○
山下義信君 私は
社会党第二控室を代表して、
健康保険法の
改正に関し
政府に
質問いたしたいと存じます。
社会保障制度の前進は、
外交方針、防衛問題とともに
わが国最大の問題でありますが、前二者のはなばなしさに比して、とかく低調に流れがちであることは常々遺憾に思っておるものでございます。本日は
政府も熱心に御
答弁を願いたいと存じます。
社会保障の諸問題は、問題が
生活に直結しておりますだけに、近時
国民の関心が高まってきたことは事実であります。さればこそ各政党は
選挙におきまして盛んにこれを
公約し、
貧困と病苦と
生活に泣く多くの
国民に一縷の望みを抱かせたのであります。ことに
鳩山内閣は、従来の
内閣と異なりまして、
首相といい、一
萬田蔵相といい、声を大にしてこのことを叫んだのであります。
健康保険の問題につきましても、われわれに劣らざる
政策を掲げたのであります。しかるに今日に至りまして
国民の期待を裏切り、これを失望させるということは、
政治としてまことに罪が深いと思うのであります。(
拍手)
鳩山首相は、外に国際間の平和を求め、うちに
友愛福祉の
政治をやるというのでありますから、私は
社会保障政策について、先ず
首相の御
見解を承わりたいと思うのであります。特に
わが国の
社会保障制度をどの
程度まで推し進めていくか、大体の目標をどこに置くか、およそいつまでにそれを実現したいと
考えているか、大体のプランを持つことにしてはどうであろうか、こういう点について伺いたいと思うのであります。
鳩山内閣は、ことしは
失業対策に重点を置いたようでありますが、次は何を
中心にやろうという
考えであるか。
医療保険の
統合か、
国民養老年金の創設か、前者は
整備統合でありますが、
国民養老年金制度はぜひ手をつけるべきであるとわれわれは
考えておりますが、
首相の御
見解はいかがでありましょうか。それにしましても
鳩山内閣の
政策からいきますというと、明年以降
防衛関係費の膨張は避けられないと思いますが、果して大砲と
バターと両立し得るとお
考えでございましょうか。富める国ですらも、このこと難いのに、
貧乏国の
わが国におきまして、いかにこれを実行し得るというお
考えでありましょうか。おそらく
バターも乏しくなるのではないでしょうか、
耐乏生活をやがて強調するようになるんじゃないでしょうか。それとも、
鳩山首相は豆がお好きかわかりませんが、満州産の大豆でとうふや
みそ汁には不自由させないという御自信がおありになるでありましょうか。将来の見通しについて、あるいは希望について、これを
国民にお示しを願いたいと思うのであります。
さらに
社会保障行政の
改革刷新の必要はないとお
考えでしょうか。
社会保障省の新設、総合運営の断行についての
首相のお
考えを、ありますれば、あわせて承わりたいと思います。
次に大蔵
大臣に、一萬田さんに伺いますが、蔵相の政界出馬は、志、民生安定にありと伝えられておりまして、従ってあなたは
社会保障に意外に御熱心であるということでありますが、その限りにおきましてはけっこうに思います。しかし
財政上将来の
社会保障関係費について、これをどう
考えておいでになりますか、差し当っては明年度のお見通しはどうおつけになっておられましょうか。また
医療保険に対してはどう
考えられますか。
健康保険への国費
負担はどうしてもやらぬという御方針でしょうか、
国民健康保険の育成方針と
健康保険との
関係について、大蔵当局には何かの御方針があるのでありましょうか、これは根本問題でありますから、大蔵
大臣から
お答えが願いたい。
この
機会に私は一萬田さんにお尋ねしますが、
社会保障関係費の使用について、これを能率化し、これを効率化し、一千億の賞用を年三回回転しますれば、三千億の効果を示すことになるのでありますが、何か御工夫にお持ちになりませんでしょうか。たとえば防衛費と同じように
社会保障費のワクを千三百億なりあるいは千五百億にきめて、その内訳を有機的に総合的に、年々の情勢に応じたプランによって、有効適切に運用させるということにしてはどうかと思うのでありますが、今のように各費目がばらばらで、年々、型のごとくに諸経費を要求するというのでは、むだが多いのではないのでしょうか。極力冗費を節約しますれば、
健康保険の国費
負担も出てくると私は
考えますが、蔵相の御所見を伺います。
