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1955-07-28 第22回国会 参議院 文教委員会 第26号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年七月二十八日(木曜日)    午前十一時八分開会   —————————————   委員の異動 本日委員松原一彦君辞任につき、その 補欠として石坂豊一君を議長において 指名した。  出席者は左の通り。    委員長     笹森 順造君    理事            雨森 常夫君            吉田 萬次君    委員            大谷 肇潤君            川口爲之助君            佐藤清一郎君            堀  末治君            加賀山之雄君            安部キミ子君            高田なほ子君            矢嶋 三義君            村尾 重雄君            石坂 豊一君   衆議院議員    赤城 宗徳君   国務大臣    文 部 大 臣 松村 謙三君   政府委員    文部政務次官  寺本 広作君    文部大臣官房総    務課長     田中  彰君    文部大臣官房会    計課長     北岡 健二君    文部省初等中等    教育局長    緒方 信一君    文部省管理局長 小林 行雄君   事務局側    常任委員会専門    員       工楽 英司君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○私立学校教職員共済組合法の一部を  改正する法律案衆議院提出) ○教育、文化及び学術に関する調査  の件  (津市橋北中学校生徒遭難事件に関  する件)  (教科書制度に関する件)   —————————————
  2. 笹森順造

    委員長笹森順造君) ただいまより文教委員会を開きます。  まず、私立学校教職員共済組合法の一部を改正する法律案を議題といたします。質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 堀末治

    堀末治君 ちょっと速記をとめて下さい。
  4. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 速記をとめて下さい。   〔速記中止
  5. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 速記をつけて下さい。
  6. 雨森常夫

    雨森常夫君 この間懇談の間に私提案者の方に御説明をお願いしたのですけれども、なおそれに関連して文部当局の方ではどういうふうに考えておられるかということをお尋ねしたいと思うのであります。この前お何しました公立学校月額平均が一万六千円であり、私立学校平均が一万一千円である。しかもなお公立学校の方の一万六千円は基本給であり、私立学校の方の一万一千円は諸給与を含めたものであるという御説明でありましたが、かように違うのはどういうわけかということをちょっと疑問に思うのであります。ところがこの間の提案者の方の御説明によりますというと、大学から幼稚園までの各種に分けての加入者数字を承わったのでありますけれども、これを見ますというと幼稚園の教諭の数が非常に私立学校の場合に多いということが一つうかがわれるので、これが一つ原因であろうかと思いますけれども、なお文部省の方でおわかりになっておりますならば、この私が疑問としておりますところの原因がまだほかにあるかどうか、これを一つ承わりたいと思うのであります。なお一万六千円というのは、一般公務員基本給一万二千円弱でありますが、これよりだいぶん山高いので、学校給与がなるほど年令のなにが非常に高いので給与の高いことは承知いたしておりますけれども、これもあわせて一つ説明を伺いたい。
  7. 北岡健二

    政府委員北岡健二君) 公立学校教職員掛金の算定の基礎になりますのは基本給だけでございますが、それは一万六千、ちょっと数字は多少ずれておりますが、三十年の二月末現在で一万六千六百五十六円になっております。それから私立学校教職員共済組合の方は大体ここにあげられておるような金額で、この場合には本俸のほかに手当等がこの中に含まれております。なお国家公務員の方は非現業の分だけをとって参りますと、やはりこれの掛金積算基礎になりますのは基本給でございますから、一万二千二百三十八円でございます、三十年二月。どういうわけで公立学校教職員の方がこのように高く、私立学校教職員の方がこのように低いかということにつきましては、これは掛金率とも関係いたすのでございますが、一般私立学校教職員給与の低いということはこのような数字に現われておるような事実に基くのでございまして、たとえば公立学校教職員共済組合の場合ですと若い人が入って、それがずっと勤めていって、そしてだんだん年をとって一定年令以後になると退職が始まる、こういう状態でございますが、ところが私立学校の場合には一つの特性がございまして、若い人の占める率とそれから年をとってから初めて私立学校に入ってくる人との数が、年をとってから入ってこられる人が割合に多いのでございます。そうしてそういう方々は大体すでに他の方面で年金をもらっておられるとかというふうな関係があるようなことから、比較的給与が低いまま入ってこられる場合がある。そういうような関係から、構成年令に対する給与構成と申しますか、そういう給与構成の形がかなり私立学校と、それから公立学校との場合には差があるのでございます。ほかの一例を申し上げますと、同じ国家公務員共済組合の中の非現業に属しておりますのが非現業平均は先ほど申し上げましたように一万二千円程度でございますが、文部省共済組合文部省支部と申しますか、文部省支部だけをとってみますと一万六千五百円というふうな平均給与になります。これは国立学校教職員というのが大部分を占めております関係上、大体公立学校教職員共済組合給与構成の仕方が似ておるということから来ると思います。それからもう一つ私立学校教職員共済組合の場合に、比較的給与の低い人がたくさんを占めておるという点もございます。御承知のように、公立学校教職員の場合には大部分が小学校中学校高等学校、こういうような職員が大部分を占めて、幼稚園職員の占めておる率が非常に低いわけでございます。現在私立学校教職員構成を見ますと、六万人程度人数の中で一万三千人程度幼稚園職員が入っておるということになりまして、その幼稚園職員給与平均は六千円台でございます。そういうことになりますと、かなり全体としての平均値が下る、こういう結果が生じてくるということになるわけでございます。もし私立学校教職員共済組合私立学校全員加入であって、従って現在ここに加入しておりません大きな大学等職員もこの中に入るということになれば、かなりまた平均数値は上ってくるのではないかというふうに想像されますが、現在のところば、ただいま申しましたような条一件がございまして、一万二千円に足らないような平均月額が出ておる、こういうことでございます。
  8. 雨森常夫

    雨森常夫君 提案者の方にもう一つお伺いいたしますが、提案理由説明に、強制加入を建前とするということをうたってありますけれども、この間承わりますというと、未加入の者は相当たくさんあるのでありますが、これは将来加入するものでありましょうか。加入するとすると、この国庫の支出がふえてくることが予想されますが、その点はどうですか。
  9. 赤城宗徳

    衆議院議員赤城宗徳君) 未加入のものもありますが、これは厚生年金の方が有利であるか、あるいは私学共済の方が有利であるか、こういうことで選択権があるために、入ってないのがあるわけでありますが、私学共済の方がまあ大体均衡がとれてくる、この方が今入ってもいいというような情勢になりまするというと、未加入学校も入るわけでございます。こう予想されます。従って今お説の通り、今四百万の増額予算を計上してありますけれども給与の人もふえてきましょうし、加入学校もふえてくるということになりまするならば、年々ある程度増額は見越さなければならないのじゃないか、こういうふうに考えております。
  10. 雨森常夫

    雨森常夫君 今のお話はわかりましたが、そうするとこの開承わりましたこの数字の未加入数字が入れば、これだけが全部入ったとすれば、それ以上にはふえない、こう考えてよろしゅうございますか。
  11. 赤城宗徳

    衆議院議員赤城宗徳君) ただいま予算に計上されている四百万円の増額は現在のものを基礎としてのものであります。そしてまた御承知通り、これは決算してあと補助することになりますので、正確な数字ではありません。大体現在入っているものを計算して、もう少しふえるようでありまするけれども決算補助でありますので、四百万という予算に計上された額をもって一応充当したい、こういう考え方であります。
  12. 雨森常夫

    雨森常夫君 くどいようですけれども、やたらにふえるものではないということは言えるわけですか。
  13. 赤城宗徳

    衆議院議員赤城宗徳君) お説の通りで、基本数字があるのでございますから、やたらにふえるということはありませんし、また急激な増加ということもあり得ない、こういう考えでございます。
  14. 堀末治

    堀末治君 今ここに資料としてもらっておるやつ、これを見ますと、いわゆるこういうことを言うてあるのです。「厚生保険特別会計から一定率費用負担を受けることになっているが、法の不備と厚生年金法改正によって、従来の保険料は子のまま掛捨となり、私学共済はこれに見合う財源として約五億五千万円を不足責任準備金として負担しなければならない。」こういうことがあるのですが、ここを一つ説明願われませんでしょうか。
  15. 北岡健二

    政府委員北岡健二君) 厚生年金とそれから私学共済との関係につきましては、この私立学校共済組合法ができ一まずときに、厚生年金法及び健康保険法改正もございまして、大体同時に上程されたのでございますが、その場、合の考え方としまして、健康保険法及び厚生年金法強制適用にすると、それから私立学校共済組合法強制適用になる。そこでその間の調整をどうするかというので、私立学校共済組合法付則でその間の調整をとったのでございます。その調整の仕方は、私立学校共済組合が発足する以前に厚生年金加入していたものは、共済組合の成立後十カ月以内に学校単位に意思を決定して、どちらに入るか選択をしてきめろというふうな付則を作ったわけでございます。そうしてその際に、厚生年金をやめて共済組合へ入る者ができた場合には、その厚生年金に入っていたときに納めた掛金をどうするかという問題が出たわけでございますが、厚生年金特別会計から共済組合の方に財源としてすでに積み立てたものを全部移すということは実施上非常に困難があるというようなことから、厚生年金から私学共済に入って、そうして私学共済の方でやめて給付を受けるという場合には、厚生年金に入っていた期間を通算して払うから、その払う時期になって厚生年金特別会計の方から一定割合共済組合へ金を納める、こういうことによって調整をするというふうになりました。ただそのときのできるときにいろいろいきさつがありまして、厚生年金法改正がおくれた関係もあって、共済組合が発足したときには厚生年金の方の支払い金額は非常に低いものであった。それが共済組合が発足した以後四カ月ほどたって厚生年金法改正がございまして、そうして支払い金額を高めたわけでありますが、法律制定の際のいきさつがあった関係で低い金額厚生年金特別会計が負担する。先ほど申し上げました厚生年金から共済組合へ移って、そして共済組合のものとしてやめて退職金をもらうという場合にぱ、厚生年金の方で負担する部分は前の法律のときの負担割合でいこう、こういうようなことになっておるわけでございます。その関係先ほどお話のありました五億何とか、正確な数字は今……厚生年金から引き継いだ人間のために現在用悪しなければならない金というのが数億の金額にな一るわけでございます。その数億の金額を一度にもらわないで、あとから埋める。あとから埋める場合にその埋める率が割合に低いということは事実でご一ざいます。それは先ほど申し上げましたように、厚生年金でその当時であれ一ば三百円単位ぐらいでしか払えないものが、共済組合の方はやめるときの給与の四月分というふうな払い方をしますから非常に高くなるわけでございます。その差額は全然完全に埋められていないというのが実情でございます。従って完全には掛け捨てとなるわけではないわけでございますが、ここから向うへ納めた分だけは入ってくる。ただ払うときの額と、それから向うで積んでおいた金とが非常な差が起る、こういうのが事実でございます。
  16. 堀末治

    堀末治君 そうすると、今の御説明によるというと、この掛け捨てになるということは全然掛け捨てにはならないわけですね。
  17. 北岡健二

    政府委員北岡健二君) そうでございます。
  18. 堀末治

    堀末治君 何ほどかの低い率だけれども国家の補償は受けられるのですね。
  19. 北岡健二

    政府委員北岡健二君) 大体積んであった金額ぐらいは共済組合の方へ入ってくることは間違いございません。ただ積んであったのが払う額に比べて非常に低いということは事実でございます。これは貨幣価値の変動やそういうことが関係しまして。
  20. 堀末治

    堀末治君 そうすると、これは私学共済決算をするときには、その金額政府に対する債権として資産に載せ得ることになるのですか。
  21. 北岡健二

    政府委員北岡健二君) 今の取りきめは政令に規定がございますのです。が、共済組合の方で退職する人間に払いまして、払ったものをその年間中のものを全部集めて翌年厚生年金からもらう、こういうことになります。ですからおっしゃるように、債権として共済組合がそういう人間に対して給付したときに債権が発生する、給付をいたしますと、債権が発生する、こういうことになります。厚生年金から引き継いできましたものが、やめたときにこちらでそのやめた人に両方を通算して退職年金を払いますので、払うと、払ったときに政令で定めた率によって計算された金額について共済組合から厚生年金特別会計に対する債権が発生する、こういうことになります。
  22. 堀末治

    堀末治君 そうすると、ここに「財源として約五億五千万円を不足責任準備金として負担しなければならない。」こうある。不足責任準備金ということになってくると、今の言うようなのとこれは合わないように思うのだが。
  23. 北岡健二

