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1955-06-07 第22回国会 参議院 運輸委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年六月七日(火曜日)    午後一時四十分開会     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     加藤シヅエ君    理事            仁田 竹一君            早川 愼一君            重盛 壽治君            木島 虎藏君    委員            入交 太藏君            岡田 信次君            川村 松助君            一松 政二君            高木 正夫君            三木與吉郎君            内村 清次君            大倉 精一君            小酒井義男君            片岡 文重君   政府委員    運輸政務次官  河野 金昇君    運輸省自動車局    長       真田  登君   事務局側    常任委員会専門    員       古谷 善亮君    常任委員会専門    員       田倉 八郎君   参考人    神戸海洋気象台    台長理学博士  松平 康男君    中央気象台予報    官       久米 庸孝君    東京大学理学部    理学博士    岸保勘三郎君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○道路運送車両法の一部を改正する法  律案内閣送付予備審査) ○運輸一般事情に関する調査の件  (気象業務改善に関する件)     —————————————
  2. 加藤シヅエ

    委員長加藤シヅエ君) では、これより運輸委員会を開会いたします。  まず、道路運送車両法の一部を改正する法律案議題といたします。  政府より提案理由説明をお願いいたします。
  3. 河野金昇

    政府委員河野金昇君) 最近における自動車の発達はきわめて顕著でありまして、本法制定当時は三十数万台でありましたのが、近々この四年間において百三十万両をこえるに至りました。これに伴い、自動車登録検査に関する事務もますます増加の一途をたどっております。  しかるに一方、定員及び予算は、国家財政現状からして、車両数増加に比例してこれを増加するというわけにも参りませんので、このように急激に増加する事務を処理していくためには、業務重点保安確保に集約し、複雑な手続等事務を極力簡素化、合理化し、行政の能率化をはかる必要があるのであります。  次に、改正案の骨子について御説明いたします。  第一は、自動車登録事項から原動機番号を削除し、原動機型式を追加いたしました。原動機は常に良好な状態整備をして置かなければならないので、整備の際に載せかえられる機会が多く、そのつど変更登録手続を必要としますので、その煩を省略しようとするものであります。ただ原動機型式が変りますと、車両の性能も変って参りますので、原動機型式登録事項といたしたわけであります。  第二は、営業用旅客自動車検査証有効期間は、現在九カ月とされておりますが、最近車両需給状況が好転し、かつ、整備状態も向上して参りましたので、整備状態が著しく良好であり、かつ、車齢走行距離等が政令で定める基準に適合するものについては、その有効期間を一カ年の範囲内で伸長することができるようにいたしました。なお、参考までに申し上げますと、自家用旅客自動車にあっては二カ年、貨物自動車については、営業用自家用共に一カ年の検査証有効期間を規定してあります。  第三は、冒頭に申し上げました目的に沿うように、自動車登録検査及び整備に関する諸規定を整理いたしました。  以上によりまして、改正法案提出理由についての御説明を終りますが、年々増加する車両数に伴う事務量増加に対処していくためには、ぜひとも法律改正を必要とすると考えられますので、何とぞ十分御審議の上、すみやかに可決されるようお願いいたします。
  4. 加藤シヅエ

    委員長加藤シヅエ君) 本案に関する質疑は次回に譲りたいと考えますが、いかがでございましようか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 加藤シヅエ

    委員長加藤シヅエ君) では、質疑は次回に譲ることにいたします。     —————————————
  6. 加藤シヅエ

    委員長加藤シヅエ君) 次に運輸一般事情に関する調査中、気象業務改善に関する件を議題といたします。  本日は参考人として、東京大学理学部理学博士岸保勘三郎さん、神戸海洋気象台台長理学博士松平泰男さん、中央気象台予報官久米庸孝さん、このお三人においでをいただいた次第でございます。  委員長からちょっと御挨拶を申し上げます。気象業務につきましては、当委員会におきまして、しばしば調査をいたして参ったのでございますが、気象変化に富むわが国といたしまして、気象観測予報について気象台関係においてなみなみならぬ努力を重ねておられますことを承知いたしております。しかしながら、気象業務をさらに充実いたさすためには、施設整備等を必要といたす場合も多かろうと思います。この点について、毎回予算要求をされておることと思いますが、必ずしも気象台当局から見て、なお不十分と思われる点もあろうと存じます。さきごろの委員会におきましても、その一例として定点観測の問題が質疑の中に現われておりました。本日は、気象業務の遂行に関し、実際業務に従事されている方から、いろいろの事項について現在の業務上望ましいかどうかという点、また学識経験者の方よりは、学究的に見ましてわが国気象業務あり方をいかに推進すべきかという点につきまして、お伺いいたしたいと存じます。ただいまから参考人の御意見をお述べ願うのでございますが、最切に各参考人の方より御意見を承わりまして、その時間は大体お一人二十分程度とお願いいたし、そのあとで各委員質疑に入りたいと存じますから、この点あらかじめ御了承をお願い申し上げます。  最初に、神戸海洋気象台長松平康男さんからお願いをいたします。
  7. 松平康男

    参考人松平康男君) 私松平でございます。ふだんは気象台のためにいろいろ御尽力いただきまして、厚くお礼申し上げます。本日は海洋気象台としてではなくて、学識経験とか申すそういう面から気象台業務について申し述べるようにということでございますので、私の話は準備もあまりしてございませんので、お聞きにくいところがあると思いますけれども、簡単に意見を述べたいと思います。  この海洋とか気象とか、こういうような角度の地球物理といいますか、いわゆるこのごろの中学、小学校などでは地学と申しますが、そういう地学関係のこと、これは現在の四十代以上の人たち学校で習っていなかったのであります。そういうような点から非常におわかりにくい点があります。  それからもう一つは、気象台というものは昔から、八十年とか百年とかいうようなときに、測候所なんかできているわけでございますが、その測候所がちょうど昔のお坊さんとかお寺とかいうような格好で、何でも気象現象に対してのことをば聞きに来られる。そういうような格好で、気象台あり方というものは非常に複雑しておって、わからないことを聞きに行くというような格好になっておったと私は思うのでございます。現在におきましても気象台仕事は、海陸空におきましての人々の生活、そういうものの気象における災害、こういうものをば防ぐというのが目的なのでございますが、その気象台のなします主目的というものが、今申しましたように、海陸空と、そんなふうな格好のところに広がっておりますために、いろいろの各方面関係を持っているわけであります。それからもう一つは、いろいろな産業を起しますのに基礎となる資料というものは、やはり気象資料というものがもとになっている。こういうふうに予報的なものと、それからこれから何かを起そうという格好のもの、そういうものを気象台が担当しているわけでございます。  それでさき申しましたように、組織がいろいろなふうに気象台の方にもできてはおりますが、国民方々要求というものが非常に各方面からある。従いまして、気象台としてせねばならぬという事柄、それがたとえば、予算というようなものを考えてみますというと、種類が非常にたくさんに分れておる。そうしてたとえば大蔵省なんかに予算を請求しましても、一見して何といいますか、非常に散漫のような格好に見られるおそれが多分にあると思います。しかしそれは気象台としましては、皆様方よく御承知でもございましょうけれども、各産業に対して気象というものが非常に強く要望されておりますために、従いまして、そのような格好に、分散したような格好の面からの予算のあれが要求せざるを得ないのでございます。このことがどれに重点を置くかということにつきましては、やはり政府なんかは国のあり方からしてそれをば認識してそうして取るというようにしていただきたいわけでありますが、これに対しましては気象台としましても、国の予算とかなんとかあるものですから、いろいろ軽重を問われると思います。しかしその予算におきましても、どれがわれわれとしまして大切でないというようなことは考えなくてもいいだろうと考えております。よく気象台なんかの予算には大体のワクがあるというような格好にとられるわけでございますけれども、これはやはり国全体のものでございますから、国の予算の全体のワク、その上から考えていただければいいんじゃないか。やはり気象台なんかの方々の話を聞きますと、どうしてもある予算ワクがきめられておる。従いまして、気象台から出しますものもどうしてもそういうワクをば考えてやるというような格好になりまして、あるものを引っ込めたり、あるものを出したり、そういうような格好のことをしておるようでございます。これはまことにまずいのではないかと考えております。  それからもう一つは、気象台予算面におきまして、災害復旧なんということが、地方なんかでよく災害が起りますというと要求なんかがたくさんあるわけでありますが、その災害復旧というものに対しましての基礎資料というものはみな気象台が作っておるのでございまして、そういうことがいろいろな県とか市とか、そういうものにおきましては非常に重要視されておって、予算面要求というものの基礎資料としておられるのでありますけれども、それが当局には、気象台が働いておるというようなことがあまりはっきりとしておらぬというような点がございます。  それからもう一つは、気象台の姿としまして、地方気象機関を見ますというと、地方気象機関は初め県営の時代がございまして、これは戦争前でございますが、それが国に合併してそうして一本になったわけでございますが、そのローカルの所におきまする昔からやっておったその業務、その地方的な業務というものがなかなか上の方では見ていただけない。これは予算的な面におきましても、非常に取りにくいような格好になっておるそうでございます。その事柄はとにかくローカルのことでございますので、ローカルでもって始末すべきだというようなお考えがあるとしますれば、上の方ではそういうお考えがあるとしますれば、そういうことをばやはり決定していただくように、たとえば地方災害対策なんかは地方でもって見てもらうようにということをば、上の方から県とか市に流していただくようになりますと、非常に測候所としては助かるのではないかしらぬと思っております。  そういうふうに、今の国全体の気象というものと、それからローカル気象の事業、この二つが今満足するような状態に行っておらぬ。特に地方業務というものが満足に行っておりませずに、測候所が非常に板ばさみになって、地方気象に尽さなければならぬのに、アビリティがあっても今の予算の面からそれが遂行しかねておるというような現状でございます。そういうことをもう少し何とか考えていただきたいと思います。  これは全体的に見てのことでございますが、そのほかに海の方の気象ということがございまして、洞爺丸とか、紫雲丸というような海難も起っておるようでございますが、この海の方の気象ということがなかなか皆さんにわかっていただけぬ。これは気象台の中におきましてもなかなかわかっていただけぬ。一番われわれとして、海の気象をやっております者からして望ましいというものは、とにかく測候所なんかは海の上にはないのでございますからして、船から、いろいろの外航の船からたくさんの資料をいただく、そのことが一番望ましいことなんでございます。ところが、その船から資料をいただくように業務法の上ではなっておりますけれども、その船におきましてもいろいろの気象観測というような設備、それが満足すべきものでない。使い得るという資料が非常に少いのであります。そういう海の資料がほしい。  それからもう一つ自分の所の船でそういうものが——自分の所と申しますか、日本の船でそういう観測資料を得るということのほかに、外国の船からもそういう資料をもらいたいわけなんです。それにはハワイとかグアムという所から無線によって、無線テレタイプといいますか、それによって自動式資料をば打ち出しておるのでございますが、その資料をとる設備をば、無線テレタイプ自動受信機と申しますか、そういうものを気象台なんかに置いてもらいますと、外国の国が集めたものを気象放送しております、それを機械的に取り入れて自分の方の参考にすることができると思います。この資料が非常に現在のところ少いのでございます。  それから船舶観測というものが、業務法によりまして、五百トン以上の通信設備を持ったところの船、それが気象台の方へ報告するというような格好になっておりますけれども、その船の観測あるいは持っておる測器に対する検定気象台が行うことになっております。その検定施設というものが気象台におきまして非常に弱体でございまして、現在九割くらいその業務法にかなっておらない測器を船が持っておるのでございますが、それを一気に持ってこられたら、とうていそれを処理することができないというような、まことに貧弱な状態でございます。そういう業務法にうたわれておるようなやらなければならぬようなことが、これは予算の上から落ちておりまして、なかなかやっていけない。こういうことが今の船の資料を、正確な船の資料が取ることができない一つ理由になっております。  それからもう一つは、船舶に向けて今の気象を放送してやる、そういう業務気象台にありまして、現在ではその海の方は中央気象台も出してはおりますが、そのほかに、閣議決定の線なんかによりまして、保安庁の通信も使っておる。これも一つ重要でありましょうが、そのほかにやはり海上気象予報放送をしております気象官署、それを海上気象予報中枢といっております。そういう所にやはり放送施設を持たしていただきますと、自分の方で言いたいことが言えて、そうして商船あるいは無線を持った船の方に非常にいろいろのサインをし得ると思います。  それから海難の中におきましては漁船なんかも非常に多いのでございますが、この漁船に対するものが気象台として非常に弱体でございます。沿岸測候所漁業組合というものが直通線をとって、気象台から、悪い状態のときにはいろいろ流してやる、そういうようなことをすれば、かなり救えるのではないかと思いますけれども、漁業組合なんかと沿岸測候所というもののつながりがないのでございます。  それからもう一つは、平水航路の場合に、たとえば瀬戸内なんかの漁船なんかに受信設備がありません。とにかく一万円くらいの金というものは、漁船なんかでは大したものではないはずであります。そういう所には蓄電池あるいは乾電池、そういうものをもって聞ける受信装置をつけるということを、これを法制化していただくということになりますと、今までの海難もある程度救えるのではないかと思います。  それから海上気象というものの調査海上気象台なんかで行なっております。中央気象台も行なっておりますが、その調査したものをば船なんかに上げるとか、あるいは漁業会社人たちに上げるということをば、昔も神戸の海洋気象台がやっておりましたけれども、現在では結局、人の面、予算の面でやれない。その調査して教えて上げるということが非常にできにくくなっております。そういう刊行物皆さんに利用していただく、そういうようなことが非常に弱体である。  それからもう一つは、よくこのごろ問題になっております定点観測でございますが、この定点観測に対しましては、いろいろな意見気象台でも分れておるというような話しもありますが、一番初めに申し上げたように、気象台要求がいろいろさまざまのものを持っております。ちょうど金平糖のとげみたいに、みな一つのもとに集まるのでありますが、定点も必要である、陸の方の気象の不備な点があるからこれも必要なんだ、こういう格好で、定点を強く片一方で出し、片一方の方では陸の方の水害対策の方の施設をばよく予算を取っていただきたいということを申し述べる。それが二つに分れたような格好にとられるのでありますけれども、決して二つに分れているのでなくして、どれもこれも必要で、おのおのの立場によってそれを主張しているという形であります。そういう点を今の気象台として、あるワクがあるというような格好考えられるものだから、ワク内というものを頭に置いて作業する、そういうことから、そういうのが起っているのじゃないかと思います。  それからもう一つは、さっきも申しましたように、海の方において一番気象が大事でございますが、その海員の育成の中におきまして、気象知識普及ということが少し弱体しておるように思います。これをば商船大学あるいはいろいろな商船学校関係の所で、あるいは海員の再教育、そういうような学校の所で、気象というものをもう少し強く知っていただきたい。昔の帆船時代には、当然風で走る時代ですから、自由に放任されておったのでありますが、最近のように汽船になりましても海難が多いということは、結局気象というものは取り入れられておらぬから、気象に対しまして知識が少し劣っているというような格好にあるためにそういうことが起る。こういう気象知識普及ということをば、もっと強くやっていただきたい。  それからこの気象台なんかの人数でございますが、これは災害を防ぐのが目的であるのに、災害時において働き得る人数、そういう人の数になっておりません。たとえば消防署なんかでは、火事を消すときの、そういうときに要する人数が常にあるのです。そういう格好になっておりますが、気象台の場合は平常の仕事をするときだけの、そういう格好目的に沿うくらいの人数しかない。ですから、台風なんかが来ました場合には、各気象観測上困っておるところでございまして、予算の面のほかに、こういう人間の足りないその組み方が、災害を防ぐ目的であるならば、その災害を防げるように初めから組んでいただく。平常におきましても、決してそういう人間が余っているわけではなくて、やらねばならない仕事はたくさんあるわけでございまして、ついそういう者がくたびれたりなんかして何もやっておらぬ、決してそういった余ったという格好人数ではない。そういうように非常時用として人数をはじいていただきますれば、平生におきましてもよりよい、そしてより国民のためになるような資料を作って上げられる、あるいはそういう働きをし得るというふうに考えております。  とにかく、この気象台仕事というものに対しましては、いつもいろいろな御努力をいただくのでありますが、どうしてもわかりにくいというのではございませんが、そういう格好の点があるようでございますから、予算なんかに反映しまして、非常に取りにくくなって、年中気象台にいろいろなお骨折りをいただいておるわけだと考えますが、気象というものに対して、気象台をもう少し、何といいますか、知って、そうして活用していただく。気象台の能力は十分今のところ発揮していないように思いますので、そういうことを申し上げておきます。
  8. 加藤シヅエ

