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1955-07-22 第22回国会 参議院 内閣委員会 第31号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年七月二十二日(金曜日)    午後二時三十六分開会     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     新谷寅三郎君    理事            長島 銀藏君            宮田 重文君            木下 源吾君            松原 一彦君    委員            中川 以良君            野本 品吉君            加瀬  完君            千葉  信君            田畑 金光君            木島 虎藏君   衆議院議員            高橋  等君   国務大臣    厚 生 大 臣 川崎 秀二君   国 務 大 臣 大久保留次郎君   政府委員    総理府恩給局長 三橋 則雄君   事務局側    常任委員会専門    員       杉田正三郎君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○恩給法の一部を改正する法律の一部  を改正する法律案山下義信君外三  名発議) ○恩給法の一部を敏正する法律の一部  を改正する法律案衆議院提出)     —————————————
  2. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) ただいまより内閣委員会を開会いたします。  恩給法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案(参第一二号)、恩給法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案(衆第二八号)を一括して議題といたします。
  3. 加瀬完

    加瀬完君 大久保国務大臣にお伺いをいたしますが、先般提案者高橋衆議院議員から、この法律の一部を敗走する提案理由につきましてるる御説明がありまして、その折提案者といたしましては、社会保障制度審議会答申というものが、意見書というものが昭和二十七年の十三月の二十三日に出されておるのだが、これについての御見解はというふうな点を御質問申し上げたのであります。すると、提案者高橋さんの方から、もちろんそういうものを十分検討をしておるが、すでに軍人恩給というものはもう法律で決定されておるのであるし、今度の提案はその今までの軍人恩給の点を改正して行くことを目的としておったのである。ですから直接社会保障制度審議会答申あるいは意見書についてどうこうというふうに、それを主に社会保障制度というものから考えてこの恩給というものを考えたのではないというふうな意味のお話があって、これは議員提案立場においては一応うなずける点でございます。しかもこういう議員提案として法律案が出るといたしましても、政治の側におきましては意見書というものが出ておりまして、それによって軍人恩給というものが先般復活いたしたわけでございますが、この社会保障制度審議会意見というものと軍人恩給の施行というものには何かまだ割り切れないものがあるんじゃないかということが一部世論になっておるわけでございます。そこでさらにそれが政府からも修正されるようなこともなく、またさらに軍人恩給改正ということで法律案提案されておるわけなんでございますが、政府の側といたしましては、社会保障制度審議会答申というものと、今度さらに恩給法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案を出されました趣旨というものについて、どういうふうな御見解を持っておられますか、それをまず伺いたいと思います。
  4. 大久保留次郎

    国務大臣大久保留次郎君) 恩給法についての説明でありますが、これはもう前からたびたび繰り返されておりまするので、私からあらためて申す必要もないかと思います。恩給制度根本公務員というものが前提になっているように思います。これは文官にせよ、武官にせよ、公務員としての国家に対する特殊の地位のために、国家から退職後給されるものがすなわち恩給でありまして、公務員という前提はどうしても必要だと思うのであります。ところが社会保障制度におけるいわゆる社会保障制度審議会答申に盛られている点は、これは国民全体の問題でありまして、公務員とか、あるいは何とかというようなものが前提になっていないのであります。国家国民生活保障しなくちゃならぬという義務に基いてやるのがすなわち社会保障制度であろうと思うのであります。そこに出発点が少し違っておる。今日の恩給制度は、前に申しました通り公務員というものが前提になって給与されるものがすなわち恩給でありますけれども公務員でなく国民として生活を救うために給与されるものが社会保障制度であります。そこで将来これをどういう工合に両者を統一するかというのが、私はこれからの問題であろうと思います。実を申せば、よく引き合いに出される公務員制度調査会においても、恩給問題についてこういう問題に触れております議論が出ております。軍人普通公務員恩給を同時にすべきか、あるいは分けるべきかという一つ議論を出しております。従って将来の問題として、社会保障制度恩給制度というものは何らかの点において調和して行かなくちゃならぬであろうと想像いたしますが、そこで今直ちにこれを二つを一緒にしてやりましたならば、私は今日の恩給を給されておる人の心理状態から考えまして、直ちに喜ぶことはない、喜ばぬのじゃないか、こういう感じも持っておるのであります。でありますから、適当な時期にこの両方思想調和ができた機会に、あるいは調和をはかって、両方制度調和して行くのが私どもの将来とるべき道ではなかろうかと、こういう考えを持っておりますが、現在の状況におきましては、先に申しました通り、その出発根本基礎が違っておりますから、今直ちに両方を同一にするということは、ちょっと困難じゃないかと考えております。
  5. 加瀬完

    加瀬完君 私の質問がちょっと抽象的でございましたので、誤解のないように、もう一度申し上げたいのでありますが、一般公務員恩給でありますとか、軍人恩給というものに反対とか、賛成とか、こういう立場を私は打ち出してはまだおらないのであります。そうでばなくて、恩給制度というものから考えるならば、あるいは高橋さんの御提案のような筋が立つかもしれない。しかし政府といたしましては、社会保障制度審議会から、この恩給というものの制度というものは、さらに国民的公平を欠くようになるおそれがあるんじゃないか。なおわが国の産業構造特殊性と憲法の精神に顧みるときは、国家が行う社会保障制度である以上は、まず最判に保護せらるべき零細企業における被用者、農民及びその他の弱小日常者というものが包含されなくては、社会保障制度としてはどうも筋が立たないんじゃないか、こういう指摘もあるわけであります。そこで恩給制度というものがあるわけでございますから、それに旧軍人、軍属、こういう関係者復活さして行くのも一つ意味のないことではございません。そういうふうなことをして参るならば、当然この社会保障制度審議会が指摘したような、一般社会保障制度というものも上向きに持って行くということでなければ、ますます国民的公平というものは欠けてくるという、指摘されたそのままの幅がさらに広がることにもなると思うのであります。こういう点、政府は今度の恩給法改正のような場合、この審議会の指摘された面というものと、一般との公幸というものをどういうふうに調節をして行くかということについて、どんなようなお立場をおとりになられているのか、こういう点を伺いたいのであります。
  6. 大久保留次郎

    国務大臣大久保留次郎君) 社会保障制度審議会答申というものは、社会保障を中心として論議されて参りましたものでありまして、私はその考えは尊重すべきものはあると思っております。ただそれだけを実行して、その中に恩給制度を包含したらどうかという議論も起ってくるかとも存じますが、さきに申しました通り社会保障制度社会保障制度として存立して、恩給制度恩給制度として当分存立していき、両方思想が融和して統一すべき時期に至ったときにおいて私は初めてやったらどうかという感じ身持っておるのであります。
  7. 加瀬完

    加瀬完君 私は大久保国務大臣個人の御意見を伺う前に、社会保障制度審議会意見書というものは政府に対して行われたものであって、もちろんこれば現内閣に対して行われたものではございませんけれども、現内閣におきましても、恩給制度というものを、文官、旧武官にかかわらず問題にする以上は、この社会保障制度審議会意見というものは一応当然問題として議せられなければならぬものだと思う。そういう点、今度の恩給法の一部改正法律案検討に当りまして、この社会保障制度審議会意見書というものは、閣議あるいは給与関係担当官の間において問題になったか、ならないか、こういうことを伺いたい。
  8. 大久保留次郎

    国務大臣大久保留次郎君) 今回の恩給法改正案には、その表題の示します通り、旧来ありました恩給法の一部を改正し、その率を引き上げたという点に主眼をおいてあるのでありまするし、根本にさかのぼり、根本にふれて社会保障制度と統一し、あるいは融和させるというまでは及ばなかったのであります。この点はさきにしばしば申しました通り、適当の機会においてそういう方向に推めなければならぬという感じは持っておりますが、今回の改正については、そこまで改正をいたす余裕はなかったのであります。ほんとうに恩給法そのもの改正主眼にしております。
  9. 加瀬完

    加瀬完君 社会保障制度審議会といいうものは、当然政府諮問機関でありまするから、この意見書というものは相当政府としては大きく取り上げなければならない性格のものであるというふうに私ども考える。で、旧軍人恩給というものに限ってみましても、「戦争遺家族傷痍者などに対する生活保障は、当然に優先して考えられねばならない。むしろ現行戦傷病者戦没者遺族等援護法における傷害年金遺族年金金額を引上げるとともに、老令者に対する年金については、定額制基礎として、これを支給するなどの措置をとるべきである。」というような、審議会そのものも、旧軍人の、あるいは戦争犠牲者によりまする恩給国民というものに対して一顧も顧みないという態度は絶対にとってはおらないわけであります。その考え方というものをどういうふうに進むべきかということを指摘しておるわけであります。こういう諸点について十二分にわれわれは……、この前の軍人恩給復活という問題は、旧武官に対する恩給復活ということに汲々としておりましたから、これは提案者高橋議員が指摘しておるように、いろいろの中にまだ整頓されておらない部面もあったかもしれない。それらの一部がこういう形になって法案に表わされて来たということにも考えられるのであります。しかしながら、政府政府として、ああいう形によって行なわれました現行法というものと、この社会保障制度審議会意見というものと何か調節するという配慮というものが当然働かなければならないものだと思うのです。そういう点、これは議員提案として一部を改正する法律として恩給法ということに限って出されたものだから、それはこの改正でいいじゃないかということであっては、出されました社会保障制度審議会意見というものは全然政府によって顧慮されておらないということに私はなると思う。こういう立場恩給というものが考えられて参りましては、国民一般に持っておるところの恩給受給者に対する不満は、社会保障の足りない点と恩給受給者との間の感覚の埋め合せ、こういったような点については、全然問題がそのまま残ってしまう、こういう一部の国民の声が当然起ると思う。これらに対して、政府はどういうふうな御見解をお持ちでございますか。
  10. 大久保留次郎

    国務大臣大久保留次郎君) 恩給法と密接な関係を持っております今あなたのおっしゃられました援護法、これは当然姉妹関係と言いますか、兄弟関係と言いますか、軍人恩給支給について密接な関係がありますので、これらの援護法関係範囲におきましては十分連絡をとり、調整を保たなければならぬという考えでやっております。一般的の護援法を離れたそれ以外の広い意味社会保障制度、ここまではまだ考えは及ばなかった。しかし、またそこまでやるだけの考えはなかったので、それは将来の問題に残して、今回の改正においては、主として援護法関係及び恩給関係法案改正にいたしたいと考えておるのであります。それといって、決して前の社会保障制度審議会答申を、これを無視するというわけではない。やはりおのずから時期があるという考えを持っております。
  11. 加瀬完

    加瀬完君 具体的な点について質問を進めて参りたいと存じます。提案者高橋さんと国務大臣のお二人に伺いたいのでございますが、この提案理由と申しましょうか、この一部改正目的と言いますものは、主として旧軍人戦争犠牲者で、非常な犠牲を受けたわけであるから、これを救済したい、あるいはこれに対して遺族方々をこうしたい、こういうことが大体おもなる目的というふうに提案理由の御説明からは受け取ったのでございますが、それでよろしうございましょうか。
  12. 高橋等

    衆議院議員高橋等君) 大体お説の通りでございます。なお戦争犠牲者、ことに戦没者遺族傷痍者、旧軍人方々に対しましては、国家補償とい観念に立脚をして問題を解決いたしたい、こういう趣旨でございます。それでこの改正は、先ほども御理解をいただいておるように思いまするが、昭和二十八年の恩給法改正のときに、国家財政見地からその金額は低いところにおかれておりましたのを、これを文官均衡のとれるようにしたい、こういう点が主たる考えでございまして、立法の根本精神は、結局昭和二十八歩の恩給法改正当時の思想を引き継いでおる、こうお考え願いたいのであります。
  13. 加瀬完

    加瀬完君 そういたしますると、提案者といたしましては、戦争犠牲者というものをどういうふうな犠牲順序と申しましょうか、犠牲順序というものをどんなふうにお考えになられたのでありますか。
  14. 高橋等

    衆議院議員高橋等君) 沿革的に申しますと、ポツダム六・八勅令によりまして、これらの人々に給されておりました恩給が、御存じのように、停止になった。そこで今回日本が独立を先般いたしました際に、とにかくこれらの方々には恩給として国家補償復活とはっきり言い切るのもどうかと思いますが、一応私は新しい時代の要請にこたえながら復活をするという考え方の上に、この恩給法改正が二十八年に行われておるのであります。従ってその一般戦争犠牲者方々につきましても、それぞれこれは国力の許す限りの方法を講ずる必要があると私は考えますけれども、特にこれらの人々は、沿革的に見ましても、またその犠牲の点におきましても、優先的にこれは考えて行かねばならぬ問題と、こう私は考えておりますし、今申し上げましたような、ポツダム六・八勅令停止をせられたものであるという沿革にも重点おいて、前回の恩給法改正が行われた、こう考えております。
  15. 加瀬完

    加瀬完君 これは一応二十八年に制定されました恩給法の一部を改正する法律案提案者であります高橋さんに、三十八年決議されました軍人恩給そのものの経過なり、あるいは理由なりというものを伺うことは当を得ないということは十分承知をいたしております。しかしお答えできる範囲においてお答えいただきたいと思いますし、主としてこの点は大久保国務大臣に伺いたいと思うのでございますが、政府も、今提案君の御説明のように、戦争犠牲者国家補償をするのだ、そこで戦争犠牲者に対する国家補償ということであると、いろいろ方法もあるだろうけれども、一応歴史的に見て、経過的に見て、軍人恩給を受給されておった者の復活というものを、戦争犠牲国家補償の第一歩として考えられたものが、二十八年の軍人恩給復活であり、そこでこのたびばそれを修正したのだ、こういうお立場をおとりになっているのでございますか、大臣戦争犠牲国家補償として軍人恩給というものを見ておる。こういうふうに考えてよろしうございますか。
  16. 大久保留次郎

    国務大臣大久保留次郎君) これは国家補償という定義がむずかしくなって参りますが、言葉によっては国家補償とい言葉を使ってもあえて私も差しつかえないと思います。根本観念国家補償にせよ、何にせよ、前提としてさきに申しました通り公務員云云ということが前提になっておりますからして、その条件のもとに国が補償するのだといえば国家補償とい言葉を使っても私はあえて異論はないのであります。今回の改正根本は平たく言えば、前の軍人に与えられた権利の復活ということを言うのも一つの理屈であると思いますが、法的根拠からいえば、これは一たん切れた恩給を改めて法律によって給付するのだ、だからして前の継続にあらずして、新しい法律によって給与制度を作ったんだ。こういう解釈も私はとり得ると思っております。二十八年度の法律はまあこれはどちらにせよ、事実は高橋さんの言われた通り、旧軍人犠牲者に対しで国家給与制度をもって救済するという根本思想と見てもいい。しかもその給与一般文官と比べて低い、均衡がとれぬ。ことに従来支給しておった給与に比べて権衡がとれぬというので増額しようという問題が起ってきたことと思います。
  17. 加瀬完

    加瀬完君 私の伺っておりますものは、社会保障制度審議会軍人恩給復活というものについては、ただ軍人恩給をそのまま復活させるということは、社会保障制度審議会としては異論がある。もっとこの際は立場を変えて、戦争犠牲者に対する国家補償といならば、立場を変えた形で補償制度というもの講ずべきだという、まあ結論を下せばそういう立場をおとりになっておったところが軍人恩給復活した、そしてさらにここに一部の改正提案された。そこで今この軍人恩給というものの一部改正という法案に臨みまして、担当大臣といたしましてのお考えは、これは戦争犠牲者に対する国家補償としての恩給復活であるから、当然この法案は妥当なものである、こういうお立場にお立ちになっておられるのか、おられないのか、それだけ伺えばいいのであります。
  18. 大久保留次郎

    国務大臣大久保留次郎君) 私はこれを社会保障でなく国家補償とい意味が、さっき申しました通り、私も言いました通り国家補償とい意味ならば、国家補償のための復活であるといっても差しつかえない、こう考えるであります。
  19. 加瀬完

