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参考人(
藤岡由夫君) 私ただいま御紹介をいただきました
藤岡でございます。本日は
濃縮ウラン問題につきまして
意見を申し上げよということでございますが、そういうことになりました
動機は、先頃
日本学術会議原子力問題委員会から
外務大臣あてに要望をいたしました。それでその写しを御
参考までに本
委員会に、
委員長あてに申し上げました。それが
動機であるかと存じます。それで主としてこの
濃縮ウラン問題について申し上げるつもりでおります。この政府に対して要望いたしましたことに限らず、少しくこういうふうになりましたいきさつ、
濃縮ウラン問題そのものについて簡単に申し上げたいと存じます。
非常に
最初わかり切ったことを申しまして、はなはだ失礼かと存じますけれ
ども、
順序といたしまして申し上げますと、いわゆる
濃縮ウランの問題が起りましたのは一昨年の暮であったかと存じますが、アイゼンハワーが
国際連合総会で演説をいたしまして、
原子力に関する、
後進国のための
濃縮ウランを百キログラム
提供して、そうして
国連に
一つの
機関、いわゆる
プールを作る、で、
イギリス及び
ソ連もそれにある程度の
提供をすることを勧誘いたしまして、その
国際機関から
各国に対して
濃縮ウランを貸すという、そういう
プール、または銀行といわれまして、そういう
機関の設置を提議いたしまして、そうして百キログラム
提供する用意があるということを申しました。これに対しまして
イギリスは間もなくこれに応じて二十キログラム
提供するということを申したのであります。
ソ連はこれに応ぜず、そのままその案は全然立ち消えになってしまったのではないようでありますけれ
ども、はっきりした実を結ばず今日に至っております。もっともその
プールの性格というものが大へん途中からまた変りまして、
最初はその
プールが
独立の
機関として
各国に
提供をするという案のようでありましたが、のちに
プールは
手形交換所のような役割をする。結局国と国との間の
協定で取り引きは行われる、そういうことになっているようであります。ところがそれが進まないので昨年
アメリカは
独立に、その
国連の
機関の問題とは別に、直接
自由諸国に
濃縮ウランを
提供するということを申しまして、そうしてことしの一月から
各国に向いまして、そういう
申し入れが始まったようであります。
日本に対してもそういう非公式の
申し入れがありましたのがこの一月でありまして、現在現実に
日本として問題に取り上げられましたのは三月の末から問題になって来たようであります。
この
濃縮ウランは何かということでございますが、御
承知のように
ウラニウム——ウラン、
ウランは
原子力、
原子エネルギーを出します、非常に大きな
エネルギーを出します点、いわば普通の
燃料にたとえられておりますけれ
ども、非常に大きな
エネルギーを出す原料であるとたとえられるのでありますけれ
ども、
ウランの中に
同位元素と申しまして少しく重い二三五と、それから少しく軽い二三八、これが約百四十分の一の
割合で、百四十対一の
割合でまじっております。で、一の方の二三五は非常によく燃えるのであります。
あとの二三八の方はなかなか燃えないのであります。そのままではつまり
燃料にならない。いわば
石ころ百四十粒と
石炭一粒とがまじったような形になっているのが普通の
ウランの元素の構成であります。それでその
石ころの方を取り出しまして、成るべく
石炭の方の
割合を多くする、そういうふうにいたしましたのが
濃縮ウランでありまして、
濃縮ウラン、化学的にも外見上も普通の
ウランと何ら変りはないのでありますが、ただ僅かに目方が軽くなっている、そういうものと言ってよいと存じます。これを一〇〇%
濃縮いたしまして、二三五だけにすれば非常によく燃えますので、これは
原子爆弾の
材料になりますけれ
ども、そこに行きますまでの二%ないし二〇%ぐらいまで
濃縮したものを、これを
提供するということを言っておるわけであります。
で、これを受けるとそれが
原子爆弾になるのではないか、つまり
濃縮の度を進めれば
原子爆弾の
材料になるわけでして、そういうことは
条約上、
協定としても最も厳重に禁止されておることであり、非常なこれは
設備と金とがかかります。また六キログラムぐらいを純粋にいたしましても、到底
原子爆弾一個の分量にもなりませんし、そういう心配は先ずないと思うのであります。
アメリカは現在のところ、そういうふうな
濃縮ウランを非常に多量に作って貯蔵しているものと考えます。
原子炉は、すなわち
ウランを燃やすための炉のようなものでありますけれ
ども、それも
アメリカでは、本来の
天然ウランを使うやり方を近ごろではほとんどとりませんで、新しく作るのは、いずれも
濃縮ウランから出発する、おそらく将来も
発電等に行います場合には、
濃縮ウランをある程度使うことをやることと考えられます。
