○石黒忠篤君 ただいま議題となりました婦人の
参政権に関する条約の批准について
承認を求めるの件につきまして、外務委員会における
審議の経過及び結果を
報告いたします。
政府の
説明によりますと、この條約は、国際連合の一九五二年の第七回総会で採択され、一九五四年七月七日に発効したものでありまして、
わが国は本年四月一日これに署名いたしました。本条約の
内容は、婦人の地位を国際的に高めようとする国際連合の事業の一環として作成せられたものでありまして、婦人に対し、男子と対等の選挙権と被選挙権を保障すること、及び婦人に対し公職就任の機会均等を保障するものでございます。で、
わが国としては、本条約の当事国となることによりまして、国際連合の事業に協力をするということができるのみならず、
わが国においては、すでに確保されておりまする男子と対等な婦人の
参政権を国際的にも確認することとなるという点にかんがみまして、この条約を批准ずることについて
承認を求めたい、こういうのが
趣旨でございます。条約文の詳細の
内容につきましては、お手元の
資料で御
承知を願います。
委員会での質疑においては、この条約へ未加入の国及びその未加入の
理由、ソ連その他の国のなしたところの留保の
意味、本条約の特質というような諸点につきまして、委員から質擬が行われたのでありますが、それに対する
政府の
答弁の
概要を申し述べますと、この条約にすでに署名をした国は四十数カ国で、十九カ国が批准を了し、または加入をいたしております。未加入国は、英、米を初めといたしまして二十数カ国でありますが、その加入しない
理由いかんと申すと、英、米は、本条約が定めておるような事柄は、本来、国内問題で、条約
事項ではないという
立場からであります。またイエーメン等の回教国、または、いわゆる後進国におきましては、男子さえ
参政権が与えられておらぬものがあるのであるから、婦人に
参政権を認めることができないというような、その国の法制ないしは風俗習慣の相違から署名をしておらぬのである」という
答弁でありました。次に、「ソ連初め東欧諸国は、第七条及び第九条に関しまして留保を付しておる。すなわち、第九条は、解釈または適用に関する紛争の解決については、国際司法裁判所に付託をすることを
規定しておるのでありますが、これらの国々は、この国際司法裁判所の強制管轄権を受諾しがたいということの
理由をもって、第九条に拘束せられないとしております。また第七条については、従来の国際法上の解釈としては、ある国が留保を付する場合においては、他の全
締約国との間には条約が成立しないのであるが、本条約におきましては、多くの国の加入を希望したために、特例を設けて留保を行なった国と留保を
承認しない国との間においてのみ効力が生じないということにいたした。これに対しまして、ソ連初め東欧諸国は
反対したものであります。なお、インドのごときは、第三条の、婦人に公職就任の機会均等を保障する
規定に対し、婦人が軍隊に勤務することを除外しておる。これは婦人の肉体的条件からいたしまして、当然のことであって、この種留保をしない国でも、婦人が
軍人となることを認めておらぬ国はたくさんあって、かかる留保の必要はないと思われるが、インドの場合は、良心的に
考えたものと認められるのであります。なお三条によれば、婦人は何らの差別も受けることなく、男子と同等の条件で国内法で定める公職につき、及び国内法で定めるすべての公務を執行する権利を有するとなっておりますが、この公職、すなわちパブリック・オフィス及び公務、すなわち。パブリック・ファンクションの定義については、国連の総会でも
議論が沸騰いたしまして、結局、各国共通の観念を見出すことは不可能であるとして、各国のきめるどころにまかせたというような経緯もある」という
説明があったのであります。
また、「本条約は、その特質についてどういうものであるか」という
質問がありましたが、「この条約は、国内法的にはその定めておるところに従わなければならないが、普通の国際条約とは趣きを異にして、宣言的のものであって、道徳的な原則を明らかにしたものである、かかる性質の条約は、第二次世界大戦後、国際連合が生れて、
経済及び社会の分野における国際協力を強調するに至ってからの産物である」という
答弁がありました。なお、「
わが国は婦人の
参政権をすでに定めておるが、本条約は
わが国に、これに加入することによって、何らかの影響を及ぼすものであるか」という
質問に対しまして、「
わが国が現在この条約の当事国となること自体によって、新たに国内的に
立法措置を要するものではない」という
答弁でありました。
委員会は五月三十一日質疑を終了し、次いで、六月二日に討論に入りましたところ、梶原委員より、「
日本国憲法第十四条の
規定の
範囲に、本条約の
内容が包含せられるものである」との了解のもとに、本案に賛成をするという御
発言がありました。
