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1955-10-14 第22回国会 参議院 法務委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年十月十四日(金曜日)    午前十一時七分開会     —————————————    委員の異動 八月二日委員岡田宗司辞任につき、 その補欠として藤原道子君を議長にお いて指名した。 九月十九日委員吉田法晴辞任につ き、その補欠として松本治一郎君を議 長において指名した。 九月二十二日委員松本治一郎辞任に つき、その補欠として吉田法晴君を議 長において指名した。 九月二十五日大達茂雄君死去された。 十月十二日委員岩澤田忠恭君、大屋晋 三君及び松野鶴平辞任につき、その 補欠として田中啓一榊原亨君及び吉 田萬次君を議長において指名した。本 日委員小林亦治君辞任につき、その補 欠として赤松常子君を議長において指 名した。     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     成瀬 幡治君    理事            剱木 亨弘君            市川 房枝君    委員            榊原  亨君            田中 啓一君            吉田 萬次君            中山 福藏君            藤原 道子君            吉田 法晴君            赤松 常子君            羽仁 五郎君   国務大臣    法 務 大 臣 花村 四郎君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君   説明員    法務省刑事局長 井本 臺吉君    法務省人権擁護    局長      戸田 正直君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○検察及び裁判運営等に関する調査  の件  (人権擁護に関する件)  (売春対策に関する件)  (治安問題懇談会設置の件)  (監獄法改正の件)     —————————————
  2. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) これより法務委員会を開会いたします。  検察及び裁判運営等に関する件のうち、まず人権擁護に関する件を議題に供します。本件について御質疑を願いたいと思います。
  3. 中山福藏

    中山福藏君 細目の点につきましては、当該官憲から書類が到着してからいろいろと承わりたいと思いますが、まず、私は、近ごろ新聞を賑わした森永ミルクキャラメル砒素事件について、その輪郭をあらかじめ伺ってみたいと思うのです。この問題は私にとっては門外漢でありますから、十分な掘り下げた点に触れることはできないかとも考えまするけれども、一般的にそういうふうな菓子屋とか、菓子あるいは食料品製造しておる営業者に対して、どういうふうなお取締り並びにその監視を常にしておられるか、それを聞きたいと思うのです。法務省はただ漫然とかかる事件を看過して、厚生省にすべてをおまかせになっておるのかどうか、法務省としてもそれに関心を持ってかねがね検討しておられるかどうか、そういう点をお聞かせを願います。
  4. 井本臺吉

    説明員井本臺吉君) われわれは事件発生後に、検挙、処罰する方の立場でございまして、新聞紙に現われたいろいろな事項あるいはその他の状況から、食品衛生法等事件が発生したような場合には、直ちにその事情を取り調べまして、適当な法規を適用した上で処置をしておるというような状況でございまして、あらかじめ事件のないうちから、食品衛生法違反があるかどうかというような点を、個々の製造工場その他につきまして調べをするというようなことはいたしておりません。
  5. 中山福藏

    中山福藏君 ただいま刑事局長お答えになったことは、これは単に過去のいわゆる、何と申しますか、あなたがたのおとりになった態度の御説明にすぎないのでありまして、私はやはりそういう問題も、時勢に適応した心持ちをもって人権擁護の任に当るという覚悟がほしいのです。すなわち人権を侵害するような問題については相当常常からやはり考究をしておく必要があるのじゃないかと考えますが、このたび約七千五百人の児童が被害を蒙り、そのうち約五十人が死亡した。しかもその原因菓子原料砒素を混入しておる。思うに、森永製菓会社はその菓子製造をやる際、過去においてもやったのではないか。今度突発的にこの砒素を混入したものであるとは考えないのです。従来このたびのような問題が結果として現われなかったために、何ら世間関心を引かず、また当局もこれに対する態度というものも明確にすることができなんだのじゃないかと思います。法務省食料品に関する限り、取締り法規上からそういう調査は全然厚生省取扱いおまかせになっておるのか、あるいは菓子原料並びに混入物に対する調査厚生省法務省と共同で、こういうものは人体被害があるとか、こういうものは人の生命影響を及ぼさないとか、研究をなすったことはないのでしょうか。ただ結果が現われただけで処罰するという、簡単ないわゆる罪刑法定主義の建前から処罰するというようなことだけをお取り扱いになっておるのでしょうか、法務省はどうでしょうか。警視庁へ参りますというと、あらゆる犯罪の資料を私どもに見せてくれて、事前防犯立場をとることについていろいろな説明をしたことがありますが、法務省としてもそういうふうに常々よく御研究になっておるものであると私どもは期待しておるのですが、いかがでございましょうか。それとも、結果が現われなければ絶対に取り上げないという趣旨でございますか。御回答をお願いいたします。
  6. 井本臺吉

    説明員井本臺吉君) われわれといたしましても、結果が現われる前から食品衛生等に関しましては十分注意いたしまして、事件になりますれば直ちにこれを検挙するというようなことで、一般に害悪の及ばないようにいたしたいとは考えておりまするけれども、何せ小さな世帯でありまして、人の関係からいいまして、予防的な、事件にいまだ至らざるものを検討するというところまでの余裕がありませんので、現われた事件を迅速的確に処置するということで一ぱいてございまして、それ以上に手が伸びていないのが実情でございます。
  7. 中山福藏

    中山福藏君 私は、その過去の刑事政策的の面から、結果が現われなければ、どうも忙しくてしょうがないから、どうも手をつけずにおるのだというようなことは、腑に落ちないのです。やはり時代の変遷とともに、そういうふうな犯罪原因をなすものについては、かねてから相当化学的の検討とか、あるいはいろいろな方面から御研究になっておく必要があるのじゃないかと考えておりまして、私に今度森永菓子の問題を見て、実にぎょうてんしたのであります。今度たまたま人体解剖の結果、森永菓子砒素が混入されておる、これは実に驚くべきことでございまして、絶大なる恐怖心日本の多くの父兄方に与えたことを確信するものであります。このたび人体解剖の結果、いよいよ砒素が混入してあることがわかったことにかんがみて、これまでの、森永菓子製造について砒素を混入したかしないか、法律上の時効にかからない時間的な立場において混入されたことがあるかどうかということについては、お取調べがあったんでしょうか。これはもう結果が現われておるんですから、当然その点はお取り調べにならなければならぬと思うのです。犯罪が構成して、しかも時効にかかっていないという見通しがついた以上、その時間の範囲内においてお取調べがこの点についてあったものと思うのですが、どうですか。
  8. 井本臺吉

    説明員井本臺吉君) お尋ね森永ドライミルク関係事件新聞にも出ておりましたけれども岡山の医大におきまして、乳児原因不明のことからいろいろと死亡その他の中毒症状に似た状況が現われたということで、岡山医科大学におきまして死んだ乳児を解剖いたしましたり、現に罹病中の子供をいろいろ検討いたしました結果、これは砒素中毒に違いないということがようやくわかりまして、しからばこの砒素はどこから子供人体に加えられたものであるかということの検討をつぶさにいたしました結果、森永ドライミルク徳島工場で出たものの製品の中からかような砒素乳児に与えられたという嫌疑をもちまして、徳島工場調べたわけでございます。その結果、徳島工場におきまして第二燐酸ソーダドライミルクに加えておったということがわかったわけでございます。その燐酸ソーダの中に相当砒素が入っておったということで、ようやくこの原因が探究されたわけでございます。そのほかの森永工場の他の製品につきましては、現在までの調べでは砒素が検出されていない。この徳島工場分だけは相当砒素が検出されているというので、これを使用しました各府県の病院その他乳幼児を扱っておる所を、全般的に詳細調査をいたしておるわけでございます。この結果、現在徳島地方検察庁におきましては、森永乳業幹部の二人、大岡正という者と小山孝雄、この両名を業務過失致死、同傷害という罪名で、昭和三十年九月三十日に起訴いたしております。  この乳幼児砒素中海森永ドライミルクによるものであるということの発見をされました岡山医科大学の方に対しましては、私どもといたしましても非常に敬意を払っておるわけでございます。容易なことでかようなものは発見できないので、われわれといたしましてもまだ他にかような中毒事件があるのではないかという点につきましては十分注意をいたし、もしさようなものがありますれば、厳粛に処置をいたしたいというように考えておる次第でございます。
  9. 中山福藏

    中山福藏君 ただいま承わりよすれば、徳島県の森永ミルクキャラメル営業所大岡並び小山ですか、この二人が業務過失致死の疑いで検挙されたということでありますが、私はもっと掘り下げて、会社本部責任を追及すべきではないかと考えておるのでございます。これは大体森永会社本部において、こういうふうなミルクキャラメルを作るにはその混成物はこれこれだということをあらかじめ十分知り抜いて、そうして向うの方に指令を与えるものだと思うのですが、これは単に大岡小山だけでなくて、会社最高幹部というものも共犯の立場にあったものじゃないか。この二人だけにその責任を負わせるということはいかがなものでございましょうか。この二人に限局して捜査をお進めになるのでありましょうか、お尋ねをいたします。
  10. 井本臺吉

    説明員井本臺吉君) 私どもの扱っておりますのは、御承知の通り刑事事件でございまして、本件につきまして森永乳業株式会社もしくはその村長その他が民事的に責任を負うかどうかという点は別といたしまして、この業務過失致死過失傷害事件責任のある者はこの砒素を混入することについて過失のある者だけでございます。われわれの調べでは、ただいまのところでは、先ほど申し上げました大岡正小山孝雄の両名がこのドライミルクに第二燐酸ソーダを挿入したという点がはっきりわかりまして、この燐酸ソーダ製品食品に用いられるようなものではなくて、工業用の第二燐酸ソーダであったようでございます。従って、この第二燐酸ソーダの中に多量の砒素があって、その砒素ドライミルクの中に混入したということになるのでございまして、その状況について過失のあるものはこの大岡小山であるという結論に達しましたので、この二人を公判に回したわけでございます。  なお、この捜査は引き続きやっておりますので、刑事的にさらにこの過失傷害致死事件について責任のある者が出て参りますれば、そういう者に対しましては容赦なく処置するつもりでございます。
  11. 中山福藏

    中山福藏君 ここに専門家榊原博士おいでになりますが、門外漢である私には薬はよくわからぬのですが、本件は果して過失でしょうか。砒素混入の最初から、砒素というのは人を殺すものであるということはよくわかっておるのですが、第二燐酸ソーダをまぜてその中に砒素がまじっておった、しかも工業用のものである、こうおっしゃるのですが、これは砒素を食わしたら死ぬことはわかっておるのですが、これは過失でしょうか。そういう薬を混入すると人が死ぬということを知っておる以上は、これは過失じゃないのじゃないか。この場合、やはり本件過失としてお取り扱いになるのですか。それは砒素というものは耳かき一本で千匹もネズミが死ぬと私は承わっておるのですが、その事実はどうか知りませんが、それくらいに毒の成分の強いものらしいのです。それを少しでも入れれば乳児のようなものには大影響があるということは、これはわかっておるのです。わかっていながら、しかもその化学的な分析とかあるいは物理上の相当知識があるものには違いない、大岡小山は。それをわかっておって混入するということは、これはやはり未必の故意と解釈すべきで、あるいは死ぬかもしれない、死ぬことはあり得べきことだということは想像がつくだろうと思う。それは過失になるでしょうかどうでしょうか、御高見を漏していただきたい。
  12. 井本臺吉

    説明員井本臺吉君) もちろん砒素が身体に対して有毒物であるということは、われわれの常識でもございますし、世柄がドライミルクに混入されましてそして乳児に与えられるという状況を知って、さようなドライミルク製造したということになりますれば、その製造にあずかった者は殺人罪になり、あるいは傷害致死罪が成立すると思います。  本件につきましては、この起訴された被告らは、第二燐酸ソーダにまさか砒素が入っておるとは思わなかったということを、いろいろの状況から陳弁いたしまして、本人といたしましては、この第二燐酸ソーダ砒素が混入されておるものであるということについて、本人の認識がなかったという結論に達したわけでございます。従って、その事件過失事件というように考えておるのであります。しかしながら第二燐酸ソーダ砒素が混入されておるということにつきましては、お話通り、多少の薬品知識がある者であれば、当然その点について考慮しなければならないという、さような点の過失があるという認定のもとに、われわれといたしましては業務過失傷害致死ということで処置したのでございます。
  13. 中山福藏

    中山福藏君 私はこういう点から、資本家政府が味方をするという言葉が起ってくるのじゃないかと憂えるのです。森永のゆうべの放送を聞いておりますと、子供の会を通じて盛んに、森永菓子がいいですからというようなおとぎ話なんかをまぜたニュースをやっておりましたが、ずうずうしくまだやっておる。何らこれに反省の色が現われないというのは、単に大岡小山のような小物だけを処罰の対象とするだけで事が済むからということじゃないかと思うのです。私はこの第二燐酸ソーダ砒素が入っておる、それは使った人は過失だ。それじゃその燐酸ソーダ砒素をまぜたものを供給した者はだれですか、一体それはお取り調べになっておりますか。もし取調べがあったのなら、どういうふうなお取り調べになって、どういうふうな御処置をしておられるのか、承わっておきたい。
  14. 井本臺吉

    説明員井本臺吉君) この森永乳業徳島工場において使用いたしました第二燐酸ソーダ仕入れ先共和産業という会社でございまして、さらにその共和産業の先の仕入れ先松野製薬株式会社でございます。松野製薬はこの共和産業を通じまして、森永に第二燐酸ソーダを供給しておったのでありまするけれども、この供給者の方は、かような薬品食品に混入されるということにつきましては、全然考えておらず、注文者の方はボイラー洗浄用にこの製品を使うのであるというような考えで、食品用としてではなく、ボイラー洗浄用のつもりで第二燐酸ソーダを出しておるようでございます。
  15. 中山福藏

    中山福藏君 短時間の間にすべてを究明するということはとても不可能だと思いますから、いずれまた席を改めて御質問申し上げますが、私は幾多可憐なる幼児生命に関する問題でありますから、ぜひ世間の満足するようなお取調べをやっていただきたいということをお願い申し上げます。  そこで法務大臣が幸いおいでになりましたから、ごく平凡な常識的なことをお尋ねしておきたい。先般森永キャラメル砒素事件に関して川崎厚生大臣放送を聞いておりますと、こういうことを言っておる。森永ミルクキャラメル会社において損害の補償が不十分であるときには国家がこれを補償すると、川崎厚生大臣は明らかに放送でそう言っておる。これは連帯的な立場にあります国務大臣発言なのであります。それで法務大臣はこれと同じ考えを持っておられるかどうか、承わっておきたい。
  16. 花村四郎

    国務大臣花村四郎君) 川崎厚生大臣がさような放送をしたかどうか私は承知しておりませんが、川崎厚生大臣がかりにただいま言われたようなことを申されたと仮定をいたしまするならば、私の意見は必ずしも同一ではない、こう申し上げてよろしいと思います。
  17. 中山福藏

    中山福藏君 もちろん本件当該主管大臣川崎厚生大臣だと思うのですが、まず川崎厚生大臣がそういう処置をとるということになりましたならば、法務省としてはこれに対してそのまま見送られますか、あるいは何らかの発言をして、川崎厚生大臣の行動をとめるというようなな考えはあるのですか。
  18. 花村四郎

    国務大臣花村四郎君) これは厚生省所管に属することでありまして、法務省でとやかく申し上げる権限を持っておらぬのでありますから、その厚生省処置に対して今日法務大臣としてこうすべきものであるというようなことをあらかじめ申し上げることは、これはとうていできないと申し上げていいと思うのでありますが、その点は一つ、詳しいことは厚生大臣の方へ御質問を願いたいと思います。
  19. 中山福藏

    中山福藏君 厚生大臣に今日ここへ出席してもらって質問しようと思っておった。ところが、ニュージーランドにけさ飛行機で飛んでしまった。これは呼ぶことができぬから、あなたにお尋ねするのでありますが、いやしくも内閣の一員である法務大臣が、そういう放送は知らぬ。こういうことは重大な人権に関する問題なのであります。少くともこういう問題が起ったときにこそ、閣議の劈頭にこれはお出しにならなければならぬ問題だと思う。それを相当の時期を経ておる今日、法務委員会に出てきて、そういう放送をしたかどうか知らぬというようなことで人間のとうとい生命を保護するということができるでしょうか。私はその片りんの言葉を伺って実に悲しむのです。そういうお言葉を承わるということを悲しみます。私はこの問題についてまた十分政府意見をおまとめになり、実に気の毒だ、五十余名の幼児が死んだことで、少しは良心的にこういうことに対する政府のまじめな方針をおきめ下さってもいいのじゃないかと考えるのです。それが仮定とかなんとかいう問題で、所管が違うから、そういう問題は川崎厚生大臣に聞いてくれじゃ、私どもは、実際人権擁護立場にあります法務委員会としては、これは先ほど申しました通りに、まことに不愉快なことであると断言するものであります。  それで先ほどから刑事局長にお伺いしておるわけですが、どうか川崎厚生大臣もいずれお帰りになるでしょうから、また臨時議会も開かれるでしょうから、そのとき重ねておあいいたしますから、政府の本問題に対する方針をきめていただきたい。何もあらためて厚生大臣にかれこれ言うていただこうとは思いませんけれども、これは内閣全体としての立場を明らかになさらないと、単なる一森永会社の問題じゃなくて、これはこういう、金さえもうかれば毒でも何でもまぜていいというような感じを製薬会社に与える原因にもなるのではないかと私は思う。私はそんな粗略な取扱いをいたすべきじゃないと考えますから、ただいまこの問題についてお尋ねしたわけであります。他の委員もおられますから、私はこの問題についてはこれで打ち切って、次回に譲りたいと考えます。
  20. 榊原亨

    榊原亨君 刑事局長にお伺いいたしますが、森永が使用いたしました第二燐酸ソーダ当局においては分析されておりますですか。
  21. 井本臺吉

    説明員井本臺吉君) 分析検討したようでございます。
  22. 榊原亨

    榊原亨君 普通ボイラー洗浄用に使います第二燐酸ソーダと今度森永が使いました第二燐酸ソーダ砒素含有量について、違いはございませんですか。  時間がございませんので、あとからでも今のお話はけっこうでございますが、もう一点、私が承わりたいと思いますのは、徳島工場でその当時作りました菓子について、検察庁は御検討がありましたでしょうか。
  23. 井本臺吉

    説明員井本臺吉君) ドライミルク関係だけ取り調べておりますが、その関係だけでも実は大へんな数でありまして、われわれの方にわかっております分を見ますると、実は死亡者が五十五人、重症者が五百五十一人、患者の数になりますと七千四百四十というような数でありまして、これは、最も多い岡山、広島、兵庫以下二十数県にわたっておるので、その全部について取調べを進めておるような実情でございます。
  24. 榊原亨

