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1955-06-06 第22回国会 参議院 本会議 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年六月六日(月曜日)    午後三時十二分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第二十号   昭和三十年六月六日    午前十時開議  第一 石炭鉱業合理化臨時措置法案趣旨説明)     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 河井彌八

    議長河井彌八君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。      ——————————
  3. 河井彌八

    議長河井彌八君) これより本日の会議を開きます。  内閣総理大臣から発言を求められました。この際、発言を許します。鳩山内閣総理大臣。    〔国務大臣鳩山一郎登壇
  4. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 本院の本会議に出席するつもりで待機していたのでありましたが、手違いのために、かかる事態を引き起しましたことは、まことに遺憾に存じます。今後は絶対にかかる事柄の起きないように注意をいたしますから、このたびのことは御了承願いたいと思います。(「了承々々」と呼ぶ者あり)      ——————————
  5. 河井彌八

    議長河井彌八君) 五月二十六日、内閣総理大臣から、海岸砂地地帯農業振興対策審議会委員宮本邦彦君、上林忠弐君三輪貞治君の任期満了に伴う後任者を指名されたいとの申し出がございました。  つきましては、この際、日程に追加して、同委員補欠選挙を行いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 河井彌八

    議長河井彌八君) 御異議ないと認めます。
  7. 松岡平市

    松岡平市君 ただいま議題に供せられました委員会委員選挙は、成規の手続を省略して、議長において指名せられんことの動議を提出いたします。
  8. 阿具根登

    ○阿具根登君 私は、ただいまの松岡君の動議に賛成いたします。
  9. 河井彌八

    議長河井彌八君) 松岡君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 河井彌八

    議長河井彌八君) 御異議ないと認めます。よって議長は、海岸砂地地帯農業振興対策審議会委員宮本邦修君、上林忠次君、三輪貞治君を指名いたします。      ——————————
  11. 河井彌八

    議長河井彌八君) 日程第一、右岸鉱業合理化臨時措置法案趣旨説明)  本案について、国会法第五十六条の二の規定により、内閣からその趣旨説明を求めます。石橋通商産業大臣。    〔国務大臣石橋湛山登壇
  12. 石橋湛山

    国務大臣石橋湛山君) ただいま議題となりました石炭鉱業合理化臨時措置法案につきまして、説明を申し上げます。  一昨年来、わが国石炭砿業は、御承知のように深刻なる不況に悩まされまして、休廃止炭鉱は続出し、未払い賃金は累増し、失業者は集団的に発出いたす等の容易ならざる問題が相次いで起っておりますことは、まことに遺憾の次第でございます。しかもこの石炭鉱業不況のよって来たる原因は、はなはだ深く、幾多の悪条件の累積によって今日の事態を招いたのでありますので、一時的応急措置をもってしては、これを克服することがとうてい困難であると認められます。この際、ぜひとも必要な処置は、長期見通しに基く、抜本的な再建方策を講じまして、もって石炭鉱業の安定と発展とをはかることだと信じます。基本産業中の基礎産業でありますところの石炭業が、かくて幸いに安定と発展との方途を見出し得ますならば、その国民経済全般の健全なる伸張に寄与するところはきわめて大なりと考えるのであります。  元来わが国石炭は、その賦存状況及び品質等におきまして、必ずしも良好の条件のもとにはございません。従ってその生産費は、諸外国石炭に比し、ややもすれば割高となることを免れないのでありますが、ことに地下資源産業に通有な特性として、採掘用場が逐年深部に移行するに伴いまして、採掘条件は次第に悪化いたします。従って適時に大規模若返り工作を行い、生産費の累増を抑止する必要がございます。しかるに御承知通り戦時戦後を通じて、何をおいても石炭増産をいたすことが、国の最大の必要事でありました時代におきましては、右のごとく適切なる若返り工作を行う余裕がありませんでした。その結果、炭鉱内外施設は荒廃いたし、固定資産の償却は閑却され、生産費は漸次増加して、企業経理は逐年悪化して参ったのでございます。  昭和二十四年に至りまして、一応戦後における石炭増産要請達成せられまして、需給関係も好転いたし、統制は撤廃いたされたのでありますが、戦時中からの諸種の弱点はほとんどそのままに包蔵せられておりまして、生産費の割高に基く高炭価問題は未解決のままに今日に至っているのであります。たまたま昭和二十五年の朝鮮動乱による好況のために、一時この問題は影をひそめた観がございましたが、昭和二十六年に動乱が休止するとともに、高炭価問題は再燃いたしまして、競争エネルギーである重油外国炭が、割高なわが石炭需要分野に進出し始めたのであります。のみならず、昭和二十七年末、長期にわたって炭鉱ストライキが行われましたことも、また重油外国炭の進出を一そう促進する結果をもたらしました。そのため、国内炭生産費を下回る価格をもって、これら競争エネルギーと対抗せざるを得なくなつたのであります。加うるに昭和二十八年下期以来の経済全般に浸透いたしました不景気によりまして、石炭需要は減退の一途をたどり、その需給は一段と均衡を失するに至ったのであります。  この際、何らかの方法によりまして、抜本的対策を講じ、炭価引き下げ、局面の打開をはからないならば、あるいはわが国石炭鉱業は衰滅の悲運に陥り、せっかくの天然資源は利用の道を失い、多数の企業者炭鉱労働者とは、ともにその生活の根拠を奪われまして、産炭地一帯に甚大なる社会不安を醸成するに至るおそれなしとしないのであります。政府は、かような見地から石炭鉱業合理化し、産炭原価を低下するとともに、その安定をはかることを企図いたしまして、鋭意検討を進めて参ったのでありました、今回ようやく成案を得るに至りました。よって石炭鉱業合理化のために法的規制を必要とする事項につきまして、石炭鉱業合理化臨時措置法案を作成いたし、また別に総合エネルギー対策見地から、重油ボイラーの設置の制限等に関する臨時措置に関する法案を立案いたしまして、あわせて本国会に提出し、御審議を仰ごうといたしておる次第でございます。  本法案は以上申し述べました通り石炭鉱業合理化、換言すれば、その生産性の向上によって炭価引き下げを意図いたしておるのでありますが、これによって生ずべき過剰労働力につきましては、現在すでに問題になっておりますところの炭鉱失業者とあわせて、これが吸収に十分なる対策を講じて参る計画でございます。すなわち従来より実施いたして参りました産炭地一帯における鉱害復旧事業失業対策事業等を一そう強化いたすとともに、さらにそれぞれの炭鉱地帯に新たに河川改修、道路、水道、鉄道建設等の諸事業を起し、その他住宅建設電源開発製塩事業等の諸事業に対しましても、職業補導教育実施いたしつつ、これら労務者計画的配置転換をはかる所存でございます。  石炭鉱業合理化臨時措置法案の内容につきましては、御審議の途上において、さらに詳細にわたって申し述べる所存でございますが、簡単に概要を以下申し上げますと、この法案は、第一章から第五章におきまして石炭鉱業合理化するための措置を定め、第六章におきましては政府諮問機関たる石炭鉱業審議会の件、第七章におきましては法律実施上の補完規定を、第八章におきましては罰則を定めております。  先ず第一章は目的と定義とについての規定でありますが、これを具体的に申し上げますと、この法律は、竪坑開さく等合理化工業実施するとともに、坑口開設制限及び非能率炭鉱整理を行いまして、生産体制集約化し、石炭生産費引き下げることをはかるのでありますが、さらにこの合理化効果石炭価格に反映させるために、標準炭価を設定公表いたし、合理化の進捗に応じて、逐次これを低下せしめるとともに、著しくこれを上回る石炭価格の生じました場合には、価格引き下げの勧告を行なって、これを一定水準にとどめ、もって国民経済の健全な発展に資することを目的といたすものでございます。  第二章は、石炭鉱業合理化計画に関する規定であります。通商産業大臣は、石炭鉱業合理化のための諸施策を総合的に実施するために、昭和三十年度から昭和三十四年度に至るまでの長期石炭鉱業合理化基本計画と、その年度別石炭鉱業合理化実施計画とを策定公表することにいたしております。さらにこの計画達成のために必要な資金については、政府が適切な措置を講ずることを規定いたしております。  第三章は、石炭鉱業整備事業団についての規定でございます。合理化工事実施は必然的にこれら炭鉱操業度の上昇を必要といたしますので、需要に対応した適正生産規模生産体制集約化するために、非能率炭鉱整備を行うことといたしました。その実施機関として石炭鉱業整備事業団を設立することといたしております。この事業団炭鉱事業主の申出に応じまして、炭鉱採掘権鉱業施設とを買収するものでありますが、炭鉱の買上げに伴ない離職する労務者に対しては、事業団より平均賃金の一月分に当る金額を支給するほか、未払い賃金があります場合には、これを事業団炭鉱事業主に代って支払うことといたしております。  第四章は、坑口開設制限に関する規定でございます。前述の通り生産体制集約化措置といたしまして、非能率炭鉱買収とあわせて新規に非能率炭鉱の発生するのを抑制するために、石炭採掘目的とする坑口開設について許可制を設けることにいたしました。ただし、この措置は、その性質上、必要最小限にとどめるために、特に三年間に限り実施することといたしたのでございます。  第五章は、石炭販売価格及び生産数量制限についての規定でございます。合理化効果炭価に反映させるために、標準炭価の制度を設けますとともに、石炭鉱業の現状にかんがみまして、炭価が暴落し、合理化計画達成に重大な支障を生ずるような事態に対しましては、通商産業大臣の指示により、生産業者が独禁法の規定にかかわらず、生産数量販売価格について共同行為実施し得るようにいたしたのであります。  第六章は、石炭鉱業審議会についての規定でございます。通商産業省に石炭鉱業審議会を設置いたしまして、合理化計画標準炭価坑口開設制限等重要事項につきましては、これを個々に諮問することといたしました。  以上のほか第七章に、この法律実施上の補完規定とも申すべき雑則を、第八章に、この法律違反行為に対する罰則を、それぞれ規定いたしておるのであります。  以上は、簡単でございますが、この法案の構成につきまして、一応御説明申し上げた次第でございます。政府といたしましては公正無私に考えまして、この法案が少くとも現段階においては、わが国石炭鉱業の実態に即して最も適正なりと信じて御審議を願う次第でございまして、幸いにこの法案が制定の運びとなりました暁には、これが実施を厳正適切にいたすことは申すまでもなく、また炭鉱採掘技術及び経営等については十分科学的検討を加えまして、万遺憾なきを期する準備をいたしております。かようにして石炭消費者利益を擁護するとともに、石炭鉱業の健全な発達とその従業者の福祉の増進とに一意努力する所存でございます。皆さんにおかれましても、何とぞ政府の意のあるところを了とせられ、本案に御協賛下されんことを切にお願いをいたす次第でございます。
  13. 河井彌八

