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1955-06-29 第22回国会 参議院 本会議 第29号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年六月二十九日(水曜日)    午前十一時二十一分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第二十九号   昭和三十年六月二十九日    午前十時開議  第一 アルコール専売法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第二 あへん特別会計法案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第三 輸入品に対する内国消費税徴収等に関する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第四 国税徴収法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第五 租税特別措置法の一部を改正する法律案衆議院提出)(委員長報告)  第六 登録税法の一部を改正する法律案衆議院提出)(委員長報告)  第七 農業協同組合中央会が不動産に関する権利を取得する場合における登録税臨時特例に関する法律案衆議院提出)(委員長報告)  第八 所得税法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第九 法人税法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第一〇 租税特別措置法等の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第一一 補助金等臨時特例等に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出第五〇号、衆議院送付)(委員長報告)  第一二 補助金等臨時特例等に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出第九一号、衆議院送付)(委員長報告)  第一三 麻薬取締法の一部を改正する法律案内閣提出)(委員長報告)  第一四 在外公館の名称及び位置を定める法律等の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第一五 国の援助等を必要とする帰国者に関する領事官職務等に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第一六 総理府設置法の一部を改正する法祖案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第一七 運輸省設置法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第一八 労働省設置法等の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第一九 昭和三十年四月及び五月の凍霜害、水害等被害農家に対する資金の融通に関する特別措置法案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第二〇 昭和二十八年度一般会計予備費使用調書(その2)(衆議院送付)(委員長報告)  第二一 昭和二十八年度一般会計災害対策予備費使用調書(その2)(衆議院送付)(委員長報告)  第二二 昭和二十八年度特別会計予備費使用調書(その2)(衆議院送付)(委員長報告)  第二三 昭和二十八年度特別会計予算総則第十条に基く使用調書衆議院送付)(委員長報告)  第二四 昭和二十九年度一般会計予備費使用調書衆議院送付)(委員長報告)  第二五 昭和二十九年度特別会計予備費使用調書衆議院送付)(委員長報告)  第二六 昭和二十九年度特別会計予算総則第八条に基く使用調書衆議院送付)(委員長報告)  第二七 昭和二十九年度特別会計予算総則第九条に基く使用調書衆議院送付)(委員長報告)  第二八 昭和二十九年度一般会計国庫債務負担行為調書委員長報告)  第二九 郵便物国産愛用の字句の消印使用に関する請願委員長報告)  第三〇 鹿児島県上屋久村に電報電話局設置請願委員長報告)  第三一 茨城県水戸市谷中町に特定郵便局設置請願委員長報告)  第三二 青森県百石町郵便局庁舎復旧に関する請願委員長報告)  第三三 新潟県西越村に無集配特定郵便局設置請願委員長報告)  第三四 宮崎県東都農地区電話架設請願委員長報告)  第三五 奈良県黒滝村の電話施設改善に関する請願委員長報告)  第三六 滋賀県近江八幡郵便局庁舎新築に関する請願委員長報告)  第三七 鹿児島薩摩求名地区公衆電話を架設するの請願委員長報告)  第三八 鹿児島薩摩中津川郵便局電話交換台設置請願委員長報告)     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 河井彌八

    議長河井彌八君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。      ——————————
  3. 河井彌八

    議長河井彌八君) これより本日の会議を開きます。  議員前田穰君は、昨二十八日逝去せられました。まことに痛惜哀悼の至りにたえません。  石川榮一君から発言を求められました。この際、発言を許します。石川榮一君。    〔石川榮一登壇拍手
  4. 石川榮一

    石川榮一君 ただいま議長より御郵告がありました通り議員前田穰君は、去る六月二十八日伊勢市において急逝されました。私ども同僚議員といたしまして、まことに痛惜のきわみであります。ここに同君の生前を回顧いたしまして哀悼の辞をささげたいと存じます。  前田君は、明治二十年、三重県四円市に生まれ、大正二年、東京帝国大学法学部を卒業、直ちに職を鉄道省に奉ぜられまして昭和十二年退官せられたのでありまするが、その間、二十四年の長きにわたりまして、あるいは大臣官房人事課長、あるいは大阪、仙台の鉄道局長、本省の運輸局長、あるいは監督局長の要職を歴任せられまして、わが国国有鉄道史上大なる足跡を残されたのであります。退官後は、阪和電鉄、南海電鉄の重役として、あるいは三重交通株式会社の社長、会長といたしまして民間交通の発展に力を尽されたのであります。  昭和二十五年、本院第二回選挙に当りまして三重県民の輿望をになわれ、めでたく当選されて以来五年余り、建設委員、あるいは厚生委員及び運輸委員長として精励恪勤、よくその職責を果されたのであります。  同君は、寡黙にして温容、該博なる知識と造詣をもって、接する者をして畏敬させずにはおきませんでした。  今や内外の諸情勢に伴いまして、国会もその責務いよいよ重大を加えますときに、同君のごとき高潔にして洗練されました士を失いますことは、まことに本院のために痛恨にたえないところであります。  ここに同君の逝去を悼むとともに、御冥福をお祈りいたしまして、つつしんで哀悼言葉をささげる次第であります。(拍手
  5. 河井彌八

    議長河井彌八君) お諮りいたします。前田穰君に対し、院議をもって弔詞を贈呈することとし、その弔詞議長に一任せられたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 河井彌八

    議長河井彌八君) 御異議ないと認めます。議長において起草いたしました議員前田穰君に対する弔詞朗読いたします。  参議院は議員正四位勲三等前田穰  君の長逝に対しまして、つつしんで  哀悼の意を表し、うやうやしく弔詞  をささげます。      ——————————
  7. 河井彌八

    議長河井彌八君) 参事報告させます。    〔参事朗読〕 本日議員中川以良君外五名から委員会審査省略要求書を附して左の議案を提出した。  在外財産処理促進に関する決議案      ——————————
  8. 河井彌八

    議長河井彌八君) この際、お諮りいたします。  在外財産処理促進に関する決議案  (中川以良君外五名発議)  本案は、発議者から委員会審査省略要求書が提出されております。発議者要求通り委員会審査を省略し、直ちに本案審議に入ることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 河井彌八

    議長河井彌八君) 御異議ないと認めます。よって本案議題といたします。まず発議者趣旨説明を求めます。中川以良君。    〔中川以良君登壇拍手
  10. 中川以良

    中川以良君 ただいま議題となりました在外財産処理促進に関する決議案につきまして、提案の理由を御説明申し上げます。  まず決議案の本文を朗読いたします。    在外財産処理促進に関する決議案   政府は、さきに在外財産問題審議会を設置し、在外財産処理について調査審議しつつあるが、いまだになんら解決方途をみるに至っていない現状である。   よつて、本院は、政府が速やかに在外財産処理根本方針を樹立し、法律上及び財政上必要な措置を講ずることを要望する。  右決議する。  顧みまするに、今次大戦により、わが国国民精神的に、物質的に、はかり知るべからざる打撃をこうむりましたことは、今さら申すまでもないことであります。なかんずく、いわゆる戦争犠牲者人々の直面せられました悲惨なる幾多の実情思いをいたしますとき、心より御同情を申し上げるとともに、終戦後十年、国家としていまだ適切なる償いをいたし得ざることは、まことに遺憾至極に存ずるところであります。されど、従来政府は、われわれの正しき要望にこたえ、祖国再建途上、乏しき財政の中より、これらの一部に対し、まことに不十分ではありますが、種々の措置により、補償あるいは救済方途が講ぜられて参りましたことは、私もまたこれを了とするにやぶさかではありません。しかしながら、この間いまだ全然手がつけられていない問題がここにあるのであります。すなわち外地に残されたる在外財産問題であります。外地よりの引揚同胞は、現在までに実に百七十五万世帯、数百万人に及んでおりますが、ことに台湾朝鮮満州等よりの引揚者の大部分は、戦争前より、長きは数十年、父祖数代にわたり、かの地において国家目的に沿い、新天地の開拓に全精神を傾倒し、営々として働き、かくて貴重なる財産を築きなした人々でございます。そしてその一つ一つは、文字通り粒々辛苦築き上げられたる血と汗との尊き貴き結晶にほかならないのであります。これらの財産は、あるいは老後の生活のために、あるいはまた子女の教育等のために蓄積せられたことでありましょう。しかるに敗戦により、一朝にしてことごとく失わるるに至ったのであります。御承知のごとく、戦時における私有財産尊重は、国際法上明らかに認められているところでありまして、敗戦の故をもって個人私有財産が没収さるるがごときことは、とうていあり得ないことであります。しかるを今次戦争においては、この厳粛なるべき戦争法規原則が、むざんにも踏みにじられて、外地引揚者財産は放棄の運命にあい、賠償の一部に充当せしめられんといたしております。そしてわずかに台湾朝鮮のみが、両国間の交渉にゆだねられることに、なっているにすぎません。しかも台湾におけるものは、日本と中華民国との間に締結せられました平和条約第三条により、私有財産権尊重し、この処理両国間の特別の取りきめの主題とすると明記されているにもかかわらず、今日に至るまで何ら具体化するに至っておりません。また国際法原則に基き、当然公正なる処理を要求すべき朝鮮との交渉も、いまだ全く放置せられている現状であります。政府はこれら台湾朝鮮に対する具体的処理につき、すみやかに交渉を進められまするとともに、目下進行中の日ソ会談においても、この観点よりしても、千島、樺太等については、あくまで領土権を強く主張すべきであると信ずるのであります。    〔議長退席、副議長着席〕  そもそも戦争による責任国民全体がひとしくこれを負うべきでありまして、ひとり外地引揚者のみに、そのたえがたき過重なる負担を負わしむる理由はどこにあるのでございましょうか。前内閣はこれが処理に苦慮いたし、昭和二十八年十一月には、在外財産問題調査会内閣に設け、さらに二十九年七月、これを審議会に拡充をいたしたのでありますが、本問題解決は、現在一歩も前進をしていないありさまであります。特に現内閣においては、本審議会はただの一度も開催をされておりません。乏しきを憂えず、ひとしからざるを憂うという言葉がありますが、敗戦によって一挙に財産を奪われ、文字通り着の身着のままで引き揚げ、十年この方つぶさに辛苦をなめておらるるこれらの気の毒な同胞生活思いをいたしまするとき、われわれは痛切に本問題解決促進政府に要求せざるを得ないのであります。  わが国が今や再建途上財政面において規多の苦難に直面をしておる現状は、私もよく理解をしておる一人でございます。それであるからといって、この際、政府はこの切実なる本問題に対し、ただ単に場当り的遁辞をもって責任を回避するがごときことは断じて許すべきではありません。鳩山総理の信条としておらるるところの友愛精神を御発揚になるのは、まさに今日このときであると存ずるのであります。(拍手)何とぞ真剣に本問題と取り組み、誠意をもってすみやかに対処せられんことを重ねて強く要望をする次第であります。  以上をもちまして私の趣旨弁明といたします。何とぞ党派を超越し、各位の心よりの御賛同を衷心よりお願いを申し上ぐる次第でございます。(拍手
  11. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) 本案に対し討論の通告がございます。順次発言を許します。菊川孝夫君。    〔菊川孝夫登壇拍手
  12. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 私は、ただいま議題となりました在外財産処理促進に関する決議案に対しまして、社会党第四控室を代表して賛成いたします。  在外財産問題については、久しい間、関係者より繰り返しその処理促進について要望されて参ったところでありまして、戦後十年を経過いたしました今日、すみやかに解決しなければならぬ問題であることは申し上げるまでもございません。先に預貯金及び送金小切手等返還に関する問題は、一部解決せられたのでありますが、いまだ関係者の納得できる財産問題解決ができておらないのであります。これら関係者は、当時政府の奨励、あるいは半ば強制的に大陸の各地、あるいは朝鮮台湾等に、国の政策に寄与するために進んで進出していかれた方々であります。敗戦の結果、裸一貫で何ら生活の基盤のない故国に引き揚げて参ったのでありましたから、戦後のインフレの波にもまれた場合、海外に一切の財産を残して引き揚げて来たこれらの人々は、一そう苦境に立たれたであろうということは同情にたえないのでございます。なお、これら海外財産を残して引き揚げてこられました方々は、ようやく年も相当取って参られまして、まさに若い当時に海外各地で働かれましたその記憶が、今やよみがえって参りましてこの生活の苦しみから、より一そう財産問題処理に関し痛切に感ぜられることは、われわれも十分納得できるところであります。(拍手)  戦後十年、ようやく世情も落ちつきを見せ、特に敗戦直後想像も及ばなかった再軍備さえ憲法を侵しまして現実に推進され、当時口にするさえはばかった国防会議さえ国会審議のすでに段階になって来ているのであります。われわれはかかる再軍備に使う莫大な国費を一切削りまして、その一部をもって戦争犠牲者補償に充当すべきことをかねてより強く主張いたして参ったところであります。(拍手)この問題なくしては財産問題処理ができないと存じます。なおまた、サンフランシスコ平和条約の結果、連合国財産補償法という法律ができまして、毎年巨億ずつ、アメリカ爆撃機が参りまして家を焼き財産をこわしたその連合国人に対しまして、われわれの税金でもって、補償をしておるのであります。これは日本軍隊がこわしたのではなくて、アメリカ軍隊が原爆を投げてこわした美術品にしてさえも、われわれの税金補償しなければならないようになっておるわけであります。そのアメリカが一方におきまして、再軍備を強行する。そうしてまだその上に、自分みずからの国民の損害までもむしり取ろうとしておるのであります。従いまして、この問題解決しない限り、根本的には在外財産問題処理はきわめて困難であると思います。(拍手)しかしながら、困難だからといって放置するわけには参らないと存じます。問題緊急性にかんがみまして、すみやかに、この国会において議決されましたならば、当院において議決されましたならば、その意のあるところをくんで、要するに、政府においてはアメリカの意をくんで再軍備国費を費すよりも、まずこうした戦争犠牲者補償のためにわれわれの税金を使うという方向に踏み切られるように要望いたしまして本決議案賛成いたす次第であります。(拍手)     —————————————
  13. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) 田畑金光君。    〔田畑金光登壇拍手
  14. 田畑金光

