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1955-07-28 第22回国会 参議院 内閣委員会 第36号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年七月二十八日(木曜日)    午前十時十六分開会     ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     新谷寅三郎君    理事            長島 銀蔵君            宮田 重文君            木下 源吾君            松原 一彦君    委員            井上 知治君            植竹 春彦君            木村篤太郎君            中川 以良君            中山 壽彦君            豊田 雅孝君            野本 品吉君            加瀬  完君            千葉  信君            菊川 孝夫君            田畑 金光君            松浦 清一君            木島 虎蔵君            堀  眞琴君   国務大臣    外 務 大 臣 重光  葵君    国 務 大 臣 杉原 荒太君    国 務 大 臣 高碕達之助君   政府委員    内閣官房長官 松本 瀧藏君    法制局長官   林  修三君    法制局次長   高辻 正巳君    防衛政務次官  田中 久雄君    防衛庁次長   増原 恵吉君    防衛庁長官官房    長       門叶 宗雄君    防衛庁防衛局長 林  一夫君    防衛庁教育局長    事務取扱    都村新次郎君    防衛庁人事局長 加藤 陽三君    防衛庁経理局長 石原 周夫君    防衛庁装備局長 久保 亀夫君    経済企画庁次長 石原 武夫君    経済企画庁総務    部長      酒井 俊彦君   事務局側    常任委員会専門    員       杉田正三郎君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○自衛隊法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○防衛庁設置法の一部を改正する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○防衛庁職員給与法の一部を改正する  法律案内閣提出衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) ただいまから内閣委員会を開きます。  自衛隊法の一部を改正する法律案防衛庁設置法の一部を改正する法律案防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案を一括して議題といたします。  前日に引き続いて御質疑を願います。
  3. 加瀬完

    加瀬完君 防衛庁長官に伺いたいのでありますが、総括質問の折にも一応伺いまして、御答弁が時間を要するようでございましたから、あとでお伺いをするということにして打ち切っておきました日本戦略構想と申しましょうか、基本戦略の問題でありますが、他の委員からもたびたび同じ問題が出ておるのでございますが、当然防衛計画ということを立てるといたしますと、防衛計画に伴う動員計画といったようなことも考えられてこなければならないと思います。この動員計画はどんなふうにお考えになっておられるのでありましょうか。
  4. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) お答え申し上げます。いわゆる動員計画というものにつきまして人と物とに分けて考え得ることかと思います。人の場合につきましては今まで法律制度の上で認められておりますのが、いわゆる動員計画に関連するものとして認められておりますのが予備自衛官制度というものがあることは皆さん御承知通りでございます。そしてこの予備自衛官法律上の定数は一万五千人ということに相なっておるわけでございます。現実にそれでは今日までどれくらいの予備自衛官が確保できておるかと申し上げますと、最近約四千人近くなっておりますが、まだ四千人を欠けております。応募しておりますのは七月一日現在で四千四百名、そしてすでに発令しておりますものが三千六百六十五名、こう相なっております。この発令済みのものがそうでございますが、応募しておるものはもう原則としてほとんど例外なく実際上発令することに相なるわけでございます。ただ手続がまだそこまで済んでいないという状況でございます。そして今年の予算では約五千名の予算を計上して国会の御承認を得ておるわけでございます。こういう予備自衛官は、それでは防衛出動の際にいわゆる防衛招集を受けることが法律によって予定されておるわけでございますが、それではそれをどういうところに一体用いるかという点、大体におきまして今考えておりますのは、主として病院とか補給処とかの、後方での業務ということに主として考えておる次第でございます。それから物の方の、物的の方面のことでございますが、これは自衛隊法の中で、防衛出動時における物資の収用等に関し、また公衆電気通信設備等利用等につきまして、基本となる法律規定が設けられておる次第でございます。百三条から以下にそれが規定いたしておるわけでございますが、この方の面につきましては、実はまだ具体的に動員計画というようなとこまで立てるに至っておりません。これをもしそういうことをやるとしますれば、おそらくこの法律だけでなく、さらに施行に必要な政令等整備も必要かと存じますけれども、まだそこまで至っていない状況でございます。
  5. 加瀬完

    加瀬完君 アメリカとの共同防衛ということがたびたび外務大臣からも防衛庁関係からも御説明の中に出てくるのでありますが、共同防衛といいますと、これは当然アメリカ軍分担任務日本側分担任務というものがあろうと思われるのであります。この点について、先般も伺ったのでありますが、あまりはっきりしない。そこで、その点について一点だけ伺いたいのでありますが、杉原長官衆議院の、航空機はもっぱら防衛のものに限られる、爆撃機は考えていないと、衆議院質問に対してこう答えております。航空自衛隊の使命は爆撃は全然ないのかというさらに質問に対しまして、そうであると、しかも、行政協定の中には、日本国防衛について両国政府協議するという協議条項があると、こう答えられておるのでありますが、これは衆議院でも出ましたように、これはいつでもアメリカとの共同作戦ということをとるわけでありますが、その共同作戦をとるということになりますと、航空作戦を指導するといいますか、この指導権を握っておる者はいつでもアメリカということになると思うのですが、そう解してよろしいか。
  6. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) 万一そういうふうな事態が起りましたならば、そのとき行政協定の二十四条に従いまして、両国政府協議をする。そして、その協議によってどうする、こうするという具体的のことはきめなくちゃならぬことに相なると思います。これは今日までもたびたび国会でも問題として熱心な御議論があったようでございますが、その際、それでは指揮権はだれが持つかというようなことも、これは一つの非常に大きなこととして問題になるかと存じますが、これは行政協定自体ではそういうことをまだ規定してもございませんし、その他のたとえば安保条約等の正式の条約規定の中でもそういう点が解決を見ていない。そうして一方、昨日も申し上げましたように、日本法制といたしましては、自衛隊に対する最高の指揮監督権というものは、内閣を代表して総理大臣が持っておる。総理大臣が持っておるということは、それ以外の者は持っていないという建前に相なっておりまするから、そうして実際上の必要からいたしまするというと、日本区域において敵対行為が発生したということに対して対処いたしますためには、共同協力をする場合に、指揮権というのが別々になっておるということは、実際上において不都合なことが生ずるのであろうということも予想できますけれども、これは私の一応考えますところでは、日本法制がそうなっている以上、これはその法制を改めるとか、あるいは特別のまた規定を追加するとかということがない限り、やはり指揮権内閣総理大臣ということでやっていくよりほかないだろう、あるいはその際、これは将来のことでありまするけれども、法律ないし法律と同等の効力を持つような条約規定国会の御承認を得るそういう場合に処する条約規定、そういう規定を必要とするだろうと存じます。ただ単に、そういう規定を前提にしないで、行政的にだけ、政府行政権の作用としてだけ処と、こう思います。
  7. 加瀬完

    加瀬完君 結論的に今御説明の要点を要約いたしますと、安保条約行政協定には、この共同作戦についてどういうふうにして行ったらいいかという規定はない。しかしながら、将来予想されるところの航空作戦というものから、アメリカの方はずんずん航空戦力というのを進めておるということは、これは事実であります。でまた、アメリカ航空作戦に頼って、日本防衛をしなければならないというのもこれは常識的にだれでも考えられる事実であります。そしてまた、いろいろの経過説明から伺いましても、地上部隊が将来撤退することがあっても、航空部隊というのは相当日本に残るであろうということもこれまた事実であります。そうなってくると、将来とも日本航空防衛というものの主導権アメリカでとっているということに判断できるわけです。そうなって参りますると、日本防衛の実際の効力というものは、あるいは実際の効果というものは、アメリカ承知をしない限りにおいては不可能だということにもなる。そうすると、それは、逆に言うならば、アメリカ主導権だけで日本防衛は考えられておるということにもなる。そうすると、私ども心配するのは、それじゃ結局日本防衛とは表面上言っているけれども、航空作戦に限っては、アメリカ本位日本防衛というものは左右されるのじゃないか、こういう疑問を持つわけです。この点はどうですか。
  8. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) 今の加瀬委員の御指摘の点は、私お聞きしておりまして二つの場合に分けて考えてみることが必要じゃないかと存じます。一つはそういう航空部隊日本の場合で言いますと、そういう防衛出動をするかせぬかという場合と、した後においての実際のいわゆる作戦行動というものをする場合のことと、この二つに分けて見ることが適当かと思います。そして航空部隊を含めて防衛出動をするかせぬかということは、これは全く日本が自主的にきめるということは明々白々たることと存じます。それからそれが出動したと仮定いたしまして、その場合の行動につきまして米国との協力関係、それは先ほど申し上げた通りのことになると思います。
  9. 加瀬完

    加瀬完君 私の伺いたいのは、航空防衛ということに関しては日本はほとんどアメリカに依願をした形になっているんじゃないか、こういう点が一点。アメリカ側からすれば、航空防衛日本については自国から手放さないと言っているのであるから、日本における航空防衛というのはアメリカ本位航空防衛ということになるのではないか、こういう点であります。
  10. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) これは現在の場合と、それから将来の場合とに分けて考えると、現在はなるほど日本側といたしましては航空に関する限り昨日も申し上げましたように、実働部隊的のものはまだ持っていない、ほとんどアメリカに依存しておるというような現状でございます。将来のことといたしましては、実はこの長期計画の中でも航空部隊のある緯度の整備ということは考えていかなくちゃならぬことだと思っております。従いまして、これが相当程度整備されました場合と現在とではずいぶん場合が違ってくるとおもいます。
  11. 加瀬完

    加瀬完君 相当整備されるとおっしゃいますが、アメリカ航空部隊に関しては相当期間日本主導権をとるということを明言しておる。なお日本航空力整備するならば撤退するということも全然今言っておりません。そうすると、防衛と申しましても航空防衛というのを除いて防衛主体というものはあり得ませんから、結局日本防衛々々と言いますけれども、防衛主導権というものはがっちりアメリカに握られておると、こう言わざるを得ないのではないか。将来はいざ知らず、現状においては、あるいは近き将来においては、日本防衛主体を握っているものはアメリカだと、アメリカ航空部隊というものによって防衛主導権が握られておる、あるいは運営されると、こう解釈してよろしいのではないか、こういう点です。
  12. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) それは事実上航空関係につきましてはアメリカ側の力に非常に期待する点が多いと思います。それは事実であります。
  13. 加瀬完

    加瀬完君 そういたしますと、次の二点を私は伺いたいのであります。  現状における事実の上においては防衛主導権を握っておるものはアメリカだと、しかもそのアメリカ航空兵力だと、こういうことになりますと、航空防衛は先ほどの説明にもありましたように当分アメリカに依頼するということになれば、共同防衛立場からはアメリカ要求する航空基地提供というものは当然日本義務となると、こういう形をとらざるを得なくなると思いますが、この点はどうかという点が一点、まずそれから伺います。
  14. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) 航空基地その他のアメリカ軍基地と申しますか、行政協定上の言葉で言いますといわゆる施設区域というもの、これは行政協定によりまして御承知通り日本側は一定の義務を負うておると、こういう関係であることは、御承知通りでございます。
  15. 加瀬完

    加瀬完君 くどいようでありますが、重ねて伺いますが、私が指摘いたしました通り共同防衛立場から特に航空力アメリカに依存するというならば、アメリカの必要とする航空基地提供は当然日本義務かと、こういう質問に対しまして、行政協定によって提供を必要とするという要求があればそれに応ずるのが当然の義務であるというふうに御答弁いたされたと思うのでありますが、そう考えてよろしゅうございますか。
  16. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) 基本的に言ってそうですが、もっと精密に申し上げますならば、行政協定に書いてあります通り施設提供についての当該条項に書いてありますように、安保条約の第一条の目的を達成するために必要な施設及び区域提供することに同意するということが明定してあることは、加瀬委員も御承知通りであります。
  17. 加瀬完

    加瀬完君 しかし、この行政協定、それから行政協定の中の合同委員会、こういうものが決定されましたときに、昭和二十七年の二月の十九日の衆議院予算委員会におきまして、時の政府は、本協定安保条約に基く事務的なものであり、もし国民権利を制限するような場合にはそれに関する法律国会に提出すると、こう説明されておるわけであります。またMSA協定が結ばれましたときに、昭和二十七年六月の二十四日日本政府から米国政府あて質問書が提出されております。その質問書によりますと、MSA協定五百十一条a項(4)に関し、自国防衛力を増進しかつ維持することという要件は、日本について国内の一般的経済的条件の許容する限度内で、かつ政治的及び経済的安定を害することなくこれが実現されれば足りると了解してよいか、こういう質問に対して、アメリカ側から、五百十一条a項(4)は、もちろん日本自国の政治的、経済的安全と両立して、かつ自国の人力、資源施設及び一般的経済的条件が許容する限度の寄与をなすことだけを要求するものであると、こう答えておる。そうすると、先ほどの長官の御説明によりますと、これは安保条約なり、あるいは行政協定なりによって防衛権共同防衛という立場から、特に航空防衛についてはアメリカに依存しておるのであるから、アメリカ基地要求というものがあるならば、これに対して提供しなければならない義務があると言いますけれども、これはあくまでもMSA協定によりましても、日本の政治的、経済的安定というものの許容する範囲というものに限定されると思う。しかも、それが国民利益に相反するときは、国民利益を守るべき、国民権利を守るべき法律国会に提出されるという手続を経て行わなければならないということになる。こういう手続なりあるいはこういう国民権利を守る配慮なりというものは、一体現在の基地問題の起っておる、あるいは演習場問題の起っておる、諸所におきまして……、これは防衛庁長官に伺うよりは外務大臣に伺いたいのでありますが、外務大臣参りませんので、外交専門家でございますので長官に伺いたいのでございます。そういう点が全然配慮されておらない。この点はどうですか。
  18. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) ただいま加瀬委員のおっしゃいましたまず第一の点、行政協定に関連しまして、国民権利義務に関することについては立法措置を別に考えるということを当時の政府が答弁しておるということ、これは筋合いとしても当然なことだと私思いますし、そうしてまた行政協定に関連いたしまして特別の立法措置がいろいろな点についてとられておる次第でございます。そして今加瀬委員のおっしゃいました点は、かなりその法律ないし行政協定の運用に関する点が非常に多いのではないかと想像いたしますけれども、法律趣旨としましてはそういうことであります。それからあとのいわゆるMSA協定締結の際に今おっしゃいましたことなども事実その通りでありますし、そうした権威があり、そうしてまたいわゆるMSA協定の中でも政治的、経済的の安定ということを特に明文をもって前文とか、あるいは第八条だったかと思いますが、五百十一条を受けた条文でもそういう趣旨のことがあるわけでございまして、この方は今加瀬委員の御質問を受けておりながら考えておったのでありますが、これは主としてMSA援助を供与する、また日本側からいえばこれを受けるということと相対応いたしまして、日本側でいわゆる防衛力の増強をするという義務を負担しておる、その防衛力を増強するという場合にそれがただ無条件にというわけでなく、政治的、経済的安定を害しない範囲において、経済的事情の許す範囲で、こういう趣旨一つの制約的な条件がついておるものだと存じます。
  19. 加瀬完

    加瀬完君 これは外務大臣に伺うべき筋合いのものでありますが、現政府にしましても、それならば安保条約あるいは行政協定合同委員会といったような線を通して発言される国民権利に対する侵害、こういうものに対する救済策というものを何か具体的におとりになっておりますか。
  20. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) このいわゆる基地の拡張という問題につきましては、これは国民の、また直接には利害関係者方々地元方々とよく御相談して納得づくでやっていくということを基本方針にしておりまするし、それからまた個々の場合にそれをどういうふうに拡張するといってもいろいろな方法方法のいかんによって地元方々に迷惑をかける程度などが違ってくるだろうと思います。それだからそういうものをどういうふうにやるか、またやむを得ず土地を使わしてもらうという場合でも、その補償等関係、これは十分に配慮してやっていく、こういう方針で進んでおります。
  21. 加瀬完

    加瀬完君 ただいまは、結局共同防衛という立場をとって、共同防衛の主としての防衛主力というものをアメリカに依存しているからにはアメリカ防衛主力航空力に対する便宜というものは、当然日本義務的に負うべきではないか、その通りである、それならば基地提供というようなものが要求されたときには、これに応ずることがある程度の義務になるか、大体その点は了承されて、その通りだということになったわけです。そうすると、今度は一方行政協定なりMSA協定なりという、いわゆる条約条項というものを検討して参りましても、この条約条項というものの中には、政治的な、経済的な安定を侵してまで、たとえば基地接収といったような方法はとられないという国民利益に対する保護の条項というものが、当然条項としてはなくても解釈としては成立する、そうであるならば、今杉原長官あと説明されたように、基地接収という問題が起りましても、これは今までの条約条項からすれば、国民反対ならば反対という意向というものが当然これは通るべきはずなんです。賠償金幾らにするとか、接収費幾らに上げるとかいう問題ではなくて、いやだと言ったらいやだという意思が通るべきはずです。条約条項の上からは。ところが現状において基地接収に表明されておることは、条約条項を飛び越えて、軍事要求というものに支配されておる、こういう疑問を生ずる、今政府基地に対する接収の仕方というのは、アメリカからきたところの軍事要求というものを強く受けてしまって、自分たちが取り結んで、当然主張さるべき条約条項において権利というものを等閑に付しておる、こういうような印象を受ける、この点どうですか。
  22. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) そこのところは、実際に調和をいかにしてとるかということに実際上相なると思います。政府といたしましても、アメリカ側基地要求というもの、これも全部今までそのまま受けておるわけではございませんです。数からいたしましても、かなりしぼったところにやられておる、そしてこの濃度は、条約建前からいたしましてもやむを得ないだろう、しかしただその場合でも、現実国民のこうむる損害等については、これはできるだけ配慮をして行かなければならぬ、そしてまた国の御理解を得てやって行かなければならぬと、こういう考え方でございます。その辺の調和について検討しておるのであります。
  23. 加瀬完

    加瀬完君 これは調和をとる必要はない。調和をとる必要というのは、法的根拠には一つもない。条約条項の中に盛られていることを確実に履行してもらえばいい、条約条項にはずれるような軍事要求は当然これは拒否できる、拒否しないで軍事要求条約条里というものを調和させようという考え方は、何のためにそれならば条約協定というものを結んだということです。これは国際法の上からも全然常識をはずれた日本政府のやり方と言わざるを得ない。この点については外務大臣が参りましてからあらためて伺います。  それで第二の問題として、この防衛関係長官にもう一つ伺いたいのは、先般の新聞によりますと、相互兵器発展計画というものです。新兵器促進のためにアメリカ大使館及びアメリカ軍事顧問団から日本政府に申し入れがあったということが出ておりました。すると、この兵器が、兵器でありますから、自衛権ということを非常に主張された。自衛兵器というものは兵器ではない。どれが自衛兵器で、どれが攻撃兵器という区別は、なかなか区別はつかない。そうすると自衛兵器研究ということは成り立たなくなるのですから、当然攻撃兵器ということも加えられてくるのは当然です。そうすると、首相の言う防衛構想というものからこれを受け入れるとすれば、攻撃兵器研究するということであるから筋が立たなくなる。この関係の、相互発展資金技術アメリカから日本によこすということであるならば、資金技術をよこされて、ちょうど今地方に行われる補助金みたいに、補助金が一割で持ち出しが九割といったような形で、逆に日本資源、資力、技術、こういうものをアメリカ兵器研究のために集約奉仕をするという形がとられるのじゃないかという心配も出て来る。こういう点、どうですか。
  24. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) お答え申し上げます。今おっしゃいましたのは、こういうことでございます。最近、何月ごろでございましたか、もちろんことしでございますが、ごく非公式にアメリカ側から言って来ておりますのに、新しい武器、ニュー・ウェポン、それは核兵器ではないということ、これははっきりとうたってありますが、それと、それから進歩したデザインの、アドヴァンスト・デザイン・イクイップメント、新しい考案の装備品といいますか、そういうものについて研究試作をするということについて、アメリカ側としては、ヨーロッパの各国に対しましてそういう援助をしておるが、日本に対してもそういう援助をすることの可能性を検討する用意があるということを言って参りました。それで今実はそれがどういう内容条件のものであるかということを詳細を聞いておるところでございます。果してその内容条件等日本側の受諾するようなものであるか、また日本側で果してそういう援助を受ける対象物になるような新しい兵器とか、あるいは新しい考案の装備品等の研究試作というようなものがあり得るかどうか、日本側としてたとえば考える、これは一例でございますが、特車等で、いわゆる戦車でございますね、日本の地形等に合うようなものの研究試作というようなものまでそれに含まれるのかどうなのかというようなことなどもまだ実はわかっておりません。向うに詳細を今聞いておるところでございます。
  25. 加瀬完

    加瀬完君 防衛庁に対しましてもう一点。同じことを繰り返すようでありますが、これは総理も防衛庁長官航空自衛隊はあくまでもこれは防備航空であって、攻撃航空じゃないと言っている。しかしアメリカ日本要求している基地は、日本に対する防備航空のための基地というばかりでなくて、当然ここからは攻撃も出動する幅を持った基地であるということは当然である。日本側航空自衛隊防衛面だけを担当してよしおろうとも、共同作戦で出動する、あるいは共同防衛の一方の立場を持っているところのアメリカ航空機というものは攻撃条件というものを備えておるとすれば、日本列島の相手側の国というものは、このアメリカ主導権を握られて一体になっている航空勢力というものに対して、日本国はこれは防衛で、攻撃する意思は全然ないのだ、攻撃の意思のあるのはアメリカだ、こう区別をつけて、日本列島の兵力というものを判断するということは、これは不可能なことだ。それでその一体になっておるアメリカ日本共同防衛航空兵力というものに対して、当然これは対策というものを立てるわけだ。すると、防衛兵力だ、防備航空だと言ったところで、これは相手方からは当然航空兵力として攻撃目標になるということも当然なんです。日本基地提供、あるいはアメリカ航空兵力の拡張というものに対して、絶対に日本列島の防備兵力にとどめて、攻撃兵力という限界には踏み入らせない、こういう交渉というものが行われておるのか、この点どうです。
  26. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) お答え申し上げます。もともとこの日米安保条約というものの根本精神があくまでも平和と安全を守るということの桝本趣旨でできておるわけでございますから、具体的な、安保条約の第一条の中にも明定いたしておりますように、これはあくまでも日本に対する武力攻撃に対して日本の安全を守る、またもう一つは、駐留軍の寄与する目的として、極東の平和、安全に寄与するということ、これが目的になっておりますから、その目的の範囲を逸脱することはできないと思います。
  27. 加瀬完

    加瀬完君 外交専門家長官がすでに御理解になられておる通り、いかなる戦史を居ても、おれは侵略をするんだ、おれは略奪をするんだということを目的にして戦争が起ったためしがない。当然それ相当の理由がある。自己の安全の名のもとに、あるいは世界平和の名のもとに、あるいは地域平和の名のもとに、戦争が行われておる。日米安全保障条約にいたしましても、行政協定にいたしましても、表面はさようであろうとも、安保条約ができ、行政協定ができ、MSAが取り結ばれる国際情勢というものを見るときには、これは外務大臣も言っておる通り、大陸の空軍配置ということや、あるいは中ソ条約ということや、あるいは中ソの宣言の中にある日本アメリカとの共同防衛に対する反駁ということや、こういうことが当然考慮の中に含まれておるわけです。そうすれば、そういった国々を対象にして今まで防衛という名のもとにあわせて攻略態勢が進められておったということも、これは客観的に見て当然なんだ。そうなって参りますと、アメリカは前進基地としてこれを見ているのだから問題は起らない。これはナッシュの言葉をかりるまでもなく、日本列島を第一線基地として考えているのだから、アメリカはそれでいいだろう。第一線基地とされた一体日本国民というものは、アメリカの第一線基地と認めて防衛態勢を進められているとすれば、これは当然敵の第一の攻撃目標になる。戦略的には第一線基地をたたくのは当然であります。それでも相変らず、国際情勢が変化をいたした今日にかかわらず、安保条約制定当時と同じように、ソ連、中共というものを一応の初手側の国としてアメリカ基地強化というものに日本協力するところの義務があるか、あるいはそういう方法が果して日本の真の防衛ということになるか、この辺は今日は当然再考慮、再反省をされなければならない時期であろうと思う。国際情勢は相当平和の方向に動いておるにかかわらず、日本防衛だけが安保条約の線を一歩も出ておらない、むしろそれを強化するような形をもって進んでいる、こういう点に対して、長官は外交の専門家でありますが、どうお考えになりますか。当然であるとお考えになりますか。
  28. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) 安保条約の根本の精神は、あくまでも日本区域の平和安全を守るということで、それが侵略というようなことの事態、敵対行為というような事態はむしろ起らぬことが実は安保条約の目的からいたしましてもそれが最上なわけで、そうして現在巨頭会談等を契機としてかなり世界の大きな動き、緩和の方向への大きな動きが見え始めたということもこれは否定することのできない事実でございます。従ってそうしてまたこれに伴ってなるべく各国が具体的に軍備、ことに非常な大きな軍備などをしないで済むようになることはこれは望ましいことであることは言うまでもないことであります。今後これが具体的にどういうふうになりますか、これにはまだ相当の紆余曲折もあることだと思います。そういうのが具体化した場合にはいろいろまた考えなくちゃならぬこともございましょうが、今すぐそれではこれの雲行というところまでの段階ではないと考えます。ことに極東の方面は御承知通り非常にヨーロッパ方面とまた異った様相の不安定的の様相もありますし、しかしこれにしても今後一挙にいかなくても逐次緩和の方向に行くということはだれしも予想しておるところでありますが、これがすぐ具体的な各国の軍備とか、あるいは防衛方針とかにまで、計画にまでどういうふうに関連を持ってくるかはまだ今後の推移というものを見ていかなくちゃならぬ、こう思います。
  29. 加瀬完

    加瀬完君 経済企画庁長官に伺いたいのでありますが、先般当委員会におきまして長官から六ヵ年計画のるる御説明を承わりまして、われわれは非常に日本の経済の見通しというものに明るさを持ったわけであります。しかしその経済六ヵ年計画というものを推進させるための、あるいは経済六ヵ年計画の目的を達するための一番の障害というものを考えるならば、これは財政的には防衛費というものをどの位置に押えるかということが問題になってくると思う。それでは防衛六ヵ年計画というものもときどき論議に出ておりますので、経済六ヵ年計画防衛六ヵ年計画というものは当然見合った形においてこれは立てられなければならないはずだと思うが、経済六ヵ年計画に見合うような形で防衛六ヵ年計画は進められておるのかということになりますと、昨日も長官お聞きの通り防衛六ヵ年計画というのはまるで何らつかみどころがない空気みたいなものである。これでは逆に長官の御担当の経済六ヵ年計画もどう進展するかわからない。防衛計画というものをかかえておっては経済六ヵ年計画の目標そのものがはなはだ不安定なものになってくると思うのです。この点どうですか。
  30. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 経済六ヵ年計画を立案いたしました目安は、この一月ごろわれわれは立てたのでありますが、大体国際情勢は、一月ごろの情勢でそのまま当分推移しない、現状が持続されるものだ、こういうことの前提のもとに六ヵ年計画を立てたのでありまして、その際における日本の国防力をどれくらいの程度にするかということは過去の実績から採算いたしまして、大体国民の所得の二%ないし三%程度にする、そういうふうな一つの目安をもちまして経済六ヵ年計画を立てたのでありますが、現状におきましては防衛長官の申しますごとく、まだ防衛の長期の計画は立っておりませんが、国民防衛というものも国民の経済力によって定めるべきものだと私は存じておるわけなんであります。そういう意味から申しまして、大体は国民所得を基準におきまして二ないし三%をやっていくという目安を持っておりますが、しかしこれは正しいものだと思っておりません、ほんとうを言えば国力ということ等ももっと検討しなければならぬ、富力というものも検討しなければならないので、ただいまその検討をやっておる最中であります。今日のところ国際情勢が多少変化いたしますればこれに応じてこれも変化いたすべきものだと私は存じておるわけなんでございます。ただいまのところ六ヵ年計画におきましては国際情勢は現状を持続するものだと、こういうふうなことでやっておるわけであります。
  31. 加瀬完

    加瀬完君 昨日の大体国富というふうな点も検討しなければ、国民所得だけからは防衛費の捻出ということを論じていくことは不当ではあると思うのですけれども、一応所得の二ないし三というものを抑えるというような点も考えたのだ、こういうお話がありまして、その点は承知をいたしております。ところで国民所得というものでありますが、たとえ一〇%であってもこれはやすやすと出し得るところの所得もあれば、一%であっても出しにくい所得というものがある。今までの日本の経済計画というものは国民所得というふうなものにばかり重点を置いておるけれども、国民の消費水準の安定度というものはあまり中心に置いておらない。今度の経済計画は一応昭和二十八年の消費水準の二四・九%というのを最終年度の目標に置いておる。この最終年度の昭和二十八年度に対して一一四・九%というのは具体的に言うとどれくらいの生活安定度というものを示しておるものでありますか、その点……。
  32. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) これは大体から申しまして人口がふえておりますし、働く人はふえたわけでありますが、一人当りの生産を二十八年度は一時間に対する生産度は七十五円くらいに見ておるわけであります。それが六年後には大体八十五円くらいに一時間の生産を上げる。物価は現状を持続しておるものという採算の基礎においてやっておるのでありますが、その基礎からいうとそのくらいの比率でもってやっておる。そうしてそれだけ生産がふえるということになって失業者も少くなり、各自の国民の所得も一一四%くらいになろう、こういう工合に相なっております。
  33. 加瀬完

    加瀬完君 これはエンゲル係数に直すと戦前のどの辺ですか。
  34. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) その数字のことは今政府委員からお答えいたします。
  35. 田中久雄

    政府委員(田中久雄君) エンゲル係数のことはちょっと計数を持っておりませんが、消費水準を戦前の消費水準に比べて申しますと、都市の消費水準におきましては大体昭和二十九年の平均が戦前の昭和九年ないし十一年とほぼ同様のところにきております。それから農村の消費水準から申しますれば、これが昭和九-十一年の百に対しまして、大体三割六分くらいアップしておるというのが二十九年でございます。これに対しまして先ほどお話のありましたように、大体一四%上っておるということでございますから、その辺で大体の勘定をおくみ取りいただきたいと想います。
  36. 加瀬完

    加瀬完君 これは戦前と戦後をエンゲル係数で比較するというのはちょっと無理がございますけれども、無理にエンゲル係数というものを使えば、戦前は農家においても昭和九年前後は三六くらいであります。現状におきましては、二十八年が五一、二十九年が五一・九と悪くなっておる。そこで大蔵大臣にもこの点は話をしたのでありますが、実に常識論で、農家なんかは戦前は相当苦しかったけれども、今は楽になっておる、こういう常識論で、戦前のまるで農奴的な生活の農家というものを基礎にして、それから幾分上ったということだけで、国民の生活安定度ということで押えていくならば、相変らず国民、特に農村の犠牲において軍備が進められたという過去の歴史を繰り返すというおそれもある。そういうことを私心配するのであります。そこで具体的に伺いたいのでありますが、これは経済企画庁長官をわずらわすまでもなく、大蔵大臣に答えてもらえればよかったわけであります。全然大蔵大臣から具体的なお答えがない。そこで長官に伺いたいのでありますが、消費水準とか、生活水準とかいうものの一番茶礎のものは、何といっても食糧の需給関係、主食の自給度というものがどうなっているかということが一番の問題になると思う。今は政府方針はどうもアメリカの余剰農産物なんかを入れて一時を糊塗していこうとするような方法をとっておりますが、一体こういう方法をとって参りますと、日本では食糧が足りない、アメリカでは余っておる、そこでアメリカの市場というものは当然日本に向いてくる、こんな関係から向うはますます日本に受け入れ態勢を強化させるような方向にもってくるでありましょうし、それが入ってくれば日本の農村というものは主食の生産は成り立ちませんから、フィリピンみたいな奢侈的農業に移行するという形になって、非常に私は今の農業状態というものは危ういと思います。そこで二つの点についてお答えをいただきたいのでありますが、余剰農産物の受け入れというものを、将来日本の食糧需給の上からどう考えていかれるのか、これが一つ。もう一つは、農村のと申しましょうか、あるいは農家のと申しましょうか、食糧自給度を引き上げていくためには農村の経済というものをもう少し考えてやらなければならない点があるのじゃないかと思いますが、この点政府はどういう御見解をお持ちであるか、この二つの点を伺います。
  37. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 第一の余剰農産物の受け入れの問題につきましては、これは日本の食糧増産計画ないしは日本の食糧自給度に差しつかえない範囲におきまして、絶対的に必要なものという場合のものだけを受け入れていきたいと思います。それで本年度以後三ヵ年間は条件が許されるならばこれをもっていきたい、こういう考えで進めております。これあることによって日本の食糧需給対策に支障を来たすというふうなことは万ないと私は信じております。それから農村の対策につきましては、どうしても経済六ヵ年計画におきましてはつぶれ地が起ることと、それから増加する人口に対しましては米穀換算として千三百万石以上の増産をせなければならない、六カ年間に。この方針のもとに進みまして、千三百万石ふえれば増加する人口に対する米穀を供給でき、同時に輸入もふやすことがなくて済む、こういうふうに相なったわけでありますが、その点につきましては、ただここでもう一応検討を要する点は、果して将来日本の食糧が米麦だけをふやしていくことによって農村がよくなるだろうか、こういうふうな点、これにはかりに新しい土地を作るという干拓だとか、いろいろなことをやれば非常な大きな資本を要するわけであります。かりに一石について三万円を要するとすれば、千三百万石の米穀を増加するためには四千億以上の金が要る。それだけの財政負担ができるだろうか。それならばむしろある程度財政の許す範囲におきまして農村の経営というものをもっと多角的にして、そして食糧生活におきましても酪農工業をもっとふやして、食糧の需給の方法を変えていく、こういうことも考えなければならない。そういうふうなことをただいま取り入れまして、各省間との意見を交換いたしまして、第二案、第三案等を今作成しておるようなわけでありますが、要するに農村は米穀だけを作っておれば今後日本の米穀というものは世界の市場から言えばこれは競争できぬ、従いましてある程度農村の経営につきましてはもっと農村から作った品物について高度化するというふうなことも考えていきたい、こういうふうな方針であります。
  38. 加瀬完

    加瀬完君 主食自給というものは、世界市場というものだけに頼り切れないという前提があると思うのです。世界市場というものを考えていつも世界市場に依存ができるなれば、これはどこから輸入しようが、どこから余ったものを受け入れようとかまわないけれども、食糧の需給関係というものは、世界市場を頼ることのできない時期が来たときに一体どうするのだということを前提に出発するので問題は大きいと思う。そこでこの絶対的必要量というものは今後も余剰農産物を受け入れるということでございますが、その絶対的必要量というものは余剰農産物として受け入れた方がいいか、絶対的必要量を生ずるわけでありますから、貿易関係の普通のルートで入れた方がいいかということに一つの問題がある。たとえば経済六ヵ年計画で貿易の振興を相当湾えております。しかしながら政府の方では二、三年で打ちやめたいと思っても向うでは相変らず余剰農産物があふれておれば、これはもう、一つ協定を結べば協定の延長によって当然日本に流されて来る。そうすればその間において当然日本をお得意とするところの米産地、食糧産地というものは、その米穀あるいは主食に関する限りは貿易品目に上ってこない、自分の貿易も開いてくれないところのものに対して、日本だけの貿易品目をやすやす受け入れるということはなかなかできないと思う。そうなって参りますと、貿励の収支というものは、余剰農産物を受け入れるという点においては、その幅だけ不振になってくるということにもなりかねない。そういう点を湾えましたとき、あと三、三年絶対必要量というものを余剰農産物という形で受け入れる方が、経済六ヵ年計画を推進するためにも非常にいいのだという結論はなかなか出しにくいと思う。この点が一つと、それから日本の農村にとっても余剰農産物を受け入れるということは大して関係がないだろうと言いますけれども、たとえば昨年度、本年度の麦の収穫というようなものを検討すれば、あるいは麦作に対する農民の意思というものを検討すれば、麦作はもうはなはだしい不振である。これは採算が合わないから、これは麦作にとどまらないで、米の栽培というようなものにまで、もう米価がつり合わないから採算が合わないというので、いいくらいにやめていこうということになるならば、日本の主食の自給計画は千三百万石どころか、その半分にも達するわけにはいかなくなる。そこで政府がたとえば土地改良とか、増産計画とかということをするよりも、主食栽培は採算が合うという農政を、そういう方向に向けていかなければならないということの方が私は先決だと思う。今年も米価は問題になりましたが、米価そのものだけを問題にすることはどうかと思いますけれども、米作をすると他の作物を作るよりもはるかに有利だという、そういう農政の上の六ヵ年計画というものを行われるように、当然もっていっていただかなければならないと思います。この点はどうでしょう。それから新しくもう一点、時間がありませんから、農村が苦しいという一つは農政が悪いということにもあるのです。三割農政と悪口を言われるぐらい、富農あるいは大農の三割ぐらいしか農業経営の採算がとれていけません。一町五反ではとんとんにいくのにも危ない、こういう情勢にある。その理由とするところは、農地の改革が不徹底だから当然解放してもらえば五百万町歩くらい開拓の可能地があるにもかかわらず、政府はこれに手をつけない。こういう林野の解放というようなことが増産計画の上から大きく取り上げられておるんですけれども、例の林野の解放計画というものに対して、六ヵ年計画は何か特別な御計画をお持ちであるか、以上の点を伺います。
  39. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 第一の余剰農産物の問題につきまして、そういう協定を結べばだんだんアメリカの方で余剰農産物がふえてくると、いやでもとらなくちゃならぬじゃないか、こういうふうな御貸間でございますが、これは全然そういうことはございません。それで昨年も買いましたが、本年もこれは日本考え方で買うのでありまして、日本がいやならやめていいわけであります。来年ももちろんそうでございます。ただいまのところアメリカでは三ヵ年間は売ってもいいということを言っております。三年間くらいは買っていいという考えで、条件が適すれば買うという考えでございますが、条件が合わなければ、これは本年も断わってもいいわけでございまして、その点は御心配ないと思います。  それから第二の日本で米穀を作るということは、これはお説の通り、ほんとうにこれは大きな私は問題だと思うのでございます。私は昨年カリフォルニアに行きまして、カリフォルニアの米穀地をほんとうに見たところが、あの大きな土地を安く、そうして二千エーカーの土地をわずか十五人の人間が飛行機で種をまいて収催しておる、こういうふうなところとは絶対これは競争できない――価格じゃ競争できない、こういうことになりますから、日本の米穀に対する価格政策というものは、これはどうしても国家として考えていかなければならない、それには幸い現在においては食管があります。食管におきまして安いものが入ってくれば、これを平均して日本の農村における米穀の価格をかげんしていく、この方針はどうしても曲げることはできないのであります。これは日本の農村というものは単に経済問題だけではないと存じます。その点はよほどお説の通り考慮していきたいと、こういうふうに考えております。  それから林野の問題、これは治山治水の問題ともいろいろからみまして、ある程度におきましては開墾地にするということによって、あるいは土砂が崩壊するというような問題がありますが、場合によれば私は草原地帯として、そうして酪農を奨励するとかいう、そういうような方法を講じまして、ただいま申しました通りに、米食ということでなくて、ある程度食生活を改善し、そうして農村経営を多角化するという方面に脅えていきたいと思いまして、ただいませっかく農林当局と打ち合せまして検討中でございます。
  40. 加瀬完

    加瀬完君 時間が迫って参りましたので、最後に経済企画庁長官に伺いたいのでありますが、冷戦が続く見通しで六ヵ年計画を作られた、こういう御説明をあるところでなさいました。そうすると国際緊張が今日においては相当緩和しておる現状に変ってきたわけでございまして、経済計画防衛計画も当然政府としては、これは再考慮をする必要がある時期に立ち至ったと思われるわけであります。そこで六ヵ年計画そのものを再検討、再編成する意思があるかどうか。
  41. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 私は現在の国際情勢が逐次緩和しつつある、この一月にわれわれが六ヵ年計画を立てました当時といたしますれば、非常に緩和しつつあるということは私は考えておりますが、今日の情勢が非常に緩和したから安心しておれるかと言えば、私はまだそこまでは達していない。こう存ずるわけでありますが、いま少しくこの国際情勢の推移を見ながらこの防衛に対する問題等も考慮するべきであると考えております。
  42. 加瀬完

    加瀬完君 保留します。外務大臣と、それから法制局長官が見えたら、また……。
  43. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  44. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 速記を始めて。
  45. 野本品吉

