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1955-07-26 第22回国会 参議院 社会労働委員会 第32号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年七月二十六日(火曜日)    午前十時二十九分開会     —————————————    委員の異動 本日委員西岡ハル君辞任につき、その 補欠として加藤武徳君を議長において 指名した。     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     小林 英三君    理事            加藤 武徳君            常岡 一郎君            山下 義信君    委員            榊原  亨君            高野 一夫君            谷口弥三郎君            松岡 平市君            横山 フク君            高良 とみ君            田村 文吉君            森田 義衞君            阿具根 登君            山本 經勝君            吉田 法晴君            相馬 助治君            有馬 英二君            寺本 広作君            長谷部廣子君   衆議院議員            早川  崇君            八木 一男君            山下 春江君            大石 武一君   国務大臣    厚 生 大 臣 川崎 秀二君    労 働 大 臣 西田 隆男君   政府委員    労働政務次官  高瀬  傳君    労働省労働基準    局長      富樫 總一君   事務局側    常任委員会専門    員       多田 仁已君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部  を改正する法律案山下義信君外一  名発議) ○社会福祉事業等施設に関する措置  法案小林英三君外五名発議) ○覚せい剤取締法の一部を改正する法  律案衆議院提出) ○未帰還者留守家族等援護法の一部を  改正する法律案内閣提出衆議院  送付) ○日雇労働者健康保険法の一部を改正  する法律案内閣提出衆議院送  付) ○理容師美容師法の一部を改正する法  律案内閣提出衆議院送付) ○戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部  を改正する法律案内閣提出、衆議  院送付) ○失業保険法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○労働者災害補償保険法の一部を改正  する法律案内閣提出衆議院送  付) ○医師法歯科医師法及び薬事法の一  部を改正する法律の一部を改正する  法律案衆議院提出) ○けい肺及び外傷性せき髄障害に関す  る特別保護法案内閣提出衆議院  送付) ○理事補欠選任の件     —————————————
  2. 小林英三

    委員長小林英三君) それではこれより委員会を開きます。   本日は、戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を改正する法律案、(参第九号)社会福祉事業等施設に関する措置法案覚せい剤取締法の一部を改正する法律案、未帰還者留守家族等援護法の一部を改正する法律案日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案理容師美容師法の一部を改正する法律案戦傷病者戦没者遺家族等援護法の一部を改正する法律案、閣法第七〇号失業保険法の一部を改正する法律案労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案医師法歯科医師法及び薬事法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案、以上十議案を一括議題といたします。  発議者提案者から提案理由説明を願います。まず、戦傷病者戦没者遺族援護法の一部を改正する法律案につきまして、発議者参議院議員山下義信君にお願いいたします。
  3. 山下義信

    山下義信君 ただいま議題とされました戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を改正する法律案について、提案理由を御説明申し上げます。  戦傷病者戦没者遺族等援護法昭和二十七年に実施されましてから三年余を経まして、遺族等に対する援護の実績は多大の効果をあげていることは御承知通りでありますが、現行法のままでは、国家補償の公平かっ完全な実施にはいまだ不十分な点が多々ありますため、今回恩給法改正による戦没者遺族公務扶助料の引き上げと相待って、以下に述べますような点について根本的かつ合理的な改正を行い、援護措置拡充強化をはかろうとするものであります。  改正点につきまして、最初に全般に共通した点について申し上げますと、第一に、援護対象を拡大して、日華事変中における事変地勤務軍属に対しても援護措置を行うこととしたこと、第二に、軍人軍属等を通じまして、戦地において生じた傷病によって死亡した場合については、その傷病公務上のものかいなか判定が困難である実情にかんがみ、援護審査会の議決による公務死推定規定を設けたことであります。  次に、遺族年金に関する改正点について申し上げますと、第一に、年金受給対象を大幅に拡大し、従前弔慰金のみの受給権しかなかった旧国家総動員法に基く被徴用者総動員業務協力者、軍の要請による戦闘参加者遺族遺族年金を受給できることとするとともに、軍の要請によってその作戦行動に関連する業務に従事した現地の企業会社等従業員及び軍病院勤務看護婦等の中の戦没者についても、その職務内容軍人軍属と区別すべき理由がないので、同様にその遺族について遺族年金受給権を認めるごとにいたしました。第二に、遺族年金受給資格についても、特別の措置をとり、受給権の発生について全然関知し得ない日時において、婚姻または養子縁組によって年金資格を失った遺族が、その後離婚又は離縁している場合は、他の理由によって失権しない限り、改正法施行後において年金受給資格を認めることにいたしました。第三に、遺族年金の羅を引き上げたことであります。これは別途提案されております恩法給の一部改正による旧軍人公務扶助料増額と相待って、先順位者年金額を三万八千三百五円に引き上げるものであります。  次に、弔慰金に関する改正点につきましては、第一に、弔慰金受給対象を拡大し、前述の軍の要請によって軍の作戦行動に関連する業務に従事した者、軍病院勤務看護婦等戦没者に対しても、その遺族受給権を認めることとしたこと、及び事変地戦地勤務軍属について、死亡原因が直接公務によらないときでも関連傷病である場合には、公務によるものと同様の取扱いをして弔慰金支給することとしたことであります。第二に、弔慰金受給資格について、その遺族の範囲を拡大し、戦没者の祭祀を主宰している親族を新たに加えたことであります。第三に、弔慰金については、従来軍人軍属以外で軍属とみなされて取り扱われてきた者については、その額が三万円であったのを、今回一律に五万円に増額して、その差別を撤廃したことであります。  最後に附加して、終戦時に責任を負って自決した軍人軍属についても戦没者と同様の取扱いをして、遺族年金及び弔慰金支給することにいたしました。  以上が改正法律案の主要な内容及びその提案理由であります。何とぞ慎重御審議の上御採択に相なるようお願い申し上げます。
  4. 小林英三

    委員長小林英三君) 次は社会福祉事業等施設に関する措置法案につきまして、発議者参議院議員岡一郎君にお願いいたします。
  5. 常岡一郎

    ○常岡一郎君 ただいま提案になりました社会福祉事業等施設に関する措置法案につきまして提案理由を申し上げます。  社会福祉事業を経営する社会福祉法人につきましては、現行法制上、都道府県知事または市町村長からの委託を受けたときは、正当な理由がない限り、その委託を拒み得ないこととなっているのであります。わが国におきまする社会福祉事業経営の実際におきましては、都道府県知事又は市町村長委託に基きましてその事業を経営する社会福祉法人が少くないのでありまして、これらの者は、もとより、所定の委託費を交付されているのでありますが、施設に要する経費につきましては、交付されていない実情であります。このゆえに、委託を受けて事業遂行に当る社会福祉法人は、過当の負担を招き、ひいては、その事業の健全な発達を阻害する原因ともなっているのでありまして、このことは立法的に解決を要すると考えるのであります。  右の関係は、刑の執行を終った者等に対しまして、国がさらに罪を犯す危険を防止するために諸種の援護を行う更生保護事業につきましても同様でありまして、国の委託に基きまして更生保護会更生保護事業を行なっている場合があるのでありますが、この場合におきましても、施設に要する経費につきましては、その負担関係適正化につきまして考慮する必要が認められるのであります。  以上のような事情にかんがみまして、ここに、社会福祉法人更生保護会等が、国または地方公共団体から委託を受けて要保護者の収容その他の措置を行なっている場合におきましては、国有財産無償貸付を受け得る道を開くようにいたそうというのが本法案の主たるねらいであります。  次に、その要旨を御説明いたします。  国が国有財産たる普通財産無償貸付し得る場合は、主として次の三つの場合であります。第一は、社会福祉法人が、生活保護法に基きまして都道府県知事又は市町村長委託を受けて行う保護、すなわち、生活扶助住宅扶助医療扶助出産扶助生業扶助等保護の用に約八割以上を充てる施設として用いる場合であります。第二は、社会福祉法人が、児童福祉法に基きまして、都道府県知事又は市町村長委託を受けて行う助産施設母子寮保育所乳児院養護施設精神薄弱児施設盲ろうあ施設虚弱児施設肢体不自由児施設教護院等への入所の措置のために約八割以上を充てる施設として用いる場合であります。第三は、更生保護会が、国の委託を受けて行う更生保護事業のために約八割以上を充てる施設として用いる場合であります。なお、地方公共団体につきましても、社会福祉法人または更生保護会におけると同様、社会福祉事業及び更生保護の事実を行うこと等を考慮して、地方公共団体に対しましても、貸付対象とすることといたしました。次は、貸付を受けた者に対する監督に関して規定を設けたことであります。国有財産一定目的に供するため無償で貸し付けます以上は、国は、当該財産使用状況に関しまして監督権を有すべきでありますことは当然でありますので、地方公共団体に対する使用方法に関する変更権規定しましたほか、社会福祉法人及び更生保護会に対する貸付におきまする場合には、国は、事業状況予算人事等につきまして一定監督権を有するごとといたしました。  さらに、国の行う監督措置に従わなかった場合におきましては、当該財産所管大臣は、その貸付契約を解除し得ることといたしました。この場合におきましては、当該解除処分が、被処分者にとりまして不利益処分でありますので、当該財産所管大臣専決処分としないで、あらかじめ、厚生大臣まだは法務大臣の意見を聞かねばならないこととし、また、被処分者に対し、あらかじめ、弁明の機会を得せしめることとして、当該処分の慎重を期し、不当にその利益を侵害することがないよう留意いたしました。  以上が、本法律案内容の概略であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに可決せられるよう希望するものであります。     —————————————
  6. 小林英三

    委員長小林英三君) 次は、覚せい剤取締法の一部を改正する法律案につきまして、提出者衆議院議員早川崇君より提案理由説明を願います。
  7. 早川崇

    衆議院議員早川崇君) お手元に配布しておりまする覚せい剤取締法の一部を改正する法律案提案理由を御説明いたします。  七月十九日に衆議院を通過いたしまして当院に御審議を願うごとになりました本改正法律案内容は以下の通りでございます。  戦後急激に乱用されるようになりました覚せい剤に対しまして、昭和二十六年本院の議員提案として覚せい剤取締法が制定され、これにより多大の成果がおさめられて、一般人の乱用が減少いたしましたことは、まことに喜ばしいことでございました。しかしながら、昭和二十八年ごろから密造による覚せい剤不良仲間などに乱用される傾向が増大し、覚せい剤慢性中毒による凶悪粗暴な犯罪、ことに殺人、傷害の事件が数多く発生して、憂慮にたえないものがありましたので、これに対しまして、昨年六月皆様方の御尽力により参議院から、罰則強化を中心とする覚せい剤取締法強化のための一部改正が行われ、取締りの面において着々成果をあげつつあることはまことに欣快に存ずる次第であります。  大体覚せい剤問題を解決するための対策といたしましては、取締り強化啓発運動徹底中毒者医療保護の三点に要約することができると存じます。啓発運動徹底という点につきましては、本年度予算に約六百万円が計上されておりましたのを、さらに、民主、自由両党の共同修正により一千万円を増額し、その徹底をはかった次第であります。  また、中毒者医療保護も、昨年精神衛生法改正により対策に必要な法的根拠を持つに至り、本年度予算においても約一億二千万円の病床設置措置が講じられたのであります。  取締り強化につきましては、昨年六月の当委員会改正取締り当局の懸命の努力によりまして多大の効果をおさめつつあるのでありますが、私の和歌山県の方におきましても、その後も一カ月三件、四件という覚せい剤中毒に関連する殺人事件が起っている事情でございます。この事情から見てさらにこれらの事態に対応するため、今回さらに罰則及び原料取締りにまで及ぶ改正を行わんとするものであります。  政府当局としても、内閣覚せい剤問題対策推進中央本部を、同じく各都道府県地方本部を設置して、これらの対策徹底を期しているとのことでありますが、さらにその措置効果あらしめるためにも、また、国民運動と、して覚せい剤禍を撲滅するためにも今回の改正は有意義なものと信ずる次第であります。  改正の第一点は罰則強化であります。覚せい剤乱用国民に及ぼす弊害はヘロインその他の麻薬を凌駕するものがあると考えられます。今かりに麻薬取締法覚せい剤取締法罰則を比較いたしますと、覚せい剤密造密売等違反は、ヘロインのそれと比較して低いばかりでなく、ヘロイン以外の麻薬と比べても営利常習違反に対する刑罰が低くなっている実情にあるのでありまして、これを少くとも営利常習違反は、麻薬と同程度に改めようという趣旨から、常習者に対しましては一年以上十年以下の懲役に処するか、情状によりましては一年以上十年以下の懲役及び五十万円以下の罰金に処するよう改正しようというものであります。出入国管理令規定によりますと一年以上の実刑を科せられたものについては、強制退去の事由とするととができるように捻っておりますことから、短期を一年といたしましたことにより、従来覚せい剤密造者には第三国人が多いと言われている事例にも十分対処し得るものと考えております。  前回の改正から約一年にして、再び罰則改正するという点につきましては、若干考慮すべき要素を含んでおりますかとも考えられますが、早急に覚せい剤禍を撲滅し、中国において見られたアヘン禍のごとき現象をわが国において再現しないためにも、この程度罰則改正はぜひ必要であると考えた次第であります。  次に、改正の第二点は覚せい剤原料取締りについてであります。覚せい剤密造、特に原末の密造検挙取締りのうちでも最も困難なものであります。しかるに、現行法におきましては、医薬品であるエフェドリン、メチルエフェドリンについて薬事法により若干の規制が行われているほかは、他の覚せい剤原料となるものにつきましては全く規制されておらない実情にあります。  覚せい剤原料となるものは、いろいろあるわけでありますが、昭和二十九年末までに検挙されました密造事犯エフェドリンから出発したものが十五件、フェニル酷酸等から出発しましたものが十一件でありまして、理論的にはこれ以外の方法もあるようでありますが、これらの方法より一そう困難を伴うようになり、現実的にもこれらの規制により多大の効果を期待し得ると考えられますので、今回はまずこれらの物資について規制することとし、以後事態の推移に応じ若干の補正を行い得るよう政令をもって指定し得る道を開いております。  覚せい剤原料を製造し、販売し、使用し、または研究しようとする者につきましては、厚生大臣または都道府県知事の指定を要することといたしました。しかし、要は、覚せい剤密造を絶滅することが目的でありますので、正規の業者に対する制約をできるだけ少くするよう措置し、特に医薬品製造業者がその業務のため製造する場合・医薬品販売業者がその業務のため医薬品である覚せい剤原料医薬関係者に販売する場合、薬局で調剤する場合、医師等が施用する場合などは従来と変らないよう措置いたしております。一般私人につきましては、医師等が施用のため交付する場合、医師等の処方せんにより調剤されたものを薬局から譲り受ける場合のほかは禁止しているのでありまして、もっぱら原料覚せい剤密造者に渡らないよう措置いたした次第であります。  これらの措置によりまして、関係業者には若干の不便はあると思いますが、覚せい剤禍の撲滅に協力していただく意味において了解願えればと考えるものであります。また医療の面におきましては、従来とほんど変りがありませんし、実際上医療に使われるものの大半は錠剤や注射薬でありまして、これらは改正後におきましても法の対象とはならないのであります。  以上が法改正の要点であります。  現在覚せい剤密使用者は五十万ないし六十万と言われておるのでありますが、この二点が改正されて、取締りが一層強化されますならば、遠からず覚せい剤中毒者を減少させることができるものと確信する次第であります。  以上簡単でありますが、各党共同提案されました覚せい剤取締法の一部を改正する法律案提案者の一人といたしまして、提案理由を御説明申し上げました次第でございます。本委員会覚せい剤取締法の立法を行われたことでもございまして、覚せい剤問題に関する事情は十分御承知のことと存じますので、何とぞ慎重御審議のうえ、原案通り御賛成いただきますようお願い申し上げる次第であります。     —————————————
  8. 小林英三