    田畑金光君 私は日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となりました在外財産処理促進に関する決議案賛成の意を表するものであります。  御承知のように、終戦以来すでに十年の歳月を経過し、戦争に伴う犠牲者に対する国内措置も、国民経済力の許容する限度において逐次解決途上にあることは、われわれもこれを認めるにやぶさかでありません。旧軍人遺家族恩給も復活されて、本年度予算においては六百八十億に達し、文官恩給を入れますと九百億に上り、恩給費国家予算に占める比率は一割に近く、国家財政の能力から見ましても、社会保障制度国民的視野から見ましても、再検討を余儀なくされておるのが現況であります。  しかるに、今日まで戦争犠牲者のうち、何らの保護も補償措置も捨ててかえりみられなかったのが、かつて在外同胞であり、引揚者問題であるわけであります。これらの人々が、永年粒々辛苦の末、蓄積して参りました在外財産処理問題が、今日の大きな政治的な問題に上っておるのであります。本件は昭和二十一年の十月二十二日、第一次吉田内閣において、引揚者世帯一万五千円を交付する旨閣議決定がなされ、同年十二月六日の閣議において再確認され、昭和二十二年度予算に計上する方針がとられたのでありまするが、当時のGHQは昭和二十二年一月、右閣議決定を破棄せしめておるのであります。  昭和二十六年のサンフランシスコ平和条約におきまして、わが国は一切の請求権を放棄し、これらの引揚者在外財産請求権は、一切日本政府責任において放棄する方針をとったのであります。しかし当時すでにインド中国、サルバドル、ブラジル等はこれに反対したのでありますが、その後、目印平和条約によりまして、インド在外財産返還する好意的措置を明らかにいたしたのであります。セイロンパキスタン等インドにならい、サンフランシスコ条約原則にかかわらず返還するということで、すでにこれらの二国は返還の実現を見ておるわけであります。アメリカにおいても、御承知のように、私有財産尊重原則から、サンフランシスコ平和条約においては請求権が放棄されておりますけれども、近く国内法でありまする対敵取引法を修正し、個人財産については、少額ではありまするが、返還するという方針を決定いたしたのであります。  すなわち、わが国アメリカと本年三月以降、在外財産返還交渉をワシントンにおいて進めて参りましたが、当初日本政府は六千万ドルの返還を主張いたしましたが、結果においては、法人を除外いたしまして、自然人のみに返還することになり、一人あて最高一万ドル、総額一千万ドルの返還をたす取りきめが決定されたわけであります。アメリカの今回の措置は、いたく引揚者同胞の諸君を刺激いたしまして在外資産返還の運動は日に日に高まって参ったのでありまするし、世論もまたこれに対しましてすみやかな措置をとるべきことを要請いたしておるわけであります。  しかるに政府の態度は、怠慢の一語に尽きると申さなければなりません。昨年の七月、総理府設置法の一部改正により、内閣在外財産問題審議会を設けまして、「在外財産に関する基本問題その他在外財産に関する重要事項」を審議決定することになっておるが、この機関がほとんど開かれていないのであります。この機関は単に、引揚者団体からの強き要請世論の批判を、いかにして避けようかとする政府措置として生まれた審議会にほかなりません。  閉鎖機関に指定されましたかつて朝鮮銀行台湾銀行清算業務も、すでに終了いたしているわけでありまして公称八千万、払込五千万の朝鮮銀行は、今日七十五億の剰余金を抱えており、公称六千万、払込三千七百五十万の台湾銀行は、今日二十五億の剰余金を持っておるわけであります。しかるに、零細なかつての旧預金債務者に対しましては、預金債務の三分の一を切り捨てて払い戻しをやっておる。これが実情でありまして、旧株主の利益擁護をはかっておると申さなければなりません。  昭和二十七年の日華平和条約第三条によりますると、台湾日本からの分離に伴う日本国及び日本国民台湾における財産及び請求権は、中国政府及び国民在日資産及び請求権とあわせて、特別の取りきめをもって解決することになっておるが、政府は何らの具体的な措置をとっておりません。    〔副議長退席議長着席朝鮮との国交調整も、御承知のごとく一昨年来停頓いたしておりまするが、これまた請求権問題を中心として停滞しておることは御承知通りであります。  で、現内閣は前吉田内閣と全くその1本質は同じく、保守反動内閣であり、積極的な再軍備内閣であることは、本年度予算を見れば明らかでありまするし、今日提案されておりまする国防会議構成等に関する法律案を見ましても、憲法調査会設置法を見ましても、明らかであるわけであります。軍備のために国民生活安定を犠牲にし、戦争犠牲者をこのままの形で放擲することは、断固許されないと私は考えるものであります。  幸い去る六月二十三日、私は内閣委員会におきまして園田政務次官に対し、この在外資産補償に関し、政府に質問をいたしたのでありまするが、その節、園田政務次官は次のような答弁をなさっておるわけであります。すなわち「在外資産返還交渉と、それから国内における在外資産補償支払いの件は別個の問題でございまするが、これは政府といたしましては、当然国際法規並びにへーグの陸戦法規にも規定してあります通り、戦いに負けました国が勝った国に賠償を支払うということが規定してございまするが、負けた国の国民個人の持っている財産を勝った国に没収をせられる、あるいは、または賠償としてこれを押収せられることは禁ぜられておるばかりでなく、いかなる場合といえども、個人財産は守られなければならぬということは明瞭に書いてあるところでございまするから、こういう意味におきましても、外務省といたしましては、当然そのような関係から、各国に対しましては、特別の規定を除くもののほかに、個人私有財産解決については、極力折衝しなければなりませんが、これとは無関係にしましてかりにその他の国々との折衝ができない場合におきましても、国内においてはこれに対する支払いをやるのは当然のことでなければならぬと考えております。それが今まで、終戦後十年間、国家財政の状態からこれに対する補償問題が実際に実施をされなかったことはまことに遺憾でございまして本日衆議院におきましては各派全会一致で、この問題に対する決議案上程されると漏れ承わっております。従いましてこの決議案上程によりまして、政府もこの決議案趣旨を順守をして、すみやかなる時期に、これに対する解決方法を講じなければならぬと考えております。」ということを明確に答弁いたしておるわけであります。私は園田外務政務次官のこの答弁は、今日の外務省方針であり、政府方針であると考えるわけであります。  従いまして、政府はすみやかに法律上の措置をはかるとともに、予算上の措置をはかることを強く要請申し上げまして、私は本決議案に対する賛成の演説を終ることにいたします。(拍手)     —————————————
  15. 河井彌八

    議長河井彌八君) 中川幸平君。    〔中川幸平登壇拍手
  16. 中川幸平

    中川幸平君 私は日本民主党を代表いたしまして、ただいま上程在外財産処理促進に関する決議案に対しまして、賛成の意を表明いたしたいと存じます。  第二次世界戦争によって、国の内外において国民の受けました損失は、精神的にも物質的にも甚大でありますが、これらの損失は、もとよりいかなる方法をもっていたしましても、完全に償うことは不可能でありまするが、損失の一部については、すでにそれぞれの方法によって補償、または救済措置が講じられつつあるのであります。しかるにこれらの損失のうちに、いまだにほとんど何らの救済方途を講じられておりませんのは、外地または外国からの引揚者が、外地または外国に残したまま失った資産問題であります。  そもそも近代戦争法規におきましては、私有財産尊重は絶対の原則であり、敗戦のゆえをもって個人私有財産が没収されるようなことはとうていあるべからざることであります。しかるに今回の敗戦に際しましては、この戦争法規原則が根本的に否定せられて、わずかに朝鮮台湾についてのみ両国間の交渉にゆだねられているにすぎず、一部国民のみが財産上不当に損失を甘受することとなったのであります。かかる一部国民損失国民全体で公平に負担してやるということは、友愛の精神から申しましても、当然のことと言わなければなりません。本問題処理は、戦後に残された最大の問題でありまして、もとより容易のわざではありませんが、引揚者の窮状を目のあたり見るとき、じんぜん日を空しうするわけにはいきません。  政府はさきに設置された在外財産審議会を活用し、さらに進んでこの問題解決を使命とする特別の行政機関を設ける等、引揚者諸君の実情を十分に把握し、すみやかに適切なる措置を講ぜられんことを要望いたしまして、賛成討論といたす次第であります。(拍手)     —————————————
  17. 河井彌八

    議長河井彌八君) 千田正君。    〔千田正君登壇拍手
  18. 千田正

    ○千田正君 ただいま議題となっておりますところの在外財産処理促進に関する決議案に対しまして無所属クラブを代表して賛意を表するものであります。  ただいま提案者並びに同僚各議員から詳しくその実情を述べられておりまするから、私はさらにそれを詳しく述べる必要はないと思いますけれども、この問題に関して実際にいかなる悲惨な問題が起きているかということを皆様にお知らせ申し上げて御理解を願うと同時に、政府に対して具体的な処置をすみやかに講ずることを要求するものの一人であります。  それは終戦後十年たった今日、われわれはすべて戦争の悲惨なことを一日も早く忘れたい、これは全日本国民のひとしく念願するところでありまするが、その忘れたいと思う戦争の悲惨な問題が、なお今日われわれの国のすみずみにおいて、その悲惨さを繰り返してまざまざと見せつけられるとするならば、それは何がゆえであるかというと、これは政治の貧困と言わざるを得ないのであります。この政治の貧困そのものを追及していく場合におきましては、私は政府の施策が当を得ておらないからであるということを言わざるを得ません。  先ほど同僚議員からこの問題につきまして、第一次吉田内閣は百五十億の予算を組んだのでありまするが、当時のGHQから、これを、破棄を命ぜられ、さらにサンフランシスコ条約におきましては、これまた日本在外資産請求権を放棄したのであります。そういうような立場から考えた場合において、この財産権を放棄した今日、これにかわるべき補償は、当然国民私有財産に対しては政府は何らかの措置をとらざるを得ないのでありますが、じんぜん今日に至って、何らの措置も講じていないのであります。昨年の十月一日、内閣におきまして、これらの審議会を設けられておりまするが、現内閣においては一度もこの問題については審議をされていない。しかもこの財産をめぐって幾多の引揚者に悲惨な問題が起きているのであります。この財産さえあれば、この一部さえあれば何とか生活ができるものを、とうてい得られないために自殺する者がどんどん出てくる、あるいは強盗をする者が出てくる、そういうような社会問題を引き起しているこの状況をわれわれは黙視することはできないのであります。  しかも、この財産処理問題については何らの手を打っていないこの日本政府は、今度の予算においては、外務省はどういう予算を組んでいるかと申しまするというと、旧在外公館に勤務しておったところの、かつてのいわゆる外務省の出先役人の日本に帰ってきた者、あるいはその留守家族に対して、相当の金額の予算を盛っている、五千数百万円という金額を今度の予算にも盛っております。帰ってこられた外務省のお役人様たちは、自分の家族も十分こうやって補償されている。しかし一文も持たず、わずか千円を持たせられて、リュックサック一つで帰ってきたところのこの引揚者たちが、戦後十年、粒々辛苦して、何十年の間海外において蓄積した財産も水のあわとなっておる今日において何を頼りに生きてゆくか。それはこの政府の誠意のある施策に対して求める以外に何ものもないのであります。  どうかこういう実情にあるこの引揚者の苦痛と、そうして戦争ということの、一日も早くこの犠牲者の苦痛を払拭させて、新しい日本の平和国家を建設するために政府は努力しなければならないと思うのでありますが、この点につきまして、この審議会が一日も早く具体的方針を作られて、そうして引揚者要望にこたえられるよう、特に要望いたしまして、私の賛成の演説にかえる次第であります。(拍手
  19. 河井彌八

    議長河井彌八君) これにて討論の通告者の発言は、全部終了いたしました。討論は、終局したものと認めます。  これより本案の採決をいたします。本案賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  20. 河井彌八

    議長河井彌八君) 総員起立と認めます。よって本案は、全会一致をもって可決せられました。  ただいまの決議に対し、外務大臣から発言を求められました。重光外務大臣。    〔国務大臣重光葵君登壇拍手
  21. 重光葵

    ○国務大臣(重光葵君) ただいま御決議に相なりました在外財産処理促進に関する決議の御趣旨は、十分に尊重いたしまして、政府といたしましては、慎重にこれを検討いたすことにいたします。以上。(拍手)      ——————————
  22. 河井彌八

    議長河井彌八君) 日程第一、アルコール専売法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)を議題といたします。  まず委員長の報告を求めます。商工委員長吉野信次君。    〔吉野信次君登壇拍手
  23. 吉野信次

    ○吉野信次君 議題となっておりまするアルコール専売法の一部を改正する法律案は、取締り関係規定の改正と、それから罰則の整備を内容とするものであります。現行法では、罰則は五千円というのが最高になっておりまするから、現在の罰則の基準の実勢に合わないのでありまするから、これを最高三年の懲役または三十万円の罰金、場合によっては懲役と罰金を両方課することができる。さらに不定量刑をも課し得ることといたしましたとともに、以下犯則の内容に応じまして、二十万円以下、十万円以下または五万円以下の罰金もしくは科料を課すると、こういうことに改めんとする法案であります。  法案自体につきましては格別の論議もなかったのでありますが、この機会にアルコール専売の根本問題に触れまして、委員会におきましては相当活発な質疑応答がございましたので、その詳細は会議録に譲りますが、ただ、アルコールの販売組織というものに関しまして特別にやかましい問題になりましたから、その質疑応答の概要をここで御披露いたしておきたいと存じます。  アルコールの販売機関は元売りさばき人と小売人とあるわけでありまして、小売人の方は地方の通商産業局の方で指定をいたしまして、全国で三千人くらいございまして、この方は問題ないのでありますが、元売りさばき人の方の会社が現在二つございます。元来は専売アルコールの元売りさばきでありますから、一つの会社であったものだそうですが、終戦後に集中排除法の関係で二つになっております。この二つの会社がすなわちアルコール興業株式会社、酒精産業株式会社、この二つであります。この二つの元売りさばきの会社が、昭和二十四年ごろに売り渡し代金を浮き貸し等の不正融資をいたしまして国に納入する売り渡し代金の焦げつきを来たしました。その額が二億数千万の多きに上っておるのであります。そこで当時の会社の責任者に対しましては、特別背任罪その他によって起訴されて、目下手続が進行中でありますが、政府は、国の債権の処理方法といたしまして、裁判上の和解を昨年、二十九年三月に両社との間に締結いたしまして、おのおの三十七年三月と、三十二年三月と、これは会社によって期限が違いますけれども、とにかくそれまでの間に二億数千万円に及ぶ巨額の売掛代金というものの弁済をせしめるという和解が成立しまして、同時に会社再建に関する協定に基きまして、政府はこの二つの会社に対して予算を統制し、配当を停止する、賃金を抑制する、販売数量の責任制をとらせるといったような一連の厳重な監督をいたしまして、ただいまのところ滞納金の回収は順調に進んでいるわけであります。  委員会で問題になりましたのは、こういう一体事態を発生した原因が、これはいろいろあるだろうけれども、要するにアルコール専売の販売組織というものに根本的に欠陥があるのではないか、こういう問題であります。この二つの元売りさばき会社は、これは純然たる民間の普通の会社でございまして、これに対して、政府の代行機関たるべきものであるにかかわらず、このものの業務上、経理上の監督をなす規定がないのであります。そういったところからこういったようなおもしろくない結果を生じたのでありますから、政府は、この際なるべくすみやかにこのアルコール専売の販売制度そのものを再検討して、元売りさばき人の責任体制というものを確立して、もう少し政府の監督を強化すべきであって、その具体的な方法の一つとしては、この元売りさばきを純然たる民間会社でなしに公的の、公けの性格を持たした特殊法人とするなどの措置を考慮すべきものではないか、こういう意見が委員会において強く表明されたのであります。  これに対して、政府当局におきましても今まで経理の監査等の監督が十分でなかったというところを認めまして今後の方針としては、政府の代行機関として、むしろこの二つの会社を一つに統合して、業務運営の合理化をさらに徹底せしむるとともに、その公共性を強化するために、政府の監督、命令に関する規定の整備をはかるというようなことをいたしまして、アルコール販売組織の全般にわたって、昭和三十二年三月の一つの会社の今までの滞りの債務の弁済が済みます時までに、慎重に検討して善処すべきことを約したのであります。  そこで、当委員会といたしましても政府の以上のような答弁を了承いたしまして、質疑を打ち切りまして、次いで討論、採決の結果、全会一致をもりて、本改正案は原案通り可決すべきよのと決定をいたしました。  右、報告いたします。(拍手
  24. 河井彌八

    議長河井彌八君) 別に御発言もたければ、これより本案の採決をいたします。本案全部を問題に供します。本案賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  25. 河井彌八

