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1955-06-07 第22回国会 衆議院 予算委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年六月七日(火曜日)     午前十時十七分開議  出席委員    委員長 牧野 良三君    理事 上林山榮吉君 理事 重政 誠之君    理事 中曽根康弘君 理事 小坂善太郎君    理事 西村 直己君 理事 赤松  勇君    理事 今澄  勇者       赤城 宗徳君    井出一太郎君       稻葉  修君    宇都宮徳馬君       北村徳太郎君    小枝 一雄君       河本 敏夫君    纐纈 彌三君       高村 坂彦君    楢橋  渡君       福田 赳夫君    藤本 捨助君       古井 喜實君    松浦周太郎君       三浦 一雄君    三田村武夫君       村松 久義君    相川 勝六君       植木庚子郎君    太田 正孝君       北澤 直吉君    倉石 忠雄君       周東 英雄君    田中伊三次君       野田 卯一君    橋本 龍伍君       平野 三朗君    前尾繁三郎君       阿部 五郎君    伊藤 好道君       石村 英雄君    久保田鶴松君       志村 茂治君    田中織之進君       田中 稔男君    福田 昌子君       武藤運十郎君    柳田 秀一君       井堀 繁雄君    岡  良一君       小平  忠君    杉村沖治郎君       中井徳次郎君    西村 榮一君       川上 貫一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  鳩山 一郎君         法 務 大 臣 花村 四郎君         外 務 大 臣 重光  葵君         大 蔵 大 臣 一萬田尚登君         文 部 大 臣 松村 謙三君         厚 生 大 臣 川崎 秀二君         農 林 大 臣 河野 一郎君         通商産業大臣  石橋 湛山君         運 輸 大 臣 三木 武夫君         郵 政 大 臣 松田竹千代君         労 働 大 臣 西田 隆男君         建 設 大 臣 竹山祐太郎君         国 務 大 臣 大麻 唯男君        国 務 大 臣 大久保留次郎君         国 務 大 臣 川島正次郎君         国 務 大 臣 杉原 荒太君         国 務 大 臣 高碕達之助君  出席政府委員         内閣官房長官  根本龍太郎君         内閣官房長官 松本 瀧蔵君         内閣官房長官 田中 榮一君         法制局長官   林  修三君         大蔵事務官         (主計局長)  森永貞一郎君  委員外出席者         国民金融公庫総         裁       櫛田 光男君         農林漁業金融公         庫総裁     山添 利作君         中小企業金融公         庫総裁     坂口 芳久君         専  門  員 小林幾次郎君         専  門  員 園山 芳造君         専  門  員 小竹 豊治君     ――――――――――――― 六月七日  委員高村坂彦君山本勝市君、北澤直吉君、石  村英雄君及び志村茂治辞任につき、その補欠  として、北村徳太郎君、井出一太郎君、田中伊  三次君、福田昌子君及び原茂君が議長の指名で  委員に選任された。 同 日  委員古井喜實君及び田中伊三次君辞任につき、  その補欠として高村坂彦君及び北澤直吉君が議  長の指名委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和三十年度一般会計予算  昭和三十年度特別会計予算  昭和三十年度政府関係機関予算     ―――――――――――――
  2. 牧野良三

    牧野委員長 これより会議を開きます。  昭和三十年度一般会計予算外二案を一括して議題といたします。質疑を継続いたします。  この際、赤松勇君より議事進行に関して発言を求めておられます。これをお許しします。赤松勇君。
  3. 赤松勇

    赤松委員 昨日、本委員会理事会におきましては、予算案審議につきまして、それぞれ総括質問をば行い、その総括質問が終了した後、民自両党の共同修正案の動議の提出があり、これに対する質疑を行い、しこうして質疑終了後、社会党両派提出共同組替案及び政府提出予算原案に対する討論、採決をば本日行い、本日の本会議にこれを上程する、こういうように理事会におきましては申し合せをいたしまして、私ども鋭意予算審議に当って参りました。しかるに、午後一時五十分本委員会をば再開する委員長の宣告によりまして、暫時休憩をいたしまして一時五十分の再開をば待っていたのでございます。しかしながら、委員会は二時五十分になりましても開会に至らない。そこで両派社会党理事は、与党理事に対しまして遅延している理由をば問いただしたのでございます。しかるところ、開会遅延理由は、参議院の本会議総理以下各閣僚が呼ばれておるために委員会再開は不可能である、そして本会議終了後、午後四時あるいは五時ごろ再開さしてもらえないかという申し入れがございました。このことは、不測の事態が起きますることは、議会運営におきましては間々あることでございます。ことに参議院重要法案につきまして、当然総理以下各閣僚出席を要求することは何人も予測できることなのです。それならば、何ゆえ午前の理事会におきまして、政府与党理事を通じまして私どもにその了解を得なかったのであるか。なぜ参議院の本会議出席をも予想しそれを織り込んで日程をば組まなかったのであるか。はなはだ遺憾に存じます。昨日理事会の申し合せ通り本委員会審議が進み得なかったということは、あげてその責任政府にある、また与党諸君にある、こういうふうに言わざるを得ないのでございます。今後この重要な予算審議に際しまして、かかる事柄が再度起きるといたしますならば、私ども理事といたしましては理事会における申し合せに対しまして、これを厳守するわけには参りません。これは本委員会運営上まことに重大な問題でございまして、この際私より政府の所信をお伺いしておきたい、こう思うのでございます。
  4. 根本龍太郎

    根本政府委員 昨日参議院におきまして本会議総理出席を求められまして、総理出席できない限りにおいては本会議は開かれない、こういうことでございました。たまたま予算委員会休憩時間になりましたので、参議院の本会議出席いたすことになったのでございます。しかるところ、参議院の本会議は約二時間近くかかりましたために、途中で退席することがどうしても向うの方で許されないので、やむを得ず総理出席がおくれた次第でございます。まことにこの点は遺憾にたえない次第でございます。総理大臣を同時に一方は本会議に一方は重要なる予算委員会出席を求められました。しかも参議院においては、出席をしない限りにおいては参議院を無視しておる、軽視しておるということで詰め寄られました関係上、また理屈のあることでもございましたので、いろいろとお願いしたけれども、ついにこのような状況になりました。まことに予算委員会の皆様に対しては申しわけなく存じていまするが、事態そのような状況でありますので、了承していただきたいと存ずる次第であります。
  5. 赤松勇

    赤松委員 官房長官ちょっと待って下さい。――ただいま遺憾の意を表されましたが、昨日はわが党の議員諸君もやはり質問に立っておるのでございます。参議院運営につきましてもこれは重大な関係がございますから一言お尋ねしておきますが、はなはだ遺憾であるという意味は、参議院が、衆議院予算委員会がいよいよ最終段階審議過程にあるにもかかわらず、総理以下の出席を要求したことが遺憾であるというのか、あるいは昨日の午前の理事会にあらかじめそういうことを予想して、与党理事を通じて私ども了解工作をば行わなかったという政府手落ちについて遺憾だ、こうおっしゃるのか、その点を明確にしていただきたいと思います。
  6. 根本龍太郎

    根本政府委員 もとよりこれは両院の日程が当初、午前中は参議院において、午後においてはこちらというふうに総理も心づもりしておられたようでありますが、その間私の方の連絡が手落ちがありました結果、参議院にも衆議院予算委員会にも大へん御迷惑をかけたことについて、遺憾の意を表する次第でございます。
  7. 赤松勇

    赤松委員 よくわかりました。再度かかることの起きないように今後一つ政府におかれましては十分注意をしていただきたいと思います。
  8. 根本龍太郎

    根本政府委員 十分注意いたします。
  9. 牧野良三

    牧野委員長 まことにつらいことでございます。(笑声)――田中織之進君。
  10. 田中織之進

    田中(織)委員 昭和三十年度の本予算案審議も非常に大詰めになって参りましたが、民主党と自由党のいわゆる予算折衝なるものが妥結したようでございまして、総理初め閣僚諸君はほっと一息したような、多少気のゆるんだような状況が見受けられるのであります。この予算政府原案はもちろんのことでございますが、特に今回妥結したといわれる民自両党の予算折衝の結果でき上ったいわゆる修正案なるものは、金額はさほど大しはものとはわれわれ考えませんけれども、その内容においてきわめて重大な問題を含んでおると考えるのであります。しかもこれは当面の昭和三十年度予算案及びその執行の過程における問題よりも、明年度以降にわたる日本経済にとってきわめて重大な問題を含んでおると思いますので、私は政府原案並びにこの予算修正案なるもの、両方を通じて見ました重要な問題について、総理以下の閣僚にお伺いをいたしたいと思うのであります。  まず今回の民自両党の共同修正案でございますが、この総括質問が終ったあと修正案が提示せられ、それに対する細部にわたる質問は、同僚の石村委員よりあらためて伺うことにいたしますが、私はこの修正案に含まれておるきわめて重要な問題に限って特に総理の御所見を伺いたいのであります。  そこでまず共同修正案の中心を見て参りますと、二百十五億に上る修正の主たる財源は、政府資金引き受け予定金融債百四十二億円を市中金融肩がわりしたことにあると思います。つまり一般会計から政府資金、さらにそれが金融債市中消化へとしわ寄せをされたことでございますが、果してこれだけの百四十二億の金融債市中消化ができるかどうかということが、当面の課題として考えなければならぬ問題でございます。私がこれを申し上げるのは、当面の問題としてこれが消化できるかどうかという問題を越えた重大な問題を含んでいるからだと思うのであります。つまり自由党最初の案は、一般会計からの財政投融資公債発行に振り向けるということにあったようでありますが、それを名目上の金融債市中消化ということに変更してきたのでありますけれども金融債市中消化ということでありますが、金融債定義も明確でないばかりでなくて、これが実際の経済機構の上から申しますならば、私はいわゆる赤字公債発行について端緒を開いたものだと見受けるのであります。これがきわめて重大だと申し上げておるのであります。従ってそれに対する政治的な影響はきわめて重大だと思うのであります。この内閣の公約でありました、公債発行しないという最大の財政金融政策の基本的なものが、政府がこの修正をのんだことによってくずれてきた、かように断ずるものでございますが、まず今回のこの金融債市中消化への肩がわりの問題を経済的に見ました場合に、公債から特殊金融債への発展が、特殊金融債ではこれは消化し切れない、結局一般金融債になるだろうと思うのであります。そうなりますと、まず第一に一般金融債でありますと、商業ベースで参りますから金利が高くなる。その面から果してこれだけの消化が可能かどうか、これは大蔵大臣から一つお答えを願いたい。  それから百四十二億円もの市中消化関係からいたしまして、いわゆる勧銀なり、興銀債への圧迫が加わると思うのでありますが、その点については大蔵大臣はどう見るか。  それから次にいわゆる政府原案国鉄に対して百五十五億の政府貸付を計上いたしておったのが、今回の妥協案によりまして四十五億を天引きされた。これはそのかわりに鉄道公債発行することになったのでありますが、御承知のように、昨年度においても鉄道公債消化されていないのであります。果して新たに追加されることになりました四十五億の国鉄公債が、市中銀行の協力によって消化し得るかどうかということに多大の疑問を持つのであります。洞爺丸事件あるいは紫雲丸事件などの多くの重大問題を起した国鉄が、さらに消化の困難な見通ししか持てないところの公債を増発するということは、私はきわめて無謀なやり方だと思うのであります。従いまして、まず第一に今回の修正の、純経済的に見ました以上三点について、大蔵大臣の御所見を伺いたいのであります。
  11. 牧野良三

    牧野委員長 田中君に申し上げます。総理答弁はすわったままお許し下さい。
  12. 田中織之進

    田中(織)委員 けっこうです。
  13. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答え申し上げます。この問題は、三十年度以降において民間資金がいかに蓄積されるかということが基本になるのであります。今回民間資本蓄積についてはあらゆる手を打っております。たとえば預貯金利子についても税を全免するというような形をもとっております。こういうことによりましても、通常とは違って相当大きな資金蓄積ができることは、当然予想されることであります。なおまた資金需給関係から見まして、デフレの一年半経過後の今日におきましては、財政の基盤がよほど固まってきておりまして、たとえて申しますれば、昨年度におきまして銀行預金の増加が約四千億円ありましたのが、貸し出しは二千億程度にとどまっておる。こういうような点も、資金需給関係がよほど堅実性を持っておるといいますか、そういうふうに打っておる。ただ私は従来こういう情勢は十分認識しておったのでありますが、なおこの勢いをもう少し強くしたい。その上でいろいろと民間資金の利用を考える。これは特に金融機関等自主性を尊重してやる上から、さようにした方がよいと考えておったのであります。今回はこの資金についても、もちろん自主性を尊重いたしますが、同時に必要な場合においては、所要の措置をとる法案提出されまして、資金流れも十分に規制するようなことになっておる。考え方として、経済的な資金民間蓄積資金でまかなわれるということは、原則としてだれもが異論がないだろうと思います。ただ問題は、時期とやり方方法論においていろいろと見解があるというのであります。時期については若干の見解がありますが、しかし他面において、必要があれば資金流れについて規制し得るという準備が整っているという見地におきまして、今回の共同一般会計からの出資をやめて金融債にする、あるいは預金部資金から抜いて一般公募に充てることについては、確信を持ってやれるというように考えておるのであります。従いまして時に興業銀行あるいは長期信用銀行等における債権発行を圧迫するということはない。  それから鉄道公債については、主として鉄道建設資金に使われる。もしもこの資金の調達ができないということになりますれば、建設事業支障を来たすおそれがある。従いましてこれは起債の場合において優先的に取り扱っていきたいと考えておる。ただ御指摘の金利の点は、私も一般公募債については別に異論はありませんが、政府関係機関等債券、あるいは預金部からの金とそうでないものとは、金利の点において不利な点があるということは率直に認められる。ただ特にこのために金利が上ることはない。今日の銀行等準備金その他の情勢からも、今日金利を下げることを進めておるのであります。下げることに若干の支障があろうかと思いますが、あとのことはなくて済む、かように考えておる次第であります。
  14. 田中織之進

    田中(織)委員 今度の民自両党の予算修正の額は、最初に私が申し上げましたように、われわれはこれは大した額ではないと見ております。それからまた、これだけの百四十二億の金融債市中消化の問題については、ただいま大蔵大臣が述べられたように、最近の貯蓄増強の傾向、さらに今回の政府預金利子に対する免税措置等関係から見て、市中銀行に相当の資金が集まるであろうから、勢いそれによって十分こなし得るだろう、こういう見方については私もあえてこれを否定するものではないのであります。その意味から見て、今回の修正について、さもこれ自体が相当なインフレ要因であるかのごとく一部の財界方面で騒いでおることについては、純経済的なまた財政的な関係から見ますならば、私はこれはちょっと当らないと見ておる。しかし問題はここにひそんでおるところの金融債のいわゆる市中金融引き受けという形で実質的に公債発行への窓口を開いたということが、私は非常に重要な問題だと思うのであります。果してそれでは、大蔵大臣は今回のこの民自両党の予算修正で、当初の自由党公債発行が、もちろん大蔵大臣、特に鳩山総理の相当頑強な反対によって、表面は金融債の一部市中銀行引き受けという形に変化しておりますけれども、われわれの見るところでは、これは将来への、しかもこれはそう遠い将来ではなくて、私がこれから申し上げますように、明年に控えておるところの公債発行のためにすでに外堀が埋められたのだ、私はこういうように見ておるのでありますが、この点に対する大蔵大臣の御所見を伺いたいのであります。
  15. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答え申しますが、予算の上に歳入の欠陥を補てんする意味において公債発行することは考えておりません。そういうことは私はあり得ないと思っております。ただ御心配下さっておる点は、金融債といううちに開発銀行債または輸出入銀行債等政府機関債券発行いたしまして、そうしてこの面からそういうことをやれば、結局公債発行するのと同じじゃないか、こういうふうなお考えかと思うのでありますが、今日開銀債あるいは輸銀債を今発行することは考えておりません。金融債と申しますのは一般金融債興業銀行債券並びに長期信用銀行債その他農中、こういうふうなごく民間機関、こういうことに御了承を願いたい。なお公債の問題――財政における公債との関係、いわゆる財源としての公債、これは私はいろいろ考えております。公債財源によることが常に不当であるとも私は考えておりません。それは今日の税というものが国民負担関係において重いか軽いかということも十分考えてみなくてはならぬと私は思う。そういう場合において民間に十分な資本蓄積ができて、十分に公募が可能であるというような場合において、なおそれを放置しておいてそして税金々々ということが果していいかどうか、私はこれはやはり検討の余地があると思うのでありまして、そういう意味において私は必ずしも公債発行を否定するものではありません。がしかし今三十年度等において公債発行ということはないということだけは申し上げておきます。
  16. 田中織之進

    田中(織)委員 大蔵大臣はやはり語るに落ちておる。それはなぜかというと、私はもちろん今回の民自両党の共同修正案における市中銀行引き受け金融債というものの定義が明確でないということを先ほど申し述べましたが、その中に今はっきりと、これは興銀債あるいは長期信用銀行債で、いわゆる民間のそれであって、開銀債であるとかあるいは輸出入銀行債であるというような、公債に準ずるような政府機関関係債券というものは今のところ発行する考えはない、こういうことでありますが、別途そうした計画が進められておることは、これは私いなめない事実だと思うのであります。そういう意味で、ただいまの大蔵大臣答弁によって、これが単なるそういう興銀債であるとか、あるいは長期信用債というような一般金融債ではなしに、準公債的な開発債あるいは輸出入銀行債というものについてすでに発展していくということを、大蔵大臣のただいまの答弁自体においてこれは物語っておると私は思う。さらに公債発行、ことに財政上の必要のため歳入を補うための公債発行についても、もちろんあなたは前提条件を今述べられましたけれども、少くともわれわれは、日本経済がもっと安定した場合における公債発行というものを今私らは論じておるのではないのです。当面の、少くとも今年なり明年なり、あるいは明後年なり、この両三年を見通し立場における公債発行というものが適当であるかないかという立場に立って問題を取り上げておるのでありまして、その意味から申しまして、少くとも三十年度は、財政上の必要からくる公債発行はやらないけれども、あなたが今述べられたような条件が整うならば、公債発行するということにあながち反対でないような答弁をされておること自体は、やはり今度の修正の問題について、これは後ほど政治的責任の問題としてあなたにもお伺いしたいと考えておるのでありますが、あなたが公債発行しない。少くともこれは今年なり明年における見通しの上に立ってのあなたの従来の言明であるとわれわれは見ておったのでありますが、ただいまの答弁であなたが述べられたような条件になれば、公募が可能であるというようなベースができるならば、財政上の必要から見た公債発行をも、あなたはやるということを述べられたように私は感じたのでありますが、これはそういうように、あなたの従来の公債発行しないという考え方を、一定の、あなたはあなたなりの条件が整えば公債発行するという考え方に変更したことを意味するのですか、いかがですか。
  17. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えを申します。私が申し上げましたことは、三十年度においては公債発行しない。先ほど公債発行について申し上げましたことは、公債発行する場合における条件、経済的並びに財政上の条件について、こういう条件がある場合に、それは見解の相違はありましょうが、それを一がいに排除はできないということを申し上げたのでありまして、私はそういうことをやるという意思を主張したわけではないのでありまして、そういうことも十分考えられるということを申し上げたわけであります。
  18. 田中織之進

    田中(織)委員 どうもその点は、今度の修正を契機として一萬田さんが従来の自説を変更されておるという疑いを多分に持つのであります。  それでは続いて私は今度の修正案の政治的な意義について、私が心配するゆえんを財政上の問題から具体的に申し上げてみましょう。率直に書って、本年度もそうでありますけれども、特に明年度以降においては、日本経済というものは非常に苦しい段階に入ると思うのであります。本年度予算編成に当りましても、すでに歳入、いわゆる租税収入というものは一応限界にきているという点から、あなたがやはり一兆円の線を堅持しなければならぬという予算編成根本的方針をとった点は、私はやはりこうした国民経済、従ってそこからしぼりとるところの租税収入限界というようなものについても、かなりの配慮をされておるというふうに見ておったのでありますが、特に今度の予算を通じて、われわれが今後、少くとも明年度において見通される事態、今年及び明年度へかけて見通される事態として重要な問題は、やはり軍事費に関する問題であります。特にこれは後ほどあらためて私は取り上げたいと考えておりますが、ことしの防衛分担金削減交渉の妥結に伴って発表いたしました共同声明によりまして、防衛庁の関係において予算外契約百五十四億円はいやがおうでも来年度予算に計上しなければならない。さらに防衛分担金については、少くともわれわれがこの共同声明を真正面に受け取る限りにおいては、明年度以降における防衛分担金削減というものはアメリカ側は応じないということを、この共同声明がうたっておるようにわれわれは受け取るのであります。下手をすると、明年度においてアメリカ駐留軍の兵力は減っても、最近のような、特に鳩山内閣のような腰の弱い防衛分掛金の対米交渉では、明年度防衛分担金をさらにアメリカの軍事的要求に従って増額せしめられるかもしれない。この面からくるところの防衛費の増大というものがまず第一に考えられます。  その点に関連して第一には、従来まで多いときには千二百億からありましたところの繰越明許費が、すでに本年度は三百二十七億円に減っております。おそらくこれはことしじゅうに使い果してしまうと私は思うのであります。そういう関係からして、明年度におけるいわゆる防衛庁費というものは、勢い、さきに述べました予算外契約予算に計上するだけの問題ではなくて、従来へ防衛予算の重大な特徴でありましたところの繰越明許費というものがなくなる関係から見て、新規増額というものが私は必至になると見るのであります。  さらに第三には、一台一億円もかかるといわれるジェット機の国内生産の方針を、アメリカとの間で日本政府が承諾しそのためのいろいろな準備を着々進めておるようでありますが、一台一億円もかかるようなきわめて非生産的な設備を、国の責任において日本側が持つということによって、いわゆる非生産的経費の支出の増大ということを考えなければならない。  こういうように大体三つの観点から見て、軍事費が増大する半面に、昨年の特徴でありました西欧諸国における景気の頭打ちの問題、特にポンド圏の輸入抑制が最近強化されてきております。そういうことに伴う貿易の国際競争の激化、さらにこれはあらためて通産大臣にも伺いたいと思っておりますが、中共貿易の問題についても、貿易協定の促進どころか、逆行するような政策をこの政府みずからがとりつつある。たびたびこの委員会で指摘されますように、特需の著しい減少というものが考えられる。こういう観点から見ますならば、昨年度は思う以上の外貨事情にございましたけれども、本年度から昨年度へかけての外貨事情というものは、いよいよ窮屈になって参りまして、現在手持ち九億ドルあるということでございますが、そのうち三億ドルは焦げつきでございます。そうなりますと、これを漸次食いつぶして明年度においては外貨事情というものがきわめて悪くなるということは、これはいなめない事実だと思うのであります。  さらに輸入の抑制の強化、また輸出の下振が続いて参りますれば、デフレ下においてようやく底をついたかの感がありました鉱工業生産が、さらに私は打撃を受けてくると思うのであります。この点から考えますならば、先ほど大臣がきわめて楽観的に述べられました今後における国民所得の増加の問題、まして拡大均衡への発展というようなことは、全く悲観的な見通しに立たざるを得ないと私は思うのであります。そこで、こういう内外の両面から見たところの経済的な困難さに加えまして、現内閣が、やはり自由党の吉田内閣時代と同じような形で、アメリカに要請されるがままに、自衛力漸増と申しますか、防衛力をますます増大する傾向にあり、そうした傾向を受けて、財界や旧右翼勢力、あるいは保守党の中には、最近――総理もその中の一人に入るわけでありますが、昔のような軍備の復活というものに対する考え方が非常に強く出てきておる。これが将来の憲法改正というような問題を契機といたしまして、今後における重大な国民的課題になることは申すまでもないのであります。こういうように見通して参りますならば、結論的に申しますれば、明年度においては軍事費の増大関係から見て、勢い財政上の歳入の不足を補うためには、是が非でも公債というものをその意味発行せざるを得ないような事態に立ち至ると私は考えるのであります。この点について大蔵大臣の一萬田さんのただいまの答弁では、少くとも今年は財政上のそういう関係から公債発行しないということを言明されたのでありますが、私が以上申し述べたような本年の予算執行の過程、また明年度に展望される経済の動きという関係から見て、明年度予算編成に当って公債発行せざるを得ない立場に追い込まれることをあなたは予見しておらないかどうか。私は少くともそういう伏線が今度の修正案に含まれておると見ておるのでありますが、この点に対する大蔵大臣見通しを伺いたいのであります。
  19. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。ただいま御意見を拝聴いたしたのでありますが、今お話の点は、来年度におきまして歳出がふえるであろうとお考えになる点を強調されたようであります。それがまた果して具体的にどういう程度に増額になるか、これは今後に待たねばわかりませんが、しかし他面において、こういう事態においては、私は歳出を減らす方面も考えてみなければならぬと思います。これはやはり今日の行財政の大きな整理をせずしていろいろと論議するのは間違っておる。今までそういうこともほんとうに考えたいと思ったのですが、しかしこれは強い政治力を必要とすると私は考えておるのであります。この強い政治力がありさえすればそういう基本的なことがやれます。私は今日において、公債発行というようなことの予見はいたしておりません。
  20. 田中織之進

