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1955-06-23 第22回国会 参議院 外務委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年六月二十三日(木曜日)    午前十時五十二分開会   —————————————    委員の異動 六月二十二日委員郡祐一君及び平井太 郎君辞任につき、その補欠として高橋 衛君及び横川信夫君を議長において指 名した。 同日委員高橋衛君及び鶴見祐輔辞任 につき、その補欠として中川以良君及 び井村徳二君を議長において指名し た。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     石黒 忠篤君    理事            鹿島守之助君            小滝  彬君            羽生 三七君            苫米地義三君    委員            大谷 贇雄君            草葉 隆圓君            中川 以良君            横川 信夫君            梶原 茂嘉君            後藤 文夫君            佐藤 尚武君            曾祢  益君            井村 徳二君            須藤 五郎君            野村吉三郎君   国務大臣    外 務 大 臣 重光  葵君    国 務 大 臣 高碕達之助君   政府委員    経済審議庁総務    部長      酒井 俊彦君    外務省参事官  安藤 吉光君    外務省条約局長 下田 武三君   事務局側    常任委員会専門    員       渡邊 信雄君   説明員    外務省経済局次    長       西山  昭君    食糧庁業務第二    部長      桑原 信雄君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○農産物に関する日本国アメリカ合  衆国との間の協定締結について承  認を求めるの件(内閣提出、衆議院  送付)   —————————————
  2. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) ただいまから外務委員会開会いたします。  農産物に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定締結について承認を求めるの件を議題といたします。前回外務委委員会として質疑をいたしまして、昨日農林委員会からの申し込みによりまして合同審議をいたしました。合同審議は昨日をもって打ち切ったのでありまして、ただいま農林委員会はそれに連関いたしまして開会をしておるようでございます。外務委員会といたしましては前回質疑に引き続きまして御質疑がございましたら御発言を願いたいと思います。
  3. 須藤五郎

    須藤五郎君 政府日本受け入れ態勢の整わないうちに、この協定の批准を非常に急いでおりますが、これはアメリカ国会日程都合に従っておるのであるかどうか。
  4. 下田武三

    政府委員下田武三君) これはアメリカ国会日程関係ではございませんので、アメリカ法律によりまして本会計年度において大統領が外国に農産物を提供するという権限が六月三十日に切れてしまうのでございます。従いまして現物引き渡しは九月まで延ばされておりますが、本元の大統領権限がなくなってしまいますので、ぜひともすみやかに日本としては協定を承認する。そして承認する旨を米国政府に通告いたしまして協定を全うさせるというのが必要だと、そういう事情によるわけでございます。
  5. 須藤五郎

    須藤五郎君 アメリカ国会のためではなく、しかしアメリカ大統領権限に左右されてこれを急ぐんだと、そういうふうに理解してよろしいですか。日本事情によって考えらるベきじゃなく、アメリカ大統領権限によってすべての問題が進められておる、そういうふうに理解していいのですか。
  6. 下田武三

    政府委員下田武三君) 事実的には米国大統領買付を承認する権限が消滅するということになるのでありまするが、しかしこれは日本自体利益から言いますと、その権限が消滅された日には、日本農産物買付または贈与を受けるということが全然できなくなります。また六千万ドルに近い借款をするということも全然できなくなります。ですからやはり日本自体利益のために、急いでいるわけであります。
  7. 須藤五郎

    須藤五郎君 政府はこの協定の有利な点を、外貨で輸入する必要がある農産物を円で購入できること。二番目は贈与された農産物で現在の児童福祉計画の拡大ができること。三番目がただいまあなたがおっしゃった六千万ドル近い額を借款として利用できること。しかもその借款低利長期である、政治的なひもは少しもついていないとこういうふうに述べていらっしゃいますが、アメリカ国内法農産物貿易の促進及び援助に関する千九百五十四年法によって今回の余剰農産物受け入れが全面的に規定されていると私たち考えるのでありますが、この協定との関係説明して頂きたい。
  8. 下田武三

    政府委員下田武三君) 仰せ通りアメリカ法律によって提供を受けるわけであります、しかしアメリカ法律には、アメリカ対内考慮から米国政府としての一定のプリンシプルなり、考え方なりを書いております。これは現実権利義務を発生させる規定というよりは、多分に対内的の考慮からの規定でありまして、そういう点によって日本が直ちに縛られることには相ならない次第でございます。
  9. 須藤五郎

    須藤五郎君 千九百五十四年法の第二条によりますと、この処置はアメリカ外交政策を推進するため余剰農産物々最も効果的に利用すると規定されておる。アメリカ利益だけを主張しておりますが、日本利益と対立する場合、政府はどういうふうに処置されますか。外務大臣がせっかく見えておるのでありますから外務大臣からそういう問題に対しては答弁を願いたい。
  10. 重光葵

    国務大臣重光葵君) それでは私から御答弁申し上げます。アメリカ法律はむろんアメリカだけにこれは適用があるわけであります。日本関係条約によって生ずるわけでございます。そこでアメリカ法律によるアメリカ利害関係と、日本の希望するところと反対になれば、これはむろんいけませんが、この余剰農産物協定それ自身は、これはもうたびたび政府委員から御説明通りに、政治的の関係はないのでありまして、経済協定であります。そこで経済協定範囲内において日本の受ける利益日本も非常に多いと思うのであります。それはまたアメリカが容認し得るところでありますから、ここにこの協定規定しておる範囲内において利害関係の一致ができたわけでございます。そこでこの協定ができたわけであります。
  11. 須藤五郎

    須藤五郎君 外務大臣利害関係が生じた場合は困る、いけないのだという御意見でありますが、それならば協定によりますと、日本借款は一九五五年六月三十日から始まることを明記しております現状から考えまして、それに相当する農産物全額が六月三十日までに日本政府の手に入るものとは私たち考えられません。現物を受取っていないにもかかわらず、借款義務を負うことになるのではないでありましょうか。
  12. 下田武三

    政府委員下田武三君) 現物の引き取りにつきましては付属文書で延長されることが認められております。九月まで延長されております。それで借款の方は現物を受け取るにつれて、現物を受け取る前にアメリカ側が金を支出するわけであります。そのアメリカが金を出したという通報を受けまして、日本側はそれに見合う円を積み立てるわけでございまするから、この円の積み立てということ自体も、今後協定発効後徐々に行われるわけであります。従いまして現物の引き取りのみならず、円の積み立て自体も、六月三十日までに大急ぎでやらなければならぬということは全然ないわけでございます。
  13. 須藤五郎

    須藤五郎君 そうしますると、六月三十日から借款が生ずるということはあり得ないことになるのじゃないですか。私たち現物を受け取って、そうして払い込んで、それに適する円を払い込んで、それで借款が生ずるのであって、しかもその借款は一度に八千五百万ドルの七〇%、六千万ドル近い金が一度に借款になるのじゃなくて、船が一ぱい来れば、一ぱい分がそのつど借款という形になって行くのであるか。その点のことがはっきり説明されてないと思います。
  14. 西山昭

    説明員西山昭君) 御指摘通りに、借款始期が六月三十日になりまして、現実にわが方で利用いたします円資金が入手していないのは奇異のように思われますが、現実に返済すべき円がなくって、借款始期が始まって、具体的に返済をするということになりますればおかしいのでございますが、協定にございます通りに、借款は四十年でございまして、しかもそのうちに三年間据置期間がございまして、現実日本側支払いをいたしますのは三年半後でございまして、そういう意味から申しまして、六月三十日といたしましたのも、必ずしもおかしくないわけでございます。
  15. 須藤五郎

    須藤五郎君 おかしくないどころじゃない、大へんおかしいと思うのですね。(笑声)その四十年ということは六月三十日から始まって、きちんと日にちがきめられておる、まる四十年間というものが。ところが、 あなたのおっしゃるのでは、九月までそれが遅れてもいいのだというと、そこに六月、七月、八月、九月、とにかく三ヵ月、四カ月の開きができる。これでは完全な四十年間の借款ということがもうすでに言えない状態になっておる。なぜそれがおかしくないと言うのですか。
  16. 西山昭

    説明員西山昭君) 借款始期と実際の貸付金の受け渡しとの始期が異なること自体借款条件として何ら差しつかえないと考えておるわけでございます。
  17. 須藤五郎

    須藤五郎君 それは非常な詭弁ですよ。これは九月に終って、全額が、全部の小麦が、農産物日本へ九月に着く。それから始まって四十年間というならばわかる。ところが何にも着かない、品物も何にも来ない。六月三十日から計算して四十年間とあなたたちは言うが、品物が来なければ金の払い込みも何もできないわけですね。そうでしょう。品物が来なくても、日本政府は二百十四億の金を日本銀行に払い込むのですか。どういうことなんですか。
  18. 西山昭

    説明員西山昭君) 現実アメリカ政府勘定払い込みますのは、御指摘通りに売買が行われまして、ドル支払いが行われまして、それに基いて円貨の積み立てを行うのでございます。
  19. 須藤五郎

    須藤五郎君 そうすると船が着くたびに、品物を受け取るたびにそれだけの分を日本銀行に払い込んで行く、こういうことなんですか。
  20. 西山昭

    説明員西山昭君) その通りでございます。
  21. 須藤五郎

    須藤五郎君 そうしますると、四十年間の借款ということにはならなくなると思いますね。三カ月の開きがある。四十年間二百十四億を借りたということにならないではありませんか。
  22. 下田武三

    政府委員下田武三君) この五千九百五十万ドルに相当する借款というものをきめます際に、なるほど現実積み立てば六月末から九月にかけまして、ぽつりぽつりとやるのでございまするが、これは七月一日に二百万ドル、八月十日に六百万ドルというふうに、ばらばらにして借款協定を結ぶということは、これは不可能なことでございます。そこで、もしまだ現実アメリカが金を支出してないのに元本や利子を払うという義務が実際発生するものなら、これは困りますが、しかし借款というのは紙の上で、四十年の長期借款で初め三年間は何ら日本側現実に支払うことが発生しないのでありますから、なるほど、ある二百万ドルについては三十九年七ヵ月の借款、あるときの百万ドルについては三十九年八カ月の借款というように、こまかくやるのが本当かもしれませんが、それはもうテクニカルに不可能なことでございます。そこでこういう長期借款を設定するという際には、初めの三カ月くらいの間にぼつぼつ入るかもしれませんが、五千九百五十万ドルというのは、ここの二、三ヵ月の間に借りてしまうのでありますから、借款のテクニカルの問題といたしまして、借款自体始期は六月三十日にする、こういうことは別に奇異なことでも、何でもないと思うのです。
  23. 須藤五郎

    須藤五郎君 あなたには奇異なことではないが、それでは筋が通らない。理屈に合わない。あなたもおかしなことだということを、あなた自身も認めている。国と国との間にそういうおかしなことがあってはならない。なぜそういうおかしいことをあなたたちは受け入れなくちゃいけないか。ぽんと米が全部きてから、九月の末にでも、はっきり借款の期日としてそれから四十年とすればいいことを、なぜ六月三十日から借款しなければならぬか、そこに問題があると思う。それが日本事情ではなくて、あなたがアメリカ事情においてやられているという点に一つの問題がすでにもう起っているわけです。
  24. 下田武三

    政府委員下田武三君) これは何もアメリカだからこういうことが発生するわけでも何でもございませんで、ほかの国ともし同じような借款を設定して、しかも借款としての金を積み立てることが、一ぺんにどっと全部ができませんで、ぼつぼつとやらざるを得ない場合には、やはり技術上どうしてもこういうフォーミュラによらざるを得ないだろうと思うのです。
  25. 須藤五郎

    須藤五郎君 私はあなたの説明ではその点が釈然としないんです。私の考え方による借款とは、受け入れた農産物が全部処理されて、現金が回収され、自由に使えるときから始まるということのように私たち考える。それまでには相当の期間がかかるのが常識でありますが、この間も借款義務をわれわれは負うのだというのでありますか。
  26. 下田武三

    政府委員下田武三君) この借款が設定されるということは、この紙の上でそういう借款ができるということと、もう一つ債権者がさあ返せといって、この債権を執行し得る力が発生するかどうかという点でございますが、今の問題の始期におきましては、またアメリカにそういう債権執行力はまだ発生しないわけでございます。紙の上で、借款ができるということでございます。
  27. 須藤五郎

    須藤五郎君 先ほどあなたは、その六千万ドル近い金が数回にわたって払い込まれるとおっしゃいましたが、その点をもう一度明確にしていただこうと思います。それからその金はどういう金から出され、品物も受け取らないうちにそういう金が日本銀行に払い込まれるのですか、その金はどこから出されるのですか。
  28. 下田武三

    政府委員下田武三君) 品物を受け取らないうちから金を積み立てるものではございませんで、実際に品物を、日本にやるべき農産物に対してアメリカ政府が立てかえて向うで払うわけであります。これはドルアメリカで払ったぞという通知に接しますと、ああそうかといって日本側では日本銀行食管特別会計から円を積み立てるわけでございます。でございますから、たとえば普通借款の場合に銀行で何億円という金を一ぺんに持ってくるわけにいきません。その場合に、あるいはトラックで分割して持ってき、あるいはこれが一日で完了しないで二、三日かかることがあるかもしれません。ちょうどそれと同じことでございます。何しろ隔たっておりますから、現物引き渡しにも二、三カ月かかるわけでございます。初めはなるほど一時にいきませんのは、これは仕方のないことでございまして、日本で困るのはまだ向う側が金を払ってもいないのに債権を執行するぞと言われたらば、それは困るわけでございますが、しかしまだその執行力は発生しないのでございまするから、その点は私はかまわないのだろうと思います。
  29. 須藤五郎

    須藤五郎君 六月、七月、八月にはどれだけ払い込むのですか。
  30. 下田武三

    政府委員下田武三君) これは協定が発効いたしますと、ぽつりぽつり買付が行われるわけでございまして、ただいまから六月に幾ら、七月に幾らという数字は出せないわけでございます。
  31. 須藤五郎

    須藤五郎君 協定が成立してから買付が始まるというお話ですが、私の聞くところによりますと、もうすでにこの余剰農産物を積んだ船が太平洋をこっちへ来ているということでございます。もうすぐ芝浦に着くということを聞いておるのですが、どうですか。
  32. 西山昭

    説明員西山昭君) 実際の買付手続が最近できまして、まだアメリカ政府からいわゆるパーチェス・オーソリゼーションが出ておりませんので、具体的に本件の適用をいたしまする買付は開始されておらない状態でございます。
  33. 須藤五郎

    須藤五郎君 それではこの余剰農産物としての小麦は、まだアメリカの港を出てないということなんですか。
  34. 西山昭

    説明員西山昭君) その通りでございます。
  35. 須藤五郎

    須藤五郎君 アメリカから今年度来る小麦は、通常貿易品物の上積みとして、この余剰農産物小麦の何十万トン、米の何十万トンというものがされておる。ですから、まず第一に来るアメリカの船は必ずこの余剰農産物であるということが言えると思うのですが、どうですか。
  36. 西山昭

    説明員西山昭君) 通常輸入量協定に基きます買付とは、必ずしも時間的にこの通常輸入量を先にやらなければならないという制約はないのでございます。実際の事情から申しますと、通常輸入量はすでに買付済みでございまして、これの契約完了いたしましたものが、現実に船積みされしまして現在到着しつつある状況と考えております。
  37. 須藤五郎