    議長河井彌八君) 総員起立と認めます。よって本案は、全会一致をもって可決せられました。      ——————————
  26. 河井彌八

    議長河井彌八君) 日程第二、あへん特別会計法案  日程第三、輸入品に対する内国消費税徴収等に関する法律案  日程第四、国税徴収法の一部を改正する法律案(いずれも内閣提出衆議院送付)  日程第五、租税特別措置法の一部を改正する法律案  日程第六、登録税法の一部を改正する法律案  日程第七、農業協同組合中央会が不動産に関する権利を取得する場合における登録税臨時特例に関する法律案(いずれも衆議院提出)  日程第八、所得税法の一部を改正する法律案  日程第九、法人税法の一部を改正する法律案  日程第十、租税特別措置法等の一部を改正する法律案  日程第十一、補助金等臨時特例等に関する法律の一部を改正する法律案(閣法第五十号)  日程第十二、補助金等臨時特例血に関する法律の一部を改正する法律案(閣法第九十一号)(いずれも内閣提出衆議院送付)  以上、十一案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  27. 河井彌八

    議長河井彌八君) 御異議ないと認めます。  まず、委員長の報告を求めます。蔵委員長青木一男君。    〔青木一男君登壇拍手
  28. 青木一男

    ○青木一男君 ただいま議題となりました十一法案について、大蔵委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。  まず、あへん特別会計法案について申し上げます。本案は、第十九国会において成立をみましたあへん法の規定により、政府が行うあへんの収納、輸入または売り渡しの事業に関する経理を明確にするため、一般会計と区分して新たにあへん特別会計を設置しようとするものであります。  内容の概略を申し上げますと、この会計は、厚生大臣が管理することとし、あへんの売渡代金、一般会計からの繰入金、栽培許可手放料等を歳入とし、あへんの収納または輸入の代金、業務取扱費、災害補償金、交付金等をもって歳出とするとともに、その他この会計の予算及び決算の作成並びにその提出に関する手続等、特別会計に必要な事項を規定しようとするものであります。  本案審議におきましては、ケシ栽培の災害補償、あへんの輸入及び国内生産の実情等について質疑応答がありましたが、詳細は速記録によって御承知願いたいと存じます。  質疑を終了し、討論、採決の結果、全会一致をもって、原案通り可決すべきものと決定いたしました。  次に、輸入品に対する内国消費税徴収等に関する法律案について申し上げます。  本案は、従来保税地域以外の場所から輸入する物品に対する内国消費税徴収等について規定しておりました「酒税等ノ徴収ニ関スル法律」の規定を全面的に整備するとともに、外交官が輸入する物品等で、関税を免除されるものについては内国消費税を免除する規定を新設するほか、輸入物品に対する内国消費税の賦課徴収等について規定の明確化をはかろうとするものであります。また輸入物品に対する内国消費税の犯則事件については、その迅速なる処理をはかるために、今回税関職員にも、調査及び処分の権限を与えることとしようとするものであります。  本案審議に当りましては、駐留軍人の横流しに対する取締り方針等について熱心なる質疑応答があったのでありますが、その詳細は速記録によって御承知を願います。  質疑を終了し、討論、採決の結果、全会一致をもって、原案通り可決すべきものと決定いたしました。  次に、国税徴収法の一部を改正する法律案について申し上げます。  本案は、最近の国税の徴収状況、金利水準の状況等にかんがみまして、国税の利子税額及び延滞加算税額、または過誤納の還付金等に付する還付加算金を計算する場合の率を、現行の日歩四銭から日歩三銭に改めるとともに、国税以外の公課について徴収する延滞金の率も、現行の日歩八銭を日歩六銭に引き下げようとするものであります。  本案審議に当りましては、滞納の処理状況等について熱心な質疑があったのでありますが、その詳細は速記録によって御承知を願います。  質疑を終り、討論、採決の結果、全会一致をもって、原案通り可決すべきものと決定いたしました。  次に、租税特別措置法の一部を改正する法律案について申し上げます。  本案は、衆議院大蔵委員長松原喜之次君の提出にかかるものであります。御承知のごとく近年数次にわたる所得税法の改正と、昨年末医師等に対する診療報酬の必要経費算定についての特例措置によりまして、医師等の所得税については過納の傾向が増加するものと思われまするので、今回医師及び歯科医師の社会保険診療収入についての源泉徴収税率を本年七月一日より、現行の一割から五分に引き下げようとするものであります。  本案につきましては、格別の質疑もなく、討論採決の結果、全会一致をもって、原案通り可決すべきものと決定いたしました。  次に、登録税法の一部を改正する法律案について申し上げます。  本案は、衆議院大蔵委員長松原喜之次君の提出にかかるものであります。現在医療法の規定により公的医療機関の開設者として指定されておるもののうち、日本赤十字社、社会福祉法人国民健康保険組合等に対しましては、その医療事業の用に供する建物及び土地の権利の取得、または所有権の保存登記に際しての登録税については非課税の措置がとられておりますが、ただ厚生農業協同組合連合会についてのみ免除されていない実情上なっておりますので、今回この公的医療機関たるの性格等にかんがみまして、登録税をかさないこととしようとするものであります。  本案は格別の質疑もなく、討論、採決の結果、全会一致をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。  次に、農業協同組合中央会が不動産に関する権利を取得する場合における登録税臨時特例に関する法律案について申し上げます。  本案も、衆議院大蔵委員長松原喜之次君の提出にかかるものであります。昨年六月、農業協同組合法の一部を改正する法律によりまして、指導農業協同組合連合会が改組せられ、新たに農業協同組合中央会が設置されることとなったのでありますが、この中央会に引き継がれる土地及び建物等の不動産を取得する場合の登記については登録税がかかることになっておりますので、今回改組の実情にかんがみまして、昭和三十一年三月末日までに登記せられるものに限り登録税を免除しようとするものであります。  委員会の審議に当りましては、格別の質疑もなく、討論、採決の結果、全会一致をもって、原案通り可決すべきものと決定いたしました。  次に、所得税法の一部を改正する法律案について申し上げます。  本案は、低額所得者の負担軽減を中心とした課税負担の軽減合理化と資本蓄積の促進をはかる見地より、基礎控除額並びに給与所得控除、生命保険料控除及び専従者控除の限度額をそれぞれ引き上げるとともに、税率の引下げ等所要の改正を行おうとするものであります。  本案の内容の主なる改正点について申し上げますと、改正の第一点は、基礎控除額を現行の七万円から八万円に引き上げるとともに、青色申告者に対する専従者控除の限度額を基礎控除額と同様に引き上げるのほか、給与所得控除の限度額を現行の四万五千円から六万円に引き上げようとするものであります。  第二点は、税率の緩和をはかるため、現行の税率適用区分のうち、課税所得百万円までの部分について改正を行い、課税二百万円をこえる部分に対する税率については据え置くこととし、課税負担の軽減をはかろうとするものであります。  第三点は、生命保険料控除の限度額を一万二千円から一万五千円に引き上げるとともに、保険期間が五年未満の生命保険契約については保険料の控除制度を適用しないこととするほか、契約者配当金はこれを支払保険料から差し引く等、本制度の適正化をはかろうとするものであります。  以上これらの改正は、本年七月一日から実施するものでありますから、昭和三十年分の所得税は月数按分により計算した初年度分の控除額及び税率を定めておりますが、給与所得に対する源泉徴収については、本年七月一日以降に支給される給与から平年度計算による改正後の控除、税率によって行うこととしております。  なお、本案衆議院において修正議決されたものでありまして、修正の要旨は主として低額所得者の負担の軽減と均衡化をはかる見地より、寡婦控除、不具者控除等の税額控除額を現行の四千円から五千円に引き上げるとともに、寡婦、不具者等が遺族年金または障害年金を受けるものである場合の税額控除額を現行より千円引き上げて七千円としております。  本案審議に当りましては、他の税法案とともに公聴会を開く等、慎重に審議したのでありまして、「今後の税制のあり方についていかなる構想を持っているのか」という質疑に対しましては、「本年八月より税制調査会を設け、十分の検討の上結論を出したい」との答弁があり、このほか直接税と間接税との割合、低額所得者の課税負担等について熱心なる質疑応答がありましたが、これは速記録によって御承知を願います。  次に、法人税法の一部を改正する法律案について申し上げます。  本案は、資本蓄積の促進に資するため、普通法人に対する課税率を現行の四割二分から四割に引き下げるとともに、清算中の法人が継続したり、合併をした場合には、法人税を課税するのが適当であると思われますので、その課税関係の明確化をはかろうとするものであります。また、調整組合及び酒類業組合等については、その性格にかんがみ非収益事業所得に対しては、法人税を課税しないこととするほか、利益の配当等の益金不算入について期限後申告の場合においても認めるように条件の緩和をはかる等、所要の規定の整備をはかろうとするものであります。  なお、本案衆議院において修正議決されたものでありまして、修正点について申し上げますと、第一に、法人のうち特に中小法人負担軽減をはかるため、普通法人の課税率を二本建とし、所得金額の年五十万以下のものに対しては三割五分の軽減税率を適用し、五十万円をこえるものは四割の税率を適用しております。  第二に、公益法人及び各種の協同組合等の特別法人に対しましては、その特殊性を考慮しまして、現行の三割五分を三割に引き下げるとともに、特別法人の清算所得金額のうち積立金及び非課税所得からなる部分の金額以外の金額に対する税率を現行の四割一分から四割に引き下げております。また、これらの修正部分は、本年十月一日以降に終了する事業年度分の法人税及び同日以降の解散または合併による法人税から適用することとしております。  本案審議に当りましては、「年所得五十万円以下のものに軽減税率を適用する理由いかん」との質疑に対しましては、「資本金五百万円以下の法人の年平均所得が大体五十万円であるから、この措置によって中小法人負担の軽減をはかり得る」との答弁がありました。その他熱心なる質疑応答がなされましたが、その詳細は速記録によって御承知を願います。  次に、租税特別措置法等の一部を改正する法律案について申し上げます。  本案は、資本蓄積の促進、輸出の振興等に資するため、租税特別措置法及び有価証券取引税法について所要の改正を行おうとするものであります。  まず、租税特別措置法改正点のおもなる内容について申し上げます。第一点は、資本蓄積をはかる見地から、預貯金、公社債等の利子所得及び配当所得について減免措置を講ずるほか、法人の増資を奨励し、資本構成を是正するために、増資登記の登録税課税の軽減をはかろうとするものであります。すなわち預貯金等の利子所得については、本年七月一日から昭和三十二年三月末日までの間、所得税を課さないこととするとともに、配当所得についても所得税の源泉徴収税率を現行の一割五分から一割に軽減し、また本年七月一日に現存し、かつ製造業、鉱業等一定の事業を営む法人が、同日から昭和三十二年一月末日までに増資を行なった場合、増資登記の登録税の税率を現行の千分の七から千分の一・五に軽減しようとするものであります。  第二点は、輸出振興に資するため、輸出所得の一部控除制度について拡充合理化を行うほか、適用期限を昭和三十二年十二月末日まで延長するものでありまして、現在輸出所得控除の制度は、輸出取引金額の一定割合と輸出所得の五割とのうち、いずれか低い方の金額を課税所得から差し引くこととなっておりますが、今回輸出所得による控除の限度を現行の五割から八割に引き上げ、またプラント輸出の状況にかんがみ、その範囲を拡充し、油井管、レール、ケーブル等についても特別の控除割合を適用しようとするものであります。  第三点は、住宅建設の促進に資するため、新築住宅に対する特別償却制度の拡充をはかり、本年七月一日から昭和三十三年十二月末日までの間に新築した一定の条件に該当する家屋の普通償却額は五年間を限って、鉄筋コンクリート造りの家屋等五十年以上のものは二十割増、その他の家屋については十割増の特別償却を認めようとするものでありましてこれによりますと、鉄筋コンクリート造りの家屋については五年間に取得価額の五割余、木造家屋は取得価額の七割余が償却されることとなります。  また、地方公共団体が本年七月一日から昭和三十三年十二月末日までの間に新築した床面積が一定坪数以下の住宅の所有権の保存登記については、この期間に登記を受けるものに限り登録税を課さないこととするほか、地方公共団体、住宅金融公庫または住宅の建売業者等が右の期間内において新築した住宅を、これらのものから取得する場合の所有権の取得登記についても、その期間内に登記を受けるものに限り登録税の税率を現行の千分の五十から千分の一に軽減しております。  第四点は、中小企業等協同組合法の規定による事業協同組合またはその連合会で一定の条件に該当するものについて、その積立金が出資総額の四分の一に達するまでは、その所得のうち留保した金額に対して法人税を課さないこととし、協同組合経営の健全化に資することとしております。  第五点は、航空事業の助成のため、本年七月一日から昭和三十二年三月末日まで航空機の乗客に対する通行税の税率を現行の二割から一割に引き下げようとするものであります。  第六点は、当事者間の協議により土地等が買い取られる場合においても、当該土地等が買い取りの申し出を拒むときは土地収用法等の規定により収用されることとなるものである場合には、譲渡所得に対する課税を行わず、買い取りの対価を資産再評価法による再評価限度額とみなして再評価税のみを課税することとしております。  次に、有価証券取引税法の改正点について申し上げますと、証券投資信託の信託財産に属する株券の譲渡に対する有価証券取引税の特例措置が、本年七月末日で終ることとなっておりますので、証券投資信託の育成をはかる見地から、昭和三十二年三月末日までその適用期限を延長しようとするものであります。なお、本案衆議院において修正議決されたものでありまして、その修正点を申し上げます。  第一に、納税義務者の選択により、社会保険料控除、医療費控除及び雑損控除にかえて、所得金額または給与の収入金額の百分の五に相当する金額を、一万五千円を限度として所得金額から控除することとしております。ただし、昭和三十年分の所得税については、七月一日から実施するに伴いまして、社会保険料控除額等の二分の一に相当する金額と、七千五百円を限度として、所得金額または給与の収入金額の百分の二・五に相当する金額との選択を認めることとしております。なお、給与所得者につきましては、毎月の給与に対する課税は従来通りとし、年末調整を行う場合、社会保険料の額が概算所得控除額に満たないものについては、概算所得控除額を控除して税額調整を行うこととしております。  第二に、利子所得課税との権衡の見地より、昭和三十年及び三十一年分の所得税に限り、配当控除額を現行の二割五分から配当所得の三割に相当する金額に引き上げることとしております。なおこの措置に並行して、所得税法施行細則において、配当所得についての資料提出限度を、現行の三千円から五千円に引き上げる等の措置が講ぜられることとなっております。  本案審議に当りましては、利子所得、配当所得に対する優遇措置が資本蓄積の促進に資する効果、利子所得と配当所得との負担均衡、大法人と中小法人との負担均衡、選択概算所得控除の実施による給与者、営業者、農民との負担均衡の問題等について熱心なる質疑応答がなされましたが、詳細は速記録によって御承知願います。  質疑を終了し、右三法案を一括討論に入りましたところ、菊川委員より、「現在の租税体系は複雑であるから簡素化すべきであること。公平の原則が薄弱となっていること。配当所得の優遇にかえて、夏季手当、夜勤手当の免税を優先的に考慮すべきであること。民・自共同修正案には不労所得の優遇に重きを置き過ぎ、不明朗な点が見られること等から三法案に反対する」との反対意見が述べられ、山本委員より、「税の理論から見ればとかくの問題はあるが、自立経済再建のために資本蓄積の促進をはかることは根幹をなすものであり、かつ自由党の基本ラインに沿ったものであるから賛意を表する」との賛成意見が述べられ、天田委員より、「今回の改正は低額所得者の負担軽減、課税負担の均衡、資本蓄積の促進という三つの前提に立っているものであるが、そのいずれについても問題があり、また資本蓄積が直ちに日本経済の指向する投資に役立つものであるとは考えられないから反対する」との反対意見が述べられ、小林委員より、「来たるべき税制調査会においては、税制の簡素化、給与者、営業者、農民間相互の負担の均衡等について配慮されたいこと、並びに次回の改正には中小法人の年所得百五十万円以下のものについて税率の軽減をはかられたい」との要望を付して賛成意見が述べられ、木村委員より、「再軍備費のごとき非生産的支出を削って、直接税中心の減税を行うべきであり、また負担の公平、間接税の比重等について遺憾な点が多く、特に利子所得、配当所得の優遇によって資本蓄積を促進させる効果は疑問であり、ひいては過剰投資の傾向を助長するにすぎないものであるから反対する」との反対意見が述べられ、次いで中川委員より、「政府案及び衆議院の修正内容は、ともに現在の経済情勢から見て妥当なものと思う」との賛成意見が述べられました。  採決の結果、右三法案は、いずれも多数をもって衆議院送付通り可決すべきものと決定いたしました。  次に、補助金等臨時特例等に関する法律の一部を改正する法律案(閣法第五〇号)について申し上げます。  本案は、補助金等臨時特例等に関する法律の有効期限が本年六月三十日までとなっておりまするのを、昭和三十一年三月三十一日まで延長しようとするものであります。  次に、補助金等臨時特例等に関する法律の一部を改正する法律案(閣法第九一号)について申し上げますと、本案は、国立公園法に基く補助の特例を設けて、同法第五条第三項の規定を昭和三十年度に限り適用しないこととしようとするものであります。地方公共団体が国立公園施設を整備する場合は、国立公園法第五条第三項の規定によって、国は整備費の二分の一を補助することとなっておりますが、これは自然、地方財政負担をかけることになり、また一面国の財政の健全化をはかる必要もありますので、昭和三十年度に限り、整備費補助金の支出を取りやめようというのであります。  右二法案の審議に当りまして、新入学児童に対する教科用図書の給与の停止、公民館関係補助金の削減、外航船舶建造融資利子補給の停止等の諸問題について熱心な質疑が行われましたが、詳細は速記録によって御承知願いたいと存じます。  質疑を終了し、右二法案を一括討論に入りましたところ、平林委員より、「補助金はその効果について異論多く、また種々の問題が伏在している。従ってこの法案を通すことは慎重を期さねばならぬ。特に質疑に当って新入学児童に対する教科用図書の給与問題について政府の具体的な明確な答弁が得られなかった。この措置が明確にせられざる限り本案に反対である」との意見が述べられ、山本委員より、「補助金は原則的には整理すべきものと考えるが、地方に財源を与えなければ実行不可能のことであるから、中央、地方を通じて財政の整備をはかるべきである。この点については今後十分検討を願うこととし、さしあたり一ヵ年延長することに賛成する」との意見が述べられ、天田委員より、「この法律はその成立の経過からいってあくまで時限法であって、これをさらに一年延長されることになるのは、いわば公約違反である。殊に文部、厚生の両省のごとき弱き面にしわ寄せされたきらいがあるから、本案に反対である」との意見が述べられ、最後に木村委員より、「本案は姑息な、零細な文教、保健に関係のある要求の弱い面に補助金を打ち切って、そうでな一面の補助金にはほとんど手が触れてない。全く本末転倒のものであるので、本案に反対である」との意見が述べられ、採決の結果、右二法案は、いずれも多数をもって原案通り可決すべきものと決定いたした次第であります。  以上、御報告を申し上げます。(拍手
  29. 河井彌八

