運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1955-06-21 第22回国会 衆議院 予算委員会 第26号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年六月二十一日(火曜日)     午前九時四十八分開議  出席委員    委員長 三浦 一雄君    理事 重政 誠之君 理事 中曽根康弘君    理事 小坂善太郎君 理事 西村 直己君    理事 今澄  勇君       赤城 宗徳君    井出一太郎君       稲葉  修君    宇都宮徳馬君       小川 半次君    北村徳太郎君       河本 敏夫君    楢橋  渡君       福田 赳夫君    藤本 捨助君       古井 喜賓君    牧野 良三君       亘  四郎君    相川 勝六君       太田 正孝君    北澤 直吉君       周東 英雄君    野田 卯一君       橋本 龍伍君    平野 三郎君       福永 一臣君    志村 茂治君       田中 稔男君    福田 昌子君       武藤運十郎君    柳田 秀一君       井堀 繁雄君    小平  忠君       田原 春次君    松平 忠久君       川上 貫一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  鳩山 一郎君         外 務 大 臣 重光  葵君         大 蔵 大 臣 一萬田尚登君         国 務 大 臣 高碕達之助君  出席政府委員         内閣官房長官 松本 瀧藏君         法制局長官   林  修三君         大蔵事務官         (主計局長)  森永貞一郎君  委員外出席者         専  門  員 小林幾次郎君         専  門  員 園山 芳造君         専  門  員 小竹 豊治君     ――――――――――――― 六月七日  委員長牧野良三君が委員長辞任した。 同月八日  委員原茂君及び中井徳次郎辞任につき、その  補欠として志村茂治君及び水谷長三郎君が議長  の指名委員に選任された。 同月九日  三浦一雄君が議長指名委員長に選任された。 同月十日  委員前尾繁三郎辞任につき、その補欠として  保利茂君が議長指名委員に選任された。 同月十三日  委員高村坂彦君及び井堀繁雄辞任につき、そ  の補欠として芦田均君及び山下榮二君が議長の  指名委員に選任された。 同月十四日  委員平野三郎辞任につき、その補欠として松  野頼三君が議長指名委員に選任された。 同月十五日  委員岡良一辞任につき、その補欠として堂森  芳夫君が議長指名委員に選任された。 同月十七日  委員小枝一雄君、保利茂君、松野頼三君、堂森  芳夫君及び山下榮二辞任につき、その補欠と  して木村文男君、福永一臣君、平野三郎君、岡  良一君及び井堀繁雄君が議長指名委員に選  任された。 同月十八日  委員平野三郎辞任につき、その補欠として松  野頼三君が議長指名委員に選任された。 同月二十日  委員水谷長三郎辞任につき、その補欠として  松平忠久君が議長指名委員に選任された。 同月二十一日  委員芦田均君、纐纈彌三君、三田村武夫君、松  野頼三君及び岡良一辞任につき、その補欠と  して古井喜實君、小川半次君、亘四郎君、平野  三郎君及び田原春次君が議長指名委員に選  任された。     ――――――――――――― 六月十七日   次の委員会開会要求書が提出された。    予算委員会開会要求書  衆議院規則第六十七条第二項の規定により来る  六月十八日午前十時予算委員会を開会すること  を要求する。   昭和三十年六月十七日    予算委員長三浦一雄殿            小坂善太郎            西村 直己            相川 勝六            植木庚子郎            太田 正孝            北澤 直吉            倉石 忠雄            周東 英雄            野田 卯一            橋本 龍伍            平野 三郎            福永 一臣            赤松  勇            伊藤 好道            武藤運十郎            久保田鶴松            福田 昌子            柳田 秀一            田中織之進            田中 稔男            阿部 五郎            志村 茂治            今澄  勇            井堀 繁雄            岡  良一            小平  忠            杉村沖治郎            西村 榮一            水谷長三郎     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国政調査承認要求に関する件  予算実施状況に関する件     ―――――――――――――
  2. 三浦一雄

    三浦委員長 これより会議を開きます。  この際一言ごあいさつを申し上げたいと存じます。  このたび不肖はからずも予算委員長に選任せられまして、この重責をになうことと相なりました。まことにふなれなものでございまして、今後ひとえに各位の御協力と御理解とによりまして、誠心誠意その職責を果し、委員会の円満な運営に努め、大過なきを期して参りたいと存じます。何とぞよろしくお願い申し上げます。(拍手)  この際御報告いたします。去る十七日小坂善太郎君外二十八名より衆議院規則第六十七条による委員会開会要求がありましたので、理事会において協議の結果、本日午前及び明日午後二時より委員会を開くことを申し合せいたしました。右御報告いたします。     ―――――――――――――
  3. 三浦一雄

    三浦委員長 この際お諮りいたします。予算実施状況に関する件につきまして、議長に対し国政調査承認要求を行りこととし、その手続は委員長に御一任をお願いいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 三浦一雄

    三浦委員長 御異議なしと認めます。よってその通り決しました。  それでは議長承認を得るため暫時休憩いたします。    午前九時五十一分休憩      ――――◇―――――    午前九時五十二分開議
  5. 三浦一雄

    三浦委員長 休憩前に引き続きまして会議を開きます。  予算実施状況に関する件を議題といたします。質疑を行います。福永一臣君。
  6. 福永一臣

    福永(一)委員 私は自由党を代表いたしまして、日本フィリピンとの間におきますところの賠償交渉に関しまして、総理大臣並びに関係大臣に対しまして、若干の質問をいたしたいと思うのであります。  私はまずもって一言申し上げたいのでありますが、わが日本はさきの太平洋戦争におきまして、幾多の国に多大の御迷惑をかけ、損害を与えたのであります。これに対しましてそれぞれその償いとして賠償すべきであることに対しましては、異論はございません。そこで払うべきものはすみやかに払いまして、そしてそれらの国々との間に永遠の親善関係を結びまして、それぞれの国の国民とわ日本国民との間に平和的親善関係が結ばれることを念願してやまないのであります。  しかしながら敗戦からようやく立ち上って今日まで参りましたわが国の現状といたしまして、まだこれから先も外国の援助なくしては日本経済というものが立ち行かない、こういう弱い立場にある日本といたしまして、賠償をいたしますにもその金額によっては非常に負担過重ともなります。そこでおよそわれわれが払い得る能力限度というものはおのずからそこにあろうと思うのであります。去年の四月、この日比賠償問題について大野ガルシア協定が一応結ばれまして、それがフィリピン国会によって反対を受けましてお流れになったのでございますが、そのときの四億ドル二十カ年払いというのが、大体わが日本払い得る限度であった。またその当時の政府国民に対しましてさように納得させておったのでございますから、国民もひとしくその四億ドル二十カ年払い限度であるということを承知しておったはずであります。しかるに今回突如といたしましてフィリピン側から八億ドルという数字が出て参りました。しかもこれがおかしなことには、フィリピンネリ団長発表しましたところによると、これは日本側からいかにも持ち出された案をフィリピン側が受諾する、承知するというような形式でもって発表されております。実におかしな格好になっておるのでございます。  さて、このネリ氏の発表によりましてわが国民は寝耳に水の驚きをしたのであります。しかもネリ氏の言によると、いかにも鳩山総理大臣もこの八億ドルという線に対しまして内諾を与えられておるかのごとく言っております。また高碕経審長官ネリ氏との会談において合意の上でこれを内諾された、こういうふうにネリ氏は語っておるようでございます。そういうふうに伝えられております。ところが参議院その他国会答弁におきまして鳩山総理大臣並びに関係大臣は、そういうことは知らない、内諾も与えなければ、八億ドルという金額については全然関知しない、こういうようなお話でございますが、私は諸般の情報を集め、あるいはまたフィリピン側発表いたしましたいきさつ――これはマグサイサイ大統領並びにフィリピン両院議員の幹部を前にしてネリ団長発表しております。そうでたらめを言うはずはないと私は思います。従いましてネリ氏の発表はどうも真実性があると私は思うのであります。また日本国民も、従来の鳩山総理大臣の非常にあけっぱなしな、フランクなお態度からいたしまして、おそらくこれはネリ氏に何か快諾でも与えられたというふうに受け取っておるのは私は当然だと思います。そこでどうもこれはネリ氏が鳩山さんと直接取引をしたのではないか、こういうように、これはもう一般の常識になっておると思います。そこで私は何もこの八億ドルを払うことがいいか悪いか、これは非常に重要な問題でありますけれども、これについてはおのずから政府としてもいろいろお考えがあると思います。  そこでこの交渉経過がいかにも国民に納得のいかない、奥歯に物のはさまったような考えを与えることは、私は国民を惑わすものであると思います。従ってこの際、そういう奥歯に物のはさまったような考えを起させることをどうか一つおやめになって、あっさりこれはある程度まではこの数字についてネリ氏との間に話があったと言われた方が、これから先いろいろ政府といたしましてこの日比賠償を実施されるについて非常に好影響を与えるのではないか、こういうふうに私は考えます。この天下周知の事実に対しまして、どうか一つ率直に日比予備交渉についての経過について、総理大臣並びに外務大臣経審長官より御答弁、御説明をお願いしたいのでございます。  そこで私はまず鳩山総理大臣にお伺いいたしますが、この八億ドル賠償形式がとられました経過について、総理大臣はどの程度に御承知であったか。私は先ほど申しましたように、おそらくこれは御承知たろうと思います。どうか一つ率直に御答弁を願いたいと思うのでございます。
  7. 三浦一雄

    三浦委員長 稲永君にお諮りいたしますが、総理大臣はすわったままで御答弁きせていただいてよろしゅうございますか。
  8. 福永一臣

    福永(一)委員 どうぞそのままで……。
  9. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私はネリ氏が着任いたしましたときとネリ氏が帰国する日と両日ネリ氏に会いました。しかしネリ氏と賠償については話はいたしませんでした。賠償交渉に実質的に当ったのは高碕経審長官でありまして、これを責任を負って監督していたというか、高碕君と同様に交渉をされたのは外務大臣であります。どうか両大臣からお聞き取りを願いたいと思います。
  10. 福永一臣

    福永(一)委員 では高碕経審長官にお伺いいたしますが、新聞報道その他の伝えるところによりまして、ネリ氏の語るところによると、高碕長官とは大体ほぼ八億ドルということで合意が成立したということを申しておりますが、その真偽のほどをお伺いしたいのでございます。
  11. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お答え申し上げます。私はネリ日本へ参るにつきまして、この交渉外務大臣がおやりになるべきものだと思いますが、事経済問題に関する点が多いのでありますから、外務大臣をお助けする意味におきまして私は折衝に当ったのであります。その点をまず最初に明らかにしておきたいと存じます。  それで私は全体の金額については、当る前に日本として負担し得る能力は一年にどれぐらいあるか、これは経済的の問題から考えたのでありまして、おそらく大よそ一年に二千万ドルぐらい、せいぜいやっても二千五百万ドル――二千五百万ドルは少し無理だろうが、二千万ドルないし二千五百万ドルくらいしか払えないたろう。これは日本負担能力からみてそう考えたのであります。彼は大野ガルシア案についてはいろいろ批評しておりましたが、あるいは日本は十年に四億ドル払うのではないかというようなことを言っておりました。そうすると四千万ドルじゃないか、そんなことはできない、そういうふうな負担能力はないと言いました。それからフィリピン側では、これは十億ドルという価値があるものだと見ておるというふうに大野ガルシア案を批評しておりました。そんなことはだれが責任を持つかわからないが、しかし日本フィリピン損害をかけたことは事実であるから、これに対して誠心誠意をもって協力しよう。協力をするということになれば、これは経済協力ローン形式をもってやることは現に実行しつつあるのだ、現にある会社は相当の資本をかけてフィリピン経済開発にかかっておるのだ、こういう方面において協力していけばいいではないか、こういうふうで、私はローン形式についてはこうしたらいいじゃないかとか、日本負担能力は大よそ一年二千万ドルからせいぜい二千五百万ドルだろうということは申し上げましたが、決してトータル・アカウントが幾らということは言いません。私が申しましたことはその点だけであります。ただフィリピンとの交渉は従前ある程度の折衝ができておっても、フィリピンの議会が認めないとかあるいは大統領承認しないというふうなことで、こちらから案を出してそれがきまらないときには困るから、まずあなたの方の考えをまとめて、そして間違いない案を提出されるならば、それからよく折価すればいいではないか、こういうふうな点で別れたのであります。  以上をもって私の経過の御報告といたします。
  12. 福永一臣

    福永(一)委員 それでは外務大臣経過についての御説明をお願いします。
  13. 重光葵

    重光国務大臣 フィリピン賠償問題について今御質問がありましたが、まず第一に、払うべきものはどんどん払って親善関係を樹立することには賛成であるという御趣旨の御意見に対しては、私も全然そう思います。しかしながら御意見通りにこれは条件次第である、日本賠償能力を見てやらなければいかぬのだということについても、お説の通りにわれわれは考えて進んでおります。前内閣時代において、すでに御指摘の通りに去年四月に大野ガルシア協定というものが一たんできた、これは非常な御尽力であったと思います。大野ガルシア協定には、今高碕長官から触れられました四億は、たしか表面は二十カ年でなくして十カ年になっておったと私は記憶しております。四億を十カ年、しかし将来話し合いによって二十カ年にすることあるべしというようなことであったと思います。それからフィリピンの方では、それを十億の実質を得るようにしてもらうのだというような考えでこれができております。これは非常な苦心の作だったと思います。そこでこの賠償問題が行き詰まってしまって現内閣に至ったわけでございます。現内閣においてはこの問題を冒頭に言われたような趣旨でもってぜひ早く処理したい、こういう考えで進んでおりました。その際に、本年に入りましてからですが、フィリピン大統領マグサイサイ氏からわが鳩山総理大臣にあてて賠償問題を一つ至急解決したい、これが解決しなければ、御承知通りに、フィリピン日本との平和関係が樹立しないのだ、平和条約をこしらえて、両国の関係を新たに親善関係基礎の上に樹立をして、通商問題、経済問題等協力に向って進んで行く、そのためにはどうしても賠償問題を解決しなければならぬのだから、早く解決をするように一つ日本側も何か案を出してもらいたいという申し入れがありました。それに対して鳩山総理は、趣旨において全然御同感である、ぜひこの問題は早く解決をしたいのだ、日本政府もそう考える、しかし具体的の案は日本比島駐在代表者から提出をする、こういう返事をいたしました結果、向うに非常にいい感じを与えまして、フィリピン側も非常に好感をもってこれを迎えたわけでございます。日本側の提案はどういう点であったかといえば、フィリピン賠償問題を総額等についてあまり議論をしても、もう従来ともし尽しておるのでありますから、さような方面からこれに進んでいくことに非常に困難を覚えます。そこでまず専門家フィリピンから日本派遣をして、賠償物資等について一々当ってみて、どういう方法で賠償問題が解決できるかということは、専門家の見地から検討をするということが一番いいと考えるから、専門家派遣をしてもらいたいということを言ってやったのでございます。そして直ちに専門家派遣することについてフィリピン側同意を得て、フィリピン側専門家日本派遣したわけであります。そして東京において日本側専門家賠償支払いの問題について、討議、検討に入ったわけでございます。その検討した結果につきましては、専門委員会の終了したときに、全部発表いたしておる通りでございます。そのうちには沈船引き上げの問題もございました。これも発表しておる通りでございます。それから、専門家日本派遣するに至りましたマグサイサイ鳩山総理の往復の文書等は、いずれもみな発表いたした通りでございます。  そこで専門家日本に参りまして、一カ月以上も熱心に検討を続けました。その結論は、先ほど申した通りに、発表いたしました。その末期において、専門家仕事に結末をつけるためにも、また賠償問題についていろいろ日本側との内交渉に入るためにも、フィリピン賠償主任であるネリ大使が、日本派遣されることが適当であるというので、ネリ大使日本に来たのであります。そこで、専門家会議仕事が進捗し、かつまた日本側との内交渉に入ったわけでございます。  日本側といたしましては、むろんこれは交渉のことでありますから、外務大臣として私が当る。しかし非常に専門的の経済方面のむずかしいことがあるのでありますから、高碕長官と私とにおいて、これに接触することになって進んで参ったのであります。高碕長官接触ぶりについては、先ほど御報告した通りであります。私はネリ大使と数次にわたって会いまして、大体高碕長官意見と同じ意見をもってこれに接触したわけであります。そこで話がまとまりませんから、そのときに、フィリピン側としても、いつまでも東京におって交渉を続けるということに難色を示して、帰らなければならぬ。そこで先月の終りに帰ることになったのであります。その場合に、決裂をして帰るということは、はなはだまずいことなので、交渉は継続していこう。しかし、まず帰ってフィリピン側意向をまとめて、そのまとまった案を日本側に提出される場合において、日本側はそれを基礎にして話を進めよう……。
  14. 福永一臣

