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参考人(
大野修司君) 本日はわれわれメーカーのために、小
委員会を開かれまして、またお
呼び出しをいただきましたことを御礼申し上げます。
最初にお断わりいたしますが、本日、
社長やむを得ない用事がございますので、私かわって出席いたしたのであります。
当社の概要を一応御
説明申し上げて、
乗用車の問題に入りたいと思います。当社は、
昭和十二年に
トヨタ自動車として独立いたしましたが、
昭和十年頃から親
会社であります自動織機におきまして、この
自動車の研究に入りました。それ以降最初の一号車が
乗用車であるように、
乗用車を積極的に
考えて、
工場の設備その他をいたしたのでございまするが、引き続き事変があり、あるいは戦争があり、そういう
関係から
乗用車が中絶をしておったわけでございます。先ほど
お話のありましたように、戦争中には、ごく少数、軍の御要求に応じまして
乗用車を
生産しておりました。また
終戦後はGHQの方からの乗用率
生産禁止の命令を受けまして、表向き作れるようになりましたのは、
昭和二十四年十月頃かと存じております。それ以来
乗用車の問題につきまして、いろいろ各社の皆様から御
説明になりましたように、積極的に
乗用車の問題と取っ組んで参った次第でございます。たまたま二十六年ごろからは、
通産省におかれましても、
国産乗用車の確立ということを打ち出されまして、積極的な御指示をいただきまして、それによりまして当社の設備も、二十六年以来、これは
乗用車のみではございませんが、すべての設備を更新いたしまして、本年までには約四十億近くを投じまして、設備の更新をいたしました。二十六年以降当初作りました車は、三十馬力の
エンジンを載せました
乗用車でございまして、これが百四十八万という
値段をつけて売り出したわけでございます。それがごく最近のものは二種類作っておりますが、一種類が九十九万五千、もう一種類は八十六万五千、こういう
価格に低下いたすことができたのでございます。これにはむろんこういう品物を作りますための
材料の供給先、あるいは部品メーカーの方から積極的な御
協力をいただいたたまものであることは当然でございまするが、その
もとをなすものは、二十六年当時の月産六、七十台作っておりました車が、現在では六、七百台を作り得るようになったのでございます。設備の上から申しますると、これは
通産省の御指示もございまして、ただいま当社の
乗用車月産の能力は、約一千台の能力を持っております。いろいろ市場の
関係から六、七百台を作っておるのでございまするが、この間の
値段の動きの最もおもなるものは、これは量産に移し得たということでございまして、この
乗用車は、特に量をたくさん作ることにおいて初めて
価格の
引き下げができるということが、如実に
価格の上にも現われておるわけでございます。
なお、私は過日衆議院の
商工委員会に
参考人として出席いたしました折、もし現在の
生産が千台を上回るならば、一割の
価格の
引き下げは可能であるということを、御質問がありましたので、お答えを申し上げたようなことでございます。特に
日本におけるこの
乗用車工業は、先ほど来いろいろ御
説明がありましたように、日も浅く、まだその技術の面についてもいろいろ研究する余地があると、かように
考えておりますけれ
ども、
現状におきましては、
材料メーカーにしろ、あるいはその部品を供給していただく部品メーカーにいたしましても、
相当積極的な設備をされ、また技術的の研究も
相当進んで参っておりますので、今後はこの技術的の進歩をとめないように、一そう強力にこれを推していくならば、私は皆様方の御要求に応じられるような車が十分にでき得ると、かように自信を持っておる次第でございます。設備の問題も、先ほど申し上げましたように一応整いましたので、本年の当初からは、当社のマスター、あるいはクラウン、この二種の
乗用車を
製造いたしまして、いろいろ御
批判を仰いでいるわけでございますが、何分にも
日本の
自動車工業は、まだまだ乗心地がどうだとか、いろいろ馬力が少いとかいうような御
批判を一部からいただいていることも事実でございます。しかしこれには
一つの原因がございまして、これを
生産いたします技術屋の方から申しまするならば、われわれがいろいろな制約をこれに加えておるわけでございます。その理由は、
小型自動車の規格がございまして、この規格の範囲において作る、これが
税金の上に影響することが非常に大きいので、
小型自動車の規格の中で、いわゆる大型らしい味も出し、また乗り心地もそれにふさわしいものを作ろうと、ここに
日本におけるところの
自動車に
関係しておる業者の非常な苦労があると存ずるのであります。今まで私の申し上げましたこの二種類の車も、
日本の
小型自動車の規格一ぱいなものを作っております。乗用人員は六名になっておりますし、幅、長さ等も
