. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は大村君がそれを言ったかどうか知りません。
  165. 小林孝平

    小林孝平君 これは現に三月八日の閣議のあと、記者会見ではっきり言われておるのです。各閣僚が勝手なことを言ったのは、そういうことは知らない、こういうことを総理大臣が言われるなら、そうしますと、今まで鳩山内閣閣僚が、四十二万戸の住宅建てるとか、あるいは何をやるとかかにをやるとか、五百億円の減税をやるとかと言われたことは、あれはみんなこのたぐいなんじゃないのですか。
  166. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 閣議であったことは承知しております。閣議にあれば私は承知しているのですが、大村君がそういうことを閣議で発言したことはありません。原子爆弾を日本が持ってもいい、あるいは自衛隊が原子爆弾によって防衛するというような発言はいたしてはおりません。
  167. 小林孝平

    小林孝平君 閣議に発言したもの以外は責任を持てないということであったら、これは大へんだと思うのです。たとえばアメリカとの防衛分担金の折衝をやる、閣議で発言しなくても、折衝の途中にいろいろなことを外務大臣が言うというようなときに、それは閣議に発言しないから私は責任を持ちません、こういうことであったら、今後鳩山内閣閣僚の発言は、大よそこれは放言に近いものである、こういうふうに国民は思うようになるのではないか。私は鳩山内閣のために惜しむからお尋ねいたしている。
  168. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 大村君がそういうことを言ったことを知らないということを言ったのでありまして、知らない以上知らないというよりほかに仕方がない。
  169. 小林孝平

    小林孝平君 それならば今お知りになったのですが、あなたの閣僚であった大村長官がこういうことを言われたのです。こういうことに対して、あなたはどういう措置をとられますか。あれはやめさせたのだから、それで仕方がない。こういうのか、こういうふらちな発言をやったのだから、それは申しわけない、私も責任をとってやめるとか何とかおやりになるとか、はっきりしてもらわないと、今度は知らない知らないでみなあなたにやられては、これはもうどうにもしょうがないわけなんです。
  170. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 事実知らないものを知っているということはまたむずかしいものです。知らないのですから、それに対して責任をとることもできません。
  171. 小林孝平

    小林孝平君 あなたが御存じなかったことはわかりましたけれども、そういうことを今わかったのです。そういうことを言ったことはわかったのです。だから総理大臣として、今どういう責任をとられる。しゃべったことは仕方がない。しかしかりに、犯罪を犯した、あるいは窃盗、強盗をやった、そういうことは、そのときわからないけれども今わかったというときに、鳩山内閣はそれでも、あれは私は知らなかったから責任をとらないとおっしゃるのかどうか、こういうことをお尋ねいたしておるのです。
  172. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) これはやはり法文の解釈の問題でして、第九条は防衛力は持ってもよろしいというわけなんです。防衛力を持ってもよければ、原子爆弾を貯蔵して、防衛の義務を尽してもいいという、大村君がもし言ったとすれば、そういう解釈なんでしょう。防衛力の範囲の問題でして、それは私はその論はとっていないということでして、どうも大村君がそういう意見を持っているものを、全然否定するわけにもいかないでしょう。つまり憲法改正の問題のときにそういう問題は明瞭に解釈せられるのでありまして、憲法を改正しなければそういう疑いがあるのは事案なんですから、防衛してもいい、防衛してもいいが防衛する手段は限定せられているのかせられていないのかという問題なんですね。防衛力というものに重きを置いた大村君は、防衛するためならば原子爆弾まででもいいと思ったのでしょうけれども、これは間違っているということを言うのも、これはやはり全部の解釈からそういうことを言うだけでして、どっちがほんとうだかどっちが正しいかはこれはどうもちょっと議論ができないだろうと思う。
  173. 小林孝平

    小林孝平君 それは、先ほどあなたは、私はこういう考え方をとらない、そうしてそういうことは私は閣議で発言したのでないからそれは大した責任がないのだ、こういうことだった。ところがうしろから根本官房長官がそういうことをやっているとこれは困るというので、(笑声)今度は方向を変えられましてそういう考え方も成り立つんだ……。官房長官は妙なことを教えられるものだから、これはだんだん変なことになって来ますよ。(笑声)あなたはそういうことを教えられていると……。総理大臣は毅然として自分はこういう考えであるといって閣内を統率する義務があると思うのです。こんな勝手な放言をして、あとからどうもそれは困る、そういう不始末な子供ができたから何とかこれは理屈をつけて言いのがれようというようなことをおやりになっておったら私は困ると思うのです。あなたが、かりにそういう大村長官の言われたようなことを弁護されるならば、多少それもやむを得ないというような考え方を持っておられればこそ、原爆貯蔵の問題なども軽々しくこれもやむを得ないと言つて発表されるのです。あなたがそういうことは絶対しないのだ、そういうことは許すべからざることであるという毅然たる態度を持っておられるならば、新聞記者会見でもこういう説明はされなかったろうと思うのです。私は二の問題はあとからお尋ねいたしますからこの程度にいたしまして、これに関連いたしまして後ほどお尋ねをいたしたいと思うので次に移ります。  次は防衛関係の問題についてお尋ねをいたします。二十五日に外相と蔵相は帝国ホテルでアリソン駐日大使、ハル極東米軍司令官、テイラー第八軍司令官に防衛問題でもっていろいろ懇談をされております。これでこの会見によりまして日本の防衛の基本方針、防衛分担金問題等をいろいろ御相談あったことと思いますが、そこで私はまず総理お尋ねいたしたいのは、日本の防衛の基本的の構想についてお伺いいたしたいと思うのであります。この日本防衛についてどういう構想でもっておやりになるのか、内閣で防衛六カ年計画とかいろいろお立てになる、あるいは防衛分担金の削減についてアメリカと交渉される、そういうことはすべて基本的な防衛計画に基いて、そういう構想に基いてやられるものだろうと思いますので、基本的な構想お尋ねいたしたいと思います。
  174. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 日本の防衛についての基本的の考えですか。
  175. 小林孝平

    小林孝平君 そうです。
  176. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 日本の防衛は安全保障条約を根拠として考えるより仕方がないと思つております。
  177. 小林孝平

    小林孝平君 それならば具体的にお尋ねいたしますけれども、防衛庁の防衛六カ年計画には一体原爆の問題をどういうふうにお考えになっておるのでありますか。何しろ大村長官は原爆攻撃に対しては原爆をもって応戦してもよろしいということを言われたのは、この間まで長官であったのでありますが、この六カ年計画には原爆の問題をどういうふうに考えているか。私は防衛計画の立案の前提として考えられることは、自力で日本を守るということではなくて、米国その他のいわゆる西欧陣営の協力によって集団防衛の一環として日本を防衛するという政府の方針であろうと思うのであります。  そういうことであれば、この原爆の問題について、どういうふうに考えておられるか。原爆などは全然考えておられないのか、あるいは考えておられるのか、その点についてお尋ねいたします。
  178. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は防衛の問題について概略こんな考え方をしているのであります。先日片山君が質問された通りで、今日の第三次世界大戦というもものは、そう無警告に突然と始まりやしない。戦争というものが始まれば、世界のどのすみで始まっても大体わかる。この防衛をするのについても相当の期間がある、それだから日本は防御力を持たなくてもいいのだ、こういうような大体のお話ですが、私も考え方についてはあんまり離れてもいないのです。日本が防衛をする場合に、敵国の侵略に対して防衛するのに、やはり突然の侵略というものはなかなかない。侵略があれば、相当準備の期間がある。それはやはり国際連合の力とか、他国の力によって防衛をしてもらうというのが一番いいと思います。自分自身の独自の力で、他国の援助なしに日本を防衛するという力を持つということも不可能なことだと思うのであります。それですから、他国の侵略がある前に、突然の侵略に対して防ぎ得るある程度の防衛力を持てばいいと思っているのであります。それについて日本の防衛六カ年計画というものができ上るのではないかと思っておりますが、その点に対しては無知識でありまして、私にはそういうことは言えないのでありますけれども、自分の考え方としてはそういうような気分で、日本みずからの力で日本を防衛するということは不可能なことである。従って原爆を持つということも必要がないだろう、こういうような気分なんです。
  179. 小林孝平

    小林孝平君 総理も認められたように、日本独自では防衛はできない。そこでアメリカその他の諸国と西欧陣営の協力によって集団防衛をやろう、こういうことなんです。そこで、今近代戦で、原爆のない近代戦なんというのはナンセンスだろうと思うのです。近代戦という言葉を使うならば、原爆のない近代戦なんかナンセンスである。そこで首相はここ数日東言葉を濁されておりますけれども、私はそう思わないので、さすが総理大臣は近代戦における原爆の意義を十分認識されているのではないかと思うのです。あまり方方から突っつかれる、特に廣瀬委員のように慎重に慎重になどおっしゃるものだから、だんだんとあまりものを言われなくなったけれども、本心は近代戦における原爆の意義を十分認識されているのではないかと思うのです。認識されているから原爆貯蔵の発言などをされるのです。そこで私は、そういうふうに認識されている総理大臣でありますから、日本の防衛六カ年計画は原爆について全然考えないのか、考えているのか、その点をお尋ねいたしたいと思います。
  180. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は日本の防衛計画については少しも存じませんが、ただ自分の考え方としては原爆を持つ必要はないと思っているのであります。
  181. 小林孝平

    小林孝平君 日本の防衛計画について全然御存じないということでございますが、一体それはどなたがおやりになるのです。防衛庁長官だけにおまかせになっているのですか。ところがその防衛庁長官は、大村長官のように勝手な放言をして数カ月後には消えてなくなってしまった、こういうことで、一体だれが責任を持たれるのです。私はこういう最も重大な国務であろうと思うのです。それを総理大臣が、私は知らないとおっしゃるのは、何かほかにお考えがあってそういう御答弁をなさるのですか。
  182. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 自衛隊法の中に国防会議をこしらえるということが書いてありますが、この自衛隊法にある趣旨により、まして国防会議を作りたいと思っております。そうして日本の国防計画立てたいと考えております。これもやはり多数がなければ、私ども少数党ですから、国防会議に賛成するかどうか、とにかくボーリングを打ってみて、大丈夫通ると思わなければ国防会議を出すわけには参らないのであります。仕方がないです。
  183. 小林孝平

    小林孝平君 少数政党であるから仕方がないと、こういうことであったら内閣の首班の指名も辞退されたらいいと思うのです。こんなことは少数党内閣でできないことはわかっているのです。それを進んで総理大臣におなりになったので、今さら少数党政党だから仕方がないということで全部やられてはたまったものじゃありませんけれども、そういうことをやっていても時間が来ますから、次の問題をお尋ねいたしますが、重光外相の外交演説では、外相は、国際情勢を概観いたしまして米英等の民主陣営は力による平和の態勢を築き、もって勢力の均衡を有利にする二とによって、共産側を真の平和共産に誘導せんと努力していると、そこで私は、重光外相にお尋ねいたしますが、あなたは力による平和という現実を認めておられるのかどうかということをお尋ねいたします。
  184. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 私は今の両陣営の争いを、今お読み上げになったように見ております。両方とも力をもって今勢力均衡を得て平和を維持しておるような現状で、この現状は事実問題として認めざるを得ないと思います。しかし何とかしてこの力による勢力の均衡、これによって平和を維持するというような方法でなくして、その力によらぬでもいい方法にだんだん進めていく、国際間の緊張を緩和する方向に向けていくことが政策としていいんじゃないかと、こう考えております。
  185. 小林孝平

    小林孝平君 それははかない外相の希望であって、現実は今申し上げたように、力による平和という現実なんです。それは外相はお認めになるわけなんですか。
  186. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 現実の問題として認めております。
  187. 小林孝平

    小林孝平君 そういたしますと、鳩山総理大臣は衆議院予算委員会において、原爆の貯蔵の問題に関連いたしまして、力による平和を是認するなら、原爆の貯蔵も認めなければならないと言っておられるのであります。そうしますと、今のように力による平和という現実の前、外務大臣も施政方針演説で述べられておりまするけれども、この現実を是認しておられるのです。そうすると、原爆の貯蔵もこれは認めなければならぬ、こういうふうに思いますが、総理大臣はもちろんそうだと御答弁になるわけでございましょうか。
  188. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 原爆の貯蔵ということを、日本に貯蔵することによって、力による平和が維持せられていくということを言っているわけじゃないのです。衆議院予算委員会において、アメリカは原爆を船の上に持っているのじゃないかというようなことを言って質問されたこともあります。船の上に持っているアメリカならば、日本に貯蔵するという必要もないのです。重光外務大臣も私も、アメリカはそういうことを日本に要求はしまいということを言ったのでありますが、要求はしまいという意味は、日本に貯蔵をしなくてもやはり原水爆はアメリカが持ち得るものですから、日本に貯蔵しなくても力による平和が維持できるということができると、こういうように思っているのであります。アメリカはイギリスに対しては、イギリスに原爆を貯蔵したいということを申し込みまして、イギリスはこれを承知したのでありますけれども、日本に対しては何事も言ってきておりませんから、どこかにアメリカが貯蔵してあるのだろうというようなおそれもないのであります、現在は。
  189. 小林孝平

    小林孝平君 あなたは予算委員会における質疑内容をお忘れになっているのであります。これは日本に貯蔵するかどうかという問題に対して質疑が行われまして、あなたの日本の原爆を貯蔵するという発言に対する質疑応答なんです。それに対しまして、あなたは力による平和を是認するなら日本に原爆の貯蔵を認めなければならないとおっしゃっているのです。だから私はこれはほんとうお尋ねするまでもなく、当然なんですけれども、今のようにお忘れになるから念のために、あなたはこうおっしゃいましたということをお尋ねしているのです。これはあなたはほかに言いのがれようがないと思うのですがね。どうでございましょう。
  190. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私が外人記者団に話をいたしましたのは、今日の世界は力による平和だということであるが、もしも力による平和だと言つて、アメリカが基地に原爆を所持したいという申し込みをしてくれば、それに対しては原爆を所持するということが平和を維持するゆえんならばジャステファイせられるならば考慮をしなくてはならないと、こういう返事をしたのです。
  191. 小林孝平