    ○野本品吉君 先般来衆議院におきまして、防衛庁長官防衛庁の国防計画に関する構想を具体的に発表せよということで、ずいぶん長い間押し問答があったようです。その結果どうしても防衛庁長官がはっきりしたことを言わぬというので、最後には遺憾なことでありましたが、長官に対する不信任の問題が起って来た。こちらの委員会に私は昨日やむを得ない用事で欠席しておりますので、それらの点についての質疑がどういうふうに行われたかということは存じませんのですが、これは私一つお伺いしたいと思いますのは、申し上げるまでもなく、防衛庁設置法の国防会議に関する規定でありますが、この国防会議は、国防の基本方針、あるいは防衛計画の大綱というような、以下二、三項目あげられて、それを国防会議に対して諮らなければならない、こういうふうに規定されております。そこで私は防衛庁長官にお伺いしたいのですが、防衛計画においてどういう方針日本の国の防衛をしていくかというようなこと、またどの程度まで陸上自衛隊の漸増の限界、あるいは海上自衛隊航空自衛隊も同様です。そういうような漸増の限界というものは、この防衛計画基本方針及び計画の大綱ということに大きな関係を持って来ると思うのでありますが、それはいかがでしょうか。
  46. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) 全くその通りでございます。すべての防衛、今後どのくらい、一体自衛隊の増強される限界は大体どういうことになるかというようなことは、この国防会議の諮問事項として予定せられておりますことに属するわけでございまして、従いまして実は政府といたしましては長期計画につきまして種々研究を重ねておるところでございますが、大体の案ができましたならば、この国防会議、今御審議を今国会でお願いしておりますこの国防会議の成立を見ました上、そこに諮って、そうしてきめたいと実は考えておる次第でございます。またすでに基本法的にはできておりますこの防衛庁設置法の国防会議に関する規定趣旨からいたしましても、こういうことは国防会議に諮らなければならないということになっております。その立法の精神からいたしましてもそういうふうにすべきだと実は考えておる次第でございます。
  47. 野本品吉

    ○野本品吉君 従ってこれは私の考えといたしましては、もし長官が海上自衛隊は軍艦が何隻何トン、それから航空自衛隊は飛行機が何機、それから陸上自衛隊においては何万、こういうふうなことを明確にここで言われるということがかりにあったとしますならば、私はこの防衛庁設置法の中に規定されております国防会議に関する規定を無視しておるものだと、こういうふうにまで考えたいのですが、いかがですか。
  48. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) 国防会議に関する法律の根本趣旨から見ますと、やはり国防会議に諮った上でやるべきものだと考えます。御趣旨は同様に考えております。
  49. 野本品吉

    ○野本品吉君 そこでさらにお伺いしたいと思いますことは、結局国防会議というものが正式な発足及びその審議、検討を経ない限りにおいては、防衛に関する具体的な内容及び基本的な方針というものは発表ができない、こういうことでございますね。
  50. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) 国防会議の成立というものを前提にして考えますときにそういうふうに相なると存じております。
  51. 野本品吉

    ○野本品吉君 国防会議の問題がどうなるかは今後の問題でありますけれども、従って国防会議が正式に発足し、これらの事柄が審議検討を加えられる段階になれば、防衛計画というものも具体的に固まっていきますし、それから発表もできる、こういうことでございますか。
  52. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) さようでございます。
  53. 野本品吉

    ○野本品吉君 次にお伺いいたしたいと思いますことは、防衛力の漸増の限界につきましていろいろ御議論があるわけですが、私は昨日お伺いしておりませんが、けさ新聞で見ますというと、志願兵制度の限界は二十万程度であるということは長官がお答えになったということでありますが、そういうことですか。
  54. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) 今大体推計のところで約二十万の前後というふうに、ざっとそういうふうに考えております。
  55. 野本品吉

    ○野本品吉君 それから民主党におきましてかねがね防衛の問題につきまして、徴兵制度というものは今のところとる方針はないということをたびたび言われております。その方針は現在においても変っておりませんか。
  56. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) 変っておりませんでございます。
  57. 野本品吉

    ○野本品吉君 そうなって参りますと、徴兵制度は今のところとる考えはない。それから志願兵制度の限界が二十万である、そういうことになりますと、おのずからそこに数的な限界が現われてくるように思いますが、これはいかがですか。
  58. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) 大体そう相なると思います。
  59. 野本品吉

    ○野本品吉君 これはこまかいことになりますが、空士長、海士長の任用期間というものを三ヵ年に改正される、ただそれだけでありまして、こまかい説明がこの提案理由では明らかになっておりませんが、そこの点を明らかにしていただきたい。
  60. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) 今日まで空士長、海士長の方は任用期間というものを設けていなかったのでございますが、これはやはり陸士長等の場合と同じように設けた方がよかろう、そのわけは、だんだん年令構成や階級構成の方から見ましてやはりこれはこういうふうにした方が運営上もよかろう、こう考えてやったわけでございます。なおその点もう少し詳細なことを政府委員からあるいは御説明申し上げると思います。
  61. 増原恵吉

    政府委員(増原恵吉君) ちょっと昨日も申し上げましたが、先ほどの二十万とい数字を補足さしていただきたいと思います。昨日も御質問がありまして私から補足をいたしましたのですが、二十万というのは一応の計算でありまして、そうしてこれは今の御質問に関連しますが、二年、三年という期限をつけて採用をする隊員の一応の限度ということでございます。曹とか幹部とかいうふうなものはそのほかの数であります。陸士長等につきましては今まで二年、三年の期限を設けておりましたが、空、海につきましてはそれを今までは設けておりません。これは陸に比べまして発足がおくれまして、きわめて初歩の、比較的には急速な拡充の段階にありまして、年令構成等について大きな支障がなく今まで参ったのであります。しかしながら、だんだん基礎数字に対する増強の率というものは減って参りまするし、期限がなくて参りますることは一面技術的その他に習熟をして参るという利点がありますとともに、これはあくまでも空士長等という階級でございますので、この階級の人たちが五年、六年とその地位にとどまっておりますることは体力的にも不十分となりまするし、あるいはやはり昇進その他の問題というものが今までは四年、五年やっておる者は実は曹という階級に上っておるわけであります。これからはそういうふうに適当に昇進をして行くということが困難になりますので、そういうこととにらみ合いましてやはり空士長等の第一線の隊員は年令構成を若くし、そうしてまたまじめにやっておっても曹等に上って行くことが困難だという事情も瀞えまして、やはりこれは当初から二年、三年という期限あることを承知の上で入ってきてもらう方が部隊構成として適当であろうというふうに考えましたわけでございます。
  62. 野本品吉

    ○野本品吉君 防衛庁の設置法の一部を改正する法律案及び自衛隊法の一部を改正する法律案についての提案理由の説明の最後の方に、「なお、自衛隊法の一部を改正する法律は、方面隊、混成団、航空団の設置の時期は、施設等の事由であらかじめ規定することが困難でありますので、公布の日から起算して七ヵ月をこえない範囲内で政令で定める日から施行する。」、こうなっております。そこで私がお伺いいたしたいのは、実は決算委員会で昭和二十八年度の決算に対して審査をして参りました結果といたしまして、相当、九百億余に達する膨大な国費を消費する防衛庁に関しましても相当きつい警告の決議が発せられておるわけでございます。そこで施設等の事由であらかじめ規定することができないで先へ行く、先へいって急に年間分の予算を消化をしなければならぬ、こういうところに予算経理上のいろいろと好ましからざる事態が起ってくると思うのでにおいて、予算の執行面において十分な注意が払われるべきであると思いますが、その点についてお考えになっておりますか。
  63. 増原恵吉

    政府委員(増原恵吉君) このたび増員をいたしまするものは、予算でお願いをしましたのは陸については四・五ヵ月分、海については五ヵ月分、空については六ヵ月分というふうにしてお願いをいたしております。そうしてこの予算の使用につきましては一時どっといくというふうな形はとらないように、もちろんできるわけでもございまするし、いたすつもりでございます。混成団を置きまする場所につきまして、大体この主たるものは現在米軍が使っておりまするものを返してもらう、この折衝は前から続けております。抽象的には、必要とするだけの広さのものはお返ししましよう、という話はついておるのでありますが、どこそこのどれをということは、まだ実はいまだにきまらないというふうなこととにらみ合いまして、公布の日から七ヵ月以内というふうにお願いをいたしたわけでございます。予算の執行は一時にどっと物の調達その他にしましてもいたすようなことはなく、計画的に適切にやっていくつもりでございます。
  64. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) ちょっと速記をやめて下さい。   〔速記中止〕
  65. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 速記を始めて下さい。  外務大臣が出席せられましたので、外務大臣に対する御質疑をこの際各委員からお願いしたいと思います。
  66. 野本品吉

    ○野本品吉君 前回の委員会で私は竹島の問題につきましてお伺いいたしました。これは明瞭に日本の領土主権が侵犯されておる非常に遺憾なことでありますが、その後まだこの問題がどういうふうになっておるかということははっきりしたことがわからずにおります。これは当事者である日本と韓国との間の話し合いがつかない。そこで国際司法裁判所へ提訴して、相手方の合意が得られない。その後のこの問題がどういうふうに扱われておりますか、またどういうふうに扱おうとされますか、外務大臣の御答弁をいただきたいと思います。
  67. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 竹島の問題は今お話しのその後の交渉はこれは日韓関係を正常化しようという交渉をずっと続けておったのでございます。これは公けの会議体の交渉ではなくして、内交渉を進めていったわけであります。それでおよそその内交渉のまとまったところで一つ公けの会議体に移したい、こういう考え方をもって進んでおったわけであります。非常に順調にいっておったと思っておりましたが、その後公けの会議に移すところまでまだ至っておりません。停頓をいたしております。従いましてこの竹島の問題も解決を見ずそのままに相なっております。内交渉の場合にいろいろ話は出ましたけれども、要するにこれは主張を認めるか認めぬかということなんで、そのままに解決を見ずして今日に至っておるわけでございます。
  68. 野本品吉

    ○野本品吉君 そうしますと、日韓両国間における外交折衝というものが円滑に進められるような状態にならない
  69. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) まあそういうことでございます。非常にこれは残念なことでございますが、これも一つぜひ日韓関係を打開をしてこの問題も一括解決し得るような機運に向けたい、こう思って実は非常に苦労をしておるわけでございます。
  70. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 今のに直接関連をしているんですが……。竹島の問題と憲法九条との関係なんでありますが、あれが侵略が行われたそのときであるならば、自衛軍による武力行使ができるというふうに考えられるのでありますが、時日がたったためにこれは国際紛争の解決手段として平和的手段に訴えなければならぬというふうになってきておる。要するに直接侵略の場合でも時日がそこに相当たってくるならばこれは憲法九条の解釈から言うというと、国際紛争解決手段として考えていかなければならぬものかどうか、その点外務大臣の御所見を伺いたい。
  71. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 私はこの点は理論上は今時日が経過しておるから自衛権の行使はできなというふうには私は見ておりません、理論的には。のみならず、竹島の場合においては、日本の主張は絶えず繰り返しておるのでありますから、主張は少しも傷つけられておらぬと思います。しかし実際問題として時日を経過した後に自衛権の行使ということはますます困難になることは、これは事実であろうと思います。理論の問題で私はないと思います。困難になりますが、さて理論を実際に実行に移すかどうかということに至っては、これは政策問題として非常な重要な問題になるのでございまして、今お話の通り日本側としては、国際紛争は平和的に解決するのだという政策を根本的に立てておりますから、あくまでも話し合いによってこれは解決すべきものだと、こういうふうに考えてその手段を、その措置をとって今日まで続けておるわけでございます。
  72. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 そうすると、理論的には今からでも竹島に対しては自衛権行動を開始し得るというふうに考えてよろしいのですか。
  73. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 理論的にはそうだと考えます。
  74. 野本品吉

    ○野本品吉君 経済企画庁長官にお伺いしたいのですが、きわめて簡潔にお答えを願いたいと思いますが……。
  75. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 経済企画庁長官は今おられないのです。
  76. 野本品吉

    ○野本品吉君 では外務大臣に伺います。大体わかりましたが、絶えず竹島の問題についての日本の主張をゆるめずに主張されておる、まさにそうなければならないと私は思いますが、ただいま豊田委員からも御指摘のございましたように、時間の経過とともに既成事実としての見方が向う側とすれば強くなってくるんではないかということを私はおそれるわけで、従ってただいまのお話のように、国交正常化の問題について話し合いを進めていく途上においても、また単独に竹島の問題を取り上げまして不断の強力な主張と折衝とを進めていただきたいと思いますが……。
  77. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) よく御意見を伺いました。
  78. 加瀬完

    加瀬完君 先日も外務大臣に、特に日本防衛関係の問題について伺ったのでありますが、結局アメリカ要求に対しまして、日本防衛要求を受けて立っておるわけでありまして、安保条約行政協定、あるいはMSA協定、こういったような条約協定というものによる条項によって当然の義務として行なっているのである、こういうふうにお答えがあられたのでございますが、私もその点はその通りだろうと了解をいたします。しかし安保条約なり、行政協定なり、あるいはMSA協定なりというものを検討をいたしましても、その条約なり協定なりの条項以外に、アメリカ軍事要求というものが非常に強く作用をしておるんじゃないかという点は見のがすことができないわけでございます。そこで安保条約制定の当時、あるいはMSA協定が進行されておりまする当時とは国際情勢も相当変っておるわけでございますので、次の点を伺いたいのでございますが、外務省から提供をいただきました資料によりますると、三月一日のワシントン・ポストには鳩山内閣の中ソ国交調整提唱というものに対する米国の世論をいろいろと述べておりまして、その末尾に、日本の経済要求の上からは国交の正常化あるいは貿易の振興というものは当然の要求であろう。また日本のインフレを抑制し、生産コストを下げる努力を日本が続けていく限りは、アメリカとしても日本のマーケット獲得にあらゆる援助を与えるべきであるという論説を掲げてるります。あるいはイギリスのサンデー・タイムスでございますか、昨年の十二月十三日の論説には、やはり鳩山内閣の成立を論及をいたしまして、現在の日本人の大多数の流行は中共との接近ということである。なぜこういう流行の原因が作られたかというと、アメリカの経済援助は当然とみなされ、むしろこの経済援助日本を平和的アジアに対する戦争にかり立てるものという疑いを日本人が持っておるからである。また占領は日米安保条約の形で継続されておって、これに対する一番容易な反抗の道が中共との接近ということであるからこういう声が起ったのだ。これは現在の日本にとって政治的な人気を増す道は、親米的でないという政策をとることにすら発展しておると指摘をいたしておるわけであります。これはその後アメリカにおきましても非常な世論となっておるように思われるのであります。たとえば、評論家のオルソップ氏でございますか、米国防当局は防衛分担金交渉を通じ、内政不干渉主義を掲げながら実際には干渉をしている。日本の国情を熟知している東京大使館の考え方とワシントン政府首脳部の考え方との間には食い違いがあるが、これを改める必要がある。こういうふうな論文をも掲げておるのであります。あるいは新聞紙の同じく伝えるところによりますと、ニューヨーク・タイムスの五月十六日には、富士山は日本人にとって尊厳至上なものであるからここでの射撃演習は永久に中止すべきである、こう強調をしておると伝えられております。言葉をかえて言うならば、アメリカの対日観というものは、日本の反米感情というものを非常に重視をいたしまして、対日政策を再検討しなければならないじゃないか、あるいは米国日本観というものを改めなければならないじゃないか、こういう声が大きくなっておると思われるわけであります。私どもから見るならば、今こそアメリカに対しまして、日本日本立場を率直大胆に発表すべき時期に至っておると思うのでございますが、外務大臣は近く渡米をされるそうでございますが、防衛分担金関係を初め、日本アメリカ、この両国間における外交関係におきまして、今までの日本国民の言いたくても言い得なかったアメリカに対する要求、要望というものを大胆率直に発表するお考えでございますか、この点を伺いたい。
  79. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) いろいろ米国内においても、日本に対する評論が行われておることは私も存じております。私は対外的問題を処理する上において、いやしくも日本立場を大胆にこれを主張しないということはよくないことだと思います。主張しなければならぬと思います。及ばずながら自分もそれを努めてきたつもりでございます。また特に相手方の了解を得るためにもこれは必要があります。表面的のことばかりでは了解を得られないのでございます。十分一つ率直な意見の交換をするということは必要でございます。私は秋にも渡米するということは、今準備中で何にもまだ国会後に考えたいと思っておるのでありますけれども、特に申し上げることはございませんけれども、十分に一つ日本立場をよく理解してもらう、まな説明したいと、こう考えておるわけであります。
  80. 加瀬完

    加瀬完君 渡米はまだ未確定のようでございますが、もし渡米されるとするならば、日本立場というものを十二分に説明する必要がある、こうお認めいただきましたので、さらに具体的な三点をお願いを申し上げたいのでございます。それとともに、御意見を伺いたいのであります。  一つは、日本防衛計画であります。もっとこの日本防衛計画というものには日本主体性というものを持た、せてもらわなければ困ると思うのでございます。この点外務大臣アメリカに対してどういう御折衝をなさるおつもりか。  もう一つ国民感情がアメリカ基地拡張ということに対して非常な反撥を示しております。これはニューヨーク・タイムスの指摘しておる通りであります。そこでこの基地拡張というものを、アメリカの一方的な要求ということによって現在までのような進め方、こういう点をアメリカに反省してもらわなければならぬと思います。この点外務大臣はどうお考えであられますか。  三点は、先般伺いました点でございますが日本の飛行場拡張に対するアメリカ要求に対して、外務大臣は大陸の空軍配置に対処する共同防衛計画の推進のためというふうな意味のことをお答えになったのでございますが、これは外務大臣のその後の御説明によりますると、大陸の空軍配置に対処する共同防衛計画の必要上ということを、アメリカがそう考えておることであろうと了解をしたのであります。そういたしますると、こういうふうに現在日本アメリカの考えそのままをもって参られることは、日ソ交渉、あるいは中日貿易といったような近隣との外交関係が復活しているときでございますので、それらの関係諸国に対しまして、アメリカのこの計画日本共同で推進するということはいい印象を与えないことになると思う。そこでこの点については、日ソ国交、あるいは中日貿易、こういう国交回復の問題に支障のないような考慮というものは、当然アメリカに対して払われなければならないと思うが、この点私どもは外務大臣日本立場というものを十二分にアメリカに申し入れていただきたいと思うのでありますが、外務大臣はどういうふうにこれらの三つの問題をお考えになっておられるか、失礼な申し分ではございますが、率直にもし渡米されました折の交渉の問題といたしまして、今私の伺いました三点につきまして外務大臣のお立場御態度を伺いたいのでございます。
  81. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) お答えいたします。防衛計画は具体的にやらなければいかぬ、私はその通りだと思います。具体的に防衛計画はやるべきだと思います。それがために今国防会議をこしらえて、防衛計画を、立案をして、これに付議したいという政府考え方を持っておるので、これは具体的にやりたいと思います。  それから国定感情の悪化が基地問題等においてあるから、これらについては反省すべきはアメリカ側に反省をさすべきだ、こういう御意見が第三の点だったと思います。これは私はその通りだと思います。しかしながら私は安保条約行政協定とか、いやしくも国際的に国民の名において条約をこしらえて責任を負った以上は、その条約に伴う責任は日本は果さなければならぬ、それが国民的の感情に沿わないということは私はないと思います。何となれば国際条約を守って責任を果すということは、日本の今日の国際的地位を築き上げる  つまり国際信用を増していくための最も重要なることであるのですから、これは日本再建の道でありますから、さようなことに私は国民的理解が縛られないことはないと思います。もし故意に国民的理解がないということになれば、これは遺憾なことでございますので、これはあらゆる努力をして条約の精神を順守すべきである、こう思います。そこでそういう努力も大いに必要がある。必要があるが、さような努力をした上で、最善を尽した上で、いろいろまだ日本国民として不便なところもありましょう、それは事実でありますが、そういう点において十分アメリカ側にも協力の意味において理解していただくということは、これは必要なことだと思います。  飛行場の問題についてお話がありましたが、そうして私が過日飛行場の設定についての御質問についてお答えをした点があります。そのお答えは、今のお話とは少し違うように私は思います。その御質問は、日本は仮想敵をどこに持つのか、お前は、大陸一帯の地区に非常に飛行基地がある、何千機というなにがある、こういうのは仮想敵国を想定しておるのじゃないかという御質問であったと私は思います。私は仮想敵国は想定をしておらぬ、これはそう鳩山総理も私も一緒に同じ席でお答えをしたと思います。私は仮想敵国は今日本は持っておらぬ。仮想敵国があるならば、これらの国々との正常の国交を回復しようという考え方は出て来ないわけでありますから、私はそう思います。理論的にもそうである。しかし仮想敵国がないから国防の必要がない、飛行場は必要がないという議論は、これはどこからも出て来るものじゃない。どこの国だって飛行場は十分整備をして自衛的の処置をとることが独立国としては当然のことである、こう思うのであります。それは四囲の状況等が、これは仮想敵国であろうがあるまいが、四囲の国が非常に莫大な軍備をする以上は、これは相当考慮して、敵国であるとかないとかいう問題でなくして、日本はいろいろな国防上の準備をするということは、これは当然のことだと、こう考えておるのであります。そこで飛行場の問題については、私は主として、これはおそらく防衛庁考え方もそうだと思いますが、日本の自衛の見地から、日本独自の見地に立ってすべての整備をするということが第一の考え方でなければならないと私はそう思います。しかしながら今条約共同防衛の責任を持っておるということも事実でありますから、共同防衛の責任を果すためには、自分の自衛的の見地に立った防衛の努力は、共同責任の関係からいろいろ米国側とも連絡をし、また協議をする必要のあることは多々あると思います。それは当然のことであります。何も日本のそれが主権に関係することでも何でもない。当然能率を上げる上においてもそれはやらなければならぬことだと思います。しかし私はそういう条約上のことの全局から来る米国との協力関係が、それが日ソ交渉に及ぼす影響を持ち、中共との貿易関係にすぐ影響を持つとは私どもは思いません。現に日ソ交渉には全然影響は与えておりません、今日まで。日本条約上やるべきことをやって、そうして何もそれが第三国に私は特殊の影響があるとは思わない。そういう影響があると思うようなことでこっちが萎縮することが、かえって大きな影響を与えると、こう思うくらいでございます。
  82. 加瀬完

    加瀬完君 それでは外務大臣は、国際情勢の変化、あるいは自国に対する侵略予想国というものが全然解消してなくなってきたという、こういう具体的な変化、そういうものにもかかわらず、まるで空な防衛計画自国の独自の立場で進めなければならないという議論になりますると、大東亜戦争構想とさっぱり変りがない、こういうふうに極論をすれば私は言われないでもないと思うのです。私の質問がもし不徹底でありましたならばもう一回質問をいたしますが、この外務大臣の言う大陸の空軍配置に対処する共同防衛云々という問題は、外務大臣説明するまでもなく、安保条約以来のアメリカ方針なんです。その方針の根底には、中ソ友好同盟条約というものや、あるいは南北朝鮮の戦乱というふうなものもあってのこういう計画ということになってきたと当然考えられる。そうであるならば、その大陸の空軍配置というものを最も危険とするところの条件というものがだんだん緩和されてきているというときに、また客観的には日ソ交渉という新しい事態が生じておるときに、相変らず安保条約制定当時と同じ方向で日本に対する基地の拡張というものをアメリカが求めてくるとするならば、それに対して、日本はそれは困るという当然の主張というものをしていい時期では今ないかと思うのです。そういう国際関係の全体の見通しというものから、一九五三年も一九五五年も同じ態度で基地拡張に応じているという必要はあるまい。こういう点について国際環境における日本立場というものもアメリカに主張をして当然ではないか、この点いかがですかと、こういう質問を私は申し上げておるわけでございます。
  83. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) その御煙間に直接お答えいたします。私は国際情勢の変化等ということを考慮に入れるべきだというお説は、その通りだと思います。であるから私は仮想敵国などということは考えておらぬと、こう言うのです。ですから、きわめて明瞭だと思います。そこで飛行場の建設などということは、前と後とはアメリカ考え方も違っておる、形勢に応じて違っておる、日本考え方もまた情勢に応じて違うべきだという点は、それはその通りである、また現に違っておるのであります。しかしながら、今日においてもそういうことは全然必要がないという議論は、またこれは私はとらない。それですから、御議論を伺ってみるとあまり実は違う点を私自身は発見しないのですが、それは私はだんだん用心をしていく、それだから、仮想敵国などという言葉を使うのは実は政策的には非常にきらいなんです。だから政策のことを聞くのじゃないとおっしゃれば、それはそれまででございますけれども、私は仮想敵国という吉葉はきらいです。それだけを申し上げておきます。
  84. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) ちょっと速記をとめて下さい。   〔速記中止〕
  85. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 速記を始めて下さい。
  86. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 外務大臣にこの三法案審議に当って大事な点だと思うのでお伺いしたい。それはもうざっくばらんに申しまして、国際共産主義勢力の最近における動向を外務大臣としてどういうふうにこれを受け取っておるか、こういう点について伺いたいと思うのでありますが、というのは、日本も都合のいいときには、戦争中ですからまあそれを言うのはどうかと思いますけれども、そのときには鬼畜米英であって、ソビエトは非常に頼りになるところであって、仲直りを一つ顧みに行こうといった、このくらい信頼すべき友人であった。ところが、終戦後アメリカの進駐によってアメリカの影響を受けますと、まさにこれは敵のようにして、仮想敵国ということは表現されないけれども、外務省あたりから出されまするパンフレットを見ましても、共産主義の脅威ということについて非常に大きく宣伝をしておったことは事実であります。しかし、最近になりまして内閣がかわりましてからは、日ソ交渉の拝聞等も行われて努力をされてわるし、特にジュネーヴ会談のあの結果から見ましても、やはりこれはもう原爆、水爆を両陣営が持つということになっては、戦争行為に訴えたのでは、これは世界民族のもとに、勝つ負けるは別として、勝っても負けても自滅になる、こういうことを両陣営とも認めざるを得なくなったと、従いましてそこに大きな戦術的な転換がきたのであります。これは原子力というものはこれから発達こそするだろう。かりに平和的利用にされて、禁止されましても、一朝有時の際に使われるような方法はちゃんと両方ともするだろうと思う。従って、これがある限りにおいてはとても今までのような戦術ではいかぬということをアメリカもソビエトもこれは認めての最近における国際緊張の緩和と、こういうふうに一方においては受け取れると思う。またある見方からしますると、これは一時形勢の悪いうちだけはソビエトはうまくネコをかぶった格好をしておるけれども、いずれは原爆禁止ということになって廃棄をさしてしまって、いざというときには有力なる地上部隊をもってやはり侵略に来るだろう、こういう見方をする人もあるだろう。その点外務省としてはどういう把握をしておるか。これは国政全般についての大きな分れ道になるだろうと思う。吉田前総理大臣や岡崎外務大臣あたりのつかまえ方はだいぶ違っておったように思うのですが、重光外務大臣はどういう把握をしておられるか、この点について一つ明快に御答弁を願っておきたい。政府の所信を伺っておきたい。
  87. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 国際共産主義の根本的の考え方についてのお話であろうと思いますが、どうでございますか。
  88. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 根本的というよりも最近におけるのをどういうふうに外務省はつかんでいるか。
  89. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 非常なむずかしい問題を私にぶっつけられて、まことに当惑をいたしますが、私の考えを率直に申し上げます。お話の根本のことはここにあるのじゃないかと思います。一体共産主義というものは世界征服の目的をいつも掲げておる、絶えず侵略をして世界が全部共産主義になるまではその方針を改めないと、こういうことに言われておった。それが昨今の平和共存の説となり、今また平和政策を常に打ち出すようになってきた、これは一体どういうことであるのかということに帰着をするのではないかと思いますが、それが果してもう原爆の問題でおそれをなしてそういうことになったのか、またおそれをなしたのは共産党だけじゃない、相手方もそうであるからこういう工合な平和機運になったのか、こういうことになるのじゃないでしょうか。私はそういうことであるとして、それに対する私の感想を申し上げます。私は共産主義が世界を赤化する、つまり世界を共産化するという根本的の理念に立っておるということは、これは共産主義の研究者はこれまでは少くとも一致しておるところである、またそうであってこそ共産主義の今日までのやり方が説明をされるのであります。これは私は一応はそれはそれでいいと思う、まあ議論の過程でそれでいいと私は思います。ところがそれが、それじゃ一体そういう根本的の脅え方、キャラクターを変えてきたのか。最近平和共存だとか、平和政策を打ち出してきた。それは実はその根本のキャラクターが変ってきたんであるとかないとか、単に戦術的な変化であるので、政策は変っていないのであるとかいうようなことが世界的に専門評論家によってもうずいぶん長い間これは議論が戦わされた問題であります。たたかわされた問題でありますけれども、大体においてまだ結論は出ておらぬように思います。しかしほんとうに専門家の間には共産党のキャラクターというものはこれはマルクス以来のレーニン、スターリン等まで十分に研究をしてみれば明らかである、こういうふうになっておる、キャラクターは変っておるのじゃないと、こういうふうに専門家は大体見ておるように思います。けれども私は実際家として、それはあまり重きを置かぬのです。実は。それは戦術的に変って平和共存といい、平和政策を打ち出しておっても、それはキャラクターは変らぬ、戦術が変ったのだと、こういってみても戦術が変ったということは、私はこれは国際上の大きなことだと実は考える、実際家といたしましては、私もそういう方面の実際家をもって任じておるものでございますが、その実際家としては、そうやっぱり、共産党の性格がどうであるとかいって、三十年、五十年、もしくは百年後のことを考える実はいとまがないのでございます。私のは実際、家としてせいぜい三年、五年、十年とこれをどういう工合にうまく向けていくかということに実はもうそれで汗だくだくになるわけです。そうですから戦術的に変ったと見ても、今日ジェネーヴ会議が開かれ、その他の情勢から見て、いわゆる東西両陣営、つまり共産陣営と民主自由陣営との間に漸次融合する、緊張を緩和していく余地があるならば、これは私は実際問題としてそれを利用もする、助長をしていくのが私は当然のことだと考えておる。そのときに、いやキャラクターが変っていないのだから、用心をしろ、こういうこともほんとうでございましょう。それは用心をするもよかろう、それはどの国だって表面に言っていることと、また奥にはいろいろございますから、それは用心をしなければならぬ。いわんや共産国に対しては十分用心をしろと、こういう理由は十分に私はあると思う、過去の実績から。しかし共産国以外に対してもそれじゃ全然無警戒でいくのかと、それはそういうわけにもいくまい。そこで実際問題としては、さような空気が今日共産陣営とその他の陣営との間に冷い戦争といわれるものが十年も戦われておったのでありますから、これを実際的に緩和していく方法があるとすれば、これには私は日本もでき得るだけのその方向に努力をして差しつかえないのじゃないか、またそれが世界平和の実現に対して実際問題として貢献し縛るゆえんじゃないかと、こう思うのでございます。まあそういうような意味で、日ソ交渉も始めたわけでございます。決して日ソ交渉なんぞはどうでもいいというわけでやっておるわけではございません。でき得るだけ日本の主張は主張で通さなければなりません。それと同時に、目的は達したいと、こうほんとうに思っておるのであります。まあそれが私は生き道でなければならぬと、こう考えるのであります。そこで御質問の点については、あるいは十分にお答えしたことにならぬかもしれませんけれども、私といたしましては、その根本問題についてははっきりとお答えいたしておるつもりでございまするが、どうぞあしからず……。
  90. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 あなたのお考えは大体わかりましたが、十年にわたっての冷い戦争をやった結果、やはりこういう政策をとらざるを得ないということを両方とも認めて、好むと好まざるとにかかわらず私は認めてきたのじゃないか。ところが一時はもうそこまで持ってきた冷い戦争を熱い戦争にさせなかったということは、やはり共産陣営の指導者も、それからアメリカ側の指導者も偉いところだと思います。日本のかつての軍国主義時代であったならば、これはもうほんとうのところまで持っていってしまったでありましょう。それをそこまでやらずにあそこで食いとめて十年やったということは両方とも指導者が世界の歴史の上に大きな足跡を残したものと受け取るべきだと思います。そして原爆時代になって、これは認めざるを得ない。こうなって来たのだから、そこで外務省の方では、重光さんが前に外務省におられた当時におきましては、アメリカは信用するに足らぬ、鬼畜米英だと言って国民に盛んに宣伝して来たわけです。それが鬼畜米英は敗戦後は慈母に変ってしまって、何でもアメリカに頼っていれば大丈夫だ、ソビエトというのはこわいんだ、こういうふうに切りかえて来た。そいつを今度は両方ともに、やっぱりこういった時代になったのだからして、外務省としては両方ともに親善の手を差しのべて行く、こういうふうにやって行かなければならぬのと同時に、どちらも信用できぬと思うのだ。ほんとうに信用できるのはやっぱり日本人だけだと思います。アメリカだってソビエトだってほんとうに信用できないと思うのだが、そこで最後に一つ伺っておきたいのは、そういうふうな情報、今までのはちょっと極端に走り過ぎておったと思うのだが、そういう情報は防衛庁に対しましては、昔は大使館には陸海軍武官というのがついて行って、そこでは独得の情報をとっておった。ところが最近はそういうことはないのでありますから、せめて一番情報の入るのは外務省だと思うのでありますが、これらの情報は詳しくやはり防衛庁に伝えなければならぬ。防衛庁だけが岡崎さんの外務大臣当時のそのままの行き方で方針を立てている。ところが外務省の方は、最近の動きを少し違った角度から見ているということになりますと、そこにズレが来ると思うのですが、こういう連絡をどういうふうにやっておられるか、その点を外務大臣から一つお伺いして私の質問を打り切りたいと思います。
  91. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 今御質問の最後の点に私はお答えすればいいのでございますが、しかしちょっと前の点、私がこの前外務省におったときには米英を鬼畜と育っていたなんというお話しがありましたが、それは何か非常な間違いのように思うので、私は一音それは言わざるを得ないのだが、私は戦争中にも責任の地位にある一定の期間おったことがある。私はそういうことを避けることを全力を尽しておった。米英鬼畜というのはだれがその当時言っておったかということは、あなたよく御承知通りだと思う。そういうことは外務省の私の関係するところにはございません。そういうことはいやしくも戦争中であっても、敵を不必要にののしったって何にもならぬことです。外交上少しも益をしないことです。日露戦争のときには、御承知通りに俘虜の待遇というところにまで非常に考慮を払ってよくなった。そこで日露戦争後にわれわれがロシアに行って非常に歓待も受け、日露の国交が急に回復したというのは、そういうところからです。また外交上はたとえ国家が敵であっても、そういうことは十分に考慮しなければ、戦争は永久にあるわけじゃない、戦争が済んで平和のときになると、すぐつまずきが来るのでありますから、それは厳に私は成しめて来たのであります。それがために私は議会において、敵を憎む精神が足りないと言って非常に攻撃をされました。しかしそれは私は少しも顧慮するところでございませんでした。そういうわけでありまして、今日それがために私どもの考え方が極端から極端になって、たとえばアメリカには全部無条件協力をし、共産党に対しては無条件に反共である、こういうような、何というか盲目的な態度はとっておらぬつもりでございます。この点は外交の背景はまた精神問題にもなりますから、一言私は弁明めいたようなことを、はなはだ恐縮でございますが、申し上げて、その次の本題に移りますが、むろん防衛の問題ということは外交全般のことと密接な関係がございます。お話しの通りでございます。そこで外交全般の動き、日本のとっておる政策と防衛関係の処理ということは、これは密接不分離の関係にあることはすべて十分に連絡をとらなければなりません。そうして連絡を十分とっておるつもりでございます。杉原君と私とは、これはもう同じかまの飯を食った仲でございますから、それについては何もあれのないことでございます。そこでぜひそういう工合にしてやって行きたい、こう考えておるわけであります。そこで外交方針に沿う防衛計画でなければならぬことも、これも当然のことであります。今日たとえば日ソ交渉をやっておる、四国会談がゼネヴァにあった、だんだん世界の緊張が緩和の方向に向いておるということは、これは認めざるを得ない。しかしそれならば、日本もその外交政策に沿うて行くならば防衛計画というものは必要はないんじゃないか、こういうもし議論があるならば、これは私は飛躍的なことだと思う。私は独立国としての日本の独立態勢の一部として、もしくは重要なる部分として、日本に自衛力がなければ実際独立国としての外交は十分にできないと思う。これは何も力の外交を私はやろうというのではございませんけれども、平和の外交をやるためにも独立の完成ということは必要に感じます。そこでそういうことを今言われておるのじゃございませんけれども、お話しの通りに、防衛当局と外務当局との間には密接な意見の一致もしくは行動の一致をもって進んで行くべきであるという御趣旨については、私は全面的に御賛成を申し上げて、私も及ばずながらそれを努力して行きたい、こう思うのでございます。
  92. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 それでは次に、最近の外交というのは、もう大使や公使にまかせるというのではなくて、航空機の発達に従いまして、巨頭外交時代になっていると思うのであります。外務大臣あるいは総理大臣等の地位にある者は、もうかまわず飛行機で行って会談をやってくる、こういう時代になっておると思う。そこで、幸いにして軍縮という気がまえにもなっておるのだが、この際に日本としては大きな手を打って、おれの方はもう兵隊は持っておらないんだ、世界中どうだ、ソビエトもアメリカも今たくさん、二百万、三百万なんという兵隊を持つ必要はないんじゃないか、うんと減らしたらどうだ、こういうふうに一つ呼びかけて行くのには日本が一番いい、憲法で幸い兵隊を持たぬときめてあるのだから、いい立場だと、こう思う。むしろあなたがアメリカへ行かれるというならば、ついでに一つモロトフと会談する、あるいはまたアメリカへも飛んで行ってそういう訴えをしてくる、これこそが今の日本の外交として大事な問題じゃなかろうか。おれの方も軍備を持たないのであるから、どうかこれに近づくようにせめてしてもらいたい、こういうことを両陣営の巨頭連中に訴えられる。幸いにして日本における外交界の長老であられるあなたは、この際一つ最後の日本民族に対する奉仕として、そういう外交をやられるのが大事だと思うのでありまして、それを期待しているのですが、この点について重光外相の所信を伺っておきたいと思います。
  93. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 今の御意見は私も十分に尊重をいたさなければならぬと、こう考えます。私も御意見のあるところを、十分一つでき得るだけの実現するように努力をいたしてみたい気持でございますから、どうぞ……。
  94. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 それじゃ最後に、特に電光外相は前にソビエトに大使として駐在されておったので、おそらく今の巨頭連中とは非常に顔なじみの方も多いだろうと思う。またアメリカに行かれても顔なじみの方が多いだろうと思うので、国会で質疑応答ぐらいに精力をあまり消耗するというのじゃなしに、それは外務次官もおるのでありますから、こういう大きな仕事に乗り出しておるということだったら、各委員会でもわざわざ外務大臣にきてもらわなくてもいいですから、一つそのことに手を打ってもらわないと、もうちっぽけなことをやっていただく時代ではなくなってきていると私ども思うのですが、この点よく一つお考え願いたい。閉会にでもなったら、そういう方面に手を打たれることによって、この防衛三法なんというものは今改正する必要がなくなることをわれわれは期待して、今の現状のままにして、またむしろ減らして行くぐらいに持って行く、これ以外にないのじゃないかと思うので、最後に一つ御足労でありますけれども、そこまで飛躍して御活躍を願いたい、こう思いまして私の質問を終ります。
  95. 田畑金光

    ○田畑金光君 関連いたしまするが、新聞の伝うるところによりますると、重光外務大臣は渡米をされるそうでありまするが、いつごろ渡米なされる御予定であるか、また単に米国のみであるのか、今、菊川君のお話にもありましたように、その他の外国にも行かれるのか、どういう任務をお持ちでおいでになるのか、お聞かせ願いたいと思います。
  96. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 先ほど申し上げました通りに、まだはっきりしたことをきめておりません。今大体私の頭できめておりますことは、アメリカに行こうと、こういう点でございます。そのほかの国のことは全然考えておりません。そこで渡米のそれじゃ目的は今のところどうであるか。まああとからいろんなこともこれは出てくるかもしれませんが、今のところどうであるかということにしてお答えしたいと思います。今のところは、日米全般の問題について連絡と申しますか、意思の疎通をはかりたいと、こういうことでございます。そこでどういう問題をどう取り上げるかということが将来準備をする間に出てくるかもしれませんが、今のところじゃ特にそれを考えておりません。申し上げるだけのものを持っておりません。まあ戦犯の釈放などというような問題はむろんこれは十分頼んできたいと、こう思っておりまするが、特にそのほかの問題に準備しておるのはございません。両国の一般関係について意思の疎通ということでございます。
  97. 田畑金光

    ○田畑金光君 時期については、まだ正規の閣議でお話なさったとか、きめたとかいうまでに至っていないかもしれませんが、この国会が終りましたら間もなく出発されるように承わっておりまするが、そのような時期をお選びなされるわけでありますか。
  98. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) むろん国会が済まなければなりませんが、向うの都合を今よりより聞いているところでございます。それはまあ向うは秋口が一番都合がよかろう、巨頭会議、これに伴ういろいろな会議を処理したあとがいいというような大体の意思表示でございます。それですから九月一ぱいにはと、そう思っておりますが。
  99. 田畑金光

