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1955-06-20 第22回国会 参議院 本会議 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年六月二十日(月曜日)    午前十時三十四分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第二十五号   昭和三十年六月二十日    午前十時開議  第一 日本放送協会経営委員会委員任命に関する件  第二 地方財政再建促進特別措置法案地方自治法の一部を改正する法律案及び地方自治法の一部を改正する法律施行に伴う関係法律整理に関する法律案趣旨説明)     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 河井彌八

    議長河井彌八君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。      —————・—————
  3. 河井彌八

    議長河井彌八君) これより本日の会議を開きます。  日程第一、日本放送協会経営委員会委員任命に関する件を議題といたします。  五月三十一日、内閣総理大臣から、放送法第十六条第一項の規定により、遠藤後一君、佐々木長治君、三輪常次郎君を日本放送協会経営委員会委員任命することについて、本院の同意を得たい旨の申し出がございました。  本件同意することに賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立
  4. 河井彌八

    議長河井彌八君) 過半数と認めます。よって本件は、同意することに決しました。      ─────・─────
  5. 河井彌八

    議長河井彌八君) 日程第二、地方財政再建促進特別措置法案地方自治法の一部を改正する法律案及び地方自治法の一部を改正する法律施行に伴う関係法律整理に関する法律案趣旨説明)  以上の三案について、国会法第五十六条の二の規定により、内閣からその趣旨説明を求めます。川島国務大臣。    〔国務大臣川島正次郎登壇拍手
  6. 川島正次郎

    国務大臣川島正次郎君) ただいま提案せられました地方財政再建促進特別措置法案につきまして、その提案理由及び内容の概略を御説明申し上げます。  地方財政は漸次窮状を加え、昭和二十八年度決算におきましては、道府県の約八割、市の約七割、町村の約二割に達する千七百二十四団体実質上の赤字決算を行なっている状況であり、昭和二十九年度におきましても、なお実質赤字額は増加せざるを得ない状況であります。  これらの累増した赤字は、地方団体財政を圧迫し、ますます地方財政の苦境を招くことになるのでありまして、政府はこの事態を打開するため、とりあえずすでに生じた赤字解消整理重点を置くこととし、地方制度課査会答申及び前年度国会において継続審議になりました地方財政再建整備法案の構想にのっとり、赤字整理を行うことといたしたのであります。これが本法案提案する理由であります。  次に、本法案内容につきまして、御説明申し上げます。赤字地方団体赤字整理は、昭和二十九年度において赤字を生じた地方団体が、その議会議決に基き財政再建計画を定め、自治庁長官の承認を得た場合において、財政再建計画の誠実な実行を条件として、特に歳入欠陥補てん債発行を認めるという方法により行うことといたしましたが、このような方式による財政再建を行うといなとは、赤字地方団体が自主的に決定することといたしております。  まず、財政再建計画でありますが、財政再建計画は、歳入欠陥補てん債発行により過去に生じた赤字を一応たな上げし、事後における財政計画的運営によってその元利金を償還し、おおむね七年度以内に収支のバランスを回復することを目的として作成することといたしたのでありますが、その樹立に当っては、既定経費節減既存収入確保重点を置き、これによってもなお、財政再建計画が立たないときは、現行制度ワク内において租税の増収をはかることといたしました。この場合歳入欠陥補てん債は、財政再建を行う団体、すなわち財政再建団体実質赤字らち必要額について認めるものとし、別に財政再建計画に基いて支払う退職金支出に充てるため、地方債発行を許すこととするとともに、これら地方債いわゆる財政再建債のうち公募分については、年六分五厘をこえ年八分五厘に達するまでの部分について、国が利子補給を行うこととするほか、財政再建債消化促進審議会を設け、公募分消化について遺憾なきを期するとともに、右による公募債はなるべくすみやかに政府資金に借りかえることといたしました。  次に、財政再建計画の円滑な実施を担保する等の見地から、財政再建団体における長と各種行政委員会、長と議会との関係等につきまして、若干の特例措置を設けることといたしました。すなわち、財政再建団体においては、他の法令規定にかかわらず、部局等の数を減じ、あるいは長の部局職員委員会等職員とを兼ねさせて、行政簡素化をはかることができるものとし、また、府県教育委員会管下市町村教育委員会との間の調整措置を講じ、長は予算調整については、財政再建計画に従わねばならないものとするとともに、財政再建計画の策定及び実施に閣して長の提案が根本的に議会同意を得られない場合に、両者の間の意見の調整をはかるために必要な規定を設けることといたしたのであります。  さらに財政再建団体中、財政再建に長期を要する団体等については、その住民福祉確保を考慮し、このような団体の行う国庫補助負担事業のうち一定のものについては、地方負担軽減の道を開き、所要事業施行に遺憾のないよう措置することといたしたのであります。  第四に、財政再建団体については、その財政再建に関し、特に政府赤字債の引き受け、利子補給等各種の便宜を供与していることにかんがみ、財政再建団体財政再建計画に反する財政運営を行なった場合に限り、これを是正するために、政府において必要な措置をとることができるものといたしました。  なお、赤字地方団体の中でも、その赤字額の少額のもの等におきましては、その意思により自主的に財政再建措置をとる団体もあるのでありますが、これらの団体につきましても、せっかくの財政再建計画の達成を可能ならしめるよう各種の面において配慮する必要がありますので、昭和二十九年度において赤字を生じた団体をも含め、赤字地方団体が自主的に財政再建を行う場合においては、歳入欠陥補てん債発行監督及び国庫補助負担事業についての特例規定を除き、財政再建団体に関する諸規定を準用することといたしました。  以上のほか、特に最近の地方財政事情にかんがみ、その窮状の打開に資するため、一般地方団体は、当分の間地方債をもって退職金支払財源に当てることができるものとするとともに、地方団体が国またはその機関に対する寄付金等支出することは、特殊の場合を除き、当分の間禁止することとするなどの特例措置を講ずることといたしたいのであります。  次に、地方自治法の一部を改正する法律案について申し上げます。  地方制度の改革につきましては、昭和二十八年十月、地方制度調査会から、とりあえず当面とるべき措置に関して答申がなされました。その答申の大部分は、昨年の国会実現を見たのでありますが、地方自治法に関する部分は、いまだ実現を見ていないので、これを中心として地方行財政現状にかんがみ、さらに検討を加え、もって民主的でしかも合理的かつ能率的な自治運営を確立して、行政経費節減行政効果の充実とをはかり、真に住民福祉を積極的に向上せしめるような地方自治の健全かつ着実な発展を期したいと存ずるのであります。これがため、都道府県市町村との地位権能を明らかにし、議決機関及び執行機関を通じて、地方公共団体組織及び運営適正合理化簡素能率化をはかり、国と地方公共団体及び地方公共団体相互間の関係に関する規定を整備し、大都市に関する事務配分特例を設け、その他必要な改正をいたしたいと考えております。  以下改正法案の主要な事項につきまして概要を御説明申し上げます。  第一は、都道府県市町村との地位権能を明らかにしたいのであります。現行地方自治法上、都道府県及び市町村は、ひとしく普通地方公共団体として、その地位権能に区別が認められていない結果、ややもすれば両者の適正な関係について理解を欠くうらみが少くなかったのでございます。しかしながら市町村は基礎的な地方公共団体でありますが、都道府県は、市町村を包括し、市町村と国との中間に位する広域の地方公共団体でありまして、両者地位権能はおのずから異なるものがあり、それぞれその権能責任とを分担しながら相互に相協力すべきものと考えられますので、都道府県処理すべき事務市町村処理すべき事務との原則を明らかにし、相互に競合しないようにいたしたいのであります。  第二に、議決機関及び執行機関を通じて、地方公共団体組織及び運営の適正と合理化及び簡素能率化をはかりたいと考えております。まず、地方公共団体議会について申し上げますると、その一は、現在定例会臨時会制度をとっておりますが、国会同様に通常会臨時会制度に改め、一般予算その他一般議案を包括的に審議すべき通常会のほかは、必要に応じ随時臨時会を招集するものとし、なお、議員から招集の請求があったときには、長は一定期間内に招集しなければならないとしようとするものであります。その二は、常任委員会は、都道府県及び人口五万以上の市の議会条例で置くことができるものとし、その運営が、特殊行政部門の偏重に堕することなく総合的に行われるように、現行行政部門ごとに置く縦割り方式を改めて、法規、歳入歳出決算一般議案及び請願等横割り方式とし、その他の地方公共団体議会は、必要な事項について特別委員会を設けて運営することが適当であるとするものであります。その三は、議員当該地方公共団体に対する請負については、長と同様の規制を加え、その四は、地方公共団体の長の不信任議決成立要件議員定数過半数とし、長からも信任を求める議案の提出ができるようにして、長と議会との間の調整を適正ならしめようとするものであります。  次に、地方公共団体執行機関について申し上げますと、その一は、都道府県局部現状は複雑に過ぎると認められますので、法定数以上に局部を設けようとするときは、あらかじめ内閣総理大臣に協議するものとし、その簡素化をはかりたいと考えております。その二は、各種委員会または委員事務局、またはその管理に属する機関を通じて、組織予算執行財産管理等内部管理に属する事務について総合的な運営確保することができるようにするために、長に最小限度調整的機能を与えるようにいたしたいと考えております。その三は、地方公共団体行政運営の公正を確保するために、監査委員制度につきまして、監査機能を充実するに必要な改正を加えたいと存じます。  第三は、国と地方公共団体及び地方公共団体相互間の関係に関する規定を整備しようとするものでありますが、その一は、法令違反または義務懈怠等の真にやむを得ない場合に、地方公共団体の反省を求める意味合いにおいて、内閣総理大臣または都道府県知事がその是正または改善のため必要な措置を講ずることを求めることができるものといたしたいのであります。その二は、国の公務員都道府県公務員、または義務教育職員との間において、恩給等支給の基礎となる在職期間の通算の措置を講ずることといたしたいと考えております。  第四は、大都市及びその機関に対して事務配分特例を設けたいと考えております。大都市制度については、かねて特別市問題をめぐり論議が多かったのでありますが、現在の府県制度のもとにおいては、適正な事務配分を行うことにより、府県との間の調整をはかることが最も適切な解決と考えられますので、政令で指定する人口五十万以上の指定都市においては、社会福祉保健衛生建築都市計画等市民生活に直結した実施事務については、都道府県またはその機関権限に属する事務は、政令の定めるところにより、市またはその機関において処理するものとし、なお、指定都市に関する行政監督について特例を設けたいと考えております。  そのほか、地方自治法中の行政争訟については、訴願前置の建前をとることとし、また給与その他の給付及び財務運営合理化のため規定を整備する等、地方行政運営合理化するために必要と認められる若干の改正をいたしたいと存じております。  なお、右の地方自治法改正中、指定都市についてその特例その他一、二の改正に伴いまして、関係法律中の規定整理する必要がありますので、地方自治法の一部を改正する法律施行に伴う関係法律整理に関する法律案によりまして、一括整理いたしたいと考えております。  以上が三法律案提案趣旨及び内容概要でございます。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに可決あらんことをお願いいたします。
  7. 河井彌八

    議長河井彌八君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。高橋進太郎君。    〔高橋進太郎登壇拍手
  8. 高橋進太郎

