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1955-05-31 第22回国会 参議院 外務委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年五月三十一日(火曜日)    午前十一時六分開会     ―――――――――――――    委員の異動 五月二十五日委員杉原荒太君辞任につ き、その補欠として苫米地義三君を議 長において指名した。     ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     石黒 忠篤君    理事            鹿島守之助君            小滝  彬君            羽生 三七君    委員            大谷 贇雄君            梶原 茂嘉君            後藤 文夫君            佐藤 尚武君            佐多 忠隆君            曾祢  益君            苫米地義三君            須藤 五郎君            野村吉三郎君   政府委員    外務政務次官  園田  直君    外務大臣官房長 島津 久大君    外務省アジア局    長       中川  融君    外務省条約局長 下田 武三君    外務省欧米局長 千葉  皓君    厚生省引揚援護    局長      田辺 繁雄君    水産庁長官   前谷 重夫君   事務局側    常任委員会専門    員       渡辺 信雄君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○婦人参政権に関する条約批准に  ついて承認を求めるの件(内閣送  付、予備審査) ○千九百三十六年の危険薬品の不正取  引の防止に関する条約批准につい  て承認を求めるの件(内閣送付、予  備審査) ○国際情勢等に関する調査の件  (海外残留邦人引揚問題に関する  件)  (漁業問題に関する件)     ―――――――――――――
  2. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  速記を中止して下さい。   〔速記中止
  3. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) 速記を始めて。  次に婦人参政権に関する条約批准について承認を求めるの件を議題といたします。  本件は衆議院において本日本会議に上るはずでございます。まず政府より提案理由を御説明を願います。
  4. 園田直

    政府委員園田直君) ただいま議題となりました婦人参政権に関する条約批准について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  この条約は、国際連合が一九五二年の第七回総会で採択し、翌一九五三年三月三十一日に署名のために開放したものでありますが、わが国は、本年四月一日特命全権大使沢田廉三をしてこの条約署名をいたさせました。  この条約は、婦人の地位を国際的に高めようとする国際連合の事業の一環として作成されたものでありまして、婦人に対し男子と対等の選挙権被選挙権を保障すること及び婦人に対し公職就任機会均等を保障することを内容とするものであります。  本条約に対しては、その趣旨及び内容に賛同して参加する国が続出している状況でありまして、この際わが国がこの条約当事国となりますことは、国際協力という見地から望ましいことであるばかりではなく、わが国においてすでに確保されている男子と対等な婦人参政権国際的にも確認することとなり、きわめて有意義であると考えられます。  よって、この条約批准につき、御承認を求める次第であります。  右の事情を了承せられ、慎重御審議の上本件につきすみやかに御承認あらんことを希望いたします。
  5. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) 本件につきまして御質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  6. 羽生三七

    羽生三七君 まだ詳細に内容を研究しておらないのでありますが、この条約を認めていない国、認めていない国というか参加していない国、それはどういう事情であるか、これが一点。この中を見ると、国によっては第七条あるいは第九条ですか、それぞれ留保を付しておるようでありますが、それはどういう事情からか、これが第二点。それから第三点は、日本は現に婦人参政権を持っているわけでありますが、この条約で何か格別影響を受けることがあるのかどうか、そういう点、その三点をお伺いいたしたいと思います。
  7. 下田武三

    政府委員下田武三君) 御質問の第一点につきましては、この条約に加入しておりませんおもな国といたしましては、アメリカイギリスがございます。これは一見奇異に感ずるのでありますが、アメリカイギリスも全く同じ理由によって参加していないのであります。すなわちアメリカイギリスにおきましては、国内において女性男子と同じ選挙権を与えるとか、あるいは公職就任機会を与えるか否かということは、完全に国内問題である、国民意見によってその国人がきめるべき問題であって、国際条約できめて国際的にどうこう言われる筋合いでないという立場を堅持いたしますために、この両大国は参加いたしておりません。  第二に、留保がいろいろの国によってつけられておりますが、その留保の意味は如何という御質問でございますが、これは大別して二つの留保がございます。一つソ連圏関係諸国留保でございますが、これはこの条約について紛争が起った場合に、国際司法裁判所強制管轄権を認めるという点をソ連邦諸国が受諾しがたいといたしまして、強制管轄権を認めないという立場から留保をいたしておるのであります。  もう一つの国は、軍隊警察等において、おれの国では婦人男子と同等の就職の機会を認めておらんと、これはあまりに良心的過ぎる留保でございますが、これは軍隊、軍人に女性男性と同じようになれないことはわかりきったことでありまして、留保を待つまでもなく、そういうことまで条約は強制するものでないことはわかりきったことでありますが、国内法制上そうなっておりますので、非常に良心的にそういう留保をした国がございます。  第三の御質問の点につきましては、わが国憲法を初め諸法令におきまして国家公務員法その他におきまして、女性男性と全く同じ選挙権被選挙権及び公職就任機会をすでに与えられておりますので、この条約参加することによりまして、国内的に何らの異なった措置を要しないわけであります。
  8. 羽生三七

    羽生三七君 これに参加しておらない国は今の英米等のほか、どのくらいありますか。
  9. 下田武三

    政府委員下田武三君) 現在までのところ、この条約署名をいたしました国はわが国を入れまして四十カ国でございますから、なお二十数カ国という国が入っておらないわけでございます。
  10. 羽生三七

    羽生三七君 その署名しておらない国は、先ほどの英米等署名をしない理由と同じなんでしょうか、何か格別の違いがあるのでしょうか。
  11. 下田武三

    政府委員下田武三君) これはよくはっきりわかりませんが、おそらくそうではないのではないかと思います。たとえばイエーメンでございますとか、リベリアでございますとか、そういう後進国回教国はすべて参加しておりませんが、これらの後進国または回教国はいまだ男性に対してすら普通選挙権を施行してないという状態でございまして、この条約に入りますには、あまりにまだ国内体制が発達していないためかと思います。
  12. 小滝彬

    小滝彬君 今下田君のお話で四十カ国署名しておるというのだが、署名批准とは違うのですが、この四十カ国というのはほとんど全部批准しておるというのですか。
  13. 下田武三

    政府委員下田武三君) 四十カ国のうち批准いたしております国は大体半分、ただいまのところ十九カ国でござ  います。
  14. 佐藤尚武

    佐藤尚武君 今の条約局長お話の中にもありましたが、回教国署名がむずかしいのじゃないでしょうか。
  15. 下田武三

    政府委員下田武三君) 先般日本に参りましたイエーメン総理大臣一行の話によりますと、まあ友好条約の交渉をいたしたのでありまするが、相手の様子を聞きますと、あまりわが国と雲泥の差があるのに驚くようなのですが、もちろん普通選挙というものは施行されておりません。また条約なんというものはどういう手続によって批准されるものであるかというと、国会は条約協賛権を持っておりません。日本で申しますと、枢密院に当るものでございましょうか、キングの側近にアドバイザーがおりまして、そのアドバイザブル・カウンシルにいろいろ相議して、キング批准するのだということでありまして、これはイエーメンのみならず、後進国はあるいはみなそうかもしれませんが、非常にまだおくれた段階にあるように承知いたしました。
  16. 佐藤尚武

    佐藤尚武君 ただいまのは婦人参政権の問題でございましたが、そのほかに婦人に対して社会上のいろいろな制約があるのでは、どうも回教国参加を期待するというようなことは、これは風俗習慣がだんだん変ってくれば別問題ですが、しかしそれには非常に長く時間がかかるわけですからして、ほとんど望みないのじゃないかという感じがします。そうすると、回教徒の国を除いたり、あるいはリベリア等後進国を除いたりして、比較的限られた国々の問でのみこれは締結されるということになりそうに思います。もちろんそれはそれで差しつかえないでしょうが、事実はそうなるんじゃないでしょうかね。
  17. 下田武三

    政府委員下田武三君) 全く仰せ通りだと存じます。現在国連加鯉の六十数カ国のうち大体三分の二の四十カ国が署名いたしておりますが、回教国のごときは、最も近い将来にこの条約に入るということは望み得ない国だろうと思います。
  18. 羽生三七