    田中(織)委員 大蔵大臣も、私が申し述べましたように、明年度軍事費を中心といたしまして財政需要が増大する傾向を認められておる。しかし増大する反面に、国及び地方財政の両面にわたるところの財政整理と申すか、そういう面で歳出を抑制する面をもあわせて講じたい、そのためには強力なる政治力が要るだろうということを今大蔵大臣が述べられたのでありますが、私が以下これから具体的に本年度予算の締めくくりとして伺いたい点は、どう考えてみても、結局われわれの見るところでは、増大をする軍事費関係というものは、これはこの内閣の力では決してこれを抑制することができないのです。問題のねらいは、結局再軍備計画を少くとも当面日本経済がもっとしっかりとしたものになるまで中止をするか、あるいは現在の駐留軍の防衛費の分担金を思い切って実際に即したように、また行政協定なり安保条約に準拠したように、もっと強くこの経理の内容を突っ込んでいって削減を求めるか以外に、私は歳出を抑制する方法はないと考えるのであります。そこで少くともただいまの大蔵大臣答弁では、明年度において増大するであろう、こうした財政需要の拡大というものに対処するために、積極的に歳入財源を確保するということを、どうも大蔵大臣も持ち合しておらない。そういう関係から見てちょうど戦時中にとったと同じように、軍事費の増大に伴って歳入が予定通りに達しなければ、それはもう国債の増発によってまかなってきたという、戦時的なやり方への復元の線がもう今度の予算修正ではっきりしたのだ、こういうように見ておるのであります。その意味で今度の修正は大局的な見地から見て二百十五億というものは先ほどから申し上げておるように大きな額ではございませんけれども、根本的に今申し上げたような公債政策への窓口を開いた、鳩山内閣にとっては財政政策における大きな後退である。さらに二百十五億でありますが、まさに夜店のバナナのたたき売りみたいな形で、自由党が当初要求して参りました四百三十億の歳出増加を腰だめで――新聞のすべての論調がそういうように書いているように、腰だめでその半分の二百十五億に増額をちょん切って、それを両党から出た折衝委員で何に幾ら何に幾らというような形で分け合うたような、こういう予算修正である。これはもちろん政府は最後まで頑強に反対した事情というものを私は認めますけれども、きのうの閣僚懇談会でこの修正をのむということにきめたということは、これは嶋山内閣にとって重大な私は責任問題だと思う。本年度予算編成に当って、過ぐる選挙の結果百八十五名の少数与党で第二次鳩山内閣鳩山さんがお作りになった。その内閣責任において、予算の事前折衝もやらずに国会に出した以上、政府が最良と考えたところの予算原案が国会を通過することができなければ、この折衝の過程にちらほら新聞にも出たように、あなたはじゃあ内閣をやめるか、信を国民に問う意味で国会を解散するか、堂々と私は所信に向って邁進すべきであったと思う。ところが何かそういうことについてはまるっきり国民の前に事情が明らかにならないままに、どたんばになってこの三百十五億の修正、しかも将来軍事費の増大のためには公債政策をとるという窓口を開くような、重大な修正の前に鳩山内閣が後退したことに対して、総理大臣としていかなる政治的責任をとられるか、この際明確に総理の御所信を伺いたいのであります。
  21. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 このたびの修正は私は原案の精神がくつがえされたとは思いません。政局の大局から見てやむを得ざる修正だと考えております。責任をとる程度のものではないと思っております。
  22. 田中織之進

    田中(織)委員 原案の趣旨をそこねたものではない。その意味において政局の情勢から見てやむを得ないものである、こういうように総理はお考えになっている旨を答弁されたのでありますが、今度の修正によって、いわゆる財政投融資が拡大されたことによって、一部の産業資本家はなるほど喜んでいます。しかしそれ以外の財界、特に金融界の多くの人たち、これはインフレへ転化していくのではないかという将来への懸念を持っております。それから中小企業あるいは農村、一般勤労者というものは、これまたやはり今度の修正によるところのしわ寄せを自分たち大衆が受けるのだ、こういう考え方から見て、ほんとうに財政投融資の拡大によって潤う一部産業資本家を除いた一般国民はあげて今度の修正に――民自両党の妥協というものは、今総理は政局上やむを得ないということでありますが、政局の安定上やむを得ないということは一体どういう意味ですか。これは後ほど大蔵大臣にも伺いたいと思ったのでありますが、最後にこの修正案をのむのに当って、一萬田さんはこれが保守合同の前提条件になるならばこの修正をのまざるを得ないと言われたという。あなたたちは国民全体をひっくるめた日本の国の運営という観点から最良の案として出した予算案を、端的に言えば保守合同をやりたい、そういう党利党略のために、このきわめて筋の通らない妥協をのんでいい、こういう結論になったということになれば私それこそ総理の政治的な責任というものはきわめて重大だと思う。簡単に政局上やむを得ないという言葉だけでは片ずけられないと思うのですが、重ねて総理の御所信を伺いたい。
  23. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 政局の安定の必要なることば私が言わないでもいいと思いますが、修正案をのむことによって原案の精神がくつがえされるならば、それはそのときには他の考え方を選ぶことも考えられるでしょうけれども、私どもは原案の精神はくつがえされてはいないと思っておるので、この程度の修正ならば政局の大局から見てやむを得ざることと思うのであります。
  24. 田中織之進

    田中(織)委員 政府提出した原案の根本趣旨がくつがえされていないと総理は断定されておるようでありますが、しかしながら少くとも総額において三百十五億これは厳密にいえばその面から見て市中銀行肩がわりしたからという形式的な点で、一兆円のワク内に納まっておるように見受けられますけれども、実質的な関係から見て、この二百十五億の歳出増加というものは、その意味で一兆円のワクを超えたことになると思うのです。その意味から見てこれは原案の趣旨を取り違えておる。大きな変更を加えたというものではない、局部的な修正のように総理がお考えになっておることは、私も理解できないし、国民も理解できないと思う。少くとも腰だめで全く民自両党というか、この内閣の延命策というか、その意味できわめて妥協したような、そういう印象を持っておるのは、単に私ら社会党だけでなく、国民全体だと思うのです。その点は原案が変更されていない、基本線がくずれていないということを、総理はどの点からそういうように理解されておるのか、その点を明らかにしていただきたいと思います。
  25. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私が申すよりは、大蔵大臣からの方が適当だと思いますけれども、私としては、一兆円予算の趣旨はくつがえされておりませんし、インフレにもならないと思いますし、地ならしの目的は達成できると思うような関係から、この程度の予算はのんでも原案の精神はくずれないと思うのであります。もしも私の言葉に不足があるならば、大蔵大臣から補足をしてもらいます。
  26. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えいたします。その前に、二、三私に向けられた質問についてお答えをいたします。  一つ申し上げておきたいことは、おそらく何人が財政当局になろうと、また政府におつきになろうと、赤字公債発行することは、私はあり得ないと思います。ただいまの御意見では、防衛費がふえるじゃないか、防衛費がふえれば、当然赤字公債になるじゃないか、こういうふうな点から、特に赤字公債について御心配下さっているようでありますが、あくまでこの防衛費については日本の経済力に応じなくちゃならない、国民生活の安定、それから社会秩序を維持していく、こういうふうな制約をどうしても考えなくちゃならぬのでありますから、赤字公債発行して軍備をやる、これは私は本末を転倒しておる、かように考えておる次第であります。従いまして、そういう意味から赤字公債が出るということは、私考えられないことであると思います。  それから、問題は、今回の措置によりまして、インフレ的になるという、これは一番御心配下さっておる点で、それはごくやり方をまずくすれば、あるいはそういうこともあり得ると思いますけれども、これは資本蓄積が十分できる。そして金融の操作によりまして、インフレ的にはならない。そして今度の修正において考えてみますと、私は従来の予算編成上の基本がそうこわれておると思いません。たとえば投融資にいたしましても、今回の修正は地方債以外で四十億の増加でありますが、これは特に日本の経済を急激に拡大する方向には使われておらないようであります。そして、そういう意味の投融資からくる関係は、前と大した変りはない。特に中小企業関係、金融上において特に困っておる方向、言いかえれば、地ならしの方向に向っておると私は考えておる。  それから、減税の点に六十七億ございますが、これも私はよく聞いておりますが、減税についても平年度において五百億で三百億、この精神を――実は程度が若干違うということがあるのであります。これは財源関係から見て、できれば私はそう拒むこともないと思います。大局から見まして、むろん私といたしましては、原案を御通過下さることを大蔵大臣として願うのでありますが、今総理大臣からも申されましたように、大局からすみやかにこの予算の成立を希望する。それからなお、私が、保守結集ですか、そういうことで予算を何とかしたということはありません。私は、今申しましたような考え方から、やはり大局的にやむを得ない、こう考えただけであります。そういうふうなことを条件とかなんとかしたことはありません。個人的な感懐としては、ああいう場合にほんとうに強い政治力かあればいいなくらいは思います。
  27. 田中織之進

    田中(織)委員 どうもきょうになると、大蔵大臣は今度の民自両党の修正案を積極的に支持されておるような口吻でありますけれども、あなたはこの修正案が妥結に至るほんの寸前までは、総理とともにこれは公債発行に一歩窓口をあけるものだということで、もし原案が通らなければ、解散もとにかく辞さない。もし総理が国会解散を賭してまで原案を固執してくれなければ、大蔵大臣としての責任が持てないから、あなたは辞表を提出する、自分の職を賭してまでこの修正案がのめないということで、最後のどたんばまであなたはがんばったのであります。それと理屈が合わぬじゃないか。それが豹変したことは、どうも国民が納得できない。その点はいかがですか。
  28. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。私は公けに通らぬ場合に解散するとか辞職する、そういうことをかつて言うたことはありません。しかしそういう決意を持ってやっておったことは――大蔵大臣として自分の原案を通すために最後までそういう決意を持つことは、私はだれでもそうだろうと思います。
  29. 田中織之進

    田中(織)委員 あなたは先ほどの答弁でも、現在の段階においてもなお自分が作った原案がそのまま通ることを希望している。しかし総理が述べられているような、大局的な政局安定上やむを得ないからのむと言われる。これは大局的見地じゃない。ただあなたたちには内閣が延命していきたい、できるなら保守結集をして自由党と一緒に解散党をやらずにいつまでも保守政権を維持していきたいという、きわめて党利党略的な立場から今度の修正に応じたものだということは、以上の答弁で明確になったと思います。  そこで重ねて総理に申し上げたい。あなたの言われるほんとうの政局の安定という見地からいえば、本来この予算委員会最初に当っても、友党の右派社会党の諸君からはすでに本会議においてこの内閣の成立の当初に当って質問された通りでありますが、あなたたちがここで国民が納得できないような妥協をするなら、選挙の結果百八十五名の少数与党内閣を作った以上、やはり君らに近い保守党の協力を求めなければならぬことはわかっているんです。従って予算の事前折衝についても、一応自由党から断わられても、執拗に自由党に事前折衝に応じてもらうような態勢をとることは、当然やるべきだと私は思う。(「あまり人のことに干渉するな」と呼ぶ者あり)人に干渉することではない。あなたたちはそういう筋を通したやり方をしないから、政局が安定しない。その意味から見て、今回の修正は、内容的にはいずれあらためて石村委員から追及いたしますから、私はその他の問題でどうしても総括質問で明らかにしていただかなければならぬ問題に移りますけれども、きわめてこの点問題を残している。将来少くとも財政歳入が伴わない限りは、防衛計画を強行しないということを先ほど大蔵大臣が言明しましたので、この点は来年度予算における重大なる国民への約束として、今年はこの問題をあと石村委員に移すことにいたします。  次に防衛分担金削減の交渉の問題でございますが、先ほど私が申し述べましたように、今回の日米共同声明の一番最後には、「しかしながら、日本政府の直面する財政的困難、なかでも本日本会計年度は、日本の経済安定の成否を決する年であるということにかんがみ、米国政府が本年度における特別の協力措置として、本会計年度以降には適用されない」、今回の減額交渉に応じたことは本年度限りの問題であるということは、この共同声明でも政府側も了承しておるのです。その点は、先般の大蔵大臣答弁では、百七十八億ですか、本年度減額された、この減額の額が明年度踏襲されるかされないかということは、ここでは約束できないが、少くとも明年度減額され得るものだということを期待しておるような解釈をここで述べられておるのでありますが、少くとも、この共同声明の最後の、私が今読み上げた点を正直に見る限りにおいては、米国政府が本年度における特別の協力措置である、しかも本会計年度以降には適用されないのだ、こういうことは、明年度以降においては、一切防衛分担金削減にはアメリカ側は応じないのだというふうにもとれるのでありますが、この点の政府側の統一した解釈を伺いたいのです。
  30. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答え申し上げます。御承知のように、昨年度に比べて本年度の防衛費の増額は、すべてで百五十二億であります。この百五十二億、ことし増額を必要としたすべてを防衛分担金削減でまかなっておる。言いかえれば、昨年度に比べて、本年度は、日本は防衛の百五十二億をふやしておるが、それは全部防衛分担金削減でまかなっておる、そういうことは本年限りだ、一応本年だけだ、来年はまた来年の交渉、こういうふうな取り組みであるのであります。
  31. 牧野良三

    牧野委員長 田中君に御相談します。もう時間が乏しくなりましたから、どうぞそのおつもりで。
  32. 田中織之進

    田中(織)委員 昨日の小坂委員の前例もありますので、できるだけ協力いたします。
  33. 牧野良三

    牧野委員長 踏襲しないようにお願いいたします。
  34. 田中織之進

    田中(織)委員 やはりそういうふうにお願いしたい。きのうはせっかく私が準備をしておるものを、先ほど赤松委員から発言があったように、午後五時間も私をこの部屋に待たせておいて、何を言うのですか。
  35. 牧野良三

    牧野委員長 ごもっともに存じますが、どうかよろしくお願いいたします。
  36. 田中織之進

    田中(織)委員 ただいまの大蔵大臣答弁だと、防衛庁費の増額をそっくりそのまま防衛分担金削減で見てくれるかどうかということは本年度限りで、明年度においてはその点が明確でない、こういうふうに述べられたように私は理解したのですが、その通りですか。
  37. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。防衛庁費だけではありません。防衛庁費は百二十五億ふえたのです。それから、施設費において二十七億ふえました。全部で百五十二億、こういうことになっておりまして、三十年度における防衛の増強、その費用、昨年度に比べてふえた分、その全部には、施設費の方も含まっておるわけであります。
  38. 田中織之進

    田中(織)委員 そういう大蔵大臣の理解では、私は非常に問題だと思うのです。そもそも講和発効と同時に、占領車が駐留軍にかわって、従来の終戦処理費のかわりに、日本が防衛分担金を、安保条約に基いて、行政協定の二十五条の(b)項に従って払うことになった。一番最初は御承知のように六百五十億、そのときにはアメリカ軍は六個師団だった。しかも、その前年度の終戦処理費に物価高その他の事情を織り込んで総額一千三百億、その半分の六百五十億というものを日本側が負担するということが取りきめられたのであります。その後やはり米軍は、当時の六個師から現在は、われわれの開くところでは二個師団に減っている。その点から見て、いわゆる駐留軍の日本側が負担すべき費用というものが、絶対額が減少してきているのでありますから、まず、今後の防衛分担金削減交渉は、行政協定の二十五条の(b)項に従って、少くとも、予算編成のときには、定期的にそれを取りきめなければならぬわけでありますが、そういうためには、まず第一に、現在の駐留軍の絶対量がどれだけで、二十五条(b)項によるところのいわゆる付加的経費の総額というものが幾らであるかという点をあなたたちはお調べにならなければならぬ。それと同時に、その後のいわゆる岡崎・ラスク会談によりまして、いわゆるMSA協定によってはっきり義務づけられたところの日本の自衛力漸増計画、つまり防衛庁経費の増加分は、これまた、それだけアメリカ側に渡すべき防衛分担金の中から削減するということのいわゆる岡崎・ラスク了解というものができて、防衛分担金というものはこの二面から漸次削減をしていかなければならぬものだ。少くとも、条約なり協定の条文の正しい解釈から、また、従来国会に提出されて参りました大蔵省主計局の説明から見ますならば、そういう理解が正しいと私は思うのでありますが、今後、その方針に従ってこの防衛分担金削減をあなたたちは交渉されていく方針であるかどうか。この点についての、大蔵大臣並びに外務大臣の御所見を伺いたいのであります。
  39. 重光葵

    ○重光国務大臣 先ほどの大蔵大臣の説明の通りに、防衛分担金の軽減の交渉は来年もでき得るわけでございます。そうでありますから、これはやるつもりでございます。これでお答えとします。
  40. 田中織之進

    田中(織)委員 私が述べた二つの原則、絶対額と、それから、防衛漸増に伴う経費の削減、その二つのベースがあるのかないのか、その点はいかがです。
  41. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えいたします。財務当局としてはむろんお考えのようなことは望ましくて、努力すべきだと私は考えておりますが、実際駐留軍が減っているかどうかとか、そういういろいろの具体的な問題があり、同時にまた、この問題はやはりいろいろな条件もあるので、駐留軍が減っただけで片づくかという点も、これはまた条約の解釈でいろいろありましょう。そういうふうに考えております。考え方としては、私としては努力いたします。
  42. 田中織之進

    田中(織)委員 この防衛分担金削減が、嶋山内閣の公約の重要な一つなんです。できれば、この防衛分担金アメリカ側へ渡しているものを削減することによって浮いた金は、防衛、いわゆる再軍備になる費用に向けるのじゃなく、社会政策、遺族補償というような方面に向けたいというのが総理の選挙前の公約だったと思う。それが、この委員会答弁過程を見ますと、いつの間にか、軍事関係アメリカ側に渡すものが少くなれば、それだけ日本側で使う防衛庁費をふやしていいような、そういうわくにまるきり閉じ込めたこと自体が大きな問題である。   〔委員長退席、重政委員長代理着席〕 しかしその点については、さらにこれを掘り下げていく時間がございませんから、私は、この点に関連して、先般私の同僚久保田委員から質問をいたしまして保留になっておる問題があるのでありまして、これは防衛分担金の問題ときわめて深い関係にありますので、この際伺っておきたいと思うのであります。  それは別途大蔵省からこの委員会提出された米側に日本から交付したいわゆる防衛分担金の支出明細に関連しての問題でございます。在日合衆国軍日本側交付金支出済額表というもので、これに二十七年、二十八年、二十九年と出ておるのでありますが、この表の一番最後に労務者給与というのが二十七年度は一銭も計上しておりません。ところが二十八年一度が百五十七億三千四百万円、全体のこの年の五百何十億に対して二八%に当ります。それから昭和二十九年度が四百四十四億九千万円、このときのいわゆるアメリカ側への交付金、防衛分担金の実に八三%に当る部分が労務費として支出されておるのであります。行政協定の二十五条(b)項によりますと、この労務者費というものはこれは米側がドルで負担することになっておると私は思う。その証拠には、二十七年度は、これは大蔵省が出してきたように日本側の交付した交付金の中から労務者費というものは一銭も計上しておらない。それが二十八年度以降になると、二十八年度に交付金の二八%、二十九年度に八三%、この率で参りますならば、本年減額したはずの防衛分担金のうちの九〇%に近い部分が、労務者費に振り向けられると思うのであります。これは私は行政協定の二十、五条(b)項に違反しておると思うのですが、なぜこういうように日本から支出した金から労務者費を払わなければならぬようになったのか、この点がこの資料では明確でありません。これは外務大臣に聞けば調達庁だという、調達庁でよく調べてみれば、この金は労務者に払うために調達庁は向うから受け取っておるけれどもアメリカ側が日本札をどこから手に入れてきておるのかそんなことはわからぬということですから、大蔵大臣から明確にしていただきたいと思います。
  43. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。二十七年度に労協費をドルから出しまして、そうして二十八年、二十九年は円払いになっておる。分担金の中の詳しいことは政府委員から補足させた方がよろしいと思いますが、分担金の中にドル建と円建の分がアメリカ側にありまして、そうして二十七年はドル払いで労務費を払っておる。ドルで労務費を払うと、今度アメリカの財務省との関係では、円の方の勘定を向うで返していく、アメリカの会計規則でそういうふうな扱いのように私は説明を受けております。ところがこれが労務費というような金になると、しょっちゅうあるものですから、そのつどつけかえをするというのが非常にめんどうといいますか、向うの事情ですからよく私は推察できないのですけれども、おもしろくない。それで簡素化の意味で労務費をこちらの円で払って――アメリカ軍と本国との関係は知りませんが、そのかわり石炭とかその他の需品の買い入れは従来円払いにしておったのを今度ドル払いにして、そうして結局日本に対するドル払いの金は減らさないようにする、こういうふうな形からこうなったように私は承知いたしております。これは一にアメリカの会計規則から来ておる、かように承知いたしております。  それから二十五条(b)項の違反じゃないかと言われますが、あれには役務並びに需品を日本の分担金から払っていい、こういうふうになっておる。この役務の中に労務者のものも入っておるというように解釈いたしておりまして、これは私違反にならないじゃないかと思います。なお御不審がありますれば、政府委員からもう少し詳しく御説明申し上げたいと思います。
  44. 田中織之進

    田中(織)委員 これはもちろん一萬田さんが大蔵大臣になる前、自由党内閣時代の問題ではありますけれども、ドル払いでやるものも、実際の取扱いの問題は、一応アメリカ側から、日本の方がこれを全部円にかえて支払うようになっておると私は思う。その点から見て、アメリカのドル払いのものを便宜的に日本の方が取りかえる便宜をはかっただけの問題のように大蔵大臣がただいま答弁されたが、私はそれは実情と違うと思う。従ってこの点は行政協定二十五条の2の(b)項の条項との関連においてこういうように変改されたということは重大な問題なんです。その意味で、この点は主計局長からでももっと明確にしてもらいたい。
  45. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 事務的に若干補足してお答え申し上げたいと存じます。  まず行政協定第二十五条の(b)頃でございますが、これは役務費ということがございまして、労務費を日本側の分担金から払うことを不可能にしておるわけではないのでありまして、その役務費といたしまして労務費を払うことは何ら行政協定違反ではないわけでございます。そこでただいま御指摘がございました通り、二十七年度はこの分担金では労務費は払っておりません。二十八年度から逐次分担金から労務費を払って参りまして、二十九年度にはそれが八、九〇%で、これは御指摘の通りでございます。この点につきましての経過を申し上げますと、元来分担金は、日本側といたしましては一括いたしまして米軍に交付して、米軍は日本側から交付を受けました金とアメリカの予算に盛っております金をプールして使う、従いまして、これは行政協定二十五条(b)項の範囲であれば、必ずしも何に使うということはないわけでございますが、しかし私どもといたしましては、せっかくの分担金でもございますし、とうとい国民の税金を交付するわけでございますから、これが何に使われるか、また適正に使われるかということにつきましては非常な関心を持っておるのでございまして、従って毎月報告も聴取し、また監査もできるような道が開いてあるわけでございます。そこで、そういった支出の適正化を確保する面から考えまして、あらかじめ米側と相談いたしまして、この分担金で支出する金の範囲を協定いたしたわけでございます。当初は労務費はそれには入っていなかったのでございますが、しかるに二十八年度になりまして米軍の会計手続が非常に変った。それは二十七年度までは米軍は円予算とドル予算と二本建で運用して参っておったのでありますが、二十八年度以降は円予算というものはなくなりまして、すべてがドル予算として計上されるということになったわけです。そこで資金としては円とドルがあるわけでございますが、予算としては全部ドル予算である、そこでそのドル予算の中から、現実には円で払いましたものにつきましては、ドル予算を米国の財務省に一々つけ戻しをしなければならぬ、そういう事態が起ったわけであります。そこで当初は各種の需品費等がこの円払いということで、労務費はドル払いであったわけでございますが、その一々のこまかい需品費を円払いということで参りますと、非常に小口のものにつきまして一々ドル予算を財務省に返還しなくちゃならぬということになりまして、米軍内部の問題でございますが、会計経理の手続が非常に複雑になる。労務費の方は毎月まとまった金が支払われるわけでございますので、円予算でこれを払いましても、米国の財務省にドル予算を返還いたします場合に比較的その辺の手続が簡単に参る、そういうような観点から、従来需品費について円払いをいたしておりましたのを振り返りまして、労務費の方を円払いにする、そのかわり従来の石炭であるとか、そういったもので円払いになっておりましたものはドル払いに振りかわる、そういうことについて申し入れを受けたわけでございます。私どもその際に事情を詳細に検討いたしましたが、ただいま申し上げましたように費目が振りかわっても、結局アメリカのドル負担には変更がない、また日本側の円負担にも変更がないわけでございますし、米軍の会計簡素化の目的も考え、またわれわれとしてこの分担金が適正に支出されるということについての方法が確保せられるという限りでございますならば、この点は同意してもさしつかえないという結論に達しまして、二十八年以後労務費の方を逐次円払いにいたし、今まで円で払っておりましたものを逐次ドル払いに切りかえる、さような内部的の振りかえが行われた、これが真相でございまして、日米間の負担関係には全然変更がないわけでございます。  なお先ほどお尋ねがございました米軍がそのドルをどこから払っておるか、これは米軍が予算の支出をいたしまして、そのドルを外為特別会計に売却いたしまして、その得た円で払っておるわけでございまして、支出は米軍の予算からでございます。
  46. 田中織之進

