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政府委員(
渡辺喜久造君) 今度一応
事務当局として減税案について立案しました気持を申し上げますと、御
承知のように現在におきましても税負担が高い。で、
改正後におきましても、それが担税力という点から見ますと、やはり私はそれだけから言えばまだ
税金は高い。こういう結論は出てくると思いますが、しかし現在の
日本経済の
状況から見まして、たとえばこの
程度の
税法でやればこの
程度の収入が上る。これ以上減税するような
措置をとればなかなかそれだけの収入は上らぬ、こういったような問題に当然ぶつかるわけであります。従いまして一応
予算の規模を一兆円のワク内にとどめると同時に、それに必要な
歳入は経常的な税収入その他の
歳入で埋める。これを一つの軸にしまして、そうして税収入以外の
歳入というものをずっと通観して参りまして、たばこの専売益金につきましては、これはたばこ
消費税が昨年は十一カ月分でございましたが、今度は十二カ月分になるといったようなことなどを考えまして、昨年の補正
予算に比べますとちょっと六十億近くですか、これはふえる。雑収入の方は、大体従来
程度の、昨年の補正
予算程度の
歳入が見積れる。残りを税でまかなう。こういうふうな考え方が出てくるわけであります。それで一兆円のワク内で
予算を組む場合におきまして、税収入としてどれだけ確保すれば、一応公債発行とか、そういった問題はもちろん考えておりませんので、経常的な
歳入でまかない切れるか。すなわち
改正税法においてどの
程度の
歳入を確保しなければならないか、これを一つの必要なる
財源として考えてみたのでございます。同時に現在の
税法のままで税収を見積っていった場合どの
程度の税収が見積られるか、この点につきましては、従来いろいろわれわれ御批判を受けております。どうも
大蔵省の見積りは少しかたきに失するのじゃないか。自然増収が出るのがいと普通のように考えるといった意味においてかたきに失するのじゃないか、こういう御批判をわれわれ受けております。正直にいいまして、七千億以上の税収でございますから、まあ百分の三見込み違いがありましてももう二百億、百分の二見込み違いがありましても百四十億、こういったように自然増収の額としての絶対額は
相当多いのですが、パーセンテージにしますと、実はかなりこまかい率にとどまるのですが、一応今年も、例年ですと十一月の半ばころに問題を締めて、そうして本年の
歳入の見積りをしなければなりませんが、本年はいろいろな
関係で
予算の
提出がおくれた。それだけに新しいデータも使い得るわけでございますし、それでいろいろな過去の御批判を受けましたことも考えまして、とにかく自然増収が当然出るというのじゃなくて、できるだけ一ぱい一ぱいに見積ってみたらどうだろうという見積りをやってみました。従いまして少し見積り過大じゃ、ないかといったような批判を受ける場合もあったのでございますが、しかしまあ大体この
程度の見積りが現行法のままならできるだろう。そういうふうな考え方から割り出して参りますと、減収の額としまして大体三百二十七億という結論になりますが、三百億見当の減税ができるのではないか。
そこでそれでは三百億見当の減税をする場合におきまして、一体どういう点に重点を置いた減税をやっていくべきか、これがその次の問題になってきたわけであります。一昨年の秋に、これは自由党内閣のときでございましたが、税制調査会というのがありまして、そして一応答申を出していきました。昨年の税制
改正におきましては、この答申の
趣旨をある
程度は組み入れましたが、同時に昨年は増減税で一ぱい一ぱいにして、間接税の増税で直接税の減税をまかなう、こういう
政府の
方針でございましたので、まあせっかく税制調査会の答申が
相当世の中で賛成を受けていた面がかなり多かったと思うのですが、結局それが不完全な姿にしかできていなかった。その後いろいろな事情の変化はありますけれ
ども、現状としまして、税制調査会の答申というものをわれわれもできるだけやはり考えてみる必要があるのではないか、こういった考え方に基きまして全体の構想を練っているわけでございます。
所得税につきましては、あのときの税制調査会の答申は、基礎控除を八万円に上げる、昨年は七万円だ、そこで一応これを税制調査会の答申通りに八万円という線を出しました。扶養控除につきましては、税制調査会の答申が一人目が四万円、二人目が二万五千円、昨年の税制
改正のときに、一人目と二人目、三人目というのは税制調査会の答申通りに一応できておりますので、子供の三人目以下をどうするかという問題があったのでありますが、これはまあ税収の
関係もございますし、今度はこの点には手を触れませんでした。それから勤労所得控除の問題につきましては、税制調査会の答申では、
限度額に対して七万五千円まで引き上げるというのがございまして、これも七万五千円までというのはなかなか無理でございますので、一応六万円まで引き上げた。
税率についても税制調査会で一応答申がございまして、それを参考にはいたしましたが、税制調査会の案とはやはり
相当違った姿になっております。それは主として二百万円以上の
税率をもっと間のびさせなかったというところにございます。これらの
税率につきましては、税制調査会の
趣旨は
相当盛り込んだつもりでございます。あとこまかい点につきましては、昨年の
改正で
相当実行されましたので、そういう点はもう今度一応解決済みとして取り扱っております。
法人税につきましては、
法人税の
税率を四十に引き下げるというのが税制調査会の、当時の
財源を見合っての案でございました。一応
法人税を四十に下げるということを行なっております。
預貯金利子の問題、配当課税の問題、これは預貯金利子の問題が、その後一応
経済政策的な観点から新しく取り上げられた問題でございますので、これは別個の観点で問題が入ってきたわけでございます。それと見合いました結果としまして、一応配当の源泉課税の
税率を一〇%に下げる、こういう案を出しているわけであります。細部にわたりましては、さらにその後における事情によりましていろいろ検討した点がございます。しかし大きな考え方としましては、一昨年の税制調査会において答申を受け、昨年は実現できなかったというような事項を、やはりかなり頭を使う場合においては参考にしまして、ただ
財源の
関係もありますし、税制調査会の御意見を全部が全部これを実現するということはいたしませんでしたが、その代り税制調査会の答申には入っていなかった事項で、主として
経済政策的な要請というので取り入れた分が幾つかございます。
今度の減税案を作りましたときにおきましては、もう一ぺん繰り返して申し上げますと、本年度の税収として確保すべき所要額というものを一応頭に置きまして、現行
税法でどれだけの見積りができるかという点を頭に置いて大体減税のワクをきめまして、そうしてその
内容盛りにつきましては、今申しましたような気持で全体を調整していく、かように御了承願いたいと存じます。