    福永(一)委員 大体そういうことは、新聞を読めばわかっています。だから、簡略にお願いします。
  15. 重光葵

    重光国務大臣 新聞でよければ――私はほかの委員会でもこの通り申し上げているので、それを聞いていただければ、それでよろしゅう、ございます。
  16. 福永一臣

    福永(一)委員 そういうような、ほかの委員会でやられたりして、重複したことは新聞でよく存じております。百も承知でございます。ただ、私がこれについてお尋ねしたいのは、外務大臣としては、おそらくこの八億ドルという数字について何らか相談を受けられた、あるいは八億ドルという総額についての話があった。そういうことを、総理大臣高碕長官、それからあなたもみな否定されますけれども、これは必ず八億ドルという線が浮び上って、そしてその点で何か知らぬけれども、いいころかげんな返事をされて、それがフィリピンに対して八億ドルという線を、日本がこれならばのむぞというような考えを、おそらく私は抱かさせたのたと思う。鳩山総理天臣は、衆議院か、参議院か忘れましたが、外務委員会において、向うがそういうふうに受け取ったのだろうということを発言されておりますが、大よそ向うがそういうことを感ずるということ自体がすでにおかしいのであります。ですから、八億ドルという金額をあなた方はお話になったかならぬかということを、率直にお答え順いたいと思います。
  17. 三浦一雄

    三浦委員長 きょうは時間の関係がありますから、簡潔に願います。
  18. 重光葵

    重光国務大臣 八億ドルというのは、向う意向として話が出ました。それは十億ドルを八億ドルにするというわけでございます。しかし、今あなたがフィリピンから報道が来たと言われることにつきましては、ネリ自身がこれをすべて否定しておることを、私は指摘したいと思います。
  19. 三浦一雄

    三浦委員長 この際、福永一臣君の質疑に関し、小坂善太郎君より関連質疑発言を求められております。これをお許しいたします。小坂善太郎君。
  20. 小坂善太郎

    小坂委員 この際委員長のお許しを得て関連質問を行いたいと思います。ただいまの質疑を伺っておりますと、総理大臣ネリと二回会った。しかし一度も賠償のことについて言及したことはないとおっしゃいました。しかしこの国会において、他の委員会先方が八億ドルに自分が了承したような、同意を与えたような印象を持ったとすれば、そういうことは先方であるいは考えたかもしれぬというような微妙な発言をしておられる。賠償のことについて一度も話し合いをしたことがないとおっしゃりながら、何ゆえにそういうように先方がそうとるかもしれぬというようなことをこの国会で言われたのでありますか、この点総理大臣から伺いたいと思います。
  21. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は、ネリ氏が東京に来たときとネリ氏が東京を去るときと二度会ったということは申しました。そのときにネリ氏に、どういうわけで帰るのか、ついにどうしても両者の主張が合わないので、いつまでもじんぜん東京に滞在することができないから帰る、どこが焦点なのか、というようなことを聞きました。そのくらいの点において決裂するということは残念だから、君の方で最後の案を出したまえ、そうすれば東京においてまた再び考えるからというような話をしました。それによって私の意向を、最後の案を出せば私が尽力をするというようにとっただろうと思ったのです。そのことを言ったのであります。
  22. 小坂善太郎

    小坂委員 ようやくそれで賠償の話をされたということが明らかになりましたが、その際もっとあなたがおっしゃっておるということがあるのであります。それはもし君の方が最終的に八億ドルでまとめてくるならば、自分の方はこれで国内をまとめるということをあなたはコミットしておられる。しかもその話をあなたは入念にも手紙を書かれて、その手紙飛行場で、ネリ氏が五月三十一日の四時半に飛行場を出発するときに、ネリ氏に届けておられる、こういう事実をあなたは否定なされますか。
  23. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 そういう事実はございません。
  24. 小坂善太郎

    小坂委員 そういう事実はないとはっきり御否定になっていらっしゃいますが、六月二日のマニラのイヴニング・ニュースによりますと、あなたが明瞭に同意しておられるということをネリ氏は言っておられる。さらに三日のAP電報によりますと、マニラネリ氏はそのことを公言しておって、さらにその八億ドルの内容について、資本財五億三千万ドル、借款二億五千万ドル、現金賠償として二千万ドル、これを十五年ないし十八年ということをあなたがコミットされたようなことを言っておる、こういうことはあなたの御言明の通りとすれば、非常に先方において信義に欠けるところのある問題である、かように思われるのでありますが、さようでございましょうか。
  25. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 何を十五年、何を十八年というようなことは全然話はありません。私はそういうような事実は知らないのです。
  26. 小坂善太郎

    小坂委員 そういう事実は総理は御存じないということでありますが、そういうあなたの書簡というものを出されたことを知って、外務省の高官は非常に驚愕して――ここにいますけれども、中川アジア局長は非常に驚いて、大蔵省へこういうことを初めて知ったといってかけ込んでいる。一萬た大蔵大臣はこのことを何にも御存じなかったということなのであります。先ほどの御答弁でも、外務大臣あるいは経審長官はこの賠償に直接関係する物として答弁をしておられますが、かんじんな国庫大臣、国家財政を預かる大蔵大臣としては何にもこのことを知らされていないで、寝耳に水だという話でありますが、こういう関係についてどう思われますか。
  27. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ネリ君は話がまとまらないのでいよいよ帰るということであいさつに来たときの話でありますから、その前に賠償についての話ができ上ってなかったのは御推察して下さることと思います。それですから大蔵大臣は当然知らないのです。大蔵大臣が知らず、われわれが決定権のないのは当然であります。ですからして、そのときの話の模様でネリが感得する以外には、そういうことを言うはずはないのであります。ネリは、外務大臣が先刻申した通りに、その後その新聞記事を全然否定しております。
  28. 小坂善太郎

    小坂委員 どうも話が非常にちぐはぐな感じを受けるのであります。総理大臣が外交問題について独走して困るということは、例のドムニッキー書簡以来の問題でありますが、今度もネリ大使が来てあなたに直接会って、そしてある程度のコミットメントを得て帰っていった。八億ドルという数字は、これは先方としては実は意想外であったのじゃなかろうかと思うのでありますが、そういう数字を持って帰った。それが先方国会の議員筋から漏れてきた。そういうことになっておわててあなたはそういう答弁をしておられるのでありますが、これは非常に重大な問題なのです。大蔵大臣として、これから福永訓の本論がありますから私は譲りますが、そういうことが行われているということであなたは満足されるのですか。いやしくも法王といわれたあなたが、議員になってからすっかりどうも格が落ちたということがいわれておる。この際あなたは国のために、二十年後の国民負担を預かる者としてあなたはきぜんたる態度をとらなくちゃいかぬと思う。この点について、こういう交渉のいきさつがあったことは、大蔵大臣としてははなはだ満足しておられますかどうですか。
  29. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。先ほどから総理大臣が御答弁なさっているように、総理大臣はそういうふうなことがないということをおっしゃっておるわけであります。私は経審長官が、あるいは外務大臣外務大臣の職権の範囲内におきまして、この賠償問題についていろいろと予備交渉をいたされておったと思うのであります。従いまして事が大蔵大臣の管掌に来れば、むろん大蔵大臣に相談があるべきは当然であります。同時にまた交渉経過において、大蔵大臣金額等について相談があったことも事実であります。しかしながら今問題になっておるそのいわゆる八億ドルということは存ぜないのであります。私どもの交渉したのはそのずっと前の経過でありまして、先ほど高碕経審長官から御説明申し上げたあの経過の過程において相談にあずかった、こういうことであります。
  30. 小坂善太郎

    小坂委員 その前の閣議で、フィリピンとの賠償額を四億ドルという大野ガルシア協定の線を五千万ドルふやして、四億五千万ドルにしたいということを重光さんは閣議に提案され、それに対して大蔵大臣はこの四億五千万ドルについても反対されたということが新聞に伝えられておりますが、さような事実はありますか。これは外務、大蔵両大臣から伺いたい。
  31. 重光葵

    重光国務大臣 それはどこからお聞きになりましたか知りませんが、さような事実はございません。
  32. 小坂善太郎

    小坂委員 その事実を仮定して四億五千万ドルでいいかどうか。
  33. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 そういう事実はありません。
  34. 小坂善太郎

    小坂委員 それでは、そうしたことが読売新聞であったと思いますが、大きく一面のトップに出ておったのですが、そういう新聞の記事は誤報である、こういうふうに了解いたします。  それからなおそれを仮定いたしまして四億五千万ドルであれば、あなたは国庫大臣として国の財政能力が負担にたえ得る、かように思われますか。
  35. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは年限にもよりますし、それから支払い条件等にもよりますから、単に私は金額だけでどうと言うのじゃありません。条件次第では四億五千万ドルでも大へん重い賠償にもなると思います。これは総合的に考えなければならぬ。しかし総合的に考えてみる場合におきまして、たとえば二十年という場合、これはやはり考えられる線ではないかと思う。しかし公式にこれについて何らやったことはありません。たとえば閣議でそういうことが問題になる、そういうことはありません。
  36. 小坂善太郎

    小坂委員 閣議で正式に諮られたということでなしに、いわゆる閣議の席で、あの総理大臣官邸の皆さん集まられたところでそういう話が出たというような新聞記事でありましたが、これはこの程度にいたしておきましょう。なお福永氏の本論がありますから、私は最後に一点伺っておきますが、今お話を伺うとそういう根も葉もないことである。根も葉もないことをもって、外務大臣、あなたの下僚が大蔵省に連絡をとっておられるのだが、その事実をあなたはどういうふうに判断されますか。
  37. 重光葵

    重光国務大臣 私はかねがね外交問題について、特に経済関係の各省とは密接に連絡をとってやるように一般的に指令を出しておりますので、それによって多少動いたことと思います。しかし問題は、今最後的にこちらが承諾をしたとかなんとかいう問題ではないのであります。これは先方ネリ大使は常に自分意向を表示しておりますか、しかしこれに対して承諾を与えたことはないので、ネリ大使意向関係方面において検討することは常にやっておった次第でございます。
  38. 小坂善太郎

    小坂委員 それでは、この問題は実は私が担当してやっておるのではなくて、福永君ですから、これでやめますが、これは国際信義の問題になると思う。今あなたはいろいろここで強弁しておられますけれども、そういう事実があれば、これはいずれわかることです。ネリ大使という国の代表者が、帰って国会議員の間で話したことが全然根も葉もないことであるということになれば――これは先方の問題です、しかしこれが事実であるということになると、これは日本の高官、ことに政府の最高首脳部が国際的に非常な不信用になるという問題があるわけであります。この点はもし御訂正になる御意思があればこの際伺っておきますし、これでよろしい、新聞報道はことごとくうそである、こういうことであればそのようにお答えを願いたい。これは総理大臣外務大臣からお答え願います。
  39. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ただいま私の申した通りでありまして、日本が信義を破るというようなことは絶対にありません。
  40. 重光葵

    重光国務大臣 ただいま総理大臣の言われた通り考えます。
  41. 福永一臣

    福永(一)委員 ただいま小坂善太郎君に対する御答弁、それからまた私にいまして、知らぬ、存ぜぬ一点張りの御答弁でございますが、それではフィリピンが今度正式にこの八億ドルの線で提案して参りました場合にはいかがなさいますか。これを唯々諾々としてお受けになりますかどうか、この点を一つ総理大臣にお伺いしたいのでござてます。
  42. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は、賠償金額を八億ドルとしての話はネリとはしません。
  43. 福永一臣

    福永(一)委員 それでは、正式に八億ドルの線で向うが提案して参りました場合には、これをお受けになりますか。
  44. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 そのときには、そのときの諸条件、情勢等によって判断をいたします。
  45. 福永一臣

    福永(一)委員 大蔵大臣にお伺いいたしますが、この問題については、肝心の財政を握っておられるあなたがつんぼさじぎに上げられておられるのであります。そこで、さぞやあなたも腹がむかむかしているだろうと思いますが、どうでございますか、この八億ドルの線はあなたは御存じない、全く寝耳に水というふうにおっしゃいますが、こういう大きな金が正式に向うから提案され、しかもだんだん話しておるうちには、総理大臣初め外務大臣高碕長官、それぞれ向う内諾を与えたとまで行かぬまでも、そういう内諾の感じを与えたということでフィリピンが参りました場合に、この八億ドルの線をあなたは実行される自信がありますかどうか、お伺いしたいのであります。
  46. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。先ほどから申すように、八億ドルの内容、条件等しさいに検討しなければなりませんが、しかし常識から考えると、これが新しい提案になった場合には、日本側としても十分慎重な検討を要することだけは申し上げておきます。
  47. 福永一臣

    福永(一)委員 慎重にされることは当然のことでございまして、それはもう御答弁なさらぬでもよろしいのでございますが、自信がありますかどうかということをお伺いしたいのでございます。
  48. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。これは、やはり交渉経過においてどういう条件になるかということを考慮しなければなりません。同時に、こまかく言えば、支払いの態様というようなこともこれまた非常に問題になります。こういうことで、またそういう案は、今総理大臣等もお話のように、向うから持ってこようという案なので、それについて支払いの意思があるとかあるいは支払い能力があるとか、そういうようなことは、私はこの際述べ得べき地位にもない。大蔵大臣としては、これは多年にわたる国民負担になるのでございますから、慎重の上にも慎重な考慮を加えるということだけを今申し上げておきます。
  49. 福永一臣

    福永(一)委員 それでは、総理大臣以下関係閣僚が、この八億ドルについては全く白紙であるというような御答弁であると私は解釈いたしまして、次の質問に移ります。  次にこの八億ドルの内容でございますが、その内容を見ますと、五億五千万ドル、すなわち五億ドルの資本財、三千万ドルの役務、二千万ドルの現金、こういうことになっております。これが純賠償でございまして、さらに二億五千万ドルの民間からの投資、借款という形で供与されるということにフィリピン側発表しておりますか、この内容の内訳につきまして外務大臣は何か御相談を受けられたことがございますか、あるいはそういう数字検討されたことがございますか、お伺いしたいのでございます。
  50. 重光葵

