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1955-07-25 第22回国会 参議院 内閣委員会 第33号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年七月二十五日(月曜日)    午前十時二十九分開会     —————————————    委員の異動 本日委員松本治一郎君辞任につき、そ の補欠として菊川孝夫君を議長におい て指名した。     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     新谷寅三郎君    理事            長島 銀藏君            宮田 重文君            木下 源吾君            松原 一彦君    委員            井上 知治君            植竹 春彦君            中山 壽彦君            豊田 雅孝君            野本 品吉君            加瀬  完君            菊川 孝夫君            千葉  信君            田畑 金光君            松浦 清一君            木島 虎藏君            堀  眞琴君   国務大臣    内閣総理大臣  鳩山 一郎君    外 務 大 臣 重光  葵君    大 蔵 大 臣 一萬田尚登君    国 務 大 臣 杉原 荒太君   政府委員    内閣官房長官 松本 瀧藏君    内閣官房長官 田中 榮一君    法制局長官   林  修三君    法制局次長   高辻 正巳君    防衛庁次長   増原 恵吉君    防衛庁長官官房    長       門叶 宗雄君    防衛庁防衛局長 林  一夫君    防衛庁教育局長    事務取扱    都村新次郎君    防衛庁人事局長 加藤 陽三君    防衛庁経理局長 石原 周夫君    防衛庁装備局長 久保 亀夫君    大蔵省主計局長 森永貞一郎君   事務局側    常任委員会専門    員       杉田正三郎君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○防衛庁設置法の一部を改正する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○自衛隊法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○防衛庁職員給与法の一部を改正する  法律案内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。  自衛隊法の一部を改正する法律案防衛庁設置法の一部を改正する法律案防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案、以上三法律案を一括して議題といたしたいと思いますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 御異議ないと認めます。  本日は、内閣総理大臣外務大臣防衛庁長官等に対する総括的な質疑を行いたいと存じます。通告順によって質疑を許可いたします。
  4. 松浦清一

    松浦清一君 鳩山総理に、ただいま上程をされました防衛関係法案についての総括的な質問をいたしたいと思いますが、この防衛関係質疑につきましては、六月の三日に、国防会議構成等に関する法律案が本会議上程をされましたときに、私はこれに関連をして防衛関係の御質問を申し上げたのです。また過ぐる予算委員会におきましても、本会議における質疑応答の中で明確にならなかった点についての御質問を申し上げました。また先般の参議院本会議におきましても、アメリカ側から要求されておる飛行場の拡張問題に関連をして、日本の現在の鳩山内閣考えておる自衛限界についての御質問を申し上げましたが、いずれも明確な結論が出ておりません。日本のいわゆる自衛力と称されるものが、昭和二十五年の警察予備隊から始まって、今日十六万に達する自衛隊に至りますまで、また本年度予算において、すでに決定をしました三万一千人を増強するという問題、この法案がもし成立するとすればそういうことになると思うのですが、十九万何千という自衛力ができ上るのに、その目標と、それから限界というものが国会で明確にされないということは、まことに国民にとって不安きわまりないものだと思うのであります。この法案審議をめぐりまして、今の軍隊である自衛隊というものが、憲法第九条に抵触するかしないかということも論議の焦点になるであろうと思いますが、私はきょうは憲法談義はやめにして、この前の予算委員会質疑の継続として、自衛力限界の問題についてお伺いをしたいと思うのです。重光外務大臣がいらっしゃるから、御記憶でしょうが、この間の予算委員会で、私はアメリカ側から飛行場の拡張問題についてしばしば要求がある、これは日米安全保障条約等に基いて際限もなしにアメリカから拡張の要求をされる、それに日本は応じて行かなければならぬのか、現在の内閣はそれに応じて行く御所存であるかということを御質問申し上げましたのに対して、これは重光外務大臣だったつもりじゃなかったんですが、さんが御答弁になって、日本にはおのずから日本の国を守って行く自衛力限界というものがあるから、その限界点に達したときには、アメリカからいかなる要求があっても、これには応じない所存であるということの御答弁があったわけです。それに対して私は、しからば現在鳩山内閣考えておる日本の国を自衛して行く力の限界とは一体どの辺であるか、数の点において量の点において、どの辺が限界とお考えになっておるかということを尋ねたのです。それに対して明確な御答弁が得られないまま時間切れになって終りになっておるわけです。その際に私は言葉を添えまして、今明確な御答弁が得られませんから、いずれこの問題につきましては内閣委員会において承わることにいたしましょうというげたをお預け申し上げておいたわけであります。従って本日は御質問申し上げる冒頭に、この前の御答弁重光大臣でございましたが、本日は鳩山総理から、日本の国を自衛して行くのにほどの限度が必要であるとお考えになっているかということを、総理から明確に御答弁を願いたいと思います。
  5. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 日本自衛限度というものは、もとより安保条約によって、安全保障目的によって限度があるわけでありますが、ただいまの松浦さんの御質問のはそういう意味じゃないだろうと思うのですが、自衛力限度という、その限度というのは日本の独力でもって自衛をし得る力というものは、ほとんどそれだけの力を持つということはできないような現状だと思います。従って限度はある期間わが国を持ちこたえ得るだけの限度だと、そういうように考えます。そうしてアメリカの力によって自衛目的達成をはかるというような考え方をしております。
  6. 松浦清一

    松浦清一君 この自衛力限度問題については、衆議院の方でもしばしば問題になって、私はその速記を通して衆議院論議を大体において承知をしておるわけです。しかしその限度というのにも、日本が持っておる戦力をもって直接日本の国が防衛できると考えられる限度と、それから日本経済力がこの辺が精一ぱいであるという限度と、この二通りあろうと思うのです。私は私なりにいろいろの見解を持っておりますけれども鳩山内閣それ自体が、日本経済力から判断して、どれくらいの戦力日本経済力が持ち得ると考えられておられるのか。また今あなたがおっしゃられるように、日本自身の持ち得る自衛力というもので、どのような事態が発生しても、日本それ自体が持っておる戦力をもって日本の国を自衛するということはなかなか困難であろうと思われるのですね。私の考えはまた別ですよ。今の鳩山内閣がとっておる方向は、やはりその戦力漸増して行くという方向をとっておりますから、それに対するその見きわめ、限界というものがおのずからなければならぬと思うのです。あなたのおっしゃることは経済力、いわゆる日本自身経済力で許される範囲限度というものを考えておられるのか、あるいは日本の持っておるいわゆる軍隊そのもの防衛し得るその壁の限度というものを考えておられるのか、その辺のところをちょっと伺いたい。
  7. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 限度両面からあるものと考えております。経済力を無視して、自衛のために必要だといって自衛力を増強して行くわけにも参りませんから、両面から限度があるものと考えます。
  8. 松浦清一

    松浦清一君 その限度の問題については、先般の衆議院内閣委員会でありましたか、杉原防衛庁長官に対して、現在政府防衛六カ年計画というものを持っておるはずであるが、それを明確に示してもらいたいという衆議院要求に対して、六カ年計画というものは持っていないというような押し問答がだいぶ長いこと続いたようです。それがまた杉原防衛庁長官を不信任するというような態度に出てくる動機にもなっておるように私は聞いておるのです。しかしこの防衛計画というものがあるなしということで議論をしておるというと、いつまで行っても議論は尽きない。この間も私申し上げたように、国会政府と議員との質疑応答というものは、何でも与えられた時間の範囲内で尋ねて、いいかげんな応答をして、そして相当量速記に載ったからもうおしまいだということでは、これは済まぬと思う。やはりある程度まで論議をして、それに対する明確な結論を出すのが国会の真意だと思う。防衛計画があるとかないとかいうことで押し問答すれば、やはりまたそういうことはきまっていない、こういうようなお答えになるから、第二次、第三次の問題としては私は伺いたいのですが、今おっしゃる経済力限度という、その限度は大体判断がつかれると思うのです。経済審議庁の方から出しておる経済六カ年計画というものがございます。この経済六カ年計画を立てるのに、日本のいわゆる自衛力漸増して行く方向というものが具体的に勘案されないで経済六カ年計画は立たないと思うのです。経済六カ年計画は立ったけれども、軍備を漸増して行くという計画は立っていない、こういうことはどうもつじつまの合わない話でありますから、その辺のところを一つ明確にしてもらいたいと思います。
  9. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) ただいまの……。
  10. 松浦清一

    松浦清一君 あなたはまた防衛のことであとで聞きますから、総理大臣から基本的な考えを伺いたい。
  11. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 今経済力について可能な範囲防衛力はどのくらいだという御質問でございますが、長期防衛計画というものは目下検討中でありまするから、その御質問に対するお答えはできません。
  12. 松浦清一

    松浦清一君 本月九日の朝日新聞を見ますと、これはどこから出たか知りませんよ。どこから出たか知りませんが、やはり六カ年防衛計画に関する大要ということで、陸上自衛隊を六管区、二方面隊、四混成団人員十八万人、海上自衛隊は、警備艦を中心とする艦艇二百隻、約十二万トンを建造して、その人員は三万人である、航空自衛隊は、実用機七百機、ジェット戦闘機F86F四百五十機、F86D百五十機、こういうふうに書いて行って、そうして航空自衛隊の隊員は約四万人である、こういうことの計画新聞記事として発表されておるのです。この六カ年計画とか、五カ年計画とかいうことは、本月九日の朝日新聞のみならず、しばしばこれは発表された。これは鳩山さんのこの内閣自体責任ではないかもしれませんが、前の自由党内閣時代に、前の木村長官が九州に旅行されて、出先で新聞記者団を集めて、いわゆる防衛五カ年計画なるものを発表して、そして帰って来て、あれは単なる部内のメモであって、正式に政府がきめたことではない、こういうようなことを釈明をしたり、あるいは前の吉田首相から木村さんが叱られて引っこめたりしたといういわく因縁つき計画なんだ。こういうことで新聞記事に報道されるということは、報道人の諸君が揮造してそういうことを出したり、あるいは新聞社が机上でそういうことを勘案して出したりする記事ではないかと思う。やはり政府部内のどこからかそういうにおいがしてくるから、だれからか話を聞いて、これが新聞記事に載ってくると考えられるわけです。きわめて重要な点につきましては、よく閣僚の人たちは、その新聞記事は偽りであるとか、あるいはそういう根拠がないとか、こういうことを言うんですが、火のない所に煙は立たぬ、これはことわざの通りで、何にもないことを新聞記事にこれを捏造するはずはないと思う。そういう点についてひた隠しにお隠しになるならば、この審議というものは堂々めぐりをして一向に進まないと思う。おそらくこの三法の審議に当って基本的な問題になるものは、やはり現内閣考えておる防衛力限界というものが基本になって、そうして自衛隊法改正をしたり、防衛庁設置法改正をしたり、具体的な論議に入って行くと、こう考えられるので、その基本的な方針一つ承わりたい。
  13. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私はその点について存じませんから、防衛庁長官から答弁をしていただきます。
  14. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) お答え申し上げます。今日までいろいろ新聞等にも伝えられておるということを申さ、れておるのでありますが、私新聞記事についてかれこれ今ここで申し上げる気持はございませんでございますが、この防衛についてのこれは一定の計画を立ててやって行った方がよろしい、その方がどこまで一体漸増といっても行くのか、大体五、六年先には大体この限度ということを示した方が、これは国民防衛についてのこれを理解してもらい、それを支援してもらうという上からしても、また防衛そのものが、やはり防衛力の建設ということは計画的にやって行かなきゃならぬ、そういうところから、やはりむずかしいことじゃあるけれども、大体五、六年くらいのところの計画を立てて行った方がよろしいと、こういう考え方から、実は今の内閣におきまして、いわゆる防衛の六カ年計画というものを立てて行きたい、こういうことで研究を重ねて来ておる次第でございます。そうしてこれは、しかし何もこの内閣になって初めてというわけじゃなく、実は前の自由党内閣時代からも種々いろいろ御苦心になって基本的な研究はしておられたことと思います。そうして自由党内閣時代にいろいろ研究しておられたところは、私どもといたしましても貴重な材料として研究をしておるところでございます。そうして率直に申し上げますが、日本防衛力を作り上げて行くという場合に、装備品等につきましても、どうしてもある程度アメリカ側からの援助ということを実際上これは必要といたします。それなくしては日本負担力はたえ切れない。そういうこともありまするし、このアメリカ側との関係というものは、実際問題といたしまして十分考えて行かにやならぬことだと思っております。そうしてアメリカ側でもいろいろと今そういう援助等関係についても研究をしておると思います。もちろん日本は今の立場がございますから、その立場はもちろん主体的に考えて行くのは当然でございます。当然でございますが、それをきめるに当っても、今申しましたアメリカ援助等関係というようなものも十分考慮に入れて考えて行かにやならぬ。そういうようなところがございまして、実は今日まで、まだ事実政府成案を、政府としてはこういうふうな案でございますということを国会に対して責任をもってお答え申し上げるところの段階にまで至っていない。もちろんこれは筋合いといたしましても、なるべく早くそういうものを作って、何よりも先に国会に対してお示しするのが筋合いだとは重々私らもそう思っております。ただ時期が、今それじゃすぐ示す、こういうことで今ほんとう責任をもってこうでございますということを申し上げる段階に至っていない。しかし何もそれを示さぬというわけじゃない。成案を得ましたならば、国会に十分お諮りしなくちゃならぬことが多いことと存じておる次第でございます。そういう次第でございますから、御了承願いたいと思います。
  15. 松浦清一

    松浦清一君 本年の一月に、経済審議庁から、「総合経済六カ年計画構想」という、こういう刷り物が出ております。これは経済審議庁の、今は経済企画庁ですが、長官に御質問申し上げたところ、大体この六カ年計画というものは閣議において了承した計画である、こういう話であります。この経済六カ年計画の内容を見てみまするというと、昭和二十八年の八千七百六万七千人のこの日本人口を一〇〇として、昭和三十五年には九千三百七十九万五千人に人口がふえる、で、この六カ年計画の最後の年度である三十五年に至って、九千三百七十万人の日本の全体のものの生活水準を高めて行くという、その方針を立てて、そのときの労働人口が四千三百七十一万九千人になる。これを完全雇用ができるような態勢に持って行くことがこの経済六カ年計画である、こういうことなんです。しかも六カ年たった後に、現在の雇用されている労働者の一人一時間当りの賃金が、七十五円が八十七円に上昇して行く、こういうようなことを基本にして、ずっとその数字を書いていって、そうして三十五年の末には、日本鉱工業生産水準が、昭和二十八年の一六一・四を一〇〇として二一三・八に上昇して行って、その他貿易とか、いろいろありますけれども、四千三百七十万人の労働人口が全部完全雇用され、吸収されるという建前でやって行くのがこの計画である、こういう説明であった。いろいろ数字は書いてありますけれども、これだけの数字を並べて、そうして六年後の昭和三十五年度末には四千三百万人の労働人口が完全に吸収されるというような、それほど具体的な六カ年計画構想でありますから、その中に日本自衛力がどのように増大して行くかということが、産業の上に及ぼす影響は大きいのでありますから、この数字の中に日本のいわゆる自衛力漸増して行く見積りと言いますか、その数字が入っていないはずはないと思うのです。もし明確に日本防衛六カ年計画というものが、杉原長官のおっしゃるようにできておらないとすれば、この経済六カ年計画構想の中に、一体自衛力漸増の壁がどの程度織り込まれておるかということを御説明願いたい。
  16. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) この経済六カ年計画構想なるものは、今、松浦委員のおっしゃいましたように、昭和三十五年度において総人口がどれくらいふえて、労働人口はどれくらいになるということを大体推計いたしまして、そうしてそれだけのものを、そういう基本的なことを元にいたしまして、そうして日本のいわゆる経済自立正常貿易によって国際収支の均衡をはかって行く、そうしてまた増加する労働人口に対して十分雇用機会を与える、そのためにはどういうふうなところに、そのために必要な一つの理想的な構図を描いたものというふうに、そうしてそれがためにどういう点に政策の重点をおくべきかというところを目的として計画した、そういう構想だと私承知いたしておるのであります。その目標数字とかいうものは、その書類の中にも断わってあったと思いまするけれども、まだ中間的のもので、今後逐次変更して行くべきことを予想せられると、そうして現にこの間国会にも経済審議庁から出されました三カ年計画、あれを見ましても、非常に数字等も元のものとは違っておる。たとえば三十二年度における国民所得などの推計などでも、すでにたしか三千六百億程度の差があったように私は見ておりますが、その最初の六カ年計画構想を作ります際に、実はまだ私どもの方の防衛の六カ年計画研究というものは十分済んでおりませんでした。そういう点から見ましても、まだ実はほんとうに固まっておる域には達していないのが実情でございます。今後、しかし基本的にはこう考えております。経済六カ年計画構想なるもののねらいとしては、この間にいわゆる経済自立達成するとともに、雇用機会を充実して行くということが目標でなければならぬ。それでそういう目的を持った経済計画というものの達成に支障のないようなふうに防衛力規模等考えて行かなくてはならぬ、それと矛盾しないように、それと調和を保つような範囲考えて行かなくちゃならぬ、こういうふうに考えております。
  17. 松浦清一

    松浦清一君 おっしゃる通り、六カ年計画が発表されましてから、またあとから三カ年計画というものが出て来て、そうしてその数字に若干相違のあることも承知いたしております。そうして政府がどのように六カ年計画数字を合理づけようと説明をなさっても、それは単なる理想案であって、具体的に確信のある数字をあげたものでは私はないと思っておる。そのくらいのことは知っておるのです。知っておりますけれども、たとえば架空の理想数字であったとしても、数字を出すからには、何と何を積み重ねればどういう答えが出るということは、そういうようなことばやはり計算されたに違いないと思う。今、杉原長官の仰せによりますと、これが構想されたときには防衛計画の六カ年計画というようなものもまだ具体的に考えられておらなかったから、この計画の中に入っていないかのごとき御答弁がございました。その言葉尻をつかむわけではないのですが、これが構想されたときに防衛六カ年計画がまだ具体的にきまっておらなかったというのですが、これは一月に大体仕上げたものでありますから、それから後に国会あたりで早く計画構想を示せという強烈な要求があったのですから、具体的に何ほどか進行しておれば、その進行しておる、現在まで考えられておる状態、そういうものを御報告願いたい。
  18. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) この防衛の六カ年計画につきまして、大体の基本的な考え方といたしましては、先ほど総理からも申されましたように、日本自衛力というか、これは日本単独ではなかなか自衛そのものですらむずかしい、それでどうしてもこれは集団防衛と言いますか、今もっと現実に即して申し上げますならば、米国の協力を得てということを前提にしなくては、なかなか日本安全保障ということはむずかしいと思います。それから、ある期間持ちこたえ得るというのを少し例をとって、適切かどうか知りませんけれども、便宜申しますと、スエーデンなどの国防あり方というものが、大体ある期間持ちこたえ得る、そうすればスエーデンは御承知通りいわゆる中立政策をとっておりますけれども、実際上、その期間後には必ずや他国から支援があるだろうということを大きな前提としてあすこの方針が立てられておるように聞いております。それなどは国際的の地位が全然同一ではございませんけれども、いわゆるまだあまり国力のない国の目標の立て方のあり方としては、やはり日本としてもそういうふうな考え方というものは非常に参考にすべきものだと思うのです。それで日本といたしましても、ある期間少くとも日本としても持ちこたえ得るだけの力、そうして足りないところはいわゆる集団保障の力による、集団保障あり方そのものはまたそのときの情勢によりましょうけれども、とにかく集団保障前提にしてでなければあり得ないだろう。それでは日本としてどれくらいの程度の力を持つかと言いますと、これは抽象的に言うことは非常にむずかしいですけれども、少し内訳的に申しますと、陸においてはある一方面に対して侵略があったと仮定いたしますれば、ある期間持久が可能である。それから海の関係につきましては、外航、内航の護衛掃海というのが非常に大きな任務だと思いますが、外航、内航の護衛の全部というまでには行かぬ、ことに外航の方は全部というわけにはいかぬと思う。これはかなり限られると思うのです。そういう外航、内航の護衛の一部、それから掃海掃海の方もこれは全部完全にというわけにはいかぬと思います。そういう掃海の一部、それから主要港湾水道等の防備を可能にする、そういうことは日本の力でぜひやる必要がある。それから空の関係につきましては、これは日本の領空の制空権を完全に日本が持ち得るだけの力というのは無理だと思います。しかし敵機の容易な跳梁を許さない程度のある程度の防空の力ということ、そういうことを目標にして大体考え方として考えております。そうして足りない分はアメリカ協力を期待する、そういう考え方、要するに、今申し上げましたように日米集団保障というものを前提にして、そうしてそれらと今のことを総合して、今度はもう一つ別の面から申しますと、日米集団保障前提のもとに日本としてもある程度自衛力を持ち、そうしてそれによって、その結果もし侵略を企てようとするものがありとせば、そういう侵略をむしろ未然に防止し得るだけの力を持ち得る、こういうことを大体考え方基本として考えておる次第でございます。
  19. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 松浦君に申し上げますが、本会議が始まるようですから、予算案等の審議がありますので、質疑はしばらく中止していただきまして再開後にお願いしたいと思います。暫時休憩いたします。    午前十一時四分休憩      —————・—————    午後一時二十一分開会
  20. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 休憩前に引き続き会議を開きます。  松浦委員質疑を継続して行います。
  21. 松浦清一

    松浦清一君 午前中、経済六カ年計画政府が出されたのでありますから、その計画の中に防衛計画に基く政策なり、その他の部分がどれくらい含まれておるかという私の質問に対しまして、杉原防衛庁長官は、まだ防衛計画というものはまとまっておらないので、この経済六カ年計画の中には入っていない、こういうふうな、どうも得心の行きかねる答弁があったのであります。私は防衛計画を外にして経済計画というものは立たないという、そういう考えを持っておりまするので、この休憩中に若干の資料を調べてみましたところが、今度の防衛庁設置法の一部を改正する法律案、この内容の中で、特に海上自衛隊が四千人ほど増強されて、昨年からアメリカから貸与される艦艇のほか、若干の艦艇が日本の造船所で作られておりますことば御承知通り、また本年度予算が成立することにより、また自衛隊の増強の法案が成立することによって行われることになりますと、艦船だけでも千六百トン級の駆逐艦が四隻含まれて合計十一隻の艦艇が日本で建造される、こういうことが明確になっておる。そのほかに航空自衛隊の増強によりましてT33ジェット練習機が九機、これを含めて三十六機が日本で建造ができる、また予算審議の際に問題になりました予算外契約をすることの許された百五十五億円のうちで、T93ジェット磯九機のほかに、F86戦闘機が七十機、T33の練習機が八十八機、合計百五十八機のジェット機が三十一年度と三十二年度にかけて本年度から継続して作られる、こういうことが明確になっておるのでありますが、それをしも経済計画に入っていない、こういうふうにやはりお答えになりますか。
  22. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) お答え申し上げます。実は私申し上げましたのは六カ年にわたる計画と、こういうことを前提にした実は問題と考えておりましたので、先きほどあなたにお答え申し上げましたので、今御指摘の点、つまりすでに計画をはっきりいたしておりますもの、つまり本年度におきまして予算の御審議をお願いいたしましたその計画はもちろんございまして、そうしてそのお毛なるものは、艦艇につきましては、ただいまも御指摘に相なりました千六百トン型の護衛艦四隻と、それから掃海艇三隻、それから小さな雑船を三隻というもの、これを建造するという計画はございます。そうしてこれはすでに国会の御承認を得ておりますところでございます。それから飛行機の方でございますが、ただいまも御指摘に相なりましたが、F86約七十機、それからT33の方を百九十六機、これはアメリカ側から備品、材料等の供給を、いわゆるMSA協定に基いてその供与を受けまして、さらにまたこれらの組み立て製造に必要な資材等の供与を受け、さらに技術的の援助を受けて、これを日本の国内で組み立て製造するということに相なっておりまして、そのうちの九機分は三十年度内に組み立てる。T33の方は九機、あとは三十一年度から三十二年度の六月までの予定でございますが、その間にわたってこれを組み立て製造する、こういう計画ははっきりしたものはございます。
  23. 松浦清一