    議長河井彌八君) 所得税法の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案租税特別措置法等の一部を改正する法律案に対し討論の通告がございます。順次発言を許します。平林剛君。    [平林剛君登壇拍手
  30. 平林剛

    ○平林剛君 私は、日本社会党第四控室を代表いたしましてただいま議題となりました所得税法の一部を改正する法律案ほか二法律案並びに民主、自由両党の共同修正案に関する委員長報告に対し、ここに反対討論を行い、今回の税制改正がいかに租税負担公平の原則を破るとともに、資本家のみを擁護する政策であるかを明らかにせんとするものであります。  わが国の今日までの税制がきわめて複雑なものであり、その複雑な法律のほとんどが大資本家に都合よく、行政においても合法的脱税を容易に許しているということは、すでに定評のあるところであります。同時に、今日までの政府の政策は、二千億に上る再軍備費を初めとして、むだな歳出が多いために、そのしわ寄せが勤労者、中小企業者、農民に過酷な重税となっておおいかぶさっておることは、何人も否定することができないところであると思うのであります。(拍手)このゆえに、過般の総選挙におきまして、鳩山内閣も、また保守政党である自由党も、五百億円の減税、一千億円の減税を国民に公約しなければ国会における多数を制し得ぬ状態に陥ったのであります。今回政府が提出した法律案の提案説明においても、特に「勤労者、中小企業者、農民等の低額所得者の負担軽減を中心として直接税の軽減をはかる」と述べざるを得なかったのを見ても、このことは明らかなことであります。  しかるに、今回の税制改正は、自由、民主両党の修正案を含めて、本年度約三百九十四億円余りの直接税の軽減がとられる反面において、砂糖の輸入を増加して消費税の増徴をはかり、二級酒を増石して間接税の面で増収をはかろうとしておるのでありますから、まさにこれは減税を看板にして、砂糖、酒などの大衆課税を増大し、消費の節約を唱えながら、徴税のため消費の増加を求める偽りと矛盾に満ちた政策と言わねばならぬと思うのであります。(拍手)  本年度約三百九十四億円の減税の内容もまたその通りでありまして勤労層に対する減税額はそのうち二百三十億円、あとは資本家の不労所得に対する減税に向けられておりまして結局資本蓄積の名において資本家中心の減税と大衆課税に拍車をかけているのは、今日の国民生活現状を無視し、一体どの階層を減税の対象とすべきかということを忘れたものであると思うのであります。  試みに、所得を対象とする税負担の変化を検討してみまするに、所得税法の改正によって、たとえば扶養家族四人ある事業所得者の所得二十万円の場合の減税額はわずかに年千七百五十円であるのに対し、所得百万円の場合は減税額三万七千円となりまして、また勤労者の給料が二万円の減税額は月に百四十一円にしかならないにもかかわらず、月給十万円の場合は月に三千六百四十五円に達するという工合に、低額所得者を中心にして直接税の減税をはかるという政府の説明には、欺瞞が隠されておるのであります。  これが租税特別措置法の一部を改正する法律案によりますと、預貯金の利子に対する免税、配当所得に対する課税軽減と、いずれもますます高額所得者や大資本家擁護の性格を露骨にしてきておるのであります。  たとえば、配当所得の場合、五%の源泉課税率の引き下げと、配当控除額を五%引き上げることによりまして、扶養控除四人で年間配当が八十四万円ある人は一文も税金がかからなくなっておるのであります。しかるに勤労者、農民、商工業者はどうでありましょうか。たとえば個人の商工業者で八十万円程度の所得がある者は、その三分の一近くまで所得税、住民税、事業税として徴収されておるのでありますから、汗とあぶらにまみれて勤労する国民大衆のこの現状と比較いたしましてまことに不公平のきわみであると思うのであります。(拍手)勤労の成果に対するこのような重税は、やがて国民の勤労意欲を減退させ、わが国の将来に暗影を投ずると言っても過言でないと思うのであります。  このことは、預貯金利子に対する免税とあわせ考えると、まことに無謀の措置と皆さんにも御理解ができると信ずるのであります。預貯金に対する利子については、一昨年までは普通は二〇%、源泉選択で五〇%を所得税として天引されておりましたが、一昨年一律に一〇%に引き下げ、さらに昨年は一年以上の定期預金の利子に対して五%の課税に改め、また今回の措置で一切税金をかけないことになるわけでありますから、戦前においてさえも預貯金利子に所得税と資本利子税で七%課税されていたのに比較をいたしますと、一方一般大衆が重税で苦しんでいるとき、持てる階層だけが不労所得で税金がかからないということは、何としても納得しかねるのであります。一体今の政府国民生活現状をどう考えているのか、その良識を疑わざるを得ないのであります。  銀行利子に対する免税措置や、配当所得に対する課税軽減措置をとったことについて、政府は資本の蓄積に資するため、あるいは国民の貯蓄心を高めるためと説明をするのでありますが、その資本蓄積は具体的にはどういう数字になるのか、蓄積された資本はどう有効に活用されるのか、こういう点になりますと、委員会の質疑においても明確なる根拠を示さず、あいまいなる答弁を続けるのみでありまして、全く税制改正の重点と緩急の判断を誤り、租税原則をじゅうりんしたものにすぎないと思うのであります。  今日の国民所得の現状は、昭和三十年度の所得税の申告納税者の予定人員二百七万人の中で、一年間の所得が五十万円以下の国民大衆が八四%、給与所得、つまり勤労所得税の納税人員総数七百九十一万人の中で五十万円以下は実に九三%であります。しかりとすれば、今日の物価と家庭経済の現状を思うと、これらの大衆のどこに貯蓄の余裕があるかと問いたいところであります。かりに、国民の貯蓄心を旺盛にとて資本の蓄積をはかろうとするならば、まず政府は通貨価値の安定をはかるための政策を充実すべきであります。(「その通り」「インフレになったら何にもならぬぞ」と呼ぶ者あり)  次に、法人税法の改正について見るに、ここにも税負担の公平を無視した大企業擁護の減税が白昼公然とまかり通ろうとしているのであります。すなわち、普通法人に対する税率を四二%から四〇%に引き下げ、自由、民主両党の修正によれば、公益法人、特別法人の税率を百分の三十に引き下げるとともに、所得金額五十万円以下の金額に対しては現行の百分の四十を三十五に改正を加えておりますが、大企業者が現行の特別措置法によりまして八百億円に達する優遇措置をとられているのに比較し、何ら見るべきものがないのであります。今日中小企業者が次第に衰亡しつつありますのは、歴代政府の重税に最も大きな原因があるのでありまして、この弱い層に対する救いの道は遺憾ながら今回の税制改正のどこにも見出すことができないことを指摘するものであります。(拍手)  わが党は課税負担の公平を期するために、課税率を三段階に区分し、特別法人は三〇%、所得二百万以下を三五%、五百万以下を三七%、五百万をこえるものを四〇%とし、租税特別措置法につきましては、法人負担の均衡を失するものでありますから、特別なものを除いてこれを全廃せよと主張するものであります。  最後に、民主、自由両党の共同修正案について一言いたしますと、この修正案ほど、わが国財政と税制の前途を憂慮させるものはないと私は思うのであります。なぜかといえば、これは明らかに銀行利子の免税と証券業者の主張する配当所得についての軽減のバランスをとるものでありまして、いわば自由、民主両党の勢力関係のバランスをとったにすぎないものであると思うのであります。この政治的取り引きをぼかすために、寡婦控除など若干の改正を行うとともに、きわめて税制上から見て、悪影響のある選択控除の新設を行なって、問題を複雑化させたものであると思うのであります。特に選択による概算控除制の新設は、新設の当初から提案説明者が、この制度に矛盾と検討の余地が多いことを認めまして大蔵大臣まで近く税制調査会では根本的に検討を加える必要を答えている始末であります。元来このような制度は、税負担の種類が数十をこえて納税者の選択が円滑に行われがたい税制のもとで、便宜措置として是認をさるべきものでありまして制度の新設そのものに議論が多いばかりか、従来勤労者が他の階層とのバランスの上からとられていた社会保険料控除のような味を抹殺する結果となり、ますます全般的な税負担の権衡をくずした改悪というべきものであります。税負担の公平を論ずる場合、今日の勤労者が源泉課税を受けているために、ほとんど完全課税であるのに対し、他の所得者の所得は、その捕捉が困難であるため、税負担の公平を失いがちであることは、すでに世論の認めるところであります。私はいかに今回の措置は、特別措置法として将来の検討を示唆しているとはいえ、このような改悪を政府の政治力の欠除から認めざるを得なかった鳩山内閣の節操のないことを、勤労者の名において抗議するとともに、一日も早くこの制度が根本的に検討をされ、税負担の公平を回復するよう要求をいたすものであります。  以上各般から、今回の税制改正案と、自由、民主両党の修正案が矛盾と欺瞞に満ちておるものであるかを指摘いたしましたが、勤労者を初め、中小企業者の税負担は、今回の修正によりましても、国民経済から見た税負担の割合は、戦前昭和十年の一三%に比較をし、約二〇%に当り、今なお重税の苦しみは続いておるのであります。従ってわが日本社会党は、貧しき者がより収奪される現在の税制が根本的に改められ、租税の原則が時の権力と政治的偏向によって著しくゆがめられている現状を回復するまで、断固として政府の反省と再検討とを求めて闘うものであります。  これをもって私の反対討論を終ります。(拍手)     —————————————
  31. 河井彌八

