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政府委員(川上為治君) 今回このニッケル製錬
事業助成臨時措置法を廃止する
法律案を出しておるわけでございますが、この
法律につきましては、もう御
承知の
通りでございまして、私から特別に
お話申し上げることはないと思うのですが、この
法律を作りました当時はちょうど朝鮮事変当時でございまして、ニッケルが国際的に非常に不足になって参っておりまして、従って
日本におきましても、おそらくほとんど外国から入って来ないんじゃないかというふうに
考えられましたし、また当時国内におきましてほとんど生産はなかった、従来戦争中に持っておりましたストックでまかなっていたというような状況でありましたが、どうしても国内におきまして、どこか工場を作りましてニッケルの製錬をしなければならないということで、この
法律を作っていただいたわけでございます。この
法律の内容は、要するにある
事業者を指定いたしまして、その指定された業者に対しまして、あるいは設備に対する
国家補償とか、あるいは法人税その他税金の免除でありますとか、あるいはまた価格につきましては一定の安定した価格を指示して、それによって販売させるとか、あるいはまた開銀等の融資を援助してやるとか、そういうような措置によりまして、この
事業体を援助いたしまして、そうして一日も早く国内におきましてニッケルが増産できるようにということでやったわけでございます。期限としましては大体四年
程度でこれを完成するということでございまして、指定業者につきましてはいろいろ検討をいたしたのでありますが、結局住友金属鉱山株式
会社の新居浜の工場が最も適当であるということに
考えまして、その工場を指定いたしたわけであります。指定されましたのは二十六年の十月、すなわちこの
法律が可決されましたのは六月の七日でありますが、十月にはこの住友鉱山を指定いたしました。それから補償に見合う
程度の積立金制度というものをこの
法律によりまして第七条で設けることになっておるんですが、これを大体
総額四億五百万円
程度ということにいたしたわけでございます。それから価格につきましては一定の価格をきめまして、これを最高販売価格といたしまして、その中に積立金をトン当り大体どれくらいということで積み立てをさして参ったのでありますが、
最初におきましてはトン当り販売価格を三百二十万円といたしまして、その際の積立金は四十万円、それからその次にだんだんコストも下って参りましたので、二十七年におきましてはさらにこの三百二十万円という最高販売価格を二百七十万円
程度に下げまして、これをお配りしました最後の表、第四表というのに書いてございますが、積立金は二十三万円、それからその後さらにまたコストが下りましたので販売価格を二百五十万円、そして積立金につきましては四十万円ということにいたして参ったのであります。価格につきましては、現在におきましては非常に安くなっておりまして、大体百五十万円
程度に販売価格は下っております。それから生産の方につきましてはこの表の第一表を見ますというと、二十六年度におきましては住友鉱山の生産が年間百六十トン、それからその他というのは志村化工でありますとか
日本鉱業でありますとか、そういうものでありますが、七十九トン、合計いたしまして二百三十九トン
程度しか生産がなかったわけであります。ところが二十七年度におきましては全部で九百九十八トンという生産が出ております。それから二十八年度におきましては千九百七トンというふうに向上いたしております。二十九年度におきましては住友鉱山だけで千六百九十トン、それからその他のものを入れますというと二千五百十八トンという生産になっております。三十年度におきましてはこれよりも相当生産がふえるわけございまして、ほとんど二十五年ころは生産がなかったものが、現在におきましてはこの
法律によりまして年間二千五百トン以上の生産が行われるようになっておるわけでございます。現在におきましてはその次の第二表にもちょうど二十九年度のニッケルという欄の需給
関係のところを見ますというと、その上の生産のところでは先ほど申し上げました二十九年度はニッケルの生産が二千五百十九トン、そのうち輸出の方がこの需要の
関係を見ますというと、輸出が千七百九十二トン、国内の需要は千三百二十二トン、むしろ輸出の方が最近におきましては非常にふえて、そして国内の需要をまかなうどころか相当の輸出をしておるというような状況になっております。三十年度の見込みを見ますというと、生産が四千二十トン、それから国内の需要が千七百四十トン、それから輸出が二千二百八十トンというようなふうにふえて参っております。こういう生産の面から見ましても、非常に最近におきましてはこの
法律によりまして助成されております
目的を達しておるといっても差しつかえないのじゃないかというように
考えております。それから価格の問題につきましては、先ほど申し上げました
最初三百二十万円というような非常に高い価格でありましたものが、だんだん下りまして、現在におきましては百五十万円
程度に下っております。しかしこの百五十万円
程度というのは国際価格というのは国際価格と比べますというとまだ相当高いのでありまして、国際価格につきましては、やはりこの第四表の
資料に載っておりますが、五十万円
程度でありますので、やはり相当高いということになるわけでありますが、ただ高いという
理由は
一つは鉱石を遠いところから運んで持って来て、精練をしておるというその鉱石代がやはり相当高くつく。その鉱石そのものが、たとえばカナダのニッケルなどと比べますというと品位が非常に悪いというような問題。特にその品位が、比較的カナダのニッケルなんかに比べますというと悪いという点なんかが、やはり価格が高いということになってくるのじゃないかと
考えております。しかしそれ以外に、やはり精練設備の内容におきまして、なお合理化すべき点が多々あると
考えられますので、今後におきましては価格の引き下げということに全力を私どもの方としましては講じたいというふうに
考えております。しかしながら国際的に見ますというとこのニッケルは依然として不足しておりまして、そういうためか相当輸出が現在伸びておるというような状況にありますので、私どもの方としましては、一応この
法律によりまして
目的は達せられましたが、今後におきましてはニッケルの価格を下げるように極力努力いたして、内需の方はもちろん、輸出に対しましても大いに貢献さすような
行政指導をしたいというふうに
考えております。
以上述べましたようなことで、この
法律の
目的とするところはもう十分達せられましたので、この際この
法律を廃止すべきではないかというふうに
考えておるわけでございます。
なお、指定されました住友鉱山につきましては一昨年の十月でありましたが、大体
目的を完遂するような
状態になりましたので、指定の取り消しを行なっております。また同時に、この積立金につきましては、すなわち補償に見合う積立金につきましては、その当時約四億五百万円
程度の、政令できめました
程度の積み立ても完了いたしましたので、今申し上げましたようなことでこの指定業者としての取り消しを行なって参っております。従いまして現在におきましては
法律によりまして特別に助成なり擁護なり、そういう必要はなくなったものと
考えておるわけでございます。