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1955-06-23 第22回国会 参議院 内閣委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年六月二十三日(木曜日)    午前十時五十八分開会     —————————————    委員の異動 六月二十二日委員中川以良君及び三橋 八次郎君辞任につき、その補欠として 郡祐一君及び加瀬完君を議長において 指名した。     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     新谷寅三郎君    理事      植竹 春彦君            宮田 重文君            木下 源吾君            松原 一彦君    委員            井上 知治君            中山 壽彦君            長島 銀藏君            上林 忠次君            高瀬荘太郎君            野本 品吉君            加瀬  完君            田畑 金光君            松浦 清一君            三好 英之君            堀  眞琴君   政府委員    内閣官房長官 田中 榮一君    科学技術行政協    議会事務局長  鈴江 康平君    外務政務次官  園田  直君    外務大臣官房長 島津 久大君    外務省アジア局    長       中川  融君   事務局側    常任委員会専門    員       杉田正三郎君    常任委員会専門    員       川島 孝彦君   説明委員    外務省参事官  石井  喬君     ————————————— 本日の会議に付した案件 ○総理府設置法の一部を改正する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○外務省設置法の一部を改正する法律  案(内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。  まず、総理府設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。
  3. 田中榮一

    政府委員田中榮一君) 先般の内閣委員会におかれまして、委員長から特に次のような御質問がございましたので、本日私からあらためてこれに対しましてお答えを申し上げたいと思います。  その御質問の要旨は、内閣に今回設置せんといたしまする航空研究所に関しました御質問の中に、航空技術については外国技術を導入することの必要なる場合が非常に多い。この場合において、これらの外国技術は大体において外国のメーカーが日本特許をとっておるために、これを使用して航空機等を試作せんとする場合において、先方特許を利用さしてもらわねばならない、その場合において、この特許の利用において国内業者がお互いに競争してその値段をつり上げるという悪例があるようである。これに対して将来どういうような対策を持っておるか、かような御質問でございまして、戦後ちょうど十年に及びまするわが国航空技術空白期間中、委員長のおっしゃいますように、海外における航空技術の発展は実にすばらしいものでございまして、また着々進歩を続けておる状況でございます。そしてこのすぐれた発明、考案はほとんどわが国特許を獲得しておるという状況でございます。従ってこのような状態のもとで・航空機の分解、修理、生産をしようといたしますと、どうしても先進諸外国技術を導入せざるを得ない状況であります。このため各製作会社外国技術との提携、これは特許の使用も含まれておるのでございまするが、この外国技術との提携を希望するものは相当数が多いようでございます。しかしながら、これを無計画に許可するととは、委員長の御心配のように、いたずらに国内業者間の競合を起し、技術指導料の価格を引き上げるのみでありまするから、十分に諸外国技術内容需要面等を調査し、計画的に導入することが必要と存じます。従って政府といたしましては、最も大きな需要面を持つ防衛庁、生産行政を担当する通産省、また技術内容検討するスタック等におきまして、十分に調査して、外資審議会で総合的に審査して、無用な競争を起さないよう調整して許可するようにいたしたいと存じます。現在までに政府で認可しました航空技術関係技術提携は、米国の七社との間のものであります。現在現実富士重工業会社富士自動会社等におきまして、現実にこれが契約が結ばれたのでございます。これらはおもに練習機に関するものでありますが、今後ジェット機を生産するようになりますれば、技術提携の申請も相当増加して参ると思います。この場合に、政府としては十分に調査、審議をいたしまして、必要最小限度のものだけを許可する方針で進みたいと考えております。なお航空技術研究所が活動するようになりますれば、その研究の成果によって外国技術輸入を防あつし、あるいは進んで逆に技術を輸出し得る面も出て参ろうかと考えております。  次に、航空技術研究所の施設の設置につきましては、できるだけ国内技術を活用して行く方針でありますが、彼我の水準に相当な懸隔がありますので、一部優秀な試験機輸入であるとか、設計図面の購入などが必要となる場合もあろうかと考えております。  以上のような方針で今後進めて行きたいと存じますが、御趣旨の点につきましては、十分一つかかることのないように細心の注意をもって進んで行きたいと考えておる次第でございます。
  4. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 御質疑を願います。
  5. 田畑金光

    田畑金光君 私、海外移住審議会の問題でお尋ねしたいと思うのですが、先般来外務省設置法の一部改正法に基いて、移住局が新たに設置されて、政府は積極的な移民政策を推進するという方針を確立されたわけであります。海外移住帯議会設置されるとしますると、むしろ外務省付属機関として設置されて、移住局機能を強化充実するというようなことが考えられるわけでありますが、これが内閣付属機関として設置されたという点は、どういう構想のもとに措置されたのであるか、その辺の事情を御説明を願いたいと思います。
  6. 田中榮一

    政府委員田中榮一君) これは総理府設置法の一部改正といたしまして、今回海外移住帯議会総理府の中に設置いたしましたのでこの点につきまして今御質問の点、まさに御不審の点もあると存じますので、内閣側としまして一応説明いたしたいと思います。  この海外移住につきまして、まあ政府といたしまして、これを総合的な見地から今後処理して、海外移住振興をはかって行かねばならぬと考えておりますが、従来この外務省の中に海外移住に関する審議会のようなものがあったのでございまするが、各方面の意向を打診して参りますると、この海外移住審議なるものが割合いに外務省的な考え方だけで進むということにおきまして、政府各省の間におきましても、いろいろ意見があり、またこれに対する要望もございまして、この海外移住審議会というものは、政府の決定いたしまする海外移住振興に関する最高政策を決定するものでございまして、もしそうといたしますれば、むしろ外務省の中に置かずに、最も中立的なところにこれを設置して、これに各省のものが入り込み、また各省から推薦するようなりっぱな学識経験者が入り込みまして、そうしてこの海外移住振興に関する最高政策をここにおいて審議する内閣総理大臣が諮問する海外移住振興に関する諸問題につきまして、この内閣に今回新たに設置されんとする審議会におきまして、今広い立場から、広い視野を持ったあらゆる面から検討をした総合的な海外移住振興に関する高度の対策をここにおいて十分審議検討し、これを内閣総理大臣答申をいたしまして、それによって政府として総合的に各省協力のもとに海外移住振興策を樹立することが最も適当ではないか、かような関係からいたしまして、本来ならば、あるいは外務省に置かれることが妥当であると存じまするが、かような見地からいたしまして、今回内閣の中に海外移住審議会なるものを設置いたしたような次第でございます。
  7. 田畑金光

    田畑金光君 御趣旨のほどはよくわかりますが、外務省設置すると、広い視野に立ち、総合的な観点に立って、移住政策が進められないから、より高い立場において進めて行くためには、中立的な性格を持つ内閣に置いた方がよかろうというわけで設置をされたというような御趣旨のように解釈いたしましたが、それでよろしいのか、どうか。
  8. 田中榮一

    政府委員田中榮一君) 大体さような見地から一応内閣海外移住審議会設置したような次第でございます。
  9. 田畑金光

    田畑金光君 そうしますと、今後海外移住政策の基本的な方針は、内閣に置かれる海外移住審議会を通じて万般の措置をはかられるという政府の御方針で、その範囲においてはよくわかりますが、つい最近のうちに政府の提案として出されまする日本海外移住振興株式会社法案、これは移住政策において画期的なものであろうと考えるわけであります。しかし、その内容あるいは予算の面等を見ましては、別段画期的という表現を用いることは過ぎておりまするけれども、とにかく新しい施策であろうと考えております。当然、今政府の予測しておられる海外移住振興株式会社法案なるものは、今内閣設置されようとしておりまする海外移住審議会等の議を経て、衆知を集めてこういう立法化ははからるべきものだと、こう考えるわけでありまするが、しかるに、そういう議を経ていない。こういうことになって参りますると、海外移住審議会の今後の機能というか役割というようなものは、どういうところに主眼を置いて運営されようとなされるのか、この辺一つ事情を聞かしていただきたいと思います。
  10. 田中榮一

    政府委員田中榮一君) 今回新たに設置いたしまする海外移住審議会は、従来外務省の中にこれとほぼ組織等も同じでございまする海外移住に関する懇談会というものが現在設置されておるのでございます。それをさらに、ある意味におきまして相当高度のものにこれを改組をしたものでございまして、まあ大体におきまして、従来の外務省内設置されておりまするような、この懇談会と大体性質は同じでございまするが、さらに先ほど申し述べましたように、より高度の具体的な政策等審議するために設けられるのでございまして、今回の海外移住振興株式会社なるものは、これももちろん審議会にかけてやることも当然だろうと思いまするが、しかしこれも具体的な問題でございまして、なおかつ、アメリカとのいろいろな借款の問題を控えまして、これは別個に昨年からすでにこの問題が進行しつつございまして、この審議会とある意味におきまして並行的にこれが研究されて参ったのでございまして、かような意味におきまして、政府としましては、この海外移住審議会と、それから今回外務省内機構を一部改革いたしまして、移住振興のために新たに移住局設置いたしまして、行政部面機能を拡大する、それと同時に、具体的な資金貸付等によりまして海外移住振興株式会社を設けまして、まあ大体こうした三本立ての考え方海外移住振興というものをはかるように考えておるわけでございます。従いまして、まあ今回はこの審議会にはかけずに作ったのでございまするが、今後この海外移住審議会運営その他につきましては、やはり移住審議会におきましても、相当との運営方針等審議されるものと私は考えておるような次第でございます。
  11. 田畑金光

    田畑金光君 私のお尋ねしておる点は、時間のズレを一応抜きますると、今問題となっておりまする海外移住振興株式会社法案なるような性格のものが、当然内閣に置かれようとする審議会の議を経て提案されるととが当然かと考えられるわけであります。こういう重大な立法化等審議会において取り上げられないとするならば、審議会というものは一体何を取り扱おうとするのか。根本政策というお話でありますが、海外移住根本政策を具体化したものが今取り上げられておる株式会社法案であろうと、こう見ておるわけでありまするが、当然こういうような問題は審議会等の議を経て立法化し、提案すべきではないかと考えるわけであります。この点は、昨年来の借款その他の問題が並行的に進められた関係上、時間的なズレのためにこうなったのかどうかといろ点を私はお尋ねしているわけでありまして、今後この株式会社法運用等については、万般について審議会の議を経る、あるいは審議会に諮問される、こういう考え方審議会運用なされるのか、この点をお尋ねしたいと思っております。同時に、園田外務政務次官にお尋ねいたしたいことは、先ほど田中内閣官房長官お話によりますると、海外移住審議会内閣設置せられたということは、外務省設置するよりも、より総合的な広い視野に立って検討を進めるためには、こういう形が望ましいというお話があったわけであります。せっかく外務省には移住局設置されて、積極的に移住政策を進められようとする機構も整備されましたが、私は海外移住審議会等外務省付属機関として置かれても、決して総合的な全般の視野に立って運用を誤まるようなことがないと考えておるのでありまするが、その点どのようにお考えになっておるか、園田政務次官見解をお尋ねしたいと思います。
  12. 園田直

    政府委員園田直君) 御承知のごとく、各種審議会は、総理大臣諮問機関として設置されたものが大多数でございまして、おのおの、たとえば積雪寒冷地帯、あるいは離島振興などという法律に基く審議会は、所管に応じて経済審議庁または農林省審議会を持っておるものと、それから内閣に持っておるものとに分れておりまするが、単に移民の点のみから考えますると、われわれとしては外務省審議会を置いて、そうして外務省が今日予算面からむ審議会事務費を獲得することは困難でございまするから、そういう面からいたしましても、他の各省に持っておりまする審議会のように、外務省設置してもらった方が事務的にはきわめて簡単ではございまするが、今度われわれがお願いしまする会合は、今夜での農業移民という観点から、企業移民とも申しまするか、各種の業態に広くわたった移民をしたいという考え方を持っておりまするので、そういたしますと、自然農林省、労働省及び通産省などとの他省との関連等も出て参りまするから、そういう点から内閣審議会を置いて、そうして諮問機関とするということに意見が一致したわけで、ございます。
  13. 田中榮一

    政府委員田中榮一君) 今の海外移住振興株式会社も、なるほどお説の通り海外移住審議会の議にかけた上で設立するというのがあるいは妥当かと考えておりまするが、しかしながら、海外移住振興株式会社も、相当早急にこれを設立いたしまして、いずれもこれは受け入れ国との関係もございまするので、早急にこれを設立いたしまして、そうして先方との交渉もいたしまするし、また内地におきまする募集、それから訓練、送出というような、非常な手続等も今後相当かかることになると思いますので、かような関係から現在の海外移住審議会とは別なことでこれを考え出したのでございまして、もちろん先ほど私が説明いたしましたごとくに、海外移住審議会は相当ハイ・ポリシーをここで検討する機関でございまするので、出発におきましては、かような過程をやむを得ず通ったのでありまするが、今後できましたならば、少くともいろいろな運営の問題、あるいは今後の経理の問題その他につきましても、十分にこの海外移住審議会と密接な関係をとりまして、会社運営して行かなければならないものと考えておる次第でございます。
  14. 田畑金光

    田畑金光君 海外移住審議会総理府設置するのがいいか、外務省設置した方がいいかという問題については、私の質問外務省設置した方がいいかのごとくとられると、これは誤解でありますので、その点は一つ断わっておきたいと思います。ただ、先ほどの園田政務次官の御答弁にありましたように、今後の移民ということは、あるいは移住政策というものは、各省所管にまたがる広範な内容を持つものだと私も考えるわけであります。農業移民もありましょうし、工業技術移民もありましょうし、あるいは労働力移民といろう考え方も出てこようと考えるわけであります。そこで私が特にお尋ねしたいことは、この審議会組織所掌事務委員その他の職員については政令をもって定めることになっておるわけであります。審議会委員の数は大体二十五人を予定しておるようでありまするが、その委員構成等についてどういうような構想を持っておられるのか、あるいはどういう基準をもって委員の選出に当られようと考えておられるのか、その辺の事情について承わっておきたいと思っております。
  15. 田中榮一

    政府委員田中榮一君) これは具体的な問題につきましては、政令でこれを定めることに相なっておりまするが、委員の数は大体お説のように二十五人ぐらいをもって委員会組織したいと思っております。その中に、会長は内閣総理大臣がこれに当る、それから委員関係の各大臣がこれに当り、なお民間側のいわゆる海外移住に関しまして特に学識経験の深い方々、特に海外移住経験を持たれた方々、あるいはこれに対しましては、非常な深い造詣を持っておられるような、いわゆる学識経験者というような方々を相当これに加えまして、そしてこの学識経験者も単に内閣でこれを選定するのでなくして、できるだけ各省の御意見を徴しまして、まあ各省の御推薦する委員をなるべくこれに充当さしたい、かように考えております。それからなお、この委員会だけでは十分に効果を上げることはできないと考えまして、いわゆる幹事会を設けまして、まあ幹事会はできるだけ関係各省次官級方々、それからさらにまた直接の関係がなくても、少くも間接には関係があると思われるような各省次官級方々をこれに加えまして、そして幹事会組織しまして、実際の行政的な事務的な面につきまして、この幹事会を常に開催いたしまして、各省間の連絡を緊密にいたしまして運営を進めて行きたいと、まあかように考えておる次第でございます。それからなお、先ほどちょっと申し落しましたが、この海外移住審議会の実際の事務につきましては、何と申しましても、やはり今度できまする外務省内移住局というものがやはり中心になりまして、移住局におきまして実際の事務等を処理すると、かようなことで一つ運営して行きたいと考えておる次第でございます。
  16. 田畑金光

    田畑金光君 御答弁の中の審議会委員構成のうちで、関係大臣並びに各省の推薦する学識経験者をもって委嘱をする、この学識経験者範疇と申しますか、概念でありますが、従来の政府のあらゆるこの種の審議会委員委嘱等というものは、学識経験者の名において常に古手官僚か、あるいは一部のあり余るほど肩書を持って時間的に余裕のない、またその道の一体識見を持っておるのかと疑われる財界の人のみが充当されておるのが通例であります。おそらく今のお話海外移住に関する識見を持つと言っても、どの分野にそのような識見を持つ人があるのかどうかということもわれわれは疑うわけであります。そこで私はあくまでも今後の移住政策が、国民各層あるいは各職業、各分野にわたるものとしますならば、当然審議会委員構成というものは、それぞれのバラエティがあってしかるべきじゃないかと、こう考えるわけであります。具体的に申しますと、古手官僚財界の一部の人のポストのはけ口一ではなくして、実際生きた国民各層生活の中から、あるいは職業の中から委嘱をして行かなければ、この移住政策の生きた推進というものはできないと考えております。そういう意味合いにおきまして、それは官僚出身もよかろうし、財界の中からもよかろうが、同時に農民団体代表の中から、あるいは労働団体代表の中から、あるいは中小企業代表の中から等、広範な各層代表を出して審議会構成をはかることが、移住政策を真に地についた生きたものとして推進できると私は考えるわけでありまするが、こういうような考え方が描かれておるかどうか、この点についてあらためてお尋ねします。
  17. 田中榮一

    政府委員田中榮一君) まだ具体的な委員人選というような問題については全然手がついておりません。従いまして、現在はどういうような具体的の人選で行くかということはまだ申し上げることはできませんが、しかし今回の海外移住審議会内閣総理大臣が諮問する最高諮問機関であり、海外移住に関しまして権威ある、また責任ある答申をしなければならぬ諮問機関でございまするので、少くとも海外移住に関しまして実際に知識を持ち、また体験を持ち、またあらゆる点から、いたずらに理論に走らず、また利害関係等に割にこだわらない、広い立場から、高度からこの移住問題を検討し得るような識見のある方と、こういうような考えでおるのでございます。従いまして、お説のような方々も、もしほんとう委員として適当であると思われるならば、おそらくこういう方々委員として任命されるんじゃないかと考えられるのでございます。
  18. 田畑金光