    議長河井彌八君) 山本米治君。    〔山本米治君登壇拍手
  32. 山本米治

    ○山本米治君 ただいま議題となりました税制改正三法案につきまして私は自由党を代表して賛成の意見を表明せんとするものであります。  御承知のごとく、本年度国民所得の見積り額は六兆三千二百三十億でありまして、これに対し専売益金を含むところの国税負担率は約一四・五%、地方税を加えますと二〇%以上でありまして、これを戦前基準時の国税負担率八・五%、国税、地方税を加えた負担率一二・九%に比べますと、それぞれ約六割の負担増加になっておるのであります。このような国民所得対租税負担の割合を西欧諸国のそれと比較して見ますと、わが国の比率は必ずしも高からず、むしろ幾分低目になっております。しかしながらわが国におきまして国民所得そのものが非常に小さい。西欧諸国に比べましても三、四分の一、アメリカのごときに比べますと、十分の一以下でありますから、租税負担の割合そのものは低目ではありましても、その国民生活に対する圧迫は非常に強いのであります。わが自由党は、その長い政権担当期間におきまして、減税に減税を重ね、その総額は三千六百億以上、国税負担者の数も千九百万以上から千万人へと、ほとんど半減近いまでに至っておるのであります。しかも現状はなおかくのごとくで、税が重いのでありますから、われわれは今後も機会あるごとに減税を実行したいと念願しておるものでございます。しかしながら、一方この問題は、歳出規模と不可分密接の関係に立つものでありまして、内外の情勢から歳出の削減が非常に困難であるものとしまするならば、減税もまた思う通りにまかせぬことはやむを得ない次第と存ずるものであります。  さて、そこで今般の税制改正案は、政府の提案理由の説明によりますと、勤労者、中小企業者、農民等の低額所得者の負担軽減を中心として、直接税の軽減をはかるとともに、資本の蓄積、輸出の振興等のために所要の措置を講じたものでありまして、その基本ラインにおきましては、われわれ自由党の考えていたところと同じであります。細目におきましては、われわれの同調しがたいものも幾多あったのでありますが、これも衆議院における自由、民主両党の予算案共同修正に伴いまして、おおむね修正せられましたので、もとより税制全般といたしまして完璧とは称しがたいのでありますが、さしあたりにおきましては、この程度の改正が妥当と考えて、これに賛成する次第であります。  こまかい点は一切省略いたしまして、二、三の問題点だけを申し述べますと、御承知のようにシャウプの税制勧告は、直接税中心の考え方でありまして、この方針に従いまして、昭和二十六年度のごときにおきましては、税収総額中直接税の割合は五八・八%、ほとんど六割に近かったのでありますが、数次に及ぶ直接税の減税によりまして、この割合は漸減し、今またこの方針が継続せられまして、その割合は五一%余りと、ほとんど五割に近づいたのであります。その反面におきまして間接税の割合が増加したことは当然でありますが、これは今日のわが国実情からみて妥当の方向と考えるのであります。低額所得者の負担軽減のため基礎控除や給与所得控除等の限度が引き上げられ、加うるに概算所得控除制の新設によりまして、夫婦に子供三人のいわゆる標準世帯の給与所得においては、月収一万九千二百七十一円までは所得税がかからないことになりました。わが党の選挙公約たる月収二万円までは所得税免除というところまではいかなかったのでありますが、それにきわめて近づいたのであります。  選択概算控除制につきましては、一部に税務の簡素化ともならす、また社会保険料等の控除は、給与所得者に与えられた恩典であるから、これと見合いになるところの概算控除制は、その恩典を帳消しにするものであり、かえって負担の均衡を害するものであるとの反対論もありますが、事実問題といたしまして、中小企業者や農民や未組織勤労者なども同じく医療費を負担しながら、あるいは社会保険に加入していないことから、あるいはまた手続の煩瑣等の関係から、その控除の恩典が受けられず、また社会保険等に与えられる国家からの相当多額の財政援助の間接恩典にも浴していないのであります。従ってこの事実上の不公平、これを救済する意味におきまして、概算控除制は適当と考えるものでございます。ことに源泉徴収による給与所得の納税義務者が全国では千二百万人以上ございますが、このうち中小企業等に従事する勤労者は二百万人以上、これらの者は社会保険に加入しておりませず、しかもこれらの人は大企業に比べて給与の水準が非常に低いのであります。これらの人が控除の恩典に浴しないのは、いかにも気の毒でありますから、社会党の諸君も組織労働者のことばかりを考えずに、これら、給与のきわめて低い、控除の恩典のない中小企業の労働者の上にも思いをいたすことを希望いたすものであります。(拍手)  次に、預金利子課税の全免は、租税理論の上から申しますと、たしかに異例のことであります。長期にわたり許されることではございません。しかしながら現在日本経済の再建にとりまして、資本蓄積はほとんど至上命令といっていいのでありましてこれなくしては、資源貧弱、人口過剰の日本において、産業を発達せしめることもできず、また就職の機会を与えることもできないのであります。そこで、われわれも、かつて貯蓄推進運動に携わったことがあるのでございますが、その当時から、こいつは一つ清水の舞台から飛びおりたつもりで、しばらくは租税理論にも目をつぶって、そうして、こういう措置をとることが必要であると痛感しておったのであります。配当課税の軽減も全く同じ趣旨によるものでありまして、なるほど一部に言われる通り、不労所得優遇のきらいがありますが、この際は先ほど申しましたように、日本将来の再建のために、就職の機会を多くするために、租税理論をも、あるいは不労所得優遇論をも超越してかかる措置をとることも、大所高所から見て必要であると確信するものであります。そのかわり、このような措置は長期にわたって継続すべきものではありませんから、二カ年の時限立法となっておる次第でございます。  次に、今般の普通法人に対する法人税率が四二%から四〇%に引き下げられましたが、われわれは、かねて、税法の難解、手続上の困難、こういうような関係から、大企業と中小企業との間に事実上の不公平があることに着目し、かつは資本力の弱い中小企業者の一般的困難を考えまして、これに対して何らかの特別措置を講じたいと思っていたのでありますが、今般、自由、民主両党の共同修正によりまして、所得年額が五十万円以下の金額に対しましては、三五%の軽減税率が適用されることになったのでありまして、はなはだ欣快に存ずる次第でございます。  最後に、これは政府に対する要望でありまして、すでにしばしば言われておる事柄でありますが、現行税法は、特に租税特別措置法などが次々と積み重ねられました結果、いかにも難解複雑になっておるのでありまして、過日も大蔵委員会に参考人として来られた大学の先生、それも租税の専門家でございますが、現行税法はわれわれでさえも難解で、具体的にはとうてい計算ができない、さっぱり自信がない、こういうふうに述べておられたのでありますが、専門の大学教授にしてしかりであります。何とかこれを簡素平易化するという必要があると思うのでございます。もちろん事柄自体が非常に旭雑なのでありますから、法律だけを簡単にするということは、なかなか困難なことだと思いますが、そこを何とか工夫してこれを簡素平易化するように、特に政府要望するものであります。  なお、今日の税制においては幾多の根本的懸案がありますから、委員会において政府からもしばしば言明がありましたように、なるべく早い機会に税制全般にわたる根本的再検討の行われますように要望いたしまして、私の賛成討論を終ります。(拍手)     —————————————
  33. 河井彌八

    議長河井彌八君) 天田勝正君。    [天田勝正君登壇拍手
  34. 天田勝正

    ○天田勝正君 私は、ただいま議題となりました所得税法の一部を改正する法律案外二法律案に関する委員長報告に対し、日本社会党第二控室を代表して反対の意思を表明いたすものであります。  反対の理由を申し述べるに先だちまして、一言、同僚議員諸君に報告いたしたい点は、この三法律案が大蔵委員会において審議された際に、われわれの質疑に対し、当の責任者である一曹由大蔵大臣は、利子所得はいわば勤労所得とも言うべきものであると述べられ、また、よく諸君は勤労者々々々と言われるが、昔と違って、今日においては、会社の社長も、その守衛も、そう違うものではないと述べられたのでありまして、かかる感覚によって作成された税制改正が、いかなる方向を目ざし、いかなる性質のものであるかを端的に表わしておると思うのであります。  今回の三税法改正の目標は、政府の説明によれば、第一には低額所得者の減税を行い、第二には租税負担の均衡をはかり、第三に資本蓄積を容易にして産業の発展と輸出の振興をはかるというのでありまして、題目としては、まことにりっぱで、けっこうであります。果してその内容が題目のごとくであるかどうか、論より証拠によって究明いたさなければならないのであります。  いつの時代でも、乏しきを憂えず等しからざるを憂えることは、民の叫びであるとともに、また為政者の最も力をいたさなければならない鉄則であるのであります。しかるに今次の改正によれば、ますます等しからざる方向に向っておることを発見いたすのであります。今ここで大資本を有する大法人と小企業の法人とを比較するならば、大企業は現行の租税特別措置法その他の税法においてすでに幾多の優遇を受けて、驚くべき減税の恩典をこうむっておるのであります。すなわち、租税特別措置法におきまして、価格変動準備金の控除、貸し倒れ準備金、退職準備金、輸出減税の特別措置、増資配当の免税、企業合理化による特別償却、重要物産の免税、交際費の損失算入の容認、船舶会社の特別修繕費、鉱山においては新鉱床買い入れ金控除、証券会社の違反損失準備金、また損害保険事業の異常危険積立金等々、これらの恩典を概算いたしまするならば八百億に及ぶのであり、かような税の軽減が与えられておるのであります。かくて大企業の実際上の法人税の負担税率は、現行四二%に対し、実効税率三〇%に満たないのであります。これに対しまして中小法人がこれらの恩恵をもし受けようといたしましても、現実には適用の条件が当てはまらないし、また、たとえ該当し得たといたしましても、倒産一歩前を坊津いたしております中小法人としては、準備金、積立金などをするところの余裕がないのが現状であります。従って四二%の税率は、なまのままで一ぱいに課せられているのが実情であるのであります。かような状態ですでに著しく不均衡に陥っておるのであります。もし租税負担の均衡をはかる熱意があるならば、以上述べた租税特別措置法の恩恵を受ける大法人には、現行の四二%を据え置き、これらの恩典に浴さない小法人には三〇%以下に軽減してこそ、負担の均衡がはかり得るのであります。しかるに今回の法人税の改正は、大小法人を問わず、所得金額のうち、五十万円以下の部分について一律に三五%の税率に引き下げ、総花式に七%減税を行なったことは、負担の均衡どころか、大企業擁護のワクの中にたまたま小法人も入ってしまったので、仕方なく同格に扱ったにすぎないのであります。  次に低額所得者の減税の内容であります。一萬田蔵相は、現行法において低額所得者の税負担は過重であるから、特に軽減をはかる旨しばしば言明されておったのであります。ところが、今回の所得税改正案によれば、これまた高額所得者の減税を一歩進めるワクの中に自然低額所得者が入ったということだけであって、主たるねらいが高額所得者の減税であるといって過言でないのであります。さきに同僚平林議員から例示されましたが、著しくここに不均衡な減税名目による措置がとられておるのでありまして、すなわち、標準家族において、二十万円の場合は、一万円当りの減税が八十七円、それに対して百万円の場合は、一万円当りの減税が三千七百円となるのであります。給与所得についてはすでに平林君からお話がありましたので省略いたしますが、以上の例をもっていたしましても、政府の減税題目は、単に人気取りのから念仏にすぎないことを暴露したものと言わなければならぬのであります。  さらに、衆議院保守連合の力を借りてこの所得課税に対し選択概算所得控除の新発明を行いました。これが租税特別措置法の送付案に盛られておるのであります。選択控除の方法は、納税者の選択によって、従来の保険控除、医療控除、雑損控除にかえて、一万五千円を限度として所得金額の百分の五を控除しようとするものであります。しかしながら、すでに勤労者の大多数は健康保険、失業保険、厚生年金保険等に加入いたしており、それぞれ控除を受けておるのでありまして、この改正によって実質的には何ら恩恵をこうむらす、まことに見せかけの減税にすぎないのであります。  次に、資本の蓄積と産業発展の関係でございますが、産業発展、輸出の振興は、かけ声通りにいくかいかないかは別といたしまして、今回の租税特別措置法によって、金持ち階級にとっては資本の擁護と膨張にまことに便利重宝の改正であります。われわれ庶民階級には縁もゆかりもない減税であるのであります。すなわち、租税特別措置法の改正によりますと、元来不労所得であるべき預貯金、公社債等の利子を受けるものは野放しに免税されるのであります。また、同じく不労所得である配当所得を受けます資本家たちは、現行法でも七十万円まで無税でありましたのを、今回の改正で一挙に百二十二万円まで無税にするという措置があえて行われたのであります。さらに桁出振興を名目として、帯出所得の控除を従来五〇%から八〇%に引き上げて大幅の減税を行うなど、資本家にとってまことに至れり尽せりの優遇であるのであります。以上によって政府並びに保守連合による三法減税の正体を概略明らかにし得たと思うのであります。  本法律案に次いで、すでに委員長から説明されました補助金等臨時特例等に関する法律は、われわれの反対にもかかわらず、委員会を通過して、依然として弱い者いじめの補助金打ち切りがなされております。これら大衆の要望する経費の支出につきましては、政府は常に財源がないの一点張りで拒否いたしておるのであります。しかるにさきに申し述べましたごとく利子所得、配当所得の減税等、純然たる金持ち保護のために七十億円の減税を断行するとは何たる悪政でございましょう。  以上申し述べましたごとく、本改正税法は、全く国民生活実情を理解せぜる保守政権による逆コース政策の一里塚ともいうべきものであり、わが賞は断固反対するものであることを表明いたし、討論を終るものであります。(拍手)     —————————————
  35. 河井彌八

    議長河井彌八君) 木村禧八郎君。    〔木村禧八郎君登壇拍手
  36. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 私は無所属クラブを代表いたしまして、ただいま上程の三税法改正法案に反対をいたすものであります。  今回の税制改正は、税負担の軽減と資本蓄積を促進するということが主眼になっておりますが、しかし、その内容はきわめて不完全であると思う。一番問題になる点は、この減税の財源をいわゆる自然増収、われわれはこれを自然増税と呼んでおるのでありますが、生計費が上るために賃金が上る、そのために累進課税がかかって、従来の税法では税収がふえる、そういうものを財源としておるわけであります。本来ならば、再軍備とかその他不生産的な支出、あるいはまた会計検査院で指摘しておるような不当支出、あるいはまた法人とか高額所得者でたくさんに脱税をしておりますが、そういうものを捕捉してこの減税の財源に充てろならば、これはその財源措置として健全であると思うのであります。しかしながら、このいわゆる自然増収というものをぎりぎりに減税の財源にしておるために、今後の予算について税収について非常に弾力性がなくなりました。この点はきわめて不健全になると思う。今減税しましても、来年は必ず増税か公債発行が現われてくると思います。経済審議庁の三カ年計画、あれをもとにして大体三十一年、三十二年度財政支出を勘案してみますと、三十一年度ではもう最低一兆四百億くらいになると思うのです。三十二年度は最低一兆九百億になると思います。この場合、今度の減税措置によって税収入を、歳入を推定してみますと、三十一年度では大体一兆百億くらいだと思うのです。従って私は三十一年度は三百億の歳入不足になると思います。三十二年度においては税収入は、今の税制改正をもとにしますと大体一兆五百億くらい、そうしますと歳出一兆九百億に対して四百億くらいの歳入不足が生じてくると思うのです。この歳入不足を何によってカバーするかといえば、結局私は増税、増税というのは、特に間接税の増税、あるいは公債発行、それに頼らざるを得なくなる。大蔵大臣はすでに現在の税制としては、所得税よりも、直接税よりも間接税に重きを置くと言っています。しかしながらこれまでインフレ期においては間接税を多くする方が、むしろやみ所得の捕捉が困難でありますから、その方が、むしろ間接税中心の方が、公平かもしれません。ところがインフレ期においては所得税中心にしておる。そしてやみ所得をたくさんのがしておる。脱税をたくさんのがしておる。そして通貨価値が安定するに至っては、これはむしろ所得の捕捉が容易になりますから、直接税中心に移行するのがほんとうなんです。ところが逆にインフレ期におけるように間接税中心に行く、これではインフレ期においてはたくさんの脱税を許し、また通貨価値が安定してからは、大衆課税にこれをまた移行しようとしている、間接税を。そういう税制改革なんです。またそういう増税、間接税の増税は、私は必至になってくると思います。そうすれば、今減税してもこれは見せかけの減税、その財源がきわめて不健全であるために結局こういうことになる、また増税できなければ公債発行、もうすでに大蔵大臣は、今度の自由党あるいは民主党の修正でその道を開いています。この点は、きわめて不健全な財源措置から見ての減税であると思うのです。  それから第二の問題点は、これはすでに社会党の諸君がもう指摘されましたから繰り返しませんが、今度の税制改正によって、きわめて税負担が不均衡になってきた。第一点は、これは今回ばかりじやありませんでしたが、今回の修正後源泉徴収額は二千五十六億円です。申告納税は六百四十二億円であります。大体源泉徴収額が申告納税の三倍以上であります。分配国民所得を見ますと、事業所得と勤労所得とはあまり変らないのです。変らないにかかわらず、税収から見ると、申告納税が六百四十二億に対して源泉徴収二千五十六億です。あまりに不均衡です。これがまた地方税にはね返って拡大されて、不均衡になっており、地方へ行けばいつでも地方税の不均衡を訴えられるのです。こういう状態になっている。第二には、今度の税制改正の結果、勤労者は月二万円の人の減税額は、夫婦子供二人で二百円です。預貯金利子が一年以上のものについて五%かかっていましたが、これが今度撤廃になる。二万円の預貯金利子の所得者は千円の減になる。また一年以上については二千円の減税になります。汗水をたらして働く人の減税が二百円、預貯金利子一年以上のものは二千円に減じ、一年以下は千円の減税、そしてまた総合課税もなくなるわけです。配当所得について二万円を例にとりますと、一割五分が一割になって千円の減税、しかもまた今度は配当所得の報告義務の限度は、今までの六千円から一万円に引き上げましたから、こういう人たちは税金を納めない、こういうことになるのです。さらにまた同じ勤労所得の方でも二万円の人は月二百円減税、二十万円の人は四千六百八十円の減税、これではあまりに不均衡と言わざるを得ない。額に汗して働く人の減税二百円で、すわっていて利子が入り、配当が入ってくる人が千円、二千円以上なんです。一体これで税負担が公平と言えるでありましょうか、きわめて私はこの点からも不健全であるといわざるを得ません。さらに法人税についても中小法人所得五十万円以下については三割五分に下げたと言いますけれども、しかし全体として今後地方税が非常に増税になるわけであります。すでに固定資産税は東京都においては三割引き上げがきまっております。また今度の地方財政再建促進特別措置法案によれば、あの第二条によって財政再建計画を立てた所では、経費節減として人員整理をやり、第二には今までの徴税よりも一そう、普通の徴税成績よりもさらにこれを、徴税成績を上げろということになっておる、徴税強化。第三は滞納の処理、第四は増税及び新税、そういうものを、今度の赤字団体として指定されれば、やらざるを得ない。従って中央地方を通じて見れば、地方においては一応減税に見えますから、今後赤字団体においては相当の増税、徴税強化、滞納処理、あるいは新税、そういう形で私は結局減税にならない、これは中央地方を通じての減税政策になっておらない、ばらばらなんです。この点またきわめて不健全だと思う。大体大蔵大臣もすでに今度の減税でも、やはり今の実情としては直接税は高過ぎると言っております。確かに高過ぎます。英米諸国等を比べてみますれば、アメリカの夫婦子供二人でアメリカの場合の基礎控除は九十六万円であります。イギリスの場合の基礎控除は四十四万円であります。日本の場合は十七万円くらいなんです。あまりにこの基礎控除には開きがある。さらにまた今年度の今度の税制改正の結果、日本個人所得税の収入は二千七百億でありますが、アメリカの税制を日本に当てはめれば九百二十億しか取れないのです。イギリスの税制を日本に持ってくれば、千七十億しか取れない。それは低額所得者に対する基礎控除が非常に大幅になっておるからであります。日本アメリカの税制をもとにすれば、三倍も多くの税金を取っている。従って、きわめて税金は重いのですから、この重い税金を三十一年度以後減税しようと思っても、もうできない、こういう自然増収という形で食うという形ではもうできません。どうしても不生産的な、防衛費、あるいは賠償、その他非常な不生産的な金が出てきますが、どうしても歳出の徹底的な削減というものによってのみ可能であって、今のような形では私は将来かえって非常に日本の税制は不均衡になる、非常に不健全になると思うのです。  これをもって私の討論を終ります。(拍手
  37. 河井彌八

