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高田なほ子君 ただいま
議題となりました
女子教育職員の産前産後の休暇中における
学校教育の正常な
実施の
確保に関する
法律案につきまして、その
提案理由並びに要旨を御
説明申し上げます。
そもそも国家の再建がその基盤を
教育に置かなければならないことはもとより贅言を要しないところであります。現在わが国における国立及び公立の高等
学校以下の
教育を担当しておりまする
教育職員は五十万人を数えますが、その約半数に当る二十四万人は女教師であり、さらにその四〇%は既婚者でありまして、平均二人ないし三人の子女を持っている現状であります。
教育の真諦は母性愛に発源し、母性愛に帰結することは幾多の実績にも見られます
通り、人の子の母である女教師の責務は特に重大であると申さねばなりません。従ってその特性が遺憾なく発揮されるためには、母性としての教師の保護が十分に
措置されなければなりません。
女教師の産前産後の保護については、すでに大正十一年九月十八日の
文部省訓令によって、分娩前二週間、分娩後六週間の休養が認められましたが、事実は休養できず登校する向きも少くないため、再三にわたって
文部次官から通牒が発せられております。
その後日本
教職員組合が結成されまして以来、産前産後の代養と、その間における補助
教員問題がるる論議され、これが改善のため不断の努力が払おれておりますにもかかわらず、今なお不十分な状態におかれておりますことははなはだ遺憾であります。
すなわち
昭和二十二年に労働協約として産前産後の休暇十六週間が決定されました。この協約は、
教育の特殊性にかんがみ、まことに適切な取扱いでありますが、その後の実状を見まするに、十六週はおろか、労働基準法第六十五条に
規定されておりまする十二週間の休養さえも十分には守られず、六ないし七週間の休養が通常の状態でありまして、はなはだしきに至っては、わずかに一週間しか休めなかったという例が、二十九県を通じて九十二名にも上っている現状であります。このような状態でありますから、その当然の結果として妊娠中絶の傾向は高まり、異常出産は三四%にも上り、母体、胎児並びに嬰児の健康障害を来たすのみならず、直接間接に
教育上不良の影響を及ぼし、ひいては国民
保健上からもゆるがせにできない重大問題であると思料いたします。
これらは、もちろん女教師の
教育的情熱と道義心の発露によるところの一斑の原因もありましょうが、主として産休期間における補助
教育の配置が十分に
実施されないことに起因するのでありまして、現在全国を通じ補助
教員を配置しておりますのは三十七県に過ぎず、これとても必ずしも完全とは申されません。すなわち長野県におきましては、補助
教員要求数四十名に対し、設置数五名、栃木県におきましては、八十名に対して十五名、愛知県におきましては、百七十七名に対して、わずかに六名であり、しかもニカ月をもって打ち切っている実状であります。従って産休期間におきましては、合併授業(一七%)自習(五〇%)等の応急
措置により、不正常な
教育が
実施されておりますため、
教育効果の著しい低下を招いているのであります。かかる憂うべき現状を解決し、
学校教育の正常な
実施を
確保いたしますには、産休補助
教員を設置する
制度の法神化こそ刻下の急務であることを痛感いたしまして、その目的達成のため、ここに本法案を提出いたした次第であります。
次に本法案の
内容の概略について御
説明申し上げます。
まず第一点は、この
法律における「
学校」とは、小
学校・中
学校・高等
学校・盲
学校・聾
学校・
養護学校及び幼稚園であること、「
教育職員」とは、
学校の校長(園長を含む)・
教員・実習助手及び寮母を指すこと、並びに
教員とは、教諭・
養護教諭・助教諭・
養護助教諭及び常勤の講師をいうことを明確に定義したことであります。
第二点は、国立又は公立の
学校に勤務する校長以外の
女子教育職員の産前産後の休暇中における補助
教員の任用と、女子の校長の産前滝後の休暇中における校長の代理をなすべき
教員または当該
教員を補助させる
教員の任用もしくは併任を任命権者の義務として
規定し、その任用が不可能の場合または著しく困難な場合には、十四週間をこえない期間の臨時的任用ができる
規定をも設けたことであります。
第三点といたしまして、臨時的
教育職員に任用された者は
教育公務員特例法の
適用を受けることと、これらの者は
都道府県の定数条例による定員に入れないことを明らかにするため、附則において所要の
改正を加えました。
第四点は、附則第二項において、現に
女子教育職員に対し、十二週をこえる期間の産前産後の休暇を与えることができるものとされている
地方公共団体に対する、調整
規定を設けたことであります。
第五点は、
私立学校におきましても、
学校教育の正常な
実施を
確保するため、雄前産後の休暇中における
教育職員の補充と必要な
措置を講ずべき倫理
規定を設けたことであります。
何とぞ慎重御
審議の上すみやかに御可決下さるようお願いいたします。