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1955-04-28 第22回国会 参議院 本会議 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年四月二十八日(木曜日)    午前十時十八分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第十一号   昭和三十年四月二十八日    午前十時開議  第一 国務大臣演説に関する件(第三日)     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 河井彌八

    議長河井彌八君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。      —————・—————
  3. 河井彌八

    議長河井彌八君) これより本員会議を開きます。  日程第一、国務大臣演説に関する件(第三日)  高碕国務大臣から、昨日の左藤義詮君、野溝勝君の質疑に対する答弁のため発言を求められました。この際発言を許します。高碕国務大臣。    〔国務大臣高碕達之助登壇拍手
  4. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 私は、昨日までアジア・アフリカ会議に出席いたしておりまして、留守をいたしまして、まことに失礼をいたしました。昨日の左藤さんの総合経済六カ年計画と本予算との関係につきまして、ただいま答弁いたします。  三十年度におきましては、六カ年計画の初年度でございまして、将来における発展のために基盤を確立することをもって三十年度経済計画の主眼といたしております。従いまして経済安定に重点を置くことが必要でありますので、一般会計予算の規模は一兆円の範囲内にとどめることにいたしまして、その資金の効果的、重点的なる配分に十分努力したのであります。すなわち社会保障費につきましては総額千六億円、これは昨年度に比しまして、約五十二億円の増加になっております。それから失業対策費は二百八十九億円、これは昨年度に比しまして四十六億円の増加になっております。更に住宅建設につきましては、財政投融資分を含めまして総額が四百二十四億円、昨年度に比しまして百四十一億円の増加となっております。また輸出振興のためには、特にプラント輸出増進のために輸出入銀行資金をふやしまして、二百二十億円を計上しまして、昨年度に比しまして百七十億円の大きな増加をいたしております。このように、一兆円のワク内におきまして公約を果すために重点的に予算配分考えております。また、企業合理化生産の向上、国内自給力の発達ということのために十分資金を確保いたしまして、六カ年計画はこれを達成することができると考えております。  それから野溝さんの、三十年度予算案では財政投融資が相当削減されてきて小規模なものである、これで六カ年計画はできるか、こういう御質問でありますが、これにお答えいたします。  三十年度投融資計画総額は三千二百七十七億円でありまして、二十九年度に比しまして四百二十七億円の増加と相なっております。また資金配分につきましては、六カ年計画との関連を考慮いたしまして、特に重点的に配分いたしまして、すなわち輸出入銀行につきましては、プラント輸出等のために大幅に増加し、電源開発につきましても、効果的な開発を増進するために資金を五十六億円増加いたしております。開発銀行につきましては、その運用総額は昨年度並み、つまり五百九十五億円でございますが、その運用に当りましては、特に石炭、鉄鋼等主要産業重点を置くというふうに効率的に運用をはかりたいと存じております。更に中小工業金融円滑化をはかり、その育成を進めるために、中小企業金融公庫国民金融公庫に対しまして、できる限り投融資を行いまして、両者合計いたしますと二百十五億円、この運用総額は昨年よりも九十五億円の増加となっております。なお商工中金に対するところの、新たに十億円を出資することに相なっております。従いまして、政府の期待しておりまするところの六カ年計画には、これは十分間に合うことと存じます。  それから二十九年度物価は大幅に横ばいであったが、下落した品目は、卵、牛乳その他農産物であって、これは農村不況を意味しておるのではないか、また三十年度物価は最近下落しておるとのことであるが、どんなものが下落しておるか、こういう御質問でありますが、これにお答えいたします。  二十九年度卸売物価は二十八年度に比べまして三%程度下落しておりますが、このうち農産物は、特に二十八年度に比べまして二十九年度は上っております。農産物は八・六%上っておる。その他の食糧は四・四%だけ上っておりますが、前年度を上廻っておりますが、御説のごとく卵と牛乳だけは、その他の食糧農産物傾向とは別に下落しております。これは生産が大幅に伸びたものであるにもかかわらず、需要が急に減った、こういうことで、農村不況だということは断ぜられないと思います。現に最近の傾向では、ややこれが安定を示しておるような状態であります。なお三十年度物価につきましては、二十九年度に比べまして卸売物価では二%程度下落考えておりますが、最近の海外市況の影響を受けまして、金属類を除きますというと、金属類海外が高いものですから、これはちょっとまだ下りませんが、そのほかの品目につきましては今下落を見ておる状態であります。  以上をもちまして答弁といたします。
  5. 河井彌八

    議長河井彌八君) 昨日に引き続き、これより順次質疑を許します。上條愛一君。    〔上條愛一君登壇拍手
  6. 上條愛一

    上條愛一君 私は社会党第二控室を代表しまして若干の質疑をいたしたいと存じます。  鳩山内閣国民が期待いたしましたゆえんは、長い間吉田内閣がとり来たった向米一辺倒外交方針を一倒した外交自主独立と、国内政治の刷新を行なって民生の安定を期することでありました。特に選挙に際して鳩山内閣国民公約いたしました四十二万戸の住宅建設防衛分担金減額してこれを社会保障に振り当てること、減税中小企業対策、中ソ国交回復等の実現にあったのであります。しかるに、総選挙後における鳩山内閣のとり来たった実際政策、ことに今回議会に提出せられました本年度予算案を見まするに、一兆円予算はもちろん、防衛関係費は昨年よりも予算外支出だけ増加を見、その他住宅政策社会保障中小企業対策等、多く吉田内閣の延長でありまして、公約は実現せられず、国民は失望を禁じ得ないものがあります。鳩山総理大臣は、施政演説において、本年度予算案の中で、住宅建設社会保障、特に失業対策費大幅増額所得税減税の三つをあげて自賛せられたのでありまするが、御承知のごとく、吉田内閣より引き続いたデフレ政策の結果、完全失業者は昨年は年平均五十七万人を算し、また今回の石橋大臣経済演説に見まするも、産業政策として重要産業合理化は推進せられ、失業者増加は必至であります。農村には多数の二男三男潜在失業者が生じ、全国を通じて潜在失業者の総数は一千万を突破すると称せられております。四十六億の失業対策費増額は、この増加しつつある失業者に対する当然の措置でありまして、現在の失業問題の解決とはならないのであります。また、基礎控除を八万円に引き上げました所得税軽減は、私どももこれを多とするものでありまするが、しかしその補てん財源としては、酒とたばこの消費税の増徴に待つものでありまして、国民大衆は右手に減税、左手に増税を見るものと言わなければなりません。かかる政策をもって、果して公約が果されたものと信じ得らるるのでありましょうか。総理大臣の所感を承わりたいのであります。  次に外交と防衛問題でありまするが、この問題に関する昨日の同僚議員質問に対し、外務大臣は、わが外交自主独立を強調せられたのでありまするが、しかし今回の防衛分担金削減に関する対米交渉を見まするに、防衛分担金減額は本会計年度以降には適用しないことを約し、分担金減額のかわりに防衛庁費増額に同意し、さらに予算外防衛費を認め、原爆用ジェット爆撃機の基地を日本に作ることを容認するがごときは、実質的に予算編成自主性が拘束せられ、アメリカの内政干渉の道を開くものと思考せらるるが、外相の所見を承わりたいのであります。  次に、中小企業対策について石橋通産大臣にお尋ねいたしたいのでありまするが、今回の財政投融資配分を見ますると、中小企業に対する融資は、中小不在業金融公庫は百十億円、国民金融公庫は百五億円でありまして、商工中金は新たに十億円が認定せられております。ただいま大臣お話によりますると、この財政投融資中小企業に対する配分は昨年より増加いたしておるというのでありまするが、多いと見られるところがないと考えられるし、また御承知通り、これらの融資の多くは従来、回収見込みの少い中小企業融資せられずして大資本方面に流れ去ったことは明白であります。今日わが国における中小企業は、その生産高において、従業員数において全産業の六〇%以上を占め、輸出中心をなしておるものでありまして、産業経済における地位はきわめて重要であります。しかしながら現在の自由競争営利主義資本主義経済より見ますると、資本主義発展に伴いまして中小企業は大資本に対抗し得ない不利なる階層であります。吉田内閣産業経済方針は、戦後におけるわが国資本主義経済復活再建でありまして資本主義発展途上においては中小企業の衰退と犠牲はやむを得ないといたしたのであります。従ってそのとれる政策は、大資本の擁護であって、中小企業は第二義的であったのであります。私がここに鳩山総理大臣石橋通産大臣にお尋ねいたしたいのは、鳩山内閣産業経済方針は、吉田内閣と同様な方針を踏襲せられるのでありまするか、またはわが国における中小企業特殊性重要性を認めて、真にこれが保護育成を行なって、その健全なる発展を通じてわが国産業経済再建を企図せられんとするのでありまするか、根本方針を承わりたいのであります。もし後者の方針をとられるといたしまするならば、今回議会に提出せられました予算の内容をもってして、果して中小企業保護育成が行われると思惟せられるのでありまするか、また金融以外に鳩山内閣中小企業がありまするならば、あわせて承わりたいのであります。政府はさきの総選挙に際しまして、国民住宅四十二万戸の建設公約したのでありまするが、予算を通じての実際は、公営住宅五万二千戸、公庫住宅七万五千戸、公団住宅二万戸でありまして、残りの二十四万五千戸は国民自力建設に依存せんとしておるのであります。言うまでもなく、選挙の際の公約は、国民はひとしく四十二万戸は政府みずからの手によって建設せらるるものと信じ、政府もまたその意図であったと信ずるのでありまするが、この具体案は全く国民の期待にそむくものなることはすでに同僚議員の指摘せられた通りでありまするが、特に私は竹山建設大臣にお尋ねいたしたいのは、公営住宅五万二千戸の建設資金のうちで、補助金支出百六億、地方公共団体支出百億を見込まれておるのでありまするが、現在御承知のごとく地方公共団体赤字続きでありまして、その負担はきわめて困難であって、すでに昨年度におきましては東京都はこれを返上したるありさまでありまするが、この地方公共団体支出負担に対しまして、大臣は確固たる見通しと対策を有しておらるるのでありまするか。また民間自力建設は昨年度は十九万三千戸でありまして、すでに飽和点に達しておると言われておるのでありまするが、昨日も同僚議員質問に対しまして、建設大臣は確信を有するごとく答弁いたされましたが、御承知のごとくその難関の一つ土地問題であります。今日都会中心とする土地は暴騰を続けておりまして住宅を必要とする勤労階級は、容易にその土地を入手できない現状でありまして、土地所有者は将来の値上りを見越してこれを譲渡もしくは貸与をなさざる実情であります。政府はこの民間自力住宅建設に必要なる土地問題に対し、いかなる対策を有せらるるのか承わりたいのであります。  日本は今回の戦争によりまして二百四十万戸の国民住宅を焼失し、政府当局の発表によりましても、現在二百八十四万戸の国民住宅が払底しておるありさまでありまして、国民生活にとりまして、住宅問題は急務中の急務と言わなければなりません。戦後英独等においてはビルディング金持ち住宅キャバレーその他の娯楽機関等の不急の建設を押えまして、建築資材の八〇%は国民住宅建設に動員して全力を注いだと伝えられておりまするが、わが国においては戦後、建設資材の八五%はビルディングキャバレー、待合、ホテル、金持ち住宅等に使用せられまして、国民住宅建設にはわずかに一五%内外の資材が回っておるに過ぎないと言われておりまするが、建設大臣は必要に応じ建築資材を優先的に国民住宅建設に動員する処置をとらるる意図がありまするかどうか、承わりたいのであります。最後に私は川崎厚生大臣にお尋ねいたします。