○東隆君 私は社会党第二控室を代表して、ただいま上程されている案件につき、総理大臣並びに
関係閣僚に若干の
質問を試みます。
私は今から三十有余年前に、精神分析学を研究したことがあります。(笑声)この学問は、ヒステリーの研究から始まった学問でありますが、今回のこの日米間の
協定には、常識をもってしては理解できない節が非常に多いのであります。いうならば、ヒステリー的症状の
協定であります。
まず、この
協定の前文なるものが、われわれには理解しにくい、はなはだしく怪奇なものであります。
アメリカの「
農産物の販売及び
日本国によるその
購入から生ずる相互の
利益を
考慮し、
日本国における学校児童の福祉
計画を拡大するため
アメリカ合衆国による前記の
法律の
規定に基く同国の
農産物の
贈与が望ましいことを
考慮し、また、前記の
購入から生ずる
資金を両国にとって
利益になる方法で利用すべきことを
考慮して、次のとおり
協定した。」この文章の中には「
考慮し」という言葉が三回も出ていますが、よほど
考慮して読まねば、この扮装した
協定はわかりません。今回の質疑は、外務委員会プロパーの人がなさるべきでありますが、わが党では農林水産委員会所属の私がいたすことになりました。まず、最初の
協定の前文から、懇切に
外務大臣より御
説明を願わねばならぬ仕儀となりましだ。理解の行くように御
説明を願いたいのであります。
私は本
協定はヒステリ—的症状を呈しておると申しました。表面はいかにも両国が
利益するようであります。一億
ドルのうち一千五百万
ドルは
贈与で、ただで
日本によこすといいます。残った八千五百万
ドルのうち三〇%の二千五百五十万
ドルは
アメリカの意のままに
使用される分であります。
日本が自主的に
使用し得るものは五千九百五十万
ドルであり、この金額は、日一本と同様に
余剰農産物協定をなした諸国に比較して、第一位にあるようであります。しかし私のおそれていることは、この
日本の自主的に
使用し得ることになっている金額が、果して
日本の自主的
使用にまかされるかどうかということであります。
余剰農産物を海外に売りさばく
米国は、自国の農業恐慌をこれによって回避するのでありますから、問題はございません。その上、三〇%の二千五百五十万
ドルは、
わが国の
支払いによって
米国の意のままに
使用される分であります。残りの七〇%の五千九百五十万
ドルは、電源の
開発、農業の
開発、生産性の向上という
方面に使うことを約束させられているようであります。約束させられても、この範囲で
日本が自主的に真に使うならば、
世界銀行その他と相まつて効果を上げるかもしれません。しかし、このこと自体が、
アメリカの
余剰農産物を将来
購入せしめない
条件を作るのであります。当然貸し主の
アメリカは、その意図を上手に変装してくるに相違ありません。ここに問題がございます。問題を解明するには、
日本国民というセンサーはその変装を見破らなければなりません。電源の
開発や、農業の
開発、生産性の向上等の変装に隠れた
アメリカの意図を明らかにしなければなりません。
電源の
開発に際して電源の調査その他の名目で、実質的に
アメリカの御意にかなうもののみに
資金の貸し出しがなされるのではないかとおそれております。
日本単独でこの
資金を使って電源の
開発ができると、総理大臣はここで言い切ることができますか。それとも
条件がつくのか、電源の
開発はどこをやるのか、
電源開発の主体はだれがするのか、これらを明らかにせられたいのであります。
農業の
開発という広範な題目は、農地の
開発に限定されているようであります。その農地の
開発の個所も、先方のお声がかりで決定されるような公算があるようで、すこぶるこれも心細いのであります。
日本独自で決定すると、首相はここでやはり言い切ることができますか、お尋ねをする次第であります。
生産性の向上というのは、一体何をやるのですか。この名目で、究極するところは、軍需産業に重点的に
使用せしめられるのではございませんか。この中身を明らかにするとともに、ほんとうに自主的にやるのでありますか。未決定であるという