    ○田畑金光君 まあ九月一ぱいにおいでになるという時期も大体明確になって参りましたが、おいでになる目的が、日米両国の全般的な問題について、その意思の疎通をはかるというお話であります。もうわれわれといたしましては、十分意思の疎通ははかられておるようにも見受けるわけでありますが、日米全般の問題と申しますと、具体的に言うならば、当面の問題としては、本年度の予算編成に関連しても起きましたように、防衛分担金の交渉の問題があると思います。さらにまた日ソの国交調整の問題等について、アメリカ側の了解を求める、あるいは情報の交換をはかるというような点もあるかと思います。あるいはまた、先ほど質問に出ました国内における軍事基地の問題とかというような問題等もあろうかと察しられます。大体重要な問題としては、われわれはたから観測しておりまして、まあそういうような点に話がしぼられて行くのじゃないか、こう考えまするが、全般の問題と申しますると、具体的にどのようなことを取り上げられようとする外務大臣の腹がまえであるのか、承わっておきたいと思います。
  100. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 今申し上げます通りに、それらの準備は実は議会後にすぐ着手をしようと思っておるようなわけでございまして、今はっきりして、こういう考えを持っておるということを申し上げるのは私の頭にないわけでございます。しかし今列挙されておるような事柄が、やっぱり結局その話し合いに出て、そういう問題を具体的に処理することができなくても、そういうことが具体的に処理され得るように、またでき得るだけ順調に行くような素地を作りたいと申し上げて差しつかえないように思います。
  101. 田畑金光

    ○田畑金光君 何日でありましたか、つい一昨日でありましたが、鳩山総理に私この点をお尋ねいたしましたところが、重光外相の渡米の大きな一つの仕事が、防衛分担金の下ごしらえであるという御答弁があったわけであります。この点は本年度の予算編成の折にも、予算の編成がおくれ、国会に提案するのもおくれた一つの大きな理由が、日米防衛分担金の削減交渉にあったことは明らかであります。政府はこういう苦い経験を持っておられるわけであります。同時にまた現内閣としては、防衛分担金を削減さして、それが社会保障、国民生活安定の方に振り向けるという実質的な削減をはかろうと努力され、また選挙の節に国民に公約されたことも明らかであります。しかしこれも所期の目的を達成できなかったというのが、今回の日米の折衝の結果であったわけであります。でありまするから、今回は準備も十分なされて、選挙の折の公約が少しでも実行できるような、そういう目的のもとに渡米をなさるのかとわれわれは推察しておるわけでありますが、どういうことでありましょうか。
  102. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) そういうような問題についても、できるだけやって行きたいと思います。
  103. 田畑金光

    ○田畑金光君 この間も私防衛庁長官にも御質問いたしましたが、この行政協定の第二十五条によって、日本アメリカの軍隊の駐留に対しまして毎年一億五千五百万ドルの防衛分担金を支出する取りきめをしているわけでありますね。それでことしも平服まで入れますと三万一千余の増員になって、かれこれ十九万六千に上る自衛隊ができて参ったわけであります。杉原防衛庁長官のお話によりますると、日本自衛隊がふえて行くということは、同時にアメリカの軍隊が撤退することになって行くものである、こういう御説明があったわけであります。同時にまたアメリカの軍隊が漸減するとしまするならば、当然一億五千五百万ドルというこの防衛支出金の負担についても軽減されて行くというのがこの協定趣旨であるという御答弁も承わりました。昨日の説明によりますると、現在アメリカの軍隊が日本に二個師団ばかり駐留しておると聞いております。しかし先般アメリカのウイルソン国防長官の話によると、来年の六月末ごろまでには一個師団を引き揚げる、こういうようなことも申しておるわけであります。今二個師団いるのかどうか私は防衛庁説明を聞いて信頼する以外にないと思いまするが、だんだんこう漸減して行くわけであります。従って防衛支出金についても当然アメリカといたしましては削減に応ずるものであると、こう私たちは考えておりまするが、そのように解してよろしいかどうか承わっておきたいと思います。
  104. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) まあこの防衛分担金の問題は、これは定期的の検討ということにもなっておりますし、そのときにはっきりするわけでございます。   〔委員長退席、理事長島銀蔵君着席〕  そういう検討をするときに、十分一つわが方の希望も達成するように、これはまあ努力をいたしてみなければなりません。しかし大体論として、共同防衛の責任で日本防衛責任が重くなってくる。アメリカ防衛責任が軽くなってくる。そういうことになれば防衛分担金の軽減ということにも影響してくるのは私は当然のことだと思います。そういうことです。御答弁はそれで尽きておると思いますが。
  105. 田畑金光

    ○田畑金光君 そうしますと、本年度の交渉等においても、昨年度の、昨年度というよりもことしの春の交渉に際しまして、防衛分担金の交渉で日米共同声明というのが出ましたですね。これによると本年度限りという言葉があるわけであります。これはまあ来年は減らすとも、あるいはふやすとも、そういうようなことは来年度の交渉だという趣旨だということも承わりましたが、これは常識から申しましても自衛隊がふえる、アメリカ軍が撤退する、当然に防衛分担金というものは減って行くものである、こう私たちはみておるわけで、従って外交交渉等においても、もう少しことしのようなあんな醜態を演じなくても話がおさまるものと、私はこう期待しておるのですが、外務大臣の見解はどのように考えておりますか。
  106. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 私もそういう工合に持って行きたいと思います。また大体そういうような順序になって行くことは当然だと思います。ただ、今御引用の共同声明においても日本側は自衛力を増すという方針は十分にそこに表示しておるわけでありますから、防衛費が全般的にどうなるかという問題は、私はこれはまた別に考えなきゃならぬと思いますが、しかし分担金はまあ今年限りは今年限りに違いないけれども、来年それじゃ全然軽減の交渉をする余地がないかというと、それは余地はある。先ほどのお話しの通りであります。だからその交渉の際に、さようなアメリカの軍の撤退というようなことを十分に織り入れて、そうしてこちらの希望を達成するように持って行かなけりゃならぬ、また持って行くことができるように今考えております。ぜひその方向に努力してみたい、こう思っておるわけであります。
  107. 田畑金光

    ○田畑金光君 外務大臣のお話しによれば、防衛分担金の削減の話し合いも見通しがある。できるという強い御見解が表明されましたので、私はその答弁を了承いたしまして、一つ先ほどお話しのように、言うべきことは率直大胆にお話しなされる、こういうことで文字通り自主的な外交を展開されることを希望したいと思っております。  次に、私関連してお尋ねしておきたいことは、まあこの内閣委員会でたびたび杉原防衛庁長官防衛六ヵ年計画についてお尋ねいたしましたが、その概貌というものがまだ明らかにされていないわけであります。しかしもうすでに今回の法律改正、予算措置によって陸上兵力が制服自衛官のみで十五万名に上ったわけであります。さらに昭和三十一年度だんだんこれがふえて参りまして、幾らに上るのか私は予測はできませんが、かりに先般巨頭会談において取り上げられました軍縮という問題が具体化して参ったということは予測しなければなりません。これは国連の軍縮小委員会等において、これから取り上げることになるようでありまするが、いずれにいたしましても、軍縮という問題は今後の国際政治の大きな絡みとなって行くことと私たちは見るわけであります。そういうことを考えて参りましたとき、もちろんこの重大な軍縮の問題が、この秋の外相会談を経て具体化するというような甘い見通しは私も持っておりませんが、やはりこれが実現するためにはある程度の年月はかかると、こう見なけりゃならぬと思っております。ある程度の年月がかかる。同時にまた日本自衛隊もこの年月のうちにはだんだん増強して行く、こういうことになって参ろうと思います。海上兵力と航空兵力の問題は一応別にいたしましても、とにかく陸上兵力というものが間もなく十五万から十八万、二十万になるかもしれない。まあそのような時期になって参りますると、世界的な軍縮問題も具体化してくるように考えるわけであります。そのような場合、日本がかりに軍縮をやるというような場合になりました場合です。一体その軍縮の問題は自国政府の独自の判断でできるのか。これもまたアメリカ承認アメリカの了解がなければ軍縮の問題に取り組むことができないのか、この点はどのようにお考えになっておられまするか、承わっておきたいと思います。
  108. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) ちょっと、御質問の何がよくわからぬのでありますが、はっきり私にのみ込めないのでありますが、御質問のその要点が私にちょっとのみ込めない点がございます。しかし将来の軍縮問題、私は日本の軍縮問題まで国際的に問題になるような時期はまだなかなかこないと思います。実際問題としては……。思いますが、日本がお話のように自衛隊もだんだん増して行くのだから、将来そういう時期がきたらどうするか、それはむろん国際間の交渉においては日本の独立国として日本自身がこれは決定することになると考えます。アメリカとの関係はその場合には私は出ないと思います。ただアメリカとの間にそういう条約関係がそのときにあれば、これは別ですけれども、そういうお答えじゃ、ちょっとあなたの御質問のポイントにこないのじゃないかと思います。
  109. 田畑金光

    ○田畑金光君 私のお尋ねしておりますことは、これは確かにいろいろな複雑な関連があるわけですが、かりに世界的な軍縮案が具体化したというような場合、日本の場合も軍縮に同調するという国の方針が決定をされた、このような場合に日本は独自の判断でもって自主的に軍縮の問題を決定できるかどうか、これにはまたもう一つ前提の要件があるのです。日米安保条約、日米行政協定のワク内においては、将来軍縮の問題が起きても、日本アメリカの了解を求めなければできないのかどうかという問題です。もしかりに数年の後に日米安保条約、日米行政協定というものが改訂された、あるいはなくなった、こういうふうな事態のもとにおいては、もちろん当然これは軍縮の問題はお話のように、日本政府は独自の判断でできましょうけれども、この日米安保条約行政協定がある限りにおいては、軍縮の問題等もアメリカ承認を得なければできないのかどうか、こういうことであります。   〔理事長長島銀蔵君退席、委員長着席〕
  110. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) それは根底においてはこれは独自の見地でさような交渉に応じ得ると思います。思いますけれども、安保条約行政協定、特に安保条約関係は大きな関係があります。十分にアメリカとの連絡及び意見交換を必要とするだろうと思います。それはなぜかというと、共同防衛の責任を持っておる国との間に、そういうことに日本がやらんとすることについては十分了解を求めることは当然のことだと思います。これは安保条約現状のままにあると仮定しての私の見解でございます。
  111. 田畑金光

    ○田畑金光君 結局安保条約、日米行政協定がある限りは、将来軍縮の問題が起きてもアメリカの了解なしにはできない、こういう見解であると承わってよろしいのですね。
  112. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) それは理論上、私は先ほど申し上げた通りにまだその……。
  113. 田畑金光

    ○田畑金光君 理論上の問題を私はお尋ねしておるのですから……。
  114. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 理論上はそうです。
  115. 田畑金光

    ○田畑金光君 了解を得なければできないと、こういうわけですね。
  116. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) そうです。
  117. 田畑金光

    ○田畑金光君 それからさっきの話に若干戻りますが、重光外務大臣が今回渡米なさいまして、防衛分担金の下交渉をなさるについても、結局日本昭和三十一年度の防衛計画というものがなければ、折衝なさるについても話は進まないと、こう見ておるわけですが、かように解してよろしうございますか。
  118. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 防御分担金の問題を論ずる場合においては、日米間においても日本防衛計画というものがあることが非常に必要なのです。そうでなければ空論になりますから……。そこで防衛計画というものを立てたいのであります。これがはっきり立っていなかったがために、先ごろの防衛分担金の交渉にわれわれは非常な心労をしたわけでございます。それでアメリカ側に対して、将来は日本も十分そういうものをこしらえて、そういう問題のお話をいたそう、こういうところまでも実はいったわけであります。そこでもう今度は国防会議もでき、そしてちゃんと手続もできるという以上は、これは政府も非常に努力をして計画を進めて、そして正式に国防会議の意見を聞いて、あるいはまた議会の御討議を経て、正式の案としてそれを元としてアメリカ側と私は交渉するのが順序だと思います。またそういうようにぜひやって行きたいと、こう考えておるのでございます。
  119. 田畑金光

    ○田畑金光君 大体わかって参りましたが、今度渡米なされる場合には、政府として防衛計画をりっぱに作ってアメリカにも説明のできるようなものを持って行く、国内的には国防会議等の諮問を経て、そのような方法で参りたい、こういうふうに承わってよろしいのですね。
  120. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) そうできれば非常にけっこうだと思います。しかしそう行くか行かぬかということは今私は申し上げることはできません。これは努力をしてみて、できるだけそこまで行きたい。ただし国防会議なんぞというのが議会の承認を最終的に得るということになれば、これは非常に話はしいいことになることは事実でございます。いずれにしても、一つ日本として日本のやるべきことはどんどんやって行くというふうな気がまえを見せることが外交交渉においては一瀞必要だと、こう思っておる次第であり、ます。
  121. 田畑金光

    ○田畑金光君 もし国防会議ができないとするならば、先ほどの杉原防衛庁長官のお話を聞いておりますと、要するに案はもうできておるのだ、案ができておるといってはちょっと強過ぎるかもしれませんが、とにかく国内的の手続として国防会議にかけなければならぬ。従ってその国防会議にかける前はまだ対外的に明らかにするわけには参らぬ。国防会議ができたら直ちに政府は国防会議に諮問したい、そして正式の政府の案を対外的にも対内的にも明らかにしたい、こういうような趣旨の御答弁があったわけであります。それはけっこうでありまするが、もし国防会議ができない場合は一体どうなされるかという問題が起きて参ります。もうすでに杉原防衛庁長官のお話を開いておりますと、その裏を察しますと、案はできておるのだが、一応国内的手続として国防会議を通したいというところしか残っていない、もし国防会議ができぬ場合は、政府として国会にも諮らないで、もちろん閉会中でありますから、政府独自の案でもってアメリカと折衝なされる、こういう御趣旨でありますかどうか、承わっておきたいのであります。
  122. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 私の申し上げるのは、成規の手続を経てさような計画のできることを期待しておるわけでございます。
  123. 田畑金光

    ○田畑金光君 できない場合は……。
  124. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) できない場合を申し上げるわけにはいきません。できることを予想しております。できないことは予想していないのですから……。
  125. 田畑金光

    ○田畑金光君 重光外務大臣にお尋ねしておきますが、会期はあさってまでですよ。
  126. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) どうかお願いいたします。(笑声)
  127. 田畑金光

    ○田畑金光君 通して上げたいのですが、外務大臣が大手を振ってアメリカの受けがいいように、早く国防会議というのをこさえて上げたいんですけれども、まだきてないし、(「きている」と呼ぶ者あり)きていてもまだ十分な審議の時間もないし、まだこの防衛三法の審議で、こんなにわれわれも昼飯も食べないで努力をしておるんですよ。政府はどういうおつもりでおられますか。
  128. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) ぜひお願いをして、どうか一つりっぱに行けるようにしていただきたい。
  129. 田畑金光

    ○田畑金光君 それじゃ話を変えまして、巨頭会談の折、私は少くとも政府としてはもう少し日本として世界に訴える、巨頭会談に訴えるようなことの意思表示等がなされてしかるべきだと、こう蓄えていたわけですが、外務大臣が何か談話を発表されたようであります。われわれはもう頭に残っていないのです。事ほどさように、どうも外務大臣のあの談話というものがあまりぱっとしないような内容のように見受けたわけであります。先ほどお話のように、外交という問題はもう少し率直大胆に訴えるところは訴えるべきだという点からすると、どうも消極的であり過ぎたような感じがいたしますが、どういうわけであんな形をとられたのですか。
  130. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) それは今さら何も弁明じゃございません。当然これは過去のことについて、日本の批判はこれは私は歓迎しておるわけでございます。しかしよその国が会議をするから、それにもってきて外部からいたずらに声を大きくすればそれが世界に響く、こういうふうに考えることも必要はないと私は考えております。私は日本としては日本の国の地位が最も、何というかプレスティージを持った態度をもってすべての問題に接しなければならぬと思っております。四国会談について日本がこれを重要視しておる、非常な関心をもってこれをみているということを議会の討論を通じて内外にこれを徹底せしめ、かつまた外務大臣の声明として、それを発表するということが最も適切な方法であり、ちょうどこれがいいことである。いたずらに、いたずらにというのは語弊がありますが、ただ電信を外国の政府に打ってみたからといって、これだけではそう大した響きがあるわけではない、外国の政府に対してはその国に駐在しておるわが代表者を通じて十分感恩表示をしておるわけでありますから、さような態度が最も適切であって、適当な処置だと私自費はこう考えたのでございます。またそうであると思う。ほかの国の例によってそうであると思います。
  131. 田畑金光

    ○田畑金光君 その点はやっぱりものの見方、国民の受け方の問題だと、こう思いますが、私たちのみるところは、もう少し積極的な外交方針というものが展開された方が国家のためであり、日本の新らしい運命を切り開く道じゃなかろうかとわれわれはみているわけです。これは重光外相がかつて敗戦のとき、ミズリー艦上で無条件降伏文書に調印をされたんですね、あのときの御苦労はわれわれの記憶に新たなものがあるわけです。しかしいやしくも独立国家ということを信じておられるならば、私はもう無条件降伏意識というものは捨てて、日本の行くべき外交の方針等は、アジアに向い、世界に向って、もう少し積極的に展開されてしかるべきじゃなかろうかと、こう考えておるのです。お話のように、必ずしも電信を打つことが、その外交ではないのだ、かような見方もありましょうけれども、もう少し私は最近のアジア、アフリカにおける、ことに後進国家における民族的な立ち上ろうとする勇気ですね、独立国家として自信を持ったあの態度、こういう外交は私は日本にも必要ではなかろうかと、こう考えておるわけであります。たとえば八月の初めに、ジュネーヴにおいてアメリカと中共が抑留者の問題を中心として話し合いを進める、これもインドのネールや、あるいはイギリスのイーデン首相等のあっせんがこのような力を、このような成果をおさめたように聞いております。このように私はまねをしろと言わぬが、もう少し日本の外交も生きた積極性があってもいいのではなかろうか、こういう感じを持つわけであります。そういうような点を、こうだんだんと考えてみましたとき、せっかく日ソ国交調整の問題は努力をされておられますが、われわれは早くこれが成功することを期待しております。それともう一つ関連しまして、昨日の衆議院の外務委員会等でも問題になったようでありますが、この昨日の新聞でありましたか、新聞によりますると、周恩来総理が日本代表に向かって、一つ話し合いをしようじゃないか、してもいい、あるいは総理の代理を派遣して話し合いを進めて行こう、こういうような意思表示があったようであります。おそらく今日のアジアの情勢を見ても、中共の今日のあの積極的な動きを見た場合に、この周総理の発言というようなものは、事実を私は報道しておるように印象づけられるわけです。この点に関しまして、先ほど重光外相は共産主義に対する見方というものを明確に説明なされました。外交実務家としての見方については私たち敬意を表します。とにかく共産主義のキャラクターは変らないかもしれないが、戦術は変って来た。戦術が変ったならば、その戦術に応じてわれわれも外部に対して手を打つことが正しい行き方であろう、この見方については私も大賛成であります。そういう見方からして、かような共産主義に対する評価の上に立たれて、この周総理の発言等に対し、どのように見ておられるのか、この点を承わっておきたいと思います。
  132. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 私は一国の外交をやる場合については、やっぱり当局者だけの自信ではいかぬのであって、私は国民的にももう少し自信を持つたらいいと思うのです。アメリカが飛行士の釈放をジェネヴァで交渉するようにした、非常に積極的にやって大いに学ぶべきだというのは、アメリカはあるいは日本に学んだのかもしれない。日本は中共における抑留邦人の釈放をジェネバァを通じてもうやっておる。これはどっちがならってもいいのですが、積極性ということで、アメリカのやり方を批評されるならば、同じような積極性を持っております。また周恩来氏がバンドン会議その他において、世界の空気を見ていろいろな手を打っておる、これは事実であります。しかし日本として周恩来氏の言うように、日本が動かなければ日本に積極性がないということは私は受け取るわけにはいかない、日本はそうじゃないのです。一体国際紛争を平和的に解決しなければならぬと、だれが一番バンドン会議で主張したかというと、日本であります。日本の平和宣言というのがとうとう最後の平和宣言の中に入ったわけです。私はバンドン会議における日本の平和政策の遂行などということを見ていると、私は誇りを感じておるのであります。日本の全権はよくやってくれたと、私だけじゃない、日本人が誇りを感じていいと思う。日ソ交渉をやっておる。これは非常な困難のことです。とにかく日ソ交渉をやって今日世界の平和に具体的に貢献しようというようなことは、これは大きな私は積極性だと思う。私は自分の国は何もかも消極的で非難すべきことで、外国のことは何もかも積極的で、これに追従しなければならぬというような考え方は私自身は持っておらぬ。私は自分のことを、日本の国の行くべき道を十分に一つ必要の程度に応じて積極的に進めていかなければならぬと、こういう工合に考えております。その点は、たとえば実質的において非常にやりにくいことでも、これはたえなければならぬところはたえて、また進んで突き進まなければならぬところは突き進んで行くべきだと、こういうふうに思っておりますから、それにはおのずから時機と度合いも考えて行かなければ国家の利益に必ずしも一致しないということです。私の考え方はそういうふうな考え方で進んで行こうと思っておるのであります。周恩来氏の話がありました。私はそういう考えを持っている周恩来氏が、自分なりまたは自分の代表者を東京によこして話をするということも考えてもらいたい。こっちが何でも行かなければならないという理屈は少しもないと思います。そういうようなことは意思の合致を見てやる、あるいは全体の考え方において相手方の言うこともよく味わって、そうしてできるだけ穏当にこれに調子を合わせて行きたいという御趣旨であるというならば、私は全然御同感です。そうしなければならぬと思っております。けれども、それば私はすべて私の言う自主的な、自分の立場を守りつつ進んで行くべきものだと、こう思います。
  133. 田畑金光

    ○田畑金光君 お話を承わっておりますると、国民がもう少し自信を持って自主的にやれ、あるいは誇りを持ってやったらどうかと思うと、まあ私たち公平に見まして、国民にもしそのような自信がないとすれば、それは歴代の政府の責任ですよ。そうして私たちは前内閣あるいは民主党の内閣ができる前後においても、今までのようなアメリカにひたすらおすがりをする、こういう屈辱的な行き方ではなくして、もう少しソ連とも国交を調整しよう、中共とも積極的に貿易を展開しようじゃないかと言って、新しい外交が展開されるのではなかろうかと期待したのは園児、そういう期待を与えたのは現内閣です。あなた方です。国民がそういう消極性とか、あるいは自主性がない、誇りを持たぬというのは国民の側に責任があるのではなくして、歴代の内閣であり、また二月の総選挙においてから宣伝をやった現内閣の本質的な同じ性格なんです。そのことをよく考えてもらいたいと思います。それからもう一つ、あなたの話によると、アメリカが今回ジュネーヴにおいて抑留飛行士の問題についての話をするというのも日本にまねたのだろうとおっしゃるが、これはちょっと私は自画自讃に過ぎやせんかと、こういう感じを持たざるを得ないのです。これは私一人の見方か、あるいは国民全体か、あなたのお話のように、重光さんがああいう手を打ったのでジュネーヴにおいてアメリカも気持を変えて中共と話をようするようになったのだと国民全般が見ているのか、私はそうも見ておりません。やはり私はメノンあるいはネール、これらの人たちの橋渡しによって、イーデンなんかの話し合いがああいうような結果をもたらしたと、こう見ておるのであります。これは見方の相違だから何とも申しようがありませんが、ただ私たちは電光外相に申し上げたいことは、自信を持たれるのもけっこうですが、古い考え方、古い外交のワクの中に閉じこもって自信だけ持たれていても、それは時代おくれですよ。それは戦争前あるいは戦争中、先ほどお話もありましたように、あなたも実はある年間責任の地位におられたわけです。かつての日本を指導し、日本を敗戦の悲地に送い込んだという責任は重光さんも十分自覚してもらわなければならぬと思いますが、今のようなお話のごとくわれわれには何の責任もないのだ、悪いのは国民の側だというのは、ちっとひどすぎやせんかと思うのです。その点はそれといたしまして……。
  134. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 私はその点は少しも言いません。私はそんなことは言いませんでした。国民に責任を帰するなんという考えは毛頭ない。
  135. 田畑金光

    ○田畑金光君 私はそう受けたんですが、それで周総理の話し合いも、これは向うから正式の代表でもよこしたら応じようという態度でなくして、とにかく日本のそれぞれの代表団が行って、国会の人たちが行ってそのような話し合いがあったとするならば、これは向うから正式の代表がこなければ話し合いに応じない、信用ができぬという話でなく、今までの引揚者もそうでしょう、政府ではなくて民間の方が中心になって引き揚げの問題を実現したではありませんか。そういうようなことを考えた場合に、今の世界の情勢から見て、アジアの情勢から見ましても、周恩来のこういう提案等は十分検討する余地があるんじゃないかと私は考えますので、もう少し政府としても弾力性のある態度をもって受け答えをされるような用意がないかどうか、この点を承わっておるわけでございます。いま一度御答弁をわずらわしたいと思います。
  136. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) いや、お話はよくわかりました。弾力性をもって十分やらなければならぬということは全然私も同感です。そうしなければならぬから、またそうするつもりでありますが、この今申された周恩来氏の提案なるものは、これは私もまだ十分検討もしておりませんし、実はそれをよく承知をいたしておりませんから、十分一つ考究をして、そしてこれに対処することにいたしたいと思います。
  137. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 同僚委員の諸君から外務大臣に対するいろいろな質問が行われました。私の質問もあるいは一部はそれと重複する点があるかと思いますが、できるだけ今までの質問と重複しないように考慮しながら質問申し上げたいと思います。  まず第一に、訪米目的の問題であります。先ほど同僚委員質問に対して、日米間の全般的な諸問題を話し合いに行く、もちろんその中に防衛分担金の削減に関する下交渉も行うつもりである、その際には防衛計画等についても、国防会議が設置され、それに諮った上でそれらの防衛計画を向う側へ持って行きたいという御答弁があったわけです。国防会議がもしも成立しなかった場合はどうかという質問に対しましては、外相としてはできるだけ国防会議に関する法律案が成立するようにお願いしたいと、こういう御答弁でありました。何ら国防会議構成等に関する法難案が成立しなかった場合の御答弁はなかったと思います。私はその点を重ねてお尋ねしたいのです。国会も余すところあと今日を入れて三日であります。防衛三法があり、さらにその地に関する若干の法律案があり、その上に国防会議、それからまた憲法調査会法案、このところたくさんの法律内閣委員会に付託され、また付託されようとしているわけです。国防会議の構成等に関する法律案はなかなかこの会期中に成立することは困難ではないかというのが私どもの見方なんです。もちろん会期等を延長すればまた別の問題でありましょうが、自由党の皆さん方は絶対に会期は延長しないという考え方でおられるようだし、もちろん革新勢力の側では会期の延長には絶対反対しているわけですから、今の情勢では国防会議法が成立するという見込みはないと思います。もし国防会議法が成立しなかった場合、電光さんは手ぶらで向うへ行かれるのか、それともそうではなくて、一応の案をともかく向うへ持って行かれて交渉されるのか、その点からお尋ねしたいと思うのです。
  138. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 私は国防会議はぜひ成立をさしていただきたいと、こう先ほどから申しておる。また成立するものと、こう私自身としては御期待を申しておるわけでございます。従いまして、それがどうしても成立しないという場合のことは考えておらないわけでございますが、万一そういうことがあると仮定しても、それはそのときに私は考えたいと、こう考えております。
  139. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 成立さしたいという御希望はごもっともだと思います。ただし今申し上げたように、たくさんの法案がこの内閣委員会に付託され、あるいは付託されよべとしているわけです。それを三日間でもってあげるなんていうことはちょっと、超人的な力をもってすれば別ですが、現在の状態においては不可能ではないか。その場合あなたは今の御答弁では、それはそのときのことにしようと、こういうお話でありますが、そのときのことにしようというそのお考えの基礎には、もし成立しなかった場合には手ぶらで行かれるというおつもりですか、それとも政府で一応案を作って、その作った案を持って行かれると、こういう意味ですか、その点を明らかにしていただきたいと思います。
  140. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 今私はっきり申し上げます通り、それはそのときで考えなければならないと思う。案と言われるのは何の案ですか。
  141. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 防衛分担金の削減に関しての防衛計画に関する案です。
  142. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) その案は今の予定は、先ほどから伺ってもおり、申し上げておる通り、国防会議等に諮って成案を得たいと、こういうわけでありますから、成案は御られないわけでございます。しかしそれはそのときに考えましょう。私はだんだん進んで行って得られると思っております。先ほど申したように、少し見込みがあなたと違うわけですから、これは一つどっちがほんとうになるか、私の方は成立することをお願いするわけです。
  143. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 今のお話では国防会議法は必ず成立するという見通しの上に立たれておる。成立するか、しないかはこの三日間の審議に待たなければならぬわけですから、今のところ言い得ないことはその通りだと思います。もし成立しなかった場合には、そのときのこととして考えると、こういうお話ですが、もし成立しなかった場合、そのときのこととして考えられているあなたのお考えを伺いたいのです。
  144. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) そう考えております。そのときに考えます。
  145. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 そのときに考えるということですか。
  146. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) そうです。
  147. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 この四月の防衛分担金の交渉は、政府側では一応案を作って向う側に示して、そして防衛分担金の削減交渉を行われたと思うのです。あの交渉のときに向う側では、本年度はということで三万一千かの増員を認めると同時に、さらにまた飛行場の拡張その他の諸条件が加えられたと思うのです。今度訪米されれば、三十一年度の防衛分担金の削減に関する下交渉、具体的な交渉は第二段の問題としても、一応の大ざっぱな下交渉はなされるものと想像されるのですが、その場合はやはり一応の成案を持って行かなければ私は話にはならぬだろうと思う。もっともこの春、来年度は大体このくらいという政府としての案は示されたかどうか、それは私にはわかりませんが、ともかく何といっても一つの成案を持たなければ話にならぬ。しかも向う側にはまた向う側としての日本の軍備を増強するために必要とされる案があると思うのです。その案とこちら側の案とが一致したところで初めて防衛分担金の削減の交渉というものが成立するのであろうと、このように思います。この春の交渉から大体想像して、三十一年度の向う側で日本側に要請するだろうと思われる計画内容等については、外務省当局としては大体大ざつぱででも御存じなのでありましょうか、その点を伺いたい。
  148. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) その点の向う側の考え方はわかりません。
  149. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 外務省としてまだその案が来ていないわけですね。従ってまたわからないということも了承いたしましょう。しかし日米共同声明等から一応私どもが判断できることは、日本の軍備を増強することについて非常な努力を払えということが向う側によって要請されておると思うのです。それらの点から想像するならば、さらに本年度よりも来年度は増強のテンポを早めなければならぬということが想像されると思いますが、その点につきましては外務大臣としてはどのようにお考えになっておられますか、お答え願います。
  150. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) それはこの共同声明にもはっきり書いてありますから、こういう趣旨によって進むことに考えております。
  151. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 共同声明の中に盛られたような趣旨に乗ってこちらも進むということになれば、そこで一応の日本側としての計画あるいは案というものが政府としてはできてこなければならぬはずだと思う。これは担当は防衛庁長官の担当であります。あなたの担当ではない。しかし直接向う側と折衝されるのはあなたである。従って私はあなたの手元にある程度の日米共同声明から要請されておるところの案というものの方向はまとまっておるのではないかと考えられるわけです。そこでその点をお騨ねいたしたいわけです。重ねてくどいようですが、お答え願いたいと思います。
  152. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) その点は、私直接に御質問でなかったかもしれませんが、ずいぶん御質問が繰り返されておると思います。私もそういう案ができておると、これはまあ交渉には非常に便利だと思います。そうしてまた将来はなるべくすみやかにそういう案をこしらえていただいて、一つ日米交渉を基礎づけるようにだんだん進めて行くことを非常に希望する次第でございます。それについては、先ほどから繰り返して申し上げます通りに、政府としてはちゃんとその案ができるように一つ仕掛をこしらえていただかなければならぬ。すなわち国防会議を二つどうぞなるべく早く成立するようにお願いをすると、こういうこともそこから出ておるわけであります。
  153. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 先ほど同僚委員質問に対して、仮想敵国というものは全然設定しておらぬ。これは今日ばかりでない、この前の御答弁の中にも出ておったと思います。これは最近の国際情勢、特に日ソ交渉等のさなかでもありますので、外務大臣としては慎重な御発言をなさる必要上、仮想敵国というようなものは考えておらぬと、こういう工合に御発言になったと思うのです。しかしあなたの御答弁でも、あるいは鳩山首相の御答弁でも、自衛の必要上の最小限度の軍備を持つのだ、自衛の必要上の最小限度の軍備というからには、それは相対的なものでありますから、必ず相手国がそこにあることは言うまでもないのであります。加瀬委員から衆議院予算委員会におけるあなたの発言等を引用されて質問されたのでありますが、それに対しては侵略国と言った覚えは一度もない、こういうお話でありました。私も国際情勢等から今日相当慎重な発言をしなければならぬということはだれしも承知しております。従って仮想敵園なんという言葉は私も使いたくない。しかし自衛の必要上の最小限度の軍備をやるのだ、こういう言葉の中には、日本を侵略するであろうところの国あるいはその兵力というようなものを一応そこで目安にし、目安というよりは目標にならなければならないと思います。そういう意味では、あなたが衆議院予算委員会で述べられたお言葉は、いわばそれに当るのではないかと思うのですが、いかがですか。その点を重ねて御質問してみたいと思います。
  154. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 衆議院予算委員会で私が述べたというのはどういう言葉をさしておられるのですか。
  155. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 大陸では強大な空軍が配置されているという意味であります。
  156. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 私はそういう説明をいたしました。これは仮想敵国がこうしておるとか、何とかいうことはむろん私は言っておりませんし、またそれが侵略の目的である、日本を侵略をすることを目ざしておるのであるということはなおさら言っておらないわけでございます。自衛軍備をこしらえるためには、先ほど申し上げた通りに、これは独立の完成というところからも考えなければなりますまい。またそれ以外にその国の四囲の情勢ということは特に注意を要します。四囲の情勢を見て私の説明を申し上げた通りに、大陸におけるいろいろな飛行機の配置をするというようなものは、たとえこれが侵略の目的でないにしても、また純粋に平和の目的であるにしても、そういうことはこれは考慮に入れなければならぬと思います。これは何も仮想敵国のものであるとか、侵略のためのものであるとかいって、これを呼ばわる必要は少しもないと思います。しかしさような状態は平和のためとしてもこれは考慮に入れて、そして日本もこれに対応する必要は何もありませんけれども、日本としても平和のために自衛軍を備える、たくわえるという用意は必要だと思います。私の意見はそうであります。違った御意見は、これは十分に拝聴いたしますけれども、私はそう思います。
  157. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 時間もないものですから、そう御質問できないのですが、最後にもう一つお尋ねします。自衛の必要上という自衛という言葉ですね、これはどこの国でも一般的に使われている言葉なんです。しかも侵略戦争をやる場合でも自衛のためと称していることは御承知通りだと思います。日本でも満州事変にしろ、あるいはその後の諸事変、戦争等もいわば一種の自衛のためと称して行われてきた、これも外相としては十分御存じだろうと思う。ドイツがあのような戦争にまで出たのも、これもまた自衛のためだ、こういって、自分は侵略戦争をやるのだということを宣言して戦争を始める国は一つもない、どこの国でも最初は、よしんば侵略戦争を始める場合でも、自衛という言葉を使っておるわけです。従って自衛という言葉はいかようにでも解釈できる言葉だと思う。そのように外相としてはお認めになりますか。
  158. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 自衛とは何ぞやという御議論のようでございまして、これはむずかしいことでございます。私の非常な浅薄な知識からみても、自衛の問題というもの、自衛は何なりやということは、今日国際上定義がないのでございます。国内的には私は定義があり得ると思う、国内法の問題としてこれを使えばですね。国際的には定義がないのでございます。そうだから非常に議論が起り、歴史的にみても、それからまた今日の国際情勢でも非常にこれは大きな問題になっておる。しかし軍備をするのに、自衛のために軍備をするというよりほかに軍備の観念を現わす上において、また制限を言い現わす上において方法がないから、国際間において自衛軍、自衛のための軍、自衛という言葉が使われておるのであります。これは私の知る限りの話を申し上げたわけであります。だから自衛の定義について第一次世界戦争のときの自衛の定義、第二次世界戦争のときの自衛の定義、これは非常な差が各国にある、これも御存じの通りでありましょう。アメリカもウィルソン時代の自衛の定義とルーズヴェルト時代の自衛の定義というものには実際において非常な差があります。さようなわけで、国際上私は自衛の問題は何なりやということになってくると、これはまあとりとめのない、まだ結論のついていない問題でありますから、これはそこにはまって行くことは今むしろ必要なことでないように思います。そこで、それでは政府方針として一体自衛軍々々々というのは、どういう考え方で自衛軍というのか、こういうことならば私の考えも申し述べることができます。私は自衛は日本の国土を守るための軍隊が自衛軍だと、こう思っております。これはまあ過去において満州事変とか、シンガポール、ハワイまで自衛のために行ったと、こういうことになっておるわけであります。そういう解釈もつき得るのかもしれませんが、私は今日の場合におきましては、日本がさような海外に兵隊をどんどん使うというような、そういうような種類の何は自衛軍備としてこれは作りたくないという方針を持っておりまして、日本の国土を守るということで、それでは何が日本の国土を守るのかという、またむずかしい問題が起りますけれども、私は大体常識でこれはさまってくると思います。これが私の今の自衛軍に関する考え方であります。国際的にはこの問題は学問的にもまた国際的にもきまっておらぬ。しかし国際的にきまっておることは、自衛軍の解釈は各国自身の解釈にまかせるということだけがきまっておる。これはしかし危険なことなんで、各国自身が勝手に自衛の範囲をきめ得るという、これはあるいはやむを得ないからそうなっておるだけの話で、しかし私は日本が自衛軍は何なりやというと、厳重に国土の防衛ということに限りたいと、私はこう思っております。
  159. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 自衛という言葉がそれぞれの国の解釈によって一応まあ常識的に定められる。日本の場合については国土を防衛することが自衛という意味だ、しかし、自衛という言葉は国際法上からも、また実際の問題でも、なかなかきめにくい問題であるという御説明は私も了解することができます。しかしその自衛という言葉が、一定の概念、内容を持っていないというために非常に拡大されても解釈されるし、それからまた非常に狭くも解釈されてきているわけです。今までの戦争で、どの戦争も自衛のための戦争でなかった戦争は私はないと思うのです。で、第一次大戦のときの戦争、あるいは第二次大戦のときについて見ましても、その解釈の仕方についてはおっしゃる通り、たとえばルーズベルトの炉辺談話に現われているあの欧州防衛考え方、いろいろそのときによって違うと思いますけれども、しかしそれであるからこそ、私は自衛という言葉が非常に危険な要素を含んでいると思う。で、外務大臣としては、自衛のために軍備を行うのだというのだが、その自衛のためといべ、自衛という考え方を私はおとといこれは鳩山さんにも質問したのですが、むしろ物理的な力の手段による自衛ということよりも、外務大臣あるいはその他の方々を通じての外交的折衝による話し合いによって問題を解決する、自衛を行うということの方が今日最も必要ではないかという工合に考えられますが、外務大臣としては、その自衛という言葉の今日、あるいはこれまで用いられてきた意味、あるいはその内容等と関連してどのようにお考えになられますか、それを最後にお尋ねしたいと思います。
  160. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 私は自衛という意味は狭く解釈すべきだと思います。特に日本の政策としてはそう解釈しなければならぬと、こう思います。その意味は先ほどから申し上げておる通りであります。それからまた国際紛争を外交手段によって、もしくは武力によらざる方法によって、話し合いによって解決すべきであるということは、これは国際憲章の趣旨でもございますし、また日本の政策として強くこれを打ち出しておる政策でございます。これはあくまでさようにいたしたいと考えております。先ほどの竹島の問題について御説明を申し上げたのもその方針によっておるわけでございます。
  161. 木下源吾

    ○木下源吾君 この自衛隊ですが、直接侵略に対して云々という一つの目標を持っておる、そこで自衛隊の創設に当って直接侵略のきわだった情勢があったのかどうか、この点を……。外部からの武力による直接侵略の情勢がその当時一段とあったのかどうか、こういう点です。
  162. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 自衛隊の任務は直接侵略及び間接侵略に対する防衛のためだということに自衛隊の任務がなっております。これはその侵略が目の前にあるからそういうふうになっておるのだという意味には私どもは解釈いたしておりませんでした。これはそういうことがある場合に備えるための意味であって、国際関係上、今日さような状態、直接侵略、間接侵略があるのだというわけではなかったのであって、また現に国際関係においてさような差し迫った条件があるとは私は判断をいたしません。
  163. 木下源吾

    ○木下源吾君 いや、私のお伺いしておるのは、この自衛隊の発達がだんだん、警察予備隊から保安隊、それから今自衛隊になったわけでしょう、それで以前には国内の秩序とか、保安だとか、そういうことをいっておったのだが、自衛隊になったときに、自衛隊の目的が主として外部からの直接侵略ということを明瞭に打ち出したわけですよ、その打ち出したというのは、その打ち出す当時の情勢で、何も従来のようでよかったのではないか、それをそう出さなければならなかった具体的な事情を説明していただきたい、こういうのです。
  164. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) それは具体的の事情というのは国際関係でございますか。
  165. 木下源吾

