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1955-08-18 第22回国会 参議院 農林水産委員会 閉会後第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年八月十八日(木曜日)    午前十時十六分開会   委員の異動 本日委員久保等君及び長谷山行毅君辞 任につき、その補欠として岡田宗司君 及び白井勇君を議長において指名し た。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     江田 三郎君    理事            秋山俊一朗君            白波瀬米吉君            三浦 辰雄君    委員            青山 正一君           池田宇右衞門君            白井  勇君            関根 久藏君            田中 啓一君            溝口 三郎君            岡田 宗司君            亀田 得治君            清澤 俊英君            三橋八次郎君            菊田 七平君            鈴木 強平君   説明員    農林省農地局総    務課長     正井 保之君    農林省農地局管    理部長     立川 宗保君    農林省農業技術    研究所長    盛永俊太郎君    農林省関東東山    農業試験場長  白石 代吉君    農林省蚕糸試験    場長      横山 忠雄君    農林省林業試験    場長      大政 正隆君    農林省食糧研究    所分析部長   永原 太郎君    水産庁調査研究    部長      藤永 元作君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○農林水産政策に関する調査の件  (農林水産関係研究機関整備拡充の  件)  (昭和三十一年度農林水産関係予算  の件)   —————————————
  2. 江田三郎

    委員長江田三郎君) ただいまから農林水産委員会を開きます。  農林水産関係研究機関整備拡充の件を議題にいたします。  この問題は昨日議題とする予定でありまして、各位の御参集を得ていたのでありますが、時間の都合で本日に延ばすことになりまして、御迷惑をかけております。当委員会におきましては、かねて研究機関整備拡充に関して重大な関心を持って検討を進めて参っているのでありますが、明年度予算の編成を前に控えまして、本日は各研究機関当局からいろいろお聞きしたいと思うのでありますが、大体時間の関係が、ございますので、現況というようなものにつきましては、御提出いた、だいておりますところの印刷物をあとで私どもも拝見するということにいたしまして、今特に重点を置かれようとしておる問題、それに伴うところの新規なまあいろいろな御要求があると思います。そういう点と、また現在この研究機関として特に隘路とお考えになっている点、そういう問題につきまして主として御意見を伺いたいのでございます。それではそういうような段取りで御高見をお伺いしたいと思います。  そこで順序といたしまして、最初農業技術研究所、それから関東東山農業試験場、その次は蚕糸試験場、それから食糧研究所林業試験場水産庁調査研究部、こういうような順序で進めていきたいと思います。  なお委員の皆さんの中で御質疑がありましたならば、一応説明が終ってからお願いしたいと思っておりますから、その点御了承願いたいと思います。  それでは最初農業技術研究所長盛永さんにお願いいたします。
  3. 盛永俊太郎

    説明員盛永俊太郎君) 私盛永でございます。  農業技術研究所といたしましては、終戦後大きな機構改革がありまして、今のような姿で発足いたしましたのは五年ほど前であります。それらの点は提出いたしました書類にありますから、一応省略いたしまして、現在研究を強化するという点で一番考えておりますことは、戦時中から終戦後にかけましていろいろな施設が非常に不十分に感じてきておるのであります。ことに終戦後いろいろな事業の面で拡張していただいたことも数々ありますが、それに付帯しました施設、また新しい器具機械というようなものの入手が一方で困難でありました関係その他で、非常にちんばになっておるような状態であります。それで昨年、一昨年ころからこれを整備強化したいというような考え方で、みんなでいろいろ内部で検討いたしました。それで昨年整備強化の三カ年計画というようなものを一応立てました。それをいろいろ農林省の御当局と御相談し御検討願いまして、大体その筋で今考えていただいておると思っているのです。  第一には建物でありまして、今西ケ原にあります研究室、それから千葉にありますおもに畜産関係研究室、それと平塚にあります園芸その他の関係研究室、それと元開拓研究所と言っておりまして目黒にありました1現在は農業技術研究所の中へ入っておりますそちらの方、そういうものは非常に——一つは全体の建坪が戦後の拡充建物の方が伴いませんで、非常に狭隘になっておりまして、それが研究のやはり非常に大きな不便になっております。そういうことが一つと、それと付帯しまして、戦前にはいろいろな研究をいたしますのに、それぞれの研究都合のいいような特別の実験室というものがそれぞれありました。それが戦後狭隘になりましたために、その特別の実験室が普通の実験室のようにして使用されているというような、やむを得ぬような事情になっております。そういうようなことをこの際一つ解決していただいて、やはり研究には特別な一つ実験室というものが必要で、その機械はそこにおいてみんなで使った方が都合がいい、またそうしておく方がその機械自身の保存や活用のためにもいいというようなことが多々ありますために、そういうような特別の研究室を元のように復活して研究ができるように、そういうふうな考え方によりまして、大体建物としまして、三カ年間の計画としまして、大よそ三億一千万円ほどのものを三カ所に大体考えました。  それから戦後、ことにいろいろな研究測定機械のようなものが大へん目ざましい進歩をいたしまして、そういうようなものが多々ありますけれども、それがそれぞれ相当高価なものであるというために、なかなか補充といいますか、新規に備え付けられないというような事情にあります。それでわれわれといたしましては、大体研究能率を上げます面から、そういう新しい測定機械というようなものはぜひ諸外国並みにやはり備えたい。もう一つの面から言いますと、どうも新しいいろいろな測定機械ができますというと、これまでの測定機械でやっておりますような場合には、ただ能率が上らないばかりではありませんで、非常に正確なものになりにくい、つまり労力をたくさんかけまして、不正確な記録とか、データをたくさん備えるよりも、やはり金がかかっても、数は少くても、正確なデータをわれわれは得たいというような考え方で、この機械器具整備ということを考えておりまして、これにつきましては、農研としまして、五カ年の間に約一億八千万円ほどの器具機械、こういうものを整えてもらいたいと、詳細な案をこしらえまして、そして農林省の御当局にも御相談いたしまして、大体今のところはその案で進んでいただいておると思っておるのであります。  今年度は、その案の第一着手としまして、西ケ原の方に約六千九百万円ほどの予算をいただきまして、それで特別実験室を今年度の間に建てることになりました。それから来年度は、つまり継続的の考え方でありまして、千葉の方に同じように特別実験室を建てていただきたいということで予算が出ておるのであります。そそれから再来年度には、同じような意味平塚の方にそういう実験室を強化していただきたい、そういうような考え方になっております。  それから器具機械になりますと、これはいろいろなものが数たくさんありますけれども、まず、先ほど申し上げましたように、新式の高価な測定機械がそのおもなものになっております。ですが、やや事変ったものとしましては、最近の放射能のいろいろな元素実験に使いまして、これがちょうど、何といいますか、われわれは札つきの元素と言います1標識の元素といいますか、つまり同じような燐酸なら燐酸でありましても、放射能のある燐酸を使いますというと、放射能のないものといつまででもそれがどこにあるかということをわれわれは見分けることができますために、そういうものを使いますというと、一面では非常に研究が、こまかいところが正確にわかるというようなことになりまして1少し話がそれるような気もいたしますけれども、たとえて言いますと、鶏にカルシウムを摂取させる、普通のカルシウムを使いますと、そのカルシウムがいつ鶏のからだのどこに入って、どういう作用をしておるかということは、もとから体内にありますカルシウムはたくさんありますために、たとえば今日食わせたカルシウムばいつどこへ行って、どういう役割をしておるかということは一向わからないのでありますけれども放射能がありますカルシウムが、たとえば今日の夕方鶏に食わしておくと、明日の朝産んだ卵のからの中にそのカルシウムが入っていることがわかるのです。そういうような意味で、それは一例でありますけれども、この放射能のあります元素を使いますと、われわれがいろいろな点で、これまでどういうふうにやってもなかなかはっきりはわからなかったことをごく簡単に知ることができる、そういうようなこともあります。そういうような意味で、いろいろな新しい施設を、器具機械その他を備えていただきたい、こういうように考えておるわけであります。  本年度の具体的の予算といたしましては、今申し上げましたその整備拡充計画に直接のっとりました施設機械のほかに、病虫害発生予察に関する研究ということ、それから果樹の病虫害に関する研究ということ、それから農家の被服に関する研究というような項目新規項目としてあがっておるはずであります。これらの事柄は、今の整備拡充の大体大きな考え方というのとは一応違いますけれども、現状から考えまして、こういう研究が必要であるという考え方から出ておりますようなわけであります。  そのほか、まあごく一般的なことになりまして、これは農研だけの問題ではないと思いますのですけれども、最近研究を非常に能率化するという点から考えますというと、以前に比べまして、人件費事業費割合というものが非常に変ってきておりますのであります。この点はやはり研究を管理し運営しておりますものからいいますというと、せっかくわれわれが優秀な研究者をかかえておりましても、その人たちを十分に活用できない、十分に働いていただけないというようなうらみがありまして、非常に残念に思っておる点であります。たとえば昭和十一年から昭和十四年のことを考えてみますというと、人件費二に対して事業費が八くらいの割合でいただいておりましたのであります。それが昭和二十九年、三十年ころになりますというと、ざっと人件費が六で事業費が四という数字になっております。そういうような点で、何とかもう少し十分に研究者に働いてもらいやすいような形にしていただければということを、いつも農林省の方にもお願いし御相談しておりますようなわけであります。ことにこの新しい機械器具というようなものが入りますというと、それを運転しますのに、つまり新しい機械器具が入りますというと、人が仕事をする能率が高まりますけれども、人一人に対しますところの経費というようなものがそういう機械に付随して非常にふえてくるということになります。たとえば、先ほど申し上げましたような放射能元素を取り扱いますようなそういう機械器具を入れますというと、やはりそれに付随しました光熱費とかその他、ときには修繕費とかその他というようなもので運転費が非常にふえるようなことになります。そういうような点もいつも非常に気にかけておるようなことであります。  時間の関係もありましょうから、私の申し上げますことは一応はその程度にいたしておきます。
  4. 江田三郎

