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1955-06-13 第22回国会 参議院 外務委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年六月十三日(月曜日)    午後一時四十二分開会   —————————————    委員の異動 本日委員須藤五郎君辞任につき、その 補欠として羽仁五郎君を議長において 指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     石黒 忠篤君    理事            小滝  彬君            羽生 三七君            苫米地義三君    委員            草葉 隆圓君            梶原 茂嘉君            後藤 文夫君            岡田 宗司君            佐多 忠隆君            曾祢  益君            羽仁 五郎君            野村吉三郎君   政府委員    外務政務次官  園田  直君    外務大臣官房長 島津 久大君    外務省条約局長 下田 武三君   事務局側    常任委員会専門    員       渡辺 信雄君   参考人    東京教育大学教    授       藤岡 由夫君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○国際情勢等に関する調査の件  (濃縮ウランの受入れに関する件) ○農産物に関する日本国アメリカ合  衆国との間の協定の締結について承  認を求めるの件(内閣送付予備審  査) ○国の援助等を必要とする帰国者に関  する領事官職務等に関する法律の  一部を改正する法律案内閣送付、  予備審査) ○在外公館の名称及び位置を定める法  律等の一部を改正する法律案内閣  送付予備審査)   —————————————
  2. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) それではただいまから外務委員会を開会いたします。  本日は国際情勢等に関する調査の一環といたしまして、濃縮ウランの受け入れに関しまして、東京教育大学教授藤岡由夫君から参考人として御意見を聴取するということに前に定めておきましたが、それをお願いをいたそうと存じます。  議事に入ります前に藤岡教授に対しまして御あいさつを申し上げます。  本日は御多忙中のところ御出席をいただきまして、まずもってお礼を申し上げます。  議事順序は、まず参考人から御意見を開陳していただいて、その後に各委員から御質疑のある予定でございますので、そういう順序で参りたいと存じます。では、これから藤岡教授の御意見を聴取いたします。
  3. 藤岡由夫