    議長河井彌八君) これにて討論の通告者の発言は全部終了いたしました。討論は、終局したものと認めます。  これより十一案の採決をいたします。  まず、あへん特別会計法案輸入品に対する内国消費税徴収等に関する法律案国税徴収法の一部を改正する法律案租税特別措置法の一部を改正する法律案登録税法の一部を改正する法律案農業協同組合中央会が不動産に関する権利を取得する場合における登録税臨時特例に関する法律案、以上六案全部を問題に供します。六案に賛成の諸君の起立を求めます。    [賛成者起立]
  38. 河井彌八

    議長河井彌八君) 総員起立と認めます。よって六案は、全会一致をもって可決せられました。      ——————————
  39. 河井彌八

    議長河井彌八君) 次に所得税法の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案租税特別措置法等の一部を改正する法律案、以上三案全部を問題に供します。三案に賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  40. 河井彌八

    議長河井彌八君) 過半数と認めます。よって三案は可決せられました。      ——————————
  41. 河井彌八

    議長河井彌八君) 次に、補助金等臨時特例等に関する法律の一部を改正する法律案(閣法第五〇号)、補助金等臨時特例等に関する法律の一部を改正する法律案(閣法第九一号)、以上、両案全部を問題に供します。両案に賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  42. 河井彌八

    議長河井彌八君) 過半数と認めます。よって両案は可決せられました。  これにて暫時、休憩いたします。    午後一時三十一分休憩      ——————————    午後六時六分開議
  43. 河井彌八

    議長河井彌八君) 休憩前に引き続き、これより会議を開きます。日程第十三、麻薬取締法の一部を改正する法律案内閣提出)を議題といたします。  まず委員長の報告を求めます。社会労働委員会理事常岡一郎君。    〔常岡一郎君登壇拍手
  44. 常岡一郎

    ○常岡一郎君 ただいま議題となりました麻薬取締法の一部を改正する法律案につきまして社会労働委員会における審議の経過並びにその結果を御報告申し上げます。  今日、麻薬取締法によって取締りの対象とされている麻薬は、同法別表に掲げられておるのでありますが、同表第二十一号三—ヒド口オキシ—エヌ—メチルモンヒナン及びその塩類、並びに第二十二号三—メトオキシ—エヌ—メチルモルヒナン及びその塩類のうち、右旋性のものについては、今般国際連合より、一九四八年の麻薬に関する国際条約第三条の規定に基きまして麻薬から除外する旨の通告がありましたので、政府においてその除外事由を検討した結果、これらのものは麻薬としての危害が全くないということを認め、今回これらのものを麻薬から取り除く改正を行おうとするものであります。  社会労働委員会におきましては、慎重に審議を行いまして本案に対する質疑を終了し、次いで討論を省略し、採決に入りましたところ、全会一致をもって、原案の通り可決すべきものと決定いたしました。以上、御報告申し上げます。(拍手))議長河井彌八君)別に御発言もなりれば、これより本案の採決をいたします。本案全部を問題に供します。本案賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  45. 河井彌八

    議長河井彌八君) 総員起立と認めます。よって本案は、全会一致をもつて可決せられました。      ——————————
  46. 河井彌八

    議長河井彌八君) 日程第十四、在外公館の名称及び位置を定める法律等の一部を改正する法律案  日程第十五、国の援助等を必要とする帰国者に関する領事館の職務等に関する法律の一部を改正する法律案(いずれも内閣提出衆議院送付)以上、両案を一括して議題とするここに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  47. 河井彌八

    議長河井彌八君) 御異議ないと認めます。まず、委員長の報告を求めます。外務委員長石黒忠篤君。    〔石黒忠篤君登壇拍手
  48. 石黒忠篤

    ○石黒忠篤君 在外公館の名称及び位置を定める法律等の一部を改正する法律案について、外務委員会の審議の経過と結果を報告いたします。  本案の内容は次の通りであります。第一は、当該法律を、在外公館を昇格、新設及び廃止するために改正するものでありまして、この改正によって法律上設置される在外公館は、大使館がヴィェトナム、ラオス、カンボディア、セイロン、イラン、アフガニスタン及びスイスの七国に置かれ、公使館がイスラエル、グァテマラ、ニカラグァ、エティオピアの四国に設けられ、それにベルリン及びカサブランカ領事館が新設され、計十三の公使館ができ、在ラングーン総領事館が、大使館ができたために廃止されるのであります。もっともこれらの公館は、すでに政令をもって設置済みのものであるとかあるいは昇格済みのものである等で、この法律改正によってここに正式に法律上の設置等をみるのであります。  大使館等を設置いたします理由は、当該の国々は、アジアの新興国でありまして、大使交換を強く希望している。わが方から見ると、東南アジア地域の外交施策の上に重要性を持っておるということにかんがみ、諸国間の振り合い等も考慮して大使館の新設または昇格を行なったということであります。スイスにおける公使館を昇格をいたして大使館といたしたのは、同国には各種の国際機関があり、種々の国際会議がしばしば催されることがあるので、米英等主要国は皆大使を派遣しているから、わが国も大使派遣をするのが適当だということであります。その他は貿易関係が主たる理由であります。  第二は、以上の各館の勤務の公務員の在勤俸の額を設定及び廃止するために、在外公館勤務員の給与に関する法律の一部を改正するものであります。  委員会におきましては、多くの大使館を置くこと是非の及びこれに関する人事上の問題法律改正に関する問題等について質疑応答があり、次いで討論に入りましたところ、曾祢委員より、新進有能な者を大使に登用するのはよいけれども、一度大使になった者でも帰朝の上本省勤務となった場合には、前歴にこだわらず、格下げをして十分使えるように運営に注意されたいという希望をつけて賛成の意見がありました。  採決を行いました結果、本案は、全会一致をもって政府原案の通り可決いたしました。  右、御報告いたします。  次に、国の援助等を必要とする帰国者に関する領事館の職務等に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、外務委員会における審議の経過と結果を報告いたします。  本件は現行の法律の実施の結果、不都合を感ずるので、一部改正を行わんとするものでありまして改正は次の三点でございます。  第一は、船長に対する送還命令により帰国者を送還する場合に、領事官帰国者に乗船地までの諸費用を貸し付け得るように改めたいということであります。  第二は、領事官の管轄区域外のところに、帰国援助をやることの必要な者が存在しておる場合には、もよりの領事官から援助をなし得るように改めたということであります。  第三は、乗船地への旅費、送還費、帰郷費等の償還義務者として帰国者の配偶者をも加えたことであります。  この三点が今回の改正であります。  委員会におきましては、帰国者の取り扱い状況等について質疑応答の後に、採決を行いましたところ、全会一致をもって政府原案の通り可決いたしました。  右、報告申し上げます。(拍手
  49. 河井彌八

    議長河井彌八君) 別に御発言もなければ、これより両案の採決をいたします。両案全部を問題に供します。両案に賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  50. 河井彌八

    議長河井彌八君) 総員起立と認めます。よって両案は、全会一致をもって可決せられました。      ——————————
  51. 河井彌八

    議長河井彌八君) 日程第十六総理府設置法の一部を改正する法律案  日程第十七、運輸省設置法の一部を改正する法律案  日程第十八、労働省設置法等の一部を改正する法律案(いずれも内閣提出衆議院送付)  以上、三案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  52. 河井彌八

