○青木一男君 ただいま
議題となりました十一法案について、大蔵委員会における
審議の経過並びに結果を御
報告申し上げます。
まず、あ
へん特別会計法案について申し上げます。
本案は、第十九
国会において成立をみましたあへん法の規定により、
政府が行うあへんの収納、輸入または売り渡しの事業に関する経理を明確にするため、一般会計と区分して新たにあへん特別会計を設置しようとするものであります。
内容の概略を申し上げますと、この会計は、厚生大臣が管理することとし、あへんの売渡代金、一般会計からの繰入金、栽培許可手放料等を歳入とし、あへんの収納または輸入の代金、業務取扱費、災害
補償金、交付金等をもって歳出とするとともに、その他この会計の
予算及び決算の作成並びにその提出に関する手続等、特別会計に必要な事項を規定しようとするものであります。
本案の
審議におきましては、ケシ栽培の災害
補償、あへんの輸入及び
国内生産の
実情等について質疑応答がありましたが、詳細は速記録によって御
承知願いたいと存じます。
質疑を終了し、討論、採決の結果、全会一致をもって、原案
通り可決すべきものと決定いたしました。
次に、
輸入品に対する
内国消費税の
徴収等に関する
法律案について申し上げます。
本案は、従来保税地域以外の場所から輸入する物品に対する
内国消費税の
徴収等について規定しておりました「酒税等ノ徴収ニ関スル
法律」の規定を全面的に整備するとともに、外交官が輸入する物品等で、関税を免除されるものについては
内国消費税を免除する規定を新設するほか、輸入物品に対する
内国消費税の賦課
徴収等について規定の明確化をはかろうとするものであります。また輸入物品に対する
内国消費税の犯則事件については、その迅速なる
処理をはかるために、今回税関職員にも、調査及び処分の権限を与えることとしようとするものであります。
本案の
審議に当りましては、駐留軍人の横流しに対する取締り
方針等について熱心なる質疑応答があったのでありますが、その詳細は速記録によって御
承知を願います。
質疑を終了し、討論、採決の結果、全会一致をもって、原案
通り可決すべきものと決定いたしました。
次に、
国税徴収法の一部を改正する
法律案について申し上げます。
本案は、最近の国税の徴収状況、金利水準の状況等にかんがみまして、国税の利子税額及び延滞加算税額、または過誤納の還付金等に付する還付加算金を計算する場合の率を、現行の日歩四銭から日歩三銭に改めるとともに、国税以外の公課について徴収する延滞金の率も、現行の日歩八銭を日歩六銭に引き下げようとするものであります。
本案審議に当りましては、滞納の
処理状況等について熱心な質疑があったのでありますが、その詳細は速記録によって御
承知を願います。
質疑を終り、討論、採決の結果、全会一致をもって、原案
通り可決すべきものと決定いたしました。
次に、
租税特別措置法の一部を改正する
法律案について申し上げます。
本案は、
衆議院大蔵委員長松原喜之次君の提出にかかるものであります。御
承知のごとく近年数次にわたる
所得税法の改正と、昨年末医師等に対する診療報酬の必要経費算定についての特例
措置によりまして、医師等の所得税については過納の傾向が増加するものと思われまするので、今回医師及び歯科医師の社会保険診療収入についての源泉徴収税率を本年七月一日より、現行の一割から五分に引き下げようとするものであります。
本案につきましては、格別の質疑もなく、討論採決の結果、全会一致をもって、原案
通り可決すべきものと決定いたしました。
次に、
登録税法の一部を改正する
法律案について申し上げます。
本案は、
衆議院大蔵委員長松原喜之次君の提出にかかるものであります。現在医療法の規定により公的医療
機関の開設者として指定されておるもののうち、
日本赤十字社、社会福祉
法人、
国民健康保険組合等に対しましては、その医療事業の用に供する建物及び土地の権利の取得、または所有権の保存登記に際しての
登録税については非課税の
措置がとられておりますが、ただ厚生農業協同組合連合会についてのみ免除されていない
実情上なっておりますので、今回この公的医療
機関たるの性格等にかんがみまして、
登録税をかさないこととしようとするものであります。
本案は格別の質疑もなく、討論、採決の結果、全会一致をもって原案
通り可決すべきものと決定いたしました。
次に、
農業協同組合中央会が不動産に関する権利を取得する場合における
登録税の
臨時特例に関する
法律案について申し上げます。
本案も、
衆議院大蔵委員長松原喜之次君の提出にかかるものであります。昨年六月、農業協同組合法の一部を改正する
法律によりまして、指導農業協同組合連合会が改組せられ、新たに
農業協同組合中央会が設置されることとなったのでありますが、この中央会に引き継がれる土地及び建物等の不動産を取得する場合の登記については
登録税がかかることになっておりますので、今回改組の