    榊原亨君 森永が使っておりますカルシウムについて、検察庁において御検討がありましたでしょうか。
  25. 井本臺吉

    説明員井本臺吉君) カルシウムにつきましても当時検討いたしまして、そのカルシウム関係では砒素は検出されなかったというふうに聞いております。
  26. 榊原亨

    榊原亨君 先ほど中山さんが再三刑事局長に御質問になり、あるいけ法務大臣お話しになりました点は、こういうふうな食品中毒ということを、単に厚生省にまかせておくだけでは安心ならないじゃないか。在来の場合であればいいのだけれども、今度のような事件が起れば、なおさらこの方面についても法務省関心を払わなければならないじゃないか、こういうお話だったと思います。ところが、刑事局長のこれに対するお答えはどうかというとそれもそうだが、とても忙しくてそこまで手が伸びぬというお話でありますが、少くともこの森永事件が起りまするならば、その森永製品については十分の御検討がなければならぬと思う。忙しくて困れば、さらに予算の予備費をお使いになってもいいのであります。十分御検討がなければならないと思いますのに、私が今三点を承わりましても、その点の御検討知識も何にもないようなふうなことにつきましては、私は非常に驚いておる。これは中山委員が御指摘になった通りだと私は思う。  この第二燐酸ソーダにいたしましても、これは衆議院の社会労働委員会でも問題になったんだと思うのでありますが、第二燐酸ソーダ製造過程におきましては、砒素がそれほど入るという過程はないんだ、あれほど中毒を起す砒素が入る過程製造過程においてはない。ところが、この場合にあれほどの中毒を起すということになりますというと、これはどうしても第二燐酸ソーダでなしに、砒素ソーダでも間違えられたんじゃないかということは、識者がみんな思っておる。そういう点の科学的の御検討がない。今の説明によると、まだこの森永お菓子、その当時のお菓子調べられたと申しましても、そうでない。私、ちゃんと調べてきた。そういたしますと、その当時あの中毒を起しました牛乳を集荷いたしまして、そうして一応このドライミルクを作りました残りの半分は菓子に使っておるのであります。私その工場長から直接聞いておる。そういたしますと、安定剤として第二燐酸ソーダを使ったならば、あるいはその当時作った菓子に使われたかわからぬ。ところが、菓子は一つ一つ食べるから、そう中毒は起さぬかもしれませんけれども、少くとも当局関心を払われますならば、その当時作った菓子についても検討がなければならぬ。忙しくてしようがないからといって、たくさん人数が要るから、ドライミルクだけやっているということでは、そんなことでは私は刑事上の責任を果すことができないと思うのであります。その当時集荷された半分のミルク菓子に使っておるのであります。そういうことをあなたは御存じない。そこで中山委員がそのことをついておられる。  またカルシウムには砒素はありません——。そうじゃありません。私はカルシウム調べてきた。これは当然日本薬局方カルシウムを使うべきにかかわらず、森永日本薬局方という名前も使っておりませず、ただ工場で、食品に使うとも何ともかまわずに、カンを持って来まして、そのカンの中の工業用に使いますところのカルシウムを使っている。こういうことにつきましても、相当森永幹部に対して責任があると私は思うのでありますが、ただ先ほども二人の者だけを、その徳島工場だけの者をやる。そのカルシウ人は徳島工場だけでなくて、ほかの工場もみんな使っている。それはどこのカルシウムか知りませんけれども、少くとも法に違反しておると私は思うのでありますが、そういう点について検察当局はどういう態度をもって追及されているか。はなはだ大事件、洞爺丸事件以上の、紫雲丸事件以上の大きな問題について、検察当局の怠慢と申しますか、忙しくて仕方がない、予算がなくて困るということだけでは済まされぬと思うのでありますが、その点はいかが思っておられるのでありますか。
  27. 井本臺吉

    説明員井本臺吉君) われわれといたしましても、可憐な乳幼児がこの毒物によりまして相当死亡しておりまするし、私どもの手元に罹病者の写真なども来ておりますが、まことに何とも言いようのない状況でありますので、この責任者に対しましては厳重に追及するという気持は十分持つております。この第二燐酸ソーダの問題につきましても、ようやく調べの結果この段階に到達いたしましたのでありまして、私ども調べといたしましては、この中毒事件は、第二燐酸ソーダ工業用燐酸ソーダであって相当砒素が入っておるというところから、かような中毒事件が起きたということで、このドライミルク砒素混入と思われるものにつきましては厳重に回収を命じまして、再び販売されるということのないようにいたさせておるつもりではございます。なお御指摘の点もありますので、さような砒素混入ドライミルク菓子製造に使用されておったかどうかというような点につきましては、さらに検討をいたしたいと考えております。
  28. 榊原亨

    榊原亨君 もう一つあなたに申し上げたい。菓子製造ドライミルクが使われたと私は申し上げたのではないのであります。牛乳を集荷いたしまして、その半分をドライミルクに使っておる。半分は練乳にいたしまして菓子製造に使っておる、こういうことを申し上げておるのでありますから、誤解のないようにお願いいたします。従いまして、この問題については、ここでこれ以上御追及を申し上げるのも無理のことと思いますが、もう少し法務省としては、厚生省ばかりにまかしておかずに、予算がなければ予算の予備費なり何なりをとって、徹底的にこの問題を洗っていただきたい。厚生省にはそういう検察当局のような徹底的に洗うというようなことはできない。これはどうしても法務省当局責任において明らかにされるべきものだと思うのでありますが、それは単に当事者二人をつかまえてきて、砒素があるとかないとかいうことだけでなしに、先ほど中山委員のおっしゃった通り、これはすべての面においてこの問題について御究明願うことを私は重ねて要望いたします。
  29. 藤原道子

    藤原道子君 私はただいま中山委員並びに榊原委員の申されたことに全く同感でございます。ことに私は遺憾に思いますのは、当然薬局方の薬を使わなければならないのに、それを第二燐酸ソーダを使っておる。工業用の薬を使っておる。そうしてこの起った事件に対して、当局のお調べが私はどうも手ぬるいと思うのです。中山委員からも言われましたように、当面責任者だけが処罰されて、そうしてそれが上の方には及ばない。しかも今伺っていると、お菓子に使った方面については何ら調査がなされていない。こういうことに対して私たちは、まあ特に母親の立場考えるときに、ふんまんやる方ないものを感ずるのであります。もっと真剣に御調査願って、もっと責任の所在を明らかにしていただきたいということを刑事局長に要望いたしますと同時に、人権擁護局長にお伺いしたい。ことは赤ちゃんの問題、先ほど来井本局長は五十何名とか言われましたが、過日厚生大臣に伺いましたら、死亡者は六十名を数える。それから被害者は九千人を突破しておる。一万に近い人間が、しかも是非をわきまえない、与えられたものを飲んだそのことによって生命を失っておる。しかもこれに対して、森永はその被害者の親たちに対して、あなた方の言う通りなことをすれば森永はつぶれてしまう、森永をつぶすわけにはいかないから補償ができないというようなことを公言しておるのです。一体こうした場合に人権はどういうふうにして守られるのでございましょうか。ことに今森永がやっておるのは、死亡者二十万円ですか、重症者に一万円、軽症者には三千円出されたばかりなんです。あとは何にも補償していない。しかも入院しておる者にはつき添い料を出しておるけれども、通院しておる者には出さない。合併症は知らない。直接ミルクによって起った症状の者は責任を持つけれども、それによって起る合併症に対してはどうも責任がないというようなことを言われておる。過日も団体交渉等において若干獲得したようでございますけれども、そういう考え方が許されていいのかどうか。そういう場合にあなた方はどうしてそういう人命をお守りいただけるかどうかという点を、この際一つ明らかにしていただきたい。  症状に至っては、私も時間がないから多くを申しませんけれども、聞くにたえないような症状によって赤ちゃんが死んでいっておる。後遺症は残るか残らないか、まだわからない。後遺症なんというものは起ってからのことだからというようなことをいって、責任を転嫁しておる。こういうやり方に対して、このまま通るようならば、世の中はやみだと思う。ことにほかの工場では薬局方の薬を使っておる。徳島だけがやっていたようでございますけれども、非常に不安でございます、こういう点は。ことにその値段が三分の一で済むからこっちを使ったというに至っては、あまりに人命を軽んじておると思いますが、こういうことに対して局長の御見解をお伺ひしたい。
  30. 戸田正直

    説明員(戸田正直君) 人権の中でも人命の尊重ということは最も大きな重大な問題だと、こう申し上げているのでございます。特に乳幼児生命ということに関して重大な関心を持っているのは当然でございます。今回の森永乳業事件でも多数の乳幼児死亡して、被害者が九千人も、合計一万人に達することは非常に痛ましいことで、何とも申し上げようがないと思います。ただ人権擁護局の仕事といたしましては、この場合にどういうような方法をとるべきかということでございますので、これは非常にむずかしいのでございまして、実は昨年の人権週間中も人命の尊重ということを一番大きなモットーにして啓蒙活動をいたして参ったのでありますが、ただ、かような問題になりますると、具体的に人権擁護局が啓蒙活動以外にどういう措置をとるかと申しますと、従来の人権擁護局の仕事、やり方といたしましては、その具体的方策がちょっと今考えつかない。もちろんこれが刑事事件になっておりまするので、刑事の面からこれを追及し、また補償等において不十分であるならば、民事訴訟によって損害賠償をする。こういうような道がございまするのですが、人権擁護局の措置としては、人命の尊重ということに対して国民全体が重大な関心を持つということは必要でございますが、具体的方策ということになりますと、人権擁護局の権限、機構等の町からは、ちょっとそれ以上に出ないのじゃないかというような気がいたしまするので、ただ人命の尊重というものは何もの以上にも大きなものでありますので、十分そうした点についても今後検討いたしたいと思っております。
  31. 藤原道子

    藤原道子君 私は大臣にお伺いしたいと思います。この問題は直接には厚生省の問題だという考えが頭に非常にこびりついていると思うのですけれども、それに対して先ほど来のお話を伺っていると、榊原さんが指摘されたように、予算がないから十分な仕事ができないというようなことを言っている。厚生省の方ではやはり予算に制限されて、食品衛生監視員というのですか、あれが非常に減らされている。予算のために命が軽んぜられ、大事な食品を担当する監視員までが制限されているということになると、どうも人間よりも物が大事にされているというようなことで、非常に不安になるわけでありますが、大臣はこの事件の追及に当って、予算が足りなくてやれないという場合には、予備費を使っても徹底的におやりになる御決意がおありでございましょうか。もっと人間を大事にしてもらいたいと思うのでありますが、その点に対して大臣の御見解を一つお伺いしたいと思います。
  32. 花村四郎

    国務大臣花村四郎君) 犯罪を追及いたしますることにつきましては、予算の多い少いにかかわらず、徹底的にその所期の目的を達成すべく検察事務の推進をはかって参らなければならぬことは当然であります。当然でありまするが、しかし、ただいまお話のありました森永のこの食品に関しまする事案については、むしろこの犯罪に直接関係のありまする食品については、これは当然検察の面から申しまして、その品物が果して適正なるものなりやいなやという点について、あらゆる観点からこれに対して検討のメスを加えて参りますことは当然でございまするが、しかしそうかというて、ただいまお話のありましたように、菓子にまでその犯罪の起きましたところの原料がまじっているという見地に立って、そのすべての食品まで検査あるいは捜査の対象として考えるべきであるかどうか、これは相当に重大な問題でありまして、この点はむしろ犯罪捜査の見地から考えるというよりも、むしろ保健衛生の上からやはり厚生省において、果してそのような人体を害するがごとき要素を含んだ菓子を作っておったかどうか。そうしてその品物はどういうことになっておるかというような、食品に関することは少くともこれは厚生省でやるべきことであり、また厚生省所管とも相なっておりまするので、この点についてやはり法務当局日本全国に散在しておりますところの菓子までも、やはりこの捜査の対象として考えていくというようなことは、これはむしろ権限を越ゆるもので、私は適当じゃなかろうと、こう考えます。従いまして、予算がないからそういう面を調べられなかったというよりも、むしろ厚生省の権限に属するものであって、法務省としてはそこまでいくべきものではないという見地に立って、やはりそういう問題も考えなければいけないじゃなかろうか、こう思います。そこまで法務省が子を伸ばしてやっていき得ることになれば理想的でしょうが、法務省はやはりそこまでやらずに、厚生省の権限に属することはやはり厚生省にまかしていく、自分の分限を守っていくという方途を講ずることがいいのじゃなかろうかと、こう思います。
  33. 藤原道子

    藤原道子君 ちょっとおかしいのですけれども、私たちすべてのお菓子まで調べろというのじゃないのですよ。工業用の薬は価格が安いから使った。その中に毒があったのですよ。それで多くの子供の命を奪ったのです。ここが犯罪に対する分れ道じゃないでしょうか。ところが、その中の半分はドライミルクに使われたけれども、半分は練乳に使われていると榊原委員が言われているのです。だから、その点についての検討がなされたかどうか。そこまでは予算がなくして手が伸びなかった。それはそれでいいのですが、何といいますか、カルシウムを検査したかというようなことに対してのお答えだったと思うのです。聞き違いだったら訂正いたしますが——ということになれば、それもやはり厚生省所管だから、法務省は知らぬといってお済みになるのでしょうか。犯罪はあくまで追及して、とことんまでいかなければ、犯罪の構成は、最後の終結は出ないじゃありませんか。
  34. 井本臺吉

    説明員井本臺吉君) 記録を急に取り寄せましたので、私忘れておりまして、いろいろお答えいたしかねたのでありますが、ずっと読んでみますると、この事件の発生の経過に、いろいろな点から毒物を検討いたしております。このビタミン、滋養糖、コロカルシウム、乳酸鉄など十二種の添加物に対しましてしさいに検討いたしましたけれども、かようなものにつきましては全然人体に悪影響を与えるというような疑問の点はなかったのでございます。ただ、問題の徳島工場ドライミルクだけが砒素があったという結論に達しまして、そのほかのものにつきましては毒のある状況が見られなかったわけでございます。従って、この徳島工場で一定期間に作られたドライミルクに何ゆえ砒素が投入されたかという点をしさいに検討いたしました結果、結局、この第二燐酸ソーダが見られ、製造過程における安定体として使われたという点がはっきりいたしまして、その安定休の第二燐酸ソーダがどこから買い入れたものであるかというような点をいろいろ検討いたしますると、これが先ほど申し上げましたように、工業用の第二燐酸ソーダだったということがわかりまして、その燐酸ソーダ検討いたしました結果、一グラムにつきまして三%ないし五%の砒素の検出がなされたのであります。従って、原因はこの第二燐酸ソーダドライミルク製造過程に使われたということがわかって、この砒素原因がはっきりしたわけでございます。従って、このドライミルク以外に使われたミルクに、ただいまのところ、砒素が混入されてそのまま菓子などに使われたという状況は全然ございません。
  35. 中山福藏

    中山福藏君 ちょっと牽連して。私いろいろ承わっておりますと、厚生省責任が非常に本件については重大であるというような範囲、なわ張り争いというような観念のもとに、法務大臣がいろいろお答えになっておりますが、大体薬事問題につきましては、これは司法処分と行政処分が二つ重なっておるのですね。しかもその基本は一つなんです。ただ、行政処分と司法処分の範囲というものに幾分の食い違いもありますけれども、結局は一つだから、司法処分をやるにしても同じ検討をやり、同じ捜査をやらなければできぬという、たとえば麻薬取締法のごときは、薬務課というものが各府県にありまして、これが一通り調べ、これが検察庁に回ってくる。もしも薬事法に違反があるというときに、検察庁に回ってきたら、これに検事が出張する、あるいは自分のところに召喚して薬事法違反であるかどうかということを、同じように調べる。だから、予算がないということは問題じゃない。当然その責任があり、本問題についても燐酸ソーダがどうかという問題については、これは当然同じ捜査をやらなければならぬ。そして一方において司法処分をやり、一方においては行政処分が伴う。これが裁判所に起訴されて、裁判官が同じまた捜査をして、一つの鑑定あるいはその捜査に基いた鑑定をちゃんと大学教授とかいろんな者にやってもらって、初めて判決なんです。ところが、起訴されるにはどうしても、検察庁においてこれはやはりその捜査をなさらないといかぬ。予算の問題とかなんとかいう問題じゃない。これは当然の私は責任だと思う。私は厚生省の役人がこれを取り調べなければならぬという仰せはちょっと腑に落ちかねるのですが、法務大臣、どうですか。
  36. 花村四郎

    国務大臣花村四郎君) ただいま中山委員の言われた一部はしごくごもっともでありまして、司法処分の対象となるべき資料については、もちろんこれはあらゆる観点から、司法処分を行なって参ります過程において調査をいたして参りますことは、これは当然であります。でありますから、従って、この犯罪が起きたその原因となるべき資料について分析、検討を行なって参りますることも、これまた当然でありますから、従って、森永ミルクの問題についても、司法処分に関係のありまする部分については、今局長が申し上げましたように、事こまかに調査を行なっておるのでありまして、この点については別に厚生省処置等を考える必要はないことは、これまた当然であります。が、しかし、それ以外の食品につきましては、これは検察当局がかれこれ申し上げたり、あるいはなすべきことでないことも、これまた明らかであります。それは食品衛生の面からやはり厚生省でなさねばならない規則もできておるのでありますから、その規則にのっとってしかるべき運用をしていくべきものであって、その点までもこれは法務省で立ち入って容喙すべきものでないと、こう私は考えてよろしいと思います。
  37. 中山福藏

    中山福藏君 そこが非常に私は解せぬのです。なぜ解せぬかといいますと、すでに事件として検察庁の問題になっておる。なっておる以上は、その犯罪の証拠の範囲というものが、八千余人がそれを食して、そして被害を受けておるという嫌疑が顕著なんです。そういうふうな証拠というものは現われておるのに、その捜査を一部に限定して全部に波及させないということが、私ども法務大臣のお言葉として受け取れぬのです。なぜそれをおやりにならぬのか、それが不思議でしょうがない。すべての問題は、本件に関する限りは、すべての証拠を収集なさらぬと、いかに費用が要ろうが、人員がそれについて必要であるかどうかということは問題じゃなくて、すべての証拠について一応の御捜査の上取捨選択をして、起訴すべきものは起訴し、起訴すべからざるものは起訴猶予にすると、こういう処置をおとりになるのが当然の私は心がまえではないかと思うのですが、それを一部に限定して、そこまでは手が伸ばせぬというのは、私どもは腑に落ちぬのですがね。
  38. 花村四郎

    国務大臣花村四郎君) 私は一部に限定するということを申し上げたわけじゃないので、犯罪捜査官に関係のある資料に関しましては、それはすべてにわたってやはり捜査を進むべきものでありますることは当然でありまするから、決して一部に限定するというようなことは考えられないことであり、また、ただいま刑事局長が申し上げましたごとく、これも捜査の一部を申し上げたにすぎないのでありまするが、よって生じて参りました犯罪の資料に対しましては、事こまかにすべてにわたって調査並びに捜査をいたしておりますることは当然であります。が、しかし、ただその犯罪の起きました資料と関係のある食品、その関係と申しましてもどの程度の関係でありまするか、深い関係のありまする場合においては、あるいはそういう食品の販売を禁止するというような措置もとらせることのあり得ることは、これは当然でありまするけれども、先ほど榊原委員の言われたようにその他の多くの日本全国に散在しておる菓子にまでも調査の手を伸ばさなけりゃならぬじゃないかというようなお説は、これはその犯罪捜査の面から見て必ずしも私は適当ではないと、こう考えておるわけでありまして、そういう面はやはりその事項を所管しておりまするところの厚生省法規にのっとってなすベきものであると、こう私は申し上げたのであります。
  39. 藤原道子