    参考人藤岡由夫君) 私ただいま御紹介をいただきました藤岡でございます。本日は濃縮ウラン問題につきまして意見を申し上げよということでございますが、そういうことになりました動機は、先頃日本学術会議原子力問題委員会から外務大臣あてに要望をいたしました。それでその写しを御参考までに本委員会に、委員長あてに申し上げました。それが動機であるかと存じます。それで主としてこの濃縮ウラン問題について申し上げるつもりでおります。この政府に対して要望いたしましたことに限らず、少しくこういうふうになりましたいきさつ、濃縮ウラン問題そのものについて簡単に申し上げたいと存じます。  非常に最初わかり切ったことを申しまして、はなはだ失礼かと存じますけれども順序といたしまして申し上げますと、いわゆる濃縮ウランの問題が起りましたのは一昨年の暮であったかと存じますが、アイゼンハワーが国際連合総会で演説をいたしまして、原子力に関する、後進国のための濃縮ウランを百キログラム提供して、そうして国連一つ機関、いわゆるプールを作る、で、イギリス及びソ連もそれにある程度の提供をすることを勧誘いたしまして、その国際機関から各国に対して濃縮ウランを貸すという、そういうプール、または銀行といわれまして、そういう機関の設置を提議いたしまして、そうして百キログラム提供する用意があるということを申しました。これに対しましてイギリスは間もなくこれに応じて二十キログラム提供するということを申したのであります。ソ連はこれに応ぜず、そのままその案は全然立ち消えになってしまったのではないようでありますけれども、はっきりした実を結ばず今日に至っております。もっともそのプールの性格というものが大へん途中からまた変りまして、最初はそのプール独立機関として各国提供をするという案のようでありましたが、のちにプール手形交換所のような役割をする。結局国と国との間の協定で取り引きは行われる、そういうことになっているようであります。ところがそれが進まないので昨年アメリカ独立に、その国連機関の問題とは別に、直接自由諸国濃縮ウラン提供するということを申しまして、そうしてことしの一月から各国に向いまして、そういう申し入れが始まったようであります。日本に対してもそういう非公式の申し入れがありましたのがこの一月でありまして、現在現実に日本として問題に取り上げられましたのは三月の末から問題になって来たようであります。  この濃縮ウランは何かということでございますが、御承知のようにウラニウム——ウランウラン原子力原子エネルギーを出します、非常に大きなエネルギーを出します点、いわば普通の燃料にたとえられておりますけれども、非常に大きなエネルギーを出す原料であるとたとえられるのでありますけれどもウランの中に同位元素と申しまして少しく重い二三五と、それから少しく軽い二三八、これが約百四十分の一の割合で、百四十対一の割合でまじっております。で、一の方の二三五は非常によく燃えるのであります。あとの二三八の方はなかなか燃えないのであります。そのままではつまり燃料にならない。いわば石ころ百四十粒と石炭一粒とがまじったような形になっているのが普通のウランの元素の構成であります。それでその石ころの方を取り出しまして、成るべく石炭の方の割合を多くする、そういうふうにいたしましたのが濃縮ウランでありまして、濃縮ウラン、化学的にも外見上も普通のウランと何ら変りはないのでありますが、ただ僅かに目方が軽くなっている、そういうものと言ってよいと存じます。これを一〇〇%濃縮いたしまして、二三五だけにすれば非常によく燃えますので、これは原子爆弾材料になりますけれども、そこに行きますまでの二%ないし二〇%ぐらいまで濃縮したものを、これを提供するということを言っておるわけであります。  で、これを受けるとそれが原子爆弾になるのではないか、つまり濃縮の度を進めれば原子爆弾材料になるわけでして、そういうことは条約上、協定としても最も厳重に禁止されておることであり、非常なこれは設備と金とがかかります。また六キログラムぐらいを純粋にいたしましても、到底原子爆弾一個の分量にもなりませんし、そういう心配は先ずないと思うのであります。アメリカは現在のところ、そういうふうな濃縮ウランを非常に多量に作って貯蔵しているものと考えます。原子炉は、すなわちウランを燃やすための炉のようなものでありますけれども、それもアメリカでは、本来の天然ウランを使うやり方を近ごろではほとんどとりませんで、新しく作るのは、いずれも濃縮ウランから出発する、おそらく将来も発電等に行います場合には、濃縮ウランをある程度使うことをやることと考えられます。  ところが、原子発電ということに至る道といたしましては、濃縮ウランを使うことだけが唯一の方法であるかと申しますと、そうではないと考えるのであります。現在ヨーロッパ諸国では、天然ウランから始めて、だんだん大きな天然ウランを用いまして、小さな原子炉から始めて、だんだんと大きな原子炉を作って参りまして、フランスなどがその典型的な道をたどっております。濃縮ウランを作るということはいたしません。ただ原子炉を作って参りますというと、大きな原子炉では、石ころがまた燃える石炭に変る、すなわち、プルトニウムに変るということが起ります。二三八のウランプルトニウムに変る、そのプルトニウムがたまりますと、これがまた非常によい原子燃料でございます。で、プルトニウムを中心にして原子爆弾を作ることももちろんできます。ところが将来もし原子発電というようなことが行なわれるといたしますと、現にその計画は相当進んでおりますけれども濃縮ウランもとにするか、プルトニウムもとにするか、いずれにせよ濃縮ウランまたはプルトニウムを使っておっただけでは、濃縮ウランも一〇〇%のというのでありますが、そればかりを使っておったのでは、それを作りますのに非常な金と電力がかかる。そのあとのものを燃料としておったのでは、なかなかウラン経済という点において成り立たないと考えられるのであります。そこで将来は増殖型と申します炉は今研究されておりますけれどもプルトニウムを使うかあるいは濃縮ウランの濃い濃縮度のものを使いまして、そうして普通のウランかまたはトリウム、そういう普通では燃料にならないものまでも燃料として使う、そういうふうに進まなければならないというのが大体の学界の見通しだと思います。いわばそこへ参りますまでの道といたしまして、プルトニウムを使っていく方法濃縮ウランを使っていく方法と二つあるわけでありまして、アメリカは目下濃縮ウランの製作ということに非常な力を入れておるのであります。  それでこの濃縮ウラン各国提供いたしまして、それにはただ普通の商品として提供することはできないのでありまして、つまり核分裂性物質、これは原子爆弾に非常に関係のあるものでありますので、アメリカ原子力法の定めるところによって、各国との間に協定を作って、そうしてそれを提供するということでこの一月から各国との交渉が始まっているわけであります。ところでアメリカはそれに対する返事をなるべく早くしてほしい、そうして六月までに協定を結ぶようにしたいということを申しまして、現にトルコを初め、十数カ国がその協定をすでに結び、または近く結ぶという状態にあるということは、新聞に報ぜられているところだと存じます。何ゆえにアメリカがそういうふうに急いで協定各国と結ぼうとしているか、そういうことの理由幾つか数えてみたいと思います。アメリカが六月の一日までに協定を結びたいということを申して参りました一番表面的な大きな理由は、アメリカ議会は大体六月一ぱいに終り、そうしてこの協定を結びましてアメリカ議会に提出をいたします。それで一カ月の間、特に問題が起らなければ発効する、そういう仕組みになっておるそうでありまして、そういう意味で本年のただいまの議会に間に合うために六月一日までに協定を結びたい、これが一番表向きのはっきりした理由であります。でありますけれども、私ども考察いたしますと、もちろんそれにはアメリカとしての立場上いろいろの理由があると思います。これをどういうためであるかということに簡単に割り切ってしまうことはできませんけれども、いろいろの理由が考えられますが、その一つ、二つをあげてみたいと存じます。  第一は、アメリカ自身原子力問題を将来どう取り扱うかという問題であります。これは私の意見と申しますよりも、先ごろ調査団として方々いろいろの各方面の人に会いましたけれども、ほとんどアメリカの有識者、学者の一致した見解でありますけれどもアメリカ原子力問題に非常な投資をして参りました。おそらく昨年度までに百五十億ドル以上の投資をして参りました。そうして多くの人の意見では、原子爆弾貯蔵量というものは相当に飽和の状態に近ずきつつある。ことに原子爆弾につきましては、近く軍縮協定を結ぶということにとにかく努力が払われております。幸いにして軍縮協定が結ばれるということになれば、ますます原子爆弾濃縮ウラン、そういう材料の貯蔵というものがだんだん余ってくることになります。アメリカ自身はそれだけの大きな投資を今日までいたしますというと、その多くの資本並びに施設、そういうふうなものをどうしても平和産業に転用しなければならない。その平和産業に転用するということの一つといたしまして、アイソトープの工業的利用、工業的な利用に限りません。医療用あるいは生物学上いろいろのことに利用するということに目下非常な努力が払われまして、その利用がはかられております。これは一つ原子力平和的利用であります。  もう一つ動力としての利用であります。この動力としての利用は、アメリカでは現在のところ潜水艦に先ず用いまして、これはすでにノーテラス号が進水して好成績をあげているということを聞いておりますが、これは一つ利用であります。しかしもちろん潜水艦というような利用の仕方は、あまりコストの点、経済的に引き合うかどうか、そういうことは考えていないに違いないのでありまして、将来商船というような問題になるとまた話は違うんですが、その商船よりも先に今考えられておりますのは発電としての利用であります。この発電としての利用は、アメリカが最も進んでいるとは考えられません。それはすでは新聞の報ずるところによれば、ソ連に五千キロの発電所が完成して動いているそうでありますし、イギリスは明年五万キロの発電所を作り、さらに一九六六年までに百五十万ないし二百万キロの原子力発電をするということを発表いたしております。イギリスその他ヨーロッパの諸国は、それぞれ将来のエネルギー資源問題ということに非常な関心をもちまして、国として、イギリスという国全体として、あげてそういう発電計画を進めております。それがまたイギリス発電が進んでいるゆえんでありましょうが、アメリカは多少事情が違いまして、まだ将来のエネルギー資源ということについて、ヨーロッパ各国ほど痛痒を感じていないのであります。むしろ石炭、石油、そういうふうなものが非常に豊富である。しかし先ほど申しましたように平和産業に転用しなければならないとすれば、発電所というのはやはり一つの進むべき道であります。現在ピッツバーグでウエスティング・ハウスが受持って建設中の原子力発電所、これはデユケンス・ライト・コンパニーと申します電力会社の新らしい発電所でありますが、その発電所の中の一部で、二十万キロの発電施設の中に六万キロの原子力発電所を作ろうといたしておりますが、これが二十七、八年頃完成するといわれております。アメリカとしては書初の発電所であります。ところがその発電ができるといたしましても、アメリカ、殊にピッツバーグ附近は非常に石炭の安いところでありまして、果してこれが経済的に引き合うかどうかということはまだまだ疑問がいろいろございます。あるいは経済的にはまだ引き合わないのではないかという問題があります。しかしながらこれはアメリカとしてはほんの最初の試みでありまして、同じ方式の試みが今度企業としてニューヨーク、ハドソン河の畔りにできることがすでに発表されております。さらにその他発電方式につきましては、まだいろいろの研究が行われております。  そういうわけで将来発電、そういう方に向けて、原子力研究をそちらの方に向けていくということに非常に大きな努力が払われようとしておりますが、しかしただいま申しましたように、コストの点から申しますとアメリカ国内ではまだまだ石炭や石油に立ち打ちできるまでに至っていないのであります。でありますけれども、他の国において発電コストの高い国、そういう国があったならば、それに原子力を輸出する、輸出産業として考える、そういうことがアメリカ学者、その他の人たちによって言われております。先ごろ日本に参りましたホプキンス、その他の人たちもむろんそういう考えのようであります。つまりアメリカでは原子力を今後平和的産業に切りかえて参りますが、それを自分の国内における発電用に使うということもむろん考えますけれども、同時にあるいはそれ以上の熱意をもっていたといっていいのではないかと思いますけれども輸出産業として取り扱うということであります。ところが現在のところまだ発電所アメリカでは完成したものはございませんで、完成はおそらくイギリスの方が先に完成いたしましよう。これは必ずしも技術イギリスよりも劣っているということではないと私は思います。ただそういうことの必要性イギリスの方がより多く考えているためだと思います。とにかくそういうわけで、将来発電輸出用にするといたしますと、やはりそれにあらかじめ手を打っておかなければならない。現在のところまだ各国提供するという濃縮ウラン並びにその設備というものは、ごく初歩的な、ほんの初歩的なものでありますが、まずそういうものを各国に供与いたしまして、一応手を打っておいて、そしてだんだんと、また将来の原子力発電に至るまでに、おそらく幾つかの段階がまだあると思いますけれども、それによって発電をまた供給する、そのための一つの手である、そういう見方は十分私どもでさえ考えられるのであります。  それからまた政治的な見方をいたしますると、今日平和攻勢といわれる、これはまあ私どもしろうとはあまりこのような席で申すことははばかるべきでありましょうし、私どもは何にも知らないのでございますが、しかしとにかく平和攻勢ということが言われ、ソ連がすでに東欧圏の内部で幾つかの国に原子力技術を伝えたということが報ぜられておりますので、むろんそれに対応する西欧圏内においてなるべく多くの国に原子力の手を打っておきたいということはあると思うのであります。それからこの夏ジュネーブ会議というのがございます。これは国際連合が主催で行われます科学者会議でありまして、国際連合は一方においては軍縮問題を取り扱いますが、同時に原子力平和的利用の問題を取り扱っております。その科学者が集りまして、話し合うことによってお互いの理解を深め、そして提携して進めていくという意味でありますが、このジュネーブ会議にはアメリカイギリスも、ソ連も、その他非常に多くの、現在ちょっと私はっきりした数字は忘れましたが、多分三十カ国も出席を申し出ておるかと思いますが、それがそれぞれの国の原子力の進んでいる状況について報告をするわけであります。アメリカ、多分イギリスもここで一つ原子炉の展覧をいたしまして、いわばこれは見本市のようなものだということが言われております。このジュネーブ会議でおそらく各国情勢がかなりよくわかる。現在でもむろんある程度のことはわかっておりますけれども、このときまでに秘密を解除する部分も相当あると伝えられておりますので、一そうよくわかりますので、これを一つのあるエポックのように現在考えるのであります。そのジュネーブ会議の前になるべく多くの国と手を結びたいと、そういう意味もあるのであります。こういう見解は、これは非常に客観的にアメリカ側立場というものを推測しての問題でございます。日本はやはり日本立場というものがございます。そこで私は日本側でこの問題がどういうふうにこれだけ取り扱われてきたかということについてまず日本側の進捗の状況について次にお話申し上げようと存じます。  昨年原子力の問題が日本で始まり、国会で原子炉予算が協賛されまして、初めて日本としては原子力問題に足を踏み入れたわけであります。で、日本でその原子力問題の方針をきめます最高の審議会という意味におきまして原子力利用準備調査会閣議決定によりましてできましたことは御承知通りだと存じます。これは当時の緒方副総理が会長であり、関係閣僚若干名、それから民間から経団連の石川一郎会長茅誠司学術会議会長、それから私、学術会議原子力問題委員会委員長、そういう資格におきまして、これはまあ個人としてではありますけれども民間から入っております。現在は重光外務大臣会長でおるわけであります。これは審議機関であります。ところがこの利用準備調査会はそうたびたび開くこともできませんので、最高決定機関といたしまして、その下部機構といたしまして総合部会というのが設けられております。これは経済審議庁石原次長会長でありまして民間側からは学者並びに経済の方々約十名近く、七、八名であります。それから関係のあります官庁の局長クラスの方が専門員として、そういう官庁側代表並びに民間専門員によって構成されております。これがたびたび開きまして、そして原子力に関する根本問題を議しつつあったのであります。で、この総合部会は実は昨年の十二月からことしの三月頃まであまり開かれませんでした。それは昨年原子力利用に関しまする海外調査団を派遣することになりまして、これが昨年の十二月の末に日本を出発、三月の二十五日に帰国いたしました。私その一員として選ばれ、推されて調査団長として約三カ月にわたりまして旅行をして来たわけであります。で、その調査団がいずれ報告をするであろう、外国の様子を見てくるであろうということで、総合部会もその帰るのを待っていたわけなんであります。そこで戻りまして細かい技術的な各国状況などの報告はすでにでき上っておりますけれども、まだその字句の修正、印刷の準備等のために一般に発表されておりませんが、それを作りますについて、やはりその報告とともに、日本の今後の原子力問題に関する進み方、それについての調査団としての意見、そういうふうなものが非常に強く要望されているということが方々で言われておったと考えます。そこで個人的の意見を言うことは私どもといたしましてもはばかりまして、調査団全部の者がよく話合いをいたしまして、意見の統一をいたし、そうして今後の日本の進むべき途ということについての一つ意見を申したのであります。これは五月の六日に通産大臣報告するとともに発表いたしました。  これで申したことは、一つは態勢です。日本の今後の原子力開発に対する態勢を統轄機関実施機関とに分けて早く整えることが肝要であるということが私どもとしては非常におもな点なんでありますが、同時に原子炉を作るにはどういうふうな方法でやって行くかということについての意見を述べております。これは日本はやはり日本独自の案を持たなければならないと思います。外国ではすでに原子力研究は非常に進んでおります。そうしてやがて原子力発電が行われるようになるでありましょう。日本で今外国がそういう研究を進めました方法を、途をそのままあとを追うようなことをいたしておりますれば非常に時間がかかり、金もかかる。そのうちに外国でできました発電装置というふうなもの、そういうプラントを日本に売りにくることは必然でありますし、また日本側でそれを買うということは、これまた必然であります。先ほど申しましたようにアメリカ原子力利用の事業を一つ輸出産業として今後取り扱うのは必然であります。また日本としては当然それを買うということが起ると思います。でありますけれども、ただそれを買っておるだけでは、永久に日本技術的に独立し得ない、よくまず買ってそうしてそれから研究をするのがいいということが言われるのでありますけれども、こういう問題は資源の問題その他非常にむずかしい問題でありまして、普通のただ機械を買うというだけの問題とはちょっと違うと思います。たとえばもし濃縮ウランを使うという方式で、アメリカが自分の方の産業に都合のいいような方式を作りまして、それを順次売ってくる、それをただ黙って順次買っておるようならば、それはすべてアメリカの便宜のために将来きめられるわけであります。日本にもおそらくウランが多少はあります。今後の探査によってもっとたくさん出てくるかもしれません。そうしますと、日本として考えます場合には、日本天然ウランをどのように利用するか。それから日本技術、すべての機械をアメリカから買うだけでは日本技術は進歩しないのであります。どういう点が日本にできるか、どういう点が今日本ではできないか、日本技術というものも考えなければいけない、経済ということもむろん考えなければいけない。で日本のそういう資源経済技術、そういうことを考えますというと、日本として今後の原子力開発に対してどういう方針で進むべきかということの一つ日本独自の案、これを十分に検討する必要があると考えるのであります。そういうことを研究いたしまして、私どもといたしましては日本としてある程度大きな将来のいろいろの技術の進歩の基礎になるような原子炉一つ作りたい。天然ウランと重水とをもった一つ原子炉を作りたい、これを第一号炉と私ども報告書を呼んでおりますが、そういうものを作りたい。それはとにかく今後のそれだけでもってすぐに発電研究をすることはとうていできないと思いますけれども、とにかく技術の進歩、そうして日本でかりに外国から発電の装置を買うといたしましても、その基礎になる技術研究、その基礎になる技術を持つ、日本に批判力がなかったならば、とうてい独自のものとしてこなしていけない、そういう意味において一つ日本のある技術研究の基盤になるようなものをぜひ作りたいということを強く主張いたしております。それと共に今濃縮ウランの問題が起っておりますけれども、その濃縮ウランは実際使うのには非常に便利であります。そうして今アメリカからすすめられております濃縮ウランというのはごく初歩的なものでありまして、これにはおそらく何ら秘密が伴っていない、これは私ども確信しており、今日に至っても依然として確信いたしております。でありますから、そういうものを補助としてこれを受け入れることはちっとも差しつかえない、おそらくあまり差しさわりのない条件、よく学術会議の三原則ということを申しますが、私ども見解ではそれに抵触しない条件においてこれを受け入れることができるだろうと考えます。そういう補助的な意味において濃縮ウランを受け入れてもいいのではないか。ただしおもな点は日本独自の案を持つ、そういうことであります。そういうようなことを総合部会にも報告いたしました。で、総合部会でいろいろその調査が行われましたが、まず外務省といたしましてはどういう条件が協定について出てくるであろうかということをできるだけの材料を集められたのであります。そうしてトルコとの協定になります前の状況でありますが、その状況に、外国と、第三国とアメリカとの間に結ばれます協定がどういうふうなものであるかということについていろいろ調査をされました、もちろん完全な材料はまだ入っておりませんです。しかし大体こういうふうなものであるらしいということの報告がありまして、そうして総合部会といたしましても、そういう濃縮ウラン受け入れの交渉を始めることは差しつかえなかろうということの意見が非常に強く出ましたのが五月十六日でございます。この日は総合部会として決議をしたわけではございません。少数意見も何も、みな個人の意見をそのまま述べるということにいたしましたが、これに対して今濃縮ウランの受け入れ交渉を始めるよりも、日本の国内の態勢をまず整えるべきである、そうして国内の態勢を整えることをまず先にすべきであって、しかる後に濃縮ウランの問題に進むがよろしい、こういう意見が一部にございます。しかしながら諸般の情勢を考えますと、日本でも非常にその濃縮ウランを受け入れるがよろしい、しかも早く受け入れるべきであるという声が非常に高くなっておりますし、いろいろの事情を考えまして、やはりある程度早く進むということも必要であるので、濃縮ウランの受け入れの交渉を始めることと、それから国内態勢を整えるということを同時にスタートするがよかろう、そういう意見が大多数でありました。これが五月十九日の原子力利用準備調査会の本会議報告されました。で、本会議ではアメリカから濃縮ウラン並びに必要な技術を受け入れるということを目標にして、その交渉を開始するということと、それからそのため日本として原子力開発のために必要な態勢を早急に整える、そういうことを決議したのであります。で、二十日の閣議に、これも大体濃縮ウランの交渉を始めるという趣旨のことが決定された由でありまして、そこで日米交渉が始まったことと存じます。  ただ私はここではっきり申し上げておきたいことは、それは交渉を始めることを総合部会で申したのでありまして、それが至急、その当時といたしましては六月一日が大体期限のように思っておりましたので、それに間に合うように交渉ができるとは、多くの人は考えていなかったのであります。私自身は無論考えていなかったのであります。交渉が開始されると思っておりませんでした。しかるにその後に五月二十八日にまた総合部会を開かれまして、このときは外務省側からは専門委員の御出席はなかった。代理の方の御出席がありましたけれども、すでに訓令も送られ、交渉も開始され、そうしておそらく六月十五日ごろまでに妥結されるであろう、おそらくアメリカ議会も半月くらいは延びるだろうから、今度の場合に間に合うだろうという意味の御報告がありました。私は委員の一人として、これに関してさらに詳しい情報ですね、そういう条件であるとか、そういうような情報でありますとか、あるいはこちらの方針であるとか、そういうものについての御相談があるものと期待いたしまして、そのように質問いたしたのでありますけれども、その日は、これは外交上の問題は外務省にまかすべきである、審議会はいろいろのことははかるけれども、ある程度以上のことはこれは事務上の行政上の問題として行政担当者にまかすべきである、そういう強い御意見がその席ではございました。私はこの問題は日本原子力の問題を左右するものでありまして、そうして行政上の事務の問題として取り扱うにしては、余りにも重要な問題であるということを主張したのでありますが、その日はそれ以上御説明がなかったのであります。しかしながらその点につきましては、六月四日に学術会議申し入れをいたしまして、学術会談委員会を開きまして、そうして外務省の担当河崎局長に申し入れをいたし、その後開かれました六月九日の何で、準備調査総合部会では、相当詳しい御説明がありました。そうして十分に委員意見も開陳する機会がありました。その点に関して私が先ほどまで申しました点は、まずその後の進み方に照しまして、すでに了解満足いたしているということを申し添えておきたいと存じます。  そこで六月四日に学術会議原子力問題委員会を開きまして、そうしてその結果要事をいたしたのであります。その要望書の内容につきまして御説明申し上げたいと存じます。これは日本学術会議は御承知のように、政府に対して、諮問に応じ、または勧告をする機関でございまして、これはスタックを通じまして、そして学術会議会長から総理大臣あてに申入れるのが正常であります。それにはしかし総会の決議を要し、またスタックの総会は一カ月に一回開かれるのでありまして、緊急を要する場合には、そういうことは間に合わないのであります。ただそういう場合には学術会議の中の、あるいは部長でありますとか、あるいは委員長でありますとか、そういうふうなものから、会長の了解を得まして、直接私見を伝える、そういうことが従来の慣例として行われております。その慣例によったわけで、総会ないし運営審議会といたしましては、これに対して、後に事後承諾を求めるわけであります。それで申し入れをいたしましたことの内容を申しますと、第一に非常に重要だと考えましたことは、これを外務省……。ちょっと読んでみますと、「交渉の基本的方針について、原子力準備調査総合部会意見を十分に徴され、かつ、国民に事態をできるだけ理解させるよう努力されることを希望いたします」、こういうふうに申しております。これは御承知のように、原子力問題は、今日非常に一般的の関心が深い問題でございまして、これはできるだけ国民に理解された形においてそのことをはかって、進めていただきたいと存ずるのであります。国民に理解させるということはどういうことかと申せば、むろん直接は、第一はこれは国会尊重であります。でありますけれども、この学者、実業界、そういうふうなものの意見原子力問題に反映させて、そしてその方針をきめますために、原子力利用準備調査会というものが公けにできているわけであります。これは閣議決定でできたものではありますけれども、昨年以来そういう機関がちゃんとあります以上、これにお諮り下さることが、一番つまり国民の世論を徴するということの一つの行き方かと思うのであります。でそういう機関を無視されることなく、意見を徴されて、会議を開くということが、しかし非常に緊急を要する場合に、そう主張できるものでもないと思いますので、そこで「意見を徴される」という言葉を使いましたのでありますが、そういうことを申し入れたのであります。これは実は今、ただいま申しましたようないきさつがございますので、これを非常に重大なこととして取り上げたのでございますけれども、その後の政府の取扱いによりまして、この点については私どもはすでにまあ満足していると言ってよろしいと存じます。  そこで学術会議のこういうこまかい条項については、一々のことをかれこれ非常にこまかいことはまあ言わないというのが大体の趣旨でございますけれども、大体具体的な点が、大きな点だと思います。二つの点を特に留意されることを望みますということを申しておきました。  一つは「交渉にあたっては、妥結を急ぐことなく、内外の情勢、将来の見通しを十分把握しつつこれを進めるべきであり、少くとも、世界諸国の原子力研究開発の状況が発表される今夏の「原子力平和的利用のための国際科学会議」の結果を見定めることが望ましいと考えます」ということを言っております。これはやはりこのことにつきましては、先ほどからの説明で、もう特につけ加える必要はないと考えますけれども、とにかく日本としては原子力研究を始めるということは急がなければなりません。世界諸国の情勢を見ますに、ことに日本の将来のエネルギー需給の問題、十年、十五年後の先に日本エネルギー供給がどうであるか、そのときの需要はどうであるか、そういうことを考えますと、日本原子力研究を早く始めなければなりません。しかしながら、その早くというのにも、そういう長期的の意味の早くと、短期的の意味の早くとが違うのでありまして、十年、十五年ということを目標にいたしますならば、早く、ここ一年の間にぜひ始めることを考える、そういう意味では非常に早くになります。しかし、ここ一カ月を急ぐか二カ月を急ぐかと、そういう意味で申すならば、そういう意味で急いで将来に禍恨を残すことがあってはならない。今日本ではその原子力問題を将来どういうふうに取扱いますかという本当の方針をきめていきますような責任をもってやる態勢がまだできていないと私どもは考えます。現在あります原子力利用準備調査会は、これは審議機関でありまして、審議機関というものは本当の責任を持つ機関ではないのであります。それでこの原子力問題というのは全く新しい問題で、各方面に非常に大きな影響を持つ問題でありまして、発電のことばかり、技術のことばかりじゃないのです。いろいろの方面に非常に大きな影響を持つ問題であり、しかも一歩あやまれば、原子爆弾というような危険を持つものなんであります。これについてはどういうふうな態勢でいくがよろしいか、各国とも原子力の統括機関というものに非常な注意が払われております。そういうような意味でぜひ統括機関を作る。また実際やるにはどういう所でやるのがよろしいかということもなかなか大切な問題であると思いますが、とにかくそれがまだ何にもきまっていないのであります。仮に今日濃縮ウランを持ってきましたところで、誰がどこでどうするかということも何にもきまっていない。そういう意味で一カ月、二カ月を争う必要はないのでありまして、先ほども申しますようにアメリカとしてはこれを急ぐ十分なる理由があると思います。しかし日本としてはこれをそんなに急ぐ理由はないのであります。この夏のジュネーヴ会議でいろいろの知識が得られますならば、そのあとまで待って差しつかえないと思います。もっともこの協定は、今はただ一般的な、受け入れるかどうかという協定技術的な面は後に残す、そういう方針のようであります。まあこの点はとにかく八月よりも早くてはいけないとか、遅くなければいけないとかいうようなこと、それに非常にとらわれるわけではありませんけれども、とにかく急いでやるということのために起す損害ということがないようにしてほしいということなんであります。  それからもう一つ申しておりますことは、協定の内容は、濃縮ウランの受け入れに直接関係する事項にとどめるべきであり、将来にわたる拘束を含むような事項及び今後の日本原子力開発方針をあらかじめ規制するような事項は、これを避けるのが適当であると考えます。これは非常に抽象的な言い方に私どもといたしてはとどめておりますけれども、すぐに皆様にお気づきになると思うのは、トルコ協定の第九条、将来原子力の問題についてお互いに相談をして、ことに発電について協力をすることが望ましい、そういうホープ・アンド・エクスペクテーションであるということを言っておることなんであります。この条項につきましてかなりいろいろの意見が出ております。これはいわば将来のひもである、今の原子力問題、今の濃縮ウランの問題でなく、将来のことのこれは約束をしておるのであるという、そういうひもであるという意見が相当にございます。しかしながらこれは法律的にいえば何ら拘束ではない、そういう意見もございます。それからまた、こういう条項はぜひあった方がよろしいんだ、日本が今単に濃縮ウランを受け入れるばかりでなく、将来発電の問題について知識を得るために、こういう条項があるのは望ましいのだ、むしろこれが積極的に望ましい、そういういろいろな意見があるように思います。で、私どもはこれも学術会議委員会におきましてずいぶん論じましたが、第三の、ぜひこれがある方が望ましいのだということは、学者また学者以外の方でもあまりそういう意見は多くないと思います。と申しますのは、どうせ、先ほどからくどく申しますように、将来原子力アメリカの大きな輸出産業といたしましてどんどん出て来るし、また日本では必ずこれを買おうということになりますと、これは普通の商品と同じでありまして、そういう輸出入の話というのは当然起ってくることであります。そのときにもし協定が必要ならばそういうことが幾らでも行われるわけなんです。この条項を置くことによって、もっとあらかじめ特別に有利な情報が得られるというふうに考えられる方があるようでありますが、それはどうもそういうふうに思えないのであります。と申しますのは、発電まで進みますと、現在のところそこにかなり多くの機密問題があります。機密にわたるような情報がたとえこういう協定があったからといって提供せられるということは、これはあり得ないのであります。機密の内容を持つものを知るためには、さらに厳格なる協定を結ぶことが必要であります。そうであるとすれば、機密のことの情報は別にないとすれば、あとはただ普通学術雑誌に発表されること、あるいはカタログその他報告のようなものなら、これは別にこういう協定があろうとなかろうと、商取引の問題としても十分に行われるものでありまして、特にこういうものを必要とするということはそれほど考えないのであります。そうしますとこの第九条のようなものは何ら法律的に無害であるというふうな意見の方もありますけれども、これを非常にシリアスに考えまして、こういうふうなことがありますと、将来どうしても、まず将来ぜひお互いによろしくお願いしますということを強く言っておきますと、どうしてもそれに引かれる。日本として独自の研究、また外国から入れる場合におきましても、どこの国から入れるか、あるいはイギリス技術の方うが便利な場合もありますし、フランス、スイス等の技術が便利な場合もあります。現にほかの問題についてはそういうことがありますが、これを一つの国と、アメリカとあまり強く結ばれたために、日本独自の考えで進むことにとかく何らか遠慮というものが出てくる。そういう意味でどうもこれはない方がよろしい、非常にこれは強くひもであると言う方もあるし、またこれはない方がいい、そういう意見が相当あるのであります。そうであるならば、特にぜひこれが必要だということがそれほど強くないならば、日本としてはなるべく日本人の多くの方が納得できるような形をとることが望ましい、法律的にこれはあっても差しつかえないという御意見の方もありますけれども、しからばこれがぜひ必要かというと、そういう法律的に無害だという方も別にこれは必要だというわけではないのです。あっても差しつかえないという。われわれといたしましては、こういう原子力問題のようなことは、今後できるだけ日本の国民の全部が支持して、そうしてできるだけ多くの人たちの知識を集め、知能を結集し、そうして国民全体の支持によって進めていかなければならない問題であると考えます。そういう点から見まして、ぜひそういう、将来を拘束すると思われるような意見があるようなことは、なるべく日本立場において除いていただきまして、そうして国民全体ができるだけその協定を支持できる、そういうふうになされることを希望するのであります。  なお、現在交渉が進行中のようであります。まあ私どもとしては、できるだけ多くの国民が、皆がサポートできますような形においてこの協定ができ、そして原子力研究が力強く推進されることを希望している次第であります。  はなはだ散漫で、なお申し上げるべきこともいろいろあるかと存ずるのでありますけれども、あまり時間がたちますので、一応このあたりで打ち切りまして、なお御質問によりまして御答弁申し上げたいと思います。
  4. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) ただいまの藤岡博士の参考人としての御意見に対しまして、御質疑のおありになる方は順次御発言を願います。
  5. 曾禰益

