○小滝彬君 私は自由党を代表いたしまして、
外交及び貿易問題に関する
質問をいたしたいと存じます。
まず総理及び
外務大臣の
演説には、いずれも平和
外交の推進という点が強調せられておりまするが、その実行方法につきましては、ソ連との国交正常化及び中共との貿易促進に関する論述が主要部分をなしておるのでありまして、これはすなわち、これまで
鳩山内閣が
選挙戦等を通じて大きなバルーンを揚げた
関係もあり、是が非でも中ソとの国交調節を急ごうと焦慮し、これを最も大事な
外交措置と
考えておる証拠であります。鳩山総理は、しばしば第三次大戦を避ける
方策として日
ソ国交を回復するのだという趣旨を述べておられまするが、一体日
ソ国交の開けぬことがどうして直ちに第三次
戦争の原因となり得るか、また、
日本の立場を強化することはあと廻しにいたしまして、〔
議長退席、副
議長着席〕
ただ単に日
ソ国交を形式的に回復すれば、どうして
戦争が避けられるのか。もちろん秩序立った平和のための努力は結構でありますが、
日本の国力も、また
日本の置かれておるところの環境も顧みずに、がむしやらに世界平和のために対ソ
外交をやるのだというごときは、これは昨日の
答弁にもありましたが、まさに言葉の魔術であり、ごまかしであると言わなければなりません。この点について総理から私
どもは、はっきりした御説明を承わりたい。実はこれは総理に差し上げました前もっての
質問要旨にはございませんが、どうぞお忘れなくお答え願います。
ところが、一方世界の
実情は、重光外相が
演説の冒頭でも指摘せられておりまする
通り、依然として緊張
状態であり、従ってソ連の平和攻勢は、西欧においては西ドイツの再軍備を食いとめようとするもがきの結果であり、東洋においては
日本をできるだけ米国から引き離して、中立化せんとする
政策の現われである。これは昨日も緑風会の佐藤先生がおっしゃった
通りであります。換言すれば、ソ連の
わが国に対する平和的接近は、民主主義
国家群の力を背景とした、いわゆる力の
外交の勝利を物語るものとも言い得るのであります。この際わが方が、もし、いたずらに辞を低くして、形式的な国交調整をあせるといたしましたならば、かえって相手方の乗ずるところとなり、平和を達成せんとする鳩山総理の
意図は全く
運用せらるるおそれなきを保しがたいのであります。(
拍手)
重光外相は前国会における
外交演説において、「われわれは、むしろ日米協力を密接にし、
わが国の
国際的地歩を強化することが、かえって日ソの国交を調整する近道である」こういうように述べておられまするが、これはソ連その他の国交がまだ開けておらない国と
日本が満足な形で国交を再開するには、まず
日本の基本的な立場、すなわち自由民主主義
国家との提携
関係をより強固にしておくことが第一前提であるということを意味されたものと
考えます。この点について
鳩山内閣は果して十分な努力をしておるかどうか。
昨日わが党の
左藤君が述べた趣旨を鳩山総理は誤解されたようでありますが、われわれは国交調整に反対するものではありません。ただ本末転倒したようなやり方では大へんなことになるということを警告いたしておるのであります。
国民の目に映る
鳩山内閣は、いたずらに中ソとの
関係に注意のすべてを集中し、友好諸国との
関係を等閑視しておるものと言わざるを得ない点が多々あるのであります。これをたとえば、
日本にとってきわめて重要な
関係にある英国やインドなどに対して、いまだに新しい大使を任命しないで、空席のままにしておる。また在米大使については、まだ大使が任地に駐在しておるにもかかわらず、
政府筋から、現任大使非難の情報を流し、重光渡米中止に関する内閣としての失敗を在米大使の責任に転嫁せんとするがごとき態度に出ており、かつ後任大使の下馬評のごときも、これは単なる新聞辞令とのみは解し得ないような事情が潜在しておるようであります。これではいかなる大使といえ
ども、円満にその任務を現地で遂行し得ないのは当然といわなければなりません。十分な国力なくして平和
外交を強力に推進せんとする
鳩山内閣の意気、まことに壮とすべきものがあると思いまするけれ
ども、これが実行に果して遺憾なきやいなや、鳩山総理及び重光外相に深い反省を要望してやまないものであります。そこで特に重光外相にお伺いしたいのは、第一は、英国、インドなどの大使は、いついかなる
