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1955-06-24 第22回国会 参議院 大蔵委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年六月二十四日(金曜日)    午後一時四十七分開会     —————————————    委員の異動  本日委員鶴見祐輔君辞任につき、そ  の補欠として井村徳二君を議長にお  いて指名した。     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     青木 一男君    理事            西川甚五郎君            山本 米治君            土田國太郎君            平林  剛君    委員            青柳 秀夫君            藤野 繁雄君            宮澤 喜一君            片柳 眞吉君            小林 政夫君            杉山 昌作君            菊川 孝夫君            天田 勝正君            井村 徳二君            中川 幸平君            木村禧八郎君   衆議院議員            前尾繁三郎君            福田 赳夫君   政府委員    大蔵政務次官  藤枝 泉介君    大蔵省主税局長 渡邊喜久造君   事務局側    常任委員会専門    員       木村常次郎君    常任委員会専門    員       小田 正義君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○所得税法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○法人税法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○租税特別措置法等の一部を改正する  法律案内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 青木一男

    委員長青木一男君) これより委員会を開きます。  所得税法の一部を改正する法律案(閣法第一五号)  法人税法の一部を改正する法律案、  租税特別措置等の一部を改正する法律案  以上三案を一括議題といたします。  三案はいずれも衆議院において修正されておりますので、まず右の修正について衆議院修正案提出者より説明を聴取いたします。
  3. 前尾繁三郎

    衆議院議員前尾繁三郎君) ただいま議題となりました所得税法の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案及び租税特別措置法等の一部を改正する法律案に対する衆議院におきます修正部分につきまして、衆議院における修正案提出者を代表いたしまして、その修正理由及び内容につき御説明を申し上げます。  政府提出昭和三十年度予算案につきましては、審議の結果、最近の経済状勢その他諸般の要請に必ずしも充分適応していると認め難い部分もありまして、日本民主党、自由党が共同してこれを修正し、六月八日衆議院を通過いたしましたことは、御承知通りであります。  この予算修正の一環といたしまして、衆議院政府提案所得税法の一部を改正する法律案外二税法の一部改正案に対し修正を行なったものであります。  その根本趣旨は、一といたしましては個人所得税につき、主として低額所得者負担軽減均衡化合理化を図ることと、二といたしましては、これとの均衡法人低額な利益に対して税率軽減すること、三といたしましては預貯金利子課税の廃止との均衡上、配当所得に対する課税上の優遇措置を講ずることであります。  以下順次三修正案について、その大要を申し上げます。  まず、所得税法の一部を改正する法律案に対する修正案におきましては、寡婦等所得税負担軽減に資するため、政府原案においては据え置きとなっていた寡婦控除不具者控除等の額を四千円から五千円に引き上げることといたしております。また、寡婦不具者等戦傷病者戦没者遺族等援護法の規定によって遺族年金又は障害年金を受ける者である場合におきましては、現在、その特別の事情を考慮し、六千円の控除をいたしているのでありますが、今回、これを七千円に引き上げることといたしたのであります。  次に、法人税法の一部を改正する法律案に対する修正案におきましては、特に中小法人法人税負担軽減を図るため、普通法人所得金額のうち年五十万円以下の金額に対する法人税税率軽減する等の修正を行うこととといたしているのであります。  すなわち、第一に、普通法人に対する税率は現在は一本税率となっており、政府原案においてはこれを百分の四十に引き下げることとしているのでありますが、これを二段階とし、所得金額のうち、年五十万円以下の金額に対しましては百分の三十五の軽減税率を適用し、年五十万円をこえる金題に対しては政府原案どおり百分の四十の税率を適用することといたしたのであります。  第二に、公益法人及び各種の協同組合等特別法人に対しましては、現在普通法人の場合と区別し、百分の三十五の軽減税率が適用されておるのでありますが、政府原案におきましては、この税率は現行通り据え置かれることとなっております。しかし、これらの法人特殊性を考慮いたしますときは、普通法人税率を引き下げることに伴いましてその税率軽減することが適当であると認められますので、これを百分の三十に引き下げることといたしたのであります。なお、これに伴い、特別法人清算所得に対する税率のうち積立金及び非課税所得から成る部分金額以外の金額に対する税率を百分の四十一から百分の四十に引き下げることといたしたのであります。  もっとも個人との権衡財源関係等をも考慮し、法人税についての修正部分は本年十月一日以降に終了する事業年度分法人税及び同日以降の解散又は合併による法人税から適用することといたしたのであります。  次に、租税特別措置法等の一部を改正する法律案修正案におきましては、低額所得者負担軽減に資する等のため、選択による概算所得控除制度を新設する等の修正を行ったのであります。  すなわち、第一に、納税義務者選択により、社会保険料控除医療費控除及び雑損控除にかえて所得金額又は給与収入金額の百分の五に相当する金額を、一万五千円を限度として、所得金額から控除することといたしたのであります。ただし、昭和三十年分の所得税については、この修正を七月一日から実施することとしている関係上、社会保険料控除額等の二分の一に相当する金額と、七千五百円を限度として、所得金額又は給与収入金額の百分の二・五に相当する金額との選択を認めることといたしたのであります。この措置によりまして、たとえば、夫婦及び子供三人の標準世帯給与所得者は、平年度において、年収二十三万一千二百五十円、月収一万九千二百七十一円以下の場合には、所得税を課せられないことになります。  なお、給与所得者につきましては、毎月の給与に対する課税は従来通りといたしまして、年末調整を行う場合におきましては、社会保険料の額が概算所得控除額に満たない者については、概算所得控除額控除して税額調整を行うことといたしたのであります。  第二に、政府原案におきまして預貯金等利子所得に対する所得税課税を免除する半面配当所得に対しては源泉徴収税率を引き下げることとなっておるのでありますが、現下の経済情勢にかえりみまするときは、直接投資を奨励することが緊要であると考えられますので、利子所得課税との権衡を考慮し、昭和三十年及び三十一年分の所得税に限り、配当控除額配当所得の百分の二十五に相当する金額から百分の三十に相当する金額に引き上げることとしたのであります。  なお、この措置とあわせて、配当所についての資料提供限度を現在一回につき三千円、年二回配当として六千円となっておりますのを、一回につき五千円、年二回配当として一万円に引き上げることといたしまして、所得税法施行細則につき所要の改正を加えることを政府に対して要望いたしておるのであります。  以上三修正案につきまして、提案理由内容と概略を申し上げましたが、右に申し述べました措置により、昭和三十年度において、政府原案に対し、所得税におきまして、約五十七億円、法人税におきまして約十億円のそれぞれ減収が見込まれるのであります。  何卒御審議の上、賛成されんことを希望いたす次第であります。
  4. 青木一男

    委員長青木一男君) ただいま説明のありました修正について質疑を行います。
  5. 小林政夫

    小林政夫君 低額所得法人税率を三五%にされたことに対しては私らの年来の主張でありまして、非常に賛成するのでありますが、その区分を五十万円以下ということにされたのはどういう理由でありますか。
  6. 前尾繁三郎

    衆議院議員前尾繁三郎君) これはまあ理論的にどういうところに線を引くかということは直ちには出て参りません。しかし現在資本金が五百万円以下の法人につきましてその平均の純粗を、税務署の扱っております純益平均いたしますと約五十万円、それから現在中小法人考えられます一千万円の資本金会社としまして、一割で百万円の純益があったと考えますと、五十万円にして、そうしてその超過部分につきまして五十万円については御承知の四〇%の税率を適用するということにしますと、平均が三七・五という平均税率になってくるわけであります。これは多々ますます弁ずるということかもわかりませんが、最初試みとして御承知のようにこの問題につきましてはいろいろ従来から論議されておるわけでありますが、余りまたこれ税率が下りまして、そうして個人事業者との均衡が非常に大きく破れるということでありましてはおもしろくないのであります。この際の措置としては、五十万円くらいが一番適当でないか、そうしてその実績なり、あるいはまた個人所得税その他におきまして大改正、根本的な改正をするという際に、さらに検討してみたらどうかというような考えをもちまして、一応五十万円というところに線を引いたわけであります。
  7. 小林政夫

    小林政夫君 これは財源関係というか、法人税減収になるという点も御配慮の中にあったのではないかと思うのでありますが、その点はいかがでしょうか、財源さえ許せばもう少し線を引くところを上に上げる、こういうお考えはあったかないか。
  8. 前尾繁三郎

    衆議院議員前尾繁三郎君) 御承知のように全般的に三五%という税率さえ一応公約当時においては考えた点であります。これは財源が許し、そうしてまた個人の方との関係を考慮して考えますと、所得税全般にも改正するというところまで手がつきましたらそれは引き上げてもいいんじゃないかと思っております。しかしこの際の修正案としては私は大体この程度でいいんじゃないか、財源措置の考慮というのは個人との経費選択控除制度が半年度分しか適用しておりません関係もありますが、十月以降の分について適用したという点がまあ財源等関係ということが言えると思います。実は五十万円にしましたところは広い意味では財源関係はもちろんありますが、一応の考え方としては、まあ財源はむしろ実施期を遅らしたという点で考えておりますが、一応五十万円にしました点につきましては、最初試みということにおきましては、この辺でやむを得ないのじゃないか、ここらで一応実施して見るべきじゃないかと考えております。
  9. 小林政夫

    小林政夫君 財源関係からいきますと、五十万円以下を三五%にした場合、平年度法人税収の減は四十四億六千万円、それから百五十万円以下を三五%にした場合の平年度減収は六十三億、その差は十八億円、まあ最初試みだから一応そういうことでやってみたということですが、大体私の希望は百五十万円くらいのところで線を引いてもらいたいという希望を持っておるのであります。次回までに御検討をわずらわしたいと思います。  それから租税特別措置法というものについて、衆議院の方ではどういうようにお考えになっておるのか。だいぶ租税特別措置法でもっていろいろな一時的な減免措置が講じられておる。今後とも特別措置法を適用する範囲が年年拡大されて、国会が開かれるつど拡大されておるという傾向、こういう傾向に対して、どういうふうにお考えになっておるのでありますか。
  10. 前尾繁三郎

    衆議院議員前尾繁三郎君) 租税特別措置法の中にはいろいろな雑多なものがあると思います。しかし、大別して一つは当分のうちだけ、まあ経済情勢が非常に異常であります時代だけに適用しようと、そうしてその後は廃止しようという考えのものであります。また最初試みであって、それを将来確立していきますためには、本法に直ちに織り込むのは適当でないので、いろいろと検討をして、本法に織り込んでいこうという意味のものがあると思います。今回の修正案におきましても、御承知のように利子に対する課税、あるいは配当優遇措置というような問題は、この二、三年間の全く異常な経済状態に適応さしていこう、租税原則をかなり破っているという考え方のもとに、臨時措置というものを織り込んでおるのでありまして、また経費概算控除制度というのは、その範囲におきましても、将来研究すべき問題を持っております。また源泉課税の場合におきましても、この際におきましては直ちに税額表に織り込むことが不可能であります。年末調整で間に合わすというような、技術的に不可能なために、平年度とは違った取り扱いをやらなければならぬ。従って、これを租税特別措置法に織り込んでおるのであります。そういう二つのものがあると思っておりますが、いずれにしましても、租税特別措置法というのは、まさに特別措置でありまして、これはできるだけ早く解消すべく実施して、本法でいくべきものだと、かように考えております。
  11. 小林政夫