    政府委員北岡健二君) 不足責任準備金と申しますのは、少し前おきが長くなって申し訳ございませんが。
  24. 堀末治

    堀末治君 なるべくわかりやすく言って下さい。
  25. 北岡健二

    政府委員北岡健二君) 共済組合が今六万人の人間が新しく入った、こういたしまして、その六万人の人間が順順にやめていきます。一定比率計算がたちますが、だんだんやめていきます。それで早くやめた人には退職一時金を払う。それから二十年以上になりますと、退職年金を払う。退職年金を二十年のときに払うのが何パーセントぐらいになるか、あるいは二十一年目にやめる人が何パーセントになるかというふうな、そういう計算が別にあるわけです。それで全部計算しまして、どれだけの金がこの今六万人入った入間が全部やめてしまって支払いが全部終るまでに何億何千万要るかという計算が立つわけであります。その計算に対しまして、それではもちろん入っている人は月給も上っていくが、そういう月給の上っていくのも計算に入れて、やめていく入も計算に入れて、毎月幾らずつ金を取っていったら採算がとれるかという計算をいたします。これが純粋保険料率という計算でございます。その場合に、給与月額の何パーセントといいますか、千分の幾ら取ったらいいかという計算をいたすわけであります。それが純粋保険料率と、こういうわけでございます。ところが、今の申し上げました計算は、六万人の人間組合の発生したときに入って、そして、それが全部なくなるまでという計算でございますから、この私立学校共済組合厚生年金から入ってくる人もおる、私立学校恩給財団から入ってくる人もおる、そういう人たちは、前に別のところで掛金をしておって、そうして、しかも、年数の通算をいたしますから、ただいま申し上げました純粋保険料の基準からはみ出すわけであります。その分を幾ら要るかという計算をそれぞれするわけであります。厚生年金から入ったのが十年の人が何人おって、八年の人が何人おってというふうな計算をいたしまして、そして、男女によってそのやめる割合が違いますから、男女別計算しまして、そして、今の年数人数とかけ合せたような数字から何億の金がその分として足りないと、こういうのが出てくるわけであります。恩給財団から引き継いだ場合にも、やはり同じように何億足りないというのが出てきます。その分だけ今の純粋保険料率計算しました金に対して足りなくなるわけですから、もしそれだけの現金が現在あれば、よそからもらえば、たとえば、厚生年金の場合ですと、大体五億くらいの不足になりますと、五億の金が現在あれば、それで将来それを積んでいって、要るときに出してやるわけですが、利息もかせぎますしいたしますから、支払いに困らない。今五億ないから、これを、その五億をどうしょべかということになりますと、これはやはり今の組合員平均にかけるよりしかない。そうして、やはり毎月の所得の千分の幾らというふうにはじき出しまして、これを取っていくわけであります。それを整理資源というわけであります。そういうような形をとる場合を整理資源というわけであります。今の純粋保険料率と同じようなふうに、月の給与の千分の幾らというふうな比率に表わしまして整理資源率、こう申します。私立学校共済組合の場合には厚生年金から入った分と恩給財団から入った分と両方の分が整理資源として必要になるわけであります。
  26. 堀末治

    堀末治君 こまかいことを言うようですけれども、つまり、給付したとき初めて政府請求権が生れるわけですね。本来ならば、その金は当然共済組合に積み立てられなければならない金なんですね。ある程度、これは何ぼか、七分五厘かに回っているというお話ですが、そうすると、金利だけ損して政府に寄付している形になる。ほんとうをいえば、給付の生れたとき少くとも、せめてその花金に対する金利くらいはっけて政府が払うだけの義務があるように思いますが、そうではありませんか。
  27. 北岡健二

    政府委員北岡健二君) その辺はいろいろ方法がございまして、たとえば国家公務員共済組合の場合とか、あるいは地方職員共済組合の場合にも同じような整理資源の問題があるわけでございます。この整理資源につきましては、国家公務員共済組合の場合には、その整理資源分国家が出します。これはむしろ使用者という立場で国が負担する。それから地方職員の場合にも、やはり使用者という立場で都道府県が負担いたしております。私立学校共済組合の場合にはそれをどこで負担するかという問題があったわけでありますが、共済組合の発足のときに、これは一つは、厚生年金法改正ともからんでおったのでありますが、整理資源を全部国がもつというふうな考え方もあり、あるいは使用者がもつという考え方もあり、その二つの考え方があったのですが、どちらも現実にむずかしいというふうな事情がありまして、私学恩給財団から引き継いだものの整理資源は、私学恩給財団の財産を全部共済組合へ引き継ぐ、こういう形で解消する。それから厚生年金からの引き継ぎの場合には、先ほど申し上げましたような、厚生年金の方で支払いのときに負担する、こういう形をとったわけでございます。で、お話のように、利息問題等があるわけでございますが、厚生年金特別会計がその点床で多少もうけているではないかという点は、確かにお説の通りあるわけでございます。
  28. 堀末治

    堀末治君 ほんとうに一五億五千万円もあったら、なかなか大きい金利ですね。実際何ぼほどあるんだろう、今度厚生年金にかけた金額は、私学共済組合に移って。
  29. 北岡健二

    政府委員北岡健二君) お答えいたします。厚生年金特別会計の方に五億五千万あるという意味ではございません。そういう意味ではなくて、厚生年金から引き継いだ約二万七千人くらいの人間が、私立学校共済組合に入って、そして先ほど計算しましたような比率でだんだんやめていくとしまして、やめていくときに払っていった場合に、厚生年金におった期間ですね、おった期間分に相当する金の積み立てが五億何千万も共済組合が払うときに、それだけの金を用意していなけれ、ばならない、こういうことでございます。ところが、厚生年金の方には、御承知のように十年前ですと月三円、非常に給与の低い時期でございますから、従って掛金なるものが非常に厚生年金で低いわけでございます。それから掛金の率も千分の十五くらいの低い率でございますから、実際に厚生年金の方に積んである金額としては、とても五億なんという金額にはならない。おそらくまあ推定して言いますと、その十分の一にも達しないのじゃないかという感じでございますが、その現実に積んであるくらいの金額は、将来において支払うときに、共済組合へ入ってくる。従って五億何千万要るという整理資源として必要だ、不足責任準備金として必要だということと、それから厚生年金の方で、現実に積んでいた金額とは直接関係がなくて、その五億何万のうち、厚生年金から将来補給される金額があるわけでございますが、それは私ども計算ではあまり大きな数字にはならない。まず一割くらいじゃないだろうか。
  30. 堀末治

    堀末治君 一割というのは五億五千万円の一割ですか。五千五百万円。
  31. 北岡健二

    政府委員北岡健二君) 一割くらいじゃないだろうかという推定で、従って計算の上にそれを表わすだけの大きさにもならないというふうなことから、厚生年金分に大体不足責任準借金が五億五千万程度というふうなことになるわけでございます。現実厚生年金の方に積んである金額も、これはとても一々計算は実際できないのでございます。推定いたしますとやっぱりその程度だと思います。
  32. 石坂豊一

    石坂豊一君 この提案されておる補助率を五分上げるということなんですが、この説明を見ますと、きわめて灘由が明瞭になっておる。他との関係も、同じ種類の職員との権衡もとっておる。それから悼生年金との関係もある程度見ているというようなことできわめてわかり切っておる。それが衆議院の方の努力によりましてわれわれはこれを公平にやり得る機会をつかんだのでありますが、こういうことは体予算関係もありまするし、願わくはこれは文部省あたりでわかっておるようなことであるから、政府提案として初めから出べきものでなかろうかと思う。事好んで衆議院で案を出されるわけじゃないので、見るに見かねて出て来ておる。予算までも補正して、そうしてちゃんと計数の立つようにして来ておるのだから、われわれはこの衆議院の案というものに少しも異存がありませんが、ただ遺憾に感ずることは、文部省私立学校のほうはどうなってもかまわん、それを求めてくればそのときでいい、ほおっておけば議員提出でもして行くだろう、そういうような考えでおられたのか。また、これは今おっしゃる通り掛金関係なりまた給与関係私立学校のほうは低いのだから、今にわかに率を上げてみてもかえって都合が悪くなる。こういうようなことで、善意で言えば、別に公平を失しているわけではない、私立学校は低い給与でがまんしておったのだから、その通りにならして行けばいい、こういうお考えであったのか。とにかく私どもはこの案そのもの衆議院から出て来たという、そのことについて、やむを得ずこういうような方法をとって来たものであるが、かような処置に対しては当然全国的に教育を管理しておられる文部省立場としては、たとえ私立学校であろうと何であろうと、同じような教育に従事している者に対しては、同等の待遇を与えて行くという立場で行かなければならんのじゃないか。その点から言えば、これは当然政府案として出べきものでなかったか。そこを一つお伺いしたい。
  33. 小林行雄

    政府委員小林行雄君) 石坂先生の御指摘の通りでございまして、実は私学教育の振興ということは、現在の大臣も非常に力を入れておられるところでございます。その一環としまして、私立学校教員福利厚生ということにも大いに力を実は入れておるのでございます。この三十年度の予算を編成します際には、文部省といたしましては、この共済組合長期給付に対する国の補助百分の十をぜひ十五に上げたいというので、そういった原案を作りまして財政当局とも相当折衝は実はいたしたのでございますが、当時財政当局のほうでは、厚生年金のほうは確かに百分の十五になっておるけれども、これは長期給付の積立金を資金運用部資金のほうに入れておるので、私学共済のほうはそういうことがないのだから、そういった点で非常に差がある、またそれ以外の社会保険との均衡というようなこともあって、これはぜひやめてくれ、大蔵省としては認めることができないというようなこともありまして、いろいろ文部省としては政治的にも折衝いたしたのでございますが、やむを得ず引き下ったというようないきさつが実はあったのでございます。そういったことでございましたけれども文部省としては、これは理論上確かに厚生年金私立学校共済組合のほうが子供の法律になっておりますので、ぜひとも厚生年金と同じ国庫補助率にしたいこいう念願は現在までもすっと持っておったのでございます。ただ文部省の事務のほうの非力、で本年度政府としてやるべきことが行われておらなかったというような現状でございます。まことに申しわけないことだと思っておりますが、しかしこの点について、文部省として熱意がなかったということではないので、その辺は御了承いただきたいと思います。
  34. 高田なほ子

    高田なほ子君 ただいま小林局長から御答弁がありましたが、二十八年にこの共済組合法案が通るときにも、文部省側の考え方としては、私立学校教職員給与が公立、国立教員の給与よりはきわめて低いということを数字的に示して、当時、速記録によると、近藤政府委員は、公立学校の百分の十、しかし私立学校はこの百分の十では非常に気の毒だから、百分の二十に実はしたいと思っている、そういうふうに折衝して来たのだというふうに速記録に残っているわけです。この際百分の十から百分の十五に上げるということは、これはもう当然過ぎる以上の当然であって、これはもう論議の余地がないように私は考えられる。しかし全般的に言うと、日本の政府は、歴代の政府そうだと思いますが、私立学校に対する認識というものは私は低いものだと思う。文部省内における私立学校部の御発言というものはどれくらい重要視されているかということについて私はむしろ疑問を持っている。イギリスあたりの制度を見ても、私立学校に対する国の補助は約全予算の七〇%、学生が負担するのは三〇%である。日本の場合は、逆に学生が負担するのが七〇%で、国は三〇%でお茶を濁している。こういうようなことから見ても、私立学校に対しての熱意というものが政府自体が私は少なかったように思う。と同時に、省内における私立学校部の御発言というものが重要視されておらないのじゃないかということすら私は考えられるわけです。今御説明があったわけですが、これは大蔵省の一存でもって百分の二十にすることができなかったというのでございますか、それともその間やはり文部省として私立学校振興に対する若干の熱意が欠けている結果からこういうふうに今まで放置されて来たのかと、こういうふうに責めたくなるわけですが、この点についていかがですか。
  35. 小林行雄

    政府委員小林行雄君) 文部省としては、先ほどお答え申し上げました中にも申しましたように、決して私学教育の重要性の認識あるいは私学教育の振興ということについて不十分であったり怠ったりしているつもりは実はないつもりでございます。御承知のように、戦前は私学教育につきましては、政府あるいは行政官庁はもっぱら監督的な立場で仕事が扱われておりましたのでありますが、戦後私学の自主性というものを認めて政府はできるだけそれを援助するという建前になりまして、私立学校法なりあるいは私学振興会それから共済組合制度というようなものも一逐次だんだん整備せられて来ておる実情でございまして、文部省といたしましても私学教育の振興にはできる限りの力を入れて参っておるつもりでございます。また現在私学教育をさらに振興させるために、中央教育審議会に対しましても一諮問をいたしまして、今後の振興方針というものを研究していただいておるような状況でございます。先ほどお尋ねの中にございましたのですが、英国の私学に対する補助が非常に大幅である、全予算の相当部、分が私学に対する補助に向けられておるというお尋ねでございますが、これは英国の特殊な事情もあると思います。英国は、御承知のように国立の大学というようなも一のがございませんので、大学はほとんど私学である、従って政府が非常に熱を入れて金を補助しておるというような形になっておると思います。わが国では多少英国とそういった点で違い出て来ると思っておりますが、いずれにいたしましても今後私立学校教育の振興には、先ほど来申しましたように、十分に努力をいたして参りたいと思っております。この国庫補助率の引き上げの点でございますが、百分の二十というような数字でございますけれども、まあ、文部省といたしましては、そう一気に現在の補助率を倍にするというようなことは、なかなか困難であろうと、それはできればそれに越したことはないけれども、その他の社会保障制度に対する国の補助金の率というようなものも勘案して、文部省としては百分の十五程度が妥当であるというふうに考えて、文部省として大蔵省と百分の十五ということで折衝を行なったのでございます。
  36. 高田なほ子

    高田なほ子君 ところが、文部省は折衝を行なっても、その百分の十五に納得できないということは、私どもとしてはむしろ了解に苦しむわけです。で、こういう問題は、文部省が当然やらなければならないのを、まあ言葉をかえて言うならば、私はサボっていると思うんですよ。決議事項、また文部省の当初の考え方、そういうものを一致しながら、なおかつ文部省が立法化さないということは、私は文部省はなはた怠慢だと思う。さればこそ、衆議院の方は、議員立法の形で、ここにだんだんの御苦労して御提出なすったので、私は赤城さんの御労苦に対して衷心から感謝をしておるというようなわけでございますが、そこで、文部省として大蔵省に迫るについては、相当のデーターをもってお迫りになっておるのではないかと思いますが、死亡生存辰とか、あるいは脱退残存表というような、そういった正確な数字が一体文部省にはお持ちになっておるのですか。この私立学校についていかがですか。
  37. 北岡健二

