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1955-07-04 第22回国会 参議院 本会議 第32号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年七月四日(月曜日)    午後一時二十一分開議     —————————————  議事日程 第三十二号   昭和三十年七月四日    午前十時開議  第一 憲法調査会法案趣旨説明)  第二 商工値中央金庫法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第三 中小企業金融公庫法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第四 中小企業等協同組合法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第五 出入国管理令の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第六 海上運送法の一部を改正する法律案内閣提出)(委員長報告)  第七 塩釜港修築工事促進に関する請願委員長報告)  第八 高知高知改修工事促進に関する請願委員長報告)  第九 港湾整備予算増額等に関する請願委員長報告)  第一〇 避難港整備予算増額に関する請願委員長報告)  第一一 岩手県大船渡市碁石崎灯台設置等請願委員長報告)  第一二 定点気象観測業務再開に関する請願委員長報告)第一三前谷地、気仙沼両駅間鉄道敷設促進に関する請願委員長報告)  第一四 会津線宮下川口間鉄道開通促進等に関する請願委員長報貨)  第一五 白棚鉄道敷設促進に関する請願委員長報告)  第一六 能登線鉄道敷設工事継続に関する請願委員長報告)  第一七 二俣佐久間線鉄道敷設促進に関する請願委員長報告)  第一八 湯前、杉安駅間鉄道敷設促進に関する請願委員長報告)  第一九 鍛冶屋、梁瀬両駅間鉄道敷設に関する請願委員長報告)  第二〇 大糸線鉄道全通促進に関する請願委員長報告)  第二一 山田線鉄道ジーゼルカー運行促進等に関する請願委員長報告)  第二二 山形、鶴岡両駅間ジーゼルカー運行等に関する請願委員長報告)  第二三 急行列車阿蘇号に二等寝台車連結請願委員長報告)  第二四 鉄道駅の出札窓口装置改善に関する請願委員長報告)  第二五 川崎駅庁舎改築に関する請願委員長報告)  第二六 羽前成田、蚕桑両駅間に中間停留所設置請願委員長報告)  第二七 米原、京都両駅間鉄道電化促進等に関する請願委員長報告)  第二八 甲府、長野両駅間鉄道電化促進に関する請願(二件)(委員長報告)  第二九 飯田線の災害防止対策等に関する請願(四件)(委員長報告)  第三〇 傷い軍人に国鉄無賃乗車証交付復活請願委員長報告)  第三一 県道伊集院鹿児島線鹿児島市武宮田通り踏切人道こ線橋架設請願委員長報告)     —————————————
  2. 河井彌八

    議長河井彌八君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
  3. 河井彌八

    議長河井彌八君) これより本日の会議を開きます。  この際、お諮りをいたします。奥むめお君から、海外旅行のため会期中請暇の申し出がございました。これを許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 河井彌八

    議長河井彌八君) 御異議ないと認めます。よって許可することに決しました。      —————・—————
  5. 河井彌八

    議長河井彌八君) 日程第一、憲法調査会法案趣旨説明)  本案について、国会法第五十六条の二の規定により、衆議院発議者から、その趣旨説明を求めます。衆議院議員清瀬一郎君。    〔衆議院議員清瀬一郎登壇拍手
  6. 清瀬一郎

    衆議院議員清瀬一郎君) 私どもがただいま衆議院提案中の憲法調査会法案を、御院の事前審査に付せられまして、ここに同案提出理由説明させていただきまする機会を得ましたことはまことに光栄と存じます。  申し上げるまでもなく、現行日本国憲法は、昭和二十一年、すなわちわが国主権連合国最高司令官制限のもとに置かれておった時代制定されました。ことにその立案は、司令部の示唆と指導のもとに、きわめて短時日の間に立案せられたのでございます。わが国主権を取り戻しました今日におきましては、日本国民の手によって自主的の憲法を得ようとの戸は近時ますます高くなって来ております。もとより現行憲法は、平和主義民主主義基本的人権尊重等原則を基調とする多くの長所を持っておるのでありまして、その長所はあくまでもこれを尊重し、擁護しなければならぬことはもちろんでございます。しかし、現行憲法が施行せられましてから今日に至るまでの経験にかんがみますると、わが国情に照らして検討を要するものが多々あるのでございます。ここにおきまして、われわれは国民的立場に立って、自主的に現行日本国憲法を全面的に検討いたしますことは、独立完成のためにも、きわめて緊要なることであると考えたのでございます。そのために有力なる憲法調査審議機関をまず設けることが必要と考えまして、ここにこの法案提出した次第であります。  この法律案は、かような趣旨に基いて国会議員三十名以内、学識経験のある者二十名以内、合計五十名以内の委員をもって組織いたしまする憲法調査会を設け、これを内閣に置くことといたすのでございます。  この調査会は、特別の諮問を待たないで、自主的に現行憲法検討を加え、関係諸問題を調査審議し、これを内閣及び内閣を通じて国会報告することを所掌事務といたしておるのであります。  また調査会には、会長一名、副会長二名を置きますが、いずれも委員の互選によることといたします。さらにこの調査会には専門委員と幹事を置くことができるということになっておるのであります。  この調査会運営に要する経費は、すでに国会を通過いたしました本年度総予算中に計上されております。  以上が本法律案提出理由並びに法律案の概略でございます。何とぞ慎重なる御審議をたまわらんことを切にお願い申し上げます。(拍手
  7. 河井彌八

    議長河井彌八君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。廣瀬久忠君。    〔廣瀬久忠登壇拍手
  8. 廣瀬久忠

    廣瀬久忠君 私は、提案者お尋ねをいたします。  憲法改正後八年、またわが国独立を回復してより四年の今日において、わが二大政党である民主、自由両党協力のもとに、この法案提出せられたることは、そこに深き意義がなければなりません。先ほどの提案理由説明のうちに、ぼんやりとその意義は示されておりますけれども、私は、かくのごとき重大なる立法においては、両党間の動かすべからざる政治的決意一致と、はっきりとしたる政治目的一致とが明瞭に示されなければならぬと思います。私のそんたくするところでは、その政治目標は、自当本国憲法制定にあると判断をいたします。しこうして、この目的達成のために両政党間に確固不動決意の合致があったものと信ずるのであります。この際提案者は、この議場を通じてその所信国民に披瀝せられんことを要求いたします。  次に、憲法調査会運営についてお尋ねをいたします。憲法調査会法成立の上は、調査会は、総理大臣及び調査会長の両者によって運営の方向がきめられると思います。つきましては、提案者提案のこの機会において、本議場において、憲法に対する調査会運営かくあるべしとの構想を明示して、総理大臣及び将来の会長に対し、運営の基準を示すべきではないか。これはまたわれわれの審議上の重要なる資料でもあります。願わくは、提案者運営に関する構想を示してもらいたい。  次に、私は調査会において調査すべき重要事項をあげるとともに、調査会のこれに対する調査を要求し、なおこれについて提案者所見を伺いたいのであります。調査会の任務でありまするところの新憲法検討に当りまして、検討の対象となるものは大別して二つであると思います。その一つは、新憲法成立過程問題点であり、その二つは、新憲法わが国情に沿わざる問題点であると思います。私はまず第一に、新憲法成立過程問題点について提案者にただしたい。新憲法わが国情にそぐわないのは、その成立過程において多くの重大なる無理があったためであると私は思います。その第一の無理は、国際法的の無理であります。その第二の無理は、国内法的の無理であります。しこうしてその第三の無理は、新憲法草案作成上の無理であります。以下順を追うて提案者所見をただします。  まず第一の国際法的の無理についてお尋ねをする。ハーグの陸戦の法規慣例に関する条約は、占領軍が被占領国においてとるべき態度について厳格なる規定を定めておるのであります。すなわち占領軍は絶対の差しつかえがない限り、占領地法律尊重せねばならないということが、国際法上の原則であると定められてあります。しかるにマッカーサー司令部は、この国際法原則を無視して、国の基本法である憲法改正を、わが政府強圧して行わしめたのであります。これと同じことが、西ドイツ政府に対しても行われたのでありまするが、西ドイツ政府は、占領軍のこの要求せる憲法改正を拒絶しました。そうしていわゆる基本法をもってこれにかえたのであります。しかるにわが政府は、当時その挙に出でなかったのは、顧みてはなはだ遺憾であります。この国際法原則は、占領という正常ならざる状態において法律のごとき恒久的かつ民族的なるものを、占領軍の力で改変することが無理であり、またあやまりであるということを戒めた国際的の普遍的真理であると私は思います。しかるに占領軍があえて憲法改正を強行したことは、民主主義に反する大きな無理であり、あやまりであると言わねばならないと思います。提案者はこれに対しいかなる考えを持っておられますか。  その第二の無理は、国内法的の無理であります。日本国憲法は、帝国憲法改正形式を踏んでいる。すなわち帝国憲法七十三条によって改正したこととなっております。当時の政府憲法担当松本国務大臣は、七十三条による憲法改正として、民定憲法たる新憲法を作ることの法律的に不可能なることを、司令部説明これ努めたのでありまするけれども、司令部はこれを拒絶し、かつこれを抑圧して、あえて改正形式をとらしめたのであります。それでありますから、憲法学者の中には、憲法変革のこの過程は、法的にどう説明せられるであろうか、その唯一の可能な説明は、これを革命に基くものと見る以外にはあり得ないと言うている者もあるのであります。革命に基く憲法と言われるほどのものを、改正形式で押し切ったことは、国内法的の大きな無理であると言わざるを得ない。提案者はこれを何と考えられますか。  その第三は、わずか十日にして憲法草案作成したその軽率、かつ準備不足の無理であります。ポツダム宣言は、日本国民主化を要求しました。占領軍当局日本民主化の実現をあせりました。性急にも、マッカーサー元帥は、憲法改正によって、一挙に日本民主化を断行することの決意をしたのであります。そこでいわゆるマッカーサー・ノートを発し、ホイットニー准将をしてその率いる政治局員を総動員し、昭和二十一年二月一日より、わずか十日間にして憲法草案作成を完了し、二月十三日には、この草案松本国務大臣に手渡しをしているのであります。かくのごとき性急な決定が、国の基本法たる憲法に対する態度として、まことに妥当を欠くものであることはもちろん、わが国情への認識不足、その他準備資料の欠けていること等より来たるべきあやまりを招いているのは当然であります。提案者はこれをどう考えられますか。  以上の重大なる幾つかの無理も、占領軍当局としては避け得られなかったところでありましょう。従って占領憲法としてはやむを得ない無理であると言い得るかもしれません。がしかし、独立日本日本国憲法としては認め得られざる無理であります。自当本の忍び得ざるところであります。以上の諸点に関し、これが将来の検討希望するとともに、提案者所見を伺いたい。  次に重大なるは、新憲法マッカーサー司令部によって押しつけられた憲法であるとよくいわれておりますその点についてであります。新憲法原案は、幣原内閣によって作られた形ではあるが、実は司令部によって作られたものであります。マッカーサー元帥の指示によって、わずか十日で作成された新憲法草案は、二十一年二月十三日に外務大臣官邸において、吉田外相立ち会いのもとに、ホイットニー准将から松木国務大臣に手交された。しかもそのときのホイットニー准将態度は、敗れた者に臨む敗者に臨む勝者の威嚇であった。のみならず、そのときのホイットニー准将の厳命は、この議場に言うにたえざる脅迫そのものであったのであります。松木国務大臣は、その後数回にわたり草案修正の要求をしたけれども、司令部基本原則なるものは不動の鉄則であって、いかんともすることができなかった。ついに政府もこれに屈したのであって、かくして政府は、司令部基本原則のままに作成せられたのであります。従って、新憲法原案は、日本政府の自由の意思によって作られたものでないことは疑う余地はありません。新憲法が二十一年六月二十日第九十帝国議会議案として提案せられ、貴衆両院の約三カ月半の審議を経たのでありますが、その間の両院審議は微に入り細にわたり、実に遺憾なき親切な審議が行われたのであります。しかし、審議の結果として決定された修正、その修正の個所をつぶさに検討いたしますと、熱心なる審議も何ら報いられなかったという感じを受けるのであります。すなわち、司令部基本原則、基本体系なるものの高き鉄壁のワクの中においての審議の自由であった。修正の自由なき審議の自由にすぎなかったという感じを深くするのであります。議会審議については、両院保存秘密議事録が公けにせられれば、おのずから明らかになることとは思いまするが、私は今、マッカーサー司令部英文草案現行日本国憲法とが、前文から最後の章に至るまで、大部分が同一であることを比較対照をいたしますれば、おのずからその間の消息をうかがうことができると思います。従って議会審議も、日本国民の自由の意思を自由に表わし得なかったのではないかと推定せざるを得ないのであります。政府原案作成においても、議案審議においても、ともに自由でなかったとすれば、それは押しつけられた憲法であると言われてもいたし方がありますまい。提案者、この点についていかに考えていられますか。  最後に、私は日本国憲法検討の心がまえについて提案者所見をただしたい。  新憲法占領憲法であるが、われわれはこれに対処するに当って、公正なる態度をもってしなければなりません。新憲法の包容する長所は、これは認めるにやぶさかであってはなりません。すなわち、新憲法が認めておる国内政治原則としての民主主義人権尊重、男女平等のごとき、また国際政治原則としての平和主義、他の諸国の尊重国際協調のごとき、いずれもこれを尊重するとともに、これを堅持し、かつ育成すべきであります。しかしながら新憲法成立過程における幾多の無理などより生ずる誤まりと行き過ぎとは、これを是正するに憶病であってはなりません。わが国独立を回復してよりまさに四年になんなんとし、憲法改正以来八年にして、その施行の実績を顧みて、わが国情に適さざるものは、日本国民自由意思によりてこれを補正し、かつ是正すべきは、独立国民の当然の権利であり、また義務であります。かくのごとく新態法の長を取り短を捨て、占領憲法の性格を一変し、よりよき自当本国憲法たらしむる改正論者態度こそ、民主主義自由主義を堅持する自主日本国民の公正なる態度であると言わねばなりません。要するに新憲法検討根本精神は、日本国憲法日本人の手で作り上げるという独立自主精神そのものでなければならぬと思います。提案者所信を闘います。以上。(拍手)    〔衆議院議員清瀬一郎登壇
  9. 清瀬一郎