ところが、
原子発電ということに至る道といたしましては、
濃縮ウランを使うことだけが唯一の
方法であるかと申しますと、そうではないと考えるのであります。現在
ヨーロッパ諸国では、
天然ウランから始めて、だんだん大きな
天然ウランを用いまして、小さな
原子炉から始めて、だんだんと大きな
原子炉を作って参りまして、フランスなどがその典型的な道をたどっております。
濃縮ウランを作るということはいたしません。ただ
原子炉を作って参りますというと、大きな
原子炉では、
石ころがまた燃える
石炭に変る、すなわち、
プルトニウムに変るということが起ります。二三八の
ウランが
プルトニウムに変る、その
プルトニウムがたまりますと、これがまた非常によい
原子燃料でございます。で、
プルトニウムを中心にして
原子爆弾を作ることももちろんできます。ところが将来もし
原子発電というようなことが行なわれるといたしますと、現にその
計画は相当進んでおりますけれ
ども、
濃縮ウランを
もとにするか、
プルトニウムを
もとにするか、いずれにせよ
濃縮ウランまたは
プルトニウムを使っておっただけでは、
濃縮ウランも一〇〇%のというのでありますが、そればかりを使っておったのでは、それを作りますのに非常な金と電力がかかる。その
あとのものを
燃料としておったのでは、なかなか
ウランの
経済という点において成り立たないと考えられるのであります。そこで将来は増殖型と申します炉は今
研究されておりますけれ
ども、
プルトニウムを使うかあるいは
濃縮ウランの濃い
濃縮度のものを使いまして、そうして普通の
ウランかまたはトリウム、そういう普通では
燃料にならないものまでも
燃料として使う、そういうふうに進まなければならないというのが大体の学界の見通しだと思います。いわばそこへ参りますまでの道といたしまして、
プルトニウムを使っていく
方法と
濃縮ウランを使っていく
方法と二つあるわけでありまして、
アメリカは目下
濃縮ウランの製作ということに非常な力を入れておるのであります。
それでこの
濃縮ウランを
各国に
提供いたしまして、それにはただ普通の商品として
提供することはできないのでありまして、つまり
核分裂性物質、これは
原子爆弾に非常に
関係のあるものでありますので、
アメリカの
原子力法の定めるところによって、
各国との間に
協定を作って、そうしてそれを
提供するということでこの一月から
各国との交渉が始まっているわけであります。ところで
アメリカはそれに対する返事をなるべく早くしてほしい、そうして六月までに
協定を結ぶようにしたいということを申しまして、現にトルコを初め、十数カ国がその
協定をすでに結び、または近く結ぶという
状態にあるということは、
新聞に報ぜられているところだと存じます。何ゆえに
アメリカがそういうふうに急いで
協定を
各国と結ぼうとしているか、そういうことの
理由を
幾つか数えてみたいと思います。
アメリカが六月の一日までに
協定を結びたいということを申して参りました一番表面的な大きな
理由は、
アメリカの
議会は大体六月一ぱいに終り、そうしてこの
協定を結びまして
アメリカの
議会に提出をいたします。それで一カ月の間、特に問題が起らなければ発効する、そういう仕組みになっておるそうでありまして、そういう
意味で本年のただいまの
議会に間に合うために六月一日までに
協定を結びたい、これが一番表向きのはっきりした
理由であります。でありますけれ
ども、私
ども考察いたしますと、もちろんそれには
アメリカとしての
立場上いろいろの
理由があると思います。これをどういうためであるかということに簡単に割り切ってしまうことはできませんけれ
ども、いろいろの
理由が考えられますが、その
一つ、二つをあげてみたいと存じます。
第一は、
アメリカ自身の
原子力問題を将来どう取り扱うかという問題であります。これは私の
意見と申しますよりも、先ごろ
調査団として方々いろいろの各方面の人に会いましたけれ
ども、ほとんど
アメリカの有識者、
学者の一致した
見解でありますけれ
ども、
アメリカは
原子力問題に非常な
投資をして参りました。おそらく昨年度までに百五十億ドル以上の
投資をして参りました。そうして多くの人の
意見では、
原子爆弾の
貯蔵量というものは相当に飽和の
状態に近ずきつつある。ことに
原子爆弾につきましては、近く
軍縮協定を結ぶということにとにかく
努力が払われております。幸いにして
軍縮協定が結ばれるということになれば、ますます
原子爆弾、
濃縮ウラン、そういう
材料の貯蔵というものがだんだん余ってくることになります。
アメリカ自身はそれだけの大きな
投資を今日までいたしますというと、その多くの資本並びに施設、そういうふうなものをどうしても
平和産業に転用しなければならない。その
平和産業に転用するということの
一つといたしまして、アイソトープの
工業的利用、工業的な
利用に限りません。
医療用あるいは
生物学上いろいろのことに
