○青木一男君 ただいま
議題となりました六
法律案について、大蔵
委員会における審議の経過並びに結果を御
報告申し上げます。
まず
関税定率法等の一部を
改正する
法律案について申し上げます。
本案のおもな
改正点を申し上げますと、第一点は
現行関税定率法によりますと、
輸出された貨物で
輸出許可の日から二年以内に輸入され、性質、形状が変っていないものについては無
条件免税の取扱いをすることとなっておりますが、海外の
建設工事等に使用する
目的で
輸出された機械設備等で政令で定めるものにつきましては、その性質にかんがみて二年をこえてから輸入される場合にも関税を免除しようとするものであります。第二点は、原油、重油及び粗油については従来暫定的に関税を免除する
措置を講じて参っておりますが、最近の経済状況にかんがみ、石炭との関連において燃料の合理的な使用をはかろ等の必要性から、製油原料として使用される原油、重油及び粗油には二分、B・C重油には六分五厘の関税を課することとし、これに伴う所要の徴収
規定を設けようとするものであります。第三点は、重要機械類及び児童給食用乾燥脱脂ミルク並びに
関税定率法の一部を
改正する
法律別表甲号に掲げる大豆、
石油、コークス等に対する関税の免除、同法別表乙号に掲げる建染染料のうちのスレン系染料等に対する関税の軽減について、その期限が本年七月三十一日で切れることとなりますが、諸般の事情を考慮してこれらの期限を
昭和三十一年三月三十一日まで延期することとし、別表甲号の暫定免税品目に新しく小麦を加えようとすることであります。
以上のほか、保税倉庫に置かれた外国貨物の外貨表示
価格の換算については、輸入申告の日の為替相場によることに改める等、所要の
改正をしようとするものであります。
なお関税の暫定的免除軽減の
措置は、
政府原案では、本年六月三十日で期限切れとなるものを
昭和三十一年三月三十一日まで延長することとなっていたのでありますが、先に成立を見ました衆議院大蔵
委員長松原喜之次君の提出にかかる
関税定率法の一部を
改正する
法律の一部を
改正する
法律によりまして、とりあえず本年七月三十一日まで延長する
措置がすでに講ぜられたのでありまして、これに伴って
政府原案の
昭和三十年六月三十日は当然
昭和三十年七月三十一日にしなければならないこととなったのでありまして、この点衆議院において修正をするとともに、
施行期日についても、
昭和三十年七月一日を
昭和三十年八月一日に修正いたしたものでございます。
本案の審議に当りましては、すでに成立いたしました所得税法の
改正法等とともに公聴会を開催する等慎重に審議したのであります。おもな
質疑について申し上げますと、「いわゆる
石油関税復活の理由は何か」との
質疑に対し、「経過的にいうと、炭化水素油については、
昭和二十六年の
改正によって従量税から従価税に切りかえられ、別表税率は、国産原油
保護等の見地から一割と定められたものであるが、当時タンカー運賃の高騰等のため、その影響を考慮して哲定的免税
措置が講ぜられてきた。その後タンカー運賃も下り、一昨年あたりから一部に関税復活の意見が起った。今回関税を復活することについては、国産原油開発五カ年計画との関連もあり、かつまた石炭対策との一環として考えられたのであるが、水産用等への影響を考慮して、主として石炭と競合するものについて低率関税を復活することとした」との答弁があり、「重油に対する課税が復活し、
価格が多少上昇してもその効率からして重油消費は減らないと思うが、石炭との調整をいかにするか」との
質疑に対し、「昨年四月から重油ボイラーの転換は行政指導をしているが、今回の関税復活と提案中の重油ボイラーの設置の制限等に関する臨時
措置に関する
法律案に基く両
措置によって、重油消費を石炭消費に転換せしめることとしている。ボイラー用重油の消費量は、年間約百八十万キロリッターあるが、五年計画として約百万キロリッターを石炭に転換せしめるつもりである。もちろん技術的に困難なものについては、強要は避ける。百万キロリッターは、石炭換算約百八十万トンに相当し、このことは現下の石炭事情からするとその効果は重大である」との答弁があり、また、「衆議院大蔵
委員会における付帯決議によれば、陸上用B・C重油中、特に
輸出に重要な
関係を有する中小企業その他の産業において使用するものに対しては、極力関税復活による悪影響を及ぼさないよう行政
措置を講ぜられたいとのことであって、
政府においては了承したと聞くが、結局課税による負担のしわはいかに転嫁されるのか」との
質疑に対しては、「水産用等の海上用B・C重油については、石炭の競合もほとんどないし、中小経営が多いので、できるだけ影響をなくしたい。すでに昨年四月から行政指導をしているが、今後はその影響を極力
