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参考人(
与謝野光君) 今回当
委員会におきまして、
赤痢予防注射に関しまして、当面の執行の
責任者であります私
どもをお呼び下さいまして、
意見を申し上げる
機会を与えていただきましたことを深く感謝を申し上げる次第でございます。先ほど
委員長から非常に御丁重なご
あいさつをいただきましたのですが、私
どもも与えられました時間を有効に使いまして、私
どもの
考えをお聞き取り願いたいと思っております。本日は
東京都の
衛生局の
関係から四人の
参考人をお呼び下さいましたので、重複を避けまして、私から大要につきまして申し上げて、細部にわたりましては、他の
参考人から申し上げさしていただきたいと思っております。私が
最初にこの
計画の始まりから、この与えられました課題につきまして
意見まで一
通り申し上げさしていただきます。
最初に申し上げたいことは、今回
東京都で
赤痢の
予防接種をいたしましたのは、本年の初めになりまして
厚生省、これから申し上げます
厚生省と申しますのは、
予防衛生研究所等を含みました私
どもから見ました広い
意味の
厚生省と解していただきたいと存じます。
厚生省から本年の
赤痢予防対策の
一環としまして、かねて問題でありまする
予防接種によりまして
免疫を与えて、しょうけつをきわめる
赤痢の
防疫の
効果を上げようという
考えから、本年は三十万人の人に
赤痢の
予防接種をやる、そのうち五万人を
東京都でやってほしいという
お話がありました。このときに与えられた
条件と申しますか、それは
術式は〇・四CCを三回
接種する
術式でありまして、
接種の薬品は
厚生省の
検定済のものを
厚生省から渡されまして、無料で地方へ渡されたものでございます。しこうして
接種をいたします
対象につきましては、
厚生省から与えられた
条件は
学童についてやれということでございます。この
趣旨により私
ども東京都といたしましても、一万有余を数える
多発の
状況にある
赤痢の
予防対策の
一環といたしまして、これを
実施に移す
計画を立てまして、都といたしましては
学童五万人ということでございますので、
全域にわたっていたしますよりは、
目下赤痢の
発生率の高い三
多摩地区を選びまして、三
多摩地区には五カ所の
保健所がございまするので、五カ所の
保健所の
管内の
市町村の
関係者に
お話しをいたしまして、
希望者をそれぞれ各
市町村で求めて、また
希望する
町村に対しまして、この
厚生省の指示された
方式に従いまして
予防接種をいたす
計画を立てたわけでございます。その間
東京都といたしましては、従来
昭和二十七年から
皮内接種方式によりまして、三年間の実績を持っておりますのですが、いずれも大した
副作用はなく、また私も
実験台の一人になったわけでありますけれ
ども、
免疫効果もありますので、私といたしましては、今回の
接種はいわゆる
副作用のあるなしを知る
試験ではなくして、
予防接種によって
免疫を与えて
防疫効果を実際に表わすという
意味の試みであろうと解していたした次第でございます。それで三
多摩地区において、
学童に対して
厚生省から与えられた薬を
厚生省の指示した
方針に従ってやる
計画を立てまして、各
市町村の
都合を聞きまして、それぞれ
保健所ごとに日程を組んだわけでございます。その際に三
多摩地区全域からの
希望者の総数が五万をちょっと上回る
程度でありましたので、丁度
厚生省から与えられた人数と合いましたので、この
計画を
実施するということにいたしたわけでございますが、その際に私
どもは
厚生省を信用しておったわけではありますけれ
ども、一応私
どもといたしまして、
皮下接種は初めてでございますので、本庁内で職員を三十数名につきまして、〇・四CCの
接種をいたしてみたわけでありますが、その際
相当の
反応を示しまして、強度の
発熱を示したものがちょっとわれわれの予測以上に多いものですから、さらに重ねて半量の〇・二CCを
接種をしたところが、〇・二CCの
術式では
反応が見るべきものがありませんでしたので、そこで
実施に移る
計画を立てます際に、特に第一回の
接種は〇・二CCを打つことにいたしたわけであります。不幸にいたしまして、ちょうど五月二十四日の日が
村山、
砂川の
二つの町が
地元の
都合がよろしいということでまず
最初にこの
二つの町の
学童に打つことになったわけでありますが、御承知のようにあとから詳しい数その他はほかの人から申しますが、
相当高率に強い高度の
発熱、
嘔吐、その他
相当激しい
中毒症状を起したものですから、