    松浦清一君 そうすると、今申し上げた、また御答弁になった数字というものは、三十年度予算で承認をされている部分、それから三十一年、三十二年はまだ予算が組まれておるわけじゃないのですから、それは計画に属する部分ですか。それがもし計画に属する部分だとすれば、それに続いてこの経済六カ年計画の線に沿う計画があるべきものと想定されるわけですか。
  24. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) お答え申し上げます。それは今申しました三十一年度及び三十二年度にわたる分は、これは国庫債務負担行為で国会の御承認を得ておるところでございます。
  25. 松浦清一

    松浦清一君 その部分だけは経済六カ年計画の中に入っているわけですか、その部分だけは全然あの計画とは別でございますか。
  26. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) その部分は、これは当然みておるところだと存じます。
  27. 松浦清一

    松浦清一君 そのほかに自衛隊関係経済計画の中に入っている部分はどれくらいございますか。今私が艦艇が幾ら、飛行機が幾ら、こう申し上げましたが、その部分だけは入っておりますとあなたはおっしゃるが、そのほかにもあるはずだと思いますが、ほかの部分ではどういうものが入っておりますか。
  28. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) そのほかは国庫債務負担行為でお願いいたしまして、すでに予算がきまりましたので、これは分量からいたしますと、きわめてまだ少いのでございまするけれども、榴弾砲や特車等の試作、これは分量はきわめて少いものでございます。これがすぐ生産全体の方に、いわゆる防衛生産全体からみて問題になるような大きな部分を占めておるわけではございません。
  29. 松浦清一

    松浦清一君 いろいろと押し問答をしておりますと、結局われわれ、それから大多数の国民は、政府から六カ年の経済計画が発表されました際に、やはりこの防衛計画というものがそれに並行して考えられているもの、計画されているものと了解しているわけです。しかるにもかかわらず、この国会が始まりましてから、防衛計画というものはないんだ、こういうことを今日まで強調しておられるわけです。ところがこれの真偽のほどについて伺いたいのですが、日本人の全体が、一体日本防衛力はどこまで計画をされ、どこまで具体的に進められるんであろうかということを国民全体が非常に心配をしておる。しかるにもかかわらず、吉田内閣以来、いまだかつて防衛に関する長期計画というものが政府から公式に発表されたことがないんです。しかし何かありそうだということは、これはもうわれわれが考えるのみならず、国民の全体がそう考えているのです。今まで伝えられているところから判断をして行きますと、防衛自体が一昨年の春防衛五カ年計画を立案をしておったということは、これは間違いない。これが前の木村長官が九州に行って新聞記者団に会見をして話をした計画なんです。あとで帰ってきて、先ほど申し上げましたように、閣議の了承を得たものでないということで、あれは単なるメモ書に過ぎぬということでお茶を濁しましたけれども、向うで話をしたときには、自分の信念だとか、単なる事務的なメモという意味で発表したのではなしに、防衛庁がこのような計画をしておる、こういうことを言われたわけです。当時は吉田内閣の時代でありますから、そのことに関しての責任まであなたにとやかく申し上げませんが、それから後、何回となくこれを練り直しておるという情報が伝えられておる、漏れておる。そうして昨年の九月に第九回目の防衛計画というものが、経済六カ年計画に見合わしてこれができ上っておる、こういう情報が伝えられておる。今年の三月にそれが大体成案がまとまって、アメリカとの間に防衛分担金の削減折衝の際に、その六カ年計画というものを資料としてアメリカに提案をして、このような計画日本自衛力を増強して行く方針であるから、防衛分担金をまけてもらいたい、こういうふうな話をして、その資料を提供した、こう伝えられておるわけです。その真偽のほどを、外務大臣がいませんから鳩山総理に伺いたい。
  30. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私はその際に交渉した当事者でなくして、杉原君が当事者ですから、杉原君から答弁してもらいます。
  31. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) お答え申し上げます。吉田内閣時代から、防衛庁内部においてはいろいろ防衛力の整備の問題について研究してきておられたと思います。そうしてまた私どももその当時から研究してきておられたものを、これは貴重な材料として研究を重ねている次第でございます。それから分担金の交渉の際のことでございますが、これは直接これに外務大臣が当っておられたので、私はっきり聞いておることでございますので、これは責任をもってお答え申し上げますが、こういうことがその要点でございます。それは日本側としては、日米安保条約の前文に、御承知通り日本日本自衛についてみずから責任を負うことを期待するということがございますが、それに従って日本としては自衛力漸増をすることが、今、現政府としても方針としてとっておる、そうしてこれを実現するためには長期計画を立ててやって行くということを最近きめた、その当時の標準といたしまして……。そういうことはもう外務大臣から先方にもはっきりと申しております。そうして長期計画を立てる方針である。しかるに一方、日本は現在財政経済上非常な困難に直面しておる。ことに三十年度は、今、日本経済の成否を決するような重要な年になっておる。それで日本としては基本的には防衛力漸増ということについて、先ほど申し上げましたような方針があるけれども、本年度はこういう財政計画の状況であるから、ぜひ分担金を減額されたい、こういう趣旨で、こういう筋のことを話されて、アメリカ側もこれを了承いたしまして、分担金の交渉が妥結した、こういうことでございます。
  32. 松浦清一

    松浦清一君 そうしますと、世間に伝えられているように、防衛六カ年計画の資料をアメリカに提供しなかった、こう明言なさるのですか。
  33. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) さようでございます。
  34. 松浦清一

    松浦清一君 もしそういうものを出したということが明瞭になってきたら、出さなかったとあなたのおっしゃることを肯定したとしても、もし世間で伝えられておるように、そういう資料が出ておったということが明らかになった場合に、あなたは責任をどうおとりになりますか。
  35. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) 私の責任は私自身で決します。
  36. 松浦清一

    松浦清一君 今あなたの御答弁になりました防衛分担金削減に関する交渉の結論については、防衛分担金に関する日米共同声明を本年の四月十九日に出しておる。あの声明の結論をおっしゃっておられたと思うのです。ところでここで一つ問題になるのは、「日米安全保障条約には、日本が自国の防衛のため、漸増的に、みずから責任を負うことの期待が表明されていることが想起される。」、それはその通りです。「また、日本自衛隊を、漸進的に増強することが日本政府基本政策である。」、こういうことを規定して、「このような期待と政策に従って、昭和三十一年及びそれに引続く年間において、自己の資力のより大きな部分を防衛目的のために振向けることが、日本政府の意向であり、政策であることが明らかにされた。」、こういうことがこの共同声明に書いてあります。その中の「自己の資力のより大きな部分を防衛目的のために振向けることが、日本政府の意向であり、」、こういうことが日本政府から表明されて、その結果向うの了承するところとなって、今年は百二十五億円の分担金の削減と、こうなった、こういうふうに理解をするわけですが、その自己の資力という限界はどの辺のこととお考えになっておられますか。
  37. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) これは御承知通り、いわゆるMSA協定、日米相互援助協定の中に、この日米安保条約の前文にうたってあります漸増的に防衛日本がみずから責任を負うということを期待するということのほかに、いわゆるMSA協定の中に、日本防衛力の増強の義務ということを負っておるわけでございます。これは第八条に明文をもって規定いたしておるわけでございます。そうしてそれはもちろん日本の一般的な経済条件、そういうものの許す範囲においてということを特にうたってあります。これはもとよりそういうことを前提にしての話でございまして、そこに言っております日本としては防衛力漸増ということをやる方針がある。それにはもとより、これは申すまでもなく財政上の負担もそれに伴ってくるわけでございますが、そういうものは、しかしそれは、もちろん具体的に幾ら幾らということは言っておるわけではございません。一般的にそういう方針である、こういうことを言っておる次第でございます。
  38. 松浦清一

    松浦清一君 非常に抽象的な御答弁で、はっきり意味がつかめないのですが、私のお尋ねしましたのは、アメリカと約束した「自己の資力のより大きな部分を防衛目的のために振向ける」、こういうことを日本の交渉に当った政府としては承認しているわけです。その「自己の資力のより大きな部分を防衛目的のために」出すと約束されたその「大きな部分」というのは、日本全体の経済力の部分なのか、日本のいわゆる一兆円予算の中の部分なのか、その辺どういうことになっておりますか。
  39. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) それはもちろん財政そのものが、一般の日本経済力というところから割り出してきた財政規模ということもきまりますし、そうして直接的にこの財政規模いかんによって防衛費をどのくらいにするということがきまるわけでございますから、今言ったものをその背景にして日本経済力ということを考えて、そうして直接には財政力の規模ということを考えてのことでございます。
  40. 松浦清一

    松浦清一君 その負担し得る能力という限界は、金額としますとどのくらいになりますか。
  41. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) それは金額をそこで示すような趣旨で言っておるわけではございませんで、今申しますように、具体的に幾ら幾らというようなところまで話はございません。そこは一般的に、要するに防衛力漸増についての政策方針というもの、それを言って、日本としての意向を政策として表明しておるということでございまして、具体的に幾ら幾らというようなことは話にも出ませんし、向うでもそういうことを要望しておったわけではございません。
  42. 松浦清一

    松浦清一君 五月二十五日に衆議院予算委員会で、福田昌子委員の高崎長官に対する質問に答えて高崎長官が、「防衛にどれくらいの負担ができるかという金額をきめるのが経済六カ年計画であります。これは経済力に応じてこれをふやします。防衛計画というものはこれと全く違っておりまして、その数字にあるいは金額を合わさなければならぬかもしれませんが、飛行機を幾らにするとか、船を幾ら作るとか、人間を幾らにするか、こういうようなことは私どもにはわかりません。金額だけは私どもにわかっております。」、こういう答弁をしておる、その金額は幾らかかるかということは追及しておりませんから、その金額のことは申しておりません。しかし経済六カ年計画を立てられた中心である高崎長官は、防衛に対する経済計画の中に金額がどれだけ含まれているかということはわかっておると肯定しておる、それをあなたは肯定なされますか。
  43. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) そういうことは実は初めて聞くのでありますが、どういうことでありますか、私にはちょっと理解にしにくいのであります。
  44. 松浦清一

    松浦清一君 経済六カ年計画についての質疑応答の際に、防衛六カ年計画を立てますと、その中に防衛のためにどれだけ金がかかるかということを質問しておる。どのくらい金がかかって、どのくらいの金が見込まれるかということを質問されて、それに対して飛行機が幾らとか、人間が幾らということは私にはわかりませんけれども、この経済計画に含まれている金額についてはわかっておりますと、こう高崎長官は答えております。さらにそのときに、その金額は幾らですかと問うておりませんから、はっきり金額は言っておりませんが、ただわかっておりますとだけ高碕長官は答えております。あなたはわからぬと言われる。それはどっちがほんとうですか。
  45. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) 私が聞いておりますところでは、このいわゆる六カ年の経済計画において、財政規模というものについてば、大体国民所得に対する割合が現状と同じものと、かように仮定して、一応の推定をしている、しかし防衛費については確たる計算をしていないというふうに言っておられたように、私の記憶にはそうございますが、またそうであろうと私は思っているわけでございます。
  46. 松浦清一

    松浦清一君 ここにちゃんと速記に書いてございます。私が今言った通りのことが書いてある。
  47. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) 私は別に答弁を回避するつもりは一つもございませんが、経済企画庁長官から一つお聞きとりを願いたいと思うのであります。
  48. 松浦清一

    松浦清一君 これは高崎長官でないあなたにお伺いしても、長官に直接聞いてくれと言えばそれまででありますから、長官に伺いますが、今度の防衛庁設置法の一部改正法律案の中で、増員される自衛隊の隊員というやつは明瞭に数はきまっておりますね、明瞭に……。合計で三万一千百七十二人をふやして、そうして従来の数にこれを合わせて十九万五千八百十人に改めるということが防衛庁設置法の一部改正法律案の内容です。本年度予算防衛関係費用が千三百二十七億円のワクの中で押えるということは、これは予算委員会で御説明もあったり、われわれもそれを了承いたしております。了承したわけじゃないが、それを聞いている。この三万一千二百七十二人を増加するということは、予算の中で千三百二十七億円は防衛関係費用に振り向けられるからですね、千三百二十七億円防衛関係費用に使えるから、そのワクの中で何人人がふやせるかと勘定してみたところが、それが三万一千二百七十二人になったというのですか、それとも計画に基いて三万一千二百七十二人をふやすために千三百二十七億円という予算が必要なのか、これはどっちなんですか。
  49. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) この自衛隊の増勢につきましては、ある程度までのところ、これは財政の許す範囲、そこをよく見てそうして増勢をはかって行きたい。そうして日本のもう一つ基本的にと言いますか、日本の独立国としての実をあげるためにも、防衛関係から見ましても、あまりにも外国に防衛を依存している。これを日本側としても、防衛関係からどうしても直接独立の実をあげて行きたい、そうしてそれとともにアメリカの駐留軍、ことに地上軍の逐次撤退をはかるようにして行きたいということを基本的に考えているのでございまして、それを実行するのには、しかし現実の財政の関係経済財政の関係というものをよく考慮の中に入れてやって行かなければならないので、その許す範囲ということが必要でありますから、今年は防衛庁及び防衛庁の経費及び防衛分担金を合わせて千三百三十七億のワク内、こういうことを政府としては予算編成の方針といたしましたので、その範囲においてやるということで、今言った増勢の範囲にとどめた次第でございます。
  50. 松浦清一

    松浦清一君 概念的なことばかり御答弁になるので、一つも話のつじつまが合わないのです。幾ら質問しても……。これはあとに私は残ってまたやりますけれども、結局私が今尋ねたのは、千三百二十七億円というもの、当初内閣の方から出された予算の総額は九千九百九十六億円です。自由党、民主党の修正案の前の、当初出されたのは九千九百九十六億円なんです。そのときから防衛関係費用は千三百二十七億円だということがちゃんときまっておったということは、大蔵大臣がしばしば説明された通りです。私が今尋ねたのは、九千九百九十六億円の予算の中で、防衛関係費用として幾ら使えるかというふうに考えてみたところが千三百二十七億円は使える。こういうことになったので、三万一千幾らの自衛隊をふやすということになったのか。それとも今年の防衛計画の初年度方針として三万一千人をふやす必要が起ったから、千三百二十七億円という予算をとったのか、どっちですかということを尋ねているわけですから、どっちかを明瞭にお答え願いたい。
  51. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) これは今御質問でございますが、実際問題といたしまして、こういう計画を立てます場合に、増勢の必要というものはまず基本として考えておって、そうしてそれじゃ一体どれくらいの財政のワクが防衛関係費、ことに防衛庁費に期待できるか、そういうことをあわせて考慮してきめるわけでございますから、その双方どっちか一つというわけじゃなしに、双方考えてきめるわけでございます。
  52. 松浦清一

    松浦清一君 それは予算を編成する状態というものを知らない人にそういう答弁をすれば、それはそうかもしれぬと思われるかもしれません。予算を編成するときには、各省が大蔵省に対して所要額を一番初め要求をするのです。そうして全体を引っくるめて、そうしてその予算の総額を考えてみて、各省の所要額を全部出すことができるかどうかというようなことを判断をして、そうして閣議にかけられて、各省大臣と大蔵大臣とが折衝をやって、そうして最後に閣議でこれを仕上げる、こういう建前になるように私は了解をしているのです。ですから防衛庁の方から、ことし防衛力をこの程度増強したいと思うので、これだけの予算ば絶対必要である、こういうことを大蔵省に要求をされたはずなんです。ぼつぼつと大蔵省と話し合いをしながら、閣議で相談をしながら、落ちついたところが主万一千何がしの増強であったわけだとか、あるいは千三百二十七億円だったとかいうことじゃなく、最初大蔵省に要求をされた数字があるわけなんです。それが三十年度のいわゆる防衛力の増強計画の一年間に必要だと考えられておる数字だ、こう思うのです。ですから数をふやす必要が起って予算をとったのか、予算がこれだけしかないからこれだけふやしたのか、こういうことを聞いておるのです。
  53. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) それは今おっしゃいましたような意味合いにおきまして、それはこれだけふやす必要があるからということが基本的と、こういうふうに申される意味合いにおいてはそうでございます。
  54. 松浦清一

    松浦清一君 それでは三十年度において、自衛隊の増強の必要数というものは三万一千二百七十二人であったと、こうおっしゃられるわけですね。で、今年は三万一千二百七十二人を増強することが必要であったが、来年はどれくらい増強する必要を考えておられるのか。もうすでに予算編成期に入りますから、今ごろ来年の数がわからぬというはずはないはずでありますから、その予定数を一つお示し願いたい。
  55. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) お答え申し上げます。来年度の分につきましては、自衛隊の若干の増強ということは必要だと考えておりますが、これを具体的に、それでは数字的に幾らというところまでは実はまだきめるところまで行っておりませんのでございます。そうして来年度の増加ということは、これは少しこの六カ年計画の最後の目標数字的な問題と違いまして、現実具体的な実施の数字になって参りまするし、そうして本年度分の増勢につきましても、それに伴う法案を今御審議をお願いしておるような状況でございまして、これを具体的に幾らというところまで実はまだきめる段階に至っていない、これが実情でございます。
  56. 松浦清一

    松浦清一君 衆議院杉原防衛庁長官に対する不信任案が出たときに、鳩山さんは、杉原君は非常にいい人なのにどういうわけなんだろうと言って話をしておられたのが新聞に出ておりましたが、(笑声)まことに今の御答弁を聞きますと、今まで六カ年計画はないのだと言っておったが、今六カ年計画の最後の数字と、来年度計画と見合うかどうかわからぬ、こういうお話でしたが、その六カ年計画の最後の数字はどの辺でありますか、それについて御答弁を願いたい。
  57. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) その最後の数字というのを、先ほどから申し上げておりますように、その数字的のところまではまだ責任をもって国会に申し上げ得るところまで至っていない、そうしてこれはたびたびの御質問で、私も実はそれをまず示せとおっしゃるのは、筋合いとしては私はその通りだと思うのです。私もそう思うのです。そうしてそれをまず示して、本年の計画説明をせよとおっしゃるのは、私は本来の筋合いと思うのでございまするけれども、それがまだ政府としては責任をもって申し上げ得るまでのところに至っていない、そうして決して私らはそれをことさらに示さぬと、そういう気持は牽もございません。またそういう必要も認めません。事実また今日の時期においては、そこまで成案を得るまでに至っておりません。(「いつごろならば出ますか」と呼ぶ者あり)できましたら本年度中には示せるかというように考えております。
  58. 松浦清一

    松浦清一君 時間がなくてあとの人に御迷惑でしょうから、もう一点だけ伺います。肝心なことですが、防衛分担金に関する日米共同声明の中の一番しまいの方に、先ほど読み上げた「自己の資力のより大きな部分を防衛目的のために振向けることが、日本政府の意向であり、政策であることが明らかにされた。」、そういうことで百二十五億円アメリカがまけたということについて、「しかしながら」と、こういうふうにあります。「しかしながら、日本政府の直面する財政的困難、なかんずく、本、日本会計年度は、日本経済安定の成否を決する年であるということにかんがみ、米国政府が本年度における特別の協力措置として、本会計年度以降には適用されない、前記の防衛分担金減額に同意した」と、こういうのです。この意味は、私の理解するところは間違っておるかもしれぬが、今年は日本経済安定の成否を決するほど非常に重要な年であるから、今年は百二十五億円まけてやるが、来年度はもうまけないのだと、こういうことが明記されているように解釈されるわけですが、その辺の点はどういうことになっておりますか。
  59. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) これはそこの書き方がいつも問題になって、不明瞭なようでございますが、その意味はこういうことでございます。本年度防衛分担金の減額、その減額された金額というものが、これは本年度限りのものである、一口に言えばそれだけのことであります。来年度のことはまた来年度ということでございます。そうして来年度以降は絶対に減額しないのだ、そういう意味も全然含まれておるのじゃございません。
  60. 松浦清一

    松浦清一君 もうこれくらいでおきましょう、あとの人に迷惑ですから……。しかしながら、私の御質問申し上げたい点はたくさん残っているわけです。残っているわけですが、今日の日程の関係もありましょうから、これで私おきますけれどもあとの残余の質問を保留しておきます。
  61. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 松浦委員の高碕長官に対する質疑もありますから、あとで高碕長官の出席を求めまして、その点は御質問を願いたいと思います。  ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  62. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 速記を始めて。次に木下源吾君の発言を許します。
  63. 木下源吾

    ○木下源吾君 私は首相に一つお伺いしたい。第一に、憲法第九条と自衛隊関係について一つ御所見を伺いたいと思います。
  64. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 憲法第九条は、自衛のための最小限度防衛力の保持は禁止しておりませんから、自衛のための最小限度目的のためならば自衛隊を持っても差しつかえないと考えております。
  65. 木下源吾

    ○木下源吾君 よく言われているのですが、首相は、在野当時は防衛隊また自衛隊、そういうものは憲法改正しないでやることはいけない、こういうように言われておった。ところがただいまのような解釈はどういう動機で変ってこられたか、お伺いしたい。
  66. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) この憲法第九条が成立する当時の司令部の考え方というのは、自衛のためにも防衛力は持ってはいけないという趣旨でこの第九条ができたということはすべての人が知っている通りであります。けれども自衛隊法ができまして、今日におきましては、今日というよりは、自衛隊法ができる当時から、日本には主権がある、主権を持つならば、それを守るという自衛力を持つのは当然だという論が圧倒的に国民の意思になりまして、それで今日においては自衛のためならば軍隊を持ってもいいということで、どしどし自衛隊が増強されておる現状でありまするから、これを否定しない方が当然だと考えるように私は意見が違ったのであります。
  67. 木下源吾

    ○木下源吾君 そうしますと、一口にいうと、自衛隊法国会を通った、それだから従来の主張を変更した、こういうことになるわけでございますか。
  68. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) さようでございます。
  69. 木下源吾

    ○木下源吾君 この点が一般にまだ了解いかぬところでありますが、国会自衛隊を認めたということと、自衛隊日本憲法に違反しておる、沿わないということとは違うのではないか。首相はかってこの種の戦力、そういうものは現憲法にそぐわないものだ、いわゆる違憲、こういうように言っておられたのであって、その後国会において自衛隊法が通過されました。これは一般の国民世論であるということは私は一つにならぬのである。あくまでもやはりこの現憲法というものと立場は、首相がかってお考えになっておったことを通して差しつかえないのじゃないか、こういうふうに考えますが、この点はどうですか。
  70. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 憲法の解釈の問題でありまするから、憲法の解釈は、時に応じて変化して行っても差しつかえないと私は考えております。
  71. 木下源吾