石油業者等に吸収せしめたい。また陸上用のもののうち、ボイラー用のものは課税による影響はいたし方ない。鉄鋼部門のうち平炉用のものは一応問題であるが、
石油業者等に相当部分吸収せしめることとしたい。
輸出産業のうちそのコストに著しく影響あるものについては
石油業者等に吸収せしめていきたいと考えている」との答弁があり、さらに、重油の販売機構は比較的確立されているようであるが、行政指導によって用途別に
価格差を設けるごときは、はたして
維持できるか」との
質疑に対しては、「特約店、元売業者との連係は判然としており、できると思う。現在、末端において
協定価格が順守されない場合は、元売業者への外貨割当で手かげんされることとなっておるので、御懸念の点は外貨割当で調整することによって実行されるものと思う。また提案中の重油ボイラーの設置の制限等に関する臨時
措置に関する
法律案が成立
施行されれば、同法第六条、重油の生産業者等に対する指示の
規定と相待って実効を期したいと考えている」との答弁がありました。なお、「結局
石油関税の復活は、石炭対策か、国産原油の
保護か、不明確である。国産原油の
保護となると、
本案のごとき低率関税では意味がない。また石炭対策として、水産用等には影響を与えないようにし、また衆議院大蔵
委員会の決議に沿って行政
措置を講ずるとなると、結局石炭と競合する重油の範囲は狭まってくる。また
石油関税復活を
政府の基本政策である低物価政策をくずさない範囲内で考えるとすると、石炭対策という意味がなくなるのではないか。
政府は将来基本税率まで引き上げる考えがあるか」との
質疑に対しては、「現在総合燃料対策を検討しているが、将来石炭は燃料としてではなく高度化して使用したいが、それには時日を要することであり、また石炭業界の現状からして将来は五千万トン確保したいと考えている。この点から無制限に重油を輸入することは避くべきであるとともに、重油ボイラーの石炭への転換も進めていかなければならない。と同時に、適当な関税をも復活せしめようとのことであって、国産原油についても将来需給度を高めていかなければならないとも思っている。ある程度高率関税を復活する必要があるということはわかるが、今後基本税率である一割まで引き上げるかどうかは十分研究していく」との答弁がなされたのであります。その他詳細は、速記録によって御承知願います。
次に、
関税定率法の一部を
改正する
法律案について申し上げます。
別途、関税及び貿易に関する一般
協定への
日本国の加入
条件に関する議定書への署名について
承認を求めるの件が、外務
委員会において審議中でありますが、
本案はこのいわゆるガット加入のための関税交渉の結果を考慮して、所要の
改正をしようとするものであります。
以下
改正点を申し上げますと、
現行の
関税定率法は、
昭和二十六年の
改正の際、従価税率一本建に整理されたのでありますが、今回の関税交渉の結果、フィルムの一部について従量税率による
協定がなされたことに伴い、露出済みの映画用フィルムの税率を従量税率に改めることとし、生フィルム以外の映画フィルムのうち、ニュース映画用のものについてはその公共性にかんがみて、一メートルまたはその端数ごとに十円、ニュース映画用以外のものについては、一メートルまたはその端数ごとに、フィルムの幅が三十ミリメートルをこえるもの五十円、十ミリメートルをこえ三十ミリメートルをこえないもの二十五円、その他のもの十五円の税率を設定しようとするものであります。
なお、この
改正によって、税率は従価税率と従量税率の二木建となりますので、関税は輸入貨物の
価格または
数量を課税標準として課するものであることを明らかにし、複関税、報復関税及び不当廉売関税を課する場合の
規定を整備するほか、加工または修繕のため
輸出された貨物で
輸出の許可の日から一年以内に輸入される貨物については、従価税品及び従量税品のいずれの場合にも関税を軽減することができることとする等の
改正をしようとするものであります。なお、この
改正はガットの譲許税率の適用と同時に
施行することとされております。
本案につきましては、ガットの関税交渉の経過について説明を聴取する等審議をしたのでありますが、
質疑のおもなるものを申し上げますと、「映画用フィルムに従量税率を適用することとしたのはいかなる理由か」との
質疑に対し、「映画用フィルムには本来からいうと、従量税を適用することが最も適当している。現在は輸入されるものの約八割が興行成績いかんによる歩合制となっているので、課税
価格の決定はきわめてむずかしい。現在は生フィルム代、現像代、焼付代等を加算してCIF
価格を算出しているが、これでは不合理であるので、かねがね研究中であった。ガットの関税交渉においては、一メートルまたはその端数ごとに三十円という譲許税率が取りきめられたが、これは