小型の規格に当てはめて作っておるわけでございます。こういう
意味からいろいろ御
批判をいただきますお言葉を分析してみまするな−らば、一がいに
日本の技術が劣っておってできないというのではなく、今申し上げましたような
条件下において作るということにおいて多少の無理があるということを、この
機会に御
説明を申し上げたいと思うのであります。かような状況を続けまして、現在もその設備も一応整い、またより一層高度の
性能を出すような研究の継続をしておる次第でございます。先ほど
團社長からも
お話がありましたように、
日本の
乗用車工業に最も必要であるところの
ボディを作ります施設、あるいはこれに使います
材料、かような点は現在大分進歩はして参りましたけれ
ども、まだわれわれの要求するようなものに到達しておりません。しかしながらこれはこの二、三年の経過を見ますると、非常に大メーカーである八幡、富士、そういう
方面の技術者がこの
自動車工業というものに
相当着目をされまして、また技術的にも非常な関心を持たれまして、私たちの現場にもそれぞれの技術者が新しい研究をされた
材料を持ち込みまして、
プレス加工をしながら、その材質を研究する、この熱心な姿を見るならば、私はこの問題も近いうちに解決し得る、かように
考えておるわけでございます。ただ一部には、
日本のこのメーカーでは、いわゆるロールのサイズの上からいたしまして、ロールの幅がせまいために、われわれの要求する広幅のものができない、というようなことがありましたので、非常に残念ではございますが、一部の
材料は
輸入をせざるを得ないという状況でございます。しかしこの問題につきましても、その薄板を溶接いたしまして、幅を広くするという研究もあわせてやっておりますので、これらの問題も近く解決するやに存じておる次第でございます。先ほど申し上げましたように、特にこの
乗用車というものは、先ほど
川又専務からも
お話がございましたように、量を作るということの必要は、
プレスをいたします型それ自体を
考えましても、大体われわれの
乗用車を作ります
型代が六億
程度かかっております。こういう点から
考えますると、量をたくさん作ることにおきまして、その
型代の
償却の一台の負担する分がそれだけ軽減することになります。こういうことがほかの車と違いまして、
トラック等と違うところでありまして、そういうところに
資金が寝る、しかも量を作ること以外に、この
償却の
方法がないというようなことが、
乗用車工業の確立のために
相当困難を今感じておるわけでございます。しかしこういうふうなことをいつか
日本としてやらない限り、
乗用車の国内の
需要を満たすのみならず、これを
輸出商品にするというからには、いつかはそういう過程を
通り得る、また通らなければならないものと私たちは信じまして、積極的にこの問題と取り組み、その解決に
努力をしておるわけでございます。
ところで、今日この
機会に、先ほど
委員長からの
お話がございましたので、お言葉に甘え、いろいろ御要望事項もこの
機会に申し上げたいと思います。とにかくこの
乗用車工業は、くどいようでございますが、量を作るということが第一
条件であって、しかも国内におけるところの
需要というものには、現在の段階においてはある限度がございます。ですからこの国内の市場を圧迫するところの
外車払下げ、あるいは
外国車の
輸入、これについては、
通産省におかれましても積極的な手段をとっておりますので、これをゆるめないようにしていただきたい。それでこそ国内の市場の確保ができるのであります。そうして、量産をすると同時に、
国産車を積極的に
一つ御使用をいただきたい、われわれの悪いところは悪いと御指摘いただき、またよく御指導いただくとともに、使っていただきたいということでございます。これには、この
機会にお言葉に甘えるわけではございませんが、官庁
方面においても
通産省あたりは積極的にその
方面に推進をされておりますので、どうか
国会におかれても、こういう点についてはよく御しんしゃくをいただきまして、いわゆる官庁
方面の車は積極的に
国産者を御
利用いただきたい、こうすることにおいて、
需要が増し、
需要が増すことによって車がよくなる、しかも
価格が引き下がるということでございます。それから
乗用車の市場獲得という問題の
一つには、先ほど
川又専務の
お話にもございましたように、やはり
自動車というものは金額が張っておりますので、これをたやすく買える手段といたしましては、
月賦の
期間を延ばすということでございます。その
月賦販売の
期間を延ばすということは、それだけ
月賦に要します
資金の獲得が必要なのでございますので、こういう点についても何らかの御
施策を
一つ御検討いただきたい。それからまた
物品税の問題でございまするが、この
物品税の問題等につきましても、先ほど圏
社長から
お話がありましたように、ぜいたく品という
考え方をどうぞ
一つ切りかえていただきたい、実際に国民の足であるという観念に立ってこういうものの御処置をいただきたい、そうすることによって、車の