    ○木下源吾君 ですから外務大臣にお伺いするのです。
  166. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 国際関係にそういうものはなかったということを今申し上げておるわけです。
  167. 木下源吾

    ○木下源吾君 そういうことがなかったならば、何も保安隊を自衛隊にする必要もなかったわけですな。
  168. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 私はそうではないと思います。その当時の責任者ではございませんけれども、そうではないと思います。私は国家が自衛のために準備をするということは、いかなる場合においても当然のこれはとらなければならぬ措置だと、こう考えております。
  169. 木下源吾

    ○木下源吾君 それはあんたのお考えで言っているので、私どもはそういうお互いの考えをここで今述べあっているのではなく、実際に現実に国内の治安、そういうために作ったものが、この自衛隊の創設に当って著しい目的がそこに現われたわけです。その目的が現われる以上は客観的な事実というものがあったから現われたのでしょうと、こう聞いておるのです。客観的事実をお伺いしておるのです。あなたのお考えをお伺いしているのではない。これはあなたがその当時の責任者であろうが、なかろうが、そういうこととは関係がございません。日本の状態でそういう客観事実はどこに何が、どういうことがあったのかと、これをお伺いしている。それを御答弁願えばいい、わからなければわからないでよろしい。
  170. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 私はその点についてははっきり御答弁をいたしておる通りであります。国際情勢にすぐ侵略されるという情勢は私は認めませんでしたと、こう言うのであります。あなたの方から、それならば自衛隊をこしらえる必要はないじゃないかといって意見を言われたから、それには賛成をすることができぬと私は意見をはっきりと申し上げたのです。
  171. 木下源吾

    ○木下源吾君 いやいや、私は具体的な事実を示していただきたい、こういうことを言ったら、あなたはその当時は自分のやったことじゃない、こうおっしゃる、だからして自分のやったことでなくても、日本の国の状態で客観的なそういう情勢があるのかないのか、こういうことをお尋ねしておるのですから、それを現実の具体的な面で御答弁を願えれば私は満足するのです。
  172. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) それは繰り返して申し上げますが、それはもうこれで三度目のお答えをしておるのです。そういう事態は私はなかった。
  173. 木下源吾

    ○木下源吾君 そうすると、日本の国にはそういう状態はなかった。こういうことでございますね。にもかかわらず、こちらは自衛隊を作った。それも現実の問題、そこに私は自分として考えるのですが、非常な矛盾があると思う。作らなければならぬような原因がないのに作った。そこに非常な重大な問題がひそんでおるだろうと思うので、私はお尋ねするのですが、日本自体としてはそういう必要も何もなかったのであるけれども、しかしながら、これはアメリカの方で何かそういう必要があって、日本に何か要請があったのかどうか、そういうことをまあお聞きしたいのです。
  174. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) それは、今の御質問は、あなたの初めの質問から全然離れた問題です。あなたはこう私に聞かれました。日本の客観情勢として直接侵略を受ける客観情勢があるかという御質問でありました。ないと私はお答えしました。そうしたらその次の御質問では、それならば自衛隊を作るべき理由のないのに自衛隊を作るのは、アメリカ側からの要請があったからかと、こうおっしゃった。
  175. 木下源吾

    ○木下源吾君 そうです。
  176. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 私は直接侵略を受ける客観情勢がないと申し上げたのです。自衛隊を作るべき理由はないとは決して申し上げません。ある。
  177. 木下源吾

    ○木下源吾君 ある……。
  178. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 客観情勢に直接侵略の情勢がそのときになくても、先ほど申し上げた通り、そういう場合が将来ある場合に、これに対処するために自衛隊を作るのは当然のことと思います。
  179. 木下源吾

    ○木下源吾君 私の前後の質問が関連性がないのではない。共同防衛と言っているから、日本の方で必要がなくてもアメリカで必要があったのではないかということをお聞きしているので、ようございますか、ですから関連があるなしにかかわらず、あなたの御答弁を願えればいいのです。そういうことがアメリカの何か要請があったか、なかったかということをお聞きしておるのであるから、それに対する御答弁を願えればいいのです。
  180. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) それだけの点であれば、アメリカ安保条約に示す通り日本自衛隊を増強することを希望しておる。
  181. 木下源吾

    ○木下源吾君 しからば、日本ではやはりアメリカの要請通り自衛隊を作るということが適当なりとお考えになったわけですね。
  182. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 自衛隊を作るということは、この問題には先ほどから申す通り関係はないと思います。アメリカとの関係安保条約によって出てきたものです。日本自衛隊を増強するという責任を、日本安保条約によって背負っておるのであります。
  183. 木下源吾

    ○木下源吾君 共同防衛については、しかしながら、双方で話し合いをするということも同時に取りきめになっておるのでありましょうか。
  184. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) まあ共同防衛の責任を持っておる以上は、それは話し合いをするということは当然だろうと思います。それはその趣旨だと思います。
  185. 木下源吾

    ○木下源吾君 でありますから、アメリカとの間における約束があるので持ったという。そうなれば、あなたのお話を聞いておれば、何でも向うから要請があればやらなければならないように受けとれるのですが、そうではないでしょう。
  186. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) そうばかりではない。
  187. 木下源吾

    ○木下源吾君 お互いに話し合いをしてやるということになるのではないですか、そういうことですか。
  188. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 全くそうです。それは何もかも向うの言うことを聞かなければならぬという理由はどこにもございません。これははっきりとこちら側の立場によって十分主張すべきことは主張し得るのでございます。
  189. 木下源吾

    ○木下源吾君 そこで初めの何に戻るのですが、共同防衛として日本では直接の侵略ということは、情勢はそのときはなかったが、なお共同防衛自衛隊を持つことになったということは、アメリカの強き必要がこれをそうさせたのではないかと、こういうようにお尋ねしておるわけなんで、この点は御了解願えると思います。
  190. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) それはアメリカの当時の情勢、共同防衛のためにアメリカの意向も十分聞いた上でのことに違いはございません。しかしアメリカの言う通りになったという結果でもなかろうと思います。
  191. 木下源吾

    ○木下源吾君 それはまあ全部、アメリカの言った希望通りの結果でもなかろうと思いますが、私の聞いておるのは、いろいろ今後予算折衝等もありましょう。その他の問題もありましょうが、もっと自主的な日本立場というものを持って行くことができるのか、できないのか、かりにそれはできるにしても、当時の政府方々の考えで、非常に幅広くこれを流用するというようなことがある危険を、私は十分感じておるゆえにお伺いしておるのですから、そのために私は自衛隊の目的が直接侵略ということに対して重要性を持っておると思うのです。なぜならば、今この法案は自衛隊を増強しようと、こういう法案なんです。具体的に言うと、外敵の直接侵略が基礎にならなければならぬと思うのです。ところが最近の情勢はしばしば皆さんからお話しのように、そういう情勢というものは緊張緩和の方向に参っておるのです。この緊張緩和の方向に参っておるときに、これをときあたかも継続的に発展してきたけれども、増強をするということ、それは非常に私は矛盾があると考える。ただ矛盾があるばかりならいいけれども、日本がかつての非常な悪い印象を世界の各国に与えておるのでありまして、そういうつまり世界に悪い影響を与えておることをここで改めて、再び兵力増強によって日本の心ないところの、侵略と言いましょうか、軍国主義化と言いましょうか、そういう方向に向っておるのだということの誤解を受けるということはないのか、こう考えまして今お伺いしておるのです。
  192. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 私は今のお話しの御趣旨はほんとうに私は貴重なものだと考えます。今後日本が再建の途上において、再び軍国主義の日本ができてきたというような印象を与えては相ならぬと思います。だからあくまで政策は平和外交で行かなければならぬ。しかし今の客観情勢と申しますか、世界情勢が漸次緊張緩和の方向に向いておるということもこれは事実でございます。ほとんど今日はそういうことに異論を唱えるものはない。しかしながら、今日社会の情勢が全然緩和してしまったのであるという結論をつけるわけにはむろん参りません。さような情勢であって、最も用心をしつつ進まなければならぬという今状況におる。それに日本は今独立日本となって日も浅く、独立完成の域にはまだ達していないというような状況であります。そこで自衛軍備の必要ということも、独立完成のためにも必要であるという今見地に立っておるのでありますから、だからそこで日本が全然なくなった軍備を自衛のために、独立完成のために、いわば最小限度の軍備を進めて行くということについて、私は軍国主義が再現したとかいうような誤解は外国に与える余地がないと、こう考えます。またさように自衛軍備等を用意をして、独立の完成に向って進んで行くということが平和の維持のためには最も必要なことのように感じます。むろん軍術の問題が行き過ぎたということでは、これはむろんいけません。しかし今日ではもう最小限度にどうして達するかということを今論じておるような状況でございますから、私は行き過ぎた心配は今のところはないと思います。そこである程度の自衛軍備をして、そうして日本が独立の完成をする、こういうことは平和の保障のためにも私は必要であると、こういうふうに感じておるわけであります。お話の、いやしくも外国に対して軍国主義の再現であるというような誤解を与えてはならぬという御趣旨は、私は非常に貴重なものであるとして、私は全然御同感でございます。
  193. 木下源吾

    ○木下源吾君 まだ独立をしておらない、この見解が正しい。それですからよけいにこの日本の軍術を私は心配する。独立国の軍隊であるならば、みずからの意思によってのみ去就はできまするけれども、非独立国の軍隊が、ややもすればこれは自分の意思に反して動かされるという危険性があるかと思うのであります。  それはさておきまして、フィリピンあるいは豪州その他まだ賠償問題が解決しておらない国々はたくさんあるわけでございます。一方においてこの賠償を非常に政府は努力しておる。ところがもうすでに御案内の通り、豪州の方でも日本の軍国主義の再来、再現というものに対して非常な敏感性を持っておる。フィリピンにおいてもそうです。ほかの国々でもアジアの国々はそうである。そこで賠償という問題と日本の軍備という問題とを相手が相当からみ合せて秤量しておる関係があるのではないか。軍備をどんどんやって行く、そういう財政力があるならば、過去の日本の軍が損害を与えた、そういうものをまず弁償してかかったらいいじゃないか、これは当然そう考えるのです。その方はそのままにしておいて、そして一方で日本の軍備を進める、千五百億、二千五百億に進める、こういうことになったならば、果してこれらの国々は賠償を、こちらの希望するような賠償で納得するのかどうか。おそらく私は賠償で牽制しておるのではないか、賠償額で日本の軍国主義の再来、再現を防ぐために賠償の問題をこれを未解決にする、それがまた賠償解決の非常な障害になっておるのじゃないか、こういうように考えておりますが、それらについての情勢を一つお話を願いたいと思います。
  194. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 賠償問題の交渉の経緯は、日本の自衛軍備の問題にからみ合ってはおりません。全然からみ合っておりません。そういうような意見は先方側において面接にも間接にも出てきてはおりません。出てきてはおりませんが、なるほど今お話を伺えば、そういうような気持ちを向うに持っておるものもあるかもしれませんが、こういう点は十分に、私はそういう議論に出会えば十分に日本側の気持ちを理解してもらうようにしなければならぬ、すなわちその処置をとらなければならぬと、こう思います。思いますが、交渉の今経緯においてはさような問題が出てきておる事実のないことだけは、これは申し上げられます。
  195. 木下源吾

    ○木下源吾君 私はその事実の有無よりも現実に賠償問題の解決しておらぬこと、それがそういう原因がある、こういうように港えるのです。財政の面で、賠償の面で押えておく一方、こうすれば再軍備のそういうような費用というものは牽制できるのだ、これは考えられることなんです。でありますから、私はこの日本の独立してから、そうしてあの戦争における日本の賠償と言いますか、そういう償いをして、そうしてからいろいろの問題をやるべきではないかと、賢明な為政者ならば私はそういうように行くのではないかと、こういうように港えておるわけなんです。現に私はこの賠償がきまっておらぬということの背後には、私は必ずそういうものが潜んでおる、絶無とは言えない。今、日本が自由国家群と言いますか、西欧諸国と手をつないでおるのである、こういうことでわずかにその問題を押えておくことができる、そういう状態ではないか、西欧陣営におるということそれ自体は、決して軍国主義の再来で諸君を再びいじめるとか、諸君に危害を加えることをしないのだというただそれ一つの保障しかないのではないか、こう考える。そこでそういう面であればあるほど、日本の向米一辺倒と言われるような、そういうような政策をどうしてもとって行かなければならない、こういうことも問題に私は出てきておる、こういうように考えておるわけです。しかしこれはお互いの考えでありまして、この点は何ですが、時間もあまりありませんので、実はあなたと一時間くらい私は欲しかったが、ありませんのではなはだ何ですが、あなたが今外交を進めて行かるる上において、背景に軍備を持っておらなければやりにくい点がたくさんありますか。
  196. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 私は先ほど申し上げた独立の完成という意味からいって、最小限度の自衛軍備を持つということは外交上必要だと考えております。
  197. 木下源吾

    ○木下源吾君 私は独立をするためにというよりも、かつて日本の軍隊は、あなたは古い外交官でよく知られておる通りです。日本がいろいろの外交交渉において、背後における軍力というもの、戦力というものがいつでも外交にくっついて強力な外交を展開して来たのであります。その歴史的な関係から、今日なおそういう日本の外交を進める上において背後に電力というものが必要である、こういうようにお考えになっておるかどうか、こういうことなんです。
  198. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 私はむしろ軍力というよりも国力と言いたいのであります。りっぱな国力、そのうちには独立の完成によって自衛軍を持つことも国力でありますが、それはごく一部分でございましょう。さようなりっぱな国力を背景としておる外交をやりたい、こう思っておるのであります。
  199. 木下源吾

    ○木下源吾君 そうすると、軍力即国力のこれは、バロメーターですか。
  200. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) いや、私はそうは思っておりません。ごく一部分だと思っております。
  201. 木下源吾

    ○木下源吾君 前時代における各国との関係は、生産関係が非常に発達いたしました結果、当然外国との間における植民地あるいは半植民地に対する商品のはけ口、市場を見出さなければならぬ。そういうつまり経済戦は、今日の言葉で言えば、その当時の冷戦であったでありましょう。そうしてこれらの冷戦が、相手国が植民地に権力を持っておる国は、関税の障壁で他国の商品の輸入を食いとめる、いろいろそういう非常な活動が冷戦時代に経済戦として続けられたわけであります。そのときに、日本はやはりそれらの経済戦のときに勝利を得るために、言うならば独占資本、そういうものの利潤を海外の植民地、半植民地の土着民族、そういうものの利益を追求するために、背後に軍隊を持ってこれらの冷戦を遂行して参り、これらのために窮極においては帝国主義国間の戦争にまで発展したという歴史を持っておるのであります。私は今の自衛隊はそういう任務は持っておるまいとは思うけれども、外務大臣は外交上における政策を遂行する上に、ただいま平和の、あるいは独立のと言っておりますけれども、それらとは経済的な結びつきはありません。もしもそういうようなことに電力を必要とするというならば、これは非常な私は近代的なつまり国家としての行く方向が違うのではないか、こう考えます。そこで私は外務大臣に、あなたの外交政策を遂行する上において、日本の戦力というものを背景に持ってやらなければならぬという、そういう現象があるのか、こういうようにお尋ねしておるわけであります。
  202. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 私はそういう意味ならば、外交の背景はそういうところによっておらないということを申し上げます。しかし外交の背景は、むろん国力によらなければならぬということは、先ほど申した通りであります。
  203. 木下源吾

    ○木下源吾君 そうだとするならば、私は日本の今日における軍備というものの存在というものは、ますます理由が少くなって来る、こういうように考えるのであります。先ほど私はあなたにお尋ねをしましたところが、直接侵略という、そういう事実はなかった。そういう面においても自衛隊というものの必要はそこになかったわけであります。今またお伺いすれば、古い日本の帝国主義のような外交面において日本の政策を他国に遂行する上において軍力を必要としない実情である、こういうことをお伺いしたならば、何も自衛隊というものを今持っておる必要というものは、その原因が非常に薄弱ではないか。いわんや、今この情勢下において、世界の緊張緩和のときにおいて、日本が一人の自衛隊員に一ヵ年百万円かかる、そういうような自衛隊を増強しなければならないという時代ではないのじゃないか、こういうように私は考えるのであります。これは日本の今年一年進んで行く皆さんの日本の独立に対する努力を遂行する上において非常に重大な問題と私は港えます。あなたから今お伺いしたのでありますが、幸いにして直接侵略の具体的な何もないのだし、日本のつまり外交、一口で言えば貿易政策においても軍力を背景としてやる必要は毛頭ないんだ、こういうことを聞きまして私は非常に安心するのでありますが、もしもこのような状態が続くとするならば、外務大臣として進んで日本の軍備をなくするという方向に着手せらるるという、こういうお考えがないのか、そういうように内閣で御協力ができないのかどうか、その点をお伺いしておきます。
  204. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 私の言葉として御引用になったことは、私の用いた言葉通りにしていただきたいと、こう思うのでございますが、私はたとえば直接侵略の客観情勢はなかった。しかしそれが、だからといって自衛隊を設ける理由がなくなったとは私は少しも申し上げておりませんでした。それから私は外交の背景として戦力を云々することは避けまして、国力は外交の背景として持っておらなければならぬということは申し上げました。それはそれにしておきまして、将来われわれの平和外交が成果を得て目的を達して、そうして戦争というか、日本の国の防衛ということが少しも心要でないという城に達すれば、むろん私どもとしては日本の不必要なる軍備は、これをなくするように努力をしなければならぬと、こう考えます。その御趣旨においては私はその通りだと考えます。
  205. 木下源吾

    ○木下源吾君 いろいろお聞きしましても、なお自衛隊を持つ必要を感じておる、こういう点は私には理解できない。ただ一点理解できることは、日本がみずからの安全を保持するために地域的集団安全保障というものを強く考えておられるようでありますが、それゆえに私は日本自衛隊というものが持たねばならぬのであるというように考えられるのですよ、あなたの御答弁から……。
  206. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 私は一国が独立して自分の生存を全うするためには基礎的に必要な自衛力というものがあると、こう考えます。それを今探求すべきだと思います。そのために自衛軍備の必要を感ずるわけでございます。独立国としての基礎的の生存条件でございます。
  207. 木下源吾

    ○木下源吾君 これは一国が独立した場合でありますね。
  208. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) ええ。
  209. 木下源吾

    ○木下源吾君 今独立しておらない場合に現在のような軍備を持つということは……。
  210. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 私は日本をどうしても独立した国といたしたいと、こう考えます。
  211. 木下源吾

    ○木下源吾君 それではお伺いしますが、日本のこの自衛隊、このできておる基礎は言うまでもなく日米安全保障条約行政協定、MSAの条約協定によってこれは完成したわけであります。これは簡単にいえばアメリカとの間における軍事同盟、日米軍事同盟と考えて差しつかえないと思いますが、その点はどうですか。
  212. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 軍事同盟と申しますか、共同防衛の仲間だと思います。
  213. 木下源吾

    ○木下源吾君 そうすると、軍事同盟より以上に共同防衛というようなことで呼ばなければならぬ特質は何でありますか。
  214. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 安保条約及びこれに伴う行政協定等から出てくるのであります。当然そうなります。
  215. 木下源吾

    ○木下源吾君 地上軍の増強と言われておるのでありますが、地上軍が増強して行く場合はもちろんこれは日本として完成されるが、海空軍においてはこれは完全に指導権アメリカにあるわけですね。この地上軍が協定によって定められておるように、一朝有事の際には共同防衛するという名のもとに日本の軍がこれに入って来ますなら、その場合の指揮権は一体どこにあるのですか。
  216. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 非常に御質問が軍事専門的になったと思いますが、共同して軍事行動を起さなければならぬような場合は私には想像ができません。今日想像ができません。しかし理論の問題として万一そういうことがあった場合には、指揮権の問題はもう協力関係においてすぐ話し合いがつくと思います。これはもう話し合いをやらなければならぬ。
  217. 木下源吾

    ○木下源吾君 話し合いもすでに済んでおるのでありますか。
  218. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) そうじゃないです。それは話し合いはそのときにつけるのでしょう。ここに協議をするとか、何とかということがちゃんとあります。二十四条にちゃんと書いてある。
  219. 木下源吾

    ○木下源吾君 それよりも交換文書でちゃんとあるのじゃないですか。
  220. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 「協議しなければならない。」、協議をするとちゃんと書いてある。しかしそういうようなことは私は申し上げた通りに、今想像をすることはできぬということを大局的に申し上げるのでございます。
  221. 木下源吾

    ○木下源吾君 私は軍事同盟ということと共同防衛ということはおそらく同じだと考えておるのです。そこでしいて私が申し上げたのは、同盟といえば対等の立場を意味するものと私は考えておる。ところが共同防衛というのですか、共同防衛というのと違うのはどこか、それは私は共同防衛の場合にはこっちの独自の対等の権限ではない、アメリカの指揮下に入るのではないか、そういう特質があるんじゃないか、こういうことをお尋ねしておったわけであります。
  222. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 指揮下と言われますけれども、その場合そういう必要のある場合には協議をしてきめればそれでいいわけです。
  223. 木下源吾

    ○木下源吾君 実は朝鮮戦争のときに国連軍が何しました。これはアメリカの司令官のもとに皆配属したわけでありますね。
  224. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) そうです。
  225. 木下源吾

    ○木下源吾君 そういうような形に、日本の場合もアメリカの極東司令官の指揮下に入るのではないかということを聞いておるのです。話し合いで……。
  226. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) そういうことに日本側が承諾すればそういうことになるわけであります。
  227. 木下源吾

    ○木下源吾君 承諾し得ない状況になっておるのではないのですか。
  228. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) それは協議をすることになっておりますから、をした場合にきまるわけであります。これは日本が承諾しなければ別々の軍隊になりますから、たしか朝鮮の場合においても全部がアメリカ軍の指揮のもとに入っていなかったのじゃないですか。小さなところがどっか別になっておりました。
  229. 木下源吾

    ○木下源吾君 お尋ねしなければならぬ点がまだございますが、二時半という委員長のお話もございますので、私はこの場合委員会における審議を重んじてこれで今日は打ち切っておきます。もしも重要なことでまた外務大臣からお伺いしなければならぬ場合があったときは、委員長においてしかるべくお取り計い願いたいと思います。
  230. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 木下委員、もし今お考えの点であれば御質問願いたい。外務大臣はきょうはずっと何か夜まで外交使臣との約束があって時間がないというので、実は午前中いろいろ御相談しまして、食事の時間も盛んに延ばして外務大臣に対する質疑を続けたわけです。一応外務大臣に対する質疑は終ったものとして取り扱いますから御了承願います。  一時間休憩いたします。    午後二時四十七分休憩      ―――――・―――――    午後四時八分開会
  231. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 休憩前に引き続き内閣委員会を開きます。
  232. 加瀬完

    加瀬完君 法制局長官に、先日堀委員質問に対しまして、法制局長官がお答えになりました点にさらに関連をいたしまして伺いたいのであります。それは長官の御説明によりますと、憲法第九条は交戦権はないが、自衛権を排除しているものではない、従って自衛のための戦闘行為は認められる。また戦闘行為には国際法上の交戦権を認められておらない、こう御説明を承わったわけでございますが、それでよろしうございますか。
  233. 林修三

    政府委員(林修三君) お答えいたしますが、大体私の申し上げました点と、大体はそういうことだったと存じますけれども、多少ちょっと補足して申し上げますが、交戦権というのは、まあいろいろの学者にも解釈がございますが、私どもの解釈いたしておりますところは、いわゆる一国が戦争状態になった場合において、その戦争を遂行する上において国際法上交戦国として認められておる種々の権利の集合、こういうものをここに言う交戦権と解釈すべきものだと、かように考えております。この交戦権につきましては、第九条第三項で認めないということになっておりますけれども、一方から申しますと、第九条第二項は自衛権を否定しておらないということも、これは通説だと思います。従いまして、その自衛権があります以上、その自衛権範囲内において、他国等から侵略を受けた場合に、それを排除するために必要かつ相当の限度において自衛行動をとるということは、これまた否定されないものと、これはいわゆる交戦権の否認、あるいは是認というものとは別の問題である、別の観点から考えるべきものである、かようにお答えしたわけでございます。で、その自衛のための従って行動権利については、これは自衛のために必要相当な限度であるかないかという観点からの制限はあるものと、かように考えます。
  234. 加瀬完

    加瀬完君 すると、国際法上同一の戦闘行為をして、それが他国の通常の例とは違って、日本が行なった場合は同一行動でありながら交戦権は認められない、そうするとそれは国際法上は当然戦闘行為の主目的である自衛行動をも認められておらない、こういうことにはならないでしょうか。
  235. 林修三

    政府委員(林修三君) 先ほど申し上げました通りに、いわゆる交戦権ということを戦争をする権利とは解釈しておらないわけでございまして、そういう戦闘行為に当って交戦国が持つ種々なる権利と、かようにいっておるわけであります。自衛権の発動としての自衛行動権、これはいわゆる侵略を排除するため必要な限度における行動権利であります。その範囲においてでき得ることは、いわゆる戦闘行為あるいは戦争行為もできる、かようにいっておるわけでありますから、そういう厭味における自衛権の発動としての行動、これは交戦権の否認とは関係なく私はできるものと考えております。
  236. 加瀬完

    加瀬完君 それはあなた一人か、あるいは現内閣を通じての特別な説と言いますか、議論にはなるかも知れませんけれども、国際法上の通説としては私は通じないと思う、と言いますのは、自衛権の発動であろうが何であろうが、日本が行なったところの戦闘行為、これと同じ戦闘行為を外国がやるとする、そうすると、その交戦権を認められている外国の日本自衛権の発動と同等の戦闘行為というものはあらゆる交戦権の権利というものを取得している、ところが日本の場合は全然権利を認められておらない、そうなってくると、日本の同じ戦闘行為が交戦権の権利を排除されておるということが直接自衛行動そのものをもこれは認められておらないということに国際法上は認定するのが当然であろう、この点どうですか。
  237. 林修三

    政府委員(林修三君) 憲法の規定は、御承知のようにこれは国内法の問題でございまして、国際法の問題ではございません。これは第一の問題でございますが、国内法の問題として先ほどから申し上げておるわけでございまして、自衛のための行動は否定されておらない、ただいわゆる国際法的に認められておるいわゆる観念としての交戦権、これを憲法が否認しておる、こういうことを申し上げたのであります。ただこれを国際法的に見た場合に、そういう自衛権の発動として行われておる戦闘行為について、その戦闘に参加している両方の国等の問題を国際法的にいかに否定するか、これは国際法の問題でございまして、憲法直接の問題ではございません。
  238. 加瀬完

    加瀬完君 憲法の解釈はあなたのような解釈が一応成り立つかも知れません。しかし自衛権と交戦権の関係において、国際法上その自衛権の発動という固有の活動を認められておらないとするならば、国際法上は日本自衛権の、主張は認められておらない、こう解釈するのが当然じゃないですか。
  239. 林修三

    政府委員(林修三君) 先ほど申し上げました通りに、国際法上あるいは国際条約日本の国が自衛権も持たない、あるいはさらに交戦権を持たないというようなことは、どこにもこれは国際法上は規定はございません。従いまして、日本は憲法の規定によって自衛権範囲内においてのみ行動する権限が与えられておる。そういう意味において他国から侵略を受けた場合にそれを排除する措置ができるわけでございまして、そういう行為をするに当っての国際法上の問題は憲法上の規定とは別のものでございまして、国際法上において日本自衛権を持たないということは全然出てこないと思います。
  240. 加瀬完

    加瀬完君 そうじゃないんです。国際法上、日本においては自衛権の発動という形において、当然自衛権の発動だから、こういう権利があるんだという固有の活動をいたしましても、国際法上は何らそれに対しましては交戦権としての権利を与えておらない。と全然同じ戦闘行為をしながら、他国には認められておって、日本のそういう活動には国際法上の権利を認めておらないとするならば、国際法上そういうふうな見方をする自衛権というものを日本が主張したところで、それは日本の独自の解釈にとどまって、国際法自衛権の主張というものを主張することは当を得ないということにはならないか。
  241. 林修三

    政府委員(林修三君) 先ほどから申し上げておりますように、実は国際法上の問題は憲法とは別な面からまた考えなくちゃならない問題だと思うわけでございますが、日本は、あるいは大部分の世界にある国は御承知のようにヘーグの陸戦法規条約にも参加しております。ジュネーヴ条約にも参加しております。従いまして、国際法的に見て、戦闘行為、敵対行為がありました場合に、その対敵行為に参加する国々はその国際条約によっておのずから縛られるわけでございます。そういう意味における国際条約上の問題は、日本のみならず相手の国もそれに従う義務はある。そういう点は今の憲法の交戦権の否認という問題とは別の問題だと私は思います。
  242. 加瀬完

    加瀬完君 そうじゃないんですよ、あなたは交戦権は認められておらないと言っているんでしょう、ですから自衛権の発動として行われた戦闘行為と同じ戦闘行為を他の諸国がやった場合は、これに対しては交戦権という特権を認めておる。ところが日本は同じ行為をして認められておらない。そういう国際法上の見方をされておるものの、日本の憲法で自衛権を認めろと主張する日本の憲法解釈そのものに無理があるんじゃないか。また、なぜ国際法上の通念として考えられないものを自衛権というふうな変なものを持ってきて、一体無理な、国際慣例を破ったような解釈を与えなければならないか、そういうことを私は伺っているんです。
  243. 林修三

    政府委員(林修三君) 私は決して国際慣例を破ったような解釈をいたして、自衛権の観念にいたしましても、交戦権の観念にいたしましても、法上から離れた観念で御説明しておるわけではございません。それで先ほど御議論だと思いますが、憲法第九条二項は日本の憲法としていわゆる交戦権を否認しておるわけです。従いまして、日本国といたしましては、他国から侵略を受けた場合に、あるいは他国との国際紛争等が生じた場合に行動し得る範囲は自衛のため必要相当な限度に限られる。つまり自衛権範囲を越えて他国に対して武力行動をするということは、これは憲法が否認しておるものと、かように考えるわけでございます。ただその他国が、日本の憲法が日本のそういう武力部隊、自衛隊等の行動範囲規定しておるからといって、日本の憲法の規定を国際条約として引用することはあり得ない。実際他国との間に今申しました自衛の範囲において敵対行為が起った場合に、特によその国が日本の自衛行動範囲を評価するにつきましては、これは国際条約に基いて他国もそれについての拘束を受けるわけでございます。そういう点は先ほどから申し上げておると思います。御質問のようなことは起らない、かように考えております。
  244. 加瀬完

    加瀬完君 法制局長官にもう一つ別の立場で伺いたいのは、法制局は憲法の解釈というものをそのときどきにおいて変えておる。こういう不見識なことはけしからんと思う。というのは、昭和二十六年の二月の二十一日の衆議院の外務委員会で、時の大橋法務総裁は、国際紛争を解決する手段であると、そうでないとを問わず戦力の保持は認められないという解釈をすべきであるという発表をしております。その以前になりますと、当時の吉川首相はたびたび、いかなる観点からも平和憲法の趣旨というものは擁護すべきだということを盛んに主張しておる。そのときには戦力や戦力にまがうようなものを全然考えておらない。で、法制局は当然そういうときにはそういう憲法解釈というものを支持しておる。今になると、交戦権は認められておらないが、自衛権は認められておる、国際法上認められておらなくても、これは憲法は国内法であるから国の解釈で成り立つ、こういうふうなことを、やって行くならば、先般鳩山総理に私が指摘いたしたように、まるで法律が多数決によって決定される、こういう法の混乱を当然起すことになる。この問題に対して法制局長官はどうお考えになりますか。
  245. 林修三

    政府委員(林修三君) 私どもの立場としては、もちろん憲法の規定趣旨に従って解釈いたしておるわけでございまして、先ほど来申し上げました解釈は決して間違っておらないと考えております。
  246. 加瀬完

    加瀬完君 当然法制局が意見を具申して発表されたと思われるところの昭和二十六年の二月十二日における大橋法務総裁の予算委員会における回答は、これはどうなんだ。それと今のあなたのお話しは、法制局の意見が若干食い違っておるのであります。
  247. 林修三

    政府委員(林修三君) 今おっしゃいました法務総裁の意見は実は私ここへ持っておりませんけれども、今の交戦権、あるいは自衛権範囲の問題につきましては、私どもといたしましては従来からそういうふうに考えておるところでございます。
  248. 加瀬完

    加瀬完君 いや、交戦権であるとか、自衛権とか言いますものは、これは憲法九条の解釈の内容方法として行われたところの条件にしか過ぎない。憲法九条の解釈をどうするかという問題で、全然兵力と名のつくもの、あるいはさっき申し述べました戦力と称すべきもの、こういうものはいかなる条件のうちにおいても持つこともできないと言っておったのと、現実においては自衛権という発動の範囲においては、兵力も持てるといったような総理大臣の主張、こういうものとの間にはなはだ憲法解釈の内容に食い違いがあるとはお考えにならないかということなんです。
  249. 林修三

    政府委員(林修三君) いわゆる戦力という問題の、言葉の問題になりますが、戦力という言葉を、いわゆる近代戦争遂行能力という言葉と解釈して、それに達せざるものは、いわゆる九条二里、における戦力ではないという解釈が従来行われておったわけでございます。今の鳩山総理大臣の言っておられますことは、いわゆる戦力というものを、その同じ言葉の意味に解釈して、そういう戦力も持てると言っておるわけではございません。つまり戦力という言葉を戦い得る力、戦いに役立ち得る力、そういうふうに素朴に解釈して、そういうものは憲法が一切否認しておるものとは考えられない、九条一項で自衛権を認め、あるいは十三条で国内の秩序を守ることを国の義務としてある以上、いわゆる警察力、一つの例をもってすれば警察力等もまた一種の戦い得る力である、そういうもの一切の保持を認めておらないものと解釈すべき主ない、従いまして、いわゆる自衛のため必要な限度における戦い得る力、こういうものを憲法九条二項は禁止しておらないものと、かように言っておられると思います。こういう法解釈が私は成り立つものと港えております。
  250. 加瀬完

    加瀬完君 あなたは議論を進めて行く上に前提をまるで違えてしまうから、そういう議論が成り立つ。現在鳩山さんが主上張されておるところの戦力なり、兵力なりというものは、警察隊とか、警察云々とかいったようなことを言っておるのではない。厳然たる陸軍であり、海軍であり、空軍であるも一のを指している。憲法には陸海空軍その他の戦力を保持することができないと規定されておるにもかかわらず、総理大臣が言っておるのは、陸軍であり、海軍であり、空軍であることを指しておる。そういうものが現在の憲法において持ち得ると吉田内閣の前半ときには主張しておらなかった。今の内閣になりまして法制局長官ははっきりとそういうものを認めておる。法制局当局として憲法解釈に食い違いがないかということなんです。
  251. 林修三

    政府委員(林修三君) 私はそう実は大きな食い違いはないものと考えております。従来の吉田内閣当時においてお答えした当時においても、いわゆる陸海空窮その他の戦力というふうに九条二項は読むべきものでありまして、いわゆる形を、名前を、陸軍、海軍、空軍というものは一切持てないという意味ではない。これはもっぱらその戦力というものが持てないのだという、こういう意味で解釈して申し上げておったはずでございます。従いまして、いわゆる去年の自衛隊法の場合におきましても、対外戦等で直接侵略を受けた場合において、これに対するような任務を持つという点のみを強く考えて、そういうものが軍隊であるといえば、自衛隊一つの軍隊というものと考えられる。しかしまあほかの点から考えれば、外国のように普通の軍隊と言われているものとは多少違う、そういう意味のことはお答え申し上げております。現在においても大体そういう意味でお答え申し上げておるはずでして、いわゆる持ち得る限度の兵力、実力というものに限界はあるということにつきましては、多少言葉の表現、説明方法は違いますが、大体そう大きな差はないものと、かように考えております。
  252. 加瀬完

    加瀬完君 少くとも今の法制局長官の答弁は法律の答弁じゃない。持ち得る限界によって兵力にならなかったり、兵力になったり、そんなばかなことは法律論としてはあり得ない。しかしそういう議論をしておるときじゃありませんから、別の問題に移ります。  鳩山総理は、憲法制定の当時においては、これは当然いかなる形においてもこういう防衛力というものを持つことができなかったのだけれども、現在は多数の者の憲法解釈が違ってきたので、今では現政府の考えているような軍備というものを保有することができるのだ、また憲法の解釈がそう変っていいと、こういうふうに言っている。私はそれに対して、戦力を保持したければ、戦力を保持すべく憲法の改正というものを先行されて、それから戦力保持というものは進行されなければならない、多数決によって法の解釈が左右されるということは、これは法治国にとってはあり得べからざることだ、法の混乱を招く最たるものだ、こう考えておりますが、法の解釈を多数の意見がそう解釈したからということで解釈を変えて行くということは正しいことかどうか。
  253. 林修三

    政府委員(林修三君) 内閣総理大臣の言われましたことに私が一々何とか申し上げることは差し控えますが、(加瀬完君「それはあなたの意見」と述ぶ)これはいわゆる法律の解釈というものには、いろいろのもちろん幾つかの解釈が出得る場合が幾らでもあるわけであります。そういうものにつきまして、大体の国会あるいは国民の多数の意見がそうなった場合に、そういう幾つかの解釈のうちの一つをとるということは、これはやはり個人の考えの問題だと私は思います。
  254. 加瀬完

    加瀬完君 憲法というものは国の基本法であります。しかも憲法九条の解釈というものは、鳩山さんのような解釈をすることには多数の疑義がある。こういう多数の疑義を残して、政策的な政略的な便宜のために憲法解釈を自己に有利に持って行くという方法法律解釈として一番正しい方法か。
  255. 林修三

    政府委員(林修三君) 今おっしゃいました点については、私は実はお答えを差し控えたいと思っております。しかしそれは法律解釈はいろいろ立ち得るわけでございまして、その法律解釈についてのいろいろな意見、あるいは論理の進め方、これはやはりそのときどき、あるいはいろいろな意見が出て参るわけであります。どれをとるかということは、そのときのそれをとる方の考え方によってきまるべきものであると、かように考えます。
  256. 加瀬完

    加瀬完君 考え方によってきまるということではなくして、法律論からすれば、どういう考え方をとるのがより正しいかという判断が下されなければならない。少くも法制局の判断としては……。
  257. 林修三

    政府委員(林修三君) これは法律の解釈には御承知のように、わざわざ申し上げることもないと思いますが、解釈の方法といたしましては、文理解釈の方法あり、論理解釈の方法もあり、あるいは類推解釈とか、あるいは反対解釈とか、いろいろな解釈の態度がございます。こういうものを総合いたしまして、ある法律規定を解釈するについて最も正しいと考えられる方法を発見するのが法律学なり何かの任務だと考えております。
  258. 加瀬完

    加瀬完君 それで一つ。そうしていろいろの観点から解釈を出して行くときに多数の疑義が残る場合は、疑義が残らないようにその法律内容というものを変更することの方が私はいいと思うけれども、法制局長官はどう思う。これは憲法九条に限らず、一般論だ。
  259. 林修三

    政府委員(林修三君) 一般論といたしまして、もちろん解釈上疑義のある場合には、その疑義がなるべくなくなるように立法論的に解決をするということが好ましいことであることは申すまでもございません。しかし現実にある問題が起りました場合、特にこれは裁判所等におきましても問題が起りました場合に、立法論的な解釈ができなければその問題についての解決ができないという問題ではないと思います。やはり与えられた法律と与えられた事実を元にして、いかにその事実に法を適用すべきかということの、現行法のもとにおいて解釈をすべき任務または義務が起るかと思います。ただそれを将来立法論的にどう解釈するか、これはまた別問題だと思います。
  260. 加瀬完

    加瀬完君 それであるならば、憲法九条の解釈のごとく多数の疑義があるものを、強引に一部の解釈を持って押すということは、法の混乱を招くだけではなくて、法体系というものを全然混乱さしてしまう。こういう点で、法制局長官法制局の立場において、法を守護するという立場から、憲法解釈について何か政府に建言をしたことがあるか。
  261. 林修三

    政府委員(林修三君) これは法制局の立場として、憲法問題について意見を問われればすぐに私どもの意見は内閣に対して申し上げます。
  262. 加瀬完

    加瀬完君 あなたが建言したことがあるかということを聞いている。
  263. 林修三

    政府委員(林修三君) 私は不肖ながら閣議にも列しておりますし、法律問題が起るたびに常に私の方からも積極的に申し上げ、また諮問があればお答えをいたしております。
  264. 植竹春彦

    ○植竹春彦君 ただいま法制長官から文理解釈あるいは論理解釈の問題が出ましたので、関連質問をいたすのでありますが、憲法第九条の第二項に、「前項の目的に達するため」、その次に句読点がありますが、そうして陸海空軍その他の戦力は持たないというふうに規定されておりますが、その場合、文理解釈並びに論理解釈といたしまして、「前項の目的に達するため」とあって、その次に区切り点がある現行法の場合と、前項の目的に達するための陸海空軍その他の戦力を置かないという場合とに区別をおいて解釈すべきでありますか、あるいは同じ意味に解釈すべきでありますか、長官御自身のお考えを承わりたいと思います。
  265. 林修三