答弁が私は予想されますが、これこそ本
協定の中心的な中身と存じますので、明らかにこれについてお答えを願いたいのであります。私は直接この
協定に当った
外務大臣から、この中身を明らかにしていただきたいのでございます。
次に、昨年のMSAによる一千万
ドルの
贈与分の使途先は、
アメリカのひもがあまりに強く、今日なお完全に消化されていないと聞き及んでおるのでありますが、いかなる状況になっておるかこの際首相、外務、大蔵、通産、いずれの方からでもようございますが、これを明らかにここでいたしていただきたいのであります。
私は、ただほどおそろしいものはないということを聞かされます。今回の
余剰農産物の
輸入は一千五百万
ドルの
贈与の形で参ります。これは十八億五千万円を使って、加工し配給するという国庫支出が伴っておるのであります。決してただではないのであります。いわんや、先刻申したようなことを、ひもつきでやらざるを得ないとするならば、ただほどおそろしいものはないということが明らかになるでありましょう。
総理大臣は、この点いかようにお考えになるか、御明答をお願い申し上げます。
なぜこういうことを申すかと申しますと、
農産物の受け入れは、
法律は異なりますけれども、
吉田自由党
内閣の遺産でございます。民主党はこの遺産を相続しなくてもよいはすでございます。このような背後に
日本をアジアにおける
アメリカの防壁にするような
協定に、心から鳩山首相は
賛意を表されておるのか、伺うのであります。御返答のいかんによりましては、将来をトしたいと存ずるからであります。明らかに申しますならば、こんな
協定を来年も取り結ぶつもりでありますか。その辺を明らかに首相からお答えを願いたいのであります。
次に私は、本
協定を中心として、民主党
政府が
わが国の
食糧問題解決にいかなる態度をもたれているかを明らかにされたいと思うのであります。民主党
内閣は成立以来、
食糧の
需給態勢の確立と、いうことにきわめて熱心でありますが、
食糧の自給態勢の確立には熱心でありません。先刻の
説明にも、「
わが国の
食糧の
需給計画上、同国の
余剰農産物を
購入することが適当であること」とあります。この際私は、
日本が完全な独立をするために、
食糧の自給態勢を確立することが必要か、
食糧の
需給態勢を確立することが大切か、はっきり首相から言明をいただくために、
世界銀行ガーナー副総裁からの書簡の一節をここに述べます。これは昨年の六月、
日本政府が招請した調査団の
報告書の送り状の中の結論の結論ともいうべきところであります。「もし、
食糧輸入がさらに増加するとすれば、これに見合うだけ工業製品の
輸出を増加しなければなりません。これには原料の追加
輸入が必要であります。従って、
食糧輸入の増加をカバーするために
輸出する工業製品によって得られる
外貨受領額の増大は、このような
輸入財の価額よりもはるかに大きくなくてはなりません。」これは農地を
開発して
食糧を増産し、
外国から
食糧を買うなということであります。
世界銀行は農地
開発ならば金を出しますよということであります。これに反して、本
協定の、
購入から生ずる
資金を両国にとって
利益になる方法で利用するために、
米国の
余剰農産物を
輸入することは、完全に
日本の
食糧自給態勢を破り、
日本農民を殺し、
わが国国際収支をアンバランスにし、
需給態勢を不健全にするものと断ぜざるを得ないのであります。(
拍手)自給態勢か、
需給態勢の確立か、いずれをとられるかを鳩山首相にお伺いするのは、私は、
河野農林大臣の委員会等における
答弁では、この点を明らかにすることができないのであります。従って私が首相のお答えをあえて強く要望をする次第であります。
次は、なぜ
小麦をひもつきで
アメリカから買わなければならないかということであります。私は
小麦の
輸入については、英国の
小麦の買い方を学ぶべきであると思うのであります。英国は世界の各地から
小麦を
輸入しています。これは新しいもので、安く
輸入できる方法であります。英国の工業製品を送り出すためにも賢明な方法であります。