    委員長小林英三君) 次は、未帰還者留守家族等援護法の一部を改正する法律案につきまして、川崎厚生大臣、それから衆議院修正点につきまして、衆議院議員山下春江君よりお願いいたじます。
  9. 川崎秀二

    国務大臣川崎秀二君) ただいま議議となりました未帰還者留守家族等援護法の一部を改正する法律案提案理由について御説明申し上げます。  改正の第一点は、留守家族手当月額を本年十月分より二千三百五十五円に増額することであります。すなわち、従来より未帰還者留守家族に毎月支給しております留守家族手当年額と、戦傷病者戦没者遺族等援護法規定に基く先順位着たる遺族支給する遺族年金の額とは、留守家族遺族とに対する処遇均衡をはかる意味からしまして、同額支給することとなって今日に及んでおりますので、今回、遺族年金の額が本年十月一日より二万八千二百六十五円に引き上げられることに伴いまして、留守家族手当についても同様に月額五十五円の増額を行うことにいたす次第であります。  改正の第二点は、帰還患者に対する療養給付期間を三年間延長することであります。すなわち、未帰還者留守家族等援護法施行前に帰還した方々で、旧未復員者給与法または旧特別未帰還者給与法により、国が療養給付を行なって参りましたものにつきましては、未帰還者留守家族等援護法の制定後は、この法律によりまして、引き続き療養給付を行なって今日に及んでいるのでありますが、法に定められた七年間の療養給付期間が、本年十二月二十八日をもって満了することとなりましたので、政府といたしましては、その期間満了後の措置につきまして種々研究いたしました結果、今回、療養給付期間を、さらに、三年間延長することが適当であると考えられますので、このように措置する次第であります。  以上提案理由につきまして御説明申し上げましたが、何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに可決あらんことを切望する次第であります。
  10. 小林英三

    委員長小林英三君) それでは修正点につきまして山下衆議院議員にお願いいたします。
  11. 山下春江

    衆議院議員山下春江君) ただいま厚生大臣から政府原案についての御説明がございましたが、私はその政府改正案の一部を修正いたしましたその修正点について提案理由を御説明申し上げます。  修正の第一点は、留守家族手当月額を本年十月分から明年六月分までは二千五百八十三円に、明年七月以後の分は二千九百三十七円に増額することであります。従来より未帰還者留守家族に毎月支給しております留守家族手当年額戦傷病者戦没者遺族等援護法規定に基く先順位者たる遺族支給する遺族年金の額とは、留守家族遺族とに対する処遇均衡をはかる意味からしまして、同額支給することとなって今日に及んでおりますので、今国会に政府より提出されております戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を改正する法律案に対し修正案が提出され、同修正案において遺族年金の額が本年十月分から明年六月分までは三万一千五円、明年七月以後の分は三万五千二百四十五円に増額されることとなっていることに伴いまして、留守家族手当について同様に月額を本年十月分から明年六月分までは二百八十三円、明年七月以後の分は六百三十七円、引き上げることにいたす次第であります。  修正の第二点は、未帰還者帰還した場合または未帰還者死亡の事実が判明した場合において手当支給を打ち切るごとなく、未帰還者帰還した場合はその帰還した日の属する月の翌月以後三カ月間未帰還者死亡の事実が判明した場合はその死亡の事実が判明した日の属する月の翌月以後六カ月間、それぞれ留守家族手当または特別手当の額に相当する額の手当支給するようにしたことであります。現行法におきましては、未帰還者帰還した日の属する月または夫婦選者死亡の事実が判明した日の属する月をもって留守家族手当または特別手当支給が打切られることとなっておりますが、未帰還者帰還した場合においてもその者は数カ月は無収入状態におかれていることが多く、その帰還とともに手当支給を打ち切られることはその家族全体にとって経済的に非常に痛手を受ける結果となりますし、また未帰還者帰還を待ちわびている留守家族にとって未帰還者死亡の事実の判明とともに手当支給を打ち切られることは物心両面にわたり大きな衝撃を受ける結果となるのであります。従いましし、さらにまた日ソ国交調整に関する交渉が開始され、未帰還問題の全面的、解決が期待される現状にかんがみ、最終的段階に到達した留守家族援護を一そう充実する意味から、このように措置する次第であります。  以上提案理由につきまして御説明申し上げましたが、何とぞ慎重に御審議の上御可決あらんことを切望する次第であります。     —————————————
  12. 小林英三

    委員長小林英三君) 次は、日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案につきまして、川崎厚生大臣から提案理由説明をお願いいたします。
  13. 川崎秀二

    国務大臣川崎秀二君) ただいま議題となりました日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由を御説明申し上げます。  日雇労働者健康保険は、昭和二十九年一月に発足いたし、当初は療養給付期間は三カ月でありましたのを同年四月、給付費の一割国庫負担実現により、これを六カ月に延長し、爾来一年順調に運営いたして参ったのであります。しかしながら、本制度の給付内容は、健康保険等他疾病保険に比較しまして、いまだ、十分とは申しがたく、ここに主として給付内容の改善をはかるため、法律改正をいたしたいと存ずるのであります。  この法律案規定しております改正点の第一は、療養給付期間を現行六カ月から一年に延長することであります。  その第二は、療養給付範囲を拡張し、歯科診療における補てつを含むものとすることであります。  その第三は、死亡及び分べんに関する現金給付を創設することであります。  その第四は 被扶養者の範囲を拡大し、被保険者と同一の世帯に属する三親等内の親族で、主としてその者により生計を維持するものを含めたことであります。  なお、今後におきましても、本制度運営の実績を十分検討いたし、財政事情ともにらみ合せた上で内容改善をはかりたいと存ずる次第であります。  以上が、この法律案提案いたしました理由であります。  なお、本原案に対しまして、衆議院におきましては、一部修正を行われ、これにつきましては、修正案提出者から御説明申し上げることになっているようでありますが、修正については、政府としても衆議院における採決の際、内閣の意見として同意を表しております。  何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いする次第であります。
  14. 小林英三

    委員長小林英三君) 本案に対する修正点につきまして、衆議院議員八木一男君から御説明願います。
  15. 八木一男

    衆議院議員(八木一男君) ただいま厚生大臣から御説明になりました日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案衆議院における修正点の要点並びにその提案理由説明さしていただきます。  この要点の第一点は、現在日雇労働者健康保険法による保険給付を受ける受給要件といたしまして、二カ月間に二十八日間の保険料の払い込みが必要となっておりますのを二カ月間に二十八日、または六カ月に七十八日のいずれかを選択的に認めることによりまして受給要件の緩和をはかったことが第一点であります。  第二点は、本法の施行期日が七月一日となっておりますのを、公布の日に改めたことでございます。第一点の理由は、日雇労働者健康保険法が実施になりましてからいろいろ実際の経過を考察いたしまするに、事故が起りました場合に、との保険給付を受ける要件に達している被保険者が全体の中で八六・六%しかありませんで、その半面における一三・四%は保険料を相当程度払いながら、わずかに保険給付の受給要件に達せないために病気あるいはいろいろのことになった場合に保険給付が受けられないというような不運な状態が起っているわけであります。その状態を考えまするに三つほどの理由がございます。  第一の理由は、現在全国でこの日雇労働者の被保険者中のおもなものと言われております安定所関係の自由労働者の就労日数が全国平均二十一日と言われておりますけれども、季節的、または特別な場所におきましては、それをはるかに下回りまして一月平均十三、四日になっているところがあるわけでございます。でございまするので、その非常に不運な状況にありまするところにおいて、またその不運な状況のときにおきまして発病を見た被保険者は非常にまじめに保険料を払い込みながら、直前の二カ月の要件が、その要件にわずか満たないために病気を医者に見てもらえないといったような非常に不運な点が起りまして、このために保険要件を総体的に下げる必要があるということが一般に認められているわけでございます。  次に、病気になりまするときにはその直前におきまして身体の状態が不調でございまするので、仕事にありつきましても自発的にからだの倦怠を覚えるために、自発的に休業する場合が考えられまするがために、直前の二カ月におきましては一般の平均よりはさらに保険料納入が下回るということが現実に起っているわけであります。これもこの要件に満たないものが相当ある理由の大きなものとなっております。また発病いたしましていろいろと医者の治療を受けておりまするときに、医者の指令によりまして休業をいたしましたために、その後に第二病を発病いたしましたときに、前の休業のために要件に達しないというような状況もございまするので、との点を勘案いたしまして、総体的に受給要件を下げるとともに、二カ月という短期間の要件の期間よりもほかに長期間のたとえば六カ月ぐらいのものを定める必要があるということが一般の認識になっておるわけでございます。この点につきまして、社会保障制度審議会におきましても、特に本年度からこれを実施するような答申が政府に対してなされておるわけでございます。この点にかんがみまして、衆議院の各党派はただいま申し上げました要点の修正を加えることが必要であると存じまして、日本民主党、自由党、社会党両派並びに小会派全部一致いたしまして、このような修正案を提出して御可決になったわけでございます。  また第二点につきましては、この法案改正案審議中に、政府の予定されました七月一日がすでに経過いたしておりますので、公布の日と改めるととが至当であると考えたわけであります。  このような二点につきまして、七月十八日衆議院の本会議におきまして、修正点について可決を見たわけでございます。  どうか参議院の本委員会におきまして慎重御審議を賜わりまして、本案を御可決ありまするよう、心から期待申し上げるものでございます。     —————————————
  16. 小林英三

    委員長小林英三君) 次は、理容師美容師法の一部を改正する法律案につきまして、川崎厚生大臣から提案理由説明を願います。
  17. 川崎秀二

    国務大臣川崎秀二君) ただいま議題となりました理容師美容師法の一部を改正する法律案につきまして提案理由を御説明申し上げます。  申し上げるまでもなく理容・美容業は、国民の日常生活にきわめて密接した公衆衛生上重要な業務でありますが、近時理容所、美容所の増加並びにこれらの施設における従業者の漸増に伴い、施設に対する衛生措置の確保並びに開設者の従業者に対する業務管理が必要とせられるに至りましたので、現行法を整備して理容、美容業の適正な運営を期するため本法案提案いたした次第でありまして、改正のおもな点は次のとおりであります。  第一点は、理容所、美容所の開設者がその施設を使用するに際しては、事前に都道府県知事の検査を受け、その確認を得なければならないこととしたことであります。  従来、理容所、美容所を開設してこれを使用しようとする者は、単に都道府県知事に届け出るだけで行なってきたのでありますが、このような届出のみによってはこれらの施設について十分な衛生措置を確保することが困難でありますので、使用前に検査を行い、もって施設における衛生措置強化を期そうとするものであります。  第二点は、理容所、美容所の開設者に対し、当該施設内で行う理容、美容の業務について適正な管理を行わせるようにするとともに、その責任を明らかにするようにしたことであります。  現行法は、個々の業務を行う理容師、美容師に対してのみ衛生上の規制を行い、施設の開設者に対しては何ら業務に関する措置を考慮していないのでありますが、これらの従業者に対する適正な業務管理を開設者に行わせることが特に必要となって参ったのであります。よって、開設者が当該施設内で無免許者もしくは業務停止を受けている者に業務を行わせた場合または当該施設内で業務を行う者が法定の措置を講じなかった場合に、その施設の閉鎖を命ずることができるようにいたしまして、公衆衛生上の措置の確保を図ることといたした次第であります。  第三点は、都道府県知事が免許取り消し、業務停止または閉鎖命令の行政処分をするに当っては、その処分を受ける者に弁明及び有利な証拠の提出の機会を与えることとしたことであります。  以上がこの法律案提案理由及び概要でありますが、何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことを御願い申し上げます。     —————————————
  18. 小林英三