    議長河井彌八君) 御異議ないと認めます。まず、委員長の報告を求めます。内閣委員長新谷寅三郎君。    〔新谷寅三郎君登壇拍手
  53. 新谷寅三郎

    ○新谷寅三郎君 ただいま議題となりました総理府設置法の一部を改正する法律案運輸省設置法の一部を改正する法律案及び労働省設置法等の一部を改正する法律案につきまして、内閣委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。  まず、総理府設置法の一部を改正する法律案につきまして申し上げますると、本法律案は、総理府に付属機関として航空技術研究所及び海外移住審議会を設置することが、おもな改正点でありまして、政府の提案理由の説明によりますると、まず、航空技術研究所の設置につきましては、航空技術の向上をはかるため、最近の航空技術に即応した研究及び試験を実施することのできる充実した航空技術研究機関を国に設けることは、かねてから行政機関、大学、民間会社など、関係方面の強く要望するところであり、政府におきましても、航空技術の試験研究に必要な施設や設備は、風洞を初め多額の経費を要するものが多く、国費の節約をはかるためにも、これらの施設を一カ所に集め、共用の機関として運用することのできる航空技術研究機関を設置することを適当と認め、またこのことにつきましては、航空技術審議会からも同一趣旨の答申がありましたので、ここに航空技術研究所を新設することとした。また、海外移住審議会の設置につきましては、政府外務省設置法の一部を改正する法律案を別途提案し、これによって外務省に移住局が設けられることとなるのでありますが、なお今後における海外移住問題の緊要性にかんがみ、広く海外移住政策に関する重要事項について審議する諮問機関として海外移住審議会を設けんとするものであります。  内閣委員会は、予備審査を合せて前後四回にわたって本法律案審議に当りましたが、その審議の結果明らかになりました諸点は次の通りであります。  その第一点は、航空技術研究所の設置のための所要経費は本年度六カ月分、千七百十三万五千円であり、また本研究所の定員は本年度四十人でありまして、その機構といたしましては、所長の下に管理部、空気力学部、機体部、原動機部、材料部、計測部、航空医学、心理学研究室、調査室、工作工場が置かれる予定であること。その第二点は、本研究所の建物は、三鷹市の元中央航空研究所の跡地へ建坪四千九百坪の計画で建てられる予定であること。その第三点は、本研究所は本年度を初年度といたしまして、昭和三十五年度まで六カ年計画の下に、ジェット・エンジンを主たる対象として研究を行う計画でありまして初年度の経費と定員はただいま申し述べました通りでありまするが、この六カ年計画のために要する経費は、施設費、人件費等を合せまして六十億円ないし七十億円の見込みであり、また定員は、第六年度には五百人となる予定でありまして、本年度はまず幹部となるべき人を任命し、その手によって逐次新人材を採用せんとする方針であること。その第四点は、本研究所の研究の結果は、大学、民間の航空機製造会社等の方面へも報告いたしまして、その利用に供せんとする方針であること。その第五点は、海外移住審議会の設置に関する事項でありますが、本審議会の設置のためには、本年度予算と定員の上には増加は全くないこと、審議会は会長を内閣総理大臣として、委員は関係各大臣及び民間の学識経験者合計二十五人で構成する予定であり、別途提案中の日本海外移住振興株式会社法案が成立すれば、まずこの会社の企業投資、企業援助等について諮問する方針であること等であります。  なお、外国の航空技術使用の場合の特許料、航空技術研究所と航空技術審議会との関係海外移住審議会を総理府に置く理由等の問題につきましても、熱心な質疑応答がありましたが、その詳細は委員会会議録に譲ることを御了承願いたいと存じます。  昨日の委員会におきましては、本法律案に関する質疑も終了いたしましたので、討論を省略し、直ちに本法律案について採決いたしましたところ、全会一致をもって原案通り可決すべきものと議決せられた次第であります。  次に、運輸省設置法の一部を改正する法律案について申し上げます。  まず本法律案の改正の要点を申し上げますと、その第一点は、最近近東諸国に対する賠償関係が漸次具体化して参りましたのと、技術援助等の国際的協力関係が緊密の度を加えて参りましたのに伴いまして、運輸省の所掌にかかるこれらの事務も次第に繁忙になって参りましたので、所掌事務としてこれを追加いたした点であります。その第二点は、現在の港湾整備審議会を港湾審議会に改め、新たに重要港湾の施設の建設改良等、港湾の開発に関する計画につきましても調査審議せしめることとし、また最近における都市周辺の交通事情にかんがみまして、新たに都市交通審議会を設けることといたした点であります。その第三点は、現在神戸商船大学の校舎を併用いたしておりまする海技専門学院を芦屋市に移転せんとする点であります。その第四点は、町村合併に伴う行政区画の変更、その他法令の改廃等に伴い、地方出先機関の管轄区域に改正を加え、また権限、所掌事務等の規定を整備する点であります。  内閣委員会は、予備審査をあわせ、前後三回にわたって本法律案審議に当りましたが、その審議によって明らかになった諸点を申し上げますると、その第一点は、本法律案の改正に伴う予算及び定員の問題でありますが、海技専門学院の移転のための増築費として二千三百六十万三千円、このほか修繕費、移転費等を含めまして、合計二千五百四十五万九千円が本法律案の改正に伴う経費となっております。また海技専門学院の移転に伴い定員を二名増員をすることになっております。  その第二点は、都市交通審議会問題であります。この審議会がその対象としておりまする都市は、さしあたり東京及び京阪神、名古屋及び福岡を中心とする北九州の諸都市でありまして、現在大都市における輸送量は戦前の約四倍になっておりまするが、輸送力は約二倍にすぎませんために、通勤、通学の円滑な交通を確保することができない事情にありますので、政府はさしあたり、通勤、通学の交通を確保するため、この都市交通審議会を設けまして、交通の動態を把握し、都市交通網についての基本的計画を立てたいということであります。都市における交通の基本的計画を立てまするには、他に道路、橋梁、交通警察等、他省の所管の事項につきましてもあわせて調査審議する必要がありまするが、この審議会はさしあたって大都市の交通状態について調査審議する方針でありまして、さらに将来都市交通の問題を拡大して調査審議する必要が生じた場合には、この審議会を総理府に移管することも考慮するとのことであります。なお、審議会の構成につきましては、委員数を二十五人以内とし、その委員といたしましては、運輸、大蔵、建設、経済審議庁等の各省庁や東京都、大阪府、国鉄、私鉄、自動車、経済金融関係、報道関係及び学識経験者より人選する予定とのことであります。  その第三点は、海技専門学院の移転の問題であります。海技専門学院は、海員の再教育を行う学校であって、現在神戸市に所在しておりますが、同じ場所に商船大学がありまして、この学生が漸次増加して、校舎が狭隘を来たし、また、商船大学が高校卒業の比較的若年者を教育しているため、年令の差のある者を同じ場所で教育することは好ましくない面もありますので、現在海技専門学院の校舎の一部や寮が所在している芦屋市に移転せんとするものであります。  昨日の委員会におきましては、水法律案に関する質疑も終了いたしましたので、討論を省略し、直ちに本法律案につき採決いたしましたところ、全会一致をもって、原案通り可決すべきものと議決せられた次第であります。  最後に、労働省設置法等の一部を改正する法律案について御報告申し上げます。  まず、本法律案の提案理由及びその内容を御説明申し上げますと、政府は、雇用失業問題の根本的解決をはかるためには、長期経済計画の推進により、経済の拡大均衡をはかり、もってわが国経済の自立達成と雇用の増大を期する必要があり、その過程において生ずる摩擦に対処するため、総合的な失業対策の樹立、運営を必要と認めました結果、まず現下の失業情勢に対処して現行失業対策事業のワクの拡大をはかるとともに、新たに特別失業対策事業として建設的な事業を大規模に実施することとし、本年度は失業対策事業費補助として百六十八億円の予算を計上し、二十二万人の失業者を吸収することといたしておりますが、これは昨年に比し、金額にして四十九億円、人員にして五万人の増加となるのであります。なかんずく特別失業対策事業につきましては、これに要する経費として約三十五億円が労働省予算に計上されているのでありますが、政府は、この建設的効果をも十分上げ得るよう建設省、運輸省等の関係各省と事業の施行方法について協議の上、当該各省に予算の移しかえを行なって、これを実施することとする方針であり、さらにこれに加えて、鉱害復旧事業、都市建設、道路事業に失業者を吸収する等の措置を講ずることを初め、失業対策事業と公共事業、財政投融資対象事業との総合的、計画的運営をはかることが必要であり、これがためこの際機構の拡充をはかり、職業安定局に新たに失業対策部を設けて、失業対策事業を計画的に実施するとともに、総合的な失業対策の樹立運営をはからんとするものであります。  内閣委員会は、前後四回にわたり本法律案審議に当りましたが、その審議によって明らかとなった諸点を申し上げますと、その第一点は、本法律案の改正に伴う予算及び定員の問題でありまして、失業対第部設置のための直接の経費増は、本年度予算において九十一万四千円であり、またその定員は五十六人を予定しておりますが、そのうち事務補助員、すなわち常勤労務者の定員は十人であります。その第二点は、二十九年度の完全失業者は六十三万人でありましたが、三十年度には労働力人口の増加による完全失業者の増加見込み分約二十万人に対し、特に失業対策を計画しているということであります。すなわちこの二十万人のうち三万人については、特別失業対策事業を計画し、このため三十五億円を国庫から支出し、主として道路の建設等に使用して、失業者を吸収する予定であり、このほか一般失業対策事業、建設省関係の道路整備事業、鉱害復旧対策事業、国勢調査、統計調査等により合計約十四万人の失業者を吸収することが可能であり、その残余の約六万人は職業補導所に収容して、職業補導教育を行うことにより、逐次就職のあっせんをする予定であるということであります。その第三点は、労働省において失業対策部設置に伴い、地方の職業安定所におきましては、機構の拡充は行わずに、職員の重点的、合理的配置を行うとともに、常勤労務者を六百四十五人増員して業務運営の能率化をはかるということであります。なお、以上のほか、石炭鉱業合理化臨時措置法の実施による失業問題アメリカの特需の減少による失業問題、一時帰休制の問題、失業保険の不正支給の問題等につきましても質疑応答が行われましたが、その詳細は委員会会議録に譲ることを御了承願いたいと存じます。  昨日の委員会におきましては、本法律案に関する質疑も終了いたしましたので、論を省略し、直ちに本法律案につき採決いたしましたところ、全会一致をもって、原案通り可決すべきものと議決せられた次第であります。  以上、御報告申し上げます。(拍手
  54. 河井彌八

    議長河井彌八君) 別に御発言もなければ、これより三案の採決をいたします。三案全部を問題に供します。三案に賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立]
  55. 河井彌八

    議長河井彌八君) 総員起立と認めます。よって三案は、全会一致をもって可決せられました。      ——————————
  56. 河井彌八

    議長河井彌八君) 日程第十九、昭和三十年四月及び五月の凍霜害、水害等被害農家に対する資金の融通に関する特別措置法案内閣提出衆議院送付)を議題といたします。  まず委員長の報告を求めます。農林水産委員長江田三郎君。    〔江田三郎君登壇拍手
  57. 江田三郎

    ○江田三郎君 ただいま議題になりました昭和三十年四月及び五月の凍霜害、水害等被害農家に対する資金の融通に関する特別措置法案につきまして、農林水産委員会における審査の経過及び結果を報告いたします。  本年もすでに凍霜害、水害あるいはひょう害等、たびたびの災厄に見舞われ、その被害も少くありませんので、農林水産委員会におきましては、去る五月二十七日、政府当局に対して、「過般来各地に発生した水害、凍霜害及び雹害等はその被害甚大であって被災者のためまことに遺憾に耐えない。よろしく政府は、速かに実情を精査し、既往の例にならい、今国会期間中に之が救済のため万全の措置を講ぜられたい。」と申し入れ、政府の善処が求められていたのでありますが、政府もまた「かかる災害に対処して、被害農家の農業経営の維持安定に資するための営農資金が、低利で円滑に融通せられるように、また今回の凍霜害等の被害農家が前年度までに借り受けている同精の経営資金については、その償還期限を延長し得るよう、所要の措置を講ずる必要がある」との意図をもって、この法律案が提案されるに至ったのであります。  しかして法律案の内容は、既往の災害において講ぜられたものに準ずるものでありまして、大よそ次のようであります。  まず今回の災害に当って新たに行われる融資に関する措置でありますが、これは農業協同組合その他の金融機関が、被災者に対して所定の条件の営農資金を貸し付け、これに対して国及び地方公共団体が利子補給及び損失補償等の助成を行う仕組でありまして、第一に営農資金の貸し付けの対象は農業をおもな業務とする者で、本年四月の凍霜害もしくは水害または五月のひょう害等の災害によって、農作物または春蚕繭の減収量が平年の収量の三割以上であって、その減収による損失額が平年の農業収入の一割以上であるという市町村長の認定を受けたものとし、第二に、営農資金の条件は農業協同組合その他の金融機関被害農家に対して種苗、肥料、飼料、薬剤等の購入資金その他の営農資金として本年九月三十日までに貸し付ける資金であって、利率は年六分五厘以内、償還期限は二年以内を原則とし、開拓者に対しては利率を年五分五厘以内、果樹栽培農家及び開拓者に対する償還期限は三年以内とし、なお貸付限度は一農家当り五万円となっております。第三は、国及び地方公共団体の助成措置でありまして、農業協同組合その他の金融機関被害農家に対して以上のような営農資金を貸し付け、都道府県または市町村がこれらの融資機関に対して利子補給及び損失補償を行う場合、国は都道府県に対し、これら利子補給及び損失補償に要する経費の二分の一を補助することとし、国の補助の最高限度は利子補給に関しては、一般は融資額につき年二分五厘、開拓者は三分の割合で計算した額、また損失補償に関しては融資総額の二割に相当する額となっております。しかして国の補助の対象となる融資の総額は四億五千万円を限度としております。  次は、前年の凍霜害等並びに前々年の凍霜害及び台風第二号等の被害農家で、今次の災害によって重ねて被害を受けた場合の措置でありまして、この場合にはすでに貸し付けを受けている同様な営農資金の償還期限を一年間を限って延長し、引き続き利子補給及び損失補償等の措置を講ずることとなっております。  かような政府の原案に対して、衆議院においては、本法の対象となる災害の中に、本年五月の凍霜害及び水害を加え、さらに被害農家として農作物の減収によるもののほか、水害による種子の流亡等、耕作上の損失額が平年における農業総収入額の一割以上のものをも対象とするように修正して本院に送付して参ったのであります。  委員会におきましては、農林当局との間に、衆議院の修正と本法による助成対象融資総額限度との関係、本法に盛られていない本年六月における九州地方その他の水害及び最近における関東地方のひょう害に対する措置、さらに進んで従来あるいは今回とられたように災害のつど立法措置を講ずるやり方を恒久的な基本立法に改めることの必要、末端に対するすみやかな融資の実施、あるいは資力の弱い被災者に対する融資の均霑等、諸般の問題について質疑が行われたのでありまして、その詳細は、会議録によって御了承を願いたいのであります。  かくて質疑を終り、討論に入りましたところ、森委員から、「政府今回の措置は、災害対策として不十分であるが、しかし急を要するから賛成するが、今後に備えて次のような付帯決議を付することにしたい」旨の動議が提出されました。すなわち、  一、本年六月の水害及びひょう害等の災害については、すみやかに被害調査を完うし、その救済に関して法的措置を講ずべきである。  二、第三項の基本的立法措置が講ぜられる以前に災害が発生した場合、その救済に関して、政府は、それが国会が開会中であれば、直ちに法的措置を講じ、また国会が閉会中であれば、遺憾なくつなぎ措置を講じて必ず次期の国会において法的措置を講ずべきである。  三、この際、政府は、従来あるいは今日採られたように、災害のつど法的措置を講ずるやり方を改めて、恒久的な基本法を行うよう善処すべきである。  というのであります。ほかに、別に発言もなく採決の結果、全会一致をもって衆議院の修正送付案に森委員提出の付帯決議を付して可決すべきものと決定いたしました。なお、右の付帯決議に対して、農林省農林経済局長から、「その趣旨に沿いたい」旨発言せられましたことを付言いたしまして報告を終ります。(拍手
  58. 河井彌八

    議長河井彌八君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。本案全部を問題に供します。本案賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  59. 河井彌八

    議長河井彌八君) 総員起立と認めます。よって本案は、全会一致をもって可決せられました。      ——————————
  60. 河井彌八

    議長河井彌八君) 日程第二十、昭和二十八年度一般会計予備費使用調書(その2)  日程第二十一、昭和二十八年度一般会計災害対策予備費使用調書(その2)  日程第二十二、昭和二十八年度特別会計予備費使用調書(その2)  日程第二十三、昭和二十八年度特別会計予算総則第十条に基く使用調書  日程第二十四、昭和二十九年度一般会計予備費使用調書  日程第二十五、昭和二十九年度特別会計予備費使用調書  日程第二十六、昭和二十九年度特別会計予算総則第八条に基く使用調書  日程第二十七、昭和二十九年度特別会計予算総則第九条に基く使用調書(いずれも衆議院送付)  日程第二十八「昭和二十九年度一般会計国庫債務負担行為調書  以上、九件を一括して議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  61. 河井彌八

    議長河井彌八君) 御異議ないと認めます。まず委員長の報告を求めます。決算委員長山田節男君。    〔山田節男君登壇拍手
  62. 山田節男

    ○山田節男君 ただいま議題となりました昭和二十八年度一般会計予備費使用調書(その2)外七件の事後承諾を求める件に関する決算委員会の審議の経過並びに結果について御報告いたします。  まず、本件の内容について大略を説明いたします。  まず、昭和二十八年度一般会計予備費使用調書(その2)について申し上げます。昭和二十八年度一般会計予備費の予算額は三十億円でありまして、そのうち昭和二十八年十二月二十八日までに使用されました八億二千九百余万円につきましては、昨年四月国会が承諾を与えておりますが、今回は二十九年一月九日から年度末までに使用されました二十一億三千九百余万円につきまして承諾を求めているのであります。  次に、昭和二十八年度一般会計災害対策予備費使用調書(その2)について申し上げます。昭和二十八年度一般会計災害対策予備費の予算額は百四十五億円でありまして、そのうち昭和二十八年十二月二十五日までに使用されました百十五億千五百余万円につきましては、昨年四月国会が承諾を与えでおりますが、今回は二十九年二月十六日から年度末までに使用されました二十九億五千七百余万円につきまして承諾を求めているのであります。  次に、昭和二十八年度特別会計予備費使用調書(その2)について申し上げます。昭和二十八年度各特別会計の予備費の予算総額は四百十億八千九百余万円でありまして、そのうち昭和二十八年十二月二十五日までに使用されました四十六億八千六百余万円につきましては、昨年四月国会が承諾を与えておりますが、今回は昭和二十九年二月九日から年度末までに使用されました三十五億六千三百余万円につきまして承諾を求めているのであります。  次に、昭和二十八年度特別会計予算総則第十条に基く使用調書について申し上げます。この規定に基き予備費使用の例に準じて予算を超過して支出されました特別会計は、郵政事業特別会計でありまして、金額は六億六千八百余万円であります。  次に、昭和二十九年度一般会計予備費使用調書について申し上げます。昭和二十九年度一般会計予備費の予算額は八十億円でありまして、そのうち同年度中に使用されました金額は七十九億九千六百余万円となっておりすす。  次に、昭和二十九年度特別会計予備費使用調書について申し上げます。昭和二十九年度各特別会計の予備費の予算総額は三百六十億六千八百余万円でありまして、そのうち同年度中に使用されました金額は五十八億九千余万円となっております。  次に、昭和二十九年度特別会計予算総則第八条に基く使用調書について申し上げます。この規定に基き、予備費使用の例に準じて予算を超過して支出されました特別会計は、郵便貯金性別会計及び簡易生命保険及び郵便年金特別会計でありまして、金額は合計十三億九千百余万円であります。  最後に、昭和二十九年度特別会計予算総則第九条に基く使用調書について申し上げます。この規定に基き、予備費使用の例に準じて予算を超過して支出されました特別会計は、郵政事業特別会計でありまして、金額は九億九千万円であります。  本委員会におきましては、以上八件について、当局の説明を聴取した上、慎重審議いたしました。審議経過の詳細は会議録でごらんを願いますが、質疑応答のおもなものを申し上げますと、「予備費の使用は、緊急に必要な経費について行うべきであるのに、一般会計において予備費を使用した科目で、二十八年度から翌年度へ繰り越したもの及び二十九年度から翌年度へ繰越見込みのものが、それぞれ数億円に上っておるが、これは予備費の使用決定に当り調査が厳密を欠いた結果ではないか、中には国庫債務負担行為で間に合ったものがあったのではないか」との質疑に対し、政府から、「予備費使用を決定した当時においては、年度内に支出を要する緊急性あるものと認めたのであるが、結果において繰り越しが生じたのは遺憾であり、今後一そう注意して厳密慎重を期する」旨の答弁がありました。なお、昨年本委員会において問題といたしました予備費の使用方針に関する閣議決定事項につきましては、その後内閣において本委員会の意向を尊重し、国会開会中は原則として予備費の使用を行わない旨の閣議決定をいたしております。  以上のほかには、各委員において別段意見もありませんでしたので、本件は全部を一括して承諾を与うべきものと全会一致をもって議決いたしました。  次に、昭和二十九年度一般会計国庫債務負担行為調書に関する決算委員会の審議の経過並びに結果について御報告申し上げます。  まず、本件の内容を簡単に説明いたします。昭和二十九年度一般会計予算総則第七条におきまして、財政法第十五条第二項の規定により災害復旧その他緊急の必要がある場合に、国庫債務負担行為をなし得る金額を、三十億円と定めております。これに基きまして政府は、二十九年十月外務省所管において、日本国とオーストラリア連邦との間の真珠貝漁業紛争を国際司法裁判所に提訴するための弁護士謝礼に必要な経費六千百万円を限度として、債務を負担する契約を結ぶこととしたのでありますが、本件は政府財政法第十五条第四項の規定により、右の事項を国会報告して参ったものであります。  本委員会におきましては、当局の説明を聴取した上、内容を審議いたしました結果、別段異議がないと議決いたした次第であります。  以上、御報告申し上げます。(拍手
  63. 河井彌八