    議長河井彌八君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。一松政二君。    〔一松政二登壇拍手
  14. 一松政二

    一松政二君 私は自由党を代表いたしまして、ただいま議題となりました石炭鉱業合理化臨時措置法案に対しまして、鳩山総理大臣以下関係閣僚に若干の質問を試みたいと存ずる次第でございます。  ただいま石橋通産大臣提案理由説明を承わりましたのでございますが、私は、はなはだ残念でございますけれども、この法律精神につきまして、若干の疑義があり、これが果して石炭合理化になるか、あるいは日本産業に寄与するか、幾多の疑問が湧いて参っておるのであります。私は、戦後のわが日本実情、昨今のいわゆる思潮につきまして、最近特に私は不思議に思っておることがある。元来人間の生存が、あるいは国の、国際場裡におけるわれわれ日本国民が生きていくということが、さほど一体簡単にできるものであるかどうか。いわんや日本敗戦によって、まず一文なしになったといってもあえて過言ではなかろうと思うほどのわれわれは打撃を受けておるわけであります。ところが、今日世の中に、あるいは新聞に、雑誌に、あるいは物の本に、無難なんじを玉にす、あるいは困苦欠乏に耐えるとか、あるいはまた、かわいい子には旅をさせるとかいうような文字が、一体どうして消え去ってしまったのでありましょうか。またこういうことは、人生、地球上に人類始まって以来、やや文明の体裁をなし、国際情勢においてお互いに競争を営まなければ生存を可能としないようになってきたこの人類社会においては、私は古今を通じての哲理であると考えるわけであります。今日わが日本のおかれておる状態をそのまま率直に国民に訴えて、実情を知らしめ、そうして覚悟を促すことが、私は最も親切な政治であり、われわれ国会議員も、政府も、あるいは政党も、なすべき私は一番の中心問題であると考えるわけであります。今日の日本において、ただいま問題になりましたような合理化臨時措置法案がかりに通るといたしましても、これが中心をなすものは人なんであります。経営者であり、従業員であり、あるいはまたこれを取り巻いている消費者、あるいは世間風潮であります。いかにも、敗戦結果新憲法が与えられ、健康にして文化的な生活を営む権利を有するがごとく書いてありますが、一体国家とは何であるか、政府とは何んであるか。近ごろの私は社会風潮を見て何か、食われぬようになったのはこれは政府が悪いのだ、あるいは国が金を出してやるべきであるというような風潮が、もう津々浦々、全国を風靡しておる。皆さん承知通り国会を取り巻く陳情、果てはデモ隊、あるいはすわり込みというような情勢において、政党政府も、これらの風潮に対してこびを呈しておる。これは私は決して国民に忠なるゆえんではないと思う。かわいい子供に菓子をやる、小づかいをほしがるのをそのままそれにやって、それが果して子供をかわいがるゆえんでありましょうか。(「古い、古い」と呼ぶ者あり)古くない。黙って聞きなさい。そういうことを言うことがいかぬのだ。僕はここで発言する権利を持っている。(「発言するなとだれも言っていない」「脱線するな」と呼ぶ者あり)脱線をしているのではない。石炭合理化をはかろうとすれば、それに従事する人のまず精神がこれを許容するようにならなければ、私は行われないと思う。かりに一つ企業がもうかるかもうからないか、その利益の配分をどう下るか。今日のように、もうかってももうからないでも、あるいは営業が成り立っても成り立たないでも、われわれは食えないから賃金をよこせ、あるいは足りないからボーナスをよこせと、今日から始まっておる、いわゆる地方公務員のごときは、あるいは中央も、いずれはそういうことになると思いますが、すわり込みをやるとかいう計画で、そうして(「本筋に入れ」「何の質問をしているのだ」と呼ぶ者あり)郷って聞きなさいよ。そういう精神状態でいる者を相手にして私は企業合理化は、ただ法律をこさえただけで行われるとは思いません。私はどうしても、この非常に甘い考え方、安易なる考え方、無責任なる考え方、われわれもこの考え方をわれわれ国民がみずから省みて、そうしてこれではいかぬのだ、これでは自立経済にならない、われわれ石にかじりついても生き抜いていかなければならぬ。国際競争場裡はそんな甘いものじゃない。日本のことだけを考えてくれる外国はほとんどありません。みんな競争相手です。それに回って輸出しなければならぬ。そうし輸出貿易を盛んにしなければ、日本は食っていけないということは、諸君、もうほとんど何人も異論のないところであります。その基幹産業であると称する石炭であるから、何とかしなければならぬと考えて、今こういう法条が出ておる。ところが、そのもとをなすわれわれ国民考え方、あるいは従業員考え方、これが合理的にならなければ、からだを作ってが魂入らないことになる。私はまずそれを、魂を作ることの方が先ではないかと考えるわけであります。この合理化法案と称する臨時措置法案を見ても、そういう片りんを、この法案の中に見ることができないことを私ははなはだ残念に思うのであります。  私はまず鳩山総理に伺いたいことは、今日のこの風潮を改めることが一番われわれ国民に課せられた、あるいは政府に課せられた、政党人に課せられた、あるいは国民代表に課せられ方責任ではなかろうかと思うのであります。(「君の頭の改造がまず第一だ」と呼ぶ者あり)私は、今私に向ってヤジを飛ばしておる方々は、われわれと考え方を異にする。そうして社会党の左派の綱領を見ればすぐわかる。革命を企図しておる。だから、産業がどうなってもこうなっても、革命が起りさえすればけっこうなんである。であるから、そういう思想の者とわれわれとは、物の考え方の基盤が違うので出る。(拍手)そういう人があるから、われわれは、それでは日本の国は立たないと思う。でありますから、われわれは、そういう日本の国を立て八千万国民が自由を楽しみながら生きていくためには、われわれの考え方をまず改めていくということが、今までの政府のな十べき、あるいは総理大臣国民を率いる上において最も必要であり、そうして一日を争う問題であると考えるのでありますが、総理大臣は、この総括的ないわゆる国民思想、物の考え方基本でありまするから、くどいようで承りますけれども、そういうことが一日も早く改められる方向に政治を持っていき、また国民をそういうふうに、私は啓発という言葉を使うことはどうもと思いますけれども、そういう方面に指導することが、この合理化法案よりも私は先決問題であると考えるのでありますが、その点に対する総理大臣の御所見を伺いたいのであります。  私は、その私の考え方に立って、今この石炭合理化法案を一読してみまするというと、合理化と称しますけれども、また先ほどの趣旨説明にもありましたが、これを流れておるものは、石炭鉱業救済ということだ。私は、合理化の線が貫かれていない。もし私は、炭鉱経営合理化するというのでありまするならば、なぜ最も必要なるところの鉱区整理統合をおやりにならないか。わが国石炭鉱業は、二、三の大炭鉱業者は別でありまするけれども、ほとんど小さな鉱区にたくさんの企業家が蝟集しておるといってもあえて過言ではなかろうと思う。ある炭鉱は、もうすでに掘ってなくなっておって、隣の山の断層にぶつかっておるけれども、それは隣の山なんだ。隣の山はまだその上を掘っておるから、下のやつに手をつけるわけにはいかぬけれども、こっちはなくなったから、もうやめてしまっておるという炭鉱がたくさんあるわけでありますけれども、そういうものに対しては、この法律案ではこれを相手にしておらぬ。ただ申し込みを受けた、買収申し込みを受けた石炭山だけを買うことになっております。これで果して私は合理化と言えるかどうか。今日石炭業者が非常に困っておる。あるいは借金で首も回らない。賃金も払えない。まことにその通りだと思うのでありますけれども、それは今日、そういうことがわが日本に初めて起ったのではない。第一次世界大戦のあとの、あの深刻なる不況一体とどうお考えになっておるのでありましょう。昭和三年から日支事変の始まる直前まで、炭鉱業者がいかに苦しんだか。一年や二年や三年不況に見舞われるのは、企業家の常なんだ。そういう場合に、好況の場合にそれに備えなければならない。また好況の場合には、また次に不景気が来ますから、その際に備えるのが企業家の努むべき責務なんであります。(「重油を奨励したのはどこの内閣なんだ」と呼ぶ者あり)ところが、今日、われ人ともに無責任になっており、非常に安易である。その日が過ごされればいい。食われぬようになれば、政府がどうかしてくれるだろう。企業がもうからないようならば、政府が買ってくれるだろうというようなことをなされますならば、私はさらにさらに国民をして安易感無責任感を助長するであろうことをおそれる。でありますから、私は、この法律案趣旨一体救済にあるのか。あるいは合理化をしようとするのか。またこれで合理化ができるとお考えになっておるか。まずこの点を一つ考えになっていただきたい。私は石炭鉱業に対していささか経験を有しております。  第二に、私は通産大臣にお伺いをしたいことは、資金計画であります。第六条によりまするというと、政府は、所要の資金の獲得に努力せなければならぬ。努めなければならぬというふうになっていると思います。世の中で何か仕事をしようと思えば、いわゆる先だつものはお金なりけりで、金の準備がなかったら何事もなすことができない。で、竪坑を掘さくする場合に莫大な金が、千数百億の金が要る予定になっているということを聞いておりますけれども、その金の用意が、確たる見通しがあるのかどうか。あると称しましても、これは世間は決して、ことしの今の日本状態は、来年の今の日本状態とは違います。どういうことになっておるか。来年のことをいえば鬼が笑うといわれるほど、昔から世の中の変転というものは激しいものであります。でありますから、今から向う四年間あるいは向う五、年間、これこれの金があって、それは心配要らないのだということになれば、その資金の裏づけによって、私は今日その計画を始めて差しつかえないと思う。けれども、先はどうなるか、先には先の風が吹くというような程度のことで、もしこの計画案をお始めになったら、始めた当初から私はその計画に狂いができてきて、とうていこの所期の目的を達することはできない。いな、かえって収拾すべからざる混乱を招き、また国費に大きな負担増をするであろうことを私はおそれるのであります。  今日石炭業界は過去の放漫経営のために、あるいは言葉をさらに極端に詰めていえば、無責任なる経営のために、ほとんど大手の炭鉱がみな社長以下責任をとっておる。それほど責任をとっておりながら、私は炭労の諸君は、(「何を言うか」と呼ぶ者あり)労務者諸君はこれに対して、どういうお考えを持っておるか。私は、従業員が、炭鉱経営状態はどうなっても、自分たちはこれだけ要るのだといって、力ずくでストライキをやって、そうして分け取りしておるのじゃありませんか。それで事業が成り立つと思いますか。それで事業が成り立たないでも、それで混乱が起って革命ができれば、あなたたち目的達成できるでしょう。(「何を言うか」「石油を使え使えと言って今になって何たることだ」と呼ぶ者あり)私はまず資金計画の詳細なる、正確なる見通しがあるかどうかについて通産大臣の御所見を承わりたいのであります。  さらに私は第三の質問といたしまして、石炭鉱業整備事業団、これについて、私は何回これを繰り返して読みましても、わからない点がある。一体社団法人か、あるいは株式会社あるいはその他のいわゆる法人なれば、これには出資者があるはずであります。これはただ政府法律によって名前をこしらえてそれに法人格を与えておるのでありまして何人もこれに出資しておるものがない。国も出資してはおらぬ。しかもこの整備事業団は、金を借りることができる。最終責任者一体だれなのでありますか。政府は、この整備事業団が金を借りるときに、一体保証するお考えでこの法律を作っておるのでありましょうかどうか。もし政府がそういう責任はとらぬのだというのならば、私はこれに向って資金を融通するという人は、私はほとんど、皆無でないまでも非常にむずかしいことであろうと思う。また、整備事業団事業をやるための金の出し場といたしまして、前年度出炭を約四千万トンとしますれば、一トンにつき二十円の納付金という制度が設けてある。