    衆議院議員清瀬一郎君) ただいま廣瀬君より重要なる御質疑にあずかりました。便宜上、後段にお問いのことをます答えまして、それから初めのことについてお答えいたします。  新憲法日本国憲法制定に関して国際法に反するところがあると思わぬか、へーグ条約占領地法律尊重することに違反するではないかという趣意のお問いでございますが、私、全く同感でございます。ただ国際法のことを考えますると、それより大きな違反があるではないか。というのは、第二次世界戦争の初めころ、ルーズヴェルト大統領チャーチル首相は、大西洋憲章なるものを発表して、この戦争は、この原則で行くんだということを世界に約束しております。その大西洋憲章の第三条には、各国は自分の国の政治形態自分自由意思で選ぶというこの原則尊重するということです。マッカーサー元帥指導のもとにできました憲法は、日本人日本人政治形態ほんとう自由意思で選ぶことを尊重しているでありましょうか。これが私は、国際法上疑問のある一番大きな点と思います。わが国はこの大西洋憲章を、彼が守るということをも眼中において降伏いたしておる。それで大西洋憲章が守られなかったということが、大きな国際法違反と私は考えておる。  その次に国内法のことでありますが、一この憲法成立について、日本国内法に対処して疑義のあるのは、今横瀬君のおっしゃったほかに、もう一つあると思う。わが国の旧帝国憲法はその七十五条において、この憲法摂政を置くの間は変更することはできないと書いてある。陛下御不例で摂政を置かるるの間は憲法改正は企ててはならない、その同じ意味から考えると、占領軍制限の下に、陛下国民も完全な自由意思を発揮することのできないときに、憲法改正するということは、そのときまで有効であった旧憲法趣旨に反しております。  それから憲法作成について強圧があったと思わないか、妥当を欠くと思わないかということでございます。私は当時追放を受けて、国会には列しておりませんでしたが、聞くところによるというと、憲法改正案については修正は許す、けれども、最後修正をするまでには、司令部の同意を得て修正をしておるのであります。かくのごときは、実に自由を尊ぶ国のなすところじゃございません。まことに遺憾なことでございます。民主主義は、国民の自由の意思でもって基本法を作ることが民主主義であります。当時のことを考えまするというと、実にこの憲法強圧のためにできたと言われてもいたし方がないのでございます。さればこそ、占領中は司令部の力をもって、日本天皇が発案して国会がきめたものだと、あの司令部の二月一日から十日までに至るところの会議は、厳重に秘密とされておったのでございます。今日これが白日の下にさらされた以上は、やはり日本人の手によって日本人のために新憲法を作ることが正しいと私は考えておる。  そこで初めのお問いに返りまするが、それゆえに私自身及び他の同僚は、この憲法は、昭和二十七年四月、わが国独立を回復したときに、直ちに改正すべきものと、さように考えておったのです。しかしつらつら世の中のことをもう一つよく考えまするというと、占領軍日本を圧迫しておったそのあとですぐ改正といえば、えてして反動的になりやすいのであります。一部政治家が、その時代平和憲法擁護とおっしゃったのも、その御用意であろうと存じます。しかし自来三年間、わが国国民生活もやや回復いたし、国民が平静を取り返しておるのであります。それゆえに、さような心配は今日はなくなりましたからして、この際、冷静に日本人の手によって憲法改正の大事業に着手すべきときだと考えました。幸いにしてわが国の大政党である自由党におかれても、これに御異議がないように拝承いたしましたから、やはりこの国会において憲法を再検討するという委員会を作って、世の中世論を十分に反映したる正しい日本人憲法を得るように努力したいと、かように考えておるのでございます。  その次に、この憲法調査会運営についてのことでございます。これは本法律が通過いたしまして、政府より会長並びに委員を御選定になったあとのことでございまするが、提案者としての希望を申しますれば、この再検討は、どうか一つ白紙でお取りかかり願いたい、今までわが国占領中または占領直後に、自分はどういうことを言ったからなんということにこだわらずに(笑声)全く白紙日本の将来のために御検討を願いたいということが一つ、もう一つは、この調査会はどうか自主的に調査を願いたい、内閣の中の機関のようでありまするけれども、政府意思とは独立いたしまして、自主的に何らの干渉も受けず公平なる成案を得ていただきたいということが二つ、そのゆえに第三としては、政党政派に区別なく、今までの御声明等関係なく、すべての会派、すべての階層の方はどうか御加入を願いたい、かような希望を持っております。これは私の希望でございます。  大体、以上をもって廣瀬君のお問いに答えたかと存じます。よろしく御審議を願います。     —————————————
  10. 河井彌八