    重光国務大臣 さような数字またはそのほかの数字を、ネリ氏は自分考え方の一つとして申したことがあります。ありますが、しかし、それが討議に上って、日本側意向をこれに対して表示いたしたことはございません。なおその結果については、フィリピン側の一方的な意見を今まとめつつあることだろう、こう今推測しておるわけでございます。
  51. 福永一臣

    福永(一)委員 そこで、まず五億五千万ドルの純然たる賠償をやりましても、十八年間に払うというようなことが載っておりましたが、十八年間といたしますと、これを毎年々々平均しますと約三千万ドルになるのでございます。日本金に換算いたしますと百億円以上であります。そこで、今後わが国が依然として健全財政を続けていく、こういう建前であるならば、予算規模の急増はとても望めないのであります。大蔵省当局が語ったといって新聞に載っているところによると、わが国の対外債務の支払いは年間四百億円くらいが限度である、それ以上は無理である。しかもこの四百億円の中にはガリオア、イロアの返済資金あるいは外貨の処理、また連合国財産の補償、こういうのがございまして、これだけでもざっと二百五十億ございます。差引百五十億円残りますが、これにビルマヘの賠償七十二億も引き当てしたければなりません。そこへこの百億以上になるところのフィリピンに対する賠償金がここに出て参りますと、オーバーいたします。大よそ現在のわが国の財政上の能力において、海外債務の支払いは四百億ということでございますが、大蔵大臣はこれに対しましてどの程度の負担方があると思うか。この四百億というのが限度であるとされるのでありますか、それ以上の能力があるとされるか、その点について大蔵大臣にお伺いいたしたいのであります。
  52. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。今大蔵大臣といたしまして、日本賠償能力がどのくらいあるかということを示すことは、はなはだ適当でないと私は考えます。ただ今日のこの日本の財政経済の現状から見まして、賠償はむろんすみやかに解決すべきでありますが、その能力は大きいものでない、できるだけこれは慎重な態度で行かなくちゃならぬというふうに私はお答えいたしたいと思います。限度の点については、今後すべての交渉があるのでありまして、この限界は日本経済の今後の推移、それから賠償の条件等もありますので、今ここで限界を示すことは私は控えたいと思います。
  53. 福永一臣

    福永(一)委員 それでは私はもう一点伺いたいのでございますが、この八億ドルという対比賠償が話題に上りまして、これが向うから提案されまして、いよいよ政府もこれに対しまして交渉を始めますと、ここに私は対外的の問題が起ると思います。それはインドネシアがまだ未解決でございますから、これが八億ドルということになると、インドネシアが賠償要求額をふやしていきやしないかという心配がございます。もう一つは、御承知のごとく、ビルマとの賠償協定は再検討条項がついておりまして、日本能力があると見るならば、あとで追加要求をするという条項がついているのでございます。ビルマとの賠償交渉に当りましては、先ほど申しましたように、大野ガルシア協定の、あの四億ドルの原則によって話が進んだと私は承わっております。そこで、ここでその倍額の八億ドルという話になりますと、私は必ずやビルマからその再検討条項を突きつけているのではないかと心配するのでございますが、この点について外務大臣はどういう対策を持っておられますか、お考えを持っておられますか。この点をはっきり一つ答弁願いたいと思います。
  54. 重光葵

    重光国務大臣 今日交渉基礎になる提案もまだない場合に、内容について詳しく討議をする、私の意見を申し上げるということは差し控えなければならぬと私は考えております。しかしながら今お示しの点は、一般問題として非常に注意をしなければならぬ、また用心してかからなければならぬ問題であろうと思います。ビルマとの関係、それからインドネシアに及ぼす影響等は非常に慎重に考慮しなければなりません。そうしてフィリピン賠償額を最終的に決定する場合においても、妥結する場合においても、さようなことに響かないように考えなければいかぬ、こういうふうに考えておるのであります。以上お答えします。
  55. 福永一臣

    福永(一)委員 響かないようにとおっしゃいますか、おそらく響きます。これが四億ドルくらいのところで落ちつくならばこれは響かないでしょうけれども、それ以上になりますと必ず反射作用がございます。そこで私はフィリピン並びにビルマ、インドネシア、これのトータルがどれくらいになるかということはわかりませんけれども、おそらく相当な金額になると思います。かりに十五億くらいの賠償がきまったといたしました場合に、これは日本の現在の財政能力において、あるいは国民経済の負担力において、これは納得し得る、あるいは実行することができるかどうか。大蔵大臣といたしましてはそういう場合を仮定してでけっこうでございますか、日本として受けられるかどうか、一言御意見を伺いたいのであります。
  56. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今十五億と開きましたのですが、どういう……。
  57. 福永一臣

    福永(一)委員 たとえばフィリピンが八億ときまるとしますと、ビルマが二億五千万ドル、インドネシアがかりに四億といたしますと、約十五億ドルになります。そういうものを目の予算にいたしまして想定いたしまして、そういう金額日本が実行し得るかどうかということを、仮定としてでけっこうでございますが、――仮定には答えられぬと言われるかもしれませんけれども、そういうことが起った場合にどうでしょう、これは実行できますか。
  58. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは先ほどから申しますように、条件が非常に大きな影響を与えると思いますが、しかし十五億ドルとなった場合に大きな負担であることは間違いないと思います。
  59. 小坂善太郎

    小坂委員 関連してお伺いいたしたいと思いますが……。
  60. 三浦一雄

    三浦委員長 小坂君に申し上げますが、時間がございませんから簡潔にお願いいたします。政府側本簡潔にお答えを願います。
  61. 小坂善太郎

    小坂委員 簡潔にお伺いしますが、ビルマの場合はビルマ経済開発の十カ年計画というものが示されて、それに即応してわれわれとしては東南アジアの開発に協力するという立場で賠償問題を考えて、二億ドルの賠償を決定しておることは御承知通りであります。ところがフィリピンとの話し合いにつきまして、そういうようなことを考えておられるのかどうか、総理大臣の施政方針演説を承わっても、東南アジアとの経済開発協力に対する根本的な御意見というものは何もない。やはりそうしたものとにらみ合せてこの賠償考えなければなるまいというのが、私どもの基本的な考え方なのです。そこでもしそうでなくていわゆる場当り的に、こうすれば友愛精神が満たされるだろうというようなことであっては、これは経済的に見れば、そうした意味の賠償を支払うということは、戦争行為と同じたのです。再生産をされない資金をただ注入して行くということにおいて。そういうことでは国際的に何らの改善を得ないのみならず、日本国民を、ただただ将来にわたって再生産をされない財政負担に縛るということなのです。そういうことを政府は十分に考えられて、今までのいろいろな不明朗な交渉のいきさつもありましょう。今福永君の指摘されたように、イシドネシアの問題もある、ビルマのスライド条項の問題も考えられる、そういう場合に、そういうものを全部総合して、やはり総合した一つの意図のもとにこの問題と真剣に取り組んで行くということでないと、今までやっておるあなた方の方針というものには非常に不満であり、私どもは非常に軽率だと思う。こういう考え方で進められるにおきましては、われわれはやはり二十年後の国民のためにどうしても立たねばならぬのではないかということを真剣に思っておるのでありますが、この際政府においては十分われわれの意図を考えて、国民の声を聞いて、一つのスタンド・プレ一をやろうというようなことじゃなくて、真剣にこの問題と取り組まれんことを私は強く意見として申し上げておきます。ことにこれに当られる外務大臣の御意見を聞いておきたいと思います。経審長官も御答弁願いします。
  62. 重光葵

    重光国務大臣 今の御忠告は私はつつしんで傾聴いたします。私どもも実は及ばずながらそういう考え方をもって全部の問題の一部として、これによって大きな問題のとびらを開きたいというような考え方を持って進んでおるわけであります。
  63. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お答え申します。ただいまの小坂さんのお考えは私は全く同感でありまして、賠償問題を解決するにおいては、日本は戦争をやった、悪いことをした結果金を払ったということになれば、国民としてもあまりいい感じを持ちません。またそれを受けたフィリピンにおいてもいいことにはならないから、 私はどうしても、これはフィリピン日本との間が両方とも――賠償を払ったことによって日本もよくなりフィリピンもよくなる、この方針でなければならぬというのが私の根本方針であります。つきましては、ここでかりに一年に二千万ドルといっても、これは金で払うのではなくて、物で払うのである、その資本財をもらった相手方がこれをまた活用していかなければならぬ。それについては、相当日本協力してこれをやっていかなければならぬ。そして結局において日本が戦災賠償を行った結果、フィリピンの産業がよくなる、こういうことに持っていかなければならぬ、これが私の根本の方針であります
  64. 小坂善太郎

    小坂委員 もう一つだけ重要な問題を申し上げておきますタイの特別円の問題についても、東京へ来て話をして鳩山総理に会えば何とかなる、インドネシアもおそらくそう考えるでしょう、あるいはビルマもそう思うでしょう。フィリピンはこれで成功したと言っている。そこでこういうようなことはやはり十分筋を通してやらぬと私はいかぬと思う。総理大臣というものは非常な権限があることは間違いない。しかし総理大臣に会って、こういう問題をその然諾によって一ぺんに解決するという、そういう旧式な方式はいけないと思う。  それからもう一つはアメリカとの関係なのです。これはやはりアメリカとの経済関係のみならず、すべての協力方針というようなものを持っていって、それとひっくるめて東南アジア開発計画というものをやっていこうというのが私たちの考え方であったのですが、このころは自主外交の名に酔うて何かありもしない金を、物でくれてやればいい。物でもそうです。日本では余っていやしないのです。余っていないものをただくれていれば、日本を中心とした東南アジアの開発ができるようなことを考えられては、これは大へんなことなのです。余剰農産物、あの問題一つをとらえても、ドルで借りてドルで支払うというときには、わずか五千九百五十万ドル四十年間に支払うということについても世界銀行が文句をいっている。そういう日本経済の実態であるということをあなた方は十分よく認識しなければならぬ。そういう認識の上に立たないで、何か大日本帝国時代の夢に酔うて、くれてやればいいじゃないか、そうしたあっさりした考えでやられたのでは大へんな間違いだ。中共貿易とソ連外交とだけやっておれば日本の繁栄は期待して待つべきものかあるというような甘ちょろい考えではやっていけないのです。その点を十分にあなた方は認識されてこの問題の解決に当られんことを、これは特に総理に要望いたしておきますが、お返事があれば承わっておきます。
  65. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 傾聴いたしました。
  66. 福永一臣

    福永(一)委員 そこで私は最後に一言申し上げて私の質問を終りたいと思いますが、このフィリピンに対するところの八億ドルの賠償というのは、国民感情において非常に負担が大きいということを私は申し上げておきたいのであります。大野ガルシア協定のあの四億ドルという原則から、一躍して八億ドルの倍額になったということは、国民ひとしく驚いておるところであります。そうしてあの大野ガルシア協定なるものは、一たん政府政府との間に協定ができたものを、フィリピン国会がこれに反対いたしまして破棄されたのでございます。そこで私は何も感情的に申すのではありません。またそうあってはいけませんが、日本政府は非常に不用意に、国民に何ら相談されないで、八億ドルというような大きな問題について、何か国民が疑惑を抱くような非常に安易な気持で話をしておられますが、日本のこの国会というものは、決してそういうふうに軽率な考えであってはいけないと思います。これは慎重審議、そうして国民が納得するような永遠の策としての賠償解決して、そうしてフィリピン国民に対しましても十分納得が行って、永遠の親善関係が結ばれますように私は念願をいたしまして、そうしてその趣旨に沿ってこの交渉を進められるように政府に対しまして注意を喚起して、私の質問を終りたいと思います。
  67. 三浦一雄

  68. 武藤運十郎

    ○武藤委員 先ほど来福永君並びに小坂君の質問を聞いておりますと、日比賠償の問題について八億ドルというような言質を与えたことはないというお話であります。しかし、いろいろな点を総合いたしてみますと、総理大臣なり、外務大臣なり、あるいは経審長官なりが、八億ドルというような金額についてある程度の話を向うにされたと推定される理由が十分にあります。しかしそういうことはないというように否定をしておるのでありますか、そうなりますと、この八億ドルの問題についてこれだけ日本国民がびっくりして、国会でもこれだけ大騒ぎをやらなければならないというような結果になったのでありますけれども、このような結果を巻き起しました責任というものは、ひとえにフィリピン側の国際的信義無視にあるという結論になると思うのでありますけれども、われわれはそういうふうに考えてもいいのかどうか、総理大臣の所見を承わりたいと思うのであります。
  69. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私はフィリピンに過失があると思っております。
  70. 武藤運十郎

    ○武藤委員 もう一ぺん。
  71. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私どもはネリとは八億ドルの賠償金の話をしていないのであります。
  72. 武藤運十郎

    ○武藤委員 そうするとフィリピン側に過失があるとお考えでございますか。
  73. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 そうです。それを言っておるのです。
  74. 武藤運十郎

    ○武藤委員 それだけはっきりすればいいのでありますけれども、私どもが鳩山内閣の成立以来外交政策を見ておりますと、はなはだしく軽率であるという感じを受けるのであります。先般の防衛分担金の削減で、これを国内の生活安定のために向けるというような選挙公約並びにその失敗、それから突如とした重光外相のアメリカ派遣並びにダレスによるこれが拒否、こういう点を考えてみますと、実に軽率まわまりないのであります。今回の問題についても、日本では四億ドルと主張し、フィリピンの方では八億ドルと主張をして、遂に成立しなかったために、ネリは帰国をしたのだというふうにわれわれは考えておった。ところがネリが帰国して、突如として、AP電、UP電によりますと、八億ドルの暫定方式というものを日本政府が示して、われわれはそれを受諾するのだ、承諾するのだというようなことが言われておるのであります。われわれは非常にびっくりしたわけです。それからなおそのことについては、これは閣内のことであるようでありますけれども、閣内におきましても、鳩山重光両相、あるいは反対に一萬田大蔵大臣などの間に、この問題をはさんで意見の対立がある、閣内不統一であるというふうなことも伝えられておるわけでございます。いずれにしましても、今までの鳩山外交というものははなはだしく軽率であり、また国会を軽視するものであるというふうにわれわれは考えざるを得ないのでありますが、首相は今後の外交交渉におきまして、いかなる信念をもって対処せんとするか。フィリピン賠償交渉をも含めて一言お伺いしたいと思うのであります。
  75. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 フィリピンとの賠償問題はなるべく合理的に、円満に、すみやかに解決いたしたい。解決することによって東南アジア諸国との友好関係をもっと増進していきたいと考えております。
  76. 武藤運十郎

    ○武藤委員 AP電、UP電の伝えるところによりますと、日本から示された暫定方式を受諾して、フィリピン側があらためて具体的な提案を占部在外事務所長代理にしたということでありますけれども、在外事務所長はフィリピン側の案を、これは仮案であるかもしれませんが、受け取られておるかどうか承わりたいと思うのであります。
  77. 重光葵