    委員長小林英三君) 次は、戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を改正する法律案につきまして川崎厚生大臣から提案理由説明をお願いいたします。
  19. 川崎秀二

    国務大臣川崎秀二君) ただいま議題となりました戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を改正する法律提案理由について御説明申し上げます。  戦傷病者戦没者遺族等援護法昭和二十七年四月一日より実施され、自来各方面の御協力のもとに二百九万件をこえる裁定を行い、それぞれ援護措置が及びましたことは、まことに喜ばしいことと存じております。  今回、援護措置をさらに強化するため、この法律の一部を改正することにいたしましたが、ここに、その概要につき御説明をいたします。  改正の第一は、先順位者遺族年金額を、本国会に別途提案されております恩給法の一部を改正する法律の一部を改正する法律による旧軍人公務扶助料増額に対応して、二万八千二百六十五円に引き上げたことであります。  第二は、遺族年金または恩給法による公務扶助料は、戦没者公務上の傷病により死亡した場合において支給されるのでありますが、太平洋戦争中の戦地で受傷罹病し、これで死亡した軍人につきましては、太平洋戦争の特殊事情、特に戦争末期における戦地の特殊事情によりまして、果してその傷病公務によるものであるかいなかの判定に相当の困難を感ずるものもあり・また、軍人戦地において生じた傷病は、その勤務の特殊事情から、そのほとんどが公務上の傷病と取り扱うのが妥当であると考えられますので、これらの者が戦地勤務死亡した場合または戦地の勤務を離れてから原則として一年以内に死亡した場合におきましては、公務以外の事由で死亡したことが明らかであるものを除き、援護審査会の議決により、公務死亡したものとして取り扱おうとすることであります。  第三は、現在弔慰金支給する遺族の範囲は、配偶者・子・父母・孫、祖父母及び兄弟姉妹に限られておりますが、弔慰金支給の趣旨にかんがみ、これらの遺族がないときは、他の三親等内の親族で、戦没者と生計関係を有していたものにも支給し得るようにいたしたのであります。  第四は、軍人恩給が停止された日、すなわち、昭和二十一年二月一日以後に遺族以外の者の養子となったもので遺族援護法公布の日、すなわち、昭和二十七年四月三十日前に縁組を解消したものにつきましては、右の期間における縁組をもって年金の失格あるいは失権の事由とすることは必ずしも適当でないと考え、との改正法施行後は、遺族年金支給しようとするものであります。  第五は、いわゆる雇用人等の軍属につきましては、従来昭和十六年十二月八日以後における戦地勤務のもののみについて、本法を適用しておりますが、日華事変事変地で勤務していたものも本法の対象に加え、それぞれの規定に従い、障害年金、障害一時金または遺族年金支給することにしたのであります。  第六は、軍人につきましては、死亡原因公務によるものでない場合におきましても、事変又は戦争の勤務に関連する傷病によるものでありますときは、遺族に対し、弔慰金支給することになっているのでありますが、太平洋戦争における戦地勤務軍属につきましても、軍人の場合と同様、弔慰金支給する措置を講じました。  第七、太平洋戦争の終結に際しまして、いわゆる至純な憂国の至情の発露として敗戦の責を痛感して自決した者が相当ありますが、当時、これらの者の置かれた立場等を考えますと、その事情まことに掬すべきものがありますので、援護審査会において、公務死したものと同視すべきものと議決したときは、その遺族に対し、遺族年金及び弔慰金支給することにいたしたのであります。  以上が今次改正の大要でありますが、そのほか、これらの措置に伴う所要の調整もあわせて行なったのであります。  以上提案理由につきまして御説明いたしましたが、何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことを初望する次第であります。  なお、本法原案に対しては衆議院におきましては一部修正をいたされまして、これについては修正案提出者より御説明申し上げることとなっているのでありますが、修正については、政府といたしましても衆議院における採決の際、内閣の意見として同意を表しておりますことも、あわせて申し上げておきます。
  20. 小林英三

    委員長小林英三君) 本案に対しまする修正点につきまして、衆議院議員山下春江君から修正点について、御説明を願います。
  21. 山下春江

    衆議院議員山下春江君) ただいま厚生大臣から政府原案についての御説明がございましたが、私はなお若干の修正をいたしました点につきまして、提案理由の御説明を申し上げます。  戦没者家族、戦傷病者、老齢旧軍人は、過ぐる太平洋戦争の犠牲者中、最も気の毒な人たちであります。もちろん第二次大戦の戦火は、程度の差こそあれ、戦闘員、非戦闘員の別なく全国民に何らかの形において打撃を与えておりますが、肉親を戦場に失った人人、完全なる身体の機能を喪失した人人、生涯の大半を軍務に捧げ尽した人人は、かつての国家権力、公的権力によって直接戦争の犠牲となった人々でありますから、他の一般戦争犠牲者とは異なった角度から、国家の補償を受くべき性質の人々であります。言いかえますれば、これらの人々は国家権力の制約を受け、軍務を遂行して倒れた方々の肉親であります。与えられた任務に服して傷つき、病に冒された人々であります。これらの人々を戦争犠牲者中の犠牲者として、第一義的に取り扱わなければならないゆえんも、ここにあると思うのであります。  従いまして、民主国家として再出発した日本がこれらの人々に対してその処遇を厚くすることは、全国民がこうむった被害に対し、国として間接的ながら遺憾の意を表する行為にも通じますし、ひいては二百万戦没者の英霊を慰め奉る精神にもつながるものと信じて疑いません。援護法の制定も、恩給法の一部改正も、私はこの精神を基盤としてなされたものと考えております。  しかし現在行われております援護法並びに恩給法による国家としての補償は、なお多くの点で改正すべき要素を残しております。  その第一点は、戦没者死亡原因に関する認定基準であります。従来恩給法にいう公務傷病とは、軍の医療設備が完備し、衛生材料の補給も円滑に行われ、軍医官等もそれぞれ専門の部門につき、軍人軍属が傷を受け、病に冒されても急速にしかも適切な医療処置が講じられるという大きな前提に立って判定されたように承知しております。しかるに今次の大戦では戦線が広範囲にわたり、戦地の気候風土も千差万別であり戦闘期間も四年の長きにわたっております。ことに戦争の末期においては、兵站ルートの多くは麻痺し、衛生材料は欠乏し、専門医官が不足し、適切な医療処置が講ぜられた戦域はごくまれであったと断言できます。これに加うるに、動員兵力が増大するにつれ、本来ならば過激な軍務、ことに強靱なる体力を必要とする戦闘勤務にはとうてい応じられないようないわゆる弱兵まで多く召集され、第一線に送り出されたのであります。この二つの要素、すなわち従来の恩給法が想定していた戦役規模をはるかにこえた戦闘形態と大量動員された水準以下の虚弱者との二つを背景に国家補償のあり方を考えますとき、恩給法上の公務傷病もそれを起点とした援護法上の公務傷病もその認定基準において太平洋戦争の実態にそぐわない点が多々あると思います。以上が修正を要する第一点であります。  次は、戦没者の身分についてであります。現在援護法におきましては、旧国家総動員法に基いて徴用され、または総動員等軍務に協力させられた者及び旧陸海軍の要請に基いて戦闘に参加、協力して死没した方々の遺族弔慰金三万円を支給することになっておりますが、法的にこれらの範疇に入れられる戦没者の実態をしさいに検討いたしますとき・三万円の弔慰措置が果して当を得たものであるか、どうか疑いの念を禁じ得ません。一、二の例をあげますと、沖縄の戦闘では数千の青少年学徒があるいは勤皇鉄血隊員とし、あるいは通信隊員とし、あるいは看護婦として戦死しております。また旧満州国の開拓任務を帯びて大陸に渡った人々の中に、開拓少年義勇隊と申す開拓訓練隊がありましたが、終戦時約二万二千五百を数えたこれらの少年義勇隊員中三千余名が悲壮な最期をとげております。さらに全員玉砕のサイパンでは、いたいけな小学生が通信隊の連絡要員となって熾烈な十字砲火の中をかけ任務を遂行し、あたら春秋に富む若い命を南海の島々に失っております。さらにまた旧国家総動員法に基く学徒協力令により軍の直轄工場、監督工場等には多くの青少年学徒が動員され、勤務中空襲等により死没しております。その数はいまだ正確には把握しておりませんが、すでに弔慰金三万円の裁定を行なった件数だけでも二千、四、五百件と推定される多くの青少年が動員され少からざる戦没者を出していると考えられますが、これらの戦没青少年に対する補償措置は決して満足すべき段階に達しておりません。弔慰金三万円の当否はしばらくおくといたしまして、まず考うべきは彼らの身分をどう扱うかという問題であります。沖縄の戦没学徒にしろ、満州の少年義勇隊員にしろ、学徒協力令による動員学徒にしろ、彼らの服した勤務の内容、身分上の拘束度等は援護法にいう有給軍属とは差別のつけられない場合が多かったと考えられます。私は彼らの身分を直ちに有給軍属のワク内もしくは正規軍人の資格内に引き入れよと申すものではありませんが、彼らの純粋な愛国民と洋々たる前途を軍務に捧げた事実とをあわせ考えるとき、再度国家補償の出発点に立ち帰り、彼らの身分に再検討を加え、その基底に立って彼らへの補償を立て直すべきだと信ずるものであります。身分上の取扱いについて次に考うべきは、いわゆる無給軍属の処置であります。彼らの多くはその勤務内容において、全く戦地勤務軍属でありながら、給与の支払者が民間企業体であったため、戦闘行為に倒れたにもかかわらず、法の対象外に置かれております。南方の軍報道業務に従事した報道班員、南方進出企業の従業員、大陸の国策事業会社の従業員等がそれであります。その他有給軍属以外の戦務協力者で、身分の取扱い上再考を要すべき者が少くありません。以上が修正を要する第二点であります。  次は、法にいう戦地規定の適否についてであります。およそ戦地という概念は、その反対概念として内地もしくは非戦地、つまり交戦による戦火が直接的にも間接的にも及ばない地域というものを持っているはずであります。従来の恩給法並びにそれを基盤とした援護法は、このように画然と区別できる二つの地域を想定し、その一つを戦地として補償体系を立てたものと考えられます。こうした地域別による補償の差は、日清戦争、日露戦争、第一次大戦、日支事変、太平洋戦争の初期においては一応の妥当性を有してはおりましたが、太平洋戦争中期以後、特に  サイパン陥落後の戦局におきましては、戦地、非戦地の別を定める区分基準は非常にあいまいになったと断言できます。内地は敵機のじゅうりんにゆだねられました。日本本土沿岸海域にも戦雲が立ちとめました。このような戦局下にあっては戦地、非戦地の別による条件差はきわめて接近したと申さねばなりません。たとえ百歩を譲って、戦地という概念の中には内地を離れたという精神的重圧、海を隔てて肉親と相離れているという感情的な苦痛が含まれているとする一部の主張を容認したといたしましても、それなら戦争末期の台湾や朝鮮を何ゆえに戦地としないかとの疑問がわいて参ります。今次の大戦におきましては、すべての日本人が戦火に見舞われ、すべての同胞が物心両面において大きな打撃を受けました。激闘の繰り広げられた戦域も、北はアリューシャン、南は豪州、東はハワイ、西はインドまで及んでおります。従いまして現行援護法に規定された戦地には根本的に改正のメスを加える必要があると考えられます。私はこの際法に定められた戦地規定は原則としてこれを削除し、国家権力が個人に対し勤務の内容、身分の拘束度についてどのような強制力を及ぼしたかという点にこそ国家補償の出発点を置くべきだと信ずるものであります。これが修正を要する第三点であります。  最後は、戦没者遺族の範囲についてであります。現行援護法は大体において新民法を基礎に遺族の範囲を定めてはおりますが、なお実情に即さない点が少くありません。一例をあげますと、再婚関係に入った戦没者の妻には遺族年金受給権が認められておりませんが、これらの女性は夫を戦野に失い、国家のあらゆる処遇を停止され、戦後の混乱期にほうり出された気の毒な方々であります。彼女らの多くは再婚関係に入らない限り人間としての生きる権利すら放棄しなければならない状態に追い込まれたのであります。かつてもてはやされた靖国の妻という誇りを捨て、あえて再婚するまでには筆舌に尽しがたい辛酸をなめたはずであります。もし国家が国家の名において補償を継続し憲法に規定する文化生活を彼女らに保障していたならば、あえて年金受給権を失う行動はとらなかったと断言できます。私は再婚関係に入り、現在において不足ない生活を営む方々にも年金を与えよと申すものではありませんが、少くとも一定期間内に再婚解消した未亡人には当然国としての補償を癒すべきだと主張するものであります。現に恩給法においては、昭和二十八年度改正により、戦没者の父母は氏を改めない限り配偶者を迎えても失権しないとの規定を設けました。これは戦没者の妻であり、あれは戦没者の父母であるとの違いはありますが、もし再婚という男女関係をもつて受給権喪失の動かしがたい理由といたしますならば、このような恩給法上の改正は不可能だったはずであります。女なるゆえに、妻なるがゆえに彼女らに課せられた失格規定は、旧民法時代の家の制度と、夫を国家に捧げた場合は国家が十分なる補償を行うという前提に立っていたものと考えられます。敗戦はこの制度を崩壊せしめ、この補償を中断いたしました。その聞こうむった損失と打撃については、国として何らの責任もとらず、ひとりか弱い戦争未亡人にのみその責任を追及するのは道義の名においても許せない措置だと申さなければなりません。その他未認知の子、事実上養親子と同一関係にあった親または子についても補償の道を開くべきであります。憲法改正による家族制度の廃止、終戦後の社会事情、経済事情、戦後七年にわたる国家補償の一切の停止、これらの諸条件を考えあわせ、法に定める遺族の範囲はさらに拡大すべき要があると考えられます。これが修正をいたしたい第四点であります。  以上公務の認定基準、公務員の身分、戦地、非戦地の別、遺族の範囲に関し修正すべき論拠を述べましたが、国家財政の現状を勘案いたしますとき、補償の実施に当っては、なお少からざる制約もやむを得ないと考えられます。しかしながら、技術的な面から諸種の制肘を加える以前に、私たちとして深く考うべきは、今次の大戦は旧来の恩給法等が想定していた戦域、戦闘態形の限界をはるかにこえていたこと、国民総ぐるみの抗戦が展開されたこと、長期にわたる戦闘の後、無惨な敗北を喫したこと、そして軍人軍属及びその遺族に対しほとんど全面的に補償が停止され、しかもその期間が七年の長きにわたったこと等であります。これらは私たち日本人としてはかって経験しなかった大きな悲劇であり、その処理には国力のすべてを傾けるべき性質のものであります。従いまして、その第一条に、「国家補償の精神に基き、軍属であった者又はこれらの者の遺族援護することを目的とする。」とうたってある援護法におきましては、従来の補償技術にとらわれることなく、自由にして実情に即したおおらかな精神に立ち、少くとも歴史に悔いを残さない心がまえをもって、以上申しました四点につき抜本的な改善を加うべきであろうと信じます。しかも補償に要する経費はここ二、三年のうちには激減すべき必然性を有しておりますから、国に殉ずるとはいかなるものであり、これに報いる国家の補償とはいかなるのであるかを全国民に認識せしめ、もって国家再建の精神的基盤を確立するのもここに、二年の間にかかっております。  これらの諸点を背景に、以下援護法に対する修正案の各項について御説明を申し上げますと、その第一点は、公務扶助料増額に伴い援護法の適用を受ける遺族に対する年金を三万五千二百四十五円に増額いたしたことであります。ただし、昭和三十年十月分から昭和三十一年六月分までは三万一千五円といたしました。  第二の点は、公務死の範囲の拡大であります。軍人及び準軍人については、故意または重大な過失によって負傷し、または疾病にかかったことが明らかでないときは、公務による負傷または疾病とみなすこと。ただし、勅令第六十八号による恩給停止以前にすでに恩給権の裁定を受けた者については援護審査会の議決を必要といたした点であります。第二の二号は、軍属については、戦時災害の要件をはずし、単に公務上の負傷または疾病のみを要件とすることといたしました。  第三点は、満州開拓青年義勇隊の隊員に対する弔慰金支給であります。満州開拓青年義勇隊の隊員が、昭和二十年八月九日以後業務上負傷し、または疾病にかかり、その負傷または疾病が原因死亡したときは、その遺族に対し、弔慰金支給することといたしました。  第四点は、養子でなくなった者の遺族年金受給権の復活の範囲の拡大であります。昭和三十年六月三十日までに離縁または縁組の取り消しにより、養子でなくなった配偶者、子及び孫について、遺族年金受給権を与えることにいたしました。  第五点は、戦犯として拘禁中死亡した者についての遺族年金弔慰金支給適正化でございます。巣鴨に拘禁中死亡した者につきましては、厚生大臣公務による負傷または疾病により死亡したものと同視することを相当と認めたことを遺族年金及び弔慰金支給の要件と改正したことでございます。  以上簡単に申し上げましたが、何とぞ慎重御審議の上、御採決あらんことをお願い申し上げます。
  22. 小林英三

