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1955-07-21 第22回国会 参議院 外務・農林水産委員会連合審査会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年七月二十一日(火曜日)    午前十時三十七分開会   ―――――――――――――  出席者は左の通り。   外務委員    委員長     石黒 忠篤君    理事            草葉 隆圓君            羽生 三七君            苫米地義三君    委員            梶原 茂嘉君            後藤 文夫君            佐藤 尚武君            佐多 忠隆君            井村 徳二君            須藤 五郎君            野村吉三郎君   農林水産委員    委員長     江田 三郎君    理事            秋山俊一郎君            白波瀬米吉君            三浦 辰雄君            戸叶  武君            千田  正君    委員            重政 庸徳君            関根 久藏君            田中 啓一君            飯島連次郎君            溝口 三郎君            森 八三一君            亀田 得治君            清澤 俊英君            東   隆君            棚橋 小虎君   政府委員    外務政務次官  園田  直君    外務省移住局長 矢口 麓藏君    農林政務次官  吉川 久衛君   事務局側    常任委員会専門    員       渡辺 信雄君    常任委員会専門    員       安楽城敏男君   説明員    外務省移住局参    事官      石井  喬君    農林大臣官房参    事官      山本  廉君    農林省農地局入    植課長     和栗  博君   ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○日本海外移住振興株式会社法案(内 閣送付、予備審査)   ―――――――――――――
  2. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) それではこれより外務農林水産連合審査会を開会いたします。  慣例によりまして、外務委員長たる私が委員長の席を汚すことになっておるそうでございますから、さよういたしたいと思います。御協力をお願いします。  日本海外移住振興株式会社法案を議題といたします。どうぞ御質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  3. 江田三郎

    江田三郎君 この会期中に二回にわたりまして連合審査会の御迷惑をおかけしまして、委員長及び外務委員の皆さんにお礼を申し上げます。  私ども農林水産委員会の方でもこの法案につきましては重大な関心を持ちまして、今日まで二回委員会を開きましたが、政府の方から資料提出等が予定通り出て参りませんので、内容について今日まで十分の審議をいたしておりません。そのためにあるいは本日の委員会におきまして、直接農林行政関係ある部分以外のこの会社の基本というようなものにつきましても、多少お尋ねすることを委員長の方でも御了承願いまして、御質疑したいと思います。  そこでまず第一にお尋ねしたいのは、第十条でこの会社業務方法をきめるということがございますし、十二条によりまして「営業年度事業計画資金計画及び収支予算」というところが問題になっておりますが、この事業計画とか資金計画とか、収支予算というものは、業務方法というものをもとにして出てくるものと考えるのでございますが、これは間違いございませんか。
  4. 園田直

    政府委員園田直君) その通りでございます。
  5. 江田三郎

    江田三郎君 そこで業務方法というものは案がございますか。
  6. 園田直

    政府委員園田直君) 会社業務開始の際に業務方法を定めることになっております。
  7. 江田三郎

    江田三郎君 これはちょっと政務次官法案の案文をお読みになっただけでありまして、それでは納得いたしかねるわけで、いやしくも一つ会社を作るのに、業務方法書というものは、これは憲法に当るべきものだと思います。従ってこういうような法案をお出しになるときには、当然資料として業務方法書というものを私どもに見せていただかなければ、一体どういう会社なのか、見当がつかんということになるわけで、これがはっきりいたしませんというと、十二条によるところの事業計画資金計画収支予算も出しようがないということになるわけですから、今のあなたのおっしゃるようなことでは、一切白紙委任状を渡しておけ、内容については白紙委任状でこの法案を通せということになりますが、そうお考えになりませんか。
  8. 矢口麓藏

    政府委員矢口麓藏君) 業務方法につきましては、大蔵省と打ち合せておりますが、今具体的なものは持ち合せございません。事業計画にしましても、まあ一応の目論見書というものができておる程度でございまして、詳細のことにつきましては新会社が発足のときに具体的な正確なものをやる、こういうことになっております。
  9. 江田三郎

    江田三郎君 大体この会社法案というものにつきましては、私どもはどうも非常に用意が欠けておるということを、最初から印象として受けているわけでありまして、従って私ども農林水産委員会の方で今日までいろいろ資料要求いたしましても、それが思うように出てこないということで非常に不満を持っておりましたが、今すでに衆議院の本会議に上程されようという段階になりましても、今なお事業計画についてもはっきりしたものがない。事業計画のもとになるところの、会社憲法ともいうべき業務方法書についてもはっきりとした案がない。そういうことでこの法案審議をするということにつきましては、外務当局としては、一体今まではそういうやり方をとっておられますか。私どもはこの農林水産委員会あたりでいろいろやっておりますけれども、そういう内容の全然わからんものを活字だけを審査するということをしたことはないのでございますが、これは外務省の伝統的な方針でございますか。
  10. 矢口麓藏

    政府委員矢口麓藏君) 御承知通り本件会社、その前は公社という案も出ておりましたけれども、いずれにしろ本件会社の案は、今年二月の予算折衝期にすでに持っておりまして、大蔵省予算折衝をやったのでありますけれども、不幸にして葬り去られまして一応お流れになったのです。つい最近、六月のいつごろでございましたか、初めごろだったと思います。その時分と記憶いたしますが、ようやく資本金一億円が、予算修正によってでき上りまして、取れまして、それからスタートに入ったものでありますから、時間的な種々制約もございまして、思うようにまかせなかった事情があるのであります。その点御了承を願えれば望外な仕合せと存じます。
  11. 江田三郎

    江田三郎君 これは仕合せと言っても私変な感じがするのですが、ないものはないと言えばそれまでですから、非常に変な気がするということだけを申しておきます。  そこで一体今度の会社というものは、借款というものが非常に中心部分をなすわけですが、この借款につきましては、業務方法なり事業計画がはっきりしたものがなくても、借款というものについては相手方は応じてきたのですが、今後どういうような事業計画を立てようと、どういうような業務方法をきめようと、内容いかんにかかわらず借款というものは成立するのでありますか。私どもは今までアメリカ借款というようなものの内容につきましては、今までの経過から見ますと、相当こまかなことまできまっていないとなかなか借款には応じなかったように思いますが、この問題に限ってだけはどんなことをやってもかまわん、何でもいいから借款を与えてやると、こういうことでありますか。
  12. 矢口麓藏

    政府委員矢口麓藏君) アメリカ側との折衝につきましては、もともとニューヨーク、ワシントンでやったのでありますが、それが今年の初めから東京に中心を移されまして、三銀行代表者ニューヨークの本社の代表者となって、日本側におきましては大蔵省外務省から私がその代表になって話を進めたのでございます。アメリカ側要求といたしましては、日本政府が、換言いたしますれば大蔵大臣元利の保証をすれば自余のことに対しては干渉せん、こういう建前をとっております。しかしこれは移民促進のための借款でございますから、移民以外のことにはもちろん因りますけれどもアメリカ側としてはその一点といいますか、二点といいますか、だけを中心に置いておるわけであります。あるいは自分の方から希望を言えといえばあるけれども、それは申すべきことでないと、こういうような態度をとっております。
  13. 江田三郎

    江田三郎君 まあそういうような、日本側政府元利の支払いについてだけ保証すれば、移民に使うならどういうことであってもかまわんというようなことだけで借款が成立するということは、これはまあ今日の借款の歴史に一つの画期的なものになるだろうと思うのでありまして、アメリカのこの市中銀行の方でそういうような借款を許してくれるといたしましたならば、これは参考になりますから、これはこれで承わっておきます。  そこで業務方法書もないが、事業計画もない、そうなりますというと、この会社内容につきましては、一応私どもとしましては、あなたからお配り下さいましたこの「目論見書案」というものを中心考えていかなければならんと思いますが、この「目論見書案」について、これを中心考えたらよろしゅうございますか。
  14. 矢口麓藏

    政府委員矢口麓藏君) さようでございます。
  15. 江田三郎

    江田三郎君 そこでこの「目論見書案」についていろいろな疑問が出て参るのでございますが、まず第一にお尋ねいたしておきたいことは、本年度以降の移民計画でございます。一体どういう種類移民をどのくらいどこへお考えになっておるのか、これはございますか。
  16. 矢口麓藏

    政府委員矢口麓藏君) 本年度のとれましたこの予算は、約五千五百人だけの予算……、この予算といいますのは渡航費でございます。大体重点的に申し上げますとブラジル、パラグァイ、ボリビア、ドミニカ、その他呼び寄せしますればアルゼンチン、コロンビア等がございますが、今言ったような順序で五千五百人を送出したい希望を持っております。どこに何人ということは、そのときどきの相手国政府の要望にもよりまして変えていきたいと思っております。
  17. 江田三郎

    江田三郎君 その移民工業移民でございますか、農業移民でございますか、どういう種類でございますか。
  18. 矢口麓藏

    政府委員矢口麓藏君) 御承知通り、現段階におきましては農業移民がほとんど全部でございまして、ただ戦後の移民形態が、ドイツやイタリアのそれを見ましてもおわかりになられまするように、いささか、形態が変りまして、いわゆる農業企業的な移民が多いのであります。その方が能率を上げるに適切でございまして、われわれの方針といたしましても、できるだけそのペイヤブルなといいまするか、よりよく報いられる形式で移民を送出したい。従いまして農業企業的なあるいは工業企業的な、ないしは漁業企業的なものに逐次転換いたしたいと思いまするけれども、一挙には参りませんから、従来の方針を踏襲すると共に、その方面に転換していくというわけでございまして、大体目論見書にも書いてございまする通り農業漁業関係のものが、私の記憶にして誤りないならば、その資金の約六五%はそちらに充てているはずであります。自余の三五%は工業関係という工合に一応のもくろみを立ててございますが、これは今度内閣にできました移住審議会にかけまして、そこで十分検討していただいて、その結果是なりということであるならば、その答申に基いて外務大臣がこれを実行する、こういう工合になりまするので、一応の計画は今申し上げた通りでございます。
  19. 江田三郎

    江田三郎君 あなた方のお考えでなしに、日本の今までの海外移民については、移民ではなしに棄民だというような非難があったことは御承知通りでありまして、戦後入った移民の問題にいたしましたところで、現地で経営の安定を得ないで、ほんとうに野たれ死にに近いような立場に立っておる人人もたくさんあるというような状態で、私どもは新らしい移民を送ることも大事だが、まず第一に今入っておる諸君をどうするのかということが大事なことだと思うのでありますが、それを今度はただペイヤブルにしていくというのですが、ペイヤブルペイヤブルと簡単に口ではおっしゃいましたって、それなら工業関係ならそうペイヤブルにできるのかどうか、ペイヤブルにできるにはどれくらいの費用が要るのか、今の資金計画ではそういう点が出てくるかということになりますれば、これはちょっと問題になると思いますが、私どもちょっとはっきりしておいてもらいたいと思いまするのは、戦後の今までの移民農業移民であったが、今年の五千五百人というのはこれは何で出るのですか。
  20. 矢口麓藏

    政府委員矢口麓藏君) 今年の三月、予算折衝当時は、今と少し情勢が変っておりまして、主として農業関係を考慮しておったのであります。できれば工業関係も送りたいという気持でありまして、まあ非常にフレキシブルに考えておりますので、大部分農業でありまするけれども、よき機会がございまして、工業関係のものも出せれば、そういうものも送りたいという考えで五千五百という数を一応はじき出したものでございます。これは三月当時であります。
  21. 江田三郎

    江田三郎君 ただいまの御説明によりますると、最初農業移民だったが、しかしそれはできるならほかの方へ、工業移民にも一部変ってもいいというような意味のことをおっしゃいましたが、先ほどの会社資金計画の初年度は、さっき御説明になりましたように、農水産六五%、工業三五%ということをあなた方の方では予想されておる。ところが私ども国会の決議というものは重んじてもらわなければならぬと思うのでありまして、せんだって衆参両院で通過いたしましたこの予算内容であります要求書によりますというと、この五千五百名というものは農業移民ということをはっきり書いてあるわけなんです。いつの間に一体農業移民として国会に提出されたものがそういうような、片方は六五%、片方は三五%というような資金の割振りをするように、いつの間にこの農業移民というものが性格を変更したのか。これは農林省も来ているのですが、農林省の方はこの農林省関係予算要求説明資料の五千五百人は農業移民だというのは、これは架空なことを書いたのでございますか、どうなんですか。
  22. 和栗博

    説明員和栗博君) 農林省予算に計上いたされております五千五百人は、一応全部が農業移民ということで予算が計上されておるわけでございまして、その移民に対しまして、送出前に農林省で担当して実施いたしておりまする実務講習をやる場合の予算を見ましても、それは農業実務講習をやる人数といたしまして五千五百人分が計上されておるわけでございます。
  23. 江田三郎

