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1955-06-16 第22回国会 参議院 文教委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年六月十六日(木曜日)    午前十時二十四分開会   ―――――――――――――    委員の異動 六月十五日委員荒木正三郎君辞任につ き、その補欠として松本治一郎君を議 長において指名した。   ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     笹森 順造君    理事            吉田 萬次君            竹下 豐次君    委員            雨森 常夫君            大谷 瑩潤君            川口爲之助君            佐藤清一郎君            堀  末治君            加賀山之雄君            河井 彌八君            高橋 道男君            高田なほ子君            矢嶋 三義君            村尾 重雄君            松原 一彦君   委員外議員            荒木正三郎君            海野 三朗君   国務大臣    文 部 大 臣 松村 謙三君   政府委員    文部政務次官  寺本 広作君    文部大臣官房総    務課長     田中  彰君    文部省大学学術    局長      稻田 清助君    文部省管理局長 小林 行雄君   事務局側    常任委員会専門    員       竹内 敏夫君    常任委員会専門    員       工樂 英司君   参考人    東京教育大学教    授       朝永振一郎君    大阪大学教授  菊池 正士君   ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○国立学校設置法の一部を改正する法  律案内閣提出衆議院送付)   ―――――――――――――
  2. 笹森順造

    委員長笹森順造君) ただいまより文教委員会を開きます。  国立学校設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本日は原子核研究所設置に伴う諸問題について参考人から御意見を聴取するわけでありますが、参考人には本日御多用中のところ御出席いただきありがとうございました。なお菊池教授は飛行機が天候のため引き返して上京がおくれ、今朝八時伊丹を出発され、ただいま羽田に着いたとのことでございます。従いまして御出席は十一時近くになるのではないかと考えられます。また朝永教授は他の会議と重なっているのを繰り合せ御出席いただいております関係上、時間を急がれておりますので、朝永参考人から始めていただくことといたしたいと存じます。進行の便宜上、学術会議原子核特別委員会委員長という立場から、原子核研究所設置を要望された趣旨その他につきまして、まず朝永参考人に御説明をいただくことにいたしたいと存じます。朝永参考人
  3. 朝永振一郎

    参考人朝永振一郎君) 私ただいま御紹介になりました朝永でございます。  きょう、どういうお話をするのがいいのかよく存じませんのですが、あとでいろいろ御質問に応じてお答えいたしたいと思いますが、一応原子核研究所をどういう目的で私ども設置を要望したか、そういういききつをまずお話いたしたいと存じます。  この原子核物理の講義をここでするつもりはございませんけれども、一応話の順序として原子核というものはどういうものであるか、どういうねらいで研究をやるか、やらねばならぬかというようなことを、まずお話したいと思います。  この物質原子からできておるということは皆さん御存じだと思うのであります。約一億分の一センチメートルというような非常に小さなもの、原子というのはそういう小さなものなんでありますが、その原子がまた構造を持っておりまして、その中心にその一億分の一センチメートルのまた十万分の一というら非常に小さな核がございます。この原子の全体として、あるいは核の外側の研究がまず物理中心問題であったわけでありますが、それが今から約四十年くらい前の中心問題でありましたが、その後物理学がだんだん進歩いたしまして、この核の中の問題に物理中心問題が移って参りました。この原子核というものはそんなに小さなものでありますけれども、やはり構造を持っておりまして、そこにいろいろな現象が起ります。その構造はいわゆる陽子という粒子と、それから中性子という粒子、それが幾つかくっつき合ってできておる、そういうものでございます。で、今から約三十年くらい前からこの構造をいろいろ調べるのが物理中心問題になって参りました。初めのうちは天然に放射性を持っております原素、つまりラジウムのようなもの、それから出て参ります放射線、いろいろな放射線が出て参りますが、やはり原子核構造物である陽子中性子のある小さな単位のものがその中から飛び出して参ります。そういうのを手がかりにして研究しておりました。ところがそういうやり方ではごく限られた研究しかできないので、次第にこの陽子中性子のようなもの、それからそういうもっとそれらがくっついてできました小さな単位粒子を人工的に非常な速さで走らせまして、そしてそれをいろいろな原子原子核にぶっつけます。そうしますと、そのぶっつけられた原子核がそこでいろいろこわれたりあるいは変化したりいたします。そういうつまり人工的に非常な速さで走らせた粒子を作るというそういう装置が非常に重要な道具になってきたのであります。皆さん御存じだと思いますが、サイクロトロンというのはそのまあ一つの代表的な機械でございます。初めのうちはその速きも、非常な速さで走らせると申しましたけれども、速さも比較的大きくなくてよかったのでありますけれども、だんだん物理学が進歩して参りますと、その速さも非常に速いものを要求するようになって参りました。たとえて申しますと、どれくらいの速さかと申しますと、まあいろいろありますけれども、ごく大ざっぱにいいまして一秒間に太平洋を横断するくらいの速さのものを用います。そういう非常な速さで走る、いわば弾丸原子核にぶつける弾丸を走らせる装置、これを加速装置と申します。この速さをはかりますのに、よくボルトという単位を使いますです。普通の小さいサイクロトロンでは百万ボルト、だんだんにもっと大じかけなものになって一億とか十億とかいうものが今問題になっております。ところがこういう非常に大きなものを使って参りまして、原子核の中の、原子核にいろいろぶつけて中の構造、それからその中において陽子中性子がどういうふうに動いているか、そういうふうなことを研究いたしまして、この物質の基本的な性質がそれから説明できる、そういうことをねらっているわけでございます。で、現在はまたさらにその物理学が進みまして、この陽子とか中性子とかいうもの自身構造がさらに問題になっております。一応陽子中性子からできている原子核というその中の構造というものの問題をすでに通り越しまして、陽子中性子がどういう原因で原子核を作って結びついているか、いわば陽子中性子をくっつけて原子核のかたまりにするところのそのまあセメントと申しますか、の役目をするものは何であるかというような、そういうところに問題がきております。で、そのセメントの問題は陽子中性子自身構造とも関係がある問題であります。いわゆる中間子湯川博士名前とともに有名になりました中間子というものも、この陽子中性子自身構造関係して議論され、考えられなければならない問題でございます。最近になりまして、中間子にも実に数十の種類があるというようなことまでわかって参りました。それがいろいろ複雑に互いに変化しあったり、いろいろ非常に複雑な現象を呈しております。そういうたくさんの中間子のようなものがどういう性質を持っているか、互いにどういう関係を持っているかというようなことは、まだ十分に、十分にわからないというよりも、ほとんどわかっていないという状態でございます。で、こういうふうな問題を研究することが非常に必要である。そのためには、先ほど申しました原子核にぶっつける弾丸を作る装置がどうしてもなければならぬ。日本湯川先生以来純粋に理論的な研究、つまり実験をやらないで、いろいろの実験の、外国で行われました実験の結果を材料にして、まあ紙と鉛筆で理論的な数学をひねくり廻すような、そういう研究が非常に進んでおりまして、ほかの国から非常に期待されておるのでありますけれども、やはり実験的研究を伴わない理論的な研究というのはかたわでありまして、ぜひわれわれの手で、自身でそういう実験研究をやらなくちゃいけない、そういう希望が非常にわれわれ研究者の間に出まして、約三年ばかり前からこういう話が持ち上りまして、学術会議原子核特別委員会で、これは原子核研究者のみならず、そういう実験研究者のみならず、理論的な研究者一緒におりますし、さらに宇宙線の方の研究者一緒におりますですが、そういう連中が何とかして日本でもこういう実験的な研究を進めなければならない。で、いろいろ考えたのでございます。そういう非常に加速弾丸を作る加速装置というのは非常に巨大なものでありまして、予算の面でも非常に大きいもので、これをおのおのの今までのような大学研究室というようなものの単位で作ることはなかなか無理だろう。でありますから、そういう巨大な装置を持つ研究所一つ作りまして、ただしそれを全国研究者たち共同に使う、そういうやり方考えたわけでございます。で、学術会議でいろいろ考えまして、そうしてそういう研究所を作ることが必要であるということを今度学術会議全体で幸いにして、お認め下さいまして、この昭和二十八年の五月に学術会議から文部省の方に、政府にそういう全国学者共同に使えるような、そうして巨大な、大きな加速装置を持つような、そういう研究所をぜひ作ってほしいということを要望いたしたわけでございます。で、その後研究所のあり方につきまして、研究者の側も今の学術会議原子核特別委員会中心にしていろいろ考えまして、それから文部省の方で同時に並行して考えられまして、結局いろいろ論議されましたのですが、やはりこの共同利用という点から見まして、特定の大学付置しないで、国立研究所のようなものも一応考えられましたのですが、いろいろな点から見まして、大学付置であるけれども、その大学の職員だけがそこで研究するのではなくて、全国研究者がそれを研究する、使わせる、そういう趣旨研究所がよかろう。こういう種類研究所はほかにもすでに例がございました。湯川さんが所長をしておられます京都大学基礎物理学研究所がやはり同様な種類研究所でございます。これは京都大学付置されておりますけれども全国研究者がそこで研究をするという、そういう建前になって、設置法におきましても、普通の大学付置研究所とは別の種類共同利用研究所という形のものになって作られておるわけであります。それからもう一つは、乗鞍の頂上にございます宇宙線研究所、これがやはり東大に付置されておりますけれども、ここはいろいろな各地の研究者がやって来て、ここで研究をする、そういうことになっております。原子核研究所もそれと同じような建前でやろう、そういうことになりましたのでございます。で、その研究所は二十九年度においてすでに予算を請求したのでありますけれども、非常に予算が削られまして、装置のごく一部でございますと、建物の一部を作って、そして定員はゼロという状態でありまして、私ども研究者が非常にがっかりしたのでございます。それで今年度、きょうここで問題にしておられるわけでございますけれども、できるだけ早くこの研究所を実現したいというのがわれわれ研究者の切なる願いでございます。で、この原子核研究原子力研究とがよく問題になりますので、その関係がよくおわかりにならない場合が非常に多いのでございます。学術会議でこの研究が問題になりましたときも、学術会議総会にこの研究所設置を要望するということが総会話題になりましたときも、原子力研究とこの原子核研究所目的とする研究とが区別がいろいろ話題になりましたのですが、この原子核研究所のねらいますところは、先ほどから申しましたように、この原子核の中のそういう非常なこまかい世界の、どういう現象が起るかという純粋純粋物理学研究をねらいとしておるのでございます。第一期計画でこのシンクロサイクロトロン、普通のサイクロトロンよりも少しばかりエネルギーの大きい、つまりスピードの早い弾丸を作る装置目標といたしますけれども、さらに将来はもっと大きいものを作りたいというのが、研究者たち希望でございます。それで先ほどボルトという単位で申しましたけれども、今問題にしておりますシンクロサイクロトロンでは約千万、数千万ボルトというのを目標にしておりますけれども、将来さらに十億かの、けたのものを作りたい。こういう純粋研究に使いますのは非常にスピードの早い弾丸を作る、走らせるという装置が重要なんでありまして、全体のエネルギーがそう大きいということは目標にしておりませんです。これが原子力の方の研究のねらいとは非常に違うわけでございまして、原子力の方の研究はあくまでそのエネルギー利用するというのが目的でございますので、この一つ一つ粒子エネルギーはそんなに大きくなくてもいいけれども粒子の数が非常にたくさんあって、全体のエネルギーの大きいというのがねらいなんでございます。先ほど申しましたように、この加速装置で走らせました粒子の早さは、一秒間に太平洋を横断するというようなそういう猛烈なものでありますけれども、これは一つ一つ粒子というのは非常に小さなもので、先ほど申しましたように非常に小さなものでありますので、そんなに猛烈に早く走りましても、その一個分のエネルギーは普通の日常の単位で見ますというと、非常にわずかなものでございます。約十億分の一カロリーというようなわずかなものでございます。ですから、こういうものはエネルギー利用という点から見れば、ほとんど価値のないものとも言えるわけでございます。しかしこの物質構造を探究するという点では、どうしても必要なものであると思います。で、私どもがこの研究所をこれから皆様方の御協力を得て作っていきたいのでございますが、何分にも非常に普通の研究所純粋物理学研究所という概念から見ますと、かなり大きな額の予算が必要なのでございますので、皆様方の非常な御支援がなければとうてい実現できない。世界の大勢を見ましても、やはり今この原子力研究をやるやらずにかかわらず、こういう物質構造を奥へ奥へと追求していくという純粋研究は、やはりだんだんと先へ進んでいるのでございます。で、非常に長い目で見ますと、こういう奥深いところにやはりだんだんと進んでいなければならないと私ども考えるわけでございます。非常に大ざっぱな話でございましたけれども、御質問があればそれにお答えすることにして、一応私の話はこれで終らしていただきたいと思います。
  4. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 朝永参考人に関する質疑のありまする方は発言を御要求願います。
  5. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 議事進行について。ちょっと速記をとめて。
  6. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 速記をとめて下さい。    〔速記中止
  7. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 速記を始めて。
  8. 高田なほ子

    高田なほ子君 二、三点お伺いいたします。ただいまのお話によりますと、原子核研究の目ざすものは純粋研究であって、サイクロトロンとかあるいは宇宙線研究、そういうところに主力が置かれて、そうして原子力の方はこれはもう全く別ものだから原子核研究と切り離して考えなければならない、こういうようなお話でございました。私もそのお話についてはまことにごもっとものお話であると思うのですが、ただいまの状態ですと、濃縮ウランの受入れに伴って原子炉研究ということも今大きく浮んで来ているわけですが、共同研究という場合に、民間あるいは官営というような、そういうような方向も今現在出ているわけなんです。そうだといたしますと、学術会議並びに原子核研究を目ざしていく学者に対して原子力研究させるような方向に持って行かれるのではないか、つまり当初お考えになっていらっしゃることと、事志が違って来るのじゃないか、こういうことについて非常に心配を持っている一人ですが、この点について博士の御所見を伺いたいと思います。
  9. 朝永振一郎

    参考人朝永振一郎君) 私は原子力のこの研究がどういうふうにこれから進みますか、私のみならずいろいろまあ議論があるのですけれども、この原子核研究所はやはりあくまで純粋研究目標にして進みたいと思っておりますし、この両方二またかけるようなことがあってはどちらも目的を達しないと思うのでございます。この装置も全く違いますし、このシンクロサイクロトロンさらに将来もっと大きいものを作りますとすれば、これは片手間でやれることではないのでございます。非常にこの力をそこへ集中しなければならんのですが、私どもとしましてはあくまでこの研究所はそこに力を集中してやるべきだと思っておりますし、またやるつもりでみないるわけでございます。
  10. 高田なほ子

    高田なほ子君 その次お尋ねしたいことは、大体今年度の予算学者の方からごらんになれば非常に御不満のような予算であると思います。三年計画くらいでだんだんと二千万ボルト、五千万ボルトシンクロサイクロトロンを建設していくのだというような意向も伺っておるわけですけれども、一体五千万ボルトシンクロサイクロトロンを作る、こういうことになって参りますと、大体予算というものはどのくらい、一体現在の予算に比べてどのくらいふやしていかなければ完全に研究はできないものでしょうか。
  11. 朝永振一郎

    参考人朝永振一郎君) この予算その他装置に関連することは、私よりも菊池先生にお答え願った方がいいと思うのです。
  12. 高田なほ子

    高田なほ子君 それでは後刻その点については菊池先生からお話があると思いますから、その次、二、三点お伺いしたいことは、ちょっとポイントをはずれるかもしれませんが、原子炉は平和的にも使えるし、それから今度原子爆弾のプラトニウムを製造することもできる、転換することもできるということで、原子力研究というと必ずやはり原子爆弾の方に研究が進んでいくように私ども考えるわけなんです。そうなって参りますと、もし国の力で、こういうことはないかもしれませんが、国の力でせっかく共同研究しようというものが原子力研究の方に持っていかれた場合に、どういうふうにしてこれをやはり学者側は阻止していくのか、相当の肚がまえというものは必要のように思うのです。大へんどうも突っ込んだ質問のようで失礼ですけれども、この点についてはどのようにお考えでございますか。
  13. 朝永振一郎

    参考人朝永振一郎君) 原子核研究所がそういう研究に転換されるということにつきましては、先ほど来申しましたように、私どもは、この研究所関係のあります者は、もしそういうことが万一あるとすれば、あくまでもそういう動きに対しては抵抗するというつもりでおります。しかしそういう研究所というものは、学問の研究というものはそう簡単に外からの影響で曲げられるべきものではないという信念は私ども持っておるわけでありますけれども、やはり皆様方及び国民全体の支持をお願いしたいと思っているのでございます。
  14. 高田なほ子

    高田なほ子君 アメリカ原子力マーシャルプラン一環として、やはり濃縮ウランを送るということがはっきり予備協定まで結ぶ段階にいたっておりますが、先般新聞で承知いたしましたが、このウランの受け入れに関してアメリカは問題が非常に技術的にわたるものだから、アメリカに来る人はやはり学者に来てもらわなければならんというので、アメリカ側から学者名前を指名してきたように私は承知しておるのです。そうだとすると、アメリカマーシャルプラン一環として純粋研究をする学者御用学者になってしまうというようなことも私どもには考えられる、そうだとすると、せっかく学術会議があるいは原子核研究所の設立の根本目的からはずれた方向に行ってしまうのではないかと思いますが、こうした場合に、アメリカから指名をして要請したという、そのアメリカ側の意図というものは学者としてどういうふうにおつかみになっていらっしゃるのですか。
  15. 朝永振一郎

    参考人朝永振一郎君) 私どもこの原子核研究所を作りますときにいろいろ考えました点の一つの中に、研究所の使命と申しますか、目的あるいは方針というようなものが外から影響されるようであっては非常に困ると、そういうことで非常に考えました。それで国立にするのがいいか、大学付置にするのがいいかというときにも、やはりその点を考えまして、大学というのはやはり何といいましても今までの伝統を持っておりまして、自治権相当強く持っております。それで今の国立となりますとそういう伝統がない、裸にいるような状態でありますので、大学付置にすることによってそういう点を守ろう、そういうふうに考えたわけであります。で、今お話しになりましたようないろいろな問題も、学者としてできるだけの考慮をいたしまして、決して安易にこの研究所を作ったわけでなくて、十分にいろいろな点を考慮して作りました。これからもその線に沿ってやっていきたい、またやっていくべきだというふうにみんな考えております。
  16. 高田なほ子

    高田なほ子君 もう一つだけ聞かして下さい。現在の日本では高いエネルギーサイクロトロンがないというお話を今なされました。そういたしますと、やはり原子核研究に対しては、宇宙線研究というものについても相当費用をとらなければならないのじゃないかということになりますが、現在研究しておる宇宙線研究費というものは、学者側から見ると、どういうふうにごらんになっておるのか、それについてどういう御希望なり御所見を持っていらっしゃるのか、それをお伺いしておきたいと思います。
  17. 朝永振一郎

    参考人朝永振一郎君) もちろん学者側から見ますれば、研究費が十分であるとは決して申し上げられないのでございます。たとえば宇宙線研究にいたしましても、乗鞍のああいう共同研究所が作られましたので、いろいろ方々の学者がそこに来て研究あるいは観測をやっているのでありますけれども、その旅費等につきまして非常に不自由しております。
  18. 吉田萬次

    吉田萬次君 私は専門的の知識がありませんから、常識的にお承わりしたいことは、先ほど朝永さんがおっしゃった、共同研究所であるというようなお話でございました。学生の人のようなものなら共同研究所利用というようなことも考えられますけれども、少くとも専門知識を持った人が専攻しようとするのに、どこかの大学付属である。付属はけっこうでありますけれども、真に研究しようとする人は、共同研究所研究できるかどうかということを私は疑うのです。そこで三島の遺伝学研究所を見て参りましても、所長は将来この研究所から必ず二人や三人のノーベルの賞金を得るところの学者を出してみせるということを明言せられたくらいであります。中におる研究しておる方は、教授以上といっては失礼かもしれませんが、それだけの能力を持ち、専門的な人がそこで自己のためにというほどの真摯な研究をしておられます。私は実に生活様式からすべての方面を勘案して、学者というものの立場というものに御同情申し上げ、その研究に対する態度に対して敬服したわけなのであります。かような点から考えました場合において、特に研究所というような、共同便所式のものでほんとうの研究ができるでしょうか。特に先ほど朝永さんのおっしゃったところによりますと、人件費そのものにも事を欠くというようなことでありましたならば、ただ単に日本にもこういう研究所があるという世界的の面子といいますか、さようなことにこだわってやったくらいにまで考えなければならぬような状態だと思います。もちろん相当費用はかかるでありましょうが、この費用というものに対する問題は、われわれがまたしかるべく努力さしていただくこともできましょう。しかしながら真摯な研究というものがさような方式でできるものでしょうか。まあ第一着手としてお考えになってのことならば、その点もとよりやむを得ないかもしれません。将来に対する研究の態度というものについてお承わりしたいのです。
  19. 朝永振一郎