    重光国務大臣 さようなものは今日まで受け取っておりません。
  78. 武藤運十郎

    ○武藤委員 ただいま問題になっておりますのは、フィリピンを対象とする賠償問題でございますけれども、そうしてそれが八億ドルでやれるかやれないかというふうな議論でございますが、これは先般解決をしましたビルマに対する賠償問題等々と関連をいたしまして、日本政府賠償、問題に対する政策の現われた一つの現象だと思うのであります。私は、そういうことも非常に重要でございますけれども、この際われわれ国会としても賠償という問題と現実に取り組む場合におきまして、政府はこの賠償問題というものに対しては、いかなる基本的な態度を持っておるのかということを、この際明らかに伺っておきたいと思うのであります。  第一には、一体日本賠償能力というものは、先ほども質問がございましたけれども、どのくらいあるのか、そうしてどのくらいの額に達するのか、それから一年間に支払い得る能力というものはどのくらいあるのかということを第一に伺いたい。  第二には、フィリピン、インドネシア、ビルマ、仏印などが賠償すべき国として考えられておるのでありますけれども、これらの国に対する比率、どこの国には幾ら払うのだというその割合につきまして、政府はいかなる考え方を持っておるかということを伺いたい。  第二には、サンフランシスコ講話条約第十四条(a)によりまして、これらの日本のなすべき賠償というものは役務ですべきである、サービスによるべきものだということを規定をしておるのでありますけれども、今度伝えられるところのフィリピン賠償案の中には二千万ドルの現金を払うということがあるようでございますが、この賠償すべきものについての政府考え方はどうであるかということを伺いたい。  第四には、賠償と非常に密接な関係がありますのは東南アジア諸国との国交の回復、貿易、経済協力などの問題だと思うのでございますけれども、これらの関連について政府はいかなる考えふ方を持っておられるか。こういうことを順次にお尋ねをしたいと思うのであります。  第一の、日本賠償能力の問題でございますけれども、賠償をなすべき相手の国というものはきまっておる。これはもうさっき申しましたようにフィリピン、インドネシア、ビルマ、仏印などでございまして、ほかにはそう今のところはないわけでございます。従いまして日本とすればそういう予想される相手国に対して賠償をしなければならない。それには幾らの賠償を予定しなければならないかというふうなことを考えなければなりません。ことに経審当局におきましては、経済六カ年計画というものがすでに組まれております。それから国民所得の見通しというものもきまっておるわけであります。そうしますれば、先ほど大蔵大臣賠償し得る能力、支払える金額について、はっきり申し上げることば適当でないというような趣旨の御答弁があったようでありますけれども、私はそんなことはないと思う。当然これは相手がきまっておるのだし、賠償しなければならぬことも明らかなのだし、日本経済の実情というものも、責任当局として向う五年間、六年間の見通しがつかないはずはないのでありますからして、これはどうしても賠償の予定額、一年に支払い得るところの金額というものは考えられておるはずでありますし、当然考えなければならぬと思うのでありますけれども、これについての確固たる見通し、信念を伺いたいと思うのであります。それが今まで欠けておったために、こういうフィリピンのごとき醜態な問題を起すことになると思うのです。たとえばこれは前の内閣でありますけれども、岡崎外務大臣が二十八年の秋に東南アジア方面に行かれたときに持って行った案を聞いてみますと、フィリピンについてはほぼ二億五千万ドル、その後三億ドルということになったようでありますけれども、そんなものである。ところが大野ガルシア協定によりますと、四億ドルということになり、突如として今度は鳩山蔵相が言われたとか言われなかったとかいっておりますけれども、八億ドルという案が出てきておる。このように二億五千万ドルから八億ドルになっていくということは、全く政府が今まで賠償問題に対する定見を持っておらなかったというところに帰着するであろうと思うのであります。われわれは前に思いつき外交あるいはそのつど外交というものを反対しておったのでありますけれども、鳩山内閣も同じくこの思いつき外交、そのつど外交というものを引ぎ継いでおるような形にわれわれは考えざるを得ないのであります。そうなりますと、今度は相手国というものからもかなえの軽重を問われまして、強いものが勝ちである、早いものが勝ちである、がんばるものがよけいとる、黙っておるものは少ししかとれないというようになって、国交にも非常に影響すると思うのであります。こういうふうに考えてみますと、日本の国の責任者として日本賠償能力はどのくらいである、一年に支払い得る金額は何ほどであるかということについては当然わかっておらなければならぬと思うのであります。議会に説明する義務があると思うのであります。これは予算委員会としては特に伺っておきたいと思いますからして、先ほどのような寝ぼけた答弁ではなくして、はっきりした答弁を承わりたいと思うのであります。これは鳩山首相、経審長官、それから一萬田大蔵大臣、それぞれ述べていただきたいと思います。   〔委員長退席、中曽根委員長代理着席〕
  79. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 それは大蔵大臣経審長官からお答えいたさせます。
  80. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私は、賠償能力というものの算出は二つの方法があると思います。一つは、賠償事態の諸条件から見る、それからもう一つは受ける方の日本経済国民生活あるいは国際的なもろもろの情勢とか、経済がどういうふうな情勢をたどっていくか、こういうことによって非常に違いますけれども、またそういうこと々十分測定し得るだけの日本の国情が従来とも安定をしていないのです。私の考えといたしましては、そう大きな賠償能力は持っていないというのが建前で、そうしてそのときにおいて十分検討を加えてやり得べき範囲内において考える、こういうふうに考えて参っておるわけでありまして、今ここで日本賠償能力は幾らあるか、こういうことはなかなか言えることではないということを御了承願いたいと思います。
  81. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お答え申し上げます。御承知のごとく、日本は戦災によって六兆以上の大きな資本財を失っております上に、その後におきましても、風水害等によって二千五、六百億の大きな資本財を失っておるわけであります。従いまして日本賠償能力というものは今後国民の努力に待つより方法がない。ただ賠償をいたしますについては外典をもってするのではありません、日本の生産力をもってする、努力によってするということでありますから、われわれの過去における罪悪を償う上におきまして、国民の努力をもってやっていくという方針でいけば相当の金額はできると思います。これができるかできないかは一にかかって生産能力につながることだと思います。
  82. 武藤運十郎

    ○武藤委員 はっきりしない。私が伺いたいのは、賠償をしていく金をどうして作るかということを聞いておるのではない。国民の努力によってやるということは当りまえの当りまえであって、特に御答弁を必要としないと思うのであります。  それから一萬田大蔵大臣の言われるように、国際情勢にもよることでございますし、相手のあることでありますから、はっきり何十何億ドルあるいは何百何十億というふうに申し上げることはできないといたしましても、少くとも大よそ賠償能力賠償すべき金額の予定というものは立てなければいけないと思うのであります。前に聞いておったところによりますと、ほぼ五億ドルから六億ドル見当で四カ国を済ませたいということが前の岡崎外務大臣のころにいわれたのではないかと私は思うのでありますけれども、もう少しはっきり、さっき私が申し上げました理由に基きまして、大蔵大臣にどのくらいの賠償能力があり、どのくらいすべきであり、一年にどのくらい支払うべきであるということを、ほぼどのくらいからどのくらいまでという、ゆとりを持ってもけっこうでありますから、お話をいただきたいと思うのであります。ただ言えないということはないと私は考える。
  83. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えしますが、それは私は非常に無理なことだ思うのであります。私が今賠償について考えろことは、抽象的でなくして、具体的なことに立脚して考えていくのがやはりいい。それは、申し上ぐれば、今日日本では賠償が成立いたしておるのはビルマであり、これはいろいろめんどうな条件がついておる。そこで実際問題としては、このできておるビルマの賠償基礎として展開するのが私はいいのではないかと思う。これは私の見解で、外務大臣はまた別個の考えを持っておるかもしれませんが、あれは具体化しておるので、これを一応某礎として考えていくというのも一つ考え方ではないだろうかということを、私は繰返してお答えしておきます。
  84. 武藤運十郎

    ○武藤委員 それでは時間がありませんからそのくらいにしておきますが、ビルマはすでに二億ドルときまりましたし、フィリピン金額において今非常に重要な段階になっておる思うのでございます。私は先ほど伺いました日本賠償能力と関連をいたしまして、この際明らかにしておいていただきたいことは、日本の対外債務というもの、外国に支払うべき賠償をも含めて、今予定されるものはどのくらいあるかということを伺いたいと思うのであります。たとえばビルマは一億ドル、年に二千万ドルずつ払うということでありますし、それからガリオア、イロアの問題は、アメリカからその解決方の催促があったようであります。新聞の伝うるところによりますと、日本政府としては、ほぼ六億ドルくらい、無利息で、二十年払いとしたいという意向が伝えられております。そうしますと、約三千万ドル年に払わなければならぬ。これは百八億円になります。それから連合国財産補償費というものが、ここ数年の間と思いますけれども、ほぼ年に五十億円は払わなければなるまいと思うのであります。その他いろいろ債務がありまして、四百億くらいになるといわれておるのでありますけれども、私はそれをつまびらかにいたしません。なお今度フィリピンとの賠償が片づきますと、八億ドル二十カ年ということになりますと、四千万ドル払わなければなりませんし、五億三千万ドル、二十カ年ということになりますと、二千七百万ドル、いずれにいたしましても、百億円見当のものを毎年支払わなければならぬということになります。さらにまたインドネシア、仏印等の賠償も結局きめなければならぬということになるのでありますが、予想される、また現に支払わなければならぬところの外国に対する債務というものはどのくらいあるのであるか、大よそのところを私は大蔵大臣ないし経審長官から伺いたいと思うのであります。
  85. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今対外債務の支払いのきまっておるものは外貨債のものであります。これは元金の償還のためにでこぼこがありますが、二十カ年間の平均をとってみますと、二千三百万ドル程度の額、それから先ほどお示しのビルマの賠償が年二千万ドル、それからタイ国の特別円があります。これが五十四億を五年間にポンドで払う、さらに九十六億円の経済協力があります。これが一応今のおもな項目であります。なおガリオア、イロアの点については、何もまだ交渉が妥結いたしておりません。最近にまたそういう交渉開始の申し入れがあったように聞いておりますが、はっきりいたしておりません。大体そういうところであります。
  86. 武藤運十郎

    ○武藤委員 そうすると、四億あるいは五億に達するのではないかと思われるのでありますけれども、一兆円の予算外のワクのうちでこれがまかなっていかれるとお考えでございますか、どうですか。
  87. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは今後の予算の規模ですが、こういう賠償が払われていくということは、とりもなおさず日本経済がそういう負担にたえるということを意味するのであります。従いましてそういう場合の予算規模が果して一兆円なりやいなやということは、私はそういうふうにおとりにならぬでもよかろうと考えております。
  88. 武藤運十郎

    ○武藤委員 いや、賠償ば現実にもうビルマに払わなければならぬし、そのほか今報告されておるものだけでも、払わなければならぬものがたくさんあるわけです。そして一兆円のワクというものは維持していくということをいわれておるわけですから、それによってわれわれはこの際考えなければならぬのであって、将来もう一兆円をいつはずしてもいいというような印象を与えることになった答弁でありますけれども、それはそれでいいのですか。
  89. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。私は将来の賠償考えて、将来どうかというふうに誤解したのでありますが、ただいまのところ、一兆円のワク内で払い得るものは払うということであります。
  90. 武藤運十郎

    ○武藤委員 賠償問題については、結局特別会計でも作ってやるよりほかないのだと思いますけれども、どういうふうに処理していかれるか、その点について簡単でけっこうですけれども、お考えを伺いたいと思います。
  91. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 特別会計は、私は十分検討を加えなければならぬ、そういう考え方もいいだろうと思います。
  92. 武藤運十郎

    ○武藤委員 今度はその基本的な問題の中の第二であります。各国に対する賠償の比率をどのように考えておるかということを伺いたい。  前にビルマとの交渉が行われたころにおける話ば四・二・一、フィリピンが四で、インドネシアが二で、ビルマは一だというようなことが伝えられておりました。最近どこの委員会か知りませんが、そういう比率は持っておらないということを政府では答弁をしておられます。これは外務省を中心として大蔵省とも相談した結果かと思うのでありますけれども、前内閣以来の話を聞いてみると、一つの案が外務省あたりでは練られたのではないかと思うのであります。これは重光外務大臣のときではありませんけれども、岡崎前外務大臣が二十八年の秋に東南アジア方面に携行された案が、伝えられるところによりますと、フィリピンが一億五千万ドル見当、インドネシアが一億二千五百万ドル見出、ビルマが六千九百万ドル見当というふうに聞いておるのであります。それからビルマとの交渉で、昨年の八月二十七日に外務省からビルマの代表に示された最初の金額は、七千万ドルであったと聞いております。これらを合計しますと、五億ないし六億ドルを十年ないし二十年で解決していこうというような考え方を持っておられたと思うのであります。これについてそういうものはないということを極力否定しようとしておられますけれども、はなはだ不見識だと思うのであります。いやしくもこの賠償というものをしなければならぬという立場に立っており、そうして賠償すべき国というものはきまっておるのでありますれば、日本の財政とにらみ合せまして、どの国はどのくらい、どの国はどのくらいというようなことを考えるのは当りまえであって、考えなければばかと同じであります。責任ある政府としては、大よその見当というものは必ずつけておらなければならぬと思うのであります。この比率について、さきに大蔵大臣からもちょっとお話があったと思うのでありますけれども、どういうように考えておるか、伺いたいと思うのであります。
  93. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。これはあるいは外務大臣がお答えになるのが適当かと思うのでありますが、大蔵大臣といたしましては、こういう国と国との間にまず比率を作って、そういう賠償をやるという考えは持っておりません。それぞれの国が日本に対して賠償の請求をするのは、それぞれその国における理由があって、みんな異なると思っております。従いましてこちらでそういうような比率をこしらえること自体が、私は非常に合理性を持たぬ、こういうふうに考えます。
  94. 重光葵

    重光国務大臣 大蔵大臣の御答弁で尽きておりますが、この賠償問題は、賠償という点から見れば、各国に共通したところがあるのでありますから、これは賠償の相手方を全部一堂に会して、たとえば会議体でやるということも、それは方法がありましょう。しかしながら今日までの経過で御承知通りに、外交交渉としては、これは各国別にやっておる交渉になっておりますから、各国の事情によって、また損害の程度等を勘案して、交渉しなければならないと思っております。
  95. 武藤運十郎

    ○武藤委員 それは相手のあることでありますから、はっきりきめることはできない、お説の通りであります。しかし払う方の身になれば、ほぼその割合をきめておくことは当然であるし、きめておかないことは間違いだと私は思います。四・二・一というふうな比率は、何かサンフランシスコの講和会議当時に、各国から被害額というものの申し出があって、それに基いて勘案をしたものが四・二・一ということであるということを私は聞いておるのであります。それが水増しされたものであるか、正直なものであるかということはわかりませんし、それからそれが全く事実に合致しているかどうかということはわかりませんが、向う様の言うことも聞きますけれども、今外相の言われたように、被害の程度にもよることでありますし、その被害の程度に対する支払いの義務をきめるのは、向うの請求もありましょうけれども、こちらとしても、どのくらいの被害を与えておるかということの基礎を持たなければ、交渉にも何にもならぬと思うのであります。ですから、向う様の出方はとにかくとして、こちらはフィリピン、インドネシア、ビルマあるいは仏印等に対して、どのくらいの被害を与えただろうか、それに対してどのくらいの割合でほぼ払っていったらいいだろうかということについて、案を持つことは適当でないということはないのでありまして、持たないということが私はむしろ間違いだろうと思います。もう一度そういう案があるかないかということを伺うと同時に、そういうようなことについて十分慎重に検討する意思があるかということをこの際外相に伺っておきたいと思います。
  96. 重光葵