    須藤五郎君 先ほどからのあなたたちの御答弁を総合すると、日本アメリカに対して農産物代金を、品物を受け取る前に前払いする。そしてそれを日本銀行に払い込む。自分の金を借り入れるということになると思いますが、そういうふうに解していいんですか。
  38. 西山昭

    説明員西山昭君) 協定によります買付手続は、通常手続によりまして買付をいたしまして、この協定関係アメリカ政府アメリカのサプライヤーに対しましてドル支出をいたすわけでございます。ドル支出通知がありました際に、日本側におきまして、関係輸入業者が日銀に円の払い込みをいたすわけでございまして、日本側が契約を完了いたしまして、B、L等の入手をいたします前に円を払い込む必要はないわけでございます。
  39. 須藤五郎

    須藤五郎君 まあアメリカ余剰農産物の性格その他はあとで申しますが、そのような無理な状態のもとにこういう協定が結ばれるということは、私たちアメリカ利益日本が奉仕させられておることである。こういう点は双務協定とは言えないと私たち考えるのであります。それから政府ひもがつかない、ひもがつかないというふうに言っておりますが、交換書簡を読みますと「日本国政府は、随時又は要請があったときは、その決定した個個の計画、各計画に割り当てた借款資金借款勘定状態及び提供することができるその他の関係資料について」アメリカに通報すべきことが義務づけられているのです。これではまるで、貸主であるところのアメリカの思うようにしか金は使えないということになると思いますが、それをひもとは言えないのですか。
  40. 下田武三

    政府委員下田武三君) この交換公文の前提になります本協定自体規定において、合意せられた目的範囲内におきましては、日本側が随意に使用できるということを特に明文の規定をもって書いております。これが昨年の協定と違うところでございまして、この三つ範囲内では日本は自由に使用し得る。しかし人の金を借りておるわけでありまするから、どう使ったということをあとで報告するだけでございます。これはまたいたし方のないことだろうと思います。でございますから、もし自由に使用できないなら、これは仰せのようにひもと言っていいかもしれませんが、これは日本が自由に使用し得るわけであります。ただ人の金を使ったのであるから、こう使ったと言って報告するだけのことであります。
  41. 須藤五郎

    須藤五郎君 あなたは人の金だと言いますが、借りた以上は自分の金なんですよ。(笑声)借りておいてまで、なお人の金だと思うところにおかしい考え方があると思う。そこにひもがついている。あなた方の気持の中にひもがついているわけです。決して人の金じゃない。借りた以上は日本の金です。借りた以上は、自分がどう使おうと、アメリカのとやかく言うべき筋合いじゃない、その点どう考えているか。人の金というのはどういうことですか。
  42. 下田武三

    政府委員下田武三君) わかりやすい例で申しますと、私がたとえば洋服屋から洋服を買うといたします。しかし、その洋服代金は、私はお前にやるのはいやだ、もう一つラジオを買いたい、だからラジオを買うために、洋服代金をおれに貸しなさい、そうして一方、ラジオは月賦で買うというわけです。これはですからビジネスとしてはいいものだと思う。ですから洋服代金を払うという以上は、まだ向うには渡さなくても、借りたことにしても、洋服屋さんがとるべき金であります。それをただ自分ラジオを買いたいために流用しておるにすぎないのでございます。でございますから、これはやはり人の金であります。(笑声
  43. 須藤五郎

    須藤五郎君 冗談言っちゃいけない。そうすると、この金を借りるのは単なる借款でないので、何々に使いますからということが条件になっている借款なんですか。
  44. 下田武三

    政府委員下田武三君) 洋服屋に払う金をラジオを買うために借りますと言って、ラジオを買うという大きな目的では合意をしております。しかし、そのラジオはどういうものを買ったとか、あるいは部分品をどういうものを使ったとかいうことをあとで報告すればいいというだけであります。
  45. 須藤五郎

    須藤五郎君 ラジオとか洋服屋とか、そんなばかげたことを例にとらないでも、この問題ではっきり説明できるはずです。そういうふうに話をそらさないで、はっきり人の金だという気持々持っているという点をもっとはっきり説明して下さい。洋服ラジオではわからない。あなたが借款した金は人の金だという気持をもっとはっきりして下さい。
  46. 下田武三

    政府委員下田武三君) 洋服というどころの話じゃございません。日本がどうしても輸入せざるを得ない食糧を買うわけであります。その買った代金を売り主に渡さないで、一方電源開発が必要だ、農地開発が必要だから、そのために貸せと言っておるわけです。でございますから、ほんとうはアメリカ代金として返すものを、日本都合電源開発農地開発に借りておるわけなんです。
  47. 須藤五郎

    須藤五郎君 わかりました。そうすると、この金は電源開発農地開発のためにということをはっきりして、そうして借りたということなんですか。
  48. 下田武三

    政府委員下田武三君) 仰せ通りでございます。協定合意された目的というのは、この三つ目的でございまして、その使用目的だけにつきましては合意ができております。が、しかし、その範囲内では自由に使用し得る。
  49. 須藤五郎

    須藤五郎君 早くそういう説明をすればいいのですよ。そうすると、やはりこのひもは、電源開発に使え、農地開発に使えというひもがついておるということがはっきり言えるわけです。それでもひもじゃないのですか。
  50. 下田武三

    政府委員下田武三君) これは電源開発農地開発がいやなことなら、ひもと言えましょうけれども、これはやはり日本再建のために、日本が希望しておるところに使うのでありますから、これはひもというよりも、むしろ日本利益のためになる、こう思います。
  51. 須藤五郎

    須藤五郎君 それは考え方の違いです。そうすると、アメリカ考えに反して日本が使用した場合はどうなるのか、またそういうことができるのかどうか。
  52. 下田武三

    政府委員下田武三君) 農地開発電源開発につきましては、もうアメリカが合点を与えておりまするから、その範囲内でやるにおきましては、アメリカ側は何ら異存の出るはずがございません。
  53. 須藤五郎

    須藤五郎君 私はそういう質問をしたのじゃないのです。電源開発農地開発に使えと言っている。その使い方内容等も、アメリカが希望しないような使い方をした場合は文句が出る。電源開発アメリカが金を百八十二億五千万円を出すと言う。ところがその金の中には、アメリカ機械を買えとか、アメリカ設計図を買えとか、いろいろなことが起ってくるだろうと予測するのでありますが、そういうことに使わない、日本独自でやるのだと言って、そういう問題は、アメリカからのいろいろな注文を日本が全部はねつけた場合、それはどうなるのか。  それからまた電源開発とか何とかいう問題以外に、日本がその金を使った場合、どういう結果が起ってくるのかということです。
  54. 下田武三

    政府委員下田武三君) 例にお示しになりました機械でございますとか、設計でございますとかは、これはもう日本が好むように使ってよいわけでございます。何もアメリカからのみ機械を買う義務を負っておりません。現にアメリカ以外の国から開発用機械を買っております。しかし仰せの後段の方の、目的以外に流用するということは、これは約束と違いますから、これはアメリカが文句を言うと思います。目的範囲内でございましたら、日本が思うように使えるわけであります。
  55. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) 須藤君、大体質問は尽きたように思いますが、あなた一人で時間を……。
  56. 須藤五郎

    須藤五郎君 もう少しお許しを願いたいと思います。
  57. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) それではもり少し。
  58. 須藤五郎

    須藤五郎君 まだ重要な問題が多々残っておりますので。
  59. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) 今までも重要でしたでしょうけれども、どうぞなるべく少く。
  60. 須藤五郎

    須藤五郎君 この問題まだもう少し私は解明したいのです。自分借款した金を、もしも違ったものに使った場合、その金はアメリカの手によって取り上げられてしまうのか、以後一銭も金を出さぬということをアメリカが言い出すのか、その場合、日本政府はどうするつもりかという問題。  それからもう一つは、この借款は日銀のアメリカ勘定積み立てられ、アメリカ日本政府の要請があったときに随時支出することになっておりますから、アメリカはきんちゃくのひもの締め方次第で、日本計画に対してどうにでもできるのではないか。このような金を借款と言うことができるでしょうか、どうでしょうか、私たちは理解ができないのであります。
  61. 西山昭

    説明員西山昭君) アメリカ勘定積み立てられました円資金を、日本側の必要に基きましてこの三計画に使用いたします場合は、アメリカ側は何らの制限なしに日本政府に引き渡すことに相なっておるわけでございます。
  62. 須藤五郎

    須藤五郎君 アメリカの余った農産物を押しつけられて、その農産物の処理を無償で日本政府が代行させられ、集金もできないうちに立てかえ払いをして、しかもその金を借りて、使い道まで制約を受けるこれが今度の借款の性格だと思うのです。こういうのを、私たちは買弁政治だと言っているのです。この金を、借款の性格は、確かに私たち買弁的だと思います。  次にアメリカは、八千五百万ドルの三〇%、すなわち九十二億円をアメリカ側で自由に使用し得ることになっている。その結果は、特需はもはやドル獲得の手段ではなくなり、アメリカに対して日本が輸出した品物さえこの金で払われ、日本の外貨事情はますます悪くなると思いますが、どうですか。
  63. 西山昭

    説明員西山昭君) この三割のアメリカ側が使用いたします分の配分につきましては、五百五十万ドルが域外買付に使用されることに相なっております。域外買付の使用分につきましては、御指摘通りに、間接にはドル収入の削減となる結果を生ずるおそれもあるわけでございますが、今後のアメリカの域外買付方針を見ますと、従来ほど大規模に継続的に行われないように見受けられますので、アメリカ側が本件交渉に際しまして、域外質付分を非常に大規模に要求しましたのにつきましては、日本側ドル収入の削減になるということで相当強く反対しまして、結局五百五十万ドルの金額に圧縮したわけでございます。その他の品目につきましては、家屋の建設に千七百万ドル、その他いろいろございますが、総体といたしまして、域外買付分の金額は比較的僅少にとどまりまして、そのために特にドル収入が大規模に減るという工合には考えていない次第でございます。
  64. 須藤五郎

    須藤五郎君 その考え方は少しあまいと思いますね。必ずこういうことをされて、この九十二億円は日本で何でも使うということになったら、日本アメリカから受けるドルというものは、ほとんど不可能になる。だから日本ドル収支というものは非常に悪くなる。これは明らかです。だからあなたたちは、この問題をどうも公けにしたがらなかったというふうに私は見るのです。しかも、この公式議事録を私が見ますと、この三〇%の金が一九五七年一月一日に、またはその前に使用されなかった場合は、アメリカの債務支払いに使用されることになっている。これがちゃんと議事録に出ております。これではますます日本にとって重大な結果を生ずると思います。一九五七年一月一日前でもアメリカの債務にこの金が支払われるということが、議事録に載っている。
  65. 西山昭

    説明員西山昭君) ただいま御指摘の一九五七年までの使用に使わなかった場合と申しますのは、域外買付の五百五十万ドルに相当する分でございまして、これにつきましては域外調達そのものが御指摘のようにドル収入の減少になる等の事情も勘案いたしまして、現実に支払わなかった場合には、いわゆるアメリカの文化啓発関係のインフォメーションサービスに使うということを規定しているわけでございます。また域外買付に当りましては、アメリカ合衆国または日本の経済に悪影響のないように使うことには相なっておる次第でございます。
  66. 須藤五郎

    須藤五郎君 日本の経済に悪影響のないということは、そんなことは空文であって、事実アメリカがこの残った金を日本アメリカ品物を売った代金にまでこれを払うというようなことになったら、日本ドル収支というものは大きなマイナスになってきますよ、これはもう明らかです。こういうばかげたことをあなたたちは約束しておるのであって、これは重大な問題だと私は思うのですが、この重大な問題をなぜ協定の本文の中に入れて明示しなかったか、これは議事録にとどめて国民の前にこういう重大な問題を隠そうとしてあなたたち考えておったのじゃないか。
  67. 下田武三

    政府委員下田武三君) 別に国民の前に隠すようなつもりは毛頭ございません。この域外調達の規定を設けましても、これが一定期間までに終らないことも予見し得るのでございまするから、終らなかった場合にはこれはアメリカが持っていくのではなくて、日本国内で使え、日本国内で他の目的のために使えという規定なんでございますから、これはむしろ日本に有利な規定だと思います。
  68. 須藤五郎

    須藤五郎君 それならば三〇%の金の使い道を五項目に分けてあなたたちは本文に入れておる、この本文の中に議事録にある覚え書のようなものをなぜ入れなかったか、その入れなかった点を私は追究しているのです。入れておくべき性質のものです。なぜ入れなかったか。
  69. 下田武三

    政府委員下田武三君) 城外買付目的とそれから日本における合衆国債務の支払いという大きな頭は協定自体に出す必要がありますが、そのあるものが一定期間内に使われない場合にどうするかというこれは細目になりますから、第七条の実施の細目は政府間できめるということにいたしまして議事録に落したわけでございます。これは条約の通例のフォームであります。
  70. 須藤五郎

    須藤五郎君 細目でというが、三〇%の金の使い途を(1)(2)(3)(4)(5)というように非常に小さいところまで分けているのです。一億五千万円の金までちゃんと分けておる、それになぜこういう大きな問題をはずして本文に入れないで議事録にとめているかという点です。
  71. 下田武三

    政府委員下田武三君) この域外買付のために金を使わなかった場合には、また別のアイテムに使うというようなことでしたならば、これはやはり協定に並列して書くべきだと思うのですが、しかしすでに協定に掲げておる他の項目へ流用々認めるわけですから、これは一段下りました規定ですから議事録にいたしたのであります。
  72. 須藤五郎

    須藤五郎君 そうするとあなたたちはこの金がどういうふうに使われようと、アメリカの債務支払いにこれが全部——アメリカ自分が使おうと思えば、ほかのものに使わなくてもいいです。すべてを債務支払いにあてることもアメリカの意思によって可能なんです。そういうことをされても一向さしつかえないというのですか。
  73. 下田武三

    政府委員下田武三君) それはとんでもございませんことで、そういう理由を認めましたのは城外買付だけについてでございます。
  74. 須藤五郎

    須藤五郎君 この覚書ではそういうふうに書いてないでしょう。この金が残った場合は、何のために……。
  75. 下田武三

    政府委員下田武三君) 議事録にこう書いてあるのでございますが、協定第五条1の(2)の目的のために使われる資金と申しますのは、城外調達のための資金でございます。
  76. 須藤五郎

    須藤五郎君 その金を何もアメリカはその通り五項目に分けられたように、そのパーセントのように使わなければならんという理由はないでしょう。それはアメリカの自由意思でしょう。だからその金が残った場合は何に使おうと自由だと言っているんですから、結局その金の使途というものはアメリカの自由意思ではありませんか。何も拘束されるものじゃないでしょう。
  77. 下田武三

    政府委員下田武三君) 議事録に書いてございますように、協定第五条の1の(2)の目的のために、つまり域外調達のために割り当てられた資金が五十七年の一月一日までに完全に使用されなかった場合は、その金は何でもいいというのではございませんで、これはまた五条1の(5)つまり日本国内におけるアメリカ合衆国の債務の支払いに充てる……。
  78. 須藤五郎

    須藤五郎君 アメリカ合衆国日本の国内における債務でしょう、それは。
  79. 下田武三

    政府委員下田武三君) そうです。
  80. 須藤五郎

    須藤五郎君 日本国内の債務という問題の中には日本アメリカヘものを売ったその債務も入るんじゃないですか。
  81. 下田武三

    政府委員下田武三君) その第五条の1の(5)というのは、合衆国の債務というものにつきましては別に理由がございまして、これはアメリカ大使館の支払う金、特に文化関係でございます。
  82. 須藤五郎

