○
説明員(
小峰保栄君)
農林省関係の
検査報告事項について御
説明申し上げます。
何分件数が非常に多いものでございますから、ごく端折って御
説明いたしますが、もし御
質問がございましたら、続いてお答えいたします。
まず
検査報告の百五十四ページ以下に全体の
検査概況——食糧、林野を除きまして
一般会計の
検査概況が書いてございます。従来は御
承知のようにいわゆる
公共事業、
災害復旧とか
農業土木施設関係の
公共事業だけに
検査の
全力をとられておったような
実情にございます。昨年から、
公共事業ばかりやっておりましても、その他のものが非常に多いわけでありますので、全般的に手を広げまして
検査をやったわけであります。
まず第一に従来からやっておりました
公共事業のうちの
農林省が
直轄でおやりになった
仕事、
補助事業としておやりになった分でなしに、直接におやりになった
仕事、これも従来はあまり手が及ばなかったのでありますが、昨年、
全国八十四
事業所ございますが、このうち三十五
事業所を選びまして
検査をしたわけであります。そういたしますと、
補助事業で従来問題になっておりましたのに類似の
事項が
相当に出てきておるわけであります。
工事の
出来高不足とか、あるいは数年前に
建設省で問題になりました
架空経理、
幽霊人夫で
予算を現金化いたしまして、それをまた
工事費に還元する、あるいは他の用途に使う、こういうような
架空経理な
ども出てきたわけであります。
それから第二に、
公共団体あるいは
農業協同組合、これが行いました
災害復旧とか
土地改良に対する
補助の
検査でありますが、これは従来先ほど申し上げましたように、ほとんど
検査能力の
全力をあげて
検査していたわけでありますが、昨年も従来に引き続きまして
検査をしたわけであります。
何分にも
工事の
個所が七万一千
個所ばかりございまして、私
どもとしてはようやく六%ぐらい、四千三百
個所ほどしか
検査ができなかったのでありますが、従来と同様の
不当事項というのがたくさんに出ております。代表的なものを申し上げますと、
事業主体が
自己負担をする、これを嫌いまして
請負代金を値切る、その結果、
工事が非常に疎漏になってすぐにこわれてしまったようなものさえあるのでありますが、そういうものが
相当に出ております。それから
公共事業の
補助工事でありますが、これは御
承知のように
検査院の
検査は
事後検査であります。
工事をやってしまって
補助金が行ってから
あとで
検査に回るというのが普通のやり方でありますが、従来これをやっておりましたが、何年たちましても、どうもあまりよくならない。はなはだ遺憾でありますが、そういう
実情にあるわけであります。これを大体大ざっぱに分けますと、
査定のときに、
査定がうまくいかないために出る
不当事項、それから
査定はいいが、
工事の
施行がまずいために起きる
不当事項、こういうふうに大ざっぱに分けて二
通りになるわけでありますが、従来はこの
査定の欠陥による
不当事項というものはなかなか
あとで参りまして毛わからない。たとえばわかっても、
あとから文句を言っても始まらない。
便乗工事なんかは、もうせっかく
工事をやってしまって、でき上ってから、これは
便乗じゃないか、
補助金を返せと言うわけにも実際問題として参りません。それでこれは
早目に
検査をした方がいいのじゃないだろうか、こういうふうなことを考えておりましたところが、御
承知のように、二十八年
災害というのは未
曽有の大
災害で、しかも特例の
法律がたくさんに出まして、
国庫負担率が非常に高くなる、こういう
事態になったわけであります。そこでこれはぜひ
早目に
調査をして、かりに過度の
便乗だとか、あるいは水増しだとか、そういうものがあるならば、
早目に振り落してしまった方がいい、こういう観点から
災害の多かった県を選びまして、たしか十六府県だったですか、このうちのこれがざっと五万六千カ所くらい
災害の
査定がついたわけでありますが、これを選びまして、そのうち二万三千カ所ばかり早期の
調査をしたわけであります。そういたしますと、非常に意外だったんでありますが、二万三千のうち一万六千