    加瀬完君 そうすると、戦争犠牲者に対する国家補償というお立場提案者と同じお立場でございますね。
  20. 大久保留次郎

    国務大臣大久保留次郎君) そう解釈していいと思います。
  21. 加瀬完

    加瀬完君 それなら伺いますが、戦争犠牲者に対する国家補償としての恩給復活ということであるならば、その恩給階段と言いますか、階級と言いますか、そういうものは戦争犠牲というものに対して正比例したところの国家補償でなければならないと思うのです。逆にいうならば、大将中将少将、下士官、兵というものがありまして、戦争犠牲というものから考え大将が一番上で兵隊が一番下であるという理論は戦争犠牲の上から成り立たたない。しかしこの軍人恩給というものを見ますると、これは旧来の旧軍人恩給階段というものをそのまま認めておる。一応大筋としては認めております。そうなって参りますると、旧軍人恩給のただ歴史的な復活だというにおいが非常に強くて、戦争犠牲に対する国家補償というところの、何と申しますか、心づかいというものをわれわれ現行法からも、新しい一部改正案からも発見することもできない。この点大臣はどういうお考えでございますか。
  22. 大久保留次郎

    国務大臣大久保留次郎君) それも私は考えようによると思っております。今日の恩給法制度大将中将少将、将官、佐官、尉官というふうに、あるいは兵卒までずっとありますが、これは現在の恩給制度に歴然として規定されておる事実でありまして、これの改正に当たっては、これを全部社会保障的の見地から直すということは、これは容易な話じゃないのであります。そればかりでなくて、これをそういう工合にしたならば、今日の恩給給与体系というものが非常に混乱する、乱れてしまう。ですから私は国家補償にせよ、恩給法改正にせよ、これを直すにつきましては、なるべく現在の給与体系、しかもそれは空想じゃないのです。事実に基いた給与体系をなるべくくずさずに行きたいという念願のもとに改正を行うのでありまして、その点を御了解願いたいと思います。必ずしもあなたの言う通り、全部これを根本的に直して、戦争犠牲者だから一律にせよという議論があるかもしれませんが、これは私は給与体系上好ましくないと存じまして、現在の制度を維持しておる次第であります。
  23. 加瀬完

    加瀬完君 議論になりまして恐縮でございますが、私が伺いたいと思っておりました前提は、戦争犠牲者に対する国家補償である、こういうことであるならば、その戦争犠牲の多い少い、強い弱い、こういうものが一応補償の基準というものに決定されて参らなければならないものだと考えるわけでございます。しかしこれは議論になりますから一応あとに残しまして、具体的に次の質問を申し上げます。とにかく戦争犠牲者に対する国家補償をしようという考えであったとするならば、政府におきましては、戦争犠牲者で救済しなければならない事項というものをどんなものをお考えになって、あるいはどんな話し合いをされたか、こういう具体的な点について伺います。
  24. 大久保留次郎

    国務大臣大久保留次郎君) 今回の軍人恩給復活しました、復活という毒薬を使うのが妥当でないかどうかは別としまして、二十八年にできました。そのできますについて、ただ漫然と作ったのではいかぬということで、当時の識者を集めてその標準ができました。これがその当時の軍人恩給復活特別例審議会と言いますか、ちょうど社会保障制度審議会のような審議会があって、この審議会議論に基いてこの軍人恩給制度はできておるのであります。そのとき一番重きにおいたのは何かと申しますと、遺家族であります。遺家族をまっ先に救護しなければならない。その次に何に重きをおくかというと、傷病者戦争犠牲になって傷病になった人、その次は老令者というふうに大体の標準ができております。この標準基礎として今日の恩給制度はできておるであります。私はこの特例審議会精神は今でも生かしておる、一つ標準として尊重すべきものと信じて、この線に沿って起案もし、改正もしておる、こういうのであります。
  25. 加瀬完

    加瀬完君 恩給特例審議会答申というものは私どもつぶさに承知をいたしております。そこで遺家族なり、傷病者なり、老令者なりが話題になったということも当然でございましよう。しかし高橋さん提案法律案というものを審議するに当りまして、政府話し合いの中には、恩給特例審議会の話に出ただけの話に尽きておった。もっと極端にいうならば、遺家族傷病者令老者といった旧軍人に限ってのみ戦争犠牲者というふうに考えて、あと戦争犠牲者のいろいろの人々、あるいは戦争犠牲のいろいろの事項、こういうものについては全然話し合いに出なかったのか、この点であります。
  26. 大久保留次郎

    国務大臣大久保留次郎君) 私の今話しましたのは、軍人恩給復活根本精神と言いますか、根本の方針を御説明したのでありまして、今回のここに提案されております恩給法改正につきましては高橋君の先言われました通り、まっ先に取り上げられた点は、文官との不公平を是正する、従って四号俸引き上げ、ベースの引き上げということが根本になっております。そのほかあるいは公務死範囲を拡張するとか、一カ年以上通算を入れるとか、そういう範囲はだいぶ拡張されておりましたのであります。従って従来の恩給法にでこぼこがあった、及び範囲が狭かったという、そういう切なる要求をこの点においていれておる、こう考えております。
  27. 加瀬完

    加瀬完君 この前の恩給法が施行されましたときにはあなたの内閣ではありません、少くともあなたの内閣社会保障制度といったようなことを公約として一つはっきりと打ち出して大きくうたっておる内閣なんです。そういう鳩山内閣でありますから、軍人恩給の一部を改正する法律案というものが出ましたならば、当然社会保障制度というものとの他のにらみ合いという点からも、いろいろの問題が話し合いとしては出てこなければ私は嘘だと思う。そこで戦争犠牲国家補償ということを背景として、前提として今度の法律案の内容というものを考えていいのだというお話でございます。それならば単に恩給特例審議会のときに出た話以外に、もっと漏れておる戦争犠牲者、漏れておる国家補償事項といったようなものは当然話し合いに出てこなければならない、何かそういう点お話し合いがないかという点を伺っておるのです。恩給法説明を伺おうとは思っておらぬのです。
  28. 大久保留次郎

    国務大臣大久保留次郎君) それは恩給法改正以外に援護法改正、これは私の方の所管でなく実を言えば厚生省の所管である、厚生省において相当の処置をとっておることと存じますが、私の方の一番直後関係を持っておりますのは援護法であります。この援護法についても今申しました通り公務死範囲を拡張する云々ということは、援護法の規定の改正と同時に私どもの方にも響いてくるわけなんであります。こういう点については十分連絡をとっておる次第であります。
  29. 加瀬完

    加瀬完君 それでは提案者に伺いますが、提案者の方では、戦争犠牲国家補償としての恩給復活軍人恩給考えておる。そしてさらに軍人恩給についての文官との不均衡というものを是正するためにこの改正法案を出したのだ、こういうお話はよくわかったのでございますが、それならば戦争犠牲国家補償という背景でものを考えるというお立場に立っておられるならば、ここに一般国民と不当な差別待遇を受けておるというふうに旧軍人考えられておられますが、一般国民の中でも、さらに戦災者その他戦争犠牲者がたくさんまだ残っておる。何ら国家補償もされないで今も残っておる。こういう方たちについては何か別にお考えになっておられる点があるか、あるいはそういう方たちとの関係というものを、何かお話合いの過程にいろいろ御討議なされましたか、その点を伺いたい。
  30. 高橋等

    衆議院議員高橋等君) 一般国民と差別待遇がある、こう提案理由には書いてありますのは、結局文官との差別を受けておる、こういう意味にお読みをお願いいたしたいのであります。それからこの恩給法をやりまする際に、これと関連のある問題として、先ほど大臣が申されました援護法改正しました。それから留守家族に対しまする、要するにまだ引揚げをいたしておりません外地に抑留さられておる留守家族の援護法についても金額的に均衡をとる考慮を払っております。ただその他の一般国民関係になりますと、これはやはりここに律しておりまする問題は、公務員としての資格を持った人に、その戦争犠牲者に対する処遇を一応まあ打ち出して、一般国民に対しましても、もちろん国力が許しまするならば、いろいろな面で考えねばならぬでしょうが、そうしたことでできるだけ広く考えましたのは、たとえば総動員法によって徴用された工員その他に対する援護法の処遇というようなことは、恩給法を決定する際にあわせて考慮はいたしたのであります。ただ全部一般国民国家戦争犠牲という点だけを除いたものについてはいろいろの問題があります。たとえば在外資産の問題等、解決を要する問題はいろいろあるのですが、結局敗戦日本の立場としまして、これを特に取り上げてやるというところまでは至っておらない、私はこれは非常に残念だと思いますが、これは現実として見ざるを得ないと思うのです。繰り返して申し上げが、戦争犠牲の中で公務員戦争犠牲についての問題をここで扱っておるということを御了承願いたいと思うのであります。
  31. 加瀬完

    加瀬完君 だんだん性格が御説明によりましてはっきりして参ったのでありますが、戦争犠牲者のうち公務員、しかもその公務員というのに説明を加えるならば、旧軍人武官と申しましょうか、こういう立場戦争犠牲に対する国家補償ということで恩給考えて参った……。
  32. 高橋等

    衆議院議員高橋等君) 旧軍人軍属、軍属もこれは入ります。
  33. 加瀬完

    加瀬完君 そういたしますると、これは戦争犠牲戦争犠牲者ということよりは、旧軍人軍属、この国家補償考えたのだということの方が私ははっきりしておると思うのです。そう解釈してよろしいですか。
  34. 高橋等

    衆議院議員高橋等君) それはまた極端でありまして、結局この法律で実施しておりまするおそらく八五%くらいになるのじゃないかと思いますが、これが戦死者の関係でありまして、英霊の関係、そうして金額的に見ますれば、普通恩給よりも当然これは公務扶助料として金額は多くなっております。それからその次がいわゆる傷痍旧軍人、これもただ公務員であったというだけでなしに、ここに国家のために傷病を負ったという事実、それから最後に普通の恩給と同じ考え方で、公務員に対する考え方と同じような考え方で扱っておるのが旧軍人普通恩給、これは全般の六、七に当る分野がそれであります。ただこれも一般文官と同じように若年停止その他の規定を置いておりますから、やはりこれらにつきましても老令にして、しかも年をとって、そうして一切その軍人はほかの職業を営むことを禁止された、そういうことで頭々使うことも禁止された、木から落ちたサルというような、敗戦の結果もう完全に気の毒な境遇に立ったという方であり、しかもこれは普通の文官と同じような待遇の仕方を考える。ただこの軍人についていろいろと非難があるようですが、これはもちろん戦争の責任が旧軍人のみにあるのだという考え方はないと思いますけれども、どうも何かそういうような気持ちがまだ心のすみにある人もないでもないのじゃないかと思いまするが、そうしたことを考えないとしますれば、これは当然してあげなければならない措置であると、こういうように考えておるわけであります。
  35. 加瀬完

    加瀬完君 私は旧軍人であるからといって、生活困窮の現状に置かれておるものを放擲していいというふうな考えは毛頭ございません。またそれが職業軍人であろうとも、戦争犠牲をこうむったという現実があるならば、これに対して国家補償をするということにたって反対をするものでもございません。ただここでお伺いをさらにいたしたいのは、職業軍人と通称呼ばれておる者と、いわゆる赤紙によって召集されたと申しましょうか、国民の義務として召集をされた軍人軍属というものと、その取り扱い方というものをどんなふうにお考えになられたか。と申しますのは、旧軍人と軍属といういわゆる公務員というワクで考えるならば、これば職業軍人という名前で呼ばれている者の方が北常にこれに適合をする。しかし一般召集で応召という形で出された軍人軍属というふうなものは、受給関係から見れば利益が薄くなるというふうに想像されるのでございますが、この点はどんなように御配慮をなされておるのでありますか。
  36. 高橋等

    衆議院議員高橋等君) これはまあ昭和二十八年に恩給を作ったときにさかのぼった根本問題でありますが、従来の恩給制度というものの基礎の上にすべて仮定俸給その他を考えて作り上げたものであります。過去におけるいろいろな事実を集積をいたし、そしてそこに新しいものをまた加味して作る、それでこの間も申し上げたんですが、二等兵、一等兵、上等兵というような階級の低い方は、全部兵長までのところまで引き上げて、できるだけ低い方の方へ少しでもお金が行くように、恩給が多く行くようにという考慮は、前回の改正のときはかっております。その通りを今度も踏襲をいたしております。
  37. 加瀬完

    加瀬完君 恩給制度基礎の上に、新しいものを加味なさったのでございますか。
  38. 高橋等

    衆議院議員高橋等君) という説明は、昔のままの恩給制度というものを復活したのではないのだということば、加算のような問題とか、いろいろなまだ未解決の問題が残っておるということを、まあ含みとして申し上げてくわかりました通り恩給制度基礎の上に加算でありまするとか、あるいは兵を兵長のところまで引き上げるとか、そういう新しいものを加味して作ったというお話でございますが、戦争犠牲者国家補償としての恩給というものを考えるというお立場に立って、その戦争犠牲者というものを提案者の御説明のように、旧軍人、軍属という公務員というワクをこさえたにいたしましても、旧来の恩給制度基礎の上に立つということについて、政府は旧来の恩給制度基礎の上に立って若干の加味したものがあったにいたしましても、戦争犠牲者への国家補償というものが、それによって完全になっていく、こういうお立場にお考えでございます。
  39. 大久保留次郎

    国務大臣大久保留次郎君) 新憲法になりましてから、国民思想がやや変りまして、どちらかと言いますれば平等の思想が盛んになってきました。で、今度の恩給改正につきましても、やはり平等と言いますか、下に厚く上に薄いというような思想を幾分取り入れて、たとえば将官、佐官の号俸を四号俸上げなかった、二号俸あるいは三号俸引キ上げたということの現われが現われておりまするが、大体におきましては、高橋君の言いました前の考え方で進んでおるのでございます。
  40. 加瀬完

    加瀬完君 新しいものの加味と言いましても、新しいものというのは、今、高橋先生あるいは大臣からお話のあった、ほんのちょっぴり旧恩給制度基礎の上に変化を加えたに過ぎない。あなた方の御説明のように、戦争犠牲というものを国家補償をするんだという線というものを貫こうとするならば、特に私は具体的な例を申し上げますが、応召や召集を受けました下士官、兵というものの犠牲というものが、それによって補償されておるという御認識でございますか、大臣
  41. 大久保留次郎

    国務大臣大久保留次郎君) 大体におきまして補償されておると思っております。
  42. 加瀬完

    加瀬完君 大臣は先ほど、こういう旧軍人恩給というもののあったことを歴然たる事実というお言葉で申しておられましたが、どういうふうにいわゆる応召、召集を受けた下士官、兵が戦争犠牲を受けておるかという歴然たる事実を御認識でございますか。
  43. 大久保留次郎

    国務大臣大久保留次郎君) これは旧制度にはっきり書いてあります。それを私は言いましたのでございます。ただ私が作って申し上げたのじゃなしに、事実を事実として申し上げました。
  44. 加瀬完

    加瀬完君 私の言うのはそうじゃない。応召された芦が旧職業軍人と比べまして十二分に戦争犠牲が報いられておるというお話でございますが、一体応召などを受けました職業軍人でなかった一般国民軍人として犠牲を受けました方たちの、経済的に、あるいは職業的に受けられた犠牲というものがどんなに大きいものであるかという御認識は十二分に御調査なされておられるのでありましようか、この点お伺いしたい。
  45. 大久保留次郎

    国務大臣大久保留次郎君) あるいは必ずしも満足ではないかと思うのでありますけれども、御承知通り、この下級の兵の数か非常に多いのであります。これを少しでも増加しますることは国の財政に非常な影響を及ぼします。ですから、そういう考えを持っておりましても、やはり事実の上に支給するについては、こういう結果になりましたものであります。これはまことにやむを得ないのじゃないかと、こう考えております。
  46. 加瀬完

    加瀬完君 私は多いにやむを得ると思うのです。数が多いから、財政影響が多いから、戦争犠牲というのは認めるけれども、まあ補償の方は不満足でも仕方がないであろう。これは一体戦争犠牲補償をしているのでございますか、そうではなくて、軍人恩給復活という目的は他にあるのでございますか、こういうふうな疑問を発せざるを得ないのです。この点下士官、兵というようなものは非常に数が多いから、これに思い切って出しておっちゃたまらないから、それはいいかげんでやるんだ、これが政府の態度だ、そう了解していいのですか。
  47. 大久保留次郎

    国務大臣大久保留次郎君) これはもういかに国家といえども補償の限度があります。今申しましたこの数の多いものを満足するほどの支給はなかなか困難でございます。財政的に困難であります。まことにこれはやむを得ない措置を思っております。
  48. 加瀬完