川崎厚生大臣に対しましては、主管
大臣でありますから、具体的にお尋ね申し上げますが、まず
赤字対策につきまして、この
赤字が出たということは一体たれの責任でありましょうか、これは
保険の
経営者である
政府が、その運営よろしきを得ないで、ついに二十九年度に四十億の
赤字を出したということなんでしょう。責任を明らかにするということは何ごとでも大切なことであります。しかるに
政府は
赤字の
原因をもって他にありとなし、今回の
改正によって、これを被
保険者等に転嫁しようとすることは、大へんな間違いではないかと思うのであります。
赤字の
原因として
政府の挙げておる
結核治療費の増高は、これは
政府みずからその源を作ったのである。病床の増加、入院料の値上げ、抗生物質の使用、療養期間の延長、これは皆
政府の施策でありまして、これが影響は二十八年度から、早くから予見し得られたところである。にもかかわらず、
政府は今日までいかなる
対策をお講じになったのでありましょうか。また一件当り
医療費の増加、これはもう去年の二月から顕著に現われまして、ことに三月、四月にかけましては、急カーブで一段と激増し始めたのである。何が故にかくのごとく急激に様相を一変したか、これまたその
原因は
政府にあるのです。昨年の初めから
政府は抗生物質の点数値下げの問題、
保険収入に対する減税
措置の問題、医薬分業の問題等について、ことごとに
保険医
対策を誤まり、
政府と
保険医と、この両者の
関係は極度に悪化するばかりでありまして、ついに
保険医に異常なる憤激と反感を与え、これが
医療費増大にしらずしらず影響を与えたことは察知するにかたくないのであります。しかるに
政府はあえて悟ろうとはしないで、頭から彼らを不正医師と見なして、
法律の
改正によってこれを監視し、これを威嚇すれば、
医療費が低下すると
考えておるのであります。すなわち
赤字の
原因、しかも
相当重大なる
原因を医師の不正にありとする
政府の
考え方、もしさようであるならば、従来うわさの高い不正診療の実情について、その真相、果してどうであるか、この
機会に御発表を願いたいのである。会計検査院は批難事項において全国三千六百四十九施設の中で、五十七カ所の国立療養所等を調査したところが、百一件の不正件数があるということを
指摘しておる。月々三百数十万件に上る莫大な件数から推算いたしますと、一年間の不正件数が約四十五万件ということになる、また一方、九万の
保険医の全体については、思い半ばに過ぎるものがあることを
報告しておる。本年五月、
政府全国
保険課長会議を開いて、最近の監査の結果では、全例不正といっていいほどであると
発言して不正請求の多いことを語っている。また本年初めから厳重なる取り締りをするぞという方針を示しただけで、
医療費の支払い高がたちまちにして今年の一月には一億五千万円、二月は一億二千万円の予想減を見たということでありまするが、果して事実かどうか、この際明白にされたいのであります。
次に、受診率の上昇を挙げておりますが、こういうことは決して憂うべき現象ではないのでありまして、
政府官掌の被
保険者は主として中小企業の従業員であり、それらの従業員が
相当健康を害しておるということを示しておるのでありまして、同時に
健康保険がいかに彼らの窮状に役立っているかを物語るものでありまして、何ら憂慮の必要のない当然の現象であります。もし受診率の低下を望むというならば、ひとえに
労働者の
生活を向上し、かつ
公衆衛生活動を活発に行いまするならば、自然に受診率は低下するのでありまして
改正案に見るがごとく、家族の範囲を
制限するというようなことは、改悪でこそあれ、何ら
赤字の改善にはならないのであります。以上のごとく、
赤字の責任は全く
政府にあるのでありまして、従って四十億の
赤字は
国庫において
負担するのが当然と
考えるものでありますが、
厚生大臣の御所見はいかがでございましょうか。(
拍手)
赤字の見通しや、これが
措置につきまして、いささか不審の点がありますが、これは
委員会で伺います。
ただ大蔵
大臣に伺いたいのは、
赤字に対する長期融資は六十億をやると言いますが、いっこの融資はするのであるか、その辺の
手続についてお示しを願いたい。おそらく
政府は、今回の
改正によって収入の増加をはかり、一方は療養の給付を極力