    委員長小林英三君) 次は、医師法歯科医師法及び薬事法の一部を改正する法律案につきまして、修正を含めて提出者大石武一君に提案理由説明をお願いいたします。
  23. 大石武一

    衆議院議員(大石武一君) ただいま上程されました医師法歯科医師法及び薬事法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案について、提案の趣旨並びに法案内容について御説明申し上げます。  医薬分業につきましては昭和二十六年総司令部の示唆に基き政府より改正法案が提案され国会においても慎重審議の結果、現在あるがごとき改正法の制定を見たのであります。その後昨年に至ってこれが施行を一年三カ月延期することになりましたが、明年四月一日からはこれを実行しなければならぬことになっております。  しかるにこの医薬分業実施の可否に関していまだに論議が絶えず、あるいは予定通り実施せよとかあるいは現行制度は改めてはならぬとかあるいは再び実施を延期せよとかの論が入り乱れております。しかしこの問題は国民生活に重大の関係のある医療制度の根本に変更を生ずる事柄でありかつ関係者諸君の完全な理解と協力とがなければ実行は困難な事柄でありますから、これを事前に調整するということの大切なことは申すまでもないことと考えますので、本案を提出した次第であります。  内容の第一は、医師、歯科医師の処方せん交付に関する点であります。改正法においては治療上医師、歯科医師が直接投薬をする必要のある場合を省令できめて此の場合に限り処方せんを交付しないでよいことになっておりますが、今回は処方せんを交付しなくてもよい場合を患者またはその看護者が処方せんの交付を必要としない旨を申し出た場合のほか、項目を列挙して限定しようということであります。  第二は、医師、歯科医師の調剤に関する規定違反した場合の制裁として定められておる刑事罰を一万円以下の罰金にいたそうということであります。  何とぞ御審議の上すみやかに御賛成下さいますことを提案者を代表いたしまして特にお願い申し上げます。     —————————————
  24. 小林英三

    委員長小林英三君) 次は、失業保険法の一部を改正する法律案につきまして、西田労働大臣から提案理由説明を請います。
  25. 西田隆男

    国務大臣(西田隆男君) 失業保険法の一部を改正する法律案提案理由を御説明申し上げます。  失業保険法は、昭和二十二年第一回国会において、経済緊急対策の一環として制定され、その後数次の改正によって、制度の整備拡充が行われました。戦後の困難な経済情勢に対処して今日までよくその機能を果してきたところであります。しかるに一昨年末より実施せられました緊縮政策に伴い、失業情勢は悪化し、これが急速な改善は今直ちに見込まれないのでございますが、これに対処する方策の一として、給付日数の合理化等を中心とする失業保険制度の整備拡充をはかり、失業対策事業等の拡充と相待って一そう効果ある失業保障を行い、もって失業者の生活安定に資したいと存ずる次第でございます。これが、この法律案を提出いたした理由でありますが、次にその概要を御説明申し上げます心  第一に、被保険者の当然適用の範囲を医療、看護その他保健衛生の事業、社会事業更生保護事業等に及ぼして社会保障制度の拡充をはかった点でございます。失業保険の適用範囲はできるだけ拡大して、雇用関係にある労働者の失業時の生活の保障を広めることが望ましいところであります。この観点よりすでに昭和二十四年の改正において大幅の適用範囲の拡大を行なったのでありますが、今回の改正においては、さらに原始諸産業を除く事業のうち医療、看護その他保健衛生事業社会福祉事業更生保護事業等に対して新たに適用範囲の拡大を行おうとするものであります。次に、長期にわたり被保険者であった者に対する失業保険金の給付日数を二百七十日または二百十日とする一方、季節的労働者等が主体となっております短期被保険者に対しては、その給付日数を九十日とすることといたした点でございます。従来被保険者が離職した場合に、離職前一年間における被保険者期間が六カ月以上であれば、離職後一年間に一律に百八十日の給付が行われたのでありますが、長期間同一事業主に雇用された者は、離職した場合において、すみやかに再就職することが比較的に困難である場合が多く、また長期間保険経済に貢献したという点をも考慮して、十年以上同一事業主に被保険者として雇用されていた者に対しては二百七十日分、五年以上同一事業主に被保険者として雇用された者に対しては二百十日分支給し得ることにいたしたのであります。また、最近は季節的労働者等短期労働者の失業保険の乱用が目立って参りましたので、この際乱用の余地を残さないよう一般的に短期被保険着すなわち離職前一年間に被保険者期間が九カ月までである者に対しては給付日数を九十日とし、一律百八十日の給付制度より生ずる不合理を是正する措置をとった次第であります。  次に、失業保険法施行実情にかんがみて、被保険者の資格の取得は喪失についての政府の確認の制度を設け、被保険者としての権利の保護を厚くするとともに不正受給の防止、保険料収入の確保に資することといたしました。  また、今回の改正に当り被保険者または被保険者であった者の福祉の増進をはかるため必要な施設を設置することについて明確な規定を設けることといたしました。これは従来も失業保険特別会計法の規定等からして設置し得るものとされていたのでありますが、今回これを明確にいたしたわけでございます。  以上が今次改正の主眼とするととろでございますが、このほか必要な法文の事務的整備を行い、一そう適正な法の運用をはかりたいと存ずる次第でございます。  何とぞ御審議の上、すみやかに可決せられんことをお願い申し上げます。     —————————————
  26. 小林英三

    委員長小林英三君) 次に、労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案につきまして、西田労働大臣から提案理由説明を願います。
  27. 西田隆男

    国務大臣(西田隆男君) ただいま議題となりました労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由を御説明申し上げます。  このたびの改正は、漁業を新たにこの保険の強制適用事業に加えること及び土木、建築等の事業にいわゆるメリット制度を適用することをその主要点といたしております。  最初に、強制適用事業の範囲を拡大し、総トン数五トン以上の漁船による水産動植物の採捕の事業を加えた点について申し述べます。御承知のように、労働者災害補償保険は、労働者の業務上の災害についての事業主の災害補償責任の裏づけとして設けられた制度でありまして、そのねらいとするところは、業務上の災害をこうむった労働者に対して迅速かつ公正な補償を行い、あわせて労働基準法に定められた事業主の災害補償責任に基く負担を分散軽減させようとするところにあるのであります。  この目的に沿いますために、この保険制度におきましては、比較的災害が発生するおそれの多い事業を強制適用事業として保険に加入させることにより災害の危険にさらされる労働者の保護の万全を期するとともに、他方、保険に加入している事業主からは、その事業の属する産業の災害率に応じた保険料を徴収する等の方法によって負担の公平をはかるよう考慮されているのであります。しかしながら、従来労働基準法の適用を受けております三十トン未満の漁船による水産動植物の採捕の事業につきましては、災害発生の危険が相当に高く、また災害が発生いたしましたときは、往々にして相当大規模な災害となるのでありますが、その事業の特殊性及びその特殊性に基く保険技術上の制約もありまして、現在まで任意適用事業として取り扱われて参ったのであります。それにもかかわらず、漁場等の関係より、これらの小型漁船の活動範囲は著しく拡大され、とれに従いまして災害発生の危険性もますます増大する傾向にありますので、政府といたしましては、かねてこの点につき何らかの措置を講ずる必要を認め、その実情の把握に努めますとともに、当保険におきましても、特に災害発生のおそれのある遠距離水面における漁掛に従事する漁船につきましては、保険に任意加入をするよう強く要望いたして参ったのであります。  たまたま、昨年当初以来北海道近海を初めとして所々に相次いで起りました台風等による大規模な災害の発生を契機といたしまして、関係者の間に漁業を強制通用事業にするようにとの強い要望が高まってきたのであります。このような事情より、このたび特に災害発生のおそれある水面において漁掛に従事する総トン数五トン以上三十トン未満の漁船による水産動植物の採捕の事業について、これを強制適用事業に加えることとし、漁業労働者の保護をはかるとともに、事業主の負担の分散軽減をはかることといたしたわけでございます。  次にいわゆるメリット制度を土木、建築等の事業に適用する点でございますが、過去の災害の実績に基きましてその事業についての保険料の額を増加しまたは軽減する制度でありますところのメリット制度は、適用事業事業主の保険料負担の公平をはかる上に効果があったのみでなく、過去の災害率が保険料に反映されることに刺戟され、事業主の災害防止の関心を高めさせ、この方面におきましてもきわめて大きい成果を上げて参ったのであります。  しかしながら、現在行われておりますメリット制度は、過去三年ないし五年の災害の実績に基き、個々の事業の翌年度の保険料率を変更するというものでありまして、土木、建築等の事業のごとく、期間の定めのあるいわゆる有期事業につきましては、これを適用することができなかったのであります。しかるに、一昨年以来電源開発工事等の進捗に伴い、土木、建築等の事業における災害は顕著に増加いたし、昭和二十九年度におきましては、当該産業における収支の均衡は著しく破れ、本年度において大幅に保険料率を引き上げざるを得ない結果となったのであります。かかる事態に即応して、政府といたしましては、従来のメリット制度実施の成果にかんがみ、保険料負担の軽減と公平をはかり、あわせて災害防止の実をあげるため、一般の事業に適用された従来のメリット制度の方式とは異なり、土木、建築等の事業の実態に応ずるよう、保険給付の額と保険料の額の割合により、確定保険料の額を更正いたし、その差額を追徴または還付する方法によって、新たに土木、建築等の事業にメリット制度を実施することといたしたのであります。  以上二点のほか、保険事業の運営を合理化するために、このたびあわせて改正することといたしました点につきまして、次に簡単に御説明申し上げます。  第一に、数次の請負によって行われます事業につきましては、従来その元請負人のみをこの保険の適用事業主として参りましたが、保険料負担の資力のある下請負人がある場合には、この下請負人を事業主として取り扱う方がより合理的と認められる場合もありますので、かかる下請負人が元請負人と書面による契約で保険料を負担することを引き受けましたときには、政府の承認に基きまして、その請け負う事業について別個に保険関係を成立させるよう取り扱うことといたしたのであります。  第二に、従来強制適用事業が任意適用事業になった場合に、その保険関係を申請によりまして消滅させるのには、保険関係成立後一年を経過することを要するものと取り扱われていたのでありますが、この制度をはずすこととし、保険加入者の便宜をはかることといたしました。  第三に、漁業を強制適用にすることに関連して沈没、滅失、行方不明となった船舶、航空機に乗り組む労働者の生死が三カ月以上わからない場合等に民法の失踪宣告を待たずに、死亡の推定を行うことといたしまして、本法の遺族補償費等の規定をすみやかに適用することができるようにいたしました。  第四に、保険料の報告及び納付の手続を合理化いたしますためにその期限を調整いたしました。  第五に、追徴金及び延滞金の徴収免除に関する規定を整備するほかその他法規定を整備いたしたのであります。  以上がこの改正案提案いたしました理由及びその内容の概略でございます。なお、この改正案につきましては、労働者災害補償保険審議会及び社会保障制度審議会に法案要綱により諮問いたしましたところ、満場一致で異議なく賛成の答申を得ました次第でございます。  何とぞ御審議の上、すみやかに可決あらんことをお願い申し上げます。
  28. 小林英三

