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政府委員(
岩武照彦君) それではこの前のときに、総合燃料対策といったものについて通産省の構想を述べるようにという
お話でございましたので、お手元にエネルギー総合対策というのをお配りしてあると思いますが、これはそれに該当いたしますので、御
説明したいと思います。
これは去る五月二十日に閣議の了解を得たものでございまして、各種のエネルギーにつきましてはどういうふうな基本的な考え方で臨むかという点を概略お示ししておるわけでございまして、その次に昭和三十五
年度までにおきまする各種エネルギーの供給の見通しを試算いたしたものをつけ加えておるわけであります。
最初の前書きでございまするが、これは今後の経済規模の拡大に伴いまして、エネルギーの
需要がふえて参る、これに対してどういう見地から対策を講ずるかという点の基本でございますが、これは極力
国内のエネルギーを有効に利用すべきで、足りない分を輸入すべきだと、こういうふうな自給度向上という見地を述べてあるわけであります。
それからその次に第二段としましては、各種のエネルギーにつきまして、ばらばらの対策では困りまするので、それぞれのエネルギーの総合的な視野に立った政策が要るではないかということを述べたわけでございます。これにつきましては、
一つは
国内資源を合理的に、かつ計画的に開発して参るということと、そうして、安価かつ良質なエネルギーを供給するということ。それからもう
一つは、使い方におきましても、使用を合理的かつ効率的にする必要があるということを述べたわけでございます。
そこで、将来の問題としましては、
一つは全体の総合的な需給の見通しがいかが相なるかということを考える必要があるということで、石炭、石油、天然ガス、都市ガス、電力等につきまして、総合的にかつ長期的な見通しを立てる必要がある。これは経済審議庁で立案しております六カ年計画に即応いたしまして、その一部になりまするエネルギーの
関係の見通しを立ったわけであります。それがこの付表としてついておりまするものでございます。この数字は後刻御
説明申し上げまするが、審議庁の六カ年計画の一部となったわけであります。
それからその次に各種の資源についてどういう対策を講じて参るかという問題でございまして、まず最初に申しますのが石炭の問題。石炭は、これは御案内のように、従来から石炭が高いということをいろいろ言われております。これにはいろんな原因もございまするが、一番の問題は、やはり、自然的条件が悪くなりまして、坑道が延び、坑内が広がりましてコストが上って参っておるということが、これが一番の
日本の石炭鉱業の
問題点でございます。そこで、これをどういうふうにして打開して参るかということは、結局はここにございまするような、
一つは縦坑の問題、さらに縦坑はどこの山でもできるわけではございませんので、一般的に坑内外の機械化によりまして出炭の能率を上げ、コストを下げて参るということしかこれは
方法としては一応考え得ないわけでございます。まあいわば一種の
日本の石炭鉱業の若返りというふうな問題でございます。これにつきましては、終戦以来、当時の復金、それからその次の開発銀行という、そういうふうな財政投資も
相当投じまして、近代的な炭鉱の若返りをさせたわけでございますが、なかなか急テンポでも参りませんので、今回新たにこれらの裏づけとなりまする総合的な石炭鉱業合理化臨時
措置法案というものを考えまして、総合的な石炭対策の一環としてこれの合理化の問題を進めて参りたい、こういうように考えたわけであります。
それから、なお合理化を推進する上におきまして、御
承知のように石炭
関係には非能率炭鉱という言葉で一口に言われておりまするが、いろいろ、ほんとうの山らしくない山といった形の操業形態がございまして、これが好況期には炭価をつり上げ、不況期には炭価を投げ売ってマーケットを乱すというような問題もございますので、そういうふうな山を買い上げまして、そうしてこういうふうな非能率な出炭能力を削減するということと、それから、むやみやたらに非能率な坑口を開いて炭価を乱すということのないようにしますために、あえて坑口開設の制限もこの
法案の中にうたうことにしたわけでございます。
それから今度は競争エネルギーの