    高橋進太郎君 ただいま提案趣旨説明のありました地方財政再建促進特別措置法案地方自治法の一部を改正する法律案及び地方自治法一部を改正する法律施行に伴う関係法律整理に関する法律案に対しまして、総理大臣並びに関係者大臣に御質問を申し上げます。  まず第一に、両法案政治民主化に反するものではないかという点でございます。私が申し上げるまでもなく、民主政治の要諦は、リンカーンの言葉にありまする通り人民の、人民のための、そうして人民による政治でなければなりません。この中でも、人民による政治が最もその根幹をなすものと考えます。人民の、あるいは人民のための政治は、あるいは民衆政治とし、あるいは賢人政治といたしまして、必ずしも民主政治のみの固有要素ではないと存じます。しかし人民による政治こそは、民主政治の不可欠の要素であり、民主政治の欠くことのできない要件と考えるものであります。特に住民生活に直結する地方自治団体運営こそは、端的に人民によるところの政治であり行政でなければなりません。終戦後民主憲法としてわが国憲法が、特に地方自治のために一章を設けたゆえんのものも、地方自治こそが民主政治運営根幹であり、基盤であって、村から日本の夜が明けるということが、わが国民主政治への合言葉でなければならぬと存ずるのであります。従って民主政治家をもって日ごろ任ずる鳩山総理は、地方自治こそ最も力を入れねばならぬ問題であると思うのであります。(拍手)しかるに今回提案となりました地方自治法の一部を改正する法律案を見まするに、まず地方議会会期は、従来四回の定例会を開くべきを、県会にあっては年一回、しかもその会期は三十日、市町村にあっては年一回、五日ないし十五日となっております。先ほども申し上げました通り地方自治団体、特に市町村住民に直結した政治行政を行うところであり、日常の諸問題が直ちに市町村行政に直結するところに意味があると存ずるものでございます。しかるに年一回、しかも五日ないし十五日の会期で、どうして住民に直結する政治行政が行われることができるでございましょうか。もちろん立案者は、それは定例会の問題で、要求があれば何回でも開けると言われるでありましょう。しかし私は、地方自治建前より根本理念を論じているものでありまして、国会ですら通常国会会期は百五十日間とありますのに、住民生活に直結した日常生活論議行政すべき市町村議会が、年一回、五日ないし十五日の期間で開会すれば事足りるとする政府地方自治に対する考え方を問題にいたしたいと思うのであります。これならばむしろ端的に、当分の間地方自治団体議会は開かないと規定せられた方が簡明であると思うのであります。(拍手)  その他常任委員会制度をこまかく規定したり、県執行部部制の問題を法的に規定し、どこに地方自治への自主性を尊重したと言えるのでございましょう。部制の問題でも、各県は、現在はあるいは四部制をとり、あるいは簡素にするなど、地方片々行政事務運営考え方によって、自主的な条例で定めております。もちろん県によっては部制の多いところもありましょう。しかしこれはむしろ中央との関係において制定せられておりますので、もし粛正するとなれば、中央各省と懇談し、その話し合いの方針によって十分適当なる調整ができると存ずるのでございます。せっかく常任委員会簡素化やあるいは部制簡素化等によって、行政簡素化するという観点からは、まことに法の趣旨はよいといたしましても、法律によるがごときは、いたずらに地方自主性を傷つけるものと言わなければなりません。(拍手)かくのごとき観点から、地方自治法の一部を改正する本法案は、地方自治民主的運営を傷つけると思うのでございますが、総理並びに自治庁長官の御見解を承わりたいと存ずるものであります。  次に、本法案におきましては、新たに総理大臣府県知事に対し、各府県知事市町村に対し、おのおの総括的に監督権を持ち得るよう規定してございます。これは自主制度に対する根本的な変革であると言わなければなりません。現在は法令規定によって、いわゆる国家団体またはその長に権限委任、もしくは機関委任を行なったときのみ法令監督権を持ち得ることといたしておりますが、権限委任上これは当然な措置であり、なお、地方自治団体固有事務に対しては、総理大臣または各省大臣は、単に技術的助言、または勧告をすることができるに過ぎません。これは地方自治制度建前として、各首長がおのおの公選制をとり、県民なり市町村民に対し直接の責任を負う地方自治制度上当然の帰結というべきでございます。しかるに、今回提案自治法の一部を改正する法律案によりますれば、その第二百四十六条の二を創設いたしまして、「内閣総理大臣又は都道府県知事は、普通地方公共団体事務処理又はその長の事務管理及び執行法令規定違反し、又は確保すべき収入を不当に確保せず、不当に経費支出し、若しくは不当に財産を処分する等著しく事務の適正な執行を欠き、且つ、明らかに公益を害しているものがあると認めるときは、当該普通地方公共団体又はその長に対し、その事務処理又は管理及び執行について違反是正又は改善のため必要な措置を講ずべきことを求めることができる。」と書いてございます。法文の形としては、公益に反したり不当な支出があった場合に限って監督権を行使しておるようでございますが、一体公益に反しまたは不当と断ずる判定者は、中央官庁であり府県知事であれば、どうして自治干渉の弊が防げましょうか。それよりもこうした監督規定の創設により、戦後、地方制度がせっかく人民による自治制度住民生活に直結する民主的地方自治団体として誕生したものが、再び戦前のごとき内務省または府県知事指揮下不完全自治制団体となり、おのおの地方団体首長は、各県民または市町村民に責務を負うことなく、監督官庁責任を負うがごとき官治的不完全自治制度になり、わが国民主的地方自治制度は根本的に破壊せられんとするゆゆしき大事と言わねばなりませんが、この点に対する総理並びに自治庁長官の御見解のほどをお伺いいたしたい。  なお、本法案中には、県と市町村との事務配分の問題がございます。この問題は、根本的には国と地方自治団体事務配分を明確にし、地方自治責任体制を整えるという前提に立って初めて意味があるのであり、せっかく国と地方団体との事務配分についてはさきに神戸勧告案等がありまするのに、何らこの点に触れるところなく、県と市町村のみの事務配分を法文化し、地方自治団体相互間にかえって混乱を誘発するおそれがあると思いますが、いかがでございましょうか。何ゆえに同時に、いな、先に国と地方団体との事務配分を法定化しないのか、これが中央地方行政事務混乱に陥れるところの大きな原因でもあると同時に、あとで申し上げまする地方財政窮乏化の大きな原因でもあるのであります。この点に対する自治庁長官の御見解を伺いたいと存じます。  次に、地方財政再建促進特別措置法案についてお尋ねいたします。  地方財政窮乏化が唱えられ、何らかの手段方法を講じ、その解決をみねばならないことは、われわれも承知いたしておるところでございます。もちろん、これが窮乏化には、地方自治団体財政運営の拙劣によるものもあり、地方団体に相当の責任のあることはいなめない事実であります。しかし地方財政窮乏は、これを地方のみの責任とすることには、窮乏を招来した原因実情から、私は酷であると断ぜざるを得ません。現在わが国行政運営の実態を見まするに、あまりにも中央集権的運営であって、わずかな補助金でも、あるいは些細な行政行為の許可や認可であっても、中央でなければ解決しない状態であります。しかも地方には出先機関が、たとえば私の郷里仙台だけでも九十以上を数えるような状態でありまして、こうした煩瑣な各省官治行政の網の中で、どうして地方自治団体が簡素な経費のかからない行政ができるでございましょうか。わずかな起債認可を受けるにいたしましても、県だ、地方財務部だ、地区財務局だ、また自治庁だ、関係省だ、大蔵省だと歩き回らなければ解決しないような実情では、なかなかコストの安い行政は無理であります。しかも最近は中央の一兆億円の予算ワクしわ寄せがすべて地方自治団体にかかって参ります。たとえば公務員期末手当支給の問題でも、地方公務員地方公務員であって、国家公務員ではないから、手当を出すも出さぬも、それはかつてだとばかりに、その財源的手当は考えておりません。しかし地方当局の身になってみますれば、同じ県庁内に国家公務員地方公務員と机を並べており、国家公務員に出して、地方公務員に出さないわけには参りませんから、借金をしても国と同様の手当をしなければならない実情であります。  また、このごろは国の補助金が不十分でございますから、たとえば簡易水道でも、あるいは国保の診療所建築補助でも、不足部分地方補助によってそのつけ足しをいたしております。そんならそうした補足補助は出さなければよいではないかといっても、そうした補足補助を組んだ県はなかなか熱意があるといって、国からの補助対象がよけい認められるという実情でございます。それで地方としては背に腹はかえられず、やむを得ない支出をいたしておる実情であります。特に気の毒なのは町村で、昨今のように県が赤字であれば、たとえば国からの補助県道は、県の負担部分負担した町村のみの県道が取り上げられ、寄付形式で認めるといろやり方をしておるところもあるので、末端の町村ではあらゆる財政しわ寄せを一手に引き受け、結局は町村民寄付なり、赤字という形式となって表われてくるのでございます。なおしわ寄せの一例は国からの補助職員であります。現在県の例を取りますれば、教職員や警察官を除いても、一般職員の約六割五分はいわゆるひもつき職員として、各種法令または各省の若干の補助によって設置を要請せられておる職員であります。ところがその補助が二分の一ないし三分の二となっておりまするが、定額はおろか、実額支給額の五分の一にも足りず、旅費や超勤などはほとんど計上されておりませんから、その不足部分はすべて地方団体負担となり、しかも元来二分の一補助職員ならば、同額のみが財政需要として計算されておる関係上、これはすべて赤字の根源となっておるのであります。  次にひどいのは寄付金でございます。各官庁建築官舎などの設営が国の予算としては不十分であるので、敷地の寄付官舎寄付建前寄付などは日常の茶飯事で、その寄付がなければ設置してもらえないというところに地方側の弱さがあるのであります。なお財政的には無理な六三制度実施で、市町村の学校の建築児童増加に伴う教室の増築、老朽校舎の建て直し等に対しまして、国の補助起債についての単価の過小見積り、坪数の切り捨て的な見積り等で、いかに市町村財政的に青息吐息であるかは御存じの通りだと存じます。このように数えあげれば、歳出面地方団体赤字原因がどこにあるかがほぼ御了察できると存じます。  これを歳入面について考えてみまするに、現在の税体系がこれまたあまりにも中央集権的であって、めぼしい税源はすべて国で押え、遊興税とか、固定資産税とか、徴税費のかかるものが財源となっているので、なかなか身にならないし、またその地方団体別の差がきわめて不均等でありまして、せめて徴税費のかからないタバコや酒消費税、砂糖消費税等でも人口割りに地方財源となっておれば、もう少し財源的には息がつけると思うのでございまするが、そこで質問の第一点は、かくのごとく地方財政赤字がこんな実情において発生したものでございまするから、国はもっとあたたかい心づかいでこれを再建整備すべきであるにかかわらず、今回提案せられました法案を見まするに、全く銀行家の債権取立整理案か、破算財団の清算方式のような感じがいたすのであります。いな銀行の取立案や破産財団の清算でも、元金債権の何割か、少なくとも利子くらいは最小限度棒引きにするのが常なのに、この法案では利子も元金も全部取り立てて、もちろんわずかに六分五厘をこえる部分は二分程度利子補給をするようですが、これは自治団体にするのでなく、金融業者の協力を得るためにするので、あまり自治団体に対する援助とはならないと思います。加うるに、このような元金なり、利子なりにはほとんど財政的援助もしないにかかわらず、その整理期間の七カ年間は、その県なり、あるいは市町村における税金の取り立てをやかましく言われたり、歳入歳出両面にわたって厳重なる中央監督が強化され、手も足も出ないように地方団体の自主的な行政事務を縛って行こうとするものであります。これでは本法案の適用を受けた地方団体は、地方団体とは名ばかりであって、その期間中は赤字整理返済機関に堕するのではございませんか、この点自治庁長官にお伺いいたしたいと存じます。  次にお伺いいたしたいのは、なぜ政府は、もっと地方団体赤字発生の根源を究明して、よって来たるところの根源について抜本的な施策の併用なく、いたずらに赤字解消を理由に、中央官庁監督権強化を骨子とする法案によらんとするかをお伺いしたい。すなわち、これは中央監督権強化と、自治体を半身不随的な存在と化して、一つは旧内務省的中央集権化の先駆とし、かつ知事官選への道を開かんとする意図を含んでいるのではないかどうかをお伺いしたい。(拍手)また赤字理由地方議会機能を弱め、各種委員会の切り捨てごめん的な法規は、赤字地方団体は、地方自治団体としては取り扱わないというのでありますか、どうか。これではまるで借金のある貧乏人は民主政治に参画ができないということと同じでないかどうか、この点に対する御所見を伺いたい。これは要するに、赤字赤字として、もっと温情的にそのよって来たったところの原因を究明し、少くとも半額ぐらいは政府で心配し、利子補給を行う、他方赤字地方自治団体としての運営は、これを切り離して考うべきであって、もし委員会の統合整理行政簡素化等について考慮の要があるとするならば、地方制度全体の問題として考うべきであると考えまするが、この点いかがでございましょうか。特に温情的なそうした措置について大蔵大臣はどう考えておられるかどうか、その点をお伺いしたいと存じます。なお、地方財政は三十年度のみの予算にすでに約三百億近いところの赤字を含んでおりますが、今回の再建促進法によっては、これらの点は何ら解決されてございませんが、これらの処理方法については、大蔵大臣並びに自治庁長官はどう考えているか、お伺いいたしたい。以上申し上げました地方財政のガンとも言うべき税制並びに中央官庁行政のやり方では、いつまでたっても赤字発生の原因となりますが、この抜本的な地方財政整備はいかにして取り扱われるのであるか、大蔵大臣並びに自治庁長官よりお伺いしたい。  要するに、両法案は日ごろ民主政治を標榜する鳩山内閣提案としては、きわめて私は似つかわしくないものでございまして、もし両法案を通じ、納得の行く条項を拾うならば、地方国家公務員を通じての恩給通算の規定を置いたり、あるいは寄付制限等の規定を置き、あるいは各種委員会事務局簡素化規定等の若干事務簡素化ぐらいのものでありまして、地方自治並びに地方財政実情から見れば、もっともっと根本的な施策の大綱を忘れ、赤字という、しかもその原因の大きな部分中央にある赤字という現象形体にとらわれ、地方自治の近代的民主政治運営上果たすべきところの、その大きな職能の育成をうち忘れたところの官僚的な法案であると断ぜざるを得ないのでございまするが、総理並びに関係大臣の御所見を伺いたいと存ずるのであります。(拍手)    〔国務大臣鳩山一郎君登壇拍手
  9. 鳩山一郎