    田中(織)委員 米軍の特別勘定に振り込まれる円貨は、ただいまの主計局長の説明にありましたように、駐留米軍がドル貨を日本側へ売却して取得した円貨、それから日本が駐留米軍に交付する防衛分担金、それから駐留米軍が軍需物資を日本で売却して得た円貨、この三つからなっておるので、私はアメリカのドル払いの会計上の簡素化の関係から振りかえたというただいまの説明はどうも納得できない。しかも労務費を従来ドル払いのものを、従来円貨で買っていた需品費をドル払いにすることによって振りかえたということ、その場合にいわゆる労務費として支払われる額と、需品費としてドル払いで受けるものとは対等額でなければ振りかえということの意味をなさないと思う。しかもその点はやはり行政協定の二十五条の第二項の(b)に、定期的再検討の結果締結される新たなるとりきめの効力が発生する日まで、合衆国が輸送その他必要な役務及び需品を日本国で調達するのに充てるために、毎年一億五千五百万ドルに相当する額を日本円で合衆国に提供する、こういうことになっておるので、これは二十八年度予算の実施過程の問題であると思うのですけれども、今財務官になっておるかどうかわかりませんが、大蔵省の鈴木源吾君が合同委員会の経過と今後の運営というのをある金融関係の雑誌に報告をしておるのであります。それによりますと、三十八年度の場合においてはっきりと日本側から出したものが、たとえば人員輸送費に三十四億、物資輸送費四十三億、電話料金その他の通信費六十六億、電気、ガス、水道、下水等の用役費五十億、兵舎、道路修理、石油施設維持のための作業費百十八億、石炭施設、家具修理資材等の需品費百九十四億、家具等の購入費二十五億、兵舎、住宅等の災害復旧工事費十四億等に分けられている、米国側の分担額のうちで労務費が四百五十億くらいであり、その他は主として需品費、家具設備購入費等に使われる、その場合に日本側の部分について実際には当時の六百五十億を越えて必要とする場合においても、その差額はアメリカ側が出すということがとりきめになっていたということを、大蔵省の鈴木財務官が合同委員会の経過として報告をしてきているのです。それがその翌年になって変更されてきている事情は、ただいまの主計局長答弁では明確ではないのです。労務費として払っているということになれば、払った労務者の人員と、賃金ベースは幾らか、この際明確にしていただきたい。
  47. 西田隆男

    ○西田国務大臣 お答えいたします。調達庁でやっております仕事は、労銀が米軍から渡りますのがおくれましたので、調達庁で一応労銀を支払って、十日に一ぺんくらいの割合で米軍側から日本円で返還を受けております。従って給与ベースの問題と総額の問題は私は現在的確に知っておりません。
  48. 重政誠之

    ○重政委員長代理 田中君に申し上げます。小坂君が質問をやられました時間ももう経過しましたが、どうぞ一つもう一問程度でお片づけ願います。
  49. 田中織之進

    田中(織)委員 一問程度ということですが、これは修正案のようにバナナのたたき売りじゃないのですから、明確になる点だけは――自由党の小坂君は一時間四十五分やっておる。できるだけ時間は短縮してやります。  現在ちゃんと予算に計上しているように、労務者の数と賃金ベースがわからぬことはないと私は思う。まあ西田さんもとっさの場合ですからその数字がわからないということは無理もないと思いますけれども、その関係から私これは正直に出していただきたいと思うのです。労務費という名目でいろいろな設備費、資材費を払っている疑いがある。しかも これは時間がありませんから私は別の機会に追及をいたしますが、鈴木財務官の報告にあるように、こんな形で防衛分担金――これは総理よく聞いておいて下さい、日本側か払わなくていいものまで、アメリカ側防衛分担金として国民の税金が渡されているような現在の防衛分担金の支出の内容なんです。とにかく根本的な問題は一個もお答えにならない。一番最初に六百五十億、一億五千五百万ドルという総額をきめたときのアメリカの兵力は六個師団、それが三分の一の二個師団に減っても、それは若干その当時からは減っているけれども、われわれはいろいろな疑いを持つのではないが結局ドル負担というようなものはアメリカはほとんどやっておらない。まるきり日本の国民の負担によってアメリカさんが日本に駐留をしておる。そして朝鮮や沖繩や台湾で戦争をしかけるようなことをやっているのでは、国民がたまらない。この問題はいずれ外務委員会あるいは大蔵委員会等で追及することにして、ここで所管の西田大臣としても数字等をお持ちでなければこれは話になりませんから、この問題は保留して次の問題に移ります。
  50. 重政誠之

    ○重政委員長代理 田中君に申し上げますが、あと一問程度で一つ終りにしていただきたいです。
  51. 田中織之進

    田中(織)委員 そこで問題はまだたくさんありますが……。
  52. 重政誠之

    ○重政委員長代理 協定の時間は一つお守り願います。
  53. 田中織之進

    田中(織)委員 そのほかいろいろ伺いたい問題があるのでありますが、委員長の力の要望もありますので、あと二点ほどにしぼって質問をいたします。  一つの問題は日ソ交渉に関連をした問題でございますが、総理も御承知のように、また総理が非常に希望されるように、世界の情勢は漸次平和共存、欧アにまたがるいわゆる中立地帯の拡大によるところの平和の方向に向っておることは非常に喜ばしいことだと思うのであります。特にオーストリアの全面講和がいわゆる四大国間の了解によって実現をし、さらに全ドイツの中立化と自由選挙による統一への提案がなされております。それからきわめて最近におけるソ連とユーゴの平和共存の共同声明がなされ、オーストリアの平和回復の問題を契機として、四カ国首脳会談が米側も同意をして近く行われようとしておるのであります。こういうことに関連いたしまして、NATOの諸国においても米軍の撤退をこの際してもらってもいいというような動きが出ておるようにわれわれは見ておるのであります。こうした世界の平和共存と申しますか、戦争が漸次遠のいていく傾向の大きな問題といたしまして、何としても欧州及びアジアにまたがるところの中立地帯の拡大ということが、その原動力になっておるように私は考えるのであります。ところがそういう線に沿うて、現内閣はいよいよきょうから本格的にロンドンで始まる日ソ交渉に臨んでおるわけでありますが、この間の四日の衆議院の外務委員会において、日ソ交渉に臨む現内閣の基本的な態度として、いわゆるソ連の中立化政策に日本は乗らないように警戒しなければならぬ、こういう意味の言明を重光外務大臣がなされておる点は、私はきょうから本格的な交渉に入るところの日ソ交渉に大きな暗影を投ずるものだと思う。これはソ連の中立化政策に日本が乗るとか乗らないとかいう問題ではない。日本の安全と平和を維持するために、日本が中立政策をとるかとらないかということが、私は基本でなければならないと思うのであります。その意味で、日本側がいわゆる米ソ両陣営のいずれとも仲よくしていく、これが今回日ソ交渉、引き続いて中共との国交調整問題が取り上げられるであろうところの鳩山内閣の外交政策の基本だと私は思うのです。その点から見れば、中立化政策をとるかとらないかということは、向うから持ってくる提案に日本が乗る乗らないの問題ではなくて、日本自体が米ソ両陣営のいずれとも仲よくしていくということになれば、そのいずれの陣営にも片寄った行き方をしないというところに日本の中立化という態度が生まれてくるのだ、私はかように考えるのであります。この間の外務委員会における外務大臣の答弁、あるいは民主党の有志議員の会合におけるソ連の中立化政策には乗らないことを今度の日ソ交渉の大きな心がまえとしておるというような外務大臣の認識では、今日から開始される日ソ交渉の前途に、私は非常に大きな問題があると思う。そういう関係から見て、ソ連が領土を返還する、日本の領土であり当然返還されなければならぬ千島、樺太等の返還問題を条件に中立化を望んで来た場合には、その中立化政策を警戒するの余り、日本の当然の要求であるところの領土の返還も求められないような事態になるかもしれないというような重大な外務大臣の発声というものは、これは見のがすわけにはいかないと思いますが、この点について総理及び外務大臣の日本の中立化政策に対する御所見を伺いたい。  それからもう一つの問題は、本日の新聞によれば濃縮ウランの受け入れの協定に関する日本側の対案が発表されておるのでありますが、これにはわれわれがこの委員会において主張して参りましたところの、学術会議の原子力委員会が希望しておりますいわゆる三原則、特に最近の原子力委員会が取り上げました第九条、アメリカとトルコのウラン協定における第九条の削除の問題と、できるならば協定の時期は八月のジュネーヴにおける原子力問題の国連の会議以後に締結の時期を延ばした方がいいではないか、こういうことについての学者の意見が外務大臣及び経済審議長官等に提示されておると思うのでありますが、本日の日本側の対案には第九条を削除するという、これはいわゆる了解事項としても入れないという意味合いにおいて、われわれはこれを希望しておるのでありますが、この点は、日本側の対案というか、政府の正式に発表したものかどうかわかりませんが、新聞に出ているところには明確になっております。特にその締結の時期を、従来のアメリカ・トルコ協定の内容も明確になりますと私は思いますので、八月のジュネーヴ会議以後に延ばす、これはそう急いだ問題ではないと思いますので、この点に対する外務大臣、経審長官、またこの問題は日本の将来の原子力の問題、平和利用の問題に発展いたしますので総理の御所見を伺っておきたいと思うのであります。  なお、その他に今度の余剰農産物の協定の問題についても、それから国内的の問題といたしましては、実は今度の民自両党の修正案の中にも、あの二十八年に特別議会を開かなければならないような非常な災害がありました二十八年災害に対する予算措置の問題がきわめて不十分です。ようやく四億何千万円かの計上が入っているようでございますが、これも国会に拠出された大蔵省の資料自体によっても、いろいろ食い違いがある。当然大蔵当局としても三十九年度において処置しなければならぬ事項が落ちておる点があるのでありますが、この問題についていずれ別の機会にお伺いすることにいたしますから、ただいま私が伺いました日本の中立化政策、これは日本側がとるかとらぬかの問題の立場からお答えを願いたい。それから濃縮ウラン協定についての問題、この二点についてお答えを願いたいと思います。
  54. 重光葵

    ○重光国務大臣 私にお尋ねの分についてお答えをいたします。今るる申されましたソ連の中立化政策、そういうことは今世界の評論家の間においてしきりにうわさされております。ソ連あるいはそういう計画をもって進んできておるかもしれません。しかし日ソ交渉は実質的にはお話の通りきょうあたりから始まるのでありますから、その際向うの出方を推測してこれに対してこっちがどういう態度をとるかということを、明確に私の口から申し上げるのは果していかがかと思います。しかしながら、私がいろいろな席で、委員会や本会議の席で申しました通りに、今日言われている中立化政策というのは、オーストリアの問題から発生しておるわけでございます。そこで私が繰り返して申し上げました通りに、日本の地位はオーストリアの地位とは全然その根底が異なっておる――交渉に当る地位でございます。日本は独立国として交渉をする。オーストリアは交渉によって独立国となった国であります。さようなわけでオーストリアに対する中立政策のひな形でもって、日本に臨むということは根底が違っておる、こう私ははっきり申し上げておったのであります。そこで、さような違った立場は、交渉に当る以上は双方とも対等で交渉するのであります。日本の立場は相手方においてこれを認めてかからなければ交渉はできません。また相手方の立場も日本において十分理解をしてかからなければ、ほんとうの目的は達しません。さようなわけで、相手方の国際関係において置かれておる立場をはっきり双方とも認めて、そうして具体的の交渉に入るべきだ、こういうふうに考えておることを再び申し上げます。  それから濃縮ウランの問題について申し上げます。これは全体的に考えてみて、今日の原子核の文明、これがほとんど文明の改造であるとすら言われて、もうこの方面の科学的の進歩にみんな目をみはって注意をしておるのであります。日本といたしましても、かような革命的な進化に進むのでありますから、この点においては十分に各国の最も長じた技術、また必要な材料等の協力を得るということは、これは根底の問題として日本としてはやらなければならぬことだと私は考えております。しかしながら、社会党各位からの御忠告の通りに、それがために日本が科学の進歩を将来拘束されるようなことがあってはいかぬ、いわんや政治的の意図を持った拘束がそこについておるとするならば、そういう問題は排斥しなければならぬということ、今申されました科学自由研究の三原則というような点は、私はこれは十分に守り通さなければならぬ、こう考えております。従いまして、そういうような弊害の伴わない、しかして日本の飛躍的な科学の進歩を助長し得るような方向に向くならば、私はこういう問題はなるべく早く片づけた方がいいと思っております。しかしながら諸般の関係上、たとえばゼネヴァ会議の結果を待つことがいいといういろいろな関係者の意見もあるかもしれません。そういうことも十分考慮して、何もすぐにでもこしらえなければならぬという方針でやっているわけではございませんけれども、いいことで日本の進歩に非常に貢献することが確かであるということになれば、それは早くやっても差しつかえないと、こう考えております。   〔重政委員長代理退席、委員長着席〕  それからひもつきの点でございます、これはあくまで避けなければなりません。今御指摘のありましたトルコとアメリカとの条約の第九条の問題について議論がだいぶあるようであります。この第九条の問題に対する議論は必ずしも一様ではございません。これはアメリカの科学進歩の協力を将来受けるために必要であるという議論もいたしております。しかしながら今協定の本論は、御承知の通り濃縮ウランに関する援助の問題でありますから、それを本文から除外しても差しつかえはないように感じます。そうしてこれについては、あくまでもいわゆるひもつきでないということを確かめた上でなければいけませんので、それを確かめた上で万事処理する方針で進んでおる次第でございます。
  55. 田中織之進

    田中(織)委員 ただいまの外務大臣の御答弁でありますが、特に中立化政策の問題でありますけれども、日ソ交渉に当って日本とソ連が対等の立場で堂々と交渉に臨んでもらいたいということは、私も全く同感であります。その臨む場合の日本側の心がまえが、いわゆる両陣営の対立した中において、日本が、この内閣の行き方から考えましても、ソ連側に身を置いた立場において向うと交渉を進めようというのではないことは、もちろんでありましょう。しかしそうかといって、この内閣はともすれば、従来の行きがかりもありましょうけれども、アメリカに依存する態度が非常に強いと思うが、少くとも日ソ交渉に当っては、アメリカ側からいろいろ指図を受けないことはよく理解できますけれども、こういう対立した両陣営の中において、特にいまだ国交の回復されておらない国との間の国交調整をやろうとするからには、日本の立場というものは、この対立した両陣営のいずれにもくみしない中間の立場をとるということを日本側が明確にすること自体が、私は交渉の妥結をすみやかにすることであり、また有利な条件を得られることだ、こういう立場で臨んでもらいたいという私らの党の方針から希望を申し述べたわけであります。  さらに原子力の平和利用の問題については、わが党もすでに態度を表明いたしておりますように、国際的な知識の水準を摂取いたしまして、早期に日本側としての技術研究の発展向上を期待するという意味合いから、何らの条件のつかない濃縮ウランをアメリカから受け入れるということについては、われわれも積極的に賛意を表するものであります。しかし問題は、日本の、これに深い関心を持っておる学者問でも、八月に、現在原子力の研究がどうなっているかという世界的水準が明確にされる国際会議があるのだから、その機会の後に――かりに協定の正文には出ないにいたしましても、付属的な了解事項等で、何らか今後の日本の原子研究に障害になるような条項が入ってはならないから、少くとも現在の国際的な原子力研究の水準を見た上で条約を締結するということにしてもらいたいという切なる希望があるわけであります。今後の交渉の進展の上に、この希望を十分考慮に入れていただきたい。もちろんアメリカの会計年度が七月からかわるという関係から、先方が急いでおる事情もわからないではありませんが、私は、ほんとうにアメリカが世界の平和の増進のために、アメリカが持っておる濃縮ウランを日本にも分けてやろう、その他希望する国に分けてやろうということであれば、会計年度をまたがっても受け入れ態勢の整うたところにやることがアメリカの本義であろうと思うから、そういう点で、日本側の学者――これは学者が真剣に研究を進めていただかなければならぬ問題であるだけに、関係する学者諸君の、また同時に国民が心配しておる点をも含んで、今後の交渉に当っていただきたいということを重ねて希望いたしまして、なお予算にいろいろのただしたい点がございますけれども、約束の時間もはるかに過ぎておりますので、いずれ別の機会にまた伺うこともあろうかと思いますから、これで私の質疑を終ります。(拍手)
  56. 牧野良三

    牧野委員長 小平忠君。どうか田中君の例によらないようにお願いをいたします。あなたには信頼する……。(笑声)
  57. 小平忠

    ○小平(忠)委員 私は、日本社会党を代表いたしまして、三十年度の国家予算案に対し総締めくくり的観点に立ちまして、総理大臣以下関係閣僚に若干の質問を行いたいと思います。  まず第一に、民主、自由両党の共同修正案に対しまして、政府見解を伺いたいと思うのであります。本件に関しましては後刻同僚杉村委員からも具体的な質問を行うことになっておりますので、私は政府の所信について承わりたいと思うのであります。  御承知のように、鳩山内閣が国会に提案されました国家予算は、本委員会におきましても、その説明においてあるいは質疑を通じて明らかにされております通り、鳩山内閣が総合経済六カ年計画の第一年度として、すなわち地固め、均衡財政、すなわちデフレ政策、これらの観点に立って編成をした予算であり、さらに産業公債発行は行わない、一兆円のわくを堅持する等等の問題が具体的にされておりますが、今回民主、自由両党間において妥結がなったと伝えられておりまするこの修正案を見ますと、今まで政府が国会において、本委員会において明らかにされておりまする政府の基本的な考え方が、全く崩壊し去ったと申し上げて過言でないと思うのであります。私が特に遺憾に思いますことは、本予算審議のさなかにおいて本予算委員会審議を中絶して、われわれ野党である両派社会党のこの審議の進行にも全く誠意を示さないのみか、見方によっては国会も国民もつんぼさじきに置いて、自由、民主両党がやみ取引をやったというような見方を、これは国民もまたわれわれもとっております。特に分科会においてもほとんど保守党議員は出席をしないで、分科会が休憩してしまう、こういうような現状を見ましても、いかに今回の予算が、新聞が一斉にたたいておりますところの、すなわち夜店のバナナのたたき売りのごときたたき売り予算であると批判されても仕方がないと思うのであります。私はこのような見地に立って、一体鳩山内閣総理大臣は、従来主張して参りました考え方、すなわち地固め予算、健全財政を推進する予算という、この考え方の一角がくずれ去ったことに関して、政府責任をどうお考えでありますか、鳩山総理大臣見解を承わりたいと思います。
  58. 牧野良三

    牧野委員長 小平君にお願いしますが、すわったまま答弁してよろしゅうございますか。
  59. 小平忠

    ○小平(忠)委員 けっこうでございます。
  60. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は、このたびの修正は、予算の原案の持っている精神をくつがえしてはいないと確信しているのです。一兆円予算のワクは守ってありますし、インフレは防ぎ得ると思います。それから政局の大局から見ても、予算の原案が通った方が国家のためになると思いましたから、政局の大局から考えまして修正案をのんだわけであります。
  61. 小平忠

    ○小平(忠)委員 総理大臣は、政府の基本的な考え方はこれによってごうも変らないのだとおっしゃるが、それはあなたの論弁でございます。現に地固め予算で、健全財政というこの考え方につきまして、自由党の四百三十億の要求に対して、これを二で割って二百十五億とした。この二百十五億の財源を一体どういう形で求められておりますか。これは自由、民主の両党が予算修正過程において、大蔵当局にこの財源の求め方を要求した、この審議過程を通じて具体的にされておりますことは、大蔵大臣が先ほども同僚田中君の質問に答えて、あなたは最後まで反対をした、これは大蔵大臣としては当然だと思う。こういう二百十五億を無定見な、すなわち産業公債発行によって求めようとするこの考え方、これが政府の基本的な予算の変更を来たさないということはどこで主張できるか。具体的に申し上げてみますと、私はその数字的な問題は省きますが、一例を申し上げますれば、二百十五億の財源の捻出に、まず資金運用部等から金融債引き受けを予定いたしておりました百七十億のうち、四、五月分の二十八億を差し引いた残りの百四十二億、これを民間金融機関肩がわりして、これを消化する見通しがあるかどうか。さらに国鉄の公社債の問題にいたしましても、昨年の洞爺丸あるいは紫雲丸事件等々によって、国鉄の経営というものは、御承知のような段階であります。しかるに国鉄に対しまして、資金運用部から貸付を予定いたしております百五十五億のうち、約四十五億円、これを国鉄の社債の公募分に回す。従来の八十億の公社債プラス四十五億、百二十五億というものがどうして消化できるか、問題はこういうような無定見なる財源の求め方によって、一体鳩山内閣の三十年度の国家予算がくつがえされないとどこで申すことができるのですか、こういう点につきまして、総理大臣どうです。
  62. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 御答弁申し上げます。具体的に例示してこれはどうかというお話ですから、具体的にお答えいたしますが、一つは二百十五億の財源捻出に、百四十二億の金融債公募に移しておる、これは一体どうだ、こういうことでありますが、これは私の考えでは今後における預貯金の増加、三十年度におきまして、これは私の立場からして楽観はしてならぬと思っております。果してそういうふうな実績をあげ得るか、非常に努力はいると思いますが、今日策定されておりまして、目標としております預貯金の増加は八千億であります。今日の金融情勢からいたしまして、この日本銀行に依存しておる市中の依存度はよほど小さくなっておる、今日第三次効率のかかっておるものも、私今正確に申し上げられませんが、おそらく五百億円前後と思っております。大体今後市中から日本銀行に返す金は五、六百億、こういうふうに考えればいいのではないかと思います。こういうふうな資金蓄積状況から見て、また日本銀行の依存度の関係から見て、市中の運用量というものはこれは相当大きなものであるのであります。特に先ほども申しましたように、このデフレの一カ年半の進行によりまして、日本の経済がよほど正常化しております。むだな金を使う必要がなくなった面が非常に大きくなっておるのです。私の当初の考えは、こういう情勢をさらに押し進めて、この際におきましては思い切って金利低下の情勢を馴致しようという考え方で、すぐにこの資金にすべてを寄らずに、ある程度財政資金の投融資を考えたのでありますが、しかし今申しましたように、その際における考えは、ごく自主的に、しかも金利をぐっと下げるという考え方を中心にいたしておりますが、しかし諸種の事情からいたしまして、今回はたとえば資金委員会というようなものを法制化いたしまして、そしてその集まった資金についての方向づけをやる、こういうようなことによりまして、また一方預貯金の利息については免税をするというふうな見地からいたしまして、この一般会計からの誘導あるいはまた預金部からの債券引き受け等を一般民間に移しても、私は必ずしもいけないことはない。そういう点についてはいろいろ意見がありますが、大局から見まして、そういう程度の同意を与えてもやむを得ない、こういう考えです。今申しましたそういう情勢下にありますから、百四十二億の金融債、それから四十五億の鉄道公債になるのでありますが、これは預金部貸付金が振りかわるのであります。この点について、私は特に優先的に国鉄債券消化をはかる決意をいたしております。そういたしますれば、この消化が可能であることは申すまでもない。かようにいたし示して鉄道事業の振興に遺憾なきを期したい、かように考えておるわけであります。
  63. 小平忠

    ○小平(忠)委員 大蔵大臣の説明を承わりますと、それならば、あなたは最初からそのような見地に立って予算の編成をすればよかった。一体大蔵大臣は民自両党の修正案に賛成なのですか。
  64. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えいたします。私はむろん私の原案が国会を通過下さることを望むことは申すまでもありません。しかし全体の関係から、今申しましたようなやり方に同意をいたしても、私の考え方の根幹を動かすことはない、こういうふうに考えます。
  65. 小平忠

    ○小平(忠)委員 きわめて苦しい答弁です。問題はいろいろありますが、その中でも現に今大臣が指摘された、国鉄公債の四十五億を優先的に消化することに責任を持ってやりたい。運輸大臣は当初予定の八十億にプラス四十五億の百二十五億というものは、引き受けの自信があるか。二十九年度の月平均の消化率を見ると、大体これは御承知のように十億です。運輸大臣としまして、このような無定見な国鉄公社債の消化が可能とお思いですか。
  66. 三木武夫

    ○三木国務大臣 これはなかなか消化は容易ならないわけです。従って運輸大臣としては、この消化については非常に懸念を持ったわけでございますが、大蔵大臣もこの消化については責任を持つということで、私はその方法論については別として、この消化責任を持つという大蔵大臣の言質を得て、この修正に承諾を与えたものでございます。
  67. 小平忠

    ○小平(忠)委員 具体的な例を取り上げないと、総理大臣は非常に安易に現政局の安定と、政局の収拾のために、これをのまざるを得なかったといっておりますけれども、そんな簡単なものではございません。さらにまた、産業公債が具体的に生産的方向に重点を置かれておるならばいざ知らず、きわめてこれが非生産的な消費面に産業公債発行の重点が置かれておる。ここに問題があるのです。  一言にして申し上げるならば、政府予算編成についての基本的な考え方は、選挙の際に総合経済六カ年計画に基いて、かくかくやるんだ、こう打ち出した総合経済六カ年計画が一月十八日の閣議において了承された構想、四月十九日の閣議において決定された大綱、これ以上一歩も進んでいない。具体性のものがない。予算の編成についても具体的なものがない。それでいよいよ百八十五名という少数内閣のために、予算の乗り切りが困難だとすれば、保守合同というようないわゆるやみ取引によってこの予算の通過をはかろうとする。これがためにこのような無定見な予算修正案が出てきてもこれをのまざるを得ない。もっと鳩山内閣は腹をきめて、この無計画な予算の編成についても、大いに反省を求めると同時に、いかなることがあっても、当初施政方針演説において示されたその方針を貫くなら貫いてもらいたい。こういう具体的な問題を取り上げても、総理はいかがですか、この責任はお考えになりませんか。
  68. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 冒頭においてお答をいたしたように考えております。
  69. 小平忠