利用するということに目下非常な
努力が払われまして、その
利用がはかられております。これは
一つの
原子力の
平和的利用であります。
もう
一つは
動力としての
利用であります。この
動力としての
利用は、
アメリカでは現在のところ
潜水艦に先ず用いまして、これはすでに
ノーテラス号が進水して好成績をあげているということを聞いておりますが、これは
一つの
利用であります。しかしもちろん
潜水艦というような
利用の仕方は、あまり
コストの点、
経済的に引き合うかどうか、そういうことは考えていないに違いないのでありまして、将来
商船というような問題になるとまた話は違うんですが、その
商船よりも先に今考えられておりますのは
発電としての
利用であります。この
発電としての
利用は、
アメリカが最も進んでいるとは考えられません。それはすでは
新聞の報ずるところによれば、
ソ連に五千キロの
発電所が完成して動いているそうでありますし、
イギリスは明年五万キロの
発電所を作り、さらに一九六六年までに百五十万ないし二百万キロの
原子力発電をするということを発表いたしております。
イギリスその他
ヨーロッパの諸国は、それぞれ将来の
エネルギー資源問題ということに非常な関心をもちまして、国として、
イギリスという国全体として、あげてそういう
発電の
計画を進めております。それがまた
イギリスの
発電が進んでいるゆえんでありましょうが、
アメリカは多少事情が違いまして、まだ将来の
エネルギー資源ということについて、
ヨーロッパ各国ほど痛痒を感じていないのであります。むしろ
石炭、石油、そういうふうなものが非常に豊富である。しかし先ほど申しましたように
平和産業に転用しなければならないとすれば、
発電所というのはやはり
一つの進むべき道であります。現在
ピッツバーグでウエスティング・ハウスが受持って建設中の
原子力発電所、これはデユケンス・ライト・コンパニーと申します
電力会社の新らしい
発電所でありますが、その
発電所の中の一部で、二十万キロの
発電施設の中に六万キロの
原子力発電所を作ろうといたしておりますが、これが二十七、八年頃完成するといわれております。
アメリカとしては書初の
発電所であります。ところがその
発電ができるといたしましても、
アメリカ、殊に
ピッツバーグ附近は非常に
石炭の安いところでありまして、果してこれが
経済的に引き合うかどうかということはまだまだ疑問がいろいろございます。あるいは
経済的にはまだ引き合わないのではないかという問題があります。しかしながらこれは
アメリカとしてはほんの
最初の試みでありまして、同じ
方式の試みが今度企業としてニューヨーク、
ハドソン河の畔りにできることがすでに発表されております。さらにその他
発電方式につきましては、まだいろいろの
研究が行われております。
そういうわけで将来
発電、そういう方に向けて、
原子力の
研究をそちらの方に向けていくということに非常に大きな
努力が払われようとしておりますが、しかしただいま申しましたように、
コストの点から申しますと
アメリカ国内ではまだまだ
石炭や石油に立ち打ちできるまでに至っていないのであります。でありますけれ
ども、他の国において
発電コストの高い国、そういう国があったならば、それに
原子力を輸出する、
輸出産業として考える、そういうことが
アメリカの
学者、その他の
人たちによって言われております。先ごろ
日本に参りましたホプキンス、その他の
人たちもむろんそういう考えのようであります。つまり
アメリカでは
原子力を今後
平和的産業に切りかえて参りますが、それを自分の国内における
発電用に使うということもむろん考えますけれ
ども、同時にあるいはそれ以上の熱意をもっていたといっていいのではないかと思いますけれ
ども、
輸出産業として取り扱うということであります。ところが現在のところまだ
発電所は
アメリカでは完成したものはございませんで、完成はおそらく
イギリスの方が先に完成いたしましよう。これは必ずしも
技術が
イギリスよりも劣っているということではないと私は思います。ただそういうことの
必要性を
イギリスの方がより多く考えているためだと思います。とにかくそういうわけで、将来
発電を
輸出用にするといたしますと、やはりそれにあらかじめ手を打っておかなければならない。現在のところまだ
各国に
提供するという
濃縮ウラン並びにその
設備というものは、ごく初歩的な、ほんの初歩的なものでありますが、まずそういうものを
各国に供与いたしまして、一応手を打っておいて、そしてだんだんと、また将来の
原子力発電に至るまでに、おそらく
幾つかの段階がまだあると思いますけれ
ども、それによって
発電をまた供給する、そのための
一つの手である、そういう見方は十分私
どもでさえ考えられるのであります。
それからまた政治的な見方をいたしますると、今日
平和攻勢といわれる、これはまあ私
どもしろうとはあまりこのような席で申すことははばかるべきでありましょうし、私