    羽生三七君 先ほどの御説明にあった、この英米等がこれに署名をしておらないということは、まあこの婦人参政権というようなものは国内的なもので、何か国内法と抵触することも考えられるということも一つ理由でしょうが、どうもそういうことになってくると、何も婦人参政権だけではなしに、国際条約国内法と抵触すると考えられるのはたくさんほかにもあると思うのですが、なぜ英米のような、婦人参政権を最も早く実行して、かつ熱心な国が、これに署名していないということは、なかなかそれだけではちょっと納得しがたいのですが、それだけの単純な理由でしょうか。
  19. 下田武三

    政府委員下田武三君) 英米におきましては、この国内法に抵触するという理由からそれをしないのではないと存じます。つまり法律以前の問題、すなわち政治的確信の問題として、こういうことは国民が自分で態度をきめるべき問題であって、国際間の条約でとやかく言うべきものではないという考えも出ているものだと思われます。
  20. 後藤文夫

    後藤文夫君 ちょっとその点を少し私は伺いたいと思ったのですが、この条約参加するということ自体が日本にとっては別に何も変った影響はないというわけですか。  それから条約に加盟している国は大体同じような状況ではないでしょうか、どうでしょうか。まだ国内法がそこに至らない国であっても、条約に加盟するという例はございますのでしょうか、どうでしょうか。
  21. 下田武三

    政府委員下田武三君) 御もっともな仰せでございますが、おそらく日本のみならず、この条約参加することによって直接受くる実績はほとんどすべての国に対して同じことであろうと存じます。ただ、しいてどういうところに実績があるかと申しますと、これは全く仮定の理論上の問題でございますが、ある国で現在は婦人参政権を認めているにいたしましても、それは将来憲法なり、国内法なりを改正いたしますと、国内的には婦人から選挙権被選挙権または公職就任機会を奪うことが国内法の改正によって可能であるわけであります。しかし一たびこの条約に加入いたしまして、国際的に約束いたしました以上は、国内法で改正しようという自由が縛られることに相なるわけでございまして、その点がまあしいて意義があるといえばあると存ぜられるのであります。
  22. 後藤文夫

    後藤文夫君 さような場合でも、もし国内法を変えようと思えば、何か条約から脱退の手続をとれば変えられるわけでございますか。
  23. 下田武三

    政府委員下田武三君) 仰せ通りであります。たとえばこの条約から脱退いたしますれば、再びその自由を回復できるわけでございます。
  24. 後藤文夫

    後藤文夫君 そうしますと、この条約は普通の法律拘束力を持つ、何か実行しなければならん、あるいは相手国に対して実行を求めることができるという性質は非常に少いと言いますか、一種の道徳的な、一種の宣言的な性格を持っているものと承知してよろしいのでしょうか。
  25. 下田武三

    政府委員下田武三君) これまた全く仰せ通りでございまして、この条約参加国に相互間に権利義務関係を設定するという条約ではございませんで、全く道徳的と申しますか、政治的と申しますか、そういうプリンシプルを確立しようという条約でございます。
  26. 後藤文夫

    後藤文夫君 そういう性質条約というものは、いろいろな条約条文の中にそういう性質の文句が入っているということはあると思いますが、他にそういう一種の宣言的な条約というものはいろいろあるのでございますか。
  27. 下田武三

    政府委員下田武三君) こういう条約は実は昔はあまりございませんでございました。こういう条約ができ出しましたのは、実は第二次大戦後国際連合というものができまして、前の国際連盟にあまり活動しなかった部分、つまり経済社会分野におきましての国際協力ということが非常に前面に押し出されて参りまして、この条約も実は国連経済社会理事会のもとにあります国連人権委員会のうちの婦人女性に関する問題を処理するボディがイニシアチブをとりましてできました条約でございます。まことに国際連合設立後の新しい風潮に基いてできました所産でございます。
  28. 小滝彬

    小滝彬君 下田君にお伺いしたいのだけれども、先ほど羽生君の質問に対して、これは法律前の問題だから加入しないだろう、アメリカイギリス態度はそういうことにあるという御説明だったのですが、私はアメリカ憲法なんか詳しくないので教えてもらいたいのだが、私の感じではこれは憲法事項を束縛するような条約では因るというアメリカ考え方がありはせんか。アメリカでは従来憲法条約に優先するというような解釈をとっているように僕のしろうと考えでは思うのだが、その辺のところをもう少し説明してもらいたいと思うのです。僕は憲法でこういうことが出ているかどうか知らんが、その辺をもう少し詳しく説明してもらいたいと思います。
  29. 下田武三

    政府委員下田武三君) アメリカ参加いたしません理由は、一番大きなものは先ほど申し上げました。これらは国内事項であるという考えであるのでございますが、ただいま御指摘憲法制度、これは御承知のようにアメリカには憲法あるいは法律までも条約に優先するのだという、国内法優位の考えを抱いておる議員もおります。しかしアメリカ政府として明確に国内法優位説は採用いたしておらないと思いまするが、確かに御指摘のような理由もあると思います。これは現にアメリカでは四十八州のうち六州では婦人裁判における陪審員になれないという制度をとっておるところがございます。これは裁判というような冷静な見地に立ってものを判断する際に婦人というものはとかく被告や弁護士の言い分に感情的に動かされ過ぎるという考え方からだろうと思うのでありまするが、現にアメリカにおきましても六州では陪審員には婦人はなれないというような国内法を持っている国もございます。でございまするから、やはり国内法との関係ということも二次的の理由には相なっていると思うのであります。
  30. 小滝彬

    小滝彬君 一体日本では憲法事項のようなものも国際条約で縛るということは、これはもう当然のことで政府の方で差しつかえないと考え、議会が承認したらそうするという考え方で進んでいるのですか。その点をもう一度説明していただきたい。
  31. 下田武三

    政府委員下田武三君) わが国におきましては政府として公定解釈を内外に発表するという措置をとったことはございませんが、しかし新憲法の九十八条におきまして条約国際法というものは非常に順守しなければならないという国際法優位説ともとれるような規定がございます。しかしこれにつきましては、ただいままでのところ、憲法九十八条は国際条約国際法規定国内法体制のうちに導入いたしまして、憲法国内法であるから国民に対して国際間の法規というものもひとしく国民を縛るものであるぞという導入の規定であるというように、ただいままでのところ解釈されておりまして、どちらが優位かということをきめた条文ではないというように解釈されております。
  32. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 大体この条約性格はわかるのでありますが、留保関係ですね。留保規定して、それでその留保に反対するといいますか、賛成しない国との間においては効力を生じないというような条項が七条の後段にあるわけです。それから九条においてはこの条約の適用に関して締約国の間に紛争があると、そういう場合は国際司法裁判所手続によって処理をするという条文があるのであります。一体この条約性格からそういう場合が起ってくるのかどうか。どういう事柄が起ると予想されるか、その点について御説明を伺いたいと思います。
  33. 下田武三

    政府委員下田武三君) 国際法一般原則といたしまして、条約のある締約国留保をいたしました場合には、全締約国がその留保承認しない限りには留保というものは成り立たないというのが一般原則でございます。にもかかわりませず、本条約におきましては、ただいま御指摘のように、なるべく条約参加する国を多くしようという趣旨から第七条の特殊な規定を設けまして、留保した国とその留保承認しない国との間だけに条約関係は発生しない、しかしこれを承認する国との間には条約関係が発生するというような特殊な規定をいたしまして、これは国際法条約留保に関する原則に非常な例外を設定するものであるといたしまして非常に問題になりました。こういう一体例外的規定が有効であるかどうかということにつきまして、国連から国際司法裁判所諮問的意見を徴したのでございます。国際司法裁判所は、これに対しましてはなはだはっきりしない答えをいたしたのでありますが、要するにそれは条約趣旨と申しますか、根本目的に照らして判断すべきであって、こういう例外は必ずしも一般国際法から承認し得ないものであるとする必要はないという、まあ消極的の、肯定をするような露見を出しました。その結果、今日におき、ましては、この例外国際間に認められるに至ったわけでございます、そこで一番問題になります点は、先ほどのおれの国は軍隊には婦人が入れないのだというような点、そういうようなことで問題になることはないと思います。問題になりますのは、ソ連圏諸国がやりました条約解釈上の紛議等につきまして、国際司法裁判所行政的管轄権を認めるおれの国は認めないというのがソ連圏国立場でありますが、それがけしからぬといって承認しなかった国、これは現実にございます。承認しません国との間には従って条約関係が発生しないわけであります。しかしまたこの条約規定を逐一検討してみますと、解釈上の紛議について問題が発生するというようなことも実際問題として実は考えられないわけでございまして、この七条の例外的規定を設定いたしました結果、ただいままでに国際的紛議は実は何ら発生していないというのが現状でございます。
  34. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 おそらくこの条約の形といいますか、そういう新しい性格条約なので、こういうのがつけ加ったのだろうと思うのです。実際上これが九条のごとき事態が起ることは予想されないのであります。ただいま局長が言われましたが、インド留保しております。公共秩序維持に当る軍隊への徴募ということはこういうのは常識的であって、この公職範囲外であるというような、条約との関係においてはインド等留保があったが、それは非常に良心的にむしろ考え過ぎているやのお話でありました。しかし、こういうことはやはり実際の問題としては相当重要じゃないかと思うのであります。差別待遇をするというわけではない。公職性質からいって、治安維持する公職、そういうものについては第七条に限っている場合があり得る、こう思うのですが、自衛隊はどうなっておりますか。私は知りませんけれども、公共秩序維持とか、治安維持とかいうような性質公職については、どういうふうにお考えになっているか、この条約の関連について一つ伺いたい。
  35. 下田武三