    ○木下源吾君 これは総理大臣が、憲法の解釈を自由に、勝手に個人としては差しつかえない。解釈を違えても変遷に応じて変えても差しつかえない、こう言いますけれども、現存の憲法がそこへれっきとしてあるわけなんです。そうしてその憲法は明らかに前後の関連をもって、そうしてその当時はっきり出ておったわけです。すなわち戦争を経て平和へ、こういう過程においてできた憲法であり、従って平和憲法と名づけられておるのであります。ところが時代が戦争のような時代にまた、なりかけてきておるから、その平和憲法というものを戦争憲法へ置きかえて差しつかえないのだ、こういうことではないのではないか、私はそう考えますが、総理大臣はどうお考えになりますか。
  72. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は現在の日本憲法の性格はやはり平和憲法であり、民主憲法だろうと思います。現在の憲法は平和をこいねがっていると同時に、民主主義を確定したということ、これは憲法の生命ですからして、それの変更はできないと思っております。ただその自衛のための戦力あるいは兵力を持っていいかどうかという問題は、これは第九条の解釈でありまして、戦争、国際紛争を解決するために兵力あるいは戦力というものを持っちゃいかぬ、今日においても、その国際紛争を解決するために兵力を持ったり戦力を持つことは、やはり憲法上禁止すべきだと考えておりますから、やはり平和憲法だと私は考えております。けれども自衛のための戦力を持っていいかどうかということは、これは第九条の解釈の問題でありまして、日本の国が独立をしており、領土を持っている、領土を持っていれば領土主権がある、その領土を間接もしくは直接に侵略を受ける、そのときに手をこまねいて見ていなければならぬということまでも否定するか否定しないかということが九条の解釈の問題でありまして、これは九条の解釈以外に、日本憲法上、日本が領土主権を持っている以上は、これを侵略せられる場合に防衛する権利はあるというように解釈するということは、決して日本憲法の性格をくずすものではない、当然に解釈していいと考える次第であります。
  73. 木下源吾

    ○木下源吾君 自衛力を持つことは平和憲法の趣旨に反しない、こういうお考えのようでありますが、元来日本はそういう兵力を持たないということをあの憲法において宣言したことは間違いない事実であります。ところが今それを自衛のためならば兵力を持っても差しつかえない、こういう解釈において、進んで兵力を持たなければならぬ理由はどこに一体ございましょうか。持っても差しつかえないという御解釈である、持たなければならないということがどこからも出てこぬじゃないか、こういうように考えますが、これはどういうようにお考えになっておられるか。
  74. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は現在の国際関係の平和、なぜ平和になっておるか。そのなぜ平和になっておるかということには、やはりこの武力というか、戦力というもののバランスによって平和が保たれていると思う。全く戦力を持っていない方が平和を維持し、できるということが証明できるんならばけっこうな話でございますけれども、現在の世界の平和というものは、やはり力の平和だというようにも考えられるので、日本日本の国を守るに相当する兵力を持つということがやはり世界の平和に利益するところが多いと考えるのであります。
  75. 木下源吾

    ○木下源吾君 よほど明らかになりましたが、首相は力の平和、すなわち力の均衡の上に立った平和、ところが平和というのは、真の平和は私はこういうものでないのではないかと常々考えるわけです。力による均衡の上に立った平和状態は、これは形式上の平和の状態であって、内容、質的には決してこれは平和ではないのでありますから、現在熱戦ではないけれども冷戦というものがずっと続いておる、やはり戦いである。この一事を見ても明らかであります。そこで真の平和というものは、やはり私は武力を互いに持たないということが大きな条件ではないか、こう考えております。この点はどうですか。
  76. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 木下さんと大体において根本は同じような考えを持っておると思います。私は力による平和というものは決して永続性があるとは思いません。そして確定的のものでもないと思います。力による平和は、お互いに力の競争をやりますから、おもむくところが必ず戦争になると考えるものでありまして、力の平和によって平和の保たれる現状には満足はできません。それですから、やはりお互いに誤解を避けて、友好関係を立って、力による平和をほんとうの平和愛好のための平和に持って行くということが最も必要なことだと思います。
  77. 木下源吾

    ○木下源吾君 この首相のお考えからいけば、ただいま提案されておる防衛庁、自衛隊法ともに私はその考えとは矛盾しておるのではないか、どうしてかといえば、力の平和というものは正常な形ではない。真の平和はやほりそういうものではない平和である。こうであるとするならば、日本の今日は、現在持っておる兵力というものをさらにこれを増強するのではなくして、現在あるものを凍結しておいて、凍結してそうして世界の趨勢に順応をして、これを漸減してなくしてしまうという方向でなければならないのではないか。しかるに、この法案は数万の増強をする、こういうところに私は首相の今言われた真の平和を求むる方法としては、これは矛盾をしてはおらぬかと、こういうふうに考えますが、首相はどうでございますか。
  78. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は日本自衛のための戦力というものは、あまりに寡少だと思うのです。世界のいずれの国を見ましても、自衛のための戦力というものは相当の程度持っているのであります。日本だけが特に自衛のための戦力が少ないということは、世界の平和を今日の現状においては維持するゆえんにはならないと思います。もしも四巨頭の会談等において、世界の情勢が軍縮方面に向って行って、そうして軍縮ということが世界的の空気になって、軍縮によって方々の国が戦力を減らす場合においては、日本もまたこれを参考として、そういうようなことを考える場合がくるだろうと思います。現在におきましては、まだ力による平和というものが幾分かの根拠がある時代でありまするから、今日においてまだ日本の軍縮時代に入るというようなことは考えられないと思います。
  79. 木下源吾

    ○木下源吾君 それだから首相はアメリカ援助を受けて日本自衛達成しようと、こういうお考えでありますか。
  80. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) さようであります。
  81. 木下源吾

    ○木下源吾君 この自衛隊の、防衛庁の設置の目的は、平和と独立を達成するためと書いてあるように記憶しております。平和と独立を達成するために今度増強される、しかるにこの増強の過程を見ておりますると、かえって独立を傷つけておる、そういう面が多々あると思うのです。独立のために兵力を増強しようとおっしゃっておる、その現実のすぐ隣りで独立を損われておる、こういう事実をたくさん私どもは先般来見せつけられておる。この点は具体的に申しますと、防衛分担金減額の過程において、アリソン大使からの覚書を受け取るとか、あるいはアメリカ国防次官補の新聞発表などを見ましても、日本防衛に対して怠慢である云々と、こういうようなこと、ことごとく私はこれらはある意味では内政の干渉だと、かように考えるわけであります。内政に干渉を受けて、これを甘んじて受けなければならないこういう状態は、私は非独立の状態だと、こう考えるのであります。一方において平和と独立を求めるために政策を行い、半面において独立を阻害するようなことを現実に行なっておるということに対する、こういう矛盾に対して総理大臣はどういうようにお考えになっておりますか。
  82. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は軍備についてアメリカ援助を受けておることは現実にその通りでありますが、決して軍備の援助を受けているからといって、アメリカに隷属をしておるという形は少しもないと思っております。
  83. 木下源吾

    ○木下源吾君 アメリカに隷属をしておる形はないとおっしゃるが、しからば政府日本の完全独立ということを言われておる。この言葉はもちろん経済援助を受けておる面もありましょう。しかしながら、完全独立を要望されておる、希求されておる政府、それは言うまでもなく自衛力達成して経済援助等をなくする、こういう意味じゃなかろうかと思う。私はそういうふうに受け取っております。そうして内政の干渉を受けないような、そうして主権領土というものを侵されないような、そういう形におけるいわゆる独立でなければならない。そういう意味でこそ、政府が完全独立を目ざして今やっておると、こういうように考えておりまするが、今、総理大臣は、隷属、そういうようなことはないと、こうおっしゃるのと、完全独立をせにゃならぬというしばしばの御声明とは、全くこれは矛盾しておると思うのですが、どうですか。
  84. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) とにかく占領時代の政令等がまだ現存しておりますから、こういうようなものは完全独立のためにはできるだけなくなした方がいいという考え方はしております。
  85. 木下源吾

    ○木下源吾君 およそ政令、まあそういうものがあることも事実でありますけれども、根本的には、その国の独立とは内政干渉を受けない、いわゆるよその人に自分の台所の指図を受けぬということ、これが大きな独立の要素である。自分のうちに許しなくしてどんどん……、仮に許すと言うても強制的に入ってこられて、自分の言うことが聞かれないというような状態ではなかろうかと思うのであります。それで、このただ一片の法令が残っておるからといって、完全独立という言葉では私はあまりにもそれは軽薄なお考えじゃないかと、こういうように考えますが。
  86. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 現在の日本のまあ領土主権の安全性がアメリカの駐留環によって保たれている、安保条約によって日本の独立が確保せられておるというようなことは、日本の独立の完成を期する上には確かに障害になると考えております。なお、経済につきましても、できるだけ自主経済にして、アメリカ援助のないようにした方がやはり独立の完成だと思います。とにかく兵備においても経済においても、アメリカ援助によって経済なり兵備なりが完成されておるということでは、ほんとうの独立の完成には支障になるものと私は考えます。
  87. 木下源吾

    ○木下源吾君 そこです。ただいまおっしゃったように、そういう独立に支障がある。今や独立を目ざすために必要である防衛庁、自衛隊、それが今増強する過程においてすでに独立を侵されていると、私が先ほど申し上げたのはその点でありまするので、これはぜひ一つお忘れなくお考えおきを願いたい。そこで私は、アメリカ軍隊がこの国にとどまっておるということは、あらゆる意味でこの国は耐えがたい精神的な圧迫を受けると、こう考えております。かつて占領時代におけるアメリカ軍は、いつ占領が終了するか、そうしてアメリカ第が撤退するかということを国民がひとしく心配しておりました。しかしその当時において、占領軍の撤退する基準というものは明らかになっておったと思うのであります。この基準は言うまでもなくポツダム宣言であります。ポツダム宣言の条項によれば、日本の国に国民責任を負える民主的政府ができた場合においては占領軍は撤退せらるべし、こういう一項がございました。このことによって私どもはわが国に一日も早く国民責任を負うところの民主政府の樹立、このために及ばずながらお互いが努力したと思うのであります。そうしてその当時はそういう目標があった。ところが今日サンフランシスコ条約を契機といたしまして、わが日本に駐留軍、いわゆる米駐留軍は日本の安全のために駐留するのであると同じ内容、同じ質を持った同じ軍隊が、かっては日本の民主化援助のためにありましたし、あの条約後においてはまごうかたなく、これは日本防衛と言いますけれども、大部分はアメリカ防衛のために駐屯しておるわけであります。ここで今この軍隊の撤退を首相が非常に心配されておる。そのために日本自衛隊を増強し、そうしてアメリカ軍隊に一日も早く帰ってもらわなければいけぬ、こういうように考えられておるようにしばしばの御意見で伺っておるのでありますが、そこで先ほど来問題になっておるところの自衛隊の増強の限度、これが問題になって参ります。どこまで一体増強したならばアメリカ軍が撤退するのか。日本国民が占領軍であろうが、防衛軍であろうが、何であろうが、外国軍の日本駐在というものに対して非常に耐えがたい重苦しいところの感じを持っておるものを、これをなくするために一生懸命自衛隊を増強しておるのだというようにも、私ども総理大臣のしばしばの話から聞いておる。そこでこのアメリカ軍の撤退のために時期は必ずしも明確でなくてもよろしいが、どの程度の増強をしたならばアメリカ軍が日本から完全に撤退するのであるかということをお考えになっておるか、この政府がまたそういうことに対して御相談になっておるか、またおきめになっておるか、こういう点について総理大臣に直接私はお伺いしたいと思うのであります。
  88. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) アメリカの駐留軍のうち空軍並びにその艦艇の部隊、この部隊が日本を撤退するということは、これは時期がちょっと私には考えられません。つまり空軍にしても艦艇部隊にしても非常に予算の上で影響のある問題でありますから、この点のことはよくわかりませんけれども、地上部隊の駐留軍の撤収はあまり遠くはないのじゃないだろうかという想像をしております。駐留しております地上部隊はそんなにたくさん今いるわけでもありませんし、これはまあ容易に地上部隊の撤収は期待ができるというような気持ちでおります。
  89. 木下源吾

    ○木下源吾君 およそどのぐらい増強しましたならばという大体のめどでもありましたならば……。
  90. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) この間そういうような質問がありまして、大体においては国防六カ年計画の間においてアメリカの地上部隊の撤収は期待ができようと思うというような答弁を私いたしたのでありますが、今日においても数年の間において撤収を期待はできようかと考えております。
  91. 木下源吾

    ○木下源吾君 そこで国内問題に相なりますが、今日の日本経済の状態において、私は増強の適否というものは十分に考えなければならぬと思うのでありますが、御承知のように、本年度予算において一千三百二十何億ですか、そこでこれは全予算の一三・六%を占めております。これは教育文化の一二・四%よりもずっと上回っておりますし、この防衛関係費に今の予算外契約百五十四億を入れますと、社会保障費一四・二%にも匹敵します。こういうような国内の経済状態において果して防衛費増強ということが適当であるかどうか、この点を一つ答弁を願いたい。
  92. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 防衛費の増加は余りしないということは私も希望はしております。けれども防衛力が全然破壊された今日でありまするから、やはり策初の年度におきましては、建設の最初の年度においては相当な防衛分担金のふくらむことはやむを得ないことじゃないかと考えております。
  93. 千葉信

    ○千葉信君 関連して。ただいま鳩山首相の答弁によりますと、空軍とそれから艦艇部隊は別にして、地上部隊の場合にはその撤退はそう遠いものじゃない、防衛六カ年計画の最中にも撤退ということが起るであろう、そう遠くはない、こういう御答弁でございましたが、そういたしますと、これは鳩山首相の頭の中には、大体どれくらい増強したならばアメリカの地上軍が撤退するであろうという構想はおありだということになるわけですが、そうしてその撤退が、そのころはまだ六カ年計画達成されない以前、つまり逆に言いますならば、大体の頭の中にある構想としては六カ年たてば地上軍はどれくらいになるか、もしくはその他の日本自衛力はどれくらいになるか。そこまで行かないうちに大体アメリカの地上軍については撤退するであろうという御答弁でありますから、その大体の首相の構想がどの程度のものか、ここで承わりたい。
  94. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 地上部隊の総数が十八万とか、十九万とかいうような具体的な数字は今日は私の口から言えない時期だと思っております。ただ頭の中で何を考えているかということを質問せられれば、そんなに多数の軍隊日本は持つ必要はないというような気持を持っております。日本の財政力に非常な負担を来たすいわゆる常備軍という形のものでしょう、これはさような何か方法を考えて、非常に大きな数字の常備軍を持つというようなことばないらしいのではないかという構想をしております。
  95. 千葉信

    ○千葉信君 今の御答弁から類推できますことは、大体地上軍が日本の十八万とか、十九万とかいうような状態になれば大体撤退の可能性が生じてくるというふうに、ただいまの御答弁から受け取れるわけですが、しかし私はそれよりもっと具体的にお尋ねしたいと思うのです。昨年アメリカの地上部隊が二万人ばかり撤退しております。これは撤退ですか、引揚げですかわかりません。とにかく日本の国内からアメリカ軍隊が二万人ばかり減員されております。その減員されたということと、今回の自衛隊の増強の数字とが面接関連あるとは思われませんが、実際問題としては日米共同で日本防衛に当るということですから、そうなれば、その防衛の態勢というものは常に恒常的でなければならぬ。そうなりますと、去年一万人帰った、その事実の上に立ってことし三万一千人というものが陸海空で日本で増強されようとしておる、この数字には関連ありと鳩山さんはお考えですか。
  96. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) これらの点については防衛庁長官から御答弁いたさせます。
  97. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) ただいま万人とかというような数をおっしゃいましたが、私そういう数については、昨年一万がどうなったということを承知いたしておりませんが、私のはっきりと承知しておりますのは、ことしになりまして約五千撤退いたしました。(千葉信君「年間ですよ」と述ぶ)もちろん一般的に申しますならば、アメリカ側の撤退ということと、日本側の自衛隊の増勢、増強ということと関係のあることはもちろんでございます。具体的にはそれでは幾らこっちをふやしたら、それに応じて比例的に幾らの数が撤退するか、あるいは幾らの数がどうと、こういうふうにはちょっといかないだろうと思います。しかし、いずれにいたしましても、本年度におきまして陸の方は自衛官二万人の増勢をお願いいたしておるのでありまするが、これがもしお認めいただきましたならば、それはアメリカの地上軍の撤退ということがさらに促進される根拠になることだけは確実だと思います。また私らもぜひそうしなきゃならぬことと考えております。
  98. 木下源吾

    ○木下源吾君 先ほどの続きをもう少し……。日本経済の状態でただいまお伺いしましたところが、この程度防衛費は当初においてやむを得ない、こういうふうなまあ御答弁でありました。しかしながら、われわれが日本経済がすでに今日大衆の生活、エンゲル係数ですね。一カ月の生計費のうちで食糧費の占める割合を示した係数が非常に劣悪であります。五〇%を前後しております。これはやはり世界の四流国以下でありましょう。こういう状態を私ども政府の統計によって知っておるのでありまして、この状態からやむを得ないであろうという、ただそれだけで実際生活を圧迫しておる経済状態を忍ばなければならぬという確率は出てこないと思うのです。どういうようにやるがために具体的にはやむを得ないのであるか、これを一つお示しを願いたいのであります。たとえば先般予算編成に当りまして、首相は防衛分担金を減らして、そうしてその大部分を住宅建設費であるとか、社会保障費に回したい、こういう一つ構想をもってこられたということを聞いております。またそうでなければならないはずであります。吉田内閣とかわった鳩山内閣は、現実は防衛分担金の交渉の過程において、これは総理大臣が直接おやりになったのではなかろうと思うけれども、あなたの幕僚は、この交渉においてすでに大きなる譲歩を示して、そうして防衛庁費をも含めて防衛諸費が表面上ようやく前年度数字につじつまを合わしておりますが、先ほど申しました予算外契約を含めますと、なおかつ百億以上の増額になっておるし、明年度もこれは増額必至の状況になっておるのであります。これに対しまして、私は首相の信念、民生安定を遂行しようというこの信念が非常に曲げられると、こう考えます。そこで私はこの程度のがまんは、苦しみは忍んでもらわなければならぬという、この具体的な何を示していただかぬと国民は非常に不安である。この程度というのは一体どのような限度であるか、もうすでに二カ年前から給与は釘付けになっております。物価は、生活必需物資は相当の上昇を示しております。こういうような一端をみまして、一方においては防衛費は逆に増額をしておる、これは非常に国民が心配しておる、希望を失っておる。ここでどうか総理大臣に、この程度のがまんはしてもらわなければならないという限度一つ具体的にお示しを願いたいと、かように思うのであります。
  99. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 防衛費の総額をどのくらいの国費の割合にこれをとどめるかというようなことについて適当な答弁をする人は大蔵大臣だと思いますが、私としては、ことし千三百二十七億でとまったのでありまするから、これ以上なるべく出したくないというのが私の気持であります。これについて千三百二十七億がまたふえたから、どういう責任をとるかという質問が出ても困りますが、とにかく私の気持は去年とことしが千三百二十七億でとまったのでありまするから、来年も千三百二十七億の限度において兵力の漸増等もまかなえることを希望しておる次第でございます。
  100. 木下源吾

    ○木下源吾君 いや、決して何です。よしそれがただいま言われた事情によって増額になっても、言質をとって云々ということは私はいたしません。しかし現実の国民生活というものには目をそむけてはいけない、これは申し上げておきたい。なぜ私は今、首相の言質をとって、そういうことはいたしませんと、こう申しますかといえば、私はやはり平和憲法を守り抜かなければいけない。そこであなたの内閣憲法を変えようとしておられる、より平和に変えようとせられるのかどうかは知りませんけれども、変えようとしておられる。そのために今保守合同を策しておられる。ここで私は当面日本国民の要請されておるものは、決して保守的な反動的な政権を望んでおるのではないと考える、私はそう考える。平和を望んでおるのであります。従って私は平和政権を国民が望んでいるということは疑う余地はないと思うのです。こういう保守合同か革新かという命題は、私はきわめて危険な命題だと思う。そうではない、やはり私は平和か戦争か、平和の政権を私は持続させなければいかぬし、打ち立てなければいかぬのじゃないか、こう考えております。今、総理大臣より率直に平和に対する所信をいろいろ伺いました。保守合同ではなく、平和の政権のためにもう少し私は大胆にお考えになる必要があるのじゃないか、こういうふうに思うのであるが、そういう意味で私はその言質を云々しないということを今申し上げたのであります。それに対する総理大臣の所信を一つ伺っておきたいと思います。
  101. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 世界中の人々が平和を熱願していることについては木下君の言う通りであります。日本国民も再び戦争の被害を考えるということは、考えるだけでも戦慄しておることと思います。どうしても世界を平和に持って行くのにはどういう方法がいいかということを考えて、その方法を堅持して行くより仕方がないと考えております。私もそういう意味において政治をやっておるつもりであります。ところでその保守合同が戦争の方に行くというような危険は今日はもうないと思います。自由党も保守合同によって日本の軍備を拡張し、日本憲法改正して、そうして軍閥の再来をするような危険を踏むというようなことは断じてないと思います。むろん憲法改正するということも、やはり何と言いますか、世界的の潮流に反抗するような意味の憲法改正をするということは断じてないと思います。これはやはり平和の確保、性格としては平和の憲法、性格としては民主主義の憲法ということを明白にしてのちに改正をしようというのだと思っております。国防費の増額ということも、そういう意味において私は去年、今年の一千三百二十七億以上に持って行くということも、いろいろな誤解を招いていけないことだと思います。これだけは堅持いたしたいという考え方をしておるのであります。決して戦争の方に持って行くというような気分を保守合同によって考えているわけじゃございません。
  102. 木下源吾