    藤原道子君 私、納得しがたい点が多々ありますけれども、これは後日に譲りますけれども、ただ、大臣に最後に一口申し上げたいのは、先ほど榊原委員はすべてのお菓子調査しろとは言っていない。砒素のまじったミルクた使ったお菓子とこういうことを言っておる。すべてのお菓子ではない。それは一つ誤解のないようにしていただきたい。
  40. 花村四郎

    国務大臣花村四郎君) 私もすべての菓子というのは砒素の入っておったと称する巣子の意味ですから、すべての菓子という意味ではありません。ほかの菓子の中にも砒素の入っておった食品相当にあったというお話であったのですから、その砒素の入っておった菓子を意味するので、すべての菓子というわけではありません。  それからなお菓子が今まで問題になっておったのですが、これはやはり法務省並びに厚生省調べた結果によりまするというと、菓子は問題になっておらないのです。むしろドライミルクが問題になっておったわけですから、従って、先ほど榊原委員の言われたことはどういう意味ですか、あるいはそういう資料がどこかにあったのでありますか、法務省調査によりまするというと、菓子は問題になっておらぬと、こう申し上げておるのであります。
  41. 赤松常子

    赤松常子君 私、簡単に人権擁護局長お尋ねと要望を申し上げておきたいと思います。このドライミルク事件で、今さまざま被害者及び死亡者がたくさん出ておりなすが、その被害者の親たちが、自分たちのかわいい子供を思いがけなく死なしたというその悲嘆の中に、いろいろとまた今後もこういうことがあってはならないという気持もございまして、被害者の方々が一つ団体をお作りになった次第です。それはまことに私どもは、こういう現象が起きるということが悲しいことなのでございまして、今度の問題は権利とか義務以前の問題だと思うのです。人権を守り人命を尊重するためには、あらゆるものに先立ってやられなくてはならない、こういう考え方でございますのに、なぜこういう被害者の方々が同盟を作って、そうして森永会社に陳情、嘆願に行かなければならないというような現象が起きておりますことは、今申し上げますように、人道問題ということをふみにじられていて、今申し上げますようないろいろな治療費などに対して、こちらから言わなければ、なかなか会社が出してくれないというような険悪な状態になっておる次第です。それで私はこういう団体ができたそのことが非常に悲しいことだと思うのです。こういうことをしなくても、会社側で十分な、治療費及び弔慰命はもとよりでございますけれども、陳謝して、そうして謙虚な態度でそういう人たちに対する補償、弔慰をしなくちゃいけないと思いますのに、ちょうど労使関係みたいな間柄になっておる次第です。この間もその代表者に会ったのでございまするけれども、ほんとうにもぎ取るようにしなければなかなか出さないというような対立の形になっているのです。それで特にひどいところの人々は、連絡のとりやすいところの被害者の人々は、こういう会を作っておるわけですが、北陸方面の人々は全然泣き寝入りでいた次第ですが、こういう会ができたというので、実は北陸、たとえば福井でありますけれども、こちらにも相当被害者が出ておる。けれども、何ら会社がかまってくれない。地方出張所に交渉しても、それはみな本店の権限にあるのであるから本店に相談してくれといって、地方の出張所の人は責任を回避しておるというような杉で、やむなくそういう会に入らざるを得ないというようなことも私聞いておるのであります。それでまあ繰り返して申し上げますように、具体的には経営、それから資本というものが人命に先立って尊重される、そういう思想がまだまだ根深く残っておるという、こういう事態に対しまして、ほんとうに私どもは遺憾に思うのでありますが、まずお尋ねいたしたいのは、そういう被害者の団体ができていることを御存じでございましたでしょうか、そのあとの始末がどういうふうになされておるかということを御存じでございましたでしょうか、それをちょっと伺いたいと思います。
  42. 戸田正直

    説明員(戸田正直君) 被害者の方々が集まられて会を作っておられるということは、うわさ程度は聞いておるのでありますが、実態がどの程度になっておるかということは、大へん申しわけないのでありますが、まだ調べておりません。ただ、そういう会ができておるということだけは聞いております。
  43. 赤松常子

    赤松常子君 どうぞ要望いたします。福井県の例にならいまして、きっとまだまだ、その被害者の人々が声なく黙って泣いておる実態があると思うのです。その点、どうぞこの人権擁護立場から、その同盟の人々がどういう気持でおるのか、今会社との間にどういう交渉が進められておるのか、そういうことに対しましてどうぞ人権擁護立場から十分御調査を願い、そうしてあくまで物質が人命に優先するという考えに対しまして、人権擁護立場から、そういうことのないように、たとえば、今申しますように早く解決して、同盟の人々が会社に血眼で押しかけていくというようなことのないように、これはどうぞ何らかの角度から一応御調査なさって、早くこの事態の解決に、これはもちろん厚生省の御管轄でもございましょうけれども人権擁護立場からも、何かそれに関連をもってこの事態の改拾に当っていただきたい、これを私はお願いいたしたい。今申しますように、調査を十分お願いいたしたいと思います。
  44. 戸田正直

    説明員(戸田正直君) 先ほども申しましたように、人権の中で一番最大のものは人命でありまして、人の生命であります。従って、人権擁護の面から人命が一番最優先しなければならぬことは、これは申し上げるまでもありません。ただいまの赤松委員のお気持は十分私どもの方でもわかるのでありますが、ただ、先ほども申し上げましたように、人権擁護局として具体的にどういう処置がとられるかということになりますと、ちょっと私困難ではないかと思います。大へん御期待に沿えないようで申しわけないのでありますが、困難ではないかというふうに考えます。  もちろん森永としては、人の生命に対してできる限りの補償をするということは、これはもう当然なことだというふうに考えております。従って、死亡者二十万円であるとか、あるいは一万円、あるいは軽症着三千円とかいうようなことが補償されているようですが、果してそれで十分だというふうに私は考えておりませんが、ただ、その場合にどういうふうに本局としてするかということになりますと、私の方の所管としては具体的にちょっとその方法が見当らないのでございまして、その補償に対して十分でないということになれば、その救済法としては民事の損害賠償の請求による。また裁判所といい、あるいは検察庁といっても、これもやはり人権擁護の仕事の一面を持っている役所でございますので、やはり人権擁護の救済方法としては、刑事の場合においてはこれを処罰し、民事の場合においては損害賠償をとるという、社会制度としてはそういう方法がとられております。それ以上に人権擁護局としての考え方として、先ほど申し上げたように、どうもそういう取扱いでいいかどうかということになれば、これは私はもっともっと生命というものを尊重されるという方法がとられていいのじゃないか、こう思うのでありますが、ただ具体的な方策ということになりますと、一応方法が実は考え当らないでおるのでございまして、これも考え方としてはもう少し私どもは十分検討いたしたい。また啓蒙活動等において、こうした問題もそういう面からいろいろ努力いたしたいと、かように考えておりますが、人権擁護局はやはり法務省の一局になっている役所でございますので、いろいろそうした、何と申しますか、陳情その他と一緒になってあれするということも、ちょっとむずかしいのじゃないかというような感じがいたしておりますので、ただ人権擁護委員会等のこの制度の方を多少動かすといいますか、活用すれば、あるいはどうかということも多少考えておりますけれども、今のところ大へんに、何と申しますか、御期待に沿えないような答弁で何ですが、これというような方策は実は今考えられておりませんので、もう少し十分検討いたしたいと、かように思います。
  45. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 関連して。花村法相に御意見を伺いたいのですが、この事件の非常に深刻な重要な意義は、十分法相も認識されておられると思うのです。もちろん人の命を奪うということは、いかなる場合にも、最も深刻なことですけれども、しかし多数の乳幼児生命を失ったということは、やはり一大不祥事といわなければならない。その結末をあなたは法相としてどういうふうにおつけになるおつもりであるか。法相のお持ちになっておる——私の申し上げていることをよく聞いていただきたいのです、あまり技術的なことを伺っているのじゃないのですから。法相のお持ちになっている権限というものは実に大きなものである。うらやむに足るほど……。ことに政治家として十分な識見を持っておられる。私はごく最近本委員会から派遣せられて釧路に参りましたが、あそこであなたがお書きになった色紙に、友愛という字をりっぱにお書きになっておられる。また現在の首相もそういう精神でおられる。それを色紙にお書きになられ、演説されるだけじゃなしにです、可憐な乳幼児生命が奪われて、多くの母親が取り返しのつかない悲しみの中に沈んでいる。法相も人の親であられましょうし、私も自分の幼児を失ったことがありますが、その幼児が呼べど帰らない。しかもそれが偶然とかなんとかいうのじゃなく、先ほどから赤松委員のおっしゃるように資本の利益のために安い薬品を用いるというふうな考え方ですね。しかもそれが日本ではまず第一流の会社考えられて、その商標というものに対して母親なり子供たちが深い信頼を持っている。無名の会社じゃありません。やはり森永といえば、ちょうど言論界における朝日とかいうようなものに当るような、非常な信頼をそれに寄せている。またその信頼をある意味においては、利用するというと語弊がありますが、その信頼に相応する非常に大きな広告をやり宣伝をやっておられるのです。これは場合によっては、法相の政治上の御意見に一致しないかもしれませんが、こういう児童のミルクというふうな問題については、国がかなり高い責任をやはり負われる必要があるのじゃないか。で、法相の所属しておられる政党としても、必ずしも資本の利益を優先して、可憐な児童の生命が失われるということを軽くごらんになるという御趣旨は毛頭ないと思う。また友愛の精神からいっても、そういうことは毛頭ない。先ほどから各委員がお述べになっておるその要点は、要するに、この問題をもっと重大にお考えになるべきじゃないか、また国民はそれを要望しております。私どもも至るところでこのことを聞く。どうして現在の政府はこの問題に対してもっと重大に、そうしてもっと大所高所からの処置をとられないのか。  そこで二点について伺いたいのですが、一つはやはり、特に現在の資本主義の社会でありますから、利益ということを無視するということは、もちろん現在の政府の政治上のお立場としては困難でしょうけれども、それにしましても、可憐な児童を対象にして安い製品を使うというふうな考え方をこの際一掃せられるために、先ほど中山委員も御質問になっておるように、この責任をつまりごく低いレベルに追及せられるにとどまらず、かなり高いところまで御追及になるという政治上の識見をお持ちにならないか。私は森永会社の経営の方針として、やはり児童の生命を尊重するというよりも、少しでも安い薬品を使えというような方針があったのだろうか。そうでなければ、直接関係せられたその会社の方々にしても、自分にもかわいい赤ちゃんがいることだろうし、このミルクを赤ちゃんが飲むのだと思えば、消毒用の薬品ドライミルク安定剤として用いるなんということは考えられない。そういうことを下級の人がなさる、安いものを使って赤ちゃんの口にそれが入るよりにするということは、会社方針の上にやはり営利第一正義というものがあったのじゃないか。児童を営利第一主義の対象にするということを法相はこのまま黙って見ておいでになるおつもりかどうか。そういう点で十分高いところまで追及せられるべきじゃないか前にも例のDDTの問題やなんかでもってかなり、こういう問題がいつも低いレベルでだけ責任が追及せられているのでは、根絶できないのですよ。ですから、法相が現在法務大臣という高い地位と、そうして大きな権限とを持っておられて、この問題を単に低いところで、出たところで、そうしてある程度まで技術的に追及するというのに満足せられるのか。それとも、児童をそういう営利の対象にするということを根絶するという意味で、かなり高いところの責任を追及せられるというお考えがないか、これが第一点です。  それから第二点は、やはりこういう際に、ある意味においては政府は罪滅ぼしをせられる必要があるのではないかと思う。今申し上げた第一点にしても、どこまで追及するかということは現在の法制上ではなかなか困難だと思います。それをあくまでやっていただくことを要望するのですが、しかもなおこういう事件を根絶するためには、私はあなたが法相として相当罪滅ぼし的な気持で、一つここで大きな手を打たれる必要があるのじゃないか。その一つが、先ほどから伺っておる人権擁護局の機構、機能というものが、実際われわれ国民から見て歯がゆいというか、不満にたえない。そこでやはりこういう問題がほかにも、最近人権が尊重されていないということが毎日のように起っている。鳩山首相のもとに、そうして花村法相の責任を持っておられる現在に、人権の尊重せられないという事実が多々起る。これに対して、あなたはやはり政治家として後世に残るような仕事をされる御量見はおありにならないですか。その一つとして、この第二の点、人権擁護局というものが実際不十分です。これはことに法務省の内局として存在しているために、動けやしないのです。現在の局長は十分御尽力になっておるのでしょうが、先ほどからのお答えのように、啓蒙宣伝くらいしかできない。そういうような意味において、独立の権限をもう少しお与えになったらどうか。そういう意味では、人権擁護局のあり方についてあなたにも考えがあるのじゃないか。あるいはこれを外局として独立させて、十分の権威をもって社会に対して人権を尊重すべきゆえんを徹底せしむるというようなお考えがないでしょうか。以上三点。  なかなか母親の悲しみを救うことはできないし、その往きて帰らない幼児生命を取り戻すことはできないのだが、これは実に重大な問題だから、最後の大所高所に立ってのあと始末をあなたはどうなさるおつもりか。今の二点のような御尽力があれば、あるいは多くの母親の心を幾分慰めもし、幼児の霊を慰めるということにも幾分なるのではないかと思うのです。今の二点について、あなたの特に信念に基かれた高い認識を示されたいと思います。
  46. 花村四郎

    国務大臣花村四郎君) ただいまの御質問でありまするが、第一は刑事責任に関するお話でございましたが、私も大体においてお説ごもっともであると申し上げていいと思います。多くの人命を失ったこの事案に対しましては、検察当局といたしまして事こまかにその真相を調べまして、そうして少くとも刑事責任を持ち得るものに対しましては容赦なく、断固として刑事訴追をするということで、何ら仮借するところなく進んで参ってきておりまするが、しかし御承知のように、刑事責任と申しましても、法律に準拠してその責任を追及して参らなければならぬことは当然でありまするから、ただ感情や気持の上から軽卒に扱うというわけにも参りませんので、従って、刑事責任追及に関しましては、当然そこには規制があると申さなければならない。すなわち法律の規定にのっとって、そうしてあくまでも厳正に、公平に、厳重にこれを追及するという方途を講じなければならないことはきわめて明瞭でございまするので、従いまして、その線に沿うて検察当局も進んで参りまして、起訴すべきものはすでに起訴もいたしております。なおその後調査も進めておりまするので、すべての捜査が完了すれば、その刑事責任ははっきりとしてくることであろうと存じます。  さらに第二の問題は、人権擁護局の問題でありまするが、これとても仰せの通りであります。が、しかし遺憾ながら、予算が伴いませんので、従いまして、われわれの理想通りにこれを運営していくということもできないことはまことに遺憾であると考えますが、しかしわが国の貧弱な財政の上から申しまして、こういう面にやはり思う存分の予算を投じ得ないこともまた、これやむを得ないことでありまして、従いまして、与えられたる予算のうちにおいて創意工夫こらし、あらゆる努力を傾倒してその成果の大きいことを念願として進んでおるような次第でございます。先ほどからだんだんお話のありましたこの森永ドライミルク中毒事件に関する人権じゅうりんのお話でありまするが、これはただいま局長から詳細に述べられたように、なかなかこれは人命を矢っておりまする大きな問題ではありまするけれども、しかしこれはやはり法律的にいえば、損害賠償の問題に帰着をいたすのでありまして、この損得賠償の問題がどういう形において解決されるか、これがなかなか重大な問題であります。おそらく訴訟に相なりましても、また訴訟のうちでも損害賠償事件というものは一番これはむずかしい事件とせられておるだけに、こういう問題に対する損害賠償の問題もなかなかこれは容易ならざる事案であると、こう私は申し上げていいと思う。どの程度の賠償をすべきか、幼児をなくした人に対してどの程度の賠償をするのがいいか、あるいは人命を失わないにしても、病院等へ収容された人にどの程度の賠償をしていいのであるか、これはなかなかむずかしい問題でありまして、もし裁判になったとしても、裁判官の相当頭を悩まし、あらゆる観点から考究せられる問題でありまするので、従って、これを直ちに人権擁護の面から見て法務当局が取り上げて、そうしてこの問題に関係を持つというようなことが果して妥当であるかどうであるか、こういう点を考えて参りますると、法律的になかなかこれは簡単に申し上げられない問題でありまして、なるほど人権擁護をしてゆかなければならぬことはこれは当然でありまするが、しかしこういう問題にまでも立ち至って人権擁護局がやるべきものであるかどうか、こういうことを私は考えてみますると、まあこういう問題にはやはり人権擁護局などは関係を持つべきものではない、こう私は一口に率直に申し上げていいと思います。  こういう問題にまでも関係を持ってくるということに相なりまするというと、その事件の大小を問わずに、やはりこういう損害賠償問題などを取り上げて参りますれば、幾ら人権擁護局が予算を持とうが、幾ら大きな機構になろうが、とうていそれはよくし得ないことであろうことは、これは想像するにかたくないのでありまするから、まあこういう問題はむしろ人権擁護などはあまりに関係すべきものでない、こう私は申し上げてよろしいと思います。が、気持といたしましては、こういう問題を再び起してはなりません。また起さざらぬことを念願し、従いまして、この与えられたる刑事訴追の面において、一般予防の面あるいは特別予防の面、そういう見地に立って十分に再犯のおそれなきよう善処していくことに、あえてちゅうちょをせざるものでございます。従いまして、こういう大きな問題に対しましては、少くとも検察当局といたしましては、あらゆる点から、犯罪予防の面から、あるいは起きた犯罪処置の面から、与えられたる法規にのっとって、行き過ぎのないように善処いたしておるつもりでございます。
  47. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 お答え伺って非常に失望したのです。友愛精神というものは紙に書くだけのものだということはよくわかった。それでこういう深刻な問題を、損害賠償の問題しか考えていないというあなたの政治上の主義主張もよくわかりました。赤ん坊の命を失っても、それが損害賠償の対象にしかならぬという、実に人情のない、非友愛的なお気持はよくわかった。そしておっしゃるいろいろのあとのことは、それはいわゆる具体性の全くないものである。具体的には、単に損害賠償の問題しかお考えになっていない。これは国民が、あなたの政党はどういう政党であるかを、よくこれで認識するでしょう。かわいい子供の命をむだにして、何も学ばれない。単に損害賠償の問題しか与えておられない。それ以外は、紙に書いたことか、あるいは単に口でお述べになることだ。どうして、このかわいい子供生命がほんとうに悲しい形において失われた、それをむだにしないというだけの政治的な方策をお示しにならないのか、私はほんとうに悲しくまた失望します。
  48. 花村四郎