一カ年四千万トンに対する二十円でありますから八億円、さらにまた開銀から貸し付けてある金利を負けて、その負けた部分が、ちょうど同様の金額を予定しているやに聞いているのであります。そうしてその納付金を徴収するのに、ちょうど地方税の徴収をするのと同じ考え方のもとに、いともこまかい、最終段階に至っては強制処分に付しても、その納付金を取り立てるような規定が、事こまかに書いてあります。私は今日のこの石炭業者、昔のいわゆる大財閥と称せられた炭鉱でも、莫大な税の滞納があると聞いております。国税に滞納があると同時に、私は地方税においても滞納があるだろうと思う。そういうところへもっていって、さらにこの納付金を課するのでありまするから、これが予定の収入をあげることは、私は非常に難中の難事であろうと思うのであります。竪坑を掘るための千何百億の資金計画もさることながら、この石炭鉱業整備事業団の日常行うための資金についても、私は確たる見通し政府はお持ちになっていないのじゃないかということが心配なのです。もちろん予定収入は予定してあるでありましょうが、それを現実に取り立てることが困難だ、まずそれを債権といたしまして、それは二番抵当にか力、三番抵当になったところの相手方でありまして、鉱業権を処置するわけにはいかない。いつまでたっても、それはただ絵にかいた餅でありまして、食べるわけにはいかない。そういうものを相手にして全部ではありません、そのうちの半分くらいは、あるいは取れるでありましょうけれども、あとの半分は取れないということになれば、それだけ事業はできないことになる。それを借金によって埋め合わせるとすれば、私は健全なる金融業者であるならば、必ず政府にその責任を持てということを言ってくるに違いないと思う。その点に対して通産大臣はいかにお考えになっておられますか、御説明願いたいのであります。  先ほどの通産大臣趣旨説明の中に、重油の消費規制をする、あるいはこれと三位一体をなすかもしれません重油ボイラー設置の制限等に関する臨時措置に関する法律案が用意されております。ところが石炭鉱業救済するために、私はこれは他の産業を犠牲にすることになり、またせっかく重油が安くて使いよくてよい、そしてストライキも何もほとんど考えなくていい、それだから値段も安いし、取扱いも便利であるし、経済であるから、みなが重油を使っている。これが合理化なんです。それを逆に法律まで用意して、これを規制するということは、他の産業が不合理化であってもいいことかと私は申し上げたいわけなんであります。また、政府の企図されておりますところの消費規制によりまするというと、ボイラーにたいているところの今の重油は、二十九年度たった七十二万トンなんです。それを三十五年度には三十一万トンまでもっていきたいという、半減したいという、その差はわずかに三十一万トンを五年間になしくずして、そうして消費規制をしようとするのが、この重油ボイラー設置の制限等に関する臨時措置に関する法律案なのであります。私はさらに不思議に思うことは、鉱工業及び大口炉に対する重油の消費は、二十九年度が百二十八万七千トンなのであります。それは逆に、逐年増加の傾向にありますが、三十五年度には百六十七万トンにふやして、約四十万トンばかりを四年間にふやすという計画になっております。皆さんも御承知通り石炭重油は、これはある程度転換ができる。重油が来なくなった戦時中、あるいは戦後のある期間、みな石炭に置きかえられておる、これがほとんど重油に転換しておるわけであります。この方は増加して、なぜ弱小のボイラー、たった七十二万トンしか使わないボイラー業者を、法律までこしらえてこれを縛らなければならぬのか、私はその理由がわからぬ。なおまた、小口及び暖房用が二十九年度に百六万二千トンという数字が出ております。これを三十五年度には五十万トンまでに、これは行政措置で滅したいというお考えのようなんであります。これを法律を用いずして、販売業者をうしろから通産省の係官がいろいろな報告を求めて、そうして最後には為替の割当を減すというところで押えて、そうしていや応なしに各家庭で用いられておる、あるいは零細なとうふ屋や油あげ屋、あるいはその他の弱小の企業家を、せっかく重油に転換しておるものを、さらにまた石炭に置きかえるというのがこの法律案であり、かっこの石炭合理化臨時措置法がそういう不合理なことを求めておるところに、私は割り切れない感情を持っておるのであります。(拍手)いわんや、石炭鉱業なるものは、アメリカにおいてはすでにシック・インダストリー、病的産業だといわれておる。電力と天然ガスと重油によってはさみ撃ちにあって、さすがストライキの王様のように言われておったCIOのルイス君も。……近ごろアメリカには石炭ストライキは影も形もなくなったじゃありませんか。(「やらんでもいいようになっているのだ」と呼ぶ者あり)やれば自分の首を締めるからやらないのだ、もっと行って研究したまえ、(「君こそ研究したまえ」と呼ぶ者あり)でありますから、私は石炭合理化をするために、ほかの産業は不合理化、それをやることが、かえって私は輸出産業をはばむ原因になると思う。石炭も、これは救済でありますから、またこういう大げさな法律案をこしらえますけれども、民間で考えれば、これは独占禁止法がなかったら、これは民間だけでやり得ると考えておる。でありますが、石炭はまことに厄介な産業なのであります。ということは、このコストを引き下げるということは、増産以外にないのであります。昭和三年、四年、五年の、あるいは五年、六年、あのころにおきまして、業者のカルテルによって増炭一トンにつき一円の罰金を課したのでありますけれども、一円の罰金を、当時石炭が三円ないし五円と称せられた、そのときの一円ですから、一円払っても、相当数の増炭をした方が小口では経済がとれるということで、不況になればなるほど石炭は出てきたんであります。ところが、この法律によりまするというと、その石炭制限をする、不況になれば制限をする。またこの合理化法案によって、すでにそういう不況のことを予想しておるということ、一応頭に入れておるということは、私はこの法律が、必ずしもその通りに行われるんじゃない。余ったり足らなかったりするということを予定してあると思う。またこの標準価格の問題にいたしましても、これはまた実に問題がある。石炭をせっかく安く掘れば、お前これは安く売っていいんだ、石炭の単価がこれこれでちゃんとでき上るじゃないかということを言われて、そうして無理に押えられれば、企業意欲は一体どこによって起るか。これは戦時中の統制経済なり、戦後の統制によっていやというほどわれわれは実験しておる。それがまたぞろ芽をふいて、そうして一通産省の係官、政府はしょっちゅうかわります。これは私は、この法律案にしましても、鳩山内閣によって出されたけれども、これは吉田内閣の当時からこの問題は研究されておった。でありますから、一通産省の係官は、人はかわっても組織は変らない。それがまたこういう法律によって、いろいろな弊害も予想される。標準炭価の問題にいたしましても、これは不良鉱区買収の問題にいたしましても、なかなかこの人間わざで値段をきめるということは容易なことじゃない。見よう見方によって、石炭のごときも休んでしまって、廃鉱にすれば、これはただなんです。廃鉱になる一歩手前を、事業団に持っていって売り込もうというそこに運動が行われ、あらゆる私は黒い影がさすであろうことをおそれる。でありますから、政府としては、なるべくこういう人の考え方、さじかげんで、どうでもなるような法律は、なるべく私は避けた方がいいと考える。昨年あれほど問題の起った造船、あるいは海運造船の問題にいたしましても、私は当時運輸委員会において、これに一人私は反対を唱えておった。そういう忌まわしい問題がつき物になるから、なるべく、そういうことは避けた方がよろしいというのが、私の論点なんであります。  私は石橋通産大臣に対しましては、以上の標準炭価の問題、あるいは重油の規制の問題等、以上五項目にわたって質問をいたしましたが、さらに私は西田労働大臣にお伺いしたいのであります。  この法律につき物であるところの労働問題は、いわゆる労働三法であって、これを改正したがよろしい、あるいは改悪反対だと、いろいろ議論の分れろところであります。でありますが、この法規は、もともと占領当時一番先にできた法律でありまして、日本人の自由意思によってできた法律ではない。従って英米流の考え方日本に押しつけておる。英米における労働事情と、日本の経済構造なり産業構造なり、労働市場というものは、まるきり違うのである。それに英米あるいはそれ以上にわたると思われるような法律があって、しかも、その法律を労働者みずから曲げておる。この法律の予想しているところは、解雇も、所要の手続と所要の給与をやれば、自由にできることになっておるのである。それを一人でも首切れば、絶対反対だと言って、ストライキに訴えるということは、これはすでに法の精神を曲解しておる。法を悪用しておる。こういうことが改まらないで、この労働法だけを施行するということは、私はそれ自身無理があると思う。私は今日の日本産業構造と、それから日本の労働市場の状態か見て、この三法がそのままでよろしいとお考えになっておるのかどうか、二の点を一つお伺いしたい。  さらに私は、日本の労働者諸君、働くものの味方だということを皆さんは非常に口をすくして言われるが、日十人の総人口は昨年の十一月で八千八百三十万人、その中で職場についておるものは約四千万人で、その四千万人が働いて、約六兆に近い国民所得をとって、それをわれわれが分けて食っておる。そうして雇用関係に立っておるところの労働者諸君は、わずかに千五百万人で、これが労働三法の適用の範囲に入っておる。あとの二千五百万人というものは、この三法の外に出ておるわけで、さらに私が奇怪に考えることは、二千五百万人と千五百万人が、国民所得を大方半々に分け合っておる。これほど私は不合理なことはないと思う。三七%に近い、いわゆる四千万人の中の三七%ばかりの諸君が、四千万人の中の三七%の人が、四八%強の所得をすでに分けておるということは、これは不合理であります。さらに驚くべきことは、その千五百万人の中の六百五十万人が、これは概数であります、六百五十万人が、いわゆる組織労働者で、世間でいう非常に強力な労働組織を持ったものが六百五十万人、そうして千五百万人の中の給与を比較してみますというと、五百人以上のものを一〇〇とすれば、小さい零細企業はその半ばにかならぬ。その間、七割から六割、五割とありますが、八百五十万人がその七割以下に位する。かく考えてくると、六百五十万人の所得は、国民一人当りの平均よりも、ずば抜けて大きいということが考えられる。私は今日の組織労働者の諸君が、給与の絶対額が多いということを言っておるのじゃございません。ただ貧弱なる日本の今日の国民経済において、所得の分け前は、何千万人という人間があれば、大体それはならされなければならぬ。それが戦前の日本においては、とにかく人数割りになっておる。たま英国においても、米国においても、そうなっておるわけであります。それに対して私は労働大臣の所見を承わりたい。  さらに、私は経審長官の高碕さんに伺いたいのですが、いわゆる六カ年計画であります。世界の情勢は常に変化しております。また世界の情勢が変化するから、従って経済も非常に変化する。いわんや第二次大戦後十数年たった今日、国際情勢は緊張緩和の方向に向い、軍縮問題が論議せられるだろうと私は考える。従って第一次欧州大戦後のあの世界不況が、私は日本の経済を統べる者、責任者としては、これは大きくクローズ・アップしていなければならぬと思うのであります。そういう問題を考えあわせて、そうして計画を立てる場合、私はどういう方にそういうことを考えあわせて織り込んでおられるか、その点を承わりたい。  なお、私は詳細なことにわたりましては、また委員会においてお伺いすることにいたしまして、今日はこれでもって一応打ち切る次第であります。(拍手)    〔国務大臣鳩山一郎登壇拍手
  15. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 一松君の御質疑に対してお答えをいたします。産業の振興のために国民精神の緊張の必要なことはもとより当然の事柄であります。この臨時措置法案実施によりまして同時に労使の間の協力態勢が強化されんことを期待し、切望をしておる次第であります。以上。    〔国務大臣石橋湛山登壇
  16. 石橋湛山

