○佐藤尚武君 ただいま
鳩山総理大臣の御
答弁、私から申上げまして、御
答弁としてはきわめて満足に感じました。どうぞそういう
態度でもってバンドン
会議にお臨みになるように切にお願いする次第でございます。その
会議の問題の
一つとして、私は
日本の
立場から言いましても大なる重点を置かなければならん点が
一つあると思うのであります。それは未開発地域の開発の問題であります。この問題は、これは先ごろの東京において開かれましたあのエカフェの
会議におきましても、各国の
代表から自国の
事情、実情について、それぞれ重要な
発言があった模様であります。元来未開発地域の問題は、
日本の
立場から申しましても、非常に重要な問題であるように私として感ぜざるを得えないゆえんのものは、
日本の人口問題の解決の上から言いましても、そういうふうに
考えられるのでありまして、近来におきまして
日本の移民問題が大分民間においても唱えられるようになり、
政府においても取り上げて
おいでになるようでありまするが移民の問題はきわめて重要な問題であるに相違はございません。が、しかしながら本当の意味での移民、技術ないしは労力の供給という点におきましては、やはり各地における未開発地域を開発するということが非常に大きな意味をもたらすものではないかと思うのであります。地図を拡げてみましても、南方諸国なり、あるいは南米諸国なりにまだ未開発のままに放擲されておる地域は広大なものが残っておるということは今さらあらためて言うまでもございませんが、この地域を未開発のままに今後も長く長く放擲しておくというようなことでありましたならば、それは単に
日本のためばかりでなく、世界全体の人類の福祉の点から言いましても遺憾なことであり、できるだけ早く開発すべきものであろうと
考えるのであります。適当に開発されるならば、もちろんこれら未開発地域を領有している統治国に対しましても、大きな利益をもたらすということはもちろんのことでありまするが、それと同時に、全世界人類の幸福の上においても、大なる寄与を受けることになろうかと思うのであります。そこで今から申しますというと、三年ほど前からでありましたと記憶いたしておりますが、国際連合の総会において、この問題が取り上げられ、そうして国際連合としても、未開発地域に対する技術援助の
方法を講じなければならんというようなことになり、それ以来、今のエカフェもそうでありまするが、その他にも技術援助の組織を作って参っているようであります。その翌年でありましたと記憶いたしまするが、例のトルーマン大統領就任の際に、ポイント・フォアの
考え方が発表され、続いてまたその翌年にコロンボ計画ができたというようなわけでありまして、欧米諸国もこれら未開発地域に対して深甚なる考慮を払うようになってきたというわけで、これは私は大いに慶賀すべきことであると思うのでありまするけれ
ども、国際連合の今の技術援助の問題にしろ、ポイント・フォア、
アメリカ側の措置にしろ、ないしはコロンボ計画、それらの努力にかかわらず、まだ成果から申しまするならば、微々たるものであるようにうかがえれるのであります。そこで私は申すのでありまして、もっともことし
あたりは
アメリカにおきましても、今までより、今までは数億、年に一億ないしは三億ドル程度の援助を与えておったようでありまするが、ことしは一そうこれを拡大して、
新聞の報道によりますれば七億とか八億とかというような資金を支出するというような計画もあるように思われまするし、だんだんにそういうように力がよけいに加ってくる方向に向いているようでありますけれ
ども、まだまだ十分ではない。
吉田総理が昨年外遊をした際、帰りに
アメリカを通られたときに、ワシントンのたしかプレスクラブでありましたか、そこで演説をした中に、南方諸国の開発に対して、
アメリカは年間四十億ドルの支出を決意しないことには、これら地方が逐次赤化されて行く、そういうおそれが十分にあるのだというような意味の演説をされたのでありました。私はこの
吉田総理の
発言は、その四十億という数字がどこから出てきたかということは、御当人に聞いたこともありませんのでよくはわかりませんけれ
ども、とにかく巨額の金を必要とするのだということについて、
アメリカ人の注意を喚起したということになったのであります。
吉田首相の六年に亙る施政に関しましては、功罪半ばするものがあると思いますけれ
ども、昨年の
アメリカにおける、今申しましたその
発言は、これはまことに時宜を得た問題であったと思っているのであります。その
吉田首相の
発言はかなり
アメリカでも注意を引いた模様でありまして、多くの重要な