    須藤五郎君 それではそういうふうにはっきり規定されているんですね。
  83. 下田武三

    政府委最(下田武三君) 交換公文に書いてございます。
  84. 須藤五郎

    須藤五郎君 アメリカは余った小麦日本の産業を押え、日本中をアメリカの兵器廠にしようとしておる、これが協定の狙いであると私たちは思っておる。  次に、政府は今日ソ国交回復の交渉を進めておると思っております。その目的の中には経済交流も大きな目標となっていると思いますが、有利な条件であれば、日本の自主的な判断に基いて貿易や借款などもソビエトとの間に進める意思があるかどうか、外務大臣にお答え願いたい。
  85. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 今国交の正常化をやるために全力を尽しておるわけであります。さような問題は国交の正常化をまずやりましてのちにだんだん考えていきたい、こう考えております。
  86. 須藤五郎

    須藤五郎君 アメリカの一九五四年法には、非友好国とはソビエトその他のいわゆる共産圏諸国であると規定し、それとの経済関係を制限していると思うんです。この協定もこのことを全的に承認していると思うんですが、ソビエトと経済関係を結ぼうとしているやさきに、この協定政府が調印したことは日ソ交渉を破綻させることにはならないでしょうか。
  87. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 私はそうはならんと思います。そしてまたそうならんためにさような法律の趣旨に全面的に協力をするというわけではございません。この協定規定されたことによって日本は拘束を受けるのでありますから、さようなことにはならんと思います。
  88. 須藤五郎

    須藤五郎君 この協定の中には、今度のやはり共産圏には、非友好国にはこの品物を送ってはならないし、製品も送ってはならんという規定があるんですね。こういうことをすることは日ソ貿易の上にもまた日中貿易の上にも大きな障害を来たすと思うんです。で、これが非常な日ソ間の国交回復の障害になりはしないかということを私たちは心配するんです。それに対して外務大臣がいかに処置をしていこうというのか、そのお考えを伺っておきたいんです。
  89. 重光葵

    国務大臣重光葵君) それは今私が申す通り余剰農産物を受け入れてもさようなことには私はならぬと思います。ならぬように協定にできておる、こう思います。
  90. 須藤五郎

    須藤五郎君 ソビエトは本年二月二日インドと製鉄所建設のための借款を結んだ、この点は皆さんも御存じの通りです。それによりますと、年産百万トンの製鉄所建設費用の全額をソビエトが負担して、一切の技術援助を行なって、これを建設操業し、その代金をインドが十二年で買い取ることになっております。しかも金利は二分五厘。高碕さんはアメリカからの金が四十年間、利子は二分六厘、安いと言っていますが、ソビエトとインドの借款は金利は二分五厘です。将来の経営参加は少しも要求しておりません。そういうことは条件をつけておりません。その建設に要する資材もインド国内で調達できるものはすべて国内で買い入れ、資材の輸入はやむを得ないものだけに限っております。アメリカ協定と比較するならば、おのずからその性格がはっきりすると思うのです。日本も早くソビエトと国交を回復して、アメリカとの協定と比べると遥かに優利な経済関係を国民の利益のために結ぶ必要があると思いますが、政府はソビエトとの間に国交回復を結ぶ決意を持っていらっしゃるかどうか、伺っておきたい。
  91. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 今申し上げました通りに、ソ連との間において国交の正常化をなるべく早く実現して、いろいろその後の両国の関係を良好ならしめる処置を考えたい。まずこの正常化ということに全力を尽したい、こう考えております。
  92. 須藤五郎

    須藤五郎君 もう一点、アメリカは本年一月末七十二億ドル余剰農産物をかかえて、農業恐慌の危機に襲われております。この恐慌から抜け出すために、日本に対してもこの協定に示されたような処置に出たのでありますが、東南アジア諸国に対しても使節団を送って自国の農業恐慌の肩がわりをさせようとしております。その結果、タイの米の輸出は一年間で二二%も減り、ビルマでは現在売れ残りの米が百万トンにも達して莫大な財政赤字にあえいでおります。政府はこのような東南アジアと貿易関係を結ぶことにより、日本経済の打開をすることを方針としていらっしゃいますが、今回の協定を結べば、ますますその実現は困難な状態になると思いますが、この問題に対しまして、高碕経審長官の御意見を伺っておきたい。
  93. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 御説のごとく、東南アジアとの貿易を増進していき、提携を密にするということは日本の国策でなければいかぬと思います。そういうふうに進んでいくべきものだと思いますが、御承知のごとく、この国々は大体原料生産国でありまして、ビルマにいたしましても、タイにいたしましても、どこにしても、米及びそのほかの原料品を主として産出しておりますから、こういうものを日本が受け入れるということは日本の貿易を増進する上において非常に大事なことと存じますから、その意味から申しますというと、できるだけアメリカ方面からは米なんというようなものを買わずに、この方面から米を輸入して、そうして、こっちのものを売るという方針にいかなければならないということは私は当然だと、こう存じております。しかるに、御承知のごとく、日本の米の消費の上から申しまして、昨年度におきましてビルマ、タイ等から持って参りました米については、相当品質の上についても問題が起っておる。それでなおかつ足りないというので、アメリカ側の米は、私は専門家でありませんけれども、タイ、ビルマよりもいいということになっておりますから、それを取ってきようではないかということで、農林当局は十分検討いたしました結果、取ったのでありますが、昨日ですか、私この席上で承りまして、ビルマが非常にいい、しかもそのやり方については非常な欠陥があるというふうなことで、ちょうど昨日私どものビルマの方に行っております外交官が帰って参りましたので、その際私はそのことを一番先に聞いたのであります。昨日のお話のような点を裏付けしまして、私は非常に心強く感じたのであります。今回の対米折衝に当りましては、もし来年余剰農産物を取るということになれば、その辺のところも十分考慮に入れてやっていきたいと存じますが、ただいまのところでは、今日決定したことでございますから、これはどうか御承認願いたい、こういうことでございます。
  94. 須藤五郎

    須藤五郎君 そこで高碕さんの御意見を伺ったのですが、けっこうな考え方だと思います。このビルマ、タイの米が非常に質がいい、そうして値が安いということはもうすでに御存じであるべきはずのものなんですが、それを昨日まで御存じなかったことは、これはおかしいと思う。特にあなたはこの間A・A会議に出席なさって、あの辺の調査もよくして話し会いをしてこられたはずだと私は考えておるわけです。はなはだその点私は遺憾だと思うわけですが、それと比べて中国の米は、中国は、昨日も申しましたが、二十万トン余裕があるといっておる。それで値段も安い。それを何を好んで東南アジア貿易の阻害になるようなアメリカ余剰農産物を高い値で——これは安くない、アメリカ余剰農産物の米は一トンについて百七十二ドルで、ビルマから買うよりも中国から買うよりも高いのです。なぜこのような米を昨年から十万トンもよけい買わなくちゃならぬかということ、これが私腑に落ちないわけです。あなたも腑に落ちないようです。来年からこれを訂正するとおっしゃいますが、本年大きなマイナスをこの法案によってわれわれ受けなくちゃならぬ。私たちがこの法案に対して非常に賛成できてない点がそこから出ているわけですが、この法案は、この協定双務協定だということになっておるのですから、日本にそのような大きなマイナスがくることならば、なぜその点を訂正しようとなさらないのか。もう約束してしまったのだから仕方がないから、来年まで目をつぶっておれということでは、これは政治家として政府の責任者としてそういうことは国民の前に言えないはずじゃないか、こう考えますが、どうですか。
  95. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) これを実施する上におきましても、すでにその計画等も全部ついておることでありますので、私はまだ値段がタイ、ビルマはあれだけの値段で安く買える、こういう数字があるということははっきり私はまだ検討いたしておりませんから、何ともお答えいたしかねますけれども、私の聞いております範囲におきましては、朝鮮等の米を引受ける、これは朝鮮等をやらなければならぬと思うのです。朝鮮との提携ということはより大事だと思っておりますから、それでその方面の米を取れというふうなことも聞いておりますが、これは何でも百八十ドルというような値段と聞いておるのでありますが、そういうふうなことからいたしまして、必ずしもアメリカの現在予定しておりますFOB百五十ドルというものは非常に高いものだということにつきましては、私はさらに検討する必要があると思いますが、この値段も確定したものでなくて、世界の競争値段でとるというふうな条件になっておりますから、その辺等につきましては、今予定とすれば十万トン、千五百万ドル、こうなっておりますが、これは千五百万ドルという金額はきまっておりますが、これが十万トンになるか、あるいは値が安くなれば十二万トンになるか、十万五千トンになるか、これはまだその数字は確定していないわけなんでありますから、できるだけ今後の値段の折衝等につきましても、よく検討いたしたいと存じます。
  96. 羽生三七

    ○羽生三七君 今の須藤委員の質問上関連してですが、昨日政府が配付した資料によると、先に愛知前大臣の渡米した際の話し合いと、今度の協定案との比較対照が出ておるわけですが、今高碕長官はなるべく現状に即していろいろ考慮されたというお話がありましたが、当時の愛知前大臣のときには米はゼロになっておる。今度これが大きく表面に出てきたわけですが、この事情の変化を御説明願いたいのです。どうして、前の愛知大臣が渡米した際に問題にならなかったものが今度新しく米を入れなければならなくなったか、その事情説明を願います。
  97. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 大体米をとるとかとらぬとかいう問題は、前内閣当時からきまっておったのであります。その当時の交渉のことにつきましては責任者からよく経過を報告いたしまして、私が受け継ぎましたときには、これだけのものをとるということになっておったのであります。その経過は一ぺん責任者から御報告いたさせます。
  98. 西山昭

    説明員西山昭君) そこに配付されてあります資料で、米が入っていない資料と申しますのは、おそらく前内閣当時の、最初にアメリカ側に出しました希望的な品目ないしは数量等について書いてあると思いますが、具体的に金額及び品目それから日本側が七割使ってアメリカ側が三割を使うという決定は、十一月の初旬に愛知通産大臣が渡米された際に決定した次第でございます。
  99. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) 曽祢委員から前々から申し入れがあるのでありますが、須藤委員どうですか、お譲りになっちゃどうですか、議事の整理の都合で、あまり一人が御占有になることは御遠慮いただきたいと思うのですが。
  100. 須藤五郎

    須藤五郎君 わかっております。
  101. 曾禰益

    ○曾祢益君 すでに各委員からの質疑がありましたので重複する点があると思いますが、私はこれは高碕大臣と外務大臣に申し上げたいのです。MSA協定とはこれは趣旨が違うと思うのです。従ってあくまで相互の利益が合致する点において必要ならばこれを受け入れるという基本的な態度においてはわれわれは必ずしも反対すべきものじゃないと思う。ということは、言いかえるならば農産物の購入に当っても、日本現実に必要なものがいい条件で、そうして購入ができるかどうか、それからもう一点はこれに関連して借款のうまみというものが言われておるのでありますが、借款そのものがほんとうに自主性のある日本利益に合致した方面にのみ使われる、こういうことが二つ成り立つならば、これは一がいにMSA協定みたいに政治的、軍事的な立場から反対すべきものではないと私は思う。かように考えるのですが、しかし現実にはそこにむずかしい問題があるのは、言うまでもなく、アメリカの方は自分余剰農産物の販路を拡張するということが元来目的なんだ、そうすると、ある程度まで同種の農産物を作っておる日本の農業の立場からいえば、これは競合もあり、場合によっては圧迫もある、そこに目的が必ずしも合致しない問題があり得るわけですね。さらに日本の貿易の自主性からいっても、ただいま須藤委員の応酬の中にもありましたように、日本としては何とか経済的にも貿易の自主性と、市場をなるべく減らさないようにする、あるいは東南アジアとの政治的な観点からも、東南アジアから主として買いたいという農産物を、それとの競合関係とを十分考えてゆかなければならない、私たちはかような見地から考えてゆきますと、どうもやはりその問題が出てくるのじゃないか、そこでまず農産物そのものに即して考えた場合に、これは言うまでもなく、日本アメリカから何か贈与の話があるから、よけいな分まで買おうということじゃないと思う。あるいは贈与、学童の給食等の贈与の分だけは、これはエキストラと考えられるかもしれませんが、日本のほんとうに必要な主要食糧農産物、その他葉タバコを入れてもいいでしょう、綿花を入れてもいいでしょう、これがほんとうに日本の輸入計画をオーバーして買うというのじゃないと思うのですが、その点は高碕長官どうですか。
  102. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) アメリカ余剰農産物を受け入れるにつきましては、日本の農業計画にそごを来たさない、これに障害を来たさないということは十分考慮してゆきたいと思いますが、先ほどお話のようにMSAとはよほど違っておりますが、本来一千五百万ドルの贈与を受けましたものにつきましても、その中に脱脂乳があるじゃないか、これは日本の乳製品工業に非常に障害を来たさないかというお話があったのでありますが、私はそうとっておりません。日本の学童にできるだけ乳製品を安く食べさすということは日本の食生活を改善する上において非常に大事なことである。従ってこの学童にできるだけ広く安くこれを供給するということのために、これを受け入れても、やがては日本の畜産物、酪農工業を大きくする一つの販路を開くことであるというふうな意味からいって私はこれを受け入れていい。ただおそれておりますことは、それが市場に流れて、一般市場に流れて、そうして日本の酪農業者の価格をくずす、こういうふうなことになっては相ならぬとこう存じまして、その点につきましてはさらに一そう厳重にこれを取り締る必要がある、こういうふうに考えております。それから大体これを受け入れますにつきましては、二つの欠陥があると私は初めから考えておるのであります。それは絶対量からいって、日本農産物がふえるということは、日本農産物の増産計画一つのマイナスにならないか、こういう点はよほど考えなきゃならぬ。これは十分慎重に考慮をしてきめなきゃならぬ問題だと思いますことと、もう一つは今の東南アジア貿易に、これはじゃまになるというふうなこともあるようなこともよほど考慮して行かなきゃならぬ。こういうふうなことはあらかじめ私の考慮に十分置いておりました結果、そのプラスの面、マイナスの面、特にマイナスの面は二つのマイナスの面をよく考慮したのでありますが、一方プラスの面から考えますというと、これは余剰農産物を、アメリカは困っておる、日本にしてみると足らないのだ。これは国際間において相互長短相補うというところの立場からいっていいことだと、そうして日本の方におきましては、これによって長期の低金利の金を入れて、そして計画が完成するということになればいい。こういうことで私はこれは日本のために有利だとこう決定したわけなのでございます。
  103. 曾禰益