    国務大臣(鳩山一郎君) 高橋君のただいまの御質問につきましては、大体自治庁長官から答弁をしてもらいます。  私からは一言申し上げておきますが、なんですか、このたび提案法律は、自治の精神を破るものだというような御質疑でありましたが、私どもは、地方自治の健全な育成をはかるために最善の努力を尽したというように思っておりまして、この考え方の違いますことはまことに残念でございます。地方財政窮乏の根本的な改革は、もとより必要と存じます。しかしこのたび提出した法案は、赤字が累積いたしましたのをとりあえず応急の措置で対処したのでありまして、将来の赤字につきましては、根本的な検討をしなくてはならないのはもとより当然なことであります。  あとは、自治長官から答弁をしてもらいます。私はこれをもって私の答弁といたします。    〔国務大臣川島正次郎登壇
  10. 川島正次郎

    国務大臣川島正次郎君) 高橋さんから、今度の自治法改正案は、政治民主化に反するのではないかという御議論のその例として、議会に対する権限の縮小、執行部に対する部局の圧縮等について御質問があったのでありまするが、議会会期につきましては、現在は年四回定時に開きますのを、今回の改正案におきましては、県会におきましては、通常会は一回三十日、市町村におきましては、その大小によって違うのでありまするが、五日ないし十五日といたしまして、大体年度の予算を中心とした総括的の審議をやらせる、そのほか必要によりましては、定員の四分の一の要求があれば、長は必ず議会を招集しなければならない。しかもその会期は、議会においてきめるのだ、こういう規定でありまして、国会規定と同じような方式にするのでありまして、決して議会を無視するという態度ではないのでありまして、これが地方議会運営上きわめてほんとうの姿だと、かように考えておるわけであります。ことに御議論のありました常任委員会制度でありまするが、現在の常任委員会は、大都市からして末端の町村に至るまで、ことごとく行政部門別に設けております。土本委員会、農業委員会、商工委員会その他行政部門別に設けておりまして、これがややともしますると、割拠主義になり、いわゆる官庁内のセクショナリズムを招来いたしまして、そのために予算の膨張をいたすという実例が多々あるのであります。そこでこの行政部門別の委員会制度を、これをよして、いわゆる横割りにして、歳入委員会歳出委員会などの形に直して、議員というものが全部の事務関係ができるように、こうする方がほんとうの地方自治に寄与するやり方だと、かように考えまして、常任委員会を全部よすのではなくて、今の縦割りを横割りにしようというのでありまして、これは最もいい改正だと私どもは信じておるのであります。執行部の縮小につきましても、各府県とも、現在では部局の過大に悩んでおりまして、これを法制的に縮小いたしまして、言いかえますれば、今度の地方自治法改正は、地方政治合理化と、もう一つは地方財政の健全化の二つの目的でありまして、議会に対しても執行部に対しても、また行政委員会に対しても、各方面に対しましてある程度の改正を加えるという考え方であります。今度の改正によりまして、監督規定が強化されたというお話でありまするが、従来の地方自治法におきましても、内閣総理大臣府県に対し、また知事は市町村に対しまして助言、勧告規定はあるのでございますが、これを直しまして、地方公共団体が現実に違法をやりましたり、あるいは義務を欠いたりした場合には、その是正を求めることができると、こうした程度でありまして、決してこれを強要しようというのではないのでございます。県と市町村事務配分につきましては、現在の自治体が、都道府県も完全自治体であり、また市町村も完全自治体でありまして、そこに自治行政の二重な行政が行えるところに、いろいろの問題が起るのでございまして、ある程度の仕事は、これを漸次府県から市町村に委譲することが適当だと考え、また市町村合併等も推進されている現状にかんがみまして、こうした修正を加えようといたしておるのであります。  また再建整備の問題でありまするが、今日地方が困っているのは、二十八年度において四百六十億の赤字が出ております。二十九年度はまだ決算ができませんが、大体推定では百二十億程度の赤字が出ると考えられ、五百八十億の赤字というものが、これが地方財政に対する重圧となりまして、資金繰りに困っているのでありまするからして、これをとりあえず低利長期にたな上げしますれば、地方財政の資金繰りはきわめて楽になるのでありまして、俸給の遅払い、その他につきましても、これを解消し得るのでありまするからして、どうしてもこの際は、ただいま御審議を願いますところの地方財政再建促進法の成立によりまして、この累積した赤字をたな上げするということが絶対に必要だという確信に立っております。その他今後の赤字が出ないようにする点について、いろいろ御議論がございまして、補助金の率並びに単価の修正、寄附金等をよすということについては、いずれもごもっともな御意見でありまして、ことごとくこれを実行に移そうといたしまして、その一部は法案の中に盛っておるわけでありまして、今度の改正によりまして、再び知事官選を招くような意図があるかということについては、それは絶対にないということをここに申し上げておく次第であります。    〔国務大臣一萬田尚登君登壇
  11. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 地方財政の今日の窮乏につきまして、お話のように、非常に原因地方にもありましょうし、また国との関係においても生じておると思います。それでこれは抜本的にこの原因を調査究明いたしまして、そしてそれに基いて地方財政の建て直しをやるべきだと考えておるのであります。ただ今日非常に窮乏しておるから、すぐに国から手を差し伸ぶれば、事が解決するというような事態ではないように思うのであります。そういうような究明したのちにおきまして、たとえば税等については、地方税と国税との配分について、近く創設を予定いたしておりまする税制調査会というものにかけまして、十分今後適正な配分を検討してみたい、かようにも考えておる。三十年度におきましては、できるだけの税の財源を差し上げたのであります。また赤字につきましては、先ほどから自治庁長官がお話申し上げましたように、とりあえずこれはたな上げする措置をとったのであります。むろんこれは抜本的なものではありませんが、今日の事態においてやむを得ず一応こういうたな上げの措置をとっておる、そして地方財政に対する圧迫はできるだけ軽くいたしておる、かようにいたしておるわけで、決して地方自治団体に対しまして国が冷淡であるとか冷たいという意味じゃありません。できるだけあたたかい心で手を差し伸べておるつもりであります。    〔高橋進太郎君発言の許可を求む〕
  12. 河井彌八

    議長河井彌八君) 高橋君。    〔高橋進太郎登壇拍手
  13. 高橋進太郎

    高橋進太郎君 実は私は、再質問に立ちたくなかったのでございまするが、どうも川島長官の御答弁を聞いておりますと、私の申し上げたのを故意に曲解せられたごとき感をいだきましたので、どうも民主党内閣になってみますると、先般の予算委員会では農林大臣が人の話を曲解したり、どうも曲解が多いような点がございまして、この点一つ、曲解せずにお聞きを願いたいと思うのであります。  私の申し上げました第一点は、たとえば会期定例会の問題であります。私の申し上げましたのは、従来四回あったのを特に町村のごときを年一回として、この定例会を五日ないし十五日にするというところに問題があると申し上げたのであります。ところが長官は、それは国会と同じように年に一回開くので、あとは臨時会は今回でも開けるじゃないかと、こう言いまするが、国会定例会が、百五十日あるのです。一年の約半分が大体議会の開会中であります。従ってそのあとで一回ないし二回の臨時国会を開くということは、これは考えられるのであります。しかしながら三百六十五日のうちわずか五日か十五日で地方議会定例会を済ませるという法のそうした考え方そのものが、私は地方の自治体というものの何ら民主的な運用を考えていないじゃないかということを申し上げたのでありまして、従ってそれを定例会が開けるからとか、あるいは国会が一回だから同じように一回でいいじゃないかということは、私はこれは議論にならぬと思うのであります。従ってその点についての長官の明快なる一つ御回答を願いたいと思います。  次に、常任委員会の問題でございまするが、私もこれは横割りがいいとか縦割りがいいとか申し上げたのではありません。すなわち運営なり事務簡素化趣旨はまことにけっこうですと申し上げたのです。しかしながらそうした縦割りにするか横割りにするか、そうしたことは、現在各県の条例なり各市町村条例できめますが、その運営は、もっとそうした条例なり各地方々々の実情によってきめられるような工合にすべきであって、法律をもってこれを強制することがどうかということを聞いておるのでございます。従って私は、今長官のおっしゃられた通り、あるいは縦割りもよろしいでありましょう。そうした運営の仕方もいいでしょうけれども、そうした、上から、これはいいこれは悪いというきめ方をして、下へ押しつけるという、その考え方の基本をいっておるのでありまして、私はこの点を承わりたいと思うのであります。(拍手)  その他不当支出の問題で、総理大臣監督権の強化の問題も、従来はわざわざ自治法総理大臣地方自治体に対して、技術的な助言もしくは勧告がやれるというところに、どこまでも中央官庁というものは、地方自治体の補佐的育成をするところの直接保護者であり、あたたかい母親のような気持で、これを育て上げるというところに、意味があるのであります。今回のごとく法制上において、そうした不当と断じたり、あるいは違反を断じた場合に、自治干渉をするというような監督規定を置くことによって、私は先ほど申し上げました通り、各首長というものが、その県民なり市町民に対して責任を負わずに、むしろ上級官庁なり中央官庁の顔色だけを見て行政をやるようでは、せっかくの地方自治制度を作られたところの、その制度の基本に反するのではないかということを申し上げたのでありまして、私はその考え方の基本を申し上げたのでございまして、どうぞ曲解せずに、川島長官の再度の御答弁をとお願いしたいと存じます。(拍手)    〔国務大臣川島正次郎登壇
  14. 川島正次郎

    国務大臣川島正次郎君) お答え申し上げますが、会期の問題につきましては、現行は年四回定例会を開くとなっておりますが、それを年一回の通常会にして、あとは臨時必要のあったときに開かれる、こういうことでありまして、年四回ならば議会を尊重しておるのか、一回では尊重しないのか、こうしたことは御議論の相違でありまして、私どもは常に開けるのでありますから、常に臨時会を開けるのでありますからして、現在の地方状態において、その程度でいいのではないかということを考えておるわけであります。  委員会の問題でありますが、委員会につきましては、現行法におきまして、行政部門別の縦割り規定してあるのでありますから、その規定を直して横割りにしようというので、現在もすでに縦割りということが規定をいたしておるわけであります。今度の改正案は、抽象的に中央集権化、官僚化だと、こういうことを世間で言うのでありますが、法文の内容を仔細に御検討願えば、決して中央集権的のにおいもなければ、官僚的のにおいもないのでありまして、十分に自治を尊重して、自治の合理化をはかっておる程度に過ぎないのであります。     —————————————
  15. 河井彌八