    委員長江田三郎君) それじゃ次に関東東山農業試験場長白石君にお願いします。
  5. 白石代吉

    説明員白石代吉君) 関東東山農業試験場長白石でございます。  私どものところは地域農業試験場一つでございまして、全国八カ所に関東東山農業試験場と同じ性格を持った試験場があるわけでございます。従って私の申し上げますことは、関東東山農業試験場だけのことではなしに、勢い全地域農業試験場に共通な問題も申し上げたいと思います。  実験器具の問題、実験室問題等につきましては、農研からお話がございましたのと全く同様な状況にございます。ただ、地域農業試験場あとからできた関係で、施設が非常に貧弱であります関係上、両三年来農林省の御配慮によりまして漸次施設が整っております。最近特に共同実験室というような施設といいますか、大体耐火構造建物ができることになりまして、事業の運営上大へん安心と、それから能率を進める上におきまして大へん便利になっております。これもなお継続の途上にございますので、これが一応完成しました暁にまだ残る問題といたしまして、地域農業試験場はその性格上地方にあります関係で、農家の方が直接視察に参ります。その場合に展示施設というようなものが欠けておりますのが農家に対して非常に御不満だろうと思っております。われわれもできる限りやっておりますが、何分にも本来の業務を遂行するに足るだけの施設すらようやくということでございまして、それまでには及ばない状態であります。従って、これらのための展示室というようなものが心要になると思います。  なお、業務運営上非常に困っておる問題といたしまして、職員の待遇問題を申し上げなければならぬことを大へん残念に思うので、ございますが、それは私ども試験場を始めましてから満五カ年になりますが、その間に練達な研究者が多く大学に引き抜かれたということでございます。もちろん大学教育も重要でございますので、人材をそこに送ることは遺憾ないのでありますけれども、それが研究面にはある時期にマイナスにならざるを得ないという場合もありまするので、こういう点は何らかの方法が講じられなければならないと思いますので、昨日の新聞によりますというと、公務員制度の中に研究公務員ということが特に取り上げられておるように拝見いたしまして、望みを持っておる次第でございます。  それから次に研究者養成施設というものがぜひ必要ではないかということを常日ごろ考えております。それは行政方面からの要求もございます。研究歴を持った人が行政に携わることがいろいろな面から能率的だという御意見もしばしば聞くところで、ございまして、やはりそれには研究者が十分そちらの方面へ常に回せるだけの機構になっておることが必要だろうというふうに考えます。なお、府県農業試験場におきましても、われわれのところから研究員を常に要望して参ります。そういう県の機関に対してもりっぱな研究者を送り込むということが、日本の全体の農業技術を推進する上において必要であろうと思いますので、この問題も将来何らかの方法が講じられなければならないと信ずるものであります。  次に、これは全地域の問題ではございませんが、最近南方諸地域の人々がたくさん日本へやって参りまして、日本農業に対して非常な期待を持りておるということが常々感ぜられます。それは経営規模の問題あるいは作物が大体共通な問題もあるというような点もあろうかと思います。で、こういう人たちの中には日本へ来て技術を身につけたいという人もございますので、全地域には必要はございませんが、幾つかの代表的な地域にこれらの人たちが来まして快適に好印象を持って勉強して帰られるというような施設が必要ではないかというようなことを常々感じております。  以上、場運営につきまして私常に考えておる問題を申し上げたのでございますが、今後の研究問題につきまして、日本におきましては、何といたしましても、畑作関係研究が非常におくれております。これは畑作関係の問題を今後の問題としまして十分力を入れて取り上げていかなければならないと考えます。畑作問題に続きまして重要な問題は牧草及び飼料研究であろうと思います。一昨年からこれは関東東山農業試験場だけに草地部が設置されまして、牧野関係並びに飼料関係試験研究を続けております。各地域にも必要に迫られて飼料作物及び牧野研究を行なっておりますが、関東東山地区農業試験場だけに草地部というものが設けられまして、一つの組織として研究が進められております。この問題につきまして、これは別な問題になりますけれども府県におきましても、飼料問題を非常に重要視しまして研究を進めておりますが、今までの経過から見まするというと、いかにも人員不足で片手間に研究をやっておるということが見えますので、早急に解決を要する問題こ対しまして、府県の認識といいますか、そういう点がまだ十分でないようにわれわれ研究会議を開きまして感ずるのであります。これは国と府県と両々相待って組織的な研究を進めていかなければ、牧野並び飼料の問題は容易に解決できないことになろうと思います。と申しますのは、牧野飼料といいますと、非常に研究範囲が広範になります。そういう関係で、しかしすでにニカ年間経過しただけでも非常に何といいますか、将来に対して希望を持てる飼料が出ております。と申しまするのは、国内にありまする野草等を栽培しますというと、きわめてよい成績を上げるものが幾つか見つけられる。あまり広範囲研究がいろいろな関係でできませんけれども、まあ扱った範囲では相当有望らしいものが見られる。特に国内産で国内に野生しておる雑草の都合のいいことは、日本の国土に長年馴致されております関係上、自然のままにおいて種がよけい取れる、こういう点が非常にまさっております。外来の牧草はおおむね採種という面において困難に遭遇する場合が多いのであります。それは要するに立地条件の違うところで生育した牧草でありますから、そういうことになるのは当然でありますけれども、そういう面が非常にはっきりしましたので、この方面の成果は大いに期待を持てると思います。  次に畜産関係でございますが、最近ホルスタイン以外の乳牛が多く飼養されておる関係で、その方面研究がいささか手薄にあるように考えますので、この方面はわれわれといたしましても大いに研究いたしまして、いかにしてその方面に手を伸ばし得るかという道を見つけ出さなければならないというふうに考えております。  以上概要でありますが、なお本年度の三十一年度に対する提出議題につきましては、各地域のを一々申し上げますと長くなりますので、私の御説明はこれで終りたいと思います。
  6. 江田三郎

    委員長江田三郎君) 次に蚕糸試験場長横山君。
  7. 横山忠雄

    説明員横山忠雄君) 蚕糸試験場横山でございます。  蚕糸に関する研究は御承知のように一番大きい目標輸出の振興ことに欧米諸国において使われる組の生産目標でありますから、ちょうど農業から出発して工業に至るまでの段階、あるいはそれの中間段階とも言える研究を引き受けておるわけであります。それでこの研究をやる土について、どういう点がさしあたっての目標であるかと申しますと、明治の終りごろに創立いたしましてからあと今日までの間、量的の方面では非常に進歩いたしまして、大体現在の絹の生産能率と申しますのは、四十年前に比べますと掃き立てる蚕の卵は二〇%ぐらいあると一〇〇%の糸ができる。それから桑園面積にいたしましても、四〇%ぐらいの桑園があれは一〇〇%の糸ができ、また繭にいたしましても、六〇%程度の繭があれば一〇〇%の糸ができるというふうに非常に量的の面が進歩し、従ってその製品生産費の低下にも役立ってきているわけでありますが、量がそういうふうに増してきてみますと、次の問題としては質の問題が起って参ります。ことに一昨年の国際絹会議以来、日本の絹に対する品質上の苦情が消費者の各国から出て参りましたので、日本としてはできるだけこの点を改良していかないと、日本の絹の輸出が差しつかえると思うのであります。しかしまた質と量とは互いに関連したものでありまして、幾ら質がよくても値段があまり高いとまた消費の面に差しつかえると考えられますので、生産費をも安くしなければいけない、それには第一に、生産能率を高めるということになりまして、三十一年度のわれわれの目標といたしましては、従来の蚕糸技術の批判と申しますか、そういうものを一そう深く掘り下げて確実なものにしていく、その点に変りはないのでありますが、それらの技術の中でどういう点に注意していくかと申しますと、絹の生産能率増進、ことに桑園中心とした生産能率増進という点を一つ大きく取り上げていきたい。その桑園中心生産能率増進という中には、もちろん蚕そのものを丈夫に育てるという問題も入って参ります。それは絹の生産はまず桑を作ってその桑を蚕に食べさせて絹を作りますから、二つの段階両方とも上手に能率を上げながら結びついていかなければなりませんので、その両方能率を高めていくという考えであります。  それから、その次の大きな目標は、生糸品質改善で、ございまして、これは品質関係するあらゆる面を一貫して帥善していきたいと考えております。この点につきましては、試験場で行う研究の方向を示すような意味におきまして、農林省にも、それからまた中央蚕糸協会と申します団体の方にも委員会ができまして、それらと密接な連絡をとりながら研究面を進めて参ります。それから、大きい目標をそこにおきますが、絹の動きと申しますか、それを見てみますと、日本でも輸出に、生糸輸出する場合と、絹製品輸出する場合と両方ありますが、絹製品輸出する場合に、研究所としてどのような点を注意していかなければならないかという問題は、従来中心になって研究する施設がなかったのであります。それは、通産省に繊維工業試験場がありますし、農林省蚕糸試験場がありますが、その結びつきのちょうど境目になる研究がどうしても手薄になっておりましたことと、それから繊維工業試験場重点というものが、絹から他の繊維の方に移った関係上もありまして、絹製品についても、今申しましたような研究については、今後蚕糸試験場相当力を入れる必要があるように感じております。  三十一年度研究目標は大体そのようにいたしまして、こまかい点につきましては、また御質問でもありますればそれにお答え申し上げたいと思います。  それから、そのような研究を進める面にどのような点が隘路になっているかを申し述べるようにという委員長お話でございますが、これにつきましては、農業技術研究所の所長から申しましたことと非常に似ているものでございます。たとえば、私の役所ば創立以来四十四、五年たっておりますが、大部分のものは木造建築でございまして、それらのものを新しくする必要に迫まられております。ことに南の方の支場などにおきましては、台風とか白蟻とかの害がありまして、どうしてもこれを今更新しくしていく必要に迫られております。  それから蚕具のようなものは、非常にありふれたものではありますが、これが悪くなりますと、研究者能率を阻害いたしますし、それから大事な蚕がまじってしまったりいたしますので、これらも漸次更新していきたい。これは戦時中その手入れをする時期がありませんでしたので、全体として非常に古くなって使いにくくなっているのであります。  それから蚕室そのものでありますが、これも戦時中危なくなって疎開した蚕室などがありまして、ことに本場蚕室などは戦前七棟あったのが、今一棟しか残っていないようなことでありますので、この増築、ことに本場では伝染病などをも取り扱っておりますので、どうしても隔離蚕室がほしいと思っております。  それから、養蚕は非常に集約な産業であり、その基礎になる研究でありますから、いろいろな環境調節についても、普通のもの以上に精密さが要求されるのであります。戦前にはそのような環境調節する特別実験室が二棟あったのでありますが、これも戦争中、もう両方とも使えなくなってしまいまして、それでそれらのものが昨年度予算で外側の一棟だけの予算が通りましたが、三十一年度にはぜひその中身をつけるようにしていただきたいと思っております。  それから蚕糸試験場でやっております桑に関する研究でございますが、これは非常に長年月を要しますのと、それからその桑園を自分で持っていないと非常に不便があります。それは大事な原蚕種を飼っておりますから、買い桑をいたしましてもし病気にでも伝染いたしますと、何年間か苦心した蚕が絶えるようなことがあります。ですから桑はできるだけ注意をして自分の畑で作った桑で飼うことにいたしておりますが、近ごろの土地問題からして、借地でありますと、もうしょっちゅう問題が起りまして、研究者もその応接にいとまのないようなことになりますから、できるだけこれば現在借地であるものを国有にして安心して長期の試験計画ができるようにしていきたいと思います。  その他機械設備につきましても、これは農研の方でおっしゃったのと同じような事情でありまして、たとえば繊維性能試験機というものが新しくでき上って、外国への発表はその機械を使って測定したものでないと国際的な通用性がないというようなこともありますので、そのような機械もぜひほしいと思いますし、それから蚕とか絹とかのこまかな成分を見るのにも、新しい機械でやると今まで見えなかった1単に能率が悪いばかりでなくて、どうしても見えなかったようなものまで見ることができるという点もあります。そういうような機械がぜひほしいと思っております。  そうして経費全体から申しますと、人件費事業費の比例は、私のところも昭和十年ごろには農研と同じように人件費二に対して事業費八ぐらいの割合であったのでありますが、現在では人件費六に対して事業費四、あるいは六・五に対して三・五というふうな割合になっておりまして、非常にその点運営が窮屈になっております。それらの点についても研究所の運営とう面からぜひ考えていただきたいと思います。  それからもう一つ、これは農業全般についてある程度言えることでありますが、蚕の研究などは特に外国に蚕の研究を本式にやっているところがございませんので、蚕糸に関する技術というものはすべて日本でもって組み立てていかなければならない、素材からして組み立てていく必要がありましてでき上った技術を外国から輸入するということはできないのであります。そのでき上った技術を輸入するのと素材から独創的に技術を組み立てていくのとでは、その労力とか、経費というものもよほど違いがあります。たとえばアメリカあたりでは大体自分のところで研究をして組み立てていきますので、工業研究にしましても、売上高の一・五、六%ぐらいは研究費に使っているという話でありますが、これは多くのものを平均した数字がそうであります。ところが日本ではずっと少くて、日本工業製品になりますと〇・五、六%ぐらいしか使っていない。蚕糸とか一般の農業研究につきましては、外国の技術を輸入するということができないので、その研究費につきましても、今申し上げましたような比例で相当の経費が要るんじゃないかと考えております。  それからもう一つは、よく西ヶ原と私の方なんかでも共通した施設を持っております。これらのものがどっちか一方で間に合うかといいますと、農業研究対象となります生物は非常に短かい時期に変化いたしますので、その必要とする時期に必要とする研究に使えるようになっていないと、施設を持っていることが役に立たないことになりますので、これは研究所研究の運営そのものから見て施設の面なんかを考えていただければけっこうだと思うのであります。  こまかい点は省略いたしまして、もしお尋ねでもありますればそのときにお答えいたします。
  8. 江田三郎