    委員長加藤シヅエ君) ありがとうございました。  それでは、その次に中央気象台予報官久米庸平さんにお願いいたします。
  9. 久米庸平

    参考人久米庸平君) 初めに名前を訂正いたします。「庸平」となっておりますが、「平」という字でなくして、「孝」という孝行の「孝」という字でございます。「庸孝」であります。事務局の方御訂正願います。
  10. 加藤シヅエ

    委員長加藤シヅエ君) 失礼いたしました。訂正をいたします。
  11. 久米庸孝

    参考人久米庸孝君) 初めに自分がどういう人間かということを申し上げます。それから自分の申したいことを申します。  昭和十三年に東大理学部物理学科を卒業して、初めに七年間、昭和二十年ごろまで帝国海軍におりまして、その間、海上気象調査観測研究、それから船の上で使いますいろいろな測器類検定とか整備とかそういうこと、並びに海上気象予報、船の上で、自分の船を台風の危難にあわせない、そういうようなことをやっておりました。昭和二十年に中央気象台に入りまして、自来十年間、主として海の上の気象通報を出す、そういう仕事を現実にやっておりますほかに、商船大学船舶運航研究所研究員を兼務しておりまして、あそこの研究員に週に一回海上気象講義をいたしております。それから世界気象機構という機構がございまして、そこに海士気象分科会というのがございます。それの日本委員の一人としてやっております。そのほか、日本学術会議の中に海難防止特別委員会というのができておりまして、その特別委員をやっております。海上気象自分専門として、それも研究の面ではなくむしろ実施面の方を私の本職といたしております。そういう人間意見だということを御承知置き願います。  突然お呼び出しを受けましたので、プリントの用意をすることはできませんでしたが、図を持って参りましたから、そちらの方の委員長のおられます席の方からは非常に見にくくて申訳ございませんけれども、図によって説明をしたいと思います。  ここに天気図図面——図面と申しましても、毎日書いてる天気図じゃなくして、実は商船大学講義用のものをそのまま持って参りましたので、少しモデル化されておりますけれども、御参考にしていただきたいと思います。一番最初にこういう図を見ていただきます。ここにありますのは、ふだん天気図をごらんになっていない方はちょっと見にくいかと思いますけれども、ここのところに、まん中に大きなまるい図形を書いてございます。これは台風であります。  これはマージという台風でございまして、一九五一年、昭和二十六年の夏に来ました台風で、戦後現われました台風の中では、終戦の直後に来ました枕崎台風という台風、それに次ぐ巨大なものでありまして、室戸大風とかそういうものにほぼ匹敵する最近現われた最も大きな台風であります。直径千二百キロ、この台風は幸いなことに戦後の日本にはやって参りませんで、朝鮮を通りまして、戦前ならば大へんだったのですが、現在の日本人にはほとんど記憶されておりませんけれども、ちょうど朝鮮戦争のまっ最中朝鮮を通りましたので、豪雨と泥濘のために両軍の機動部隊機械化部隊がその中に没し去りまして、戦闘が三日間停止した、そういう台風であります。  この台風のときに、この付近を通っております船舶がどういう行動をしたか、そういうことを表わすのがこの図でございます。ここにこういうふうに黒くぼちぼちが並んでおりますが、これが台風の通過した経路であります。六時間置きの位置が書いてございます。ここにいろんな色でもってたくさん経路を書いてございます。これは日本気象電報を打っております一級船——一級船と申しますのは、これは皆さん方の方が御専門かと思いますが、外国航路に往き来するような大きな船であります。それの台風に影響があると思われる範囲のものだけを引っぱり出しましてここに書いたものが、これであります。現在日本の、先ほど松平先生からもお話がありましたが、外へ出ております船舶は、中央気象台気象電報を打つ義務が負わされております。現在どのくらいのデータが入ってくるかと申しますと、ほぼ戦前に復帰いたしておりまして、大型商船一級船、それから打ってくる電報は、私正確な統計は存じませんけれども、大体同時にこの範囲、ここが百八十度でありますが、この範囲に同時に入っている日本船舶は大体、大型商船百隻、漁船五百隻と見てよかろうと思います。無線機を装備しております漁船は千五百隻ありますが、そのうち三分の一が海上で実働状態にあると考えまして、商船百隻、漁船五百隻のうち約七十隻から、同時に入電いたします。ですから、各時点ごとに海上の船から同時に電報を受けることができます。  また、そのコースがどこにあるかと申しますと、大部分はここから、日本の港を出ましてからバシー海狭を通過しまして、南シナ海を通ってマラッカ、インド洋、イランへ参ります。一部はヨーロッパまで参りますが、大体インドどまりであります、一部はフィリピンへ参ります。このコースは、非常にたくさん船が絶えず就航しております。日本から最短コースをとりまして、アメリカ航路、濠洲へ行く船、大体ここのところがブランクになりまして、こことここに商船が通過いたします。そのうちの一部がここに現われてくるわけであります。  ここにちょっとこれは見にくいかと思いますが、この台風がやってきましたときに、こういう船の刻々の位置が——私ども天気図で毎日やっておりますが、どの船がどう行動しているかということは、私どもの手元で毎日、当直に当っておりますと手にとるようにわかります。それで船のコースを追跡します。どの船が危険に瀕するか、どの船は大丈夫か、そういうことを常時監視しているわけであります。そういたしますと、この台風関係のある船を選び出すことができます。それをあとから調べたのがこの図でございます。  これを見ますというと、どういうことを船でやっているかと申しますと、北から南へ行く船、こういう船は、初めのうちは普通の航海速力で走っております、十ノットで。……それから台風が接近いたしますというと、速度を上げまして——速度を上げるということはどうしてわかるかと申しますと、六時間ごとの位置が少しずつ離れます。ですから、この間速度を上げているわけであります。ここを速度を上げまして、台風の来襲に先だって自分の船を進めて、港へ入る、そういうことをやります。それから逆に北から南への船がたくさんございますが、そういう船はどういうことをやるかと申しますと、ここからやってきまして、たとえば桃色の線が入っている船があります。これは日枝丸であります。三千七百トン。これがここへやってきまして、ここまで来ますというと、ここの所で、これは数字が入っおりますが、小さいのでごらんにくいかと思いますが、ここの所に来ましたときに、台風がちょうどここまでやってきております。このまままっすぐに行けばぶつかる。ここのところで約二十四時間ほど、しばらく行ったり来たりして台風待ちをするわけであります。それからここに、たとえば黄色い船があります。燈色の船があります。この船はこう来て、バシー海峡を通過いたしますけれども、まっすぐ日本に行かないで一度南へ下りまして、このスケールはこれのちょうど二倍になっておりますから、この大きさをここへ持って参りますと、台風の大きさはこうなります。台風の外側をずっと回りながら、台風が通過したあと北へ上るわけであります。それからここに赤い船があります。この赤い船は東邦海運の利根川丸であります。七千トン。この船はここまでやってきましたときに台風が接近しましたので、南へ下りまして、台風が行き過ぎた後北へ上る。それから青い船はフィリピンへ行っておりますが、宝隆丸でありますが、ここの所で非常に速度を上げております。ほとんど全速を出しております。ここの所へ来まして、台風圏外を出たところで速度を落しております。  今言ったことをもう少しわかりやすくするために、こういう図をごらん願います。これは、この図の中から利根川丸のコースと、それから宝隆丸のコースと、それから台風のコースと、その三つを取り出すとこういう図ができます。これで、このままではちょっと船がどういうことになったかわかりにくい。そこでこういうことをやります。台風がこう動くのですけれども、その台風がかりにとまっていたと仮定する。そうしてその台風に対する刻々の船の方位と距離をこの図の上に写しております。そうしますと、台風の中心に対するこの船の相対運動が出て参ります。この図を作ると、船がどういうことをやったかということが非常によくわかる。そこでその図をかきますと、このようになります。この図を見ますと、たとえば利根川丸はこういう巨大な台風に対して、こう来てこう来て、台風に対してこう相対的に運動して逃げたのだということがわかります。台風の左側のうしろ、左うしろの正面は台風の最も静かなところであります。静かといっても相対的であるけれども、台風の中では最も安全なところで、しかも非常に巧みに抜けた、非常に巧妙な航海術をやったことがわかる。台風一つ来ると、この付近の船は皆こういうことをやるわけであります。たとえば利根川丸がもしもこういうことをやらなかったとすれば、やらないでまっすぐ自分の予定のコースをこう来たらどうなったかというと、このときの速度をそのまま外挿いたしまして、船の本来の航海計画に従って外挿いたしますと、どうなったかということを書きますと、大体このようになるわけです。台風の中心に入って非常な危難を受ける。昨年は辰和丸が南シナ海で遭難しましたが、そういうようなことが起りかねない。それは船体自体の強度もありますし、船長の航海術もありますから、何も沈むとは限らないわけですけれども、台風の中心を通って損害を受けないということはないわけですから、何らかの相当大きな損害を受けるということになる。その損害を未然に防いでいるわけであります。  たとえばこの利根川丸は七千トンでありますから、トン当りの単価を今二十万円といたしますと、大体十四億の船であります。もし沈んだとすれば、これでもって十四億の金が消えてなくなったことになる。それは船自体の値段もそうでありますが、それに積んでいる物資、それから特に船員の生命、そういうものを考えますと、金では換算できない。台風一つ来ますというと、こういうふうに十くらいの船がみんな台風から逃げることによって、適当な避航法をやることによって損害を防いでいる。そのために何百億、全部をトータルすると何千億になるかもしれぬと思いますが、物資その他を入れると……。そういうような損害を未然に防いでいるわけてあります。  どうやってそれを防ぐかと申しますと、これは別に我田引水を言うわけではなくて、自分の毎日やっている仕事だから御説明するわけですが、中央気象台船舶無線通報というものを出しております。一番こちらの図をごらんになりますとわかりますが、話がちょっと飛びますが、現在世界中の海にブランクのところを作らぬようにしよう、どこの船が地球上のどの海を航海しても、必ずどこかから気象通報が受けられてそれによって安全に航海できるようにしようというので、これは気象通報事業が始まりまして以来の長年の理想ですが、それが完成しましたのは一九四六年の、今度の第二次大戦の終った翌年に初めて完成いたしまして、世界中が完全に協力するようになった。中共から電報が来ないので、ソ連からもよこさないというので、誤解される方があるのですが、ソ連はそういうようなことはございません。ソ連は他の各国同様に全く完全な気象通報をやっております。また地球上の区域を、国境を撤廃いたしまして、世界中の気象台が分担して、互いに自分の方の海面を受け持って、どこの国の船でもその海面に入るときにはそこの気象通報を受ける。そういうシステムが一九四六年に完成しております。日本の担当している区域はどれだけあるかといいますと、東経百度の線、ここにちょうどシンガポール、マレー半島、ここの線であります。南支那海を入れたものでありますが、百度で切りまして、片方は日付変更線で切ります。それから赤道で切りまして、北緯六十度で切ります。地球のほぼ八分の一に当りまするこういう海面であります。これが日本中央気象台の責任分担区域ということになっております。  こういうこともよく、内地のことだけを、陸上の生活だけを考えておられる方は、そういうインターナショナルの責任を負うということは、今の日本の戦後貧乏になったこういう国では無理だ。オーバー労働だ。そういうことはどこか金持の国にやってもらったらいいと、そういうことを言われる方も相当あるのですが、実はそうじゃいなのでありまして、なるほど区域は広い。広いけれども、この区域にいる多数の船舶のうちの大部分は日本船であります。先ほど申しましたように、この範囲で操業しておりますのは約五百隻ありまして、皆さんの御承知かどうか知りませんが、現在ではアラスカのすぐそばまでカニをとりに行っております。それからここのオホーツク海の中ではタラをとっております。ここではサケ、マスそれからクジラ、それからニシン、それからカツオをこの海面で全部とっております。マグロに至りましてはこの南方海域全部と、それからカリフォルニア沖で、最近この海域が放射能で汚染されまして危険になって以来、南半球に行って、南緯二十度から三十度、ニュージランド付近までマグロをとりに行っております。ここの南支那海のトンキン湾まで底引きに行っております。ベンガル湾でも底引きが、それからスマトラの南部、この天気図からはずれて、南半球に行っておりますが、そこでもマグロをとっております。そういう船が、ここの中の大部分は日本船であるということと、われわれの日本の船が外国気象台の担当する海面に行きまして、そこで操業をしている。そういう所で操業をしている船が、外国気象台から安全な海上警報を受けるわけでありますが、それを受け取る場合に、人に任かせて、われわれの方は何もしないということは許されない。海の上に国境はないのですから、区域わけによりましてそれぞれ責任範囲海上警報を完成することによって、自分の国の船が外国へ参りまして、外国の海へ行って航海するわけであります。外国の海というわけじゃないのですが、外国気象台の責任範囲になった海へ行って、そこで安全に操業するためには、われわれも義務を果さなくちゃいかぬ。  そこで、そういうようなウォーニングをやるためには、何をするかと申しますと、こういうような天気図をわれわれは書くわけであります。自分の責任範囲天気図を毎日四回書く。六時間おきに四回書いて、それから日本のごく近い所、本州を中心としました狭い範囲は一日八回書いている。そういう天気図をもとにして、そういうウォーニングを出している。ウォーニングが正確であればあるほど、船の危難は減るわけであります。  台風というものは一年に二十五から二十六ほど、できます。日本へやってくるものは、一年に二つか三つしかないが、太平洋上には毎年二十個以上の台風が出ますですから、そういういう台風の出るたびに、その付近にはああいうふうに、天気図に見える商船だけでも十隻ある。気象電報を打たない漁船に至っては、何十隻から何百隻いるかわからぬ。今ごろからカツオになると、小笠原近海にはカツオ船が何百隻と出ております、焼津、三崎、枕崎から。そういうところへ台風一つやってきますと、何百隻という船が引っかかる。その船は全部中央気象台気象通報によって、台風がどっちからどっちへ動いて、どれくらいの風速を持っておる、そういうことを知って今後の操業計画を変更する、あるいは航路を避退することによって、その安全を保っている。  そういう魚をとりに行くのも、何も面白半分に行っているのじゃない。われわれの国は、農業生産六千万石しかありません。それで八千万から九千万近い人口が生きている。一人生きていくためにはどうしても、一人一石の割の農業生産を必要としますから、残りの分はどうしても工業生産及び水産業にたよらなければいけない。その工業生産を国内で発展させるためには、外国貿易がどうしても必要なのでありますから、結局水産業外国貿易、海上の船、それの安全をはかることなくしてわれわれは生きていけない。だから、われわれはこういう天気図を正確に書きたい。天気図が少しでも正確になればウオーニングがそれだけ正確になりまして、たとえば三百隻の船を助けて、一隻だけやり損って遭難さした。そういうことが少しよくなれば、その一隻がなくなるかもしれない。毎年毎年少しでもよくしていきたい、そういうわけで海上観測点を少しずつふやしてきたわけであります。島の上に作る、あるいはそういう商船の電報をたくさんふやしてくれということをたのみまして、やってきた。  ところが、商船観測がたくさんありさえすればそれで十分かというと、実はそうではないのであります。これは海上における気象観測というのは、非常に厄介なものでありまして、厄介というのはちょっと語弊があるかもしれませんが、正確な天気図を書くには、ぜひとも正確な観測をするためには、商船上の航海士が自分の船の保安のために片手間に観測をしておるというだけでは、どうしても正確な天気図は書けないのです。これは一つ一つ、たとえばバロメーターその他のこまかい問題をお話しする余裕がありませんけれども、ほかの問題にたとえて申しますれば、たとえば私はここに一つ時計を持っておる。この時計は精工舎の非常に安い時計であります。一日に二分も三分も違っておる。こういう時計を持った船ばかりが外へ出ておると、こういうことになります。これは別に船が悪いのではない。そういう商船士官が無能なわけではないのですけれども、船に使用し得る計器というものにはある程度簡便なものではないといけませんで、たとえば気圧計一つとりましても、中央気象台のような所、あるいは気象台観測所のようなものは、水銀晴雨計を用います。水銀晴雨計でありますというと、十分の一ミリまで正確にはかれます。なれた観測員でありますと、目分量で百分の一ミリまではかる。ところが、一般の船舶に水銀晴雨計を装備してそれではかれということは、技術的に無理なんでありまして、一般にアネロイド晴雨計というものを装備いたします。アネロイド晴雨計といいますのは、これはたとえば一週間も海上を航行しておりますと、その間に一ミリニミリという違いが出て参ります。たとえ専門人間が使ってもそういう誤差を作っていきやすい。これは機械自身の性能から来るのでありまして、やむを得ない。だから、どこかの港に入ったとき、あるいはどこか非常に優秀な測候所のある島を通過するとき、そういうときにその船の持っている気圧計がそういう標準的な観測とどれくらい違っておるか、そういうことを比較いたしまして、この船はいつでも一ミリか二ミリ高く出るとか、この船は三ミリ低く出るとか、そのわずかの差を検定することによって観測が正しく行くわけであります。これはたとえば風の観測においてもそうであります。中央気象台のような所でありますというと、ロビンソン風速計を使いまして風の平均の強さというものを正確にはかっております。ところが、海上船舶にそういうめんどうな観測をしろということは要求できないのであります。ですから、そういうところの船は非常に簡便な、ほんの数秒間じっと見つめておれば、一応目盛の上に風速が出てくる、そういう計器を使用いたします。そういう計器というのは相当の誤差を持つ。従って、たとえばどこか気象台測候所のあるような島の付近、あるいは気象台定点観測船のあるような地点を船が通過するときに、それをチェックいたしまして、その船の風速、それから気圧、そういうものを参考にして天気図を引いていく。  そこで、海上における定点というのは現在どれくらい分布しておるかと申しますと、大体定点観測最初にやりましたのがフランスでありまして、フランスはもともと気象事業を最初に作った国でありまして、ナポレオン三世がフランスで一番最初にやったのですが、それで昭和十三年だったと記憶しますが、記憶違いかもしれませんが、あるいはその前後であります。大西洋のまん中にカリマレ号という観測船を派遣しまして、それが定点観測最初です。大西洋のまん中に何とかして測候所に相当する船を一つ置こう、それを基準にして大西洋の解析をやろう。解析というのは天気図を分析することでありますが、それをやりまして、それがもとになりまして、今度の第二次大戦のあとで大西洋では非常にそれが発達いたしまして、現在ここに十一点出ております。ここがアメリカ、ここがヨーロッパでありまして、ここに十一点並んでおります。これはアメリカ、カナダ、ヨーロッパ各国が共同いたしまして、アメリカは一番金持ちですから自分の国で五はい出しております。そのほかではカナダが出している、イギリスが出している、フランスが出している、それから北欧三国が出しております。それからイタリアのような国は船は出さぬで金だけ分担しております。そういうやり方で十一点作って、大西洋を完全にカバーしております。これがどういう意味をもつかということは、あとで東大の岸保さんがほんとうの意味を説明すると思いますが、こういうことをやっているわけであります。こういうことをやって大西洋にブランクというものをなくしてしまった。これで大西洋の天気図というものが非常に正確に書ける。ウォーニングが非常に正確に出せる。こういうことをわれわれは太平洋の方でもやりたいというわけであります。  この日付変更線からこちらが日本の責任分担区域でありまして、しかもその中にある船の大部分は、これは単なる国際責任というのではなくて、実は大部分が日本船です、だから、そこの保安をやるということはわれわれ自身に直接影響する問題であります。ですから、ここの中にはインターナショナルに予定されている点は四点、SVXTというこの四点あります。日付変更線の右側にも四点あります。これはPQMNの四点。この中で現在われわれが非常に困っているのは、例の一昨年の定点観測の廃止のときに、アメリカはVは残しておりますが、北方のSは撤去してしまった。XとTは日米共同でやっておったのでありますが、そのうちのTだけは海上保安庁の手でやられておりますけれども、Xの方うがなくなってしまった。そのためにここの所、千島沖からカムチャッカ、アリューシャンにかけまして天気図の精度が落ちるのです。落ちると申しましても程度問題でありまして、たとえば非常に熟練した予報官、現業経歴十年も持っているような予報官が書きますと、そう違いはない。しかしそこまで到達するには、大学を出た人間を十年も十五年も教育しないとできない。そういう予報官というものはそう簡単にはできないのであります。われわれはもっと簡単に、そこにたとえば観測点さえ置けば、どこの測候所のどんな予報官が書きましても正確なものができる、そういうものにしたいのです。特にこの海面に日本船がおらぬというなら別です。ところが、そうじゃなくて、現在でもここに北洋船団が三百隻出ております。そのうちの五隻くらいはすでに沈んでおります。  とにかくわれわれは毎日海上に警報を出しております。自分の責任範囲にある船が沈むということは、医者が自分の患者を見殺しているようなもので、夜も寝られぬです。だから、あれをやめたためにそういうことが起ったとは申しません。申しまけんけれども、ああいうことをやめるということは、そういうものが死んでゆくのを見殺すということなんです。それがわれわれにはたえ切れない。だから、海の上にそういう正確な観測点をぜひ置いてもらいたい。これはあとから学術的にはどういう意味を持つかということは岸保さんがやりますが、単に学問的な興味のためにやって、論文を書いて博士になるためにやっている、そういうわけのものではないのでありまして、もともとがその日その日の日本の水産業並びに貿易の安全をはかるために役に立っておったものをやめられたということが、われわれはたえがたいのであります。そこのところを一つよく御了解願いたい。そういう意味でお話をいたしました。終ります。
  12. 加藤シヅエ