    ○曾祢益君 脱脂牛乳については、これは昨日連合審査の際に責任ある農林大臣から、確かに日本の酪農業を圧迫ずるものであるということは、はっきり言っておられるのであります。その点についてはまあ議論がありまするが、私が聞きたいのは、あなたも認められておる二つの悪影響について、これは観念的に当然あるわけですが、そこでアメリカ日本の輸入計画にどういう影響を及ぼしておるか。あなたは総合的に借款の面も考えて比較考量した結果プラスと、まあ大局的判断をされたと思うのですが、日本の必要とする農産物の輸入計画から、これは一体ワク外なのか、ワク内なのか。それからアメリカから通常取引で買う数量との競合関係アメリカの方から言えば、通常の取引に、プラスにこれを買ってもらいたいわけでしょう。だからそっちに食い込んだのじゃアメリカ農産物の輸出奨励法の趣旨に反するわけだ。そうすると、日本がよけいに買わない限りどうしてもいやでも応でもそのしりは第三国、これは中共もあるでしょうか、主として東南アジア、そっちの方から輸入し得べきものをカットするという結果は当然招来する。ですからそこら辺の出入りの関係を大ざっぱでけっこうですから、日本の本来これなかりせば、農産物の輸入計画に、この米を十万トン程度とか受け入れることによって、アメリカから通常買おうとする計画とはどういうふうに違ってくるか、東南アジアに対してはどういう影響を与えるか、その点を簡単でいいですから、計数的にお聞かせ願いたい。
  104. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 今度の余剰農産物の受け入れは、日本の所要ワク内において入っておるわけなんでありますから、その詳細な数字関係は農林省の関係者から、政府委員から説明いたします。
  105. 桑原信雄

    説明員(桑原信雄君) 通常の私たち考えておりますものは、過去の実績からはじいて参りまして、米といたしましてはアメリカから二十万トン程度を入れますものが通常というふうに見ております。ところが今お話の三十万トン入れるということになりまして、その影響がどうかということでございますが、これにつきましては、大体主な影響のタイ、ビルマの問題でありますが、タイ、ビルマの方とは国と国と協定いたしたわけでありますが、ビルマの米、あるいはタイの米といたしまして、食糧庁としていかような品種のものが好ましいかということで打ち合せをいたしたわけでありますが、打ち合せいたしまして、ビルマにつきましては昨年の米に対しましていろいろ問題があったあとでありますので、それに対して好ましいものとして約束いたしまして、この程度まではとり得るという協定をいたしましたものが二十二万トンでございます。それに対しまして現在多少実際取り引きをやってみましたところが、ある程度いいものが出て参っておりまするので、今二万トン程度これに追加いたそうかということをいたしております。それからタイにつきましては、やはり同じように品種、銘柄別に話をいたしたわけでありますが、その結果三十万トンとることにいたしまして、現在のところでは約束の三十万トンを二万トン越えたものを引きとっております。それからなを、あるいは台湾とかいうこともあるわけでありますが、そういたしまして、今年としましてはこの三十会計年度中に米では百三十二万二千トンを到着させますから、それによって国の配給をまかなって参りたいということをいたしておるわけであります。そこでアメリカからの三十万トンを引きますと九十九万一千トンというものが残るわけでありますが、この数字につきましては今申し上げましたようなことでありますので、特にアメリカから入れるためにどこかを私どもの手で削ったという点は出て参っておりません。  それから小麦につきましては、大体アメリカからの通常を今申し上げましたような式で七十五万トン程度が過去の最近の状態からいきまして通常と見込んでおるわけでありますが、これに対しまして、本年度は二百二十四万トンを到着させましてまかなって参りたい、その中から今のアメリカの七十五万トンの通常のものと今度の三十四万トンと八万トン入れまして四十二万トンの余剰農産物を入れますと、百十四万五千トンになりますがこれを引きました百九万五千トンというものはその他の国からということになっておるわけであります。  それから大麦につきましては、これまた二十万トン程度が普通の取引状態であろうといたしておりますが、これに対しまして五万五千トンを、これは一応仮定数字でありますが、五万五千トンを入れまして三十三万二千トンをアメリカからとるということになりますが、これに対しまして六十七万三千トンを年間到着させたいということにいたしております。差し引き三十四万一千トンがその他の国から購入いたすという計画を持っております。
  106. 曾禰益

    ○曾祢益君 お答えに対して恐縮ですが、やはり今のお話を承わっても、米についてはタイ、ビルマあるいは中共等の市場からは、向うは少くとももっと買ってくれ、日本としても品質もありますが、相当研究してプラスの面があるのを、それを捨てていることはあると思う、十万トンばかり。小麦についてももちろんこれはアメリカが一番大きいにしても、カナダ、アルゼンチンもおることだし、これは外務大臣に伺いたいのですが、これらの関係諸国からもっと買ってくれというのは当然です。特に今度の余剰農産物アメリカから受け入れについて相当やはり苦情なり、何とか自分の力で買ってくれという希望が大きく来てやせんかと思うのです。その事実と並びにそれに対する判断は外務大臣はどういうふうに考えておりますか。
  107. 重光葵

    国務大臣重光葵君) この日米協定を結ぶに当って、対外関係としては今のお話の点が一番大きい問題であります。そこでこの問題については十分に検討しなければならなかったわけでございます。そこで、農林省その他で検討した結果、これは観念的にいえば関係のあることは当然だと考えます。買う分量を一方からよけい買えば一方から買えなくなる。観念的にはそうでありましょう。しかし、これまた実際的には品質とか——品質の問題は今御議論もございましたが、それから外貨の関係とか支払いの方法とかいうようなこと、全面的に関係をして対外関係考慮しなければならんわけであります。そこで、今それじゃこの協定があるからおれのところから買ってくれないようになっては困るといって、いろいろ苦情が来ていはしないか、こういうことでございますが、まだそこまでのなにはございません。ございませんが、これはビルマに行っている日本の大使とか、各国に行っている日本の代表者に、なるたけ一つ米を買ってくれ、こういつて、米を買うことを勧めていることは事実でございます。事実でございますが、それだからすぐ希望があるからその米が買えるかというと、なかなかそうは実際的に、アメリカとの協定がなくても、いろいろ考慮しなければならん条件が非常にあるのでございます。それらのことの専門的の考慮を経た上で、このくらいの程度ならば、そう悪影響はなかろう、こういうことに決着をいたしたのでございます。その判断については、おそらく観念的にこれをいえば、いろいろ御批評があるだろうと思いますが、ここは一つ全般的に考慮して判断を願うよりほかにしようがないと思います。
  108. 曾禰益

    ○曾祢益君 そこで協定に即してちょっと伺いますが、協定第四条の二に「アメリカ合衆国のこれらの農産物通常の市場取引を排除し、又は世界の自由諸国間の貿易関係を実質的に害することがないように合理的な注意が払わるべきこと」に両政府は同意しているわけですが、「実質的に害することがないように」というのは、これはどういう意味ですか。
  109. 西山昭

    説明員西山昭君) 「実質的に害することがないように」と申しますのは、たとえばタイ乃至はビルマにつきまして、日本側が従来通常の取引をやっておりまして、タイ、ビルマから買い付けておりますような米の数量をこの協定に基きまして、その結果において特に故意に削減する、こういうことのないように従来のタイ、ビルマの米市場としての地位を日本との関係におきまして維持する、こういう趣旨でございます。
  110. 曾禰益

    ○曾祢益君 それはわかったようなわからないようなことで、実質的というのは英語ではなんといいますか。
  111. 西山昭

    説明員西山昭君) 英語のほうではマテリアリイとなっております。
  112. 曾禰益

    ○曾祢益君 そこで、それこそ観念的な議論になるのであって、マテリアリイというのは、なんといいますか、非常に量的にも大きくてはいかんという意味にもなると思いますが、実際はもちろん日本の豊凶による需要の変化があるでしょうけれども、平年通りにそちらのを取ってやって、しかもアメリカから受け入れるというのじゃ、どこかがあまるので、実質的の変化は必ず市場にあるわけですね。実質的にはただそれをあまり極端でなくやるという程度の意味なのかどうか。
  113. 西山昭

    説明員西山昭君) 先ほどの農林省から御説明がありましたように、日本の大体の輸入必要量というものがあるわけです。私どもとしましては、東南アジア諸国に対しまして特に考慮々払いまして、タイ、ビルマ等は年々協定がございまして、大体政府間の話し合いにおきまして、タイ及びビルマからは最小限この程度の数量は買ってやる必要がある、こういう政治経済的な関係からスタートしているわけでございます。しかしてこの協定量に基きます数量は、現実にすでに買付済みでございますが、特に東南アジアとの密接な関係で、協定上の買付以上の分は、現在は買付の努力をしているわけでございます。他方アメリカとの通常輸入量という問題がございますが、この点は日本の外貨事情あるいは過去におきまする凶作、あるいは麦類の統制撤廃に関連しまして、通常以上によけいに買った年もあるわけでございます。これらの要素を十分に考慮いたしまして、アメリカと話しまして、大体の了解をとっております。通常輸入量規定の仕方と申しますのは、これらの要素をすべて入れまして、現実通常輸入の分よりも低い数字に押えているわけでございまして、全体の輸入計画のワク内におきまして、すべてが円満にいくように数字の計算をいたしている次第でございます。
  114. 曾禰益

    ○曾祢益君 これはまあ数字の魔術みたいなもので、タイやビルマに対しては、日本からみれば協定量、いわゆるミニマムな輸出までは侵さないという点で調整しておられるだろうと思うので、これは結局政策論になりますから、その点は質問はやめますが、いま一つこれに関連して、先ほど須藤委員からも質問があった、これは協定の文の読み方なんですが、結局非友交国をして、この農産物もしくは同様の農産物を入手する可能性を増大させない。この約束はこれはもちろん農産物そのものであって、第二次製品なんかには関係ないものだと協定考えますが、この点条約局長はどうですか。第四条の一。
  115. 下田武三

    政府委員下田武三君) やはり同様のものといいますと、たとえば小麦アメリカから輸入した結果、大麦が余ったから、大麦を渡すということ以外に、たとえば綿花を買いまして、その綿花を加工して綿布がたくさん出るというようなことも含むと思うのです。
  116. 曾禰益

    ○曾祢益君 それは、あなたがそういうのじゃこれは話のつけようもないのですけれども、常識で考えれば、たとえば小麦を入れて大麦の方が余ったから出すというのは、これはいかんということは趣旨としてわかります。しかしその製品までいけないということは、一体どこにそんな明確な義務規定がおるのですか。同様のものというのは第一次製品だけでなければ協定としてはおかしいじゃありませんか。どうしてそういう解釈になるのだか、はっきりしていただきたい。
  117. 西山昭

    説明員西山昭君) 従来アメリカ側と話し合いました経過からいたしますと、小麦を入れまして、小差粉を入れるようなものも観念的には入ることに相なっておりますが、本法はいわばアメリカの政策の宣伝的な性格を持っておりまして、この点につきましては、アメリカ側はさまつにわたって問題を提起しないということに相なっております。
  118. 曾禰益

    ○曾祢益君 これはちょっと大きな問題だと思うのですが、政府答弁ははっきりしない。ですからこれはそういう今の条約局長の議論からいけば、たとえば綿花が入る、それで綿布を売るのもいけない、布帛製品もいけないのみならず、化学繊維もいかん。そういうべらぼうな条約上の解釈というものは成り立たない。アメリカ政府は対内的の余剰農産物の保護、市場開拓に熱心なんだから、いろいろの希望はあるでしょう。日本政府が負担する義務の限界がそんな不明確なでたらめなことじゃ許されませんよ。明確な態度としては、たとえば、例外として小麦と小差粉くらいまではまあやむを得ないのならやむ得ない。しかし綿花と第二次製品というようなものは義務はそこまでは負わないのだ、小麦と大麦の転換、これは常識から考え協定そのものが禁止していると、どっちなんですか。はっきり返事して下さい。
  119. 下田武三

    政府委員下田武三君) 西山次長が申しましたように、これは精神的、抽象的な規定でありまして、現実問題としてはまあ起らないと思っておるのですが、この規定の根拠は、まあ余剰農産物としてもらったものは国内で消費するのが主眼点でありまして、その裏をいっておるわけであります。しかし、実際問題として、日本農産物が余っておる国じゃないのですから、この協定によって余剰農産物をもらった結果、共産側に行く、入手する可能性が増大するなんということは実際問題としては考えられないことであります。日本はもともとこれらの大きな輸入国なのでありますから、何も自国内で消費するという規定日本にとっては何ら重い負担にも何にもならないわけでありますから、実際問題としてはおそるるに足らない規定だと思います。  なお先はどの加工した場合まで含むかどうかという点、これは実はアメリカ側が相当気にしておった問題なんでありまするが、日本側はこんなことまで規定する必要ないといって実は拒絶したのでありますが、実際問題としてはアメリカ側は心配しておる点ではあるのであります。
  120. 曾禰益

    ○曾祢益君 しつこいようですけれども、この食糧の場合はあなたのおっしゃるようなことは当ると思います。ところが、これが綿花の場合なんかだと、一体アメリカ側の余剰農作物としては米綿だけを別ワクにしておいてできるものじゃありません。そんなことは理屈ははっきりしておいてもらって、食糧についてはこう、あるいはたばこについてはこう、それから綿油化についてはこうと、はっきり義務の限界を示される必要があるのじゃないですか。
  121. 西山昭

    説明員西山昭君) 綿花につきましては、この協定によりまする輸入分は内需用に割り当てすることに相なっております。
  122. 曾禰益

    ○曾祢益君 どこにそういう協定があるのですか。
  123. 西山昭

    説明員西山昭君) その協定に基きまして国内で消費するように相なっておりますので、日本側の取扱い方式としまして内需用に割り当てることにいたしております。
  124. 曾禰益

    ○曾祢益君 どうも、協定の裏に何かそういうあれがあるというのは、そういうことが非常に国民に対して、いろいろな疑惑だ、ひもつきだという、事実以上に一般に悪感情を与えるものだと思いますが、それはまあとにかく、実情はわかりました。  そこでもう二点ばかり伺いたいのですが、その一つ円資金の利用でございますが、これは先ほども域外調達についての話がありましたから、これはもう私は触れませんが、協定の中で、アメリカが使う円資金の問題の中で、交換書簡の中にありますが、(3)の「合衆国農産物の販売の促進及び市場の調査のため並びにこの問題に関係する合衆国及び日本国の公務員及び事業家の交換訪問のため」、これは一体どういう意味なんですか。アメリカ農産物の販路拡張のために日本の公務員が出かけるということはどういうことなんです。アメリカの方が行くのは話がわかるのですが、日本の公務員がなぜ顔を出しているか。
  125. 下田武三

    政府委員下田武三君) たとえて申しますと、パン食を奨励いたします上において、製パン技術であるとか、あるいはパンの配給組織でもるとか、そういうものの研究に日本の公務員等が出張する場合を考えております。
  126. 曾禰益

    ○曾祢益君 これはまあそういうこともあるかもしれないけれども、わざわざそんなときにアメリカの方からの金を使って、そうして行くなんということは、一体、国家の体面上どうなんですか。少しは協定その他についても、もう少しそこら辺の国民感情を考えるような措置が講ぜられなかったのですかね。外務大臣の御意見はどうなんですか。幾ら貧之国でもそのくらいのことは、アメリカの方の円資金を使って日本の公務員をアメリカ小麦のために、粉食奨励という理由で、アメリカのファンドを使って行くというのは一体どういうわけなんですか、これは……。
  127. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 私も少しどうも気がきかんように思います。(笑声
  128. 小滝彬

    ○小滝彬君 ちょっと関連して。この点は私もこの前の委員会で質問した点なんですが、一体ここにあるファンドというものは円のファンドでなきゃならぬ。円のファンドを使ってアメリカへ行くということは、どうもぼくらは頭が悪いのでわからないのですが、その点をもう一度はっきり、それをまたドルにカンヴァートするつもりなのか。しかし円のことがここに書いてあるのだね。どうもそういう点がはっきりしない。この前も聞いたけれども、明快なる答弁を求めます。
  129. 西山昭