    加瀬完君 財政的に困難だからやむを得ない措置と言いますけれども、一体この下士官、兵の一般応召者の戦中犠牲というものをどれくらいお考えになっておられるか、おられないかという問題があると思います。これは財政事情がどうこうと言っておられないほど非常に戦争犠牲が多い、あるいは軍人恩給復活したワクの中でも、もっとこれは下士官、兵というものは優遇されなければならないのじゃないか、そういう操作も技術的にできるわけです。一体基本的な態度というものをどうお持ちになっておったかという結局問題になろうと思います。どうもやはり御説明の中では、提案者も、あるいは大臣も、上に薄く下に厚くと言っておりますけれども、事実においては上が厚く下は薄くなっているというふうに私どもは判断せざるを得ない、比較的上に薄く下に厚いようにしてやるように見られがちでありますが、よく検討して見ると、まるで下の方は涙金にも当らない、上の方は厚くてもけっこうである、あなた方の御説明通り戦争犠牲者の救済、国家補償をしようというのは厚くてもけっこうだが、下の方は、下士官の方はさっぱり国家補償という性格はどこにも出ておらないじゃございませんか。これだけの金額では……。この点を大臣国家財政がないんだから仕方がないと言って済ませられる問題であるか、私どもは疑うのであります。この点どうですか。
  49. 大久保留次郎

    国務大臣大久保留次郎君) これはもう補償はほんとうにやればけっこうですが、今申し上げました通り、これば何べん繰り返しても同じと思いますけれども、数が多いので国家の財政には限りがあるのです。実を言えば今回のこの恩給法軍人改正案においても大蔵省は非常にしぶっておったんです。困るとこぼしておったけれども、大局において賛成したというような状況で、これは財政の限度があるからやむを得ないと思います。救済ということを考えたら無限ですけれども、これはどこかで打ち切らなければ無限にはできない。まず私はこの辺が妥当であると考えたのです。
  50. 加瀬完

    加瀬完君 旧軍人恩給復活という恩給制度というものによりまして、このいわゆる戦争犠牲国家補償というものをやって行くというこのやり方に御無理があるというふうにはお考えにはならないのですか。
  51. 大久保留次郎

    国務大臣大久保留次郎君) それはあなた、社会保障社会保障と言われるけれども社会保障のみを言われるようですが、私ども社会保障じゃないのです。これは公務員国家のために尽した給与なんです。そこを一つ頭へはっきり置いて議論していただきたい。今日の恩給制度公務員あっての恩給なんです。そこはどうか……。
  52. 加瀬完

    加瀬完君 私は大臣の御説明を承わりに来ておるのじゃないのですから、私ども質問に御説明いただけばいいのです。あなたはそうおっしゃるが、さっきからおっしゃっておられますことは、あなたの御説明の中に、私どもを納得させるように持って行こうということなんで、これはもう違うのです。われわれははなはだ怪しいと思うから伺っておるのですから、われわれの伺っておりますことに御答弁いただけばいいのです。そこで戦争犠牲国家補償するのだという、こういう立場で言われるから、それでは下士官、兵というものは、これだけでもって国家補償されているということではどうもあまりにも気の毒な状態と言わざるを得ないのじゃないか、そりすると、数が多いのだから、そういったって国家財政には一応のワクがあるのだから出し切れない。そうおっしゃる御説明をそのまま私どもが受けるとするならば、恩給制度というものでこの問題を、戦争犠牲国家補償というものを考えて行くことに無理があるとはお考えにならないかと、こう伺ったわけです。社会保障制度をしろとか、何とかいうことは意見になりますから私は申しません。そういうことでない。恩給制度というものを復活してやってみても、特に下士官、兵という相当な犠牲者というものが十分慰謝することができない、こういう御不満を大臣はお感じにならないかどうかということを承わりたい。
  53. 大久保留次郎

    国務大臣大久保留次郎君) それは程度問題であります。さっき申しました通り、私は満足するほどの給与ということはこれはむずかしいのじゃないか、まずこの程度においてやむを得ない、こう考えております。
  54. 加瀬完

    加瀬完君 提案者に伺いますが、この点御説明によりますると、尉官以下四号ですか、お引き上げになった。しかし曹長、伍長になりますると三号、中心になっておられますのは大体尉官ということに私は御説明を承わっておったわけでございますが、この点もう少しお話しいただけますか。
  55. 高橋等

    衆議院議員高橋等君) 少し誤解かおありなんじゃないかと思うのです。尉官以下の大多数を占めるものは全部四号上っております。ただその中の一部分の曹長、軍曹のところは、仮定俸給を実は四号上げますと文官より高くなる、その階級より高くなる、そうすると、文官より高いものは作らない、こういう考え方でそこを三号の引き上げにやむを得ずやったわけでございます。
  56. 加瀬完

    加瀬完君 結局尉官が四号上っておりますのも、それは文官とのつり合い上尉官を四号上げたということになるのですか。
  57. 高橋等

    衆議院議員高橋等君) そうでございます。
  58. 加瀬完

    加瀬完君 そういたしますると、これは文官との均衡をとろうということが主目的でありまして、別に戦争犠牲に対する国家補償という観点から位づけをしたというわけではないと解釈してよろしいのですね。
  59. 高橋等

    衆議院議員高橋等君) それはその御質問は少しおかしいと思うのですが、結局戦争のために犠牲になったこれら公務員人々が、これが十年の久しきにわたってまだ文官との差別待遇を受けた恩給をもらっておるわけです。それを文官並みにしようというわけなんでありまして、少しそこら辺の考え方が食い違いがあるのじゃないかと考えます。
  60. 加瀬完

    加瀬完君 私は何もことさら反対という意思を今表明しておるわけじゃない。戦争犠牲国家補償をするのだという点で実施して行くものであるならば、これは下士官、兵といったようなものに重点がもっと置かれて私はいいんじゃないか。具体的に言うならば、格づけがもっと上になってもいいのじゃないか。しかし御説明を承わりますると、伍長、曹長というものを四号上げますると文官とつり合いがとれなくなる。そうであるならば尉官を四号上げたということは、これは文官との均衡の上で上げたのかというふうにどうも考えられる、そうなって参りますると、これば戦争犠牲国家補償ということの強い線できめて行ったのじゃなくして、旧軍人恩給というものが復活されて、その復活された旧軍人恩給というものと文官恩給というものを比べて、文官恩給との不均衡というものをならしていった、こう解釈せざるを得ない、その点なんです。
  61. 高橋等

    衆議院議員高橋等君) 先ほど来大臣に御質問でありましたから、私はお答えすることを御遠慮申し上げておったのでありますが、ちょうど先ほどの根本問題に入ったようですから一応お答えをいたしておきたいと思うのです。実は援護法を作りまするときに、どういうような振り割りにして行こうかというので、いろいろとあのときは案を実は持ったのでありますが、その中で、生活に困られておる方と生活に困られない方とを振り分けて、生活に困られておる方に年金を出すようにしたらどうだろうか、生活にお困りでない方は一つ精神的な面で国家財政の点からいってもお許しを願ったらどうだろうかというようなことも実は意見の中には出たのであります。ところか当時の遺族会の人々は、この全国の遺族の要望と申しまするのは、そういう貧しいから金を出してくれとか何とかというのではないので、国のためにわれわれは奉仕して、そうしてわれわれのむすこや夫は散華したのだ、だから生活に困っておるからという点に重点を置かないで、国で補償するという観点で、恩給という制度によって従来と同じような解決をしてもらいたいというこれは強い要望でございます。たとえば、これは余談になるかもしれませんが、当時の全国遺族大会なんかへ行かれまして、この社会保障というようなことを一口でも言いますと、先の演説をはばむぐらい、実はその点については要望がはっきりといたしておったわけなんです。そこでわれわれとしましても、公務員としてなくなられ、しかもそれが公務としてなくなっておるのであるから、これは恩給を従来やっておる一般文官と同じような公務扶助料という考え方、また過表においてやっておった軍人の公務扶助料という立て方で行くのが正しいと考え、たまたまこれらの問題が合致をいたしまして、今の恩給制度かでき、そうして恩給制度基礎となる仮定俸給というものを恩給特例審議会によりまして、過去におきまする給与をこれを引き直しまして、そうして仮定俸給をきめたそのものを基礎にして、実はこのたびの、まだ改正になってない二十八年の恩給法というものの兵その他の者が、兵長以下の二万六千七百円というような金額が出てきたわけでございます。この金額が私はこのたびの文官恩給との是正をここでいたしましたにしましても、御指摘のように、この金額をもって十分であるとは私は決して考えておらないのです。やはりこれは戦争犠牲になられた方々に報いるにははなはだ私は乏しい、わびしいものであるということを考えております。しかし今大臣が申されたように、一面においては国家財政の点も考えねばならぬし、また一面におきましては、この犠牲者の中でも生活にお困りにならない方と、そうして非常にお困りになる方というものが出て参りまして、また当時における貨幣価値と農村における問題とはまたおのずから違うのでございます。同じ五万円の恩給を年額受けておられましても、農村における五万円というものと都会における五万円では非常に受ける方は違う。まあいろいろな意味でここで考えてみなければならぬことが起っておりますが、この金額をそれならば引上げまして、困っておる方も困っておらない方も均霑して全部同じように出すということをやりますと、これは大へんな金になるだろう。ただ将来考えねばなりませぬ点は、これは将来というか、今すぐでも考えたいと思う、国の財政が許せば考えたいと思いまする点は、たとえばこの前の内閣と社会労働の連合の委員会でもお答えをいたしておきましたが、これは私の考え方としてお聞き取りを願いたいのですが、戦争でたとえば一人むすこをなくしたり、あるいは三人むすこをなくして全然身寄りのない年寄りたちがだんだんこれから年をとって参ります。あるいは未亡人の問題もあるでしょう、こうした方々に対しましては、私は何か恩給の割増金というようなものでも考えて、こうした方々には少くとも将来の生活保障を何らかの形でやらなければならぬということは考えますが、今の下級者の恩給金額は必しも満足すべきものではございませんけれども、過去からのいろいろな事実を積み重ねて仮定俸給を作って行って、一応こうしたもので御満足を願っておきたい、こういうつもりでおるわけです。また衆議院におきましては、議論の中でやはりあなたの所属されておりまする党の方から、この応召兵というものは、実は軍隊でもらっておった金額よりも収入は実際は非常に多いのだ、だからその収入を基礎にすべきじゃないかという御議論も一応は承った、それに対しまして、私もいろいろの立場考えられるけれども、たとえば会社の重役をなさっておられたとすれば、その重役として持っておられた株は戦死をされてもされなくても家族に残るし、いろいろな点も考えられるので、こうずっと公平にならして行ってみると、ここら辺で満足を願わなければならぬと、こう考えるのだという御答弁を申し上げておるようなわけで、一応そう申し上げておきます。
  62. 野本品吉

    ○野本品吉君 私はもう何も申すまいと思って黙って聞いておったのですが、どうも文官恩給との開き、それを一枚看板に言っておられるものですから、ついものを申したくなります。実は私はこの案の内容そのものにつきましては別といたしまして、提案理由に、文官との恩給のアンバランスを調整するというその提案理由を修正を求めたいと思うくらいなのです。そこで一つお伺いしたいのは、二十八年に軍人恩給が初めて復活されるときに、国家財政その他の事情を御勘案になりまして、やむを得ない処置として加算を取りましたね。それから下級を含めた、それから逆に停止の年令を上げた、これは軍人の皆さんに恩給を支給して幾分でも適当な処遇をしようとする趣旨から、そういうことをおやりになられたのですね。ところがそのときに軍人に、こういうことを適用したからというので、その悪い条件を文官に皆かぶせてしまった。今度は逆に一般公務員がいいから、いいからというので、それを理由軍人のを上げる、こうなってくると、軍人のために不利益な条件はだまっておって文官に押しつける。文官がいいからというとすぐそれに持って行く、こうなってきますと、これは一貫しませんよ。だから私は内容については論議いたしませんから、文官がいいからとか、武官がいいからとか、そういうことをあまりおっしゃらないで……、そうでないとこの問題は通りませんよ、いわゆる旧軍人の方と文官の間に国論の分裂を起すのじゃないか、実際そうです。この点につきましては、私はぜひ文官がいい、文官がいいという御意見は、なるべくならばおっしゃらない方が穏やかに事が済むと思いますから、この点どういうお考えになっておりますか。
  63. 高橋等

    衆議院議員高橋等君) 昭和二十八年の加算制度その他の改正政府提案でなされておりますから、政府から御説明をしていただきますが、文官との不均衡があることは事実でございます。この不均衡がまた文官同士の間でもそういう問題があることは、昨日も御答弁申し上げましたが、よくわかっております。少くとも文官と四号俸ないし一万二千円べースという点では一致しないものがあるのです。ですからそれを申し上げておるので、文官がよいと言っているわけじゃございませんので、一つこの問題は、やはりこの提案理由からこれを消せと言われますと、提案者としてはそれは消す意思はございません。そういう意味で御了承をお願いいたしておきます。そうしませんと、この恩給法改正基礎が完全にくずれることになりますので、それは御承知おきを願います。
  64. 野本品吉

    ○野本品吉君 私が申したいのは、別にこれをじゃましょうとか、けちをつけようということじゃなくて、そういう理由を一枚看板にしておりますと、結果的に同じものが出て、そうして高橋さんその他がこれだけ御苦労になりましても、それが日本全体の政治的なプラスにならぬ。
  65. 三橋則雄

    政府委員(三橋則雄君) ただいま野本委員から加算に関しまして一言ございまして、今、高橋議員からその点について説明するようにということでございましたので御説明いたします。これにつきましては、野本委員もあるいは御承知のことと思いまするが、加算は御承知のように軍人といわず、文官にもあったのでありますが、主として軍人であり、軍人の場合の方が加算のつく機会が多かったのでございますが、加算は何といいましても短期間の在職者に恩給を給するような結果になり、また若い退職者に恩給を給するような結果になり、ひいては国家財政上大きな負担となり、恩給亡国を来たすようなことにもなるものであると考えられましたので、それからまた旧軍人に対しましては、いろいろな事情はあるにいたしましても、今次の戦争につきましては、内地、戦地の勤務につきまして、いろいろな見方もあるかと思いますけれども戦争の非常に苛烈になったときのことを考えますると、特に戦地だからということで特別に加算を付けるということは、これにつきましてはいろいろ議論があり、また従来のようないろいろの加算をそのまま認めるということは、これにも論議がありました。そこでそういうことを考慮されまして、その結果、旧軍人方々に対する加算が廃止されることになったのでございます。ところでまた別の見地から考えますると、加算は御承知通り、戦地とか、あるいは軍隊勤務などの激しい勤務についた場合におきましては、相当高い程度の加算が付けられておったのでございます。そういう加算が廃止せられることになった。こういうことを考えました場合において、低い程度の加算の付いておったものについて、加算をそのまま存続するということにつきまして、条理上またいろいろな議論が出てきたのでございます。そういうことからいたしまして、現行制度におきましては、加算という制度政府においては取りやめる、こういうことにいたしまして、昭和二十八年の法律第百五十五号の制定のときにおきましては廃止する法案を出しまして、御審議をお願いしたような次第でございます。
  66. 野本品吉

    ○野本品吉君 ついでにもう一つ、今のお話を一応承わったということにして、先ほど来、加瀬さんからお話がありましたが、私はそういう考え方からするというと、当然国土防衛の最後の戦いに、土地の青年その他とともに戦った南西諸島の公務員諸君の処遇等はもっと十分配慮されてしかるべきじゃないかと思う。あの最後の沖繩の戦いで分隊長になり、小隊長になって、ほんとうに文字通り祖国を守るために倒れた公務員諸君の処遇等がいろいろな関係でおくれておりましたけれども、やはり、こういうときに私は考えてやるべき問題だと思っておりますが、これは恩給局長どうお考えになりますか。
  67. 三橋則雄

    政府委員(三橋則雄君) 今の野本委員のお話には私は同感でございまして、恩給法の対象といたしまして取扱い得るものはもちろん取り扱わなければいけないし、その恩給法の対象として取り扱えない、すなわち公務員としての取扱いを受け得ない者につきましては、御承知通り、ただいま援護法が設けられておりますから、その対象の中に含ませる等、その他の方法を講じまして、できる限り今のお話のような方向に向って善処すべきではないかと思っております。私の承知しているところでは、厚生省の関係者におきましても、今、野本委員の仰せられるような線に沿って努力しておるのではなかろうかと思っております。先般も厚生省の関係者が南西諸島の方に行っていたことを承知しています。
  68. 野本品吉

    ○野本品吉君 私はこれ以上申し上げません。だから高橋さんと私がお互いに信ずるところがあって、論争にわたりましては際限がありませんから、ただ刺激的なお言葉をお使いなさらぬ方がおためになります。
  69. 高橋等