    小林孝平君 だからこれは今の外務大臣の外交方針演説の中にも、明らかに力による平和の現実を述べられた、ふた是認されている。また総理大臣もおそらく是認されているでしょう。日本の防衛計画というものは、日本だけで単独にやれるものではない、西欧陣営の一環としての日本の防衛を考えているのだから、従ってこの力による平和を考えている。これを是認して、そういうことをやっておいでになるのだから、これを認めて、そうして日本も向うから申し入れがあれば原爆の貯蔵もまたやむを得ないと、こういうふうにおっしゃつているのだろうと思うのです。これ以上この問題を私は繰り返したくありませんので、ここで同じくこの問題につきまして、総理はこの原爆貯蔵の問題について、米国はそんなことは——原爆貯蔵の要求、申し入れですね——そういうことはしないだろう、また道義的にもしないだろう、こう言つておられるのですけれども、こういうしないだろう、道義的にしないだろうという考え方は、非常に甘いのではないかと思うのです。第一回の原子爆弾の攻撃を日本に加えたのはアメリカなんです。またヤルタ協定によって明らかにされた、日ソ不可侵条約を侵犯して、ソ連が日本に対日宣戦をするように勧奨したのはアメリカなんです。これは戦争中だと言えばそれまでであるけれども、ともかく国際間の関係においてはどういうことがあるかもわからぬ。道義的にはしないだろう、私はこういうことでは納得できないと思うのです。現に私が繰り返して申すように、第一回の原子爆弾の攻撃を日本に加えたのはアメリカなんです。またビキニ環礁において無警告に水爆の実験をしまして、わが第五福龍丸にあのような悲惨な損害を与え、また日本の漁業に壊滅的な打撃を与えるようなこういう水爆の実験も勝手に膨大な大洋においてやっているのです。この道義的にしないだろうとは、どういう観点に立ってあなたはお考えになるのか、お伺いしたいと思います。
  192. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は無警告にアメリカが持ってきやしないだろうと思いますし、事実上アメリカはその必要を感じないだろうという考えでそう申したのであります。
  193. 小林孝平

    小林孝平君 事実上アメリカはそういう必要を感じないだろうとおっしゃるけれども、あなたは日本の防衛計画すら自分は知らないとおっしゃっておる。そういうような状態で、アメリカの防衛計画がおわかりになるはずがないだろうと思います。ただ、あなたは非常に明朗であって、また闊達な御気性でございますから、人を疑わないというきわめて善良なる性質を持っておいでになるからそういうふうにお考えになるけれども、世の中はそんなものじゃないのです。現にあなたはしばしば吉田さんのために苦い経験をおなめになっております。(笑声)同じ日本人でもこういうことをおやりになるのです。ましてアメリカ人です。大体そんなこと考えていたらどうなりますか。あなた一人の総理大臣になれるとかなれないという問題ならいいけれども、われわれ八千数百万の人間が、あなたが好人物のために、道義的にやらないだろうなんという甘い考えのために水爆の最初の攻撃を受けましたら、これは大変なことなんです。もう少し慎重に研究していただきまして、この点は一つ御慎重に願いたい。  そこで、最後に一点お尋ねいたしますが、あなたは三月二十四日の衆議院の本会議におきまして、わが党の細迫議員の原爆問題に関する質問に答えられまして、国会の原爆実験反対の決議はもとより尊重いたします、実験には今日でも反対すべきものだと思っていると答えられたのであります。私は、これは非常に重要なことだろうと思うのであります。これは、鳩山内閣として原爆実験に反対をするという立場を正式に声明されたのでありまして、こういう声明を内閣はおやりになる以上は、アメリカに向って、アメリカは今週ビキニにおいて再び水素爆弾の実験を行うということを言明しております。従って、今回こういうふうに反対すべきだと考えておられるならば、アメリカに向って原爆実験の中止を要求されるのが当然だろうと思います。それをおやりになるかならないか。もし総理大臣がお答えできなければ、外務大臣でもよろしゅうございます。(「総理総理」と呼ぶ者あり)
  194. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) アメリカに対しては、原爆実験について日本から要請をしているものと考えております。
  195. 小林孝平

    小林孝平君 原爆実験をやってくれというふうに要請をしておるのですか。
  196. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) いや、やらないようにして下さいと。
  197. 小林孝平

    小林孝平君 外務大臣にお尋ねをいたします。そういうことをいつおやりになりましたか。
  198. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 原爆実験によって日本の利益が害せられるということは、これは非常に日本としては耐えられぬところでございます。そこでビキニ原爆の跡始末としてこれを解決する際にも、アメリカ側に厳重に将来かようなことの繰り返せられないことを要請したのでございます。その要請に応じてあらゆる予防手段を講ずるということを申して証言を与えました。しかし、それだけに満足することはできません。そこで、その後にビキニでありますか、アメリカが委任統治権を持っておる太平洋においてまた原爆の実験をするという報道が新聞紙上にありましたから、その実否を今確かめておる階段でございます。いよいよそうであるということになれば、その実験に対して警告を与える、少くともこれに対してはアメリカの真意を十分確かめなければならぬ、こう考えております。
  199. 館哲二

    委員長館哲二君) もう時間がありませんから簡単に願います。
  200. 小林孝平

    小林孝平君 外務大臣、そういうことじゃだめです。あなた全然ビキニの実験の問題について勉強されておりませんよ。こういう重大な問題をそういういいかげんなことでは困ります。アメリカは、はっきりとビキニにおいて再び実験をする、あれ以外実験の場所がないということを言っておるのです。これは自由党内閣のもとにおいてもはっきりと言っておる。しかし、自由党内閣のときは、岡崎外務大臣のようにああいう軟弱外交でございましたから、ビキニの水爆実験には協力すると、こういう自由党の態度であったから、この実験禁止を申し入れできなかったのです。ところが、総理大臣は今度は違って、初めてこの問題について公式に発言されて、自分は原爆実験は中止すべきものであるという重大な発言をされておるのです。そんななまぬるいことを言わないで、確かめるとか何とか言わないで、やめてもらいたいということを言うのが当然だと思う。(「そうじゃない、申し入れてあるはずだ。」と呼ぶ者あり)そこで総理はそう言われましたけれども、あなたはおやりになっておるのですか、申し入れを。
  201. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 私の申し上げたのは、そういう報道は公式じゃありません。通信報道がありまして、その実否を確かめて、そういうことが果してあるかないかということを今確かめておるところであります。(「いつまでかかるのだ」と呼ぶ者あり)その上で、その上で……。
  202. 小林孝平

    小林孝平君 総理は、わが国から原爆中止について要請をしてある、してあるはずだと、こうおっしゃった。
  203. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) それは、その真否を確かめた上で……(「してないじゃないか」と呼ぶ者あり)
  204. 小林孝平

    小林孝平君 じゃ、してないじゃないか。総理はやってあるはずだと、こう言っておられる。外務大臣はやっておられないと言っておる。あなたは総理と事ごとに外交方針が違うのですが、この問題についても、総理は手紙を出したはずだと言っておられるのに、あなたはさぼってやらないのですね。(笑声)
  205. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) ビキニの問題について、ビキニの事件があったものですから、ああいうことが再びないようにするためにアメリカに交渉したということを重光君から文書によっても私は承知したのです。それで私は先刻のような答弁をいたしたのであります。
  206. 小林孝平

    小林孝平君 そうしますと、結局実験を中止してくれということはまだやっておいでにならんのですか。それで、先ほど申し上げましたように、吉田内閣のもとにおいてはアメリカの原爆実験に協力するという建前から、向うにやめてくれということは言えないということだった、ところが、鳩山さんは、これを大転換されまして、この原爆実験は中止すべきものであると国会においてはっきり明言されておる。それならば、すみやかにアメリカに向ってこの原爆実験の中止を要請されたらいいと思う。それをおやりになるかどうか。
  207. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 今調査をいたしましたところ、昨年末に申し入れております。そうして、それはまず向うにそういう意向があるかどうかということを突きとめて、あるということを確かめて、そうして申し入れたわけであります。
  208. 小林孝平

    小林孝平君 それは間違いです。外務大臣はそういうことをおっしゃるけれども、昨年末に中止の要請をしておるはずはないです。されておるならば、その文書をお出し願いたいと思う。そういうことはやってあるはずがないです。(「うそ言っている」と呼ぶ者あり)間違いです。それはやってあるとすれば、実験をやってもその被害がなるべく軽るなくようにというような程度なんです。実験をやめてくれという文書は出ておりません。外交のことはしろうとにはわからぬなどということでおやりになっておるのではないですか。この問題はそんな簡単な問題でないから、われわれはもう非常にこの問題について研究いたしました。あなたよりよほどわれわれは調べております。そういう文書があったら当委員会にお出しを願いたいと思うのです。委員長に要求しておきます。
  209. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 今申し上げたことは、事務当局の報告によって申し上げたのであります。そしてそれについて今御要求があったことを取り調べて、それを御報告いたします。
  210. 館哲二

    委員長館哲二君) 委員長から申し入れますが、今の文書の内容がはっきりしましたら、こちらへ提出をしていただきたいと思います。
  211. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 関連……今の総理の御発言によって、原爆の実験は好ましくないものであると、従ってこれは好ましくないからやめてくれということを申し入れたはずだという言明がありましたが、どうもそこいらがあいまいになって、申し入れたかどうかがわからない程度で今のようなことになりましたが、過去において申し入れたかどうかは別問題として、この席において総理が明瞭にそういう言明をなされた以上は、新たにでも申し入れるべきであると思いますが、その点について総理はそういうふうにお考えになる約束をされるかどうか、その点をはっきりしていただきたい。
  212. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) ビキニの問題がありましたときに、ああいうようなことを再びやっては困るから、アメリカに忠告を与えたというようなことを私は読んだので、それで私はさっきの説明をしたのでありますが、もしもそういうことがしてなかったならば、さっそくにやりたいと思っております。
  213. 永井純一郎

    永井純一郎君 鳩山総理お尋ねいたしますが、先ほど来小林君から、憲法なり防衛の問題について、だんだんと質問がなされました。私も常に感じておるのでございまするが、吉田内閣以来、保守政党が日本の防衛について何ら自主的に、しかも積極的に考えておらぬ。具体的に、軍事的には何の知識さえない、無責任であるということが明らかにだんだんとなって来ておるのであります。私はこういう点を基礎として、総理大臣がみずから常に新聞等でアメリカが押しつけた憲法だから改正するのだ、あるいは独立国になったのだから軍隊を持つのは当然だといったような、非常に抽象的な、われわれの感覚から言えば実に日本の実情からかけ離れておる、非現実的な無責任な感情論をただやっておる。それを国民がよくわからないで、国民の一部の人たちがよくわからないで軍隊を持った方がいいんじゃないかという感じをかなり私は持っておると思う。で、私はもちろん独立国になったのでございまするから、自衛権は私は当然あると思う。しかし、その自衛権を具体化して軍隊を持つかどうかということは、これは日本にとって日本の外交上、あるいは国の安全保障上、あるいは自立経済の達成上、あるいは財政政策上、あるいは国民生活安定の上からそれが適切であって、しかも可能であつて、かつ有効であるという場合にのみ軍隊は私は政策的には持つものであると思う。そういうことを少しも解明をしておらないで、独立国になったのだから軍隊を持つのは当然だというような、子供だましの非常に飛躍した議論で国民を迷わしておると私は思うのです。  そこで、私は時間が非常にないので、簡潔に項目を追って総理質疑をいたしまするから、総理の答弁が非常に不明確な場合には、杉原さんなり外務大臣から補足をしていただいて、できるだけ詳細に、正直な、国民がよくわかるように私はお答えを願いたい。そうして国民とともにこの日本の防衛の問題を私は解明したい、こういうふうに思う。  で、私は一番先に総理にお伺いしたいのは、日本は果して、これはいろいろ考え方にもよるんでしょうが、軍隊というものを実際上持ち得るのかどうかということをまず総理にお伺いしたい。持つことが可能であるのかどうか、この点をまず伺いたいと思います。
  214. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は可能であると思っております。
  215. 永井純一郎

    永井純一郎君 そこで、さらにお伺いいたしまするが、それでは国民所得の何%ぐらいまではそういう費用に充ててこれを持とうとされるのか、この点をお伺いいたします。
  216. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 可能な範囲から、だんだんと拡張して行くより仕方がないと思っております。
  217. 永井純一郎

    永井純一郎君 そこで、政府は経済の六カ年計画立てておるのでございますが、六年後の国民所得が一体幾らになるかといえば、七兆四千億ぐらいにしかならない、政府自体の計画がそうなんです。できる範囲でと言われまするが、およそ私は見当というものはあると思うんですが、国民所得の何%ぐらいが適当であると思われるのか、重ねて私はこの点を明らかにしていただきたいと思う。総理がはっきり言われなければ大蔵大臣からでもけっこうです。
  218. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 私の考えでは、一がいに国民所得の何%ということを抽象的に言えないと思う。それはこの国の国情というものが非常に違うのであります。たとえば日本にしても、戦前と今日がいかに国情が違うかということで、国民所得が同じだからすぐ防衛費が何%と、こういう意見は私は成り立たぬと思う。それでそういう意見をよくよその国の人がするのでありますが、それは私とらないんです。そのことだけははっきり申しておきます。ただ私は今日言い得ることは、具体的に今の防衛費というものが国民所得に対して約二%それがしになっておる。ですから現実に今日の状態を言う以外に私は言えないと思います。そこで私は三十年度の予算等におきましては、国民所得に対して今のパーセントをこえることはできない。それは日本の国情が今日許さない。かように考えております。
  219. 永井純一郎

    永井純一郎君 それでは現在は約二%でもって、これが軍隊であるかどうかは別といたしまして、今日自衛隊というものを持っておる。六年後におきまして国民総所得を七兆四千億と政府は計算をいたしてわれわれに資料を提出いたしておりまするが、現在の二%というものを、順次私は総理大臣にお伺いしたいんですが、ふやして行くのではないかと思う。それでなければ憲法を改正して軍隊を持とうという議論は出て来ない。その点を総理大臣から伺いたい。
  220. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 数字に関することであるようでありますから、私から総理にかわってお答えいたします。それはやはり今申しましたように、六年先に単に国民所得が七兆四千億になるから幾ら、そういう観点で私は今考えるべきじゃない。もっともやはり今後六カ年計画を日本の復興について考える場合に、日本の防衛というものをどういう関連において考えなくちゃならぬかということは、これは考えなければならない。防衛いかんによって日本の経済というもののあり方も大きな影響を受ける。国民所得も大きな影響を受けるのでありますから、それは考えますが、今その点についてはまだ詳しい、ここでどういうふうになるというような結論が出ておらぬのであります。今この経済六カ年計画その他に関連をして具体的に肉をつけ、皮をつけ、骨をつけるというような、骨は若干あると思っておりますが、そういうような状況なのであります。  なお私ここで一言補足しておきますが、これは対外的ないろいろな関係もありますから申し上げますが、国民所得に対して今日二%と申しましたが、そうじゃない。もう少し大きい。ですから約三%に近いもので、しかもこれに日本の場合においてはいろいろと、よその国では国防費といい、日本では防衛費になりますが、よその国防費といううちの科目にはいろいろ入っておる。日本の防衛費のうちにはそんなのが入っていないのもあります。ですからすぐこれを何%と比較されて、日本が低いと言われるので非常に私困っておる点もあるのでありますが、日本の三%近いというものは決してそんなに低いものでないということを一言ちょっと申し上げておきます。
  221. 永井純一郎