    議長河井彌八君) 小林武治君。    〔小林武治君登壇拍手
  16. 小林武治

    ○小林武治君 私はただいま議題となりました地方団体関係法案につきまして、鳩山総理並びに関係大臣に質疑をいたします。御承知のように、地方財政は年々膨張の一途をたどり、昭和三十年度におきましても、いわば政府苦心の作品たる財政計画におきましても、その総額は九千七百六十二億円となりまして、国家予算の九千九百十四億円に匹敵するものであります。しかも年々赤字は累増し、昭和二十八年度末における歳入不足額は実に四百六十二億円といわれ、地方財政はまさに崩壊の危機に瀕しておるのであります。この事実は国家全体といたしましてもまことに重大なる事柄であります。すなわち、一方の国家予算がいかに健全財政を謳歌いたしましても、国家組織の他の半分でありまする地方がかかる半身不随的の状態でありましては、国家財政の前途はまことに憂慮すべきものと思うのであります。まずかかる重大なる事態につきまして、鳩山総理は果して十分なる認識を持っておられるかどうかということを伺っておきたいのであります。すなわち、地方財政窮迫の問題は、もはや一自治庁長官のよくするところではありません。真に内閣全体の問題として真剣にこれを処理すべきものと思うのでありまするが、内閣は果してその手段と努力とを尽しておられるかどうかということであります。特に地方団体が今日応接に困難しておりまするのは、中央各省がその施すところに何らの統一がなく、てんでんばらばらにその政策を地方団体に一方的に押しつけておることでありまして、これがための経費の無駄と行政の非能率とは枚挙にいとまがないのでありまして、地方団体赤字の大きな原因ともなっておるのであります。かかる事実にかんがみまして、政府はこの際、地方団体の利益の擁護と申しまするか、中央各省地方に対する政策の強力なる調整連絡、さらに地方団体に対する連絡指導を強化し、これによりまして、国家活動の基礎をなす地方行政改善、健全化をはかるために、思いきって政府はこの際、自治省というような一省を設ける考えがないかどうかということを鳩山総理にお伺いいたしたいのであります。このたび政府地方財政再建整備のために法案を提出されたことは、一応これを了とするものでありまするが、これは単なる過去の赤字解消のための応急的一時的措置にとどまっておるのでありまして、将来の健全財政を何ら保障するものでないことを心配いたすものであります。すなわち、自治庁はさきに本年度の地方財政計画を一兆四百億と見積ったのでありまするが、その後これを圧縮いたしまして九千九百億円と見積り直しを行い、しかもこれによる歳入不足額すなわち赤字を百四十一億円としてこれを公表されたのであります。ところが、これが一たび内閣の問題となりまするや、政府は、かかる事務当局の冷静なる数字に対しまして、当初より赤字とすることの不手ぎわ、あるいは不評、あるいは地方の反撃をおそれましてか、一夜にしてこれが収支の均衡をとるよう数字の変改を指示されたのであります。自治庁当局が財政計画を策定するに当りましては、あらゆる資料により慎重にこれを見積りをなしたはずであります。しかも国の予算のすでに決定ずみでありまするため、何らのこれに対する措置もなさず、また別に財源補てんの措置も講ぜられず、単に机上の遊戯によりまして百四十億の赤字を一夜にして解消せしめたごときは、地方財政計画そのものの信頼性を全く失墜せしめたるばかりでなく、地方赤字問題に対する政府のむしろ安易な考え方を露呈いたしたるものとして、まことに遺憾に存ずるものであります。自治庁の役人が一たび鉛筆を手にすれば、立ちどころにして百四十億円が浮び出るというようなことがありましては、何人もかかる計画を基準として財政の切り盛りをする意欲を失ってしまうであろうと存じまするが、地方財政計画の信憑性のために、この間の経緯につき、自治庁長官の御説明を求めたいのであります。  次に地方財政赤字原因でありまするが、地方団体の理事者並びに議会側の運用の仕方にも私は大なる責任があり、深くその反省と自粛を求めるものでありまするが、他の一半は、米国の占領政策たる地方制度改正の行き過ぎにあるのであります。従って、この複雑にして非能率、しかも不経済の現行地方制度を根本的に改正することは、地方財政改善のためにはどうしても必要でありますので、このたびの地方自治法の一部改正もこれを意図されたものであるのでありまするが、その内容はむしろ不徹底であり、中途半端ではないかと思うのであります。たとえば、このたびの地方自治庁原案には、税を滞納した議員の職務停止の条項などもあったのでありまするが、一部の反対あるいは運動によりましてこれを削除されたなど、政府としてはきわめて自信のないやり方でありまして、いやしくも政府として最善と信ずるものにつきましては、私は勇気をもって推進していただきたいと思うのであります。  私はこの自治法改正案に関連しまして、総理または自治庁長官に伺いたいのでありまするが、その第一は、政府市町村合併の進捗に伴い、この際、府県につきましても統合その他の方法によりまして、これを整理またはその性格を変更する等の御意思はないか。第二は、地方財政膨張の原因である各種行政委員会を、思いきってこの際、廃止または整理するお考えはないかどうか。第三に、地方議会議員定数は、諸外国に比べてむしろ過多と思われるのでありまするが、これを適当に減員するというようなお考えはないかどうか。第四に、地方議会常任委員会の廃止を、五万以下の町村などと言わず、さらにこれを大幅に拡張するお考えはないかを伺っておきたいのであります。  もう一つ自治庁長官にお伺いしたいのでありまするが、このたびの改正案では、人口五十万以上の市には大幅に府県事務の委譲を規定しているのでありまするが、私はこれを契機としまして、多年地方紛争の原因であった特別市の規定をこの際削除して、一応これを白紙に返す意図はないかどうかということであります。すなわち、最近における大都市周辺における町村合併につきましての深刻なる紛争も、この特別市の規定関係するものと思われるのでありまするが、いずれにいたしましても、近く実現の見通し困難であるこの規定を一応白紙に返すことが適当ではないかと思うのであります。  次に大蔵大臣に伺いたいのでありますが、思うに、大蔵大臣は決して一大蔵省の大臣とか、あるいは国の直接予算のみの大臣ではなく、日本全体の大蔵大臣と思うのでありまするが、これは地方財政に関する限り、ややともすれば大蔵省はこれと対立的の関係に立ち、その圧縮に急にして、その実際の窮状にはむしろ眼をおおっておられるのではないかと思うのであります。冒頭に申したように、国が幾ら健全財政を誇りましても、地方がこの累増する赤字状態では、公けの経済全体としては、きわめて不健全財政と言わざるを得ないのであります。すなわち、大蔵大臣はこの際、地方実情を直視され、地方の努力にもかかわらず真にその足らざるは、国がこれを財源的に措置する熱意と決意とをお持ちであるかどうかということをまず伺いたいのであります。  すなわち第一は、今年度におきましても地方交付税の率を増す御意図はないか。地方交付税は今年度国税三税の二二%となっているのであります。このたびの衆議院の予算修正におきましても、さらに六十七億円の減税となっているのでありまするが、これに対する始末等もどうされるかを伺っておきたいのであります。  第二は、地方に今後適当な税源を新規に与うる意図があるかどうかということであります。すなわち、わが国の税は中央地方を合わせておよそ一兆二千億程度と思われるのでありますが、そのうち国税は七割余を占めておりまして、地方税はわずかに三千六百億円に過ぎないのであります。その地方歳出に対する割合は府県平均におきましても二割余に過ぎず、また県によっては、わずか一割にも足らないのでありまして、自治体としての実体を備えておらないのであります。これは税源の極端なる偏在でありまするから、これを中央地方に再分配することができないかということを伺っておきたいのであります。さらに、徴税上きわめて非能率、かつ不経済なる国税、府県税、市町村税等現在ばらばらになっておるこの現行税体系を、根本的にお変えになる考えはないか。ことに、今日地方における徴税費はきわめて多額を要しておるのであります。すなわち、現在におきましては総税額の約八%が徴税費に当る、その額は二百億円にも及んでおるのでありまするし、滞納額も現在数百億円に上っておるのであります。これらは税制そのものに私はある程度の欠陥があると思うのでありまして、これの根本的再検討を希望せざるを得ないのであります。  次に、私がお尋ねしたいのは、地方債の問題であります。国が非募債主義を堅持しておることは、まことにけっこうであるのでありまするが、この主義は国全体としては、いわばしり抜けになっておるのであります。すなわち地方債は年々一千億円余も発行されておるのでありまして、昭和三十年度の起債の計画におきましても一千百四十四億円となっておるのであります。しかしてこのうち公企業会計を除く一般会計分だけでも八百七十億円でありまして、これが期末における地方起債現在高は実に四千百八十億円に上るのであります。従ってこれが元利償還額は、昭和三十年度には実に五百十一億円に相なるのでありまして、新規起債額の半分以上に上るというおそるべき数字であります。この事態をこのまま継続したならば、やがて元利償還額が新規起債額を上回るというようなおそるべき事態も近く参るものと思うのでありまするが、この現実を大蔵大臣はどうお考えになり、今後いかにこれを処置せらるべきものと考えるかを伺つておきたいのであります。  最後に、私は文部大臣に伺いたいのであります。地方財政再建を考えるとき、われわれは教育費の問題を除外して考えることはできません。すなわち教育は地方行政の重要なる一環であるばかりでなく、その経費地方財政需要の過半を占むる膨大なるものであります。今日ややもすれば教育の問題は、統一的行財政責任者たる地方首長から全く独立しておるように思われておるのでありますが、町村のごときは教育問題を除いては、他に重要なる行財政というものはほとんどないのでございます。この重要なる教育行政あるいは教育制度の再検討につき、私は松村文相の誠実なる人柄に大いに期待したのでありまするが、その後の文相のなすところを拝見すれば、ややもすれば単に文部官僚の狭い見地に立つなわ張り的主張の代弁者に堕しておるやの感があるのは、はなはだ遺憾に存ずるのであります。すなわち最近における地方財政再建措置に当りまして、教育委員会の多少の権限の制限につき、これを阻止されんとし、または一般公務員と区別して教育職員についてはあえて停年制を拒否されんとするがごときは、大局的見地に立つべき文相の主張としては、その真意の了解に苦しむものであります。すなわち私は文相にお尋ねしたいのであるが、教育が地方行政の上においての占むる地位の重要性からいたしまして、今後における地方行財政再建、健全化のためには、この際教育制度の全般につき根本的再検討を加える要があると思われるのでありまするが、まず文相は一元化の建前からして、この際、地方教育委員会整理または廃止するお考えはないかを、あらためて伺っておきたいのであります。教育の大切なることは言うまでもありませんが、これはひっきょうずるに、国の財政力、経済力の裏づけがなくては、結局十分なる成果は上げ得ないのであります。この点からして義務教育の六三制は、何としてもわが国にとっては過重の負担のように思われるのでありまするが、文相はこの重大問題を国家現状と将来にかんがみ、もう一度真剣に考え直してみるお考えはないかどうかを伺いたいのであります。  以上の問題につきまして、私は各大臣のまじめな御答弁を期待して、私の質問を終ります。(拍手)    〔国務大臣鳩山一郎君登壇拍手
  17. 鳩山一郎

    国務大臣(鳩山一郎君) 小林君の御質問に対してお答えをいたします。  私に対しての質問は、地方の財行政の問題が非常に重大な問題である。内閣全体として考うべきものと思うがどうだ。政府全体として対処し、中央機構を設置する用意があるかどうかという点について、私は答弁をいたします。国の諸施策がほとんど地方財政を通じて実施せられます今日におきまして、地方財政現状を見て非常に憂慮いたしまして今度の法律を出したのでありますが、今日のように国の施策がほとんど地方財政を通じて実施せられておることにかんがみまして、こういうような窮迫した事態を生じたということは、まことに重大でありますので、中央機構の設置ということは、慎重に検討すべき時期に到達しておるものと考えられます。国も地方財政規模のことについて慎重に考慮せよということでありますが、これはもとよりそういうことで、この点につきましては、大蔵大臣に御質問があったと思いますから、大蔵大臣から答弁をしてもらいます。その他については自治庁長官から答弁をしてもらいます。    〔国務大臣川島正次郎登壇拍手
  18. 川島正次郎