    ○曾祢益君 ただいまだんだんと御説明下さいまして、非常によくわかったような気がするのですが、総合部会における問題の取り上げ方と、それからいま一つは、学術会議の最近の結果のお話と、両方あったと思いますが、これは藤岡教授は両方の立場におられて、きょうはむしろ学術会議から申し入れられた点について、学術会議の総合的意見を代表されているのだと思います。そこでただいまのお話の中で、五月二十八日の総合部会における外務側の取扱い、これは私もどうも不適当ではなかったかと思うのですが、取扱いが。その後、六月四日の学術会議で、特にこの第九条に関連した非常な御検討がなされ、申し入れをなされて、それから六月九日に総合部会になって、このときにはかなり外務省が何でも行政方面交渉の方面は自分らがやるんだということではなくて、態度を改めて、相当詳しく御意見を伺い、また説明もしたようで、先ほどのお言葉でも、その説明でだいぶ何といいますか、満足されたといいますか、了解された点が多いというお話だったように伺いました。それが総合部会における最近の事情であって、一応、さらに繰り返して言うならば、五月二十八日の会議と六月九日の総合部会との間にちょっと問題が起ったわけですね。それがやや、何といいますか、話がついたというふうに伺ったのですが、そこで、どういう点を御了解なさったかという点なんですが、第一には、六月四日の学術会議申し入れの内容の第一項ですね、すなわち、よく総合部会に現われるような意見を徴してからやる——この点については政府のやり方について大体納得されたというふうに承わったわけです。  そこで結局問題は、具体的な六月四日の学術会議の総合的な意見の二点になると思うのですが、第一の、もちろん日本としては原子力の平和利用が非常におくれているので、態勢を整えるとともに、どんどん進めていかなければならない、長い目ではかるならば急がなければならぬ、こういう観点に立ちながらも、ただ、同時に急ぎ過ぎて、そうしてこの際不利なことをやってはいかぬ、こういう意味ジュネーブ会議の結果まで見定めたらどうか、と、これははっきりそうも言われている。しかし現実の政府の進め方からいえば、これは相手方もありますし、わかりませんけれども、どうも新聞等の伝えるところによれば、政府が五月二十八日の総合部会で申しましたように、大体六月十五日までに妥結を予定してやっていると思うのです。そういたしますると、そこに食い違いが出てくるわけですね。絶対の食い違いでもないかもしれないけれども、まあまあ、どちらかといえば、ジュネーヴ会議まで待った方があるいは安全じゃないか、こういう御意見からみると、これは協定の内容等によってそれは価値判断は違うでしょうが、しかし少くとも結果として生まれるところは、ジュネーヴ会議の終える前にこの濃縮ウラン受け入れの協定をやってしまおう、しかも第二点の第九条がどうなるかということは次にあるのですから、とにもかくにも濃縮ウラン受け入れに関する協定は、第一項の、希望的観測にもかかわらず、事実上無視されるということになるのですね。その点については一体どういうふうにお考えになるか。やはりこの第九条の問題がかりに御意見通りになって削除か何かされたとしても、その他いわゆる日本の自主性を拘束するような条項がないとしても、とにかく濃縮ウラン受け入れの協定は、アメリカとの間に六月十五日に作ってしまおう。ジュネーヴ会議よりも、学術会議よりも前に作ってしまおう。これは一体どういうふうに見られているか。それに関連して、もちろんアメリカ議会は六月一ぱいで一ぺん休会になるわけですが、また引き続き、これは私もよく知らないのですが、次の議会が始まるのでしょうが、これを早くやらないと、かりに受け入れるのがいいとしても非常におくれるというようなことは、一体マイナスの方はどういうふうに考えるか。この機をのがすと、ここ六カ月か数カ月くらい、濃縮ウランをかりにアメリカから受け入れるのがいいとなってもおくれてしまう、こういう点は一体どういうふうにお考えになるか。
  6. 羽生三七

    ○羽生三七君 ちょっと議事進行について。今、政務次官や条約局長が見えられたようですが、これは本件に関連しておみえになったのか、他の法案の審議でしょうか。
  7. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) そうではありません、他の法案についてのことと存じます。藤岡参考人に来ていただいて意見を述べることについて、参考においでになったらどうかということを外務省に申し入れたのでありますけれども、ただいままでおいでにならなかったのでありまして、もう大体済んだから、ほかの法案についてという意味でおいでになったのだろうと委員長は推察いたします。(笑声)
  8. 藤岡由夫

