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棚橋小虎君 私は
日本社会党を
代表して、
米価問題に関して二、三の
質問を
政府にいたしたいと思います。
政府は、すでに今年度において米穀の
事前売り渡し制を実施することを決定したのでありますが、その後の
政府の
動きを見まするのに、
政府は果して真剣に、
事前売り渡し制の実施を考えているかどうか、はなはだ疑問とせざるを得ないのであります。言うまでもなく、
事前売り渡し制が円滑に実施されるためには、まず
農民が自主的に進んでこれに協力する
態勢がとられなければならないのは言うまでもありません。そのためには、
農民の理解と
納得とを深め、その
制度の適切な
受け入れ態勢を整えるなど、万全の
措置がとられねばならないのでありますが、まず何よりも重大なことは、いかに適正なる
価格をもって
農民から米を買い入れるかということであります。言いかえれば、
農民が喜んで
政府に米を売り渡しできる
価格をすみやかに決定することであります。しかるに、
政府は、当初
植付前に
買い入れ価格を決定すると称しながら、じんぜん今日に至り、その後
河野農林大臣は、たとえ
米価を決定するにしても
暫定米価でよろしい、正式には秋になってきめると言明し、次いで
米価審議会が早急に
米価を決定するようにとの決議を行うに至りまして、再び
米価を
早目にきめる
方針になったようであって、そのための
米価審議会を招集しておきながら、なおかつ
政府案なるものをきめておらないのであります。
政府部内には
予算成立後に延ばそうという
意見も有力であるとのことでありますが、事、
米価に関する限り、
政府の
意見は全く
統一を欠いておると言わなければならないのであります。
政府はなぜこのようにいつまでも
米価について確固たる
態度をおきめにならないのであるか。
政府はこれで果して新しい
管理方式が実施できると考えておるのでありましようか。われわれは、今日予見されるような条件のもとにおける
事前売り渡し制には反対でありますが、
管理方式のいかんにかかわらず、
米価を早期に決定することは、
農家が安んじて
生産にいそしむ上に絶対必要であると考えるものであります。
政府はこの際、すみやかに
米価を決定すべきであって、一体いつおきめになるつもりであるか、まずその点に対してお伺いをいたしたいのであります。
次に、
政府は
生産者米価を一体幾らにするつもりであるか、これが
農民の
最大の
関心事であります。
農民といたしましては、それによって再
生産を十分に保障し、均衡のとれた
生活を維持するに足る
米価を望むことは当然であります。今日までの
供出制度が、完全にその機能を発揮することができなかった大きな理由が、
農民の
納得のいかない低
米価にあったことは明らかであります。従来の
パリティ価格を基礎といたしまして算出された
米価が、ついに
農民の満足をかうに至らなかったのは、それによって再
生産を保障することもできず、また
世間並みの
生活を保障もされなかったからであります。これがために昨年九月の
米価審議会においては、従来のパリティ方式にかわって、
生産費方式によるべきことを決議せられ、その決議に基いて専門委員会が設けられ、ある程度の
報告が
政府になされておるはずであります。
政府は本年新たに
事前売り渡し制を実施するに当って、多数
農民の要望であり、また権威ある
米価審議会の決議でもある、この
生産費方式による
生産者米価の算出
方法を採用される
意思があるかどうか、これをお尋ねいたしたいのであります。
さらに、
政府与党である民主党においては、三十年度産米の
価格を二十八、九両年度の平均
価格の一万二百六十円とし、
政府をしてこれを実施させようとしているとのことであります。このような過去の数字を加えて二で割るというようなやり方は、
便宜主義のはなはだしいものであって、合理的に
国民を
納得せしめるものではないのであります。
米価の算定は、このようなそのときどきの政治的考慮によって恣意的にきめられるものであってはならないのであります。すでに繰り返して申しまする
通り、あくまでも
生産費を十分に償うものとして、一定の根拠の上に打ち立てられた
米価でなければならないのであります。従って
生産費は、単に参酌する程度の従属的に取り扱うべきものではなく、あくまで
生産費を本位に、第一義的に考慮しなければならないものであります。これを抜きにして、
米価を
政府の都合のよいところに落ちつけようとして策を弄するのは、全く
農民を愚弄するものと言わなければならぬのであります。
事前売り渡し制を前にいたしまして、
米価について最も妥当かつ
農民の
納得し得る
価格を打ち出すことも、特に考慮しなければならないこの際において、
政府の
米価決定に対する
態度は、もっと慎重で誠意があり、かつ真剣なるものでなければならないと思うのであります。
政府は、
米価審議会の決議や専門委員会の
報告にもかかわらず、御都合主義によって漫然従来の算定方式をそのまま踏襲し、あるいは過去の実績を基準にする等の安易な
措置でお茶を濁す考えであるのか、その点お伺いいたしたいのであります。