    国務大臣川島正次郎君) 小林さんから地方制度の改革につきまして、いろいろ適切なる御議論があったのでございまするが、市町村の合併を促進するについても、府県の性格を直す必要があるのじゃないかという第一の御質問につきましては、全くその通りでありまして、市町村の合併は、昨年来きわめて円滑に進捗をいたしております。これが完成しました暁におきましては、現在の府県制度に対して、相当な改革をする必要があるということは、年来の議論でありまして、現在地方制度調査会におきましても、特にこの問題を取り上げまして、府県を合併をするか、あるいは道州制にするかということについても活発な議論、研究が行われている最中でございまして、今日結論を申し上げる段階には至っておりません。  次に、行政委員会に対して、相当の措置をする必要があるじゃないかという御質問でありまするが、行政委員会の中の公平委員会というものは、今回廃止をいたすつもりで提案の準備をいたしております。教育委員会その他につきましては、まだ結論には到達をいたしておりませんが、行政委員会全体に対して再検討の必要は十分認めております。  議員の減員でありまするが、これは前年吉田内閣当時に一応提案をいたしまして、否決になった経過があるのでございます。町村合併の進行に伴いまして、市町村におきましては漸次自発的に減員を行なっておりまするし、また府県におきましても、自粛をいたしまして減員を行なっているところもあるのでありまして、こうした経過も見まして、この問題は慎重に考えて処理をいたしたいと存ずるのであります。  また、委員会を五万以下の市は置かないという改正案を、五万以上の都市でもこれはよしたらいいじゃないか、こういう御議論のようでありまするが、大体五万以上というものは町村を除いた市でありまして、府県並びに市には、委員会を置くことが必要ではないかという考えで改正案を出したわけでございます。  特別市の規定につきましては、これはこの改正案におきまして、とりあえず五十万以上の市、つまり五大都市に対しましては、ある程度の事務府県から市に委譲する改正案を御審議を願うことになっておりまするが、特別市の規定自治庁からよすかどうかという問題につきましては、これは府県制を直すときとあわせて考えたいというので、一時この点は留保しているわけでありますから、さように御承知を願いたいのであります。  それから財政計画の問題でありまするが、百四十億の赤字が出たのを、これを消してしまったのは一体どういうわけかという御質問でございますが、今年の財政計画の策定に当りましては、二十九年度の財政計画を基礎にいたしまして、それから三十年度におきまして当然減少すべき項目並びに当然増加すべき項目などをいろいろ計算をいたしまして、歳出を出しました一方、歳入におきましても、三十年度は二十九年度に比べまして、国の負担としましては交付税交付金におきまして百三十億、たばこの益金の繰り入れが三十億、入場譲与税の関係におきまして二十数億、これだけは昨年よりも国の支出がふえているのでありまするが、これにさらに市町村固有の税収等を勘案して、いろいろ調べますると、二十九年度の通りの事業をやっていきますれば、これは百四十億の不足になるのであります。そこで私は先般の知事会議におきまして、この赤裸々な事実を示して、現在は全部の府県じやありませんが、赤字に悩んでいる府県市町村においては、いわば非常事態であるのだからして、事業の面においても、事務費の面においても、極力圧縮をしてもらいまして、この百四十億というものを消してもらいたいということを強く要請をいたしているのであります。その後財政計画の策定に当りまして、この百四十億を計画の外におくがいいか、あるいはこれを計画の中に入れて、どの項目で幾ら減らすかということを合理的に示す方が地方財政運営上いいかということについていろいろ考究をしました結果、百四十億というものを各項目に分配をいたしまして、今日お示ししている財政計画を立てたのでありまして、私どものは百四十億が三十年度において当然赤字とは考えておらないのでありまして、これを地方の自粛によりまして、事業の縮小並びに事務費その他の節約によりまして、これを消してもらいたいということを念願をいたしているのでありまして、今年の約九千八百億に近い財政計画の策定の内容は以上の通りでございます。    〔国務大臣一萬田尚登君登壇
  19. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 財政の健全が、中央地方を通じての健全なものでなくてはならないということは、これは申すまでもございません。従いまして、無意と決意を私が持っておることは、これは言うまでもありません。この国と地方との税の配分についてのお尋ねですが、これは近く税制調査会にかけて研究をいたし、なお税制自体について十分検討を加えてみてはどうかという御意見も、ごもっともでございまして、これも根本的に一つ検討を加える考えであります。  なお、地方債の全体にないて非常に御心配、これは全くその通りでありまして、今日地方財政を何とかして再建整備しなくてはならぬということも、こういうことにあるのであります。今後におきましては、地方財政をあらゆる面から、今日の状態の起きた原因を探究するとともに、これを是正をいたすことに努力しまして、そうして今後の地方債発行というものは、私はやはり生産的な用途にする、こういうような、しかもこれは必要に応じて、必要限度にとどめていく、かようにして今後の地方債整理をやっていかなければならぬと考えております。  なお、交付金につきまして、本年度率を上げる意思はないかというお尋ねでありますが、これはこの二二%は三十年度におきまして初めて適用したものでありますし、なおかつ、この交付税の建前からいたしまして、そう私は軽々に変更すべきでない、要は地方財政の今日の状態を起した原因をまず深く探究しまして、これに対する対策を講じ、そうしてその上において財源的な措置を考えるべきであろうかと考えておる。  なお今回衆議院におきまする予算修正の結果、所得税等の三税の収入が減ったことから交付税が減ったから、これにはどういう措置を講じたかというお尋ねでありますが、これは専売益金からの交付金によって補てんをいたしてあるのであります。  お答え申し上げます。    〔国務大臣松村謙三君登壇
  20. 松村謙三

    国務大臣(松村謙三君) お答えを申し上げます。  地方財政整理再建につきましては、私ども決してこれに協力を惜しむというようなことをいたしておるわけではございませんが、この教育委員会権限の問題につきましては、実はこれは教育の根幹をなすものでございまして、改むべきは、これはその方面から観測をいたして改めるのが本筋でありまして、単に財政の面から、財政整理の面からだけこれを取り上げるということは参りかねるのでございまして、それでこれを抜いた、こういう次第でございます。ただし教育委員会制度そのものは、これは相当に再検討を要するということは、いろいろの内容についての差はありますけれども、大体世論が一致いたしておると申してもいいわけでございまして、私どもといたしましては、速急にその改正の案を検討いたしまして、すみやかなる機会にその案を得たならば実施をいたしたい、このように考えておるわけでございます。  また停年制の問題をなぜこばむかというお話でございますが、これも実はこういう次第でございます。今日の教員の数は大よそ六十万あるのでございますが、ちょっと六十万を切れるくらいでございますが、それが六十才になりますとどれだけ減るかと申しますれは、五十六才から六十才までにはずっと減って参りまして四千五百人くらいの人しか残りません。その以前に、大体五十才から五十五、六才の間に、ほとんどみな交代ができまして、それ以上に残る数は、非常に少いのでございます。そこであるいは五十五才に停年制をきめますか、六十才にきめますか、きめますと、そのときまでは身分を保障したようになりますので、かえって人事の沈滞を来たすというような実情もあるわけであります。従いまして、ただいまのところでは、この自然の成り行きにまかせておきまして、その必要があるときにはまた考慮をいたしてもおそくないのでないかと考えるのであります。そういうわけでございまして、決してわざとこれを地方実情とそぐわぬ考え方をもってやっているわけでございません。  なおお尋ねの、きわめて重大なことでありますのは、六・三・三の制度を今日の財政の見地からして再検討をする考えがあるかないかというお尋ねでございますが、これはいろいろ考えてみましたが、過去八年の間、非常に辛苦をいたしてここまで校舎の設備もあらましでき、そしてこの制度が一つの落ちつきを見ておりますので、これをまた後退せしむることは、非常な混乱が多くして、そして財政上のこの緊縮の趣旨に沿うようになる効果が割合に少いのでないかと考えられますので、これは、お話の通り国力に不相応であることだけは、これは申すまでもないのでございますけれども、これは国も地方も、また父兄も、従事する職員も、ともども一つになって、何とかして国力のさらに充実するまで苦労をしてでも持ちこたえて、そしてこの制度の完璧をはかり、国民の教養の充実をはかるということが、行くべき道でなかろうかと考えて、ただいまその方針でやっておる次第でございます。
  21. 河井彌八

