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公述人(新倉文郎君) 御指名であります
全国乗用自動車協会の新倉文郎です。簡単な時間ですが、要旨を申し上げまして御参考に資したいと思います。
結論を申し上げますと、本
法案に絶対
反対をいたします。その
理由を申し上げます。本
法案の制定は
自動車運送
事業を営むわれわれといた、しましては、免許可
事業を免許を廃止する方向へとつながらしめるところの非常に
危険性のある法律であるということが一言にして言えると存じます。
その内容は免許可
事業はこれを免許するに当りまして、きわめて慎重な審査を必要とするのであります。そこで審査内容につきましては、
公益事業を担当し、さような危険な
自動車を扱いまして大衆にまみえます観点から、起り得た
交通事故等におきましては、これを弁償する
責任能力、さような点に欠陥のない完全な資格を有することがまず第一に詮議されねばならんと信ずるのであります。しかるにその後における
自動車運送
事業の免許可を見ておりますと、まことに乱許乱設であって、かような重要な審査並びに要望せらるる資格に欠くるものが多いことをまことに遺憾と存じますが、それこれに対して免許可
事業の本質から、これが改善育成及び
責任遂行のすべてを要求されねばならぬことが、これは道路運送法の
規定するところであると信じておるのであります。
しかるにそのことなくして、ややもすれば起り得る
人身事故に対して、まことにこれが弁償の
責任を果しがたき部分が一部あるからという
理由をもちまして、これを
強制するところの、本法の提案を見たことは本末転倒であるのみならず、私はまことに遺憾な措置だと考えております。
前に、衆議院で
一般タクシー、ハイヤー並びにトラック等の免許可に対して、これを、免許をよして、自由営業にひとしいことに処置し、しかして起り得る
事故等の弁償に対応するために、
強制保険の道を講じたがよいであろうという
意見が、当時の法律改正の提案者である、衆議院の中曽根代議士その他から承わったのでありましたが、私はそれにまっこうから
反対いたしましたのは、
事故を起したから、それに要するところの治療費なり、ないしは生命を失われた方々に対して慰藉の道を、金をもって解決すればよいのだというところに大きな間違いがある。それはこの
事業に対応するわれわれの心かまえといたしまして、まことに飛躍をしておるところのいき方であると存じておるのであります。
交通事故の問題等がやかましくなっておりまして、かような未熟な、いわゆる私どもから見ますと、以下幾らか説明いたしますが、ずいぶん欠陥の多い法律が通りそうな傾向を持ってきておるというのは、これは
事故の問題に対する抜本的な考え方が少いからだと私は存じ上げておるのであります。
交通事故の問題は、何によって起るかと申しますと、車と人であります。そこで
事業責任に任ずる者は、常に完全整備の車を提供せねばならぬことであります。同時にこれを操作する従業員諸君は、平安にして安定のうちに日常の作業を続けなければならぬのであります。車がよくて、従業員諸君が平安のうちに
運行されまする
事業には、おそらく
事故は皆無にひとしいものになります。たまたまそうしてでも、いろいろな
理由によって
交通事故を起し、人身に危害を与えることはないとは言えませんが、さような場合におきましては、完全な労働者との、労働条件を確保し、車両の完備を期しておる
事業体は、さような、万一起り得た災害等においては、弁償解決をしておるところの過去の実例がなかったとは言えないと存ずるのであります。そこで私どもは、さような結果に対して、弁償すればいいという観念を根底から直さなければならぬのが、現在の責務であると存じます。しかして
事業者に対しては、さような
強制を受けなくとも、いつ何どきでも五十万や百万の弁償はできる
企業体であらねばならぬし、
事故を起さざる車と、
事故を起さざるところの従業員の待遇改善等が行われる
企業体であらねばならぬために、当時私は免廃法に
反対する一員といたしまして、おおむね基準台数は、労働組合が構成できる程度の、その最小
限度にする、そうすると、一人の専従者をもっていたしますと仮定いたしますれば、五十台というものが最小
限度の
企業体であらねばならぬ。しかして弾力性とあらゆる場合における負担、
責任に任ずる
企業体をもって、免許可の基準になすべきである。かように説明したことを覚え、かつ、それによって大方の御賛同を得たと信ずるのであります。
ここに私どもはかなりの車両を持っておりまするから、それこれの指数をもちまして
反対の
理由を申し上げてみたいと思います。私どもで大体やっておりまする大和交通の所属車両は二百五十台のハイヤーと、約四百五十台のタクシーであります。約七百台、ちょっと十台ばかり切れますが、大体の台数でありまして、これを一番
事故の多かった昨年の五月からをとってみまして、そうしてことしの四月までをとってみております。それによりますと、ハイヤー
方面におきましては、お客さんなり、第三者に与えたる人身の危害等につきましてお
支払いした