    江田三郎君 農林省の方ではそういうようなことであって、これは外務省発言を求められておりますけれども、私ははっきり言っておきますが、私は農林省の、政府の方から公式に出された予算要求説明資料にもそう書いてあるわけなのでございますから、別なあなた方のような資料というものは、今日まで予算委員会にも、国会にも出たことはないのでございます。移民内容についてはこれが一つ出ているだけなのでございますから、あとでかってな注釈というものは、これはかってな注釈に過ぎんのであります。公式なものではございません。  そこでそういうように一たん予算要求の中には五千五百名は農業移民だということを書いておる。ところがこの会社内容を聞いてみるというと、ただいまのお話しのように所要資金においてことし五億四千万ですか、五億四千万というものは農水産関係六五%で、工業関係三五形ということをあなた方は言っておられる。農業移民なのに、今までが農業移民であって、この予算内容においても農業移民なのに、会社の方では三五%ということになると、一体この予算というものは何だということになってくるわけなのでありまして、そこで……、もうちょっと待って下さい。そういうようなことになるから、私ども農林水産委員会ではこの問題について非常に神経を悩ますわけなんです。私たちはどっちにころんでもよろしい。納得のできることならどっちでもよろしい。しかしながら、政府方針というものは一貫したものでなければ困ると思うのです。この問題についても最初から農林省外務省とがけんかをしている。われわれからいうとまことに迷惑千万です。われわればかりじゃないのです。現地に入っているあの移民諸君の、アマゾンでもどこでも旗を巻いて一番困っているというあの状態をどうするかということなんです。なぜ一体ああいうことになるのかということなんです。そこに私は大きな原因として、今日まで移民政策について政府部内において意見の統一を欠いておる、これがまあ一番大きな問題だと思うのでありまして、この運営の問題についても、もう今日まで私たち昨年以来、この移民の問題についていろいろの機会政府当局から説明を求めておりますけれども、そのたびに出てくるのは、農林省外務省とのけんかじゃございませんか。まことに迷惑千万なのです。そういう状態を一体あなた方はどうやって調整しようというのでありますか。これはむしろ農林大臣外務大臣、この両大臣から答弁を承わらなければならぬのでありますが、先ほど委員長お話しでは、政府の方は予算委員会に重点を置いて、当委員会大臣は出てこないというのでありますから、大臣が出てこなければ次官でよろしい、お答え願います。
  24. 園田直

    政府委員園田直君) 今の予算の点でございますが、農林省から出た予算要求説明書の方はわかりませんが、予算折衝の経緯につきまして、予算書に明記されておるものは、そういう分類はせずに、ただ単に渡航費の五千何百人ということについて五億数千万円予算がついておると思います。  農林省外務者との間にいろいろな意見の食い違いがあったことは、御指摘の通りでございまして、これは両方事務当局移民問題を自分の所管的な立場から熱心に主張をして、現在の振わない移民を振興せしめたいという熱意から出たことであって、これは当然のことであると思います。これにつきましては、政府としてもいろいろ調整をいたしまして、数回の両省の会合を開き、最後には政府としては統一した見解を持ちまして、まず移民業務については、国内移民の募集、選考及び訓練、こういうものは農業移民に関しては農林省雇用関係あるいはその他の労働移民に関しては労働省、その他の産業、貿易に関するものは通産省、こういうものと外務省と協議をしてやるということにきまりまして、移民したあと外務省責任を持って実施をする。従いまして、法律的には外務省責任を持ってやることにして、法律的に責任の所在を分散しないという方針をとりましたが、運営面においては十分外務省関係各省協力をしてやっていけ、こういう裁定を下し、そのほか内閣移民審議会を今般設立をいたしまして、その移民審議会内容は、主としてその業務の多寡に応じまして、農林省労働省通産省順序審議会委員の比例をきめまして、ここで内閣総理大臣に対する答申をやるとともに、各省業務並びに計画等実施が円満にいくように調整をやる、続いて人事あるいはその他の面において交流をやる、続いて両次官で事務的な申し合せをやって、そうして円満に調整をやる、こういうふうにきめたわけでございます。
  25. 江田三郎

    江田三郎君 園田さんも今政務次官をやっておられますけれども、あなたも野党生活が長いのでありまして、今の予算要求説明書内容については、私が申しましたことにそらとぼけた御返事をなさいましたけれども、あなたがもし野党時代だったらおそらく私以上に声を大にして食い下ったろうと思います。一年生じゃあるまいし、そんなそらとぼけ方はやめた方がいいと思います。ともかくそんなことを言われるなら、これは当然通っているのですよ。そうしてわれわれは今後この移民訓練について、ほかの訓練をしたら間違いじゃないかということをいつまでも追及できるじゃありませんか。まあそんなことはよろしい。そういうことは別にいたしまして、私、あげ足をとるのが目的ではありませんから、先に進みますけれども、一体同じように資金融資すると言ったところで、農林水産関係工業関係というのはおのずから違わなければなりません。これは国内におきましても、この農林中央金庫であるとかあるいは農林漁業金融公庫あたりの金と、それからその他の金融機関の金、農業の金というものは、これは期限においても利率においてもほかの金融とは違っておるのでありますが、そういう点については、ここには単に金額だけしか書いてありませんが、その内容についてはどういうお考えを持っておりますか。
  26. 石井喬

    説明員石井喬君) 私からお答え申し上げます。ここに出してございますのは一応のワクでございまして、それの内訳につきましては、私どもの一応の見通しと申しますか、計算の基礎というものは持っておりますが、それによりますれば、この工業関係、農水産関係というのは、利率なりあるいは貸付期間なりというものは一応書いてございます。
  27. 江田三郎

    江田三郎君 具体的にどう書いてありますか。
  28. 石井喬

    説明員石井喬君) 大体これは一応の私どもの、もちろん国により事業によって違って参ります。農業関係融資営農資金融資と申しましても、一年限りでもって解消のできるような部分もございます。相当長期にわたるものもあるかと思います。従いまして私どもは、独立資金の場合、独立するような際には、大体五年くらいのものを考えております。それから農企業、これは一応コーヒー園のようなものを考えますと、まず四年くらい置きますれば五年目に返せるのではないかというふうに考えております。それから水産関係につきましては、これも大体三年くらいということを予想いたしております。それから工業関係につきましては、これは、これも非常に内容によって違って参りますが、一応三年ぐらいというものを予想しております。  利子といたしましては、ブラジルその他中南米におきまする高金利というものを勘案いたしまして、農業関係におきましては九分、それから企業関係と申しますか、工業水産というようなものにつきましては一割一分程度のものを考えております。
  29. 江田三郎

    江田三郎君 一体そういうようなコーヒー園だとか、いろいろな一つの例を言われますと、私はそういうような期限考え方が妥当かどうかということにつきましては、別な意見を持ちますが、農林省としては、この貸し出しの期限利率等について相談を受けたのでございますか。
  30. 和栗博

    説明員和栗博君) まだ相談を受けておりません。
  31. 江田三郎

    江田三郎君 そうするとそういうようなこの資金をどう配分するか、どういう期限にするか、どういう利息にするかというようなことは、これは事業計画なんでございますか、業務方法なんでございますか。私どもはこれは当然業務方法だと思います。
  32. 石井喬

    説明員石井喬君) 私はこれは業務方法と申しますよりも、個々のケースによっていろいろ違った場合が生じて参りますので、具体的にはすべて事業計画でもってきめなければならぬと、こういうふうに考えております。
  33. 江田三郎

    江田三郎君 もしこれが事業計画だということになるならば、業務方法としてきめるべきものは何と何ですか、ただいま申しましたことは業務方法じゃないのでございますか。
  34. 石井喬

    説明員石井喬君) たとえば貸付利率の大きなワクでございますとかいうふうなものは、業務方法に入って参ります。
  35. 江田三郎

    江田三郎君 これはそういうようなことを、私はしつこくは申しませんけれども、要するに内容がないということですよ。本来業務方法にはそこまできちんといっていなければならないので、たとえば公庫関係もいろいろなものがございます。国の機関としてありますけれども、おそらくどこの公庫業務方法書でもごらんなさい。もっと詳細なものが業務方法できまっているわけです。業務方法というものがかっちりきまって、その上に事業計画なり資金計画が出てくるわけなんでして、あなたの言うようなそういう問題についても、ケース・バイ・ケースでいくというのは、要するにこれは責任のがれの答弁にすぎないのであって、内容は何もきめてないということにほかならないのです。  そこで外務、農林両次官の交換覚書の内容を見ますというと、この事業計画及び資金計画、及びその資金計画について変更をしようとするときは、外務大臣農林大臣に協議をすることになっておりますが、この事業計画なり資金計画、及びその変更といったところで、そのもとの根本であるところの業務方法について一体どうするのか。業務方法というものを一方的にきめておいて、そうしてその上に立ってこの事業計画資金計画相談してみたところで、それじゃなかなか意見の一致をみないと思うのでありまして、あなた方が将来とも、今日まで続けられたようにお互いになわ張りを争って、両省間のけんかの種に持っていこうというならこれでいいでしょう。しかしながら、日本移民の成功のために、あるいは日本の国民のために移民をやろうというならば、問題はけんかをすることじゃなしに、けんかのないようにすることだと思うのです。そうしますと当然この根本になるところの業務方法についても両大臣の協議が必要になってくると思うのでありまして、ただいままでの説明を聞きますと、要するに事業計画資金計画、あるいは業務方法書、そういうものについて残念ながら外務省は今までこういうものをやったことがございませんから、はっきりした概念を持っておられぬのじゃないかと思います。  そこで私はあなた方のおっしゃることは、業務計画とか資金計画とかいうことは、ここに書いてあることは、業務方法まで含むものだと、こう解釈するのですが、そう解釈しては間違いでございますか。日本移民の成功のために、両省はけんかをするためにじゃなしに御答弁願いたいと思います。
  36. 石井喬

    説明員石井喬君) 私はこの会社事業の内訳、内容というものが、非常にいろいろな方面にわたっており、一つ日本国内における公庫式のものだけではない。従いましてこの業務方法を現に国内においてやっておりますように、非常に詳細に規定するということはながなかできないのじゃないか。従いまして業務方法といたしましては、会社ワクをはめるような非常に大きなものを考えているわけでございまして、それのワクの中におきまして、具体的にどういうものはどれだけの利率でどただけを貸すか、これは個々の場合によってもいろいろ違うと思いますが、しかし一応、さらにこまかいワクというものは事業計画できめてゆくべきものである、かように考えておる次第でございます。
  37. 江田三郎

    江田三郎君 これはどうも石井事官にお答え願う筋じゃないと思うのです。根本の問題です。政府責任のある立場の人にお答え願いたいと思います。
  38. 園田直

    政府委員園田直君) 業務と、資金と、事業の問題でございますが、主として融資の条件、そういうワクの問題及び資金計画は、われわれとしては主務官庁と財政官庁の所管であり、事業官庁は事業計画について協議すべきであると考えております。従いまして、他の省とはそのように了解をいたしましたが、その後いろいろ農林省から御意見もありまして、事業計画と申しましても、御指摘の通りにこの問題は主として融資その他の問題が重点でございまするから、やはり資金というものを入れておけば、資金計画並びに事業計画、広範囲なものになって、大体の両省の連絡がつき、調整もうまくいく、しかもその上に内閣総理大臣直轄の移民審議会というのがあり、これには農林大臣が出席をして、農林省推薦の多数の委員発言もございまするから、政府といたしましては、これで円満なる移民事務の遂行ができると考えてこのようにしたわけでございます。
  39. 江田三郎

    江田三郎君 この審議会というものが別途あるからと言われましたが、審議会審議会なんでして、この会社運営会社運営で、審議会というものはこの会社運営だけのためにあるのじゃないと思うのです。会社運営に当って業務方法書というものは憲法のようなものになってくるわけなので、そこで大綱がきまってしまえば、あとでかれこれ言ったところで、これはなかなかおさまりがつかぬわけです。この業務方法について両省間の一致があれば、あとの問題については非常にスムーズにいくわけなんです。一体園田さん、どういうわけですか、こだわりを持つのは……。われわれにはてんで見当がつかぬのでして、今日まで外から見ておるというと、まことに火花を散らすとまではゆきませんけれども、陰性なけんかばかりいつまでも続けるというのは、どういうわけなんですか。なぜ一体けんかをしなければなりませんですか。
  40. 園田直

    政府委員園田直君) これはけんかというわけじゃございませんで、熱意の要求のあまり、熱心のあまりの主張のし合いでございまして、農林省外務省の間には実際に相当な開きがございました。その後いろいろ折衝相談をした結果、内閣としましては数回農林事務当局と外務事務当局との両方の相談会議をやりまして、そうして最後に法文においては、これを両方の共管事項にすることは責任の所在を不明ならしめるおそれがあるから、法文上は外務省が主管官庁となり、運営面において農林省外務省、その他の関係各省とよく協議じてやる、こういうことで裁定になりまして、外務省としても農林省としても、熱意のあまりいろいろ御意見はあったようではございまするが、政府として意見を統一した以上は、こういう方針でやるという決定があり、その後なお農林省の方では熱意のあまりいろいろ御意見がございまして、そうして逐次農林省意見をいれて実はここまできたわけでございまして、昨日農林省外務省の実は申し合せも円満了解をした次第でございまして、今日の段階においては、農林省外務省の間には何らの意見の相違もございません。
  41. 江田三郎