    委員長江田三郎君) では、次に食糧研究所長代理の永原太郎君。
  9. 永原太郎

    説明員(永原太郎君) あいにく所長が病気しておりますので、分析部長の永原が説明させていただきます。  食糧研究所は、昭和九年に過剰米対策のため米穀利用研究所として発足いたしたのでありまするが、その後食糧事情の変遷に伴いましていろいろ名前も変り、内容も変りまして、現在の食糧研究所の内容といいますか、仕事ということになりますというと、昭和二十二年にまあ確立したと申し上げていいと思います。その後、昭和二十二年から、このお手元に差し上げました食糧研究所概要にございますように、大体主として農産物を対象にしまして、それの処理、加工、貯蔵ということについてやって参ったのでありまするが、現在まで主として基礎データ、基礎資料を積んで参ったのであります。  それで現在までどういう仕事をやってどういうことをしてきたかまた本年度はどういうことをやりたいかというふうなことにつきましては、おわかりにくいと思いますが、前年度までの事業経過と本年度事業計画というものをお手元に配布してごらんに供するわけであります。  現在までは、主として農産物の対象の処理、加工、貯蔵といものを研究して参ったのでありまするが、実験室的の研究で過ぎたのでありまするが、来年度におきましてどういうふうに考えているかといいますと、もう一歩進み出まして、実験室だけでは、何といいますか大学研究所ならばまあ別といたしまして、行政官庁の研究所であればもう一歩出て、食糧の加工にいたしましても、実際物をちょっと製造してみたい、製造試験をやってみたいというのがわれわれの来年度考え方であります。と申し上げますのは、食生活の改善とかいろいろ叫ばれておりまするが、今までの実験室研究データだけをもってやるということは、いささかわれわれも不安といいますか、果してどうだと言われた時分に言い切れない面もあるのでありまして、そこで来年度におきましては、小規模ながら半工場といいまするか、実験室のビーカーとフラスコという以上にもう少し機械設備をして、今までの基礎データを基礎にいたしまして、製造試験をやっていって、食糧政策の方にいささかなりとも貢献いたしたいというのが、われわれの全体としての来年度計画であります。  それからもう一つ年度計画いたしておりまするのは、いろいろ今まで貯蔵保管というようなことをやっておりましたが、いろいろ保管技術におきまして、まあ加熱したりいろいろいたしますが、そういたしますと、変質したりいたして、十分目的を達し得ないのであります。たまたま最近に至りまして、先ほど農業試験場長から申されましたような、放射能性物質によって穀類の殺菌をし、保存をするという研究がぽつぽつ外国にも出てきておりますので、われわれといたしましても、おくれないでこの点に関して研究を始めたいと考えております。しかしこれは相当に強力なものを要する、人間に毒作用を及ぼす以上に強力な単位のものを使わなければならぬということもありますので、特別な施設を要します。そういう観点から現在におきましては、これは農林省として、そういう放射能性物質を取り扱う研究を一本にしてやってみようじゃないかということになっているということを承わっておりますので、われわれもその線に沿ってやっていただきたいと思っております。  それから、御承知かとも思いますが、食糧研究所昭和九年に約百坪くらいの木造建築で出発いたしまして、その後の事情によりまして、年々とは申しかねますが、百坪とか五十坪とかいうように、点々として木造建築を建てまして、現在七百坪になっておりまするが、全部木造建築でありますので、火災の点において非常に常に危惧の念を抱いているわけであります。ことに全部の部屋が化学実験室でガス、電気を使っております。そういう点からいたしまして、われわれは何とかしてこれを本建築にしていただきたいということを考えておりまして、本年度にも要求しております。ことに一昨々年あたりからスタック等の、ごあっせんによりまして、外国品が相当入っておりますので、これを現在ではやむを得ず木造の建物の中に入れておりますが、何とかしてこれを安全な場所に置いて、十分な保管、管理をやっていきたいというふうに考えております。  それから最後に、はなはだ勝手でございまするが、食糧研究所は、米麦以外、現在におきましては野菜、くだもの、そういうところまで及んでおりますし、ある部門につきましては、一般の、たとえば私が担当いたしておりまする分析にしましても、野菜とか、それから魚というふうなものを分析いたしておりまするが、全人員が百四名でありまして、これに対しては仕事が十分できないというので、盛んに毎年人の要求を実は出しておるわけであります。最近南方諸国に行きました所員の話によりましてもタイの一ライス・プラントと申しますか、それにおいてさえも食糧研究所の全事業よりももっと大きな事業をやっておるというふうな状況を聞きまして、もう少し整備していただいて、十分機能を発揮さしていただきたいということを念願しておるのであります。簡単でございまするか……。
  10. 江田三郎