    重光国務大臣 むろんわが方においても十分材料を集めて、正確な基礎の上に交渉しなければならぬのでありまして、それを努めておるわけであります。しかしその見積り等は非常に困難なことでございます。これは御推察にかたからぬと思います。それから比率の問題についてお話がありましたが、これは先ほどお答えした通りでありますが、とにかくビルマの賠償ということは、これはもうきまっておるわけでございますから、ビルマの賠償について、何と申しますか、基礎というわけではないでしょうが、これで一つの標準はできておるわけであります。なるべくその標準をもって、将来の賠償もわが方の負担を重からしめざるように努力していきたい、こう考えております。
  97. 武藤運十郎

    ○武藤委員 ビルマとの問題がすでにきまっておるし、標準になるといわれますが、一つの標準にはなりますけれども、ビルマとの問題というのは、非常に私はルーズな条項があると思うのであります。先ほども福永君でしたか指摘されましたけれども、同条項の平和条約五条の(a)の(I)によりますと、一応きめるけれども、公正なかつ衡平な待遇についてさらに検討をし直すというような趣旨の条項がございます。そしてそれは何を標準とするかというと、一つには賠償総額に向けることのできる日本経済力に照らしてという、この日本の主観的な立場でございます。それからもう一つは、フィリピン、インドネシアその他の諸国に対する最終的解決の総結果に照らしてという客観的な事実についてであります。この二つに照らして、公正かつ衡平な待遇をすべきものだということで、新たなる検討の申し出をすることができるように条項ができておると思うのであります。そうしますと、ビルマとの二億ドルないし二億五千万ドルという金額というものは、きまったようできまっていないと思うのであります。ビルマとの交渉経過を聞くところによりますと、これは全部事実かどうかわかりませんか、ビルマの代表は最初四・二・一という案は、これはどうもビルマの申し出た金額が正直過ぎたのだ、ほかの国は水増しがあったのだ、だからどうも少いのだ、ことに戦争中日本協力したビルマに少し残酷ではないかというような話があり、日本がこんなにビルマを虐待するのは、どうもアメカリから強制されているのではないでしょうかというような話も出たということでありますし、同時に平等理論というものを主張しまして、当時大野ガルシア協定フィリピンに四億ドル払うということがきまっておったときでございますからして、平等ということになりますと、フィリピンに四億ドル払うのだったら、ビルマにも四億ドル払ってもらいたい。しかしフィリピンを一億ドルにすればわれわれの方だって一億ドルでもかまわないというような平等論を主張したそうでございます。その結果、どうもそういうわけにもいかないということで、その間にどういう経過があったか知りませんけれども、二億ドルということで落ちついたようであります。そのときにビルマとすれば、泣き泣き二億ドルを承認したと思うのでありますが、加えられたのがこの条項だろうと思うのであります、いわゆる平等理論から衡平理論というような形に引き移って参りまして、全部平等でなくてもいいけれども、一応二億ドルできめるが、もしほかの国が多くなり、先ほど申し上げたようなものに照らして考えた場合に、もう少しふやしてもらわなければ困る――減らすということは私はないと思うのでありますが――という意味でこれが加えられたと思うのであります。そうしますと、私は伺いたいのは、フィリピンの問題が軽率に八億ドルとかなんとかいうふうにきめられることになりますと、これはもう当然ビルマも申し出てくるのではないかと思う。あのときにきめられたのは、フィリピンが四億ドルという標準でビルマが二億ドルになったのですから、もしフィリピンが八億ドルということになったら、その倍になって、ビルマの方は四億ドルにしてもらいたい、もう一億ドルほしいということを申し出てくるのではないかと思うのであります、そうなりますと、なかなかこれは収拾がつかないような状態になるわけでございますが、そういう点について今後どういうふうに処理していこうとされるか、このビルマとの条項をどういうふうにやっていこうとするか、これを伺いたいのであります。
  98. 重光葵

    重光国務大臣 ビルマとの賠償協定の交渉のいきさつについては、私は知らないのでありますけれども、いろいろお話のようなこともあったでございましょう。私が、ビルマの賠償がすでに決定しているのだから、それは一つの標準として考え得ることたと申し上げたのは、それで今度はフィリピン賠償その他の賠償について、非常にふつり合いなことになりますと、またビルマとの賠償問題が蒸し返されるおそれがある。今お話通りのような関係になる。たからそういう蒸し返しの来ないように、将来も処理していきたい。こういうことは先ほども申し上げたのであります。方針としては、将来のことは過去の問題に悪影響の及ぼさぬように、これは努力をしていかなければならぬ、こう思っているわけであります。
  99. 武藤運十郎

    ○武藤委員 私も一たんきまった賠償問題が蒸し返しになるようなことは歓迎するものではありませんか、先ほど大蔵大臣外務大臣などから述べられたような、賠償能力なり賠償比率なりについて定見を持っておらない。無定見であれば、これはもう収拾すべからざるような状態において蒸し返されてくるということになると思うのであります。私が当局に対して、賠償能力をどのくらいだということの腹をきめなさい、持っているべきだ、また各国に対する比率をどのくらいにすべきだということについて定見を持つべきではないかということを申し上げているのは、今外務大臣からおっしゃいましたような、蒸し返しというようなことが出てこないということのためにも、必要ではないかという観点から伺った次第でございます。この点については十分お考えの上で、賠償能力並びに一年に支払い得る金額、各国に対する比率、態度などについては御検討おきをいただくことが一番よろしいのではないかということを申し上げておきたいと思うのであります。  それから第三には、賠償は役務が原則だと思うのでありますけれども、この点についての政府考え方、サンフランシスコ条約によれば十四条の(a)におきまして、役務でするということになっております。もちろんサンフランシスコ条約を同意してない国もございますから、これをすべて日本だけでの考えで押しつけるわけにはいかないのではないかと思いますが、日本賠償に対する考え方というものは、役務ですべきだということを日本考えてこの条約を結んであるのだと私は思うのであります。しかるに今度伝えられるフィリピンの出したといわれる条項によりますと、二千万ドルは現金で払うということがございます。そうして政府ではこの八億ドルを、外務省筋の放送かどうか知りませんが、新聞の伝えるところによりますと、多少手直しをすればこの八億ドルものめないことはないのじゃないかということが伝えられておるのでありますけれども、この現金の支払いというものを、今後フィリピンを初め他の国に対しましても賠償のうちに入れるつもりがあるのかないのか、この点を伺っておきたいと思うのであります。
  100. 重光葵

    重光国務大臣 サンフランシスコ条約を受諾しておる国々に対しては、むろんサンフランシスコ条約の規定によって賠償問題も処理されるわけであります。さような国々に対しては役務賠償ということが主になることは申すまでもございません。サンフランシスコ条約を受諾していない国に対しては、それを持ち出すこともできない状態でありますから、これは別に話合いをするよりほかに方法は、ございません。   〔中曽根委員長代理退席、委員長着席〕 しかしながら日本側としては、サンフランシスコ条約の趣旨によって交渉をすることもまた当然のことでございます。しかし今向うの案にどういうものがあるかということは、これは出てきた上で検討するよりほかにしようがございません。今まだ出てきませんから、そのことについて想像的に申し上げることは差し控えたいと思います。
  101. 武藤運十郎

    ○武藤委員 出てきておらないと言われますが、私はもうとっくに御承知たと思うのであります。しかしまあその通り受け取りましょう。受け取りましても、それではフィリピン交渉におきまして幾ばくかの現金を支払うということもあり得るということに伺っていいのですか、それとももう現金は支払いをしない、賠償としては、たといサンフランシスコ条約を受諾しない国であっても現金は支払わないというふうに考えていいのか、政府の態度を伺いたいのです。これは私は、必ずしもサンフランシスコ条約にあるからやめる、ないから払うというものではないと思う。賠償する方法としても、同じ賠償するのでも、それが日本経済にどういうふうな影響を及ぼすかとか、あるいはそれが賠償を受けた国の経済発展にどういうふうに寄与するか、それが日本にどのようにはね返りをしてくるかというようなことを考慮しながら賠償というものはすべきでおり、賠償すべきものを役務にするか、現物にするか、現金にするかということをきめていかなければならない。それは自主的に日本がきめていくべきものであって、現金を加えるか加えないかというようなことについては、政府としては自分自身の考えというものを持っていなければならないと思うのでありますが、この点フィリピン賠償問題について現金を加えるか加えないかということを大蔵大臣から聞きたい。
  102. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今日の国際収支の今後の見通し等もありまして、さしあたり現金で支払うということは私は非常に困難であるということを申し上げておきます。
  103. 武藤運十郎

    ○武藤委員 第四には、賠償と国交回復、貿易などに対する態度について伺いたいと思うのであります。賠償を払うということば必ずしも金を払えばいいということではないと思うのでありまして、同時にわれわれは、東南アジアとの国交の回復、貿易というようなこと、さらには経済協力、市場の開拓、回復というようなことを考えながらこの賠償問題を処理すべきものと考えるのであります。こういうふうな関連において政府はいかなる考えを持っておるか、伺いたいと思うのであります。
  104. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お答え申し上げます。私は一日も早く賠償問題が解決されまして、両国の間の国交が回復し、そうして両国間の感情が融和されてきた場合には、今後かりに賠償が負担をもって支払った賠償といえども、それがフィリピンの側にもよくなり、あるいは必ず日本のためにもよくなり、そうして両国の経済提携がますますよくなれば、ここに貿易は十分促進できることと存じます。
  105. 武藤運十郎

    ○武藤委員 貿易などと関連して考えてみますと――必ずしも賠償額が貿易の見込みによって規定されるというふうな公式論ではいかないと私は思います。思いますが、貿易と関連して考えてみますと、日本とビルマとの貿易は八%、インドネシアとの貿易は一三%、フィリピンとは七%にすぎないというような実情であって、われわれが考えておるところのフィリピン、インドネシア、ビルマというような重点的な賠償比率はないといわれますけれども、考えとは逆の結果がこの貿易の率から出ておるのであります。もし貿易というものを非常に考えて、貿易との関連において賠償を考慮しようということを考えるならば、逆にビルマ、インドネシア、フィリピンというふうに賠償金額考えなければならぬというふうなことにもなるのでありますけれども、その辺の勘案はどういうふうに今お考えになっておるのか。私の先ほどの、その比率をどうするかというふうなことについても、これは関連をするのでありますけれども、御意見を承わりたいと思うのであります。
  106. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 この賠償問題と金額とそれから貿易というものとを関連性を持って考えることは、いささか私は邪道だと存じます。賠償はどこまでもやはり相手方にかけた損害によって計算さるべきものでありまして、それと貿易金額とを対照するということは無理だと思いますが、ただいまの御指摘のごとく、事実ビルマとは非常に親善関係が深まってきつつありますから、これは貿易も増加しております。インドネシアにおきましても、これは将来非常な大きな前途があると思いますが、これも今日ではまだ支払い条件等において行き詰まっておる状態、フィリピンの問題については今賠償問題が交渉中である、こういうふうな状態でありますから、これが解決されましたときには、私はその比率は、ただいまの比率でなくて、相当変更するものだと存じます。比率ということは、つまり貿易の比率は相当変更するものだと存じます。
  107. 武藤運十郎

    ○武藤委員 その次に、インドネシアとの賠償交渉というものが中断をしておるようであります。インドネシアは非常に膨大な金額を要求しておるがごとく、百五十億ドルとかなんとかいうふうなことを私はかつて聞いたことがあるのであります。そうして先ほど申し上げましたように、日本政府では一億五千万ドルぐらいではないかというふうなことを外務省筋では言ったということも聞いております。その後インドネシアとの賠償交渉はどのようになっておるか、今後どうしようとするのか、外務大臣から承わりたいと思うのであります。
  108. 重光葵

    重光国務大臣 インドネシアが賠償問題を解決したいという希望を表示しておることは、もう久しい間でございます。しかしほんとうの交渉というようなものは主だ始まっておりません。これは向うの内政関係もあるようでございます。ただインドネシアの政府当局とわが代表部との間に、賠償の問題を早く解決しなければならぬというくらいな程度で意見の交換があったという状態であるということを申し上げます。
  109. 武藤運十郎

    ○武藤委員 賠償問題はそのくらいにしまして、最後に日ソ交渉のことについて一言伺いたいのでありますが、日ソ交渉がだいぶ進行しておるようでございます。われわれはかねて中共、ソ連との国交の叫復、貿易その他は主張しておるところでございますが、たまたま鳩山内閣においてこれに着手されたわけであります。まことに慶賀にたえないのでありますけれども、なかなか困難な問題もあろうかと考えますか、今後信念をもってあくまでもこの日ソ交渉を完結をさせるということでなければならぬと思うのであります。この点について、鳩山総理大臣並びに重光外務大臣の信念、決意などを、見通しともあわせまして一言承わっておきたいと思うのであります。
  110. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 どうにかして日ソ交渉を成功させたい、できるだけのことをいたしたいと思っております。
  111. 重光葵

    重光国務大臣 交渉は、御承知通りに彼我の立場及び主張が全面的に机の上に乗せられたという形になっております。今後のロンドンにおける交渉の結果によって、これが妥結を見るかどうかということになるわけであります。今後どういうことになりますか、それを今日予想するわけにはむろん参りません。参りませんが、わが方としては、この交渉は日ソの国交を正常化する目的をもって始められておるのであり、その目的を達するためにわが方の主張、立場は十分に主張して、その目的を達したい、こういうふうに考えておることを申し上げます。
  112. 武藤運十郎

    ○武藤委員 総理大臣のお言葉はいささか心細いのでありまして、どうにかして何とかしたいというようなことでなくて、あくまでもこれをなし遂げるという決意と信念でやっていただきたいと思うのであります。  これで私の質問を終ります。
  113. 三浦一雄

  114. 松平忠久

    松平委員 日比賠償問題につきまして、ただいま同僚議員からいろいろと質疑が繰り返されたのでありますが、なるべく重複を避けまして、政府の所信をお伺いしたいと存じます。  まず第一に、フィリピン側からひんぴんとして報道されてくるところによれば、八億ドル、支払い期間二十カ年以内、十八カ年ともいわれておりますが、これをスライド方式案によって行なっていくということが日本政府に通達されて、近くマニラにおけるこの交渉の再開を要求してきておる、こういうことを向うでは発表しておるのでありますけれども、このフィリピン側の通報というものか、日本政府に通達されてきたかどうかということから外務大臣にお伺いしたいと思います。
  115. 重光葵

    重光国務大臣 いまだフィリピンの案が通報されておらないということは、前回申し上げた通りでございます。
  116. 松平忠久

    松平委員 正式に先方から通報されてこないということでありますか、フィリピン側からの報道によりますと、すでに日本側にそれが通達されておるということや、あるいは鳩山総理重光外相、また高碕長官も、先般来訪したところのネリ大使との間に相当程度の了解ができたというようなことを言って、それを基礎にしてフィリピン側における国内のいろいろだ反対論者等の説得に努めて、大体これを基礎にしてやっていこうというようなことか、フィリピン側からも伝えられてきております。しかし、ただいまの同僚議員の質問に対する御答弁を聞きますと、そういうような同意をした覚えはないということを、鳩山総理以下関係大臣答弁をされているのでありまして、ここが先方の言い分と日本側の言い分のたいぶ違っているところであって、そうしてこのために世間には相当疑惑が伝わっており、国民々非常に不安に陥れている原因がここにあるのではないか、こういうふうに思うのであります。フィリピン側におきましても、相当国内情勢が複雑であるということは前々からわかっておったのでありますが、日本の方も、フィリピン側のこういう複雑性がだんだん閣内に伝わってきたのか、非常にあいまいもことしていてよくわからない、そうして閣内もどうも思想統一がばらばらである、これが非常に国民に不安を与えていると私は思うのであります。従って、フィリピン側のこういう報道あるいは新聞記者に対するネリ大使等の談話というものに対して、総理は一体非常な迷惑を感じておられるのか、もしそうであるとすれば、これに対して何らかフィリピン側に反省を求めるなり、おるいは何らかの申し入れをするなり、そういうことをおやりになったかどうかということをまずお伺いしたいのであります。
  117. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 フィリピン日本との間の賠償交渉報道フィリピンでずいぶん発表せられましたけれども、それに対してネリ大使からは、そういうようなことは事実に反する発表か出たのである、まことに相済まないというようなことを言ってきております。
  118. 松平忠久