    衆議院議員高橋等君) おためになりますとか、何とかいう議論を私はここでお伺いしようとは毛頭考えない。私は信念を申し上げた。あなたも信念を申されておるわけなんであります。どうぞその点率直だ御理解下さいまして、決して文官がどうとかいうことを、言っておるわけではありませんので、一つこの問題は、これは御了解をいただきたいと思います。
  70. 野本品吉

    ○野本品吉君 私はおためになると申しましたのは、高橋さんのおためになると申したのではない。いろいろな影響するところが相当ありますから、その点についての御考慮をわずらわしたいと、それだけの希望を申し上げたのであります。どうぞ誤解のないように……。
  71. 加瀬完

    加瀬完君 提案者に伺いますが、提案理由のうち、あるいは御説明のうちには、戦争犠牲者に対する国家補償ということを言っておりますけれども、この恩給の支給をする格づけをする上においては、国家犠牲度というものは特に考慮は払われておらないというふうに了解してよろしうございますか。
  72. 高橋等

    衆議院議員高橋等君) 文官と同等の待遇をここでいたすという意味から申しますれば、これは戦争犠牲であるから、特によくするという点が入っておらないということを御指摘になるならばその通りでございます。あともし言葉が足りませねば、政府の方から答弁を願います。と申しますのは、これは二十八年の恩給法というものを基礎にしておるものですから、政府の方から補足の説明をお願いしていただきます。
  73. 加瀬完

    加瀬完君 それではさらに質問を続けて参りまして、適当に政府の方から御答弁をいただくことにいたします。結果文官恩給との均衡を獲得しようということがねらいであるということでございまして、何もここに新しく戦争犠牲の度合いとか、あるいは国家犠牲の度合いとか、こういう一つの尺度を設けて恩給支給の期日々新しくきめ直して行くと、こういうふうなことではなかったんだと、こういうふうに承わっておったのでございますが、そういたしますると、これはいろいろの例はございますが、ねらっているところは、軍人恩給復活をそのまま認めて、それと文官との均衡を得ることに主力をおいたのだ、結論はこういうふうに了解してよろしうございますか。
  74. 高橋等

    衆議院議員高橋等君) この戦争犠牲者に対する処遇の問題は、たとえば遺児の育英とか、あるいは就職のあっせんとか、考えられる面はいろいろあることは、物的、心的に問題があることは申すまでもないのであります。ただ恩給法の建前で参りましたときは、この金額の点におきましては御指摘の通りでございます。ただ数多い戦争犠牲者の中で、こうしたものを、ここで恩給制度というものを復活いたす一つ理由は、やはりそこに戦争犠牲であったということを一つ理由になっておる。これを御了承おき願いたいと思うのであります。
  75. 加瀬完

    加瀬完君 これは、このたびの法案提案者に伺うべき筋合いのものではありませんので差し控えておったのでありますが、今のお話にも出ましたように、戦争犠牲によりまして恩給というものが停止されておった。それを復活させてやる、文官均衡いたしておるということが、犠牲者に対する一つ国家補償でもあるという、先般からの御説明でそういうふうに受け取れるわけでございます。しかし高橋さんにお伺いするのは筋違いでありますので、どうも質問を申し上げても、これは二十八年にきめた連中の考えだと言われれはそれっきりの話でありますけれども、そのほかに旧武官というものをここに一応……、旧武官というものはないわけです。日本人には武官というものはないわけです。ない武官というものを認めて一応の復権ということをやったわけです。ということは、文官に対して均衡を得させて、戦争犠牲者に対して国家補償の一部をかなえてやるということのほかに、私どもはどうも問題が残るように思われる。しかしこれはこのたびの提案者の御責任ではございませから、提案者からの御説明は求めません。政府委員の方に、この二十八年に旧武官恩給復活いたしますときに世論はいろいろのやはり批判をいたしたわけでございます。今私が質問をいたしましたような問題を、政府側といたしましてはどういうふうなお立場をおとりになって、どういうふうな御説明をその当時なすっておられたんでございますか。その点を一つ伺います。
  76. 三橋則雄

    政府委員(三橋則雄君) 今、加瀬委員から、軍人がなくなった今日において、旧軍人の方に恩給を給するということは筋が通らないことじゃないか、こういうような御発言があり、そして昭和二十八年法律第百五十五号が制定される際には、どういうふうに政府考えておったか、こういうふうな御質問のように承わったんでありますが、御承知のように、昭和二十七年に旧軍人及びその遺族方々恩給を給するかどうか、給するとすればどういうふうな方法によって給するかという問題を審議しまするために、御承知のように恩給法特例審議会というものが設けられたのでございますが、その特例審議会におきましても、今のようなお話もございましたが、その審議の結論といたしましては、答申案に書いてありますような結論になったわけでございます。私は軍人がなくなったから、当然軍人には恩給は給されない、こういうふうな前提に立って議論を進めるということも、あるいはできるかもわかりませんが、しかし旧軍人恩給が給せられる措置が講ぜられましたのは、法理論的にもいろいろとそのときに議論があったと思うのでありますが、御承知のように、それからたびたび先ほど来御説明がありましたように、旧軍人恩給及びその遺族の扶助料というものは、連合軍最高司令官の命令によって制定せられましたいわゆる昭和二十一年勅令第六十八号の規定によって廃止せられたのでございます。そこで勅令第六十八号が講和条約の発効とともに失効する。失効するその結果はどうなるのか、こういうことが当時問題になったわけでございます。失効しました結果は、御承知通り昭和二十一年の法律第三十一号の附則の第二条その他の条文がございまして、そういうような条文の関係からいたしまして、旧軍人には恩給関係につきましては、一つの潜在的な、既得権とは言えないにいたしましても、一つの潜在的な法律上の地位というものがあるのではなかろか。従って全然この潜在的な法律上の地位というものを無視することはできないのではなかろうか。こういうことが当時の法制局長官の御説明にもあったように私は記憶いたしておるのであります。そういうようなことも考慮いたしまして、旧軍人方々恩給を給するという措置が講ぜられたと承知いたしておるのでございます。ドイツにおきましての例を引きますことはいささか変な話でございますが、西ドイツにおきましては、御承知のように、軍備が廃止せられて軍人は全然いないのでございます。しかし日本よりも一足先に、旧軍人に対して恩給を給する措置が講ぜられましたことを考えますると、必ずしも軍人というものが廃止せられた、そのために必然の結果として、旧軍人には恩給を給することはできない、こういうことは言い切れないのではなかろうかと、その当時私ども考えておったわけでございます。
  77. 加瀬完

    加瀬完君 私が伺いたいと思います点は、恩給復活するということだけで限ってみましても、最も真実に戦争犠牲を受けた旧軍人恩給制度復活したというだけで、補償されるということにはならないと思う。ですから旧軍人も含めて、特に戦争犠牲を受けたところの一般国民が、国家補償とい立場から、何か社会保障というものを与えられるというのであるならば、これはうなづける。最も大きな戦争犠性をしたものであっても、先ほどから例に出しておりますように、下士官、兵のごときは最たる戦争犠牲者であるにもかかわらず、恩給によりまして補償される額というものは非常に少い。そうすると、これは旧軍人とか、戦争犠牲者補償するというふうなことは、これはただ表面の理由だけであって、従来の旧軍人恩給復活したということ以外の何ものもあとにないじゃないか、こういうふう思うのです。で、傾向として旧軍人恩給をそのまま復活したということなのか、そうじゃなくて、戦争犠牲者に対する補償復活するという大きな線で、旧軍人恩給というものを考えたということなのか、どっちですか。その当時あなたがお作りになったのではないから、はっきりあなたのお考えを述べていただけばそれでよろしい。
  78. 三橋則雄

    政府委員(三橋則雄君) 今私が御説明申し上げましたように、昭和二十一年勅令第六十八号によりまして、旧軍人及びその遺族方々恩給は廃止せられたのでございます。この昭和三十一年勅令第六十八号は、敗戦の結果として、御承知のように連合軍最高司令官からの指令に基いて制定されたものであります。そう考えて参りますると、私は旧軍人及びその遺族方々恩給が廃止せられたということは、戦争の結果であると思うのであります。そういう観点から考えますれば、旧軍人及びその遺族方々恩給がなくなったということも、一つ戦争犠牲だと私は思っております。それからもう一つ、今加瀬委員が仰せられました通りに、戦争に行ってそうして負傷し、戦争犠牲になり、あるいはまた戦傷病のためになくなった場合は、これも一つの大きな戦争犠牲であります。そういう戦争犠牲そのことを考えて、そうして国家補償的な、社会保障的な見地に立っての御議論は認められ得ることと思うのでございますが、この恩給制度におきましては、先ほど来大久保国務大臣からも御脱出がございましたように、あくまでも国家公務員を対象とした使用者と被使用君との関係であり、国家は使用者である立場においてものを考える、こういうようなことが前提になっておると思います。それからまたその補償の問題でございますが、これも私は恩給という一つ制度を立てる上におきましては、一つ前提かあると思うのです。御承知のごとく国家公務員法の第百八条にもございますように、恩給は退職時の条件によって給せられなければならないのです。法律にそういうように書いてあるように私は承知しておるのでございます。すなわち退職時の条件というものが、一つ補償のものさしに考えられているわけでございます。それならば国家公務員恩給考える場合におきましては、その補償のものさしというものは一体どういうふうなものであるのかということが問題になります。退職時の俸給とか在職年限とか、あるいは傷病の程度というものがものさしになってくるのじゃないかということが考えられるのであります。そういうことを前提といたしまして、技術的に考えられて作られているものが、制度としての恩給制度であるのでございまして、そういう前提に立って昔の軍人恩給制度というものは作られており、私たちもこんどの制度を作るとき、そのような考え方であったのでございます。
  79. 加瀬完

    加瀬完君 恩給制度を私は一つ伺っておらない、廃止せられた軍人恩給がそのまま復活したと見ていいのじゃないか。
  80. 三橋則雄

    政府委員(三橋則雄君) 先ほど加瀬委員の仰せられましたあの恩給法特例審議会答申案にも書いてありますごとくに、必ずしもすべて従来の、昔のままの軍人に関する恩給制度復活したとも言えないのでございまして、この答申案に書いてありまするごとくに、これに相当の変革を加えなければならないという前提のもとに変革を加えられているのでありまして、昭和二十八年法律第百五十元号一の中にその趣旨は表われているのでございます。
  81. 加瀬完

    加瀬完君 私の質問がはっきりしないかもしれませんが、もう一度申し上げますと、これは戦争犠牲に対する国家補償である、刈るいは社会保障制度としての救済策だ、こういうことの線よりは、むしろ既得権であった旧軍人恩給というものをここに復活してやるのだ、こういう立場の線の方が、二十八年の旧軍人恩給復活というものには大きく作用しているのじゃないか、こういう点なんです。
  82. 三橋則雄

    政府委員(三橋則雄君) 私はその点につきましては、どちらか一つにはっきり申し上げることはできかねるところでございまして、そういうような諸般の情勢が総合判断された結果、旧軍人及びその遺族方々に対して恩給を給する措置がとられたものと考えております。
  83. 加瀬完

    加瀬完君 総合判断されて、結局旧軍人恩給復活した、こういうことになりますね、なぜならば、あなた方は、これは戦争犠牲者に対する国家補償だ、それが証拠にはこういう国家補償の基準というものによって、こういう位づけがされておるじゃないか、あるいはまたこういう国家補償の措置によって旧軍人恩給そのままじゃない、こういうようにまるっきり違った改革がされておるじゃないかということについては何ら説明がないわけです。提案者の御説明によりましても、新しいものを若干加味したということなので、基本線というものは、既得権であったところの旧軍人恩給というものをもう一度復活さしてやった、こういう線以外の何ものもない、社会保障制度としてこれを取り上げたものでもなければ、あるいは戦争犠牲に対する国家補償の特別措置として取り上げたものでもなくて、軍人恩給復活という立場で取り上げた、こういうことになると思うのであります。これは大臣でもないあなたに問い詰めて参りましてもお気の毒でありますから、これでやめますけれども、大久保大臣に伺いますが、そうでしょう。結局いろいろなことを言っておるけれども、それはつけたしで、旧軍人恩給というものをここに大きな立場復活さしてやったのだ、二十八年の軍人恩給復活は……。それに修正を加えて、さらに文官との均衡その他の問題点の解決をしたのだ、こういうように今度の提案内容、あるいはこの旧軍人恩給というものを大臣は御解釈になっておられるのでしょう。
  84. 大久保留次郎

    国務大臣大久保留次郎君) まあ俗の言葉でいえばそう言っていいと思うのです。法律的にまだいろいろ理屈はつきますけれども、内容は異っております。法律の性格は違っておりますが、俗の言葉で申せばその通りだと思います。
  85. 加瀬完

    加瀬完君 だいぶわかってきました。大臣正面で非常によくわかりましたのですが、それでは軍人恩給というものは復活をいたしました。しかし旧軍人恩給そのものに、これは国家補償とい立場から考えれば非常にいろいろ問題があるだろうと思うのです。たとえば何度も繰り返して恐縮でありますが、応召された、義務づけられて召集された者と、本人で出た者と、階級が違うからといっても犠牲度というものはこれは逆なんです。ところが将官、佐官、尉官というものは、これは武官としては当然恩給対象は大きくなる。ところが何年おっても兵隊は恩給対象としてはなはだ低い。こういうことは旧軍人恩給の当時から当然問題にされておった。そこで今度の戦争で最も大きな犠牲を負ったのはこの応召兵、応召兵に対するところの戦争犠牲に対する国家補償というのは別にお考えになるのか、こういう点が一つ。それから戦争犠牲という立場考えるならば、旧職業軍人だけが最たる戦争犠牲者にはならない。たとえば軍人というワクを限って見ても、先ほども提案者の方から御説明もございました天涯孤独に悩んでおる戦争犠牲者というものはたくさんある。こういう方々に対しては、こういう戦争犠牲者に対しては別途政府は対策を考えるのか、この三点。
  86. 大久保留次郎

    国務大臣大久保留次郎君) 今別途考えるかというお話でありますが、しかしこれはさっきからしばしば繰り返した通り、公務関係においての給与だけの議論でありまして、それら以外には、さっき申しました通り、援護会関係、さらに広くなりました関係におきましては、厚生省において立案されることと思いますので、私の仕事の範囲外とこう考えております。なお一言申しそえておきまするが、この今回の改正案をやりますにつきまして、ほんとうを言えば、改正の額をきめるにつきましては仮定俸給という厄介なものがあります。これはしばしば話に出ますが、これがほんとうに正しいかどうか私はまだわからないのです。ほんとうを言えば……。これまであずかっておる、あずかっておるからこれはまあ大体正しいものと見て、これを基礎として実は今日の改正の案ができておるのでありますから、これを根本的に研究し直すということは、これはなかなか容易なものではないと思う。けれども先ほどおっしゃった通り、識者が集まって審議会を作って、審議会において審査したのであるからして、まず間違いない、こういう信念のもとに進んでおるような次第であります。これは私は触れませんです。この点だけは一つお含みおきを願いたいと思います。
  87. 加瀬完

    加瀬完君 軍人恩給復活であるという点はよくわかったわけでありますが、一体この軍人恩給復活し、それを修正をしたということだけでは、さっき言ったように残る問題がある。これは軍人恩給復活をし、修正をすればもう戦争犠牲に対する国家補償はもうこれで完全なんだ、あと何も問題は残らないんだ、こういう御答弁ではまさかないと思う。そこでさっき私が指摘いたしましたように、これでは漏れ落ちになるところの戦争犠牲者というものがまだある。旧軍人というものを限っても、旧軍人軍属の遺家族あるいは旧軍人軍属そのものでも、これではまだ救済されない幾つかのものがあるであろう、こういうものに対してあわせてその社会保障か何かの制度で進んで行かれる御配慮があるのかどうか、この点だけ……。
  88. 大久保留次郎

    国務大臣大久保留次郎君) それはさっきからしばしば繰り返して申します通りに、今日のこの恩給給与で満足しているとは思っていないのです。しかし現在の状況から見てまことにやむを得ないと思っておる。それから戦争犠牲者と言いますけれども犠牲者は非常にこれは多いのです。さっきだれかから出ましたが、沖繩の学生が戦争に参加した、あるいは満州の開拓の青年が戦争に参加して犠牲君になったというように非常に広いのです。あるいは内地におきましても、学生が動員をされて警備に当ったというようなことをやれば、これまで拡張すれば限りがないのであります。しかし私どもの今日の恩給法を一改正するという趣旨は、さっき来申し上げました通り、ごく狭い範囲においての改正でありまして、これ以上の広くなりました点は、さっき申しました通り、これは厚生省において私どもと連絡をとりまして解決をしなければならぬ点だと、こう考えております。
  89. 加瀬完

