○曾祢益君 私はこの
協定に対して、承認を与えることに反対するのであります。
元来私
たちといたしましては、この
協定はMSA
協定とは、決して本質的に同一とは
考えておりません。いわゆる憲法改悪による再軍備その他を包蔵するMSA
協定とは違ったものだという感覚でこの
協定を見ておるのでございます。先ほどの質問の際にも申し上げましたように、従ってこの
協定が、ほんとうの自由な意思による経済的ベーシスに乗って、平等なお互いの
利益になることを
協定している内容であるならば、これは内容によって判断すべきものであって、一がいに排撃すべきものとは
考えておりません。従ってそういう意味からいうならば、
日本の貿易の自主性に害を与えないこと、
アメリカの過剰
農産物を受け入れるため、
日本の貿易自主性を阻害するというようなことがあってはならないと思うのであります。さらに
借款について、
日本が国土の開発、
電源開発、農地改革等々に少しでも
借款がほしい、こういう
気持があることはわかりまするけれども、しかし
借款であるから何でもかんでも受け入れていいということにはならないと思います。従って本
協定から出てくるところの
借款に、これまた
日本の自主性を完全に阻害しないというような
条件であることが当然に必要になってくると思うのであります。
これらの見地からいろいろ検討いたしまして、その過程において、私並びに同僚
委員諸君、あるいは連合審査における農林
委員諸君と
政府当局との
質疑応答を伺いますると、遺憾ながらいまだ私の疑点及び不安は去らないのであります。すなわち元来が
アメリカの過剰
農産物を有利にさばこう、その市場を開拓しようという趣旨と、やはり
日本が
自分の自立的な農業政策を貫いていこう、こういうところに、これは相いれないものがあることは、これは単なる観念的な問題ではないと思うのであります。その点と、従いまして農民の不安は解消されておりません。
さらに貿易の自主性についてはいろいろの御
答弁がありましたけれども、これは明確に
日本が東南アジア、あるいは中国大陸を含めたアジア貿易の自主的な展開に対しましては、これは少くともその面から見れば、
一つの制約になることは明々白々たる事実であろうと思うのであります。ひいては
日本の自主的な外交、アジア諸国との友交
関係にも決して累を及ぼさないとは断言できないのでありまして、その点についてはとうていわれわれは満足し得ないところであると思うのであります。
さらに
借款の使途につきましては、これは交渉の経緯に徴しまして、
日本側の自走的な要求は、
政府の努力にもかかわらず、決して十分に達成されてないことは明白でございます。
電源開発もとより非常に大切ではございまするが、本件
協定の一面においては、
日本農業及び農民に対する
一つのマイナス面を
考えるならば、真に自主性のある本件
借款による開発
計画の中心というものは、当然に
農地開発と輸出振興に置かれるべきであることは、これは議論の余地がないと思います。それがいろいろな経緯があり、またそこに
協定上あるいは
付属文書上においていろいろな苦心の跡は見られますけれども、これは
政府の
答弁において明らかな
通り、一回限り、一年限りのこの
協定において今や
現実には
電源開発に六、
農地開発にはたった一という程度の非常に不満足な
借款の使途がきめられている。すなわち、自主性が阻害されていることは、これは言うまでもないところと思うのであります。
さらに
アメリカが得る
円資金の
使い方等についても、何といっても域外調達に対する、あるいは
日本の
ドル取得に関する制約ということも
考えてみなければなりません。かく
考えて参りますると、やはり根本において私の心配しておった点は解消されておらない。
政府は吉田内閣当時の安易な
アメリカ依存
関係、取れれば何でももらっておこうというような外交をそのまま引き続いて踏襲して、何ら改めておらないと言わなければなりません。同僚羽生
委員も、言われましたように、事児童、学童に対する給食の問題もそうでありまするが、一般的に言って一番基本的なことに、
日本の自立経済というものは
日本のやはり自力でやるということを基本にしなければなりません。たまたま外国から援助があると、わずかなそれに飛びついていこうということは、これも多くの同僚
委員から
指摘されたように、今年だけの問題ではありません。
借款を得てやり出した事業は、途中でこれをやめるわけには参らないのであります。従ってわれわれが
借款を受け入れる場合に真に自主性を貫き通すということが、非常に困難になってくるわけであります。
かようないろいろな理由におきまして、私は本件に対して遺憾ながら賛成することに参らないのであります。冒頭に申し上げましたように、以上の理由によって
日本社会党は本件に承認を与うべきではないと判断する次第であります。