どもは何にも知らないのでございますが、しかしとにかく
平和攻勢ということが言われ、
ソ連がすでに
東欧圏の内部で
幾つかの国に
原子力の
技術を伝えたということが報ぜられておりますので、むろんそれに対応する
西欧圏内においてなるべく多くの国に
原子力の手を打っておきたいということはあると思うのであります。それからこの
夏ジュネーブ会議というのがございます。これは
国際連合が主催で行われます
科学者会議でありまして、
国際連合は一方においては軍縮問題を取り扱いますが、同時に
原子力の
平和的利用の問題を取り扱っております。その
科学者が集りまして、話し合うことによってお互いの理解を深め、そして提携して進めていくという
意味でありますが、この
ジュネーブ会議には
アメリカも
イギリスも、
ソ連も、その他非常に多くの、現在ちょっと私はっきりした数字は忘れましたが、多分三十カ国も
出席を申し出ておるかと思いますが、それがそれぞれの国の
原子力の進んでいる
状況について
報告をするわけであります。
アメリカ、多分
イギリスもここで
一つの
原子炉の展覧をいたしまして、いわばこれは見本市のようなものだということが言われております。この
ジュネーブ会議でおそらく
各国の
情勢がかなりよくわかる。現在でもむろんある程度のことはわかっておりますけれ
ども、このときまでに秘密を解除する部分も相当あると伝えられておりますので、一そうよくわかりますので、これを
一つのあるエポックのように現在考えるのであります。その
ジュネーブ会議の前になるべく多くの国と手を結びたいと、そういう
意味もあるのであります。こういう
見解は、これは非常に客観的に
アメリカ側の
立場というものを推測しての問題でございます。
日本はやはり
日本の
立場というものがございます。そこで私は
日本側でこの問題がどういうふうにこれだけ取り扱われてきたかということについてまず
日本側の進捗の
状況について次にお話申し上げようと存じます。
昨年
原子力の問題が
日本で始まり、国会で
原子炉予算が協賛されまして、初めて
日本としては
原子力問題に足を踏み入れたわけであります。で、
日本でその
原子力問題の方針をきめます最高の
審議会という
意味におきまして
原子力利用準備調査会が
閣議決定によりましてできましたことは御
承知の
通りだと存じます。これは当時の緒方副総理が
会長であり、
関係閣僚若干名、それから
民間から経団連の
石川一郎会長と
茅誠司学術会議の
会長、それから私、
学術会議の
原子力問題委員会の
委員長、そういう資格におきまして、これはまあ個人としてではありますけれ
ども民間から入っております。現在は
重光外務大臣が
会長でおるわけであります。これは
審議機関であります。ところがこの
利用準備調査会はそうたびたび開くこともできませんので、
最高決定機関といたしまして、その
下部機構といたしまして
総合部会というのが設けられております。これは
経済審議庁の
石原次長が
会長でありまして
民間側からは
学者並びに
経済の方々約十名近く、七、八名であります。それから
関係のあります官庁の
局長クラスの方が
専門員として、そういう
官庁側代表並びに
民間の
専門員によって構成されております。これがたびたび開きまして、そして
原子力に関する根本問題を議しつつあったのであります。で、この
総合部会は実は昨年の十二月からことしの三月頃まであまり開かれませんでした。それは昨年
原子力の
利用に関しまする
海外調査団を派遣することになりまして、これが昨年の十二月の末に
日本を出発、三月の二十五日に帰国いたしました。私その一員として選ばれ、推されて
調査団長として約三カ月にわたりまして旅行をして来たわけであります。で、その
調査団がいずれ
報告をするであろう、
外国の様子を見てくるであろうということで、
総合部会もその帰るのを待っていたわけなんであります。そこで戻りまして細かい
技術的な
各国の
状況などの
報告はすでにでき上っておりますけれ
ども、まだその字句の修正、印刷の
準備等のために一般に発表されておりませんが、それを作りますについて、やはりその
報告とともに、
日本の今後の
原子力問題に関する進み方、それについての
調査団としての
意見、そういうふうなものが非常に強く要望されているということが方々で言われておったと考えます。そこで個人的の
意見を言うことは私
どもといたしましてもはばかりまして、
調査団全部の者がよく話合いをいたしまして、
意見の統一をいたし、そうして今後の
日本の進むべき途ということについての
一つの
意見を申したのであります。これは五月の六日に
通産大臣に
報告するとともに発表いたしました。
これで申したことは、
一つは態勢です。
日本の今後の
原子力開発に対する態勢を
統轄機関と
実施機関とに分けて早く整えることが肝要であるということが私
どもとしては非常におもな点なんでありますが、同時に
原子炉を作るにはどういうふうな