    参考人藤岡由夫君) 御質問にお答えしてよろしいでしょうか。……ただいまの御質問はおもに二つの点であるように存じます。一つは、この学術会議としては、ジュネーヴ会議まで急がないで、むしろ見合わせた方がよかろうという意見表示をしているが、そうでなくなった場合にどうなるかというそういう御質問だったと理解します。で、その点は学術会議学者の側としましては、どういう協定ができるか、そういうことはこれはわからない。要はでき方によると思います。かりにこれはただ近き将来においてアメリカ濃縮ウランその他のものを受け入れる具体的な交渉をすると、そういうことの仮約束のようなものだから、何も具体的なものがないということであるならば、あるいは私はそれでもよろしいかとも存じます。しかしそういうどういう協定であるかということは、私どもとしては別にちょっと推測する材料もございません。もしもこれが、たとえばどういう種類の型のどういう種類のものを、どういうふうにするということがあるとすれば、これはまた日本で作るといたします場合に、あるいは買うといたしまする場合に、どういうものであるかということになりますと、これは各国情勢を知った上できめるべきで、もしもそういうことに対しても何かあらかじめ規定するような条件が盛られるようなものであるならば、これはジュネーヴ会議の後にすることが望ましい。要はどういうものができるか、そういうことを考えておりまして、私、学術会議申し入れは、ただそれを一般的な問題として取り上げたためにこういう抽象的な表現になったと、そういうふうに考えます。  それから第二の点に、もしも来年に回された場合におくれはしないかという御質問だったと思います。これは私、もし来年約束したために、実際の受け入れがさらに一年おそくなるということになれば、それはおくれるかもしれないのでありますけれども、もし来年協定を結んで来年のうちに受け入れることができるならば、来年といっても、何もこれは六月である必要はないと思います。来年の初期でよろしゅうございましょう。それならば私はそんなにおくれることはないと思う。もし今受け入れることになりまして、よくアメリカから原子炉を買うという言葉が非常に使われております。買うのはどういうものを買うか、これは買うということは、アメリカでハシテングのライセンスを与えるようなものだということで、あと民間側でかってにやれということだそうでありますが、私ども立場から言えば、果してこれを買うのがよろしいか、これを自力で作るがよろしいか、これは相当問題だと思います。どういう型を選ぶかということ……。
  9. 曾禰益

    ○曾祢益君 実験炉の場合は……。
  10. 藤岡由夫

    参考人藤岡由夫君) 実験炉の場合、日本の実業界でも、ことに業界でそういうことをやろうと思っている人人は、ぜひ日本で作る力を持ちたい、そういう意見が非常に強いと思う。ところが、果してこれはできるか。パテントの問題等もございますが、それが一番やさしいものなら、まあ私どももあの程度のものなら日本でもできるかと思うのであります。しかしまた実際設計してみますというと、この点はむずかしい、この点は技術導入を必要とする、この点の材料は必要とする、そういうふうな点がいろいろとあると思う。私ども望ましい点は、日本態勢ができ、そうして実際やる人がきまって、どういうものを、どういうふうに作るのか、もつと具体的に当ってみますと、この点が買いたい、この点の技術を導入したい、そういうようなことで、もし方針がきまっても、やりますのには何カ月か必ずかかります。でありますから、その上ですぐ話ができるものなら、来年の春でもおくれて困るということはないと思う。ただ漫然と、これは一つ買いますというだけの約束をするとは私ども考えていない。もう少し具体的に、日本技術を考え、将来を考え、できるだけ技術を身につけるという意味において考える。そうすれば数カ月はそうおくれて困るということはないと考えております。
  11. 曾禰益

    ○曾祢益君 それで、少しくどいようですけれども、さっき伺ったところによると、五月十六日の総合部会と、原子力利用準備委員会の本会議、ここでは一応は工場は貸してもいい、同時に日本態勢を整える——まあ日本態勢を整えるのが原則でしょうが、交渉はまあいいだろう、で大体きたのが、六月四日の学術会議で、いわば交渉についても、協定についてもジュネーヴ会議まで待った方がいいだろう、ことに第九条はない方がいいだろう、こういうことになった動機は、何と言っても第九条のことが非常に中心に危惧されたからと、こういうふうに考えられるのですが、しかし結局、まあ第九条のことはあとで御質問しますが、今伺ったところによりますと、絶対ジュネーヴ会議あとでやらなければいかぬということではなくて、これはもちろん内容による、こういうことに解釈して差しつかえないのでありますか。
  12. 藤岡由夫

    参考人藤岡由夫君) それでけっこうだと思います。
  13. 曾禰益

    ○曾祢益君 そこで、第九条以外にも、いろいろ学術会議でも議論のあったことだと思いますが、一般的な、ひもであるかないかという議論は別として、たとえば、第二条の、実験炉を作る場合に、やはり何か協議してやるような情勢があるのですが、そういうことは、向うから濃縮ウラン提供されるということを前提とし、ことに昨日ですか、アイゼンハワーが新らしい提案で、これは実験炉建設の資金も半分持つとかいうことを言っておりますから、濃縮ウランを受け入れるだけでなくて、日本で実験炉を自主的にお作りになる場合でも、こういうものがほしいとか、ここは日本でやるというときに、これは協議ということが第二条にあるために事実上非常に拘束を受けるというような心配はないですか。
  14. 藤岡由夫

    参考人藤岡由夫君) そういう点では、まあ第二条の協議というのはそれほどに思いませんけれども、協議よりもさらにオブザーブという字の何でございますが、ああいうふうな点についてはかなり心配を持っている人がございます。それはつまり、協議、さらにオブザベーションというようなことになりますと、やり方によっては、何か内容について指示を受ける、命令を受けるというようなことになれば、日本研究、自主的な研究ができないではないかというような心配を持っている人もありますけれども、これはまあ物を借りる以上、やっぱり、非常に危険である、あるいは何かうわさによると、別のことに使われておるというようなことがあったときに、ちょっと行って見るぞというようなことで、まあ大したことじゃないという意見が多いのであります。私も大したことはないと考えておりますが、しかしそういうふうなものでないということを——この内容はこれは決して命令をしたり、指令をしたりするような意味のものではないという了解がどこかにほしいと考えております。
  15. 曾禰益

    ○曾祢益君 そこで、第九条なんですが、どうも私も第九条がいかんのかどうかということについて考えておるわけですが、たとえば、デンマークの場合だと思いますけれども、あれはイギリスとも協定を作ったようですね。これは、内容を知りませんからわかりませんが、デンマークの場合に、第九条があったのかどうかも知りませんが、法律的に見れば、必ずしも趣旨がアメリカの独占を約するような内容、態様をなしていないと思う。ただ、私はどうもこの間から政府の態度がわからないので、その点を伺うのはどうかと思うのですが、ほんとうに厳格に実験炉を作るための濃縮ウラン受け入れだけにとどめるというはっきりした線を画しているのか、まあアメリカがついでに発電炉のことまで外交的にゼスチュアをし、さらには純商業的に見れば、これはもう何も秘密でもなく、またアメリカの意図を特に悪くとろうという意味でなくて、これはやっぱり原子発電についてのマーケットを作ろうという商業的の意味が当然あるだろうと思う。そこであれやこれやで、原子炉だけでなくて、次の話をしようやというような軽い意味だから差しつかえないじゃないかという見方もあると思うのですが、日本学術会議の御意向はもちろんであるが、直接政府の諮問機関である原子力利用準備委員会藤岡さんは、やっぱりこの際ははっきり濃縮ウランの受け入れ、実験炉に関する便宜供与、これに伴う協定だけにする方がいいのだ、実際発電のことは今後またジュネーヴでいろいろ陳列もあるだろうし、またイギリスとの関係もあるだろうし、たとえばデンマークがアメリカとも結び、イギリスとも結んだという、こういうパターンも研究してみたらいいだろう、いろいろな関係から、まあまあ原子力発電の方のやつは一切出さぬ方がいい、こういうふうなお考えじゃないかと思うのですが、どうなんですか。
  16. 藤岡由夫

    参考人藤岡由夫君) その通りであります。私ども最初からこの濃縮ウラン受け入れ問題を論じましたのは、全く濃縮ウラン受け入れだけのことを論じておりますので、将来のことに言及するということは少しも考えていなかった。でございますので、これはそういう言及するというようなことはしない方がよろしい。この問題はこの問題だけに限るのがよろしい。それから今デンマークのお話もございましたが、日本でも法律的に見れば、これは大した約束でも何でもない。ということは、たとえば横田教授のごときも言われ、そうしてそれについてはだれも異論はないのであります。しかし、多くのほかの心配する人の申しますのは、たとえ法律的に何でもないものであっても、あとは力だというのです。力と力とでもって物は動いていく。もし今ここで私見を差し挾むことを許していただきますならば、デンマークはヨーロッパの国でございまして、イギリスと非常に密接な深い関係を持っている国なんです。それがアメリカとも結びつき、イギリスとも結ぶということも対等にできると思う。日本とデンマークとは、その対アメリカの力の関係が非常に違うと思うのです。ですからデンマークができた、だからといって日本でもその通り何でもないということは言えないと思う。それはそういうことを言う議論は、必ず日本にはあると思うのです。  で、私どもといたしましては、これがなくては困るというような事情があるならばまた格別、日本立場から見れば、多くの人が納得することは、この条項がむしろないことだと思うのです。で、この条項がないことによって多くの人が納得するならば、私は日本じゅうのなるべく多くの人が納得し、賛成し得る形にしていただきたい、そう考えます。
  17. 曾禰益

    ○曾祢益君 ところがどうもこれはまあ政府議会の問題になるのですが、結局には、どうも私の議会における質問から得たインプレッションでは、何か中間的なことを考えている。協定には出さないけれども、了解事項には出すと、変なことを考えておる。どうもその辺納得しないのですが、何かそういう点は、例の総合部会ではお話があったかどうかということが一点と、いま一つですね、私もそういう考えであるけれども、同時にこういう考慮もできやしないかと思うのですが、つまり濃縮ウランの方は大体まあほとんど秘密がない、商品みたいなものだ。しかし原子発電となれば、しろうと考えですが、相当な秘密事項があろう。従ってこの際アメリカと約束にもならないような、現実にお互に拘束するような内容を持てない発電のごときことを第九条にそっと書いてみたってあまり意味ないのじゃないか、ほんとうに原子発電までやろうということになれば、これはまあジュネーヴにおけるあの国際的な機関が、アイゼンハワーの一年半ぐらい前の提案のようなものになれば別ですけれども、そうでなければ、結局援助を与える国と、援助を受ける国との間にかなり厳重な取りきめが別にどうせできなければいかん。その場合に総合的に考えて、今のお話のようなことができるならば、アメリカをそう一々気にしないで作ったらいい。同時にそれが独占的な地位を与えなければ、さらにイギリスともやればこれにこしたことはないのじゃなかろうか。従ってその実際に結ぶ場合にはかなりはっきりした権利義務が、濃縮ウランの場合と違って出てくるのじゃないか、秘密条項は、従って権利義務が明らかになる。今日そういう点から考えても、中途半端なことを第九条の形で、さらにそれを協定じゃないからといって、了解事項の形で置くなんていうことは、全く意味がないような気がするのですが、どうでございますかね。
  18. 藤岡由夫

    参考人藤岡由夫君) これは私、個人的な意見として申せば、私は日本は、日本としての立場としてはない方がいいということを率直に言うのが、私は一番最初日本のとるべき態度、あとはまた向うは向うの要求がございましょうから、それはいろいろな段階もございましょうから、根本的な態度としてはない方がよいものならば、全然除くということが基本的な態度であるのではないかと、これは私の個人的な意見でございます。
  19. 羽生三七

    ○羽生三七君 ちょうど政務次官と条約局長がお見えですから、藤岡委員長の御説明に関連して一、二承わります。  いつぞや、先日この当委員会で、重光外務大臣出席された際、この協定を今国会に間に合わせるように急いでおるかどうかということを質問したところが、格別期限を切っておるわけではない、急ぐ理由はないというお答えと、もう一つは、学術会議の本問題に関する決定を尊重すると、この二点を重光外相は私に答えられたわけです。ところがこの二、三日来の新聞の報ずるところによると、原子力協定の妥結を急ぐためにワシントンに向って政府が訓令をしておる。しかもそれは新聞によっては十五日仮調印という新聞もありますし、中には二十日前後を目途として仮調印という記事もあるんです。いずれにしても近日中にこれに対する協定を結ぶという方針であるように思われるのでありますが、これはどう政府としてはお進めになっておるか、それを承わった上で次の質問をいたします。
  20. 園田直

    政府委員(園田直君) 前回の委員会で大臣が答弁いたしました通りでございまして、今日の状態で何もまだ今国会中に調印をやらなければならんと考えておるわけでないばかりでなく、むしろいろんな検討や、あるいは自後の会議の模様、学術会議の御意見等も聞いてやりたいと考えておるのでありまして、ただいまのところ、やはり今国会中に正式の調印はできないのではなかろうか、会期後になるということは申し上げられませんが、大体そういうことになるのではなかろうかという見通しさえ持っておる状態でございます。
  21. 羽生三七