    加瀬完君 くどいようでありますが、あわせて解決を急がれるというお考えなのか、それとも徐々に研究してということなのか。私がこういうふうにはなはだ失礼な言葉でお伺いをいたしますのは、戦争犠牲国家補償とか、あるいは戦争犠牲者の救済というのがあるならば、一部分旧軍人恩給が修正されたというだけでは、全然まだ多くの部面というものが、こういうものの犠牲者が残っておる。だからこの多く残されたる部面の救済というものを政府があわせて考えるのでなければ、一部修正に政府が同意されたといたしましても、政府のほんとうの、今、大久保大臣のおっしゃられたような意思というものは通じない。そこでこの修正に政府が積極的に応じられるというならば、あわせて私が先ほどから申し上げておるようなことをも積極的にお考えなさるということでなければ、これは先ほどからの大臣のお言葉とは、この修正というものと政府の同意というものは矛盾をするものと、こう思いますので伺っておるわけであります。積極的に旧軍人恩給の一部修正あるいは旧軍人恩給復活いたしましたと同様の熱意をもちまして、残されたる問題の解決をなさるお考えだと了承してよろしうございますか。
  90. 大久保留次郎

    国務大臣大久保留次郎君) 先ほど申し上げました通り一般社会保障の程度、つまり広い意味戦争犠牲者の救済、そこへ行きますると所管が違います。私からどうこう申すのは少し僭越過ぎるのじゃないかと思いますが、その熱意だけは持っておりますから、しかるべく措置いたします。
  91. 加瀬完

    加瀬完君 その御熱意にすがって、われわれはもう一度お願いをしたいと思うのでありますが、旧軍人軍属というワクの中におきましても、この恩給の一部修正を受けましても、下士官、兵というものは私は公平にいって戦争犠牲補償がされたと考えられない、非常にまだ不満足だ、こういう点の解決をどう考えるのか、これが一点。それから旧軍人軍属の家族であったがために現在経済上非常に窮迫、困窮を続けておるという家庭も相当ある、こういうものに対する救済というものは、現状のいろいろの方法をもってしてははなはだどうも当を得ているとは思われない、こういう欠陥がたくさんある、この点をどうお考えになられるか、この二つの点です。
  92. 大久保留次郎

    国務大臣大久保留次郎君) この点もさっき来しばしば申し上げましたのでありますが、決して私どもは現状をもって十分に補償できたということは断言いたしません。まことに不十分であると思っておりますけれども、各方面の点から考えましてまことにやむを得ない、こういう点であります。もし世の中がもう少し進み、思想が変りまして、広い意味社会保障制度が進んできたならば、進むことができましたならば、より一そう完全な補償制度があるいはできるのじゃないか、こういう感じだけは持っております。
  93. 加瀬完

    加瀬完君 これは非常に重要な御発言と承わったのでありますが、やむを得ないという言葉は、現在以上遺家族その他に対しての処遇を向上させることは政府はやる考えがない。あるいは下士官、兵に対する恩給そのものにいたしましても、あるいは恩給以外の方法にいたしましても、これも改善をする意思は今のところない。世の中があらたまりでもすれば考えは別だと、こういうふうにおっしゃったのでございますが、それでいいのですか。
  94. 大久保留次郎

    国務大臣大久保留次郎君) 意思がないというのじゃないのです。財政上その他の点からまことにやむを得ない、こういう意味です。
  95. 加瀬完

    加瀬完君 まあいろいろ形容詞を取り去りますと、結局やれない、もっと悪くいえばやらない、こういうふうに考えてよろしいのですね。
  96. 大久保留次郎

    国務大臣大久保留次郎君) やらないとは申しません。まあやむを得ないと、こう申し上げました。
  97. 加瀬完

    加瀬完君 やむを得ないということは、結局ここ近い期間においてはやれない、こういうふうに了解してよろしうございますか。
  98. 大久保留次郎

    国務大臣大久保留次郎君) 言葉の相違でありますが、まことにやむを得ないと思っております。
  99. 加瀬完

    加瀬完君 やる意思はないと……。
  100. 大久保留次郎

    国務大臣大久保留次郎君) 意思がないわけではないが、まことにやむを得ない、こういう解釈をしております。
  101. 加瀬完

    加瀬完君 意思があるなしにかかわらず、当然やらなければならない問題なんであります。こういう問題は簡単に、まことにやむを得ないとか、意思はありましても今やれないとかいう御答弁で出せる問題じゃないと思うのです、性質からいって……。そういたしますと、結局戦争犠牲とか、あるいは戦争犠牲者に対する救済とか、こういうことよりも、政府考えておるのは、ただもう旧軍人軍属に対する恩給復活を少しでもいい条件で引き上げてやろう、目的はここだけにあるというふうにわれわれは考えざるを得ない、どうなんです。
  102. 大久保留次郎

    国務大臣大久保留次郎君) これは何べん繰り返しましても、まことにやむを得ないだけです。決してその意思がないとは申しません。
  103. 加瀬完

    加瀬完君 どうもはなはだ失礼な申し分でありますが、戦争犠牲に対する国家補償ということであれば、広範な立場からお考えをいただかなければならないし、またそうすべきであることを社会保障制度審議会から意見書として提出されておって、十分それをそしゃくしておるにもかかわらず、相変らず旧軍人恩給復活改正一本やりで進んでおりますのは、どういう目的でございますか、何を目的として政府はそれにのみ非常な御熱意を格別におかけになっておるのでございますか。
  104. 大久保留次郎

    国務大臣大久保留次郎君) これは先ほどもたびたび申しました通り、この委員会は恩給法改正が中心、従って恩給についての話が中心になりましたのでありますが、社会保障制度審議会答申は、これは尊重しなければならんし、いずれの機会においては、その権利というものは実現される機会が来るかと存じますけれども、所管から考えまして、他人の閣僚の受け持ちのことについて私があまり出過ぎた発言をするのはいかがかと存じまして、先ほどから控えておる、気分だけ私申し上げておるつもりでおります。どうか御了解願いたいと思うのです。
  105. 加瀬完

    加瀬完君 これは重要な問題でありますから、国務大臣は担当でないから答えられないというのであれば、担当の大臣に御出席いただいてから、私はさらにもう少し質問をいたしたいと思いますから、一応大久保大臣及び提案者に対する質問はこれでとどめまして、他の問題は留保いたします。
  106. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  107. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 速記を始めて。
  108. 田畑金光

    ○田畑金光君 私まず第一にお尋ねしたいことは、非常に恩給法というのは私自身不勉強で、実はゆうべ恩給法関係法令集というのを読んでみたのです。しかしこれを読んでみてもなかなか非常に広範であるし、複雑であって読み通せないわけであります。こう重要な法律がこのように乱雑な形と申しますか、次から次に附則法律で重ねて行きますと、いよいよもって恩給というものが一体何であるかということの核心をつかむことがむずかしいのじゃないかと、こう私は考えるわけであります。担当大臣であるただいま大久保国務大臣のお話を伺っておりますると、仮定俸給年額について大久保大臣も御自信がなさそうであります。まあとにかくそういうことでやって来たから、およそ間違いはないであろうという信念でおやりになっておる。まことに私はごもっともだと思っております。こうなって参りますると、この恩給法というものを承知しておるのは、おそらく三橋恩給局長、あるいはその周囲の人くらいのものであるかもしれません。提案者高橋衆議院議員ももちろん御承知であると私は敬意を表しておるのでありますが、こういう私は恩給法のあり方でありますが、まず恩給法の内容を見ておりますると、たとえばだんだん読んで参りますると、第一条から逐条別に見ておりますると、大部分がその中で削除されておる、こういうことであります。そうしてそのあと昭和八年の法律第五十号の附則からだんだんと積み重ねて行って、昭和二十八年法律第百五十五号のいわゆる旧軍人恩給復活にまたがっておるわけであります。迷宮に入ったような感じを持たざるを得ません。そこでまず第一に私お尋ねしたいことは、大久保国務大臣、あなたもお困りだと思いますが、全部に理解のできるように恩給関係の法令をまず整備することが大事な点じゃないかと思いまするが、この点どうお考えになっておられるか、これを伺っておきたいと思います。
  109. 大久保留次郎

    国務大臣大久保留次郎君) 恩給法の問題につきましては、人事院からの勧告が参っております。従ってこの問題については、共済組合の制度とともにいかに扱ったらよろしいかということが、ちょうど今公務員制度の調査会の研究題目になっております。で、この結論がすでに出かかっておりますので、こういう結論を持ちまして、将来何とか善処せねばならぬ問題であると考えております。
  110. 田畑金光

    ○田畑金光君 大臣はいつも公務員制度調査会の審議に万事依存されておられるような御答弁を承わるわけであります。恩給法関係法令の整備についても公務員制度調査会にその研究を一任してやるというような御答弁でありまするが、そのように承わってよろしいのかどうか。さうにそうだといたしますならば、公務員制度調査会において恩給関係法令に関する研究がどの程度進んでおるのか。従いまして、またその研究の成果は来たるべき国会等に提案されるものと私は考えまするが、そのような近い国会に提案される御意思があるのかどうか、この点を三橋恩給局長から伺っておきたいと思います。
  111. 三橋則雄

    政府委員(三橋則雄君) 恩給法令の整備の問題でございまするが、その問題につきましては、恩給法改正をしまするたびに私たちその立案に当る者といたしましては、常に一般の人にわかりやすいような、法律改正をしたい、こういうことを心がけてきたのでございます。この点は単に私ばかりでなくて法制局の責任者当局もしかりでございまするが、法律の改定につきましては一つの型ができておるのでございまして、その型からいたしまして、現在のところこういうふうな結果になっておるのでございます。これについては私は現在の、現行恩給法令のこのやり方につきましては、現在のところはやむを得ないことじゃないかと思っておるのであります。それから公務員制度調査会におきまして恩給法令の整備云々の問題でございまするが、今、大久保大臣のお話のありましたのはどういうことか私もちょっと判じかねる点もないではございませんが、おそらく新しい退職年金制度というものができる、こういうことになりますれば、現在の退職給与制度でありまする恩給制度に関する法令は、過去のものとしてきれいさっぱりとしたものにされてしまうであろう、こういう前提のもとのお話ではないかと思うのでございます。それから次に、公務員制度調査会においていろいろと審議が進んでおるとするならば、新しい退職年金制度はいつごろ国会に出すつもりか、こういうふうな点についての私に対してのお尋ねでございまするが、これについては私は全然その点につきまして責任の衝にあるわけではございませんので、私からは答弁は申し上げかねるのでございます。
  112. 田畑金光

    ○田畑金光君 三橋恩給局長の御答弁で大体わかりましたが、あらためて大久保国務大臣にお尋ねいたしますが、あなたの先ほどのお話しによると、公務員制度調査会恩給関係法令の整備を研究しておるというような御答弁でありましたが、それは私事実と反するんじゃないかと、こうみておるわけであります。今の三橋恩給局長の御答弁を承わりましても、要するに昭和二十八年十一月十七日、人事院から国会、内閣に対しまして国家公務員の新恩給制度に関する勧告がなされております。すなわち国家公務員退職年金制度に関する勧告であります。この問題と大臣は取り迷えて御答弁なさったように私は見受けるわけであります。この辺の追及はいたしませんが、お話によりますると、公務員制度調査会等で、人事院の今申し上げましたような国家公務員退職年金制度に関する検討に関しまして、政府にしかるべき助言、答申がなされたような場合には、政府といたしまして、従来の恩給制度一般に関し新しい角度から検討される用意がおありであるかどうか、この点を承わっておきます。
  113. 大久保留次郎

    国務大臣大久保留次郎君) 年金制度恩給制度、人事院は年金制度という文字を使っておりますが、これについてはさっき申し上げました通り公務員制度調査会の小委員会にかけて論議しております。この間も参議院一でちょっとお話ししたことと思いますが、公務員制度調査会は総会と小委員会と二つからなっております。総会においては根本の論議をいたし、小委員会においてさらに繰り返してその議論検討しております。両方の論議ば大体尽きましたので、これを今整理中であります。日ならずしてその大問題についての基本の方針だけはきまることと存ずるのであります。その中に恩給制度の問題も入っております。ですからまだその結果ははっきり申し上げる時期に至っておりませんけれども恩給制度、すなわち年金制度をいかに扱うかという大きな方針だけは、不日私はきまることと考えております。
  114. 田畑金光

    ○田畑金光君 大臣国家公務員制度調査会の総会や小委員会の御報告は、本会議においても、この委員会においてもたびたび承わっておりますので、その点はもう十分に承知をいたしておるわけであります。ただ私のお尋ね申し上げておることは、公務員制度調査会から人事院が先般勧告いたしましたような国務公務員年金制度等の構想をもって答申がなされた場合には、どういう構想のもとに恩給制度を、これは相当質的にも変って行くのではないかと私は考えておりますが、そういう答申を尊重される御意思があるかどうかということであります。さらにもう一つ私はお尋ねいたしたいことは、国家公務員法の第百八条の第三項によりますと、「恩給制度は、健全な保険数理を基礎として計画され、人事院によって運用されるものでなければならない。」、第四項に、「人事院は、なるべく速かに、恩給制度に関して研究を行いその成果を国会及び内閣に提出しなければならない。」、こういう工合に載っておるわけであります。そういたしますと、私は公務員制度調査会の研究を待ち、その答申を尊重するのが政府のとるべき態度であるのか。それと本人事院というものは、今読み上げましたように国家公務員恩給制度に関しまして平素から研究し、これに対する一つの対案をもって政府に勧告するわけでありまして、人事院というものは、本来が、国家公務員制度の各種の給与や、あるいは労働条件その他一般に関する問題を中心としてこの機関が存在するわけであります。そういうことを考えましたときに、人事院の勧告を尊重することが国家公務員制度調査会のそれよりも優先しなければならぬと私は考えるわけであります。にもかかわらず、人事院からすでに答申がなされたにかかわらず、今度は公務員制度調査会が同様な件を今研究しておるから、その答申を待って善処をするということは、少し私は順序が違やせんかと、こう考えております。この点人事院という制度の問題と、国家公務員制度調査会のこの機関の関係について、どうこれを評価されておられるのか、この点も合わせて大臣から承わっておきたいと思います。
  115. 大久保留次郎

    国務大臣大久保留次郎君) 人事院の勧告は、法律的に見まして政府の外に立って公務員の利益を代表しての発言権を持っておるのであります。従って政府としては、これは法律的に見て当然その勧告については尊重せねばならぬ義務があると思っております。公務員制度調査会政府が設けました政府諮問機関であります。これはほんとうをいえば設けなくてもいいのです。政府考えでやってもいいのでありますけれども、やはり衆知を集めてなるべくよい方向に進んだがいいという考えのもとに、政府が参考意見を聞きたいというので作った機関であります。実をいえば、おそらくこの人事院の勧告が元になって公務員制度調査会というものも一つできておるのじゃないかと、こう考える。そこで問題になるのは、人事院の勧告をそのままやったらいいじゃないかという議論でありますけれども公務員制度の問題は決して年金制度ばかりじゃありません。もう一つ人事院から勧告を受けておりまするのは地域給の制度があります。そういうような工合にいろいろな問題が複雑化してきております。ことに公務員制度につきましては、給与の面についてばかり考えても、手当の数だけでも十ある、十もたくさんある手当を一々計算して、一々支給するよりも、できるだけもう少し簡素化して給与する方法はないものだろうかという考えも持つような次第であります。ただ単に、一つ二つの地域給制度や、あるいは年金制度というものを一つ切り離してやるよりも、公務員制度全体から考えて、任用から、懲罰から、労働権から全部の問題を解決したらいいのじゃないかという考えのもとにやっておるのであります。その中に、今申しましたように人事院の勧告もむろん入っておる。これは人事院をうとんじたのじゃない。むしろ人事院を尊重したために、せっかくこの中に入れて調査しておる次第であります。
  116. 田畑金光

