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説明員(
加唐勝三君)
農業改良局の
畜産の方と
牧野並びに
飼料作物の企画をいたしております
加唐でございます。大体経過と現況と対策に分けまして簡単に申し上げたいと思います。
農業改良局と申しますのは御承知の
通り戦後にできましたものでございまして、それまでは
農業関係の各
試験研究機関がいろいろに分れておりましたものを、
農業を
中心にいたしまして集めて
仕事をして行く、こういうことになった次第でございます。その当初におきまして、私
どもの方で企画いたしましたことは、
農業経営の中の
家畜、
畜産のための
畜産ではなくて、
農業経営の中の
畜産、
農業経営をよくし、安定にするための
畜産、その基盤としてえさをなるべく農家が作ることが有利であろう、こういう
考えで
計画をいたしまして、動物そのものに関する
研究でございますが、たとえば繁殖でございますとか品種
改良でありますとか、飼い方の方の飼養管理、そういうふうなものはその当時の現況のままから拡充をいたしませんという
方針で進みまして、かわりに
畜産でなしに
畜産のもとになりますえさを農家で作るという
仕事を第一に拡充する、こういう
方針で参ったわけでございます。そこに
段階を二つ設けまして、
一つは畑なり水田の耕地を使いましてえさを作るという
飼料作物を入れて行くという
方面を第一とし、第二は、山なり何なりの草地を使います草地の
改良ということを二番目に置きまして、この二つを合せまして、第一の方に緊要度と申しますか、重要度を置いて
仕事をして参ったわけでございます。その結果できましたのがお手元にございます
参考資料の方の三十ページと三十一ページにございます
機構でございます。これには
林野庁関係は入っておりません。それから蚕糸
試験場関係も入っておりませんが、
農業改良局が管理いたしております
試験研究機関の
研究室はあがっておるわけでございます。三十ページがちょっと間違っておりますが、六としまして、その次(イ)となっておりますが、それが逆になりまして、六が国立
機関の部となりまして、(イ)が草類に関する
試験研究一覧となります。それに対しまして三十一ページの方が(ロ)で、
飼料作物等に関する
研究機関名、まだこの中に少し抜けておる所がございますのですが、たとえば
農業技術研究所の
経営土地利用部が草地
関係の経営の
研究を若干やっております。全部ではございませんので抜いてございます。それから同じく
農業技術研究所の園芸部がやはり果樹園の間作として草生
栽培関係のことをやっております。地域の
農業試験場の中でも経営部で経営
調査をやっておる所がございますし、園芸部でわずかではございますが、草の
関係をやっておるところがございます。そういうものは一部の
仕事でございますので、省いてあるわけでございます。そういう経過で今度の
機関ができたのでございますが、何分戦後早々の際でございまして、十分な範囲をもってこれらの
研究室を
構成するということがなかなか困難でございまして、また人的
構成にしましてもそういう経歴を持った人が非常に少いのでございまして、そのために人的
構成が必ずしも満足すべきものではないというような事情もあった次第でございます。それがいまだに必ずしもよくはなっておりません。ただみな
研究者が熱心に
仕事をしておりますので、われわれが予期しておる以上の結果を上げておると信じておりますけれ
ども、まだ普及の方に大幅に移すというほどの非常に目ざましい進歩はいたしておらない次第でございます。まあ大体以上の
通りでございまして、次に現況に移りますですが、二年ほど前に、今の表でございますが、関東東山の地域の
農業試験場でございますが、そこに草地部というのを新設したのでございますが、これは
畜産局の援助を受けまして作りました次第で、われわれの希望といたしましては、代表的な各地に作りたいのでございますけれ
ども、さしあたって関東東山に作ったわけでございます。そこに作りました理由は、施設が、建物などがあるということと、ちょうど北の気候と南の気候の境に当っておりまして、草の種類が非常に豊富である。従ってその成績が全国的に相当応用できよう、こういうような
考えで作った次第でございます。この関東東山の草地部が現在
中心になっておる。まあ
農業技術研究所の方の
畜産化学部の
調査の
機関もございますが、この二つが
中心になっておるという形でございます。それでこの
資料には国立
機関の
予算関係が出ておりませんです。それは精密に計算することがちょっとむずかしいからでございます。なぜかと申しますと、共通費がございまして、各
研究室の共通費というものは精密にわからないわけでございます。各
研究室にメーターが付いていれば幾ら電気を使ったかということがわかるのでございますが、そういう点がわかりませんので省いておりますが、大体国立の
研究機関で推定いたしまして六千五百万円ほどの