    国務大臣花村四郎君) 法務省の権限をあまりにも大きく過大視しておられるから、そういう考えが出てこられると思う。これは根本的に私とその考えが違っておられる。(「そうらしい」と呼ぶ者あり)法務省としては、そう何もかにも、すべての権限を待っておる役所じゃありません。そんなどうも、法律によらないことまで法務省考えたり、手を出すようなことを、もししたとしたら、どうしますか。あんたは黙っておられないと思うんだ。なお大きい声でしかりつけられるだろうと思う。(笑声)与えられた権限のうちで忠実にやっておるのでありまするから、その点はもう御安心なすってけっこうだと思う。  ただ、友愛精神のみをもって、もちろん法律を適用していく上においては民情も社会感情も取り入れて、そして友愛精神をもって事を処理しなければならぬことは、これはもう当然であります。釈迦のいういわゆる慈悲の心、孔子のいう仁の気持、キリストのいう愛の心をもってやらなければならぬことは、これは当然であります。こんなことは言わぬでもわかり切ったことなんだ。(「損害賠償だけだな」と呼ぶ者あり)が、しかし、そう大きい権限を持っておるものじゃありませんから、あなたの言われる通り、何もかにもやっていけないのでありまするから、もしやっていけば、これは大へんなことになる。少し行き過ぎても、もう人権じゅうりんであるとか、どうも法務大臣は権力をふるい過ぎるというておしかりをこうむるわけです。まあ与えられた範囲において厳格に、しかも公正に、司法の運営については欠くるところのない気持をもってやっておりまするから、その点は一つ、しばらく御安心を願いたいと思う。
  49. 中山福藏

    中山福藏君 一つ聞いておきますが、多分これは二ヶ月の製菓禁止を行政処分でおやりになったと覚えておりますが、どうでしょうか。
  50. 花村四郎

    国務大臣花村四郎君) 多分、それは厚生省の行政処分としてやったことであろうと思います。
  51. 中山福藏

    中山福藏君 そこで、それは厚生大臣一個のお考えですか、または内閣全体として御協議になったのですか。
  52. 花村四郎

    国務大臣花村四郎君) もちろんそれは厚生大臣処置でありまして、政府としての意味ではございません。
  53. 中山福藏

    中山福藏君 こういうふうな重大な問題は、何ですか、これは閣議にかける価値のある問題だと思うのですが、これでも簡単なこととして一厚生大臣、しかもよわい四十二、三歳で、社会の経験の薄い一個の厚生大臣の御意見だけにまかしておいていいのですか、お尋ねしておきます。(笑声)
  54. 花村四郎

    国務大臣花村四郎君) さあそうですね、これは重大問題ということについては、これは異論のないところですが、果してこれを閣議の問題として討議すべきものなりやいなや、それについては、これはいろいろ問題もあろうと思いますが、まあ厚生省所管でありまするがゆえに、厚生大臣がこれに対しての処置をしていくということは当然のことであろうと思いまするので、厚生大臣処置であるから、その行なったことが不適当であるとは私ども考えません。
  55. 中山福藏

    中山福藏君 これは防衛庁長官の場合も同じようなことで、たとえばオネスト・ジョンを日本に入れるという場合には、非常に首相としても責任をいつもお感じになっている。そういうふうな軍事問題だけを内閣全体がかれこれ協議すべきものではなくて、それ以上のものであるということを私は痛感するのです。子供を死なしてみなければ、この気持はわかりません。私は子供を二人死なしたから、よくわかる、親の気持が。だからして、法律家がややもすると世間から、外国の弁護士と日本における弁護士の社会的な地位というものの開きが相当あるという誤解を招くのは、ここだと思うのです。(「その通り」と呼ぶ者あり)人道と法律というものがいつも並行して、なるほどという世間のうなずく行動を法律家がとらないところに、私は日本の一般の弁護士が社会的な尊敬を受けないものがそこにあるのじゃないか。一般の法律家もあまりに冷たすぎる。あの弁舌冷ややかな態度をとるところに、法律家がややもすると世間から誤解されるのじゃないかということを、常に憂える一人であります。それでありますから、ただいまのようなお確めをしておくのですが、五十数人死んで、七千五、六百人の人間が被害をこうむった、それを一厚生大臣ぐらいにまかしておいて、それで私は、のほほんときめ込んで、それは厚生大臣所管だからというような御答弁では、あまりにも冷やか過ぎると思うのですよ。これは砂田防衛庁長官の問題であれば、全部閣議におかけになって、いろいろ御協議なさる。  しかも私個人として考えれば、私だったら製菓会社の、森永みたいなのは永久にその菓子製造を禁止する、製菓を。そのくらいの覚悟で一回どんとやらなければ、日本の一部の商人の、しぼり出して、もうけさえすればいいという考えはなおらないと思う。だから、それで二ヵ月くらいの製菓行為を禁止されるということで、行政処分の効果があるのか。これについて各閣僚の御意見は出なんだのか、あるいはこれを黙視しておられるのか、あるいはこれをもう一回議題に持ち出して、内閣全体としての親切な国民に対する意思表示があるのか、どういう御処置をなさる御意向があるのか。これは友愛精神で言うわけではありませんが、そこまであってもしかるべきものだと思う。
  56. 花村四郎

    国務大臣花村四郎君) 中山委員お話、まことに有益でありまして、今後の参考として大いに尊重いたしたいと思います。
  57. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  58. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 速記を始めて。  それでは本件につきましては一応この程度にいたしまして、次に売春対策に関する件を議題といたします。本件について御質疑をお願いいたします。
  59. 藤原道子

    藤原道子君 私大臣にお伺いしたいのでございますが、この売春等処罰法が衆議院において否決されました。ところが、この売春問題に対しては、今度くらい世論のささえがあったときはなかったのです。しかしこれに対して大臣は私ども委員会においても、また衆議院におかれましても、売春問題に関しては売春問題協議会ができておるのだから、この答申を待って成案を得て、りっぱなものを出すのだというようなことをしばしば言明されたわけでございます。ところが、九月の二日に協議会から答申案が出されましたが、この後における政府のとられておりまする措置についてお伺いをしたい。聞くところによると、大臣の中でも非常にりっぱな答申案だということを言っておいでになる。従って、この売春対策問題協議会に答申案に基いて、必ず私は法律が作成されておると期待しておるのでございますが、それに対してその後の経過をお伺いしたいと思います。
  60. 花村四郎

    国務大臣花村四郎君) ただいまお話しのありましたように、答申案は出て参りました。しかもその答申案はまことにりっぱなものであると申し上げていいと思います。あの答申案を基礎として、売春問題の対策が行われますることに相なりますれば、まことに私どもも喜ぶべきことで、しかも理想に近づき得ると考えておるのでありまするが、しかしその予算措置の面等から考えて、果してそのまま実現し得るやいなや、これはまあ疑問なきを得ないのであります。が、しかし私としては、二十二国会においてしばしば申し上げましたごとく、なるべくすみやかに来たるべき国会に提案する旨申し上げておきましたので、従ってその線に沿うて、答申案をつぶさに再検討し、そうしてしかも保護施策に関する面は法務省で行うわけには参りませんので、主として取締りの面から見た問題を対象として、ただいま法務省の案なるものを作りつつあります。従いまして、これができ上りますれば、臨時国会になりまするか、通常国会になりまするか、これを国会に提案をいたしたいと考えております。それでなお関係官庁にも連絡をとりまして、そうして法務省案を進めておる次第であります。  ただ、しかしここで一言お断りしておかなければならないことは、ただいま日本民主党の方へもこの売春問題対策に関する意向をただしております。御承知のように、今日の政党政治の時代でありまするから、政党の意向を無視しての立案のあり得ないことは当然でありますので、民主党の方面にもその動向を尋ね、さらに民主党の方では政党の意向も徴して、そしてその法務省集を国会に提案すべきものなりやいなやを決定せらるるということに相なろうと思います。いまだその決定はありませんから、どういうことに相なりまするか、ここで予測をするわけには参りませんが、政党の態度を見きわめた上で、法務大臣の提案に関する意向も決定いたしたいと存じます。
  61. 藤原道子

    藤原道子君 それではお伺いしますが、大臣は私たちに対する公約を尊重して次期国会に、通常になるか、臨時になるか、提案する意向であるというふうに解釈してよろしいですね。ただし、政党政治であるから、民主党の意向をも徴して、それから出すか出さないかを検討するというのでございますか。
  62. 花村四郎

    国務大臣花村四郎君) 法務大臣としては提案する考えでありまするが、しかし政党政治の時代でありまするがゆえに、政党の意思を無視するわけには参りませんから、政党の意向を徴した上で確定、提案するかどうかが確定するということに相なろうと思います。
  63. 藤原道子

    藤原道子君 よくわかりました。それでは、もしも提案すべからずという御決定になりましたならば、大臣はどう処置なさいますか。
  64. 花村四郎

    国務大臣花村四郎君) そういう決定のない前から、あらかじめそういう決定があるであろうことを想像してここで答弁を申し上げることは、これは適当でないと存じまするから、その決定のあったときに、私のその提案に関する意見は決定いたしたいと思います。
  65. 藤原道子

    藤原道子君 それではまことに私たちとしては困るのでございます。とにかく前国会で、全国民的な世論に支えられた法律でした。けれども、大臣は答申案を待って必ず次期国会に提出するということをしばしば言明なすったのであります。ところが、今日になって、政党政治であるから党の決定に反して行動はできない、こう言っておいでになる。あらかじめそういうことを想像しての私の考えは言えないとおっしゃる。けれども、少くとも一国の大臣なのです。国民は大臣の言明ということに対しては非常にそれを期待し、信じているのです。ですから、もしも、私はこれだけの重要な法案を大臣が言明されたにもかかわらず、もしも民主党が出さないということでほおかぶりするわけには、私はいかないと思う。私は必ず次国会に出されることを信じているのでございますが、もし民主党の意見が出さない方へ傾いた場合には、大臣は職を賭してもがんばって下さいますか。
  66. 花村四郎

    国務大臣花村四郎君) ただいま申し上げたように、私としては前回の国会で提案すべきこと、すみやかに提案すべきことを申し上げておりますから、その考えは今なお変りませんが、しかし、そうかというて、政党政治でありますから、政党の意向を無視して勝手に法務大臣考えをやっていくということのできぬことは、これは当然なことで、その点はあなたもお認め下さることであろうと思いまするから、その民主党のこの問題に対する態度とにらみ合せて、最後の決意はきめられるということになるでありましょう。
  67. 藤原道子

    藤原道子君 確かに、政党政治だから民主党の意見を無視しては出されない、これは一応了承します。ところが、大臣の熱意が民主党の意見相当左右するということも、これはいなむことのできないことだと思う。ただ、大臣はこの点に対して、出す御意思のもとにほんとうに民主党内でがんばっていて下さるかどうか。漏れ聞くところによると、必ずしもそうでないようなうわさも飛んでおり、この点を明確にしてほしい。大臣というものの党内における比重はそう簡単なものじゃないと私は思う。一つお願いします。
  68. 花村四郎

    国務大臣花村四郎君) ただいま申し上げたことを繰り返すことになりますから、どうぞ、その程度で御了承願います。
  69. 藤原道子

    藤原道子君 大臣はほんとうに出す御意思で——もう一ぺん、くどいようですけれども、これは大事なところですから、一つ民主党内で相当強く、自分はもう国会に、国民に言明しているのだから、答申案が出たら出すんだという言明をしてきているのだから、出さなければ困るという立場をとってやっていただきたいのですが、それをやっていただいておるかどうか、繰り返して、くどいようでございますが……。
  70. 花村四郎

    国務大臣花村四郎君) これは国会で言明した、しないにかかわらず、当然今の事態にかんがみ、こういう問題に対する対策の提案すべきことは何ら疑う余地がないと、こう私は考えておりまするがゆえに、従って、もし党の方で私の意見を述ぶるの機会がありますれば、私の所信を述べて賛成を願うようにいたしたいと考えております。
  71. 藤原道子

    藤原道子君 党の態度はそれでわかりました。法務省では答申策に基いて立法化の操作を始めておいでになるんですね。どの程度まで進んでおるのでございましょうか。
  72. 花村四郎

    国務大臣花村四郎君) それは条文も、そうですね、まあ大体でき上る程度に進み、関係官庁とも折衝して、遠からず成案ができ上るというところまで行っておると思います。
  73. 藤原道子

    藤原道子君 それではさらに——それで安心しました。で、法務当局では大いに立法操作を一つ進めていただきたいことを強く要望いたします。ということになると、民主党で今度内閣にあらためて売春問題審議会ですか、これを設置するというようなことがしばしば新聞に見えておるし、またある人からはそれに入ってほしいという勧誘を受けておるということも伺ったのでありますが、そういう動きが果してあるのでございましょうか。
  74. 花村四郎

    国務大臣花村四郎君) ただいまお話しのような話がないわけではありません。二十二国会の決議によりまするというと、御承知のように、強力にして総合施策を対象とした委員会を作って、そうしてこの売春問題の対策に関する問題を研究すべきであるというような決議にも相なっておりまするので、従って、こういう決議にのっとった強力なる委員会をさらに内閣に作ってやっていくことがこの国会の決議に沿うゆえんであるかどうか。あるいはまた、それはこの売春問題対策協議会の答申が行われないがために、この法案を出すことが国会に間に合わなかった。この第二十二国会にですね、間に合わなかったという関係もあったので、ああいう決議をしたのであるから、従って、この売春問題対策協議会の答申がある限りにおいては、さらにまたそういう国会で決議をされたような審議会を作る必要はないじゃないか、その答申に基いて法案を作って出せばいいのじゃないかというような考え方もあり、その点でいろいろ議論が起きておりますることは事実でございます。これをどう処置して参りますか、やはりこういう点に対してもなるべく国会の意見を尊重して、そうして国会の決議の線にのっとって進んでいかなければならないということは、これは当然なことでありまするから、これらの問題を取り上げて党の方でもいろいろ検討しておるのじゃないでしょうか。私はそう思います。
  75. 藤原道子

    藤原道子君 審議会が、今までの協議会もやはり内閣に設置されていたので、あれは法務省のものではなくて内閣にお作りになった。あれも昭和二十八年だと記憶するのですが、私どもの国会の要望にこたえて政府がお作りになる。そうして大臣もしばしばあれを、内閣がかわったけれども尊重していくというふうに言明しておいでになったわけなんです。ですから、あの内閣の答申案が、大臣が今言われましたように、りっぱなものが出たのですね。今までの協議会も、議会の要望により政府みずからがお作りになった。だから、この答申案が出た以上は、これよりさらに強力なものをまた内閣にお作りになると、これが国会の決議を尊重するゆえんだということにも私たちはとれないのですね。こんなりっぱなものが出て、早くりっぱな法律を出せということに基いての議院の要望であったと思うのです。しかも内閣にあったものを解体して、また内閣に作るということも、非常に解せないのでございまして、大臣が言われましたように、まず答申案が出ておりまする以上は、ぜひとも、何といいますか、一つこれを尊重してほしい。ことにこの前の衆議院の最終日における決議でございますけれども、すみやかに次の国会に出せということがここに決議されておる。審議会ももしお作りになるならば、審議会設置法によってお作りになる法案を出さなければならない。それからまた作らなければならない。ごたごたしていれば、次の国会におそらく間に合わないと思う。ところが、同じ決議は、ここに次期国会に出せということも決議しておるのでございますから、この点一つ、この答申案に基いて今法文化を進められておられまするところをお急ぎいただいて、次の国会、私は臨時国会には無理だと思います。期間も短かいのでございますから、だから通常国会にも必ず私たちは出してほしいというのが、私ども全国民の全女性の要望でございますので、一つ大臣がそのようにお取り計らいを願いたいと思うのです。ですから、新たに作るということは私たちは必要でない、こういうふうに考えますが、大臣、もう一回、一つ決意のほどを伺わせていただきたい。
  76. 花村四郎

    国務大臣花村四郎君) 決議にのっとって、さらに総合的な施策を目ざして、強力なる委員会を内閣に作らなんでもよろしいという御意見もあります。あなたの今言われたような御意見もあります。が、しかし先ほど申し上げましたように、その国会の決議はやはり、あの売春問題対策協議会があってそうして審議を進めておるのにかかわらず、さらにもっと強力な総合的な——しかもこの総合的という言葉が加わっておるのですから、この点にやはり深い関心を持つべきものであろうと思うのですが、総合的な委員会を作れという決議でもあるので、やはり前の協議会よりももっと変ったものを作って、やはり検討しなければいかぬのじゃないかという解釈をされておる人も相当あります。これはまあどちらの議論がいいか悪いかは別といたしまして、あなた方が考えておられるような考え方ばかりじゃない。そういう考え方もありまするから、それはやはり党の方でどういう考え方をとりまするか、いずれ態度は決定することであろうと思いまするが、法務大臣としては、先ほどからるる申し上げました以外には出ないと、こう申し上げていいと思います。
  77. 藤原道子

    藤原道子君 実はいろいろな筋から入った情報によりますと、あのときに売春対策協議会が内閣の協議会とは知らなかった。初めは法務省の諮問機関だと思っていたので、内閣に審議会を設けるということを要望したのだ、困った、しまったというような声がちらほら聞えておるわけなんです。さらに、私はこれよりももっと総合的なりっぱなものをというと、どうなさるか。これでも約二年もかかっておる。今ここで新たに設けて、同じ決議は「次の通常国会に提出し、」とあり、果してお間に合いになるかどうかということなんです。これが総合的でないかどうかということもお伺いしたいし、さらに決議はこううたってありますよ。     売春等に関する決議   いわゆる売春等に関する諸問題は、文教、保健、道義、社会秩序並びに転落貧困家庭の扶助政策など各般に亘り、速かに抜本的総合施策を樹立しこれを実施する必要がある。  仍て、政府は、この際内閣に強力なる審議機関を設け、その議を経て行政措置、立法的措置、予算措置など総合対策を策定し、国会の審議を要するものについては次の通常国会に提出し、現行の法令並びに行政措置により可能なる範囲については政府責任において速かに実施励行すべきである。   右決議する。  だから、結局強力なる審議機関というのは、法務省の諮問機関だと思っていたから、内閣に作れということであったとあとで聞いておるのです。知らなかったのです、諸君は。そこでこういうことをしたけれども、さらに「内閣に強力なる審議機関を設け、」とあるのですが、内閣の協議会だったということを大臣が御認識になるならば、しかもでき上ったものがりっぱなものであるならば、あらためておやりになるということは、われわれから見れば、引き延ばしのような印象を受けるのです。ですから、幸いにして大臣もこの答申案がりっぱだとおっしゃった。りっぱならば、これを生かしていただくことが適切な措置であり、国民の血税をさらにむだに使う必要はないと私は思うのです。従いまして、大臣のもう一回私はお心がまえを伺いたい。
  78. 花村四郎