    松平委員 それは非常に重大な発言だと思うのでありますが、ネリ大使から相済まないと言ってきた、その内容というものをもう少し詳しくしていただきたいのであります。すなわち、ネリ大使が相済まないと言ってきたのは、たとえば大蔵大臣等の進退というものに関連した報道があって、そういうことを向うから報道されたのはきわめて遺憾であるというようなことをネリが言っておったということを聞いておるのでありますけれども、この八億ドルという基礎数字に関して、これを軽々に向う発表したことは相済まぬ、こういう意味の釈明と申しますか、言明がこちらの方に通達されてきたのであるかどうか。もしそれが来たのであるとすれば、どういう経路をもってその通達が日本政府になされたかということをお伺いしたいのであります。
  119. 重光葵

    重光国務大臣 その点は私から御説明をした方がいいと思います。  フィリピンでいろいろ新聞記事が出ました。特に、通信員の通信に載った事項があります。賠償問題がございます。それが日本においても問題になったことはるる御指摘の通りであります。これに対してネリ大使は、さような、通信記事は正確でないということで一度ならず取り消しをいたしました。特に取り消しをこちらから強く要求したというわけではございませんが、しかし、かようなことば事実に反するのであるから、いかにも当惑するというようなことは、日本の代表から機会があったときに向うには話しをしました。それに対して、まことにその通りたというので、これを取り消しをいたしました。取り消しをいたしましたときに、日本側に迷惑をかけるようなこの状況については、自分は非常にお気の毒である。しかしこれは事実に反するからといって、はっきり取り消しをした、こういう釈明でございます。
  120. 松平忠久

    松平委員 その取り消しをしたというのはとういう内容についての取り消しであるか、まずそれを伺っておるのであります。先ほど質問申しましたように、大蔵大臣の進退に関するようなことがあったというので、そういう意味のことで迷惑をかけたというので向うから進んで取り消してきたのか、あるいは八億ドルというものが伝わってきたそれ自体について、何らかの誤解があったというようなことで何らかの釈明がおったかどうかということを、お聞きしておるのであります。
  121. 重光葵

    重光国務大臣 その御質問に対して私今お答えした通りに、新聞通信等で報ぜられたことは事実に合っておらぬといって取り消しをした。その数字はむろん含んでおります。
  122. 松平忠久

    松平委員 非常に重大な御発言であると思うのであります。新聞によりますと、八億ドル、しかもその内容まで伝えられてきておるのでありまして、ただいまの御答弁によると、その数字をも含めて取り消しをしてきた、こういうふうに受け取れるのでありますか、そういうことでございましょうか。
  123. 重光葵

    重光国務大臣 さような記事が正確でないと取り消しをいたしたのでございます。
  124. 松平忠久

    松平委員 そういたしますと、フィリピン賠償に関する今後の交渉の再開ということは、何を数字にしてくるかということは、まだ政府にはほんとうのところわかっておらない。言いかえれば、この予算委員会においても先ほど御質問の焦点になっておりますことは八億ドルの内容の中で、たとえば資材賠償というのが五億、それからそのほか現金二千万、役務三千万、借款二億五千万というようなことを前提として行われておるのでありますけれども、それについては、先方がそれらの新聞報道というものは正確なものでない、こういうことのように受け取れるのでおります。果してその通りであるかどうか、もう一度確かめたいと思うのであります。
  125. 重光葵

    重光国務大臣 その通りでございます。
  126. 松平忠久

    松平委員 その通りであるとするならば、この問題はあとに譲りまして、次にお伺いしたいと思うのであります。  このフィリピン賠償交渉に当って国民の受けておる感情は、どうも日本の閣内においてやや意見の不統一があったのではないか、こういう点であるのであります。その第一の点は、この交渉の衝に当る場合におきまして、高碕長官あるいは谷顧問、重光外務大臣というように、いろいろな人が交渉の任に当ったように思うのでありますけれども、この交渉の窓口と申しますか、そういうものは外務大臣意向を受けて高碕長官が当たっておったのであるか、あるいは谷顧問が当っておったのであるか、また何ゆえにこういうような窓口を二つにするような印象を与えたのであるか、ということについてお伺いしたいと思います。
  127. 重光葵

    重光国務大臣 これは前に御説明しております通りに、フィリピンとの交渉ネリ大使日本に米た後に内交渉が始まっておる、正式の交渉というところまではいかないのであります。内交渉向う日本側の要路の意向を聞くということは、何もこれは差しつかえのないことであるのであります。しかしわが方としては、大体これに応ずるために手分けし、また方針もきめてやらねばなりません。そこで閣議でいろいろ経済方画のことは高碕長官にお願いをし、また一般的の問題はむろんこれは外務大臣責任において、また外務大臣自身においてやるわけでございます。しかし向うが各方面意向をいろいろ聞き、出た議論をするということは、これはむろん差しつかえのないことでございます。さようなわけで、内交渉は結局意見が一致しないまま別れておるということは、説明をいたした通りでございます。これから向う意見が出てくるたろう、こう今予期されておる状況であることもお話した通りでございます。
  128. 松平忠久

    松平委員 これに関連しまして、このフィリピン賠償のことに関して、交渉の世評においていろいろ先方からの数字の出し方が違ってきたりしておったように伺っておるのでありますけれども、この交渉の過程において、やはり閣議等において隔意なく関係大臣意向等を披瀝して、協議の上で当っておられるかどうか。新聞等の報ずるところによりましても、何か大蔵大臣はつんぼさじきにおったというような印象を受けるのでありますが、五月三十一日でありますか、最後ネリ大使鳩山総理との会見前におきまして、いわゆる交渉が妥結をするかあるいは決裂になるか、そういうまぎわにおいてすら大蔵大臣との間には話がなかったというようなことを、新聞では伺っておるのでありますけれども、この点についてはどうでありますか。一つ大蔵大臣にお伺いしたいと思うのであります。
  129. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。この賠償交渉におきまして、外務省におきまして下準備、下打ち合せをする、これは当然たと思うのですが、いやしくも国民負担に関する賠償金額とかあるいは条件等について大蔵大臣が知らぬということは私はあり得ないし、またそういうことをやるような外務大臣は世界にないだろうと思っております。従いまして、当然私はこれについて必要なそういうふうな交渉は常に連絡をとっておったわけです。今お心しの、いよいよこの話し合いが一応終ってそして帰るということは、私も知っておったわけであります。
  130. 松平忠久

    松平委員 今のお話によると、絶えず連絡があったというお話でありますか、資本財による賠償というものがおもな賠償になっておるのであります。従って資本財に関連するところは通産大臣が一番関連するところであると思うのでありますけれども、通産大臣との間には隔意のない協議がなされておったかどうかということを、お伺いしたいのでございます。
  131. 重光葵

    重光国務大臣 これはこういう交渉をまとめるためには、経済問題に関係しては経済閣僚、その他文化問題に対しては文部大臣というふうに連絡をとっていかなければ交渉がまとまらないことは明らかでございます。しかしごく内交渉の時代において、交渉の分担を持ち責任を持ってやる人間が、すべて一々他の閣僚の指揮を受けるようなことでは、交渉はいけません。そこで本問題について内交渉の時代を過ぎまして大体案ができれば、これは閣議に諮らなければなりません。ところが大際は内交渉は不幸にして失敗したのです。そこで申し上げる通りに、失敗した、これは決裂だというふうにして別れると大へん工合が悪いのであります。そこで交渉はどうしても継続しようじゃないかというので、向うネリ大使もそれを承諾して、交渉は継続しよう、そうしてフィリピン側意向一つ十分まとめて提案をしようということで別れたわけであります。その別れるときには正式の閣議を開く余裕はございませんでしたけれども、関係閣僚は、経済閣僚、大蔵大臣もむろんのことでありますが、一緒に集まって、さような方針でネリ大使に帰ってもらったわけであります。これが全貌でございます。
  132. 松平忠久

    松平委員 数字の問題について若干お伺いしたいのであります。交渉の過程において重億ドルが八億ドルになってきた、そうしてこの八億ドルの内容か結局重大なる関心の的になってきたということでありまして、その中に、ある場合においては借款が三億万千万ドル、フィリピン側の最終案と称せられるものの内容によると二億五千万ドル、こういうわけでありますが、このいわゆる借款というものについての性質等を伺いたいのであります。すなわち純然たる賠償のほかに借款があるのは、どういうことであるかということでありまして、この点について政府の見解を所管の大臣から伺いたいと存じます。
  133. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 外務大臣折衝しておられる中の経済関係する問題につきまして私折衝に当ったのでありますが、その主要なる問題は借款問題であります。借款問題につきましては、大体資本財をもって賠償に充てるという場合に、それを生かしていくためには相当事業をやっていかなければならぬ、その事業をやる場合には日本側もこれに協力しようじゃないか、日本側協力するにはすでにフィリピンにおいて現在日本の商社がやっておる方式をとることにして、それに対して政府は相当の資金的の援助をしよう、その商社は両国政府が公認したる商社をもって当らして、それに対して政府は相当の援助をする、その援助は幾らするか、この問題がつまりローン、借款の形式になって現われるわけなのであります。
  134. 松平忠久

    松平委員 そういたしますと賠償をした資材によっていろいろ開発等もしていくその場合にあるいは金が足りないとか機械が足りないというときに、この借款をする、こういうふうに受け取れるわけであります。そういたしますと純賠償額が多いに従って借款の額も多くならなければならぬと思うのでありますけれども、それが逆でありまして、純賠償額が多くなる借款の方が少くなる、こういうように交渉経過にはなっておるわけであります。そういたしますと、今岡崎長官の御説明になったところとは、どうも矛着するように思うのですけれども、借款の内容についてもう一度明確にしていただきたいと思います。
  135. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 借款の内容につきまして何があるかということにつきましては、交渉の内容に入っておりませんが、原則的に私は申し上げたわけなのであります。従いまして借款の金額が二億だとか三億だとか、そういうことはきめておりません。
  136. 松平忠久

    松平委員 そういたしますと、借款の条件すなわち利息であるとかあるいは償還期限であるとかいうようなおよその話というものは、今までの交渉の中には全然なくて、ただ二億五千万ドルの借款というような工合にきわめてばく然たることであった、こういうふうに受け取れるわけでありますけれども、いやしくも先方との間の交渉に当っておる場合におきまして、そういうずさんな交渉はないと私は思うのであります。この借款の内容とかあるいはその条件について何らか向うとの間に話し合いがあったと思われますけれども、それを一つここで明らかにしていただきたいと思うのであります。
  137. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 大体の原則は長期、低金利で、それは回収できるものだ、こういう原則でありますが、その内容等につきましてはまた今後折衝しなければならぬ、こういうふうになっております。
  138. 松平忠久

    松平委員 ここに私は先方の立場と日本の立場が非常に微妙な関係にあるように思うのであります。八億という賠償に当って、借款というものがあるということによって何らかフィリピンの方も国会において一種のごまかしによる御記を受け、日本側においても二極のごまかしによってそれをやっていくというようなふうに見えないこともないのでありますけれども、大体そういうような意図もあってこの借款というものがあるのか、つまり腹と腹というようなものがあって、そしてこの借款というものが中に織り込まれておるようにも受け取れるわけでありますけれども、その辺の腹はどういうようなものであるか、もしお答えできるのであるならば承わっておきたいのであり
  139. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 この問題は先ほど小坂さんの御質問にお答え申しましたごとく、根本精神は日本が役務なり資本財をもって賠償して、これをフィリピンに完全に利用してもらって、ほんとうにフィリピンのためによくなるということに尽したいというのがこちらの精神でありますから、その精神を生かすためにはただ単に資本財だけを渡して、もうそれで事足れりとしてあとは袖手傍観するわけにいかない。どうしてもある程度経済借款なり援助によって、両方の努力によってこれを生かしていきたい、こういう趣旨が根本であります。
  140. 松平忠久

    松平委員 そういたしますと、資本財による賠償というものは当然払うべきものでありますか、借款というからには条件等の内容が終わなければ借款は成立しないというふうに私どもは常識では考えるのであります。しかし今の御答弁によりますと、これは日本が、どうしても借款を与えなければならないという義務を負ったところの借款になる、こういうことであるかどうかという点でありますが、その点は政府はどういうふうにお考えになっておられますか。
  141. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 その問題につきましては、両国政府が認めるということが条件であると同時に、これは政府政府の間でなくてその中に商社を介するということであります。商社によってこれは右利であるとかあるいは回収ができるということが認められなければこれは実行できないのでありますから、従いましてそういう問題がきまらなければ、これは実行できないわけであります。
  142. 松平忠久

    松平委員 次に、大蔵大臣にお尋ねしたいと思うのであります。先ほど来武藤委員質問に対する大蔵大臣答弁を聞いておりましても、やや明確を欠くのでありますか、この点が私は一番大半な点であろうと思うのであります。すなわち、現在日本が対外債務として払っておる金額並びに近い将来払わなければならぬ金額というものは、これはだれが政府の衝に当っておっても、相当長期の財政計画を立てていかなければならぬことは当然であるのであります。従って日本の支払い能力というものも、ただ単に国民が働いていけば能力が出てくるというような考え方ではなくて、所管の大臣としては、やはり一つの大きなワクというものをお考えになっておると思うのであります。先ほどの数字によりますと、一年に四、五百億見当になるような数字が武藤委員からは示されたようでありますけれども、大蔵大臣としては、日本の対外債務のぎりぎりのところは、一体どのくらいかということがおわかりになっていなければならぬはずであると思うのであります。その点について大蔵大臣の所信をお伺いしたいと思います。
  143. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。対外債務の支払いといいましても、これはいろいろな条件があります。国内の情勢、これは経済国民生活も含みますが、さらに国際収支とか国際的ないろいろの問題がありまして、こういう情勢は今日非常に変化しております。どれほどが賠償に払えるか、これはものの考え方におきまして、賠償だけを中心に考えて他を抑えていくという考え方もありましょうが、しかしこれは総合的に考えていかなければならぬ。私はこういう面について、予算の点において一応の目安を出しているわけであります。
  144. 松平忠久

    松平委員 ちょっと要領を得ないわけでありますが、私の質問は、むろん各般のことをいろいろ総合的に考えて、日本側としてはどの程度まではぎりぎり行けるのだ、こういうことがなければフィリピンとの交渉もできないということになると思うのであります。将来起るべきインドネシア、あるいはビルマの再検討条項等のことも勘案されて、それらのすべての問題を検討した上で、およそどの程度のものは支払い得るのだというめどがなければだめだと私は思うのでありますが、そのめどはどうしてもお示し願えないのかどうか。(「交渉の手の裏を見せるわけにいくまい」と呼ぶ者あり)交渉の手の裏を見せるわけにはいかぬと思いますが、しかし私は、その場合においては、日本のぎりぎりのところを国民に示さなければならぬ、国民の納得のいくような線でなければ、賠償なんというものは解決できないと思うのであります。すなわち日本の対外債務、賠償の処理によっては、国民の相当の理解がなければなかなかうまくいかぬ、こういうふうに思うのであります。従って進んで国民に、国民協力を要望するという態度に政府は出なければならぬ、こういうふうに私は思うのでありますが、それらの点をもお考えの上で御答弁順いたいと思います。
  145. 重光葵