方法でやって行くかということについての
意見を述べております。これは
日本はやはり
日本独自の案を持たなければならないと思います。
外国ではすでに
原子力の
研究は非常に進んでおります。そうしてやがて
原子力発電が行われるようになるでありましょう。
日本で今
外国がそういう
研究を進めました
方法を、途をそのまま
あとを追うようなことをいたしておりますれば非常に時間がかかり、金もかかる。そのうちに
外国でできました
発電装置というふうなもの、そういうプラントを
日本に売りにくることは
必然でありますし、また
日本側でそれを買うということは、これまた
必然であります。先ほど申しましたように
アメリカは
原子力利用の事業を
一つの
輸出産業として今後取り扱うのは
必然であります。また
日本としては当然それを買うということが起ると思います。でありますけれ
ども、ただそれを買っておるだけでは、永久に
日本は
技術的に
独立し得ない、よくまず買ってそうしてそれから
研究をするのがいいということが言われるのでありますけれ
ども、こういう問題は
資源の問題その他非常にむずかしい問題でありまして、普通のただ機械を買うというだけの問題とはちょっと違うと思います。たとえばもし
濃縮ウランを使うという
方式で、
アメリカが自分の方の
産業に都合のいいような
方式を作りまして、それを順次売ってくる、それをただ黙って順次買っておるようならば、それはすべて
アメリカの便宜のために将来きめられるわけであります。
日本にもおそらく
ウランが多少はあります。今後の探査によってもっとたくさん出てくるかもしれません。そうしますと、
日本として考えます場合には、
日本の
天然ウランをどのように
利用するか。それから
日本の
技術、すべての機械を
アメリカから買うだけでは
日本の
技術は進歩しないのであります。どういう点が
日本にできるか、どういう点が今
日本ではできないか、
日本の
技術というものも考えなければいけない、
経済ということもむろん考えなければいけない。で
日本のそういう
資源、
経済、
技術、そういうことを考えますというと、
日本として今後の
原子力開発に対してどういう方針で進むべきかということの
一つの
日本独自の案、これを十分に検討する必要があると考えるのであります。そういうことを
研究いたしまして、私
どもといたしましては
日本としてある程度大きな将来のいろいろの
技術の進歩の基礎になるような
原子炉を
一つ作りたい。
天然ウランと重水とをもった
一つの
原子炉を作りたい、これを第一号炉と私
どもは
報告書を呼んでおりますが、そういうものを作りたい。それはとにかく今後のそれだけでもってすぐに
発電の
研究をすることはとうていできないと思いますけれ
ども、とにかく
技術の進歩、そうして
日本でかりに
外国から
発電の装置を買うといたしましても、その基礎になる
技術の
研究、その基礎になる
技術を持つ、
日本に批判力がなかったならば、とうてい独自のものとしてこなしていけない、そういう
意味において
一つの
日本のある
技術研究の基盤になるようなものをぜひ作りたいということを強く主張いたしております。それと共に今
濃縮ウランの問題が起っておりますけれ
ども、その
濃縮ウランは実際使うのには非常に便利であります。そうして今
アメリカからすすめられております
濃縮ウランというのはごく初歩的なものでありまして、これにはおそらく何ら秘密が伴っていない、これは私
ども確信しており、今日に至っても依然として確信いたしております。でありますから、そういうものを補助としてこれを受け入れることはちっとも差しつかえない、おそらくあまり差しさわりのない条件、よく
学術会議の三原則ということを申しますが、私
どもの
見解ではそれに抵触しない条件においてこれを受け入れることができるだろうと考えます。そういう補助的な
意味において
濃縮ウランを受け入れてもいいのではないか。ただしおもな点は
日本独自の案を持つ、そういうことであります。そういうようなことを
総合部会にも
報告いたしました。で、
総合部会でいろいろその
調査が行われましたが、まず外務省といたしましてはどういう条件が
協定について出てくるであろうかということをできるだけの
材料を集められたのであります。そうしてトルコとの
協定になります前の
状況でありますが、その
状況に、
外国と、第三国と
アメリカとの間に結ばれます
協定がどういうふうなものであるかということについていろいろ
調査をされました、もちろん完全な
材料はまだ入っておりませんです。しかし大体こういうふうなものであるらしいということの
報告がありまして、そうして
総合部会といたしましても、そういう
濃縮ウラン受け入れの交渉を始めることは差しつかえなかろうということの
意見が非常に強く出ましたのが五月十六日でございます。この日は
総合部会として決議をしたわけではございません。少数
意見も何も、みな個人の
意見をそのまま述べるということにいたしましたが、これに対して今