    小林政夫君 どうも臨時臨時ということで、安易に税の軽減措置が講ぜられる傾向があります。また非常に御承知のごとく税法自体を難解のものにならしめております。簡便な税法という意味においても、すみやかに租税特別措置法を撤廃されることをわれわれは望むものであります。また金融政策産業政策社会政策等税法で解決していくということも少し本来の税制という面から言えば考え直すべきではないか、こういう意味において、衆議院においても御検討をわずらわしたいと思います。  それから預貯金源泉課税預貯金課税の全免と均衡をとるために配当課税軽減した。この均衡をとるには、こういうふうに改正をされた結果、ほんとうに均衡がとれてくるかどうかという点については数字的にどういう検討をなされているか。
  12. 前尾繁三郎

    衆議院議員前尾繁三郎君) 御承知のように利子につきましては、全く課税を受けないのであります。従って、それに比較すれば全部非課税というようなところまでいかなければ本当に均衡がとれたということは言いがたいと思います。しかしいずれにしましても、まあ利子につきましては、御承知のように実際問題としてはいたずらに銀行の手数をかけておりますが、いわゆる貯蓄組合預金関係課税されておる課税額も非常に少額であります。従ってこれを全免いたしましても収入としてはそれほどではありません。しかし配当につきましてこれを全く課税をせんというようなことになりましては、ことに配当につきましては、御承知のように大所得者、いわゆる大納税者と称するものはほとんど配当収入によっているのであります。そういうものがごそごそ落ちていくというようなことでありますれば、社会上の影響が非常に強いと思います。さりとてこれだけの預金に対してこれだけの措置がとられております際に、政府原案であります源泉徴収の分だけの率を下げたというのは、実質においては何ら軽減を受けたものではないことになってしまうのであります。ただ実際問題としては徴収できない部分が出て参りまするが、しかしそれによっては理論上は別に軽減されたということには相ならないのであります。従いまして、その点におきまして、われわれは従来の配当控除制度の二五%をあるいは三五%まで持ってくるべきかとも思いまするが、しかしそうなりますると、また半面にあまりにも今度は逆に他の所得から引くようなことにもなりますので、二五%を三五%程度に持ってくるという措置を講じるのは、また一応これも多少疑問のある点で、実際上の軽減にはならんのじゃないかということを言われますかもわかりませんが、資料提出限度を引き上げるということによれば、まあ配当についても相当な措置がとられたのだ、源泉徴収の一割に下げました政府原案と相待ちまして、あらゆる措置はとられているのだ、少くとも感覚において均衡感を与える、かように考えておる次第でございます。
  13. 小林政夫

    小林政夫君 われわれも今数字的に均衡をとれたかとれてないかということの判断は、いわゆる所得階層によっても違いますし、また所得の質によっても違うので、そう的確に数字的な比較ができないのでありますが、まあやってみよう、ある程度やってみたいと思って資料を収集中でありますが、衆議院の方でどの程度やれるかと思って聞いてみたのでありますが……。  それから今配当所得関係して資料提供限度を現在一回につき三千円、年二回配当として六千円となっている、それを一回につき五千円、年二回配当一万円に引き上げることとしたと、こう今の提案理由説明の中にあったわけでありますが、現在までの取扱いは年一回につき三千円、年二回決算の場合においては六千円になるけれども、一回決算の場合には三千円になっておると思うので、それは施行細則でも必ずしもはっきりしないのでありますが、実際の国税庁の取扱いがお説のように変るのかどうか。変ることはもう確約されておるのかどうか。その点を一つ
  14. 前尾繁三郎

    衆議院議員前尾繁三郎君) 政府要望いたしておりますが、政府としましては、これはもう民主党も責任を持っておられますので、一回五千円、年二回で一万円ということに御了解を願っておる次第であります。ただその従来の政令におきましては、三千円未満となっておりますが、われわれの意思といたしましては、政府に差し出しました要望書はその点が不明確でありましたのでございまするが、以下というので、三千円なり五千円なり、あるいは一万円を含めての考え要望しておりますので、その点はあらためて政府要望いたしてみますから、含むものと御了承願ってけっこうだと思います。
  15. 小林政夫

    小林政夫君 それじゃ政務次官にお伺いしますが、今の点は前尾さんのおっしゃる通り政府は御決定になりますかどうですか。
  16. 渡邊喜久造

    政府委員渡邊喜久造君) 資料提出限度につきましては、御提案趣旨がはっきりいたしましたので、それに向って実現するようにいたしたいと考えております。
  17. 小林政夫

    小林政夫君 それでは再度念を押しますが、年二回決算は一回につき五千円以下、それで年一回決算の場合には一万円以下と、こうですね。年一回決算の場合には一万円以下、これでいいんですか。
  18. 前尾繁三郎

    衆議院議員前尾繁三郎君) 一回の場合には、要するに回数で限りまして、これはこういうことを御了承願いたいと思うのです。御承知のように従来はこの取り扱いは、要するに源泉徴収義務者の方の手数があまりにかかるということで、こういう政令が出ておるわけであります。従ってその趣旨は私は全然消えておるとは考えておりません。しかし今度はあまり小さいものはあさらぬという、新しいわれわれの考え方が新たにつけ加わったというふうに御了解願いたいのでありますが、さりとてやはり形式は、手数を、あまりめんどうをかけぬというような形式をとっておりますので、やっぱり一回払うものについてとにかく五千円、年二回払っても五千円ずつで一万円になる。かように御了承願いたい。
  19. 小林政夫

    小林政夫君 そうすると、年一回決算の場合は五千円以下までしかならないということですね。円滑に言えば、端的に言えば、結局そういうことですね。
  20. 渡邊喜久造

    政府委員渡邊喜久造君) 今のお尋ねにつきましては、話の当初の出所は今前尾委員のおっしゃった通りです。要するに年一回とか二回とか言わないで、従来の三千円を五千円に上げる、これでわれわれは一応了としたわけです。ところがいろいろ議論をして参りますと、これは証券界要望などもありまして、現在の書き方ですと、三千円と五千円というふうに直すだけでは五千円に達しない場合には資料を提出しなくてもいい、こういう話になるわけであります。それではどうも工合が悪いから、五千円以下にしてくれないか、こういう話が一つあります。  それからもう一つ、今小林委員の御指摘になったように、従来のやつは全く資料提出限度につきましては、一応資料を出す会社手数ということを中心に、一回出そうが、二回出そうが、とにかく同じ金額、ところが今度のやつは多少趣旨が違うのじゃないか、そういう意味において年一回決算の場合においては一万円、片方が五千円以下になるなら、片方を一万円にしてくれないか、こういう話がありますが、そのいずれの点につきましても、全く当初一応民目両党と政府の間で意見の一致しておりました点は、とにかく三千円が五千円に上る、その点だけが一致しておりまして、その他の細目については全く一致しておらなかったのです。これは現在われわれの方で多少それによる影響などを調べておりますが、まあ施行細則の問題がございますから、いずれはっきりさしたいと思っております。まあ御要望の点はできるだけ尊重するつもりではおりますが、最終決定につきましては、もう少し調べてみたいと、こういうことを申し上げております。
  21. 小林政夫

    小林政夫君 前尾さんの先ほどの説明の点が、少しぼやけたのだけれども、衆議院の方の要望趣旨ですね、主税局長から聞けば割合はっきりしております。年一回の場合は一方円以下、こういうことで要望しておられるのか、その点はどうですか。今度は多少前の手数を省くという意味であるか、やはり預貯金の全免と関連した意味があるのですか。
  22. 前尾繁三郎

    衆議院議員前尾繁三郎君) 実は私はそういうふうに解しておったのでありますが、またその差し出しました文書は年二回とわけて出して……。
  23. 渡邊喜久造

    政府委員渡邊喜久造君) わけてないんです。
  24. 前尾繁三郎

    衆議院議員前尾繁三郎君) ところが今聞きますと、新たにまたそういう要望が、またそういう会社が出たそうでありまして、その点につきましてはなお検討しまして、相談いたしまして、いろいろ新たにしたいと思います。
  25. 小林政夫

    小林政夫君 もう一回恐縮ですが御出席願いまして、その点一つはっきりさしていただきたいと思います。
  26. 土田國太郎

    土田國太郎君 今の年一回の問題ですがね。これははなはだ株主としては、会社都合によって二回で一万円のものはまあ源泉にならない。一回で一万円ならばとられる。そういう不合理な話はないと思うんですが、この点よく一つ衆議院の方とお考え下すって、はなはだこれは会社都合によって、株主が同じ一万円とるのに、源泉がかかるのと、かからないのとが出てくるわけです。特に業体によって年一回でなければ都合の悪い事業がたくさんあるのです。これを一つ御考慮下すって、たとえば自分のことを言うちゃ変ですけれども、われわれの業体なんか、一年を半期ずつにできないんです。どうしてもこういう業体はたくさんあるのです、日本の国内に株式のあれを見ますと。そうすると、はなはだ会社都合によって、株主が不公平の取り扱いを受けるようなことになりますから、一つその点はもう一ぺん御努力願いたいと思います。
  27. 前尾繁三郎

    衆議院議員前尾繁三郎君) 衆議院で相談いたしまして、さらにお答え申し上げます。
  28. 小林政夫

    小林政夫君 少額所得法人税率を五%引き下げるということについては、御承知のごとく非常に主税当局としては反対であったと思うのだが、従来からのわれわれとの議論のやり取りでは。それで最近非常に少額所得法人の方で心配している点は、こういうふうに税法は五%軽減になったが、実際の課税に当って、更正決定等相当課税所得がふくらまされるのじゃないかと非常に心配をしておる向きもあるのですが、衆議院の方においてこういう点はよく徴税当局に旨を含めて、だめをおしておられるのかどうか。
  29. 前尾繁三郎

    衆議院議員前尾繁三郎君) 今回の五%引き上げた措置趣旨はもう十分政府も了承いたしてくれておるわけでありまして、決してそのために今度はこれをカバーするために調査の上で厳重にやる、従来以上に厳重にやるという考えは毛頭ございません。その点は先般衆議院におきまして主税局長も株式配当の問題とともに一応そういうような答弁がありました。
  30. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 今度の税制改正に対する修正案のねらいというものは、一体低額所得者の税負担の過重なものに対して逓減をする、こういうところをねらったのか、総花的に少しずつ色をつけると、こういうふうにやったのか。ねらいは一体どこにおったのか、一つお尋ねいたしたいと思います。こういうのは重点的にやった方がいいのじゃないかと思うのですが、非常に衆議院の方で修正されるに当って、この減収として六十七億を見込まれまして、平年度において百四十一億一千五百万円ですか、これを割り当てるについて、思いつきで、こことここと、しかも今度は別表改正等の複雑な仕事をやらんように、なるべく簡単にこれを割り当ててしまった、こういうきらいがあるように思うのでありますが、あなたの方の衆議院修正をされるに当ってどこをポイントにねらってやられたか、この点を一つお答え願いたい。
  31. 前尾繁三郎