    田畑金光君 これは田中官房長官に念を押した方がいいかどうかということは、私もどうかとも考えまするが、少くとも私の言わんとすることは、一つ政府当局に強く今後の人事行政運営していただきたいということだけは申し上げておきたいと思います。今のお話によりますると、そのような人方の中で、利害にとらわれず、あるいは理論のみに走らず、真に大局に立って移住政策識見を持つならば、広く各層から委員選考等については考えて行きたい、こういうようなお話があったわけであります。一体、私は言葉尻をつかむわけじゃありませんが、利害にとらわれないで、あるいは言説にとらわれないで、真に国事のため大局に立って処理できる人が幾名おるかという問題、おそらく政府が今日まで出しておられる各種委員の顔ぶれというものは、そういう範疇にある人方というのはほとんどないのです。これは今の政府や今の官僚考え方からすると、それはそういう範疇に属するがごとく考えているかもしれぬが、大きな間違いです。これは繰り返して私は申し上げまするが、この間の園田政務次官答弁の中にもありましたし、先ほどの答弁の中にもありましたが、今度の移住政策というものは、従来のよろな観念とは趣きを異にしておると考えるわけであります。やはり広範な各層の世論の上に立った、あるいは国民各層経済生活の中に直結した移民政策というものが推進されねばならぬと考えておるわけであります。ことにこの間の園田政務次官答弁の中には、今後考えられる労働力移民等についても、日本労働界の御協力も願わなければなぬというような趣旨答弁もあったわけであります。また農業移民についてもまさにそうだと、どう考えるわけであります。私はそういう今後の移民政策考えたときに、田中官房長官お話のような、観念的な考え方ではまたこれは失敗すると考えるわけでありまして、まず第一に移住審議会をそのように権威のあるものにしようとおっしゃるならば、私はもう少し従来のような委員選考というものは、基準というようなものは改めるべきであると考えるわけであるが、もう一度この点について、一つ田中官房長官の御答弁を願うとともに、園田政務次官見解を承わっておきたいと思います。
  19. 田中榮一

    政府委員田中榮一君) 先ほど私が申し述べましたごとくに海外移住審議会は実際に効果的な審議会としてこれを運営して行きたいという考えでおりまするので、先ほどお話のような、従来の単に多数の委員を兼務しているような方がこれに入っていただくという考え方でなくして、むしろ実際的にこの海外移住に関して真に経験を持ったような方が、ほんとうに実際の意見をここに申し述べて、またその体験をここに生かして、これを審議会答申の上に反映さして行こうというよう血考え方でおりますので、この点につきましては御意見のほどを十分に一つ尊重いたしまして、今後進めて行きたいと考えておる次第でございます。
  20. 園田直

    政府委員園田直君) ただいまの仰せは全くその通りでございまして、当初設置法改正の案を作成します過程におきまして、この審議会構成は、まず法律をもって審議会を作っていただいて、権威あるものとして、そうしてその中の構成は先般来申し上げましたような理由で、総理大臣答申する諮問案が外交の転換期に応じた一つの理想であると同時に、国家財政の面から逐次その段階を踏めるように、しかも審議会で議せられたことは、直ちに行政面に現われて参りますように関係各省の次官及び議員の方数名、及び学識経験者の中には、ただいままでずっとこれに非常な理解を持っておられて、しかも非常に識見を持っておられる、海外移住懇談会構成しておられる方々の中から数名、及び今仰せられました通りに、移民というものが失業対策ではなくて、りっぱな文化水準を持たれた方が出て行くという意味から、そういう対象になる移民される側の方々代表数名、こういう方々をもって構成したらどうかと最初は考えたわけであります。それがいろいろ折衝の過程におきまして、法律によらずして設置法の改正によって審議会を作ることになりましたので、議員の方々もこれに御加勢をいただくことは、ただいまのところはできませんが、そのほかのことは今申し上げました通りでございまして、全く御意見通りだと私も考え、この点については強く審議会を作る際には、外務省としても内閣意見を具申する所存であります。
  21. 田畑金光

    田畑金光君 いろいろお尋ねいたしまするが、海外移住審議会委員委嘱等は大体いつ頃の見通しであるのか、との点が第一点。第二点といたしましては、ただいま園田政務次官田中官房長官のお言葉を承わりまして、私の考え方に同意を与えられたので、非常に私は力強く考えております。従いまして、今後この委員委嘱に当りまして、ほんとうに今お話のように、国民各層が新しい視野観点に立って移住政策協力できるような態勢がとられるかどうかということを、私たちは監視して参りたいと考えておるわけであります。ことに承わりますというと、事務局は外務省移住局において所管をされる、ということになって参りますならば、ただいまの園田外務政務次官考え方というものは、大いに今後の運営の中に反映されるものと考えるわけであります。そういうようなことを考えて参りましたときに、私は先ほど伺いましたこの日本海外移住振興株式会社法案等についても、順序から申しますと、当然海外移住審議会に諮問して、しかるのちに立法化されるのが当然であったと考えるわけであります。しかしこれは今までのいきさつからいたしまして、今回は時間のズレからこういう形になったのだろうと思いますが、今後この株式会社法運用についてはどういう点を、あるいはどのような問題について、ただいま議ぜられておる移住審議会に諮問をなされるのか、この辺の事情もあわせて承わっておきたいと思います。
  22. 園田直

    政府委員園田直君) 審議会移民全般に関する案を総理大臣答申するのが使命でございまして、移民外交の転換に当ってまず第一に、先般御質問を受けた移民の長期計画などの作成は、これは第一の仕事でございます。従ってまず何をおきましても審議会を早く作ることが先決問題でございますから、法律案のお許しがあれば、直ちにまず第一に審議会構成に取りかかりたいと考えております。なお提案、御相談を申し上げまする株式会社の点につきましては、仰せの通りでございまするが、すでに提案いたす運びになっておりまするので、提案いたしましたのちについては、この法案の許すところの企業投資、あるいはいろいろな企業の援助、こういう問題がございまするので、そういうものに対する長期の計画というものを第一に御相談申し上げたいと考えております。その御相談を早急に願いまして、それに基いて会社の基本方針運営、人事等の面を考えてみたいと考えております。
  23. 田畑金光

    田畑金光君 私は一つ園田政務次官並びに田中官房長官が、海外移住審議会運用について、あるいは委員の任命等について、今後のこれが運用等において、私のただいま質問いたしました、そうして答弁なされた事項に関しまして、忠実に実行されることを監視したいと思いますので、十分一つ意のあるところをくんで、これが運用はあくまでも民主的にはかっていただきたいことを要望いたします。
  24. 加瀬完

    加瀬完君 総理府設置法の一部の航空技術研究所に関する問題は、大体質問も出尽されておるからという委員長の御注意もあったのでございますが、ごく簡単に二点だけ伺います。一点は、提案理由の御説明を承わりますると、航空技術研究の理論的なもの、あるいは技術的なものの向上をさせるということが第一の目的であるというふうに受け取れるのであります。先ほど来の田中さんの御説明などからあわせて考えますと、どうもとの航空技術研究所というものは、航空技術が軍用機技術というものに一方化されるような予測がされるわけであります。そうでありましては、この提案理由の説明中の目的とは、はなはだ違って来ると思われるのでありますが、この点すでに出ておる問題かも存じませんが、もう一度承わりたいのであります。
  25. 田中榮一

    政府委員田中榮一君) この航空研究所設置の目的は、今お示しのような点もございますし、またなるべく各省が経費をダブってこういうものに使うということのむだを省くということがまあ主眼でございます。それでこの航空研究所はそうした軍事的というようなものではなくして、むしろこれを広く産業の発達の方面にこれを使うと申しまするか、将来六ヵ年計画を立てまして、小型ジェット機の原動機の研究、それから機体の研究等もし、でき得るものならば、六年後におきましてジェット輸送機等の研究に移ったらどうか、かような方向でこの航空研究所設置した理由でございます。しこうして、これにつきましては、もちろん各省の御協力のもとに、文部省、それから運輸省、郵政省、それから通産省・それから防衛庁等も全部これに御協力願いまして、この協力のもとに一ヵ所において整備した航空研究所を作って行きたい、これが今回の設置の目的でございます。
  26. 加瀬完

    加瀬完君 一ヵ所で整備した航空技術の研究をしたいということはよくわかるのでありますが、なおそれが産業の発達ということを主目的にして進められて行くということでありまするならば、その研究の主体はどうしても航空技術理論的なもの、あるいは技術的なものということに主体が置かれなければならないと思うのであります。しかしながら、どうもジェット戦闘機とは言いませんけれども、ジェット機をすぐ防衛関係で使用されるものの、にわか仕立てのために、まず先にこの研究が利用されるのじゃないか、あるいは軍用の練習機というものの製作のためにまず先に利用されるのじゃないか、こういう懸念があるのでありますが、そういう点がもしないとするならば、航空技術研究所機構というものも、あるいは構想というものももっと変って、はっきりと学術的な方の重点に置きかえられなければならないと思うのです。これは防衛庁が一番深く関係するという印象がどうしてもぬぐい切れないように思われるのですが、この点もう一度明確にお答えをいただきたいのです。
  27. 田中榮一

    政府委員田中榮一君) この研究所は、御指摘のように主として理論的な方面と技術的な方面の研究が主たるものでございまして、研究内容といたしましては、空気力学、機体、原動機、計測材料・工作・燃料・潤滑油・航空医学、航空心理学等の各分野に関しまして研究を進めて行きたいと考えます。従いまして、これらの研究に従事いたします技術者は、いずれも現在各大学の航空技術を研究して、現に航空技術を研究しておられる教授の方々であるとか、あるいは各航空機製作会社等におきまして技術面を担当しておられます技術者の方々等が、相当この航究研究所の中にも入り、またこれを利用していただきまして、またこれらの方々とも十分に連携をとりまして今後研究を進めて行きたいと、かように考えております。従いまして、製作というよりも、むしろやはり研究ということに重点を置きたいと、かように考えております。
  28. 加瀬完

    加瀬完君 大学などの航空関係の学者たちがこの機関に入り、あるいはこれを利用し、あるいはその方たちと連携するということでありますが、むしろただいまの政府の御答弁のような趣旨であるならば、入るとか、利用するとか、連携するものじゃなくて、大学なり、あるいはこの学者の方なり、そういう方たちが中心になって主体的に動けるよう底機関という性格を持たなければならないと思うのであります。そうであるならば、内閣の中にこれを置く方が適切なのか、大学の研究所のような性格で、ただ予算その他の関係においてもっと政府が力こぶを入れて、学者自身に運営させるといったような方法をとる方がその目的に合うのかということになりますと、どうも私は、あくまでもこの研究所の運営の主体は政府の政治的な方向によって行うものであって、理論的なあるいは技術的な、学者としてはそのワクの中で利用価値のあるところだけへ認めて行くのだというふうにどうしても受け取れるのでありますが、そうではないのでありますか。
  29. 田中榮一

    政府委員田中榮一君) 私の説明が足りませんで恐縮でありますが、との研究所は、将来六ヵ年計画でもし完成いたしましたならば、との研究所を大学も十分一つ利用していただきたい。それからまたかりに民間の製作会社におきましても、自己が用いざる試験設備、研究設備をこの研究所に置いて持ちたいと思うのでありますので、こうした研究設備、試験設備を広く民間側にもこれを開放いたしまして、そうしてこれを利用していただく、それからまた各大学の研究室の方々もこの研究所を利用していただく、それから各省の当面の技術者におかれましても、との研究所を十分に一つ利用してその研究の効果を全うしていただきたい、かような考えでこの研究所を設置した次第でございます。
  30. 加瀬完

    加瀬完君 大へん時間が長くなって恐縮でありますから結論だけ伺いますが、そうすると、この研究所はあくまでも理論的なもの、技術的なものの研究が主であって、防衛関係にさっそく役立てるというふうな意味のジェット戦闘機の製作を促進させるためとか、あるいはその他軍用機の国内生産を何とか間に合わせるためとか、そういう便宜的なものに使うということはないのだと、こう了解してよろしいですか。
  31. 田中榮一

    政府委員田中榮一君) 本研究所は今申しましたごとく、主として理論技術方面の高度の技術あるいは研究をこの研究所においていたしまして、そうしてまたそれを各大学なり各会社各省におきまして十分利用していただく、かような考え設置するわけであります。
  32. 加瀬完

    加瀬完君 次の点を伺います。この研究所で進められる航空技術によりまして、日本のこの種生産機関とある程度の結びつきを立てて行かなければならないと思うのでありますが、この関係はどういうふうにつけて行くのか、この計画あるいは将来の見通し、この点について伺います。
  33. 田中榮一

    政府委員田中榮一君) 申し落しましたが、現在内閣航空技術審議会という、一つの審議会がございまして、この航空技術審議会が中心になりまして、今後わが国としてどういう方面の点を主として研究をし、試験をしていったらいいかということを航空技術審議会において決定をいたしまして、この答申に基きましてこの航空研究所各種の研究、試験をやって行くわけであります。そこで民間会社その他との関係は、民間会社の者があるいはこの航空研究所に参りまして、ここにおきまして十分に理論技術を研究し、そしてまたこの設備を利用きせる、こういうようなことにおいて民間会社との関係を結んでいったらどうかと考えております。
  34. 加瀬完

    加瀬完君 そうすると、その運営が、また逆戻りになりますが、結局中におる技術者たちの研究にまかさせられるということよりは、審議会の決定によって方向づけられるということになるのでありましょうか。
  35. 田中榮一

    政府委員田中榮一君) この航空技術審議会は大体におきまして、たとえば空気力学のどういう点に重点を置いていったらいいか、また機体のどういう点について研究していったらいいかというような専門的な研究の重点をここで研究いたしまして、そうしてなるべく重複を避けまして、そうして主としてこの航空研究所において研究する、同時に大学なり各省におきましても、その航空技術審議会の決定によりまして重点的におのおの研究していったらどうか、かように考えておる次第であります。
  36. 加瀬完

    加瀬完君 審議会構成はどんなようなメンバーになりますか。
  37. 田中榮一

    政府委員田中榮一君) 現在の審議会のメンバーは、会長は内閣総理大臣になっております。副会長は経審長官が副会長になっております。委員には関係各省の次官、並びに現在のこれに関係ある事業会社の社長、または技術方面あるいは理論方面を担当しておられまする各大学の教授等が現在メンバーになっております。
  38. 加瀬完

    加瀬完君 総理大臣、経審長官あるいは事務次官、こういう方たちは名前を私伺わなくてもわかるのでありますが、関係社長というのは一体どういう方々、それからこれに学問的な関係の教授と言いますが、今決定されております。あるいはやがてきめられます方といいますか、そういう方たちのお名前を承わりたいと思います。
  39. 田中榮一

    政府委員田中榮一君) それではお答え申し上げます。民間の方では日本化学工業協会副会長池田亀三郎氏、それから東京芝浦電気社長石坂泰三氏、それから富士重工業社長北謙治氏、日本航空専務取締役松尾静磨氏、それから新三菱重工業副社長荘田泰蔵氏、大体以上の方が民間の方でございまして、大学側といたしましては東京大学教授の兼重寛九郎氏、それから日本大学の教授の倉西正嗣氏、それから日本学士院会員の東大名誉教授の三島徳七氏、それから東京大学教授守屋富次郎氏、東京大学教授永井雄三郎氏、東京大学教授中西不二夫の各先生方でございます。
  40. 加瀬完

    加瀬完君 関係会社の社長、あるいは次官その他大臣、こういう方たちの意見というものは、あるいは出て参りまする議論というものは当然これは生産技術ということにはかかわりがあるでありましょうが、理論的なものとかあるいは技術的なもの、こういう純科学的なものというものからは、むしろそうでない他の目的の条件が多く含まれると思うのであります。それに比べまして大学の教授というものは数においてはるかに少いわけでありますから、との審議会における傾向というものはどうしても政治的な便宜主義というものに押し流されるおそれが十二分にあると思うのです。この点を政府ではどう考えておられるのでありますか。こういうメンバーで進めて参りまして、先ほど御説明のように航空技術理論なりあるいは技術的なものなんという局限されたものだけに純粋に研究が進められる、この研究所の性格をそういうふうに考えられますか。
  41. 田中榮一

    政府委員田中榮一君) 航空技術審議会におきまして、御参考までに申し上げまするが、決して政治的な意図とかそういうものは全然含まれておりません。これは純技術的、理論的もしくは一部におきましては行政的な面にも若干関係しておりまするが、現在までに答申をいたしましたのは二つございまするが、その一つは航空技術に関する重要研究の目標及び方針、こういうことに対する諮問に対しましてそれぞれ答申をいたしております。それから第二の諮問は、これはやや行政的な面にも関係いたしまするが、関係各行政機関の共用に供する航空技術研究機関設置に関する基本方針、これは諮問第二号になっておりますが、これに対しまして各省で持っておるできるだけの航空技術の研究機関を一ヵ所に統合して、そうして経費の節約を省くことが至当であるという答申が出まして、この答申に基きまして今回この航空技術研究所ができたわけでございます。
  42. 加瀬完

    加瀬完君 あまり時間を取っても恐縮でありますのでもう一点、これは外国人は全然、この研究所には外国並びに外国人は関係がないか……。
  43. 田中榮一

    政府委員田中榮一君) 関係ございません。
  44. 上林忠次

    ○上林忠次君 今回できますところの、外務省設置されます移住局と、また総理府にできますところの移住審議会、かようなものができますことに対しまして御忠告と申しますか、心がまえをお聞きしたりお願いしたりするのでありますが、外務省でこれまでやっておりました海外移住協会、あれは種々仕事をやっておりましたが、従来の移民の実績というのは上っておらぬ、先回も申し上げましたように、日本移民というのは世界中でもへたな移民をやっておる、失敗であり、失敗に近いというような過去の業績がありますが、今回総理府外務省にそういうような専門の移民政策を統括するという事務局ができましてまことに慶賀にたえないのでありますが、私はこの日本の苦しい沈滞したときに、特に若い者の気持の現状から考えますと、この移民計画は将来どのように発展するか、大して大きな期待はできないであろうというような過去の実績から考えますところもありますが、現在の狭い土地で押し込められた日本人がきゅうきゅうとしているとの現状から考えまして、この移民が一つのわれわれの国民の将来の発展への緊張さを増すという大きな力を作る原動力になるんじゃないかと考えますのでまあ審議会ができますにしましても先ほどから審議会のメンバーはどういうような人たちにするか、すでにこれは審議会の大きな活躍を願っておるのでありまして、過去の経験、失敗、移民の成功しなかったあの政府の後援の仕方の弱かったところ、いろいろ考えていただきまして充実した審議会を作ってもらいたい。これはただ移民を少しでもよけい出していくということでなしに、日本の今の弛緩したまあデカタンスになっている国民の気持を緊張させる上に大きな一つの力を与えるものであると、さような意味で皆様の一そうこれに対する緊張を願いたいのでありますが、総理府の方と、それからまた外務次官のこれに対する心がまえを、お気持をどういうような気持でやっておられるか、ただ移民を少しでも出していこうというようなおそらくそういうような弱い簡単な気持でやっておられるんじゃないと思いますが、そのお気持を一つ披瀝していただきたいと思います。
  45. 園田直