    江田三郎君 農林省だれです、責任者はだれです。山木参事官で答弁できるかどうかしれませんが、一体この会社運営を円満にするために、ここに書いてあるような事業計画及び資金計画等について、協議をするということで円満にゆくものでございますか。私たちはこの業務方法というものは、これは会社憲法に当るべきものであって、ここで大綱がきまるのだ。業務方法というものはそういうものです。そういうものできまった、そこから派生してくるところの事業計画資金計画について、もし意見の違いがあったときに、もとの、根本について検討してないのでありますから、今後意見の食い違いがあることは必然であります。現に五千五百人の今年度移民についても、農林省説明によるというと、これは農業移民だということをはっきり言っておる。ところが外務省の方は六五%、三五%というような、資金運営計画を出しておる。そういうようにもう今出ている問題についても違っているんですよ。そういう問題について、ただ根本問題ほどうでもよろしい、業務方法はどうでもよろしい、事業計画資金計画だけでやってゆけるのだ。円満にやってゆけるのだ……。われわれから言えばナンセンスだと思うんです。これはあなたは農林省責任者じゃありませんけれども、どう考えているんです。
  42. 山本廉

    説明員(山本廉君) 私からお答え申し上げますが、海外移住振興株式会社運営につきまして、農林省漁業関係が非常に大きなウエートを占めているので、会社の今後の運営につきましては、外務省からも、会社ができた暁には極力協力してやっていきたいというお話がございました。ただいま御質問になりました両次官の了解事項につきましては、事業計画資金計画について、外務大臣会社に認可をする前に農林大臣に協議をするということで、先日次官の覚書を取りかわすということに意見の一致を見たわけであります。  それで業務方法書の問題でございますが、これは確かに御指摘のように、会社資金計画あるいは事業計画の基礎になるものではございますけれども、これは私が事実外務省の方とも先週来御交渉いたしましたときに、これは外務当局で事実農林省と協議をいたして、農林省意見も十分にこの業務方法書に反映するように、事実上十分に協議をするというふうに私は了承いたしております。
  43. 江田三郎

    江田三郎君 今の山木参事官の言われるようなことなら、この了解事項に業務方法書ということを入れてもいいんじゃありませんか。それを園田さん、法案の修正をするというなら、そういう意見も衆議院の農林水産委員会の方ではあったようでございますが、それならあなた方もいろいろ面子もありましょうし、まあ日本移民の成功のためもありますけれども、面子のためにがんばるのもまたそれもやむを得ないと思いますけれども、こういう覚書のそういうものに、外務省はなぜこだわらなければならないのですか。これは業務方法書についても協議するということがなければ、力のある、有効な、将来のトラブルを避けるような覚書にはならぬと思うのですが、どうしてそれはいかんのですか。
  44. 園田直

    政府委員園田直君) 政府といたしましては、農林、外務と、省は分れておりましても、一つ内閣のもとにそれを、所管を、担当している問題でございまするし、あるいは融資の条件、あるいはその他の外務大臣の所管事項にいたしましても、それは当然閣議なりその他で了解及び協議をしてやるべき問題でございまして、事実においては、申し合せがなくとも、各関係各省は密接に協力せられなければならぬ筋合いのものでございます。しかしながら、事実においてはそうも参りませんので、両方から意見が出てこういう申し合せをやりましたが、業務方法から事業計画資金計画、一切を協議いたしますということは、結局主管官庁の責任の明確を不明確ならしめるおそれもございまするので、結局相談の結果、こういうふうに円満に意見を一致したわけでございます。
  45. 江田三郎

    江田三郎君 この問題は、園田さんにこれ以上聞いたって答えは出ぬと思いますから……。  もう一つ、私ばかり質問してもいけませんから、もう一点だけ聞いておきますが、今度の渡航費貸付につきましては、あなた方の方ではこれは渡航費というものは赤字が出るおそれがある。従ってこの会社の一般の事業とは切り離してゆきたいと、特別なアカウントを設けてゆきたい、こういうことをおっしゃっておられまして、そうしてここにお配り願ったものによりますというと、この渡航費について政令できめられる要綱案というものをここにお配り願いましたが、そうしますというとこの会社の扱い分については、この政令要綱に従って会社が損をしなくても済むようなことになるようですが、これは今まで海外協会の方から貸し出している分については、これは一体どうなるんですか、これも適用されるんですか。それから一体今後の渡航費の扱い方をあなたの方では海外協会連合会にまかすんだということをおっしゃいましたが、一方においてこういう政令によって、会社が損失を受けなくて済むような措置がとられているのに、なぜ一体海外協会連合会というものにやらさなければならぬのか、なぜ一体この会社というものはそういうトンネルをしなければならぬのか、その点が私どもには納得できないんですが、その点は一体どういうわけなんですか。
  46. 園田直

    政府委員園田直君) この政令をきめました以前の渡航貨付を受けた分に関しましては、これと同じような取り扱いを受けるように改正するつもりでございます。なお渡航費を海外協会連合会に委託したという趣旨は、海外協会連合会に、おのおの主管の業務を持っている農林省、労働、通産、外務省が協議して、移民の募集、選考、そういう業務を委託しておりますし、なおまた、渡航費貸付及びこれの償還ということは会社自体でやりますると、人件費等の点で相当むだが出て参りますので、海外協会連合会に委託したわけでございます。
  47. 江田三郎

    江田三郎君 私は会社がなぜ一体渡航費のことをこういう政令で特別措置もできるのに、一貫してやらさないということについて、今の説明ではわからないので、会社がやるとコストが高くなるということを言われましたが、そうすると会社というものはもう金を貸すということだけで、貸した金の回収はどうするんですか、事業資金の方は、一方においては事業資金の回収ということはやるんでしょう。そうして渡航費についても、それだけのスタッフがあるんだから、当然取り扱っていいと思うのでありまして、それを特別措置までできたのに、依然として海外協会連合会にやらせなければならないというのは、何だか海外協会連合会ですか、それとの関係についてわれわれとしては疑惑を持たざるを得んわけであります。今までも海外協会連合会につきましては私どもはいろいろな情報を聞かされました。その情報の全部を正確とは思いません。思いませんけれども、多少は根拠があるものだろうと思いますが、そういうような海外協会連合会になぜ今後も渡航費貸付ということをやらさなければならぬのか。会社の、今度の法案によりますと、渡航費貸付ということが業務の範囲の第一でしょう。これは偶然に書かれたものじゃないと思う。一番重点を置くべきものだということから一番最初に書かれているのだと思います。そうでなければ説明がつきません。その第一に書かれている渡航費について赤字が出るかもしれない、それについては別途政令を作って赤字が出ないような措置をとる。しかも海外協会連合会に事務を委託して、会社はトンネルだけするんだ、会社がやるとコストが高くなるというけれども会社はほかの事業に投資をしなければならぬ、投資をするということは金を貸したということだけでは済まない。あとの世話もいろいろしていかなければなりません。回収もしていかなければなりません。指導もしていかなければなりません。そういうような業務をやるスタッフがあるのに、なぜ一体この渡航費については避けなければならぬのか、どうもその点については納得がいかないんですが、その点はいかがですか。
  48. 石井喬

    説明員石井喬君) 私から事務的にお答え申し上げます。現在この会社貸付業務をいたしますのは、事業資金の方は全部外地でいたします。従いまして国内におきましては渡航費貸付以外の仕事はないわけでありまして、この渡航費貸付につきまして、実情を申し上げますと、現在連合会が募集、選考いたしまして、選考の結果、こまかいリストを完全なものを作りまして、それで船に移民が乗りまして、船が出発いたしましたあとで、つまりこの渡航費の金額が確定いたしましたあと外務省の会計課長が小切手を切ります。その小切手を連合会を立ち会せまして船会社の担当者を呼びまして、外務省の方からいきなり船会社の方に必要な金だけが渡るという仕組みになっておっております。従ってこの貸付事務というものについては、その名簿の確定、それからまた神戸におきましていろいろ契約書を作るような仕事、これは渡航費貸付その他いろいろございますので、それを全部神戸で連合会が取り扱っております。従いましてこの渡航費貸付業務も、ただいま申し上げましたような実情でございますので、連合会がいろいろ扱いましたものをそのまま扱いますことが一番いいんではないかということで、わざわざ会社の委託を受けまして、もう一度そういう書類を作らせる必要があるというので連合会に貸付の事務を委託するということになっております。  回収の事務は、これはただいま仰せがございましたように、現地において会社が回収事務を行います。事業資金について行います。この回収は全部会社現地において行うということになっておるわけでございます。ただこの会社事業資金の対象となるものと、中南米全部に広がっておりますものとの間に非常に広い差と申しますか、地域的な問題がございますので、具体的にはいろいろとむずかしい問題が出て参ると思いますが、現地の回収事務は全部会社責任を持つ、担当するということになっております。
  49. 江田三郎

    江田三郎君 今手続についていろいろ説明を聞きましたけれども、これだけではどうもわれわれは納得できないので、どうもこの会社目論見書、あるいは今日まで政務次官その他の御説明を聞いておりますというと、ほんとうの困っている移民の世話ということではなしに、何だか鉱工業投資というようなことだけに重点がおかれていくのではないか。特別にこの際民間資本も集められるというようなことも出ておるわけでありますから、そういう点からそういう変更が出てきわしないかということを私たちは非常に心配せざるを得ぬわけです。もしこういう借款の金がありましたところで、一つの鉱工業資金を回すということになりましたならば、これはもうどれだけの仕事ができるか、私はその対象としてはほんの僅かな件数だと思います。そういうところであとから日本移民を受け入れるのだといったところで、一体現地でどういう事業計画されるか知らないが、鉱工業を起したところで、一体現地政府がそれに日本移民だけを雇用するというようなことを許すかどうか、私はそう簡単にはいかぬと思います。資本は向うに持っていったが、そこに雇うところの雇用の人数につきましては、必ず現地政府としても、自分のところにも失業者がおるわけですから、そういう者を使わなければならぬ。もしそういうことについて反対の意向をとるならば、おそらくその現地でできた会社というものも非常に困難なことになるのではないか。そういうところから今度せっかくあなた方がお立てになった企業移民というものは、もしそれを農業移民を、今長野あたりで行き場に困っているところの諸君を、これを経営の成り立つように、農機具を入れてやろう、共同販売の組織も作ってやろう、あるは共同講入の組織も作ってやろう、そういうように事業費を注ぎ込まれるということなら、これはけっこうだと思いますけれども、そうでなしに、違った方面の企業投資ということになると非常に危険性があるのではないか。そういうところも、ただいまの渡航費の扱い方一つを見ても、何だか私は会社の性格には割り切れないものがあるということだけを申しまして、ほかの委員の御質問がありますから差し控えます。
  50. 戸叶武

    戸叶武君 私はこの移民国策の具体化の出発に際して、やはり政府がもっと基本方針をはっきりさせてもらいたい。われわれは国策審議の場にあるのでありまして、行政補助機関の役割ではないので、外務省農林省との所管争いの事務的調整の報告を聞くというような程度でものを言っているのではないのです。園田君の御苦労のほどはわかるのでありますが、われわれの求めているのは、外務省農林省のセクショナリズムの角突き合いに対する監視ではない。問題は移民に対する日本の国策というものが基本的にどう立てられているか、それがはっきりもしていないで、こういう日本海外移住振興株式会社というものがでっち上げられたり、また外務省の外郭団体的な日本海外協会連合会というものがでっち上げられているところに、無政策な移民政策のすべり出しの破綻があるのだと思うのです。先ほど前の方から質問を出されました通り外務省なり農林省なり、現実の移民政策の性格に対しても非常に根本的な相違があって調整ができていない。園田さんの言われているのは、その官庁同士におけるところの事務的調整であって、移民政策に対する基本的な考え方というものは私は何らまとまっているようには見られないのです。で、外務省の移住局参事官が出されたところの移民国策の確立と当面の重要施策というものの中には、現在外務省が立案している十年間に約四十三万人の資本と技術を持った優秀な日本人を送り出すという新移民政策というものを打ち出しておりますが、この構想は私はりっぱだと思うのです。問題は政治は現実なんです。われわれの国策に対する基本的構想と、現実のこの移民政策の推し進めとの間にギャップがあっては何もならないと思うのです。  私は昨年の十二月からこの一月にワシントンに行きましたときにも、ブラジルの人々にも多く会いました。またカルフォルニアの一帯におきましては、ブラジル移民の幾多の失敗面が日本に報ぜられていないのを憂えて、移民としての先覚者である人々が、日本人の代表者を送ってブラジルを視察したその報告をも受け、資料をも私はいただいてきております。日本には移民が非常に成功したものだけが強調されているが、ブラジルにおいては五百人もの失意の人たちが気違い病院に入っておるという悲惨事もある。これは今までの移民政策に対して西欧諸国のごとく、日本政府からの庇護というものがあまりなかったことから来ているので、特にアマゾン流域におけるところの移民というのは、アメリカで大資本をもってしても失敗した経験もあって、一度アマゾン移民で許されても、どうやって逃げ出してほかの安住の地を求めるかというのが、ブラジルについての移民の大きな仕事で、その間に行き倒れになったり、餓死したり、気違いになったりするような悲惨事が繰り返されておる。  そういう今までの移民政策の失敗の尻ぬぐいもしないで、いきなり何かもうけ仕事のような形においてこの日本海外移住振興株式会社というものをでっち上げ、しかもアメリカ銀行が金を貸してくれるからという借款移民政策を樹立したところに、この金さえつかめば何かできるであろうという無性格さがあるのじゃないかと思うのでありますが、外務省農林省考え方というだけでなくて、一体外務省なり農林省なり、今まで移民政策責任を持った仕事をしている人たちが、移民国策に対して国会において、外務大臣なり農林大臣なり、いかなる見解を披瀝してわれわれとともに審議したのか。外務省においては、外務省の中に海外移住懇談会なるものを設けてみたり、あるいは今後移民審議会を設けると言いますが、外務省でコントロールするのには手ごろな人たちだけを集めて移民国策が樹立できると思っているのか。  過去の日本の大陸におけるところの移民政策の失敗、今日の世界情勢に適応するような移民政策の行き方、前の跡片づけ、そういうものを十分検討して、移民政策を確立して、その上に立って事業をやるのが至当であるのに、事業を先にして、移民政策に対する基本的見解が述べられていない。しかも予算委員会が忙しいからというのは、一つの口実であるけれども、こういう日本の人口問題で悩んで、移民問題というものが大きく国策として打ち立てられなきやならないときに、政府の方で責任ある人が出てこないで、所管争いの事務的調整ができたという覚書みたいなものをここに出してくるというのでは、われわれが行政補助機関としての役割を果すならば別であるけれども、国策を審議するところの委員会として、非常に私は心もとないと思うのですが、移民国策に対して外務省はどういう形において推し進められようとするのか、その点を園田さんから私は明確にお聞きしたいと思います。
  51. 園田直