    ○木下源吾君 総理は賢明であるから、そういうことにはならないとも考えられますが、しかし保証はできません。すでに私が今申し上げたことは、かつて再軍術論が横行しておったときに、再軍備には賛成であっても、ビキニの灰には反対しておる。ビキニの灰はいうまでもなく平和を要望する声であります。ビキニの灰には反対ということは、そういう意味で私は日本にはビキニの灰に反対する平和の政権というものが必要である。毒軍備賛成、反対で低迷するのではなく、そこまで私はいって国民の要望にこたえるべきじゃないか、かように考えておったものでありますが、しかるにやはりこのビキニの灰に賛成するものがあるのです。それはいうまでもなくアメリカにおける戦争挑発の中心であるようないわゆる水爆、原爆の製造で漠大な利益を得るものであります。これが賛成するのであります。そこで私は日本にはおそらくそういうものはないとは考えます。しかしこれらも今日までの情勢を私どもは見ておりますと、日本には基本的にそういうものはないけれども、どうもこれに雷同する一つの種族がいる。それは何であるか、それは官僚である。財閥が権力、力が強いときには財閥、軍閥が強いときには軍閥、全くこの得体の知れない族がいる、これが非常に危険であります。あなたのような根っからの自由主義ではない、しかもそういう日本の自由主義は非常に温室の中に育ってきているのであるから、フランス革命のような試練を経たのではなくして、そういう結果できているものですから、見わけがつかないときに官僚が食い入って、そうしてビキニの灰を賛成し、これを拝んでいるものと手つなぐ危険性が非常にあるのであります。そういう意味で私はこの保守合同というものは厳格に検討しなければならないのではないか。こいねがわくは、私はビキニの灰に反対するそういう政権を早く打ち立てて、そういうゆるぎない政権のもとに平和の政策を私は押し進めて行かなければならないのだ、こう考えておるのでありまして、そういう意味で保守合同に対する所見を伺ったのであります。それで、いずれにいたしましても首相は平和を熱愛する世界の風潮というものをよくおわかりになっておるし、そうして今回四国の巨頭会談において示されたところの大きくなる平和への、共存へのこの成果というものを定めし私は高く評価しておられると考えます。そういうように私は考えております。ここでこの自衛隊の増強ということも行きがかりでしょうが、ないかもしれないけれども、思い切ってここではこの手綱を凍結してしまう状態を……。そのかわりに総理大臣みずから世界の平和のために、口ばかりではなく、実際に中国あるいはビルマに、少くもアジア諸国だけでもよろしい、世界の共存に役立つ、平和のために役立つ、そういうために出向いて行って、日本の真意を明らかにして世界平和に貢献する御意思があるかないか。すでに御承知のように、周恩来はヨーロッパから、あるいはバンドン会議に、またウー・ヌー首相は御案内の通り、インドネシアの骨相もその通りでありましょう。インドのネール首相においても、またユーゴーのチトー首相においても、そうして今またヨーロッパにおける巨頭会談、いかに世界の各国の指導者が平和のために今根強い活動をしているかということはうらやましいほどであります。総理はみずから進んで、国内における国民のあまり好みもしない防衛自衛隊、そうして憲法上まぎらわしいようなそういうことにうき身をやつしておられるよりも、進んでこのような挙に出づるというお考えがございませんか、あるのが私は当然だと思う。それを一つ所信をお伺いしたいと思うのです。
  103. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私も世界の平和を持ち来たすことについて、何事か私にできる仕事がありましたならば、その労をいとうものでは決してありません。
  104. 木下源吾

    ○木下源吾君 そのお言葉は情勢が許すならば世界の各国の指導者と同じように、みずからこちらから出向いても平和のために力を尽そうというお考えであるというように了承して差しつかえありませんか。
  105. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) その効果があるようなことがわかりますれば、必ず出かけたいと思います。
  106. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 木下委員にお諮りいたしますが、衆議院の本会議が始まるようでありますが、木下委員の御質問が、防衛庁長官がおられなくても総理質問されるということであれば継続してもよろしいのですが、いかがですか。
  107. 木下源吾

    ○木下源吾君 休憩を望みます。
  108. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) それでは午後三時半まで休憩いたします。    午後二時五十五分休憩      —————・—————    午後三時五十五分開会
  109. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
  110. 木下源吾

    ○木下源吾君 もう少し総理をわずらわして……。やはりこの自衛隊の陰には、仮想敵国というか、直接侵略の対象というものを、手近かなところ、ソ連とか、中共というところに置いてあるのでありますか。
  111. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は仮想敵国としてソ連や中共を考えていると言ったことはないのです。ただ日本の国家として、暫時でもある国内に侵入して来たものを一定の期間防衛するだけのものを持っていたいというだけで、ソ連や中共が仮想敵国であるとは思っておりません。
  112. 木下源吾

    ○木下源吾君 まあそうでなければならぬはずだけれども、大方はやはり日本の直接防衛、そういうものは、平和を脅かすものはソ連、中共である、こういうように印象づけられておりますから、この際それをはっきり総理の口から、言っていただくと何時に、自衛隊の諸君にもそういうようなことは関係ないんだ、こういうように印象づける必要がある、こう考えておるので、そこで自衛隊のあの諸君は、精神のよりどころとして、やはり反共ということを非常に高揚しておるように聞いておるのですが、これは総理の今のお考えとはよほど変っておると思いますが、その点はどうでございますか。
  113. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私はそういうようなことは、なるべく慎しんで言わぬ方がいいと思っております。
  114. 木下源吾

    ○木下源吾君 今度のジュネーヴの四巨頭会談、これなどは非常に情勢も緊張緩和の方へ行っておる矢先であるから、ただいま私が申し上げたような反共、あるいは中ソを仮想敵国にするというようなことが、今までかりにそういうことが平気で言われておっても、緊張緩和のために今後は一段とそういうことのないようにしてもらいたい、これが国民一般の何だと思うのであります。そこで私は時あたかもヨーロッパにおいてはああいう会談が行われておる。日本においては兵力増強の国会を通じて審議がなされておるわけです。これで世界の全体の中における日本の行き方というものは、何だかこう矛盾しておるような印象を各国に与えるのではないか、こういう点を懸念しておるのでありますが、こういうことに対しては、政府みずから進んで各国にそういう疑念を払拭するような手段を何か講じられる必要をお考えになっておられましょうか。
  115. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私はソ連や中共ともほんとうの国際関係を正常化したいということを思っております。これは決してアメリカ関係とは矛盾しないと思うのであります。アメリカもやはり世界の平和を企図しておるものと思いますし、アメリカとの安保条約その他の密接なる関係を結ぶ等のいろいろな事柄も、これもやはり戦争を回避したいというのでありまするから、ソ連と国交を調整したいということと、アメリカとの関係を緊密にしたいということとは決して矛盾はしていないと思います。
  116. 木下源吾

    ○木下源吾君 その矛盾というのではなくて、今の世界の情勢では、世界の緊張緩和、東西間における冷戦の揚棄、そういう方向に足を踏み入れておる。あたかも日本においては今こういうように現実に兵力を増強する、それはまあよしどういう目的であるかは別といたしまして、現実にそういう方向をとっておるということが、世界の多くの国々に対して日本が世界の風潮と逆行しておるかのごとき印象を与える。これに対する政府は改めて具体的に何か声明と言いますか、何かを講ずる必要があるのではないか、こういうように考えるわけであります。その機会は何も突如としてそういうことを現わすのではなく、ただいまやられておる日ソのロンドンの交渉等を通じてもよろしいと思うのであります。そういう点はお考えになっておるかどうか、こういうことです。
  117. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 形から見ますと、木下君の言われるように、四巨頭会談においては軍縮の協議をしようというのに、日本では自衛力漸増をしようとするのでありまするから、その二つの行き方が矛盾するというように見えますのは、ほんとうにおっしゃる通りだと思います。けれども日本自衛力漸増というものは、決して侵略戦争を目的とするものでないということは、詳細に点検すれば実に明瞭だと思いますので、ソ連との国交調整をする機会をつかまえて、そうして日本の誠意のあるところを明らかにいたしまして、そうして決してアメリカとの国交を緊密にして行くのも、ソ連との国交を正常化するのも同じ平和を持ち来たすためだということを、ある機会をつかまえて明瞭にいたしたいと考えております。
  118. 木下源吾

    ○木下源吾君 そういうことを私は非常に国民が期待しておりますし、ぜひ実現していただきたい。ただ問題になるのは、私ども今の情勢から見まして、ああいう巨頭会談が冷戦十年と言いますか、その結果行われてあのような状態が表現されております。これについては、私どもいささか国内における今日まで、もちろんこれは相対的でありますが、政府等に対しては反対の立場でなされたことは事実でありますが、すなわち再軍備反対あるいは戦争反対、積極的には平和擁護、こういうような運動、政治的な戦いを熾烈に展開してきたそのやはり結果が、四巨頭会談の冷戦に終止符を打つという方向に幾分でも役立っておる、かように考えておるのであります。国内における単なる権力の争奪だとか、あるいは政権の移動、そういうような問題から行けば、主張が異っておるために敵味方のような戦いであったかもわかりません。しかしながら、結果においてそういう国民の世論というものが、自然に世論というものが結集された形で再軍備反対、戦争はいやだ、平和をというこの戦いというものが、今度の四巨頭会談にこのような緊張緩和の効果をもたらしたと、かように考えております。従いまして、私どもはこの方向をさらに進めるべきだと、かように考えておりまするが、しかしながら、なおかつ今日の世界情勢から言って、常に東西が話し合いでお互いの共存平和を招来しよう、平和はただ単に軍備の縮小ばかりではなく、原子兵器の貯蔵あるいは製造禁止ばかりではなく、文化、経済一切の交流を盛んにし、平和を求めようとする、そういう方向が今打開せられ、扉が開かれてきた、こういうように考えるのであって、従いまして、われわれの国内における単なる戦いのための戦いだけでは今後の方向は違うではないか、こういうふうに考えます。しからばどうであるかと言えば、先ほど私がちょっと申し上げましたように、政権にいたしましても保守、革新というものではなく、やはり平和を中心にしたところの政権というものが必要である。そのために鳩山内閣で、鳩山さんで私は平和を挺身して進めるという決意と努力があるならば、なおけっこうではないか。ところが口でだけ平和で、口でだけいろいろ緊張緩和、共存を唱えておっても、現実に行うことがそれと逆なことであっては、これは私は非常に国民の期待を裏切るものである、そうでなく、平和をまっしぐらに押し進める、こういうことのために政策を行なって行くことができないものか、私は平和の政権は今の民主党内閣というような、そういうものだけでなかろうと思う、平和を希求しておるものは……。そういう意味で今非常に政府が苦悩せられておる保守合同によってここを切り抜けようとする、しかしそれは正しい方向であるかどうかということにやはりもう一ぺん考えを及ぼさなければいかぬのではないか、かように考えて御質問しておるわけであります。従いまして、この平和を獲得するためにもつと積極的な活動、日ソ交渉、あるいは日中の経済交流、あるいはアジアにおける文化交流、こういうことに熱心に、そうして果敢に進められるということが大切じゃないか、こういうように考えておりますが、これについて何か総理はお考えになっておることがありましたならばお伺いしたい、かように思います。
  119. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 特に近隣諸国家の国家群といっていいでしょうか、国家等とは国際関係を正常化して緊密な関係を作り上げていく、貿易を増進をしていって、そうしてまあお互いに誤解のないようにすれば非常にいいだろうと思っております。買切の増進についても、国交をしげくさえすればずいぶん誤解は取り除かれるとも思います。朝鮮などは非常に、言本に対してまるで誤解をしておるようでありまして、日本はまた朝鮮を取り返しにくるのだろうというようなことをほんとう考えているという、これはアリソンから聞いたのでありますけれども、そういうことを言っておる。非常な誤解だと思います。国交が正常化されて交通がしげくなって貿易が増進して行けば、そういうようなばかな考えは雲散霧消してしまうのだろうと思いますので、国交をしげくするということは特にアジア諸国とは必要だと考えております。
  120. 木下源吾

    ○木下源吾君 ただいまのようなやはり互いに信頼をする、互いに、あなたがよく言われる人格の尊厳、お互いに尊敬し合う、これはもう民主主義の基調であることは言うまでもありませんが、同時にほんとうに進歩的な政権、進歩的な政策、政治を立てようとするならば、私はやはり政策を何としても前面に押し出されなければならない。政策ですね。人、個人中心にやればやはり政策だと思うのです。それで先ほども申し上げるように、総理が幾ら口で良心的な弁明をせられても、政策がこれに一致しないと、これは私はとうてい実現は困難だろうと思う。だから平和のための政策であるならば、今からでもそれは果敢に推し進める。日ソの間におけるところの交渉でも、あるいは東西経済交流のことについても、あるいは北鮮との間におけるところの経済交流、文化交流のことについても、韓国の間においても私は互いに信頼する、互いに尊敬し合う、こういう精神を実際の政策の上で私は現実化して行くことが大切だと思うのですが、どうもこの政策が思うように進んでおらないようです。相手を非常に疑っておる。今度の四巨頭会談等に対しても、外務当局の見解なんということを新聞で見ますというと、相変らず共産圏というものには大きな警戒を要する、こういうようなことを新聞に出しておる。ちっとも真実を吐露して、そうしてやろうという気持を持たない。こういうようなことでは真の平和の招来はむずかしいのではないか。アイゼンハワー大統領のごとく、口よりも実際政策の上で今度のような大胆に、それは実現するかどうかわかりませんが、お互いの基地を青写真を出し合い、そうしてその上を飛行機でお互いに照らし合う、どうですか、こういうような政策の上に誠意を披瀝するというような行き方でないと、日本の場合、それを手前におってなおあのような現実を見ておっても、ソビエト、これを疑って、平和攻勢のかけ引きだとか、いろいろそういうようなことを外務当局が発表するというのは私は模しまなければならぬ、こういう点について総理の所信が、総理考え政府のそういう機関の中にさえ私は徹しておらない、はなはだ遺憾だと、かように考えるのですが、これに対して総理は何かはっきりした手を打って、そういうことのないように、国交の妨げになるようなことのないように、進んで国交の正常化のために声明なり、あるいは具体的な行動によって現わすということが必要だと、かように考えますが、総理の見解ほどうですか。
  121. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 機会があれば、そういうような態度をとる必要があると思いますれば、やりたいと考えております。
  122. 木下源吾

    ○木下源吾君 日ソの交渉に対しても非常な期待は持たれております。国交が先か、条件が先か、いろいろなそんなことを言われておるが、そういうことは私はやはり小手先の問題ではない、大きなこの平和が何のゆえにこのようになってきたかということを考えれば、そういうことは私は問題ではない。私どもはやはりこのような平和は、世界の多くの人民の英知が進んで参ったから、なかんずく原子力による革命が今進行しておるためである、大きな原子力革命が進んでおる、こういうように考えております。日本がこのような世界の趨勢におくれることなく行くためには、今のような保守的な考えで、そうして国内だけの権力の争いと言いますか、そんなことでは私は達成せられないのじゃないか、かように考えまするので、日ソ交渉に対する方向を今度の巨頭会談でも、何ら日ソに影響がないというようなことを外務当局が発表しておりますけれども、これは大いなる私は間違いである、この巨頭会談の契機をつかまえて、日ソ会談をさらに日本の側から積極的に平和のために推し進めて行く、こういう気魄と具体的なやはり方策が立てらるべきだと、かように考えますが、こういう点について外務大臣から一つ……。
  123. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 御意見ごもっともに拝聴いたしました、十分。
  124. 木下源吾

    ○木下源吾君 おすわりになってよろしいのです。私はそれを具体的に、一つ積極的に、この機会に日ソ交渉に世界緊張緩和、国交調整のために進んで手を打つべきであると、かように考えますが、所見を伺っておるわけであります。
  125. 重光葵

    国務大臣重光葵君) ただいまの御意見、けっこうな御意見だと考えます。
  126. 木下源吾

    ○木下源吾君 何かおやりになりますか。
  127. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 私は日ソ交渉をやっておることそれ自身が、世界情勢の緊張の緩和に大きな手をつけておるのだと、こう確信しておるのであります。従いまして、日ソ交渉は続行していって、もっとも続行し得られない原因は少しもございません。幸いに進んでおりますから、これを進めて、そうして主張すべきは主張し、今後の向うの考え方を聞くべきは聞いて、そうして目的を達したい、こう考えております。
  128. 木下源吾

    ○木下源吾君 日ソ交渉のやはり大きな障害は、私はこの日本の基地、基地化の問題と関連して大きな障害だと、こう考えておりますが、これは外務大臣どういうようにお考えになりますか。
  129. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 私は必ずしもそう考えておりません。日本に他国の駐留軍があるということを、これを基地化と、こう言われることだろうと思いますが、これは戦後の情勢によってできてきた、今日までできてきた、日本の置かれた地位からできてきたことなんであります。これはソ連も十分にこの点は見てとっておるわけで、十分理解をもってその上に日ソ交渉を始めようというソ連の希望なんですから、われわれもソ連においても同様なことがずいぶんあります。ソ連と中共との関係もいろいろございます。しかしそういうことよりも何よりも、一つ現状のままで、一体日ソ関係を調整することができるかどうかということを十分探究して行くことが必要である、こう考えて日ソ交渉に進んでおるわけであります。
  130. 木下源吾

    ○木下源吾君 かつて私は北海道の宗谷海狭、あすこでつまり稚内の漁船が拿捕された、これは私ども非常に関係があるものであったために、あすこの狸穴の代表部へ行きまして、返してくれ、こういうような私的の交渉をやった、ところがそのときに向うの責任ある人の言うのには、何もこちらは進んで拿捕するつもりでやっておるのではない、実は北海道の目の先、その付近には、ここからは大型のB29が飛び得る飛行場がここにある。ここのところにはレーダーの装置がある等々を示されたのは、北海道の大部分のつまり基地ですね。そうしてこういう状態にあるんだから、われわれの方でも海の深さをはかる道具だとか、あるいはまた写真でいろいろなものを写すという、そういう装置を持っておるものとか、いずれにしても軍事的なそういう何を持っておるものは一応取調べなきゃならぬのだ、単なる魚をとる漁民が多少越境しようが、そういうものは問題ではありません、こういうように私は聞いた。なるほどこちらからみると、当然防備をしにやならぬ、こういうように考えておって何の不思議も何の矛盾も考えておとぬのだが、相手方になってみると、なるほどそう言われて現状をいろいろ示されるというと、なるほどと、こう考えるんですね。だから物事はやはり相手方の立場に置きかえてみて、そうして考えてみる必要が私は非常に大切だと、こう考えました。どうもえてして国内におれば、自分の立場ばかりで物事をものさしではかって行く傾向が強い、そこで私はその漁船拿捕の問題から考えてみまして、これほどうしてもお互いに隣接したところの基地というものをなくしなければ、そういう問題が解決しないと、こういうように確信したわけであります。そこで今こういう情勢下において、私の言うのは、こちらから進んでアメリカのアイゼンハワー大統領が言うたことをまねるわけではありませんが、互いに国境をどのくらいのところ、あるいは五十里でも百里でもよろしい、この間の基地はお互いになくしようじゃないか、このくらいの提案が私はなされてしかるべきじゃないか、お前の方でつかまえたから、こちらはお前の方を悪く思う。何もそんな測量に行ったものでも、写真をとりに行ったものでもないやつをつかまえるのは不届きだなんというようなことができる原因を、お互いに一つ思い切って私はなくすることに一歩前進したらどうか、それが私は今日の時期では非常に大切なことだと考えるんです。今の私は一例を申し上げました。互いの国交調整、そうして緊張緩和のための積極的な方策というものをお考えになっておらないのかどうか、お考えになっておらなかったならば、これからさっそくまたそういうことを考えるというような準備もおありになるのかどうか、こういうことをお尋ねしておるわけです。
  131. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 御意見の通りに、緊張の緩和もあるし、互いに他の立場を認めて理解し合って行かなければ緩和はできません。そこで基地の撤廃ということを互いに認めるということも、これは一つの大きな何でございましょう。しかしそれよりも何よりも、国交の正常化ということが必要です。国交の正常化がされていないようなところで、ほかにいろいろな手段をとっても、それはごく枝葉なことになります。そこで日本側としては、もう短刀直入に、しかも最も効果的の方法として日ソ交渉を始めて国交の調整をやろうと、こういうのです。私はこれが一番大きな手であろうと思うから、これを進めて参る、こう考えております。国交調整に当りましても、はっきりと申し上げておる通りに、お互いに他の立場を認めて、領土主権を尊重し、内政には介入せず、紛争は平和的に解決するという精神を互いに確認することが、すべての問題の先決であると私どもは信じてやっておるのであります。まあその精神は、今お話の御趣旨に非常に共通するものがあるように考えております。あくまでそれで進んで行きたいと考えております。
  132. 木下源吾

    ○木下源吾君 ただい左の御答弁は、非常に私は重要なことと思います。なぜならば、そういうことがソビエトとわが国との代表間において、おそらく平和原則が確認せられるということになれば非常に私は効果的だと考えますが、今遠くまだ離れておる。しかも日本政府外務大臣総理から、その平和原則をもって進むのだという今宣言をされることは非常に重要だと考えております。だがしかし、私はこの機会に、あなたにかようなことをお伺いしておるということはほかならぬのであります。今度の防衛庁の設置法で、御承知のように自衛隊ですか、北海道に混成旅団を作るということになっておるわけですね。北海道といえば、だれもおおかりのように、一衣帯水、ソビエトとの間に千島あるいは樺太、そうして稚内から、美幌から、あるいは根室の計根別から、こういうとしろの防備またはレーダー装置その他たくさんあります。こういうようなことが、ほんとうに今あなたのおっしゃるような精神で行くならば、これは現在のまま凍結すべきであります。これは正直なところそうでなければその言明と合致しないわけであります。しかるにこの法案によって、このソビエトとの間における最も関係の深い北海道に混成旅団を増設しよう、こういう案があるようであります。これは私は実際に今の緊張緩和のためには少くも妨害になりはせんか、こういうように考えて今申し上げておるわけです。また熊本ですか、九州にも師団を増設することになる。これなども相手は韓国でありましょうけれども、とにかく中国との間における疑惑を生むに十分であります。こういうようなことがございますので、一貫して私は個々の政府のあげ足を言っておるのではありません。真に日本の平和と、そうして世界の平和に、あの大東亜戦争というような戦争を起した責任を償うために、進んで貢献するためには、今のような消極的なそういう態度ではなく、進んで平和のために私は政策を打ち出してどんどん進んで行くというのが日本の今の立場じゃないか。しかも保守合同によってこの今の政局を切り抜けようとする考えから転じて、平和の政策で具体的な政策をもっと大胆に打ち出して、日ソ交渉に反対するものは反対したらよかろう、そういうような具体的な政策を打ち出し、あるいは中国との間における平和政策を打ち出して、反対するものは反対しても仕方あるまい、だがしかしながら、国民の大多数がこの政策には共鳴するのであるからして、その確信を持って進まられたらどうか、こういうようにまあ考えて先ほど来申し上げておるわけであります。今の平和の原則の宣言といい、進んで平和の政府国民とともに打ち出して行くということを私はもっと明瞭にここで一つ答弁を願いたい、かように考える次第であります。
  133. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 私ども内閣ができまして以来、政府の対外政策は終始一貫平和外交をもって進んでおると、こう信じており、また実際それを実行しておるわけであります。その平和外交の意向は各種の機会にこれを宣明をいたしております。数回の国会を通じてはむろんのことでございます。しかし国際的にはさような重要な機会が二、三ございました。一つはアジア・アフリカ会議、バンドン会議、これは日本の平和宣言、平和外交というもので終始一貫して相当国際的に注目を引いたことでございました。日ソ交渉も先ほど申し上げた通りに、これは重要な平和外交の具体的の推進でございまして、まあさような方針で、その他のアジア各国に対してもそれを遂行しておるわけでございます。アジア各国に対しては平和の樹立のためにはまず賠償の問題も片づけなければならぬ、また片づいた賠償条約は忠実に、また最も円滑にこれを実行して行かなければならない、こういうようなことを済々やっておるわけでございます。ただ、それならば日本は全然防衛力も何にも要らぬ、こちらばかり裸になって相手がどういう防衛力を持っても差しつかえない。これは私はある意味において無条件の平和政策とも言い得るでしょう。これは私は今の何では哲学的に考え、理想的に考えてみれば、なるほどそれはむろん重要な意味があることだと思います。しかし今の世界はやはり相対的なもので、すべてが相互主義になっております。向うで樺太なり千島の方面でたくさんの飛行基地を設け、何個師団の兵隊を持っていつでも北海道に侵入し得るというようなふうに誤解をさせて今日まできた状態において、北海道においてそれじゃ自衛力一つも要らぬと、こういうのも私は少し平和外交としては、実際問題としては行き過ぎじゃないか、私は決して防衛力を十二分に持つことを主張するものでも何でもございません。控え目に、控え目に行かなければならぬ、そしてもうそういう点に使う金をほかに回して行く、これは非常にけっこうなことです。しかしいやしくも独立国である以上は 独立国の完成のためにも自衛力は必要であると思います。それは平和外交とは少しも関係のないこと、しかもそういう、ことに自衛をやるというその精神力がまた平和外交に相なるのでありまして、私はそれとこれとが全然矛盾しておるのであるという御意見には今すぐ御賛成はできません。しかしできるだけ防衛方面の設備等も考えて行って、平和外交に支障のないように、それから平和外交を大胆率直に進めて行けというお話には私は全面的に御共鳴を申し上げます。
  134. 木下源吾