方針によって任命せられるお
考えであるか。もちろん少数党内閣で、あしたの命も予断しがたい
状態でありまするから、まあしばらく様子を見ようというお気持かもしれませんが、いやしくも平和
外交の
重要性をそれほど認められるならば、一日もすみやかにこれが任命の措置をとられるよう要望するものであります。同時に現在の大公使は、なるほど前内閣か任命した連中であるかもしれませんか、超党派
外交と
外交の継続性とを提唱せられる現内閣としては、あくまで適材適所主義に徹し、いたずらに
外交陣営の士気を動揺せしめるようなことのなきように配慮あらんことを望んでやまないものであります。さらに、この点に関連して、もう
一つ重光
大臣にお伺いしたいのは、近くロンドンにおいて開催せらるる運びとなっておるソ連との
交渉には、すでに内定しておる衆議院の松本俊一君を派遣せらるるお
考えでございましょうか。私は、機微なる
外交交渉に先だちまして、一々
日本側の提案内容の公表を要求するような
質問はもとよりこれを差し控えるものでありますが、あえて松本代表の問題を取り上げますのは、松本君の
交渉者としての
能力や経験に不安や疑問を抱くためではなくして、それは戦後の国会はきわめて長期の国会であり、その国会に責任を有するところの議員を
交渉者に任命せられるということは、日ソ
交渉が急速に進展妥結するかのごとき楽観的な観測を外相がお持ちになっておるか、または是が非でも、日ソ
交渉を形だけでも早くまとめ上げたいというあせりに基いておるのではなかろうかとの疑念を引き起すおそれがあるからであります。一体国会に議席を有する者が、重要なる
国際会議に代表者となることにつきましては、私自身といたしましては、これはもう外国に例のあることでもあるし、
日本でこのような先例を開かれますることには双手を上げて賛成するものであります。がしかし、芳沢・カラハン
交渉の往時を顧みまするとき、はたまた、戦後ドイツ及びオーストリー問題についての四カ国会議の遷延ぶりを思い起しまするとき、国会議員を代表者に任命するということは、いささか無理があるのではなかろうかというように思われるのであります。すなわち、私は日ソ
交渉に関する外相の根本的認識に誤りなきやいなやを憂えるものでありまして、この点についての率直な
所見をお伺いいたしたいのであります。
次に重光外相は、米国との協力
関係に関し、
防衛分担金の
減額問題に触れておられるのでありますが、この問題について、まず鳩山総理にお伺いいたしたいのは、去る四月十一日の外務委員会における私の
質問に対し、総理は、「
防衛分担金が少くなればそれだけ
予算に余裕を生じまして、
社会保障費の方に回せると今でも思っております。」と答えられましたので、私は総理のかかる言い分が、当時進行中であった本件
交渉に悪影響を与えるおそれのあることを懸念いたしまして、これが追及を差し控え、単に「このような問題については、よく対外
関係を
考えて正確な御
答弁を願いたい」、こう申し上げて
質問を打ち切ったのであります。その後
交渉の結果により、
防衛分担金削減によって浮いてきた金額は全部
防衛費に当てられることが明らかになったのでありますが、これはもちろんあらかじめ予定せられておったところであり、もしそれを知らなかった政治家ありとすれば、それはおそらく鳩山総理だけであっただろうと存じます。(
拍手)
一体総理は、現在においても依然としてその余裕分は
社会保障費の方に回し得るというお
考えをお持ちでありましょうか、もししかりとすれば、過般の日米共同声明の趣旨にも反すると思いまするし、ことにこれまで総理が故意に
国民をだましてきたと見るむきも少くないのであります。この際明確なる御
答弁をお願いいたします。
更に、この
分担金問題が
鳩山内閣によって非常にまずい手ぎわで取り扱われましたため、反米感情を醸成しようとする一部分子に、きわめて都合のよい口実を与えたことも看過し得ない事実であります。
政府の責任また重大であると言わざるを得ない。すなわち、
政府がもっと
選挙だけにこだわらず、早目に
交渉を開始し、
予算編成前に十分米国側と打ち合せを遂げておきましたならば、もともと日米間においては、先ほど
外務大臣が申されました
通り、安保