    委員長江田三郎君) 次に、林業試験場長の大政君。
  11. 大政正隆

    説明員(大政正隆君) 林業試験場の大政でございます。  林業試験場に関しまして御説明を申し上げますが、お手元にガリ版刷りでございますが、「参議院農林水産委員会に対する資料」というのを御配付申し上げてありますから、大体これはお読み願うのでありますが、一、二これを引用しつつ御説明さしていただきます。なお、林業試験場というものを正確に理解していただきますためには、このことを一つお心にとめていただきたいのであります。つまり林業試験場は国にある唯一の林業の研究機関である。ですからその内容はすこぶる多岐にわたって、しかも対象とする経営の形態は国有林から民有林に至るまでということなのであります。そのために一本の林業試験場ということになっておりますが、内容はすこぶる複雑なんであります。たとえば研究で申しますれば、経済研究から虫の研究、あるいは治山治水の研究から、パルプから、木材糖化の研究というのが一カ所において行われておるのであります。これをどういうふうに運営していくかということにつきまして、昭和二十六年に林野庁と協議の上に林業試験場整備五カ年計画というのを立てたのであります。そうしてその方向に向って着々進んできておるのであります。たとえば林産研究に対する建物というのは、参議院の諸先生の非常な御援助の下にできたというようなふうに進んではおりますが、実は研究所として非常に稀有な例でありますが、東京の目黒にあります建物は、戦火によって約八割を焼失したのであります。もちろん施設も全部焼失いたしました。それから浅川にある研究室は全部焼失したのであります。いずれも直撃弾によって焼失したのであります。これらの復旧と整備とを一緒にしていかなくてはならないということが非常な悩みだったのであります。しかも国の予算として配賦されまする予算は、大体において各研究所のバランスということが大蔵御当局の頭の中にありますのですかどうですか、トータルにおいて大体各試験場並み、その金の中の大部分を建設の方へ回すということで研究費が非常に少くなってきた。のみならず器具機械はほとんど新しく購入しなくてはならん、こういうふうな状態にあったのであります。それで先ほど来しばしばお話がございますが、研究場の人件費事業費割合は、私いろいろな研究機関について調べてみますると、まあ日本の現状を加味していきますならば、ぜいたくを言わないところで人件費三に対して研究費七でいいのではないかと思っておりますが、現在は林業試験場はそのほぼ逆でありまして、この一番あとの表にございますが、人件費六・三に対して事業費、その中には器具機械も入っておるかと存じますが三・七という状態であります。それで明年度予算におきましてはせめてこれを人件費四に対して研究費六、せめて今の率を逆転させたいという意味予算を編成いたしまして、目下大蔵省の方へ提出する準備中のものであります。そこでこの研究機関を運営していきますにどういうふうにすべきかということをいろいろ協議いたしましたが、まず木材になってからこれを加工する方面、これを林産方面といっておりますが、これと木材を作るまでの森林を育てる部分、これを林業方面とかりに申しますと、この二つに分けて、この二つは非常に性格が違いますので、林産方面は目黒だけに集中いわしました。これも非常な困難を排しまして目黒に集中したのであります。そうして林業方面はこれを目黒を本場として各地方に支場を作るという考え方をとったんであります。そうして林産方面は東京に集中いたしまして基礎研究から応用研究までする。しかし林業方面は、本場が主として基礎もしくは全国的なことをいたしまして、支場がその地方特有の事情に応じました林業の技術の推進に貢献するために研究をする、こういうような建前をとったんであります。そうしてそれまでかなりの支場というものが営林局に併置されておったのでありますが、営林局に併置いたしますと、民間の林業家はどうも試験場は国有林の仕事ばかりしているんじゃないかという、まあこれは誤解も多いのでありますが、そういう点で御相談を受ける点が非常に少いのでありまして、これを国有林から離すという計画のもとに、むしろ研究それ自身の立場からというので六カ所ほどを想定しまして、これを少しずつ整備しておるのでありますが、現在青森、秋田の両営林局に併置されております支場を合体いたしまして東北支場にするということが宿題として残されておるのであります。これを明年度予算としてお願いすることになっております。こういうような支場、本場あるいは林業、林産体制をいたしますと、現在の定員では非常に足りないのであります。しかも当初出発いたしましたときは八百四十名でありましたのが現在は行政整理のため七百六十二名になっております。これも現下の国の情勢を考えまして、急にお願いすることは困難と思いまして、後に申し上げますが、本年度においては林産研究一ついて数名を要求する、こういうふうになっております。  こういう機構方面はこの辺で終りたいと思いますが、一つ申し上げたいことは、図書館、標本館であります。現在林業に関する図書は、林業試験場日本では特に非常に多くを保有しておるのであります。約十万冊をこえております。しかもアメリカなどは、アメリカの林業関係の本は全部林業試験場へ送る。これをコッピイして大学方面へ送ってくれというように、現在ソビエト、中共を含めて外国から入っておりますが、これを入れる図書館が焼失したのであります。これを各研究室に分散しておりまして、火災の危険が非常に多いので、ぜひこれを建てていきたい。そうして単に研究所ばかりでなく、日本林業全体の一つの中央図書館的なものにして皆さんに御利用していただきたいと考えております。それから標本館はちょっとお考えになりますと、何か陳列品だけするところのようにお思いかもわかりませんが、これはもちろん普及宣伝の具にもなりますが、もっと重要なことは防腐菌その他の菌を培養いたしまして、これを全国に配るというような役目があります。たとえば現在木材防腐に関しまして防腐試験をするには、林業試験場の培養した菌を使うということにきめまして、これを培養して送っておりますが、これに対して何ら行う施設がないのでありまして、研究室の一部でやっておりますが、これをお願いしたいと思います。そこで林業試験場を運営いたします方針でありますが、森林の効果を考えてみますと、森林が存在するためにすでに発する効果、すなわち治山治水のようなもの、あるいは林木を収穫することによって得られる効果、これらはっとに皆様方が御承知でもあり、広く言われているのでありますが、われわれとしてもう一歩考えて参りますと、森林を経営するその中間において得られる効果、とりもなおさず雇用量と所得の増大でありまして、この研究を進めることによって、地元山村の方々の利益に非常に資するのじゃないか、山村民の生活向上に資するのではないかと思いまして、主としてその重点をこの三つに置いて進めるつもりでおりますが、それについて具体的に研究員研究成果の経済効果をよくみきわめつつ研究をしろということを言っているのであります。もちろん研究には基礎研究と応用研究とありまして、経済効果の測定できるのは応用研究に限るのでありますが、林業試験場のような産業庁の付属機関でありますと、応用研究こそが主目的でありますから、もちろん基礎研究もいたしますが、この経済効果の測定ということを考えさしております。そうしてさらに偉大な研究というものを目当てにしておりません。小改良、小進歩を目当てにして研究を進めさしております。もちろん少数の人は大きな改革を望んで研究を進めておりますが、大部分は小進歩、小改良ということに進んでおりますが、今までの研究がそういう点に対して日本においては非常に考慮されることが少なかった。従って研究が一般社会遊離する、あるいは研究成果が林業を、われわれの場合には林業でありますが、林業に貢献するところが少なかったというのは、この小改良、小進歩を目的とする研究が比較的少かったからであろうと思いましてこの方面に進めております。そうして目的といたしましては結局治山治水の問題もありますが、これは後に御説明申し上げますけれども、最後の目的は林業というものをもっと集約化していく、高度化していくという問題、さらに先ほど申しましたような少しでも多く日本の一大問題になっております人口収容、雇用量の増大に寄与する方向に向うように、これが一つの目的になっております。ですからこれからお話し申し上げますことは、みな基調がそこにありますので、その点をお含みとり願いたいと思います。  で、どういう方向で進めておりますかということを、実はこれ一口で時間がないので、申し上げたいのでありますが、先ほど申し上げましたように林業試験場は非常に性格の変った研究所の総合研究所という形をとっておりますので、その一つ研究所に匹敵するものを部としてありますから、この部についてほんの二、三くらい触れていきたいと思います。  第一は経営部でありますが、御承知のように林業が意識的に経済ということが強く取り上げられて参りましたのは、何と申しましても終戦後であります。そこでこの経済研究が非常におくれておりますので、私どもとしてはまずわが国、ひいては世界の経済機構の中における林業の位置づけということに努力をしようということになっております。さらにまた林業の雇用量と所得の増大、これは先ほど申し上げましたがその方向に進めてゆく、これが大きな今後の林業試験場の方向でありますが、さらにもう少し具体的に申しますと、それより多少はずれるかもわかりませんが、牧野あるいは草原といった方がいいかもわかりませんが、この経営の合理化、これに向って進めていきたいと思っておるのであります。御承知のように今次の戦争が終りますまでは、牧野研究牧草に関する唯一の研究所林業試験場であります。それが終戦によりましてGHQの進駐になり、NRSの勧告によってその一部分を農業方面で取り上げることにしたらよかろうという勧告によって分離されてくるのでありますが、さらに酪農経営が終戦後急速に進歩するという形で、その二つが結び合いまして農業における牧野研究と、林業における牧野研究、これにおのずから二つの方向が現われてきたのではないかと、こういうふうに思うのであります。牧野と一概に申しますが、牧野というべきものと草原というべきものがこみになっておるのでありますが、これにいろいろな点にわれわれとして、林業としてタッチしなければならぬという考え方が入るのであります。一つは、現在農業方面で主力を入れておられるのは乳牛であります。乳牛の飼育ということになりますと、おのずから非常に集約的な飼法が必要なのでありまして、この点はすでに御説明されたことでありますから、この点はもちろんわれわれ林業試験のタッチする面ではないと思います。そのほかに考えられますことは、つまり乳牛以外の家畜、肉とか毛とかを利用する家畜、この点についての飼育はむしろ林野その他を使ってもかまわないのではないかという考え方一つと、現在牧野法の適用を受けますような牧野は、これを利用することのできない小さい農家があるのでありまして、これらの所有しているいわゆる乳牛以外の家畜をどういうふうに考えてこれを飼育していかなければならぬか、これはもちろんこの問題自身は行政の問題でありますから、われわれ自身の関知と申しますか、深く立ち入るべきものではないのでありますが、その方面研究を進めていきたいと思いまして、三十一年度におきましては森林の中に家畜を入れた場合に森林が果して阻害されるか、あるいはいわゆる飼料植物ができないか、つまり牧畜と林業とが同じ土地において両立し得るやいなやという問題を、この一番あとにたしか書いておいたと思いますが、この一番あとの表の前にありますが。明年度の「混牧林経営に関する基礎的研究」として予算を請求しておるのであります。  さらにもう一つは、経営部でお願いしょうと思っているのは、森林資源の調査方法であります。これらは日進月歩のものでありまして、すでに林野庁で実行に移されているのでありますから、これをさらに進んだ方向に、学問というものは日進月歩でありますから、その方向に進めていきたい、こういうふうに思っております。  次は、木を育てます造林でありますが、造林は、何といっても林業試験場の中核であります。この造林にはいろいろ育種方面のこと、それを保育していく方面のこと、あるいはその環境のこと等いろいろありますが、保育する方面におきましては、従来の保育方法が国有林経営を対象にしておりましたのを、民有林経営というものを考慮の中へ入れてやる、あるいは国有林経営一の将来を見通してその方向に向って、端的に申しますと、早く切れる、短伐期林業を目標として研究を進めていきたいと思っております。  育種でありますが、育種は御承知のように、選伐、交配、突然変異、この三つをねらうのでありますが、選伐に関しましては林業試験場考えまし一た、たまたまそれがスエーデンの方法と一致いたしまして、現在国有林で広く試験に移し、また実行に移されております精英樹の選伐でありますが、これば戦後ある程度完成したのでありますが、さらにわれわれとしては交配を目当てにする、たとえば北海道方面の非常に成長のおそいエゾ等にかわるに外国の松を取り入れて、これを交配して、新しい松を作っていったらどうだろうかというような問題その他を研究しているのであります。ところが突然変異になりますと、最近問題になっておりますのは、先ほど農研の所長の申されましたように、放射性物置のガンマー線の利用であります。コバルト六〇、これを利用いた、します、いわゆるガンマーフィールドと申しますのは、その面積、アメリカあたりの例をみましても、四十万町歩をこえて、これを立てますのに、私ども計算したことはありませんが、おそらく一億に近い金がかかるのでありますので、これらの研究ばとうてい一試験場のするところではないというので、この総合の研究所の設置を要望しておったのでありますが、たまたま来年度と申しますか、予算源は別のようでありますが、農林省官房においてこれを新しく作るというお考えのようであります。これはわれわれとして非常に喜んでいるのでありますが、御承知のように、放射能として出ます中のガンマー線、波でありまして、波長が約十のマイナス九乗から十のマイナス十一乗センチメーターくらいだと思っておりましたが、レントゲンでありますというと、たしか十のマイナス六乗から十のマイナス十二乗くらいで、実は林業の中におきましてすでにレントゲンを利用いたしまして、杉その他の成長刺激になるという結果が出ておるのであります。それでかねてからこのガンマーフィールドの実現を希望しておったのでありますが、これができました場合には、林業方面も含めてこの研究所が運営されることを希望してやまないのであります。  次に、この造林の問題で一つ取り上げられなくてはならないのは、ようやく林業におきましても肥料をやるということが問題化しつつあるのであります。この肥料をどういうところにやったらどのくらいの効果があがるか、山におきまして、あるいは苗畑にどういうふうにやったらいいかというような問題の、ある部分は解決しておりますが、ある部分は解決しておらないのでありまして、この点に関しまして、明年度は林業肥料の施用法の研究ということでまず第一歩を踏み出すために予算要求をしておるのであります。  次に、土壌調査部でありますが、これば本来土壌調査を目的として出発したものでありまして、現在におきましては八十万町歩をこえる二万分の一の地図ができているのでありますが、とこでは先ほど申しました肥料関係を土壌調査部でやっておりますので、この土壌調査部の将来というものは、日本一つの土壌調査図を作る、すなわち土地利用区分を完成する、それと同時に、今のような肥料問題を取り上げるというので、予算要求は先ほど申し上げた通りであります。  次に、こん虫及び病害に関する研究でありますが、この研究の将来ば、先ほど来お話がございましたように、予察の問題に尽きると思う。結局最後は病虫害が発生しないような方向にいくべきである。あるいは発生するのをあらかじめ知って、被害初期のうちにこれを絶滅する方向にいくのが、これがノルマルな考え方と思いますが、その前に、われわれの方面農業よりも多少おくれておりますために、林業薬剤の問題、あるいは天敵の問題というのを取り上げておりますが、来年度は林業薬剤に関する研究費を予算要求しております。と申しますのは、農業でわかっている薬剤なら、それを使えばいいじゃないかという考え方が出るのでありますが、実は三十メートルも高いところへ噴き上げますのには、もう噴霧機の能力を越しております。ですから、気流を応用するとか、あるいは飛行機を使う、その場合に添加剤として加えられておるものと実際の薬剤との比重その他の関係があって、実際はそこへ届いているのは薬剤ではなかったというような点、それらの点がいろいろと研究されねばならぬ。また虫の種類もだいぶ違っておりますので、これらの虫に対してどういう薬がきくかというような点で、この点について研究したいというので予算要求をいたしておる次第であります。  皆様方と一番密接な関係と申しますか、いつも御注意を受けますのは、防災方面でありますが、実は土壌侵食の問題が林業において問題化してきましたのは、実に戦後であります。戦前は土壌侵食というのは考えられなかったのであります。というのは、そういう事実がなかったのであります。あっても非常に狭かった。この土壌侵食の問題は、現在は土壌力学的な研究に進んでおりますが、将来はこれを物理化学の手法を入れた研究に進むべきものと思い、その方向に進みつつあります。防災と申しましても、先ほど森林が存在するによっての効果の中に防災も入れましたが、私の考え方では、最も完全な林業を経営する場合には、土地を破壊するということを考えてほだめだ、ちょうど、最も完全な工場経営は機械を破損してはならないと同様に、最も完全な林業経営は土地を破壊してはならない。ですから防災研究も経済林と保安林と両立する点はどこにあるかというような方向に向って研究を進めていきたいというふうに考えております。  それから防災の問題といたしまして、実は被害防止という消極面だけは取り上げられるのでありますが、ここに忘れてならないのは水資源であります。現在わが国において、水産、森林、水というのが三大資源であるというふうに説く方もありますが、その水資源の研究は、これをいかに調節して水資源を活用するかという研究をしておるのでありますが、実は林業試験場のこういう研究個所は岡山県以西には一つもないのであります。そこで日本全国の山の中の水の動きがわからないのであります。そこで来年度においては九州において少くとも一ヵ所これを作りたいというので予算化しておるのであります。  最後に、林産方面でありますが、私どもの見通しといたしましては、木材利用というものの将来は、ちょうど石炭の利用が経てきました過程を経るのではないかと思うわけであります。つまり構造材あるいは燃料として出発しておりますが、将来はこれは化学的利用に向って進むものである、というふうに考えて、その方向に重点を置きつつあります。しかしながらこれは遠い将来の問題でありまして、またいかに遠い将来におきましても、燃料として石炭の価値がまだ認められておりますように、構造材その他に木材が使われることは当然であります。ただ使われ方が違ってくる、すなわち木材そのままに使わずに、これに加工をしていくというようなことが問題になると思っておるのであります。そこでこれはもうすでに三年ほど前から予算要求し、それをいただいて着々整備しているのでありますが、木材加工技術に関しましての予算要求しているのであります。  最後に、化学的利用でありますが、化学的利用にはパルプその他いろいろございますが、われわれとしては立ちおくれてはならぬと思いますのと、北海道においては、ことに問題といたしまして木材糖化の問題がございます。この問題は不肖私が委員長をいたしまして、数年来北海道からの予算をいただきまして、東京で木材糖化の基礎に関する研究を進めて参ってきたのでありますが、多少その方向もわかって参りました。この際これをもう少し中間試験にし、これはいろいろな方法があるのです、濃塩酸法とか、濃硫酸法とかいろいろな方法がございますが、これを比較検討する意味におきまして、木材糖化の研究費を予算に出しております。  なお、明年度予算で出しておりますのは、北海道の風害対策であります、御承知のような大風害を受けまして、これは北海道の風害そのものを対象にするのはもちろんでありますが、このまあ、言葉は悪いですが、絶好のチャンスをとらえて風に対する森林経営というものをどういうふうにしていくかという研究の端緒を得たいというので、これに対する予算要求しております。  以上が林業試験場の姿、あるいは将来の方向、さらにその第一歩として明年度要求申し上げている事項、並びに隘路について申し上げたのでありますが、もう一りこれは皆さま方からごらんになれば、非常に小さい問題と思いますが、試験場として切実に困っておりますのは、同一構内に林産研究施設を作りましたために、苗畑がすっかりつぶれてしまったのであります。そのためにこれは昨年来要求して認められないのでありますが、苗畑の敷地を要求している次第であります。  多少混雑した御説明を申し上げまして、お聞き苦かったと思いますが、以上で終ります。
  12. 江田三郎