予算をいただいております。それでそれがどういう配分になっておるかと申しますと、現在のところ約六〇%が人件費になっております。人件費の方はふやしていただきましたが、
事業費の方がふえておらない。それから
事業費の内訳といたしまして、一般の共通費、光熱費、その他肥料な
ども共通に買います。その共通費が三〇ないし三五%くらいになります。それで残りの五ないし一〇%というものが
研究室の者が自由に使います
研究の費用という状態になっておるのでございます。これらに関しまして、先ごろ当
委員会から
研究並びに普及の
機関の拡充強化ということにつきまして
大臣あてにお
申し入れいただきましたことについては、われわれは大へんありがたく存じておりますので、なるべくお
申し入れの線に沿いまして
研究者の
研究がやりよいようにいたして参りたい、こう思っておる次第でございます。
それから国の
機関以外のものでございますが、これは本文の中にも総額の金額等が出ておりますが、
参考資料の三十三ページの方に都道府県に対します
研究の
補助金が出ております。項目は非常に多いのでございますが、府県当り一項目大体十万円以下という状態でございまして、都道府県の
試験場の場長さん方からは非常に苦しい、何とかしてくれないかということが言われております。これらの
仕事はすべて人件費の
補助を含んでおりませんので、国でやっていただきたいと思うことを県の方の人件費の
負担においてやっていただいておる、こういうことになっておる次第でございます。そのほかに官公立
機関以外の大学及び
民間等の
研究者並びに
研究室がございますので、それにつきましては項目が非常に少うございますけれ
ども、三十四ページに出ておるような
仕事を御依頼いたしておる次第でございます。まあ現況は大体以上のような次第でございます。
対策につきましては、この
資料に書いてございませんが、三つ、四つ新しいことを来年度にやらしていただきたいというふうに思いまして、
予算を
提出してございます。
一つはやはり先ほど横井企画官から申し上げました草地の
土壌の
調査に関する
試験的な面を十カ所ほどでやっていただこうと、こういうふうに
考えております。これは都道府県に対する
補助金でございます。それから草並びにえさの作物、
飼料作物の病気が当然ふえて参るのでございまして、もうすでに草地の
改良が行われ、
飼料作物が少し作られてきますというと、かなり病気が出ております。それからまたこれらの草、ことに永年性の草でございますと、それが宿主と申しますか、病気の宿るところになりまして、これが耕地の方にやってくる、また耕地の方の病気が草の方に行って、そこで年を過して行く、こういう危険があるのでございまして、さしあたって、草並びに
飼料作物にどういう病気が出ておるか、どういう害虫がこれを襲うかというような
調査を、ごく少数でございますけれ
ども数ヵ所でやりたい、こういうふうに
考えております。
それから
参考資料の中にも述べてございますが、
わが国では非常に草に関する教育がおくれておりまして、大学などでも草の
専門家の教授、助教授という方が非常に少いのでございます。そのために草の
研究者というものが出ないので、これを補うのには
一つば
農林省の方の
予算で、研修会というようなものを開きまして、それで養成して行く、これはどろなわ式でございますけれ
ども、これで補う。もう
一つは基礎的に、基本的に大学なり教育
機関の方で養成していただくということが必要ではないか。
予算には
提出してございませんけれ
ども、将来はそういうことも
考えて参りたい、こう思っております。それから先ほど御
意見がございましたのですが、
牧野を
改良して行きます
考え方でございますけれ
ども、
畜産局の方で今やっておりますのは、人工の急速の
改良でございます。ところが
林野の方でやっておりますのは、どちらかと申しますと天然更新と申しますか、時間がかかる、そのかわり費用と労力はあまりかからない、ゆっくり在来の草で直して行くという二つの方法があるわけであります。それで乳牛などを入れるということになりますと、どうしても人工
造成、人工
改良ということが必要になって参ります。しかしながら馬でございますとか和牛のような力を使います役畜ですと、どうしても集約度が低いものでございますので、成育がおそいものでございますから、急速な人工更新をやっても引き合わないということになろうかと思うのです。それで、この
方面はやはり天然更新という形で野草で直して行く、悪い方の雑潅木類をのける、そういうことをいたして、野草で直して行く、いい野草を残して行く。また野草というのは、
わが国の立地条件によく適合しておるのでございますから、これを
改良しまして、野草の中で今よりかいいのを作る、それで
改良、天然更新をやって行く、この二つの道をまあ狙いまして、この間にいろいろ
程度、
段階がございますから、その土地の状況、経営の状況に応じまして取り上げる、こういうふうにいたしたらどうかと思っております。
それからわれわれしばしば非難されるのでございますが、
わが国では