    国務大臣石橋湛山君) お答えいたします。  まず、何よりも精神合理化が必要であるという意味の前段の御議論に対しては、むしろ賛成であります。しかしながら、そうであるからというて、ただいま問題になっております石炭問題を閑却しておくわけに行かないと存ずるのであります。これを放任しておいたらどうなるかということを考えますと、むろん一面において御趣旨のような精神的な緊張ということは必要でありましょうが、やはり実態的に石炭鉱業というものは何らかの措置をしなきゃならぬ段階に入っておると思うのであります。  それからこれは決して救済ではございません。石炭鉱業を立て直すということは、日本基本産業を立て直すことでありまして、また従業者の数から申しましても、常用労務者中約三十万人現在数えておる。これはまあ非常な数でありますが、これらの労務者、あるいは企業者一つ立て直ってくれることが日本の経済の全体の自立のためにぜひ必要だと思いますから、それには石炭価格を、原価を下げてそうして石炭というものが、重油や、あるいは輸入石炭と十分競争し得る力を持たなければなりませんので、日本経済全体の再建のために、石炭価格の低下をはかりたいというのが趣旨で立てました案でございますから、決してその一部の企業者等を救済しよう、あるいは労務者救済しようという意味の法案ではございません。せっかくこういう計画を立てても、将来の資金がどうなるか、これは金は積んでおるわけじゃございません。どんな仕事をするにしても、金を積んでおいて仕事をするということは、これはまあ事実、普通の場合ないことであります。私としては、これは日本の将来に非常な不安が起り、日本の将来に対して全然信念がないなら、これはいたし方ありませんが、私は現在の日本がだんだんよくなって行くということに信念を持っております。従ってこの石炭鉱業合理化のための資金の調達ができないということは決してないというふうに確信をいたしておる次第であります。  それから、御質問をいろいろいただきまして、お答えがその御質問通りにならぬかもしれませんが、私はこの案はむろん労働組合等の協力を得られるものと信じております。というのは、現在のままで日本石炭鉱業が行きましたら、これは全くもう土崩瓦解するというてもいいと思います。従って企業者が困ることもありますが、その従業者、三十万人の従業者というものは惨たんたる状況に陥り、現に非常な困難に中小炭鉱は陥っておるのでありますから、そこでこの合理化法案によってそうしてまあやむを得ない中小炭鉱、弱小炭鉱整理する、その他は合理化によりまして炭価を下げ、そうしてそういう重油や輸入石炭競争のできるような立場に立ちさえすれば、この鉱業が安定するのでありますから、従ってそこに従業する人たちも安定するわけでありますから、こういう案に対して従業者が反対するというわけはない、従って私は労働組合等においても、この法案にはむろん協力をしてもらえるものと信じております。  それから整備事業団の納付金がとれるかということでありますが、これはまあ現に炭鉱業者も承諾しておりますし、それから先ほど一松さんの御質問の中にもあったように、何もかも人におんぶするというような心がけでない限りは、この必要なる整備のために一トン二十円までという納付金ができない理屈はないと思いますから、これ丘必ず納付されるものと信じております。  それから事業団の借入金のことでありますが、これは大体事業団の所要資金は、全体で今八十億円と考えておるのであります。これは納付金によってまかなわれるわけでありますが、しかしただ時間のズレがありますから、ときにまだその納付金の入らない前に、資金を必要とする場合に借入金をすることができるということでありまして、長い金を借りる意味はございません。ましてその場合には大体において政府資金の利用ができるとい今ふうに私どもは考えておるわけでありますから、この整備事業団の性格上、だれも金の貸し手がないという御心配はないと考えております。  それから重油の規制のことは、確かに重油を使うそれを制限をして、そうして日本石炭鉱業の立て直しをしかければならぬということは、一面から申しますと、少し無理がありますことは私も重々承知しております。しかしながら、はなはだしい規制をするつもりはないのでありまして、とかく国内エネルギーをできるだけ高度に利用するということは、私は日本産業全体のために必要だと思う。なるほど当面は安い重油を輸入することはいろいろと便宜がありますから、いいようでありますが、結局は日本の国内のエネルギー資源をできるだけ高度に利用するということが、単に石炭鉱業だけでならえ、それより著しく上る、あるいは著しく下るということをやはりとめなければ、これは合理化が進行いたしません。自由放任で、もう今のままでおうっておいてよろしい、つぶれる炭鉱はつぶしてしまえという思い切った態度がとれれば、それは標準炭価も何も必要がございませんけれども、そうは私は今の日本産業界は参らないと思います。やはり石炭鉱業は、一つかような方法によって立て直しをしてやらなければならぬ、それにはある程度国家の力を貸してやらなければならぬ、国家の力を貸す限りは、やはり標準炭価のごときものを作って、そうして炭鉱の方でもこれに協力してむやみに炭価を高くしたり、あるいはむやみに炭価を下げて合理化を妨げるようなことをしないというだけの、やはり一種の炭鉱経営者自身の自主的な努力を要すると思うのであります。それをこの標準炭価制度によって要求しておるわけでありますから、お話のようなこととは意味が少し違うと存じます。以上。(一松政二君「事業団最終責任者は、主体は」と述ぶ)事業団最終責任者は、政府でございます。(一松政二君「そうであれば国家が負担するというわけですか」と述ぶ)それはそうなりましょうが、しかしながら、整備団の資金は、借入金の必要なことは、先ほど申しましたように一時の金繰りだけでございます。    〔国務大臣西田隆男君登壇
  17. 西田隆男

    国務大臣(西田隆男君) お答えいたします。  第一の御質問は、労働三法の改正をしなきゃ石炭合理化法案目的達成は不可能ではないかという意味合いだったと考えております。私は必ずしもそうだとは考えておりません。一松さんのおっしゃるように、労働組合法、労働関係調整法等につきましては、いろいろ改正したらいいではないかという意見が、各方面に相当強く叫ばれておることは、私も承知いたしております。しかし私としましては、今直ちにこれをどうする、こうするということは考えておりません。よく研究いたしまして、もし改正しなければならない点が相当あれば、改正することにやぶさかではございません。また労働基準法につきましては、特に中小企業関係から、これは改正してもよろしいという意見が相当強く叫ばれておるようでございます。しかし労働基準法の改正ということは、国際的にも相当大きな影響がありますので、今回予算にも計上いたしておりますが、予算がとれました上におきましては、労働省で、第三者、一学識経験者によって、労働基準法は改正すべきであるかどうか、改正するとすれば、どういう点を改正するのかということを、慎重に検討してもらうために、ただいま、せっかく準備中でございます。  第二の問題は、日本国民所得の配分が不均衡になっておる、これでよろしいのかというような御意見であったと考えます。私は国民所得の配分が、非常な不均衡になるということは好ましいことではないと考えておりますが、御承知のように、日本経済の実態は、一松さんのおっしゃる通りで、現実の問題としては、あなたのおっしゃるように不均衡になっておることは事実でございます。しかしながら、これは、ただ単に不均衡になっておるから、これを法制化して均分するというようなことは、日本経済の現状から考えて、これは非常に困難なことでございます。そこで私は、基本的に、力によって自分の配分を余計にとるとか、あるいは利益の上った企業において、労使双方だけでその利益の配分をするとかいうような考え方でなくて、国民経済的な正しい認識に基いて、価格引き下げによって国民大衆にもそのとり分を還元してやるのだという基本的な考え方に立てば、結局はそれによって、生活費の切り下げによる実質所得の向上という面において、ある程度現在の不均衡が是正される、こういうふうな基本的な考え方に立って、労働行政を執行して参りたい、かように考えております。    〔国務大臣高碕達之助君登壇
  18. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) ただいまの御質問にお答え申し上げます。  やがて来たるべく想像される世界的の不況に対して、六年計画はどうやっているかと、こういう御質問であると存じますが、六年計画におきましては、現在われわれが受けておるところの特需、これは四億ドルから六億ドルある、この特需は六年の間になくなるということを想像いたしております。その上に、どうしてもその国際収支のバランスをとるためには、輸出産業として八〇%以上輸出を増進しなきゃならぬ。この方針を立てておるわけなんでありますが、ところが各国におきましては、輸出というものについて十分奨励いたしておりますのでありますから、いろいろ輸出については競争があるということは覚悟していかなきゃならぬ、こう存じますわけであります。それにつきましては、どうしても日本の商品の輸出について全体のコストを引き下げるべく合理化せなければならぬ。その合理化をする上におきまして、すべての基礎産業のその基幹となる石炭というものを合理化して、少くともその価格を安定せしめ、その価格引き下げるということに重点を置かなければならぬ。全体のエネルギー・バランスから申しまして、日本の現在は電力と石炭と石油によっておりますが、石油は輸入品である。国内の資源といたしますれば、電力と石炭によらなければならぬ。そのうちの石炭が一番重要と存じまして、まず最初に石炭合理化をいたしたわけなんであります。合理化によりまして価格引き下げ、輸出を増進し、そして国際バランスをよくしたい、こういうのがねらいでございます。     —————————————
  19. 河井彌八

