○江田三郎君 ただいま
議題となりました農林水産関係三法案につきまして、農林水産
委員会における審査の
経過並びに結果を
報告いたします。
まず、
水産業協同組合法の一部を
改正する
法律案について申し上げます。
水産業については、去る
昭和二十五年第九
国会において、火災等による特定物件の損害に限定して共済制度を設けておりますが、本来水産業は農業と同様自然に大きく依存し、自然の暴威による各種
災害が多いにもかかわらず、かような火災以外の災厄についての共済
事業を行うことは許されていない現状であります。従って今般水産業協同組合共済会の
事業範囲の拡充をはかりますとともに、全国を地区とする漁業協同組合連合会の
事業に関する
規定の一部を
改正して、漁民生活の安定に資したいというのが
提案のおもなる
理由であります。
内容について申し上げますと、まず第一点は、
水産業協同組合法第六章の二、水産業協同組合共済会の
規定の
改正でありまして、従来の共済会は、第百条の二の設立目的及び第百条の四の
事業に明らかなように、
事業の用に供する建物等物件だけについて、
災害による損害を相互に救済することを目的としていましたのを、農業協同組合法の
改正と同様の趣旨により、
事業の拡充を可能ならしめるとともに、第百条の十として、新たに共済規程なる条文を設け、
事業の種類別にその
実施方法あるいは共済掛金等の重要
事項について、共済規程で定めて行政庁の認可を受けることにいたしたほか、条文の一部整備をはかっております。
第二点としては、同法第八十七条、漁業協同相合連合会の
事業の種類の
規定中、特に全国を地区とする連合会の
事業に対し、去る
昭和二十七年第十三
国会において、特定の四つの経済行為について、当分の間農林
大臣の認可を要することにしておりますが、その後の
経過等にかんがみ、この際農業協同組合法と同じく、この
規定を廃止することにいたしております。なお今回の
改正実施に当っては、
予算は必要としておりません。
委員会におきましては、
提案者側から、水産業協同組合共済会は、現在建物共済
事業を行なっているが、今後さらに海上における遭難もしくは傷害事故に関し、漁民厚生共済を行うほか、漁具共済、漁業共済等全国の漁業者が要望している各種の共済
事業を順次
計画実施するため法的根拠を与えたいとの説明がありました後、
質疑応答を重ね慎重
審議いたしましたが、
質疑応答のうちおもなるものについて申し上げますと、飯島、三浦並びに森の各
委員からの、半農半漁の地域において、この水産業協同組合共済会の共済
事業と農業団体の行う共済
事業との間に紛争を起すことのないよう、行政庁が未然に確固たる
措置を講ずる必要があると考えられるがいかがとの趣旨の
質問に対し、
提案者及び農林、水産両当局からそれぞれ、今後そのような紛争がないよう、関係機関並びに関係団体が相談して適切な
措置を講ずる考えであるとの
答弁があり、次に森
委員及び東両
委員からの、漁具及び漁獲等の関係において、沿岸漁業を
対象として強制加入による
災害補償制度を設け、
政府が強力な助成
施策を行うことが必要であるが、いかになっているか、またその際、
現行の共済会の
事業との競合摩擦を生ずることはないかとの趣旨の
質問に対して、
提案者側から、国の保護助成のもとに漁業
災害補償制度が早急に確立されることが必要である、それが実現するまでこの共済
事業を行わんとするもので、もし漁業
災害補償制度が実現したときは、この共済会が行う同種の
事業はこれを取りやめる考えであるとの
答弁があり、農林
大臣からも、漁業
災害補償制度を制定することが必要と考え、目下
政府は必要な資料の調査を行なっているとの
答弁がありました。その他詳細につきましては、
会議録によってごらんいただきたいと存じます。
かくて
質疑を終り
討論に入りましたところ、森
委員から、「本法
実施に当り関係団体の間に将来摩擦競合の憂いがあるので、半農半漁の地域において、水産、農業両団体の行う共済
事業が相互に摩擦競合を起すことのないよう、
政府は事前に適切な
措置を講ずべきである」との趣旨の
付帯決議を付して
賛成する旨の意見の開陳があり、東及び千田両
委員から、
付帯決議につきましては
賛成であるが、「さらに漁業は、天災により大きく影響を受ける原始産業であるから、農業同様漁業にも全面的に国家補償による凶漁を含む
災害補償制度をすみやかに制定されたい」との希望を付して、それぞれ
賛成意見の開陳があり、また秋山
委員から、漁獲あるいは漁具等の共済
事業については、
実施主体の強化について当局が十分検討を加えることを希望して