    重光国務大臣 その御趣旨は私も全然御同感で、そういうような心がまえで進んでいきたいと考えております。
  146. 松平忠久

    松平委員 その点についてはこれ以上追及はいたしません。  次にお伺いしたい点は、今回のこのフィリピン賠償の点ですが、先方の申しておる八億ドル、日本のいっておる四億ドルのこの賠償は、大体金銭に見積って大よそのところで、そういう政治的な折衝によって将来妥結されることを希望するのでありますけれども、この物質的賠償のほかにもっと根本的な問題は、太平洋戦争において日本軍が、いわゆる非人道的な、恐怖というか、戦慄というか、そういうようなやり方をやってきたことに対する精神的な打撃というものを非常に重視しなければならない。この日本の行なってきたところの精神的な打撃というものはなかなか解消するものではない。先般来訪したフィリピンの未亡人会の人たちの話を聞いても、どこか心の中にそういうわだかまりが残っておると思うのであります。従ってこの賠償問題を交渉するに当っては、どうしても精神的な面におけるところの償いを持っていかなければならない。金が出せないならば、せめて何かほかの方法によってその償いを長きにわたってやっていくのでなければ、私は日本の対東南アジア政策というものはできないと思うのでありますが、こういう点について一体どういうふうな精神的な償いを政府はお考えになっておるか。この点は総理並びに外務大臣にお伺いしたいと思うのであります。
  147. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 賠償問題を合理的にすみやかに解決するということは、精神的の打撃を償うのに非常に有力だと思います。
  148. 重光葵

    重光国務大臣 今申された御趣旨は、実に戦後来雨アジア方面で新たに独立した諸国に対する日本の根本的な考え方でなければならないと思います。むろん賠償問題もその重大な意義を持って初めて意味をなすのでありまして、これをすみやかに解決したいというわけでありますか、そのほかにもできるだけ過去の戦争の創痍を消すように努力をいたしたい。文化方面においても、また人の交流においても、いろいろそういうことに気を配って一つやっていきたい、こう考えております。
  149. 松平忠久

    松平委員 賠償問題の解決がやはりその中の重きをなすものであるという総理の御答弁でありますが、まさにその通りであろうと思うのであります。しかし、東南アジアつまりアジア人というものに対する外交としては、欧米のいわゆる物質主義で固まっておる国とは相当違うものがなければならぬと私は思うのであります。従って違った観点でアジア人らしい外交を持っていかなければならないというふうに考える。ただ単に八億ドルあるいは四億ドルということで値切り倒したりしてやって、それで解決できるものとは私は思いません。もっとあたたかい、総理の言われるいわゆる友愛と申しますか、そういうあたたかい気持でもって長く接していくということでなければならぬと思います。従ってこの際私のお伺いしたいことは、これらの精神的な償いと申しますか、そういうことを即刻お考え願いたいと思うと同時に、たとえば総理あるいは外相みずからそういう地域に行っていろいろ話し合ってくるとか、あるいは国民使節というものを派遣するとか、ないしは未亡人あるいは遺児、孤児の教育等についても何らか日本でめんどうを見てやるとか、そういうような文化的なことを具体的にお考えあってしかるべきだと思うのであります。それと並行して初めて賠償問題も円満なる解決ができると思うのでありますが、そういう手は一体政府としてはどの程度お考えになり、打つ御決心であるかということを重ねてお伺いしたいと思うのであります。これは外務大臣にお願いしたいと思うのであります。
  150. 重光葵

    重光国務大臣 さような千段を着々ととっていきたいと考えております。何分にもすべての問題に着手する前に賠償問題を片づけなければならぬというような状況になってしまっておるものでありますから、この賠償問題は今後どうなりますか、これはまだ見込みがつきませんけれども、あらゆる努力をして片づける方向に向いたい、こう考えておるのであります。もっともそれがあまりに長引くというようなことにでもなりましたならば、その前にも今お話のような手段はとり得る機会があろうかと思います。いずれにしても、有効にさようなことを考えてみたいと思っております。
  151. 松平忠久

    松平委員 最後にお伺いしたい点は、東南アジア政策と対米政策との調整ということをどうお考えになっているかという点であります。この賠償問題にいたしましても、あるいはそれに続く経済開発の問題にいたしましても、この二つの地域に対する政策の調整がなければならぬというふうに私は考えておるのであります。政府は先般のアジア・アフリカ会議において、高碕長官に対して訓令を与えられておる。あの訓令によりますと、一言にして言うならば、平和政策、共存政策というか、これをもっていこうというお考えのようであります。私どもこれには反対はいたしておらぬ、むしろ積極的にそうあらればならぬと思っておるのでありますけれども、しかしながらこの政策を実施していくためには、賠償問題も解決しなければならぬし、また日本に対する不信、信頼感の喪失というか、あるいは経済的進出に対する警戒心、こういうものも、その次に起ったシムラ会議等を見ましても、非常に根強いものがあるのであります。従ってこれらを払拭していくということを考えなければならぬ。ところが他方において、これを払拭するためには、日本の自主独立の外交というものをもっと積極的に展開していかなければ向うはついてこない、こういうふうに私は見ておるのであります。従って対米政策をやはり今のような屈従的な、従属的な政策を改めていかなければならぬ。初めこの鳩山内閣は、そういうことをお考えになっておったように私は見ておったのでありますけれども、その後垣光外務大臣の渡米の拒絶にあって、あの前後から考え方を曲げられてしまったのではないか、そうして他方において平和政策、共存政策を東南アジアには遂行していこうというお考えになっておる反面におきしまして、アメリカに対する口主外交に失敗しまして、アメリカにはやはり屈従的な態度をとらざるを得ないように追い詰められてしまっておる。これが今日非常に悲劇となって現われているのであろうと思うのであります。従ってアメリカの要請によって、たとえば再軍備の問題にいたしましても、先方から見るならば、この程度の金は当然日本に支払う能力があるではないか、そういう考えを起すのは、私は必然であろうと思うのであります。従って日本の対外政策全般といたしましては、対東南アジア政策というものを、政府がさきに高碕長官に与えた訓令のごとくにやっていくというためには、やはりこの対米政策にもっと自主性というものを取り戻して、アメリカの反省を促しつつやっていかなければならぬと思うのでありますが、この点に関する対東南アジア政策に対する政府考え方と、アメリカに対する政府考え方、その調整等について、どういうふうなお考えを持っておられるか、これは総理並びに外務大臣にお伺いしたいと思うのであります。
  152. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 東南アジアの住民は、先刻あなたのおっしゃいました通り、非常に感情の強い民族でありまして、親切心をもって賠償問題を片づけるということが非常な影響を持っているものと私は思っております。東南アジア諸国民とやはり了解をしていかなければ、すべて親和の関係は出てこないと思いますので、できるだけそういう方面に努力をしたいと思います。その東南アジア諸国瓦と友好関係を緊密にするということが、アメリカに対する屈従的な態度によって非常にそこなわれる、これは当然なことたろうと思います。アメリカには何も屈従する必要はないのであります。とにかく日本の誠意が通ずれば、アメリカも協力はしてくれるものと思っております。アメリカの非常におそれているのは、ソ連の平和外交の名においてそうして実際においては世界制覇の考えがあるということに対して、非常な疑惑の念を抱いているのでありますか、これはソ連の態度いかんによっては、アメリカは直ちに変ってくるものと思うのであります。それですから、アメリカに属従する必要は日本としてはごうまつもないと私は思っております。
  153. 重光葵

    重光国務大臣 私も同様に考えておりまして、なお私の言葉でもって御説明を申し上げれば、現内閣がアジア外交を重視しておって、アジアの諸国及び諸民族と真に共存共栄の立場に立って親密な国交関係を開いていく、また続けていきたい、こういうことにあることは、御承知通りであります。しかしそれはむろん日本独自の立場をもってこの政策を遂行するわけでありますから、日本がアジアの一個である以上は当然のことであります。しかし日本の世界的の地位として、日本の対外政策が今日においては米国との関係を基調にしているということは、これまた繰り返して申し上げている通りであります。それは何もアメリカに対して屈従をするということでも何でもございません。日本の自主的の立場をよくアメリカに了解をさせて、そうして緊密な関係を持って世界平和にともに貢献したいということでありますので、その基調は少しも変っておりません。それからまた少しもそれに対して故障はございません。追い詰められていることも何にもございません。米国との緊密な関係を持って協力関係を進めているということは、今日現実の問題であります。またアジアにおける日本の政策についても、米国その他の民主諸国等に十分の了解を求め、また理解をしてもらうということが非常に重要であることも申すまでもございません。さような考え方をもってアジア外交を進めているわけでございます。
  154. 松平忠久

    松平委員 ただいまの総理並びに外相の御答弁通りにいけば、これはなかなかうまくいくと思うのでありますか、私ども見ておりますところによりますと、やはりこれは相当現実問題としていろいろな矛盾が出てくるのではないか。この矛盾の解決、調整ということをよほど勇気をもって考えていかなければ、対東南アジア政策というものは失敗してしまう、こういうふうに私たちは憂えているのであります。従って、バンドン会議その他シムラ会議等におきましていろいろと新たなる空気が出てきた。これがただ単にから念仏に終ってしまうということをさせないためには、どうしてもやはりアメリカに対する相当の反省を促しまして、そうしてほんとうに思い切った日本の独自の政策をフリーハンドにやっていけるというようなことにしなければ、日本の国際的地位も上らないし、また日本に対する信頼感というものも出てこない、こういうふうに私は思いますので、そういうような積極的な意図に基いてこの矛盾を調整、解決してい~ということに一段の努力を要望いたしまして、時間が参りましたから私の質問を終ることにいたしたいと思うのであります。
  155. 田原春次

    田原委員 関連して。日本フィリピンとの間の賠償交渉の機会にわれわれがよく考えておかなければならぬ問題が二、三あると思うので、これを質問したいと思うのであります。  それはサンフランシスコの講和条約が不本意なうちに国民の多数の不満のうちに結ばれ、従ってそれに関連した行政協定もはなはだしく国川多数の不満のうちに結ばれておりますので、種々なる問題が今の米軍との間に残っておる。フィリピン賠償解決のいかんによっては直ちにインドネシアとの問題も起るわけであります。私はこの機会に前回首相への質問を留保してある問題につきまして、主として鳩山首相、続いて日米行政協定の問題については重光外相に質問しておきたいと思うのでございます。  それはおととい以来またまた富士山麓においての演習場問題が非常に悪化して参りました。五月中旬に起りましたときは、従来の演習地すなわちAというのであります。これに対して、従来使用していなかったB地区に砲座を設けてA地区への演習をするということに対して、B地区側が反対したのであります。ところが実際はそのA地区、すなわち長い間被弾地区になっておりますA地区にはいまだ解決せざる問題がたくさん残っておる。これらを解決せずに新たに砲座を拡張したところに、五月中旬の地元民の憤激があったのであります。一昨日以来起っております問題は、A地区に長い間採草、採石、それから桑を植えたりする入会権を持っており、中には個人の所有権もあるにもかかわらず、それらの問題の解決を無視いたしまして、演習場として米軍が使っておる。これに対する地元民の憤激であります。一昨日の新聞に現われておるところを見ますと、地元民すなわち山型県南都留郡忍野村忍草部落という小さな部落であります。三百戸の農村でありまして、そこはA地区になっております。演習場全体が長い間の入会権の所有部落でありまして、その薪炭や石や草をとらなければその村はやっていけない。ところが戦前日本の陸軍が演習場に使っており、終戦後アメリカが占領いたしましてずるずるこれを使い、各種の入会権や所有権の問題は未解決のままに、今度は行政協定になってまたずるずる使っておる。調達庁の方に言わせますと、これは県知事や村長が承諾しているから当然やれるのたと言うし、地元民に言わせますと、県知事や村長は個人の所有権や村の入会権については承諾を与える権利はないのだ、こういういさかいのもとにもう五、六年争っているのであります。ついに爆発いたしまして、昨日のごときは多数の検束者を出し、その途中においてトラックが倒れまして多くの重軽傷者も出しておるという問題がある。これは要するに日米行政協定の結び方がはなはだしくアメリカに有利に結んであり、しかもその有利の上に、さらにアメリカ側が一方的にこれを無視して自分の都合のよいように解釈しておるにもかかわらず、単に現地の交渉は調達庁のみにまかせまして、日米行政協定の締結責任者であり、また改訂の必要がある場合には改訂の責任者である外務省が黙って見ておるからじゃないかと思うのであります。私が首相にお尋ねしたいのは、日比賠償交渉もけっこうなことであるが、今下手にやりますと必ず争いがあとに残る。この実例として山梨県の問題がありますから、山梨県の梨ヶ原の演習場に対する処置をどうされるおつもりであるか、これをお尋ねしたいと思います。
  156. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 先般富士山麓演習地の問題については、調達庁の努力によって山梨県と米軍との間にも了解に達したと聞いております。実は今朝の新聞を見てまた何か始まったかと思って非常に心配をしておったのでありますか、今般の紛争については調達庁において十分調査解決することにいたします。
  157. 田原春次

    田原委員 首相の答弁はそれは前の話をしておるのでありまして、前回解決したというのは新しく拡張しようとするB地区の問題であります。きのう以来起っておるのはA地区というそもそもたまの落ちるところの問題が未解決でありまして、これは現地の解決としてはよろしく調達庁を督励して解決すべきであります。将来の問題としてかような駐留米軍による一方的な行政協定無視の行動に対して、なおわれわれはがまんしなければならぬかどうか、この問題であります。行き過ぎの米軍の行動に対してはこれをたしなめ、必要とあれば行政協定を改訂するという気持を持ってもらわなければならぬのでありますが、これに対する態度がはっきりしておりませんから地元民は心配しておるのであります。行政協定はこのままやっていくのですか、あるいは一方的なああいう行き過ぎに対しては改訂いたしまして、対等の立場で話をするときには、いかぬということが言えるようにしなければいかぬと思うのでありますが、それらの点についての首相の心がまえを聞いておきたい。
  158. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 自衛権のない今日におきましては、安保条約並びにこれに付属する行政協定を改訂する意思はありません。けれども行政協定によって生ずるいろいろの弊害については、できるだけこれを排除し得るように努力をして参りたいと思っております。
  159. 田原春次

    田原委員 この問題に対する重光外相の方針を一聞かせてもらいたい。
  160. 重光葵

    重光国務大臣 将来行政協定を改訂するかどうか、こういう問題がおもな問題だと思います。行政協定は今もある以上は、これは向うもこっちも厳格に尊重しなければならぬと思っております。そこでそれについて見解の相違があれば、これは交渉によって解決するよりほかにしようがございません。行政協定を将来どうするかという問題につきましては、これはむしろ私自身の意見として申し上げなければならぬのでありますが、これは今は改訂する意思のないということはたびたび申し上げましたが、遠き将来と申しますか、日米関係のずっと将来のことを考えますと、これは十分に再検討をしていくべき時期が来るであろう、またさような時期のなるたけ早く来ることを私自身は希果しております。そういう時期か来ますならば、この問題も取り上げて改正の方向に進めていきたい。こうは思っておりますが、目下のところ、総理の言われる通りに、自衛軍備等の増強ということがありますので、時期を見てそういうことを考えたい、こう考えております。
  161. 田原春次