関係でございますが、これはこの(2)に書いてございまするが、従来石炭と重油の
関係のいきさつを簡単に申し上げますると、終戦直後はむしろ国際貿易も開けておりません
関係で、むしろ石炭復興
中心に進めて参ったわけでございますが、その後、ある程度石炭の出炭が回復しまして、どうやら
国内の
需要に追いつけるというような
関係になっておりましたところへ、重油の方がだんだんと輸入の道が開けまして、しかもこれは、朝鮮事変当時には、タンカーの運賃も
相当高かったものでありますから、石炭と
相当な競争できる価格で売れておりましたが、だんだんとタンカーレートが下りまして、むしろ値段が非常に石炭より安くなって参ってきたということが
一つと、それからもう
一つは、冬場の
需要期等におきまして、いろいろな労働争議等の
関係で石炭の供給が円滑を欠いて、その結果
需要家が重油の方に走ったというふうな
関係もありまして、むしろ石炭よりも重油を選ぶというふうな傾向がだいぶ出てきました。当時通産省も重油の転換ということを熱管理の面からある程度進めて参ったわけでございまするが、そういうことで少し重油の消費がふえまして、一昨年あたりでは五百数十万キロにも上りまして、今後の鉱業の発展次第では
相当重油の消費はふえて参る。普通ならば石炭の消費分野でしたものが重油に変ってくるということが起ったわけであります。これを考えてみますと、結局、
一つは外貨収支の面から問題になりまして、当時の事情からいいましても、一億七、八千万ドル程度の外貨を使ってきた。そういう問題が
一つ。それからもう
一つは、石炭で済む用途に重油を使って、その結果石炭の方は
販路がだんだんとさびれて、貯炭が激増しまして、困ったことになったというような状況になりました。そこでこの際
国内の適正な
産業規模を維持するという見地からと、外貨の収支の均衡化という見地から、この際この消費分野を適正に調整しまして、石炭で間に合い得る用途は石炭を使ってもらい、重油でなければならない用途は、これは重油で間に合わせてもらうというような方向を考えたらどうかというのがその第二点でございます。
なお第三点としましては、現在のような石炭鉱業の状態からいいますと、競争エネルギーを押えるだけでは済みませんで、むしろ積極的に石炭の分野の消費を、
需要を拡張して参るということが必要でございます。そのためには新しい分野で低品位炭の発電、これはいわゆるボタ発電でございますが、まあボタとも限りませんで、それに類似の低品位炭の発電を促進して参る。それから、これはまだなかなかむずかしい問題でございまするが。石炭の完全ガス化の問題もこの際取り上げて参る。またその他の
方面にも石炭消費を拡大していこうという対策を進めて参るというのがこの石炭対策であります。
それから石油の方としましては、これは御
承知のように、
国内での産油は全消費量の五%にも満たない状況でございまするから、しかも他方技術家の研究によりますれば、
日本の
国内の石油資源はあながち捨てたものではなくて、探鉱の
方法よろしきを得るならば年産百万キロリッター程度もあながち無理ではないだろうという結論もございますので、この際
国内資源の開発を積極的に進めて参ろうということで、実は本国会に石油資源開発株式会社
法案を
提出した次第でございます。
それからその次の(2)の問題は、これは石炭との消費分野の調整の問題であります。この一環としまして、一番石炭と重油とどちらでも使用し得る用途は、設備からいいまするとボイラーでございます。それで重油ボイラーにつきまして、新設はこれはできるだけ抑制し、既存の重油ボイラーもある程度転換してもらいたいということで、これまた
法案としましては、重油ボイラーの
設置制限の
法律案を提案している次第でございます。
それから天然ガスでございます。これは実は今まで燃料資源のうちでは比較的開発のおくれている資源でございまして、ずいぶん方々にいろいろな賦存状況もございますので、これをもう少し開発をしまして、
一つは都市ガスの方に進めて参る。それからもう
一つは新しくガス化学の方に、これはいろいろな系統のガス化学が出てくると思いますが、その
方面に有効に利用をして参ろうという考え方であります。
それからその次は都市ガスの問題であります。これは石炭対策の一環とも考えられまするが、むしろ広くいえば、これは