    政府委員北岡健二君) お答えいたします。掛金の算定をいたします場合には、私立学校共済組合掛金の案を作りまして、そしてそれを文部省に提出して、文部大臣の認可を得て掛金が定まるというような法律、それから、それに伴ってできました政令ないし定款等で規定してございます。従いまして、この掛金を算定いたします基礎になる調査につきましては、私立学校教職員共済組合の方が、そのための事務費予算を計上いたし、それからその実施の方法について文部省とも相談、打ち合わせいたしまして、全国から昭和二十九年度中に資料を取りまして、実態調査をいたしまして、その実態調査の結果、必要になります死亡表であるとか、生存表であるとか、脱退残存表であるとか、それから平均給与人数それから給与の上昇率、そういうようなものを出しまして、それによって専門の人の検討によって計算されました結果、掛金率が出て参るわけでございます。その掛金率に基きまして、望ましい掛金率を定めるために、どういう財源が必要であるか、それを要するに、出てきました財源の率と、それから望ましい掛金率との間の差額になります部分が、これが国庫補助で産めるか、その他の方法で埋めるかしなければ、掛金率を上げなければならない、こういう事態に追い込まれるわけです。そこで、その望ましい掛金率と必要な財源率との差額を埋める方法としまして、国庫補助の百分の十を十五に上げるという方法と、それから私立学校振興会からの助成をするという両方をかみ合せていきたいというふうなことを考えまして、そういう線で適当な方法として国庫補助率増額、あるいは振興会の助成、あるいは他の財源と申しますと、これはもう一つありますのは、私立学校共済組合の内部で資金があるわけでございます。毎年五億ぐらいずつ長期の掛金をとっていきます。そのうち去年支払いましたのは一億円でございます。それから本年度支払う予定はまあ一億、やはり同じぐらいじゃないか、そんなように考えますと、四億なりそういう金が出てくるわけでございます。そういうものも現在の私立学校共済組合では利率五分厘に回すという計算にいたしておりますが、もし利率の差がそれよりも高利に運用ができるならば、その上積みと申しますか、余裕が出てくるわけでございます。そういうのは一つ財源になるわけでございますから、従って掛金を増徴しなければならない時期であっても、そういう財源が見込まれ得るならば増徴しないでも済むということに相なります。そういうようないろいろな方法考えて大蔵省と事務的な折衝をいろいろしております中に、一番まあ望ましい方法として、国庫補助率を引き上げて、振興会からの助成の割合をあまり多くしないでおいた方が適当じゃないかということを考えて折衝いたしましたが、先ほど局長から申し上げましたように、他の共済組合制度との均衡とか、あるいは厚生年金が国庫補助率を昨年一割五分に引き上げましたときの現実の事情等から一応見送ると、要するに話がつかないままに済んだ。ところが共済組合の方の掛金率なるものは一定の時期までにきめないと徴収ができないわけでございます。そういう関係からそれでは第二の国庫補助増額はそういう関係で、ことしは断念して、望ましい掛金率をことしは他の方法で実現していこう、来年さらにこの問題については大蔵省との交渉をするということにいたしまして、本年は引き下った、こういうふうな事情があるわけでございます。
  38. 高田なほ子

    高田なほ子君 大へん丁寧に御説明して下さいまして、だが率直なことを言えば、百分の十五でもまだこれは若干低い、しかしまあいろいろの調整関係もあるので、百分の十五、こういうようなところでまあ落ちついてやろうというお考えのようですが、くどく申しますが、私立学校教職員給与指数は非常に低い、わけて幼稚園の先生方の給与というものはお話にならないようなまあ非常に低い状態にあり、せめて福利厚生の面において若干でもその低い給与が補い得て、十分な御活動ができるということのためには、やはり科学的なデーターをもって、死亡生存表、脱退残存表、あるいは給与指数、そういったようなものを十分にかみ合せて所期の目的が実現できるように私どもはしてほしいということを強く念願するので、この際百分の十五というのは最低ぎりぎりの線であるので、当然この法律は一日も早く通過させて、なお文部省としてはそれ以上の努力をしていただかなければならないように考えられますが、この点について今一たび小林局長の御意見をお伺したいと思います。百分の十五だけでいいか。
  39. 小林行雄

    政府委員小林行雄君) お尋ねの御趣旨のように組合員立場からいたしますれば、国庫補助の率が高まりまして、従って掛金率が低くなるということは一そう望ましいことでございますが、しかし社会保障制度全般、あるいは保険の財政ということもございますので、そういった点もかみ合せて今後まあ十分に文部省としても研究いたしたいと思います。
  40. 加賀山之雄

    ○加賀山之雄君 事務的なことを一、二点お伺いしたいと思いますが、この私立学校教職員共済組合員の人員ですね、わかっておりますか。
  41. 赤城宗徳

    衆議院議員赤城宗徳君) 概算は六万人となっておりますが、なおこまかいことは文部省のほうから……。
  42. 北岡健二

    政府委員北岡健二君) この私立学校共済組合組合員の種類が五種類ございます。長期と短期と両方入っておるもの、それから短期だけ入っておるもの、それから短期に入っていて長期のほうが普通の長期でなくて恩給財団の従前の例によるという種類のもの、それから恩給財団のほうだけ入って短期に入らないもの、そういうような五種類ございますが、従って種類によって数が違うわけでございますれども、現在の総数は男女計で五万九千三百六名、三十年の三月三十一日現在でございます。なお加入しております学校数は四千八百二十一校でございます。
  43. 加賀山之雄

    ○加賀山之雄君 この恩給財団に入ってだけいて短期給付のないものというのは、これはやはり組合員なんですか。
  44. 北岡健二

    政府委員北岡健二君) 組合員でございます。もちろん正規の組合員でございます。正規の組合員が先ほど申し上げましたような五種類に分れておる。ちょっとほかに例のない種類でございますが、恩給財団を引き継いだという関係から恩給財団に入っていましたものが、従前の掛金給付を続けたいと希望をするものと、それから共済組合給付及び掛金に切りかえたいというものと二種類ありまして、その両方選択権を認めて、発足のときにそういう選択を許すように法律が承認したわけでございます。
  45. 加賀山之雄

    ○加賀山之雄君 これはそれぞれ掛金率がもちろん違うのだろうと思いますが、非常に事務が複雑になっているわけですね、それらの事務はいかなる機構によって行われておるのですか、この共済組合の事務ですね。
  46. 北岡健二

    政府委員北岡健二君) 業務関係の仕事をいたします事務局を置きまして、その事務局の中に長期給付関係と短期給付関係と二つに分けて、毎期給付のほうは大体健康保険のほうの関係でございますから、その事務のほうは地方で健康保険関係の医師の診療を受けて、それが例の診療報酬支払い基金、こういうほうへ医者から請求が行き、それに対してその基金のほうに共済組合から支払いをする、そういうふうな決済方法を大体とっております。それから長期給付のほうは退職者が直接組合の事務所のほうへ請求に来まして、それに対して退職金の額を査定して給付していく、その場合に組合員の種別によって給付が違うわけでございますから、それぞれの給付によって請求の種類に応じて計算をして支払いをいたします。掛金のほうはやはり組合の種類によって掛金の率ないし額が違うわけでございます。現在のところでは普通の長期給付のほうは千分の六十二の掛金になります。これを学校法人とそれから組合員とが折半負担いたします。短期給付のほうは本年度から千分の六十六になりまして、これもやはり折半負担でございます。恩給財団の従前の例によりますのは、組合員が三百円、学校法人が三百円であります。それでそれらの組合の種類によりまして各学校法人が組合員から徴収し、自分の負担すべき分も加えて翌月の終りまでに組合へ送付する。組合のほうはそれによって入りてきた金額が納入されて、それが財源になって支払いをする、こういう機構になります。ただほかの共済組合と違って一つむずかしい点は、他の共済組合の場合には本俸で掛金を徴収いたしますが、この組合の場合には本俸とほかの手当とを含めた金額で徴収いたしますので、事務的に申しますと月によって移動が、本体の移動以外に手当の関係で移動があり得るわけでございます。その点を把握するのが非常に困難なわけでございますが、法律によって学校法人が納付の義務を負っております。自分の分と組合の分と合わせて納付する義務を負っておりますので、その制度で法人のほうで計算をいたし、疑問があればこちらから問い合わせて訂正するというふうなやり方では収入のほうは処理しております。
  47. 加賀山之雄

    ○加賀山之雄君 そうすると、組合の責任者というのはどういう方……、名前を言わなくてもけっこうですが、どういう方がやっておられるか。  もう一つ私立学校がそういう共済事務をやるわけですね、それらの事務費は組合のほうから私立学校のほうへ、その事務を扱うものは組合が負担するのですか。
  48. 北岡健二

    政府委員北岡健二君) 共済組合の役員としましては、理事長と理事とそれから監事でございますが、いずれも文部大臣の任命でございます。それからそのほかに評議員とそれから審査委員会の委員と二種類ございますが、いずれも文部大臣の任命でそれぞれ任期二年でございます。  それから学校法人がやります事務につきましては、事務費は計上しておりません。法律上の義務になっておるわけでございます。給与を支払う際に、その分を取りのけて送金をするという関係でございますから、特別の事務費としてはないわけでございます。
  49. 加賀山之雄

    ○加賀山之雄君 もう一つ組合加入していない、つまり厚生年金にだけ入っておるという人はどれくらいの人数になりますか、私立学校で。
  50. 北岡健二

    政府委員北岡健二君) 私立学校教職員共済組合は先ほど来申し上げておりますように強制適用でございますが、発足の当時に特令で選択を認めたのがあるわけでございまして、従って不加入の者があるわけでございますが、この不加入が長期、短期とも不加入、短期のみ不加入、長期のみ不加入、こう三種類になるわけでございます。そういうものを全部合計いたしまして人数にいたしますと、不加入の者が一万四千五百九十名、学校数にしまして百四十七でございます。
  51. 堀末治

    堀末治君 最後に一つお聞きしたいのですが、今お聞きすると、役員は文部大臣の任命だということですが、そうすると、これの会計監督はどこでやるのですか。
  52. 北岡健二

    政府委員北岡健二君) 国庫補助が出ておりましたり、事業費及び事務費が国旗補助が出ておりますような関係がございまして、それからまた法律の方でもこの私立学校共済組合の監督権は文部大唐とされております。そうして、従って、会計の監査等は、文部大臣が行うわけでございますし、なお補助金等が出ておる関係から、会計検査院の監査も行われるわけでございます。まだ発足新しい組合であって、今日までのところは会計検査院の監査はまだ実施しておりません。いずれ対象に上ってくるというふうに考えます。文部省といたしましては、本年になりまして四月から監査をいたしまして経理の上に何ら疑問の点はないということは確認いたしてございます。事務執行等についてもその際横討して、改善すべき点はいろいろあるということを一考えまして、その改善の点については管理局長と共済組合の理一事長たの間で順次実現の方法を相談しているというふうな段階でございます。
  53. 加賀山之雄

    ○加賀山之雄君 先ほどの強制加入の建前であるというお話がございましたが、お話承わると、非常にこれは複雑な関係になっておると思うのですが、この共済事務というものをもう少し、強制加入にしたり、特に今度こういう措置がとられた場合に、もう少し単純化すると、恩給財団なんかは、これはもう今までのあれをみんな引き継ぐということを言われたし、こういうものを従来のあれでほうっておくような手もないように思うのですが、もう少し単純化されるような意向は文部省にありませんか。
  54. 北岡健二

    政府委員北岡健二君) 現在の段階では一応組合成立のときの経過規定で附則の方で定められている特別の措置でございますので、従って、法律上からいいますと、その特別措置として経過措置でとられたも一のを、もう一度改正するということは、技術的に非常に困難だという感じがいたします。特別な異例なのは、先ほど申し上げました恩給財団の従前の例によるものでございます。これはそのときに恩給財団に入っていた者だけしかこれを選ぶことはできませんので、従って、ある期間が過ぎれば消滅いたすのでございます。従って、そこまで改正考えるという点までまだ検討いたしたことはございません。なお非加入の者の問題があるわけでございますが、これも理論上は当時選択権を与えられて選択したのでありますから、直ちにこれを動かすという点についてはどうかと思うのでございます。またこれを実際にやるということになりますと、先ほどから申し上げましたように、厚生年金の引き継いだもの、恩給財団から引き継いだものについて、整理資源の問題なり、年数計算なり、非常に複雑なものがあるわけであります。それが今度新たにあとの時期になってまた同じ種類のものが入ってくるということになりますと、整理の問題をどうしたらいいかということになりますと、これは非常にむずかしい問題でございまして、よほど研究してすっきりした線が出せない限りは、ちょっと着手はむずかしいのじやないか。もちろん意見としては私学の側からも非加入の側からも、あるいは加入している側からもそういう御意見でございますし、外の方からにもそういう御意見はあるのでございますが、なかなか技術的にむずかしい問題だということを考えておるわけでございます。
  55. 加賀山之雄