    政府委員下田武三君) 軍隊警察の職務に、ある国が女性就任機会を与えないと申しますことは、これは何と申しますか、女性肉体的本質から来る当然のことでありまして、何もそのために留保をする必要がないほど当然ではないかと思われのであります。でございまするから、留保をしない国でも、何ら留保をしないで、しかも自国では軍隊婦人を入れない国はたくさんあるわけでございます。でございまするから、私はそういう留保は実は良心的ではありまするけれども、必要はないのじゃないかと考えておるのでございます。従いまして、わが国批准をする場合にもそういう留保は必要ないのじゃないかと考えております。
  36. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 そうしますと、この三条にある国内法云々その公職女性としての体力その他の関係で、常識的に当然除外されるようなものは、国内法で別段の規定をしても、これは違反ではない、こういうふうに解釈されているわけですね。
  37. 下田武三

    政府委員下田武三君) 実はこの第三条の公職という言葉の定義につきまして、国連の第七総会におきまして非常に議論があったのであります。条約を作る以上は、そうして条約の中に公職という字を使う以上は、定義を下すべきだという主張が一部からございました。その点、いろいろ議論が沸騰したのでありますが、結局、公職とは何なりという定義を各国に共通した観念から規定するということは不可能だということが結論になりまして、その点は常識にまかそうということに相なて定義を下さなかったわけであります。その際、もちろん軍隊警察公職と認めるか認めないかという問題も提起されたのでございますが、それはもう肉体上の差異に基くものであって、国内法でそれを除くといっても、これは当然のことである、従って定義の中にわざわざそれを規定する必要はないという論が勝ちを占めたような次第でございます。
  38. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) この際申し上げておきますが、条約局長余剰農産物に関しまする条約調印式に外相と同行のため十一時五十分に退席をされます。もっとも政務次官西堀条約第二課長とも出席されておりますので、審議は続けていきたいと思います。他に御質疑はございませんか。――御質疑もないようでありますから、質疑は終了いたしたものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  39. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) 御異議ないと認めて、質疑は終局したものと認めます。     ―――――――――――――
  40. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) 次に千九百三十六年の危険薬品不正取引防止に関する条約批准について承認を求めるの件を議題といたします。  政府より提案理由説明を聴取いたしたいと存じます。
  41. 園田直

    政府委員園田直君) ただいま議題となりました千九百三十六年の危険率品不正取引防止に関する条約批准について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  この条約は、国際連盟主催のもとに、一九三六年にジュネーブで開催された麻薬不正取引防止会議において作成されたものでありまして、わが国は、同年六月二十六日に署名を行なったのでありますが、その後、戦争等理由により批准が延期されたまま今日にいたりました。  この条約は、わが国が、さきに当事国となっている麻薬に関する一九一二年一月二十三日のヘーグ条約、一九二五年二月十九日及び一九一三年七月十三日のジュネーブ条約補足条約でありまして、これら三条約に対する違反行為国際的に訴追処罰するための措置を拡充することを内容としております。従って、わが国は、この条約当事国となる場合には、麻薬害毒流入に対する防衛態勢を一層強化できるばかりでなく、麻薬分野における国際協力を一層促進することができるようになるわけであります。  この条約は、一九三九年十月二十六日に既に効力を生じておりまして、わが国としましても、以上に述べました利点を考慮に入れ、この際批准を行い、この分野における国際協力の実をあげることが必要であると考えます。  よって、この条約につき、御承認を求める次第であります。  右の事情を了承せられ、慎重御審議の上本件につきすみやかに御承認あらんことを希望いたします。
  42. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) 本件についての質疑は次回に譲ることにいたします。     ―――――――――――――
  43. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) 次に、国際情勢等に関する調査を議題といたします。
  44. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 では、日ソ交渉がいよいよ始まろうといたしておりますが、政府はその場合に在ソ抑留邦人の帰還の問題に最も力を入れて交渉になるというようなことが伝えられておりますが、この抑留邦人の実情についていろいろまちまちに伝えられておりますので、一応あらためてここで日本側の正確なこれまでの調査の結果をまず御報告をお願いいたします。
  45. 田辺繁雄

    政府委員(田辺繁雄君) ソ連地域における未帰還者の状態につきましては、昨年の九月厚生省で未帰還者消息の現状というものを作りました。これによりますと、ソ連地域における未帰還者は昨年の五月一日現在で一万三千六百三十一名でございます。これは正規に申しますと、ソ連と外蒙古でございます。未帰還者と申しますのは、ある時期においての生存の資料のある者、不確実な死亡資料があっていまだ死亡と断定できない者等を全部網羅いたしております。この数字は国内における調査の数字に伴なってだんだんと変ってくるわけでありますが、総数は現在ではソ連地域が約一万一千名程度であると御了承いただきたいと思います。これは死亡処理等が行われます結果、だんだんと減って参ったわけであります。この中で現在どのくらい生存しておることが確実視せられておるかという点につきましては、まず確実な点としては、赤十字社名簿に載っている方であります。これは千三十一名でございます。当初、この名簿に登載されておりましたものは千四十七名でございましたが、そのうちすでに十五名帰還をいたしております。一名はすでに死亡いたしております。従って、十六名差し引きますというと、千三十一名と相なるわけであります。それからこの名簿には載っておりませんけれども、現地から通信の来ているものが百四十名ございます。昭和二十七年以降現地から通信のあるものでございます。従いまして、その合計が千百七十一名と相なるわけであります。そのほかにソ連から帰った人の証言によって生存しておると見込まれる者の数でございますが、およそ、三百名程度と推定いたしております。これは現地から帰った方の証言によって、どこどこの地域に何名くらいの人がおったという証言をとっておるわけでありますが、氏名の判明しておる者もあり、判明してない者もございます。また残留事情の明確にわかっている人もあり、はっきりわかっていない人もございます。なおまた、これは引揚者のあった地点についての情報でございますので、引き揚げのなかった地点についての残留の事情はわからないわけでございます。それから千島、樺太関係は帰還者があまり多くありませんので、正確な数はわかりませんが、おおむね、一千名前後ではないかと推定いたしております。大部分は、一般居留民として残っている方が多いと考えております。  以上、きわめて簡単でございますが、概要を御説明いたしました次第であります。
  46. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そうすると、千島、樺太関係を除きまして、今のお話だと、確実な生存者として考えられるのはどのくらいですか。
  47. 田辺繁雄