    説明員西山昭君) 本項につきましては、まだ協定が発足いたしておりませず、具体的な計画そのものも確定いたしてない次第でございまして、ただいま御指摘のような問題も生ずるかと思いますがこれらにつましては今後具体的に検討することと相なっておりますので、そのように御了解願います。
  130. 小滝彬

    ○小滝彬君 私はこれ以上言う気持はないのですが、どうもその場逃れにいいかげんな思いつきを答弁せられるようで、まじめに聞いているときには非常に不愉快な感じがする。きまっていないならきまっていないという答弁で、ただ思いつきでなく、ほんとうに円でアメリカに行けるのかどうか。そういうことも考えて、答弁してもらいたい。
  131. 曾禰益

    ○曾祢益君 次に借款条件のことについて、これは高崎さんにお伺いしたいのですが、まあ今さらこれが実質的には、ドル条項を認めた結果になったのじゃないかというようなことを言っても、これはまあ意見になりまするからやめますが、かりに円支払いの場合に、この協定の六条ですか、にありまするアメリカの使用計画については「日本国の経済状態考慮することに同意する」、こういう非常に抽象的な、まあひもをこっちからつけたか、つけないかわからない程度になっていますが、かりに円で支払う場合には、これは大きな資金になるわけですね、この程度の協定の文句でいいとはわれわれは考えない。まあしかしこれは円で支払うのだか、ドルで支払うのだかわからないが、そういう御事情もあろうと思いますが、実際そういう場合にこの程度のことではなくして、もっとはっきり、国内におけるこれだけ膨大なアメリカ円資金については、当然もって日本のポジションを守るだけの、経済上、金融上のポジションを守るような考慮がなされなければならないと思いますが、その点はどうお考えになっていますか。
  132. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 私はこれは円で買って、円で払うものだ、こういうことで初めかかっておりましたところが、今のドル借款がついている、ドル・クロスがついておるということで、ドルで返すということをきめた以上、私はこれはドルで返すのがほんとうだと思います。そのドルをそのままアメリカに持っていかれたら、日本の経済状態が非常に悪くなりますから、私の考えとしては、アメリカ日本における大使館の費用、まあ約三百万ドル近くアメリカからドルを現送してきて、ここで円にカンヴァートして使っておられるわけです。その方にこれを使ってもらいたい、こういうことを私は希望しておるわけでありますが、これは内々の折衝において、個人的な折衝においては、そういうことは大体話はすんでおるわけです。それは今曽祢さんのおっしゃったごとく、このくらいのことではまだ軽いと思っております。その点については今後折衝を重ねていきたいと、こう存じております。
  133. 曾禰益

    ○曾祢益君 最後に日本側資金の、いわゆる借款の使用について伺いたいのですが、その前に、まあこれも私の質問でもいいのですが、きのう委員長から合同審査会の最後に言われました点について、はっきり申し上げるならば、愛知用水等の日本の農業開発に関する資金の割合については、再考慮の結果はどういうふうに政府は決定されたのか、これは全委員会として伺いたいのですが、結果をお知らせ願いたい。
  134. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 昨日農林との連合委員会におきまして、この余剰農産物の見返り円資金の使用、これについて政府の間の意見が調整していなかった結果、いろいろ御迷惑をかけたことはまことに遺憾でございますが、その後いろいろ政府間において協議いたしました結果、本年度は百八十二億五千万円を、これを電源開発に使用し、それから三十億円を、これを農業開発に使用する。で、農業開発は愛知用水以外に、愛知用水を二十五億とし、北海道に五億持っていく、こういうふうな原案で今農林当局がこれを作っております。それからあとの一億五千万円を生産性本部に使う、こういうことにして、大体もう予算を組んでしまっておることでごさざますから、きのうの委員会におきまして、多少問題がありましたが、これは一つ来年度におきまして本年計画いたしましたこの事業については、来年度かりに余剰農産物が入ってこない場合におきましても、この計画を遂行するよりに十分検討していきたいと、こういうことに相なりまして、けさこのことは農林委員会におきましても私が御説明申し上げてきたような次第でございます。
  135. 曾禰益

    ○曾祢益君 実質的な問題については各委員においてもお考えがあろうと思いますので、もう追及はいたしませんが、来年のことを言うと鬼が笑うという話もあるので……。どうも不満足なように考えられるのです。  そこで、協定の第六条によると、この「百四条の(g)の規定に合致する経済開発のため」ということにまあ目的が大体きめられておるわけであります。さらに引き続いて「合意された目的範囲内で」やる。しかしまあ随意に使用できる。どうもこれもずいぶん条文の書き方としてもおかしいので、実際は随意ということはほとんど出てこないのじゃないかと思うのですが、もう一つこの交換公文で、この目的範囲合意をされているわけですが、各委員からもそういう御意見なり御質問がすでに出尽していると思うのですが、一体これがほんとうに日本の自主性であるとはどうも考えられない。交換公文の形式からいっても、アメリカ側の使うべきファンドの内容等については、アメリカの方から、アリソン大使からのいわゆる文書の中に書いてある。それに対応して外務大臣の方から日本の方はこう使うのだというので出てくるならば、まあこれは形式的にも多少は対等だという形もとれると思うのでありますが、アリソン大使の方からこれを日本使い方についてこういうふうに合意したというものをもらっている点から見ても、さらには言うまでもなく現内閣が引き受けるまでの経緯等から見ても、実際は自主性がないということが非常に証拠が明らかになっておるように思うのですが、その交換公文がなぜこういう形式になったかということについて、外務省から御説明を願います。
  136. 下田武三

    政府委員下田武三君) 交換公文に御指摘のようなフォーミュラーがございます。多くのルーティンの外交文書は、自分の力が言うべきことをさきに言って、その返事で向うの言うべきことをまた言うと、これはお互いに言いっぱなしの外交文書、ルーティンの外交文書はこういうふうになっております。しかし交換公文と同時に、協定の内容について、協定のある了解を確認するという場合の交換公文は、たとえ向うが言うべきことも、こっちが言うべきことも、これは同じことを書きまして、左の了解が両国政府間に成立したものと認めると言って、あなたの方としても了解を確認してくれと言って、その返事において私の方もそう了解しておりますという返事を確認いたしまして、そうして協定の内容を補足するという目的を達成いたしますためにやる形成でございます。これは、条約協定の署名と同時に、その内容を補足する附属文書としての文書の形態でございまして、通例やっておる方式でございます。
  137. 曾禰益

    ○曾祢益君 それはちょっと条約局長、おかしいじゃないですか。その場合でも、文書が二つあって三つあったって、ちっともかまわない。アメリカ自分円資金はこう使いますということを書いて、それに対する回答で、その回答を求めて、こっちはその通りに了解する。それから日本は別に往翰を出して、その中には、日本使い方はこうします、それに対してアメリカは異議なし、こういうやり方だってできるのです。今の御説明では私は必ずしも満足いたしませんが、いずれにしても、ポイントは、どうしてもこれはアメリカの……、これは問題の本質になってくるわけなんですが、アメリカ余剰農産物の販路拡張が、目的である。従って、日本が、輸出振興とか、あるいは農業開発ということを主にしてこのファンドを利用して行く、借款を利用して行くということでは、これは話ができなかったのであります。そこで電源開発というものは、これはもちろん日本の開発計画そのものから言えば、非常な優先順位が与えられなければならないことは、これはもうだれも異存ないのでありますが、これが大きな優先順位を与えられてしまって、そうしてまあ農業開発の方がどうやらこうやら頭を出した、こういうところが実情じゃないかと思う。それを今さら変えられないにしても、先ほど来の御答弁は、現実の予算に即しての話だから、ああいうことになったと思います。今後……、今後と言ってもしょうがないかもしれないが、協定の趣旨から言えば、少くともファンドの歩合まで、百八十二対三十と、六対一という歩合まで、これは実際押しつけられているのか、押しつけられていないのか、それを明らかにしていただきたい。
  138. 下田武三

    政府委員下田武三君) この協定には使用目的だけを書きまして、その目的のワクというものは、これは法律的の意味合いを持って参ります。しかしこの歩合につきましては、わざわざ協定から落しまして、法律上のワクは、はめなかったわけでありますか、実際の交渉の過程におきましてはインフォームしておるわけであります。それでアメリカといたしましても、本来余剰農産物を売ろうとするのが目的でありますのに、日本の農地を開拓して、農産物が要らなくなるような措置を認めさせたわけでありますから、この点、この二十億という数字は、日本側から通報いたしまして、まあアメリカとしても、その範囲内ならと、実はのんだわけでありまして、交渉の経緯から言いますと、たとえ協定には数字が出ておりませんでも、これをあとから日本が変えるということは、交渉中の了解に反することになりますから、実際問題としてはできないことになります。(「大問題だ」と呼ぶ者あり)
  139. 曾禰益

    ○曾祢益君 私の質問は終ります。
  140. 羽生三七

    ○羽生三七君 今の点は、何かきのうのお答えと若干違っておるように思うのですが、(「大臣連中の答弁とはまるで通う」と呼ぶ者あり)その中の円使用計画の、電源開発、農地、それから生産性の向上の三つは、若干はこの割り振りの変更は可能なんじゃないですか。(「それだからこそ再考してくれと、きのう頼んたのだよ」と呼ぶ者あり)
  141. 下田武三

    政府委員下田武三君) その点につきましては経審長官からもお答えがありましたように、すでにアメリカにインフォームしてあるので、やはり日本側としても、あの予算書にその内訳が掲出してあるものであるから、変更はできないということを申されておると思います。
  142. 羽生三七

    ○羽生三七君 第八条の規定に基いて、再協議の機会を作ったらどうですか。それでなかったら、これは第八条というのは全然意味のないものですよ。
  143. 下田武三

    政府委員下田武三君) むろん第八条の協議条項によりまして、協議することはできます。しかしこの交渉の実際の経過から見まして、アメリカが非常にいやがったところを認めさせたのでありまするから、この上、またさらに、いやがる項目をふやすということは、実際問題として困難だということを申し上げているのであります。
  144. 羽生三七

    ○羽生三七君 他の同僚議員の諸君の御質問で大要尽きておるのですが、こまかいことで二、三お伺いいたします。  その前に一つ、これは若干意見がまじるかと思いますけれども、お尋ねしておきたいのは、この交渉全体を見て、これはアメリカ側からすれば八千五百万ドル程度の農産物で、しかもその中の千五百万ドルが贈与で、これでアメリカの、実際上あの非常な過剰農産物の処理に役立つようなものでないのです。九牛の一毛なんです、アメリカから見れば。アメリカ経済の実態に大して影響を与えるほどのものじゃないのです。しかもその影響はというと、東南アジアにおいては、もう昨日来者議員が指摘された通り、ビルマやタイにとっては、日本に輸出するもの……、日本だけではない、その国の輸出の主たる貿易品目としては、米以外にないのです。それだけを頼りにしている。それには非常な大きな影響を与える。だから、日本のこのアジアに対する貿易政策として、ひいては外交政策としても、若干のこれは障害を残すのだ。それで日本自身にとっては、それじゃ、やはり利益になるかと言えば、確かに四十カ年の長期年賦で、利息から言っても必ずしも私はそう高いとは思わない。がしかし、問題は、先ほど来指摘されたようにたくさんあるし、特にこの愛知用水のごときは、この協定を、来年、再来年も継続するならとにかく……、継続すると言っても賛成するわけじゃありませんが、継続しないという場合になると、実際問題として、あの莫大な農業計画が、簡単に、財政投融資からさあ持ってこいということを大蔵大臣が了承するかと言うと、わずか十億でも渋った、きのうの大蔵大臣の態度から見て、私はなかなかこの農業計画の完全遂行ということは容易ならざることだと思う。そうすると、どの面から見ても、アメリカ自身にとっても、また東南アジアから見ても、日本政府にとっても、このことが、協定を結ばなければどうしてもその国の事業がやって行けないというほどの、そういうウェイトはどこにも持っていない。だから、そういう意味で、私のお尋ねしたいことは、先ほど来、各議員が指摘されたことでありますけれども、もし明年度こういう協定をさらに結ばれる場合には、この内容についてもっと根本的な検討をされる、あるいはこのアメリカからの米の輸入等については、しかも値段も非常に高いのですから、あえて私はそれを求める必要はないと思う。しかも世界の食糧事情が下降傾向です。必ずしも今あせっていろいろな約束をされる必要はないほどに世界の食糧事情は好転しておるのでありますから、そういうことも勘案して、もし明年度さらにこの協定政府が、われわれは立場が違うけれども、政府として協定を継続されるようなことを行う場合には、内容的にもっと十分検討する御意思があるかどうか。これを最初の問題としてお尋ねいたします。
  145. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 今の御質問は、私、いろいろ考えました点と一致しておるわけなんでございます。先ず第一は、アメリカとすれば、これは九牛の一毛だと、こういうことでございましょうが、しかし非常に向うは農産物がたくさんできて困っておる、現在の日本の一億ドルというものは、アメリカに対しても相当大きなウェートだと思っております。アメリカ日本に対して感謝しなければならん、感謝してもらわなければならん、私はこう思います。日本におきましては、これは東南アジアの貿易に対して、先ほど御説明申し上げました通りに、ある程度のじゃまにはなる、こう思っておりますが、しからば現実的にビルマ、タイに対しては、観念的には、ある物はやめてくれ、そうしてこっちの物を買え、こういうことは言えますが、現実的にいって、日本が要求する米がタイ、ビルマにおいて幾ら手に入るかということは、まだそこまではっきりいたしておらないわけであります。その意味から申しまして、さしあたった問題としては大きな障害をきたしていない、こう存ずるわけであります。それでまた日本におきましても、国内におきましては、開発するということは、電源開発はもちろんでございますが、愛知用水、北海道の開拓等は、私は、仮に余剰農産物がなくても、日本の食糧増産計画日本の国土開発計画からいって、日本の予算が許すならばどうしてもこれは実行していかなければならんものだ、私は相当大きなウェートを持ってやっていくべきものだ、こう思うのでありまして、これが第一年度において着手するということは、これはあとへ引続いてやるということは、これはお説のごとく非常に困難でありましょう、現在の切り詰められた予算においては。しかしながら、どうしてもこれはやっていかなければならん重大な事項だ、こう存じておるわけでありまして、それが第一年度におきまして着手できたということば、これは私は国のために喜ばしいと存ずるわけなんであります。それから来年度の交渉につきましては、いろいろ衆議院におきましても、また本議院におきましても、いろいろな有効適切なる御注意がございましたものですから、この御注意は十分肝に銘じて今後の交渉もいたしていきたいと存じますし、特に現在の協定されました物資を買い付けるにつきましても、先ほど御説明申しましたごとく、金額はきまっておりますが、単価がまだ決定いたしておりませんから、それについては、仮に今度の米を十万トン買うにつきましても、タイ、ビルマにおいて品質のいい米がこれだけの値段で買えるということになりますれば、その値段がつまり国際競争価段となっておりますから、その点につきましては、それを十分参照して交渉いたしたいと存ずるわけでございます。
  146. 羽生三七

    ○羽生三七君 ちょっと問題が少しそれますが、去年MSA協定の際に同時に協定されたそのときの農産物購入協定、その場合の五千万ドルのうちの一千万ドル贈与は別として、四千万ドル分の使用がその後どうなっておりますか。域外調達との関連で、その結果を御報告願いたいと思います。きのう、ちょっと資料を要求しておきましたので、それに基いてで結構であります。  もう一つは投資の保証に関する協定です。これに基いてやはりその際結ばれた協定ですが、それに基いて行われた民間の投資が総額でどの程度になっておるか、御説明願いたいと思います。
  147. 酒井俊彦