今年度予算によりますと、生活保護費結核対策費がいずれも減額せられておりまして、これはすでに昨日同僚議員からも指摘せられましたごとく、現在の国民生活安定に逆行するものなることは明白であります。すでに都会中心とする完全失業石は七十万に及び、農村にあっては耕すべき土地を有せざる二男三男の問題は深刻化し、ボーダー・ラインの生活を続けて生活保護法の援助を受けねばならない要保護者増加の一途を辿っております。また結核は、厚生大臣の塾知せらるるごとく、昭和二十八年の実態調査によりますと、患者二百九十二万人、要注意者二百六十一万人でありまして、そのうち入院して治療を受けなければならない重病患者は百十二万人を数えまするが、全国を通じ、病院のベッドは十七万八千にすぎない実情であります。かかる現状においてこれらの費用を減額するがごときは、国民をして餓死と病死に追い込むものであるといわなければなりません。厚生大臣は憲法第二十五条に明記せられる国民の文化的の最低生活と健康が、かくのごとき予算をもって保障し得るとお考えでありまするか。結局は一兆円予算防衛関係費のしわ寄せが社会保障関係費に及んで、鳩山内閣公約たる社会保障制度拡充が水泡に帰したのであります。従って一兆円予算防衛関係費現状のままにいたしましては、社会保障拡充は他にその方策を求めなければなりません。厚生大臣は他に適切なる方策がおありでありますれば、お示しを願いたいと存ずるのであります。特に健康保険問題でありまするが、二十九年度において前年度の黒字十八億を使い果しました上に、さらに四十一億の赤字を生じたありさまでありまして健康保険は危機に瀕しておるのであります。厚生当局はこの対策といたしまして、保険料最高率の千分の六十五に引き上げ、さらに医療費の被保険者一部負担標準報酬引き上げ等を考慮しつつありと伝えられましたが、昨日の本議場において、厚生大臣保険料引き上げと、標準報酬引き上げを行なって赤字克服に対処する旨を明らかにせられたのであります。かくのごとき健保の改悪を行いまして、労働者犠牲を強化いたしましても、今日の健保赤字を解消せしめることは困難であると思われますので、私は左の二点につき厚生大臣の御意見を承わりたいと存じます。  第一は、健保赤字の原因については、入院料引き上げパスストマイ等の使用、被保険者及び受診率増加、乱診乱療等があげられまするが、その重大の一つ結核費の増大であります。現在結核費節減対策として、患者つき添い看護婦の廃止が問題化しつつありますことは、厚相の御承知通りであります。私は健保から結核を切り離して、結核対策特別立法によるか、結核予防法大幅改正による別個の結核治療の道を開いてこれをなことが一案と考えられまするが、厚生大臣の御意見を承わりたいのであります。第二には、医療費パスマイシン等医薬品費の占めるウェイトが大なるものがありまして、昔、薬九層倍と称せられてきましたが、実際において広告費その他の関係上、医薬品生産費よりはるかに売価が高いことは事実と存じます。よって主要なる医薬品は、営業利潤より分離したるところの製造、配給の管理制度を創設するがよいと考えられまするが、厚相のお考えを承わりたいのであります。次に、人口対策の一環といたしましての家族計画の問題であります。周知のごとく、わが国は今回の戦争によりまして多くの国土を失い、明治五年当時のこの四つの狭い島となったのでありますが、人口増加しまして八千七百万に達し、さらに年々百万余の増加を見つつありまして、毎年約八十万の新しい就労人口が生じつつあります。石橋大臣は先日の経済演説の中で、少くとも完全失業者の数が二十九年度のそれを越さないよう努力する所存であると述べられましたが、この年々増加する就労者に対し、いかにして職を給し得るかは重大な国策であります。移民もまた多くの希望を有することのできない現状にありまして、人口対策は今日国家百年の大計といわなければなりません。ことに家族計画産児調節は、労働者、農民その他勤労階級にとって、きわめて切実な問題であります。厚生省は近く三千三百万円の予算をもって受胎調節指導に乗り出し、一部の国民に対して無料で器具薬品を支給すると伝えられますが、さらに一歩を進めて、この際国策として積極的に家族計画を全国民に普及徹底し、産児調節指導を行うとともに、必要な国民に対しましては全般的に器具薬品無償配布を行うの英断を実施すべきであると信じますが、厚生大臣の御所見を承わりたいのであります。  川崎厚生大臣社会保障制度審議会の委員として、社会保障制度に関する造詣が深く、理解と熱意を有せられるのでありまして、昨日の本議場におきましても社会保障機関の統合、その他総合的企画に関しましては、近く学識経験者をあげて機関を新設する旨を明らかにせられたのでございますが、この際わが国民生活現状より見て、最も緊急を要する社会保障制度の完備のために、厚生大臣として全力を傾注せられんことを切望いたしまして私の質問を終ります。(拍手)    〔国務大臣鳩山一郎登壇拍手
  7. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 上條さんにお答えいたしますが、私に対する御質問は、間接税を増徴して、そうして直接税を減税しても、それは減税というわけにはならないではないかというような点にあったと思っておりますが、この点に対しては一萬田君から御答弁をした方がいいとは思いますけれども、私からも簡単に申し上げておきます。間接税を増徴せずして直接税を軽減できれば、それは最もいいには違いないと思いますが、財源のない場合には、間接税を増徴しても直接税を軽減した方がいいと思いますので、その途をとったのでございます。  他の諸点につきましては、関係閣僚から答弁をしてもらいます。(拍手)    [国務大臣重光葵登壇拍手
  8. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 私に対する御質問は、政府外交自主独立ということを言っておる、しかるにもかかわらず、今回の日米防衛分担金の問題について日米交渉をやった、そしてそれが日本予算編成の問題にまで響いておる、まことにそれは自主独立外交ではないじゃないか、内政干渉にまでいっておるじゃないかと、こういう御質問でありました。しかし私はそうは思いません。私も日本防衛力が充実して、そしてすみやかにこの防衛分担金などを払う必要のないようになることを衷心から希望するのでございます。しかしながら日本は敗戦後のまだ事態が続いておるこの際、条約にはっきりとそのことがきめてある。これに従って条約を尊重して交渉も行い、また義務を果すということは、自主独立外交には当然のことだ、私は自主独立外交が、条約義務を履行しないというようなふうにいくべきものじゃない、条約は十分に尊重して、国際信用を積み上げて日本利益を増進するということが、当然自主独立外交でなければならんと、こう考えております。  防衛分担金の問題については、これまた発表いたしました通りに、条約の規定に従ってでき得るだけ日本利益のために交渉を進めていくという気持でこれを行なったのでございます。その結果は発表されておる通りであります。今日それではかような条約国際間にないかと申しますというと、御承知通りに、今防衛問題については特に集団安全保障の時代でありますので、各地とも、ヨーロッパでもその他の土地でも、集団安全保障のために、条約によっていろいろ約束をすることがございます。それが一々国の主権の侵害であるということでないことは私から御説明を申し上げるまでもないことでございます。条約は私は尊重をしてそしてそれによってでき得る限りの国家利益に即して交渉をする、こういうことは当然のことのように考えます。  以上をもってお答えといたします。(拍手)    〔国務大臣萬田尚登登壇拍手
  9. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答え申し上げます。所得税軽減をして他方で酒税、砂糖税増収になる、これは減税にならないじゃないかと、こういうふうな御質問かと存ずるのでありますが、所得税が、現実に今回減税になることは申すまでもありません。御承知通りでありますが、酒につきましては密造が相当多いのでありまして、この密造を厳に取り締っていきたい。こういう意味合いにおきまして、他面造石をふやしておる。現実に今日の酒の消費を特に奨励するというわけではないのでありまして陰でやるのが表に出る、こういうふうなことから増収になるのです。砂糖につきましても、今日すでに九十五万トン輸入しておるわけです。これを特にふやすという意味じゃないのでありまして、九十五万トン入ることによって砂糖の税が増収になっていく。こういうふうな関係からこの間接税が今回は増収になる。これは所得税他方減税財源になる。また、こういうことはしばらくおきまして、税の体系からいきましても、日本の場合におきましては、あまりに直接税に負担がかかり過ぎておる点は否定ができないのであります。従いまして税の体系からいたしましても、若干今後において間接税の方に財源を移していくということは、これは税体系自体から見ても、私はこれは当然考慮さるべき、また取り上ぐべきことであると、こういうふうに考えております。  それからもう一つの御質問でありまするが、これはあるいは通産大臣からなお詳しく御答弁があるかと思いますが、どうも中小企業についての投融資なんかに関心が薄いのじゃないかというような御質問であったかと思うのでありますが、決してそういうわけではないのでありまして、特に今日の日本経済現状では、私はデフレ政策が相当に進行しており、またいい効果も現われておりまして、中小企業という方面に特に手を差し延ぶべき段階に今日ある。こういう考え方からいたしまして、たとえば今回の予算におきましても、国民金融公庫及び中小企業金融公庫に対しましては、二百十五億円の金を出しておりまして、本年度貸付予定額は約七百七億円になっております。昨年に比べますと八十七億、約九十億円ふやしておる、こういうふうなことであります。なお商工組合中央金庫に対しましても、十億円の出資を特別にいたしまして、債券発行能力をふやしていく。また政府出資によって他の民間出資をも誘導していくことができるだろう。こういう配慮も加えておるわけでありまして、決して大企業に偏して、中小企業の方に財政的な投融資が少いというわけではないということを御了承得たいと思います。(拍手)    〔国務大臣石橋湛山登壇拍手
  10. 石橋湛山

    国務大臣石橋湛山君) お答えいたします。  今この中小企業についての御質問でありましたが、中小企業金融公庫商工中金国民金融公庫等につきましては、今、大蔵大臣から一応お話がありましたから私は繰り返しません。だが、中小企業日本の特殊の形態で、また非常に大きな人口を擁しておるということはむろんの話でありますが、私どもとしては、やはりこの特殊性を認めて中小企業を育てていきたいということにあくまでも努力をいたしておるつもりであります。ただし、これはただ、中小企業の救済をするということではおもしろくないのでありまして、どうしても中小企業中小企業としてその特殊の能力を発揮し得るように、健全な企業として育てるようにしないと、ただ困るから、これを補助する、救済するということだけでは、これは片づかないと存じますので、そういう方向に強く持っていきたいと考えております。で、金融の処置なども、さような観点からいたすわけでありますが、本年の一般会計の方面での計画といたしましても、中小企業対策としては、たとえば協同組合の共同施設を推し進める。それから設備の近代化、中小企業者の設備を近代化してやらないといけませんので、設備の近代化に対しては政府としても相当の補助を行いたい。それから協同組合を大いに強化するという意味から、協同組合中央会を作るということも本年度計画をいたして実行するつもりであります。そのほか、全国に六百何十カ所現にあるのでありますが、中小企業の相談所を、これも予算を今年は少々ふやしまして相談所を強化していく、中小企業者のいろいろな経営上、あるいは技術上の相談をやろう、こういうことをいたしております。これはまあ中小企業対策として特にあげたのでありますが、そのほか生産性向上ということも、今年は全体として、生産性向上本部を作って実行いたすわけであります。これはすでに生産性向上ということは、中小企業も含めての意味にしてもらいたいということで、その方向で中小企業者の生産性向上ということにも重きをおきましてやるつもりであります。そのほか、輸出振興費は本年度は、昨日も申し上げましたように、相当予算増額いたしまして、かなりやれると思っておりますが、その輸出振興という中には、無論中小企業者の製品の見本市をやるとか、あるいは中小企業者の輸出品に対するいろいろの海外で見本市を行うとか、あるいは海外の市場の状況を調査して中小企業者の方面へも流すとか、かようなことをいたすことにいたしております。そのほかあまりに競争が激しくて、市況が悪くなって、中小企業者が困っておりますのは、御存じのように、いろいろの設備の制限あるいは設備の制限をしながら、同時に古い設備を近代化するように行わせるというようなことは従来からやっておりますが、現在も引き続き実行いたしておるわけであります。それだけお答え申し上げます。(拍手)    〔国務大臣竹山祐太郎君登壇拍手