    ○木下源吾君 時間がありませんからこれだけにしておきますが、最後に総理に……。いずれもみな国を思い、民族を考える。しかるに現在防衛力の増強も国土を守るためということをうたっております。もちろんこれは単なる国土ばかりではない、一切のものを含めてだと思いますが、さるにても昨今の天候をやはりお気づかいになっておるでありましょう。日本は毎年毎年台風のために巨大な損害をこうむっております。この災害に対して、数年前の災害でまだ手のつかぬ所がたくさんある。この間の九州から東北、北海道のたび重なる台風の被害、人命もたくさん死傷も受け、行方不明を出しておるし、これらの災害はやがてくるであろうことを考えるようななまぬるい侵略ではありません、台風の侵略は……。洞爺丸の沈没も千数百の人命を奪われておりましょう。これらを考えてみまするときに、国土は荒廃の極に達しておるからであります。治山治水も政治のまた貧困であるためであります。気象予算の極端なる削減から技術に対する不信、そうしてこれが復興にほんとうのまじめを欠いておる、災害復旧に名をかりて補助金の乱費は新聞に出ておる、それだけではない、国会における決算委員会を通じてみれば明らかである、こういうことを一切含めて、今どうしたならばほんとう日本の再建と平和のために立ち上ることができるか、この障害はどこにあるか、私は今時間がありませんから私から申し上げます。他力本願だからである。他力本願です。この一言をもって申し上げれば私はもう明瞭だと思う。防衛の必要もあるでありましょう。しかしながら、他国に依存しておるこの状態で一体これが何の成果がありますか。私は精神の作興は同時に生きた具体的な経済的な問題が先行しなければならぬと考えるのに、このような侵略が今まだ、十一号台風が消えたと言いますけれどもあとから本格的なものがまだ何しておる。こういうものをそのまま荒廃するままに打っちゃらかしておいては、いかなる防衛措置も、自衛隊の増強も、私はそれは本末転倒しておると考える。満州事変のあの五・一五事件、あるいはそういう問題の発端をなした東北の人なる飢餓、あれは東北方面の農民の非常なる政治の圧迫によって、経済圧迫によってああいうことがかもし出されたのであります。少数の人々が、自衛のために軍力を増強するといかに笛を吹いても、現実は足もとからこれがくずれるような、そういう政治では私はだめだと思うのであります。あえて私は御答弁を得ようとするのではありませんが、最後に私はこのことを申し上げまして私の質問を結ぶことにいたします。
  135. 植竹春彦

    ○植竹春彦君 防衛法案が今議題となっておりますが、これにあわせて国防会議の構成に関する法律案が予備審査の過程にあります。この四つの法案が、同時に審議されてこそ、ただいまの議題も完全に審議ができると思うのでありますけれども、この三法案国防会議構成に関する法律案を切り離して、審議しようという委員長の御苦心も了解できますので、私は三法案についての質問をいたしますにつきましては、多少の国防会議に関する質問もまざってくることは、防衛庁設置法の第四十二条以下に国防会議に関する規定があるためであると御了承をあらかじめお願いいたしまして質問を開始いたします。私の、質問は一、二の点に本日はとどめておきまして、詳細は国防会議に関する法律案のときに十分に御質問を申し上げたいと存じます。さて、予算は三十年度はすでに通過いたしております。しかし長官の権限の範囲内で予算の実行に当り、配分の問題も残っておるわけであります。この三万一千二百七十二人の増員計画につきましても、杉原防衛庁、長官は、この委員会の論議を尊重して予算の実行、実際の配分に当られることと想像いたしつつ私は質問いたすのであります。  質問の第一点は、この防衛に関しまする総合組織、この防衛の総合的問題をただいまの内閣としてどういうふうにお考えであるか、どういう御方針であるか、どういう御計画であるかをお伺いいたしたいのであります。防衛庁設置法の第一条ないし第四十一条には、この防衛庁の組織と機能が規定されておりまして、これと並列的に第四十二条以下で国防会議の件を通じまして国防の総合的規定がうたわれておるのであります。しかし国防の総合的計画国防会議のみにまかせてしまうということは当を得ていないと思うのでありますがゆえに、それで国防細線の根本方針を承わりたいと思うのであります。結局第一条から第四十一条の規定は防衛庁の自衛隊の管理に関する任務が規定してあるのでありまして、四十二条以下に総合的な組織、機能が響いてある。それは国防会議を通してのみ書いてある。私は国防会議を通してのみ総合的な国防計画を立てるのは、ただいまの国情からしていかがかと思われます。この国防の総合的な基本的な考えからすると、国防には国防会議の問題のみならず、諮問機関としての国防会議の、原案が出ておりますが、この国防会議の問題のみならず、あるいは中央の諜報局とか、あるいは防衛産業に関する問題とか、さらにまた公安調査に関する問題とか、広報活動に関する問題、これを他の観点から見るならば、外交、経済、内政、教育、ことに科学教育の問題、それらの問題を総合したこの国家防衛に関する総合的な官庁が必要であろうと思います。いわば国防省とでも申すべき総合的な組織が必要で、防衛庁もその一内局的な存在であるべきであろうというふうな意見も持ちますので、その意見に対しまして政府の御批判、かつまた政府のお考え、御方針総理大臣から承わりたいのであります。なお、国防省といったような性質の総合的な組織の中には、あるいは三軍の各長官をして国防の枢機に参画せしめるといったようなことも必要でありましょう。軍閥とか、制服をおそるるの余り、その制服の人たちの当然の職能をも滅却してしまうような、あるいは角をためて牛を殺すの類となってはいけない、そこでこの国防の総合組織体の中には、やはりこの三軍の長官といったようなものの活動を参加せしめる必要があるのではないかと、さように考えるので、まずその問題から総理大臣の御意図を承わりたいのでございます。
  136. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 植竹君の御質問はごもっともだと思います。防衛庁の現在の任務を考えましても、防衛庁がこのままでよいのかしらんということも、ときどき防衛庁長官と話をしておる次第で、非常に任務も多く、なかなか単独の防衛庁長官でもってやり切れるとも思えないくらいに任務が大きいものですから、あるいはお話のように、国防省というようなことも考えなければならないかもしれません。ただいまのところは現在の防衛庁の行き方でもってやって行ってみまして、不都合を生じた場合には直ちに直して行くというような気持でおります。
  137. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) 植竹さんの御意見は、私ずっと初めから注意してお聞きいたしておったのでございますけれども、御趣旨のポイントをはっきり私つかめないような点がございましたので、何かあるいは非常に膨大な国防の機構というようなことをお考えになっているのではないかしらというふうに推察をいたしたのでございますが、私いろいろ現在今後の日本防衛庁などの組織等については、これはいろいろ研究して行かなければならぬことがあるかと思いますけれども、現在非常に広範な分野にわたって、昔よく使われたいわゆる広義国防的な、非常に広い意味の総合的な機関、そういうことは、これは私ら考えてもおりませんし、私の私見では、それは今の日本の実情からいたしましても適当でなかろう、私ほそう考える次第でございます。
  138. 植竹春彦

    ○植竹春彦君 私の質問の要旨は、総理は御了解下さったことと思いますが、残念ながら防衛庁長官は誤解しておられるようであります。そのためにあたかも総理防衛庁長官とはまるで違った、閣内不統一かのごとき状態を呈しましたけれども、これは長官の私の質問の要旨をお取り違えの結果であろうとよく解釈をいたして再び御質問をいたします。  私は考えは、膨大なる国防計画というのではなく、一つの組織体としてその所を得せしむる。国防会議国防会議としての職分を守り、国防の総合的基本問題を全部国防会議に負わしてしまうのは、国防会議が少し負担が大き過ぎるのではなかろうか。基本計画とか、いろいろな国防会議の職能が書いてありますが、国防基本方針防衛計画の大綱、産業の調整計画の大綱、それらのことはすべて国防会議のみに規定されて、いかなる法律にもこの第四十二条以外には日本にはない、立法的に何もそういう制度がない、これではいけないのではないか、もっと総合的な、単に制服の人たちだけの判断でない、またごく一部の専門家だけの意見でなく、この国防は行政の延長でるから、行政の延長としての国防、しかも普通の行政とは違って相当永続性を持つ行政であり、行政組織でなければならないから、そこで国防組織というものは国防会議防衛庁と自衛隊、それだけでなしに、もっと科学的な総合的な組織であるべきだというのが私の考えであり、同時にさらに突っ込んで申しますと、今回の予算の措置をみますと、数の増強にのみ重点がおかれて、科学的の国防研究費とか、国防基本研究の方に割かれておる費用の配分が少いのじゃないか、しかしそれらは問題がこまかくなりますので、明日以後の各論の質問のときに、総括質問でないときにあらためて御質問申し上げることといたしまして、本日は長官からのお答えはこの程度でけっこうであります。そうしてさらに次の質問に移りたいと思います。  第二の質問は、木下委員の御質問との関連質問でありますが、総理は、わが国の国防について仮想敵国を持っていないというただいまの御発言はまことにけっこうな御発言であり、日本のおかれた国際的の立場から考えても、現在の国際情勢、またその外交のセンスからいってもまことにけっこうな御発言であると存じますが、しかし一つ国防問題、直接侵略を受けた場合に、これを一時的なりとも防ごうというからには、やはり日本の四囲の、国境外における国際情勢、その外国の軍の配置、外国の外交方針、軍事方針、それらを十分に研究してかかることが当然のことであろうと私は思います。直接侵略に対して防ぐというからには、どういう直接侵略が行われるかということを仮想して行くことは、これは当然の事柄であるので、その日本の四囲を囲続する国際情勢をみて、直ちにその設置せられたる、あるいは空艇部隊とか、あるいは陸上部隊、海軍潜航艇等のいろいろな配置をみて、直ちにそれらが日本の直接侵略と考えることは、むろんこれは国際親善の上からもまた外国に対する友愛の関係からしても、まことにこれは軽率な問題であるから慎しまなければならぬことであるけれども国防計画を立てる上にはやはり四囲の情勢を判断して、どういったような直接侵略が行われたときには、どういったような防ぎ方をするというのは当然な行き方ではないかというふうに考えますので、それについて総理からでなく、長官のお考え外務大臣のお考えを承わりたいと思います。
  139. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) わが国の自衛隊の主たる任務が、直接侵略及び間接侵略に対してわが国の安全を守るということに任務づけられておる。従ってその任務を果すために必要なことをかねてから研究して行くということは当然のことでございます。そうして、それがためには現実に今自分たちの持っておる防衛力というもの、それをそういう侵略の生じた場合に、その少い防衛力を最も効果的に効率的に運用するにはどういうふうにして行ったらいいかというようなことを、かねてから日本の地勢その他と関連して研究して、その点において遺漏なきようにかねてから用意をして行くのは当然のことだと思います。
  140. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 私は今日の日本の国際関係からみて、そうしていずれの国に対して防衛をするか、どの国を、いわば仮想敵国を持っておるとすべきかというようなことを考えて、そうして防衛手段を講ずべき時期ではないと考えております。私は今日の日本のおかれた国際環境からいって、いずれの国とも平和関係を維持することに努めなければならない。従っていずれの国をも敵国視すべきでないと、こう深く考えるのでございます。しかしながら、それと同時に、日本としてはさような平和外交で行きますけれども、先ほど申しました通りに、日本として自衛のために防衛力を持つということは、これは当然のことだと思います。当然のことでありますから、またそれを持たなければほんとうに独立の完成というわけにも参りません。そこでそういうことについては、私はりっぱに平和外交を維持して、両立しつつこれはやらなければならぬことだと思います。さような意味で私は日本防衛力の充実ということは必要である、こう考えておるのであります。
  141. 植竹春彦

    ○植竹春彦君 そうしますと、その重光外務大臣の言われますこと、杉原防衛庁長官の言われますことはよくわかるのであります。そのためにはどのくらいの兵力量を日本として持つべきか、なぜそれだけの兵力量を、直接侵略がきたときに、一時防衛のためになぜ今日提案として出されただけの増強をする必要があるのか、そういうお尋ねをしたいと同時に、もっと具体的にこれを言えば、たとえばかりに、実際上さようであるというのではありませんが、実際上シベリアならシベリアに四個師団の空艇部隊があったと仮想します。これこそほんとうに実際そうであったというのではない、仮想であります。そうした場合に、そのうちの四個師団のうちの一個師団でも二個師団でも、一番近い北海道にやってくる、あるいは朝鮮から一番近い九州の博多なり、佐世保なり、鹿児島に上陸部隊がやってきた場合には、それがどこからやってくるかということは別として、日本を囲続する外国軍隊から国土侵略を受けた場合に、どのくらいの日本自衛の兵力量があったならば幾日間の防衛ができる、何日間の防衛ができるといったような具体的な計画を持って国防に当るのが当然だろうと思う、それに対して長官としてどういうお考えですか、それを一つお答え願いたいと思います。
  142. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) 仮定の問題といたしまして、外部からの武力攻撃があったとします場合に、これに対してどれくらいの防衛力があればいいかというようなことは非常にむずかしい問題でありますが、その場合も、それが同時に一方面に対するだけであるか、あるいは多方面に対してであるか、それから一方面としました場合にも、あらかじめそれを察知し得て、そうしてそれに対して用意をし得た場合と、そうでない場合と、それからそれに対してこっちは知っておっても、今度は他の交通破壊等の関係でそこに集中ができなかった、いろいろそういうふうなことで違いますけれども、しかしまたその侵略勢力の大小等によることでもございますから、一がいにこれらにどれだけの防衛力が要るということはなかなかむずかしい問題であります。
  143. 加瀬完

    ○加瀬完君 関連して。ただいま仮想敵国と申しましょうか、直接侵略をするであろう相手国と申しましょうか、こういう問題につきまして政府に伺いますと、そういうものは予想しておらないとおっしゃるのでありますが、外務大臣に伺いたいのでありますが、五月九日の衆議院予算委員会におきまして、外務大臣は、日本に対する大陸方面の空軍の配置は実に重大な状態になっておる。そこで米軍としては、これに対応するために新しいジェット機を使用する、これは滑走路が長くないと困るので、共同防衛責任を果すために滑走路の延長をしてほしいとアメリカから要求があった、これに日本側は初めから協力する約束があるので、これに協力することが条約の趣旨に合すると考える、こういうふうに大陸の空軍配置は重大な状態になっていると指摘し、それに対応するために当然の条約として、飛行場の拡張に応じたのだと、こう言っている、なお六月三日の新聞によれば、衆議院内閣委員会におきましては、同じく外務大臣は、飛行場拡張は共同防衛の必要上拒否する考えはないと言っておられる、そうすると、大陸空軍配置に対応する戦力、あるいは飛行場の拡張は共同防衛の必要の戦力、こういうことから共同防衛というのはアメリカとの共同防衛であろうと思います。アメリカと共同防衛の対象国というのははっきりわかった、そうすると、日本防衛計画というものも、当然ある特定の侵略するであろう相手国というものを想定して作られていることも、あなたのお言葉からすると、そういうふうに考えるのは当然だと思う、その衆議院予算委員会内閣委員会お答えと、今のお答えはまるっきり違っておるのでありますが、この点いかがでございますか。
  144. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 私は違っておるつもりはございません。私はそう申しました。それはしかし仮想敵国と日本がはっきり言う必要はないと思う、しかしながら、日本の周囲の国々が武力をずっとたくわえておるとするならば、これに対して相当の日本自衛力考えるということは、これは当然のことで、これは仮想敵国であるからさような考え方をやるんだと、私は言う必要もないし、言わぬ方がいいと思う。
  145. 加瀬完

    ○加瀬完君 言う必要もないし、言わない方がいいか悪いかというのは立場の相違だ、しかしあなたの考えておることは、明らかに大陸空軍配置をしているところの国というものに、これは直接侵略を受ける相手国だと想定をしているのは事実だ。そのために、共同防衛としてこちらも対応策を立てなければならないと考えていることは、御説明通りを受ければ事実です。これは第三者から見れば、仮想敵国ということが言われるならば、直接侵略を受けるであろう相手国というのは、政府においてはっきり想定をしておるということは言われるのでありませんか。
  146. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 私はそれは違うと思います。あなたの言われるように、どの国から直接侵略があると言って、どの国と言ってさせばその通りです。私はそうではない、これは国際関係はどこでも同じことです。たとえばスエーデンならスエーデン、ノルウェーならノルウェーに軍備があり、陸の関係がある、これには相当の自衛力を要する、日本は置かれたる地理的の地位に応じて海の関係考えなければならぬ、それからまた大陸の状況も考えなければならぬ、それを考えるということは、直ちに仮想敵国を推測して、これと対抗するものになるんだというのは、私は少し行き過ぎるように考えます。私はそう考えていないことを申し上げておるのであります。
  147. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 加瀬委員に申し上げますが、あなたの持ち時間はあとにありますから、関連質問はなるべく簡単に願います。
  148. 加瀬完

    ○加瀬完君 これで一つ……。大陸空軍配置ということをさしておるのですから、あとで私の持ち時間になったら伺います。大陸空軍配圏と言うなら、大陸空軍配置をしているところの国はどこだかわからなくて、大陸空軍配置に対応するために飛行場拡張に応じたということは言われないと思う。これは委員長の御注意もありますからあとで伺います。
  149. 植竹春彦

    ○植竹春彦君 私の質問あとまだ総合的な施策として戦略協定はどういうふうにやっておられるか、防衛力の問題、その他で総括質問がございますから、時間の関係上本日はこれにて打ち切りまして、国防会議質問のときにしさいを譲ります。どうぞ次を……。
  150. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 鳩山総理にまず伺いたいと思いますが、今回四巨頭会談が終了したのですが、この会談の結果によりますと、大体各方面とも戦争の危険が除かれたという観測を下しておるのでありますが、総理自身はこれをどういうふうに判断せられておるか。さらにその判断に基かれてわが国の防衛力というものを今後いかにあらしめねばならぬというふうに考えておられるか、この点をまず伺いたいと思います。
  151. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 四巨頭会談の結果、日本防衛問題にいかなる影響を及ぼすかは、今後の軍縮問題等の具体的発展を見ませぬと、まだ判断する時期ではないと考えます。とにかく、大体において四巨頭会談が成果を得て、軍縮問題、あるいはその他の欧州の安全保障について何か取りきめができるだろうとは想像はしております。緊張が緩和せられたということは、各国の大統領、あるいは総理大臣が申しておりますから、そうなるであろうとは思いますけれども、軍縮問題等の具体的発展を見ませぬと、日本がそれによってどういう態度をとるかということは、まだ言い切れる時期ではないと考えます。
  152. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 そうしますと、将来近く軍縮会議等が開催せられる、そういう際については、すでに日本防衛力というものはこれに対して相当軍縮といいますか、そういう考え方をしなければならぬ程度防衛力はすでになって来ておるというふうに判断せられておりますか。
  153. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) そういうふうになることを希望しております。
  154. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 希望と言われると、どうもこれは現実の問題なんでありますが、今の日本防衛力というものがすでに軍縮等が行われたときにはそれに伴って減らさなければならぬという程度にまでなって来ておるのかどうか、あるいはまだまだ今の防衛力程度自衛力という見地からいってももっと拡大しなければならぬというのか、これは現実の問題として、希望でなく、現実どうなっておるのかということを明確に承わりたいと思います。
  155. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) 私からお答え申し上げます。まず陸上自衛隊の方は、御承知通り現在十三万ということで今度増勢をお願いいたしておるわけでございますが、空の方などにつきましては、これは全くまだ出発したばかりでございまして、飛行機にしましても、ほとんど全部が練習機と言っていい、まだ実用機と申せるものは、輸送機の十機と連絡機の一機、航空自衛隊はそれくらいのことでございまして、まだ実動部隊的のものは何にもない状態でございます。それから海の方も、これは今まで主力をなしておりますのが、アメリカから借りました艦令の約十二年くらいに平均なりますフリゲートが主力をなしておるような状態で、これはもうきわめてまだ微弱な状態、そういう状態でございます。この事実をもとにして国際的の今の軍縮の対象というような点から見ますと、一般に軍縮と言われているものからは、私はかなり違った水準のところにあるものだと思います。そういう現実であります。
  156. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 そうすると、防衛庁長官のお考えとしては、空軍及び海上軍については、将来近く軍縮会議が開かれるようなことがあっても、現状通りで行くというか、あるいはさらにこれを拡大強化して行かなければならぬというふうに考えられるという意味なんでしょうか。
  157. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) これは、今申した通りでございますから、空の方とか海の方など、これはもう少しはやはり増勢する必要があるだろう。しかし、今後どれくらいそれじゃするかという場合の相当長期的なことを考える場合には、それはわれわれはいろいろ国際の情勢全般とか、あるいは国際的の軍縮だとかいうことであって、ことにその場合でもアジアの情勢というようなものを非常に具体的に考慮に入れなくらやならぬことだろうと思います。
  158. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 地上軍についてはどんなふうに考えられておりますか。
  159. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) 地上軍につきまして今、国際的の軍縮というものとの関連において、これは第一まだ国際的の軍縮というものが果してどういうふうな基準で行くのか、実はこれは軍縮というのの基本的な考え方というものが、そういうふうにしたいという点では各国希望が一致している点が非常にあると思いますけれども、具体案、ことにまたその基準等については、これはまだなかなか時間のかかることだろうと私は思うのです。それだから、今それと結びつけて今の陸上自衛隊のことなどを考えるのも非常に考え方がむずかしいわけでございますが、少くとも日本の地形等からいたしましても、現在日本では六管区隊、六つの総合部隊というものが全国に配置されておるわけでございますが、これは北海道に二つの総合部隊、本州、四国を合せて三つの管区隊、本州では一番西の方の山口県と九州と合せて一管区隊が配置されておるような状況でございます。実はことしの今、増勢をお願いしておりますので、混成団みたいに管区隊の半分くらいの総合部隊を二単位というものの増勢をお願いいたしておる次第でございます。今後どれくらいにするか、その辺のところを将来どの程度左でにしようか、そういう点が実は今研究いたしておるところでございまして、なお若干は必要であろうと考えておる次第でございます。
  160. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 従来防衛庁長官中心でいろいろ質疑応答が重ねられたようでありますが、全体の計画というようなものはなかなか明確にせられておらぬために、かような別の角度から質問をしておるわけなんでありますが、そうすれば、空軍、それから海上軍、これについては軍縮会議があろうとなかろうと、今後まだ増大して行かなければいかぬ、地上軍の方については、やや増大すべきか、あるいは現状程度でいいのか、そこらについては相当疑問のある程度にはなっておるというふうに解釈してよろしいですか。
  161. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) まあごく大体そうだと申し上げていいと思いますが、今申し上げますように、軍縮そのものの基準の方がはっきりいたしませんので、実はあまりはっきりしたことは申し上げにくい性質のものだと思いますが、それで御了承を……。
  162. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 なお詳細については、詳細質問のできるようなときに伺うことにいたしまして、その問題はその程度にいたします。  総理に続いて伺いたいと思うのでありますが、四巨頭会談の今回の結果というものが日ソ交渉には相当好影響を及ぼしたというふうにお考えになっておられるでありましょうか、何ら関係はなかったというふうに考えておられるでありましょうか、そう点お伺いしたいと思います。
  163. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 四巨頭のジュネーヴの会議が成果をおさめるような場合には、日ソ交渉に好影響があると考えております。
  164. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 なお、それに関連しまして、ソ連及び中共との通商拡大についてほどういうお見通しを持っておられるでしょう。今回の四巨頭会談のやはり結果から見まして、どういうふうな見通しを持っておられるか、その点をお伺いします。
  165. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 中共の貿易に関して、アメリカのセネトにおきましても、このワクをはずすということについてはこのごろはそういう意見を吐く人が出てきたようであります。もしもジュネーヴ会議において緊張が緩和をすることになれば、中共に対して日本から輸出をするということについてのワクが取り除かれる可能性もふえるわけでありまするから、中共との貿易は、ジュネーヴの会議が円満に好転すれば非常に有利に発展していくものと考えております。
  166. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 ココム物資はソ連並みぐらいに中共に対しては緩和せられるというふうに解釈していいでしょうか、その点……。
  167. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) そういうようになることを非常に希望しております。ソ連との貿易程度までは日本貿易ができるようになれば、日本としては非常に有利だというように考えております。
  168. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 外務大臣はこれについてもっと具体的に、お見通しはどんなふうに持っておられるでしょうか。
  169. 重光葵