    政府委員園田直君) 仰せの通り外務省といたしましては、戦後の移民というものが今までの移民であってはならぬと考えております。謙虚に反省いたしまして、今日までの外務省移民というものが単なる外務省所管事項の付随であったかのごとき感がございまして、出先公館におきましても本省におきましてもややもすると単なる事務扱いにされたということは反省いたして照るところでございまして、従いまして今後の外交は今日までの移民の延長ではなくて、ありとあらゆる意味における移民外交の転換期であると考えまして、在外公館の人事の配置、あるいは本省の移民局の設置並びに今後お願いいたしまする移民公社の設立などあらゆる面に新機軸を開く意味においてやりたいと考えておりまするので、今後ともいろいろ御指示をお願いする次第でございます。
  46. 田中榮一

    政府委員田中榮一君) 私から申し上げるのはどうかと思いまするが、先ほどもお答えいたしましたごとくに移民政策というものはもちろんこれは外務省が重点的でやるのがこれが当然であると思うのでありまするが、やはり移民を送り出す国内的のことになりますると、やはり農林省とか、また輸送につきましては運輸省であるとか、それから労働移民につきましては労働省、あるいは各種企業移民につきましては通産省と非常に各方面に移民関係いたしておりまして、こういう点から申しますると、外務省以外の各省のやはり移民政策に対しましては相当な努力をいたしておりまするので、国内的に各省移民に対する努力を総合的に一つ調節いたしまして、そうしてこの移民政策を遺憾なくやるためにはどうしてもやはり内閣というものが中におりまして、十分にその間の調節をとっていかなければならぬと、かように考えまして、今回の海外移住審議会を形においてははなはだおかしなことでございまするが、内閣に置いたのもそこにあるでございまして、まあ内閣といたしましても十分に各省と横の連絡を緊密にいたしまして今後努力いたしたいと、かように考えている次第であります。
  47. 上林忠次

    ○上林忠次君 私、力を入れて先ほど申しましたように、まあそう近い将来に大きな移民日本の国力の発展、あるいは民族の発展に貢献するかどうか、大きな希望は持てないかもしれませんけれども、この沈滞した気持、国内のこれを突破するために、そして国民が移民をしなくても国内であらん限り働き、国力の充実にわれわれ働いていく、またわれわれの生活の向上をはかっていきたい、日本文化の向上に貢献するというような原動力としてどの移民が大きな力になるんじゃないかと、私は考えておるのであります。そんな意味で、まあ少し話は大きくなるかもしれませんけれども、この移民というのはそう簡単なものじゃないのだ、これで一つ気持の刷新をするのだというところまで考えていただいて、そういうようなことをお願い申し上げておきます。
  48. 野本品吉

    ○野本品吉君 一つお伺いいたしますが、われわれはいわゆる太平洋戦争が考えようによっては日本の国土の狭小な、資源のきわめて貧弱な日本に人口の強圧が加わってきた、これをどうするかというところにも基因しておるという見方もできるかと思う。そこで戦後の日本の状態を見ますというと、外国へ行った者が全部引き揚げてくる、いよいよますますそういう人口過剰の状態、加うるに国土がいよいよ狭くなり、資源が貧弱になってきた。いきおい移民という問題が民族の生きる一つの道として考えられてくるということは当然であろうと思う。そこで問題は、かつての日本の民族の海外進出に対しまして非常な猜疑の目をもっておりました各国の人たちが、日本移民政策を強力に推進する、こういうことになったときに、それに対してどういうふうに考えるか、すでにそれに対する反響が現われておるのではないかと思いますが、日本移民政策の力強い推進に対する諸外国の見方、感じ方等につきまして、何かお考えになっておる点がありますか。
  49. 園田直

    政府委員園田直君) 仰せの通りでございまして、移民を推進せんとする最大の障害はかつての日本海外への同胞の進出という一つの政策的な攻略と見られる点が非常な障害となっておることは仰せの通りでございます。特に先般来から御指摘を受けました北ボルネオ島のごときは、北ボルネオの移民を論評するだけでインドネシア方面にも多大な影響を与えるというような状態でございます。従いまして移民を推進せんとするに当りましては、まず国内的な準備を整えるとともに、その諸計画は単なる国内的な計画ではなくして、相手国のあるところでございまするから重要な在外公館の中心部には移民専従の外交官を配置いたしまして、各現地の在外公館にもこれの専従の外交官を配置するなど相手国の了承と納得とによってこちらが逐次計画を進めていくというふうに、計画を立てていくように準備をいたしております。
  50. 野本品吉

    ○野本品吉君 大体政務次官の御答弁で了承はできたのでありまするが、私は国内的な体制を整えることもむろん必要ですし、それからできるだけ移民を送り出すことに努力することも必要でありますが、ただいまもお話のございましたように、日本の新しい移民というものがどこまでも平和主義に徹した移民であるというような点についての諸外国の理解と協調とを求める機構の方と言いますか、そういうことを先に考えるべきだと思うのですが、どうでしょう。
  51. 園田直

    政府委員園田直君) 仰せの通りでございます。
  52. 野本品吉

    ○野本品吉君 そこで先ほどの御答弁を伺っておりましたが、これは私は聞き誤まりであるといけませんからあらためてお聞きしますが、アメリカが日本移民に対してどういう形でか協力しておるというようなことをお話しになりましたが、もう少し具体的に内容をお示し願いたい。
  53. 田中榮一

    政府委員田中榮一君) これは、あるいは外務政務次官からお答えするのが至当であろうと存じまするが、今回の海外移住振興株式会社のできましたそのもとは、アメリカのナショナル・シティ・バンクとそれからチェス銀行と、アメリカ銀行の三者が日本に対しまして千五百万ドルの日本海外移民振興のための融資をいたしました。その会社に融資いたしまして、政府がこれに対しまして全面的に保証をいたすわけでございます。そしてこの借りました千五百万ドルを五ヵ年間で貸すのでございますが、この金によりましてこの中南米方面に対しまして日本がある一定の数の移民の世帯を送り込むわけでございまするが、これに対しまして先方におきましてこの営農をいたしまする営農資金を貸し出す、それからまた現地におきまして事業をする場合におきましてこの事業に対する援助をいたします。それからもし必要がありと認むる場合におきましては、移住会社そのものが現地におきまして事業を経営いたしまして、そしてこの移民の受け入れ体制を拡大し、またこれを整備すると、それによって日本から移民を受け入れる、かようなこの資金面に対する協力によって移民の数を増加させるということでございます。  そのほか政府といたしましても渡航費を貸し出すとか、それから今回政府におきまして一億円の出資をいたしまして、この会社の資本金を助成する、それからまた会社自体におきましても社債を募集して事業資金・運転資金の一部とさせる、こういうような資金面でございまして、このもとがやはりこのアメリカからの三銀行の移民受け入れに対する一つの援助という形ででき上ったのでございます。
  54. 野本品吉

    ○野本品吉君 今の事柄は私としては非常に深刻に考えさせられる問題があるわけなんです。と申しますのは、アメリカが日本の人たちを主として中南米へ移住させるために千五百万ドルの金を移住振興株式会社の基金として出してくれる、そして営農資金を貸し出したり、事業の援助をしたり、受け入れ体制の拡大強化のために骨を折ってくれる、これはまあ一応けっこうなことですが、私はこれと関連してすぐ頭に浮んで参ります問題は、アメリカ自体は日本人の入る余地はないかということです。ほかの国へはたくさん行けと、おれの国へはそうは入れないぞ、もしそうだとするというと、これはまことにもって気持のよくない問題なんで、私はそういう勉強が足りませんからよくはわかりませんが、終戦後におけるアメリカ合衆国が日本人を受け入れることに対して法律的に制度的にまた実際的にどういう扱いをしておるか、また今後どういう扱いをするであろうかということについて一つはっきりしたお考えをお答え願いたい。
  55. 園田直

    政府委員園田直君) ただいま申し上げました借款は、中南米への移民のための借款ではございませんので、単に移民としての経費としての借款でございます。アメリカについての移民はただいま実施しておりまするのは難民救済移民という名目とそれから一般の移民の割当がございます。
  56. 野本品吉

    ○野本品吉君 それで終戦後日本からそういう向うへ定着することのできる移民としてどれくらい行っておりますか。
  57. 石井喬

    説明員(石井喬君) 私からお答え申し上げます。これは概略の数字でよろしゅうございますか。そういう詳細の数字は後ほどこれを印刷してお手元に配付いたしたいと思いますが、終戦後参りましたこの人間は実は数は非常に多いのでございます。ところがこの占領下と申しますか、当初のところは私どもの万に確たる資料が残っておりませんので、全部で何人になったか、よくわかっておりませんが、私どもが出かけますようになりましてからは、昭和二十七年に参りましたのが最初でございまして、これが現在まで政府の手で参りました者が約五千名をこえております。そのほかに五千二百九十三名というのが政府から渡航費を借り受けまして中南米へ参りました移民の総数でございます。そのほかに自費渡航者、あるいは現地の呼び寄せにかかる者、こういう者がおそらく戦後ブラジル等で五千名をこえる。
  58. 野本品吉

    ○野本品吉君 私の聞いておるのは、アメリカ合衆国のことを聞いておる。
  59. 石井喬

    説明員(石井喬君) アメリカのこと、それは申しわけありませんでした。合衆国の方はただいま政務次官からお話のございましたように、一九五二年に向うの移民法が一部改正になりまして、それ以来年間百八十五名の入国の割当がございます。これは例の花嫁その他で一ぱいになりまして、一般の人は向うにはほとんど行けないというのが現状でございます。そのほか、例の難民救済法による移民が本年四十八名向うに参りました。これが今後どのくらい参りますかわかりません。向うへ定着するために参りました者の数ということになりますと、アメリカはほとんどないと思います。
  60. 野本品吉

    ○野本品吉君 そうすると、もしアメリカ合衆国、北米へ行きました数が戦後わずかに二百名そこそこということなんですが、これはかつての日本移民を喜ばなかったような考え方が今でもアメリカに依然としてあるということでしようか。
  61. 石井喬

    説明員(石井喬君) これはやはり日本から向うへ参りました者、ただいま二百何名というお話でございましたが、実は兵隊の花嫁になって参りました人間の数は相当多いと思います。私、今つまびらかに数字をよく知りませんが、それ以外の向うにいわゆる戦前に参りましたような移民は労働者として参った者が多いのであります。向うの労働組合は非常に強力なものがございまして、これがやはり国内の労働者の職業を確保するというような意味からいたしまして、他からの労働者の移入ということについては今でも喜ばないというのが現状でございまして労働者移民としてはヨーロッパ各国と多少取扱いが違いますが、日本からは全然……、いわゆる有色人種はほとんど入ることはないというふうに考えております。
  62. 野本品吉

    ○野本品吉君 これはきわめて重大なポイントであろうと私は思うのです。自分の国は門戸をかたく閉ざして他に行くことに協力しようということになると、どうも私はその辺のことが了解できがたい点があると思うのですが、政府としては、私はこれ以上申しますというと、いろいろ影響するところもあるかもしれませんので遠慮いたしますが、とにかくアメリカ合衆国が日本からの定着移民に対して旧態依然としてこれを拒否するような態度をとりつつ、しかも中南米その他への移住に対して協力する、これに対してどういう説明をされるか、どういうふうに考えられるか、これらのことにつきまして、私は外務当局が今後アメリカとの間に一つの問題として話し合いを進めることを希望いたしますが、そういう用意はありますか。
  63. 園田直

    政府委員園田直君) この点につきましては外務省の外交というものが単に今までの延長でただブラジルとか中南米とか、そういった惰性でいっておったような傾向もございますので、先ほどから申し上げましたように、近い将来におきましてワシントンに強力な移住専門の外交官を配置をして、ただ単にアメリカと日本との国交調整という名積の問題ばかりではなく、将来にわたる移民の問題については強力に話し合いを進めていく必要があると考えましてその計画を持っております。その点につきましては、こちらにもやはり反省すべき点があるというように考えております。なお、アメリカにつきましては今も申し上げました通りに、その一番の障害は労働組合あたりにあるように思いますので、これにつきましてはすでに了解を得る、手続をいたしておる最中でございます。
  64. 野本品吉

    ○野本品吉君 大体お気持はわかりましたが、くどいようでありますけれども、この問題の解決と申しますか、推進について外務当局が熱意ある努力を傾けられるということは私は非常に望ましいことで、この点を特に希望申し上げて私の質問を終ります。それから賠償の方に関することはあとでよろしゅうございます。
  65. 木下源吾

    ○木下源吾君 お尋ねしますが、航空研究所技術研究所、これに類したものは前にあったのですか。
  66. 田中榮一

    政府委員田中榮一君) お答えいたします。戦前にありましたものを御参考までに申し上げておきたいと思います。海軍関係におきましては第一、第二技術廠、第一燃料廠、陸軍関係におきましては、第一ないし第八陸軍航空研究所、多摩陸軍航空技術研究所、陸軍航空審査部、燃料廠、気象部というものがございます。これは陸軍の関係のものでございます。それから内閣におきましては中央航空研究所というものがございました。それから逓信省関係におきましては航空試験所、それから文部省関係におきましては航空研究所、これは東大に付置されてございます。そのほか、東大、京大その他五大学に航空学科の研究室というものがございました。
  67. 木下源吾

    ○木下源吾君 この中で学問的研究と技術研究というものはおのずと別々になっているのですか。
  68. 田中榮一

    政府委員田中榮一君) 戦前にございました各種の研究所の中で最も理論的に技術的に進歩いたしておりますのは、文部省の航空研究所でございます。それに次いで内閣の中央航空研究所、逓信省の航空試験所というものがその次に理論的血方向を主としてやっております。
  69. 木下源吾

    ○木下源吾君 そうしますと、今度の何はこれまでにはいかぬでも、これらを全部総合したものを内閣に一つ置こう、こういう意味ですか。
  70. 田中榮一

    政府委員田中榮一君) 今回の計画はこれらのものを含めまして、相当戦前よりももっと権威のあるものを作りたい、かように考えております。  現在私どもの方で計画いたしておりますのは、六ヵ年計画を目途にいたしておりますので、六ヵ年後におきまして、もし私どもの理想がかりにかなえさしていただいたならば、おそらく戦前のこれらのものよりももっともっと整備したものがで登るのじゃないかと考えております。
  71. 木下源吾

    ○木下源吾君 そうしますと、これは六ヵ年計画の裏づけの法律とそういうふうに了解していいのですか。
  72. 田中榮一

    政府委員田中榮一君) 裏づけと同時にこれが第一段階になる法律であると考えております。
  73. 木下源吾

    ○木下源吾君 戦後、航空機のことについてはアメリカからだいぶ日本は制約されておったと思うのでありますが、こういうことをどんどん進めていくことには今は一向アメリカの制約はないということですか。
  74. 鈴江康平

    政府委員(鈴江康平君) 航空機の研究及び生産は終戦頂後ポツダム勅令によりまして禁止をされておりましたのですが、昭和二十七年四月二十六日にこのポツダム勅令が廃止になりました。その以後は自由になし得ることになっております。
  75. 木下源吾

    ○木下源吾君 今現に航空機などは日本で……、日航機などはずいぶん私も乗ってきているのですが、これはアメリカから借りている、操縦士はアメリカの操縦士、それで三十五万円も払っている実情だということを聞いているのでありますが、そういうことが、日本航空機日本技術者、そういうもので自由にやっていかれないのかどうか、ちょっとそういうことをお尋ねしたい。
  76. 鈴江康平

    政府委員(鈴江康平君) 今お話がございましたように、確かに現在の日航の航空機はアメリカから輸入してやっております。それからまた技術者も外人の操縦者が多いようでありますが、航空機につきましては先ほど副長官も申し上げましたように、日本でそういった技術が戦後とまっておりましたために、直ちに日本でそれを作るということになりましても、とうてい今の段階においてはできない状態でありますので、ああいった航空機輸入している状態でございます。それから操縦者につきましては漸次日本人を訓練いたしまして置きかえていく方針であるということを聞いております。それから現在わが国でやっておりますのは、小型の練習機といいますか、連絡機程度のものが幾分作りつつある、こういう状況であります。
  77. 木下源吾

    ○木下源吾君 それは今外国から購入しているのか借りているのか知らぬが、ああいうようなものを日本国内で独自に作り得ると、そうして持ち得るということ、それから技術者も従って日本人がやるというようなことは一体どのくらいの時日を要しますか、今のこういう研究などをおしやりになって。
  78. 鈴江康平

    政府委員(鈴江康平君) ただいまのところ、この研究所が六ヵ年計画で完成の予定でございますので、もちろん研究所がで巻上りましてから研究を開始するというのじゃなく研究所を建設しながら研究をして参りますので、六ヵ年後……はっきりと申し上げることはちょっとむずかしいと思います。六ヵ年後間もなく、おそらく現在の輸送機程度のものは作り得るのじゃないかというふうに考えております。ただ需要面等もございますので、生産費の方で果して間に合うかどうかと、外国輸入しました機械に比べて日本の方が安くできるかどうかということはちょっとわかりかねるのでございますが、少くとも作り得る技術だけは、六ヵ年を出て間もなくそういうものができるのではないかというふうに考えております。
  79. 木下源吾