    国務大臣花村四郎君) 先ほどからもしばしば申し上げた通りで、私としてはその答申案に基いてそうして立案をして、なるべく近い機会において国会に出したいという気持でおりまするが、しかし今日は政党政治の世の中でありまするから、政党の意見も徴した上でそのことは確定的に決定せらるることであると、こう申し上げていいと思います。  ただいまの、その委員会を設けていいか悪いかという点は、これはいろいろ議論があります。あの売春問題等対策協議会というのは内閣で作った委員会であるから、これ以上作る必要はないという論もあり、しかし、それよりももっと広い範囲において、文教、厚生、労働等の諸方面に学識経験を持ち堪能な委員も入れて、そうして、総合的に対策を練るというようなことも必要じゃないかという論もあります。両論あります。それでどちらをとるべきか、あるいはどちらがいいか悪いかは、これはまあおのずから、その、何と申しまするか、機関によって決定されるでしょうが、しかし私はここでどちらがいいとか悪いとかは申しませんが、法務大臣としては、二十二国会で申し上げた通りに、なるべくすみやかに法案を出したいという意向を述べております。意向は今日もなおかつ変らぬということだけははっきり申し上げておきます。
  79. 藤原道子

    藤原道子君 私は、最初は次期国会と、——臨時国会になるか通常国会になるかと大臣は言われた。と同時に、この決議も次の通常国会という決議になっておることをぜひ実行していただきたいということを強く要望しておきます。他の御質問の方もあられようかと思いますので、私はこの程度にいたします。
  80. 赤松常子

    赤松常子君 時間もございませんから、簡単にお尋ねいたします。私、先ほどから法務大臣の御答弁を承わっておりますと、また新しく暗雲が現われるという気持に襲われまして、ほんとに不安に感ずる次第です。去る国会におきまして、ちょうどこの部屋で法務大臣に、私、ずいぶん長い時間をとって、この問題につきまして繰り返し繰り返し御質問申し上げ、それに対しましてまた法務大臣は、誠意をもってしばしば、この次の国会には必ず出すとおっしゃったことをお忘れならないことだと思っております。それに対しまして、また今の御答弁を伺いますと、何か党の決定が非常に重大な、法相の心境を左右するかのような印象を私受けた次第でございまするが、そういう公約、はっきりしたお約束と、それから、その党の決定とに対しまして、法務大臣はどちらをお守りになる御熱意がございますでしょうか、お伺いいたしたいと思います。
  81. 花村四郎

    国務大臣花村四郎君) この売春問題等に対する法案の国会提出は、これはもちろん法務大臣としてもできまするし、また議員の方々もできるのでございまするが、しかし議員の方々といたしましても、党の意向を無視して単独でお出しになるというようなお考えを持っておられないことは、よく私も承知をいたしております。その皆様方のやはり気持も、党人の一人として私は同じように持っておる一人である、こう申し上げますれば、その結論はおのずからはっきりおわかりになろうと思います。(「国務大臣ですよ、あなたは。」と呼ぶ者あり)
  82. 赤松常子

    赤松常子君 ほんとうに、私ますます不安な気持を強めざるを得ない次第です。これはほんとうに私重大だと思いまして、このことにつきましてはまた時間をかけて御質問したいと思っておりますが、要点といたしまして、先ほど藤原議員の質問中に、党からこの問題に対して発言を求められる機会があったらば自分の意見を申したいというふうな、非常に消極的なお立場のようでしたが、むしろ積極的に、党を法務大臣のお考えになっていらっしゃいます方針に引きずる、あるいは動かすことに御努力なさっていただけないでしょうか、お伺いしたいと思います。
  83. 花村四郎

    国務大臣花村四郎君) 微力でありまするから、党を引きずるなんということは、これは思いもよらぬことでありますが、(「心細い」と呼ぶ者あり)まあその自分の考えていることを実現する意味において助力するという点においては、これは人後に落ちない一人でございますから、従いまして、でき得ることはやっていきたいと思います。
  84. 赤松常子

    赤松常子君 法相のお気持は以上で一応よく了承いたしまして、また今後お願いもし、あなたの党にもまたお願いをしたいと思っております。  次に刑事局長にお伺いいたしますが、非常に花村法相が積極的にこの立案化に御熱意をお持ちになって、相当進んでいると存じますが、予算関係、先ほど法務大臣は法文の作成をほぼ完了したかのような御答弁でございましたが、この前の国会でこの討議の際に、反対の討論を民主党の代表がなさいまして、その中に一番重要な点はやはり予算の問題、これが今やりくりできないから、予算措置ができないからこの法案成立には反対だ、こういう御答弁でございました。非常にそうだと思うのです。それにつきまして、実際の事務をとっていらっしゃいます当局として、この予算関係などについて大蔵省当局と御折衝なすっていらっしゃるのでしょうか。そういう点のお扱いはどの程度進捗しておりましょうか、お伺いたします。
  85. 井本臺吉

    説明員井本臺吉君) 売春関係の法案につきまして、予算の一番要りますのは労働省と厚生省でございます。その他文部省、警察関係など、各省がこの法案には関係ありますので、この関係各省の意見が全部一致いたしませんと、全体の法案がまとまらないことになるのでありまして、その点につきましては大臣にお願いをいたしまして、政府の御方針をきめていただくようにお願いしているわけでございます。ただわれわれといたしましては、法務省だけでやれる分だけにつきまして、法案の整備をいたしまして、われわれのなし得る分野における分だけでありますれば、われわれの職分でありますから、その点についてまとめていきたい、こういうように考えているものでございます。
  86. 赤松常子

    赤松常子君 そういう狭いところをまだうろうろしている……。ごめんなさい。失礼、言葉が過ぎました。そういう法務関係だけを私聞いているのじゃございません。申すまでもなく、これが各省にわたっているということはもう十分知り尽しての上でお伺いしていることなのであって、一番大きな予算をとりますのは、更生施設を作る、そういう予算であることもお互いもう知っているわけでございますので、それこそ総合的な予算を私はお伺いしている次第なんであります。そういう点、各省とも連絡協議会をおとりになっていらっしゃるはずでございますから、その点の広範囲にわたった予算の面でのどういうお取扱いかをお伺いしたいと思います。
  87. 井本臺吉

    説明員井本臺吉君) この理想的な案を施行いたしますのに、私ども目の子で勘定いたしましても、まあ二百億円ぐらい要するのじゃないかということを考えております。従って、政府全体におきましてさような予算でもどんどん支払ってこしらえるということになりませんと、全体の法律が運用していけないということになるわけでございます。それでは二百億円の金ができなければ全然これが行われないかということになりまするが、次善、三善案もあろうかということで、さような金がかからないでもできる範囲の法案はどの程度であろうかというようなことについて、われわれは今検討をしているわけでございます。
  88. 赤松常子

    赤松常子君 よくわかりました。それでは進めておいでになるということは事実のようでございますから、ときどき私どもお伺い申し上げて、その進渉状態を知りたいと存じますし、私どもも熱意を持っておるわけでございますので、今後連絡を密にして、その事務の方々の作業をしておいでになる状態をほんとうによく知らしていただきたいと思っておりますし、私も伺いに参りましよう。  それから私、これは一つ人権擁護局長お尋ねしたいのでございます。最近私、佐賀の鉱山に参りましたのですが、御承知のように、非常に炭鉱の不況で、すでに失業者が数万を数えております。それから山の中に人身売買業者がずいぶん入り込んでおりまして、そうして若い子女の売買を上手に、言葉巧みに行なっている事実がございます。それを私相談を受けましたので、とりあえず付近の交番にそれを申し出る。これは山でございますから、なかなか完備した警察がありません。そういうことを示唆いたしましたところが、そこに相談に行ってもだめだったということを報告に来ているのでございます。何らこれに対して適当な処置をしてくれないという報告も来ております。それからまた、せんだって吉原から出て来た婦人の言葉に、あそこの大門のそばに派出所がございますが、その巡査の顔はいつでも外に向っていないで内側に向っている、われわれが出入していることを監視している、こういう実情をつぶさに訴えて、そういう警官の取締りというものがわれわれの逃げるということを妨害するようにやられているということを強く訴えておりました。それからまた、せんだって佐賀市の神野町の交番にその付近の赤線地帯の婦人が逃げ込んだら、これまた業者にすぐに電話で連絡して、業者に手渡したという事実も私存じておりますが、こういう末端の交番あるいは警察——これは刑事局長にもお願いしておきたいことでございますけれども、まだまだ十分そういう際の取扱い、そういう場合に人身売買を今されているそういう状態を知って、これを防ぐ法律がかなりございますのに、末端の警官がこれの知識がないためにそういうことにかかり合おうとしないというようなこともあるのでございますので、十分この点の徹底をはかっていただきたいと思う次第でございます。なお最近、最高裁判所では、前借金は全部棒引きである、それで払わないでよろしいという画期的な判決が下されたということは、非常に私ども明るい気持でまた伺ったわけでございまして、こういうことがはっきりと末端にまで徹底して、その判決が生かされるように努力をお願いしたいと思うのでございますが、まあこういう点に対しまして、後の機会をみまして詳しい具体的なことを申し上げて、御参考にしたいと思うのでございますが、そういう点ほんとうによくやっておいでになるのでございましょうか、その点お伺いしたいと思います。従来の法律の十分下部に徹底する措置と申しましようか、末端でどうも守られていないという実例がしばしばございますので、そういうことをどうぞはっきりしていただきたいと思います。
  89. 戸田正直

    説明員(戸田正直君) ただいま最初の御質問のことは、佐賀の鉱山におきまする人上売買、これは佐賀の地方法務局に持っていったところが相手にされなかったというような御趣旨ではないのですか。これはどういう御趣旨ですか。
  90. 赤松常子

    赤松常子君 交番に……。
  91. 戸田正直

    説明員(戸田正直君) 交番ですか。この人身売買事件人権擁護上実に忌まわしい事件であって、民主国家として許されない事犯であるということについては、私どもも従来関心を持ちまして、昨年度は多分二百六件でしたか、多少数字はもっと多いと思いますが、大体二百件以上人身売買事件を取り扱って、適切な処置いたしております。また、ただいまのお話のような、たとえば交番に逃げ込んでも相手にしてくれない、あるいは吉原でどうも逃け出すのを監視しているような工合だとか、いろいろお話がございましたが、こうした取締りの面は捜査当局がされるのでございますけれども、私どもの方でもできる限りいろいろ実態を調査しまして、人身売買事件について遺憾ないような措置をいたしたいと考えております。
  92. 市川房枝

    ○市川房枝君 先ほど来の藤原赤松委員法務大臣との質問応答を伺っておりますというと、法務大臣は、出す、出そうという意思はありますけれども、常識によって、決定に従わなければならぬといまではおっしゃいませんけれども、御趣旨はどうもそういうふうに聞えるのです。まあ率直に言いますというと、あまりお出しになりたくないので、結局党に押しつけるというか、責任を党に転嫁するというようなふうに実は受け取れるのですが、しかしこの問題は、一法務大臣の意思というか、そういう問題ではなくて、鳩山内閣自身の問題だと思う。いや、内閣に設けられました売春対策協議会、これは自由党内閣のときにできましたけれども、しかし鳩山内閣はこれを継承して、熱心に、その答申に従って法律を出す、こういうふうにおっしゃっておいでになったわけです。この協議会は、言うまでもなく、先般答申案を出したわけですが、その答申案を出したあとで、伺いますところによりますると、鳩山総理大臣の代理として根本官房長官が、答申案作成に協力された委員の人たちをお呼びになって、ごあいさつがあったそうでありますが、その席で根本官房長官は、非常にいい答申案を出してくれてありがたかった、これに従って法律を出す、こういうことをおっしゃったそうでありますが、従って私は、まあその協議会の性格から見て、これは内閣によってできたものだ、従ってその答申案は閣議に報告されるべきものであって、それに対してどういうふうな態度をとるかということは、当然いわゆる全閣僚で御相談があったはずだ。いや、新聞を拝見しますると、閣議にも諮っておるらしくて、その中で賛成された大臣、あるいは反対された大臣のお名前が具体的に新聞に出ておる。一体その閣議でどうなっているのかということを、当然その席においでになっております、またこの問題についてはいわゆる主管相でおありになります法務大臣が、よく御存じのはずだと思いまするから、内閣として閣議の模様といいまするか、伺わしていただけたら、大へんありがたいと思います。
  93. 花村四郎

    国務大臣花村四郎君) 売春問題対策協議会の答申が閣議に出されたことは事実でございます。しかし閣議の内容につきましては、これは根本官房長官が発表するという大体慣例になっておりまするから、私からあまりそういう面は立ち至ってとやかく言わぬ方が適当であろうと思いますが、要するに、まあこの問題は法務大臣とそうして党の政調会並びに法務委員等となるべく協議をとげてきめる方がいいではないかというような意見相当ありまして、今はそういう方向に進んでおると、こう申し上げていいと思います。それは別に閣議で決定したわけでもありません。ただいま申し上げましたのは、閣議に関係なしにそういう意見が多いので、そういう方向になるべく進むことがよいのじゃないかということで、そういう方向に進んでおります。
  94. 市川房枝

    ○市川房枝君 そうすると、まあ閣議では決定をしていないというわけでございますね。将来御決定になるかどうかといいますか、これは先ほど赤松委員からの御質問に対する井本刑事局長からの御答弁で非常に予算を伴うというような御意見がありましたが、その予算の問題になれば、それこそ閣議の決定といいますかによらなくちゃならないのじゃないかというふうに思われるのでありますけれども、将来閣議でこれをもう一ぺん取り上げてはっきりした結論をお出しになることになっておりますか、あるいはそうでなくて、これは法務省おまかせといいますか、その点もちょっと伺いたいのです。
  95. 花村四郎

    国務大臣花村四郎君) もちろん本法案については法務省で提案をいたしますれば、次官会議を通して閣議にかかることは当然であります。
  96. 市川房枝

    ○市川房枝君 さっきからまた新しく内閣に協力なる委員会を作るということについての藤原委員から御質問がありまして、そういう意見がある、まあこんな御答弁をなさいましたけれども、今までの委員会は、関係各省の次官が全部委員にも御参加になっておったわけです。それから民間からも入っておられた。そこでまあこの答申案が出て、それは大へんけっこうだということになっておりますが、しかしまた別個に委員会を作るということになりますと、今までの案に対して不満だといいますか、あるいは今まで審議に参加され委員の人たちの審議がよくなかったといいますか、というふうな感じを、委員自身もそういう感じをお受けになるかもしれないけれども、外側から見てもそういう感じを実は受けるわけなんです、その点、大臣はどういうふうにお考えになっておりますか。いや、この前衆議院で新しく内閣委員会を作るということに決定をしましたときに、その協議会の委員でありまする婦人の委員の人たち四名の人たちが、それは自分たちの一生懸命今まで参加してやってきたのを無視するんだというような意味において、新しく委員会ができてもそれには参加をしない。いや、婦人の人たちは委員として参加をしないように望むという声明書を、あのとき出されました。これは大臣はそれを御存じかどうかわかりませんが、もし新しいもりができましても、婦人の人たち、今まで一生懸命参加しておられました人たちが参加をしない、その他の婦人も参加しないということになったら、それでもかまわないとお考えになりますかどうか、その点を一つ……。  それからもう一つは、新しい委員会を作って、やれ総合的とかいろいろさっきお話しがありましたが、私からみると、今までの答申案というものと考えて、それはどういう方を委員になさいますかわかりませんけれども、非常にいい案ができるという期待は持てない。いや、その案を作るまでに、結局今度の協議会だってやはり二年近くかかっているわけです。結局まあそれがもっと膨大なものといいますか、ということになれば、もっとかかるということ。従って、まあ決議の中に次の通常国会に提案するということがありますけれども、私どもは、それはできっこないんだ、要するに新しくまたこういうものを作ってするということのねらいは、それによってたな上げをする、引き伸ばしをする。それこそ大臣自身が、この前の国会のときにこの委員会でも何度もおっしゃいましたけれども、ただいま協議会において審議中でおりますのでその答申を待って考えるなんというようなことをおっしゃいましたけれども、そういうことに、これからまた二年間、三年間、いい口実ができるわけだと思うのですけれども、そういうふうな引き伸ばし以外の何ものでもないというふうに受け取れないこともないのでありますが、それについての大臣のお考えを伺いたい。
  97. 花村四郎

    国務大臣花村四郎君) 新しい委員会ができまするかどうか、これは将来に属することで、あるいはできないかもしれませんし、あるいはまたできるかもしれませんが、そういうできるかできないかわからない事柄を、ことさらどちらかに仮想して、そうしてここで答弁をいたしますることは、これは適当でないと存じまするから、私は控えたいと思います。
  98. 藤原道子

    藤原道子君 できるかできないか、仮定の問題とは受け取れませんよ。現実に起きているじゃありませんか。市川さんの今の質問には、それなら今までのはだめで、今度はいいということになるが、もしそのときには婦人の委員は一切参加しない、それでもいい、やるのだというお考えがあるかどうかということがはいっていたと思うのです。それに対しても御答弁がない。どうも私どもは先ほどから聞いていると、大臣はしっぽをつかまれないように、つかまれないように、ただ用心しておいでになる。もっと大胆率直にやって下さいよ。大臣は議会で何べんも言明したのたから、民主党が反対ならば私は首をかけてもやります、大臣のいすを俸にふってもやりますという、その信念が私たちは伺いたいのです。私はもう一回大臣の御答弁を伺いたい。
  99. 花村四郎

    国務大臣花村四郎君) 先ほどからも重ね重ね申し上げましたように、法務大臣としてはやりたいという希望を持っておりますが、しかしただいまは党の意見も徴しており、党の意見に必ずしもすべて従ってゆくというのではありません。私はそういうことをいまだかつて申したことはない。法務大臣としてなさねばならぬことに対しては、あるいは党の意見と相反してもやらなきゃならぬ場合も出てくるでしよう。しかし政党政治の今日においては政党の意思を尊重しなきゃならぬということは、これはすべての議員が同じ私は気持だろうと思う。私の気持も、あなたがたの気持も、その点においてはぴったりともう、少しも食い通いはないと思う。でありまするから、そういう見地に立って党の意見をただいま徴しつつある、こういうことを申し上げておる。党の意見を徴した上で私の意思は決定したい、こういうのでありますから、何度お尋ねになっても、やはりその線を出ずるわけにいかぬのでありまするから、まあその程度で一つ御了承願いたいと思います。
  100. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 私から一言お尋ねしたいのですが、九月二十三日の毎日新聞の夕刊に、閣議で花村法務大臣から、協議会の答申案は尊重するが、転落女性等の保護更生をするというような教育偏向の傾きがあるので、社会、政治問題を加味した売春問題の対策審議会の設置法案を通常国会に出したいという発言があった、こういうことが報ぜられている。こういうことになりますと、これは売春禁止法を出すというのではなくて、設置法に出してくるのじゃないかということになるから、それを私は皆様方が非常に心配されておるのだと思う。ですから、こういうことが新聞報道として、事実があったかどうか。あなたが出そうとされるところの設置法案ということと、すみやかに次の通常国会に出そうとするのと、これはアイデアが違っておると思うのです、食い違いがある。で、あなたのどうも考え方が分裂しておるのじゃないかと思うから、これはどういうものであるか。なお新聞は、その席上川崎厚生大臣、三木運輸の各大臣、根本官房長官からは、世論は設置法などではおさまらない、売春禁止は新立法が必要ではないか、こういう発言があった、こういうふうに報じているのです。その結果、審議会は閣議の了解事項で作ることとし、法務、厚生などの関係各省で禁止法案提出の方向で連絡することになった、こういうことを報じているわけですが、一体あなたは、しばしばここで言明されておるように、党の意向がどうこうということよりは、あなたはお出しになりたいという意向だと、こういうふうに了解いたしますが、新聞報道等について先ほど私が申しましたような意見をまじえて一つ御質問したいのですが、お答えいただければ非常にけっこうだと思います。
  101. 花村四郎