    政府委員(田辺繁雄君) 赤十字名簿に載っている人は、これは確実と考えてよろしいと思います、向うから渡された名簿でございますので。それが現在千三十一名残っているのであります。現地から通信のありました者、これは昭和二十七年以降通信のありましたものが百四十、合計千百七十一名が確実に生存しておることがわかるわけであります。それから二十八年の十二月以降三回にわたってソ連から引き揚げがございました。その帰還者の証言によって生存しておることが確実だと見きわめられる者が、おおむね、三百名程度であろうと推定いたされます。これは数は、帰還者の証言でございますので、あるいは多少違いがあるかと思いますが、まあ三百名前後ではないかと推定されております。この中には名前のわからない人も入っておりますので、名前はわからないが、たしかに日本人がおったという数字も入っております。合計いたしますと、千四百五十名から千五百名の間ではないかと考えます。
  48. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それらの諸君は、日本人の戦犯は別として、そのほかの人たちは、何といいますか、国際法上というか、戦時国際法上というか、どういう形で残留しておるということになっておるのか。何かソ連の方からの通知によると、赤十字社名簿に載っている者だけで、それ以外にいないというようなことにもなっておるようでありますが、それらの食い違いを日本側としてはどういうふうにお考えになっているのか。
  49. 田辺繁雄

    政府委員(田辺繁雄君) 赤十字社名簿に載っている人たちにつきましては、既決軍事俘虜名簿というのがあります。すなわち、判決を受けた軍事上の俘虜名簿という意味であろうと思います。そのほかに現実に二十七年以降通信の来たものが百四十名おるわけであります。従って、その人がソ連におることは確実かと考えております。それからそのほかにどれくらい残っているかという問題は、これは現地から帰った人によって一々聞いて調査する以外にないのでございますが、その数は、先ほど申し上げた通りでございます。現在残っておられる方の大部分は、何らかの名義によって刑を受けて、受刑中の者でございます。刑が満刑になって釈放になっても、そのあと自由民としておる方は百名程度ではないかと推定いたしております。
  50. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そうしますと、この現地から通信があった人、これらは通信は公けに許されているのかどうか。それから今の既決軍事俘虜以外の現地通信者百四十名、あるいは推定の三百人、そういう者に対しては、こちらからは通信が許されているのかどうか。あるいは許されるのかどうか、その辺の事情はどういうふうになっておりますか。
  51. 田辺繁雄

    政府委員(田辺繁雄君) 通信の来ている人につきましては、通信が許可されているものと考えております。
  52. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 こちらからは……。
  53. 田辺繁雄

    政府委員(田辺繁雄君) こちらからは、通信の来ている人については往復で、たしかPW通信と言っておりますが、大部分はこちらからも通信が出せるはずでございます。
  54. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そうすると、ソ連が言っている既決軍事俘虜以外にそういう現地通信者がいるとすれば、そういう者の数字は、ただ通信によって確認をしておるのみならず、ソ連との間に何か交渉をされて、確認をするような努力を今までにされたのかどうか。そういう点では何ら今までに措置はとられていないのか。その辺の事情はどうなっておりますか。
  55. 田辺繁雄

    政府委員(田辺繁雄君) 実は厚生省といたしましては、引揚問題、夫帰還問題の解決のために、生存残留者の早期送還ということと相並びまして、状況不明者の調査、究明ということを重要な一環として考えておるわけであります。今日未帰還者の中で、状況不明者が八五%の多数に及んでいる状態でございまして、終戦後十年になる今日、家族としては非常にこれが心痛の種でございます。また家庭上のいろいろな問題を解決する上から見ましても、せめて生きているか死んでいるかだけでも知らしてほしいという、ごもっともな強い要求があるのでございます。そこで、厚生省といたしましては、状況不明者の調査という点に重点をおきまして、今日まで国内的なあらゆる調査を進めてきておったようなわけでございますが、すでに十年もたつ今日でございますので、終戦直後帰ってこられました帰還者によっていろいろの資料を聞きただし、その後の状態を逐一明らかにしていくということは、そう能率が上らない状態になってきておるわけでございます。そこで、何とかしてできるだけ早くそういう点をつかみたいと思いまして、日赤を通じましていろいろの安否の照会等をいたしておりまするけれども、これも今日までのところ、はかばかしい成果をあげるに至っておらない状態でございます。そういう点からいたしまして、昨年の幕、内閣に設置されております引揚同胞対策審議会におきまして、その問題についていろいろ相談いたしました結果、これは関係各省の次官と民間の関係団体の代表者をもって構成されておりまする審議会でございますが、そこでは未帰還問題解決のための引き揚げの促進並びにこの状況不明者の調査究明については、関係当事国間において隔意なく折衝を行なって、その解決が期せられるべき問題でありまするので、政府はこの際進んでさらに一そうの積極的方策を講ずべきであるという決議が行われました。これが総理大臣に通達になったわけであります。厚生省といたしましての調査究明の責任を持っている関係上、外務省に対しましてすみやかな機会にこういった決議の趣旨が実現できるようにしていただくような折衝を重ねてきておったわけでございますが、今般のロンドンにおいてソ連との間の交渉が行われることに相なりましたので、まず先に未帰還問題の解決のために積極的に乗り出しまして、こういう資料を明らかにしていただきたい、できるだけ当事国から生存者及び死亡者に関する責任ある資料を提供するように要請していただきたいということを外務省に強く要望をいたしておる次第であります。
  56. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 今のお話で千四百五十人から千五百名程度が確実な生存者とみるというお話しでありましたが、その生存者のうちで、ソ連人と結婚をしている、あるいは残留をむしろ希望しているので帰ることは希望していないというような者あたりはどれくらいだというような点の調査なり見込みなりはおありですか。
  57. 田辺繁雄

    政府委員(田辺繁雄君) 先般ソ連から帰りました人によって得ました情報によりますと、樺太関係を除きまして、現地に残留を希望していると思われる者が四十名ないし五十名ではないか、これも正確なことは一々本人に当って聞いたわけでございませんのでわかりませんが、一応帰還者のもたらしている情報によりますれば、大体このくらいの人が該当者ではないかと思われる程度でございます。
  58. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 今の厚生省のお話によると、生存者その他の確実な調査を至急にやるべきだという決議がなされて、それが総理大臣に通達され、外務省に移されているのですが、外務省はその決議をどういうふうに遅滞なく実行されたか、どういうふうな運びになっているか、その点の御報告を外務省からお願いします。
  59. 中川融

    政府委員(中川融君) ただいま厚生省側から御説明のありました現地において残留しております人のうちで、状況が不明な者の調査ということにつきましては、外務省におきまして厚生省から数次にわたりまして御要望を承わり、国会の決議の趣旨も十分拝聴しております。中共及びソ連地区にまだ残存しております同胞の調査ということについては、従来からも全力を尽してやっておるのでありますが、従来何と申しましても政府が直接手を出すことができなかったために隔靴掻痒の感があったのであります。主として日赤にお願いいたしまして機会あるごとに日赤からソ連なり中共の赤十字あてに、残存者の帰還のみならず、その状況調査ということを常に先方に連絡をしておるのであります。ところが今回ソ連につきましては、直接政府間に国交回復の交渉が行われることになりまして、引揚問題を直接ソ連との政府間の交渉に移すことができる段階になりまして、詳細な資料を松本全権に携行してもらって、これをいわば第一の議題として取り上げて先方と交渉してもらうという手はずにいたしておるのであります。  中共については、先般紅十字の代表も参りまして、いろいろ民間団体が直接先方と話し合う機会がふえて参っておるのでありますが、常々それらの民間団体を通じましで、同様の措置を頼んでおります。結果的に申しますと、何と申しましても、終戦後すでに十年をけみしておりますために、なかなか先方にも的確な資料が散逸しているという、整備していないというような事情もあるようでありまして、思うようにその調査の結果が出てこないのでありますが、中共側も十分誠意をもって調べるということを申しておるのであります。  またソ連につきましても、今回の松本全権によってある程度の事態がわかるのじゃないかと、かように期待しておる次第であります。
  60. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 国交回復が行われていない、従って政府間の交渉が行われなかったために、政府が直接にやることができなかったというお話でありますが、しかし今度国交調整に乗り出されるに当っては、政府は外務大臣も鳩山総理も抑留邦人の問題は、これは人道上の問題であるから、そういう国交回復とか何とかいうようなもの以前の人道上の問題であるから、そういう意味においてまっ先に交渉するのだというようなことを言われておるのでありますが、もしそういう人道上の問題で、国交回復その他に関連なしにやらるべき問題であるとすれば、政府が直接にそういう立場なり、そういう気持から、政府自体がこの問題に限っては、交渉の相手方に出られるということも決して妨げないのじゃないか、それを今頃、始ってからそういうふうな主張をなさるのは、非常におかしいと思うのですが、その辺の関係はどういうふうに外務省でほお考えになっておるのか。
  61. 中川融