    ○加賀山之雄君 これははっきりと赤城さんに伺いたいのですが、今度の措置によって、組合員掛金率があるいは有利になる、あるいは給付がよくなるというようなことが考えられているかどうかということが一点。  それから私立学校の国のあれが増額されることによって、私立学校当局の掛金ですね、これがどうなるか。これは、ふえるのか、減るのかという点、その点を一つ伺います。
  56. 赤城宗徳

    衆議院議員赤城宗徳君) これによって給付がよくなるとは考えられませんが、これがないと、掛金が千分の六十六ぐらいになります。この法律が通れば千分の六十二くらいになりますから、その折半で掛金がふえると思います。  それから私立学校当局の掛金といいますと、もう一度お伺いしたいのですが。
  57. 加賀山之雄

    ○加賀山之雄君 学校負担分です。
  58. 赤城宗徳

    衆議院議員赤城宗徳君) 学校負担分も低くなるわけです。掛金と折半ですから低くなるわけです。
  59. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 他に御発言ございませんか。
  60. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 この法案を審議する機会に、私は実は私学三法全体にわたり、その後の運営の状況をつぶさに審譲、調査し、あわせて私学の振興の根本的な検討をするのにいい機会かと考えておったのでありますが、国会も末男になっておりますので、当初私が考えましたその角度からの質疑並びに審議の態度は私はみずから修正したいと思っておりますが、先日来、承わりますと、この法案についての質疑は大体出尽したやに承わっております。提案理由にも書いてありますように、私もこの私立学校教職員共済組合法が第十六国会にかかった当時、これを私審議したものでありますが、その当時の附帯決議をここに生かして補助率の引き上げを企図されたものであって、この法案の内容そのものには異論のあろうかたはないかと思います。ただ、私いくらしほりましても、今いただいた資料を見ますというと、私立学校教職員共済組合のその後の経理状況等、運営の概要がわかるところの資料が、私のボックス内には入っておられないようでありますが、出されなかったのかどうか。出されなかったとするならば、当然これは提出していただきたいと思いますし、また私は、この法案についてはかって審議したことがありますから、法そのものを承知しておりますが、やはりこういう法案を審議する場合には、後日のためにも申しておきますが、法である私立学校教職員共済組合法そのも一のを一資料の一部として出さるべきものと思いますが、私のボックスにはそれも入っていないようです。まあこの法そのものは、今後の法案提出者並びに政府側にそういう要望をすることにとどめておいてよろしいのでありますが、私立学校教職員共済組合についての資料は出されましたかどうか、その点念のために承わりたいと思います。
  61. 赤城宗徳

    衆議院議員赤城宗徳君) おっしゃる通りにすべきであったと思いますが、私立学校の運営経理状況の資料は差し上げてありません。
  62. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 終戦後この私学の振興というものに非常に国会みずから、さらに国民各層にわたって関心を持つことになって、いわゆる私学三法というバック・ボーンが入ったことは非常に喜ばしいことと考えております。私どもはこれらの法律を国会で審議し成立させたものとしてこれらの三法のその後の運営状況と、それと私学の振興との関連については常に見守っていかなければならない義務があると考えております。従って私はその資料を早急に出していただきたいことを要望いたします。  委員長、ちょっと速記をとめて下さい。
  63. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 速記をとめて下さい。    ————・————    午後零時二十三分速記中止    ————・————    午後零時四十七分速記開始
  64. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 速記を始めて下さい。
  65. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 発議者でもそれから政府委員でもいずれでもけっこうでございます。お答え願いたいと思います。それから、他の委員からすでに質疑があった問題であるならば、その言葉を前提として簡単に御答弁いただいてけっこうでございます。私はごく一、二点だけ簡単に伺います。私立学校振の発足以来本日までの運営経理の状況一興会への昭和三十年度可決予算に至るまでの助成金の総額は幾らになっていますか。
  66. 小林行雄

    政府委員小林行雄君) こちらからお答えするのはいかがかと思いますが、私学振興会の出資金でございますが、私学振興会への出資金は二十七年度が三億九千万円、それから二十八年度が十五億、二十九年度は五億、本年度の予算では八億五千万、こういうことになっております。
  67. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 合計で。
  68. 小林行雄

    政府委員小林行雄君) 合計で三十二億四千万、これは私学振興会への政府の出資金でございます。
  69. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 これに基く運用の概況を述べて下さい。
  70. 北岡健二

    政府委員北岡健二君) 二十七年度に出資されました振興会の出資の三億九千万円は大体短期経理の貸し付けに充てております。それ以後の分につきましては二十八億五千万の分はそれぞれ長期貸し付けに充当されるわけでございますが、長期貸し付けは五年の年賦で償還されるわけでございます。ただしこの中から水害復旧の特別立法によりました国庫補助の半額に相当する分のものがありまして、これは十七年年賦になっております。金額は今ちょっと正確な数字は手元にございませんが、六千万円程度であったと記憶いたしております。それから本年度の八億五千万円の出資はそのうち二億が暫定予算に計上されておりましたので、その分の貸し付けは終ったのでございますが、あとの分は貸付配当を大体きめまして、目下各学校法人と契約中でございます。
  71. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 この本年度の予算竹外の作興付の確定するのはいつになりますか。
  72. 北岡健二

    政府委員北岡健二君) 本年度の貸し付け金は新たな政府出資、が八億五千万でございますが、前年度前に貸し付けました分で償還されるものがございますので、それが五億二千万程度になる見込みでございます。なおその償還時期等は十月以降になる分もございますので、貸し付けの全部が決定いたしますのは、大体年間三期に分かれる見込みでございます。それからもう一つ当初に申し上げました二十七年度の三億九千万の分につきましては、これは業務経理に対する短期の貸し付けで、一年で償還になりますので、この分の貸し付けは年度末から年度初めに償還されまして、それが再貸し付けに回るということになります。従いまして長期貸付の分は恒常的なものは大体年三回、それから短期貸し付けの分は年一回、こういうような貸し付け決定に相なります。全部が完了いたしますのは来年の一月の末でございます。
  73. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 この振興会発足以来今日まで利子はどのくらいになっておりますか。
  74. 北岡健二

    政府委員北岡健二君) 振興会の貸し付け利息は、普通の貸し付けは日歩一銭八厘でございます。それから災害復旧等の貸し付け金は低いのは五分でございます。それから火災等の場合は多少高くなりまして、大体五分五厘の利息になります。それで二十八年度末に利息の剰余金が六千万円、それから二十九年度の決算で一億三千万円、利息の剰余金でございます。合計しましてちょうど二億でございます。それから三十年度末の利息の残りの推定が一億四千万の見当でございます。もっともこの利息の中には、別に政府が前に私立学校に貸し付けました戦災復旧の貸付金であるとか、私学運営費の貸付金であるとか、こういうものがございまして、それの利息が多少加わっております。この利息は五分五厘の利率に定っておりまして、二十五年間で返すことになっておりますから、本年度まではまだ金額としまして大した金額にはなりません。三十二年度が約その分の利息だけで九千万円くらいはいる予定でございます。その後利息としてはだんだん減って参ります。
  75. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 あなたの御説明では三十年度末に三億四千万円の利息剰余金が得られる、かように了承していいわけですか。
  76. 北岡健二

    政府委員北岡健二君) その間に、この剰余金の計算されましたものの中から私立学校振興会が私学共済組合その他に助成をいたす予定がございます。従いましてその助成が行われれば今まで三十年度末に二億予定されます金額の中からその助成が行われるということになるわけでございます。その分だけ減るわけでございます。
  77. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 そこのところちょっと不明確なんですがね。二十九年度末にその剰余金、利息剰余金が二億と、こう説明されました。そうして三十年度に一億四千万云々と説明されたから、私は私立学校教職員共済組合等に、すなわちそういう福利施設に利用された残りが三十年度末に三億四千万になるのかと、かように私は説明を受け取って承わったわけですが、二十九年度末の二億は共済組合等への助成を除いたものであって、三十年度の一億四千万というのはそれを含んだものだ、こういう御説明と了承してよろしゅうございますか。
  78. 北岡健二

    政府委員北岡健二君) 言葉が少し足りなくて失礼いたしました。私立学校振興会か貸し付けによって得ました利息は、その利息の中から法律で定める積立金及び事務費を使います。その残りが純残額になるわけでございます。利益金と申しますか、その利益金をもって私立常校共済組合その他に助成をする、あるいは他の用途に貸し付ける、こういうことに桁なります。そこで二十九年末に残りました二億の金、二十八年度、二十九年度合せて残っております三億の金は助成準借金として積み立てております。それから三十年度の末に推定されますのは事務費とそれから積立金を引いた残りが大体一億四千万円になるだろう、こういう推定でございます。そこで先日御審議いただきまして法案の成立いたしました私学恩給財団の既年金受給者に対する助成約千七百万円が今年度中に共済組合に支払われるわけでございます。なおそのほかに私立学校共済組合に対しまして事業費の助成をいたすことになっておりますが、それが大体五千万円ございます。従いましてその五千万円を従前の積み立てた二億の申から払うか、五千万円と千七百万円、合せて六千七百万円を二億の積み立ての中から払うか、三億の積み立てば別の用途に充てることにして、本年度予想される一億四千万円の中から払うかは、これは私立学校振興会の方で決定することに相なっております。とにかく合せて三十年度末に推定される三億四千万円の中からすでにきまっておりますのが一億七千万円と五千万と六千七百万と、これだけは大体支出されることが確定的のものでございます。そのほかの金額につきましては、振興会の方で助成あるいは貸付等の案を練っておるようでございます。
  79. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 角度を変えて承わりますが、二十九年度末までこの教職員の福利方面に幾ら総額助成されましたか。ということは、これは母法を審議するときに非常に問題になったことは、この私学振興のためにこういう法を作るが、経営者に利益するような一方的な運営をすることなく、非常に悪条件下に教育に挺身しているところの私学教職員福利厚生に十分心して運用しなければならぬということがこの母法を審議するときに非常に私は論じられたと記憶しておるわけです。従って私がここで角度を、裏から聞きますが、昭和二十九年度末まで私学の教職員の福利方面に幾ら助成され、三十年度末においてはその総計が幾らになると数字を組まれておられるか、お答え願いたいと思います。
  80. 北岡健二

    政府委員北岡健二君) 私立学校共済組合では今までのところ、はっきり私立学校教職員福利厚生のために助成した金額としましては、私立常校共済組合が発足いたしました当時に、その事務所の諸度設備をするために百万円を補助助成いたしました。それ以外には計画がいろいろありましたのですが、成り立たなかったためにまだ実施いたしておりません。具体的に申しますと、二十八年度の剰余金の中から共済組合の事務所を作るという計画があってその金額を予定しておりましたが、事務所の買い入れがうまく運ばなかったので取りやめになりました。その後にそれでは土地を買って新たに建築するようにしようという案になりまして、土地の購入費七百何十万円かを計上いたしたのでございますが、これも土地買収がうまくいかなかったので立ち消えになりました。なお最近におきまして、私立学校共済組合の事務所が狭隘で困るからというので新たに買い入れる計画を立てましたが、これはやはり時間を経過しておりますうちに、相手方の都合でその直接対象がなくなりましたために、大体五、六千万円を予定しておったのでありますが、それも立ち消えになりました。それからそのほかに案あるいは計画として当初いたしましたものとしては、私立学校共済組合の方で、教職員福利厚生のために保養所を設ける、あるいは簡易な診療所を設けるというふうな案があり、それからあるいは職員の住宅を建設するというのを、これは振興会が直接計画を立てようというふうな段階になったのもありますが、いずれもまだ正式の決定を見ておりません。そういう状況でございます。
  81. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 ただいま審議しているこの法律案では、私学教職員退職給付等の不合理を是正するために国の補助率を引き上げるという内容のものでありますが、まことにけっこうでございます。と同時に、この私立学校教職員共済組合の積極的な活発な運営のために国家から多額の出資金を出しておる。振興会からいま少し助成してしかるべきではないか、また助成ができるのではないかと思いますが、所管局長の御見解いかがでございますか。
  82. 小林行雄

    政府委員小林行雄君) お尋ねの振興会から共済組合への助成でございますが、文部省といたしましても、共済組合の方でいろいろ計画されるこの事項の中で、特に考えられるたとえば事務所の問題とか、あるいは宿泊設施その他の福利厚生施設というようなものにつきましては、文部省がやはり振興会と共済組合との中に入りまして、できるだけそういったものが実現されるように、この助成が行われるようにあっせんをして参りたい、こういうふうに考えております。
  83. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 私学の経営というものは国公立とずいぶん違って困難な点もあるわけでありますが、しかしこの私学の振興は、私が申せば釈迦に説法になりますけれども、何といってもその教育の場に健闘されている教職員の身分、生活の安定というものが、すなわち、より立派な教育者を得るということが第一前提でなければなりません。そういう立場から、母法審議の場合にもその点がずいぶんと論議され、私も論議したものでありますが、先ほどの答弁で明確なように、本年まで乏しい国家資金の中から三十二億四千万の出資がなされ、それに対して教職員福利厚生の方面にどの程度回されておるかという答弁に対しては、まことに貧弱きわまるもので、これは当事者の計画の疎漏ということもあって、必ずしもあなた方の責任のみとは言えないと思いますけれども、私は母法の審議をされた当時を回顧して、ただいまの管理局長の言明の通りに、積極的にやっていただきたいということを強く要望いたしておきます。  そこでもうあと一、二点で終りますが、一つの私学振興会の方の運営に当って一番問題になるのは、貸付もさることながら、それ以上に償還回収だと思いますが、これに対して現在貸付業務等をやられておるわけですが、見通しというものをいかように立てておられますか、承わっておきたいと思います。
  84. 北岡健二

