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1955-06-30 第22回国会 参議院 運輸委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年六月三十日(木曜日)    午後一時五十九分開会     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     加藤シヅエ君    理事            仁田 竹一君            重盛 壽治君            木島 虎藏君    委員            入交 太藏君            一松 政二君            山縣 勝見君            高木 正夫君            三木與吉郎君            内村 清次君            大倉 精一君            小酒井義男君            片岡 文重君            平林 太一君   国務大臣    運 輸 大 臣 三木 武夫君   事務局側    常任委員会専門    員       古谷 善亮君   説明員    運輸省海運局海    運調整部長   朝田 靜夫君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○運輸一般事情に関する調査の件(海  運及び造船に関する件) ○海上運送法の一部を改正する法律案  (内閣提出)     —————————————
  2. 加藤シヅエ

    委員長加藤シヅエ君) これより運輸委員会を開きます。  運輸一般事情に関する調査中、海運及び造船に関する件を議題といたします。山縣委員より質疑通告がありますので、これを許可いたします。
  3. 山縣勝見

    山縣勝見君 私は二、三海運造船政策基本問題について、大臣にお伺いいたしたいと思います。ただ、基本問題と申しましても、抽象論だけでは、御質問いたすにいたしましても、また御答弁を願うにいたしましても、徹底し得ないことと思いますから、二、三の具体的な問題を中心としてお伺いをいたしたい。ただし、私の意図いたしまするところは、具体的にどうするとかなんとかという問題ではなくして、大臣から日本海運に関する基本的なお考えをお伺いしたいのが本旨でございます。でありますから、多少具体的な問題に触れることもございましょうけれども、趣旨はただいま申したような次第でありますから、御承知を願いたいと思うのであります。  先般の委員会において、ただいま問題になっておりまする石油業者自社船を持つという問題、タンカー・ボートを自社船として持つという問題について、片岡委員から御質問がございました。その問題については私は本日は触れようとは存じません。ただ、現在単に業界だけではなく、社会的にも大きな問題になっておりまするこの問題の解決は、要するに、特定一つ産業利害がその国の産業または経済全体の利害とどういうふうに調整さるべきか、またそれを国家財政見地から、あるいはまた国家経済の上から、どういうふうに見るかという問題に帰着するかと思ふのであります。これを海運の問題についていえば、これも具体的な問題を取り上げた方がよかろうかと思いますが、先年来問題になっております鉄鉱専用船の問題、石油業者の場合におけるタンカーと同じように問題となっておるところの、製鉄業者自社船を持って専用船として鉄鉱輸送に当るという問題、これはわが国重要産業として製鉄業はすこぶる重要であり、ことに鉄のごときはわが国産業基礎的重要資材でありますから、かような見地よりして、できるだけ安い鉄を使って日本産業基盤を強固にする、これは非常に必要なことだと思います。また、もとより製鉄業者としては、安い運賃でもって、しかも的確に鉄鋼原料等輸送するということは、これは当然に希望するところでありますから、その点から見れば、製鉄業者自社船を持つということを望むことも理解されないではありません。しかしながら、当然にそこに日本産業または経済という大きな見地から、重要な一つの問題があることを忘れてはなりません。日本産業の中でも最も重要な基本産業一つである海運企業との関係、その際にそのいずれを重く見るかという問題ですが、結局国家経済全体の立場から両者関連を比較衡量して決定さるべき問題だと私は存ずるのであります。さて、具体的に御質問いたしたいと思いますが、先般の委員会においてタンカー自社船問題について、私は片岡委員の御質問、さらにまたこれに対する大臣の御答弁を拝聴いたしておりますので、抽象論的には大臣の御見解を承っておるのでございますが、具体的に、たとえば鉄鉱専用船鉄鋼業者が持つという際について、これはただいまいろいろ経団連等においても問題になっておりますし、製鉄業者もそういうふうな希望を持っておりますが、この問題を中必として日本海運あるいは日本産業という観点からこれらの自社船問題を大臣はどういうふうに基本的にお考えでいらっしゃいますか。まずこの点をお伺いいたします。
  4. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これは、最近いろいろタンカーなどの問題で問題が起っておりまして、私は山縣委員の御意見をいつか拝聴したいと思っておったのであります。これは一つには、やはり御指摘のように、一つ日本経済自立上の要請があると思うのであります。これがもし外国のように経済的な実力を持っておった場合には、荷主輸送船を持つということが、さまで問題にはならぬわけであります。日本経済の底の浅さというものから、こういう問題が問題になってくるわけでございまして、やはり荷主自分で船を持っていろいろ自分の荷物を運んで行くということそれ自身は、好ましい、非常に好ましいことだとも私は思っていないのでありますが、ただ、今それなら多少のこの考慮をしなければならぬということは、やはり日本国際収支改善の面からでございます。経済自立と申しましても、それは端的に現われるのは国際収支の面に現われてくるわけであります。こういうことで、現在外国船によって、この運賃外国船に払っている。そういう場合に、これを日本船に置きかえて、そして外国船に払っておる代価というものを節約するということは、好ましいことなのでありますが、それが、多少の影響はあると思いますが、どの程度本来の海運業界影響を与えるか。全然無影響とは言いませんが、その影響というものはどの程度のものであろうかというところに、この問題についての、今御指摘のような問題について、私がこれは相当時間をかけて慎重に検討しようという態度をとっておるのはそういう点にあるのであります。だから、一つ国際収支改善の面と、海運界の育成という問題とか、どの点においてこれは調和させられるかということに、私自身としての非常な悩みもあるわけなのであります。まあ、このたとえばタンカーの場合にいたしましても、これが十分にタンカーが今あれば、問題は何もないのです。まだこれから計画造船で、六カ年計画タンカー財政資金でも使っていなきゃならないけれども、その上に今現に戦時標準型のタンカーなんか、十八万トンくらいも三、四年の間に作らなきゃならぬ。そういうものを作っても、なおかつ六カ年計画で三十万トンくらいのタンカーを作っても、それがまあ財政投資一つ限度だと思うが、作ってもなおかつ七割程度の油しか運ばれない。三割は外国船によって運ばなきゃならぬ。こういう場合に、船はほしいのです、タンカーは。それがタンカー業者に、この日本海運界に大きな打撃を与えないで、そういう船はほしいのですから、船舶を拡充するような方法はないかどうか。こういう点で、原則としては私は好ましいことじゃないと思う。しかし船舶を拡充するという必要は、日本国際収支改善の上からいって、これは必要なわけである。それがしかし一面において考慮の余地があることは、海運界に非常な打撃を与えないか。これをどう調和させるか。もし調和ができるとすれば、やはり船を拡充していくということは、実際問題としては好ましい。ここにどの点に、どういう点でこの調和をはかれるかということについて、われわれとしてもこれは検討を要する問題があるわけでございまして、やはりこの原則論的には好ましいことではないが、それを今言った国際収支改善の方からどの程度調和するかということが問題であると、かように考えておるわけでございます。
  5. 山縣勝見

    山縣勝見君 大臣の、特定産業と、それに関連しての他の産業全体との関連から見た御意見は、先ほど来私の開陳いたしました見解基本的には大体同じように伺いましたのであります。なお重ねて申し上げますが、本日は現在問題になっておりまするタンカー自社船建造についての御質問はいたしてはおりませんので、この点重ねて御承知を願いたいと思うのであります。  大臣からただいま基本的な考え方についてお伺いいたしましたが、しからばお聞きいたしますが、この鉄鉱専用船製鉄業者自社船として作るという場合において、これと、今問題になっておりまするような製油業者自社船としてタンカーを持つという場合と、同じような内容、同じような形態、同じような日本産業全体から見たウエート妥当性ないし必要性を持っているものであるかどうか。あるいは違ったものであるかどうか。この点どういうふうにお考えになっておられますか、お伺いをいたします。
  6. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これはやはりそういう業者自身が持つことが、海運界においては好ましいことと私は思っておりませんが、問題の点はやはり今申したように船腹日本に不足をしておるということで、海運界打撃を与えないでそういう船腹を充実できる方法はあるか。たとえば、もう船は持っておる、運営というものは全然海運業者にまかすのだ、ということも一つ方法でしょう。自分は船の船主だけであって、これをオペレートする面は全部自分でやらないというようなととも一つ方法でしょうし、だから、船を拡充されていくということは好ましいが、これを何か、今言ったことも一つ方法でしょうが、海運業界打撃を与えないでその要請に沿える点がないかということで、原則的には好ましいことではないと、こう考えております。
  7. 山縣勝見