価格というものがどんどん
引き下げ得るということを申し上げたいと思うのでございます。それから今回御提出をいたしました書類の中に、あるいは御
下問の書類の中に一五〇〇CCの車を五十五万円
程度に
引き下げ得るか、あるいはそれにはどうするかという
意味の御
下問のように存じましたので、いろいろ検討をいたしておる次第でございまするが、さらに物品その他の点につきましては、先ほど
團社長の
お話にありましたように、結果的に見て四〇%
程度、値引きをしていただく必要があると存じます。これには
一つ今の
材料の歩どまりという問題が含まれておりますので、
材料の歩どまりがよくなりますれば、
価格はそれだけ
引き下げなくとも、われわれの
原価はそれだけ引き下がるわけでございます。それの
一つの例は、先ほど申し上げましたように、寸法上の問題がある、あるいはその寸法上の問題から歩どまりの低下ということにもなりますので、われわれの
希望するような寸度のものが、あるいは質のものが得られるように、現在いろいろメーカーと交渉中でありますけれ
ども、この
方面にも
一つ国会方面でも御検討をいただきまして、御指導いただけるならば、この解決も早いのではないかと思います。こういうふうにいたしまして、
材料方面が約四〇%
程度、これは
価格だけでなく、寸度の上の歩どまりがよければ、これが三〇%
程度というふうにもなるかと思います。われわれの方の社内のコスト、この
方面から研究をいたしますると、
一つの例でございまするが、当社が現在六、七百台の
乗用車を含み、
トラックとともに、月産二千台
程度を作っております。これをもし五千台
程度まで作り得るようになるならば、そうしてその中に
乗用車が二千台ないし二千五百台
程度が含まれるようになるならば、今申し上げたように、社内コストの四〇%
程度の
引き下げは可能になります。こういうふうに見ますと、社内コストは、ある量を作れば
引き下げ得る。それからもう
一つ、今申し上げました
材料方面が歩どまりと合せまして、四〇%
程度引き下げ得る。そうしますと、その
材料を使ういろいろ部品もございますから、その部品もやはり三、四〇%
程度下げていただけるというようなことが、これは夢ではなくて、実際にある
程度の見通しがつくのであります。またそこに、今申しました一割五分
程度の
物品税というものに考慮を加えていただきますならば、せっかくこのたび
参議院におかれまして、
一つの標準を示された
数字に近い結果が出るという見通しを私たちはつけたのでございます。ただし、それには今申し上げましたように、いろいろな
条件はついております。
条件はついておりますけれ
ども、もう
一つこれを裏から見まするならば、
価格が引き下がるということは、すなわち一面においては
需要を喚起することでございまして、
需要を喚起するということは、量が上ることでございます。それはわれわれの
生産の量が上るということとともに、それに
協力していただいております
材料メーカーにお願いする
材料の面もふえるということでございます。部品の面もふえるということでございます。単純に今の量で値を下げるのではなくして、量がふえながら下っていくということなので、これは必ずしも困難でない、かように
考えておるわけでございます。せっかくにただいまの
自動車工業に対しては、大どころの
材料メーカーを初め、部品の専門メーカーも、技術の面につき、あるいは設備の面につき、あるいは
価格の
引き下げに、非常に熱心に
努力をしておりますので、幸いに今回
国会において取り上げられたこういう
機会に、もう一そうの、そういう
方々の御
協力を得るならば、一歩一歩、その五十五万円という
価格も夢ではなくして、現実に近いということを私たちは痛感した次第でございます。それには御提出をいたしました書類にも、一応われわれがどういうことを、
政府にもあるいは
国会においても取り上げていただきたいかという要望事項もつけてはございまするけれ
ども、必ずしも無理ではない、しかも一番いい例は、われわれの所で、これは当社だけでなくして、
日産さんにおかれましても、富士精密さんにおかれましても、壁が上るということで
価格の引き下がるという事実は
数字で出ると思うのでございます。それと同じような足取りをこの
自動車業界、あるいはこれに関連するところの産
業界において御
協力をいただけるならば、非常にいい
数字を今回
参議院の皆様からお示しをいただいた、非常に参考になった、やってみたらある
程度の見通しがつく、こういうふうに私ほお答えを申し上げたいと思うのでございます。われわれの力が足らずいたしましていろいろの御要求あるいは要望事項をたくさん並べましたけれ
ども、われわれは労使とも
どもに一生懸命にこの問題の解決に当っておりますので、どうかわれわれが
考えておりますことが達成できますよう、一そうの御支援をいただきたい、かように申し上げて私のごあいさつといたします。