  11. 竹山祐太郎

    国務大臣(竹山祐太郎君) お答えを申し上げます。公営住宅に対する地方起債については十分に考えて、自治庁、大蔵省とも話をいたしまして、できるだけの起債のワクは用意をいたしております。なお前年までにそのことが十分でなくて、東京で家が計画通りできなかったというお話は事実であります。そのために三月、特に十億を追加をいたしましたので、その分が約三、四千戸は目下進行をいたしておるようなわけであります。なお土地の問題につきましては、今年度十億円このために用意をいたしまして、百万坪の土地造成を今後数年間続けてやって参りますほかに、五百万坪の緑地の開放、数十万坪の国有地の現物の提供を願います、その他いろいろのことを努力をいたしまして全体の宅地の提供には十分満足のいくというところまでは、もちろん全体の土地関係でありますから、いきますまいけれども計画だけは十分に行き得ると考えております。それから資材の点につきましては、お話通りであろうと思いますけれども、実を申すと、鉄鋼、セメントは、全生産量に対して建築に回る分は二%であります。従ってこれが非常に建築を抑制するということには実は根拠が薄いわけでありますが、御趣旨のように、不要不急の建物をどんどん建てた今までのやり方は改めなければならんと考えて、自発的に一つこれを押えることを政府としては極力進めております。みずからも、今回は政府の営繕には相当これを抑圧をいたしておるようなわけでございます。なお、計画全体について、いわゆる民間自力建設は、当初とはうそじゃないかというようなお話にも受け取れましたけれども住宅計画というものはずっと今までああいうやり方で参っておりますわけで、十七万五千戸は直接政府の金で建てます分、二十三万戸は自分の分、一万五千戸は増改築の分というふうに、いろいろな種類の方法でなければ家は建たないと考えます。従ってお話しの通り、昨年までの民間自力建設は約二十万戸でありましたか、これに対して今回は特別償却を四倍にふやす、そのほか登録税また固定資産税等、できるだけの税制の面において考慮を払いますほかに、約五十億の民間自力建設に対する金融の保障を政府がいたします等のことによって、この程度の増加は十分期待をいたし得る。また現在の情勢をいろいろと調べておりますが、私たちは決して無理でないと考えておる次第であります。(拍手)    〔国務大臣川崎秀二君登壇拍手
  12. 川崎秀二

    国務大臣(川崎秀二君) 上條議員より社会保障の問題に関連しまして、かなり広汎な御質問でありましたので逐次お答えを申し上げたいと思います。第一に、社会保障の経費が少いではないかというお尋ねでございましたが、社会保障の強化推進は、昨日も当議場で御答弁申し上げました通り、昨年度予算に比しましては相当にふえた計算になっております。ことに失業対策費をも加えますると一千六億の計上となりまして、従来わが国予算ではなかった一〇%以上の計上がここに見られたわけでありまして、厚生省の管轄といたしましても、社会保険の強化を中心に相当に前進をしたつもりであります。  将来の具体的方策といたしましては、まず健康保険国民健康保険を二つの大きな柱といたしまする社会保険を強化するばかりでなく、漸次複雑な社会保険に斧鉞を加えまして、でき得る限りこれを統合していきたい、かように考えておるのであります。また諸外国に比しまして著しく遅れておりまする児童保護の施設、あるいは養老制度の拡充にも刷新を加えていきたいと思います。社会保障の強化策につきましては、上條議員の御指摘の通り社会保障制度審議会が数次にわたりまして勧告をいたしてくれておりまするし、これが理想の線であると私も考えております。極力わが国の財政力とマッチさせて、いかにこれを具現するかということが私どもの責任でありますので、社会保障制度審議会の取り上げました、最近におきまする提案である社会保障強化推進には、まず社会保障の企画庁のようなものを作ったらどうか、そこにおいて総合計画を作って推進すべきであるという意見は、先日も閣議で取り上げまして、大体この方針のもとに近い将来において社会保障企画庁を発足させ、これを基盤にいたしまして諸種の複雑な社会保障体系を一本化していきたい、かように考えておる次第でございます。  それから結核対策につきましては、これも全く御指摘の通りであります。予算といたしましては、昨年の予算から二億七千五百万円でありますか、少くなっております。しかしながら、この結核対策健康保険とも重大な関連を持っておりまして、健康保険の費用は赤字対策並びに本年の国庫補助等を加えますると、三十億以上の増加をはかっておりまするから、これらをおしなべまするならば、結核対策全般としての対策は昨年よりはさらにふえておると思うのであります。結核医療と健康保険と切り離して単独立法をする意思がないか、こういう御質問でありましたが、これは一つの重大な御示唆であると思います。ことに御指摘のような結核医療費の増し高からいたしまして御もっともの点もあるのでありますが、かりにこれを実施いたしまするとすれば、現在作られておる各種保険の制度別に作ったのでは現状と大差のないことになりまして、いたずらに制度を複雑化する結果ともなりますから、どうしても国民全般を対象としての結核保険をしなきゃならんと思うのであります。国民全般を対象とすることになりますると、国民の所得階層別の分布や、あるいは結核の発病する率等に関連する精細な資料を用意しなければならず、これは現状ではほとんど不可能に近いのであります。また結核の発病率は最近の調査によりますれば、都市と農村との間には大した間隔がないのでありますが、結核を都市病だとする考え方も、国民考え方の中に相当深く食い入っておりますので、従って直ちに疾病保険を結核だけに創設するというようなことは、今日政府としては考えてはおりません。しかしながら健康保険の将来の恒久対策などとも関連をしまして民主的な審議機関ができますので、その際においてそういう問題も取り上げられ、かつ世論の動向なども徴しまして、ただいま御提案の趣旨は、十分に善処をいたしたいと考えております。   第三に、薬価を低下させよというお話でありました。これは国民医療費軽減にも関連をいたしますので、厚生省としても十分に意を注いでおるところであります。目下この薬の値段を引き下げる措置としてとらしておりますものをあげますと、第一には、企業合理化するための行政指導及び企業合理化促進法による補助政策を第一にいたしまして、第二に、一番大きな問題であります高価な輸入品につきましては、技術提携による国産化を勧奨し、価格引き下げに、これは成功をいたしております。その他減税、免税措置等を通じまして、薬価は次第に下降の情勢にありまするけれども、これらと関連しまして、ただいま御質問の中で御提唱になりました、主要薬品国家買い上げをせよということにつきましては、国家管理についての御趣旨は、きわめてけっこうであると思いますが、現下の経済情勢からいたしまして、なお十分の検討をいたしたいと存じます。  また、最後に御質問になりました人口問題は、御指摘のごとく重大な問題でありまして、むしろ国際的視野からすれば、日本における最大の問題であると考えるのであります。これを家族計画思想に立脚しまして、受胎調節の普及をはかりますことは、母性保護の見地からいたしましても、またわが国人口問題の処理からいたしましても、強力に推進をする必要があると思うのであります。優生保護相談所を中心として今日までも相当やってきたのでありますが、これは最も受胎調節の必要な生活困窮者に及ぼす影響力が少かったものでありまするから、そこで今回の予算におきましては、この生活困窮者というものを一つの目標にした受胎調節費三千二百万円を計上いたしたのであります。従って従来の優生保護相談所に使っております二千六百万円を合わせますと五千八百六十万円になりまして、これまた相当に対策を立てて前進をしたつもりでありますが、百尺竿頭一歩を進めよといういろいろな御教示がありましたので、この点につきまして御趣旨に沿ひ、漸次受胎調節の特別施策を強化していきたいと、かように考える次第であります。(拍手)     —————————————
  13. 河井彌八

    議長河井彌八君) 堀眞琴君。    〔堀眞琴君登壇拍手
  14. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 議長並びに同僚議員諸君、私は無所属クラブの同僚諸君のお許しを得まして、国際情勢の見通しその他若干の問題について、内閣総理大臣以下数名の閣僚に質疑をいたしたいと思うのであります。  まず第一に、国際情勢の見通しについての質問であります。言うまでもなく適切な内外政策を行うためには、何よりもまずその前提として客観的な国際情勢の分析と、誤まりのない見通しが必要であることは言うまでもないのであります。しかるに、鳩山首相の施政方針演説では、何らこれに触れるところがなく、また重光外相の外交演説におきましては、数言これを述べているのみでありまして、しかもその言うところは、いかにもお粗末であり、しかもその中に多くの誤まりをさえ犯していると思われるのであります。  重光外相が述べておりまする国際情勢の分析は、世界情勢の緊張は依然として緩和されない状態にあるということ、そうしてこの緊張の度を増した原因は何かといえば、ソビエトが二月政変以後、力には力をもってする政策に転換したからであるということ、また、アジアにおいては、中国が二つに分れて相争っていることが、アジアの安定と平和を害するものであり、事態はすでに重要な国際紛争となっているということ、これのみにとどまっておるのであります。いかにお粗末な分析であるかは、事理明白であると思うのであります。しかも、単にお粗末であるというだけでなく、重大な多くの誤りをさえ犯しているのであります。すなわち国際緊張が緩和されないのは、ソビエトの政策転換に原因するのではなくて、アメリカ帝国主義の戦争政策に原因するのでありまして、ヨーロッパでは御承知のようにパリ協定の批准による西ドイツの再軍備、西欧連盟の結成、またアジアではSEATOの結成、台湾海峡への軍事的な干渉、これらのものが国際緊張の度を増してきた原因としてみなければならないのであります。なお、鳩山首相も重光外相も、二つの中国という言葉を使っているのであります。しかしながら中国は一つであり、その代表政府は六億の人口によって信頼支持されているところの中共政府であることは、いかに詭弁を弄しようとも、これを否定することのできない事実であります。従って一島嶼にすぎない台湾により、わずかにアメリカ帝国主義のかいらいとしてその政権を維持する蒋介石政府を、中国の政府として認めることは、重大なる誤まりであると申さなければならないのであります。もう一つ国際情勢の分析の中で見落しているのは、平和に対する諸国民の努力の最近におけるところの成果であります。アジア、アフリカ会議については外相も一言触れているのでありまするが、しかし単に、アジア、アフリカの地域にある諸国の相互理解と親睦とを主目的とした国際会議としてのみこれを認め、その国際政局の上に持つところの重大な意義を少しも理解していないのであります。言うまでもなくアジア・アフリカ会議は、かつてその十半がヨーロッパ、アメリカの植民地であり、従属国であったものが、今度の大戦によりまして、それぞれ独立し、または独立せんとして努力している国国によって自主的に持たれた会議であり、さればこそアジア、アフリカの各国も、これに重大な関心を持ち、その代表としてはいずれも首相を派遣しているのであります。しかるにわが国では、高碕国務大臣を代表として派遣し、その結果は本月二十五日付のフランクフルター・アルゲマイネ紙上でリリー・アベック女史が批判しているように、「日本は単にオブザーバーの役割を果しただけで、それ以上のものは何もしていなかった。日本は今もって太平洋の孤児の役割しか果し得なかったのである」ということを述べているような結果となっているのであります。なおニューデリーにおきましては、四月の上旬にアジア諸国会議が開かれまして、わが国からも四十名近くの民間代表者がこれに参加いたしまして、原水爆の禁止や、国際緊張の緩和等につきまして討議いたしておるのでありまするが、これらの平和に対する諸国民の努力ないしはその運動等に対しまして、何ら触れていないのであります。以上の国際情勢の分析ないし見通しに関しまして、私は次のような諸点を首相並びに外相に対して質問いたしたいのであります。  