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説明員(
十河信二君) ただいまは非常に御懇篤な御言葉をいただきまして、私といたしましてまことに恐縮にたえない次第であります。私に課せられた任務は、まず第一に輸送の安全、合理化、赤字のないような独立採算制の企業として福建をするというふうな点であると心得まして、そういう点においていろいろと研究もいたしまするが、また具体的に実施に着手いたしたものもございまして、それらの点を簡単に申し
上げたいと存じます。
第一に輸送の安全をいかにして確保するかということでありますが、これは人的、物的両方面にあると思います。人的方面ではなるべく職員が仕事を楽しんで朗らかにやるということがいい、こう考えまして、そういうふうに指導いたして参りました。物的の方面ではかねて御存じの
通り国鉄の今日の施設ははなはだしく老朽荒廃いたしております。それらの老朽荒廃の施設を更新するにあらずんば、輸送の安全、輸送力の増強ということはとうていできないのであります。しかしながら財政はなはだ不如意でありまして、これらの老朽荒廃した施設をすみやかに更新するという
事態にははなはだ遠いのであります。そこで輸送力を増強して無理の輸送をしない、従って事故をなるべく起さないようにする最も手っとり早い
方法は、車両の不足を訴えられておりますから、車両をできるだけ増強するということであると考えました。予算でお認め願っておりまする点は着々すでに実行いたしておりますが、その上に幸いに金融の方面におきましても幾らかゆとりができており、また車両
会社は仕事が足りなくて困っておるということでありますから、
国鉄は予算では買い取ることはできないが、車両
会社が金融機関から金融を受け車両を作ってくれるならば、
国鉄はこれを借用いたしまして、国民の要望に何ほどでも多くこたえたい、こう考えまして世間でいわゆる民有車両という制度を――制度といえないかもわかりませんが、そういう処置を講じて、ただいま着々進行中であります。この民有車両の計画は今のところでは金額において大体三十億円内外、車両の数で申しますと三等寝台を百両くらいは作りたい。ディーゼル・カーを六、七十両作りたい、それから通風車とか冷蔵車とか、これも世間で非常に逼迫しておってお困りになっておる貨車のうちでも特に需要の旺盛な種類の貨車であります。これらのものを二百両ずつくらい作ってもらいたい、そうすればそれを一々
国鉄で借用いたしまして、予算の都合がついて金ができて買えるようになれば買いとるということで今進めております。
次に、今日までの内外の権威者がいろいろ御研究下さいましたところによって、最も大きな
経営の合理化、輸送力の増強、安全、サービスの向上という点に役立ちまするものは鉄道の電化じゃないかと思います。かつて
昭和二十四年五月に資源局と鉄道審議会、この二つの団体におきまして研究をせられました結果、内閣その他の方面に勧告もしくは答申をいたしております。その
方針に沿うて、
国鉄は電化を進めて参っておるのであります。今日まで終戦後約六、七年の間に七百キロばかり電化が進んで参りました。この電化をいたしました結果、石炭が七十一万トンばかり節約されました。
経営の費用が約二十億円浮いてきております。この
実績を見ましても、電化が非常に鉄道の合理化、財政の改善等に役立つ、こう考えまして、これを取り
上げて促進したいと存じましたが、当時の
調査はすでに数年の年所を経ておりますので、いろいろの周囲の事情が変っておりますから、先月新たに
国鉄におきまして電化
委員会というものを設けまして、部外の権威著にも御参加を願います。また部内においても特に労働組合の代表軒に参加していただきまして、いろいろな方面から検討いたしております。もしでき得るならば私といたしましては来年度の予算の中にその一端を取り入れてもらいたい、こう考えております。私の腹案としてその
委員会に提出いたしておりまする計画は、先刻申しました資源局その他で研究をいたしました線に沿うて、幹線大体三千三百キロぐらいを電化のまず対象にいたしたい。その中でも一番輸送密度の高いところから始めていきたい、まず輸送密度の高いところはそれだけ経費の節約の多いところでありますから、
経営合理化、財政
状態の改善に役立つと思います。この三千三百キロをできるならばそのうちの半分でも実は早く改善したいと思うのでありますが、この三千三百キロの電化に必要な工事費はおよそ千四百四十億円ぐらいかかるのであります。しかしながら電化をいたしますると、