    委員長小林英三君) 以上十議案に対しまする質疑は次回以後に譲りたいと存じまするから、御了承を願いたいと思います。  なお、あん摩師、はり師、きゆう師及び柔道整復師法の一部を改正する法律案につきましては、先般各派懇談会等において修正点の御相談をいたしておったのでありますが、衆議院の当該委員会等とも目下調整ができるやに聞いておりますから、午後並びにその以後に譲りたいと思っております。     —————————————
  29. 小林英三

    委員長小林英三君) 次にけい肺及び外傷性せき髄障害に関する特別保護法案議題といたします。  御質疑を願います。
  30. 高野一夫

    ○高野一夫君 私はこの法律の実務に当られる政府委員にお考えを伺いたいのでありますが、それは三カ年の補償打ち切りをやりましてからあと二カ年の療養給付、場合によっては休業給付を与えることになっておりますが、もしもその二カ年の療養給付を与えた後に、その人がなおかつ全快しないで、しかも実際問題としては何らの仕事にもありつけないような廃人同様の状態に置かれた場合に、これに対してどういうふうにお考えになるか。
  31. 富樫總一

    政府委員(富樫總一君) お話ごもっともでございます。いわゆる不時の病でございまするので、三年、さらに二年の給付を受けましても、なおかつ療養を続け休養を続ける場合も相当あり得ることでございます。でき得ますればさらに継続して給付をするにこしたことは拾いかと思えるのでございまするが、一面におきまして、先に一千二百日分の打ち切り補償金もございます。最後には不十分ではございましょうが、生活保護法の適用もあるというようなこともございます。さしあたりこの悲惨な病気につきまして、現行法よりは一歩前進という建前で、現実的な保護措置の推進をはかるというのがこの法律の考え方であるわけでございます。さよう御了承いただきたいと存じます。
  32. 高野一夫

    ○高野一夫君 二カ年の療養給付をやって、なおかつ完癒しないで、全快しないで、しかも、廃人同様の状態に置かれた。これに対しては生活保護法でも適用し得るような場合ならば生活保護法でも適用すると、それ以外にはもはや何らの方法を講ずることも考えられない、こういうことになりますか。もう本人たちが生活保護法を受けるというだけでもって、あとは各自やるよりほかない、一般の病気と同様の状態になるわけですか。
  33. 富樫總一

    政府委員(富樫總一君) さらにつけ加えますれば、先ほど申し上げましたように、打ち切り補償金というものが千二百日分支給されておりますし、またきのうもお話がございました障害年金支給されるわけで、十分とはむろん言いがたいかもしれませんが、この二つの、病気に対する一般の傷病に比して特別の保護を加えるということが現実的に前進するということで本法が立案構成されておるわけでございます。
  34. 田村文吉

    ○田村文吉君 議事進行について。このまま五分ぐらい休憩されたいのです。
  35. 小林英三

    委員長小林英三君) じゃ速記をとめましょう。ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  36. 小林英三

    委員長小林英三君) 速記を始めて。
  37. 榊原亨

    ○榊原亨君 昨日この会が一応労働大臣の御見解についての御開陳を承わってということで、質疑を継続するということでございましたが、先ほど来大臣のお話がございませんから、一応昼食の時間でもございますので、ここで休憩をお願いいたしたいと思います。
  38. 小林英三

    委員長小林英三君) それでは暫時休憩をいたします。午後は一時から再開をいたします。    午前十一時五十八分休憩      —————・—————    午後一時四十三分開会
  39. 小林英三

    委員長小林英三君) 休憩前に引き続きまして委員会を開会いたします。  けい肺及び外傷性せき髄障害に関する特別保護法案議題に供しております。御質疑を願います。
  40. 西田隆男

    国務大臣(西田隆男君) 私から一言委員の皆様に釈明したいと思います。  それは、昨日の社会労働委員会におきましての質疑応答の中において、私が特に全額国庫負担の問題について個人的な見解を申し述べましたことは、委員会等における内閣の代表者としての発言としては適当でなかったと考えますので、この点一つ委員諸君においては御了承願いたいと思います。  それからもう一つの問題は、質疑の過程において、厚生年金との重複する給付の問題に対する私の答弁の中で、言葉が足りなかった点があったかとも考えます。その意味は、ただ政府としましては、けい肺法の法律案を策定いたします過程に率いては、二重給付になるということの上にこの法律案というものを考えたのだという答弁を申し上げましたことによって、お尋ね下さった方の、厚生年金と二重になるから重複する、これをのけたらどうかという御意見をあたかも否定したかのようにお受け取りになられたかとも考えますので、この現行法制下における重複給与という問題についてこれは法的に現在は認められておりませんので、現在の法律の建前から行きますというと、これまた二重に給付する必要はないのではないかという御議論はりっぱな一つの御議論であると考えておりますので、それを決して否定したわけではありませんけれども、ただこの法律案の決定いたしまする過程において、政府側の考え方を申し上げただけでございますので、その点も釈明いたしておきますから、どうか一つ御了承願います。
  41. 小林英三

    委員長小林英三君) 御質疑を願います。御質疑の用意ができるまで私から質問をいたします。  富樫労働基準局長にお尋ねいたしますが、第二条の二号及び第三条にありまする「けい肺を生ずるおそれがないと認められる政令で定める作業を除く。」ということがあるのですが、このことにつきましては、昨日私から別表第一、第二に関連いたしましてただしておいたのでありますが、なお将来のためにただしておきたいと思いますととは、おそれがないと認める尺度、つまりこれはこういうものはおそれがないという認める尺度、言葉をかえて申しますと、判定の基準、これが現在科学的に判定の基準というものがあるのか、また信頼し得べき測定の方法があるのかということをまずお聞きしたい。
  42. 富樫總一

    政府委員(富樫總一君) このけい肺は遊離けい酸粉じんを原因として発生する病気でございまするので、科学的に申しますれば、遊離けい酸粉じんに関する専門的用語で申しますれば恕限度の問題にかかわるわけでございます。しかるところ恕限度、遊離けい酸粉じんの粉じんの数、あるいは粉じんのこまかさ、あるいは粉じんの中に含まれる遊離けい酸の含有度というものを総合いたしました恕限度につきましては、いまだ科学的に十分なる結論が得られておらないのでございます。従いまして本法案におきまする粉じん作業を禁止いたしますにつきましても、この恕限度に、科学的な観点からかかわることなく、事実上過去の実績に基きましてけい肺が発生したという事実を中心としてこれを取り上げておるのでございます。従いましてとれをはずす場合におきましても、必ずしも恕限度にこだわることは適当ではないと考えておるのであります。たとえば、具体的には実際問題として遊離けい酸粉じんがある程度発生しておる場合におきましても、通風の関係開放性の工場あるいはその作業の強度の度合い等を勘案したければなりませんわけでございます。従いましてこの作業につきまして、たとえばモデル・ケースによりまして、この作業のうちの特にこの何とか作業というようなものが一般的に遊離けい酸粉じんの出ないところであるというふうに確認されますれば、それは一般的に除外いたしますし、そうでなく個々の工場、事業場におきまして若干の粉じんが立っておりましても、相当長期にわたる粉じん職歴者につきまして健康診断いたしました結果、事実に賄いてほとんどけい肺の発生のおそれがないという過去の実績がございますれば、これをそれに応じて除く具体的な基準は政令で定めることになっておりまするが、これは目下専門家の方々の御意見も聞きつつ検討しており、けい肺審議会に付議して最終的に決定するわけでございまするが、との政令におきましても、基準をできるだけ具体的にきめまするが、さらに最終的には今申しました基準がどうしても最後的には抽象的にならざるを得ない場合もあるかと思いまするので、その場合には具体的判定は中央の労働基準局長が認定をすると、こういうような立て方にいたしたい考えでございます。
  43. 小林英三

    委員長小林英三君) なお伺いますが、私の質問については簡単でけっこうですからその要点だけ一つ。  それからこの四十八条に労働基準監督官がそれぞれの事業場に行ってそしてこの遊離粉じんを含み、または含む疑いのある粉じんの測定もしくは検査をするということになっておるのでありますが、この際に、それらの検査をしたり測定をする場合において何か現在機械的にそれを測定するような機械器具があるのか。また機械器具がなくして、側定する場合において、現在の監督官等の知識においてそれが正確、的確に測定または検査ができるかどうかということについてお伺いいたしたい。
  44. 富樫總一

    政府委員(富樫總一君) 遊離粉じんの測定のなし方につきましては、これは測定機によって測定するのでございます。従いまして機械もなく個人々々の何と申しますか、いわゆる職人的熟練技能等に依存することはないのでありまするが、しかしながらそれにいたしましても、一つの工場の中のどの場所を選んで測定するか、あるいは風のある所、風のない所、あるいは今日は水をまいたけれども、あるときにたまたま水をまいてなかったときにはかるというようなその場所なり時なり条件なりによって、いろいろ同じ機械で検査いたしましても結果は違う場合があり得るのでございます。そこでこの検査の仕方につきましては、率直に申して私個人はしろうとでございまするが、粉じん測定に当るべき監督官を集めまして十分なる講習を実施いたしまして、慎重を期させることにいたしてございます。  それから政令に予定する基準の概略ということでございまするが、今ここに持っておりませんので、非常に重要な事項でございまするので、大体の記憶だけを申しますとかえって間違うおそれがあると存じますので、後の機会に先生に申し上げたいと思います。
  45. 小林英三

    委員長小林英三君) さらにお尋ねいたしたいととは、第二条並びに第三条、先ほどからお尋ねしております適用除外、これは昨日の私の質問に対しても、基準局長から私の了解し得るような回答があったわけでありますが、この際念のためにほかの言葉でもってお伺いいたしたい。適用除外ということは事業単位でやるのか、あるいは事業場単位でやるのかということについてはっきりした御答弁を願いたい。
  46. 富樫總一

    政府委員(冨樫總一君) ある特定の作業につきまして、一般的に除く場合と、個々の作業場について作業場単位に、あるいはその作業場のうちのこの作業というふうなこと、そういうふうに除いていく考えでございます。
  47. 小林英三

    委員長小林英三君) そうすると、今の問題は、事業単位でやる場合もあるし、事業によっては事業場単位に除外する場合もあるとこういう意味ですね。
  48. 富樫總一

    政府委員(富樫總一君) さようでございます。
  49. 小林英三

    委員長小林英三君) それからこの事業並びに事業場の種類によりましては、従来何十年間もけい肺というものが出ていないというような事業場または事業もある。これが別表第一号並びに第二号には現に載っているわけでありますが、これらのものはやはり一応は別表第一号、第二号に載っけて置いて、そうして労働基準監督官の測定または検査によって順次に除外していく、こういうことになるのですか。
  50. 富樫總一

    政府委員(富樫總一君) 何分にも日本全体から見ますると、非常に複雑な多岐にわたる作業場でございまするので、あるいはそこにおいて重篤なけい肺が生ずるようなことがあっては、そうしてそういうものが漏れては困るというので、やや大事をとって事業場を掲記せざるを得なかったことは御了承願えるかと存ずるのでございますが、しかしただいま仰せのように、この掲記した根本的な立場が過去の実績に重点を置いているわけでございますから、仰せのように過去十何年において出なかったというようなところはもちろん早くこれを把握して、逐次適用を除外する、またこの政令に基く施行規則におきましても、そういうところの事業主の方が申し出られればどんどんこちらの方から出向きまして、検査をして、はずすものははずしたい、こういうふうな考えでございます。
  51. 小林英三

    委員長小林英三君) さらにお伺いいたしますことは、今の御説明になりましたよう血事業場もけい肺分担金というものは、それが除外されるまではずっと納めていくと、こういうことにたるわけですか。
  52. 富樫總一

    政府委員(富樫總一君) この本法による分担金は、経過的には、本年度の分につきましては、ほぼ事前納付を要しないで、確定納付、つまり三月から四月にかけて納めるというふうにいたしてございます。従いましてできるだけ早目に問題のないところは適用を除外いたしますれば、最初から全然納付の義務を生じないことになると考えます。できるだけそういうふうにいたしたいと考えておるのであります。  もう一つは、この別表の第一から除くということについては、やや心配がある。しかし第二表からはまず除いてもよかろうという場合があるかと存じます。そういう場合には、健康診断等の経費等は省略できまするが、場合によっては、第一表の方に残るというような場合には、これは万が一という火災保険というような程度で御負担を願う場合もあるかと存じます。
  53. 小林英三

    委員長小林英三君) それから第三条の算用数字の5ですが、「使用者が指定した」ということがあります。それから「他の医師」というのがありますが、「この使用者が指定した医師」または「他の医師」という医師はどんな医師でもよろしいのか。
  54. 富樫總一