    国務大臣重光葵君) どの点でございますか。そのココムの点でございますか。
  170. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 今回の四巨頭会談の結果から考えてみまして、ココムの物資の解除というものが大幅に緩和せられる方向に向っておるというふうに見ていいかどうか、そういう点であります。
  171. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 御承知通りに、一体ココムというものはどうしてできたかというと、これはまあ東西陣営の緊張からできたわけでございます。従いまして、その緊張が緩和するという方向に向えば、ココムのリストの緩和ということも調子が合うわけです。果してそのリストの緩和ができるということは、みんなのココム会議の全会一致の、意見の一致を見なければなりませんから、すぐそうできるということは言えませんが、しかし同じ方向にあるということは少くとも言えるわけであります。従いまして、四国会議において世界情勢の緊張が緩和するという方向に向えば……、まあ大体そういう方向に向っておると判断し得るのでありますから、これは好影響はあると思います。従いまして、直接対ソ貿易にもそれが好影響を受けるわけであります。それから中共との関係はまた一層緩和になります。そのココムの関係につきましては。しかしながら、これまた間接ながら好影響を受けると、見通しとしてはそういう工合に見ることが順当であろうと、こう考えます。
  172. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 次の問題としては、憲法九条の解釈の問題について総理自身のお考えを伺いたいと思っておりますが、これはどういうふうにお考えになっておりますか。私ども見ますると、吉田内閣のときの憲法九条の解釈と鳩山内閣になってからの憲法九条の解釈は、相手表現においても変ってきておるように思うのでありまするが、これをどういうふうに総理みずからはお考えになっておりますか。まず吉田内閣のときのこの見方と、現在お考えになっておりまする憲法九条の防衛力、これをどの程度保有し得るというふうにお考えになっておるか、この点について……。
  173. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 憲法九条は、自衛のためならば、必要にして最小限度の限り戦力を持ってもいい、ただし紛争解決のため、あるいは侵略戦争というようなためには、いかなる戦力も持つわけにはいかない、こういうように考えております。つまり戦力というのは、やはり一言にして言えば、戦い狩る力なんですけれども、まあ軍隊といっても差しつかえないでしょう。自衛のためならば艦隊を持ってもいいというようなことに解釈をしていいと思います。
  174. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 吉田内閣のときは、御承知のように近代的戦力は持てないというような表現をしておったと思うのでありますが、鳩山内閣では、今お話のごとく、侵略排除に必要な最小限度戦力なら持ち得る、それをこえるものは持ち得ないというふうな表現をしておられるように思うのですが、その場合に、侵略排除に必要なる最小限度戦力なら持ち狩る。これは、侵略になりますと、相手方のやってくる侵略いかんによりまして、大きな、非常に大きな侵略もあれば、実に小さな侵略もあり得ると思うわけなのでありますが、従って必要最小限度戦力ということも非常に幅のあることになると思うのでありますが、それは非常に幅のあるものとお考えになっておるのかどうか、そこを伺いたい。
  175. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) まあ、それは国際情勢によって決定をするよりほかに道はないと思います。間接または直接の侵略を防ぐためには、自衛隊はそれを目的とするというのでありまするから、間接または直接の侵略を防ぐに足る、戦い得る力は憲法九条が許しておる、こういうふうに解釈いたします。
  176. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 そうしますと、相当大きな侵略に対しては、やはりこれと少くとも、よく言われる一定期間くらいは持ちこたえ得る程度自衛力なら持ち得る、それは相当な大きな自衛力である。場合によるというと、やはり近代的戦力に匹敵するような自衛力である、またそれが持ち得るというふうに、これが自衛範囲内ならば持ち得るというふうに解釈してよろしいでしょうか。
  177. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) そういうふうに解釈する以外に道はないだろうと思うのであります。
  178. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 それではさらに、憲法九条の問題につきまして、従来抽象的にいろいろ議論をせられておったのでありますが、この竹島の問題という、ああいう具体的な問題について総理の率直なる御見解を伺いたいと思うのでありますが、竹島は御承知通り占拠せられておるのでありますが、かりにこれを日本側から反撃するということは、これは憲法九条にいう国際紛争の解決手段としての武力行使というふうに見て、これは憲法九条ではできないと解釈しますか、あるいはわが領土権を現実に侵されておるのでありますから、これは回復するのは自衛権の発動である、自衛の行動の範囲内であるという考え方からいたしまして、これは憲法九条からもできるのであるという解釈をするのか、そのいずれでありましょうか。
  179. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 率直に言えば、竹島は日本の領土です。日本の領土を占領せられたのでありまするから、これは侵略と見るのが妥当で、自衛権の発動はできるわけであります。ただ、それをすべきがいいか、あるいは談判によって、武力の解決をせずに、防衛をせずに、外交談判によって解決するのがよいか、これはまあどっちを選ぶかということが問題になりますけれども日本の領土を侵略せられているということには見るべきものと思います。
  180. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 竹島の侵略が行われてからある程度の時日をたっておらなければ問題なく考えられるのでありますが、相当の時日がある場合においてなおかつこれは反撃することが自衛権、行動権の範囲内であるというふうに解釈することについては何ら疑義なくさようにお考えになるというふうに解釈してよろしいでしょうか。
  181. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 理論から言えば私は領土侵略だと思います。自衛権を発動してもいいと思いますけれども、あなたのおっしゃるように時期を経ておりますからこれはやはり談判によって、戦争の方法によらず外交的手段によって解決する方が穏当であろうと考えます。
  182. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 あとの問題は防衛庁長官中心に質問をすることにいたしまして、総括的な問題としてはこの程度にいたしておきます。
  183. 加瀬完

    ○加瀬完君 前の委員からもいろいろ指摘されたのでございますが、防衛計画を進めて参りますにはその前提といたしまして国際情勢の見通しでありますとか確固たる軍事戦略の基礎でありますとか、日本経済及び財政が防衛力にどれだけたえ得るか、その見通しでありますとか、こういうふうな観点が当然前提として論議し尽されておらなければならないと思います。そこで私も確固たる軍事戦略基礎、これをどう考えているかという点、日本経済及び財政の防衛分担力の見通し、この二点についてお伺いをいたします。  日本防衛問題の推移を見て参りますと、安保条約によりましては自衛力漸増を期待される程度でありましたけれども、MSA協定によりましては「自国の防衛力及び自由世界の防衛力の発展及び維持に寄与し、自国の防衛能力の増強に必要となることがあるすべての合理的な措置を執り、」、こういうように発展をして参りました。で、こういう発展の過程から国民防衛構想の成り行きというものが日本の思うままにならないんじゃないか、こういう不安を持っておることが久しかったのであります。ところが鳩山内閣になりまして、分担金の交渉で相当強い線を出すように伝えられておりましたので、私ども日本の自主性というものがどれくらい取り戻せるかという大きな期待を持って注視をいたしておりました。ところが四月十九日の日米共同声明の発表となったわけでございます。これらの点については重光外務大臣がこの声明は安保条約、行政協定、MSA協定の延長として取りきめたにすぎない、こう答えられました。これらが衆議院におきましても問題になり、まして、安保条約では漸増を期待する程度であったものが、共同声明では一そうこれを義務づけられたのではないか、こういう質問が出て参りました。これに対しまして、外務大臣は、安保条約の趣旨に基いて双方合意の結果である、こう答えられておるわけであります。そこで、この合意という言葉でありますが、この合意の内容はたびたび鳩山総理大臣も御説明せられておりまするように、日本経済力、あるいは国力について十分説明が向うに届いておる、あるいは日本防衛力漸増の規模というものについて十分話し合いがなされておる、あるいは日本経済力漸増規模とのバランスについて話し合いがなされ、かつ了解点に達しられておる、こういうふうに私どもは解釈をせざるを得ないのであります。そこで、あらためて双方合意によってこういう結果を結論づけた、こうおっしゃられるのでありますから、これは外務大臣ではなくて総理大臣といたしまして、政府といたしまして、日本経済力、あるいは国力について十二分にアメリカ説明が届いておるのか、届いておるとすればいかなる点をよく説明をしたのか。防衛力漸増計画の規模、これについてどういうふうにアメリカに話し合いをしたのか。日本経済力漸増規模とのバランス、これについていかなる説明アメリカにしたのか。これらの点について話し合いの結果の相互の了解点というものはどういうものであったのか。これらについてまず第一に伺います。
  184. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私はその分担金減額に対してアメリカ当局と直接交渉をいたしません。直接交渉をいたしましたのは外務大臣でありまするから外務大臣から答弁するのが適当と思いますが、私がその当時自分でどんなことを考えていたかということを申しますれば、日本では防衛計画漸増するという約束をしておりますので、今日まで防衛計画漸増して参ったのであります。漸増していったならばそれによって、その漸増の仕方によってアメリカが分担金を削減するという約束になっておりまするから、過去の業績に従って、日本防衛力漸増した過去の事績に従ってことしはある程度防衛分担金の減額をしたものと考えております。将来についてはまた別でありまして、来年度予算についてはその後の日本の行いました防衛力漸増によってまたどのくらいの減額をアメリカ要求するかということは新しい問題となる。将来の六年計画について先のことを約束したからそれで防衛分担金が減額されたのだというような考え方をしておりません。
  185. 加瀬完

    ○加瀬完君 外務大臣何か、今総理大臣のお言葉ではさらに御説明をして下さるというお話しでしたが、何か御説明ございませんか。
  186. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 僕は自分の考え方を言つたので、間違っているかもしれませんからね。
  187. 重光葵

    国務大臣重光葵君) それじゃ私から補足をいたしましょう。防衛分担金の交渉に当ってまあ国力を考慮してやらなければならなかった。そこで日本経済力等について十分の説明をしたかというお話が主たる問題でなかったかと思いますが、これはむろん説明をしておるわけです。そうして、日本防衛力漸増ということを条約の趣旨によっておるという決意を日本側は持っておるということは当然の条約上の義務を果すという意向があるということをいっておるのである。そこで、しかしながらこれはまあアメリカ側の希望にそれだからすぐ沿うわけにいかない。というのは、日本の国力の関係があり、経済力関係がございますから、そこで経済力が、なかなか日本の今日の経済をもってしてはすぐこの非常にたくさんの増強をやるということは困難である。だからこのくらいの程度一つとどめたい。このくらいの程度というのは、日本側としては二十九年度予算範囲内で大体防衛力漸増ということはやりたい。それで一つ義務を果したい。そのためには分担金の軽減をやってもらわなければならぬというのでやってもらったわけであります。そこでこれは日本経済力はまだ非常に困難であるので、困難な点を説明して十分向うの理解を得なければそこにいかなかったわけであります。この声明文の全文は日本経済力の困難なことを認めておることを了承されておるわけであります。さようなことだと思います。
  188. 加瀬完

    ○加瀬完君 私の質問いたしておりますのは、防衛分担金の交渉ではなくて、防衛分担金の交渉の内容として日本経済力なり防衛力漸増計画なりというものは、当然これはその間において説明されなければならない。そこで日本経済力、あるいは国力というものについてどういう説明をしたかというその説明の内容を伺っているのであります。それから漸増の規模というものは、総理大臣は六カ年計画というものではなくて、今までの経過からして分担金を引くことを交渉したのだというけれども、向うはあの共同声明からみても、来年、再来年の漸増規模というものを話をしないで、了解しないでああいう声明を出し得るはずがない。そこで当然漸増の規模というものも話し合いに出たはずだ。その話し合いに出た漸増の規模というものは一体どういうものなのか。この二点を聞いているのです。
  189. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 御答弁いたします。日本経済の困難な事情は当時大蔵大臣からある程度の材料はたしか出しているはずだが、日本経済状態を説明をいたしました。それから一本の防衛力の増強ということは、今、総理の言われる通りに従来の増強の経過を見て、そうしてこの交渉が成立したのであって、将来のことはどういう計画を持っておるかということは、こちらにも持っておりませんでしたし、そうしてこれを示す機会がございませんでした。
  190. 加瀬完

    ○加瀬完君 今、外務大臣のお話を聞くと、この説明材料はすでにできておるはずだそうでありますから、あとでこの説明に使われた経済力の材料と申しましょうか、これを本委員会にお出しいただきたいと思う。  それから第二の漸増の規模については、こちらも考えておらないとか、向うも話し合いに出なかったとか、そんなばかなことをいって、一体この問題のああいう共同声明が出るという内容の説明になるとまさか大臣でも思っておらないと思う。どう考えましても防衛計画というものは、基礎的な軍事戦略と経済財政の防衛分担力というものの見通しが立たなければ出るはずがない。アメリカだって当然共同防衛という立場からならば、基礎的な軍事戦略というものが討議されておらなければならない。アメリカの分担分はどうで、日本の分担分はどうで、ということが考えられておらなければならない。これは先ほども私は関連竹岡で伺ったのでありますが。ないないということで——なくて防衛ができるはずがない。戦略のない防衛があり得るはずがない。そこで一体この防衛交渉に当って、あるいは新しい防衛計画に当って基礎となるべき日本の戦略構想というものは一体どういうものであるか、これを総理大臣に伺いたい。日本の戦略構想
  191. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) アメリカに対して防衛分掛金の減額の交渉をいたしますのに、将来の防衛計画を出す、そういうようなことはありません。
  192. 加瀬完

    ○加瀬完君 いや、アメリカと交渉がなければ、こういう防衛関係三法を出しまして防衛力漸増をはかって行く、そういたしますと、とにかく防衛計画を進めて行く前提として、その基礎としては日本一つの戦略計画というものがあるはずだ、それは一体どういうものなのか、それを伺いたい。
  193. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) 日本の戦略計画があるはずだとおっしゃいますが、どういう意味のものかしりませんが、そういう戦略計画というようなものはまだございません。
  194. 加瀬完

    ○加瀬完君 外務大臣は先ほども伺ったのでありまするが、衆議院予算委員会におきましてアメリカ側要求に対して飛行場を拡張することは、当然その条約の趣旨に合致すると答えた。そういたしますと、日本アメリカに対して協力義務というものをはっきり認めるということになる。協力義務を、すなわち防衛義務を認めておるからには、日本の負うべき義務は一体どういう点であり、どういう関係に立つのかといったことは、それぞれ検討され、また話し合いの結論が出ておらなければならないはずだ。ともかくもアメリカの戦略下に共同防衛があるとしても、そのアメリカの戦略下の日本の共同防衛のポジションというものが一体どういうものか、こういうことが話し合いに出なければ日本防衛計画が推進するということはあり得ない、その点です。
  195. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) 分担金の交渉と関連のないことでございますね。
  196. 加瀬完

    ○加瀬完君 そうです。
  197. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) 今、御質問の御趣旨は、あるいはこういう点ではなかろうかと私推察いたしてお答え申し上げたいと思いますが、アメリカとの共同防衛という以上、そこに何らか両者の協定によるいわゆる戦略協定というか、戦略計画、そういうものがあるか、こういうような御趣旨の御質問だったと思うのですが、これは行政協定の第二十四条の中に、これはすでに加瀬さん御存じだと思いますけれども日本の区域において敵対行為が起ったとき、あるいは敵対行為の急迫した脅威が生じた場合に、日本両国政府がこれを防衛するために協議するという協議条項がございます。これは行政協定を作ります際にいろいろ研究の結果こうなったと思います。あらかじめ両者の間にこういう敵対行為がないのに共同でどうする、ああするということは、なかなかあらかじめきめておくことがむずかしいところから、そういう事態の起った場合に、両国政府が協議する、こういうことに相なっておりまして、まだそういう事態が現実に起っておりませんので、その協議事項の発動はまだないわけでございます。
  198. 加瀬完

    ○加瀬完君 協議条項の発動がございませんでも、協議条項をきめるからには、先ほどから問題になっておりまする一応侵略するであろうと思われる対象国、率直に言うならば仮想敵国が予定されておらなければならない、あるいは協議条項の内容としては当然どういう方法で侵略するであろうかという侵略想定でありますとか、あるいはそれに対するところの戦闘——こちらのとるべき戦闘態勢の方策でありますとか、利手国の戦略戦術、あるいはこちらのそれに対する戦闘方法、こういうものが当然想定されなければなりません。さらに言うならば、想定される侵略の武器というものも考えられるであろうし、防御の武器というものも考えられるでありましょうし、あるいは防衛の拠点というものをどこに設けるかということも考えられるでありましょうし、防衛の方法というのも当然考えられるであろうと思う。  そこで外務大臣に先ほどの続きで伺いたいのでありますが、大陸の空軍配置というものは——あなたは非常にわが国に対して侵略のおそれがあるということは認めている、どこの国かわからない、こう言う、しかし大陸の空軍配置というものをあなたは認定しているのだから、その危険も。その大陸に空軍配置をしている国はどこの国だ、これを伺いたい。
  199. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 私は大陸の空軍配置は侵略のあるための空軍配置だと言ったことはございません。ありますか、見せて下さい。
  200. 加瀬完

    ○加瀬完君 大陸の空軍配置は重大な状態になっている。重大な状態というのは、空軍は何のために一体目的を持っているのか、そうすればこちらから見て、外務大臣が重大な状態であると判断するならば、わが国に侵略する態勢にあるという判断で、重大な状態ということに認定したと解釈するのは、これは当然だろうと思います。
  201. 重光葵

    国務大臣重光葵君) それは当然ではございません、非常な違いです。一つの国が国防を用意をするに当っては、その周囲の国々の地域の国防の状態を考慮に入れないわけには参りません。これは当然のことでございます。それを直ちに侵略するものだと——侵略軍だと判定することは、私は行き過ぎであり、間違いであると思います。それは私はやらない、そういうことはやらない。
  202. 加瀬完

    ○加瀬完君 あなたがやろうがやるまいが、アメリカとの協力義務をはっきり認めておる前提に立ってこういう発言をなさって、しかも所々方々の飛行場アメリカ要求通りに拡張されつつある、こういう国内条件をもあわせて判断をいたしますときに、重大な状態にあるということは、侵略予想ということを考えるから重大な状態にあるということをおっしゃられると、だれもこれは判断する。もしもあなたの発言からそう判断できないというならば、これは私の判断が間違っているんじゃなくて、あなたはこういう空軍配置は重大な状態にあるということを表現しておって、それで今あなたのお考えになるような趣旨の内容であるということを納得させることの方が、はるかに私は無理であろうと思います。  それでは伺いますけれども、侵略の予想というものを全然立てないで、侵略の予想というものを全然持たないで、一体甘木の国を中心にして、まわりの国の軍備態勢というものを考えて、それが全然侵略がないという予想のもとに、防禦態勢とか自衛態勢とかいう対策を考えられるんですか。
  203. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 私は相手方、周囲の国における他国の軍備がすぐ侵略であると確定しなくても、軍備はしなきゃならぬとこう考えております。しかしその他国の軍備が非常に増加して、何も日本に対する侵略のための軍備であるとは他国が言わなくても、おのずからこれには準備をする覚悟がこちらにもなければならぬと、こう思います。それが直ちに日本に対する侵略準備である、こういうふうに仮想敵国呼ばわりすることは、私は日本の国際関係上そういうことはしない方がいいと思います。危険であると思います。
  204. 加瀬完

    ○加瀬完君 その後半のお説だけは私も同感であります。仮想敵国呼ばわりしたりすることはいけないことはわかる。しかしあなたの発言は、日本を侵略する対象というものを考えての発言である、そうでなければ飛行場の拡張は共同防衛の必要上拒否する考えはないと重ねて発言するはずはない。それならば伺いますが、共同防衛というものは、どういうお考えで共同防衛の必要上とおっしゃったのですか、この共同防衛の内容をどうお考えでございますか。
  205. 重光葵

    国務大臣重光葵君) それは安保条約及び行政協定に規定してあるからでございます。従って条約によって義務を果さなければならぬ。その義務を果すことは、侵略に対する仮想敵国を想定する私は必要はないと、こう考えております。
  206. 加瀬完

    ○加瀬完君 安保条約によって共同防衛の義務を果す。安保条約というのは、これはアメリカと締結しておるのである。そうであるならば、大陸の空軍配置というものは重大な状態であるというのは、どこの国をさすかは明らかである。それでもあなたは……仮想敵国という言葉は私は使いませんよ。日本自衛をすると、こう言いましょうか、日本自衛権を侵す国がもしありとするならば、その相手国というものはどこであるかということは想定しておらないと考えられるのですか。日本という言葉が悪ければ、アメリカが共同防衛の相手国と考えている国はどこだということを考えておらないということを、あなたの発言から判断できるんですか。
  207. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 私はそういうことを言っておるのではありません。アメリカとの関係において、安保条約、行政協定からくる日本は義務をやらなければならない。その義務を果すために、自衛力漸増もやらなきやならぬ。しかしながら何の機会に私は申したか知りませんけれども日本の近くに非常な大きな外国の空軍があるとするならば、これは日本を侵略する目的があるといなとを問わず、日本は十分自衛力を作るためにも、これは考慮に入れなきゃならぬ、それは私は重大なことだと考えて、考慮すベきだと、こう考えるのであります。
  208. 加瀬完

    ○加瀬完君 これは重大な問題でありますから総理大臣に伺いますが、仮定の問題でございますが、全然日本に侵略する意思のない防衛というものがどこかの国にあったとしても、それに対してあなたは政府責任者として、やはり自衛権を拡張しなければならない、防衛に万全を期さなければならぬと、こういうことをお考えになりますか。
  209. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は力による平和を維持するのには、世界の国々が自衛のために持っている兵力を考えて、それに相応した日本自衛隊を持つということは必要だと考えております。少くも仮想敵国というようなことを考える……たとえば仮想敵国を考えたとして、ソ連ならソ連を仮想敵国として、それに相応するような防衛力日本が持つということはとうていできやしません。
  210. 加瀬完