聞くところによれば、大蔵
大臣はかつて閣議において、
生産者米価を現行
価格以下に引き下げることを主張せられ、また先ごろ大蔵事務当局の見解として、三十年
米価は従来
通り価格パリティ方式によって算出し、奨励金に該当する分については、昨年並みに支出することとして、石九千六百二十七円を主張しているようであります。これは減収加算を加えた二十九年の
米価九千九百九十九円を下回ること実に三百七十二円でありまして、
農民にとりましては、まことに三斗の冷水を浴びせられるの感があるのであります。また最近では、食管会計内において操作し得る範囲内ならばよろしいというように言われているのでありますが、この大蔵
大臣なり、大蔵事務当局なりの
米価に対する考え方は、決して米穀の再
生産や
農民の
生活に考慮を払ってなされたものであるということはできません。ただ国の財政が許さない、食管会計が赤字となる、こういう財政的理由からだけであります。さらに一歩突っ込んで言えば、資本主義的な
経済の発展をはかるためには、
米価を上げれば都合が悪いという資本家本位の打算から打ち出されたものであり、さらに憶測を加えるならば、
農民はまだまだ景気がよ過ぎるから、その消費を抑制する必要があるという偏見から編み出されたものであります。
農林大臣は、財政当局のこのような米の
生産事情や、また
農家経営の実態から遊離した
米価算定に関する考え方に対して、いかなる見解を持っておいでになるか、お伺いしたいのであります。また大蔵
大臣は、今でもかような考えを正しいとお考えになっているかどうか、この点お伺いいたします。
米価の決定に当って、
政府がかたわら財政的支出能力について考慮を払うことは当然でありましょう。三十年度予算において
政府が計上したいわゆる予算
米価は石九千七百三十九円であります。それによって現行消費者
価格との間には、管理費を加えて約百三十億円の赤字が生まれる。これを他の収入益でカバーすることになっているが、さきに決定した減収加算分三十三億円も合せて食管会計のワク内で操作するとのことでありますから、これ以上の支出をするとすれば、一般会計からの繰り入れによるか、あるいは奇想天外の妙手を編み出す以外、どこにも財源はないはすであります。
政府は、どうやらこの妙手の発見に苦心されているようでありますが、われわれは、一般会計において防衛費や資本家救済の傾向の強い補給金、補助金がふんだんに使われている点を指摘いたしまして、これらの費目を節減しても、
国民の生命のかてである主食については、二重
価格制度をとって、
生産者米価の引き上げを実現すべきものであると考えるのであります。この点については、民主党に参加した旧改進党も同じ
意見であったのであります。民主党になってから旧改進党の諸君がこの持論を放棄したということは、まだ寡聞にして私は聞いておらぬのであります。ところで、食管会計の現状が、すでに
生産者
価格と消費者
価格との開きを認めている以上、形式的には一般会計の負担でないというだけのことで、明らかに二重
価格になっているのであります。結局何らかの形で消費者が負担するのでありまして、消費者
価格を上げないと言いながら、酒米の値上げをはかり、輸入食糧の低落で当然安く配給せられるべきものを据え置いて、収益の増加をはかるというのでは、これは消費者
価格の据え置きは、明らかに消費者を欺瞞するものであって、むしろ一般会計からの繰り入れを行う方が
国民の負担の均衡からいって、はるかに当を得たものであると考えます。この際、大蔵
大臣及び
農林大臣の二重
米価に対するお考えを承わるとともに、特に大蔵
大臣に対しましては、
政府が現在とっている財政
方針からして、
生産者米価引き上げの余地が、いかなる限度まで許されるかについて、はっきりその所信を承わりたいのであります。
要するに、
政府が従来の低
米価政策を維持しながら、
事前売り渡し制を実施しようとするのは、
事前売り渡し制の完全なる実施をねらっているのではなくて、むしろその崩壊を予想し、ここに河野農相年来の主張である米の統制撤廃を一挙に実現しようとする魂胆であると考えられないことはないのであります。もし
事前売り渡し制が、所期の目的を達成することができず、失敗に帰したならば、もはやこれを再び従前の統制方式に引き戻すことはとうてい不可能であります。中途半端な統制は、特に
生産者の立場を無視した統制は、おそかれ早かれ崩壊すべき運命にあると言わなければなりません。今日、事別売り渡し制の実施に当って、
価格について特別の考慮を払うことをせず、とうてい
農民の協力を期待し得ない水準を固持するがごとき
政府の
態度は、まさに意識的に統制の放棄を企図していると言わざるを得ないのでありまあう。輸入米を含めて月間平均のわずか十五日の配給しか保障されていない今日の食糧需給のもとにおいて統制の崩壊は直ちに
国民生活を不安に陥れ、社会的混乱に導くことは明らかであります。
政府は、現在の米穀統制をあくまで維持していくつもりであるか、それとも統制を撤廃しようとしているのであるか、これを明らかにされたいのであります。
以上六点について
政府当局の責任ある御
答弁をお願いいたす次第であります。(
拍手)
〔
国務大臣河野一郎君
登壇〕