    政府委員北岡健二君) 昨年度までは大体申しまして、貸付の回収というのが新たなる債権の分だけでございまして、これにつきましては、貸し付けますときに、厳密に調べ、担保もそれぞれとって貸し付けております。そうして従って実態がかなり正確にわかっておりましたので、その回収事務等につきましてはそれほど支障はなかったのでございますが、先ほどちょっと申し上げましたように、旧債権と申しますか、戦災復旧等に貸し付けましたものの回収が、大体の数が本年度から飛躍的に増加するというふうな状態に相なりますので、これに対処する機構を作らなければいけないというので、昨年から本年にかけまして振興会の事務職員を増員いたし、新たに管理課という課を設けましてその回収をもっぱら担当するというふうにいたしまして、回収を確実にやっていこうと、こういうふうな方針で進んでおります。
  85. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 ここでは私はどうしても文部大臣がおられないと工合が悪いわけですが、幸いにして政務次官がおられますから、政務次官並びに局長に最後に承わりたいと思います。  それは第一次鳩山内閣の安藤文相は皆さん御承知通りに私学の振興というものをその教育政策の一つの大きな筋として打ち立てられました。かって本委員会においても松村現文相はこれを継承することを言明されたわけです。この線から昨年は一昨年に比して振興会の出資金も三分の一に激減して五億になっておったわけですが、この角度から一昨年に比べれば約半額でありますが、昨年に比べては三億五千万増という形が出て来たかと思うのでありますが、承わりたいことは、今のわが国の私学は論ずれば幾つかのたくさん問題があると思うのですが、時間がないから伺いません。要するに我が国の私学教育の振興という立場から現在の状況をいかようにみておられるか、特にこういう点は非常によくなった、しかしこういう点は私学の自主性を侵してはならないが、かようになってもらいたいというような具体的な心願を持っておられれば、そういう角度から答弁していただきたいし、さらに私学三法が制定されて以来のこの二法の運用状況をいかように見ておられるか、さらに文部省はこの法の運用に当る当事者でありまして、私学関係の所管局長もおられるわけでありますから、今後の抱負の一端を最後に承わっておきたいと思います。まず政務次官のほうから御答弁をお願いします。
  86. 寺本廣作

    政府委員(寺本広作君) かねて松村文部大臣が私学の振興に力を入れて文部行政をやっていきたいということを申しておられるわけでありますが、本年度の予算ではただいま矢嶋委員から御指摘がありました通り、私学振興会に対する政府の出資金を前年度の五割増しにした、その後自民両党の折衝でさらにそ、れが増額されて御指摘の通り前年度より三億五千万増額になって参っておるわけでございます。私学振興会に対する出資はその通りでございますが、根本的に私学と国立公立の学校との関係がどうあるべきものか、どういうふうに根本的に考えて私学振興に理論的に基礎を与えていくべきものであるかということについては、文部省としては、はっきりした政策を打ち立てたい、かようなことでただいま中央教育審議会にこのことを諮問いたしております。中央教育審議会におかれましては、四月以来この問題についてたびたび会議を開いておられまして、審議も相当に進捗しておるようでございます。九月にはおそらく答申が出ることだろうと期待をいたしております。私どもといたしましては、この答申を重要な参考として今後方針をきめていきたい、かように考えております。
  87. 小林行雄

    政府委員小林行雄君) ただいま政務次官がお答えになりましたことで大体もう尽きておることと思いますが、事務といたしまして、まあ私学教育私立学校教育の重要性と申しますか、これは国立学校等と違いまして、それぞれ達識の人の理想なりあるいは熱意というものが大元になってできており、それに伴ってそれぞれの学校の独得の学風あるいは伝統というものがありまして、国立学校等に比べますと、いわば個性のある教育が行われておるというところに私学の重要性があると思います。こういつたすぐれた点は文部省としましても今後ますます助長をしてゆかなければならない。そういった面で私学の自主性の確保ということは政府も十分応援してゆかなければならぬと思います。また一面私学といえども公けの教育でございますので、公共性という点からも十分やはり私学に自粛をしてもらわなければならない。公共性の確保という点にも文部省としては十分配慮をしなければならないと考えております。この私学の自主性あるいは公共性、いずれにいたしましてもそれらの点をうまく調和をしてゆかなければならぬものだと思っておりますが、現在私学では一番やはり何と申しましても経済上に急迫しており、これは戦争の結果あるいは戦後の経済状況等もございまして、非常に急迫しておるものもございます。そういったことが原因になりまして、往々世間の批判の対象になるようなものも一部にはあるわけでございますので、そういった経済的な急迫の面については国といたしましても私学教育の重要性を認めて大いに援助をしてゆかなければならない、私どもはそういった点を考えまして私学の振興については文部省当局も大いに力を入れてゆくべきであるというふうに念願しておるのでございます。  大体の運用状況と申しますか、私立学校法ができましてからは従来の監督あるいは強い官権の監督行政が最近になって変って参りまして、官権の排除ということになりまして私学は非常にそれぞれ建学の理想に基いて明るく実際の授業を行なっておられることと考えております。私どもとしては私学、私立学校法ができましてからはうまくいっているのではなかろうかと考えておるのでありますが、中には公共性の面から一部には世論の批判の対象になるようなものもありますので、こういった点については今後法の運用等の面で十分やはり考えてゆかなければならぬ、場合によっては何か制度的なものも潜えなければならぬのではなかろうかという点で現在中央教育審議会の委員の方々の御結論が出るのを文部省としては待っているような形でございます。
  88. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 ただいまの政務次官並びに局長の発言の中には重ねて伺う内容のものもありますけれども、時間が長くかかるようですからそれは省きますが、ただ私学振興に関して御両者に熱意のある点だけは多といたします。  それで最後に伺いたいことは、この法律案を出された赤城衆議院議員は特に私学に関して関心と熱意を持たれているがゆえに、こういう法案を提出して下すったわけでありますが、先ほど私が質疑した経過からもわかりますように、運用いかんにもよりますが、やはり私は私学三法の中で振興会への出資金の大小とその運用いかんというものが私は私学の振興の死命を制するものと思います。そういう立場から与党の文教関係の重鎮でもある赤城発議者に承わりたい点は、すでに来年度の予算の事務的積み上げの時期に到達しているわけでありますが、こういう法案を出されるのと関連して、赤城発議者は来年度の予算国家財政窮迫でいろいろ支出する面がありますけれども、私学の現状とそれらの将来に対する希望と合せ考えるときに、来年度の予算において私学振興会への出資金というものはどの程度予算化されるのが妥当かという点について、どういう御見解をもっておられるか、その点をまず赤城発議者に承わると同時に、文部事務当局はすでに事務を開始しておるわけですが、文部省議としてどの程度数字をまとめようという腹をもっておられるのか、今に至ってまだ検討中で、何ら数字をもたないというようなことではこれは済まされないと思います。ラフな数字でもすでにもっている段階でなければなりません。従って、両者からその点だけを承わって、その答弁が格別私の期待と反しない限りはこれをもって質疑を終りたいと思います。御答弁願います。
  89. 赤城宗徳

    衆議院議員赤城宗徳君) 私学振興会に対する出資金につきましては、私の方でも八億五千万程度では足らないということで三十年度の予算におきまして、もっと要求しておったのでありますが、いろいろ大蔵省との折衝上、第二次で八億五千万円になった、こういう状態でありますので、来年度の予算におきましてはそれを超すようにそれぞれの機関と話し合って超すように努力をいたしまして御期待に沿うような努力をいたしたいということを申し上げて答弁に代えます。
  90. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 どのくらいの数字を描いておられますか。
  91. 赤城宗徳

    衆議院議員赤城宗徳君) 総額で五十億ということで全部であったと思いますから、去年も、三十年度におきましては十五億くらいを初め要求して、それでどうしてもだめだというので十億ということまで要求しておったのであります。今それぞれの機関もありますので、私からその額をどの程度ということもちょっとおこがましいように思いますので、最大限の努力をするということで御了承願いたいと思います。
  92. 小林行雄

    政府委員小林行雄君) 予算要求の額は、これはもう大臣が御決定になるものでありますので、私どもが……。
  93. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 大臣の意見を聞いておりません。事務当局の……。
  94. 小林行雄

    政府委員小林行雄君) 事務といたしましては、これは振興会発足の当時大体五カ年間で五十億をもらいたいという一応の計画があるのでございます。現在まで三カ年で、当初の三億九千万、これは大体短期の融資に回っておりますので、これを差し引きました二十八億五千万だけが現在政府出資の中で施設の方へ回っているのでございます。この二十八億五千万を五十億から差し引きました残り二十一億五千万を、これをできれば今後、もうすでに三カ年たっておりますので、二カ年の間に得たいというようなことで、事務といたしましては予算を作りたいと考えているような次第であります。
  95. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 他に御発言もないようでありますから質疑は尽きたものを認めて御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  96. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 御異議ないと認めます。  これより討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べを願います。別に御意見もないようでありますから、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  97. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 御異議ないと認めます。  これより採決に入ります。私立学校教職員共済組合法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案を原案通り可決することに賛成の方の御挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  98. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 全員一致でございます。  よって本案は全会一致をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。  なお、本院規則第百四条による本会議における口頭報告の内容、第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成その地目後の手続につきましては慣例によりこれを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  99. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 御異議ないと認めます。よってさよう決定いたします。  それから報告書には多数意見者の署名を付することになっておりますので、本案を可とされた方は順次御署名を願います。   多数意見者署名     吉田 萬次  雨森 常夫     大谷 瑩潤  佐藤清一郎     川口庸之助  堀  末治     加賀山之雄  安部キミ子     高田なほ子  矢嶋 三義     村尾 重雄  石坂 豊一
  100. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 午後の本委員会は二時半から開会することといたしまして、暫時休憩いたします。    午後一時二十七分休憩    ————・————    午後四時十分開会
  101. 笹森順造

    委員長笹森順造君) これより文教委員会を再開いたします。  政府より報告する案件がございまするから、これからその報告を聴取することにいたします。
  102. 緒方信一

    政府委員(緒方信一君) 先刻、三重県の教育委員会からの報告によりますと、津市の中学校におきまして、水泳訓練中に非常に遺憾な事故が発生したようでございまして、私どもが入手いたしておりまする状況につきまして御報告を申し上げたいと思います。  学校は津市橋北中学、はしきたと書きますが、橋北中学校の生徒六百二十名を校長ほか教員二十名引率のもとに津市の中河原海岸で水泳訓練中に、本日の午前十一時過ぎに遭難事故が発生いたしました。  この事故の原因につきましては、早々の報告でございますのでまだはっきりしたところが明確に出ておりません。あるいは突然大波が襲来したというようなこともいわれておるようでございますけれども教育委員会といたしましてもさらに調査を進めたいとかように申しております。  遭難事故の内審でございますが、これも数字につきましてはあるいは早々でございますので若干違いがあるかもしれませんけれども、女子の生徒五十名がおぼれまして、行方不明を二名出しております。ちょっと数字の符合しない点がございますけれども、四十六名の者は一応救助をされまして、そうして人工呼吸を施しまして、八名はすでに意識を回復いたしております。しかし、その三十八名のうち二十二名は、これは報告によりますとすでに絶望のような模様であるというわけでございます。  かような遭難の内容でございますけれども、現場におきましては、まあ警察関係等はもちろんでございますが、県、市の教育委員会から出動いたしまして、あるいはまた県立の病院から医師が十六名出かけまして救助に当っておる模様であります。また、関係機関によりまして水難対策本部を設けて、いろいろと対策を講じておるようでございます。県の教育委員会といたしましては、明二十九日に臨時招集いたしまして、開会をいたしまして対策を協議する予定だと、まあかようなことでございます。  早々の間におきまする調査の結果をとりあえず以上のように報告して参ったわけでございますが、何と申しましても、かようなたくさんの生徒が学校の行事でありまする水泳訓練中に溺死をするというようなことが勃発いたしましたことは、まことに遺憾なことであると存じます。教育委員会におきましても十分この点は努力をいたすわけでございまするけれども原因の調査を十分に進めまして、その上で適当な指導をさらに行なっていきたいと考えるわけでございます。何と申しましても、当面といたしましてはこの救助を第一にはかることが必要であると考えます。  以上のような非常に遺憾なできごとが起りましたことを、報告によりましてわかりました点だけをまず御報告申し上げる次第でございます。
  103. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 ただいまの報告では、詳細不明でありますが、まことに遺憾なことだと存じます。そこで今の報告に基いて一、二伺いますが、その報告は、三重県教育委員会から自発的に文部省に報告されてきたものでありますかどうか。あなたのただいまの報告の出所についてお答え願いたいと思います。
  104. 緒方信一

    政府委員(緒方信一君) これは報道機関の情報もございましたし、今どちらが先かということをらよっと……今私こちらに出て参りましたところに、本省の方から電話で報告を受けまして、どちらが先かということをちょっと私お答え申し上げかねますけれども、あるいは報道機関の情報を私の方で受けまして、それをさらに電話を三重県の方にかけたかとも思われます。ちょっとどっちが、先後がまだ明確に申し上げかねます。
  105. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 それではこれはあなたの局の所管でありますが、三重県の教育委員会を通じ、津市の教育委員会に対して、遭難の前後並びにその後の状況についての報告要求は電報あるいは電話で直接なさいましたか、いかがですか。
  106. 緒方信一