    永井純一郎君 私が総理大臣にお伺いをしておる点は今大蔵大臣からお答えを願ったようなことではなしに、現在二%なり三%に相当するものが軍事費として支出されておるわけなんであります。しかし、あなたは国民に向って常にアメリカが押しつけた憲法であるから改正して軍隊を持つようにするのだ、独立国であるから軍隊を持つのは当然だというような、非常に抽象論で国民に呼びかけておる。そこでそういう議論をされるからには、憲法を改正してまで軍隊を持っていこうというからには、現在の国民所得に対する比率というものを順次上げていくという方向を私はとらざるを得ないと思う。あなたの憲法改正論から言えば当然そうなると思うのだが、そういう方針を基本とされるのかどうか、こういうことを総理大臣に伺いたいのです。
  222. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 財政のあんばいについては大蔵大臣から答弁をしていただくより仕方がありませんからさように御承知を願いたいと思います。
  223. 永井純一郎

    永井純一郎君 そこで、現在でさえ三%近いものを出しておる。今後あなたは憲法を改正して軍隊を持つべきだという積極論者なんです。私どもはそれに対して反対論者なんです。国民はこの帰趨に実際迷っておる。しかし、これを説得するのにあなたのような私は抽象論ではいけないということをまじめに考えるのです。ですから少くともあなたのような積極論者であれば、私は国民所得の現在で三%程度ぐらいでありますが、これを順次上げていかなければ憲法を改正してまで軍隊を持つとうということに私はなっていかないと思う。そういう基本方針はこれは当然総理としてお持ちであるはずだが、これをごまかさないで、先ほど言うように、はっきりそういう考えであれば考えであるということを言われたほうがいい、こういうのでお尋ねいたします。
  224. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は憲法の改正によって膨大なる強力なる軍隊を持ちたいという考え方をしておりません。財政の許す範囲内において少くとも軍隊を持っていきたい、こういう気分であります。
  225. 永井純一郎

    永井純一郎君 それではお尋ねいたしますが、六年後に七兆四千億にしかならない。それが今日のままの二%ないし三%くらいを軍事費に回すとすれば、特に国民生活の安定のための、選挙公約のような社会保障の制度に重点を置いてゆくという政策をとるとすれば、これは一千数百億にしかならない。その程度のもので一体どのような軍隊を持とうというのか、それを私は聞きたい。
  226. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) それは国防会議において決定してもらうより仕方がないと思っております。
  227. 永井純一郎

    永井純一郎君 国防会議にかけるのもけっこうだと思うのです。私が言うのは一番初めにお尋ねいたしましたように、軍隊をあなたが子供がおもちゃのサーベルを欲するような感情論で国民に訴えておられる点がいけないと思うのです。従って初めに私が質疑いたしましたように、軍隊というものを実際上持ち得ないと私は思うのです。不可能だと思うのです。それをあなたは可能だと言われたから、どういうふうに具体的に軍隊を持とうとされているのか。それをあなたは、やはり先ほど日本の防衛の構想についても無知識であり、無責任な答弁をなさいましたが、結局何も自主的な考えというものがないのだと思うのです。そこでさらに一歩進んで、国防にも六カ年計画があるが、政府が言っている六カ年経済計画とどういう関係を持つものであるか、この点を私はお尋ねをしたいと思う。
  228. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) これは先ほどもその点について私からふれておきましたが、まだそこを具体的に申し上げるところまで成果を持っておらぬということを先ほど申し上げたつもりであります。
  229. 永井純一郎

    永井純一郎君 総理大臣に私はお伺いいたしますが、これは私は法律論ではなくて、憲法改正、憲法上の問題であります。あるいは法律上の問題ではなしに実質的な問題として私はお尋ねしているのであります。また実質的な意味でお答えを願ったらいいと思うのですが、今総理大臣は軍隊々々ということを言われますが、これが自衛隊であれ何であれ、いずれにいたしましても今のような程度の軍隊を順次々々それでは作っていって、そうしていつ憲法を改正して、名前を軍隊ということに直そう、それはできるだけ早く、しかも先ほど小林君に対するお答えでは非常に積極的にこれは重大問題だからやるのだ、こういうお話があった。それは今のような自衛隊程度のものをもう少しよくして、もう少し充実したものを軍隊としていこうというお考えなんですか、その点を私はお伺いしたいのです。
  230. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 日本の軍隊は今のところ陸兵に重きを置いております。やはり海軍並びに空軍を持ちたいと思っております。
  231. 永井純一郎

    永井純一郎君 いや、そういうふうにお答えになりますから私は全く無責任だと申し上げたいのです。陸兵を持つだけでも一人の自衛隊員でさえ年間百万の予算が要るのだ、それを海軍だの空軍だの持って、どの程度のことをどうしようというのですか。そういうことが全く頭の中で無秩序になっておって、ただ子供がおもちゃのサーベルを腰にくっつけたような、そういう無責任な感情論で、選挙のために呼びかけられるから、国民は軍隊を鳩山さんがおっしゃるように持ったら国が守られるのじゃないかというような非常に大きな間違いに陥っている。しかも、そのためには莫大な費用がその程度のものであっても要るのです。その辺をもう少し秩序立てて、陸兵だけでいけないのだ、これからは海空軍を持ちたいのだ、それは全く子供だましの議論だと私は思う。そういうことであれば今の三%を一〇%にしても、なおかつ千機のジエット戦闘機さえ日本では持てない。その点をもう少し責任ある態度で私は御答弁を今の点はいただきたいと思う。軍隊というものをどういうものを考えておるか、そしてどういう程度になったら憲法を改正して本格的にやろうと思われるのか、この点は前の内閣のときでも非常にいつも不明確、国民に少しもその点がはっきりしないのです。鳩山総理大臣は積極論者でありますから、私はこの点はっきり今日国民に知らさなければならぬ、かように思います。
  232. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 憲法改正にもまだ時が要りますし、国防会議決定もまだできないのでありまするから、そういう理想において着々と準備をしていきたいと思っておるという意味であります。
  233. 永井純一郎

    永井純一郎君 しかし、それは幾ら言ってみましても、六年後にわずか七兆四千億しか——私はおそらくこれだけに国民所得はならぬと思います。そのときを考えてみましても、わずかに一千数百億か、あるいは無理をして使っても二千億ぐらいの軍隊しか持てない。財政的に不可能なことなんです。そういう点を私ははっきりと答弁をしていただかなければ、これは責任ある政府の態度であると私は言えないと思う。  私は軍事的には無知識であります。国防会議にかけてから相談をしますということでは、それは非常な事務的な答弁であって、政治家としての私は態度ではないように思う。  私はそれでは重ねて伺いたいのですが、アメリカは日本に対してどのような国防を要求といいますか希望しておるのか。その点をそれでは伺いたいと思います。
  234. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) その点私は存じません。
  235. 永井純一郎

    永井純一郎君 こういうふうですから、私はだんだん国民にわかると思うのです。総理大臣みずから日本をいかにして防衛するかという意欲も何もないのです。責任さえ持っておられない。それでただ子供だましに、独立国になったのだから軍隊を持つのは当然だという、そういう無責任な放言にひとしい演説をされておるのだと私は思う。総理大臣がわからなければその他の所管大臣から、杉原さんなり外務大臣から私はお聞きしたいのです。
  236. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 ちょっとその前に……。総理はそれについてはわからないとおっしゃいますが、この間われわれはわざわざこの予算委員会を休んで総理に時間を差し上げた。それはアメリカのハル、テーラー司令官並びにアリソン三者にお会いになるというそのお会いになったときに、国防の基本構想については意見が完全に一致したということが言われております。そういうふうな会談その他を経ておられるのだから、少くとも基本構想としてはお持ちになっておるであろうし、向うの意見も聞かれたろうし、日本側の意見も述べられて、それを存じませんではわれわれ済まされない。明確な御答弁を願います。
  237. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私ですか。私は会議に出席しておりません。
  238. 館哲二

    委員長館哲二君) 総理大臣がお答えにならなければ、他の国務大臣どなたか御指名になりますか。
  239. 永井純一郎

    永井純一郎君 それは防衛庁長官なり外務大臣に……。
  240. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 国防の全貌、特にアメリカとの交渉をするのに当りましては、実は日本の自主的に見た国防がどういうものであるかということがはっきりしなければ本当にはできません。
  241. 永井純一郎

    永井純一郎君 それを聞いている、さっきから。
  242. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) そこで自主的な国防がどういうものであるかということを確立しなければなりません。私は確立するために国防会議も起そうと思っているわけであります。しかし、大体のことは今日までの日本の国防と申しますか、自衛軍、この構想を基礎にして、基礎にしてそれが米国側においてその程度で満足しているかどうかということから進んでいるわけでございます。ところが今日の日本の国防の程度において米国側はまだ満足をいたしておりません。これは事実であります。そしてこれを増強してもらいたいというのがアメリカ側の要求でございます。希望でございます。アメリカ側は日本の国防は日本がこれを処理し、やるべき問題だとして、アメリカ側はそういう建前をとっております。しかし、日本の国防がどういうものであるかということを知ることはアメリカにおいて必要である。それは共同安全保障の関係から必要があるからそれをよく連絡をしてもらいたい、アメリカの希望としては言うとこういうことでございます。そこで日本の現在の自衛軍の程度ではまだアメリカとしては十分でないと、こういう建前をとっているわけでございます。そこでいかにして現在の自衛軍を増強し得るかということは、日本の力によってこれは判断をしなければなりません。そこで日本の経済上の方面、一般財政の関係を考慮して、これを、これ以上急激に増加する今日本側に経済上の力はまだ十分にないと判断して、できるだけ現状のワクにこれをとどめたいという考え方をもって折衝をいたしているわけでございます。(「ちっともわからない」と呼ぶ者あり)
  243. 永井純一郎

    永井純一郎君 何をお答えになっているのかよくわかりません。(笑声)そこで私は率直に時間がないのですから申し上げますが、米国は満足しておらないと言われますが、これの要求はもちろんできないと思いますが、米国が希望している日本の軍隊の規模というものはどういうものかということをお尋ねしておきたい。これはスタッセンも来たし、この前の司令官や何かとも皆さんお会いになっている。
  244. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) その防衛力の内容については私からお答えするのはどうかと思います。それは防衛庁の責任に属しておりますから、防衛庁でアメリカ軍との連絡によってこれはいろいろ連絡をいたしているわけであります。そちらの方に譲ることにします。
  245. 杉原荒太

    国務大臣(杉原荒太君) お答えいたします。先ほどから永井さんからいろいろ防衛の問題についてお話がございました。この経済再建の六カ年計画ということをかけてやっていきたいということを政府考えておるわけでございます。そうして更に防衛の問題につきまして、前内閣時代ずっと、従来いわゆる自衛力の漸増という方針をとって来ておるわけでございますが、そのいわゆる漸増というものが年々、そのつど、国民の間でも、それじや一体この防衛の限度というものはどこにあるのだという点についていろいろと不安もあるだろうと思うのです。それで私らといたしましては、そういう点について、五、六年先には大体どの程度だということの一つのめどをつけてぜひやっていきたい。これはめどをつけること自体が決してやさしいことじやないけれども、何とかめどというものを一つつけてやっていきたい。そうしてまた、皆さん御承知通り国民が非常な関心を持っておりますが、今アメリカの駐留軍にほとんど日本の国防というものが依存しておる。これは本来が暫定措置としてとられておることである。またそうでなくちゃならぬことだと思う。それで、これを大体国民の要望といたしましても、なるべくすみやかに駐留軍の撤退を可能ならしめる状態ということは、私は希望しておることだと思うのです。そういう点をあわせて考えまして、六カ年くらいの大体のめどをつけてやっていきたいということを私深く考えております。その際も、言うまでもなく、日本のいわゆる国力、財政力、経済力、まずそういう物的な問題だけじゃなく、国民心理の動向、いろいろと複雑に考えていかなければならないことだと思います。防衛ということも本来、言うまでもなく、国民の防衛、国民が国を守るという中の一環でなくちゃならぬということは言うまでもありません。(「抽象論ばかり言ったってだめだ」と呼ぶ者あり)そういう点をよく考えてやっていきたいと思います。今それじゃ六カ年計画内容はどうか。これは非常にいろいろな面から考えていかなければならぬ。その中には特に専門的の知識を要するものも多々あると思います。また、政治的に考慮しなければならぬことも多々あると思います。そういう点につきましては、これから慎重に研究してやっていきたいと思っております。(「答弁にならぬね」「抽象論ばかり言ったってだめだ」と呼ぶものあり)
  246. 永井純一郎

    永井純一郎君 非常に政府が無責任で何ら自主的に、あれだけ自主外交とか自主防衛を総理大臣は言ってきましたが、何らそういうものがないということが順次明らかになってきましたが、私は更に今の防衛庁長官が言う将来六年先のめどの大体の数字をお示しを願いたい。それから米軍の件について、外務大臣も、あるいは防衛庁長官もはっきりしておりませんが、幾らを大体日本に要求しているのか、そうしてどの程度の日本に軍隊の規模ができたら米軍を基地から撤退せしめようと言っているのか、この点を私ははっきり知りたいと思います。
  247. 杉原荒太

    国務大臣(杉原荒太君) アメリカ側では日本の兵力量が幾らということについての要請はございません。ただ日本側といたしましては、この今の計画立てます際にも、装備等につきまして、アメリカ側の協力ということは、ある程度期待しなくちゃなりませんが、しかし、その期待の限度等についても、また研究を要する問題であると私は考えております。
  248. 永井純一郎

    永井純一郎君 米国政府としては、日本にどの程度のものという要求は具体的にはない、それから、数年先の日本の軍隊のめどというものをつけようと思うがそれもまだできておらない、こういうふうに承知してよろしゅうございますか。
  249. 杉原荒太