余りについて、われわれとして直してもらわなきゃいかぬのじゃないだろうかというようなところが出てきたのであります。いろいろ
査定は、
農林省が
査定権限をお持ちなので、私
どもとしては、
農林省に御注意して
査定を修正していただく、こういう方法をとったのでありますが、今の一万六千七百カ所、全体の
工事費にいたしまして八十七億円というものが減ってしまったわけであります。これは非常に大きな、私
どもの予想していた以上に大きい
金額なので驚いたのですが、今年は昨年の
経験にかんがみまして、二十九年
災害、それから二十八年
災害で、昨年私
どもが見られませんで、しかも
工事に着手していないという
個所が
相当にあるわけでありますが、この未
着手個所、二十八年災の未
着手個所と、それから二十九年災に対する新らしい
査定、これを選びまして、一月から四月までの間、
災害の多かった所を歩いて見ました結果、今年はこの
金額がずっと減りまして、それでも十五、六億円は減るのじゃないだろうかという、こういう予想を立てております。
それから
農林省の
補助金は御
承知のように
種類が非常に多うございますし、
金額も
相当にかさんでおるのであります。二十八年度は
災害が多かった
関係もありますが、
補助金が七百二十六億円という大きな
補助金が出ておるのであります。この七百二十六億円のうち、五百億というのが今申し上げました
公共事業関係、主として
災害復旧でありますが、
災害復旧、それから
土地改良、こういう
公共事業関係の
補助であります。残りの二百二十六億ばかりが
公共事業でない、私
ども俗に
一般補助と言っておりますが、
牧野改良とか、あるいは
農薬の
補助、こういうような
工事関係で
土木工事、
公共事業以外の
補助、これがいわゆる二百
種類ほどあります。そうして
金額にして申しますと、今申し上げた二百二十六億と大きなものになりますが、これは従来は
公共事業関係の
補助の
検査に追われまして全然手をつけていなかったのであります。昨年はこの方面にも手を伸ばしまして、
全国ばらばらに、なるべく各
ブロックごとに
全国にわたって歩いたわけでありますが、約九千八百くらい
町村がございましたが、当時はそのくらいあったのでございますが、そのうち二百八十
カ町村、一県について大体二十
カ町村を見て歩いたのでありますが、そうすると、わずか二百八十くらいだったのですが、二億円ばかり
補助の
不当払というものが見付かったのでありますが、本年も昨年の
経験にかんがみまして、
一般補助の
検査というのは一月から現在まで引き続きやっております。
大体総括的な御
説明はそのくらいにいたしまして、今度個別的なもので代表的なのを
一つ二つずつ拾いまして御
説明いたします。
まず先ほど申し上げました
農林省の
直轄工事、
補助でない、国が直接におやりになった
直轄工事の中から出ました
不当事項、九百三十号でありますが、これは佐賀県の
有明干拓建設虚業所、ここで
架空経理をやっていたわけであります。これは幸い不当な
使い方・たとえばこの前問題になりました北海道開発庁で飲み食いに使った、こういうような
使い方は比較的少い。
工事費を
幽霊人夫なんかで落しまして、
予算を落して現金化して、それをまた
工事に還元をするという、
架空経理としては典型的なあれでありますが、
金額が
相当に大きくなっております。
それから九百三十二号、これは
直轄工事の
施行が非常に粗漏だったという代表的な
案件であります。これは阿武隈川の上流で
ダムを作っているのでありますが、ここで
ダムの表面に水が入る所は石を張ったわけであります。その石を直接張りますと、いろいろすき間が出たり何かしていけないものでありますから、土と石の間に
砕石を入れるわけであります。
砕石の質が非常に悪いために、入れて間もなくもう全部風化してしまっている、こういう
ケースであります。全部これは手直しをしてもらうことになっております。
それから
あとずっと同じような
ケースがございますが、これは共通的に気がつくことは、今申し上げましたのもこれは間組であります。日本の
土建業者としては
一流中の