    政府委員(中川融君) 御指摘通り、引揚問題は、人道上の問題でありますので、たとえ正式国交が回復していない国との間におきましても、政府が直接この問題を取り上げて悪いということはないとわれわれは考えております。従って前内閣当時におきましても、この引揚問題につきましては、直接政府が交渉の衝に当るべきであるという論も非常に引揚者団体の方々からは強く言われておりまして、われわれ事務当局もその点を十分研究していたのでありますが、当時におきましては、やはり国交のない国との直接折衝ということにつきましては、やはり大局的見地から好ましくないという空気がありましたために、これは実現しなかったのであります。現内閣になりましてから、この点につきましては、相当、もう少し一歩進んだ考え方ということが強く政府内でもなって参ったのであります。ちょうど中共につきましては、紅十字の代表の来朝が去年の暮ありまして、直接民間同士の話し合いというのが非常にうまくいっております。その関係から、中共につきましては、むしろ従来の民間団体を通じて、政府がお願いして、これを通じてお願いする方がかえって効果的であろうという判断から、この方法をとってきておるのであります。ソ連につきましては、直接交渉ということを考えたのでありますが、これもちょうど国交回復のための交渉が行われることになりましたので、揆を一にして行われることになりましたので、やはりこれの一環として、しかし第一の議題として取り上げるということが、これまた最も効果的であろうと考えて、その道をとっておるのであります。決して国交回復ができないうちは、この人道問題について直接交渉ができないという割り切った考え方で行動しておったのではないのであります。その間の事情を御了承願いたいと思います。
  62. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 今の御説明によりますと、人道上の問題であるにかかわらず、国交回復が行われていないということを名にして、少くとも前内閣はそのことをサボっておられた、それは一つの大きな政治的な責任であると思いますが、内閣も変りましたことですから、今からこれを云々しても遅きに失するので、今はその問題は問題にいたしませんが、もし今局長の御説明のようであるならば、中国との関係においては、抑留邦人あるいは戦犯の問題について政府自体が直接に乗り出されてしかるべきではないかと思うのであります。と申しますのは、この間もインドネシアのバンドンにおけるアジア・アフリカ会議に私たち出席をいたしまして、会議が済んで四月の二十五日に私たちが出発をする日、実はわれわれ国会の各党の代表から成り立ちます顧問団が中共の周恩来総理と会談をいたしたのでありますが、そのときに周恩来総理は中国にいる在留邦人、日僑の帰国の問題については、これまで民間団体との間にいろいろ話をしたのであるが、現在の状態、現在の段階になっては、特にたとえば既決軍事俘虜の仮釈放の問題その他いろいろなそういう問題、仮出所の問題、保釈の問題等があるのであるが、それらの問題は民間団体を相手にしていたのでは効果的な話し合いができないので、この際は早急に政府が何らかの形において出て下さることが非常に必要であり、ぜひ帰ったら総理あるいは外務大臣に伝えてほしいというお話がありました。この伝言はすでに確実に総理あるいは外務大臣に届いていると思うのですが、そうだとすれば、さっきお話局長の話合いから言っても、中共との間にも政府自体が直接に出てきて、この問題に関する限りは折衝をするということが可能であり、また必要であると思うのですが、その辺を事務当局としてはどういうふうにお考えになるか。
  63. 中川融

    政府委員(中川融君) 事務当局といたしましては、この人道的な問題について国交未回復の国と直接政府が交渉をする、働きかけるということについて一向差し支えないというふうに考えております。従って中共におきまして邦人引き揚げについて必要があれば、その方が効果的であるならば、政府が直接働きかけるという道を考えていいのでありますが、これは先般紅十字代表がこちらに参りました際にも、赤十字から従来の経路による交渉を変えるという方があるいは適当であろうかどうかというふうな問題を向うに提起したことがあるのであります。やはり従来通り三団体を通じてやってもらいたいというように向うに言われました。折角ここまで来たんだから、今までの経路をこわさずに今までの考えでやろうじゃないかというような話があったのであります。従ってそのときの私どもの感じが、やはりここまで引揚問題が今までのルートで進んでおる際であるから、やはり今までのルートで促進するのが、この問題についてピリオドを打つことが一番いい方法であろうと考えまして、積極的に政府が乗り出すということを控えてきておるのであります。先般のバンドン会議の際の周恩来首相の会談等から、政府がどんな形においてか、直接出る方がより効果的であるということがはっきりと確認いたされますならば、決してそういう方法をとるのにちゅうちょするものではないのであります。従ってこの点についてはさらに研究をいたしたいと、かように考えております。
  64. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 この点については、周恩来がそれを確言をしたことははっきりしておりますし、ことに周恩来は俘虜の大部分の方々についてはなるべく早い機会にお返しをしたいと思っている。それから非常に少数の方々については何らかの処刑をしなければならないと思う、しかし処刑をするとしても重い刑を、非常に重い極刑を科せようとは思っていないし、特に死刑にするというようなことは絶対にないから、この点は自分がここで責任を持って言明をいたしますというようなことまで言って、なおかつ、こういう数々の問題が出て参っておるので、ぜひ政府が直接に一つ話し合いの相手に出てきてほしいということを繰り返し強調をいたしておりましたから、ぜひ事務当局としても、この点を早急に話しを進めるように特段の配慮を願いたい。大臣にはすでにそういう伝言は確実に伝わっていることと思いますから、ぜひその点を事務的にも早急に進捗していただきたい。
  65. 小滝彬

    小滝彬君 外務省の政府委員にお伺いしますが、先ほどの説明は私には腑に落ちない。何となれば前内閣時代においては直接交渉することがおもしろくないという考えのもとに、政府としては日赤は使ったけれども、ほかには努力しなかったような説明である。しかるに一体この引き揚げ問題について最初米国を通じていろいろ話しをしたことも事実であるのだし、また国連の特別委員会というものも設けられておる。一体国交のない国が直接交渉するということは、外交の問題を取り扱っている人間としては、そういうことができないということは御承知のはずです。中立国を通じてやるとかあるいは特別の機関を通じてやるということは当然のことである。それを怠ったのじゃなしに、国際赤十字を使ったこともある。また国連の特別委員会なんかはソ連は出てこなかった、それはなぜかというと、ソ連の政策というものが当時においては現在とは違っていた、こういうことば外務省の役人ならば知っているはずです。昨年の十月に共同声明が出たり、あるいは十二月にいろいろな会議があって、向うの方がむしろこちらに手を差し伸べてきた。こういう際だから、だんだんドムニッキーか何かが出てきて、交渉の道が開けたのであって、これは現内閣がやったからできたのじゃないので、世界の情勢がしからしめたものです。しかしそれは今外務大臣が来ているのじゃないからいい、何も政府委員をとっちめようというのじゃないけれども、今の説明に僕は前提上に矛盾があると思うのは、もし、そんなにその方がいいのでやってもいいという現内閣の忠実なる役人としてやるなら、現内閣は、また事務当局はロンドン交渉をする前に、まず人道上、問題であるかう引揚問題を片ずけたらお前さんのところの交渉に乗りますという態度で出るのがしかるべきである。それをいかにも交渉の一つ内容であるかのごとく向うの手に乗ってきて、これを交渉する際にはまず引揚問題というようなものが、向うのバーゲンの対象に使われるおそれなしと誰が保証し得よう。しかりとすれば、今のような論法で外務省の政府委員考えているならば、何も今になってロンドンでやらんで、もっと早くやればよかった。これは佐多君の言う通りで、一体今の説明は非常に私には腑に落ちないわけであります。またそうすれば、中共の問題もほかの団体を通じてやった方が都合がいいからというだけではない点もありはしないかと思う。私は少くとも外務大臣はそういうふうに考えていないだろうと思うのだが、今の説明には私は矛盾があると思うので、その点についてはっきりと外務省の政府委員の方から答弁してもらいたい。
  66. 中川融