条約の規定に基く共同防衛
関係以外のことについて協議したわけでもありませんから、米国が
日本の
予算に容喙したというような間違った印象を与えずに済んだであろうと存じます。ところが
鳩山内閣は、あの
予算を確定すべきどたんばに来てしまってから、米国
政府に対して、何とか格好を付けてくれなければ内閣の運命にかかわりますというような泣き落し戦術を用いたという、この報道は、少くとも一部の事実を物語っておるようでありますし、また急拠重光外相を渡米せしめようとした事実もこの報道を裏付けるものと存ぜられますので、私
どもといたしましては、
鳩山内閣の
自主独立外交の看板は、一体何を意味するのかと揶揄せざるを得ない気持になるのであります。(
拍手)この
交渉を通じてまたこの
交渉の結果を見て、鳩山総理はいかなる感想を持っておられるのか。これでもまだこの
交渉に臨んだ
政府の措置に落度はなかったと弁護せられるお気持であるか。総理の良心的な御
答弁を求めてやまないものであります。
さてついでに対米
関係につきまして、高碕長官、お帰りのようでありますから、高碕長官にお伺いいたしたいのは、米国の余剰
農産物買付
交渉の最近の状況であります。すでに
予算面におきましても、この買付による見返
資金二百十四億円の借り入れを見込んでいることは、一
萬田大蔵大臣の
演説にも言及せられておりますが、聞くところによれば、返済円貨に関するドル・クローズが問題となり、
日本側のほうはむしろドル借款に変更したほうがいいというので、こういう申し入れをされたというように
承知いたしております。しかしこの余剰
農産物買付は、特に円貨支払いによるというところに妙味がある。それにもかかわらず、これをドル借款といたしましたならば、たとえ金利の方では少々有利になりましても、ドル調達の
義務を
日本側が
負担しなければならない。この点はきわめて不利になるのでありまするし、かつ新聞でもすでに報道しておりまするところの世界銀行側の意向もありますので、むしろ大蔵事務当局あたりの純理論ないしは面子論というようなものをおさえまして、円借款の原則のもとに、同時に相手国の立場も考慮に入れた他の便法もあるやに
考えられると思うのでありますが、これは一体どうなっておるか。もっとも最近では、また
日本側で円借款を希望するというように逆戻りをしておるとも伝えられております。いずれにいたしましても、この
交渉の経過及び支払い条件についての高碕長官の御見解をお伺いいたしたいのであります。
さて次にアジア
外交について、重光外相は僅々
所見を述べておられますが、
外交は紙の上の議論だけでは何らの役にも立たない。百の説法よりも
一つの実行を尊しとすることは、今さら申し上げるまでもございません。たとえば賠償問題について、かつて重光外相は、前内閣の残した重要な遺産の
一つとして、ビルマとの賠償
経済協力協定を受け継ぐと申されましたが、一体これが実施に必要なその細目取りきめや合同委員会は、いまだに成立いたしておりません。しかしこの協定が
現実に円満な実施を見るようになれば、自然フィリピンもインドネシアも、早くこれにならおうとするようになるのは当然であり、これこそ他の諸国との賠償問題を早く解決する上に最善の手段であるというように私
どもは
考えるのであります。このビルマ賠償実施について
政府は真に十分な努力をしておるかどうか。この間の事情と
政府のお
考えとを御説明願いたいのであります。
また外相は一衣帯水の韓国との国交調整に努力しておるというように
演説の中で述べておられ、昨日も請求権問題などが難関だというようにちょっと言及しておられましたが、去る二月二十五日北鮮の南日外相からの新聞を通じての呼びかけに対し、同日鳩山総理は、北鮮側に希望があるならば、貿易、文化交流等について
交渉の用意があるということを述べておられる。その後もこの種の報道が繰り返されましたので、四月五日の京城からの通信によりますと、韓国の
外務大臣は、もし今、
日本が北鮮との
関係を樹立しようとするならば、韓国の方は
日本との
交渉を断念するという旨を述べたことが報ぜられておるくらいであります。成るほど現