    ○加瀬完君 私が伺っておりますのは、総理は、力による平和ということをお述べになりましたが、力による平和は真実の平和じゃない、こういうことをお述べになっておる。そういうお考え総理の御本心であるならば、全然侵略をしないという相手方の防備に対して、日本がそれに対処するところの防衛力の拡張をする必要があるかどうかということなんです。
  211. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 一つの独立国が、独立国を立てて行きますのには、戦争の有無にかかわらず、相当の自衛力を持つ、相当の戦力を持つことが必要だと考えております。
  212. 加瀬完

    ○加瀬完君 そういう戦力は何のために一体必要なんですか。全然相手方からも侵略される予想もないというときに、戦力を拡張しなければならないというのは、その戦力は何にお使いになるのですか。
  213. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) いつ共産党の国内暴力革命が起きないとも限りませんし、いつ知らない国が侵略をして来るかもわかりませんから、不時の備えとしてこれは必要だと考えております。
  214. 加瀬完

    ○加瀬完君 不時の備えとして必要であるとするならば、先ほどから言っておるように、どういう不時の問題が起るであろうかという予想のもとに防衛計画というものは立てられなければならないか。ところがあなたのお話は、幾ら聞いてもそういう侵略予想といいましょうか、侵略想定というものは全然つかない。それで大陸の空軍配置が重大な状態になっておる、こういう外務大臣が発言をするからには、それじゃ一体対岸の大陸の空軍を持っておる国を、自衛力を脅かす対象国として考えておるかと言えば、そうではない。それではあなたは、分おっしゃったけれども、共産党の暴力革命というものに対処してだけ、この自衛隊漸増というものを考えておられるのか。
  215. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 共産党の暴力革命というものを例に引いただけでありまして、いかなることが世の中に起きて来るかということは、すべてわかるものでありません。それですから一つの国が国をなす以上は、適当の防衛力を持つことは必要だと考えておるのであります。
  216. 加瀬完

    ○加瀬完君 今庄で出て参りましたこの防衛関係の諸法律、それからアメリカと取り結ばれました安保条約あるいはMSA協定、こういうものは明らかにアメリカとの共同防衛というものをうたっておる。政府説明も、アメリカとの共同防衛責任上こういうふうにやらなければならない、ああいうように計画をしなければならないという説明がある。そうすると、これはアメリカ日本防衛目的というのは同じである。で、アメリカが対岸の大陸の空軍配置というものから飛行場を拡張しようというならば、アメリカがこれは対岸の大陸の空軍を持っている国に対して防衛体制を固めていると見るのも当然だ。それに日本協力しているわけです。そうすればそういう関係において日本の今行わなければならないというところのポジションというものはきまっておる。それがないということで防衛計画が立ちますか。これはどうです。
  217. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) アメリカとの安保条約によって日本を守ることが最も賢明であると考えて、日本防衛、はできておるのであります。私はそれに対して反対はできないと思います。従って吉田内閣あとを継いで同じ方針のもとに安保条約と行政協定を尊重しまして、その筋に沿って日本防衛考えておるわけであります。
  218. 加瀬完

    ○加瀬完君 それはいいですよ。
  219. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 御質疑の途中ですが、加瀬君に申し上げますが、あなたの御要求の大蔵大臣が見えました。で、大蔵大臣は他に所用があるそうでありますが、加瀬委員の御要求によりましてきようは来てもらいましたから、御質疑の順序もありましょうが、なるべく大蔵大臣に対する質疑をまとめて適当なときにしていただきたいと思います。
  220. 加瀬完

    ○加瀬完君 総理大臣の今おっしゃったことは、総理大臣のお立場は私は認めます。そういう関係に立ってアメリカアメリカ防衛体制から飛行場要求しているんです。で、協力義務があるからといって日本がそれに応じている。そうすればアメリカのこれは侵略予想国というものを日本も肯定していることになる。日本もそうであるならば、この防衛計画の推進に当りましては、当然アメリカのポジションと日本のポジションがきまっていなきやならない。それがきまらなければ日本防衛計画というものは立ち得べくもない。アメリカとの共同防衛という条約の上でどういう一体位置を日本は占めておるのだ、それを聞いているんです。
  221. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) アメリカ日本飛行場の拡張を申し込んでおりますのは、決して侵略戦争のための私は飛行場の拡張ではないと考えております。アメリカ日本要求しておる飛行場の拡張は、今まで日本飛行場で使っておる飛行機がプロペラの飛行機からジェット機に変更いたしまして、そのために距離を長くしてくれというだけであります。しかも飛行機は戦闘機だけであります。爆撃機がないのであります。爆撃機がない、戦闘機だけでありますから、侵略に対する場合の戦闘機だけなのであります。防御に対する、自衛のためだけの飛行機でありまして、こちらからの侵略的の飛行機では全然ないのでありますから、決してこれは自衛目的範囲を超脱しておると私は考えない。その範囲においてアメリカ要求に応じて飛行場の拡張をやっておるのであります。
  222. 加瀬完

    ○加瀬完君 私が伺っておりますのは、自衛範囲を出るとか出ないとかということではないのであります。自衛範囲がどうかは知らないけれどもアメリカは大陸の空軍配置を重大な状態と認めて、これに対処すべくジェット戦闘機の飛行場の拡張というものを日本要求して、日本は当然これは受くべきものだという協議の上で受けておる。そうすると、日本も当然アメリカの認定と同様の必要と義務を感じて受けたというふうにこれは判断するのが当然なんです。そうであるならば、アメリカが大陸の空軍配置の重大な状況に対してジェット戦闘機の飛行場を拡張するという一つの役割を持つならば、日本自衛隊そのものも何かアメリカとの関係において持たせられておる役割というものがあるはずです。その役割なり戦略なりというものが前提に立たなければ、日本防衛計画というものは進まないはずじゃないか。一体基礎になるべきはずの日本の戦略なりあるいはアメリカとの関係に立っての日本の受くべき役割というものは、一体どういうものであるか、その防衛計画の基礎になるものは一体何だ、これを聞いておるのです。
  223. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) その基礎になるものは日本安全保障ということであります。
  224. 加瀬完

    ○加瀬完君 具体的に伺っておるのです。アメリカが大陸の空軍配置に対して対処すべくジェット戦闘機の飛行場の拡張をやっておる。こういう具体的な一つのものがある。それならば、安全保障によって今度日本自衛隊として受け持つべきものはどういうことであるか、その受け持つべきものがきまるからには、その前提となるべきものがアメリカ日本との共同作戦といいますか、共同戦略といいますか、そういうものがなければならない。それがなければ自衛軍の増強というものは意味がない。それがあるはずだから出せというのです。
  225. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) 先ほども申し上げましたように、共同作戦計画というようなものは現在ございません。先ほど申しました通りでございます。二十四条の場合に予想されておりますのは、その現実の事態が生じたとき協議して作る、協議事項の対象になる、こういうことでございまして、現実まだ発生しておりませんので、現在ないのが事実でございます。
  226. 加瀬完

    ○加瀬完君 これはあと委員会でまた長官に伺いますけれども、協議事項の対象が出てこないとか、まだ協議しておらないと言う。ところでこれだけ大きな義務と危険を国家が負担して進めるときに、その基本的な条件というものが検討されたり確定されたりしておらないということは、それはあり得ない。もし確定されておらないで、こういう計画を進めるというならば、あなたの重大責任だ。しかしこれはあとでまた、総理大臣にはきょうだけかもしれませんが、あなたなり外務大臣なりに伺いますから一応保留します。  そこでこの問題について一つまた加えて伺いたいのでありますが、共同防衛計画というものを盛んに先から言っておる。少くとも共同防衛というからには、二分の一は日本の国の防衛ということもあるはずです。アメリカ防衛だけではないと思います。日本の国の防衛というものが当然日本の生活防衛だ。ところが今読み上げますが、アメリカの駐留軍によりまして、外国軍隊要員による刑法の発生件数というものを私は調査をした。そうすると、昭和二十七年には強姦が三十一件、これが二十九年には六十二件にふえておる。放火が二十七年には十二件でありましたのが十三件にふえておる。強盗が百四十四件でありましたのが百九十五件にふえておる。暴行が三百八件でありましたのが五百八十四件、昨年は七百六十六件、傷害が昭和二十七年には二百四十七件でありましたのが七百七十三件、合せていろいろのものその他を入れますると、昭和二十七年の当然刑法犯罪として発生をされたものが千八百七十八件に対しまして、二十九年には四千六百三十九件になっておる。かくのごとく日本の生活は脅かされておる。生活防衛という点から言えば、アメリカに防御されておる点よりも、侵された部面の方が個人にとってはこういうふうに大きい。この問題に対して政府はどう考えるか、総理大臣にお願いします。
  227. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 遺憾に考えております。そういうことのないようになることを望んでおります。そういうようなことから米軍の駐留軍が減退するのだろうと想像をしております。
  228. 加瀬完

    ○加瀬完君 総理大臣に伺いたいのは、こういうふうに国民の生活防衛という点からするならば、生活防衛はますます侵されておる。生活は防衛されておらない。にもかかわらず、アメリカ要求だけを受けて共同防衛という名のもとに日本自衛ではないではないかと疑問の持たれるような日本飛行場の拡張やその他いろいろの戦力を進めることが果して妥当であるか、こういうことを考えていただきたいということであります。しかしこれは意見になりまするから御答弁は要りません。  次に伺いたいのは、日本防衛計画日本経済自立計画基本でありまして、言葉をかえて言うならば、民生の安定ということが先であって、経済自立、民生安定に支障のない範囲防衛計画を進めるのだ、こういうふうな意味のことを首相はたびたび述べられるのでございますが、今もってこのようであろうと解釈してよろしゅうございますか。
  229. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) その通りであります。
  230. 加瀬完

    ○加瀬完君 そうすると将来日本経済自立のために経済六カ年計画というものを策定されたわけでございますが、防衛計画経済六カ年計画のワクの中で推進をして行くものだ、こう了承してよろしゅうございますか。
  231. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 経済六カ年計画と見合って充実して参りたいと考えております。
  232. 加瀬完

    ○加瀬完君 本年度防衛予算を見ますると、経済六カ年計画とは関係がない、こう説明されておる、そうすると防衛予算というものは六カ年計画の未確定のうちにアメリカと交渉してでき上ったことになる。言葉をかえて言うならば、アメリカの一方的要求が大きく支配をしておるというふうに解釈できないこともない、しかも防衛六カ年計画というものができない。防衛六カ年計画経済六カ年計画と見合って当然出さるべきものだという意見も前の委員からたびたびあった。ところがそういうものがない、そうすると防衛六カ年計画というものができないで、三十年度の増強計画というものをしても、これは国防計画にはならない、こういうふうに思うがいかがでございますか。
  233. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 長期の国防計画は、国防会議法が成立いたしましてから至急に作りたいと考えております。
  234. 加瀬完

    ○加瀬完君 もう一度伺いますが、結論としては総理経済六カ年計画に国力回復の主力を置いておるのだとこう解釈してよろしゅうございますか。
  235. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) その通りであります。
  236. 加瀬完

    ○加瀬完君 そうすると、経済計画に見合う国防計画という立場から今の御説明通りに承わりますると、経済計画国防計画の総合的な立場から将来の国家財政計画考えられていると思いますが、こう了解してよろしゅうございますか。
  237. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) よろしゅうございます。
  238. 加瀬完

    ○加瀬完君 それでは大蔵大臣にお伺いいたしますが、三十一年度以降の財政計画が立てられているはずだと思いますが、御説明をいただきたいと思います。
  239. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 防衛計画は、今お話のように経済六カ年計画によって日本経済力が増して行くのに応じて、その範囲内で立てられて行く、こういうことになるのでありまして、防衛計画の総合計画は、従って今後において立てられる、また立てるがよかろうかように考えております。それに応じて双方見合わす財政計画というものを立てて行かなければならぬと考えております。
  240. 加瀬完

    ○加瀬完君 財政計画は今三十一年、三十二年程度でも、財政計画はお立ちになっておりませんか。
  241. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 今後この六カ年計画が具体的に積み上げられて行くし、また今回の防衛会議国防会議、これができて長期の国防防衛計画も、こういうものができてここで財政というものも考え、またその財政の許す範囲内ということも、これはワクになるだろうと思っております。今のところはそういうものははっきりしない、そういう意味における財政計画はまだ立っておりません。
  242. 加瀬完

    ○加瀬完君 大蔵大臣は重要な御発言をなさいましたが、国防会議等ができないので、国防会議等の意見を聞かなければ防衛計画防衛予算というものも決定しないので、まだ財政計画は立っておらない、こういうふうにお話を承わったわけでありますが、それでよろしゅうございますか。
  243. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 私は防衛計画が今後に立てられるのでありますから、それを立てた上でなくてはという意味であります。
  244. 加瀬完

    ○加瀬完君 私は議論を申し上げるわけじゃございませんが、おかしいと思う。さっき総理大臣経済六カ年計画というものに主力を置いて、これに見合うべき国防計画というものを立てて行くのだ、こういうお話でございますが、それならば、その六カ年計画というものを中心にした財政計画が、少くも来年度、再来年度くらいの財政計画が立っていなくてはおかしいじゃないか、こう言った。そうすると、あなたは国防会議などでもって防衛構想というものが明確にならなければ財政計画が立たない、そうすると、その財政計画というのは総理大臣のいう六カ年計画というものを中心にして考えて行くということでなくて二本立だ、防衛要求というのものと経済要求というものと二本立で立てて行くということになる、総理大臣の意見と食い違っておる、どちらなんです。
  245. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えしますが、私は食い違っておるとは存じません。この防衛計画というものは、その国の経済、特に日本の場合には、安保条約等によりましても経済力の許す範囲内においてやる義務を持っておるというふうに私は解釈いたしております。また先ほどから総理のお話のように民生の安定、いわゆる今日における防衛というものは、民生の安定、言いかえれば経済力というものを考えずして防衛というものは考えにくいのだ、また考うべきものでもない・こういうふうに解釈いたすのであります。その経済力といいますか、いわゆる今後六カ年の計画によりまして日本経済もやって行く。従って経済の六カ年計画ということによって防衛というものもすべて規制を受けて行く、日本経済力を越えて防衛というものはあり得ない、こういうふうに考えておるのであります。
  246. 加瀬完

    ○加瀬完君 今のようにおっしゃられるならよく了解される。さっきあなたはそうはおっしゃらなかった。  そこで、今おっしゃられたことで総理大臣と大蔵大臣の御見解は一致いたしましたので、あらためて伺うのでございますが、財政計画は立っておらないとあなたはおっしゃった、しかし経済六カ年計画というものを立てる上には、政府の購入分とか、民間の需要分とか、こういうものがきまらなければ三カ年計画なり六カ年計画というものは立たない。そうすると、財政計画というものが立たなくては政府の購入分が幾らであって、民間の需要分が幾らであるという経済上の有効需要その他の関係というものは立ってこない、そこで財政計画は全然立っておらないのでございますか。
  247. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) この経済の六カ年計画に対しましても、今のところ大きな一つ経済目標を示しておりまして、今後においてこれを具体的に積み上げて行って、具体的なものが作成されて行くのでありますから、むろん財政におきましてもこの経済六カ年計画と裏表になる財政というものがここで作成されなければならないのでありまして、今後六カ年計画の具体的な積み上げとともに、財政の長期計画というものも確立されると思っております。
  248. 加瀬完

    ○加瀬完君 改めて伺いますが、三十一年、三十二年……明年度の財政計画はすでに検討済みであるというふうに私は伺っておるのでございますが、ございませんか。
  249. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) まだ三十一年、三十二年の財政は今のところ何もきまっておるものはありません。
  250. 加瀬完

    ○加瀬完君 それならば私がこの入手いたしました資料で申し上げますが、財政計画はきまっておる、三十一年度には一兆四百二十四億、三十二年度には一兆八百七十四億、こういう歳出合計でその内訳を申し上げますと、社会保障費は三十一年度も三十二年度も同じく一千六億、文教関係費が三十一年度には三十億ふえて、三十二年度には同様に三十億ふえておる、それで一千二百三十億、防衛関係費は本年度の一千三百二十八億に対して三十一年度は一千四百億、三十二年度は一千五百億、住宅対策費などに至りましては十億だけしかふえておらない、これはもちろん未確定分も多分にあると思います。不確定な要素が多分にあると思いますけれども、この私の入手した数字結論をするならば、社会保障費とか文教費とか住宅対策費というものは、三十一年度、三十二年度予算関係では、現状かまたは大した変化を見せておらない。しかし防衛関係費は、三十一年に千四百億、三十二年に千五百億、予算外契約とか防衛支出金その他のものというものには、相当変化があると思われますが、それらを除いても、こういうように増大をしておる。三十三年度以降この方向で行くと考えるならば、内政関係費というものはさらに減ってきて、防衛費の部面というものが相当大幅の部面をとってくるというふうに考えられる。この数字に若干の変更はあると思いますけれども、こういうものが関係庁の間におきまして、全然問題になっておらないとあなたは言い切れますか。
  251. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) この数字については、私は関知いたしておりません。大蔵省として、三十一年以降の財政規模等について、数字的に何らまとまったものを発表したことも、あるいはまた具体的に私自身持っておることも今のところありません。あるいは今他の官庁において試みの案として考えられておるものはあるか知らぬが、私はそういう案についてはどうぞ保留をしてほしいと思います。大蔵省から出た場合はいいが、そうでない場合において、これが長期の財政計画であるというようなことは十分お確めになった上でないと、どうも数字が先走って行く結果、非常な混乱を招くおそれがあるように考えます。
  252. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 加瀬君に申し上げますが、森永主計局長から補足的に説明したいということでありますが。
  253. 加瀬完

    ○加瀬完君 けっこうです。
  254. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) ただいま大臣からお話がありました通りでございまして、お示しの数字は、多分この参議院予算委員会におきまして、経済審議庁の佐々木計画部長が一試案として読み上げられた数字であると存じます。私どもその数字を全然存じておりませんでしたので、佐々木計画部長に、ただいまの数字はどうしたのかということを伺ったのですが、これは全く自分の試案で、皆さんには御相談してない数字であるから、従って計画というような意味でこれをお考えになっては困る、そういうようなお話でございました。その数字をたしかお読み上げいただいたんじゃないかと思いますが、私ども承知いたしておりますような経過はさようなことでございます。
  255. 加瀬完

    ○加瀬完君 どこから数字を得たかそれはここで言う必要はない。大蔵大臣に伺いますのは、あなたはこれには何ら関知しておらないと言った……。
  256. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) その通りであります。
  257. 加瀬完

    ○加瀬完君 私どもは、こういう数字を出してどうこうとあなたはおっしゃるけれども、これが少くとも防衛計画というものを検討して行くときにも、六カ年計画がないならば、三年にする計画はあるだろうと言うけれども、それもない、そんなばかなことはないといって、数字も当らなければならない、資料も当らなければならない。で、こういうものが出てきた。数字にはちゃんとふえておる。そこでだ、こういうものがあなたが何ら関知しないと言うけれども、大綱において私たちこれに近い数字というものを来年度、再来年度内閣が持つかどうかしらぬけれども、持ったとすれば、来年度、再来年度の大蔵大臣の発表する数字にこれに大様似たものが出れば、あなたは政治責任をとるか。全然関知しない、これは全然大蔵省では検討しておらないというがどうか。
  258. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) それは私は非常に御無理な申し分であると思っております。それは結果において往々にして数字が似るということもありますが、しかし今のお示しの数丁には私が関知してないことは事実であります。ですからそれ以上これをお疑いになることは、それは私は無理じゃないかと思います。私がここで関知しないことをはっきり申し上げます。
  259. 加瀬完

    ○加瀬完君 関知しないとはっきり言い切れるならば、無理でも何でもない。そんなものはうそっぱちな数字なら数字として、それが出たら政治責任をとるとおっしゃられるはずです。しかるに防衛関係予算というものをひた隠しに隠しておる。そういうようにわれわれは少くとも今までの政府の見解からは了解せざるを得ない。そうすると、こういう数字がすでに検討されているのじゃないかということの疑いは当然なんです。そこでこういう数字が誤まりであるというならば、三十一年度、三十二年度ぐらいの標準予算を何か示されておる今日、そうしてアメリカとああいうふうな激しい防衛交渉がとり結ばれておった経過からしても、三十一年度三十二年度の財政規模が、あるいは財政計画が、いまだに出ないということはあり得ない。そうすると大要の数字というものは大蔵省が持っているはずだ。これがだめだというならば、そのほんとうのものをどうぞ出して下さい。
  260. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 私率直に申し上げます。いろいろとそういうような御意見もありますししますから、特に財政当局の立場からすれば、今後防衛費というものが、ここに単に財政的な見地ばかりでなく、また専門的な防衛庁当局の考えもありますから、一体どういうふうなものか、それがはっきりする方がいい、こういうことを考えるのです。財政的見地からしてもそうです。それから一般の社会に及ぼす——たとえば一般の人々が、何だか防衛々々と言って、いかにも防衛を拡大しておるかのような誤解といいますか、印象もあるのですから、やはり私はこの辺で長期の防衛計画を作って示して、そうして今後こういうふうになるだろうとはっきりした方がよかろうというのが私の今の考え方なのでありまして、今何にも従って持っておりません。これは率直に申し上げます。
  261. 加瀬完

    ○加瀬完君 大蔵大臣ともあろう方が、ここで率直に国民の前に防衛計画の輪郭を示すのが当然だと、こうおっしゃられるくらいであるならば、少くともこのワクの外に防衛費をはみ出してばたらないという財政計画を持たなければならない。これは防衛庁をわずらわさなくても、あなたの方だけでできることなんです。それは一体どうなんですか、といいますのは、あなたは日本銀行におられるときから、非常に財政の引き締めということをお話しなされておった。ところが今架空の数字だと言われるけれども、これによると、三十一年度の歳出合計が一兆四百二十四億に対して、歳入の規模は一兆百三十一億で、二百九十三億の赤字が出るということになっておる。三十二年度には、同じく三百九十八億の赤字が出るということになっておる。この数字は、違いはあるかもしれませんけれども防衛計画を進めて参ります上に、来年から赤字を出さないでやって行くのだ、赤字を出さないワクの中で防衛計画をやるのだ、こういうお考えでございますか。
  262. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 二点お答えしますが、今お読み上げになりました数字は、私の関知する数字ではない。  それからもう一つの赤字を出さずに防衛をやるかということであります。それは当然であります。防衛というものは、先ほどからしばしば申し上げますように、わが国民経済の許す範則内においてこの総額は考えておる。これは内外ともに認めておる原則であります。従って防衛をするがゆえに赤字が出るということは許されておることではないと思います。
  263. 加瀬完

    ○加瀬完君 それでは念を押して伺いますが、こういうことに了解してよろしゅうございますか。内政費は減らさない。防衛費は赤字国債などによってまかなうような方向には行かない、こう了解してよろしゅうございますか。
  264. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 来年度並びに来年度以降の予算をいかに組むかについては、なお十分検討を加えなければなりませんし、防衛費をたとえば増加するために赤字を出すということはやりません。
  265. 加瀬完