    議長河井彌八君) 中田吉雄君。    〔中田吉雄君登壇拍手
  22. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 私は、ただいま提案されております地方財政再建促進特別措置法案地方自治法の一部を改正する法律案外一件について、日本社会党を代表して総理大臣自治庁長官並びに関係者大臣に対して、その重要な点をたださんとするものであります。  自治庁が最近発表いたしました数字によると、地方財政赤字は、昭和二十九年度末で五百八十六億の膨大な額に達しています。地方団体は今やこの膨大な赤字のため、地方団体自身の自治行政運営ができないだけでなく、地方団体の手を通じて行われる国の行政施策の遂行すら重大な支障を来たしています。従って、地方財政再建整備と行政の根本的な改革は焦眉の急として久しく要望されていたところであります。しかるに今回提案されたる再建促進、自治法改正の両法案をつぶさに検討いたしますならば、まことに不十分きわまるものであって、これでもって地方財政再建を望むがごときは、全く百年河清を待つたぐいと言わなくてはなりません。しかも地方自治は、各国の伝統が示しますように、寛容ある態度をもって年期をかけ、忍耐強く保護育成しなくてはなりません。しかるに地方団体は、あたかも金を湯水のごとく使う放蕩むすこのように、性急にがんじがらめな諸規定で縛りつけようといたしております。しかも赤字責任をあげて地方に転嫁し、あまつさえ増税と首切りによる再建を余儀なくさせ、再建促進の美名に隠れて中央集権化をはからんとしておるのが両法案の基調である点は、わが党の深く遺憾とし、強く反対するところであります。(拍手)その解決案は、あくまでその根本にまでさかのぼってなされなくてはならず、しかも、自治制度の改革については、その能率化は民主化をそこなわないように、あくまでも地方自治の本旨に沿うものでなくてはなりません。そこでまず第一、鳩山総理大臣に対して、地方財政赤字原因とその責任の所在についてお伺いいたします。  特別措置法案によりますると、赤字対策は、再建債二百億のうち五十億の政府資金の融通、百五十億の公募分に対する二分の利子補給、たった七千五百万円だけであります。五十億の政府資金は七年間に返すのですから、これは特別な援助ということはできません。しかもこの公募債も同法第十二条第三項によると、なるべくすみやかに政府資金に肩がわりされることになっていますから、補給利子の政府負担は一年間だけだと見ていいでありましょう。従って六百億に及ぶ膨大な赤字に対する政府助成は、あとにも先にも本年度一年分の利子補給七千五百万円だけで、一切の責任地方団体に押しつけているわけであります。これは重大と言わなくてはなりません。果して地方だけが全責任を負うべきでありましょうか、決してそうではありません。民主政治の基盤として新しい理念の下に出発いたしました自治体が、敗戦後の困難な中に、いかに祖国再建のために協力したでありましょう。供米の割当が完遂できず、あるいはまた六三制学校建築寄付金が集まらないために、いかに多くの人が責任をとらされたでありましょう。ある郡のごときは、全部のほとんどの町村長が、その責任を負って任期の半ばで退陣のやむなきに至った例は少くないのであります。実にわが国が今日のような段階まで来ましたのは、このような犠牲と献身に負うものであります。従って地方公共団体に対する国の財政援助の十分でなかったことこそ問題であり、地方団体がその責に任ずべき理由はいささかもないものであります。  赤字といえば、今でこそ地方財政の代名詞のように言われますが、しかし皆さん、昭和二十四年までは大体赤字はなかったのであります。すなわち昭和二十四年においてドッジ・ラインの均衡予算のため、地方配付税が所得税と法人税の百分の三三・一四であったものが半減されて、地方財政赤字の第一歩を踏み出したのであります。さらに昭和二十五年シャウプ勧告による税制改革は、府県財政の弱体化を招き、それが府県赤字の大きい原因をなしているわけであります。さらにまた昨年と本年の緊縮予算と、金融引き締めのデフレ政策、すなわち一兆円予算のしわの多くが地方財政に寄せられておるのであります。その結果として、地方財政赤字は、昭和二十五年五十億、二十六年百一億、二十七年三百億、二十八年四百六十二億、二十九年に五百八十六億と、年とともに増大しているわけであります。しかも二十五年度赤字団体の数が三百四十六から、町村合併により団体数が激減したにもかかわりませず、今や千三百二十三の多きに達し、府県の約八割、市の約七割、町村の約二割という工合に、赤字が一、二の地方団体の特殊の現象でなしに、全般的な傾向になっているわけであります。これをもって見ましても、放漫財政財政運営の不手ぎわだけによるものでなく、もっぱら制度的な欠点に由来するものと言わなくてはなりません。従って赤字の大半は国の施策によるものであって、当然政府国会がその責に任ずべきものと思いますが、これに対する鳩山総理の御所見をお伺いいたしたい。特に再建促進に対して一番理解の薄いように感ぜられる大蔵大臣に、この点について、はっきりいたしてもらいたいと思うわけであります。  第二に、赤字五百八十六億と再建債二百億との関係であります。地方制度調査会は、昭和二十八年十月その答申におきまして、昭和二十七年度決算による赤字三百億を基準といたしまして、昭和二十九年においては二百億の再建債を起すことを勧告いたしています。しかるに赤字昭和二十八年百六十二億、さらに昨年度百二十四億と累増し、合計五百八十六億にも達しています。地方制度調査会は、赤字三百億のときでさへ二百億の地方債勧告していることを思いますならば、六百億に及ぼうとしていますところの赤字に対して、二百億の再建債でもって地方財政再建を云々することは全くできない相談と言わなくてはなりません。いかなる計数的根拠に基いて二百億で事足りるとされたのであるか、詳細に説明を伺いたいと思うわけであります。また、本法案によるような条件で、どれだけの府県と市また町村が指定を求めるかというその推計についてもお知らせ願いたいと思うわけである。わが党は大体四百億程度の再建債を妥当としているわけでありますが、再建の促進状態に応じてさらに二百億の再建債のワクを増額されるか、その点をお伺いしたい。またこれに応じられる用意がおありであるか、その点大蔵大臣にお伺いしておく次第である。  第三に、財政再建計画の条件が過酷にすぎる点であります。本法案昭和二十六年四月施行の農林漁業組合再建整備法、昭和二十八年八月施行の農林漁業組合連合会整備促進法にならったものである。まず協同組合のごとき経済団体である私法人の再建国家統治機関組織の一環として公共の福祉の増進をその目的とし、行政の主体として各種の公権力を付与されたところの公法人であるところの地方公共団体再建を混同したところに、本法案の致命的な欠点があると言わなくてはなりません。自治庁内の若い良心的な諸君のうちにも、大きな異論と不満があると言われているのは当然と言わなくてはなりません。農協の再建整備さえ、昭和二十六年から本年度予算計上のものを合計いたしますなら、三十六億の助成を行なっています。また造船融資に至っては論外である。昭和二十八、九年の両年だけで、すでに四十億九千万円の利子補給をなし、本年度予算においてもまた三十五億の補給利子を計上いたして参る。秀駒などが登場し、乱脈をきわめた造船融資に対してさえ、市中銀行に約六分の利子を補給していながら、権威ある地方制度調査会答申は無利子を勧告しているにもかかわりませず、なぜ利子の補給もいたさないのであるか。地方団体は造船会社のように選挙のときに政治献金をしないためにこのような措置をとっているのか、川島、一萬田両大臣の御説明を承わりたいと思うものであります。(拍手)本法案のごとく政府の助成なしに自力によります場合は、再建期間が八年では短か過ぎると思いますが、この期間をきめた基準をお示し願いたいと思うわけである。また本法の第二条第三項には、指定された翌年からおおむね七年以内と再建期間を定めているが、事情によってはさらに変更を認めるのであるか、認めるとすれば、いかなる場合にお認めなされるのであるか、その点をお伺いしておきたいと思うわけである。  第四に、本法案議会審議権を不当に制限している点であります。この法案の適用を受けて財政再建を行うかどうかは、地方団体にとっては真に重大であって、慎重審議は当然であります。しかるに本法案の第十一条によりますると、長の提出する財政再建についての関係議案審議には、長は審議機関を限定し、あるいは長に解散権を与える等、議会審議権を大幅に制限いたしております。これでは議会再建整備期間中の間、長の諮問機関的な存在として有名無実にすることは明かである。たった七千五百万の利子補給で自治権の一切を買い上げようとするのが本法案でありますが、なお、この本条項には再建に対して議会の価値をいささかも認めていないだけでなく、これを厄介視し、むしろ赤字の責めを議会に転嫁し、執行部万能、議会否認の思想を前提としているようでありますが、このことはわれわれ議会人としてとうてい容認することができないわけである。第十一条を削除して再建にどのような支障を来たすか、その理由をお伺いしたいと思うわけである。  第五に、財政再建と教育財政関係である。最近における地方財政赤字は、教育に重大な影響を与え、今、一学級当り児童数五十人として、小学校一・五、中学校一・八の基準で教職員確保している府県はほとんどございません。従って一学級当り六十人近い児童数を詰め込んでいる例も決してまれではないわけである。しかるに本法案によると、再建計画の策定に当っては、教育委員会の意向を反映する機会は、全然ないだけではございません。一たんきまった予算執行について長と協議をしなくてはならぬようになっています。また今回の自治法改正により、教職員の定数等について教育委員会に対し、長に重大な勧告権を与えているわけである。すなわち今回の両法案改正によって教育委員会自主性は全くそこなわれ、権限は弱体化されます。しかも自治法改正法案によると、教育委員に対する報酬の算定方式が、公選でないところの他の委員と同じように日割計算で払うようになっています。これでは教育委員をして萎微沈滞せしめ、財政再建の犠牲が教育財政に怒濤のように押し寄せてくるのを防ぐのに全く無力であると言っても過言ではないと思うわけである。松村文相が原案送付権の確保に対して、異常な努力をされました点については深く敬意を表するものである。しかし両法案には教育費の節約で地方財政の建て直しをやろうとしている不動の決意がみなぎっています。自治庁は原案送付権の上においては譲りましたが、実をとっています、これで教育の水準を守ることができるとお考えでありますか、お伺いしたいと思うわけである。  なお、この機会に文部大臣にお伺いしておきたいことは、このような再建の前におびえている教員に対して、保守両党は最近教育二法案について行政罰を刑事罰に修正することについての意見の一致を見たということが伝えられています。今国会あるいは最近の国会において、そのような法案の修正を意図される用意があるか、お伺いしておきたいと思うわけである。  次に自治法改正について二、三お尋ねいたします。  第一に、府県の将来をどういうふうにしようとされているかという点であります。目下大規模な町村合併が進行いたしています。これが一応完了いたします昭和三十年ごろに備えて、いちじるしく行政能力の高まった町村と国との間にある府県の性格と権能をどうするかということは、今後における地方自治最大の課題と言わなくてはなりません。しからば一体今回の改正はどのような府県を理想とし、中間団体を理想として、それを目ざしての第一歩の改正であるか、道州制か、府県の統合か、完全自治体か、国の出先機関であるか、こういう点について、はっきりとお伺いしておきたいと思うわけである。高橋君に対する川島長官の答弁にもかかわりませず、今回の改正法案におきまして、市町村は基礎的な公共団体とし、府県は広域の地方公共団体としておる点は、知事官選への重大な布石ではないかと思うわけである。憲法第九十三条には、地方公共団体の長は、その地方公共団体住民が直接選挙をすることとし、知事の官選は憲法改正なしにはできないことになっております。そこで今回の改正によって、住民が直接選挙を要する憲法上の地方公共団体というものは、基礎的な公共団体である市町村だけだという概念を導入しまして、保安隊は戦力ではないのである、だから憲法違反ではないという故智にならって、違法性を阻却して知事を官選にしようとする布石ではないかと思うわけであります。現行憲法は、はっきりと府県市町村との二重構造を前提とするものであり、自治のためにも絶対官選にすべきではないと思うが、重ねてこの点についてお伺いしておきたい。なおまた現行憲法のもとにおいても、知事を官選にするようなことができるかどうかについてもお伺いしておきます。  第二に、民主化と能率化との調和の問題であります。本法案の全体を貫きますものは、能率化による安上りな地方政府を作るために、民主化を犠牲にしておる点であります。たとえば議会定例会が年四回あったのを通常会と改め、一年に一回としたような点であり、議会開会の煩を避けました。これは執行部の権限を著しく強化するものである。特にわれわれのような議会の勢力分野において革新勢力が少いような際におきましては、臨時会招集の四分の一の法定数を持たないような議会が多い際において、革新団体は、ほとんど民意を反映するような機会は失われてしまうものである。かようなおそれはないものであるかどうか、お伺いしておきます。  われわれといたしましては、自治訓練の場としても定例会制度は存置すべきものと思うわけである。また常任委員会制度等もますます高度の専門的知識が要請される現在におきましては、現行方式を可とするものであって、議員の兼職禁止等の規定を挿入するだけで十分だと思うわけである。行政機構の高度化につれて、集権化は時の趨勢でありますが、わが国のような民主的な洗礼の浅い現状におきましては、能率化が若干犠牲にされても、民主化の徹底の道を選ぶべきだと思うが、その両者をどのような形に調和されようとしておるか、お伺いしておきます。  第三に看過することのできないのは、長の不信任決議の成立要件過半数議決に改めたことである。このことは大統領制度と議院内閣制の混同であります。さらにまた革新系首長の立場をはなはだしく不安定にすることを奥深く意図するものと言わなければなりません。  わが国地方制度は、国会のような議院内閣制度と違って、アメリカの大統領制をとって、一方では議員を、一方では住民が直接首長を選挙する制度であります。だから、議会から選ばれた間接選挙の場合とは違って、その議員数の三分の二の出席で、四分の三の議決で不信任決議をするような慎重な措置が大切なわけであります。これは大統領制度の当然の要請であります。それを過半数の出席で、過半数議決で不信任できるようなことになりますならば、特に議会勢力の分野が少いが、ようやく進出しかけたところの革新勢力の首長の地位は、きわめて不安定であって、このことは私はやはりたくさん出かけたところの革進系の首長に対する大きな弾圧と見て、これは絶対許すことができないと思うわけであります。  さらに、最後に鳩山総理に、このような地方行財政の重大な危機に際会いたしまして、きわめて近いうちに特別に、地方自治のための臨時国会をお開きになる用意はないかということをお伺いするものであります。今回国会提案されました地方財政再建促進の特別措置法案自治法改正等をもって見ましても、とうてい急迫した事態に応ずることはできません。過般、昭和三十年度の地方財政計画に対して、財政議会は、給与費と恩給費を別にしても百五十億以上の歳入欠陥であり、さらにかねて懸案であるところの給与費と恩給費を考慮いたしますならば、四百八十億の歳入欠陥だと言っているわけであります。従って、大量の行政整理をしない限り、本年度半年度だけで約五百億の赤字が出ることは、今や必至であります。このような状態からいたしまして、近く地方制度調査会からも答申があるということであります。その答申を待って、私はきわめて近いうちにこの地方自治のための特別国会を、臨時国会をお開になることが大切だと思うが、それに対する御所見をお伺いしたいと思うのであります。  さらに、鳩山総理は過般の参議院予算委員会において、災害を別にして補正予算を組むようなときには、内閣の運命をかけるということを申されています。権威あるところの地方財政議会勧告をもって見ても、五百億もあるというのに、赤字が出ようというのに、このような措置のために私たちは当然、地方交付税を百分の二十二から百分の二十七あるいは百分の三十二に引き上げる措置が必要だと思うが、あのような総理の御発言を見ると、地方財政には危機はないと見ておられるのでしょうが、その点についてお伺いいたしまして、私の質問を終るわけであります。(拍手)    〔国務大臣鳩山一郎君登壇
  23. 鳩山一郎

    国務大臣(鳩山一郎君) 御質問にお答えをいたします。  赤字原因について、国もその一端の責めを負わなくてはならないのではないかという御質疑がありました。先刻も申しましたように、国の諸施策が地方財政を通じて実施せられる今日において、国と地方、国が地方赤字について一部の責任のあるということは、私は当然だと考えております。  それから最後の御質問の、臨時国会を開く意思があるかどうかということにつきまして申し上げますが、今日のように、国、地方を通じて財政措置の合理的縮減が必要でありますときに、地方団体もこの方針で財政運営することと、そういうような方針を維持してくれることと思いますので、赤字が起るとは考えません。従って、臨時国会を開く意思はございません。  その他の質問に対しましては、関係閣僚から御答弁をいたします。    〔国務大臣一萬田尚登君登壇
  24. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 赤字補てんのための債券、地方債二百億、これは少いじゃないか、こういう御質問がありました。これはこの二十八年までの、当時地方公共団体赤字のはっきりしておった総額に基きまして、そして他の方法で補てんのできぬと思われる二百億につきまして、地方債に肩がわりをさせる。そうしまして、この赤字から資金的に非常に地方公共団体が圧迫を受けておる、これを緩和しよう、こういう意味で、この二百億といろ数字が出ておるわけであります。  なお、この利子の補給等について御質問がありましたが、私の考えでは、ひとりこの利子補給ということにかかわりませず、地方公共団体のこの今日の財政窮乏原因が真にはっきりいたしまして、そしてそれぞれ再建整備の計画を立てて、なおかつ地方の規模というものが、地方財政の規模と申しますか、あるいは地方公共団体がどうあるべきか、こういうようないろいろの諸問題があると思います。こういうものを究明して、その場合において、国がいかに援助を差し伸べるかということを私はほんとうに考えていいのじゃないか。単に利子補給というようなことばかりでなく、今日ではそういう基本的な線がなおはっきりいたしません。応急の措置をとっておるという事態であるのでありまするから、そうこれに国から、国の財政も乏しいのでありまするが、国が援助をやるということばかりでは、私は解決しないだろう。かように考えているわけであります。  そういう意味合いにおきまして、もう一つ交付金の率を引き上げてはどうかという御意向もあったのでありまするが、これはことし初めて、三十年度初めて二二%を適用するようになったのでありまして、この交付金については、これは平衡交付金とはまた非常に性質も違うことになり、建前も特殊な性格を持っておりますので、そう容易に引き上げることも適当でないと思いますが、これも先ほど申しましたように、やはりこの今日の財政地方のあり方が十分矯正される、こういう点とよくにらみ合わして、これは適正に考えていったらいいだろう、こういうふうに思っております。(拍手)    〔国務大臣川島正次郎登壇
  25. 川島正次郎

    国務大臣川島正次郎君) 二十八年度の決算に出ました赤字が四百六十億、それに二十九年度に出るだろうと推定される赤字が百二十億、合計五百八十億の赤字に対して、二百億では足りないだろうという御説であります。二百億を計算しました当時は、二十九年の赤字がはっきりしませんので、一応二十八年度の赤字の四百六十二億を基礎にして計算を立てたのでございまして、二百億で大体府県にして十九府県、市が七十七市、町村は四百くらいを計算をして二百億という数字が出たのでありまして、しからばその残余の金額はどうするかと言いますると、四百六十二億のうち、約九十億というものは、二十七年度以前の国の直轄工事に対する府県分担金でありまして、これは支払延期にすでになっております。この九十億のうち黒字の府県もありまするが、大部分赤字府県でありまして、赤字府県が国に支払う分担金は、これは相当長い期間に繰り延ばしてもらうことを大蔵省と話ができておるわけでございまして、その他の金額は零細な市町村赤字でありますからして、これは再建整備団体の適用を受けずに、各市町村の自粛によってこれを解消してもらいたいと、こう考えておるのでありまして、七年では短か過ぎるのじゃないかという御議論でありますが、これは一応の考えでありまして、私どもも七年がいいか、十年がいいかということについては、いろいろ考究したのでありますが、とりあえずおおむね七年といたしまして、これは必要に応じては多少の延長はできる考えでおります。第十一条に、市の長と議会との関係の点が明記されておるのでありますが、何といたしましても、こうした非常事態に赤字を克服しようというのでありますからして、市長と県知事と、また県議会と市議会というものは一体になってやらなければならぬのでありまして、一体の形をとる上においては、こういう規定が必要だと、かように考えたわけでございます。  それから自治法改正の問題でございまするが、府県の将来につきましては、今日まだこれを明確に答弁をする段階に至っておりませんが、現在の制度におきまして、府県知事というものは、これを官選にできないことは憲法上明らかでございます。  それから不信任の決議の問題でありまするが、今回の法案改正いたしまして、不信任は半数でできるようになっておるのでありまするが、現在の各公共団体現状を見ますると、長と議会とが、所属党派が違うためにいろいろ混乱が起りまして、議会運営地方公共団体運営に不明朗な点があるのでありまして、これを国会と同じように、過半数で不信任ができるようにすることが地方公共団体運営を明朗ならしめるゆえんだと、かように考えて改正法案を提出した次第であります。    〔国務大臣松村謙三君登壇
  26. 松村謙三