政府は朝鮮米を買い付けてやるなどと相手国の歓心を買うのに努めておるようでありまするが、私はまずその前に、鳩山総理以下閣僚がいたずらに共産圏との貿易や文化交流等の可能性を誇張して宣伝するのをやめなかったならば、韓国との国交調整も非常に困難になると思うのであります。この点についてまた鳩山総理にお伺いいたしましても、鳩山放言のもとを作るかもしれませんから、私はそれは今はあえて
質問いたしません。(
拍手)
そこで重光
大臣は、韓国と北鮮との
関係は、台湾と中共と同じような
関係であるから、これに対しては、北鮮に対しては中共貿易促進に対する熱と同様な熱をもって向っていこうとしておられるのかどうか、また北鮮との
関係調整と韓国との
交渉をいかようにうまくあやつるお気持であるか。この点について、いわゆる二元
外交の綱渡りを誇りとせられる現内閣の
外務大臣でもありまするから、対外的にお差支えのない限り、この両者の
関係についてのお
考えを御披瀝願いたいと存じます。
さらに、
経済外交及び貿易の
重要性は、総理以下各
大臣ともこれを認識せられておるようでありまして、まことに同慶至極であります。がしかし、同時に、実際の施策がきわめて貧弱であることはまことに寒心にたえないところであります。過般の本
議場での緊急
質問でも私から申し上げました
通り、中共貿易などというものは、友好諸国に対する不必要な刺激を避けるために、ただ黙々として実際上これが進展を期すべきであるにもかかわらず、鳴りもの入りで通商使節団を入国さして、しかもいざ
交渉が妥結に近づくと、先方からいろいろ無理難題を持ち込まれて
政府も今ちょっと、もてあましぎみの態に見受けられるのであります。
他方、英国
政府は、ガットの第三十五条の規定によって、
日本との
関係においてはガットの規定を適用しないということを発表しておるし、米国では、いわゆるクーパー法案の一部修正を上院財政委員会において可決いたしておる、さらにまた
日本のマグロ罐詰に対してアンティ・ダンピング法を適用しようとする動きがあるというような報道もございます。これらはもとより中共貿易のかけ声に起因するとは由しませんけれ
ども、私
どもは、このような重大問題が、どうも現在の外務当局においては第二次的に取り扱われておるのではなかろうかというような感じを受ける次第でございます。そこで外相にお伺いいたしたいのは、第一、先ほど日中貿易促進については、実際的な方法で便宜を与えておるというふうにおっしゃいましたが、日中決済協定に対する
政府の保証問題及び通商代表部設置問題、これらの問題はいかが取り計らわれる御意向であろかどうか。昨日も同僚
左藤君がこの問題を提起いたしましたけれ
ども、御
答弁がなかったのであります。本日はぜひその御意向をお伺いいたしたい次第でございます。 第二は、英米に対する関税その他の貿易
関係の
交渉については、これまでも努力するとか、いや、先方の態度州遺憾であるというようなことを
外務大臣は言っておられる。しかしこれでは不十分でありますので、もっと積極的な、真剣な措置がなければならないと思います。一体どのような具体的な措置をとられるお
考えであるか、またお見通しはどうであるか、この点についてはっきりとした御
答弁をお願いする次第であります。
次に、本
年度予算を通覧いたしますと、その貿易振興
対策は、はなはだ微温的であって、
石橋通産大臣、かねがね御主張の拡大均衡はとうてい期待し得ない。
産業貿易
関係の費用は、単に名目的な
増加をみておるに過ぎず、ことに
産業合理化に必要な開銀への
政府出資のごときは、
民間出資を除きまするならば、かえって減少しておるという哀れな
状態でございます。特に、いわゆるプラントものや鯨油のような特殊物資の
輸出は、これまで
砂糖輸入のリンクによって、実質上相当率の助成策が講ぜられ、ようやく対外的競争に堪えてきたのでありますが、かかる特殊な助成措置につきましては、内外ともいろいろ批判がございまするので、私はこれを継続せられるのがいいというようなことは主張いたしません。しかし、ドイツ、フランスなどの実例を見ましても、
政府が相当強度の実質的な
輸出助成策を講じておるのに比べまして今
政府の
考えておるような諸般の措置はきわめて不十分であり、これらの諸措置を全部総合いたしましても、その補償率は、昨年までのリンク補償等に比して、ほとんど問題にならないほど急減しておるということは明らかであります。たとえば貿易振興について貿易商社の強化が叫ばれ、まあ