まず第一に、今日国際緊張をもたらしたものは一体、ほんとうにソビエトの政策転換によるものと考えられているかどうかということが一つ。第二には、果して中国は二つに分れていると、こう考えられているのかどうか。第三には、平和に対する諸国民の努力を果してどのように政府当局としては見ていられるか。そして最後にバンドン会議の国際的な意義については、首相、外相はどのような考え方を持っていられるか。この四点について質問いたしたいのであります。  次に、自主独立の平和外交の問題について質問いたしたいのであります。いやしくも自主独立外交というからには、特定国に依存した一辺倒外交であってはならず、平和外交というからには、平和共存の上に立って一切の武力を排し、紛争を平和的手段によって解決するものでなければならないことは言うまでもありません。しかるに鳩山首相の言う自主独立の平和外交は、アメリカとの協力、とりわけ日米共同防衛態勢の上に立っての外交であり、従ってそれは対米依存の外交であり、力の外交であると言わなければならないのであります。のみならず、鳩山首相の言う平和外交が一片の言辞に過ぎないことは、これをいかにして具体的に進めるかについて何らの方策も示していないところにも現われていると言うことができるのであります。もしほんとうに平和外交自主独立の立場で推進しようとするならば、たとえばソ連との国交回復に対しても、一そうの熱意を示すべきであり、さらにそのためには平和共存の原則を認めるとともに、わが国が別して世界に主張し得るところの原水爆の禁止を、さらに積極的に呼びかけなければならないはずであり、これはまた日本国民、二千数百万の署名運動を展開した国民の心からの念願でもあると申さなければならぬのであります。またバンドンのアジア・アフリカ会議でも、さらに積極的に平和の宣言をなすべきであり、ただ単に武力解決の放棄と経済的、文化的協力をうたうだけでは、リリ・アベック女史の批判も当然のことであると言わなければなりません。さらにこれを、主権、領土の尊重、内政の不干渉、不侵略、人種の平等、互恵平等、そして平和共存を主張した周恩来中国首相の平和宣言案に比較して見まするときに、いかに日本の平和宣言案の内容が貧弱なものであるかということを見ることができるのであります。私は以上のような観点に立ちまして、首相、外相に対して次の四点を質問いたすものであります。  まず第一に、こういうような本質を持つところの平和外交を、首相並びに外相はいかにして具体的に、平和的にこれを進めようとしているのか。第二点は、ソ連との国交回復を心から果してほんとうに望んでいるのか。第三点は、原水爆禁止、原子力の平和的利用を積極的に国際的に呼びかけるべきではないか。第四番目には、バンドン会議での日本代表団の平和宣言案は平和共存の原則を認めていないが、これを主張することが今日、日本のおかれた立場から必要ではないか。この四点について質問をいたすものであります。  次に、日中貿易問題について質問をいたしたいのであります。  日中貿易の促進は、日本国民の、念願であり、日本経済自主性を確立する上にも欠くことのできない問題であることは言うまでもありません。さればこそ、民主党も過般の選挙で、日ソ国交の回復とともに、その主要な政策一つとして日中貿易の促進を掲げ、国民に大きくアッピールし、国民もまたこれを支持したことは、その選挙の結果に現われていると言うことができるのであります。しかるに今回の施政方針演説の中で述べられているところはどうかと言うならば、「中共に対して極力貿易関係の改善に努めたい所存であります」と言っているに過ぎません。幸いにして日中両国民の貿易促進に関する熱意から中国通商使節団一行の訪日が実現いたしまして、目下貿易協定締結のための努力が払われているのでありまするが、政府のこれに対する熱意が認められないばかりか、むしろわれ関せずえんの態度をすらとっているかに見受けられるのであります。それというのも、一つにはアメリカに対する日本政府の気がねもさることながら、また一つには、アメリカ側の日中貿易協定の締結に対するところの干渉を思わせる節さえも見られ、決済問題についてある銀行筋のとった態度等にそれが具体的に現われているのであります。  今、日中協商委員間において問題となっていますところの事柄のうち、最も根本的と思われるものについて見るならば、まず決済問題であります。一九五三年の、前の協定の覚書に示されました両国通貨による直接決済を行うよう努力するという取りきめを、一歩前進したものにして具体化させるという原則については、日中双方意見の一致をみたのであります。しかしながら、中国側はその具体策として、日中双方の中央銀行間の直接決済あるいは直接清算勘定を設ける支払協定を主張したのでありまするが、国交が回復していないという理由で、これまで日本政府側の同意を得ることができず、わずかに円建の決済方式を採用することに双方の意見の一致をみたのみで、事態はしばらく停頓状態にあったのでありまするが、昨日に至りましてようやく日本政府側のこれに対する了解が得られ、支払協定についての協議を行い得る段階に至ったのでありまするが、しかしこの上ともさらにこれを実現するためには、政府の積極的なこれに対する措置が講ぜられなければならないと思うのであります。  次に、通商代表部の相互設置の問題でありますが、円滑な通商貿易を行うためには、相互に通商代表部を設置いたしまして、各代表部が、その身分を保障されて駐在国において、いずれもその義務を遂行するためのあらゆる便益を供与されること並びに通信の自由が認められる等のことが必要であることは申すまでもないのであります。中国側におきましては、この通商代表部として、中国政府の任命する政府機関としての代表部設置を主張いたし、日本側では民間代表部の設置を主張しておるのでありまするが、そのいずれにしても、これまで日本政府側のこれに対する保証がなくては問題を解決することができなかったのであります。この問題につきましても、昨日政府側から一応の了解を得たのでありまするが、しかしながら、これもまた決済問題と同様、政府側の一段の措置が望まれるのでありまして、もし政府側においてこれを積極的に進めるという意向がなかったならば、これが実現を見ることはできないであろうと思うのであります。また見本市の問題につきましても同様であります。かくて日中貿易協定締結の見通しは、今日のところ一応つけ得る段階に達したと見ることができるのでありまするが、しかし、なお日本側において、今後とも考慮しなければならない問題が多々あるのであります。ことに日本政府のこれに対する積極的な措置が望まれておるのであります。  なお商品別のリストの問題があるのでありまするが、例のココム・リスト制限品目との関連において、日本並びに中国の相互の輸出入商品のリストを拡大するということが、今日の日中貿易を促進する上において必要な措置であると思うのであります。中国側では日本側の立場を了解いたしまして、一応商品リストの作成については、双方とも一致をみたのでありますが、しかしココム・リストが適用される以上、日本側として制約を受けることも事実であり、かくては日本側にとって、日中貿易の大宗ともいうべき石炭、鉄鋼等の大量輸入が困難となる事態も憂慮されざるを得ないのであります。こういう諸問題もあるのでありまして、気は以上の点から次の二点を質問いたしたいのであります。  決済問題あるいは通商代表部の相互設置等の問題に関して、さらに政府は一段と進んだ措置を講ずる考えがあるかどうかということ。第二には、ココム・リストの解除、もしくは少くとも制限品目を対ソ並みにこれを大幅に解除するよう、政府はアメリカ側と折衝するつもりであるかどうか。この二点について質問いたしたいのであります。  最後に防衛問題について質問を申し上げます。政府は防衛問題を日本の独立問題に関連せしめて考えているようであります。しかしながら、日本の独立を達成するためにはまず何よりもポツダム宣言にのっとりまして、戦争の跡始末をすみやかに行うとともに、いずれの交戦国とも平和条約を結ぶことが必要であります。われわれがさきにサンフランシスコ条約の締結に際して、全面講和こそ日本の独立を達成する道であることを主張するとともに、日本を軍事基地化し、日本に再軍備を強要したサンフランシスコ条約は、日本の隷属化をもたらす以外の何ものでもないこと、特にアメリカによって要請された日本防衛力は、アメリカの極東防衛の一環としてのみ認められていることを主張したのでありまするが、今回、はしなくもそれが事実であることを国民の前に暴露しているのであります。例の防衛分担金減額をめぐってのいきさつがそれであり、アメリカの承認なしには日本政府は何もできないし、鳩山内閣自主性は少しも認められないことを示したのであります。しかし、この防衛分担金減額問題は、民主党の先般の選挙公約であり、二百億減額してこれを内政諸費、とりわけ社会保障充実のために使用すると述べてきたのでありまするが、アメリカからの強い要求で社会保障に回すどころか、すべてこれを防衛庁費に回して防衛力の増強をはからなけれげならないこととなったのであります。時間もありませんので、私は質問の要点四点だけを申し上げて私の質問演説を終ることにいたします。  アメリカとの防衛分担金交渉で、防衛庁から防衛計画書がおそらくは提出されたと想像されるのでありまするが、それはいかなる内容のものであるか。第二には、ジェット機発着のために飛行場が拡張されることになったということでありまするが、その規模はどの程度のものであるか。第三には、いかなる根拠によって防衛予算は昨年と同一であると言うのか。以上の諸点について私は首相並びに防衛庁長官にお尋ねいたすものであります。(拍手)    〔国務大臣鳩山一郎登壇
  15. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 堀君の御質疑に対して答弁をいたします。  堀君は国際情勢の見方についていろいろ質問がありました。国際情勢をこういうような緊張の状態にもたらしたものは何かという点については、私は、過日外務大臣議場において説明をいたしましたそれで尽きていると思っております。やはりソ連の……共産主義国家の態度が世界革命をやるというようなことで、各所で事実上革命を起してきたものですから、それに対して自由主義国家群がそれを防衛するというのは当然の事柄であろうと思っております。そこでだんだんに「力による、力による」と言い出したから、双方で武力の競争をし出したので、ここまで緊張の度がふえたものと思っております。  なお、中国に対しての観測も、ただ私は現在の事実を客観的に見て、やはり二つの中国と見るのが正しいと思っております。  第三点は、平和に対して諸国民の努力についてでありましたが、これは今日では、ソ連を含めて世界各国が世界平和のために努力をしていると思っております。最近においては、ソ連の態度もやはり世界戦争を避けたいというような方向に行っているものと私は思っております。そうして世界を平和にするというこの各国の努力には、日本としてももとより協力すべきものであると考えております。  バンドン会議について、決して私どもは軽視してはおりません。何か思い違いだろうと思います。  平和外交について、また数種の質問がありましたが、逐次、覚えていますことから答弁を申し上げます。  平和外交をどうして具体的に進めていくか。どうして進めていくかということは、むろんこれは自衛ということは忘れるわけにはいかないのであります。実際に自衛力を持たないで世界の平和をただこいねがっているということだけでは済むまいと思います。やはり日本は自衛力を持たなくちゃならぬ。その力がない。アメリカと安全保障条約を結んで自衛の力を補充していく。これは当然日本としてとるべき途だと思っております。それですからアメリカと協力はしていくけれども、何もその自由主義国家群のために世界を征服するというような考えを持っていないことはもとより明瞭だろうと思っております。しかしながらアメリカと自由主義国家との協力関係だけに立っておるということでは、やはり世界戦争に持っていくという危険がありまするから、ソ連や中共とも国際関係を正常化して、これとも戦争の起らないように努むべきは当然だと思うのでありまして、これはアメリカに対する態度とソ連に対する態度とが決して矛盾するものではない。同じく世界を平和にしたいという、その希望から生れてきておる二つのやり方と思っております。ソ連との国交回復を心から希望しておるかというようなお話もありましたが、二つの全く相いれない団体ということにして、ソ連の方とは心から希望はしていない、自由主義国家群とは協力関係を心からやっていきたいというような態度では、やはり戦争に持っていく危険があります。二つの国家群というようなことに全く分れてしまって、両々相対峙するということは、世界の戦争を導くゆえんになりまするから、ソ連ともやはり心から国交関係を正常化したいという希望は捨てるわけには参りません。原水爆の禁止、原子力の平和的利用、これを国際的に呼びかけるべきではないかという御質問がありましたが、これはバンドン会議の共同コミュニケで、やはり原水爆の禁止とこれの平和的利用とが、コミュニケの形で意見が発表されました。全面的にもとよりこれに賛成であります。日本もそれに加わって決議をしておるはずであります。  バンドン会議が平和共存の原則を認めないではなかったかというのですが、平和共存という文字は使ってありませんけれども、おのおのの国が独立をして、そうして平和的に共存しようではないかという、その趣旨には、すべての国が賛成をしておるのでありまするから、文字は用いてはいないけれども、私は同じことが決議されておるものと思っております。わが国外交方針がもとよりその方針でいくべきことは当然な事柄であります。 日中貿易の促進について、これについては私よりは関係閣僚からの方が適当だと思います。もとより私どもとして、日中貿易もだんだんと拡張したいということはこいねがうところでありましてそれがためには中共と同じように政府が当事者になることはできませんけれども、できるだけこれを増進するようには、やるべきことはやりたいと思っております。なお商品品目の拡大については、もとよりワクが一つ一つ拡大せられていくようにしたいと希望を持っております。  国防問題については、分担金のことから二、三の質問がありましたが、これは当局閣僚から答弁をしてもらいます。  以上をもって私に関する限り答弁をいたしたつもりであります。(拍手)    〔国務大臣重光葵登壇拍手