    衆議院議員前尾繁三郎君) 御承知のように配当の問題につきましては、これは利子の全免というものとの均衡をとって考えております。それから法人税並びに概算経費控除は、これはいずれも低額のものをねらいといたしております。しかしただいまお話のように、その措置低額所得者だけに適用するというようなことは果して低額者とは幾らからいうのだというようなことになって参りますると、これは非常にむずかしいことになります。三五%の税率を五十万円までに適用します場合におきましても、大法人でありましても三十五万円までについては軽減税率を適用するということでいきまして、結局基礎控除と同じような累進的な役割をもたせる、しかしねらいはあくまで小法人にある、概算控除制度にいたしましても一万五千円までは大所得者にも適用はあるわけであります。しかしこれは比率で軽減の割合をお考え願いましたら、絶対額からいきますと、ことに上ずみで考えましたら、大所得者の場合には一万五千円につきましても、税額の軽減税額からみますと、少額の人の五%に対する税額というものよりは、これは絶対額は多くなりますが、これはどうも課税の技術上やむを得ないので、そこに三十万円あるいは二十万円までを低額所得者考え、そこだけに適用があるというふうにいきますと、非常に不自然なものができ、かえって不均衡のものができるというような点からいたしまして、大所得者にも適用はいたしますが、主としてその恩恵を受けます割合はあくまで低額所得者にあるわけであります。その点はわれわれは低額所得者を目標としてやっておるわけであります。御了承願いたいと思います。
  32. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 次に配当控除額の引上げにつきまして、三十年と及び三十一年分の所得税に限り配当控除の割合を百分の三〇に引上げるということは、この二カ年に限った今度のいわゆる修正というものは、三十年度予算修正をあなたの自由党と民主党との、いわゆるまあ折衝委員の間に行われて、三十一年度についてまでもこれをやられるという趣旨は、どういうところにあるのか。これは三十一年も民主党と自由党のいわゆる予算については話し合いをつけてやっていこう。こういう腹がまえをもって、三十一年度もこういうふうな処置をされたのか、この点を伺っておきたい。
  33. 前尾繁三郎

    衆議院議員前尾繁三郎君) たとえ臨時措置でありましても、ごく短期間にやったのではこれは効果がありません。やっぱり短期間と申しても二年間くらいはやらなければなりませんし、またあまりに朝令暮改であってもなりませんし、二年間ぐらいたちまして、そうしてその後の情勢につきましては、またそのときの情勢に応じた判断をしなければなりません。しかしただことしだけの措置ということでは、これはおそらく期間が短いのでありまして、またあまりにも安定しませんから、その措置がすぐ消えてしまうものだということでありましては、おそらくこれは効果が上らんと思います。従って利子の減免の免除の措置が二年間に限られております。それと相符合しまして配当措置もきめておるわけであります。
  34. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 この配当控除につきましては、おそらくこういう要望の強いのはどちらかと申しますと証券業界あたりからは強い要望が出ておると推測できるのであります。で、次の配当所得についても資料届出の限度の額の引き上げについても同様なことが言えると思うのであります。このにおいを、少しわれわれ第三者から、いわゆる折衝に当られなかった、これに参画しておらないものからみますると、俗にこれはまあ常識的に民主党の方では今の大蔵大臣の一萬田さんが金融界に非常に顔がきいている、いわゆる銀行その他の金融界に顔がきいていて、さすがの自由党もこれにはちょっと手が出ない。そこで自由党の方で顔のきくのは、池田さんを通じて証券業界に顔がきいている、こういうことが俗に言われておるわけであります。そこでこの折衝に当って今度の預金利子の免税措置が講ぜられたというのは、民主党的な免税措置である。これでは自由党の方ではおれの方にも一株入れろということで証券業界に、われわれきわめて第三者的に見ますと、そういうにおいがするのでありますが、しかもこれを二年間としておりますと、二年たったらまた頼むと、こう出てくるので、そこにいわゆる俗に言われまする運動の余地が生じ、いまわしい風評も立つことになる危険がきわめて多いと思うのであります。どうせこれをやるならば、もう少し長くやられてもいいはずだと思う。私のお尋ねしたいのは、そういうふうな今まで言われておったような風評が、ここになってみると、成るほどなあというような、うなずけるような修正になって、衆議院から送付されて来ても割り切れないものがあるのであります。従ってここで参議院としてお尋ねいたしておきたいのは、将来よもやこういうことで、いまわしい、この前の入場税法のときのようないまわしい事故の起る危険がないかどうか、あなた一つ修正案提案者としてはっきりとここで表明願いたいと思うのです。なぜ私はこういうことを言うかというと、この前も入場税の問題のときに、せっかく送り込まれたら、衆議院においてはあとでああいう事件を起しておられますので、念のために一つ伺っておきたいと思います。はっきり御答弁願いたい。
  35. 前尾繁三郎

    衆議院議員前尾繁三郎君) 自由党といたしましては預金利子の全面的な非課税という非常な特別な措置が一方的にとられておりますと、先ほど来から申しておりますように、われわれはむしろ自己資本こそふやすべきだ。もちろん証券業界の要望もありますが、それ以上に資本の蓄積が重要でありますことは御承知のように国民全体が認めていることであります。しかもまた利子率につきまして相当な手を打たなければ貯蓄ができない、それ以上にまた自己資本をふやす、むしろオーバーボローイングを解消いたしますためには、配当に対する措置が相当大きな手をもって打たれるというのでなければ、オーバー・ボローイングもできないということで、あくまで純理に基きましてやっている措置であります。もちろん業者の要望にこたえたというそんな意味合いのものではありませんし、将来に不正事件が起るというようなことは絶対にないと確信をいたしております。ただ非常にこれは税の体系から言いましたならば税の原則をかなりはずれた、まあ非常立法とも言うべきものでありますので、従ってこれを長年続けていくというようなことであってはなりませんし、またわれわれは御承知のように拡大均衡をねらって地固めし、また拡大均衡に進む、もう二年もたてばこういう措置を必要としない状態まで持っていき得る、かように脅えておりますので、そう長く続けようとは絶対に現在のところ考えておらないのでありまして、二年たてばまた運動でというようなことは、もとより考えておる次第ではありません。
  36. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 それでは配当控除額の引き上げ及び配当所得資料提出限度の引き上げによりまして、明年度で大蔵省の推定によりますと二十億くらいの減税になるのですが、この二十億の減税をすることによって、どういうことを期待されるのか、どういう現象がここに表われることをあなた方は期待し、それを指導されようとするのか。折角減税をいたしましても、何ら資本蓄積が漠然と資本蓄積と言われるだけではわからぬのでありますが、そこからどういうことを期待して、こういう非常措置をとられたのか、これを一つ伺いたい。そこに何か計画があるのか。
  37. 前尾繁三郎

    衆議院議員前尾繁三郎君) 御承知のように自由党の考えとしましては、まあ従来から預貯金利子の減免ということも一応公約に考えております。そうしてまあ政府は今度の措置におきましては預貯金は三百億乃至五百億ということを考えておられるようでありまするが、まあわれわれ最初考えました原案の当時におきましては、約一千億くらいの預貯金は新たにこの処置によって預貯金を増加していく。その一部を国家の要請しまする産業投資に回していこう、そうしてその他を民間の産業投資に回して拡大均衡をねらっていこう、こういうことであったのでありまするが、今度の措置によって一応政府の答弁から考えますと、五百億の預貯金を集めるというようなことになっているようであります。それにも増しまして、金額的には株式につきましてわれわれは計画的に考えてはおりませんが、御承知のように非常に増資が困難であるというような、とにかくそれがネックだと言われておりますことは御承知通りであります。従いまして少くとも従来ネックでありましたこの点を除去いたしまして、そうして民間の産業投資を活発ならしめるという大きな効果はあるということを期待いたしているのでありまするすれども、数字的にどれだけふやしていって、それをどういう方面に投資をやるというところまでは計画は持っておりません。
  38. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 今の御説明のありましたように、預貯金の免税によってはそれだけ預金をふやして、これを資金委員会かを設けられまして、一部を国の要請する財政投融資に肩がわりさせようというねらいがあると思うのでありますけれども、その配当控除の引き上げについては、二十億の減税を行なっても何らそこに計画がないが、ただあなたの御説明では、これによって増資を、今非常に増資がやりにくい。たとえば最近、今行われております富士や八幡製鉄なんかの増資なんか非常に失業株ができるだろうと言われております。従って新しい増資を促進させるということがねらいである、こういうふうに受け取ってよろしゅうございますか。まず御説明を承りたい。
  39. 前尾繁三郎

    衆議院議員前尾繁三郎君) その点におきましても、非常に現在の配当課税の問題がネックだと言われております。ことにわれわれはできるだけ大衆の資金を集めなければならぬ。それが低額所得者の減税をやりますその減税が、一方におきまして消費的な方に走っては意味をなしませんので、減税をやれば必らずそれが産業投資に還元していく、還元させなければならぬ。それにつきましては、やはりそれに対する相当な刺戟剤を与えて、そうして吸収していくということを一方にやっていかなければなりません。その点におきまして、相当な効果がある、かように確信をいたしている次第であります。
  40. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 もう一つ配当所得についての資料提出限度の引き上げということは、なるほど提出義務者の手数の簡略ということが表面の理由になっておりますが、裏を返してみますと、これはもうはっきり言うと、これだけは免税と言わぬばかりの措置だと思う。免税と言いますが、源泉徴収はなるほどされるが、総合課税はされないのだ、そういうことはする必要はないのだ、こういうふうに考えられるのでありますが、やっぱりほんとうのねらいは手数の簡略というよりも、一回について五千円、二回として一万円までは総合課税はされないのだ、これがほんとうのねらいであるかどうか、この点を一つ。めんどうくさいという点だけであったならば、大して今の五千円に引き上げるということはあまり意味がないと思うので、これはどうしてもそれだけは免税だということを知らせるものである、こういうふうに受け取った方がはっきりしていいと思いますが、その点を承りたい。
  41. 前尾繁三郎

    衆議院議員前尾繁三郎君) 確にそのねらいが新たに加わって参りまして、むしろおっしゃるようなことがそこに主眼点がおかれていると思います。ただ非常に低額の方になりますと、むしろみずから進んで申告をしていただいて、そうして配当控除の三〇%を受けてもらった方が得だという面があります。従ってむしろみずから進んで申告をしてもらった方が得なのであります。そういう方法をとっていただく。そうしてまあその中間にあります方々におきまして、実際上課税にならぬというところをねらっているのであります。
  42. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 それでは次の選択による概算所得控除の新設について伺っておきたいのですが、選択はあくまでも納税義務者の自主的な選択ということになると、どちらを選ぶかということを一々意思表示をさせなきゃならぬということになると思うのですが、これらの事務的取扱いはどういうふうに処理されようとしておるか。非常にめんどくさいことになるだろうと思うのですが、事務当局から一つ伺っておきたい。
  43. 渡邊喜久造