    政府委員(緒方信一君) 電話でいたしております。そうしてなお続報がくることになっております。
  107. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 その続報がきたならば、そのときあらためて文書にして当委員会に報告していただきたいと思いますが、あなたの今の報告の中によれば、ただ訓練中というので、津波のようなものが起ったのか、あるいは船に乗っての事故なのか、この大まかなところもわからないようですが、その程度の報告がきたのでございますか。
  108. 緒方信一

    政府委員(緒方信一君) そこは先ほどもお断わり申し上げましたけれども教育委員会でもそこをさらに究明をいたしたい、かように申しておりまして、ただいま申し上げました通りの報告でございます。それ以上まだわかっておりません。
  109. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 まあ大きな事件が起きたのであわてたのかどうかしりませんが、報告の仕方としてはまことに変なものだと思うのですね。こんな簡単な報告をする場合にでも、こういう点は明確にさるべきものだと思いますが、これは明確になっていなければしょうがないのですけれども、ちょっと意外に感じます。  それから、この女子五十人がおぼれたという数字と、八人が回復したというのは、五十人中八人が回復したというのですか、それとも救助せられた四十六人中の八人が回復して、二十二人は絶望というのですか。その女子五十人がおぼれたということと、二十二人は絶望のようだというこの五十人と二十二人の関係はどうなのですか。
  110. 緒方信一

    政府委員(緒方信一君) これは五十名おぼれまして、そうして行方不明は明らかにはっきりなっておりますのが三名、それから四十六名今救助をされた、これもはっきりなっております。これもちょっと先ほど申し上げましたが、数字の食い違いがそこに若干ございます。これは私教育委員会のこの報告のままを申し上げておるわけでありまして、ここに若干食い違いがございます。そのおぼれましたうちの四十六名を助け上げまして、人工呼吸を施しまして、八名は人工呼吸の結果意識がすでに回復いたしております。三十八名はなお人工呼吸を施しているところである、しかしながらそのうちの二十二名は絶望ではなかろうか、かようなことでございますから、おぼれました者の五十名のうちでございます。
  111. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 そういうことは、今のあなたの報告によると、最大限まことに残念なことながら、今の情動では二十四人程度の犠牲者が気の毒にも出たようだ、こういう数字になるわけですね。
  112. 緒方信一

    政府委員(緒方信一君) 二十二名につきまして絶望と申しますのは、それがどの程度のものであるかは、これは、明らかにできませんけれども、今のお話のようなことも想像できるわけであります。
  113. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 これはまだ正確な続報をいただかなければ何とも把握をいたしかねますが、校長以下二十人おられだとすると、これは課外課程中の事故と思いますが、紫雲丸事件とは違って、事情を調べてみなければわかりませんが、まことに遺憾な希有の事故だと思います。教室の延長としての場合においての事故だと思います。すでに電話連絡されたそうですが、現地においては適時的確な手をうたれていると思いますけれども文部当局におかれても早急に十分連絡をとられて、善後処置に現地において誤りなきようにされると同時に、続いて入るところの正確なる資料を当委員会に出していただきたいと思います。
  114. 堀末治

    堀末治君 今のこの事件でございますが、非常に遺憾な事件が続々と出る。非常に気の毒でもあり、遺憾に思うのですが、私ちょっと今の初中局長の報告では非常に不満足なんです。十一時に起きた事件ですね。そうするともうすでに五時間たっております。五時間たっておってこのくらいの報告よりできないという今の通信機関でないと私は思う。至急報でかければあの間はなにほどの時間もかかりません。せっかく今あなたがわざわざわれわれに御報告下さるならば、できればあなた自身電話をかけて聞いても、もう少し的確な御報告をして下さるのがほんとうに責任を感ずるものだと思う。この間うちからこういう事件が次から次と出て非常に皆遺憾に感じておるときにもつてきて、十一時に起きた事件が今四時すぎにわれわれに報告するのにもってきて、一向あなた自身教育委員会と打ち合せをしていない。報告を受けないでくるというのは、緒方さん、がないと思う。そうでありませんか。もう四時二十分ですよ。今新聞社の方からどんどん報告がきているのに、あなたがかりに院内に来ていたからといっても、院内でも直通で電話をかけられる。至急報でかけたら何分もかからない。今すでにここに来てから、さっきから来ておりますから、あれだけの時間があれば詳しく聞けますよ。三時というのが四時までおくれているのですが、主としてきょうは文教一般に関する質問を特にしようというて、大臣までお出かけを願っておる。そこにもつてきてこういう突発事件が出ているのですから、なるべくならばこういうものに対してはあなた自身要するに電話をかけて、親切な報告をすると同時に、あなた自身が今言われた通り的確な情勢を把握するということは、ほんとうにあなたは責任を感ずる立場にあるのだと思うのですが、どうですか。私は非常に不満足ですよ、こんな報告では。(「同感」と呼ぶ者あり)時間がないならともかく時間が十分にある。
  115. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 今のはお尋ねでございますか。
  116. 堀末治

    堀末治君 そうです。御答弁願います。
  117. 松村謙三

    ○国務大臣(松村謙三君) 今お話のようなお尋ねがございますことは、これは当然でございますけれども、しかし向うの方もこういう大きなことがあって非常にうろたえておりましたので、報告がおくれたと思います。私がこの報告を受けましたのは、今からこうでなければならぬ。そういう場合に四十分先でございまして、おくれて受けたわけです。それまで緒方局長とほかのことで話をいたしておりましたが、そのときにはまだ報告がきておりませんで、緒方君が帰ってまた引き返してきて、こういうようなことが起りましたということでありましたので、ついお尋ねのようなおくれた事態をかもしたわけでございます。十分この報告をとっておりますが、新聞社等に参っておりますのも大同小異でございまして、たとえば大きな波が襲来したということが原因だということでありますが一部には少し沖の方によけい出すぎたのだというようなことがあるのじゃないかというようなこと、それから四十六名が救助されたが、ほとんど絶望だということも、大体新聞社に来ておるのも、こちらの方の報告もよく似ておりますので、非常に混雑の際でありますから、こういうあいまいな何が来たと思います。今いろいろ連絡をいたしておりますから、御了承をお願いいたしたいと思います。
  118. 堀末治

    堀末治君 大臣がわざわざ御答弁下さったからよくわかるのですけれども、私はほんとうにこういうような事件がでたら、これは属僚にまかせておくべきものではない。局長自身が電話に出て、ある程度は、わかってもわからなくても、一ぺん電話口に出て、状況はどうだと確かめて、今しもか委員会を開いておる最中ですから、質問を受けた場合に、自分として何らか的確な答えをしなければならないから、できるだけ的確な報告を受けたいということは、あなたとして当然取るべきことである。これはいかなる場合でもそ一体あなた方自身が、こういうものに対するほんとうの道義心がないからこんなことができると私は思う。これは決して先生方ばかりを責めるわけでなく、みなあなた方自身が、これは監督の立場ではございませんけれども、やはり今でも学校職員は、文部省といえばただ単なる勧告の機関でなく、ある程度監督というようなことも考えておられる。それであるから、その立場にある人は、そういうことがあったらいち早くみずから電話をかけるべきです。大尉と御相談になることもございましょうが、しかし私はこういうようなことは、大臣とどんな御相談があったかしりませんが、これにまさるそう緊急な相談はないと思う。それであるから、自分自身電話をかけて、今ここに来られなかったら、この話が出たら今局長がみずから電話をかけておりますから、今しばらく詳細な報告が来るまで符ってもらいたい、これでも私はけっこうだと思う。だれが電話をかけたのか、今の矢嶋君の質問に対して、あなたの今言った通り新聞社から受けたか、こっちから先にかけたか、そんなことはわかってもわからぬでもいい、あなた自身私はまず電話口に立って、どうかということを聞くということが、私はあなたのほんとうの責任感の上に立った仕事ぶりでなければならないと思うのです。あなた方自身が一体だらけておるから、こういうものが絶えないのです。私はこれは非常に遺憾にたえない。いかがですか、私の言うことが間違っておりますか。あなた方自身が率先して、ほんとうに子供は大切だ、そうでないから次から次と事故ばかり起き、何かというと、この委員会に事故の問題が出ておる。この前も大臣に、処罰を厳重にして、多少なりともそれによってこういう事件を緩和したらということまで、私は痛烈に言うておる。それにもかかわらず、あなた方は今はこういう事件ができて、新聞社の報告と同じだといわれる。同じでもけっこう、みずから電話をかけて、今委員会の開会中であるから、おそらくこれは質問を受けるであろうから、できるだけ的確な報告が受けられないかと電話をかけて、そして同じ報告でもいいから、みずから責任があるから聞いて私は答弁するのが、ほんとうの今まで言うた通りあなたのお立場であり、あなたの責任だと私は思うのです。これはいかがですか、私の質問は無理ですか、大臣、私の質問は御無理だと思いますか。
  119. 松村謙三

    ○国務大臣(松村謙三君) 決して御無理とは思いませんけれども、この報告がおくれましたのは、先刻申しましたように、もう向うの方が混雑しておることと思いまして、今から一三、四十分前にようやく知れたようなわけでありますから、ことに教科書の問題等もあったものですから、局長がこちらへ参ったというわけでございますから、事情は一つ御了承を願ってお許しを願いたいと思います。
  120. 吉田萬次

    ○吉田萬次君 この問題はどうも私ははっきりと想像もつかんような問題でありまして、海水浴場で起った問題としてはそうでもないと考えられますが、また洲を中心にした海岸は遠浅の海水浴場になっております。そういうところにこれだけの最悪のことが起るようなことはあり得ないことだと思います。これで沖へ出ていったということになりますると、水泳の練習のために行かれたなら、こんなに惨害がひどいはずもないと思います。波が起るということも、突風ということもないとはいえぬでありましょうけれども、簡単に波はそんなに起るものではないと思いまする関係上、これは多少十分に調査していただきたい。それからどういう目的で何をやったかということによって起るかもしれませんけれども、想像も及ばん問題であります。これはそういう点から考えると、指導者というものが非常に怠慢な計画のもとに起った問題じゃないかということを想像せなければならない。かような点から考えまして、私は波が起るということはどうしても今でもわかりません。これはどうしても今まであれくらい惨禍があったのにかかわらず、指導するという方面においても手ぬかりが相当あったものじゃないかと思いますので、その点十分御注意が願いたいと思います。
  121. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 堀委員からの御発言私もごもっともだと思います。しかし私はこの際松村文部大臣に申し上げておきたいんですが、いずれこういう問題については閣議等においてもいろいろと懇談の際に話が出るかと思いますから、私参考に申し上げておきたいんですが、あの紫雲丸事件が起った当時、国家警察警察庁本部並びに運輸省本部の報告はわれわれ議院運営委員会になされましたが、全く周章ろうばいといいますか、両者の数字が食い違うし私もびっくりしました。当時事件の起った当日のわれわれに対する報告では、幾ら多くても犠牲者は八十人はこえないという数字が警察本庁並びに運輸省当局から報告されたにもかかわらず、皆さん御承知通り、犠牲者は二百名になんなんとしたわけです。あの事件のときは警察本庁直属のものであり、また運輸省直轄のものでありながらそういう報告しかなさらなかったことに私はあぜんとし、参議院の議院運営委員会を通じて当事者に注意を喚起したわけですが、このたびの事件についても、これは文部省の直接管轄、取り扱っておる学校の事故ではありませんけれども、報告される以上は、もうちょっと具体性を帯びた報告をされるように、今後気を配られた方がいいと思うのです。しかしただ私らも今聞かなければ知らないわけですが、局長は不十分ながらも自発的に御報告を当委員会にしたというその善意だけは多といたしますが、報告内容について堀委員からいろいろと忠言並びに要望がありましたが、その点は私も全く同感でございますので、今後もそういう点については内閣全体としても、また文部当局としても御注意願いたいことを要望いたしておきます。
  122. 笹森順造

    委員長笹森順造君) ただいまの報告に対してほかに御発言ございませんでしょうか。
  123. 吉田萬次

    ○吉田萬次君 希望いたしておきますが、今朝日新聞の夕刊を見ますと、相当詳しく出ております。新聞に出ておるところを見ますと、相当時間もあることでありますので、少くとも新聞に出ておるぐらいの程度の御報出自のできるようにしていただきたいと思います。
  124. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 速記をとめて下さい。   〔速記中止
  125. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 速記を始めて下さい。  これより教育、文化及び学術に関する調査を議題といたします。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  126. 川口爲之助

    川口爲之助君 話は少し旧聞に属するのですが、政府はかねて重要な文教施策を示されております。それは直接予算関係のない文教の刷新あるしは道義の高揚、こういうようなことであります。こういう案はどういう教科課程によって推進されるかということであります。かって京大事件の起りました当時、大谷委員の質問の中に東洋道徳が滅びた、これにかわるべきものを出される考えがあるかないかということを問われたのであります。その際大尉からそういうものはあらためて出す考えはない、良知良識によって人格の完成をはかって、そうして礼譲の心すなわち良心を持たしめることによって祖国愛、道義の高揚をはかる、こういう、ふうにおっしゃられたように記憶いたしております。そこでこの通義の高揚ということは御説明の趣旨はよくわかりますけれども、これをいかに具体的に実現せしめるか、推進していくかという点について一つお伺いいたしたいと思います。
  127. 松村謙三