    政府委員(冨樫總一君) 法律上は医師法にいう医師であればどなたでもよろしいということに一応解釈されるわけでございます。
  55. 小林英三

    委員長小林英三君) それから労働者は医師の選定の自由を認めているのでありますが、その医師の選定の自由を認めた理由は。
  56. 富樫總一

    政府委員(富樫總一君) これは労働基準法の安全衛生規則にもこういうことがあるわけでございます。やはりこの医師につきましては患者の信頼感ということが一つの問題点になります。それをしいて忌避いたしまして、無理無理いやがる医師の診断を受けさせるということになりますと、その結果につきましてまだ別個のトラブルが起るおそれもあるかと存じまして、いやしくも医師であれば——あまりそういう例はございませんが、もし労働者がどうしてもそっちの方の医師が自分としては気に入らないというのであればみずから——この場合は自分で経費負担をすることになりますが、自分で試験を、検査を受けて申請するということで、これはまあほかの健康診断の場合との権衡もあるのでありますが、さような意味合いでございます。しかしながらこのけい肺につきましては、さらに考えまするに、普通の病気のように一般のお医者の中に、少くとも現段階におきましては十分なる診断能力があるとは申しかねまするので、またしかしながら、労使間にいろいろな紛議なり何なりが生じてはなりませんので、症状の決定というものは、すべて役所の立場から正式に決定をするということによって、その間に間違いなきを期しておる次第でございます。
  57. 小林英三

    委員長小林英三君) この今の症状の決定という問題、第五条ですが、地方けい肺医の診断または審査につきまして症状決定をする場合において、むろん医師の誤診というものはあり得ると私は思うのでありますが、その医師の誤診というものに対しまして制裁規定は別にないようでありますが、ありますか。
  58. 富樫總一

    政府委員(富樫總一君) もしそれに不服があれば、不服の申請をずるととができるようになっております。またこの誤診が後に明らかになりますれば、その誤診に基く処分を既往に向って取り消すわけでありますが、医師の誤診そのものについての措置は、本法におきましては特定の規定はなく、一般の医師の誤診と同様の取扱いになると解しております。
  59. 小林英三

    委員長小林英三君) さらに第九条の作業の転換の円滑の問題ですが、それで事業所内における転換が困難な場合に政府の責任というのはその際にどうなるのか。また転換すべ職場がないために労働者をやむを得ず解雇するというような場合におきましては、政府はこの際にどういうふうな責任を持たれるのかどうか、伺いたい。それからもう一つは、職業紹介あるいは職業補導等の政府の具体的の構想がございましたならば承わりたい。
  60. 富樫總一

    政府委員(富樫總一君) どうしても同一事業内におきまして転換の道がなく、やむを得ず離職せざるを得ないような場合におきましては、政府の責任といたしましては、第九条に規定いたしまする職業紹介、職業補導、新たなる技能を身につけさせるというようなことにつきまして、特別に、優先的に手厚く措置いたしまするとともに、後に三十八条の後段に規定しておりまするように、たとえば共同作業所あるいは農場等を経営いたしまして、そこに収容するという建前にいたしておるのであります。具体的には、私どもの推定では、要転換者というものは、大体普通年に三百数十人程度です。その大部分は金属山あるいは石炭山というような大事業所、大企業の従業員でございますので、坑内夫から坑外夫にというようなことは事業所内の転換ができ、従いまして、どうしても離職のやむなき場面に相当する方々というものは、割合に少いのではないかと考えておりますので、いずれにいたしましても、具体的計画は、この本法施行政府が全般的に健康診断を実施いたしまますので、その実施の結果にかんがみて、要転換者のどういうところに、どういう地方に、どういう作業、そういったような実情をある程度把握してからなにいたしませんと、むだなところに、補導所を作ってみたり、むだなところに共同作業所を作るということであってはならぬので、今後そういうような実情把握と表裏して、有効適切な計画を立案したいと考えておるわけでございます。
  61. 小林英三

    委員長小林英三君) それから第二条の五号に労働者の定義があるのです。「他人に使用される者で、労働の対償として賃金、給料その他の報酬を支払われるものをいう。」、こういう定義があるわけです。ところが賃金総額は、第二十条の二行目に「事業主がその事業に使用するすべての労働者に支払うすべてのものの総額とする。」、こう書いてあるのですが、そこで承わりたいと思いますととは、ここの二十条の二行目の「すべての労働者」という中には臨時夫であるとか、日雇い労働者及び適用除外例の職場の労働者というものは私は含んでいないと思うのですが、含みますか。
  62. 富樫總一

    政府委員(富樫總一君) この分担金をかける料率の決定の基礎になる賃金は、その事業において使用されるすべての労働者を基礎にいたすのでございます。これは全く便宜の措置でございます。そうでないというと、ある会社におきましては、百人のうち四十何人、あるいはその四十何人が翌日には一人減るとか三人ふえるとかというように浮動いたしまするので、これは労災保険の保険料徴収の際と同じ賃金総額を基礎にいたしまして、一人につき九十銭とか一円とかというふうにした方が双方ともに非常に便利である、そうでないとこれは粉じん作業労働者の特別の賃金名簿を作るのである、そこでそれが正しいか正しくないかということで監督官の間に無用のなにができるから、この方がよかろうということで、かように立案をしたわけであります。で、そのために同じ事業でも粉じん作業の労務者の多寡によって不公平が生じやせんかという御議論にもなるかと思いますが、もちろん多少の出入りはあるかと存じまするが、たとえば窯業なら窯業におきましては、大体の大ざっぱな、大まかな比率がきまっておるわけでございます。で、先ほどのように非常にけい肺の発生のおそれの稀薄なものは、ですからもう適用を除外いたしますれば、この方が官民ともに便利であろう、こういう意味合いからかようになっておるわけでございます。
  63. 小林英三

    委員長小林英三君) 御質問がございましたら。
  64. 高野一夫

    ○高野一夫君 今度のけい肺の特別措置で、このけい肺病としての診断が確定したものに対して適当な保護措置を講ずるということは、まことに必要でありけっこうなことだと思うのですが、さらに大事なことは、それよりも事前にけい肺病にかからない措置であろうと思う。その措置については、今度の特別保護法案には何にも書いてないのですが、これは労働基準法の四十二条ですか、これによる命令か何かでそのけい肺ならけい肺にかかる、粉じんなら粉じんの被害を防止する適当な措置を講ずるという方法でもすでに講じておられますか。それによって相当の効果が上っているとお考えになりますか、それを伺いたい。
  65. 富樫總一

    政府委員(富樫總一君) 御存じの通りけい肺に関する対策といたしましては、不治の病のもうかかってしまった者を保護することももちろん大事でございまするが、今後発生せしめないことの方がより重要であるわけでございます。従いましてその予防措置の問題でございまするが、建前から申しますと、遊離けい酸粉じんだけの防止措置というものは、今日の段階におきましては考えられておらないのであります。他の粉じん防止措置、一般の中の一環としての遊離けい酸粉じんの防じん措置でございまするので、ただいま先生の仰せになりました基準法の第五章以下の規定に基きまして、安全衛生規則の上に相当詳細な規定が設けられておる。鉱山につきましては、鉱山保安規則の上にその防止の措置規定されてございます。  そのおもなる対策は二つございまして、一つは、粉じんの立たないこと、そのことを防止する策、主としていわゆる湿式化をはかることでございます。これは今日大企業、特に鉱山等におきましては相当普及しておると聞いております。またもう一つの措置は、防じんマスク、立った粉じんを吸わないようにするということでございまして、この防じんマスクにつきましても、労働省におきまして年々この研究改善を加え、労働大臣の検定を経た防じんマスクが作られておるのでありますが、これが年々今日約十万生産されて使用されており、相当の効果を上げておると考えておりますし、今後とも一段の努力を払いたいと考えておるわけでございます。
  66. 高野一夫

    ○高野一夫君 この必要な措置を講じなければならないということで、いろいろなごまかい規定ができておるわけでありましょうが、それは多くは企業主に対する義務づけになっているのじゃないかと思いますが、そういうことに対し、それが的確によく適正に履行されておるかどうかの監督を厳重にされているものか、あるいはあまり守られないものか、こういう点について何か処罰の規定でもあるのか。またあるとすれば、監督の結果、これはどうも不良である、不適正であるということとを摘発されて、戒告なり注意なり企業主に与えられておるような事例でもありますか。
  67. 富樫總一

    政府委員(富樫總一君) この規定施行は、もちろん一方におきましては実情に即し、小さな町工場に湿式の何百万円もかかるようなことを強要するというような非常識なことにわたらないように注意いたしますと同時に、実情に即したような指導的監督を加え、悪質なものにつきましては処罰をいたしておるのでございまするが、マスクにつきましては、先ほど申しましたように、年々十万個を生産し使用されておるので、相当に浸透しておるかと存じます。なおこのマスクにつきましては、頭から強要するというだけでなく、また一方におきまして、役所側において研究を加えまして、この呼吸度等についての改善を加える必要もあるわけであります。両々相待って事態の改善に努めております。罰則は基準法の百十九条の中に規定されておるのでございまするが、この罰則の適用された件数等につきましては、ただいまここに手元にございませんので、いずれ別の機会に先生に申し上げたいと思います。
  68. 高野一夫

    ○高野一夫君 今お話を伺いますと、適当にこれが励行されているやに伺いますが、しからばそれが適当に励行されてこの場合は粉じん、粉じんによる危害の防止が相当成功するのであるなら、毎年々々新規発生のけい肺の患者というものはだんだん減ってくるか、少くともふえない程度に防止ができておるはずだと考えますが、しかしながら労働省のあるときに出されたる、統計によりますと、年々三百何十人ずつはやはり新規けい肺患者が出るようね何か見込みの統計になっているように思うのでありますが、これが年々三百何十人ずつやはり新規の患者が出る、しかも一方においては適正なるとの予防措置を講じさせているつもりであるけれども、それがうまくいくならば出ないはずじゃないかとも考えられるのでありますが、この辺の関係はどうなんですか、実際問題として。
  69. 富樫總一

    政府委員(富樫總一君) なかなかとの作業そのものの性質によりまして、防じんなり湿式化あるいは防じんマスク等が完全なる性能を発揮するというととろまで行きかねまするので、遺憾ながらこういうものがやむを得ず発生するということでございます。お配りいたしました資料に、年々三百人あまりの発生見込み数をあげておりまするが、これは今後の改善の度合いがどういうふうにとの効果を発揮するか、あるいは特に防じんだけでなく配置転換、予防的配置転換等の効果も、将来は相当大幅に見込まれ得るわけでございまするが、差しあたりこの推定数字をあげる上におきましては、従来の推移そのものを基礎としまして、その推移のままで経過すればこういう数字が出る、今後はそういう努力によって相当改善されるであろう、改善されるであろうけれども、数字的にあげることはやや正確を欠くおそれがあるというので、それは計数的推計数字にはあげなかったわけでございます。
  70. 高野一夫

    ○高野一夫君 この問題について、最後に大臣の御見解を伺っておきたいと思いますが、私はこういう特殊な病気については、発生後の療養も大事であるが、できるだけ発生を予防する措置を講じられるということの方が特に重視すべき点じゃないかと思います。そこでその点については、今度の特別措置法案にはなくして、労働基準法なり、まあ根本の、基本の法律による、こういうことになっておりまするから、ともすれば、法律が二つになりますれば、これがいずれかがおろそかにされがちの、傾向もないでもないと考えますので、どうか今後、特にこの予防措置について十分の御留意願いたいと思いますが、一応の御見解を伺っておきたいと思います。
  71. 西田隆男

    国務大臣(西田隆男君) お答えいたします。ごもっともな御見解でございまして、現在の段階におきましては、安全衛生規則等鉱山保安法による予防措置を講ずる以外に的確なけい肺、粉じん吸入をとめるという方法は現在発見されておりませんために、やむを得ずこの安全衛生規則と鉱山保安法によって取締りをしていくと、こういう予防措置を講じていくということを考えておりまして、けい肺対策審議会等においても十分に予防措置に対する研究をいたしております。また世界的にもこのけい肺粉じんの予防をいかにするかという問題には、各国の学者も研究いたしておるようでありまして、けい肺の粉じんを吸入しないで済むような的確な予防方法ができましたならば、直ちにそういう方法に切りかえていくことを考えておりまするし、政府といたしましても、できるだけ早く何とかしてこのけい肺に対する予防措置の完成を目ざして検討を続けておるわけでございます。
  72. 森田義衞

    ○森田義衞君 ちょっと労働大臣にお伺いしますが、現在この法案に対しまして、前に労働大臣から、これまでの給付に対して上積みの給付をやるんだと、簡単に割り切ったようなお話がありました。しかも労働大臣個人としては、政府が全面的にこういったようないろいろな給付はやらせるように努力したのだが、残念ながらそうはいかなかったというような御見解の発表があったのですが、そうなりますと、これまで給付を受けております三年間には、この厚生年金保険法によるところの障害年金がもらえないのだといったような規定になり、それが三年経過しました後には、まあ今度はもらえるといった格好になるので、前の三年間とそれからあとの二年間ではもらう側においての給付内容がだいぶ額が違うと、前とあとの関係におきまして、どういう御見解をおとりになるんだか、その点をお聞きしたいと思います。
  73. 西田隆男

    国務大臣(西田隆男君) お答えいたします。前の三年間は雇用が継続しておるという関係において、厚生年金の適用がないが、あとの二年間は雇用が中断されたという法的な雇用関係に基いて厚生年金支給の権利義務の関係が発生する、そういう観点に立って、すでに法律上の雇用関係の中断によって法律上の権利義務の関係が保険契約上発生しておるものを除外する、こういう考え方を、この法案を作るときに私は持っていなかったと、こういうふうに私は申し上げたわけでございます。
  74. 森田義衞