    参考人朝永振一郎君) 共同研究ということについて、そういうやり方では、ほんとうの深い研究はできないのではないかという御趣旨だったと思うのでございますが、私は必ずしもそうは思いませんのです。と申しますのは、一つはもちろんこういう研究所が東京にも京都にも大阪にもあるという状態になったら非常にけっこうだと思いますけれども、それにしてもやはり共同的な空気は非常に必要だと思うのであります。と申しますのは、学問、特に物理学はそうなのでございますけれども、一人の天才に依存するということももちろんございましょうけれども、たくさんの有能な、無能な人では幾ら集まってもしようがないですが、有能な熱心な研究者がいつでも自分の研究上の結果とか、あるいはそのアイデアを交換し合い、そういうことで非常にこの物理学の最近の進歩は著しくなっておるのでございます。現に日本実験がほとんど行われないにもかかわらず、理論的研究が盛んになり得たというのも、やはり外国との間にその意味の共同的な研究が、つまり知識の交換、アイデアの交換というようなことがあったからなのであります。そういう意味で、共同研究というのは、必ずしもそういう大きな研究所を方々に作ることができないから、仕方がないという意味のものだけでなくて、互いにコミュニケーションによってどんどん進めていくということが昔の、少し前あたりの学問の研究のあり方と違いまして、最近の特徴なのでございます。たとえば物理学で申しますと、ニュートンという偉い人が一人であらゆることをやってしまったわけです。あの大きなニュートン力学の体系というものを一人で作り上げた。しかし現在ではそういうことはあり得ない状態でございます。共同研究所というものを考えておりますのは、決して日本が貧乏だというだけでなく、ほかの国でもやはりそういう種類研究所がございます。現にヨーロッパにおきましてはヨーロッパ全体の、これはユネスコが管理しておるのでございますけれども、ヨーロッパの外国の学者共同に使う研究所、これはやはり原子核研究所でございます。この研究所は規模はこれより雄大でございますけれども、これと同じ趣旨で大きな装置を作って、そしてヨーロッパのいろいろな国の学者がそこへ出向いていって、それぞれ研究する。そこで共同的にそこで討議したり、意見の交換をしたりすることによってどんどん進めていこう、そういうのが現にヨーロッパで今作られております。でありますから、共同に使うということは必ずしもやむを得ない措置というのではなくて、やはりこのごろの学問の傾向からしまして、そういういき方でやることは、積極的に学問を進める上にやはり一つの必要なことでもあると、私は考えております。
  20. 吉田萬次

    吉田萬次君 日本の国が理論物理学が非常に発達しても、これに伴うところの実験ということができないということがすこぶる遺憾だとせられております。そこで理論的の問題は共同でも、あるいは簡単にでもできるでありましょうけれども、しかしだから少くとも自己の研究しようということに対する機械なり、器具なり、材料なりというものに対し、一定の期間、自己が専用しなければならぬというようなことが起きてきやしないかということを考えます。その場合において機械を専有するというわけではありませんけれども利用する場合において、自分の使いかけておったのを人が使うということになったら、実験研究というものに対して相当支障を来たすということが起きてきはしないかということが考えられまする関係上、かような面についてたくさんの人の研究もけっこうである、後進の途を開くということから考えても、あるいは共同研究する、こういう方面から勘案いたしましても、なるほどおっしゃる通りでございましょうけれども、しかしながら確立した一つのものをでき上がらせようとすることの研究に対して、果してそれでいいのでしょうか、どうでしょうか。
  21. 朝永振一郎

    参考人朝永振一郎君) この共同と申しましたけれども、何から何まで共有、機械を共有する、そうして一人の人がやっておったものを途中でほかの人に貸さなければならないということではございません。私どもこの加速装置と申しますか、非常に速度の大きな弾丸を作るというその装置は一箇作りまして、そこから出てくる弾丸をどう使うということはいろいろな研究者が自分で考えまして、自分の創意を傾けて、そうしてどういうふうに使うかという、その実際に使う実験装置でございます。これがおのおのの学者がそれぞれ自分で使ってやるわけであります。いわば原料を供給する一つ加速装置共同に使いまして、その原料をどういう実験に使うがいいかということは、もちろん意見の交換はありましょうけれども、個人の創意を傾けて、そうしてその研究者実験炉の装置考えてそこでやる、そういうわけでございます。ですから、何か共同と申しますと、一体誰が研究したか正体がわからないようなものになるのではないかという御心配はあるかもしれないが、決してそうではありません。
  22. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 私も知識がないので大ざっぱに伺いますが、お答えも簡単に大ざっぱでけっこうでございますが、なお、菊池教授と御一緒だったとよかったのですが、時間の都合でこうなっておりますが、後刻菊池教授が意見を述べられる際に私たちの質問の事項に関連して述べていただければ非常にありがたいのでありますが、朝永教授に伺いますが、まことに失礼ですが、まず身分を伺いますが、この原子核研究所ができた場合に菊池教授所長になられるように伺っておりますが、朝永教授はこの研究所の設立の計画に参画されておられるのか、菊池教授との横の連絡を伺っておきたいと思います。
  23. 朝永振一郎

    参考人朝永振一郎君) 私は学術会議の方の原子核特別委員会委員長という役をしております。この研究所の設立に対して、研究者の方のいろいろな考えをそこでまとめる役をしておりましたから、そういういきさつで今東京大学の方に原子核研究所の設立準備委員会というのができております。この研究所の管理は東大に頼む、東大に付置するということになりましたので、東大の中にそれができたのでありますが、その設立準備委員会の委員の一人に入っております。
  24. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 今国会に出ている法案の中にも含まれるわけでございますが、近く設立されるという原子核研究所の構想、内容、それについては、あなたさま個人としては大体意にかなった方向にいかれているのでございましょうか。それとも今の計画中、あの面はどうも理解しがたいという面がございましたら、重点的でよろしゅうございますから、お伺いいたしたいと思います。
  25. 朝永振一郎

    参考人朝永振一郎君) この原子核研究所は、実はまだこれから本式にできて来るわけでございまして、意に沿ったものができているかどうかという御質問には、まだ少し何ともお答えするほどの段階に至っていないと思いますのですが、私の見ますところでは、これからわれわれ及び菊池先生中心にされる方々との話合いで、この所期の目的を達するようにいけるものと思っております。で、現在のところ、重大な支障というものはむしろ予算の面、それが一番重大な支障になっております。
  26. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 先ほどあなたさまの御発言でも承わりましたし、またちょっ上新聞雑誌で見るのでありますけれども、せっかく権威あるお方にお二人おいでいただきましたので、あらためて伺いたいと思いますが、実験を伴わないところの研究というものは、言葉が適当でないかもしれないが、今の日本のレベルというものは世界的に冠たるものだ、ただ実験を伴う応用的研究施設というものが不十分なために世界のレベルにおくれているということをよく聞くのでありますが、これは国内的の発言でなくて、大所高所から、世界的の視野から見た場合に、たしかにそういうレベルに日本研究というものが進んでいるのでございましょうか、念のために承わりたいと思います。
  27. 朝永振一郎

    参考人朝永振一郎君) そういうレベルと申しますと、理論の方が進んでいるかということですか。
  28. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 ええ。
  29. 朝永振一郎

    参考人朝永振一郎君) これはもちろん日本が一番進んでいるというようなことは……、どこの国がどこより進んでいるというようなことは、そう簡単に割り切って答えのできるものじゃないと思います。各国それぞれ特徴を持っております。ですけれども日本のこれらの研究の水準が決して外国から見て問題にならないというものじゃない、むしろ非常に期待されておりますし、それから外国で名前の知れたり、あるいはその仕事が向うに影響を与えているというような、そういう学者が非常にたくさんおる、そういう点で非常に評価されているわけであります。  それから先ほど実験が伴わないというお話で、その応用を伴わないとおっしゃいましたけれども、この原子核研究所でやります実験というものは、これは応用とは別なんでございまして、実験と申しますのは必ずしも応用と結びついたものではないのです。
  30. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 そこで伺いますが、先ほどのお言葉にも原子核研究についてのヨーロッパには各国の共同研究の施設すらある、ということを承わりました。で、私は知識がないから伺うわけですが、原子核研究というのは、理論的なものであって、これを推し進めていくというと、やはりこの応用という面の原子力研究へと進展していく、そこで原子核研究の範囲内に関する限りは国際的のベールがかかっていず、すべて各国に公開的にやられている。これが応用などの場合、原子力研究の段階になれば国際的にべールがかかっていく、かようなものじゃないかというようにとった、わけですが、この点と、それから国際的水準という立場からですが、承わりますると、先進島国の各大学は理論物理学科のほかに、一流の大学というものはたいてい原子核研究所を持っている、さらに国立の大規模の研究所もあるというようなことを承わるわけですが、日本の現在の水準ですね、現在の国際的な水準というものはどの程度で、またどのくらい、やっていけば一応国際的な先進国の水準にたどり着けるものか、その大ざっぱな点と、それから日本学者の眼から見た世界各国の原子核研究、さらにこの応用の発展した原子力研究ですね、これはあなた方学者の眼から見た場合に、これがそれらの国の軍需産業、国防と結びついて平和的利用というものよりは別の方向に、非常にやはり国家権力によってこれが制約され、利用されつつあるというような、まあ日本の純然たる学者として、そういう眼で見ておられるかどうか。また日本にこれから原子核研究所を設けられ、ついては原子力研究機関とかあるいは大学原子工学科というようなものがだんだんできるようになっていくのじゃないかと思うのですが、そういう場合の、日本学者として今からどういう心がけで進んでいかなければならないかという点について、ごく大まかでよろしゅうございますからお話願いたいと思います。
  31. 朝永振一郎

    参考人朝永振一郎君) 御質問は幾つかあったのでございますが、一とう初めの原子核研究がだんだんに進んでいって、原子力の方へいくというようなお話がございましたけれども、現在の原子力というのと今原子核研究所でねらっております原子核研究というものとは質的に違うのでございます。実は原子核物理がこの約二十年くらい前に一つの段階がございまして、それ以前は先ほど申しました原子核というのは陽子中性子からできていると、そういう考えで話が済んだわけなのであります。ところがその以後になりまして中間子、それからいろいろな問題が出て参りまして、原子核というのは決してそんな簡単なものじゃない、もっと複雑なものだということがだんだんわかって来ましたので、今の物理学はそちらの方をねらっているわけでございます。原子力の方はその二十年前ごろの簡単な考え方の上に生れて来た発明なのでございます。今原子核研究者たち目標にしておりますのはそこからさらに先に進んだことを目標にしておりますので、原子核研究所も在来のねらいはそこにあるのです。これはいつも説明するときに非常に困難を感じるのですけれども、簡単なたとえで申しますと、昔電気、発電、まあ発電機の原理が発見されまして、ああいうぐるぐると磁石の間で針金を巻いたものを廻すと電気が起るという原理が発明されまして、そうしますとそれを実用に供しようという、そういう目的でいろいろな電力に関係する学問が進んで参ったわけであります。水力発電とかあるいは火力発電とかいうようなものと結びつきまして、電気の学問だけでなく、非常にいろいろなそれと関連しまして、電力を応用するという目的で発電の方の学問が発達して来たわけでございます。しかし電気についての学問はそこで決してとまったわけではなくて、さらに電波が発見されますし、それから真空管の原理が発見されますし、電気の本体については今日でもまだ本体はわかっていないわけであります。電子というものが電気のもとだということはわかっておりますけれども、それがどういう法則になっておるかということはまだわからぬ点がいまだにあるわけであります。そういうわけで、どんどんと発電を踏み越えて電気に関する学問は進んできたわけであります。それからまた新らしく無線電信とかラジオとかいう応用が生れておるわけであります。原子力についても全く同様だと私は思うのであります。現在の原子力の基礎になっております原理は、もはや物理学では過ぎた問題で、われわれは今その未来、これからの問題をここで研究しよう、そういうものなんであります。ですから、これからの問題が原子力の問題に何か新しいプラスになるか、あるいはならないか、わからないわけであります。それから今度ほかの違った方面に応用が開けてくるかもしれない、これは電気の上で申しましても、電力という観点からいえば今の発電機の原理からあとで発見されましたいろいろな現象は、何もプラスになっていないわけでございますけれども、全然方面の違った応用が生れてきておるわけであります。そういう関係だと私は思います。  それからその次の質問はどれくらい……。
  32. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 国際的水準との関係
  33. 朝永振一郎

    参考人朝永振一郎君) 国際的水準と比べてどうか、この原子核研究所のねらっておりますようなこういう純粋研究、何千万ボルト、あるいは何億ボルトというようなのは、大体、米、英、ソ連ももちろんだと思いますが、それからヨーロッパ各国にほとんどどこの国にもあるものでございす。ただもう、一けたあるいは二けた上りますと、これはヨーロッパでもやはり一つの国では作れないので、共同研究所がスイスにできる、そこに今作りかけておる、そういう状態でございます。
  34. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 朝永参考人に、対する御質疑はほかにございませんでしょうか。なければ時間の関係上、朝永参考人に対する質疑はこの程度にとどめたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  35. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 御異議ないと存じます。それではさよう決定いたします。   ―――――――――――――
  36. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 本日の会議を開きます。冒頭において御披露申し上げました菊地参考人が見えておりますので、菊池参考人から、まず原子核研究所設置の経過、研究所目的研究内容その他について御説明願うことといたします。菊池参考人
  37. 菊池正士

    参考人菊池正士君) 原子核研究所が話が出ましたのは今から大分前の、四、五年前のことであったと記憶しております。終戦、後は非常に日本状態がみじめでありまして、それに反して原子核研究に要する施設は相当の経費を要するということ、それからまた原子核研究そのものが外国では戦争中非常に進み、それからその後も非常に進んで、懸隔が一日々々とひどくなるということから非常に心配いたしまして、それで何とかして日本でも、戦争前は日本原子核実験的研究相当の段階まで進んでおりまして、終戦当時もサイクロトロンは二台動いておりました。しかしそれも終戦と同時に破壊されましてだめになりました。しかし終戦前の設備に比べまして終戦後の設備はずっと進歩しておりまして、それだけまた経費もかさんできたものになってきております。それで四、五年前に各大学がこれを持つことは到底不可能だから、せめてできるだけ立派なものを集中的にそこに経費を集めて、できるだけ立派なものを作って、そして研究者がこれを使って、全国的にこれを生かすことを考えてやるような研究所を作ったらどうだろうか、ということが話の起りであります。それで学術会議から要望書が出まして、それが文部省へ参りまして、今日のような形で原子核研究所ができることになったのであります。それでその目的としますところは純粋な学問の研究ということを建前としております。つまり大昔から自然科学というものは、物質というものはどういうものであるかということを研究して参っております。そしてそれが現在の段階でだんだんと追いつめていって原子核のところまできている、さらにこれを原子核より、もっと先のところまで進んできておる、われわれはそれからいろいろな段階でいろいろな種類の応用が出て参っております。原子力の問題も、要するにその応用の一つでありますが、われわれとしてはそういう応用の問題にいくのではなしに、人類が始まって以来自然探求という目的において、そういう目的でやってきた仕事をどんどん盛んに続けて、物質というものは何であるかということを研究していこう、そういう意味で純粋の学問的な研究をすることを標榜しております。大体そういうところであります。
  38. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 研究所目的、内容は。
  39. 菊池正士

    参考人菊池正士君) 研究所目的純粋な学問的な研究目的とするのでありまして、その内容はまずサイクロトロンを作る。シンクロトロン。シンクロトロン、サイクロトロンともに学術用語になりますが、シンクロトロンもサイクロトロンも両用に、どちらにでも使えるような方式を考えまして、その両用に使うことを考えております。そしてそれによりまして非常にエネルギーが高い陽子を打ち出しまして、その陽子をいろいろな陽子によって起こるいろいろな原子核に対する反応を研究して参ります。それからそのときに生ずる中性子研究であるとか、あるいは放射性同位原素の研究であるとか、それから同位体分子の研究であるとか、そういったようなことを具体的には考えております。それからにさらに現在のわれわれのやっております原子核の方は、エネルギーが約一千万、数千万ボルトまで参りますが、原子核研究にはそれでいいが、今言いましたように、その物質現象に関しいろいろな研究はそれよりさらに進んでおりまして、原子核よりさらに先の電子の領域にあります。これは宇宙線みたいなものはわかっておりますが、宇宙線みたいなものを人工的に作り出していこうという超高エネルギー原子加速装置という研究がありますが、これは非常に実際に加速装置を作ろうとしますと非常な金を要することになります。現在われわれの計画しておりますのは、超高エネルギー加速装置を作るよりも、むしろそういうものを作る基礎となるいろいろの技術自体の研究を、準備段階としてこの研究所でやってゆく、そしてシンクロトロン、サイクロトロン等によって十分原子核研究の領域は実績をあげ、その上でさらに超高エネルギー加速装置の建設に進みたい、そう思っております。ただその超高エネルギー加速装置は現在出ております予算の中には入っておりません。これは第二期の計画としてわれわれ考えております。大体そういうことです。
  40. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 菊池参考人に対する質疑の御希望の方は順次発言の御要求をねがいます。
  41. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 伺いますが、菊池教授は、原子核研究所の設立第一年度の昭和二十九年から進めらた事柄については、すっと関与されて参ったわけですか。
  42. 菊池正士

    参考人菊池正士君) 立案の主だった一人に当っております。
  43. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 私は先ほどから両教授お話を承わって、ずいぶんと大切なもので、将来日本の動向を決定することに至大な影響のある問題だと思っているわけですが、ところがこの計画を見ますというと、昨年度は定員をゼロにして、定員はなくして、資料を見ますと、一億千五百八万円の予算を取り扱っておられるのですね、従って中心的な人物としてあなたがこれに参画されたということになると、私は本務である大阪大学教授としてのお勤めに非常に支障を来たしたのではないかと思いますが、その点は昭和三十年度の予算とも関連して参りますので、率直なあなたの御所見を承わりたいと思います。
  44. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 委員長からちょっと申し上げますが。今の御質疑の内容に関して、文部当局から説明を求めたいと思いますが、そののちに菊池参考人から返答をいただいた方が内容の理解についてよいと思いますので、さよう計らいたいと思いますが、いかがですか。
  45. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 菊池さんそれで結構ですか。
  46. 菊池正士

    参考人菊池正士君) 結構です。
  47. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) ただいま矢嶋委員からお話のありました一昨年度の原子核研究に関する費用は、これは国立文教施設費のうちにございました、つまり建築費でございます。従ってこの予算実施、その他は文部省管理局において責任実施いたしたのであります。東大に原子核研究所創設準備委員会というものがございまして、これらが、何といいますか、法上の性格は持っておりませんが、原子核研究ということについて計画を進める場合、いろいろ学者がより集って御研究になっておられるのです。そういう委員会のうちに、菊池先生なり朝永先生にお加わりいただきました。これが昨年の状況でございます。
  48. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 菊池教授の答弁を求める前に、政府委員から、みずから進んでそういう発言があったから、あえて伺いますが、一体新しい仕事を始めるという場合に、定員ゼロで予算を組んで仕事を始めるという例がありましょうか、こういうゆき方をどうお考えになっておりますか。
  49. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) 定員と申しますのは、施設、設備を使って仕事ができるときに入れますのが普通だと考えております。国費をむだなく使う意味においては、建築が進行中である、設備が動かない状態におきましては、そこに機関としての定員を入れるべき筋でないと考えまして、こういう計画をいたしたのであります。
  50. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 政府委員との質疑は、今本筋ではないからのちにやります。私は納得いたしかねますが、いずれにしても本務と何らかの関係があると思うのです。でこれだけのこの世紀的な計画を立てられ、これをスタートするに当っては、私は精神的に時間的に相当の私は犠牲を払われるのじゃないかと、こう思いましたが故に先ほど伺ったわけですが、菊池教授から三十年度の、今後のことにも関連いたしますので大学学術局長の意見は意見として菊池教授の御見解を賜わっておきたい。
  51. 笹森順造

    委員長笹森順造君) ただいまの御質疑に対して菊池参考人
  52. 菊池正士

    参考人菊池正士君) 二十九年度の定員を、それは定員をいただけたら……。
  53. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 ということは、私の伺いたい点は、昭和二十九年度においてあなたの大阪大学教授という本務とそれからこちらに関与されたことによって非常に負担が過重になり、本務に影響はなかったかということを伺っているのです。
  54. 菊池正士

    参考人菊池正士君) 本務に、まあ私の考えでは本務に支障はなかったと思いますけれども、負担はずいぶん重かったと思います。
  55. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 そのくらいにして、次に今何ですか、この日本大学においてのこの原子核研究を、研究と申しますか、勉強と申しますか、やっているのは各大学の理論物理学科ですか。それはですね、もし菊池教授で不十分だったら大学学術局長から私承わりたいと思いますが、全国にこの研究をしている関係者というものはどのくらいおられるのか、それを承わりたい。
  56. 菊池正士

    参考人菊池正士君) 今理論物理学科とおっしいましたけれども、理学部の物理学科には論物理実験物理と大体二つありますが、こういった原子核実験的な研究をやっておるのは実験物理学の方でてございます。応用ではございません。原理的な実験を、つまり理論の実証をしていく実験をやる実験物理学
  57. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 どのくらい全国であるのですか。
  58. 菊池正士

    参考人菊池正士君) それは、全国でこれは大学を出たもの百五十人くらいに私は伺っております。
  59. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 何人でございますか。
  60. 菊池正士

    参考人菊池正士君) 全国で百五十人くらい。
  61. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 百五十人。
  62. 菊池正士

    参考人菊池正士君) これはごく大ざっぱな数字でございます。
  63. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 学生数は幾らですか。
  64. 菊池正士

    参考人菊池正士君) 大学学生数でございますか。
  65. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 ええ。
  66. 菊池正士

    参考人菊池正士君) 原子核専攻でございますか。原子核専攻は最近の制度ではそういう専攻に入るのは大学院に入ってからでございます。
  67. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 現在どのくらいございますか。
  68. 菊池正士

    参考人菊池正士君) 大学院で、大学原子核を専攻しておりますものを全部集めますと、新制度の大学院の学生としてはそうでございますね、はっきりした数字は私責任を持って申し上げられませんが、私の大体の記憶で申しますと、四、五十名程度ではないかと思います。これは非常にばく然としております。
  69. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 この国立でなくて大学付置研究所の形態をとられたのですが、東京大学を選ばれたのはどういう根拠で選ばれ、またどういう機関で東京大学に設けることを決定されたのでございますか。
  70. 菊池正士