    山縣勝見君 その点は大臣と全く同意見でありまして、われわれはその点に対しては別段大臣に御質問することもないのでありますが、私のお聞きいたしたいと考えておりまするのは、日本経済の現段階のもとにおいて、かつまた製油業者製鉄業者現状のあり方のもとにおいて、タンカー及び鉄鉱専用船をおのおの自社船として持たんとする場合、その両者産業ないし経済全体の立場から見て、同じように考えるべきであるかどうか。もちろん、実際には海運業に対する影響という点を考慮してという大臣の御意見は、私どももさよう考えるのでありまして、この点については御質問しようとは思っておりませんが、両者日本産業ないし日本経済全体に対する関係について、現段階においてどのようにお考えになっているか、この点を重ねて明確にしていただきたいと思います。
  8. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私もこの点についていろいろ勉強しているのですけれども、ああいう問題があって、やはり世界石油業者ども三割くらいは自分の船を持っている。だから、このタンカー業者石油業者というものとが将来どういう関係でいくことが好ましいのかということも一つの課題だと思います。だから、石油業者に比べると、鉄鋼業者が船を持つということはもっと好ましくないことだと私は思うのです。それよりももっと好ましくないんじゃないか。非常に石油業者タンカー業者との関係というものは世界的に密接なものがある。しかし、鉄鋼業者の場合に自分で船を持ってそれを動かすということは、どちらも好ましいことじゃないが、どちらがよけい好ましくないかというと、鉄鋼業者自社船を持つ方がよけい好ましくないことではないかというふうに考えておるのであります。
  9. 山縣勝見

    山縣勝見君 ただいま大臣結論的な御見解を承わって、私の質問に対する御答弁結論を先にお聞きいたすようなことになったのでありますが、ただし、その結論を出すまでに海運政策上いろいろな重要な問題がございますので、それらの点について一、二お伺いいたしたいと思います。  これは海運に限ったことではありませんが、一応海運中心に申し上げれば、海運企業というものと製油業あるいは製鉄業、そのいずれに自社船を持つということに関連してウエートを置くか。これに対して大臣は、海運に対して打撃を与えない程度に云々と仰せられましたが、もちろん結論は、そうなるしでありますけれども、その際に考慮の重点は、国費であろうと、民間資本であろうと、要するに大きな意味の国の資本というものがいかに有効適切かつ効率的に投資されるかという問題に帰するだろうと私は思う。そういう点から見て、たとえば製鉄業者自社船を持つ場合、それから製油業者自社船を持つ場合、かたがた私が申し上げたいことは、将来日本経済というものが相当進展いたし、また世界の鉱石の生産輸送、それから製鉄それからまた原油の生産、その輸送製油、それらのルートが変ってきて、日本製油業あるいは製鉄業というものの規模が拡大強化された場合における論議をいたせば、これは切りがないと思いますが、私はあくまでも現状日本経済のもとにおける製鉄業あるいは製油業という建前のもとに御質問いたすのでありますが、タンカー鉄鉱専用船とは少くとも現段階のもとにおいては相当の差異があると私は見る。それゆえに、結論として大臣が、それはどちらも好ましくないが、どちらがより好ましくないかといえば、鉄鉱専用船だと仰せられたことは、結論としては私は同感ですが、要は、たとえば鉄鉱専用船等から見ますと、これは米国のごとく、製鉄業者というものが鉱山、輸送港湾というものの一貫したルートを持って、そうしてその特定ルートに限ってその専用船を所有、運航する。その際には何ら海運業を圧迫することはない。不特定、多数のルートに運航したり、片航海に輸送することはしない。従って、国家的見地よりして国費をむだに使わない、民間生産力をむだに使わない、いわんや海運業に要らざる打撃を与えないということであって、この点タンカーの場合いささか事情を異にしておるのではないかという意味で私はお伺いしたのですが、さきに結論的に私と大体同意見の御意見を承わったので、そこに至るまでの問題についていろいろ御質問いたしたいと思っておりましたのを省略せざるを得なくなりましたが、私はこの鉄鉱専用船については、かって通産省あたりでも相当これを取り上げて問題にいたしましたし、現在製鉄業者も問題にいたしておりますが、これはどこまでもやはり特定ルートに、一貫経営のあるところにおいてやるべきであって、たとえばわが国鉄鉱石を輸入する北米カナダにいたしましても、東南アジアにいたしましても、それと対応する日本の各港湾にいたしましても、今伝えられるような鉄鉱専用船に対応した荷役設備がほとんどない。ことにアメリカのグレート・レークのごときは四、五万トンの貯鉱桟橋を持って、それに横づけしてそうしてシュートしてやる。そういうふうな船だけをいかに作りましてもだめでありまして、専用船の利点とせられているいわゆる割安であり経済的であるということとは、およそ反対の結果を招来することとなるのであります。こういう意味でお伺いしたのでありますが、大臣の御所見は私と全く同意見でありますから、これらの点に関する質問はこの程度に省略しておきます。  次にお伺いいたしたいと思いますのは、第十一次の新造計画がいずれ進められるのでありますが、この第十一次新造計画そのものについて私は本日お聞きいたそうと思いません。本日お聞きいたそうとは思うのは、そういうふうな問題にあらずして、大臣から日本海運政策についての基本的なお考えを伺うのが本旨でありますから、十一次造船をどうするかということについては別段お聞きいたしません。  ただ、その前提として、ここ数年来ことに金融業者新造計画に当って資金の貸与をいたす際に、海運企業投資をする際に、日本海運企業の再編成に対する政府方針をただし、それを基礎とし参考として造船融資に対する態度をきめるということが慣例でもあり、本年もまた同様なことであろうと思いますが、もうすでに予算もまさに通過せんといたしておりますし、政府も第十一次造船の準備をいたしておるようでありますが、それに対して海運企業合理化編成に対する基本的なお考えはいかがでありますか。海運造船合理化審議会に対して内示をするとか、あるいは一定の結論をお持ちになるような段階に立ち至っておりますかどうか、お伺いいたします。
  10. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) まあ合理化審議会等答申もございまして、これによってグループの形成は自主的にやっていく、そういうことで国際競争力強化していく、経費の節約もはかるということが大きな荒筋の考えでございます。これは私は就任以来、海運振興策というものについてはいろいろとこれはやって、考え方をいろいろ検討も加えてもみたのですが、なかなかこれが難問題で、たとえばまあ資本構成の何か是正をして、一つは個々の企業体自身というものがもう少し基盤の強いものができる方法がないか。それができれば、一つ不当競争——お互に不当競争しないで国際的な競争力を持たなければならぬのですから、そういうことで再編成——企業基盤強化して、その上に立って一つ海運の再編成ということが考えられないかということで、幾度も検討してみたのですが、なかなかぶつかって、これは海運業だけをとってきて、日本経済の中でこれだけを引き出してきて、これだけを基盤強化するということでは、行き詰まってくる。どの企業もどの企業も同じような状態を持っているわけです。だから、これだけを取り除いてやろうとすると、抵抗が起ってくる、ほかの産業から。それならこの産業をどうするのだということで、非常に各企業体経営基盤強化するということが、いろいろ案が、やはりその案というものが具体化されないのですね。その点が一つ。それと、今申したように、そういうことができて、そしてもう少しやはりグループ強化ということができればいいことはわかっているのですけれども、これも今の経済統制経済の時代ではございませんし、やはり自主的な、一つ企業体自身の自主的な態度でないと、すべての建前はそういうふうになっていない。そこにまあ山縣委員の御質問に対して御満足がいくような答弁ということには、まことにならないことを恐縮に考えておるのであります。  何とかしなければならぬと考えながら、これだといって、これで日本海運界が振興できるのだというよう非常な妙案というものも、いろいろな案を考えながら行き詰るという点もある。だから、現在のところでは計画造船である程度船腹を確保していく。とにかくこの戦争によってほとんど船腹が壊滅したのですが、これの船腹の拡充を年度計画によってやっていくということと、なるべく法律の強権的なものでなくて自主的な一つ業界の協力によってそして再編成と申しますか、グループ強化によってできる限り不当な競争を避けて国際競争力をつけていくという、まことに微温的なものであるわけでございます。いろいろお知恵があれば実際拝借したいという率直な気持でございます。
  11. 山縣勝見