賛成意見の開陳がありました。
ほかに
発言もなく、
討論を終り、
採決を行いましたところ、
全会一致をもって原案の
通り可決すべきものと決定いたしました。
また森
委員提案の
付帯決議について
採決を行いましたところ、
全会一致をもって
委員会の
決議といたすことに決定いたしました。
なお、右
付帯決議に対しては、農林当局から善処する旨の言明がありましたことを申し添えます。
次に、
森林法の一部を
改正する
法律案について申し上げます。
昭和二十六年
現行森林法実施以来今日まで四カ年、その間における経験に徴し、かつまた最近町村合併に伴う末端行政
区域が拡大せられた等の
事情に関連して、この際、比較的小規模な森林組合を合併して、その規模を適正にし、組合運営の円滑をはかろうとする機運が起ってきているのでありますが、
現行法の管理
規定が組合経営の実体に沿わないところがありまして、組合の合併に支障を及ぼしておりますので、これらの点について最小限度の
改正を行おうとするのが、本
法律案が提出されるに至った
理由であるとされております。
しかして
改正のおもな点についてその大要を申し上げますと、大体次のようであります。
すなわち第一は、森林組合の総代会に関する
規定の
改正でありまして、
現行法では組合員の総数が百人をこえる施設組合は、総会にかわるべき総代会を設けることができることとなっており、総代の定数は組合員総数の四分の一以上とし、ただし組合員総数が二百人をこえるものにあっては、五十人以上であればよいことになっており、また総代会を設けた場合でも、毎
年度の通常総会を招集しなければならないことになっておりますが、これを改めて、総代会を設けることができるものは、組合員総数が二百人以上であるものとし、総代の定数は組合員総数の四分の一以上でなければならないことは
現行法通りなのでありますが、しかし三百人をこえるものは、七十五人以上であればよいこととし、なお総代の定数は、この
法律施行後百八十日までは現状のままで差しつかえないことになっております。しかして総代の任期は、三年以内で定款で定めることとし、また総代会が設けられた場合は、年一度の通常総会はこれを招集する必要がないことにしようとするのであります。
第二は、森林組合及び森林組合連合会の役員の選出の
方法の
改正でありまして、これが選出は、
現行法では投票による
選挙以外は認められていないのでありますが、これを改めて、投票による
選挙のほかに選任制を認めることとし、また投票による
選挙の場合でも、森林組合の役員については、総会以外において
投票所を設けて
選挙を行い、また役員
候補者が定数以内の場合は投票を省略することができることとし、なお森林組合連合会については、総代会の制度を廃止することにしようとするものであります。
第三は、理事の職務に関する
規定を設けて、理事の責任等を明確にし、第四は、組合の合併の手続に関する
規定を整備し、合併の際は定款及び
事業計画を行政庁に提出して、その認可を申請しなければならないとしようとするのであります。
委員会におきましては、まず
提案理由の説明を開き、次いで
質疑に入り、
提案者代表及び農林当局に対して、役員の選出について選任制を設け、また総代会をもって通常総会にかえることは、組合民主化に逆行するものではないか、組合の規模を末端行政
区域にこだわることなく、たとえば流域単位等、これを拡大してその適正を期し、組合の
内容の充実をはかるべきではないか、伐採調整
資金の貸し出しが本
資金設定の趣旨に反して、その森林区内に間伐収入のある間は貸し出されていないが、これを是正する考えはないか等、種々の問題について所見がただされたのでありまして、その詳細は、
会議録に譲ることを御了承願いたいのであります。
かくして
質疑を終り、
討論に入りましたところ、東
委員から、「総会にかわって年一回くらいは大会を開いて、志気の高揚に努める機会を作るよう指導すべきである」との趣旨、また亀田
委員から、「総会にかわって総代会の制度を設けることについては遺憾であり、当局は責任をもって今回の
改正によって総会が無用であるという印象を与えることのないよう徹底せしめるべきである」との趣旨、また清澤
委員から、「総会の出席者が少いのは総会において意見を述べる機会を与えられないからであり、総代会及び役員選任制を設けることは組合の民主化に反し、封建制を残存せしめる原因となり、今回の
措置には大いに警戒を要するので、
実施の結果によっては再
改正を要するかもしれない」との趣旨、また三浦
委員から、「
現行森林法には森林組合の性格を初め