    議長河井彌八君) 山本經勝君。    〔山本經勝君登壇拍手
  20. 山本經勝

    ○山本經勝君 私は日本社会党第四控室を代表いたしましてただいま議題になっておりまする石炭鉱業合理化臨時措置法案につきまして鳩山総理大臣以下各関係大臣に御質問を申し上げます。  まず、基本的な問題といたしまして総理大臣にお伺い申し上げたいのは、過ぐる総選挙の際に民主党が公約し、また第二次鳩山内閣が組閣されました際にも明らかにされました経済六カ年計画に基く日本経済の再建に関してでございます。これはたびたび強調されて参りましたように、拡大均衡方式を推進するのである、こういうふうにおっしゃっておったわけでございますが、この拡大均衡経済の方向という基本方針と、当面する石炭実情を打開するための合理化方式とは、全く首尾一貫しない観がございます。そこで、この点をまず総理大臣にお伺いするわけでございますが、これにつきまして理由を申し上げますと、石炭は御承知のように、原料として、また燃料として、国民生活と密接な関係があることは周知の通りでございます。しかも一方、右炭を採掘するために必要な機械、器具、鉄材、木材、または坑木、こういったような広範な資材、機械、器具を必要といたしますので、これをさらに運搬をし、鉱山に運び込み、そうしてさらに石炭を積んで運び出すこれらの鉄道、船舶、こういったものを引っくるめて見て参りますというと、文字通り日本経済産業構造の中で重要な地位を占めておる石炭産業であるということは、あらためて申し上げるまでもございませんし、先ほど通産大臣のお話の中にも、このことは指摘されているわけでございます。ところが一昨年、二十八年でございます。下期から以来現われて参りました石炭界の不況、きわめて顕著に現われて参った上げでございますが、こういう石炭不況が、どういう状態でこういうことになってきたかということについてでございますが、実態を見て参りますと、昨二十九年中に二百数十に上る炭鉱がつぶれました。そうして二十八年から九年にわたる二年間に、大体八万人に上る炭鉱労働者失業者を出しました。そうしてまた賃金不払い等、先ほど一松さんのお話にもありましたが、非常に苦境に立っておるわけでございます。そうして未払い賃金にいたしましても、大体昨年最も多い時期には、二十億に達していたと記憶しておるわけでございます。そうして、また一方、こういう状況のもとでございますから、欠食児童が一番多いときには一万数千人に上っております。それからまた人身売買といったような、まことにゆゆしい社会問題にまで発展したわけでございます。この原因についてはいろいろありましょうが、結局、利潤の追求のみにきゅうきゅうとしておって、大局を忘れておったというような石炭産業に従事しております従業者自身の反省を必要とするというような点も見のがしてはならぬことであろうと考えるのでございますが、何としても重油転換政策の奨励、政府のとっておいでになりました一連の政策の影響というものは見のがせないものであると考えております。さきに申し上げましたように、日本経済産業構造の中で基幹産業として重要な地位を占める石炭産業が原始産業であり、地下に広がっております炭層を追って採掘をするというのでありますから、年々歳々その条件は悪化するというのが自然の勢いでございます。その点は他の製造工業などと非常に違った特殊の条件を持っておるということでございます。ましてデフレ政策という、いわゆる財政引き締め、あるいは投融資の引き締め等が強力になされました関係上、一般の中小民間企業の不振と萎縮といいますか、あるいはまた半面では、特需を中心にした大企業の独占集中の過程が急速に進行いたしまして、原料生産である石炭産業の弱みから、最も大きくしわ寄せを炭鉱に受けた。その結果が今日現われております需給のアンバランスというのではなかろうかと考えられるわけであります。  そこで今日まで政治的ないろいろな惰性もありますが、これらの惰性を打ち破って、どうしてもこの際もっと広い見地から、全日本基幹産業を大きく見直していかなければ、日本の再建にならぬのではないか、さように考えるわけでございますが、特にガス、電力、肥料など広く国民の経済活動を活発にして、国民所得の増大をはかるというような政策が行われますと、おのずから石炭需要は増大する結果となる。私は鳩山内閣が強調して参られました拡大均衡経済という方向については、大きく期待をかけておったわけでございます。ところがいわゆる経済六カ年計画というものの中身を検討して、参りますと、先ほどからのお話もありますように、全く具体的な施策に至っては見るべきものがないという点で、きわめて失望をいたしておるのでございます。その経済六カ年計画の一環をなしておりますところの本法案についてみますと、一口に申し上げますなれば、単に不良炭鉱と申しますか、大体中小炭鉱が中心になると考えられますが、年産三百万トン程度にあたる中小炭鉱を買い上げて、これを閉鎖し、そして生産を制限するということが中心になっておるわけでございます。これは先ほどから申し上げますように、拡大均衡を中心とした方向であるならば、当然石炭産業並びに鉄鋼、化学肥料、ガスあるいはその他関連する産業あるいは石炭を必要とする産業という広い範囲において拡大生産を目標にされねばならぬと考えるのでありますが、この点におきましては全く反対で、縮小生産の方向をとっておられる。このことが基本的な拡大均衡経済を目標とした六カ年計画の方向という、つまり内閣の持っておられる基本方針と、現実に行われております石炭企業合理化あるいは石炭鉱業臨時措置法として合理化を目ざしておられる方向とが、全く一貫性がないということでございます。この点について総理大臣の明確な御答弁をお願いしたいのでございます。第二の点といたしまして、同じくただいま申し上げましたこととも直接関連を持っておりますが、経審長官の方にお願いを申し上げたいのは、昭和二十二年と記憶をいたしておりますが、戦後の廃墟の中から日本の復興を推進するためには、何をおいてもまず石炭であるということが強調されたことは、まだ記憶に新しいところでございます。そこで当時四千万トンの生産目標を立てて、昼夜兼行で強力に増産が推進されたわけでございます。二十五年になりますと、さらにそれが五千万トンの目標に変り、それからこれら増産をはかるために必要な資金の問題にいたしましても、合理化資金というのを出しまして、莫大な額を投じまして、そうして増産々々という合言葉のもとに生産が推進されたわけでございますが、二十六年になりますと、がぜん重油転換が奨励されるような事態になって参りましてそこで七年、八年と、その状態は継続され、そうして三十年の今日になりますと、石炭の生産の制限という状態が現に現われて問題になっておるわけでございます。こうして見て参りますと、燃料とし、あるいはエネルギーといたしまして、石炭に対する政策、さらに広範に申し上げますなれば、石炭のみでなくて、石油、ガス、あるいはその他関連する一連の総合的な燃料の政策というものに全く一貫性がないということでございます。そうしてこうした状態がすべて鳩山内閣責任であるとは私は申し上げませんが、少くとも政府としていわれております拡大均衡経済の推進をしようという建前から考えられるとするならば、単に石炭をどうするかという問題ではなくて、総合的な熱エネルギーに関する一貫性のある国策が樹立されなければならない。またそれが当然のことと考えておるわけでございます。聞くところによりますと、閣議においては国内で生産されまする熱エネルギー資源の有効利用と外国から輸入されますところのエネルギーの関係を調整することを建前といたしまして、石炭、石油、天然ガス、都市ガスなどの長期総合計画が決定になっていると聞いておるのでありますが、もしそうだといたしますなれば、その計画についてこの際、経審長官の方から全貌の御説明をお願いし、あわせてその財政的な裏づけをいかようにお取り計らいになろうと考えておられるのか、この辺も懇切な御説明をいただきたいのでございます。  次に第三点でございますが、総理にいま一つお伺いを申し上げたいのは、さきにも述べましたように、石炭産業日本の国家資源であるという点、かつこの開発施設は国家の財産であるといわねばならないと考えるわけでございます。これが現在、アメリカを初め、国外から輸入されるところの重油によって消費分野がはなはだしく侵食され、縮小されておることは見のがせない事実でございます。しかも今日の国際社会においては、輸入の途絶というようなことや、あるいはまた価格の変動等が保証できないということは、常識的に考えても明かなところでありますので、外国依存の危険から国内産業を守る、そのために関税等の方法、あるいはその他いろいろな保護政策があるでありましょうが、それらの保護政策を強化するお考えはないか、この点をあわせて総理にお伺いを申し上げる次第でございます。  第四に、通産大臣にお伺い申し上げたいのでありますが、通産省では昭和二十七年以来、都市ガス化の計画を推進されてきたのであります。現在その進行状況はどういう実態になっておるかということについて、詳細に御説明をいただきたい。この都市ガス化の問題は、一般家庭燃料の合理化として国民経済に大きな役割を果すというばかりでなく、従来使用されて参りました薪炭の大量消費ということのために、山林が乱伐され、そうして治山治水に重大な影響を与えておることは申すまでもないのでございます。ことに日本のように毎年ほとんど定期といってもよいような形で、夏季ともなりますというと、台風、あるいはそのために豪雨というような災害に見舞われまして、農業といわず、あるいは工業といわず、あるいは一般市民に至るまで非常な被害を年々受けて参っておるわけでございます。こうした状態は、いわゆる山林の乱伐という結果から生まれたことであることも、一つの重要な要素であろうと考えられるわけであります。  また、いま一つ、目を転じまして、日本は火災の国といわれます。年々莫大な国帑と申しますか、国家の財産が烏有に帰しておるわけでございます。この火災の原因を一応大ざっぱに見て参りますというと、大部分が失火のようであります。そうしてこの失火が、六炭あるいは練炭等を使用いたします火鉢とか七輪、あるいはまきを使用いたしますところのかまど等の火の不始末によるという出火がその大体半分を占めるといわれております。これはこの火の取扱いについてガスと違いまして、非常に、消したと思っていても消えていなかったりするというような取扱い上の不便さからくることが大きな原因となると考えるわけであります。で、こうして考えてみますというと、家庭経済の面から申しましても、木炭、石油の混用とか、あるいは木炭ばかりを使うとか、あるいはまきばかりを使っておるというような形におきましても、ガスと比べますというと、どうしてもガスが一番安くつくという現在の状態から考えまして、家庭経済上から見て、何といっても家庭のガス化ということは非常に重要なことである。しかもこれは多くの都市住民が熱望しておることである。それからまた目を転じて今申し上げましたように、国家的な災害の予防という見地もまた重要なのでございまして、年々こうした見地から、需要の増大の方向にあるということがいわれております。また通産省当局の御説明によりましても、やはりガスが需要増大の方向をたどっておるということは明らかにいえるのでございます。ところが、このガス事業が公益事業という形でありながらも、一部に独占されておるということを見捨ててはならぬこれは重大な問題でございます。従って今申し上げましたような実情のもとで、一般的に普及の重大な障害になっているのは、このガス企業が各地方にありまして、それぞれ公益事業として独占化されておる、こういうところに大きな問題があるのではなかろうかと私は考えております。私の出身地でございます福岡県で最も人口の密度の高い十一の主要都市について調べたわけでございます。約四十一万世帯に対しまして、西部ガスが供給いたしております世帯数はわずか七分の一、四十一万戸に対する七分の一の六万一千戸でしかないわけであります。そこで私は市民の声を聞いてみたわけでございますが、やはりガスが安くつく。それでガスは引きたいのであるが、申し込むというと、いわゆる前金でもって引込料金というのをとられる、それは大体平均五万円といわれるのでありますが、その場所によりまして十万円かかるところもある、十三万円かかるところもある、あるいは三万円くらいで済むところもある、こういうような実情なのであります。そこで一方、こういう金が差しあたりどんどん出せるほどなれば、窮乏という言葉も消えてなくなると考えるのでありまするが、申し上げまするような状態のものではなかなか簡単に申し込んでもつけてくれないし、またつけるための申し込む金がないと、こういうような実情にある。それから一方がガス会社に言わせるなれば、世帯数を増すだけではコークスの処理に困る、結局引き合わない。引っ込むのについても、機材、工事費等、経費の面で、資金関係もあるのだ、従って現在が能力の限度であるというふうに言っております。大体一戸平均、今申し上げましたように引き込みのための前納する金は五万と申しておりますが、これは平均でありますので、先ほど申し上げた通りで、こう申し上げてみますというと、一体この熱望されている家庭ガス化、あるいは都市における家庭のガス化という切実な要望が実現できないところの隘路がどこにあるかということは、おのずから通産大臣におかれましても御理解いただけるかと考えます。  そこで通産大臣に所信をお伺いしたいのは、通産省の言っておられます都市ガス化五カ年計画の有効な実施のために、この際次のようなことを私はお考え願いたいと思う。都市住民の熱望にこたえて、当該地方の公共団体をして家庭のガス化、あるいはガスを供給するために必要な施設を作る、投融資等によってのこのガス化を助成される考えはないか。現在通産当局が言っておられますようにガス化が進行しておりますし、またガス化の希望を持っておられるが、ただ現在のようなガス企業の形態をそのまま存続しておいたのではとうてい、先ほどから申し上げるように、この隘路は打開できない。従って地方公共団体、あるいは新しい企業でもよければ、また炭鉱経営者自身にそうした投融資の道を開いてガス化の計画をする、こういうことはお考えになれないものなのか、これは真剣に一つ考えになっていただきたいし、またその所信を伺いたいわけでございます。そういたしますれば、石炭石炭というので、先ほどから石炭救済するというようなお話もありましたが、救済をしてもらわなくても、おのずから石炭増産しなければならないということになって参ると考えておるわけでございます。  また同じく通産省で御計画になっております、すでに実施中であります電力の問題にしても同様でございます。さらに私はここで付け加えて申し上げておきたいことは、硫安あるいは尿素、こういった肥料でございますが、これも御承知のように大企業の独占的な経営にまかされておる。そこで中国を初め、東南アジア諸国における硫安並びに尿素の需要というものは非常に大きなものであります。その輸出が期待されておるにもかかわらず輸出ができない。また国内におきましても、農村の食糧増産のためには、どうしても安い肥料が豊富に提供されなければなりませんが、これまた申し上げますような、いわゆる硫安会社の協定に基いて、適当に生産を調整し、価格を維持するという独占的なやり方がやられている。この産業部門はこれまた石炭を非常に必要とするわけでありまして、こうしたいわゆる国民がほしがっているもの、あるいは国民の経済活動をするための必要な資材を製造する、あるいは材料を製造する業務、産業をどんどん起すことになりますならば、石炭はいやでも必要になってくるわけであります。こういう一貫した一つの総合的な計画が立てられない限り、個々の、石炭が困っているから何とかするというような弥縫策でもっては、とうてい当面は乗り切れないのではないか、かように考えるので、この点について通産大臣責任ある御所見を伺いたい。しかも、私は今申し上げました産業今野を拡大した政策を実施することによって、拡大均衡経済といわれる内閣の御主張とも一致してくるし、それこそが正しい道であろう。かように考えるので、その点の所信を伺っておきたいわけでございます。  次に、第五番目といたしまして、同じく通産大臣にお伺いしたいのは、竪坑の開さく及び機械化でございますが、今日まで一連の合理化は一応進められて参りました。必ずしもこれが所期の目的達成していないということは、一松議員の御質問の中にもお触れになったように考えておりますが、竪坑の開発をしない分につきましては、つまり機械化によって今度の計画増産をする、いわゆる能率を引き上げろというのでございます。そこで能率を現在の十一トンから十六トンに引き上げ、価格の点では二割の引き下げをやろう、こういうわけのように承わっておるのでございますが、これが労働強化によらずしてこうした事柄が実現できるのか、このような結果が実現できるという科学的な基礎を明らかにしていただかなければならない。今日まで合理化はいつも労働強化一本やりに終っている。このことは、関係者のほとんど一致して認めておるところなのでございます。むろん資金を投下し、そうして機械を入れて合理化したいということは、いわゆる企業努力としてなされた分野がないと申すのではない。そのことによって常に人員の余剰を生じ、そうしてそれらの人々がいわゆる首切りとなり、あるいはまた残った人々の労働強化によって、労働時間の点も十分にこの点でお考えを願わなければならぬ点だと思うのでありますが、こういう意味で労働強化が強制されてきております。そうしてこうした合理化そのものを推進することは当然必要なことで、合理化そのものをわれわれが反対しておるのではなくて、心理化によって人員の整理が起る、そうして労働強化が押しつけられるというところに問題があるのでございます。    〔議長退席、副議長着席〕 ですから、そういう意味において特に私はここで通産大臣に聞いていただかなければならないことは、そのことが労働者、特にあの危険な炭鉱労働者に対して災害を増大しているという事実であります。こうした無理な人員の犠牲をすることによって、いわゆる保安要員の配置が不十分になったり、あるいは保安施設の改善が十分でなかったり、こういうことから、しばしばそうした血の犠牲を労働者にしいる結果を作り上げている。このことは見のがすことのできぬ問題でございます。  政府当局もすでに御存じの通り、先日北海道の大夕張でガス爆発が起ったのであります。そのために四十四名の労働者が死傷いたしました。こういう事実につきまして、その原因を直接私ども、詳細な事実を知っておるわけではございませんが、新聞や現地からの簡単な電話連絡によりますというと、ガスが非常に多い個所ができまして、そこでこれを密閉するということであって、しかもそこの個所はきわめて高温であるということから、密閉をやるので作業中であったと聞くわけであります。このような状態、特に温度が急に上昇する、極端に一夜のうちに上昇するというのではなくて、徐々に上昇いたしますから、当然だれが見てもわかる状態になるわけでございます。そこでこれらのいわゆる爆発に至るまで温度が上るまでに、それぞれ措置を講じ得ると私は考える。私の二十年の炭鉱生活の経験から申しましても、そのことははっきり申し上げ得ると思うのであります。ところが、これらの予防措置を講ずるに必要な人員が配置してあったかどうかということは、非常にこの場合にも問題であると考える。常に業者は能率を上げることにのみきゅうきゅうとしておりまして、いわゆる人員の削減というようなことを強行するために、保安の軽視が行われたり、いわゆる保安問題を軽く扱っている。そういうことがいわゆる災害を惹起して、大きな事故を起しました幾多の事例が今日までもあるのであります。  今度の大夕張の問題はともあれ、現在組合からも代表が参って調査に当っておるような実情でありますが、こうして考えてみますと、労働者の安全が保障され、そうして労働強化にならない正しい意味における合理化というものは、どうしたらできるのか。この辺の研究なり検討を十分通産省においてもなされたことではあろうと考えます。しかしながら今日までの状態を見て参りますというと、これはいわゆる場当り的な方法でしがなかったのではなかろうか。先ほどの御質問なり、あるいは政府の御答弁の中にも……政府の方からの御答弁はありませんでしたが、まず現在の鉱区の分布状態、あるいは炭田別の鉱区の分布状態を見ますというと、先ほどお話の通り、小さな炭鉱大きな炭鉱入りまじっておってそうして鉱区が輻湊しておる。きわめて複雑な状態にあるわけなんであります。で、本当の意味において、これを竪坑を開さくし機械化するというのであれば、少くともこの鉱区は、いわゆる炭田別に鉱区を統合整理されなければならないという点では、先ほどの一松さんの御意見とも全く一致するわけであります。ただしこのことは、いわゆる日本炭鉱の置かれております今日の実態がすでに、前進式採炭といわれる近い所から掘っていく炭鉱であります関係上、非常に状態が悪くなっております。そうすると、いわゆる保坑から坑道維持あるいはその他の経費というものは莫大にかかるから、とても私企業では事実上できない。そうなると、勢い浮び上ってくるのは、しばしば言われておりますところの国有国営という道が残されておる。で、こうした点につきましては、先日も通産大臣は衆議院の本会議におきまして、国営国有、あるいは国管方式をとる考えはないということをおっしゃっておりますが、こういう実情を打開するために、多くの資金を投下し、しかも失業者を出して、それらを救済しなければならぬというような事態になりましたならば、少くともこれに対する、国有国営の形をとらなくとも、政府資金の投下によって、日本石炭産業が守られなければならないという現実ではなかろうかと考えます。この点につきまして、通産大臣の確固たる所信を伺っておきたいわけでございます。  次に第六番目に、この法案の中身について若干触れた御質問をいたしたいのであります。標準炭価と販売統制についてでありますが、標準炭価を決定する方法というのは、具体的には一体どういうふうにお考えになっておるのか。一般には生産原価を基礎として、これに適正利潤を加え、さらにそのときどきの市場の変動や消費産業の状況等を勘案して決定するというのが、一応の常識なのでございましょうが、これはかつての配炭公団において炭価を決定する、あるいは買炭価格を決定するときの困難さを思い浮べてみるというと、これは容易ならぬ、簡単に行く問題では実はないと思います。そこで配炭公団の実例と申しましても、ここでこまかに申し上げる余裕もございませんが、これはすでに通産大臣も御存じなことなので、その点につきまして、十分自信がおありかどうかということを明らかにしていただければいいと思う。かつ、その決定自身を、かりに事業団といいますか、あるいは審議会等においてきめましても、それがどの程度のいわゆる販売価格の拘束を持つものであるか、ここら辺も、……
  21. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) 時間が参っております。
  22. 山本經勝