    ○木下源吾君 この技術を研究せられるのだが、同時に技術を研究したものを実地にこれは応用すると、そういう関連はどういうようにとの計画の中にあるのですか。
  80. 鈴江康平

    政府委員(鈴江康平君) この研究所におきましては、航空機生産いたしまする基本的な技術はここで研究をし、獲得をして行くということになりますが、それを生産いたしますのは当然各生産会社でございますので、その間の連絡はもちろん十分とって行く予定でございます。そうしてこの研究所の研究いたしました成果は、各航空機生産会社に提供するということになりますが、同時にまた各生産会社が機体を作りまして、試作をし、それを実験をいたしたいという場合には、この研究所の施設を貸与するということで、その間の連絡をはかって参ります。それからこの研究所の運営につきましては、先ほど副長官から御説明がございましたように、航空技術審議会というものが内閣にございまして、それがこの研究所の運営方針審議しておりますので、その中に生産会社代表者もおりますので、この研究所と連絡することについていろいろ注文がございますれば、そこで述べていただくということになっております。
  81. 木下源吾

    ○木下源吾君 この研究所で研究したものは逐次会社の方で実用に供されるのですね、そうしてほんとう航空機の発達のために寄与すると、こういうふうに了解していいわけですね。
  82. 田中榮一

    政府委員田中榮一君) お話通りでございまして、ここで研究した結果を大学、会社その他各省方面に報告をいたしまして、これを十分に一つ利用していただきたいと、これがこの研究所の目的でございます。
  83. 木下源吾

    ○木下源吾君 今ちょっと考えられるととは、これらの生産会社というものはまあ幾つかあるわけですが、そういうものに補助金か何か出すと、そういう民間というか、そういう方面でやらしたらどうでしょう、そういうことを考えたととがありますか。
  84. 田中榮一

    政府委員田中榮一君) 御案内のように航空機の試験研究というものは非常な高価なものでございまして、もちろん現在の航空機製作会社にもある意味試験機関というものは持っておると考えておりまするが、しかし製作会社自体といたしましてもやはりどこか一ヵ所国において精巧なる試験機関を作ってほいしというような希望を持っております。それからまた各省、また各大学等におきましても、とうてい各大学、各省だけでは整備した試験機関というものは持ち得ないので、やはりどこか一ヵ所に優秀なる、しかも全く整備いたした試験機関をぜひ持ってほしいと、こういうような希望もございまして、従来これを作るまでには約三ヵ年くらいいろいろ紆余曲折がございましたけれども、やはり各省といたしましても、できれば自分の所に持ちたいという気持があったと思うのでありますけれども、しかしそれではなかなか航空試験所というものはできませんので、内閣に一ヵ所整備したものを作ってほしい、こういう各省の希望がここに結集されまして今回の試験所ができることになったわけであります。そういう各会社に補助金なんかを出しまして同じようなものを各社に作らずに、できるならば一ヵ所に経費を集中いたしまして模範的なものを作った方が国家全体として考えましても最も適当ではないかと、こう考えておるわけであります。
  85. 木下源吾

    ○木下源吾君 各会社も皆おのおのやっており、政府各省いろいろあるやつを経済的に一ヵ所でやるということですが民間の各社のやつも一ヵ所でやるようにすればもっと経済的にできるのではないか、ことにこういうものは、できるときはいろいろうまいことを言ってこしらえるけれども、いざ予算となる、予算がないからとか、気象台みたいにあんなに定点観測が大事だといっても、予算が出ないというようなわけで必要欠くべからざるものがたくさんあっても、この予算ではできない、あの予算ではできないということで、しかも研究者が十分研究ができないというようなことでは、趣旨に沿わないのではないかと、こう私は考える。何でも自分のかさの下にしょい切れないほど集めて、そうしてやることも、それは一つの方法かも知らぬけれども、もっと民間というものをとり入れて、組織を大きくして、幾らでも発展して、幾らでも応用できるような組織の方向に持って行く方が私はいいのではないかと、こう考えるのですが、そういうようなことが論議されたことはないのですか。
  86. 鈴江康平

    政府委員(鈴江康平君) 確かにお話のような議論もございましたのですが何分にも航空研究施設と申しますと現在の音速を越えるような速さの飛行機を実験するということになりましてもその風洞一つだけで十五億とかあるいは二十億かかるというような状態でございます。それでとうてい一つの民間会社が持つということもできませんし、また航空機生産会社は現在四つか五つかございますけれども、それらも現在の飛行機の需要に対しましてそれだけの施設をするということはとうていできないというような状況でございますので、それからまた一方その研究所を使いますのも、民間の生産ばかりでなく、たとえば運輸省において外国航空機を買いましても、その性能検査をしなければならぬ、そのために技術を必要とするという研究もあるわけでございますから、国もやはり研究を必要とする、そういった観点から民間も国も両方で使えるというものを作りたいといろわけでございます。それで今申し上げましたように、民間ではとうていそういった金もなかなか捻出できないものでございますから、これは国がせざるを得ないだろうという観点考えたわけでございます。外国の例を見ましても、航空機生産の非常に発達しておりますアメリカにおいてすら、やはりこういった航空の研究は大統領の直轄のもとにおきまして、大きな研究所を国が持って、それを国のためにも使い、また民間のためにも使わしているというのが実情でございます。ほかのイギリスやあるいはフランス、あるいはスエーデン、スイスというような国でも大体同じような方法をとっておるわけでございます。
  87. 木下源吾

    ○木下源吾君 ただ私は、各省のやつを一つにまとめると、これは非常に口でいえば経済的で便利でいいようですけれども、この前の黄変米の問題を一つ参考にすると、農林省では試験を一つもしておらないのだね、それでやっておるところは厚生省で、それでいいとか悪いとか、ややともすると両方対立するようなことで、かえってそのために実効が上らぬわけですね。今度これからおやりになることは、やはりそういうセクトではなくて、総合的にそしてみな責任を持って日本の発展のためにやると、こういうことがいいのだが、まだそれができておらぬのですよ、役所のセクトがあって。そういうところを私は心配するのです。それよりもむしろこの機会に、民間までも拡大して、そうして組織面においてもっと自由に民主的に入れてきて、それを見ておって実際によければ補助金をやるあるいは何をやるということにして、いろいろ援助を与えるというようなことをやった方がいいのではないか、今までのような昔のしきたりのものでほんとうに効果が上るかどうか、それを懸念するのですが、そういう点には心配要りませんか。
  88. 田中榮一

    政府委員田中榮一君) 最初に私がちょっと簡単に御説明したのでありまするが、航空研究所は現在の——少し政府考えておるところは先のことを考え過ぎたかも存じませんが——現在のプロペラ式の航空機ももちろん研究はいたしまするけれども、この航空技術研究所の主たる目的はジェット機の機体であるとか、航空力学とか、そういう方面を主として研究いたしまして、おそらく今後六ヵ年のうちにおきましては航空界も相当技術が変革されるものと考えまして、まあ大分現在おくれておりまするが、六年後におきましてジェット機の機体、力学その他の研究をで送るだけ世界水準にまで持って行きたいというのがこの航空技術研究所の念願でございまして、かような点からいたしますると、現在の航空機製作会社政府が何がしかの援助金を与えまして、それでも相当役に立つとは考えておりますが、しかし将来の日本航空技術の水準というものを考えますると、やはりこうした行き方で行かなければ日本航空技術の水派というものは向上できないと、まあかような考えのもとに実はこういう計画を立案いたしたのでありまして、仰せのように各製作会社に現在の製作水準、現在の技術水準を向上させるために何がしかの補助金を出してそれを向上させるのも、現在の航空技術の永仁向上のためにはそれも一つの方法だと考えておりますが、日本の将来の航空技術の水準向上という点から申しますると、どうしてもこうした行き方でないとなかなかできないものでございますから、一応こういう考え方をしたわけであります。
  89. 木下源吾

    ○木下源吾君 まあ御趣旨はだんだんお伺いしたのですが、それではこの研究に従事する職員というか、学者というか、そういう人たちの待遇について、給与も身分の保障も従来通りのようなことを考えておられないで、特別に何かこういう人たちを、今あなたの言うように航空技術を急速に世界水準に引き上げ、一方においては権威ある機関とし、権威あることをやらせるためには、それに必要なだけの待遇等のことも考えておるのかどうか。
  90. 田中榮一

    政府委員田中榮一君) 優秀なる技術者を獲得するためには最も優秀なる待遇条件というものが必要であるということは、もとより私どもも考えておるのでございまするが、ただ、現在の財政状況並びにいろいろ各省の人件費の振り合いからいたしまして、まあ優秀なる待遇ということはとうてい現在の状況では考えられぬのでございまするが、この点はわれわれといたしましても要するに研究が十分でき得るようなことをしてあげるごとが、これが技術者に対しましては最上の方法ではないかと考えておりまして、でき得る限り容易にまた好む研究ができるようなことを財政的に一つ十分われわれが心配し、努力をしたい、そうしてこれらの技術者が十分な満足を持って研究ができるようにしてあげたいと、かように考えておるわけであります。そこで、現在いろいろ各方面のこうした方々を物色いたしておるのでありまするが、ただ待遇が非常にいいかと申しますると、御指摘のようになかなか待遇というものが十分にできないのでございまして、特に悪いことはございませんけれども、待遇は非常にいいということはございません。
  91. 木下源吾

    ○木下源吾君 まあそれはそこらにして、それならこの航空技術審議会ですか、この委員というのは何か報酬があるのですか。
  92. 田中榮一

    政府委員田中榮一君) この航空技術審議会は民間の方だけに若干の手当が出ておりまして、そのほか公務員に対しましてはほとんど何も出ておりません。
  93. 木下源吾

    ○木下源吾君 民間といえば大学校教授も含むのだろうと思うのだが、やはり同じですか。
  94. 田中榮一

    政府委員田中榮一君) 大学教授の方々には、従来はあまり出てなかったのでございまするが、最近は車馬賃というような名義で若干の実費弁償の程度で支給されております。
  95. 木下源吾

    ○木下源吾君 私は、次官だ総理大臣会社の社長だといっても、これはむしろ出してもいいと思う。大学教授に至っては、この間も濃縮ウランの問題で研究しておる大学教授なんか、実情はひどいのだね。だからこういう人たちには、ただ名前で委員なんといっても、キンギョみたいに水ばかりで生きていられないのだから、こういうことは考えてくれんければ、いい答申なんというものは実際に出てきませんよ。私どもは今ここでは一生懸命になにして、ただ義務的に作ろうとするようなことを言っておられるように聞えるのだが、その内容というものは今まで作ったものはみなそうなんだ。だからそういう点を十分に裏づけてもらわなければ、作るだけ作って、賛成しておられんと思うのですよ。これは十分にそういう点は考慮してもらわなければいけないと思う。  次に私は移民の問題ですね。この移民はこの間からいろいろ言っておるが、何というか、政府方針といいますか、園田さんに何べんも聞いておるのですが、大体内閣としてこの移民移民地における同化の政策をとるのか、やはり民族の保存というような政策を根本的にとるのか、こういう点はどういうふうに考えておるか。私は移民はやはり同化という点まで進まぬと、何かの機会にいろいろ引き揚げの問題が起ったり、あるいはそこの所の赤化の場合にそれを防遏するための移民とか、いろいろ出てくるわけです。そういうことを一切ひっくるめて同化政策であるということになれば、赤かろうが青かろうが、私は一向差しつかえないと思う。民族保存といいますか、そういう意味で進めて行くのか、同化という点で考えておられるのか、これはまああなたに突然お聞きしてもなんだと思うのですが、これはやはり政府は一つの方針を持つべきだと思うのです。何かお話し合いになったことがございますか。
  96. 園田直

    政府委員園田直君) ただいままでしばしば検討もいたしておりまするし、そういう方面に向って研究もしておるところでございまして、あくまでこれは同化政策をもって進まなければならぬ。日本民族の足場を築くという点であったならば、移民問題は断じて阻害されると考えております。そういう点から、実は今度の設置法並びに移民会社等法律案を提出するに際しましても、出て行く農業移民企業移民等によって関係各省が直接向うと折衡するなどといういろいろな共管問題が出て参ったのでございまするが、私はそういう点から、部内におきましても部外におきましても、まことに卑猥な言葉でございますが、これは養子にやるか嫁入りさせるかの仕事であるから、向うに入れたならば向うの国民として向うの国家の状態に従って生活をして、破談になった場合に外務省が責任を引き受けなければならぬという筋合いのものであるから、向うに入ったあと関係があるからといって農林省がその指導をしてみたり、あるいはその他の関係各省が指導したりするというのは従来までの移民であって、これは誤まりであって、これは変更しなければならぬという点をずっと主張してきたのであります。  なおこの際、先般御質問いただいまして調査して御報告申し上げると申しました松原機関の損害補償の問題は、その後調査いたしましたが、これの損害を外務省並びに政府は補償いたしておりません。ただ松原機関の仕事によって相手国の政府に支払い義務が生じ、その支払いができないためにいろいろな問題が起っております。その問題を解決するために報償費を存外公館が若干支出しておりまして、この報償費の使い方その他については、十分注意をしなければならぬ問題でございまするが、支出並びに費目等の事務的なことにつきましては支障がございませんので、御了承願いたいと存じます。
  97. 木下源吾

    ○木下源吾君 今の方針私も結構だと思うのです。そうなければならぬと思うのですが、これは園田さん一人の考えじゃ駄目なんです。政府のやはりなんで、そうして外務省の役人さんたちもやはりそうお考えにならなければならないと私は思う。従ってその問題は具体的に、しからば農業移民なら農業移民にどこまで、どの限界まで、外交においては一体政府が力を入れてやるのか、向うへ行ってその人たちが開墾なり手起しして生産を上げる。とてもこれではいま十年、十五年たたなければ農民が自立できないのです。だからしてそこの土地を政府が、あるいは公共の力によって耕耘する、こういうことが必要になってくる。そうすると賠償ならば、荒蕪地に入って起こして、やれば、初年度は一反歩から三俵、二年度は五俵、その次は八俵ということにだんだんなりますけれども、一たび排水あるいは客土をやって、いろいろそういうふうに耕土的に手を加えてやれば、当初から十俵なり、次の年は二十俵なり、こういうように生産できるわけなんです。この点について政府一体移民に対して、つまりそういう資金は相手国が本来ならば出すべきだと、こういうように私は考えるのです。それで、そこまで行って、一年なりあるいは一年半なりの定着するまでのものはアメリカから金を借りて、それを渡してやろうが、あるいは政府から貸してやろうが、それは私はそういう限界が必要だと思うのです。その点について、今現に行いつつあるところの外交において、相手国はどういう状態にあるか、あるいはそういうことに対してはどういう考えを当局がこっちで持っておるのか、そういうことをお聞きしておきたい。
  98. 園田直

    政府委員園田直君) 今のことにつきましては、最初から申し上げますと、まず第一に選定の問題がございます。移民を選定しまして、移民されるに先だって、これに訓練を与える期間がございますが、その訓練の時期からすでに変ってこなければならないと考えます。農業移民にいたしましても、日本の農業と向うの機業は全然変っておりまするし、しかも短期間にその技術というものも訓練できるわけじゃございません。従って移民される前の訓練の重点というものを、今までと変えて、相手国に同化するために、相手国の国内事情に関する教養あるいは簡単なる語学、こういうものを移民される方々に普及伝達をするという方針に切りかえなければならぬと考えて、これはそういうふうに具体的に研究中でございます。  なお、向うに行きましてからは仰せの通りでございまして、向うに行ってから若干年間の資金及び報償、こういうものは一つは相手国に対して条件を有利にするように外交折衝によって進めまするし、その後また向うに養子に行ったといいながら、この点についてはいろいろ相談をしなければなりませんが、われわれみずからも借款いたしました金をもって、その間の資金なり生活の保証金を貸し付けるように考えております。ただその際に注意をしなければならぬことは、相手国に移民を移植いたしましたあとまで、いろいろ世話をすることと指図をすることの限界というのが非常にむずかしいのでございまして、先ほどから申し上げました通りに、将来の移民は同化政策をもってやらなければならぬばかりではなくて、日本の今までの移民の最大の障害は、日本が外へ出て行って自分の国の出先機関を作るのだという印象が、ことごとくこの移民を妨害いたしております。従いましてそういうお世話をするに際しましても、公社などという政府の直接機関をもってお世話をすると、そういう誤解を受けるばかりでなく、また機構の中からおのずからそういう間違いを来たしまするから、そこで今度お願いをするのは、会社という形態でそういうお世話はするが、政府が直接指図をしたり相手国の誤解を受けるような、いろんな政策内臓ことはやらないという面から、こういうような会社案をお願いした次第でございます。
  99. 木下源吾

    ○木下源吾君 まあいずれにしても、今過渡期であるから、いろいろ徹底したことはできないと思うのでありますが、移民問題は日本の位地を位地づけするために、非常に対外的に重要だと思うのであります。というのは、口でただ平和移民であると言っても具体的にはどういうことをするのかという問題です。あるいはまた技術移民である、この技術移民は、賠償と労務をもって弁償するという問題と、どういうような関連が一体生じてくるのか、いろいろ問題があろうと思うのです。で今一番の問題は、日本の人口問題解決とかいろいろいうが、アメリカのつまり極東政策日本政策というか、低賃金政策日本に対する植民地の市場としてのこの面を、何か出て行けばそういう搾取あるいは抑圧から逃がれられるのだ、こういうように一般的に考えられているものがあるとするならば、私は相当これは考慮を要する問題じゃないか。で、今国内において人口の多いということもさることながら、アメリカの日本に対する植民地政策というか、従属政策というものがいろいろな面に弊害をもたらしておる。そうして人口が多いということよりも、低賃金というところに問題があるわけなんです。これを根本的に解決する一つの方針政府が立てないでやれ移民であるとか何であるとか、こういうようなことだけではこの問題は処理できないのじゃないか、こういうように考えるのです。この点についてはどうですか。いろいろの問題にからんでくる。今の移民問題でも会社の資金はアメリカから出してもらうのだ、援助というと非常に耳ざわりがいいのですね。ところがアメリカ政府日本政策というものは、今日までことごとく援助という名前によって、実際は搾取、実際は抑圧だ、こういうことに言えば言い得られるような政策で来ているわけです。ですからこの会社がアメリカから資金を仰ぐということは、それとの関連も十分考慮しておやりになっておるかどうか、こういう問題ですね。移民を向うに送ってまでアメリカの日本政策に対する重荷をしょって行かなければならないような、そういうことに対しては政府は考慮してやっておるのかどうか。
  100. 園田直