    議長河井彌八君) 木下源吾君。    〔木下源吾登壇拍手
  11. 木下源吾

    木下源吾君 顧みれば昭和二十一年十一月三日、本議場において新憲法制定記念の式典があげられ、当時のこれにかかわった保守党諸君も、また当時の保守党内閣総理大臣も、この憲法制定国民全体の日である、長く、これを基本法として守っていかなければならぬ、こういう宣言が行われた。(「その通り」と呼ぶ者あり)私は新憲法による民主主義によりて、被圧迫階級からついにこの国会に選ばれました。われわれは、そのすべてである。しかして今この憲法改正せんとする諸君の前に立って、まさにこの改正に反対する質問を展開するの光栄に浴したのであります。  皆さん、私はまずこの憲法調査会法案は、民主党の清瀬君ほかが提案者になっておりますけれども、やはりこれは鳩山総理大臣も賛成しておるし、この内閣も賛成しているものであるという前提に立ちまして、質問をいたしたいと思うのであります。(「その通りと呼ぶ者あり)  第一に、総理及び提案者がしばしば今日まで言明しているごとく、この憲法の主として第九条を改正して、公然と再軍備をするためのものではないかという点についてであります。この憲法調査会法案なるものは、実は私に言わしむれば、憲法改悪調査会法案と題された方がまことにふさわしいものであると考える。(笑声)何となれば、これは平和を愛する大多数の国民の側から世論としてわき上ってきたものではない。一部の再軍備を欲し戦争を欲する支配者の側の不純な意図から発しているからであります。(拍手)このことは過般の衆議院議員選挙の結果と、その後の鳩山総理の言動に照らしてみて、いよいよ明白な事柄であります。鳩山総理は、その施政演説に対する衆議院議員淺沼稻次郎君の質問に答えて、総選挙の結果、国会においては憲法改正することはできないという危険を感じたので、内閣調査会を置くことにしたと言っているのであります。国民に隠れて憲法改悪しようとするのは、さすがに危険を感ずるのでありましょう。いずれにいたしましても、総選挙の結果、国会における発議が不可能となったのでありますから、このような法案提出はやめてしまうのがほんとうであります。(拍手)それをあえて強硬に今提出するがごとき態度は、その裏に何か重大な意図が隠されているとしか考えられない。それがすなわち憲法第九条の改悪、再軍備戦争への道を切り開くための改悪であるということは、今や天下に歴然たる事実である。わが国一流新聞紙上においてさえ、憲法調査会は、実は憲法改正のためのお体裁にすぎないのだと、その欺瞞性を指摘しておるのであります。条文にしてはわすか十カ条と付則にすぎないけれども、その裏には、かように重大な問題がひそんでおるのであります。鳩山総理及び提案者諸君が、ただ単にこのことを否定して足れりとするならば、私ばかりではない、国民の大多数も決して満足するものではないということを銘記しなければならぬ。  特に提案者に対しては、この法案作成されました他の動機についてこの脇明かにしておいてもらいたい。それは、この憲法調査会法案が、最近政府与党あるいは保守派一般の間にあって画策されておる保守合同劇の具に供されているという事実についてであります。いやしくも、このような重大な問題が保守派の取引の必要から軽々しく取り上げられたということは、まさに言語道断と申さなければなりません。この点は、特に提案者の答弁を求むるゆえんであります。  次の質問は、ただいま申しましたような再軍備のための憲法改正は、現在平和の方向に向っている国際情勢と著しく逆行するものではないか、あるいはまた平和的な鳩山外交の基本精神とは全く相反するものではないか、こういうことであります。今さら私が申し上げるまでもなく、世界の情勢は、現在冷戦緩和の方向に向って推移しつつあるのであります。それは現在ばかりではありません。これから将来も、多分にそうでありましょう。そしてこの事実は、来たるべき米英仏ソの四カ国口頭会談においては、さらに一歩を進める、それは確実に推察され得るのであります。しかるに、かかる情勢のもとにあって、この法案国会提出し、わが国がことさらに再軍備を目途とする憲法改正に乗り出したという認識を世界の各国に植えつけるがごとき、そういうやり方は、たとえそれが各国の誤解であろうとも、国家のためにとるべきところではない。いや、当然なすべきことではないのであります。(拍手国民意思に反して時代に逆行するがごときを、すなわち保守反動というのであります。このようなことでは、せっかく友好関係を取り戻しつつある隣接諸国及びアジア、世界の平和愛好国との関係を、再び悪化せしめる懸念なしとしないのであります。この法案提案者諸君は、果してこのような情勢を考慮に入れているのであるか、提案者の確たる御答弁をお願いしたいのであります。  次に、鳩山総理に対して、あなたの言う話し合いによる平和的な外交、あるいは平和的な貿易の増進、またはバンドン会議で平和十原則宣言に参加したるわが国の外交方針と、この法案は根本的に矛盾するものではないか、こういう点であります。特にただいま交渉を継続しているソビエト、及び今後飛躍的発展を予想される中共貿易の相手国たる中華人民共和国、あるいはすぐお隣の大韓民国、朝鮮人民共和国など、またその他の国々は、わが国憲法改正軍備という事柄については、一段と警戒の念をもって注目していることは、想像にかたくないのであります。一方では平和な交渉と交流を希望し、また実際そういう政策をとろうとしていながら、片方の手では、再軍備戦争を準備するようなこういう法案を出してくることは、全く矛盾もはなはだしいと言わなければならぬ。そればかりではない。せっかくの平和外交も、これによって非常に困難な事態に直面するか、あるいは全くだめになってしまうのではないかと思われるのであります。  質問の第三点は、この法案そのものが違法、違憲であるという疑義についてであります。私が先ほども申しましたごとく、この法案は初め国会調査会を置くという総理の言明があり、総選挙の後には、新勢力分野によって国会における改正発議が不可能になったため、これを内閣に持っていって設置するという、そういうわけなんですが、実はこれが違法であるということは、大部分の言論機関及び多くの憲法学者によって唱えられているところであります。今国会におきましても、予算委員会その他の委員会におきまして、この問題は論議を尽されました。しかし政府側がたびたび言明したところの意見、すなわち、内閣改正提案権があるということは、国会提案権を少しも害しないというふうな意見は、現憲法第九十六条の民主的な意義を理解していないどころか、少しも論争するに足る意見ではないのであります。あるいはまた、政府はこの法案における憲法調査会が、単に、憲法に対して検討を加え調査審議するのであると言いのがれるかもしれません。それはしかし、ただいまの提案者の言葉によって、明らかに大改正を行うと言っている。しかしこれも表面は、はなはだしい詭弁を弄して、国民を欺瞞しようとする意図である。何の目的もない検討とか調査とかがあるはずはない。特に憲法については、調査審議すること自体が、すでに憲法を取り上げることで、もはや改正の一手段であると、かように断ぜざるを得ない。いわんや、国民の代表にあらざる民間人をまじえて、その結果を具申して、内閣の責任制を牽制するがごときは、ゆゆしき問題であります。あえて法制局長官の明確な答弁を要求するものであります。  さらにまたこの問題に関連しまして、この法案提案者に対しお聞きしたいと思うのでありますが、それはこのような憲法上疑義のある法案を議員提出にされた理由についてであります。申すまでもなく、憲法改正ということは国家大事の中の大事でありまして、だからこそ、その改正の取扱いについては、はっきりと国民意思すなわち国会にゆだねられているのであります。しかるに、この法案提案者及びこれらの賛成者諸君は、みずから国会審議権を阻害するような措置に出て、国会発議権者たる権利を放棄するような恥ずべき行為をなしていると私は考えざるを得ないのであります。かかる本末転倒の醜態をあえてなさった提案者に対して、私は明確なる答弁を要求したいと思うのであります。  最後に、私はわが国の現憲法世界に類のない平和憲法に対する鳩山総理所信をお伺いしたいと思うのであります。現憲法は、ただいまも申しました通り、平和憲法といわれておるのであります。いかなる種類の戦力及び武力といえども、これを放棄して、永世の平和を希求すべしという第九条の条項は、第二次大戦のあの暗い悲惨な状態から立ち上った全国民の心からなる願望であり、決して特定の占領国から押しつけられたものとか、その場限りのものではなかったのであります。当時、ソ連をも含めた世界勢力の均衡の上に立って、戦後の世界平和確保の立場から日本に課せられたるテーゼであったと、私はかく考えるものである。そしてその基本情勢は今日といえども、何ら変化をしていないのであります。でありますからこそ、特定の国の都合によったり、あるいはまた、わが国軍備を持たせなかったのはミステークであったなどというような理由によって、軽々に改正などされてはたまらないのであります。現憲法のどの部分を改めてみても、平和と民主主義が傷つくのであります。  ところが、鳩山総理を初め、口を開けば憲法改正を言う人々は、明らかにわが国の再軍備を強要しようとする一部の外国の支配者によって踊らされていることになるのではないか。かようにして改正される憲法こそ、自主性のない、よその国から与えられた憲法であると言わなければなりません。(拍手)大衆の政治家たることを自任されている総理が、大衆の平和に対する欲求に耳を傾けないで、ある外国の戦争挑発者と、それの手先になり下っている一握りの資本家、支配階級のために、この平和憲法改悪するということになれば、あなたの政治史上に不覚の一ページを印するものではないか。たといこの法案を無理やり国会を通したからといって、現に再軍備の費用のために生活を破壊され、軍事基地によって生業を奪われ、また戦争のために肉親を失った遺族、原水爆の脅威におののいている国民大衆の大反対運動は、怒濤の高まりに達するでありましょう。そのときに当ってあなたはいかなる責任をとるか、どのような覚悟をもってこれに対処せられるか、所信をお伺いしたいのであります。  私は最後戦争の放棄、自由人権と民主主義擁護、平和憲法万歳を叫んで、この質問を結びます。(拍手)    〔衆議院議員清瀬一郎登壇
  12. 清瀬一郎

    衆議院議員清瀬一郎君) ただいま木下君よりの御質問中、提案者に対して問われたと思いますることをお答え申し上げます。  前に説明しました通り、この調査会白紙の立場で御調査あることを希望しておるのであります。それゆえに、この調査会はどうするであろうということをお答えいたしかねまするけれど、私の考えを言えとおっしゃれば、憲法第九条はやはり書き直すべきものと、かように思っております。今の日本国憲法においても、(「それで白紙か」と呼ぶ者あり)自衛のために必要な限度においてはわが国は戦力を持ち得るとは解釈しておりまするけれども、これについては、毎回の国会で議せられる通り、いろいろと疑義がありまするから、疑義のないように、一つ新たに書くことが必要であろうと、私は解釈しております。  その次に、この提案の動機についてお尋ねにあずかりましたが、私どもは、保守合同の道具のためにこの調査会法を提案したのじゃ断じてございません。御安心を願います。ただしかし、保守合同を目途として今から相談を始めるのでございます。国のために重要なことでありまするから、話はこれに及ぶことはあろうとは思いまするけれども、これを具として保守合同をするのじゃ断じてございません。  その次に、国際情勢に照応して御論じになりました。私も木下さんと同様に、世界の平和を念願するものでございます。この点については決して木下さんなり、木下さん所属の政党と意見を異にするものじゃございません。ただ四頭会談を計画せられ、世界の緊張が緩和する方向にいっておることは、心から喜んでおるのであります。しかし、これら外国の意見は、全くいまだ調整されておりませず、おのおの軍備の縮小は、ちゅうちょいたしておりまするこの際に、独立国として自衛の戦力を持つということは、私は各国においても異存はなかろうと思います。  現に西欧諸国は、ドイツに向っては再軍備を求めておるんです。わが国わが国自身を自衛することを、友邦がきらうというはずは私はないと、かように考えております。この調査会調査するだけのことで、調査の結果を内閣と、内閣を通じて国会報告するだけでございまするから、内閣の責任制をみだるといったような大きなものじゃございませんから、これまた御安心をお願いいたします。    〔国務大臣鳩山一郎君登壇
  13. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 木下君の御質問に対してお答えをいたします。  憲法改正が国際情勢と逆行してはいないか、私どもの主張する平和外交、これとも逆行するのではないかという御質問でございました。私は平和外交をあくまでも堅持いたしたいと思っております。平和にはあくまで努力するのが万人の望むところと思います。それに自衛のための最小限度の自衛隊を持つということは、少くとも平和外交の推進、あるいは世界の国際情勢に逆行するものとも私は考えません。  次に、平和憲法に対する私の所信をお問いただしになりましたが、現行憲法長所のあることはもとより認めております。ただ、成立の経緯あるいは経験から見まして、検討すべきところがたくさんあるということもまた同時に考えておるのであります。それらの点について審議会によって審議してもらいたいと思うだけであります。外国の強制などは断じてございません。  その他の点につきましては、法制局長官、その他に御質問があったようでありまするから、私は答弁を差し控えます。    〔政府委員林修三君登壇
  14. 林修三