    政府委員(酒井俊彦君) 第一の点にお答え申し上げます。昨年買い付けました五千万ドルのうちの四千万ドル、これは米側が使用するのでありますが、そのうち一千万ドルは、昨年の六月三十日で終りまするところの向うの会計年度、その六月末までに成立しました契約の支払い、これは第三国向けの弾薬等の域外調達、これに一千万ドル使っております。あと三千万ドルは今後の第三国域外調達のために充てられるはずでありますが、これは現在のところ全然使用いたしておりません。
  148. 羽生三七

    ○羽生三七君 もう一度、今の点、まあ一年を経過してこういうことなんですかね、もう少しその事情説明していただきたい。
  149. 酒井俊彦

    政府委員(酒井俊彦君) この一千万ドルが使われておるわけであります。あとの三千万ドルにつきましては、これはアメリカ政府の使います金でございますので、的確にわかりませんが、いろいろ日本側としても、この三千万ドルについての使い方に、あまり日本経済を撹乱しないように、悪影響のないようにということで相談をいたしておりまして、結局、話がまとまりまして、今年になりましてから、それじゃ三千万ドルは今後の域外調達に向けろということで、結局こういうふうにきまりましたのでございまして、まだ、それ以後の契約分についての支払いでございますから、実際問題として金が出ていないという状況でございます。
  150. 羽生三七

    ○羽生三七君 今、私のお尋ねしたことは、日本が早く使わなければいかんという意味じゃないんです。そういう意味とは全然関係がないんです。なぜそういう協定を結んで一年にもなるのに何らの動きを示しておらんということは、不審に感ずるんですが、それはまあ、よろしうございます。  民間投資の保証協定の場合に最近の状況を……。
  151. 西山昭

    説明員西山昭君) 投資保証協定に基きまして申請がございました件は一件でございます。内容は、ダウ、ケミカルがアサヒ、ダウに対しまして約四億四千万円に相当します貸付金債権取得認可申請があるわけでございますが、現在本件は関係省におきまして内容を検討中でございます。
  152. 羽生三七

    ○羽生三七君 これも今の御報告では実際に一件だけが報告されたわけですが、これは前内閣のことになるけれども、この協定をここへ、委員員へ出されたときは、この協定を結ぶと非常にアメリカの民間資本が導入されて、何か日本経済におそろしく寄与するということを言って、すみやかなる協定締結をということをおっしゃったのですが、今のお話では、一年たって、たった一件ということで、割り切れないことばかりですが、まあ、それはよろしうございます。  それからアメリカドルの対日投資の総額というのはおわかりになりますか。
  153. 西山昭

    説明員西山昭君) ただいま金額を持ち合せておりませんが、件数から申し上げますと、本年四月末までの投資の認可総件数は、技術援助計画で四百五十三件、株式持分の取得が百二十七件、貸付金債権の取得が三十八件でございまして、これを業種別に見ますると、技術援助契約に関するものが、機械、化学、金属関係の製造部門、株式持分の取得においては石油、化学、金属部門、社債または貸付金債権につきましては電力関係か圧倒的に多いということになっております。それからただいま申し上げましたのは各総額でございまして、国籍別に見ますると、米国、スイス、英国等が過半数を占めておりますが、そのうちに米国の比重が圧倒的に多いと了解いたしております。金額は後ほど申し上げたいと思います。
  154. 羽生三七

    ○羽生三七君 ちょっとお尋ねいたしますが、先日のこの委員会で大体各条についての逐条的なあれは済んだのでありますか。何かタブって質問をしてはよくないと思いますので……。
  155. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) 逐条的にはやりませんでしたけれども、一日やりまして、今日は第二日目でございます。その間に合同審査会の審議がありまして、御質疑があったと、こういうわけであります。
  156. 羽生三七

    ○羽生三七君 たとえばこの交換公文の場合ですね、一から五項目まである場合の、たとえば五の合衆国の広報機関の活動に要する資金、こういうのは何か御質問があったのですか。たとえばこういうような……、(「なし」と呼ぶ者あり)そうですか。それではこの一からお伺いしますが、アメリカの駐留軍がだんだん減ってくるというので、逆に今度の三〇%の分のアメリカの国内における円使用が軍人宿舎の建設になるわけですが、これはどういうことですか。明け渡しの建物が多くなるから、その見返りに建てるということですか。ちょっと事情を御説明願いたいのであります。
  157. 下田武三

    政府委員下田武三君) 仰せ通り都内の施設は相当撤退いたしておりますが、さらにこれを、ファイナンス・ビルとかたくさんまだ残っておりますので、そういうものの撤退を要求するについて、そのかわりに要るものであります。
  158. 羽生三七

    ○羽生三七君 三は先ほど曽祢君からお尋ねしたからけっこうです。五についてこの場合ちょっとお伺いしたい。
  159. 下田武三

    政府委員下田武三君) これも協定発足後、実施の際に相談するわけでございますが、たとえて申しますと、昨年も米国大使館から文部省を通じまして、幻燈用のスライド機械の寄贈があったのですが、千二三百台寄贈したが、とても日本の小学校の数から比べましても、少な過ぎるというので、もっと、もらいたいという希望があります。そういう幻燈機械なんかを日本の学校に寄贈することについて金が相当要る、そういうようなものにまっ先に使われるのじゃないかと思っております。
  160. 羽生三七

    ○羽生三七君 まだ少しありますが、ちょっと時間がかかるので、私はもしあと午後も継続されるようならば、その際にお尋ねいたしますが、もしそうでなければ、この際、意見を一つちょっと述べておきます。  それは千五百万ドルの贈与分の問題ですが、実は私の議論が少し青くさい議論になるかも知れない。せっかく千五百万ドル相当分を日本の学童のために援助してくれるというのに、けちをつけるというのも私どうかと思うのですが、しかし私、日本の政治の最近の情勢を見ておって、至るところにもうスキャンダルが発生して、まずいことが山積をしておる。この程度の金は、日本の政治がしゃんとすると、できるのですよ。それから学童の給食用に千五百万ドルというのは、必ずしも少い金ではないでしょうが、これをもらって、それで子供に何か恩恵的な印象を与えてということは、この前の本会議にもどなたかから御質問があったけれども、私も同感なんです。しかしこの外務委員会の席で、何か予算委員会でやるような青くさい議論をするのは、私はどうかと思いますけれども、私は実際問題としては、ほんとうにこれは考えなければならぬ問題だと思う。実際こんなことをやるよりも、あらゆる部面で、日本が、もっと政治の上で、経済の上で考え直してやれば、この程度の金で学童に何か他国の恩恵的な印象を与えるようなことをしなくとも私はやり得る余地がおると思う。そういう意味で、何かこんなことは普通に安易な形でなれてしまって、何かよそからもらってくるのは当りまえだというような気分になることは、私は好ましくないと思うので、まあ今後のこともありますので、これは質問ではありません。私の意見として申し述べておきます。
  161. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) 委員長として申し上げます。ただいまの羽生委員の御意見は、文部大臣をして謹聴せしめたい意見だと私も考えます。幸い外務大臣は副総理でおいでになりますから、文部大臣にどうぞよろしくお取次を願います。
  162. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 各委員の御質問にできるだけ重複しないようにするつもりであります。先日来の委員会に私は出なかったもので、あるいは速記を見ておりませんので重複する場合があるかも知れません。その場合は、そのことをおっしゃっていただければ、けっこうです。簡単にお尋ねいたします。  アメリカ国内法余剰農産物の処理についての法制が従来いろいろあって、またいろいろ変ってきておるようでありますが、一九五四年の農産物貿易の促進及び援助に関する法律、これ一本にまとまったのか、まだやはりMSA関係等の法律に基く対外援助の面があるのかどうか、その点と、それから今年度におきまするアメリカ余剰農産物の処理計画で、日本以外の他の国に対してどういう計画が行われておるか、これを一つ概要でけっこうですが……。
  163. 西山昭

    説明員西山昭君) 余剰農産物の処理につきましては、四百八十五号の処理方法に合せまして、MSA協定の四百二条で、三億五千万ドルの限度で余剰農産物を処理することができるように相なっております。ただし、このMSAに基きます援助は——援助と申しますか、農産物の処理は、昨年の五百五十条に基きましたものと同じような性格になるわけでございまして、現地通貨で借款いたします使途その他につきましては、アメリカ側の政策によりまして軍需産業その他に使用されるということに政策上相なっているように了解いたしております。日本につきましては、この経済援助的な性格を持ちます四百二条の農産物の処理は適用範囲になっていない次第でございます。  この協定に該当します各国の取扱い分につきましては、現在まで判明いたしたところによりますと、国別から申しますと、トルコ、ユーゴースラヴィア、チリ、ペルー、パキスタン、スペイン、アルゼンチン、イスラエル、フィンランド、英国、イタリア及び日本の十二カ国になっておりますが、その後若干追加された国があると了解いたしております。金額から申しますと、日本を含めまして約三億ドルに相なっております。
  164. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 見返り円資金の用途の問題でありますが、これはしばしば質疑が重ねられているので、大体三つのワクの範囲内においては完全にわが方の自由ということは、支面上は、はっきりしておりますけれども、先ほどの下田条約局長の答弁にありましたように、実際上はきまっておって動かしがたいというのが、おそらく実情だろうと思うのです。昨日高碕長官は、これはわが方で適当に書いて通告すればこと足りるであろうという御答弁であったと記憶するのでありますが、実際上は、なかなかそうはいかぬだろうと思うのであります。しかしながら、そのことは、それといたしまして、アメリカの方の率直な考え方はどこにあるのか。われわれはあの円資金の配分の方法に必ずしも満足しない。どうも農業関係が非常に片すみに追いやられている感じがするのであります。伝えるところによりまするというと、この資金日本の農業開発に振り向けることについて、アメリカの農業界ですかな、農業界方面で相当強い反対の空気があるということが伝えられておるのでありますが、アメリカ政府の率直な考え方及びアメリカの世論といいますか、農業界方面の意向等について情況をお示しを願いたいと思います。
  165. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) ただいまの御質問は、そういうふうなアメリカの方にもいろいろな意見があるのでございますが、大体原則といたしまして日本側がこれこれに使いたいという大ワクだけを申し入れまして、それに対して向うに承認を与えてもらうことなのです。また向うが日本に大体その大ワクだけ言ってくればこちらは承認を与えるということになります。今回の百八十二億五十万円、三十億円、一億五千万円というのは、日本の要請として先方に申し入れたのでありまして、それで先方はオーケーということになりましてほぼ予算を組んだのでありますから、今これを変更するということは非常に困難でございますが、これに当りましては、最初アメリカでも、輸出振興にこれを使え、こういうふうな意見があったのでありますが、それで輸出振興をやろうということになってくると、これは輸出振興ということになるとまた反対する人がある。あるいは農業開発に使うということになると農業者がまた反対するということで、アメリカでも相当の意見があると思いますけれども、アメリカ政府の意見といたしましては、総合した意見といたしますれば、日本から申し出るということによって、それについては相当意見を申しましようが、日本のやはり意見を尊重するということになっておりますが、一応大ワクをきめてしまえば、最後にこれをどこに使うかということになりますと、あのMSA援助の時の一千万ドルの金の使い方はおそろしく小さな点までも干渉してきたのでありますから、そういうことをされては困ると思って、この点については十分注意してやっております。大ワクをきめるときだけは一応こちらから申し入れて向うが承認する、しかしアメリカでもいろいろ意見がある、こういうようなことと存じております。
  166. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 米と大麦と小麦、この関係の数量がどういう根拠できめられたか、これはしばらくおきまして、アメリカとしては余剰農産物の処理の面において最も関心を持つのは、おそらく通常の取引、アメリカの立場における通常の取引に影響を及ぼさないことであろうと思うのであります。農林当局は通常の取引量としてのアメリカからの輸入量を想定されておるわけであります。おそらくは余剰農産物を、穀類を輸入する限りにおいては、従来のアメリカからの輸入量というものは、まず実質上の義務と申しますか、実質的の義務としてわが方はこれを尊重しなければいかないという立場になるのではないかと思うのであります。言いかえれば、余剰農産物を若干でも入れれば、その半面において従来の輸入量はこれは責任を持って確保しますという立場に立つのだろうと思う。この通常アメリカ日本との取引量ですね、これについて何らかの話し合いが日米間にあったのかどうか、その点を一つ伺いたい。
  167. 西山昭

    説明員西山昭君) 通常輸入量につきましては、アメリカ側といたしましては、御指摘のように、この過剰農産物をさばくためには、通常の取引を阻害して過剰農産物をこの協定に基きましてさばくのでは、アメリカとしては妙味が少いわけでございます。従いまして、通常の輸入量というものを農務長官が認定しまして、その上にこの協定に基く買付をすることに仕組みとしては相なっておりますが、先ほど御説明申し上げましたように、通常輸入量のきめ方につきましては、日本といたしましては、外貨事情が悪くなれば、本来ならば若干無理しましても通常輸入というものはしぼらざるを得ない。それからまた過去におきまして、凶作あるいは麦の統制撤廃等のような事情によりまして、通常よりも多く輸入したような事実も、これは通常輸入の要素としては考慮できない、これらの事情も十分話しまして、アメリカ側としましても日本の経済事情を十分了解いたしまして、その意味におきまして通常輸入量という考え方規定してきておるわけでございます。従いまし、この角度から通常輸入というものを、大体アメリカと話しました数字と申しますのは、米、大麦、小麦等につきまして一応の基準がございますが、実際の過去の輸入量よりは下回るような数字に踏んでおる次第でございます。
  168. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 昨日農林大臣は、下半期において米麦等の収穫の状況その他によって全体の食糧の輸入量を調整する場合があるであろう、そういう場合においてはアメリカからの輸入についても当然調整し得るのだという趣旨のお話御意見があったと思う。私は、やや疑問を持っておるのであります。言いかえれば、この秋あたりに特殊の状況が出ればこれは別でありますが、多少アメリカからの通常の輸入を減らすというふうな場合に、わが方だけでそれができるのか、一応この条約との関連で、アメリカ側と話をして、向うの了解を取りつけるというような必要があるのかどうか、その点を伺いたい。
  169. 西山昭