    国務大臣花村四郎君) 新聞記事は私は不幸にして見ませんが、まあ委員長が述べられたことですから、新聞に多分出たでありましよう。でありましようが、今読み上げられた内容は、私は申したことがないというていいと思います。ただ、この答申案が出たときに、私は二十二国会の経過等にかんがみ、なるべく近い機会にやはりこの売春法案を出すべきものであるという意見は述べたように記憶をいたしておりまするが、多分そのとき川崎厚生大臣も、もし答申案のごとき保護施策を目ざしての法案を出すということになれば、相当の予算を要する旨を述べたように記憶をいたしておりまするが、それは述べただけで、なお閣議としてその問題に対してどういう処置をとるべきかとい記憶いたしております。
  102. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) そうしますと、実は新聞でございますから誤まりがあったかもしれませんが、まあ私たち新聞に出たのを一応通してお尋ねするわけですが、実は厚生省の方は、御承知のように、二日の日に内閣に対して答申をした、それに基いて保護更生施設等をやらなければならぬ、従って二十億ほどの予算が要る、これに対して一万人くらいの転落女性を対象にしてやらなければならぬというような、一つの具体案をまとめたということが九月六日の新聞に発表されております。そして今申し上げましたように、九月二十三日の夕刊でございまして、二十三日の閣議のときに、だから川崎厚生大臣や三木運輸大臣、根本官房長官らは、一つもう立法しなければならぬと言っておる。そのときに法務大臣の方から、そうじゃなくて審議会設置法を作らなければならぬ、対策設置法案を作らなければならぬ、こういうような発言があったからというので、非常に心配されておるのだろうと思うのです。お聞きしますと、そういうことは間違いであって、大臣が積極的にこういうものを出すべきだという御発言になった、こういうふうに承わりまして非常に愉快に思って、私も了承したのです。
  103. 藤原道子

    藤原道子君 大臣の言葉がちょっと、だんだん不安になってきたのです。最初は次の国会とおっしゃった。臨時国会になるか、通常国会になるか、出す準備をしております。そうしてその後になるか、なるべく近い機会にとおっしゃると、私らどうも変なのですよ。一体どうなるのですか。決議を尊重するならば、決議は次の通常国会となっております。大臣は次の通常国会を目ざして御提案になるおつもりか。党は知りません、大臣自身のお気持です。大臣ですから、人がちょっと違うのですから。(笑声)
  104. 花村四郎

    国務大臣花村四郎君) なるべく早急に出したいという意味の中には、臨時国会並びに通常国会というものが想像できようと思います。そういう意図を含んだ意味の近い国会という意味に御解釈を願ってけっこうだと存じます。
  105. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  106. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 速記を始めて。  それでは本件についてはこの程度にいたしまして、次に人権擁護に関する件を議題として調査を続けたいと存じます。御質疑をお願いいたします。
  107. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 人権擁護の問題は、新しい憲法が厳にこれをわれわれに命じているところでありまして、現内閣においても、これをやはり重大な問題とお考えになっているというふうに確信をするのでありますが、緊急に法相の高いレベルの意見を伺っておきたいという問題がございます。  その一つは、これは最近山形の鶴岡地検で起った、従ってその裁判所において起った問題で、新聞においてもかなり大きく扱われ、産業経済などは全国版でこれを報道し、山形地方においても朝日そのほか各紙が大きく取り上げておられるもので、当局においても十分慎重にお考えのことだと思います。問題は、この山形県西田川郡温海町越沢小学校の講師の西村完司君の選挙違反の事件でありますが、これは当時の知事の選挙であって、その繰り上げ投票のために、この先生がその前日に、受持ちの小学校の二年と三年の合併の教室でもって、明日は選挙があるので学校は休みになると言って、選挙の意義を説明され、その父兄、父母たちが棄権せられないような御趣旨のお話があったのだろうと思います。ところが、これが特定の候補を排撃し、特定の候補を支持するような話をさせられたということで、起訴せられたのです。その第二回の公判が四月の二十七、八の両日に行われたのですが、その公判廷におきまして検事が、証人として同講師の受け持ちの二、三年の学童十七名を、越沢部落総代五十嵐右衛門宅に設けられた臨時法廷に喚問され、検事の尋問が行われた。二、三年の小学校の生徒というのですから、ごく幼い児童であり、従ってその状況は十分想像し得るわけです。これは問題は直接には選挙法に関係しているのでありますが、やはり同時に、この教育二法とも間接的な関連があるように私は思うのであります。  で、教育二法案が文部委員会と本委員会と連合審査しましたときに、同僚の亀田得治議員から当時の文相大達さんに対して、この教育二法案というものは非常に証拠が困難なものを対象としている。教育は言葉によってなされるものでありますから、その言葉はその教室において消えてしまうのであります。従って、これを追及しようとするあまりに、生徒を証人として呼ぶ、そして恩師に対して反対の立場に立って、その証人として証言を求めるということになりはしないか。そうしましたらば、これは一つ法相よくお聞き取り願いたいのですが、そのときの大達文相のお答えでは、そんな証拠がないために、子供を呼んで先生に対して反対証言の立場に立たせるようなことは考えられない。教育二法の違反にせよ、選挙違反にせよ、歴然たる証拠があって、そしてその実害が明らかであるという場合に初めて取締りが行われるのであって、証拠がないために、ついには子供を呼んで先生に対して反対証言をさせるようなことはあり得ない。もちろん子供を証人として呼ぶということは違法ではないけれども、しかしながらそういう場合は考えられないというお答えがあった。ところが、実際問題としてはこういう場合が現に起ってきたのです。ところが、それに対して憂うべきことは、この鶴岡地検の責任者、また山形地検の次席検事などの方々も、子供を証人に呼ぶということは別に違法ではない、他に証拠がなければ、やはり公訴を維持するという観点から、そういうこともやるのだということを新聞記者に向って語っておられる。  そこであなたに伺いたいのは、この教育の問題というのは、私はその本質的な意味において、法律以上の問題だと思うのです。法律による取締りというものも十分に重要なことでありますけれども、しかしながら、そのためにこの教育の場が破壊されてしまうということになることは、国家百年の大問題だと思う。子供を証人に呼ぶということが一般に行われることは違法ではない。またたただいま申し上げました場合についても、これは違法であるかないかということは、一般的には必ずしも違法ではないと言われるかもしれないけれども、第一には、そういう小さい子供を、自分の毎日学校で教えを受けておるところの自分の尊敬する先生に対して、その面前で、その先生が法を犯されたのではないかということに対して、証人として証言を求めるということそれ自体に、私は検事の職権の妥当な行使でないということがあるのではないか。  第二には、一般にこの証拠が明らかでない場合には、毎日学校で教えを受けておる恩師に対してその面前で、子供が反対の立場に立って検事の証人尋問に対して証言しなければならないということが、妥当なことだというふうにお考えになっておられるのかどうか。この点について特に高いレベルにおいて御意見を明らかにしていただきたいとお願いするのです。
  108. 花村四郎

    国務大臣花村四郎君) ただいま羽仁委員のおっしゃられた犯罪に関し学童を調べるというようなことは、これは全くお説と同じで、好ましいことではございません。なるべく、あらゆる角度から、そういうことは避けられるだけ避けるということに意を注がなければならないことはこれは、当然過ぎるほど当然である。従いまして、検察官もこの当然の理をわきまえて、そうして検察の運用をやっておりますることを私は信じて疑いませんが、しかし場合によりましては、真実を発見するというこの大きな問題に対して、公正妥当なる判断を下さなければならぬというこの法の命ずるところに従いましては、そういう好ましくないようなことでもやはりやらなければならない。それは大きな重大事に対する小さな犠牲であると、こう考えて、やはりやむを得ないことじゃなかろうかと、こう私は思います。もしそれを、そういう好まないことであるからといって、なすベきことをなさずに、法の精神を踏みにじり、真実の発見を誤まるようなことがありましたならば、その子供調べたということより以上の大きいそこに弊害も、不合理も、また妥当性を欠くような問題が起きてくるおそれがあると私は申し上げていいと思います。従いまして、法律によっては決して禁じておるところではありませんから、できるには違いありませんけれども、しかしまあでき得ることならば、そういう子供の供述を証拠として取り入れるような方途は避けられるだけ避けていくということが一番望ましいということは、これはもう羽仁委員と同じ意見でありまするが、そうかというて、犯罪者を見のがすがごときことがあっては、これこそ治安の面から見てより大きな重大問題であろうと思います。
  109. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 ただいまの御説明で、子供を証人として呼ぶということは一般に好ましくない、できるだけそれを避けるのが当然であるという御趣旨はよくわかった。しかしながら場合によっては事実を明らかにするためにそういうことをしなければならない場合もあり、また法もそれを禁じているわけではない。で、事実を明らかにするためにそういうことをしなければならない場合もあろうということを後段においてつけ加えられておるのでありまするが、問題は選挙違反の問題であって、そこにも関係してくると思うのですが、やはり選挙について、旧憲法時代には選挙の取締りということが非常に厳重に行われた。新憲法になってから、選挙の自由が尊重されなければならないというふうに、全く百八十度の転換がなされている。しかし残念ながら、これは法相もお認めになることと思いますが、やはり官僚主義の時代の弊風が残っていまして、選挙違反の取締りにはいろいろな種類の人権じゅうりん及びいろいろな種類の選挙の自由の侵害というものが行われているということは、これはおそらくはなはだ遺憾であるという点は御同感下さることだと思う。  今回の場合におきましても、検事が明らかにしなければならないとして考えた事実そのものがどれだけの実害のあるものであるか。で、小学校の二年、三年の子供というものに対して、先生が明日の選挙について説明をされた。その子供に別に金銭をもって買収しようとしたわけでもあろうし、その子供を饗応その他そういう利益を誘導したことがないことは明らかだ。従って、最近の選挙に関する取締りの原則からいいましても、こういうようなところに検事が立ち入って、そうして今御説明がございましたような趣旨における事実の究明をしなければならないという、そういう明白なる根拠というものがあるかないかということは、これは十分に議論の余地があることだろうと思う。明らかにそれが、先ほども聞きましたように、教育二法案の審議の際に大達文相は政府を代表して御説明がありましたように、明らかなる証拠があり、かつその実害がとうていこれを許すことができないという場合に限ってやるのであって、その証拠がない。そのために学童を呼ばなければならないというふうなことは起り得ないことであるというような御説明もあった。ですから、公平に考えてみまして、私はこれはかなり、現場の検事としてはその職務に忠実なるのあまり、そういうふうな態度に出るということがあるということについては考えなければならない点があるにしても、法務行政の最も高いレベルにある法相としては、こういう問題についての要点をどういう点にお置きになるか。選挙違反について、たとえ軽微な問題であるにしても、やはり事実を明らかにするということを法相として御希望になるということは、私はあり得ない。それよりも、その教育という重大な問題について非常な不安を与える。いわんやちょうど妻が夫に対して反対の証言というものに立つことは望ましくないということと似ているような、ふだん毎日教えを受けておる先生に対して子供が法廷において検事の尋問に答えなければならないというふうな、情に反し、また教育の趣旨に反するようなことが、必要にして最小限度を越えて行われることがないように、私は高いレベルにおいて、最高のレベルにおいて識見を示さるべきではないかと思う。これは現実の問題としましては、先ほど申し上げましたように、地検なりあるいは地検の支部なりの方はそういう意見新聞記者に言っておられるので、この地検なりあるいは地検の支部なりの検事の御意見、それから法相の御意見とは、おのずから私はそのレベルにおいて違うところがあろうと思う。もしも法相が最も高いレベルにおいて示される御職見というものが十分な高いレベルを維持せられないと、私はやはりその第一線で働いておられる方々は、自分の仕事に関心が集中せられて、社会一般の問題という方を十分に考慮するという点で、私は欠ける点が生じてくるのではないか。ですから、あなたがやはりその最高のレベルにおいて、社会のいろいろな問題をも十分に考慮せられて、もう少し高邁な識見を示されることが必要ではないか。  現にこの問題について現地の法務局の人権擁護課などにおいては十分にこれを慎重に考えられて、こういうことが再び起らないような努力をしておられることだと思うので、これは人権擁護局の方でも報告を受けておられることでありましょうから、人権擁護局長からも御説明を伺っておきたいと思うのですが、どうか法相にお願いをして、願えれば今一応お答えをいただきたいと思いますのは、この学校の先生の仕事というものは御推察のように、なかなか複雑な仕事です。それで生徒と先生との間に親愛の感がなければ教育というものはできるものではない。従って先生が自分の教えている子供がいつ何時検事に呼び出されて自分に対して証言をしなければならないような立場に立つのかということがおそれられるのであっては、教師はやはり小さい子供が何をどう誤解するかわからないということから、およそ公民教育として必要なことにタッチすることも遠慮するようになってしまう。これは十分御推察が願えることだと思う。従って、教師としては実害がない限り、やはりかなり大胆率直に、いつも生徒を信ずる立場において教育をされることが、私は国家百年の計のためにあくまで必要なことだと思う。全国の教員が、今申し上げたように、自分の教えている子供が、いつ何時法廷において自分に対して検事から尋問せられ、証言をしなければならないというようなことになるということで、日常の教育に不安を感ずるということがないように一つこの際最も高いレベルの御所見を伺いたいと思うのですが、どうでしようか。
  110. 花村四郎