    政府委員(中川融君) 先ほど私が説明いたしましたことにおきまして言葉が足りないためにお叱りを受けたような結果になったのでありますが、私は引揚問題に専心しております事務当局としての立場からのいろいろな考え方を申し上げたのであります。われわれは常に、もう久しい以前から留守家族の人々からこの問題については、政府が民間団体にまかしておかずに直接交渉に乗り出すようにという、強い期待と要望とを受けてきておるのであります。これにつきましては、国際法上その他からいろいろの議論があることは承知しておりますが、なお、引揚問題をできるだけ促進したいという事務当局の見地からは、その国際法上いろいろな支障また大きな意味におきましての日本国際的地位に関する支障、これまたあるのでありまして、それらのものをも、いわばこの人道的問題という点に考えを集中いたしまして、いわば押し切ってやるべきではないかという意見考えたのでありますが、これはただいま小瀧委員の御指摘になりましたように、当時におきます共産主義諸国の政策というようなもの、またさらに国際情勢という大きな客観的事情等から、やはり大局的判断においてはそのようなことば適当でないと、また国際法上の制約もあるのでありまして、従ってこれは実現を見なかったのでありますが、最近に至りまして、共産圏の政策というものも非常に柔軟性を帯びて参りまして、日本がじっとしていてでも向うから誘いかけてくると、こういうような事態になってきたのであります。従って直接交渉という問題も、比較的そのような制約を顧慮せずにやり得るような情勢になってきた、かように考えるのであります。事務当局の見地から申せば、従って現在の希望が実現しやすい情勢になっておる、こういうようになってきておると考えるのでございます。なお、ソ連との交渉に当りまして、引揚問題をまず前提として提起すべきである、これは全くわれわれもそう思っておるのでありまして、たまたま揆を一にして同じ人が交渉に当るということから、これがいわば交渉の一部になり、その内容になり、条件の一つになるというふうに見えるのでございますが、気持としては、この問題はいわば交渉の前提である、これを片づけ得ないようであるならば、交渉自体ももう問題にするに足らないと、このぐらいの考えで臨むのでありまして、時期がたまたまおくれましたことはございますが、これはやはり本格的な国交回復の交渉が行われ、それに権威ある全権が出るということを目の前に控えながら、別に引揚問題のために別個のルートで直接交渉をするというのは、効果の上から適当でないと考えまして、同一の人がこれに当るということになったのでございます。決して引揚問題を交渉の一つ内容として、それを折衝の題材に供するという考えではないのでございますので、御了承お願いいたします。
  67. 小滝彬

    小滝彬君 私はここで今政治論をしようとするのじゃないが、中川君にもう一度最後にお伺いしておきたいのは、なるほど偶然同じ人がやったというふうに言っておられる。しかし当方の考え方はそうであっても、ロンドンというところで、正式な国交回復の全権委員というものを、それを出しておいてやれば、向うが一つの交渉の内容にとるのは当然だろうと思うのです。そこで一体それは、重光さんに聞くべき問題だけれども、あなた方事務当局では非常に一生懸命やっておられるというのだが、まずそれを前提としてやって、そのあとで正式の国交回復の全権を任命してもいいと思うんだが、それを、熱心に引き揚げのことをお考えになっておるならば、そういうやり方を進言されたかどうか。事務当局は一体そういう取り計らい方について一括して全権を出せば、かえってこれが向うのバーゲンに使われはせんかという点は、専門家の諸君はよくわかっているはずなんだが、鳩山総理は、何といわれても、諸君としてはいかなる意見を持っておられたか、もう一度念のために、今後の重光大臣に質問する都合もあるから、お伺いしておきます。
  68. 中川融

    政府委員(中川融君) ただいま御指摘になりましたように、在ソの邦人引揚問題について直接交渉してみたらどうかという考えは、ことしの初めからわれわれは持っていたのでありまして、そのための具体案をいろいろ考えまして、たとえばニューヨークあるいはワシントンにおきまして、日本の在外使臣その他から直接ロシヤの在外使臣の方にこの問題について働きかける、あるいはロンドン等においてそれを使って働きかけるというような方法を考えまして、省内でこの作業をまとめていたのであります。大体そういう方向で至急進めようという考えが熟しておりました際に、例の日ソ交渉をやったらどうかという申し出があったのであります。従って先ほど申し上げましたように、偶然揆を一にした、時期が同じになったというのが真相でございます。日ソ交渉も当初の予定では二月中あるいは少くとも三月には始まるということで、日ソ交渉の準備を急いでおったことは御承知の通りであります。従ってわれわれも急速に引揚問題が同時に取り上げられる、二月三月中には取り上げられるというつもりで、日ソ交渉と同じ人がこれに当るということで準備を進めたのであります。遺憾ながら日ソ交渉自体の方がいろいろの事情で六月に延びましたために、引揚問題の直接交渉もそれにいわば引きずられて今まで延びてきているのであります。その点でははなはだ当初の期待に反しまして遺憾でありますけれども、なおしかし、この方法によって先ほど申しましたように強力にこれを推進できると考えております。その時間を延引いたしましたことは、その効果によって償い得るのではないかというふうに考えている次第でございます。
  69. 小滝彬

    小滝彬君 私は非常に不満足でありますけれども、質問者がありますから、これで打ち切ります。
  70. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 ソ連の戦犯既決軍事捕虜、その数は一応わかったのでありますが、中共には現在どれぐらいの戦犯あるいは残留者がおり、戦犯はどういう状態にあるのか、その辺をお伺いしたい。
  71. 田辺繁雄

    政府委員(田辺繁雄君) 昨年の秋に李徳全女史がいわゆる戦犯名簿を持って参りました。それに登載されてある人員の総数は千六十九名でございます。その他の生存残留見込数は約六千と推定いたしております。
  72. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 その千六十九名の戦犯はすでに判決を受けているのかどうか、その辺の処刑といいますか、状況はどうなっておりますか。
  73. 田辺繁雄

    政府委員(田辺繁雄君) 戦犯名簿にはその点の記載がないのでありまして、刑の判決はだいぶ受けていないのではないかと思っております。
  74. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 その辺少しもおわかりになっていないようで、向うからはまあいろいろな数字を言っているようですが、ここでそれは繰り返しません。とにかく先ほど周恩来の申し出もあるんだから、今の戦犯千六十九名を向うから名簿をもらったら、その名簿の員数だけしかわからないというような態度でなくて、もっとそれの内容その他をはっきり究明をして、早くこれらの処置なり、これらの帰れるなり何なりするようなことのできるような努力を、一つぜひ早急にやっていただきたい。先ほどそれが今までできなかった政治的な責任論についてのいろいろな議論もありましたが、その過去の議論はわれわれが今さら問うところではない。過去は過去でいいのであって、将来において早急にこれらの問題の処置を、しかも先ほど申したように政府自身が表面に出て、直接の相手方として交渉されるように特に強く要望をしておきたいと思います。ちょっとソ連の戦犯との関連においてお尋ねをしておきますが、アメリカあるいはその他の国々の関係の戦犯、内地にいる者その他の状況がどうなっているか、その一つを御報告を願いたい。
  75. 中川融

    政府委員(中川融君) 欧米諸国に関係の戦犯の内地に服役をしております者の数、その釈放をせられております者の状況等につきまして、はなはだ申しわけありませんが、担当官がただいまおりませんので、担当官に問い合わした上で、あらためて資料として提出するなり、あるいは御質問にお答えするようにいたしたいと思います。
  76. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 ではこの次の機会にそれをあらためて御提出を願って、ソ連に対して今言ったような交渉をされると同様に、その他の中共についてもあるいは欧米諸国についても、特に欧米諸国は政府が最も友好関係を誇っておられる国であるから、これらに対してはさらに積極的に、徹底的にこの戦犯処理の問題を交渉されることを特に希望をいたしておきます。同時に先ほどお話しのいろいろな数字にわたるものは資料として一つ御提出を願いたいと思います。  対ソ交渉について北洋の漁業の問題がいろいろ問題になるだろうということが言われておりますが、北洋の漁業の現況はどうなっているのか、特にソ連との交渉において問題になるいろいろな問題点その他について、まず一応御報告を願いたい。
  77. 前谷重夫