    参考人菊池正士君) これは学術会議の方からそういうことを政府に言って、政府から文部省に回りましたときに、文部省の中にあります国立大学附属研究所審議会と申しますか、何かそういうものがございまして、そこでいろいろ御相談になって、もちろん私も委員として出ておりましたが、東京大学ときまりましたのですが、その理由でございますか東京大学の……。
  71. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 ええ。
  72. 菊池正士

    参考人菊池正士君) それはいろいろあると思いますけれども……。
  73. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 ということは、いろいろある理由の中の一つでも結構ですが、何ですか、東京大学関係者にこの方面の研究スタッフがそろっておるとか、何かそういうことなんでございますか。
  74. 菊池正士

    参考人菊池正士君) 研究として特に東京大学がこの実験の方通で進んでおるからというわけではございません。
  75. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 どういう理由なんですか。
  76. 菊池正士

    参考人菊池正士君) やはりああいう大きいものをやるについて最も適当だということだろうと思います。われわれとしては別にどこの大学でなければならんということは何も希望はありません。
  77. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 この学術会議の申し入れというのは、その国の関係考えられたのでしょう。共同使用ができるようにというところに主力を置いて意見具申をされておるようですね。そこで共同研究施設という場合に国立という場合を、それから大学付置という場合とが出ると思うのです。大学付置となればどの大学付置されたら一番いいかということが堀り下げられていくと思うのです。結論として東京大学云々ということになったということですが、国立がよろしいか、東京大学付置がいいかというようなことは、あなたも関与されておるそうですが、その委員会では相当に議論されたのか、議論されたとすれば大きな主だった議論はどういう議論があったのか。それと関連しますが、この段階では東京大学付置研究所とするか、近き将来に国立研究所をさらに設置する関西なりあるいはどっかに設置するというような、そういうお考えでおられるのか、その辺のところをお聞かせ願いたいと思います。
  78. 菊池正士

    参考人菊池正士君) 国立にするか大学付置にするかということについて私覚えておりますのは、一つには実際からいって現在国立になっておる研究所というものはどうも運営があまりうまくいかない。恐らく事務力の不足といいますか、どういうことかよくわかりませんけれども、運営がやりにくいという話を伺いました。それから大学付置になっておりますと、大学院の学生その他が入って参りまして、学生の教育に非常にいい、従ってこの方面の人を養うには大学付置がいい、そういったような議論がいろいろございました。それで将来さらに国立のものをここに建てるかどうかというようなことは今全然考えておりません。
  79. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それでは東大に附設するこの研究所を年次計画で充実してこれを共通利用施設としてやっていくと、かように受け取れるわけですが、もしそうだとすれば北海道から九州まで大学があるわけですが、各大学大学院の学生にも何らか期間を切るか、いろいろ具体的な方法がありましょうが、研究にこの施設を提供するようになることと思いますが、これと、さらにそうなった場合に、やはり東大の自主性ですね、大学の自治ですね、これとの関連はうまくいくかどうか、私はこういう名目でできても、いざとなると私は東大の発言権が非常に強くなって来て、そして東大の理学部を拡充し、新設し、ともかく原子核の勉強をするに当っては東大に入らぬことにはどうにもならぬというような事態が私は起ってきやしないかという点を懸念するわけですが、その点はいかがでございましょうか。
  80. 菊池正士

    参考人菊池正士君) その点は、つまりこれを所期の目的通りに全国でもって学者に使っていただくということ、これは今までに例のないことでございまして、今のような御心配が全然ないとは申せないと思います。それについては、われわれできる限り、たとえば運営の面でも研究所教授会のほかに各大学の方に入っていただいて協議会というものを作りまして、その協議会というものに相当まあその規則上協議会が自主的になるわけにはいきませんけれども、慣習上、所長としては協議会に重大な問題は諮問してやっていくという慣習を早くつけたい、そういうようなことで今のような御心配はできるだけなくしたいと考えております。
  81. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 これとも関連して参りますが、日本大学全般に関する問題ですが、たとえば日本大学のどこどこに航空学科を置くとか、あるいは原子核研究をする学部、学科を設けるとか、そういう各大学の、何も物理学関係しないのですが、各学科の配分で、すね、こういうものを組織的に基礎的にきめる機関というものは今の日本に私はないのじゃないかと思うのですね。何がありましたら局長からも承わりたいと思いますが、何かその大学でこの学科をさらに作りたいという希望があり、機関できめてくると、そうすると文部省と話し合って、大蔵省と話し合ってやるというわけであって、国家的な立場から日本の国の産業構造、あるいは人口密度、そういうものを総合的に勘案して、これはあなたが関与しておる原子核研究のひなを養う物理学なら物理学、そういうものをどういうふうに大体配置して、予算をいかように分配したらいいだろうという、こういう私は大学教授中心とした、それが私は能率が上ると思うのですが、それを中心としたそういう種類委員会というものは私は大学の一般論として必要じゃないか、こういうように考えておるのですが、そういう点はどうお考えでおられますか、菊池教授の御所見を承わりたいと思います。
  82. 菊池正士

    参考人菊池正士君) 私もぜひそういう機関がほしいと思います。しかし現在ある程度もちろん文部省で各大学から出た要求を、ただうのみにされるだけでなしに、ある程度は学界にいろいろそれを諮問されて、そうしてそういうことをやっておられると思うのですけれども、しかしそういうことについて今日何か強力な機関ができれば大変結構だと思います。ただ大学研究者がそれの中心になっておられますと、あまり自分のところに関係が深過ぎて、果して公正なことができるかどうか心配でありますけれども、適当なそういう委員会はぜひほしいように思います。
  83. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 今度この付置研究所所長に予定されているやに承わるのでありますが、文部省関係大学付置研究所並びに国立研究所ですね、これと、たとえば通産省、建設省所管の国立研究所とを比較した場合に、私は多くを見ていないわけなんですが、ちょっと見たころの私の印象では随分と条件が違う、文部省関係とは。予算の貧弱さからくるのか、あるいは建設省、農林省、通産省あたりになれば他団体から、国庫以外に何らかの私的援助があるのかなと思うくらいに、同じ国の研究機関でありながら非常に私は条件が違うような感じを受けておるわけですが、学者としてそういう感じを受けておられますかどうか、その辺のことを承わりたいと思います。
  84. 菊池正士

    参考人菊池正士君) つまり通産省、ああいったところの研究所と比較して大学のことでございますね。
  85. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 ええ。
  86. 菊池正士

    参考人菊池正士君) それはそういう研究費の面なんかで非常にそういう感じがいたします。
  87. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 どういうわけであんなに差があるんでしょうかね、部屋の装備の状況から見ましても、それから勤務条件からしても、非常に私は文部省関係研究機関たくさんありますけれども劣悪条件だと思うのですが、どういうわけでああいうふうになっておるようにあなた方は見られておりますか。
  88. 菊池正士

    参考人菊池正士君) 皆さんが文部省予算を下さらないからだと思います。(笑声)
  89. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 少し横途にいったようですから……。伺いますが、先ほど私は朝永教授にちょっと伺ったんですが、原子核研究というのは国際的に見た場合に全くベールがかかっていないと、 こういうふうに見ておりますか。
  90. 菊池正士

    参考人菊池正士君) 原子核はかかっておりません。
  91. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 すると、原子力研究になると、これは各国の間に大きな壁があるわけですね。
  92. 菊池正士

    参考人菊池正士君) はあ、いろいろな秘密の部分が出て参ります。
  93. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 その秘密の部分はどういう国家的な要請から出ておるとお考えになられますか。
  94. 菊池正士

    参考人菊池正士君) 現在ではもちろん兵器の関係でございます。
  95. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それでは今の国際情勢下においては、原子核原子力関係をさっき承わったわけですが、原子力研究に関する限りはその国の国防と密接不可分の関係で各国の学者研究を進めておる、かように了承していいわけですね。
  96. 菊池正士

    参考人菊池正士君) 原子力でございますね。そう思います。各国ともに最近では原子力の人と、それから原子核研究者と、どんどん分業が進んで参りまして、現在では原子力研究科、原子核研究者というものはかなり離れた、ちょうど理学部的存在と工学部的な存在と分れております。
  97. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 近く濃縮ウランの受け入れ協定がきまって、日本もその方面が始まるようですが、今度できるこの原子核研究所とそれらとは、やはり何らかの横の連絡はとられるようになってくるんでしょうね。いかがでしょうか。全く無関係じゃないと思いますがね。
  98. 菊池正士

    参考人菊池正士君) まあ関係のある面といえば測定装置の面でかなりあると思います。一方で使われる測定装置が他方でも使われる、いろいろな、かような面で関連がございます。
  99. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 こういうことが予想されませんか。原子力研究を進めていくに当って、原子核研究所にこういうところにおいて壁にぶつかっているんだが、君のところでこれを解明してもらえたいかというような、そういうような形の私は横の連絡というものが生まれてきそうな感じがするのですが、どうですか。
  100. 菊池正士

    参考人菊池正士君) 現在、つまりそういう要請が原子力の方の研究の側から起りはしないかということでございますか、今おっしゃるのは。
  101. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 ええ。
  102. 菊池正士

    参考人菊池正士君) 現在、つまり原子力の方でどういう問題になってくるかということですが、その場合おそらくいろいろな問題が原子力を始めますと、その分野だけでは不可能で、どっかに援助を求めることが出て来ると思います。その一部が原子核のそういった研究にいくことが絶対ないとは申せません。しかしそれより以上に現在の原子力の問題で問題となって来るのは、たとえば材料の問題です。それから化学の問題であるとか、あるいは今度は本当の工学的な問題、材料の不純物の問題、それから温度、製造の問題、そういった問題のほうが原子力としては、はるかに必要な資料になってくると思います。原子核として必要になってくる資料は、ほとんど公表されているようなもので、そこいらにあまり秘密はないのです。むしろ技術的に組み立てていく面に、たとえば、材料を使う場合に、その中に含まれている不純物の純度がどのくらいだったらいいだろうか、あるいはそれだけに下げるには、どういう方法で精練したらいいだろうか、そういったところにいろいろと秘密もある、困難もある。原理的な面では、原子核研究は必要なんですけれども、その面ではほとんど秘密のない公開されたものばかりになっております。むしろ原子力の問題と横の学問的に、横に関連を持つとすれば、学問全般にわたると思います。その原子核本来の原子核に及んで来るパーセンテージというものは、決して大きなものではないと思います、全体からすると。ですから原子力日本でほんとうにやるようになって、原子核研究所にほんとうにそういうことがはっきりする段階になるとすれば、そういうことは学界全般に及んで来る問題だと思います。
  103. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 今年度の予算案に一部学界と業界の要望によってこつ然と二億五千万円化学、ケミストリーの研究費というのが予算案に盛られておりますね二億五千万円。この予算というものはやはり原子力研究のほうに関連があるわけで、あなたの原子核研究とは関連は全く皆無だ、こういうふうにとられると思うんですが、そうですね。
  104. 菊池正士

    参考人菊池正士君) 今の予算のことについては何も存じません。
  105. 吉田萬次

    吉田萬次君 ただいまのお話を承わっておりまして、また矢嶋委員のお説も承わりますると、この研究所が東大に属するというふうのことは、将来に対して東大の専有物になるというわけじゃありませんけれども、少くとも便宜上から考えましても、そういう方面に、そういう方向へ向きやすいというような私も気分がいたします。今日の原子に関する研究というものは、私は論文の提出、あるいは、研究人員の方面から考えますと、名古屋の大学相当坂田教授のもとに発達しておるようにも考えられます。かような点から考えますと、好学の士というものに対する点から、また研究しておる問題の点から考えましても、必ず一学校に専有ではありませんけれども、便宜になるような傾向から、そういうものが阻止せられるような傾向があるというふうなことは、私はすこぶる遺憾に思います。従って公立といわず私立といわず、すべての方面の研究者が、本当に研究のできるような方法において、また学問的の争いが起きて、そうしてその問題が紛叫するようなことのないように、あなたが所長になるというふうなことだったら、特にこの点御留意を下さって、将来の禍根のできぬように御出発願いたいと思います。
  106. 大谷瑩潤

    ○大谷瑩潤君 はなはだしろうとくさいお尋ねをしますが、私の友人でウラニウムを日本の中で十七年か八年前から掘り出している人がありまして、現在相当量の原石といいますか、原鉱といいますか、そういうものを持っておるのでありまして、仁科博士が御存命中においてその原料を相当使って御研究になったというようなことを聞いておるんです。今度できますこの研究所には、ウラニウムというようなものは必要ないんでございましょうか。
  107. 菊池正士

    参考人菊池正士君) 特に必要はないと思います。
  108. 大谷瑩潤

    ○大谷瑩潤君 そうすると、いわゆるペーパーの上での御研究のほうだけであって、材料とか機械とかいうようなものの必要はないのでございますか。
  109. 菊池正士

    参考人菊池正士君) いえ、それは非常に要ります。実験研究でございますから、いろいろな材料を使います。もちろんウラニウムも必要にはなると思います。ただ私の申しましたのは、特にウラニウムのほうが原子力のほうで非常に必要でございますが、そういったような意味で、特にウラニウムが必要であるというわけではない。元素の一つとしてウラニウムをいろいろ使って見る必要はもちろんございますから、そういう意味ではもちろん必要でございます。特に必要ございません。
  110. 大谷瑩潤

    ○大谷瑩潤君 そういういろいろの原料は、全部アメリカから輸入される御計画なんですか、そういう材料は。
  111. 菊池正士

    参考人菊池正士君) ちょっと御質問の意味がわかりませんが……。
  112. 大谷瑩潤

    ○大谷瑩潤君 そういう研究の資材ですね、材料というものは全部アメリカから輸入されるという御計画になっておるんですか。
  113. 菊池正士

    参考人菊池正士君) 大部分は国産でやります。ほとんど材料としてアメリカから買います、外国から少くとも買いますものは、非常にわずかでございます。
  114. 大谷瑩潤

    ○大谷瑩潤君 そうすると、その研究に問に合うだけの資材は国内にあるわけですか。
  115. 菊池正士

    参考人菊池正士君) 非常に特殊なものでないものがございます、そういうものはどうしても買わなければなりません。たとえば重水、重水などはちょっと日本ではできません。
  116. 大谷瑩潤

    ○大谷瑩潤君 その経費は年額どのくらいの予算になっておりますか。
  117. 菊池正士

    参考人菊池正士君) 特に材料費だけを内訳にしてどのくらいになるかということは、ちょっとここで申し上げられません。
  118. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 荒木君は昨日委員を辞任されておりますので、委員外議員として発言を許すことに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  119. 荒木正三郎

    委員外議員荒木正三郎君) 先ほどから矢嶋委員のほうから質問がありましたが、大学付置する研究所を設けるのと、それから独立した研究所、そういう形で設置するのとどちらのほうがいいかという問題ですね、御所見がありましたら聞かしていただきたい。
  120. 菊池正士

    参考人菊池正士君) これは私も国立……私はどっちででなければならないというような意見はわからないのでございます、正直にいいまして。たとえばこれが国立研究所になったとしましても、今までの国立研究所とは違った種類のものになるかもしれませんし、その点はっきりいたしません。ただ一つだけ先ほど申しましたように学生との関連、そうして若い連中からどんどんそういう研究者を出していくという面からいくと、どうしても大学付置のほうがいい、その点は確かに大学付置のほうがいいと思います。
  121. 荒木正三郎

    委員外議員荒木正三郎君) 学生の問題ですが、計画の書きものによると、大学院の学生を研究所に採用するというんですか、研究所で手伝いをさせるというふうになっているようですね。その場合は各大学大学院の学生を東京へ連れて来るのか、あるいは東大の学生をそれに使うのか、その点はどういうふうにお考えになっていますか。
  122. 菊池正士

    参考人菊池正士君) 各大学大学院の学年がそこで研究できるという制度ができれば、それが一番いいと思っております。
  123. 荒木正三郎

    委員外議員荒木正三郎君) 今さき学生を使うのに、大学院に付置した方が便利であるというお話があったわけなんでありますが、ところが、これが東大の学生、東大の大学院の学生だけが恩典をこうむるということになれば、片手落ちになるのじゃないかということを心配しているのですが、その点、各大学院の学生を平等というとおかしいが、門戸を開放してやっていくというふうにお考えになっているのですか。
  124. 菊池正士

    参考人菊池正士君) ぜひそういうふうにしたいと思っております。制度上どういうことになりますか、おそらく不可能じゃないと思います。
  125. 荒木正三郎

    委員外議員荒木正三郎君) もう一点は、この原子核研究については、各大学で従来研究することになっていますね。それから今度新たに共同研究の設備を作られる、こういうことになるわけですが、非常にけっこうなことだと私は思いますが、その各大学研究と、それから今度の共同施設として設置される研究所との関連ですね、どういうふうにお考えになっているのかお聞きしたいと思います。私が心配するのは、そのために各大学の原下核の研究予算が削られたり、あるいは設備の充実がはかれないというふうな事態も起ってきて、各大学原子核研究が非常に苦しくなるというような事態が起るのじゃないかということを心配して尋ねているわけなんです。
  126. 菊池正士

    参考人菊池正士君) そういう事態には、現在そういう事態になっていく様子は全然見えてないと思います。
  127. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 私もう一、二点伺いたいのです。もう一、二点伺いたいのは、この学術会議から年次計画案として出されたのを見ますと、予算面では第一年度、第二年度、第三年度が四・二・一と先細りになっているわけですね。ところが、今度政府側から設置要綱として出されたのを見ると、第一年度、第二年度、第三年度は、一・三・五と金額があとになるほど大きくなっているわけですが、これは国家財政の予算関係でこうなっているのだろうと思うのです。そこで、私伺いたいのは、こういう研究というものは、私は一年おくれるとずいぶん進むものじゃないかと思うのです。ということは、私は昭和二十年のあの終戦の年を思い出すのですが、当時、私は新聞で、原子力原子核の論議を日本学者会議である学者がやったところが、ある学者は、この戦争の最中に、そんな原子核とかいうような議論をしておって、国家のために何がプラスになるかというような反論をされたのを当時私は新聞で見ておった。ところが、八月になりましたところが、原子爆弾が広島、長崎に落ちたのを私は今さら思い出すわけなんですが、こういうのは、一年もおくれれば、私は相当進むものじゃないかと思うのです。従って、この学術会議の、最初に予算を多く出して、だんだん小さくなっていくのと、この案の通り、最初多く出してだんだんこうやっていくのでは、完成年度というのは違ってくるわけですが、こういう設置要綱でいった場合、ごく大ざっぱでいいんですが、日本原子核研究の施設、設備、そのレベルというものは、世界的な視野の立場で見た場合に、どのくらいのクラスに属するものでしょうか。大ざっぱでいいですから、一つお教え願いたい。
  128. 菊池正士

    参考人菊池正士君) 最初の学術会議から出ております案のようにいけば、あれはもちろん、われわれしろうとのあれがありまして、予算がちょっと立て方に未熟な点がありまして、少しあとで精密にやりますと、それが多少ふえてきております。しかし、われわれが最初に考えておりました程度にできれば、研究所としては、大学付置研究所、あるいはああいった種類の独立研究所としても恥しくないものができると思います。ただ先ほど申しましたように、非常にエネルギーの高い、つまり原子核などをすっ飛ばして、もう一つ先の問題に対しては、この研究所は現在はただ準備段階の研究をしようとしているだけで、本式な装置を作る計画までは入っておりません。それを含めますと、外国に比較すると、まだそういうものは日本一つもないわけですから、将来はそういう方面もすみやかにやっていきたいと思っております。
  129. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 先ほども承わったんですが、いろいろ種類もあるので、一概に比較はできないけれども、大ざっぱにいって、やはり何でしょうな、世界研究の進んでいる国に比べられて、日本のこういう研究は、それに追いつくべく努力しているという段階だと、こういうふうにとってよろしゅうございますか。
  130. 菊池正士

    参考人菊池正士君) 現在そうでございます。とにかくあの戦争中、そして戦争前からですけれども、こちらの方の、日本における実験的な研究というのはほとんど停滞状態になりまして、その期間がもう、ほとんど十年近くにもなっております。再開されて三、四年前からぼちぼち再開せられましたが、その間に向うでは原子力の問題と関連して非常に発達しておりまして、今、どう公平に見ても非常におくれております。で、早くこれを同じところにもっていきたいというのが、現在われわれの考えでございます。
  131. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 この法律が国会で可決成立したのちにおいて、いつ研究所を発足するか、またそれの定員はどうするかというような、こういう問題については、すでにあなたと文部省あるいは東大側とは、すでに打ち合せ案はでき上っているのでございますか、いかがでしょうか。
  132. 菊池正士

    参考人菊池正士君) 文部省の案は聞いております。
  133. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 その案なるものは、あなたは大体了解できる案でございますか。あるいは、この点は変えてほしいというような御要望を申し出ている内容のものですか。
  134. 菊池正士