    ○山本經勝君(続) 全く法案の中から受け取れない、こういうふうな実情でございます。  それでは時間が参ったようでございまして大へん残念でございますが、本法案としては最も重大な問題として私ども考えております炭鉱労働者の失業並びに失業に関する対策、あるいは基本的な考え方として労働関係の問題が残ったわけでございますが、この点につきましては委員会におきまして十分また御質問をし、検討をいたしたい、かように存ずるわけでございます。(拍手)    〔国務大臣鳩山一郎登壇
  23. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) お答えをいたしますが、私に対する質問に対しても関係閣僚から答弁をしてもらった方がよろしいと考えております。  六カ年計画と矛盾しておらないかという御質問に対しましてお答えをいたしますが、とにかく質問をする山本さん自身がお認めになりましたように、石炭産業というものは、非常に窮迫した事態になりましたので、臨時措置法を必要と考えたのでありますが、これは六カ年計画と矛盾しておらないと思います。  統制政策につきましては、原則としてはやはり自由経済で行くわけでありますけれども、例外として統制の政策を加味することはやむを得ないと考えております。    〔国務大臣高碕達之助君登壇
  24. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) お答え申し上げます。  エネルギー総合対策から、この石炭合理化は、こういう関係があるかということを、先ほど総理がお答えいたしました。この六年間の目標としている拡大均衡とこの合理化とは矛盾するだろうか、こういうことについて私は一言申し上げたいと思いますが、大体におきまして、六年間における日本の人口一人当りにおきまして、エネルギーの資源を石炭に換算いたしますというと、現在は一・三二でございますが、これを六年後に一・六〇に上げたいと思っております。それにつきましては、大体エネルギー資源である電気の方は、六カ年間に五〇%ふやす、これはラウンド・ナンバーで申します。それから石炭の方は二〇%ふやす、油の方は一〇%、これはほとんど輸入によらないで、国内の資源を開発してこれに充てる、こういうエネルギー資源の総合計画を立てているわけでありますが、石炭におきましては六年間におきましてもちろん六カ年計画では、最初の三カ年間は、将来の拡大均衡における一つの地固めを行うことになっておりますが、石炭だけはそうでなくて、毎年増加していきたいということで、そういうことで二〇%増加、現在は四千三百万トンでありますが、これを六年後に五千百万トンに、二〇%ふやす、こういう計画でありまして、これに要する資金も年々大体三百億ぐらい見込んでいるわけでございます。  以上をもってお答えといたします。    〔国務大臣石橋湛山登壇拍手
  25. 石橋湛山