改正を要すべき幾多の問題が残されているから、
政府はすみやかに
森林法の根本的
改正を行うべきである」との趣旨の希望あるいは意見を付してそれぞれ
賛成があり、ほかに
発言もなく、続いて
採決の結果、
全会一致をもって原案
通り可決すべきものと決定いたしました。
最後に、
農林漁業金融公庫法の一部を
改正する
法律案について申し上げます。
農林漁業金融公庫を設立して、農林漁業者に対し農林漁業の生産力の維持増強に必要な長期かつ低利の
資金を融通する考えをもって、
昭和二十七年十二月
農林漁業金融公庫法が施行され、その後数次にわたって
改正が行われて今日に至っておりますが、今回さらに次のような
改正を加えるため本
法律案が提出されたのでありまして、その大要を述べますと、第一は、公庫の
資金に対する
政府の出資を増額することでありまして、現在
政府の出資は四百五十六億七百万円でありますが、新たに十億円を本
年度追加出資して四百六十六億七百万円にしようというのであります。これは当初
政府の
計画では九十五億円を追加出資することになっておりましたが、本
年度予算案が修正されました結果、
一般会計から行う
政府の出資は十億円に減額され、その減額分は
資金運用部
資金に期待することになり、公庫における本
年度の
資金は結局において、
一般会計から十億円、
資金運用部から百九十五億円、既貸付の回収分五十五億円、計二百六十億円になるのであります。
第二は、公庫の
資金の貸付の
対象を追加して、その業務の
範囲を拡大することでありまして、従来農林漁業の生産力の維持増進に必要な施設の改良、造成及び取得に必要な
資金の融通は、農林漁業者の共同利用に供するものに限られて行われていたのでありますが、これを改めまして、個人の用に供するこれらの施設をも貸付の
対象とすることにしようとするのであります。
第三は、公庫が日本開発銀行から借り入れている借入金の残額約二十一億円を日本開発銀行に返済し、そしてこれに相当する金額を産業投資特別会計から公庫に対し出資されたものとし、すなわち借入金を出
資金に振りかえることにしようとするものであります。
以上が本
改正法律案の
提案理由及びその
内容の
概要であります。
委員会におきましては、まず
提案理由の説明を開き、続いて
質疑に入り、
政府当局との間に、本法案によって新たにその途が開かれることになった個人に対して
貸し付ける
資金の
融資対象施設、貸付限度、
融資機関、貸付
方法及びこれらの当否、
衆議院における
予算修正に伴う公庫の
資金源変更が公庫の経理に及ぼす影響、公庫の
資金計画及びこの中の自作農維持創設
資金の性格、本法案と別途
政府から今
国会に提出されている自作農維持創設
資金融通法案との関係、本法案によって産業投資特別会計からの出資に振りかえられることになる日本開発銀行の
貸付金の
内容、
資金取扱い機関である農業協同組合の強化と調整勘定
国庫納付金の問題、農林漁業金融の一元化並びに組合金融の確立等、いろいろな
事項について究明されたのでありまして、その詳細は
会議録に譲ることを御了承願いたいのでありますが、その間において問題になりました個人貸付
資金の取扱い方につきましては、
復旧資金以外の官金の貸付
対象となる施設は、農舎、畜舎、サイロ、堆肥舎、蚕室、動力用農機具、排水ポンプ、灌水施設、蚕具、その他主要農作物または輸出農作物の生産の維持増強に必要な施設、もしくは合成繊維漁網綱であり、その
資金の貸付を受ける者が必要とする金額の二割以上の金額を、
融資機関である農業協同相合、漁業協同組合または公庫が業務を委託した
金融機関が、協調
融資することを条件とすることになっていることが明らかにされたのであります。
かくして
質疑を終り、
討論に入りましたところ、森
委員から、
政府において農林漁業金融を再検討して基本的対策を確立すること、協同組合を育成強化して零細農山漁民に対しても必要な
資金の均霑をはかること、
融資手続を簡素にするとともに、組合役員の個人的保証責任
措置の是正をはかること、
資金量を充実確保するとともに、その金利を極力低くし、かつ
融資対象を拡大すること等の趣旨、また青山
委員から、合成繊維漁網綱の取得に必要な
資金については、新たに本法第十八条に独立した
規定を設けて取り扱うべきであるとの趣旨の希望を付して、それぞれ
賛成があり、他に
発言もなく、続いて
採決の結果、
全会一致をもって
政府原案
通り可決すべきものと決定いたしました。
以上、御
報告いたします。(
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