    委員長加藤シヅエ君) どうもありがとうございました。  それでは最後に、東京大学理学部の岸保さんにお願いいたします。
  13. 岸保勘三郎

    参考人岸保勘三郎君) 私、東京大学の岸保です。私の説明は、私自身が現業にタッチしていないので、むしろ純学問的な立場から、なぜ定点観測を特に必要としているか、また高速度の計算機をなぜ必要としているか、その二点に立ってお話ししたいと思います。  私たちは数値予報研究会を作りまして、約三十人くらいで日本では動いているわけですけれども、これは別に官製のものでありませんで、全く同好の士が集まってやっているわけで、別に財政的な裏付けもないので非常に進歩がおそいわけですけれども、ここ二年間われわれのベストを尽してやってきました成果も含めて、お話ししたいと思います。  それで、数値予報といいまして非常によく御存じのお方もおられると思いますけれども、念のためにちょっと簡単に数値予報というものをこれからの説明のためにお話ししておきますと、数値予報というのは、読んで字のごとく、数値的に予報することで、今の予報でも数値的には予報しているわけですけれども、数値的よりもむしろ定性的な面が非常に入るわけですけれども、最近の気象学界の傾向としましてこれを数量的に予報しよう。たとえばここの気圧は幾らになるということを正確に予報しようとするわけで、この機運が起りましたのがわずか数年前でありまして、日本ではそういう点珍しいわけでありまして、それはどういう順序でやるかと申しますと、まず、たとえばきょうの十二時に日本上空もしくはそれを含めたところの気圧とか、気温とか、そういうものが立体的にわかりますと、たとえば好きなだけの、二十四時間先、すなわちあすの昼の気圧がどんなふうに出てくるかということを計算でやらすわけでありまして、最初状態がわかればこれは自動的に物理の法則に従って計算をするわけでありまして、この物理の法則さえわれわれがしっかりつかんでおれば、割合に経験というものは要らないので、そういう点、さっき久米さんが言われましたように、非常に今の状態では、十年間とか、そういう長年の経験を必要としますけれども、そういう点はもう計算機の問題でありまして、最初資料をどれだけ正確にわれわれがつかんでいるかと、それにかかっているわけで、それさえ可能であれば、将来の見通しというものは非常に明るいわけでありまして、その問題に関連しまして少し外国の状況をお話ししますと、何も私外国がいいからというわけじゃなしに、非常に日本状態を対照的に示すために、少し外国の話をしようと思います。  天気図を少し持ってきたのですが、非常に急いで、こういう場を想像せずに持ってきましたために、遠くからはあまりよく見えませんけれども、これはアメリカの天気図という意味で持ってきまして、これが日本のわれわれがやっている天気図でありまして、これがヨーロッパ、これはストックホルム、スエーデンでやっているやつでありまして、まあちょっとおわかりにくいんで簡単に説明しますが、アメリカでは、ここらがアメリカ大陸になっているわけでありまして、今の久米さんのお話にもありましたように、ここが大西洋でありますけれども、ここの定点が十一もありまして、観測点が非常にありまして、天気図がうまく書けるわけでありまして、この天気図を使いまして、これを人工頭脳と言われている電子計算機を使いまして自動的に結果を出すようなシステムで作っておりますが、この結果をこういうふうなテレタイプで打ってこういう結果が最後に出てきまして、これはちょっと遠くで見るとおわかりにならないと思いますが、等圧線の形を一つづつ書くかわりに数字を打ちまして、気圧の関係が出てきております。こういうのは一つの例でありますけれども、これがことしの五月六日、約一カ月前に、これを一日一回の現業に取り入れました。アメリカではこれがちょうど一カ月前です。それで予報業務にこれが入ったので、研究の段階をやっと抜け出たわけであります。これをデータをまず受信しまして、これを集めまして、電子計算機に入れまして計算をして、それから結果が出るまで約十時間かかります。それで予報は三十六時間先をやります。結局、二十六時間先を予報しているわけで、一日予報を今のところやっている。それに対しましてストックホルム、スエーデンでは、これは非常におわかりにならないと思いますが、これがアメリカ大陸で、これがヨーロッパ大陸であります。ここらが英国でありまして、ここらにスエーデンがあります。それでスエーデンでは三日先を予報しようとして、こういう非常に膨大な範囲予報をやっております。  これが、日にちを延ばせば延ばすほど、非常に広い資料を必要とする。日本はこの辺に入りかけているわけです。それに対して日本現状は、われわれは今このくらいの範囲を使っております。これだけの資料が十分にありますと、二十四時間、三十六時間くらいまでは割合にうまく行くということが、われわれはわかることができました。ここにこういう結果を持ってきましたが、これはちょっと遠くからではおわかりにならないから、省略いたします。  それて、この地図を見ますとわかりますが、これはいわゆる南点という点でありまして、これは北点であります。今アメリカがやっておりますV点がここにあります。そうすると、実際にこれが全くブランクでありまして、ここがない限り、どんな確実な計算をやりましても、最初資料が間違っている限り、その資料をもとにして計算を進めますから、絶対にいい結果が出てこない。ところが、これは日本の方には割合いい資料がありますから、天気図を引張って計算をしてみましても、日本の方では割合にいい結果が得られる。ところが、この辺になりますと、私ども経験の浅い者がやると結果が悪いわけで、今の段階ではいわゆる予報のエキスパートの人にわれわれの予報に使う天気図を直してもらいまして、その人が電報を一々さがし出してきて、丁寧にわれわれのこの天気図を引き直してくれます。その資料を作ってわれわれは研究を進めておりますけれども、これがもし観測点がありますと、だれだって天気図が引けるわけで、引きさえすれば、あとは自動的に物理の法則に従って計算をしたら、途中で間違いがありません。  大体現状説明したわけですけれども、われわれはこの計算は、今はその資料だけの問題ですけれども、これを計算するに大体数十万回くらいのかけ算、足し算をわれわれ必要とするわけで、これを手でやりますと、実際今手でやっているわけですけれども、実にみなエネルギッシュな計算で、十人くらい力を合わせてやっているわけですけれども、簡単な計算でも一月くらいかかるような大へん膨大な計算でありまして、見通しが非常に悪いのであります。それで、最近富士通信機のリレー計算機という日本でできた自動的な計算機を使ってやっておりますが、これも一週に一度しか使わしてもらえないところへ、最近は有料になりましたし、われわれは財源を持っておりませんし、窮地に陥っているわけであります。  しかし、科学の進歩にはやはりそういう困難に負けて研究を放棄するということは間違いでありまして、われわれが心配しているのは、貧すれば鈍する、そういう気持になりまして、研究意欲を失ってしまうということをわれわれは心配しているわけで、そういう点われわれとしては、定点の復活、それから高速度の計算機、これをぜひ設置したいという要望を持っているわけで、計算機を気象関係で持っていないのは、ヨーロッパの先進国やアメリカに比べまして、日本だけが持っていないことは、非常に残念で仕方がない。向うは着々と正確な結果を出して、非常に予報成果を上げて行くのに、われわれは手をこまねいて待っているという状態で、その一例が台風予報に、去年からわれわれは試験的に数値的な予報を試みてみましたけれども、非常に見通しは明るいのです。  まず、台風資料がないということが一番困るわけで、南点の近傍の資料がないということ。それでこれはどんなふうにきめていくかと申しますと、簡単な例をあげますと、たとえば川に流れておる小さい渦巻があります。ちょうど台風はあんなふうに流れておるわけでありまして、小さい渦巻とそれを流す大きい流れと、その足したものか実際に観測すれは、たとえば足したものを十ミリの気圧としましますと、台風が二ミリでありまして、残りは八ミリである。そういう場合で見ますと、八ミリを正確に予報すればいいわけですけれども、実際の観測は十ミリか十二ミリか十五ミリかわからないわけで、二ミリ引いて残るものを流す場というものは、非常に観測地によって違ってくるわけで、どうしてもわれわれは避けがたい致命的な観測の欠如というものを感ずるわけでありまして、その問題さえ解決つけば、われわれは明るい見通しを持っております。そういう点だいぶ——それは台風の問題でありますけれども、今度はそういう——今そこにあげました例は去年の五月、北海道の根室沖を襲いましたメイ・ストームと言われる、五月のあらしと言われている非常に発達した低気圧を扱ったわけですけれども、その場合もやはりどのくらい深まるかということを数値的にわれわれは予報できるという見通しは持っております。それはまだ学問的な段階ですけれども、われわれとしてはぜひこれを実際の予報業務に持っていきたいという希望を持っておるわけであります。  それから最後に、われわれ数値予報をやっておる者としましては、非常に財政的にも貧困でありまして、わずかに朝日新聞から九十万円、去年科学奨励金をもらった程度で、これもリレー計算機を一日使えば一万円程度で、そんな状態で使っていったらまたたく間になくなるわけで、われわれとしては、この間の五月の二十日の気象学会の総会におきまして、学会に要望書を出しました。それはこういう点で、中央気象台に対して定点の復活に努力されんことを、それから第二に、各研究機関に高速度の計算機を備えてもらうように、そういう二つの要望書を出して、満場の賛同を得たわけですが、それをちょっと最後に御紹介をして、皆さんのよき御判断にお任せしたいと思います。どうも長い間ありがとうございました。
  14. 加藤シヅエ