    政府委員園田直君) 移民につきましては、外務大臣が本国会劈頭の方針演説にも申し述べておりまするが、外務省といたしましては、今日までの移民が振わなかった原因、あるいは今日アマゾン等におきましてもいろいろな問題のある点等も十分検討いたしまして、今日移民外交を転換すべき時期であると考えております。  その第一は、今まで日本国民または国家の組織的な勢力進出の一環として取り上げられておったものを、今後はそうではなくて、相手国との相談によって同化政策をとりまして、相手国の了解と納得のもとに日本の人々に自由に働く場所と土地を与える、これが移民の基本方針であると考えております。  なおその具体的な問題に関しましては、世界の移民の趨勢が、集団移民から個人の自由による移民を、政府がこれを援助して、移民先における生活の基礎なり産業を援助するという方向に変っております。また一つは、今まではどこの国におきましても農業移民が重点でございましたが、イタリアやその他各国の国々を初めとしまして、企業移民というものに変っております。企業移民と申しますのは、決して工業移民という意味ではございません。農業移民というのも、単に国内で土地がない、あるいは非常に困った方々が向うに土地を求めていくという農民の農業の意味ではなくて、やはりこの農業移民にいたしましても、農業移民の方々に、先ほど御指摘のありましたような資金やあるいは機械や、あるいは組織的ないろいろな組合、あるいは販売路などの援助を技術的にあるいは金銭的に援助をして、そうして農業あるいは漁業、あるいは工業、あるいは商業等のそういう企業の移民をしたい、こういう方法に変っておりますので、われわれとしてもそういう方向に変えていきたいと考えております。  なお具体的に申しますると、今まで移民がいろいろ問題がありましたのは、戦前は渡航費を国家が補助しておりました。しかるに戦後は渡航費の補助がなくて、かろうじて先般来から渡航費貸付をやっております。渡航費貸付をやっただけでも移民は逐次ふえておりまするが、この渡航費貸付だけではなくて、貸付そのものは、実際は国家が、国民が自由な意思によって他の国に行って働く場合は、これを援助をする責任と義務があるものと考えまして、国家財政が許すならばこれを補助するのが当然でありますが、今日の情勢ではこれを許しませんので、まず今までよりも渡航費の償還、あるいは金利等をずっと下げまして、そうしてこの数を増したい。なお渡航費ばかりでなく、向うに行かれたあとの、雇用農民であれば、賃金をためて独立をされる場合の一つの土地の購入資金、あるいは相手国が納得する場合は集団土地を国家で購入をして、これを独立をされる農民の方々に分譲するとか、あるいはそのほか協同組合その他販売路、あるいは機械、こういうものの援助をして、そうしてなるべく今までのような間違いがないようにしたい、こういうように考えている次第でございます。
  52. 戸叶武

    戸叶武君 イタリアのごときはその国の財政乏しきを憂えず、政治よろしきを得て、やはりイタリアにおける人口問題の解決として、海外移民のためには渡航費政府から出しておる。それにもかかわらず、日本においては相当再軍備の方面においては力こぶを入れるが、こういう移民の問題に対しては、イタリーから比較しても非常に冷淡である。こういうところに、たとえば今外務次官お話しするところによれば、原則としてはそれを行うべきでありますが、戦前のように渡航費の補助はできない、それだから貸付ということにしたい、貸付ということにしてもこれはなかなか返ってくるものでないということがわかっている。それだからこの会社でやってもこれは損するだけで、何ともいかないので、国家でしりぬぐうようにしなければならないから、それをすなわちこの日本海外協会連合会の方へ押しつけて、そうして補助金政策ででもいこうかというところがねらいのようでありますが、そういうところにかえって金が結局は使われるのです。結局いろいろなからくりをやっている間にこの不明朗なできごとというものが生まれてくると思うのです。ものごとを筋を立ててすっきりさせれば金でも出てくるし、金の行方もはっきりするのだから、いろんなトンネル会社みたいなものを作ると間違いが起きる。それが火元になるのです。日本海外協会連合会を設立する際にも私たちが憂えたのはそうでありまして、戦前の移民ボス、あるいは移民関係において利害関係を非常に持つ船会社関係が、直接自分らが出しゃばっては悪いというので、今度は引込んで、身がわり的なものを押し出すというような形のもので作り上げられたと思われるような、それに外務官僚の古手の人が配置されたと思われるような形においての日本海外協会連合会というものの実態を私たちは知りたい。その実績を調べたい。そういう資料要求しているのです。私たちはこの日本海外移住振興株式会社法のでっち上げを見ても非常に会社が心もとない。しかも一面においてあまり信用のできない、とかくのうわさがある日本海外協会連合会というものがそういう大きな事務を押しつけられる。結局そこへ落ちは行くものとみていたら、案の定初めのスタートと違ってそこへ落ちて行く。そういう政治技術だけを使われているのでは私たちは困ると思うのですが、日本海外協会連合会に対してどれだけの政府責任を持つつもりか。特に外務省責任は重いと思いますが、私はそれを明確にしてもらいたい、いろいろな文書がここへ出ているけれども、これはおざなりのものですから……。
  53. 園田直

    政府委員園田直君) ただいまの御指摘は全くその通りであるとわれわれも考えております。政府が十分な資金を出せば、この渡航貸付費も補助金として、会社の重要なる業務内容に含み、移民業務を推進するには好適なものと考えます。御指摘の通りに、いろいろ予算折衝いたしましたが、予算面がなかなかうまく参りませんので、これからやりくりをして、いろんな面が生まれている点は、われわれも反省しております。連合協会においていろいろ御指摘を受けるような点も、実際は金銭上の面に最大の原因もあると考えております。そもそもこの海外連合協会は事務を委託するだけの、実費を渡す程度に至っておりません。各県、各地方の移民に熱意のある有力な方々が集まられて、そうしてそれに政府としてはわずかの補助、外務省からと農林省からと両方、補助というよりも実費の一部を渡しているような関係で、そのためにいろんな問題が起ったものであると考えております。従いまして、今後この海外連合協会につきましては、そういう業務を委託する際の事務費を潤沢に補助すると共に、この重要な任務を委託するに際しましては、早急に海外連合協会を法的な裏づけをして、そうして主務官庁の厳重なる監督権をつけて、責任をもって監督したいと考えております。  海外連合協会の法的措置がおくれております原因は、この配付しております振興株式会社業務内容によって海外連合協会の性格が変って参りますので、この会社法案が決定すれば、ただちに同業務の委託をし、同業務を海外連合協会になさしめるということが明確になりますので、ただちに法的な措置をいたしたいと考えております。
  54. 戸叶武

    戸叶武君 日本海外協会連合会の実態に対して私たちに不審を抱いているのです。その何らの十分なる、改組なり検討もしないで、それに法的な裏づけを行なって、そうして資金供給をやるというようなやり方は本末転倒だと思うのです。しかもこの法案を作られた際に、農業移民の募集から選考までは農林省、海外のことは外務省というような大きな角度からの原則を確立しておりながら、事実上日本海外協会連合会並びに地方海外協会なんかは、主管庁が外務省で、明らかに外務省の外郭団体であります。農林省と共に監督するといいながらも、事実上においては各地方にできているところの海外協会を見ても、また日本海外協会連合会の実態を見ても、名実ともに外務省の外郭であって、農林省の言うことなんか大体聞くような性格にはできておらないと思うのでありますが、これは外務省農林省だけの問題ではない。移民を推進するに足りるだけの内容を整えたものに整備していくところの御決意があるかどうか、臭いものにはふたで頬かぶりをしていくのかどうか、そのことを園田君からお聞きしたい。
  55. 園田直

    政府委員園田直君) 先ほどもお話しがございましたが、海外移住懇談会が外務省の推薦をする方々であって、外務省の一方的な御意見が通るような意見でございまして、われわれはそのようには考えておりませんが、そのような誤解を受けてもなりませんので、今後は……。
  56. 戸叶武

    戸叶武君 移住懇談会のことは私は触れておりませんよ。
  57. 園田直

    政府委員園田直君) そういう点からいたしましても、なお今の海外協会連合会、あるいは会社業務等の問題に全部関係をいたしまして、移民審議会を作った本旨はそこにございまするので、移民審議会には関係各省、農林、労働、通産、各省から審議会委員を推薦することになっておりますし、なおまた移民の募集、選考、訓練等に一番業務責任のありまする農林省の方から推薦の委員を大幅に入れることも考慮してございます。ここで基本的な方針を立てまして、海外連合協会を法的に裏づけするに際しましては、十分御指摘の点は留意をして検討をし、組織の強化、改正をしたいと考えております。
  58. 戸叶武

    戸叶武君 留意とか何とかいう言葉は私たちは大体返上したい。これはこの前における海外協会連合会ができるときに、農林委員会は一せいにこの問題に対して意見を開陳している。しかし、それにはあまり耳を傾けられない。われわれはこの外務、農林の合同委員会においてこのことを主張する点は、衆議院においてでも、ややもすれば外務委員会は外務省の肩を持ち、農林委員会農林省の肩を持つというようなセクショナリズムでは、私は官庁も国会も権威をなくすると思う。この移民の問題のごときはきわめて重大であって、農林省のなわ張り主義と外務省のセクショナリズムで行わるべき性質のものではない。それにもかかわらず、これが非常にいろいろここに出ているところに、私たちはすべり出しがら非常に危惧の念を抱いておるのでありまして、一度すべり出してしまったら、私たちの言うことなんかもう聞きはしない。それはもうわかり切っていることだ。今の問題はそれ以上追及してもあれでしょうが、この移民の……。
  59. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) ちょっと戸叶君に御相談いたしますが、大体御質問が一段落ついたらほかの方にお譲りを願ったらどうですか。
  60. 戸叶武

    戸叶武君 もう一点だけやって……。きわめて重要な問題ですから、あと一つだけ、委員長、どうですか。
  61. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) それでは簡単に。
  62. 戸叶武

    戸叶武君 農業移民からこの企業移民の方に移る趨勢にあるというのは、これは私たちは了解するのですが、農林省側で、私の心配している点は明日の問題でなく、明日への方向はわかるけれども、現実に今日の移民というものは農業移民が重点になっているのだから、その現実の問題から片づけていかなければならぬのじゃないかという苦慮を持っていると思うのですが、そういう問題に対して外務省側では、どうも私は将来の理想を語っているだけで、じみな、今まで行った農業移民の苦しみ、それから現実に押し出されているところの農業移民、そういうものを落ちつけてから後に、二の技術移民なりあるいは企業移民なりというものに可能なお世話ができると思うのですが、そういう点についてどういうお考えですか。今までの外務省の文書やいろいろなものを見ると、そういう点において私は非常に配慮が欠けていると思うのです。
  63. 園田直

    政府委員園田直君) 外務省といたしましては、御指摘の通りにいろいろな方針はございましても、いろいろの今までの関係からしまして、初年度並びに当分の間は当然ほとんど重点は農業移民だと考えております。なお将来それが企業移民に移行しました場合におきましても、その企業の重点はやはり農業関係の企業移民の方が重点になるということは十分考えております。
  64. 千田正