金額が、一カ月百五十円平均であります。一年にいたしますとこれが千八百円程度でありましょう。一カ月百五十円程度になっております。しかるにタクシーのほうはこれにルノー等が入っておりまするために、非常に昨年は
事故が増大いたしまして、一カ月の平均が大体千百円見当になっております。これはそれをもって少くとも完全示談解決をしておりまするから、それによって
あと民事訴訟を受けるとか、それ以外の
請求を受けておらぬのであります。全部を解決しておる実情がこの数字によって私どもの
会社のすべてを物語っております。これに対して本
法案の内容を見ておりますと、おおむね全国タクシー、ハイヤーの
保険料負担は幾分の差等をつけるとしても、かれこれこれを同様に見ておるのではないかという点に、法の未熟な点があると存じます。
しかして
事故を起す危険率によって
保険料の負担をきめるということになりますれば、少くとも東京におけるハイヤーとタクシーとの比率が十分の一に近いほどハイヤーは危険がないのでありますから、これを東京のハイヤー以上に走行の少い地方の
一般ハイヤーにこれをおしなべて通算してみますと、さらに低いものになりましょう。そうなった場合にですね。幾分の差等をつけるというがごとき言葉をもって、あるいは無
事故の場合における幾分の
保障戻しをするというような言葉をもってしては、まことに強大なるこれが負担ということになりまして、今まで自分たちが誠意をもって
事故を解決しておるところの、全額
賠償のすべての完全解消をしておるものから言いまして、それの数倍を負担しなければならないという結果になりましょう。こうなりますと、一部東京、大阪等の危険な車の流しによって起るところの損傷を、それを全国の落ちついた
事業者が何倍かの負担をして、これを補わなければならんということになりましたときに、私どもは全国
業者の負担の不公平、不均等、こういう点において大きな
反対の猛然として巻き上ることを覚悟せねばならないと存ずるのであります。
私は本法の制定に当って、当初より
自家保険制度を十分これに加味立案さるべきであるということを運輸当局にも力説いたしました一員といたしまして、さらに
反対の
理由を申し上げてみたい。健康
保険についてこれを見ますと、私どもでは約三千の従業員諸君に対して健康
保険を自家
保険しております。それによりますと、
保険料の滞納があるとか、あるいは
保険給付が不完全であるとか、ないしは治療が不徹底であるとかというふうな、ややもすれば健康
保険に対して受けるところの非難というふうなものを少しも聞いたことがございません。しかして自家
保険によるところの非常なこの経費の節減、お互いの慎重さ、さようなものがこれをプラスいたしまして、毎年数百万円の過剰金を生ずるのであります。これは他に流用できませから、いずれかの機会におきまして診療所の設置とかいうふうな、
一般の健康施設に対する設備にこれをかえるべきであるという議が持ち上っているような次第でありまして、国家がお役人の仕事によってやっておりますこの種
保険行政
制度の姿から見まして、実は
保険料の滞納及び
保険給付が遺憾となり、ややもすればいわゆる健保、健康
保険によるものは悪い安い薬が盛られるであろうというがごとき非難を聞くことは絶対にありませんことは、われわれは自家
保険の経験によって体験をし、これに
一つの立証をしておるのであります。ここに私どもは自家
保険をいたしますことは、同時にこれは本法に
反対することにつながっておりまして、相当の
会社は自分の手のうちにありましても、今のような
保険の
賠償は完全解決下において、
一つは月額百五十円、
一つは千百円程度においてすべてを完了しておるわけでございまして、ときには
被害者のけが人の諸君等から、まあ相手が大和であったから、やれやれ安心であったというふうな、こういうふうな言葉を聞くことさえ往々にしてあるのでございます。かような
保険料、その他実際上の問題について、私は立案の内容である
保険料の問題について、負担がきわめて不均衡になるという点と、それから実際において、これをわれわれの手のうちにおいてやっておりました過去の体験から見まして、何ら支障のないことであり、それをみずからが解決できるところの、かような行政圧力を受けなくても
保障ができ、それに対する担保が確保できるところの
企業体の免許と、その
事業の育成こそ、この際
事故を起さないという、人道上の本質にかんがみて、詮議されるべき筋合いのものであると、深く信じておるのであります。起した場合の
保障ということでなくて、起さざるところの政策、
制度、行政、これこそ痛烈に要求するところの、私の
反対理由の重大なものになるのであります。
そこで国家が、先ほど
委員長さんからお話がありましたが、六〇%を再保するということによって
保障するということになっておりますが、それは初年度において、再
保険料をもってまかなうことでありますから、国家予算には何ら予算の計上を見ておりません。次年度において計上するかしないかは、私は存じませんけれども、これは一応特別会計下におきまして、
保険料の収入、それからして
保険の弁償、こういうものとが右左の貸借勘定において相殺されることでありますから、本