    政府委員渡邊喜久造君) これは先日条文の御説明のときに、一応、課長から御説明申し上げたと思いますが、源泉徴収される給与所得の場合におきましては、一応考え方としては選択考え方が基礎にはなっておりますが、おそらく納税者とされましては、法律でいずれか選択できるとすれば、これは通常の考え方としては、それによって税金が軽減される方を選択される考え方が普通であろう、こういう意味考えまして、年末調整におきまして、片方雑損控除社会保険料控除医療費控除などの金額と、それから百分の五または平年度一万五千円、いずれか少い方の金額と比べてみまして、そのどちらが納税者にとって有利かという考え方で、有利な方を特に選択といった意思表示なしに行い得るというふうに一応条文はしております。従いまして、考え方の基礎は選択でございますが、源泉徴収される分につきましては、そこに改めて選択の意思表示は要らない、どちらか、いずれか税額が低くなる方をとって年末調整する、こういうふうに条文はなっております。  それから確定申告の場合におきましては、これは一応考え方選択になっております。選択をしてできるようになっておりますが、この場合におきましても、これは確定申告の申告書の様式などの作り方によると思いますが、その点につきまして、納税者が比較的容易にいずれか選択の判断ができ、同時に容易にこちらの方を選択したということを書き得るような申告書の様式を考えていきたい。たとえば百分の五または一万五千円、いずれか少い方を片方で計算する。片方では、あなたの社会保険料控除医療費控除雑損控除、そういうものが合計して幾らかというのを両方書いてみる。そうして、あなたはどちらを選択なさいますか、選択する方に丸を付けてもらうということがいいかどうかしれませんが、まあそういうふうに、比較的いずれか容易に判断できるような申告書の様式を作らなければならぬ、かように考えております。
  44. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 この選択による概算所得控除の新設で、減収を、平年度は八十億、それから初年度四十億と組まれておるけれども、実際に、社会保険料控除であるとか医療費控除及び雑損控除等をこの一万五千円を限度とせられました場合におきましては、ほとんど今源泉徴収を受けておるような給与所得者のごときは、たいていは一万五千円の限度にほとんど引っかかってしまう、何らかの社会保険的な控除をされておりますので、従ってこの恩恵に浴することはなくなってしまって、実際にこの一万五千円の所得控除の恩恵に浴する者は、むしろどちらかというと、表面はなるほど選択でありまするけれども、現在そういった控除をされておらないような高額所得者控除の対象になり、低額の者はむしろ社会保険その他で実際は控除されておるので、控除を受ける恩典に浴する者は高額の者だけだ、こういうことになるきらいがあると思うのですが、この点はどう考えておられるか、提案者のほうで。まあ具体的な例を申し上げますと、どこかの工場や会社に勤めておるような職工であるとか、職員であるというものは、大てい社会保険料控除でみな一万五千円以上納めております。ところが会社の顧問であるとか、あるいはまあ、ざっくばらんに言いまして、国会議員の歳費であるとかいうようなものは、これは控除はほとんどありません。従ってそういう問題から、百分の五、一万五千円の限度までは自然に選択控除の恩典に浴する、こういうことになるきらいがあるのでありますが、その点どう考えておられますか。
  45. 前尾繁三郎

    衆議院議員前尾繁三郎君) 御承知のように、現在、事業所得、農業あるいは商工業、その他につきましては、ほとんど実際、医療費控除、それから雑損控除社会保険料控除というのがありましても、実際問題としては全然帳簿に記帳されておらぬ、証拠書類が出し得ないというようなことで、従来は控除の恩典がありながら、実際にその権利の上に眠っておるという状況でありまするから、その点につきましては、従来まあ政府資料では〇・七%程度控除をなされておる、従って今回の五%の控除によって相当の恩恵がある、われわれはかように考えております。  給与所得者につきましても、最初われわれがこれを立案しましたときに、政府資料によりますと、三・三%が大体平均になっております。これはちょっと資料が古いので、最近のは多少事情が変って、ふえておるんじゃないかと思いますが、それにしましても五%の控除を受ける、ことに組織労働者は社会保険料控除を受けておりますが、未組織のは全然受けておらぬというような場合もありますので、そういう点におきまして不均衡が是正されるというふうに考えておったのであります。そうして一万五千円の限度で参りますと、もっとも先般いろいろ非常に高い比率の社会保険料控除の適用を受けておるようなお話がありまして、調べてみますと、そういう人はほとんど控除になっておらぬ、従って現在の措置によって適用を受けるという人から考えますと、もちろん絶対額におきまして給与の高額所得者が恩典にはなりましたが、これは給与が非常に多いのでありまするから、その比率は問題になりません。その措置としてねらっておりますような所得階層の人からいいますと相当な恩典になる、かように港えておったのでありまするし、また最初政府に計算してもらいましたところでは、四十億の減税のうち三十億ぐらいは給与所得者の減税になり、十億くらいが事業所得者の減税になる、こういうふうな計算も聞きました。しかし大した大きな狂いはなかろうというので、そういうねらいをもってこの金額がきめられたわけであります。
  46. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 最後にもう一点だけ伺っておきたいのですが、今回のこの修正を見てみますると、最初はどうも重点が、われわれが考えているのと、ぼけているように思うのですが、具体的に申しまして、きょう当局から提出されました株式の利回り等から見ましても、大体税込みの利回りで八分五厘四毛くらいになっておりますから、一千万円くらいの株式を持っておる人は八十五万四千円収入があって、それで現行法でも二五%という配当控除をされるのでありますから、四分の一、まず二十二、三万円の控除をされる。八十五万円ぐらいの収入、これを所得税の別表によってみてみますると、大体二十二、三万円税金がかかることになります、勤労所得だけでしたら。そうすると、一千万円くらい株式を所有している人は、家に寝ておっても、それに配当によって得るところの配当所得には税金が、まあ源泉徴収されるのは別でありますが、総合課税は現行でも全然されない。それがさらに上廻りまするから、約百万円ぐらいまでの配当所得がありましても、ということになると、一千二百万円ぐらいのところの株式を持っていて、寝ておってもこれには税金がかからない。ところが百二十万円の勤労所得給与所得等でございましたらば、朝から弁当持ちで行ってずいぶん働いても、それには二十何万円の、二十四、五万円の税金がとられるということになるわけでありますが、これについては、法人のほうでは法人税で払われるのだから、もうそっちに税金をかけないのは当りまえだ、こういうようにやったならば、配当源泉徴収そのものがおかしいのでありまして、配当に対しては源泉徴収を、そのまま法人が払ってあるなら、源泉徴収自体がおかしくなってくると思うのでありますが、これもやめなければならんと思うのだが、源泉徴収をするということになると、やはり総合課税の場合に配当控除というのもおかしくなると思うのでありますが、そこで一千万円以上の株式を持って家に寝ておった人には税金がかからない。毎日弁当を持って働いておる勤労所得者に対して二十万、三十万ぐらい税金がかかる、こういうような税体系について、それはまあ理窟はいろいろ付けようはあるかも知れないが、今の社会観念からして少し行き過ぎではないか。そうしてこれをさらに三〇%にふやすということは、より行き過ぎではないか、こういうふうに思うのでありますが、この点について、そういうことも配慮をされまして、この修正案をこしらえられたのかどうか、その点を前尾さんから伺っておきたい。
  47. 前尾繁三郎

    衆議院議員前尾繁三郎君) もとよりわれわれもその点を考えておったのであります。預金につきましては、これはもう幾ら所得がありましても課税にならんということは、いかにもこれはおかしい。税の理窟から言うとおかしいのでありますが、しかし、この際としましては臨時の非常立法としてそれが許される。また配当につきましては御承知のように、深く掘り下げれば、結局法人の独立課税か、あるいは法人擬制説をとるかということによって、独立課税説をとると、もうすでにおかしくなっておるのであります。従って、もし完全な法人擬制説をとるならば、すでに、もし配当源泉法人税をとられぬということになれば、さらに多くの配当が得られたであろうという点がありまするし、また三〇%平均で引くのでありまするから、累進税率でもっと高いものを納めておる場合もあります。それで、一番極端な、配当所得だけあって何らほかに所得がないのだという人を想定していただきますと、御承知のように百二十万の配当所得一つも税金がかからないということになるのでありまするが、しかし、その前に、ほんとうは、もっと配当を多く得られたであろうということを考えたり、あるいはすでに申し上げました高い累進税率の適用を受けておるという点も考えていただきまして、そうして、そういう人は普通の状態におきましては、恐らく相当ほかに動労所得もみな持っておられるという状態を考えていただきますと、必ずしもこれは全く許されないような不合理なものとわれわれは考えておりません。もとより非常立法で、そこまでやらなければ資本蓄積が実際問題としてできないという必要に迫られてとった措置ではありますが、全然許されぬ、理窟には合わない措置だと考えておらないのであります。
  48. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 そこで、そういうふうな非常措置までとって資本の蓄積をやられるといっておるのだが、一面において、蓄積された資本の使い方ということで、これは非常に問題になると思うのですが、この点について、われわれも、かねがねから思っているのだが、今はどっちかというと、紡績のほうでも、そろそろ設備をちょっと減らしていかなければならぬのじゃないかというような事態にきている。操短をやらぬというようなことになっていると思うのであります。あらゆる面におきましてそういう事態がすでに起りつつあると私は思うのでありますが、従って、こういう非常措置をとって、せっかく設備を拡大され、充実され、資本蓄積で生産設備の充実をはかられる半面におきましては、この生産された品物がうまく捌かれるようにしなければならぬと思うのであります。砂糖の生産にいたしましたって、輸入の原糖のほうが半分ぐらいで、生産設備は倍ほどある。それから紡績もそうなってきた。やがて鉄鋼もそうなってくる。石炭も上ってきた。そういうときに、さらにこれは資本の蓄積をして設備を拡大するのだ、こうおっしゃるのですけれども、一体どういうふうな設備を今度は拡大されようとしているのか、この点ちょっとわかりにくいので、当然こういう非常措置を取られまする以上は、どういう方面に蓄積された資本を活用しよう、こういうことも当然お考えになりまして修正されたことだと思うので、予算修正の折衝に当って論議されました要点を、参考のために一つ御披露願っておきたいと思います。
  49. 福田赳夫