    ○千田正君 外務省にお尋ねいたしますが、今度のこの会社ができましたその重点は、この間からの御説明によりますと、大体中南米のように考えられるのでありますが、それとともに東部、東南アジア、あるいはその他の国に対してもこの会社の機構を伸ばしていこうという、こういう観点を持っておられるかどうか、こういう一点と、もう一つは、御承知通り、アマゾン流域などはそう開拓するといっても、日本人が行っても、先ほどの戸叶君やあるいは江田君が言ったように、そう簡単には参りません。これはよほどしっかりやらないというととんでもないことになってしまう。これはよほど腹を入れて考えておられると思うが、もう一つことに考えていただきたいのは、一体漁業移民というのは何をやるか、あなた方は漁業の漁の字もおそらく知らないと思う。この計画の中には漁業移民というものがある。これは雇用移民なのか、それとも漁場を開拓するための一体漁民の進出なのですか、この点はっきりしておらない。かりに漁場を開拓したとしても、その背後にそうした水産物を受け入れる態勢が、それをどこへ持っていくのか、こういう点全然私は外務省として持っておらないように思う。これははっきりしてもらいたい。農業移民にしても、これはよほど研究してもらいたい。外務省に私は特に申し上げておきたいのは、私は一九二五年、アメリカで当時イミグレーション・アクトが通過しまして、日本移民が血の雨を降らせられた。その最中に一学生として行っておった。どんなに血涙をのんで、あの移民法が施行されるときに日本移民が圧迫されたかという歴史を私は考えてみて、これは簡単にはいかない。今度の戦争のときにおいても、満州開拓をごらんなさい。満州開拓の移民の、ことに青少年の義勇隊なども最後には銃をとって戦わせられて、今日までいかほど苦労したかわからない。われわれはこうした人たちをかかえて、今開墾のくわをさらに入れかえようとして、現在東北なり北海道なりへこうした開拓民をまた再輸入した格好においてやっていかなければならない。そのとき、戦争の終結と同時に一番早く逃げ帰ったのは外務省の役人です。最後に残されたのはこうした開拓義勇隊であるとか、開拓移民であるとかで、そうした人たちがどんなにみじめな生活のもとに生命を終り、そうして残虐の行為のもとに日本に帰ってきたかということを想起した場合においては、この海外移住会社というような簡単な一つ会社などによって解決をつけらるべき問題ではないと私は思う。将来外務省は真剣になって海外移民に対して最後の最後までめんどうをみるという決心を持っているのかどうか。私はその本格的な日本の海外に対する移住の国策の根本精神で最後まで一体みるつもりなのかどうか、この点を一点聞きたいです。  もう一つは、漁業移民のこと、農業と称しまして農業移民水産関係移民として六五%みている、あとの三五%は工業移民だという、六五%のうち一体漁業移民はどれだけみておられるのか。しかも漁業の対象は一体どこにあるつもりなのか。そうして一体そうした漁業の根拠地としてどこを選んでいるのか、そうしてその国がほんとうに漁業移民を入れるだけの市場があるのかどうか。そうでなかったらば、またこういうみじめなところのいわゆる移民となり、移民というよりも、おそらくこじきのようになると思います。農業であるならばやはり奥地へ奥地へと開拓の道を進められるかもしれませんが、漁業となると一つの危機をはらんでおる。簡単ではありませんので、この漁業に対するところの外務省の見解を承わっておきたい。
  65. 園田直

    政府委員園田直君) 移民相手国が中南米ばかりであるかどうかということでございまするが、中南米に対する移民というものは相当比重が大きいのではございまするが、将来は相手国との話し合いがつくにつれまして、距離、費用等の問題から考えまして、東南アジア、特に今日すでに話が一部上っておりますカンボジア、ビルマ、あるいは将来はボルネオと話し合いを進めていきたいと考えております。漁業移民に関しましては、資金のパーセント及び根拠地の個所等はあとで参事官からお答えをいたします。主としてわれわれが考えておりまするのは、雇用関係ではなくて、むしろ開拓企業と考えております。  なお今までの御指摘を受けましたうちの一番大きな問題である、今日までの移民というものが、何か国家で働く場所がなくて困っている者を送り出せば、もうそれで移民が終ったという考え方であったところに、今日のいろんな悲劇や問題を生んでいると思います。この会社だけで決してそれが解決されるとは思いません。ただその一部の端緒がつくだけだと考えておりまするが、移民というものは御指摘の通りに、渡航することは一つの準備であって、渡航されたあとの生活の保障なり、あるいはそのほか生活の基礎を築かれるための援助、並びになるべく早く移民協定を結び、協定が結べない場合においても、直接相手の政府と内々の折衝等をいたしまして、雇用関係あるいは移民の開拓土地、その他の条件等についてのいろんな責任ある政府としては、折衝をしなければならんと深く決意をいたしております。
  66. 千田正

    ○千田正君 漁業移民に対する詳しいあれを説明して下さい。
  67. 石井喬

    説明員石井喬君) 根拠地の問題からまず申し上げますと、現にいろいろ話がございますのはアルゼンチン、チリとか、それからベネズエラというようなところに、具体的なものではございませんが、いろいろ話があるように考えます。  それから農林水産関係のうち、どのくらいが水産に回るかという問題でございますが、これは現実に話が進んで参りませんと何とも言えないと思いますが、私どもはまあ大体のワクといたしましては、一億九千万ないし二億程度農業関係に参りまして、一億五千万あるいはそれ以下のものが水産にいくのではないか、しかしこれは会社ができまして、あとで現実に大体まあ合弁事業という格好になると思いますが、その話が進んで参りました際に、それに応じてまた考え直さなければならないというふうに考えております。
  68. 千田正

    ○千田正君 そうするというと、これは今までの移民というものの性格とはだいぶ離れております。漁業そのものの形態というものは、農民の形態とほだいぶ違う。外国においては御承知通り魚を食うというような民族はそんなにありません。一体南米なら南米、中米なら中米でとった魚を、どこで処理するのですか。これは日本が買うのですか、アメリカで売るのですか、それともチリーなり、カンボジアなりが買うというのですか。そういうようなものをはっきりお調べにならんというと、ただ国内の漁場が狭くなった、海外に行って一仕事やろうじゃないか、そういうだけの移民であったならば、過去の移民と同じような悲劇を繰り返さなければならぬ。中米において一体どういう漁場を開拓して、どこへ一体とったものを売るのか。そうしてかりに合弁になって、五十、五十、フィフティ、フィフティの場合において、損失はどういうふうに引き受けるか、利益もそうだ。損失は五十を引き受けるという場合においては、一体どこが引き受けるのだ。あなた方のこの会社がそうしたマイナスを受けた場合において引き受けられますか。船一そう作ったって、百トンの船は一千五百万も二千万円もかかるのです。一億五千万では一隻や二隻の船しか持っていけない。よほどこういう問題は真剣になって考えないと、漁業移民だと大きなことを言ってもものにならぬのです。一体どういう計画でやるというのですか。もう少しはっきり言って下さい。
  69. 石井喬

    説明員石井喬君) ただいまのお言葉にございました、どこでこれを使うかという問題でございます。これもいろいろ国によって違いますが、チリーあたりは今後自分でもって、自分のところでもある程度魚を食べさせたいということも言っておりますが、相当たくさんに新しい漁場を開拓いたしますれば、その国において消費し切れないことは当然でございますので、大体におきましてカン詰にいたしまして、外国へ輸出するというのが各国のねらいのようでございます。  それから一億五千万円程度で何もできないではないかというお話でございますが、私どもは実はできるだけ現地の資本なり何なりを主にしまして、合弁企業なり何なりを作って、この会社はそれに対しましてその一部を補助すると申しますか、あるいは誘い水という意味で金を出していきたい、かように考えております。
  70. 千田正

    ○千田正君 どうも漁業については皆さん御研究が足りないようです。ということは、チリーについても中南米についても、魚を食うというものはきわめてわずかであります。東南アジアの漁場開拓を御覧なさい。東南アジアでさえも、われわれと同じようなアジア民族でさえも魚なんか食っていない。だから今大洋漁業が一日一隻を持ってきても、その市場を撹乱してしまう。だから一隻満載してきた船をその日のうちに市場へ出すというと、魚が値下りして、腐ってしまう、暑いから……。食っていけないから冷蔵庫を特別施設して、そうして徐々に徐々に出していかなければ魚価を維持できない。と同時に日本の漁業というものは壊滅に瀕していく。これが同じアジア民族であって、魚を食う民族であるところの東南アジアにおけるところの漁場開拓の状況ですよ。中米においてどこで一体魚を食うか、どれだけどこへ一体輸出するか。アメリカは御承知通り南米からのカン詰に対しては、日本からのと同じように排斥をしておる。絶対に入れない。太平洋コーストにおけるところの漁民のストライキを見てごらんなさい。外務省であるならば、それだけの世界のデータを集めていなければならないはずだ。そういうあらゆる面におけるところの問題をよく研究してから、日本の漁民が将来漁場開拓に行って、そうして苦しまないような方途を作らなければ、この問題は簡単に片づかないと思います。ただ日本の漁場が狭くなった、食ってゆけないから行くんだというようなことだけを題材に選んでやられるということは、これは非常に将来の日本移民国策に対する重大なるところの影響を及ぼすと思いますから、よく研究していただきたい。この点だけ申し上げます。
  71. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) ちょっと委員諸君にお諮りいたしますが、先ほど申し上げたように、御要望の各大臣は、予算関係でおいでになれません。外務政務次官がおいでになっておりましたが、農林省では責任のある答弁ができまいということで、山木参事官の回答で済ませておったようなわけでありましたので、何とか政務次官でも来ていただかなければということを申したので、今吉川政務次官が、愛知用水のことについて衆議院で具体的な質問がある中を割いて来られたと、こういうわけであります。御質問があったらばこの際一つお願いします。吉川政務次官に対する御質問ございませんか。
  72. 江田三郎

    江田三郎君 先ほど両次官の了解事項について質問したわけですが、私ども先ほど来質問いたしてみまして、この会社の、十二条の事業計画資金計画というものもまだきまっていない。と同時に第十条の業務方法もまだきまっていない。われわれは業務方法というものは、これは会社憲法に当るべきものであって、この業務方法から事業計画なり資金計画なりというものが出てくるものであると、こう考えているわけです。そこで今まで農林省外務省とは、しばしば、あるときは派手に、あるときは陰性にけんかを続けてきたのですが、ただ今後日本移民の成功のために、両省間がほんとうに手をとってやっていくというのには、事業計画資金計画という第二義的なものだけの協議だけではいかんのじゃないか。その前に当然この業務方法についてはっきりと協議しておかなければ、これが先決問題なんだから、それをはっきりしておかなければこれは意味がないのじゃないか、一貫しないのじゃないか、こういうことからいろいろお尋ねをしておったわけです。  それについて山本参事官の答弁によりますというと、ここには事業計画資金計画及びその変更とあるけれども、この業務方法についても協議は受けることになっていると、こういう山本参事官の方の答弁がありましたが、そこまでいっているなら、これはもうあっさりと業務方法というものもここに、協議事項の中へ入れたらどうだということを私は申しましたのですが、一体農林省の方では、――これはおそらく了解事項については吉川政務次官がおやりになったと思うのですが、吉川さん、その業務方法について、これを入れておくということはどうしていかんのですか。
  73. 吉川久衛

    政府委員(吉川久衛君) 江田委員の御指摘のように、事業計画の私は前提条件ともなるべきものが業務方法書であると考えております。そこで政務次官の了解事項を打ち合せるときに、農林省といたしましては、第十条にございます業務方法と第十二条の事業計画と、それから資金計画並びに収支予算について協議をしてほしいということを申し入れたのでございますが、外務省の方では、事業計画だけですべてはわかるんだということでございましたが、私の方はできるだけここをはっきりいたしておいていただくことが、いろいろとお話し合いをしてゆくのに都合いいのではないかと考えまして、まあ強く要望をいたしたのでございますが、その後いろいろと折衝をいたしました結果、事業計画内容をなす資金計画を入れれば、その前提条件は当然わかるから、ここらあたりで十分連絡をとって、協議をしていただけるものと考えて、資金計画事業計画に加えて了解事項にうたった次第でございます。
  74. 江田三郎

    江田三郎君 ただいまの吉川政務次官の答弁を聞きましても、私と同じような考えで、当然この業務方法についても協議事項に入れなきゃならぬということをお考えになって主張された。しかしながら、なかなか外務省の方で聞いてもらえなかった。私はもうそれははっきりしたらそれでけっこうでございます。ただそういうように依然として外務省の方で農林省の言うことを聞かぬ。これはどちらがいいとか悪いとかいうことじゃございません。そういうような根本問題について、なお話し合いができぬようなことでは、この会社の前途は暗たんたるものだろうという印象だけを深めましたということだけで、質問はいたしません。
  75. 飯島連次郎

    飯島連次郎君 私は二、三の問題についてお尋ねしたいと思いますが……。
  76. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) 飯島君に伺いますが、吉川政務次官よろしゅうございますか……。
  77. 千田正

