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参考人(
大沢三郎君) では申し上げます。先に申し上げておきますが、私が今申し上げますことは、私が属しております
全日本中小企業協議会の
意見と、それからその
協議会が参加しております、本
法案の今
国会の
通過を待っていただいて、そうして慎重に
審議をしていただきたいという
協議会が各
団体で作られておりますが、その
意見や
討論を含めて申し上げるということを御了解願いたいと思います。
で、その
討論と
意見の要約をいたしますと、第一点は、この
法案が
私的独占禁止法を
骨抜きにしてしまって、無
制限なこの
カルテルの
結成というものを許すように修正されましたことは、非常に大きく
中小企業者に不安と
危惧とを呼び起しておるということを申し上げなければなりません。で、特にこの
不当競争、
ダンピング等の弊害に苦しんで
組合結成の必要を認めておる多くの人にも、このような露骨な
独占の
強化については、非常に何といいますか、戦時中のような危険を感じております。特に
昭和十二年に制定されました
輸出入品等臨時措置に関する
法律、これらいろいろな経緯を経ながら結局
官僚統制のもとにあって、次第に全面的な
統制への
法規に変り、ついには戦時的な
統制の
基本法になった、このようなことが起りはしないかというような点が非常に心配されておるのでございます。
第一は、この
法律が
日本が
占領状態にあったとか、あるいははっきりと独立したような
状態にない間にでき上った
条約や国際的な取りきめを前提としていて、
日本の
経済の自立と逆行するような危険がないか、その反面において
日中貿易においては
統制を
強化して
輸出入組合というものを作って、
独占資本の
利益を擁護して、
中小企業というものの
利益が非常にそこなわれるのじゃないか、その結果
貿易全体が縮小して、そうして
法案の
目的とするところと反するような結果にならないかというのが第二点です。
第三点は、もしこの
法案が成立するようなことがありますというと、
日本の
経済全体が非常に苦しくなって、かえって
ダンピングの危険というようなものは、すなわち
ダンピングの
基礎である
国内経済の
不況というものはかえって深まらないか。この結果
ダンピングがかえっていろいろな形で行われるようになって、諸
外国、特にイギリスなどとの
関係が悪くなって、せっかく
貿易をやって平和というものを、
国際緊張をやわらげようというようなことを考えておることと逆にならないか。
第四点は、このような非常に広く
国民の生活と結びつき、
経営の運命とも
関係しております
法案でありますから、よく
国民の各層、各界の
意見をお聞き下さって、よく納得がいくような点まで
討議をしていただかないと、大きな社会不安が起るのではないか、そこで
国会においてもよく
慎重審議をして下さって、会期の少いこの
国会において急遽本
法案の
通過をはかるようなことのないように、特に要請したい、大体このように
意見がまとまっております。
独占の
強化のもたらす結果についていろいろ考えてみ、
討議をしておりますが、先ほど
水上さんから御
意見がありましたが
独占の
強化される結果、
中小企業並びに
独占からはずされておる大
資本において起る現象は、
生産面においては
原料高と
製品安というものが全面的になる危険がある、そうして自主的にせっかく
組合を
結成して得られた
利益さえも、そういう
独占的なものによって壟断される結果にならないか。その結果は今よりも一そう
経営は苦しくなる。このような危険がある。
輸出入の窓口を抑えられて、
国内の
生産の
協定というものができることになっておりますが、そういうものに縛られた結果は、一貫して
国内の
経済というものは
カルテル化して、そういう中で
独占経営以外のものは非常に苦しくなる危険がある。この点では
私的独占禁止法が改廃されようとしておるというようなことが非常に強く問題になっておりますので、これはこの一片の
危惧ではなくて
現実の問題ではないか、このように考えられております。前にも申しましたように、もし
独禁法というようなこの
占領中にできた
法規だからかえなければならないということで前門の虎を追い払ってみても、それと同じような性質であるこの不平等な、
外国との
条約によって、取りきめなどによって
制約がされておるこの
法案が
通過成立いたしますというと、
後門の狼を招き入れた結果にならないか。特にこの問題について申しますというと、これは
法文について申し上げますと、
外国の
条約並びにそれに準ずる取りきめに反したような
協定はできないという点でありますが、
中日貿易におきましては
ココムの
制限という国際的取りきめに準ずるものがありまして、このために多くの問題を起しておるわけですが、この
法案によってこの
ココムの
制限に
取引が縛られてしまやしないか。従って
貿易の量というものが拡大しない結果になるという、こういう点では明らかに
国民の
利益を害することになるのじゃないか、こう考えられます。
第三は、
官僚統制の危険はどこにあるかという点でありますが、これは先ほど申し上げましたように、戦時的な
統制というものが今でき上ってきておる。この
法律を通してだんだん
