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説明員(立川
宗保君) お手許に資料を差し上げてございますが、この
小作料統制の目標及び算定方式についての
意見、
小作料対策協議会、
昭和三十年八月十一日という、大体この資料に基きまして経過を申し上げたいと思います。
小作料対策協議会は農林大臣が委嘱しました九人の先生方、すなわち我妻栄、東畑精一、近藤康男川野重任、大槻正男、大川一司、馬場啓之助、大内丈、宍戸寿雄、以上の九先生か組織をされましてメンバーとなられまして、七月の八日から実体的な審議を始めていただきまして、そうして八月の九日まで、四回の
委員会と一回の小
委員会で討議を重ねられまして、八月の十一日に、お手許に差し上げておりますような
意見が、この協議会の結論として農林省に提示をされた次第であります。
そこでこの内容を簡単に御
説明申し上げますと、農林省からこの協議会に
意見を求めました点が二つございまして、
一つは
小作料統制の目標と申しますか、あるいは統制
小作料の政策と申しますか、そういったような問題が
一つ、それから第二は統制
小作料の算定方式、農地法二十一条に
小作料の基準を定めることになっておりますが、それの前提となりますところの算定方式、これを
意見を求めたわけでありますが、それに応じまして、その二つに区分されて
意見が出て参りました。
さて、
小作料統制の目標でありますが、これについては五項目に分けて
意見が提示をされたのでありますが、第一は農地改革は自作農創設を
一つの目標とした。ところが全部が自作農地化せずに小作地が残っておる。そこでこの
小作料の統制の見地から申して、小作地の耕作者についても、自作地の耕作者と同じような利益を与えるというような見地から考えるべきであろう。第二には、この小作農であると自作農であるとを問わず、農業者一般について申せば、それは単なる経済的に賃労働者というような性格に甘んずべきではなくて、小生産者として育成して行くということが必要である、つまり労賃収入以上のものが農家の収入としてあるべきであるというのが第二の点であります。
さて、その労働収入についてでありますが、これはいろいろ先生方が研究をなさったのでありますが、戦前は御
承知の
通り小作料が相対的に高かったのであります。そうして農地価格もそれに見合って高い価格があったわけでありますが、それはたまたま農民が自分の労働を非常に低く評価いたしまして、そうしてその前提のもとにそのような
小作料が成り立っておった、こういう工合にこの
委員会では判断をされたわけであります。農地改革はその点から申せば、この
小作料を正常な地代にまで引き下げるというのが方針であるのであって、従って現在、農地改革以後の現在におきましては、農民の労働収入の評価は、少くとも都市の工業労賃と見合うものでなければならない、その程度に農民の労働を評価するということで考えられねばならない。そうして
小作料の統制につきましては、統制の意義が議論をせられましたが、それはやはり現在統制は必要であるということが御
意見でありました。
さてその次は、その算定方式に若干
関係が出て参りますが、
小作料を計算いたします場合に、収益計算方式を考えておるわけでありますが、その場合に、前提になりますところの小作農の農作物の収量でありますが、これは普通の平年の収量を前提といたしますけれ
ども、その平年の収量にやはりある一定の変動の幅があります。減収の誤差があるわけでありますが、減収加算がつけられる程度の減収になりますならば、そこで減収加算という形で収入が裏打ちされますけれ
ども、減収加算がつかない程度の減収であっても、なおかつ小作農の経営が安定をするような前提において平年の収量を見なければならない、こういうことが
意見として出て参ったのであります。それから最後に全員の
意見ではございませんでしたが、小作地を現在では積極的に残さなければならないという必要はない。小作地が残って、おるということは土地取り上げが生じたり、やみ
小作料が出てきたり、その他好ましくない
事情が起るのであるから、政策としてはむしろ小作地を漸次減らして行くということを強く考えるべきであるという
意見がございましたことを明らかにしてあります。
さて次に算定方式に入るわけでありますが、以上のような前提に従いまして、農地に帰属せしめ得る地代の限度をどういう工合に把握するかということを計算を一いたしたのであります。それは
一つの収益計算方式というものでごいますが、これは文字でここに書いてございますけれ
ども、便宜数字につきまして御
説明を進めたいと思いますが、四ページの表、これは
一つの参考表でありまして、正式には算定方式の抽象的なものが
意見といいますか、答申でありますけれ
ども、それに基いて計算をするとこうなる、こういうものでございます。これは最近の作柄の安定をいたしておりました年と考えられます二十七年、
昭和二十八年、二十九年はともに減収加算がつきましたような不作の年でありましたので、
昭和二十七年をとりまして、その二十七年をペースにして一二十年の計算をやったというのがその方式であります。
まず収入から利潤を引いて土地収益を出す、こういう方式でありますが、その収入のつかみ方は平年の反収の二石二斗一升というものから先ほど御
説明を申しました減収加算がつかない程度の減収額、すなわち四・九%の収量を落しまして、つまり従って二石一斗という数字になるわけであります。そこでその二石一斗の米を販売に回すものと自家消費分とに分けまして、販売分は先ごろきまりました
