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政府委員(中川融君) 先ほど私が
説明いたしましたことにおきまして言葉が足りないためにお叱りを受けたような結果になったのでありますが、私は引揚問題に専心しております事務当局としての
立場からのいろいろな
考え方を申し上げたのであります。われわれは常に、もう久しい以前から留守家族の人々からこの問題については、
政府が民間団体にまかしておかずに直接交渉に乗り出すようにという、強い期待と要望とを受けてきておるのであります。これにつきましては、
国際法上その他からいろいろの
議論があることは承知しておりますが、なお、引揚問題をできるだけ促進したいという事務当局の
見地からは、その
国際法上いろいろな支障また大きな意味におきましての
日本の
国際的地位に関する支障、これまたあるのでありまして、それらのものをも、いわばこの人道的問題という点に
考えを集中いたしまして、いわば押し切ってやるべきではないかという
意見を
考えたのでありますが、これはただいま小瀧
委員の御
指摘になりましたように、当時におきます共産主義諸国の政策というようなもの、またさらに
国際情勢という大きな客観的
事情等から、やはり大局的判断においてはそのようなことば適当でないと、また
国際法上の制約もあるのでありまして、従ってこれは実現を見なかったのでありますが、最近に至りまして、共産圏の政策というものも非常に柔軟性を帯びて参りまして、
日本がじっとしていてでも向うから誘いかけてくると、こういうような事態になってきたのであります。従って直接交渉という問題も、比較的そのような制約を顧慮せずにやり得るような情勢になってきた、かように
考えるのであります。事務当局の
見地から申せば、従って現在の希望が実現しやすい情勢になっておる、こういうようになってきておると
考えるのでございます。なお、ソ連との交渉に当りまして、引揚問題をまず前提として提起すべきである、これは全くわれわれもそう思っておるのでありまして、たまたま揆を一にして同じ人が交渉に当るということから、これがいわば交渉の一部になり、その
内容になり、条件の
一つになるというふうに見えるのでございますが、気持としては、この問題はいわば交渉の前提である、これを片づけ得ないようであるならば、交渉自体ももう問題にするに足らないと、このぐらいの
考えで臨むのでありまして、時期がたまたまおくれましたことはございますが、これはやはり本格的な国交回復の交渉が行われ、それに権威ある全権が出るということを目の前に控えながら、別に引揚問題のために別個のルートで直接交渉をするというのは、効果の上から適当でないと
考えまして、同一の人がこれに当るということになったのでございます。決して引揚問題を交渉の
一つの
内容として、それを折衝の題材に供するという
考えではないのでございますので、御了承お願いいたします。