    参考人菊池正士君) それは、たとえば人の面では四講座とかということに聞いておりますが、これはまあ、現存人をふやすということが非常に困難な折りで、もうこの際、今年これ以上どうこうということをいっても仕方がないと思いますが、施設費の面で、今年度もう少し増額されたら非常に助かると思っております。
  135. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 これは関連しますからここで聞いておいた方がいいと思いますから、大学局長に答弁を求めたいと思うのですが、いつ発足するかですね、それから定員、講座、その他の内容はどう考えておるかということと、それから数字的に私は疑問をもっているのは、この前予算の説明の場合には、付置研究所予算の中に三億三千万の原子核関係のが入っている、こう説明された。ところがここに出されている資料を見ますと、昭和三十年三億三千万という数字が出ておるのですが、この食い違いはどこからきているのか、ここで伺っておいた方が都合がいいと思いますから、この際お答え願いたい。
  136. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) いつ発足するかという点でありますが、この法律が御可決になりましてから一カ月以内に公布実施いたしたいと考えております。定員は本年度はまあ四十人でございまして、そのうち講座を構成いたしますのは、先ほど菊池先生お話のように四講座でございます。それから一億の経費の違いは、二億余りが国立学校の経費に組まれていて、これは先般御説明申し上げました。ほか一億は、国立文教施設費の方に組まれておりますので、これは先般御説明申し上げませんでした。
  137. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 他の委員の御質問もあるようでありますから、最後に伺いますが、先ほどあなたの御発言の中に、国立研究所はどうもうまくいかないという言葉が私は耳に残っておってどうも、…、都合によったら速記をとめてもよろしゅうございますから、国立研究所はわが国にずいぶんあるわけですが、どういう点がうまくいかないのか、どうすればうまくいくようになるかという、私見で結構ですから、速記をつけて差しつかえあれば速記をとめてもよろしゅうございますいますから、せっかくおいでになった機会に伺わせていただきたいと思います。
  138. 菊池正士

    参考人菊池正士君) 一つには私はある程度待遇の問題があるのじゃないかと思いますが、従って非常に希望者がないということもあるのじゃないでしょうか、私はそこら辺はよくわかりませんが、大学教授というのと研究所の技師というのですか、そういうところでかなりいろいろなことがあるのじゃないですか。
  139. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それだけでございますか。
  140. 菊池正士

    参考人菊池正士君) それと、もう一つは、やっぱり国立になると、つまり事務力というものが大分違うのじゃないかと思います。大学などになりますと、たとえば今度の場合にでも建築をするとすればすぐ営繕課がおりまして、そしてその営繕課で建築をどんどん進めていく、それから予算を請求するとしても非常な事務力がありまして、どんどんそれを事務的に運んでおります。国立研究所になりますとそういろいろなものが、営繕課とか何とか事務系統がくっつくわけのものでもありませんので、つまり何となく影が薄いのじゃないかと思います。
  141. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 もう一つですがね、大学にある場合と国立研究所という場合、国立研究所という場合は行政機関のやはり影響力が大きくて、研究の府としての自由とか自主性というものが、大学よりは小さな機関の国立研究所の方がやはり行政機関の息がよけいかかってまずいというような、こういう雰囲気はございませんか。
  142. 菊池正士

    参考人菊池正士君) そういう雰囲気もあるのじゃないかと思います。私は実は国立研究所のことをほとんど知りませんのでよくわからないのでございますが、あるいはそういうこともあるのじゃないかと思います。
  143. 高田なほ子

    高田なほ子君 お尋ねいたしますが、原子核研究所を設立するに当って、学術会議の方からはいろいろの原則が出たと思うのですが、その中で自主性を重んずること、それから共同利用、それからもう一つは大平な点は、原子力研究目的としないと、こういうふうに私ども承知しているわけです。その第三番目の原子力研究目的としないということは政府も認めておるということを私どもは承知しておるわけですが、その政府の認めておるというような点については、何かはっきりとした申し合せとか何とかいうものができておるものでしょうか、どんなものでしょうか。
  144. 菊池正士

    参考人菊池正士君) 大学設置法にそういうことがちゃんと出るのじゃないでしょうか。
  145. 高田なほ子

    高田なほ子君 そうですか。そうですね。  それから共同利用の面になりますが、それはやはり自主性を侵さないという面で協議機関が必要であるというようなことを伺っておるわけですが、協議機関というと、具体的にはどういうものをさし、また今その協議機関を作るためにどんなお話し合いが進められておりますものか、そこらの消息をちょっと伺いたい。
  146. 菊池正士

    参考人菊池正士君) これは研究所教授会のほかに、今度は東大以外の専門家の集りからできておる協議会というものを作る予定です。そうしてそれを所長の諮問機関としてそういうものを置く。
  147. 高田なほ子

    高田なほ子君 もう一つ伺っておきたいのですが、それは今私どもが一番案じておりますことは、濃縮ウランの受け入れということが今しきりに出ております。そういたしますと、濃縮ウランの受け入れ、つまりはっきりいうと、原子炉の基礎研究というものが現在の日本ではまだ殆んどできておらない、あるいは受け入れ態勢ができておらないということが巷間強く言われておるようです。この場合に、その基礎研究の中に、私どもはしろうとで十分わかりませんのですが、いろいろの問題があると思うわけです。化学のほかに実験物理に属するものがたくさんあると思うのですが、その原子核研究の分野の中で原子炉日本に建設していく場合に、何か交錯する面があるのではないかと思うのですが、そういう点はどんな点でしょうか、お伺いしたい。
  148. 菊池正士

    参考人菊池正士君) これは先ほどもお答えした部分に入るかもしれませんけれども、それはある面で、主として私の思いますのはいろいろな放射線の測定器であるとか、そういったような面で、かなり共通な面があると思います。
  149. 高田なほ子

    高田なほ子君 ただいま、この研究所が田無にできるわけですね。
  150. 菊池正士

    参考人菊池正士君) はあ。
  151. 高田なほ子

    高田なほ子君 その場合に、やはり原子核研究所へ行っても放射線といったようなものの影響というものを考えなければならないということはいろいろな雑誌や何かで見ているわけですが、そういったような危険ということはあまり考えなくてもよろしいものなんでしょうか。
  152. 菊池正士

    参考人菊池正士君) それはもう完全に遮蔽ができておりまして、外へは放射線が出ないようになっております。
  153. 高田なほ子

    高田なほ子君 ありがとうございました。
  154. 高橋道男

    ○高橋道男君 今高田委員の一番最後の質問に関連して若干伺いたいのですが、田無に研究所ができるときに、地元民の反対があったということが相当大きく報道されたことを覚えておりますが、あれは何かあやまってああいうふうに地元民に考えられたのか、どういう理由があったのでございましょうか。もし教授として関知されておる問題がありましたら伺いたいと思います。
  155. 菊池正士

    参考人菊池正士君) 一番最初にはかなり原子核研究ということと原子力、あすこですぐに原子力研究が始まって、つまり原子力原子核というようなことが混同されておりまして、原子力研究が始まるというふうに受け取られたと思います。もともとあすこは水爆や何かの反対の署名運動や何かが非常に盛んであった土地のように聞いております。それで町のほうに前もって話し合いもなしに、いきなりそういうことが発表されたものですから、それであすこの町議会の反対があったのであります。その後はだんだん、こちらもずいぶんいろいろ説明いたしましたが、だんだんそういうことではなしに、今皆さんがここで言っておられるように、現在そういう目的でもってやられても、将来それがゆがめられた方向に行きはしたいかという、非常に、私はそういう心配から、最後はそういう心配に変ってきておるように思います。
  156. 高橋道男

    ○高橋道男君 それは現在ではそういう誤解から生じたことは一切解消して、そうして研究所の将来について、はっきりした協力態勢ができておる、協力態勢といってはちょっと言い過ぎかもしれませんけれども、そういう抗議めいたことはないというふうに了解してよろしゅうざいますか。
  157. 菊池正士

    参考人菊池正士君) 形式的には町議会の反対は取り下げておりません。しかし実質的にはその近所の住宅がずっとございます。そういう住宅街の方々からわざわざわれわれに招請状がありまして、そういう方々と、それから町議会のほうの反対する方々と御一緒にいろいろ懇談をする機会がずいぶんございました。それで最後にいたしましたときなどは、そういう方々みんなで原子核研究所をあとで見ていただくようにいたしまして、実質的には何も現在そういう空気はございません。ただ形式的に町議会の反対は取り下げられてないと思います。
  158. 高橋道男

    ○高橋道男君 今の町議会の決議ですか、それが取り下げられていないということは、今後の障害になりませんか。
  159. 菊池正士

    参考人菊池正士君) 実質的にはいろいろな面で協力してすでにいただいておりますし、まずないと思います。
  160. 高橋道男

    ○高橋道男君 次にお尋ねしたいのは、世界的に見て原子核研究に関することには何ら秘密がないと、すべて開放的であると伺って安心したものでありますが、ほかの研究機関から、たとえば原子力関係研究機関では、必要な原子力研究の基礎に関するデータを原子核研究所に求められるということもこれはあると思うのですが、そういう点いかがでございましょうか。さらにもう一つつけ加えて、原子力研究あるいはその他の機関から、原子核研究所で得ておられるだろう、あるいは得られるだろうと思われるデータについて、協力あるいは提出を求められた場合に、原子核研究建前は開放的であるという建前の上から、一切のデータをそういう機関に対して提供される、そのデータがどういうような目的に使われるかということは別問題として、開放的であるという建前の上からすれば、一切のデータをそういう求めに応じて提供されるということが当然考えられることでありますが、そういうふうに考えてよろしゅうございますか。
  161. 菊池正士

    参考人菊池正士君) どうもそれを、われわれの結果が大体論文として公表されました。それをどこでどういうふうに使うということは、これはわれわれの予測できない問題でございます。それから私たちは原子力研究をやっていかんとは決して思っておりません。適当な形のもとに正しい意味では原子力というものは当然やらなければいけないと思います。で、学問と応用というものが決して分離して、俺は学問だ、俺は応用だというべきじゃない。学問本来の使命は、それによっていろいろな技術の発達をはかるということが学問の大きな使命になっておると思います。で、原子力研究が正しい意味で進んでいく場合に、原子核研究がもしそれに対して役に立つならば、それを拒む理由は一つもないのであります。
  162. 高橋道男

    ○高橋道男君 私もそれは原子力研究を阻止すべしという理由は何ら持っていないのでありますが、先ほど朝永教授がおっしゃつた中に、別にこれも原子力研究を阻止するというお言葉じゃなかったと思う。原子核研究に専念することは、その他の研究にくちばしを入れたりあるいは関連を持つということはとうていできないくらい大問題であるということを仰せられたのであります。もっともそうであると私も思いますけれども、それは原子核研究所立場からすればそういうことは考えられまするが、一教授立場として原子核研究所に勧められておる方が他の機関から、この他の機関での必要に応じて協力を求められる場合に、協力ができないというほど原子核研究というものが非常に大きな、またセパレイトされた部門であると考えるかどうか。全然ほかの機関には協力できないというような立場のものではないと私は思うのですが、そういうふうに考えていいのかどうか。
  163. 菊池正士

    参考人菊池正士君) しかし原子力研究をやりますると、今ここで評価されているようなものがありましても、大して論議にならないと思います。ですから、協力を求められるといっても、原子力の方の問題は、それほど大きな協力という問題はないだろうと思うのです。ですから、原子力をやはりやるとするならば、もしもこの研究所でやるということになるとしましても、今までの計画と全く別な施設を作らなければそれはできないと思います。
  164. 高橋道男

    ○高橋道男君 私の申すのは、原子力研究までも予定されておる原子核研究所で将来行われるということは、これは考えられないことだと思うのです。ただ教授の個人的な立場において、また個人的な研究内容において原子力研究と関連をつけて外から協力を求められるということは、これはあり得るのじゃないかと思うのです。そういう場合は協力をするというように考えていいものか、これは少しく問題が離れるかもしれませんけれども、見解をお伺いいたしたいのであります。
  165. 菊池正士

    参考人菊池正士君) それは原子力研究が、私今申しましたように原子力研究を進めるということには非常に積極的に賛成なんでありますけれども、それが正しい方向をとって進んでいくのでありましたら、役に立つことでしたら、私としては喜んで努力したいと思っております。
  166. 高橋道男

    ○高橋道男君 もう一点。これは念のためにお伺いしておきたいのは、共同研究施設であるということでありまするが、従前の国立学校設置法に、共同施設というものが立案される場合には、共同研究施設ということはたしか明示してあったと私は考えておるのであります。今回はそういうことが明示されていないのでありますけれども、この明示してあるしてないは、これは菊池君一人の問題じゃないと思いますが、先ほど共同研究施設ということがはっきりしておりますので、これはどなたかからもお尋ねがございましたが、研究所としての規則を明定して、そういうような共同施設であると、単に東京大学教授、学生あるいは大学の学生はもちろんのこと、ほかの大学教授、学生も含めて研究の利便に供するということを私は狭められていいのじゃないかと思うのです。もちろんこれは研究所自体で専断されることはできないかもしれませんけれども大学当局あるいは文部当局へもはかって、そういうことを明かに定めておかれる方が共同研究施設の目的をさらに実効あらしめることができる、こう思うのでありますが、そういうお考え所長立場としてお持ちいただけるかどうか、これを念のためお尋ねしておきます。
  167. 菊池正士

    参考人菊池正士君) 全く同感でございます。そういうふうにしたいと思います。
  168. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 菊池参考人に対する質疑はこの程度にとどめたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  169. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 御異議なければさように決定いたします。  国立学校設置法の一部を改正する法律案は午後に引き続き審議をすることといたしまして、午後は正二時から再開いたします。暫時休憩いたします。    午後零時三十九分休憩    ――――・――――    午後二時四十一分開会
  170. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 休憩前に引き続き会議を開きます。  議題は、国立学校設置法の一部を改正する法律案であります。質疑のある方は順次御発言を願います。
  171. 高橋道男

    ○高橋道男君 まず私午前中の参考人に対する発言の中で、東京大学原子核研究所共同研究施設であるということを明示されていないということを申しましたが、この今回の改正案にはそのことはもちろん明示してありませんけれども、現行法を見ればそのことははっきりと明示してありますので、その点私の言葉の足りなかったところを申し添えて訂正をいたしておきたいと思います。  次に昨年の国立学校設置法の改正の場合に、大学別の定員表等を国立から削除をいたしたのでありますが、その場合に、削除をするけれども、各大学の定員などをきめるについては適当な機関に諮ってきめてもらいたいということを希望として申し上げておったのでありまするが、今回の若干の改正に伴う定員の異動ということにつきまして、何らかそういう方法をおとりになったかどうか、局長にお伺いいたしたいと思います。
  172. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) 個々の大学の定員をきめます場合には、個々の大学から請求のあります予算を検討して、最後的に大蔵省と折衝をいたしたわけでありまして、個々の大学の定員については、お話しのように別の第三者とは相談しなかったのであります。その趣旨はやはり大学の自治ということを尊重いたしまするがゆえに、そこに第三者が直接大学それ自身の構成に関与することは、われわれの考えとしては不適当だと考えたわけであります。しかし全般を見渡しまして、大学の組織がしかるべき形にあるようにというような点につきましては、研究所につきましては研究所協議会、また大半につき減しては大学組織等研究会というような会がございまして、大学教授等を中に参画していただきまして、全般的にどういう点に将来力を入れていくか、どういう組織が研究機関としては理想的かというような一般問題としては、御趣旨のように大学の当局の意見もいれて研究しております。
  173. 高橋道男

    ○高橋道男君 ただいま仰せられた機関というものは正規に作られておるものであるかどうか、それを念のためお聞きいたします。
  174. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) 法律上の存在ではないのでございまして、大臣の伺い定めをもって省内に便宜構成しておる機関でございます。
  175. 高橋道男

    ○高橋道男君 私は定員表などを削除するときに、その削除することの経過を熟知しておられる大学局長である稻田さんが御在任中には、その趣旨を含んで大学の定員などについて十分の配慮をなさって均衡がとれるように、不均衡の起らないような措置をおとりになると思いますけれども、年限がたつに従ってそういうきまったものがない。大学局長の専断的な判断によって不均衡が起らないという保証はできにくいように私は思うのでありますが、そういう上から稲田局長局長在任中にそういう正規な機関を、法律とは申しませんけれども、政令、省令等において少くともこの正規な機関にして、そういう不均衡の起らないような措置をとるというようなお考えがないものかどうか、これをお伺いいたします。
  176. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) 学部、学科、講座等がいかに組織せられるかというようなことを基準的に定めることが今後大学運営のために必要だと考えております。で、さっき申しましたような委員会等を経てこの作成をまあいろいろ研究しているのでございますが、もしそれができますれば、学校教育法は文部大臣に大学の基準を定めることを委任いたしておりまするから、できますればそういうものを省令化するというようなことが考え得るだろうと思います。
  177. 高橋道男

    ○高橋道男君 これに関して大臣に御意見がございますれば、お伺いいたします。
  178. 松村謙三

    ○国務大臣(松村謙三君) 今大学局長の申した通りに考慮をいたします。ただ委員会制度につきましては、これを申すのではございませんけれども、全般的に委員会というものが非常に多いのでございまして、これは責任の所在などを変更するおそれもありますから、そこはできるだけそういうことをしまするのに特殊のものを作らないで、できれば他の何を併合してでもやっていけるように簡素な形をとりたいものと考えております。これはお尋ねについたことだけに申すのではございませんが、そういう考えを持っております。
  179. 高橋道男

    ○高橋道男君 大学全体の運営の上につきまして、そういうような機関があることが私は好ましいと思いますので、そういう御質問を申し上げたわけでございますが、こういう機関があることによって、先ほど局長が言われたような大学の自治を侵すと、第三者がその何らかの拘束をするということは、これは私は起らないものだと思う次第でございます。  次にお尋ねいたしますのは、あるいはあとさきになるかもしれませんが、午前の東京大学原子核研究所に関する朝永教授の御発言の段階に、国立研究所であるよりも大学付置研究所の方が大学の自治というような建前から、研究の自由が確立されるというような発言があったと思いますが、その点については局長もお聞きになっておったと思うのでありますが、局長もそういうふうにお考えになるかどうか。つまり大学付置研究所とそれから国立研究所とは学問の自由という点で区別がある、差別があるというようなふうに御判断になっておるかどうか。これを伺いたい。
  180. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) 文部省と言わず、各省が直轄の研究所を持ちますのは、多かれ少なかれ行政上の必要と研究とを密接ならしめようという意図の下に置かれるのが常であると思うのであります。たとえば国語研究所にいたしましても、教育研究所にいたしましても、文部省の国語行政なり教育行政に何らか寄与するという目的をもって設けられたものだと考えております。今新たに原子核研究所を設けまする場合、これはわれわれは純然たる学術研究の機関として考えたいのであります。そういう点から考えますれば、やはりこれは行政に直結するよりはむしろ研究の場でありまする大学付置するのがよろしい、しかも一大学付置しながら他の教育機関、研究機関が共同利用できるような、いわゆる共同利用研究施設という形で置きたい。こう考えた次第でございます。
  181. 高橋道男

    ○高橋道男君 共同利用という点でほかにも研究施設がございますけれども、これが開かれましてから、共同研究立場から十全に共同利用が行われているかどうか。これは局長のお立場から行われていないということはおっしゃらないかもしれませんが、そういう点に十全を尽されていないというふうな点は起っていないかどうかをお尋ねいたします。
  182. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) 東京大学宇宙線観測所も、京都大学基礎物理学研究所設置以来まだ三年くらいのものでありまして、その成果を判定するのにはまだ早いのでございますけれども宇宙線観測所は御承知のように国、公、私立全国大学が主として夏の期間を中心として乗鞍利用いたしております。これはこの期間を利用いたしませんとできない研究に使われるわけでありますので、自然この利用は非常に高い程度に利用せられております。また京都の湯川記念館を基礎といたします基礎物理学研究所は、これは全国の基礎物理学研究者の道場というような意味におきまして、いろいろここにおいて研究討議するということに利用せられておりまして、年間を通じて全国の理論物理学者は相当この機関を利用しておる状況だと思います。
  183. 高橋道男

    ○高橋道男君 今回のこの原子核研究所と関連して、ただいま局長はこれは純粋な学術研究の機関であるということをおっしゃいましたし、また私もそういうふうに信じておりますけれども、他の機関、たとえば航空研究所なり、あるいは原子力研究所というようなものも総体のうちに含めて考えるのでありますが、そういう機関との関連というようなことについては何かお考えはございましょうか。
  184. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) 御指摘の研究所なり、あるいは航空研究所というような非常に応用の末端に関連いたしまする機関は、これは政府の各機関に直結いたしました直轄研究所として設けられるのが普通だと思っております。従いましてここに考えておりまする原子核研究所とは相当質的の差があるわけでございます。もちろん学問研究の交流、関連の問題でありまするから、学問研究の協力を求められれば、もちろんこの原子核研究所も他の研究所関係を持って参るのでございまするれけども、午前中学者から御説明もうし上げましたように、これは純粋の基礎的の研究でありますし、現在考えられます原子力利用の問題とは相当関連するところが薄いのではないかというふうに考えております。
  185. 高橋道男

    ○高橋道男君 ただいま私のお尋ねいたしました、そういう機関との関連をお考えになっていないかということについて、薄いというお答えがございましたが、関係がないというようなことに考えていいのかどうか、はなはだくどいようですけれども
  186. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) 設置目的なり、法それ自身に書きますのは、原子核及び素粒子に関します実験研究に限られておりますので、原子力利用と申しますければ、御承知のようにこれはどこからウラニウムを得てくるか、重水をどう使うか、諸材料をどうするかといったように、物理関係以外の要素が非常に入って参りまして、むしろこの原子物理学研究の成果を利用して、原子力利用というものを考える応用の段階にそちらの研究は進んでおるわけでありまするから、今そちらからこちらへ振り返ってきて協力を求める点がほとんど現在のところないのではないかと思うのであります。将来この原子核研究所原子の理論を究明した場合に、従来考えられておった原子力以外のまた新しい領野がそこに開かれてくるかもわからないのでありますけれども、それは現在予想せられるところではない。そういうような点からまあ原子力利用の問題と原子核研究の問題とは私はさしあたりそう密接な関係はないと、かように申し上げたわけであります。
  187. 高橋道男