    委員長江田三郎君) 最後に、水産庁調査研究部長の藤永君。
  13. 藤永元作

    説明員(藤永元作君) お手元に配付いたしました水産研究所機構図をごらんになればわかります通り、現在水産庁の研究所は全国に八つございます。それからほかの農業あるいは蚕糸試験場と違いますのは、中央試験所というものを持っていないことでありまして、中央試験所的なものは調査研究部を持っているわけでございます。研究所の内容は大体同じでございまして、その地方々々のそれぞれの特有ないろいろな水産資源の研究をやる、あるいはまた全国的にやらなくちゃならないものは調査研究部が中心になりまして、それぞれ仕事を分担しましてやっていくというふうな方向をとっております。一番力を入れておりますのは、何といっても魚族資源の研究でございまして、その目的とするところは、たとえば具体的に申し上げますと、現在イワシがだんだん減りつつありますが、果してどこまで減っていくのだろうか、またイワシが減ったかわりに何がふえていくだろうか、そういうような研究をやっております。  それから水産の方で陸上では類のないことは、国際的な問題が非常に多いということでありまして、例を申し上げるまでもないと思いますが、北洋におきましてはソ連と、日本とアメリカと、カナダが同じようなサケ、マスの資源を分け合っている、あるいは東支那海に参りますと、日本と中国と台湾とが同じように底魚を取り合っている、あるいはアラフラ海に参りますと、日本と豪州とが同じように真珠貝を取っているというところに、ほかの原始産業、原始産業とは申しましても、水産でなければ見られないような国際的な問題、従ってそれに伴う国際的な紛争というものが非常に水産には多いわけでございます。  従いまして今われわれは日本列島を中心とする研究、従って外国とあまり紛争の起らない方面研究と、やれば必ず外国と紛争の起る研究、つまり国際漁場の研究と、こう二つに分けて問題を処理しているので、ございます。従いまして国内的で片づく問題はそれぞれの研究所にまかしておりますが、国際的の問題は水産庁が中心になりまして、これに関係研究所及び大学あるいは民間の業者、そういうものがみな一緒になりまして、研究調査を進めることというような方向をとっております。従いまして国際的な紛争、争いというようなことは戦争前にはなかったわけでございますが、戦後に急に起きた問題でありますし、従いまして人員も非常に不足はしております。しかしながら今人間をふやすといっても、なかなかふやすわけには参りませんので、何とかこれば兼任の形でやっておりますが、どうしてもお願いをいたしたいのは、船の問題であります。各研究所は船は持っておりますが、船齢が二十年あるいは二十五年というような使いものにならないようなものもだいぶあります。また全然船を持たない研究所もございます。それからこれば農業の方でも申されましたが、機械器具、こういうものが非常に不足しておりまして、人間をふやすことはなかなかこれからは困難になって参りますので、何とか新しい機械器具によってその人間の不足を補なっていくというような方法をとらざるを得ないと、かように思っております。  一番お願いを申し上げたいのは、これから国際紛争というものはどうしても客観的な、蓄積された調査研究の結果がものをいう。従いましてそういう方面にどうか皆さん方も心を向けて下さいますようにお願いいたしたい、かように思っております。
  14. 江田三郎

    委員長江田三郎君) 以上の説明に対しまして御質疑があれば順次お願いいたします。
  15. 三橋八次郎

    ○三橋八次郎君 質疑というものではございませんが、試験研究機関日本の農林水産漁業の発達と進歩とに対しましては、重大なる貢献をしておるということは申すまでもないのでございます。しかしながら仕事が非常にじみでありますので、ややもすれば国政の上にまま子扱いにされるという懸念がたくさんあるので、ございます。いずれにいたしましても日本の産業の発達は基礎研究がしっかりできておらなければなりませんことは申すまでも、ございません。私はつい最近西ヶ原の研究所を拝見したのでありますが、戦前は地方の試験所などに比べますと、かなり優秀な設備を持っており、しかも非常に新しい機械も備えられておったように思ったので、ございますが、この間見たところによりますと、ずいぶん古い機械で、しかも非常に苦心をして継ぎはぎをいたしまして試験研究をしておる状態を見たのでありますが、なるほど先ほど盛永所長から承わりますと、人件費に対する事業費というものば八対二の割合だと、こういうことでございます。試験研究機関は何としましても人の問題と設備の問題、この二つが重要なのでございますが、研究員の優遇をいたしまして、多年そこで研究した力がますます発揮されるようにまず待遇というものを考えてゆかなければならないのでございます。従いましてほかの方に比べますと人件費は高くなることでございましょう。しかしながら研究を遂行してゆきますには、やはり事業費というものは非常に必要なのでございまして、優秀な技術者は設備がないために非常に能率が上らぬと、しかも現在の日本の一般の農業関係から見ましても古い設備でやった試験研究というものは、もはや用をなさないような状態になっているのではなかろうかと思うのでございます。研究能率を上げます上におきましても、あるいは正確を期する上におきましても、あるいは短時日の間に成果を上げる上におきましても、新しい機械の購入ということが非常に必要だと思うのでございます。建物などを見ましても従前の納屋であったところが実験室になっておるというような実情も見て参ったのでございます。あれでは全く試験研究機関というものは産業の上に重要なるものであることは、新しい大臣ができるごとにその言葉を聞くのでありますが、実際にその内容を見ますと実に貧弱きわまるものでございます。さらにまた新しい研究、たとえば農業薬剤の研究などというものはずいぶん次々と新しい農薬が入ってくる。それの分析には特別の装置と設備が要る、それをいろいろとガラス管をつなぎ合せてみたり、古い機械を改造してみたりしてやっておるありさまを見ますと、あれでは試験研究機関のほんとうの性能というものは発揮ができないと思うのでございます。ことにこの農薬の問題につきましては、近ごろこれは防疫という方面からみましても、単に農業関係ばかり、農林省だけがやるべき問題ではないと思うのでございまして、農林当局におきましては水産あるいは商工の方面とも連絡をとりまして農薬の研究ということにつきましては、さらに一段の拡充強化をお願いしたいと思うのでございます。なお、平塚の分室はごく最近できたのでございますが、あれも戦後まだ日なお浅いときに発足したので、なかなか整備をいたしますに時間がかかっておったようでありますが、今ごろとの程度まで整備をしたかということをお伺いしたいのでございます。  次に、地域農業試験場で、ございますが、これは先ほど白石場長から本来の方へ力を入れると、技術の普及の方がどうもお留守になりがちだということを申しましたけれども、私は試験場の本来の使命というものは、研究と浸透とこれは二つあるものであると思うのでございます。どちらに重きをつけるかということにつきましては、これは全く車の両輪と同じことでありまして、両方へ力を入れなければならぬ。これが今までの試験研究機関というものは、地方におきましてもそうで、ございますが、研究方面には相当力を入れましても浸透方面には何ら見るべき施設がないというのが通常で、ございます。こういうことでは、おそらく世間から農業試験場はやはり象牙の塔の中におるので、大学と何ら区別がないじやないかというようなそしりを受けますのは当然のことだと思うので、ございます。従いまして展示室のようなものは強硬に一つ本省に予算要求いたしまして、できました技術は即刻下部に流すことのできるような機構を作っていただきたいと思います。なおまた研究員の養成ということにつきましても、これはややもしますると、この地方の試験場でもそうでございますが、技術者が大へん不足をしております。日本の全体の試験研究機関の整備というような面からみますると、その跡継ぎを、りっぱな人を養成していくことは非常に重要なことであると思うのでございます。研究項目のうちで畑作に力を入れる、あるいは牧草飼料などに力を入れるということは最もよろしいことでございますけれども、おそらく今までの試験研究機関の少くとも農業関係方面は水田中心に参っておりますので、こういうような試験の重点日本農業の将来を見つめながら変えていくということにつきましては、従来以上に予算が要ることだと思うのでございます。これらの研究の成果こそ日本農業の将来をきめることになるのでございますから、こういう転換に当りましても、一つ十分の予算をつけ与えまして、そうして研究の効果を上げていかれるようにやってもらいたいと思うのでございます。  なお、この地方の試験研究機関地域の試験研究機関との連絡関係で、ございますけれども、こればやはり試験研究項目を委託するにいたしましても、予算の裏づけというものがなかったならば地方の試験場ではできません。従いまして予算的に十分この地域試験場と地方の試験場の連繋ができるようにしてこそ、研究能率というものは上っていくと思うのでございます。たとえば五年かかってできますことが三年でできますれば、予算を少しぐらい多くやりましても、すぐにはね返りができるというように、もっと国といたしましても試験研究機関能率的に使う方法考えていかなければなりません。全く別世界のように取り扱い、しかも冷飯を食わして、優秀な技術者が予算がないために安閑としておるというような状態では、将来の効果というものは危ぶまれると胆心うので、ございます。なお、地域試験場におきましての人件費事業費との比率は、過去はどうであって、現在はどうなっておるかということを一言お答えを願いたいと思います。
  16. 江田三郎