    説明員西山昭君) 実際問題としましては、御承知のようにアメリカ会計年度は昨年の七月から今年の六月に相なっておるわけでございます。協定に基きまする買付会計年度上はその期間で行うことになりますが、協定がおくれました関係上、日本側としては買付並びに積み出しの期限の延長を了解をとっておる次第でございます。従いまして協定に関連をいたします通常輸入量の実績を申し上げますと、綿花につきましては約九万俵の買い残りが残っておるわけでございます。それから米につきましては約一万二千トンの通常輸入量分としての買付が残っておるわけでございますが、その他の品目につきましては、すでに買付が完了いたしておるわけでございまして、この意味におきましては、本協定に基きまする通常輸入量買付を減らす減らさないという問題は事実上起ってこないかと考えられる次第でございます。
  170. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 会計年度関係からいえばお説の通りだろうと思います。しかし実際上この協定の持っておる趣旨からいえば、ズレてきておる関係で、経済的にはやはり私は同じ問題が残るだろうと思う。一応本会計年度としてはバランスがとれた、従って計算済みだ、だから、かりに米についていえば、アメリカの二十万トンを、新しい年度の問題ですよ、それを十万トンにするとかというふうなことは、やはり私は簡単にはできないのであろうと、こう思うのであります。これはまあいいです。  それから綿花のことでありますが、私、綿花の事情はよく知らないのでありますけれども、三千五百万ドル、その分を余分に持ってきて、そうして国内だけで消化する、国内用であるということでありますが、それにプラス経済的には学童に回す綿花の五百万ドル分はあるわけでございます。これは日本の繊維状況の現情からみまして相当繊維業界には影響がありはしないかと思いますが、全然影響なしに、繊維業界としてもあるいは繊維需給の面からいっても、これは好ましいことだ、こういうふうに繊維業界の方でも受取っておるのかどうか、長官の御意見を伺いたいと思います。
  171. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 御承知のように、現在綿製品は非常な暴落をいたしておりまして、従いまして暴落の主因はどこにあるのかというと、やはり綿花の価格が安定していない。綿花、それはだんだん価格が暴落する、こういうふうなことが一つの原因になっておりますが、その意味におきましてそのギフトとして受けますものは、大体それだけの綿花をもらってきて、それを一応処分してそれによってできた製品をできるだけ学童に無償で配給しようじゃないか、こういう原案でございますが、またこれを幾ら金をとるかどうかということは決定しておりません。できるだけ安くしたい。これは、一般の綿製品の市場に関係しないと存じます。買い取りとして持ってきたものにつきましては、これは従前の取引業者、従前の輸出入業者にそのまま取り扱かわしめるわけでございますから、品質だとか、価格の点につきましても、従前の業者がこれをよく検討した上において取引するわけでございまして、ただその決済については、こういう余剰農産物の規則によって決済いたしますが、取引は全部従前の関係業者を使うわけでありますから、非常な大きな影響はないことと私は存じております。
  172. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 通産省の方では綿紡関係では操短の企画を実行しなければいかぬとかというふうなことが最近熱心に言われておるようなことであります。おそらくノーマルの通常取引量は私入っておる計画であろうと思う。それ以外にプラス相当な額が入ってきている。それは国内市場としてさばくのだ、それから学童関係も、ともかく学童も制服はきておるのである、すでに新しく綿花がきて、それはプラス給付されることになる。相当私は業界に影響を及ぼすんじゃないかということを、実はよくわかりませんけれども、懸念しておったのであります。影響なければ、それはけっこうであります。
  173. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 大体外貨予算のワクというものの綿花はきまっておるわけでございますから、そのワク内に入っておりますから、私はえらい影響はない、こう存じております。
  174. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 それから積み立て関係と融資をしていく関係になりますが、米、大麦、小麦のごとく食管会計に入る分は、食管特別会計から日本銀行の、アメリカの今の積み立てに入っていく、こういうことになるのであろうと思うのであります。違っておりますれば御説明願いとう存じます。それから綿花関係等はそれぞれの業者が何らかの方法によって直接積み立てていくことになるのかどうか。積み立て関係はどういうふうに実際上行われるかということと、それからそれが一度ドルに変ってさらに円に変って、融資されるということになるわけであります。電源開発に対する貸付融資、それから生産性向上本部ですか、それに対する融資の場合、それの責任機関はどういう機関が想定されておるものか、特別会計が作られるのか、特別会計なしにやろうとすればどういう機関が責任機関としてその衝に当るのかという点を一つ説明願いたいと思います。
  175. 羽生三七

    ○羽生三七君 その問題の御返事の前に関連して。何か先日の委員会でこの問題は経審長官の御出席の際に残されておると承わりましたが、主として借款問題に関する質問を私どもも先に承わろうと思ったのですが、この機会にちょっと具体的にお答え願いたいと思います。
  176. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) ただいまの日本で処理したその円を日本銀行に入れてこれをドルに返して、またそのドルを円に返すというテクニックに関しては詳細政府委員の方から説明いたします。その他のことにつきましてはまた私あとから御説明いたします。
  177. 西山昭

    説明員西山昭君) 円貨の積み立て手続は本件の契約及び買い取りの手続通常の買い付けと同じでございますので、為替銀行日本輸入業者から手形を買い取りまして、先方のアメリカ側ドル支払いをいたしまして、その通知を受け取った暁におきまして、当該の為替銀行ドル支払いに相当する円貨を白銀に積み立てることに相なっております。
  178. 酒井俊彦

    政府委員(酒井俊彦君) それからあと第一の御質問でございました借りる円をどの機関が責任機関になってやるかという点でございますが、これは特別会計を作りまして、今西山次長から話されました日銀にあります米軍勘定に振り込まれた円が、ドルにコンバートされまして、それが米国の輸出入銀行を通じて日本政府に貸される、その日本政府に貸される金は特別会計に受け入れまして、その特別会計から電源開発、農業開発、生産性本部というふうに貸されるわけであります。この特別会計につきましては別途御審議を願うことになっております。
  179. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 それでは特別会計のあれは政府はこの国会にお出しになるのですか。
  180. 酒井俊彦

    政府委員(酒井俊彦君) この国会に提出するはずでございます。
  181. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 それから羽生さんもちょっと関連して質問された生産性本部への融資でありますが、この生産性向上の施策、これに対する一億五千万円の資金の実際上の用途はどういうふうに使うのかということを一つ説明願いたいと思います。
  182. 酒井俊彦

    政府委員(酒井俊彦君) これは生産性本部は御承知のように通商産業省が監督に当っておりまして、詳細は通産省が見ておるわけでありますが、大体に申し上げますと、経堂管理、労務管理、その他一般の生産面性を上げるためにどうしたらいいかという点についての啓蒙宣伝なり研究、あるいはそのためにアメリカなりヨーロッパなりに必要な人が出かけて行って研究してくる、現場を見てくるというような仕事がございます。その場合に現地のアメリカにおける滞在費等はアメリカが持ってくれるというような格好になっております。私の承知しておりますことはごく大ざっばでありますが、大体そういうような見当に使われるものと承知しております。
  183. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 私どもこの生産性向上本部ですかの性格はよく知らないのでありますが、少くとも経済的には事業機関ではないだろうと思うのです。ところがそういうところに融資をして、そうして四十年ですか、長きにわたっての償還をとっていく、いかにも、これは補助金とか、こういう場合にはわかりますけれども、事業資金的の性質のものに融資をするというのには適格じゃないような私感じがするのであります。その点はどうでしょうか。
  184. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 私もその点については梶原さんと同じような感じがいたすのでありますが、元来が生産性向上本部というものは、民間の団体の寄附金をもってこれを作るということが原則になっておりまして、民間の団体がこれの責任を持つということになっております。従いまして、今の原案とすれば一億五千万円をそれに貸すのだが、これは低金利であるといっても、金利負担はなかなか困難だろうというふうに思っておるわけなんでございますが、この運営につきましては相当研究を要すると、こう思っておりますが、元来、生産性本部というものにつきましていろいろ私は検討いたしたのであります。これは現在通産省の所管に属しておりますが、私は終戦後数回欧米方面に参りまして、ドイツなりイギリスなりアメリカ状態を調べました結果、従前の産業の合理化運動というものは、単純に、大ていは資本家系統の人たちがやっておるということで、いつも合理化によって失業者が生じた場合に、その失業者をどうするかというような問題は等閑に付せられておる。今後の合理化運動というものは失業者はどういうふうにして救済するかということが前提条件でなければならぬというのが合理化運動でありまして、生産性本部の出発点はそこにあるということを私は聞いて、非常に興味を持って調べたのであります。従いまして、この生産性本部には資本家だけでなくて、労働関係の方々も一緒に入ってこれを検討しようじゃないか、そうして国の一つの産業をどういうふうに合理化することがいいか、これはいろいろの問題がありまして、今日私は失業問題を経済審議庁の長官として検討いたしておりますというと、合理化——石炭の合理化はきわめて簡単であるように考えますけれども、その合理化をしたことによって起る失業者をどこへ持っていくかということはまず最初に考えなければならぬ。これから検討するということになるというと、なかなか石炭業者だけが考えるべき問題ではないと私は思うのです。そういう点から考えますというと、この生産性本部の活動ということは非常に大事でありまして、ただ、起った失業者をその場所で、なるべくその仕事に近いような方面で吸収するというような考えは、私はもう古いと思っております。少くともこの失業者を、職業もある程度転換しなければならぬ、職業の場所も考えるということまでよく練っていかなければ、これは根本的の解決はできないと思います。そういうふうな点につきまして、私はこの生産性本部というものには非常な期待を持っておるわけなんでございます。現在これは通産省の所管に入っておりますが、将来、私はこの運営につきましては、経審長官として十分これを発言していきたい、こう存じておる次第であります。
  185. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 生産性向上本部それ自体の内容なりそれから仕事に対する長官の御見解はわかるのであります。ただそういうところに、一億五千万円のこういう特別の性格の資金を融資をして、条件はおそらく変るでしょうけれども、普通でいけば、四十年の長きにわたって償還せしめて、一体どういうことに使うのか、アメリカへ人を出すとか、調査をするとか、あるいは指導をするとか、研究をするとかいう性質のものに、こういう長期資金を融資すベき私は性質のものじゃあるまい、こう思うのであります。いずれまた具体的になりますれば検討されるべき問題であろうと思います。  それから最後に……。
  186. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) ちょっと私も連関して御質問したいのですがよろしゅうございますか。——日本の農業は、土地の生産性は非常に高いけれども、農民一個としての生産性は非常に低いということが非難されている。これをも上げることが、生産性本部の仕事じゃないかと思うのだが、そうなってくるというと、工業の生産性を上げることによって、工業合理化が進歩する。そこでそういう意味の失業者が出た場合に、不景気による失業と同じように、帰農という問題が、日本の家族制度ということに結びつきまして、しょっちゅう後進性を非難されている農村及び家族制度、これが失業もしくは生産向上のための余剰労力を収容することになるおそれが相当あるのであります。そういうような方向にいってはいけないのだから、生産性本部としては、今長官のおっしゃったようなことを十分にお調べ願うということと、農村及び家族経営の、小農というものの生産性の低いことを上げることによって出るところの農村内部の過剰の労力というものをどうするか、あるいは移民に行くとか、あるいは工業に向けていくとか、その工業に向けていくところは、これまた生産性を向上させなければならぬといった問題で、農業の問題が非常に大事だと私は思うのでありますが、今の生産性向上本部の考えでは、そういうことは全然眼中にない実際の行き方をしていると私は思うのでありますが、それに関しまして、この点に非常に御熱意のある経審長官はどういう考えをお持ちになるか、お述べを願いたい。
  187. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 私はこの日本の失業問題というものと、それから農村問題と、中小工業問題とは、非常に重大なる影響があることと存じまして、今日経審においてみております完全失業というふうなものは、これも大事でございますけれども、これは統計に表われてくる数字でありまして、きわめてこれは数字もとりやすく、対策を講じることもできやすいのでありますけれども、いわゆる潜在失業者としての、十時間あるいは八時間働くべき力を持っておりながら三時間しか働けない。また一時間に七十円とらなければならないのに三十円でがまんしなければならないという人が、石黒委員長のおっしゃったような工合に、農村なり、それから中小工業、これはやはり依然として日本の家族制度が重んじられている状態でありますから、親類の者がやって来たから、まず三人で働くところを五人でやっておれと、こういうようなことをやっている、それが農業の経営をして困難ならしめ、中小工業者の経営をして困難ならしめている重大なるゆえんだと存じまして、生産性本部がほんとうに活躍するということになりますれば、その点に私は重点を置いてもらいたいということの信念でございまして、この生産性本部のことにつきましては、私はその意味におきまして、ただいま委員長の御質問になった点につきましては十分考慮し、その方面に発言したいと存じております。
  188. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 もう一点でありますが、融資の場合の金利が電源開発も農業開発も四分ですか、ところがアメリカに対する債務としては三分である。一分の差があるのであります。これはどういう計画といいますか、その一分はどういうふうにされるお考えなんですか。
  189. 酒井俊彦

    政府委員(酒井俊彦君) 仰せのようにドルで全部返します場合には三分であります。もしこの協定にもございますように円で、返すという場合ができますれば、その場合は四分の金利で返さなくちゃならぬ、おっしゃる通りドルで全部返せば一分のさやができますが、これはこういったような他の事業に対する政府機関の投融資の場合の条件その他をも勘案してきめる必要がございますし、それからなお若干の事務費等もございますし、それからまたたとえば途中でこの会計がアメリカ支払いができなくなったような場合に、デフォールトで全額返えさなくちゃならぬというような関係にもございますので、とりあえず四分ということにいたしております。これは必ずしもアメリカから借りたそのままの金利で貸さなくちゃならぬということでなしに、普通の金融のように、そこにある程度のさやをみておくということが必要であり、同時にほかとの振り合いということも考えまして四分ということにいたしたわけであります。
  190. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 そうしますと、その一分のさやは特別会計に積まれていくわけですか。
  191. 酒井俊彦