    ○国務大臣(松村謙三君) 今のお話でございますが、学校教育におきましてはこれは道義の高揚と申しますか、入が社会に立ってそしていく道を学校教育として十分徹底して行いますようにいたすことに指導方針を改めてやっているわけでございます。この成果は漸次上ってくることを期行いたしております。それから一般社会の道義の高揚につきましては、これは近く発足いたします新生活運動の大きな部面として取り上げていただきたいと、こういう考えを持っております。新生活運動は生活の運動でありますと同時に、やはり道義の裏づけがなくてはならぬと考えますので、両々相待って効果を上げ得ることと思うのでございます。  それから今やっておりますことは、もう一つは、映画などの人心に及ぼす影響の大きいことにかんがみまして、この方面の悪い影響を除き、いい方面の感化を助長するような方策をとっておるわけでございます。
  128. 川口爲之助

    川口爲之助君 ただいまのお話によりますと、新生、活運動その他の面からこれを取り上げていくというお話でありますが、一応これは御趣意はわかります。けれども、道義の高揚、あるいは祖国愛、愛国心を盛り上げていくということにつきましては、まず教育の面においてこれを的確に推進していくということでなければならぬと思います。いろいろ科学技術の修得、そうしておっしゃるような良知良識によって人格の完成をはかる、それによっていわゆる日本国民であるという観念をまず植え付ける、そこからいわゆる愛国心というものが生まれ、あるいは道義心というものが生まれてくる、これが教育の根本の理念ではないかと思うのです。でありまするからして、これを推進するためにはどうしても教育の課程においてこれをやらなければならぬと、かように一考えておる。ただいまの教育課程というのを私はあまり詳細には存じておりませんけれども、全科目を通じて徳目を説くという点に限られておるのではなかろうかと思います。つまり修身あるいは地歴といった独得の科目を掲げて国民精神を引き締めていくという点には欠けておるのじゃないかと考えます。その点いかがですか。
  129. 松村謙三

    ○国務大臣(松村謙三君) 終戦後の教育の方針は、これは大体におきまして国が教育の方針に関与しないというようなことで占領中はやってきたものでございますから、その聞きわめて区々まちまちであったことは御了承の通りであります。そのうちにいい進歩的の面もあると同時に、また非常な弊害の伴うことのありましたことは、これは認めざるを得ませんで、そういう意味から言えば、子供たちにどうしても厳粛な品正の陶冶をするということがこれはぜひ必要なことと考えます。かつても申しました通り、世界の民族と伍していく上におきましてはどうしても高い教養と高い品正を持たなくちゃなりませんから、そういう意味において今後学校教育は十分に徹底してやりたいと考えております。この意味においては、だれも異存はないことと思うのでございます。また古い愛国心という言葉には弊はありましょうけれども、民族を愛する、祖国を愛するということは、これは当然のことであろうと思いまして、こういう面について児童が十分理解をしていきますように努めることは、これはだれも異存のないことと考えまして、そういうふうに努めたいと存じております。
  130. 川口爲之助

    川口爲之助君 自由な立場教育をしていくということは、それはよくわかります。しかし、今私どもは独立国家となったのであります。この独立国家として一番大きく要請されるものは、自主性の確立ということであろうと思うと同時に、今おっしゃられた国家意識、民族意識というものを作振していかなければならぬ、これが独立国家に要請される最も大きな問題ではないかと思うのであります。ところが、占領政策の余弊というものが制度の上にも、また社会秩序の上にもあらわに出てきております。その間隙に乗じて、物心両面と申しまするか、精神面からも、経済面からも、まあ極端に言えば破壊工作が行われておる。その結果、国民全体の気持を支持していく伝統精神、これが、昨日堀委員からのお話もございましたけれども、かなり不透明なものになっておる。これをどうして直していくかということは、これは教育の力に待たなくちゃならないと思う。この点に政府当局が考えを及ぼされて、道義の高揚ということを高く掲げられたことは、われわれ大いに敬意を表するものであります。さてその道義の高揚を繰り返して申すようでありますけれども教育課程においてこれを推進していくということでなければならぬと思います。それを私どもは要求をいたしておる。たとえば、自分の国の歴史を知らない。自分の国の地理も知らない。徳目、修身科目もない。そこにどうして愛国心というものが起ってくるであろうということを私どもは疑っておる。でありまするからして、少くとも教育課程においてこれを徳目として教育の面に打ち出してもらわなければならない。ひっきょうするに、社会科の改訂ということであろうと思います。この点について何かお考えはございませんか。
  131. 松村謙三

    ○国務大臣(松村謙三君) お話通りに心得ております。全くそういう意味において最大の努力をしなくちゃいかんというふうに考えております。ただ私の考え方はぜひそういう占領行政中のふやけたところは是正をしなくちゃなりませんが、同時に世界の進運におくれないだけの用意を必要とするのだ、こういうふうに考えているのでございます。明治のあの興隆期を考えてみましても、やはりかつて非常なヨーロッパ心酔の時代がございましたことは御承知通りでございます。それがやはりあとからだんだんその悪いところを直し、いいところをとって明治の文化はできたと、こう思うのでございまして、日本の国民性のうちには東西の文化を吸収してこれを新しい日本の文化に改める能力がありますことは、これはずっと仏教、儒教の伝来以来のことでございまして、今日といえどもやはりそういう意味で、教育も広く世界のいい点をとっていくということを考えなくちゃなりません。そしてその机底はお話通りの日本の祖国愛、同胞愛の燃ゆる気運でやっていくと、こういうふうに漸次教育のあり方を変えていかなければならぬと心得ております。
  132. 川口爲之助

    川口爲之助君 明治文化の興隆は、これは日本の伝統的精神というものがはっきりと現存をしておった、それが基調となってああいうことができたのであります。そこでまた明治の初年には教育に対する何と申しますか、指令が出ております。これが施政の要道となってあれだけの世界に類例のない短期間の進歩発達を遂げた、その精神が今なくなっておると申しては言路が過ぎるかもしらぬけれども、どうもきわめて不透明なものになっておる。これを教育課程において是正していくということをわれわれは希望するのであります。そこでいわゆる社会科というものを改訂して修身、地理歴史というものを独立科目として、そうして子弟を指導してゆくということが望ましいということであります。文部当局はこの春社会科の改訂の案を発表されております。私どもはそれを新聞で拝見いたしております。ところがまだそれは実行に移されておらぬようであります。この点はいかがですか、実行には移す機会がないのでございますか。
  133. 松村謙三

    ○国務大臣(松村謙三君) その点につきましては私の前任者の時代に、安藤君の時代に社会科に倫理、歴史、地理、これを加えることをきめたのでございます。それで私になりましてからも前任者のその考えを引き継ぎまして、そうしてこの四月からそれは実施いたしておるわけでございます。現に教科書の指導書というのがございますが、それにもきちっとその点を明示いたしまして、全国の学校へ配っております。教科書等もそれに準じて作っております。さよう御了承を願います。そうしてこれは助長してゆきたいと考えております。
  134. 川口爲之助

    川口爲之助君 それでは先ごろからおおかたの世論の激しい批判を受けております検定教科書の問題についてであります。これはまだ行監の特別委員会において審議究明をされておるということであります。私どもこの問題を外から眺めておりますと、いかにも複雑であり、またいかにも不純なものがあるやに見受けられるのであります。こうした環境から生れた教科書、しかも比較的高い値段で児童生徒に与えられておる、これが果していいのであるとするならば、これによって神聖なるべき教育が的確に行われるであろうかどうかということを私ども考えるのであります。われわれの古い観念からいたしますと、やはり教育というものは半ば教える人そのものの人格の反映である、かように考えております。もし生徒児童を道具、これをおもちゃにしてもてあそぶというような者がかりにありとしたならば、これはほんとう教育というものは行われないというふうにわれわれは考えるのであります。どうもこれまで新聞雑誌に現われました事実ないしは行監の特別委員会を通しての事実、これは当局としてどういうふうにごらんになられておりますか、また現行の検定教科書制度、これはそのまま存続するお考えでありますかどうか、その二点についてお尋ねいたしたいと思います。
  135. 松村謙三

    ○国務大臣(松村謙三君) 教科書の問題をずっと全面的にみますと、いろいろの点において問題があると思うのでございます。私は責任者として、そういう事実のあるなしは存じませんけれども、いろいろその選択について業者の間にいろいろのことが行われておるといううわさのありますことは御承知通りで、そういうわさの出るだけでも教育の上で児童に及ぼす影響の大きいことはもちろんでざいます。こういう面があります。また教科書の内容につきましてもいろいろの批判がございます。そしてその教科書というものは現在の法律によりますと、一度検定を受けますと無期限に効力を持っているわけでございまして、今こういう不穏当な内容があるといいますと、それは時代的に見る必要がある、二十四、五年ころの占領行政のあのずいぶん破壊的の時代の教科書は、やはり同様の記事が盛られているということもあります。それが今もとめられないで、一度検定を受けたものですからそのままになっておる、こういうような事情もございます。それからまた父兄の経済面から申しますと、あまり煩項に、一つの村、一つの町で教科書の選定の仕方が違いますので、きわめて不経済な、ちょっと隣りの村に住居が変りますと教科書をまた新たに買わねばならぬということ、そして年々変りますがゆえに兄弟譲り合って使うということができないというような事柄、それから検定の方法ども今日秘密にしておりますが、それがかえって無責任な検定をする危険もありはせぬかというような疑問等々のことが今日教科書の問題の世論となっておるわけでございまして、こういうことを総合いたしまして、これは全く白紙の上に立ってこれを再検討いたすというわれわれの決意でございます。そして教科書というものをきわめて明朗な、そして今いう、経済的にも父兄に大きな負担のかからないようにということに注意をおき、その内容のことはもちろんでございますけれども考えてやっていかなくちゃならぬと思います。ただしかし、これは一面そのために進歩を抑えてはなりませんから、昔の国定教科書に返るというような考え方は持ってはいかぬと思いまして、今日の検定制度のいいところを残して、そして弊を除くようにいたしていきたいと考えておるのでございます。
  136. 川口爲之助

    川口爲之助君 そうすると、ただいまの問題は、これまで起った経過をしさいに検討して、是正すべきものを是正して、検定制度を続けるという、こういう御趣旨でございますか。
  137. 松村謙三

    ○国務大臣(松村謙三君) さようでございます。
  138. 川口爲之助

    川口爲之助君 そこで質問の要点をすぼめますが、千数百名の調査員の方方がおられるということです。その方方が文部省の指導要綱に基いて、出版業者が編集する、その編集された原稿を調査員の方々が選定基準に従って採点をする、それがまた検定審議会にかかりまして決定をする、おそらくその過程においては文部当局においても多少目を通されることと思います。このようにして複雑な、また入念な過程を経ましてでき上った教科書というものが、年とともに変っていくということは、どうも私どもの平凡な頭では理解ができない、また一つの科目に数十種に及び教科書がある、何ゆえに一つの科目に対してこのような多数の教科書を作るのか、これもちょっと了解に苦しむのでございます。それは日に日に改っている世の中の進歩につれまして内容が若干改訂されるということもありましょうが、また種類にいたしましてもいろいろ希望もございましょうし、その土地に適したものを作らなければならぬという意味から、三種類、五種類のものはできても仕方はないと思いますけれども、折角作ったものを毎年々々変えてゆく、そういうまた種類の同じ教科書を作るということは、どうもそこに大きなむだがあるのではないか、少くとも一たび定められた基本的な科目、基礎的な科目、これは少くとも三年や五年は続けて使用してもよろしいのではないか、かように考えるのであります。そこでこの点についての御意見も承わりたいと思うのですが、ただいまのお話にございました調査員の選定の方法、これはどういうふうにして選定されるのか、また匿名ということはどういう意味においてなされるのか、これは見ようによっては、匿名と申しましても出版業者あるいは関係の者は直ちにこれを知ることできる、しかしながら一般の国民は全然知らない、そこに複雑な事情の生ずる原因があるのではないか、かように考えます。それらの点につきまして一つお話を承わりたいと思います。
  139. 松村謙三