    ○小平(忠)委員 総理大臣はきわめて不見識であります。現に運輸大臣が今何と答弁されましたか。鉄道公社債の引き受けについても非常に困難である、そういうような案を出されて、大蔵大臣は最後までこれに反対したが、時局収拾のために真にやむを得なかった、運輸大臣も、この鉄道公社債の引き受けについては非常に困難だから、最後は大蔵大臣が優先的に責任をもってこれを解決するという言質を得て実は承諾したのだ、こういうような一つのいきさつをもってしても、あなたのただいまの答弁に対して国民が了承できますか。私はできません。もっと誠意ある御答弁を願います。
  70. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えいたします。これは先ほどから申し上げましたように、今回の場合におきましては、資金につきまして法制的な規制も必要とあれば考えておるのでありまして、資金蓄積は十分見込まれるのでありますから、こういう消化において遺憾のないことを私は確信いたしております。
  71. 小平忠

    ○小平(忠)委員 私は総理大臣に、国民が納得する、国会のわれわれも納得をするという誠意ある答弁を願いたい。具体的な数字は、特に本問題について午後同僚委員質問があるから、私は具体的な問題に触れない。しかしあなたの当初の答弁は私自身が了解できないから、私は二、三の具体的な例を取り上げたのです。これに対してどうですか。
  72. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は先刻申しましたごとく、このたびの修正予算の原案の精神をくつがえすものではないと思います。予算の原案の精神がくつがえされなければ、政局の大局から見まして、本予算の通過を希望するので、妥協に応じた次第であります。
  73. 小平忠

    ○小平(忠)委員 妥協に応じたと最後に苦しい御答弁でありますが、時間がきわめて貴重でありますから、本件は保留いたしまして、私は次の質問に移りたいと思います。  本年度の国家予算の中で当初から問題となり、今後も問題となって残るであろう大きな問題は、わが国自立経済達成の上に大きな禍根を残し、また問題となっておる防衛関係費の問題であります。そこで私は委員長を通じて政府当局に防衛六カ年計画なるものの提示を求めておるのでありますが、いまだにその資料の提出がございません。過日三十年度におけるところの防衛計画についてその資料の配付がありました。この際資料の提出がなされておりませんが、防衛六カ年計画の構想について私は政府見解をただしたいと思うのであります。
  74. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 今まで私この委員会でもたびたび申し上げておるのでございますが、政府におきましては自衛隊しかしただその増強の程度、内容等につきましては、これは国力を十分考えて妥当なところに持っていくようにせねばならぬ、そういうところからせっかく研究いたしておりまして、いまだ成案を得るに至っておりません。
  75. 小平忠

    ○小平(忠)委員 過般の新聞紙上に――これは三月五日と記憶いたしておりますが、防衛庁の防衛六カ年計画なるものの試案が発表されました。これは三月十四日の午後二時に、大村前防衛庁長官以下防衛庁幹部が集まりまして、最終的な案を練ったはずであります。この大村前防衛庁長官からあなたは引継ぎを受けておりませんか。
  76. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 大村長官の当時におきましても、防衛庁の案は発表したことはございません。
  77. 小平忠

    ○小平(忠)委員 その後具体的にもちろん研究はされておると思うのであります。第一次案から第二次案、第三次案、今日においては第九次案までいっているのじゃないでしょうが。現にその資料も一部われわれの手に入っているのです。これはもちろん閣議の了承を得てないからあれでしょうけれども、私が申し上げているのは防衛庁の試案でもけっこうなんです。そういうものがなければ、正式に本委員会に配付になりました当面の防衛計画というものが出てこないと思う。これは場当り的なものですか。そうじゃないと思う。いかがでございますか。
  78. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 長期の計画につきましては、ただいま申し上げますいうに、私はこれはほんとうにあらゆる見地から慎重に研究せねばならぬと思いまして、研究中でありまして、実は防庁衛自体としてもまだ成案を得るに至っていないのが事実でございます。
  79. 小平忠

    ○小平(忠)委員 成案というものは、いわゆる決定案でございますね。これはなくても、一応の試案はあると思う。それがなければ三十年度予算の編成はできないと思う。  それでは伺いますが、先般新聞紙上に発表されております数字は、これはいずれもでたらめなものですか。
  80. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 私は新聞紙上に伝えられたと称するものにつきましては、かれこれ言うことを差し控えたいと思います。
  81. 小平忠

    ○小平(忠)委員 それでは私は防衛庁長官に二、三点具体的な問題についてお伺いをいたしたいと思うのでありますが、あなたの方から配付をいただきました資料によりますと、大体航空自衛隊の増強については、ジェット戦闘機の増強に重点を置いておる。こういったものも、あなたの方では何ら計画性のない無定見な場当り的なものに基いておやりになっておるのでございますか。
  82. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 今回三十年度において増勢します航空自衛隊の予算の前提をなしております計画は、航空自衛隊航空機が約二百三十機、そのうちでアメリカ側から供与期待しておりますものが、約九十四機、他は日本側で……。その大きな部分は練習機でありますが、実用機が六十機ございます。それからそのうちに九機のジェット機を含めまして――昨日もこの委員会で小坂委員の御質問お答え申し上げましたが、三十二年度に及ぶ計画といたしまして、F86が約七十機、T33が約九十七機というものを今計画いたしておる次第でございます。
  83. 小平忠

    ○小平(忠)委員 ただいまの数字は事新しいことではございません。それでは私は防衛庁長官に防衛六カ年計画の九次案なるものについて、これは責任を持てるか、持てないかだけでけっこうですが伺いたい。大体最終年度に陸上自衛隊が十八万人、航空自衛隊が七百十八機の実用機、四百二十機の練習機、海上自衛隊においては百九十八隻で十一万四千トン、海上航空機が百五十六機、対空部隊が十二大隊、これが防衛六カ年計画の第九次案として一応成案を得たかのごとくわれわれ仄聞するのでありますが、いかがでございましょうか。
  84. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 私は今まで申し上げた通りに考えておりまして、研究中であります。そういうことを決定しておりません。
  85. 小平忠

    ○小平(忠)委員 研究中であるということで、私は責任を持てるか持てないかということを聞きたかったのでありますが、次に移ります。  大体以上のような構想がいろいろ防衛庁にあるということでありますが、ジェット機による空軍の増強ということが、具体的に先般配付された資料によっても明らかとなってきているのであります。それによりますと、大体三十年度末にF86を五十四機、これを三十三年度までにF86だけで百二十四機に増強せんとしておる。ところがこれはことごとくF86なんです。しかし今日アメリカでは現にF86の時代じゃない。すなわちF100超音速機の製作に重点を置いて、現にこれを使っている。先般もわれわれ飛行場の現地調査に、横田の基地に参りましたそのときに、現地司令官の極東軍司令部のビエルブ代将が、次のように言っております。F100につきましても、近々この基地に参るだろう。大体日本はすべての点において時代おくれのものを莫大な金を払って持ってきて、実際の場合に役に立たないというのが事実なのでありますが、防衛庁長官どうです。このF86についてももうアメリカでは生産を停止して、F100に切りかえておるというような段階において、三十二年までこのようなF86に重点を置いて増強計画を立てるなどということは、自衛隊の目的である一朝有事の際に間に合わないじゃないですか。
  86. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 御承知の通り、現にアメリカ軍でもF86は第一線機として使用いたしております。またNATO諸国に対しましても、アメリカで生産してこれを供与していることは御承知の通りでございまして、F86はまだ価値あるものだと考えております。今おっしゃいましたように、なるほどアメリカでは超音速戦闘機としてF100台のものも試作、実験いたしておりますが、これに全面的に切りかわりますのには、アメリカとしてもまだ相当の時日を要する模様だと私は承知いたしております。
  87. 小平忠

    ○小平(忠)委員 それでは角度を変えてお尋ねをいたしますが、このF86は、現段階においては、確かに世界的なジェット戦闘機という見地から見るならば、これは実用機として価値のあるものです。しかし自衛隊の三十二年度までの計画によりますと、F86だけについて見た場合、御承知のように、百二十四機を保有するというのであるが、実際のこのジェット戦闘機の戦略目標は、大体どういう点に重点を置かれているのか。
  88. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 航空機は、近代防衛の上から見まして、特に重要であることは申すまでもございません。そしてまた今の戦闘機は、これはむしろ防御でございまして、爆撃機等の攻撃的の武器というわけではございません。そういう点で日本の防衛上必要だと考えている次第であります。
  89. 小平忠

    ○小平(忠)委員 そういたしますと、このジェット戦闘機は爆撃機と違って、大体攻撃ではなくて防御であると言われるが、日米行政協定の第二十四条には、日本区域において敵対行為または敵対行為の急迫した脅威が生じた場合には、日米両国政府は必要な共同措置をとると規定いたしておるのであります。すなわち具体的な問題として、今日この日米行政協定によって米軍の基地を現に日本に置いてある。こういうような観点から、御承知のように緊迫した台湾海域の実情から考えてみますと、この日米行政協定第二十四条に規定しているような事態は、これは絶無だということは言えない。そういう場合に、この日本の航空自衛隊はどのような行動をおとりになることになりますか。この規定から参りまして……。
  90. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 これは協定の適用解釈の問題でございますから、政府の正式の見解は、外務大臣からお答えするのが適当かと存じますが、私に御質問のようでございますから、私の見解を申し上げますと、二十四条は今おっしゃいましたように、日本区域において発生した敵対行為の場合あるいはまた敵対行為の急迫した事態が生じた場合に、両国政府のとるべき共同措置についての協議を規定してある次第でございます。そしてその両国政府間の合意は、現在まだ存在していない次第でございます。
  91. 小平忠

    ○小平(忠)委員 外務大臣の見解はいかがですか。
  92. 重光葵

    ○重光国務大臣 さような危機が生じた場合におきましては、この条約の規定によりまして、直ちに双方のとるべき共同措置について協議するつもりであります。
  93. 小平忠

    ○小平(忠)委員 協議に出て、大体どういうような結論が想像されますか。
  94. 重光葵

    ○重光国務大臣 それは、協議の結果次第によることと私は存じます。
  95. 小平忠

    ○小平(忠)委員 それでは具体的に申し上げます。外務大臣に承わります前に防衛庁長官に伺いますが、現に台湾海域の緊迫した事態というものは、これは全世界の人類が非常に注視しております具体的な問題として、米軍の基地が日本にある。米軍が保有している原水爆を日本あるいは日本の近接の地域から搭載した爆撃機が敵の攻撃に向った、そして原水爆を放したという場合に想像されることは、日本の至るところの基地が攻撃されるということもないとは言えない。そういう場合に日本の航空自衛隊はどういう行動をされるか。
  96. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 いろいろの場合を想定しての御質問でございますが、各個の場合の態様によりますから、一がいに、こうだ、ああだということを申し上げることは非常に困難と存じます。もちろん自衛隊の目的はあくまでも外国から武力攻撃のあった場合に、国を守るために必要な場合、そしてしかもその必要を総理大臣が認めた場合に国会の御承認を得て出動するわけでございます。それによってきまる次第でございます。
  97. 小平忠

    ○小平(忠)委員 現に防衛庁法の規定に従って、自衛隊は直接侵略に対決するということも明白になっておりますし、具体的に日本にある米軍の基地を敵が攻撃するというような場合に、日本の自衛隊は日米行政協定、さらにさかのぼっては安保条約の規定によって黙っておれないと思うのですが、どうでしょうか。
  98. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 自衛隊の行動につきましては、防衛出動の場合、その他の場合につきましても、厳格に法律でその要件等を規定しておりますから、その要件が満たされる場合に、その手続に従って行動する以外の行動はとれないわけであります。
  99. 小平忠

    ○小平(忠)委員 ただいまの安保条約、行政協定の規定に従って、直接的な侵略あるいは米軍との共同戦線、こういうことの具体的な事例を私は申し上げたのですが、そういう場合に自衛隊は出動するのでございますか。
  100. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 私の解釈いたしますところでは、安保条約及び行政協定の中に自衛隊の行動について直接規定した規定はございません。それから自衛隊の行動の法的要件等は、ただいま申し上げた通りであります。
  101. 小平忠

    ○小平(忠)委員 自衛隊法第三条に明瞭にうたっております。「自衛隊は、わが国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略及び間接侵略に対しわが国を防衛することを主たる任務とし、」と明瞭にうたっているではありませんか。
  102. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 それは自衛隊の目的及び任務をちゃんとそこできめておるわけでございますが、その行動につきましては、あとの方で特にその要件等を規定しているものがあることは、御承知の通りでございます。
  103. 小平忠

    ○小平(忠)委員 あなたはそう言って逃げましても、ちゃんと行動についても具体的に書いてあるじゃありませんか。
  104. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 防衛出動の場合につきましては先ほど申し上げたと思いますが、たしか七十六条だったと思いますが、そこにその要件等は明記してある次第でございます。
  105. 小平忠

    ○小平(忠)委員 重ねて申し上げますが、そのような具体的な事態が生じた場合に、航空自衛隊は国を守るという防衛の見地から当然攻撃ではなくて防御のために出動する、これは常識なんです。そうでございましょう。
  106. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 それはそうでありましょうが、その場合にも今申し上げておりますように、法律に規定しております要件を厳格に備えていて、その法律の要求している手続、ことに国会の承認を求めるというような要件が重要なる要件としてあるのでございますから、そういう要件を満たした上でなければ行動はできない次第でございます。
  107. 小平忠

    ○小平(忠)委員 憲法第九条に規定してある武力行使あるいは戦力の規定にかかわらず、吉田内閣を通じ鳩山内閣を通じ、私の判断からすると、常にこのようなごまかしの答弁で事実を歪曲して、具体的にはどうかというと、日米安全保障条約、あるいは行政協定、あるいは自衛隊法と具体的な法律を作り、防衛力というものは政府のいわゆる漸増計画に基いてどんどん進められている。  私最後に鳩山総理に所信を承わっておきたいと思いますが、あなたは鳩山内閣の首班として総理大臣になられる前に、どういうことをおっしゃっていたか。日比谷公会堂においても、地方の遊説においても、あなたはどういうことをおっしゃっておられたか。そういう具体的な観点から見て、あなたは今の自衛隊の行動、自衛隊の増強計画についてもっと国民が納得する説明ができませんか。この機会に承わっておきたいと思います。
  108. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は自衛の目的の範囲内においては、その必要な限度に応ずる限り憲法違反ではないと思っております。そういう趣旨のことは演説で申したことはあります。自衛の目的のためにする自衛隊というものの準備は、少しも憲法違反にはなるまいと確信いたしております。
  109. 小平忠

    ○小平(忠)委員 それではあなたのかつての声明、発言と現在とは全くうらはらのごとく、まるで変ってしまったということになるのであります。これをもってしてもあなたの信念、あなたの所信等がいかに明白でないかということをこの際私ははっきり申し上げたい。  以上の基本的な線に立って、私は次に二、三点具体的な点についてお伺いいたしたいと思うのでありますが、今日政府は防衛六カ年計画あるいは三カ年計画、本年度の計同等、具体的に発表されないにしろ持っておられる。そしてとりあえず本年度の問題なり、あるいはジェット戦闘機の三十二年度までの生産計画等については承わりました。こういうような具体的な情勢から私はお伺いしたい。防衛庁長官にお伺いしますが、一体戦闘機F86一台の製作費はどのくらいかかるのですか。
  110. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 これの製作費といいましても、どのくらいの量を――量産でやるかどうかという事情によることは御承知の通りでございます。アメリカで非常に大量に生産したときの基準額は大体九千七、八百万だったかと思います。今度日本でアメリカから部分品の供与を受けて組み立てますものは、日本側で作りますものが、大体平均いたしまして、約四千六、七百万円だと存じます。
  111. 小平忠

    ○小平(忠)委員 そんな安い値段でできるのですか。間遠いありませんか。
  112. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 これは間違いございません。つまりアメリカ側からその部品等は無償で供与を受ける次第でございますから、そういうことになるわけでございます。
  113. 小平忠

    ○小平(忠)委員 私が伺っているのは、そういう無償で受けるという意味ではなくて、現実に日本がF86を作った場合――これは先般の日米交渉においても、いわゆる提供を受けるものと、日本自体で生産するものとは別になっているので、その日本自体で全部の機材を購入して製作する場合どのくらいかかるかということを聞いておるのです。
  114. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 それだから、先ほども申し上げたわけでありますが、日本で作るといいましても、どれくらいの量を作るかによってその金額が違ってくることは当然でありまして、先ほども言ったように、アメリカの量産時の基準価格というものは大体日本の金にしますと約九千七、八百万だったと記憶しております。
  115. 小平忠

    ○小平(忠)委員 実は、その点につきまして、後日で結構ですから正確な数字をお知らせしていただきたい。  そこで、F86ジェット戦闘機の一カ年の維持費、燃料費は大体どのくらいかかるのですか。
  116. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 これは使用の仕方にもよりますけれども、大体三千二、三百万くらいだと思います。
  117. 小平忠

    ○小平(忠)委員 そういうことから、今長官のおっしゃられたように三千万から四千万の維持費がかかるとすると、六カ年計画でこの実用機が六、七百機ということになりますと、この維持費だけでもかりに三千万と見て三百十億の金になります。そのほかにしかも航空自衛隊、陸上自衛隊、海上自衛隊の増強をするというのですが、この計画は、民主党内閣が今次の選挙において、六カ年計画の最終年度における防衛費の全体の総支出額は千八百億だということを言っておられる。一体千八百億を限度にして、このような増強計画がなされますが、大蔵大臣いかがでありましようか。
  118. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは、将来の増強についてどういうふうに金額を見てやるかということは、具体的に防衛計画が立った後でなければ何とも言えないと思っております。
  119. 小平忠

    ○小平(忠)委員 それでは選挙の際に、大体日本のいわゆる自衛力の限度というものは、六カ年計画の最終年度において千八百億である、こういう線を選挙前の閣議において、三十年度予算を編成する大綱方針をきめる際に出しております。その線はどこから出たのですか。
  120. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 三十年度予算編成の場合に、そういう防衛計画の六カ年計画というものは私は全然存じません。
  121. 小平忠

    ○小平(忠)委員 そういう選挙のときには具体的にこうだ、ああだと公約したことを、まだ半年もたたない今日そういうものは知らないと言う。実に無定見きわまる言だと思います。こういうでたらめなことをおっしゃるから私はあえて追及したくなるのです。問題は、ジェット戦闘機の維持費だけでも二百億、三百億というものがかかるのですから、政府のこの防衛力漸増計画についてはほんとうに具体的な計画をもってやらぬと、国家予算全体の中に占める割合というものは脅威的なものになる。現に本年度の分だけでもどういうことになるかといえば、大体本年度予算は防衛関係費の総額が千三百二十億です。それに予算外が百五十四億あります。さらに前年度の繰り越し未使用分が二百二十七億あります。これを合計いたしますと、予算外の百五十四億は今年全部使うものではない、もちろん来年度にひもがついて参りますが、しかし一応この総額は千七百八億ということになる、これは三十年度だけです。これを政府考えておる、防衛庁の考えておるところのいわゆる防衛計画に基いていきますと、一体どれくらいになるか。こういう点を、腹を割って具体的にこうだからという説明はできませんか。最も大事な予算問題について、今度の民主、自由両党の予算修正案においても、この重大な防衛関係費については何ら触れていない。私は大蔵大臣にお伺いいたしますが、この防衛関係費の中で、いわゆる前年度の未使用分の二百二十七億というのは一体どういうものですか。この百二十七億というのは、本年度の防衛関係費のいわゆる総額の千三百二十七億にプラスして使うのですか。そうじゃないのですか。
  122. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 繰り越しでございますが、この繰り越しは機材費関係、施設整備費関係それから船舶建造関係、そういうものがおもなものでありまして、施設整備費と船舶建造費が全額の約八割を占め、機材費が約二割を占めておる次第でございます。その中でもうすでに契約の済んでおりますものが半分を少し越えるくらいで、あとは未契約という状況でございます。
  123. 小平忠

    ○小平(忠)委員 これは本年度の千三百二十七億という予算の総額のワク外にさらに二百二十七億プラスして使うものですか。
  124. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 繰り越しが認められますものにつきましては使用するわけでございます。
  125. 小平忠

    ○小平(忠)委員 そういたしますと、政府は防衛関係費は前年度の千三百二十七億にとどめたいということではない。そうすると、千三百二十七億プラス二百二十七億と理解してよろしゅうございますか。
  126. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 政府で防衛関係予算編成についてきめました方針は、三十年度の新たな防衛経費、それから防衛支出金、これを合せたものこういうことに相なった次第であります。
  127. 小平忠

    ○小平(忠)委員 あなたの答弁は全然違うのです。私の申し上げておるのは、三十年度の防御関係費の総額千三百二十七億というものに未使用分、繰越金に予定されております二百二十七億を予算外にプラスして使うことになりますか、それともこれは使わないことになりますかということです。
  128. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 これは、先ほど申し上げました通りに繰り越しが認められる分は使用するわけございます。これは繰越金そのものの性質からそうなると思います。
  129. 小平忠

    ○小平(忠)委員 そうすると三十年度の防衛関係智の総額は千三百二十七億プラス二百二十七億と理解してよろしゅうございますか。大蔵大臣いかがですか。
  130. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 三十年度の防衛費に関する総額は、千三百二十七億であります。前年度の繰り越しはむろんありますが、しかしまた三十年度において二十一年度に繰り越すものもあると思います。ですから予算としてはプラスじゃない。仕事の分量としては――かりに千三百二十七億全部三十年度に使う、そして前年度からの繰り越しが二百億幾らありますから、仕事の分量としてはふえると思いますが、予算関係ではないと思います。
  131. 小平忠

    ○小平(忠)委員 それはわれわれもわかっております。もちろん三十年度から三十一年度に繰り越しになる分もわかっております。政府は防衛関係費は千三百二十七億、前年度より増加しないんだ、分担金を削減した分は、選挙の際には内政費に回すと公約したけれども、その折衝においてひもがついて、自衛隊の予算の増強に回すんだということになって、結局総額を千三百二十七億に抑えたと自慢されておる。しかし今大蔵大臣が説明したように、実質は繰り越し分はプラスして使う。事業量がそうだということになる。しかし私は政府の無定見なる防衛関係費の削減を主張しているんではないんです。今回自由、民主両党の予算修正において、二百十五億の財源をあのように苦しい産業公債発行に求めたのであるが、こういう点に求めることはできないのですか。
  132. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今回の財源は、財政からいたしまする経済に対する投融資、あるいは経済自体の力に振りかえるということに基本があるのであります。防衛関係予算については、これを変更するわけには参らないのであります。
  133. 小平忠

    ○小平(忠)委員 時間が貴重ですから、防衛関係につきまして私は以上の質問をもってやめたいと思います。思うに三十年度予算編成だけでなく、従来吉田内閣時代から、毎年度の防衛関係費の予算の内容を見るに きわめてずさんきわまるものである。特に予算の使途につきましても、自衛官の養成という面において、現実に各自衛隊のキャンプをごらんなさい。その施設において、衛生あるいは給与あるいは被服、こういう面できわめて徹底を欠く点があるのであります。昨年私は、今は滋賀県知事になりました自由党の森幸太郎氏と、予算委員という立場からこの自衛隊の実態を見ました。具体的に例をあげることは時間がないから申し上げませんけれども、もっと自衛隊そのものの内容を検討して、予算の使い方がもっと検討されなければならぬ。過日も新聞紙上に出たが、自衛隊の内部においてあのような見苦しい事件が起きてきている。こういう事柄を特に防衛庁長官大蔵大臣も十分に反省せられて、自衛隊が真に国民に理解をされ、納得されるような会計、さらにひいてはアメリカ一辺倒、アメリカの言いなりほうだいでなく、国民生活の安定、民生安定という見地からこの防衛費を削って、国民生活安定の方向に回すような考え方ぐらい今の内閣は持っていただきたいと思うのであります。  次に私は日ソ交渉につきまして本院並びに参議院におきまして予算委員会なり外務委員会で、いろいろ具体的に質疑がかわされております。そのうちで私は二、三点総理大臣並びに外務大臣の所見を承わっておきたいと思うのであります。  日ソ交渉の基本方針について政府は、懸案解決と国交回復とのかね合いを不明確のままにいたしておるのであります。そこで具体的にお伺いいたしたのでありますが、今度の日ソ交渉におきまして、もし領土問題が妥結しない、どうしても話し合いが進まないというような場合でも、平和条約を締結するお考えでございましょうか。総理大臣に承わりたいと思います。
  134. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 外務大臣でいいでしょう。外務大臣の方が正確だから。
  135. 重光葵

    ○重光国務大臣 この点は従来たびたび御説明をいたしておるのでありますが、領土問題等については、日本は主張がございますので、その主張を十分貫徹するようにあくまで努力をする、こういうことで、貫徹しない場合の予想はいたすことを差し控えなければならぬ、こう思っております。しかしこれは理論の問題としては、いろいろのことを考えなければなりません。むろん心がまえとしていろいろなことは考えなければなりません。もし理論上そういう場合になったらどうするのかというお尋ねであると仮定して、その場合においては、その場合に国家の向うところに従って最善の、最も利益のある方法によってこれを考える、処置すると申し上げるほかないと思っております。
  136. 小平忠

    ○小平(忠)委員 私は日ソ国交調整というものは非常に重要な問題だけに、懸案解決に重点を置くのか、まず国交調整に重点を置くのか、こういう重点の置きどころの問題だと思います。先般外務大臣は、五月二十四日と思いましたが、参議院の外務委員会で、さらに六月四日の衆議院の外務委員会で、なしくずしの調整には応じない、こういうふうに言明していると思います。これはきわめて重大であります。この点について総理大臣見解いかがでございましょうか。
  137. 重光葵