    国務大臣(杉原荒太君) お答えいたします。大体のめど、これは今までも防衛庁におきましてもいろいろと内部的には研究しております。まだこれを防衛庁の正式の決定とかいうところの段階まで行っておりません。しかし、これはいろいろの方面から研究はしておりますが、そうしてまた、おおよそ事務的に検討してみて、大体この程度じゃないかという研究はしておりますが、これは事柄の性質上からいいましても、ここではっきりこうだと言い得るようなそういうまだ段階でないということは、これは永井さんも御了解いただけることと思います。(「了解できない」と呼ぶ者あり)何もないというわけではありません。
  250. 永井純一郎

    永井純一郎君 さらにもう一点総理大臣にお伺いしたいんですが、私は、これは私どもかなり軍事専門家といろいろ研究を重ねているわけでございますが、日本が真に自主的に日本の国を守ろうとすれば、軍事専門的には、アメリカの太平洋戦略というものを知悉しておらなければ自主的計画立てようにも立たないということは私も考える。しからば政府は常にアメリカが言っているように、日本の四つの島も含めた戦略というものについて、大体でも一体知っているのか、あるいは司令官なんかと会合しておられるようでありますが、そういう際に追及して大体知っているのか、それを知らずに国防会議を作ってみたって、私は何ら軍事的専門的計画というものは立たない。この点を私は総理大臣に伺いたい。
  251. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) その点に対する答弁は、私より防衛庁長官の方が適当だろうと思います。
  252. 永井純一郎

    永井純一郎君 それじゃ何も知らないということになりますよ。それはあなたは何も御存じないということになってしまって、非常に工合が悪い。
  253. 杉原荒太

    国務大臣(杉原荒太君) 今おっしゃいました点は確かに極めて大事な点でございます。そうしてまたこの点につきましては、アメリカ側とも、従来もいろいろと向うの見解を相当程度聞く機会を持ってきております。しかしこれはいろいろと変化のあることでもございます。それだからそういう点、今後も向うの見解は見解としてこちらも十分承知して、そうしてやっていくことが必要だと考えております。
  254. 永井純一郎

    永井純一郎君 この点は自主的な国防を確立せんと政府が真に考えるならば最も重要な点でありまするが、従って私は米軍の戦略というものを十分に要求を今後していく。それができて初めて日本の潜水艦をどうするとか、飛行機がどのくらい要るとか、海軍の軍艦をどうするとかということの初めて数字が出てくる。それは今後政府は積極的にその点を明らかに米国政府についてしていくということを私ここで言明をしていただきたいものと、こう思います。その点一つお願いしておきます。
  255. 杉原荒太

    国務大臣(杉原荒太君) 日本側の考え方は率直に私は向うにも言って事を進めていきたいと思っております。(「どういうことを言うのか」と呼ぶ者あり)それは今無理じゃないですか。(笑声)
  256. 永井純一郎

    永井純一郎君 私は、それをもし知ったならば、日本の再軍備をすることが不可能であるという結論に達することを私どもは知っている。私どもは自分の研究でそう思う。しかし時間がないので、その点詳しくここで政府責任ある人々と論議ができないのは遺憾に思いますが、最後にもう一つお尋ねしたいのは、鳩山総理にお伺いしますが、総理は常に、直接侵略というものがあるから、それに対して軍隊を持つのだ。一つ理由として常にそう言われておる。しからば一体いかなる国が侵略するというふうにお考えになっておるのですか。この点総理の所見を私伺いたい。
  257. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) いかなる国が侵略してくるかはわかりませんけれども、日本国としては、いかなる場合にも準備をしておくことが必要だと思うのであります。
  258. 永井純一郎

    永井純一郎君 そういう考えに立ちますと、もう少しあなたの頭の中に日本の軍隊の構想というものがはっきりしなければ何の役にも私は立たないと思う。考えられることは中ソを常に念頭におかれるということなんです、保守政党の人々は。そこで私はお伺いしたいのは、中ソが前年の十月十二日に中華人民共和国成立五周年記念の祝典の際に、ソ連からは当時の共産党中央委員会第一書記のフルシチョフ、それから当時のソ連閣僚会議議長第一代理であったブルガーニン現首相、中共からは周恩来総理、毛沢東首席等が出席をいたしまして、前年の十二月十二日に共同宣言をいたしております。この中で、この両国が極東と世界の平和及び安全をはかることを推進するということを強く述べております。なお、最近中共が強く唱え出したこの各国間の友好関係、外交の五原則を厳守する、そうしてアジア、その他の国に対してこの原則を拡充して友交関係を維持するようにしたいというようなことを言っておって、特に重要な点として、対日共同宣言があって、異なる社会制度の国家でも平和に共存が可能であるという原則を強く表明いたしておるのであります。そうして両国は貿易関係、文化上の連繋等の樹立を強力に進めるようにしたい、この共同宣言を吉田内閣は単に平和攻勢というようなことでまじめに取り上げなかったきらいがありましたけれども、私は、鳩山総理はこれを貴重な宣言として中ソ両国に対していかれるものである、また、そういう線からして今のソ連との交渉も今後いたされるものであるというふうに私はとりたいのでございまするが、この点の所信をお伺いしたいと思います。
  259. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 現在の世界情勢が、第三次世界大戦というか、米ソ戦争というか、人によって違いますけれども、とにかく一面においては軍備の競争をして、そうして力による平和が維持されておりますが、同時にこれらのイギリスだとかなんかはやはり力による平和だけでは心配だと、同時に友交関係を結んで世界大戦をどうしても避けたいという傾向もあることも事実であります。二つの道を歩いてどうしても平和を維持したいという希望があります。私はソ連や中共もまた同じであろうと思う。戦争の準備はしておるけれども、どうしても世界大戦は避けたいと思っておるのだろうと思います。そんなわけで日本に対しても友交関係を結んで国際関係の正常化をはかりたいというのも、やはり世界大戦を避けたいという気持からだろうと思うのであります。それだから、それには私も協力をして、できるだけ世界大戦を避けるためには努力をすべきものだと思う。ところがそれは一面であって、やはり力による平和の方もないがしろにできませんから、力による平和に対してもやはり一応は考えていくのが安全だろうと考えておるようなわけであります。
  260. 永井純一郎

    永井純一郎君 もう一つ簡単に。そこで私総理に、なるほど力の関係という点も御説明をつけ加えてされましたが、私はこの中ソ共同宣言をまじめに鳩山内閣としては受け取って、これを基礎に今後国交の正常化に努力を中ソに対してやっていく。従って積極的に中ソが侵略するものというふうにはとっていないのだという点を私はここで明らかにしていただきたいと思うのであります。
  261. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) そうです。その通りであります。
  262. 永井純一郎

    永井純一郎君 時間がきましたから……。
  263. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は時間があまりございませんので、焦点をしぼって二つの問題について、伺いたいのであります。その一つは、これまでいろいろ閣議でも論議がありました防衛に関係する問題、もう一つは地方財政に関連する問題、この二つであります。この二つが今後の日本の財政経済をきめていく上に一番重要な問題であり、特に鳩山内閣公約されましたいろいろな減税なり住宅なり社会保障、失業対策、そういう政策をやる上にこの防衛の問題と地方財政の問題がはっきりいたしませんと、全部公約は私はくずれていくと思います。そこでこの二つの点にしぼって質問をいたすわけであります。  まず総理大臣にお伺いいたしたいのですが、この三十年度の予算大綱が示されました。その中で、三十年度の予算においては防衛費は安全保障、防衛分担金と、それと自衛隊の費用として二十九年度の千三百二十七億のワクはこえない、こういうことをはっきりうたってあるのです。とことがただいま重光外務大臣からお話ありましたが、アメリカ側と折衝の今過程にあるようですが、アメリカは日本の防衛努力に満足しておらないという、新聞などで知るところでは、三十年度少くとも防衛費は九百億円以上にしてもらいたいというようなことが伝わっております。そこで三十年度の予算大綱で防衛費は千三百二十七億の二十九年度のワクをこえないと言っていますが、アメリカとの折衝の過程において、もしこれがこえることになれば鳩山内閣公約は根本からくずれてくるわけです。そこでこのワクはどの程度の決意を持ってお守りになるのか。もしどうしてもこれ以上アメリカが要求してきた場合には、内閣の運命を賭してまでもこのワクは守り抜くものであるかどうか。この点総理大臣にまずお伺いいたしたいのであります。
  264. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は防衛庁費並びに防衛分担金、合計で現在のワクをこえないでアメリカとの交渉は済むものと今日では思っております。
  265. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 外務大臣は先ほど折衝の模様をお話しされましたが、今総理大臣の言われたような線でまとまるとお考えでありますか。
  266. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 私の先ほど申し上げたのは、今の防衛力、軍隊の数では満足しておらぬから話をしなければならぬことになっておるわけでございます。大体その予算の点においてはそれでまとまり得るという見込みは今の総理のお見込みの通りでございます。そのつもりで今折衝いたしております。
  267. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 防衛庁長官に伺いますが、防衛庁は、先ほど、九百五十二億を要求したのですね。それでもし二十九年度のワクを守るとなると非常にそこに相違が出てくるのです。大へんな相違です。そこで防衛庁長官の御意見伺いたいのです。それで落ちつくも  のであるかどうか。
  268. 杉原荒太

    国務大臣(杉原荒太君) 今まで総理大臣からも御答弁がありましたが、防衛庁費及び防衛分担金を合わせて、昨年度のワク内でやっていくという方針でございます。
  269. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大体その方針はわかりましたが、それではもしこのワクをこえるような場合には一体どうされますか。
  270. 杉原荒太

    国務大臣(杉原荒太君) そのワク内でやっていくわけでありますから、それだから防衛分担金の減額がぜひ必要と認めまして、今交渉中であります。
  271. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それでは内閣責任において答えていただきたいのですが、われわれにも資料としてはっきりと三十年度の防衛費は千三百二十七億のワク内とありますから、もしこれをこえるような場合、折衝の過程において、そういう場合には内閣の運命をかけてもこのワクをお守りになるつもりでございますか。総理大臣に伺っておきたいのです。
  272. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は予算を作れるだろうと確信しているのであります。
  273. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 作れるであろうというような頼りないあれでは……、政治的な責任として、私はもっとわれわれにこういう資料出した以上は決意を示さなければなりませんが、もしそうでなかった場合には、これまたそのときに、三十年度予算のときにわれわれ問題にいたしたいと思います。  さらにもう一つ伺いたいのですが、選挙の前に総合経済六カ年計画というものをお出しになって、日本の経済の将来、どういうようにやっていくか、昭和三十五年を目標にいたしまして、計画を発表されましたあれを見ますと、昭和三十五年の防衛費として、千八百億円というようになっております。そこで賠償の費用をあれから引きますと、大体千五百億円といわれておるのです。昭和三十五年の防衛費は千五百億円、そういう前提のもとで、完全雇用と経済自立を達成するという計画になっております。とことろが最近新聞で見ますと、アメリカの要求によって、防衛六カ年計画というものを自治庁で作っている。それによると、昭和三十五年の防衛費は、大体二千百億円になる。こういう数字が出ております。そうしますと、防衛六カ年計画ですと、昭和三十五年二千百億、総合経済六カ年計画ですと千五百億です。ここに六百億の差が出てくるわけです。防衛六カ年計画をやりますれば、総合経済六カ年計画というものはくずれてくるわけです。また作り直さなければなりません。実は選挙の際に、防衛計画を盛り込んでない総合経済六カ年計画というものを発表して、あたかもそれで完全雇用と経済自立ができるように宣伝したことに非常に責任があると思うのですが、この矛盾をどういうように調整されるのですか。この点伺っておきたいと思います。
  274. 杉原荒太

    国務大臣(杉原荒太君) 木村さんから今アメリカ側が要求している額がこうだという言葉があったように思いますけれども、アメリカ側からのそういう意味の要請はございません。これは当然に日本側で自主的に決定していくべきものであり、またそうでありましす。そうしてただいまおっしゃった経済審議庁で作った経済六カ年計画と、それから防衛庁の事務当局で今まで素案として考えておったのとの矛盾という御指摘がございました。これは私らの方でも、あれはまだ最終案ではございません。当然にこれは調整していかななければならんことであります。なおそういう額の点のみならず、これはまだほんの素案でございます。これは十分に検討していくべきものと私自身考えております。
  275. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その十分調整はもちろん必要でありましょう。しかしあの総合経済六カ年計画というものは、昭和三十五年に防衛費を千五百億以上にふやせば、あれは実現できないのです。完全雇用もできないのです。経済自立もできません。従ってあの経済六カ年計画は、もう現状よりも防衛費をふやして、完全雇用も経済自立もできないという案なのです。それに六カ年計画を加えていけば、昭和三十五年に、これはですね、防衛六カ年計画による防衛費をふやしていけば、昭和三十五年に完全雇用も経済自立もできないということになるのですよ。その点どうお考えですか。防衛費一千五百億でなければ、三十五年に完全雇用と経済自立ができないという案なんです。それだのに防衛六カ年計画で防衛費をふやしていけば、あの長期計画は全部くずれてしまうのです。にもかかわらず無責任選挙前にああいうようなものを発表しておったということは、これは私は非常な責任の問題があると思うのです。
  276. 杉原荒太