    山縣勝見君 ただいま大臣基本的なお考えを承わって、現在グループ中心にして、微温的だと仰せられましたが私は徴温的がむしろいいんであって、海運政策基本というものは元来自由でなければならない。自由であればあるほど、海運政策は完璧に近いと考えるのでありまして、強権でもってやらないという考えは全く同感であって、ぜひそうお願いをしたいのであります。ことに海運政策を一言にしていえば、自由しかない、ただ金融的に、国際的にいろいろ問題がございますから、必要の最小限度において政府がいろいろ監督なされていくことであろうと思います。この点についてはさような大臣基本的なお考えを承わって、非常に私どもは安心をいたすのであります。  ただ、それに関連して、最近憂慮をいたしておりますのは、毎年の新造計画に当って、政府はさような考えを持っておられるでございましょうけれども、何といつも、新造計画金融を伴わなくてはできない。ことに国家財政資金を預かっている開発銀行においても、また市中銀行はもとよりでありますが、政府代行機関であるともいうべき開発銀行においてすらも、運輸省政策に対して二、三の意見が出るというのが実情であって、海運政策に関し、もとより運輸省は確固としたものをお持ちでございましょうけれども現実の面においては、金融政策サイドから制約づけられた海運政策というものが、ややもすれば重視せられがちであり、ときには金融政策によって海運政策がゆがめられているという懸念が非常に強い。これは日本海運の将来にとって私は実に懸念にたえないのであります。そしてそれが例年の新造船建造に当って、海運企業合理化という名において、金融サイドから運輸省にプレスをかけるという事実を私は現実に見ておるのでありますが、ただいま大臣のお説を拝聴して私は非常に意を強ういたすのであります。  ただ、この際具体的な問題の二、三について、なおお伺いいたしたいのでありますが、すでに予算も近く国会を通過いたしまするから、おそらく海運造船合理化審議会等において、金融方面が新造船に対する融資をきめるについての条件的な意味において、政府はどういうふうな海運企業合理化あるいは再編成方針を持っているかということを必ず政府に対してただすことでありましょうし、政府もまた、すでに審議会等においてその方針を内示されつつあると思うのであります。具体的のこまかいことについて大臣にお伺いいたしますことは恐縮でございますが、場合によっては具体的な問題は調整部長から承わってもよろしいのであります。先ほど来たびたび申し上げておりますように、具体的な問題についてお伺いいたすのが目的ではなくして、ただそれらを中心として海運政策に対する大臣基本的なお考えを承わりたいというのが本旨でございまするから、それから二、三具体的の問題を中心としてお伺いいたします。  将来日本海運というものを、今仰せのようなお考えのもとで、企業分野の画定をはかるということを政府はお考えになっているやに伺うのでありますが、それはどういうふうな意味であり、またどういうふうなお考えのもとに、またどういうふうな形体において行われようとしているか。またそれがどういうふうに日本海運の進展のために役立つのであるか、承わりたいと思います。
  12. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) その詳細の点は調整部長が補足いたしましょうが、大きな一つ考え方としては定期船不定期船——まあ、定期船につきましてはオペレーターの自社船ということに次第々々に持っていく、そうして不定期船につきましてはそうもいきますまいけれども、そういう形に持っていきたいということが大きなねらいでございます。そういうことで、多少の海運会社の、何と申しますか、整理等も行われた例があるわけであります。これはそういうふうに行政指導をいたしたいと思います。  もう一つは、今御質問の中にあったかと思いますが、本年度の第十一次造船については、一昨日市中銀行代表者が参りまして、融資開銀八割、市銀二割ということで銀行協会の方できめたという話であります。また開銀の方に対して市中銀行優先弁済の条件を出して、開銀の方もこれを承諾をされた。今年度の大体の資金的な、十八万九千の建造計画に対する資金の話し合いは現在ついたわけでございます。またその十八万九千トンの内容につきましては、タンカー五万四千トン、貨物船十三万五千トン。定期船不定期船との割合については、少し定期船を多くしたらどうかということが合理化審議会の小委員会にあるわけであります。またその割合等答申を待ってきめたい。御質問がそういう点にも触れられたかと思いますので……。
  13. 山縣勝見

    山縣勝見君 調整部長の方からそういう点について……。
  14. 朝田靜夫

    説明員朝田靜夫君) 山縣先生の御質問の具体的な問題についてお答えをいたしたいと思いますが、定期不定期分野をどうするかという問題と、定期船自社船主義でなければならないと、こういうような方針を立てておるということの可否、こういうような問題に限定をいたしましてお答えを申し上げますというと、われわれの方の考えで申し上げますならば、定期船はどうしても輸出貿易の振興と密接な関係にあるものでございますので、どうしても使用船腹が変動をいたしまして、定期が予定通りのスケジュールを組めないというようなことになりまするならば、貿易の伸張にも影響をいたす、こういうような考え方でおりますのと、いま一つの点は、今後伸びまする定期船の航路と申しますのは、大体におきましていわゆるアメリカ系のオープン・コンファレンスというものでなくて、クローズド・コンファレンスというイギリス系の同盟の航路の拡充をされる方面の航路でございますので、従いまして、こういう英国系の航路同盟につきましては自社船主義を建前にいたしております。用船はごく例外で臨時的な場合にのみしか認められないという慣習がございますので、どうしても定期につきましては自社船主義で今後の建造をはかりたい、こういう考えでございます。  いま一つの点は、不定期船市場がよくなりますというと、今まで計画造船におきましてこの定期航路に使うといっておる使用船腹不定期船に持っていく、そうしてまた定期がよくなれば不定期から定期のところへ帰ってくる、こういうことになりますというと、定期航路のその中においてまた不当競争が起ってくる、こういうような考えでおりますので、どうしてもそういったところの計画造船において、定期航路を拡充していきます際に、この船はこういう定期航路に使用するのだという条件のもとにおいて認めていきたい。これはマーケットなり海運市況のいかんによりまして、厳重に拘束をすることはどうかと思いますが、少くとも計画造船におきましてはそういう予定通りの定期船というものを整備したい。こういう考え方からしまして、定期船自社船主義、こういうことを考えておるのでございます。不定期市場におきましては、こういうことは決してわれわれは厳格な規制を必要とするとは考えておりません。自由奔放に、オーナーでありましても、オペレーターでありましても、コマーシャル・ベーシスで活動をしていただきたい、こういうような考え方であります。
  15. 山縣勝見

    山縣勝見君 ただいまいろいろ御意見を承わりましたが、自社船主義、ライナー・オペレーターの自社船主義ということはその通りだと思います。ただ問題は、しからば従来のライナー・オペレーターの系列にあるオーナーというものはどういうふうにお考えになりますか。
  16. 朝田靜夫

    説明員朝田靜夫君) オーナーにつきましては、ただいま申し上げましたような定期航路の船を絶対に作らせないんだという原則を設定することは、実情にも合いませんので、共有あるいは裸用船というような条件で定期航路の確保ができまするならば、これはわれわれども考えとしましては、認めてゆきたいという考えでございます。先ほどの定期船自社船主義に対応いたしまして、原則として不定期船につきましてのオーナーにつきましては、不定期船船腹を所有して、オペレーターに提供されるというようなことを原則に考えております。
  17. 山縣勝見