日本の製品を送り出すために、現在やむことを得ず
輸入している
小麦を有効適切に
輸出の面に生かすことは、古い
小麦を新鮮な
小麦にかえ、
貿易を拡張する方法であります。すでに世界は
農産物中、
食糧は買手市場ではなく、売手市場に変っています。
わが国産業発達と
貿易の拡大に専念されております通産大臣は、この方法によって真の平和
日本を作るか、この
協定によって武装平和の
日本を作るかの岐路に立っておるのであります。いずれを選ばれるか、御回示をわずらわしたいのであります。
次に、
農林大臣にお伺いをいたします。大麦の
輸入は大きな金額ではございません。しかし、大麦は粒食か、みそか、ビールか、飼料になるものであります。
輸入の量は少くても、
わが国の水田裏作を含めて作付面積はいかようにも伸ばすことができるものであります。
日本産の
小麦はパンに向きませんから、
小麦の
輸入はやむを得ずとしても、大麦まで
輸入しなければならぬ
理由が私にはのみ込めないであります。まさか食管会計の赤字をなくするためとも考えられません。
輸入する
理由を明らかにされたいのであります。
次に、米を
輸入することになっております。これは非常に考えねばならぬ点があるので、農林、通産両大臣と
外務大臣からお答えを願いたいのであります。米は、当然自給態勢の確立のためにあらゆる施策が集中されねばならぬと思います。それには内地米に似ている加州米その他を入れるよりも、
東南アジアの米を必要最低量
輸入すべきであると思います。
東南アジアは、売るべきものは米よりほかに数多くはございません。そこの市場を
日本が開拓するには、何としても米を買わねば片
貿易にならざるを得ません。この明らかなることを知りながら、
東南アジアの諸国が、
米国から
日本が米を
輸入することを好ましくないと申すのを知りながら、なぜ
アメリカから米を
輸入するのか。その
理由を伺いたいのであります。もし、内地米と加州米が似ているとするならば、それよりもわれわれは韓国と国交を調整し、米を
輸入すべきだと思います。目下韓国は
日本に向けるものがなく、片
貿易となっています。そうして
日本の弱小な漁業家を苦しめることになる韓国ノリの
輸入をやっています。隣邦韓国からなぜ米を
輸入しないか、これを明らかにしてほしいのであります。
次に、「児童の福祉
計画を拡大するため
余剰農産物の
贈与を受けることが望ましいこと」と
説明をされておりますが、これはいかに理解したらよろしいのか。なるほど
米国は、脱脂粉乳をもてあましている。だから、児童の福祉
計画の拡大に名をかりて、かく言っているにすぎないのであります。
日本では酪農
農家はすでに乳価の低落であお息と息であります。バターでもチーズでも脱脂粉乳でも、畜産製品の
輸入は禁物なのが現在の
日本の状況であります。
贈与だから受けるというのでは、なお悪いのであります。食生活改善上、酪農業がいかに重要であるかを説く
農林大臣には
説明のできぬところだと思います。
農林大臣は、児童に脱脂粉乳を与えるよりも生乳を与えるように努力すべきであります。牛乳からバターをとって脱脂粉乳を
国内で作るように
政府は手を差し伸ぶべきであります。酪農業を発達させるには、安い飼料を豊富にすることであります。牛乳やその他の畜産物は処理加工されなければ、ふん詰まりをすることは明らかであります。安価な飼料と畜産物の加工処理について、いかなる手が打たれているか、なぜ脱脂粉乳を
輸入するのか、あわせて伺うものであります。
最後に、本
農産物の
輸送が
米国の旗のもとに行われるということは、
米国の
法律に
規定されているとはい、
わが国の海運発達上遺憾しごくなことであります。いかようなことで船賃まで
わが国で
借款の対象にするのか、不明であります。
わが国の船舶による
輸送についていかに
交渉したか、その経過をお尋ねをいたします。
要するにこの
協定は、
日本の産業の発達に
悪影響を及ぼし、
貿易の伸張をはばみ、海運の進展をチェックし、農業を破壊し、酪農をつぶす
協定であると私は断じて
質問を終ることにいたします。(
拍手)
〔
国務大臣鳩山一郎君
登壇、
拍手〕