    ○森田義衞君 いや、何といいますか、割り切った雇用継続関係だけで御説明になることは、これは法律もございますからそれはわかっておるのでございますが、実際の給付内容が違うのだ、実際困るのは、およそ病気になりますれば、気の毒に完全に不治の病だと焼き印を押されているのだと、そういった関係で、たとえばこの厚生年金保険法の四十七条ですね、これはなおる場合とかなおらぬ場合とか、いろいろな病気も想像されて、三年後にこういった給付があると思うのですが、この病に対しては初めからなおらないのだという認定が下されている、そういった関係もあって、そういう休業給付がこういった法律的にきめられている、あるいは療養給付もきめられている、そういったものをあと二年間、あとの形の方については同じように延ばしていこうということで、そういった点がある関係からそれはけっこうなんですが、あるいはかりに積み立てた金がまあ既得権としてあるならば・かりに身分が継続しようとしまいと、そういった点で実際にとる側の立場は違っているのである、そうなればこの基本法でいうあなたの御精神からいうならば、あとの方を打ち切るか、前の方をまた特別な法律によってこういった不治の病に対してはやってやるか、どっちか私は大臣としてはお立ちになるのが普通ではないかという考えを持つが、いかがですか。
  75. 西田隆男

    国務大臣(西田隆男君) お答えいたします。これは何回もお答えしてまたおしかりを受けるかもしれませんが、私がこの法律案の策定に当りまして考えましたことは先ほどもお答えしましたように、この現在のいろいろな法律関係、経済の情勢、契約というようなものは、これはかかってもなおらない、予防法がないというようなことに関係なくして、一般的に労働基準法によってきめられた法律関係、従ってこのけい肺や外傷性脊髄障害の問題はこれはかからないようにすれば済むが、けい肺の方はかかるまいとしても、それに対する完全な予防措置がございませんので、従って第四症度に病症が進行してきた場合には、これは死ぬという以外に完全な治療法がないというような、まことに悲惨な事業病という一種の国民病的な性格を持っているものであるからして、現在の法律関係その他は、そのものは当然これはそういう特殊なものでない。従ってこれだけに特別に何らかの措置を講じてやらなければならないと考えて、あわせて、その金額を二カ年間療養給付をするということで一応まあ結論をつけたわけでございまして、森田先生のおっしゃるように根本的にやるべきじゃないかといろ議論もこれは正しい議論と思いますが、そこまで考えないで、この法律は作った、かように御了承願いたいと思います。
  76. 森田義衞

    ○森田義衞君 現実の問題といたしまして、前三カ年、それから私は病人の困っていることは、結局その病気になる労働者は一文の貯蓄もないと思います。三年たったからといって食いつぶすようなものは何もない、初めから困っているのほど。こう私は考えておりますが、そういった点で三年後の何といいますか、二年間、前の三年間そういった間の差異につきましてなるべく上積みとおっしゃっておりますが、それについては何といいますか、個人的見解でもけっこうですが、労働者についてどういうお考えをお持ちでございますか、お伺いいたしたいと思います。
  77. 西田隆男

    国務大臣(西田隆男君) お答えいたします。森田さんのお伺になっているのは、二年間の給付を別な意味で延ばしただけでなくて、もっと根本的に三年の給付をやるときから考えるべきじゃないか、こういうお尋ねですか。
  78. 森田義衞

    ○森田義衞君 私は筋が通っていないような感じがするのです。この三年間の間とそれからあとの二年間との間におきまして、これは別にその他厚生年金法があるのですから、この法律適用を受けるのですが、三年後はよくなる、実際問題として前は悪いのだ、こういったことならば、大臣のお考えなら上積みでよくやってやろうというお考えならば、その面を油考えにならなければ理論が一貫しないだろう、こういう気持です。
  79. 西田隆男

    国務大臣(西田隆男君) これはさっきも申しましたように、三年間の給付というのは雇用の継続を前提としての無過失損害賠償の考え方で労働基準法で規定しておりますので、私がきのうからお答え申し上げておりますのは、これはこの法案を作ります際においては、その構成の上に立って、別にそれより以上に確たる措置を講じてやらなくちゃいけいなんじゃないかという考え方を基本的に持って、この法律案の二カ年という限度をきめた、かように私はきのうからお答えいたしておるのでありまして、それ以上に本質的な問題として、こういうものを修正してみたらいいじゃないか、あるいはもっとよけいやったらいいじゃないかという議論は、これはいろいろあると思いますが、そういう問題でなくて、ただいま申しますような観点に立っての法律を作ったんだ、こういうふうに御了解いただく以外に私お話の申し上げようがないかと思います。
  80. 森田義衞

    ○森田義衞君 押し問答をしたって同じなんですから……、私は実際上の内容が違うのだから、筋の通った見方でもってやった方がいいといった気持から実は——多いとか少ないとかいう議論をしているのじゃないのです。その点から実際上違っておる面を指摘しておるだけの質問ですから、これ以上申しません。
  81. 相馬助治

    ○相馬助治君 質疑が切れたようですが、どうですか。
  82. 小林英三

    委員長小林英三君) ちょっと速記をやめて。   〔速記中止〕
  83. 小林英三

    委員長小林英三君) 速記を始めて  暫時休憩いたします。    午後二時三十六分休憩      —————・—————    午後三時三十一分開会
  84. 小林英三

    委員長小林英三君) 休憩前に引き続きまして委員会を開会いたします。  けい肺及び外傷性せき髄障害に関する特別保護法案について御質疑を願います。——他に御発言もないようでございますから、質疑は終了したものと認めて御異議ございいませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  85. 小林英三

    委員長小林英三君) 御異議ないものと認めます。  ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  86. 小林英三

    委員長小林英三君) 速記を始めて。  それではこれより討論に入ります。御意見のおありの方は賛否を明らかにしてお述べを願います。
  87. 榊原亨

    ○榊原亨君 ただいま審議中のけい肺及び外傷性せき髄障害に関する特別保護法案につきましては、これまでの質疑応答で明らかでございますように・いろいろの面におきまして矛盾あるいはその他いろいろ考えなければならぬところがたくさんあると私は考えているのであります。  まず第一番目に考えなければなりませんことは、ただいまの医学的立場から申しましても、また労働者、災害におきますところの実情から申しましても、外傷性脊髄患者でなるほど悲惨な運命をたどる者が多くはございますが、その原因たる脊髄の障害そのものが悪化するという性質の種類のものではないのでありまして、これはその合併症その他が次第に重くなるという性質のものでありまして、これをたとえて申しまするというと、熱傷におきますところのかいよう——やけどにおきまするかいようと同じ種類のものでなければならないのであります。ところがこのけい肺病はこれとは反対でございまして、けい肺病そのものが年とともに悪化するというところにおきまして、このけい肺病は特殊な病気として考えなければならぬのであります。従いましてこれらの病気にかかられたところの労働者の諸君のために立法的措置を講じますならば、これは少くとも脊髄損傷の病気とけい肺病とは画然と分けまして別々に立法化をするということが至当であるのでございます。私は今日はこの労働者一般の方々が非常に熱望されておりますので、これらのものは別個に立法すべきであると思うのでありますが、暫定的措置として一応この二つのものを認めるのでございますが、必ず将来この脊髄性障害というものがけい肺病と並び同じ法律の中にはりますことによりまして、けい肺病患者の方は非常なるいろいろ待遇改善の上におきまして障害が来たされるおそれを私は今でも持っているのであります。従いまして将来はぜひともこの二つの病気は画然と分けました法律におきまして立法化されまして、労働者諸君の利益のために、労働者の尊い犠牲に対する報いといたしましても、この二つのものは画然と分くべきものと私は考えるのであります。  次に、ことのけい肺病につきましても、この法律けい肺ということでございまして、その法律の中にはそれはけい肺におきますところの病気であるということを明記しておりまするからよろしいようなものでございまするが、これはけい肺ではない、肺にけいじんがたまりましただけのものではなしに、それによって増殖性の変化が来たものをさすということでなければならぬと思うのでございまするが、このけい肺病とただごみを吸ったために起りました病気につきましては、質疑応答において明らかでございますように、この二つの間の判別診断というものは非常にむずかしいのでありまして、これらの点につきましても今後いいろな診断の上、取扱いの上において紛争が起るおそれがあるのであります。また粉じん工場そのものの定義につきましてもいろいろ種々雑多なことでございますし、粉じんそのものを測定する方法につきましてもまだ十分なる科学的根拠を持った確実なものが発見されておらない今日におきましては、この法律の運用において各所においていろいろな問題が起ってくることを私どもは考えておるのであります。またけい肺と結核との関係におきましても、この両者を区別することができない場合がしばしばあるのでございまして、私ども医学の立場から申しますと、かような点を明らかに法律においてするということが労働者諸君の利益のためにもなると私は思うのでございまするが、ただいまの現状におきまして、会期の迫りました今日といたしましては、これらの点を明らかにすることによってかえって労働者諸君の望んでおられるところのこのけい肺病が成立しないという運命に陥るということを私はおそれております。従いましてこれらの点から申しまして、これらの問題は将来の解決といたしまして、そうしてその運営に当りましては、特に労働省当局の十分なる用意と周到なる注意のもとにこの法律が運営せらるべきであると私は考えておるのであります。また当局が新しい病気に対しますところの立法化、たとえば初めて結核予防法ができましたときには、非常に結核に対する関心が高まりまして、結核にあらざるものをも含めて非常にいろいろな問題が起ったことも私は承知いたしておるのであります。今日ここで初めてけい肺病というものが法律の面に現われて参りまして、この立法的処置をすることになりますというと、必ずやこの病気は非常に多く多発するということを考えておるのでありまして、多発いたしましても、それがほんとうのけい肺病であればいいのでございまするが、そこにいろいろな難点ができましたり、トラブルができますということにつきましては、私どもはこれをおそれるのでございますから、労働省当局におかせられましては、特にこの面の運営について十分なる考えがなければならないと考えるのであります。給付の面につきましても、私どもはこのような病気は一生涯政府の責任において治療すべきものであると考えます。この考えは今も変らないのでありまするが、しかしながら今現にその病気によって困っておられますところの労働者の患者の諸君は先の百よりも今の五十の方がいいのだ、ことに私どもの心を打ちましたことは、もしも休業給付がもらえませんならば、今現に炭鉱の住宅におられるその住宅を追い出されてしまう、その住宅が今ないのだ、かような私なども陳情を受けまして、私どもはそれをしいて、先の百ということよりも今の五十という方が皆様にとってよろしいというのなら、やむを得ない。それならば、私どもはこの法案によりまして先の百より今の五十を与えるということが政治の上においても正しいのではないかという観点に立つに至ったのであります。これらの点を考えまして、さらにその給付の面におきまして、わが党の松岡委員がるるお述べになりましたように、今日もなお労働大臣がはっきりとおっしゃいましたように、厚生年金給付と、それからその他の給付が二重になるというような問題につきましては、十分これは考うべき余地のある問題とは思うのでございまするが、特にけい肺病の特殊性にかんがみまして、今後これらの措置が先例とならざるという条件のもとに、私どもはこの厚生年金についてもこれを与うべきものとの結論に達したのであります。  以上簡単でございますが、先ほどから申しましたような諸点につきましても、またその他質疑応答におきまして繰り返されました種々雑多なるいろいろな問題につきましても、この法案はきわめて不備でありまして、今後なおさらに改善を要すべき多々大きな、小さな諸点があることを私は認めざるを得ないのであります。またこの法案によっていろいろなトラブルが起りますその諸点においては、私は目のあたり今後の紛争を見るのでありますが、特に先の百より今の五十の方がいいという労働者諸君の切なる御要望にこたえて、わが党といたしましてもきん然この法案に賛成の意を表するものであります。
  88. 田村文吉

    ○田村文吉君 緑風会を代表いたしまして本案に賛成の意見を申し述べたいと思います。  このけい肺病に関する法律が検討されましてすでに数年に相なるのでございます。議員立法でもしばしば提案されて参ったのでありましたが、諸般の研究が一応行き届きましたので、このたび政府提案を見るに至りましたことは同慶にたえないところでございます。私はこのまれなる病気、また外傷性脊髄病にいたしましても、珍しいこの病気に悩んでいられる不幸な人たちのためにこの法律が制定されるのは当然なことではあると考えまして、この一日も早からんことをこいねがって参った一人でございまするが、さて法案を拝見いたしまするというと、一、二の私どもとしては不満の点がないではないのであります。しかし大きな目から考えまして、これに対する法案が一日も早く成立することが必要であると考えましたので、賛成をいたした次第であるのでございまするが、一番私がこの法案の成立につきまして政府の反省を促したいと考えましたことは、この厚生年金と障害扶助関係法律とが十分の連鎖を持っていなかったようなうらみがあったことでありまして、これは厚生省と労働省と二つの役所がありまして、同じ保険関係、かような問題につきまして常に十分の連鎖が行われていないのではないかという心配をいたしておるのでございます。今後この点につきましては立法される政府諸公の十分の御関心をお願いいたしたいということを希望いたします。  次には、この法案がはっきりとでき上りました場合に、現在でもそうでありますが、これが運用に当りまして一けい肺患者というものは宣告を受けることによって立ちどころにもう地上に立っていることのできないような衝撃を受けることに相なる場合が多いのでございまするので、こういう運用の上におきまして、これが診断及び治療の宣告等におきましては十分に親心をもって運用していただくことを私はお願い申し上げたいのでございます。  以上、政府に御注意を申し上げたい、また希望をいたします点を申し述べまして、法律が、まれなる病気であるがゆえに必ずしも十分完全な法律ではないと思いながらもとの法案を一応通しまして、もし今後不足の点がありまするならば修正をされていったらよろしいと、かように考えまして賛意を表する次第であります。
  89. 相馬助治