かくして討論を終りまして採決を行いましたところ、本件は、全会一致をもって
承認すべきものと議決いたしました。
以上、御
報告申し上げます。(
拍手)
次に、ただいま議題となりました、関税及び貿易に関する
一般協定のある
締約国と
日本国との
通商関係の規制に関する千九百五十三年十月二十四日の宣言の
有効期間を延長するための
議定書への署名について
承認を求めるの件につきまして外務委員会における
審議の経過と結果を
報告申し上げます。
政府の
説明によりますと、
わが国は一昨年のガット第八回
締約国団
会議において採択されました関税及び貿易に関する
一般協定のある
締約国と
日本国との
通商関係の規制に関する宣言、これはすなわち日本のガット仮加入宣言でありますが、それによりまして事実上ガットに加入したと同様の利益を享受しておるのであります。しかるに、この
規定するところによりますと、同宣言はガットヘの正式加入の日、または別段の取りきめがない限り、本年六月三十日に失効するということになっておるのであります。一方本年二月二十一日に、ジュネーブにおいて開始されました、そうして今なお現在続行されておりまする関税交渉
会議におきまして、
わが国のガットヘの正式加入が討議されておるのでありますが、六月三十日までに必ず正式加入実現の運びに至り得れば、まことにけっこうであるが、必ずできるとは申されないような事情のもとにおきまして、昨年十月よりの第九回
締約国団
会議において万一、右不可能の場合に備えまして、前記の仮加入宣言の
有効期間を延長することと相なり、本件
議定書が本年一月三十一日に、賛成二十六、
反対なし、棄権五、欠席三という成績をもって採択されたのであります。この
議定書は、
わが国と仮加入宣言の当事国でこの
議定書に署名する国との
通商関係を、
わが国のガット正式加入、または本年十二月三十一日のいずれかの早い時期まで引き続きガットの
規定によりまして規制しようとするものでありまして、
わが国はこの
議定書に署名することによって、継続してガットに基く利益に均霑することができるわけなのであります。
しかるにこの
議定書が署名のために開放せられておりまする二月一日には、
国会は解散中でありましたが、この
議定書はもともと
わが国の利益のためのものであり、かつその署名を前提として作成されたものであり、なおかつ、時あたかもガット正式加入のための関税交渉を控えておる際であったので、
わが国が率先して署名をするということが絶対に必要なものであったために、二月一日
政府の
責任においてこれに署名をいたし、
国会の
承認は
憲法七十三条のただし書の
規定によって、これを事後に求めることといたしたものであります。右のような事情がございまするから、これを了察して本
国会において
承認を与えられんことを求めた次第であるというのが、
政府の
説明であります。
さて、この
議定書の
内容は、前述の
政府説明の
通りに、ガット仮加入宣言の効力を、暫定的に延長することを目的としたものでありましてその詳細はすでにお手元に配付されておる
資料によって御
承知と存じますので、ここには述べません。
委員会は、本件について二回開会いたしまして
審議を行いました。本件
議定書そのものは簡単でありますが、これに連関しましては、たくさんの重要問題がありました。
わが国のガット加入の見通しいかん。加入に伴う利害、また、
わが国が関税および貿易政策においてどういう根本的
方針を持っておるかということ、ないし目下ジュネーブで行われておる関税交渉に触れまして、各委員からの熱心なる質疑が行われたのであります。主要なものを申し上げますと、まず、「本件
議定書採択に当って棄権している五カ国、及びその棄権の
理由はどうであるか」ということの
質問に対しまして、「棄権した国は、英本国、オーストラリア、南ローデシア、南ア連邦、並びにチェコスロバキアである。英本国及び英連邦諸国の棄権は、国内業者の
反対を反映するものと推測される。チェコの場合の
理由は、
政治的のものであるように思われる」という
答弁がありました。次に、「本年二月から開始された関税交渉の経過、並びに日本の正式加入をいたし得る時期の見通しいかん」という
質問に対しましては、「関税交渉中の国は、米国、カナダ等十五カ国にわたっておるが、正式加入のためには、
締約国三十四カ国の三分の二以上、すなわち二十三ヵ国以上が加入
議定書に署名せねばならないのであるが、関税交渉に今参加している国は十五カ国であるから、まだ参加していない国の中でオーストラリア、フィンランド、ギリシャ、トルコ、インド、ブラジル、チェコの七カ国は、日本の加入を支持する旨を表示しているので、残る一ヵ国を獲得すべく、主としてベネルックス三国に対して交渉を進めておる。しかしオランダは
政治的