    ○加瀬完君 国債を発行するかどうか。
  266. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 今申しましたように来年度以降の予算の編成については、今後ここで今いろいろのことを確言をする時期にないのであります。ただ、しかしながら今のところ私が考え範囲内において公債を発行することは考えておりません。
  267. 加瀬完

    ○加瀬完君 今は考えておらなくとも当然この推移を躍ると、赤字国債によりまして防衛費を漸増するという方向をたどらざるを得ない、そういうときでも、あくまでも内政費を減らさないで防衛費の増額のために国債を発行するということは絶対に政府としてはやらない、こういうふうに御確約いただけますか。
  268. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 来年度以降の予算の規模とかあるいは内政費をどうするとかいうことは、今後十分検討しようといたしておるのでありまして、それについては今私がここに何ら確言をする時期でありません。  ただ一つ申し上げたいことは、またおそらくあなたも確めておきたいと思うことは、防衛費を増大するために赤字にするおそれはないか、そのことだけは私はしませんということだけを申し上げておきます。
  269. 加瀬完

    ○加瀬完君 これは総理大臣と大蔵大臣の二人にお尋ねを申し上げたいのでありますが、鳩山内閣は住宅問題あるいはその他の問題を取り上げまして、社会保障費の増額ということを大きくうたってきて、来年度からの予算防衛費をふやすことによって社会保障関係の費用というものを現状あるいは減退させるというふうなことはしない、公約に従って防衛費を減らして社会保障費の方を増加するのだ、こういう選挙の当時と同じ御覚悟でございましょうか。
  270. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) これらの判断について大蔵大臣に一任をいたします。
  271. 加瀬完

    ○加瀬完君 総理大臣がどういう腹がまえかということを伺うことが先だ、総理大臣の御本心をまず御表明願いたい。
  272. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) ただいまはそれは発表できません。
  273. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 先ほどから繰り返し申しますように、来年度以降の予算の編成が非常にむずかしいことは申すまでもありませんが、それについては今後十分検討、研究をして行こう、こういうことが今の段階でありまして、それ以上責任のある私が今ここでいろいろと申し上げる時期ではありません。
  274. 加瀬完

    ○加瀬完君 私がさっき読み上げた数字が全然事実無根の数字であると言うならば、社会保障費は減らさない、あるいは現状に置くようなことはない、文教費は必要に応じてふやす、そうして防衛関係費というものを相当大幅にふやすことはない、従って赤字国債といったような形はどういう関係になろうともとらない、こういうはっきりしたことが打ち立てられる筋だと思う。特に総理大臣におかれましてははっきりと公約に従いまして公約実行の予算を組みますということが言えるはずだ、それが言えないということは、あなた方がどのように抗弁しようとも、大体来年度、再来年度の財政計画というものは、もう防衛費を増して社会保障費は据え置く、文教費は押える、こういう心がまえがあるからと、これは邪推かもしれませんが、こう推論せざるを得ない、そうでないならばはっきりと公約通り年度はやります。こうおっしゃったらどうですか、総理大臣にお聞きいたします。
  275. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) ただいま来年度は私は数字をつまびらかにいたしませんから公約はできません。
  276. 加瀬完

    ○加瀬完君 公約をするのではないのです。あなたの選挙のときの公約は、本年度は不完全であったが、来年度は絶対やるということのお考えがあるか、それとも防衛費を減すというのはアメリカとの約束があるからやれない、こういうことなのか、どちらなんだ、こういうことなんです。
  277. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 希望は持っておりますけれども、その実現が可能なりやいなやということは、私は判断する時期でないので、できないのであります。
  278. 加瀬完

    ○加瀬完君 防衛費を経済六カ年計画のワクの中で押えるというお考えであるならば、社会保障費が増したりあるいは消費水準が来年度から上ったりするのは当然なことなんです。また、経済六カ年計画目的に沿うような予算というものが財政計画として組まれて行かなければならないことは当然なんです。それがやれないということはどうも防衛計画そのものに何か裏話があるのではないかと、どうも推定せざるを得ない。それは今年は初めてで、野党のわれわれがこういうことをお考え下さいというのではない、あなたが総理大臣になる前に、組閣する前に天下に公約したこと、それは今年は完全でない、それを来年は完全におやりになる御意思があるかないか、今聞けば、数字がわからないから来年になってみないとわからない、これでほお答えにならない、それでは防衛費は何か裏話があるのではないかという疑問を持たせられることも当然なんです。どうなんですかこの点は。
  279. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 防衛費については裏話など絶対にありません。
  280. 加瀬完

    ○加瀬完君 裏話がないと言うならば、あなたの公約になっております内政費というものをふやして防衛費を削減して行くという方向をおとりになるのかどうか。
  281. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) それが可能なりやいなやということが私には判断できませんから、希望は持っていると言う以外に御答弁のしようがありません。
  282. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) こういうふうにお考えを願えばいいのじゃないかと思います。それは、お説のようにいろいろなことを、たとえば防衛も国力に応じた程度はこれはやって行くというのが政策でもあります。それと同時に、また社会保障もこれもなるべく増したい、これは何もかもができればそれが一番いいと思いますが、しかしそこに日本の国力といいますか、あるいはもう少し具体的に言えば、それをまかなうだけの財源が一体どうであるか、こういうもので制約を受けるのもやむを得ない。従いましてそれらのものは総合的に、最も国の力にふさわしいように総合的なものが打ち立てられるということで、すべてが国力の範囲内にとどまるようにするのが、私はとるべき政策だと思います。
  283. 加瀬完

    ○加瀬完君 今問題になっておりまするのは、あなた方の考えた国力相応ということと、私どもの方の考えてもらわなければならない国力相応の仕事の内容が違っている、それは議論になりますからさらに具体的な問題について私は伺いたい。  それは、経済六カ年計画によりますると、特需に依存しないで国際収支のバランスの維持によりまして完全雇用をはかって行く、こういう目的をもって強力な経済政策を推進するということになっている、目標といたしましては国民所得を六カ年計画の暁には七兆三千九百億、消費水準が昭和二十八年度に対しまして二四・九%、こういうふうに押えている。私の伺いたいのは、こういう所得、こういう消費水準というものは、来年度の財政計画の中に具体的にどういうふうに織り込まれて行くか、それともこの計画はただ計画であって、これを推進できないような別な要素、防衛費の増強という要素が多分に入って来るのじゃないかということを懸念するから伺うわけであります。そこでこういう消費水準の目標を維持するためには、幾つかの前提条件が可能になって来なければならない。たとえば食糧の雲給関係をどうするか、完全雇用の問題をどうするか、少くもこういう大きな問題があると思うのです。そこで時間も迫っておりますが、食糧の需給関係を伺います。日本の農業は国民の食糧を供給できないという現状であります。その原因の一つとして、学者によりましてはMSAの小麦の輸入、あるいは本年度のような余剰農産物の受け入れといった、こういう外国の農産物の受け入れ方というのに原因があると言われている。すなわちこのままではアメリカの過剰農産物の固定的な市場と日本がなる、従いまして日本の食糧というものは価格競争からずり落ちますから、日本農業は主食栽培では経営が成り立って行かないので、多種的農業になる、フィリピンのように。これでは一体日本の主食自給というものは成り立って行かないじゃないか、こういうふうに心配をしている学者たちは一人ではないのであります。  設例になりますが、日本農業には二つの条件がある。外的な条件はアメリカの余剰農産物のいい市場とされている。内的な条件といたしましては食糧が不足しておりますけれども、食糧の価格というものは経済作物に匹敵することができないから、経済作物を作った方が得だ、こういう形になっておる。なお内外条件にマッチするように余剰輸入農産物によりまして、防衛拡張をしようという相互共同目的ということが加わっておる、それでありまするから、来年度、再来年度、受け入れ態勢はますますこれは強化されると見なければならない。そうすれば一方農家にとりましては農家経済というものはますます逼迫するわけでありますから、もう商業的農業に堕さざるを得ない。主食など栽培しておるのは一番ばかだということになる。日本の主食農業の主体性というものは全然なくなってきておるのであります。こういう関係にあるときに、余剰農産物の対価による軍備拡張というものが日本経済の基盤を弱化するということにもなるわけでございますので、こういう点を考えあわせまして、学者たちの指摘しておりまする余剰農産物あるいは主食自給の関係というものに対して、六カ年計画の上からどういう見通しを持っておられるのか、この点をまず伺いたい。
  284. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) この日本の食糧問題について今お話がありましたが、私はそういうお考えには同調はできないのであります。日本の食糧問題が今日のようになっているというのは、要するに戦争に負けて領土を失った、具体的に言えば朝鮮、台湾をなくしたということに具体性があるのであります。戦前におきましてはむしろ食糧は余り気分で、むしろ食糧品の値下りをいかに防止するかということが食糧政策、価格政策のむしろ中心をなしておったのであります。従いまして何もアメリカからどうとかこうとかいう問題ではない。日本の食糧の今日の状況は、全くそういう基本的な致命的な点があるのであります。従いまして今日海外から約平年において四億ドル、米の石数にこれを換算すると、おそらく二千万石から二千五百万石くらいを輸入に待たなければならない、これはアメリカがどうしようがしまいが、これは日本の今日の人口を、今日の生活水準において養って行く上において、当然これだけの食糧をいずこからか輸入しなければならない。そういうふうな客観的な条件のもとにおいて、アメリカからその若干の部分を有利な条件において輸入するということが、何も私はそれが非難をされ、あるいはまたそれが何も軍備といいますか、防衛といいますか、日本防衛と結びつけてかれこれ言うことはごうも私はないと思います。
  285. 加瀬完

    ○加瀬完君 それなら伺いますが、大蔵大臣責任をもって答えてもらいたい。日本の主食生産状態をこのままにしておいて、あなた方の要望する防衛の食糧備蓄計画というものをどう立てるか。
  286. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 私は今主としてアメリカの余剰農産物あるいはかつてのMSA、こういう点についての関係を申したのでありますが、そうであるからと言って、日本の食糧増産政策をなおざりにしてはおらないのでありまして、今後できるだけ国土を、いわゆる国内資源を開発して国際の収支のバランスをよくする上からも食糧の輸入を減す必要もあるので、また日本人口問題、いかにして人口を養うかという意味においても、国土の開発ということが最も必要であります。従いまして、食糧の増産にはあらゆる手を今日打っておるのであります。たとえば食糧増産費にしても、また近くはたとえば愛知用水あるいは北海道のあるいは東北においての広大なる地域にわたって集団的な開拓をやろうというのは皆それであります。なぜそうするかと言えば、単に食糧というものは私は商業政策ではいかぬだろうと思う。それは本当に世界の平和というものが破れないという保証があれば、私は日本のような国においては商業政策でもいいと思う。しかしもしも日本の場合において海が荒れたらどうでありましょうか、海が荒れたら一体だれが食糧を輸入してくれるでしょうか。そうしてみると、やはり私は食糧というものについては可及的に国内の自給度というものを高める必要があると考えております。(「その通り」と呼ぶ者あり)そういう意味において食糧の増産に挺身いたしておるわけであります。
  287. 加瀬完

    ○加瀬完君 あなたの今おっしゃるようであるならば、政府政策というものは当然変ってこなければならない。というのは、あなたは自給度を高めると言っておるけれども、現在余剰農産物などを輸入するために農村はどうなっておるかということなんです。エンゲル係数から見ても、農村は昭和二十一年から二十三、四年だけですよ、四五・六%を占めておったのは。このごろは昭和二十八年度は五一・〇、二十九年度は五一・九とエンゲル係数は悪条件になっておる。というのは、農村自体が生活できないように追われておる。あなたは主食の増産をさせなければならないと、こう言いますけれども、それで特に商業的農業に堕してはならないから、あくまでもこれは外から持ってくるという形で主食の計画を立てるわけに行かないと言うけれども、外から持ってきていることが原因になっておる、そう言って悪ければ、外から持ってくること以上に農村自体の主食栽培の経済的有利性という計画政府が持ってくれないならば、だんだん貧農化して行くことはこれは事実です。数字によって申し上げるならば、一番農家が有利になるのは超過供出、超過供出は大農にありましては九〇%超過供出によって利益を受けておりますけれども、小農にありましては五〇%も超過供出を出し得る階層というものはない。こうなってみると、いわゆる三割農政ということで、政府経済施策は大農に有利であって、中農以下は少しも利益を受けていない。そうすればそんな米麦を作っていてはばかばかしいから経済作物を作ろうということになるのであります。しかし経済作物よりも主食を作った方がいいということにならなければ……。日本の米の反別は九反四畝、九反四畝の米の耕作で農家経済がやっていけるという御認定に政府はお立ちでございますか。
  288. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) この点を一つ考えを願いたいと思うのです。この食糧の増産ということと、もちろんこれはいろいろありましょう、土地改良もありましょうし、また肥料の問題もありますし、なお開墾もありましょう。しかしこれはそう一朝一夕に米がすぐに増産するように行くものではないのでありまして、今日年々日本人口は百万人以上増加をしておる、この増加する百万人にあてがうだけの食糧を増産するのは容易なことではありません。ですからかりに増加する百万人を養うような食糧増産をしたとしても、今日不足しておる先ほど申し上げました四億ドルに及ぶ、二千万石、二千五百万石に及ぶ今日の欠乏はなかなか埋まって行かない、従いまして当分の日本の食糧事情は何といっても輸入に仰がなければならぬ、この輸入に仰ぐということが、何も今日の日本の実情を見ても、農産物の価格を支配していない、私も先般一万百六十円の米価を作ったのであります。これは何も外国の食糧価格に左右された値段ではないのであります。従いましてそういうふうな食糧を輸入に仰がなければならぬという現実の日本の今日の状態あるいは将来の状態と、農家が今日どういう生活の状況にあるとかあるいはいろいろな貧農があるということとは、これは別個でありまして、私は今日の農業の状況というものは、少くともあるいは日本開閥以来ありますが、特に明治政府当時から重商主義といいますか、こういうふうな形において農家が非常に圧迫を受けておったと思う。大体そういうふうな形において明治時代の富国強兵といいますか、日本の国を支配しておったあの政治が、やはり農村の支柱においてとられておったと思う。その後いかに日本の国がよくなったかということを考えれば、私はそうなにはないと思います。
  289. 加瀬完

    ○加瀬完君 食糧増産計画という立場から今何も外国の食糧を輸入しなければ食糧需給計画が立たないくらいのことは、だれでも知っておる、ところが食糧需給計画の立て方が、外国の輸入によってばかりやっておって立つか立たないかということを私は言っておるのです。それは農村の経済の確立、もっと率直に言うならば主食を作って農家がやって行く、もっと極端に言うならば主食を作ることの方が一番得だというような態勢を作らなければ、そういう態勢を作らなくては、幾ら主食増産をやれと言ってもだめなんです。  そこで、大蔵大臣に聞きますけれども、今、日本の耕地は国土のうちの一六%で六百万町歩しかない。ところが、山林は七〇%ある。しかも、山林の中にすぐ開拓すれば開墾可能になるところが五百万町歩ある。ところが、これは少数の土地所有者によって占められておる。ところが、農家経営者というものは、中農以下というものは、この単作地帯で、それから東北の方の地帯においては、この山林というものに依存をしなければ農家の経営が立って行かない。ところが、山林というものが少数の土地所有者が押えているので、相変らず土地を改革をされたけれども土地改革の効果は十分に上っていない。人口問題のことも言われましたけれども人口を減らすわけには現在の農家は行かない。というのは、人口をたくさん持っていることによって、人手をたくさん持っていることによって、採草地や採炭地なり、経済的に必要な所を考えられるわけでありますから、考えられる所に労働自体として人間を提供して、やっと生活しているという現状なんです。人間がいなければ食っていけないという実情なんです。こういう実情を御存じでございますか。そこで、山林解放ということを政府はお考えになっていますか。土地改良というのとつぶれているのとどういうバランスになっているとお考えになっていますか。必要によりましてつぶれている耕地は、ほとんど野放しではありませんか。たとえば、必要な耕地でありながらも、アメリカならアメリカから飛行場の基地としてよこせといわれれば無条件に田畑を渡している。ところが、貧窮の底をついている農家は、主食として大切な大きな仕事をしている。あなた方は少くも主食を作っている限りには経済的な最低限の保障はいたしますよという農業政策は何もない、こういう現況を御認識でございましょうか。極端にいろいろ申し上げますけれども一つお答えいただきたいことを申し上げると、山林解放の意思がありますかどうか。
  290. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) これは農業政策といいますか、あるいは山林……一体日本の農業をどうするかということで、これはまあ河野農林大臣が詳しくまたおってのときにお話しすると思うので、私はそこまで立ち入って言うのは分が過ぎると思いますが、私は山林を解放するかということをここでかれこれ申すことでもないと思います。しかし、十分検討はいたします。
  291. 加瀬完

    ○加瀬完君 それからもう一つ伺いたい。あなたはさっき、農民は明治以来の重商主義から見ればはるかに裕福になったと言っている。私がさっきエンゲル係数を示したように、終戦直後の食糧不安で、主食は非常にやみ値が高くなったときだけどうやら都会地並みのエンゲル係数を持った。ところが、今は都会地よりはるかに低い。都会は五一です。それで、これは農林省の農地局の統計でも、一町五反くらいの耕地がなければ、これは農家経済というのは零にならない。プラスの出るのは二町以上ということになっている。それでもあなたは農村経済が非常に裕福になったと、そういう御認識にお立ちになるのですか。
  292. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 農村経済が非常によくなったというわけではないのでありますけれども、これはやはりすべて私はこういう社会的関係というものは、ヒストリカルに、歴史的に見なくちゃいけない。日本の農村の今日は、ずっと昔の日本の農村が継続されて今日に及んでおるのでありまして、明治時代の、私たち子供の時代における農村と今日の農村と比較した場合に、非常に今日の農村がよくなっておることには間違いないのでありまして、まあごく最近をとりましても、都市の消費水準と農村の消費水準の回復の度合いを見ますと、今日では農村の方が高いのです。たとえば、農村を一〇〇とした場合に、ごく最近の数字でも、都市は九八の消費水準であるというような状態であるのでありますから、これはそう一挙に農村はとても大へんないい生活をするというような、これはそのよって立つ日本の農業という基盤がそういう飛躍的改善を許さないから行かないのですが、皆さんの力で、政治というもので、徐々に農村をよくして行く。またよくなりつつあることは間違いないと思う。
  293. 加瀬完

    ○加瀬完君 認識不足もはなはだしい。歴史的に見るというけれども、歴史的に見ても、昔のままの状態そのままの農家もあるのですよ。農地改革というものをされても、農地改革の目的というものが何にも達せられないところの農家もずいぶんと多い。というのは、地主から解放されても、新しく山地主というものができて、山地主に依存しなければ生活できないという、さっき私が申し上げた通りです。そういう農家が大多数である。しかも、あなたの方は売春法を否決をいたしましたけれども、売春を一番心配している方々の一番問題になっておったのは、農村の困窮者によるところの人身売買である。農家がそんなによくなりまして、歴史的に改善されて農家の子女というものが人身売買に供されるということがあると思いますか。この一つから見ても、問題はあなたの言うように簡単ではない。こういうことを私が聞きますのは、次のことをもう一回伺いたいからであります。それは、農村の消費水準というものが、昔の農村、農奴と言ってもまだ言い足りないような低い生活をしておったものを標準に置いて、それから何パーセント上ったと言っても、これは人間の生活ではない。そこで今度の防衛計画というものも、再びかつての戦争経済のもとに農村というものを犠牲にして、農村の経済自立というものはあと回しにして、農村の犠牲の上において防衛計画が進められるということであってはならないと思いますが、どういう一体農村人口なり、あるいは農業政策なりの計画が成り立っておるのかということを伺いたいのであります。大蔵大臣でありまするから、農政全般についての御答弁は求むる方が無理でございますが、少くも、本年度のあなたの内閣予算において、主食自給計画を進める一番のもとは、主食栽培が一番有利であるという条件を作らなければならない。そのためには、こういう政策を打ち出すべきだという政策がございますか。
  294. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 今のお話で、もう農村のことについてのお話はないのでそれでいいと思いますが、私が今申し上げたいことは、そしてまた大蔵大臣として申し上げ得べきものと思いますことは、非常に私は誤まりと言いますか、偏見と言いますか、無理に日本防衛というものをゆがめて御覧になることがないかと思うのです。それは防衛でありますから、そんなにこれが拡大される理由はないのですよ。私はそう思います。従いまして、やはり防衛というようなものは、一体どういう限界を持つべきかということが、この際この辺で財政的にも打ち出されていいじゃないか。そうして繰り返して申しますように、自衛なんですから、自分の国を守るという意味なんでありますから、その自分の国を守るということが、特に今日の国際紛争の態様が、だんだんに鉄砲を撃つばかりが国際紛争じゃないというこの状況を見た場合におきまして、国力、特に経済力を越えてやり得るものでないということも、これはそういう意味の自衛ということと、今日の国際紛争が何も鉄砲を撃ち合うことばかりじゃなくて、むしろそれ以上に社会革命ということが大きなねらいになっているということを考える場合に、どうあるべきか、これはある限界がある。国力を越えてすべきものでもない。これははっきり私はすると思うのであります。ですから私はそういうふうなごく率直にお考えを特に願いたいのであります。
  295. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 加瀬君に申し上げますが、あなたの持ち時間がありませんから、今の一点だけにしていただきたいのです。
  296. 加瀬完

    ○加瀬完君 じゃ一点だけ。  今の御説明の点ですね、結局農村経済自立防衛計画というものをどう見合せておるか、均衡を保たせるように計画が進められておるか。あるいは計画を進めようとするのか。その一点だけ大蔵大臣に。
  297. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 農村を貧困ならしむるような防衛計画には大蔵大臣としては賛成ができません。
  298. 加瀬完

    ○加瀬完君 計画の内容だ。今の御答弁は、具体的な政策を伺っておるのに、ただ観念論のような答えだけでは不満足でありますから、もう一度おそれ入りますが質問に応じた御答弁を伺います。
  299. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 私それでは質問の要旨を十分把握しなかったと思いますが、どういうふうに具体的に申し上げればよろしゅうございましょうか。
  300. 加瀬完

    ○加瀬完君 具体的に申し上げればというのは、私が伺ったのですから、具体的に申し上げることはあなたに答えてもらわなければならないことなんです。
  301. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) どういうふうに……具体的に申せと言えば、私の可能な限りにおいて具体的にお答え申し上げます。
  302. 加瀬完

    ○加瀬完君 これからの経済六カ年計画に即した予算編成において、農村経済の樹立というものと防衛計画に伴う予算というものをどういうふうな振り合いをつけて行くのか。
  303. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) これは農村もむろん六カ年計画の最も大きな要素のうちになると思います。従いまして、六カ年計画と農村というものは別個のものではなくして、農村をよりよくすることが六カ年計画の中に織り込まれておるのであって、防衛ということも何もそれと相反するものではないと考えまして、すべてこれらのものが一つのハーモニー、調和を保って行くと、こう考えます。それを今後具体的に考えて行こうというのが今の状況であります。
  304. 加瀬完

    ○加瀬完君 大蔵大臣はまた御出席いただけるのでしょうね。いただけるものとして質問を留保いたします。
  305. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) お諮りいたします。本日の総理大臣を中心とする質疑はこの程度で終了いたしまして、明日続行したいと思いますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  306. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) それではさように決定いたします。本日はこれにて散会いたします。    午後七時二分散会