    ○重光国務大臣 私に直接のお尋ねじゃないのではなはだ相済みませんけれども、私が言った言葉についてのお尋ねでございますから、私より一言御答弁を申し上げます。  なしくずしの交渉には応じない、あるいは私もそういうことを申したかもしれません。しかし実は今伺ってみて、なしくずしの交渉というのはどういうことでしょうか。それがもしソ連側からしばしば放送される、まずやさしい問題を解決して、そうしてそれでもって日本における公使館、大使館をこしらえて、そうして進んでいこうというふうななしくずし、平和条約を締結する事態に達しない前に、平和条約を締結したと同じような効果をおさめていこうという、ソ連側、むしろ共産党の側の方面からしきりにいわれる主張であるならば、あるいは今の御説明はそういうことかもしれませんが、それに今すぐ応ずるということは、私は申すことはできません。これはやらない方が国家の利益である、こう思っておるのであります。
  138. 小平忠

    ○小平(忠)委員 総理大臣見解を聞いているのです。
  139. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ソ連との国交調整をするということは、結局ソ連とは戦争状態の始まる前の状態に引き戻したいという念願でありますから、戦争によって起きたところのいろいろの問題が解決してから国交調整するというのが当然だと思うのです。けれども、交渉はしてみまして、領土問題等について非常に長引くような場合に、その終結まで待つのがいいか、あるいはその途中において数項の問題について解決したときに国交を調整した方がいいかは、そのときの事態によってきめなくてはなりませんから、あらかじめ予想はできないと思います。
  140. 牧野良三

    牧野委員長 小平君、もう時間が経過したから、どうぞよろしくお願いします。
  141. 小平忠

    ○小平(忠)委員 おなかがすいてきたでありましょうから、適当に、なるべく答弁も簡潔に願いまして――小坂君が一時間四十五分、田中君が一時間四十分ですか、そういうような時間は私はやろうと思っていません。なるべく約束をした時間内にとどめようと思っていますが、若干重要な事項が残っておりますから、しばらく御猶予を願いいます。
  142. 牧野良三

    牧野委員長 わかりました。
  143. 小平忠

    ○小平(忠)委員 私はただいまの総理大臣の御答弁、きわめて重要であろうと思います。というのは、やはりただいま外務大臣がおっしゃったような事態が起らないと限らない。私は具体的にお伺いいたしますが、かりにソ連が一方的に戦争終結宣言を行なってきた場合には、どういう態度に出ますか。その場合の法的根拠はいかがでございましょうか。
  144. 重光葵

    ○重光国務大臣 その点においても、たびたび私の意見を申した通りであります。ソ連が一方的に戦争終結宣言をするということは、勝手でございます。それはソ連も勝手であります。日本も勝手であります。
  145. 小平忠

    ○小平(忠)委員 さらにお伺いいたします。そういう場合、これはあり得るのです。勝手に一方的にやってくる、そういうようなことがやはり一歩前進なんだから、それじゃいいじゃないかということになって、具体的な問題として、通商代表部を設置するとか、あるいは貿易協定を結ぶとかいうような問題にまでこれは発展しないとも限らない。そういう場合のこともやはり考えなければならぬ。そういう場合はいかがでございましょうか。
  146. 重光葵

    ○重光国務大臣 すべて将来の事態の発展は考えなければなりません。それはそれだけではありません。国際関係全局から見、日本を中心とした情勢考えなければなりません。しかしながら、今戦争終結を一方が宣言したから、すぐ通商関係が起るとか、そんなことはございません。現にソ連がドイツに対して戦争終結をしたけれども、そういうことは全然起っておらないのが現状であります。それはまだいろいろなほかの要素が加わるからでありますから、日本の場合においては、十分そのときに考慮しなければならぬことだと考えております。
  147. 小平忠

    ○小平(忠)委員 日ソ交渉について、総理大臣からも、外務大臣からも、積極的ないろいろ御意見を聞いております。これは特に選挙の公約でもあります。真剣に日ソの国交調整をすみやかにやるのだ、そういう観点に立って見る場合に、あなたの実際に統括しておる外務省の全体が、ほんとうにあなたの意見の通り、鳩山内閣の意見の通りいっておるかどうか。具体的な例をあげると、外務省の情報文化局で出しております「世界の動き」というこのパンフレット、これなんかきわめて消極的で、急げば事を仕損ずるとか、思うようにいかないのではないかということが具体的に指摘されている。これは日ソ交渉というきわめて大きな外交折衝の上に立って、日本の外務省の、特に情報宣伝とか、そういうような見地に立つ役所として、私はきわめて重大であろうと思う。こういうものをあなたはごらんになっておりますか。こういう点についてどうお考えですか。
  148. 重光葵

    ○重光国務大臣 これも私が説明申し上げるまでもなく、外交を国の利益に沿うて進めるためには、世界の情勢のごときものは、きわめて客観的に具体的に知識を広めなければならぬと思っております。それが必ずしも一方的の意見を代表するというわけではございません。客観的に賛成論も反対論も、世界の情勢、各方面から受け取る情報をそのまま世間に知らせるということは、これは私はいいことだと考えております。そのときには、受け取る情報について、新聞情報などは新聞の書き方によって色がつきますから、そのついた色について、その色だけをつかまえて御批判になるということは、これは私は少しいかがかと考えます。外務省といたしましては、政府の方針に従って、日ソ交渉も熱心に、日本の主張が通ってそうして国交回復、正常化の目的を達するようにしたいという見地から、すべてをやっているわけでございます。
  149. 小平忠

    ○小平(忠)委員 どうも了解できる御答弁ではない。外務委員会なり予算委員会なりで、日ソ国交調整について、総理大臣も外務大臣もその答弁は、われわれ社会党の質問に対してもある程度了解のいくような答弁があるのですが、どうもそういう答弁の中にも、選挙の公約をしたのだから、今度は一応全権団を送って日ソの国交調整をやってみよう。しかし腹は、これはなかなかむずかしいのだ。公約があるから一応やるのだというような面がもしあったならば、国民を愚弄するものだと私は思う。現にこれは新聞のことを言っているんじゃない。外務省のあなたのところで出しているもので、これは具体的な、いわゆる国民の見るものなんです。新聞じゃない。こういうところにそういうようないわゆる批判めいた消極的なことがどのように影響するか、私はこの点を指摘した。どうぞ一つしっかりやって下さい。  時間がありませんから、次に、三十年度の国家予算の中で防衛関係問題と同様に重要な問題は、結局先般河野農林大臣が下手すると不信任にまで発展いたそうとした例の減収加算、さらに本年度の米の供出制度を予約売り渡し制度に改正して、すなわち戦後の長い間の天下り供出というような面の大きな変革を来たそうとしているこの問題について、その新しい制度の基本は、何といっても米価並びに予約奨励金、免税措置、あるいは前渡金というような具体的な条件がすみやかに決定されてこそ、一応予約売り渡し制度がある程度見通しがつくのだということもできると思います。その一番問題になるのは米価であります。本日の新聞にも、大体今月の中旬ごろには本年度の生産者価格を決定いたしたい意向であるかのごとく報道されております。米価はいつごろ審議会に諮問し、いつごろ最終の決定をなさるお考えでありますか。同時にその米価の大体の決定の額はどの程度にお考えでございましょうか。
  150. 河野一郎

    ○河野国務大臣 米価の決定につきましては先般の米価審議会の懇談会の御意見を拝聴いたしまして、その御趣旨に基きまして大体六月の中旬にこれを決定するという方針をきめておるわけでございます。その具体的な決定をどの程度に考えておるかということでございますが、これにつきましては目下検討中でございます。
  151. 小平忠

    ○小平(忠)委員 先般この米価問題については、全国の農業団体、農民組織が会同して、全国の農民代表が一堂に集まって、この米価問題について農民大会を開いた。その席上でこの三十年産米の基本価格について――農産物価格協議会というものがあるのでありますが、ここで慎重審議して、農家の現状を考え、最も農民の再生産を償い、日本の現実の姿も十分に取り入れた、すなわち的確なる生産費方式、あるいはこれはだれが見ても無理ではないという観点に立って本年度の出産価格一万二千四百円というものを決定し、大会で決議いたしております。これについて農林大臣は、この価格の決定は妥当か、あるいはこの線まで本年庭の生産者価格を持っていけるという御意見であるか、いかがでございましょうか。
  152. 河野一郎

    ○河野国務大臣 先般の農民大会の御決議は、御承知の通りに一万三千五百円を目途として、それに近づくようにするような御決議でございます。しかしこの一万二千五百円の算出の基礎につきましては、御承知の通りの実情でございますから、政府におきましてもそれらの点を十分考慮に置きまして目下検討中でございます。
  153. 小平忠

    ○小平(忠)委員 農林大臣の目下考慮ということはわかります。大体の予定は二万二千五百円ではないのであります。一万二千四百円であります。これは一万二千三百六十九円ですが、四捨五入をいたしまして一万二千四百円の数字を出しております。この予算に近いような政府案が出るとお考えでしょうか。とうていこれは開き過ぎて問題にならぬと考えておいででしょうか。
  154. 河野一郎

    ○河野国務大臣 政府におきましては米価審議会の意見を十分に尊重していく予定でございまして、これにつきましては生産費主義を十分に取り入れてやるようにという御意見も、先般においてあったことでございますし、また御承知の通り、六月に米価を決定いたすといたしますれば、生産費主義に十分な考慮を払うということだけでは間違いが起って参りますことは、御承知の通りであります。従いまして生産費主義にパリティ計算を加味いたしまして、この数学的根拠に立って十分考えて参りたいということでございまして、私は今お示しになりました一万二千四百円も十分参考にはいたしますかれども、別途そういう数字的基礎に立って最終決定をいたしたい、こう考えております。
  155. 小平忠

    ○小平(忠)委員 私はなぜこういうことをお伺いするかというと、これは今年度の集荷制度が成功するか失敗するかの分岐点なんです。民主党の米価問題の特別委員会では、廣川弘禅氏が委員長になって、昨今の新聞では一万二百円というような数字を出しておる。かりにそのような線で本年度の生産者価格について、農林大臣が一方的な手段をとられるとするならばこれはゆゆしき問題である。さらにもう一つの問題点は、この予約売り渡し制を実施する際に、予約をいたしました米価と非予約の米価とどのぐらいの価格差をもってどうやるかという点も問題であります。さらに食管特別会計を見ますと、御承知のように三十年度の買上数量は二千三百五十万石、これに対する予算米価は九千七百三十九円でありますから、その買入価格しか予定していないのです。そうすると、政府は具体的にこの価格を引き上げる財源をどこに求めるかというところに問題がある。先般減収加算のときも、この点については農林大臣に具体的にこれをお伺いした。常識として考えられるのは買上数量を減らすか消費者価格を引き上げるか、こういう線が出てこない限り米価の財源がないのだというようないわゆる批判もあるのであります。こういう点について農林大臣は一体この基本的な考え方をどう考えておるか、さらに予約米価と非予約数量に対する買い上げ価格はどのくらいに開きをお考えになっておるか。
  156. 河野一郎

    ○河野国務大臣 お答えいたします。それらの点につきましては、ただいま申し上げました通りに、目下検討中でございます。いずれ十五、六日までの間に決定するものでありますから、しばらくお待ちを願います。
  157. 牧野良三

    牧野委員長 小平君、予定がちょっと変ってきまして、この辺で質問をかんべんして下さい。時間ですから。
  158. 小平忠

    ○小平(忠)委員 一時間四十分も五十分もやると言っておりません。まだ一時間十五分くらいですから……。
  159. 牧野良三

    牧野委員長 つい御熱心のあまりですからやむを得ませんが、この程度でどうぞ……。
  160. 小平忠

    ○小平(忠)委員 ただいまの農林大臣の答弁では私はどうしても理解できない。これは今度の自由、民主両党の共同修正にもきわめて関連する問題でありますから、お伺いいたしたいのでありますが、先般の減収加算三十三億というものは、予算通過後食管特別会計において操作するという答弁であったのであります。この減収加算は、先般の説明によりますと、予算編成の際に農松省は大蔵省にこれを持ち込んで協議したところ、ついに妥結を見るに至らなかったからこれは計上しなかったというのですが、そういたしますと、今度修正の話し合いをされる際に、農林大臣はこの減収加算三十三億についてどのようにお考えになりましたか。河野国務大臣 先般もお答え申し上げました通りに、予算編成の際にはこれは計上いたしませんでしたが、これを支払うことに決定いたしまして、その財源についてはいろいろ考究いたしました結果、予算編成当時と現在とでは外米、外麦等の買入価格その他経理等につきまして、十分これはまかない出すことができるという確信を得ましたので、この財源処置は必要がないということに私は考えたのでございます。
  161. 牧野良三

    牧野委員長 小平君、この程度で頼む。
  162. 小平忠

    ○小平(忠)委員 これはきわめて重要なる問題であります。その後に外米、外麦の輸入価格が値下りになったから、一応財源処置は必要ない、それはけっこうでしょう。私はそれを聞いておるのではなくて、すなわち今度の予算修正の際には、政府修正しなくても、与党である民主党がこの修正に参加したのだから――先般の説明によると、この問題は大蔵省と予算編成当時相談したが妥結できなかった。もし妥結されるならば、食管特別会計にこの減収加算三十三億というものは計上したのだ、妥結しなかったから計上しなかったのだということであるならば、今度この修正を機会に食管特別会計の中も修正をしてしかるべきだ。いかがでございますか。大蔵大臣、この点についてはどうでしょうか。
  163. 河野一郎

    ○河野国務大臣 御承知の通り食管特別会計の性質からかんがみまして、将来にわたって操作をすることでございまして、これは前例に基いて、過去の実績によって操作をするのでありますから、こういうようなことでよろしいと考えておる次第であります。
  164. 小平忠

    ○小平(忠)委員 ほかの委員からの発言があって大臣の答弁がわからない、もう一ぺん答弁して下さい。
  165. 牧野良三

    牧野委員長 農林大臣せっかくでしたが、今小平君が御答弁がわからなかったそうですから、もう一ぺん御迷惑ですがお願いいたします。
  166. 河野一郎

    ○河野国務大臣 もう一ぺんお答えいたします。ただいまお答え申し上げました通り、食管特別会計は、会計の性質からかんがみまして、従来の前例に徴しまして、私はこのままで運用していくことによって差しつかえないと思いましたので、なお将来にわたってのことでございますからこのままで置いておく方が妥当であるということで、これについては、政府といたしましてはこのままでけっこうだと思うのであります。
  167. 牧野良三

    牧野委員長 小平君にお願いします。どうかこの程度で……。
  168. 小平忠

    ○小平(忠)委員 それではもう一問で……。
  169. 牧野良三

    牧野委員長 ありがとう。どうかそうして下さい。
  170. 小平忠

    ○小平(忠)委員 ただいまの農林大臣の答弁は、これは予算編成の建前からいって誤まりなんで、私はこの点の是正を要求をいたしておきます。  最後に一点運輸大臣にお伺いいたしまして私の質問を終りたいと思いますが、あえて運輸大臣に質問をいたしたいと思いますことは、昨年の洞爺丸事件、さらに先般の紫雲丸事件によって、国鉄は国民に大きな衝撃を与え、悲惨な事態を起しております。そこで私は、最近日航の運営について運輸大臣が日航の幹部といろいろ日航法の改正あるいは日航の公社案あるいは日航の役員に対する政府の権限、日航に対する政府の出資をめぐって云々、さらに六月より航空料金の値上げがされております。しかし今日は日航は赤字の状態である。航空機の整備に至っても、赤字のために十分にいかないというようなことも聞くのであります。私はあえてこのことを最後にお伺いいたしたいのは、こういう事故というものは精神の弛緩、油断から起りやすいものでありまして、日航それ自体の安全運航という見地に立って、今日の日航のいわゆる営業状態を政府は今後どのように監督せんとするお考えを持っておるのか。さらに今日日航が使っておりますところの旅客機について、現に国内線と外国線と二種類に分れております。これらの性能あるいは日航のそれ自体の飛行機の寿命であります。さらに整備状態はどのようになっておるか、あるいはパイロット、すなわち操縦士の技能はどのように教育されているか。先般の木星号の事故というものは、もう今では国民から忘れられようとしています。しかしあのこと一事をもってしても――当時は占領治下であった。しかしああいう状態において、忘れられようとしているときに不測の事態は起きるものであります。そういう見地に立って、私はこの国会を通じて、日航の運営が、日航の営業が、あるいは日航それ自体の飛行機が――どうも最近は寿命がないのを十分に整備をしないで動かしておるのではないか、もしも事故があったらどうしようか、洞爺丸事件紫雲丸事件に引き続いて、そういう不安さえもあるのであります。私は、国民が安心して日航機を使えるように、また日航それ自体、貴重な国の資本を投じてこれを運営されるのにどういう方針でいくか、国民の理解できる運輸大臣の御答弁をお願いいたしたいと思います。
  171. 三木武夫

    ○三木国務大臣 今日国際航空は、各国とも非常に力を入れておるわけであります。日本も立ちおくれて、一昨年から国際航空を始めたわけであります。従って立ちおくれた日本の国際航空がすぐに営業のバランスが合うということは、これは無理であります。従って今年度から、予算の御審議を願っておりますように、直接の補助を与えて国際航空を軌道に乗せていきたいということでございます。今は香港あるいは北米航路だけでありますが、近い将来にバンコックあるいはビルマ等に延ばしていきたい、こういうことで今後も政府の補助は継続していきたい、数年間は継続するということで、直接の補助をして、この国際航空に対しての企業を軌道に乗せていくことにいたしたわけであります。国内航空につきましては、六月一日からある程度料金の改訂を行いました。しかしこれは欧州などに比べますと、現在の日本の国内航空の料金が高いとは思われません。一マイル当り十八円六十銭前後、欧州では三十円前後、アメリカのツーリストぐらいの値段。これで大体国内航空というものは、通行税の点も勘案いたしますと、ペイをしていくことになる。要するに、国際航路については今後数年の補助を継続していく。次に日航の安全性についていろいろ御心配がありました。最近は事故が瀕発する現状にかんがみて、交通機関全般に対して厳重な注意を喚起した次第であります。日航が現在使用しておる飛行機はDC4、DC6Bで、この飛行機は、御承知のように世界の優秀なる第一線機であります。この整備につきましては、羽田とサンフランシスコにおけるユナイテッド・エア・ラインで、これはもう六十時間あるいは八十時間ということでチェックしてやっておるはか、あるいはエンジンについては一千時間ごとにオーバー・ホールをして、そうして航空の安全を期しておる次第でありまして、日航の安全についてはできる限りのことはいたしておる、こう考えるのでございます。
  172. 牧野良三

    牧野委員長 川上貫一君。
  173. 川上貫一

    ○川上委員 申合せによる私の質問の時間は二十分でありますから、内容の複雑な質問をすることはできません。ただ三十年度予算の性格の骨組みは防衛関係費だと思うので、この防衛に関係する二、三の点について、総理大臣と外務大臣に簡単な問題でお答えを願いたいと思うのであります。  去る三月の三日に発効したアメリカと蒋介石の相互防衛条約というものがありますが、この適用区域に沖繩及び小笠原が編入されておると思うのであります。このアメリカと蒋介石との相互防衛条約の時分に、日本の政府はアメリカからどういう交渉を受けたか、どういう了解を求められたか。また日本の政府はこの場合にどういう返事をアメリカに対してしたか、この点をお伺いしたいのであります。
  174. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は知りませんから、外務大臣から……。
  175. 重光葵

    ○重光国務大臣 アメリカと台湾における国民政府との間の条約については、通報を受けました。しかしこれに対しては、わが方としては通報を受けただけにとどめてあります。
  176. 川上貫一

    ○川上委員 沖繩、小笠原が日本の領土であることは間違いないのですが、その領土が外国同士の相互防衛条約の適用区域にはめられた、そこでそれの通告を受けた、それでそのまま政府は放ってあるということではどうも合点がいかないと思うのであります。  さらにこの問題について、こういうことがある。一昨年の冬に発効したアメリカと李承晩との相互防衛条約、この防衛条約には、アメリカの行政的管理のもとにある領域が適用区域となっておる。このアメリカの行政的管理のもとにある領域――アメリカと蒋介石との条約には、明らかにアメリカの管轄権のもとにある西太平洋の諸島とある。ところがアメリカと李承晩との条約には、アメリカの行政的管理のもとにある領域とある。この領域の中には、明らかに日本にあるアメリカの軍事基地が含まれるはずだと思う。これがアメリカと李承晩との相互防衛条約の適用区域の中にはまっておる。この点について、どういう通告をアメリカから受けたか、またそれに対して日本の政府はアメリカにどういう交渉をしたことがあるか、この点を伺います。
  177. 重光葵

    ○重光国務大臣 日本内地における空軍基地が、アメリカの行政権のもとにないことは周知のことでございます。従って、その中には問題になっていないとこう思います。
  178. 川上貫一

    ○川上委員 軍事基地には日本の警察権がない、刑事裁判権もない、税金もとれない、治外法権が行われておる、日本の行政権は入っておりません。日本の行政権の入っておらぬところが、すなわちアメリカの行政的管理のもとにある地域なんです。この例は、租界、租借地、それから日本にある軍事基地、こういうのにかかわらず、なぜ日本の軍事基地はアメリカと李承晩との防衛条約にいうところの領域でないのでありますか。これを、一つはっきりお考えを聞いておきたい。
  179. 重光葵

    ○重光国務大臣 それは、日本の領土の中にある日本の領域だとわれわれは考えております。
  180. 川上貫一

    ○川上委員 そうしたら、沖繩と小笠原も日本の領域であります。これはどう……。
  181. 重光葵

    ○重光国務大臣 小笠原も沖繩も日本の潜在主権を持っておるところでありますから、これは領域だと考えております。しかしながら、これらは条約によってその統治の権限、行政権が米国にあるということは御承知の通りであります。
  182. 川上貫一

    ○川上委員 そういう条約はないばかりでなしに、一体日本の軍事基地がアメリカの管理のもとにあるというのは、行政協定、安全保障条約その他でなっておるのです。もしも条約というような問題を持ち出すのならば、そのもとに――日本の軍事基地はアメリカの行政的管理のもとにある。これは私たちが言うのじゃない。国際法学者に聞いてみたらいい。多くの国際法学者は、この条文のもとにおいては、日本の軍事基地は当然にこの防衛条約の中に含まれるという解釈をしている。この問題について、そうすれば、外務大臣あるいは総理大臣は、そうでないということをアメリカと交渉の上ではっきりしておるのでありますか、あなたの方の主観でそうお考えになっておるのでありましょうか。
  183. 重光葵

    ○重光国務大臣 日本国内におけるアメリカの管理しておる飛行場はアメリカの領域である、そういうことはもうきまっておる、私はそういうことのきまっておる定説を知りません。おそらくそれは共産主義国の理論であるのではないかと私は考える。
  184. 川上貫一

    ○川上委員 妙な答弁をされるのですが、日本の国際法学者が言うておる。何も共産主義国かどうかそれは知りませんが、そこの国会図書館でない、法制局で一つ御研究になってもよい。これはちゃんと危険がある、これに適用されるということが……。そうでないという論拠はない、こう言うておる。御研究になったことがあるですか。研究をしもせずに、それは共産圏かなんとかいう妙な答弁をしてはどうもならぬと思う。これははっきりしてもらいたい。
  185. 重光葵

    ○重光国務大臣 先ほど申し上げた通りでございます。
  186. 川上貫一

    ○川上委員 これは答弁ができぬのです。実際に日本の軍事基地がアメリカと蒋介石の相互防衛援助条約の適用区域になっておる、そうでないということを政府ははっきりと答弁しません。これは答弁ができぬのじゃろうと思う。しかし沖繩、小笠原は日本の領土である。小笠原は東京都の中なんです。日本の軍事基地は、これは明らかに全国至るところにある。このような土地が外国の防衛条約の領域の中に編入されておって、日本は何か知らぬがちょっと通告を受けた、まことにけっこうでございますというような顔をして日本の政府がおるというところに、私は三十年度予算の基本的性格があると思う。こういうところに性格がある。  そこでもう一つ聞きますが、それならば、アメリカと蒋介石の条約によると、こういうことを書いてある。沖繩及び小笠原諸島のアメリカ軍は、蒋介石が同意をしない限りは撤収しない、こうなっておる。これは日本政府了解を受けましたか。何かの通告を受けましたか。
  187. 重光葵

    ○重光国務大臣 もしさようなことがアメリカ政府と台湾の国民政府との間に了解ができておるならば、これは彼らのことでございます。日本にはこれは適用のないことでございます。
  188. 川上貫一

    ○川上委員 小笠原と琉球は日本の領土である。ここをアメリカの軍隊が事実上占領しておるのである。ところがこれに対して蒋介石とアメリカ政府は、蒋介石が同意しない限りは撤収しないのだ、こういう約束をしておる。これを、それはよその国がやったことであって、日本は知らぬことだというような答弁が、日本の外務大臣の答弁ですか。日本の領域です。ここのところで、外国の軍隊が帰らぬということを外国同士で約束しておる。それは外国のことであって、日本の政府は知らぬこっちゃ、こういう妙な答弁をなさっては、私は日本の外務大臣じゃないと思う。これでいいのですか。
  189. 重光葵

    ○重光国務大臣 今の答弁の通りであります。
  190. 川上貫一

    ○川上委員 そうすれば総理大臣並びに外務大臣はこういう約束がアメリカと蒋介石の間に行われておるということを御承知でありますか、どうでありますか。
  191. 重光葵