    衆議院議員(福田赳夫君) ただいま菊川さんからのお話、まことにその通りなんであります。私どもも、せっかくこれも努力いたしまして、国民の皆さんに蓄積していただきました資本を、それが不用不急な方面に無計画に使われては困る、こういう考え方をいたしておったのであります。そのために政府といたしましては、もともと政府案におきましても資本蓄積助長のため政策をとって、一般減税でありますとか、また、その中でも預貯金の全面免税というような原案を出しておったのでありまするが、それに対しまして自由党から、さらにそれを一歩進めたい。そうして、さらにさらに蓄積をふやしまして、そうしてその蓄積は、これは国家有用の方面に効率的に使いたい。その方法として、政府のほうで公債を発行いたしまして、金融機関に集まりましたその蓄積を、先ず公債消化のために天引きをする。こういう御提案があったわけであります。私ども民主党といたしましては、この提案を見まして、その量がともかく四百三十億円というような多額なものでございまして、しかもそれを使いまして減税の百七十億円、さらに財政投融資およそ百五十億円、さらに残りの百十億円を、これは歳出の増加にあてる。こういうお考えでありまして、この量の点におきましてそれだけのことをいたしますと、将来の財政に減税のしりというものが昭和三十一年度以降に相当大きく響きます。また歳出を行いますれば、その勢いというものが明年度に大きくかぶさる。来年の財政を考えますと、さなきだに均衡が非常に困難であります。その上にさらに大きな重圧を加えるということになりますので、量的な問題において、まずこれは自由党とよく相談をしなければいかぬというように考えたわけであります。それからまた公債を発行するという考え方につきましても、私どもは資本を蓄積してこれを国家有用な面に使うということについては異存はなかったわけでありますが、しかし公債という形においてこれをやるかどうかという点につきましては、さような考え方はとるべきでないという考え方をとったわけであります。しかしながら自由党のおっしゃられるところの根本的な考え方である、資本を集めてそうしてこれを有用に使うということについては意見を同じうするのであるから、その代案といたしまして、資金委員会というものを作るということを提案申し上げたわけであります。そうして公債の消化に限らず、広く金融機関に集まりました預貯金は、資金委員会政府が諮問いたしまして、そうしてその諮問の後におきまして、政府は、その金融機関に集まった預貯金政府の意図する方面に使うべきであるという立法をいたすという御提案を申し上げましたところ、それに意見が一致いたしまして、ただいま資金委員会法案というものを鋭意準備をいたしておるわけであります。かたがた、政府民主党といたしましては、さような効率的使用という方針を推進いたしますために経済自立六カ年計画というものを策定いたしまして、そうしてこれを具体化いたしまして、その線に乗ってすべての経済政策を進めていく、またその進める手段といたしましては、この資金をこの資金委員会に諮問いたしましてその線に乗っけて推し進める、かような考え方をいたしております。
  50. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 そうすると、その資金というのは、やはり開銀の投資、こういうふうな考えを持っておられるのか、それとも、その資金委員会が直接投資される考えでいるのか、それは開銀の投資の方へ見込んで行くというのであるか、その点はどうですか。
  51. 福田赳夫

    衆議院議員(福田赳夫君) それは制度としての問題と、現実にとる政策の問題と、二つに分ける必要があろうかと思うのであります。制度の問題といたしましては、かりに公債を発行して、また開銀債を発行するということありとすれば、これは、その公債の消化、開銀債の消化というものは、この資金委員会法律の適用の範囲内になります。しかしながら、ただいまのところでは、また、ただいま御審議を願っておる予算におきましては、公債も発行いたしません、また、さらに開銀債も発行しておりません。ですから、これは当然本年度の予算といたしましては、公債も開銀債もこれは資金委員会の対象にするという場面が出てこないわけであります。しかし、さようなことが、もしありとすれば、もちろんこれが消化のために資金委員会が働くということはあり得ることであると、かように考えております。
  52. 平林剛

    ○平林剛君 同僚議員の菊川委員から全般にわたって質問がありましたから、私はおもに選択控除の件についてのみ質問をいたします。これは今前尾議員から御説明がありましたように、新しい試みとして政府の減税法案のほかに修正をされたものとお聞きしたわけでありますが、大体社会保険料が、今度の選択控除の中で、今まで勤労者の一つの恩典としての社会保険料の味というものが今回なくなってしまった、とまでは行かなくとも、半減をしてしまったことは争えない事実であります。現在までの税金の負担につきましては、それぞれ国民各層が権衡をとりながら負担をしてきたのでありますが、今まで勤労者を例にとってみると、かなり社会保険料控除というものは大きな地位を占めておりました。政府の調べによっても、平均して三・三%あるいはそれ以上になりつつある。勤労者にとっては、この税額控除というものは、かなり税の負担の面において助かっておったと言ってもいいと思うのであります。そうして、そういう国民負担権衡の上に立って、なおかつ勤労者の税金が重いということで、税の軽減が叫ばれてきました。今回政府もこの点に着目して減税政策を国民に約束をされて、そうしてその実行に移ったものと私は思うのであります。ところが今回のこの修正は、この勤労者の恩典とも言うべき社会保険料の味というものを消していってしまった。今修正案説明をお聞きしますと、低額所得者を重点にしてこの点の修正を行なったと聞いたのでありますけれども、しかし現実の問題としては、先ほど菊川委員が指摘されたように、必ずしも今度の選択控除低額者のみが助かるというのではなくて、かなり高額の人にかえって有利になっておるような傾向に見られるのであります。特に前尾議員は前に大蔵省の三現庁の責任者をやっていられたこともおありでありますから、御存じであると思うのでありますが、印刷、造幣、専売その他の職員……ここにある資料の例をとりましても、大体国鉄の場合においては年額の総収入が三十万程度の人は、もうほとんど四・六%という工合に、今度の選択控除の恩典を社会保険料だけでなくしてしまっておるような実情であります。専売公社を例にとりましても大体二十五万円から三十万円の人は三・五%以上になっておるのでありまして、かりにこれを国鉄の場合に駅長級のところへ持ってきても、すでに三・五%程度社会保険料控除を受けておる。こういうことから見ますと、今の印刷、専売、造幣、国鉄等の例をとってみても、低額の人よりもだんだんに高額の人になるに従って五%の恩典に浴する部分が多くて、低額の人が、社会保険料がすでにかなりのパーセントを占めておるために恩典が少い。しかも一般の所得者を例にとってみると、もっとたくさん所得のある人に対してはまるまる五%の典がある。こういう工合にして、どうも修正案を御説明になった時の御趣旨のように低額所得者必ずしも今度の恩典に浴していない。高額所得者の方がむしろ利益するところが大きいというような具体的な数字が指摘できるのでありますが、こういう点について提案者はどうお考えになっておるか、お聞かせを願いたいと思います。
  53. 前尾繁三郎

    衆議院議員前尾繁三郎君) 従来の組織の非常に強化されておりまする面におきましては、社会保険料控除が相当程度に引かれており、場合によりましては五%以上引かれておるものと考えておりますが、それはそれといたしまして、これが既得権だ、そうして、それによって勤労者と、またその他の事業所得者との均衡をはかるものだという考え方はこれはとっておりません。現在の課税の実情が動労所得者にかなりきつくはなっておるという事実は私は認めます。しかしそれは税務行政の問題であり、また税制全般の問題でありまして、たとえば社会党諸君のよく言われます事業税を全廃しろというような声も聞くのでありまするが、それは事業税その他の負担もすべて合せて考えなきゃならぬ。税務行政の問題としても、また動労控除制度の問題、あるいは補完税であります事業税の問題それらを合せて検討していかなければならぬ問題でありまして、今回の修正予算におきまして、それをどうこうするというようなわけにはいかぬ大きな問題であります。従いまして、これは政府も言っておられますような税制調査会を国会が終りましたらすぐ開いて根本的に検討しよう。これにまかして、そうしてその均衡をはかっていかなきゃならぬというふうに考えておるのでありまするが、今回の修正案といたしまして、経費控除制度をとりましたのは、従来の組織ができておらぬ未組織の場合、またすでに恩典が与えられております利用者が実際それを制度上活用できないのでありまして、これはおそらくわれわれにしましても一々医寮費の領収書をとり、それを税務署に提出する、あるいはいろいろな雑損がありました場合にもそういうことはできない。できないことを無理にただ形式上掲げて、そうしてそれを恩典だと言っておるのでは、これはまた税務行政の問題としましても非常に行き届かない点であり、また行政上から考えまして、おそらく一律に五%引くという制度をとりましたら、かなり簡素化されて、その恩典が実現できる、こういう点にわれわれは不均衡だというので考えたのであります。従ってもとよりまた一万五千円の限度も押えておるわけでありますから、あくまで大所得者をねらっておるのではなしに、低額所得者をねらっておるという趣旨におきまして、冒頭申し上げました趣旨をわれわれは考えておるわけであります。
  54. 平林剛

    ○平林剛君 社会保険料は勤労者にとっても一つの恩典というよりは、まあ私が恩典と指摘したことを一つの特権のようにお考えになったかもしれませんが、その故に私は勤労者全般においての、国民全般の権衡がとれておった。今まで税制、税の政策を行う上において、やはり吉田政府の下においても、税の負担の公平ということで税の政策をしかれておったと思うのであります。少くともそういう見地に立たなかったならば、国民全般の中からその税の負担が公平であれば黙っておるけれども、公平が破れたときにやはり文句が出てくるということに私はなると思うのです。だからその限りにおいては、今までの吉田政府も十分な配慮が行われて政府の政策が行われていたと私は思いたいのであります。そういう意味からいきますと、明らかに今度の措置はそのバランスをくずしたことになる。もちろんこの社会保険料の払っていなかった人に対しては、今回の措置はかなりよくなったということは私も認めるのでありますが、その半面においては権衡というものを破っていったことだけは事実です。特に前の政府案が提出されたときには一つのバランスの上に立って提案をされたのであります。ところが今回社会保険料の恩典がない人たちを中心にやるということは、それらの人たちの措置を優遇する半面において、他の一千万円に相当するこれらの恩典にあった人たちの味というものを消していったことになる。現実に政府は銀行利子の免税と、それから配当金の税の軽減という面においては、今度の修正案でバランスをとったじゃないですか。バランスをとって今度の修正をされた。これに対して私は社会保険料の味を消したその見返りとしての分が一体どこにあるのか。理論的にはどういうところにその見返りとしての分があるのか。権衡というものをどこの点でとったか、そういう点についてもう少し理論的に今度のやつで数字的に御説明を願いたいと思います。
  55. 前尾繁三郎

    衆議院議員前尾繁三郎君) 先ほど申しましたように、税務行政の根本問題、あるいは勤労控除制度、あるいは事業税の問題、それらをひっくるめました租税体系全般としての配慮の下に均衡をとるというところまでは、予算の修正案でありまするから、広範な修正、根本的な修正ということは、これはできませんので、将来に待たなければならない。しかししばしば言われて、今度の経費控除制度がいかにも新たに制度均衡をとろうというふうに聞えるかもわかりませんが、従来からあった恩典なんです。ところが現実問題としてできない恩典を与えておって、それで均衡がとれでいると申しましても、これは絵にかいたぼたもちでありますので、それの実現のできるように小範囲ではありますが、この均衡をとろうというところにあるのであります。従って事業者全体と勤労所得者全体のバランスをとるというような考え方のもとに、あるいはまた組織労働者と未組織の労働者というようなものの均衡をとろう、従来あります未組織のものと組織のされているものという面の均衡をとろうという点においては、この制度でいきますが、それ以上の範囲にわたるものではないのであります。ただ従来社会保険料控除をやってそうして勤労者と事業所得者とのバランスをとっているとわれわれ考えておりません。ほかのものにつきましても、十分なそれに類するものの恩典はある、ただそれが実際問題として実現されておらぬ。その点の均衡を是正しようということにすぎないのであります。繰り返して申しますように、大きな勤労所得とその他の所得との均衡というようなものは、根本問題として今後に税制調査会等においてやっていきたいと、かように考えておるのでございます。
  56. 平林剛