    政府委員園田直君) 十分考慮いたしております。この借款の当初の経緯は、受け入れ機関たる機関機構あるいはその他についてもいろいろ条件があったようでございまするが、そういうことでは、いろんな制肘を受けたり、あるいはまた一つの商業政策の面からの財政投資の代行機関をわれわれがするようなことがあっては大へんでございまするから、十分注意をいたしております。ただいまのところ政府が元利の支払いさえ保証すれば、あとは何ら条件はついていない、こういう段階でございます。
  101. 木下源吾

    ○木下源吾君 最後に平和移民の問題についてですが、要するに平和移民である限りにおいては、相当に現実の問題と、もう一つは考え方の問題がある。そこで政府は今ほうはいと世界に起きておる平和運動、こういうものに対して外務省はどういう形でこの運動を理解しておるかどうか、もしもそういう方針でもあったならば聞かしてもらいたい。
  102. 園田直

    政府委員園田直君) 平和運動は主義思想を問わず世界の趨勢でありまして、平和を願う問題は各国民の共通の念願でございます。従いまして政府といたしましても平和を念願し、平和を維持するための諸施策を進めることは当然でございまして、そういう点については熱心に推進して行きたいと考えております。
  103. 木下源吾

    ○木下源吾君 ではお伺いしますが、平和の世界集会、いろいろの集会に対する旅券の場合、これに外貨を割当てるについて外貨のつまり順位といいますか、商業に要する外貨を使う、いろいろそういうものがあるのですが、その順位に対してはどういうような取り扱いをしておられるか。
  104. 園田直

    政府委員園田直君) ただいまの発言と矛盾するようではございまするが、平和委員会集会出席のためのドルの割当はただいまのところ今度おいでになる方にも、国会から行かれる方以外にはいたしておりません。他は優先外貨またはギャランティを持って出席をされておる状態でございます。これは御承知のごとく一年度の割当が二百万ドルでございまして、いろいろな政府代表者あるいは大臣等がいろいろな外交折衝のために海外に旅行する分まで含めまして二百万ドルでやっておるわけでございまして、審議会を作ってやっておりまするが、ただいままで渡航の旅券そのものが問題になっておったことはよく御承知の通りでございます。今日そのような面をよく考えまして、特に今の御質問は主義思想の異なる国家への旅行に対する渡航の件、これも含めての御質問だと考えておりまするが、今までは特に共産主義圏に対する旅行は特殊な者以外は許可しないという原則で審議をやってきたようでございますが、今日におきましては、メーデーの渡航許可を初めといたしまして、やや行き過ぎなどという部内の批判も私みずから受けておることもございますが、私は、私の信念といたしまして、そういう方面に協力することは決して主義、思想の問題ではなくして、これは一つの趨勢であると考えてそのようにやっておるわけでございます。ドルの割当につきましても、今度初めて平和委員会に行かれる方に正式にドルの割当をやっております。将来ドル外貨の使い方について余裕が出てきたならばそういう面も考えなければなりませんが、これは主として大蔵省が主管をいたしておりますので外務省意見はごく一部でございます。旅券の点につきましては、仰せの通りに逐次やっておる所存でございます。
  105. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 総理府設置法の一部を改正する法律案に対しましては大体質疑も終ったようでございますから、午後は外務省設置法の一部を改正する法律案について質疑を続行していただきます。  なお、川島行政管理庁長官は衆議院において委員会及び本会議に出席される見込みでございますから、川島長官の出席を待ちまして、定員法の総括質疑を続行したいと思います。  午後二時まで休憩いたします。    午後一時四分休憩      —————・—————    午後二時三十九分開会
  106. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 休憩前に引き続き、これより内閣委員会を開会いたします。  外務省設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑のある方は順次御発言願います。
  107. 田畑金光

    田畑金光君 賠償問題についてお尋ねしたいわけでありますが、今回アジア局の中に賠償部を設置せられたわけであります。承わりたいことは、この権限、事務分掌についてでありまするが、今回の国会に各省設置法の一部改正法案が出ておるわけであります。たとえば建設省の設置法一部改正法案を見ますると、東南アジア方面からいろいろな技術の発注が予想せられてくるということ、あるいはまたビルマの賠償問題、経済協力協定の締結とともに役務賠償等が考えられておるということで、これらの事務に関しまして、建設省においては大臣官房において処理をするという法律案も出ておるわけであります。さらに運輸省設置法の一部改正法案をみましても同様に、先般フィリピンとの沈船引き揚げに関する中間賠償協定が成立して、こういうような役務賠償あるいは、ビルマ連邦との協定締結に伴う賠償問題が発足したので、これも運輸大臣官房において処理をする、こういうようなそれぞれの法改正案が出て参っておるわけであります。経済審議庁設置法の一部改正法案を見ましても、同様に賠償事務というものが取り上げられて参っておるわけであります。そこでお尋ねしたいととは、外務省のアジア局に設置せられる賠償部の職務権限というものと、これらの各省大臣官房において取り扱って行こうとする賠償事務との関係がどういうような関連を持って行くのか、この点についてお尋ねしたいと思います。
  108. 園田直

    政府委員園田直君) 賠償事務に関する基本方針は、各省関係のものを一括してこれを行うという方針ではございませずに、関係各省はおのおのその権限に基いて、賠償実施関係事務でその所掌に属するものはこれを各関係省で行い、外務省はその総括調整と相手国との連絡に当ることを主として考えております。
  109. 田畑金光

    田畑金光君 そうしますと、各省がばらばらでその省所管の賠償事務に関しては取り扱って行く、外務省の賠償部は総合的な立場でこれを調整して行くということになって参りますると、日本政府対たとえばビルマ政府との関係等においては、窓口は一本を通じて外交交渉を通じて話を進めて行くという形ではなく、それぞれの政府の各官庁がやって行くということになれば、非常にばらばらになって、外交折衝の上からいっても調整をはかるということが非常に困難のように考えるわけでありまするが、そうしますると、たとえば運輸省は運輸省でその所管事務についてはビルマ政府と話し合いをする、建設省は建設省でその所管事務については相手国と話をすると、こういうことになって行くわけでありますか。
  110. 園田直

    政府委員園田直君) 外務省は総括調整と、それから賠償相手との折衝連絡は外務省が当ることになっております。ビルマの問題は全部窓口は外務省が一本でございます。
  111. 田畑金光

    田畑金光君 そうしますと、すべての外交上の折衝、交渉あるいは協定の締結は外務省が当って、ただその協定実施に伴う役務の提供とか、技術の提供、こういう点はその協定に基いて各省が当ると、こういうことになるわけですか。
  112. 園田直

    政府委員園田直君) その通りでございます。
  113. 田畑金光

    田畑金光君 まず第一に、そうしますと、お尋ねしたいことは、この賠償部が定員二十五名という人員で構成されておるわけでありまするが、この賠償部で取り扱う、あるいは今後取り扱うであろうと予測される職務権限の内容について御説明を願いたいと思います。
  114. 園田直

    政府委員園田直君) 主としてお願いしておりまする賠償部は、その内容を申し上げますると、調整課と業務課と経理課を設けたいと考えておりまして、調整課では実施計画の作成、日緬合同委員会関係及び関係各省との連絡等の事務をこれでつかさどります。業務課におきましては個々の賠償契約の承認などの事務、経理課においては賠償実施に伴う経理関係事務を行わせるつもりでおります。
  115. 田畑金光

    田畑金光君 今の各課の業務分掌、権限等については資料を提出していただきたいと思います。それだけの説明ではどうも聞き流してしまって頭に残りませんので、一つすみやかなる機会に資料を出してもらいたいと考えます。  それからこの賠償の問題に関連しましてお尋ねしておきたいことは、日本とビルマとの賠償経済協定が四月の十六日に発効いたしておるわけであります。ところが細目の実施協定について話し合いが進んでいない。こういうわけで、この点は両国政府ともそれぞれ賠償協定の円滑な推進をはかる上からいって混乱を来たしておるわけであります。先般社会党両派からも細目実施協定の締結促進について申し入れをいたしておりまするが、この細目協定の取りきめについてどのよう血進行状況になっているのか、どこに問題があり意見の食い違いがあるのか、このような点について詳細に今までの交渉の経過を、そうしてまた現在の交渉の内容を御説明願いたいと考えます。
  116. 中川融

    政府委員中川融君) ただいま御質問のビルマとの賠償実施細目協定の進捗状況でございますが、これは四月十六日発効と同時にできるだけ実施したいということで、すでにそれ以前より案を作りまして先方と交渉したのでございます。先方の係官がちょうどアメリカに出張中というようなことで、現実の交渉は三月になりまして始まったのであります。いろいろ初めのらちは日本側の案と向側の考え方との間にある程度の開きがありまして、たとえば一例を申し上げますれば、日本側は賠償物資をビルマ側が調達いたしますに当りまして、その契約の内容を審査いたしまして、たとえば契約の価格が非常に不当に低廉であるというような場合には、日本側としてはこれをビルマ側に話しまして、そういうものを適正価格に直すというような処置をとりたいと、かようなことも考えまして、そのような案も入っていたのでありますが、これは日本側としては、むしろビルマ側に業者の適正な価格のものが行くということが、将来長い間の日緬関係に好影響を与えるだろうというような気持から、さようなことを考えたのでありますが、先方はできるだけ普通の商売と同じような方法でやりたい、従って少しぐらい価格が安くても、そのようなことは日本政府が一々干渉すべきではないのではないかというような議論もありまして、それらの点はその後の交渉によりまして漸次歩み寄りまして、日本側もしいてそのような価格のチェック等はしない、日本の法令に従って出される限りそれを承認するというふうに変って参りました。今一つ残っております問題は、現実に支払いいたします際に、日本側はビルマ賠償協定の趣旨にかんがみまして日本側において直接支払う、日本業者に支払いをする。ビルマにビルマ側の欲する品物が行ったという確証が来ました場合に、日本側の手で支払いをするということを言っておりましたのに対しまして、向う側が必要な代金というものをビルマ側の手に移しかえて、ビルマ側の手でこれを支払いたいということを言っております点が残ったただ一つの問題であります。この点はいろいろ日本側にも法規上の建前というものがございますので、政府の金をそのままビルマ側に渡すというわけにも行きませんので、この点は目下話し合いによりまして、両方歩み寄りまして、できるだけ先方がそういうことを主張いたします根拠と、そこにあります気持としては、できるだけ契約というものを自由にやらしたい、支払いも自由にやらしたいということでございますので、その趣旨を十分汲みまして、ビルマ側が安心するような方法によって、しかし日本の法規の建前をくずすことなくこれを実施したい、かようなことで目下先方と話し合いをいたしております。これが残っております唯一の問題でございますので、近く遠からずと申しますか、ごく近くこの問題も解決するであろうと私たちは見通しを立てております。なおこの実施細目自体が本ぎまりになります前でも、すでに懸案となっておりますビルマ開発の事業等で、日本業者がすでに契約を事実上結んでおるものがございます。かようなものを四月十五日以後は賠償に繰り入れて実施したいという希望が先方にありますので、それら当面の懸案になっておるのにつきましては、暫定方式というものをきめまして、そうして将来の本格的な細目協定を決してそれによって拘束するものではないという了解のもとに暫定取りきめをいたしまして、これでとりあえず実施の道を開きたい、かように考えまして、暫定取りきめの方式はもうビルマ側と実質的に全部話し合いがついております。ビルマ側との間に話し合いがついておりますのでもうすでにこれは発足し得る段階になっております。さようなことで、できるだけ賠償実施細目の締結を急ぎたい、かように考えて努力しておるところでございます。
  117. 田畑金光

    田畑金光君 今問題として残っておるものは支払いの方法の問題でありますが、これがまだ話し合いが細目にわたってつかない、こういう御説明でありますが、そうしますと、その点だけを残して、あとの細目の取りきめは話し合いがついたと、こういうわけですね。
  118. 中川融

    政府委員中川融君) それ以外の点は実質的にほぼ話し合いがついている、かように御了承願いたいと思います。
  119. 田畑金光

    田畑金光君 そうしますと、今の代金支払いの協定と申しますか、細目の取りきめの話し合いの見通しでありますが、これは大体いつ頃にでき上る見通しであるのか、さらにこの交渉というのは、これは今どこでどういう方々の話し合いでなされておるわけでありますかへその辺を御説明願いたいと思います。
  120. 中川融

    政府委員中川融君) この実施細目の交渉はラングーンにおきまして、日本の太田大使と先方の担当の大臣でありますウー・チョン・ニエン工業大臣との間に行われております。なおこの交渉を促進する目的をもって現地の大使館の牛場参事官をただいま帰朝いたさせまして、東京で細目に至るまでの打ち合せをいたしまして、急遽牛場参事官はまた帰りまして、さらに太田大使の交渉を促進する、かような手配になっております。おそくとも一ヵ月内には片づくと、かように考えております。あるいはもっと早く片づくのではないかと、かように期待いたしております。
  121. 田畑金光

    田畑金光君 まあ一ヵ月前後のうちにはおそくとも解決するということになれば、ビルマとの賠償問題というものは細目協定に至るまで万事解決されるので、両国の間のこの問題は今後円滑に軌道に乗るものと、こう見られるわけでありますね。
  122. 中川融

    政府委員中川融君) さようでございます。もっともこの実施細目がきまりましても、実は賠償の内容というものが出てこなれば賠償は実施できないのでございますが、この賠償の内容につきましては、ビルマ側が、ビルマ政府内の各省意見をとりまとめまして目下作成中でございます。これもほんとうならば一ヵ年の全部にわたりましての年次計画というものが出るのが好ましいのでございますが、ビルマ側の事情もありまして、今年度は一年度を見通しての実施計画というものが困難であるというような事情にあるのでございますので、われわれといたしましては、必ずしも一年を通じての実施計画ができなくても、個々にきまったもののから一つ相談しようじやないかということを相談申し上げまして、できるだけ現実に実施を促進いたしたい、かように考えております。
  123. 田畑金光

    田畑金光君 今年度の予算に、賠償と特殊債務処理費として百億計上されておるわけであります。で、ビルマの賠償は二億ドル、十年間ということになっておりますが、そうすると、一年間二千万ドルという計算になるわけであります。この本年度の予算に計上されておる百億の予算措置とビルマの賠償との関係はどのような形になっておるわけですか。
  124. 中川融

    政府委員中川融君) 本年度の予算には百億という金額が出ておるわけでございますが、これは大蔵当局から御説明がある方が適当だと思いますが、前年度以前よりの引き継ぎがある程度ございます。従いまして、ビルマが年平均二千万ドルに相当いたします。十二億円というものを全部払いましても、十分その中でやりくりのできる予算になっておる次第でございます。
  125. 田畑金光

    田畑金光君 まあ百億計上されておりますので、当然二千万ドル、七十二億は支出できる、支弁で承るということは、まあ数字の上に明らかでありますが、そうしますと、その百億というものは、その他にどのようなものを予定しておられるのか、他の国々との賠償問題は、現に聞くところでは交渉の過程にあるか、あるいはまた未交渉の段階にあるわけで、その他の国々との関係に関してはどのようになっておるのか、その辺の事情を一つ……。
  126. 中川融

    政府委員中川融君) ただいまの平和回復善後処理費、本年度から名前が変ったようでございますが、この予算はビルマのみならず、ほかの国との間の賠償がきまりますれば、その賠償の支払いもその費目から出ることになります。しかしながら、ただいま御指摘のありましたようなビルマ以外との間の賠償というものは、まだきまっていないのでありまして、今きまっておりますものといたしましては、たとえばフィリピンにつきましては沈船引き揚げの暫定協定というのがございます。これはすでにきまっておりますので、これから支出することになりますが、これ以外にはきまったものがないのでございます。ほかの国との賠償交渉の現状の御質問のようでございましたが、これはフィリピンとの間には御承知のように目下交渉が進んでおります。しかし最終的結末はついていないのでございまして、これはいつつくかということもただいま目測はつけ得ない状況でございます。インドネシアとの交渉はフィリピンの交渉よりもさらにおくれておりまして、これはおそらくフィリピンの交渉が妥結いたしました上において、初めて現実的の問題になるのではないか、かように考えております。なおインドシナ三国との賠償問題があるのでございますが、インドシナ三国、ヴェトナム、カンボジア、ラオスという三つの国がございますが、このうちカンボジアとの間におきましては、カンボジアは賠償権を放棄いたしておりますから問題はなくなったのでございます。ヴェトナムとの間には賠償問題はまだ残っておりますが、これはまだ話し合いが具体的に進捗するに至っておりません。ラオスとの間には、サンフランシスコ条約に基きます権利としてはラオスが賠償権を持っておりますが、まだ一回も本件についての申し入れ、交渉等が行われた事実はないのでございます。
  127. 田畑金光

    田畑金光君 インドネシアとの話し合いの問題ですが、これは四月十八日からの、バンドン会議に、高碕長官その他外務省の谷顧問ですか、その人方が出席された節に、これらの問題について相当話し合いが進捗しておるという新聞報道等もあったわけであります。さらにそれぞれの在外公館を通じて話し合いを進めておると考えるわけでありますが、この点については全然フィリピンの賠償が片づくまでは話し合いを進めないのか、あるいは現実に話し合いは進めておるのか、この辺の事情について説明願いたいと思います。
  128. 中川融