官僚統制的な色彩が強くなるのじゃないか。で、この点では特に具体的に申し上げたいのです。と申しますのは、これはつい先ほどまでは私
たちの間では
一つの危ぐ危険というように受け取られておりましたけれども、非常に
現実の問題として現われてきております。と申しますのは、
中国の
貿易を
統制するために
輸出入組合を
中国に向って作るということがこの中にはっきりうたわれております。その中で考えてみるのですね。
中国貿易には明らかに不
均衡の点がいろいろ存在しております。これは
皆さん御承知だと思いますけれども、米と、
大豆という
重要食糧品と、塩という
原料品を
輸入して、それに見合うところの
甲類物資が
ココムの
制限にかかって
輸出ができないために、このような不
均衡が生じているわけです。しかしこの不
均衡というものは
国民の常識として、この
法文にありますように
関係業者または
一般消費者の
利益をいちじるしく害するようなことにならないと、このように認識されております。従って本
法案が
中国に対して
輸出入組合を
結成するということは非常におかしいではないか、そういう論理的な
基礎はないじゃないかというふうに考えられます。この不
均衡であるということと、
不利益であるということとは必ずしもこの場合は一致しない。特にこの米、
大豆、塩の
関係から言いますと、
国民に喜ばれていて、かえってこの不
均衡は
日本の
国民経済にとって有利な点もあるというようなことを考えますというと、この不
均衡が
不利益であるということをどこから結論されたのか。しかもこの不
均衡の原因として先ほど申し上げたように、
ココムの
制限というところにあるわけですから、非常にその了解がしにくい、こういう点であります。一体だれがこの不
均衡で
不利益だということを断定して、
中国に対して
輸出入組合が必要かということをここに書かれたのかということをはっきりさしていただきたい。その上に町では
中国向けの
輸出入組合に対してもうすでにわれわれに相談なくあるプランができておるという
うわさがあります。この
うわさには私は根拠があると考えます。その
うわさの第一点は
甲類物資の
輸入が
片道決済としてもよい、従って乙、
丙類だけは三千万ドル
程度の
ワクの中でバーターさせる、こういう
考え方があります。第二は
組合の
専務理事に
通産省の某
次長がすでに就任を用意されておるというような点が
うわさされておる点は非常にわれわれとして困るといいますか、非常に弱っておるわけです。この第一点は
中国貿易の場合には不
均衡即
不利益でないということを私は是認しておられるということだと、こう考えます。またこのことは道理にかなっておると、こう思うのです。
甲類物資の
片道決済ということは必ずしも
日本にとって
不利益ではないのですけれども、
協定貿易の
立場からいえば、
甲類物資についても明らかにこれに見合う
物資を出すことが正しい、このように考えますけれども、一応これでも
日本国民にとっては
不利益ではないということは言えると、こう考えます。それから町で特に問題になっておる、われわれの間で問題になって、非常に物議をかもしておることは、このようなお
みやげといいますか、このような
中日貿易に関する
ワクというような
みやげをもって、そうして
通産省の
官僚の人人が
組合に入ってくるというようなことがもし起ったとすれば、これこそが
官僚統制の第一歩ではないか、このように非常に心配するわけです。で、先ず
自分で不
均衡すなわち
不利益だという、こういう断定を作り出して、そしてそれとは違うような
みやげ案のようなものを作って、そして
自分たちの就職の場をそこに見つけるというようなプロセスこそが
官僚統制の最も巧妙な道行きではないかと、こういう工合に言われておるわけであります。で、これは党派は申しませんが、ある代議士の方にわれわれの仲間の者が
輸出入組合の話をしましたところが、そんなに重要な
法案なのか、おれはそれは何か
官僚の人々が老後を養う場所に使えて、そういうところが多いのはいいというようなことで、それじゃいいだろうという
程度に考えておったが、それは大
へんだというようなことを現に言われておるような例もあるわけであります。こういうことは、
官僚統制を憂えておりましたけれども、非常にはっきりとこういう形で、
うわさを種として非常に申しわけないわけですが、こういうことが現われてきておる。このことは非常に今まで行われた
官僚統制の一例と、いろいろな例と似ておると、このように考えます。こういうような
官僚統制が
アウトサイダーの
規制にも加えられ、先ほど
水上さんが
希望されましたけれども、若し
貿易業法というものができて、
登録制になった場合に、どうして正しい
登録制が行われ、その監査が行われるかという点について非常にいろいろな問題が出てくる、こういうように考えておるのです。
それから第四は、その結果、では
貿易が拡大するかといいますと、全般として申しますと、たとい一時的に
輸出がふるうようなことがありましても、
独占価格の形式によって、
国内の
不況が非常にはなはだしくなり、社会不安を醸成し、ひいては
日本経済を危うくするような結果となるのではないか。従って国家百年の計に立っての
貿易拡大とは、こういうことは縁が薄いのではないか。特に
中国について申しますと、
ココム制限の