    ○重光国務大臣 今申し上げた通りに、その条約は知っております。知っておりますけれども、はっきり条文をあなたの御研究のように一々記憶はいたしておりません。
  192. 川上貫一

    ○川上委員 日本の領土に外国の軍隊が入っておって、それは外国同士が相談をしなければ帰らぬという約束をしておって、それを日本の外務大臣があまりよう知らぬ、どういう条文だったか忘れた、これではきわめて無責任です。これじゃ外務大臣はできない。もう一ぺん聞きますが、そういう約束がどの条約のどういうところに入っておったのか、これは外務大臣御承知のはずだ。これはどこに入っておったか。
  193. 重光葵

    ○重光国務大臣 いずれ調べました上で御答弁いたします。
  194. 川上貫一

    ○川上委員 外務大臣は知らぬのです。琉球と小笠原を事実上占領しておるアメリカ軍が、蒋介石政権の同意がない限り撤収しないという約束を、ダレスと葉外交部長との交換文書によって条約を締結したと同様の効果あるものとして取りかわしておるのです。はっきり書いてある。総理大臣はこれを知りやせぬのです。外務大臣も知らない、こういうことでは外交はできぬと私は思うのです。これではまるで日本の外交というものはアメリカに対してはもう何でもおまかせ、どういうことでも言いなりほうだい、その他に向ってはいろいろな考え方をるるとしてお述べになる、こういうことがやはりこの三十年度予算の根本的性格をきめているということをどうしても指摘しなければならぬ。予算関係のないものではないのです。千島、樺太の返環の要求をいろいろ問題にしておられる。この問題について私はあれこれ言うのじゃありませんけれども、一方では小笠原、沖繩に対しては、事実上領土権を放棄しておるのじゃありませんか。こういうことでありますから、政府は小笠原の人権擁護の問題についても何もしておらぬのです。そこで一つお聞きしますが、アメリカ軍による小笠原の人権のじゅうりんに対していろいろ申し出をしておると言われましたが、何月何日にだれに対してどういう外交文書をもって交渉なさったか、それを明らかにしていただきたいと思います。
  195. 重光葵

    ○重光国務大臣 小笠原の人権と言われますが、多分小笠原における元の住民の帰還問題だろう、こう考えます。その帰還問題については米国側に従来たびたび督促しておるのであります。その日付並びにその督促の内容等につきましては、それがお入り用ならば調べて申し上げることにします。
  196. 川上貫一

    ○川上委員 それはあとで、日付、あて先、それから外交文書の種類、これを一つお聞かせを願いたい。  時間がありませんから次の質問に移りますが、今度やはり防衛関係で飛行場の拡張が行われておって、政府もこのアメリカの要求を承諾してやっておられますが、今度の飛行場の拡張はB47の発着のためであることは明らかなんです。ところがB47というのは御承知の通り原爆搭載機であって、これは世界周知の事実なんです。この原爆搭載機が発着する、こういうように飛行場の拡張が行われておって、それでなおかつ日本はアメリカの原爆基地にはならないということが言えるのかどうか、この点は簡単でけっこうですから御答弁を願いたいのですが、これは一つ総理大臣お答えを願いたい。というのは、原爆の問題については総理が非常に熱心にお答えになっておるのでありますから、総理からお聞きしたい。
  197. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は原爆というものを普通の兵器というようには考えていません。従ってアメリカが原爆を日本に持ってくるということについては、アメカが約束をしておる通りに日本の同意を得てからの後のことだろうと思うのです。それですから現在は原爆はないのです。日本にないということをアメリカでは明らかにしておるのです。将来持ってくる場合には、私は普通の兵器とは通うから日本に同意を求むるものと思うのです。同意を求めたときには私はこれを拒絶する考え方をしておるのであります。それですから日本には原爆はこないものと思っておるのです。
  198. 川上貫一

    ○川上委員 御答弁意味はわかりました。そうすると今度の飛行場の拡張をするが、ここにはB47は来ないという確約になっておるか。
  199. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は今度の飛行場の拡張はジェット機の発着のためと考えております。
  200. 川上貫一

    ○川上委員 アメリカはこういうておるのです。今回伊丹、三沢その他の飛行場の滑走路を、B47のジェット爆撃機の発着に適するように拡張することを日本側が同意したことに満足しておるというておる。これはB47が着くように日本は飛行場の拡張をすることを承知してくれた、まことにけっこうだというておる。B47が来る、これは来ないのですか。
  201. 重光葵

    ○重光国務大臣 今の文書はそれは何ですか、新聞情報ですか。
  202. 川上貫一

    ○川上委員 それを質問される必要はない。アメリカはそういうことを絶対にいうておらぬのならいうておらぬと言って下さい。
  203. 重光葵

    ○重光国務大臣 私はその情報を持っておりません。
  204. 川上貫一

    ○川上委員 B47は日本の飛行場に今後来ないという根拠を示して下さい。
  205. 重光葵

    ○重光国務大臣 私はいかなる飛行機が来るか来ないかは、それは申すことはできませんし、また心要はないと思います。日本が原爆の基地にならないということを、はっきりと申し上げ得る材料を持っておるということを繰り返して申し上げます。
  206. 川上貫一

    ○川上委員 政府の今まで言うておる答弁は原爆の貯蔵ということを言うておる。原爆の貯蔵とB47が原爆を搭載してくるのとは違うのです。日本に貯蔵するかどうかという問題と日本の飛行場が原爆某地になるという問題とは違うのです。B47は原爆搭載機なんです。これはアメリカでは一千二百機もできておる。世界の主要基地に配属してある。これは原爆を積むのです。これが日本の飛行場へ来るのです。そのために滑走路の延長を要求しておるのです。こういう事実があるにもかかわらず、日本は原爆基地にならぬと幾ら言われても国民は納得できないのです。そこでほんとうに原爆基地にならぬということを政府が言われるなら、日本の飛行場には今後B47は来ないのですということを証明しなければ、これは言われないのです。こう思いませんか。政府の外務大臣の御答弁ではとても国民が納得しないと思うのです。この点はどうでしょう。
  207. 重光葵

    ○重光国務大臣 私は共産党の方面からしきりに、アメリカは原爆を日本に持ち込むとか、基地にするとかいうことを言われることを知っております。しかしそう言われたことは根拠はないのです。われわれのはっきり申し上げることは、アメリカはその意思なし、こういうことなんでありますから……。
  208. 川上貫一

    ○川上委員 何も共産党が言うておるのじゃなくて、国民が言うておるのです。B47というのはここに写真があるのです。この写真を見たらわかる。この写真の下半分がまっ白くなっておる。これはおそらく日本では初めての写真だと私は思うのでありますが、この下の白くなっておるところは、原爆を投下してこれの放射能を防ぐ装置ができておる、自分でほおりますから。この写真は外国の雑誌にはありましたけれども、日本の雑誌に載ったのは初めてなんです。これは明らかです。これがB47なんです。説明がついておる。原爆投下の放射能を防ぐ設備だ。このB47が来るために滑走路三千メートルが要るのです。B52は三千六百メートル要るのです。今さしあたり日本の飛行場は三千メートルに延長しておるのです。この三千メートルというのがB47が発着する最低の限度なんです。ここまで要求してきておる。これを今度の防衛分担金の折衝で日本はのんだ。のんで三千メートルに拡張しておる。そこでアメリカはちゃんとこういうことを日本が同意してくれたことは満足だと言うておるのです。明らかなんです。こういうことが明らかなのにもかかわらず、政府の当局者が原爆は日本には来ぬのだというようなことを言うのは、私は間違いだと思う。そうではなくて、その危険がありますということをなぜ正直に国民に知らせないのですか。危険があるじゃないですか。こういうことになりつつありますから、国民諸君も力を合せて戦争を防ごうじゃないかということをなぜ政府は言えないのか。こういうことを言おうとしないで、ひたすらにアメリカのやり方については隠すという態度、これは私は国民の立場に立った態度ではないと思うのです。今国民が一番心配しておる問題は原爆じゃないですか。原爆基地になるということじゃないですか。原爆基地になる、これが出ておるのです。今後はごらんなさい。必ず雑誌新聞にこれが出るに違いないのです。こういうことについては、外務大臣でも総理大臣でも、実はこういう事情になっておって、そのような危険はあるということを卒直に正直に国民に知らせるということが、国民の要求と希望に基礎を置く政府の態度だと私は思うのです。これについて外務大臣はどうお考えになりますか。
  209. 重光葵

    ○重光国務大臣 さような重大な問題でありますから、政府は真相を明らかにして、誤まった宣伝に乗らぬように指導していきたいと考えておる次第であります。
  210. 川上貫一

    ○川上委員 これは幾らでも言えるのですけれども、さっきも言いましたように、私は申し合せの時間は厳守したいと思う。もうほとんど時間がない。そこで残念でありますが、他の機会にこれを譲って今後の問題、討究の問題、国会における研究の問題に私はしてもらいたい。簡単なあげ足取りの問題ではないと思う。私は質問するのに、政府の人に質問して一本とって喜ぼうというようなことを考えておらぬのです。国民の利益のために真相を明らかにしなければならぬ、こう思って私は質問しておるのです。これに対する政府答弁は私は国民の納得する答弁じゃないと思います。  もう一つお聞きしたいことは、濃縮ウランの問題でありますが、これは一点だけです。濃縮ウランを受け入れるのには、アメリカの原子力法の百四条の認可証が原子力委員会から出なければならぬと思う。この形式はどういう工合になるのか。これは外務大臣でけっこうであります。
  211. 重光葵

    ○重光国務大臣 この問題は、日米の間において濃縮ウラン受け入れの協定ができた後に起る問題だと考えております。
  212. 川上貫一

    ○川上委員 これは重大な問題です。原子力協定、濃縮ウラン受け入れ協定ができたあとで百四条による認可証の問題が出てくるという御答弁です。それならばこれは非常に問題だ。私は政府答弁は認可証は要らぬのだということをおっしゃるかと思った。ところがそうでない。これで問題は明らかになった。そうすると原子力法によって認可証を受けた場合の条件は、原子力法第八条によって、アメリカの原子力委員会が国家の防衛と安全保障のために必要と認めた場合には、この貸した、あるいは与えた濃縮ウランの生産施設、利用施設――日本の場合には利用施設に当ると思うが、利用施設に対して物質の回収命令が出せる。作業するために工場ないし施設へ立ち入りを命ずる権限を持つ。第三点が重要です。作業を命令する権利を持つとある。この作業命令の中にはどんなことを命令してくるかわからぬ。この権利を原子力委員会は持たなければならぬ。これが認可証を与える条件である。濃縮ウランの問題では、双務協定に入れる入れぬということが問題になっておりますけれども、アメリカの原子力法というものが全部ものをいうのでありまして、これを明らかにしなければ、ただ条約の上にひもがつくとかつかぬとかいうことを言うておったのでは、濃縮ウラン受け入れがいかに大きな将来の影響を持つものであるかということが明らかにならぬ。この点についてはどういうことになると総理大臣はお考えになるか。
  213. 重光葵

    ○重光国務大臣 あなたの御質問は国内法と協定というものを全然混同された御質問のように思う。日本はアメリカの国内法によって拘束されておりません。ただ協定によって協定の通りやるわけであります。それでその協定によって、アメリカ側がいろいろアメリカの国内法によって日本の協定を履行するということは、アメリカ側のことであります。従いまして日本はさようなことについては、協定以外には何にも拘束を受けるわけはございません。その協定に従ってアメリカ側の必要な手続を経て協定を履行するということに相なっておるのであります。
  214. 川上貫一

    ○川上委員 時間がもうありません。申し合せの時間が参りましたから、私は意見だけを述べておきます。外務大臣はああいう答弁をしておるが、これをやり出したら三十分も四十分もかかる。ただ一口言うておきたいことは、外国の法律は日本に合わぬというようなことを言っておりますが、これはうそなんです。濃縮ウランの受け入れにはアメリカの原子力法がくっついてくる。くっついてこなければアメリカは貸すことができない。これがアメリカの国内法なんだ。これを十分に研究する必要がある。アメリカの国内法の原子力法というものは、アメリカだけに適用するものでよそに適用せぬというものじゃない。この原子力法によって濃縮ウランを出すのです。この濃縮ウランの一切の条件はアメリカの原子力法によらなければ出せないのですから、個々の制約というものは受けた方の国に来る。これは直接アメリカの法律が適用できない場合には、国内法を作らなければならぬ、これはありましょう。これはありましょうが、その約束ができぬ限りは、濃縮ウランを決して日本には出さないのです。ここのところを外務大臣はごまかしておる。これは一言にしては尽きぬと思うが、私は約束の時間が来ましたから、これでよしますけれども、いいかげんな答弁をしてはいけない。これは重要な問題だと思う。
  215. 重光葵

    ○重光国務大臣 私は今のような御非難を受けるのは根拠がないから、申し上げます。アメリカの原子力に関する法律が世界の国際法になったということは、今初めて伺いました。さようなことはわれわれの社会には通用いたしません。日本に関する限りは、協定あるいは条約によってアメリカとの関係が結ばれるのであります。そこでアメリカがその協約を実行するためにとらなければならぬ手続は、それはアメリカの国内法によるでありましょう。それはその国内法の手続を十分にとることができるという前提のもとに、アメリカ政府が協定を結ぶのに違いはございませんから、日本に関する限り協定以上の、もしくは以外の義務は何も負うておらない、また負う必要はない。そういう理屈はどこからも出てきません。
  216. 川上貫一

    ○川上委員 そう答弁になれば、やはり意見を述べておかぬと……。   〔「時間々々」と呼ぶ者あり〕
  217. 牧野良三

    牧野委員長 大臣が答弁したんだから、お許しいたします。
  218. 川上貫一

    ○川上委員 そういうことを言われてはいけない。答弁は要りません。大体協定というのは、濃縮ウランを受け入れるという協定をするんです。このあとでアメリカの原子力法による制約がついてくる。だからあとからやると私はさっきから言っている。ここをごまかしてはいけない。協定文の上に全部が書かれているのではない。協定では濃縮ウランを受け入れるという協定をするんです。しかし受け入れるためには、アメリカの原子力法がものを言うのですから、それをのみ込まなければ、日本では操作できない。ここが大事な点です。これは答弁は要りません。
  219. 牧野良三

    牧野委員長 これにて予算三案に対する質疑は終局いたしました。  それでは午後二時五十分より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後二時二十三分休憩      ――――◇―――――    午後三時八分開議
  220. 牧野良三

    牧野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  昭和三十年度一般会計予算外二案を一括して議題といたします。  右三案に対する質疑はすでに終局いたしております。  この際、日本社会党両派の共同提案として、赤松勇君外十六名より、昭和三十年度一般会計予算外二案の編成替を求めるの動議が提出せられており、かつまた日本民主党及び自由党共同提案として、上林山榮吉対外二十一名より、昭和三十年度一般会計予算外二案に対する修正案提出せられております。これより順次その趣旨説明をお許しいたします。  まず予算三案に対する編成替を求めるの動議の趣旨説明を求めます。岡良一君。
  221. 岡良一