    委員長加藤シヅエ君) ありがとうございました。  それでは、これより参考人の方に御質疑のございます方は、順次御発言を願いたいのでございますが、まず、どの参考人にお答えをおもらいになりたいか、そのお名前をあげて、どうぞ御質問をしていただきとうございます。
  15. 木島虎藏

    ○木島虎藏君 岸保さんに一つお尋ねしたい。今の電子計算機ですか、一体幾らぐらいするものですか。
  16. 岸保勘三郎

    参考人岸保勘三郎君) 私がアメリカのプリンストンにいましたときで、初めてあすこが気象の機械を作ったときに、ミリオンで、日本金で約三億円と言われたのですけれども、日本の労働力は安いから、もうちょっと安いと言われておるわけであります。それだから、だんだん大量生産になると、コストが下りつつあることは聞きますけれども、日本で、たとえば証券会社なんかでも買っておるのが、大体一億程度のもので、ちょっと機能が落ちますけれども、大体そのくらいのものだと思います。もうちょっと追加しますと、東大と東芝で合同で作っておるところの電子計算機TACというのが、七千万円ぐらいの予算でスタートして、まだ建造中であります。
  17. 木島虎藏

    ○木島虎藏君 大体わかったのですが、その七千万円ぐらいのもので今のあなた方の目的は達せられますか。
  18. 岸保勘三郎

    参考人岸保勘三郎君) はあ、大丈夫です。
  19. 大倉精一

    ○大倉精一君 大へん、定点観測についてだいぶ詳しくなって、参考になったんですが、私はこの際、本予算定点観測並びに電子計算機の関係予算計上もあったんですが、残念ながらこれは全部削られたんです。こういうことから、政府において気象業務に対する認識が非常に怪しいということから、きょう一つ、現業を担当しておられる方並びに専門的に研究をせられている岸保さんから、この研究を通じて、また本当のなまなましい現業の体験を通じて、現場の実情並びに気象業務に対して、こうしてもらいたいああしてもらいたいということを、一つ率直にお聞かせ願いたい、かようなことを私はきょう期待しておるわけです。  そこで、まあこちらはしろうとでわかりませんが、二、三についてお尋ねしたいのですが、それは松平さんの関係かちょっとわかりませんが、関係の方からお答え願いたいと思います。たとえば伝達機関ですね、いわゆる予報伝達について、どうも現地のたとえば港湾関係とか、漁船関係とか、あるいは農業その他交通関係ですね、こういう関係との、何といいますか関連性といいますか、これもどうもぴったり行っていないのじゃないか。たとえば世界気象機構ですね、ここにおいては大体各国にそういうことを要請されておると思うのですが、先般の政府説明ではやっておりますと言っておりましたが、大体この関係は大阪ですね、現在大阪における造船関係とか、あるいは倉庫、荷役、そういうものと一つの何か機関を持っておられるが、そういうものを持っておられるそうですが、そのほかにはないということを聞いておるわけです。ですから、かりに運輸省で気象業務を担当しているという現在における東京湾のことは、これはさっぱりわからぬといいますか、現状においては現地と伝達できぬ、こんなような状況になっておると聞いているが、そんなような状況は現在どうなっておるか、ちょっと御説明を願いたい。
  20. 松平康男

    参考人松平康男君) それは、さっき私が申し上げましたように、地方地方での今のやり方では、それをば何といいますか、そこにある気象観測、それから民間、それとタイアップしていくよりほかやり方がないわけでありますが……。
  21. 大倉精一

    ○大倉精一君 それは今、全国的に見て、ほとんどできておらぬということを聞いておるのですが。
  22. 松平康男

    参考人松平康男君) 全部的にはできておりません。私の方の神戸の方ではそういうことをやっておりますけれども……。官と民とでやっております。そうしなければ——そうするのが一番いいというのでやっておりますが、このやり方も非常に、何といいますか、考えねばならぬところがあります。それは、たとえば神戸には大会社があるわけですが、船関係の会社が集まりまして大きな組織を作って、気象台に来てくれといいましても、そこには出て行けません、人がありませんですから。ところが、そこに保安庁なんかありまして、保安庁には、気象台から今の警報が出た場合は、サインをしなきゃならぬ、当局決定の線で。そういう方も一緒におられるために、そこに私の方としては出張っていって、いろいろなことを申し上げ得るわけなんです。ただ、警報だけですと、今の閣議決定の線でもって保安庁の方に流せば済むわけですが、それでは間に合わぬというか、十分じゃありません。今度来る台風はどういうふうな台風か。神戸をヒットするような、大阪をヒットするような台風が来ると予想した場合に、そういう組織を、私どもからサインを送りまして、すぐ作っていただく。そうしてその台風に対する説明をするわけです。そういうことをローカル的にやっておるわけです。東京湾のために、たとえば横浜ということになると、横浜はそういうことをやり得るかどうか、やはり人数の点でやり得ないということがあります。そういう組織を作り得るように、気象台も港のいろいろな港湾関係施設をしようというようなことで、予算要求してあったわけなんですけれども、落ちておりますけれども、そういうことをやれるところはとにかく無理してやっておるわけですから、今神戸なんか海の方は大丈夫。陸の方では、県とか市で組織を作って、気象台に出てこいと言われましても、手がない。そういうわけで、今自分の方から出張ってそういうことをやっておる。民間から出しておりません。
  23. 大倉精一

    ○大倉精一君 結局、こういうことはやる必要があるというのですが、私は今のいろいろな御説明で、洋上に浮んでおる船、洋上の船はそれはそういうふうな気象通報やなんかで待避ができる。しかしそのほかに、岸壁に繋留されている船ですね、岸壁に繋留されておる船が波によって、岸壁にぶつかって損害を受ける、この公算は非常に大きいと思うのです。その損害を回避する指導をするということについては、やはり大阪湾でやっておられるように、現地において、現地の現況といいますか、いろいろな条件といいますか、そういうものを把握しながら、お互いに話し合って指導をする、こういうことが私は必要だと思う。従って、たとえば大阪湾の場合は、昨年の第五号台風ですか、一昨年の第十三号台風では、非常に大きな成果をおさめておられるように聞いておる。これが被害があるというと、いろいろ世間の注目を浴びるのですが、何らかの成功をおさめておられるので被害がないものだから、一向に世間の注目を浴びない。だから、政府の援助もないということになる。私はぜひともこういう主要港湾には、そういう機関というか、指導機関を、そういうものを置く必要があると思うのです。
  24. 松平康男

    参考人松平康男君) 絶対必要です。
  25. 大倉精一

    ○大倉精一君 それからもう一つお伺いしたいのですが、たとえば通信関係ですね。これは久米さんの方ですか、私は担当はわかりませんが、通信関係が非常に不備じゃないかということも私は聞いておるのです。たとえば今トン・ツー、トン・ツーという方式だけでやっておる。このトン・ツー、トン・ツーでもってくる。こいつを翻訳する。また報告をする。またそいつをトン・ツー、トン・ツーに直して、トン・ツー、トン・ツーでやる。非常にこれが時間がかかるということを聞いておるのですが、海上保安庁は非常に完備した施設を持っておるそうですね。これをなぜ気象台で持てないかということです。たとえば、一本の線でトン・ツー、トン・ツーもやれるし、そして今度は電話にも声が出る。声の伝達、声にも切りかえられる。あるいは一方においては、模写電送といいますか、天気図みたいなものを電送してやれる。こういう線に切りかえる必要があるのじゃないですか。トン・ツー、トン・ツーで非常に不便をしておられるのじゃないかと思うのですが、その点はどうなんですか。
  26. 久米庸孝

    参考人久米庸孝君) 現在の有線電信の専用線というやり方は、時代おくれになっておることは事実であります。専用線でトン・ツーでやることからテレタイプ化されまして、それがラジオ化されて、それからファクシミリ、ただいま模写電送とおっしゃったのはファクシミリのことだと思いますが、現在ではだんだんそれも無線化されまして、まだこれを完全に実施している所はございませんけれども、将来は、たとえば先ほど私が申し上げました海上に対する予報とか警報とかいうようなものは、中央気象台天気図ができ上ってから、それを平文で、どこに低気圧がある、高気圧がある、それから台風がどういうふうに動いておる、そういうふうに直して放送するということのかわりに、中央気象台でできました天気図をそのまま無線電送によりまして船に知らせる、そういう方向に進むだろうと思います。われわれの国も早くそういうようになりたいと思っております。  私自分で、船の上でたとえば気象予報をやることもやっておりましたし、自分の方が逆に船にそういうことを知らせるということも今やっておりますけれども、平文でもって、どこに台風があって、どう動いておるというのを聞くのと、それから目の前に天気図が送られてくるということでは、実際の判断の上で非常に大きな開きがあります。自分の目の前に天気図がありますと、船長が自分で判断するときに、ただ気象台から知らしてもらう——もちろんそれは気象台でもアドバイスする必要はありますが、それよりも自分の目の前に常時天気図を持っておるということは、気象判断の上で非常に大きな参考になります。今でも大きな船舶でありますというと天気図を書きますけれども、天気図を書くのに船の上では非常にロードがかかりますから、天気図が直接送られてくればこれは非常にいいのです。
  27. 大倉精一

    ○大倉精一君 ほかの委員の質問もあると思いますので、ぽつんぽつんと気のついたことだけお伺いするのですが、この伝達機関、組織の面で、これが一貫した組織を持っておらぬということで、現業において非常に困っておられる面があるのじゃないか。私はこれは非常に大事なことだと思うのですが、たとえば有田川のこともちょっと聞いたのですが、和歌山に観測所がある。しかしながら、その上流の方では気象台としての観測所がない。これはほかの方でやるというようなこともあるそうですが、あるいはその他においても、農林省の関係、あるいは建設省の関係海上保安庁の関係というような工合に、いろいろな各ばらばらにやられている。しかも気象に関する予算がこれによってばらばらに、どこが重点ということかわけのわからぬような格好で、方々にばらまかれている。こんなようなことで、あなたの方で、あれも買いたい、これも買いたい。ああいうこともしたい、こういうこともしたいということが、一貫した方針のもとにやることができないということがあるのじゃないかと思うのです。そういうことをあなた方が現業において、こういうものがあったらなあというような面もたくさんあると思うのですが、そういうことについて、現状一つお願いしたい。
  28. 松平康男

    参考人松平康男君) さっき私が申しましたように、予算の面でございますが、気象台のやっている仕事は、気象というものを必要とされる面がたくさんあるために、いろいろな方面へ御満足のいくようにというつもりで、予算もいろいろなパートに出ておりまして、見ますというと非常に散漫な格好になっておりますが、実は散漫ではないのでございまして、そんなに気象台仕事が複雑化しているというふうにおとり願いたいのでございます。それで、現在におきましても、水制度なんかでもいろいろな所でやっておりますけれども、私の考えるところでは、気象に関することは、専門気象台というものが国の機関を十分に使う。いろいろな面に気象を必要としておられますでしょうけれども、やはり専門の方に任されて、予算なんかでも少くて満足な、正しいものができる、こういうふうに考えておるわけです。
  29. 大倉精一

    ○大倉精一君 今日は予算関係予算を取ろうというわけでおいで願ったわけじゃないので、実情を聞かしてもらいたい。予算というものは、これは予算ワク考える必要はないと思う。私の質問は、気象業務がかくあるべきだということを私は聞きたいと思うのですが、さらに地方測候所に対する中央の考え方、待遇が非常に冷淡だということを私は聞いておる。それで、聞くところによるというと、地方測候所においては、機材整備はもう使いものにならんほど使っている。たとえば降雨の場合におきましても、洪水対策にしましても、山間の雨量観測あたりは、だあっと大雨が降ってくると、肝心の雨量観測機械に故障が起って、肝心の大雨のときにさっぱり役に立たぬというようなことも聞いております。あるいはまた温度計の箱、これは百葉箱と言うんだそうです。温度計の箱なんかも、明治何年かに作ったものを使っている。あるいはそれの置いてあるところの芝生の手入れなんかも、ほとんど予算がなくてできないようなふうになっている。あるいは温度、湿度、気圧計等の自記器械、こういうものも、あるいは風速計も、台風時にはこわれてさっぱり役に立たぬ。こんなものを使っているそうでありますが、あるいはそういうようなことについて、離島や岬というところは潮風に当って、よけいそういう感がひどいということも聞いておる。あるいはまた雨量のロボット観測器も、台風のときにはほとんど記録はできぬ。ですから、私が聞いているところでは、地方の肝心の測候所はほとんど修理ないしは取りかえをしなければ、ほとんど使いものにならぬような現状であるということを聞いておるのですが、そんなようなことはどうですか。これはどなたにお聞きしていいかわかりませんけれども……。
  30. 松平康男

    参考人松平康男君) お話の通りでございまして、さっき申しましたように、ローカル仕事でございますね、それが国の一本になりましてから、国全体の気象というような格好のものが重点をおかれている。そのために各県で、県営自体で作ったその県の仕事ですね、その仕事に対する予算というものが非常にいろいろな面から出してあるのですけれども、取れておらぬ。取れておらぬということは、取りにくいから取れておらないのではないかと思います。取りにくいということは、結局ローカルのことはローカルでやれ。考え方としましては、たとえば一つの県がありました場合に、県の人たちの利害関係になることだから、その県でやれというようなお考えもあるのじゃないかと思います。もしそういうお考えがあるのでしたら、また昔の状態にもう一ペン返して、一つの県のことは県でもってそういう予算を組む、そういうような格好に指示していただいて、政府なんかのやり方としても、そういうふうなことをばはっきりとしていただけば、かなり測候所としてはやれるのじゃないかと思いますけれども、現在では所長なんかが県から頼まれる、あるいは市から頼まれるというときに、すぐに実は予算がない、こういうようなことを申し上げている。一言一言みな、お金のことばかり言わざるを得ないのです。初めから国としては、ローカルのことはローカルというようなお考えがあるのでしたら、それをはっきり、たとえば気象台のことでありますれば、運輸大臣あたりから知事あるいは市長あたりに、ともかくローカルのことは予算が取りにくくなっているから、とにかくローカルで見てやれというようなことを一札いただけば、出先の測候所長なんか非常に気楽にやっていける、またこじきみたいな格好をしなくてもやれるというような気がします。
  31. 大倉精一