    国務大臣(杉原荒太君) 経済六カ年計画の詳細につきましてはです、経審長官から詳細お答えしていただくほうが適当と思います。今御指摘の数字等は、私の解釈ではなお、先ほど申しましたようにです、調整の余地があるものだと私は考えております。
  277. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これはまた経審長官質疑する機会がございますからこの点はその程度にしておきます。  次に伺いたいのは、先ほどからいろいろ議論もございましたが、日本の防衛は自主的にやるという御意見もありましたが、さっき総理は日本の防衛というものは安全保障条約、協定に基いてやるよりしようがない、こういう御答弁なんです。なるほど実際においてはあのMSA協定によって防衛実務というものに負いまして、防衛義務ですね、メリタリー・オブリゲーションを負って、そうして今防衛力の漸増をやっておるのです。ですから自主的にやるといっても、口では自主的といいますが、実はMSA協定、あの第八条によってアメリカから日本の再軍備を要求されているのです。義務なのです。そういうように総理はお考えではないのですか。
  278. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 現在日本は日本国の単独の力でもっては防衛できないというのは事実でございます。それですからやはり国際連合、もしくはアメリカ等の兵力と合体しなくては日本の防衛はできませんから、やはりアメリカのことも考えて、日本の防衛計画立てるべきものだと思います。自主の防衛といって、日本単独でもってどこの国とも戦争をするわけには参りませんから、やむを得ず自由主義国家群とも協力をして、そうしてやはり防衛をしていくよりいたし方ないと考えております。
  279. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いたし方がないからMSA協定を結んで、アメリカから義務を押しつけられてもこれはまあしようがないということになると思うのです。そこでMSA協定に基いて日本が防衛力をふやす場合の防衛力というものの内容です、これには限界があるのかないのか。先ほど総理は、日本を防衛する場合に自衛のためならば軍隊を持ってもよろしいのだ。しかし原子爆弾は、これは少し行き過ぎであるというお話があったのですが、じゃ原子爆弾がいけないとすれば、原子爆弾以下の戦力ですね、一体どの程度が防衛力の中で憲法に違反しない限界であるとお考えになりますか。
  280. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 日本の防衛をなし得るかどうかという限界線だと思います。防衛を可能にするのにはどの程度のものが必要かということが限界になるわけであります。日本が必ずしも原爆を持って自分で使用しなくても、アメリカが原爆を持って飛行機で飛んで来さえしてくれれば防衛はできるわけでありますから、日本が原爆を直接持つとか、あるいはアメリカが基地に原爆を持つということは必ずしも必然的に伴うものではないと思っております。
  281. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうすると、この防衛力を考えるときに、実力については限度というものは一体ないのですか、科学的に。前の吉田内閣としては、戦力は持つちゃいけない、しかし戦力とは近代戦争を遂行する能力である。そういうふうにとにかくそれも非常におかしいですが、一応しかし限界がなければ……。MSA協定を結ぶときに、防衛力というものについてその限界に  ついての話し合いがなされているのか。
  282. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) とにかく外国の侵略があった場合について、防衛するのに絶対必要なものかどうかということで判断をしていくより仕方がないことになると思います。その点によって日本が持つ兵力、戦力について、兵器について限界ができてくるだろうと思っておるのであります。
  283. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 時間がございませんので私は結論を申し上げて、そうして特に杉原防衛庁長官から伺いたいのです。杉原さんは前にMSA協定を結ぶときに、岡崎外務大臣に対して、このMSA協定の中にアメリカから八条によって要求される防衛力の中には陸海空軍は含まないという一項を入れるべきだ、入れなければ憲法違反になるのだ、そういうので入れるべきだということを主張されたのです。そこでもうつ進んで、じゃその岡崎さんはそれに対して、陸海空軍は含まないという構想にするつもりだと言ったけれども、一方的に日本政府がそう考えてもアメリカとの了解が立たなければならないから了解を十分つけたか。これに対して話し合いするつもりだと言ったけれども話し合いじゃだめだ、議事録か何かにはっきりそれを残さなければいかぬじゃないかという御主張であったと思うのです。それで杉原さんはMSA協定の第八条による防衛力増強の義務を負って、そうして行なっておる防衛庁長官にあなたはおなりになったんですから、この防衛力については、前にあなたが御主張になったような陸海空軍をこれは含んでない、そういう理解のもとに防衛庁長官におなりになったのかどうか。この点を伺っておきます。
  284. 杉原荒太

    国務大臣(杉原荒太君) ただいま木村さんから御指摘の点、一つは憲法の解釈の問題、一つはそれになると思います。これは今までたびたび議論になっておりますが、私の解釈しておりますところでは、九条の第一項というものは明文、文字に明示してありますように、国際紛争を解決する手段としての戦争及び武力及び武力の行使を禁止している規定と思いますが、第二項が非常に問題でありまするが、非常にこれはいろいろ説が分れておることは、私から申すまでもございません。一方が他方を完全に説得し得るだけ力のある解釈はまだないように思っております。しかし、一つの解釈といたしまして、この自衛のまず目的の点から見まして、あくまでもそれが自衛の目的に限定されなければならぬということ、それからもう一つは、ただ単に目的さえそれであれば、限度はどこまでもいいという、そういう性質のものではないと私は思っております。その目的に必要相当な限度、客観的にそこに制約があると思います。そういう解釈を前提にしてこそ、私は今の自衛隊法も国会を通過しておると解釈しております。自衛隊法では、申すまでもなくこれをわが国の平和と独立を守り、国の安全を保つということを目的に掲げて、そうして直接侵略及び間接侵略に対して国を防衛すること、ということを自衛隊の任務とし、さらにこの任務を果すために武器の保有を許し、さらにそれをいかなる場合に出動し得るかということについても、外国からの武力攻撃があつた場合、それに限定して、もちろんそこには外国からの武力攻撃のおそれがある場合ということがカッコの中に入っておりますが、そういう場合に、しかもそれが国会の承認を得てなされるんだ、そしてそういうふうにして防衛出動した場合に、その武器の使用という点につきましても、法律で限定してあります。国際法の法規慣例を守るということ、さらにまた具体的の、その事態に応じて合理的にどこまでも判断される限度をこえてはならないということを前提としております。私はこういう点から見まして、今の自衛隊法、それに基くところの自衛隊というものは、憲法に違反するものではないと解釈しております。
  285. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 するとアメリカとのMSA協定による防衛力の中には、今あなたがおっしゃったようなそういう限界を越えた防衛力を向うが要求する、そういう条約になっておるんですか。防衛力というものはそういうものを含んでおるんですか。
  286. 杉原荒太

    国務大臣(杉原荒太君) 今木村さんがおっしゃったようにMSA協定の中には、日本の防衛力の増強の努力についての規定がございます。同時にまたさらに他の部面において規定がありまして、これは日本の憲法に従って実施せられるという規定がございます。その二つをあわせてみますときに、今の私の申しましたところでMSA協定との関係でも差しつかえないと私は思っております。
  287. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは杉原さん、今のそうおっしゃられるそれは、MSA九条二項において、各国とも憲法の規定に従ってやる、それでは不明確であるから、あなたは岡崎外務大臣に対して、はっきりとMSA協定の中に、軍隊及び戦力を含まないという項目を入れなければ憲法違反の疑いがあると、あれだけあなた主張されたではありませんか。そうして岡崎さんがそういうものを含まないと言っただけでは済まないで、日本の政府だけが理解してもアメリカとの了解をつけなければいけないんだということを言われたわけです。そういう点については、アメリカとの了解がついておるのですか。そういう点が一つと、先ほどあなたはまた衆議院におきましても、今の自衛隊は実質においては軍隊と言える、いわゆる外国の侵略に対して戦争をする実力は軍隊です、実質においては軍隊と言われておるし、またMSA協定でアメリカに要求されているのも、そういう軍隊です。ですから、MSA協定九条の二項に各国との憲法の規定に従い云云は、あれではまだ憲法違反の疑いがあると、あれほどあなたがおっしゃったのですよ。だから、あなたはもっと具体的に、その中には、憲法九条の陸海空軍その他の戦力というものはアメリカの要求する防衛力の中に含まないという一項を入れるべきだと、こういうようにあなたが主張されたように私は記憶しております。
  288. 杉原荒太

    国務大臣(杉原荒太君) お答えします。私がそのことを主張しておりましたのは、まだ草案の時代に、憲法のあの条項が入っていないときでございます。それからさらに防衛力という観念は非常にこれは広い概念であります。そうして、しかもそれをそのままにしておいては、私は憲法違反のおそれがある。それで私は実はどうしても憲法との関係に……協定と憲法との関係に関する一条項が必要なんだという意見を持っておりました。そうしてあとになってそれは入りました。今木村さんがおっしゃっておるのは、あれは草案に入る前の時代の私の見解だと思います。
  289. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そのために、あとで戦力に対する拡張解釈を始めたと思うのです、民主党は。あれが入ったからですよ。憲法九条二項が入ったから、自衛のためなら戦力を持ってもいいのだという解釈に変えざるを得なくなった。そうしてMSA協定に要求する防衛力というのは、やはり戦力も要求しているのだ、しかしその戦力も自衛のためなら憲法違反ではないのだというふうに、解釈を変えていっている。そうしてあなたは、実際の上においてはこれは軍隊である、事実の上においては軍隊であると言っているのです。その点やはり矛盾だと思うのです。
  290. 杉原荒太

    国務大臣(杉原荒太君) 私が二、三日前、衆議院内閣委員会で答弁しました中に、実質的には軍隊たる性質も多分に持っておる、こう申しましたのは、それは現在の自衛隊法という法律によって自衛隊の性格は性格づけられております。そしてその中に、主たる任務として、直接侵略に対してこれを、国を防衛するということが主たる任務の中に入っております。そうして外国からの武力攻撃に対して防衛することを任務とする実力部隊というものは、普通の観念ではこれは軍隊と言うから、それだからこれは軍隊と言っても、その意味においてなら差しつかえなかろう。しかしながら、同時に他方において、自衛隊——陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊というのは、これは法律に明定された名称でございます。従って公けにはこれを勝手に変えるわけにはいきません。変えるためには法律の改正を必要とするということを申し上げたのであります。
  291. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 時間がありませんので……。最後にガリオア債務の返済の問題について伺いたいのですが、これは吉田内閣のときでは、これは債務と心得る、債務と心得るのだから返すのだ、そうしてこれは独立国としてただ恩恵を受けるのはいさぎよしとしないからこれを積極的に返すのだ、こういう解釈であった。そうしていよいよ三十年度の予算にはこのガリオアの利払いの問題が現実の問題としてくるわけで、三十年度予算にこれが組まれると思う。そこでこの際はっきりしておいてもらいたい。これは一体債務なんであるかどうか。それで債務であるとするならば、どういう過程を経て債務になったか。今までその過程がちっとも明らかにされておりません。で、時間がございませんから、私の見解だけ先に述べますと、これはですね、「国の予算」という大蔵省から出しておるものがあります。昭和二十七年度の「国の予算」という中に、こう書いてあります。「対日援助費は総額約二十四億ドルに達し、わが国の経済の安定及び復興に顕著なる貢献をなした。この対日援助費の性格は、当初明確でなかったが、平和条約の交渉過程においてわが国の債務として確認された。従って、この返済が行われなければならない。」こういうふうにはっきりと、大蔵省が出したものです、これに書いてある。そうしますれば、これによれば、平和条約の交渉過程においてわが国の債務と確認されておるのです。ですから、債務と心得て返すというようなものでなくして、従っていやになったから債務と心得ないで返さない、そういうようなことができる性質のものではないのです。従ってこのガリオアの債務の問題については、はっきりと平和条約の交渉過程において債務と確認されておるのですから、この過程を、これは外務省でおわかりのはずだと思うのです、この点をはっきりと一つここでしていただかないと、これは今後非常に大きな額でありますから、日本の大きな負担になるのです。そんな簡単に、債務と心得てこれを返すとか返さないというようなことでない。それが一つ。  それからかりに債務となった場合でも、イタリアの場合は、これは全部アメリカが債権を放棄しております。十億ドル放棄しております。またドイツの場合は、一部債権の放棄でありますが、アメリカは二十億ドル放棄しております。二十億ドル廃棄しておるのです。日本の場合は約二十億ドル。寛大なる条約を結んで、寛大というならば、この約二十億ドルはアメリカに対して放棄を要求すべきじゃないか。イタリアの場合は全部放棄しております。ドイツの場合でも、二十億ドルはアメリカが放棄しておるのです。こういうことをちっともここに明らかにされていないで、ただ債務と心得るというので、だんだんその事態が確認されておる。また債務と心得るなら、三十年度予算を組むときに、国庫債務負担行為としてはっきりとその明細をうたわなければならぬ。うたわなければ、予算に組むことはできない。この点、最後に伺っておきたい。  それからもう一つ、これは本当に最後ですが、さっき地方財政の問題を質問したかったのですが、時間がございませんから私の見解だけ述べて、あとで答弁していただきたいと思うのです。今度の鳩山内閣公約はみんな地方財政に非常に大きな影響があります。住宅の問題でも、それから社会保障費の問題でも、減税の問題でも、何一つとして地方財政に関連のないものはございません。今まで私調べたものを見ますると、大体社会保障関係だけを調べてみますと、昭和二十九年度において社会保障関係だけで千二百十一億、事業をしておりますが、そのうち国は七百十四億出して、地方の負担が四百七十九億なんです。従って今度民主党住宅建設公約をした、あるいは社会保障、失業対策を公約しましたが、地方財政はこれはみんな補助としてやるのですから、裏づけがなければこれはできないのです。住宅建設でも、これは竹山建設大臣に伺いたいが、六万戸かりに公営住宅を作るとして、二十九年度は百二十六億出しておる。これに対して地方は百十億負担するので、負担がしきれないので、東京都でも返してきておるのです。ですから、いかに公営住宅建てるといって国の予算だけ組んでも、地方財政の裏づけ考えなければ、できません。社会保障費だってそうです。これは厚生大臣に伺いたいのですが、失業対策費を幾らふやしても……。昭和二十九年度は百十億ふやしました。しかし地方は八十六億の負担です。負担しきれない市町村は困っている。今度公約に基いて失業対策費をふやします。ふやしますというと、地方負担分を考えなければ、国がふやしたって事業はできません。みんな地方財政に関連がある。住宅対策だって、失業対策だって、厚生だって、地方財政に対する考慮をどうされているか。これができなければ、公約できません。ですから、この防衛費の問題と地方財政の裏づけがくずれたら、公約できません。その意味で、最後に建設大臣、これは公営住宅について地方財政との関連をどうするか。それから厚生大臣に、失業対策、あるいはいろいろな厚生施設と地方財政との関連ですね、こういう点を伺いたい。  それから減税についても大蔵大臣に伺いたい。国が減税しても、今度は地方において地方財政が行き詰まりますから、そこで御承知のように、すでに赤字は四百六十億。しかも少くとも地方財政で三十年度に四百億以上は新しい需要が起きます。もう三十年度は地方財政は一番危機です。これまでにない危機です。債務償還費は百二十億もふえます。そこで、地方は増税です。固定資産税の土地の評価を引き上げよう、増税をする。これではほんとう減税にならない。大蔵大臣一般会計と地方財政との調整をどういうふうに考えているか。一兆円々々々と、幾ら一兆円でバランスをとろうとしても、地方債が出されても、地方財政に大きくしわが寄っているのです。詳しいことは本予算が出たときに質疑いたしたいと思いますが、これで私時間がございませんので、御答弁に対してまた質疑をするわけに参りませんから、その点考慮されまして、十分懇切に、もう反論できないのですから、もう話しっぱなしであなたの方は済むのでございますから、その点は御了承の上で、懇切に一つ御答弁願いたいと思います。
  292. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答え申し上げます。今そこの書物にお書きになっておることを引用されて話がありましたが、その書物も、はなはだ不勉強で悪いのですが、実は存じません。しかし今お読み上げになったことは、私も納得はいきません。それはおそらく正しい書き方でないんじゃないかと私は考えております。現にそれは、ガリオアその他の債務については、吉田内閣のときにおいて債務と心得るというふうになって、そうして昨年の五月にこれが金額総額並びに支払い方式について、第一回の会合を開いた。従いまして、債務と心得ておることは私は間違いないのだというふうに、すでに事実があるわけですから……。ただ今日その総額並びに方式については、アメリカ側と日本側とがなかなか意見が合いません。従いまして、これは今日まだ折衝をしておるという過程。従いまして、これはきまればまた国会の御承認を得て、そのときに完全にきまる、こういうふうに御承知願いたい。  それからもう一つの、三点の、国の財政と今日の地方財政の現状、これは非常に御心配。だれも心配なんです。もう私なんかもやはり地方財政を今日のままに放置しておくことは、とうていこれはもうできない。こういうことをやっておりましたら、おそらく、たとえば地方債の発行にしても、こういうようなことを続けていけば、将来借りかえだけでも、もう新しく出す道もないような事態になっている。何としてもここで地方債の、これはもうしなくちゃならぬ上か、した方がいいとかどうとかいうのじゃなくて、ほんとうに真剣に私は取り組んで、何とかしなくちゃならぬ。そこで今度は従来の、これは地方自治庁長官からお話があると思いますから、それは私は述べませんが、具体的な御案ができれば、それについては私としてもできるだけ一つ協力していこう。たとえば、まあ今の何では私の方で、中央からの関係では、従来補助金をやっておるために、今お話しのように、また補助金ですから持ち出しがなくてはならぬ。そこで、ますます地方財政を悪くしている。それでまあ私の一つ考えでは、たとえば、今度はこれはガソリン税の関係からも何ですが、地方道路税というようなものを創設する。これはすっかり地方に上げようと思う。そうしてそのかわり、その範囲でやりなさい、こういうような形でやっていく。これは私の一つの、これは具体的にしたいと思っていますから、これを具体的に申し上げるのですが、そういうような形にする。それから同時に、従来のたまっております赤、これはおそらく地方自治庁長官からお話があると思いますが、莫大なものがあります。これについてはこの際に整理して、これは別勘定に振りかえるより手がないと思いますが、別勘定にして、これは長い期間をかけて整理する。そのかわり、地方庁がこれを負けてもらおうなんて考えはいけない。長い期間で払う。それにいかなる援助を中央が与うべきか。こういうような形で考慮して、中央、地方を通じて健全財政。ただしかし、同時にこの場合に、これは私の立場から地方庁に言うのもどうかと思いますが、しかし同時に国会の十分な御理解を受けなければなりませんが、地方の財政というものは中央がいかんともなしがたい組織、組み立てになっている。わずかに地方債を発行するとかいうようなときに、いやそれはいかんとかなんとか言うくらいにしか——いわゆる地方自治の独立、これはある意味においてはいいかもしれませんが、それならそれで、もう少しすべてにおいてそういうふうな考え方にせなくてはならぬかもしれませんが、これは同時にまた、地方の、あるいは日本の国全体の行政機構のあり方に関連してくる。特に今日の地方の行政機構がこのままでいいのか。このままでいいとするならば、かりに今のような仕事をしておっていいのか。いろいろの問題が深く私はあると思いますので、そういうことも入れて考えないと、なかなか、地方の財政を健全にすると一口に言いましても、したその翌日から私は赤字が出るという事態になりはせぬかと心配する。そういうような考え方で、御趣旨の線に沿うて地方財政の健全に中央としてもできるだけの協力をする、こういうふうに御答弁申し上げます。
  293. 竹山祐太郎