    ○高橋道男君 次にお尋ねは、たしか学術会議から放射線基礎医学研究所というようなものの設立について勧告があったことを聞いておるのでありますが、こういうものに対しての御見解をお伺いいたします。
  188. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) 放射線基礎医学研究所設置につきまして、学術会議から政府に建議のありました問題につきましては、すべて科学行政協議会において審議いたしまして、その採否を決定いたします。先般科学行政協議会におきましては、政府部内においてこれを実現すべしという決定を見たようでありまするが、まあその結果まだ各行政部門に対して伝達がない状況でございます。もしこの設置につきまして、科学行政協議会の議を経て官房長官から文部大臣へ伝達があるといたしますれば、文部省としては十分その設置等について考究すべき問題だと思います。
  189. 高橋道男

    ○高橋道男君 その問題につきまして考究する場合には、ただいまの原子核研究所と同じように共同利用施設としてどこかの大学にただ一つ設置すべきものかどうか、そういう点についての御構想はございませんか。
  190. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) まだ全くその辺について研究を遂げてないのであります。直轄研究所とすべきか、あるいは付置研究所とすべきか。またこれは非常に大規模のものでございまして、多くの資材あるいは人員を要するものでありますから、他のいろいろな喫緊な問題等とにらみ合せまして、いついかなる時期に着手するかというような点についてもまだ検討をもっていないのであります。
  191. 高橋道男

    ○高橋道男君 次にお尋ねいたしたいには、大学院に関する問題でございますが、今回横浜の医科大学大学院が置かれる。で、学校教育法の施行規則でありますが、それを見ますると、その六十六条に「設備、編制、学部及び単科の種類並びに学士に関する事項は」――「別に定める大学設置基準による」ということがうたわれておりますが、その大学設置基準というものによって、今回の方策をお定めになったのかどうか、これをお尋ねいたしたい。
  192. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) 御指摘の学校教育法施行規則第六十六条が定めております大学設置基準というものは、まだできていないのでございます。これにつきましては、先般の御質問にお答え申し上げましたように、文部省におきましては鋭意研究中でございます。
  193. 高橋道男

    ○高橋道男君 そうしますと、大学設置基準がなければ、いかなる方法によってこれをおきめになるのですか。
  194. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) 大学基準というものが基準協会において作成せられております。文部大臣が大学院、大学を認可いたしまする場合に、大学設置審議会に諮問いたしまするが、大学設置審議会が審査の内規といたしまして、今の大学基準を中心といたしました審査の内規を持っております。事実の問題としてはそういうような関係でございます。
  195. 高橋道男

    ○高橋道男君 ただいま仰せられた大学設置審議会というものは、これは官制で定められておるものでございますか。
  196. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) これは学校教育法第六十条に大学設置の認可に関しては、「大学設置審議会に諮問しなければならない。大学設置審議会に関する事項は、命令でこれを定める」こう規定してあります。
  197. 高橋道男

    ○高橋道男君 そうしますと、大学設置基準というものは研究しておられるということでありますが、この法が施行されてから相当もう長くなるのでありますが、いつごろ制定されるお見込みでございましょうか。
  198. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) 御指摘のように法が制定せられてから、相当年月を経過しておりまするが、何と申しましても、この新制大学というものについては、いろいろ最初の試みを多く包含いたしておりますので、批判もあり、現実の切実な要求もございまするので、それらを見合いながら、作ります上におきましては、十分完成したものを作りたいというようなことで研究しているわけでありますが、私どもといたしましては、できれば本年中くらいにはその一応のまとまりをつけて、上司の決裁を得たい、こういうように考えております。
  199. 高橋道男

    ○高橋道男君 できるだけ早くその案を得られることを希望します。  次に、それにも関連があるのでありますが、新聞紙の伝えるところによりますと、京都大学に今回航空学科が設けられるということを見たのでありますが、それは事実でございますかどうか。
  200. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) 京都大学におきましては、戦前戦中に航空学科があったのでありますが、進駐軍の指令によりましてこれを廃止いたしまして、その一部をもって応用物理学科を構成して今日に至りまして、今日航空学研究の必要を感じまして、応用物理学科を再転換いたしまして、本年度の予算から航空学科を設置することにいたしております。
  201. 高橋道男

    ○高橋道男君 応用物理学科の再転換と言われましたが、応用物理学科は航空学科ができた場合にはなくなるという意味ですか。
  202. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) 応用物理学科は四コースをもって成り立っておりますが、それがなくなりまして、それに将来加えて完成した航空学科を作りたいと考えております。
  203. 高橋道男

    ○高橋道男君 その応用物理学科のなくなる時期が、今の御答弁からははっきりいたしませんけれども、現在入学しておるものが四年の在学中には異変は起り得ない、少くともすでに入学しているものについての異変は起り得ないと私は思いますが、この人たちが大学院へ進みたい、自分の専攻希望の応用物理学の上からの大学院に進みたい、こういう場合に何らか支障が起るのじゃないかという気がいたすのでありますが、この点はいかがでございますか。
  204. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) 航空学科の方の領野が、ここで具体的にあります応用物理学科の領野よりも広いわけでありますから、従って現在応用物理学科として流体力学等のみを専攻しておりますものが、将来航空学科の方に設けられました大学院の課程で流体力学等の応用物理学のみを専攻するということは、これは可能であるわけであります。
  205. 高橋道男

    ○高橋道男君 そういう大学院の研究を進めるという点について、私は今局長の言われたことにつきましては、若干のまだ危惧を持っておるのでありますが、応用物理学科を航空学科に転換するというようなことについても、先ほどお話大学設置審議会にお諮りになったのでありまするかどうか。そういうようなことを諮らなくてもいいというようなことになっておるのでありますかどうか。お伺いいたします。
  206. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) 大学設置審議会に諮って、その結果設置いたしたわけでございます。
  207. 吉田萬次

    吉田萬次君 ただいま航空学科というものが京都大学にできるというお話でありまして、それが実現するということになっておる。ところで今度の原子研究というものに対して、やはりこれが同じような方向で進むと私は考えておる。しかるに昼前の質問によりますると、これを戦力と結び付けて考えられるような質問が出たと思います。戦力と結び付けて考えるということについての答弁が、やはりそういうふうなものであったならば禁止するような答弁があった。そういうことでありますると、これは今日の研究というものが、あながち戦力と結び付けてまで考える必要はないと私は考えるのと、かりにもしそういうことであったならば、防衛庁の方から希望して研究がしたいというようなものが来た場合、どういうふうな処置をとられますか。文相にお伺いいたします。
  208. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) 一応私から申し上げます。今朝の朝永博士の話を聞いておりましたのが私でありますので、失礼でございますが、大臣のお答えの前にその点だけを申し上げたいと思います。これはもちろん朝永博士自身のお考えであると思うのでありまして、われわれといたしましては、別にその戦力とか戦力域外という問題をこの問題に関連して何ら考えておるわけではございません。航空学科の復活という問題は、航空学研究それ自体が、基礎的研究についても応用的研究についても、日本の一般学術、技術あるいは文化というような面からみて、一般的に切実であるから、さきに東京に置き、このたび京都に置き、あるいは将来またどこかに考慮する、こういう考えであります。
  209. 松村謙三

    ○国務大臣(松村謙三君) 今大学局長からお話し申し上げた通りでございますが、いつかの新聞などにも何か防衛庁の仕事をするためにそういうものを設けるような記事をかつて見たことがございます。これらは全く原子核研究にしましても、それから航空学科の問題にしましても、そういう考えは毛頭持っておりませんので、純然たる学術の研究、こういうふうに考えております。
  210. 吉田萬次

    吉田萬次君 そうすると、かりに防衛庁の方面から研究がしたいという志望者があった場合には、これは門戸を開放して、そうして研究をさせられる御意思と考えてよろしゅうございますか。
  211. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) 私は学問研究の自由を阻害しない範囲におきまして、どなたの依願を受けまして研究者研究しても差しつかえないのじゃないかと思っております。
  212. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 私は局長にはいろいろ承わりたいことがありますが、大臣御都合があると思いますので、大臣に関する質疑をまずやらしていただきます。  やや具体的になりますが、たとえば今度の法案の中に、佐賀大学に農学部というのが出ておるわけですね。これは私は反対というわけではないのです。私は大学の学部の増設、単科の転換、その他すべて国家的見地からゆかなくちゃならぬのですけれども、具体的なことは申し上げないが、わかっていただくために申し上げなくちゃならないのですが、たとえば熊本大学で農学部を設置すべし、農業県熊本に農学部を設置すべきだという意見があり、県会等で決議したことがあるのです。ところが熊本大学の学長は、いやいや福岡に農学部があり、宮崎にあり、鹿児島にある。県がそれだけ腰を入れて農学部を作るだけの金があったならば、どうか今ある大学の――あの熊本大学は御存じのようにタコの足大学で、戦争下にやられてきわめてお恥しい状況ですが、その充実をはからなくちゃというので、地域の非常に強い要望を鰐淵学長は排除して今まで来ておるわけです。ところが、地元としては非常に強力な要望があるわけです。私は国家的立場から見た場合に、かりに九州にさらに農学部を作るとすれば、私は地理的ないろいろな条件からいっても、作るならば佐賀の地よりも熊本の地の方が適当ではないかと考える。これは別に私が熊本に居住しておるからというので申し上げるのではない。さらに発展すると、私はそれは学都は多くなるにこしたことはない。一例をあげると、佐賀の農学部の新設というものが果して合理的科学的によろしいという答えが出るのかどうかという点に若干疑問がないわけではありません。この一つの例を申し上げたわけは、午前中参考人からも意見を承わったわけですが、また先ほど高橋委員からも要請があったようですが、私も重ねてその点お伺いするとともに要請いたしたいと思うのです。やはり国の大学というものは、これのいかんというものはその国家の興隆と私は関係があると思います。従って学部、学科等の新設とか、あるいは廃止とか転換というようなもの、これらはやはり純粋に第生者的な立場からきわめて合理的に配置ができるような私は取り組みをしなくちゃならぬと思う。さらに予算面から考えましても、私はそういう機関で大学別に予算をこしらえたならば、大学の事務局長とかあるいは学長が、自分の大学に少しでも乏しい大学予算の中だから、分け前をいただこうというので、しょっちゅう心配されて、あたかも行政官のごとく東京に通い、文部省にお百度を踏む必要はなく、また大学が多くなった関係もありますが、やはり私は重点的に予算を配分するというのを全面的に否定するわけではありませんが、やはり人的に物的に、大学閥における弱肉強食の大学行政というものは幾らかあるということは否定できないのじゃないか、そういうことは地方大学はやはり言葉は適当でないかもしれませんが、若干ひがんでおりますよ。そこで私は先ほどの高橋委員の質疑とも関連するわけですが、こういうような私どもの発言を大臣はいかようにお受け取りになられますか。またそれらの解決のために積極的に御努力なさる御意思はございませんか。お伺いいたしたいと思います。
  213. 松村謙三

    ○国務大臣(松村謙三君) お答え申し上げます。率直に申し上げますと、いろいろそういうお話のような、見方によりますといろいろな意見もあることと存じますが、私がこれを認めましたのは、実はいつかも申しました通りに、大学のこれまでの懸案になって、すでにたとえば準備の費用を先に出してあるとか何とかで、既成事実のようになっておるのだけは今度は一つ片づけまして、そうしてそれできっぱり一つ区画をきめようというような感じからいたしまして、すでに既成事実のようになっておるがために、佐賀の農学部も認めて提案をいたした、こういうような次第でございまして、そのためにはすでに十分これらのことは以前に検討せられたことであろうと存じまして、これを認めて提案をいたしたわけでございます。詳しいことは局長から申し上げます。
  214. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 私は佐賀の大学の農学部そのものにピントを合してお伺いしておるわけではないのです。これは一つの説明、私の気持をわかっていただくために申し上げましたので、問題は学部、学科の新設とか廃止とか転換とか、あるいは予算の配分とか、そういう点をもう少し合理的な、また各大学予算の分配闘争に必要以上の神経を使わなくてもよろしいような、そういうような行政の確立をされる必要をお感じになっておられないかどうか、そこに質問のポイントがあるわけでございます。
  215. 松村謙三

    ○国務大臣(松村謙三君) 御質問の焦点をあやまったかもしれませんが、それならばお話の通りに私も心得ておりまして、大学の何は相当将来重点的に考えてやってゆかなくちゃ、整備をしてゆかなくちゃならないというようなふうに考えておるわけでございます。
  216. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 ただいまの大臣の御見解に即応するところの具体的な方途に関する所見を、近き将来に当該局長である稻田局長さんに伺いたいと思いますので、御研究おき願いたいと思います。  次に伺いたい点は、やはり大学の教育の機会均等というものは、大臣どうしてもこれは原則として守らなくちゃならないと思うのです。国家財政の関係もありましょうが、守らなくちゃならないと思います。私は九州出身ですが、九州の片いなかから考えますと、私はもとの学制に返せというようなことを申し上げるのじゃないのです。教育の機会均等という立場から考えますと、その一人の青年、学生生徒の立場に立って考えると、教育の機会均等がかえって逆になる場合があるわけです。これはまあ具体的にわからないかもしれませんが、中学校の場合を考えた場合に、ある土地の、ぐうっと山間僻地に生れた子供は、その地の小学校六年、中学校三年、しかもその中学校は今の教育予算の施設設備、教員構成のきわめて不十分なところで、そういう土地に生れた素質のいい子供もですね、学問をしようという場合に、かえって背よりは教育の機会均等に恵まれない事態になるかもしれない、今のような教育予算の教育の実情ではですね。そういうことが私はあり得ると思うんですが、そういう角度から、かつて、天野文部大臣はこういうことを言明されたことがあるんです。それは、多数の国立大学ができたこれは学生を守って育成していきたいと、そうしなければならぬ、しかし国家財政の都合もあって、早急にすべての大学を同じレベルまで充実するということができない。従ってせめて素質に恵まれ、求学の気持に燃えている学徒に対しては、機会を平等に与えるために、たとえば東京大学のような施設、設備の充実した大学大学院を主にして、そして地方の施設、設備の不十分な大学で勉強し、十分満足することのできなかった学徒を多数収容できるような大学に、漸次大学を取り運んでいきたい、こういうことを天野さんの文教政策として委員会で発言されたことがあるわけですが、このお考えは、今の文部省大学院の設置、それから大学院の――これからあとで数字は具体的に局長に聞いて参りますが、大学院の学生数ですね、それらを考える場合に、あの天野文部大臣が言われた方針というものは生きているのかどうかということ、それから文部大臣はこういう所見に対してはどういうお考えでおられるのか、承わりたいと思います。
  217. 松村謙三

    ○国務大臣(松村謙三君) 天野さんはそのようなお話があったかもしれませんけれども、私は現在の情勢から見てさようには考えておりません。と申しますのは、機会均等と言いましても、また大学院をそういうふうなものに作りますと、それがまた不平等になる一つの原因にもなりまするし、今日の状態において大学院というものをそういうふうなものにいたしますと、現在の大学の上にさらに大学が出てくると、こういうことになりまして、ほとんど大学の上に大学が出てくるということになって、事実内容の充実などはできなくなっちゃいますから、私は将来国力が充実してきたときは、それはまた別の問題でございますけれども、今日においては地方の大学を重点的にでもできるだけ充実をさして、そして教育の機会均等をそれではかっていくよりほかに道がないと、こういうふうに私は考えまして、内容の重点的充実に主力を注ぎたいと考えております。
  218. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 松村文部大臣の答弁はきわめて明確でございます。ただいま法案が出ておりますが、そういう角度から大学院の設置並びに定員の決定、さらには各大学への予算の配分に当っては、今の松村文部大臣の基本的な考え方に沿って大学学術局長は仕事を取り運んでいるものと考えますが、相違ございませんか。
  219. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) その通りでございます。
  220. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 次に伺いたい点は、やはり教育の機会均等という立場からでありますが、まだ大臣ごらんになっていないかとも思いますが、大学学術局の方ではですね、私の要請に基いて大学関係の資料をりっぱにこしらえて出していただきました。ただこの資料の作成の仕方には若干不満な点もあり、これはあとで伺いたいと思いますが、数字をよく並べて出して下さっております。その中でですね、短期大学の件でございますが、まあ御承知のように短期大学というのは過渡的な段階として認められてできているわけでありますが、昼間と夜間に区別して私は承わりたいと思います。まずこの昼間の短期大学ですね、これは松村文部大臣としてはこれを多くしていく考えであるか、それともこの昼間の短期大学は四年制にできるだけ早い機会に切りかえて一本にするというお考えであるかということです。具体的にさらに申すならば、たとえば教員養成の大学は四カ年制と二カ年制のがあったわけですが、教員、養成は四カ年一本であるべきである、従って二カ年の課程を四カ年にこれを昇格させていくのだということをかつて大学局長は言われたのでありますが、その方針のもとに今やられてると聞き取ってよろしいかどうかということが第一点。  それから第二点にお伺したい点はですね、教育の機会均等という立場から申しますというと、やはりこの通信教育、定時制高等学校、夜間の高等学校を含んで、そういう勤労青年が高等学校教育を終えた後に、それぞれの地域の夜間の大学ですね、これに就学ができるように、その窓口を広げてやるということは、私は教育の機会均等において非常に大切なことだと思います。しかも最近の国民経済力から考えて、働きながら学問をするというのは、むしろある程度私は本体にしなくちゃならぬのじゃないかというぐらいに私は考えているわけでございます。そこでこの国家予算という立場から考えた場合、その地にある大学は夜間の大学を併設するということはそう金が多くかからないわけですね。従って私は具体的に伺いますが、昼間の大学は一県一大学主義というのをとってきたわけですね。従ってその県の、いわゆるまあこれは県庁の所在地にあるわけですが、そこは各官庁に勤めている勤労青年もずいぶんいますし、工場に行っている人たちは工科系統のものを学びたいでしょうし、その官庁にいるところの事務官等は経済学とか、あるいは法律学を勉強したいという向学心に燃えているのがずいぶんおります。従って私はこれらの一県一大学は、この国立の夜間の大学を全部こしらえたらどうか、そうして国の予算は大してかからない、かように私はまあ考えるわけです。答弁をいただくためにこの資料に基いてちょっと申し上げなくちゃならぬのですが、私立、公立、国立のこの短期大学一つもない県が四県ございます。それから国立の短期大学があるのが十六、公立のあるのが二十五となってですね、そのいずれもないのがやはり十政県あるわけです。そうしてこの表を見ますと、私立の学校よりはこの国立、公立の学校の方がはるかに志望者が多いんですね。これはおそらくやはり充実していて、勤労青年の期待に沿うということを物語っているのじゃないかと思います。で、現在ある私立の学校をこれを圧迫しちゃなりません。これはこれで育成しなくちゃなりませんが、そのないところに、私は一県一大学主義の各大学に、国家予算は大してかからないのですから、国立の夜間の大学ですね、これをその地域々々に即応する学科内容において全部設けられたらどうか、かように考えられるのですが、御所見いかがでございましょう。
  221. 松村謙三

    ○国務大臣(松村謙三君) ありていに申しますと、実は私まだ日が浅くて短期大学について十分の知識と十分の研究を持っていないのでございます。先般も申し上げました通り、これは一つは職業的に変えたらという経済界等の意見もありまするし、中央教育審議会の何では、このままで大体やっていけばどうかという意見もあるようでございまするし、地方のいろいろの実際を私見ておりません。従いまして、これにつきましては早急に研究を進めまして、そうして善処をいたしたいと思うのでございます。今お話しの御意見等はほかからもそういう考え方を承わっておりまするし、よく研究をいたしまして、十分善処をするようにいたしたいと思います。実は私ここにお答えできる知識はこれ以上にはただいまのところはありませんので、不十分かもしれませんが、それだけお答えを申し上げます。
  222. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 私の伺っている点の焦点については、今文部大臣で十分御判断できるのでございます。その焦点はどこかというと、短期大学の、短期大学という言葉を出しましたが、私は内容云々ということに焦点を合わしているのでなくて、とにかく憲法には教育の機会均等という問題が教育の問題に関する限りは大きな筋として入っているわけですね。その立場から定時制とかあるいは通信教育でともかく高等学校教育機関までは終えた青年が幾らもおるわけです。しかもその青年がさらに進んで大学教育、その内容はともかくとして大学の教育の機会に恵まれたい、昼間にいけないから、働きながらでよろしいから恵まれたいという、そういう希望者がおるわけですね。それを一人残らず救おうというわけには参りますまいが、そういう学徒にやはり最高の学府の窓口をあけるようにするということは、私は教育の機会均等という精神を生かす立場からぜひやらなくちゃならぬ問題じゃないだろうか。それをいよいよやるという決意さえつけば、あと短期大学の内容をどうするかという問題もありましょうし、また予算があまりかからないという考えからいけば、一県一大学あるその大学は県庁の所在地くらいに設けたらどうだろうかという具体的な考え方が出てくると思うのですが、その基本的な考え方はいかがでしょう。
  223. 松村謙三

    ○国務大臣(松村謙三君) 原則といたしましては、お話しのようなことができれば非常にけっこうだとは考えます。しかしそれにはいろいろの点を見合してやらなくちゃなりませぬから、それ以上の具体的のことをただいまここにお答えを申すことは、しばらく遠慮さしていただきたいと思います。
  224. 竹下豐次

    ○竹下豐次君 関連いたしまして。今大臣のお答えのうちに、短期大学の制度の問題について中央教育審議会ですかで、このままにしておいたらどうかという意見があるということでございましたが、それは正式に何か諮問に対する答申がありましたのでしょうか。それともそういう意見を持っておる人もあるということなのでございましようか。
  225. 松村謙三