  16. 重光葵

    国務大臣重光葵君)  外交問題を処理するに当って、国際情勢を十分に検討して見間違わないようにしてやらなければいかん、この御趣旨については、私は全然御同感であります。その通り考えております。しかしその見方は、きわめて客観的に、まあ日本外交としては日本中心として見なければなりません。しかしながらその見方はきわめて客観的に、ある意味において科学的に見なければならんと私は信ずるのであります。私もそれを努めておるつもりでありますが、しかし今のようなお話は、私はさように客観的の御観察でないように感じます。極端に申し上げれば、私どもが常に研究をいたしておるモスクワや北京の新聞に出ておる評論のように私は感じました。それは私は決して客観的の見方ではないと思う。ソ連が、たとえば自由民主主義国のやり方についてはっきりと、これはソ連を包囲する政策をとっておる、これに対しては力には力をもってしなければならんから、われわれは軽工業主義を捨てて重工業主義に移ったと、こう宣言したのは、マレンコフ辞職の当時に政変が起って、それをはっきりと宣言をいたしておる。そしてモロトフ首相代理は、もう天下に向ってその強硬な態度をはっきりと示しておる。これは何もほかに解釈するのでなくて、これは客観的事実であります。その結果において、ソ連は従来の平和攻勢のやり方を変えたということも、これも事実であります。さようなことによって国際情勢はだんだんとよくなるかと思いましたが、前回の私の国際情勢の観察は、だんだんと平和的気分も動いてきておるように思うというような意味のことを申しましたが、実はそれ以来、考え方を、観察を変えることが客観情勢にはっきり合するものだと判断をいたしておるのであります。それは何もありましょう、御批評もありましょうが、私はそう解釈することが最も客観的の判断であると、こう信じておるのであります。  それで中国のことでありますが、中国は地理的には一つであるということは、これは私もそう思う。チャイナといい、支那といい、これは一つ。私は今さら台湾は中国にあらずというようなことを申すのではございません。しかしながら中国を支配している政権としてはっきりと二つのものがある。台湾は中共政権の下にいないということも事実である。それからまた中共の支配しているところには台湾政府の歯も立たんということも事実であります。この事実をいかんともすることはできません。世界はすべて共産主義国の立場に立って観察すべきであるというようなふうな御意見かもしれませんけれども、それはそうはいかないので、今二つのさような政権のあるということも、これは事実でございます。これに対して日本としては国民政府を中国の政府として承認しており、また従来の行きがかりもあるということも事実であります。私はこの際において、中共としてもかような国際的の事実を基礎として、できるだけ平和的に武力を排してこの困難を解決するように協力してもらうことが世界の平和のためにいいことである、こう考えておるのでありまして、それがためには台湾海峡を差しはさんでおるこのむずかしい東亜の安定、平和を害するような事態を、なるべくすみやかに平和的に解決するように協力を求めたい、こういうことをはっきりとこの席から申してきたわけでございます。  さらにまたその他の問題については、もうすでに総理大臣から十分お答えいたしたように感じます。(「分担金の問題はどうしたか。内政干渉じゃないか」と呼ぶ者あり)分担金のこれが干渉であるかどうかということは、先ほど十分に御説明をした通り、今ここに繰り返しません。  さらに中共貿易の問題。中共貿易の問題は、すでに今お話通りに、ずいぶんとわれわれはその好結果を得るように実際的方法において便宜を与え、かつまた従来のやり方とは違って、この方向に向って努力しておるということは、すでにお認めになっておる通りであります。それが、先方の言う通りにすべていかなければ、日本政府の責任であるというようなお考え方は、私はいかがかと思う。これについては、今申す通りに、従来のやり方とは違って、できるだけの努力を払っておるということは、すでにお認めのようでありますから、あえて一々のことについては申しません。しかし、その方針は今後とも続けてやるつもりであります。   これをもってお答えといたします。(拍手)    〔国務大臣石橋湛山登壇拍手
  17. 石橋湛山

    国務大臣石橋湛山君) 私に対する御質問は、多分中共貿易の点だろうと思いますが、今外務大臣が言われたように、われわれとしても対中共貿易が促進されることは大いに希望するところでありますが、ただし、これは希望しますが、しかしながら、非常に過大な希望は持てないぞということは、われわれは前から申しておる。いろいろの点において中共が、きのうもたしか申し上げたかと思いますが、中共が日本から輸入したいというものは、残念ながら例のココム・リストの中に入っておるものが大部分であります。それでは話にならない。それからまた日本輸出したいというものは中共があまり希望しない。各種の中小企業者が作っているようなものはあまり向うは輸入を希望しない。そういうことがありますから、過大な希望はかけられないということは最初から申しておるつもりであります。ココム・リストを解除したいということは、これは申すまでもありません。できるだけ解除するように努力してきましたし、将来も努力していくつもりであります。解除されるものは解除されて今ここまでくると、台湾問題もあるし非常にむずかしい。実際には解除されませぬ。努力はいたしますけれども、なかなかむずかしいということだけ申し上げておきます。(拍手)    〔国務大臣杉原荒太君登壇拍手
  18. 杉原荒太

    国務大臣(杉原荒太君) お答え申し上げます。  第一の御質問でありますが、昨日の本議場でお答えいたしました通りでございまして、今回の分担金交渉で、これは当然に日本側のこの防衛努力という点が確かに問題になりました。その際、外務大臣もこの安保条約一つの根本的条件をなしておりますこの自衛力の漸増というものは、これは日本側もやっていく方針だ、そうしてまたそれについては、この国力に見合った漸増ということが必要であるから、今政府においては、経済再建について六カ年計画をせっかく立ててやっていこうという方針でやっていっておる。それからそれに見合う防衛の長期計画を立てていくつもりだ、こういうことをはっきり申しております。しかし政府のその防衛の長期計画は、まだ事実できておりません。そしてこれは、事きわめて大事なことに違いありません。それだから、これは国防会議の実現をみました上で、その審議を経て政府としての案を決定せられるものだと考えております。  それから分担金交渉の結果、防衛関係費が昨年度と比べてふえていないというその根拠はどうかという、こういう御質問でございます。今回の分担金交渉におきまして、政府として最もこれは堅持すべきものとしてやりましたことは、終始一貫堅持しましたことは、とにかくこの防衛関係の今年度の経費、分担金とそれから防衛庁の経費と合わせたものが、とにかく年度のワク内ということ、もちろん、政府といたしましても防衛力のある程度の増加ということは、これはそういう方針をとると、しかしそうすればどうしても分担金の方を負けてもらわんというと、今度は防衛費というものがそれだけふくらんでいって、そして内政費を圧迫するということになる、そうなってはいかんから、どうしても前年度のワク内ということ、それに対してはどうしても分担金減額が必要だ、こういうことから経費を合計したものが前年度のワク内ということは、当初から最後まで一貫してとった強い態度でございます。そして共同声明にありますように、ああいうことにまとまったわけでございます。それからそれについておそらく予算外契約の国庫債務負担行為のことをおっしゃるのでありましょうが、昨年度は御承知でもありましょうが、前年、その前からの安全保障諸費が残っておった。ああいう点もあわせて比較する場合に考えべきものだと思っております。それからもう一つ、飛行場の拡張の問題でございましたが、これは調達庁の主管でありますから、担当大臣からお答えをすることが適当だと思います。     —————————————
  19. 河井彌八

    議長河井彌八君) 小滝彬君。    〔小滝彬君登壇拍手
  20. 小滝彬

    ○小滝彬君 私は自由党を代表いたしまして、外交及び貿易問題に関する質問をいたしたいと存じます。  まず総理及び外務大臣演説には、いずれも平和外交の推進という点が強調せられておりまするが、その実行方法につきましては、ソ連との国交正常化及び中共との貿易促進に関する論述が主要部分をなしておるのでありまして、これはすなわち、これまで鳩山内閣選挙戦等を通じて大きなバルーンを揚げた関係もあり、是が非でも中ソとの国交調節を急ごうと焦慮し、これを最も大事な外交措置と考えておる証拠であります。鳩山総理は、しばしば第三次大戦を避ける方策として日ソ国交を回復するのだという趣旨を述べておられまするが、一体日ソ国交の開けぬことがどうして直ちに第三次戦争の原因となり得るか、また、日本の立場を強化することはあと廻しにいたしまして、〔議長退席、副議長着席〕 ただ単に日ソ国交を形式的に回復すれば、どうして戦争が避けられるのか。もちろん秩序立った平和のための努力は結構でありますが、日本の国力も、また日本の置かれておるところの環境も顧みずに、がむしやらに世界平和のために対ソ外交をやるのだというごときは、これは昨日の答弁にもありましたが、まさに言葉の魔術であり、ごまかしであると言わなければなりません。この点について総理から私どもは、はっきりした御説明を承わりたい。実はこれは総理に差し上げました前もっての質問要旨にはございませんが、どうぞお忘れなくお答え願います。  ところが、一方世界の実情は、重光外相が演説の冒頭でも指摘せられておりまする通り、依然として緊張状態であり、従ってソ連の平和攻勢は、西欧においては西ドイツの再軍備を食いとめようとするもがきの結果であり、東洋においては日本をできるだけ米国から引き離して、中立化せんとする政策の現われである。これは昨日も緑風会の佐藤先生がおっしゃった通りであります。換言すれば、ソ連のわが国に対する平和的接近は、民主主義国家群の力を背景とした、いわゆる力の外交の勝利を物語るものとも言い得るのであります。この際わが方が、もし、いたずらに辞を低くして、形式的な国交調整をあせるといたしましたならば、かえって相手方の乗ずるところとなり、平和を達成せんとする鳩山総理の意図は全く運用せらるるおそれなきを保しがたいのであります。(拍手)  重光外相は前国会における外交演説において、「われわれは、むしろ日米協力を密接にし、わが国国際的地歩を強化することが、かえって日ソの国交を調整する近道である」こういうように述べておられまするが、これはソ連その他の国交がまだ開けておらない国と日本が満足な形で国交を再開するには、まず日本の基本的な立場、すなわち自由民主主義国家との提携関係をより強固にしておくことが第一前提であるということを意味されたものと考えます。