経営の費用が約八十億円節約されます。石炭の節約が二百三十四万トンぐらいに達する見込みであります。この電化をいたしまするにつきましてもいろいろな点において検討を要する事項が多々あるのであります。電源をどうするか、あるいは直流でやるか交流でやるか、あるいは相当長距離電車にするか電気機関車でやるかというふうな種々の技術上経済上の問題がありますが、これはただいま申しました
委員会で熱心に研究を進めてもらっております。おそらく予算の何までに間に合わせてくれることと期待をいたしておるのでございます。そういうふうにやりましても、電化はなかなか急速には参らない。今日までも毎年五、六十キロぐらい進んでおりますので、私はこれを倍以上――できるならば三倍ぐらいの速力で電化を進めていきたいと思いますが、電化をするまでもできるだけその経費を節約し、皆さんに安心して愉快に旅行のできるようにして差し
上げることが私の任務でありますから、輸送密度の非常に高いところは電化することが利益であるということは先刻申しましたが、その次の
程度のところは旅客の方はディーゼル・カー、
貨物の方はディーゼル機関車で輸送することが適当なんであります。一番経済的でもありますから、そういうものをまず取り入れて、電化のできるまではディーゼル・カーにいたしまして、そのディーゼル・カーにしている間に電化を一面においては進めていく、ディーゼル機関車あるいはディーゼル・カーはまた次のところへ持っていくというふうにして進めていきたいと思います。今日までも
国鉄で約五百六十両ばかりのディーゼル・カーを使用いたしております。そのために二十五万トンの石炭の節約になっております。また
経営費は約九億円の節約になっております。ディーゼル・カーにするということも、これも
経営合理化、財政改善の意味においても、またお客さまあるいは従業員の仕事が楽にできるようにという点から申しましても、非常に有利である、こう考えまして、先刻申し
上げました民有車両の中にも、特にディーゼル・カーを相当多量作ってもらいたいということを注文いたしておる次第であります。
なお、組織の点におきましても、私まだ
地方を十分回る
機会を得ておりませんので、
地方のことは十分研究が履いておりませんが、中央の
国鉄本庁内におきまして、御
承知の
通り、局が非常に多く分れておりまして、複雑になっておって、どうも能率が上らない。総裁、副総裁、総裁室
理事というふうな段階になっておりまして、各部局を
担当しておる
理事の間で数局にまたがる仕事がとかく進行がおくれがちになるという
状態にかんがみまして、総裁、副総裁の補佐機関といたしまして、
理事の陣容を強化いたしたい。何と申しますか、常務
理事といったようなものを数名置いて、これを総合的に仕事を進めていくまとめ役というふうなものにしたい。なお、この常務
理事には、でき得るならば民間から人材を迎えて、民間の空気を導入することが必要だと考えまして、そこここ
方々に当って参りましたが、民間で現役として働いておられる
方々は、どうも
国鉄に迎えることが困難であります。いろいろな条件が悪いものですから、困難でありますから、ただいまのところは内に人を求めるのほかはない、こう考えておりますが、しかしながら、でき得る限り民間の人材の御協力を願いたいと、こう考えまして、すでに船舶の方面ではその方の専門の方をお迎えして、顧問という名義でお助けを願っております。そういったような方を得らるるならば、できるだけこの
国鉄内部に局限しないで、広く国民各階層、各方面の御
意見を取り入れ、またいろいろな角度から検討していただけるようにいたしたいと、こう考えまして
方々にお願いをいたしておるような段階になっております。
またこの
委員会におきましてもたびたびいろいろな御注意を伺いまして、
国鉄部内においても、上層ではいろいろなことを考えて注意をしても、なかなか全国に徹底を欠くうらみがあると思います。そこで監察局というものを、従来監察役というものが数名いたのでありますが、これを強化いたしまして監察局というものを作りまして、
経営の合理化が徹底しておるかどうか、綱紀粛正が徹底しておるかどうかということをさらに一段と力を入れて
監督いたしたいとこう考えまして、皆さんにでき得る限り御心配を少くするという
方針で、その方町の組織に若干改善を加えまして、それから洞爺丸、紫雲丸等で大へんな事故を起しましたので、これまた国民に対して申しわけがないと考えまして、その方の組織にも改善を加え強化いたしております。
なお、その他にいろいろな申し
上げたいこともありますが、こまかくなりまして長くなりますから、おもなる点を数点申し
上げまして、皆さんの御批判をいただきたいと存じます。