日本の森林資源を保全する見地からも、さらに取り上げるべきではないかということの考えでございまして、これは経済審議庁にありまする資源調査会の勧告がたしか三、四年前に出ております。これによりますれば、家庭燃料としては、大都市あるいは中都市においては、むしろ石炭ガス
中心で燃料をまかなうべきだ。それから農村においては、これは、改良かまどを普及して森林資源、ことに薪炭用材を節約すべきだというふうな結論になっております。それに沿いまして、都市につきましてはガス拡充の五カ年計画を定めまして、現在たしか二年目になっておりまするが、五カ年間に供給家の戸数にしまして約四割程度をふやして参りたい、現在二百数十万戸ありますが、これを三百万戸余へ持っていきたいということでせっかく努力している次第でございます。
それからなおこまかい問題としましては、都市ガスのやり方につきましても、天然ガスをできるだけ使って参る。それから石炭ガス化の問題も、これは完全ガス化の問題をできるだけ促進して参ろうという考え方でございます。この
方面につきましては、いろいろ開銀融資等のあっせんも行なっている次第でございます。
それから電力でございますが、これはすでに御案内のように電源開発の五カ年計画というものをもって進めておりまするが、この考え方につきまして
問題点がいろいろございまするが、
一つは水火力の
関係をどうするかという問題でございます。これはここに書いておきましたように、水力問題としましては、流れ込み式の小さい発電所は、これはできるだけ第二次的に考えまして、やはり主力は大きな容量をもった貯水池式の電源開発に重点を置くべきではないかという考え方でございます。これは
日本の既存の水力は御
承知のように調整能力の少い点が欠点でございます。こういう考え方で調整能力を持たせまして、あわせてコストの低下をはかって参ろうという考え方でございます。
それから火力の方は、これは
日本の火力発電所は
相当古い発電所が多いわけでございまして、熱効率は
相当下っておるし、コスト高になっておるというような現況でございまするから、これは新しい能率の高い火力発電所を建設して、その一部をもって置きかえて参るという考え方が
一つのポイントでございます。ここに新鋭火力とありますが、これは高温高圧の発電所で熱効率の高いものを総称していっているわけでございまして、それからもう
一つは先ほど石炭で申し上げましたように、産炭地におきまする低品位炭あるいはボタ等を利用しました火力発電、これにも力を入れて参りたいというふうに考えておりまして、その一部はすでに実施の運びに移る段階になっておるわけでございます。
それから電気の問題で、もう
一つは、発電コストの上昇の問題であります。これは当初五カ年計画を作ります際にも、これを完成の暁には将来
相当この原価が上るのじゃないだろうかというふうに見られておりましたが、やはりその
通りの傾向でございまするので、これは一方におきましては電力会社の企業
内容の合理化を促進するのが当然でございまするが、同時に補償費等におきましていろいろな空気も見られまするので、これもできるだけ適正化して参るというような考え方もございます。
それからなおここに特にうたっておりませんが、いろいろここに金利、税制等の問題につきましても、もう少し検討を進めて参りたいというふうな考え方でございます。
それから最後に薪炭問題がございます。これは通産省から申し述べるのもどうかと思いまするが、先ほど申し上げましたように、森林資源の保全という見地から都市ガスの問題、それからもう
一つは、先ほど落しましたが、地方の中都市におきましては、一挙に都市ガスまでいくまでに、練豆炭というような石炭系燃料の問題もあるかと存じております。それから農村では改良かまどの普及の問題、こういう問題を総合いたしまして薪炭材の節約をはかって参りたいというふうな考え方でございます。
それからこの終りの方に「金融上、税法上の
措置」と書いてありますが、これはそれぞれの項目に応じまして
措置して参りたいと思っております。財政投資の問題もありまするし、あるいは各種税法上の減免税の問題もあるかと思います。
なお石油関税の復活問題でありますが、これは国産原油の開発促進という見地等も含めまして国会に提案をした次第でございまするが、
衆議院の方の御審議は終ったように聞いております。
それから、なお将来の原子力問題でございますが、これはここ五年や七、八年ですぐ