    山縣勝見君 私は重ねて申し上げますが、具体的の問題を呈示いたしているようでありますが、私は具体的の問題を今日問題にするのが目的にあらずして、大臣が、海運政策の振興に当って、基本的に今後どういうふうにお考えになるかについてお伺いしたいのであります。でありますから、こまかい点については別でありますが、基本的な問題につきましては、大臣からお答弁をお願いしたいと思います。  今お話しのライナー・オペレーターが自社船主義で行くということは、クローズド・コンファレンスの場合等を考え、そういうふうになるのは今お話しの通りだと思う。ただ、伝え聞くところによりますると、ライナー・オペレーターの自社船主義を遂行するために、従来ライナー・オペレーターの系列にあったオーナーの持っていたオーナー・ボートというものは、ライナー・オペレーターに肩がわりをして、その代償として、そのオーナーにトランプ・ボートを優先的に認めようじゃないかという御意向があるやに聞いたのですが、その点はいかがでしょうか。
  18. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) まあ大体そういう方針で、やはりこの定期船はライナー・オペレーター、今まあ自社船主義で行きたいということでございますので、今申したように、オーナーが、その系列というものが、そういうふうな系列に持ってゆきたいと思っておりますから、それが、オーナーがライナー・オペレーターに船腹を譲り渡したような場合には、これは不定期船を優先的にという規定があるようであります。そういうことで、この定期船については、漸次オーナー・オペレーターというものが一緒になるように持ってゆきたいと、こう考えているのでございます。
  19. 山縣勝見

    山縣勝見君 それはあるいは一つ考え方だと思うのでありまするが、具体的にそういうふうになりますると、現在の有力ライナー・オペレーターというものは、ここ一両年相当の、時には同時に数隻の建造をいたしている。そうし、その系列のいわゆるライナー・ボートのオーナーというものも相当の新造をいたしている。そうしてこれは議論にわたりまするから今日は省略いたしまするが、日本海運というものの従来の発展の過程から見て、また日本海運将来におけるバランスのとれた構成という点から見て、単に数社にライナー・ボートが集中される。しかもその数社のいわゆるライナー・オペレーターの系列にあるオーナーが、今度はトランプ・ボートを優先的に作るということになれば、おそらく特定の数社のいわゆるライナー・オペレーター及びその系列の会社のみがライナー・ボート、トランプ・ボートを作るということに現実に相なるのでありまするが、これでは日本海運の真にあるべき姿として決して適当なものではなく、真にバランスのとれた日本商船隊の構成という点から見て遺憾の点があると思うのであります。これもまた先ほど来申した資金的な面から海運政策を見る結果の一つと思うのでありますけれども、戦前の社船及び社外船という観念は戦後にはすでに適用できないのでありまして、もしも政府海運企業の再編成についての案を作るに当って、今御説明のような方針で進まれるとすれば、極端にいえば、いわゆる数社のライナー・オペレーターを中心にして、ほとんど建造計画の大部分の船が作られるという結果になると思うのであります。それでは先ほど来申し述べる通り、日本海運全体の立場に立って見て、決して妥当であるとは思われないのであります。  ことに、私が非常に遺憾にたえないのは、毎年これだけの莫大な国家資金を投下して建造いたす際に、建造に関する基本的な観念というものが年によって違っておる。たとえば、去年及び一昨年のごときは、共有ということに対しては相当重視をされている。それを慫慂された傾向がある。ただいま調整部長のお話では、ライナー・オペレーターの系列にあるオーナーというものにライナー・ボートを作らせる、共有で作らせるというお話でありますが、それも承わりますれば、定期船の建造に余裕がある場合ということであります。現在のように、これほど申し込みが多くて、これほど財政資金が枯渇している際、定期船建造に余裕があるというようなことは、現状のもとにおいては予想できないことである。そうすれば、共有という観念による建造は現実にはそう起ってこないのではないか。昨年及び一昨年あたりは、合理化審議会答申にもありました通り、ライナー・オペレーターの系列にあるオーナーには共有でもってむしろ慫慂しておった。しかし現実には、共有という観念が相当批判的になってきておる。それから果して日本海運というもののあり方から見て、オーナーはなぜそのライナー・ボートを持ってはいかぬのか。オーナーはトランプ・ボートしか持てない。むしろこれまで一両年前まではライナー・オペレーターの系列にあるオーナーというものは、むしろライナー用の船舶を建造所有して、そしてりっぱにその定期航路というものを維持する。もちろん調整部長のお話のように、用船料その他の問題もありましょうが、それは系列にあればおのずから別途の方法で調整される。この方式からいえば、日本のオーナーはトランプ・ボートしか作れないというふうに持っていって、果してこれは日本海運にとってバランスのとれたものができるかどうか、非常に疑問に思うとともに、共有問題等についてはいささかただいま申したような結果に相なっていると思うのでありますが、いかがでありましょうか。
  20. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) まあ一番問題は建造のワクが非常に少いというところにくるわけで、ワクが、相当のワクがあれば、山縣委員の御指摘の通り、オーナーが適所に作るというようなことも、船腹拡充の意味からいったら意義のあることだと思います。やはり少いワクの中から建造しようということになってきますと、どうしてもやはりライナー・オペレーターを重視するという傾向が出てくることはやむを得ないのではないかと思うのですが、今確かに御指摘のようなことも私はあろうかと思います。こういうことで船主の選考につきましては、今御指摘のようなことも勘案をいたしまして、これはよく小委員会等において検討を加えてもらいたいと考えております。
  21. 山縣勝見

    山縣勝見君 大臣の懇切な御答弁でございましたから了承はいたすのでありますが、ただ一点、さらにこの問題について大臣ぜひ頭に置いていただきたいと思いますることは、私は戦前の日本海運の姿をもって戦後の日本海運の姿を律してはいけない。ことに、社船、社外船という観念でもって戦前の日本海運は律せられておりましたが、現在は全然違う。しかしどんなにきれいな言葉で再編成の案文ができましても、結果として、たとえばあるAというライナー・オペレーターがありますとしますと、現実の従来の例から見れば、少くともその会社は二、三隻のオウン・ボートを作る。そしてその系列下にあって、従来とも新造船建造に当ってライナー・ボートを建造し来たったBというオーナーが、その所有するライナー・ボートをそのAオペレーターに譲渡することを慫慂されている。そうすると、そのAというライナー・オペレーターというものは、新船建造に当って、二、三隻はゆうゆうと作る。しかもその系列下のオーナーから、その所有するライナー・ボートの譲渡を受ける。しかもそのライナー・ボートの譲渡をしたAオペレーターの系列下にあるBオーナーは、優先的にトランプ・ボートの建造が認められる。これでは戦前の社船、社外船というような観念でもって戦後の海運政策を律すると同じような結果になる。こういうことでは、私は日本海運というものは、その発展過程から見ても、また日本海運というもののバランスのとれたほんとうの姿という点からしても、さらにまた、日本海運の将来の発展という点からしても、私は禍根を残すものと思う。それから定期航路における自社船主義については、今お話しの通り、世界の趨勢から見ても、当然そうすべきだと思いますが、ただし、その反射的効果として、今申しましたようなこと、またオーナーというものの所有船舶の構成にあまりに作為的なものを加味することは、できるだけ避くべきだろうと考えるのであります。従来、海運企業合理化の名において、海運政策金融見地よりする重圧にゆがめられてきたきらいが多いのでありますが、海運政策はあくまで日本海運の将来を見通しつつ、高く国際的視野に立って、大所高所より検討決定せらるべきものであって、運輸省はかかる見地より、確固たる海運政策をお進め願いたい。  それからグループの問題、先ほどお聞きしましたが、時間もありませんし、他の委員の御発言もございましょうから省略いたしますが、たとえば、現在の定期航路というものの安定度に対してはどういうふうにお考えになっているか。たとえば欧州航路、あるいはアメリカ航路、あるいはその他日本定期航路の現状において、その安定度はどういうふうにお考えになっておりますか。
  22. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 欧州航路を除いては、安定をしているというふうに考えているわけでございます。
  23. 山縣勝見