    ○平林剛君 どうもお話を聞いているというと、社会保険料が今まであったことが適当な措置じゃなかったようにも聞えるし、また今日の税の負担のバランスをとることを、ただ組織労働者と未組織労働者との間のバランスをとればいいという御感覚のように承わるのであります。私は社会党でありますから、勤労者の利益を代表しているからそれのみ強調しているというわけじゃない。今日の税全般を眺めてみたら、むしろ未組織労働者と組織労働者とのバランスをとる以上に、勤労者と事業所得者のバランスの点において十分考えなければならぬし、それから大きな資本を持っている人の利潤と、勤労者の税負担のバランスということを、もっと真剣に考えなければならぬ時代だと思う。これは私は社会党に属しているから言うのではなくて、一般の識者においても、これだけは感じておられると思うのですよ。私はその点について大へん今のお答えの中に納得しがたいものがあるのでありますが、これ以上は追及しません。  もう一つ選択控除に関する法律改正をなぜ今度の場合に所得税法改正の中に含めないで、そして租税の特別措置法の中にお加えになったのか、先ほど小林委員の御質問に対して若干お答えがありましたが、最初試みでもあり、なおよく根本的な極計をする必要がある、かようにお答えになったことを記憶しておるのでありますが、そうすると、今秋が指摘しておる点についても、税制審議会ですか、そこでこれらの点はあらためて検討をしようというお考えがあって、とりあえず租税特別措置法の中にお加えになったのでありますかどうか、その点を一つお聞かせ願いたいと思います。
  57. 前尾繁三郎

    衆議院議員前尾繁三郎君) なお先につけ加えておきたいことは、社会保険料控除は、これは特に組織労働者に与えられた特権というのではなしに、これは全般的にこういう性質のものは引くべきであるとわれわれは考えておるのであります。そうして社会保険等につきましては御承知通り歳出の方では国がこれに対していろんな補助金を与えて、そうしてそこに恩典がある、未組織の人になりますとそういう恩典もなしに、また税金の恩典も受けていないわけです。これは二重に国の保護が行き届いておらぬという感じを私は持っておるわけであります。そういう意味において、せめて税金の面におきましては同じでゆきたいと、かように考えておるのであります。  それからこの臨時措置法に入れました点は、先ほどお答えしましたように、私はやはり恒久的な制度でありましたら、これは毎月々引くべきものだと思っております。ところが遺憾ながら今すぐ税額を刷り直して、そうして七月からそれを実行しようとしても無理であります。従って本年度はあくまで一応年末調整でやるというやり方しかありません。そういうふうな点もありまするし、また引きます内容につきましても、生命保険料というようなものをこれらと関連してどういうふうに考えるかというような問題、あるいはただいまお話のありましたように、社会保険料と同様の性質と言いながら、片方におきまして、まあ医療費の控除は別として、雑損控除というようなものと相並べて考えておるのですが、そういうようなものとの関連、従ってこの範囲がいいかどうかということも根本的にまだ検討してみる必要はあると思います。一応アメリカの制度その他によりまして、われわれこの範囲でいいとは一応は考えておりますが、まだまだ恩給の制度とかいろいろなものを検討して、そうしてその中に入れてゆくべきほかのものがあるのじゃないか。それから五%というパーセンテージにつきましても、これが果していいかどうかということは研究の余地が相当あると思っております。一応政府資料によりまして、三・三%あるいは事業者におきましては〇・七%というようなものを考慮に入れて考えておりますが、しかしもっと深く突っ込んで検討した上で、このパーセンテージについても考えてみなければならぬと、かように考えております。それこれ考えまして現実に即してやると、こういうことであります。
  58. 平林剛

    ○平林剛君 今のお答えで税制全般を検討する機会には、今回新たな試みとして行なった選択控除については今お答えがあったような角度でいろいろ検討するということを確認をいたしまして私の質問を終ります。
  59. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 まず大蔵省の方にちょっと伺っておきたいのです。修正者に御質問する前に、最初のこの原案では大蔵省の方はこれは預金利子課税の方と配当所得課税の問題ですが、最初配当所得については二割五分控除、それで預金の方は全免にする、こういうわけでありますね。大蔵当局としては最初なぜそういうふうに考えたか。そうして今度修正者がそれを二五%の配当控除を三〇%に上げたということについて、大蔵当局としてどういうお考えを持っておられるか。
  60. 渡邊喜久造

    政府委員渡邊喜久造君) 配当控除を今度の修正におきまして二割五分から三割に上げよということにつきましては、片方預金利子の免税をやったということとのバランスの問題として問題が提起されたものと思います。このバランスにつきましてはわれわれもやはり一応のバランスをとって考えていくべきだと、こういう考え方で進んできております。それで預金利子の方は一応全免にする。そうして結局その場合におきまして株式を中心とする会社の自己資本というものについて、税法上どういう措置をとっていいのか、それとのバランスがとれているかという問題として検討したわけでございます。自己資本の問題につきましてはわれわれが現在とっている幾つかの措置、これは二つの面に分れておる。一つはたとえば新規増資の場合におきまして、二年間新規増資された分についての配当についてある程度法人税を免除していく、そうした面、それから片方における配当課税の面、こういう二つの問題を中心にしてやはり現在の措置が行われていますから、それとあわせて考えていくべきじゃないか、こういったような考え方から、昨年の新規増資に対する法人税の免除というのはかなり大きなフェイバーだと思っておりますし、従いまして、これで大体バランスを得ているのじゃないかということで案を提案した次第でございます。ただそれにつきましては提案の当初からもいろんな御意見はございました。これでは預貯金の方にフェーバーが行き過ぎている。従って配当について何らかやはり措置考えるべきじゃないか。それで政府原案を出しております源泉課税の一五を一〇に下げるというだけでは結局単に朝三暮四といいますか、源泉の方で負けるけれども、総合のほうで結局取り戻すことになる。何ら実質的なフェーバーじゃないじゃないか。従って片方で全然税金を取らないといった預貯金利子に対するフェーバーがある限りにおきましては、配当の方でももう少し考えていくべきじゃないか。こういう御批判があったわけです。これはまあバランスの問題ですから一応算術で十割る二イコール五といったようにぴしっと答えが出るものでもございませんし。それで両党の修正案におきまして、これが新しくバランスを得るゆえんだというふうに一応御結論を出されまして、まあ政府の方に申し入れがあったわけでございますが、政府といたしましては検討をいたしました上で、両党の意見が、そういうことをしなければバランスがとれぬ、と同時にその程度のことをすることによって、初めてバランスがとれるのだという御意見であれば、一応政府としてもこれを了承すると、こういう次第でございます。
  61. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは非常にどうも自信のない御答弁でして、最初政府原案を作るときには、一応今お話のように新規増資についても法人税免除は非常なフェーバーだ。こういうようなことを前提として考える。そうして、それでバランスがとれるのだ、そういう確信を持たれて原案を出して、それで今度は両党の修正案が出てきたから、最初いろいろ議論があったけれども、政府としては原案のように決定したのだ、それに対してまたその議論が蒸し返されて、その議論というのは両党の修正案となって出て来た。それをまた、それがもし配当の利回りと預貯金の方の金利との権衡を保つものであるというのならば、もし均衡を保つ意味ならば、政府も認めるべきだ、そういう何か非常に自信のない御答弁で、それはどちらが一体正しいのか、最初決定した以上は相当の根拠があって今お話のように決定されたと思うのです。またそれよりも根本的な問題が一応あるのですけれども、どうも何か押しつけられたというような格好で最初原案に対する自信がばかにない。だから今後のことについては、根本的な問題についてはあとで伺いたいのですけれども、どうも今の局長のお話ではわれわれを納得させることはできませんね。
  62. 渡邊喜久造

    政府委員渡邊喜久造君) これは結局預貯金利子に対する課税とそれによってまあ預貯金を伸ばしていく、それから株式による資本の蓄積させていく上に、これについての税の措置、これのバランスのフェイバーがやはりどういうふうなバランスになっているか、こういう問題だと思うのです。従いまして先ほども申しましたように二一天作の五で割り切れるといったような問題とは思っておりません。従いまして政府としましては、当初の原案がこれで一応バランスがとれているのだというふうに確信を持って出したわけでございますが、いろいろの御批判を得まして、そうしてやはりどうもこれじゃ預貯金の方に行き過ぎている、どうしてもやはり株式の方にもう少しフェイバーを与えなければ、そこにバランスが得られないのだ、こういう御意見でございます。まあ政府考えたところが終始一貫正しいものだというふうに強く考えますのも、あまり独善的かとも思いますし、国会においてそういう御批判を受け、こういうふうに修正されるのが、これが正しいバランスだという御意見であるということになりますれば、政府としての主張も、十分われわれの方の論拠も御説明申し上げまして、それをお聞きになった上でなおかつ、こういうバランスが正しいというわけでございまして、われわれも一応いろいろなお話を伺いまして、それじゃこの際政府としても考え直してみようという意味におきまして、修正案を承諾したわけであります。
  63. 山本米治

    ○山本米治君 関連質問。今利子課税配当課税と何がバランスがということが問題のようですが、もし真にバランスというのならば、配当課税を全免するのがむしろバランスじゃないですか、というのは特に今の日本の実情からみまして、日本は直接投資が少くて間接投資が多い。それが事業のオーバー・ボローイングの問題とか、いろいろな問題に関連しておるので、そこでなるべく直接投資、すなわち株式をたくさん募集して、自己資本も各企業が自己資本を充実することが今日望ましいと思うわけです。もしそういう意味でいうならば、利子課税を全免するならば、むしろ配当課税も全免すべきじゃないか、これこそ真のバランスじゃないかと思うのです。配当課税を全免するということになると、減収が非常に多い。そうすると歳入の方で困るという問題もあるので、これの方がなかなか踏み切れないのだ、こういう考えもあって、こういうふうになったのじゃないかと思う。どこがバランスかというのは今言ったように初めは十五を十にするだけがバランスだ、それじゃまだ足りないのだ、今度は配当控除の二十五を三十にする、それでようやくバランスだと言われるが、むしろ真のバランスと言ったら配当課税の全免の方がバランスじゃないかと思うが、その点はどうですか。しかしそれをやれというのでは必ずしもございません。もしそうすれば減収になるので、あるいはまた他の面から困るだろうと思うのでありますが、真のバランスの面からいったら、そうではないかと思う。ことに日本の各企業が自己資本が少い、間接投資で銀行へ金が集って、それが会社へ貸せられるいう実情が、いろいろ問題を起しているわけですから、こういうことにかんがみれば、むしろ真のバランスというのは、そこにあるのではないかと思うが、いかがですか。
  64. 前尾繁三郎