新聞あたりでも、これに対して批評を加えて参っておりまするが、四十億はとにかくといたしまして、年間数十億の資金を供給するということでなければ、今申し上げましたような大がかりな開発はできない相談であると思います。ところがここに注意をしなければならんことは、受け入れる国々の心理でありまして、なるほど未開発地域を開発されるということは非常に必要なことではあるとしましても、一国ないしは数国の膨大な資本によって、これらの地域が支配されてしまうということに対しては、非常な懸念を持っておる模様であり、又その懸念を持つのが、これは当然なことでなければならんと思うのです。資金がなければ開発はできない。しかしその資金を受け入れる側において、そういったような心理状態であるとしまするならば、この資金が順調に入って来るわけはございません。単に資金ばかりでなくて、これらの地域を開発するというためには、非常に大きな労力と、ことには技術的な知識を必要とするのであります。その技術なり労力なりを供給し得る国は、たとえば
日本のごとき、或いはイタリアのごとき人口過剰な国々で、そしてかなりの程度技術の進歩しておる国々からは、これをその方面で援助することができるわけでありますけれ
ども、これも又多数の労働者、労力を一時に入れるというようなことでありましたならば、受け入れる側から言いまして、大きな危惧を感ぜざるを得ない。資本に対してもそうである。労力、技術の方面に対してもそういったような懸念があるとしまするならば、いかに未開発地域の開発という問題が全人類のために必要なことであるにしろ、実行はなかなか困難ということにならざるを得ないので、そこで
考えられまするのは、何とかしてその受け入れる方にも又送り出すほうに対しましても、ある第三者の仲介を
考えて、そうして順調に資本も入ってくる、受け入れる国においても心配なくこれを受け入れることができる、同じように労力、技術が入って来るというような仕組みを
考えなければならんと思うのでありますが、幸いそこに国際連合というものがあるということをわれわれは思い出すのでありまして、この国際連合なるものの旗じるしの下、資本も労力、技術も注入されるということでありまするならば、受け入れ側の心配というものは私は多分に解消することができるというように
考えるのであります。国際連合の重要性というものは、そういうところで発揮されなければならんと思うのでありまするし、又国際連合内部におきましても、この国際連合自分
自身でファンドを持って、資金を持って、そうしてみずからこの開発に乗り出さなければならん、それが一番いい
方法であるということを論じておる向きもあるようである。私個人の
意見でありまするけれ
ども、そういったような仕組みを強力に持ち出し得る国は、それは
日本のほかにも多々ありましょうけれ
ども、
日本のごときは最も適当な地位にあるのではなかろうかと思う、その点であります。つまり
アジアの一国として存在しておる
日本、しかも相当の程度技術を持っておる
日本、労力も供給することができるという
日本、ただないのは資本だけであります。この資本は
アメリカとかイギリスとか、そういう方面からこれを受けることができましょう。世界におきましても、最も大なる資本国といいますのは今では
アメリカを除いては求められないようでありまするが、とにかく資本はそういう方面からこれを期待することができるのではないかと思いまするし、つまり仲介的な
立場に立つ第三勢力と申しまするか、国際連合のようなものをその中に入れて、そうして国際連合の仕事としてやるということ、そうなりまするならば、よしんば
アメリカから資本が供給されるにしましても、それはすでに
アメリカの資本ではない、国際連合のになります。
日本から労力、イタリアから同じように労力ないし技術が入るといたしましても、それは
日本ないしイタリアの労力ではなくて、国際連合の労力ということになるのでありまするがゆえに、受け入れ側におきましても、私はそう心配なくこれを受け入れることができるようになるのではなかろうかと思うのでありまするし、そういう点に関しまして、順次そういう空気を作ってゆく、それが実現のできるような空気を作ってゆくという上において、
日本のごときは農も適当な地位にあるのではなかろうか、こういうふうに思うのであります。幸いに今度のバンドン
会議などが開かれるというような場合におきまして、未開発地域の
問題等はかならずや議題として取り上げられるべき問題であろうと思いまするし、そういう場合に
日本の全権が果してどういうふうに
発言ができるかどうか、これは予測はいたしかねますけれ
ども、
日本側の
考えとしまして、今申し上げましたような
方法でもって、大きな問題を解決する方向に進めてゆくという努力をするというだけのことは、
日本としてやるべきことではなかろうかというように
考えるのでありまするが、そういう点につきまして、
総理がどういうふうにお
考えになりますか、もとよりこれは突然こういう問題を持ち出しまして
政府のお
考えはいかがでござると開き直っても、これは仕方のないことであります。大体の
考え方として
総理はどういうふうにそれをお
考えになるか。もし幸いにして私の
意見に対して同感を表せられるというようなことでありましたならば、
政府としまして、あるいは
外務省としましても、そういう点に
一つ大きな力を入れていただく、そういう空気を醸成してゆくという上において、大きな力を入れていただくというふうに御努力をお願いしたいと思います。そういう点で
総理大臣の御
意見を承わりたいと思います。