    政府委員中川融君) インドネシア及びフィリピンとの賠償交渉につきましては、政府は従前より誠意をもって、この交渉をできるだけ早く進めて妥結に達したいという、根本方針で来ておるのであります。従いまして、日本側としては機会あるごとに賠償交渉の促進に努めて来ておるのでございますが、幸いフィリピンとの間には、相当現実的な段階にまでわたっての話し合いが行われるに至った状況でございますが、インドネシアとの間の交渉は、賠償額に関する彼我の見解というものが非常に隔たっておりまして、なかなか現実的な段階に至っての交渉ということができない状況でございます。御指摘のありましたバンドン会議の際におきましても、わが高碕全権が先方のスナリヨ外相と会見いたしまして、本件の促進方を試みたのでございます。ある程度の話し合いは腹蔵なく話し合いが行われたのでございますが、しかしなお賠償額等につきましての現実的な歩みよりといろ段階には至っていないのでございまして、これは話し合いしないというのではなく、話し合いはいたしたいのでございますが、なかなか機運が熟さない、こういう状況でございます。
  129. 田畑金光

    田畑金光君 園田政務次官にお尋ねしますが、このフィリピンとの賠償交渉の問題については、新聞等ですでに経過が明らかに一応されているわけであります。そこで例の八億ドル賠償の問題は、日本政府としてはそのような話し合いは相手方になされなかった、何らかの誤解だろう、あるいはまたフィリピン側の過失であるかのごとく、こう答弁されているわけであります。そこでこの問題は、経過をわれわれが判断しておりますると、日本政府から最後的な案をまとめてとい、それに基いて話し合いを進めよう、というような経過をたどっているように見受けるわけであります。従って最後的な腹を固めてこいというようなことが、あるいは八億ドルという問題にイコールされたような感じも受けるわけでありますが、せっかくここまで賠償問題が進んで参りました以上、フィリピンとの話し合いはすみやかに進めて、日本の国力、経済力に応ずる線において妥結をはからねばならぬと考えるわけであります。今の日本政府の態度は、向うから最後案を持って来るそれを受けて立つという態度であるのか、あるいはこちらの方から話を呼びかけて進めて行こうとする態度をとられるのか、どういう段階にあるのか、この辺の事情説明していただきたいと思います。
  130. 園田直

    政府委員園田直君) フィリピンとの賠償問題は、仰せの通り、将来の貿易の面から考えましても、フィリピンと日本との国交調整の面から考えましても、政府といたしましては、早急に解決したいという熱意を持っております。先般来より折衝は逐次行われまして、先般来よりネリ大使がこちらに参りまして、いろいろ折衝いたしましたが、依然として日本経済力の負担から来る日本の支払い能力を主張するわが方と、もう一つはフィリピン側からは十億という線を主張いたしまして、なかなかその主張は相譲りませずに、ついに何らの妥結も見ず、ネリ大使はフィリピンに帰るような段階になりました。そのまぎわに両方ともこれは早急に解決をしなければならぬという熱意から、いろいろ折衝をいたしまして、従いまして、おのおの自国の立場から、この程度ならば折衝が成立するのではなかろうかという一つの目標を立てて、フィリピンの方から最後の案を作って、そうして話し合いをするということになっている模様でございまして、フィリピンの電報を見ましても、近々向う側から正式に提案して来る模様でございまするし、わが方といたしましても、これを直ちに受けて立ちまして、いろいろな折衝を始めて解決をはかりたいと考えております。
  131. 田畑金光

    田畑金光君 近くフィリピン側から申し入れがあるだろうという見通しでありまするが、今までの交渉の経過から申しますると、それも当然予測されることだと考えておるわけであります。ただ問題は、今取り上げられている八億の賠償の額の問題が妥当であるかどうかという問題が当然残ってこようと考えるわけであります。今伝えるところによりますると、日本政府は一年間二千万ドルないし二千五百万ドル、こういうようなことを国力に相応する賠償能力であると見ておるようでありまするが、二千万ドル、二千五百万ドルということで、十年にするか二十年にするかということによって当然これは違って来ると考えるわけであります。二十年にすると五億ドルあるいは五億五千万ドルという線も出て来るわけであって、そうしますと、当然経済協力あるいは借款、こういうような面を考えてみました場合に、フィリピン側の主張しておる八億ドルというのも、政府のいわゆる国力に相応する一年間の賠償支払い能力から算出してみますると、あながち不当でもないようにも見受けるわけでありまするが、この辺の事情についてはどういうように政府の腹がまえはなっておるのか、お聞かせ願いたいと思います。
  132. 園田直

    政府委員園田直君) ただいま折衝中の段階であり、向うからの申し入れを待っておる状態でございまするから、その向うの案の妥当あるいは妥当でないかの意見を申し上げるととは、折衝のさわりになりまするが、今フィリピンで新聞等で伝えておりまする八億の線というものはいろいろな問題を逐次相談して進めて行くならば、今おっしゃいました通りに、わが方としてもこれに対しては何らか折衝をして、向うの方もこちらの方も一つの妥結点に到達する具体的な可能性はあると考えております。
  133. 田畑金光

    田畑金光君 今、日本の財政が一兆円の規模を守っているわけであります。しかしこれは国民所得の増大の面から申しまして、あるいはまた経済活動の基盤が拡大されるに従って、一兆円のワクが必ずしもずっと守られるかどうかということは問題が起きてくるだろうと思います。当然賠償の問題は、国民の経済力あるいは国の財政能力、こういう点から判断をしなきゃならぬと考えておりまするが、一体政府は今の日本の国民経済あるいは国の財政の中において、どの程度賠償能力に充当する余地があると判断しておられるのか、一つ政府見解を承わりたいと思います。
  134. 園田直

    政府委員園田直君) 幾らという額を具体的に申し上げらるべき筋合でもございませんし、日本の支払い能力の限界を示すわけにも参りませんが、フィリピンとの問題は支払うべき筋合の問題であるし、それが妥当なものであるならば払うべきであると考えております。
  135. 田畑金光

    田畑金光君 それは外交交渉の結果でありまするから、妥当にして向うの主張が正当な限界を守ってくるならば、それは当然日本政府としても受け入れて、すみやかに賠償協定の成立をはかるべきだと、こう考えるわけであります。ただ私のお尋ねしておりますることは、すでにビルマとの賠償協定で、年二千万ドルを負担しなくちゃならぬ、負担しておるということ、さらにフィリピンとの賠償問題で、かりに政府考えておるように、国力に応じたという前提のもとに二千五百万ドル、あるいは三千万ドル年額負担すると仮定いたしましても、さらに引き続いて出てくるのはインドネシアとの賠償問題が出てくるわけであります。フィリピンあるいは、ビルマに対しまして、インドネシアは一番高額な賠償額を要求しておることは、今日まで明らかに知られている事実であります。そうしますと、このインドネシアとの賠償の成立等を考えた場合に、さらにそのほかその他の西南アジアの国々等を考える場合に、賠償額というものは、これは膨大な額に上って行くだろうと見るわけであります。当然そういうふうに将来の見通しというか、近いうちに実現するであろう、また当然国の財政処理として考えて行かねばならぬこれらの問題は、今日の見通しの上に立って現内閣も財政を処理されておると考えるわけであります。で、そういうことを考えたときに、今の御答弁では非常に頼りないような感じを持つわけですが、大蔵大臣が八億ドルの賠償は不当であり、経済力からいってもとても負担にたえられない、こういうようなお話をなされておるのを見ましても、当然国の財政の限界、国の財政の中に占める賠償能力の限界というものがあると考えるわけであります。こういうような点について政府はどのように考えておられるか、この点を承わっているわけであります。
  136. 園田直

    政府委員園田直君) お尋ねの意味は十分わかっておりまするが、今直ちに相手の申し入れを受けて、その支払いの額を決定しなければならない、折衝しなければならない段階でございまするし、その決定に引き続いてインドネシアその他との問題も出て参りますので、年々の支払い能力の限界並びに見通しを申し上げることは、直ちにその額にも響いて参りまするから、お答えができないわけでございまするが、大体田畑委員のお考えになっておる程度だと考えております。
  137. 田畑金光

    田畑金光君 どうも御答弁を聞いておりまして、私もわからなくなって参りましたが、まことにどうも頼りない御答弁であります。まあいろいろ今回の交渉のかけ引きと申しますか、技術の上から問題のある点も考えられますので、この点はまた適当な機会に一つ権威のある御答弁を願いたいと考えるわけであります。そこで若干問題が飛びまするが、このアジア局の所管事務を見ますると、第三に、アジア諸国における邦人の生命、身体及び財産の保護に関すること。  第四に、「朝鮮、台湾、樺太、関東州・南洋群島その他の地域に関する整理事務を行うこと。」、第五に、「邦人の引揚に関すること。」、第六に、「在外公館等借入金の審査確認事務を行うこと。」、こういう所管事務があるわけであります。で、この二、三日の新聞を見ますると、こういう海外におりました人方が在外資産の補償の要求をやって、総理大臣にもあるいは関係大臣にもそれぞれ誌願、陳情をやっているわけであります。この在外資産の補償の問題に関しまして、政府はどういう態度で処理されようとしておられるのか、政府方針をまず尋ねてみたいと思います。昨日の夕刊によりますと、鳩山総理はこれらの陳情された人方に対し善処をするというようなお話をなさっているわけでございます。この問題に関しまして、一つ政府の腹がまえ、方針を承わっておきたいと思います。
  138. 園田直

    政府委員園田直君) この問題に関しましては、内閣に在外財産問題審議会というものを設置してございまして、こちらの方で慎重に検討中でございます。
  139. 田畑金光

    田畑金光君 そうしますと、在外財産問題審議会総理府機関内閣機関としてやっているので、今の点は外務省としては関知されていないというような御答弁でありますか。
  140. 園田直

    政府委員園田直君) 外務省としては感知していないわけではございません。この委員会の方に資料を提出するなり、あるいはこの説に従っていろいろ対外的に折衝をやっております。すでに御承知の通りに、米国の問題その他の問題等も進捗している状態であります。
  141. 田畑金光

    田畑金光君 そこで私はお尋するわけでございますが、今、政務次官の御答弁にありましたように、なるほど在外資産の返還交渉というものが五月の十日に妥結をいたしているわけであります。日本政府は当初六千万ドルを予定されたそうでありますが、米国政府は法人を除外して、自然人のみとして一人当て最高一万ドル、総額一千万ドルの個人資産を返還するという約束をいたしたわけでございます。これは米国の国内法を修正し、近くこの在外資産というものは、申し入れて参りまするそれぞれの個人に返却されるようになって参ったわけであります。これは当然個人財産でありますし、米国側のとりました処置は当然のことだと考えるわけであります。そこで今問題となっておりますることは、米国においてはすでに国内法の修正を通じ、また外交交渉を通じまして、全額ではないが個人の財産は返還されるというこの基本原則が確立されたわけでございます。同様なかつての台湾にあったもの、朝鮮にあったもの、満州にあったもの、その他の、西南アジア諸国にいた在外法人の個人資産というものが、ほとんど何らの措置もとられていないわけであります。しかもこれらの個人財産というものは多くの場合賠償の中に算出されておるか、国の賠償の中にこれが加えられているわけであります。これらの人方が当然個人財産の返還を求めることも政府としては予測して、これが対策を立てておかねばならぬはずであります。昭和二十七年の日華平和条約の第三条を見ますると、こういうように言っているわけであります。「日本国及びその国民の財産で台湾及び膨湖諸島にあるもの並びに日本国及びその国民の請求権(債権を含む。)で台湾及び膨湖諸島における中華民国の当局及びそこの住民に対するものの処理並びに日本国におけるこれらの当局及び住民の財産並びに日本国及びその国民に対するこれらの当局及び住民の請求権(債権を含む。)の処理は、日本政府と中華民国政府との間の特別取極の主題とする。」このように日華条約第三条には明確に規定されておるわけであります。これを見まするというと、台湾政権と日本政府との間においては、これらの在外資産問題については何らかの話し合いが進められておるはずでありまするが、この話合いはどのように進行しておるのか、この点の御説明を願いたいと思います。
  142. 園田直

    政府委員園田直君) 仰せの通り台湾の日本からの分離に伴う日本国及び日本国民の台湾における財産及び請求権は、中国政府及び国民の在日資産及び請求権とあわせて特別の取極をして解決することになっております。従いまして政府としてはでき得る限りすみやかに解決したい所存で日舞条約発効直後から交渉開始方を相手方に数回打診しておりまするが、中国側は準備不足を理由になかなか応諾をいたしません。いまだ交渉開始の運びに至ってない状況でございまして、台湾の状況から見まして国府側に神々の困難があることは認められまするが、何らかの方法によって解決を促進したいと考えまして、ごく最近正式に文書をもってすみやかに交渉を開始したいという旨を申し入れてございます。
  143. 田畑金光

    田畑金光君 昭和二十七年の日華条約の締結から今日まで、これらの場合が放擲されておるということは政府の怠慢と言わなければならぬと思っております。話し合いの申し入れをやっても向うがえんじない、応じない、結局なめられたということだと思いますが、このアジア局の所管事務には、先ほど申し上げたように今取り上げられておる問題が最も大事な所管事務として取り扱われているわけでありますが、皆さん何をやっていたのか、一つこの所管事務というのはそうしますと三項から四項、五項、六項というものは何もやってないのか、将来やろうとする所管事務を掲げたのか、一つ見解を承わっておきたいと思います。
  144. 中川融

    政府委員中川融君) ただいま政務次官から御説明いたしました通り、この台湾の残置財産の返還問題、これにつきましては鋭意誠意をもって従来とも大いに努力してきたのでございますが、これは御指摘のように残念ながら先方の態度が日本の誠意に報いるだけの措置をなかなかしないのでございます。この点最近に至るまでまだ正式の会談の開始に至っていないのは、はなはだ遺憾でございます。決して努力を怠っていたというわけではないのでございましてごく最近にも改めて厳重なる訓令を芳沢大使に出して、強硬な交渉開始方の談判をさしておるのでございます。効果が上らないという点ははなはだ申しわけないのでございますが、何と申しましても日本としても外交交渉、説得による交渉以外にこれを強制する方法がないわけでございまして、はなはだ隔靴掻痒の感はございますが、努力は従来もしておりますし、今後ももとよりこれをさらに続けて行きたいと考えておるのでございます。  なお、台湾以外の地域の財産の問題もあるわけでございますが、一番大きなものといたしましては中国本土でございます。これは御承知のような政情でございまして、中共との話し合いと何と申しますか、条約と申しますか、かようなものができていない現状のもとにおきましては、この財産問題の取りきめということができないのでございますが、それ以外の地域につきましては、たとえばインドにつきましては日本とインドとの平和条約によりまして、その際インド側の好意ある措置によってこれが返還されるということが原則的にきまっておるのでございます。なお、セイロン、パキスタン等もインドの例にならいまして残置財産はサンフランシスコ条約の原則にかかわらず返すということで、これの方は返還がすでに実現いたしております。それ以外の国々につきましては、たとえばフィリピンでありますとか、インドネシアでありますとか、これらはいずれも平和条約が発効し、あるいは新しい平和条約が結ばれる際に、それぞれ取りきめができるわけでございますが、目下のところこれらの国々が財産を返すという目当てはないのでございます。  この所掌事務にいろいろこれらの旧日本の領土でありまして地域の残務整理でありますとか、アジア諸国における邦人の生命、財産の保護に関すること等いろいろございます。これらはもとよりかってそこにおられました方々の財産の返還問題ということは大きな問題でございます。しかしながら、それ以外にもたとえば現におられる人たちの保護と、あるいは貿易上のいろいろの機会を促進するということでありますとか、諸種の事務がございます。いわば整理関係事務と戦後の新しい邦人発展に伴う事務、この二つがアジア局の所管事務としてあるわけでございます。整理関係事務を決して怠っているつもりではない。できるだけ早くこれを促進するように努力しておる次第でございます。御了承願いたいと存じます。
  145. 田畑金光

    田畑金光君 私は努力しておるという抽象的な答弁で満足するわけには参りません。どういうわけで今までそのような話し合いが進んでいなかったのか。どんな点で相手方は話し合いに応じようとしないのか。とにかく条約第三条に明確にうたわれておるわけでありまするが、台湾政権はこれらの財産についてどういう考え方を持っているのか。もしそれが返すべきものではないと、言葉をかまえて返さないと、こういうふうなことになった場合に、それでは日本政府はどのように個人財産について、これらの個人のかつて持っていた在外資産について、どういう考え方で処理して行こうとされる御方針なのか。この辺の政治的な一つ政府方針を承わっておきたいと思います。
  146. 中川融

    政府委員中川融君) ただいま御質問の最初の部分でございますが、つまり台湾政府日本の残置財産につきましてどのような考え方を持っておるのであろうかという点でございます。これは表面的には先ほど御説明申しました通り、交渉開始を交渉いたしますと、先方は準備不足である、調査不足である、調査ができていないというととで、会談を回避しておるのでありますが、その底意と申しますか、奥にある考え方としては、これを何らか日本にある先方の財産請求権というものと相殺をしたいということが底意にあるようでございます。これは日本側としては相殺ということは好ましくなく、こちらから返すべきものは返す。そのかわり向うにあるこちらのものはそのままこちらに返してもらうという方針で行きたいと考えておるのだという、こちらの考え方と向うの考え方との間に相違がある。そこを先方は察知いたしまして、会談をなかなか、回避しておるのではないかと、かように考えられるのであります。しかし、これはあくまでもこちらが察知いたしましたところでございまして、先方が正式にそういうことを言っておるものではないのでございます。なお、究極におきまして、たとえば、交渉いたしましても、先方日本の財産を返さない、日本人の財産を返さないという場合、あるいはいつまでたっても交渉にどうしても応じないで、結局ずるずるに財産が返ってこないというような場合にどうするかということでございますが、これはサンフランシスコ平和条約その他の平和条約に基きまして、在外財産の処理の問題、あるいは在外財産が没収なり先方に抑留された場合に、どのような国内において補償措置をとるかという、この大きな問題のやはり一環になるのではばかろうかと、またそうすべきであると、かように考えております。この補償の問題につきましては、先ほど政務次官から御説明いたしましたように、政府としてもそれを真剣に考慮すべく、すでに相当前から在外財産問題審議会というものを設けまして検討いたしておるのでございます。大蔵省の事務当局におきましても、内閣におきましても、この審議会でも検討いたしておりまして、相当検討は進んできております。今や、その一番原則的な問題と申しますか、平和条約によりまして没収されます在外資産の補償問題とその間の中核に実は検討が入ってきております。この審議会の慎重な検討によりまして、最も適切な措置をとりたいと、かような考えがただいま政府考え方でございます。
  147. 田畑金光