理由で難色を示している。」なお、関税交渉は十五カ国に対して並行して行われておる。すなわち、一つの品目について税率の引き下げが討議せられる際には、その品目の重要輸出国は、すべてこれに関与する仕組みである。たとえばアメリカに対する日本の輸出品である玩具の関税税率引き下げの交渉の結果は、同じく玩具を輸出しておる国のドイツ等の諸国にも影響が及ぶから、従って交渉には参加させて、
技術的に詳細な討議がなされるので、すこぶる面倒で時間がかかるが、しかし非常な努力をもってこれに当っておるので、六月上旬には交渉のめどがつき得るのではないかと思われるようになって参ったということであります。正式加入の手続きとしては、交渉が終了すると加入
議定書が作成されて、これに
締約国の署名を求めるために一定の期間開放される、そして二十三ヵ国以上が署名をしたときに有効となる、「ただいまのところでは、この時期を九月上旬と見込んでおる」との
答弁でありました。次に、「英国及びフランスとは関税交渉を行なっておるのか、それとも別途に関税について話し合いが行われておるのか、また加入
議定書に署名するように交渉をしておるのか」という
質問に対しまして、「英国は関税交渉には応じないが、ガット第三十五条の
規定を援用して、日本加入を支持する
態度を示している。フランスは三十五条の援用加入を認める
態度をも示しておらない。英国とは最近通商条約締結の機運に進んでいるので、日本としては通商交渉の過程で根本問題の解決をはかった上、ガットのワク内に持っていくことを適当と
考えている。フランスについては通商条約を結ぶ話は進んでおらないが、やはり通商条約から入っていくのがよいと
考えておる」という
答弁でありました。
次に、「ガット加入は、日本の
経済自立ないし国際収支とどれほど
関係があるか」という
質問に対しまして、「現在、関税について最恵国待遇を与えている国との
関係においては、加入後格別の変化は起らないと思われるが、日本の貿易上、アメリカ
関係が非常に重要な地位を占めているので、交渉の結果、
わが国の主用輸出品に対するアメリカの税率が引き下げられることともなれば、アメリカから受けるところはきわめて多く、この点は実質的に大きな利益となると
考える」との
答弁でありました。「日本は今、関税自主権を持っていると言えるか、日本のガット加入に
反対する国に対して、自由に高い関税を課することができるか。」こういう
質問に対しまして、「日本は関税自主権を持っておる、また関税法及び関税定率法に基いて、差別待遇をなす国に対して複関税、または報復関税を課すことができる。もっとも協定税率は、これら特別税率に関する定率法いかんにかかわらず、従前
通り適用されるのである。また報復的関税を課する問題は、実行上は慎重に検討する必要がある。たとえば対日平和条約によって、日本は明年四月までは相手国に対して双務的ではあるが、最恵国待遇を与えることを義務づけられているのであって、また特別税率を課する輸出品目の実態についても、とくと
考えをする必要があって、報復的関税の実施はなかなかむずかしい点を伴うのであるが、原則的に言えばできるということになるのだ」という
答弁がありました。
次に、「イギリスが日本と最恵国待遇を含む条約を締結することをしぶっておる
理由の一つには、意匠盗用の問題等があるようであるが、先方から繊維品についての苦情が来ていると聞いているが、実情はどうか」、という
質問に対して、「意匠盗用の問題等は、日本側にだけ非があるのではないが、先方が日本の実情に通じていないことから起るのが最大の原因だと思われる。しかし最近は実情調査に人が参ったので、その結果を期待をしておる。現に陶器のごときは、非常によい解決に向いつつある」というような
答弁がありまして、「英国と通商条約を締結するためには、条約の
規定自体、あるいは附属
議定書等に、商標権、意匠権の保護のための
規定を入れることが必要になるように思われる」という
答弁でありました。そのほか米国上院におきまするクーパー
法案に対しまするいわゆるジョージ案に関しましたり、また第九回
締約国団の
会議で議せられたガット
規定の改正問題如何というようなこと、また、これらに対する
わが国の
意見、日本の行なっておるリンク制等の輸出助長政策に関しまする
締約国団の意向はいかがであるかというような質疑応答が行われたのでありますが、詳細は
会議録で御
承知を願いたいと思います。
委員会は、六月二日質疑を了しまして、討論に入りましたところ、小満委員より、「本件には賛成をするが、ガット加入の見通し及び加入することによって
わが国はいかなる利益を得るかの点についての
政府の
説明は不十分であることが不満である。しかしジュネーブにおいて
わが国代表団が極力努力しておることでもあり、成果をあげるように外務省は十分努力すべきものであるという希望条件を付して賛成をする」との
意見を述べられました。
次いで採決を行いましたるところ、本件は、全会一致をもって
承認すべきものと議決いたした次第であります。
以上、御
報告を申し上げます。(
拍手)