二つの町では非常に大きなセンセーションとなり、また社会問題となりましたことについては、まことに遺憾に存じております。で、これらの
事故に対応しましては、
東京都といたしまして、極力
医療班を派遣いたしましたり、あるいはその他の必要な
措置を講じたわけでございますが、その間非常に
二つの町におきまして問題になりましたことが幾つかありまして、一体この
接種が何がゆえに行われたのかという点で非常に問題にされました。当時
厚生省から係の人も見えて、
学者の方方がいろいろ率直な御
意見をお述べになったので、無理もないのでありますが、その際
お話しの中に
実験という言葉があった
関係もあって、一、二の新聞に
実験接種というふうに大きく出ました
関係もありまして、
地元の
印象といたしましては、
防疫対策の
一環であるという
考えよりは、何か
自分らの子弟がこの
実験動物に使われたのではないかという非常に強い
印象を受けまして、この点が非常に私
どもに
責任を問われた
一つの
事項でございまして、で、私
どもといたしましては、
厚生省の
考えはどうであったか知りませんが、少くとも私
どもは、
厚生省が今まで三カ年の
間全国にわたって十五万の人に対して
接種をやって、もう
副作用はないのだという
お話でございましたので、
副作用の
試験ではないと思っておりましたものですから、先ほど申し上げましたように、
防疫対策の
一環として取り上げたわけでございましたので、その点はほぼ了解してもらえたのではないかと思っております。その間
町民大会等が開かれまして、非常に私
どもは何べんかこの
方々と
お話し合いをしたわけでありますが、残っております問題は、
医療費については、一応私
どもは
医者にかかった人の
医療費は見ようと思っておりますけれ
ども、こういった
事故のためにあるいは氷を買った、氷袋を買った人もある、あるいは体温計を買った人もあるというようなことで、各
家庭は
相当の出費をした。また、ちょうどあの辺は
狭山でございますので、
狭山茶の今ちょうど葉をつむときでありますので、
子供が寝たための無形のみならず有形においても収入の上に響いた、従ってある
程度の
見舞金をよこしてもらいたいということがありまして、私
どもといたしましては、この問題は軽々に
お答えができないものですから、まだ最後的な返事を保留しておるような次第でございます。現在のところ、その後の
経過はよくいたしまして、先週の初めからもう
欠席児童もなくなりまして、一応今回の
注射によりまする
副作用と申しますか、
反応は一応解消いたした次第でございますし、現在のところその
意味におきましては、おさまっておるわけでございまして、残っている問題はこの
見舞金の問題でございます。
地元の要求といたしましては、
見舞金を
学童のうちで
注射を受けた者全員に対しまして一人
当り千円、私
どもの計算したところのベースで計算いたしますと百二十万円余になるわけでございますが、百二十余万円をよこしてもらいたいという
希望を述べておられます。これらにつきましては、私
どもの気持といたしましては、できればこれは国の
方針に従って私
どもがいたしたのでございますから、何らかの形で国からごめんどうをみていただきたいと思っております。
東京都といたしまして
見舞金を出すことは非常に困難でございまして、その点も御賢察願いたいと思っております。
なお、この第四の問題は、御質問がありますが、今後の
予防接種の
施行についてでありますが、私
どもは、ことに私は長い
間赤痢の
予防接種については興味を持っておりました。従前から
実験に参加したことも昔あったのでございまして、
赤痢の
免疫はできるものと思っております。従って今後も、
赤痢の
予防注射をできるだけ
学者の方に
改善工夫をしていただいて、
実施をいたしたいと
考えておりますが、これについての
意見といたしましては、今回のような
副作用の強いものは困る、ことに行政上の
措置に移す場合には、いま少し厳重にこれらの点を御研究願いまして、
地方庁が安心して使えるようにしてもらいたいと思っております。
それから
予防接種を
施行する場合に、今後において新しい
予防接種、
赤痢に限らず新しい仕事を医学の
進歩、
公衆衛生の
進歩の上においてやっていく場合に、やはりわれわれは神様ではありませんので、予期しない
事故があるわけでございまして、その際にはやはり国が
一つ責任を持ってやってもらいたい。そうでなければ、こういうふうにいたしませんと、
地方庁側だけが
町村に対しまして
責任を持つという形にされましては、やはり危なくて、今後
厚生省から頼まれても一切お断りいたしたいと思っております。
以上、私の申し上げたいことはこの辺で終る次第です。どうもありがとうございました。