    政府委員(前谷重夫君) 北洋漁業につきましては、現在鮭鱒流し網につきまして約十四船団出ておるわけでございます。対ソ関係は、従来のロ領漁業は陸上基地を利用しての建網漁業が戦前あったのでございます。そのほかに北千島を中心といたしまする北千島の基地漁業、これが戦前あったのでございます。なお戦前は鮭鱒流し網漁業は行なっておらなかったわけでございます。そのいわゆるロ領漁業はロ領の基地を利用しての漁業でございますし、北千島漁業は千島の基地を利用しておる漁業でございます。なお、北海道の根室の近海におきまするコンブ等の北海道の漁業がいろいろございます。これもやはり対ソ関係におきまする関係があるわけでございます。そのほかこまかい問題といたしまして、灯台の点灯とかあるいは資源の情報の交換でございますとか、そういう無電の連絡上の問題でございますとか、あるいは海難救助の問題というような問題があるだろうと思います。
  78. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 領海の問題はどういうふうになっているのですか。
  79. 前谷重夫

    政府委員(前谷重夫君) 領海の問題は、これは外務当局から詳しくはお聞きとり願いたいと思いますが、いわゆる公海の問題としまして三海里ぐらいの問題が議論としてあるわけでございます。
  80. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 その議論内容を外務省に伺いたいと思います。
  81. 中川融

    政府委員(中川融君) 領海の範囲の御質問でございましたが、御承知のように、従来領海の範囲は三海里であったというのが通説とされていたのでありまして、多くの国が三海里の領海説をとっていたのでありますが、たとえばロシヤあたりは十二海里を前から言っておりまして、三海里説にくみしない。それ以上の領海を唱えるものも若干あったのでありますが、しかし最近におきましては単純なる領海の区域以外に、いわゆる大陸棚等の思想によりまして、広範な海域にわたりまして自国の権限を主張するという風潮が出てきたことは御承知の通りであります。日本としては領海は三海里というのを原則といたしまして、従来の慣行により、それ以上の領海を主張しております国の主張というものはこれを考慮に入れつつ、諸般の条約なり取りきめなりいたしておりまして、必ずしも各国全部三海里であるべきであるというような態度はとっていないのでございます。
  82. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 ソ連との間にはそういう問題で、いろいろ領海の問題があると思いますが、同じような問題はカナダあるいはアメリカあるいは朝鮮あたりとの関係においてもあると思いますが、それらの問題は現在の段階ではどういうところで話し合いができておるのか。将来もそれをどういうふうにしようとしておられるのか。それとの関連において、ソ連との関係においてはその領海の問題でどういうふうにお考えになるのか。
  83. 中川融

    政府委員(中川融君) 隣接国でありますたとえば朝鮮あるいは中国との間に水産資源の問題につきまして、いろいろの紛糾があるのでございますが、それは現在のところは領海の範囲が幾らということについての論争ではないのでありまして、もっと大きな大陸棚の思想あるいは防衛水域の思想、こういうものに原因いたします紛争が起っておるのでありまして、これらの国が何海里の領海を一体主張しているのか、こういうことも的確には明らかでございません。大体各国、それから中共も領海としては三海里程度ではなかろうか、かように考えております。なお、米国等との間におきましても領海としての問題はないのでありまして、むしろ水産漁業保護の見地から、日本の漁業というものにつきまして制約を加える、こういうような国際取りきめがこれらの国との漁業の交渉の内容になっておるのであります。ソ連につきましては、今回の松本代表が行きまして向うと話します題目の一つに、水産漁業の問題が大きく入っておるのでありますが、これにつきましては、これは従来からもソ連の十二海里説、たとえば領海というものをそのままには日本は認めていないのでありまして、御承知のように、領海内におきましても日本は漁区というものを持ちまして、その中で漁業をする、こういう権利を持っていたのであります。これらの基本的な考え方は今後も捨てないで漁業の交渉に当りたいと、かように考えております。
  84. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 現在北洋で操業している区域は海岸からはどれくらいの海里になっておるのか、それは逐次最近違ってきているのか、その辺はどういうふうになっておりますか。
  85. 前谷重夫

    政府委員(前谷重夫君) 現在の北洋の鮭鱒流し網につきましては、許可制度をとりまして、その許可制度のもとで操業区域を定めております。これは昨年度におきましては、沿岸から三十マイルということになっておりますが、本年度におきましてはこれを縮めまして二十マイルということにいたしておるわけであります。なお、先ほど私戦前のことを申し上げましたときに、やはり戦前におきましても母船式の鮭鱒漁業はあったのでありますが、現在のような沖合いにおける鮭鱒漁業はなかったと、こういう趣旨でございますので訂正いたしておきます。
  86. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 北洋漁業のいろいろな事情をお聞きしたのですが、はっきりわからないのは、それらの状況であって、それではソ連との交渉をする場合に、特に漁業問題として問題になる点はどういうものが問題になるとお考えになっておるのか、その点をもう少しはっきり御説明願いたい。
  87. 前谷重夫

    政府委員(前谷重夫君) 北洋のソ連との漁業の関係におきましては、まず第一に現在行われておりまする鮭鱒流し網漁業につきましては、操業の安全を確保いたしたいと、かように考えておるわけでございます。またでき得る限り沿岸に近くわれわれとしては操業いたしたいという点があるわけでございます。千島漁場につきましては、これは漁場の性質及びこれに過去に従事いたしました漁民の関係上、でき得れば基地を利用することが漁場の利用上非常に幸いであるということに考えておるわけでございます。根室附近におきましては、ほとんどコンブ、ワカメ等の沿岸漁業の漁場になっておるわけでございます。これの安全操業、それから漁業の性質上陸上基地を必要といたしまするので、そういう陸上も使えたらと、かように漁業の面から考えますると希望を持っているわけでございます。
  88. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 この操業の安全の確保ということが非常に重要な問題になるようですが、今現在どういう程度に操業の安全が脅かされているのか、実際の状況、それらがどういう障害になっておるのか、それらを詳しく一つ
  89. 前谷重夫

    政府委員(前谷重夫君) ソ連関係の拿捕の問題は、講和発効後におきましては、今までに約二百隻程度ございましたが、そのうち百六十隻程度が帰還いたしておりまして、三十隻程度の乗組員が二百二十人程度がまだ帰還をいたしておらないわけでございます。この拿捕の原因等につきましては、われわれの方も詳細わからないわけでございまして、いわゆる領海侵犯だとかあるいはその他の理由によるものかはわかりませんが、一定の条約ができまして一定の範囲内においては安全に操業ができるということを希望しておるわけでございます。
  90. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そうすると、そういう問題はすべてこれは漁業協定というような形で話がまとまるのか、あるいはそうでなくてもっと一般的な話としてまとまるのか、その辺は外務省としてはどういうふうに。
  91. 中川融

    政府委員(中川融君) 日ソ交渉の内容、あるいはどのような方針でやるかということにつきましては、本日担当官が見えておりませんので、はなはだ恐縮ですが、担当官の見えました機会に御質問願いたいと思います。
  92. 小滝彬

    小滝彬君 水産庁長官が見えているこの機会にお伺いいたしたいのですが、中共との私的に結ばれた協定に対して、水産庁としてはいかなる態度をおとりになっておるのか、またその内容についてはいかなる見解を持っておられるか、概括的でもいいですから、本日この機会に一応御説明願いたい。
  93. 前谷重夫

    政府委員(前谷重夫君) 中共とわが国との民間の漁業代表として協定が結ばれましたものは、六地区におきまする漁業の操業上の協定というふうにわれわれとしては考えておるわけでございます。一定の時期に相当の船がその漁区に競合いたしまする結果、漁場のいろいろの摩擦が起りますので、これは事実問題といたしまして操業の調整という形で同業者間におきまして協定ができたものというふうに考えておるわけでございまして、従いまして、この辺につきましては民間交渉によってそういう漁業協定ができましたので、その実施等につきましても当然民間団体において協議の上で実施されるものということで、われわれといたしましては民間協定の建前を尊重いたしまして、これの状況を見ておるというふうな現状でございます。またその対策なり実施の方法につきましては、それぞれ業界そういう意味において業界が自主的にそれを実施していく、こういう建前でもっていろいろその方法等について検討されておるようでございます。
  94. 小滝彬