    ○国務大臣(松村謙三君) 局長からお答えいたさせます。
  226. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) 御質疑の点は、正式に文部大臣に対して中央教育審議会から昨年答申があったわけでございます。これはやはり第一の念願は、今暫定機関でありますのを恒久的機関にしろということ、それから教育内容をなるべく実際的、専門的な教育にしろ、この二点が中心であるようであります。
  227. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 続いて大臣に伺いますが、この前も大臣の御所見を承わって御所見はわかっているわけですが、私は具体的に大臣がどういう努力をされるかということを承わりたいのです。それはこの中央教育審議会長から大臣に審議会の総意をもって申し入れた中に、非常に大学の志願者が多いと、これにこたえるためには収容力を増加する、ただそれだけでは十分でない。やはりその志願者を平均化する立場から大学を質的に均等させ、さらに大学の特質ができるように配意しなければ、ただ大学をふやすだけで解決できるものでないと、こういうことを大臣に意思表示しています。ごもっともだと思うのですが、この立場とも関連があるわけでありますが、率直に具体的に伺います。それは国立、公立、私立大学、これの差別扱いですね。それから昼間、夜間の大学の差別扱いですね。こういうものが民間はもちろんのこと、官界にもこれが最近非常に急速度に出てきております。これは私はきわめて重大だと考えております。現在人事院というものがありますが、公務員の給与、任用その他を相当のスタッフをもってやられているわけですけれども、私は当面の人事院と、あるいは国会における内閣委員会の旧人事委員会に該当すべき部面でやるべき事柄の大きな問題は、私はこれと関連した問題じゃないかと考えております。終戦後しばらくなかったのですが、近ごろうわさに聞くと、官界においても私立大学出というものは無視されて国立大学出がぐんぐん伸びていく。同じ国立大半出でも東京大学出身者は他の国立大学出と能力の云々ということ以外の要素をもってぐんぐん伸びていく。同じ東大の中でも法律を出た人はさらに猛スピードをもって伸びていく。で、あたかも一部の者は人種が違うがごとく、路傍の雑草のごとく踏みにじられるような人事行政が行われようとしている。現に行われているということを私は聞いています。これは文部省というわけじゃないのです。文部省以外の名前は言いませんが、数省についてはことにひどい傾向が出てきております。こういう風潮というものがばっこしてくるようでは、それは五年、六年浪人しても東大に入らなければ、東大の法律に入らなければ、こういうふうに私はやはり青年を導いていくことになると思うのです。民間においては夜間部を卒業した人には第一就職試験さえ受けさせないわけですからね。まことに私はひどいことだと思う。そういう大学にやはり国庫から、私学振興会等はやはり貸付なんかやっているわけですからね。私学の経営その他について国家権力が介入することは決して好ましいことではありませんが、しかしやはり発言することは、やはり国家の文教政策の立場からあるわけですから、私はまず官界においてそういう官立、公立、私立の差、中間、夜間の差、そういうものが全くないようにまず率先してやられる、これは私は大臣に、具体的にできるならば閣議等で発言し、次官会議の決定を待ちたい。さらに文部大臣の権限として私立大学に、あるいは産業界、経済界に指示、指令という、そういうことはできないということははっきりしておりますけれども、やはり一国の文部大臣としてどういう見解を持ち、どうしていただきたいというような、そういう御所見というものは私は何らかの方法で反映させる方法があるんじゃないかと思うんですが、これらについての大臣の所見を承わります。
  228. 松村謙三

    ○国務大臣(松村謙三君) お話を承わりまして、これは官界におきましては、戦争前は今お話しのような弊が官僚に相当に激しかったことは私らも当時痛感をいたしていたことでございます。戦後すべてが民主的になって参りまして、人事院等も公平に取り扱っていることと思っておりますが、それが再び以前のようなきざしがまた出てくるとするならば、これは遺憾千万なことでございまして、そういうことのありませんように、われわれも努力をいたしたいと思います。民間のことにいたしましても同様でございますけれども、これは私どもから強い干渉をいたすことはできませんが、できるだけ公平に一つ採用をしてもらいたい、これにいたしましても、やはり新しい大学の出身者は夜、昼にかかわらず不利益でありますのは、いわゆる同じ学校を出た先輩という者がありませんので、これらも一つの大きな原因をなしておる。よく就職その他につきましては、民間においてもできるだけそのようなことのないように何をいたしてもらいたいと思います。機会があるならばこれらのことを要望いたしたいと考えております。それから機会均等の意味からして入学の際のことも考慮を要しますが、また一面学校を出たそのときのことも考えなくてはなりません。その画面について均斉のとれた考えをもって進みたいと考えております。
  229. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 大臣の答弁了といたします。ただ私は具体的に伺いますが、民間に対してはあえて伺いませんが、少くとも政府部内において具体的にいかようなる形において努力されるかということですが、たとえば具体的に文部大臣として閣議においてそういうことをお話いただく、さらに次官会議においてそういう基本的な問題を議題として提供して、そしてこれを確認願う、そういうようなのは私は一つの努力をする具体的な方法だと思うのですが、さような方法をとっていただきたいと思うのですが、いかがでございますか。
  230. 松村謙三

    ○国務大臣(松村謙三君) 今明確に申すもいかがかと思いますが、適当な機会に適当な方法でただいま申し上げました趣旨を貫徹するように努めたいと思います。
  231. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 その問題については私他日、いかなる適当なときにいかなる適当な方法において努力されたかということを承わりたいと思いますので、その点に関する質疑は切って、次の質問に移りたいと思いますが、関連して竹下委員から何かありましたら……。
  232. 竹下豐次

    ○竹下豐次君 関連しまして。先ほど短期大学の問題につきまして、中央教育審議会から答申になったということを聞きましたが、実は私は答申になったことを今日まで知らずにいたので、この間もああいう質問を申し上げた次第でございますが、今ちょっと拝見いたしますと、相当長い答申のようでありますので、後日でもけっこうですが、差しつかえなかったらば、写しでもいただきたいと思います。
  233. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) これはこの委員会に配付してございます。
  234. 竹下豐次

    ○竹下豐次君 矢鳩委員から私学の問題が出ましたので、私も関連してこの際簡単にお尋ねいたしたいと思いますが、私は平素学校の教育というものは、それが官学であろうと私学であろうと、これを差別して考えるべき筋合のものじゃない、日本国民を養成する上において、教養をする上において、両方とも同じように考えていかなければならないはずのものだと、根本的に私はそういうふうに考えておるわけです。ところが近頃始まったことじゃございません、よほど前から今日まで続きまして、どうも教育の状況に文部省の力の入れ方と申しますか、そういう点が非常に厚薄があるような感がしてならぬのであります。形式的にみましても、私学の方に関係しておいでの文部省の機構としては調査局でしたか、私学振興会というものがあります。大学の問題についてもやはりそこでおやりになっておるのか、そこはよく存じませんが、私学振興会でお取り扱いになっている仕事というものは、まあ金を貸してやる金融公庫みたいな仕事が大部分の仕事であって、教育の問題について大学局なり初中局あたりから官公の学校に対する指導をしておられる程度にはやっていないかのような感じがするのであります。まあ私の研究が足りないのかもしれませんが、機構も非常に小さいし、人数も少い、実際の成績からみてもそういうような結果になっておるような気持がするのでありますが、こういうことではどうしても官と私の学校の卒業生がそこにまた開きが出てくるというこれもやむを得ないことじゃないか。言いかえるというと、どうも文部省の態度、それから現在の機構におきまして、両方が別々になっていくような教育になってしまっている。それですから、それでは困るから、何とかこれを近寄らせるようにしなければならぬのじゃないか、それについては文部省の機構を改めていくことにする必要があるように思うのであります。なお私学の人がよく言われますることは、私学にはそれぞれ伝統があって、そして特徴がある、特徴があるのだ、これをどうしても生かしていかなければならぬから、官学と同じような気持でやってもらっては困る、これは大へん強い主張のように承わっております。これも一応もっともなことと思います。たとえば慶応義塾だったら福沢諭吉さんの精神が伝っておる、早稲田だったら大隈さん伝統がある、そういう特徴がある学校もありましょう。今日までそれが伝わっておるかどうか、そこに多少の疑問がありますが、今申しました二つの学校などは幾らか残っているように思います。しかしその他の学校におきましては、大体におきまして何の特徴があるかと申しましても、大した特徴というものがないのが今日大学初め諸学校の状態ではないかというふうに考えるのであります。それにもいろいろな理由があると思います。もとは創立者がその学校を経営していくことがそれぞれそれだけの力強さを持っておったし、組織もそうなっておりましたが、今は自治会なんというものがあって、なかなか創立者なり校長の思う通りに動かせないという事情もあります。ある所では、うわさによると、その理事者にあまり思わしくないような人も入っておって、それがために運営がうまくいかないというようなこともあるように聞いておるのであります。それで、これでははなはだ困りまするので、何とか文部省の方でも、現在文部大臣のそういうところに立ち入る力が私どもとしては弱過ぎる、指導力を持たしていない、監督権ももとより持たしていない、全く持たしていないわけではありませんが、非常に弱い。それでは文部大臣としても非常に仕事がしにくい。理想の実現というところまではいかなくても、相当に指導していこうと思っても、なかなかそれがやりにくい今日の制度になっている。かように考えるのであります。私学といえども政府でもって認可し、また知事以下の認可になっているところもあるわけであります。いずれにしても国民全体という立場から考えて、歩調を全く同じというところまではいきませんけれども、できるだけ近寄らせていく、また特徴があるならば、それはまた別な考え方で生かしていく方法もあるわけでありますから、今のように全然タッチしていないというようなことでは私はいかないのじゃないかと、かように考えておるわけであります。こういう問題について大臣どうお考えでございましょうか。今日のようにほとんど自由にまかしておいた方がいいとお考えになりましょうか。それともこれじゃいけないから、何とかしなければならないというふうにお考えでございましょうか。承わりたいと思います。
  235. 松村謙三

    ○国務大臣(松村謙三君) お話の通り、私学の点にはさらに一そうの力を注がなければならぬと考えております。数字で見ましても、宿学の学生は十八万、私学は二十八万、たしかそうだと思いますが、そういう数が出ますので、そうなりますと、私学の学生を上りよくするということはこれは非常に必要なことと思います。それから今日大学の自治ということがここまで絶対のようになってみますと、官学も私学もない、ただ経費を全部国が出すか、または民間の資金によるかというだけで、それはちょっと極端な言葉かもしれませんが、そういうようなことにかってきておりますから、従って私立大学にも特色を持たせながら、これをよりよくしていくということは、これは考えるべきことであって、ぜひそういうことにいたすべきだと思っております。それについてさらに具体的に申しますと、それもいいですが、私立大学の間の差が、御承知の通り今数が多くて差が非常にございます。従って、一律にいくわけにもこれまたいかないことは、官学の大学でも今日では千差万別になったと同じような形になっておりますので、これらの点をよくしんしゃくいたしまして、そうして何とかもう少し国が力を入れてやっていくべきだと、たとえば英国流の私学将励の方法、あるいはアメリカ流の方法、いろいろありますが、こういうものもしんしゃくいたしまして、一つ私学のもう少しレベルを上げて、国としても力を尽すべきであろうと考えております。
  236. 竹下豐次

    ○竹下豐次君 私が申しましたのは、大臣もそうお聞きになったのだろうと思いますが、大学の問題だけでなく、大学全体を通ずる問題として申し上げておるわけであります。その点を一つ御了解を願います。  なお私は私学のことを深く研究しておるわけではございませんけれども、人体私学にも決してすべての学校が官学よりも下っているというようなことを考えているわけじゃございませんが、なかなかりっぱな大学等もあることももとよりであります。そういうりっぱな学校がある。その次に位するものはまだ十分でないけれども政府はもう一段力を入れてやる、協力してやる、金の面だけのことを言うのではありませんが、いろいろな方面で政府の方でもう少し力を添えてやるということになりましたならば、向上する素質を持っておる学校が相当あるのじゃないか、これはほんとうに私は惜しいと思うのであります。もう一息でなるところをそのままに捨てておかれる、これを引き上げるような方策を講じていただきたい。  それから第三番目に数え上げたいのは、これはもうない方がかえっていいのじゃないかという学校もありやしないかと思うのであります。ひどい学校もあるようであります。しかし、それはこういう考えもあるだろうと思うのであります。そんなのは自然にほったらかしておいても、つぶれればそれでもいいじゃないかというような考え方もなきにもあらずと思いますが、しかしそれは私は非常に冷い考えでありまして、学校の問題は普通の商売と違いますから、損するものはつぶれてもいいというわけにはいきません。その間に非常に間違った教育をされたり、間違った考え方を持たせるような学校があるとすれば、それは何とか今のうちに考えなければならないのではないかと、かように私は考えております。その点も一つよくお考えを願いたいというふうに思っておる次第であります。
  237. 松村謙三

    ○国務大臣(松村謙三君) よくお話を承わりました。私学の振興には努力をいたしたいと思います。
  238. 竹下豐次

    ○竹下豐次君 それから最後にもう一つ希望を申し上げておきますが、いろいろな問題で文部省の方としては、大臣としましては仕事のしにくい今日の制度になっているように思います。どうすればいいかということでありますが、私は文部大臣の権限をしっかり強くするような制度に改めて、いかなければならないと思います。今のままの大臣の権限では、これはなかなかいくらあせっておやりになりましても、効果をあげるということは困難だと私は思います。これについては、私は大臣がそれをそうするとかいうようなお答えを今ここでいただきたいとは思いませんが、一つ考えを願いたいと思います。
  239. 堀末治

    ○堀末治君 今矢嶋君の質疑ないし希望に対して、私も同様のことを最近特に思っておるのであります。それは、いわゆる学閥のあることは、昔から、特に戦前のひどかったことは、大臣もおっしゃった通りであります。そこで私最近、前の東大総長の南原さんのある書いたものを見たのでありますが、いわゆる日本の今の学制の改革は、私どもアメリカさんから無理に押しつけられたものだと、こういうふうにまあ思い込んでおったのでありますが、その書いたものを見ますと、当時学者の間にも、日本の学制は戦前のあり方ではだめだ、どうしてもこれを改革しなければならないということを考えておったが、ちょうどアメリカの使節団も来て、この人方といろいろと話し合ってみたところが、自分らの考え方と非常に一致しておったので、私はこの学制改革を支持したのだ、こういう御意見があったのであります。そこでなるほどそんなことであったかと思いながらそれを読んで行きましたら、その中で特に南原さんがおっしゃっておることは、いわゆる日本の学閥の弊害をあの人は痛切に感じて、私はずっと読んだことですから、今詳しくは覚えておりませんけれども、とにかく学閥ということは、日本は非常に誤まっておるということについてあの人は考えられて、この学制改革を支持したということであるのであります。そこで私、南原さんという人は、失礼ですけれども、学閥が東大に強いことを、私は全然学校を出ておりませんけれども、それを諸官庁のお役人において特に平素感じておるのでありますが、南原さんは東大を出た方でないのではないかと思って、南原さんは一体どこを出た人かなということを聞いたら、東大の出身だということを聞いたのであります。東大を出ておりながら、東大のあの強い学閥に対してそういう考え方を持っておられるということに、私非常に敬服したのでありますが、幸いにそういうところから、一切ばらばらに分れておったいわゆる一種の職業的な学閥的な大学を排して一律の大学にした。なるほどそういうところに大きい考えがあったのかというふうに私啓発をされたのでありますが、実は最近、じきこの間のことであります。これも官吏であります。しかしこの人は技術畑の人ですが、この人もそういう学閥がなくなったということに対して、技術畑でありながら非常に愉快に感じておったものと見えて、私どもは何も、そういう学校も何も出ておりませんけれども、私はどちらかというと工業的立場におりますために、技術家を非常に平素重く見ておる。ところが官界に来るというと、いわゆる技術畑の者はとにかく虐待されておることは日に見えておるのでありまして、非常にその点、いわゆる技術畑を出た人に気の毒に感じておったのであります。ところがこの間私の部屋へちょっと来た――ごく簡単な用件で来たのですが、君、このごろどうしていると言っていろいろ話しましたら、そのときに、いや先生、また厄介なことが出てきた、また学閥が頭をもたげてきて、そうしていわゆる公務員法を改正して、もう一ぺん学閥を強くしたいというふうな方向に持ってゆく連動がしきりと行われておるのであるから、そういう場合には先生一つお骨折りを願いたいと、こういうことで話を終えたのであります。ごく短かい時間でありましたから、そうか、そんなことがあったら一生懸命打折ってあげるから。こう言って私別れたのでありますが、何かそういうような傾向が政府部内に――今の公務員法等を改正して、そういうような方向に持ってゆくというような傾向を大臣、お耳にでもされておりませんでしょうか。
  240. 松村謙三

    ○国務大臣(松村謙三君) そういうことは私どもの耳には入っておりませんでございます。そういう改正の計画などは、これは許さるべきものでは断じてないと考えまするし、まさかこの民主政治の今日に、そういうことを考えているようなことはなかろうと思いますが、十分注意をいたしまして、そういうことのないように取り計らいます。
  241. 堀末治

    ○堀末治君 ぜひどうか、そういうことが――やっぱりせっかくそういう趣旨で学制が改革されたのに対して、技術畑の人はだんだん前途に光明を認めたといいますか、喜んでおる際に、またそういうような傾向がこの官界の中に起っておるということは、非常に前途憂うべきことだと私は考えるのでありまして、もしそういうようなことがあれば、われわれ学閥も何もないものですから、率先してこれを打破するように努力しようと、かように考えております。どうか今までお耳にとまっておらなければなんですが、この機会にお耳にとめていただきまして、ぜひそういうことのないように御努力を特にお願い申し上げておきます。
  242. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 大臣に関する質疑を一、二点で終りたいと思います。この法案の中に原子核研究所共同利用研究施設として東京大学付置するということが提案されておるわけでございますが、この点に関しまして、午前中参考人からも意見を聴取いたしました。原子核研究所には多額の予算を要するということも承知いたしました。でき得れば数個の大学に、他国に見られるような研究所ができればけっこうなのでございましょうが、それも現実問題としてむずかしいので、東京大学付置されることになったようでございます。そこでいずれ大学の自治等とも関連があって、今後運営の面に一、二問題が起ってくるのではないかとも推測されるわけでありますが、そこで私は強く意見として申し述べたい点は、午前中参考人の意見も聞いたわけでありますけれども、東大に付置するからといって原子核研究所の施設が東大の独占物になってはならない。さようにならずに、全国原子核研究の学徒にまさしく共同利用研究施設としてその成果を上げ得るように何らかの方途を講ずる必要がおる、かように私は考えるのでありますが、この際、大臣の所見を承わっておきたいと思います。
  243. 松村謙三

    ○国務大臣(松村謙三君) 御趣旨の通りと思います。そういうようなことについても、先般大学当局とも話をいたして、東京大学に独占されるような形にならないようにということを申しておったのですが、運営委員会などを設けまして、そうしてそれには各方面のその道のエキスパートを入れて、単に東京大学ばかりじゃなくて、そこですべての運営をやってゆく、こういうことにいたすつもりでございますから、御心配のようなことはできるだけ避けたいと思っております。
  244. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それでは最後に伺います。松村文政にも関連して若干質疑があったようでありますから、私は最後に四点について承わりますから、ごく重点的に、簡単でよろしゅうございますから、大臣の所見を明確にお答え願いたいと思います。  その一つは、三十年度の一般会計予算修正が御承知のように大幅になされたわけです。この予算修正は、自由党と民主党の共同修正の形をとっているわけです。現在は政党政治でありますから、民主党内閣である鳩山内閣の国務大臣であり、文部大臣である松村さんもこれは無関係の問題ではないと思います。文部省関係は六億七千万円の増額修正がなされて、ほとんど八方美人的になされているわけですね。そもそも全修正の中に一番そのウエートがかかっているのは、河野農林大臣の所管される農林省関係が一番大幅に予算増額がされているわけですね。私は予算のぶんどりをやれということを申し上げているのではないのですから誤解されないように……、ところが文部省関係は六億七千万ということになっておる。しかもこの中を見ますと、大学関係の修正というものは全くないわけですね。私はこの前も管理局長にちょっと伺いましたが、終戦後十年たって戦災大学の施設の復旧ができていない、約六〇%しかできていないのです。だから私はあれほど大幅な修正が議論されておれば、おそらく文部省を代弁しての松村文部大臣の見解によって、国立大学の施設関係はものの五千万も、あるいは一億くらいは増額されるのかな、こういうふうに外から予想しておったわけですが、それは少しも入っていないわけなんですが、あの予算案の修正に当っては、民主党所属の松村代議士としては、全く関知されなかったのかどうかということが第一点です。  それから第二点は、これは地域では相当の問題になっておりますので伺いますが、やはり大学関係があると思うのです。それは神戸に商船大学を新設する場合に、当委員会で最も議論されたのは、東京商船大学を充実すべきではないか、それからそれの充実もはからずに東京高等商船、神戸高等商船の後身にも当る神戸商船大学を作ることはいかがかという議論がずいぶん戦わされました。当時の東京商船大学の学長は敢然として、神戸商船大学は新設すべきではない、東京商船大学を充実すべきであるということを敢然と本委員会でも発言されました。私はその度胸にはいまだに敬服しているのですが、やられたのです。その当時の神戸商船大学新設の前提になるのは、海技専門学院という運輸省所管の船員再教育機関があったのです。その当時多く議論されたことは、さなきだにタコの足の大業が多いときに、東京商船大学を充実することに重点を置いて、新規の神戸商船大学を作らなくても、海技専門学院という船員教育機関一本で充実したらどうかという、私はごもっともな意見だと思ったのですが、ずいぶん主張されたのですが、結局海技専門学院という運輸省所管のものがあっても差しつかえないのである。神戸商船大学と同居させてもうまくいくということで、多数でこれは誕生したわけです。ところが現在になって、私はわれわれが予想した通りの紛糾が起って、運輸省は自分の所管の海技専門学院を芦屋の地にこれをまとめたい。従って運輸省の予算の中からそこに建築、増築をして充実をしたい、こういう見解であり、文部省側としては、いや、今海技専門学院が芦屋の方に移られては、深江の商船大学予算がないし、設備費等を持っていかれては大事だということで対立して、そこで運輸省はこれを押し切るために、運輸省の設置法の一部改正をして押し切らんとしているように聞いているわけでありますが、これは私は、予算は運輸省にありますけれども、運輸大臣と文部大臣の間で私は政治的な解決をはかるべき段階にこの問題は来ているのじゃないかと、かように考えておりますが、文部省とし、文部大臣としては、これをいかに解決されようとしているのか、これが第一点。  最後に承わりたい点は、どうも文教の問題については、基本的な重大な転換を来たすかのような報道があらゆる方面から出て、教育関係者を非常に動揺させるのでありますが、かように不安定なことを遺憾に思う一人でございます。ここに大臣がおいでになっておりますから、あと伺いませんから、これだけを伺うわけですが、それは私は、教育委員会制度というものは、ずいぶん議論されていますが、大臣によけいなことは聞かないのです、一つだけ聞きます。大臣は今の教育委員会制度は検討しなければならぬ、そのうちで市町村教育委員会の必置性というものは、その地方公共団体の規模等からいって設置単位というものは検討しなければならぬというところにあなたは重点を置いて、そういう考えでおられると、かように私は了承するのですが、それに相違ないかどうか。  それからまた教育二法の刑事罰につきまして改正する云々ということが報ぜられて、ずいぶんといろいろと動揺を来たしておりますが、少くとも、私は松村文部大臣の人となり、お考え方、本委員会においての御発言等から推察して、教育二法を今改正して刑事罰云云ということは、大臣としてはお考えを持っておられないように私は推測しておるのでございますが、長くは要りません。非常に時事問題として騒がれておりますので、以上三点にわたって簡潔、重点的でよろしゅうございますから、お答え願いたい。
  245. 松村謙三