    山縣勝見君 この海運企業の再編成ということは、主として先ほど来調整部長のお話にございましたが、定期航路を中心として日本の対外競争力を増し、そして海運企業合理化をはかるということだろうと思うのでありますが、定期航路を中心にして再編成というものは重視されている。こう了解してよろしゅうございますか。
  24. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) さように御了承願います。
  25. 山縣勝見

    山縣勝見君 そうしますと、よく海運企業の再編成が云々されまする際に、有力オペレーターの中の二、三のものについては、再編成ということはむしろもう完成しておって、あまり問題にされていないというふうな考え方のもとにおいて、よくグループの問題あるいは再編成の問題が云々されるのでありますが、今私に対する大臣の御答弁によれば、欧州航路がむしろ安定いたしていない。たとえばニューヨーク航路のごときは、安定をしているが、欧州航路がむしろ安定していない。安定をいたしていない欧州航路に配船いたしているオペレーターについては、資産状態あるいはその他の点から見て、必ずしも他に比して優秀とは言えない。しかも再編成という問題の場合においては、それらのことが何ら問題にされないで、定期配船の点よりしても、資産状態の点よりしても、むしろすぐれている会社があたかも再編成あるいは合理化の点において問題視されるということについて、どういうふうにお考えになっているのでありますか。私の思うに、やはりこれは無意識の中に戦前のいわゆる社船と社外船という観念をもって全然事情を異にする戦後の日本海運を律せんとする誤りに出ずるものではないかと思うのでありますが、いかがですか。
  26. 朝田靜夫

    説明員朝田靜夫君) 欧州航路の問題につきましては、不当競争というような面で、英国側あたりからの批判もございますけれども、同盟の加入を申請をいたしまして、結局入れられないで、アウトサイダーとして活躍をいたして、ついにまあその目的を達して同盟に加入が実現をしたというようなことは、山縣先生も御承知のように、過去において同盟の経緯なり発生理由から考えましても、そういう事例は幾らもあるのでございます。この問題につきましては、きわめて国際的な反響なり関連なりで、きわめてむずかしい問題でありますので、同盟の問題につきましては、一応政府はノータッチということで基本方針を進めて参っているのでございます。今の段階におきましては、この程度答弁しかできませんのを非常に遺憾と存じます。
  27. 山縣勝見

    山縣勝見君 私のお伺いいたしておりますることは、その点でございませんので、いろいろ欧州航路について政府が御苦心になっておられますことは、よく承知いたしております。ただいま私はこれは問題にいたしておりません。私の問題にいたしているのは、海運企業の再編成がもう年中行事のように言われている。その海運企業の再編成が言われているその目標は、ただいま大臣の御答弁のごとく、不定期船については先ほど調整部長のお話にありました通り、これは自由闊達に世界に雄飛していく。ただ、定期航路というものは国家的な使命を持っている、また国の一つの施策というものが相当反映する、さらにまた国際的のいろいろな問題もある。従って、海運企業の再編成とは、主として定期航路の運営というものについて重点が置かれている。これは大臣の御答弁にあった通りであります。しからば、ここにお伺いいたしたいのは、日本定期航路は現在ニューヨーク航路はやや安定しているが、一番問題は欧州同盟の問題である。その欧州同盟にどの会社が就航しているかといえば、海運企業の再編成に当ってほとんどいつもどこからもあまり問題にされない会社がそれに従事している。それらについてどういうふうにお考えになっているのかということをお伺いしているのであります。従って、私のお尋ねしているのは、海運企業の再編成という名において最近の新造計画が相当作為的にゆがめられているのではないかということをお尋ねしているのです。その点についてどういうふうにお考えになっておりますか。
  28. 朝田靜夫

    説明員朝田靜夫君) 非常にむずかしい御質問なんでございますが、欧州同盟に加入をいたしておりまする海運会社が、やはり再編成との関係において、そこに問題があるんではないかという御質問でありますが、御承知のように、五つのグループが結成をされましたのはむしろ、何といいますか、政府の方で相当行政指導をいたしまして作られたものではなくして、自然発生的に、業界の自由意思でもっておのおの自主的におきめになっているのでありまして、きわめて好ましい姿だと思っておりまするので、私どもといたしましてはそれをバック・アップするような措置は講じているのでございますが、この問題について、それでは欧州同盟に参加している海運会社グループをどういうふうに再編成すべきかということにならないと、御質問の答えにならないと思うのでございます。これは山縣先生もおっしゃるように、自主的にできましたグループでございますので、それをできるだけ尊重いたしたいという考えで、それを何らかの形において調整する必要がありますならば、われわれの方も考えていきたい、こう考えております。
  29. 山縣勝見

    山縣勝見君 私の御質問の趣旨が徹底しないので、御答弁がむずかしいのだろうと思いますが、私はそれを申しているのではなくて、特に私は大臣にお聞きおき願いたいのでありますが、海運企業の再編成の真のあり方というものを多くの人が真に理解していない。というのは、この問題については私は身をもって苦い経験をいたしている。戦争中政府の強制的な慫慂によって海運企業の整理統合という当時の政府の至上命令によって、十数社が統合を強制せられた。それが日本海運に課せられた唯一の方策であるとしてこれを強制された。そしてこれはみごとに失敗に終っている。個人的の犠牲と損害はまだ忍ぶべし、日本海運という国家的見地よりする損失はこれを償うことができません。そして今またこれに似たやうな考え方が毎年海運企業合理化の名において強く押し出されている。たとえば現にオペレーターを数社にすることが日本海運の行くべき道なるがごとき意見が一部に有力に唱えられている。そしてまたこのような思想に基礎を置く再編成方針がいろいろ取りざたされている。真に日本海運というものを深く堀り下げないで単に金融見地から、あるいは便宜主義的に皮相な方策が案出せられる。海運というものはそんな単純なものではない。今後日本海運世界海運に伍して力強く押し進んで行くためには、それではいけない。海運企業の本質を真に理解し、これをつかんだ方策でなければならない。そしてそれは単に当面の方策ではなく、日本海運の将来にわたっての確固としたものでなくてはならない。そのことを大臣に御承知置き願いたいから、かりに具体的な問題の二、三をあげて御質問いたしているのであります。その意味で現在のオペレーターをどうするかという問題、これに対してグループ強化してやるという御方針に対しては、まことに賛成であります。しかしこれも決して強制すべきものでない。また、ことに金融サイドから見た海運企業の再編成であってはならない。毎年の例から見ても、新造計画の具体化に従ってこの懸念がさらに出て参ると思いますので、あらかじめ大臣にお考え置き願いたいと思ったのであります。そしていつも出るのは、数個の有力なオペレーターに統合することが日本海運として利益だというような意見でありますが、海運企業というものは、そういうふうな単純な考え方、一片の作文でもって律せらるべきものではないのであって、このことをぜひ私は大臣にお含み置き願いたいのであります。この点に対して大臣からまだ伺っておりませんので、この際御所見をお伺いいたしたいと思います。
  30. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) いろいろ山縣委員からお教えを受けまして感謝いたします。私もやはり、銀行が金融面からややもすると、優位な地位を持っておりますから、そういう面からいろいろな産業政策が出てくる形は、順序が間違っているものだと考える。実際問題としてはなかなか強いものですから……。しかしそれは運輸省なり通産省なり——そうあっては、これはよほど日本産業再建のためには、せまい金融の面から産業の再編成考えるということは弊害が多いと思います。そういう点で、各方面の産業官庁が独自の日本産業再建の考え方のもとに、そういうごくせまい眼からくる金融の圧力というものに対して、われわれが産業政策見地から善処をしていかなければならぬと考える。またいろいろ御指摘の、将来の再編成というものが、これはやはり自主的な、海運界においては自主的な一つの再編成と申しますか、グループ強化が望ましいので、これに圧力を加えるという行き方は、海運業界の本来の趣旨からいって好ましくない。今いろいろ申されましたことは、私どもといたしましても必要な参考といたしまして、今後の海運政策に当っていきたいと、こう考えます。
  31. 山縣勝見