    ○田畑金光君 御答弁を承わりますると、ごもっともらしい点もないでもありませんが、これは要するに公務員制度に関する諸般の問題に関しまして、政府の責任を回避する隠れみのような感じを禁ずることができぬわけであります。お話のように、公務員制度に関するスタッフをそろえて諸般の問題を調査し、研究してもらっておるというわけでありますが、人事院というものを莫大な国家の予算を使用し、しかもあれだけのスタッフを持って、本来の目的が今お話しのように国家公務員制度の万般に関する問題を取り上げているはずであります。なるほど政府機関に独立しておる存在であるかもしらんが、公務員のいわゆる団結権等に対する制限の代償として人事院制度が置かれておる、こういうことを考えました場合に、人事院の勧告なり、あるいは報告なり、助言なりを受けることが国家公務員制度の完全な推進の上においても私は最も大事な点だと、こう考えておるわけであります。こういうような点については幾ら論議をいたしましてもコンニャク問答に終る傾向もありますので、私はこれ以上追及はいたしませんが、大久保国務大臣に特に一つ考えていただきたいことは、公務員制度の問題というと、すぐ公務員制度調査会と口癖のようにおっしゃっておられますが、まことにこれは迷惑な話であります。その前に一つ人事院制度というもの等もよく研究なさって、権威ある勧告や報告等については十分尊重する気持を持っていただきたいと思っております。そこで当初に戻りますが、私はこの恩給法関係の法令集でありますが、御承知のように、本年度の予算を見ましても、旧軍人遺族等の恩給費というものが六百六十九億三千六百三十五万円に上っております。文官恩給費か百六十三億六千四百九十七万八千円に上っております。軍人恩給というものは昭和二十八年、二十九年、三十年度と逐年莫大な増大を示しておるわけであります。しかもこの根拠法規が、先ほども申し上げましたように、恩給法関係法令集の附則という形で取り上げられておる、このことであります。私はやはり軍人遺族等の恩給制度というものが、こういうふうに不動の制度になり、しかも国費の八%を恩給費が占めるようにななった今日においては、法令等についても十分検討する余地があると考えておりますが、この点に関しまして提案者高橋衆議院議員の御見解を承わるとともに、あわせて大久保国務大臣の御見解も承わっておきたいと思います。
  117. 高橋等

    衆議院議員高橋等君) 私から法令の整理のことを申し上げるのもどうかと思いまするが、私個人の考えといたしましては全く御指摘の点は同感でございます。この恩給法ぐらい読めない法律は珍しいのじゃないか、継ぎ足し、継ぎ足しで消したり足したり、まあ着物にたとえてみれば、もうぼろぼろの着物を継ぎ足して、どこが何やらさっぱりわからないと言うていいと思います。実際わかっておるのは恩給局長ほか数人の方でございましょう。私も実はよくわからないで困っております。ですから私もでき得れば平素から、何かの機会にできるだけ早く一つ国民にわかりいいようなものに整理をお願いしなければならぬと考えております。
  118. 大久保留次郎

    国務大臣大久保留次郎君) 今高橋君の御意見に同感であります。
  119. 田畑金光

    ○田畑金光君 一つこれは大久保国務大臣に特に私は希望として申し上げておきますが、高橋衆議院議員のお話もありましたように、難解でもあるし、まことにこれは読みにくいのであります。こういうことでは恩給制度というもの、あるいは恩給法の批判というものが正しく当を得ることが至難であると考えます。この点はできるだけ早い機会根本的な検討を進めていただきたいと思っております。この点に関しましては、いろいろ恩給制度その他の問題について後ほど私は私の考え方を申し上げるわけでございますけれども、現実恩給法というものが存在し、恩給制度というものがある以上は、国民にもう少し理解のできるようにしてやってもらわぬと困るわけであります。この点は十分一つ御留意して、政府においても御努力願いたい、かように希望を申し上げておくわけであります。  次に、私は少しく数字にわたりまするが、恩給局からの資料を拝見いたしましたところが、現在の恩給の調査状況というものが、都道府県における調査の状況と、それからまた援護局関係における調査の状況、それぞれの資料があるわけであります。そこで本年度の六百七十億に上る予算の、いわゆる各種目ごとの恩給該当の人員をそれぞれ総計いたしますならば、これは二百十一万九千五百名に上っておるわけであります。この予算に計上された人員というものと、今私の指摘いたしましたような都道府県における調査の段階、あるいは援護局における調査の段階、さらにまた恩給局自体においてもまた不明な人員等も相当にあるように聞いておりますが、予算の人員と、これらの関係とはどういうふうになっておるのか、この点を第一に承わりたいと思います。同時に今後調査によってさらにこの人員はふえるのか、ふえないのか、もちろん公務扶助料とか、あるいは普通扶助料とか、いろいろ内容によって人員の異動は出てきましょうが、総体的に申しまして、さらにこれは人員がふえて行くのか、あるいはこの限度であるのか、その辺について一つ資料に基いて御説明をわずらわしたいと思います。
  120. 三橋則雄

    政府委員(三橋則雄君) 田畑委員のところにお配りいたしましたところの資料は、三月の末の資料でございますでしょうか。
  121. 田畑金光

    ○田畑金光君 これは恩給局から、たとえば擁護局における旧軍人恩給調査中の状況は五月二十八日現在ですね。それから都通府県における調査の状況は四月の十日、陸軍関係は四月の十日、海軍関係は三月の三十一日、こういうような資料ですがね。
  122. 三橋則雄

    政府委員(三橋則雄君) 田畑委員のところにお配りしてある今申されておりました資料は、先般衆議院の委員会におきまして審議が始まります前にお配りいたしました資料であると思うのであります。今度の予算の推計を立てましたときの最後のものは、三月の末に調査いたしましたところの数でございます。それからまた恩給局におきまして、将来たとえば増加恩給のような傷病恩給でございますというと、御承知のように有期の裁定を受けておるものがございます。この有期の裁定を受けておるものにつきましては、その期限がきますというと、一応再審査をし、給否を決定することになります。そういうことでありますので、その当時の裁定を……、三月三十一日の裁定件数として上っておる数を若干補正しなければいかぬ点がございまするが、大まかに申しますと、三月三十一日における恩給局で調べましたところの資料を前提といたしまして、予算の算定の基礎といたしております。それから今後将来の見込入といたしまして、件数はふえることになるのか、あるいは少くなるかという将来の見込みについてのお話でございますが、今の田畑委員の仰せられた、田畑委員のお手元にあります統計の資料から見まするというと、公務扶助料の件数のところは予算の件数に比べて非常に窮屈になっているように承知いたしております。この公務扶助料の件数につきましては、実は今度の予算を組みますときにおきましても、非常に注意をいたしたところでございまするが、大体におきまして、最近におきまして書類が入ってくるのが少くなって参っておりますことからいたしまして、かりに変動があるといたしましても、そう大きな変動はないのではなかろりかという見込みをつけております。それが一つであります。それから個別的に、あるいは今申しますように、公務扶助料の件数だけで、あるいはたとえば普通恩給なら普通恩給だけと、こう限定して考えました場合には、あるいはその予算の件数と言いますか、その推定いたします数というものはかなり狂ってくる、違ってくる場合が想像されますけれども、総体の件数として考えました場合におきましては、あるいはそう大きな狂いはないのじゃなかろうか、こういうように想像いたしておるところであります。そういうようなことからいたしまして、この私たちの今の考えといたしまして、予定をいたしておりまする件数で予算を作成いたしまして大体大きな狂いはない、こういうふうに思っておるわけでございます。それならどのくらいの件数を予算で見ておるかということでございますが、これにつきましては、いろいろこの委員会でも申し上げたかと思っておりますが……。
  123. 田畑金光

    ○田畑金光君 わかっております。
  124. 三橋則雄

    政府委員(三橋則雄君) おわかりでございましたら省略いたします。
  125. 田畑金光

    ○田畑金光君 大体お話によりまして、人員に三月末現在の人員でもって総体としては大きな狂いはなかろうという御説明であるわけです。そういうような見通しでありますならばけっこうでありますが、先ほど私が読み上げました都道府県における調査中の案件といりものと、擁護局における旧軍人恩給調査中の状況というこのことは、今の予算の人員と関係があるのかどうか、この点を伺っておきたいと思います。
  126. 三橋則雄

    政府委員(三橋則雄君) 三月の末に調査をいたしました際におきましても、擁護局に手持ちになっておりまする件数と、都道府県に受け付けております件数を総合判断いたしまして、予算の予定件数を立てたのでございます。都道府県やあるいは援護局にあります書類の中には、恩給局から返した書類もかなりあると思っております。それからまた、これは大した数ではないのでございますけれども、地方の手持ちになっておる件数の中におきましては、引揚援護局に参りましてから、恩給局の方で処理すべきものとして恩給局にくるものがだいぶあると思いますけれども、中には援護局の方において処理すべきものも若干あるのでございます。そういうようなことを考えたりしました場合におきまして、都道府県におきまして受け付けました件数を、全部本年内において処理されるべき請求の書類として考えるべきものかどうかにつきましては、若干の考慮を払わなければならぬのじゃないかと思っております。繰り返して申し上げますが、二月末におきまして都道府県におきまして受け付けておった書類と、それから引揚援護局におきまして保留しておった書類、こういうようなものも全部ひっくるめまして予定を立てたところでございます。
  127. 田畑金光

    ○田畑金光君 それじゃ念のために承わっておきますが、昭和二十八年には旧軍人恩給には四百五十億の予算であったわけです。昭和二十九年が六百三十八億千八百七十万に上っておるわけですが、おそらく昭和二十八年の前後は、旧軍人恩給制度復活しました直後でもありましたので、相当調査においても遺漏なきにしもあらずと推測されるわけであります。従いまして、予算に計上された人員と、その予算の実施の状況等には相当な違いも出て来るのも、これは当然かと思うわけでありますが、昭和二十八年度の予算運用の実績と、昭和二十九年度の予算運用の実績とについて御説明を願っておきたいと思います。
  128. 三橋則雄

    政府委員(三橋則雄君) お尋ねの件でございますが、大体におきまして予定をいたしました金額を上回るようなことは、各恩給を通じて全般的にはなかったわけでございますが、ただ一つだけ注意すべきことがございます。それは公務扶助料の金額、件数の問題でございます。公務扶助料につきましては、昭和二十八年におきまして一応考えましたところの伴数といたしましては百五十万四千という数でございます。それから若干昭和二十九年度におきましては失権があるということを考えまして、百四十六万三千という件数を予算に組んだのでございます。ところで昨年の夏の終りごろから秋にかけまして、将来の見通しといたしまして、この予算の予定の人員は少し窮屈じゃないかという感じがいたして参りました。そこでその後いろいろと検討いたし、また財政当局ともいろいろ打ち合せをいたして参ったのでございました。そうして昨年の暮の予算の編成のときには、若干昭和二十八年度、二十九年度と考えてきました場合にも二十九年度は百四十六万三千になるのでございますから、理屈から申しますと、三十年度はこれよりも若干減ってもいいわけでありますが、それを減すことはどうかと思われまして、昭和二十九年度の百四十六万三千以下にする、ことは見込み違いを生ずる危険があると、こういうふうに考えられておった次第でございます。そうして今年になりましてからも、いろいろと現実の裁定数等について検討をいたしてきたのでありますが、その結果といたしまして、結局四万六千くらいをふやすことが必要ではなかろうか、こういうことを三月の終り決定をいたしたのでございます。この四万六千という数は昭和二十八年度の当初に百五十万四千という数を予定いたしており、またその百五十万四千に積み重ねるべき数である、こういうふうに考えました。そこで昭和二十八年度におきましては百五十万四千という数を予定いたしておりましたが、それに国方六千を積み重ねまして、昭和二十八年度におきましては百五十五万と、こういうのが最低の受給件数と、こういうふうに考えて修正したのでございます。それから昭和二十九年度におきましては、今申し上げましたように、百四十六万三千という数を予算では予定いたしておったのでございますが、それに四万六千を加えまして百五十万九千という数に、昭和二十九年度の件数を修正をいたしました。それから三十年度におきましては、百四十六万八千ということになっておるのは、二十八年度、二十九年度に自然増のありましたのと同じようなふうに、すなわち昭和二十八年度当初に予定した数等から考えますと、百四十二万二千という数になるわけでありますが、それに今の四万六千という数を加えまして百四十六万八千という数を三十年度には予定することにいたしたのでございます。この修正は大きな修正でございまして、これに要しまする金額といたしましては、四十一億四千万円ほどの経費を要するものとして予算に組むことといたしたのでございます。最初の予定件数より非常な狂いを生じたものと言いますと、見込み違いをいたしました大きなものは公務扶助料の件数の点でございます。
  129. 田畑金光

    ○田畑金光君 次に私は提案者に伺いたいと思いますが、それは先ほど、また前回それぞれの同僚委員から質問になりましたので、重複を避けまするが、今回の提案理由によりますると、旧軍人及び旧準軍人恩給金額の計算の基礎となる仮定俸給年額がいわゆる一万円ベースになっており、かつ一般公務員恩給金額計算の基礎俸給の号俸に比較して四号俸程度低くなっている。また一般公務員との均衡を考慮し、上に薄く下に厚くの趣旨を加味して調整し、これをいわゆる一万二千円ベースに引き上げ、さらに四号俸ないし二号俸高くすることにした、こういう提案趣旨説明でありますが、問題になってきますることは、要するに一万二千円ベースに今回文官との比較考慮の上に立って引き上げられた、仮定俸給の年額が引き上げられたと、こういうことになったわけであります。文官においては二十八年の十二月以前に退職したのが一万二千円ベースになったわけでございまして、ところが、昭和二十九年の一月以降退職した文官は一万五千円のベースで恩給が支給されておると、こういうことになっておるわけであります。それでこういうことになって参りますると、文官との均衡という点を重点において考えて参りますならば、だんだんまた一万五千円ベースと、こういうようなことも論議に上ってくるとみなければならぬと思っております。そこまで行くには先ほど来の加算の問題、あるいはさらにこまかく通算の問題等についても一万二千円ベースの上に立って論議し、検討すべき余地も残されておりまするから、そこまで行くには時間もあるかもしれません。しかし構想として、考え方といたしまして提案者ないし現政府は、この旧軍人遺家族恩給に関しまして、さらにベースを引き上げるというような構想をお持ちであるのか、それともこの恩給制度については国家財政国民公平の原則のもとに、この辺で一応の限界を引こうとするお考えであるのかどうか、この点に関しまして伺っておきたいと思っております。
  130. 高橋等

    衆議院議員高橋等君) まことに適切な御質問でございます。これは将来に問題を残しておる点でございます。これは文官相互間にも同じことがもちろん言えるわけです。ただ私の現在の気持を申し上げてみますると、この恩給の予算に占める程度というものにつきましても、相当国民の負担とか、いろいろな問題を考え合せますときに、これは相当慎重に考慮をなさねばならない問題があると私は考えております。そういうようなことからいって、これは財政上の点に非常な制約を受けるということが第一点であります。それからいま一つの点は、先ほども質問に対してお答えいたしておいたのでございますが、この戦争犠牲者遺家族の中には、なお現在の給与でなしに、いま少し特殊の生活保障と言いますか、というものをはかる必要のある入が、これからだんだんと出て参ると考えておるのです。そこで国家財政とにらみ合せまして、いずれを先にすべきかというようないろいろな問題がありますので、現在私は一万五千円ベースに至急にこれを上げるという二とをここではっきり申し上げるだけの決意もついておらない、まず、とりあえず一万二千円ベースのところまで持って行きたい、こういうつもりでおります。
  131. 田畑金光

    ○田畑金光君 大臣見解を……。
  132. 大久保留次郎

    国務大臣大久保留次郎君) 今回の恩給法改正により一段落ついたと申しますか、ひとまずある程度のでこぼこは直されたんでありますが、今回の恩給改正案の通過に伴って、衆議院において決議があります。この付帯決議は、二十三年六月三十一日以前においては給与が違っておるからして、これを至急に調査して善処しろと、これは政党政派を超越した各派の一致した提案であります。これはぜひ私どもはこの決議に従って早く調査をし、早く結論を得て何とか最終の方法考えなければならぬと、こう考えております。これがまずまっ先の仕事であります。それからあと問題はいろいろありますけれども、これはあと回しにして、この付帯決議の趣旨だけを早く調査したい、こういう気持を持っております。
  133. 田畑金光