    ○羽生三七君 非常にわれわれとしては好ましい御返事をいただいたわけで、われわれもこの原子力平和利用については根本的には異議はない。ひもさえつかなければ早い方がいい。しかしながら、第九条がひもであるかどうかということも、しろうとのわれわれとしては判断ができませんが、しかし政治的に判断して、学術会議の当問題に関する委員会が正当な結論を出されておる場合であるならば、それを尊重されて政府は事を進められるのがまず適当かと思います。そういうことでここ一月、二月を急ぐほどの問題ではないと思っておるやさきにこういう新聞記事がありましたので、今お伺いしているのであるますが、しかし今後政務次官の御答弁のようでありますならば、われわれとしては非常に好ましい結論でありますので、どうか慎重に学術会議の要望等も入れて事を処理されることを希望いたします。
  22. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 一、二お伺いしたいんですが、ジュネーヴ会議の結果を見てから考えたらよかろうという学術会議の御意見は、ある程度ジュネーヴ会議の結果によっては、アメリカ方式といいますか、今問題になっておるもの以外に、ある程度コンクリートな見当がついておるんでしょうか、それともまあ様子を見てその上でというふうな立場なんでしょうか、その点を一つ伺いたい。
  23. 藤岡由夫

    参考人藤岡由夫君) 率直に申しますと、コンクリートな、何か方針を変えるかもしれないという見通しはついていないと思います。このアメリカイギリス方式というものは大体わかっておりますけれどもソ連がどういうことをやっておるかということも学術的に申しましても全くわからないのであります。でございますので、たとえ濃縮ウランアメリカから受け入れて実験用原子炉を建設する場合におきましても、もしも非常に違うやり方というものがあるならば、同じアメリカから買い入れるにいたしましても、またそういうことも考慮に入れた設計とかいろいろのことがあり得ると思います。で、そういうような意味におきまして、近くみんなのそういう展示会を行うので、それを見た上で考える、そうそう急ぐことはあるまいというだけでございまして、特にそれによって非常に変ることが起るというようなはっきりした見通しを持っておるわけではございません。むしろ抽象的なものです。
  24. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 そうしますとジュネーヴ会議の結果、やはりアメリカの今問題になっておる分を受け入れる方が好ましいというような結果になるかもわかりませんね。
  25. 藤岡由夫

    参考人藤岡由夫君) 適当な条件のもとであるならば濃縮ウランを受け入れることは好ましいということは、全くその通りであります。ただ私どもは、どういう型を作るかとか、将来の見通しがどうかというようなことに、できるだけ方針を立てた上でするのが望ましいと考えますので、たとえばジュネーヴ会議も近くあるんだから、それまであわてることはないだろうと言っているんです。それでおそらくはその後においてもやはりアメリカから受け入れるということになるであろうということは、私もやはりそうだろうと考えております。
  26. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 それから日本独自のプランといいますか、それが必要だということを非常に強調されたのですが、おそらくその考え方はほんとうの考え方だろうと私も思うのでありますが、かりにアメリカからの受け入れが、先ほど来問題になっておりましたように、いわゆる実質的のひもがつくのだというふうなことであれば、これはまあ学術会議としてもその受け入れを拒否することに当然なるだろうと思います。そういう場合において、日本及び世界における原子力平和的利用の現状から見まして、日本独自でやり得る、当然やり得るというふうに見ていいのかどうかですね。私その方面の知識が全然ないので、かりに英国のものにしても、その受け入れというようなことは、現実の問題としては相当の困難があるでしょう。アメリカの受け入れはひもつきで困ると断わりますと……。しかし先ほどお話のように、長期ではあるけれども原子力の平和利用については事は急がなくちゃいけない、こういう条件のもとに、わが国独自で一つやるということが望ましいことではあるけれども、現実の問題としてその可能性といいますか、その見通しといいますか、そういうものはどうであろうかという点、一つお教えをいただきたい。
  27. 藤岡由夫

    参考人藤岡由夫君) まことに恐縮でございますけれども、私もはなはだ浅学非才でございますけれども、私ども日本独自の方針を立てるということは、すべてのことが日本でできるということではないのであります。たとえば日本で、ニッケルでございます。そうするとこれはどうしてもニッケルを使うような仕事は日本ではできないのであります。どうしても輸入しなければならん。同じようにもしウラン日本でどうしてもある程度以上できないというようなことになれば、それは日本だけではどうしてもできませんです。また技術的な面においても、私は果して日本だけでずっとできるかどうか、これは若干疑問を持っております。まあ私ども立場では、それは時間と金とがあればできると言いたいのでございますけれども、今その時間と金ということが問題なんでございまして、すでに今日のようにおくれておりますと、今現にイギリスなりアメリカが四十一、二年ごろから研究を始めたといたしまして、ほんとうに原子力発電が実用になるのは、おそらくイギリスの発表では六十六年、まあ約二十五年ぐらいかかっております。それをこれから日本でも二十五年かけて発電がほんとうになるまでいくか、またそれだけ注いだ金を日本でも注ぐか、これはどちらもおそらくできないことであります。その間どうしてももうすでに諸外国で完成したものを輸入しなければならないという事態が当然起る。ただ私ども日本の独自の方針を立てるということは、あくまで日本だけの手でやるということではないのでありまして、技術や資材を輸入しなければならないことは当然のことであります。でありますけれども、その間方針、見通しをなるだけ立てて一番いいようにやるということであります。たとえて申しますれば、今濃縮ウランアメリカから受け入れて実験用原子炉を作ることは望ましいと思います。しかるべき条件のもとにおいては望ましいと思います。非常に今後の日本のためになります。しかしそれだけ依存することはいけないということは、たとえば一例を申しますれば、アメリカは貸すのであるから全部向うに返せということになると、かりに将来日本原子力発電のようなことをやるようになりますると、燃料日本で作るかあるいは輸入するか、非常に必要なことは、そのあとの灰を処理する、灰を処理するということは、普通の石炭の灰とは違いまして、いわゆるビキニの死の灰のようなああいうものが、非常に多量に危険なものが出てくるのであります。それを科学的に処理をするということは、非常に大きな新らしい技術だと思います。その技術の練習がアメリカから濃縮ウランを受け入れてできるか、これは私はできないと見るのが当然だと思います。そっくり使ったものを返すのであるからして、それを取り扱うことができない。ですからそれをやるためには、どうしてもやはり日本でそういうことのできる技術の習得をなるべく早く日本でも研究していく、それはやはり日本の別の原子炉を作らなければならない、あくまで。ただもしも向うのつまりべースでやるか、こちらのベースで、しかも向うのものを利用するか、そういうことだと思います。
  28. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 お話の点はきわめて常識的であって、われわれよくわかるのでありますが、先ほどお話のように濃縮ウランにしても、原子炉にしても、今後一つは商品としての立場に立つであろう。アメリカはやはりそれは商品の輸出というような観点で事を急ぐのであろうというお話もあったのでありますが、原子力の平和利用というものはやっと始まらんとしている。先進国は、検討は相当進んでいるのでしょうけれども、新しく出発するような段階にある。今後かりにそれを商品的に考えれば、いろいろな改善なり工夫が行われて、やはり相当の検討なり相当の改善というものが行われて、進歩発達というものは必然的なものであろうとしろうとながら感ずるのであります。従って今問題になっている濃縮ウランを受入れたら、それは将来の日本原子力平和利用に決定的に方向づけるというような性質のものかどうか、私には非常に疑問です。かりに英国の方針が非常に経済的であって、優秀であってよければ、アメリカがいかに力でどうこうしようとしてみたところで、それは経済の性質から科学の性質から、それを持ち通すことはとうていできない。おそらくそこに一つの変化が伴うのではないか。ことに新しい科学ですから、各国でそれぞれの検討は行われたでしょうけれども、やはり先ほどの、日本といわず、アメリカといわず、ヨーロッパといわず、その方面の学者がほんとうに協力をしていいものを作り上げてゆくということに必然的になるべき性質のものであろうというふうに思われるのでございますが、従って九条の問題も問題ではございましょうけれども、それによって一国のあれを支配するとか、支配というと大げさになるけれども、力をもってどうこうするということがかりにあるとしても、それは科学の立場から私はナンセンスであろうと思うが、従ってそれに対して、これは大へんといいますか、また容易ならざることも考えられると思う。非常に何といいますか、私には腑に落ちない実は感じがするのでありますが、学術会議の各委員の御説明も、ほんとうに科学技術という点から考えて、濃縮ウランの今の受け入れについては、あの九条のあの程度の条項で日本の将来の原子力の平和利用の面から、科学技術の面において非常な制約を受けるのであるか、その点からの一つの御心配なのか、非常にその原子力平和利用に関連してのいろいろの政治的な観点ですね、今両陣営が対立しておって、原子力の平和利用というけれども、それが原子爆弾につながり、さらに戦争にもつながるというふうな面から、一つの政治的な面からの疑念であり、心配であると申しますか、政治面の問題としての観点であるか、その点が実はこれまで私自身としては判断しかねておったのでありますが、その点を一つ御説明願えると、簡単でけっこうですから……。
  29. 藤岡由夫

    参考人藤岡由夫君) 第九条の議論が科学技術的な面からない方がいいといわれる御質問かと思いますが、技術的な面で、第九条は濃縮ウランの問題ではないので、将来の発電などについてのことをやるわけでございますので、直接技術的にあれがあっては困る、そういうことはないと思います。ただ将来あれがある方が望ましいのだということが、技術的に申しましてぜひ望ましいかという、そういうことも私は別にないと思います。それはやはりあの条項は、今の濃縮ウラン受け入れに直接関することではないのでありまして、将来の約束をするかどうかというようなことが——あれは約束でも何でもないのだという意見もございますし、またやはりあれがあるととらわれるという意見があるのでありますが、直接あの問題が濃縮ウランそれ自身に関する技術上の問題ではないと思います。私の申しますのは、いかにもお説の通り、あれがあっても別に差しつかえないという意見の方、ずいぶん学術会議の中にもいろいろの意見の方がございます。ただ、今問題は濃縮ウランの問題ですから、濃縮ウランに関する約束だけをすればいいわけなんです。そういう点ではまあ非常に議論のあることは、あってもなくても将来別に大して違いがないのならば、これはなくしておいた方が多くの人が賛成しやすいのではないかというのが、私委員長といたしまして申しますと、やはりなるべく多くの人が賛成し得る形をもちろん日本としてとることが、知能を結集する上において望ましい、そういう考えでございます。
  30. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 濃縮ウランの受け入れの問題ですが、これはアメリカが独占的に、まあイギリスが多少できるといたしましても、目下のところアメリカが独占的に供給するというようなときにひもつきの問題等がよく起るのですが、現在一体濃縮ウランを供給できる国が世界にどことどことどこか、また近い将来に濃縮ウランなりあるいはウランの鉱石なりをそのままでもいいのですが、供給できる国はどことどことある見込みか、そういう点をまずお伺いいたします。
  31. 藤岡由夫

    参考人藤岡由夫君) 濃縮ウランを供給できる国は、今考えらますのは、おそらくアメリカイギリスソ連ではないかと思います。それ以外の国は、濃縮ウランを供給ないし自給もできませんが、先ほど申し上げましたように、原子力発電に行くまでの道は、必ずしも濃縮ウランを用いるだけの道ではないと思います。プルトニウムを用いている国もあります。フランスとかカナダとかいう国は、自国としてはプラトニウムを生産することによって原子力発電に進みたいと、そう考えております。濃縮ウランというのは一つでございます。  それからいま一つの、将来どこの国が供給し得る見通しかという御質問でございますが、これは私は全くしろうとでございまして、そういう問題は、これはむしろ外交上の問題でございまして、ただ聞くところによりますというと、天然ウランは問題になっておりますけれども濃縮ウランの方はとにかくアメリカイギリスソ連だけでございますから、あまり問題はないと思います。天然ウランはおそらく供給されるであろうということをいわれておりますのは、ベルギー、それからオーストラリア、それから南アフリカ連邦というのがごいますが、そういう国の名前が、たとえばアメリカ学者などによってちょいちょいあげられております。
  32. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 今度のジュネーヴ会議でございますが、これは日本は面接招請されているわけでないと思うのですが、オブザーバーを出す、それによって日本として得るところは相当あるだろうと思いますが、それについて向うに人を派遣する等の準備は、学術会議なりあるいは原子力平和利用委員会なりでできておりますか。
  33. 藤岡由夫

    参考人藤岡由夫君) 今度のジュネーヴ会議に今オブザーバーとして呼ばれているとおっしゃいましたが、原子力科学者会議でございますが、これは国連主催の会議でございまして、その招待状は外務省にきております。従って外務省におきましてその準備は整えておりまして、人を派遣する選考委員会のようなものは、外務省がそれによってやっておいでになるのでございます。その問題は今外務省の方の問題なので、学術会議ないし原子力利用準備調査会の直接の問題ではないのであります。
  34. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 これは今度のアメリカとの協定の問題にも非常に大きな関係があるとすると、向うへ日本の方から出した人々の報告なり何なりによってまたずいぶんいろいろと変ったことになってくると思いますが、政府の方ではこれに対してどういう御処置になりますか、出すのですか出さないのですか。
  35. 園田直

    政府委員(園田直君) 出席させるつもりで人員の選考を検討中でございまして、選考委員等を作り、あるいは学術会議の方の御推薦等を待つ等、いろいろ準備を進めております。
  36. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 もしジュネーヴにおきましていろいろ討議が行われ、その結果またいろいろ学術会議日本にとって非常に貴重な結果であるということになって参りますというと、アメリカから濃縮ウランを受けて、そうしてそれでもって原子炉を作って動かすということでない方法をこちらで早く考えられるようになると思いますが、その点いかがでしょうか。
  37. 藤岡由夫