    ○国務大臣(松村謙三君) 検定の方法につきましては、今事務の局長がおりませんから、私から大体のことをお答え申し上げますが、これはただいまのところでは、秘密に検定の委員を嘱託いたしまして、そしてそれでその原稿を、どこの会社のもの、どの著者のともわからないようにいたして配布いたして検定をいたしてもらうわけでございます。そうしますと、大体五人くらいを一組にして検定をいたしてもらいます。その検定の標準というものは、これは大体大まかなものでございますが、ひっきょう教育基本法を基準といたしまして検定をいたす、こういうようなことになっているわけであります。そうしてそれにだれか一人でも落第点をつける委員がありましたならば、これはもう採用せられないというようなことでやっておるのでございます。しかしながらそれが漏れるといううわさもありますが、もう一つには、著者は大学の教授などでありますが、検定をする人はまあそれ以下の人、地位の上から言えば以下の人というようなことがありまして、かえって十分行かないという点もありますし、それからもう一つは多数でありますから、十分の報酬も差し上げる完全なことにもなっていないようなうらみもあります。こういうような点を見ますと、十分改正をする余地大いにあるのではないか。この点だけは法律では文部大臣が検定をするということになっておりまして、文部大臣がその点はいかようにもなし得るわけでございまするし、また直接それに対する責任もあるわけでございまして、十分に検討をいたしたいと考えております。
  140. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 関連して。文部大臣、ただいま川口委員から熱心に質疑を展開されているわけですが、私の感じでは、この国会開かれてもう数カ月、やがて半年になんなんとするわけですが、教科書行政というものはわが国の文教政策のうちで大きな一つの問題です。さらに教育委員会制度という教育行政制度、これもわが国の当面せる教育政策の上では大きな問題です。こういうような大きな問題についての大臣の御答弁というものは、国会開かれて教カ月になんなんとするわけですが、一歩も進まれないわけですがね。従って質疑応答を承わっておりまして、何かもの足らない感じがするのですが、たとえば今川口委員が教科書問題を聞かれているのですが、それだとすれば、どういう機関にどういう諮問をして、いつを目途に結論を出したいと思っているとか、あるいは今までいろいろ検討した結果、諮問すれば、その諮問の答申はともかくとして、自分としては一応こういう見解をもってこのようにしてはどうかと思っているという、やや前進した答弁がないと、われわれはもう委員会をやっておってどうももの足らないと思うのです。たとえばあなたが従来の国定には戻したくないということは前から言われていることですが、それではあなたの所属される民主党で民編国営論というものがあるわけですが、このやり方もいろいろあろうと思いますが、民編国営については大臣としてはどういう見解を持たれているのか、またそれと国定というものは果して実質的に異なるような実際行政ができるのかどうか、そういうような点についてやや具体的に前進したところのお答えを願わなければ、大臣非常に慎重なお人柄の関係もありましょうが、長きにわたる国会においてわれわれはいろいろの教育の根本問題について大臣と質疑応答をしながら、ほとんど前進らしき答弁がない点を非常に私は心細く思っているわけですが、せっかくこの暑いのに川口委員一生懸命質問されているのですから、少しは大臣の私見にしても前進したところの答弁をお願いいたしたいと思うのでございますが、いかがでございましょうか。
  141. 松村謙三

    ○国務大臣(松村謙三君) お話通りでございまして、私お答えは前進していないと仰せられても、これどうも申しわけのないわけでございます。しかし、事柄はきわめて重大でございまして、ちょっと思いつきで申し上げたのでは、これはかえって世間を誤ると考えるのでございます。そこで十分の自信を得て一つ御批判を得ますのにはつい議会のことで気をとられまして、まだ自信をもってこれで行こうという案を持っていないわけでございます。ありましても、まだこういうつもりでおるとは申し上げかねるわけでございますので、今後十分に調査をいたし、また自信をもちまして次の議会までにはこの教科書の問題、教育制度の問題等々、教育の根本に関するものはやはりいろいろな連関を持っておりますから、十分に検討をして私どもの文教に対する方針を明かにいたしたいと存じます。どうかさよう御了承を願いたいと思います。
  142. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 大臣、もう一回だけ伺いますがね。それでは教育行政制度それから教科書行政制度、これらはこれから検討して変更する場合もあるだろう、変更しない場合もあるだろうという程度でございますか、それとも教育行政制度と教科書制度はともかく改変しなければならないから、次の通常国会まで具体案を得て、そうして、国会の議決を要すべき問題については国会の可決成立の上に次の通常国会を目途にいたしたい、こういう見通しなんでございますか、いずれでございますか。
  143. 松村謙三

    ○国務大臣(松村謙三君) 私はこの教科書の問題につきましては、これはどうしても改めなくちゃいかんと考えております。従いまして、次の議会までには必ず改正案を議会へ提出いたしたいと考えております。それから教育委員会の制度につきましては、これは十分の調査をいたした上でないと、今申されるように、検討の結果このままでいくか、それからこれも一つ改めていくかということは、私まだここに明らかに申し上げるところまで到達いたしておりませんが、検討は十分いたすつもりでおります。
  144. 吉田萬次

    ○吉田萬次君 先ほど川口委員から教科書の種類が非常にたくさんある。従って、その選択というものについて困るじゃないかという御質問がありました。大臣の方針としては民編国選という線を出しておられると存じております。ごもっともなことだと思いまするが、そうであったならば、そこに非常な注意をしていただいて、多種類のものについて少数の種類にしてもらうことはできんでしょうかということでして、種類の多いということは、結局貧乏な国の経済から考えまして、非常なこれは不適当なものだと、貧乏な国には不経済であるというふうに考えます。また一つの本を作るにいたしましても、それに対する研究費だとか、あるいは諮問であるとか、あるいは労力だとかいうものが払われておりまして、そういうような費用がかかる。また一つの本ができ上りますというと、それに付随いたしまして、教師用であるとか、あるいは学習帳であるとか、あるいは参考書であるとか、あるいは資材であるとかいうような、これにやはり付随した莫大ないろいろなものがそこに出てきます。かような点から考えまして、本の種類がたくさんあるということは、一面において選択によって自分の理想とするものを選択するということについて便利かもしれませんけれども、私は国定教科書というものを謳歌するわけではありませんが、国定教科書というものができたのは、やはり貧乏国としての教育の方針においてやむを得ざる現象であったかとも考えられます。従って、私は、多数のこの種類というものは、きわめて私はわが国の経済から見て不適当なものだと考えまするが、これに対する大臣のお考えはどうでございますか。
  145. 松村謙三

    ○国務大臣(松村謙三君) 今お話の民編国営の形を私がとるという考え方を前提として今申しておるのではございません。あれは私の属する党派の一人がそういう意見をはかれておるのでございまして、党のまだ党議ともなっておるわけではございません。これはもちろん十分検討の資料にはなりましょうが、今私がその考えで進んでいるというようなところではございませんので、全く白紙で考えたいと思うのでございますから、その点はさよう御了承をお願いいたしたい。しかし今お話の、教科書のいかにも雑多でありますこと等については、これはその通りでございまして、どうしてこれを少くする、と申しますか、あるいは検定を厳重にすると申しますか、というようなことで、今日のような一町村ごとに教科書が変るということは、私は変えていかなくちゃならんと考えております。要するにどういう形にしますかということをこれから研究をいたしたいと思いますが、御趣旨は全く私どもは同感でございまして、そういう方向へ進みたいと考えております。
  146. 吉田萬次

    ○吉田萬次君 ただいま大臣は民編国営とおっしゃいましたが、私は民編国選、せんは選ぶというように考えております。
  147. 松村謙三

    ○国務大臣(松村謙三君) それは全くその通りでやっております。
  148. 吉田萬次

    ○吉田萬次君 そこに違いがありますから……。  それからもう一つついでに承わっておきたいのは、大臣は新しい生徒に対して本を無償で配給するようなことをおっしゃったことがあるやに承わっておりますが、これは私は一年生の新入生に対する配給ということはきわめて慎重にやっていただきたいと思います。決して本を一冊ずつ、あるいは本が各課程における二冊か三冊かの全部の本にいたしましても、これを受けるということが果して適当であるかどうか、地方は決してこれを望んでおりません、ということは、費用がそれほどのものでないということもありますし、市町村におきましてはこの報告に非常な繁雑をきたすような点もありますによって、この点は十分御考慮が願いたいと思いますが、今でもさような御意思でありますかどうか。
  149. 松村謙三

    ○国務大臣(松村謙三君) 私はこの全部の生徒に教科書を出そうと申したことはないのでございます。そういう考えを持っておりませんです。ただ一つの案として申し上げたことはですね、今は停止されておりますけれども、来年度からはぜひ復活いたしたいと思っております。前からの一年生の入学のお祝いに国がその年の教科書の一部を全部に差し上げるということは、これは来年度から何んとかして復活をいたしたいと存じておりますが、その復活したときには、ただいまのように、そういうふうに全部に上げた方がよろしいか、あるいは一年生新入学生のみならず、全学級のうちで貧困で図書を買うに困る人たちだけに、そういうものを、教科書を上げた方がよろしいか、大体同じほどの費用でどっちにでもなるのです。(「どっちですか」と呼ぶ者あり)そういうことだからどっちがよかろう、しかしそれを貧困な人たちに上げる方がいいようには考えますけれども、ただ技術的に困りますのは、ただいまお話の一部の人にそうしますと、子供たちの自尊心を傷つけばせんか、これを技術的に除くことができたならば、あるいはその方がよくはなかろうかというようなことを申し上げたのでございまして、これらのことは今これから研究をさせているわけでございます。
  150. 吉田萬次

    ○吉田萬次君 もう一つ。それはそこに私はいわゆる民編官選のことがはっきり現われてくるということで、文部省が生徒におやりになる本というものは、あるいは希望のものをお分ちになるか、あるいは全面的に同じ本を全国に流されるかということは、これは重大問題だと思いますが、その点に対するお考えをお伺いしたい。
  151. 松村謙三

    ○国務大臣(松村謙三君) 今日の検定制度が存立いたしておりますにつきましては、それによってその地方で採択せられた教科書を渡す、現在もさようになっているわけでございます。
  152. 川口爲之助

    川口爲之助君 ただいまのお話を承わりましたが、私のお尋ねの趣旨は現行法のうちで悪いところがある、もし悪いところがあるならばそれを是正していきたいというのが私の質問の趣旨でございます。民編国管あるいは国営という問題は、これは別の機会に申し上げたいと思います。そこでもう一つお伺いしたいのですが、修業年限が一年ふえた、修業年限が増しておるにもかかわらず基礎的な学力が一般に劣っておるということが世論になっております。これに対しまして、終戦後における混乱期、動揺期におけるこれは過渡的の現象である、こういうふうに言われておる向きもございます。またおよそ教育制度はまず人間の形成、人間を作るということと広く知識を求めるという関係から、特定の科目についてはあるいは学力が劣っておるかもしれない、こういうふうに片づけられております。学力が劣るかあるいはまさるかということは、これはものさしでははかれないのですからして、専門家の調査に待つ以外には道はないと存じます。さりながらここに一つども心配なことは、社会秩序の紊乱と申しては言葉は過ぎるかもしれませんが、その状態が学園に移っておるという感じがするのであります。その点を非常に私は心配をするものであります。それは何かと申しますというと、青少年の犯罪はおいおいと増加の一途を辿っております。それからしてひんぴんとして学園に起る不祥事件、これはまことに目をおおわしめるものがあるのでございます。人格の先成、人間性の陶冶これを目途として進んでおられる現在の教育の方針と今の情勢とは全く相反した方向に走っておるというふうに私ども考えておる。一体これはどういう原因からこういう状態になったのであるか、教育の制度が悪いのか、あるいは教科課程、いわゆる教科書の内容が悪いのか、またこれを教える教師、その人の質によるのであるか、おそらくはこれはそのいずれにも当らないということは、われわれは固く信じておるのでありますが、しかしながら一体こういうふうになったのはどこから原因が来ているかということを深く憂える。その点について何かお考えがございましたら、一つお聞かせを願いたい。
  153. 松村謙三

    ○国務大臣(松村謙三君) 今お話の現在のアメリカの制度を取り入れた今日の教育がいいかどうかという問題、以前の制度の学力と今の制度の学力はどうかということになりますと、これはなかなか比較は困難であろうと思います。近ごろドイツから帰った人の話を聞きましても、ドイツはやはり以前日本でやっていたような、悪く言えば詰め込み主義と申しますか、ああいうやり方を今もやっておりまして、物理、化学の教え方もそういうふうで進んでおって、従って早く力がつくと、こういうことを申しております。日本はそれとは反対で、いわゆる啓発させていくというところにあるようでございまして、そのよしあしについては、いろいろ議論もあることと思うのでございますが、ただ今お話のような道義の頽廃の面に至りましたならば、これは占領行政中のそういう面に触れない考え方教育の災いをいたしておることは、私どもは認めざるを得ないと考えます。大体学校において修身を教えないというようなことは、アメリカあたりのような家庭に宗教の感化が徹底する所においては必要ないかもしれませんけれども、宗教の権威が向うのようでない日本においては、どうもそういうわけにも参らない。それに、それをやるのだというふうなことも一つ原因をなしておりましょうし、もう一つは敗戦後の日本の失望をいたした状態が心理的にそういう面にふやけて参りまして今日の社会情勢となっており、それがまた子供に影響するという点は、これは見のがすことはできないと考えます。従いまして一面は社会教育、社会の生活改善と、それと学校教育と相待ってやっていかないならば、この状態はなかなか矯正することはできない。両面に最大の努力をしなければならぬと考えております。
  154. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 議事進行について。
  155. 笹森順造

    委員長笹森順造君) ちょっと速記をとめて。    午後五時四十九分速記中止    ————・————    午後六時二分速記開始
  156. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 速記を始めて下さい。  私から発言いたします。先刻午後の委員会が開会されました際に、文部当局より三重県における学童の橋北中学校の遭難事件についての報告に関連いたしまして、この委員会がただいま終了いたしまする前に、引き続き報告があることを期待してその報告を求むるということで皆様方の御了解を得ております。ただいまこのことについて文部大臣から御報告をいただきたいと思います。
  157. 松村謙三

    ○国務大臣(松村謙三君) 実はあれから直ちに津なり県なりの教育委員会に電話をいたして尋ねましたが、両方とも責任者が現場へ行っておりまして要領を得た返事を得ることができません。それで現場の対策本部には電話がないために、徒歩連絡をしてもらって至急報告方を依頼いたしておったのでございますが、いまだに返事がございません。こういうやむを得ない次第でございますので、どうかきょうは御報告をいたすことは遺憾ながらでき得ないわけでございまして、事情を御了承をお願いいたしたいと思います。
  158. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 本日はこれにて散会いたします。    午後六時四分散会    ————・————