    ○田畑金光君 大臣の御答弁の中で、衆議院における各派の文官恩給是正に関する共同決議案でありますか、この点を尊重されて、近い将来に善処をなさるということは、これば当然のことであり、私も賛成するものであります。私のお尋ねしておりますことは、すでに本年度の旧軍人遺家族恩給が約六百七十億に上っております。それが民・自案の修正によりますると、平年度に百六十億の総額になるわけです。民・自案の本年度の総額が二十四億六千万でありまするから、この平年度の増額を見ました場合に、いずれ昭和三十二年度ごろには、旧軍人遺族恩給だけで八百億を超えるということに計数上なって参ってくるわけであります。この点は、また一方においては減るということもありましょうが、こういうようにだん、だんとふえて参ってきますと、当然先ほどの高橋衆議院議員のお話のように、国家財政の制約という問題、それから国民負担の能力一国民各層の公平の原則という問題か浮び上ってきょうとしておるわけであります。そういう情勢の中で、私はかりに一万五千円ベースというものをとった場合にどうなるかということを試みに私はお尋ねしたわけであります。もし恩給局の方でそのような数字があるならば、一体どの程度になるのか、その数字を私は承わっておきたいと思っております。
  134. 三橋則雄

    政府委員(三橋則雄君) ただいま一万五千円ベースに恩給引き上げた場合において、軍人恩給は一体どれくらいになるであろうかという御質問であったと思いますが、大体一応計算いたしましたところでは、平年度におきまして、現在のこの法案による金額のほかに、九十三億前後軍人恩給としてふえると思われます。それから今、田畑委員の仰せられました昭和三十二年度におきまして、軍人恩給が一体幾らになるというお話でございましたか、昨日でございましたか、高橋委員から御説明を申し上げておりましたように、八百億という言葉がございましたのは、昭和三十一年度におきまする文官恩給軍人恩給とを合計いたしました場合におきまして八百八十三億になります。このことであります。これは昭和三十一年度のことでございます。それから昭和三十二年度におきましては、文官恩給軍人恩給とを合わせました場合におきましては九百四十一億というような御説明があったと思っております。もちろんこの中には、一応権利の喪失者というものを考えないで予測した金額ということもっけ加えて申し上げておきます。
  135. 田畑金光

    ○田畑金光君 そこで私は大久保大臣にお尋ねをいたしたいわけでありますが、現在の文官並びに旧軍人遺家族恩給が、今の支給の内容で参りましても、昭和三十二年度には九百四十一億に上るということになったわけであります。かりに二万五千円ベースでやりますると、さらに旧軍人遺族恩給だけで百億近くの増額をみなくちゃならぬ。そうなって参りますると、一千億円というのが文官、旧武官恩給費が国家財政の中に占めるという結果になるわけであります。で、私はここに初めて問題が出てくると思うわけでありまするが、一体国民所得というものと、こういう文官武官年金恩給費というものとの比率と申しまするか、これはどういう線で、それはもちろんその国の経済力、国力、相互の上に立って批判をしなければなりませんが、日本のようなこういう貧弱な国土において、一体国民所得というものと恩給費というものとの比率というものは、どの程度が限界であると政府考えておられるのか。さらに私は、先進国家における問題について、当局の方で研究されておられるならば、国の予算の中に、いわゆるこういう恩給というものがどの程度の比率を占めておるのか。たとえばイギリスならイギリスの例に徴した場合に、まあこういうような点かもしおわかりであるならば一つ説明を願っておきたいと思います。
  136. 大久保留次郎

    国務大臣大久保留次郎君) 外国の資料は事務の方にも持ち合せがありませんもので、各国によって比率はまちまちのようで、どの程度をおさえるかということは困難な問題でありますけれども、今申し上げました通り、今回の増給を合せても一番高くなる三十二年度におきましても、九百四十億前後ということでありまして、この程度の恩給給与ばやむを得ないじゃないかと、こういう私は考えを持っております。
  137. 田畑金光

    ○田畑金光君 私は大久保国務大臣にお尋ねしたいことは、昭和三十二年度前後に恩給がふえても九百億前後じゃないか、その辺はやむを得ない、そういう非科学的なものの考え方で政治を論議されるということは危険じゃないかと思っております。わが国の予算は現在一兆円であります。あるいは昭和三十一年度の予算は、大蔵大臣の話によりますると、必ずしも一兆円のワクにはこだわらない、こう申しておりまするか、しかし今の国民所得の伸びの工合と、国民経済力の発展の内容というものを検討したときに、また経済自立のためにせっかくここまで苦労してきていて、それが突然インフレになって、日本の経済が成り立つとも考えておりません。勢い来年度もやはり均衡財政だから、その均衡財政の上にある程度のゆとりを持った財政だという性格だろうと思っております。そういう財政の中に、一体純然たる社会保障費の比率というものはどの程度計上すべきものであるのか、あるいはこういう恩給制度というような予算というものはどの程度計上すべきものであるのか、あるいはこの恩給費用というものと純然たる社会保障費というものの関係はどうなるかという問題は、当然私は政府においても論議され、計画を立てられてしかるべきだと増えるわけであります。私は念のためにさらに資料に基いてお尋ねいたしますが、これも恩給局の方からきた書類だと思いますけれども国民所得と文官年金恩給との関係昭和三十年七月十九日付の資料があります。これによりますると、昭和五年から昭和二十年までの国民所得と一般文官年金恩給費との比率が載っております。昭和九年、十年、十一年、基準年度に比較いたしますると、なるほど昭和二十九年、三十年度の文官恩給費の占める割というものはなお低位にあるように見受けますけれども、しかし当時の国民生活や国情のもとにおける恩給の問題と、今日の国国民経済のもとにおける恩給の比率というものは、必ずしもこの数字だけで論議をするのもどうかと考えております。最初に私お尋ねしたいことば、この資料の問題でありまするが、どうして戦争前の資料の中に一般文官年金恩給たけが出ていて、軍人恩給が載っていないのか。国民所得といわゆる旧時代の文官武官恩給費との比率がどうであるかという数字を私は実は知りたいのでありまするか、この点どういうわけで武官恩給費というものを計上していないのか、あるならば一つ武官文官を含めた恩給費と国民所得の比率について御説明をまず願っておきたいと思います。
  138. 三橋則雄

    政府委員(三橋則雄君) 今、田畑委員からお話のございましたこの表は、先般厚生労働委員会と当委員会との合同審査委員会がございました際に、田村委員からだったかと思いますが、国民所得と文官年金恩給費との関係を調べてくれないか、こういうお話がございました。私は田村委員あとでお伺いしましたら、文官年金恩給との関係を知りたい、こういうお話でございまして、それでこの表をお作りいたしまして田村委員に差し上げたのでございます。その際には、恩給局におきましてはこういう資料を作ったことはなかったのでございまして、国民所得ではなくて、国の決算と恩給費との比率につきましては作ったものがございましたけれども国民所得との関係につきましては作ったものがございませんでしたので、早急に田村委員のお求めに応じまして、とりあえず急いでこれを調査して作ったような次第でございます。従いまして、軍人関係につきましてはまだできておりませんが、これはすぐできることでございます。国民所得を全部調べましたものがございますので、あとでこれも表にしまして、お入り用でございましたらお届けいたしますから、御了承願いたいと思います。
  139. 田畑金光

    ○田畑金光君 それで私は、今国民所得の問題と武官文官恩給費との比率と申し上げましたが、それも必要でありまするが、むしろ昭和五年なら昭和五年以降の国家財政と、その財政の中に占めている恩給の比率がどう動いているかということを私は資料としていただきたいと思っております。私の記憶か間違っておるかもしれませんが、昭和十二年前後のたしか国家予算の中にいわゆる恩給の占めた費用というものは一〇%か、一〇・五%前後だと思っております。たしかにこのころが恩給亡国と言われた、日本が非常に恩給で国の財政に負担を感じたときだと記憶いたしておりますが、さて今日国の財政の状況を見ますると、一兆円の予算の中にすでに八%ないし九%の恩給費というものが占めておるようになってきておる。この敗戦の国において、しかも戦争犠牲というものが国民の各層の中にまだ強く残っておる。こういうようなときに、恩給費の占める割がすでに八%ないし九%に上っておる。こういうような中から、さらに純然たる意味社会保障制度というものを推進しなければならぬ、このような宿命の中に立たされておるわけであります。この恩給の問題と社会保障制度の問題というものは切っても切り離し得ない問題であると考えまするが、当然こういうことになって参りますると、私たちは数字の上から申し上げましても、すでに国の予算の中において、あるいは財政の面から恩給というものが限界にきておるということだけは、はっきり汲み取ることができるのではなかろかと、こう思っております。こういうような限界があるという御認識のもとに立たれたからして、私はただいま見えておる川崎厚生大臣も、そろそろ国民年金制度というような、もう少し恩給というものから高い立場に立つ年金制度という方向に日本の政治を進めて行かねばならぬ、こういうことを本会議あるいは旅先で唱えられておると考えるわけであります。ちょうどよい機会でありまするから、川崎厚生大臣に私の今まで申し上げたような諸点に関連いたしまして、いわゆる国民年金制度の構想についてこの際あわせて承わっておきたいと思っております。
  140. 川崎秀二

    国務大臣(川崎秀二君) 戦没者遺家族に対しまする、また旧軍人恩給に対する保障というものは、たびたびこの法案が提出をされて以来論ぜられておりまするように、今日の考え方といたしましては、一応国家がこれら、当時ば聖戦という形において動員をされ、戦域にむなしく没したる人々に対して補償をするという形で出発をいたしましたために、国家の当然これらの人々に対する報賞として国家補償の形におきまして行われておりまするから、いわゆる社会保障考え方とは今日は体系としてははなはた異ってきておるような状態にあることば御承知通りであります。しかし、ただいま御指摘の通り恩給の費用がとにもかくにも八百数十億に上り、今回の修正を加えまして次第に九百億の線に近づきつつある、明年度以降におきましては、これが実施をされますと、中には社会保障的な要素をも含んでおる部面もありまするけれども、なおかつ恩給的体系において一千億に上りまする費用になりますることは、私も保守党の一員としてはなはだ憂慮にたえなく考えておるのであります。これは当然公平なる国民に対する給付といたしまして、もとより官吏あるいは戦域に召されたる者に対する補償としての考え方の根拠は違いまするけれども、わが国における多数の貧困の家庭並びに最低生活に呻吟しておる者に対しまして、今月失業対策を含めて一千億をわずかにこえたにすぎない。この対象は、おそらく生活保護の対象が百九十二万であり、社会保険の対象が全部入れまして四千万になります。もともとこの社会保険というのは、最低生活保障とは全然違った観念にありしまして、医療、あるいは失業、あるいは死亡その他のいわゆる社会保障の対象となりまする、平素から掛金をして自分の生活を守るという社会連帯の観念出発したいわゆる積極的施策ではありますけれども、その社会保険を入れまして大体五千万以上の大衆が対象となっておるに比して、戦没者遺家族あるいは官吏の家庭というものをどう勘定に入れましても、これは一千万台じゃなかろうかと思いますので、そのようなことからいたしますると、いろいろこれは吟味をしてみなければなお早急の結論はつきませんけれども、もはや恩給的体系におけるところの費用が一千億に近づいたことは、限界がきたというふうに私は考えをいたしておるのであります。これから先の日本の施策といたしましては、どうしても国民一般に対して、最少額醵出制の、ある部分においては無醵出制の年金制度というものを実施をいたしまして、国民全般が福祉国家の余滴を受けるということにいたしたいし、これと関連いたしまして、恩給というものも再検討してみなければならぬ時節が近づきつつあるのじゃないか、これはひとり旧軍人恩給だけじゃなしに、もちろん文官恩給も含めての問題でございますが、その点につきましては、御指摘の点と私の根本考え方は、実際の実施の手段となりますればいろいろ違う点もあるかと思いますけれども根本的な考え方は同じ基本線に立っておるということをこの際表明して、おきます。
  141. 田畑金光

    ○田畑金光君 今、厚生大臣の御答弁で、私の先ほど来大久保国務大臣質問し、やりとりして政府の意思を確かめようと思った点は、大体答弁によってよくわかったわけでありますが、そういうような考え方のもとに保守党内閣も進歩した政策を取り入れ、新しい理念のもとに進められなくちやならぬ事態にきておるのじゃないか、これはすでに私は先ほど来、数字の上から申し上げて大久保国務大臣に御質問申し上げたわけでございますが、大久保大臣に特に強く要望したいことは、やはりもう少し科学的な数字の上に立って、予算の面、恩給の問題、社会保障の問題等を検討されるように要望しておきたいと思います。
  142. 加瀬完

    加瀬完君 ただいま田畑委員に対する厚生大臣のお答えで、大体の点は了解されておるわけでございますが、先ほど給与担当の大久保国務大臣に次のような点をお伺いをいたしたわけでございます。そういたしますると、これは担当大臣でないから、担当大臣からお答えをいただいた方がよろしいであろうということになりまして、御足労をいただいたわけでございます。その一点は、今度の恩給法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案に直接関係はないわけではありますが、いわれておりますところの軍人恩給というものの復活に対しまして、これは現政府の責任ではないのでございますが、どういう立場をとっておられるのかということに対しまして、戦争犠牲者に対しまして国家補償としての恩給復活ということであるという、大要そのような意味のお答えがもったわけであります。そこで戦争犠牲者に対する国家補償としての恩給復活ということであるならば、これは戦争犠牲度というものに対して恩給の格差というものがつけられて行かなければならないわけじゃないか。しかしながら、今度の修正を見ましても、あるいは現在施行になっておりますいわゆる軍人恩給を見ましても、これは戦争犠牲度に対する格差というものは何もない。これは単なる軍人恩給復活ということではないかというふうに伺いますると、まあいわばそんな形になってしまうということに話は落ちたのです。それならば伺いますが、戦争犠牲者の救済というものを考えるならば、国家補償というものを考えるならば、少くも軍人恩給というワクの中で考えても、旧軍人軍属というワクの中で考えても、下士官、兵には非常に犠牲度が大きいけれども軍人恩給復活というものによってはそう償われておらないところの階層というものが一つある、それから遺家族傷病者と申しましょうか、こういうふうな戦争犠牲者で、軍人恩給その他によりましてもまだまだ恵まれない階層というものの一団がある。こういう階層に対しましては、あわせて国家補償と申しますか、社会保障と申しますか、こういう制度を、軍人恩給復活させるというならば、あわせてこれを進めて行かなければ片手落ちになる。これらに対して政府は、軍人恩給をさらに文官均衡を得るように改正をして行くということに同意をするならば、取り残されたるところのこれらの階層に対しても、国家補償立場から特別な措置なり、あるいは社会保障としての適切なる措置なりを進めて行かれる御意思があるのか、この点を伺ったのでございます。そういたしますると、直接担当でもないので、ここでやりたいとは思うという個人的な意思の発表はできるけれども、約束できないという形になりましたので、担当大臣としての川崎さんにおいでをいただくということになったわけでございます。で、くどいようでありますが、戦争犠牲者に対する国家補償としての軍人恩給復活というものであれば、この軍人恩給復活ということで漏れ落ちる階層がある。これらの階層に対して、旧軍人軍属というワクの中で限っても、下士官、兵などに対する、大臣も今お話になりましたが、いわゆる動員されたる、応召されたるこの階層というものに対して、国家補償というものを別に何か考える必要はないのか。あるいは遺家族というものに代表されるところの、戦争による犠牲を極端に受けているところの階層がございます。これらに対して現状のままで、社会保障の上からいっても万全であるというお考えに立っておられるのか、具体的にこれらに対してどういうふうに国家補償していくというお策をお持ちになっておるのか、こういう点を伺いたいのであります。
  143. 川崎秀二