    山縣勝見君 私はこの辺で質問を終りたいと存じますが、たまたま具体的な問題を提起いたしましたが、私のほんとうの趣旨は、海運政策基本問題について大臣に御質問もいたし、また私の所見もお聞きとり願いたいのが本旨でございまして、私の所見に対し、たまたま基本的には大臣もほとんど同じような御見解のようにただいま承わりまして、まことに欣快に存じます。  最後に一点、希望といいますか、御質問申し上げたいのは、現在造船融資に関して利子補給法がございます。利子補給については昨年以来いろいろ論議がございましたが、これに対しても私見を述べたいのでありますが、今日は省略いたしますが、ごく最近の海運企業現状から見て、おそらく来年あたりは、現在開銀から猶予されている財政資金の猶予利息は返さねばならぬようなことになるかもしれない。その際は開銀から受けている財政資金の利子は六分五厘となることになる。最近は多少海運市場も好転した結果、開銀の希望もあってあるいは開銀から猶予利息の支払いを要請されるようなことに立ち至るかもしれないし、また返せれば返した方がよい。しかしその際、国の財政資金が六分五厘であって、民間から借りている、これはもちろん利子補給を受けているのだけれども、それが五分だという、それでは国から出ている資金の利息の方が高いという反対の結果になることも予想される。これに対しては運輸省としては当然何かお考えがあろうと考えるのでございますが、私の所見は、その際には、御承知の通り、わが国海運に対する戦時補償の打ち切り額は約二十六億ございまするが、かりにこれを現在の時価に換算すれば五千数百億であります。先年私が英国に参っていろいろ調査いたしたところでは、英国ではわが国におけるごとき戦時補償の打ち切りのごときことはなく、従って、英国の海運業者は、保険金を中心とする豊富な自己資金でもって着々と船を作っている。しかるに、わが国では戦時補償を全額打ち切られて、壊滅せる日本商船隊再建の道を絶たれ、しかも一方においては、戦後日本海運の再建は国家要請であって、かたがたわが国海運は利子補給というやむを得ざる措置を受けてその再建に当り来たったのである。かような経緯による財政資金、しかもその財政支出の根源は、元来日本海運から五千数百億を召しあげた結果によるものである。その財政資金の方が民間資金よりも高い結果になるというようなことになるのでありますが、そういう事態にはどうお考えでありますか。
  32. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 開銀の利子が六分五厘、三分が猶予しているわけであります。むろん利益があれば猶予しない。これに対しては、資本構成のために必要がございますれば、この問題については開銀と折衝したい、こう考えております。
  33. 山縣勝見

    山縣勝見君 ぜひそうお願いをいたしたいと存じます。あまり私一人で長く質問いたしましても何でございますから、これで終ります。
  34. 一松政二

    ○一松政二君 私は、今山縣委員が、過去二、三年のつまり計画造船の割当が、ある程度、まあ山縣さんの御意見に従えば、ゆがめられているような傾向にあったのです。ところが、私は昨年、一昨年あたりに運輸省当局に伺ったところによれば、日本海運は戦争中から終戦と非常にひどい目にあって、船を沈められてしまって、そしてまた見返りに持っておった特殊預金はほとんど税金でとられてしまったということで、特にめんどうみるのだと、——まあそのほかにもいろいろなことがありますけれども海運に特にそういう特典を与えてやってきたのだという説明が常に大部分を占めておったのであります。ところが、戦前または戦争中に中に何ら船に関係のなかった人が、造船その他船会社をこしらえて、それに新造船がどんどん割り当っていくようなことをやったために、いろいろな問題が起ってきた。戦争中に犠牲を船会社にあまりにしいたので、それの多少の補てんの意味ならば、まあ正確にその犠牲になったということは無理かもしれませんが、事情の変化をあるいは加味したようなそういう割当をやっていったならば、私は問頭は起らなかったのじゃないかと思います。ただし、資金などの点において多少そういうものが不足して、あるいは関係のなかった人が有力になったというようなこともあったかと思いますが、まあそういう気がしておったわけであります。でありますから、私は今後にもそういう計画造船を継続する限り、そういう問題が起るので、昨年ああいう問題の発生以前から、あまりに競争が多くて、そうして割当に常に難渋するし、場合によっては痛くもない腹をさぐられるという、実に気の毒にたえないから、それに決定も非常に困難だから、財政資金市中銀行で許されるだけの金額をもって、造船所に政府みずから私は船を建造して、そうしてそれを裸用船なり何なりにしたらば、その難はのがれるのじゃないかという案を、私は一番先に投げかけたら、船舶国営化とか国有化というような議論が起っておったので、その後運輸省海運会社か何か一応考えられたのか、新聞にも出ておりましたが、それをとりやめて、また昔の方法に帰った。そこでまた、今後第十一次造船でおそらく非常な競争で、これが去年のように不況だったならばまだ楽であるかもしれないけれども、また幸か不幸か、ちょうど十一次造船をきめる直前、問題になる直前からまた海運界がやや、まあ幾ら続くかしれませんけれども日本造船所も半歳前の閑子鳥の鳴いたやつが今日の隆盛を来たそうとは、それこそ俗にいうお釈迦様でも御存じあるまいということで、私は運輸大臣は大体計画経済がお好きな方だと思うけれども、先ほどの御答弁の中にも計画のいかにむずかしいかを思わせるような御答弁があったようですが、その今の割当の問題は、これは見よう見方で、えこひいきしておるように見られる、これは必ず起ると思うのだ。将来もこれをやっておればやっておるほど一番起るので、自由企業が一番いいということになるのですけれども、私は一つ、そう急ぐわけじゃありませんけれども調査部長に一つ資料をもらいたい。  というのは、私はまあ船の方には、荷主として、あるいは船会社と多少関係したことがあるし、多少知っておりますけれども、しばらく遠ざかっておったので、戦争前の、つまり五、六百万トンの船舶を所有していたときのいわゆる有力船会社の、今山縣さんも触れられたが、戦争前のことがよかったとは思われないという議論もありますが、しかしそれは現有勢力で、自由企業でそこまで引き入れて、それが壊滅状態になっておる、そこで国家としてはそれに多少報いる意味で大きく持たしておったと思う。またあるいは占領軍のやったことで、あの特殊預金を打ち切ったということは日本経済のために非常にマイナスであったと思う。国家の国民に対する負債はすなわち国民の資産であって、国が全部自分の借金を踏みにじってしまって、国民を裸にしてしまって、国がひとり財政に余裕があるということは、とんでもない話だと思う。それで財政資金企業をやるところにいろいろな問題が起ってくるわけですから、私は過去五、六年間において割り当てた船会社と、それから戦前のまああまりもう日本の船が沈んでしまったころになったら問題になりませんから、日本の戦争に突入したころの、戦標船を造ったとかなんとかいうことはどうでもいいが、何かそこら辺の区切りをつけられる、一番はなやかなりしときの、まあ数隻以上でいいのですが、今の一ぱい船主みたいなものでありませんで、その会社と、戦後に新しく計画造船の割り当てた表がもしできれば、私はそれは非常に参考になると思うので、それでそれだけちょっとお願いしたい。  私は少し山縣委員意見の違うところがあるかもしれないけれど、今の鉄鋼船の建造及び石油会社がタンカーを建造すること、私はこの二つは画然と区別すべき問題であると思うのです。今日の石油会社は国民の犠牲においてボロもうけをしておるのだというのが私の概念です。ということは、自由に重油を輸入さしてごらんなさい、そんな利益をあげるはずはない。ところが、外貨が不足しているという理由のもとに、砂糖や大豆と同じことで、ある意味においては不当にもうかっておるわけです。国の政策から来ることでありますが……。そしてその一部、あるいは半分近くまでが、外資が入っておるわけです。それで国民には不足しがちなものでありますから、よく売れて、そして値段が高いのです。そこでもうかる。もうかるから船まで作ろうということになるし、銀行ももうかるから金が貸しやすくなるし丸善のごときも、伝え聞くところによると、おそらく三年ぐらいの間に償却してしまうだろう。また償却し得るわけだ。石油会社はもうけを船の方に持っていけば、税金で船ができる勘定になるのです。そういう観点から、私は船の建造が問題になっておると思うのです。それはただ単に荷主が船を作るという観点だけでなくして、一方に国の輸入制限という特別な施策によって、何百万トンかあるいは千万トンに近いかしりませんが、そういう国にない物資を輸入する特権が認められているわけです。それがボロもうけをして、そのもうけをそのまま表に出して自分が船を経営することになれば、税の方で償却に持っていくこともできる。そういう点に私は国民として割り切れざる感じを持っておると思うのです。そして荷主と船会社というのは、これは非常に微妙な関係にありまして、私はこの荷主と船会社というものが完全に分れているものであるという結論はなかなか下しにくい、人間が神様でない限り。荷主とそれからこれをオペレートする船会社が常に琴瑟相和して、そうして合理的な運賃でやってくれれば、これは問題はないのですが、これは私自身の経験を申し上げてもはなはだ何だと思いますけれども運賃世界的な急変があるのです。そして何ぼ前の年まで頭を下げて頼み込んだ運賃で、犠牲を払った運賃で、運ばしてくれ、運ばしてくれというような事態がかりにあったとしても、一たびマーケットがよくなってしまったら、極端な言葉でいえば、見向きもしない、はなもひっかけないということになる。それは私は荷主としては絶対に考えておかなければならぬことだと思う。ある程度自社船を持つ。まあ私個人のことを言えば問題でありますが、私が会社におったときには、大体運んでいるものの三分の一のものは自分で持っている方がいいのではないかということはよく言われていて、船会社の人も言うし、あるいは荷主の方の側も言っておりまして、荷主と船とを全然別に考えるということに断定を下すことは、そこに多少考えなければならぬ余地が起りはしないか。河野農林大臣がまだ就任当時でした。大豆なんというのは国に買い上げてしまってもうけをとる、あるいは砂糖の方もそういうようなことですが、そういう話もあったやに聞いております。ああいうまとまったカテゴリーの相当金額に上るドルの割当は、ドルの割当であることによってもうかるだけの話であって、私は正当なる自由競争による利益とは思われないのです。これは国民が非常に犠牲になるわけです。その点で私は単なる荷主と船会社との関係以外に、そういう問題があるということを一つ十分お考えになっておっていただかないと、極端な言葉をいえば、税金で船ができてしまうという、二重に国の負担において石油会社がひとり太ってしまうという問題が起りまして、これは将来非常に大きな問題だと思うのです。どうかその点をよほどお考えになっておいていただきたいと思うのです。  それから鉄鉱石の特殊船というやつは、それは山県委員が申されましたように、太平洋なり、あるいはフイリピンなり、マレーの鉄鉱石を買うために、特殊の鉱石専用船というようなものは、私はこれは考え得べからざるものだと思う。ただ、しかし専用船ではないが、どこにも向えるトランパーの普通の貨物船鉄鋼会社が持つということになったら、その隻数あるいはトン数のいかんによっては、私はこれはむげに排撃できないのではないかという気がするわけです。そしてフィリピンだとかマレーのごとき所は、もう帰り荷か行き荷か、どちらか片荷を考えても、私は採算はとれないと思う。一部の積荷かなんかならいいけれども、年に五十万トンなり六十万トンなりを一つの港から運ぶとすれば、もうほとんどこれは、行きか帰りか片方が空荷になりましたら、私は採算がとれるはずはないと考えております。これは今の専用船ではございません。専用船は私は問題にならぬと思うのだ。普通のとにかく荷物でも積める貨物船製鉄会社がかりにこしらえたって、何とか船会社にしてしまうわけですから、製鉄会社が作ろうとした場合には、これは私はやはり今荷主だからいけないのだと簡単には排撃されないのじゃないかという気がいたしますので、その点を一つ運輸大臣におかれましても、これなんか自由企業ならば、金さえできればだれが作ったっていいのだから、運輸省がイニシアチブをとり、あるいは命令権を持ってるのだから……。これは非常にむずかしい問題なんで、私はある程度そういうことも加味されて御判断を願わなければ、無理が起る場合がありはしないかということを心配するものであります。  で、先ほどトランパーとライナーの問題がありましたね。ここで調整部長にちょっと伺いたいのは、私は最近は船のことはわかりませんが、戦後においてはトランパーの分野が非常に減ってライナーになったように、前に海運局長から聞いておるのですが、そうですか。
  35. 朝田靜夫