    政府委員(林修三君) ただいまの御質問のうち、私に対する御質問についてお答え申し上げます。  第一は、憲法改正の手続と申しますか、憲法改正議案提案権のことであったと思います。これは、憲法第九十六条には「憲法改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民提案してその承認を」経ることになっております。この意味のいわゆる国会国民発議するということは、もちろんこれは国会だけが持っておる権限でございます。しかしながら、これは憲法九十六条の条文からはっきりいたしますように、これは国会国民関係をきめたものでございまして、国会がこういう憲法改正国民に対して発議されるにつきましては、あらかじめその意思決定を議案についてなされることが必要であるわけでございます。その意思決定をするについての議案を誰が発案するかということにつきましては、憲法九十六条は直接にはきめておらないわけでございまして、これは憲法の一般の原則から解釈すべきものであるわけでございます。それにつきまして国会議員提案権を持っておられることは、これはもちろん申すまでもございません。しかし憲法七十二条の規定からいって、内閣提案権を持っておるということは、理論的に言えることだと存じておるわけでございます。  第二点は憲法調査会内閣の責任制のことに関することでございます。これにつきましては、先ほど清瀬議員からお答えがございましたけれども、この法案は、現行憲法検討して、その結果を内閣及び内閣を通じて国会報告するということになっておりまして、この調査会みずからが行政の衝に当るものでもございませんし、またその報告内閣あるいは国会法律的に拘束するものでもございません。従いまして、これは内閣の責任制とは矛盾するものではないと存ずるわけでございます。  以上、お答え申し上げます。     —————————————
  15. 河井彌八

    議長河井彌八君) 田畑金光君。    〔田畑金光君登壇拍手
  16. 田畑金光

    ○田畑金光君 今日わが国の諸政党のうち、最も熱心に憲法改正と再軍備を主張しで参ったものが民主党であることは、天下周知の事実でありまして、また追放解除者が多いということ、戦前戦時中の指導者が多いということも、この政党の特色であります。今回ようやく憲法調査会法は、めぐりめぐって政府与党の議員立法として提案されることになりました。不可解きわまることは今日までの経緯であります。鳩山総理は総選挙前後の遊説先におきまして、超党派的な憲法調査機関国会に置くことを明らかにいたしました。しかるに総選挙において憲法改正阻止に必要な三分の一以上の革新勢力が進出するや、急速、方針を変更し、内閣調査会を置くことに決定いたしたのであります。しかも政府与党は、憲法調査会法提案するに当り、国防会議法を初め、その他重要法案とともに、民自両党の連携工作の具に供せんとし、両党所属の全議員の共同提案をはかったが、自由党の拒否に会いますると、政府提案とすることに決し、さらに政府発案について論議がやかましくなりますると、三転して与党議員提案といたしたのであります。いやしくも国家の基礎法であり最高法規である憲法問題を取り扱うのに、党利党略のために私せんとすることは、憲法の冒涜であり、憲法軽視のきわまれるものと考えるのでありまするが、鳩山総理所信を伺いたいのであります。  本法律案によりますると、委員総理大臣が任命することになります。総理大臣は勢い憲法改正にくみする委員を任命するでありましょうことも明らかであります。たとえ任命されましても反対論者は拒否することも明らかでありまするから、本調査会はナンセンスであり、憲法調査会ではなく、憲法改正調査会に終ることは自然の理であります。この点に関しましてあらためて提案者所信を伺いたいと思うのであります。このような行為は、民主的な仮装を装い、国民を愚弄するものと申さなければなりません。鳩山総理は、憲法調査会調査審議の結果、内閣報告する結論については、直ちに内閣憲法改正案として発案する御意思であるのかどうか、この結論に対しまして内閣はどのような態度をとられるのであるか、明確に承わっておきたいと思うのであります。  次にお尋ねしたいことは、自衛隊合憲論を唱える鳩山総理の見解についてであります。鳩山総理は、人も知る、この数年来、吉田前総理のなしくずし再軍備に対して、最も激しく非難され、反対されて参った一人であります。自由党を出る、戻る、また出る折の鳩山さんの大義名分が、憲法改正と自衛軍の創設であったことは、誰でもが承知の事実であります。警察予備隊も違憲であると主張されたのが鳩山総理でありました。いよいよ政権を担当されたのでありまするから、国民は、正直な鳩山さんのことゆえ、平和憲法と現実の食い違いをどのように合理化されるかということを注目いたしたのであります。ところが最近の総理の見解は、「情勢が変ったから常識も変った。法律によって議会を通過したのであるから、自衛隊は違憲性を失い、議会の空気も変り、世論も変ってきたから、私の意見も変った。」こうなってくると、頭のほどを疑わざるを得ません。かっての警察予備隊は、御承知のごとく昭和二十五年のポツダム政令によって創設され、自後、法律改正に基き増員されております、保安隊は昭和二十七年保安庁法によって制定され、自後またいくたびかの法改正を経てきておるのであります。いずれも国会の議決を経てきておりますが、法律によって決定されたことが憲法違反の疑いを解消するというのであれば、吉田前総理に対する激しい指弾の声はあがるはずはありません。ことに前吉田内閣は、からくも戦力なき軍隊論をもって憲法第九条の限界線を守ろうとしたのでありますが、現内閣とその与党は、学界の少数説である清瀬理論によって自衛戦力を肯定し、自衛戦争を肯定いたしておるのであります。そこで鳩山総理にお伺いすることは、あなたは、かつて吉田前総理の再軍備方針を憲法違反として激しく非難されたが、これは今日自分が誤まっていたと率直にお認めなさるかどうか。政権奪取のためには手段を選ばすとしてとられた措置であるとお認めになるかどうか。あるいはこの際あらためて、正直な鳩山さんにいま一応戻って、今日の自衛隊は憲法違反であると断定する勇気がおありであるかどうか。  次にお尋ねいたしたいことは、憲法改正には一定の限界があることを考えておられるかどうかという問題であります。鳩山総理を頂点とする保守政党は、この機会に、再軍備体制の確立とともに、天皇制や家族制度の復活、労働三法の改正、教育二法案改悪、自治行政の後退等、教育、文化、労働、科学、社会制度の各面にわたる憲法改正を考えていることは明らかであります。私は、憲法改正というからには、一定の限界がなければならないと思っております、この限界を越えた改正は、名は改正でありましても、法律上の意味における革命であり、クーデターであると考えるのであります。鳩山総理並びに提案者は、憲法改正に一定の限界をおく意図があるのか、それとも民主憲法の原理を根本的に改めて、旧明治憲法の原理を復活しようとする御意図であるかどうか、お伺いいたしておきたいのであります。  次にお尋ねすることは、一体今日の国際、国内情勢は、再軍備の強化を必要とするものと判断するかどうかという問題であります。朝鮮休戦に続くジュネーブ会議の成果は、世界の緊張緩和に大きな作用を与えたものと言わなければなりません。台湾海峡を差しはさむ緊張は、新たな危険と脅威を投げ与えましたが、しかし平和を求める世界国民の熱望はこれを乗り越え、より広く、より深く拡大されて参ったのであります。ことに西南アジア五カ国提唱により、去る四月インドネシアのバンドンに開かれましたアジア・アフリカ会議は、世界歴史の上に偉大な黎明期を印したものと言わなければなりません。われわれはこの会議を通じまして、第二次大戦後の新しく勃興せる西南アジア、アフリカの民族運動の気魄をくみ取ることができるのであります。何ものをもおそれざる、しかも何ごとにもとらわれざる自由と人権、独立と平和を求める息吹きを感ずるのであります。一両年前までは夢想に過ぎなかった大国間の巨頭会談も、近くジュネーブで開かれようとする世界情勢であります。今日わが国は、ソ連との国交調整、西南アジア諸国との賠償問題の交渉が進みつつあります。これらの諸国は、かつての軍国主義日本に対する不安をぬぐい去っておりません。こういうとき、憲法改正意図する本法律案国会提案というものは、大きな外交上の将来に影響をもたらすものと私は考えるのでありますが、重光外務大臣の所見を承わっておきたいと存じます。  一方国内情勢をごらん下さい。MSA協定に縛られて、政治的、軍事的、経済的に、また、外交上もアメリカ一辺倒に終始して参りました保守政権の政治は、完全に破綻を来たしておるのであります。加うるに、一昨年来の金融引き締め政策とデフレ政策は、完全に暗礁に乗り上げ、今日経済規模は縮小され、国民生活は破綻し、一千万に上る潜在、顕在失業者の大群、基礎産業の危機、中小企業の倒産、人妻、婦女子ら大量の人身売買事件が起っておる現状ではありませんか。政府当局は、この現実を一体どう見ておられるのであるか、多くの同胞を飢えしめ、職を求めている幾百万の青年の血の叫びを無視して、今再軍備を考えておるということは、たれのための軍備であるのか、鳩山総理所信を承わっておきたいと存じます。  あわせて杉原防衛庁長官にお尋ねしたいことは、今回の予算によりまして、やがて日本の自衛隊は二十万の兵力になろうといたしております。昭和三十一年もすでに増強の計画は立案されたと聞いておりまするが、昔の軍隊には、いわゆる建軍の精神というものがありました。今日の自衛隊は、どういう精神、あるいはどのような指導理念、どのような目標を与えて団体訓練を施されようとしているのか、あるいは施しているのか、烏合の衆であるのかどうか、この際明確なる御答弁を願いたいと存じます。  最後に、私は発議者並びに鳩山総理お尋ねいたしたいことは、いかに保守政党諸君憲法改正を考え、再軍備を考えましょうとも、今日の事態は、もはやその希望は許されなくなっているということであります。すでに国会には革新勢力の進出により、国会発議は不可能な状態になっているではありませんか。また、国会の外をごらん下さい。昨年二月憲法擁護国民連合が発足し、憲法改正反対に立つ国民の諸勢力は、がっちりとこの連合に結集されて参ったのであります。政党、労農市民団体、婦人、各種文化団体等、実に百三十五団体が結集されておるわけであります。保守政党意図が反動化すればするほど、平和と民主主義を擁護する国民勢力はさらに増大するばかりであります。資本主義の社会はやがて没落し、社会主義の社会に移行することは歴史の法則であります。この際発議者は歴史の教訓に耳を傾けて、法律案を撤回する意思がないかどうか、あなたの先ほどのお話を聞いておりますと、占領軍から押しつけられたのであると言われておりましたが、あの押しつけられた憲法を、涙を流して喜んで承わったのはたれであったか。一九四七年、四八年、極東委員会において憲法改正問題が取り上げられたとき、あのときの保守勢力は、憲法改正すべきではないという、こういう阿諛迎合をやったのは今日の保守勢力ではなかったのか。私はあらためて鳩山総理大臣も、今日のこの法案に対し、与党に勧告なされて撤回せしめるだけの勇気はないかどうか、強く政府の猛省を促しまして、私の質問を終ることにいたします。(拍手)    〔衆議院議員清瀬一郎登壇拍手
  17. 清瀬一郎