    国務大臣竹山祐太郎君) 住宅の問題についての御心配、ごもっともであります。この点につきましては、今も十分に大蔵省、自治庁と相談をいたしております。今度はやる以上は、お話しの通り、十分なる裏づけをつけない計画は意味をなしません。今例にお話しのような点は、今までのやり方が予算だけ取って裏打ちをしなかったために、実行ができなかったわけでございますから、この点につきましてはしつかり特別のワクを作る等の方法をとることに、今三省相談を進めて、その線で実行をいたすつもりであります。
  294. 川崎秀二

    国務大臣(川崎秀二君) 厚生省所管の関連としましては、今木村委員から御指摘になりましたように、地方財政とも深い関連があるのでありますから、この点については大蔵大臣の御言明になりました線に沿って、われわれも善処いたしたいと考えております。しかしながら、ただいま御指摘の失業対策、あるいは失業保険金の問題は、労働省の所管におもに属しておる二とでありまして、私の所管しております方といたしましては、生活保護であるとか、あるいは国民健康保険、これは経営主体は地方側にあるわけでありますが、これらの関連相当大きな部面を占めるものと思うのであります。しかし生活保護などの実況は、むしろ地方側におきまして今日生活保護を大きく活用しようという部面が相当多くなってきております。むしろ、はね返りが多いように考えております。しかしながら、生活保護の実態にかんがみまして、これは十分憲法の精神に沿って、われわれとしては生活保護を十分に充実していきたい、かように考えております。
  295. 川島正次郎

    国務大臣川島正次郎君) 地方財政の問題につきましては御指摘の通りでありまして、全く危局に立っていると言っていい現状であります。三十年度の予算編成に当りましては、ぜひこの問題を解決しなければならぬ時期に到達をいたしておるのであります。まあここに至りましたいろいろな原因を探求いたしまして、まずこれを取り除くということが必要でありまして、先般来これに対していろいろ調査もし、研究もいたしておりまするが、何にいたしましても、この問題はひとり国だけではいかぬのでありまして、国が犠牲を払うと同時に、また地方公共団体にも相当な犠牲を払っていただきまして、何とか軌道に乗っけたいと、こう考えておりまして、先ほども佐藤さんの御質問に対してお答え申し上げたんでありますが、現在ありまする四百六十二億の赤字は、これを長期低利に書きかえまして、一応たな上げの形式にいたしまするが、同時に、再び赤字が起らぬように、地方の事業のある程度圧縮もいたしまするし、また財源措置もいたしまして、健全な町方財政の基礎をこの際確立いたしたいと、かように考えていまして、来たるべき本予算提出までには適当な案を作りまして、各関係官庁と相談をいたすつもりであります。
  296. 西田隆男

    国務大臣(西田隆男君) 失業対策の問題についてお答えいたします。労働省としましては、国で行う失業対策事業費は全額国庫負担にしたいと考え、ただいま大蔵省と折衝いたしております。これが完全にできませんでも、相当程度の地方負担の軽減になるように、今努力中でございます。
  297. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 外務大臣にお願いいたします。
  298. 館哲二

    委員長館哲二君) ガリオアの問題ですか……。重光外務大臣。
  299. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) どの点でございましたか。ガリオアの点でございますか。
  300. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 じゃ、ちょっと、僕、質問申し上げますから……。ガリオアが債務になるに至った経過ですね。平和条約の交渉の過程において債務として確認されたということが、大蔵省のこういう文書にはっきり出ているんですよ。外務省としては、おそらくその過程を御存じなはずであります。御存じでなければならぬと思いますので、その過程を話していただきたい。
  301. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) ところが、私の承知しておるところでは、これは前内閣時代に債務と心得て交渉を進めておったことを承知しております。それは債務と心得て交渉しておったことは、継承して続けて交渉いたしております、しかしその債務が確定するのは、これは交渉が妥結をしまして、そうしてはっきり、どういう額であるかということをはっきり確定して、債務としてそのときに決定的に引き受けるときにおいて初めて確定するんだ、こういう解釈をもって交渉を進めております。その印刷物は、債務と心得てというようなところを、何じゃございませんでしょうか……。
  302. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いや、そんなものじゃございません。はっきり確認されたというのです。
  303. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) はあ、それは取調べてもよろしうございます。
  304. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ええ、取調べて一つ……。
  305. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) よろしうございますが、私はそういう工合に心得て交渉いたしております。
  306. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それから、さっきイタリアやドイツの例をあげまして、それをイタリアではアメリカは放棄したんでしょう。
  307. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) そうです。
  308. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ドイツではこ十億ドルも破棄しているのですよ。
  309. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) ドイツは二十億ドルとは……。
  310. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 三十二億のうち二十億ドルを切り捨てているのですよ。
  311. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 三分の二です。そうです。
  312. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 切り捨てているのです。ですから、日本でなぜそういうことが要求できないのか。
  313. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) ああ、それはその並みにはできそうなんです。
  314. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いや、二十億ドルですよ、ドイツの場合。
  315. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) いや、そのドイツ並みで一つやろう。しかし日本としては、実を言えばもう少し有利な条件で一つやりたい、こういう方針でもって交渉を進めておるのです。
  316. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いや、ドイツの場合は二十億ドルなんですから、私は金額を言っているのです。
  317. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 三分の二ですよ、全体の。
  318. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ですから、私は率を言っているのではないのです。金額を言っているのです。
  319. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 金額はどうなるか、今私ははっきり申し上げられません。しかしこういうことは、三分の二放棄しておるということははっきりしております。それがあるいはそういう額になるのでございましょう。残りの三分の一を、利率二分五厘で、二・五彩で五年間据え置き、その後三十年間に元利を支払うというようなことが、ドイツとアメリカとの関係でございます。この大体のなにで一ついこうじゃないかというのが、アメリカ側の考え方のようでございます。その条件りよも、できるならば有利な条件で一まずやりたい、こう交渉しております。
  320. 館哲二

    委員長館哲二君) 森永主計局長から、本のことについて釈明をしていただきたいと思います。
  321. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) ただいまお示しの本は、公的な出版物ではないのでございまして、財政調査会という名前で公刊されたものでございまして、ただいま御指摘の個所は、これは不穏当な表現でございまして、前にも当委員会、あるいは衆議院予算委員会で、問題になったことがございます。
  322. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうです。
  323. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) これは政府のもちろん見解ではございませんし、その言辞もきわめて不適当であるという政府の見解を申し上げましたのでございますが、今後誤解を招かないために、当該個所を削除するなりなんなり、一応措置を講じたいと存じます。
  324. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 委員長、これは了解できませんが、時間がございませんので、今後本予算のときにあらためてこれは質問いたします。
  325. 館哲二

    委員長館哲二君) ちょつと速記をとめて下さい。   〔速記中止〕
  326. 館哲二

    委員長館哲二君) 速記開始。次は吉田萬次君。
  327. 吉田萬次

    吉田萬次君 私は最初、石橋通産相に御質問を申し上げたい。石橋通産相は完全雇用六カ年計画立てて、失業問題を解決すると言っておられましたが、果してこの完全雇用六カ年計画というものがなし遂げ得るやいなやということを、お伺いしたいと思うのであります。しかも緊急失業問題をその中に取り上げておられる。まだことしの卒業生につきましても、就職し得ない者がたくさんあるのであります。失業後就職の見通しがつかない者は、従って心がくさってくる。また思想が悪化してくる。これは不景気や、それからまた一時的の現象ではないと考える次第でございます。国の指示が地方庁にもありましたかとも存じますが、地方の地方庁におきましても、一応形式的にそれぞれの方面の人を集めて、そうして訓示をし、依頼をしたことはありまするが、ついに一介の訓示に終ったように考えておりまして、この問題が徹底しておると考えられません。また放任のような状態にありまする関係上、いろいろの方面に就職を依頼せられておりまして、今日人一人就職を依頼し、その問題が適当に解決せられた場合においては、三万円の報酬ということが当然のように言いふらされておる次第であります。で、労働組合なぞの諸君におきましても、自分の組合であるとか、あるいは自己というものを中心にした以外のことは、あまり考えておられません。で、自己の子弟を優先的にその組合に雇用するというような会社もありまして、雇用の門がきわめて狭くなっておる。  また貿易の振興を考えましても、コストの低廉は労銀がその根源をなすということは、これもよくわかっておることでありまして、高賃金は人を雇わないようにする。また合理化をはかり、あるいは機械化せられてくる。従って職場というものはだんだん狭くなってくる。機械より労銀が安かったとればならぬような時代が来ると思うのいうことは、私が調べました範囲においでたった一回あるだけでありまして、明治二十七、八年の日清戦役の後におきまして、マッチの工業が非常に盛んになってきた。従って、マッチ工業の勃興によってスエーデンから機械を買ったことがあります。そのスエーデンから輸入せられた機械によって大量生産がはかられたにもかかわらず、しかもこの問題が労銀が安かったがために押し倒されたために不成功に終ったという、この一例だけがあると考えるのであります。現在においても最もいい例は、理想的経営でありまた工場が機械化せられておるということでありまして、ある会社では、労銀にプラス厚生施設で、労働者一人一カ年五十万円としております。年一割のこれを利子とみますと、一人五百万円の金の使用となり、百人といたしますると年額五億円の影響があるというように考えられるのであります。しかも過去五カ年間、この会社は一人も雇っておらない。また自然の退職というものを認めておりながら、将来二、三年は雇う必要がないというまでに機械化せられておるのであります。またこれに類するものといたしましては、日清紡績が島田に工場を作りまして、この工場を作りましたのが、非常に機械化せられて生産能力をあげておる関係上、一コリの製品が一人でできる。女工が要らないというようになっておる。これにならって倉敷紡績であるとか、あるいは敷島紡績であるというようなものが、順次これにならいつつあるというであります。  内外の情勢を考察しますと、まことにかようなことに対して憂慮にたえないと考えるのであります。今日、社会保障制度の問題、これは斧鉞を加えたならば非常に斧鉞が私は加えられるべきものであり、いわゆるこれは国家のガンであると考えられると思うのでありますが、これと同様に、この問題を解決しようとするについては、抜本的な努力と決意が要すると思うのでありまするが、これに対する通産大臣の方策を伺いたいと存ずる次第でございます。
  328. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) お答えいたします。非常に大きな問題でありまして、なかなか簡単にはお答えのできかねることと存じます。ただ六カ年計画につきましては、これは私の案というよりは、私もむろん賛成してそれに参加したのでありますが、政府としてどうしても、今御指摘のように、失業者がだんだんふえる、若い人たちの就職口がない、こういうことであってはいかぬ。これは経済的のみならず社会的に非常に危険でありますから、どうしても職場をふやすということをいたさねばなりません。その観点から、人を中心にして、いかにして全部の働く能力があり働く意思がある者に職場を与え得るかという観点から、案を作ったものでありまして、必ずしも私の案と申すわけではございません。しかし、私の案と申すわけでないから決して責任を負わないというものじゃありませんから、そういうわけではありませんが政府の案であります。今の合理化すれば人がだんだん要らなくなるというお説も、これもごもっともでございますが、しかしながら、同時に、低賃金で多数の人間を雇ってやるということでは、これはやはり進みません。国際競争力を持つためには、ぜひとも生産コストを下げなくてはならない。それには生産能率を上げて、なるべく少人数で一人当りの生産高がふえるということをいたさなければなりません。これには今後むろん努めるつもりでございます。同時に、そうすると今申すように、たとえば石炭鉱業の合理化をやるといたしますと、縦坑を掘り、種々なる設備の改善をいたしますと、そこに相当の失業者が現われてくる懸念がある。これは別途に何らか吸収をする仕事をして、公益事業その他を起してこれを吸収する、かような方策をとっていくつもりでございます。
  329. 吉田萬次

