○羽仁五郎君 非常に残念なことですが、法相は問題の要点を御了解になっていないようです。御承知のように、
犯罪には私はやはり風俗習慣というものの基礎が十分になければならぬ。人を殺すとか、物を盗むとかということは、別に法律がなくても罪です。ところが、選挙に関する選挙法というのは、御承知のように、あなたも政党政治家であるから十分御了解のように、議会においてその選挙法の立法によって、その個々の条章には、今まで罪でなかったものが罪になることもあるし、あるいは今まで罪であったようになっていたものが罪でなくなるものもあります。その政党政派それぞれの
考え方によって違うものである。また各国の例をひいても、
日本の保守的な政治家が罪にならないとお
考えになっておられることが、あるいはオーストラリアの選挙法によれば、それが最も重大な罪だというようにされている場合もあります。
日本の保守政治家の中には、ここに橋をかけるとか、ここに道路を作るとか、そういうことを選挙民に公約せられて当選せられる、それが何ら法にも触れない、罪にもならないという場合にも、オーストラリアの選挙法によれば、むしろそういうものこそ最も民主主義を害するものであるとして、法に触れる重大な
犯罪だと
考えられておる場合もあるのです。ですから、選挙の公正を害する本質的な
犯罪については、私はこれはやはり民主主義を阻害する非常に重大なものだと思う。けれ
ども、絶えず選挙法改正によって改正されて、そして出てくる条項の中には、今申し上げたように、立法によってあるいは罪となり、あるいは罪とならないものもあるのです。これは十分に法相としても、今のような大言壮語せられないで、
実情についてお
考えになった方がよろしいと思うのです。
であなた御自身に対する
世間の評判というものも十分御反省になっておられることだと思います。それで法相の地位にあられる者が、こういうふうなことをされてはどうだろう、しかし法に触れないから差しつかえない、そういうようなことは、
世間にいろんな不安を与えることもある。従って、今私の申し上げておる要点をよくお
考えになって、いま一応御答弁が賜わりたい。要点は、この選挙法の違反という場合に、現在の法律で、そしてまた従来の風俗慣習によって、最も憎むべきものだと
考えられているのは、明らかに金銭あるいは物品その他によってその人の自由の意思を失わせて、そうして誤った投票をなさしめる、こういうことに対しては、あなたの
言葉にある
検察官は、今日以上に厳格でなければならないと思うのです。そしてまたその選挙法に触れる人が、社会上の地位においてあるいは政治家である、あるいは弁護士である、あるいは政党の有力な
幹部である、こういう方々がなさることに対しては、
検察庁はもっと勇気を持って民主主義を守らなければならないと思うのです。
けれ
ども、今ここで問題になっているのは、学校の先生が二年、三年の
子供に対して、明日選挙が行われることについて
説明をせられた。そこで別に
子供たちに金をばら撒いたわけではない。
子供たちの親たちを饗応したわけではない。それらの人に花輪を贈ったわけではない。選挙の
説明をした。しかもその際に二、 三年の
子供が家へ帰ってどういう話をするかということは、先生はよく知っていますよ。従って、明らかに選挙の本質を害するような行為をするのであるならば、その際にかなり明瞭に、観たちにこういうふうに言ってくれということを言うに相違ない。場合によっては、そういうふうにしなければ就職に差しつかえがあるとかなんとかいうような、最近群馬県で起ったような、警官が言ったようなことはおっしゃったかもしれない。しかしそういうことをおっしゃっているのじゃない。従って、その教員に対して
検察側から起訴せられた後でも、その教育
委員会は、その先生に対する信頼から、その先生が続けて職務を行うことをお認めになっているというような場合、すなわち、この点は一言に要約して申せば、法の施行ということについて完全明白な危険がある場合に、初めて権利が制限せられ、あるいは
検察権を発動すべきであって、
検察の発効ということはやはり必要にして最小限度にとどめて、重要な権利というものを侵害すべきではない。また教育者というふうな重大な仕事に不安を与えるべきではない。これは御同感だろうと思う。さればこそ、先ほど第一回分御
説明では、そういうことは好ましくない、できるだけ避けてほしいという御
説明があったのだろうと思う。この点いま一応伺っておきますが、選挙法違反はまことに憂うべきことです。ですから、その取り締りに当られる検事が十分に努力せられるということは私も希望するところでありますが、しかしながら、その必要にして最小限度を越える、教育というような重大な使命に不安を与えられるようなことは、これは許さるべきことではないと思いますが、その点いかがですか。これが第一点です。
それから法の施行の場合といいますが、法というものはいろいろな法があります。児童福祉法もあれば憲法もある。やはりこの選挙法を運営せられる場合にも、児童福祉法なり、あるいは憲法なり、それらのいろいろな
関係を考慮せらるべきだと思う。これはおそらく御同感だろうと思う。選挙法の違反に触れているからといって、児童福祉法の第一条に明記しているような、そういうものを全く忘れてしまうというようなことは、先ほどのお
言葉を返すようで恐縮でありますが、第一線の
検察官としても許されないことだろう、それこそ罪万死に値することだと言わなければならない。
それから第三に伺いたいことは、実際の
実情として、二、三年の生徒を、しかも教師の前で検事が尋問している場合に、これは
新聞が報道し、かつまたその場におられた方からも私は伺ったので、あるいは必要に応じてはそういう方に来ていただいて
調べなければならないかと思うのでありまするが、この
子供たちは泣き出してしまう。検事が先生はこういうことをしたのだろうというふうに言えば、うんと言い、弁護士が、そういうことは先生はなさらなかっただろうと聞きますれば、やはりうんうんというふうに言う。ですから、二、三年くらいの、七つ八つの
子供を検事が引っぱり出して、先生の前に出て、先生がこういうことをしたかしないかということについて得られるところの証拠というものは、果してわが憲法の命じ、児童福祉法の言わむとするところを尊重し、そうしてしかも選挙法の
取締りを公平にやるということについて、いいですか、そういういろいろな観点から見ても妥当なことだろうか、そうして必要なことだろうか、そうして最小限度においてやらなければならないことだろうか。その三点について一応もう少し落ちついて一つ
お答えを願いたいと思います。