    国務大臣(松村謙三君) お答えをいたしますが、ただいま御質問のこの第八条の点につきましては、すなわち予算執行に当りましては、その長と協議をせよという、この程度のことは今日財政の建直しの上においていたしますのは、これは当然の協力と心得まして同意をいたしました次第でございます。これは教育の成果をあげますのには、地方の自治の長と渾然一体となってやることがもちろん理想でございますので、そういう意味合いにおきましても、この程度のことをいたすのは妥当であると考えたわけでございます。  また、お尋ねの二法案行政罰を刑事罰にするというようなお尋ねでございましたが、これは私としてまだ承わっておりませんのでございます。  さよう御了承を願います。     —————————————
  27. 河井彌八

    議長河井彌八君) 松澤兼人君。    〔松澤兼人君登壇拍手
  28. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 私は、ただいま政府より説明がありました地方財政再建促進特別措置法案及び地方自治法改正法律案ほか一件につき、日本社会党を代表して数点質問いたしたいと存じます。  ただいまの川島国務大臣の説明を聞くまでもなく、わが国地方自治団体府県と言わず、市町村と言わず、積年の赤字のためにまさに累卵の危うき状態にあり、これを放置するならば、三十年度中には地方団体職員の俸給の支払いに支障を来たす府県市町村は、ほとんど軒並みになることは火を見るよりも明らかであります。これまでわれわれは、すでにこのことあるを指摘いたしまして、しばしば政府の善処を要求したのでありますが、自由党内閣においても、民主党内閣においても、われわれの意見に耳をかさず、今日の事態に悪化してきたのであります。政府自身の報告によってみましても、二十八年度決算赤字四百六十二億二千四百万円に、さらに二十九年度赤字百二十三億九千万円を加えて、計五百八十六億一千四百万円に達すると見られているのであります。この状況は、これまで政府の常に指摘している、たとえば地方団体の経理の不手ぎわ、団体首長の選挙運動、人員過剰、職員給与の増高等の原因によってきたのではなく、明らかに政府の失策によるものであると言わなければならないのであります。われわれに言わしむれば、地方団体のかかる窮状の真の原因は、増高する再軍備経費による地方財政への圧迫であり、国と地方財政的不均衡、恒常的伸縮性税源の不足地方財政計画の実情無視等がその重要な、かつ決定的なものと考えられるのであります。  今回提案を見ました地方財政再建促進特別措置法案は、従来の赤字解消のねらいをもって作られたものでありますが、われわれは上述いたしました地方財政危機の真の原因に対する何ら抜本的な解決がなされていない点に強い不満を感ずるのであります。  そこでこの提案の三法案につき、まず内閣総理大臣にお伺いいたしたいことは、第一、地方財政の危機は累年その傾向を強めているのでありますが、その根本的原因は、財政が、国の財政中心主義をとっていて地方財政が閑却されているところにあるのではないかと思うのであります。税源を考えてみても、安定性ある、しかも景況に敏感であり伸びのある税源は優先的に国に取り上げられて、地方団体は不安定であり零細である税源のみに依存せざるを得ない状態に置かれているために、財源が窮屈となり、歳出は逆に、国の事業の増大に伴い地方財政を増高せしめ、これを赤字にする結果となっているのであります。地方財政赤字解消の抜本塞源的な方策は、地方団体がその固有本来の権限を行使するに必要心して十分なる自主財源を賦与することであると思うのでありますが、総理は、この基本的な解決につき、いかなるお考えを持っておられるか、御答弁願いたいのであります。  第二にお伺いいたしたいことは、再建促進特別措置法にいたしましても、地方自治法改正法案にいたしましても、一貫して見られることは、政府は種々なる口実に基いて、地方自治の制約、中央権力の地方への介入強化であります。あるいは赤字に藉口し、あるいは地方行政の非能率を理由として、かかる反動的政策を強行しようとしているのではないかと疑わせるのであります。政府は、みずからの施策の失敗を地方団体責任に転嫁し、その権限を縮小しようと考えているのではないか。これは重大な問題でありまして、憲法のいわゆる地方自治の本義にもとるのではないかと心配するのであります。総理はこれについていかなる所見を有せられるか、率直に表明願いたいのであります。  第三は、地方制度の根本的なあり方についてであります。戦後、戦前の官治主義から、民主主義の基盤の上に地方団体固有本来の職責を果させようとの線に沿って、地方分権と自主主義に移行してきたのでありますが、まことに残念なことには、この新しい自治制度の発展に必要なる財源的措置を講ずることを忘れ、ともすれば戦前の官治主義に逆行せんとする施策を強行しようとして、各方面にいたずらなる混乱を巻き起しているのであります。ここに私は、政府地方制度の基本的なあり方につき、いかなる考えを有しておられるのか、総理大臣みずから、地方制度の板本的改革の構想、道州制、府県制、その権限の再配分等につき、所信を明らかにせられんことを要求いたします。  次に大蔵大臣にお伺いいたしたいことは、さきにも総理大臣に対し中央地方の税源の配分の問題につきお尋ねいたしましたが、大蔵大臣からも将来の税源の再分配について御所見を伺いたいのであります。  第二点は、地方財政計画は一応地方自治庁において策定するのでありますが、結局は大なり小なり、大蔵省の査定に際し、国の財政上の都合によって実際必要なる財政需要すらも削減されているのであります。その結果、地方財政計画は単なる机上プランに終って、現在見るような地方財政窮状を現出してくるのであります。一体、大蔵省はいかなるものさしをもって、地方財政需要が多いか少いか、あるいは地方歳入が増徴されるかどうかを判断されのでありますか。要するに、国の財政の都合なり再軍備のしわが地方財政に寄せられて来ることになるのではないかと思うのであります。大蔵大臣としては地方財政の真実の需要と収入とをいかにして判定されんとするのか。上に述べたような大蔵官僚の査定による事務的机上プランとならないためには、大臣としては将来いかなる所見を有しておられるか、伺いたいのであります。  第三点として、地方財政再建促進特別措置法案によって政府は過去の赤字を解消されんとしているのでありますが、しかし現在の基準財政収入であるならば、地方財政の根本的再建は期待することが困難と思われるのであります。その上に、国税は減税措置実施されるとしても、地方税についてはその措置がとられていないのみでなく、再建促進特別措置法によれば、「徴収成績を通常以上に高めるための計画及び実施」「滞納の徴収」「普通税に関する標準税率をこえる課税」等の負担増加が必至であり、地方税法改正法案によっても、国税減税による地方税の減収を防ぐため税率の調整をなす等、地方住民負担は何ら軽減されておらないのであります。われわれはこの際、再建の基本的方策として、地方交付税交付金の増額が考えられなければならないと思うのであります。全国知事会では、すでに税率三〇%に引き上げることを決定しているのでありますが、大蔵大臣はこれに対していかなる考えを持っておられるか。将来多少の引き上げは地方財政再建のために必要と考えられるかどうか、伺いたいのであります。  次に川島自治庁長官に質問いたしたいことは、  第一、赤字解消のために再建債を起す担保として地方団体権限に制約を加え、行政委員会の本来の権限を剥奪しているのでありますが、これは自治本来の趣旨に逆行するのではないかと思われるのであります。この法律によって、地方団体の長及び議会行政委員会権限を制約しないといういかなる保証があるか、伺いたいのであります。  質問の第二点は、地方赤字解消のために政府再建債二百億を予定しているのでありますが、さきにも触れましたように、地方赤字政府の発表によっても約六百億に達せんとしている状況であります。二百億程度では不十分であるばかりでなく、結局は、現在の赤字が多少緩和されても、財政再建の根本的対策が実施されなければ、再び赤字の泥沼に全国地方団体が陥ることは必然であります。この段階においては、こそくなる方法ではなく、思い切った方法をもって地方財政の立て直しをなさなければならないと思うのでありますが、その構想を伺いたいのであります。  第三点は、財政再建はむしろ地方団体自主性に待ち、その再建計画を指導し、これに政府赤字解消の資金的援助を与えるという、いわゆる自主再建方式によることが妥当と思われるのでありますが、何ゆえに、中央権力の介入、監督強化、権限の大幅な制約という、官治主義の拡大をはかるような方式をとられたのであるか伺いたい。  第四に、地方財政危機に対する国の責任についての反省がこの法案のどこにも見られないのは、まことに遺憾であります。三十年度以降の地方財政計画が、一方に赤字解消するとともに、他方、今後は絶対に赤字を生ぜしめないという基本的な計画の策定がなされていない限り、今後も赤字の増加することは必然であります。他方財政危機に対する国の責任についていかなる反省をなされ、今後赤字を発生せしめない地方財政計画につき所見を伺いたい。  第五点として、地方自治法改正は、その中に府県の一部が指定市に委譲する等の事務の再配分につき新しき構想がなされているが、地方団体首長については、一定部局以上の部局を設置しようとするときは総理大臣に協議をしなければならないことになり、議会については、その権限を縮小し、行政委員会権能を制約する等、反動的傾向が顕著に現われているのであります。自治庁長官は、さきにも総理大臣に対して質問したのでありますが、かかる逆行的改正を積み重ねて、地方自治をいかなる方向に持っていこうとするのか、政府地方制度改革に対する基本的構想を伺いたいのであります。  最後に、文部大臣にお伺いしたいことは、自治庁で最初にこの法案を起案されたときには、教育委員会等権限に相当大幅な制約が加えられていたのでありますが、文部大臣の御意見により、ややそれが緩和されて法案規定となったと聞いておりますが、それでも一、教育委員会は、一定事務執行については団体の長と協議しなければならないこと。二、都道府県教育委員会市町村教育委員会との関係において、市町村立学校職員市町村ごとの定数は、都道府県教育委員会市町村教育委員会の意見を聞いて定めること。三、特定条例実施に関しては、都道府県教育委員会市町村教育委員会に対し、財政再建に関する一般的指示をすることができること。四、教育委員会事務局の部課の減少及び職員の兼任など、結局、教育委員会の本来の権限機能を制限する規定が挿入されているのでありますが、このことにより、教育を不当な行政権の支配から守るための教育委員会の本来の趣旨が没却されるのではないかと心配するのでありますが、教育を権力に屈することなくこれを守るために、文部大臣はいかなる所見を持っておられるか、伺いたいのであります。  以上をもちまして、私の質問を終ります。(拍手)    〔国務大臣鳩山一郎君登壇
  29. 鳩山一郎

    国務大臣(鳩山一郎君) 松澤君の御質問にお答えをいたします。  税源の配分について御質問がありました。政府としては、地方制度調査会、税制調査会の答申趣旨に従って、地方財政を勘案いたしまして、財源の充実をはかった次第でございます。しかし、地方財政窮乏については、なおこの上にも種々考慮せなくてはならぬことがあると考えております。  次に中央権限強化について御質問がありましたが、このたびの諸法案は、赤字解消の臨時的措置でございまして、御質問のような意図は持ってはおりません。目下、第二次地方制度調査会において地方制度の全面的改正審議中であります。地方制度の全面的改正については慎重に検討いたしたい考えを持っております。  他の御質問に対しましては、関係閣僚から答弁いたします。    〔国務大臣一萬田尚登君登壇
  30. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 地方税が不安定で弾力性がない、そういう税が多い、こういうことであるのであります。こういうことにつきましては、税制調査会にかけまして、十分検討いたしまして、財源の配分の適正を今後期したいと考えております。  それから、地方財政計画が国の財政上の都合で、どうもゆがめられておるという御心配であるのでありますが、これは地方自治庁とも十分連絡を、あるいは地方団体とも十分連絡をとって、さようのことのないことを期しておるのでありますが、なお今後地方の実態によく即するように一そう注意をいたしたいと考えております。  交金付の税率の引き上げでありますが、これはもう御承知のように、交付税の建前からいたしましても、すぐに地方の方に金が要るから交付税の税率を引き上げるという行き方は私はできないと思うのでありまして、地方財政の規模の適正化がはかられて、そういうものをよく見合って、慎重に検討を加えていきたい。かように考えております。(拍手)    〔国務大臣川島正次郎登壇
  31. 川島正次郎