    国務大臣石橋湛山君) 先ほど総理からもお答え申し上げましたが、拡大均衡と、この合理化法案が矛盾するだろうということは、私は全然そういうことはないと思います。というのは、むろん経済の拡大均衡をはかっていかなければなりませんが、しかしそれにしても、第一に石炭の値段が今までのように高くては、これは拡大均衡をはかることはできないのですから、従って石炭の値段を合理的に下げるということは、拡大均衡政策の前提条件とも申してよろしいと思うのであります。拡大均衡は、単に無理やりに生産をふやすということでなくて、同時にいわゆるプロダクティヴィティ、生産性といいますか、生産性を増加するということがどうしても必要だと思いますので、そういう意味において、私は今回の石炭合理化は、石炭のプロダクティヴィティをふやす、それをもとにして全産業のプロダクティヴィティをふやす一つ基本になるものと存じております。  御質問はいろいろありましたが、都市ガスの問題は、通産省におきましても、ぜひ一つ都市の燃料はガスにいたしたいと考えまして、奨励を行なっているのでありますが、お話のように、なかなか配管等の施設費が高くなりますので、この普及が思うように参っておらないことは、はなはだ遺憾でございます。これはそうかといって、競争会社を作ったからというて、それが普及するものではないと思います。そこで御意見のように、ガス事業に対する財政投融資をするというような気持がないかということでありますが、資金の融通については、今までもガス事業に対して相当努力をいたしてできるだけ融資をするように努力をいたしております。なお、それに対して財政投融資をするかどうかということについては、研究をしてみるつもりでおります。  それからそのほか硫安の増産とかいうようなことをいろいろお話がありましたが、むろん硫安の増産も大いにやるつもりで、これには財政投融資を本年も相当傾いたす予定になっております。そのほか完全ガス化でありますとか、あるいは石炭の化学工業でありますとかいうものも考えている次第でございます。  それからこの合理化の結果、労働強化にならないかというお話でありますが、私はこの合理化は、先ほども申しましたように、石炭生産性を増加する、機械化によって生産性を増加するのでありまして、その結果が労働の強化になるとは信じておりません。ただ中には、企業者の中に誤まるものがあったり、お話のように保安要員などの手を抜いて事故を起すというようなことは、これはなきにしもあらすでございますから、それに対しては、むろん通産省としては十分な監督をいたすつもりでおります。  それから鉱区整理統合のことも考えまして、これは強制的にいたすようにはなっておりませんが、しかしながら非能率炭鉱を買い上げ、あるいは竪坑を掘るということに伴いまして行政指導によりまして鉱区整理統合をいたす心組みでおります。  それから国有国営のことは、先般衆議院でも申しました通り、ただいま考えておりません。国有国営にしなくてもやれる、また国有国営にしたから、必ずやれるというものではないと考えております。  標準炭価は、主要生産地の標準品位の一般炭について生産原価その他を考慮して、そうして大体一年ごとに審議会の議に付して決定をし、これを公表するつもりでございます。楽な仕事ではないかもしれませんが決してできないことではないと確信をいたしておる次第でございます。  以上、お答え申し上げます。     —————————————
  26. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) 上條愛一君。    〔上條愛一君登壇拍手
  27. 上條愛一

    ○上條愛一君 私は日本社会党第二控室を代表いたしまして本法案に関し若干の質疑をいたしたいと存じます。  わが国におけるエネルギー供給の推移を見ますると、エネルギー需要の年年の増加に対し、水力発電等、輸入燃料が主たる供給源となっておりますことは周知の通りであります。これは吉山内閣以来今日まで、政府がエネルギーの増加供給源として、一定の国策を有せず、安易な輸入燃料に依存しまして、重油消費の規制と、その輸入関税を考慮せず、また外国炭輸入の制限をなさずして放任し、国内炭の最大限利用の方途を講じなかったことが、今日のわが国石炭鉱業の行き詰まりを招来した最大原因であることは明白であります。  しかし、輸入燃料によって国内の熱源不足の解決をはかろうといたしますことは、国際貿易収支の面からも不安定であり、現在すでにその限界を越えつつあることは明らかでありまして、巷間に国内石油資源の開発が強く要望されておりまするゆえんであります。この際政府は、当面の経済のみにとらわれず、国内資源を最高度に活用する立場から、単に非能率炭鉱を買いつぶすことによって、出炭を制限して炭価の安定をはかり、石炭鉱業の当面する不況克服を期待するよりも、むしる石炭需給安定のために妥当な方策を樹立いたしまして、低能率炭鉱、低品位炭鉱といえども存立し得る道をはかるべきであると信ずるのであります。この見地から本法案を見して、第一にお尋ねいたしたいのは熱資源開発方式に関してであります。現在伝えられるところによりますると、過剰出炭量は三百万トンと称せられております。もしかりに低品位炭を使用する五万キロワットの火力発電所を長崎、筑豊、常磐に各一カ所、北海道に二カ所、合計五カ所を建設いたしまするならば、年間約三百万トンの石炭を消費いたすということになるのでありまして、有力なる解決策の一つであります。総合的なエネルギー対策として当然考慮が払わるべき方策でありまして、当面する出炭過剰をただ押えることが石炭鉱業合理化、近代化の唯一の道ではないと信じます。しかるに通産当局は熱資源開発方式の樹立に当りまして、石灰資源の生産能力に限界ありといたしまして、水力発電を主として火力発電を従としておるのであります。しかも火力発電は水力発電に比べまして建設費が低廉でありまして、平均キロワット水力十二万円に対しまして、火力は五万五千円であって、約半額にすぎないのであります。なお建設期間も、相当の大発電所でありましても二カ年程度で完成するのであります。さらに最近発電原価も非常に安く、かつ火力は水力のごとく天然現象と雨量に左右せられることがなく、計画生産が行い得るのであります。以上のごとき総合的立場から、この際政府は熱資源開発方式を修正して、石炭資源地帯付近の水力発電建設計画を火力に変更する等の操作によりまして、石炭消費量の増大を企図するお考えがありますかどうか。またさらに低品位炭を原料といたします各種の石炭化学工業を振興して、新しい消費分野を開拓し、石炭問題解決のための意図を有せられるかどうか、御所見を承わりたいのであります。  次に、石炭の流通面でありますが、現在中小炭鉱業者の販売組織は、中間販売業者に依存する実情でありまして、大手筋大会社と比較にならない不利な立場に置かれておりますが、政府はこの際、中小炭鉱の自主的共販組織を勧奨して、これに財政融資を与え、法的保護をも考慮する必要があると思われますが、政府はその意図を有せられるかどうか承わりたいのであります。  次に、石炭整備事業団に関する問題でありまするが、この事業団整備基準に基いて買収する規定になっておりまするが、整備基準はどのような内容でありまするか。また買収に要する費用並びに事業団の運営費については、炭鉱事業主からの納付金によってまかなわれることになっておりまするが、不況にあえぐ炭鉱企業の現状から判断いたしますと、旧債の金利はとにかくといたしましても、特別の出炭に応じたトン当り十八円の納付金を支出することは、この負担に殖えられるかどうか、はなはだ疑問でありまするが、通産大臣はこれについていかなる見通しを有せられるか。また事業団は業務に必要な資金を借り入れることができるとありまするが、それは起債を認めるのでありまするか、あるいは財政融資を行うのでありまするか。また大蔵当局とどのような了解点に達しているか。その借り入れ方法等につきまして具体的にお示しを願いたいのであります。なお本法案は時限法でありますので、法の失効時に存在する事業団の所有にかかるところの採掘権鉱業施設その他の財産等がどのように処理されのでありまするか。廃止によって生ずる財産帰属等の問題の処理に関する法の規定がないのでありまするが、これに関する通産大臣の御意見を承わりたいのであります。  次に私は、通産省の付属機関として石炭鉱業審議会が設置せらるることになっておりまするが、その審議内容は直接的に炭鉱労務者関係を有し、場合によりましては致命的な影響を与えるのであります。本法案の第七十二条には「委員及び専門委員は、関係行政機関の職員及び石炭鉱業に関し学識経験のある者」となっておりまするが、この中の石炭鉱業に経験ある者として当然労務者の代表を加えるものと信ずるのでありまするが、今日まで通産省に設置せられておりまするところの付属機関の二十二を見ましても、労働者の代表が除外せられておりまするので、この際、念のために審議会の構成について伺っておきたいのであります。次に、通産大臣並びに労働大臣にお尋ねいたしたいのでありまするが、石炭鉱業振興に関しまして、かつて国は五千二百万トンの生産を目標としまして、その達成のために特別なる財政資金の融資を行なったのであります。しかるにこの融資は無統制、無計画でありまして、必ずしもその所期する石炭増産効果を上げ得ず、濫費の傾向が強かったのでありまするが、この融資が、今日の石炭業に膨大なる負債となって残っておるのでありまして、この財政資金借入残高は本年二月末現在、旧復興金融金庫関係で二百三億、旧見返り資金で三十七億、開発銀行百五億となっておるのであります。この債務が現在石炭企業合理化、近代化の阻害となっておることはいなめない事実であります。政府はこの際、この旧債務を一時たな上げする意図がおありかどうか。もしないとするならば、旧債の返済が新規貸し出しを上回って、新たにさらに特別融資を行わない限り、石炭鉱業の近代化、合理化は不可能と思われ、もし、しいてこれを行わんとすれば、徹底した労働強化と低賃金政策となって現われてくることは必然でありまするが、両大臣は、本法の実施によって生ずるところの労働強化と低賃金の招来を防ぎ得ると思考せられまするかどうか。また従来雇用労務者の退職に当りましては、その勤続年数に応じまして退職金が支給せらるるのが通例でありまするが、本法案においては労働基準法に基くところの予告手当と未払い賃金の支払いを規定しておるのみでありまして、退職金に対する考慮が払われておりません。従って退職金問題をめぐって労資間の紛争が生ずると思われまするが、何ゆえ退職金問題に関する規定を除外したのでありまするか。また退職金問題を中心として起る紛争にいかに対処せんとするのであるか、承わりたいのであります。  特に労働大臣にお伺いいたしたいのは、本法案実施によって生ずる数万の炭鉱労務者の失業に対し、具体的の方策が樹立せられておりまするかどうか。政府当局は建設事業もしくは公共事業等に吸収すると称しておりまするが、従来の実際を見まするに、工場、鉱山労働者の失業対策としてこれらの事業効果をあけておらないのであります。労働者は働かなければ生活できないのであります。すでに本法案実施によって職場を失い、社宅を追われる炭鉱労働者は、一日といえども生活の余裕を有しておらないのであります。従って急速に対策が講ぜられなければ、ボーダー・ラインの生活に突入し、生活保護法の援護を受くる以外に道がないのであります。果して労働大臣はこれらの失業者の移動、住宅、就労等に対しまして、遺憾なき具体的対策準備せられておりますか、その詳細を承わりたいのであります。  最後に鳩山内閣総理大臣にお尋ねいたします。本法案は、わが国産業経済を独占資本を中心に再編成するため、関係労務者と中小企業の犠牲を法律をもって強制しようとするものであります。従って本法案は、結局において大企業、大資本の擁護でありまして、独禁法に示すところの一般消費者大衆の利益と労働者の雇用を保障するものではありません。しかも最近の政府の行政指導の態度を見ますると、独禁法の実質的変革と思われるカルテル、トラスト的経済統制の色彩を強めまして、政府はその見地に立って、わが国産業経済に対する方策を進めつつあるやに思惟せられまするが、総理は独禁法に対し、存廃その他いかなる見解を有しておられるか承わりたいのであります。  またわが国産業経済の構造は、依然として中小企業がその大部分を占め、中核をなしております。しかるに近年のデフレ政策と特需の衰退によりまして、中小企業は破綻し、完全失業者は七十万を突破しつつあるのであります。さらに本法案実施によりまして新たに中小炭鉱に六万の失業者が生ずることは明白であります。しかるに政府説明によりますと、これら失業者は、建設工事、公共事業等に吸収するとのみにてその具体的対策が示されないのであります。すでに中小炭鉱においては現在失業にさらされ、生活に窮し、電燈すらつける能わずして、ろうそくの光に照らされて一家飢えに泣くの惨状を呈しております。全国の労働者は、その生活苦を傍観できず、資金と物資を集めてその救済に全力をあげつつある実情であります。国民生活の安定は、鳩山内閣の公約であります。総理は、本法案実施によって牛ずるところの六万の炭鉱労務者とその家族の生活保障について、確固たる具体策を立て責任をとるの覚悟を有しておられるか否かを承わりたいのであります。  以上をもって私の質疑を終ります。(拍手)    〔国務大臣鳩山一郎登壇
  28. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 上條君のお質問に対してお答えをいたします。  このたびの臨時措置法案は決して独占を強化するものとは考えておりません。それから失業者に対しましては十分の措置を講じておるつもりでありすす。詳細は労働大臣よりお答えをいたします。    〔国務大臣石橋湛山登壇
  29. 石橋湛山