    衆議院議員前尾繁三郎君) 私から答弁した方が適当かと思いますので申し上げますが、ただいまもお話がありましたように、均衡論から考えまして、むしろ預貯金利子には全然課税しないということでございますので、全く均衡は、つきつめていきましたならば、今の御議論のように配当にも全然課税しないというところまであると思います。そして、ただそこで数字的な問題ではなしに、やはり社会的な観念からいたしまして、何かバランスを失せられた預金に対しましては非常に大きな措置がとられながら、配当についてはほとんど源泉課税を引き下げるだけで実質的な軽減は何もないじゃないかということになると思います。ただまたそこに配当に対する課税という問題は、御承知のように法人税の問題と関連しまして、独立課税あるいは法人擬制説という、この二つの間に非常にあいまいになっております。従って均衡という問題も、数字的な問題ではなしに、結局非常に感じの問題です。従って最初政府考えておったところで均衡はとれたというふうなのも一つ考え方でありましょう。しかし何か預金利子に対して全面的非課税にするという大きな措置に対しまして、実質上何ら引かれることのない、ただ源泉だけの率を下げられた、それも取り戻しを食えば、何ら従来と変らないじゃないかという感じでは、いかにも株式に対して手が打たれなさ過ぎる、しかも現在の情勢から申しますと、自己資本をふやしていかなければならないということの方がより重大ではないか。と申しまして、それでは配当に対して全然課税しないということにしたらどうなるかということでありまして、御承知のようにいわゆる長者番付に載っておりますものは、みんな配当所得者ですが、ああいうものは全部落ちるということになったら、これは社会的に許されないというところまでいってしまうのであります。まあわれわれといたしましては、配当控除二五%を三五%くらいまで持っていくと非常に大きな措置だという感じがいたします。しかし三〇程度ではどうも手ぬるいじゃないかという感じさえ持たれると思いますが、これはまた一方におきましては、法人税税率を下げているときに、配当控除を三五まで引き上げるということになりますと、逆にほかの所得から引いてやる、いわば税金ぱかりでなしに、補助金までやるような格好になって、これも行き過ぎかと、従って大体におきまして実質上五%引き上げた三〇程度が限界ではないか。従ってこれを数学的にどちらの措置が大きいかと申しますと、私は預金利子に対する方が大きいと思います。しかし実質的に均衡をとろうという点からいきますと、限界まではいっている、打ち得る手といたしましては最大の手を打っているということが言えると思うのであります。この辺で均衡がとれたと一応考えなければ仕方がないのじゃないか、かように考えております。
  65. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 今均衡論が出ましたけれども、実質の問題として、実質問題として配当利息というものと預金利子というものは同質のものですかね。配当の利回りというものは株価の上下によって変動するものですね。しかし預貯金の利回りというものは変らないのですよ。定額ですよ、定率なんですよ。今均衡論、均衡論といいますけれども、株式が下がれば利回りは上るのであって、株式が上れば利回りが下るのでしょう。ですからこれを本質的に同質に論じて均衡論をやるということは多少、全然関連ないとは言えませんが……。そういう金利ですから、金利の体系の一つとして株式体系を考えなければならんとしましても、これはそこは必ずしも配当所得控除を上げたり、あるいは配当課税を下げたから、そこで株式投資がふえるのだ、資本の蓄積がそこで行われるのだ、そういうふうには必ずしも言えないと思うのです。当面としてはこのデフレ政策で株が下ってきたら、株価を引き上げるために、そういう操作をやれば、それは多少株を引き上げるのに役立つかも知れません。しかし基本的なこの目的は資本蓄積にあるのでしょう。資本蓄積をいかにしてふやすかということにあるのです。こういう措置を講ずることによって、どの程度まで資本の蓄積がなされるか。ほんとうの意味の資本蓄積というより資金蓄積ですね、それが可能になるのか。今度これは大蔵省の方は最初原案でも問題があるのですけれども、その上に社会問題としても不労所得をだんだん優遇する措置を講じて、勤労所得の方に対しては非常に不均衡になってきている。今度の動労所得のいわゆる改正でも、たとえば所得月収二万円の人に対しての減税は四百円くらい程度でしょう。これは夫婦二人、子供三、四百円くらいのものでしょう。ところが二万円の配当をもらっている人、これは衆議院の伊藤好道君がだいぶ予組委員会でも主張しておりましたが、五分減税になれば千円でしょう。非常に不権衡ですよ。そういう面ではそれをさらにまた不労所得の方を優遇していく、ますます。それがほんとうの資本蓄積になるか。どの程度の資本蓄積になるか、それを一つ伺いたいと思います。
  66. 前尾繁三郎

    衆議院議員前尾繁三郎君) どの程度に資本蓄積になるかということを数字的に先ほども申し上げたのですが、考えておる点ではないのでありまして、と申しますよりは、これは実際上わからんと思います。むしろ現在において何としても株式投資が不利だ、そうして株式投資に金が回らん、そこでどこにネックがあるかといえば税金の問題だ、私は常に最近の租税措置についてよく申しておるのでありまするが、とにかくネックだといわれておるところは排除して、そうしてそこで国民に協力を求めるという行き方でありませんと、どうしてもついて来ない。たとえそれがかなり預貯金利子の全免というようなことも、私はそれは税制から考えたら非常に不合理な措置であり、しかしそれがネックでできないと言われておる際にはそこまで譲歩して、そうして預貯金を集めるということに集中していくということで考えていかなければなりません。また、ただいまお話しのように配当預金利子とは全然これは違って均衡というものはないのだ……。
  67. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いやそう言っちゃいませんよ。そんなこと言っていませんよ。同じに扱っちゃおかしい。
  68. 前尾繁三郎

    衆議院議員前尾繁三郎君) こういうことになれば、これは別でありますけれども、いずれにいたしましても、従来から利回り関係をさかんに言われておるのでありますが、それに対して何らの実質上の措置がないというようなことであっては少くとも片手落ちであり、しかも自己資本をふやすということをわれわれがつねに申しておりながら、それに対する何らの措置がないということであってはなりませんので、従って最大限度のとり得る措置はとってみようというところにこの問題はあると思うのであります。
  69. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この資本の蓄積が順調にいかない原因にはいろいろあると思うのですが、今前尾さんは税制に非常に重点をおかれましたが、そればかりじゃないわけなんですね。いろいろな条件がほかにあるのですよ。で、今何が一番ネックになっているかというと、資本の過剰蓄積が問題になっているのです。そうなんですよ。逆なんですよ。あなたは蓄積々々と言いますけれども、民間実態資本からごらんになっても、これは鉄鋼なんかも、ストリップ・ミルの増設をやって、八幡、富士、川崎、日本鋼管、日亜製鋼または何とか鋼板と言いましたかね、関西の……。そういうところがまたストリップ・ミルを増設するのですよ。そうしてフルに稼働していないのです。みんな六割くらい。それから砂糖も御承知のようにうんと過剰設備でしょう。それでその上に何か池田さんが、前尾さんの最も尊敬される池田先輩が名古屋精糖にああいう設備をして、非常に過剰にしてしまって、それでもう増産はしない。増産ストップという方針になったところが、また今度は四国製糖とか富国製糖のようなものをもぐり込まして許すのでしょう。砂糖だってそうですよ。繊維だってそうでしょう。繊維だってこれはあまり思惑すぎて非常に設備過剰になっちゃって、資本蓄積、資本蓄積と言いますけれども、この実態資本との関連をみないで、いくら蓄積したって意味ないですよ。だからかりに今度は配当課税について優遇措置を講ずる、大蔵省の最初の案よりももっと優遇措置を講ずる。それで株式の方へだんだん金か行くとしても、これにひもをつけなければ、ますます過剰投資、二重投資、こういうものを助長するばかりじゃないですかね。問題はだからそういうところにあるのであって、これは単に株屋さんに貢献するだけですよ、その株の操作として……。で、私はこれだけ措置をやったからといって、正しい意味の資本蓄積にどれだけ役に立つか、一番役に立つところを抜きにしておいて、そうして非常に過剰投資、二重投資なんです。従って私は預金利子の方についても問題があるのですけれども、一体どれだけの実質的効果があるか。最初僕は大蔵省でも預金利子課税の廃止、それから配当所得に対する課税軽減、こういうものについても相当私は議論があったのじゃないか、またなければならんはずですよ。こう言ったってどれだけほんとうの意味の資本蓄積になるか、こんなことをやらなくたって、私はそんなに大局から見て資本蓄積に障害があると思えない。特に最近ではむしろ実態資本から見れば、資本は過剰蓄積です。そういう際にわざわざこんなことをやっても、これはもう不労所得者に恩恵を与えるだけであり、そして株屋さんにサービスするだけです。そうじゃないですか。
  70. 前尾繁三郎

    衆議院議員前尾繁三郎君) 税制の問題だけが資本蓄積のウエートではないということは、私はもちろんそうだと思っております。しかしそれがネックだと言われるところにやっぱり問題があるので、まあその点は譲歩しなきゃならぬ、臨時的にはそれを、そういう措置もとらなきゃならぬ、かように考えておるのであります。もちろんおっしゃるように、現在ある部面は過剰投資であるということについては私は否定をいたしません。従って、一面におきまして、資本の蓄積されました増加蓄積の分につきましては、一応の国の要請する方向に直接持ってこようというふうに考えておるのであります。そうしてまあ過剰投資の面は、ただいまおっしゃいましたように、砂糖だとか、ある面ではそれにしましても、もっと合理化し、資本さえあれば相当高度に機械化し、合理化されるという面もあると思います。そうしてまた全般的に考えましたら、やはり資本の蓄積が足らんということは争えない、私は事実だと思っております。
  71. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それはまあもっと基本的に考えなきゃならのです。全般的に足らぬ、足らぬと言っても、やはり日本経済の資本蓄積に乏しいことは事実です。なぜ乏しいかと言えば、蓄積された資本が、今言ったように、二重投資、過剰投資ばかりではなく、再軍備の方ばかりでなく、不生産的支出に非常にたくさん使われる。こういうことも相対的に産業方面における資本の蓄積を乏しくしている大きな原因だと思うのです。そういう基本的な点からやはり考えなきゃならぬのです。特に前の池田大蔵大臣以後、前尾さんも当時大蔵省におられたのですから、資本の蓄積というものと租税の負担の公平とというものの問題ですね、この点がどうも逆になってきていると思うのです、最近。それで負担公平を犠牲にしても資本蓄積に重点を置くというふうになっていると思うのです。これは主税局長、どうお考えになりますか。最近ではそういうふうになっていると思うのですよ。
  72. 渡邊喜久造