保険制度を実施するに当って、何ら国は負担しておりません。かようなことになっております点に痛烈な
反対をいたします。
本
法案の内容を見てみますと、私どもの
反対をしておりますところの無
過失賠償制度が大きく取り上げられております。故意または重大な
過失以外も
賠償責任を免れないのでありまして、この担保として
保険料の積み立てによって、これを弁償することになりますから、おおむねというか、ほとんど全部の
事故は、
被害者のよいと悪とい、順法精神の有無にかかわらず、交通規則の無視にかかわらず、その
方面からおおむねこれは弁償されるところの性格に追い込まれて参りますと、現在の日本の他の交通機関ないしは歩行者、そういうふうな人たちの交通に対する道徳上の態度が、国民性の上から見ましても、まことに未熟であり、遺憾千万だと存じております。その部分を全部あげて、無
過失においてこれを全部弁償しなければならぬということになりますと、非常な大きな負担が、無条件で
自動車業者にかかってくるということを憂えるものであります。それに対しては、今まで解決をする場合において、彼らに
責任がある場合に、おいては、その
責任を当然ある程度しんしゃくされまして、示談解決をしておりますことは、妥当なる反省を求めておる
一つの
賠償方途であると存じます。
かくして、この
保険がわれわれにまみゆるところのものは、年々増大するところの
保険料の大きな重圧であって、しかも一面においては、ガソリンは上り、やれその他のいろいろな
制度が、弱いものに大きく振りかぶさってきておりますのみならず、この
保険受取証を持たなければ、営業ができない。しかも今申し上げましたように、全体的にこれを見ますと、まことに大きな負担を先取りされて、それによらずんば一日も営業ができない、運転ができないというような禁止的な姿に入ってきまするところのこの
法案は、単に
保障をするということでなくして、その
事業の存亡への
一つの禁止か、あるいは存続かということに締めつけるところの重大な要素を持っております。単に免許可をするとか、取締りをするというふうな、そうしたいわゆる法律の命ずるものは、妥当なる国民への姿ではなくて、人権に対して、営業に対して、その自由を認めざるところの、大きな障害となる本法の制定に対して、根底から私どもは
反対をしたいと存ずるのであります。
そこでこの問題を結論づけて申しますと、トラックとか、通運とか、早川さんなどもお見えになっておりますが、そういう
方面もおそらく
反対だと存じますが、立案者が運輸省であるがために、御遠慮なさっておるのではないかというふうなことを考えますことが、うがち過ぎておるとするならば、お許しを願いたいのでありますが、私はこの法律がぽっと出て参りました間においては、法の精神には賛成をしようとする声が、今日でもあるようでありますが、これが順次、
法案の御審議が進行するに至って、かく
保険料を大きく負担しなければならない人たちが、この
法案の内容を見ますと、だんだん、だんだん深刻に検討されまして、一日一日に
反対の声が増大しつつあるということは、この法律の内容がわかるに従って、私どもはしかあることと存ずるのであります。これを幾日かを猶予されまして、そうしてこの国民大衆なり
業者に再考を求めるならば、全国をあげて、この本案のごとき、いわゆる負担におきましても、解決におきましても、未熟なものに向っては
反対すると存ずるのであります。
ここで私どもは
委員長さんや、ほかの
委員の各位にお願いしたいことは、直ちにかようないわゆる新しい画期的な問題を実現することを急がれずして、時期尚早なる今日の段階において、これが検討をしばらく加えられまして、その完全実施に入ることを望むとともに、実施をされる場合におきましては、一たび
保険料をある程度払った以上は、それをもって免責たるの、お互いの
責任を果し得るものとならねばなりません。従って今の
過失がないものであろうと、あるものであろうと、ほとんど全体をあげて
賠償の対象になります場合においては、多分に社会政策を加味しておるところの本
法案であります限りにおきまして、国家は少くとも
業者の負担する、車所有者の負担する
保険料と同額以上の国費をもってこれが
保障に任ずるところの対策を、予算措置において打ち出さるべきことを私どもは要望して、またその主張をなすべき
責任があると思う。ただ、これは洞爺丸事件のごとき、あるいは紫雲丸事件のごときものと同様に、大きな
賠償をし、かつ
賠償は積み立ての範囲じゃなくて、その上に大きな民事訴訟がふりかかって参りまするから、この
法案の制定によって打ち出されてくるところの、ある程度の
保障をするという安心感は、
被害者からさらに大きな民事訴訟を受ける素因ともなります場合に追い込まれる姿になってくると私は思うのであります。かような点について、国が社会
制度の上において、これに対する相当の費用を計上して、もって
あとの分は全部弁償に任ずるから、
業者なり車所有者が負担した
限度においては免責になるというような、胸のすく法律になることを念願して、その場合においては賛成をしたいと存ずるのであります。
反対の
理由を簡単に申し上げました。どうぞよろしく御審議を願います。