    政府委員(林修三君) 現行の「前項の目的を達するため、」と、区切りを打った場合と、今おっしゃいました別項のためのと、完全に形容詞とした場合は、やはり多少意義が違ってくると考えられるのじゃないかと思います。普通の場合……。
  266. 植竹春彦

    ○植竹春彦君 そういたしますと、そのための陸海空軍というように、ポゼシブ・ケースの場合には、前項の侵略目的を達するような軍隊は置いてはいけないということになりますので、ポゼシブ・ケースということではなくて、副詞句に使いまして、「前項の目的を達するため、」と、句読点がありますね。前里の目的を達するためには、いっそのこと陸海空軍その他の戦力は一切置かないという解釈と、文理解釈、論理解釈、両方から申しまして、そういうふうに分れるのじゃなかろうか。もし果してしかりとすれば、ために置かないということになりますと、戦力と名のつくものは自衛であっても何でも、もしも自衛のために置いても、それが自衛以外の目的に使用されるのをおそれて、それを防ぐためにいっそのこと陸海空軍その他の戦力を置かない、かように文理解釈が行われるものであろうかどうか、その点について林長官としての御解釈を承わりたい。
  267. 林修三

    政府委員(林修三君) 二項は「前項の目的を満するため、」と、「ため、」で切ってございますが、そこで結局これが何を受けるかということについてはいろいろ議論があるわけであります。一項の中のある字句を受けるのか、あるいはどこを受けるのか、あるいは全体を受けるのかということになるわけであろうと思います。私どもの考えとしましては、一項全体の趣旨を受けて、九条一項が国際紛争を解決する手段としての戦力を放棄する、一方においてこれは裏の言葉として、自衛権は放棄してないという説もわれわれは認めておるわけであります。そういう点から考えれば、今申しました「達するため、」ということでありましても、これが一切の陸海空軍その他というものを保持しないということではなくて、やはりこれも結局「戦力」という言葉がもちろん問題であろうと思いますが、「戦力」という言葉を二項と関連して非常に高い程度に考えれば、いわゆる戦力は保持しないということになります。「戦力」という言葉を非常に低く考えて、いわゆる戦い得る力、警察隊等を含めた、あるいは今の自衛隊等を含めた一切の戦い得る力を讃えれば、それを一切いけないという趣旨はこれは出てこない。従ってある基準を置いたその下のものはよろしいと、こういうことになってくると思います。それに対してはやはり一項の規定を受けて、自衛のために必要な相当の限度、自衛のための目的じゃなくて、限度という意味において条件がある、こういうような解釈はなし得ると、かように考えます。
  268. 植竹春彦

    ○植竹春彦君 私の発言はいわゆる戦力論争じゃなくて、文理解釈、論理解釈というお言葉がありましたので、その文理解釈からすれば置けないことになるのじゃないか。私の解釈では自衛権を否定していない。それはただいまの民主党と同じように解釈しております。自衛権は否定していない、第一項において……。しかしこの第二項において、自衛権は否定してないけれども、もし陸海空その他の戦力を置くときには、この第二損で禁止してある。侵略目的のためにまでも、かりに使用されることをおそれて、武力の行使等をおそれて、いっそのこと陸海空その他の戦力は置かない、こういうふうに解釈していらっしゃるか、いらっしゃってないか、あなたの論理解釈、文理解釈を伺っているわけであります。もう一度お答え願います。
  269. 林修三

    政府委員(林修三君) 結局その二項の文理解釈から申しましても、今お説のことでございますが、結局この二項の「戦力」という言葉をいかに解釈するかについて、今の自衛のための必要相当な限度の戦力という言葉に相関連してくることだろうと思うのであります。私が先ほど申し上げましたことも、結局二項は第一項を受けてその保障として考えられるかと思いますが、結局その考え方としては自衛のため必要限度の戦力はここで禁止している戦力にならない、こう解釈をしているわけであります。いわゆる近代戦争遂行能力以下の戦力という言葉にも、多少説明の仕方は違いますけれども、結局同じような論理、推理の過程で説明して行くと、かように考えられるのであります。
  270. 植竹春彦

    ○植竹春彦君 そういうふうに自衛のために戦力を置く、こういう解釈は今のつまり「ため、」と「ため」の戦力というのと違うということは御承認になったわけ、ですが、「ため」の戦力ということならば置くかもしれませんが、「ため」と青って句読点がはっきりあります場合には、戦力が置けないといったような解釈がいわゆる通説になっているようでございますが、それに対する御解釈は……。
  271. 林修三

    政府委員(林修三君) これは私の私見になるかもわかりませんが、「ための」と書いた場合には、いわゆる自衛のためならどんなものでも置けるというような解釈が出てくるかと思います。また私から先ほど申し上げましたように「ため」というところで区切ってあるような関係から、やはり二項と二項と関連して、自衛のためどんなものでも置けるのじゃない、やはり自衛のため将来必要相当な限度に限られると、こういうものは戦力として置けないのだというふうな解釈も出てくると思います。かように考えております。
  272. 植竹春彦

    ○植竹春彦君 「ため」に置けないと書いてあるのですね。「ため」の軍隊は、「前里の目的を達するため、」の戦力は置けない、こう書いてあるのじゃなくて、「前項の目的を達するため、」には戦力が置けない、こう書いてありますね。
  273. 林修三

    政府委員(林修三君) 「ため」にはとはございません、「ため」でございます。
  274. 植竹春彦

    ○植竹春彦君 「ため」ですね。しかしその「ため」の次に「の」の字もなければ逆に「の」の字のかわりに句読点がありますね。ために置けないというのと、ための戦力を置けないということは違うのじゃないのですか、先ほど違うことを御承認になったのです。
  275. 林修三

    政府委員(林修三君) 先ほど申し上げました通りに、これが「ための」として完全に形容詞になっている場合には、いわゆる自衛のための陸海空軍その他の戦力、ここで言わない自衛のための陸海空軍、戦力ということが自衛の目的であれば、どの範囲にも持てるという解釈が出てくる余地があり縛るであろうと思いますが、「だめ」というような言葉で切ってあるところから考えれば、そこまでの解釈は出てこないのじゃないかと思います。
  276. 植竹春彦

    ○植竹春彦君 わかりました。ただいまのことはわかりましたが、結局そうすると、法制局あるいは政府の側の御解釈は、戦力は、もし憲法九条に反しないで戦力が置けるものならば戦力は置いていいという御解釈と、こう承知していいのですね。
  277. 林修三

    政府委員(林修三君) 戦力という言葉の意味になりますというと、従来吉田内閣当時に説いておりました戦力という言葉とは、戦力という言葉を別な意味で言っておりますから、多少そこは混乱するわけでございますが、いわゆる戦力という言葉を素朴に戦いに役立つ力、戦う力と言えば非常に低い限度のものまで入る、そういうものを一切入れないという趣旨がこの第九条一項の趣旨から出てくるわけではないであろう、「前項の目的を達するため、」ということをつけている以上はやはり自衛のために必要相当とされる限度、必要最低限度というものはここで言う戦力には入らないと考えます。つまり従来の近代戦争遂行能力以外のものは戦力に入らないというのと多少説明の仕方は違うと思いますが、説明方法と申しますか、やり方は同様であると言えるだろうと考えております。
  278. 植竹春彦

    ○植竹春彦君 ただいまのお言葉で吉田内閣の戦力と鳩山内閣の戦力と、戦力の解釈に相違があると承わりましたので、吉田内閣のときの戦力と、鳩山内閣のときの戦力の意味との開き、どういう点が違うと法制局のお立場でお考えになりますか、御説明願います。
  279. 林修三

    政府委員(林修三君) 先ほどから御説明申し上げました通りでございまして、実際の具体的なものに当ってみれば、実は同じようなものになると思いますが、いわゆる近代戦争遂行能力に達するものが戦力であり、それ以外のものは戦力でない、こういうのが従来の説明の仕方であったと思います。近代戦争遂行能力というのは、相当近代的な装備を備えた相手に対して、それをとことんまでまかす力はないけれども、とにかくある程度自衛を全うするくらいのものはやはり近代戦争遂行能力に入らないというお考えであったと思います。今の自衛のために必要な最低限度の戦力は持てるという意味は、結局それを別の言葉で言い現わしたような格好になるのじゃないか、つまり戦力という言葉はいろいろの段階を設けて、いわゆる近代戦争遂行能力にあらざるものは戦力でないとは言わずに、それも言葉を素朴に言えば戦いに役立つ力であるけれども、自衛のために必要最低限度のいわゆる戦い得る力はここで禁止されている戦力ではない、こういうふうに御説明しているわけで、それは大体説明の仕方が違いますが、限度から考えれば相似たものである、かように考えるわけであります。
  280. 植竹春彦

    ○植竹春彦君 吉田内閣における戦力の言葉の解釈については、私もただいまの林長官のお答えになったと同様に解釈いたしておりますが、鳩山内閣のとぎにおける戦力の解釈につきましては、自衛のためなら戦力を置けるというのでありますから、もし直接侵略が、大きな侵略のある場合もありましょうし、小さな侵略が行われる場合もあるでありましょう。大きな近代戦の能力を欠いても、自衛できる程度の侵略が行われたときには、それはいいんですが、もし近代戦の戦力でなければ一時的の防御といえどもできないような大きな侵略が行われましたときには、この自衛のために常平生から大きな戦力を用意しておかなければならない。しかるに自衛のためになる戦力を置くことができるとなると、近代戦を遂行する能力も出てくる、こういう解釈に鳩山内閣の場合にはなろうかと思いますので、いま一応長官の御解釈を承わりたい。
  281. 林修三

    政府委員(林修三君) 自衛のために必要最低限度の戦力という言葉は、今日は客観的な基準でございまして主観的なものではございません。やはり客観的な国際情勢、あるいはその付近の国々における国力の問題とも関連することだと思います。それから近代戦争遂行能力という言葉も、もちろんそういう意味だと私たちは理解しておったのでありまして、やはり日本をめぐる国際情勢あるいは国々の装備、そういうものを考えていわゆる近代戦争遂行能力をこえるようなものはいけないということでございまして、つまり客観的な基準によってきめられるという点は、そう私は違いがない、かような考え方でございます。
  282. 植竹春彦

    ○植竹春彦君 林長官の御解釈につきましては、私としてまだただしたい点がございますが、本日の防衛三法案についての質疑といたしましては、一応この程度で終えまして、国防会議の際に、あとに譲りたいと思います。
  283. 木下源吾

    ○木下源吾君 引き続き今度は防衛庁側に一つお伺いしますが、まあこの国土防衛といって一口に言ってしまっているのですが、具体的にはどういうことです。
  284. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) 今まで政府側での説明の中でも、いわゆる国土の防衛という言葉をたびたび使ったかと思います。私自身正確にこの言葉だけ使ったかどうかはっきりいたしませんが、考え方というものの実体はやはりそういうふうなことであります。これはつまりわが国の自衛ということは外に出かけて行くというものじゃない、全くわが国土に侵略を受けた場合にそれは限る、その場合の防衛というものを考えてそういうことが中心的な観念になっている、そういう意味でございますから……。
  285. 木下源吾

    ○木下源吾君 あなたも国土防衛という言葉を衆議院で言っているのです。そこでそのお尋ねをしているのですが、日本の国内だけの領域で戦争する、そういうことを意味しているのですか。
  286. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) これは少し反対の方と比較して言った方が割に観念がはっきりすると思いますが、戦前と言いますか、以前の日本防衛考え方というものはどちらかというと、ことに日清戦争後などの時代においては、日本を守るのにむしろ外での、外国における一つの国防戦というようなものを考えて、そこで防ぐというような、いわゆる外征軍というようなことが非常に一つの大きな中心的な考えになっておったのではないかと考えますが、現在私が考えておりますのは、そういうのと非常に違う。外に出て行って守る、そういうのじゃない。つまり外部から日本に侵略して来た場合に日本で守るという意味の、こういう考え方であります。
  287. 木下源吾

    ○木下源吾君 どうもわかりにくいね。もう少しわかりやすくはっきりと言うてもらいたいと思うな、国土防衛とはこの前の大戦のときに竹槍で海岸であの何を防ぐ、こういうふうな戦いである。また飛行機でも国内だけで戦うのだが、国外には出て行かない、その国土等は国民をも含めて国土というのか、国を守るというのと国土を守るというのとはどういうことか、物だとか、そういう文化施設、そういうものを守るという意味なのかどうか、あるいは資本家を守る、こういう意味なのか、こういうことを明確に言っていただければいいわけです。
  288. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) その点は要するにわが国のこの自衛隊法について言いますと、わが国の独立、平和を守り、国の安全を保つということであると言ってあるわけでございますが、この際わが国と申しますのは、国の構成要素をなす国土、国民、それから国としての基、本的な政治組織、そういうことが中心になるものと思います。
  289. 木下源吾

    ○木下源吾君 どうも不明確、そこでそれならば別にお尋ねしますが、近代戦争が起きた場合に自衛の戦争だとまあこちらは考えておる、しかしながら、原水爆の戦いは自衛戦争だなんと言っておるけれども、国土も何もめちゃくちゃになることが確実です。そうすると、原水爆もやはりこちらへ持っても駄目だ、いわゆるあなたのおっしゃる国土防衛ということは、これはとうてい実行できまい、こういう点についてはどうお考えになりますか。
  290. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) たしかにこの原水爆というようなものは大規模に使われるようになりますと、これは日本に限らず、おそらくどこの国でもほとんどもう全面的な、破滅的なことになるだろうと思います。日本といたしましても特に今そういう点が深刻であろうと思います。
  291. 木下源吾

    ○木下源吾君 そこでよくアメリカのアジアにおける防衛線はいわゆる反共防衛線と言われていたものが、アリューシャンから日本列島、沖繩から台湾、フィリピンの線、こういうようなことが言われておりますが、これは戦争が起きれば第一番に日本がその戦争の戦場になるということは考えられますが、それについてはどういうふうにお考えになりますか。
  292. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) これはその戦争の態様でございますが、もし世界的の米ソの間の武力的の衝突、全面的の武力衝突というような場合にはその危険は多分にあるだろうと思います。ただしその場合といえども、それじゃどういうふうな態様の戦闘になるかということは一がいに言えないことだろうと思います。
  293. 木下源吾

    ○木下源吾君 いまちょっと明瞭を欠いていますが……。
  294. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) たとえば米ソの全面的な武力衝突になって、そうすると、自動的に日本がすぐその戦争に挫き込まれるかどうか、これは両方のいろいろ戦争政略もありましょう。それからまたかりに巻き込まれたという場合でも、直ちにそれじゃ日本に対して原爆が使用されるかどうかというような点は、一がいにあらかじめ予断はできないであろうと思うのであります。
  295. 木下源吾

    ○木下源吾君 あらかじめ予断はできないと言うよりも、こういう場合において日本アメリカ基地に、そういうふうになっておる、この基地は自衛の……、日本で考えておれば自衛かもしれませんが、もうすでにジェット機を飛ばす、また飛行場を拡張しておるということは、この偵察とか、あるいは戦闘圏内というものが非常にはっきりしておるのです。こういうような状態にあったらば、私はいざ戦争ということになったら一番先に日本が目標になるのじゃないか、こういうことを今までの戦争の結果から考えられるわけです。従って国土防衛のために云々ということが、こういう日本の状態であったならば、かえって国土を、だまっておればわからないのが、こういうようにしておけばかえって危険性が多いのではないか、こういうことを聞いているのです。
  296. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) そこのところは非常に判断がむずかしいところだと思いますが、逆にそれでは日本にそういう防衛するような施設、力というようなものが全然ない場合には、それでは全然安全か、そういう保障もなかなかないだろうと私は思います。その辺のところはなかなかにわかにどちらがどうという論定、断定はむずかしいと思いますが、むしろある程度の防衛の備えをするということは、そういう戦争状態ということをむしろ未然に防止すると、そこに主眼点があるものだと思います。
  297. 木下源吾

    ○木下源吾君 それで先ほどあの話を聞いておりましたが、いわゆる自衛のための戦力かということになって、日本の場合、このようなやっているような、戦力は自衛のためにもならない、世界の規模から言えば……、そこでアメリカと地域集団安全保障ということがまあ考えられるのだろうと思いますが、そこでアメリカにくっついておれば危険性が、国土が守られると、こう考えておいでになりますか。
  298. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) これはその方が国土の安全はより守れると、こういうふうな考えのもとであります。いわゆる集団安全保障ということでございます。
  299. 木下源吾

    ○木下源吾君 それはあなたは朝鮮の戦争を御承知でございますか。それは守られたか、守られなかったか、どうかは知らぬけれども、残っているものは南北朝鮮のあの荒廃した事情は御存じになっていると思う。アメリカについておれば守れるか、守れないかの、その議論は、それは議論だからいいです。南北朝鮮の実情がこれを雄弁に物語っている、荒廃してあの状態になっている、こういうことです。しかしそれは私はよろしい。そこであなたの部下の兵隊さんたちは防衛の戦争をやるのか、侵略の戦争をやるのか、雇い戦争、傭兵戦争に参加するのか、そういうようなことはおわかりになっているか、それに対してはどういう教育をしておられますか。
  300. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) この点ははっきりいたしておりまして、わが国の自衛隊の使命、任務というものはあくまでもわが国の独立と平和を守り、国の安全を保つ、それがために直接侵略及び間接侵略に対してわが国を守ると、これが主たる任務であり使命である、これははっきりしているわけでございまして、侵略のためでもなく、またいわゆる他国のためにただ雇い入れるべきとか、そういうことは絶対にないということはこれは明瞭でございます。
  301. 木下源吾

    ○木下源吾君 今のお答えは非常に抽象的でありますが、いざ戦争のときに、この戦争は侵略戦争であるか、自衛の戦争であるかということを区別する、みずからわかることの教育をしておりますか。
  302. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) この辺のところは特に大事な点でございますからして、そうしてまた日本は若い経験もございまするし、その点十分徹底するように教育、訓練の過程において努めております。
  303. 木下源吾

    ○木下源吾君 これは実際の幕僚諸君に聞きます。どういう実際の教育をしておりますか。
  304. 増原恵吉

    政府委員(増原恵吉君) この法律にありますので、これは御承知のように、自衛隊が出動いたしまする際は総理大臣が、もとよりいろいろな方面の意見を聞かれることと思いますが、認定をして、いわゆる防衛出動をやるべきものと考えまするならば、国防会議が設置をされるならばこれに諮り、いわゆる自衛のための行動であるかどうかを認定をされ、これを余裕がある場合には国会に事前に諮って、そうして命令を下される、この命令に基いて隊員も行動をする、これが自衛のための行動であるということになるわけでございます。そういうふうに行動をするということを教育しておるわけであります。
  305. 木下源吾

    ○木下源吾君 かつて戦争をやりまして、非常な中国あたりに損害をかけた、しかし損害を受けた中国で終戦後どういうことを言っておるか。われわれは日本の人民に対しては友情を持っておるし、ただわれわれが反対し憎むべきは日本の軍閥である、軍の指導者である、これはひとり中国ばかりではありません。敗戦の結果これらの人々、これらは実際において軍の指導者、あるいは政治の指導部、そういうものを厳罰に処したわけであります。しかるに、しかく軍隊というものは指導者の意思によって非常に左右せられるものである。そこで今お尋ねしたのは、お答えは指導者がきめて命令をしてやるのだ、一口に言えばそういうことになりますが、私はそれだけではこれは兵隊たちは侵略戦争であるか、自衛の戦争であるかということをみずから正確に判断する基礎にはならぬと、かように考えます。そういう危険を考えておりますために、日常教育の上においてどういう決定をされても、兵隊自身においてこの戦争はやるべき戦争であるか、やるべからざる戦争であるかということを判断する能力を与えておかなければならない、かように考えておる。そういう点をやっておるかどうかということをお聞きしたい。なぜなれば、みずからそういう確信に燃えての戦いでなければ、よし平和軍隊であっても、自衛隊であろうが何であろうが効果が挙らない。日常そういうことに対しての教育の実情を一つお話しを願いたい、こういうことなんです。
  306. 増原恵吉

    政府委員(増原恵吉君) 自衛隊の任務が国の独立と平和、安全を守るということは御承知通りであります。このことを平素よく教えてあるわけであります。一面から言いまするならば、これはいわゆる国土を防衛するという言葉でありまするが、外へ出て行って、いわゆる外に出て国を守るというふうなやり方は、今後の自衛隊においては、国の方針としてもそういうことはないのであります。でありまするから、外に出るというような命令が出る場合には、これは自衛のためのものであるかどうかを判断するという能力を持っておるわけであります。しかし国内において外から侵略をしてくる、武力攻撃を加えてきたものがある場合に、これに対しては適法な手続きによって総理大臣から命令が出た場合に、そうしてこれが防衛庁長官の命令となり、各階級を通じてのいわゆる上官の命令として伝わってきた場合には、これに服従するということが教えてあるわけであります。そういう場合に一々これを批判するという教育はいたしておりません。
  307. 木下源吾

    ○木下源吾君 私は批判する能力をやはり養わねばならぬと、こう思っております。そこでそういうことはただ上からの命令だけによって動くのだということだけをやっておる、これは私は非常に危険だと思うのですが、それはそれでまあよろしい。過去における日本軍隊は、日本の帝国主義戦争遂行のために、日本のですね、これは独占資本と軍閥の犠牲になった。こういうことは明らかに日本帝国主義が滅亡する瞬間において明らかになった。そこで今の場合、民主主義下におけるあなた方は軍隊を作ろうとしておられるのだから、この経験にかんがみて、従来と同じような上からの命令で、上からの指導者たちの決定によって動かすというだけでは、これは民主主義を守る軍隊にはならぬのではないか、こういうふうに考えておるわけであります。その点に対して、何か特段の注意を払って兵の教育をやっておるということはないのですか。
  308. 増原恵吉

    政府委員(増原恵吉君) 自衛隊員としての教育は自衛隊の使命、今まで申し上げた自衛隊の使命に徹するということを中心としまして、服務の本旨というところに掲げておりますような条項を遵守しますことを平素教育をいたしておるわけでございます。念のために読んでみますると、隊員というものは国の平和と独立を守る自衛隊の使命を自覚するというこが根本であります。そうして任務は直接の侵略の場合、いわゆる外部からの武力攻撃に対処するということでありますので、一致団結をするということ、厳正な規律を保持するということがきわめて大切であり、ます。いわゆる指揮統率の関係が確立するということ、そういうふうに心がけ、さらに徳操を養うということを強調をいたしております。これは一般の社会人としてもりっぱな教養、徳操を持つという、これはまあ従来の部隊においては特に強調をしておられた条項ではないように思いまするが、そういうところを強調をし、人格を尊重する。これは民主主義の基本である人格をお互いに尊重をするという心がまえ、そうして心身を鍛え技能を磨く、これは部隊員としての行動、強健な心身及び科学技術をよく身につけて、進んだ武器、兵器等をりっぱに使用することができるということを考え、強い責任感をもって専心その職務に当るというふうなことを服務の本旨として、こういうことで教育をいたしておるのでありまするが、もちろん全体として憲法、法律に従って行くという条項があるわけであります。民主主義日本というものを守るという心がまえを常に持たせて行くということでやっているわけでございます。
  309. 木下源吾

    ○木下源吾君 まあ平和と独立を守る。この点についてこの間平和を守る日本に母親大会というような、戦争で子供を失ったり、原子爆弾で子供を失ったりした母親が集まって母親大会を開いて、その後今世界大会で、私は世界大会へ行ってその人たちのしゃべったことの一節々々を今思い出します。われわれは戦争のために子供を失って、また残った子供は食えないために自衛に入っておるというような、そういう悲しい状態にある。こう言っておる。世界大会へ行って古っておる。私は平和を守るならば。この育葉を玩味して、自衛隊というものはよほど考えなければいかぬのじゃないか、かように考えるのです。まあ一つの例でありますが……。また独立の場合です。ただ独立と言いますけれども、この間総理大臣にも私は言うたように、他人の台所にきて、隣の主人公にかれこれ言われるような国は独立でないでしょう。他人のうちへきて他人の領土を、そこのところの主権まで侵す、主権が及ばないような基地を時っておる国は、それは独立ではないと思います。自分の意思によってですね、各国と自由な貿易のできない、そういう立場に置かれておるのはこれは独立ではない。この条件だけでも今見まして、現在あるような基地に対して、しかもその基地を借りて演習しておるというに至っては、私は独立のためにという軍隊の、その実態を一つ考えてもらわなければいかぬと思う。おっしゃっておることとやっておることとは、かくのごとく矛盾があるのではないですか。それだから私は実際においてどういう教育をしておられるかということをお尋ねしておるのであります。でありますから、共が兵として、あなた方が、みんながおっしゃるように、この国を守らなければならない。みずからの責任において自分が守らなければならぬという、そういう信念から出た確信が、自分の行動に移るような教育を何かなさっておるか、具体的にそれをお尋ねしておるのであります。ばく然とした平和だ、独立だということをお聞きしておるのであれば、私はただいま申し上げたようなことを言わなければならない。そこでお尋ねしますが、この自衛隊は何といっても軍隊であることは間違いございません。小さかろうが、大きかろうが……。そうして使命はあなた方のおっしゃる通り、民主主義を守り、平和と独立を守るのでありましょう。しかしながら、かつての軍隊は、私たちは五銭三厘のときから兵隊に入った。明治四十四年兵だ。今の軍隊の兵隊は、給料をほかの公務員よりもよけいの給料をまあ出しておるわけであります。こういう現実の相違が何のために起きておるのであるか、こういう点について一つお尋ねして御意見を伺いたい。昔の軍隊とはそういうように違っておるのだが、それでいわゆる防衛であろうと侵略であろうと、いざというときに戦争をするという、そういう条件にこれはなるのかどうか、これをお伺いしたい。
  310. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) いろいろ自衛隊の士気その他等についての批評というようなことをときどき聞くのでありますけれども、私はいろいろ例外的のことはございましょうが、だいぶ私はこの自分の国を守る使命というものを非常に自覚して、そうしてやってきておる。そうしてこれまでもずっと経過的に見ましても、だんだんその気風というものも自衛隊内の士気というものも確かに上ってきておる。そして私は事実そうだと思っております。中にとかくの風評が立てられるようなのがあって、それはそういう例があって、私どもまことに相済まぬことだと感じておりますが、それをもって全般を推すというのは、少し合わないのであって、全体の士気というものは非常によくなっている。またよくしなければいかぬことと思っております。
  311. 木下源吾

    ○木下源吾君 日本の国土を守ると、こうおっしゃる。日本の国土を守る。この国土を守るために、これだけのつまりまあ給料を払って兵隊を養っておく。いいですか、日本の国土を守るために、それではあなた方は日本の財政が非常に膨脹してですよ、軍備が膨脹して将来困ると、こういうお考えにはなりませんか。
  312. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) この防衛力のいわゆる漸増という場合、防衛力整備という場合に、それがその結果財政等に非常な過度の負担を生じ、そうして国民生活を圧迫するというようなことになる結果になっていかぬことは当然でございまして、その辺のところは特に実は私らも防衛力の漸増ということを考えます場合にも、最も意を用いておるところであり、また今後もそういう点を特に深く考えてやって行きたいと思っております。
  313. 木下源吾

    ○木下源吾君 ただいまの御答弁のその点を深く考えて行くと、そういうことはこういうことじゃないですか。憲法を改正して給料の要らない、そういう、元のような軍隊を作った方がいいと考えておるんじゃありませんか。
  314. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) そういうことは全然ございません。今私は徴兵制ということは考えておりません。
  315. 木下源吾

    ○木下源吾君 あなたはすぐる今月の初旬の衆議院内閣委員会で、いわゆる民兵制度ということについて考えておる。こういうことをおっしゃっておりましたが、この民兵制度というのはどういう意味ですか。すなわち今のような公務員、そういう給与を払わないでもっと安い兵隊を作ろうと、こういう意味じゃないですか。
  316. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) この衆議院内閣委員会において民兵制ということが論ぜられたのでありますが、それはこういう次第でございます。改進党時代において研究しておられたものの中に、一種の民兵的な制度というようなことが研究された。それは改進党の案によりますと、青年をきわめて短期間訓練をしておく、たとえば年に一、二ヵ月そういう訓練をするというようなことが考えられておるわけでございます。そこでそういう意見は、現在でも民主党内にもそういう意見の方がございまして、これは必ずしも民主党全体の意見というわけではございませんが、民主党内にもそういった意見もございまするので、そういう点も一応研究はしてみなくちゃならぬ、そういう意味で、実はこの民兵制ということに言及したことがございました。しかしこれもずっと具体的に考えてみまするというと、実行という点から見まして、なかなかそう簡単なものではない。ことに義務制というようなものを前提にしないでは、なかなか実行ということの点で、今のまた日本の社会情勢からいたしましても、言うべくしてなかなか実行はむずかしいのじゃなかろうか、そうして今また直ちに義務制というようなことは、私は眠りえておるわけじゃございませんで、実行問題としてはなかなか今の日本の社会状態等からいたしまして困難じゃなかろうかというふうに考えております。
  317. 木下源吾

    ○木下源吾君 私はいろいろまあ金のかからない軍隊のために御苦心をしておるということは察しますが、今のような自衛隊、一生懸命おやりになっておるであろうけれども、ほんとうにこれは金をかけるだけにふさわしい効果が上るかどうか、こういうこと。そうしてもう一つは、次長が言われたが、やはり私は自衛隊員ですね、この人たちの中からいざ戦争というときに出動するかしないか、そういう意思がもとなら参謀本部か、あるいは今なら国会、あるいは総理大臣の権限のあるそういうところに反映する機関を作ったらどうか、そこで初めて第一にまあ民兵……、戦争に対してのいざのときに防衛戦であるか、侵略戦であるかは別として、その戦争に対する責任を持つ、かように考えるのですが、そういうような制度というか、機構というか、そういうものを作るという考えはないのかどうか。これは一面から言えば、非常にそういうことをやると危険というように考えるかもしらぬ、従来の考え方から言えば……。しかしそれは私は従来の軍隊とは違うのだ、侵略もしない、よそへも行かぬ、うちでだけやるのだ、口でそう言いましても、侵略を受ける軍隊、防衛の軍隊、内容も質もどこも変っていない。何ぼ論争したところがそれは軍隊であるに違いない。指揮者の意図によって、侵略するときは指揮者の名によって侵略に進んで行くのだ、そうして自由に動かし得るという、そういう機構にこしらえておったのでは幾らここで論争しても私はこれは無駄だ、かように考える。であるから、ほんとうに戦争して犠牲になる、ほんとうに戦争の犠牲になる人々の中で、この戦争は何であるかということを判断し、そうして命令をする、そういう者にその意思が反映するような機関を設けたらどうか、組織の中に……、こういうふうに考えますが、こういう点についてお考えになったことがあるかどうか。
  318. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) これは自衛隊員の各個が自分のほんとうの自覚においてあくまでもわが国を守る、侵略ということではなく。しかしわが国を侵略してくるものに対しては、あくまでこれを守るということの一人々々の自覚というものがやはり根本であると思います。そうしてその点について、今、木下委員のおっしゃいますことは何かそういう、 はっきり理解しにくかったのですが、何かこの各隊員の意思が反映するような一つの機構を考えたらどうかというような御意見でございましたでしょうか。
  319. 木下源吾

    ○木下源吾君 そうです。そういうことです。
  320. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) これは和むしろそういうことは、部隊の内部においての実際の隊員の指導の中核をなす中隊長あたりが、一つのほんとうの中心をなして部下を掌握して将官一体になってやっていく、その辺のところをしっかりやることが大事だろうと思います。
  321. 木下源吾

    ○木下源吾君 いろいろそういうことをやると懸念せられておるかもしれぬ、幹部諸君は……。ところが国会においてこういうことを論議することが現実に行われておる。日本状況がこういう状況である。軍隊はかつての軍隊とは違う、だからなるほど行動に対しては統一、団結、一心にならない。それはそうであろう、けれども何よりも大切なのは精神である。その点に対してただ特にどうこう言うたって、それは私はあまり効果はないと、こう考える。まあそういう点について、しかしながら、私の今申し上げたことを別に考えておられぬとするならば、それはそれでまあよろしい、時間がもうありませんから……。特にこの機会にお伺いしたいことは、今度のジェットの基地ですが、五つの基地、来年また一つふやすというこの基地は、これは変更するわけにはいかぬのですか。
  322. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) これにつきましては、従来もう長い間にわたってアメリカとの話し合いの結果でございまして、日本政府としても、またこの基地の拡張ということは原則的に認めているところでございまするからして、これを変更する意思はございません。ただその実施のやり方響については、まだ今後研究すべき点が残っておると思います。
  323. 木下源吾

    ○木下源吾君 日米合同委員会ですね、これで民間のものを収用したり、使う場合には、これは所有者の承認があくまでも要る、このようなことが原則だろうと忍べのです。何ぼ日米合同委員会であろうとも……。ところが今度の場合は自分の方できめて来て、所有者との間においてあらかじめ何らの話し合いもしないで合同委員会できめて来て、そうしてこいつを提供しろ、こういうところに非常な無理があるのではないですか。この点についてはどうお考えになっておりますか。
  324. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) これは具体的にこの基地の拡張等になりまして、そしてその計画ができて、そしてそれを実施に移そうという前には、拡張に要する土地が、私有の場合にはもちろんその方々との間の話し合いということが当然に必要なわけでございますから、そこで十分御理解いただくように、極力政府としては話し合いを円満に進めるということを基本的の方針として君えている次第でございます。
  325. 木下源吾

    ○木下源吾君 今お話のように、長い間そのことについてお考えになり、折衝して両方でやったというのだから、長い間になぜ拡張しようと思うそこのところを最初に話し合いをしないのかと、こういうのです。自分たちで勝手にきめてしまって……。それはやりいいでしょう。やりいいだろうけれども、そうしておいて、それをよこせと言うたところが、なかなか話はうまくいかないだろう、こういうことを私はお尋ねしておるので、そういうところに何か欠階があるのではありませんか。
  326. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) 今小牧については調査が大体済んでおるようでありますが、具体的の今後の拡張の実施計画について今検討しておる状態で、そのほかのところはまだ立ち入り調査も済んでいないというような状態でございます。その後どういうふうに具体的に計画を立て、それに伴って直接利害関係者と話し合っておるかわかりません。
  327. 木下源吾

    ○木下源吾君 私のお伺いしているのはそういう意味ではない。あくまでも話し合いで解決するという御趣旨で行かれないのかと、こういうことを一口に言えば言っておるのです。
  328. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) それはもう極力ほんとうの話し合いという話し合いで進むことを基本的の方針として行くつもりでございます。
  329. 木下源吾

    ○木下源吾君 どうしても、どこから見てもこれは無理だと、こういうことになった場合には、場所を変更することができますか。
  330. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) それは極力利害関係者のすべての方々と御相談して、なるべく全部の御了解を縛るよう最善の努力をいたすつもりでございます。その中でたとえば一部同意し得ないというような方々がある場合には、これはやむを得ないことだと思います。
  331. 木下源吾

    ○木下源吾君 実は直接やっておるのは調達庁長官がやっておる。最近調達庁長官は、あれは日本の調達庁長官ではない、アメリカの調達庁長官だと、(笑声)こういう声が非常に日本人に強くなりました。それほどこの基地に対しては、日本人に対して強圧的態度に出ておるのです。そういう空気は決してこのことを実行する上に役に立たない、何にもならぬ、かえって妨害になる、住民全部が反対している基地が何の役に立ちますか。こういう点を考慮せられたならば、初めのうちに……、五十数億も金をかけてやるでしょう。この基地飛行場の拡張は、これくらいの金をかけてやるのですから、やる前にいろいろ折衝をしておやりになったらいいのじゃないか、しかしそういうことをしないで、合同委員会とか、何とかできめたからと言って、特にそれで今各地に紛争が起きておる。今あなたは小牧と言いますが、小牧は正式には何にもやっておらぬ。承諾しておらぬ。そういうようなことですから、私はここに長官に実情を申し上げて、このような空気の中にも手を尽して防衛をしようとするが、どこを見てもこれは不合理だと見る場合には、変更することをアメリカ側に努力する、こういうことをお開きしたいのです。アメリカできめたことは、これは命令なりというような、そういう印象を国民に与えないために、どうですか、そういう何をおとりになるお考えはありませんか。
  332. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) この場所そのものの選定につきましては、これを変更するということは私は困難だと思いますが、ただその拡張が、どういうように拡張するか、これはその仕方によってずいぶん利害関係者への影響というものは違うと思う。そういう点についてはなお十分考慮の余地があるものと存じます。
  333. 木下源吾

    ○木下源吾君 時間がだんだんなくなりましたが、せっかく高碕大臣が見えておられるので……。新聞で見ますと、いろいろ飛行機の生産も軌道に乗ってきたようです。この点については動く金も相当に大きいですね。こういう軍需生産に対しての計画をお立てになっているのでしょうが、それを伺いたい。
  334. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 現在のところ軍需生産というものについては別途に考慮いたしておりませんで、全体の産業の一部分としてこれを考慮しておるわけなんであります。その将来の推移によってはまた別途に考えてみたいと思っておりますが、全部これは通産行政の中に入れまして、鉱工業の中に入れて、鉱工業としての計画を立てておるのであります。
  335. 木下源吾

    ○木下源吾君 新三菱と川崎重工の二つの会社で飛行機を作る、こういうことであって、その設備資金が三十何億か要るということが新聞に出ておる。そうしてこれは今度の日本計画生産をやれば、その設備はまあ一応用がなくなる、こういうような状況である、こういうことを新聞に見ておるわけであります。こういうことは事実でありますか。
  336. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 詳細のことは政府委員の方でよく御回答申し上げます。
  337. 久保亀夫

    政府委員(久保亀夫君) お答え申し上げます。ジェット機の生産につきまして、F86とT33と両機種ございまして、ただいまお話の通り新三菱と川崎重工でそれぞれ生産を担当することに予定いたしておりますが、この設備資金は建物、機械あるいは治具等、三十数億ということになっておりますが、そのうち治具等につきましては米側から日本政府は供与を受けまして、各会社に貸与いたしまして生産を委託する、かようなことになっております。会社が持ちますのは機械、それから大部分は従来の建物を利用するのでありますが、一部建物あるいはそれの改造等でありまして、今度の発注いたしますF86七十機とT33九十七機、それによりまして米側からもらいました治具はもちろん、それから会社側で調達します治具の全部、それから機械の相当部分も償却をいたすような計算で実は予算を計上いたしておりまして、大体この計画を完了いたしまして、会社としての大体の採算はとれるというふうな計算に相なっております。もし将来生産が進むとどういうことになるかと言いますと、非常に安くなるという結果が起ることになるだけでございまして、一応これで採算がとれるように計算いたしております。
  338. 木下源吾

    ○木下源吾君 三十六億の設備資金が償却されるのはどういう意味で償却されるのですか。
  339. 久保亀夫

    政府委員(久保亀夫君) 治具の関係は、今度私どもが契約いたします今の九十七機と七十機で全部品物の代価の中へ治具は入れます。機械、建物におきましては、これは税法の許す最大限度で償却をいたすことになっております。
  340. 木下源吾

    ○木下源吾君 そこで大体まあ何をいたしましたが、今度そうすると、これで作る飛行機に対しては、三十六億は全部かかるわけですね。
  341. 久保亀夫

    政府委員(久保亀夫君) 先ほど申し上げましたように、治具については全部今度生雇いたします飛行機にかかりますが、難物、機械等につきましては税法の許す最大限度で 令名ではございません。
  342. 木下源吾

    ○木下源吾君 大臣がせっかく来ておられるので、またほかのことですが、どうですか、あなたの御計画で貿易関係をいろいろやはりおやりになるのでありますが、商船隊を保護するために海軍が必要ですか、その点どうですか。
  343. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 一朝事あるときには商船隊はやはり保護する必要があると思います。
  344. 木下源吾

    ○木下源吾君 そこで一朝事あるときですがね。どの程度の一体海軍で保護できるのですか、それを今お聞きしているのです。どの軽度の海軍が必要であるか。
  345. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 非常にそれはむずかしい問題でございまして、私一人としてはちょっとお答えしかねますのですが、防衛庁長官にお願いいたしましょう。
  346. 木下源吾

