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説明員(
鈴木敬一君)
住宅金融公庫におきましては、御
承知の
通り、
昭和二十五年に創設いたしまして、今年の六月で満五ヵ年を経過いたしたのであります。この間
融資総額大よそ八百億円でありまして、これによって建設し得た住宅は大よそ二十五万数千戸に上っておる次第であります。
当初から私
どもの
公庫といたしましては、全般的に窓口
業務は各種の
金融機関に
委託をいたしまして、漸次その数を加えまして、現在のところ全国で大約五百六十ばかりに上っておるのであります。これらの
金融機関の扱いますのは、全般的の
資金の出し入れ、すなわち
貸付の際の
資金供給並びに元利の
回収金の徴収というものを取扱ってもらっておりますと同時に、
公庫の
委託先といたしましては地方公共
団体、これは現在までのところ
都道府県だけでありますが、これらの地方公共
団体に向いまして
借り入れた
資金によって建設すべき住宅の設計、すなわちいかなる住宅を建てるかという設計の
審査をしてもらいまして、それと
貸付承認後において本人が住宅を建設する実況を
都道府県の職員によりまして、現場で
審査をしてもらいまして、その出来型に応じて数回あるいは十数回に分けて
資金を貸し付けると、かような
方法にいたしておりますので、
借り入れた
資金が他に流用せられるということは防ぎ得る
方法であると、かように信じておる次第であります。
そうしてそのうち一番戸数において数の多い
個人住宅の申し込みの窓口は、これらの
委託金融機関でありまして、一定の
業務取扱い規程に基きまして
金融機関が、住宅に困窮する世帯であるかどうか、並びに
公庫から
借り入れて確実に所期の住宅を建て得るかどうか、及び
回収元利金の負担にたえられるかというような諸点にわたりまして、
金融機関が
審査をいたしまして、その
貸付決定前に
公庫、実際には
公庫の全国に九つありまする支所でありまするが、これにそれぞれの
金融機関から
審査及び調査の資料を提供いたしまして、指揮を仰ぐと申しまするか、協議をいたしまして、
公庫の支所において
貸付決定の承認を与える。その承認する場合において、ことごとくの場合に
予定の
貸付口数金額よりもはなはだしく超過する例でありますので、これを公正に、公開の抽せんの
方法によりまして抽せんをいたすことが原則に実際相なっておりますが、その上で
貸付の決定を与えまして、本人は建築に済干するというような組織になっております。
それで私
どもの方の
委託機関の一種類たる
金融機関に対しましては、それぞれ
貸付の際、受付から
審査、
貸付の際にそれぞれの手数料を払い、また公正証書に基きましてこの
債権の管理をいたしまする道程において
回収手数料を支給することに相なっております。並びに
都道府県に対しましては、設計の
審査並びに現場
検査に応じましてそれぞれ手放料を支給する、かような大体の手続に相なっております。割合にめんどうな手続という御非難をことに当初のうちにしばしば受けましたので、努めてこれを簡易ならしむるように改善いたして参ったのでありまして、だんだん
借り入れの
方々が数多くなりまして、
貸付金によって住宅を建設してみる経験を経られた今日におきましては、まず手続上の非難、不平等も承わらないような情勢に相なって参ったと思っております。
ただいままでの実績は、大体概数を申し上げた
通りでありまするが、何分
貸付の
目的が庶民に、市中
金融によらずして住宅
資金を供給するという、先ほ
ども御
質疑御応答の中に現われておりましたように、割合に困難なる
貸付をなさねばなりません。一面ではまた住宅に困窮するということは、一家あげて日夜の悩みでありまして、これが供給の成果をあげますためにも、できるだけ親切丁寧にということを役職員一同心がけておりますと同時に、あくまで
貸付金でありますから、これが
回収につきましては、当然の
目的でありまするように、
回収の実績を円満にあげ得るように努力をいたしておる次第であります。
回収の成績におきましても、
委託先の
金融機関等を督励指導いたしまして、最近の情勢におきまして、年間、
回収期日をおくれずして所定の元利金を納入したパーセンテージは、全国通じまして約九七・五ということに相なっておりまして、これも年々改善の実をあげつつあるような次第でございます。しかしながら、何分常業の
資金を貸すとか、あるいはまた生産設備を貸すとかいうような生産的の
資金でないのでありまして、住宅を建設するという、いわば直接考えますと、非生産的な
資金でありますと同時に、経済界の情勢次第によって債務者の
方々において
償還に困られるような場面もなきにしもあらずであります。たとえばある地方でニシンの漁が非常にないとか、
災害をこうむつたとか、または債務者自身の死亡、失職、数多くの、二十五、六万に上る債務者中においてはいろいろな変遷経過もございますので、今後においても
回収には極力順当な手段によりまして成績をあげてゆきたいと所期いたしておる次第であります。
なお、本
公庫の経理につきましては、当初より不正不当なような結果を生みませんように、
関係者一同固く努力を続けておるような次第でありまして、今回国会に
会計検査院から御報告相なりました御報告の中においても、不正不当の事件は御
指摘に相なっておらぬのでございまするが、その中で一、二御報告と申しまするかございますようでありまするが、たとえば
回収の点につきまして現状を申し上げますると、六月以上一年未満の
延滞口の数は、
昭和二十八
年度末において九百七十件、金額にして千二百二十七万七千円余ということに相なっておりまするが、同じ
年度末の証書
貸付契約高総額に比較いたしますと、この六月以上一年未満の
延滞口は、件数において〇・五九%、金額において〇・〇二%に当るような次第でありまして、同じ計数が、前
年度末における割合と比較いたしましても、若干の成績の向上を見ておるような次第でございます。なお一年をこえた