この点について鳩山内閣は果して十分な努力をしておるかどうか。  昨日わが党の左藤君が述べた趣旨を鳩山総理は誤解されたようでありますが、われわれは国交調整に反対するものではありません。ただ本末転倒したようなやり方では大へんなことになるということを警告いたしておるのであります。国民の目に映る鳩山内閣は、いたずらに中ソとの関係に注意のすべてを集中し、友好諸国との関係を等閑視しておるものと言わざるを得ない点が多々あるのであります。これをたとえば、日本にとってきわめて重要な関係にある英国やインドなどに対して、いまだに新しい大使を任命しないで、空席のままにしておる。また在米大使については、まだ大使が任地に駐在しておるにもかかわらず、政府筋から、現任大使非難の情報を流し、重光渡米中止に関する内閣としての失敗を在米大使の責任に転嫁せんとするがごとき態度に出ており、かつ後任大使の下馬評のごときも、これは単なる新聞辞令とのみは解し得ないような事情が潜在しておるようであります。これではいかなる大使といえども、円満にその任務を現地で遂行し得ないのは当然といわなければなりません。十分な国力なくして平和外交を強力に推進せんとする鳩山内閣の意気、まことに壮とすべきものがあると思いまするけれども、これが実行に果して遺憾なきやいなや、鳩山総理及び重光外相に深い反省を要望してやまないものであります。そこで特に重光外相にお伺いしたいのは、第一は、英国、インドなどの大使は、いついかなる方針によって任命せられるお考えであるか。もちろん少数党内閣で、あしたの命も予断しがたい状態でありまするから、まあしばらく様子を見ようというお気持かもしれませんが、いやしくも平和外交重要性をそれほど認められるならば、一日もすみやかにこれが任命の措置をとられるよう要望するものであります。同時に現在の大公使は、なるほど前内閣か任命した連中であるかもしれませんか、超党派外交外交の継続性とを提唱せられる現内閣としては、あくまで適材適所主義に徹し、いたずらに外交陣営の士気を動揺せしめるようなことのなきように配慮あらんことを望んでやまないものであります。さらに、この点に関連して、もう一つ重光大臣にお伺いしたいのは、近くロンドンにおいて開催せらるる運びとなっておるソ連との交渉には、すでに内定しておる衆議院の松本俊一君を派遣せらるるお考えでございましょうか。私は、機微なる外交交渉に先だちまして、一々日本側の提案内容の公表を要求するような質問はもとよりこれを差し控えるものでありますが、あえて松本代表の問題を取り上げますのは、松本君の交渉者としての能力や経験に不安や疑問を抱くためではなくして、それは戦後の国会はきわめて長期の国会であり、その国会に責任を有するところの議員を交渉者に任命せられるということは、日ソ交渉が急速に進展妥結するかのごとき楽観的な観測を外相がお持ちになっておるか、または是が非でも、日ソ交渉を形だけでも早くまとめ上げたいというあせりに基いておるのではなかろうかとの疑念を引き起すおそれがあるからであります。一体国会に議席を有する者が、重要なる国際会議に代表者となることにつきましては、私自身といたしましては、これはもう外国に例のあることでもあるし、日本でこのような先例を開かれますることには双手を上げて賛成するものであります。がしかし、芳沢・カラハン交渉の往時を顧みまするとき、はたまた、戦後ドイツ及びオーストリー問題についての四カ国会議の遷延ぶりを思い起しまするとき、国会議員を代表者に任命するということは、いささか無理があるのではなかろうかというように思われるのであります。すなわち、私は日ソ交渉に関する外相の根本的認識に誤りなきやいなやを憂えるものでありまして、この点についての率直な所見をお伺いいたしたいのであります。  次に重光外相は、米国との協力関係に関し、防衛分担金減額問題に触れておられるのでありますが、この問題について、まず鳩山総理にお伺いいたしたいのは、去る四月十一日の外務委員会における私の質問に対し、総理は、「防衛分担金が少くなればそれだけ予算に余裕を生じまして、社会保障費の方に回せると今でも思っております。」と答えられましたので、私は総理のかかる言い分が、当時進行中であった本件交渉に悪影響を与えるおそれのあることを懸念いたしまして、これが追及を差し控え、単に「このような問題については、よく対外関係考えて正確な御答弁を願いたい」、こう申し上げて質問を打ち切ったのであります。その後交渉の結果により、防衛分担金削減によって浮いてきた金額は全部防衛費に当てられることが明らかになったのでありますが、これはもちろんあらかじめ予定せられておったところであり、もしそれを知らなかった政治家ありとすれば、それはおそらく鳩山総理だけであっただろうと存じます。(拍手)  一体総理は、現在においても依然としてその余裕分は社会保障費の方に回し得るというお考えをお持ちでありましょうか、もししかりとすれば、過般の日米共同声明の趣旨にも反すると思いまするし、ことにこれまで総理が故意に国民をだましてきたと見るむきも少くないのであります。この際明確なる御答弁をお願いいたします。  更に、この分担金問題が鳩山内閣によって非常にまずい手ぎわで取り扱われましたため、反米感情を醸成しようとする一部分子に、きわめて都合のよい口実を与えたことも看過し得ない事実であります。政府の責任また重大であると言わざるを得ない。すなわち、政府がもっと選挙だけにこだわらず、早目に交渉を開始し、予算編成前に十分米国側と打ち合せを遂げておきましたならば、もともと日米間においては、先ほど外務大臣が申されました通り、安保条約の規定に基く共同防衛関係以外のことについて協議したわけでもありませんから、米国が日本予算に容喙したというような間違った印象を与えずに済んだであろうと存じます。ところが鳩山内閣は、あの予算を確定すべきどたんばに来てしまってから、米国政府に対して、何とか格好を付けてくれなければ内閣の運命にかかわりますというような泣き落し戦術を用いたという、この報道は、少くとも一部の事実を物語っておるようでありますし、また急拠重光外相を渡米せしめようとした事実もこの報道を裏付けるものと存ぜられますので、私どもといたしましては、鳩山内閣自主独立外交の看板は、一体何を意味するのかと揶揄せざるを得ない気持になるのであります。(拍手)この交渉を通じてまたこの交渉の結果を見て、鳩山総理はいかなる感想を持っておられるのか。これでもまだこの交渉に臨んだ政府の措置に落度はなかったと弁護せられるお気持であるか。総理の良心的な御答弁を求めてやまないものであります。  さてついでに対米関係につきまして、高碕長官、お帰りのようでありますから、高碕長官にお伺いいたしたいのは、米国の余剰農産物買付交渉の最近の状況であります。すでに予算面におきましても、この買付による見返資金二百十四億円の借り入れを見込んでいることは、一萬田大蔵大臣演説にも言及せられておりますが、聞くところによれば、返済円貨に関するドル・クローズが問題となり、日本側のほうはむしろドル借款に変更したほうがいいというので、こういう申し入れをされたというように承知いたしております。しかしこの余剰農産物買付は、特に円貨支払いによるというところに妙味がある。それにもかかわらず、これをドル借款といたしましたならば、たとえ金利の方では少々有利になりましても、ドル調達の義務日本側が負担しなければならない。この点はきわめて不利になるのでありまするし、かつ新聞でもすでに報道しておりまするところの世界銀行側の意向もありますので、むしろ大蔵事務当局あたりの純理論ないしは面子論というようなものをおさえまして、円借款の原則のもとに、同時に相手国の立場も考慮に入れた他の便法もあるやに考えられると思うのでありますが、これは一体どうなっておるか。もっとも最近では、また日本側で円借款を希望するというように逆戻りをしておるとも伝えられております。いずれにいたしましても、この交渉の経過及び支払い条件についての高碕長官の御見解をお伺いいたしたいのであります。  さて次にアジア外交について、重光外相は僅々所見を述べておられますが、外交は紙の上の議論だけでは何らの役にも立たない。百の説法よりも一つの実行を尊しとすることは、今さら申し上げるまでもございません。たとえば賠償問題について、かつて重光外相は、前内閣の残した重要な遺産の一つとして、ビルマとの賠償経済協力協定を受け継ぐと申されましたが、一体これが実施に必要なその細目取りきめや合同委員会は、いまだに成立いたしておりません。しかしこの協定が現実に円満な実施を見るようになれば、自然フィリピンもインドネシアも、早くこれにならおうとするようになるのは当然であり、これこそ他の諸国との賠償問題を早く解決する上に最善の手段であるというように私ども考えるのであります。このビルマ賠償実施について政府は真に十分な努力をしておるかどうか。この間の事情と政府のお考えとを御説明願いたいのであります。  また外相は一衣帯水の韓国との国交調整に努力しておるというように演説の中で述べておられ、昨日も請求権問題などが難関だというようにちょっと言及しておられましたが、去る二月二十五日北鮮の南日外相からの新聞を通じての呼びかけに対し、同日鳩山総理は、北鮮側に希望があるならば、貿易、文化交流等について交渉の用意があるということを述べておられる。その後もこの種の報道が繰り返されましたので、四月五日の京城からの通信によりますと、韓国の外務大臣は、もし今、日本が北鮮との関係を樹立しようとするならば、韓国の方は日本との交渉を断念するという旨を述べたことが報ぜられておるくらいであります。成るほど現政府は朝鮮米を買い付けてやるなどと相手国の歓心を買うのに努めておるようでありまするが、私はまずその前に、鳩山総理以下閣僚がいたずらに共産圏との貿易や文化交流等の可能性を誇張して宣伝するのをやめなかったならば、韓国との国交調整も非常に困難になると思うのであります。この点についてまた鳩山総理にお伺いいたしましても、鳩山放言のもとを作るかもしれませんから、私はそれは今はあえて質問いたしません。(拍手)  そこで重光大臣は、韓国と北鮮との関係は、台湾と中共と同じような関係であるから、これに対しては、北鮮に対しては中共貿易促進に対する熱と同様な熱をもって向っていこうとしておられるのかどうか、また北鮮との関係調整と韓国との交渉をいかようにうまくあやつるお気持であるか。この点について、いわゆる二元外交の綱渡りを誇りとせられる現内閣の外務大臣でもありまするから、対外的にお差支えのない限り、この両者の関係についてのお考えを御披瀝願いたいと存じます。  さらに、経済外交及び貿易の重要性は、総理以下各大臣ともこれを認識せられておるようでありまして、まことに同慶至極であります。がしかし、同時に、実際の施策がきわめて貧弱であることはまことに寒心にたえないところであります。過般の本議場での緊急質問でも私から申し上げました通り、中共貿易などというものは、友好諸国に対する不必要な刺激を避けるために、ただ黙々として実際上これが進展を期すべきであるにもかかわらず、鳴りもの入りで通商使節団を入国さして、しかもいざ交渉が妥結に近づくと、先方からいろいろ無理難題を持ち込まれて政府も今ちょっと、もてあましぎみの態に見受けられるのであります。他方、英国政府は、ガットの第三十五条の規定によって、日本との関係においてはガットの規定を適用しないということを発表しておるし、米国では、いわゆるクーパー法案の一部修正を上院財政委員会において可決いたしておる、さらにまた日本のマグロ罐詰に対してアンティ・ダンピング法を適用しようとする動きがあるというような報道もございます。これらはもとより中共貿易のかけ声に起因するとは由しませんけれども、私どもは、このような重大問題が、どうも現在の外務当局においては第二次的に取り扱われておるのではなかろうかというような感じを受ける次第でございます。そこで外相にお伺いいたしたいのは、第一、先ほど日中貿易促進については、実際的な方法で便宜を与えておるというふうにおっしゃいましたが、日中決済協定に対する政府の保証問題及び通商代表部設置問題、これらの問題はいかが取り計らわれる御意向であろかどうか。昨日も同僚左藤君がこの問題を提起いたしましたけれども、御答弁がなかったのであります。本日はぜひその御意向をお伺いいたしたい次第でございます。 第二は、英米に対する関税その他の貿易関係交渉については、これまでも努力するとか、いや、先方の態度州遺憾であるというようなことを外務大臣は言っておられる。しかしこれでは不十分でありますので、もっと積極的な、真剣な措置がなければならないと思います。一体どのような具体的な措置をとられるお考えであるか、またお見通しはどうであるか、この点についてはっきりとした御答弁をお願いする次第であります。  