    田畑金光君 大蔵省所管にかかる問題は適当の機会にまた私は御質問しようと思っておりますが、外務省の当然所管しなければならぬ問題について、私は御質問をいたしておるわけであります。  そこで、政務次官にお尋ねしたいことは、現実に台湾政権との話し合いが今のような硬直状態で、要すれば逃げておる。事をかまえて条約の履行を避けておる。これが真底の方針だと、どう見るわけであります。そうしますと、相殺というお話でありまするが、一体、どの程度台湾政権、あるいは中国人民の財産がどの程度日本にあるのか、あるいは台湾にある財産が幾ばくに上るのか。どの程度に上るのか。この辺はアジア局の方としても当然調査しておありのことと考えまするが、それらの計数的な試算の状況の御報告を求めるとともに、そのほかに政務次官にお尋ねいたしたいことは、先ほど申し上げたように、現実にかかる在外資産補償の問題が政治的に日程に上りつつあるというこのことであります。このことに対しまして、政府はどういう方針をとろうとしているのか。すでに旧軍人遺家族恩給についても一応復活し、まただんだんとこれが矛盾せる点は改正せられつつある、明年あたりの予算にはこれらの恩給が一千億、国の予算の一割になるかもしらぬ、こういうところまできておるわけであります。ところが在外資産の問題のみは、まだ何らの解決の糸口もない大きな、非常に大きな問題だと思います。これは国の財政経済の点からいっても重大な問題だと考えています。これに対しまして、政府は在外財産問題審議会設置いたしましてもうそろそろ一年にもなりまするからして、何らかの態度というか、方針等が決定されてしかるべきだと考えるわけでありまするが、周囲の動きも相当激しくなって参りましたが、これに対しまして、政府はどのような方針で臨まれようとするのか、一つ外務政務次官政府見解を承わっておきたい思います。
  148. 園田直

    政府委員園田直君) 前段の台湾に残しておる在外資産公金及び私金、並びに日本における国府側の資産等につきましては、台湾ばかりでなく、サンフランシスコ条約に関係する国々のおのおのの公金、私金等は一表になって外務省でも作っておりまするが、これは管轄は大蔵省でございます。しかし、外務省としても、その表を持っておりまするので、なるべく早急にこの資料を差し上げたいと考えます。ただいまここに持っておりませんので、御了承を願います。  なお、ただいま問題になっております在外資産の問題については、外務省としてはおのおのの国々でただいままで解決しておるのはスイスと、アメリカがただいま申し上げました通りに解決しておるだけで、サンフランシスコ条約関係の国々の解決は今なおついてない状態でございます。従いまして、台湾に対してももちろんでございます国々に対しましても、強力に外務省といたしましては折衝をして、この問題を解決したいと考えております。政府共同の責任としては別でございまするが、在外資産の返還の交渉と、それから国内における在外資産の補償支払いの件は別個の問題でございまするが、これは政府といたしましては、当然国際法規並びにへーグの陸戦法規にも規定してあります通り、戦いに負けました国が勝った国に賠償を支払うということが規定してございまするが、負けた国の国民が個人の持っている財産を勝った国に没収をせられる、あるいはまたは賠償としてこれを押収せられることは禁ぜられておるばかりでなく、いかなる場合といえども、個人の財産は守られなければならぬということは明瞭に書いてあるところでございまするから、こういう意味におきましても、外務省といたしましては、当然そのような関係から、各国に対しましては、特別の規定を除くもののほかに、個人の私有財産の解決については極力折衝しなければなりませんが、これとは無関係にしまして、かりにその他の国々との折衝ができない場合におきましても、国内においてはこれに対する支払いをやるのは当然のことでなければならぬと考えております。それが今まで、終戦後十年間、国家財政の状態からこれに対する補償の問題が実際に実施をされなかったことはまことに遺憾でございまして、本日衆議院におきましては各派全会一致でこの問題に対する決議案が上程されると漏れ承わっております。従いましてこの決議案の上程によりまして、政府もこの決議案の趣旨を順守をして、すみやかなる時期にこれに対する解決の方法を講じなければならぬと考えております。
  149. 田畑金光

    田畑金光君 私の聞きたい点について、政務次官の御答弁がありまして私も了承するわけであります。お話のように、戦時国際法を見ましても、あるいは国内法、ことに憲法の精神に照らしましても、負けた国の個人財産が全く放擲されてしかるべき理由はどこにもないと考えます。仰せのように、本日衆議院においても在外資産処理促進に関する決議案がおそらく各党派の全会一致でもって決議されるものと見ておりまするが、政府においてもこの決議案の趣旨にのっとって、在外資産の補償の問題は解決をなされるという強い御意思でありまするから、私はただいまの答弁を了承いたします。従いまして外務次官の、いやしくも政府の所信を代表して、本委員会において力強い発言、あるいは約束をなされた以上、われわれは今後この実施について十分批判し、また監視し、見守って参りたいと考えておりますから、一つ政府当局の努力を切に要望しておくわけであります。
  150. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 他に御質疑ございますか。
  151. 加瀬完

    加瀬完君 移住局が新設されまして移民政策が一段と進捗するわけでありますが、それについては、先ほどからの御説明によりますると、当然移民政策というものは今までとは面目をかえて、強力なものになるであろうということが予想されるわけであります。そこで現在政府考えておりまする移民政策といたしまして、移民をもっていくところの対象の国は、どういうところを対象にいたしておるのか、それからその国に対しまして、どういう外交方針で目的を積極的に可能にしていくのか、これらの点についてまずお伺いします。
  152. 石井喬

    説明員(石井喬君) 私からお答え申し上げます。ただいま私どもが考えておりまする日本移民を送り出します先は、主として中南米諸国でございます。具体的に申し上げますならば、ブラジル、それからアルゼンチン、パラグァイ、ボリビア、それからドミニカというところが現在考えられております。これらの国々に対しまして、それ以外のところはそれではやらないのかということになりますと、北米合衆国につきましては、先ほどもちょっとお話が出ましたような難民救済法移民というのがございますが、これはきわめて限られた数でございまして、多くを期待はできないと考えております。それから東南アジア諸地域につきましては、これは将来それが可能になりました暁には、私どもは大いに推進したいと思いますが、現状におきましては何と申しましてもまだ戦争の記憶もなまなましいと申しますか、各国の感情の融和が十分できていないと申しますか、現在これを推進するというごとは不可能かと思いますが、将来可能な時期が来ましたときには、と申しますよりは、そういう時期を何とか招来するように努力いたしましてやりたいと考えておりますが、現在のところはわれわれの日程には上っておりません。で、結局中南米諸国ということになると思いますが、これらの国々に対してどういうふうに移民外交を推進していくかというお尋ねだと思います。  これは、私どもはもちろん個々の移民を受け入れる国々につきまして、その国の政府との交渉を十分にやらなければならないのでございますが、この交渉それ自体が国によっていろいろ変ってくると思います。たとえば、ブラジルのごときは、御承知のように現在対日感情は決して悪くないのでございますが、しかもなおかつ一部に日本人が非常に同化しないという理由のもとに、日本人を必ずしも歓迎しないという空気も相当根強いのでございまして、この国と移民協定を結ぶということはかなり将来の問題にならざるを得ないかと思います。それに反しまして、たとえばドミニカと申しまするよりボリビアのごときは、向うの政府が積極的に日本移民を受け入れようということで、現在移民協定を結ぶ話が現に進行いたしております。こういう国を相手にいたしましては、私どもは移民協定を結んで、しかる後に移民を送り出すというような態度をとっていきたい。個々の国につきましては、そういうふうにおのおのの国と話を進めて行かなければならないのでございますが、それ以外に私どもといたしましては、やはり日本がどうして移民をやらなければならないのか、その必要性、それから日本移民を送り出すことによりまして、世界的にどういう寄与があるのかというような点を明らかにいたしまして、私どもはまず国連だと思いますが、そういう世界的な機構に向って、その必要性と有利性を強調いたしまして、やはり全世界的な世論の支持のもとにこれを推進して行くような方法をとって行きたいというふうに考えております。  それからさらに中南米諸国は御承知のようにカトリックの国でございますが、カトリックの団体がいろいろございまして、これらの団体がやはり日本移民の推進ということに相当興味を持っていてくれますので、こういうものにも働きかけましてやって行きたい。私どもは世界的にと申しますか、あらゆるチャンスを利用しまして、日本移民をしなければならない必要性、その結果未開発地の開発その他世界的にいろいろ寄与するのだという点を大いに啓蒙宣伝いたしまして、広くあらゆる手を打ってこれを推進して行きたいというふうに考えております。
  153. 加瀬完

    加瀬完君 日本移民の必要性からあらゆる手を打って問題の解決をして行くというのでありますが、対象国として今考えられておるのは中南米、こうなって参りますと、一体中南米に対しまして一年に何名くらい、何年間どれだけの規模を達成しようとするのか、この点を伺います。
  154. 石井喬

    説明員(石井喬君) 昭和三十年度におきましては、御承知のように予算の上におきまして約六千名というものが計上いたしてございます。それ以外に私どもといたしましては、ブラジル、アルゼンチンが主でございますが、おのおのに約千名ないし二千名程度の、これは自費で渡航するもの、それから呼び寄せ先が旅費を負担して呼び寄せようというもの、こういうふうに考えております。しからば将来、どういうふうに、どの程度の規模にまでということになりますと、これは実に相手国がございますので、私ども計画を立てることはやさしいのでございますが、いろいろそのときそのときの情勢で相手国の受け入れ方が違いますので、必ずしも私どもが計画する通りには行かないと思いまするけれども、渡航費を相当潤沢に持ち、それから輸送手段というものが確保できるということになりますれば、どのくらい送れるか、私どもは少くとも二、三万の人は毎年送り出せるようになるのじゃないかというふうに考えております。
  155. 加瀬完

    加瀬完君 私は、今までの政府説明を聞いておりますると、少くとも国の基本政策として移民政策考えてやって行くというふうに了解をいたしておったわけであります。そこで移住局というようなものをも新設するというに了解をしておったわけでございますが、ただいまの話を聞いて参りますると、一体日本の人口増加の問題の解決というものとどんな関係に立って、六千名とか一千名とか、こういう数で中南米という対象国だけでの移民政策というものに満足しておって、今までの説明の裏づけになるのかということに疑問を持ったわけであります。一体中南米というものを対象に、二万名にも及ばない数、将来発展するとしても二、三万名、こういうことで国の基本政策としての移民問題というものは解決するというふうに政府はお考えになっておるのでありますか。また移住局というものを作るからには、少くとも相当の見通しというものをもって、人口問題の一つの解決の方法というふうな立場でも、問題の解決を見て行かなければならないと思いますが、そういう考慮というものが全然ただいまの御説明からは私には受け取れないのでありますが、この間の事情をもう少し御説明いただきたい。
  156. 園田直

    政府委員園田直君) ただいまの御疑問は当然のことだと私どもも考えております。本年の予算の折衝中におきましても、当初最小限、今までの惰性の移民をやるにしても、一万人はやりたいということで、渡航費貸付の予算折衝に鋭意努力をしたのでございますが、遺憾ながら国家財政緊迫の折柄、約七千名近くの人員でがまんしなければならないような状態に立ち至ったわけでございまして、われわれとしては決して満足しておるわけではございません。  なおまた、ただいま参事官から御報告申し上げましたのは、当面の移民の計画を申し上げたのでございまして、先般当委員会で長期にわたる移民計画を発表せよという御指図がございました際に、検討はいたしておりまするが、暫時御猶予を願いたいと申し上げましたのは、これに修正を加えたいという私は意見を持っておるからでございます。それは、この計画では約一年間に四万、十ヵ年計画で四十万の計画をいたしておりまするが、第一次移民の相手国がただいまの当面の問題になっておりまする中南米を重点としたもののみであります。ところが、これは渡航費の削減、少い渡航費で最大の人員をあげ、経費を節約をして国家の財政の許す範囲において移民の数をうんとふやすという意味におきましても、あるいはまた今日までの日本国民のいろいろな関係からいたしましても、移民の土地というものは必ずしも中南米ばかりではなくて、もっとむしろ近い、しかもお互いに風俗、習慣の似通っておる場所にも日本の人間が出て行って、そしてその国の人間となって働く場所はたくさんあると私は確信をいたしております。遺憾ながらこういう国々には過去の戦争において、日本人はあまりにも甚大なる恐怖心を相手に与えておりまするので、今なお国交調整、貿易等も完全にいかない状態でございまして、この際公開の委員会においてこれに対する移民の計画並びに希望等を申し上げることだけでも相手の了解なしに申し上げるととは非常な影響があるような状態でございまするので、将来は賠償並びにその他の問題を早急に解決をいたしまして、皆さん方の御支持を得ましても、こういう近隣諸国に対する日本移民問題等についても考え、並びにその経費を半減することによってその人員をふやし、四十万という計画もこういうことではとうてい国策としての移民としては御報告申し上げる段階ではございませんから、もっと大いに研究してみたいという観点から、暫時御猶予を願いたいと申し上げた次第でございます。従いまして、今のような方針で、ただいまできておりまする長期計画等も今度お願いしてできまする移民審議会等にお諮りをいたしまして、ほんとう日本の国策の一環としての移民ができますように何とかやってみたいと、こういうつむりでございます。
  157. 加瀬完

    加瀬完君 今の政務次官の御説明よくわかるのでありますが、結局、中南米などというところだけを対象国に考えておっては、移民問題の解決はつかない、もっと手近なところで移民の対象国というものを見つけなければならない、しかし客観情勢はそれを許しておらないということに、要約すればなると思う。そこで、一体政府といたしましては、客観的に見てもっと手近かなところに移民が持っていけないところの困難なる条件というものは一体どういうことであるか、条件、事項であるというふうにお考えになっておられますか、その点。
  158. 園田直

    政府委員園田直君) それは、当面ではほとんど不可能なような状態ではございまするが、その障害というものは決して私は打開不可能な問題であるとは考えておりません。ただ単に近隣諸国が日本というものが再び東亜の盟主的な気持で移民というものを日本民族進出の足場にするのではないかという誤解さえ解くことができればこの方面は容易に解決すると私は考えております。
  159. 加瀬完

    加瀬完君 結局近隣諸国が日本の東亜の盟主的な再現というものをおそれておることが移民問題安どの解決をも延ばしているということになりますると、現在政府のとっておる外交政策というものには全然反省の余地がないか、この点伺います。
  160. 園田直

    政府委員園田直君) そういうことに意を注ぎまして、外交の重点を、アジアに重点を置く外交に切りかえることは当面の問題であると考えております。従いまして今国会においては在外公館設置法の一部改正を上程いたしまして、ただいままでは在外公館の設置方針は大きな国の大きな都会に格の高い大使館、あるいは公使館等を置くことになっておりましたが、そういう観念を一擲しまして、アジアの小さい国国、特に植民地から今度の戦争によって独立をいたし楽した新興国家に格の高い重要な在外公館を付置いたしまして、そうしてこういう方面の誤解を解くとともに、弱小アジア近隣諸国との提携をはかって世界に対する外交を進めていきたいといろ考え方でございます。
  161. 加瀬完

    加瀬完君 これは後ほど本委員会に当然かかってくる国防会議などにも関連がついてくる問題と思うのでありますが、東亜の盟主的な日本の再現というものにおそれるということを裏返しをすれば、日本の現在進められておるところの強大なる軍事国家としての再現というものに対する恐怖というふうにも解釈できないことはないと思うのであります。しかしながら外交機関をいろいろ整備をいたしまして、弱小国家に対しましても友好の手を差し伸べると言いますけれども、基本方策そのものが一番おそれるところの再軍備の方向に強化されていくということになりまするならば、この現在の国の傾向というものを改めない限り、今の政府政策というものとはどうしても矛盾を生じてくると思う。で、外務省関係事務担当の方々たちはこの国の、現在政府が行おうとするところの再軍備の方向への基本政策というものと、移民なら移民問題を解決しようとするところの友好関係の増進というものとに何らか食い違い、矛盾そういうものを感じておられないか、どうなんです。その点は。
  162. 園田直

    政府委員園田直君) おのおの自分の有する考え方のもとに判断するのでございますから、場合によっては特にごく間近かな中共等についてはそういう誤解もあるかもわかりません。しかし他のアジア諸国については、方針をよく説明をしながら、理解を受けながら連絡をとっていけばその方面に対する誤解を最小限度に食いとめるととがで送ると考えております。
  163. 加瀬完

    加瀬完君 私が伺っておりますのは、現在におきましてその説明が足らないというのか、あるいは相手方の理解が浅いというのか、いずれにいたしましても、日本の現在の国策の方向というものに対する不信、あるいは疑惑、こういうものが外交交渉の上に、あるいは移民問題の解決という友好関係の上にある程度の障壁になっておらないかどうかということなんであります。
  164. 園田直

    政府委員園田直君) それは濠州あるいはその他の新聞等を見ましても日本の防衛問題並びに日本経済計画等が発表になるごとにその種の風評、並びにその種の批判が生まれておることは、新聞等でもよくわかるところでございます。防衛もしくは経済計画等の進展につれてそのような誤解が出てくることがあるかもわかりませんが、そういろ面はよくわれわれが基本方針説明をして、これをもってかつてのごとくアジア近隣諸国に侵攻したり、これを脅威したりするものではないという今後のやり方によって理解と了解が得られるものと考えております。
  165. 加瀬完

    加瀬完君 別の問題でありますが、賠償部の新設について当然役務賠償と申しましょうか、労力賠償と申しましょうか、こういう問題も考えられ、扱われてくると思うのであります。そういう内容は、その前の移民関係とは何か関係づけて考えられておるでしょうか、それとも全然役務賠償の問題と移民関係の問題は関係をつけては考えておらないのでございますか、現在の政府のお考えを伺いたい。
  166. 中川融

