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政府委員(
高田正巳君) 戦前は、今
お話がございましたように、
相当やっております。一番盛んな時期には、私の聞いておりまするところでは、一千町歩以上もやっております。
国内の需要の三分の一ないし半分ぐらいは
国内産のアヘンで充足をいたしたように私ども聞いております。それで、今の御
質問の、しからば来年あたりから
国内で希望者があればどんどん許していくかという御
質問でございまするが、の耕作の反別につきましては、これも
法律の中でどこかに
規定があったと思いまするが、毎年厚生大臣がそれを告示することになっておる。昨年は全国で百五十町歩以下ということで、実際はたしか百四十九町歩ぐらいだったと記憶いたしまするが、これだけのものを指定をいたしまして、耕作をやってもらっておるわけでございます。それで今後希望者があればどんどんふやしていくかという御
質問でございまするが、長い目で見ますれば、今の御
指摘のようなことになって参ると思うのでございます。ただ当面ここしばらくの間は、結論的に申しますと、あまりこの耕作反別を広げる実は気持を目下のところ持っておらないのでございます。その
理由はどういうことかと申しますると、実はこのあ
へん法を昨年の国会で審議をいただきました際に、これは参議院におきましても
衆議院におきましても同様でございましたのでございますが、あ
へん法の内容の一部になっておりまする
ケシの
栽培を再開するということは、非常に考えものじゃないか。少し
政府は考え直したらどうかというふうな御意見が非常に強かったのであります。と申しますその
理由は、まあ覚醒剤とか、あるいはその他
麻薬につきましても、いろいろと不正取引等がございまして、薬物によるこの弊害というものが今わが国では
相当びまんをいたしておる、こういうときに、
ケシの
栽培を再開いたして、決してこれは農民を疑うわけじゃないけれども、いろいろ盗難が起ったり
事故が発生したりして、ますますこの傾向に拍車をかけるような素地ができていくのじゃないか。なるほどアヘンがどうしてもなけりゃならないので、
外国から
輸入する場合には外貨を使うことになるけれども、しかしその外貨もそう大したものじゃないじゃないか、だからよほど
政府としては考えたらどうかというような御意見が強かったのであります。それに対しまして私どもといたしましては、いやごもっともであるけれども、
ケシの
栽培ということは、これはなかなか
栽培にも技術を要しますし、アヘンの採取ということにも
相当な技術を要するのであります。戦前
日本で多年にわたって耕作農家が苦労いたしまして、
相当の段階に達しておったのであります。これを終戦後十年も放置してあって、今後このままにしておくならば、この
栽培技術あるいはアヘンの採取技術というものもだんだんなくなってしまう。そういうことになったら、これは非常に憂慮すべきことになるし、またアヘンというものはどうしてもこれは医療上なくてはならぬものであるから、簡単に今日のように
輸入できる状態であれば問題はないけれども、この状態もいつどうなるか逆睹しがたい、さようなわけ合いであるから、どうぞこれを再開してやらしてもらいたい、しかしながら御心配の
取締りの点については、私どもは
自分たちの
取締り能力の範囲を超えての耕作は当分やらないから、当分は技術保存というその
程度で
栽培をやらして行くからというようなことを御
説明申し上げまして、実はこの
法律が成立いたしたような経緯もございます。さような経緯もございまするので、今後しばらくの間は、大体現在の耕作反別というものを守って参りたい、かような気持でおるのでございます。それからもう
一つは、幸いに耕作の農民の方々の御協力によりまして、昨年から今年にかけては
事故が一件も出ておりません。その点は心配したほどのことはなかったのでございまするが、もう
一つの問題といたしましては、非常に有利なあれだというので、だいぶん御希望があったのでございますが、実際にこれを耕作してみますると、しばらくやめておりますので、なかなか収量も、あるいはモルヒネの含有量というものも、そう簡単に戦前の域に達するということは
相当むずかしいので、従いまして収量、
価格はモルヒネの含有量で計算をいたしておるのでありますので、予期よりも反当収入がなくて、農家に御迷惑をかけるようなことがあり得ると思うのです。さようなわけ合いでしばらく
栽培技術がもとに復して、
相当な収量があるという段階に至りませんと、多くの農家がこれをおやりいただいても非常に失望なさって、かえって今後の
ケシの
栽培は有利でないからやめてしまおうという気持が起らないとも限らない。その辺あれこれ勘案いたしまして、当分のところ大体この
程度の耕作反別を維持していく。しばらく模様を見ましてから広げるということを考えております。目下のところ今のように考えておる次第であります。
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