    小滝彬君 もしこれが満足なものではないけれども、この際やむを得ない措置としてでも政府の方でこれを黙認しておられるということになれば、あるいは政府の行政的な措置からでも協力してやらないと、なかなかこの協定を実施する上での相互間の話し合いはむずかしいのじゃないかと思うのですが、一体この業者間の自主的なやり方でうまくいきそうな見通しですか、どうですか。
  95. 前谷重夫

    政府委員(前谷重夫君) 六漁区につきましては、当初私たちも船を特定するということになりますと、非常に実施が困難じゃなかろうかというふうに考えておりましたが、協定を見ますると、船は特定しないで、一定の時期におきまする最高隻数を限定する、こういう形になっております。従いまして現在主としてこれは以西底びきでございますが、福岡、山口を中心の地域、長崎の地域、それぞれ地域におきまして標識をつける、あるいはその操業について団体等でもちまして最高制限を守るように、具体的な措置として、業界内部でその内容が固まっておるように承知いたしております。従いましてこれに対して政府が法令によってどうするとかという、そういう政府としての措置は必要はないかと、かように考えております。
  96. 小滝彬

    小滝彬君 それは政府の方がまあ事実行政指導でもすればやりやすいと思うのですが、それにそういう措置をとられないということは、今後のいろいろ水産に関する交渉なんかに悪例を残すというような点も懸念せられてのお考えですか。その辺もあわせて御説明願いたい。
  97. 前谷重夫

    政府委員(前谷重夫君) この交渉の経緯を見ますと、民間交渉の建前上、交渉の議題として、たとえば資源の共同調査の問題とか、制限区域の問題等には触れ得なかったように考えております。従いましてこの協定を見方によりますると、そういうものに触れなかったのはどういうわけかというふうな問題もあり、いろいろの問題もありますので、またその内容自体が事実上の漁業操業の協定という内容でもございますので、民間側の自主的な措置にまつのがよかろう、かように考えておるわけでございます。
  98. 小滝彬

    小滝彬君 中共と関連してもう一つ朝鮮のことをお伺いしたいのは、船は従来ずっと向うがとっているんですが、人は相当返えして来ている。これが従来の例であります。ところが最近になって相当数の人が帰れない、向うの裁判の判決を認めるわけじゃないが、とにかく向うの建前からいっても、刑期がすんでしまったような連中も、実は帰れないで相当抑留されていやしないか、これについては船の問題とかいろいろ言うかもしれませんが、私どもも直接関係しておる私どもの選挙区あたりから出た連中も、まだ帰っていないように私承知しているんでが、これについて最近何らかの措置をとられようとしているか、またいろいろな交渉が金公使を通じて行われているか、その点を外務省でも通産省でもけっこうですが、御説明願いたいと思います。
  99. 中川融

    政府委員(中川融君) 韓国に抑留されております日本の漁夫は、従来はお説の通り大体三カ月ないし六カ月いたしますと逐次帰って来たのであります。判決では相当長期の刑の判決を受けましても、現地には大赦、特赦等によりまして、六カ月の間には帰って来たのが例でございますが、御指摘になりましたごとく、最近この三カ月ほどの間には、どうも帰える漁夫がいないのでありまして、この点はわれわれも非常に不満に思いまして、随時韓国側の注意と喚起しております。現に約三日ほど前に私は韓国の代表部の人を私のところに呼びまして、この頃漁船の乗員の帰還する者が非常に少いがどういうわけだろうか、できるだけ早く帰えしてもらいたい、ことに学生等でいわば一人前になっていない人たちが、十数人もまだ昨年の十一月頃から抑留されたままになっておるケースがあるのでございまして、このようなケースはほかの者もちろんのことながら、人道上の問題として未成年者をすみやかに帰えしてもらいたいという注意を喚起した事実がある。先方も調査の上、できるだけ善処したい、かように申しております。どういうわけでこの頃釈放者が少いのであるかということは、われわれも理由の発見に苦しんでおるところでございます。引き続きまして強力にこの帰還方を交渉いたしたいと考えております。
  100. 小滝彬

    小滝彬君 今一体何人くらいとどめられておるかということがまず一つと、今一体理由がわからないとおっしゃるけれども、最近の京城あたりからの電報で見るというと、北鮮と漁業協定をするとか貿易協定をするというようなことが、あるいは政府の人によって、あるいは民間において叫ばれ、あるいは事実上そういうようなことが行われておるといううわさがある。私は相当これが影響していやしないかと思うのですが、中川君の御見解は如何ですか。
  101. 前谷重夫

    政府委員(前谷重夫君) 人数について申し上げます。現在未帰還は船八十四隻、人は二百八十四名でございます。
  102. 中川融

    政府委員(中川融君) 韓国側が最近対日態度が、従来相当よくなりかかっていたようであったにかかわらず、最近またこれが冷却したということはわれわれ見ておりまして、その通りであると考えるのであります。その理由といたしましては、日本がやはり共産圏諸国と近づきつつある。ことにいわゆる北鮮と日本が貿易上の取引をしそうだというような記事が新聞等に出ましたために、非常に向うの感情を刺激いたしまして、これは現在北鮮との間に日本は何ら貿易をやっていないのでありますが、貿易をやるやのごときいろいろ報道が出たために、これが韓国側を刺激いたしまして、韓国側の態度が硬化しているということは、遺憾ながら事実であると思うのでございます。しかしこれが直接今の漁夫の帰還を阻止しておる原因であるかどうかということについては、どうもそれを確かめるすべがないのでありまして、従って先ほどどういう理由で漁夫が帰って来るのがこの頃とまっているのか原因がわからないと申しましたのは、このような事情から申し上げた次第でございます。
  103. 小滝彬

    小滝彬君 貿易がないけれども、こういう支障を来たしているというのは、鳩山総理大臣以下がしきりとこういうことを宣伝に使っておられるためだと思いますから、私はここでそういう点を局長質問しようとは思いません。これで打ち切りますが、もう一つそこに欧米局長が来ておるようだからお伺いしたいのだけれども、濠州との間には特別合意書というものができて、司法裁判所に付託するという話がずいぶん前にきまったと記憶しておりますが、これはどうなっておるか、現実には船が過去の話し合の基礎によってアラフラ海に出ておるようだけど、あの件は如何に最近取りはかられているか、その進行状態はどうか、簡単に御説明願いたい、これで私の質問を打ち切ります。
  104. 千葉皓

    政府委員(千葉皓君) 私欧米局長でございますけれども、濠州の関係は寺岡参事官がやっておりますから、詳しくは存じません。
  105. 小滝彬

    小滝彬君 それでは水産庁長官が御存じでしょうから、簡単でけっこうです。
  106. 前谷重夫

    政府委員(前谷重夫君) アラフラ海の大陸棚の問題につきましては、大体司法裁判所に根本的な問題といたしましては提訴するということで、合意書が大体双方の間に協議ができまして、目下日本側といたしましては、御承知の寺岡参事官が濠州に参りまして、いろいろその準備にかかっておるわけでございます。ただ暫定的な措置といたしまして、本年の出漁につきましては、やはり昨年通り大体目標を一千トンということにおきまして、漁区につきましては、多少昨年度と変更がございましたが、出漁をいたすことになりまして、あれは五月に出漁いたしております。
  107. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 質問じゃないのですが、今朝の新聞などを見ますと、濃縮ウランを受け入れるにつきまして藤岡博士なども、自分が不明であったというような意見を述べておるような段階でありますから、この委員会でも濃縮ウランの問題に関しまして、各専門家を呼んで、意見を聞く催しをしていただきたいと思うのでありますが……、
  108. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) その件につきましては、よく理事諸君と相談いたしまして決定いたします。  本日はこれにて散会いたしたいと思いますが、衆議院は本日午後一時よりの本会議にガット加入議定書批准承認婦人参政権条約批准承認の件を上程するらしくあります。そういたしますと、当院に送付になりますことは近いことと考えられます。なお外務関係の在外公館名称変更の審議余剰農産物協定に関する審議等を近くいたさなければならんことになりますと思いますから、本日衆議院の本会議の議決を経まして二件が当院に送付をされますれば、定日外の委員会を開きたいと、こう思いますから、どうぞさよう御承知願います。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時一分散会      ―――――・―――――