実情にかんがみまして、
昭和三十一年三月末日までに登記せられるものに限り
登録税を免除しようとするものであります。
委員会の
審議に当りましては、格別の質疑もなく、討論、採決の結果、全会一致をもって、原案
通り可決すべきものと決定いたしました。
次に、
所得税法の一部を改正する
法律案について申し上げます。
本案は、低額所得者の
負担軽減を中心とした課税
負担の軽減合理化と資本蓄積の促進をはかる見地より、基礎控除額並びに給与所得控除、生命保険料控除及び専従者控除の限度額をそれぞれ引き上げるとともに、税率の引下げ等所要の改正を行おうとするものであります。
本案の内容の主なる改正点について申し上げますと、改正の第一点は、基礎控除額を現行の七万円から八万円に引き上げるとともに、青色申告者に対する専従者控除の限度額を基礎控除額と同様に引き上げるのほか、給与所得控除の限度額を現行の四万五千円から六万円に引き上げようとするものであります。
第二点は、税率の緩和をはかるため、現行の税率適用区分のうち、課税所得百万円までの部分について改正を行い、課税二百万円をこえる部分に対する税率については据え置くこととし、課税
負担の軽減をはかろうとするものであります。
第三点は、生命保険料控除の限度額を一万二千円から一万五千円に引き上げるとともに、保険期間が五年未満の生命保険契約については保険料の控除制度を適用しないこととするほか、契約者配当金はこれを支払保険料から差し引く等、本制度の適正化をはかろうとするものであります。
以上これらの改正は、本年七月一日から実施するものでありますから、
昭和三十年分の所得税は月数按分により計算した初
年度分の控除額及び税率を定めておりますが、給与所得に対する源泉徴収については、本年七月一日以降に支給される給与から平
年度計算による改正後の控除、税率によって行うこととしております。
なお、
本案は
衆議院において修正議決されたものでありまして、修正の要旨は主として低額所得者の
負担の軽減と均衡化をはかる見地より、寡婦控除、不具者控除等の税額控除額を現行の四千円から五千円に引き上げるとともに、寡婦、不具者等が遺族年金または障害年金を受けるものである場合の税額控除額を現行より千円引き上げて七千円としております。
本案の
審議に当りましては、他の税法案とともに公聴会を開く等、慎重に
審議したのでありまして、「今後の税制のあり方についていかなる構想を持っているのか」という質疑に対しましては、「本年八月より税制調査会を設け、十分の検討の上結論を出したい」との
答弁があり、このほか直接税と間接税との割合、低額所得者の課税
負担等について熱心なる質疑応答がありましたが、これは速記録によって御
承知を願います。
次に、
法人税法の一部を改正する
法律案について申し上げます。
本案は、資本蓄積の促進に資するため、普通
法人に対する課税率を現行の四割二分から四割に引き下げるとともに、清算中の
法人が継続したり、合併をした場合には、
法人税を課税するのが適当であると思われますので、その課税
関係の明確化をはかろうとするものであります。また、調整組合及び酒類業組合等については、その性格にかんがみ非収益事業所得に対しては、
法人税を課税しないこととするほか、利益の配当等の益金不算入について期限後申告の場合においても認めるように条件の緩和をはかる等、所要の規定の整備をはかろうとするものであります。
なお、
本案は
衆議院において修正議決されたものでありまして、修正点について申し上げますと、第一に、
法人のうち特に中小
法人の
負担軽減をはかるため、普通
法人の課税率を二本建とし、所得金額の年五十万以下のものに対しては三割五分の軽減税率を適用し、五十万円をこえるものは四割の税率を適用しております。
第二に、公益
法人及び各種の協同組合等の特別
法人に対しましては、その特殊性を考慮しまして、現行の三割五分を三割に引き下げるとともに、特別
法人の清算所得金額のうち積立金及び非課税所得からなる部分の金額以外の金額に対する税率を現行の四割一分から四割に引き下げております。また、これらの修正部分は、本年十月一日以降に終了する事業
年度分の
法人税及び同日以降の解散または合併による
法人税から適用することとしております。
本案の
審議に当りましては、「年所得五十万円以下のものに軽減税率を適用する
理由いかん」との質疑に対しましては、「資本金五百万円以下の
法人の年平均所得が大体五十万円であるから、この
措置によって中小
法人の
負担の軽減をはかり得る」との
答弁がありました。その他熱心なる質疑応答がなされましたが、その詳細は速記録によって御
承知を願います。
次に、
租税特別措置法等の一部を改正する
法律案について申し上げます。
本案は、資本蓄積の促進、輸出の振興等に資するため、
租税特別措置法及び有価証券取引税法について所要の改正を行おうとするものであります。