一流であります。で、この表にしておりますが、ずらっとごらん願いますと、
五大業者と言われるような、皆
一流中の
一流の
業者の
工事の
手抜きとか、そういうのが目立つのであります。これは
建設省関係ではこういうことはあまり身受けないのでありますが、
農林省の
直轄工事では
一流の
業者が
相当に
手抜きをやるということが昨年わかりまして、私
どもとしては驚いたのであります。今年もこの
直轄工事につきまして、昨年
検査のできませんでした約五十カ所、五十
事業所というのを中心に
検査を進めております。昨年
検査をしましたところも合せて見ておるのですが、昨年
検査を済ませたところは非常に
経理がよくなっております。問題がぼつぼつ出ておりますが、これは昨年
検査しなかったところが大
部分でありまして、今年やりますれば、
直轄工事の
経理というのは
相当に改善されるのじゃないだろうかと、こう考えております。
それから少し飛びますが九百五十号、これは印旛、手賀沼のあの大きな
干拓工事をやっておりますが、あそこで使うということで、とてつもなく大きな
機械を作ってしまったわけであります。あそこは地盤の非常に悪い所でありまして、大きな
機械を持っていっても
使いものにならぬ、こういうので、結局これは全体で二千九百万円ばかり金をかけましたが、
使いものにならないので、現在はほかへ移してしまった、こういう
ケースであります。
それから次は
補助事業の代表的な
ケースを
一つ二つ拾いまして御
説明いたします。
何分にも数が非常に多いものでございますから、
一覧表にしてございますが、この中から代表的な
ケースを幾つかここに並べたわけであります。代表的な
ケースも二十件以上はございますが、この中から
一つ二つよって御
説明いたします。
百七十二ページの(3)というのでありますが、これは
災害を受けていないものを含めて
査定がついてしまったわけであります。
架空工事とわれわれ言っておりますが、最も質の悪い
工事になるわけであります。
災害を受けていない
部分を含めて
補助申請をして、それがそのまま通ってしまった。それで金が余ったものですから、これを村の
一般経費に使っている、こういう
ケースであります。
それから次の(4)の飯田の
ケースでありますが、これはやはり
工事の
出来が非常に悪いのですが、これは二十八年
災害で、御
承知のように九割の
国庫補助ということで、非常にこれは二十八年
災害に対しましては
国庫補助率を上げたのでありますが、依然として
工事費の六割五分ぐらいで
工事をやめてしまって、ここにございますように全然市は
負担をしていない、こういうふうになっておるわけであります。
(6)の
名張、三重県の
名張でありますが、これは
建設省と
農林省と同じ
一つの
災害に対しましてダブって、
査定がついてしまった、
補助金を
二つ分もらって、そのままにしておった、
検査の結果これがわかって返えさせる、こういう
ケースであります。
それから百七十七ページの、(11)山口県の佐波郡
出雲村の
ケースであります。これは昨年の
検査報告にも書きましたのですが、今年で大体二十六年
災害は終りますので、総まとめにして書いたのであります。これは新聞なんかに出まして非常に有名になってしまった
ケースでありますが、
一つの貧弱な村に対して七億二千万円、それから裏にございますが、八坂村、これは
出雲村の隣村でありますが、これに四億九千六百万、こういう大きな
査定がついたわけであります。そして村としては、一億円
余り負担しなければならん。この村は大体村税が四千五百万円という貧弱な村でありますが、こういうようなところで一億円以上も
負担しなければいかんような
査定がつくということに、いろいろ間違いのもとがあるわけであります。
工事の
出来は
余りよくない、それから
自己負担もしていない、こういうようなことになっておるわけであります。
それからもう
一つ、(17)の大分の玖珠郡の森町でありますが、これも先ほど申し上げましたように、
請負代金を非常に値切ってしまった。その結果これは
自己負担しないで、百七万円いった中で二十七万円を町の