制限することによって支出を抑え、明年度以降は
政府負担の必要のないことをひそかに期待しておるのであろうかという疑いがあるから、この際、
政府の融資の
関係を大蔵
大臣から明白にお示しを願いたい。
続いて、なお
厚生大臣にお尋ねしますが、
保険料の引上げは、デフレ
経済下の現在、
労働賃金の実質的低下の今日、これに逆行するのはなはだしき暴挙とはお
考えになりませんか。
労働者に支出の増加をしいることは、
労働者の賃金を引き上げる覚悟がなくてはできないのであります。
労働者の生計のいかなる点から
負担の増加の合理性を発見されましたかう御説明を願いたい。
当面の急務は、
健康保険の根本
対策をどうするかということであります。
赤字処理と同時にこのことが提起されねばならないのであります。
政府はこれから検討するという態度でありまして、驚き入った無責任、無責任というよりは無為無能というほかはありません。
厚生大臣はその就任を諾するに当りまして、かねてその用意と確信があるべきはずでありまして、殊に尊敬する
川崎君でありますから、その御用意があると思いまするので、次の諸点について特に明確なる御
答弁を得たいと思います。
一、
厚生大臣は、明年度はおよそ百億の
国庫負担は実現して見せると言明したということでありますが、果たしてその御方針であるかどうか。二、
結核予防法を根本的に
改正して、公費
負担のあり方を検討し、
保険経済との
関係を
解決する
考えはないか、ありとすれば、どのように
改正しよとするか。三、
保険医
制度を確立する
考えはないか。
保険医の資格、指定方法、分布方針、処遇の問題、公的性格の与え方、権利義務の明確、
生活の
保障、保護助長の範囲、優良
保険医の表彰等、
保険運営に心から協力し得るようにすることはきわめて緊要と
考えるが、
政府の方針はどうであるか。四、
医療機関の整備、特に公的
医療機関は
保険運営と密接なる
関係がありますが、
保険病院等整備
計画を積極化し、大施設によって
医療コストの低下、
医療内容の適正化をはかるということは必要であると
考えるが、御
意見はどうであるか。五、予防衛生、
公衆衛生活動は
医療保険と不可分の条件であるが、
政府はかえって消極的方針をとって
予算も減じておる。不祥事件も今言われたように頻発の傾向がある。これを積極化する
考えはないか。六、診療報酬支払
制度を
改正する
考えはないか。高価薬を使えば使うほど利益があるという現行
制度、繁雑なる請求
手続、複雑にして困難なる審査方法、適当でない今の基金
制度、これらについて
改革の
意思はないか。七、被
保険者の協力は最も重要な問題でありますが、
健康保険におきましてもメリット制を取り入れる
考えはないか。健康にして無病であった者、あるいは健康管理優秀なる事業場等に対する褒賞制等を考慮する
意思はあるか、ないか。八、
保険原理は広範なる危険分散を求めております。現下の
保険状況におきましては、多々ますます被
保険者の適用範囲を拡大いたしまして、たとえば忘れられたる五人以下の従業員およそ三百万、この際これらの新加入をはかるべきであると
考えますが、
政府の方針はいかがでありましょうか。九、
保険運営の能率化は、責任制の確立と運営の民主化によるのほかはないのであります。今日の
政府管掌は全く官僚の独善に陥りやすいのでありまして、また責任の明確も期しがたいのであります。あるいは経営と監督の分離等、運営上これを改善するお
考えはないのでありますか。
以上、
質問の大要でありますが、
最後に希望を申し上げておきます。
わが国社会保障の現況は、
医療保険が六五%を占めて、
制度としてはアンバランスであります。しかし、これは
医療保険が行き過ぎておるのではないのであって、年金等、いまだ着手せざる
部分が多々あるからであります。従って
健康保険に多少にても行き過ぎがあって、国力に相応しないなどと誤解して、これが
後退をはかりまするならば、せっかくの
保障制度はこの一角から総くずれとなりますことは、きわめて明白であります。しこうして国内不安の間隙がこの点に集中し、この盲点をうかごうということは、断じて避けるべきであると存じます。
政府、殊に
厚生大臣の勇断を望みますとともに、明快なる御所信のほどを伺わんとする次第でございます。
これをもって
質問を終ります。(
拍手)
〔
国務大臣鳩山一郎君
登壇、
拍手〕