    ○木下源吾君 防衛庁長官はその方じゃないでしょう。実際ここで禅問答みたいなことをやってもしようがないので、ほんとうに暴風雨のときにはどうすれば助けられるかがほんとうの防衛のときのやつが必要だと思うのですよ。ところがやがていつか来るだろうというような夢のような攻撃だとか、直接侵略だとか、間接侵略だとか、そんなものに金をかけてたくさんやられてもたまらないから、あなたの方は金をもうける方なのだから、そんなことで金が必要だとすれば、国民も多少の考えが出てくるだろうと思うのです。防衛庁は侵略のことばかり考えないで、商売の方ではどうかと言うのですよ。つまり財政計画とか、産業計画とか、いろいろな計画の上で、それの方ではどうしても海軍や陸軍が要る、そういうものを持っている方が仕事がやりいいのだ、こういうような何かがあるのですか、それをお聞きしているのです。
  347. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) どうもこれは多少御質問とそれるかも存じませんですけれども、ただいまの防衛庁でお答えいたしました飛行機を作る場合の問題につきまして、初め私はアメリカの人たちとの折衝を受けたそのときには、これは練習機である、そして飛行機を生産するのには一番初めの序として、これをやればいいのだ、これは私は将来日本の飛行機工業というものが、単に防衛だとか、軍備ではなくて、平和産業としての発達をする上においても必要なことだと思って、私はこれは非常にいいことだと思ったのです。そのときに私が彼らと交渉したことは、ここで五十機だとか、六十機だとか、そういうけちなことはせずに、もっと大きな数を注文してくれぬか。そして東洋方面においてそういう方面の飛行機を供給するというときならば、ここでやった方が安いだろう。そういう意味で商売をやりたい。こういうことを折衝してみたことがあるのです。その後その問題は私の手から離れて、実は通産省に持って行って防衛庁と相談してやってもらっているようなわけなのですが、そういう意味合いから申しまして、飛行機工業のごときも、これは私は今、日本といたしますれば、アメリカと比較するとよほどおくれているのでございます。戦争中この工業といたしましては、その場合にこれを取り入れて向うの治具を使い、向うの機械を使い、技術を導入してやって行くということは、私は日本の将来の工業について大きなプラスになるというふうな考えで進んでおるわけであります。ただいまのお話の貿易をやるということになれば、これはどうしても日本の貿易業者、日本の生産業者を安心せしめてこれに従事せしめるということにせなければならぬ。もちろんこれは保険もつきましょうけれども、そういうふうな意味からしまして、これはある程度の防衛をするという必要もあるだろうと存じますけれども、これはどの程度に、どのくらいかということになりますと、これはある程度私はここでお答えすることは、はなはだするだけの私は能力はないわけであります。この点はお許し願いたいと思います。
  348. 木下源吾

    ○木下源吾君 そこなんだ。三十六億円からの設備資金が要るのですよ、二ヵ年ぐらいの飛行機を作るのに、今説明願ったように……。こういうものが済んでしまったら煙みたいに消えてしまうのでは大へんだと思うのです。あなたのおっしゃるように、それが民間飛行機の何かになるなら、そういう面だというならまだ話はわかるのです。実際においてそういうところに、昔ならば臨時軍事費であるとか、軍事費というものは非常に化けものですから、それで私は今お聞きしておるわけです。それは軍の方とあなたの方との連絡がよくついておっておやりになっておるのかどうか。そういうことを聞きたかったわけです。今の簡船隊の問題などは今ごろは護衛も何もありませんよ。昔の日本が武力を背景にして経済戦争をやったという時代ではないのですから、そんなものは要らないですよ。ただ何か商船隊を護衛するなんというのは、かえって危いですよ、今なら……。そういうことはまあ別としまして、三十六億からの設備資金、それはアメリカから借りる金ですから、日本は払わなければならぬ、もらう金ではありません。これははっきりしてやってもらわなければ……、そこを考えて私質問しているのです。時間がありませんからこの辺で終ります。
  349. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 まず第一には、防衛庁として防衛的見地に立って憲法改正の必要があるというふうに考えられますが、この点も伺いたいと思います。従来憲法の解釈については、総理に政治的な見解を聞き、あるいは法制局長官の軍事的解釈を聞いたりしているのですが、防衛的な見地に立って、一体ただいまの憲法の改正が必要があるかないか、こういう点を伺いたい。
  350. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) 憲法九条についていろいろと国の間に議論が大きく分れており、おそらくそれはそれぞれ理由のあることだと私は思いますが、しかし一方が他方を圧倒的に説伏し得るだけの何もない。その結果憲法九条をめぐっていつまでも議論が果てない。こういうことは日本防衛という見地からいたしまして、やはり非常に基本的に遺憾なことであろうと思います。従いまして、そういう点、はっきり批判の余地のないような、国論がが、国の中に議論が大きく分れることがないようにすることがきわめて大事だと思います。
  351. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 今のように、解釈が区々に分れるというような点から、これをはっきりさしたいという意味の憲法改正の必要論、これは一つの理由だと思いますが、そのほかに、ほんとうに防衛的な見地から憲法九条の改正が必要であるのかどうか、そういう点、たとえば志願兵制度でこれが足りるのかどうか、そういうような問題それからまた一面においては、憲法改正ができないときに、憲法改正の必要がある、あるということは、自衛隊というものが全くあいまいもこたるものであって、さなきだに日陰者のような傾向があるということ自身からみますと、かえって自衛隊の士気を鼓舞する上においてはどうかというような面もあると思います。そういう点において、ほんとうに防衛的な見地というのは、将来の侵略に対する関係もありましょうが、要するに作戦計画というか、自衛行動に基く作戦計画、そういう点からの問題もありましょうし、あるいは防衛カ増強の見地からの問題もありましょうし、それにまた自衛隊現実の訓練、士気の高揚という面からの問題もあると思います。そういう点について憲法改正を要望していいのか、あるいは悪いのか、これにはいろいろの見方があると思いますが、その点について防衛庁長官としてのお考えを承わりたいと思います。
  352. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) 最も根本的に大事だと思います点は、先ほど申し上げました点でございます。それからもう一つ重要なことだと思いますのは、いわゆる交戦権の禁止、これは実に奇妙な、今、日本がその点におかれておると思います。国際法からみまするというと、交戦権は日本は何ら制約されていない。しかるに国内法的にみるというと憲法上の制約がある、そこからしでいろいろと実に奇妙な地位にあるのだと私は思います。外国に対しては交戦権を主張しても何ら国際法上違法でも何でもない。ところが国内法でみると制約がある。これなども先ほど申し述べました第一点と共に、この第二点は非常に私はっきりさしていただくことが防衛の見地からも私は大事だと思っております。
  353. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 交戦権の問題でありますが、これは憲法第九条の二項には「前項の目的を達するため、」云々とあり、しこうして交戦権を認めない、というのは、第三項でなくて第二項自身であります。そういう点から自衛権行動範囲においては、これに伴う交戦権はあるのであります。そこまで行くことが自衛隊のある以上、軍の訓練、士気の維持、向上の上からは絶対必要だというふうにはお考えになりませんか。
  354. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) 私も個人としては、実は第三項の前段において自衛のため必要最小限度防衛力が持てると解釈する以上、交戦権の部分についてもそういうふうに、豊田委員のおっしゃったような解釈ができるのじゃないかという私見は、実は一応の意見としては私は持っておるのでありまするが、まだそこを断定的にまで、それを私確信は持ちません。この点も実際に当てはめてみますると、先ほど法制局長官もるる説明しておりましたけれども、非常に妙なことになると思いまするし、いわゆる自衛のために行動するのである、いわゆる自衛行動権、そうしてそれが一方交戦権というものの関係を見まするというと、行動する行動の実体の上から見ますと今度同じことになる、実体的に見ますと同じことになって、しかもそれが交戦権ということでは認められない、非常に妙な工合に相なると思います。こういう点が実は非常に不明確になっているという点なども、もっと憲法の改正をされる場合には、ぜひ問題にして明らかにされることが私は必要であろうと思います。
  355. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 今日この自衛隊の訓練等の際には、昔と違うわけでありますから、憲法というようなものを基本にしていろいろ訓話等をやるようなことがあるだろうし、またそれが必要なんじゃないかというふうに考えられるのでありますが、そういう場合に防衛庁としては、今までのお話の程度でありますと、実際お困りになっている点はありはしないかどうか、この点が第一でありますが、具体的に言いますと、たとえば鳩山総理のごとく、が現実に変ってきたから、それがために解釈を変えるのだ、事実によって解釈を変えるのだというような言い方とか、それから今指摘せられた法制局長官の言のごとく、自衛の行動は認めるけれども交戦権の方はないのだというようなことで、一体自衛隊にあれだけの国費を投じて、士気の高揚なり、自衛隊があれだけの意味のある訓練が実際されているのかどうか、これについて一体日ごろどういうふうに防衛庁長官はやっておられるのか、そこを伺いたい。
  356. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) 予備隊から保安隊となり、そうして自衛隊、まあこれをずっと経過を見ますというと、自衛隊というものになって、自衛隊法によって従来かなり問題になっておった点が法によってはっきりと、直接侵略、間接侵略に対処することが主たる任務と明記されておる、こういう点はこれは自衛隊の性格というものが非常にはっきりしたという点は、従来に比してその点は自衛隊の指導上も非常によくなったと思います。実際上、従来いろいろ言われておったのは、法によってはっきりとそれが明示されておるという点は、これは非常に私は違った、その点からいたしますと、ずっと士気をあげるという点からいってもよくなっておることだと思います。
  357. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 現実の問題として、自衛隊内において憲法第九条をめぐって非常に士気の高揚上困った問題が起きておるという具体的な事実はありませんか。
  358. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) それは具体的に事例として今ここで私ごうごうという事例をあげることはできませんけれども、一般的にはやはり自衛隊法でははっきり認められておるけれども、それと憲法の関係等についていろいろまだ論議があるということ自体は、自衛隊の指導という上からいきましても、まだそこに問題があるように存じます。
  359. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 そうすると、憲法改正のできるまでの間は、これはどのくらいかかるかわかりませんが、その間というものは自衛隊の訓練その他の上において重大なる支障があるということになると思うのでありますが、その点についてはどういう対策を講ぜられておるか。
  360. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) これはやはり現行の自衛隊法に基いて、自衛隊法によってはっきりと示されておる自衛隊の使命というものがございまするからして、その使命第一主義で使命に徹して行くということで指導することだと思います。
  361. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 どうも使命に徹すると言っても、これはきわめて抽象的で、そういうことでは今の憲法九条との関係からくる基本的な問題を補うということはとうてい困難じゃないかと思う。この防衛力の増強もさることながら、先ほど来いろいろ同僚委員の間からも出ておるのですが、精神的な面ですね、そういう点が一番問題じゃないかと思うのですが、その面において今のような基本的な欠陥がある。そういう面からは、一体憲法改正の必要があり、ありと言うことが、この自衛隊、しかも兵に相当するようなところに訓練上いいことなのかどうか、こういう点について私は非常な疑問を持っておる。憲法改正の必要があるということを言われるけれども、言うこと自身が士気のかえって低下を来たすのではないかという点に非常に私は疑念を持つものですから、そういう点について一体どういうふうに考えておられ、また今後どういうふうにやられるかということについて、日ごろの訓練に当っておられる防衛庁次長にこれは伺った方がいいかもしれませんが、どちらでもけっこうです。
  362. 増原恵吉

    政府委員(増原恵吉君) この点は長官から申し上げましたところに基本はあるわけでございますが、われわれとしては、政府のとっております憲法九条の解釈というものを部下に明示をいたしております。そうしてその解釈のもとにまたこの自衛隊法防衛庁設置法ができておるわけであります。この政府の憲法九条の解釈、そうして国会の議決によってできました自衛隊法に基いて、それに掲げられた使命に邁進をするということで十分やって行けるというふうに考えております。
  363. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 いろいろ総理、それから法制局長官、それから防衛庁長官とせられても、憲法九条をめぐって非常に悩んでおられると思うのでありますが、しかしこれは防衛庁長官にせよ、鳩山総理にせよ、ほんとうに理論に一貫しようという気魂がないために、どうも頭隠してしり隠さず、それがためにかえって問題をいろいろ起しておる。従って一つの信念というか、文理解釈の一つの行き方でほんとうに一貫した行き方をしようとするならば、それはできるだろうと思うのです。同時にそれを確立することによって自衛隊の精神訓練の基本というものははっきりしてくると思う。こういう点についてお踏み切りになるという、頭は隠してしりを隠さないようなことのないようにするだけのお考えというものはないかどうか、それを長官に伺いたい。
  364. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) 自衛隊法に基いて自衛隊というものはあるわけでございますが、しかも自衛隊法というものは現に法律として認められておる。私はこれが違憲だとは思わないわけでございまするが、その自衛隊法と本法との関係等につきましても、なおよく首尾一貫するように研究をいたしたいと思います。
  365. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 次の問題に移りますが、過日私の質問に対して長官は、空軍と海上軍は、四巨頭会談などの一連の関係で、将来世界的な軍縮があるような場合にも、なおかつ縮小したりするのではなくて相当また増強しなければいかぬということを言われ、同時に地上軍については、将来軍縮でもあろうというときには、やはり考えにやならぬ段階に来ておるというような意味の御答弁があったのであります。要するに地上軍はある程度のもう段階に来ておる、空軍、海上軍はしからずというような御答弁があったのですが、そういう御答弁の趣旨からこれは察知いたしますと、現在の地上軍はすでに十三万、今回の増加によってこれが十五万になる、この十五万になるということになれば、将来軍縮があったような場合には相当増強せぬでいい、あるいは多少減してもいいという、そこらまで来ておるということがその御答弁の裏にひそんでおるように思うのであります。それから本日同僚の野本委員から質疑せられ、それに対する御答弁は、志願兵制度で行くとすると、その限度は二十万ということを言われ、確認せられたわけでありますが、それからまたある新聞に発表じゃないのでしょうが、出たところによると、防衛六ヵ年計画の目標というものは十八万というようなことが出ておるわけであります。志願兵制度を前提にすると十八万とか、三十万という数字が出てくる。そうすると、軍縮がないというような場合には、大体十八万から二十万くらいな線でどうかというまた一つ考え方が出てくると思うのです。それで要するに一つの目標、これは全体的な目標なり計画衆議院の審議以来ずいぶんお尋ねをしておるようでありますが、明確な御答弁がまだない。従って今のように軍縮会議等が開かれる場合のことに関連して、十五万ないし十八万、二十万というようなところで推察するようになると思うのですね。これはあまり大きな誤解を与えるとかえって今後いろいろ問題が派生してくると思います。従って誤解でなくて正解にほぼ近づくような意味で御意見を伺いたいと思います。
  366. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) この間豊田委員との間の私の質疑応答の間に、軍縮の関連のことでございましたが、その際私の申し上げましたことなどで、かなり言葉の足りぬ点などもあったかと思います。それから私も、しかしその当時はっきりと申し上げたつもりでございますが、軍縮と申しても国際的の軍縮というものが具体的にどういうふうになるか、その辺のところはまだはっきりしないから、なかなかこれとの関連においてということは非常にむずかしいという意味のことは私はつけ加えて申し上げたつもりでございますが、事実私は現在もそう考えておりますが、今軍縮という問題が非常に大きく問題として取り上げられてきつつあることは、これは明瞭でございますけれども、これの今後の具体化という点については、私はよほどこれは紆余曲折をふるものだろうと思っております。御承知通り、これは前の大戦後でもこの軍縮問題というのは非常にいろいろな経過をたどって、なかなか海軍などについては明確なことができましたが、陸軍等についてはそれができなかったというようなことがございますし、そうかといって今の軍縮という傾向は決して無意味なものじゃないと思いますが、なかなかこれの具体化という点については非常に複雑なものでございまするから、どういうふうになって行くかという点については確たる見通しもなかなか立てにくい。ことにこの今極東方面などにつきましては、なおさらむずかしいのではないかという感想を持っております。従いまして、基準そのものがまだきまらない。軍縮というものとの関連において日本の場合のことを論ずるのは非常に時期尚早だというのが基本的な考えであります。ことに日本が、今私が考えておりますのは、むしろけさほど外務大臣も言っておられましたが、いやしくも独立国として備えることが、普通の世界的の常識からしても必要な程度の最小限度のことは考えておるわけでございまして、あの軍縮というのは、これはもうその程度をむしろ越えた分についてのことが問題の対象になるものだと思います。これも軍備撤廃ということと全然違って、軍縮ということでございますから、それだから実は日本の今私らが考えておりますものと軍縮問題と具体的に結びつけるということは非常に私困難だと実は考えております。
  367. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 そうすると、この前は軍縮があるというようなことになれば、地上軍の方についてはまず考えなければならぬ段階にあるということはお取り消しになるわけですか。
  368. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) しいて軍縮というものを、今後の状態がどういうふうになるか、そしてまたその基準がどういうふうになるかということが明らかでございませんから、はっきりと申し上げることができませんけれども、もしその基準などがきまり方いかんによっては、場合によってはそれがあるいは問題になるかもしれぬ、この程度のところが現状であります。
  369. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 しかし志願兵制度で行く場合に二十万がマキシマムであろうということについては、もうその通り考えておられますか。
  370. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) これは大体およそのところでございますが、およそのところ大体、それくらいのところであろうというふうに今まで大体推定しておる次第でございます。これは主として二十万と申しますのは、自衛隊の幹部の方でない士長以下のものでございます。
  371. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 次に伺いたいと思いますのは、防衛庁長官は、衆議院内閣委員会の審議の模様によりますと、空軍関係については三十二年までの目標を大体明らかにせられたのでありますが、地上軍と海上軍とについては全体的な計画は立っていないというふうに言われているのであります。やはり計画は立っていないというふうにこの委員会においても言われるわけでありますか。
  372. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) さようでございます。それから一つ今おっしゃいましたので私申し上げておくことが必要だと思いいますが、航空自衛隊について三十二年度まで立っているということは、航空自衛隊整備計画全体についてそれがそういうふうになっておるというのではございませんで、私が衆議院でもずっと説明してきておりますことは、先ほどもちょっと話に出ましたF86、これが約七十機、それからT33九十七機、これを先ほどもちょっと説明いたしましたように、アメリカ側からの部品等の供与によって、これを日本で組立て生産するということを三十二年六月までの計画で考えております。それとそれに必要なる予算も御承認いただいておるわけでございます。その部分を実は申し上げた次第でございます。
  373. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 計画が地上軍、海上軍については立っておらぬと、こう言われるのでありますから、これをしいて聞こうというわけにもいかぬでしょうが、ただ何故に計画が立っておらぬかというその理由だけは、これはやはり国民に対して明らかにしておいた方がいいと思いますから、その点を……。
  374. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) その中で最もおもなる理由といって申し上げていいと思いますが、それは従来もそうでありますが、今後も自衛隊整備ということを考えていきます場合に、実際上アメリカ側からの援助はこれは実際重要な要素になろうと思う。そういう点につきましては、アメリカ側でもいろいろそういうことを研究しておることでありますから、そういう点などもよく結果を見てさらに立てて行きたいと、こういうふうに考えます。
  375. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 そうすると、アメリカ側との共同防衛の見地からの要求と言いますか、それが明らかでない、それがために計画が立っておらぬ、しかしそれも国防会議がいよいよ始まれば、その際までにはもちろん実施して行く、こういうふうに解釈してよろしいですか。
  376. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) 国防会議ができましたならば、なるべく早くそれにかけるような状態になるよう努力いたします。
  377. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 次にお尋ねしたいと思いますのは、今回の防衛力の増強に伴って国内に対する防衛生産計画、これをまあ具体的に伺いたいと思うのでありますが、たとえばどういう機種についてどういう数量、どういう金額、これの発注先はどういうふうに考えておるか、そういう国内の生産計画を明らかにしてもらいたいと思います。
  378. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) 本年度の計画でございますか。
  379. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 本年度の予算に伴う……。
  380. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) 本年度予算に伴う計画でございますね。一つなるべく詳細に政府委員説明させます。船舶とか、航空機その他車両、これは政府委員から説明させます。
  381. 久保亀夫

    政府委員(久保亀夫君) それでは御説明いたします。陸上自衛隊、海上自衛隊航空自衛隊とそれぞれ事情が非常に違いますので区別して申し上げます。陸上自衛隊につきましては御承知かと思いますが、大別いたしましていわゆる火砲、戦車、装備品甲類と申しますものと、一般民需と共通します車両、通信機、あるいは建設器材といったようなものでございますが、そのうち三十年度に関しましては装備品用類は一応大部分は米軍から供与を瞬けるという予定に予算建前上なっております。装備品乙類につきましては、これはほとんど全部特殊なものを除まして日本側で調達するという予定になっております。ただし装備品甲類につきましても逐次これは予算関係ともにらみ合せまして、また日本の国情等ともにらみ合せまして逐次国産化して行く必要は当然あるのでございまして、昨年度から若干設計、試作等に着手しておりますが、本年度からそういった事情もだんだんと強くなって参りまして、本年度には中型戦車二十五トン程度のものでございますが、これとそれから百五ミリの無反動の自走砲と申しますものと、それから百五ミリ、百五十五ミリの榴弾砲等を本年度から試作することにいたしております。これはそれぞれ研究費、あるいは器材の分を予算に計上しております。なぜこういうものを先に載せましたかと申しますと、これは試作いたしましてそうしてそれを制式といたしまして実用に供するのには一定の期間を要します。そこでこういったものを、陸上の武器の主体をなすものにつきましてまず国産化いたしまして、小さな銃砲等につきましては比較的そういった期間が短かいのでこれの予算ともにらみ合せて、六ヵ年計画ともにらみ合せて逐次国内の生産体制を作って参りたい。弾薬につきましては、これは米軍の特需という関係で相当生産設備が拡充されておりますので、むしろこれはどういうふうに維持して行くかということに問題があると、かようなことになっております。装備品乙類につきましては、車両、通信機等につきましてはここ二、三年内で国産化の程度が相当進んで参っておりまして、その点につきましてはまず問題はないという状態になっております。それから航空機につきましては初級練習機T34メンターと称しますものは昨年度から計画いたしまして今日すでに国産化の段階に至っております。ジェット機の国産化につきましては本年度の計画に上げておるわけであります。  それから海上につきましては、これは二十八年度の予算以来艦艇それ自体につきましては従来の造船能力を活用いたしまして、すでに二十八年度の計画の分につきましては昨年度以来各造船所に発注いたしております三十年度の分につきましてもそれぞれ警備艦用四隻を発注いたします計画で予定が進んでおります。それから海上艦艇につきましては、これは新造船に載せます武器につきましてごく高度のレーダー等につきましてはアメリカから供与をいただいておりますが、三インチ砲とかその他対潜兵器等につきましてはこれも昨年来の新造船と並行いたしまして計画を進めております。  大体海陸を通じます装備品の国産の進行状態、あるいは生産の状態といったようなのはさようなことでございまして、これの数量、金額、発注先等につきましては材料は持っておりますが、後ほど資料にして差し上げます。あるいはこの場で申し上げますか。
  382. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 大体のところをここで言ってもらって、あと資料をもらえばと思います。
  383. 久保亀夫

    政府委員(久保亀夫君) まず陸上の装備品について申し上げますが、装備品甲につきましては大体車両類が二十三億程度、それから建設器機材が同様二十二億程度、それから通信機等二十二億程度、その他を合せまして約七十六億と申しますものがいわゆる装備品になっております。その中に、先ほど申し上げました七十六億の中には榴弾砲百五ミリ、百五十五ミリが約八千七百万円ばかり、これの発注先は大体日本製鋼という予定で計画されております。それから先ほど申し上げました特車につきましては研究所の試作費の中に約二億円計上されております。それから百五ミリの自走砲、これは約三千万円弱の同じく研究所の試作費に計上されております。試作先はそれぞれあるいは三菱、日本重工、あるいはこれまた製作所等従来の経験、技術、今日の設備等とにらみ合せて大体予定いたしております。それから航空機につきましては先ほどのメンターT34、これは富士重工……。
  384. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 これは合計二十七機ですか。
  385. 久保亀夫

    政府委員(久保亀夫君) さようでございます。合計二十七です。本年度分といたしましては合計二十七機、金額にいたしまして約五億強でございますが、富士重工ということで、これは従来からの国産化の相手方になっております。ジェット機につきましては合計予算外を合せまして五十八億弱。本年度の予算は五億円で、これは先ほど申し上げましたように新三菱と川崎とを相手方に予定いたしております。海上の艦艇につきましては二十八年度計画の分につきましては、すでに随意契約で、三菱造船その他数社に随意契約をいたしおりますが、本年度の警備艦四隻、それから中型掃海船三隻等につきましては目下設計を進めておる途中でございまして、契約の相手方等については、これは目下のところ未定と、さようなことに相なっております。
  386. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 合計これは十隻ですか。
  387. 久保亀夫

    政府委員(久保亀夫君) 四隻と三隻とあと雑船、交通艇の小さいのが三隻入りまして十隻でございます。
  388. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 総金額これで幾らになりますか、国内発注のものが。
  389. 久保亀夫

    政府委員(久保亀夫君) 別の資料で総括的な数字を申し上げます。ただいま申し上げましたのは装備品と申しますか、完成品を購入していたします大なきものを申し上げましたので、修理費等を加えますと一般生産業界に流れると申しますか、出される金額を申し上げますと、器材費が、これは全部そういう関係になりますが、陸上が百四十七億、これは先ほどの七十六億のほかの、主として修理費、それから燃料が入るわけでございます。それから海上が、これは艦艇費を除きまして修理費、あるいは燃料費等が五十四億、それから航空関係が、これも同様航空機そのものと修理費燃料費等を入れまして六十六億、合計二百六十七億強と申しますのが陸海空を通じての器材費でございます。このほかに本年度分として船舶建造費が五十四億七千万円と、合計三百億程度のものが本年度の器材費としてそういった方面に支出される金額になるわけでございます。
  390. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 大体これで発注計画はわかったのですが、あと資料を一つ発注先、種類別、数量、金額等を出してもらいたいと思います。なお経済企画庁長官に伺いたいのでありますが、経済六ヵ年計画では特需依存を脱却しろという見地に立っておられるのでありますが、この特需脱却と国内のこの防衛生産との関係を具体的にどういうふうににらんでおられるのか、この点を伺いたいと思います。
  391. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 特需は漸次なくなって三十六年度にゼロになる、この計画でございますから、防衛計画というものは、別に鉱工業生産等から分れて立てていけないのでございまして、これは輸出産業である、これは防衛産業であるというふうなことは別々にしないで、全体をひっくるめて考える、そういう意味から申しまして特需の方が減ったからその数量だけは全部防衛にいくとこういうふうな考え方はいたしておりません。
  392. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 それはお話のごとく特需を脱却したからそれを全部防衛生産計画にということはお考えにならぬでありましょうが、今数字をあげられたところだけを見ても、本年度で三百億出ているのですね。今後これが六ヵ年間ずっと続くか増加されるというわけですが、これは非常な数字になると思います。従って輸出と国内生産を合せてどうだとかいうようなこれは私は数字じゃない。まあ数字として非常に大きなものだ、何も特需とパーパーになるというような考え方はする必要もないでしょうし、ですが、この防衛生産がどの程度になるか、こういう点は、まあ将来の計画は別としても、さしあたり本年度はこういう三百億であるならば、これから推算して、どういうふうになってそして特需から脱却するものがこの程度である、それとのにらみ合せはどうなるというようなことがないと困るのじゃないかと思うのですが、どうでしょうか。
  393. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 防衛計画がはっきり立って参りますというと、これは非常にけっこうなことだと思っておるわけでございます。防衛計画というものはまた長期にわたって立て得ないものでございます。どうしてもこれは一般の鉱工業品という中に入れて現在は計画を立てなければ、全体の経済的の計画は立たないわけであります。われわれのところは金額をもって目安をおいておるわけなんであります。ただ御質問のような点まではまだ進んでおらないというのが現状でございますから。逐次そういうようなことについては防衛庁予算なり計画が進むに従って、これと並行して進んでいきたいと考えております。
  394. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 将来の点は別として、三十年度の分については、経済六ヵ年計画における初年度計画と、それから今の防衛生産計画というものとの関係というものはどういうふうに見ておるのですか。
  395. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) それはただいまの二百六十七億とかいう大きな数字でございますが、これは燃料費等も入っておるのでございまして、このうちのどれくらいの、設備費としてどれだけの発注がされるかという鉱工生産としてどれくらい入っておるかということばまだはっきりいたしておりません。全体の鉱工生産の中にこれを含めておるようなわけなんであります。
  396. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 それはまあそういうふうな行き方でいっておられるというのでありますが、長官自身も言っておられるように、この防衛生産非常な数字なのでありまして、六ヵ年先は別としてこの昭和三十年度についてはこれは別個にやはり航空機も……、これはしかしそれから推算して将来どうなるか、少くとも三ヵ年計画ぐらについてはどういうふうになるかということはこれは当然あっていいと思うのですけれども、御所見はどうでしょうか。
  397. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 生産計画を立てます上においてはごもっともの質問だと思います。私は一日も早くかくあらんことを希望いたしますが、ただいまのところ、全体の防衛費としてはどれくらい国民生活から負担できるか、こういうふうな点から一応の目安をつけまして、三十年度はこの程度に押えていく、こういうふうな考えでございます。これを防衛費を金額から見ておる、こういうような状態でございます。
  398. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 どうもそこらのところをまだいろいろお尋ねしたいと思いますけれども、この問題この程度にいたしまして、一つ重大なる問題を伺いたいと思うのでありますが、それは防衛庁自身にもお考え願いたいと思います問題なのでありますが、この先ほどの発注計画による受注会社、それの下請たる中小企業ですね、これに対して親会社の支払いぶりが非常に悪い。これはいいものもあるでありましょうけれども、全体として非常に悪い。もう通常いっておるのは検査に一ヵ月くらいかける。それから支払いの内部の手続だって一ヵ月ぐらいかかる。それからもらった手形というものは大体早くて四カ月、ひどいのは六カ月、八カ月、従って初めから――納付してから考えますというと、せいぜい早いのが半年、おそいのは一年というようなものがあるのですが、これは非常に問題になっているのです。この軍需の国内発注、これに伴って下請たる中小企業というものが非常にその危機にさらされておる。はなはだしいのは日平産業みたいなのがあるのですが、要するに軍需発注に伴うての非常に長期にわたる支払い遅延、それからはなはだしいのは手形の不渡り、これらに対してはどういうふうに防衛庁としては通産省筆と連絡をせられてやっておられるか。それからこれに対してまた通産大臣に質問したいと思うのですが、通産大臣がおらぬものですから、総合調整の立場から経済企画庁長官の今までに対する見解と、これから一体どうするつもりなのかという点を一つ
  399. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) この戦後の防衛関係の発注というものは、ほとんどこれは何か米軍が面接日本の業者にいたしまして、これはほとんど政府はあまり詳しく関与していなかったというのが事実でございまして、終戦後ですね。そういうふうな結果無謀に大きな設備を持ってしまう、無謀にたくさんのものができたというような感じがあります。これが要するに今日発注がなくなってきたからというので、今政府に泣きつかれて政府もこんぱいしているというのが現状の事実でございます。今後のことにつきましては、これは大体この種の事業というものは、航空機にいたしましても、艦船にいたしましても、また火砲等にいたしましても、大体あるいは五〇%、あるいは六〇%くらいまでは中小工場に下請に出すというのが原則でございまして、そうすることがやはり能率を上げる上におきましても、またいろいろな点におきましても便利の点があるのであります。そのときに、つまり発注を受けた人たちは大きな会社でありますから、それがその中小工業への支払い条件等につきまして、悪い影響を及ぼすということは影響するところは非常に甚大であるものと存じまして、その発注者というものを、よほど信用状況を調べ、過去の実績、現在の経営者等もよく調べた上でこの発注者を選定していかなければならぬということが第一だと存じておりますが、それにしても現状のような工合にだんだん発注の数が減ってきた結果、支払い条件を手形にするとか、あるいは不渡りにするというような結果を来たしましたことは、はなはだ政府としては手落ちと、こう存じておるわけですが、今後こういうような点については特に注意をして防衛庁、通産省ともに話をして行きたい、こういうふうに存じております。
  400. 増原恵吉

    政府委員(増原恵吉君) 防衛庁関係で調達発注をします場合に、下請の方に適正に金が支払われないといううわさ、ないし不平等私ども耳にしております。この点は私どもの方で発注をしまする際に随意契約、あるいは指名競争等にします場合は、もとよりこれは非常に厳密なあれをやっておりまするが、一般競争の場合でも業態調査をお願いしまして、そして一般競争に参加をさせるというふうなことであるわけなんであります。その場合に下請に対する支払い条件等を厳密に規定するというようなことは、亀八は今まではやっておらぬわけです。この点については調達実施本部で今そういう点をいろいろ研究をさしておるわけであります。下請関係などに適正に迅速に支払いが行くようにということを口頭で注意をするというようなことはやっておりますが、どういう手を用いることがよろしいか、これは今調達実施本部で勉強をいたしております。
  401. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 この問題は通産省筆でも大いに指導監督をしなければいかぬ問題だと思いますけれども、やはり発注官庁たる防衛庁自身が本気になっておやりになる。ことに先ほど経済企画庁、長官の方から言われたような具体的な方針に基いて、そうしてしっかり指導監督をせられれば非常に違ってくると思うのです。これは独禁法の関係で公正取引委員会でも取締りはしておりますけれども、そういうことでなく、やはり発注官庁自身が本気で、乗り出されるということが絶対必要だと思いますので、その点について一つ御所見を伺っておきたいと思います。
  402. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) ただいまの点は特に一つ留意をしてやって行きたいと存じております。
  403. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) その点につきましては、私非常に重大な問題だと存じまして、私のこれは過去の経験でございますが、もし発注をした場合につきましては、その親会社の下請をする連中に組合組織を作りまして、その組合でどれくらいのなにがいるか、金が入るかということを一本にまとめまして、それで発注をする場合その組合の連中とそれから親会社の二つがこれをやる。その場合に、私はこれは飛行機の生産をやっておりましたときに発注者として立ったのでありますが、そのときに組合には幾ら、親会社に幾ら、こういうようなことを分けて、それの責任を明らかにしたこともございます。ですからそういうふうな点も今後考慮してやっていってもらいたいと思います。
  404. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 最後に一つだけ。私も今経済企画庁長官の言われたようなことを実は考えているわけなんであります。ところが親会社の方は中には下請業者が組合を作ることをいやがったりするのがあるわけです。そういう点についても発注官庁の方で、これは思想的にも非常に関係のあることなんですけれども、下請業者にむしろ組合を作らせ、それと一体化して受注もし、未払い、支払い遅延というようなことのないように、現に今後防衛庁方針を具体的にお立てになり、それによって指導監督を受注会社に対してやっていかれるように要望いたしまして私の質問を終ります。
  405. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) ただいまの豊田委員質問に関連しましてこの際ちょっと。私の聞くところではどうも防衛庁のたとえば計器類とか、あるいは通信機というような、平和産業に当然活用し得るようなものの発注の仕方ですがね、やはりアメリカ軍事顧問団、あるいは技術者に対して遠慮をせられているのですか、ちょっと企画が違うと性能は同じであってもこれはだめだ、やはり結局は向うのものを使わなければならぬということで、アメリカの会社の製品を使われるというような傾向が非常に多いということを聞いているのです。これはそもそも平和産業に役立つような計器類、あるいは通信機等の日本の生産技術を高める上から申しまして、多少当面不便がありましてもこれは押しても国産品を奨励して使っていただかなければならぬと思うのです。どうもその点についての配慮が欠けているということをしばしば聞くわけであります。御答弁は要りませんけれども、豊田委員質問に関連しまして、この点は十分に今後御配慮を願って、日本の生産技術が少しでも高まるように御配慮いただきたい。
  406. 田畑金光

    ○田畑金光君 杉原防衛庁長官にお尋ねいたしますが、長官に就任されてから数カ月になるわけですが、陸海空の司令官ですか、総元締として管内の視察と申しますか、どの程度視察をなされておられるわけですか。
  407. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) 私、実はその点で非常に残念に思っているわけでございますが、就任早々ずっと実は国会関係がございまして、参りましたところは陸海空それぞれの代表の意味でそれぞれ一ヵ所、合計三ヵ所だけ行ったにとどまっております。
  408. 田畑金光

    ○田畑金光君 陸海空三軍の司令官としてまだそれぞれ一ヵ所しか回っていないということはどうも怠慢だと私は思うわけであります。予算を編成されるにしても、あるいは自衛隊の今後の運営管理をなされるにしても、もう少し実情を把握されなければ私は適切なる指導、指揮、監督はできないと、こう尽るわけです。防衛庁長官国会が終ったらずっと回られる御予定ですか。それと、もう一つ重光外務大臣、あるいは一萬田大蔵大臣、河野農林大臣等はそれぞれアメリカその他を視察されるようですが、防衛庁長官としてはアメリカなんかにおいでになる予定等はないですか。
  409. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) アメリカ等外国に行く予定は、全然そういうつもりはございませんし、まず第一、何よりも今おしかりを受けました隊内の各方面の実情を視察したいと思っております。
  410. 田畑金光

    ○田畑金光君 初めて防衛庁長官になられて三ヵ所御視察なされたそうですが、どういう印象を受けられましたでしょうか、承わっておきたいと思います。
  411. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) 各自衛隊の部隊の人たらがいろいろの制約条件の中にあって非常な苦心をしながらその職務に精励しておるということを、そういう感恩を持っております。
  412. 田畑金光

    ○田畑金光君 高碕企画庁長官にお尋ねいたしますが、長官自衛隊等を視察なされたことがありましょうか。
  413. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 私は国務大臣に就任してからはまだ一ぺんも見る機会はございません。その以前には、木村防衛庁長官の時代にはときどきあっちこっちを見せていただいたことはございます。
  414. 田畑金光

    ○田畑金光君 高碕長官にお尋ねいたしますが、先日来のお話を承わっておりますると、防衛六ヵ年計画のあり方というものが国定所得との比率においては二ないし三%が適当であろう、ただしこれは過去の経験的な事実に徴してそういう結論を持っておる。正確には国富、国力、こういうものとの比較検討でなければ出てこない、このような御説明があったわけであります。お話の国富、国力の調査は目下やっておられるような御説明でありまして、近く結論が出るようなお話でありましたが、それはどのような機関でいつごろから開始なされておられるのか、いつごろまでにその調査が完了するのか、この際一つ説明を願いたいと思います。
  415. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) この国富の調査というのは実は昭和十年やった切りでありまして、それ以来行われていないのでございます。非常に私はこれは必要だという考えをもちまして、今回この予算にそれを、調査をする予算をようやく計上していただいた、こういう状態でございますから、なかなかこれはそう簡単にその数字は出ないのでございまして、非常な詳細に調査をいたさなければならぬ、大体の予定はどうしても二ヵ年くらいを要する、こういうふうに考えておりますが、これをなるべく圧縮して、短かい期間にこれを仕上げたい、こういうようなことでありまして、せっかく努力中でございます。
  416. 田畑金光

    ○田畑金光君 二年もかかるようではこれは容易でない仕事であるわけです。そのころはもう現内閣はどうなっているかこれはわからぬ情勢であろうと思いますので、企画庁長官はお話しになっておられまするが、やはり防衛計画というのは国富とか国力、国民生活に相応するものでなければならない、まさにその通りだと思っております。ところが、私も先般内閣委員として初めて練馬の陸上部隊を見たわけですが、これは直感しまして、直感ですが、一体あの装備、あの器材ですね、あの車両、あの給与、あの兵舎ですね、一体これは今日の国民の生活相応の身分であるかどうかということを考えたとき、私は非常な疑問を持ったのです。ここに私はむだがあるのじゃないか。一体これが国民生活に相応する自衛力であるか、私は深い疑問を持ったのです。防衛庁長官のお話は、大へん困難の中でよくそれぞれが努力しておられるという印象を受けられたそうですが、私はそういう簡単な印象じゃなくして、もうちょっと深刻な印象を受けたのです。今日のこの国民の生活を見たとき潜在失業者が一千万に上る、あるいは今日一番不況を叫ばれておる炭鉱関係を見た場合、深刻な生活のどたんばに追い込められているわけですね。こういう状況のさなかにおいてあの施設を見たときに、一体これが今日の国力に相応する軍備力であるか、自衛力であるかということを見たときに、私は大きな批判を持つわけですが、企画庁長官は、あれが今の国民の生活にふさわしい自衛力であるとお考えになられましたかどうか、この点を承わっておきたいと思います。
  417. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) お説のごとく一般貧困の巷に追い込められておるわれわれの同胞の上から見ましたときに、これは相当ぜいたくであるという感じはいたすのであります。しかしながらできますれば私はあの生活ぐらいまでにこの一般の人たちの生活を引き上げていくということは努めなければならぬ。で、それから考えましても、私はお説のごとく比較の問題でございますが、できるだけあの生活までに一般は引き上げたい、こういうふうな感じでございます。
  418. 田畑金光

    ○田畑金光君 高碕長官正直なところをお答えいただいてありがたく思っております。あなたの観察された通りに、確かに今の自衛隊の装備、給与その他の条件というのは国民の生活に比較すると数段高いところにあるのです。その点お認めになりましたから私も非常に同感であります。しかしそのあとは私は間違っておると思うのですがね。自衛隊条件が高いところにある、国民生活をそれに引き上げていこう、こういう努力をこれからなされるわけですが、逆ではありませんかね。私は国民生活がこの程度であるならば、むしろ自衛隊の装備その他に関しても、国民生活にふさわしい姿におくことが、私は国を守り国民生活を守る自衛隊でなければならぬ考えます。あなたの先ほど来のお話を承わっておりますると、国富、国力、国民生活にふさわしい限度自衛隊はおかねばならぬ、こういう観点に立って判断いたしましたときに、理論的な矛盾だし、どうもその点は経済企画庁長官のこれまでの御意見と食い違っておると思っておりますが、私はあくまでも国民生活に基準をおいた自衛力、自衛隊、こういうものを考えるべきだと思うのです。どうでしょうか、その点は。
  419. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 確かに私は御意見ごもっともの点があると存じます。しかしどの程度にこれを下げて、どの程度に国民生活を上げるというふうなことにつきましては、相当私は検討を要しますし、今日の自衛隊というものを、これは全体が義務としてでなく、募っておるわけでありまするからして、そういうふうな意味におきましても、ある程度の待遇というものについては考慮されなければならぬかと、こんなふうにも存じておるわけでありまして、この点はよくさらに一応検討いたしたいと存じます。
  420. 田畑金光