    説明員朝田靜夫君) 世界の傾向といたしましては、従来不定期船であったと思われるようなものも定期船化しつつある状態でございます。しかし、この定期船の業態自身が変って参ったということが、それとともに言えると思うのですが、ニューヨーク定期航路にいたしましても、帰りには米を積んだり、オープン・カーゴというようなものを積んでおりますが、従来の戦前におきますような定期船であるとは解釈しがたいと思う。そういう意味におきましては、定期船化の傾向は非常に強いと申し上げてよろしいかと思います。  まあしかし、日本の場合におきましては、不定期船が従来の計画造船におきましても、建造量にいたしましても非常に少いものでございますし、最近におきましても不定期船船舶というものは足りませんので、昨年度におきましても年間四百万ドルという外貨による用船料を払っておる状態でございます。また今年度になりましても、四月、五月に至りまして、すでに三百五十万ドルという昨年度いっぱいに使いました外貨にほぼ匹敵するくらいの外貨用船料を払っておるようなわけでございます。一日も早く、こういったような不定期船船舶も、片方において定期船の優先というような問題もございますが、不定期船もある程度長期にわたって整備していかなければならない。ある程度定期船の建造量なり不定期船の建造量というものがいいとわれわれが考えるのが、五対五、こういうことになっております。
  36. 一松政二

    ○一松政二君 私は戦前だけしか知らないのですが、戦前のライナー、貨客ライナーとすれば、普通の、今調整部長が言うように概念的にも実際的にも変っておるが、戦前は大体において貨物だけのライナーと貨客混合のライナーと同じ航路の上に走っておったときもあるわけでありますけれども、特別な優秀船でない限りは、どんどん普通のトランパーが当時の優秀船——当時の社線に雇われてライナーの中に入っていっておると思うのですが、最近はどうしてそういうふうにトランパーとライナーというものがはっきり区別しなければならなくなったのか。それはスピードの関係なり、設備なり、多少船の構造にも関係があると思うのですが、そうそこに厳密な区別が私はないはずだ、船の利用価値としてはあり得べきはずはないと思うのですが、その辺はどういうふうになっていますか。
  37. 朝田靜夫

    説明員朝田靜夫君) スピードの点について定期船不定期船と分けるということも、お説の通り、少し理屈が通らないと思うのであります。従いまして、高速船がライナー・ボートであるということも言えませんし、その区別がスピードの点なり、あるいは船体の構造等によりましても、違っておらないような面が出てきております。たとえて申しますならば、最近におきます優秀トランパーというのは、少しデッド・ウエートにいたしまして、クローズにいたしますと一万三千トン、しかも十四ノット半というような船腹も優秀トランパーとして世界各国においても相当需要の強い船腹であります。従いまして、どこで線を引いて、これが定期船であり不定期船だということは、言えないと思うのでありますが、定期船でこの航路に利用するのだということになりますと、その貨物なりあるいは積みつけの構造なり、そういったものにつきましてほぼ限定されると思う。計画造船におきましてはそういった意味で、どの航路においてたとえばシルク・ルームがあるとか、そういうようなシスター・ボートで配船をいたす方が、オペレイトする上においても非常にいい、効率的だ、あるいは荷主に対するサービスもいいと、そういうようなことがいろいろかかって参りますので、そういう面におけるところの区別は言えると思います。
  38. 一松政二