延滞口につきましては、二十八
年度末において件数で三百二十件、金額で八百七十五万六千円余でありまして、これを同年末の証書
貸付契約高総額に比較いたしますると、件数においておよそ〇・二、金額において〇・〇一六%に当るわけでありまして、これは同様の計数に、前
年度末の数字に比較いたしましてほぼ同様に相なっておりますので、一年おくれて計数が同様に相なっておりますので、
実質上は大体成績が悪くはなかったものと私
ども考えております。もちろんわれわれもこれで決して満足いたしておるわけではございません。また、およそ
債権額は長年期でありまするから、年月を経るごとに何と申しまするか、陳腐化する傾向にありますので、この元利金の
回収につきましては、順当な督励をたゆまず、今後においても努めてゆきたいと考えておるような次第であります。
なお、二十八
年度におきましては御
承知のごとく、七月まで暫定予算でありましたことが
一つありまするし、本予算の成立がおそかったということもございまするが、ことにこの
年度は不幸にいたしまして六月から七月、八月、九月と風水害等の被害が続々起
つたのでありまして、家屋の流失あるいは全壊等の
災害も数少からず全国でございましたので、従いまして建築資材の騰貴、あるいはまた大工賃、その他の人夫賃の騰貴等もありまして、著しく建築費の増高を来たしまして、それがために二十八
年度におきましては、当初
年度開始前に準備として第一回に二十八年三月に申し込みを受けまするし、続いて第二回といたしまして同年五月から六月にわたりまして
個人住宅の募集をいたしたのでありまするが、各債務者におきまして、その建築工事の進捗
状況が先ほど申し上げました値上り等のために思わしくございませんで、やむを得ず
個人住宅につきましては十月にさらに追加受付約二万五千件を当せんさして追加したような次第でありまして、この二十八
年度は私
どもの
貸付の方式によりましては最も困難をきわめた年でありまして、最初の第一回、二回におきましては抽せん当せん後におきまして
貸付決定をいたしますると、それぞれ設計を作りまして、その
審査の申請を各
都道府県へするわけでありまするが、これが今申しました建築費の増高並びに
土地の値上りも
原因の
一つであったかと思いまするが、われわれの考えました以上に期限
通りに設計の
審査申請を願い出られた数が少くありまして、世俗に言う落伍者が多かったのであります。しかしながら、われわれとしてはこの
年度における
事業計画通りになるべくこれを実行いたしたい考えでありまして、今の追加申し込みを受け付けたわけでありまするが、追加申し込みの際におきましては、第一回、二回の申し込みの際に思わぬ多数の棄権者が出たのでありまして、第三回においても相当の棄権者が出るであろうという予想をもちまして、
予定の金額一ぱいにまでは建設を実行してもらいたい念願で相当数を割り当てたのでありまするが、この第三回の追加申し込みの際におきましては、一般物価が
災害当時一時的に著しく高騰いたしましたものが落ちついて参りまして、物資によりましてはかえつて値下りするような傾向すら出たためもありましようか、また住宅獲得の熱意に燃える必要性のある
方々の多かったためでありまするか、第三回の申し込み受付をしました結果は、予測ほどの棄権者がありませんので、いわば思いのほかに多数の方が満足な建築工事の促進をみたというような事実がこの年にあったのであります。
一体
公庫の
事業はお
貸付はいたしまするけれ
ども、個々人の建設能力に左右せられることが非常に多いのでありまして、個々人と申すのは、債務者だけの問題でありませず、その関連する建設業者等のことをも含めまして、それらの人々が誠心誠意、熱意に燃えてやられましても思い
通り建設ができんこともありまするし、またただいま申しましたような建設費の横ばい、あるいは若干の値下りでもありますると、意外に多数が進捗する、こういうような情勢に左右せられる次第でありまして、
検査院から
事業計画よりもよけいできたと認められると、こういう御感想を承わつて、これはしごくごもっとものことでありまするけれ
ども、またわれわれとしましては見通しが正しく現われてこなかったということは大へん遺憾に存ずる次第でありますが、直ちに翌
年度以降におきましてこれらの調整をはかりましたために、
昭和二十九
年度末における累計におきましては、二十八
年度以前から二十九
年度末までの累計において、おおむね
予定の
事業計画通りに調整し得た結果をおさめておりますることをここにあわせて御報告を申し上げておきたいと思います。
もう
一つ会計検査院からの御所感があるのでありますが、これは二十八
年度末において相当な利益金が出た、たしか九億二百十九万円の利益が出たが、
政府納付金をさらに納付しなかったと、こういう御
指摘でありまするが、これはよく御
承知下さいますように、
公庫の国庫納付金に関する政令の規定に基きまして所定の経費を差し引きまして、すなわち諸種の損金を差し引いて
規定通り計算をいたしておりますので、そのうち滞貸償却引当金繰入というのが損金として、及び固定資産減価償却引当金繰入、この二つは大蔵大臣の指示を得てその割合において計上することにしておるのでありまして、この年におきましても、大蔵大臣から滞貸償却引当金への繰り入れは
年度末
貸付金残高の千分の十五に相当する額だけを引き当てて積立てるように、こういう御指示があったのでありまして、当該
年度の
貸付金残高六百十一億九千四百が余円に対しまして、先ほど申しました九億余円の利益金は千分の一四・七に該当いたしますので、所定の千分の十五に満たない額でありまするから、利益金
全額を引当金に計上いたしまして損金に立てましたために、剰余金として
政府に納付すべき金がなかった。こういう事実を
会計検査院から御報告下すつたものと了解いたしておるような次第であります。
はなはだ粗雑でありましたが、一応お聞き取りを願つておきます。