一般経費に使っている。その報いといいますか、
工事が非常に雑で、ほとんどこわれかかっていた、こういう
ケースであります。
今まで申し上げました
内容は
農業施設でありますが、
漁港の
ケースを
一つ申し上げておきます。
百八十二ページの二であります。愛媛県の
ケースでありますが、防波堤の
災害復旧をしたということになっておりますが、
工事の
出来が非常に悪い。そのかわりに三百八十四万円いった
補助金のうち九十八万円余らしちゃったこういう
ケースであります。
それで大体
公共事業の
事後検査というものについてはざっと申し上げたわけでありますが、先ほど申し上げた
査定の
事前調査のことが百八十六ページ以下にまとめてございます。この中から
一つ、
二つ、代表的な
ケースを御
説明しておきます。
まず百八十九ページの、(2)熊本県阿蘇郡小国村であります。これは御
承知のように、山の中の寒村でありますが、ここへ三億六千六百万円という大きな
査定がついたのであります。
災害も
相当にひどかったのでありますが、これの
内容をみて参りますと、
建設省とダブって
査定がついていたり、あるいは設計が非常に過大になっていたというのが
相当に出てきたわけでありますが、それでダブった一番ひどいのは、あの村の中で北里川という小さい川がありますが、この
復旧事業五千百万円、これは小さい川でありますが、川一本そっくりダブっておった。
農林省と
建設省との両方から五千万円以上の
復旧費がついておった、こういう
ケースになっております。それで先ほど申し上げました三億六千六百万円という
査定の三五%、一億三千万円減ってしまった、ずいぶん大きな減り方であります。
それから百九十二ページの(6)、これは舞鶴の
漁港災害復旧でありますが、御
承知のように
写真をつけて
災害復旧を申請いたしますが、その
写真がにせものだった、よその
写真をつけて出して
査定がついてしまった、こういうちょっと珍しい例であります。
それからその次の百九十二ページの(3)、これは和歌山県の御坊、ここもずいぶんひどく
災害を受けたのでありますが、この土砂の排除ということにずいぶん大きな
査定がついたわけであります。ところが行ってみますと、排除しなくてもいい耕土に非常に向いた土が入っておる所があります。それから被害が軽微でわざわざ
復旧事業をしなくてもいいという所がある、それから
町営住宅の敷地にする、そこまで
農林省の
災害復旧費の
査定がついていたというので、これも
相当に減ったわけであります。
以上で
公共事業関係の御
説明は終りますが、最後に
一般補助、
公共事業関係でない
補助金、これは昨年初めてやってみまして、先ほど申し上げましたように
全国で約二百八十
町村を選んでやったのでありますが、これが私
ども想像していた以上にどうもよくないというので、二億円ほど昨年は出たわけであります。二百三十億のうち、
全国約九千
余りの
町村にばらまかれたわけでありますが、しかし私ともが二百八十
カ町村を
検査しましたら、不当だと思われるものが約二億あった、こういうことになっております。これは非常に小さいけれ
ども、国の
予算としては
相当に大きいのであります。末端の
補助金の
受給者というところへいきますと、非常に小さいものになってしまう、ひどいのは、これは静岡であった例ですが、農家一軒の
農薬の
補助金が一円なんというのもあります。こういうのは全くの
むだ金になってしまうわけであります。そういう非常に小さいものもかなり出ております。百円以下というのは
相当にあるようであります。それからこれは特に昨年は御
承知のように、
災害、
冷害対策とか凍
霜害対策とか、こういう
災害関係の
補助金が
棟類も
金額もかさんだのでありますが、この
災害関係の
一般補助というのが特に悪いようであります。経常的なものについては、かなりうまくいっておるものも多いのでありますが、こういう臨時的な
冷害対策とか何かは
予算の成立が非常におくれたりなんかした
関係もあったのですが、これが成績がよくない、こういうことになっております。
大体ざっとごく大ざっぱでございますが、御
質問がありましたら、お答えすることにいたします。