濃縮ウランの受け入れ交渉を始めるよりも、
日本の国内の態勢をまず整えるべきである、そうして国内の態勢を整えることをまず先にすべきであって、しかる後に
濃縮ウランの問題に進むがよろしい、こういう
意見が一部にございます。しかしながら諸般の
情勢を考えますと、
日本でも非常にその
濃縮ウランを受け入れるがよろしい、しかも早く受け入れるべきであるという声が非常に高くなっておりますし、いろいろの事情を考えまして、やはりある程度早く進むということも必要であるので、
濃縮ウランの受け入れの交渉を始めることと、それから国内態勢を整えるということを同時にスタートするがよかろう、そういう
意見が大多数でありました。これが五月十九日の
原子力利用準備調査会の本
会議に
報告されました。で、本
会議では
アメリカから
濃縮ウラン並びに必要な
技術を受け入れるということを目標にして、その交渉を開始するということと、それからそのため
日本として
原子力開発のために必要な態勢を早急に整える、そういうことを決議したのであります。で、二十日の閣議に、これも大体
濃縮ウランの交渉を始めるという趣旨のことが決定された由でありまして、そこで日米交渉が始まったことと存じます。
ただ私はここではっきり申し上げておきたいことは、それは交渉を始めることを
総合部会で申したのでありまして、それが至急、その当時といたしましては六月一日が大体期限のように思っておりましたので、それに間に合うように交渉ができるとは、多くの人は考えていなかったのであります。私自身は無論考えていなかったのであります。交渉が開始されると思っておりませんでした。しかるにその後に五月二十八日にまた
総合部会を開かれまして、このときは外務省側からは専門
委員の御
出席はなかった。代理の方の御
出席がありましたけれ
ども、すでに訓令も送られ、交渉も開始され、そうしておそらく六月十五日ごろまでに妥結されるであろう、おそらく
アメリカの
議会も半月くらいは延びるだろうから、今度の場合に間に合うだろうという
意味の御
報告がありました。私は
委員の一人として、これに関してさらに詳しい情報ですね、そういう条件であるとか、そういうような情報でありますとか、あるいはこちらの方針であるとか、そういうものについての御相談があるものと期待いたしまして、そのように質問いたしたのでありますけれ
ども、その日は、これは外交上の問題は外務省にまかすべきである、
審議会はいろいろのことははかるけれ
ども、ある程度以上のことはこれは事務上の行政上の問題として行政担当者にまかすべきである、そういう強い御
意見がその席ではございました。私はこの問題は
日本の
原子力の問題を左右するものでありまして、そうして行政上の事務の問題として取り扱うにしては、余りにも重要な問題であるということを主張したのでありますが、その日はそれ以上御説明がなかったのであります。しかしながらその点につきましては、六月四日に
学術会議の
申し入れをいたしまして、学術会談
委員会を開きまして、そうして外務省の担当河崎局長に
申し入れをいたし、その後開かれました六月九日の何で、準備
調査会
総合部会では、相当詳しい御説明がありました。そうして十分に
委員の
意見も開陳する機会がありました。その点に関して私が先ほどまで申しました点は、まずその後の進み方に照しまして、すでに了解満足いたしているということを申し添えておきたいと存じます。
そこで六月四日に
学術会議の
原子力問題委員会を開きまして、そうしてその結果要事をいたしたのであります。その要望書の内容につきまして御説明申し上げたいと存じます。これは
日本学術会議は御
承知のように、政府に対して、諮問に応じ、または勧告をする
機関でございまして、これはスタックを通じまして、そして
学術会議会長から総理大臣あてに申入れるのが正常であります。それにはしかし総会の決議を要し、またスタックの総会は一カ月に一回開かれるのでありまして、緊急を要する場合には、そういうことは間に合わないのであります。ただそういう場合には
学術会議の中の、あるいは部長でありますとか、あるいは
委員長でありますとか、そういうふうなものから、
会長の了解を得まして、直接私見を伝える、そういうことが従来の慣例として行われております。その慣例によったわけで、総会ないし運営
審議会といたしましては、これに対して、後に事後承諾を求めるわけであります。それで
申し入れをいたしましたことの内容を申しますと、第一に非常に重要だと考えましたことは、これを外務省……。ちょっと読んでみますと、「交渉の基本的方針について、
原子力準備
調査会
総合部会の
意見を十分に徴され、かつ、国民に事態をできるだけ理解させるよう
努力されることを希望いたします」、こういうふうに申しております。これは御
承知のように、
原子力問題は、今日非常に一般的の関心が深い問題でございまして、これはできるだけ国民に理解された形においてそのことをはかって、進めていただきたいと存ずるのであります。国民に理解させるということはどういうことかと申せば、むろん直接は、第一はこれは国会尊重であります。でありますけれ