    ○国務大臣(松村謙三君) お答え申します。第一の予算修正に関しましては、私その中に介在をいたしておりませんで、自由党と民主党との間に適当なあんばいをいたした、こういうことでございます。しかし大学のなににつきましては、間接かもしれませんが、私立大学の振興に関する経費があると思います。  それから育英資金が一億というのがございましたが、これをこちらからあとから注文をつけて、同意を得たのは、そのうちの三千万円だけは学生寮に回しまして、七千万円を大体大学の育英者への貸金を三千円にした部分に回して、それだけよけい大学生を入れろ、育英資金を給すというところに回した、こういうわけでございますが、そういうところはあとから事務的に話しをいたしましたが、これ以外のところは自由党と民主党の政務調査委員会の間に取りきめができたわけであります。大学にはそれだけ関係がございます。  それから神戸の問題は、実は向うの方で予算が出たことを私は知りません。そこでだんだんこういうことになって参りますと、従来の経過は別といたしまして、あの海員なんとかというのは、やはりあとになりましても、運輸省の所管のものでありますので、こちらの施設に影響を及ぼすならば、これはなにしますけれども、それには及ばぬと申すものですから、それ以上突っぱりもできませんし、予算も向こうに出しておるものですから、こちらの大学の経営に影響ある点だけは、厳重に向うと話し合いをいたしまして、遺憾のないようにしたわけでございます。  それから教育委員会の制度の再検討は、これは白紙の上に立ってやりたいと思うておりますが、教育二法案の刑事罰につきましては、私は毛頭そういうことを考えておりません。もしも何か私が教育上に大きな変革をするかのごとき世間にお考えがありますならば、私は就任以来、無責任にこういうことをすると言ったことは一回もないつもりで心がけておるわけでございます。それは大きな変革をせないとは申しませんけれども、単にそういうことが伝えられておりますならば、そういうことを軽率にやる考えは毛頭ないということだけを申し上げたいと思います。
  246. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 私は大臣の質疑はございません。  そこで、ただいまのに関連して局長に伺いますが、あとの施設関係を伺いますけれども、神戸の問題ですね、今の大臣の答弁では、文部省としては海技専門学院が芦屋に移ることを了承したと、それによって解決する、こういうことなのですね。
  247. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) 両省の事務当局の間におきましては、最初から意見の対立はないのであります。船員教育審議会が答申をいたしまして、養成と再教育は分けた方がいいということから研究いたして参りました。ただ文部省は分ける上におきまして、ただいま大臣が言われましたように、急に施設を持っていってしまうとか、急に両方で使っている人を一方に片寄せるとか、あるいは校舎をどちらかに片寄せるというようなことがありますると、従来の計画に支障が生じますので、そういう点についての支障のないことを運輸省が保証いたしまして、その上に立ってこの予算を運輸省が出すことに同意いたしたわけであります。反対は大学の一部の教員及び外部の方々からあるわけでありまして、これも一つの御見解とけ思いますけれども文部省としては、今進みます方角をもって支障なしと考えております。
  248. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 この問題はそれで終りますが、何ですか、海技専門学院のあの設備で、それにあずかってまあ神戸商船大学は今まで僕は運んで来ていると思うのです。大学ができる当時、僕はあそこを見たのですが、海技専門学院というものはかなりの設備を持っていましたよ。商船大学ができたといって膨大な予算が要ったわけではないけれども大学というものはあれでほとんど運営してきておったと思うのです。それでその設備をごっそり持っていったら、おそらく神戸商船大学は多額の予算を一度に出さなければ、私は大学の講義ができないのではないか、かように思うのですが、その点はどうですか。
  249. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) すでに二年間で一億の金を投じまして施設設備をいたしております。運輸省は設備を持っていくとは申しません。全部置いておくというからわれわれは同意いたしております。
  250. 吉田萬次

    吉田萬次君 簡単な質問でありますが、先ほどの大臣の御答弁にありました教育二法案に対するあなたの見解でありますが、この教育二法案に対して刑事罰、行政罰の問題につきましては、刑事罰を抜いたならばあの法案というものはほとんど役に立たないようにわれわれは考えておる。どうしてもあれに対する刑事罰がなけらねば、ほんとうの私は改革はでき得ないと思います。従って私はこの問題はおそらく民主党の間にも自由党の間にも相当にこれに対する議論があり、またこれに対する意見も持っておられる諸君がありまして、この問題がどういうふうに発展するかということについては、軽率に私は考えることはでき得ないと思います。従って大臣の今のはっきりした御答弁というものは、さように承わってよろしゅうございますか、どうですか。
  251. 松村謙三

    ○国務大臣(松村謙三君) 将来の政党の間でどういうことになりますかは、これは私の関知することではございませんけれども、私の所見をお問いになりましたから、私はそういう意思がないということをお答えを申し上げたわけであります。なぜそういう意思がないかと申しますと、この教職員を監督する上においては、これはいろいろのやり方があると思います。それで一応現在通ったこの制度がございますし、これをあのときのいきさつ等もありまして、これを今廃止することは考えませんけれども、これをさらに重くするというようなことは、今日の事態において私は妥当ではない、こういうふうに考えておりますので、教育の安定ということをほんとうに考えますならば、ほかにいろいろの方策もありまして、ああいう刑事罰等というようなことがなくても、できる方途は他にもあると思います。そして今現にやりましたあの成績等もずっと見ますと、伝家の宝刀のような効力はやはりあるのでありまして、それを一歩進めるところまで出るということは、これは私はとらないことであり、またあの法案ができたときのいきさつ等も考えてみますと、私はその道をとらないと、こういうふうに考えたからお答えを申し上げたのです。
  252. 吉田萬次

    吉田萬次君 私と大臣と見解を異にしておりますから、ただいま議論するときではありませんので、これは十分に考慮していただかなければならぬ問題であるし、将来この問題は必ず再燃すべきものと私は確信しております。
  253. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 審議を本法案に返しまして、大臣の質疑は終りました。それで他に大臣に質疑がなかったら、私は局長にこの法案について伺いたいと思いますが、いいですか。
  254. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 委員長から発言いたします。  ただいま審議の主題となっております議案について、大臣に対する御質疑のあります方は御発言を願います。
  255. 高橋道男

    ○高橋道男君 この法案にも間接的には関連があると思うのでお尋ねいたしますが、大学を整備されることは非常にけっこうでありますが、ただいま大臣のお話を伺いますと、育英費のうちから三千万円かをさいて学生の寄宿舎をこしらえるということをおっしゃいましたが、それと関連して学生の健康保険ですね、これのお考えはないかどうか。学生が相当たくさんおりますけれども、これが学資の不十分なことから、あるいはアルバイトをする、いろいろな健康上に無理していることも関係があって相当、ずっと以前の状態と比べると学生の健康状態に憂うるべきものが相当あるように聞くのであります。学生の中にもそういう希望があることをちょいちょい伺うのでありますけれども、寄宿舎の方の設備をお考えになるのであるならば、この学生の健康保険ということについても、何らかのお考えがあるかと思うのでありますけれども、何かお考えがあるかないかをお伺いします。
  256. 松村謙三

    ○国務大臣(松村謙三君) 大学局長に詳しくお答えを申し上げさせます。
  257. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) お話の健康保険は大へん重要な問題だと考えておりまして研究いたしております。これにはいろいろの前提がございまして、ここ数年の間におきまして、まず各大学における学生の医療施設を充実せしめようというような意味において医療施設を整備して参りました。次に、本年度の御審議いただいております予算に計上いたしておりますのは、現実に学生の罹病、罹患の状況がどういうところにあるかということを、現実について詳細に本年度は調査いたしたいと考えております。これらの前提の上に立って、なるべく早い機会に学生の健康保険制度につきましては、実現を期したいと思っております。
  258. 高橋道男

    ○高橋道男君 もう一点、それにも関係があるのでありますが、せんだって、一月ばかり前の新聞であろうと思いますが、学生のサナトリウムの設備がどこかにできた。それは主として民間資本によってできたようなふうな報道がございましたが、これに関しては文部当局から補助金その他何か援助をされたことがございますか。
  259. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) 政府の補助金といたしましてもし支出することができますれば、これは学校関係費用であろうと思うのであります。御指摘の団体につきましては、その点をいろいろ考慮せられたようでありますが、まだ実現してないのでございます。文部省関係におきましては、かつて学徒援護会においてそうした施設を計画したことがございまするし、援護会におきましては、できれば近い将来に援護会としてもそういう点を研究したいと申しておるようでございます。
  260. 松村謙三

    ○国務大臣(松村謙三君) 今お話のサナトリウムにつきましては、この間元大使をしておりました堀内君がたずねて参りまして、そしてあの建築はりっぱにできたそうです。そして来月ですか、早々竣工式をあげるそうであります。非常に施設もよくできたので、ぜひそのとき来てくれということです。行って見てきたいと思っておりますが、あれはりっぱにできたようでございます。
  261. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 大臣に対する質疑がなければ、先ほど矢嶋委員から御要望の管理局長からの答弁を求めたいと思いますが……。
  262. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 管理局長の質疑はあと回しにして、この法案の内容について簡単に承わりたいと思います。  まず承わりたい点は、義務学科の分離が三つ出ているわけですが、これを分離して学部に昇格することによって、学生の定員増というものはどの程度になるのか。要するに、その大学の収容人員の移り変りですね。それから、この分離する二学部の予算増は、平年度においてどの程度のものか。さらに、学部に昇格した以上は、これから年次計画で充実されるのだろうと思いますが、その充実計画の概要というものはいかなるものか。さらに、これは他の移管等にも関連しますが、地元の寄付とか何とかいうものを要請されたのかどうか。そういう予算面のことを承わりたい。
  263. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) 第一の点の御質疑でありますが、学生定員の増減は、本年度はございません。
  264. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 将来……。
  265. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) これは本年度のこの予算性質上いたしにくいので、将来は、この点につきましてまた計画することがあるであろうと思うのであります。  それから、ここに計上いたしておりまする学部関係予算総額四千二百万円でございます。将来の計画つきましては、またその年度々々に従いまして予算を積算いたしたいと思います。これは単価も変って参りますので、今から予見いたしますことは差し控えたいと考えております。  それから地元の寄付は、文部省関係からは要請いたしておりません。ただ、地方におきましては非常に各大学の充実について関心を持たれておりまして、それぞれ寄付をせられたのでありまするが、これは当初、これらの分離学部に農学科ができますと同時に多くを寄付せられております。将来に向っての寄付はほとんどなかろうかと思います。
  266. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 具体的に伺いますが、佐賀大学の農学部の定員は、本年何人であるか。それと、将来についてそれらの定員増について検討することがあるであろうというようなことを答弁されておるが、学科を分離して学部にする以上は、何年計画で何講座にしてどうだという、そういう計画がなくてはこれは審議できぬと思うのですが、あるであろうじゃこれは困る。もう一ぺん答弁して下さい。
  267. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) ただいま学生定員と承わりましたので、学生定員は年々の時間の状況等を見て、そのときに応じてきめるわけであります。今、講座というお話でありますれば、これは八講座をもって一カ年とします。
  268. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 三大学ともですね。
  269. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) これは本年から完成まで八講座で一応参ります。しかし将来学科を増設するとかというような場合は、これは別の問題であります。
  270. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 具体的にもう一つ伺いますが、結局佐賀県というと、これは地方財政緊迫の典型的な県でございますが、このたびの分離学部、農学科を分離して農学部になるに当って、県費を幾ら支出したことになっておりますか。
  271. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) 六千万円でございます。
  272. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 少しこまかくなりますが、今後はもう佐賀県から、あなたの方でかような部類の寄付を受けるというようなことはないかどうかというのを一点と、この六千万円については、起債とか何とか、自治庁当局とあなたの方で協議して地方財政の窮迫を少しでも助けるような、そういう措置をとられたのか、全くそういうことは関知していないのか。少しこまかいですが、一点お伺いします。
  273. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) すでに出したのが六千万円であり、本年出すべき金が一千万円余であります。それだけで一応この問題は解決すると考えております。こういう場合、財政の問題について、自治庁と県との問題につきましては、文部省は何ら関与いたしません。
  274. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 では次の公立大学の移管についてでありますが、これは、各公立大学は現在の大学の規模のまま移管されたのか。本年度において、あるいは明年度において、現在の各大学の規模を何らか変更される計画はあるのかどうかという点が一点と、それからこの学部の移官に当って、香川県並びに鹿児島県から幾ばくの寄付を国庫に受けておるか、その点承わりたい。
  275. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) 香川県から六千百万円余、それから鹿児島県からは四億五千万円程度の寄付を受けております。従いましてこれらの寄付によりまして、規模と申しまするか、相当建物その他の設備をこの際充実することになっております。
  276. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 講義数、学生定員というようなものは、現在の公立大学のまま移行する、かように了承してよろしゅうございしますか。
  277. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) その通りでございます。
  278. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 これら移管に伴って大学の教職員の他大学との交流とか、あるいは国立大学になるがゆえに、資格に疑問のある者が整理されるとかいう、そういう人事問題の見通しはいかがでございますか。
  279. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) 移管に至るまでりっぱに県立大学として営んで参っておりまするから、移管いたしました場合に、人事の交流といってほかから教授陣容を増強しなければならぬというような必要はないと思うのであります。ただ移管いたしました場合には、一応全員が入って参りまするけれども、将来既存の学部の担当教官等の関係を見合いまして、移管以後におきましては、相当これらの大学におきましては、人事の配置転換が行われるものだと考えております。
  280. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 次に大学院でございますが、この九カ所に大字院が設置されますが、これらの大学院の定員というものは、大体同様であるのか、またその定員はどの程度か、その点承わります。
  281. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) 新設でございますので、新たに入営定員八百四人を設けるわけであります。
  282. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 各大学への配分は、一々に答弁いただかなくてもよろしゅうございますが、大体どの程度なんですか。
  283. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) 大体教授一人が二人を持つのが基準でございます。
  284. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それはまあ一人が一人を持つということはわかりました。私が承わりたいのは、この九カ所に設けられる大学院の、その方針から来るところの定員というものは大体均等なのですか。それともこれらの九大学院は、ABとかあるいはABCとか、その規模において何段階か差等があるのでございますか。
  285. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) 二十二講座、三講座、四講座程度、いろいろ講座の数が違いますから、従って教授を基準といたします入学定員に多少の差はございまするけれども、医学部のことでございまするから、大体の形か斉一でございます。
  286. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 大体同じだと言いますが、私は熊本大学の定員は五十二人と開いておるのですが、八百四人だと九で割ると大体九十人くらいで、ずいぶん違いますが、どうなんですか。
  287. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) 私の申しますのは入学定員でございます。矢嶋委員お話のは官制定員ではないかと思います。
  288. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 そうするとあなたの八百四人というのは入学定員ですね、一年間の。
  289. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) その通りでございます。
  290. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それで私の言う五十二人が官制定員ならなおおかしくなるじゃございませんか。
  291. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) 幾らでお割りになりましたか。
  292. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 八百四を九で割ったらいかがですか。
  293. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) 九つのほかに既存の大学院の中に医学研究科を設けましたものが七つの元の帝大及び六つの元の官立大学、すなわち全部で十三あるのです。
  294. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 私はここに九カ所の大学院が設置されたのだから、九カ所に新設された大学院のことを伺っているわけで、それでそこの食い違いができたわけですが、それからいえば、結局私が言ったように、九つの大学院は、大体一つ大学院が官制定員五十人くらいということなんですか。熊本大学は五十二人と聞いている。
  295. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) 五十人までないと思います。二十二講座であれば四十四人程度でございます。
  296. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 あなたの分母と私の分母に大きな相違があったので合わなかったのですが、やっと合いました。  そこで伺いますが、この九大学院を設置した場合の、九大学院だけですよ、平年度における所要予算というものはどのくらいですか。大まかでけっこうです。
  297. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) 大学院の経費という点で非常に当惑いたすのでありますけれども、要するに教授に学部と共通であります。それから講座研究費も共通でございます。施設設備も共通でございます。要するに学生経費だけ切り抜いて申せば、大学院固有の増額ということになるだろうと思います。その点でありますが、ちょっと私今医学の学生定員の単価を調べてお答えいたしますから、しばらく御猶予願います。
  298. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 大学局長が調べている間に、ちょっと管理局長に伺います。大体の整備の状況というのはこの前承わったわけですが、タコの足大学の整備というものは一段落ついたと、こういうふうに了承してよろしいかですね。さらに答弁のためにもちょっと申し上げますならば、まだ分校というものが若干ありますが、これらを整備していこうという方針でおるのか、この程度は残しておかなければならぬと、こういう方針でいるのか。さらにやや具体的になりますが、教員養成大学は二年課程と四年課程がございますが、県によればこれが数カ所に分れているところがあり、いずれも四年課程の大学に独立さしてほしいという運動のある地域の大学もあるやに承わっておりますが、これらに対する基本的な方針というものは、予算関係もございましょうが、今の段階においてはいかように立てられておるのか承わります。
  299. 小林行雄

    政府委員(小林行雄君) 大学の統合整備の進行についてのお尋ねでございますが、もちろん当初統合計画を立てまして、その計画に従って一応完成したようなところもございますが、まだ中には計画計画としてそれが実施されておらないというようなところもございます。しかし、相当もうすでに年所を経ておりますので、この大学を地元の関係というものもいろいろ無慮しなければなりませんので、当初の計画通りにすべてが必ずしも整備されなければならぬというふうには文部省としては考えておりません。しかし、地元とも十分話し合いがつきまして円滑に整備ができるものはやはり統合して参りたいと思っております。先般この委員会でお尋ねのありました福岡大学の久留米分校というようなものにつきましては、これはやはり教育上必要であるというふうに考えて、できるだけ早い機会に一応統合整備をやりたいと考えております。  なお、教員養成大学についてのお尋ねでございますが、この教員養成大学に関しましては、一府県内で四年制を設けるために二つ以上の大学設置してもらいたいというようなものが相当ございます。これについては、前の国会でいろいろ御決議もあったようでございますが、現在この四年制の教員養成大学を、従来の何と申しますか、師範学校の伝統に基いて分けていくというふうなことになりますと、国として非常に大きな経費も要することになりますし、また経費ばかりでなく施設設備、あるいは教員、教授の陣容等も非常に膨大なものになりますので、そういったものをまず着手するよりは、まず既存の現在の大学の整備充実ということにもっと重点的に力を注ぐべきである、こういうふうに考えておる次第でございます。
  300. 吉田萬次

    吉田萬次君 ただいま福岡大学の整備統合ということが出ましたが、福岡大学の整備統合をどういうふうにせられますか。ひいてはこれと同じような立場にある愛知県の学芸大学をどういうふうに整備統合するお考えか、承わりたいと思います。
  301. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) 九州大学が久留米に分校を持っておりましたが、九州大学に関しまする整備統合計画といたしますれば、この分校は、一般教育の一部でありますので、なるべく早い機会に福岡に持っていく計画を実は持っておったわけであります。それが先般の北九州の災害によりまして、この分校に通じまする橋が落ちましてから、大学当局としても、文部省といたしましても、統合促進しなければならぬと考えるに至ったのであります。しかしながら、この春以来久留米市におきまして、何とか教育施設をそのまま置くか、さもなければ、かわるべき教育施設を置いてもらいたいという要請が出て参りましたので、大学文部省が相談いたしまして、一応統合をこの春行うものを延期いたしております。大学としては、なるべく早く統合いたしたいのでありますが、何か県なり地元におきまして、しかるべき教育施設をその分校の跡に設置せられることがわれわれとしては望ましく考えまして、地元の各当局とその後いろいろ意見を交換しつつあるわけであります。
  302. 吉田萬次