    衆議院議員清瀬一郎君) ただいま田畑君より、発議者に対し向けられました質疑に対してお答えをいたします。  その一つは、今国会に革新勢力が三分の一以上を占めた場合に、憲法調査はナンセンスではないかというお問いでございました。私はそうでないと考えております。過日の選挙は、なるほど衆議院において革新勢力がふえたのは事実でございます。しかし過日の選挙は、憲法改正を主なる争点として争った選挙ではございません。(「そんなことはないよ」「そんなら解散しろ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)これを主要なる争点としてやるためには、われわれはどういう憲法を望んでいるかということを一つ打ち出して、それと現行憲法とを比べるということにおいて初めて争いは決するんです。われわれがなさんとする憲法案はできておりませんからして、あの選挙では新しい憲法がいいか、マッカーサーさんの作られた憲法がいいかを比較することは、いまだできておらないのでございます。それゆえに各派は、公正に一つの案を作って、再び国民の前に表決を受けるということは、まことに意義あることと考えております。(「詭弁だぞ詭弁だぞ」と呼ぶ者あり)かつまた国民の思想は、占領回復以後においてずっと変って参っております。私は占領直後に、あなた方右派の方が、自主憲法をしばし守ろうとおっしゃったことについてはよくわかります。あの通りすぐにやれば、反動憲法ができるおそれがないではなかった。しかしながら世の中の秩序がずっとととのって、冷静になったじぶんに、さて、占領軍憲法がいいか、日本人によって、日本人の作った憲法がいいかの判断ができる時代がくると私は存じておるのであります。  この憲法改正に、限界があるかどうかということであります。私は限界はあろうと思うんです。憲法制定権の紛淆は、自殺論法でございまするから、今、われわれがもし新憲法を作ると言えば、やはり日本国民主権があることを変更することはできないと思います。日本国民によって憲法を作らないという主張の者が、日本国民憲法制定権なしということは言えません。これが唯一の限界であります。そのほかには限界はないと思っております。  それからこの議案の発案の経過についてお問いであります。私はこれは内閣の発案でもいいと思います。自、民両党の発案でもいいと思います。ただ予算修正の際に、憲法調査会の経費は自、民両党折衝の際、わが党でこれを追加する要求をしたのであります。こういう来歴にかんがみまして、民主党より発案をいたしましたが、自由党は心ず御賛成下さることと存じます。他の党派も多数の御賛成あらんことを熱望いたしております。  最後に、撤回の意思ありやということです。決してそんな意思は持っておりません。非常に重要なる案で必ず通過することを切願いたしております。    〔国務大臣鳩山一良君登壇拍手
  18. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 田畑君の御質疑に対してお答えをいたします。清瀬君がだいぶ答弁をいたしましたので、私の答弁する範囲が縮小せられた感じでございます。  第一に、国民発議をする場合においては三分の二の国会の多数が必要であることはもとより明瞭でありますけれども、国会意思を決定する議案は、内閣にも提案権があると思うのであります。それから考えれば、このたびの調査会を置きたいという案を国会に出すことは当然であります。  ただいまの御質問の、調査会報告かあった場合にどういう措置をとるかという点につきましては、調査会報告があった場合に、内閣としては慎重に考えて処置をして行きたいと考えております。  それから、私に対して、特に自衛隊と憲法九条との関係について御質疑がありました。今日私は、自衛のためには必要なる最小限度の兵力を持っても差しつかえないと考えております。  その他は大体において答弁があったようでありまするから、私はこの程度において答弁を終ります。    〔国務大臣重光葵君登壇拍手
  19. 重光葵

    ○国務大臣(重光葵君) 私にお尋ねの分をお答えいたします。  提案者説明によりますというと、調査会の仕事は、憲法の再検討であって、決して国家をして再び軍国主義に向わしめんとするような趣旨は少しもない、平和主義民主主義を、日本国民自身の手によって自主的にこれを新たに憲法に織り込もうとする企てのようであるのでありまして、そうでありますから、調査会の設定は、われわれの堅持している平和外交と少しもその方向を異にしているものではないと思うのであって、諸外国との友好関係を促進しようとする外交政策とは少しも矛盾がございません。それで、お尋ねの日ソ交渉にも悪影響を与うるものではないと私は考えております。    〔国務大臣杉原荒太君登壇拍手
  20. 杉原荒太

    ○国務大臣(杉原荒太君) お答え申し上げます。  わが国の平和と独立を守るということが自衛隊の使命であり、自衛隊は子の使命に徹することによって、国民の負託にこたうべきものと考えておりすす。     —————————————
  21. 河井彌八