    参考人藤岡由夫君) どうも現在の段階は、アメリカ日本との間において交渉が始まっている段階なのでございます。それ以外の国とは別に交渉が始まっていない段階なのでございます。それだけの現在事情にある、そういうことではないかと思うのでありますけれども、私がつまり待ったがよかろうということは、現在の段階で申せば、つまり実際上の買い方とか、やり方とか使い方とか、そういうものについてはいろいろ新しい知識もあろうから待つがよかろうというので、それをアメリカと交渉の始まっている段階をくつがえすとか、あるいはそれ以外に並行的にすぐ何か始まるかというようなことは予想的に今やっておりません。
  38. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 今度は政務次官の方にお伺いいたしますが、アメリカと今まで話し合いを進めておられる、こちらの方で九条が非常に問題になった。それで向うの方で、なぜ九条を問題にするかというようなことで問題にしたと、あちらの新聞に見えております。この九条の問題についてアメリカの方ではどう言っているのですか。
  39. 園田直

    政府委員(園田直君) 九条の問題は先般からいろいろ局長並びに大臣から御報告申し上げました通り、将来の問題でございまするから、協定からははずすつもりでおりますが、議事録にたぶん載ることになると考えております。アメリカの方ではこれについては大体意見は了承しておりまするが、率直に申し上げまして、本濃縮ウランの受け入れについては、いろいろひもつきであるとか、あるいは将来九条の問題で牽制されるとか、いろいろ意見があるが、それはそういうものではなくて、たとえばアメリカとの協定を結べば他の国から受け入れができないとか、あるいはその他を拘束するとか、そういう箇条を並べまして、そういう事実がないから、よくそういう趣旨が徹底するように御了解願いたいというような電報がきておりますが、こういう点については将来局長の方で整理をして御報告するつもりであります。
  40. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 ただいまのお話ですと、協定の条文の中から、議事録ですか、しかしその議事録というものは単なる議事録でなく、今までの、たとえば日米安全保障条約とかその他から見ますと、これも相当ものをいうんです。そういたしますというと、協定じゃはずしたけれども、少し陰の方へ引っ込めただけで、やはりこれが力を持つということになりますが、これは全部いっそのことはずすということはできないんですか。
  41. 園田直

    政府委員(園田直君) 濃縮ウランの受け入れについて九条をはずせという御意見委員会ではよく聞かれますが、中には協定の中に入れろという御意見もあるわけでございまして、特に政府の与党である民主党では、九条は協定の中へ入れよう、こういう御意見もあります。こういう御意見については、政府といたしましては、九条はいろいろ御意見によって、なおまた条約上の問題からいたしましても、将来の問題を協定に入れることは、協定といたしましてもおかしうございますからはずしますが、そういう意味合いにおきまして、将来の電気炉の問題を予約するという意味で九条の意味議事録にかけることは適当であろうと、ただいまのところは考えておるわけであります。
  42. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) ちょっと御注意申し上げますが、当委員会協定の中に入れろという意見は出ませんでした。
  43. 園田直

    政府委員(園田直君) 与党でございます。私の党でございます。
  44. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) 政党の委員会では出たかもしれませんが……。
  45. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 先ほど藤岡さんの話ですと、九条の問題について、まあせっかく置いてあっても障害はないじゃないかという意見がある。しかし積極的に入れろという意見はなかったというふうに聞いておる。ところが、今、政務次官のお話を聞くというと、これは党の方では積極的に入れろという御意見です。積極的に入れろという御意見もこれはあったとすると、まあ私どもとしては何か根拠があると思うのですが、その積極的に入れろという意見、これはひもつきだひもつきだといわれているのに、積極的に入れろという意見はどういう根拠に基くのか、それをお伺いしたい。
  46. 園田直

    政府委員(園田直君) 委員会で、党の意見を申し上げますとしかられますから……。今折衝中の段階で、党の方と政府と折衝します際に、そういう意見が一部出まして、言われた方々の御意見は、将来原子発電炉を作るということは、むしろ将来われわれとしては有利ではないかという、そういうような御意見のようでございました。
  47. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 党の方のことですからここではあまり追及はいたしませんけれども、ただ原子発電炉を作るということだけだったら、だれでも望む、それが今言ったようにある国との間に結局において実質的に独占的な予約という形になってくることが困るということが問題になっているのです。その独占的な予約ということを差しつかえないという意味でもって、その党の方でもって入れろというような意見があったのですか。
  48. 園田直

    政府委員(園田直君) ただいまのような意味は絶対にないということが正式の文句になって、アメリカの方から電報で参っております。
  49. 苫米地義三

    苫米地義三君 私は観点を変え、商売上の点から二、三御質問したいと思うのですが、藤岡団長を中心とした欧米視察団がおいでになり、その際にアメリカ原子炉技術等を日本提供しようというような問題になった。世界的に見て進歩したものですかどうですか。せっかく提供を受けても、それは一年や二年ですぐ廃棄されるようなものなら、そんなものは問題にならない。そういう点に対して視察の結果どういうふうにお考えになりましたか。
  50. 藤岡由夫

    参考人藤岡由夫君) ただいまの、今、日本提供されようというものはどういうものかということでございますか。
  51. 苫米地義三

    苫米地義三君 はい。
  52. 藤岡由夫

    参考人藤岡由夫君) ただいま提供されようというものはごく初歩的なものだと考えます。つまりたとえば発電所というものが、将来の原子力発電、火力発電所というものがあるとすれば、それを大学の実験室で実験してみる、そういう程度のものでありまして、従ってこれはそういうことの発電に関する技術のごく初歩的な部分を調べる段階のものではありますけれども、これが非常に役に立つものだということは全然ないと思います。しかしそれだからといってそういうものが不必要かと申しますと、それはそうではなく、たとえば今、一番簡単なもので、日本でもたぶんこれをまず作るだろうということも言われておりますウオーター・ボイラー型と申しますのは、アメリカではむしろ教育施設といたしまして、大学などにおいて学生その他の訓練に使う、そういうような意味で今後盛んに使われるであろう。でございますから廃棄というふうなものではないのでありまして、必要なものでございますけれども、ただ目的が違う。ごく初歩的な、そういうものだと思います。
  53. 苫米地義三

    苫米地義三君 私の言うのはそういう意味ではない。一国のレベルが、その程度の実験炉が、ほかの国の同じ程度のものに比較してそうおくれているものではない、むしろ進歩したものであるというような御観察で、今の受け入れを考えておられますか、どうですか。
  54. 藤岡由夫

    参考人藤岡由夫君) そういう段階のものといたしまして、ほかの国におくれておるかどうかということは、これはちょっとむずかしいのでございますが、イギリスではまあ私どもの見ました範囲では、そういう濃縮ウランを使った実験用原子炉というものは、私どもの見ました範囲ではないのであります。それで全部大体天然ウランを使いまして、濃縮ウランを使ったのは、むしろこの工業用のものの準備的研究において濃縮ウランを使っていると思います。そういう段階のものはイギリスでは作っていないのであります。私どもは少しも見なかったのであります。しかし今後そういうようなものはイギリスにあるかもしれない、ソ連にもあるかもしれない。そういう実験的、初歩的な、何かそういう、これはつまりなるべく秘密の解除された限りで私たちは知りたいのであります。
  55. 苫米地義三

    苫米地義三君 私の伺いたいのはこの場合は一種のプラント提供、プラント輸出というように考えてもいいのですね。そのプラント輸出を受けた場合に、受けた方の立場はですな、今までの、たとえばこの場合なら炉の構造、操作、応用面、そういうものについても指導が必要なわけですね。日本はおくれておることはあなたがおっしゃる通りだ。従って先進国のプラントを入れる以上は、このプラントに属しておる炉の構造、操作、応用面について、今まで彼らが知っておる限りの知識と経験を吸収するというのが目的です。そういう立場においてですな、私は今度の受け入れについてそういう条件をむしろわれわれのほうからつけるべきだ。で、民間でプラントを買ってきよるとそういうことになるのです。炉の構造を知らなければならぬ、そうして操作も教えてもらわなければならぬ、応用面についても教えてもらわなければならぬ、しかも将来進歩した場合にはその進歩した方法をもこちらの方が優先的にもらうということが、このプラント輸出の条件の常道なのです。これはそれで、ただプラントだけ提供してもらって、あとは手探りで実験して、ほんとうに期待できるでしょうか。
  56. 藤岡由夫

    参考人藤岡由夫君) その点は私はいわゆるプラント輸出とは違うと思います。プラント輸出というのは、つまり相当に工業化された段階でございまして、そうしてある程度の秘密を持っております。今度の今アメリカで出そうという、たとえばウオーター・ボイラーというのは必ずしも秘密ではございません。どういうふうなことをするのだということをみな私どもも聞いておりますし、学術雑誌等に相当に詳しく出ております。それで青写真をもらうかどうか、これは検討を要しますけれども、まあわれわれの仲間では、あの程度のものは日本のメーカーでもできると考えておる人もあります。そうならば、日本で作りますことがむしろ日本のメーカーの技術を進めるゆえんだと思います。そのあたりのことはさらに検討いたしまして、しかし初めてのことでございまして、ことに材料の点においてかなりその進歩がございます。その純度の材料を得られるかどうか、そういうことをよく検討いたしまして、その上でどういうふうにして日本で作るかどうかということを考えていきたいということを私どもは考えております。全然そっくりプラント輸出のようなものを受け入れるのがためになるか、それともある程度のものを日本で作るという建前においてそれを補う意味で、足りない知識なり技術なり、計画なりを受け入れるかということは、今後十分に考えるべき問題だと思います。
  57. 苫米地義三

    苫米地義三君 そうしますと、物だけ提供されれば、あとは自身だけでやっていくということですか。
  58. 藤岡由夫

    参考人藤岡由夫君) 私はそこまでは、まだ断言はいたしません。果してできるかどうか、どういうことが必要か、そういうことをまだかなり詳細に検討する必要はあると思います。その上で、これは全部物をそっくり買うのがいいということの結論になるかもしれません。そういうことの検討は必要だと思います。
  59. 苫米地義三

    苫米地義三君 先ほど園田政務次官が、何か民主党で積極的に受け入れるという議論があると言われましたが、それは私の言うような意味で言っている人があるんじゃないですか。と申しますことは、プラントを提供してもらって、そのプラントに関する限り、今までの後進性を回復せにゃならぬ。そのためには、プラントを提供した人の過去の経験と知識と、それから応用を早く吸収するということが第一段だと思うのですね。そういう要件をこっちの方からむしろ要求すべきである、そういうのじゃないかと私は思うのですが、その点は考えられませんか。
  60. 藤岡由夫

    参考人藤岡由夫君) この濃縮ウラン受け入れの問題については、お説のようなことも十分考えられると思います。しかし第九条は濃縮ウラン受け入れの問題ではないのでございます。将来の約束をするかどうかということなんです。それで、実はその点につきまして、利用準備調査会でのお話の中に、党の方でも非常に御熱心に積極的にあの第九条が必要だという御意見があったということは伺いました。私が先ほど積極的にあれがぜひ必要だという意見はないということを申しましたのは、学術会議学者の中にはないと、そういうことでございます。あれがぜひ必要だということはないのでございます。そのときに、内閣利用準備調査会のある専門委員が言われましたが、あれが積極的に必要だとおっしゃいました方は、つまり将来のことを今から約束をしておいた方が、優先的に将来もらえるから必要だと、つまりその必要ないい面を考えておられるのであって、学者が考えますように、あの条項があったからといって、なかったからといって、別に具体的には違いはない。むしろ、何と申しましょうね、具体的、技術的にそれの必要がないと、そういう学者側の反対的な意見を考慮に入れて、その上に、なおかつ、あの第九条が必要だということを考えられたのであるかどうかということを、ある専門委員から聞かれたんであります。私は同じようなふうに、どうかあれが、将来のことを思うと、将来のことをなるべく早く約束しておく方がいいとお考えになりますときに、つまりそれに対する反対意見でございますね、将来は必ずそういうような問題が起るのですから、黙っていても、もし商業上のお互いの話し合いが成り立つならば、必ずこれは起りますので、それよりもむしろ将来は、自由な立場に立っておいた方がいいのではないか。そういう御意見もお考えの上で、どうぞ結論をきめていただきたい、そういう意見があったのです。それだけ申し上げておきます。
  61. 苫米地義三

    苫米地義三君 私は第九条のことは問題にしていないのです。現実には技術科学の研究をしたいというので、意見をとるのですから、その限りにおいて、彼らの今までやった程度までは、早く自分のものにしなければならぬという建前からいって、それの指導の義務を、こっちから、ひもをつけるという必要はないかどうかということなんです。と申しますのは……。
  62. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) 苫米地委員、それは今の条約には書いてない。
  63. 苫米地義三

    苫米地義三君 条約じゃない、条約のことじゃないのです。そういう意味で、むしろ積極的にこっちから……。
  64. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) 条約の中に新たに入れろという御意見ですか。濃縮ウラン受け入れについて入れろという御意見ですか。
  65. 苫米地義三

    苫米地義三君 そうじゃないのです。技術的に見て、そういう必要は感じられませんかということです。
  66. 藤岡由夫

    参考人藤岡由夫君) 私は、濃縮ウラン受け入れの問題は、受け入れの約束をすれば、あとはお互いの話し合いで十分できると思います。別に義務づけるというふうに考えておりません。話しい合いで十分いけると思います。
  67. 苫米地義三