    ○千田正君 吉川政務次官に一点だけ聞きますが、今外務省に話しました中で、この移民の中に漁業移民外務省の方は十分御研究になっておらないようです。ということは、なかなか容易じゃありません、漁業移民は。農業移民は長い歴史を持っておって、繰返し繰返しそうした苦闘の中からいろいろ結論が出てきておるのでありますが、漁業移民はそう簡単ではないのであります。しかも市場が限定されておる。漁場もなかなか見た目に見えるような簡単なものじゃない。気候風土等がまた日本とは違う。そうして漁獲した魚の質もまた違ってくる。従ってそれの販売のルートというものは、おのずから日本考えているような簡単なものじゃない。そこで私は外務省にさらに慎重に御研究を願っておるのですが、一体農林省としましては、漁業移民に対するどういうような指導をされるというような見解を持っておるか、その点を一つ意見を伺っておきたいと思います。
  78. 吉川久衛

    政府委員(吉川久衛君) ただいま問題になっております漁業移民とは、チリーとアルゼンチンと考えております。今残された漁場であるということで、いろいろ調査をいたしましたところ、アルゼンチン等においても日本の漁業移民を歓迎するような情勢にございますので、この機会に北方で失われた漁場を南方によって開発をしていこうという考え方でございますが、具体的な問題等についてはまだ検討の過程にございますので、はっきり申し上げかねるのでございますが、残された非常に有望な漁場であり、しかも非常に歓迎されているというただいまの情勢を、できるだけこの機会を逃さずに、アルゼンチンの沖合、チリーの沖合へ、ただいままでの行き詰った日本の漁業を伸ばしていきたい、かような考え方であります。
  79. 千田正

    ○千田正君 どうも吉川さんのあれも非常に抽象的で、あまりに安易にお考えになっておるのじゃありませんか。ということは、残された漁場が少い、漁場を開拓したい、これはまあ当然日本の漁民としては考えることであります。私のお伺いしているのは、移民として、外務省のお答えによるというと、チリーならチリーの漁業家なり、あるいは政府なりの声がかりで、向うと合体して一つの企業体を作って漁業をやろうという考えのようでありますから、そういう意味で行くのか、あるいは漁業、いわゆる労働者として雇用契約のもとに向うへ行って、漁民として移民されるのか、どっちを一体主体にしていくのか、こういうことであります。  たとえば漁業労働者として行った場合には、日本の漁場の開拓にはなりません。はっきりそうしためどをつけない限りにおいては、こういう問題は得てして失敗を重ねるおそれがありますから、その点をはっきり、農林省は一体漁業に対してはどういうように考えておるのか、この点を伺いたい。
  80. 吉川久衛

    政府委員(吉川久衛君) その問題につきましては、向うでは漁業は日本に比べて非常におくれております。それで日本の漁業に対するところの技術と申しますか、あるいは漁業の経営と申しますか、というような問題について、非常にすぐれた日本の漁業を向うでは歓迎はいたしておりますけれども、しかし向うが主体となって日本の漁業移民を受け入れるという形ではなくて、日本のすぐれた技術、経営というものと協力をしてやってほしいというような実情にございますので、外務省でいわれておるような企業移民と申しますか、たぶん向うで歓迎をいたしておりまするのは企業移民でございます。従って私の方の考え方は、向うと共同をして漁業を開発をしていこう、かような考え方でございます。
  81. 千田正

    ○千田正君 私はこれは時間がありませんから論争いたしませんが、よほど研究してかからぬというと、移民であれば、イミグレーション――移民であれば、チリーならチリーの国民になることなんであります。再び日本に帰ってこないという精神で行かなければならない。これが移民の本質ですよ。あなたのおっしゃるのは、企業移民であるならば、向うへ行ってお互いに儲けようじゃないか、儲けたらまた再び日本に帰ってこよう、漁場の開拓であるのだ、こういうことであればおのずからそこは違ってくる。イミグレーションの性格というものと、企業の性格というものとはおのずから違いますよ。この根本精神をはっきりわきまえておかないというと、とんでもない問題になってくる。そうしてなお御研究不足な点は、チリーはなぜ漁業が発達しないか、チリーの国民は食わないですよ、魚はあまり。日本のように蛋白源と称して魚でなくちゃ夜も日も明けないような国民じゃないのです。しかも食う魚はおのずから限定されておる。二十種にも及びませんよ。それ以外の魚はどうするかというと、それはカン詰にして送るということですが、さっきも私が申し上げましたけれども、買う先はアメリカしかない。アメリカ日本と南米からのカン詰及び冷凍魚に対して排斥をやっております。こういうようないわゆる世界の販売市場の情勢を判断しながらやっていかなければならないのに、農林省として、そういう点について一体どう処理していくのか、これはもう一回研究していただきたい。  もし、あなたが今のようなお答えを繰り返すなら、論争する必要もありませんし、時間を取る必要もありません。
  82. 飯島連次郎

    飯島連次郎君 私は外務省にお尋ねしたいと思いますが、具体的にお答えをいただきたい。  まず園田政務次官にお尋ねをいたしますが、衆議院の委員会その他においても、園田次官はしばしば、十カ年に五十万人の移民を送出するということをおっしゃった。それが直接間接にかなり国内にも響いております。と同時に、国会にこういう移民会社法案が出て、予算国会において議決されたことによって、これに対する期待を持つ人たち希望はかなり高まっておると私は見ております。これらの期待、希望等に対して、十カ年に五十万人送出するというなら、一体具体的の内容というものをお持ちのことと思いますが、どういう内容を持っておっしゃっておられるか。
  83. 園田直

    政府委員園田直君) 当初移民送出の長期年度計画は、ただいま差し上げてある表にありますが、四十三万、約五十万の計画を立てて、年度五万の基準を立てておったのでございますが、当初、初年度におきましてはまず一万という計画を立てまして、渡航費並びにこれに伴う経費三十五億を予算要求をいたしましたが、予算折衝の経過において、遺憾ながら初年度は先般御報告のような状態であったわけであります。そこでその後の、大体十カ年間にわたる長期送出計画を検討しておりまするが、その長期計画は、まず第一は、受け入れ相手国との交渉の問題、及び一部におきましては、十年間に五十万くらいの移民計画数では、これは人口問題の一部を解決するには至らぬのではないか、もう少しさらに案を練って、これをふやすような方法を研究せよというような御指摘も受けておりますので、さらに検討し直しておるところでございます。
  84. 飯島連次郎

    飯島連次郎君 まだ研究中ということですが、それではそれはまた他日に譲ることにしまして、さしあたり本年度予算に計上されておる五千五百人について、先ほど参事官からきわめてラフな内容お話しがございましたが、ブラジルその他の国々に対する、この五千五百人の移民の業種別、国別の内訳等は、会社事業目論見書もすでに作成されているのですから、どういうふうにお考えですか、具体的に計数を……。
  85. 矢口麓藏

    政府委員矢口麓藏君) 国別でございますが、これも先ほどちょっと御答弁を申し上げました通り、一応のあれはできておりますけれども、そのときどきの情勢に応じまして変えていきたいと思います。といいまするのは、その時の政府方針によりまして受け入れの条件等が変ってくるのであります。ことにブラジルにおきましてはそういう傾向がございますので、今から幾らということははっきり申し上げられないということを御賢察願えれば幸いと思いますが、重点の順序を申し上げますと、ブラジルでございます。その次はパラグァイでございます。その次はおそらくはドミニカかボリビアか、私はドミニカの方が多くなるような、今の客観情勢はそうでございまして、その次はボリビア、その他いわゆる呼び寄せの形式のようでありますが、呼び寄せがアルゼンチン、コロンビア、その他の国からある、こう御了解願いまして、はっきりした数字を申し上げられないことを御了承願います。  業種別でございますが、これは実はどこがどれということははっきりした数字で、これもやはり申し上げる段階に来てないのでありますが、まあ大体先ほどから申し上げましたような、ラフな計算しかできてないのであります。これを実施する段取りになりますときには、この会社が発足いたしますときに、会社の首脳部が中心となりまして、審議会の了解を得て推進する、こういう考えであります。
  86. 飯島連次郎

    飯島連次郎君 きわめて抽象的なお答えですが、そうすると一般の人が入手できる「海外移住の手引き」という日本海外協会連合会が出しておる手引き、この第一ページをひもとくと、昭和三十年度中南米移民送出予定表というのがあります。これを見ると、各種移民を合せて、ブラジルは約三千に近い数が、これにはっきり数字で示されている。これはそうすると全然根拠のない数字ですか。
  87. 矢口麓藏

    政府委員矢口麓藏君) それはいつの日にちのものか存じませんけれども、この会社の問題が具体化していったときのわれわれの計算であります。それから最近皆様御承知通りブラジルの情勢がバルガスの死亡後悪くなってきまして、アマゾン関係は種々御指摘の通りの非難もいわれておりますので、重点をアマゾンから少しはずしたい。どの程度はずすかは、そのときの情勢と受け入れ状態等によりまして変るのでありますが、重点をはずしたいと思っておりますので、そのブラジル関係のものは少し減って、ほかの方面、たとえばパラグァイとかドミニカないしはボリビア等に移したいと、こう考えておる次第であります。
  88. 飯島連次郎

    飯島連次郎君 そうすると私どもも、ブラジルにはかなり少いながらも数的な期待をかけておったのでありますが、バルガス大統領の自殺を契機にして、相当かなり移民事業に対するブラジル政府としては大きな、日本にとっては好ましくない変転が起って、予算が半減したとか、雇用移民を中止をしておる、かなりこれは大きな打撃ではないか。そうすると、いつも園田次官が強調される移民外交の展開というのは、そうすると一体ブラジルをおいてどこに向って集中的に行われるのか。
  89. 矢口麓藏

    政府委員矢口麓藏君) 一つ私言い落しましたが、バルガスの死のほかに、もっと大きな原因をなしておりますのは、ブラジルにおきます悪性のインフレであります。これが最近相当のスピードで進んでおります。全移民に対する予算の割当というものを減額しつつあるということです。  次に移民外交でございますが、これは衆議院その他におきましてもしばしば御指摘を受けまして、われわれも一日も早くこれを作りたいと強く念願いたしておるのであります。まず順序を申し上げさしていただきますると、ボリビアにおきましては、現在進行の過程でございます。移民協定でございますが、ございまして、近く、おそらく近い将来にこれが成文化することと私どもは期待いたしております。進行の過程でございまして、次に計画だけ申し上げさしていただきますると、ドミニカにも同様なものを今作る準備を進めておりますので、これもそう遠くはないだろうという想定を持っております。  そのほかにパラグァイでございますが、パラグァイは現在在外公館があそこにございませんものでございますから、一々アルゼンチンから出張するというのでなくて、やはりあそこに公使館を置きませんと、非常にやりにくい事情がございまして、これがあればできると考えておりますけれども、そういうわけでございます。  それからアルゼンチンでございますが、アルゼンチンはしばしば、私も向うに参りましたときに、在外使臣を通じてそういう要求を出しましたけれども、今のところ向うから反応がない。これは非常にデリケートな問題でございまして、しかしこれでくじけることなく、引き続き交渉を進めるつもりでございます。  最後にブラジルが一番大きな問題になるのでありますが、これは先生方皆様御承知通りブラジルには相当の排日分子がございますので、これを移民協定という政府政府との申し合せにするということは、潜在しておりまする排日分子に好餌を与えるおそれが多分にございますので、その点は現在向うに赴任しております在外使臣に対して、よくその間の空気等を勘案しまして、適当な時期に任国政府に申し込みをして協定を作るよう話してあります。もし、政府政府との移民協定ができない場合におきましては、できればこの会社、あるいはその他の私的団体が移植民院との間に何らか取りきめを取り結んで、現在のアマゾンその他の芳ばしからざる状態を救済したい、こういう工合考えておる次第であります。
  90. 飯島連次郎

    飯島連次郎君 これはブラジルのことは第二にいたしまして、今協定が結ばれようとしておるボリビアに対して、これは先般もちょっと伺ったんですが、その内容等についてはまだ研究される段階ではないということで、これはまあやむを得ないと思うのですが、少くともわれわれが期待するのは、イタリアが戦後明らかに四年間にして五十万あまりの移民を海外に送出した、そのときの協定のおもな内容等を調べてみると、移民渡航費の全部または一部を受け入れ国側に負担させるという条項もあります。なお移民に、労働雇用、社会保険、社会福祉等に関しては内国人と均等の待遇を与える。それからさらに移民入国後の旅費は受け入れ国側に負担させる、まあその他にもございますが、これらの点については、初めて移民協定を結ばれようとする国に対しては、私はイタリアの措置等にならってこれは何とか、渡航費すら政府が貸し付けて、そうして向うに行って粒々辛苦の中から返済をしなければならないという、そういった特にアマゾンの奥地の開拓等に従事しておる農業移民の現況等からすれば、私はこれは当然日本政府が内国開拓等に対する助成等にかんがみても、これは助成してしかるべきだと思いますが、もしどうしてもそれがさしあたって困難だとすれば、こういう移民協定等において全部いけないとすれば、一部だけでも相手国に負担をさせるとか、あるいは入国後の旅費くらいは当然相手国政府でもってくれるという、そういう受け入れ態勢を移民外交においてこれはぜひとも推進していただくことが、私は外務省の大きな任務だと思う。これらについてお考えがあるいは多少おありだろうと思うから、差しつかえない範囲でお漏らしをいただきたい。
  91. 矢口麓藏