    吉田萬次君 これは非常にむずかしい問題でありまして、容易に解決する問題ではないと存じます。決して今のお答えで満足するものではありませんが、それから幸いにここに西田労働相がおいでになるから、ちょっと伺いたいと思いますが、本年度の卒業生の就職の状況というものについて、またどうお考えになっているか。
  330. 西田隆男

    国務大臣(西田隆男君) お答えいたします。大学の新卒業生の問題は、昨年から非常に大きな問題として考えておりますが、私が今考えておりますのは、私、地方自治庁長官をやっておりましたときに考えたことでありますが、地方制度調査会のほうから答申がありまして、地方公務員の停年制をしけという答申が参っております。従って、これは地方公務員だけでなくて、地方自治団体のほうにも停年制の適用のできるような立法措置をすることによって、私の考えでは数万という人間の一応の就職が可能であると考えております。学校卒業者が大会社とかあるいは大都会とかに集中して就職を求めるということは、現在では不可能な状態でございますので、地方の自治体に新らしい大学の卒業生を就職させまして、地方の行政の人事の若返りを考えると同時に、経費の節減にもなります。日本の国の現状から考えますと、老年の者と若い者と、どちらが働かねばならぬかということを考えますと、これはもう条件なしに、年寄りに遠慮してもらって若い者を働かせるということが、国の実態から考えて最も必要なことである、かように考えておりますので、自治庁長官ともよく連絡をとりまして、そういうふうな立法措置をこの国会にいたしたい、かように考えております。
  331. 吉田萬次

    吉田萬次君 ただいまの御説明は一応肯定ができまするけれども、今日若い者を使って老人を退職させる、やめさせるというようなことは、簡単でありまするけれども、今日の年齢的なものから考えまして、五十、六十という時代というものは、その弟子を養うに対して最も重要なときである。その重要なときに首を切られて、そうして果していわゆる社会保障制度によってこれが救えぬということであったなら、私はこれはきわめて国家的に重大な社会問題を起すと思う。従って、ただ単純に、今のお言葉だけのお答えでは、満足ができません。またこういうことは、えて、一応そう御答弁になってそれで十分考えていただけるかというと、そうではなくて、知らぬうちに消えてしまう。今日、卒業生が出る前においては非常にやかましい問題であったけれども、出てみると、さような声が少くなってくる。しかしながら、そこに呻吟しておるところのたくさんな卒業生というものがあるということについては、非常に悲惨な状態に陥っておるということを十分考慮して、考えていただかなければならぬと思いまするし、またこの問題はきわめて重要な問題でありまするから、具体的には本予算のときにまた質問さしていただくことにいたしまして、暫定予算であるから、今日はこの程度でおきます。  それからもう一つ、石橋通産相にお伺いしたいのは、中小企業に対する育成の公約であります。三月二十四日の毎日新聞の紙上に石橋通産相と全日本中小企業協議会の副会長の中島さんという方との対談が出ておりました。銀行の貸出額は、中小企業には三分の一で、しかも生産は半分以上の実力を持っている点からアンバランスであり、資金やその他祝の問題も均衡を失しているというようなことを言っておりまするのにつきましては、大臣は直接中小企業を潤す手段として、商工中金であるとか、あるいは中小企業金融公庫の金をふやすというようなことを言っておられます。また中小企業に対する輸出振興策については、協同組合を強力に支援するということを言っておられまするが、果してそういう御意思でおやりになるおつもりか。かようなことは口頭禅に終るおそれがありまするが、はっきりしたお考えが承わりたいと思います。
  332. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) ただいまのお尋ねの点は、現在本予算編成にかかっております。その本予算がきまりませんと、はっきりどれだけの資金という数字を申し上げるわけにはいきませんが、私としては、これは極力やっていくつもりであります。
  333. 木村守江

    木村守江君 ただいまの吉田君の質問関連いたしまして、労働大臣にちょっとお尋ねいたしますが、労働大臣の先ほどの答弁によりますと、いわゆる学校卒業者の就職はきわめて安易なような御答弁でありましたが、労働大臣は先ほど学校卒業者が都会に職を求めるというような考え方は、これからは考え直さなければいけない。地方に行って地方自治体等でその職場を見つけて地方自治体に吸収するような方法があるというようなお話でありましたが、地方の自治体というものは、労働大臣が考えておるような状態ではないと思います。御承知のように地方自治体は今や地方財政の窮迫に伴いまして、地方自治体の機構の改革に伴いまして、いわゆる人員整理をしなければならない状態であります。一例を申し上げますと、学校の教職員にいたしましても、いわゆる年齢の多くなった老齢になった、いわゆる老齢と申しましても、五十才をちょっと越しました人人を整理いたしましても、なおその府県の学芸学部の卒業生すらも全部雇うことができないというのが実際の状態であります。かような状態をお知りの上で、ただいまのような御答弁をなさるのかどうか。ちょっと御質問いたします。
  334. 西田隆男

    国務大臣(西田隆男君) お答え申し上げます。私は決して若い人たちの就職がきわめて容易にやれるとは考えておりません。しかしながら現在の学校卒業者の数万に及ぶ失業者をどうするか、就職をどうするかという問題になりますというと、やはりそういう方面に吸収する余力があると思われるところに持っていく以外には方法がありません。それから大都市や大会社に行っちゃいかんという意味じゃなくて、そういうところにだけ就職を求めるということが、結局就職のできない原因にもなっておりますので、その他の地方にもやはり就職を求めて、結局私が考えておりますところによりますと、地方自治体の方の人事の若返りというようなことも考えなければなりません。それと地方制度調査会の答申として、地方公務員の定年制を実施せよという勧告を自治庁で受けておりますので、これを実現せねばならないという責任を感じて申し上げたわけでありまして、決してあなたのおっしゃるように、きわめて平易なことであるという観点に立っての新卒業生の就職ということは考えておりません。
  335. 木村守江

    木村守江君 ただいま労働大臣の話を聞いておりますと、実際地方の実情を知らないで答弁しておるような感じがします。もちろん学校を卒業した卒業生が決して大会社のみを望んでいるのではありません。決して都会に集中して都会の会社でなければ就職をしないというような考えを持っておりません。ただいま最近の学校の卒業者は、どこでもいいから雇ってくれるところがあれば、臨時でも何でもけっこうだ、どんなとこでも入りたいというような切々たる希望を持っております。しかも地方の自治体に入るところがありますれば、幾らでも喜んで入ります。ところが、そういうような地方の自治体におきましても、なお狭き門があるのが実際の状態でありまして、かような状態が実情でありますからして、労働大臣はもう少し地方の実情をお調べになりまして、そういうような答弁をなさらぬように、これからもう少し勉強をしてもらいたいと思います。
  336. 西田隆男

    国務大臣(西田隆男君) お答えいたします。木村委員のお考え方は決して間違っておると私は考えておりません。しかしながらさっき申しますように、地方制度調査会の答申に基いて、政府としてはそれを尊重して、地方公務員の定年制をしかねばならなくなっておりますので、従って地方公務員だけでなくて、これを他にも及ぼすようにして、現在まで吸収力のないものを新しく吸収するような方法を考えたい、かような見地から申し上げておるのでございますから、どうぞ誤解のないようにお願いいたします。
  337. 木村守江

    木村守江君 それではちょっと最後にお尋ねしますが、それでいわゆる現内閣が唱えている完全雇用ができますか。
  338. 西田隆男

    国務大臣(西田隆男君) お答えいたします。完全雇用と申しますのは、三十年度で直ちにやるという意味合いじゃございませんので、今から数年かかって経済六カ年計画の達成ができれば、完全雇用ができるという見解に立っておるだけであります。
  339. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 中小企業金融に関連いたしまして通産大臣、大蔵大臣に一言お尋ねしておきたいと思います。先ほどの商工中金の資金の拡大関係関連いたしまして、現在商工中金の出資金は大体十四億になっておりますが、政府自身は二百十万円ぐらいしか出資をしておらぬ。法律の建前からいうと非常にこれはアンバランス、もう十四億の大部分が、なけなしの中小企業界から血の出るような出資をしておるという状態であります。従ってこの際、少くとも政府では民間出資にバランスのとれる程度の出資をすべきで、これはもう当然法律の建前からそういう結果が出てくると思うのであります。ことに中小企業金融公庫からは二十億の金が回っている。このうちの半分くらい、十億はせめてこの際政府出資としてこれをやるべきだというふうに考えるのでありますが、通産大臣及び大蔵大臣の答弁を得ておきたいと思います。
  340. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) 商工中金の出資の問題は、かねて私ども考えております。できるだけ御趣旨に沿うようにいたしたいと考えております。
  341. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 商工組合中央金庫の政府出資ですが、できるだけふやすようにいたすことはけっこうでございますが、財政の関係もありますので、なかなかそう思うように参りません。また、バランスが必ず政府が多くなくちゃならぬということも私は考えておらない。特に商工組合中央金庫については、相当な債券発行能力があるわけであります。御承知のように、もうずいぶんこれは市場から資金も集めております。まあできるだけ御趣旨に沿うようにはやりますが……。
  342. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 今債券引受けをしておりますということでありますが、債券引受けのもとになる資金がだんだん枯渇をしております現状であります。そういう点において民間出資と大体パ一に近い程度のものは、この際当然すべきじゃないかというので、政府出資の方が多くなければならぬというふうには私は言っておらんのです。同じ程度くらいにやるのは当然じゃないかと思いますが、こういう点について大蔵大臣の答弁をもう一度……。
  343. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) なるべくこれは特別に商工組合中央金庫という制度を作ってあるのでありますから、なるべく御趣旨に沿うようには考えております。
  344. 吉田萬次

    吉田萬次君 今の通産省の中小企業対策では、業種別と地域別組織がありますが、その業種別のほうへ片寄っておるのが盲点だとせられておるのであります。しかるに、ここに両方とも考慮せられておらないという一例をあげて、そうして御意見が承わりたいと存じますが、これはことは地方的の一つの小さな問題でありますけれども、かような問題が私はたくさん各方面にありはしないかと思います。そして今日中小企業の諸君が、業者がいかに苦しんでおるかという真相を御当局も知っておられないと思いまする関係上、一例をあげて、そうして御答弁が承わりたいと思います。業種別と地域組織と共に備わっており、しかも血涙をふるってそうして犠牲を払い、輸出の振興に努力してしかも成績が非常に上っておる。というのは、愛知県の一宮市におけるところの繊維業界でありますが、これについて陳情をいたしましても、政府が一顧の同情もしてくれないということで、ついにけんかをして帰って来ておるというような問題があるのであります。この組合は一千名の組合員を持って尾西紡織工業組合という名をつけております。スフの織物に対して全力をおげ、そうして世界一の生産地になろうと努力しておるのであります。昨年度中に世界各国に向けて発送いたしました見本だけでも数百種に上り、しかも好評を得まして注文が殺倒して、今日では月産百五十万ヤールを上回っておるような状態であります。しかるに現況では中小企業といいましても、中の上の部類に属する方面に力が注がれております。いわゆる小企業に属する方面には、あまり考慮が払われておらないように考えるのであります。今日各業者たちは平均三台の織機を持ちまして、そうして商工中金であるとか、あるいは中小企業金融公庫という方面に陳情しましても、ちっとも顧慮してくれない。たとえそれが組合員でありましても、信用調査であるとか、あるいは信用調査などに口をかりて、そして事実は借りられない。そして組合がこれを証明いたしましても、しかも、かような小さな問題は手数がかかるとか、あるいは人手がないとか言って断わられておるような状態で、やむなく地方銀行にたよって、ようやく焦眉の急をしのいだような状態であります。現在の状態といたしましても、この協同組合が今までに四カ月切りかえで十カ月も続けてこれを完全に返済しておる。二カ月の据置きで三カ月日に半分と、四カ月目に半分というような払い方をしましてこれを履行しておる、実に涙ぐましい状態にあるのであります。しかも、その中からいわゆる輸出に全力を注いでおる。一千名の組合員が高い犠牲を払いながら世界各国に見本を出しておるというその真相を知っておられるか知っておられんか知りませんが、これに対して何らの便宜を与え、何らの支援も考えておられないということは、まことに遺憾であると思うのであります。その生産物は全国にない織物でありまして、いわゆる毛織織機を利用しまして、そうして高級スフを織り、その技術というものがまた卓越しておりまして、輸出のものにつきましては見本よりいいものを出しておるというような状態で、いわゆる味というものに対する最善の努力を尽しておるのであります。従いまして、今日におきましてはカナダあるいは南西アフリカ、あるいはイラン、イラクを初め中近東アジアであるとか、遠く北欧のノルウェーからデンマークまでこの見本を出し、輸出をしておるのであります。この現況を見まして、これは涙ぐましい気の毒な状態である、いわゆる中小企業におけるところの上位のものには相当な関心を持っておられるが、小さいものには関心を持っておられぬ、しかも輸出ということに全力を注いでおる業者に対する関心がなく、相談にくればけんか別れになるようでは、私はすこぶる遺憾である。で実情をよく御調査願いまして、そうしてかような問題に対する方策を講じていただきたいと思いますが、これに対する通産大臣のお考えが承わりたいと思います。また、この中小企業に対する金融その他の便宜というものに対してはどういうお考えをお持ちになっておるか。
  345. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) 中小企業の問題は、昔からお題目のように言われながら、なかなか実効が上らなかったということは事実であります。実際それほどむずかしい問題でありますから、御指摘のようないろいろな手落ちや、手の回らないところが多々あるであろうということは、まことに恐縮しておるんであります。しかし決して放擲しておるとか、やらないとかいうわけではなくて、今までも相当やっておるように思います。たとえば今の御指摘の尾西毛織物でありますか、にも商工中金等からかなりの融資が行われておると私は承知しております。
  346. 吉田萬次