牧野行政の方が先に行っている、
研究が残されている、で、
牧野改良の人からは、
研究がおくれていると言ってしかられるのでございますけれ
ども、なるべく
研究を早く進めまして、
牧野改良行政の
資料を提供するというふうにして参りたいと思っておるわけでございます。で、先ほど申し上げましたように、
わが国では草の
関係、草地の
関係、
牧野の
関係の
技術者が非常に少いのでございまして、これはそういう
方面に
技術を持っており、またやりたいという気を持っている、そういう意欲の強い人と、これは大学、
民間を問わず全部を集めまして、しっかりした
計画のもとに、
ばらばらに
仕事をしませんで、一致して
仕事をして行くことが必要ではないか、そう存じまして、昨年度におきまして、
畜産技術連盟という団体がございますが、ここにお願いをいたしまして、草地
関係はこれからどうやったらいいかということを調べていただきました。これは昨年に草地
研究会というものができましたので、
畜産技術連盟と草地
研究会とが共同いたしまして
一つのアンケートをいたしました。これは
専門家に対するアンケートで一般の世論
調査ではございません。学識経験のある
専門家のアンケートであります。これによりまして
研究の線が出て参りましたので、その線に従っておいおいと新規の
事業をふやして行きたい。そのアンケートの結果はお手元に参っておりませんですが、要するに基礎が何もできておらぬということが、
わが国の
牧野の
改良試験研究の最大の欠点でございます。これはやはり二つ
考え方がございまして、今の
事業をすぐやるための
試験研究というものが最も要望されておりますけれ
ども、それと同時に、将来の発展ということを
考えまして、基礎をしっかり抜け目なく網の漏れがないように組織を作って行くということが必要ではないか、こう
考えられる次第でございます。それで急ぎの方はそういう当面の
研究をやる、それから将来のことはゆっくりと漏れのない網を張りまして
仕事を進めたい、こういうふうに
考えております。
それからもう一項でありますが、これは直接
関係でございませんが、外国の人たちが
日本に参りますのが非常にふえておるわけでございますが、それで
農業関係者が言うことは、なぜ山を遊ばせておくか、林木はあるのでございますが、木のはえていない
傾斜地がたくさん余っておる、あれをなぜよい草地にして牛を飼わないかということを言うのであります。全く、つまり草をよくして牛を飼う可能性はあると思うのでありますが、牛の消費の増加であるとか、牛の値段であるとか、いろいろなことを
考えますと、そう外国人の
考えるようにはすぐには行かない。それで、このバランスをとりまして、牛の消費がふえるということ、それから十円牛乳などということが問題になって参りますことは、牛の消費層が下ってきた、ずっと下の層まで牛というものが浸透してきたということでありますから、これを広げるためには、牛の値段を下げるように農民の方で
努力しなければならないのではないかと、こう
考え、それにはどうしても
飼料が安くできる結局草地というところに行く、耕地が使えますけれ
ども、耕地にも限度がございますので、やはり草に行かなければならない、それで一応外国人には賛成するのでありますけれ
ども、また半面に、その人たちの言うようにすぐには参らない、それで結局消費の増加ということと、牛の数がふえて行く、草がよくなって行くということが、あるバランスをとって進みませんと、この春のように乳価が下りますというと
牧野の
改良がとまってしまうということでありますから・そのバランスをよくとりまして、その前に
試験を十分やって行くというようにして進めて参りたいと思うのであります。
それから先ほどちょっとどなたからかお話がありましたのですが、来年ニュージーランドで万国草地会議と申します国際草地会議の第六回目が開かれることになっております。それで
農林省といたしまして昨年から交渉いたしまして、ローマのFAOの本部に泥炭地の
改良の次に、
牧野の
改良技術の援助を求めたわけでございます。この夏、向うの
専門家が二人参ったのであります。そのうちの一方の人の
意見では、ニュージーランドで開かれる草の会議に
日本が参加することを非常に期待しておる、なぜならば、ニュージーランドの土地は
日本の土地によく似ておる、火山灰地でございます。雨量も非常に多いのでございます。これは
アメリカ、ヨーロッパの人はあまり出ない、
関係がないからあまり出ない、ぜひ
日本から相当、四人から六、七人くらいのデリゲートを出して、そして参加してくれ、そうするとFAOとしては、
日本の
政府なり何なりが、草地
改良に熱意を持っておるという証拠になるから
技術援助にも力を入れることになる、こういうことを申しておるのでもります。それで
日本の
技術のおくれた面を急速に取り戻すために、こういう国際的な、外国に草地
関係でも人を出すというふうにいたしたいと
考えておる次第でございます。これにつきましては、御援助、御後援をお願いしたい、こういうふうに存じておる次第でございます。