    国務大臣(川崎秀二君) 今回の恩給法改正に対しましては、私も最終的に自民両党の修正案に賛成をいたし、また原案はもとより大久保大臣のお考え通りに賛成をいたしたものでありまするから、今日のところ、これをもって旧軍人恩給並びに遺家族に対する補償を一応果したものと考えておるのであります。しかし今御指摘の通り、その内容につきましては、経緯についてはいろいろな過程がありまして、これは私は党内における少数意見でありましたので、この際発表を差し控えたいと思うのでありますが、今後いろいろ社会保障制度の拡充ということから考えますると、この案に対しまして、さらに相当吟味をしていく必要は今後に残されておるのではないかというふうに考えるものであります。それはただいま御指摘の通り、下級将校あるいは下士官、兵というものに対する給与よりも、上級将校に対して厚くなっておるということは、しばしば指摘をされております。私ばかりにこの体系が今日とられる最良の手段であるにいたしまして、できればこの階層に対するやり方というものは、あの恩給法復活をいたしました際におきまして、戦没者遺家族のこの法案が出ました際におきまして、でき得る限り社会保障的配慮をしてもらいたい、社会保障制度に切りかえるという以前におきましては、まず軍人恩給のワクの中においても社会保障的な配慮が必要ではないか、すなわち社会政策的な配慮が必要ではないかと考えておったものでございます。しかしそれらはもちろん案の一部にば取り上げられてはおりまするけれども、私個人の過去の主張からいたしますれば、かなり速い形で今日実現をいたしておりまして、これを今日の責任ある閣僚といたしまして、同意をいたしました以上は、この席においてそれ以上の意見を申し述べることはできませんが、将来でき得れば社会保障制度の側から次第にこの問題を考え直してみまして、恩給制度に対しても大きな斧鉞を入れるとともに、やはり国民全体に対する年金制度の中に次第に包含して行くような体系に改めてこそ、初めて公平な形になり得るのではないか。もとよりかの戦域に参りました人々と、戦いの庭に立たなかった者との間に格差があるのは当然でありまして、これらの点については決して同一の主張をいたすのではありませんけれども、先進国におきましては、年金をとっておる上に恩給をとるというようなことはできないような形になっておりまして、アメリカにおいてもスエーデンにおいても、年金を渡されておる者には恩給はこれを支給しないとか、あるいは恩給との落差ば別に徴収をするというようなやり方をやっておりまする点は、相当今後年金制度を進めて行く上において大きな配慮をする必要があると思うのであります。従いまして、いろいろお尋ねでありましたが、現在の恩給法は、一応今日の段階としてはやむを得ざる修正であり、また私も同意をいたしたことでありまするから、これに対して批評は差し控えますが、でき得る限り近い将来におきまして、社会補償制度を中心としたる側よりこれらの問題を眺め渡して、そうして国民の世論に沿いつつ改正をして行きたいというふうに考えをいたしておるような次第であります。
  144. 加瀬完

    加瀬完君 先ほど来私の質問をいたしました点は、恩給特例審議会答申に基きまして軍人恩給というものが復活をして参ったのでありますが、それに対しましては、社会保障制度調査会の意見書いうものも出ておって、こ意見書というものはあまり参昭されておらないじゃないかというふうな点で疑念を持ったのでありますが、担当大臣のお考えをつぶさに承わりまして、社会保障制度調査会の意見書というものが非常に重く考えられておるという点は了承いたしたわけでございます。そこでいま一点伺いたいのでございますが、今お言葉の中にもありましたように、極端にいうならば、復活されました軍人恩給、それにさらに修正を加えましたところで、また社会保障というものから離れましても、国家補償という点から考えても下士官、兵というふうな方々に対しての補償というものばこれは不満足である、不十分である、この点もあわせて考えて参るというふうに了解をいたしたのでございますが、そういたしますると、現内閣ではございませんが、前内閣におきましてこの軍人恩給復活されましたときに、軍人恩給という予算のワクを社会保障の中にわれわれは示されたわけでございますが、一部伝えられるところによりますると、アメリカに対してばこれを防衛費の中に組んである、こういう一説が盛んに当時とんでおったのでございますが、この点は大臣はどういうふうに御認識なされておられますか、かりに、私がこういう唐突な問題を出しますのは、この亀入恩給というものは旧軍人を救済をする、あるいは犠牲に対して慰謝をするという裏面の形でありまするけれども、底に流れるものはそうではなくて、これによって旧軍人で慰謝される場面、あるいは補償をされる場面というものは非常に少くて、旧軍人というものをふたたび犠牲にして、何か違う目的にこれを使って行く、そうであるならば私は非常に日本の将来に対しても悲しいことであろうと思うのです。現内閣社会保障制度を高く揚げて国民に臨んでおるわけでございますし、今、大臣のお考えはよく了承したのでございますか、軍人恩給復活と前後いたしまして、そういう一説もなされておりますのでこれらに対して現内閣としてのお立場もあわせてこの際はつきりと伺いたいのでございます。
  145. 川崎秀二

    国務大臣(川崎秀二君) 旧軍人恩給費が防衛費の一部ではないか、あるいは防衛費とつながるものではないかというお尋ねでありますが、これは全然別個なものでありまして、私からいわせれば、やはり広い意味社会保障的な経費であると私は考えておるのであります。軍人恩給あるいは一般文官恩給というものは、世界の社会政策の学理と申しますか、考え方では、やはり社会保障ないしは社会政策的センスの翼のもとにあるというふうに大体論理づけられておるわけでありまして、私もその説を肯定をいたすものでありまするら、防衛費とつながりのあるものだとは考えません。ただ民間や、あるいは政府の指導者がいろいろ演説をしたり、講演をして歩きます場合におきまして、軍備を日本に持たなければならぬときに、戦争犠牲者に対する何らの補償をしておらぬということでは、わが国の防衛論議というものができないのではないか、こういうようなことを強調をいたす関係で、あるいは防衛費とつながりがあるようなことが一部の方々からまた批評もされて、それが半ば定説なる、こういうような傾向はございますけれども、これは純然たる社会政策的な意義を持つておるもどでありまして、防衛費とつながりのある問題ではないと私は考えておるのでございます。
  146. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) この際他に川崎厚生大臣に御質疑のおる方は御質疑を願います。
  147. 木下源吾

    ○木下源吾君 まだあるでしょうけれども、飯を食ってからにしたら……。
  148. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) いずれ休憩はいたしますが、川崎厚生大臣は他に所用があるよりですから、川島厚生大臣に対する御質疑のおる方はこの際願いますということを申し上げておるのであります。まだ川崎厚生大臣に対してありますか……。ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  149. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 速記を始めて。
  150. 加瀬完

    加瀬完君 大臣の御説明よくわかるのでありますが、一点伺いたいのでありますが、そうすると、今までの御説明によりますると、この軍人恩給関係のものの考え方というものよりは、むしろ厚生大臣としての考え基礎は、社会保障制度調査会の意見書というものにウエートがあるというふうに了解してよろしうございますか。
  151. 川崎秀二

    国務大臣(川崎秀二君) 私は内閣の閣員でおりますから、今日決定いたしました恩給法に対しての考えと、この際直ちにこの席上において違う意見を申し述べようとは思いません。ただ私が将来意図しておりまするのは、社会保障制度審議会考え方が日本の恩給制度並びに年金に取り入れられて、そうしてそれが主軸になり得るような態勢を早く招来したいものだという信念は持っております。
  152. 加瀬完

    加瀬完君 しかし結局恩給制度というものを、大久保大臣言葉をもってするならば、歴然たる事実としてこれにいろいろ修正を加えたり、あるいは追加いたしましたりして、結局恩給制度というものの制度を固めて参りますると、大臣の今おっしゃるような、社会保障制度としての変革を来たすのに非常なむしろ障害というものになるというおそれも考えられるわけであります。従って社会保障制度というものを一日も早く実現を願うならば、こういったような問題に対して、鳩山内閣社会保障というものを公約した手前からも、もう少し統一的と言いますか、社会保障としての一体的な施策というものを講ずべきじゃなかったかというふうに考えるのでありますが、この点はいかがでしょう。
  153. 川崎秀二

    国務大臣(川崎秀二君) これは出発のときにいろいろ議論がありました問題でありまして、すでに問題としてはある。いわゆる戦没者関係の三法と言いますものが、この法律が作られたときに国家補償か、社会保障かというようなことで、非常な御論議があったように聞いております。私も党内においては非常な論議をいたした者の一人でございます。しかして当時出ましたことが次第にいろいろな要求が累積をいたしまして、ただいま御指摘の通り、今後社会保障制度を中心にしたものの考え方の方に転換するにいたしましても、かなりの困難があるということは私は御指摘の通りだと思っております。従って本年われわれの方から提案をいたし、それからさらに自由党、民主党によって修正をされたことは、確かに遺族その他に対する、遺族の心境あるいは環境を思いますると、何としても実施をしなければならぬことでありまするけれども、体系としては次第に社会保障制度考え方々伸ばして行くことには非常な大きな難関が、岩石のごとく横たわりつつあるということを私は否定をいたしません。
  154. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 他に厚生大臣に対する御質疑は……。
  155. 木下源吾

    ○木下源吾君 今のをお伺いしておると、社会保障軍人恩給とはつながりあるようなことをおっしゃっておるが、やはりそれは違うのだな。それは社会保障はあくまでも保障であって、恩給はやはり一つの既得権になってしまって、余裕のある者でもそれはとる権利ができてくる。社会保障とは私は違う思うのだが、この点どうですか。
  156. 川崎秀二

    国務大臣(川崎秀二君) 生き残りと言いますか、サーバイバーと向うでは言っておりますが、これの体系の、まあ生きておられる軍人に対する恩給というものと、やはり戦没者に対する社会保障的な意味、また国家補償的な意味、まあ双方加えての立場といりものはかなり違うと思う。もう少し的確に申し上げれば、戦没者遺族の中には未亡人で非常に路頭に迷っておられる方もあるし、生活困難の実情もありまして、そのような意味合いで、戦没者遺家族に対する年金が少し社会保障的な要素を含んで給付をされておるということは私は言えると思うのでございます。従いまして、社会保障制度の純粋な出発点には立っておりませんけれども、ものによってはその役目をいたしておるものがある。しかし御議論の点は多分これはむしろ社会保障制度の一環として行うべきじゃなかったか、こうおっしゃるのだと思うのでありますが、それは私の個人的な考えはその方に傾いておるのであるますが、今日実施をいたしました政府といたしましては、これは国家補償において行うべきものだという考え方のもとに着手をいたし、これが吉田内閣以来陸続提案をされておりまする関係で、私は責任ある閣僚といたしましては、今日これは社会保障的な意味をもかねての役割もいたしておるということを答弁申し上げるよりほかにないのでございます。
  157. 木下源吾

    ○木下源吾君 そこで社会保障ということと、この恩給ということとの間には共通の点も内容においてあることは認め得るが、しかし社会保障である場合にはもっと均衡がとれて平均にならなければならない。そこに問題があると思う。そこを今こちらもついておるのだろうと思います。社会保障であれば、要するに困難な者、それから一般的に保障をしてやらなければならぬ者はできるだけ広範に均衡がとれるようになるのが社会保障の本質じゃないか。ところがこれではなるほど二部分は社会保障と共通な点があるけれども、これではきわめて不均衡だというところに社会保障との違いがある、ここに私は厚生大臣としての非常な社会保障に対する責任があるのじゃないか、厚生大臣としての責任があるのじゃないか、こういうように考えておるのですが、その点はどうですか。
  158. 川崎秀二

    国務大臣(川崎秀二君) この今回の提案あるいは修正案ができまする過程におきましては、そういう議論はかなり厚生大臣といたしましても、また厚生省の事務名局も、たとえば階級差を圧縮するとか、あるいは下士官、兵の方により多くの重点をかけるとかいう議論はいたしたのであります。従って御趣旨の点は十分に私どもは拝承いたすのでありますけれども遺族会その他のいろいろな御要望があり、それを反映いたしましたる自由党、民主党の関係の議員の方が、この方が適当であるということでかかる提案になったものと思います。そこで党議が決定をいたしました以上は、私どももそれに従って今日対処をいたしておる次第でありますことも御了承願いたいと思います。
  159. 木下源吾

    ○木下源吾君 その党議決定によってきまったことをあなたがおやりなるのは、これはいささかも矛盾はありません。大いにけっこうなことでありますが、提案理由にもありますように、今次戦争犠牲者中の最も気の毒な方々、こういうことがうたわれている内容は、こういう内容々持っているのだからこそ社会保障ではない、実際に……。しからばこういうように戦争犠牲をたくさんに受けておる者は、先ほどもちょっと話があったようですが、何か沖繩かどっかのひめゆりとかいう二十前の娘さんたちやら、それから女学生やら、そういう人たちが、軍人ではなくてもですよ、やはりその当時の応急の、戦いの指導者の命令によって、そうして戦没しておるわけですね。広島においても長崎においてもですね。戦うという意思はないけれども、結果においては戦争犠牲者がたくさん出ているわけですね。こういうことを考えまするというと、厚生大臣としては、あくまでも私は戦争犠牲に対する救済と言いますか、それをつまり恩典を均霑させるということであるならば、これは私は相当責任を強く感じて遂行しなければならぬのじゃないか。こういう問題が出ておらないのならば私はよろしいと思のですが、出ている以上は、これは私はないがしろにできない、こういうことに考えておるのです。従って厚生大臣は先ほど来、きまったのだから、私は閣僚として従いますと、こうおっしやるが、私はかってベウアンのあの去就をあなたは御存じだろうと思う。ここの吉田内閣においても当時の厚生大臣の橋本君ですか、あなたは御承知でしよう。私はここにやはり真に戦没者あるいは戦争犠牲者をほんとうにわれわれは救わねばならぬというこの意思は、これはほんとうに社会保障でやらなければならない。それを堅持せられるならば、厚生大臣は、ただ党議決定をし、みなで決定をしたのだから、これに従っておればいいというのは、私はちょっと日ごろの川崎さんには不似合いな御答弁じゃないかと実は思っておるわけですよ。率直に腹の中で……。この点についてはどうですか。
  160. 川崎秀二

    国務大臣(川崎秀二君) 私もこの社会保障の推進につきましては、たとえば社会保障の中心問題である健康保険を初めとする社会保険の強化政策、あるいは老令保障、さらには児童擁護というような社会保障の三つ四つの大きな柱を強力に推進するためのプランを自分の胸にも描くとともに、事務機構等についても相当に変革をいたしまして、社会保障企画室などを設け、着々次年度の案を練っておるわけであります。御承知通り、私は第一次鳩山内閣の閣僚でございませんでしたので、本年度の予算並びに今回の恩給関係のスタートから閣内において参画することを許されなかった事情があるのであります。三月の十九日に厚生大臣たることを拝命をいたしましてすぐ、予算の骨格がすでに出ており、その後主として社会保障の中心問題である社会保険の赤字問題等に没入いたしておりまする関係上、今回の遺家族の問題につきましても、根本的に論議を歳内部におきましても十分展開する余裕のなかったことを残念に思っておるような次第であります。民主党におきし致しては、今回北村徳太郎氏を委員長といたしまして、恩給制度並びに年金制度検討委員会なるものを設けられておりまして、明年度の予算編成等に当りましてはもろと本質的に考え直してもらいたい、たとえば今指摘の沖繩戦没の民間人、これはむしろ国に殉じた人々でありまして、その立場からいたしますれば、当然国家のために生命を投げ出さなければならぬ、平素から投げ出さなければならぬ職業軍人とは違い、さらに一そう崇高なる任務を帯びて散っていった人々である。かように存じておるのであります。従ってこれらに対するところの給付というものは、もとよりそういう人々に対してこそ行われなければならぬということは乱も木下委員と同じであります。従って、お前の心境はどうか、あの際辞職を賭してまで戦ったならばよいではないかという意味であったのだろうと思います。ベヴアン氏とか、あるいは橋本君の故事を引かれてのお尋ねでありまするが、私が就任をしたその際におきまして、すでに何といいますか、予算のシュプールみたいなものが出ておりました関係で、これに対して十分な施策をしなかったことははなはだ残念でありますが、今後これらの問題につきましては、なるべく私たちの信念を伸ばすような形で、党内においても実現を見るように努力いたしたい、かように存じておる次第であります。
  161. 木下源吾

    ○木下源吾君 あなたは大へん時間がお忙しいようだから、あまり長くお引きとめはいたしませんが、ただいまの御答弁は、要するに、より今後戦争犠牲者、あらゆる意味犠牲者を、それはまあいろいろ範疇があろうが、社会保障的に救済する熱意が燃えておるから、この際は心だけで、ある断定で一つやっておるのだというように受け取っておきたいと私は思います。従って私は、しかしおやりになることによっては国民が非常にたよりなく思っている。ほんとうに今非常に大きな問題にやはりなりつつあるのは、医薬分業の問題です。川崎厚生大臣は厚生の立場から所信を明らかにして、五月ごろには新医療費体系ができると、こういうことを言って分業断行の所信を私は発表しておられると聞いておるのであります。今伝えるところによりますというと、また大臣のこの純真な主張が通らないような場合にもなりかねないように私は思うのです。それはいずれがいいか悪いかは別問題といたしまして、国民に対してこいねがわくば、たよりない厚生大臣だというような印象を与えないように、今、日本の再建は非常に重大なときでありますから、ぜひ一つ検討願いたいと思います。私は今、大臣から聞いて、この法案がますます私は部分的であり、そうして思いつきであり、いろいろな欠点がたくさんあることが今わかってきたようなわけであります。ただいまの希望を申し上げまして、時間を長くとらせてまことに恐縮でありましたが、私はこれで終ります。
  162. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 厚生大臣に対する質問は他にないようでありますから、午後六時四十分まで休憩いたします。    午後六時八分休憩   〔休憩後開会に至らなかった。〕