昭和三十年の農民の手取り米価で計算をいたしまして合計一万二百六十八円という数字が出て参ります。それから自家消費の分は消費者公定価格、消費者米価から中間経費を差し引きまして、その中間経費を除いた原価、それが石当り九千二十五円、一等から四等米までの平均裸価格でありますが、それを単価といたしまして自家消費分一石六升に乗じまして九千五百七円を得ます。さらに副産物を加えまして収入合計が二万一千九百六十七円。
次に生産費用でありますが、これは
昭和二十七年の生産費調査、先ほど申しました
昭和二十七年の価格に、物材費につきましては経営部門のパリティ指数の
昭和二十七年から三十年までの伸び方でもって調整いたします、ふくらまします。それから労働費等につきましては、これは都市の工業労賃でもって二十七年の生産費をもとにいたしました労働費を換算いたしまして、それに労賃の上昇率を掛けまして、二十七年から以降の上昇率を掛けまして数字を出す。かようにいたしまして、資本利子、租税公課を加えた費用が二万四十一円。
そこで以上収入から支出を差し引きますと、千九百二十六円、これは反当りであります。それから利潤につきましては四%を押えましで、これを差し引きますと、土地の収益が千百二十四円という数字が出て参ります。
さて以上のような
考え方でやりましたこのやり方がこの算定方式のa、b、c、d、eのところまで抽象的な文句で書いてございます。さてこれがいわば基本になる土地の収益計算でありますが、この参考表としてもう
一つ計算がございます。これは六ページの別紙2というところであります。この六ページの計算はどういうことかと申しますと、現在統制
小作料の基準が五百二十五円、反当五百二十五円になっております。ところがこれは
昭和二十五年にきめたのでありますが、この二十五年のときにきめました五百二十五円の基準統制
小作料は、二十四年産の予算米価を基礎にいたしております。それが反当り四千四百三円であります。ところが
昭和三十年の手取り米価は九千八百七十三円に相なりましたので、その間の米価の上昇率で五百二十五円というものをふくらましてみますと、ここにありますような掛け算をやりまして、答えが千百七十六円というように出て参ります。
さて、本文に戻りましてf以降でございますが、以上のような前提で
小作料の算定方式を考えたのでありますが、これに土地による等級差をつけなければならぬ、いい土地はやはり周く、悪い土地は安くということをつけなければならない。で中には、統制
小作料の性格を、一本
小作料という工合にして、
一つ全国一律に、もう一本でいい。これがもう一番上だということで、単純にただ
一つの金額を出す方がいいじゃないかと、こういう御
意見もございましたが、多くの
委員の
方々の御
意見は、やはり差をつけた力がよかろう、こういうことで農林省が二年前以来やっておりました土地等級調査を一応とって、それでこれに基いて基準
小作料から上下の格差をつけた方がよかろう、こういう御
意見がございます。最後にgのところでありますが、これはこういう御
意見が出たわけであります。
以上計算をされましたこの土地収益、つまり先ほどの数字で申しますと、四ページの数字では反当千百二十四円というこの数字でございますが、これは
小作料として認め得る最大限である。そこでこれまで統制
小作料の改訂をするということは、しない方がいいのではないかという御
意見であります。で、それはこの辺は全員の御
意見ではございませんが、こういう御
意見があったということを明記をしてございますのは、以上のような
小作料統制の見地に立てば、現行の
小作料よりもこの答えとして出した
小作料は上るが、そこまでは認め得るという理論上の計算になるけれ
ども、それまで
小作料を上げないで、その余裕分を農業経営の中に保留をして、農業経営の
改善のために必要な投資に充てたらいいじゃないか。で、そういう見地から先のように出ました千百円何がしというようなところまで基準の
小作料を上げない方がいいということにもなろうかという御
意見が
一つ。それからもう
一つは、
昭和二十五年以来の土地収益を以上のような方式でいろいろ計算をして参りました。年によって多い年も少い年もいろいろ出て参りますが、大体二十五年から多少不規則ではありますが、二十九年ぐらいまではどうやら減って行く傾向にある。かつまた年次間においても安定を欠いておる。つまり不規則である。一本でずっと下るという傾向が二十五年から三十五年まで通してあるわけではない。また一本でぐっと上るという傾向がその年間にあるわけではない。不安定でありますから、
小作料を土地収益限度一ぱいに上げることは適当でないだろう、こういう御
意見もありました。で、具体的にはここには表示されておりませんが、このような御
意見からは現行の全国の最高反当六百円、基準が五百二十五円というこの現在の統制額は、そのまま据え置いたらよかろう、これを引き上げるという必要はないではないか、こういう御
意見が展開されたわけであります。以上のようなことでこの協議会の御
意見が出て参りました。で、以上に基きまして現在では農林省といたしまして、これをどういう工合に取り上げて、どういう工合に決定をするかということを今内部で検討中でございます。まだ全然結論には到達しておりませんが、このような御
意見を大いに尊重して、これを前提として考えて行こうじゃないか、こういうことで目下作業及び討議をいたしております。