    ○大倉精一君 私はそういうふうなこともけっこうであると思いますが、今日聞きたいことは、予算はいいのです。今、運輸大臣あたりとおっしゃるけれども、運輸大臣は何にも知らないのです。この前の運輸委員会で、私、数値予報のことを言ったら、それはどういうことです、今初めて聞きましたというようなことを言っているのです。そんなことじゃさっぱり始まらぬので、この委員会を通じて、国民も知りませんから、現地はこんなにひどいのだ、こういうふうになっているのだということを、一つ端的にこの委員会を通じて国民に知らしてもらいたい。今言ったように、測候所設備なり機械なんかがさっぱり使いものにならぬものを使って、天気があたるはずがない。金がないというのは政府関係であって、測候所はこうであるということを言う必要があると思う。現に今新宿の伊勢丹ですか、あそこで気象関係の展覧会をやっている。あんな結構な機械は気象台で一ぺんも使ったことがない。肝心の気象台で使ったことのないものをずっと陳列して、このようなりっぱな機械が発達しているということをやっている。ですから、ここで皆さん方が現場の状態一つお聞かせ願いたいとい思います。さっき私が言ったようなことも事実であるということは、これはわかったのです。  さらに、私は人員関係、人員が足らぬと思うのです。それでたとえば、現在中央気象台で長期予報係というものがあって、これは九名しかおらない。前には長期予報係は四十名ぐらいおった。これは一例で、ほとんどの関係が人員の不足ということに大きな原因があるのではないか。たとえば気象関係は、これは九人なら九人でもやれる、四十人なら四十人でもやれる。研究にも前には補助というものを使っておられたのですが、今は金が足りぬから補助というものを使っておらないというようなことです。こういうようなことが表面に現われないから、これはとうてい国民は気がつかない。たしかに仕事をやっているようだが、肝心の作業を省かざるを得ない、こういうような状態が起ると思うのですが、こういう実情について一つお聞かせ願いたいと思います。とくにさっき聞いたところでは、大へん労働過重で、病気になる人がいるそうですね。一割病気で欠勤しておられるそうです。これは大へん私は大きな問題だと思うのですが、人員の面から実情をいろいろ例をあげてお聞かせ願いたいと思うのです、困っておられるところを。
  32. 松平康男

    参考人松平康男君) それなら私の方の役所の例をとってみます。神戸の海洋気象台は現在は七十八人ぐらいでございます。これで御前崎から豊後水道までのその海域の沿岸から沖合の海上気象を担当しております。そうしてそのほかに、兵庫県の代表測候所としてやっております。神戸の気象台は、昔は神戸測候所という本のと海洋気象台というものに分れておりました。ところが、御承知かどうかわかりませんけれども、進駐軍から、気象台の方が多過ぎるというので減らされた。私の所は昔は九十八人おりましたが、それが二十名ぐらい首を切らなければならない状態になったのです。そうして大きな官署が小さな官署を兼ねてやるということになっております。このことは非常に困ることでございまして、たとえば中央気象台なんか、天気予報やあるいは警報を出すというような場合、八丈島、大島、それを除いた東京都というものをやるわけです。中央気象台というものは東京測候所がやることをやっておるわけです。神戸海洋気象台は神戸の測候所のやることをやっておる。頭を陸と海に向けなければならないというようなことで、非常に無理がある。大が小を兼ねるということは業務上にも非常に困難がございます。たとえば大阪の管区気象台と神戸の海洋気象台は、両方とも大きな気象機関でございますが、片一方は高潮警報を出す。片一方は出さない。その出す出さないというのは、大阪の方が出した場合に、海洋気象とは言っておりますけれども、神戸測候所仕事なんです。そういうような格好の、両方で食い違うというような、人々の耳に変なふうに、大きな官署が食い違っているというような考えを持たれるというような格好で、大は小を兼ねている。これは人が少いからそういうふうになっているのです。  海洋気象台は昔は、中央気象台と並んで、海の方の人々のためにいろいろな図を作っておりました。たとえば、ここにございます北太平洋の天気図というものを作っておったわけです。こういうものがやれなくなった。これはどうしても船の方から要求があるものですから、まだフィリヤーなんかでもって整理されないときに、こういう天気図というものを一日一回作って船の方にやっておったわけです。そういう業務がなくなっておる。あるいは船の方々に、たとえば海難防止の面からして海難調査をしてやる。日本沿岸なんかでは、どういうふうな格好の遭難をされておる、気象の問題によってどういうふうな状態になっておる、どういう場所でというようなことも調べたのです。こういうふうなものもたくさん刷って船の方に上げるということもできません。それから現在ではそういうものを調査しようにも人手が足りない、それをやろうとしますれば、船の関係の方からお金をいただいて、いわゆる委託業務、委託を受けたような形にしてやらなければならぬ。やる意思はありながら、人が少いというのでやっておらぬというような状態なんです。この海難の防止なんかの面について出しました図なんかも、ごらんになればわかるのですが、海難というものはばかのようにと言っていいぐらい同じような場所でそうして同じような気象状態で遭難しておられるのです。こういう図を配ってやると、航海していまして、この海区はこういうことで危い、こういう気象状態というのがすぐわかる。こういうものを配りたいのでございますけれども、これが配れない、そういうような状態でございます。ここにお目にかけますから、これは昔やったものでございまして、現在やらなくなっているものでございます。
  33. 大倉精一

    ○大倉精一君 なお、今の人員の問題ですね。こういうことを聞いている。今の人員では、台風は二週間に一回ぐらい来てくれるなら、大体作業もできるのだが、しかしながら一週間に一ぺん来たり、十日に一ぺん来たり、五日に続いて来たりしたら、さっぱりお手上げだという話を聞きましたが、そうですか。
  34. 久米庸孝

    参考人久米庸孝君) お手上げというのはちとあたらぬと思いますけれども、非常に疲労困憊いたしております。たとえば、大体台風というのは八月に一番たくさん出現いたします。さっき申しましたように、私どもが扱っております台風予報というものは、日本に上陸する台風だけを問題にしておるのではない。発生から消滅まで、あの海を歩いております台風全部について、それの予報をやっております。そうしますと、八月には普通台風が五つないし六つ出ます。大体は五日とか六日おきに出まして、一つ台風の寿命というものは大体二週間でございます。そうしますと、一つ台風が出ましてから、それを一週間くらいで大体最盛期に達して、あとどうにかなりそうだというときに、また次のやつが出てくる。そういう形になっております。そういう形で順序よく行きますと、そういう場合にはふだんの当直配置に、さらに私どもの方で臨時編成という非番を動員してやる編成をやりますが、その第三編成という一番軽いやつを編成してどうにか間に合う。ところが、昨年の八月には終りの十日間の間に、同時に台風が三つほど出ました。そうしますと、三日に一つくらいの割で台風が出てくる。そうしますと、編成の全部を動員いたしましても、結局休養をとる時間がなくなってしまう。自分の当直が終ると、すぐまた次の臨時編成に入らなければならぬというようなわけで、そういうようなわけで、それが一週間とか十日続きますと、みんな疲労困憊いたしまして、別にわれわれお手上げすることはありませんが、それが自分の社会的任務でありますから、自分のからだの続く限りやりますけれども、疲労困憊してきますから、能率が落ちて参ります。そういうことは事実であります。
  35. 大倉精一

    ○大倉精一君 まあそういうことで、さっぱりこれは人間が足らぬということがわかるのですが、数値予報関係も今のお話のように、当番明けの人も非番の人も集まって、どこの命令もなくサービス的にやっていくということも聞いておるのであります。で、そういうようなものは数値予報ができれば、私は五日に一ぺん来ても、疲労困憊もせずに人員がいけると思うのですが、それはどういうものですか。
  36. 久米庸孝

    参考人久米庸孝君) 現在数値予報はまだ現業面に入っておりませんので、非番とかそれから公休日とかそういうものをつぶしまして、有志が集まって研究しております、そういうものを実用面に入れるときには、どうしても人をふやさないと、それはやっぱりできぬだろうと思います。現に今年も、今年の夏数値予報の実用化ができるかどうかということは、これはやってみなければわかりませんけれども、それからとにかく理論的にある程度成功したものはわれわれ当然取り入れていかなければならぬのでありますから、それをいろいろ取り入れてやってみようという試みをもって、計画を立ててみたのでありましたが、現在の人員ではそれだけの余裕がございません。それをやりますというと、われわれの従来やっておるところの公務の一部を削らなければならぬ。それが片一方に切りかえられるかということはわからぬのでありますから、そういうものを新しく取り入れるためには、それだけの人員とか、それからそういう一つのセクションなりを設けてやらなければ、これはできません。
  37. 岸保勘三郎

    参考人岸保勘三郎君) その問題につきまして、今年初めてそういう現業に入れるか入れないかという問題を聞きまして、いわゆる相談があったわけですけれども、われわれの中で話があったわけですけれども、結局入ると、われわれの中である人は、仕事の分担が違いますと、ある人が数値予報専門にやりますと、いわゆる現業に入りますと、ほかの人がその人のやっておる仕事をおんぶしてやる。結局その人は、数値予報研究々々といいましても、ほとんどはみな夜家へ帰って、ひどい人は全くからだをこわしはしないかと思うくらい夜仕事をやっておるわけでありますので、みなそれがそっちに仕事がおんぶするために、われわれ数値予報のグループとしては、今年はそういうような現業に入れてもらうことを無理には頼まない。それだけ、逆に言えば、われわれとして研究をやっておる人間としまして、そういう実際面との交流がない限り、どうしても観念的な学問になりまして、非常に進歩がおくれるわけでありますが、やむを得ずそういうものをのまざるを得ないという状態であります。
  38. 大倉精一

    ○大倉精一君 岸保先生のお話があったので、関連してお伺いするのですが、日本の大学は気象関係についての研究機構として非常に不十分だと思うのです。それで外国あたりでは研究の中心は大学にあるという工合になっておるそうでありまするが、現在では研究気象台でやらざるを得ない。やらざるを得ないが、それに対する予算もない、設備もないというようなことで、結局大学が気象業務研究の中心になっていないということが大きな一つの欠陥になっているのじゃないかと思うのです。中には数値予報関係で、外国天気図を買ったらいいじゃないかと言う人もあるそうです。アメリカのやつを買ったらいいじゃないかと言う人もあるそうですが、これはアメリカのやつはアメリカを中心にした天気図であって、やはり自主的に日本日本で作らなければならぬ、こういう意見があると思うのですが、その点についてちょっと一つお聞かせ願いたいと思います。
  39. 岸保勘三郎

    参考人岸保勘三郎君) その点につきまして、やはり日本では歴史的に大学の研究機関が非常に気象関係は特に貧弱でありまして、そういう点アメリカのようにはいかないわけでありまして、その点参考になるのはノルウェー系統の——ノルウェー、スエーデン、そういうところはやはり気象台を中心に発達しておりますから。ところがこのように学問が高度化しまして、数値予報がこんなに現業面にタッチしますと、大学とか気象台とか、そういう点でわれわれこだわる必要はないと思います。要するに十分な研究ができるということが根本問題でありまして、そういう点国情に合って、もしくは理想的に言えば、大学にあった方がいいわけですけれども、まあ日本現状がそうでない以上は、とにかくどこかで研究できるというシステムがあることがわれわれにとって一番望ましいことであります。  それから天気図の問題ですが、外国から買うとか何とか言いますが、外国では実際まだやっておりません。それで特にまたアメリカと日本ではうんと様子が違いまして、日本ではジェット、ストリームと言いまして、非常に流れの早い地域がありまして、アメリカの上空では非常に気圧の変化がゆるいわけですけれども、日本では非常に急速度に変ることがはっきりして来ました。そういう点でアメリカでやっておるシステムと日本でやっているシステムとは少し方法を変えなくてはいけないわけで、そういう点で日本日本資料を用いてわれわれがよくよく研究しないと、そのまま使うことは適当でないのであります。ただ科学的なものですから、やり方とか着想とか、そういうものは大体同じ線に沿ってやっていけると思います。
  40. 大倉精一

    ○大倉精一君 もう一つ。では定点のことについてちょっとお伺いするのですが、先ほどのお話を聞いておると、あの北方定点は絶対必要だという結論になるわけです。ところが残念ながら定点観測の船三ばいも予算を削られた。これに対して私この前大蔵省の主計官に聞いてみましたら、定点は必要かも知れぬけれども、離島ですね、そういうところを強化して、何やら島なら何やら島があれば、北方定点というものは今すぐにやらんでもいい、こういう大蔵省の主計官の見解だったのです。ところが予算を編成し、あるいはこれを削減する場合に、あなた方あるいは学者のそういう意見というものは政府の方に反映されておったか、あるいは何か相談も受けられたかどうか。私はこの前主計官の意見を聞いて、まるっきり私の認識と違った認識を持って予算を削られているが、これは日本気象に関しては非常に重大問題だと、こう思ったのですが、主計官はやはり自信を持っておられるようで、どうも専門家、学者がこれは要ると言っているのに、そろばんをはじく人はこいつは要らんのだと、こういうことはもう非常は理不尽な問題だと思うのです。何かその間あなた方専門家にそういう相談をして意見なりを聴取されたことはございますか。
  41. 久米庸孝

    参考人久米庸孝君) 私は気象台の運営の責任者ではございませんので、現場を担当しておりますから、運営の責任者には相談が、当然そういうことがあったと思います。私自身には別にございません。
  42. 大倉精一

    ○大倉精一君 そうですが。学者の方にはありませんか。意見を求められたことはございませんか。
  43. 久米庸孝

    参考人久米庸孝君) 定点と離島とは性質が違うのであります。定点は離島のすぐそばに持ってくるのじゃなくて、離島のないところに定点を持っていくのであります。
  44. 岡田信次

    ○岡田信次君 私は岸保さんにちょっとお伺いしたいのですが、大体気象学という学問とそれから気象という天然現象、この間にある程度のギャップがあるんじゃないか。言いかえれば、気象という天然現象に、人知というか、科学というか、学問というものがまだ追いつかない点が現在の気象学にはあるんじゃないかと思いますが、その点いかがでしょうか。
  45. 岸保勘三郎

    参考人岸保勘三郎君) その点はわれわれもそういう考えがありまして、実際にわれわれが考えている理論を大気に応用する点については非常にはばかって、またそれだけ気象学が物理学に比べまして非常におくれたわけでありますけれども、ここ数年間急ピッチにその理論が実際に適用されるということがはっきりしまして、それが実際に可能であるという、可能といいましてもあとで詳しく説明しますが、可能であるといわれたのが丁度二年前であります。そういう点はアメリカなんかは割合に早く実行という点にすぐ入ったわけですけれども、それまでに多くの気象学者が半分は、大気というものは非常に複雑だと、そういう一つ研究者でありながら、一つの迷信のようなものにとりつかれて、実際に応用することを非常にはばかった、そういう点が非常に進歩をおくらした。その逆にそういうことが利用できるということがわかりまして、急速に発展して、そして日本で今度は観測の方が荒っぽいとか、日本の測器がいかぬとかいう点で、日本ではだめだろう、そういう意見もありました。しかしそれもわれわれはそうでないことを自信をもって、言いたい。ただしわれわれが今いう可能性というものは、大きな気圧のパタンでありまして、こまかい局地的な、たとえば仙台の気象台の方にいきましたところが、気象台の東北地方の雨が平均二十ミリなら二十ミリ降るだろうということはいいでしょうけれども、たとえば岩手には八十ミリ降るとか、仙台では五ミリ降るとか、そういう局地的なところまではまだわれわれは理論を持っておりません。そういう大きなところは大体われわれは行きついているんじゃないか。そういう点むしろギャップは、いわゆるわれわれの普通の知識がまだ気象界全体に十分行きわたらない点にギャップがあるんじゃないかと思います。
  46. 岡田信次