    ○田畑金光君 企画庁長官に、よくその点私の言うことが間違っているか、あなたの考えが正しいのか、よく判断をいただいて、今後の経済六ヵ年計画防衛六ヵ年計画をお作りになる場合には念頭に置いて仕事をやっていただきたいと要望申し上げます。そこで私は防衛庁長官にお尋ねするわけでありまするか、このような食い違いが出てくるというのは、そもそも今の自衛隊というものが国力に相応する自衛隊、あるいは日本政府の自主的な判断に基く自衛隊、こういう性格から逸脱していると私は見るわけであります。と申しますのは、それはすべての基準というものが、アメリカ援助によって、アメリカの指導によって、アメリカ軍事顧問団の関与によって作られ、また増強されつつあるところに私はこういう矛盾がきているのじゃないかと考えたわけです。これは昨日来の質問の中でもうすでに出たと思いますけれども、六月四日の朝日新聞の夕刊によりますると、会計検査院から指摘をなされた、それは要するに陸上自衛隊の冬の制服を買い過ぎて十年分以上のストックを持つことになった、総量七十二万着に上って、本年度の自衛隊員が十五万名にふえても今の給与方式でいくと十年間はもつというようなことが指摘されているわけであります。まことにばかげた話です。これは事実と反すると言われたらまたそれまで、ですけれども、とにかくこれが事実であるかどうかは別にして、これに類するものが多いということは昨日の質問の中から明らかにされたわけです。こんなばかげたぜいたくなまねをされていいんですか。国民の生活をあなた方はどう考えておられるかということです。私も常磐炭田にいる者です。そうして中小炭鉱の生活の困窮の姿というものをまのあたり見ているからそれだけ痛切に見るわけなんです。こういうところにむだがあるんです。国の富とか、国の力というものはこういうところにむだになっているんです。そうしてあなた方のお話を承わっておりますると、最近志顔兵は募集に対して五倍も十倍もふえてきた。従って志顔兵の募集についても苦労はしない、二十万名はゆっくり募集も可能である。なるほどそうかもしれません。それは食えないからですよ、失業者が多いから……、生活のよりどころをほかに求めることができぬから自然に自衛隊に応募者がふえてきているのです。これはもはや今日だけでなく、戦争中、戦争前の日本を見れば、今さら私が申し上げるまでもなく、杉原防衛庁長官はよく御理解のことだと考えるわけなんです。こういうことをいろいろ考えてみましたとき、皆さん方のおやりになっていることも非常にこれは反省しなければならぬ点があると思いまするが、その点どういうふうな気持をお持ちでしょうか、お伺いしておきます。
  421. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) ただいま田畑委員のおっしゃいました中で一つの事実に関する部分で一つ申し上げておきたいと思いますことは、新聞に出ておった冬服の問題というものはこれは事実と違っております。これはアメリカ側からの冬服の相当な供与を受けたことをさしているものだと思います。これを防衛庁が有償で買ったというようなことではございません。  なおその点以外の点について従来物資の調達筆について、いわゆる不要不急のものを買ったというふうなことの非難、これは故意にそういうものを買った、そういうことをするはずはございませんが、昨日もその点御説明申し上げたのでございまするが、編成装備表の検討が一つ、それから実際の使用の実情等について検討が足らなかったという結果がそういうふうになっている点を非常に遺憾に思います。それに対しましては十分これが是正の措置をとってきているのでありますが、全般的に見て貴重な国費の適正な、また効率的な運用ということをやるのは当然でありまして、御趣旨の点はよく体していきたい、こう考えております。
  422. 田畑金光

    ○田畑金光君 深追いはいたしませんが、新聞記事の内容が全部該当するとかしないとかというのは問題の外です。私の申し上げたことは、私もかつて五年ばかり兵隊におりまして、関東軍におりまして、戦争前の日本の軍隊というものを見ているんです。あの当時に比較しまして、敗戦後の日本において日本自衛隊ができた、どのような装備を持ち、どのような部隊の生活をやっているのかと私は関心を持って見ましたが、これは戦争前と今日の世界情勢、その中に置かれた日本の情勢が違うといえばそれまでだけれども、少し私はぜいたくが過ぎわせぬかと私はこう見たのです。そこでこれは先ほど申し上げたように、いろいろ考えているのですが、あのたくさんの車両を見ても、あの喧々たるりっぱな通信施設を見ても、あるいはバズーカ砲を見ましても、機関銃を見ましても、これは堂々たる装備です。けっこうなことです。なるほどこれをMSA協定を読んでみますと、付属書のCというところに「両政府は、標準化の原則から生ずる利益を認めて、型及び品質に関し、この協定に基いて供与される援助の効果的な使用及び維持を促進する程度の標準化を達成するため、実行可能な共同措置を執ることが望ましいことに同意した。」とにかく標準化ということが両国政府の取りきめでお互いに認め合っているわけなんです。そこで兵器も、あるいは服装も演習の器材もすべてアメリカの標準と申しますか、アメリカの規格に合わされて作られているわけですね。服装を見てもそうでしょう。それからその他の今言った武器一切を見ましてもそうなんです。これはどうでしょうか。私はまあその辺はわかりませんが、もう少し日本独自のもの、これが技術の面でありますと日本の独自というものではないけれども、体格が違うのですから、それから服装なんかにしましても、これは正直に言ってあまりどうも長い間のアメリカの駐留軍の服装を見なれている国民は、あの服装はあまり印象がよくないと私は思うのです。私個人の印象かもしれませんが、こういうようなこと等についてもう少し独自なものということはお考えになったことはありませんか。
  423. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) 装備品等につきましてはこれは実際上今までアメリカ側からの供与が大部分になっておるわけでありまして、日本側で調達する分につきましては、日本側でやっておるわけでありますが、実際上アメリカ側の供与を受けているものが主要な装備の大部分、こういうわけでございます。なお先ほど装備局長から豊田委員に対する答弁の中で述べておりましたが、日本側でも今後たとえば特車等で日本の体格等に合うようなもの、これを作る必要があるということから、これも一挙には参りませんので、今年度試作にかかる、こういうことになっております。これは財政負担等の関係からいたしまして、今まで何でも日本側としていわゆる自主的にやる。そうは一挙に参りません。参りませんけれども、ただいま申し上げましたように、逐次そういう着想を持っているわけでございます。しかしこれは実際問題といたしましては、私はなかなかそう一挙にいくものではない。財政負担等もございますので、一挙にいかないと思いますが、そういう着想を持っておる。そういう方向で行っているということは申し上げることができると思います。  なお服装の点についてであります。これについては今までいろいろ御批評を受けております。受けておりますが、それも私就任しましてから、いろいろ制定の経通算も聞きましたのでありますが、あれも相当あれするのについては相当のいろいろの意見を聞いてそうして研究の結果ああいうようなふうになっておるようでございます。そしてまた今、軍隊の服というようなものは、ヨーロッパなどの例を見ましても、かなり国際的になってきておるということは事実でございまして、必ずしも日本だけがあの何になっておるというようなことには、私はヨーロッパなどの実情を見ましても、そうは思いません。しかし今までいろいろ国会でもそういう御意見はたびたび聞いております。その点は私そう、ヨーロッパなどに参りましても、もうほとんど型は同じなのが非常に多い。そういう点特に、それがためにどうというふうには服装の点は考えておりません。私は服装の点はそういうふうに思います。
  424. 田畑金光

    ○田畑金光君 今の長官の御答弁の中にもありましたが、特車という書案が出ておるのですね。これは吉田内閣の時代から、国民をごまかすための言葉だったのです。だからごまかしの軍隊だという意識が強く残っておるのです。皆さんは、もう憲法を改正して、堂々と軍備を持とうというお考えに立たれるならば、現行憲法のもとでも、自衛のための軍隊が可能であり、自衛のための戦争も認められるという立場をとっておられるならば、特車などというこのごまかしの言葉というものも、少しお考えになったらどうでしょうか。  それからもう一つ、この隊員の階級なんか見ましても、陸将だの、陸将補だの、一等陸佐、二等陸佐、三等陸佐、まことにどうも品位がないですね。こういうような点は、防衛庁長官としてはどのようにお考えになっておるのですか。
  425. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) 御意見の点は十分に拝聴いたします。
  426. 田畑金光

    ○田畑金光君 御意見の点は十分にというのでなく、どういうようにお考えになっておるのですか。こういうようなごまかしの言葉はなくされたらどうですか。特車だなんて、新聞なんかは全部戦車と書いているのですよ。(「大将大将」「杉原さん、元帥になるよ」と呼ぶ者あり)戦車と書いてあるのに特車と呼んでいる。陸将だなど、そう言ったって、統合幕僚会議の林議長がワシントンにおり立ったときには陸軍大将の礼をもって十数発の礼砲をもって迎えられている。向うは陸軍大将として遇されておる。国内ではまことに陸将だの、陸将補だのまことに何のことやらわからないのです。もう少しこういうような点も考えられたらどうかと私は思うわけです。  それからこれも質問の中にあったわけですが、政治優先の原則の確立の問題でありますが、憲法六十六条によりますると、「内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない。」また防衛庁設置法第三条によりますると、防衛庁長官国務大臣であるということ、自衛隊法の第七条によると、文民である内閣総理大臣自衛隊の最高指揮官であるということ、まあこういうようなことで一つの機構と申しまするか体制は武力に対し政治優先の原則というものが掲げられているように見受けられます。問題はこういう思想というものがほんとうに末端まで、あるいは自衛官の最後の一人に至るまでどのような指導方針のもとに、教育のもとに徹底させておられるか。この問題をまず伺っておきたいと思います。
  427. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) その点は日本の新しい自衛隊を作っていくに当りまして、非常に大事な点だと思います。そうしていわゆる軍が政治を支配する、それに関与するというようなことは、最もこれは慎しむべき、慎しむべきというよりもそうあってはならぬことだと思います。従いまして隊員の政治……選挙権の行使だけは別でございますが、それ以外の政治行為というようなことは厳に避ける、あくまでも隊務に専念すると、こういうことでいたしております。
  428. 田畑金光

    ○田畑金光君 お尋ねしたいことは旧陸海軍の出身がどの程度現在の自衛隊の尉官、佐官、将官に入っておるか。  もう一つは、この防衛庁設置法第十九条によると、内務部局に自衛官の勤務ができるようになっておるんですね。この点は非常に国会でも論議のやかましかった点でありますが、現在制服の自衛官がどの程度内部部局に入り、どのような仕事を担当しておるのか、この辺を一つお聞かせ願いたいと思います。
  429. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) その点詳細は政府委員から説明いたさせます。
  430. 増原恵吉

    政府委員(増原恵吉君) この内部部局に制服が勤務することができるというのは、保安庁時代からの規定でございます。しかし現在に至るまで内部部局には制服の自衛官は勤務させるということにはいたしておりません。
  431. 田畑金光

    ○田畑金光君 一人もないのですか。
  432. 増原恵吉

    政府委員(増原恵吉君) ございません。
  433. 加藤陽三

    政府委員(加藤陽三君) お尋ねの第一点の幹部自衛官の中におきまする旧陸海軍の将校の数でございますが、陸上自衛隊は、本年二月一日現在の調べによりますと幹部以上一万三百四十七名のうち三千六百六十六名、約三五・四%であります。海上自衛隊は、三月三十一日現在の調べでありますが、三等海尉以上の現員二千二百三十七名のうち千九百三名、八五%であります。航空自衛隊は、これも三月三十一日現在の調べでありますが、幹部千二百九十一名のうち七百五十六名、五八・六%、こうなっております。この旧陸海軍の軍人と申しましたのは短期現役を除きました現役で准士官以上のものでありまして、技術、主計、衛生等の各将校も含み、さらに陸士の五十九期、海兵の七十五期、これは任官はいたしませんでしたが、候補生でありました、こういうものも含んだ数であります。
  434. 田畑金光

    ○田畑金光君 今の説明でわかり、致したが、すでに幹部を見ますると、陸上自衛官において三五・四%、海上自衛官においては八五%が旧海軍軍人が占めている。航空自衛隊においては五八・六%占めている。これはもうほとんど旧陸海軍人が現在の自衛隊の幹部を占めているというわけでありまして、先ほどの政治の優先原則がどのように確立されているか。この私の質問に対しまして、杉原防衛庁長官は選挙権の行使以外に政治に関心を持たすことをやめさしておる、このような御答弁であります。私は昔の片寄った教育が、結局あの軍人の政治干渉を招き、国をあやまった最大の原因だと見ているわけであります。政治優先の原則を確立するためには、そういう軍人の目を政治的な面から遮断することによって私は達成できないと思っております。むしろもう少し民主主義的な訓練と申しまするか、新しい社会における政治というものと、軍との関係、こういうような根本的な問題等について理解を深める、教養を持たせる、こういうことなくしては、またあやまれる一方的な教育によって、あやまちを犯すことを、私はおそれているわけなんです。お聞きいたしますると、今の自衛隊の精神的な指導というものは、反共的な教育一色によって指導されているように承わっております。反共的な教育を一方的に指導されている。そうして一方を見ると旧軍人の幹部が今日の自衛隊の大半を占めている。またこれがおそるべき偏向的な思想の中に追い込む危険性があるのではなかろうかと、私はこう心配しているわけですが、その点はどうでしょうか。
  435. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) 今、旧軍人が非常に多いという点の御質問でございますが、これは旧軍人の採用につきましてはきわめて慎重な基準のもとに採用しているものであります。そして現実に採用されてやっております者は、私は実情を実際知っておりますが、この人たちは過去の失敗という点などに反省は非常に強く、実によくやっておると私は思っております。それからできるだけ教養を広く持つということが基盤、じゃないかというような御意見、これはその通りごもっともだと思います。そしてこれは学校及び郷隊の教育につきましてもそういう点を主にしてやっております。
  436. 田畑金光

    ○田畑金光君 防衛庁長官に伺いますが、自衛隊法の第六十一条を読みますと、「政治的行為の制限」というのがあります。これと国家公務員法の第百二条を見ますると、同じく国家公務員の「政治的行為の制限」というのが出ておるわけなんです。内容をのぞいてみますると別段の違いはないのです。そうしますと、政治的な行為の制限というものは、自衛官の場合も一般国家公務員の限度であると解釈してよろしいかどうか。それとも自衛官の場合は一般国家公務員の場合よりも政治的な行為がより強く厳重に縛られていると解釈しておられるのか、これを御説明願いたいと思います。今申し上げたように法律規定、条文の体裁から申しましても何も違いはないのです。一方は政令による、一方は人事院規則による、これだけです。その点どうでしょうか。
  437. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) その点から申しますとおおむね同一でございます。それから政治に対する関与ということを定めるという点からいたしますと、実はこの防衛庁の内部の機構等におきましても実はそういう点をおもんぱかって一項を設けておるわけでありまして、そうしてその運用においてもそういう点特に留意して実際にやっておるわけであります。
  438. 田畑金光

    ○田畑金光君 機構の点も運用の点もそのようなことをおそれて運営をなされておられる、こういう御説明でありまするが、具体的に申しますと、どのようなことでありましょうか。さらに私は重ねて申しますが、選挙権の行使以外は許されない、こういう厳重な指導をやっておられるようでありまするが、選挙権を行使するにしましても自主的に選挙権の行使ができるような基礎的な教育というものが施されねばならぬと思うのです。そのような機会等を与えられておるのか、その点伺っておきます。
  439. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) それはもう選挙権は全然自由なんで、それは特に選挙権の行使を拘束するようなふうなことは全然やっておりません。
  440. 田畑金光

    ○田畑金光君 私の御質問いたしておるのは別に選挙権の行使について民主党に入れろと、こういう制限をやっているか、拘束をやっているかというわけではないのです。民主党でもいい、自由党でもいい、社会党でもいいが、少くとも政治的な判断力、みずから正しく行使し縛るような、たとえば基礎的な教育と申しますか、あるいは軍人である前に、自衛官である前に一個の人間として人間的な教育という面をどのように施されておられるのか、このことをお尋ねしておるのです。
  441. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) その点は今までもたしか御説明申し上げたと思いますが、服務の本旨というものがちゃんときめられておって、それに従ってやっておりまして、直接に自衛隊員としての任務というもの、それからそれに直接関連する必要な一致団結とか、あるいは厳正な規律の保持とかいうことともに一般人間としての基礎的な徳操の涵養、人格の尊重というようなことは特に重きを置いてやっておりまして、それは学校においても部隊においてもそういうことを主眼においてこの服務の本旨に従ってやっておる次第でございます。
  442. 田畑金光

    ○田畑金光君 それじゃ一つお尋ねしますが、あなたは第五十三条の「服務の本旨」をお話しになったのだろうと思います。実はこの間私も練馬部隊へ行きまして、おそこは軍管区の司令部もあるのですね。司令官というのか、それはまあ陸将でしたかにお尋ねいたしましたが、どういう指導方針のもとに教育をおやりになっておられるのか、たびたびお尋ねいたしましたが何らのお答えも得られなかったわけなんです。事実。それから五十二条の趣旨に基いて、服務の本旨に基いて教育をやられるといっても、これは旧軍人の教育以外何も出てこないように私は見るのです。部隊に参りまして視察しましたこの印象は、かつての旧右翼の学者を呼んで話を聞くとか、こういうことはよくやっておるようです。それからまた旧軍人や、あるい巣鴨の戦犯の残された遺書とか、こういうことは奨励され、また熱心に読まされておるようですが、私はこれだけの基礎的な教育では、ほんとうに一個の自衛官である前に一個のりっぱな日本人としての教育というものは欠けるのではなかろうかという心配を持っておるんです。聞く者が右翼の思想であり、読む者が古い右翼的な思想によって終始終っていたとすれば、私はこれは少し危ないのじゃないかと、こう思うのです。しかも司令官の方でも、教育の方法については確たる自信を持ってこういう方針でいっているのだという御説明も聞きかねる。それでこの点を私は強く防衛庁長官にお考え願って、再びあやまちを犯すことのないようにやってもらわなければならぬと、こう考えまするが、私の今申し上げたことが間違っておるかどうか、隊内の、部隊の中の教育はそれとは違ったものであるという実証があるのかどうか、お示しを願いたいと思います。
  443. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) 田畑委員の御意見の御趣旨はその通りで、一つの非常に偏したものであってはならぬ。ただどこまでも、それと決して矛盾することじゃない、むしろ根本は、しかし自衛隊員としての使命という点だけは、あくまでもそこのバック・ボーンだけは、これは確立していかなければならぬ、そしてその根底においては、人間としての広い教養を持つということが眼目だと思っております。
  444. 田畑金光

    ○田畑金光君 自衛隊としてのバック・ボーンを教えていただきたいと思います。
  445. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) 申すまでもなく、これは自衛隊法に明示せられておりますところの使命でございます。
  446. 田畑金光

    ○田畑金光君 この辺で質問は終ります。  まあ長官に特に考えていただきたいことは、答弁を求むるよりは、私はよほど注意して運用してもらわぬと、間違った方向にまたいくようなことがあっては、これは大へんなことになりますので、よく一つ賢明な長官でありまするから、実情を視察されて、そうして間違いのない指導をやってもらわなくちゃ国民が大へんである。このことだけを申し上げておきます。
  447. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 菊川君の持ち時間はあと五分でございますから……。
  448. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 きのう要求いたしました資料が届きましたので、この資料について二、三お尋ねいたしたいと思うのですが、契約を、ほとんど随意契約、指名契約になっておるわけでありますが、特にまあ機械類、あるいは通信機械等につきましては、これはまあ特殊の会社、メーカーでなければ困難だと思うのでありますが、繊維品でありますが、夏の制服であるとか、毛布であるとか、冬服、外套、敷布、こういうのはほとんど今、日本の繊維産業というのは世界の水準、これだけは抜くことになっておるのでありますから、こういうものの納入につきましては、やはり公開入札制度をおとりになった方がいいのじゃないかと思うのだが、しかも代表的なこの会社に少しずつ、一例を申しますと、毛布にいたしましても、同じ規格の毛布の東洋紡績あるいは鐘紡、あるいは東亜紡織という工合に指名契約をやっておられるようでありまするけれども、一体これはどういう考えからこのような購買方法をとっておられるのか、一つ伺いたいと思います。
  449. 久保亀夫

    政府委員(久保亀夫君) ただいまお尋ねの一般論といたしましては、もちろんできるだけ一般競争、それから一般競争に適しないものは特定の優良なメーカー、あるいは特定の規格のものを作るメーカーを選んで指名競争をさせる。ただ、やむを得ない場合、特に技術を要するとか、そういった場合に随意契約と、こういう建前にいたしておるわけでありますが、今お話しの衣料、繊維製品等につきましては、私どもは実は予備隊が発足いたしましてからごく初めのうちは一般競争、公開競争ということをいたしておったのでありますが、この場合どうも中小メーカー、あるいは粗悪な品物が入るといったようなことで、むしろ問題がございまして、これをできるだけ範囲を広くして指名競争にする、物によりますが、八社とか十社とか、十数社の指名競争で競争入札させる、これを実は今日では原則といたしております。ただその表の中で、あるいは説明が不十分であったかと思いますけれども、指名から商議、あるいは一般から商議といったような書き方をしてございます。これは指名競争をいたしまして、こちらで予定価格を作りまして、指名競争をいたします。そのときに予定価格以下に札が落ちない場合がございます。これは繊維製品等につきましては、非常にそういう場合が多いようであります。そういった場合に、これは会計法の原則に従いまして、最低札とネゴシエーション、廟議をいたしまして、やはり形式は最後は随意契約ということになるのでありますが、しかし当初ばあくまでも指名競争ということでスタートしまして、随意契約になる。こういう場合が繊維製品、あるいは石炭、あるいは最近は石油等につきましてこういった事例が非常に多いのでありますが、一応建前は指名競争ということにいたしております。一般競争によるものがある程度少くなっておりますのは、初めに申し上げたような理由であります。  それから今、毛布の例で仰せになりました少しずつということでございますが、これは少しということでもないのでございますが、ある一定の期間に毛布をたとえば数万どうしても入隊者のために用点するといったような場合に、一社ではとうていこれは受注できないというような場合が少くありませんで、実は特に防衛庁のために会計法に特例を設けてもらいまして、複数入札と申しますか、入札箱を五つも六つも作りまして、少しずつ入れまして、それで総数をある一定の、時期に満足させるというような方法を実はとっておりまして、そういった方法で毛布等については調達しておる場合が多いのでありまして、ただいま仰せの場合も多分そういった方法で入札したのであると思います。  ただいまお尋ねの点につきましては、以上お答え申し上げます。
  450. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 たとえば、これはむずかしい機械の点なんかについては、われわれ専門でございませんので、よくわかりませんから、これは指名あるいは随意も、これはここで突っ込むことはできません。また時間もありませんし、具体的に一例をあげてみますると、ここに提出された資料の中で毛布、これはしろうとでもわかるが、同じ九千枚の毛布を、東洋紡績にも注文しておる、これは規格も一緒だ。毛・スフ混紡、同じくそれから毛布の毛・スフ混紡を東亜紡織に九千枚注文しておる。しかも値段も一緒ですよ。それから同じ毛布八千枚、これは鐘紡にやはり指名入札しておる。このようなメーカーが八千枚や九千枚の毛布を一括して納められないというわけはない、こういうやり方というものは、そもそも談合の余地が、こういうメーカーに顔を出して、この程度で納めようじゃないかという談合の余地があると思う。自衛隊に品物を納めさえすればもうかる、まず商人の自衛隊殺到ということを、これは特に皆さんの前でこういうことをいうのは、まことにいやみをいうようでありますけれども、将来に向ってああいう事故が起らないようにと思ってこういういやみをいうのでありますから、この点を一つ考えてもらいたい。同じ九千枚を買うのに、しかも小さい商店から九千枚というのだったら話がわかる。日本の代表的な紡織会社から毛布を八千枚、九千枚と分けて買うようなことはちょっとだれが考えてもおかしいと思います。この点について一つ伺っておきたい。僕はわからぬが、ほかの者、わかる者だけ、われわれしろうと目で見たっておかしい、一つ御答弁願いたい。
  451. 久保亀夫

    政府委員(久保亀夫君) ただいまの点はちょっと千枚以上抜きましたので……二つ理由があると思います。一つは日付がそれには入れてございません。あるいは九月、十二月、三月に買ったものもございますし、期限の都合によってはただいま申し上げました複数入札、期限がある程度迫ってきたものにつきましてはやはりストックのあり高等を見まして複数入札をやりますので、そういったかげんでありまして、別に特に分けてやるということは、いたしておらないつもりでございます。
  452. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 菊川君、もうそこで一点だけにして下さい。
  453. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 わかりました。それじゃもうあと時間を委員長やかましく言われるので、最後にお伺いしておきたいのは、非常にりっぱな刊行物をいただきましたが、防衛年鑑刊行会というのがこれだけの資料を提供された以上防衛庁とは非常に密接な関係にある会が発行されたと思いますが、この点について増原次長から一つお答え願いたい。増原さんが刊行の言葉を載せておられる。資料を見まして、非常にいろいろな資料が載っております。これは私らもけっこうだと思います。あなたの方の防衛庁の官房が監修になっておる。ちょっとこれを見まして僕ら非常に不愉快に感じますのは、御用尚人にずっと広告さしておる、防衛庁に納入しておる御用商人がずっと広告しておる。ほんとうに今のを刊行しようと思ったら……御用商人から召し上げてきて刊行する刊行物とちっとも変っていない。だから自衛隊そのものはくさっているということをいう。今の斜陽族のやることと同じことなんであります。こういうものを配って、しかもこの資料はよほど君の方が何だろうと思います。関係の深いところでなければこういう資料を提供しっこない。われわれの方から要求したってこういう資料を提供しっこない。普通のところじゃない。しかも、あなたが刊行の言葉をここに載せておられる。それに御用商人がずらっと広告を出して配っておる。今の自衛隊がほんとうに国を守る筋金が入っていると言えるか、この点について一つはっきり答弁を願いたいと思います。
  454. 増原恵吉

    政府委員(増原恵吉君) これは自衛隊現状といいますか、防衛に関する何か一つのまとまったものを作りたいという希望を刊行者から申し出ております。現在までそういうものがございませんので、いろいろ部内でも相談をしました結果、正確な資料に基くそういうようなものがあることがいいだろうということで監修ということを認めまして資料の監修をいたしたわけであります。それにつきまして発行の部数というものは相当たくさん出るという見込みは一応ございませんので、強制にわたるようなことは絶対にいたさないということで広告を取るという話は聞きました。私どもはそれについては特別の異議を申さなかった。御要求がありまして各委員に差し上げるということにいたしたわけでございます。
  455. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 この点大事だからもう一つ言わして下さい。あなたの言われるように、こういう書類はそんなにたくさん売れない。たくさん売れなければそんなところへ広告を載せたって広告価値はない。発行部数がたくさんあってこそ広告価値がある。これは増原さんわかるだろう。そんな広告価値のないところにこんな大きな広告を出すということについてはくさいということはわかっているだろう。しかもこれはあなたの方の防衛庁が資料の提供をしてしかもそこへ御用商人の代表的な、今度船をこしらえるといったようなときに船会社、代表的な造船会社がずっと書いてある。燃料は石油会社がずっと響いてある。それから機械類については各電機の何が書いてある。これはどう弁解されようとも今の斜陽族が会社の立場を利用してそこで資金、飲みしろを集めてやる刊行物とちっとも変っていない、率直に私は申し上げますが……しかも堂々と前長官の木村さんの写真から吉田総理の写真まで載せて配られておるのですが、こういうものにあなた方がこういう貴重な資料を提供されたということは私はどうかと思うのですが、そのように宣伝したいというなら、ほんとうに純粋に国を愛するというなら、こんな斜陽族のやるような刊行物でなしに、それならばそれだけの費用を取ったって……、先ほど会計検査院からいろいろ弾劾もされておる、それを節約したらそんな費用くらい出てくるはずです。こういうことをやって、これはもうほんとうに今の日本の一番悪い風潮である。斜陽族階級が自分の地位を利用してそうして業者から金を集める手段ですよ。それの一役を買っておる。これじゃどうもせっかくの自衛隊も現地でまかり間違ったときには国民からいろいろのことを言われながら国を守るための訓練を受けておる前線の青年諸君にとってはこんなことではまことに気の毒だ。この点において杉原さん今後こういうものをやっていくつもりか、そのつもりなら堂々と防衛庁はそれだけの予算くらいは要求して、これだけ豊富な予算があるのだから、ああいう不要なものを買ってそうして会計検査院からしかられておる、それを節約して刊行されるように願いたい。それで、全然これがほんとうの個人がやったというならまだいいですけれども、これは単なる個人じゃない、僕ら行ってこういうものを刊行するから資料をよこせと言ったってあなた方の方はとても応援はできない、密接なる関係のある刊行会の一会員でありますからと言って言いのがれはできても、それはしろうとをごまかすことはできるでしょう、裁判所に行って弁護士をつけて抗弁することはできないだろうと思う。常識論としてそういうことはできないと思う。杉原さん、こういう点について今後の心がまえを一つ伺いたい。
  456. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) この防衛年鑑につきましてはこれは私これを見てどんな経緯でこれができたかということは特に部内でも聞いたわけでありますが、この経緯等につきましては別段これが何かくさいところがあるなんというふうなことはないものと私は確信いたしております。そうして防衛庁でこれらの編集に協力した点は、先ほど増原次長が申しましたように、防衛庁の実情について国民の間にできるだけ知ってもらいたい、もらうようにしたいという一念にほかならなかったことだと思います。今菊川委員から御質問の点は、将来こういうことをします際には十分考えの中に入れてやりたいと思います。
  457. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 普通の広告が出ておるのだったらそんないやな感じはしない、防衛庁の大口納入者の広告をみなとっておる。普通の業者であったならば、業者というものはそろばんが高いので、何ら関係ないものだったらそういう売れぬようなものにこんな大きな広告をしっこない。くどいようでありますけれども、やはりそういうところにどうしても変な因縁もできる。あなたが答弁されたし、それ以上は私深入りしませんけれども、そういうところから、とかくの事故を起すので、あのように規律の厳しかった旧陸海軍でさえもシーメンス事件を起してみたり、戦争中は起しておっても、あと国会が追及をする元気もなくなっておったから、ようせなんだから大きな事件はなかった。だから特に現在におきましてはそういう危険が多分にありますので、一つ十分この点だけは改心されて、今後そういうような事件もないように、この点については特段の御注意をあなたに特に払ってもらわなければ、これはもう税金を納める国民立場からするとたまったものじゃないと思うのです。この点あなた一つどう考えますか。
  458. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) その点はただいまおっしゃいましたところと私も全然同感でございますから、十分注意してやっていきたいと思います。
  459. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 私は一昨日の憲法に関する質問のところで、法制局長官から交戦権の問題についての明確な答弁を得たわけであります。つまり自衛のための侵略の排除であって、交戦権は認められないのであるからして、従ってその戦争は戦時国際法上の戦争にはならぬという結論に私はなると思うのです。もしそうだとするならば、侵略を排除するための日本側で行う武力行動は単なる武力行動であり、決して戦争の範疇に入るものではないということになると思うのです。この点について防衛庁長官はどのようにお考えになるか、お答えを願いたいと思います。
  460. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) 非常にむずかしい問題でございます。国内法と国際法と相交錯する点で、第一この国内法上からいたしまするというと、あくまで自衛権の行使としての自衛行動権とでも申しますか、そういう範疇に入るものであると思います。一方国際法的に見ますというと、その原因のいかんにかかわらず、一度ここに敵対行為というものが発生いたしますというと、また敵対行為でなくても、あるいは日本はしなくても、向うから宣戦というようなことをすれば、それによって自動的に国際法上は戦争状態が発生するというようなことになって実に奇妙な現象に相なるわけであります。その辺のところを国際法、国内法を通じて法理的に説明することは私には非常に困難でございますので、憲法上からいたしますれば、やはりこれは自衛のための行動ということに、法理的にはそういうことに相なるのだろうと思います。
  461. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 自衛のための行動であっても戦時国際法上の戦争ではない、つまり交戦国としての権利日本側においては持たないのだということになると、日本側行動は単なる武力行動だと、こういう結論になると思うのです。戦時国際法上の交戦国としての権利を持たないことになる。従って日本の場合は単なる武力行動を行なったにすぎないということになる。単なる武力行動です。武力の行動、力の行動、侵略を排際するための武力行動だけだ、こういうことに結果はなるわけであります。そうなりますと、自衛のためという、その自衛の観念までが非常におかしいことになると思うのです。私はあなた方の方の考え方を助けようと思って質問するのです。その自衛そのものがこれまた国際的にはきわめて奇妙なものになるのではないか。従って、私は憲法の解釈に戻ってそういうような見解に到達するものとするならば、やはり憲法は文字通り論理的にも文理的にも正しく解釈された解釈というものが正しいのではないか、こういう結論に達せざるを得ないと思いますが、防衛庁長官としてはどのようにお考えになりますか。
  462. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) これは単なる武力行使としての事実行為というだけじゃなく、法律的に見まして、これは国際法上からいたしましても、自衛権の行使ということに相なるのだと思います。
  463. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 私がお尋ねしているのは、交戦国としての権利日本側は認められないわけですな。一昨日の法制局長官の答弁によりますと、交戦権は認めないということになっております。そうなると交戦国としての権利が認められないのだから単なる武力行使だ。従ってその自衛そのものも、これもまだ国際法的にはかなり疑問があるのではないかという疑問になるのではないかと思う。
  464. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) その点は私はこう解釈いたしますですね。あとの交戦権の方こそ非常に奇妙な現象を起すと思います。この国際法上からすれば、ここに敵対行為なり、あるいは宣戦とか、とにかく戦争を客観的に、これは戦争は言うまでもなく合意じゃなく一方的の意思表示だけで、あるいは敵対行為だけで、戦争状態というものは国際法上は発生してしまいますから、そうして発生すれば交戦国というものは、一つの戦時法上の平素に許されない特別の権利、つまり交戦権というものは、国際法上からすれば自動的にそれは持ってくるわけでありますから、その場合でも日本国際法上からすれば対外関係においては国際法上の交戦権は何も否定されていない、自動的にそれは国際法上からもって行使し得るという状態であって、一つ国内法からすれば憲法上交戦権の制約があると、こういう状態になるわけで、それだから外国に対しては交戦権を主張することは何ら認められていない。ただ国内法的にそういう憲法上の制約がある、ここに私非常に法理的に、法制的に説明するのはむずかしいと、私自身としてはそういうふうに考えます。ただそれがためにこの前の自衛権に基く行動、この武力行動というものがただ単に事実上の武力行使というだけでなく、これは国際法上も認められた一つの法的の自衛権の行使、こういうものだと私は思います。
  465. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 私も戦争状態が発生するためには、一方の国の、たとえば戦争の宣言である、あるいは事実的な武力侵略であるということがあれば、同時に戦争状態として認められることは、私も決して否定するものじゃないのです。その点は問題ないのですが、あなたの国内法的には交戦権を認めない、こういう考え方ですね、交戦権という言葉は国内法上のいろいろの戦争遂行に当って平時には認められないような諸権利も国家に認められることをさしているのだと思う。しかしそれは国内法的な交戦権の問題と同時に、国際法的な交戦権、そうして実際問題としては、国内法よりも国際法上の権利としての面が非常に大きな比重を占めていると私は思う。そう考えますと、国際法的には交戦権は認められないということになりますと、日本としての立場が非常に不利なことになる、こういう私は結果になると思う、理論上ですね。従ってそこに非常に矛盾が起きてくるのじゃないか、こういう工合に私は考えるのです。そうしますと、その根源として国を守るべき自衛の行動にしましても、国際法的には非常な制約を受けざるを得ない、こういうことを私はお尋ねしているわけです。その点を一つ
  466. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) それはその通りだと思います。従いましてその差異の点がこの自衛権の行使というものと、交戦権の行使というものと、比較して見ますとき、私が申し上げるまでもなく、交戦権の行使という範囲がずっと広くなりますから、その点において差異があると思います。
  467. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 その問題と関連して、先ほど外務大臣に私は自衛という言葉の意味するその内容についてお尋ねした。防衛庁長官もそばにいてお聞きになっただろうと思います。自衛という言葉がきわめてあいまいな言葉であり、一定の意味内容を持つものでないということが一応明らかにされたと思います。で外相は自衛という概念については最小限度の概念というものを、自分は考えているのだ。これは拡張解釈は幾らでもできる。しかし自分としてはあくまでも最小限度に自衛という考え方を考えたいというのが外務大臣の答弁であったわけです。で、最小限度に考えられた自衛というものを防衛庁長官としてはどういうように具体的に考えていられるか。それをお尋ねしたしと思います。
  468. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) 今のは法理論とともに、そうでない事実上政策上の二つの問題があると思うのですが、私は自衛権の観念というものは、法理上の観念としては、そんな茫漠たるものじゃないと思います。ただそれじゃどの範囲までだということは、ここに一つの事実行為が発生して、それが自衛権行使だといった場合に、その事実認定の問題では非常に違いがあると思います。そういう点でどこまでが具体的な場合に自衛権の行使が許されるかどうかということについて、いつも問題が起きるのだと思います。自衛権そのものは法理上の観念としてはそんなものじゃない。そしてそれがただこういうことはございましょう。従来の一般国際法上の自衛権の観念と、あるいは行使条件といいますか、それと国連憲章の五十一条の場合では、かなりそこに範囲の、ある面では広く、ある面では狭いと、そういう差異はございますけれども、一方重光さんが言われたというそのあとの自衛についてどういうふうなことを考えておるか、これは日本で今つまり自衛のために必要最小限度ということはどうか、こういうその辺のところをどういうふうに考えておるかというのであります。これは私やはり抽象論にならざるを得ないのですが、これは外部からの武力攻撃を排除するために必要最小限度、こういうことに法理的には解釈せざるを得ないと思います。
  469. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 自衛の法理上の観念は一応きまっておる。ただし政策的な面においてはそれは広くとも狭くも解釈できる、こういうお考えのようですが間違いないですね。
  470. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) これはつまり政策上勝手にというより、その置かれた時、場所等の条件によってそれが違ってくるだろうと思います。それからなお先ほど私この外部からの武力攻撃に対する云々とこう申しましたが、これは私はこの一般国際法の観念よりも、さらに日本の現在の現行法等を基礎にしての一つの概念構成上からそう申しておるのでありますが、自衛隊法などにいわゆる武力攻撃と限定してある、あるいはちょうど国連憲章の五十一条などに近いところだと思っております。
  471. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 法理上の観念としては一応きまっているという御答弁であったように思います。ところで法理上の観念として自衛というものがどのようにきまっておるのか、その概念の内容について、限界等について御説明を願いたいと思います。
  472. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) これは堀委員の方がよく御存じの通り、一般国際法の教科書にもよく書いてあることでございますから、急迫性の侵害に対してこれを排除する権利でございますから、これは御質問趣旨はそういう点にあるいはないのじゃないかと思いますが、なお御質問を待って答弁いたします。
  473. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 あまり議論めいたことはよしましょう。瞬間が、私にはもうあと十五分くらいしかないようですから、そういう法理論はあと幾らでも討論は機会があると思いますから、それは省略します。  先ほど田畑、委員との間の質疑応答の中に出て参りました自衛隊の教養の問題、あるいはその精神的なよりどころといったような問題について、私も少しお尋ねしたいと思います。私自身自衛隊の中でどういう教育が行われておるかは一つも知りません。ただわずかに二、三の知っている自衛官の人々から聞く程度であります。しかし現在自衛隊の中で行われているところの教育の方法にしろ、あるいはまたその自衛隊の精神的よりどころとしているところのものについても、私はちょっと腑に落ちない点があるのです。先ほど長官は立派な教養を与えるために教育をやっているのだ、こういうお話でありまするが、実際問題としてはたとえば共産主義に対する反対の思想を吹き込むとか、あるいはそれに類したようなことが大体において自衛隊の教育の基本をなしておるのではないかと思います。先ほど長官自衛隊のバック・ボーンということが必要なんだ、そのバック・ボーンというのは自衛隊法等に規定されておるところの使命に徹して行くのがバック・ボーンだ、こういう御返答だったと思います。あるいは間違っているかもしれませんが、大体私はそのように承わったのでありますが、その現在の自衛隊の精神のよりどころとしているものは何か、それからまたその教育の基本的な方向はどういうものかということについて御説明を願いたいと思います。
  474. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) 自衛隊の指導精神とでも申しまするところは、やはりこれは使命第一主義という、やはり使命に十分自覚して、自衛隊員となった以上その自衛隊の使命を十分自覚して、そうしてまた現実に今自衛隊に入ります人たちは教育の程度からすれば相当高い人たちですから、自衛隊を志望して来た人たちはそういう点をまた自覚し得るなににあるのでありますから、相当教養の程度は高いのであります。それをただいろいろの、特に強制的に何かの思想を押しつける、そういうことはあまりきくようななにじゃない、もっと高い教育程度にあるものがほとんど全部だと思います。それで、その第一は、やはりあくまでも自衛隊員になった以上、わが間を守るという自衛隊の任務を十分自覚して行くということは、これはどうしても考えなければならぬ、そうしてさらに、しかしその任務を果すためにも、根底においてはやはりこの人間一般の、人間一般としての教養と言いますか、信念を養うと言いますか、あるいはもっと深い、やはり人間としての基礎を養うということがやはり根底になくちゃならぬものだと思います。そういう点を特に中心にして教育にいたしておる次第でございます。
  475. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 人間としての立派な教養を身につけるような教育をやっていられる。片寄った教育はやっておられないというわけですね。しかし私聞くところによりますと、かなり片寄った教育が行われているのじゃないかと想像される。私は一々ノートを点検したこともなければ、あるいは教科書があるとするならば、その教科書を見たこともないのです。ただ私のかつての教え子たちが何人か自衛官に入って、昔のいわば少尉とか中尉とかいうものに相当する士官級の人々なんです。それぞれテーマを与えられて、そうして研究をやっているのだという話をやっておりました。しかしその研究の仕方は自由であるかというと、必ずしもそうではない。一定の方向に方向づけられた研究を行わざるを得ない。勢いその人の教養も片寄らざるを得ないというのが私ども二、三の自衛官に接して感ずる感想であります。私はそれでは本当の正しい人間の教養というものは得られないのではないかという工合に感ずるのです。従ってあなたが今立派な人間としての教養が得られるような教育をやっているのだと、こう抽象的にわ話しになっても、十分私には納得ができないのです 何といっても一番根幹の精神は反共精神だと思います。これが今日の自衛隊を貫く指導精神ではないかと思いますが、その点はどうなんですか。
  476. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) 自衛隊の使命という上から見まして、わが国を守る、そのわが国というのはあくまで民主主義の日本を守るということで、全体主義とかいうふうなことは、私いずれにしてもこれは最も自衛隊の使命から見て反するものだと思います。あくまで民主、主義の日本を守って行くという、ことを中心に考えている次第であります。
  477. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 民主主義日本の国を守るのだから、民主主義的な教育でなければならぬということは、何も私は反対しません。その通りでいいと思うのです。ただ円満な人格を養成するためには研究が自由でなければならぬと思う。よた共産主義になにも私は賛成せいという意味じゃないのです。共産主義に反対する人はしてもいい。しかし共産主義に対する理解がきわめて皮相なものだということを感ずるのです。もっと深い根底の上に立って共産主義を批判するというなら、問題は私はないと思います。ところがそうではなくして、私が接した限りの自衛官の人々の話によりますというと、きわめて皮相な共産主義に対する教育を受けているわけです。これではほんとうに共産主義を理解するということはできない。私は円満な人格というものは必ずしも共産主義に賛成することであるとは思いません。しかし共産主義というものはこういうものであり、またソビエトの国家あるいは中国というのけこういう政策を実施しているのだという現実の政策並びにその基礎となっているところの思想的な問題についての深い理解がやはり一方においては必要ではないか、そういう点において私は欠けているところがあるのじゃないかと思うし、それからもう一つ反共の精神を吹き込まれるばかりでなく、それに関連してきわめて右翼的な考え方がその中心をなしている。この点はかつての日本の軍部において行われた教育の仕方とほとんど同じではないかという感じを受ける。その点についてはどのようにお考えになっていますか。
  478. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) いずれの全体主義的ななには、自衛隊の隊員の任務と私は合わないことだと思いますし、また一方ほんとうに自分たちの使命を自覚するためには、その使命と反するものについてもそれを皮相なことではなく、深くこれをよく理解するといいますか、その深い理解の上に立って、また自分本来の使命の自覚ということがかえって固まるものだと思います。
  479. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 具体的な資料を持たずにこういう質問を申し上げても、これまた結局言葉のやりとりぐらいに終ってしまうので、大へん残念だと思いますから、この問題はまあこの程度にとどめておきたいと思います。次に、最後にただ一点だけ。これも田畑委員がたしか触れたと思いますが、政治と軍事との問題です。軍事が優先してはいかぬという田畑君の質問に対して、防衛庁長官も大体同感を表された。そのために十分考慮されていられることと思うのですが、しかし自衛隊がいよいよ増強される、そして一方では国防会議というような機関が設けられて経済計画に見合っての防衛計画等も作られて行く、こういうことになりますと、私はやはり軍事が政治に優位する心配は依然としてぬぐいされないだろうと思います。ことに陸海空の三軍の中において中堅幹部を占める者が、大体において旧軍人層であることは間違いないと思います。それらの点からも、十分これは長官の方において気をつけられないというと、かつてのばかばかしい軍事優先の日本を再現しないとも限らぬと思う。そこへ持って参りまして、最近の風潮は、軍国主義の復活への風潮が相当強く、政府の方でもそういうふうな風潮に対しては意識的にこれを促進するかのような気配えさ見られる。私はこういうような風潮に乗ってさらに自衛隊を中心とする日本の軍事あるいは軍事力というものが、非常に大きな比重を政治の上において占めてくるのではないかという心配を持っている。まあ防衛庁長官がいわゆる文官である、文民であるということによって、わずかに形式の上においてはそれを防いでおります。あるいはそのほかの最高幹部が大体旧軍人でない人が占めているということも承知はしておりますが、何しろ中堅幹部が旧軍人であり、そしてこういう風潮がどんどん助長されて参りますというと、心配、それは単なる心配であって、実際にはそういうことは起らないのだということになれば、私は問題はないと思いますが、ところがやはり心配される、ことに私は西ドイツの最近の風潮を考えながら、これをお尋ねしているわけです。西ドイツの再軍備がいよいよ認められて、御承知のようにナチスの旧軍部の人たちが続々と復活しつつあるわけです。まだドイツの軍事、あるいは軍事力というものが政治力に優位するという傾向は少しも見えておりません。しかし漸次そのような傾向に、軍国主義の復活と相待って、なりつつあるような感じがしてならないわけです。私は、そういうことを考えますにつけても、防衛庁長官としてもこの点は最も強く留意されて、そして軍事が政治に優位するということのないような状態をぜひ作っていただかなければならぬと思う。なお、私は、今同時にドイツが十万に国防軍が減らされた、そして一九二三年ですか二四年ですか、いよいよ軍隊が新しい発足をするというので、あのようなワイマール憲法下において軍事的な方向を打ち出したのです。ところがそれがだんだんにくずれて行ったということも、私は今思い出しています。そこで、私は軍事と政治との関係について最後に防衛庁長官の御所信のほどをはっきりと承わっておきたいと思うのです。  これで私は終ります。
  480. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) 今までの日本の過去を反省してみましても、国の運命を決するような重要なこととして、私は政治の軍事に対する優位というものは、機構の上においても運営の面においても、そうしてまたただそういった法律制度だけではなく、実際にそういう慣行というものを確立して行くという努力が必要なことだと思います。それからもう一つ私大事だと思いますことは、今の、昔の言葉で言いますと、いわゆる陸海軍、今は陸、海、空三軍、これの相剋というようなこと、これは私はもういけない、それからいわゆる武官と文官との相剋というような、こういう点を最も留意して行かなければならない。それらのことはこれは決して別々なことではないと思います。あくまでもそれらを総合いたしまして、先ほどおっしゃいました政治の軍事に対する優位ということは、これはしかし私一つはただ形式だけじゃいかぬので、その局に当るいわゆる政治家にせよ、それから文官にせよ、これがまた軍事的専門的な人たちのもつ役割についての正当な理解ということが私はぜひ必要だと思います。それを、かえってその辺のところを欠けば、私は結果は逆に行く傾向があるのじゃないか、そういう点をよく留意してやって行かなければならぬと思います。
  481. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 以上をもちまして質疑通告者の質疑は全部終了いたしました。本案に対する質疑は終結したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  482. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 御異議ないものと認めます。よって本案に対する質疑は打ち切ります。  お諮りいたします。討論に入ります前に、討論に対する御準備等もあると思いますから、約十分間休憩いたしまして、八時半から討論に入りたいと思いますがいかがでございましょうか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  483. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) それじゃさように決定いたします。八時三十分まで、休憩いたします。    午後八時二十三分休憩      ―――――・―――――    午後八時三十六分開会
  484. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 休憩前に引き続き委員会を開会いたします。自衛隊法の一部を改正する法律案防衛庁設置法の一部を改正する法律案防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案、以上三案を一括して議題といたします。  本案に対する討論に入ります。御意見のおありの方は賛否を明らかにしてお述べを願います。
  485. 加瀬完