次に、本年度予算を通覧いたしますと、その貿易振興対策は、はなはだ微温的であって、石橋通産大臣、かねがね御主張の拡大均衡はとうてい期待し得ない。産業貿易関係の費用は、単に名目的な増加をみておるに過ぎず、ことに産業合理化に必要な開銀への政府出資のごときは、民間出資を除きまするならば、かえって減少しておるという哀れな状態でございます。特に、いわゆるプラントものや鯨油のような特殊物資の輸出は、これまで砂糖輸入のリンクによって、実質上相当率の助成策が講ぜられ、ようやく対外的競争に堪えてきたのでありますが、かかる特殊な助成措置につきましては、内外ともいろいろ批判がございまするので、私はこれを継続せられるのがいいというようなことは主張いたしません。しかし、ドイツ、フランスなどの実例を見ましても、政府が相当強度の実質的な輸出助成策を講じておるのに比べまして今政府考えておるような諸般の措置はきわめて不十分であり、これらの諸措置を全部総合いたしましても、その補償率は、昨年までのリンク補償等に比して、ほとんど問題にならないほど急減しておるということは明らかであります。たとえば貿易振興について貿易商社の強化が叫ばれ、まあ政府はその一つの方法として、商社の統合に努力しておられるようであり、これはもとよりけっこうでありますが、外国の商社に比して日本の商社が致命的な弱点を持っておる。それは金利が高いということであります。自己資本の五十倍にも及ぶ取引額を持っておる商社にとって、きわめて高利の資金を使うということは非常な弱みであり、ことに最近の輸出は延べ払いが多くなっておりまするので、特にこの点についての措置を緊急に必要とする次第であります。もっとも砂糖とのリンク制にかえて今度特殊物資資金制度を設けられ、輸銀を通じてプラント輸出等の方に回されるお考えのようでありますが、この資金はリンク制による補償と違いまして、もちろん元本を返還する必要のあることはいわずものがな、相当の金利も負担しなければならないのであります。従って関係企業や商社の努力によるところのコストの引き下げにはおのずから限度がありますので、私は石橋通産大臣が昨日同僚野溝君に対して与えられました答弁には、はなはだ心もとない感じをもってこれを拝聴いたしたのであります。また一例を重機械輸出振興費にとりましても、通産省の方では二十億円以上要求しておったはずでありまするが、やっとその十分の一が認められておるという調子で、貿易振興は単なる掛け声に終った感があります。私は実はかつて貿易行政を主宰してきた者といたしまして、やり手の石橋さんが通産大臣になられたならば、一萬田法王くらいとは一戦を交えて大いにまってくれるものと、(拍手)実は本当に超党派的に石橋さんの任命を喜んだものでございます。ところが今度の予算では全く失望いたしました。どうですか、通産大臣……。これだけの武器でもって、本当に輸出振興ができるとお思いになるか。昨年に比べて非常に貿易は不利な立場に立っておるということを専門家の石橋さんはお認めであると思う。(拍手)率直に石橋通産大臣の御意見なり御抱負なりをお聞かせ願いたいと存じます。  さてその次は、重光大臣演説の順に従って、移民外交の問題に移りますが、一昨二十六日の朝日新聞に掲げられました大宅壮一君の談話にも、移民業務に関する各省のなわ張り争いが皮肉られておりました。河野農林大臣なかなか力が強いから、重光外務大臣にも、むづかしい点もありましょうが、一体農業移民の募集、訓練などを農林省が引き受けるならば、最近ようやく具体化しつつある技術移民、工業移民については通産省が出なければならなくなる。石橋さんもなかなか力が強い、そういうことに結局なるでしょう。そこで近頃は政府当局でも、これは総理府に移民審議会を設けたらいいだろうというような考えがあるようにも聞いております。まさか現内閣もこんな屋上屋を重ねるような愚策はとらないでしょう。しかし移民政策はこうばらばらになっては大へんであります。そこで私は重光外相から移民政策の実施機関はいかがあるべきか、本年度の移民関係予算というものは何とか本年度の移民業務を遂行するに十分なものであるかどうか、また今後の移民の見通しはどうか、これらの点について、外務大臣としてよりも、むしろ副総理として、これらの問題を統轄する立場において御所見を御披瀝あらんことを要望いたすものであります。特に河野農林大臣の農山漁村に対する見方、考え方には多大の不安を持っておりますところの農山漁村の人々にとって、海外移民こそはその士気を高揚せしめるものであり、かつまた、農山漁村の二、三男対策の一助として期待せられるところも多いのでありますから、副総理はこの点も十分お含みの上、彼らの期待に沿うような御答弁あらんことを切望するものであります。  また、これに関連してお伺いいたしたいのは、吉田前総理が直接あっせんせられ、米国の三大銀行からきわめて低い利子で、移民のため相当額の長期金融を受け得ることになっていたはずでありますが、これに対して重光外相はいかなる考えをお持ちであるか、この点であります。移民推進は超党派的要望であるにもかんがみまして、米国銀行からの融資受け入れに必要な措置は、すでに政府の方でも御考慮中であり、あるいはもう実施し得る段階になっているかとも考えますが、これは至急決定せられる必要のある重要案件でもありますから、この点もあわせてお示し願いたいと存じます。最後に、いま一つ重光外相に申し上げたいのは、北京のメーデー出席者に対する旅券下付問題については、過般の外務委員会において、慎重考慮中であるというように私に答弁せられたのでありますが、その後の新聞情報によりますと、岸民主党幹事長が総評の高野事務局長に会って、これが下付方を約束した、また鳩山総理は、私としては旅券を出す意向だから、そのようにきまると思うと述べられたとか、いろいろ出ておる。他方外務省は、これが下付に難色を示しておる。次官会議では何らの結論を得なかったというように出ておるのでありますが、しかし結局外務省はこの連中の出発の間際になって、全員に対して旅券を下付したもののようであります。かかる報道は、その正確さはいずれにいたしましても、この種外交問題が閣内や党内に大ぴらに持ち回られ、もみくちゃにされた後、またいろいろなニュース種になった後、結局は外務省がそのしりぬぐいをさせられるということを物語っておるものでありまして、これは再三にわたるわれわれの警告にもかかわらず、依然として鳩山内閣は二重三重外交を継続しておるということを示したものでございます。(拍手)重光外務大臣は果して真にかたい信念のもとに外交を推進しておられるかどうか、これを疑わしめるものがある。もとより関係閣僚意見を聞かれるのもけっこうでありましょう。しかしメーデーに出席しようという全員に一般旅券を下付せられたということが事実であるといたしますならば、これはこの問題に対する重光外相の従来の態度や言明と相当食い違いがございますので、結局だれかの思いつきに押されてしまって、それに追従してしまったというふうにも見られるので、副総理としてはまことにあるまじき態度のように考えられるのであります。たとえ名目は労働事情視察が目的となっておりましても、実際は大いに政治的な意味を含んだところのメーデー出席を主目的としたものであり、これに対して一般旅券を出されたといたしますならば、(「けっこうじゃないか」と呼ぶ者あり)黙ってくれ。これは共産圏への渡航を為替管理法による制限以外は完全に自由とするということの先例を開いたものと解せられるのであります。私はここに重光外相のはっきりとした説明をお願いすると同時に、今後の対共産圏旅券の下付については、一体いかなる方針をもって臨まれるお考えであるか、責任のある御答弁をお願いするものでございます。 なお質問を終るに臨みまして、一言つけ加えておきたいのは、従来鳩山内閣外交問題取扱いぶりにきわめて軽率であり、そのため国民に多大の不安を与え、かつ海外へもきわめて悪い影響を与えてきた事実にかんがみまして、去る四日六日衆議院外務委員会においては、野党各派の共同提案によって、現内閣の外交措置に関する戒告決議が行われ、また越えて同十一日には、参議院においても同様なる趣旨をもって外務委員会が招集せられ、石黒外務委員長は、「政府外交問題の取扱いに不注意であり、遺憾の点があったことは、これを認めておるようであるが、これら不注意、遺憾の点はもっと重大なものと感じて政府の態度を一そう慎重にしていただきたい。これが満場の希望であり、かつ自分は外務委員長として、国民の深い憂慮というものに対し、十分に将来御注意あらんことを切望してやまない」こういう趣旨を述べられ、政府もこれを尊重するとのことであったのであります。しかるに、昨日来の政府答弁ぶりを見ますると、この石黒委員長の注意は無視せられたかの感があるのであります。たとえば、重光外相渡米中止に至るまでの取扱いぶりには遺憾の点もあったということは、これまですでに外務委員会において政府側は認めておるのでありますが、昨日の重光外務大臣答弁では、「いや、先方の都合を聞いたが、先方が都合が悪いと言ってきたので、それで行かなかったにすぎない」というような、しゃあしゃあとした言いぶりでありました。これはまことに遺憾にたえないのであります。しかしこいねがわくは、今後においては、鳩山総理以下各閣僚とも、常に、われわれ一同の気持を代表して発言せられましたあの石黒委員長の言を想起せられ、またまた議会側から戒告とかあるいは不信任の決議を突きつけられることのないように、国家国民のために善処あらんことを切望いたしまして、私の質問を終る次第であります。(拍手)    〔国務大臣鳩山一郎登壇拍手
  21. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 小瀧君の御質問に対して答弁をいたします。  日ソの国交を調整することによって、世界の平和の問題が解決できるか、戦争が避けられるかという御質問でありましたが、私は日ソの国交を調整することによって、世界の平和を維持することに役立つものと思っております。運用せられないように注意をしろということでありますが、運用せられるおそれはないと思います。これによってソ連の勢力が拡大をして、力による平和のバランスが破れて、そうして戦争になるというような危険は全然ないと思っております。  防衛分担金のことについて、私の発言に不都合の点があったかもしれません。ただ私の心持は、防衛庁費は、自衛隊をだんだんと強くしていこうということは条約上約束があると思いますので、防衛庁費というものは年々増額せられなくてはならない。防衛庁費が漸増して、自衛力が漸増していけば、それに応じて防衛分担金というものは減額されてくる、こういうような約束でありますから、防衛庁費がふえてきて防衛力が漸増していけば、防衛庁費がそれだけ減る……(「減らんですよ」と呼ぶ者あり)その減ったものは、それですから、もしも予算面において、防衛庁費防衛分担金の合算したものが前年度と同額のワク内にとどまれば、予算面においてそれが社会保障費の方に回る、そういうことを申しましたのであって、予算面において現われてくる金ができるから、防衛分担金が減ずれば、それだけ予算面において余裕ができてくるから、それで余裕ができてくれば、社会保障費ができることである、こういうことを申したのであります。それで……(「頭が狂ってる」と呼ぶ者あり)狂っていません。つまり予算面が前年度のワク内にとどまれば、社会保障費のほうに財源が回されるというようなことが頭の中にありましたから、防衛分担金が減ずれば、それだけ予算面において余裕ができる、余裕ができれば、社会保障費に回るという、言葉が足りませんでしたからかもしれませんが、そういう意味でありますから、御了承願います。その他の点につきましては、私への御質問はなかったと思いますから、これで私の質問答弁したものと考えております。    〔国務大臣重光葵登壇