    政府委員渡邊喜久造君) 租税の原則と資本蓄積その他のいわゆる経済政策的な要請をどういうふうに調整していくかということにつきましては、これはまあわれわれが絶えず当面している、しかもむずかしい問題の一つであります。憩税の原則だけでございますれば、割合にまあ何とかすなおに割り切れる問題も、片方の当面する資本蓄積という問題のゆえに、これを曲げていかなきゃならない。あるいはあえて犠牲にしても資本蓄積というものを中心にものを考えていかなきゃならない。たとえば預貯金利子免税のごとき、その一つの事例でございますが、われわれとしましては、やはり税は税、できるだけこの線で沿っていきたいという希望は、税をやっているものとしては持っておりますが、しかしこれは前にもこの委員会でも申し上げたと思いますけれども、これは私の私見でありますが、国が何か経済一つの方向に持っていこうとしますれば、現在としては補助金を与えるとか、あるいは国が金融をつけてやる、あるいは税金をまけるとか。右の点として、残されている点はその三つじゃないか。そうすると、税だけがそういう点について、これは租税原則以外には一歩も出ない、譲れないということを言っているわけにはいかんじゃないか。補助金を与える場合と比べまして、また税は税なりのやはり別な一つの作用を持っておりまして、従いましてそうした要請にもこたえながら、同時に国民感情的に尊重されております租税原則というものをくずさないで、大きくくずさないで、何とかやっていこう、いかにそこに調整を求めるか、これは戦争以来特に出て来た問題でありまするが、われわれの最も腐心しておるところであります。今回の改正におき、あるいは修正案におきまして、そうした面におきまして、さらにその線が当面ぜひ必要だという意味で強く要請されているわけでありますが、将来の問題としてこれをどういう姿において調整をとり、同時に税制そのものも簡素なものにしていくか、これにつきましては、かつて大蔵大臣も当委員会で申し上げたと思いますが、近く税制調査会なんぞを開きまして、広く一般の方の御意見を聞いてみたい、かように考えております。
  73. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それから配当所得についての資料提供限度ですね、これを現在一回三千円、年二回配当して六千円、これを今度年としては一万円に引き上げるというふうになっておりますね、どうしてこういう必要があるのです。
  74. 前尾繁三郎

    衆議院議員前尾繁三郎君) 御承知のように従来から三千円という、一回三千円年六千円という一応限度は立っておるのであります。それについては提供者のためにあまりに煩瑣でないようにという配慮の下に出発したのでありまして、だんだんそれは引き上げてきたわけであります。従ってまあ最近におきましては提供限度が、申告しなくてもいい限度だというふうに考えられてきておる。今回引き上げる考えとしましては、あまり少額のものはあさらぬというような考え方が加わって、年に一万円という限度に引き上げたのであります。もっとも非常に所得低額の人になりますと、申告をして、そうして配当控除を受けられた方が得な方が相当あります。従ってその人につきましてはこれはもちろんそれによって控除を受けられた方がいいと思います。その少し上をねらって、実質的にはいろいろ具体的に計算をしますと、いろいろな人がありますので、一応そういうような考えでまあ非課税といいますか、小さいものはあさらぬという租税行政の措置と相待った一つ優遇措置いとうふうに考えておるのであります。
  75. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大蔵省側の意見を聞きたい。そこでどれだけの実益があり、どうしてこうしなければならないか、その申請においてですね、こうしなければならないか、その必要があるのか。
  76. 渡邊喜久造

    政府委員渡邊喜久造君) 三千円を五千円に上げる、それの問題は一応前尾議員の御答弁になった通りであります。結局税務行政におきまして、あまりまあ小さい隅から隅まで全部あさるということもできない問題であります。まその点を考え資料限度を押えたのであります。こういうお話でございました。一応それによりまして、こまかい配当まで一応課税する、隅から隅まですることは避ける、こういう意味においてこの資料限度を上げる、こういう御趣旨だというふうに伺っております。
  77. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その御趣旨だと伺っておるんだというので、最初は大蔵省はそうしなかったでしょう。原案ではそうなっていないのですね。しかしそれが修正によってこうなったのですね。大蔵省のお考えとしては、これはですね、分割したらどうなんです。分割しまして、その名義人をたくさんずっと分割するでしょう。そうして年一万円以下になるようにしたらどういうことになりますか。そういうことがしいいようになる、そういう場合はどうですか。
  78. 渡邊喜久造

    政府委員渡邊喜久造君) 分割するということは、これはまあ預貯金などで、たとえば貯蓄組合などでも十万円以下の預貯金を分割するということがよくありまして、それから配当についてもお話のように、それは分割するといったようなことが全然考えられないこともありません。しかしそれをはっきりわかっているものについてまで課税をしないというふうな問題ではないと思います。
  79. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 しかしそういうことはわからんですよ、実際問題としてね。ですから勤労所得とか、そういうものについては源泉できちっととって、ほとんどのがれることのないようにしておいて、そういう不労所得についてはそういう課税をのがれるような機械を拡大する、また機会を拡大するだけでなくて、税法上でもはっきり利益を与えておるのですけれども、今度の修正措置によって、ますますそういうことを拡大するということは、決してこれは公正な税務行政として、いかに租税の公平の原則は、資本蓄積の前に多少犠牲になってもかまわないと言っても、最近の税金を納める人の身になってみると、非常な不均衡になってきておる。著しく不均衡ですよ、勤労所得と申告納税との間には。これなんかは全体の税収入をみたって不均衡じゃありませんか。国民所得の比例からみたってあまりにこれは不均衡です。大部分三分の二ぐらい、三分の二以上が勤労所得でしょう。あまりこれは不均衡過ぎますよ。こういう税制改正が行われるたびに、ある程度勤労者に利益を与えると言いながら、それを名目としてそういう不労所得が、そういう階層の減税に便乗して、ますます不均衡にしている。今のこれなんかは、こんなことをなぜわざわざやる必要があるんですか。それじゃそういう細かい配当所得については煩瑣である、今までもっと、煩瑣ならば、これはやっているのです。それをこの際なぜやるのか。三千円を五千円に上げることによってどれだけの繁雑さというものが省けるか、どれだけプラスになるか、そういう点はどうも私はよく割り切れないのですね。  それからもう一つ伺いたいのは、今の大蔵省の税制改正はですよ、最初原案はこれは全体のバランスをにらんで作ったのでしょう。何も所得税とか、あるいは配当課税とかそういうことだけでなく、全体の税収入、来年度の税収入ですね、そういうものと、それからほかとの均衡全部を考えて大蔵当局は立案したわけですね。そういうバランスが破れるのですよ。主税局長として、そのバランスという点からもやはり考えなくちゃならぬ。それから来年度の税収入に対する影響というもの、そういうものを全部総合して最初の大蔵省原案というものを作ったはずですよ。それがこういうふうに修正されて、それで主税局長、そういう意見もありますのでそうなりました——それで済みますか。(笑声)
  80. 渡邊喜久造

    政府委員渡邊喜久造君) それはわれわれとしても原案を出しますときには、これは今お話のように、税の相互の負担のバランスも考えましたし、それから来年度になりますれば、税収が平年度化する。従って本年は、たとえば政府原案で言えば三百二十七億で済んだものも、来年になれば五百十四億になる。さらに修正案ではそれが大きくなるわけでございますが、そういう一応のバランスをみながら案はできております。ただしかし木村委員がおっしゃいますように、お前たちはバランスをとって作ったのだから、それがちょっとでも修正というか、ある程度修正を受ければ、もうすぐに云々、それはわれわれは原案で通ることを希望し、同時に原案で通ることがいいのだ、最上だと思っておりましたけれども、しかし結局国会で御審議願う法案を作ったのですから、国会の方でさらにそれをいろいろ御検討下さった上で、それでやはりわれわれと同じような立場において、全体のバランスも考え、将来の税収もお考え下すって、そうして、いやこれがいいのだというふうな御決定なんでございまして、われわれも一応それを受けまして、申し上げることは申し上げた上であれしたのですから、政府としても一応それを承諾した。こういうわけでございます。
  81. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それでは修正者に最後に一点だけ聞いて、修正者の方もバランスをお考えになってお作りになったのですから、そのバランス論について修正者から一言だけ、関連しますから伺っておきまして、それできょうは質問を保留しておきます。
  82. 前尾繁三郎

    衆議院議員前尾繁三郎君) もとより税の問題でありまするから、バランスを考えずにやったわけではありません。御承知のようにただ資本の蓄積が、現下の非常に大事な問題だという点からいたしまして、国の要請にこたえて、租税原則がある程度ゆがめられていることについては、これはやむを得ぬ措置だと思っております。これは預金利子あるいは配当についての問題であります。バランスの問題につきましては、これはいろいろ御議論があると思います。しかしいずれにしましても、配当預金利子関係、あるいは法人個人事業関係個人と勤労の問題についても考えておりますが、しかし根本的な考え方としましては、これは修正範囲でやり得るような問題でないと思います。ただおっしゃる通りに、最近におきましては、かなりゆがめられてきておりまするし、また経済自体が非常に異常な結果からいたしまして、これはもう先ほどお話のありましたように、われわれも、ことに私などは税金の仕事にたずさわってきた者でありますから、できるだけ租税原則はゆがめたくないと思っております。しかしこれはアメリカみたいに、非常に経済状態が正常なところでありますとゆがめられずに、ほとんど祖税原則は祖税原則というので、一本できておるのでありますが、ドイツのように最近の状況をみますと、かなり担税原則がゆがめられてきておる。これはもうやはり特別の国情、そのときそのときの状態によって違うものだと思います。従って日本の最近の情勢が、かなり租税政策としてはゆがめられてきていることは否定できません。それにしましても、その間におのずから均衡をとる、また将来の税制という問題についても考えながらきているのでありまするが、さらに繰り返して申し上げますと、税務行政上勤労所得事業所得との間の不均衡というような根本の問題もあります。しかしこれはまた勤労控除制度、それとまた事業税の制度、全般にわたって租税大系として考えていかなければなりません。これは税制調査会等におきまして、さらに根本的な検討を加えるべき問題であって、今回の修正案としてはそこまではどうもいけぬ。従いまして出されております政府原案をもとにして、さらに均衡をとっていくという考え方で、今回の修正案になっておることを御了承願いたいのであります。
  83. 小林政夫

    小林政夫君 ちょっと最後に自後の税法はいつごろまでに当院へ送り込まれる御予定ですか。日程を承わりたいのです。衆議院の大蔵委員会としてどういう日程で……。
  84. 前尾繁三郎

    衆議院議員前尾繁三郎君) 私は大蔵委員じゃありませんので……。
  85. 藤枝泉介

    政府委員(藤枝泉介君) 私がお答えするのはあるいはちょっと筋違いかも知れませんが、明日から他の税法におかかりのようでございまして、従って大変遅れて、これは政府としても責任があるでございますけれども、来週早々にはこちらへお回しできることになるであろうと考えて、またその点を衆議院の大蔵委員会にはお願いを申し上げております。
  86. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 議事進行。その場合もう会期は、われわれ一応延長になるものとして審議しているのですけれども、しかしそんなに遅くなってわれわれのところへ回されて、一体あとどうなるのですか。われわれその責任を負うことはできませんが、その点委員長もはっきりしておいていただきませんと、それが成立しなくても、私たちの責任じゃない。委員長もその点をはっきりしておいていただかないと困るのですが……。
  87. 青木一男

    委員長青木一男君) その問題は後刻理事打合会で相談いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時十三分散会      —————・—————