    ○岡田信次君 そういたしますと、岸保さんのお考えでは、日本気象台というか、気象観測機関、これの観測の機械であるとか、あるいは観測設備であるとかいうものは、現在の気象学で考えられる一番いいやつがある程度備わっているとお考えになっておりますか。
  47. 岸保勘三郎

    参考人岸保勘三郎君) それは誤解を与えましたけれども、われわれはいわゆる使いものにならぬというものがあっても、これはやってみて、たとえばここにある渦がこちらに行く、ここの渦を観測したわけでありますが、理論的にはここへいくわけですけれども、もしこの観測資料がでたらめでありますと、とんでもないところへいく、それがでたらめにいくほど観測資料は悪くなるわけでありまして、こまかい点になりますと、私自身現場にタッチしておりませんし、どの機械は精度がどのくらいのものか、具体的に十分知っておりません。しかしわれわれは現在日本の上層で提供された資料で、あの程度の気圧のパタンは予報できるというだけでありまして、まだこれから実際のこまかい、いわゆる天気予報といっておりますのは数値予報でありまして、天気予報になりますと、雨がどこにどれだけ降るとか、雲がどれだけできるとか、そういう点は天気予報の方になりまして、これは次のより高度な研究段階だと思います。それが数値予報という段階だと私は思っております。
  48. 一松政二

    ○一松政二君 せっかく権威者が寄っておられますから、ちょっと定点観測やその他みたようなことは私の聞こうとする分野ではございませんが、大体日本は地勢的に海洋に囲まれて、そして細長くまん中に背骨が通っておるために非常に気象の変化が、大陸、おもに私はアメリカのことを考えるのですが、アメリカあたりの気象の天気予報と一緒にしたら、また学者の間には誤解があるかもしれませんが、まずごく常識的に考えて、日本の天気予報は最近は少しあたるけれども、どうもあたらん方が多いとか、どうも当てにならんとかいうようなことをよくしろうとは言っておるわけです。それから例の突風などにしましても、なかなかそれが、さっきあなたのお話の通り渦の観測が正確でなければ、それはとんでもないところにいく。しかもそれはさっきお話のように非常に気流が早いというので、思いがけないごく近海で遭難をするというようなことがあるのですが、その日本の地勢が海洋に囲まれておる、そうしてかりに定点観測があったところで、そう陸上のようにたくさんあるわけにはいかない。日本海と太平洋に囲まれてしまって、その中間に、船ではあるかもしらんが、詳しいことはできない。従って観測の方は荒っぽいという考え方になるかもしらぬ。従って日本の天気予報というか、気象研究というものが大陸に比べてかなり複雑であって、むずかしいものであるということは考えられないのですか。それはどなたでもよろしゅうございますから……。
  49. 久米庸孝

    参考人久米庸孝君) 日本は天気予報がむずかしいことは事実ですけれども、アメリカと比べて日本がむずかしいというのは当らぬと思います。というのは、アメリカでもたとえば西の方はヨーロッパの西に大体相当いたしまして、気圧配置の上から申しましても比較的天気が安定しております。ところがアメリカの東海岸というのは日本に非常に似ておりまして、大体シベリアかカナダに相当する。それからあそこに五つの湖がございますが、その五湖が大体日本海に相当いたします。これは相当するというだけで、よく似ておるというわけじゃございません。それからあそこの東部十三州のまん中を走っておる山脈が大体日本に相当いたします。それから冬の低気圧でも夏の熱帯低気圧でも、アメリカの東部海岸と日本は非常によく似ております。日本だけが特別にむずかしいとは私は考えません。それから先ほどの天気予報のお話ですが、あした雨が降るか降らないかという天気予報は、これは数値予報をやりましても急にあたるようにはなりません。ただ数値予報をやりますとどういう点がいいかというと、数値予報は方法論の上で物理学、力学を使っておりますが、これである一つの基準線が出て参りまして、理論的にはこの方向にいくべきであるが、観測その他の誤差からいって、このくらいの巾が出てくるだろうというような予報のやり方になっていくわけであります。現在私ども現場でやっております予報というのは、シノプティックというやり方でありますが、方法論の上からいうと、生物学、経済学というものに近いのでありまして、空間と時間の上で、普通の社会科学で申しますと、社会と歴史の中で考えるのと同じような考え方をいたしまして、現在ここに表われておる天気が時間と空間の中ではどういう意味を持っておるかということを天気図の上で判断いたすわけであります。つまり予報の本質がある一つの必然的な法則によって持っていくというのじゃなくて、現在こういう情勢のもとにおいてこういう意味を持っておるものがここに表われておる、それを判断いたしまして、だから近い将来はこの程度の間に落ちるだろうというふうに持っていくわけであります。ですからその行き方をいつまでも続けておる限りにおいては、これは天気予報は永久にあたりはずれがあるだけでありまして、つまり天気予報のどこが間違ったとか、どこが正しかったということは言えないわけであります。ところが力学的な方法をその方法論としてその基礎の上におきますと、それが単なるあたりはずれでなくて、誤差を論ずることになってくる。そこのところが数値予報の行き方が天気予報の上で非常に大きな意味を持ってくるわけであります。ただその数値予報をやりましても、天気予報そのものが急にあたるようになるわけじゃございません。ただ先ほど申しましたように、台風のようなものはこれは一つの気圧配置のシステムであります。ですからそういうものに対しては適用が可能なわけであります。もちろん適用するときは理屈通りに参りませんから、それはいろいろな安全係数を掛けなくてはならない、けれども、やり方が非常に客観化される。そこが非常な特質であります。
  50. 一松政二

    ○一松政二君 今台風のお話が出ましたが、台風に対して、台風が起らないようには、これは自然現象ですからできませんが、その方向を早く知りたいというのは何びとも考えておるのですが、なかなか方向がつかまえにくいようでございますが、あれはもう少し時間が早く、どういう方法をしたらもっと早く知られるとか、何かこう一般に知らせる方法、あなた方の観測上もっと方向を正確につかまえるお考え方というものはないものでございますか。
  51. 久米庸孝

    参考人久米庸孝君) それで定点観測船が要ると言っているわけです。つまり広い範囲に下から上まで、高いところまで観測をして、広い範囲の、三次元の天気図を書いて、その中で大気がどういう流れ方をするかを調べ上げて、それをもとにして法則を組み立てないと、台風がどっちの方向に行くということがわからない。だから定点観測船というものが要るわけです。
  52. 一松政二

    ○一松政二君 それは今言った、南方に行くのか、フィリピンに行くのか、シナに行くのか、日本に来るのかという程度のものであって、私が申し上げたのは、いつも鹿児島の沖まで来て、そうしてこれが四国へ上るのか、あるいは九州の中部を通るのか、西部を通るのか、二つや三つのあなた方がいろいろプロバビリティをお書きになっておるが、あれは定点とは直接関係はなかろうと思いますが、いかがでしょうか。
  53. 久米庸孝

    参考人久米庸孝君) それはなりませんです、おそらく……。それは、どういう方法をとってもおそらくなりません。たとえば潮岬のところまで台風が参りまして、大阪湾に入るか、こっちに来るかということは、そこを通過してみなければわからないのでございます。(笑声)それはたとえ数値予報をやりましても出て参りません。
  54. 一松政二

    ○一松政二君 それでは私は、その進路を知るということが、やはりどうせ病気にかかるなら、病気の性質なり、どこが悪いのかということが一番実際問題としては必要なことである。病気にかかったことはわかるけれど、何病であるか、ということが必要と思うが、日本の近海まで来た、あるいは上陸する地点まで来ておって、そうして蛇ののた打つように日本国中を荒れ回っている台風もあるわけです。それがなかなか通ってみなければわからぬということになると、こいつは私ははなはだ失望せざるを得ない。また事実はそうであるかもしれませんよ。今さっき岡田委員の言われたように、学問がそこまで発達していないという考え方に、しろうとで言えばお考えになるかもしれんし、しかしそうすると、まあ自然現象だからつかまえられぬ、起ってみれば、それは対症療法があるかもしれないが、病気が起るか、起らないかは医者の領分外になるだろうし、人の体によっても違うということでありますから、学問の領域をあるいは離れるかもしれませんが、実際われわれが社会生活をする上において一番必要なのは方向だと思います。
  55. 久米庸孝

    参考人久米庸孝君) そのためにわれわれは医者と同じような方法をとっております。たとえば、気象台から注意報を出したり、警報を出したりするのはそのためであります。つまり、お医者さんの場合に、たとえばこの人間がツベルクリン反応が陽転した、そういうことをお医者さんは言います、それがわれわれが注意報を出す場合であります。その場合に、ツベルクリン反応が陽転したというだけでは、その人間が発病するかどうかはわからないわけであります。しかし、発病する可能性があるぞということを知らせるのが、われわれの出しておる注意報であります。その次に、それが起りますと、一般にはお医者さんに行きまして、たとえば三カ月に一回とか、あるいはもっと熱心な人は一カ月に一回とか、レントゲン写真をとりまして、その危険の去らない間、あるいはその後の経過を見ているわけであります。そして実際レントゲン撮影をして、写真の上に陰影が出ると、お医者さんは、君は発病したぞ、すぐ絶対安静をしろということを言われます。そのレントゲン撮影で陰影が出たのを知らせるのがわれわれの出している警報であります。つまりその場合に、それでは発病した、このまま絶対安静にしなければどうしてもいけないものか、あるいは自分の一家の生計の都合上で、一日に五時間だけは働いてもいいか、その辺のことを医者が適切にそのとき指示を与えてくれないから、それが役に立たないとおっしゃるのと同様だと思います。
  56. 一松政二

    ○一松政二君 実は人間の性格というものは横着なもので、せっかくあなた方が、来るであろうと思っていろいろ工夫算段して方向を知らしていると、とんでもないところへ行ってしまった用意した方にはこないで、用意しない方へ行ってしもうた。あのときああだったから、今度またああ言うけれども、またあんな目を見ちゃむだ骨だというので、ついうっかりしていると、うっかりしたところへ行くという実際上の問題がたくさんあるわけであります。それで、やはりしょっちゅう注意しておればこれにこしたことはないけれども、二度三度もしそういうことがはずれると、三度目にほんとうに行くときにすっかり用意しないで、完全に損害をこうむるようなことが、これは人間のあさましさであるわけであります。
  57. 久米庸孝

    参考人久米庸孝君) 私が商船大学で学生に教育しているのはその点であります。つまりその場合に、もし自分では気象学を全然勉強しないで、たとえば台風が、東京湾のような南に開いているようなところの港に船を入れている場合に、もしも台風が西を通ったならばここにどういうことが起る、東を通ったならばどういうことが起る、それを判断してそれが今すぐ言えないとすれば、どちらを自分で選んだらいいかということを自分自身のそのときの航海目的と船の性能、それに応じて自分の舶地を変えなければならない。それが病気の場合には、たとえば発病しましたぞと言われたときに、自分はじゃどうしたらいいか、たとえば、自分は妻子をかかえて一日二時間でも三時間でも働きながら長い間かかって療養した方がいいか、あるいは今すぐ女房に働かして自分は病院に入った方がいいか、それは自分の体自身に応じて判断しなくちゃいけない。だから海員とか、そういう気象を利用する人にはそういう教育をもっと高度にさせなければいけない、さっき松平先生がおっしゃったのはたしかそういう意味だと私も同感に思います。
  58. 一松政二

    ○一松政二君 その船やらそういう特殊なやつは、これは自分だけが警戒するったってそう大したことじゃない。だだっぴろい地域にあって、たとえば関東に一〇〇ミリ降って、河川の水量がふえて、場合によったら利根川が氾濫して土手が決壊するかもしれぬというようなことがかりにあって、まさにその通りやっておると、はずれちまったそうして広い地域にわたって洪水を警戒しておったらさっぱり何もなかった、また一週間ほどして次の台風が来る、この前あんなことだったから当てにならぬというて、やることはやるけれども、やる人間に魂が入っていないで、そうしてつい川が氾濫して災害を起すというようなこともありがちなんです。
  59. 久米庸孝

    参考人久米庸孝君) それがさっきの病気の場合と同じゃないか。たとえば、昭和二十四年に東京にキティ台風というのが通過いたしました。キティ台風は東京の西側を通った台風でありまして、東京湾に起した高潮は大正六年の高潮以来の高潮であります。ところが、一人もあれで死んでおりません。高潮のためには死ななかった。気象台の暴風警報の発令と同時に、太田区からあの周辺の住民を全部避退さしたからです。大正六年のときには、ここには相当御年輩の方がおられますから、東京におられた方は御存じかもしれないと思います。私は知りませんけれども。
  60. 一松政二

    ○一松政二君 私は知っていますよ。
  61. 久米庸孝

    参考人久米庸孝君) あれに次ぐ大きな高潮が起ったにもかかわらず、死んだ人が出なかった。つまり被害をそれだけ食いとめ得たわけです。
  62. 一松政二

    ○一松政二君 私はそういうことが悪いと言っているんじゃない。
  63. 久米庸孝

    参考人久米庸孝君) そういう行き方をすることによって、さらに起り得べき被害を食いとめていくことができる、そういうことを言っているわけです。
  64. 一松政二

    ○一松政二君 それは私も認める。それが悪いとか何とか言っているわけじゃない。それをもっと正確に知ることができないかということを求めているわけなんです。
  65. 岸保勘三郎

    参考人岸保勘三郎君) そのあたるあたらないの問題より、われわれ研究をやっている人間としましては、少しでも科学的にそれを究明したいというのがわれわれの任務だろうと思います。ところが、非常に、さっきもお話しましたように、われわれはデータがないことは、資料がないことは第一の困難な点ですけれども、大体研究費がないわけです。ないからわれわれは遊んでいるわけじゃないのですが、非常に効率の悪い研究をやっているわけで、遊んでいるわけじゃないので、そういう点、まあ一つわれわれ計算機がないということは、もうある意味では致命的なんですが、あんまり何といいますか、それでもわれわれはそれを代用しようとは思いませんけれども、それを使えたときにはどんなふうに改良できるかという暗中模索の状態でありまして、その点声を大にして何べんも言いたいと思うのです。
  66. 重盛壽治

    ○重盛壽治君 関連したようなことですが、先ほど久米さんは、今大陸からの気象の連絡は、データはできておると言われておったのですが、たとえば特にソ連もあげられたのですが、ソ連でも、中共でも、朝鮮でも、これはみな日本気象観測するに足るだけの連絡ができておるわけですか。
  67. 久米庸孝