    委員長江田三郎君) これは三橋さん、関東東山試験場長さんですか、どちらですか。
  17. 三橋八次郎

    ○三橋八次郎君 関東試験場長さん……。
  18. 清澤俊英

    清澤俊英君 関連でお聞きしたいのだが、大臣官房も来ておられますか。もっとこれをやる上に大体試験場を総括して見ておられる、どなたか大臣がここへ来れば、一番いいけれども、大臣がおられないとすれば、それにかわって出られる人をだれか呼んでもらわなければ問題にならぬと思います。
  19. 江田三郎

    委員長江田三郎君) それにつきましては、午後各局及び官房から予算の問題で来られますから……。
  20. 清澤俊英

    清澤俊英君 農林事務次官でもいいが出てもらいたい。
  21. 白石代吉

    説明員白石代吉君) 昭和十二年ごろ、私省略いたしましたのは、農研の所長盛永さんがお話しになりましたのと、人件費事業費関係ば全く同じでございますので、省略いたしたのでございます。
  22. 三橋八次郎

    ○三橋八次郎君 わかりました。
  23. 白石代吉

    説明員白石代吉君) それからついでに申し上げますが、私の発言によりまして、何か試験研究が本来で、普及は従だというようにお聞き取りのように聞きましたが、私はそう発言したのでは、ございません。実は参観者が非常に多いので、ございまして、今時期になりますというと、毎日バスが十台くらい私ども試験場の前に並ぶというような状況で、せっかくお見えになった方に、標本等をお見せして説明すれば、説明が十分にいくのでございます。それからまた昼食等をおとりになる場合でも、部屋の中でとっていただきたいので、ございますが、それもできない。それで研究に使う部屋しか今ない。わずかに一つ講堂があるので、ございますけれども、それではどうも収容がし切れない。こういうことを申し上げたので、ございまして、私ども常に普及は念頭に置きまして、このものの普及はどういうふうにしていくかということをまず試験の設計の当初から考えておるので、ございますから、御了解願いたいと思います。
  24. 池田宇右衞門

    池田宇右衞門君 ただいま各試験場長さん及びその代表の方々から内容をそれぞれ承わりました。その問題については、委員のうちにおいて最も、非常に御研究を下さっております三橋委員からお述べ下さった通りであります。ただこの際私が申し上げたいことは、三十年度予算におきまして、暫定が二月続き、さらに一月続いた際において、私は暫定予算の当初に当りまして、人件費は計上されたが、目下日本に国立、あるいは県立関係の国費助成、国費支弁の各試験場がある。しかるにこれに対する試験は四月、五月の候は、最も研究期といたしまして必要な時期である。この費用を相当割り当てて、あるいは格別なる技術の工夫と努力によりまして、それぞれの部門におき、それぞれの範囲においてこれを打ち立てて、国のあらゆる部門に流すものは流し、試験費として廃止すべきものは廃止するという方法をとらなかったならば、この損害は非常に取り返しのつかないほどに莫大である。と、同時に、日本のせっかく持った特殊技術の進歩をおくらせることである。かようなことを大蔵当局に強く要求したのでございます。しかし農林方面予算は、各委員も、関係者もお知りの通りであって、まことに遺憾の段階に追い込まれました。もしそのときに本日のような材料がありまして、各党が一斉に立つことを得ましたならば、よりよき効果が打ち立てられることだろうと私はひそかに思ったのでございます。しかし本日は幸いにいたしまして、よくその説明を聞き、後刻、清澤委員からも要求して、官房その他、予算関係がお集まりだということでございますから、ここにおいてこれをじっくり質疑応答したいと、かように考えます。今後予算関係においては、予算会議の開かれた際においては、試験場におきますところの各自も、よくこの点に注意をお払い下さいまして、われわれの至らないところ、気づかないところには、どうか資料を御送付願いたい、かように希望いたします。
  25. 江田三郎

    委員長江田三郎君) 速記をとめて……。   〔速記中止〕
  26. 江田三郎

    委員長江田三郎君) 速記をつけて……。
  27. 清澤俊英

    清澤俊英君 大体詳しく御説明いただきまして、非常にありがとうございました。ただ水産関係へのあなたの研究題目が、非常にまあ遠洋漁業というようなものだけに中心を置かれて、内政面とでも申しましょうか、いわゆる国内における河川、または湖沼というようなものが、だんだんと開拓で減って参りましたり、潅排水等の関係上、あるいは電源開発等で非常におもむきが違ってきております。今まで多額に収獲を持っていました山間部の農民、あるいは沿岸の漁民というようなものが、ほとんど失職状態になっている状態のとき、この淡水魚の研究並びにそれに対する御発言が一つも聞かれませんでしたことに対して、非常に不満という言葉を使うのは、出過ぎかしれませんが、どうも納得しかねるものがありますので、その点をどうお考えになっているかということと、いま一つは、沿岸漁業がだんだん衰微しているようであります。従って、機帆船等の問題も相当入っておりますのですが、これらとの関連における沿岸漁業とでも申しますか、海岸でありますが、それの今までの漁民生活が非常にくずれておるというようなことに対する御研究一つ考えておられないというように見ましたが、その点はどうなっているかという二点をお伺いしておきたいと思うのであります。
  28. 藤永元作

    説明員(藤永元作君) 内水面の問題は、これは水産庁だけでどうすることもできない問題が非常に多いのであります。たとえば農薬を例にとってみますと、農薬の被害のために、河川、湖沼、あるいは沿岸の魚族は減っていくというようなことも非常に多いのであります。こういう問題は農業改良局とも十分連絡をとって、いかにしてその被害を少くするかというようなことを今鋭意研究して参っております。それから電源開発のために魚族が減るということも仰せの通りでございますが、これは電源開発の会社と一緒になりまして、モデル・ケースのような、たとえば今は相模湖でやっておりますが、電源開発の場合に河川の水が減った場合にはダムのようなものを利用する、そういう場合にどのように魚族がういう場合にどのように魚族が増加しておるかというようなことは、日野に淡水区の研究所がございまして、そういうことを専門にやっておるのでございまして、そこでやっております。  それから沿岸漁民の対策、これは水産庁でも非常に頭を悩ましておりまして、何といっても過剰人口ということが一番大きなネックになっているんじゃないか、かように思っております。従いまして、沿岸漁民の進むべき方向といたしましては、半農半漁的な形体が割合生活は安定するのではないか、かように思っております。それから純漁村というものは、これからは組合あるいは生産組合のようなものを中心にいたしまして、なるべく海外に出るというような方向をとっております。そういうように研究を進めております。先ほどちょっと申し上げましたが、水産方面はちょっと沖に出ますとすぐ外国との摩擦ということが非常に大きくなりますから、これからはわれわれといたしましては国際漁場の研究ということに最も力を入れなくちゃならない、かように思うのであります。
  29. 清澤俊英

    清澤俊英君 あなたね、予算を頭できめられておるから、その中でするには国際的な遠洋漁業等のことを非常に重点に言うておられますけれども、現実において河川の状態や沿岸の状態が違ってきまずから、これを守るために、できるできないは別として、これぐらいの研究機関を持ってこういうふうにやったらよかろうぐらいのことは進めてもらうことが私はいいんじゃないかと思うのです。と申しますことは、場合によっては、禁漁区を設けて繁殖をはかるとかいうようなことも研究対象となるのじゃないかと思いますので、そういう点をやはり研究して、水面を遊ばしておくという考え方をなくするように研究が進まなければならぬ。  一番私どもが不満にたえないのは、電源開発などができます際に、ダムの研究などはほとんどできていないわけです。これは電源によって水路を断たれたというような地方におきましては、重大な支障になっておる。ちゃんとあなた方の方にダムの研究等ができておって、電源開発ができるその際に、そのダムをどういうように使うかというようなことになりますれば、非常に今の紛糾を緩和すべきものがたくさんあったと思うのです。せっかく上流においてマスやサケを養魚してみましても、全部河口でもって取り上げられてしまう。こういうために何百万分の一かがようやく旧来の漁民に幸いするというようなことは、私ははなはだそれは遺憾にたえないことでありまし  同時に、やはりそういうことの御研究をしていただくことが、できるできないは別ですよ、予算がとれるとれないは別だが、そういうものを常に力強くあなた方のところでおっしゃっていただかなければ、民間の人たちが幾らわいわいと言っても、問題にならない。本日もここには陳情書が来ておるが、これらなども多分藤原ダムに対する将来の漁業権の問題が出ておるのじゃないかと思われる。私はまだ見ませんですけれども、すぐ一つ、たとえればそういう問題が出てくる。しからばどういうダムを作っていったならば、ダムの魚堤を作っていったならば、これが解決するかというようなことを、さらに研究していない。非常にそういうことをやる機会があります。だから、そういう点をいま少し、予算がとれるとれぬは別として、御研究、強調していただくことが私は必、要性があると思うのですが、どうお考えですか。
  30. 藤永元作

    説明員(藤永元作君) ダムの問題は、今淡水区で非常に研究はして参っております。それから電源開発の方にも、ダムが実行される場合には必ず魚堤は作ってもらうようにというようなことは、厳重に申し込んでおります。しかし現状で偽わらないところを申し上げますと、ただ、おざなりにやっておるという程度にすぎないのじゃないかと思われるのです。それでわれわれとしましては、常に強く魚堤を作るようにということは申しておるのであります。  それから問題は常に、わずかな補助金といいますか、見舞金といいますか、そういうもので解決されておるというのが偽わらない現状だろうと思っております。そういうことでないように、しっかりしたデータをとるようにわれわれは努力しております。
  31. 清澤俊英

    清澤俊英君 しからば、魚堤というようなことは別としまして、ダムで方々で湖水ができますね。それに対して大体どういう魚族を入れたら一番、飼料等の関係もありましよう、土地によりまして。こういうダムの上流においてどういう魚族をやったらいいかというような御研究は済んでおるのですか。
  32. 藤永元作

    説明員(藤永元作君) 今淡水区を中心にやっております。寒い所、暖い所、あるいは南の九州というような所で、大体どういうような魚を飼えばいいというようなことは鋭意研究しております。大体の筋はわかっております。
  33. 清澤俊英

    清澤俊英君 それならば、なお聞きますが、そういう所でしからばいつから研究して、今現在放流しておる所はどことどこですか。
  34. 江田三郎

    委員長江田三郎君) 大体そういうことをよく今後お考えになって運営していただきたいと思います。  そこでちょっとお諮りしますが、午後農林関係各局の予算の内容を聞くということで、実はこれはきのうの日程になっておりましたが、なかなか時間をとりまして、きょうも繰り返して午前中承わっておるようなわけで、質疑がありましたら、一つその点お含みの上で、簡単に、予算関係じゃなしに。
  35. 三橋八次郎

    ○三橋八次郎君 さっきの質問に対する答がない。
  36. 江田三郎

    委員長江田三郎君) 三橋君の質問にまだお答えがない面がありますから、それらの問題につきましては、これは一つあとから三橋君の方へ直接お答えを願いたいと思います。
  37. 白波瀬米吉