まず、
租税特別措置法改正点のおもなる内容について申し上げます。第一点は、資本蓄積をはかる見地から、預貯金、公社債等の利子所得及び配当所得について減免
措置を講ずるほか、
法人の増資を奨励し、資本構成を是正するために、増資登記の
登録税課税の軽減をはかろうとするものであります。すなわち預貯金等の利子所得については、本年七月一日から
昭和三十二年三月末日までの間、所得税を課さないこととするとともに、配当所得についても所得税の源泉徴収税率を現行の一割五分から一割に軽減し、また本年七月一日に現存し、かつ製造業、鉱業等一定の事業を営む
法人が、同日から
昭和三十二年一月末日までに増資を行なった場合、増資登記の
登録税の税率を現行の千分の七から千分の一・五に軽減しようとするものであります。
第二点は、輸出振興に資するため、輸出所得の一部控除制度について拡充合理化を行うほか、適用期限を
昭和三十二年十二月末日まで延長するものでありまして、現在輸出所得控除の制度は、輸出取引金額の一定割合と輸出所得の五割とのうち、いずれか低い方の金額を課税所得から差し引くこととなっておりますが、今回輸出所得による控除の限度を現行の五割から八割に引き上げ、またプラント輸出の状況にかんがみ、その範囲を拡充し、油井管、レール、ケーブル等についても特別の控除割合を適用しようとするものであります。
第三点は、住宅建設の促進に資するため、新築住宅に対する特別償却制度の拡充をはかり、本年七月一日から
昭和三十三年十二月末日までの間に新築した一定の条件に該当する家屋の普通償却額は五年間を限って、鉄筋コンクリート造りの家屋等五十年以上のものは二十割増、その他の家屋については十割増の特別償却を認めようとするものでありましてこれによりますと、鉄筋コンクリート造りの家屋については五年間に取得価額の五割余、木造家屋は取得価額の七割余が償却されることとなります。
また、地方公共団体が本年七月一日から
昭和三十三年十二月末日までの間に新築した床面積が一定坪数以下の住宅の所有権の保存登記については、この期間に登記を受けるものに限り
登録税を課さないこととするほか、地方公共団体、住宅金融公庫または住宅の建売業者等が右の期間内において新築した住宅を、これらのものから取得する場合の所有権の取得登記についても、その期間内に登記を受けるものに限り
登録税の税率を現行の千分の五十から千分の一に軽減しております。
第四点は、中小企業等協同組合法の規定による事業協同組合またはその連合会で一定の条件に該当するものについて、その積立金が出資総額の四分の一に達するまでは、その所得のうち留保した金額に対して
法人税を課さないこととし、協同組合経営の健全化に資することとしております。
第五点は、航空事業の助成のため、本年七月一日から
昭和三十二年三月末日まで航空機の乗客に対する通行税の税率を現行の二割から一割に引き下げようとするものであります。
第六点は、当事者間の協議により土地等が買い取られる場合においても、当該土地等が買い取りの申し出を拒むときは土地収用法等の規定により収用されることとなるものである場合には、譲渡所得に対する課税を行わず、買い取りの対価を
資産再評価法による再評価限度額とみなして再評価税のみを課税することとしております。
次に、有価証券取引税法の改正点について申し上げますと、証券投資信託の信託
財産に属する株券の譲渡に対する有価証券取引税の特例
措置が、本年七月末日で終ることとなっておりますので、証券投資信託の育成をはかる見地から、
昭和三十二年三月末日までその適用期限を延長しようとするものであります。なお、
本案は
衆議院において修正議決されたものでありまして、その修正点を申し上げます。
第一に、納税義務者の選択により、社会保険料控除、医療費控除及び雑損控除にかえて、所得金額または給与の収入金額の百分の五に相当する金額を、一万五千円を限度として所得金額から控除することとしております。ただし、
昭和三十年分の所得税については、七月一日から実施するに伴いまして、社会保険料控除額等の二分の一に相当する金額と、七千五百円を限度として、所得金額または給与の収入金額の百分の二・五に相当する金額との選択を認めることとしております。なお、給与所得者につきましては、毎月の給与に対する課税は従来
通りとし、年末調整を行う場合、社会保険料の額が概算所得控除額に満たないものについては、概算所得控除額を控除して税額調整を行うこととしております。
第二に、利子所得課税との権衡の見地より、
昭和三十年及び三十一年分の所得税に限り、配当控除額を現行の二割五分から配当所得の三割に相当する金額に引き上げることとしております。なおこの
措置に並行して、
所得税法施行細則において、配当所得についての資料提出限度を、現行の三千円から五千円に引き上げる等の
措置が講ぜられることとなっております。
本案の
審議に当りましては、利子所得、配当所得に対する優遇