    国務大臣花村四郎君) ただいま羽仁委員から申されました、大達文相が犯罪に関して学童を証人として調べるようなことはないだろうと言われたその言葉は、私は大達文相の偽わらざる告白であると申し上げていいと思います。これはただに大達文相のみならず、私どももさように考えるのであります。それは日本の教育者として、学童の重大なる教育の任に当る先生にして、犯罪を犯すがごときことは断じてないと、こう深くこの先生というものを信じておればこそでありますが、このわれわれの信念をどこまでも維持していくような態度をとってほしいということが、私は日本の先生に心からお願いをすることであります。が、しかし、ただいまお話のありましたように、山形県のこの学校の先生が犯罪を犯しておる、犯したのだ、こういうことはまことに私どもも遺憾にたえないことであって、われわれが信ずる、教員に対する崇敬の念をささぐる気持にきずを与えたものであるという意味において、私どもはまことに遺憾に思います。遺憾に思いますが、こういう事態が起きました以上は、これはやはり法の命ずるところによって忠実にこれを行なっていかなければならぬことも、検察当局としては当然であります。  そこでこの法の運営解釈について、それでは検事と法務大臣との考えは違っていいじゃないかというようなお話でありましたが、そういう羽仁さんのような考えを持たるる人もありましょうけれども、しかしこれは率直に申し上げれば、検察官は法の命ずるところによって終始行動をしておるのでありまして、法を運営する面においては感情や情実をまじうることはできない。あるいは法の解釈にはいろいろあります。類推解釈もあれば精神解釈もあり、いろいろ解釈もありまするから、法の解釈に対しては弾力性を持っておるのでありまするから、その解釈の異なるような場合のあり得ることは、これは多く申し上げるまでもありませんけれども、しかしこの法を運営し執行する面においては、感情や情実をまじえちゃならない。その地位によって、あるいはその職場によって、その法の解釈を異にしちゃならない。やはり法律の精神をあくまでも守って、厳正公平なる解釈をして法を運営していかなければならぬということが、これがこの法曹を通じての一大原則であります。従いまして、法の運営あるいは執行に対して、堅持であろうが、あるいは副検事であろうが、あるいはまた検事総長であろうが、はたまた法務大臣であろうが、それを異にすることがあってはならぬということは、これは当然過ぎるほど当然なことであります。でありまするから、私の法務大臣としての高き考えはどうかというような御質問は、むしろ私は意外に感ずる                   …ような次第でありまして、そんな地位によって法の運営執行に差異を生ずるようなことがあっては、これはむしろ私は一大事であると申し上げていいと思う。法務大臣考え方も一検事の考えも、やはり法の前にはあくまでも厳正公平であり、平等であらなければならぬことは、これはもう一大原則であって、その時と場所とを論ぜず、これは動かすことのできないものであると、私はこう申し上げていいと思う。で、そういう意味において、検察官の法の運営に関することも、また法務大臣のこれに処することも、あえて異なることはない。異なるようなことがあってはならぬと、こう申し上げていいと思います。  それから最後に、この選挙違反に関する問題でありまするが、まあ選挙違反等に関して、子供まで呼ばなんでもいいじゃないかというような意味の御意見もあったように思いまするが、これは私は大きな間違いであろうと思う。今日とかく選挙違反というようなものは犯罪じゃないのじゃないかというような気持を持っておられる人が多い。選挙違反で拘束でもすれば、選挙違反で泥棒や強盗と同じにどうも身柄を拘束したり、手錠をはめていくのはけしからぬというような言葉を往々聞くのです。  私はいつですか、地方へ行ったときに、地方の人が集まって参りまして、少くとも選挙違反の事件に関してだけは手錠なんかはめなんで、別扱いにしてくれという陳情があるのです。それで私申し上げたのは、とんでもないことだ、選挙違反が犯罪でないような頭を持つこと自体が間違っている。泥棒も、強盗も同じことだ。法に違えておるというようなことは同一であるのだ。選挙違反であるから特段なる扱いをしていい、選挙違反なら犯してもいいという気持を持つことは、これは大なる誤りだ。そういうこと、そういう考え方が、要するにいつの選挙でも、選挙違反というものは選挙に伴って出て参りまするのみならず、その選挙違反によって起る選挙の腐敗堕落というものが、ひいては政界の腐敗堕落に結びついていくというような、まことに悲しむべき現象を考えるときにおいて、選挙違反こそ、これはもうむしろ厳重に処罰して、もって初めてわが国の憲法が守られていくのじゃないか、こう私はむしろ言いたいのである。でありまするから、その地方に行って、手錠をはめなんでくれというような陳情を受けたときに、私は特に言った。選挙違反などを犯すことは何よりも恥だ。自分の、わが国の憲法から与えられたこの貴重なる一票を、情実や、因縁や、金によって、そうしてこれを変えていくというような、そういうさもしい根性を持つこと自体が、これは何よりの罪悪であると、私は声を大にして言うたわけなんであります。  でありまするから、従ってこういう学校の先生は、社会の師表ともなり、また教育者となって、常に新憲法の精神にのっとって、そうして選挙違反などは自分みずからが進んでやはりなくすような方向へ努力をしていかなきゃならぬというのに、しかも小学校の子供を使って選挙違反をやるというに至っては、これはもう言語道断なんだ。私は罪万死に値するというていいと思うのだ、われわれの先生に対する敬意の程度からいえばです。であるから、こういう事柄についてやはりその真相をきわめる、その真実を間違いなく発見していくという方向へやはりわれわれがあらゆる努力を傾倒して、そうしてその教師の立場をはっきりしてやる。罪のないものならないもの、あるものならあるで、やはり法律に従わせるということで、その人の立場考えてあらゆる面から最もよりよい方法を講じてやるということが、これがむしろ親心であると、こう私は申し上げていいと思う。  こういう見地に立って考えるときに、子供調べなければならぬというやむを得ざる事態に追い込まれた場合において、その子供調べるというようなことは、決して御心配に相なる必要もなし、またそういうことで法を曲げるがごとき方向へ、羽仁さんともあろう大家があまり御同情を願うことは、私はかえってどうも困る、こう申し上げていいと思います。
  111. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 非常に残念なことですが、法相は問題の要点を御了解になっていないようです。御承知のように、犯罪には私はやはり風俗習慣というものの基礎が十分になければならぬ。人を殺すとか、物を盗むとかということは、別に法律がなくても罪です。ところが、選挙に関する選挙法というのは、御承知のように、あなたも政党政治家であるから十分御了解のように、議会においてその選挙法の立法によって、その個々の条章には、今まで罪でなかったものが罪になることもあるし、あるいは今まで罪であったようになっていたものが罪でなくなるものもあります。その政党政派それぞれの考え方によって違うものである。また各国の例をひいても、日本の保守的な政治家が罪にならないとお考えになっておられることが、あるいはオーストラリアの選挙法によれば、それが最も重大な罪だというようにされている場合もあります。日本の保守政治家の中には、ここに橋をかけるとか、ここに道路を作るとか、そういうことを選挙民に公約せられて当選せられる、それが何ら法にも触れない、罪にもならないという場合にも、オーストラリアの選挙法によれば、むしろそういうものこそ最も民主主義を害するものであるとして、法に触れる重大な犯罪だと考えられておる場合もあるのです。ですから、選挙の公正を害する本質的な犯罪については、私はこれはやはり民主主義を阻害する非常に重大なものだと思う。けれども、絶えず選挙法改正によって改正されて、そして出てくる条項の中には、今申し上げたように、立法によってあるいは罪となり、あるいは罪とならないものもあるのです。これは十分に法相としても、今のような大言壮語せられないで、実情についてお考えになった方がよろしいと思うのです。  であなた御自身に対する世間の評判というものも十分御反省になっておられることだと思います。それで法相の地位にあられる者が、こういうふうなことをされてはどうだろう、しかし法に触れないから差しつかえない、そういうようなことは、世間にいろんな不安を与えることもある。従って、今私の申し上げておる要点をよくお考えになって、いま一応御答弁が賜わりたい。要点は、この選挙法の違反という場合に、現在の法律で、そしてまた従来の風俗慣習によって、最も憎むべきものだと考えられているのは、明らかに金銭あるいは物品その他によってその人の自由の意思を失わせて、そうして誤った投票をなさしめる、こういうことに対しては、あなたの言葉にある検察官は、今日以上に厳格でなければならないと思うのです。そしてまたその選挙法に触れる人が、社会上の地位においてあるいは政治家である、あるいは弁護士である、あるいは政党の有力な幹部である、こういう方々がなさることに対しては、検察庁はもっと勇気を持って民主主義を守らなければならないと思うのです。  けれども、今ここで問題になっているのは、学校の先生が二年、三年の子供に対して、明日選挙が行われることについて説明をせられた。そこで別に子供たちに金をばら撒いたわけではない。子供たちの親たちを饗応したわけではない。それらの人に花輪を贈ったわけではない。選挙の説明をした。しかもその際に二、 三年の子供が家へ帰ってどういう話をするかということは、先生はよく知っていますよ。従って、明らかに選挙の本質を害するような行為をするのであるならば、その際にかなり明瞭に、観たちにこういうふうに言ってくれということを言うに相違ない。場合によっては、そういうふうにしなければ就職に差しつかえがあるとかなんとかいうような、最近群馬県で起ったような、警官が言ったようなことはおっしゃったかもしれない。しかしそういうことをおっしゃっているのじゃない。従って、その教員に対して検察側から起訴せられた後でも、その教育委員会は、その先生に対する信頼から、その先生が続けて職務を行うことをお認めになっているというような場合、すなわち、この点は一言に要約して申せば、法の施行ということについて完全明白な危険がある場合に、初めて権利が制限せられ、あるいは検察権を発動すべきであって、検察の発効ということはやはり必要にして最小限度にとどめて、重要な権利というものを侵害すべきではない。また教育者というふうな重大な仕事に不安を与えるべきではない。これは御同感だろうと思う。さればこそ、先ほど第一回分御説明では、そういうことは好ましくない、できるだけ避けてほしいという御説明があったのだろうと思う。この点いま一応伺っておきますが、選挙法違反はまことに憂うべきことです。ですから、その取り締りに当られる検事が十分に努力せられるということは私も希望するところでありますが、しかしながら、その必要にして最小限度を越える、教育というような重大な使命に不安を与えられるようなことは、これは許さるべきことではないと思いますが、その点いかがですか。これが第一点です。  それから法の施行の場合といいますが、法というものはいろいろな法があります。児童福祉法もあれば憲法もある。やはりこの選挙法を運営せられる場合にも、児童福祉法なり、あるいは憲法なり、それらのいろいろな関係を考慮せらるべきだと思う。これはおそらく御同感だろうと思う。選挙法の違反に触れているからといって、児童福祉法の第一条に明記しているような、そういうものを全く忘れてしまうというようなことは、先ほどのお言葉を返すようで恐縮でありますが、第一線の検察官としても許されないことだろう、それこそ罪万死に値することだと言わなければならない。  それから第三に伺いたいことは、実際の実情として、二、三年の生徒を、しかも教師の前で検事が尋問している場合に、これは新聞が報道し、かつまたその場におられた方からも私は伺ったので、あるいは必要に応じてはそういう方に来ていただいて調べなければならないかと思うのでありまするが、この子供たちは泣き出してしまう。検事が先生はこういうことをしたのだろうというふうに言えば、うんと言い、弁護士が、そういうことは先生はなさらなかっただろうと聞きますれば、やはりうんうんというふうに言う。ですから、二、三年くらいの、七つ八つの子供を検事が引っぱり出して、先生の前に出て、先生がこういうことをしたかしないかということについて得られるところの証拠というものは、果してわが憲法の命じ、児童福祉法の言わむとするところを尊重し、そうしてしかも選挙法の取締りを公平にやるということについて、いいですか、そういういろいろな観点から見ても妥当なことだろうか、そうして必要なことだろうか、そうして最小限度においてやらなければならないことだろうか。その三点について一応もう少し落ちついて一つお答えを願いたいと思います。
  112. 花村四郎

    国務大臣花村四郎君) 最初の、検察官の取調べがしいて教育に悪影響を及ぼすというようなことがあってはならぬことは、これはもう今羽仁委員のお説と少しも変りません。もちろんそうであります。が、しかし私は、検察官が取調べに関して教育までも阻害するような行き過ぎや無理はやっておらぬと信じて疑いません。でありまするから、もしそういう事柄がありましたならば、遠慮なく一つおっしゃっていただきたいと思う。が、しかし先生の前で子供調べたという一事をもって直ちに教育を阻害するものであるとの判断は、私は妥当ではないと考えます。  それから次にこの法律に関しての話でありまするが、もちろん法律によりましていろいろとその解釈も変って参りましょうけれども、しかし少くとも犯罪に関しまする刑法その他法規の適用運営等に関しましては、大体法律の解釈というものはきまっており、その解釈の線に沿うて、これを適用していかなければならぬというようなことも大体制約されておりまするので、その線を著しく脱してやるというようなことは、まずこの法律運営の面から考えて、想像のできないことであると申し上げてよろしいと思います。
  113. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 第二点は、児童福祉法などの精神も十分尊重せられたいということなんです。
  114. 花村四郎

    国務大臣花村四郎君) もちろんそれは児童福祉法等も考慮のうちにおいて、福祉法に反するごとき所為をとるようなことは私は断じてないと思う。もしありとするならば、その事実を御指摘願いますれば、つぶさに調査をした上で、また的確なる御答弁をいたしたいと思います。  それから最後に……。
  115. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 小さな子を呼んで泣き出すような訊問をやる……。
  116. 花村四郎

    国務大臣花村四郎君) 子供を呼んで調べて泣き出したと、そういう幼な子を取り調べるというようなことは適当でないのみならず、かりに取り調べても的確なる質料を得られないのではないかと、こういうお説でありましたが、あるいはそういう場合もないことはないでありましょう。私は必ずしもないとは否認をいたしません。そういう場合もあり得ることも想像できますけれども、大体において、検察官もそういう学童を対象としての捜査を進める場合においては、それに適合したやはり取調べをもって臨むということが考えられるのでありまして、今日の検察官の、何と申しまするか、程度等にかんがみて、無理をするようなことは私は断じてない。やはり子供子供子供のうちでも学童は学童、その人に適合したやはり最も適切な、しかも合理的な取調べを進めていくものであることを私はやはりあくまでも信ずるものでありまするが、これとても人のやることでありまするから、神様じゃありませんから、あるいは間違いがないとは私は断言はいたしませんから、もしそういう不合理な場面がやはりありましたならば、抽象的ではなくて、具体的に事実をお示し下すって、そうしてここでこういうことをやっておるじゃないか、こういうことはどうも不当だと思うがどうかと、こういうて具体的におっしゃっていただけば、まだ私の知らぬことでありますれば、取り調べてそうして答弁をいたしまするということにいたしたいと思いまするが、まあ羽仁さんのおっしゃられるように、あるいは取り調べ中に泣いたというような子供もありましょう。あっても、やはりその取調べによって、子供がかりにその事実そのものをありのままに言わないと仮定しましても、やはり真実発見のために大きな寄与をする面があるのじゃないか。そういう点を把握することはやはり検察官の専門的立場において抜かりなく私はやり得ると、こうやはり見て、そういう場合がかりにあったとしても、やはり真実発見の上に欠くべからざることで、やはり場合によってはなさなければならないことであると、こう申し上げていいと思います。
  117. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 今のお答えは趣旨において、いずれも私の先ほど伺った三点について、第一の点、第二の点、第三の点、それぞれ趣旨においては私のお尋ねした点に同感のお答えがあったのですが、その詳しい事実についてはそれぞれあとから詳しく伺いたいと思いますし、またこの委員会でも委員長にお願いして十分に調べたいというふうに考えておりますが、結論としましては、どうかこれは法相に一つお願いしたいのですが、最近人権じゅうりんの事実がなかなかあとを断たいのです。しかも公務員による人権じゅうりん、あるいは警察官、あるいは検事などによる人権じゅうりんの疑いのある事件が多く出ております。従って、私はさっき検察官と法相とが法の厳正たる適用の上において態度を変えてほしいというふうに申し上げたのじゃない。で、どうかしますと、やはり検察官は、今も法相の最後の御説明の中にありましたように、事実を明らかにするということに熱中するあまりに、あるいは判断を誤まられるということがあるかもしれない。やはり法相としてはあらかじめかなり高いレベルをお示しになって、検察官が一つの法律の適用だけでなく、さまざまな法律というものを十分念頭におき、またそのことがあるいは子供に対する影響、教育に対する影響、またそのための社会に与えるところの影響というものも十分に考えて、その法の適用は厳正公平でなければならないが、しかしそういうさまざまな影響というものを十分慎重に考え、ことに教育などに関係する問題については、社会に与える不安というものも非常に大きいですから、そういう点で法の適用は厳格でなければならないが、しかしながらその影響、また他の法律との関係というものについても十分慎重に考えなければならないという、この指示をぜひ一般的にもしていただきたいというふうにお願いするのです。で、それは法の適用ということは、今もお話しのように、人間がやることなのですから、人間の中には古い考えにかなりまだ影響せられている人もある。また一般に申しまして、現在日本が民主主義になりましてからまだ日も浅いことでありますから、民主主義以前のやり方というものがどうかすると起ってきますから、そこで現在の法相としてはこの日の浅い民主主義を日本において成長せられる方に御尽力を願いたい。で、いやしくも民主主義以前の警察及び検察のやり方の復活を阻止せられるように特段の御尽力を願いたい。そういう意味で先ほどは申し上げたので、法相であるから、検察官であるからといって、法に関する態度を変えてほしいということを言っているのじゃないのです。  政治家としてあなたが今日、まだ十年にしかならない日本の民主主義であるから、検察官の中にことによると、まだ新しい民主主義のやり方というものの上において、あるいは不十分の人があるかもしれない。特に法相としてはそういう意味で検察の仕事が新しい民主主義的な方向に伸びていくように御尽力を願いたいと思う。明瞭に子供たちが多く泣き出している。それはこの公判に臨時の法廷となりました部落の総代の方もそこで御覧になっている。それからそのほかにも多くの方が見て、あんな小さい子供を泣き出すまで検事が尋問をするということについての批判、世論の批判でございます。またさればこそ地方の各新聞がいずれも片寄った立場でない、いろいろな立場新聞がこれを重大なる問題として取り上げている。また全国的にも言論がこれを問題にしているということも、やはりそこにどう見ても行き過ぎがあるという事実があるからであります。これらの事実についてはなお人権擁護局でもお調べのことであろうと思いますから伺いたいと思うのであります。どうか一つ法相がこの際民主主義以前の検察のやり方を一掃せられて、新しい民主主義的な検察の方向が成長せられるように格段の御尽力を賜わりたいと思います。
  118. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  119. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 速記を起して。
  120. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 法務大臣先ほどそういう事実があるならば示せということでありますから、一点だけ申し上げておきますが、さっき申し上げたように子供たちが泣き出してしまった、そうしてそれが臨時法廷で部落総代の方その他の方がそれを目撃せられておるのでもありますし、従って地方の各新聞紙でこれを問題にせられ、また全国的にも世論の問題にされているような事実でありますから、法務省におかれましても、直ちにこの問題についてのお調べを願いたいと思うのであります。われわれも調査をしたいと思いますが、法務省でもお調べを願っておきたいと思います。  それから明日法相御出席にならぬということでありますから、別の問題になるのでありますが、やはりこれも新聞紙が最近報道せられておることで、一般にいろいろな不安を与えておることでありますから今お答えを願っておいた方がよろしいと思うのですが、法相は最近治安問題についての構想を発表せられたようでありますが、それはどういう考えでそういうことをお考えになっておられるのか、そうしてまたそれはどういう御計画であるか、この際伺っておいた方がよいと思うのですが、お答えた願いたいと思います。
  121. 花村四郎

    国務大臣花村四郎君) 治安問題と申しましてもいろいろ広範囲にわたっておりますが、治安問題のうちで法務行政の範疇に属する問題であると、こうまず申し上げていいと思うのであります。そのうちでも最近共産党の党活動その他の動向というものが第六全協を契機として変って参りましたことは御承知の通りであります。従いまして治安維持の面からこれを対象としてながめた場合に、やはり旧来の共産党のあり方に対する考え方を変えて、そうして新しい出発をして参りまするこの党活動等々に関してやはり新しい時代に即応する見方をして、そうしてそれに対して適当なる取締り対策も考えていかなければいけないのじゃないか。今日はまさに今までのこの取締り方策に関する考え方をやはりその時代に即応するように変えなければならない段階がきたのじゃないか。そういう段階にきたことを認めて、もってこれに対処していくことが必要だという意味において、ただいま申し上げましたような精神にのっとって治安維持に関する対策も講じていかなければならない。こういう意味において私のごときまことに不敏なものがこういう重大な問題をひとりぎめにするというようなことは今の民主的な時代に適したものでもないので、従って衆知を集めて、つまり社会感情なり人情なりをとり入れて、そうしてこれが対策に細心の注意と考慮とを払っていくという建前から、ここに治安問題懇談会というような会を作りまして、そうしてこの会に対してつまり法務大臣の相談相手として、世論の帰趨を誤またず、また独断専行に陥らず、最も時代に適応したところの処置を講じていきたい、こういう建前から出発をいたした次第でございます。
  122. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 ただいまの御説明の治安問題対策懇談会というのは、法務省に設置せられるのでありますか、内閣に設置せられますか。それとも私的な懇談会なんでしょうか。もし公的なものであるとするならば、そういう法律案をお出しになるようなお考えなのか。そのへんのところを伺いたいと思います。
  123. 花村四郎

    国務大臣花村四郎君) その点はこれは法務省に設置をする建前に相なっておりまするが、行政組織法の第八条にいう審議会というような性格を持っておりませんので、従って立法措置の必要なしと認めておるのであります。
  124. 中山福藏

    中山福藏君 治安対策に関する委員会というか、懇談会というか、そういうものをこしらえるという今の羽仁委員の御質問お答えの法相の言葉は、私はどうも近ごろの内閣のやり方を見てみますと、砂田長官の古い十年さきに働いたいわゆる将官連中というものを相談相手にして御審議をやる、あの懇談会と申しますか、顧問連中が嘱託をされてから、非常にはやり出したように見ておる。先ほどのミルク、粉乳の問題につきましてもまだ閣議でもそういうことは相談も何もしておらぬ。大体閣議というものが一つの相談の相手役だと見ておる。そういうふうな十四、五人の大臣がおるのに、それはたな上げにしておいて、新しい連中を呼び出して御審議をなさるというそのこと自体が私はふに……これはまあ一向合点がいかないんですね。私はこれは一番相談に乗りやすい、まあすべての社会の事情を朝な夕な下僚から報告を受けている、御存じになっているところの閣僚が今の日本においては一番すべての材料を集めやすい地位にあると思う。そういう連中を一向自分の相談相手にせず、新しい人を寄せ集めて相談をする。私はどうもおかしくてしょうがない。近ごろの新生活運動に対する百五十三名でしたか、ああいう選び方でも、砂田長官の選び方でも、またあなたの設けられようという懇談会でも実におかしくてしょうがないのです。これは烏合の衆と申せばはなはだ失礼です。相当えらい人がおられる。ここにおられる人は少くともえらい人の一人でしょう。社会問題についてはそういう人を寄せ集めて気がね気詰まりをして、一向自分の意見の発表はせず、まあ今日はこれですませましょう。一年間か二年間かしりませんが、そういうことをやっておいて、早急の問題に対処することができるでしょうか。そういう考え方自体が非常に私自身には首肯することのできない問題だと思う。どうか一つ厚生大臣とも相談なさらぬというような、時間があるのかないのかわからぬですが、私どもは閣議が始まる前にでもちょっと川崎さんこっちへ来てくれ、君この問題はこうなんじゃないかという相談の時間は幾らもある。そういう時間を間に合わせるということをせずに、懇談会というようなものだけこしらえてうまくいくと思われるかどうですか。私は率直に承わっておきたいと思う。形式的に衆知を集めて独断専行に陥らぬようになどというむずかしい漢字を使って、形容詞たっぷりの言葉を承わったんですが、そういうことでうまくいくんでしょうかね。なるほど六全協ですか、それを起点として共産党の浸透作戦というものは相当に巧妙をきわめてやっているということは私どもはよく存じておりますが、しかしこれはあなた自身が、おれはこうやるのだということを一応方式を立てて、それに対してどうであるか、またこれよりもすぐれた案があなた方にあればお聞きすると、こういう建前ならばこれは聞えるのですよ。しかし法務省全体が一定の方針というものも何もなくて、これからまた松村方式で衆知を集めて相談される、その間に内閣がかわるというようなことも忘れてやられるということはいかがなものであるかと考えるのですが、これはどんなものでしょうか、一ぺん一つ御意見承わってみたいと思います。
  125. 花村四郎

