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国務大臣(
河野一郎君)
一つこの点は明確にお答えをいたしまして御了解を得たいと思います。私は
農林行政の基本的な
考え方は、
農家経済の安定に置きたいということであって、むろんそれが今までのように
国家的要請によって、国際的な
環境等から
考えて
食糧増産を絶対しなければならぬという
国家的な
要請を今まで強く打ち出されておりましたその
農林行政を、漸次
農家経済の安定、いかにすれば
農家の所得がふえ、収入がふえ、
農家経済が安定をして行くかという面に切りかえて行きたい、こういうことが
一つの基本的な
考え方でございます。それが
食糧増産と非常に矛盾するかといいますと、私は今お示しになりましたように、米を作ること以外にほかのものはできないというところでは米を作って行くべきだ、しかし米を作るよりもほかに有利適切なものがあって、その方をやれば非常に
経済が安定するが、今までのように作付において強制するとか何とかいうようなことは漸次変えて行かなければならぬ、こう思うのでございます。ただここで
考えなければなりませんことは、
畜産をやる、
養蚕をやるにいたしましても、全然米を作らんで全部
畜産をやってしまえとか、
養蚕をやってしまえというような
考え方ではないのでございまして、これはどこまでも
多角経営にして
農家経済に強靱の
度合いを付けて行きたい、こういう
意味で
奨励をして行きたいということでございます。ただむ
やみに、
外国の米が下ったから
外国の米に依存すればいいじゃないか、
国内ではどっちでもいいじゃないか、どっちでもいいじゃないかというような
考え方ではないのでございまして、私はこの点についてさらに
言葉をつけ加えますれば、今申し上げますように、これ以上
食糧の
自給度を強力に強めて参ろうということはけっこうなことでございますけれども、それが
農家の
負担においてそれを推進するというような結果になることは避けなければならない。これが
農家の
負担にならぬようにするには、強大に
補助率を高めて、たとえて申しますれば、現在の
払い下げ米価を上げるということは、これはなかなか許されることではありません。これは
国民生活安定の上から許されることでない。さればといって
食糧増産の方に強力に推し進めるために
生産費がどんどん上って行く、上って行く
生産費を償うように買って行くと、私は今後の
米価の
決定は
生産費を
中心にしてなるべく
考えて行きたいと、こう
考えておりますから、そうしますと、そこにどうしても二重
価格というようなことになりがちでございます。といってこれに対する
国家負担が一体どうなって来るかというような
点等を見合わせますと、そこに結論が出て来るのじゃないか。これをしからばといって
国家の
財政負担を抑えますれば、そうすれば
農民の
負担において、
農民の
犠牲においてやらなければならぬことになって来る、
農民の
犠牲においてやることは避けなければならぬ。
国家の
負担においても
一定の、ある程度の
制約を受けるということになって参りますから、そこに弱い強いが出て、
農林大臣が負けたとか、
大蔵大臣に抑えられたとかいうような、ただそれだけの面子ならよろしうございますが、それだけの
影響が全部
農民にかかって来るというようなことになりますから、それを
考えまして、そうして
農業政策、
農林行政、その根本の
考え方はあくまでも
農家経営の安定という面でやって参りまして、そこに
国家的要請があってやる場合には、
国家は
財政負担を惜しまずにやってくれるかどうだというような、基本的な
閣議決定に基いて行くべきだというふうに、こういうふうに私は
考えておるのでございまして、ただ単に米を作ることはきらいだとか、安い米を持って来さえすればよろしいというようなことは毛頭
考えていないのでございます。その必要な
度合いにおいて
日本の
国内生産の必要な限度において
外国から持って来ればよろしいのだ、
外国からなるべく安い値段で有利適切なるものを買って来ればよろしい、買って来たものが安いからといって、それに
影響を受けて
国内の
米麦の
決定を何ら
考える必要はないと、こういうように
考えるわけでございます。