ども、この
学者、実業界、そういうふうなものの
意見を
原子力問題に反映させて、そしてその方針をきめますために、
原子力利用準備調査会というものが公けにできているわけであります。これは
閣議決定でできたものではありますけれ
ども、昨年以来そういう
機関がちゃんとあります以上、これにお諮り下さることが、一番つまり国民の世論を徴するということの
一つの行き方かと思うのであります。でそういう
機関を無視されることなく、
意見を徴されて、
会議を開くということが、しかし非常に緊急を要する場合に、そう主張できるものでもないと思いますので、そこで「
意見を徴される」という言葉を使いましたのでありますが、そういうことを
申し入れたのであります。これは実は今、ただいま申しましたようないきさつがございますので、これを非常に重大なこととして取り上げたのでございますけれ
ども、その後の政府の取扱いによりまして、この点については私
どもはすでにまあ満足していると言ってよろしいと存じます。
そこで
学術会議のこういうこまかい条項については、一々のことをかれこれ非常にこまかいことはまあ言わないというのが大体の趣旨でございますけれ
ども、大体具体的な点が、大きな点だと思います。二つの点を特に留意されることを望みますということを申しておきました。
一つは「交渉にあたっては、妥結を急ぐことなく、内外の
情勢、将来の見通しを十分把握しつつこれを進めるべきであり、少くとも、世界諸国の
原子力研究開発の
状況が発表される今夏の「
原子力の
平和的利用のための国際科学
会議」の結果を見定めることが望ましいと考えます」ということを言っております。これはやはりこのことにつきましては、先ほどからの説明で、もう特につけ加える必要はないと考えますけれ
ども、とにかく
日本としては
原子力の
研究を始めるということは急がなければなりません。世界諸国の
情勢を見ますに、ことに
日本の将来の
エネルギー需給の問題、十年、十五年後の先に
日本の
エネルギー供給がどうであるか、そのときの需要はどうであるか、そういうことを考えますと、
日本は
原子力研究を早く始めなければなりません。しかしながら、その早くというのにも、そういう長期的の
意味の早くと、短期的の
意味の早くとが違うのでありまして、十年、十五年ということを目標にいたしますならば、早く、ここ一年の間にぜひ始めることを考える、そういう
意味では非常に早くになります。しかし、ここ一カ月を急ぐか二カ月を急ぐかと、そういう
意味で申すならば、そういう
意味で急いで将来に禍恨を残すことがあってはならない。今
日本ではその
原子力問題を将来どういうふうに取扱いますかという本当の方針をきめていきますような責任をもってやる態勢がまだできていないと私
どもは考えます。現在あります
原子力利用準備調査会は、これは
審議機関でありまして、
審議機関というものは本当の責任を持つ
機関ではないのであります。それでこの
原子力問題というのは全く新しい問題で、各方面に非常に大きな影響を持つ問題でありまして、
発電のことばかり、
技術のことばかりじゃないのです。いろいろの方面に非常に大きな影響を持つ問題であり、しかも一歩あやまれば、
原子爆弾というような危険を持つものなんであります。これについてはどういうふうな態勢でいくがよろしいか、
各国とも
原子力の統括
機関というものに非常な注意が払われております。そういうような
意味でぜひ統括
機関を作る。また実際やるにはどういう所でやるのがよろしいかということもなかなか大切な問題であると思いますが、とにかくそれがまだ何にもきまっていないのであります。仮に今日
濃縮ウランを持ってきましたところで、誰がどこでどうするかということも何にもきまっていない。そういう
意味で一カ月、二カ月を争う必要はないのでありまして、先ほ
ども申しますように
アメリカとしてはこれを急ぐ十分なる
理由があると思います。しかし
日本としてはこれをそんなに急ぐ
理由はないのであります。この夏のジュネーヴ
会議でいろいろの知識が得られますならば、その
あとまで待って差しつかえないと思います。もっともこの
協定は、今はただ一般的な、受け入れるかどうかという
協定で
技術的な面は後に残す、そういう方針のようであります。まあこの点はとにかく八月よりも早くてはいけないとか、遅くなければいけないとかいうようなこと、それに非常にとらわれるわけではありませんけれ
ども、とにかく急いでやるということのために起す損害ということがないようにしてほしいということなんであります。
それからもう
一つ申しておりますことは、
協定の内容は、
濃縮ウランの受け入れに直接
関係する事項にとどめるべきであり、将来にわたる拘束を含むような事項及び今後の
日本の
原子力開発方針をあらかじめ規制するような事項は、これを避けるのが適当であると考えます。これは非常に抽象的な言い方に私