    吉田萬次君 毛織物には相当な注意が払われておりますけれども、スフの零細なる一千名を擁する組合のほうの紡織のほうには、ほとんど考慮が払われておらない。
  347. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) そういう点があるかもしれません。それはなおよく調査いたしまして、金融はもちろんできるだけつけるように商工中金あるいは中小企業金融公庫等ができるだけのことはいたしておるはずであります。でありますが、今申すように多数の今の一千名にも及ぶというようなわけで、なかなか手が回らないという点は多々あると思います。しかし、これに今後なお大いに強力にやるつもりで努力いたしております。
  348. 吉田萬次

    吉田萬次君 それにつきまして大蔵大臣にその問題についてお伺いをいたしたいと思いまするが、先般あなたは一宮市へ来られまして、そうして商工会議所で今通産大臣にお尋ねしたと同じような問題について地方の諸君が陳情いたしました。その節あんたは熱心にわざわざメモまでして、そうしてこれについては非常な関心を持ち、努力するということをお話になったのでありまするが、今度のこれは、きょうは暫定予算でありまするけれども、通常予算に対してかような問題を織り込んでおられまするか、また織り込まれる意思があるか。これに類するたくさんな私は例はあると思いまするから、これに対するお尋ねがしたいと思うのであります。  それから三十年度の予算につきましてですが、中金であるとか、それから中小企業金融公庫というものは非常に日歩が高いのであります。で歩積みまでやっておる諸君に対しては非常に残酷だと私は思うだによって、少くともこれが輸出振興になり、国家に対する貢献をするというものに対しては、多少何とか方法を考えてもらえんかどうかということを承わりたい。
  349. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 中小企業に対します金融面からは、今おそらく通産大臣からもお答えがあったのでありますが、まずやはり金融が受けられるようにそういう態勢をお作りになることは申すまでもありません。だから私は触れません。ただ金融面から申しますと、中小企業専門の政府関係機関、これは今回の予算でも資金を増額して、そうして従来こういうふうな金庫は代理貸しということになって、自分でも店を持っておらない。それで私は今度はやはり中小金融の運営を円滑にする上から、地方のおもな所に支所といいますか、支金庫といいますか、というものを出して、そうして自分でよくやはり地方の中小企業の情勢をなるべく近くで把握して、そうして金融をする。こういう形で特に中小企業金融公庫なんかについてはそういう方向を求める、また同時に、金利についても具体的にどうするということを、ここで申し上げるわけにもゆきかねますが、総じて私は今金利を下げ得る客観的な条件を与えるとともに、同時に金利も下げてもらう、こういうふうなことを今全部の金融面について施策をいたそうといたしております。この中小企業については、特に私は従来ともすると観念的に、中小企業の金融というものはめんどうくさいということも一つありますが、金額が小さいのに、同じ紙を一枚使わなければならぬという、ごく端的に言えばですね。これはやはり親切でないので、中小企業なるがゆえに金利が高いということ、高く取ってもいいというような考え方はやめてもらおうという考え方と同時に、特に中小企業について金利以外の負担はいろいろあると思うのです。わずかの金を、わずかの金と言ってははなはだ失礼なんですけれども、それほど大きくない中小企業の金融については、金利にさほど負担があるということになれば、これはとても大きな金を借りたときと違って、特に私は金利の実質負担が大きくなると思う。そういうことは一切やめてもらう、あるいはまた中小企業については、なるべくある程度中小企業の方が現金をもらえるような形ですね。長い手形をもらって苦しむというのでなくて、ある程度現金をもらえる。これをどういうところから打ち込もうかということを考えて、これらの施策についても一つ考える。なお、税については御承知のように低額所得者については税を軽減する、中小企業については特に事業税について減額をはかる。それから今お話の輸出振興の問題については、輸出所得について所得からの控除を従来の五〇%を八〇%までする。こういうふうにしまして、私としてはできるだけ中小企業の育成ということについて、さらにこの三十年度の予算面に本当に打ち出していこう、こういうふうに考えているわけです。
  350. 吉田萬次

    吉田萬次君 ただいま御説明ございましたが、銀行でも少くともかような問題について注意を払うようにしていただきたい。御存じのようにアメリカの中小企業が生きたというのは、要するにナショナル・シティ・バンクであるとか、あるいはアメリカ銀行であるとかいうような、今から三、四十年前には微々たるものが今日の大をなしておると同じように、親切にして中小企業を救おうという気分でやったから、それででき上ったのであって、今日の日本の銀行というものはすべてどうかというと、たくさんな金を一時に貸して、一ところによって莫大な利益を占めようというような観念を持っておるからいかんのであって、銀行の方面に対する造詣の深い蔵相といたしまして、銀行に対して何とかかような方面に対する歩積みその他をして、そうして小小企業を苦しめるということでなくして、やはり中小企業金融公庫なとにたよらずして、銀行も門戸を開いて、かような連中を救うように、何か警告か注意か訓示が与えてもらえぬものでしょうか、どうでしょうか。
  351. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 関連質問。ただいまの古田委員の御質問の中で、歩積み預金が今日中小企業の乏しい資金を固定化して、いかに困っているかということは、大蔵大臣もよく御承知のことと思うのでありますが、この際歩積み預金を一定限度に比率で押えるという規制を、大蔵省としておやりになる御意思はないかどうか。たとえば三割に押えるというような行き方をやられることは、私は絶対必要だと思うのですが、その点あわせて御答弁願いたい。
  352. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 銀行経営上についての御注意、非常に私はありがたくちょうだいしておきます。銀行の方も、精一ぱい銀行の使命を体しまして、やっているものと私は確信しておりますが、なお一そう今言うたようなことをよく耳にいたすのでありますが、できるだけ一つ注意といいますか、そういうことのないように私としては強く指導する考えをいたしております。  なお、歩積みについては、これは私は非常に遺憾に思っております。特に中小企業の方にそういうことをするということは、私としてもこれは物心両面から耐えられないことなんで、私は常にこれをやかましく言っているのです。中央銀行なんかも、多く中小企業の件をやっているのですが、特に中小企業に関係する金融機関に、これは十分よく申しまして、これをまさかわざわざ法律でやるということも、はなはだ金融機関のやはり名誉に関する遺憾なことであるから、そういうことはしなくても、必ず直してくれると思っておりますので、十分この点を指導いたすことにいたします。なお、その精米を見て考えることにいたします。
  353. 吉田萬次

    吉田萬次君 次に、間接税の増徴について御質問申し上げますが、先般の議会の議場において、大蔵大臣は、所得税その他五百億の減税をする。その反面において、間接税において五百億円の増徴をはかるということを言っておられましたが、果してそれはできるでしょうかどうでしょうか。そしてまた、いかなる方面にこれを適用しようとおぼせられるのか。新聞紙上に出ているところの蔵相のお考えであれば、これは増徴ということよりも、むしろ調整に近い程度のものであって、果してそれが本当の減税になり増徴になるかどうかというふうなこと、またこれをもう少し掘り下げて考えてみたときに、これがどの方面にどんなに影響するか。またこれに対して、少くとも庶民階級が危惧の念にかられるようなことはありはしないかということについてお伺いしたい。
  354. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) いろいろなことを申すこともありません、御承知通りでありまして、非常に乏しい財政であります。がしかし、デフレをやっている過程におきまして、今経済の地固めをやっている過程におきまして、どうしても中小企業の方とか、勤労者とか、農家の方とか、そういうふうな低額の所得者その他が、力の関係でどうしても負担が重なる。そういうようなのは、地固めをやっていく上において、やはり国家として手を伸ばす、それが減税の今回の趣旨になっているわけでありますが、そうするとやはり乏しいところからは財源にはなりません。そこでそのこと自体をあげると、いろいろ御批判もあると思いますが、今日やはり砂糖についても相当輸入しないと高い。価格のいろいろな統制の仕方もあるかもしれませんけれども、やはり経済の正常化に持っていく場合には、あまり需給関係において無理に供給を押えておくことは適当でない。そこで砂糖を輸入する。砂糖を輸入すれば、何にもしないでも自然税の増収になる。そうしてしかも砂糖は今よりもずっと安くなる。国民生活はそのためによくなると私は考える。もう一つは、私は酒を考えているのですが、酒は今日やはり密造がなかなかあるのです。ある意味において足らないとも言える。まあ酒を飲めというわけでもないのですけれども、ある程度は必需品でもあるというような意味もあるのですが、それで幾らか造石をふやそう、それだけのことです。酒の造石をふやす。ですから、なにごしんぼうなさって、おれは酒を飲まん。そんなものは税なんか負担せんと言えば、お酒を飲まなければいいのです。そうすれば酒の税はかからない。これは別に酒を飲めと言って強制するわけでも何でもありません。そういうふうな程度のことは、まあ日本の現状において、他面において非常に社会で苦しい人を救ってあげよう、その金を何とか捻出しょうとすれば、そのくらいのことはがまんしてもらわなくちゃ、日本の国情がなかなかいかないので、何もかもいいように大手をふって何もかにも支障がない、全然もうすべてが百%、そういうわけにゆきませんので、そういう意味で間接税……。特にもう一つその点について申し上げておきたいことは、御承知のように日本の税制というものは、シャウプさんが来られて、直接税中心に、これはまあ私はよく知りませんけれども、当時の話では税制の体系として、むろん面接税が国税の中心であるから、直接税でずっと一貫するのが、一つの税の体系としてはりっぱなものらしいのですが、しかし日本は今日非常にまた特殊な経済情勢にありますので、そう単に理論一点ばりの税制も、もう少しやはり金を使う人は少し税をたくさん出してもらうということも加味していいだろう、こういうふうな意味合いで、これは程度の問題でありますが、そういう意味でやるのであります。
  355. 吉田萬次

    吉田萬次君 時間がありませんから、もう一つ質問いたしますが、これは補助金の整理の問題でありますが、非常に重大な問題だが、もう五分よりないということでありますからもう簡単にして、そうして質問をいたしますけれども補助金の整理というものは、御存じの通りにこれは国といわず、地方といわず非常に考慮せなければならん重大な問題であって、いわゆる手をつけても手を焼くというのが従来のありきたりであります。これがもし実行ができるとするならば、運営上に非常な貢献をする。この三月二十六日の、週刊のエコノミストの三月号にも補助金の乱費ということが出まして、たくさんな実例と数字がここに表わされて、その真相が出ております。また二十九年度には補助金が実に二千九百十三億であって、全予算の二九・二%を占めておるということが出ております。で、国の今月予算の三割を占めるというこの補助金の整理というものにつきまして、前の内閣におきましても、非常に苦慮いたしまして、そうして八十五億の義務教育の国庫負担と、それから入場税の問題の処理をするために、一割の天引きというような方針で予算編成し直されたというようなときにでも、この補助金について手をつけられましたが、しかもどうかというと、三、四百億円の補助金の整理をしようとせられたにかかわらず、しかもどうかというと、最大限六十億より削ることができなかったという現状であります。で、蔵相はこの三十年度の予算編成に当りまして、従来のいわゆる補助金政策を全く白紙に還元して、そうして整理がしたいということを言明せられ、また公約をしておられまするが、果してそれができることでしょうかどうでしょうかということでありまして、補助金の整理というものは、これは非常な英断を要するむずかしい問題でありまして、これができるというようなことであり、またこれが一萬田大蔵大臣によって徹底的にという言わんでも、われわれの肯定し得るまでの整理ができるということなら、私は従来にないもう日本一の大蔵大臣だろうと思うのであります。が、これは非常にむずかしい問題であって、今日の新聞にすら、すでにどうかというと、これがこわれかけておるような論調が出ておるのであります。これに対するいかなる決心と、どれだけの英断をふるってこの問題を処理していこうとせられるか。いずれ将来においてこれははっきりわかる問題でありますが、これに対する確信の、また所信のほどを承わりたいと思います。
  356. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 補助金につきましては、昨日もまあこれは暫定予算案でありますが、衆議院で附帯決議の御趣旨もあって通りましたのですが、この御趣旨を体しまして補助金の計上をいたすのでありますが、そうして私の考えでは、補助金を何もかも削ってしまえ、そういうふうな乱暴なことはもう考えてもおりませんし、また考うべきことではないと思います。ただやり方の問題として、どうすればやはりほんとうに……、補助金のうちでかえって相手方の負担を重くするような補助金もないとも言えない。それは補助金をもらうためにまた自分から出していかなければならない。それがまあゆとりのあるところならよろしいのですけれども、たとえば今日地方公共団体のうちには、もう赤字赤字で苦しんでおるところがある。そこへ持ってきて中央からそれがしの補助金が来る。その苦しい中からでも、自分がまた金を作ってから、そうしてから一緒に仕事をしなければならぬと、こういうふうなことになってくると、そういう補助金については、これはなかなか考えて、まあ補助金の性質にもよりますから、相手が赤字だからすぐやめてもいいとも私は言えません。そういうふうに補助金によっては、なかなか相手を苦しめることもある。同時にまた補助金のうちで必ずしも補助金を当初差し上げるようにした時のそのままの状態が続いておるとも限らん。あるいはまたかえってもうそんな補助金は取ってもいいじゃないか、効果を上げていない、そういうふうなものもありましょう。そういうふうな実際の補助金の本当の目的を達成しておるかどうかということをよく見た上で、達成せぬものは、これはやめなくてはならぬ。また当然やめるべきだ。そういうことをやる場合に、これはいかぬ、それはいかぬというだけのような形では、なかなかこれはそういうふうな事態があっても、補助金をやめるということは困難だと私は思いましたから、これはまあ私財政についてはなはだしろうとですから、まあしろうとじゃから、かえって盲ヘビにおじずというやつかもしれませんが、まあ一応考え方によっては全部やめるような形くらいな考えをして、そうしてほんとうにまたこう復活をずっとして、これはいかぬから復活せんでおけば、まあいくのじゃないかというような考え方ですね。それをやめるときのやり方と、自分の気持ちはそういう言葉であるいは表現したことがあるかと思います。それで非常にあるいは強く響いたかもしれませんけれども、むろん私は補助金について、いやしくも補助の目的を達しない少くとも補助金については、やめてもいいというものは、これは三十年度の予算においては、これはやめていただかなければ、国家の財政が組めぬと、こういうふうに思っております。
  357. 吉田萬次

    吉田萬次君 これは非常にむずかしい問題でありまするが、蔵相が相当な決意と、それから公約をしておられる問題でありまするので、将来龍頭蛇尾に終らぬようにしていただきたいといふ、時間もありませんから、希望を述べて私の質問を打ち切ります。
  358. 館哲二

    委員長館哲二君) 本日はこれにて散会いたします。    午後五時三十九分散会    ————————