    参考人久米庸孝君) ソビエトに関する限りは十分であります。中共は全然ございません。
  68. 重盛壽治

    ○重盛壽治君 そうすると、今ちょうど一松さんの話によく似た話なんだが、一つの例をとってみると、昨年の洞爺丸事件のとき、あのときに、時間は正確でないかもしれぬが、八時五十分ごろの沈没だったと思うのですね。たしかそのときに、中央気象台から函館測候所に対して入ったのは、六時四十分ごろにあの台風は函館湾から太平洋に抜けるという通報が入ったわけです。で、今度七時四十分ごろになって、進路が変るやもしれぬと。しかし実際には北方へ抜けるようになってそれがわかったのは、函館測候所がやっぱり七時何分かにつかまえられたが、今一松さんの言われるのはそのことだと思う。僕もそうだと思う。あのことがもし機械化によってか、あるいは技術によってか、いま一時間も早く船の方へ連絡がついたらと、もちろん私どもは個人的にはこういう考え方をしている。今言われたような台風が次から次へとあのときは来たので、今度来る台風も大したことはなかろうというので、台風をあそこで関連しておった人たちが軽視をしたという点も、これは事実あったと思います。しかし本当にあの事実とあの速度がわかっておれば、洞爺丸の退避しておった所は一番風当りの最もいい所、一番強いところへ退避しておった。しかしそれがほんとうに函館海峡から太平洋へ抜けるということになれば、あそこでよかったということになる。それがわずかに一時間半かそこらの間に、今いう台風の進路がはっきりつかめなかった。もちろんあの地方気象連絡も、先ほど大倉委員の言われた、松平さんも説明してくれた、地方的な連絡の不備も若干あった。あったところが、台風はやはり中央気象台から六時四十分か四十五分に北海道へ向うという北海道から太平洋沖へ抜けるというあれがたしか入っているはずです。それが七時四十分からまた一時間ぐらいたったころに進路が北に回るだろうということをようやく言っている。実際に沈没したのは八時五十分ごろだ。こういうふうに時間おきごとに……。  われわれはあのときに深刻に感じたことは、あの日本気象機関というものが、もう少し完備しておったら、機械か。手不足か知りませんが、あのくらいのことがなぜわからなかったかということが、そういうことが言われるのですが、そこで今一松さんの言われる問題になってくるのだが、通ってみてからわかるということであるならば、日本気象というものはもっと研究しなければならぬし、それからああいうことがなくて、一時間前に、あるいは三十分前にあのことがわかるようにすることのためには、それは今言った中共からの連絡がなかったが、あの気象の連絡があったとすれば、あの問題は避けられた、あるいは日本方面に大きなレーダーが一つあったら、はっきりしたレーダーがあったならば避けられたであろう、ないしは、仙台の測候所が強化されておったら、函館の測候所がもっと整備しておったらというふうな問題があるのではないかと思うのですがね。そういう点の具体的な問題、どういうふうにお考えになりますか。
  69. 久米庸孝

    参考人久米庸孝君) 今おっしゃった実例だけを取り上げるならば、中共の問題ではないと思います。むしろレーダーの問題であります。レーダーも万能ではございませんで、たとえば台風がああいう非常なスピードで走っておりますときには、台風の中心というものは非常に複雑な形をとります。レーダーで撮影されたいわゆる台風眼の位置と、それから天気図上に解説しました気圧の最も低い点と、それから風の渦巻の中心と、普通台風の中心というのはその三つの性質をいっておりますが、その三つの点が全部分離いたします。そうしてその間に、たとえば昨年の十四号なんかの例でありますと、六十キロ、七十キロという違いが出て参ります。ですから、眼の今通過している位置が、ちょうど低気圧のいわゆる中心であるということは、これは今後さらにもう少し研究しないとわかりませんが、ですけれども、中心が今通過しておる位置をもっと早く知るというためには、レーダーは威力を発揮いたします。
  70. 重盛壽治

    ○重盛壽治君 そうすると、あのときに完全な機械があったならば、もう少し早くわかったんじゃないか、こういうことが言えるわけですか。
  71. 久米庸孝

    参考人久米庸孝君) それは、さらに今後研究が進んでもっと高度の精密さを持つようになれば、そうなるかもしれません。今すぐそうなるかと言われても、それはちょっとお答えできません。というのは、現在の高層気象観測点というのは三百キロの間隔を基準にしております。ですから、三百キロ以内の小さな現象については論じられません。
  72. 大倉精一

    ○大倉精一君 関連してお伺いするんですが、今の台風の進路について、一松さんが、九州まで来てわかるんでは、ほとんど気象台を信頼するに足らずと、こういうお話だったと思う。これは私はいろいろなものを総合しなければ、経験があったからこれでいいんだ、あるいは人間の精神力の魂の問題がどうだからできるという問題ではないと私は思う。たとえば台風の進路を予定するのは、学問上まだはっきりしたものはないそうですし、北方の高層気流の配置によるものであるとか、あるいは気圧配置によるものとか、いろいろで、学問上一定の定説がないようですから、総合して見なければならない。その点からいっても、北方定点が北方のその当時の高層気流の状態とか、あるいは気圧の状態を測定するという、これも一つ台風進路の予想の大きな私は要素になると思う。それからもう一つは、台風の場所を発見するのに飛行機をもってやる。それは現在アメリカの飛行機ですね、これはアメリカの飛行機だから、これは他力本願で、気象台が独自の考え方あるいは要求によって、今出てくれ、今あそこへ行ってみてくれということは、言えないわけです。アメリカ軍の御都合によって行くものですから、アメリカ軍から提供されたもので、都合がよかろうが悪かろうが、それでやらなければならぬという問題がそこにあるだろうと思うんです。  あるいはまた機構、運営の問題もある。たとえば、私はちょっと、うわさですからわかりませんが、洞爺丸のときにはどこでしたか、鳥取辺を通るときに、何か台風慰労会というものをやったらしいんです。もう台風はこれで来ない、ことしはしまいだと、やったらしいんだ。ところが、そこへ十五号が発生した。ところが、ある予報官は、自分の長年の勘でもって、この台風経路から、性質から、北海道が危いと思ったらしい。北海道が危いと思ったんだけれども、それが勘だものですから、これは業務の上にのせることができなかった。そのときに北海道は危いということを、大阪なり名古屋なり、連絡しておれば、北海道の気象予報はもっと違ったものになったかもしれない。これは一つの運営上の問題だと私は思うんです。  あるいはまた、南方定点の問題ですけれども、これは今のあつみ丸みたいなものを、これを定点観測に出すということは大体間違いだと思う。あのなべぶたのような、金づちでたたけば穴のあくような船を、台風のどまん中に行けというのは無理だと思う。台風が来たらこれはもうどんどん逃げてしまって、そうして場合によっては九州が見えるところへ来て、そこで北緯何度とか、現在こうであるといってみても、それはだめなんです。ごまかしていると思う。位置が違ったならば、観測船から来るデータなんていうものは、ほとんど価値がないと私は思う。ですから、こんなものを出すということ、これも間違いなんです。大蔵省はこれでけっこうだと言っているらしいけれども、それは間違いだと私は思う。それで私は確かに北方定点があれば必ずこれで正確になるとは言いませんけれども、重要なる要素だと思う。南方定点観測船も、あのあつみ丸みたいなものじゃなくて、ちゃんと観測が完全にできるような船であれば、やはり台風が来ても、中心ははずれても、大体一定の範囲内に行動をして正確なデータが出る。こういうことが私はずうっと、総合されて台風の進路というものもさらに正確を期することができるのである。  人員の問題もそうです。人員の問題もああいう不足な人員でもって無理してやる。たとえば離島あたりでも、気球を揚げるのに、私が聞くところによると、平時は八時間に一回ですか、六時間に一回ですか、揚げるらしいのですが、とても台風時には人間が足りない。  そういことを総合して、結局九州まで来なければわからぬということになる。これは予算関係もある、結局政府の怠慢だと思うのですが、そういう点について、台風の進路と定点観測ないしはその他の飛行機、そういうものについて、実際の業務の体験からもう少しお話を願った方がいいだろうと思うのです。
  73. 久米庸孝

    参考人久米庸孝君) 定点に関する問題は、もう最初詳しく申し上げましたから、もうよかろうかと思うのですが、飛行機その他の方は、現在台風の中心をできるだけ早くつかんで、それから台風の中の性質を調べ上げる最もいい方法は飛行機であります。その飛行機で観測する方法は、大体昭和十九年から始まっております。これはアメリカだけでありませんで、実は日本でもそういう試みがありまして、昭和十九年の秋に鹿屋の航空基地から銀河という飛行機が五機飛び出しまして、台風の中心を突っ切って、中心を突きとめた実例がございます。けれども、当時は日本は飛行機がほとんどありませんで、それから戦後軍隊が解体いたしました。もちろん航空も停止された。それから当時は飛行機の航法といたしまして、現在のようなロランを持っておりません。ロランと申しますのは、電波で航海するとかあるいは航空する方法でございます。ところが、アメリカではロランという、そういう盲目の飛行機の最もいい航法を採用したので、これを使いまして、現在では密雲の中でもどんどん飛行機で突っ切って、中心を突きとめます。その方法で、台風の位置を追跡するのが、今のところでは最もいいことになっております。いいことになっているというのは、台風のほんとうの中心はどこであるということは、固定したところから見るのではありませんで、飛んでいる飛行機から見るのでありますから、多少の誤差は免れない。しかしそうやって突きとめたのが、最も正確であります。そうやって突きとめて、台風の進路を、経路を正確に調べることによって、台風の持っているいろいろな性質がだんだんとわかってきております。たとえば、先ほどの潮岬のすぐそばへ行って横に行ってしまった、そういうふうな一つの蛇行性を持っているということも、いろいろ詳しくわかっている。それから蛇行の性質がどういう性質の蛇行であるかということも、いろいろ研究が進んでおります。ですから、もちろん現在はアメリカがやっておるだけでありまして、アメリカ軍が必要としなくなれば、いつ何どきあれはなくなるかもわかりません。そういう場合には当然、これは日本でやらないというと、台風の精度は落ちます。
  74. 小酒井義男

    小酒井義男君 ちょっと関連して……。今の久米さんの答弁の中で私ちょっと何ですが、最初に詳しい説明をしていただきましたね。いろいろな船舶の避難状態、あれは私は定点観測の必要任務、そういう点から説明願ったのだというふうに理解したのですが、そうですか。
  75. 久米庸孝

    参考人久米庸孝君) そうです。
  76. 小酒井義男

    小酒井義男君 そうすると、これは委員長の方から時間の制限があったので十分説明が聞けなかったのじゃないかと思うのですが、あれを聞いておると、付近を航行中の船舶の被害を避けるだけが定点観測の任務のような印象を受けるのですね。定点観測というものはそれだけなものなのか。たとえば日本の本土に対してどういう役割を果すのかということをお聞かせ願いたいのです。
  77. 久米庸孝

    参考人久米庸孝君) 先ほどは一番端的な、私どもが自分の現在の職務で一番私自身の職務から痛感するところでしたから、端的に申し上げました。  定点観測のもう一つの持っている非常に大きな意味は、定点観測はラジオゾンデを揚げまして、高層気象観測をやることであります。高層気象観測をやって、大気の三次元の構造を突きとめていく。それに基きまして、大気が全体としてどういう流れをし、その中でどういうことが起っているか、それと、実際のたとえば日本の内地におけるいろいろな天気なりあるいは長期予報といったような季節に関するようなもの、そういうようなものとの関係を調べ上げなければ、地上の天気図だけを頼りにしていては、今年の梅雨は寒くなるだろうとか暑くなるだろうとか、そういうことを言っても、それは非常にラフな統計的な確率しか持ち得ない。何か大気の中に起っておるそういう大循環の現象がどういう法則を持っているかということを突きとめなければ、将来はわれわれは長期予報とか、あるいはもっと高度の天気予報をやるときに、頼りになるようなそういう法則なり理論なりをわれわれは求めることができない。そういう点で定点観測は大きな意味を持つのであります。
  78. 大倉精一

    ○大倉精一君 定点観測はずいぶんやったんで、まあ私は申し上げることはないのですが、ただ非常に僕は遺憾に思うことは、大蔵省が、肝心の金を出す大蔵省が全然認識が違うのです。この前の速記録を読まれても、実際現地を担当している方、学者の方が大蔵省に抗議を申し込んだことがあるが、ああいう考え方で政府日本気象に対してやられたんでは、これは未来永劫に定点観測の船の金などは出ませんよ。一つそういう点はあなた方、日本のために、日本の百年の大計のために、大いに抗議を申し込むように相談をして下さい。
  79. 松平康男

    参考人松平康男君) ただいまのおっしゃったことで、私前から考えておるのですけれども、昔は気象台というようなものは、国民のためにこうやればいいだろうというような格好でやっておった官署でございます。それが今度は、最近は切りかわったはずだと思います。国民のための気象官署。従いまして、われわれの気象官署に対しましては、まことに失礼な言い分かもしれませんけれども、運輸委員方々におかれまして、気象台はこういうことをやれ、あるいはこういうことはまずいといって、そういうふうにもう少し、国の機関、国民の機関でございますから、使っていただきたいと思う。そういうような観点から、予算とかなんとかはわれわれが努力するというのではないのでございますので、われわれはサーバントでやっておりますから、そこは一つ今の国の、国民の機関として必要として置かれている気象機関でございますので、どこにまずい点がある、あすこはこうやるべきだといって、金をつけてやっていただくと、まことにやりやすいと思うのでございますが……。(笑声)
  80. 大倉精一

    ○大倉精一君 私は、国会でやるのは当然ですけれども、国会は国民の世論を背景にいたしますので、あなたの方の専門家からそういうふうにやってもらいたいとか、国民はこういうむずかしい定点観測のことはわかりませんので、定点観測ばかりではありませんが、例の電子計算機、何千万円くらいのこれさえも削られている。これは一つあなた方も大いにやって下さい。  それからもう一つ、せっかくの機会ですからちょっとお伺いしておきたいのですが、給与関係ですね。気象関係の給与関係ですが、これは非常にまずい。これは気象業務に大きな影響があると私は思う。私は一昨年でしたか、気象台長の部屋へ行きましたけれども、あの冬の寒いまっ最中にストーブもたいていない、お茶も一日に二回くらいしか出さない、電話は一日に何回しかかけられない、こんなことを言っておった。これでは、気象々々と言っても。おかしいと思う。北海道におきましても札幌管区気象台におきましては、石炭が冬になったって二階と下に事務所があるけれども、石炭の予算がないので、二階の職員を全部下に集めて、舷々相摩すという格好になってやっておった。あるいは豊岡においても電灯料がないので、電灯もつかないということも聞いている。あるいは離島関係では、あすこで測候所を作るのに、建物はセメントや木材で設計は来る。来るけれども、大工や左官屋さんは設計通りに来ない。来ないので、職員が自分の明け番を利用して、大工になったり左官になったりする。そして自分たちが建てる。そうして超過勤務手当はありはしない。そういうことをやっておったのですが、これはもうとんでもないことであると思う。そういう実情があるのですが、これは(「大蔵省へ行かなければだめだよ」と呼ぶ者あり)その実情を聞きたい。今日は予算だけではないので、ほんとうかどうかという実情を聞いているのです。遠慮は要りませんよ、こういう機会におっしゃって下さい。
  81. 加藤シヅエ