    白波瀬米吉君 蚕糸試験場長にちょっと伺いたいと思うのですが、蚕糸科学研究所というものは、あれはまあ蚕糸に対する科学の研究ということを非常な大きな期待をもって作られたのであって、それがかれこれもう二十年ぐらいな年次がたつと思うのでありますが、あなたの方の試験場研究されているのと、現在蚕糸科学で研究しているのとは、一つの特色を今日も持っておるかどうかといというような問題、もしああいう研究もぜひ必要なんだということであるのなら、ああいう状態のままでほうっておかれてよいとお考えになっておられるかどうかということを、一つお聞きしたい。私は、あの問題は非常な大きな期待をもって、生糸輸出の上に一つの大きな光明を与える研究をするの一だというようなことで、発足してすでに二十年にもなる。今日あなたの立場からお考えになって、やはりああいう研究はもうぜひ必要であって、一つの大きな研究機関としての存在価値があるのだというようなふうにお認めになっておるとすれば、現在ああいう状態のままで置かれてよいとお考えになっておるかということを、ぜひこの際一つ承わっておきたいと思います。
  38. 横山忠雄

    説明員横山忠雄君) 蚕糸科学研究所ができましたのは、白波瀬委員の御承知のように、ナイロンが発明されたのに対して、日本蚕糸業をそれに適応させていくということでもって緊急にでき上ったのでありまして、その当時としては相当な資金と運営費を持っておりましたので、かなり希望を持ち、また活発に始めたのでありますが、戦争中二度戦災にあいまして、設備をすっかり焼いてしまいましたことと、それから戦後それを復旧するに足りるだけの資金を集めることができなかったことと、その二つでもって、初めの計画がすっかり狂ってしまいました。しかしあれを作るときの意味と申しますか、それは、官立の研究所でできないような意味研究をする。申しますと、一つはテーマのとり方、もう一つは会計面について、官庁の非常に不自由と申しますか、官庁とは違った運営の仕方をやっていきたいということでできたのでありまして、それらの長所を生かしていって、国立の蚕糸試験場と有無相通ずるような形でやっていくのは、これは非常にいいことであり、またそういうことはある程度必要なことであろうと思います。戦後あの研究所の運営が非常に困難になりましたときに、民間の方にもお願いしたことはありますが、いろいろな事情から申しまして、もとの形に復旧することができませんでした。しかしその後いろいろな方面、たとえば農林省からは応用研究費の形でもってある程度研究費をもらっておりますし、それから文部省からも科学研究費また私立研究所の補助金、そういうふうなものをもらいまして、一番悪い時期は通り過ぎて参りました。それで、ごく最近になりますと、またぽつぽつ新しい研究ができかけております。  そのうちの一つとしましてほ、蚕の方面で、蚕の新品種の育成が割合成功しております。国の研究所で育成した蚕の品種を少し改良いたしまして、実際に民間に合うような形にした日一二二改、支一二二良という品種ば、これは春の品種としては非常に普及率が高くて成績をあげております。それからつい最近、七月になってから、蚕品種協議会を通過いたしました品種も蚕糸科学研究所の育成でございまして、これも細繊度、最初私の御説明申し上げました日本輸出生糸を改善するという方向に沿うた品種として取り上げられております。それからもう一つの最近の成功は、いろいろなバクテリヤから出てくる酵素を利用して、絹の製錬、また絹織物の、何と申しますか、いろいろな型抜きの方へ酵素を使っていく、また野蚕繭の練糸も、今までできなかった程度まで野蚕繭の繰糸ができるようにしていくというようなこと、これらのことは、ごく一例であります。  これらの研究から見ましても、国の研究よりもその範囲とか、それから金を支出する時期とか、こういうような面において比較的自由な面がありますので、この蚕糸科学研究所というふうなものももう少し研究費がありますれば、もっとずっとうまくやっていけるのじゃないかと思います。従って、私の意見といたしましては、あのようなものも最初作ったときの精神を生かせるようにできれば非常によろしいと考えておるのであります。
  39. 江田三郎

    委員長江田三郎君) 田中君、簡単に願います。
  40. 田中啓一

    ○田中啓一君 ただいま人件費事業費とのアンバランスのお話がございましたが、従来、戦争前には、人件費でまかなわないで事業費でまかなっておって、実際に人を使っておるのだというようなものが行政面には各方面にずいぶんあった。地方などに行って見ても、そういうことで人件費が非常に膨張しておるように見えるけれども、使っておることは昔も今も変りはせぬ。そういうようなことが、この試験場にはございませんか。これを一つ盛永さんからお聞きしたいと思います。
  41. 盛永俊太郎

    説明員盛永俊太郎君) 実は私、研究所関係いたしましたのは戦後でありまして、戦前のことについてばきわめて正確には申し上げられないかと思いますが、私の聞いております範囲では、そういうことを加味しましても、大体先ほど申し上げましたような比例になるように伺っております。
  42. 江田三郎

    委員長江田三郎君) ちょっと速記をとめて下さい。   〔速記中止〕
  43. 江田三郎

    委員長江田三郎君) 速記をつけて。  それでは、懇談中に御了解を得在したような運びをいたしたいと思いまして、一応試験研究機関の担当者からのお話はこれで打ち切ります。どうも皆さん御苦労さんでした。特にきのうというのを御迷惑をかけまして、済みませんでした。  なお、これで休憩いたしまして、午後は、はなはだ恐縮でございますが、一時半から再開したいと思いますが、ちょっと休憩に入りまして、鈴木委員の御紹介で陳情の方が見えております。これは漁業関係でございますので、特に水産庁の方ではお聞き取り願いたいと思います。  それでは休憩いたしまして、午後は一時半に再開をいたします。    午後零時三十二分休憩    ————・————    午後一時三十五分開会
  44. 江田三郎

    委員長江田三郎君) ただいまより委員会を再会いたします。  昭和三十一年度農林水産関係予算の件を議題にいたします。  すでに昭和三十一年度予算の編成期になりまして、各省それぞれ検討が進められていることと思われますが、農林水産関係予算につきましては、従来ば農林省案ができ上って大蔵省に提出された後において予算案の内容を知ったような状態でありまして、今回は事前に各当局から予算編成上の構想等について説明を聞き、委員会として要望いたしたいものはこれを要望いたしまして、当局の善処を求めることにいたしたいという趣旨によって、本日この問題を議題にしたわけでございます。なお当局におきましては、目下検討中で未確定の事柄が多いと思われ、また自由な話し合いをするために懇談によって議事を進めたいと存じますから、あらかじめ御了承を願いたいと思います。これから各当局別に順次お聞きをいたします。  速記をとめて下さい。    午後一時三十六分速記中止    ————・————    午後四時五十一分速記開始
  45. 江田三郎

    委員長江田三郎君) 速記を始めて。
  46. 亀田得治

    ○亀田得治君 ちょっと文句を言う格好になると思いますから、速記をつけて下さい。  そこで、これは少し忘れられておるような問題じゃないかと思うのですが、先ほどたまたま三浦さんからも同じような質問が出て、それと同じような事柄なんです。それはおそらく農地局長も知らないかもしれぬと思うのですが、農地に関する、あの農地解放に関する訴訟ケースですね、これがずいぶんだくさん残っているのです。それで、ほとんどそれがだんだん解決がついていくというふうな状況には私どもは見えないのです。むしろ、そういう状態にあるのに、どうも農林省全体の動きを見ておると、何かもうみながそれを敬遠してしまって、ほったらかしにしてしまう、こういう感じがするのです。これば一例ですが、たとえば私のおるところの大阪の東住吉ですね、これは一つ農業委員会で百三十一件のケースをかかえておるのです。これはおそらくあなたも驚くでしょうが、これは一小さな農業委員会としては大へんな問題なんです、これは。ほかの農業政策なんてこればちっとも手がつかぬですよ、こんなにたくさん、件数だけでもこれは大へんですよ。普通のあなた、しろうとの人なら、ちょっと訴訟が一つあったら、一家総出で頭を痛めて、それを年中考えている。農民にしてみれば同じなんです。だから、こういう状態で非常に、につちもさっちもいかぬようになっておるのに、最近私どもが地元で聞いたのですが、京都事務局ですね、農地局の事務局がありますね、あそこのこういう問題を担当しておる調査課というのですか、課がなくなるのですね、そういうことを聞いておる。課がなくなっても、実際にこういう仕事をやる人はそこに残しておくのだということであればまだいいのですが、何か非常にその方面にたんのうな農林省の事務官の方を引き揚げるようなことを私どもは聞いておるのです。それでやはりそういう面を見ると、どうも農林省はこういう問題についてどういうふうにお考えになっておるのか。なるほど全国の農地からいえばわずかな数かもしれぬけれども、しかしやはり国が手をつけた仕事である以上は、どんなにめんどうがかかっても、やはりこの結末をつけていく、これは非常に大事なことだと思うのです。で、私どもは、たとえばさっきちょうど国全体の費用の問題でもい農業関係とそれ以外とは、これは法律は違います。違ったって、それは放置できないと同じように、これは農地全体から見たって、なるほど東住吉としては百三十一件というのは多いが、日本全体の農地から見ればわずかだと言われるかもしれぬが、個々にしてみれば、これは大へんなことです。これは決して私は東住吉だけじゃなしに、ほかにも私は相当同じようなものがあろうと思う。これに対して、どうも後退していく感じが具体的に現われてきている。一体そういう考え方で来年度予算等をお組みになろうとしておるのか、その点を一つお聞きしたい。
  47. 正井保之

    説明員(正井保之君) ただいま大阪の例がございましたが、現在事務局が三つ出先として、ありますが、その中で京都が一番訴訟の件数等が多うございます。特にまた大阪地区は多いわけでございます。現在京都の事務局には、優秀な事務官が、特に優秀な人が二人担当しておりまして、非常に一生懸命に能率的にやっておるわけです。今度機構が変りまして、従来調査課というのを設けまして、そこで訴訟事務と、その他農地局の中の資料を整備するとか、あるいは各部にまたがる事項とか、そういった仕事をいろいろやっておったのでありますが、これを、訴訟事務につきましてはほとんどが農地に関するものだけでありますので、むしろ農地課に統合しましてやるということで、変ったわけであります。なお訴訟の要員につきましては、そういう組織が変る際のあとに支障のないようにということで、十分関係の課長と私ども一緒になりまして、また従来の責任の人を、各事務局ごとに話を聞きまして、要員は農地課に引き継ぐということをいたしております。現在京都のうち引き揚げるというお話で、ございましたが、実はそういった配置がえのことも考えないではありませんけれどももちろんそういった際にはあとを十分、かなりもう長くやっておりますので、かりにかわる場合にも、それに十分匹敵する方を必ず切りかえてそうしてやるということで、ございまして、別にまだきまったわけではございません。そうして切りかえるについては、訴訟事務を、これは非常に専門化いたしておりますので、ただ農地の関係をかつてやっておったから間に合うというわけではございませんので、人事等については慎重にやってゆきます。
  48. 亀田得治