    苫米地義三君 私が特にそれを念を入れたのは、これは原子力の力を、たとえば爆発用にはもちろんですが、動力の面において、あるいは放射能の面において、あるいは灰の面において、利用面が多種多様あるわけです。これが研究されますと、パテントが行われてくると思う。いろいろな方面において多岐多様のパテントが行われる。そういう場合に、こっちが早く研究して、そういう情勢におくれないようにしなければならぬ。そのためには、過去の経験や知識を早く吸収するという必要があると思うのですから、それで、そういう必要がないかどうかということを伺ったのでありますから、それ以上のことは別にお尋ねしません。
  68. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 伺いたいことが多いので、時間もあれですから、簡単に伺いたいのですけれども、第一に伺いたいのは、けさのラジオを聞いておりますと、衆議院でも戸叶議員の御質問に対して外務大臣は、濃縮ウラン受け入れの仮調印は、八月のジューネブにおける原子力平和利用国際科学会議よりも前に行われることはないだろうという御答弁であったように、私はラジオで聞いたのですが、ただいま政務次官のお答えでは、その点がはっきりしていなかったのですが、確認しておきたいと思います。
  69. 園田直

    政府委員(園田直君) 大臣のただいまの答弁はその通りでございますが、正式調印が会議よりも先になることはないだろう、こういう答弁でございました。
  70. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 それでは重ねて外務省の方に伺いたいのは、もう一つだけですが、外務省は学術会議の御意見というものを尊重せられるということは申すまでもないと思うのですが、その尊重せられるという御態度に、先ほどから他の委員からの御質問にもその点があったと思うのですが、建前は尊重しておられるようですけれども、実際において、現在の交渉の進行の過程というものは、どうも学術会議意見というものに沿うておられないように思いますが、どうなんですか。現に藤岡原子力問題委員長が外務省に申し入れられたのは、ジュネーヴの会議を待てという申し入れをされたように今話を伺い、またわれわれ承知しておるのですが、待たないというのは、学術会議意見を無視するということですか。
  71. 園田直

    政府委員(園田直君) 学術会議は正式には内閣の諮問機関でございまして、外務省に対する直接の諮問機関ではございません。しかし、学術会議における意見は、十分しんしゃくいたしまして、御出席藤岡参考人とも、しばしば外務省では御意見等を承わる機会を作りまして進めておるようなわけでございますが、必ずしも御意見通り全部行っておるというわけではございません。
  72. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 しからば学術会議が、ジュネーヴ会議まで仮調印を待てという意見を出しておられるのに、それを無視せられる理由を明らかにせられたい。
  73. 園田直

    政府委員(園田直君) 学術会議からは、正式調印をジュネーヴ会議以後に待ったらどうかという申し入れでございまして、その通りになっておるわけであります。
  74. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 関連。今盛んに正式調印をジュネーヴ会議後というのですが、仮調印はそれじゃいつやられるのですか。その点をはっきり御言明願いたい。
  75. 園田直

    政府委員(園田直君) 仮調印は今月の中旬ころになると思います。
  76. 羽生三七

    ○羽生三七君 どうもこれは非常に人を愚弄した話なんです。仮調印だからいいの、本調印だからどうのと言って、そこで言葉のあやで僕らが正直に受け取っていたら、だんだん事情が明らかになってきた。これはとんでもないことだ。どうですか。責任あるお答えをお願いしたい。
  77. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 いままで仮調印したのが本調印と変ってないじゃないか。仮調印したということは事実上したことと同じことです。
  78. 羽生三七

    ○羽生三七君 そうなると、私がこの間、外務大臣に伺ったのは、今国会に間に合せるかということを聞いたのですよ。七月幾日に仮調印をやって、本国会に間に合わなければ次の通常国会か、臨時国会までは知らん顔ということですか。それは非常に無責任な話だ、これだけ論議されて。
  79. 園田直

    政府委員(園田直君) 仮調印は御承知のごとくアメリカの国会のために必要なんでありまして、日本政府としては、それに対する権利義務は当然正式調印でやるのでございます。これは仮調印で向うと相談をして、そして国会を避けて、国会が終ってから正式調印をやろうという意味ではございません。正式調印は、細目取りきめなど実際上の事務的な関係からいたしましても相当期間かかりますので、国会を終って閉会中にすぐできるなどというわけではございません。
  80. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 藤岡原子力問題委員長に、今お聞きのような状態、そこで学術会議でもお考え願いたいのですが、政府はその学術会議意見を尊重する、あるいは国会の論議を尊重する、あるいは世論を尊重する、これは当然ですけれども、しかし従来の慣例からみますと、さかのぼればサンフランシスコ平和会議あるいは日米安全保障条約、あるいは行政協定、MSA、いかなる場合にも、今政務次官のお答えにありましたように、アメリカを主体にした行動が多かった。しかも御承知のように、日本の外交の自主性というものがまだ確立していないという状況ですから、どうか学術会議の方で、これはあなたにお願いですが、学術会議の方で本当に御心配になっておる点をなお重ねて御討議下さって、必要な措置をおとり願いたいと、こういうふうに考えます。  で、私、政府に向って一言だけ言っておきますことは、それは全く行政権の乱用であり、憲法に違反することになります。そういうことをおやりになるということは、私はとうてい納得できないし、国民も納得できないと思う。現にそれは前例があることで、現に外務省は、富士山の問題にせよ、何にせよ、安保条約についても非常に苦労しておる。またここに新たな苦労を加えられる。まさか、いかに政務次官でも、外務省は民主党の外務省とは考えておられないでしょう。日本国の外務省であるということは十分御自覚のことだと思う。しかも学者がせっかくあれだけ討論し、しかも藤岡原子問題委員長を通じてその正式な見解を発表しておられるのですから、私はあくまでも良心的にそれに対応せられることを希望して、先ほどのような御答弁はちょうだいできません。  続けて伺っておきたいのは、今のジュネーヴの原子力利用国際会議ですが、これに対して学術会議の方ではやはり積極的な態度をとっていただきたいというような希望なんですけれども、特に二点について伺っておきたい。  第一点は、現在国民がこういう問題について心配しておるのは、やはり原子力の軍事的利用というものがじょじょに日本において既成事実が作られておるということを心配しておると思う。従ってジュネーヴの国際会議において……私は実は先日学術会議においても茅会長にその点を質問して、茅会長は私に同意をされた。このジュネーヴの会議日本が参加するときに、日本としては特に原子力の軍事的利用禁止の一刻も早く決定せられることを要請せらるべきだと思うのですが、学術会議はそういう努力をなさるおつもりでございましょうか、いかがですか。  第二に、この問題と関連しますから、ついでに伺いますが、この人選ですね。その人選にやはり学術会議委員会意見というものを強く御主張になりたいと思うのです。それと関連して、現在ワシントンで行われておる交渉に関して、学術会議の方では、何かそれと絶えず連絡をとられるような、科学アタッシェというようなものと通ずるような手段をとっておられるか。その三点について藤岡委員長の御答弁を願いたい。
  81. 藤岡由夫

    参考人藤岡由夫君) 第一の、軍事的利用の禁止を学術会議としてジュネーヴ会議に要求するような処置を講ずるかという御趣旨でございますけれども、これは、かって昨年の総会におきまして、そういう原子兵器の使用が禁止になるように、全世界の学者が提唱をして進みたいという意味の声明を出したことはございます。これは国会がビキニ事件を討議した少しあとでございますが、それはございますが、今度の会議は、その性格等から見まして、学術会議が提案をするというような場所ではない。これは日本出席のことを取り扱っておりますのは外務省であります。日本の代表として行くので、特にここに学術会議がそういうような提案をするのは適当でないというふうに考えますし、まあ、とにかく、そういう問題は今学術会議としては考えられておりません。それが一つ。  それから第二に、ジュネーヴ会議出席者の人選について、委員会としてはどういうふうなことを考えておるかということでございますが、これは先ほどからお話がございますように、外務省が主体となりまして人選等も進められております。この選考委員会には若干学術会議側の者が入っております。それで、別に人選に直接学術会議が関与をする、そういうものではないと考えております。  第三の点は……。
  82. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 現在ワシントンで行われている交渉について……。
  83. 藤岡由夫

    参考人藤岡由夫君) 科学アタッシェ向坊氏がおりまして、この向坊氏が交渉に当っておるということを新聞等で拝見しておりますけれども、直接連絡は何もいたしておりません。これは直接連絡をいたしますことはちょっと筋が違うと思います。
  84. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 ただいまの第一の点は、学術会議では、茅会長はこのジュネーヴ会議において……。
  85. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) ちょっと御注意を申し上げますが、濃縮ウラン受け入れに関して藤岡博士に何しておりますので、それに連関をして学術会議から政府申し入れをしたという文書の中に、学術会議というものと、それからジュネーヴ会議のことが出てきております。そうでございますから、学術会議内部への御注文なり御議論なりは、なるべく御遠慮いただいて、この濃縮ウラン受け入れについての件について御質疑を願い、それを終って、他の案件がまだありますから、藤岡博士に御退席を願ってやっていただきたいと思います。
  86. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 私の希望ですけれども、これは学術会議会長も、ジュネーヴの会議において、原子力の軍事的利用の禁止の問題が出るであろうし、日本の代表もそういう問題について発言の機会が得られるだろうというお答えがあったので、私は濃縮ウランの受け入れに対して日本国民の抱いておる不安というものの解決に、そういう方面でも努力せられたいということを希望しておるわけなんです。  第二に伺いますが、ジュネーヴまでという学術会議の御意見に対して、ただいまお聞きになったように、政府の方は仮調印はそれ以前にしよう、しかもそれはアメリカ議会との関係でということを言っておりますが、これは最近のニューヨーク・タイムスの記事で、アメリカはジュネーヴの会議で、各国、ことにイギリスやソビエトなどの発表、あるいは展覧というものから、アメリカが秘密を続けようという努力が不可能になるのじゃないか、従って特にジュネーヴの前に日本と仮調印をしようという動きをしているのではないかということを、最近のニューヨーク・タイムスの五月十八日でも、そういうことが報道されているようですが、これは政府の方でも、学術会議の方でも、そういうようなことによって、この仮調印を急いでいくということは、そういう点にも問題があるのじゃないか、これは政府の方に申し入れられた、学術会議の方の、ジュネーヴの会議まで待てということの御意見、先ほどから藤岡委員長は十分その点を強調されておるのですが、今のような点も十分考慮されて、十分なる論拠を持って待つことを主張せられているのだと思いますが、その点なお重ねてお尋ねいたします。
  87. 藤岡由夫

    参考人藤岡由夫君) 学術会議の要望書といたしましては、非常に抽象的な言い方をしておりますので、本調印とか、仮調印とか、そういう種類のことは、何らまたそういう外交上の規則もわれわれとしてはございませんで、もっと抽象的なことを言っております。ちょっと、全文を、その条項だけ読んでみますと、「交渉にあたっては、妥結を急ぐことなく、内外の情勢、将来の見通しを十分把握しつつこれを進めるべきであり、少くとも世界諸国原子力研究開発の状況が発表される今夏の「原子力平和的利用のための国際科学会議」の結果を見定めることが望ましいと考えます」というので、趣旨は、内外の情勢、将来の見通しを十分把握しつつこれを進めていただきたい。妥協を急ぐことがないように、それが趣旨でございます。あとのことは、たまたまこういうことがあったという一つの例にすぎないと思います。そんなふうに思います。
  88. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 学術会議の三原則ということは、世間では誤解されている場合があるようですが、これは結局、日本における原子力研究が自由に、そして円満に進歩するためには、最小限の条件として、これらの原則を要請せられている。これらの原則が無視せられると、日本における原子力研究というものが、どうしても自由円満にいかなくなる。そういう意味で、学術会議ではそういう三原則をお立てになったと思うのですが、今度の濃縮ウランの問題について、どうも三原則に違反して来るのじャないかと思える点があるので、藤岡さんに伺いたいのですが、第一に、藤岡さんの先ほどの御説明で、今度の濃縮ウランの受け入れに対して、大した秘密はないという御説明でございましたが、その中で、お話の中にも出て参りました、たとえば灰の処理は日本ではできないということでありますが、そういう点におけるやはり秘密というものがそこに出て来るのじゃないか、そうしますと、日本学者がその灰の、せっかく濃縮ウランを受け入れても、それの燃えた、あるいは燃える過程、あるいは燃えたあとについての研究ということが、やはりできないことになるのではないかと思われるのですが、その点どうでしょうか。
  89. 藤岡由夫

    参考人藤岡由夫君) これはまあ考え方であると存じますが、秘密を設けないということは、公開をするということは、秘密研究をしないということでございまして、たとえば陸軍、海軍が、これは絶対に人に見せない秘密の場所を作っていた、そういうことをしないということが趣旨だと思います。それで、ただいまのように、灰の研究をできない、これは灰が秘密かということになりますが、これは初めから、つまりこれは国際的な約束で、灰はそっくり返しますということならば、それが初めから与えられたものでございまして、つまり、日本にはそういう材料がないものと思えば、それだけで、別にこれはとくに秘密にしていくということではない。そういうことではないのでございますから、初めからそういう約束でもって受け入れたものならば、灰の秘密を持ち込んだ、そういうことにはならないと私どもは考えております。
  90. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 しかし、その点について、その灰の保全措置、あるいは一般に濃縮ウラン協定に伴ってトルコとの協定の場合にも、あるいはアメリカの現在の原子力法の百二十三条にも言われております安全措置というものは、やはりそれが破られないような立法を日本で必要とするということに、どうも私はなるように思うのです。その灰の性質を変化させたり、分量を減らしては困りますから、困るという約束をする以上は、その灰の分量を減らしたり、性質を変化させないための立法措置をしなければならん。それからまた、その濃縮ウランをどこかに持っていってはいけないということでありますから、どこかえ持っていかないような、そういう立法措置をしなければならん。そういうものにはやはり刑罰を伴う立法措置が必要ですが、そういう刑罰を伴う立法措置をして、濃縮ウランを受け入れて、そういうことを研究するということについて、学者の間にそれを好ましくないと考えられる意見があるように私は承知しているのですが、その通りじゃないのですか。
  91. 藤岡由夫