政府はその
一つの方法として、商社の統合に努力しておられるようであり、これはもとよりけっこうでありますが、外国の商社に比して
日本の商社が致命的な弱点を持っておる。それは金利が高いということであります。自己
資本の五十倍にも及ぶ取引額を持っておる商社にとって、きわめて高利の
資金を使うということは非常な弱みであり、ことに最近の
輸出は延べ払いが多くなっておりまするので、特にこの点についての措置を緊急に必要とする次第であります。もっとも
砂糖とのリンク制にかえて今度特殊物資
資金制度を設けられ、輸銀を通じて
プラント輸出等の方に回されるお
考えのようでありますが、この
資金はリンク制による補償と違いまして、もちろん元本を返還する必要のあることはいわずものがな、相当の金利も
負担しなければならないのであります。従って
関係企業や商社の努力によるところのコストの引き下げにはおのずから限度がありますので、私は
石橋通産大臣が昨日同僚
野溝君に対して与えられました
答弁には、はなはだ心もとない感じをもってこれを拝聴いたしたのであります。また一例を重機械
輸出振興費にとりましても、通産省の方では二十億円以上要求しておったはずでありまするが、やっとその十分の一が認められておるという調子で、貿易振興は単なる掛け声に終った感があります。私は実はかつて貿易行政を主宰してきた者といたしまして、やり手の石橋さんが
通産大臣になられたならば、一
萬田法王くらいとは一戦を交えて大いにまってくれるものと、(
拍手)実は本当に超党派的に石橋さんの任命を喜んだものでございます。ところが今度の
予算では全く失望いたしました。どうですか、
通産大臣……。これだけの武器でもって、本当に
輸出振興ができるとお思いになるか。昨年に比べて非常に貿易は不利な立場に立っておるということを専門家の石橋さんはお認めであると思う。(
拍手)率直に
石橋通産大臣の御
意見なり御抱負なりをお聞かせ願いたいと存じます。
さてその次は、重光
大臣の
演説の順に従って、移民
外交の問題に移りますが、一昨二十六日の朝日新聞に掲げられました大宅壮一君の談話にも、移民業務に関する各省のなわ張り争いが皮肉られておりました。河野農林
大臣なかなか力が強いから、重光
外務大臣にも、むづかしい点もありましょうが、一体農業移民の募集、訓練などを農林省が引き受けるならば、最近ようやく具体化しつつある技術移民、工業移民については通産省が出なければならなくなる。石橋さんもなかなか力が強い、そういうことに結局なるでしょう。そこで近頃は
政府当局でも、これは総理府に移民
審議会を設けたらいいだろうというような
考えがあるようにも聞いております。まさか現内閣もこんな屋上屋を重ねるような愚策はとらないでしょう。しかし移民
政策はこうばらばらになっては大へんであります。そこで私は重光外相から移民
政策の実施
機関はいかがあるべきか、本
年度の移民
関係の
予算というものは何とか本
年度の移民業務を遂行するに十分なものであるかどうか、また今後の移民の見通しはどうか、これらの点について、
外務大臣としてよりも、むしろ副総理として、これらの問題を統轄する立場において御
所見を御披瀝あらんことを要望いたすものであります。特に河野農林
大臣の農山漁村に対する見方、
考え方には多大の不安を持っておりますところの農山漁村の人々にとって、
海外移民こそはその士気を高揚せしめるものであり、かつまた、農山漁村の二、三男
対策の一助として期待せられるところも多いのでありますから、副総理はこの点も十分お含みの上、彼らの期待に沿うような御
答弁あらんことを切望するものであります。
また、これに関連してお伺いいたしたいのは、吉田前総理が直接あっせんせられ、米国の三大銀行からきわめて低い利子で、移民のため相当額の長期
金融を受け得ることになっていたはずでありますが、これに対して重光外相はいかなる
考えをお持ちであるか、この点であります。移民推進は超党派的要望であるにもかんがみまして、米国銀行からの
融資受け入れに必要な措置は、すでに
政府の方でも御考慮中であり、あるいはもう実施し得る段階になっているかとも
考えますが、これは至急決定せられる必要のある重要案件でもありますから、この点もあわせてお示し願いたいと存じます。最後に、いま