    ○一松政二君 もう一ぺん伺っておきたいのですが、先ほど山縣さんの質疑応答で大体のことは想像できるのですが、それと運輸省方針もほぼ察知するのですが、まあ計画建造の場合に、たとえばライナーだけ、あるいは先ほどのお話の系列化で、あるいは資金の援助あるいはその他で、自分の系列に属するものにかりに船を作らした。それでそれを何ばい持っているか知りませんが、そうしてそれはどこどこの定期航路に使うのだということで運輸省も、計画造船も、合理化審議会の方でもその線に沿ってやったところが、会社のことですから、いつ経営者が変るともこれは限らぬわけです。そしてまた船を持っておるほどのものは船が一つの財産ですから、しかもいつ手放したらいいのか持っていたらいいのか、問題になってくる。自分の船でない限り、かりに世話をやいており金の心配をしてやった船であるけれども自分が所有していない限りは、どうもあてにならない。マーケットが変ってきたので、船を売られてしまったとか、あるいは株式が全面的にあるいは会社の支配権をとられるほど他の人にとられた、というふうなことで、船を引き抜かなければならぬようなことがかりに起らぬとも限らない。そういうことがかりに起った場合、あるいは起りそうなようなことがあった場合には、運輸省はどういう措置をおとりになっているのか。ちょっとそれは調整部長さんから聞いておきます。
  39. 朝田靜夫

    説明員朝田靜夫君) そういう場合におきましては、計画造船定期航路として建造を許可いたしましたようなものにつきましては、この航路について建造を許可するという意図のもとに許可いたしておるのでございますから、その面におきましての拘束はあるわけです。しかしながら、これは法令によって拘束をされておりませんので、計画造船の際の一つの条件になっておるのでございます。従いまして、これに違反いたしましても、罰則の適用も何もございません。これは一つ、その会社の信用の問題でもありましょうし、道義的な責任がそこにあると思う。ただ航路は八次ごろから、そういった航路の問題を詳細に審査いたしましたものでございますので、それ以前の計画造船についてはそういう条件がついておらない。そういうものにつきましては非常にむずかしいのでございますが、大体におきましてそういう引っこ抜かれるようなところにおきましては、建造の場合に債務保証を御承知のようにいたしております。その債務保証をいたしておるオペレーターの意図に反して持っていくということについては、よほど円満に話がつかないとできないというようなことで、事実上できるだけ円満に解決をしなければ、そういったような株式の引き受け、あるいは船体の引き受けということは押えられる。行政措置によりまして押えられると思うのです。
  40. 加藤シヅエ

    委員長加藤シヅエ君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  41. 加藤シヅエ

    委員長加藤シヅエ君) 速記をつけて。
  42. 一松政二

    ○一松政二君 その今の、結局、あるのは道義的な責任だけですね。そういう債務の保証とかいろんなことがあるけれども、それらの船会社の支配権が動揺したり、あるいは船の持主が変るような場合には、そういう問題はとうに考えてやっていることであって、いかに道義的に責任を持っておるといっても、もっと法律的にそういうことは問うことかと思うけれども、そうでないと、私はやっぱりマーケットがよくなったりすれば、そうして欧州航路なら欧州航路を作ったところで、あるいはニューヨーク航路にしたところで、一社や二社がやっているわけではないのですから、その航路に使えばだれでもいいことになるし、航路別にいえばだれでもいいのですし、特定の船会社からいえば、それをすっかり当てにしておったのに、それが競争相手の方にいってしまったりして、そうしてそれをさらに補充するにはちぐはぐになって定期航路が乱れてしまうという問題も起りかねないと思うのですが、そういうことはやっぱり今度の十一次造船の割当などについても、何とかそういうことの防げるような考え方をされておるのですかどうですか、伺いたいと思います。
  43. 朝田靜夫

    説明員朝田靜夫君) 先ほど山縣先生の御質問にお答えいたしましたように、定期船につきまして今一松先生のおっしゃったような事態が起りますので、なるべくは自社船主義を原則としてやりたい。それで、なおかつオペレーターの資産信用力の問題もございますから、あるいはそれだけでとうていまかなえないような問題も、ワクの関係からは問題がございますけれども、そういうような問題につきましては、やはり共有とかあるいは裸用船でもっていきたい。従来、御指摘のような事態が起りますのは、やはりタイム・チャーターでございまして、期間も比較的短いものが多いのでございますので、そういう弊害が出てくるのでございます。そこで相当長期な裸用船あるいは共有ということになりますれば、そういう弊害は起らないと、こういうような考え方から、先ほど申し上げましたような方針で進みたいと事務当局は考えておるのでございます。
  44. 山縣勝見

    山縣勝見君 先ほど調整部長の御答弁の中にございましたが、本年度新造計画について、定期不定期の建造量の割合は、当初運輸省としては、今お話しのように、五対五、現在ではさようにお考えになっておるやに承知いたしますが、先般、合理化審議会答申では、定期の方が五強というか、少し定期船の方にウエートを持ったような答申が出ておりますが、私はこれは運輸省の当初からのお話あるいはお考えの方がいいと思うのですが、どういうふうにお考えですか。答申が出た際に、どういうふうに御処理になりますか。
  45. 朝田靜夫

    説明員朝田靜夫君) 当初私たちの計画におきましては、今のお話のように、ほぼ五対五、正確な計画の数字を申し上げますならば、定期が六万八千、不定期が六万七千となりますが、今お話しがございましたように、合理化審議会の小委員会におきましては、定期の整備を急速にやる必要があるので、どうしても定期を優先させるべきだという御意見が出まして、不定期船につきましては五〇%以下にすると、こういう大体の意見が小委員会におきまして出されたのでございます。運輸省といたしましては、合理化審議会答申が、正式に総会を経てそういうものが出て参りまする際におきましては、一体五〇%以下でどこで線を切ったらいいのかということは、事務当局として非常に困るのであります。しかしながら、小委員会の討議の模様なり趣旨を考えてみますというと、三〇%や二〇%でいいというようなことは、そういう非常識なことはないのだと、こういうことははっきりしておりますので、この大体五対五という線を基本にいたしまして、何隻入るかという端数のトン数が出て参りますような場合に、あるいはなるべく計画をもとにいたしまして、その定期の急速整備優先というような思想ができるだけ満たされるということが、どの程度の量になるかということについてはまだきめておりません。ただ、そういう審議会の精神からいいますというと、そんなに原案とはかけ離れたものでないという気持がいたしておりますので、そういう方向で処理をいたしたいと思っております。
  46. 山縣勝見

    山縣勝見君 大体御意向承わりましたが、それでは大体精神は五対五、端数整理あるいはその他五対五の精神を失わない範囲において、万一どちらをプリファーするかという際には、定期船をプリファーするということに了解してよろしいでしょうか。簡単でけっこうです。
  47. 朝田靜夫

    説明員朝田靜夫君) 五対五ということをそこまで強く申し上げるつもりではございません。むしろ合理化審議会の五〇%以下ということの方に重点を置いて、そういう今申し上げましたような気持で調整をいたしたい、こう考えております。
  48. 山縣勝見

    山縣勝見君 五対五ということは、合理化審議会では一応小委員会——私はおそらく総会も通ろうと思いますから、五以下ということはやむを得ぬと思いますが、私の申し上げるのは、五以下の場合において、先ほど来調整部長のおっしゃっておるような精神で運輸省としては臨まれる、こう了解してよろしゅうございますね。
  49. 朝田靜夫

    説明員朝田靜夫君) 大体さようでございます。
  50. 山縣勝見

    山縣勝見君 もう一点だけ。先ほどちょっとお尋ねを漏らしましたが、ライナー・オペレーターの系列にあるライナー・オーナーが、そのライナー・ボートをその親会社に譲る場合において、そのリプレイスメントにおいて優先的にライナー・オーナーをとらんとするのか。試案として運輸省はお持ちであろうと思うのですが、これはお持ちでなかったらいいですが、お持ちですか。
  51. 朝田靜夫

    説明員朝田靜夫君) まだそういう案は持っておりません。
  52. 加藤シヅエ

    委員長加藤シヅエ君) ほかに御質疑はございませんか。——別に御質疑もございませんので、本日は、本件につきましてはこの程度にいたします。     —————————————
  53. 加藤シヅエ

    委員長加藤シヅエ君) 次に、海上運送法の一部を改正する法律案を議題といたします。  ちょっと速記をとめて下さいませ。    午後三時三十七分速記中止      —————・—————    午後四時七分速記開始
  54. 加藤シヅエ

    委員長加藤シヅエ君) 速記を始めて下さい。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時八分散会