    議長河井彌八君) 羽仁五郎君。    〔羽仁五郎君登壇拍手
  22. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 憲法尊重に専心して余念なく、その趣旨の実現に全力をあけることを絶対的の使命とせねばならない政府をして、今、余念を抱いて本法案意図しているような方向に力をさかせ、国民の重税の一部たりとも、このような余念の方向に費消せしめることは、本質的に憲法違反であり、国民の信託を裏切らしめるものである。かつまた、これは最近の選挙の結果に示されたる国民意思を軽視するものであり、国会の最高権威にも関する深刻な不安を内外に与えている。本法案国会上程に際し、首相は国民の前に最も厳粛に首相自身の政治的信念を明らかにすべきだと思います。  第一、そもそも現在のわが憲法の音義はどういうところにあるのか。枝葉末節、一時のいきさつ、表面の動きかどの問題でなく、その奥底の本質について首相の信念を聞きたい。  本院の許可を得て、僕は最近ヨーロッパを視察しましたが、現在のヨーロッパの新しい動きには想像を超えるものがある。スエーデンなどが社会保障を完全に実現し、国民の生活に不安がなく、牢獄がからになっている。政治家の責任は牢獄をからにすることにある。(「その通り」と呼ぶ者あり日本に比較しても大国でもなく、富める国でもないスエーデンが、今日かくのごとく国民の生活を安定させ、牢獄をからにし、売春等の問題もないのは、ほかでもない、スエーデンが今日まで過去迫五十年にわたって戦争をしたことがないからである。これに反し、日本は明治以来、休む間もなく戦争戦争を続け、国民は涙のかわくひまがなかった。さればこそ、今この、これまで泣かされ続けてきたわが国民の多数のために、当分戦争軍備のことを全く考えないで、もっぱら国民の生活を楽にすることに全力をあげようと誓約をされたのが現在の憲法ではないのですか。青年は戦場に死し、またいまだ帰らない者があり、国内には失業者があふれ、少女が売春の境遇に投げ捨てられ、少年が恐るべき罪を犯して死刑を宣告されている。首相に、わが国民の母親たちの久しくかわくひまもない涙をぬぐって、そこに喜びの色を与えようとする一片の良心があるならば、政府は本法案の方向などに力をさくことができるはずはない。首相の政治的良心の声を聞きたい。  第二、本法案国会上程が、国民の間にいかなる不安を引き起しているか、首相はここに思いをいたしたことがあるか、何のための憲法調査会か。言を巧みにする者は仁すくなし、首相は、端的に国民の不安に答えたまえ。結局徴兵制度が出てくるのではないか、結局軍事的支出のために国民生活費が、またいよいよ圧迫されるのではないか。日本の現状において自衛隊の兵隊の数をふやすことは、それだけ売春婦の数をふやすのではないか。(拍手)結局主権在民の主旨がくつがえされ、統帥権が天皇に帰するなど、国民の手を触れることのできないものを中心として、軍閥、財閥、官僚などの権力がまた手のつけられないように増長し、国民はものも言えなくなるのではないか。これらの国民の不安に対し、心配はないと首相は答えることができるか。かつて大学教授の言論を抑圧した鳩山文相は、その後間もなく日本軍閥ファシズムのために、みすから言論の自由を失われたではないか。本法案の方向に一歩を踏み出すものは、もはや途中から帰ってくることはできないのである。  第三、首相は現在のわが憲法の根本主義のバランスがくずされる危険を認識しているか。現在のわが憲法において、その根本主義は互いにきわめてデリケートのバランスに置かれているのである。現在わが憲法成立当時のいきさつの発表などが考えられているようだが、当時のいきさつの背後に、国内的にまた国際的に、日本が共和制の方向に進むべきことが要求されていた事実のあったことも忘れてはならない。わが国民としても、国際的の世論としても、当時日本の天皇と軍隊と、この二つを、二つながら存置することには深刻な不安があり、かくて現憲法における日本国の天皇の地位は、日本国が軍隊を持たないということの関連において、戦争放棄とのバランスにおいて保たれておるのである。今、日本において憲法上に軍隊を置くこととするならば、憲法上に共和制が要請される論理的理由があり、歴史的理由があり、客観的必然があるのではないか。戦争を放棄し、軍隊を持たないとしている現憲法のもとにおいてさて、現在自衛隊、防衛庁など、軍事的支出が財政上、予算上に国民生活費、住宅建設費などを圧迫する動きを押えることに多大な困難が痛感され、いわゆる文官優位の原則はすでに踏みにじられ、軍事的見地に対する政治的見地の優越の原則さえも日々にくすされ、自衛隊、防衛庁関係の汚職がすでに手のつけられないようになり、国民に著しい不安を与えているではないか。しかるに、ここにさらに進んで憲法上に軍隊を認めるようにするとすれば、一体何によってこの軍事的の力のおそるべき過大の増長を防ぎ、押えることができると首相は考えておるのか、現在の日本において、果して年事的の力がいわゆる統帥権を、いつまで政党内閣の首相の手にゆだねて満足していると判所されようか。さればといって、統帥権を天皇の手にゆだねることのさらにおそるべき危険は、厳粛なるわが国民の経験において明らかである。かくて、今憲法上に軍隊を置くならば、その統帥権の関係からも、憲法上に共和制を認めることが要請されることをとどめ得ないのではないか。  第四、この際首相は、むしろ憲法尊重の実を示すことに専念さるべきではないか。なかんずくこの際首相は、社会保障に誠意を示すべきではないか。今直ちに首相が実行し得られるべきものとしても学生の健康保険であるとか、あるいはまた国立病院などのみならず、一般の看護婦の養老年金などの問題の解決は、すでに先ごろからの世論一致した要求となっているではないか。さらに本月一日朝日紙上に、クリスチャン・サイエンス・モニター極東支局長ゴルドン・ウオーカー君は、現在日本の外国新聞特派員に対する過大の課税の方針がこれら外国新聞特派員の事実上の大量国外追放ともなりかねないことを訴えているが、現実に言論圧迫となるようなことは許さるべきでない。現在の憲法尊重の実を示さすして、何の憲法調査ぞや。  最後に第五に、鳩山首相の在野時代と今日と、国際情勢が著しく変化したことは事実である。国際連合十周年記念特別総会におけるソビエト代表モロトフ外相の演説は、代表席を初め一般傍聴席に異常の感銘を与え、演説が終ったとき満場にわき上った拍手が続いて、次のイラン代表エンテザム外相の豊里が四分ほどおくれたほどであったが、その中にただ一人、アメリカ代表ダレス国務長官が拍手せず、からだをかたくしていた姿が目立ったと、ロイターなどの外電が伝えている。本月二日の東京新聞が載せているマンチェスター・ガーディアンの政治漫画は諸君の眼にも触れたであろう。ミスター・ローがそこに、最近のモロトフ外交の好調に対するダレス外交の硬直状態を痛烈に批判するイギリスの世論を巧妙に画き出し、われわれを深く考えさせるものがある。国際連合総会においてアイゼンハワー大統領さえもが、軍備を縮小し、それによる節約を世界の平和、経済の発展にふり向けることを要請しているときに、事実上において日本軍備拡張を憲法上からも促進しようとする本法案提出は、現在の国際緊張の緩和の国際情勢に対するあまりにも愚かな有害無益の逆行ではないか。アイゼンハワー大統領、またダレス国務長官などがいつまでもアメリカの議会内の反動勢力の武力政策に引きずられ、台湾問題についても危険な政策をこれ以上続けることは、これまでアメリカに対し友好的態度をとってきた世界の国々にとって深い憂慮となっていると、マンチェスター・ガーディアンなどイギリスの世論が指摘している。本年の夏、おそくも秋には、中華人民共和国は台湾問題解決についての確固たる態度の基礎を完備すると観測されているけれども、台湾問題についてアメリカが早く世界、なかんずく先ごるバンドン会議において表明されたアジア諸国の意向の支持を受けることのできるような外交政策の変更を行わなければ、アメリカはいよいよ孤立するであろう。わが鳩山首相は、保守党内部の寝わざ的政治工作などにわずらわされて最高の使命の判断をあやまらぬために、議会閉会後にみずから国際的活動を開始し、インドのネール首相などと会談して、国際情勢の新展開の認識を高められ、アジア及び世界における日本のあり方の新方向を発見すべきではないか。中華人民共和国の国際連合加盟が近い将来に予測されている。鳩山首相の努力により、日本が現在の日ソ外交交渉にある程度の成功をおさめ、日本の国際連合加盟が実現される可能性も生長とているが、そうなれば真実の国際的の安全保障によって日本の安全を実現する方法もあるではありませんか。国際緊張が緩和されつつある今日、事実上に国際緊張を前提とし、または口実として、わが憲法を後退させようとする本法案は、わが国民を裏切るものではないか。むしろ首相は、最近の国際緊張緩和の新情勢の中に、現在の日本国憲法平和主義のイニシアチブが生かされる光栄のチャンスの増大するのを見るために、海外にも活動し、構想を新たにされる意思をお持ちでないでしょうか。(拍手)    〔国務大臣鳩山一郎君登壇拍手
  23. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 羽仁君の御質疑に対してお答えをいたします。  何ですか、私どもの企てることが、現在の憲法長所を破壊してしまって、国際関係あるいは国内情勢に対しての逆コースの方向に向うことを念願しているように考えられているようでありますけれども、決してそういうような希望は持っておりません。現在憲法平和主義国民生活の安定を主眼とするような長所に対しては、もとより尊重いたします。提案者説明がありました通りに、憲法のできましたその成立の経緯や、その後の経験により、検討すべき点がたくさんあると思いますので、その改正をいたしたいと考えるだけでありまして、決して逆コースの方に向うために、あるいは民主主義を破り、あるいは平和主義を破壊するというようなことは、少しも考えておりません。  国際情勢については羽仁君と私も同じような考え方をしておりまして、現在は確かに緊張緩和の方向に国際情勢は向っておるものと思います。しかし、自衛のために最小限度の自衛隊を持つということは、決して緊張緩和の妨害になるものではないと私は思うのであります。むしろ緊張緩和に役立ってこそ、これを妨害するということは全然ないと思っております。  大体において、これによって答弁ができたと思いますので、答弁を終ります。    〔衆議院議員清瀬一郎登壇
  24. 清瀬一郎

    衆議院議員清瀬一郎君) 羽仁さんの御質疑は、おおむね政府に対する御質疑でありましたが、最後に、こういう憲法調査会提案をするのは、国民を裏切るものではないかというのは、提案者に対する質疑だと思います。私は決して国民を裏切るものとは思っておりません。また、ただいま首相がお答えになりました通り現行日本憲法は、改正を予想しておるんであって、いわんやその検討のために委員会を作るということは禁じちゃおりませんです。すなわち憲法違反でもありません。国民意思に反することでもございませんから、決して国民を裏切るものとは、私は存じておりません。御了承願います。
  25. 河井彌八

    議長河井彌八君) これにて質疑の通告者の発言は、全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。
  26. 河井彌八

    議長河井彌八君) 日程第二、商工組合中央金庫法の一部を改正する法律案  日程第三、中小企業金融公庫法の一部を改正する法律案  日程第四、中小企業等協同組合法の一部を改正する法律案(いずれも内閣提出衆議院送付)  以上、三案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  27. 河井彌八