    政府委員矢口麓藏君) まことにごもっともしごくでございまして、われわれもぜひそういう工合にしたいと考えておる次第であります。ただ、今おっしゃられました渡航費の受け入れ国側の負担ということは、これは実施されておりません。明文上には、協定文上にはそういうのを書いてございまするけれども、われわれが調べたところによりますと、ほとんどこれは実行されておらないということを申し上げて差しつかえないと思います。  次に入国後の旅費でございますが、これは現在でも日本移民に関してもほとんど全部が各国で実行いたしております。ブラジルでもそうでございますし、ただ一つの例外はパラグァイでございますが、自余の国におきましてはみんなおのおのの国が負担してございます。  社会保障の点でございますが、これは国によっておのおの違いまするが、ブラジルにおきましてはほとんどブラジル人と同様の扱いを受けておりまして、たとえばアマゾンの奥地で病気になった場合には、現実に私も聞きかつ見てきたのでありますが、非常にいい取り扱いを受けております。その方面に対する心配ということは非常に少いことは申し上げられると思います。
  92. 飯島連次郎

    飯島連次郎君 ブラジルに関しては私どもは最近非常に悪い情報ばかりが陸続としてわれわれの耳に入って参ります。これはせっかく大きく門出をしようとする日本移民事業に対して、私は実に大きな暗影になっていると思う。これがどういう事情か、私ども現地を見ないからわかりませんが、向うの相手国政府移民に対する考えもかなり強く作用しておるのではないかということにも考えられますし、それからなお先ほどの経済金融事情等も関係しておることと考えますが、なお向うの入国後の指導、あるいはこれが取り扱い等について私は欠くるところが非常にあったのではないかと考えられる節が多いのでありまして、これはごく最近鳥取の海外協会の事務局長大久保君の報告等によりましても、実にそういう点が深刻に述べられております。その他もう申し上げるまでもなく、あるいは松原機関の跡始末等に対しても、私はやはり新しく送り出すということにあまりに急なるために、すでに入っている人たちのその情勢をそのままにしておくことは、これは砂上に楼閣を築くの愚を繰り返すことになると思うのです。私は会社目論見書等を拝見して、第一年次には旧移民、新移民と両者に分けて、ほぼ折半の人員に対する資金手当が考えられているようでありますが、重点は私は何といっても、先に入った人たちが落ちつけるように、そして少くとも非常に不幸不憫な状況にあるとすれば、そのよって起る原因を探究されて、それをどうしても向うに安住得せしむるようなことをまず第一にやるべきだと思う。これなくしては幾らあとから送ってみたところで、そういった先に行った人たちの芳ばしくない情報というものは、たとえばバチルスのごとくに新しく入植した人たちに伝染というか伝播をして、そうしてあるいは精神的にあるいは経済的に大きなマイナスになるだけでありますが、これは私どもの過去の経験に徴してもきわめて大事なことだと思うので、この会社金融会社ではあるといいましても、あまりに打算に走ることになしに、そういう点についての御用意なりお考えなりを一つ承わりたいと思います。
  93. 園田直

    政府委員園田直君) アマゾン地区に関するいろいろな問題等が日本の新聞あるいは雑誌に、現地を視察して帰った人の御報告にありますことは、御指摘の通りでございます。われわれも大久保氏からの参考意見等も詳細に検討しておりますし、現地の手紙、各協会からの情勢も収集いたしております。これは戦後に移民した一年ないし二年の方々のところにそういう事情が相当あるようでございまして、広いアマゾンの中には成功された方もございまするが、一年、二年の方の中には相当苦労をしておられる方もあるようでございます。またその中には、たとえばある一地に集結して、開拓中によその隣りの町に買い物にあまり出かけすぎるので、それを支配人が牽制をしたのを監禁だと誤認されたようなこともあるようでありますが、事実においては御指摘のようないろいろな問題があるようでございます。これはやはり政情の変化とインフレの増大、いろいろの問題がございましょうが、根本的に政府として責任を反省いたしますると、やはり問題は渡航後の資金、あるいはその他の面についての政府の援助が何ら具体的に今まで講ずる道がなかった、やられてなかったということと、もう一つは、これは言いにくい点で、実は衆議院でもこの種の緊急質問が上程されようといたしました際に、内々に実情を御報告申し上げて、これを本会議で緊急質問されますことは、直ちに向うの国にこの情報が流れまして、この隘路を打開せんとするのに非常な障害があるだろうという実情を打ち明けて、緊急質問の中止了解をお願いしたことがございまするが、最大の問題は、やはりこの移民の方々が、入る前と入ったあとの条件の食い違いと申しまするか、土地がたとえばいわれておったような適地でなかったとか、あるいは行ったあとの宿舎とか病院とか、あるいはその他の施設がいわれた通りの条件ではなかった、こういう点も非常にあるようでございます。従いまして、こういう点につきましては、早急に移民協定が結べなければ、政府政府の内々の相談におきましても、今後はこういう点を政府責任をもって折衝できるようにすると同時に、この会社資金その他の面についても、いろいろな援助なり、あるいは協同組合等の組織を推進することによって、そういう面を早急に解決していかなければならないと考えております。  なお会社のできましたあと資金の運用につきましては、今提示しておりますのは、これは目論見書でございまして、決して責任を回避するわけではございませんが、会社ができましてから、審議会等で立案をして、各省が詳細な検討をして、さらに決定したいというので、実は謙虚な気持で目論見書を書いておるわけでありまして、その資金の使い方について、旧移民と申しますか、今行っておられる方で非常に困っておられる方、そういうものをまず取り上げろという御意見は十分われわれも考えております。で、この面につきましては、ただ行っておられる各団体の方々の赤字を埋めること専門に使われますと、また一つの問題が起きて参りますが、そういう点も注意しつつ、今日行っておられる方で、資金さえ何とかなれば直ちに再生の道が講ぜられるという点については、御注意の通りにやりたいと考えております。  なおまた松原機関その他の問題等で、いろいろ財的物的の問題で、相手国政府の契約等につき、将来の移民入植上非常な阻害になる点は、政府といたしましてはある程度のいろいろな金銭なり、あるいは政治的な補助の面はすでに実施いたしております。
  94. 飯島連次郎

    飯島連次郎君 そこで私は一番問題になるのは、入植後二、三年にして、持参金はもうほとんど使い尽してしまった、といってたくわえもない、といって農業以外にはこれという特技がない、こういう人たちに対して、だれに何がしの資金を供給してやったら、その経営がぐっと伸びるかということのその判定ですね、これは結局会社でおやりになると思うのですが、これにはやはり大多数が農家でありますから、農業経営なりその農業の技術、経験の豊富な方でなければその判断を誤まることが多いと思います。そういう点については私、旧移民に対する、そういう経営指導、経営のよくわかる人たちという者を会社ではこれは厳選して、相当数募集になるということは、私はお考えになっておると思いますが、この点についてどういう工合に準備なさっておりますか。
  95. 園田直

    政府委員園田直君) 御指摘の通り考えております。
  96. 飯島連次郎

    飯島連次郎君 それからさらに企業移民とは申しましても、数の上ではおそらく相手国の実情等からして、近い将来には農業移民が大多数を占めて参るのではないかと思いますが、これについては第一の条件は、私は入植適地の調査選定ということだろうと思います。これについても相手国のあてがいぶちを食うというだけでは、やはり今までの移民のまずい先轍を踏むということになりますから、私はやはりこの会社なりあるいは在外公館なり、そういった技術者と申しますか、そういうことの経験者を一つ、在外公館のない、たとえばさっきのお話しのパラグァイですか、そういうところにもいち早く在外公館を設置されて、しかも設置されておるところにはそういう農業事情のわかる、適地調査等の適任者を一つそこに配属して、そうして広く大所高所から日本人の入植に適する土地を、外務省みずからおやりになるということは、これは欠くべからざる条件だと考えます。この点についての用意なりあるいは準備がおそらく進められておることと私は考えますが、その準備の状況はいかがですか。
  97. 園田直

    政府委員園田直君) 従来からも農林省と御相談しまして、適地調査を行なってはおりますが、御指摘の通りに、この会社が発足するとなれば、十分な資料はますますもって必要になりますから、在外公館等のない場所には早く設置したいと考えております。  なおまたいろいろな学者、あるいは特殊技術を持たれた方、農業専門家の方々の海外旅行等に際しまして、そういう方面の特殊な、専門的な知識をお持ちの方には、外務省といたしましては任務を委託しまして、適地調査をお願いしておりますし、今般なお適地調査の、専門の調査の目的をもって調査団の流遣も考えております。
  98. 飯島連次郎

    飯島連次郎君 最後に、「会社業務によって援助される移民の概数」という目論見書の第一年度の数字と、それから第一年度にお使いになる五億四千万円との関係はどういうふうにこれはあんばいされておりますか。
  99. 石井喬

    説明員石井喬君) ここにあげておりますのは、実はきわめて何といいますか、概算と申し上げては申しわけないのでありますが、私どもは、向うへ参りました移民の方々の中で、全部が全部この会社から資金を借りなければならん、そういった人ばかりだとは実は考えておりません。開拓移民で向うへ参られました方で、現在特にアマゾンについていろいろいわれておりますが、これは先ほど申し上げました通りでございますが、それでも中にはやはりそういう必要なしに、現地銀行から借りた金もちゃんと返して、なおかつ将来の見通しを立ててやっておられるような方も相当おられまするので、そういった方にはまあ必要はない。それからいわゆるコロノでもって向うへおいでになった方々の中には、独立する際にこの会社から金を借りなければなかなか独立できないという方もかなりおられると思いますが、同時に契約の内容その他によりまして、そういうことでなしに、自分だけで独立できる方も相当あるというように考えまして、そのうち、これははっきりした数は、十分調査しないと、あるいは具体的な段階にならないとわかりませんが、一応まあここに書いてございますような数字の人々に対してこの金を貸して援助したいというふうに考えておるわけでございます。
  100. 飯島連次郎

    飯島連次郎君 次に資金計画の中の資金調達の方法、その中で特に回収金の年度別の状況ですね、これを拝見すると、第五年度には九億一千六百万余りの資金を回収することになっている。最後の損益の見通しの表を拝見すると、第一年度は千六百万余りの赤字になっておりまするが、この五年度には一億九千三百万余りのこれは剰余金が出ることになっておりますが、私はこれは個々の移民の実情等から考えますと、大多数が農業移民であって、しかも入植して五年くらいで、個人の農業経営がこういう比率で黒字になるとはなかなか考えられない。で、大数観察をすれば、会社の損益の見通しというのもなかなかこういう甘い計算は出ないと思うのです。そういう場合に、会社はこういったいわゆるコマーシャル・ベースといいますか、そういうことにあまり力点を入れすぎて、この採算に乗らない方面にはだんだん資金をもう注がないことにして、なるべく採算のいい方面にだけ、つまり資金の効率的な運用という点から、そういう方面に偏する傾きが、私はこの会社法全体を見ると、何らかそういうにおいが濃いので、その点が非常に気になっているところへこの目論見書を拝見すると、非常にこれは無理な計算であると、こう思うのです。そういう場合に、極端に言って、せっかく資金を注入したけれども、五年たってもとんとんだ、利益がないという場合、あるいは赤字が出たという場合には、赤字の出る方には資金はもう回さないというお考えですか、あくまでもこれは採算中心会社運営をおやりになるのか。
  101. 石井喬

    説明員石井喬君) 私どもは経営中心、この会社が純粋の営利会社ではないという建前で、どこまでも運営してもらいたいというふうに考えております。ただいまの損益の見通し、大へん甘いじゃないかというお話、私どもまことに反省しなければならない点であるというふうに考えておるのでございますが、ただこの表では、先ほど申し上げましたように、一応この仮定の金利というものを算出いたしまして、それをもとにいたしまして計算して参りまして、その結果をここにあげました。貸し倒れ準備金というものも、これは実にこれでは甘いのかもしれませんが、まあ国内法によりまして最高ときめられておりまする貸し倒れ準備金をここに見た次第でございます。五年目の一億九千万円、かなり甘いという御非難も、確かにその通りだと考えますが、また一方やり方によりましては、五十数億の金を使うということになりますれば、この程度の、せめてこの程度のものは何とか出してもらいたいというふうにも考えておるわけでございます。  ただいま御指摘ございましたように、まあこういうような採算的な運営をやる結果、非採算的な面に対しては非常に力が注がれなくなるのではないかという御心配はまことにごもっともでございまして、私どもその点いろいろ考えまして、この回収に対するいろいろな事業計画その他を認可制にいたしております。さらにまたこの会社運営につきましては、いろいろと業務上の監督も出せる、かなり広範な業務上の監督が出せるような規定も置いてございますので、そういうようなことのないようにやりたいというふうに考えておる次第でございます。
  102. 亀田得治