ワクの中にいつまでも
貿易というものが縛られていて、そして決して拡大することがない。このようなことになりますというと、これは先日
石橋通産大臣が言明されましたけれども、
ココムの
制限を
ソ連並みにまで緩和するということと著しく矛盾すると、このように言われております。具体的に申しますと、
政府は
貿易促進の公約をされておりますが、いろいろな点ではその反対のことが起ってきておるのではないかと、さようにみな考えております。そのことは
促進運動というものを
骨抜きにしようとしておるのじゃないか。すなわちどういうことかといいますと、
取引は
輸出入組合にやらせて、
促進運動は村田さんの主宰される
国際貿易促進協会がやればいいと、こういうふうに出てこられておるようであります。そうしますと、
促進運動というものは
取引から引き離されて、簡単な
思想運動になって、これは死滅してしまうわけです。こういうようなことは非常に重大なことであって、今日まで業界が
自分の力で盛り上げてきた
促進運動というものをどうしてここでこのような形で死滅させられなければならないか、こういう
促進運動というものを生かしながらやっていただけないであろうか、こう考えております。特に
中国貿易における不
均衡の問題は先ほど申し上げましたけれども、
調整の
事項はほとんど言うに足りません。この点は
衆議院の
公聴会におきまして種々論議されましたけれども、
中国貿易において
調整の必要ある
事項というものは具体的にありません。ある
調整事項については、
促進運動の中で、
促進諸
団体の協力によって、この
調整は現に行われておって、不都合がないのです。この点は拡大していく
貿易の中で、大
資本と
中小企業との
利益の
調整さえも行われているというのが実情であります。従ってこういう
状態を官なり
国会なりは進めていくような
法案なり、処置なりをとっていただけないだろうが、このように要望するわけであります。
輸出入組合の方針や
人事というものが非常に、みんなの陰に隠れたところで行われて、一面
国際貿易促進協会の
人事をこのようにしろというような干渉まで行われているという事実を聞いております。このことは非常に大
へんだ。この点については御
質問があればあとでお答えいたします。
組合の
結成が
促進運動を
骨抜きにするために利用されているというような事実があるとすれば、これはこの
法案の趣旨と相反するものだ、このように考えます。この点は重大な警告を
皆さんにしておく必要があるのではないかと、このように考えます。
具体的な例を最後に
一つ申し上げます。それは最近
通産省が予算を取って下さいまして、五万トンの
中国大豆が
輸入されるようになりまして、
中国から七十数社にオファーが参りました。ところが
通産省の御見解によって、これを五千トン以上の実績のある者にしぼられまして、そうして若干数については出入りがありますけれども、そのようにして
大豆の
取引から、オファーをもらった中小商社が現に締め出されようとした。ところが
中国から来ておるオファーというものは現に生きているということが明らかになりましたので、現在
国内で資格のある実績者と無資格でオファーを持っている者との
調整というものが必要になって、これを
貿易諸
団体の手において行なっております。こういうようなことが起っておることを見ますというと、
官僚統制というものの弊害というものと、それから
促進団体なり民間なりがやらなければならないということが明らかになってくるのではないか。で、このように見てきますと、特にこの
大豆問題で問題になったことは、常に
大豆取引は、たとえば
通産省と私
たちが
お話をして、油をしぼるには大体四十四から、せいぜい安ければ四十ポンドというようなところで交渉しておりますと、四十六ポンド半でぽんと買ってしまうような大商社が現われた。そういう大商社の人々が特に
組合結成について熱心であるということは一体どういうことなんだ。このような点が公正な人々の間に深い疑惑を呼んでいるわけです。このことは
独占という意図とこの
輸出入組合というものとが結びついておるのではないかというようなことを疑わせる非常に大きな問題になっております。特に
国民生活の必需品としてのとうふ、みそ、しょうゆというようなものの原料である
中国大豆をただ単に
取引の対象と考えたり、それから実情を無視した価格の政策でもって操作しようとするようなことは、
国民の
利益と相反する
統制の色彩が濃いと、このように考えております。
最後に各階層の
意見を申し上げますが、
日本中小企業団体連盟をも含めて、
日本の
中小企業は本
法案に対して非常に強い反対と
慎重審議の意向を明確にしております。それから
国際貿易促進協会に集まっております多くの
資本、それから労働
組合までも含めておりますが、この人々の間でも、この
独占を無
制限に許すという問題や、
輸出入組合を
中国に特に認めなければならないという点などについては多くの論議がかもされております。従ってこの協会としましても、本
国会に
慎重審議をお願いしたい。そうして社会不安の起らないようによく
討議をされた結果、修正すべき点は修正し、
法案を成立さしていただきたいと、このように望んでおります。
以上非常に簡単でありまして、雑駁でありますけれども、私の公述を終ります。御
質問があれば承わらしていただきたい。