現行従価税率三割よりも四割一分ほど高くなるので、現在の天然色映画フィルムについての売切買切
契約の本国送
金額に
現行税率を課した場合を従量税率に換算したものを基準として、三十五ミリメートルのものについて、一メートルまたはその端数ごとに五十円等とすることとし、従量税率を採用することとした」との答弁がありました。その他ガット
協定、いわゆる新ガットの問題等について
質疑がなされましたが、詳細は速記録に譲ることを御了承願います。
以上二
法案について
質疑を終了し、一括して
討論に入りましたところ、平林剛
委員より、「
関税定率法等の一部を
改正する
法律案について、国産原油は国内需要量の五%に過ぎず、今後とも輸入重油への依存度が高まると思うが、このことは、強大な国際
石油カルテルの支配力を強めることとなり、わが国の経済自立を阻害する危険がある今日、
石油関税復活は妥当な
措置である、また基本資材ではあるが、
石油業者が高利益を得ている現状においては、関税を課すべきである。その影響は
石油業者に吸収せしめるとの答弁があったが、この点
政府の積極的な研究を要望する。今後タンカー運賃の下落という事情は続くと思うので、基本税率まで復活すべきであり、
政府も諸般の事情を考えて処置するとのことであるので、
本案に
賛成する」との意見が述べられました。
討論を終り、
関税定率法等の一部を
改正する
法律案について
採決の結果、
全会一致をもって
衆議院送付案通り可決すべきものと決定し、ついで
関税定率法の一部を
改正する
法律案について
採決の結果、
全会一致をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。
次に日本開発銀行の
電源開発株式会社に対する出資の処理に関する
法律案について申し上げます。
現在、日本開発銀行が電源開発促進法の
規定に基いて
電源開発株式会社の株式五十億円を保有いたしているのでありますが、これは
電源開発株式会社創立の当時における予算編成上の都合により、便宜日本開発銀行をして、
政府にかわって同社の株式を保有せしめたのでありまして、日本開発銀行の本来の業務から申しまして変則的なものであります。他方、一昨年来、日本開発銀行と農林漁業金融公庫及び中小企業金融公庫との間に、業務分野の正常化をはかるため、債権の承継を行なつたのでありますが、今般その最終処理として、日本開発銀行が両公庫に対して持っている貸付金を、
政府の産業投資特別会計に引き継いで、同特別会計からの両公庫に対する出資金とすることとし、本
国会に中小企業金融公庫法の一部を
改正する
法律案及び農林漁業金融公庫法の一部を
改正する
法律案が提案され、すでに可決されておるのであります。
本案はこの機会に、日本開元銀行が保有する
電源開発株式会社の株式をも産業投資特別会計に引き継ぐことによりまして、日本開発銀行が本来の融資活動に専念できるようにしようとするものであります。すなわち日本開発銀行の保有する
電源開発株式会社の株式を、
政府の産業投資特別会計に帰属させ、同時に日本開発銀行は、引き継いだ株式の額面
金額の合計額と同額だけ減資することとし、また電源開発促進法のうち、日本開発銀行が
電源開発株式会社の株式を保有することができる旨の
規定を削除しようとするものであります。
次に日本開発銀行法中の同行の資本金の額を、さきに申しました両公庫に対する貸付金を産業投資特別会計に引き継ぐ分等を含めまして、現在の資本金二千四百六十二億二千万円を二千三百三十九億七千万円に改めようとするものであります。
本案審議の詳細につきましては速記録により御承知願いたいと思います。
質疑を終了し、
討論、
採決の結果、
全会一致をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました次第であります。
次に、
資金運用部資金法の一部を
改正する
法律案につきまして申し上げます。
本
改正案の第一は、現在の
資金運用部資金法によれば、五年以上の預託金はすべて年五分五厘の利子を付することになっておりますが、より長期の預託金に対しても、それに相応した適正な利子を保障するために、五年以上七年未満のものは従来通り年五分五厘とし、新たに約定期間七年以上の段階を設け、年六分の利子を付することといたそうとするものであります。第二は、
現行の
資金運用部資金法によれば、資金運用部預託金の
契約上の預託期間は三カ月を下らないものと
規定されており、各特別会計等におきまして三カ月未満の短期の余裕金があっても、資金運用部に預託することができない事情にありますので、これらの特別会計等に対し、短期資金の運用の道を開くため、最低約定期間を一カ月に引き下げ、一カ月以上三カ月未満のものについても預託を認めることとし、それに対し年二分の利子を付することといたそうとするものであります。なお、期限前、払い戻しの場合の利率は、現存預託されていた期間が三年以上のときは年四分五厘、三カ月未満のときは利子を付さないことになっておりますが、以上の