    国務大臣花村四郎君) 必要な事項に関しましては閣議でも討議をいたしまするし、また閣僚の間でもいろいろの問題をとらえて話し合っていることも事実でございます。中山委員の言われる以上に閣議も活用され、あるいはまた閣僚間においても腹蔵のない意見を交換していろいろ話し合ってはいるのでありまするけれども、しかし政府の当路者としてやる方がいいか、あるいは政府というものと離れた考えを聞くのがいいかというような点が、やはり考慮のうちにおかれて、要するにこういう問題が起きてきているのでありまして、私としてはうまくいくものであると、こう解釈しているのであります。しかして今日こういう問題が何か今急にはやり出したようなお説でありまするが、そうじゃないので、これはもう自由党の内閣時代に相当やっている。ここに統計を持ってきておりませんけれども、この種審議会とか、そういう会議のできましたのが、相当数に上っております。むしろ法務省などはほとんどない省であると申し上げていいと思う。二十五年以降ほとんど一つもないと申し上げてもいい。ところがほかの省においては三つも四つも五つも、はなはだしきは二十ぐらいできている省もあるようでありまするが、これはもう自由党内閣のときにむしろみな作った。鳩山内閣に至りましては、ほとんどできたものはわずかであります。ただいま言われたような新生活運動に関する委員会のようなものとか、あるいはただいま指摘された防衛庁の顧問制度とか、あるいは法務省のただいま申し上げましたような治安問題懇談会といったような、あるいはまた大蔵省で設置した財政経済懇談会ですか、といったようなものがわずかにできたにすぎないのでありまして、むしろ日本民主党としては、この種委員会をなるべく整理して、そうして少くしようと、従って新規に起す委員会は、なるべくこれを仰制しようという党の方針を決定いたしまして、そうしてこの方針にのっとって今日まで進めてきているのでありますから、今までにできている多くの委員会は、みなこれは自由党の吉田内閣のときに作った委員会でありまして、鳩山内閣においては、この日本民主党のそうした基本的な考え方にのっとって、そうしてなるべくこういうものは作らぬという建前で進んできているのであります。まあ法務省はこういう委員会を作ってないから作っていいという意味じゃありませんけれども、しかし重大な治安維持に関する問題に対して、やはり今日の段階においてはそういう民主的な考えを取り入れて、そうしてやる方がいいのじゃないかと、羽仁さんがさかんに、民主主義を取り入れてやって行けというようなお説を強く主張されたのですが、そのお説から言えば、むしろ私はほめられていいと思うのですが、これは中山さんから、むしろ反対を受けるのは意外で、まあ反対でもありますまいが、あまりどうもほめて下さらぬというようなことは意外であると思うのでありまするが、そういう趣旨でありまするから、一つ悪しからず御了承を願いたいと思うのであります。もちろんやる私のことでありますから、うまく行くものなりと、あくまで信じている次第であります。
  126. 中山福藏

    中山福藏君 私はなぜそう申すかというと、先ほど森永の問題が出ましたときに、閣議にも一ぺんもかからぬ、こういう重大な問題があるとおっしゃったから、そういうふうなのんきな大臣方のお集りでは、幾ら懇親会とか、対策委員会をお作りになっても、一向効果は上らんのじゃないかと、あなたの言葉を証拠として提出したのです。辞護士ですから、その証拠に基いて結論を申し上げているわけでございます。御承知の通りに、この間、今おっしゃった行政組織法というものは、根本的に私は改革して、あの委員会というものを減らさなければ、この国民の税金の多いときに、国民はたまったものじゃないと思う。私はこの前、古い時代の内務省の防空委員をしておったことがありますが、そのつど上京して出席したときに、やはり手当が渡るのです。出席するというと、旅費が渡る、こういうことはこれは節約をして、できるだけ国民の税金を少くするということが、何より大事じゃないかと思う。官公邸の廃止というものを、去年の予算委員会で私が言ったときは新聞は小さく書いた。鳩山首相がおっしゃると大きく、第一号活字である。私はその五、六ヵ月前に、ちゃんとケースを上げて説明している、委員会で。ところが、そんなようなあんばいで、その都度々々に、人によって、言うことが同じであっても値打ちが違ってくるのですね。ですから私は、ただいまおっしゃったように、自由党、民主党というので、委員会を作る数が違う。これは私は自由党でも、民主党でもどっちでもない。私は公平中正妥当な立場に立って、自分の意見だけは発表しているつもりであります。私はこの自由党の時代に、各行政組織法を根本的に改革をして、委員会を減さなければいかんのだということは、非常にこれは私は自由党の功罪の上に、相当考えなければならん問題じゃないかと思っております。それを花村法相は、先日新聞に、岸本次官というえらい次官を抱えた。これは法務大臣がえらいからだというので、非常に愉快そうな顔を写されていらっしいましたが、それだけの自信があるならば、それに適当した見識をもっていただきたい。自由党がそれだけの行政改革をようやらなんだら、あなたが率先してその範を示されるのが、大法務大臣のこれは立場じゃないかと私は実は思うのです。あの記事を見て私は実は愉快になりました。どうか一つそのくだらないことをおやめになって、そうして範を一つ後世にたれるというような、まことに晴れ晴れとした態度をとってもらいたいと思うのです。たとえば松村文相の新生活運動をごらんなさいませ。文化的に生活をさせる、生活合理化する、政府の言う以上に出ていない。あれだけの人間がやっていて、一体何している。私はそれくらいの程度だろうと見通しをつけておった。あれじゃたまらんですよ、国民は。そうして何か茶菓が出て、それに対する手当が渡る。私はこんなことでは五千万円という金がなくてもよかろうと思う。それくらいのことはだれでもやれる。その種類のものだったら、これは大へんなものです。恐らく思想作戦ですから、思想をもって思想に対抗する以外に方法はないと思うのです。今度おやりになっても、御協議になってもそこに落ちてくる。もう暴力革命というものをやらんというのですから、思想でいこうというのですから、思想によってこれを圧服する以外に方法がない。そこに必ず落ちてくると私は断言する。それについてどんなお考えを持っていらっしゃいますか。私はこれ以上質問しませんから、法務大臣愉快なところであの新聞に出た顔を一つ、もう一つほころばして御答弁を仰ぎたい。
  127. 花村四郎

    国務大臣花村四郎君) いろいろ御意見を承わりましたが、中山委員のお説の前段は、これはごもっともで、私も賛成でありますが、その御意見は、わが日本民主党の主張しておるところとぴったりと当てはまって、少しも変りありません。で、私はこの日本民主党の主張、すなわち中山委員の言われるその御主張を信条として進んでいくということについては、何人にも一歩も譲らんと申し上げていいと思う。私は中山委員のただいまのお話しに限っては最も強い共鳴者であり、また同好者であるとまで私は申し上げていいと思う。でありまするから、法務省などにも委員を作る必要も、ある面ではありまするが、今日まで委員会等は作っておりません。でありまするから、恐らくわが官庁中で、この種協議会、もしくは委員会といったような会を持たざることは第一位でありましょう。たぶん法律上欠くべからざる委員会に限って六つか、七つあったと思います。ほかの官庁へ参りますれば、ほとんどもう枚挙にいとまのないほどそういう委員会だとか、協議会といったようなものを持っておりますることは、これは周知の事実で、私がここで多く申し上げるまでもありません。まあかような見地に立って御判断を願いましてもわかりますように、いかに法務省においてはこの日本民主党の主張、中山委員の主張と同じ線を進んでおるかがはっきりおわかりになろうと思います。がしかし、ただいま申し上げましたこの治安問題懇談会は、羽仁さんの言われた精神をそのまま織り込んで、そうしてあくまでも民主主義に徹して、そうして国民の気持、あるいは社会感情あるいは民情を取り入れて、そうしてこういう取り締りの面に友愛の精神をもってやっていかなきゃいけない。ただえんま様のようなこわい顔や、こわい形かばりじゃいけない。やはりやさしみを持った、そこに友愛精神を織り込んで、そうして民主主義に徹して運営することが必要だという意味でこれは考え出したことでありまして、新生活運動の成果がどうなりまするか、私がここであえて余談をはさむ必要はごうもないと思いまするが、まあこの懇談会は最も有意義に、大きな成果をあげていき得るであろうことを私は信じておるものでございます。しかしながら、これについては御承知のごとく予算措置等が伴いませんから、別にこの財政上いろいろの問題が起きてくるわけでもありませんし、まあ私の足らざるところを補っていくということに相なりまするので、まあ大大臣かどうかはわかりませんが、これは中山さんの判断にまかせますが、まあかりに大大臣とすれば、大大臣も過失なくいき得るものであるという点が強化されたという意味において、私は満足しておる次第でありまするが、どうぞまあ一つ、中山委員においても今後とも陰に陽に御指導を賜わらんことを、法曾界の大先輩にこの機会にお願いしておく次第であります。
  128. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 法相はしきりと私を引用されるので、私ははなはだ迷惑にも考えるのですが、先ほどの質問の続きを二点だけ伺っておきたいのですが、第一はこの治安問題についてのお考え方をもう少し明らかにしていただきたい、と申しますのは、古い考えですと、いわゆる警察国家的に何でもこの治安問題というのを治安対策的に押えればどうにかなるという考えがあったようで、われわれはそれに対して非常に不満に考えております。治安の問題はやはり結局は国民生活の問題で、私は最近ヨーロッパを旅行して、スエーデンなどが刑務所が全くからになっている、従ってスエーデンがソビエトなどと親密な関係を持っていっても少しもそういう不安がない、刑務所がからになるくらいに国民生活が安定しているとあれば、いわゆる治安対策というようなことにそう神経質にする必要が全くないだろうと思う。けれども国民生活が非常に不安であり、失業者も多い、なかんずく十数万人の大学卒業者が今卒業しようとしているのに、そのほんの三、四割しか就職ができないというのであれば、多数の知識階級が失業することによって、思想上いろいろな問題ができてくるという、それを今度はまたいわゆる治安主義でもって押えていこうということは、全く旧憲法時代の考え方で、日本を不幸に陥れた考え方にほかならない。いわゆる警察国家主義のようなものだ。私はまさか今法相がそういうすでに悲惨なる実験ずみの考え方に立っていかれるものではないと思うのですが、その点についてもいわゆる治安取締り主義というようにお考えであるのか、それとも国民生活の安定によってそういう問題が解決していくというふうな方面に、もっと御尽力になるということであるのか、その点を明らかにせられたい。  それから第二点は、新しい設置法案によらないで、そういう会を設置せられるということでありましても、やはり法の精神なり民主主義の原則なりから言って、私は何よりも法務当局としてはこの衆参両院の法務委員会というものを十分に尊重せられることが、もちろん申すまでもない当然だろうと思う、新聞、言論に発表せられることは、民主主義として当然のことでありますが、言論機関に発表せられると同時にこの法務委員会にも構想を常に発表せられて、そうしていかれることを希望いたすのであります。そういう態度をおとり下さることと確信をいたしますが、その点についても伺っておきたい。  で、第一の点、やはり私は先日の法相の言論機関に対する御発表が問題になっているのは、せっかく共産党が合法的な活動を主としようというふうにされていくのに、それに対していわゆる取締り的な方向で進んでいくということになれば、また追い込んで非合法的な方向にいってしまうのではないか、合法活動を尊重されるということは妥当な方法だというふうに一般の輿論は考えている。それにまさか逆行するのではあるまいと思うのですが、その点について伺っておきたい。  第二点すなわちもし設置せられるとするならば、その構想なりあるいは人選の方法なりというものを本委員会においても明らかにせられたいと思うのですが、もうすでにその懇談会の設置は御決定になったことなのですか、どうですか。先ほどから中山委員もしばしば御指摘になっておりますが、閣議にもお諮りになったかどうか、どの程度の御決定になったのか、人選の御方針というものは大体どういう御方針であるか、いわゆる治安取締りの古い方方を集めておやりになるというのか、それともそうではなくて新らしいお考えがあるのか、以上伺っておきたい。
  129. 花村四郎

    国務大臣花村四郎君) ただいまの第一点の点でございますが、これは懇談会が名前のごとく、治安問題懇談会ということに相なっておりまするので、従ってこの反共対策のみを対象としているわけではございません。私が先ほど申し上げましたのは、その一例を共産党を引用したに過ぎないのでありまして、やはり御承知のように左もあれば日本には右もあり、右翼の活動もまた相当見るべきものもあり、その他必要なる犯罪等も起きておりまする世相等にかんがみて、最もよりよい多くの人が認めてもって最善の方途であると考えられる、つまりよりよき対策を考えて行こうというのにほかなりません。でありまするから、治安問題に関して、しかもそのうちで法務行政の範疇に属する問題について、時に触れ折に触れて法務大臣が必要ありと認むる事項を、つまり相談をする、こういうことでありますので、別に支障の起きるようなことはないと、多くの人の意見を徴して悪いということがありとするならば、これは別でありまするが、独断専行よりもむしろ衆知を確めて、そうして大事なことはその意見を聞き、それを参考にしてそして法務行政を行うということはこれは羽仁さんの言われた趣旨にぴったりと適合するものであって、私はむしろ羽仁さんからはほめられていいものであると、こう考えておるわけです。  それから第二点の問題は、これはもちろん法務省法務委員会を尊重せねばならんことはこれは当然であります。これはただに私ばかりでなくて、歴代法相においてもこの間にはすこぶる強きものがあったと同時に、私も在来の法相の考えと少しも変るところはありません。むしろ法務委員会を尊重するの念慮においては何人にも私は一歩も譲らんと申し上げていい、法務委員も私は長い間やって参りました。そして法務委員会の運営並びにその内容等も詳しく承知をいたしております。ことに衆議院においては法務委員長の栄職も汚しておったというような関係からいたしまして、法務委員会を尊重するということの念慮はきわめて熾烈なるものがあると私は申し上げてよろしいと思うのであります。従いまして大体主な事柄は、法務委員の方々にやはりおはかりして、そうしてこの法務行政の運営をやっていくのが一番適当であると、こう考えまして、機会あるごとに皆様方の意見を聞き、あるいは自分の意見を申し上げるという機会を実は得たいと考えておるのでありまするが、なかなかどうもそういう機会が出てこないで困りますが、まあなるべく一つそういう機会を作っていきたいと念願をいたしております。そうしてこの懇談会は、大体設置することに決定し、党の了解も得、また閣僚諸君の了解も得ておりまして、今は人選をいたしておるところであります。人選もきわめて慎重に各層の有力なるメンバーに集まってもらうことにすることを希望しておりまするが、しかし旧来の委員会を見よすと、同じような人がいつでもどの委員会にも顔を出している、でありまするから、こういうこの重複した委員の方はなるべく遠慮をしてもらう方がいいのじゃないかという意味も含めて、そうして慎重に今人選をいたしておるところでございます。かような次第でありまするので、また時に触れ折に触れ法務委員会の方へは発表のできる機会がありますればいたしたいと思っております。
  130. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 どうか一つ取締り第一主義のような古い考え方は復活しないように御尽力願いたいと思います。  それからなおなかなか本委員会に出席されることがむずかしいと思いますので一つだけ伺っておきたいのですが、われわれは最近北海道方面裁判検察及び刑務の調査に派遣されたのでありますが、その際にも現場の刑務所において非常に強い要求が看取せられますのでこの際伺っておきたいのですが、この監獄法の改正というものは法相就任後間もなく御発表になったことでもあり、その後私が本委員会でしばしば質問いたしました際にも着々進行しておられるように御答弁をちょうだいしておりますが、この刑務所長、また刑務に当っておられる方も古い民主主義以前の監獄法があるためにそういうことをした方がより効果があると考えることができないために困っておられる面もあるように思うのですが、やはりできるだけ早く新しい民主主義的な法律改正をなさるべきだと思いますが、よほど御苦心のところとはお察しいたしますが、どんなお見込みでやっておられますか、でさるだけ早く実現せられたいと思いますが、お答えをちょうだいしておきたいと思います。
  131. 花村四郎

    国務大臣花村四郎君) 監獄法の改正問題のお話しでありましたが、この点については全面的に私も賛成であります。お説の通りであります。でありまするから、矯正局の方へ申しまして、そうしてこれが改正に着手をするように命じてあり、今日多分その案を作りつつあると思います。先ほども矯正局長にきてもらいまして、どの程度に進んでおるかという話を聞きましたところが、多分十月一ぱいぐらいで矯正局としての案ができるので、それをもって法制審議会にかけるか、あるいは新たに監獄法改正に関する委員会を作ってかけるか、まあいすれにしてもこの種委員会にかけるように進めておる、こういう報告でありましたから、近いうちにまあ大体の原案と称するものができまして、そうしてしかるべく委員会に諮問をして、そうしてその上で法律案を作るという段取りに進み得ると存じます。
  132. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 この問題は、実は私どもいろいろな刑務所の第一線に働いておられる方々の御意見もあり、また、今法相がおっしゃるように、いろいろな面からも早急の改正の必要を感じておりますので、どうか一つ格段の御尽力を願いたい。で、議員提出改正法律案というものの提出のようなことになりますと、私は政府としてやはりあまり面目にも多少関することにもなるのじゃないか。もう世論は、特に早くから改正の必要を世論は要求しているんでありますから、どうかあまり長い時間をおかけになっておりますと、議員提出改正法律案というようなことにもなるかもしれない、それはやはり法務当局の面目というものから考えなければいかぬ、いろいろと民主的にさまざまの意見を聞かれ、審議会等の機関にかけられるということもけっこうなことでありますけれども、しかし大体改正しなければならない要点は、もうすでに明らかになっていることでもありますから、臨時国会ということは無理でありましょうが、通常国会あたりにはぜひ提出せられるように希望したいのですが、御尽力願えましょうかどうでしょうか。いかがなものでしょうか。
  133. 花村四郎

    国務大臣花村四郎君) 御趣旨の精神を体して、なるべく早い機会に改正法案を出すべく努力いたしたいと存じます。
  134. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 本日はこれにて散会いたします。    午後三時三十八分散会