    政府委員(酒井俊彦君) 実際に米国に返す場合にはドルで返しまして、そうして金利は四分とっていくという場合に、それから事務費をとりますから、そのとる場合にはさやは一分弱になりますが、それが特別会計に積まれてくるわけであります。
  192. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 これで最後でありますが、しばしば問題になりまするこの余剰農産物の受け入れが、通常ノーマルな商取引に害を及ぼす。ことに食糧関係では、東南アジア方面もきわめて寛大なる影響を受けるわけであります。現在のところ大した影響はないというお話でありますけれども、私はともかく一億ドル見当の農産物が、最近のようにどちらかといえば、供給が潤沢になってきておる、この情勢のもとに動くということは、これは観念的でなくて、現先の影響を必ず起しておると思う。これは農林省のいわれております数字をたんねんに検討いたしましとも、ある程度出ておるのであります。  そこで私一つ確かめたい問題があるのでありますが、これは昨年のMSAの受け入れの場合にもあったのでありますが、現在のこれまでの輸入量、これを大体ノーマルとして、新しく増加していく分については、それはどちらかといえば正常な取引外のような考え方で、増加する分については、これは余剰農産物で補って受け入れていっても、正常な取引を害しないというような考え方があるようであります。やはり正常に伸びていく貿易量、これはやはり一応ノーマルに持っていかなくちゃいかん。従って日本として輸入量がふえるから、余剰農産物を入れても他の国に対して害を及ぼさないという考え方は、私は危険ではないかと思う。現状においては、一億ドル見当のものが動けば、これは結局正常の取引というものに大なり小なり私は影響を及ぼすと思うのであります。将来食糧関係は、輸入がかりに増加していくような場合に、通常な取引という観点と、それに対して支障を与えないという考え方、どういうところに基準をおいて判断していくか、この点を一つ長官からお伺いしたいと思います。
  193. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 私どもとして、日本側の希望といたしますれば、通常取引というものはなるべく少くしてもらって、余剰の方でもらった方が支払い条件は楽だし、その方が都合がいいわけなんでございますから……。しかし、また売り手の方になってくると、これは通常貿易が今までこれだけあるのだから、これだけつけろ、これだけとって、その余分のものだけにしろ——これは売り手と買手でありますから、相当主張すると思うのでありますが、しかし、全然通常のものを減してしまって全部余剰というわけにはいかんと思いますが、こちらの方針とすれば、できるだけ通常のものを減して余剰のものをふやしてもらいたい、こういう工合にいきたいと存じておりますわけなんです。まだそこのところは新らしい交渉をしませんからわかりませんが、今後の交渉につきましては、その点が一番売り手と買手とのかけひき、というと語弊がありますが、交渉の一番重要な点だと私は存じております。
  194. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 アメリカとの関係は長官お話しの通りだろうと思うのであります。現在の数字を見ましても、この余剰農産物の数字を見ますると、アメリカからの輸入帯は相当ふえておる。もちろんほかの国からのもふえておりますけれども、ふえ力が余剰農産物を計算に入れて参りますと多いのであります。ふえ方の率といいますか、おそらくはかの国から見れば、ともかくアメリカからの輸入母がふえることになるので、これに対して、内分の方のふえ方はきわめて少い。こちらの方から言えば、多少ふえたからといって文句を言うな、何も通常の取引を除外しておるのではないと言えるでしょうが、それはそうですけれども、やはり貿易全体から見ればノーマルな状況にあるとは言えない、アブノーマルな要素のものの方がふえてきておる。これは今後相当問題じゃないか。日本側が問題にするよりは、そういう利害関係国がこれを取り上げる方が、私は問題が大きくなりはしないかということを懸念しておるのであります。今後一つそういう点については十分慎重に御検討を願いたいと思います。終ります。
  195. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) 委員長はこれでしまいたいと思います。これ以上やるというと、須藤さんのやかましく言われる人権侵害になると思うのであります。  そこで三日にわたりまして御質問をいただきましたので、御質問及び審議も十分にいたされたことと委員長考えます。よって質疑はこれをもって尽きたものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  196. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) 御異議ないという声がございますから……(笑声)これで質疑を打ち切ることといたします。  休憩をいたしまして、お食事を願いまして、新らしい勇気をもって午後は御討議を願いますのでありますが、その前に、ただいま配付をいたしましたように、昨日連合委員会で十分御審議をいただきましたことについて、農林水産委員長から私の手元にただいま申し入れがありました。よってそれを読みます。   只今貴委員会において御審議中の「農産物に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定について承認を求めるの件」については、連合審査の過程においてお判りのとおり、わが国農業上極めて重大な影響を及ぼすものと考えられますから、これが承認を与えられる場合には、政府において少くとも別記の事項が遺憾なく実行されますよう、貴委員会の適当な御措置を願いたく   右当委員会の総意を以て申入れます。  こういうことをもって五項目の別記の申し入れがあったのでございます。これを午後の開会のときにお諮りをいたしまして、外務委員会として独自の立場で本協定を審査いたす際にどう取扱うか、こういうことについてお諮りをいたしたいと思います。私の考えるところによりますというと、付帯決議として処理をして参る方法と、外務委員会の決議として政府に申し入れをするという方法との二つがあるのではないかと思われます。むろん付帯決議ということは本案を可決した上でのことでございますが、そういう二つの方法があると思います。そこで本案の御討議を願いまして、採決をいたして、その後にこれをどういう取扱いにするかということに正式のお諮りをいたすのでありますが、午後の開会の初めに懇談会をお開き願いまして、全体どう処理するかということをあらかじめ大体について御相談を願って、それから討議に入って採決をして、正式にこれの処理について決定をいたしていきたい。こう考えます。(「異議なし」と呼ぶ者あり。)どうぞ御承知を願います。   それではこれをもって暫時休憩をいたします。     午後一時四十二分休憩    ————・————     午後三時三分開会
  197. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) これより外務委員会を続いて開きます。   それではこれより討論に入ります。御意見のおありの方は賛否を明らかにしてお述べを願いたいと存じます。
  198. 羽生三七

    ○羽生三七君 私はこの協定に反対をいたします。  この協定を内容的に見るときに、これは米国の日本に対する経済的支配力を内包しておるからであります。のみならず、ときにはそれは政治的でさえあると考えられます。たとえば、この協定は、自由であるべき食糧についてすら国際障壁を築いておるのであります。またこの協定は、文面においては世界の自由諸国間の貿易関係を実質的に害することがないように、合理的な注意が払わるべきことをうたいながら、実際には東南アジア諸国との貿易を阻害する結果を招来することとなります。さらにまたこれを国内的に見るときに、円資金の使用計画の一部をなす愛知用水についてこれを見ましても、五百六十億円という巨額の資金を要する農地開発が、円滑にその目的を達成するやいなやはすこぶる疑問なきを得ないのであります。かりに本年度と同様の方針で今後の予算編成が行われるといたしますならば、円資金調達のため、この種余剰農産物の購入協定は毎年これ々継続しなければならないし、もしまたこれを予算上資金上すべて国内でまかなうことにすれば、既定の食糧増産対策費等にしわ寄せされる公算がすこぶる大であります。  これら諸点から考えても、本協定には賛成しがたいのでありますが、さらにこの協定中には、千五百万ドルに相当する児童福祉計画に基く贈与分も含まれておりますが、わが国はむしろ国内経済の各部面においてむだを排除し、不正や汚職を一掃して、学童の給食費程度はみずからの手でまかなうことを考うべきであろうと考えます。そしてまたわれわれは、みずから確固たる経済自立計画を樹立して、安易な外国依存の弊風を打破して、独立国家に値する強靱な経済基盤を確立すベきであると考えます。  かかる意味合から、日本社会党は本協定に反対するものであります。
  199. 小滝彬

    ○小滝彬君 私は自由党を代表いたしまして、この協定を承認することに賛成するものであります。  ただ一言付け加えて申し上げたいのは、先ほど来の質疑応答にも明らかなるがごとく、あるいは政府委員説明が不適切あるいは不十分であったためか、この協定の真意に対していろいろの誤解もあるようでありまするから、こいねがわくば、これが実施に当る向きにおきましては、これをもって反米感情を醸成するもとにすることのないように、十分運用に注意せられんことを希望いたしまして、私の賛成討論といたします。
  200. 曾禰益

    ○曾祢益君 私はこの協定に対して、承認を与えることに反対するのであります。  元来私たちといたしましては、この協定はMSA協定とは、決して本質的に同一とは考えておりません。いわゆる憲法改悪による再軍備その他を包蔵するMSA協定とは違ったものだという感覚でこの協定を見ておるのでございます。先ほどの質問の際にも申し上げましたように、従ってこの協定が、ほんとうの自由な意思による経済的ベーシスに乗って、平等なお互いの利益になることを協定している内容であるならば、これは内容によって判断すべきものであって、一がいに排撃すべきものとは考えておりません。従ってそういう意味からいうならば、日本の貿易の自主性に害を与えないこと、アメリカの過剰農産物を受け入れるため、日本の貿易自主性を阻害するというようなことがあってはならないと思うのであります。さらに借款について、日本が国土の開発、電源開発、農地改革等々に少しでも借款がほしい、こういう気持があることはわかりまするけれども、しかし借款であるから何でもかんでも受け入れていいということにはならないと思います。従って本協定から出てくるところの借款に、これまた日本の自主性を完全に阻害しないというような条件であることが当然に必要になってくると思うのであります。  これらの見地からいろいろ検討いたしまして、その過程において、私並びに同僚委員諸君、あるいは連合審査における農林委員諸君と政府当局との質疑応答を伺いますると、遺憾ながらいまだ私の疑点及び不安は去らないのであります。すなわち元来がアメリカの過剰農産物を有利にさばこう、その市場を開拓しようという趣旨と、やはり日本自分の自立的な農業政策を貫いていこう、こういうところに、これは相いれないものがあることは、これは単なる観念的な問題ではないと思うのであります。その点と、従いまして農民の不安は解消されておりません。  さらに貿易の自主性についてはいろいろの御答弁がありましたけれども、これは明確に日本が東南アジア、あるいは中国大陸を含めたアジア貿易の自主的な展開に対しましては、これは少くともその面から見れば、一つの制約になることは明々白々たる事実であろうと思うのであります。ひいては日本の自主的な外交、アジア諸国との友交関係にも決して累を及ぼさないとは断言できないのでありまして、その点についてはとうていわれわれは満足し得ないところであると思うのであります。  さらに借款の使途につきましては、これは交渉の経緯に徴しまして、日本側の自走的な要求は、政府の努力にもかかわらず、決して十分に達成されてないことは明白でございます。電源開発もとより非常に大切ではございまするが、本件協定の一面においては、日本農業及び農民に対する一つのマイナス面を考えるならば、真に自主性のある本件借款による開発計画の中心というものは、当然に農地開発と輸出振興に置かれるべきであることは、これは議論の余地がないと思います。それがいろいろな経緯があり、またそこに協定上あるいは付属文書上においていろいろな苦心の跡は見られますけれども、これは政府答弁において明らかな通り、一回限り、一年限りのこの協定において今や現実には電源開発に六、農地開発にはたった一という程度の非常に不満足な借款の使途がきめられている。すなわち、自主性が阻害されていることは、これは言うまでもないところと思うのであります。  さらにアメリカが得る円資金使い方等についても、何といっても域外調達に対する、あるいは日本ドル取得に関する制約ということも考えてみなければなりません。かく考えて参りますると、やはり根本において私の心配しておった点は解消されておらない。政府は吉田内閣当時の安易なアメリカ依存関係、取れれば何でももらっておこうというような外交をそのまま引き続いて踏襲して、何ら改めておらないと言わなければなりません。同僚羽生委員も、言われましたように、事児童、学童に対する給食の問題もそうでありまするが、一般的に言って一番基本的なことに、日本の自立経済というものは日本のやはり自力でやるということを基本にしなければなりません。たまたま外国から援助があると、わずかなそれに飛びついていこうということは、これも多くの同僚委員から指摘されたように、今年だけの問題ではありません。借款を得てやり出した事業は、途中でこれをやめるわけには参らないのであります。従ってわれわれが借款を受け入れる場合に真に自主性を貫き通すということが、非常に困難になってくるわけであります。  かようないろいろな理由におきまして、私は本件に対して遺憾ながら賛成することに参らないのであります。冒頭に申し上げましたように、以上の理由によって日本社会党は本件に承認を与うべきではないと判断する次第であります。
  201. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 私は本件協定に対して承認を与えることに賛意を表するものであります。  この協定の実施がわが国の農業面に好ましくない影響を与えるであろうという疑点、これは私も持っておるのであります。またわが国の正常な貿易の進展の上に、特に東南アジアとの貿易の進展の上に好ましくない影響を与える懸念のあることも私は認めるものであります。しかしながらわが国における農業資源の開発はこれまたきわめて緊要なことであって、本件協定がその面において相当の寄与を期待することができるわけでもり、同時にまたわが国の食糧事情が遺憾ながら今後も相当量の食糧を海外に依存しなければならないこの現状とにらみ合わせまして、懸念はありまするけれども、両者勘案いたしますると、この協定を拒否すべき理由を認め得ないのであります。従って私は本件協定に賛意を表するものであります。  ただ、今申しましたような懸念、すなわちわが国の農業に対して悪い影響を取ぼさないようにできる限りの配慮を払うこと、及びわが国の正常な貿易の進展の上に支障な及ぼさないように格段の注意と措置を政府において払うべきことを私は条件といたしたいと考えるものであります。  以上であります。
  202. 須藤五郎

    須藤五郎君 私はこの協定に承認を与えることに反対をするものであります。  なぜならば、この協定はあたかもMSA協定とは違ったような様相を示してはおりますが、その本質はNSA協定と何ら変らないということが言えると思うのであります。もっと言うならば、MSA協定よりもその被害の及ぶところもっと大きいと思うのであります。そのほか多々反対の理由はありますが、詳しいことは明日の本会議において反対の理由を述べたいと存じます。  本日は簡単に反対の意思を表明しておきます。
  203. 苫米地義三

    苫米地義三君 私はこの協定の承認に賛成するものでございます。  その理由は、わが国の農産物は自給の程度に達しておりませんので、その一部を海外よりの輸入に仰がなければならない実情でございます。本協定はそのうち一部を輸入するということでございますし、その内容につきましてもおおむね妥当なことかと存じておりますから、本協定を承認することに賛成するのでありますが、ただ本委員会にも現われましたようないろいろな疑点、あるいは注文、あるいは勧告等がございまして、それは一々ごもっともな点があると思うのでございます。それゆえに、贈与を受けたものの使用と、あるいは借入金の使用方法については、その実施については十分な注意と、その利用度を高めるように政府は努めるということが御答弁の中にございまするから、私は政府の熱意と、そういう善処の答弁に信頼をいたしまして賛成をする次第でございます。
  204. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) ほかに御意見はございませんか。ほかに御意見もないようでございますが、討論は終結したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  205. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) 御異議ないものと認めます。  それでは、これより採決に入ります。農産物に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定締結について承認を求めるの件を問題に供します。  本件を承認することに賛成の方の御挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  206. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) 多数でございます。よって本件は多数をもって承認すべきものと決定をいたしました。  なお、合同審査を開きました際に、農林委員の諸君からいろいろ質問なり御意見なりがありました結果、今日当該委員長の江田三郎氏から外務委員長にあてまして申し入れがございましたことは、先ほど御報告申し上げた通りでございます。これに関しまして、外務委員会の適当なる措置を願いたく右当委員会の総意をもって申し入れますと、こういうことを申して参りまして、五項目の事項にわたりましての要望があったのでありますが、これに対しまして当委員会はいかよう取り計らいましょうか。
  207. 小滝彬

    ○小滝彬君 農林水産委員長からの申し入れは、委員長の本会議における報告の中にその旨を織り込まれるということで、十分申し出の趣旨は達成し得るやに考えまするけれども、そういうふうに取り計らわれてはいかがかと考えます。
  208. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) 今小瀧委員の御発言がございますが、申し入れの件を織り込むということでよろしょうございますか。あるいはこれをこのまま報告の中に入れて委員長から本会議で報告をいたすということにいたしましょうか、いかがいたしましょうか。
  209. 曾禰益

    ○曾祢益君 大体小瀧委員もこの大体の趣旨においては御異論ないことだと思いますし、私どもも趣旨において異存ございませんので、形式としては、今委員長が言われましたにこの内容をそっくりそのまま本会議における委員長の御報告の中に取り入れていただきたいと思います。
  210. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) 小瀧委員、それでよろしうございますか。
  211. 小滝彬

    ○小滝彬君 それでけっこうであります。
  212. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) それではそういうことに取り計らいたいと存じます。  なお委員長といたしましては、合同審議のときの委員長も勤めましたことでございますから、政府に対しまして合同委員会における意見、要望等の強いもののあったことを、合同委員会の委員長を勤めました私といたしまして申し入れておこうと思いますから、さよう御承知を願います。(「異議なし」と呼ぶ者あり)  なお、本会議におきまする口頭報告の内容及び議長に提出いたすべき報告書の作成、その他直後の手続につきましては、慣例によりましてこれを委員長に御一任を願いたいと思いますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  213. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) 御異議ないものと認めてさように決定いたしました。  それから報告書には多数意見者の署名を付することになっておりますから、本件を承認された方々に順次御署名を願いたいと存じます。   多数意見者署名     苫米地義三  井村 徳二     中川 以良  野村吉三郎     横川 信夫  大谷 贇雄     鹿島守之助  草葉 隆圃     小滝  彬  佐藤 尚武     梶原 茂嘉  後藤 文夫
  214. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) 御署名漏れはございませんか……、御署名漏れはないと認めます。  これをもって本件に関しまする外務委員会を終りたいと存じます。  本日の委員会はこれをもって散会をいたします。    午後三時二十七分散会    ————・————