どもといたしてはとどめておりますけれ
ども、すぐに皆様にお気づきになると思うのは、トルコ
協定の第九条、将来
原子力の問題についてお互いに相談をして、ことに
発電について協力をすることが望ましい、そういうホープ・アンド・エクスペクテーションであるということを言っておることなんであります。この条項につきましてかなりいろいろの
意見が出ております。これはいわば将来のひもである、今の
原子力問題、今の
濃縮ウランの問題でなく、将来のことのこれは約束をしておるのであるという、そういうひもであるという
意見が相当にございます。しかしながらこれは法律的にいえば何ら拘束ではない、そういう
意見もございます。それからまた、こういう条項はぜひあった方がよろしいんだ、
日本が今単に
濃縮ウランを受け入れるばかりでなく、将来
発電の問題について知識を得るために、こういう条項があるのは望ましいのだ、むしろこれが積極的に望ましい、そういういろいろな
意見があるように思います。で、私
どもはこれも
学術会議の
委員会におきましてずいぶん論じましたが、第三の、ぜひこれがある方が望ましいのだということは、
学者また
学者以外の方でもあまりそういう
意見は多くないと思います。と申しますのは、どうせ、先ほどからくどく申しますように、将来
原子力は
アメリカの大きな
輸出産業といたしましてどんどん出て来るし、また
日本では必ずこれを買おうということになりますと、これは普通の商品と同じでありまして、そういう輸出入の話というのは当然起ってくることであります。そのときにもし
協定が必要ならばそういうことが幾らでも行われるわけなんです。この条項を置くことによって、もっとあらかじめ特別に有利な情報が得られるというふうに考えられる方があるようでありますが、それはどうもそういうふうに思えないのであります。と申しますのは、
発電まで進みますと、現在のところそこにかなり多くの機密問題があります。機密にわたるような情報がたとえこういう
協定があったからといって
提供せられるということは、これはあり得ないのであります。機密の内容を持つものを知るためには、さらに厳格なる
協定を結ぶことが必要であります。そうであるとすれば、機密のことの情報は別にないとすれば、
あとはただ普通学術雑誌に発表されること、あるいはカタログその他
報告のようなものなら、これは別にこういう
協定があろうとなかろうと、商取引の問題としても十分に行われるものでありまして、特にこういうものを必要とするということはそれほど考えないのであります。そうしますとこの第九条のようなものは何ら法律的に無害であるというふうな
意見の方もありますけれ
ども、これを非常にシリアスに考えまして、こういうふうなことがありますと、将来どうしても、まず将来ぜひお互いによろしくお願いしますということを強く言っておきますと、どうしてもそれに引かれる。
日本として独自の
研究、また
外国から入れる場合におきましても、どこの国から入れるか、あるいは
イギリスの
技術の方うが便利な場合もありますし、フランス、スイス等の
技術が便利な場合もあります。現にほかの問題についてはそういうことがありますが、これを
一つの国と、
アメリカとあまり強く結ばれたために、
日本独自の考えで進むことにとかく何らか遠慮というものが出てくる。そういう
意味でどうもこれはない方がよろしい、非常にこれは強くひもであると言う方もあるし、またこれはない方がいい、そういう
意見が相当あるのであります。そうであるならば、特にぜひこれが必要だということがそれほど強くないならば、
日本としてはなるべく
日本人の多くの方が納得できるような形をとることが望ましい、法律的にこれはあっても差しつかえないという御
意見の方もありますけれ
ども、しからばこれがぜひ必要かというと、そういう法律的に無害だという方も別にこれは必要だというわけではないのです。あっても差しつかえないという。われわれといたしましては、こういう
原子力問題のようなことは、今後できるだけ
日本の国民の全部が支持して、そうしてできるだけ多くの
人たちの知識を集め、知能を結集し、そうして国民全体の支持によって進めていかなければならない問題であると考えます。そういう点から見まして、ぜひそういう、将来を拘束すると思われるような
意見があるようなことは、なるべく
日本の
立場において除いていただきまして、そうして国民全体ができるだけその
協定を支持できる、そういうふうになされることを希望するのであります。
なお、現在交渉が進行中のようであります。まあ私
どもとしては、できるだけ多くの国民が、皆がサポートできますような形においてこの
協定ができ、そして
原子力の
研究が力強く推進されることを希望している次第であります。
はなはだ散漫で、なお申し上げるべきこともいろいろあるかと存ずるのでありますけれ
ども、あまり時間がたちますので、一応このあたりで打ち切りまして、なお御質問によりまして御答弁申し上げたいと思います。