日本の原子力資源を利用するということはできませんが、やはり将来の、二十年三十年先を考えますると、この原子力エネルギーの利用という問題も当然考慮していくべき問題でありまして、御
承知のように今度濃縮ウランの受け入れ問題も一応レールに乗り始めましたから、これらの問題を明らかにしまして、原子力エネルギーを将来どういうふうな
方面に使うかにいろいろな問題があると思いますが、これをできるだけ
産業的に使って参りたいというのがこの考え方でございます。
それから付表といたしまして将来のエネルギーの供給と見通しをつけております。これは各種のエネルギーを一応石炭に換算いたしまして、これは六千五百キロカロリーの石炭に換算いたしまして、相互間の構成等がわかるようにしたわけであります。
最初石炭は三十五年に
国内産五千万トン、輸入炭二百八十万トン程度は、これは
品質上の問題からしましてどうしても輸入しなければならないだろう、五千二百八十万トンというふうな見通しでございます。これは二十九
年度に比べまして一五%の
増加になりまするし、全体のエネルギーの構成比から見ますと三九・六%、二一九年の四一・七%から比べますと若干下りますが、これはあとで何しますように、電力の
増加の結果総体的にウエートが下つたのじゃないか、こういうふうな見通しでございます。
それから電力でございますが、これは先ほど
お話しいたしました五カ年の計画後、これはたしか三十三
年度で終っておると思いますが、その後通産省で引き続いて考えておりますものを入れまして、一応水力で五百九十八億キロワットアワー、これは石炭に換算いたしますると四千六百万トン程度になるわけであります。構成比は三六・三%で、これは二十九
年度の三三・五よりだいぶ伸びました。また量的にも三割の
増加を示すわけであります。なお火力の方は、これの水に見合います量を一応二百七億キロワットアワー、石炭換算八百五万トン、こういうふうに一応推定いたしております。
それからその次の石油でございますが、これはこの表の中に内訳を作ってありますように、国産原油は五カ年計画の推定によりまして年産百万キロリッター、これに輸入原油千二百万キロリッターを考えまして、これを精製いたしまして、千百七十万キロリッター、これに足りない分、これはおもに重油かと存じますが、三十七万キロ入れて千二百万キロリッターの
需要があるのではないかと考えております。これは三十九
年度に比べまして二割七分の増になっておりますが、この
増加のおもなものは、これはガソリン系統でございます。だんだんと車両の運行量もふえて参りますので、やはりガソリン系統が
相当ふえて参る。そうしますと、それに見合う原油を輸入いたしますれば、結局重油の方は精油よりも少くて間に合うという状況でございます。
なお鉱工業用の重油等はそう大きく伸ばすという考えはございません。現在程度に将来見通し得る若干の伸びを考えておる。たとえば発電等に若干伸びがございましたので、そういう程度を考えておるわけでございます。むしろ燃料として、重油の
需要増加も、石炭の使用可能なものはむしろ石炭を使ってもらうという考え方で、この表を試算しておる次第でございます。
それから亜炭でございます。これは大体横ばい程度かと存じております。
それから天然ガス、これは今後積極的に開発を促進して参りますと、大体二倍半以上にふえるのではないかと考えております。おもな用途は、先ほど申し上げましたように、化学工業
方面、それから都市燃料が
中心になります。
それから薪炭材でございます。これは私詳しい
説明の能力はございませんが、大体現在九千八百万石程度、原木石でございますが、これが人口
増加等も考えますと、やはり少しふえざるを得ないだろう、もちろん先ほど申し上げましたような方向でできるだけ節約をはかって、といいましても、やはりある程度は
増加傾向にあるのではないか、こういうふうに考えます。全体としまして五カ年間には二割程度総エネルギーがふえて参るのではないだろうかと思っております。この間の鉱工業生産の伸びとも、大体この辺の数字で相応して参るだろうと思っております。
なおこの備考としましていろいろ各種エネルギーの換算基準を示しております。まあこの率につきましては、いろいろ
意見もあるようですが、これは資源調査会の換算率をそのまま採用いたして、これによって換算いたしたいと思います。大体こういうふうなことでございます。