    委員長加藤シヅエ君) 今の御質問はどなたに……。
  82. 大倉精一

    ○大倉精一君 いやもう全部です。気象台関係
  83. 加藤シヅエ

    委員長加藤シヅエ君) 参考人の方、その通りかどうかという御質問です。
  84. 松平康男

    参考人松平康男君) その通りでございまして、ほかに何も申すことございません。
  85. 木島虎藏

    ○木島虎藏君 松平さんその他の方にお尋ねしますけれども、今までお話を聞いておりますと、今の電子計算機の問題やなんか、いろいろな重要な問題があると思いますけれども、私どもの感じでは、とかく技術の専門家とかあるいはいわゆる専門家の方は、そういう事の重要性を、予算のやり方とかその他、役所の方のそういうことをおやりになる方に説明が少し足らぬじゃないかと思う。私どもも今聞きまして、初めて承わったようなことで、それから将来予報の的確さにどの程度貢献するか、現在の段階では直ちに切りかえることはできぬけれども見通しはどうなるかというふな、専門的な説明が少し足らぬと思う。皆さんの悪口を言うわけじゃないけれども、えらい方は、そういう技術的なあまりこまかいことを言うと、人は子供みたいに思われるでしょうけれども、一般はそうじゃないのです。ですから、よくかみ砕いて説明なさって、そうして重要なところを強調なさるということが必要じゃないかと思うのです。日本は諸外国のように、技術的に進歩してないのです。世界水準に達しておる特殊な方はございますけれども、一般としては非常におくれておるわけです。特に私どもの過去の経験から言いますと、物理がきらいだったとか数学がきらいだったとかというのが、文科の方にいきまして、その人たちが政治の中枢とか、そういう金を出す方を占めておるから、非常にわかりが悪い。だから、そういう方によくわかるように説明をなさい。それから象牙の塔に引きこもらないで、実際の現実の国民生活に関係のあることですから、そこまで下りてきなさって、そうしてよくわかるように説明なさるということが必要じゃないかと思うのですが、どうですか。
  86. 岸保勘三郎

    参考人岸保勘三郎君) そういう点は、確かにわれわれ説明不十分な点があったと思うのですけれども、まあわれわれもずいぶん説明には歩いたつもりなんですが、歩くところが間違っていたのかもしれません。それからそういういわゆる経理担当、そういう点は気象台として要求してもらうように、最善と思った方をやったのですが、それが十分でなかったということがわりましたし、それからわれわれとしては、そういうことを出すのが恥かしいのですけれども、学会にも出して要望した。われわれは研究だけしておればよろしいのだけれども、研究だけしておったのでは、飢え死にしちゃう。可能な点ではやったつもりですけれども、まだまだ足りないということがよくわかりました。
  87. 片岡文重

    ○片岡文重君 ただいままでの参考人各位の御意見を伺っておりますと、今日の気象関係における成果について、国民がとやかく批判がましいことを言うことは、これは僭越至極です。皆さんが涙ぐましいような努力を今日までされておられるということは、私ども今日よくわかりました。  そこで今後、今木島委員からも言われましたように、どうも日本政府は、こういう文化的な施設に対して、科学的な研究に対しての経費を支弁することに、あまり積極的ではないようです。そこでまず気象台の運営を担当しておられる方もお見えになっておるようですけれども、大体気象台自体が、今までの予算で満足をしておる。満足という言葉がもし悪ければ、少くともやむを得ないという考えを持っておるのじゃないか。で、皆さんが御要求なさる経費について、私どもはそういうことではいけないのじゃないかということで、予算書を拝見していらいらしておるけれども、皆さんからの御要求というものはさっぱり私どもとしては聞いておらない。そういうことではやはりいけないと思うのです。やはり今の政治は、遺憾ながら、泣く子がよけい乳を飲むという政治です。やはり大いに泣かなければならない。国会にきて声を大にしなければならない。政府要求してだめならば、やはり国会なり政党なりにどんどん一つ陳情されればいいと思います。機関ばかりにたよっておられてはいけない。皆さんはたくさん税金を使うことは、これはとりもなおさず国民の税金だから、遠慮しなければならないというつつましやかなお考えが多分におありのようですけれども、そういうことで中途半端なことをやって経費をむだにしておったならば、なお私はもったいないと思う。やはり積極的に、必要な経費はどんどん要求して、やはり一等国たるに恥じないような、文化的な水準に私はもっていくべきだと思う。そのためには学会にも出し、国会にも積極的にお出かけになって、この方面に惜しげもなく経費を使っていただくということに私はすべきであり、それに従う職員諸君の、給与、定員等についても、やはり知能的な高度の労働なのですから、途中で疲労困憊するようなことのないようなやはり態勢は整えるべきであり、それらについてはやはり大蔵省とも十分に、皆さんのうんちくを傾けてお話し合いになれば、大蔵省といえどもまさか木石ではないのですから、十分にお話に私は乗って下さるものと思います。ですから、一つぜひそういう方面に積極的に研究や、現場に働いて下さると同時に、経費の要求に対して、即刻果敢に要求をして下さるようにお願いをいたしておきます。
  88. 一松政二

    ○一松政二君 ちょっと、私はアカデミックかどうか存じませんが、せっかくおいでいただいたから伺いたいのですが、台風というものは、太平洋における、ことに北半球の太平洋における特殊の現象でございますか。あるいはカンサス州あたりで起ってくるハリケーンというものと同じ性質のものであるか、あるいは太平洋の南半球、あるいはインド洋の南半球、あるいは大西洋の北の方、あるいは太平洋の北の方、これは太平洋の北の方は台風が抜けるのですから台風と言うのでございましょうが、ハリケーンと台風というものとは同じ性質のものでございますか。ついでに一つ伺いたいのですが……。
  89. 久米庸孝

    参考人久米庸孝君) 全然同じものであります。
  90. 一松政二

    ○一松政二君 南半球の方にはないのでございますか。
  91. 久米庸孝

    参考人久米庸孝君) あります、豪州、それからアフリカに。南米だけにはございません。南米だけになぜないのかわかりません。全く同じものでございます。
  92. 一松政二

    ○一松政二君 あとがとうございました。
  93. 大倉精一

    ○大倉精一君 私ばかり聞くのは……時間もあるので、最後にお伺いして、締めくくり的な御意見を伺いたいと思います。今では、台風の話がだいぶ出ましたが、今度は地震と津波を一つ。  地震というのは毎年来るものではなくて、たまに来るものですが、しかし重要なものだと思うのです。それで私の聞くととろによりますと、日本の地震計といいますか、これは遠隔の地震の研究用が主体だということを聞いている。肝心の直接被害をこうむる近所地震といいますか、近所地震の計測というものは、ほとんど機械の機能において不完全であって、地震中には機械の機能がこわれちゃう。こわれちゃって機能が停止してしまって、計測が不可能になる。こういうことを聞いております。これはほんとうかどうか。一つお伺いしたいと思うのですが、従って気象台の地震に関するいろんな機械設備というものをみんな切りかえてしまう必要があるのじゃないか、こう考えるのですが、そういう必要があるのかどうかということも、この際、一つお伺いしたい。  もう一つは、特に、私は聞くところによりますと、観測の精度、特に時間とか長期連続の観測、あるいはそういう精巧な機械というものがあれば、地震の予想というものは可能なのである。地震の予想というものは可能であるということを聞いているんですが、その点について一つ専門的に、この際お伺いしておきたいと思います。  それからこの地震に関連して、津波についてはこれは非常に冷遇されておって、東京について言えば、たった一人しかおらぬそうですね。従って、この人は風呂に行くのでもちゃんとありかを言っておかないと交代もできないというような、そういう実情にあるということを聞いているんですが、台風あるいは水害、洪水というものは非常に重要なものですが、この地震、津波ということについても非常に重要な問題だと思うんです。この問題についても、今申し上げたようなそういう、きわめて不完全というよりも、全然なっておらんような格好でもって運用されているということも聞いております。こういうことについての実情をお伺いするとともに、最後に一つ、現場を担当しておられる方々並びに専門的に研究しておられる学者から、日本気象業務はかくあるべきだという御意見があれば、これは予算に何も関係ありませんが、一つお聞かせ願いたい。むろん貧乏な国ですから、一ぺんにはできませんが、当然長期計画一五カ年計画なり、六カ年計画というものをきめなければならぬと思うんですが、私は総括的にこの実情をお聞きすると同時に、そういう日本気象業務の現在、あるいは将来のあり方についてはかくあるべきだというふうに御意見があれば、一つぜひともお聞かせ願いたいと思います。
  94. 松平康男

    参考人松平康男君) 大倉委員、非常に御勉強下さいまして、いろいろ御質問下さいますが、地震関係専門家はここにおりませんので、おっしゃいますようなことを、もう少しわれわれも勢ぞろいして来ればよかったと思いますけれども、その前にもう少し気象台でもお呼びつけになりまして聞いていただけなかったかしらぬという気もいたすのであります。私どもそんなにたくさんいろいろと心配していただいているとは、予測いたしておりませんでした。で、気象台かいかにあるべきかということに対しましても、今まで申し上げておりますが、結局気象業務法というようなものが出ておりますから、いかにあるべきかということはあの気象業務法にこうせいとおっしゃった……。
  95. 大倉精一

    ○大倉精一君 人事問題、機構問題についてはいかがですか。
  96. 松平康男

    参考人松平康男君) それは業務法の通りにそれが行われるというのであれば、それでいいんではないかしらぬと考えているわけであります。あれですっかりうたわれているような気がいたします。あれは皆様方国民の方からお作りになったものであります。われわれそれに従うべきだと思いますが、その従うということが従っていないように思います。予算、その点ならば私はたくさんあると思いますけれども、後日また申し上げてもよいと思います。
  97. 大倉精一

    ○大倉精一君 たとえば、さっきもお話のように、船舶検定の件にしても、法律ができておっても、九〇%は大蔵省で予算は無視されて、法律が死文になっているということもその一端なんですね。
  98. 松平康男

    参考人松平康男君) 私の方の海洋気象台の担当業務としましては、さっき申し上げました格好なんですけれども、運輸大臣の検定を受けていて、それで気象台に報告しなければならぬ船がありますが、それの測器の検定日本の船の中で一割だけが大臣の検定を受けている。あと九割はそのままで昔通りでございます。それでいいのか悪いのかということは、こちらは検査しなければなりませんが、それがどんと来ますというとちょうど今の検定免状の切りかえのように、耐えられない。私の方はたった二人で神戸港を控えてやっておりますが、全く手不足どころではなく、一部は業務を停止しているような状況であります。現在その業務法にうたってありますけれども、それが施設の点、人の点でやれずに、船会社の方からもとの神戸気象台はやっておったじゃないかとたたかれておりますが、実際にいろいろ見ていただいて、これではなるほど仕方がないというようなことで、神戸地区のことは前には小泉さんなんかも非常に応援していただきましたが、やはり現在のところは遺憾ながらただいま申し上げたような状態でございます。
  99. 岸保勘三郎

    参考人岸保勘三郎君) 私最後に……非常に私は数値予報研究面のそれ自体の話をしましたが、私去年からことしにかけて、名古屋、新潟、仙台気象台を回りまして、まあ数値予報知識を広めに行ったわけですけれども、非常に現場の人を見まして、あれでは研究しようとする意欲さえわかないんじゃないかと、そういう点を特に痛感しまして、こういう点を気象学会としましても、中央でもいわゆる研究者になる必要はないんですが、それを理解してもらうだけのわれわれは基盤を作りたいと思っております。その点をつけ加えておきます。
  100. 重盛壽治

    ○重盛壽治君 先ほど松平さんのお話の中にあったと思うのですが、たとえば神戸港一つを例にとってもけっこうですが、洞爺丸事件の函館を例にとっても、互いの官庁の機構の連絡面がかなり不備だと思う。そういうように考えますが、それを自主的に事故防止という形によってやっておられるのですか、ああいうのをより法制化していくということが考えられているか、そういう方法を望まれているか、それが一点。それからもう一つは、漁民に知らせるために法制化して、船にも漁船にも天気予報がわかるようにすればどうか。それには金がかかるというような問題等もあろうが、そういう予算の面は別にして、法制化していくのがよいかどうか、その点二つ伺いたい。
  101. 松平康男

    参考人松平康男君) 今、漁船の問題でございますけれども、これも今水産庁などでもやりかけておられるようなことを聞くのでございますが、測候所なんかがやっております。事柄がとくにかく天気予報の旗を揚げるとか、暴風警報の旗を揚げるとかやっておりますが、昔あたりの小さな村のような単位でなくて、漁村も相当大きくなっておりますから、そこには漁業の組合がある。そういうところへの連絡は非常に悪いようであります。私は悪いと思っております。そういうところの連絡というものが、これは保安庁なんかでなさるあれがありますけれども、気象台から直接連絡をするということもわれわれせねばならぬことと思っております。そのせねばならぬことが、今のところでは、費用の問題なんかでできておりませんけれども、ぜひそういうようにやるように努力しなければなりません。  それからもう一つ、そういう漁業組合なんかから出ている船に何かサインする、あるいは気象台からサインしてもいいが、無線の連絡をする、そういうようなことが結局、向うへ耳を持ったような格好にしなければなりませんから、耳を持つということは、強制的に、ほんとうは文化人であるならば、自分の命に関係するのだから持つべきでありますが、今の日本ですと、どうしても、さっきもどなたかが言ったように、文化が低いようなことがありまして、何か規則でもってきめてやっていかないと、どうも気象台がいくら努力しましても、努力の尽せないところがあるようでございます。
  102. 重盛壽治

    ○重盛壽治君 前の方のお尋ねに対しては……。たとえば気象関係の問題の連絡機構、国鉄とか、測候所とか、保安庁とかいうものの連絡がきちっといっているかどうか。それを連絡をとるための法制化というようなことが必要であるかどうか。セクショナリズムというのか、自分自身のほうだけのことをみなやっておってほんとうに官庁としてぴちっとした連絡がないように思うが、そういう点から来る欠陥があるかないかどうか。あるとすれば、何か法制化する必要があるかないかどうか。
  103. 松平康男

    参考人松平康男君) 今おっしゃったことは、閣議決定の線によりまして、今の災害の場合、災害警報は海の方では保安庁、陸の方は放送機関あるいは伝令の方法を通じて、一応流れているはずでございます。官庁間におきましても、いろいろな通報のシステムによって連絡がいっていると思います。
  104. 重盛壽治

    ○重盛壽治君 十分に行っていると思いますか——私は十分でないと思いますが……。参考人松平康男君) 末端まではわかりませんが、とにかく気象台はそこまで流し込むというだけのことをやっておるのでありまして、それから先のことはあまり私としましては——とにかく末端まで果していっておるかどうかということは非常に疑問に思いますけれども、そこまで十分手が及びませんものですから——とにかくきめられたものだけのものをやらざるを得なくなっております。現在神戸なんかでも、県でも市でも一応おとりになりたがっておりますけれども、人手が足りませんものですから、とっておりますと、電話一つに対しましてどうしても台風には一人つかなければならないのです。ですから、僕の方では直通をおとりになるのはけっこうでございます。が、おとりになった場合は、警報が出た場合は一人来ていただいて、御自分でとっていただくというふうにせざるを得なくなった実状でございます。
  105. 加藤シヅエ

    委員長加藤シヅエ君) 御質疑もないようでございますから、参考人に対する御質疑はこれで一応終ったことにいたしてよろしゆうございましょうか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  106. 加藤シヅエ

    委員長加藤シヅエ君) 御異議ないと思います。  今日はお三人の参考人方々はお忙しいところをおいで下さいまして、当委員会気象業務につきまして調査をいたしております上に、大へん貴重な参考意見をお述べ下さいましたことを、厚くお礼を申し上げます。  本日の委員会はこれで散会いたします。    午後四時二十二分散会      —————・—————