    参考人藤岡由夫君) ただいまの点につきましては、これは私として国内立法をするような必要のことはなかろうということを私もかねて申しておりました。現在もそのように思っておりますけれども、多くの学者はそう思っておりますが、ただ私どもといたしましては、別の問題もそうでございましょうが、安全保障の問題につきましては、これはどういう程度のものであるかということをはっきりさせていただきたいということは考えております。これにつきましては、しかし事実は、具体的には外務省が交渉の上でどういうことになるかということで、外務省の方の問題で、私のお答えする問題ではないと思います。
  92. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 私はどうも立法の措置がここで必要になって来るのじゃないかというふうに思っておりますが、次の点について伺っておきたいのです。アメリカが現在日本濃縮ウランを貸与しようという考え方が、日本の三原則の、第二といいますか、第三といいますか、もう一つの原則、つまり日本に事実的な原子力研究というものの発達が望ましい考え方と矛盾するのではないかと思えます一つ理由としては、これはやはり現在アメリカ原子力委員会委員の一人でありましょうか、マーレイ君の言われた言葉として引用されております。スエーデンが自立的に原子炉を作ったということは、アメリカ外交の非常な失敗だということを言っておられるのです。そうすれば、アメリカが今濃縮ウランを貸与しようとする考え方の中には、その国、すなわちわれわれの場合には日本です。日本に自立的な原子研究が成長するということと矛盾する考えがあるのじゃないかと思いますが、どうなんですか。
  93. 藤岡由夫

    参考人藤岡由夫君) 私は、マーレイ委員の言葉というのは、新聞で見ましたけれども、やはりアメリカが、どういう意見アメリカ側にあろうとも、日本はやはり日本立場でものを考えればよろしいので、現在私ども濃縮ウラン受け入れということは、適当な条件のもとにおいて望ましいと言っておりますけれども、これはやはり技術の進歩、そういう点を考えまして、非常に遅れております場合には、ある程度のものを入れるということは、これは当然やらなければならないことと思うのであります。ただやり方を日本としての立場の上に立って受け入れるということをすればいいので、自立的に進めるということは、必ずしも外国技術を何も受け入れないということではないと思うのであります。
  94. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 今のスエーデンの場合なども、十分学術会議で、あなたの委員会において御研究のことだと思うのですが、先ほどのお話の中にも、濃縮ウランによらないで、天然ウランによる研究というふうなこともあるのですが、学術会議を代表せられているあなたの考えでは、今さっきお話になりましたような、外務省の交渉の態度というようなものをも考慮に入れられて、現在進められている濃縮ウラン貸与の交渉というものが、学術会議が決定せられておる原子力研究について最も望ましい方向というものと矛盾なくいくというふうにお考えでしょうか、どうでしょうか。
  95. 藤岡由夫

    参考人藤岡由夫君) 今外務省の進められておりますことについての意見ということは、私ちょっと差し控えたいと存じます。
  96. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 最後に伺っておきたいのですが、日本が現在原子力研究をやっていくには、単に濃縮ウランの貸与を受け、あるいは原子炉を買うなりなんなりするというようなことだけでいくものではないのじゃないか。いろいろな方面の研究とバランスがとれて進歩していかなければ、所期の目的を達することができないのじゃないかというように考えますが、あなたがこの原子力問題の委員長として、そういう問題にも、きっと御討議があったことだと思うのですが、現在日本原子力濃縮ウラン受け入れに関係して、他のいろいろの学問の研究及び技術研究について十分のことができているというふうに御覧になっておられましようか。それとも、他の方面においては、はなはだ不十分だというようにお考えになっておられましょうか。予算の面その他バランスの面で、これがバランスのとれた措置であるかどうかという点について、もし御意見があれば伺いたい。
  97. 藤岡由夫

    参考人藤岡由夫君) バランスが十分にとれておるかどうかということは、なかなか問題がちょっとむずかしいのでございますが、私は、一般的に申しまして、原子力のみならず日本の科学技術にはもっと力が注がれることが望ましい、そう考えております。
  98. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 しかし予算の面で見ますと、すでに原子力関係で二億五千万ですか、そういうものの繰り越しを入れて今年には四億というような予算がとられていますが、私はおそらく、この濃縮ウランを買い、また原子炉を買うとか、そういうような方向にそれだけの金を使っていることと、それから他の学問技術関係において政府が現在予算に組もうとしていることとは、おそらくバランスを失しているのじゃないか。従って政府が現在アメリカ申し入れを受け入れて、日本における原子力研究を促進しようと言っていることは、その実体において全く意味をなさない。つまり他の方面の学問、科学技術研究は予算上の措置を全然しない。ただ濃縮ウラン受け入れにだけ予算上の措置を考えるということは、どうも私は、現在政府のやっていることが原子力平和利用に関する日本の学問技術の発達ということを目的としているとは考えられない。これはまた世論が心配している点でもあるのじゃないか。従って、これが単に一部の資本家の利益、従って学者の学問研究などを犠牲にするような利益あるいは場合によってはそれが軍事的な利用一つの捨石というものになっているのじゃないか。科学全体の進歩ということのためになされているのじゃないのじゃないかという心配が、国民の間に多いのではないかと思われますが、そういう点について学術会議においての御議論があったろうと思うのですが、どうでしょうか。
  99. 藤岡由夫

    参考人藤岡由夫君) 私はその点につきましては、特に学術会議の議論を結論的に申すわけではございません。従って私の個人的意見になるかも知れませんが、ただいま二億、三億という金が、ほかの学術に関係する金に比べてバランスを失して多過ぎるという御意見であると存ずるのでございますが、私は原子力の開発の問題は学術の問題だけとは考えません。常にどこの国でも、これは工業的な利用、さしあたって発電の問題などは大きく取り上げられますが、その他そういう非常に目的を持った問題でございまして、わが国の将来の産業経済、そういうものが全部これにかかってくる問題で、単なる純粋の学術上の問題ではないと考えます。そこで原子力に関することの開発が、今、日本でここで始められましたならば、私は、年間二億、三億の程度の金では、これは実際はできないと思います。もっと、はるかに多くの金が実際に必要になってくると思います。しかし、それだからといって、ほかの学問に対する金に対して多きに失するということはない。むろんほかの学問はまた学問で、さらに大きな予算が入れられることは望ましいのではありますけれども、バランスとしてそれを失する問題ではない。つまり原子力は単なる学問の問題ではないので、もう少し直接的な意味を持つものであるという点で、別に考えなければならないと考えております。
  100. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) 大体この程度にとどめたいと思いますが……。
  101. 羽生三七

    ○羽生三七君 最後に一つ藤岡委員長にお伺いいたしますが、近日仮調印をするという問題は、藤岡委員長としては、政府から話があって了解された問題でありますかどうか、これだけ伺いたい。
  102. 藤岡由夫

    参考人藤岡由夫君) これは私は、そういうことを相談をされる正式の位置でもなければ、了解をすべき位置でもないと思いますがいかがでございましょう。(笑声)
  103. 羽生三七

    ○羽生三七君 いや、それでよろしゅうございます。
  104. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) それでは本件に関する調査はこの程度にとどめたいと存じますが、御異議はございませんか。
  105. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 ちょっとその点について外務省側に一言……。
  106. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) それはあとから一つ……。それでは御異議ないものと認めます。  藤岡博士にはまことに御苦労様でした。ありがとうございました。(拍手)   —————————————
  107. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) 次に過剰農産物の輸入につきましての提案理由……(笑声)正式の名前はあとで申し上げますが、非常に長い……(「まさにその通りだ、それが本質を現わしている」と呼ぶ者あり)これに関しまして外務政務次官から提案の理由の御説明を願います。
  108. 園田直

    政府委員(園田直君) ただいま議題となりました農産物に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  昨年七月米国議会において成立した一九五四年の農産物貿易の促進及び援助に関する法律により、昨年三月に日米間で署名した農産物の購入に関する協定に基いて行なったと同様の米国の余剰農産物の円による購入を行うことができるほか、その贈与をも受けることができることとなりましたので、政府といたしましても、わが国の食糧等の需給計画上、同国の余剰農産物を購入することが適当であること、わが国における給食その他による児童の福祉計画を拡大するため余剰農産物の贈与を受けることが望ましいこと及び購入の結果生ずる資金の利用によりわが国の経済に少からざる利益をもたらされるべきことを考慮して、そのための協定の締結につき、昨年秋以来ワシントンで具体的交渉を行なって参りましたところ、本年五月両国政府間で意見の一致を見るに至りました。よって、五月三十一日、本大臣と在京米国大使との間においてこの協定の署名を了した次第であります。  この協定により、わが国は、八千五百万ドルまでの米国の余剰農産物を円をもつて購入するほか、現物贈与の形で千五百万ドルまでの余剰農産物の贈与を受け、さらに八千五百万ドルの購入によって積み立てられる資金のうちドルに交換された七割を、電源開発、農業開発及び生産性向上のための借款として受け入れることになります。また、積立資金の残余の三割は、わが国における駐留軍米軍の軍人軍属用宿舎、城外調達、教育交換計画等に対する経費として米国が日本国内で使用することになっております。このようにして、この協定の実施がわが国にもたらす利益は、本来外貨による輸入を必要とすべき農産物を円で購入することができ、また贈与を受ける農産物によって現在の児童福祉計画を一段と拡大することができるほか、さらに農産物の購入代金の七〇%すなわち六千万ドル近くに上る額を借款として利用することによってわが国の経済の発展を促進することができる等、各方面にわたり多大のものがあるものと期待されます。  よって、ここにこの協定の締結について、御承認を求める次第であります。なにとぞ慎重御審議の上、本件につきすみやかに御承認あらんことをお願いをいたします。   —————————————
  109. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) 次に、国の援助等を必要とする帰国者に関する領事館の職務等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。政府から提案の理由を聴取いたします。
  110. 園田直

    政府委員(園田直君) 国の援助等を必要とする帰国者に関する領事官職務等に関する法律の一部を改正する法律案の提案理由及びその内容を説明いたします。  まず提案理由を説明いたします。  現行の「国の援助等を必要とする領事官職務等に関する法律」は、その施行以来一年九箇月となりますが、この間にこの法律を実際に運営してみた結果、次に申し述べますように、この法律の一部を改正することを適当と考える次第であります。 一 現行法律第三条により帰国費を貸し付ける場合には、帰国者の在留地から本邦までの船車賃並びに途中の生活費及び医療費を貸し付けることができますが、法律第二条に基き船長に対する送還命令により帰国者を送還する場合には、乗船地までの船車賃並びに生活費及び医療費を貸し付けることができない現状なので、このような場合にも帰国者が乗船するまでの諸費用は、これを貸し付けることが適当と考えられます。 二 領事官は、もともとその管轄区域内の行政事務についてのみ職務を行うことになっているので、領事官の管轄区域外の地に帰国を援助する必要がある者がいる場合には、現行法律では帰国を援助することができないのであります。しかし、このような場合にも、もよりの領事官が帰国を援助することが適当と考えられます。 三 夫婦は、民法第七百五十二条により互いに協力し扶助しなければならず、また同七百六十条により婚姻から生ずる費用を分担する等の趣旨にもかんがみまして、どちらか一方が、国の援助等を受けて帰国した場合には、他の一方が返済能力があれば、一方が借りた帰国費等を他方が国や船会社に対し返済するのが妥当と認められますので、帰国費等の償還義務者として新たに配偶者を加えるのが適当と考えられます。  以上三項目の理由により、この際この法律を改正するのが適当と考えられますので、これらの改正を主眼とした今次の改正法律案をここに提出する次第であります。  以上がこの本法律案の提案理由であります。  次に本法律案の内容の説明をいたします。  まず第二条に第二、第三及び第四の三項を追加し、乗船するまでの必要な旅費、すなわち乗船地行旅費を貸し付け得ること、貸付の場合の手続規定及び乗船地行旅費の定義を掲げました。この定義中には、領事官の管轄区域外から乗船地までの旅費も貸し付け得るように配慮されてあります。  次に第三条を改正しまして、領事官の管轄区域の内外を問わずいずれの地にある者に対しても帰国費を貸し付け得るように措置しました。  次に第五条を改正しましたが、これは乗船地行旅費の五字を加えるとともに、条文の表現を整理しただけで、文意は変っておりません。  最後に第六条及び第七条の改正でありますが、これは乗船地行旅費、帰国費等の新たな償還義務者としての配偶者の三字及び乗船地行旅費の五字を当該条項中必要な箇所に差し入れたものであります。  以上をもちまして本法律案の提案理由及び内容の説明を終ります。  何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御採択あられんことをお願いいたします。
  111. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) 本案は衆議院の外務委員会で本日上ったそうであります。そこで引き続いて本案について質疑のおありの方は順次御発言を願いたいと存じます。(「きょうは疲れました、明日開いたらどうですか」と呼ぶ者あり)  じャ本日は本案についてはこの程度にします。   —————————————
  112. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) 次に、在外公館の名称及び位置を定める法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。  本件につきましては、提案理由の説明はすでに済んでおります。質疑のおありの方は順次御発言を願います。(「これも一つ次の委員会で……」と呼ぶ者あり)  そういたしますと、本日はこの程度にいたして、本日の委員会はこれにて散会をいたします。    午後四時二十七分散会