    吉田萬次君 愛知大学の方は。
  303. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) 愛知の学芸大学の分校につきましては、当初から統合という計画は持っていないわけであります。岡崎を四年課程とし、名古屋を二年課程といたしておりますが、これにつきましては、昨年の暮、衆議院の旧文部委員会におきまして、こういう教員養成施設は土地の状況に応じて考えて、必ずしも一県に四年課程一カ所という考えをとらないようにという御決議がありましたので、いろいろと研究はいたしておりますが、これだけでなく、他にも同様の性質を持っておりますものが非常にたくさんございます。これらを実施いたすということになりますると、相当多くの施設費及び経常費を要することでもありまするし、また地方におきまして相当意見の対立等もあるわけでございますので、それらをにらみ合って今研究中でございます。これにつきましては、まだ方針が確立していないわけであります。
  304. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 さっきの続きの管理局長に対する質問ですが、大学が新設された当時、今度もその場合ですが、公立から移管される場合あるいは学部に昇格をする場合に、よく地元との間でかくかくの施設をこしらえて国庫に寄付するからというような取りきめが――この取りきめ自体は僕はいいとか悪いとは言いません。そういうことが現実に新制大学ができる当時からずいぶんあったわけですが、施設関係でそういうような申し合せの履行された率というのはどういう状況ですか。
  305. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) 私から申し上げます。国立大学設置いたしましてから、大体今まで集まりました寄付が三十億程度あろうかと思います。なお現に関連いたしておりまする寄付がまあ十七億ばかりありますけれども、そのうち十一億程度は納入しておりますから、なお六億程度が残っておるのではないかと思っております。それからまた、このたびの合併その他の関係におきまして、やはり六、七億程度の新たな問題がここに発生いたしております。
  306. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 ちょっと勉強のためだから聞いておきたいのだが、これらの財源ですね、これらは全部何ですか――全部と言っちゃ語弊がありますが、これは一部県議会の承認に基く公共団体の自主財源から出るものと、それから一部は篤志家の寄付ということになると思うのでありますが、しかし大きな部分は、とにかく都道府県議会の承認を得た寄付ということになっていると思いますが、起債なんかでやっているのはないのでしょうね、どうですか。財源の点について、大まかに一つ伺いたい。
  307. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) 多くは県の財源及び地元の市の財源、あるいは関係郡区域等の町村の財源及びお話のように集めました寄付の財源だと思います。直接最初から国に寄付するための起債というものはないと思いまするけれども、たとえば県立として起債を受けて病院を作り、その作った病院を国に寄付する、こういうような事例はあるようであります。  それからついでに、先ほど大学院の学生経費でありますが、学生一人当り七千二百円でございますから、全体で大学設置に対しまする費用は五千二百万円程度とお答え申し上げます。
  308. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 ちょっと今聞きそこなったのですが、九大学院で平年度予算五千二百万円と、かように承知してよろしいのですか。
  309. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) 予算でございますと九でないので、十六医学、歯学研究科、こういうふうに御了承をいただきます。
  310. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 一切がっさい大学院の平年度の総予算は五千二百万円ということでありますか。
  311. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) このたび新設いたします大学院の予算でございます。医学部関係の――博士課程の医学部の予算、ここに新設いたしました部分でございます。
  312. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 私は質問を、こう聞いた方がよろしいと思うが、大学院の規模は若干狂いがあると思うが、それじゃ大まかな例で、岡山大学大学院を設置する、これは平年度でどのくらいの国庫所要となるのか。
  313. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) 五十人定員とすれば、三千六百万円程度と思います、学生経費が。
  314. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 わかりました。安いものですな。  次に、これに関連して参りまするが、日本学術会議の大臣に対する申し入れによると、修士課程のみを置く大学院が望ましいと、それも望ましいと書いてありますが、この出された資料によりますと、修士課程のみを置くものは、国立には今までもないようですし、それから今度も新設をされていないようですが、修士課程のみを置く大学院を考慮する必要があると学術会議の方から申し入れられたことは、どういうところに考えがあるのか。またこれを取り上げられない文部省の御見解はこういうものでしょうか、伺います。
  315. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) 学術会議のは国、公、私立を通じてでございますから、なるべく大学院を置きやすいというような点から申しますれば、多くの私立大学等につきましては、修士課程のみを置くものが相当予想せられんだろうと思うのであります。それかつ国立につきましては、全部の大学考えればその点は同じでありまするけれども、方針として、昔の帝国大学、自立大学を基礎といたしました学部に限っておりますので、これらにつきましては、当初から十分博士課程まで置き得る大学でありますので、国立については、最初から修士課程を併存する計画で進んで参ってきております。
  316. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 その点わかりました。さらに学術会議の方から大学院の講座研究費の増額とか、特に助手の増員等をはからなければ十分の成果を上げ得ないというような申し入れがなされておりますが、この申し入れに沿うような処置をされているのかどうか、その点承わります。
  317. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) 教授力の充実という点につきましては、ここ三年ばかり最初の年は百人、次の年は七-五人、今御審議いただきます予算におきましては、百四人の完全講座の充実の費用をお願いいたしております。それからさらに講座研究費につきましては、大学設置というようなことを予見いたしまして、先般、大学院を設置すべき学部に関連する講座研究費は他の大学の倍額に増額いたしております。さらに設備につきましては、昨年以来、昨年は理工系、本年は生物系というふうに、大学院に関しまする設備を充実いたしております。また国立文教施設の計画につきましても、大学院というものを頭に入れて計画いたしております。
  318. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 では次に茨城大学、工業短期大学というものが新設されているわけでありますが、これは何学科を置き、完成年度には学生定員は何人で、平年度の所要予算幾らか、さらにこの新設するに当って、茨城県の地元から幾ばくの寄付をあなた方は要請されたのか承わります。
  319. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) 茨城の短期大学は工学でありまして、機械と電気の二学科をもって成り立ちまして、学生数は八十人でございます。
  320. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 完成で。
  321. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) これは、やはり、入学定員でございます。それから費用は、このため固有の費用といたしまして二百万円程度でございます。それから茨城大学短期学部に関しまする地元寄付は一千百五十万円でございます。
  322. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 一千百五十万円というのは、結局、施設並びに設備費でこの一回に限る性質のものかと思いますが、そうですか。
  323. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) これは大学と一体でございまするので、図書館を中心としてこしらえた施設を寄付するということであります。
  324. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 その図書館は、この短期大学でない茨城大学利用できるわけですね。
  325. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) 昼夜同共通で利用いたします。
  326. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 そこで局長に伺いますが、この短期大学の年間予算二百万程度で勤労青年の向学心にこたえ得るとなれば、その点からまた国家の人材養成という立場から、きわめてこれは低廉にして能率的なものだと思うのですが、先ほど私は大臣に伺ったように、各県庁の所在地にそれは法学を設けるか、法経を設けるかともかくとして、年間一百万で二百四十人の学生諸君が勉強できるわけですから、一県一大学に必ず短期大学を設けてはいかがですか、そういう意見を文部省でまとめて、大臣をして政府部内でその貫徹に努力していただくというお考えはお持ちになられないでしょうか。ぜひ私はやっていただきたいと思う。
  327. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) 御趣旨のように、勤労青年の教育のために、夜間短期大学というものの設置を努めて参りました。その結果、今御審議いただきますものを含めて十九に達したわけでございます。で、ただ、これは今まで置きましたものは、昼間の学部が相当充実いたしておりまして、施設も設備も教授陣容も充実しておりますものから置いて参りましたのでこの程度でありますが、これ以上これを広げて参りますというようなことになりますると、世間の新規に置きますための経費というものか相当かさんで参るだろうと思います。お話の点は理想でございまするけれども、今直ちにそれを実現し得るというような程度まで調査研究、準備が進んでいないということをお許しをいただきたいと思います。
  328. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 空にある星をほうきで掃くようなそういう問題じゃないと思うのです。では具体的に承わりましょう、局長。たとえば、東九州の大分に、あの経済学部に法経の短期大学を置くとか、あるいは比較的充実した熊本大学の工業学部に工学部門の短期大学を置くというようなことは、二百万円程度でできるのであったならば、私は国家的な見地からながめた場合でも、これは、言葉は不適当かもしらぬが、国家投資という立場から考えた場合、実に私は当を得たものだと思うのですが、具体的に私の頭に浮ぶ二つの大学をとって伺いますが、いかがでしょうか。
  329. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) 御指摘の学部等は、近い将来においてそういうことを計画をするのは非常に不適当とは考えないのでありまするけれども、私どもこういう短期大学計画いたします場合には、非常に詳細に現実の問題について研究いたして計画いたすわけでありまして、今直ちにこの二つについて、でき得ると申し上げるだけの準備のないことをお許しいただきたいと思います。
  330. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 私は、一県一大学に短期大学を設けたらどうかということを伺って、こういうお話になったわけですが、非常に不適当とは云々というような御発言ですが、不適格になる一番大きな要素は何ですか。
  331. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) 私ども短期大学を従来置いて参りましたのは、一つは、先ほど申し上げました基盤となる中間学部の力が強いか弱いかということであります。従いまして、教授陣容、あるいは施設設備、こういう点が第一であります。それからいま一つは、地域性、今矢嶋委員全国各府県と仰せられておりまするけれども、順序で考えます場合には、関東地方とか、近畿地方というような相当広地域を考えまして、ある個所に工学部を置けば、ある個所に経済を置くというふうに、その取り合せあんばいを考えてきております。従いまして、今御指摘にありました地域につきましては、第一の基盤となる学部の強さ等につきましては、これはもう少し詳細に検討いたしませんと、お答えがしにくいのであります。しかし、他のあんばいというような点につきましては、その辺にないわけでありまするから、この点の要素は適当だと思います。こういう意味合いにおいて、これは考え得る、非常に不適当ではないと思いまするけれども、われわれ事務にあずかる者といたしまして、この国会において、これは将来、近い将来に置き得るとまで断定する材料のないことをお許しいただきたいと思います。
  332. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 その点はそのくらいにして、次にもう一、二点伺っておきます。予算関係ですが、四月十六日付で出していただいた資料には、科学研究費の拡充という名目で本年度の予算要求十億五千万が出ているわけです。それで三十年度一般会計の修正案の内訳というこの資料には、今度は科学振興費という言葉で、三十年度の政府案は十一億九千万、それを一億五千万プラス修正をしたのだ、こう書かれているのですが、前に出された資料の十億五千万と、今度出された十一億九千万というこの表わし方は、どういうわけでこのような食い違いが生じてくるのか。
  333. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) 最初の化学――ケミストリーの方でありますが、これは矢嶋委員が特にケミストリーについて示せという御要求がありましたので、その分だけを取り出したのが一億五千万円……。
  334. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 いやそうじゃない、十億五千万円――科学研究費の拡充というのは十億五千万円……。
  335. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) 十億五千万円というのは、ただいま御審議いただいております政府提出予算の金額だと思います。それからあとで国会修正になりましたのが、一億五千万円その上に増、こういう関係であったと思います。
  336. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それではこの半ぺらの六月八日付でもって出していただいた一般会計予算修正案のところでは、修正増加を一億五千万円にして、その修正される前の政府案で十一億九千万と書かれているわけです。そうするとこちらの十億五千万円との差がわからないのです。  それを調べていただく間に管理局長に伺います。先ほど大臣に伺いましたが、一般会計予算修正のよしあしはともかくとして、自由党と民主党との共同修正で二百余億の修正がなされて、その間に文部省関係予算が六億七千万円プラスになったおけですが、この中に大学の施設関係のものが全く入ってないことには、私は期待を裏切られて悲観したのです。特に私若干の大学を見ているわけですが、ことに私が比較的よく知っている熊本大学等は、日本大学の中で、かつての数個の帝国大学、帝国総合大学とまではいかないかもしれませんが、数ある日本大学の中では、私は定員等から見ても相当有力な大学と見ているのです。その熊本大学あたりの整備状況というものは、私はよく知っているだけに頭にぴんと来るのですが、ひどいものですよ。あなたが御承知になっている通りです。具体的になって申しわけないが、市立の藤園中学校は鉄筋の建築をするというのに、大学関係の寄宿舎が、数百万の予算がなくて移転しないために建築ができないという、それほどまでの状況にあるときに、このたびの予算修正で、どういうわけで法律関係を全く無視したのか、私は修正された自由党、民主党の当事者に対しては聞いてみたいような気持でおるわけですが、大臣は先ほど申しましたが、実質的には政党政治下においては、かなり閣僚諸君はやはり発言していると思うのです。河野農林大臣は、農林省関係予算なんかでははっきり相当の発言をしているのです。あなたは国家公務員だから、なかなかこういう面にはタッチしにくいと思いますけれども、私は要望として申し上げておきますが、今後やはり大臣をしかるべく補佐していただきたいということをお願いをいたしておきます。
  337. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 本案に対して他に質疑はございませんか。
  338. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 大学局長、さっきのあれを説明して下さい。
  339. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) これは私の方の資料でないので、今ちょっと聞いております。これは会計課長が出したので、私の方ではわからないのです。
  340. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 先ほど高橋委員から質疑がありましたが、京都大学の応用物理学講座の件、私のところにもあの大学の学生から非常に心配した手紙が来ているのでありますが、さっきの高橋委員の質疑で大体私はわかったようでありますが、少し不明瞭の点があるから重ねて伺いますが、今年度入学した人は、応用物理の課程を履修するのですかどうですか。
  341. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) 今年新たに入学する人は、航空学科の課程を履修すると思います。そのうちにもちろん応用物理の科目はあるわけであります。
  342. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 あとのはもうわかっているからよろしいですが、そういうよけいなことを言うからわからなくなるのですよ。それでは前に入った今の二年生、三年生、こういうところは、入った当時の応用物理学講座で勉強してゆくのですか。今度新設された航空学科の方へ切りかえられるのですか、どうですか。
  343. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) 二年生は一般教育を終ったばかりでありますから、おそらく航空をやるであろうと思います。それから三年生はその習得した科目によると思います。また本人の選択によると思います。応用物理だけを中心にしてゆきたいというのか、あるいはまた内燃機関その他ジェット・エンジンまでやって航空全体をやりたいというのか、それは学生次第によりまして、どちらでもでき得ることと考えます。
  344. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それでは具体的に伺いますが、三年生が、自分は大学に入ったときは応用物理学に入ったのだ、だから応用物理学をうんとやりたい、それを重点にやりたい、それから大学を卒業した後にも、応用物理学科の修士課程あるいは博士課程の大学院に進みたい、こういう希望を持っておる学生がおったならば、その学生の希望に百パーセント沿えますね。
  345. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) 大体学校当局の考えますことは、学年進行、押し出し的の考え方でありますから、入ったとき志しましたものを卒業までは出す、次の年度に変ったら、変った年度から変えてゆく、こういう考え方が普通でありますから、京都におきましても、例外ではないと思います。
  346. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 その点はぜひ大学当局に適当の機会になにしていただきたいと思うのです。それは今あなたが言われたように、ことし入った人は航空学科へ入って勉強するが、応用物理も勉強できますとかいうような、そういう式でゆけば、言葉の上はそうなっておっても、実際は教授とかあるいは講座の組み方から、不承々々応用物理以外に航空の方に重点を置いて勉強しなければならぬような立場に学生が追い込まれるようなことが私はあり得ると思うのです。だから学生は非常に心配して、われわれの顔も見たこともないのに、単なる文教委員というだけで、こういう手紙をよこしているのだと思いますので、あなたが今お話になった原則論というのは、まことにりっぱだと思います。正しいと思いますから、学生の数は少くても、一生涯に関する問題ですから、大学当局にさように取扱うように適当な機会に連絡していただきたいということを申し上げます。
  347. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) 先ほどの資料は、提出いたしましたものについて今研究中でございますけれども、私ここで検討いたしましたことは、矢嶋委員がさっきお示しになりましたのは、十億五千万円でありますれば、これは科学研究費だけの経費であります。それから会計課上長が提出いたしました科学振興費とあります費用は、おそらく科学研究費ばかりでなく、科学振興に関しまするものを総括してここに入れたのではないかと思うのであります。そうなりますなら在外研究員の費用、学術情報事業の費用、民間研究機関の補助金、こういうものが中に包含されておるので、その点でこちらの方の金額がふえておると考えられるのでございます。科学研究費のこれは十億五千万円に間違いない点を申し上げたいと思います。  それからもう一点、これは申しわけありませんでしたが、さっき岡山大学の医学研究科をとっさの場合に計算いたしまして申し上げましたが、これは三十七万四千円でございます、学生経費だけは。この点訂正いたしておきます。
  348. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 二けた違っておりましたね。  そこでこういう資料のとき、項目が違うと非常にこちらはしろうとだからわからなくなるのですが、そうなるとそれを裏返して伺いますが、今度修正になった一億五千万ですね、これは科学研究費の拡充だけでなくて、学術情報事業の拡充とか民間学術団体の補助とか、一切がっさい含んで一億五千万円補正した、こういうことになるわけですか。
  349. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) 一億五千万円のうち、一億四千万円が科学研究費、科学研究費のうちでは機関研究費と総合研究費に入ります。それから他の一千万円は在外研究員の費用が増額されております。
  350. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 時間が長くなりますとお気の毒ですから終りますが、科学研究費の拡充の中の一項目の七番目にある化学研究促進補助金一億五千万ですね、これは午前中伺って明快な答弁を得なかったのだが、これは防衛庁の要請ですか、産業界の要請ですか、どういう方面の要請でこつ然として一億五千万円出てきたのですか。午前中の参考人の意見を聞くと、これはやはり原子力関係相当関連を持たせて活用しようということで一億五千万円が組まれてきたと、かようにとれたわけですが、少し詳しく説明して下さい。
  351. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) この点につきましては、これは防衛庁の要請でもなければ、また原子力関係からでもございませんで、特に松村文部大臣就任以来、科学振興に非常に努めたいと言っておられまするし、特にその御見解として、資源の乏しい日本におきましては、化学、これの充実振興というものを急速に促進せしめることが必要だという点に非常に力点を置かれまして、その御見解のもとに文部省としてはこの点予算要求いたしまして、ここに提出御審議をいただいておるわけでございます。
  352. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 原子力関係に非常に関心を持っておる一部産業界から強力な要請があったと聞いておるのですが、その点と、それから化学だけになにするというのは、私はどうも理解しがたいのだが、自然科学という立場から力を注がれるのが正常の形じゃないかと思うのですが、それはいかがでしょうか。
  353. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) 科学研究費の年々の申請を見ておりますると、三億程度もあるわけでございまするけれども、特に化学におきましては十三億も要求があるわけであります。その要求の内容を見ますと、いかにも緊急の課題でございまして、またそれを基礎といたしまして、日本の食糧問題あるいは衣料問題あるいは建築材料なり、あるいは医療、診療の薬剤等、化学に頼りますことが非常に有意義であるというふうに考えられて参ったわけでありますが、そういう点につきまして、特に大臣がこの問題を重視せられ、化学の研究促進という点に力を入れて参った次第でありまして、これはいずれこれを配分いたしました点をごらんいただきますればおわかりいただけますように、ある一部のみにこれを注ごうという意図は文部省では持ってないのであります。
  354. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 きょうは長くなりますからこれで終りますが、先般局長に要求しました都道府県別に、学科系統別に各種大学学者、学生数とか、就職状況とか、それらの点に関しての資料を非常に詳しくお出しいただいたことについては、事務当局でずいぶんと御苦労であったことと、私が要求しただけにお礼を申し上げますが、この次機会があったら、この資料についてお聞きいたしたいと思っております。ただ願わくば、こういう資料を作る場合に、縦横の統計を出されて、そうしてこの資料をわれわれが見たときに、ある問題が全体の中に占める割合というものはどういうものかという大勢が把握できるように、縦横の集計を出していただくとなおけっこうかと思います。それから就職状況のところに、例をあげれば教員養成系の項で、たとえば大分は就職希望者が三百十人あって就職者がゼロというような例があるのですが、こういうのはミス・プリントではないかと思います。もしミス、プリントがありましたらいつでもよろしいですから、委員会でなくてもよろしいから、お教え願いたいと思いますが、兵庫県あたり二百九十二人の就職希望者で就職者一人というような例もありますので、これはミス、プリントではないかと思いますが、総じて非常に綿密な資料を出していただいたことについてお礼を申し上げておきます。
  355. 笹森順造

    委員長笹森順造君) ちょっと速記やめて下さい。   〔速記中止
  356. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 速記を始めて。  それではただいま審議中の法案に関して、海野三朗議員から委員外の発言を求めておられますが、これを許すに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  357. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 御異議ないと認めます。それではさよういたします。
  358. 海野三朗

    委員外議員(海野三朗君) 私は二、三お伺いしたいのであります。この前の吉田内閣のときに、高等学校令によって私立の学校がいわゆる高等学校となったものが非常に多いのです。ところがその際、内容の充実しないような学校にして、文部省の認可を得たところの学校が全国非常に多いのです。内容の充実していない学校であって、その私立学校の名義だけで、そうして今現に地方でたくさんそういう学校があるのですが、その内容についてお調べになるお考えがありませんか。そうして充実しなかったならば、そこを早く充実するようにという警告を文部当局が与えなくてはならないから――私はそう思うのですが、その点の御所見はいかがなものですか。
  359. 笹森順造

    委員長笹森順造君) ちょっと申し上げます。本日の審議の議題になっているものと思ったので、今委員外の御発言を許したのでありますが、本日の議題になっておらないものであるならば、またこちらの方で別に考えさせていただきたいと思います。
  360. 海野三朗

    委員外議員(海野三朗君) ああそうですか、それでは……。
  361. 笹森順造

    委員長笹森順造君) それでは時間も大へん過ぎておりますから、本日の審議の議題に関したものでなければ、また他の機会にお願いいたしたいと思います。  それでは本日はこれにて散会いたします。    午後五時三十九分散会