    加瀬完君 私は社会党第四控室を代表いたしまして、ただいま議題となりました防衛関係三案に対しまして反対の意を表するものであります。以下理由を申し上げます。  反対の第一は、国際情勢の見通し及び国内情勢、国民感情の諸点につきまして政府と見解を異にするからであります。安保条約では漸増を期待するとしてあるのに、共同声明では一そうこれを義務づけたのではないか、こういう質問に対しまして、政府安保条約趣旨に基いて双方合点の結果である、こう答えられました。合意という言葉でありますが、この合点の内容には、当然日本の経済力または国力についての十分な説明防衛漸増の規模、日本の経済力と漸増規模のバランス、こういう問題が話し合いとして出され、かつ了解点に達していると見るべきであります。しかしこれらの点につきましては十二分質問したのでありまするが、的確な答弁は何ら得られないのであります。御承知のごとく安保条約の前文におきましても「直接及び間接の侵略に対する自国防衛のため漸増的に自ら責任を負うことを期待する。」とあり、また第三条には米国の配備を規律する条件は、両政府間の行政協定できめると行政協定のワクがきめられ、さらにその行政協定の中に合同委員会が設定されておりまするが、昭和二十七年二月十九日の衆議院予算委員会におきまして、時の政府は、本協定安保条約に基く事務的なものであり、もし国民権利を制限するような場合には、それに関する法律国会へ提出すると声明されておるのであります。しかし安保条約に伴う国民権利の侵害に対しまして、国民権利を擁護するいかなる法律もその後制定されておらないのであります。国土、国民を守ることではなくて、国土、国民をあげてアメリカへのサービス・オンリーに政府は奉仕をした、これが実態と判断をするのでございます。われわれはこのような自己の権利を守り得ないところの精神なき防衛というものは、存在を認めることができません。またMSA協定におきましても、昭和二十七年六月二十四日日本政府米国政府あて質問書におきまして五百十一条のA項(4)に関し、自己の防衛力を増進し、かつ維持するという要件は、日本については、国内の一般的、経済的条件の許容する限度内で、かつ政治的及び経済的安定を害することなくそれが実現されれば足りる、こう解してよいか。この質問に対しまして、アメリカはその通りである、こう回答いたしておるのであります。そうであるならば、アメリカに対する条約並びに協定の限りにおきましては、当然日本の経済条件はもちろん、政治条件も十分勘案されるべきであります。今まで政府は、アメリカに対し、どういう政治的安定と、経済的安定を主張してきたのか。この主張が根底にあるならば、軍事基地拡張反対の陸続として続く陳情、あるいは祖先墳墓地を慕う、あの血を吐く陳述を聞くならば、日米共同声明などというものはとても出せないと思うのであります。しかも国際情勢は冒頭に述べましたごとく、熱戦は申すまでもなく、冷戦すらやみ、平和五原則が打ち出され、日ソ交渉も開かれるとき、かつ日中人士の交流も始まり、安保条約のころの国際緊張というものは全然ないのでございます。この国際情勢の中に、相手なき防備の必要を政府が力説いたしましたならば、まことにナンセンスといわざるを得ません。われわれはこのような、ほうはいとして起っておる平和要求の国際情勢に逆行する軍備増強というものには、賛成することができないのであります。  反対の第二は、防衛計画の不確定という点であります。およそ一国の防衛計画するからには、自国に対する侵略の可能、その侵略予想国、侵略径路及びその方法、侵略使用兵器及び戦術、こういったものが種々検討をされ、その上に自国基本戦略が立ち、この戦略のもとに防衛計画が進められるのが当然であります。しかし、この点、政府の態度はまことに不明確であります。日本基本戦略構想ができていないはずはない。これは一体具体的にどういうものであるか。たとえばどこの国を対象に防衛計画を進めるのか。あるいは相手国と想定される国はどういう方法で、どういう兵器をもって侵略をすると思うのか。あるいはこれに対する防衛をどう考えるのか。共同防衛という立場からならば、アメリカ軍日本の分担の任務をどうきめるのか。指揮の統一の中心をどこに置くのか。動員計画というのが当然あるべきであるが、こはらは具体的にどうだ、こういう問題に対しましては、明確な答弁を得られないのであります。特に日米防衛関係につきまして、日本軍とアメリカ軍との共同防衛関係において、結局防衛の中心が航空兵器になるということから、当然アメリカの軍事主導権、あるいはアメリカ航空支配権、そういうものが優先するのではないか、こういう質問に対しまして、そうではないという答えは出てこないのであります。そうするならば、日本アメリカに対する協力というのは、アメリカ航空基地提供というものが一つ義務になるのではないか、こういう質問に対しましても、これを肯定するかのごとくであります。こういう情勢から結論いたしますると、現在進行しつつありまする日本防衛というものは、主導権を持っておるものはアメリカである。軍事戦略の基本策は日本にはまだない。アメリカ航空戦力のため、今後相当の基地提供もいなむわけには行くまい。また共同防衛の分担分は、日本の経済力を脅かすのではないか、こういう判断も出て参るわけであります。一言にして言うならば、日本防衛というよりは、アメリカ本位防衛が進められて、アメリカの第一線基地一本列島として防衛が進められておるということであるならば、日本国及び日本国民にとりまして、基本権利の侵害が陸続として起ってくる、こういう心配もあるわけでございます。われわれは、このような国にの利益を忘れての内容というものには賛成することができないのであります。  反対の第三は、日本の経済及び財政は、防衛負担力に耐え得ないという点であります。経済六ヵ年計画のワクの中で防衛六ヵ年計画を進めるのである、こう政府説明するのであります。それならば、基本の経済六ヵ年計画というものは確実に成功をするのか。その目標として示しておりますところの国民所得七兆三千九百億、消費水準が昭和二十八年に比して一一四・九%、こういう引き上げが可能であるか。こういう問題について、二つの点から私どもは非常な不安を感ずるのであります。  一つは食糧の自給関係が立って行くのか、もう一つは完全雇用ということを建前にしておりまするけれども、この完全雇用の具体的な成果が上るのか、これを農村の実態に徴してみますると、農村は余剰農産物の受け入れ等によりまして、かえって主食栽培が経済作物に負けてくるという結果を来たしまして、健全な農村というものの度合いからすれば、ますます不健全農村の傾向をたどっておるわけでございます。従いまして潜在失業者をたくさん抱えております農村人口の解消というものは、とてもできがたい現状に追いやられております。また従いまして消費水準もはなはだしく下ってくるという現況にあります。今エンゲル係数を一つ例にあげるならば、終戦直後の昭和二十二年には四一・八でありましたものが、二十七年には五〇・六、二十八年には五一、二十九年には五一・九と主食の実質的な値下りとともに、結局確定されないところの、安定されないところに米価に比例をいたしまして、生活が下降してくるという結果が出ておるのでございます。この農村の実態というものを捨てておきましては、とても経済六ヵ年計画というのは立ち御べくもないのであります。また財政計画におきましても、当然経済六ヵ年計画を進めるためには、三十一年、三十二年度辺から財政計画というものは立てられなければならないはずである、こういう推論から、私どもはいろいろと質問をいたしたわけでありますが、全然財政計画が立っておりません。財政計画が立っておりませんと、財政計画によって有効需要というものがきめられて参るわけでございますから、この有効需要の決定というものが全然ありませんでは、経済振興もその点からそごを来たすわけでございます。こういう諸般の判断をいたしますときに、防衛六ヵ年計画どころか、基本になる経済六ヵ年計画が立っておらない。従いまして安定しない経済、財政の上に防衛負担というものをかぶせることは、日本現状におきましては非常に困難なことである、こういう判断を下さざるを得ないのであります。  反対の第四は、法案提出の政府の態度であります。鳩山総理大臣は、自衛のために兵力を持ってよい。自衛のためならば近代的な軍隊を持ってもよい。また憲法の解釈は、国民の大多数がそう考えるならそれでよい。こういうふうに言っておられるのでありますが、しかもこの法の守護に当るべき法制局の長官がこの俗論を肯定しておるのでありまするが、これは法治国の日本におきましては、非常に危険な思想であると断ぜざるを得ません。この理論を進めて参りまするならば、法の内容は多数決できまるということにもなりかねないのでございます。政治的権力者が政治権力をもちまして多数で押すならば、憲法の解釈も変えられるといたしましたならば、一体法の精神はどうなるのでありましょう。法は権力者を守るためではない。正しさを守るべきものであります。その法の内容が政治家の便宜とその政略によって適宜に変えられるといたしましたならば、国民はその生命、財産、あるいは人権の保護を何に頼ればよいのでありましょう。少くとも法律には頼れないのであります。この総理の軽率な発言と同様の考え方国民多数が持ったといたしましたならば、一体国内の治安、秩序というものは静ひつのしようがないのであります。このような法の混乱を招く憲法無視の態度、法の精神軽視の態度、これは三権分立の国家の基本をゆるがすものであります。民主政治は憲法尊重の上にのみ築かれます。この民主政治に逆行するこの政府の提案態度に、われわれは強く反対せざるを御ないのであります。  以上四つの反対理由をもちまして本案に対しまして私どもは反対を表明する次第でございます。
  486. 宮田重文

    ○宮田重文君 私は自由党を代表いたしまして、この自衛隊法の一部を改正する法律案外二案に対して賛成の意を表明するものであります。  永世中立をいたしておりますスイスの大統領がかつて、力で支配されている世界で一国が独立する第一の条件は、侵略に対抗してみずから武器をとってみずからを守ろうとする覚悟である、というようなことを盲われておるわけでありますが、この三法案の審議にあたりまして、あるいは憲法第九条を中心とし、あるいは種々なる角度から各種の質疑が行われ、その質疑も大体終ったのでありますが、私どもは今日わが国の自衛隊があるいは防衛庁設置法趣旨に基き、あるいは自衛隊法の精神に基いて、これはわが国の平和と独立を守るためにかような防衛力を持つ必要があるのである、かように考えて、少しもその間においては、質疑中にも現われておりましたごとくに、侵略的な気持は毛頭持っておらぬ、こういうことでありまして、私どももまたさような気持をもってこの自衛隊行動に対しては、信じながら行こうとするものであります。  しこうしてこの三法案は、現下の国情に応じてその必要上この緯度のものを増強して国の力に即応した形をととのえて行こうと、こういうことでありますから、私どもはその意味におきましてこの三法案に対しては適切なる漸増の処置である、かように考えまして、この三法案に対して賛成の意を表明するものであります。  簡単ながら私の討論を終ります。
  487. 松浦清一

    ○松浦清一君 私は社会党の第二控室を代表いたしまして、ただいま問題になっております防衛三法案に対して反対をするものであります。  吉田内閣以来保守政権によりまして計画をされて参りましたわが国の防衛体制は、日米安全保障条約に基きまして、わが国の防衛力を漸増して、それにつれてアメリカの駐留軍を漸減して行くという方向をとっておることは明らかであります。すなわち昭和二十五年七万五千で出発をいたしました警察予備隊は、その後十一万名に増強をされ、保安隊となり、さらにそれが自衛隊との切りかえに際しまして十三万名になり、さらにまた昨年は強いアメリカの要請に基いてこれが十六万四千五百三十八人に増強されたのみならず、陸の自衛隊、海の自衛隊、空の自衛隊といういわゆる三軍均衡の軍備体制が確立をされたのであります。この間国会において論議の焦点となりましたことは、要約をいたしますると、第一が、このような軍備の違憲問題、第二には、このような軍備はわが国の自主的なものではなくて、アメリカの強要によるものではないのか、第三には、わが国の経済力がこの漸増方針にたえ得るかどうかということ、第四には、政府側の繰り返して説明される平和のためということは、かえって平和を乱す結果となりはしないかということでありました。私どもの憂慮もしたり、繰り返し、繰り返し反対をいたして参りましたことは、大体この四点に集約されることは記録に明らかなところであります。ところが私どものこの意味における反対にかかわらず、本年度においてはこれがさらに増強の方針を進めつつあります。すなわちこの三法の改正案によって明らかにされた本年度の軍備計画は、まず人員の点で見ますと、陸上自衛隊では自衛官、非自衛官と合せて十六万一千六百五十八名、海上自衛隊では自衛官、非自衛官と合せて二万薫百三十八名、航空自衛隊では自衛官、非自衛官を合せて一万一千五百五名、その他官房、内局、統幕会議、防衛研究所等を合計いたしますると、十九万五千八百十一名となるのであります。さらに予備自衛官五千名を加えますと、その数は実に二十万八百十一名となるわけであります。さらにこのことのために部隊編成の増加するものは、陸上において方面隊一、混成岡三、独立大隊八、海上においては千二百五十トンの護衛駆逐艦二隻、潜水艦一隻をアメリカから供与されるほか、日本自身が時速三十ノット、五インチ砲三門の性能を持つ千六百トンの警備艦甲二隻、同乙千トンのもの三隻の就航、及び警備艦甲四隻の新発注、引き揚げられた旧駆逐艦「梨」の購入、航空関係では大小各型対潜警戒攻撃機約三十六機、大小各型飛行艇十二機がアメリカから供与されることになっております。航空関係では初めて戦闘航空団が新設されまして、実用機部隊が編成され、アメリカからF86Fセーバー・ジェット戦闘機五十機が供与されることになっております。また本年度からはいよいよF86F及びT33というジェット練習機の国内生産が始ることになるのであります。さらに本年度内に増強される航空機は、F86Fのほか、T6G八十四機、T33五十九機、C46輸送機など二百三機がアメリカから供与されるのであります。さらに日本で購入する練習機、連絡機二十七機を合せて二百三十機、そのほか教材用としてF86F及びT33各十一機、計二十二機、これを合計すると、本年度の航空機の増加分は、私の計算によりますと、実に二百五十二機の増加となるのであります。もし数に間違いがあればいつでも訂正いたします。これによりまして日本の陸海空三軍の陣容というものは、今日の日本の経済力から判断をいたしまして不相応なものとなると思うのであります。すなわちこれを本年度の予算面から見てみますると一千三百二十七億円が防衛関係費としてすでに承認され、そのほかに昨年度末使用分二百二十七億円、その他四月十九日の日米共同声明によりまして明らかになりましたように、防衛庁に対して、百五十四億円の国庫債務負担行為の権限が付与されることになっておりますので、本年度の防衛関係総経費は合計一千七百八億円となるわけであります。この三法案、審議の過程を通して明らかになったことは、高碕企画庁長官から本年度の国民総所得六兆三千億円に対して、三十一年度は六兆六千億円と推定され、本年度より防衛関係費を増額することが可能であるということが言明されておりまするので、現内閣の自衛力漸増方針は、吉田内閣以来の方針通り着々として進行しつつあることが明瞭となってきたのであります。政府が総合経済六ヵ年計画を立てるに当りまして、この計画に並行して防衛六ヵ年計画があるだろうとの国会の追及に対し、杉原防衛庁長官を初め各関係閣僚は、頑強にこれを否定して参りました。そうしてその長期防衛計画の方向はきわめて不明瞭なままで、泣いても笑ってもこの三法案は本院を通過成立の運命にあるのであります。政府がひた隠しに隠してきた防衛六ヵ年計画は、政府の必死の隠蔽にかかわらず、すでに世上にはその情報は流布されておるのであります。すなわち本年度を起点として六ヵ年後には陸上自衛隊は六管区二方面隊四混成団、総人員十八万人、海上自衛隊は、警備艦二十隻を中心とする艦艇二百隻、約十二万トン総人員三万人、航空自衛隊は、実用機七百機、練習機五百機、総人員四万人、合計陸海空の自衛隊員二十五万人となり、日本の陸上自衛隊が十八万人になったときにアメリカの地上軍は撤退を終る。残されるアメリカの海軍、空軍と日本のこの三軍とが日本防衛する総力であるということであります。従って日本政府としては年々防衛関係予算措置を拡大する必要があるので、計画の最終年度にはアメリカに対する防衛分担金を含めまして二千百億円程度を要することになっているのであります。このような実情でありまするので、私はこの三法案に賛成ができないのであります。  具体的な反対の第一点は、日本の自衛のためと称する軍術が、憲法第九条に違反しているかいないかということが明確になされない、ままに増強されて行く軍部には反対であります。国会の中では保守政党の諸君が違憲でないと結論をして、革新政党は違憲であると主張をいたしております。これは昭和二十五年の警察予備隊創設以来の論争でございます。学界においても善意な学者はすべて違憲説を支持いたしております。国定の大勢はどうかと言えば、過ぐる二月選挙はこの問題を最高の論点として戦われましたが、その結果は憲法改正阻止の勢力を革新政党に与えたことによって、その考え方の動向は明らかであります。これが反対基本線であります。  第二には、伝えられる防衛計画六ヵ年の最終年度における二千億円に余る防衛費が、日本の経済力ではたえることのできない大きな負担であるということであります。経済企画庁の立てられた総合経済六ヵ年計画は、具体的な科学性のないものであって、単なる机上の作文に過ぎないことは世論の一致した見方であります。この作文にはっきりいたしておりますことは、経済の樹立ということと、完全雇用ということを二つの目標に並列させて、総合的にかつ、長期的な計画を立ててやることであります。そうしてこれが目標を達成するためには、鉱工業、農林水産、輸送、治山治水、労働、住宅、人口、社会保障、財政金融、税制、物価等各方面にわたって政策の総合性を保持しつつ長期にわたり一貫した施策の実施によって裏づけすることが必要であると、そう書いてあるのであります。まことに概念的な表現であります。私どもは鉱工業の中に石炭、石油等の燃料や鉄鉱や、防衛産業の具体化が周到に解明せられ、農林水産の中に総合食糧対策、肥料の問題が具体的に計画され、解明されなければ、この総合六ヵ年計画が単なる思いつきの作文にすぎないとのそしりは当然と思うのであります。従って私どもはこの計画の中から昭和三十五年の最終年度に四千三百五十万人と想定される労働人口が完全に消化されるということを残念ながら信用することはできません。日本の予想される経済力は、計画の最終年度二十五万の自衛隊を養ない、その装備と消耗品をまかなうだけの実力に成長することは絶対に不可能であります。わが国の経済を自立する方策についての論議は別の機会に譲ることといたしましても、この意味において軍備の漸増方向に対して私は反対するのであります。  第三には、外敵から侵されないだけの軍備を持つことが平和を守る手段であるとの考え方についてであります。この法案の審議の過程を通じて明らかにされたように、日本を取り巻く列国の軍備は、情報として流布されている六ヵ年計画の最終年度におけるわが国の軍備をもってしても、列国の現況と、日本の六ヵ年後とを比べてみても、これは比較にならないのであります。自主独立の防衛体制と政府はよく申しますが、今から六ヵ年たてば列国はわが国のそれよりもさらに速度を早めて、軍備は増強されるのであります。日本は世界のいずれの国に比べても人口の密度は高く、その数も多いのでありますから、方法をもってすれば兵隊の数を作ることはできないことはないでありましょう。しかしながら兵隊の数だけでは戦力にならないことは論ずるまでもございません。いつまでもアメリカの腰にぶら下っているわけにもいかないのでありますから、その真の戦力たる国の綜合的な経済力を、いわゆる戦力たらしめることができがたいとすれば、世界の平和を求める道は、ほかに求めるのが当然であります。世界に対して原爆の国際管理を強く要請することもその一つの道であります。徹底的な軍備の縮小を要請し、国際連合による警察軍によって、侵略国に膺懲を加えて行くことについて、大きな無理をして軍備を強化して行くほどの努力を払えば、必ず効果はあると思うのであります。平和は軍備の強化にその道を求めるのではなくて、軍縮の方向への努力の中から生まれてくるものであるとの観点から、私はこの三法案に反対するのであります。  第四には、一本の軍備はアメリカに隷属している傾向がきわめて強いということであります。すなわち航空力を中心として多くの艦艇の供与または貸与を受ける海上自衛隊のごとき、全くアメリカ依存の上に成り立っていることは周知の通りであります。このことは日米安全保障条約に基くものでありまして、これと対照的に中ソの間には、御承知の中ソ友好同盟条約が結ばれております。この二つ条約が相対立して背中合せになっているということが、件軍備論者をして軍備を急がしている理由となっていると思うのであります。しかしながら日本の国は、前にも申し上げました通りの実情にあるのでありますから、ただいま開かれておりまする日ソ交渉などの機会を通してまずソ連との平和を求め、それを契機として中共とも平和のための交渉を求めて、この二つの対立した安全保障条約を解きほぐして日米、中ソ一本の平和条約、安全保障の条約締結にまで推し進めるための最善の外交努力を払うべきだと思うのであります。この理想を実現するために努力を払うということは、万人反対するものはないのであります。現在のアメリカの隷属軍の増強は、およそこの理想実現への道とは反対の方向をたどりつつあるのであります。従って、私は世界に平和を求め、国民生活の安定を求めるがゆえに、この防衛関係三法案に反対するのであります。  以上をもって討論を終ります。
  488. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 私は緑風会を代表いたしまして、ただいま議題となっている三案に対し賛成するものであります。すでにこの三案に関する予算は、本国会において通過をいたしておるのでありまして、本三案に対しましては賛成いたさざるを得ないと考えるものであります。しかしながら審議の経過にかんがみまして、次の要望を付することにいたします。  第一の要望は、自衛隊の戦力、交戦権等につきましては、首尾一貫した憲法の解釈を確立して、国民に疑惑を与えないようにいたしますとともに、自衛隊の精神訓練に遺憾なきを期せられたいということであります。  第二の要望は、長期防衛計画をすみやかに確立いたしまして、これに基いて計画性のある、むだのない防衛力整備を期すべきだということであります。  第三の要望は、防衛庁費は年々莫大なる繰り越しをいたしておりまするような事実にかんがみましても、今後経理の適正につきましては特に細心周到な考慮を払い、しこうして資金の方は効率的活用に努むべきであるということであります。  第四の要望といたしましては、武器受注会社の下請でありまするところの中小企業に対して、支払遅延あるいは手形の不渡り等を発生せしめ、しこうして中小企業を困窮に陥れるようなことのないように、防衛庁関係省と協力をせられ、そうして受注親会社の指導方針を確立いたしまして、将来確段の、親会社に対する指導、監督に遺憾なきを期せられたいということであります。  以上四点の要望を付しまして本三案に賛成をするものであります。
  489. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 私はただいま議題となっおりまする防衛三法案に対しまして反対いたすものであります。  まず第一に憲法第九条に違反するという理由からであります。政府説明によりますると、武力的に国際紛争は解決しない、平和的に解決するのである、そのために侵略の戦争の手段としての戦力は持たない、しかしながら自衛のための軍隊はこれを持つことができる、自衛のための戦争もこれを可能とするものである、こういう趣旨であります。もちろん憲法といえども時代とともに解釈が変って行くことは私も認めます。しかしながら、その憲法、あるいは法律に対する解釈の変り方は、その法難なり解釈にあらわれた規定とまっこうから反対するような解釈は認めることができないと思います。しかも憲法第九条の第二項にある交戦権の問題に関しては政府の答弁するところは全く支離滅裂であります。また自衛そのものについても、法理上の観念としてはともかく、政治的な解釈はこれまでしばしばいかようにでも釈解されてきたのでありまして、事実従来のいかなる戦争も自衛の戦争として今日まで戦われて参っているのであります。私どもはこの憲法第九条に対する解釈の政府側のとっている態度が間違いであると同時に、今度の自衛隊の増強は憲法第九条に違反するものといわなければならないのであります。これが反対の第一の理由であります。  第二の理由は、最近の国際情勢に逆行する軍備の増強だといわなければならぬ点であります。御承知のように、ジュネーヴにおいて四巨頭会談が行われました。一応軍縮の方向が打ち出されたのであります。もちろんその具体案等は今後国連の軍縮小委員会なりあるいは四カ国外相会議等において話し合いが行われるものと思いますが、しかし今日四巨頭会談を中心として平和の趨勢が世界的な盛り上りを見せていることは何人も否定することができないと思うのであります。しかるに今回ここに自衛隊を増強いたしまして、十九万五千、さらに予備自衛官を加えるならば二十万以上の増強となるのであります。六ヵ年計画の第一年度が二十万以上の兵力となるのでありまして、これが六ヵ年計画を遂行した後においては、さらに大きな増強を見ることは火を見るよりも明らかだと思います。私どもはこの国際情勢の最近における平和の趨勢に対する逆行した再軍備増強には反対せざるを得ないのであります。  第三の理由といたしましては、今日行われようとするこの再軍備増強が、アメリカの隷属化の再軍備の増強だということであります。防衛分担金の交渉等に現われておりまするように、日本防衛支出金がアメリカの指示のもとに組まれているということ、アメリカ承認なしにはこれを変更することができないということ、のみならずアメリカ自身の極東防衛計画に基いて日本の再軍備が進められているというこのことは、一面から言うならば、日本の再軍備はアメリカに従属した再軍備である、こう申し上げても間違いはないと思います。私どもは独立の国に自衛の手段がなければならないということは認めますが、しかし、といって、他の国に従属するような再軍備をここで増強するということには反対を表明せざるを御ないのであります。  第四番目に、今増強されようとしているこの軍備計画が、全く無計画であるということであります。数度の質問に対しまして、防衛庁長官は、まだ六カ年計画はできておらないという答弁であります。しかしながら警察予備隊が発足してからすでに五年、自衛隊ができてからでもすでに一年になります。その間に何らの計画も作られなかったとするならば、事のよしあしはともかくとして、これは防衛庁の怠慢であるといわなければなりません。無計画に二十万からの軍備を増強するということは、これまたわれわれ国民としてはとうていこれを許すことができないのであります。これが第四の理由であります。  最後に私は今増強されようとしているところのこの再軍備が、財政経済に対する非常に大きな圧迫となるという点であります。予算の面では昨年と同様防衛支出金は一千三百二十七億ということでありますが、予算外契約は百五十四億、前年度の繰越金が二百二十七億、合計一千七百八億、これは直接軍事費であります。このほかに間接軍事費とも目されるものを加算するならば、おそらく二千億をはるかに突破するでありましょう。このような膨大な軍事費がさらに例年増加して行くのであります。日本国民経済に与える影響というものはきわめて大きいと申さなければなりません。しかも一方日本国民経済を立て直すべき六ヵ年計画でありまするが、これはきわめてずさんな計算の上に立っているところの計画であり、最後にはこの計画は中間報告であるという逃げ道を打ってはおりまするが、いかに弁解しようとも、この計画がずさんであるということは、これは否定することはできないと思うのであります。その中において、六ヵ年計画を今後において作り出そうとするのであります。私はどのように数字をひねってみても、日本の財政経済の上に与えるこの軍事費の圧迫を排除することはできないと思います。  以上の理由によりまして、私はこのただいま議題となっております防衛三法案に反対をいたすものであります。
  490. 松原一彦

    ○松原一彦君 防衛庁設置法の一部を改正する法律案外二法案に対し、日本民主党を代表して賛成します。  本案は設置法においては、自衛官等三万一千二百七十二人を増員し、初年度において二百六十六億一千万円の経費を要するものであって、この結果、防衛庁の定員は十九万五千八百十人となるのが最も著しい改正であって、その他自衛隊では各地に方面隊を増置し、新たに混成団及び航空団を設け、海士長、空士長に任用期間を定めることにいたし、これに伴う諸給与を定めたものでありまして、すでにこれは本年度の予算に明らかに計上せられて国会承認を得たものであります。政府はこれを実施する責任を持っております。従って、この法案の成立によってこの責任を果さなければならないと信ずるものであります。  この法案の論点は、隊員三万余人の増員の妥当性が認められるならば、他には論ずべき法案上の大きな問題はないのであります。にもかかわらず、この法案が衆参両院を通して大きな論議の的となったのは、根本的には自衛力に対する憲法解釈上の問題であって、私の所属する政党は一応これを割り切っております。しかし私などは憲法制定当時からこの問題に対しましては、やはりこの憲法制定の当初から、この憲法下においては軍隊は持たないという意思であったというふうに信じて参ったものであります。しかしながら、憲法解釈のいかんを問わず、絶対無抵抗主義あるいは絶対無防備主義というものに対しては私は承認することはできない。それはすなわち敗戦主義と一致するものであります。自衛は生命を持っているものの本能であります。個体であると集団であるとを問わず、特に一国をなす民族が絶対無防備、絶対無抵抗の生活はあり得ないと思うのであります。現実要請の上に立つ以上、世界にその例はないのであります。平和論者という人々が無抵抗、あるいは無防備のみをもって平和の要ていのごとく説かるることは論理が飛躍し過ぎるのであります。もちろん独立国家、特に日本のごとき民族をもって立つ独立国家が、この完成を求め、将来世界の平和を望んで出発する以上、ことさらに挑発的な軍備を持つことも無用であることは申すまでもありませんが、と申して、私は独立したる軍隊を持ち、独立し得べき経済を持ち、そうして全民族が自己防衛の独立の意思を持って立ち上るということは、当然しごくのことであろうと信ずるのであります。かような意味におきまして私は憲法解釈のいかんにかかわらず、将来独立国家日本の民族の立って行く前提には最小限度であるべきはもちろんでありまするが、独立の防備を持つことをは要求するのであります。  いま一つのこの審議の途上に現われましたる論争は、経済計画に伴う長期防衛計画が明らかになっていないという点であったのであります。本来わが国か日米安全保障条約を結んで、防衛力の漸増を認めないから、責任をもって今日まで参ったにもかかわらず、それが毎年防衛分担金のワクによって動かされ、自主的に計画的に長期防衛計画の実現を見なかった感の深いことは、私も遺憾とするものの一人であります。で、今回この点におきまして、特に国防の基本方針防衛計画の大綱及びこれに関連する産業等の調整計画をはかるための国防会議というものがすでに防衛庁設置法案の中に法律として明らかにせられておる以上、この最高の国防会議を通して日本の国防国策が確立せられ、これが全国民の前に露呈せられて、その了解と支援とのもとに、私は国防は行われなければならないのは当然だと思うのでありますが、その点における用意が欠けたことをまことに遺憾に思うのであります。こういうような意味におきましても、今追っかけて参っておりますところの国防会議だけは、この際一つぜひとも成立させていただきたい。(笑声)私は特に諸君に要望する。この国防会議を通して、いかなるものが、いかなる程度のものが適当であるか、どういう長期の計画を立てなければならないものであるかということをは、正々堂々国民の前にこれをば示すことによって私はいやしくも国がみずからを守ろうというのにちゅうちょ逡巡の態度などのあるようなことのないようにいたしたい。これは諸君に向って特にお願いして、どうぞ国防会議法だけは明後日までに(笑声)必ずお通しいただきまするようにお願いします。(「希望討論だ」と呼ぶ者あり、その他発言する者あり、笑声)ことわざにも申しまするが、ものはきわまりて通ずると申します。兵器が急速に進歩いたしました結果、最近におきましては今日の進歩したる原爆兵器をば振り回すというと、世界の人類ことごとく滅ぶる結果をも生ずるおそれがある。みずから守らんためのものが自他を殺すということになっては大へんであります。従って巨頭会議にも見える通りに、また他の諸君の常に言われる通りに、世界の大勢の上には非常に大きな変化が参ろうといたしておる。私どももこれを認めるに決してやぶさかではございません。どうか日本も単なる観念上の国防ではなく、世界の恒久平和を樹立する上におけるほんとうの意味における、一方的な自衛といったようなものにとらわれないで、世界の大勢の上に立って、世界とともにかように非生産的な軍備をのさばらさない世界のくることをば熱望してやみません。  私はこの立場を通して、本年度の予算に盛られたる国防に関する費用を具現する方策に賛成するものでございます。
  491. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 他に御発言もなければ、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  492. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 御異議ないものと認めます。  それでは直ちに採決に入ります。防衛庁設置法の一部を改正する法律案自衛隊法の一部を改正する法律案防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案を一括して議題といたします。右三件を衆議院送付原案通り可決することに賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  493. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 多数でございます。よって右三件の法律案は多数をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。  なお、本院規則第百四条による本会議における口頭報告の内容、本院規則第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成、その地自後の手続につきましては慣例によってこれを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  494. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお報告書には多数意見者の署名を付することになっおりますから、三案を可とせられた方は順次御署名を願います。   多数意見者署名     長島 銀蔵  豊田 雅孝     中川 以良  中山 壽彦     宮田 重文  木島 虎蔵     井上 知治  植竹 春彦     野本 品吉  木村篤太郎     松原 一彦
  495. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 本日はこれにて散会いたします。    午後九時三十二分散会      ―――――・―――――