措置が資本蓄積の促進に資する効果、利子所得と配当所得との
負担均衡、大
法人と中小
法人との
負担均衡、選択概算所得控除の実施による給与者、営業者、農民との
負担均衡の
問題等について熱心なる質疑応答がなされましたが、詳細は速記録によって御
承知願います。
質疑を終了し、右三法案を一括討論に入りましたところ、菊川委員より、「現在の租税体系は複雑であるから簡素化すべきであること。公平の
原則が薄弱となっていること。配当所得の優遇にかえて、夏季手当、夜勤手当の免税を優先的に考慮すべきであること。民・自共同修正案には不労所得の優遇に重きを置き過ぎ、不明朗な点が見られること等から三法案に反対する」との反対意見が述べられ、山本委員より、「税の理論から見ればとかくの
問題はあるが、自立経済再建のために資本蓄積の促進をはかることは根幹をなすものであり、かつ自由党の基本ラインに沿ったものであるから賛意を表する」との
賛成意見が述べられ、天田委員より、「今回の改正は低額所得者の
負担軽減、課税
負担の均衡、資本蓄積の促進という三つの前提に立っているものであるが、そのいずれについても
問題があり、また資本蓄積が直ちに
日本経済の指向する投資に役立つものであるとは考えられないから反対する」との反対意見が述べられ、小林委員より、「来たるべき税制調査会においては、税制の簡素化、給与者、営業者、農民間相互の
負担の均衡等について配慮されたいこと、並びに次回の改正には中小
法人の年所得百五十万円以下のものについて税率の軽減をはかられたい」との
要望を付して
賛成意見が述べられ、木村委員より、「再
軍備費のごとき非生産的支出を削って、直接税中心の減税を行うべきであり、また
負担の公平、間接税の比重等について遺憾な点が多く、特に利子所得、配当所得の優遇によって資本蓄積を促進させる効果は疑問であり、ひいては過剰投資の傾向を助長するにすぎないものであるから反対する」との反対意見が述べられ、次いで中川委員より、「
政府案及び
衆議院の修正内容は、ともに現在の経済情勢から見て妥当なものと思う」との
賛成意見が述べられました。
採決の結果、右三法案は、いずれも多数をもって
衆議院送付案
通り可決すべきものと決定いたしました。
次に、
補助金等の
臨時特例等に関する
法律の一部を改正する
法律案(閣法第五〇号)について申し上げます。
本案は、
補助金等の
臨時特例等に関する
法律の有効期限が本年六月三十日までとなっておりまするのを、
昭和三十一年三月三十一日まで延長しようとするものであります。
次に、
補助金等の
臨時特例等に関する
法律の一部を改正する
法律案(閣法第九一号)について申し上げますと、
本案は、国立公園法に基く補助の特例を設けて、同法第五条第三項の規定を
昭和三十
年度に限り適用しないこととしようとするものであります。地方公共団体が国立公園施設を整備する場合は、国立公園法第五条第三項の規定によって、国は整備費の二分の一を補助することとなっておりますが、これは自然、地方
財政に
負担をかけることになり、また一面国の
財政の健全化をはかる必要もありますので、
昭和三十
年度に限り、整備費補助金の支出を取りやめようというのであります。
右二法案の
審議に当りまして、新入学児童に対する教科用図書の給与の停止、公民館
関係補助金の削減、外航船舶建造融資利子補給の停止等の諸
問題について熱心な質疑が行われましたが、詳細は速記録によって御
承知願いたいと存じます。
質疑を終了し、右二法案を一括討論に入りましたところ、平林委員より、「補助金はその効果について異論多く、また種々の
問題が伏在している。従ってこの法案を通すことは慎重を期さねばならぬ。特に質疑に当って新入学児童に対する教科用図書の給与
問題について
政府の具体的な明確な
答弁が得られなかった。この
措置が明確にせられざる限り
本案に反対である」との意見が述べられ、山本委員より、「補助金は
原則的には整理すべきものと考えるが、地方に財源を与えなければ実行不可能のことであるから、中央、地方を通じて
財政の整備をはかるべきである。この点については今後十分検討を願うこととし、さしあたり一ヵ年延長することに
賛成する」との意見が述べられ、天田委員より、「この
法律はその成立の経過からいってあくまで時限法であって、これをさらに一年延長されることになるのは、いわば公約違反である。殊に文部、厚生の両省のごとき弱き面にしわ寄せされたきらいがあるから、
本案に反対である」との意見が述べられ、最後に木村委員より、「
本案は姑息な、零細な文教、保健に
関係のある要求の弱い面に補助金を打ち切って、そうでな一面の補助金にはほとんど手が触れてない。全く本末転倒のものであるので、
本案に反対である」との意見が述べられ、採決の結果、右二法案は、いずれも多数をもって原案
通り可決すべきものと決定いたした次第であります。
以上、御
報告を申し上げます。(
拍手)