    議長河井彌八君) 別に御発言もなければ、これより九件の採決をいたします。  まず、昭和二十八年度一般会計予備費使用調書(その2)  昭和二十八年度一般会計災害対策予備費使用調書(その2)  昭和二十八年度特別会計予備費使用調書(その2)  昭和二十八年度特別会計予算総則第十条に基く使用調書  昭和二十九年度一般会計予備費使用調書  昭和二十九年度特別会計予備費使用調書  昭和二十九年度特別会計予算総則第八条に基く使用調書  昭和二十九年度特別会計予算総則第九条に基く使用調書  以上、八件全部を問題に供します。  これら八件は、委員長報告通り承諾することに賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  64. 河井彌八

    議長河井彌八君) 総員起立と認めます。よって八件は、全会一致をもって承諾することに決しました。      ——————————
  65. 河井彌八

    議長河井彌八君) 次に、昭和二十九年度一般会計国庫債務負担行為調書問題に供します。本件は、委員長報告通り決することに賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  66. 河井彌八

    議長河井彌八君) 総員起立と認めます。よって本件は、全会一致をもって委員長報告通り議決せられました。      ——————————
  67. 河井彌八

    議長河井彌八君) この際、会期延長の件についてお諮りいたします。  議長は、衆議院議長と協議の結果、第二十二回国会の会期を七月三十日まで三十日間延長することに協定いたしました。会期を三十日間延長することについて、討論の通告がございます。順次発言を許します。矢嶋三義君。    〔矢嶋三義君登壇拍手
  68. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 私は社会党第四控室を代表いたしまして本国会を七月三十日まで延長せんとする本案件に反対の意思を表明し、わが党の態度を明快にせんとするものでございます。  反対の第一点は、会期に関しまして無感覚であり、三十日という異例の大幅をなす点でございます。私どもは会期はみずから決定するものでございまするが、みずからがきめましたところの土俵内においてこれらの案件を審議終了するところのルールを確立し、国会みずからが国民に範を示さなければならないと、かように考えるものでございます。(拍手)本国会は三月十八日召集されましたが、その当時本国会の会期は、五月三十日までが妥当と考えましたけれども、与党民主党が比較多数の内閣でございまするので、譲りまして、六月三十日までの国会会期に賛成をいたした次第でございまするが、現在、各位が御承知通り国民生活に密接なる関係のあるところの昭和三十年度予算案は、なお成立いたしておりませんので、この予算案並びにこれに関連するきわめて重大なる法律案件が本国会において成立するまでの最小限度の会期延長をはかるべきであるとの、われわれは態度を堅持しておったのにもかかわらず、異例にも三十日という大幅の延長がなされましたことについては、国民にかわって断固反対せざるを得ません、参考に申し上げまするが、わが参議院を一日間開きまするというと、国民税金は約百二十五万円要るのでございます。衆参合せまして一日間の所要経費は約三百七十万円、これを三十日間会期を延長いたしますると、実に一億二千万円の国費が費消されるわけでございまして、われわれは会期の問題について無感覚であってはならないという立場において反対する次第でございます。  反対の第二点といたしましては、政府与党の不手ぎわのために、こういう事態になった次第でございましてこの段階には、すみやかにこの国会を閉会してあらためて出直すべきであるということでございます。この点については、自由党の議院運営委員会の理事松岡委員も、個人としては全面的に賛成されているほどでございます。(笑声、拍手)御参考までに申し上げまするならば、案件を国会に出す段階において政府部内においてその調整が不可能であり、不統一が現出した次第でございまして、その結果、政府提出の諸案件というものは非常に出しおくれたのでございます。参考に数字的にこれを示すならば、五月二十日現在で、内閣提出法律案件はわずかに大十三件、条約案件は六件しか提出されておりません。そうして昨日二十八日現在で、内閣提出法律案は百三十六件、そのうち成立したのはわずかに二十八件、条約は十五件で、そのうち成立したのはわずかに七件でございます。さらに、国会に法案あるいは条約案が提出されて、その国会に臨むところの政府の態度は常に不統一であったのでございます。たとえば余剰農産物の問題、米価の問題憲法九条の解釈等の問題について、常に政府部内は薫見の不統一を来たし、これが国会の運営に重大なる支障を来たしたということは、各位の御承知通りでございます。いわば現在の鳩山内閣は、政権担当の能力は不足している次第でございまして、すみやかに総辞職するか、あるいはここで店じまいをして、世論の反撃を受けているところの案件の内容を再検討して出直すべきである。そういう意味において国会の延長に反対をいたす次第でございます。  反対の第三点といたしましては、保守合同という政治的目標達成の手段に供されているということでございます。国会は、申すまでもなく、各政党会派がその政策実現を期する場であり、案件審議がすべてでなければなりません。皆様御承知通り予算審議の重点は、国会の外で行われ、保守合同の取引の具に供された傾きがあると国民の有識者は批判いたしております。自由党諸君にしてみれば、民主党が比較多数の内閣であり、この条約、諸案件の審議をいたし、あるいは日ソ外交等外交問題を通じて弱体鳩山内閣を窮地に陥れ、保守党の主導権を確立し、保守合同を進める手段にこれを使おうとする気配濃厚なる点は、まことに国会を自演し、国会を軽視するものと申さなければなりません。(拍手)  以上の諸理由を申し述べまして私は日本社会党第四控室を代表し、国民にかわって断固反対の意思表明をいたす次第でございます。(拍手)     —————————————
  69. 河井彌八

    議長河井彌八君) 天田勝正君。    〔天田勝正君登壇拍手
  70. 天田勝正

    ○天田勝正君 社会党第二控室は、三十日間の会期延長に反対をいたします。  とかく会期の延長問題が議せられまする場合には、必ず会期は国会自体が決定するのであって、政府には何らその責任がないかのごとく言われるのであります。しかるに、当初会期を決定いたす場合には、政府の意向が十分与党を通じまして申し述べられ、そこで決定されるのであります。従って、一旦決定した会期は、その会期内に重要法案は十分議了できるように政府は努力して諸案件を提出するのが、当然であります。(「そこまではいい」と呼ぶ者あり)そうでありますれば、当初五月一ぱいの会期が決定された場合には、必ずこの会期内に十分すべての案件が議了できるように提出すると政府は約束いたしたはずであります。しかしながら実際はかように運びませんために、われわれもこれに努力いたしまして、六月一ぱいの延長は一応認めたのであります。その間今日まで百四日でございまするが、この間において法律案が議決されたものは、議員提出を含めてわずかに四十三件であります。この審議渋滞の原因がどこにあるかと言いまするならば、私に言わしめれば、あげて政府並びに与党にその責任ありと言わなければなりません。その一つの例をあげまするならば、三十年度予算にいたしましても、四月当初に提出するはずであり、さらに下って四月十五日には必ず提出すると運営委員会においても約束をいたし、われわれ議院運営の者は四月十三日以降委員会の開かれる準備をいたして待機いたしたのであります。ところが、ついにはこの提出が四月下旬とおくれましてここに一つの政府の無定見を暴露いたしたと思うのであります。また閣僚諸君が、衆議院並びに本院の各委員会における発言は常にばらばらであって、その結果は常に陳謝から陳謝と続いて、いわゆる陳謝省を設立しようなどという声さえ起きておるのが現状であり、この状態から政府の真意、政府方針が那辺にあるかを確めるために委員会は日も足らざるありさまのために、ついに今日の状態を来たしておるのである。ごく先ごろの例を見ましても、河野農林大臣が米価決定に当ってその決定のおくれた原因として、本院の議院運営委員会において米価審議会委員を決定することができないがゆえにおくれたなどと言って、あたかも責任をば本院に転嫁し、またわが社会党右派の委員が、この決定は相当延びても差しつかえないどという意見を述べたという、こういうありもしないことまで持ち出して、他に責任を転嫁するということから、これが運営委員会並びに予算委員会において陳謝されたことも、諸君の記憶に新たなるところであります。かようにいたしまして、ほとんどその無定見と無方針が、この審議の渋滞を来たした最大の原因であることは明らかであります。  次に、私は明らかにいたしたいことは、衆議院、参議院を通じまして今国会ほど各党が議案の審議に協力して参ったことはないと存じます。本会議におきましても、委員会においても、ただ一度も混乱を起すようなことはなかった。こうして協力して参ったにもかかわらず、現に当院において今日、議決しようといたしましても、衆議院送付案はもはやないという状態であり、私はここに自分の所属いたしておりまする大蔵委員会の例を挙げまするけれども、すでに送付案なきままに会期切れの法案については先に審議をいたし、これが送付されるや直ちに可決して今日先ほど諸君が議決されましたように、一日に十数件の重要法案を議了するという努力を払っておるのでありまして、私どもは、われわれにこの審議渋滞の責任なしと言わざるを得ないのでありましてこれは先に矢嶋議員からも指摘されましたように、院外の何らかの政治効果をねらってこの三十日の会期延長の措置であると言わざるを得ないのでありまして、私どもはかような措置には断固反対をいたすものである。(拍手
  71. 河井彌八

    議長河井彌八君) これにて討論の通告者の発言は、全部終了いたしました。討論は終局したものと認めます。  これより採決をいたします。議長が協定いたしました通り、会期を三十日間延長することに賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  72. 河井彌八

    議長河井彌八君) 過半数と認めます。よって会期は、七月三十日まで三十日間延長することに決しました。     —————————————
  73. 河井彌八

    議長河井彌八君) 日程第二十九より第三十八までの請願を一括して議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  74. 河井彌八

    議長河井彌八君) 御異議ないと認めます。まず委員長の報告を求めます。逓信委員長瀧井治三郎君。    〔瀧井治三郎君登壇拍手
  75. 瀧井治三郎

    ○瀧井治三郎君 ただいま議題となりました請願につきまして、逓信委員会における審議の経過及び結果を御報告申し上げます。  本件請願は、郵便物国産愛用の字句の消印使用に関する請願鹿児島県上屋久村に電報電話局設置請願、茨城県水戸市谷中町に特定郵便局設置請願、青森県百石町郵便局庁舎復旧に関する請願、新潟県西越村に無集配特定郵便局設置請願、宮崎県東都農地区電話架設請願、奈良県黒滝村の電話施設改善に関する請願、滋賀県近江八幡郵便局庁舎新築に関する請願鹿児島薩摩求名地区公衆電話を架設するの請願及び鹿児島薩摩中津川郵便局電話交換台設置請願の十件であります。  委員会におきましては、以上の諸件について慎重審議の結果、いずれも願意を妥当と認めてこれを採択し、議院の会議に付し、かつ内閣に送付すべきものと、全会一致をもって決定した次第であります。  右、御報告申し上げます。(拍手
  76. 河井彌八

    議長河井彌八君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。 これらの請願は、委員長報告通り採択し、内閣に送付することに賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  77. 河井彌八

    議長河井彌八君) 総員起立と認めます。よってこれらの請願は、全会一致をもって採択し、内閣に送付することに決定いたしました。  本日の議事日程は、これにて終了いたしました。  次会は明日午前十時より開会いたします。議事日程は決定次第公報をもって御通知いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後七時十四分散会      —————————— ○本日の会議に付した案件  一、故議員前田穰君に対する追悼の辞  一、在外財産処理促進に関する決議案  一、日程第一 アルコール専売法の一部を改正する法律案  一、日程第二 あへん特別会計法案  一、日程第三 輸入品に対する内用消費税の徴収等に関する法律案  一、日程第四 国税徴収法の一部を改正する法律案  一、日程第五 租税特別措置法の一部を改正する法律案  一、日程第六 登録税法の一部を改正する法律案  一、日程第七 農業協同組合中央会が不動産に関する権利を取得する場合における登録税臨時特例に関する法律案  一、日程第八 所得税法の一部を改正する法律案  一、日程第九 法人税法の一部を改正する法律案  一、日程第十 租税特別措置法等の一部を改正する法律案  一、日程第十一 補助金等の臨時性例等に関する法律の一部を改正する法律案  一、日程第十二 補助金等臨時特例等に関する法律の一部を改正する法律案  一、日程第十三 麻薬取締法の一部を改正する法律案  一、日程第十四 在外公館の名称及び位置を定める法律等の一部を改正する法律案  一、日程第十五 国の援助等を必至とする帰国者に関する領事官職務等に関する法律の一部を改正する法律案  一、日程第十六 総理府設置法の一部を改正する法律案  一、日程第十七 運輸省設置法の一部を改正する法律案  一、日程第十八 労働省設置法等の一部を改正する法律案  一、日程第十九 昭和三十年四月及び五月の凍霜害、水害等被害農家に対する資金の融通に関する特別措置法案  一、日程第二十 昭和二十八年度一般会計予備費使用調書(その2)  一、日程第二十一 昭和二十八年度一般会計災害対策予備費使用調書(その2)  一、日程第二十二 昭和二十八年度特別会計予備費使用調書(その2)  一、日程第二十三 昭和二十八年度特別会計予算総則第十条に基く使用調書  一、日程第二十四 昭和二十九年度一般会計予備費使用調書  一、日程第二十五 昭和二十九年度特別会計予備費使用調書  一、日程第二十六 昭和二十九年度特別会計予算総則第八条に基く使用調書  一、日程第二十七 昭和二十九年度特別会計予算総則第九条に基く使用調書  一、日程第二十八 昭和二十九年度一般会計国庫債務負担行為調書  一、会期延長の件  一、日程第二十九乃至第三十八の請願