  22. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 御質問について順次にお答えをいたします。項目がずいぶん多うございますので、大体、順序によってお答えいたしたいと思います。  日ソの国交の調整に当っても、またその他の問題についても、日本外交を進める上においてちゃんと基本的な立場を作って、そうして進んでいかなければならぬ、日米協力関係のごときは特に重きをおかなければならぬ、その方面に対して十分努力を怠ってはならぬというお話につきましては、私全然そういうふうに考えております。さようにしていかなければすべての方面における外交の推進はできないと、こう考えております。日米関係について努力いたします点につきましても、決して私は出先に責任のみを転嫁するような考えは毛頭持っておりません。私はこの機会に申し上げますが、私が外務省の仕事をするに当って、出先の機関が非常な複雑困難な、任地におりましても、非常に努力をして本省に向って適当な報告を常によこしておるということを実は私感謝しておるのであります。  それからまた外務省の人事について、超党派的の外交考えておるお前としては、また外交の継続性を主張するお前としては、この党派的な色合いにとらわれず、適材適所をもって進めなければいかんというふうな御趣旨がございました。これは全く私がさような考え方をもって進んできておるのであるということを私は強く申し上げて差しつかえないと、こう考えます。私も全然そういう工合な方針で今日まで進めております。それにつきまして、これはただ人事のみではありません。私は外交全般については、本当に超党派的に考うべきものである、すなわち国家的に考うべきものである。また外交の継続性はあくまで尊重しなければならぬということを衷心考えておるものでございます。  それで今御質問の点を少し飛ばしましてこれに関連しておりますビルマとの国交回復の問題、また賠償の問題についてお話がございましたが、ビルマの条約が前内閣時代の努力によって成立したものであるということについては、私もたびたび言及をいたしました。この遺産を継ぎまして、最近この平和条約及び賠償協定が東京において批准交換をみて非常な意義を持つことになったということにつきましては、私はすでに議会に対して御報告申した通りでございます。これはぜひ立派に実現していきたいと、こう考えております。そうしてその実施が円満にいくことが将来賠償問題の解決に非常に役立つのじゃないかというお話は、これは全く私はそう考えております。そこでビルマに対する条約の実施ということについては非常に力を尽しておるのであります。いろいろそれについて不満足の点をお聞き及びかもしれませんが、この点については、実際十分によくやりたいと、こういう考え方をもって進んでおります。そういうことが直ちにその他の賠償問題に関係するということも、今申されました通りでございまして、その他の賠償問題も同様な考え方をもって進めておる次第でございます。  それから日ソ交渉について松本代議士を任命したことが非常にあせり気味じゃないか。実はそういう意味で松本君をわずらわそうとしたのじゃございません。これは質問者も御存じの通りに今日の外交界を見渡して、私は誰が適任か、この重任を引き受けるのに誰が適任であるかということを考えてみまして、経験知識に富む松本君が一番適任じゃなかろうかと、こう思って、松本君をわずらわすことに、実は今内定の程度でありますが、内定しておるのでございます。日ソ交渉が種々の困難をはらむかもしれないということは、これは予想しても差しつかえない、すべての交渉事はそうでございます。そこでこれはあせってもいけないし、しかしそれかといってこれに対して熱心を欠いてもいかんと思います。我々は日ソ国交を正常化したいという熱意を持っておるのでありますから、それに相当する熱心さをもってこれを進めたいと考えております。しかしむろん交渉事でありまして、相手がある、しかもむずかしい相手があることでありますから、これはあせる必要は少しもない、その点において松本君が最も適任であると私は思っております。さような意味でありますから、松本君を派遣して、この仕事に携わらしめるということについては、私は議会のお許しを得ることができるだろうと、こうひそかに期待をいたしておるわけであります。これは議会のお許しを前提といたしてのお話でございます。  それから防衛分担金交渉のことについて、いろいろこれは御批判もありましょう。実は私といたしましては、内外の情勢にかんがみてこれはどうしても成立をせしめなきゃならぬ、また成立をせしめ得る見通しのもとに、と申しますのは、日本にとっても、今アメリカ関係のことでかような基本的の問題について話がまとまらぬことは、これは非常な不幸なことである、と同時にアメリカといたしましても、かような問題について日本側と意思の合致を見ないということは非常な不幸なことであると、私はかたく信じて、これはどうしても十分に双方の満足するようにまとめ上げたい、こういう考えをもって進んだのでございます。しかしそのやり方については、とやこう批判もございましょう、いろいろ私自身としても、決してそれが非常に満足のものであるとは考えませんが、しかし御批判は御批判として、この交渉がともかくも初めの予想の通りにまとまり、しかもわが方として大局上の希望は達成したということについて、これはやはり満足をいたさなければならぬと、こう思っておるわけでございます。  それからアジア外交のことにつきましては、これは先ほど、ビルマの問題のお話がございましたが、これは繰り返えしません。また、アジア外交につきましては、相当私は長く私の施政演説のうちにも述べておることでございますから、それによって御了承を得たいと存ずる次第でございます。(「韓国と北鮮の関係」と呼ぶ者あり)  そこでその次に北鮮であります。そこで、北鮮と韓国との関係を言われておる、韓国との関係は、まだいわば内交渉の時代でございます。そうしてこれについてはいろいろな曲折のあったことも事実でございます。しかしながら、今御質問の要点は、一体北鮮との関係をどうするか、こういうことでございます。私は今日の、現在の私の考え方、方針としては、こういうことは言える、私は近いところ、一番この日本の重要であって近い、この韓国との関係をまず正常化したい、調整をしたいと、こういう一念に今燃えておるわけでございます。その調整をいたした上でなければ、その次のことには進みかねると、こういう考え方でございます。それは、いろいろ新聞には何かあったかもしれませんけれども、それについては私は決して総理大臣初め、他の閣僚と意見の差異はございません。  それから経済外交のことがございました。ガットのこと、及びアメリカの議会における法案のことは、これはすでに十分御説明をいたしたいと考えますから、これはそれに譲ります。  それから中共の方で、中共の通商代表部をすぐ置くことを認め得るかどうか、また、政府がこの貿易の問題について、政府として責任をとって保証する用意があるかどうかと、こういうことが要点であったと思います。今日まだ中共との関係は、民間の貿易代表により、また民間の貿易増進を期待しておるという時期でございます。まだ政治的にこれを取扱うという情勢の変化は見られないのであります。さようでありますから、政治的に通商代表部を正式に認めるということは、すぐ政治的のこれは問題になるのでございます。それはまだ時期でないと、こう考えております。また政府の保証ということも同様に考えなければならんと思っております。  それから移民行政、移民行政は非常に重要なことであることは申すまでもございません。これも私は施政演説で、るる申し上げた通りであります。このことについて、移民を特に中南米方面にやる、この際に、日本の移民を向うに定着せしめることについて統一した考え方がなければならん、これは一つの大きな外交問題になるのでありますから、これはその外交方針によって統一的にこれを処理するということは当然のことであろうと思います。ただ、国内においてその移民をどういうふうなところからこれを選択していくかというような、この国内的処理につきましては、これは省としては外務省で直接これを取扱うのも果してどうかと、これらを一括して一つ機関に、中央に機関を設けるということも考え方でございましょう、しかしさようなことをしてこれを複雑化する必要は私はないと思っております。そこで国内のいろいろな必要な措置は国内に対する官庁においてこれを処理し、対外的に関係のあることは外務省において統一すると、こういうことが大体の考え方でなければならんと思う。しかしそれを十分に連絡統一していくことは当然必要なことでありますから、それは対外移民の処理は、これは外務省が中心になってこの考え方を統一すると、こういうことは適当であろうと、こう考えておるのであります。  それで全部済みましたと思います。(「移民借款の問題」と呼ぶ者あり)  移民借款の問題は、お話通りにこれは銀行借款でございます。これを一つぜひ利用いたしたいと、こういう見地のもとに今そのことを促進しております。それでどういうその組織にするかという結論はまだ出ていないようでございますけれども、これはぜひやりたいとこう考えております。  北京行きの旅券の問題、これはこの前委員会でお話がありました。これは慎重考究をいたしました。今日の事態において、だんだん中共との関係なんぞ、貿易も促進しなければならんという事態において、実際の視察をする視察員の旅行を制限する方向に向くということは、どうもこれは少しよくない、これは制限はしない、制限はむろんあります、制限はむろんありますけれども、非常な政治運動とかいうようなことでなければ、これは視察に対しては、旅券は出して差しつかえないというように決定をいたしました。このことについては旅行される人々ともよく協議をしまして、さような目的を逸した行動のないということを十分理解をつけて、この旅券を発行したことでございます。どうぞさように御承知願います。(拍手)    〔国務大臣高碕達之助登壇
  23. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 余剰農産物交渉はどうなっておるかという御質問でございますが、お話のごとくこの問題は、無条件で円貨払いの場合は、多少金利が高くても円貨でやるべきものだと、そう見ておりますが、ところがこれはダラー・クローズがつぐということに相なりますというと、いろいろほかに影響するところが大きくなりまして、いろいろ考慮いたしました結果、金利も安くなるからドル貨払いでやりたい、こういう方針で進んでおったのでありますが、最近、お話のごとく世界銀行から注意がありまして、その注意があったものですから、他に影響しない場合は円貨払いでも払い得るように、ドル貨でも円貨払いでも払えるように、今折衝中であります。  以上をもってお答えといたします。    〔国務大臣石橋湛山登壇
  24. 石橋湛山

    国務大臣石橋湛山君) リンク制廃止のことについての御質問であるように聞きました。リンク制についてはもう御承知通り非常な弊害が、これは外に対して工合が悪いばかりでなく、国内においても実は、なるほど輸出はそのためにある程度プラント輸出ができました。しかしこのためにかえって安売りをした、それだけ余裕があったためにですね、下げなくてもいい価格を下げたというような弊害も多小起ったようであります。かたがたこれをやめまして、しかしやめて、今の安売りをしてもいいというほどのもうけのあったリンクでありますから、それにかわるようなほどの金額の何らかのことをするといっても、これはできるはずがないのであります。また補助とか補償とかいうものを輸出に対してしたら、またなかなか対外的に厄介な問題が起りますから、これはできません。しかしそのかわり、たとえば金融に対しましては、輸出入銀行資金源をふやし、またその金利あるいは貸し出しの割合等についての考慮をいたしまして、金融上の便宜を与える、それから根本的には石炭とか鉄鋼等の値段を押えまして、あるいは下げまして、そうしてその原価を安くする、こういう地道な方法でいくよりほかないのでありまして、その目的で現在やっております。今の予算輸出振興費が十分かと言われれば、これは十分とは申せませんが、しかし昨年度に比較すれば、相当大幅に増加いたしましたから、ある程度相当の効果は上げ得るものと自信をもってやっておりますから、どうぞよろしくお願いいたします。(拍手
  25. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) 質疑は、なおございますが、これを次会に譲りたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  26. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。      —————・—————
  27. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) この際、お諮りをいたしますが、前田穰君から病気のため十五日間請暇の申し出がございました。これを許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  28. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。よって許可することに決しました。  次会は、明後三十日午前十時より開会いたします。議事日程は、決定次第公報をもって御通知いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後一時二分散会      —————・————— ○本日の会議に付した案件  一、日程第一 国務大臣演説に関する件(第三日)  一、議員の請暇