    ○相馬助治君 私は右派社会党を代表いたしまして、ただいま議題となっておりまするけい肺及び外傷性せき髄障害に関する特別保護法案——衆議院修正議決にかかる案に対しまして賛成の意思を表明するものでございます。  御承知のようにこのけい肺並びに外傷性脊髄障害は現在の医学においてはその治療に関して未解決の分野が非常に多く、従って有効適切なる化学療法はいまだ発見されないというのが定説であるばかりでなく、他産業におきまする職業病と一種異なっておりますることは、この職業を離れても病勢はいよいよ進展するという特殊的症状を持ちますることと、肺結核との合併症を来たしやすい性質がありまして、その死亡率が著しく高く、きわめて人道的にも大きな問題となっていることでございます。しかもわが国においてはこのけい肺症に罹病する労働者の数は従来きわめて多いのでございまして、この対策に関しましては従来も世界的関心を呼び、このけい肺対策については国際会議が三回も開催せられ、わが国も代表を出してこの運動に賛成してきたという実情から見ましても、この問題を解決することは社会的、人道的影響が広範囲に及んでいるという意味合いからその対策は緊急にしてかつ重大なるものがあるとわが党は感ずるものでございます。内容は必ずしも満足するものではございませんでしたが、今回政府が本法案を国会に提案せられましたことに関しましては、わが党は率直に敬意を払うものでございます。同時にこの修正案が本院に回付せられるや、その法案内容その他につきまして自由党の議員諸君、緑風会の議員諸君からそれぞれの疑義があったにもかかわりませず、会期の点をにらみかつ本法が対象とする特殊な職業病に特別の愛情を感ぜられた緑風会並びに自由党の委員諸君が、それらの議論を最終的には引っ込めて衆議院修正案に同意されたという態度に対しましては、これまた心からなる敬意を払うものでございます。どうか政府は、この法律の立法趣旨にかんがみられまして、その運用の万全を期せられたいと思うのでございます。  特にわが党として一言触れたく思いますることは、けい肺に対しましてはともかくといたしまして、外傷性脊髄障害につきましては、海上労働に従事する船員にも発生する事態が当然予想せられ、現在も患者があるのでございまして、本法にこのものを適用しなかったということは一つの誤まりであるとわれわれは考えるのでございます。果せるかな衆議院におきましても、本法の修正可決に際しまして、船員法適用の労働者に対しましても本法の趣旨に沿ったような措置がなされるべき旨の付帯決議がなされ、政府はこれに対して善処する旨の答弁があり、本院におきましても、不肖私の質問に対しまして、運輸省船員局長並びに厚生省、労働省、それぞれ政府より積極的なる善処をする旨の答弁があったのでございまして、私はこの答弁に多くのものを期待する次第でございます。  以上申し上げまして、わが党は本法案に対しまして賛成の意思を表明するものでございます。
  90. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 私は日本社会党第四控室を代表いたしまして、ただいま議題となっておりますけい肺及び外傷性せき髄障害に関する特別保護法案に関して賛成の討論をいたすものであります。けい肺問題が世界的に取り上げられましたのは二十世紀の初頭であり、世界的に問題になりましてからここに五十数年がたっております。さらに南ア連邦において法律が制定されましたのが一九一二年、イギリスにおいて立法を見ましたのが一九一八年、わが国においては昭和五年鉱業法公布防疫規則において初めてけい肺業務上の疾病として取り上げられたのでありますが、当時はよろけとして、今日ほどけい肺という病気の実態が認識されず、そうして法上十分の保護なくして今日に参ったのであります。戦後昭和二十三年当時の労働科学研究所長暉峻博士を中心としたけい肺対策の準備会ができ、金属鉱山復興会議でけい肺対策委員会の発足があり、二十三年本院に対して鉱山労働者のけい肺対策に関する建議が提出されましたのが国会に対します最初の要請であったかと思うのであります。自来国会のたびごとにけい肺特別法制定の要望の請願書が続いて参りまして、衆議院においても、十三国会から委員会において対策委員会が設置せられて研究調査されて参りましたが、当院においても赤松労働委員長の当時、けい肺問題について調査し立法の必要があるということで委員会で取り上げ・けい肺病院の見学調査等が進められて参りました。続いて昭和二十六年であったと思いますが、十三国会当時の労働委員長のもとにおいて全会一致で参議院として特別立法をすべきであるという決定を見ました。その後この労働委員会の決定に基きまして、当時の労働専門員室、あるいは当院の法制局において立法の手続を進めて参りまして、十六国会に同僚議員の賛成を得て議員立法として提案をいたして参りました。その十六国会における法案の提出をいたしました際にも、このけい肺問題が人道的な問題であり、そうして粉じん作業場においてけい肺にかかりました者がけい肺と診断をされました後においては、十分な入院その他の処置もできないままその進行が行われ、あるいはけい肺と診断されてもなお収入減をおそれて働き続けるという事態がございました。当時の三度の傷病等に至りますというと、多く結核を併発して、ただ死期を待つばかりという状態でございました。そこで院が調査を進めて参ります間に、特別立法を急ぐべきであるということで、同僚議員の多数の、これは半分を越す署名もいただきましたが、立法をいたしました案は私どもとして必ずしも十全であるとは思いませんでしたけれども、同僚議員の意向も参酌いたしまして、御審議願える案を作ったつもりでございます。十六国会において当時スト規制法が審議されたのでございますが、その過程において同僚議員の御同情、御理解をもちまして継続審議にすべきだという決定がなされました。そうして十九国会において、財政支出を伴うことであるし、政府提案としてこれは提出せらるべきである、特別法として立法することの必要はお互に認めるけれども、予算関係もあってこれは政府提案になさるべきだという御要請がございまして、政府けい肺対策審議会等を通じてその意見の取りまとめに努力をせられて参りました。その間労働省においても、三年の労働基準法の適用期間は五年に直すべきであるという議論も一応内定を見たようでございまして、私どもの最初の案には三年の労働基準法を五年に延べるという点を重要な内容として提案をいたして参りました。その後けい肺対策審議会の意見もあり、政府において今国会にけい肺及び外傷性せき髄障害に関する特別保護法案として提案せられるに至ったわけであります。  そこで顧みますというと、参議院といたしましても、二十六年以来四年の日月をけみしたのであります。その間における同僚議員の理解と同情、政府当局の努力についても、私どもここに敬意を表しなければならぬと思いますが、出て参りました法案は、あるいは転換給付の点についてもっと考えなければならぬという衆議院要請もございますが、私どももそういう意見を持っております。あるいは病院も鬼怒川のほか、あるいは秋田、あるいは北海道等にけい肺病院が既設せられましたけれども、なお今日の一万九千、二万に近いけい肺患者を収容するについては不十分でございます。しかも、この治療方法の確定的なものがないという今日においてけい肺病院の増設の急務なるは私が申し上げるまでもないととでありまして、歴代の労働大臣もその点は十分に御認識になっておることだと思うのでありますが、病院あるいは診察、診断、あるいは治療等について、さらに格段の措置が講ぜられなければならぬと思うのであります。あるいは就労施設につきまして予算措置を講ずること、あるいは議員立法の中にありました平均賃金についてそのスライド制の実施を要すること、あるいは先ほど同僚相馬委員からも指摘がされましたけれども、船員法適用の労働者に対して本法の均衡のとれるような法的措置を講ずる等、幾多法案についても改善を要する点がございます。あるいは政府の施策についても、今後拡充をせらるべき点が、あるいは予算措置について増額せらるべき点等が多々あることはこれは何人も認めるところでございますが、この法案の成立を機会にいたしまして一層のけい肺対策が講ぜられ、予防措置徹底をいたしまして、何よりもけい肺患者が不治にして、そしていたずらに信仰に待つばかりという現状が打開せられて、罹患者が少くなり、あるいはかかりました者は軽度の段階において十分な転換がされるように法案について、多少経営の中で転換が不可能な場合に、あるいは経営の外にほうり出されるのではないか、あるいは外において就労施設を設け職業教育をやっても、今日の場合においては経営の外において仕事につき得ないのではないか、こういう心配もございますが、それらの点等にそういう心配がないように経営の努力もさることながら、その転換就労先について十分な措置が講ぜられますように要望をいたしたいと思うのであります。  これらいろいろございますけれども、六年の長きにわたって参議院で要望して参りました、あるいはその成立を期待いたして参りましたけい肺特別立法に、外傷性脊髄障害に関する規定をつけ加えまして、今日ここに審議を終り、この院を通過することになりましたことについては感慨無量なるものがございますが、幸いにいたしまして関係者の御努力によって、御理解によって、ここに法案が成立するに至りましたことについて心から敬意と賛意とを表するものであります。  今後の法の運営あるいは法の改善、けい肺対策の十全なる措置については、特に政府に要望をいたして賛成討論を終るものであります。
  91. 有馬英二

    ○有馬英二君 私は民主党を代表いたしまして、けい肺及び外傷性せき髄傷害に関する特別保護法案につきまして心から喜びを禁ずることができないのであります。しかもこれがただいま同僚委員からもお話がありましたように、長年希望されておって、そうして再三問題になりながら今日まで成り立たなかったところの法案である、その法案がわが民主党の内閣の時代にでき上ったということが一つと、しかもこの法案審議にかけられる理由になりました労働大臣が、特に鉱業家であるところの西田氏が大臣であるというときにこれが通過したというようなことは、これは非常に意義が深いことであると私は思います。  私は今から約二十五、六年前に初めて日本でけい肺というものを研究した人間でありまして、けい肺がどういう工合に結核と違うか、また結核と合併するものであるかということを北海道で炭鉱並びに鴻之舞鉱山で多数の患者あるいは坑夫について研究をした一人でありまして、その後その研究を持ってドイツへ参りまして、ドイツの鉱山並びにけい肺病院等を視察をして参りまして、帰って鉱山監督局に、その当時は鉱山局でありましたが、けい肺の予防について進言をしたことがあります。そういういきさつがありまして、私はもうよほど前からこのけい肺の予防並びに治療及びとれが法制化ということを非常にこいねがっておった一人であります。おそらくここにおいでになるどなたよりも私が一番その点においては古いかと考えております。しかしながら当時私どもは一介の研究者であったがために、こういうことにはほとんど手を尽すことができなかったのでありますが、今日この法案ができ、本院を通過するに当りまして、私は私の年来の、多年の私の希望が達せられるということを考えまして、ほんとうに心からその喜びを禁じ得ないのであります。  ただし、先ほど同僚各位からも指摘されましたように、法案そのものの内容、これはまだ不完全なところがたくさんありますし、わが国の労働行政におけるけい肺病の予防並びに治療機関に対する施策は、はなはだもの足りないものがたくさんありまして、かねがねここにただいまけい肺病院の院長をしております大西君などと私は絶えずそのことについて語り合っておる一人であります。こんなようなことで、私個人といたしましても、特にとの法案の通過ということを非常に心から敬意を表するものでありますが、なおとのけい肺法案がもっと改善され、特にけい肺にかからないような施策をこれからもっと真剣に行わなければならない。またけい肺病院が今のような貧弱なものでなしに、もっと完備したものが各所にできなければならないと私は考えておる一人でありまして、どうぞそういう点につきまして労働省におかれましては、この法案の通過というばかりでなしに、今後の行政の上において一新生面を開かれまして、さらに鉱業方面の労働者のために、あるいは工員のために最善の方法を尽されるように進みたいものと私は考えておるのであります。心から私は賛成するものであります。
  92. 長谷部廣子

    長谷部廣子君 私は無所属クラブを代表いたしまして、本案に賛成をいたします。  けい肺及び外傷性脊髄障害は特殊の業務上の疾病でございまして、労働者が職場においてこの病に冒され、再び健康体になることを得ないままに死に至る最も悲惨な病気でございます。これら特殊の業務上の疾病には、一般の業務上の疾病に対する対策のほかに特別の保護を与えて患者の生活の安定をはかることは人道的に当然なことであると思います。給付の面につきましても、いまだ十分とは思われませんが、現段階におきましては、この程度でもやむを得ないと思うのでございます。こういったような理由によりまして本案に心から賛成をするものでございます。
  93. 小林英三

    委員長小林英三君) これをむちまして、討論は終局したものと認めます。それではこれよりけい肺及び外傷性せき髄障害に関する特別保護法案を採決いたします。本案を原案通り可決することに賛成の諸君の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  94. 小林英三

    委員長小林英三君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもちまして原案通り可決すべきものと決定いたしました。  なお、本会議におきます口頭報告の内容、議長に提出する報告書の作成その他の手続につきましては、委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  95. 小林英三

    委員長小林英三君) 御異議がないものと認めます。  それから報告書には多数意見者の署名を付することになっておりまするから、本案を可とせられた諸君は、順次御署名を願います。   多数意見者署名     加藤 武徳   高野 一夫     相馬 助治   山本 經勝     横山 フク   吉田 法晴     阿具根 登   長谷部ひろ     有馬 英二   高良 とみ     谷口弥三郎   森田 義衛     田村 文吉   常岡 一郎     榊原  亨   山下 義信     —————————————
  96. 小林英三

    委員長小林英三君) なおこの際お諮りいたします。  理事補欠互選を行いたいと存じます。前理事加藤武徳君の補欠互選をいたしたいと思いますが、前例によりまして、委員長の指名に御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  97. 小林英三

    委員長小林英三君) 御異議ないものと認めます。それでは委員長より加藤武徳君を指名いたします。  暫時休憩をいたします。    午後四時十二分休憩   〔休憩後開会に至らなかった〕