    国務大臣石橋湛山君) お答えいたします。  この法案は、決して石炭の生産をただいたずらに押えようということを目的としておるものではございません。むろんわれわれは需要の増進を大いにやりたいと、かように考え需要増進のためには全力を注ぐのでございますが、しかしながら過渡的に当面の問題として、この合理化をとにかくやらなければ、いずれにしても先ほど申し上げましたように、石炭の原価が下り、需要者に入る価格が低くなければ、結局石炭の生産を維持することができないということになりますので、そこでこの合理化をして生産費を下げよう、その間において合理化を妨げるような事態が発生する懸念もございますので、そこでこの生産を一時押えなければならぬということも起る。またいかに合理化をいたしましても、結局機械化その他の手も及ばず、どうしても非能率であるという炭鉱は、まことにやむを得ませんので閉鎖をするということも、これは全体を浮かすためにはやむを得ないことだと思います。従って低能率炭鉱を存置するということは、決して拡大均衡にもならないし、石炭鉱業そのものを生かす道にもならないと存じますから、低能率炭鉱は、やむを得ませんから整理をいたしたい。しかしそれは低品位炭を排除するという意味ではないのでありまして、低品位炭の利用ということは、もちろん非常に考えておりまして、これをできるだけ山元において火力発電にするというような方式は、強力に進めて行く覚悟でございます。あるいは石炭化学、先ほど申し上げましたように、火力発電は言うまでもなく、石炭化学、その他の石炭の利用の道は十分研究をして行きたいと存じております。結局先ほど経審長官も申された通り昭和三十五年度には、生産を押えると申しますが、石炭は五千万トンを超える需要があるという見込みで、拡大均衡をやるのでございますから、繰り返して申し上げますが、決して単に生産を押えるための法律ではございません。  それから中小炭鉱の販売組合のお話がありましたが、これは実は今までもしばしば企てましたが、なかなかうまく参りませんので、実は弱っているわけでございますが、今後も一つ何とか指導をしまして、できれば中小炭鉱の販売をもう少し合理化して、そうして中小炭鉱者が販売の上において、非常な不利益をこうむることのないようにいたしたいと考えております。  それから事業団資金の融通を受けることについては、先ほど一松さんの御質問に対してお答えした通りでありまして、これは一時の金繰りのために資金の融通を受ける必要が起るだろうということを予想して立法をいたしておるのでありますが、その資金の融通はさようでありますから、政府資金、国家資金の融通も考えておるわけでございます。  それから事業団の財産の問題は、これは事業団はこの法律の施行期日が終りましても、鉱害の問題がございますので、あの法律のあるように、なお事業団は継続するのでございますが、最後にはむろん財産を整理する。結局もし残余財産があれば、それはその際に適当に処分するということであります。  それから審議会の委員の中へ労働者の代表者を入れるかという御質問に対して、あれは私ども、実は今までの委員会というのは、どこの代表者というような考え方がありましていろいろのバランスでもって、あっちの代表を入れるから、こっちの代表も入れるというふうなことで、これはあまり好ましい形ではないと思いますから、代表者という形でなく、真に学識経験者にお願いをして、審議会を組織したいと思います。その中にはむろん代表者という意味でなくても、これに労働者の出身の方、あるいは現に労働に従事しておる人たちを学識経験者の中に加えることは十分に考えておる次第であります。  それから、これが労働強化なり、賃金低下にならないかという御質問に対しましては、これも先ほどどなたかにお答えしたように、私どもはさように考えておりません。プロダクティビティを増すのでありまして、賃金はむろん特別にそのために上るということは考えておりませんが、世間の物価あるいは賃金一般のレベルと共に、炭鉱労務者賃金も上ることは予期しております。ただ炭鉱だけがひとり賃金が上るということだけは予期をいたしておりませんが、一般の物価、賃金等に相応した賃金を取るということはむろん考えております。  それから退職金の問題を特に法律に書いておきませんでしたのは、これは企業者労務者との間に取りきめられるべきものでありまして、一律に法律的にこれを強制するとか、決定するとかいうことは困難だと考えましたので、退職金のことはわざとあそこに入れておかなかったのであります。  それから大資本家の資本の擁護になるということも、これも先ほど申し上げた通り、決してそういうつもりではございません。これは結局、中小炭鉱というものの救済と言っては語弊がありますが、中小炭鉱を生かす、とにかく能率のいい炭鉱は大中小にかかわらず生かす、それで機械化をし、あるいは中には竪坑を掘るということで行くのでありまして、結局この計画が終りましたときの状況はどうなるかというと、依然として中小炭鉱の生産高が少くも全生産高の半分を占める形になるわけでありまして、決して大資本、大炭鉱だけに集中するのではございません。  以上、はなはだ簡単でありますが、お答えを申し上げました。    〔国務大臣西田隆男君登壇
  30. 西田隆男

    国務大臣(西田隆男君) お答えいたします。  労働強化と賃金低下の問題は、ただいま通産大臣がお答えした通りでございます。  それから、上條さんはお考え違いをしておられるのではないかと思うのですが、一カ月の特別手当を給付すると書いてありますのは、あれは予告手当ではございません。特別な一カ月分の手当を給付すると、こういうことでございまして、予告手当と退職金は、さっき通産大臣が申しましたように、労使双方によってきめらるべき問題でありますので、あの法律規定の中には載っておりません。当然予告手当は別にもらえるということになっております。  それから合理化法案の施行に伴って生ずる失業者をどう収容するのか、具体的に詳細に言えという御質問でありますので、詳細に計画は立てておりますが、まず三十年度に生じまする失業者は、買い上げの対象になります炭鉱の者で四千七百名を想定いたしております。従ってこの四千七百名を地区別に事業別に収容するという計画を立てておりますが、その必要なものを申し上げますというと、三十年度で電源開発工事に四百名、河川の改修その他に千七百五十名、それは遠賀川に五百名、その他に千二百五十名、道路事業に千五十名、それから鉄道建設改良に九百名、合計で四千百名、初年度から次年度に繰り越しますものはその六〇%、三年度に繰り越しますものはその四〇%としまして、これに二年度、三年度に増加するものを含めました集計の最後の数字だけを申し上げますと、一十一年度におきましては一万四千七古五十名を収容する予定であります。二十二年度におきましては、一万六千八百名を収容する予定にいたしております。これだけの数を収容すれば、買い上げの対象になっております約二万七千名を想定されております失業者の吸収には十分であると、かように考えております。  なお詳細は、委員会で数字等は御説明いたしたいと考えております。
  31. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) これにて質疑の通告者の発言は、全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。  本日の議事日程は、これにて終了いたしました。次会の議事日程は、決定次第公報をもって御通知いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後五時三十七分散会      —————————— ○本日の会議に付した案件  一、海岸砂地地帯農業振興対策審議会委員選挙  一、日程第一 石炭鉱業合理化臨時措置法案趣旨説明