    国務大臣川島正次郎君) 今回提案しました二法案が、中央集権化をねらっているのではないかという御議論につきましては、総理大臣からもお答えがあったのでありまするが、絶対にそういう企図はないのでありまして、現行法におきましても、地方自治法に、地方財政に対しては調査する権限がありまするし、またこれに対して助言、勧告規定もあるのであります。現在の地方財政現状にかんがみまして、その程度では足りないというので、ややこれを強化いたしまして、再建促進法におきましては「状況監査する」という文句に直し、また助言、勧告の方につきましては、長期にわたって計画した財政計画が、それが適当に運営されてない場合に限っては、その運営されてない部分だけの「執行を停止する」という規定を設けただけでありまして、それ以上に中央集権化の規定は絶対にないのでございます。地方自治法改正につきましても、ここでありました助言、勧告規定を、違反または義務懈怠等の場合については、その是正改善のため必要な措置を講ずることを求めることを得ると、こうした程度でございまして、全く地方自主性を尊重した改革なのでありまして、抽象的に今度の改革案というものは中央集権化だ、官僚化だと言われることは、まことに私どもとしては迷惑に感じておるわけであります。  今度の法案関係しまして、一体地方財政赤字になったについて、国は少しも反省しないではないかという御議論でありますが、大いに反省しておればこそ、こういう法案を出したのでありまして、なおこれだけでは決して足りないのでありまして、根本的に地方機構の改革というものを今日検討をいたしておるのでありまして、何といたしましても、数年来にわたる赤字の蓄積でありまして、これは一朝一夕には解決いたされないのでありまして、三十年度並びに三十一年度、両年度にわたりまして根本的な機構改革をして、地方財政の健全化をはかりたいと、こういう意図に従いまして、とりあえず今回の提案をいたした次第でございます。    〔国務大臣松村謙三君登壇
  32. 松村謙三

    国務大臣(松村謙三君) お答えをいたします。  第一の予算執行の件につきましては、これは先刻お答え申したような次第でございます。  第二の、教員の定数を府県の教育委員会から町村の教育委員会の方へ諮ることは、これはいずれは両方話し合ってきめることでございますから、この改正は大きな影響はないと考えたわけであります。  第三の給与の条例についてのことでございますが、これも府県の教育委員会から一般的の方針を指示いたすことは、この財政整理の協力の意味から申しても、これは承知してよろしいことと考えます。  第四の委員会事務局の部課の簡素化の問題でございますが、これは行政の上の節約の点でございますから、もちろん異議のないことと思いまして、要するに、これらのことをいたしましても教育の大本の運営には支障のないことと信じて、承知いたした次第でございます。     —————————————
  33. 河井彌八

    議長河井彌八君) 須藤五郎君。    〔須藤五郎君登壇
  34. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 鳩山内閣は、その成立に際し、多くの公約を国民に与えました。しかし、当国会に提出され、また提出されんとしている諸法案は、その性格からいって、ことごとく公約の精神に反するものと言わざるを得ないのであります。この矛盾こそ日本政治自主性なき姿の現われであり、アメリカ従属の姿を露骨に暴露しているものと言わなければなりません。本日ここに提案されましたる地方財政再建促進特別措置法案並びに地方自治法一部改正案もその一つであり、そのつながりとして、日本地方行政機構をファッショ的に再編成せんとする法案であると言わざるを得ません。  地方自治体の財政状態が今日危機的な段階に来ていることは、あらためて言うまでもありません。政府はさきに、全国都道府県の八割、市の七割、町村の二割が赤字団体であり、その総領が六百億円になんなんとすると発表しております。そのほか、政府自体において捕捉し得ない金融機関よりの借り入れ、支払いや事業の繰り延べ等を考えるならば、赤字実情はもっと深刻なものと言わなければなりません。政府は、この地方自治体の赤字原因は、人件費の多いこと、単独事業のやり過ぎにあるとしておりますが、これこそ全く詭弁もはなはだしいものであります。赤字原因はそのようなところにあるのではない。その一は、政府が再軍備計画を推進する必要上、地方の有力財源をことごとく優先的に中央に収奪し、地方には何一つ残さないからであります。その二は、敗戦以来アメリカ政府日本占領方針のもとに、それを忠実に実行してきた吉田内閣及び鳩山内閣自主性なき軍事化政策によるものであります。中央財政はその編成権をアメリカに握られ、毎年予算の大半の額を、アメリカ軍の駐留とその軍事基地設置の費用、及び自衛隊増強の費用に充当してきたのであります。地方自治体においてもまた、当然中央政府がやるべき諸事業をさえ、いわゆる地方自治民主化の名のもとに押しつけられ、中央の軍事化政策推進の片棒をかつがされてきたのであります。  政府は今回の法案によって、まず第一に、自治体に対し公務員整理を強要し、人件費の切りつめをしようとしております。元来、教育費というものは全額国庫で負担すべきものである。しかるに、今日政府はどのようなことをやっておるか。教職員の人件費は半額しか負担せず、あと半額以上は地方自治体の責任においてまかなわしておるではないか。また危険校舎の改築に対してすら、わずか三分の一の負担しか負わず、地方自治体に対し過大なる負担を背負わしておるのが現状であります。今年三月示された「地方財政状況」によると、歳出の六五・五%を消費的経費、三一・六%を投資的経費に区分しております。将来の国家を背負って立つ児童の教育に当る教職員の人件費を、消費的経費という言葉をもって扱い、地方財政赤字解消の第一目標にあげようとする意図は、許すことができないではないか。総理及び自治庁長官の答弁を伺いたい。  また政府は、赤字責任地方自治体の放漫なる計画にあるとしておるが、実際は政府のやり方にあるのである。二十八年和歌山の水害の際、県は県民の犠牲でやむなく十六億円を支出し、復旧工事を行なったが、政府はこれに対してわずか二億七千万円を支払っただけである。また福岡県においては、一昨年の大水害からまる二年たったが、水害は毎年繰り返され拡大されるために、災害河川の復旧は一向に進まず、改修工事は必要工事量のわずか三彩というありさまである。このままでは、工事の完成には八十年を要すると言われておる。中で一番大きかった二十八年度災害についていうならば、政府が災害立法で公約した流失埋没農地の復旧費三十八億八百万円のうち、十四億二千万円、すなわち三七%が国庫から支出されたにすぎないのである。この結果、政府の公約を当てにして借金または自己負担で復興を進めてきた県や地元の耕地整理組合には、一割一分の金利の負担がのしかかっておる。しかも、反当り十万円以下の復旧は完全に農家の自己負担にされ、資金のない農民は、荒れ果てた農地をそのままにして、日雇いに出ておるのが現状であります。私は二月の総選挙に際し、関西、中国地方を遊説しましたが、どの地方に行っても、よい道路に出たなと思うとたん、その近くにアメリカの軍事基地があることを知った。また基地を遠ざかるに従って荒廃の度の大きいことに気づいたのであります。この一事をもってしても、投資的経費といっておる公共事業費すらが、実はアメリカの軍事基地に使われ、政府の従属政策の犠牲に地方自治体がされておることがはっきりするではないか。このようなやり方を改めずして、果して財政再建ができるものかどうか、総理及び自治庁長官の答弁を求めたい。  事実、地方自治体の赤字はシャウプ勧告で始まり、アメリカの朝鮮侵略戦争を通じて増加しておるのであります。二十六年度百一億、二十七年度三百億、二十八年度四百六十二億、二十九年度五百八十六億というふうに赤字が激増しておることは、吉田内閣の再軍備政策が強行されるにつれて赤字もまた急ピッチで増加しておることを、はっきりと示しておるのであります。政府はさらに措置法によって、滞納税金の取り立てや増税をし、また新税を設けて新たに税金の取り上げを計画しておるが、私は最近数カ所の自治体理事者に会い、果して政府の希望するごとく滞納税の取り立てがなし得るかどうか尋ねましたところ、そのほとんどの理事者は不可能であると答えておるのであります。今日においてすら税負担の限度を越えておるにもかかわらず、なおミシン税や鶏税のごとき新税を設けるがごときことが国民に許されるでありましょうか。しかも、この法案が急いで提案されました裏には、地方金融機関の圧力がある。すなわち、地方自治体は、無理な金を借りて金利に苦しんでおるので、金融機関といえどもこのままでは不安になってきたので、政府を督促してこのような法案を作らせたということである。この法案によってやせ細るのは国民であり、肥え太るものはひとり金融機関のみであると言われているが、大蔵大臣の率直な答弁を求めます。  政府は公約において、社会保障費の増加、完全就労を約束しましたが、赤字解消の責任を自治体に負わす結果、失対事業は極度に緊縮され、しかも失業者は増加する結果を生ずると考えるが、総理はこの点いかに責任を感じておられるか伺いたい。ほんとうに地方財政再建整備をはかるためには、政府は今までの政治のあり方を根本的に改め、平和政策を立てなければ、赤字解消は不可能であると言わなければならない。にもかかわらず、政府は反対に軍事化政策を一歩進めるために、この二法案を提出したのである。今日地方議会首長は、国民の不満と要求に押されて、中央に抵抗せざるを得ない事態がひんぴんと起り、中央の施策が思うように遂行できない状態にあります。たとえば基地、税金、供米等の諸問題を初め、その事例はたくさんあります。かかる自治体の抵抗を阻止し、軍事化政策を強化するために、財政再建を口実にして中央の威令を強め、地方議会を弱体化し首長中央の太いひもつきにしようとしておるのであります。つまり、かつての天皇制内務省下の地方組織が必要となったのであります。この目的が両法案に一貫して流れておる精神であります。すでに川島自治庁長官も、府県を併合して道州制に切りかえる意向を表明していることは、知事を官選にして官僚の最後的仕上げをはかる準備に進んでいるものであります。これが地方組織の軍事的組織がえの仕上げでもあります。自衛隊はすでに自衛隊法に規定されているように、官僚化した知事と結合して、初めて国民の弾圧に自衛隊を出動させ得るごとき地方軍事体制を完成することができるのであります。首相のこれらに対する御見解を伺うものであります。    〔国務大臣鳩山一郎君登壇拍手
  35. 鳩山一郎

    国務大臣(鳩山一郎君) 御質問にお答えをいたします。  地方財政窮乏につきましては、いろいろの原因がありますが、あなたの言われるがごときことは、原因はございません。その他についても御質問がありましたが、だいぶ見解の根底を異にしているようでございます。(拍手)    〔国務大臣一萬田尚登君登壇
  36. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 今日、地方公共団体が特に地方の銀行等から、あるいは地方債、あるいはまた借入金で資金の融通を受けておることは、これは間違いありません。がしかし、これは地方公共団体財政が、赤字の結果に負うところが多いのでありまして、銀行にいたしましても、こういう借入金の返済を受けるのは、これはまあ当然のことであります。この法律は、こういう地方公共団体財政赤字再建整備しようというのを目的にいたしておるのでありまして、その結果、地方公共団体財政が整ってくれば、自然に銀行が回収を受ける、かようになるのでありまして、決して金融機関を太らせるというような、特にこれに利益を与えるというような意味合いでないことは申すまでもないのであります。(拍手)    〔国務大臣川島正次郎登壇
  37. 川島正次郎

    国務大臣川島正次郎君) ただいま御審議を願っておる二法案が、軍事化に関係のあるような御意見ですが、とんでもないお話でありまして、条文をよくごらん願えばわかるのでありまして、中央集権化のような条文はないことは、先ほども繰り返して申し上げた通りでありまして、どこまでも地方自主性を尊重して改正案を作っておるのであります。しかし赤字に悩んでおる公共団体は全く非常事態でありますからして、各方面で犠牲を払わなければ、これは解決いたさないのでありまして、従いまして単独事業その他の縮小はやむを得ません。事業が縮小すれば、自然に人員の整理も行われます。これにつきましては、特に人員整理の資金として六十億の起債を認めておりまして、よす人が喜んでよせるような方策をとっておるのでありますからして、御心配のような事態はできないと私は考えております。(拍手
  38. 松村謙三

    国務大臣(松村謙三君) 私には御質問がなかったようであります。
  39. 河井彌八

    議長河井彌八君) これにて質疑の通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。  本日の議事日程は、これにて終了いたしました。  次会の議事日程は、決定次第公報をもって御通知いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後一時三十七分散会      —————・————— ○本日の会議に付した案件  一、日程第一 日本放送協会経営委員会委員任命に関する件  一、日程第二 地方財政再建促進特別措置法案地方自治法の一部を改正する法律案及び地方自治法の一部を改正する法律施行に伴う関係法律整理に関する法律案趣旨説明