    田原委員 現在のところ日米行政協定を改訂する意思なし、遠き将来においてやるかもしれぬというのでありますが、かようなアメリカ側の日米行政協定を無視した行動に対しては、アメリカの方にもその行き過ぎを責めておる世論がある。たとえば五月の中旬にニューヨーク・タイムスの社説では明らかに富士山麓における演習は中止すべし、あれはアメリカ側にとっては、ワシントンのアーリントン墓地に爆弾を撃ち込まれるようなものであるから、国民感情を尊重すべしと言っておるのであります。こういう一つ一つのケースをとらえていくことが、行政協定の改訂には有利じゃないか。だから現在改訂をしませんということは、日本におるアメリカ軍が、ますます行政協定無視の行動をとられても傍観しなければならぬ、これは国民に与える心理的影響が重大です。独立ということば、独立の気魄を持つこと、精神力にあるのであります。それをアメリカさんならいかなることをやってもいいというように認めるような態度はよろしくないと思う。どうしても行政協定の改訂を促進すべきであると思っております。しかし時間もありませんから、意見だけを申し上げて終ります。
  162. 三浦一雄

    三浦委員長 川上貫一君。――川上君にお伺いしますが、大蔵大臣参議院側から出席を要請されておりますが、ここを退席してよろしゅうございますか。
  163. 川上貫一

    ○川上委員 けっこうです。  日本とソビエトとの国交の回復という問題は、今日国民の最も大きな希望であって、鳩山総理大臣に残されておるわずかばかりの国民の期待は、私はこの一点にかかっておると思う。そこで、この問題についてほんの簡単に質問いたします。政府の方では千島及び樺太の返還ということを交渉の前提条件とする、とこう言われておるようでありますが、返還が実現せぬ限りは国交の回復はしないつもりであるという、こういうお考えであるかどうか、この点を総理大臣にお聞きいたしたい。
  164. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 領土問題の解決交渉の前提条件にすると何かに若いてありましたか。
  165. 川上貫一

    ○川上委員 これは文句の問題は別として、千島、樺太の返還と抑留者の即時無条件釈放ということが交渉の前提である、こういうように政府考えておると考えておりますが、もしそうでないというのであるならば、そうでないということをはっきり言っていただきたい。
  166. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ソ連との国交関係の正常化をしたいというのは、戦争前の状態に日本とソ連との関係を持っていきたいというのでありますから、領土問題のように、日本の領土であったところを戦争の結果ソ連が占領しているというようなことは、やはり正常化するのには解決をしなくてはならない問題だと思っておるのであります。それですから、正常の関係にするのには、いろいろの懸案を解決しつつ正常化に努力したいと思っておるのでありまして、領土問題が解決しなければ正常化の交渉に入らないという意味ではありません。それに反して、抑留者の帰還問題あるいは戦犯の釈放問題は、大してむずかしい問題ではなく、それらこれらの問題は、すでに帰すというようなことが世界的の世論でありますから、ソ連もこれには承諾するものと私は今日なお考えておるのであります。それですから、この抑留者の帰還問題については、交渉に入る前にこの問題だけは解決してもらいたいという態度で松本全権に訓令をしておる次第であります。
  167. 川上貫一

    ○川上委員 そうすれば、こう理解してよろしゅうございますか。抑留者の問題については、交渉に入る前に解決をすることを望む、領土の問題については、交渉の前提の条件ではない、言いかえれば、領土の問題は片づかぬでも国交の回復はしたい、こう解釈してよろしゅうございますか。
  168. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 そういうように窮屈に解釈しないで、私の言った通りにあなたは了解して下さい。
  169. 川上貫一

    ○川上委員 言った通りはそうなんです。
  170. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 いや、後段はあなたのっけた話でありまして、領土の問題が解決しなくて国交は正常化せられたるも一のと私は思われないのであります。国交を正常化するのには、戦争の起る前のような状態にしたいというのですから、戦争によって生じたる占領地は戦前の状態に返してもらいたいという努力をするのは当りまえだと思います。
  171. 川上貫一

    ○川上委員 どうもあいまいでわからぬです。もう少しはっきり言うて下さい。領土の問題が片づかなければ国交の回復はできないと考えておるのかどうかということなのです。言いかえれば、樺太、千島、これが日本に返還されないようなことじゃ国交の回復はできぬのじゃ、とこういうのかいわぬのかというのです。
  172. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私の説明によって了解をしていただきたいと思います。
  173. 川上貫一

    ○川上委員 その説明がわからない。この千島、樺太の返還を前提条件としておるということは、今そう考えておるということは、多くの人がこれを心配しておるのです。また実際そう思うているのです。今総理大臣が私の質問に対してはっきりとした答弁をなさらぬというところにこの問題がやっぱりあるのです。  そこで承わりますが、ポツダム宣言というのは四大国一致の原則に立ったもので、ソビエト同盟抜きのサンフランシスコ条約でソビエトがポツダム宣言に基く権利を放棄したものでないということは明らかだと思うのです。ところがポツダム宣言によると、日本の国が力ずくで、強欲で取り上げた他国の領土はこれを返還するということになっておるのです。そうすると、南樺太という問題は、これはもうポツダム宣言でもとの国に返還するという、こういうことになっておるのですが、今度の交渉の基本的態度はポツダム宣言によるのではないのかどうか、この点をお伺いいたします。
  174. 重光葵

    重光国務大臣 その点は、交渉の題目になる、だろうと考えております。
  175. 川上貫一

    ○川上委員 それは答弁にならぬのです。ポツダム宣言をもとにして交渉する態度であるか、ポツダム宣言をじゅうりんして交渉する態度であるかという点を聞いておるのです。
  176. 重光葵

    重光国務大臣 ポツダム宣言はむろん尊重しなければならぬと思っております。
  177. 川上貫一

    ○川上委員 ポツダム宣言には、強欲に力ずくで外国から取り上げた領土はこれを日本から切り離して返すとなっておるのです。きまってあるのです。南樺太はこうなっておるのに、これを交渉の中で解決しなければ国交の回復はうまくいかぬ、これはどういうことになるのです。
  178. 重光葵

    重光国務大臣 南樺太に対してポツダム宣言の解釈が、今あなたの言われるように、そしてまた共産ソビエトの言われるように、その解釈すべきであるかどうかということは、これは交渉の題目になるだろうと思います。
  179. 川上貫一

    ○川上委員 交渉の題目じゃない、そうしたら、日本政府は、ソビエト同盟はポツダム宣言を日本が受諾した、この問題について、それに対するソビエト同盟の主張の権利は放棄しておるのだ、こういう御解釈になるのでありますか。
  180. 重光葵

    重光国務大臣 ポツダム宣言の解釈いかんの問題が交渉の題目になると私は申し上げております。
  181. 川上貫一

    ○川上委員 それは私は口ではいろいろ言われても、ぶちこわしの態度だと思う。総理大臣も本委員会で繰り返して、千島と樺太の場合は、歯舞、色丹とは違うのであって、困難な問題で、現に日本はサンフランシスコ条約では、領土権を放棄しておるんだ、それだから尋常一様にはいけない、こう言うておられるのです。外務大臣もそれに同じような意見であったのであります。ところが最近になると、きょうの御答弁でも、千島、横太の問題というのが、日ソ交渉の基本的な問題のような格好になっておることが明らかだ。これはどうしてもポツダム宣言というものを、日本政府考えでは否定してかかっておると解釈せざるを得ない。サンフランシスコ条約はあれは何によって結んだのですか、これはどういうことでありますか。
  182. 重光葵

    重光国務大臣 ポツダム宣言に対する考え方は先ほど中した通りであります。  それからまた領土問題に対する考え方は、過去における鳩山総理の言明も、私の説明も、その通りにお考え下さって差しつかえございません。今日の説明もその通りであります。しかし具体的の領土問題について、今交渉の途中におるのでありますから、ここで私これ以上申し上げることを差し控えます。
  183. 川上貫一

    ○川上委員 私はこの交渉に水をさすのではないので、実は国民が心配しておりますから、それを聞いておるのです。サンフランシスコ条約は、これがポツダム宣言に基いて締結をしたと政府はずっと言うてきておられる。その条約には千島、樺太は放棄するとちゃんときまっている。ところがこの千島、樺太の問題を交渉の中心に置いておるのです。そうなりますと、いろいろ政府はいわれますけれども、サンフランシスコ条約をきめたのも、これはポッダム宣言に基いたもの、このものをもう一ぺん蒸し返して、ソビエト同盟との国交回復にはこれが片づかなければ戦争前の状態にならぬのだから、国交の回復はできぬのたというような御答弁、これではポツダム宣言をじゅうりんするばかりでなしに、サンフランシスコ条約に違反する。アメリカ、イギリスはこれを放棄したという、こういう条約に日本は調印しておる、こうなっておる。ところが今度の交渉ではこれを返せという要求が出ておる、この関係は一体どうなるのか、総理大臣にお聞きしたい。
  184. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 外務大臣から答弁いたします。
  185. 重光葵

    重光国務大臣 今のお話は、川上さんがソ連の利益代表としてお話があるような気がしますが、サンフランシスコ条約は調印をいたしました。日本が調印をいたしました。これは守らなければなりません。しかしながらサンフラシスコ条約は、ソ連は――あなたの言われるソ同盟でありますか、それはサンフランシスコ条約を調印いたしておりません。でありますから、サンフランシスコ条約を日本に対して利用することはこれはできぬ筋合いだと思っております。しかしそれは条約に調印しなくても主張はありましょう。これが交渉の題目であります。その交渉の題目になっておる問題について、私は今ここに私の意見、もしくは政府の方針を申し述べることはできない、こう考えております。
  186. 川上貫一

    ○川上委員 交渉の過程とか交渉の題目とかいうものではなくて、交渉の前提なのです。政府の態度が問題なのです、ポッダム宣言を踏みにじってかかっておるようなことをやったのでは、できる交渉ができないのです。これを心配しておるのです。できそうな国交回復をわざわざぶちこわす方向をとりつつあるということを国民は心配しておるのであります。ソビエト同盟がこのサンフランシスコ条約には加わっておるとかおらぬとか、そこにポツダム宣言に対するところの、ソビエトの権利があるとかないとかいう考え方が政府にあるのだと思いますけれども、今度のオーストリアの国家条約を見ればわかります。この国家条約の第一条には、四大国一致の原則によらぬ平和の取りきめは、ポツダム宣言に違反することを認めておるのです。同時にこの第十一条では、日本のことを書いてある。日本については今までの条約も今後の条約も、四大国一致の取りきめ以外のものは、一切認めないと書いてある。これはアメリカははんこを押しておるのです。オーストリア国家条約にアメリカは調印しておる。これが今度のオーストリアの国家条約なのです。明かなのです。ソビエト同盟はサンフランシスコ条約いかんにかかわらず、ポツダム宣言に対する権利があり、日本はポツダム宣言を守る義務があるのです。だからサンフランシスコ条約では、千島、樺太は放棄してあるのです。これを今度の交渉でまた持ち出してきて、ソビエトがこれに応じなかったので、だからこの交渉は破れたのだというところに持っていこうとする魂胆があるのだと国民が言うたときに、政府答弁のしょうがないだろう。鳩山総理大臣は非常に熱意を持って、この交渉を進めておるといわれますけれども、このようなことをやっておられたら、幾ら熱意を持っておられましても、これはぶちこわしなのです。こういうことをどうしてなさるか。  時間がありませんからついでに青いますが、去る十四日の第三次交渉で、内容は公表しないということを相互に約束されておるにもかかわらず、十五日の夜には、外務大臣は丸ノ内ホテルに各新聞社の編集長をわざわざ呼んで、閣議にもまだ諮らぬうちに、この内容を発表して、現地の日本代表を困惑させ、ある新聞の記事によると、現地からは抗議生言おうかという、こういう記事が出ておる。これは実際外交上の不信義はもちろんでありますけれども、わざわざ交渉をぶちこわす態度たと私は思う。鳩山総理大臣はこれでいいのですか。私は重光外務大臣が、このような態度々とられるのが鳩山総理大臣と打ち合せの上かどうかは知りません。知りませんけれども、閣議を開いたのはその発表の翌日なのです。私は鳩山総理大臣が、ほんとうにこの日本とソビエトとの国交を回復するということに黙想があるのなら、外務大臣にこのような態度をとらしてはならぬと思う。なぜポツダム宣言にこれをちゃんときめてあるにもかかわらず、これを前提条件にしたり、領土の問題が片づかなければ、国交のほんとうの回復はできないといったり、どうしてそんならサンフランシスコ条約の時分に、これを放棄するというのにはんこを押したのですか。理路整然としているのです。私はあえて言いますか、領土の問題については、日本はくちばしを出すことは要らぬというようなことを言うておるのではありません。そんなことを言うておるのではない。手島を戻してもらいたいというのは国民の希望でしょう。しかしほんとうに日ソの国交をりっぱにやり、この国交を回復して、世界の平和を保とうとするならば、一ぺん国際的にきまっておるものを持ち出して、それを前提条件とするというような無法きわまる態度は、ぶちこわしの態度であり、責任を他に転嫁する態度である。ほんとうに鳩山総理大臣は、日ソの国交回復をやる熱意があるのかど、うなのかということを、国民から疑われても何とも申しようはないだろうと私は思う。こういう点について総理大臣はどうお考えになりますか。総理大臣に承わりたい。
  187. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は日ソの国交調整をしたいという熱意は持っております。これを不調に終らすためにたくらみをしているというようなことは絶対ありません。そういうことはできません。
  188. 川上貫一

    ○川上委員 外務大臣はよろしい、けっこうです。
  189. 三浦一雄

    三浦委員長 川上さん、約束の時間が迫っておりますから、一つあと一問にお願いします。
  190. 川上貫一

    ○川上委員 総理大臣は実際口の先でそう言うておられるけれども、ほんとうに考えてみる必要があると私は思うのです。国会でいいかげんに言い抜けをすることはできましょう。しかし問題はそこにあるのではありません。ほんとうに日本国民とソビエト同盟その他の国民とが手を握ることができるような国交の回復を希望しておるのです。これが問題なのです。国会の言い抜けなどはどっちだっていいのです。これに対して政府の今のような答弁では、決して熱意があるものとは思わぬ。と同時に鳩山総理大臣はどこからかちいとやられておるのと違いますか、あるいは内閣に不統一があるのと違いますか。あるいは保守合同の一つの問題として、どこからかえらく突っぱりを食って、従来通り鳩山さんの考えがいけなくなりおるのと違いますか。またあるいは某外国からいろいろなさしがねがあって、鳩山さんが前に考えられたようなことがいけなくなりおるのじゃないですか。これを国民は心配しておるのです。私はこれを聞いておるのです。時間がありませんから長く私は言いませんけれども、私は質問をして政府を困らせるというようなことを快しとしておるのじゃありません。国民がこれは本気になっておるのです。その本気になっておるのに、政府のやり方を見ておると、責任をソビエトに転嫁し、国民をもう一ぺん欺こうとするような態度がありありと見えるのです。この点について私は、時間がありませんから、政府の反省を促し、鳩山総理大臣がわずかに残されて、おる旧民の期待に真剣になって報いられることを希望して、私の質問をやめます。
  191. 三浦一雄

    三浦委員長 本日はこの程度にいたしまして、次会は明二十二日午後二時より開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時一一分散会