    議長河井彌八君) 御異議ないと認めます。まず委員長の報告を求めます。商工委員長吉野信次君。    〔吉野信次君登壇
  28. 吉野信次

    ○吉野信次君 ただいま議題になっておりまする三つの改正法律案は、中小企業の維持、振興に関するものであります。  商工組合中央金庫法の一部を改正する法律案からお話し申し上げますが、この中金は、現在資本金が十六億七千二百万になっておりまして、そのうち政府の出資が二百十万円であります。これを今回は、この中金に対する政府の出資を十億円増額しよう、こういう案でございます。もっとも中金としては、中小企業金融公庫の方から借金をしておりますから、その借入金のうち十億円を近く返さなければならないのでありますから、今度の、せっかく増資をいたしましても、中金の貸出資金の増額にはならない筋合いになっておりますが、しかし十億だけ増資をいたしますと、商工債券発行の基盤を強化することになりまするし、また、民間の出資増額をも期待ができますので、これによって組合金融は一段と円滑になるものと存ずるのであります。  この原案に対して、衆議院では修正が施されまして、すなわち政府の出資金に対しては、民間出演に対する配当が年六分に達するまではこの政府出資の方は配当しない、こういう一カ条を追加しております。  委員会におきまして、いろいろ慎重に審議したのでありますが、商工中金の金利が高すぎる、また組合が金を借りて組合員に金を貸す問題、それから中金は組合金融であるのに、組合員たる個人に金を貸すというような問題について熱心な質疑が行われたのでありますが、詳細は速記録によってごらんを願いたいと存じます。  質疑を終りまして討論に入りましたところ、まず豊田委員から、「政府は商工中金に対する指導監督を強化し、もって健全なる組合金融の発展をはかるとともに、資金運用部資金を商工中金に低利で貸し付け得る道を考慮すること。指定預金の引揚げは、資金源確保の状況とにらみ合せてこれを延期すること「商工債券の金利の引き下げをはかること。商工中金の運営合理化を促し、その企業努力により資金原価の低減をはかること、などによって、同金庫の資金源確保と貸出金利引き下げに努むべきである」という趣旨の付帯決議を付して、本案に賛成するという意見が述べられました。  ついで河野委員から、「商工中金は、運用面の合理化によって金利の引き下げをはかるべきであり、政府当局としては厳重に指導監督すること、また、中金の金利自体が高い上に、組合ではさらに組合員に転貸しするために金利を高くして、その差益によっていろいろ経費をまかなっておるようなところもあるくらいであるから、商工中金傘下の組合融資についても、厳正に指導監督せられたい」。という希望条件を付して、本案並びに付帯決議案に賛成するという意見が述べられました。  討論を終って採決に入りましたところ、本法律案は全会一致をもって衆議院送付通り可決すべきものと決定いたしました。なお、豊田委員から提出されました付帯決議案も、全会一致をもって原案通り委員会の決議とすることに決定いたしました。  次に、中小企業金融公庫法の一部を改正する法律案について申し上げますが、この金庫は、御承知の通り昭和二十八年八月に設立されたものでありまして、今度さらにその機能を拡大強化しようというので、大体三つの改正点がございます。  その一つは、この公庫に対する政府の一般会計からの出資金を昭和三十年度において新たに五億円だけ増す、そうしてその資本金額を百六十億円とする点であります。当初の政府原案では、十五億円増す案でありましたが、衆議院修正を受けまして、その十億円だけ減額されましたので、出資金は減りましたが、そのかわり資金運用部からの財政投融資は、当初九十五億円であったものを百十五億円に改めて、その方は二十億円を増しまして、政府出資の減った分を補う、こういう趣旨であります。  第二点は、公庫の貸付方法を改めて、従来の代理貸しに加えて新たに直接貸しをも実施するための措置として、理事一名を増員して、公庫の業務にかかる現金を郵便振替貯金とし、または銀行に預け入れることができることとした点であります。  第三点は、商工組合中央金庫に対する金融公庫側からの貸付金の返済期限が今年の八月になっておりますのを、これを政令にゆだねるという改正点でありまして、この政令では、十億円を近く回収せしめまして、あとの十億円はこれを延期する予定になっておるということであります。  この案の委員会における審議中に、いろいろ問題がありましたが、詳細なことは速記録に譲りますが、おもなるものについて申し上げますと、「中小企業に関する政府関係の金融機関が多過ぎるように思うが、これを統合整備する必要はないか」こういう質問に対して政府は、「国民金融公庫は零細業者を対象とするものでありまして、一件当りの貸付金額も少いし、それから中小企業金融公庫の方は、これよりやや大きい中規模の業者に長期金融をする機関でありまして、国民金融公庫とは、貸付ける金額も大きいし、取扱いの方法も違ってきている。また商工組合中央金庫の方は、これは組合金融が主でありますから、結局この三つのものは、それぞれ違った分野と目的を持っておりまするので、併存しても差しつかえがなかろう」という政府の答弁がございました。また、「公庫の業務の基礎は、依然として代理貸しにあるとすれば、直接貸しを今度始めた理由と、どの程度に直接貸しをやるのか」こういう質問に対しましては、「一般金融機関は、従来から取引のあるものに対してすら中小企業というものに対する融資を渋りがちであった。いわんや新規取引の中小業者に代理貸しをするということは、なかなか十分でないから、将来企業として伸ばしたい向きに公庫が直接出ばって貸付を行わしめる必要があるのであって、またその直接貸しは公庫の毎月平均貸出計画二十億円余りのうちで、大体三億円程度をこれに充てたい」という答弁でありました。  質疑を終って討論に入りましたところ、海野委員から、「公庫が直接貸しを始めることには賛成だけれども、一般会計からの出資を五億円に減額した本案に対しては、政府原案の十五億円ですら不足と思っているものにとって、非常に不満だから、これには反対だ」こういう反対意見の陳述がありまして、小松委員からも、同じような理由で反対意見が述べられました。これに対して豊田委員からは、「公庫の運営に当っては、中小企業の組織化を阻害せしめないように注意せしめられたい」という希望条件を付して、賛成意見が述べられました。  かくて討論を終り採決をいたしましたところ、本法律案は多数をもちまして、衆議院送付通り可決すべきものと決定いたしました。  最後に、中小企業等協同組合法の一部を改正する法律案でありますが、これはいろいろ改正の点が多岐にわたっておりますが、第一点は、組合の設立を現行法では定款の認証をもって足れりとしてあるのを、今度行政庁の認可を要することにした点であります。  第二点に、組合運営の円滑化をばかるために、役員の選挙方法について、現行の無記名投票による方法のほか、新しく指名推薦の方法をとるように改正した点であります。  第三は、組合の指導連絡に当る団体として、都道府県におのおの一つの中央会、それから全国に一つの中央会というのを設くるようにした点であります。  第四点は、これは監督規定でありまして、今後定期的に組合の決算関係書類を行政庁に提出させるという点であります。  最後に第五点として、不健全な組合や、あるいは睡眠組合、または中央会というものに対して、行政庁は業務の改善命令を出し、場合によっては解散命令をも出し得るようにしたという点であります。  委員会におきまして、この法案につきましても、いろいろ慎重に、質疑がございまして審議いたしたのでありますが、詳しいことは速記録に譲りますが、そのおもなるものは、「組合の設立を今までと違って認可制度にすることに関して、行政庁が期限を規定しないのは不都合ではないか」と、こういう質問に対して、政府側からは、「期限はつけてないけれども、少くとも一カ月内には処理するように地方庁に対して厳重に通牒を出して、そうして四半期ごとにその結果を報告させるようにいたしますから、特別の事情がない限りは、認可をおくらせるようなことはないように十分注意をいたします」という答弁がありました。それから、「組合の役員選挙に指名推薦ということは非民主的ではないか」という質問に対して、政府側は、「あくまでも無記名投票というものが原則でありますけれども、指名推薦をとる場合は、その前に出席者全員の同意を求める。一人でも反対があれば、無記名投票によるようにする」と、こういう答えでございました。それから、「新しく設立される中央会に対する補助金がないのはどうか」ということに対して、政府側では、「本法律案が通過いたしまして、中央会がいよいよ設立を見ました暁には、予備金なり、あるいは補正予算なりで適当な補助金に関する予算措置を講じたい」という答弁がございました。なお、「この中央会が政治的に利用をされないまう慎重に指導していくつもりである」という答弁もございました。  かく質疑を終りまして討論に入りましたところ、波野委員と小松委員から、「今回の改正案は全体を通じて官僚的、非民主的統制であって、時代逆行の感が深い、特に設立の認可制をとったり、あるいは役員選挙に指名推薦を認めるとやうことは、何としても納得いたしかねる」というので、それぞれ反対意見が述べられました。豊田委員は、「睡眠組合などを再編成する等の方策によって、今まである組合の水準を向上するように政府は格段の努力をするよう」に要望して、賛成の意を表明されました。河野委員も、「現在組合の実態から見て、経営、特に経理面のずさんなことが問題であるから、指導監督の強化は必要であり、本改正案による措置は適切である」とし、「ただし、当局は指導の域を越えて干渉がましいようなことにならないように注意されたい」という希望を付して、賛成意見が述べられました。最後に石川委員からも、「不満足ではあるけれども、現状では官僚的な指導もやむを得ないものがあると思う。全国的な組織が一応でき上った場合には、すみやかに本法を改正して民主的な運営をするようにという希望をもって、本案は賛成だ」という意見が述べられました。  かくて、一討論を終って採決に入りましたところ、多数をもちまして、本改正法案ば原案通り可決すべきものと決定いたしました。  右、委員会の経過と結果を御報告申し上げます。(拍手
  29. 河井彌八

    議長河井彌八君) 別に御発言もなければ、これより三案の採決をいたします。  まず、商工組合中央金庫法の一部を改正する法律案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  30. 河井彌八

    議長河井彌八君) 総員起立と認めます。よって本案は、全会一致をもって可決せられました。      —————・—————
  31. 河井彌八

    議長河井彌八君) 次に、中小企業金融公庫法の一部を改正する法律案  中小企業等協同組合法の一部を改正する法律案  以上、両案全部を問題に供します。両案に賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  32. 河井彌八

    議長河井彌八君) 過半数と認めます。よって両案は可決せられました。      —————・—————
  33. 河井彌八

    議長河井彌八君) 日程第五、出入国管理令の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)を議題といたします。  ます委員長の報告を求めます。法務委員長成瀬幡治君。    〔成瀬幡治君登壇拍手
  34. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 ただいま議題となりました出入国管理令の一部を改正する法律案につきまして、委員会における審議の経過及び結果について御報告申し上げます。  まず本改正案の内容について申し院げます。第一は、第五十四条の改正であります。すなわち、政府説明に上りますと、出入国管理令に定める退去強制事由に該当するため、違反の審査を受け、またはその審査の結果国外に強制退去を命ぜられた外国人は、所定の収容施設にその身柄を収容することになっておりますが、疾病その他特別の事情によって収容を継続することが適当でない場合には、確実な身元引受人に身元を引き受けさせ、かつ千円以上三十万円以下の保証金を納付させた上で、仮放免を許可しているのであります。しかしながら、最近仮放免をしてもよいと思われるにもかかわらず、適当な身元引受人がないこと等のため、この保証金を納めることができかい者が相当あります。これらの者については、適当な保護団体等に保証金を納めさせ、その身柄を引き受けさせた上で仮放免を許可しておりますが、該当者が相当政に上るために、これらの保護団体等の負担もこのために著しく増大いたしますので、結局仮放免の手統の円滑な運営を期しがたくなるというのであります。そこで、本改正案では、このような場合、入国者収容所長または主任審査官が認めるときは、その保護団体等が差し出した保証書をもって保証金にかえることを許すことができることに改めようとしているわけであります。  第二は、付則の改正でありまして、政府説明によりますと、昭和二十七年四月二十八日平和条約発効のとき、わが国に終戦から引き続いて在留する朝鮮人及び台湾人並びにこれらの者の子で終戦後から平和条約発効の日までに生まれた者については、ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する法律第二条第六項によって、目下のところ、正規の資格を有しないままで在留することが許されているのでありますが、これらの朝鮮人及び台湾人の子で平和条約の発効以後に生まれた者は、特別に三年を期間とする在留資格が与えられているのであります。そこで、平和条約発効後三年目に当る本年四日二十八日以降は、それらの子はあらためて在留期間の更新をする必要があるわけでありますが、事実上その必要が生ずる時期は、来る七月以降となっております。ところが、出入国管理令規定によりますと、このような在留期間更新の許可を受けました場合には、手数料として一件について千円を納めねばならないのでありますが、これらの子供の保護者たちは、永年日本に居住し、正規の在留資格を持たないままで在留を許されている者であり、また大部分が貧困者と申してよく、しいてこの手数料を納めさせようといたしますと、かえって在留期間の更新手続を渋る結果となり、ために不法残留者が続出するおそれが多分にあるというのであります。そこで、これらの事情及びこれらの者とわが国との特殊関係を考慮して、政令で定める日までは、その手数料をとらずに在留期間の更新ができるようにするものであります。  以上が本改正案の概要でありますが、当委員会におきましては、慎重に審議をいたしましたところ、中山、羽仁、吉田各委員から、大村、横浜、浜松の各収容所の収容状況、仮放免の方針、仮放免者の身元引き受けに関する保証団体の性格、仮放免の取り消しの場合における保証金没収、強制送還の実情等について質疑がなされ、かつ、この取扱いが公正に行われるとともに、個々の場合について、人情の加味される必要と、その取扱いについて政府所信をただし、特に韓国人、中国人の処遇についてすっきりしないのは、国交調整の未了に基因する不安定にあるので、これに対して根本的措置を講ずる意向の有無について、政府から善処したき旨が述べられました。その詳細は、速記録によって御了承願いたいと存じます。  討論におきしては、別に発言はございませんでしたので、直ちに採決いたしましたところ、全会一致をもって可決すべきものと決定いたした次第でございます。(拍手
  35. 河井彌八