    ○亀田得治君 時間が大へんおそくなりましたので、今までと重複しないようにして二、三確めておきたいと思います。  私はこの問題は、本件の会社とこの海外協会ですね、この二つが並立するような格好ははなはだまずいと実はこう考えておるのです。そういう角度から少し確めてみたいのですが、先ほど政務次官は、この事務委託費を相当潤沢に海外協会に流したい、そういう趣旨のことをおっしゃったのですが、これはどの程度の金額を予定されているのですか。
  103. 園田直

    政府委員園田直君) 今年度外務省から支出をしております補助額は千二百万円でございます。しかし千二百万円ではとうてい移民募集並びに貸付業務等はできませんので、さらに増額する必要があると思います。
  104. 亀田得治

    ○亀田得治君 さらに増額というのは、どの程度をめどにされておるか、概算でいいんですから……。
  105. 園田直

    政府委員園田直君) 現状におきましても、やはり千五百万円くらいの補助はしなければならんと考えております。
  106. 亀田得治

    ○亀田得治君 合計ですね、増額されて、追加がですか。
  107. 園田直

    政府委員園田直君) ただいま外務省から千二百万で、農林省から六百万補助をしておるそうでございまして、総計千八百万であります。いろいろな渡航の援助をすべき協会が、援助をした手数料等のごときものを取ったなどということもときどき聞いておりますので、そのようなことがあってはなりませんので、実費でこれを遂行できる限度におきましてはやはり二千二百万くらいは要るのじゃなかろうかと考えております。
  108. 亀田得治

    ○亀田得治君 それからこの会社の事務員ですね、総数と、それから海外協会で定款に書かれておるような仕事に従事をする事務員ですが、これはおのおのどの程度なんです。
  109. 石井喬

    説明員石井喬君) この会社につきましては、今後できまするので、その際に会社首脳部となる人がまたいろいろお考えがあると思います。現在において何人というはっきりした数は申し上げかねると思いますが、一応この目論見書案というものにおきましては、大体国内において、とりあえずの問題でございますが、十人ぐらいです。それから海外には二、三カ所支店を出すことにして、とりあえずおのおの二人ぐらいは出さなければいけないのじゃないかというふうに考えております。それから海外協会連合会につきましては、これは実は私どもは今後の移民の振興ということの基礎には、やはり国民全般がこの移民というものに対して関心を持つようなふうになっていかなければならない。一種の国民運動と申しますと言葉が過ぎるかと思いますが、相当啓蒙宣伝という面に力を入れていかなければならないと考えておりますので、それを大いに強力にやるということになりますと、事業費としては相当の額がかかるかと思いますが、現状におきましては、まあこの役員諸公につきましては、実は一文もお金は差し上げませんで、たくさん名前が並べてございます。事務員といたしましては現在十四、五人の者がここに働いている現状でございます。
  110. 亀田得治

    ○亀田得治君 それから海外協会の仕事でありますが、先ほど政務次官の答弁の中では、渡航費貸付はするが、回収等は会社の方でやるんだというふうに言われましたが、この外務省移民課から出された私の方に渡っておる資料ですね、この資料の十七ページによりますと、海外協会の仕事の中の第三番目に、渡航費その他の資金貸付及びその回収に関する事業というふうに明記されておるわけです。で、これを見ますると、回収の仕事もやるように見えますし、それから単に渡航費だけの貸付ではなく、そのほかの資金貸付等も扱うように見えるわけですが、もしこの通りに読むとしますると、会社ができ、協会が動き出しますると、実際上この会社の仕事を一切協会の方に何か移していくというふうな感じがするんですが、この出された資料の中で書いてあるこの協会の業務、第三番目というのはこれはどういうふうに解釈したらいいんでしょうか。
  111. 石井喬

    説明員石井喬君) お手元に配付いたしました渡航移民関係資料、これは資料の中でここに書いてございますのは、連合会が出発しました当時にきまりましたことでございます。その当時は移民に対する渡航費その他の貸付、その他の資金というようなことも実は考えていたと思うのでございますが、しかし現実の問題といたしまして、現在の海外協会連合会は、その他の資金を調達することはできないと思います。現実にその他の資金貸付というものは一切行なっておりません。  それから貸付及び回収の問題でございますが、これは従来は、現状においてもそうでございますが、渡航費貸付及び回収は海外協会連合会の責任になっておりまして、連合会が貸付をいたしまして、その回収の責任も連合会が負っておる。でこの回収の責任につきましては、ただいまのところは連合会は現地移民の受け入れのための機関がいろいろございます。そういうような機関と契約を結びまして、その回収をやってもらっておるという格好でございます。将来この会社が発足いたしました後は、この貸付回収の事務は、ことにその回収の事務は会社責任を負って現地において行うということになる次第でございます。
  112. 亀田得治

    ○亀田得治君 先ほど政務次官は、適当な時期がくれば海外協会について法的措置をとる、こういうことを二、三回おっしゃっているんですが、それは具体的にどういうふうにしようということなんですか、その法的措置ということの意味は……。
  113. 石井喬

    説明員石井喬君) 海外協会の連合会の法制化につきましては、昨年の移民行政に関する閣議決定がございました際に、この移民関係の実務はすべて内外を通じて海外協会連合会をして一体で行わせる。従ってその当時渡航費等も、現状でもそうでございますが、連合会をして貸付させる、しかしこの事業はその仕事の性質がきわめて公共的なものでございますし、政府から相当多額の資金もこれに出ているという関係で、どうしても法的な根拠が必要であるということで、できるだけ早く法制化するということを閣議決定いたした次第でございます。従いまして今回は間に合わなかったのでございますが、できるだけすみやかにこれのいろいろな基本的な事項、たとえばこの基本の金をどうする、あるいは役員をどういうふうにしてやる、事業はどういうものをやるのだというようなことを、法規の根拠を持たしめて執行せしめてゆくというふうに考えております。
  114. 亀田得治

    ○亀田得治君 海外協会連合会は、現在は財団法人になっているわけですね。
  115. 石井喬

    説明員石井喬君) さようでございます。
  116. 亀田得治

    ○亀田得治君 その組織では都合が悪いわけですか。
  117. 石井喬

    説明員石井喬君) これは現状において特に都合が悪いということではございませんけれども、やはり大蔵省あたりの強い御意向もございまして、政府資金を相当に扱うと申しますか、あるいは使用すると申しますか、というような団体であるからして、やはり民法による法人というよりも、法的な、もっと特別な資格を持たせる必要があるということでございます。
  118. 亀田得治

    ○亀田得治君 そうすると今問題になっている法案のような会社をまた作る、外務大臣なんかが大いに監督権を持っているような……、そういうふうに変えてくることを言っているわけでしょう。
  119. 石井喬

    説明員石井喬君) この会社法案のようなきわめてデリケートなものというよりも、むしろこの法人の基礎を民法ではない、特別の法律に置く必要があるということだと思います。
  120. 亀田得治

    ○亀田得治君 だから民法にない特別な法人とすれば、本件のような法案になってくるわけなんです。それ以外に何かありますか、特殊なもの……。
  121. 石井喬

    説明員石井喬君) おっしゃる通りに、民法以外の法人格を持たせるための法律でございますから、性格的にはこの会社法案のようなものになると考えております。ただその規制の内容をどの程度にするかというような点におきましては、会社とは多少ニュアンスの違いが出てくるのじゃないですか。
  122. 亀田得治

    ○亀田得治君 だから私言うのです。とにかく同じようなものが何か二つ生まれてくるという感じがするのは……。そこでその予想される法的措置というものは、大体このようなものしか考えられぬと思うのですが、たとえばこの本法の第二十五条ですね、罰則等が規定してあります。これはまあ公けの目的を持っているからということで、一般の公務員に準じてこの厳重な罰則が本法では規定されておるわけですね。そういうものもやはり当然これは入ってくるわけでしょうね。
  123. 石井喬

    説明員石井喬君) その点まだ十分にはっきりしたお答えは申し上げかねますが、必要に応じては入れなければならぬとも思っております。
  124. 亀田得治

    ○亀田得治君 それは必要に応じてはじゃなしに、つまり先ほどから具体的にこの事務員の数とか、そういうものを置きますると、株式会社の方は割合とえらい人だけでこじんまりした簡単なもの、それから実際に大衆に接触して繁雑な仕事をやって、あるいは貸付を頼まれたりいろいろするのは、この新しく予想されるその法人なんです。ところがこっちの方は、事務的なものにすらこういう公務員と同じような監督的な罰則が入っておる。してみれば当然これは新しく予想されるものにこそそれくらいのものは入れておかなければ……、つまり何でしょう、この罰則を入れたということは、頼まれたからといって不公平な貸し出しをやったり、そういうことをしてはいかん、そういう立場から入れている罰則でしょう、二十五条以下のものは……。だかな当然それは新しい会社にもその程度のことは、それ以上のものを予想するのがそれは当然かもしれないけれども、最小限度その程度のことは入ってくるべきだろうと私考えるのですが……。
  125. 園田直

    政府委員園田直君) 御指摘の通りでございまして、別に名目だけにしておく、もう一つ会社を作るということは本旨ではございません。ただ国家資金を出す大蔵当局の意見として、大な国家資金を委託するものであるし、なおまた今までの各委員の方々から御指摘をいただいておるような点もございまするし、重要な業務をいたすのでございますから、これは業務の点についてより、むしろただいま御指摘の監督権並びに罰則の点について目的があって、法制化しなければならないものと考えております。
  126. 亀田得治

    ○亀田得治君 大体私の心配していた点ははっきりしましたから、もう質問を終了したいと思いますが、できますれば私は移民政策全体というものが、本日の委員会でも各委員から意見が出ているわけです。でそれに対するこれは機構なわけですね、でこれは非常に重要なわけです。ところがこの会社と切っても切り離すことのできないのは、この海外協会が改組されて生まれるべき会社なんです。で、私は見方によってはそれが相当重要だと思う。それがどうもずっと検討してゆくと同じようなものになる。どうも性格が半ば公共的であり、両方ともそれならば、いっそのことこれは全部海外協会の人も含めた何か一つの団体を作った方がむしろ簡素でいいのじゃないか、監督にもその方がはっきりするわけです。新しい会社というのは、これはどうしてもこの会社を通じての監督になるでしょう。そういうところもどうもおかしいと思うし、できれば私は、だから新しいその海外協会に関する法案を早く作成して、一緒に出してもらって、それに対してこの移民政策に対する政府方針を堂々とくっつけてそうやってもらわないと、ちょっとこれだけを半分だけ一応承認せよという形をとられたんでは、判断がなかなかつきにくい。だからこの点は一つよく検討してほしいと思う。私ども納得さえいけばいつでもこういうものはどんどん通したい気持ですから……。
  127. 園田直

    政府委員園田直君) 御審議の経過におきまして、この会社業務の重点である外務、農林の主張もありましたが、実際におきましては、この法律案作成の経緯につきましては、一番最初に問題になったのは、ただいま御指摘の点でございます。すなわち国家資金を出す面にある。国家資金の回収並びに規制、監督というものの責任を持っている大蔵省は、海外協会というものと会社というものの二本建はいけない、これを一本にまとめていこうというのが大蔵省の一元化の意見であり、一方、他の省の意見は、他のいろいろな政治的な面から見ても、今日全国にわたるいろいろな業務を扱っている海外連合協会、この会社と一本に今日の段階においてまとめることは、人的な構成の意味においても、あるいは政治的な意味においても非常に困難が多い。政治的な面と、もう一つ渡航費というものが非常に論議の重点になりまして、渡航費というものを大蔵省一つ貸付資金という判断をするし、われわれ各省は、これは移民をする際に、日本の国民の移民をする人々には、国家が責任を持って援助すべき当然のこれは義務であって、ほんとうにこれは貸付金ではなくて、補助金として出すべきものである。従って一般の資金に関する企業の面と渡航貸付に関する面とは切り離して考えなければならないのじゃないか、そうしなければ、ようやく発足したこの会社が運行不能に陥って、何ら実績をあげ得ないということになる。こういう各種のいろいろな面からいろいろ論議をされまして、そして結局会社会社としてやる、そのうちの渡航に関する事務は今までの連合協会に委託しよう、委託するについては、正式にそういうふうになれば、渡航費などの監督権なりその他のものをきめなければならない、こういうようにきまったのであります。
  128. 亀田得治

    ○亀田得治君 もう私打ち切りたいと思いますが、希望としては、その海外協会の改組さるべき状態、それをまあ要綱でもいいですからね。これはおそらく構想は考えておられるでしょうが、参考までに至急私ども農林委員にも一つ出してもらいたい希望を申し上げておいて終ります。
  129. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) それでは本日はこれをもって外務、農林水産委員会の合同審査を終ることにいたします。    午後一時十一分散会