一つ重光外相に申し上げたいのは、北京のメーデー出席者に対する旅券下付問題については、過般の外務委員会において、慎重考慮中であるというように私に
答弁せられたのでありますが、その後の新聞情報によりますと、岸民主党幹事長が総評の高野事務局長に会って、これが下付方を約束した、また鳩山総理は、私としては旅券を出す意向だから、そのようにきまると思うと述べられたとか、いろいろ出ておる。
他方外務省は、これが下付に難色を示しておる。次官会議では何らの結論を得なかったというように出ておるのでありますが、しかし結局外務省はこの連中の出発の間際になって、全員に対して旅券を下付したもののようであります。かかる報道は、その正確さはいずれにいたしましても、この種
外交問題が閣内や党内に大ぴらに持ち回られ、もみくちゃにされた後、またいろいろなニュース種になった後、結局は外務省がそのしりぬぐいをさせられるということを物語っておるものでありまして、これは再三にわたるわれわれの警告にもかかわらず、依然として
鳩山内閣は二重三重
外交を継続しておるということを示したものでございます。(
拍手)重光
外務大臣は果して真にかたい信念のもとに
外交を推進しておられるかどうか、これを疑わしめるものがある。もとより
関係閣僚の
意見を聞かれるのもけっこうでありましょう。しかしメーデーに出席しようという全員に一般旅券を下付せられたということが事実であるといたしますならば、これはこの問題に対する重光外相の従来の態度や言明と相当食い違いがございますので、結局だれかの思いつきに押されてしまって、それに追従してしまったというふうにも見られるので、副総理としてはまことにあるまじき態度のように
考えられるのであります。たとえ名目は労働事情視察が目的となっておりましても、実際は大いに政治的な意味を含んだところのメーデー出席を主目的としたものであり、これに対して一般旅券を出されたといたしますならば、(「けっこうじゃないか」と呼ぶ者あり)黙ってくれ。これは共産圏への渡航を為替管理法による制限以外は完全に自由とするということの先例を開いたものと解せられるのであります。私はここに重光外相のはっきりとした説明をお願いすると同時に、今後の対共産圏旅券の下付については、一体いかなる
方針をもって臨まれるお
考えであるか、責任のある御
答弁をお願いするものでございます。 なお
質問を終るに臨みまして、一言つけ加えておきたいのは、従来
鳩山内閣が
外交問題取扱いぶりにきわめて軽率であり、そのため
国民に多大の不安を与え、かつ
海外へもきわめて悪い影響を与えてきた事実にかんがみまして、去る四日六日衆議院外務委員会においては、野党各派の共同提案によって、現内閣の
外交措置に関する戒告決議が行われ、また越えて同十一日には、参議院においても同様なる趣旨をもって外務委員会が招集せられ、石黒外務委員長は、「
政府も
外交問題の取扱いに不注意であり、遺憾の点があったことは、これを認めておるようであるが、これら不注意、遺憾の点はもっと重大なものと感じて
政府の態度を一そう慎重にしていただきたい。これが満場の希望であり、かつ自分は外務委員長として、
国民の深い憂慮というものに対し、十分に将来御注意あらんことを切望してやまない」こういう趣旨を述べられ、
政府もこれを尊重するとのことであったのであります。しかるに、昨日来の
政府の
答弁ぶりを見ますると、この石黒委員長の注意は無視せられたかの感があるのであります。たとえば、重光外相渡米中止に至るまでの取扱いぶりには遺憾の点もあったということは、これまですでに外務委員会において
政府側は認めておるのでありますが、昨日の重光
外務大臣の
答弁では、「いや、先方の都合を聞いたが、先方が都合が悪いと言ってきたので、それで行かなかったにすぎない」というような、しゃあしゃあとした言いぶりでありました。これはまことに遺憾にたえないのであります。しかしこいねがわくは、今後においては、鳩山総理以下各閣僚とも、常に、われわれ一同の気持を代表して
発言せられましたあの石黒委員長の言を想起せられ、またまた
議会側から戒告とかあるいは不信任の決議を突きつけられることのないように、
国家国民のために善処あらんことを切望いたしまして、私の
質問を終る次第であります。(
拍手)
〔
国務大臣鳩山一郎君
登壇、
拍手〕