    議長河井彌八君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  36. 河井彌八

    議長河井彌八君) 総員起立と認めます。よって本案は、全会一致をもって可決せられました。      —————・—————
  37. 河井彌八

    議長河井彌八君) 日程第六、海上運送法の一部を改正する法律案内閣提出)を議題といたします。  まず委員長の報告を求めます。運輸委員長加藤シヅエ君。     ━━━━━━━━━━━━━    〔加藤シヅエ君登壇拍手
  38. 加藤シヅエ

    ○加藤シヅエ君 ただいま議題となりました海上運送法の一部を改正する法律案につきまして、運輸委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。  まず改正案のおもなる内容を簡単に申し上げますと、第一は、旅客定期航路における安全性確保のため、事業者が海上における人命の安全の確保のための法律たる船舶安全法及び船舶職員法の規定違反いたしました場合等には、事業の停止または免許の取り消しをなし得ることといたしたことであります。  第二は、不定期航路事業のうち、一定の国内航路において継続反復して旅客の運送をするものを許可制といたしまして、その運賃、料金、運送約款、運統計画、事業の停止及び許可の取り消し等について、旅客定期航路事業に準じた規制を加えることであります。その他現行法施行後の経験にかんがみまして、免許基準等についての改正をしようとするものであります。  当委員会におきましては、主として旅客定期航路事業の免許基準に関する改正規定がきわめて抽象的であること、また、旅客不定期航路事業についてはその実態にかんがみ、これを許可制にすることの可否及びこの事業と旅客の臨時輸送との区別の不明確なこと等の諸点について、熱心なる質疑が行われたのでありますが、詳細は速記録に譲ることにいたしたいと存じます。  さて本法案につきまして、仁田竹一委員より修正案が提出されたのでありますが、次に、その要旨を簡単に申し上げまえ  まず第一は、旅客定期航路事業の免許基準にかかるものでありまして、原案は、事業の的確なる遂行能力及び事業開始の公益上から見た支障の有無をも審査するよう免許基準を改めようとしているのでありますが、これらの基準はいずれもきわめて抽象的な概念でありまして、かかる規定場は、往々にして行政庁による法の恣意的運用を許すおそれもありますので、事業者の能力に関する基準につきましては、より具体的な現行法の定めを存置いたしますとともに、公益上の支障の有無に関する基準につきましては、政府当局の意図するところを考慮いたしまして、より具体的に表現したことであります。  第二は、旅客不定期航路事業にかかる修正でありまして、この事業と臨時の旅客運送との区別が不明確でありますので、これを明確にするよう修正いたしますとともに、なお、旅客不定期航路事業の性格にかんがみまして、許可基準を緩和したことであります。  第三は、旅客定期航路事業者に対する改善命令にかかる修正でありまして、原案では、船舶その他の輸送施設の改善を新しく命令事項にしようとしているのでありますが、これらは事業者の良識に待つべきものであって、法律をもって強制することは妥当でないと考えますので、サービス改善命令につきましては、改正追加を取りやめ、現行通りとしたことであります。  第四は、船舶運航事業の定義にかかるものでありまして法の適用を有償の船舶運航事業に限定しようとする改正は、実際には有償でありながら、無償と称して法の適用を免れる者を生ぜしめるおそれがありますので、この改正を取りやめたことであります。  討論に入りましたところ、大倉精一委員より、次の決議を付すべき旨の動議が提出されました。  その決議案は、   一、政府は旅客不定期航路事業がおおむね零細な事業者により経営されている現状にかんがみ、本法施行に際しては、これら事業者が不利益を受くることなきよう特段の配慮をなすべきである。   二、政府は、旅客不定期航路事業の取締りに籍口して、旅客の臨時輸送に対し不当な拘束を加えないよう、第二十一条の短期間とは三十日程度に定むる等、同条省令の制定その他行政措置については適切なる考慮を加え、もって法の円滑なる運用を期すべきである。というのであります。  かくて討論を打ち切り、採決に入りましたところ、仁田委員提出修正案並びにこの修正案による修正部分を除く原案は、ともに全会一致をもって可決すべきものと決定いたしました。次に大倉委員提出の付帯決議案につきまして採決いたしましたところ、これまた全会一致をもって可決されました。  なお、運輸大臣より、決議の趣旨はこれを尊重したい旨の発言がありました。  以上、御報告申し上げます。(拍手
  39. 河井彌八

    議長河井彌八君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。本案全部を問題に供します。委員長の報告は、修正議決報告でございます。委員長報告通り修正議決することに賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  40. 河井彌八

    議長河井彌八君) 総員起立と認めます。よって本案は、全会一致をもって委員会修正通り議決せられました。      —————・—————
  41. 河井彌八

    議長河井彌八君) 日程第七より第三十一までの請願を一括して、議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  42. 河井彌八

    議長河井彌八君) 御異議ないと認めます。まず委員長の報告を求めます。運輸委員長加藤シヅエ君。    〔加藤シヅエ君登壇拍手
  43. 加藤シヅエ

    ○加藤シヅエ君 ただいま上程になりました日程第七から第三十一までの請願につきまして、運輸委員会における審議の経過並びに結果を御報告いたします。  日程第七及び第八の二件は、いずれも港湾修築の促進に関するものであります。日程第九及び第十の二件は、いずれも港湾整備予算の増額を要望する趣旨のものであります。日程第十一は、岩手県大船渡市碁石崎に灯台等を設置し船舶の航行安全を期せられたいという趣旨のものであります。日程第十二は、定点気象観測業務再開に関するものでありまして、北方定点における気象観測の打ち切りと、南方定点における気象観測期間の縮小とのため、日常の気象予報、警報の精度を低下させ、気象災害対策を不完全にし、さらに気象学等の研究上にも大きなマイナスとなっているから、両定点における気象観測業務を完全に再開されたいという趣旨のものであります。  日程第十三から第二十までの八件は、鉄道敷設促進あるいは建設工事促進に関するものでありまして、いずれも当該沿線の産業の発展、地上、地下資源の開発、民生の安定、文化の向上、交通網の完成の見地から、すみやかに鉄道の開通をはかってほしいと」う趣旨であります。  日程第二十一は、山田線の旅客列車のジーゼルカーの運転方促進及び増発並びに貨物輸送力の増強、また日程第二十二は、山形—鶴岡両駅間にジーールカーによる直通運転の要望と、山形県下一円におたる国鉄線の輸送力の増強をはかってほしいという趣旨であります。日程第二十三は、急行列車阿蘇号に二等寝台車を連結してほしいというのであります。日程第二十四は、国鉄の駅の出札口は、現在各種各様で、乗車券購入の際、乗客と駅員との対話も十分できないような装置が多いから、音声がよく聞えるような装置に改善してほしいという趣旨であります。日程第二十五は、川崎市は人口四十三万余を擁し、大小の工場合せて一千余に上り、日本工業生産の中枢都市として、躍進途上にあるが、駅舎は戦後のバラックのまま現在に至り、川崎市の発展を阻害しているから、すみやかに駅舎の改築をしてほしいという趣旨であります。日程第二十六は、国鉄長井線羽前成田駅と蚕桑駅間の中間に位する部落民の利用に不利不便が多いから、中間に停留所を設置してほしいというのであります。  日程第二十七は、京都—米原両駅間をすみやかに電化するとともに、電化完成の暁には、京都—草津両決闘の混雑緩和と草津線との連絡上、西明石—京都両駅間の電車運転を草津駅まで延長してほしいという趣旨であり、日程第二十八は、甲府—長野両駅間の電化をすみやかに実現し、沿線の産業の発展をはかってほしいという趣旨であります。日程第二十九は、飯田線は東海道線中央線とを結ぶ重要線であるが、途中天龍峡—佐久間両駅間は、一方は天龍川に沿い、他方は急峻な山腹が迫り、従来から落石、土砂崩壊事故が多いから、その防止対策を講ずるとともに、輸送力の増強をはかってほしいという趣旨であります。  日程第三十は、傷痍軍人に対しては、かつて国有鉄道無賃乗車証が交付されていたが、終戦後庭止され、傷痍軍人の人々は療養のための交通費にすら困っている現状であるから、従来通り国鉄無賃乗車証の発行を復活するとともに、復活に当っては傷病の程度による等級を別とし、傷痍軍人記章を佩用し、かつ財団法人日本傷痍軍人会会員証を携行した者のみに制限してほしいという趣旨であります。  日程第三十一は、県道伊集院・鹿児島線は、西鹿児島駅構内において国鉄鹿児島本線指宿線と平面交叉しているが、この踏切地点は、市内でも最も交通量の多い場所にもかかわらず、駅構内にある関係上、交通遮断回数も多く、通行者の危険と不便がはなはだしいから、人道跨線橋を架設してほしいという趣旨であります。  以上二十九件につきまして、委員会において審議いたしました結果、いずれも願意妥当と認め、全会一致をもちまして、議院の会議に付するを要し、内閣に送付するを要するものと決定いたしました。  以上、御報告申し上げます。(拍手
  44. 河井彌八

    議長河井彌八君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。  これらの請願は、委員長報告通り採択し、内閣に送付することに賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  45. 河井彌八

    議長河井彌八君) 総員起立と認めます。よってこれらの請願は、全会一致をもって採択し、内閣に送付することに決定いたしました。  本日の議事日程は、これにて終了いたしました。  次会の議事日程は、決定次第公報をもって御通知いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後三時四十二分散会      —————・————— ○本日の会議に付した案件  一、議員の請暇  一、日程第一 憲法調査会法案趣旨説明)  一、日程第二 商工組合中央金庫法の一部を改正する法律案  一、日程第三 中小企業金融公庫法の一部を改正する法律案  一、日程第四 中小企業等協同組合法の一部を改正する法律案  一、日程第五 出入国管理令の一部を改正する法律案  一、日程第六 海上運送法の一部を改正する法律案  一、日程第七乃至第三十一の請願