    ○岡委員 私は日本社会党を代表いたしまして、昭和三十年度一般会計、特別会計及び政府関係機関予算につき、政府原案並びに本日上林山榮吉君外三十一名の御提出にかかる修正部分に対しまして、遺憾ながらその撤回を要求し、ここに編成替を要求するの動議を提出いたすものであります。  去る四月二十五日、政府原案が本院に提出されましてより一カ月有余、われわれは鋭意その審議を進めて参ったのでありますが、今般突如として民主、自由両党の妥協の成立によりまして共同修正案提出されました。保守政権温存のためには国民の世論を顧みるいとまもないというあまりにも無原則、無定見の妥協に対しては、世論がきびしく批判をいたしておりますから、この際私から申し上げることは差し控えたいと存じます。  さてわれわれの組みかえ動議の内容でありますが、大体政府は、国民所得の推定において二十九年度六兆一千九百七十億円、三十年度は六兆三千二百三十億円と二%強の増加を見込んでいるにもかかわらず、一般会計予算規模を両年度ともに一兆円のワクで押えているのでありますが、二十九年度から本年度にかけて平均物価は約四%下落しておりますから、実質的には国民所得の増加は名目上の二%増と物価下落による四%増を合せて六%の増加となるのであります。従って本年度一般会計予算規模は、必ずしも一兆円のワクを固持することなく、国民所得の増額に見合って、二%から六%までの増額を行なっても、ことさらに財政インフレを引き起す誘因とはならないのであります。  われわれの組みかえ案はこの点に着目して、もちろん消費的支出の多い一般会計予算は一兆円のワクに抑えましたが、生産的支出や投資的支出の多い財政投融資関係では、国民所得の伸びに正比例した郵便貯金、簡易保険等の増額を見込みまして、これらを原資として財政投融資の増額をはかったのであります。今回の両党妥協案は、この点については、むしろわれわれの方針に屈服したものとも言えるでありましょう。しかしそれにいたしましても、減税、一般歳出、財政投融資の各項目ともきわめてずさんであって、とうてい国家予算として採用できるものではないのであります。たとえば減税において年所得五十万円以下の法人税率を三五%に引き下げると改正しておりますが、年所得五十万円とは全く零細規模の法人であって、中小法人の税率の引き下げの主たる対象は少くとも中小企業等協同組合法でいう中小企業体すなわち資本金一千万円以下の法人を対象とすべきであります。  しかもこの共同修正案の本質は、すでに明らかにされた通り、防衛関係予算は歳出千三百二十七億円、予算外契約百五十四億円、過年度繰越金約二百七十億円を加えると、合計千七百五十億円をこえる多額な防衛費を予算上の鉄則として動かし得なかった点にあるのであります。これに対しわれわれの組めかえ案は、第一に歳入面においては、減税一千億円に及ぶ税制改革を行い、一方では租税特別措置法における大法人に対する不当なる課税減免を大幅に廃止し、結局租税収入では政府案よりも十億円減収とし、歳入規模を九千九百八十六億円に組みかえるものであります。  第二に、歳出面においては、防衛関係費では一千二十七億円を削減し、一般行政費では政府案よりも冗費を節約して二百五十二億円を減額する。一方では、社会保障関係費並びに文教関係費、公共事業、食糧増産対策費関係において、資料に明らかにしたような理由で、それぞれ最低必要経費を増額計上したものであります。また地方交付税交付金の交付率を二二%から二七%に引き上げまして、新規に三百十七億円を計上し、政府が計上している赤字二百億円を埋め、地方道路税、木材引取税、自転車荷車税のごとき悪税に反対いたしまして、これの廃止による百二十億円の減収を補わんとするものであります。また旧軍人恩給については、文官恩給との不均衡を是正し、特に下士官兵に対する支給額を引き上げるために、政府案に比べて二十億円増額せんとするものであって、これは共同修正案のごとく、現行恩給法の強化を目ざすものでなく、恩給法を将来は全国民に対する国民年令制度に切りかえていく過渡的手段といたしたのであります。また本年度産米に対する生産者価格は、あらゆる農業団体が一致して要求し、かつ本院農林委員会も決議している通り、石当り一万二千四百円といたしまして、消費者価格との差額を供出数量全体について全額国庫負担することにして、そのうち一般会計では二百五十九億円だけを負担せんとするものであります。また住宅対策費においては、われわれは政府の公団新設には絶対反対いたします。なぜなれば、公団は高額所得者向きの高級住宅のみを建設せんとするものであって、現在の住宅政策に最も要求されている所得の低い勤労者諸君に対し、家賃の安い住宅の供給は二の次と相なっているからであります。従ってわれわれは、公団に対する投資をやめて、これを国営住宅建設に組みかえるものであります。なお政府は、公務員諸君の給与については、人事院勧告を全く無視しておるのでありますが、われわれはベース・アップはさておいて、 当面の給与の不均衡だけは是正するため、地域給全般、東北及び裏日本各県の寒冷地手当を増額いたしまして、かつ期末手当と勤勉手当をそれぞれ合計して、年間三カ月分に増額するため、新たに百七十一億円を計上いたしたのであります。  第三に財政投融資計画については、原資は、国民所得の伸びに見合う郵便貯金等の資金の増加を見込みまして、これを第一に、本年度に限り地方債の元利支払いのうち、三百七十億円だけを二カ年間支払いを繰り延べし、第二に、開銀、農林漁業金融公庫、その他資料に列挙した対象に対してそれぞれ融資せんとするものであります。  このようにわれわれの組みかえ案は、歳入においては、国民の租税負担の公平を期し、歳出においては、防衛関係費を機動性ある治安力の限界に押え、かつ各経費の不公正を是正して、わが国経済の自立と拡大再生産のための基礎固めをせんとするものであります。慎重なる御検討の上御賛意を賜わりまするよう期待をいたすものであります。  なお政府原案並びにその一部に対する両党の共同修正案に対し、撤回を求め、その趣旨を説明申し上げたいのであります。予算修正という以上、当然まず修正の内容、すなわち政策の打ち合せがあり、その財源のめどが検討され、最後に金額がはじき出されるものと承知しておったのでありますが、今度の共同修正案では、これが全くその逆をいきまして、縁日商人よろしくの取引により、まずその総ワクがきまり、さらにこれが減税六十七億、財政投融資六十億、一般歳出八十八億と項目別に仕切られ、ぶんどり合戦のような騒ぎのあとで、最後の仕上げは大蔵官僚の手にゆだねるという、全く前代末聞の修正が突如として現われたのであります。保持政権温存のためには、国会の予算審議権、ひいては国家の経済や国民の生活を左右する国の予算の権威を顧みないという、その不見識、不誠意に対しましては世論がごうごうの非難を放っていることは、皆さんも御存じの通りであります。  その内容の矛盾については、さきにもいささか触れましたが、要は何ら政府原案の本質を変えるに至るものではなく、いわば再軍備の道を行く親馬に連れ立って、選挙民に尾を振って行く子馬の道行きにすぎないのであります。このような観点からいたしまして、われわれがこの両案の撤回を求める理由の第一は、これらの予算案が全く独立国たるの面目を失い、自主性を欠くものであって、独立を念願するわが国の国務をこのような予算案で執行することはとうてい忍びないとするところにあるのであります。この事実を明らかにするものは、繰り返し本委員会においても指摘されたように、その防衛分担金削減の交渉てんまつであります。予算の編成権は、申し上げるまでもなく重大なる国務であるとして、憲法にも明らかに示されておるのであります。しかるにこのたびの予算編成過程、特に分担金削減の交渉を通じ、心ある国民が政府自主性に対し疑義を持つに至ったことは、まことに取り返しのつかぬ痛根事と存ずるのであります。  鳩山内閣は、第一次の組閣の当初におきましても、すでに防衛分担金削減の意志を示唆されているのでありまして、昨年十二月下旬から本年新春早々にわたりまして、アリソン大使あるいはラドフォード提督など米国側の要路の人々との間に瀬踏みの話し合いが行われておったことは、すでに報道されておるのであります。  さらに総選挙に臨むや、鳩山総理みずから、分担金は二百億削減し、うち百億はこれを住宅建設等に回したいと言明しておられるのであります。総理は、本委員会において言を右左にしておられるが、責任ある一国の総理として、総理大臣のためにも、このような態度は私のとらないところであります。しかもこのような御発言があったればこそ、アリソン大使からのあの警告的な非公式の申し入れが参っておる。これまた本委員会の追及に際して否定をされておられるようではありまするが、すでに権威ある新聞、雑誌によって全国民の周知しているところであり、これを否定しようとする政府の態度そのものが、自主性の喪失を示すものと申し上げたいのであります。その非公式な申し入れによれば、防衛費は九百億を基準額として、これをこゆる部分の半額だけは分担金の削減に応じようというのであり、加えて当時ヘンゼル国防次官補やスタッセン対外活動本部長官があわただしく往来をいたされて、わが国の防衛努力に露骨なる不満を表明しておられるという事実も アメリカの意図を察するに余りありというべきであります。いよいよ三月下旬重光外務大臣並びに一萬田大蔵大臣は、アリソン、ハル、テーラー氏ら米側首脳部と会談を始められ、二週日以上の日を費して、四月十一日、分担金は五百五十八億から百四十三億削減するが、条件として防衛庁費の増額、ジェット機滑走路の拡張、ジェット戦闘機の国内組み立て、あるいは部品の製造等を要求されておられるようである。これでは事実上。防衛関係費の総ワクは千三百二十七億を四十五億上回る結果となる。そこで政府は周章ろうばいをしまして、結局四月十五日、ほとんどアメリカ側の防衛要求をのんで、ただ形の上だけ千三百二十七億のワクを維持し得たにすぎなかったのであります。従って十九日発表された日米共同声明は、その間の消息を雄弁に物語るものであって、分担金は前年度に比べて百五十三億削るが、米軍使用のジェット機滑走路の拡張のため、飛行場拡大の施設費を二十八億増して八十億とし、分担金増額は三百八十億と相なっておるのであります。  防衛庁費は八百六十八億と前年度に比べて百二十六億を増加し、なほ百五十四億円の予算外契約を義務づけられ、これに前年度繰越金二百三十七億円を使い切ることともなれば、防衛費だけでも総額は千二百四十八億にも達せんとするのであります。  その間重光外務大臣の渡米がワシントンから拒否されたり、一方では一萬田大蔵大臣の辞職説が飛び出すという始末であって、政府の面目は内外ともにまるつぶれと相なったのであります。一体このような事実をもってしても、政府予算編成自主性われにありと言い切れるのでありましょうか。  この一連の経過が物語るものは、一つは、日本政府防衛分担金削減交渉というものが、安保条約、行政協定、MSA協定のワク内で行われる限りは、日本国の政府は絶対に主導権を持つことができないというきびしい現実であります。言葉をかえて言うならば、政府のいう防衛分担金削減なるものも、その本体はつまるところ日米共同防衛の名のもとに実施されておるところの、日米共同防衛の名のもとに実施されておるところの、アメリカの極東に対する軍事計画によって左右され、決定をされるものであるというこの動かしがたい事実であります。  このようにして、わが国予算において最も大きな幅を占める防衛関係費が、日本国政府の権限と責任においては決定いたしかねる。これこそ不当なる内政干渉を甘受するものとも言うべきであって、独立を待望する国民の断じて承認し得ないところであります。  次に、政府原案並びに共同修正案に対し撤回を求める第二の理由として、この予算の執行によって、わが国の安全と平和をむしろ危うくするであろうという点を指摘いたさなければならないのであります。総理は口を開けば、独立国には固有なる権利として自衛権がある。従ってこの権利を裏づける自衛力の存在は当然であると申されている。しかし独立国、自衛権、自衛力というこの三段論法も、わが国の不完全独立という実態において、その大前提が虚実上すでにくずれているのであります。不完全なる独立国あるいは植民地が他国の意を迎え、これに強制されて築いた防衛力なるものがいかなる運命をたどったかは、すでに幾多の歴史的事実が物語っておるのであります。もちろん私は独立が先か、防衛が先か、ここで卵と鶏のあと先を論じようとは思いませんが、ただ政府が独立のためと称して抱いている自衛という卵が平和の鳩の卵ではなくして、さい疑を象徴するヘビの卵であることを国民は憂えているのであります。インドのネール首相は全国民に告げて、持てる大国のさい疑心こそ、今日の国際緊張の根本の原因である、しかし、持たざる国にとってはこのようなことば関知する必要もないことである、と喝破いたしておる。英国を代表して長く対日理事会の席に連なったマクマホーン・ボール氏も、アメリカの対日政策の根本は、いかにして日本を反共の防壁たらしめるかにあると忠告をしているのであります。しかしアジア・アフリカ会議において、アジア・アフリカ三十余カ国は、戦争によって国際紛争を解決しない、同時に大国のあと押しで他国を脅威するような個別的、集団的防衛をしてはならないと、はっきり宣言をいたしているのであります。わが国の平和憲法の精神は、このようにして今日独立を念願するアジア・アフリカの決定的な世論と相なっているのであります。われわれは今こそこの情勢を率直大胆に認識いたまして、いたずらに大国のしり馬に乗ってさい疑の鬼となるよりは、むしろ憲法に対する誇りと自信を持って、この平和の精神を守るべきであります。平和と独立を愛好するアジアの隣人とともに、平和の道を探永すべきであると信ずるのであります。しかるに鳩山総理は、不用意にも、台湾海峡に危機の迫る事態において、原子兵器を使用しようというワシントンにおけるダレス言明に呼応して、東京においては日本の基地に原子兵器の貯蔵もやむなしという鳩山言明をあえてされているのであります。防衛分担金の交渉の過程においても分担金削減とは何のゆかりもないジェット機の組み立てや、滑走路の拡張を承認する羽目に陥り、あるいは科学文化の費用はこれを軒並みに抑えながら、軍用マイクロウエーヴの増設や兵器の技術研究に必要なる予算として七億円を増加いたしまして、十三億六千万円を計上しているのであります。このようにして自衛隊の性格は、今や語らずといえども、おのずから本来の自衛の目的から攻撃的性格に変貌して参ったのであります。今試みに、アジア全土と全人口について見ましても、その三〇%から四〇%が、あるいはインドを中心とする中立国、または中国を中心とする共産圏に属し、政府のいう自由陣営なるものは大韓民国、中華民国、タイ、フィリピン、これに日本を加えて、その領土、その人口においてはアジア全体の二〇%以下にすぎないのであります。しかも、この共産圏と中立国が平和の約束をくさびとして、いよいよ友好協力の関係を進めているのであります。このような情勢のもとにおいて、いわゆる自由主義諸国なるものが依然として自由の名において大国から強制された軍事的義務の重圧に苦しんでいるのであります。これは日本の悲劇のみにはとどまらず、実にアジアの悲劇と申さねばなりません。アジアの平和が世界の平和のいしずえである限り、日本もよろしく今日の大局に開眼し、真に平和と独立の大道につくべきであると思うのであります。このような意味において、本予算の執行は、アジアの動向を無視し、アジアの平和を愛好する友人を裏切り悔いを百年の後に残すものであって、とうてい日本社会党は賛意を表しかねるのであります。  第三点として、公約違反の責任を究明いたさなくてはならないのであります。政府の最大の公約は、民生を圧迫しない限度において防衛力を整備しようという第一次組閣以来の言明、さらには防衛分担金削減して民生の安定に充てようというこの公約が、とうとう守られなかった点にあるのであります。これが守られなかったばかりか、四月十五日の日米共同声明ですでに述べましたごとく、日本の自衛隊を漸進的に増強することとし、来年以降日本の努力のより大きな部分を防衛目的に振り向けるという約束をいたし、とりあえず、百五十四億の予算外契約を背負い込んでしまったのであります。このことは単なる公約違反の責任のみではありません。独立を待望し、きゅう然として政府の言明を支持した全国民に対し、まことに冷水三斗の思いを与えたのでありまして、この点における政府責任は公約違反以上に重大であると申さねばなりません。元来政府が選挙に当って公約された各種の事業を最小限に実現しようといたしましても、少くとも百億以上防衛関係費を削減しなくてはできない相談であることは常識でもわかるのであります。従ってこの一角が失われるとともに、政府の公約は全面的に挫折し、経済六カ年計画そのものも第一年度においてすでに当初の計画がくずされるという羽目に立ち至っておるのであります。たとえば政府は四十二万戸の住宅建設を約束した。しかしふたをあけてみれば、政府資金によるものは十七万五千戸にすぎないのであって、しかも三万戸の増築分を加えてようやく数字のつじつまを合せているのである。六万戸の公営住宅にしたところで、今日の地方財政の苦境から見て百億に近い負担にたえられるかどうか、その計画の達成もまたまことに危ぶまれている実情であります。今日全国の住宅不足三百万戸といわれ、国民が旱天に慈雨のごとく待ち設けた四十二万戸の住宅建設が、まずこのように羊頭を掲げて狗肉を売るの結果と相なり果てたのであります。  政府はまた社会保障の強化を公約しておられる。本年度予算においても社会保障関係費は一千億をこえたと自負されておられるのである。しかしその予算の内容たるや、生活保護法に基く扶助費と失業対策諸費がその半ばをこえているのであります。生活保護や失業関係費の予算増加とは、言いかえれば国民生活の貧困の度合いがそれだけ増大したことを示すものであって、むしろ政府の失政を証明するものにほかならないのであります。日本における社会保障の強化は、現在行われている社会保険諸制度の整備にあることは常識と相なっているのでありまするが、政府管掌の健康保険が、治療医学の進歩、利用度の向上、あるいはその制度運営の改善等によって、療養給付費が著しく増大した。その結果、財政収支に赤字が生じまするというので、その穴埋めを直ちに労働者やその家族や、医者や、事業主の犠牲に転嫁して顧みないというのであります。これでは社会保障の強化どころか、社会保障の百歩の後退であって、ここにも重大な公約違反の事実を指摘いたさねばならないのであります。  公共事業費、災害復旧費、食糧増産費等においても削減が無慈悲に行われまして、治山、治水の計画もこれでは当初の予定が狂ってしまっているのであります。人口増加による百万石の増加分はとうていこのような増産計画によってはまかない切れるものではないのであります。しかも予算編成当時における与党の強引さに押されまして、予備費が著しく食い込まれ、本年は雨が多いと伝えられておりますが、災害発生に対してはきわめて危険千万なる予算的空白の状態が出現をいたしているのであります。  政府はまた低額所得者に対する減税を公約して参りました。なるほど本年度の減税総額三百九十四億、しこうして給与所得者の税金は全体で約百七億の減と相なっております。しかし一方では油税については約二百億、砂糖消費税については六十四億と間接税が過大に見積られ、消費の抑制を唱える政府が、かえって間接税の増徴をねらおうというまことに予算的な矛盾を平気で犯しておられるのであります。しかもこの程度の減税では、夫婦子供三人の月収三万円のサラリーマン家庭ではわずかに六百五十円前後の減税でありまするが、一方株式の配当所得に対する減税は政府原案で半減され、修正案によってさらに優遇をされんといたしております。まことに不公平千万と申さねばなりません。  一方資本蓄積に名をかって法人税は二%引き下げておりまするが、これは貸し倒れ準備金や、価格変動準備金、退職準備金を持つ大企業だけが、臨時措置等も加わって実効税率は大きく軽減をされ、ここにも中小企業との間に大きな不公平が生れているのであります。なお一万九千円以下の非課税所得者は、約七百万に達すると申しておりまするが、これらはもちろん税制の改革によっては何らの恩恵に浴することはできないのでありまするけれども、社会保障の後退によって、彼らは生活水準の切り下げを強要されているという事実をわれわれは見のがすことができないのであります。このようにして低額所御者の減税という公約も、事実においては十分に果され得なかったのであります。  これを要するに大国の強制による防衛関係費の不当なる重圧と、一兆予算とのワクに締めつけられまして、住宅建設も減税も食糧増産も社会保障も、政府の公約が、全く雲散霧消をいたしたのでありまして、国民の政治不信の声はすでにおおいがたいものがあるのであります。しかも一方では産業合理化に名をかって、鉄鋼三百二十四億、機械八日二十三億、セメント三百十億、硫安二百十六億、石炭四百九十億と巨額にのぼる財政投融資が、惜しげもなく三年、五年の間にわが国の基幹産業の大手筋に投じられようとしております。  一体アメリカとはこと変ったわが国の低い産業的立地条件、あるいは現在の重い防衛負担のもとにおいて、一体資本主義の政府の手で遂行される産業の合理化なるものが、完全雇用と拡大均衡を実現できるものであるのかどうか、完全失業者はすでに本年度における政府予想を上回って六十三万人が八十万人をこえている始末であります。このように合理化政策は、ひっきょう独占資本の強化と、大衆の貧困をもたらすことが、資本主義社会の論理的帰結であることは経済学のいろはと申さねばなりません。われわれはかかる観点から、この予算は明らかに公然たる軍事的性格を持つ、大衆収奪の予算であると申し上げざるを得ないのであります。  しかもこの一週間余にわたる民主、自由両党の予算折衝なるものこそ、いよいよ、日本の保守勢力がその主人たちに対する忠勤ぶりをはっきりと国民の前に示されたものであります。  一億予算のワクが事実上くずれた。公債政策が実施段階に入った。来年度以後の消費々出が増大をするインフレの懸念がある。地固め予算の構想がくつがえされる。こうして大蔵大臣がなんと陳弁されようとも、あなたの当初の予算編成の方針はその根本においてくつがえされたのである。しかしこのような一大臣の責任をこえた厳然たる政治的事実、それこそわれわれにとっても、国民にとっても重大なのであります。それはこの無原則、無定見なる妥協、その結果生まれた共同修正を通じて、日本における保守勢力の合同へのスプリング・ボートがいよいよ築かれたということであります。合図をかけるものはだれであるか、合図をかけるものはこの国の主人公と、そして政府並びに日本の保守勢力の主人公であります。この主人たちこそは日本の保守勢力の結集を政局の安定の名のもとに待ちもうけておるのであります。しかしこれらの主人公にとって政局の安定とは公然たる再軍備の強行のためのものにすぎないのであります。  このようにして、今日国民は、鳩山内閣の行かんとする道もまた、かつて吉田政府の歩んで参った道であることを知るに至っておるのであります。国民はこのたびの公約違反のごときも再軍備を意図する諸君の予定のプログラムであったことを見抜き始めておるのであります。総理はしばしば占領行政の行き過ぎ是正が、わが国独立の要件であると申されておるのでありまするが、占領行政の行き過ぎ是正とは、現在日本につきまとっておるこの強制された再軍備の重圧を取り除くことではないのでありましょうか。知らず知らずの間に日本の独立と平和と繁栄を虫ばんでおるこの悪霊は、日本の保守勢力につきまとう宿命的な必然の悪であると総理の良心は感じておられるでありましょうか。しかし目ざめた日本の国民はもはや運命論者ではないのであります。あらゆる苦難を乗り越えて真に日本の独立と平和と繁栄のために戦い進むであろうことをここに心から申し上げまして、私の説明を終ります。(拍手)
  222. 牧野良三

    牧野委員長 次に予算三案に対する修正案の趣旨説明を求めます。野田卯一君。     ―――――――――――――
  223. 野田卯一

    ○野田(卯)委員 私は、昭和三十年度一般会計予算案、特別会計予算案、政府関係機関予算案の修正案につき、提出者を代表いたしましてその理由及び内容につき説明申し上げます。  政府提出昭和三十年度予算案は、これを慎重に審議した結果、最近の経済情勢その他諸般の要請に必ずしも十分適応していると認めがたい部分もあり、政府原案をさらに適切なものといたす意味において、ここに日本民主党、自由党共同して修正案提出いたす次第であります。  修正の根本的な考え方は、国民貯蓄の増加、オーバー・ローンの著しい減少等、金融情勢が正常化に向って着実な足取りを示している今日、租税による財政投融資の量をできるだけ民間資金の活用に肩がわり、これによって生ずる一般会計の余裕を国民負担の軽減と緊要経費の増加に充てるとともに、経済の基盤を強固にするための財政投融資の量の増大をはからんとするものであります。  以上のような考え方に立って修正を加えました第一点は、国民負担の軽減合理化と蓄積の増強をさらに一歩前進させるため、所得税及び法人税において、政府の減税案に加えて、さらに三十年度六十七億円の減税を行わんとすることであります。  その概要を申し上げますと、所得税については、新たに経費控除の制度を設け、社会保険料控除、医療費控除、雑損控除等々、選択的に所得の五%を控除することとし、主として定額所得者の負担の軽減均衡化をはかるほか、産業に対する直接投資促進のため、小額の配当所得に対する優遇措置等を講じ、また未亡人、不具者等の税額控除を引き上げることとしているのであります。  また法人税につきましては、中小企業法人に対する負担の軽減均衡化をはかるため、五十万円までの利益に対しては三五%の低率な課税を行い、これに伴い、農業協同組合等の特殊法人の課税を三〇%に引き下げることとしているのであります。  この減税措置によって、昭和三十年度におきましては六十七億円の税収減が見込まれるのであります。  修正の第二点は、一般会計において緊急必要な経費八十八億円を増額計上したことであります。政府原案は、一般会計において二百六十二億円の出資及び投資を計上し、かつ規模を一兆円のワクにとどめ、その結果、食糧増産費、社会政策費、公共事業費、文教振興費、災害復旧費等の緊要な経費についても、きびしい削減が加えられた部分もあり、現下の諸要請に必ずしも適応しないと認められます。よって修正案に示されているように、食糧増産及び農林漁業の振興安定のための経費を約三十二億円、旧軍人遺族扶助料その他旧軍人恩給関係及び戦没者遺族援護関係費を約二十一億円、国民健康保険、簡易水道補助、世帯更生運動費等の厚生関係費を約七億円、文教及び科学技術の振興費を約七億円、河川港湾等の公共事業費を約十二億円、災害復旧費を四億五千万円、中小企業振興費を一億円、移民促進機関資金に一億円等、当面最も緊要と認められる諸経費を、合計八十八億円を増額計上したのであります。  修正の第三点は、財政投融資の原資調達方法の改訂と緊要な部門に対する財政投融資額の増加であります。今回提出しました修正案の一つの眼目は、前にも述べましたように、租税による出資投資の量をできるだけ縮減し、国民貯蓄の増強策と相あわせて、民間資金の活用によって所要資金の確保をはからんとするところにあります。  前に申し上げました通り、減税による一般会計歳入の減少六十七億円と、緊要経費の増加額八十八億円を合計しますると百五十五億円になりますが、これは一般会計の出資及び投資二百六十二億円を削減して処弁し、削減された出資及び投資の分は別途資金調達の方法を講ずることとしているのであります。すなわち資金運用部資金の増加をはかるとともに、財政資金による金融債及び国鉄債引き受けの一部を民間引き受けに振りかえる等の措置をとらんとするものであります。  さらに財政投融資については、経済基盤の強化の意味において、電源開発、中小企業、農林漁業、特定道路、国鉄新線建設に対する資金量の増加をはかり、また一般会計の歳出増加に伴う地方負担の増加を補うため、財政資金による地方債のワクを二十億円増加することといたしておるのであります。  右に述べましたような操作の結果、政府原案に予定されている金融債の引き受け百七十億円のうち約百四十一億円と、国鉄貸付金百五十五億円の四十五億円、合計百八十七億円が民間引き受けに振りかえられることとなるわけであります。また資金運用部の原資は、当初の計画より約二十九億円の増加が見込まれているのであります。  次に、地方財政との関係について申し上げます。一般会計予算修正の結果、六十七億円の減税によって、地方交付税が約十四億円減少しますので、これは専売特別地方配付金三十億円を四十四億円に増額することによって補てんし、また歳出増加に伴う地方負担の増加は、大体二十億円程度と推算されますが、これに対しては、起債のワクを増加したことは前に申し上げた通りであります。  以上申し上げました修正の結果によりまして、昭和三十年度一般会計の規模は、政府原案の九千九百九十六億円から八十一億円圧縮されて、九千九百十五億円と相なるわけであります。  この修正案は、一面において国民負担を軽減し、一面において緊要経費を確保し、また一面においては、経済基盤の強化を促進するものであり、しかも絶対にインフレの心配のない堅実な財政操作によってこれを行わんとするものでありまして、時宜に適したものと確信するものであります。  何とぞ御賛成あらんことを希望する次第であります。(拍手)
  224. 牧野良三

    牧野委員長 これをもって予算三案に対する編成がえを求めるの動議並びに修正案の趣旨説明は終りました。  これより予算三案の修正案に対する質疑を行います。順次これを許します。  右質疑に対する答弁者として、両党当局者より委員長に対して左の諸君指名方連絡がございました。   中曽根康弘君  福田 赳夫君   松浦周太郎君  三浦 一雄君   田中伊三次君  野田 卯一君   前尾繁三郎君 右の諸君は、答弁に当られる便宜のため、こちらのいすにおかけを願いたいと存じます。石村英雄君。
  225. 石村英雄

    石村委員 提案せられました修正案に対して、提案者及び関係政府当局にお尋ねいたします。  この修正案は、自由党と民主党の提携によって生まれたもので、民主党はゼロ、自由党は四百三十億、そうして、とどのつまりそれを二つに割って二百十五億というようになさったのだと聞いておりますが、政治はあるいは妥協かもしれませんが、しかし、あまりにこれではでたらめで、党利党略の具に供されたということになると思います。世間がごうごうたる非難を浴びせかけておるのも当然のことと存じますが、私はその政治論は別といたしまして、少くとも二百十五億ではありますが、この中にやはり自由党の血が通っておると思います。自由党の血が通っておるこの二百十五億の修正案につきまして、どんなものがひそんでおるか、これが今後の日本の政治経済にいかなる影響を与えるかという点を、少し自由党のお考え方をもとにいたしましてお尋ねいたしたいと存じます。  自由党のお考えとしては、一月二十三日に水田さんが本会議で代表質問をしていらっしゃいますが、その中に、はっきりと自由党のお考えを示していらっしゃいます。つまり水田さんのお話を聞きますと、従来の傾向であった財政インフレ・金融デフレを、財政デフレ・金融インフレに転換すべきだ、しかるに総花的インフレ財政が依然として約束されておる。この民主党の予算編成方針に対して、依然として総花的インフレ財政だ、こうきめつけていらっしゃるのでございますが、この予算修正は、当然自由党のお考えとして、この総花的インフレ財政が是正されておると思いますが、一体どの点にそういう総花的インフレ財政の是正が行われておるか。われわれが考えますと、インフレの根源であるところの軍事費には何ら手を触れなくて、おみやげ予算といわれる補助金なんかを総花的にむしろふやしていらっしゃるのではないか。水田さんが総花的インフレ財政ときめつけられたこの予算を、さらにより総花的にし、インフレ的になさったのではないかと思いますが、御答弁をお願いいたします。
  226. 野田卯一

    ○野田(卯)委員 今の御質問お答えをいたしますが、水田君の言った表現は別といたしまして、われわれ自由党といたしましては、できるだけ最近の金融情勢に照らしまして、財政と金融との持ち分というものをなるべくはっきりさせていきたいという考えを持っております。その一つといたしまして、財政投融資でありますが、御承知のようにアメリカの指導のもとに始めました、税金を取って、その税金でもって投融資をまかなうという考え方は、今日の漸次正常化しつつある経済のもとにおきましては、これは改むべきであるという考えを持っておるのであります。税金で取り立てました金は、これは普通の国家の支出に充つべきである。投融資のようなものにつきましては、これは税金でもってすべきでない。こういう考え方でありまして、投融資につきましては、なるべく民間資金を動員いたしまして、それでまかなっていく方向に行くべきである、こういう考え方に出発をいたしておるのであります。今回の予算修正におきましても、われわれはこの点につきまして非常に努力をいたしておるのでありまして、一般財政で負担をいたしておりました財政投融資百五十五億をはずしたのも、その理由に基いておるのであります。
  227. 石村英雄

    石村委員 水田さんの発言は、やはり自由党を代表しておっしゃったので、決して水田さん個人の御意見だとは思いません。しかし、ただいま財政投融資の点でお話になりましたが、同様の御意見をやはり水田さんもおっしゃっておられます。この財政投融資の点には次に触れることといたしまして、まず修正案のちょっと小さなことですが、きょう修正案をいただきまして見ましたところ、大体何の事業費に幾らということはわかりますが、何にお使いになるのかわからないのが一点ございます。それは、内閣官房の金額で二百万円増額していらっしゃいます。あれは何にお使いになるお考えでございますか。
  228. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 内閣官房の二百万円は、憲法調査会というものを内閣に設置する、そのための費用でございます。
  229. 石村英雄

    石村委員 憲法調査会を内閣にお作りになる費用だということでございますが、鳩山さんの従来の答弁から考えますると、鳩山さんは民主党の中に作る、しかし他党との話がつけば内閣の中に作る、こういう御答弁予算委員会であったように思いますが、これは、結局鳩山さんとしては、自由党、民主党の話し合いがついたから、総理大臣としては、内閣官房にこうした経費をもって憲法調査会をお作りになるということに御決定なさったわけでございますか。
  230. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 憲法改正調査会は、国会に置くか、あるいは内閣に置くかというのが問題になったのでありますけれども、現在の政情においては、内閣に置く方が適当だと思ったのであります。
  231. 石村英雄

    石村委員 まあ総理大臣としては、本懐を一部お遂げになったことでおめでたいと思いますが、(笑声)総理大臣として、せんだっても鳩山さんは、すでに自衛軍という言葉を本会議でも使っていらっしゃるわけでございます。昨年も自由党の憲法研究会か何かにいらっしゃって、九条を改正するというお考えを述べていらっしゃいますが、この憲法調査会をお作りになる基本的な考え方はどこにあるのでございますか。
  232. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 憲法のどの部分を改正するかということは、調査会によって慎重に考慮していくつもりであります。しかし、その改正の一部に憲法九条も含まれることは、当然だと思っております。
  233. 石村英雄

    石村委員 総理大臣の構想が、九条の改正にあるということは明らかになりましたが、もう自衛軍という言葉を総理大臣自身がお使いなるという時代に、あの九条を改正するねらいは、鳩山さんとしてはどこに置いていらっしゃるわけでありますか。
  234. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 憲法九条には、正しい解釈と思うものもあるし、それに対して疑問を抱いておる方もずいぶんあるのでありますから、これを明瞭にすることもまた必要であると考えております。
  235. 石村英雄

    石村委員 この九条はきわめて大事な条文でございますが、憲法については、学者にしろ何にしろいろいろ各条についてずいぶん異論があると思います。ただその異論があるからといって――総理大臣として、自衛軍は差しつかえない、憲法違反でないというはっきりした立場に立っていらっしゃる人が、一部に異論があるからというくらいで改正せられるというのは、少し軽率過ぎるように思いますが、何か憲法九条を改正して、もっとはっきりした形に打ち出したいという御意図があるのではないかと思いますが、どうでございましょうか。
  236. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 明瞭にすることが必要だと思いますし、同時に国民の総意に諮って、九条を改正する必要があると思っております。
  237. 石村英雄

    石村委員 その意図なんですが、たとえば兵役の義務を負わせるとかなんとかいう何か積極的な意図がなければ、もうすでに自衛軍という言葉を、国会の本会議で公然として総理大臣がお使いになる時代に、何か意図なしに、ただ疑問をはっきりさせるというだけではあまりに軽々しく考えられますが、とにかく意図がどこかにおありであろう、もっとはっきりした目的がおありであろう、こう存じますが、いかがでございましょうか。
  238. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は、ただいまのところ徴兵のことは考えておりません。
  239. 石村英雄

    石村委員 二百万円をどういうようにお使いになる御予定でございますか。
  240. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 お答えいたします。二百万円は、憲法調査会設置に伴いまして、いろいろ会議費であるとか、そのほかの諸費用に充てる予定でございます。
  241. 石村英雄

    石村委員 これは、この予算が通ればさっそく発足させられるお考えでありますか。
  242. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 憲法調査会の構成等につきましては、いずれ自由党とも協議いたしまして、内容を確定して、法律案として提出する予定になっております。従って憲法調査会を設置するということについて、両党の合意を得たわけであります。
  243. 石村英雄