    ○亀田得治君 まだ京都事務局のそういう機構改革というものは本ぎまりになっておらぬようですが、今の局長のお話からみても、京都事務局が一番輻湊しておるようです。それで、もし配置がえ等をする場合はあってもあと支障のないようにする、こう言われるのですが、これほ実際問題としてなかなかできにくいことなんです。やはりこれは、だれでもそうですが、自分が最初から担当して、そうして裁判所等に対する自分の意見を盛り込んだものを書類を出しておる。やはりその人がそれに自分の一つの使命といいますか、考え方というものをぶち込んでやっておるわけですから、その八でなければこれはなかなかがんばれぬようなものなんです。これはどんなに優秀な人でありましても、やはりかわれば、これは前の人がやったことなんだということで、結局責任がなくなって、ますますこれはもう結果においては何が何だかわからなくなってゆくのです。ただ私は非常に心配するのは、そういう有能な人が一生懸命やっておる、いつまでも同じ所におると、何か役所の内部ではいろいろな、出世というのか、そういう関係がはなはだ気の毒なんだというような面が何かあるようなこともちょっと聞いたのですが、そういう点は、これはやはり仕事が主なんですから、その仕事で一生懸命専念しておる以上は、たとえポストが変らぬでも、これは私はやり方は幾らでもあろうと思う。そういう点、私は十分一つこの問題については、局長の方で考えてもらいたい。  それからもう一つ予算の点ですね。百三十一件について国が出しておる費用というものは、一件一万五千円なんです。ところが、実際に訴訟を担当しておる弁護士、私はもちろんやっていないですよ。(笑声)実はその当時農業委員も農地委員もやっておったから、直接はもちろんやっていない。ところが、実際弁護士に渡るのば八千円なんです。いろいろな県の費用とかそういうものを引かれております。ところが、この訴訟は大体七、八年かかっているのです、起きてから大体。ところが、一件八千円くらいもらって、そうして七、八年間も優秀な弁護士にやらす。これは相当犠牲的にやっても、そんなことは続くものじゃないのですよ。これは全く自分の方が損になります。何べん法廷へ出るかわからぬですよ、七、八年ですからね。まさかそんなことはやっていないだろう、こうおつしゃるだろうが、ところが、実際ばそれじゃ話になりませんからね、  一回法廷へ行って二、三十円の程度じゃ。そんなばかなことはありませんよ、専門家に対する待遇として。そこで結局その返りというものは、地元の農業委員会なりあるいはその土地解放を受けた農民の方へ、これがかかってくるのですよ、やむを得ぬから。そうすると、まあ農地解放は割合安くやってもらったのだが、どうもそっちの方の費用が大へんで、実際ひどい状態になっているんです。私はむしろ一つこの際は、もう負けていいというわけじゃありませんが、ともかくやっぱりこういう問題はほうっておけば二十年も三十年もかかりますよ、こんな調子でだらだらやっておったのでは。だから、そういう費用の点も一つ思い切ってこの際組むなら組んで、そのかわり年内なら年内にもう勝負つけるというふうな考え方一つやってほしいのですがね。先ほど三浦さんのおっしゃったようなあれでも、ほうっておけば、実際十年も二十年もかかっちゃう。それじゃ私は実情に沿わぬと思う。そういうふうな立場で今度の予算は一ぺん組めないのですかね。これは私は大蔵省でもよく事情を話しゃ、そんなことになっているのだと言ったら、わかってもらえると思うのですが、その点はどうでしょうか。
  49. 正井保之

    説明員(正井保之君) 訴訟の関係予算につきましても、実は昨年度におきましても、単価の引き上げ、特に長くかかっている場合は多くは手間のかかる事案が多いわけでありまして、それだけ弁護士さんにも御迷惑をかけるわけでありますので、継続及び新規、ともに単価の引き上げを最後まで、いよいよもう予算がきまつちゃうというところまで、ずいぶんせり合ったたのでありますが、またそういった事情等についても主管の課でも承知いたしまして、ずいぶん昨年度も努力したわけですが、うまく話し合いがつかなかったということになったわけでありますが、今年の予定しております経費で引き上げまして、そうしてあまり非常識なことにならないようにということで持ち出しております。なおこれは十分努力したいと思っております。  それから早く片づけるようにということでありますが、これも先ほどお話がございましたようなことで、できるだけ努力をして能率的にやって参りたいと思います。
  50. 亀田得治

    ○亀田得治君 それからそれに関連してくるのですが、訴訟の多い理由ですね、これはぐずぐずやっているから、これからでもまだふえてくるのですが、先ほど申し上げた百三十一件のうち五十一件というものは、いわゆる農地法にきめられた出訴期間経過後に出ておる訴訟なんです。つまり無効確認いう名目で出しておる訴訟なんです。だから、これは今後もこういう調子で、だら、だら国がやってゆくんだということなら、どんどん出てくる可能性もあるわけなんです。それはなぜそういうことになるかといったら、これはやはりあなたの方のやっぱり指導方針がはっきりしないからなんでして、その点はっまりこうなんですね、農地法のあの五条で、たとえば農地をつぶして学校等を建てるという問題が起きた場含に、まあそういう公共的な仕事なら、せっかく百姓をしておるのだが、おれたちもやむを得ない、あきらめようということで、農民が市の方なんかにそれを譲ることを承諾する。ところが、その際に地主の方は、元地主であった人が、お前の方は今度は百姓をやめて土地を高く売るんだから、そのもらった金から半分くらいよこせ、こういう申し込みが来るわけですよ。これは何も法律上の根拠は別にないのです。ところが、知事なり  農林省はとうか知りませんが、農林省もあるいは幾らかそういう点考えているのじゃないかと思うのですが、その地主の考え方に若干なびくのですね。だから、地主がよしという承諾書を持って来たら、小作の方に金を払ってやるというような態度に、ざっくばらんに言えば、出るわけなんです。そこで小作は1小作じゃない。現在じゃ地主の方ですが、これは早く問題を解決してお金をもらいたいから、地主の了解を得るために、半分なら半分渡しましょう、こういうことになってくる。そういう事例が相当あるわけです。ところが、そういうものが一、二現れたもんだから、これはともかく、何か解放された農地についても物言いをつけておけば、結局いっかはまたその半分くらい返ってくる可能性があるということで、出訴期間がもう過ぎておるのに対しても、無効確認訴訟といったような、こんなものは訴訟しさえすればじき敗訴になることはわかり切っている。切っているのですが、ともかく裁判所に書類だけ出しておけ、言いがかりさえつけておきや、土地が処分される場合には入ってくる。入ってこなきゃもともと、そういう点があるわけです。私は、こういう実情にありますので、こういう金を地主が請求することに対して農林省は一体どう考えておるのか、これを一つ見解を聞きたいのです。まず法律的に、並びに法律的以外な立場、両方から。
  51. 立川宗保

    説明員(立川宗保君) 農地法第五条の許可の関係でいろいろと御指摘がございましたが、もちろん訴訟が提起されておっても、それは提起によって直ちに所有権の移転を否認するものではございませんから、訴訟が確定をするまでは、適法に所有権が移転せられかつ登記せられた人の所有であることは当然であろうかと思いますが、今御指摘のようないろいろな事態があるということでございますので、その辺はいろいろ調査をいたしまして指導に遺漏がないようにいたしたいと思います。
  52. 亀田得治

    ○亀田得治君 ちっと、やっぱり速記をつけるということになると、慎重になってしまうのですが、たとえば第五条の場合はですよ、これは私言うのは、その考え方がはっきりしませんと、だんだん訴訟がふえてくるのです。片づくどころじゃないのです。それで私は聞いておるのですが、この第五条の場合は、五千坪をこえる場合には農林大臣の許可ですから、これは農林省が直接扱わなきゃならないのです。私はそんな不明確な態度では許されぬと思うのです。知事がやるのに対して農林省考え方を参考に出してある、そういうことじゃないのですからね。今までに農林省が直接そういう問題を扱ったことはないのでしょうか、私が言ったような一つの紛争を持ち込まれて扱ったということは。
  53. 立川宗保

    説明員(立川宗保君) 具体的な案件については私は記憶がございませんが、御承知のように、現に国有農地でまだ売り渡し未済のもの、これの用途の転用につきましては、旧所有者と相談をするということに当然なるわけでありますが、すでに所有権が移転済みのものであって、それについて農地法五条の転用の申請が出て参りました際に、所有者の同意書の添付々必要こするというようなことをやっておるはずは、当省としてはないはずでございます。
  54. 亀田得治

    ○亀田得治君 それではこういう点だけは明確に私お答え願えると思うのですが、まあ感情的な問題は別として、法律的には、地主がその現在の自作農に対して幾らかの金を要求すると、こういう権利はないでしょう。
  55. 立川宗保

    説明員(立川宗保君) それは、現にこの訴訟が提起されておりましても、訴訟が確定をして、この無効確認の訴えが確定をいたしますまでは、そのようなことにはならぬかと存じます。
  56. 亀田得治

    ○亀田得治君 そういうことなら、現在の自作農の人が学校等のために農地を出しましょうという話が学校を建てる公共団体との間につく、その話さえつけば、もうどんどん仕事を進めていいわけでしょう。どうしても地主が了解を与えぬという場合に、地主の了解を待つ必要がないわけでしょう、学校の必要性というものはみんな認めてきておる場合に。だから、そういう点を、何もその法律上の根拠がないのに、ぐずぐずする傾向があるわけなんです。だから、私はそれははなはだ、もうちっとも根拠のないことですから、そういう点については一つ農林省として十分明確な考え方を出してやってもらいたいと思うのです、これは訴訟の増加を防ぐためにも。それは出せますかな、そういう……。
  57. 立川宗保

    説明員(立川宗保君) この問題は、私が申し上げましたように、訴訟が確定をしていない前には、この旧所有者の所有権というものが働く余地はないように思いますので、大阪ですか、どのような事態で今御指摘のようなことがありますか、少し調べまして、何かあるいはいろいろ思わざる理由があるのかもしれませんが、よく調べまして、農地法の趣旨に基いて適当な指導をいたしたいと思います。
  58. 亀田得治

    ○亀田得治君 もう一つ最後に。先ほど局長から御詳明あった中で、従来農地の移動統制等の問題について府県にまかしていたが、非常に何だから、農林省としても少しタッチしたいという意味のことを一言われたのですが、あれ、私意味がよくわからなかったのですが、どういう意味ですか。
  59. 正井保之

    説明員(正井保之君) 移動統制とかあるいは所有権の改廃統制、そういったものについての事務費について、農林省からも見るようにしたいということで、検討しておるわけです。
  60. 亀田得治

    ○亀田得治君 予算をそういうふうに農林省が見ようというのであれば、私はやはり、法律上府県が握っておる事務でありましても、やはり適切な事務が行われるように意見は出してやってほしいと思うのです。それが先ほど管理部長が言われた、つまり何か私適当な指示を出してもらいたいという、それに当るわけですからね。金を出す以上は、やはりそれくらいの指示は出してやってほしい。これは十分一つ研究した上ですけれども……。
  61. 江田三郎

    委員長江田三郎君) それでは、まだいろいろあると思いますが、大体先ほど懇談の中にもありましたように、この来年度予算の具体的な問題につきましては、農林省の方でも、懇談の中で委員の諸君から強く御希望された点は、十分慎重に考慮されて、編成に当っていただきたいと思いますが、なおその中で食糧の増産六カ年計画の問題、それから補助金の行使の問題、本年度予算に対する公共事業費の中の天引き等の問題につきましては、これは懇談の趣旨をもとにいたしまして、明日また委員会としての決議なり申し入れの案を作ってお諮りしたいと思いますから……。  本日はこれで散会いたします。    午後五時十七分散会    ————・————