    政府委員中川融君) ただいま政務次官から御説明いたしました通り、東南アジア等近隣諸国の移民ということは究極の目標としてはこれはあるいは考えられることかと思いますが、当面の事態といたしましては、いわゆる農業移民、あるいは労働移民というものは考えられない事態でございます。これはいろいろな事情からさようなことは考えられないということになっておしてサービス賠償ということがございますが、これで行きます人はエンジニア、技師などのような人でございまして、労働者あるいは農民というようなものはこの役務賠償の中には入れないで考えておるのでございます。
  167. 加瀬完

    加瀬完君 問題は別になりますが、移民の場合、農業移民だけではなくて、技術移民とか、あるいは工業移民、こういったような問題も当然考えられておると思うのでありますが、その点はいかがでしようか。
  168. 石井喬

    説明員(石井喬君) 従来確かに移民と申しますと、主として農業移民でございました。しかし最近のヨーロッパからの中南米あたりにどんどん出ております移民の趨勢を考えますと、農業移民というものはほとんどなくなりまして、ほとんどすべてが企業移民と申しますか、資本と技術と経営者がそれについて行くというような形態のものが非常に多くなって参っております。日本におきましては、戦後昭和二十七年以来始まりました移民は、そのほとんど全部がいわゆる農業移民でございます。もっともその中には約半数ほど従前のような雇用移民と申しますか、コロノで行った者がございますが、今後は私どもはやはりヨーロッパ各国の趨勢にならいまして、企業移民と申しますか、技術と資本を持った移民を大いに振興して行かなければならぬというふうに考えております。
  169. 加瀬完

    加瀬完君 この法案の内容の審査からこういう質問をするのはちょっと的がはずれているきらいがありますけれども、一応こういう政府の企画というものがあるからには、また、ただいまの御説明企業移民というものを考えていらっしゃるということになりますると、これは移住局を作っただけでは企業移民というものは成功しないと思う。当然移住局という一つの移民を扱う機関を作るからには、やがて企業移民に移れるような移民の準備計画と申しましょうか、教育計画と申しましょうか、こういうものがなければならないと思うのです。この点政府はどんなふうな対策をお持ちでございましょうか。
  170. 石井喬

    説明員(石井喬君) ただいま御質問がありました点、まことにごもっともでございまして、私どもも今後の移民、とりあえず中南米でございますが、そこで今一番問題になっておりますのは、日本人はなかなか同化しにくいという点でございます。従いまして今後私どもは移民を送り出しまする大前提といたしまして、やはり日本人の国際的な教養と申しますか、国際人としての心がまえと申しますか、そういうものを十分に与えることが必要である。これはただ単に向うに行く決心をしました者を集めまして短期にやってもなかなか効果が上らないと思うのであります。やはり今後は長期と申しましょうか、若いうちからそういうような日本人全体にそういうような心がまえを持たせるような教育と申しますか、啓蒙と申しますか、というようなことをやって行かなければならぬというふうに考えております。
  171. 加瀬完

    加瀬完君 私が今伺っておりますことは、理論的というか、観念的にそういうふうなことが必要であるということはだれもわかっている。そこで政府としては現在企業移民というふうな点そうとするならば、当然企業移民として適格性を持ち得るような基礎訓練なり準備教育なりというものが行われなければならないはずなんです。こういう計画が当然移住局というふうなものの出発に前後して考えられなければ、移民政策としては私は片手落ちだと思うのです。これは政策的にこういうものを政府はお持ちかどうかということを伺いたい。
  172. 園田直

    政府委員園田直君) ただいままで主として農業移民でございましたから、移民の選定をやったあとは、移民をするための準備訓練をやりますために、訓練所に収容いたしまして、これに対する予備的な教育をやっておりましたが、ややもすると、それが団体訓練的な、昔の日本魂を養成して送るというような格好でございましたので、そういうものは払拭するばかりでなく、企業移民ということになりますると、第一に移民の選定方針が変って来なければなりません。続いてその訓練所に収容しまする間の期間におきましては特に国際情勢なり、あるいは相手国の経済の状態、あるいは企業のための各種事情等、知識教養を重点とする訓練に切りかえ、しかもその訓練所に収容する期間を、予算をなるべく獲得いたしましてこの期間を長い期間に目的を達する期間にあらしめるようにしたいと考えております。
  173. 加瀬完

    加瀬完君 最後に一つ伺いますが、この外務省設置法の改正の中に賠償の問題と移民の問題があるから申し上げるのではないのでありますが、賠償の問題というのは、今の日本にとって非常に重要な問題だろうと思う。このいう形でやがて何人かの日本人がその対象国に行くということも考えられます。そうして行ったのをやがてその土地に移民として入れるというような形も考えてできないことじゃないと思う。そういうつながりというものを考えて、すなわち賠償と移民というものを考えて計画するという計画の仕方というものを政府は全然お持ちでないかどうか、との一点だけ最後に伺います。
  174. 園田直

    政府委員園田直君) 御意見通りであると考えておりまするが、ただいまのところそれに対する具体的な研究はいたしておりません。審議会等に十分に注意をして御意見を取り入れてやりたいと考えております。ただし、その点をあまり大げさに言いますると、フィリピンの賠償にいたしましても、ビルマの賠償にいたしましても、何か日本の帝国主義的な商業政策の攻撃の前端ではなかろうかという誤解も受けまするので、十分慎重に検討したいと考えております。
  175. 木下源吾

    ○木下源吾君 今だんだん聞いて、この間のも何かまだ満足でないように思う。実は樺太、千島、これは日本人が行けば、皆経験があるからいいと思うのです。幸い今、日ソ交渉をやっておられる。との方面に移民といいますか、あるいは季節移民、何でもよろしい、日本人が行けるような何か方策を考えておらないか。北海道には樺太からの引揚者がたくさんおるのですよ。そうしてそれが今たむろしておるような状態、やがてその人たちは行けるような時期もまた来るだろうという淡い希望を持っておられるのです。今、日ソ交を返せ、あるいは何を返せ、領土を返せと言っておるが、その以前に、やればすぐできる皆困っておる問題で、実際問題としてこういうことができれば、何万といろ者が助かるわけです。従来のように定住しなくてもよろしい。季節でもよろしい、漁をする間でも。季節移民でも。何かそういうことを現実の要求として、国民の要求です。それは。北海道付近にいられるとよくわかる。こういうことについて何か今政府が手を打たれる考えはないか、こういうことです。それと関連して、私は可能だと思うけれども、一番の障害は、互いに、つまり防衛施設をやっておる。こっちはB29が飛び出すような飛行場がある、向うの方はまたそれに対応するような何かある、こういうようなととが障害になっておると思う。それがなければ、あんな所は大きいソビエトであります。決して、日本人の人口はたくさんで困っておるし、ことにそういう人たちはああいう土地で長年生活してなれておる、すぐ生業にもつき得る、こういう、つまり条件を持っておるのだから、向うの方では喜んで私は入れるだろうと思う。ほかに共産主義だとかいろいろな何かむずかしいことを言いや、主義なんとかということがあるけれども、そういう問題よりも、非常に現実に必要なこと、経済上においても、もう北海道、あのくらい取れるニシンが取れなくなっておる。それでそのニシンはどうかというと、向うの方にたくさんいるわけです。樺太の方面では。千島方面でもサケ、マスでもたくさん取れるのです。カ二でもそうです。今年あたりはもう船団が四つ出まして、去年は一つです。大漁ですね、タラバガニなんてカムチャッカ島で。そういう経済的にもまたこの移民の根本的な、どういう移民というようなむずかしい問題ではなく、対岸の北海道ではニシンが不漁、気候が悪くて凶作、冷害、少し外へ出て漁をしようと思えば、台風でこの間も新聞で、ごらんの通り昨年あたりは百何十そうも三十トン以下はみなやられてしまっておる。そういう危険を冒してまでそういう資源のあるところまで出かけて行くわけなんだが、こういうほんとうの国民の要求といいますか、希望を満たし得るのには、何とか向うさんと話し合いをしてくれさえすれば、私はできると思うのです。日ソ交渉を今やっていないなら別だけれども、実際やっておるのですから、あまりはったりみたいなことばかり言わんで、現実に国民の利害、要求というものに即したことを一つおやりを願えぬものかどうか。また移民と関連するといえば関連でありますが、季節移民でもいいですよ。こういうことについて一つ意見がもし聞かれるならば何だけれども、今あなたからそれに答弁を得て私は食い下ってどうというのではありません。この機会だから……。この前も私はそういうことでちょっとお伺いしたのだけれども、御答弁も願えなかったし、別に追及して理屈をどうとかそういう意味ではありません。ほんとうですよ。沿岸漁民なんというものはもう魚がいなくなったのですよ。先には資本漁業が沿岸の零細漁民の領域を終戦後荒らして、その後その人たちは日米加の漁業協定によって出て行ったり、あるいは北洋漁業に出て行ったりしておる。残されておるのは荒廃した漁場だけで、零細の漁民、そうして不漁でしかも災害ばかりにあっておって惨たんたるものである。それはもう日本海の沿岸あたりは全村全くこじきのような状態に陥っておるところもあるのです。ですから、そういう人たちの多くは樺太からの引き揚げ、そういう人たちがたくさんおります。何とか一つこれをしてやられないか。それで悪い障害に当ればその障害をお互いに克服してそれを一つ達成することを……土地を返せとか、返さないとか、領土をどうだとか、こうだとか、そんなむずかしい問題よりも、それはそういう現実の問題でおやりを願えないか。こういうことを……外務省あたりは非常にむずかしく考えておるのだ。この間も海馬島でタラ漁船がひっくり返って人が死んだ。向うの方から引き渡すからといっても、国交回復をしておらんからそんなもの受け取ることはできないとこういうのです。ところが私四、五日前にも北海道に行くときに、大水の部長さんにどこへ行くのだと言うたら、今度向うの方から言うて来た、無線電信か何かで言うて来た。日赤か何かでこれを引き取りに行くとか何とか、洋上北緯何十何度何分とかで……実際歯がゆいのだが、私たちはおやりになっておることはもちろん規則があってそうでしょうけれども、死んでしまったものを引き取るまであの規則だこの規則だと言うてもしようがないじゃありませんか。もう少し生きたことに動いてもらう、そういうつもりで御答弁を一つ願いたい。あまりまあ無理な注文かもしれませんけれども…。
  176. 園田直

    政府委員園田直君) まず、ただいま最後に出願した遭難船の死体引首取り問題でございまするが、それは国交調整が開かれていないから拒否したわけでは決してございません。狸穴の旧代表部の一員から遭難船、金栄丸だと思いますが、金栄丸の破片と死体が漂着したからという手紙が外務省においてあったわけでございます。そこで外務省としましては、狸穴の方はただいま代表と認めておりません。これはきわめて簡単なようではございますが、これを申し込みによって受けるか受けんかということは代表部の資格が出るか出ないかの問題でありますから……しかしそういう資格を言っておる問題ではありません、人道上の問題でございますから、そこでその問題は解決するように手続はとるように……、これはまあ外務省事務官としては当然の苦労の存するところでありまして、昨日これは調査したところによると、日赤と水産庁の方に通知をしまして日赤を通じて外務省から案も付して電報によって照会をしておる。そうして二十一日だと思いますが、樺太南端数海里のところで向うの軍艦からこちらの海上保安庁の船が死体を引き受けたのでございますので、御了承を願います。  なお樺太、千島付近に対する先般からの木下委員の御意見は十分わかり過ぎるほどわかっております。なおまた、先般日比谷の公会堂において行われました主として北海道関係方々の漁権の拡大国民大会等にも出席しまして強い要求も受けております。これは日ソ国交回復後の移民という問題もございましょうが、その前すなわち日本人に自由に働く場所を許してもらうような折衝をやれという意味だと受け取っておりまして、お言葉当然のことだと考えております。ただいまわが方の全権は国交調整を進めますに際しまして約数ヵ条の諸懸案を提示いたしておりまして、これは早急の問題であるから国交調整上、国交調整前に一つ話し合いを進めてもらいたいという案を出しておりまするが、その中には今、木下委員から仰せられたような問題は、国交調整後のいろいろな条約なりその他の取りきめによってきめる問題以前に当面の問題として自由操業の問題、あるいは漁業権の共同調査の問題、あるいは遭難船の問題、あるいは避難等に対する問題等は向うに要望して話し合いをしておるところでございます。  千島、樺太の将来の移民その他はただいま御承知の通りにわが方は、南樺太、千島、歯舞、色丹島の領土返還ということが主問題でございますし、また今お言葉に出て参りました防衛等の問題も、くしくも日ソ交渉の一つの問題の重点に触るような気もいたしますので、その点についての御答弁は御勘弁を願いたいと考えております。
  177. 木下源吾

    ○木下源吾君 なかなかお話聞いておるとみんな納得するようだけれども、今の死体などはあれが始まってから一月かかったから腐っちゃった。それだから私は言う。それはこの間二十一日でしたか、朝日新聞を見たからわかっておるのですけれども、そういうことを人道上の問題…この前もそうです。根室のあすこへ油船が漂着したときに無線電信でやって参る。強引にやっておる。外務省はそれはタッチしない。外務省が化石だというのは私はそれを言うのです。それはそれでよろしい。これから気をつけてで登るだけ穏当に…。そんなことは人道上のことをやったかって悪いことをしたということは国会で言う人は一人もおらんから、それはそういうことでよろしい。今後はもう少し生きた仕事をやってもらいたい。今の樺太、千島の問題、領土とか何とかということも大切です。それよりも私は実際に行き来できるようにしたらどうか、行きたくて行きたくてしょうがないでいるのだから。そこで問題になるのは、私は捕船のことで狸穴に数回、数年来あれしておる。そうとする、つかまえるのはこちらは何じゃないのだ、ただ問題は、こういうように、ここのところはこういうつまり軍事施設がある、こういうところは飛行機、ことはレーダー、ここはこうとこっちの方を指摘して来るのですよ、これだから私の方は警戒せなければならないではないか、それですから、つまり、いやしくも相手方を偵察するような機械類その他のものを持っておったり、そういう疑いのあるものは、それは調べなければならないということを聞きました。聞いておればごもっともなんですね。問題はそういろ軍事施設を作ったことにあるんですね。そういうものが必要ないということになれば何でもない、問題は簡単に解決する、そういうふうに解している。で、こっちから言えば、向うが防衛しているから、向うから言えばこっちに軍事施設があるから、こういうことになるんですよ。これは、私は文明国の日本とソ連との間で話し合いがつかぬわけはないと思います。どうして話し合いがつかんのか、それを私は残念に思うんです。私は目下日ソ交渉が始まっておるのだから、現在の必要を満たすために、千島やカムチャッカ方面に応急的避難港などを設けてもらいたい。先先の抽象的なものじゃなく、現実のものを何とかして進めていけないものかということを聞いておるのです。それには防衛施設をやめてしまったらどうか、ことしから何万人という軍を増強するのでありますが、これは国民の要望している国交交流を妨げるものではないか、どうですかね、こういうことを聞いておるわけです。これは私の希望とか話ぐらいに聞いておいて下さい。  それでは次に、賠償々々と言っておるのですが、大体私はサンフランシスコ条約でですね、賠償問題や領土問題をそのまま残しておいてやると言ってもできないのじゃないか、こういうことには私はうなずいておるわけです。この賠償問題がいまだにひっかかっておるわけですね。一体この賠償問題は日本の国がああいうあばれ回ったから、あのあばれん坊をまたあばれるときには一つ制止する意味で一つ賠償をうんととってやろうじゃないか、こういう考えも一部にはあるのじゃないか、実際には日本が立てないようにして、あるいは金を持ったり財産を持っておるとまたあばれるから……、で、そうではなくて、真にフィリピンのように荒らされたところを、これをいわゆる人道上と言いますか、そういう意味でこれを復興する責務は日本で、これだけは負担するのが当然じゃないか、こういうような観点もあろうと思うんです。で、私はですね、あすこを荒らしたのは日本の軍隊ですよ、まあ軍国主義というか何というか、まあそういうものなんですが、この賠償が済まんうちに、防衛だか攻撃だかこれは知りません。再び今一生懸命千何百億とか二千億とか言ってこういうことをやっておって、矛盾じゃないのかどうか、私はそれを聞きたいんですよ。これをですね、そういうすっかり皆片づいてしまってからならば何か考えてもそれはいいのでありますが、ことに私は外務当局にお尋ねしたいのですが、かねて日本の軍国主義時代の外交というものは、背後に軍力を持って、いわゆる力を持って、そうして外交を推進せしめた、これはまごうかたない事実である。今日ですな、今日外交をされる場合に、やはり背後に電力を持たなければ、あなた方は日本の外交を推進することはできないのかどうか、この点を一つお伺いしたいと思う。しからば軍備を持たなくても外交はできるというならば、一体何を背景にして外交をなさろうとしているのか、これを一つお伺いいたしたいと思います。
  178. 園田直

    政府委員園田直君) 武力を外交の背景だとは断じて考えておりません。武力がなければ外交ができないとは考えておりません。武力の背景のある外交はそれは外交ではなくて、力による圧力である、こう考えております。武力のない外交、すなわちほんとうの外交というものは国民の支持と総意によって外交を進めていけばで登るものと考えております。
  179. 木下源吾

    ○木下源吾君 その国民の総意というものは、私が今言ったようなもので、北海道の沿岸へ行けばみんな樺太へ行きたがっています。また千島や、カムチャッカとの交流を望んでいるのはほとんど全国民の世論であります。国民の意思に従って外交を進められるならば、この際軍備を撤廃して日ソ国交を回復することが平和移民遂行の要請であると考えますが、どうですか。
  180. 園田直

    政府委員園田直君) ただいまの漁期を目の前に自由操業の問題、あるいは送還の問題、共同資源の開発の問題等が、これからあとに起ってくるいろいろな話し合いを前にして早急に解決してもらいたいという話し合いは進めているわけでございます。ただその先に、だから、こちらの防衛をどうだこうだということになって参りますと、それは論点の起るところでありますから、今、木下さんのおっしゃったことは強く全権に申し伝えまして要望いたしております。
  181. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  182. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 速記を始めて。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時三十一分散会