改正に伴い、預託期間が五年以上のものについては年五分とするとともに、一カ月以上三九月未満のときは年一分五厘といたそうとするものであります。第三は、資金運用部審議会の
委員が十名で、この
委員のうち学識経験者は三名以内となっておりますが、学識経験者の数を二名増加し、五名以内とし、
委員の総数を十二名以内といたそうとするものであります。
本案審議の詳細につきましては速記録により御承知願います。
質疑を終了し、
討論、
採決の結果、
全会一致をもって原案通り可決すべきものと決定いたした次第であります。
次に
厚生保険特別会計法等の一部を
改正する
法律案について申し上げます。
本案は、厚生保険特別会計法並びに船員保険特別会計法についてその一部を
改正しようとするものであります。
まず厚生保険特別会計法の一部
改正について申し上げますと、第一点は、
政府の行なっている健康保険の給付費が異常に増加し、支払財源に不足を生ずるに至ったことは御承知の通りでありますが、この補てんのために、
昭和三十年度以降七カ年度間、毎年度十億円を限り、一般会計からこの会計の健康勘定に繰入金をすることができることとしようとするものであります。第二点は、日雇労働者健康保険事業の保健施設及び福祉施設に充てるための
経費について、日雇健康勘定から業務勘定へ繰入金ができることとし、これに伴って業務勘定の決算上の剰余金については、日雇健康勘定の積立金へも組み入れできることにしようとするものであります。
次に船員保険特別会計法の一部
改正でありますが、船員保険で行う給付のらち、健康保険の給付に対応する給付の費用が異常に増加を来たしたのでありますが、その財源の一部に充てるために、
昭和三十年度以降六カ年度間、毎年度二千五百万円を限り、一般会計からこの会計に練り入れることができることとしようとするものであります。
本案につきましては、厚生保険特別会計の
昭和二十九年度及び三十年度の支払い財源の不足の発生事情等について
質疑がなされたのでありますが、速記録によって御承知願います。
質疑を終了し、
討論、
採決の結果、
全会一致をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。
最後に、
余剰農産物資金融通特別会計法案について申し上げます。
今
国会において、去る六月二十四日、農産物に関する
日本国とアメリカ
合衆国との間の
協定が
承認されましたが、
本案は、右の
協定に基きまして、米国余剰農産物の購入に伴い、アメリカ
合衆国から借り入れることとなる外貨資金を財源として、電源開発、農地開発等、わが国の経済発展を促進するために行う資金の貸付の経理を明確にするために、一般会計と区分して、新たに余剰農産物資金融通特別会計を設置しようとするものであります。
本案の概要を申し上げますと、この会計は大蔵大臣が管理することとし、借入資金の借り入れによる収入金、貸付金の償還金及び利子等をもって歳入とし、貸付金、借入資金の償還金及び利子、事務取扱費、借入資金の償還に関する諸費をもって歳出とすることとし、その他予算決算の作成及び提出、損益の処理等について、特別会計に必要な事項を
規定しようとするものであります。
本案審議に当りましてのおもなる
質疑を申し上げますと、「
政府が農産物に関する
日本国とアメリカ
合衆国との間の
協定に基いて借り入れる外貨資金を財源として、電源の開発、農地の開発、その他本邦の経済の発展を促進するため資金の貸付を行うが、その資金計画はどのようになっているか」との
質疑に対し、「電源開発に百八十二億五千万円、農地開発に三十億円、その内訳は愛知用水
関係二十四億五千万円、篠津地域四億五千万円、根釧地域五千万円、上北地区五千万円であり、生産性向上本部一億五千万円となっている」旨の答弁がありました。その他いわゆる余剰農産物
協定に関し、種々質問がなされたのでありますが、その詳細は速記録によって御承知願います。
かくて
質疑を終了し、
討論に入り、平林剛
委員より、「いわゆる余剰農産物
協定に社会党は
反対である。その理由としてアメリカが過剰農産物の処理に困って、隷属国とじての日本に押しつけたような
協定であると指摘されており、アメリカが得をする
協定である。この
措置によって、わが国の農業及び学童給食に対する児童の心理的影響、さらには東南ア諸国に及ぼす影響等を考慮して
反対する」旨の意見が述べられ、松澤
委員より、「第一に余剰農産物
協定に
反対である。第二に、本特別会計の資金の運用に自主性がない」旨の
反対意見が述べられ、
採決の結果、多数をもって原案通り可決すべきものと決定いたした次第であります。
以上、御
報告申し上げます。(
拍手)