○武藤
委員 ただいま問題になっておりますのは、
フィリピンを対象とする
賠償問題でございますけれども、そうしてそれが八億ドルでやれるかやれないかというふうな議論でございますが、これは先般
解決をしましたビルマに対する
賠償問題等々と関連をいたしまして、
日本の
政府の
賠償、問題に対する政策の現われた
一つの現象だと思うのであります。私は、そういうことも非常に重要でございますけれども、この際われわれ
国会としても
賠償という問題と現実に取り組む場合におきまして、
政府はこの
賠償問題というものに対しては、いかなる基本的な態度を持っておるのかということを、この際明らかに伺っておきたいと思うのであります。
第一には、一体
日本の
賠償能力というものは、先ほども
質問がございましたけれども、どのくらいあるのか、そうしてどのくらいの額に達するのか、それから一年間に支
払い得る
能力というものはどのくらいあるのかということを第一に伺いたい。
第二には、
フィリピン、インドネシア、ビルマ、仏印などが
賠償すべき国として
考えられておるのでありますけれども、これらの国に対する比率、どこの国には幾ら払うのだというその割合につきまして、
政府はいかなる
考え方を持っておるかということを伺いたい。
第二には、サンフランシスコ講話条約第十四条(a)によりまして、これらの
日本のなすべき
賠償というものは役務ですべきである、サービスによるべきものだということを規定をしておるのでありますけれども、今度伝えられるところの
フィリピンの
賠償案の中には二千万ドルの現金を払うということがあるようでございますが、この
賠償すべきものについての
政府の
考え方はどうであるかということを伺いたい。
第四には、
賠償と非常に密接な
関係がありますのは東南アジア諸国との国交の回復、貿易、
経済協力などの問題だと思うのでございますけれども、これらの関連について
政府はいかなる
考えふ方を持っておられるか。こういうことを順次にお尋ねをしたいと思うのであります。
第一の、
日本の
賠償能力の問題でございますけれども、
賠償をなすべき相手の国というものはきまっておる。これはもうさっき申しましたように
フィリピン、インドネシア、ビルマ、仏印などでございまして、ほかにはそう今のところはないわけでございます。従いまして
日本とすればそういう予想される相手国に対して
賠償をしなければならない。それには幾らの
賠償を予定しなければならないかというふうなことを
考えなければなりません。ことに経審当局におきましては、
経済六カ年計画というものがすでに組まれております。それから
国民所得の見通しというものもきまっておるわけであります。そうしますれば、先ほど大蔵
大臣は
賠償し得る
能力、支払える
金額について、はっきり申し上げることば適当でないというような
趣旨の御
答弁があったようでありますけれども、私はそんなことはないと思う。当然これは相手がきまっておるのだし、
賠償しなければならぬことも明らかなのだし、
日本の
経済の実情というものも、
責任当局として
向う五年間、六年間の見通しがつかないはずはないのでありますからして、これはどうしても
賠償の予定額、一年に支
払い得るところの
金額というものは
考えられておるはずでありますし、当然
考えなければならぬと思うのでありますけれども、これについての確固たる見通し、信念を伺いたいと思うのであります。それが今まで欠けておったために、こういう
フィリピンのごとき醜態な問題を起すことになると思うのです。たとえばこれは前の
内閣でありますけれども、岡崎
外務大臣が二十八年の秋に東南アジア
方面に行かれたときに持って行った案を聞いてみますと、
フィリピンについてはほぼ二億五千万ドル、その後三億ドルということになったようでありますけれども、そんなものである。ところが
大野・
ガルシア協定によりますと、四億ドルということになり、突如として今度は
鳩山蔵相が言われたとか言われなかったとかいっておりますけれども、八億ドルという案が出てきておる。このように二億五千万ドルから八億ドルになっていくということは、全く
政府が今まで
賠償問題に対する定見を持っておらなかったというところに帰着するであろうと思うのであります。われわれは前に思いつき外交あるいはそのつど外交というものを反対しておったのでありますけれども、
鳩山内閣も同じくこの思いつき外交、そのつど外交というものを引ぎ継いでおるような形にわれわれは
考えざるを得ないのであります。そうなりますと、今度は相手国というものからもかなえの軽重を問われまして、強いものが勝ちである、早いものが勝ちである、がんばるものがよけいとる、黙っておるものは少ししかとれないというようになって、国交にも非常に影響すると思うのであります。こういうふうに
考えてみますと、
日本の国の
責任者として
日本の
賠償能力はどのくらいである、一年に支
払い得る
金額は何ほどであるかということについては当然わかっておらなければならぬと思うのであります。議会に
説明する義務があると思うのであります。これは
予算委員会としては特に伺っておきたいと思いますからして、先ほどのような寝ぼけた
答弁ではなくして、はっきりした
答弁を承わりたいと思うのであります。これは
鳩山首相、
経審長官、それから一萬田大蔵
大臣、それぞれ述べていただきたいと思います。
〔
委員長退席、中曽根
委員長代理着席〕