    石村委員 ではまだ具体的な意見の調整はできておらない、単に作るということだけに意見が一致したから、とにかく予算だけをとっておこう、こういう御趣旨なんで、いつごろから発足するかというようなことは、全然御予定はないわけなんですね。
  244. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 その通りであります。
  245. 石村英雄

    石村委員 それでは、こまかな点はまたあとで触れていきたいと思いますが、さっき野田さんから御答弁もありましたが、水田さんは、ドッジ政策以来、国家の経費はその年の税金でまかなうという方針を一貫してきたが、この方針は正常でない方針で、そのため日本の税金は不当に高くなっておる、国定の資本蓄積が推進されるとしたら、治山治水とか、その経済効果が長い将来に持続されるような事業は、その年の税収入のみで行うべきではなく、公債発行によってまかなうことがむしろ本筋である、こう言っていらっしゃいます。意見の善悪は別といたしまして、今度の修正案で、やはりこうした治山治水のようなものは公債でやっていこうというお考えがどこに現われておりますか。鉄道のあの分だけでございましょうか。
  246. 野田卯一

    ○野田(卯)委員 直接に政府が治山治水の事業をやるために公債発行する、あるいはそれに類似した方法をとるということは出ておりません。
  247. 石村英雄

    石村委員 従来鉄道の四十五億は、資金運用部でやったのですが、これが公募債に回されておるように見ております。ところで、この点でちょっとお尋ねしておきますが、新聞で見た程度であるので、あるいは間違いかもしれませんが、鉄道に対しては、新線関係で五億資金運用部の引き受けを新たに計上し、そうして四十五億は削って公募債に回すというやり方になっておるように新聞では伝えておりますが、そのようにしていらっしゃるわけですか。
  248. 野田卯一

    ○野田(卯)委員 さようになっております。
  249. 石村英雄

    石村委員 新線の五億を特に資金運用部でおやりになった理由はどこにあるわけですか。
  250. 野田卯一

    ○野田(卯)委員 新線建設の財源といたしまして、資金運用部資金によるということを、投融資の面においてきめたわけでございます。
  251. 石村英雄

    石村委員 何もそれは資運金用部でやらなくとも、公社債でおやりになってもけっこうではないかと思うのですが、特に五億だけを新線だというので資金運用部で確保された理由ですね。これは公社債に持っていかれても十分いいではないかと思いますが、それを資金運用部で先におとりになったということはどういう理由なんですか。
  252. 野田卯一

    ○野田(卯)委員 新線建設の確保をはかるために、財源措置といたしまして、あるいは公募債、あるいは資金運用部の引き受け等、いろいろな方法があると思いますが、この際新線建設の確保をはかるためには、資金運用部資金でやるということでございます。
  253. 石村英雄

    石村委員 結局この五億は、新線が確実に建設されなければならぬということで資金運用部のワクをおとりになった、こう解釈してよろしゅうございますか。
  254. 野田卯一

    ○野田(卯)委員 新線建設の財源として、資金運用部資金に依存する方がよろしいという考え方であります。
  255. 石村英雄

    石村委員 さっきの野田さんの御説明にもあったのですが、水田さんも、国民の税金で国家が金貸しをやっておるような仕事は、この辺でやめたいというようにおっしゃっておられるわけですが、今度の修正案を見ますと、国民金融公庫とか農林漁業金融公庫とか中小企業金融公庫というものに一般会計から出しておる出資を相当部分削られて、そうしてこれを資金運用部の方に回していらっしゃいますが、つまりこの考え方は、税金でこうしたことに金貸しをやるべきではないという考え方に立って、水田さんの御議論がここに実を結んだということに解釈してよろしゅうございますか。
  256. 野田卯一

    ○野田(卯)委員 大体そういう考え方であります。
  257. 石村英雄

    石村委員 従来こうした農林漁業金融公庫にいたしましても、国民金融公庫、あるいは中小企業金融公庫でも、その当事者のやり方に対して、国民は相当の不満を持っておったわけでございますが、従来自由党のときおやりになったのが金貸しのお考えでおやりになったということになると、これは、国民がこの当事者に不満を持ったのはむしろ筋違いで、金貸し根性で政府が出資をしておったのだということになるので、国民の不満は見当違いであった、これは政府に対して、政治に対して不満を向けるべきである、こう思います。  ところでこういう水田さんのお考え、あるいは野田さんの考えと、われわれの考え方はあるいは平行線になるかもしれませんが、こういう機関を従来利用しておったものは、普通では金融が受けられない、もちろん現在生活保護を受けるというようなことはないでございましょうが、このままに放置しておけば、こうした層は低落するというようなものが、この機関を利用しておったわけでございます。こういうものに対して、今後政府が税金で出資してこういう人たちに対する金融措置を講ずる必要がないというのは、あまりに無慈悲な、冷酷な御意見ではないかと思いますが、提案者の野田さんは、やはりこうしたものは税金でやらなくてもよろしいのだ、公庫自身は、税金でなくて、今度資金部になれば、利子も払わなければならぬ、運用面についても相当お困りになってくると思いますが、あくまでこうしたものは、こういう層に対しても税金でやるのは間違いだというお考えをお貫きになるのでございましょうか。
  258. 野田卯一

    ○野田(卯)委員 今のお話、御趣旨がよくわかって参りましたが、たとえば国民金融公庫、中小企業金融公庫、こういうような資金の源泉を税金に求めるという考え方は、今回の修正案におきましても、それを非常に減らしておるわけであります。そうして特別会計の財政資金資金運用部の資金をこれに充てるという考え方でありまして、将来そういうふうにいくべきじゃないだろうか、もしその結果この大衆に対する金融の金利が高過ぎるとかなんとかという問題が起りましたら、それは別途の問題として措置すべきじゃないか、かように考えます。
  259. 石村英雄

    石村委員 これは考え方の問題ではございますが、非常に重要な考え方の問題だと私は思います。税金でやるべきではない、当りまえの一般資金で――もちろんその出どころは、資金運用部というような比較的確実な資金源を考えてはいらっしゃると思いますが、金さえ出せばいいのだというのと、その金は税金でやるのだというのとは非常に考え方が違うと思います。金さえ貸せばそれでいいのだ、こういうのと、国民の税金でこうした層に対する金融的な措置を講ずるという考え方とは、全く雲泥の相違があると思いますが、やはり結局そうしたお考えを持っていらっしゃるということに結論はなると思うのですが、こういう御答弁は、われわれ社会党員は、あるいは理解すると思います、資本家の政府だから、どうせそんなことしかしないのだというように理解すると思いますが、お人よしの一般国民は、そういう御説明ではおそらく納得いたさないと思います。農林漁業金融公庫にいたしましても、今度九十五億に対して八十五億も削減していらっしゃるわけでございます。国民金融公庫でも、二十億の原案に対して十五億も削減していらっしゃる。御持論からいけば、これが筋の通ったやり方だと思いますが、考え方として、国民としてはとうてい納得がいかないと思います。提案者はこれを撤回する、考え方を改められるというような御意見はありませんか。
  260. 野田卯一

    ○野田(卯)委員 私は、ただ金だけ出せばいいんだ、こういうような考え方で申し上げているわけではございません。中小企業にいたしましても、国民金融公庫の対象になる大衆にいたしましても、その人たちの生業なり、あるいは生活なりが確保されるためには、いろんな措置を講じなければならぬ。今その資金の源泉をどこに求めるかというお話でございますが、それにつきましては、一般会計資金をもってこれに充てることを定則とするという考え方は避くべきである、預金部等の特別会計に集まりました財源をもってこれに充てる方がむしろ適当ではないか、かように考えております。またこれらの金融公庫が、その運営上いろいろな金利その他の点について問題が起りましたならば、それについては、別途に措置していったらいいじゃないか。現在すでに国民金融公庫に対しましても、中小企業金融公庫に対しましても、政府の出資が相当行われている。これが今無利息で働いておりますので、公庫の経営がそれだけゆとりがあるわけでございます。そういう点につきましては、今後も当然政府としては見守っていかなければならぬ、かように考えております。
  261. 石村英雄

    石村委員 そういたしますと、もし金利のつく金を出すことになり、従って公庫がこの金利関係でいろいろ支障が起るとすれば、別途の措置を講ずるというお考えのように聞きましたが、そういたしますと、利子補給でもなさるというお考えがあるわけなのでございますか。
  262. 野田卯一

    ○野田(卯)委員 私は、その点まで私の立場としてコミットするわけではございませんが、それらはもちろん利子補給という考え方もある。それをするかどうかという考え方でなしに、そういったいろんな方法を考えていくべきではないか、こういうように思うのであります。
  263. 石村英雄

    石村委員 こういう性質としては、非常に大きな問題を修正案としてお出しになるというとき、当然この利子に対する考慮が私は払われてしかるべきだと思います。出す出さぬは別といたしましても、どういう考えを持って今後やっていくということがなくて、ただこれを削減していけば、税収が減った、一方総花補助金分の足りないところ、これはこの一般会計の出資の二百六十二億から百五十五億削りさえすればこれがうまくいくんだから、やはりそれでよいじゃないかというようないいかげんな考え方でこれが作られたとする。あるいは四百三十億を二百十五億に簡単に二で割ったような、そういう考え方でやはりこの大事な問題もやられておるとは、どうもこれは信じられないのです。私は非常に野田さんに好意を持って聞いておるわけなんです。どうか一つ正直にお考えを……。
  264. 野田卯一

    ○野田(卯)委員 ただいまの問題も、われわれがやりくりをする場合に全然無視をしているわけではございません。各金庫の経理状況というものにも考慮を払いまして、本年度措置におきましては、これでやっていけるという見通しのもとに実行しておるのであります。
  265. 石村英雄

    石村委員 どうもはっきりと正直に御答弁になったのか、あるいはどうか存じませんが、しかしこれだけの金が金利がつかぬでは非常な問題だと思います。もう現実に資金運用部の金利は六分五厘か幾らか存じませんが、こうしたものがはっきり負担になるということはわかりきったことであるわけなのです。それを何とか考えるかもしれぬというような、そういういいかげんな態度とはどうもとれないのですが、やはり幾ら聞いても、そんなところは考えなかったということになるわけなのですか。はっきりした処置については……。
  266. 野田卯一

    ○野田(卯)委員 お説の点はもっともな点でありまして、これはわれわれも考えております。しかしながら昭和三十年度の問題としては、この振りかえによって直ちに公庫が運営に困るというような状態を生じないという見通しでやっておるということであります。
  267. 石村英雄

    石村委員 もちろん、これで公庫が破産するというようなことは起らないと思う。やれないとかやれるというのは程度の話で、金利がかかり、公庫の負担がふえるということは、それだけ一般の国民、下層の階級の豊かでない人たちが利便を受けられないことになると思うのです。現実にもうはっきりした数字が出てくる。これは何とかやりくりがつくだろう。破産はもちろんするわけではございません。しかし金利が負担になっただけ、公庫としては貸し付ける金も少くなるでございましょうし、金利も何とか考えなければならぬという問題も出てくるのではないかと思います。やはり野田さんは、そうしたことは別に何とかなるだろうくらいにお考えになったとしかとれないのです。  野田さんに対する質問は終えまして、大蔵大臣はこの問題をどのように考えておいでになるのか。やはり自由党のお考えのように、こうした公庫なんかに出す金は税金でやるべきじゃない一般資金でやるべきであるというような基本的な考えに同調していらっしゃるわけでございますか。また今度の金利負担についてどのように考えていらっしゃいますか。
  268. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 答えをいたします。税金でいろいろな金融的方面に金を出すことは、私は原則的には必ずしも正しいと思いません。しかしこれは資本蓄積と関連することであります。いろいろな考え方、見方がありますけれども、大体終戦後における日本の状況というものは、物価が上昇傾向をたどった。従いまして、なかなか資本蓄積ができがたいものがありましたから、自然強制貯蓄というような意味合いも持ちまして、税金が加重されていく。普通だったら貯蓄という正常な形でいくべきものも、こういう場合は税金という形の強制貯蓄で、なるべく消費を節約して物価を押える。そうして、そういうふうな税金で取った金を経済活動のために貸していくことが当然必要だ。そういうふうな形態が今日においてどれほどたくさん残り過ぎておるかどうかという点があると思います。そういう点について、私は見解の相違もあるだろうと思います。しかし今日において一般会計からの融資をやめて――今度おやめになるという趣旨ですが、やめた。やめたからこれがいけないというふうには考えておりません。ただ今具体的な御質問金利の点、これは一般会計から繰り入れるなり、回転資金資金部に入れるのですから金利がつく。金利がつく金ですから、それだけ資金コストが高くなりますから、公庫、金庫としては経理がうまくいかないといいますか、それだけ負担が多くなることは免れない。ただ今日の情勢から見ますと、そうした場合に現実にどうなるかと考えれば、今御承知のように金利の低下を一般的にはかっておるのでありますが、こういうような情勢で、金融公庫の金利を政策的に下げていくことは無理になるだろう。こういうところに相違が現われるだろうかと考えております。
  269. 石村英雄

    石村委員 大蔵大臣は、どうも私の申したことがおわかりにならないように思いますが、これらの公庫に政府の金、つまり税金で集めた金を出すことは、社会政策的な考え方と申しますか、とにかく特殊な考え方からこれが従来やられてきたんだと私は思うわけであります。ただ金が資金運用部から回ればいいというのではなくて、国民の税金でこうした層に対する融資をするんだという考え方と、いやそうじゃない、そんなことはしないという考え方は、実に大きな開きがあると思う。その点を大蔵大臣はどうお考えになっておるか。国民金融公庫、あるいは農林漁業金融公庫、そんなものには税金で資金を出さなくてもいいというお考えがあるのかどうか、それをお尋ねいたしておるわけなんです。
  270. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私は、必要のある場合に財政資金でもって、いわゆる社会政策的な意味でもって財政からいろいろな投資、あるいは融資、あるいは救済資金、それは、私は必ずしも具体的な場合に否定するものじゃありません。しかしながら、今の金庫は必ずしも社会政策をやるためにできておるとは考えておらないのでありまして、これは、やはり基盤においては一つの採算の立つ、ビジネス・ベースに乗せて経常をされておるものではないかと思います。
  271. 石村英雄

    石村委員 もちろん公庫が慈善事業として金を出しておるわけではありません。もちろん出した金が回収されるという見地から運用されておると思います。問題はこういう特殊な公庫を作り、そうして政府資金を出したという、その考え方なんです。その点をお尋ねいたしておるわけでございますから、もっと具体的にその点についてはっきりとお考えをお述べ願いたい。   〔「イエスかノーか」「よけいなことを言うな」と呼び、その他発言する者あり〕
  272. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 御答弁申しますけれども、御趣旨はわかりますが、はっきりいたしませんので……。
  273. 石村英雄

    石村委員 はっきりしなかったということですが、つまり政府は公庫に国民の税金で金を出して――全部ではありませんが、資金をやるという考え方、それをお認めになるかというんです。今度それが大いに削減されたのだが、その削減について……。
  274. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 御答弁申します。私は、その点においては、なお一般会計からそういう金を出すのが、まだ今日のときにはよいという立場をとりまして原案を組んでおったのであります。これが今回修正されるのでありますが、全般の見地からこれに賛意を表しておる次第であります。
  275. 石村英雄

    石村委員 大蔵大臣は原案を出されたんですから、これを貫きたいという御意思はあったでしょう。われわれはそれを一つお願いしたいのですが、それならさっきから話の出ました金利の問題について、何か金利負担について、大蔵大臣としてこの修正案をおのみになった立場からお考えがありますかどうか。
  276. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答え申し上げます。その点につきましては、私は先ほどからも具体的に触れたのでありますが、実は金庫、公庫等の金利をさらに下げるつもりをしておったのであります。一般金利も今低下をはかりつつあります。従いまして、政府機関におきましても金利を下げるつもりをしておりました。それが、私は現状を維持しなければならないようになるだろう、こういうふうに考えて、そういうところで大体やっていける、こういう考えでおります。
  277. 牧野良三

    牧野委員長 石村君、だんだん時間が迫って参りました。御注意下さい。
  278. 石村英雄

    石村委員 そういたしますと、今度金利負担が出てきたので、これらの公庫の貸し出し金利は下げることができなくなったという御答弁了解してよろしゅうございますか。
  279. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。これはなお十分具体的にそろばんも入れてみなくてはなりませんが、大体私の見通しといたしましては、ただいま答弁した通りでありまして、今のお尋ねの通りと存じます。
  280. 石村英雄

    石村委員 それでは、ここに公庫の方の御出席を願っておるのですが、ごく簡単に各公庫の方に、こういう政府出資がなくなった関係金利負担が出てきた関係で、金利あるいは仕事の面でどういうことになるか、御説明を願いたいと思います。特に国民金融公庫なんかは、せんだって三毛でしたかお下げになったが、これをまたもとへ復活しなければならぬというようなことがありますかどうか、御説明願いたいと思います。
  281. 櫛田光男

    ○櫛田説明員 お答え申し上げます。このたびの修正案によりまして、私どもで計算いたしますと、本年度は差引大体三千万円くらい未払いの経費負担が増加いたしますが、この点は繰り越し現金の減とでもいいますか、そういうところで吸収ができますので、全体としては大した影響はないと存じております。  それから金利の引き下げの点でございますが、できれば日歩一厘程度を近い将来において下げたいと思っておりましたが、多少それが困難になってきたのではないか。これは今後もっとよく毎月の具体的な収支状況を確かめましてから結論を出し得るのではないかと思っております。今のところは少し困難になってきたので――この間は下げたわけではございません。近い将来に日歩一厘程度下げてみたい、さように思っておる次第であります。
  282. 石村英雄

    石村委員 いろいろお尋ねしたかったのですが、時間がないので、公庫関係の方にはせっかく来ていただきまして大へん失礼でございますが、お尋ねするのをやめまして、一つ提案者にお尋ねいたします。自由党は、こういうように公債発行を原則として考えていらっしゃる。長期の経済的効果の上るものは公債でやるべきだという基本的な御意見を持っていらっしゃいますが、今日こうした方針をおとりになる場合に、公債発行はどういう方法で発行せられる御意図があるわけなんですか。一般の市中公募によるというお考えであるか。あるいは日銀の引き受けによるというお考えであるか。この点の考え方をお示し願いたいと思います。
  283. 野田卯一

    ○野田(卯)委員 今回の修正案には、直接公債発行という問題はございません。おそらく自由党考え方になっておるのだろうと思いますが、われわれといたしましては、公債発行する場合に、日本銀行の引き受けになるような形では絶対に公債発行すべきでない、かように考えております。
  284. 石村英雄

    石村委員 そういたしますと、国有鉄道の四十五億というのも、もちろんこれは公募で、日銀引き受けという形では考えられていないということになるわけなんですね。
  285. 野田卯一

    ○野田(卯)委員 さようであります。
  286. 石村英雄

    石村委員 今度の財政投融資関係は、一般会計の出資を百五十五億減らしまして、それを資金運用部に回し、その結果、金融債にいたしましても、あるいはただいまの国有鉄道公債にいたしましても、一般市中銀行、あるいは一般の投資家に負担させるということになっておりますが、この消化の前途について、あるいは提案者だから当然りっぱにこれは消化されるというお考えであるかとは思いますが、この消化の前途について、どのようにお考えになっていらっしゃるでしょうか。休憩前のこの委員会で三木運輸大臣は、四十五億についても相当心配している、こういうようにおっしゃっておられたのですが、提案者はこれら金融債にいたしましても、国鉄の四十五億にいたしましても、簡単に消化ができる、そういう情勢に今ある、こういう御判断に立っていらっしゃいますかどうか。
  287. 野田卯一

    ○野田(卯)委員 最近の金融情勢、すなわち銀行に非常に預金が集まって参りまして、銀行の貸し出しはほとんどふえない。従って銀行に金が非常に余ってきておる。こういうのが最近の実情であることは御承知の通りだと思います。このような情勢をもっていたしましたならば、この消化はさほど困難ではないのではないのではないか、さように思っております。
  288. 石村英雄

    石村委員 この問題は見込みの話ですから、あまり触れたくないのですが、しかし運輸大臣も心配していらっしゃる。そうしてまた皆さんも、大事な新線だけは、五億というものを資金運用部引き受けでちゃんと確保なさったということは、皆さん提案者が、やはり四十五億の国鉄の公社債にいたしましても不安を抱かれたから、そういう新線だけは、五億というものをちゃんとやろうというお考えからなさったのではないのでございましょうか。もし不安がないということなら、何もこんな念の入った、手の込んだ処置を講ぜられる必要はないわけでございます。やはり皆さんとして公社債の消化、あるいは金融債消化については一抹の不安を持っていらっしゃるのではないかと思います。いかがでございましょうか。
  289. 野田卯一

    ○野田(卯)委員 ただいまの点につきましては、私たちとしては、公社の公募債につきましても、さほど消化については懸念は持っておりません。この資金配分の関係におきまして、新線建設の分は、資金運用部の資金によるということにいたしたことで、それでほかのものが非常に心配だ、こういうわけではないのでございます。
  290. 石村英雄

    石村委員 少くともほかの分は売れなくても、消化されなくても、消化されただけ事業をすればいい、こういうお考えだったというところに結論はなってくると思うのですが、いかがでありましようか。
  291. 野田卯一

    ○野田(卯)委員 この公社債の公募分の消化につきましては、もちろん政府当局も日銀も、それぞれの立場においてでき得る範囲で協力していける、かように考えております。
  292. 牧野良三

    牧野委員長 石村君、時間がだいぶ過ぎました。
  293. 石村英雄

    石村委員 大蔵大臣にお尋ねいたしますが、大蔵大臣休憩前に、何かこういう金融債にしろ公社債にしろ、消化ができないような状態が出てきたら措置を講ずるような御答弁があったように記憶いたしておりますが、今度のこうした措置に対して、資金の規制と申しますか、金融債あるいは公債を十分に消化させるような特殊な措置を講ぜられる御腹案があるわけでございますか。
  294. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えいたします。私もこの金融債あるいは国鉄債等が消化するという確信のもとに御同意を申し上げたわけでありますが、これは今日の金融市場から見まして、昨年度におきましても、金融機関だけで大体四千億ぐらいになっております。貸し出しは二千億ぐらいであります。そういうふうな状態でございました。そうして日本銀行への返金、これが、全部で約千九百億ぐらいのものが日本銀行に返ってきておるようであります。ことしは二次高率のかかっておる、金融機関がどうしても日本銀行へ返さなければならぬ金は約五百億程度で、大体金融機関は、五百億、六百億を一応返しても、あと資金は投融資をどっかに求めなくてはならぬような状況が出てきておる。こういうふうなことが一応見通せます。そうして金融機関の今年度預金、貯金の目標額は八千億になる。私この八千億が果して成功するかどうか、これはよほどの努力が要ると思います。しかし一応専門家が集まって、本年度は八千億を増強しよう、それだけ増そう、こうやっておるのですから、やはりこれは一応入る。こういうふうに考えてみますと、私はこういうふうな情勢において、金利をずっと下げようという考え方であったのでありますが、こういうような状況であれば、私はこの程度の公社債を市場に移しても、これは消化する可能性があるという確信があります。同時に今度資金委員会というものができまして、もしも金融機関が自主的にこういうもののいろいろな資金についていかぬ場合、この法律もありまして、資金流れを規制する準備もまた他面背景に持っておるのでありますから、私はできることを確信しております。
  295. 石村英雄

    石村委員 ただいまの大蔵大臣のお話を聞きますと、金利をずっと下げていきたいと思った。ところがこういうものが飛び出してきたから、金利はあまり下げられないのじゃないかという結論が生まれそうな御答弁に拝聴いたしたのですが、いかがでございますか。
  296. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えいたします。それは、むろん若干のことはあるかもしれませんが、しかしかりに八千億というような場合に、いわんやこれが他面四百億の減税措置がとられておる。この減税措置は同時に貯蓄増強の原因にもなるのでありまして、今私が申すのは、このことをやったために金利が下らぬというのではない。今度ぐっと私は下げたかった。いわゆる国際水準並にぐっとこの際預金金利を下げたい。貸出金利も下げたい。そういうような状況においてまたいろいろな資金の運用を考えようという考え方をしておったのでありますが、そういう点に若干の考え方のなにがあるかもしれません。あるかもしれませんが、私はやはり金利も下っていく、こういうふうに考えております。
  297. 牧野良三

    牧野委員長 時間が過ぎました。どうぞよろしく……。
  298. 石村英雄

    石村委員 大事な問題ですから、委員長ちょっとお願いします。  大蔵大臣は、ただいまぐっと下げたいのがちょっと下る、その程度が少くなったという考え方ですが、大蔵大臣は施政方針演説でも、日本の経済の前途について相当警戒と申しますか、警告を発していらっしゃるわけでございます。私はこの大蔵大臣の国際経済の前途に対する懸念というものは、必ずしも杞憂だとはいえないと思います。せんだって日銀の発表した輸出入の物価指数を見ましても、三月においても四月においても、輸出物価は上り、輸入物価は下っておるというのが今日の日本の状態でございます。そして欧州あるいはアメリカも、大蔵大臣がおっしゃったように、非常に金利の引き上げをして警戒をしておる。こういう状況で、この消化問題にいたしましても、日本の資本蓄積ということも、やはりこの国際経済の動向が非常に影響してくると思います。また相当懸念すべきものがあるのではないかと思いますが、こういうときに、自由党の主張であるインフレ政策をとって、それを引き起しそうな公債政策を今打ち出していこうという芽が、二百十五億の中に含まれておるわけなんですが、これを大蔵大臣及び民主党自体は、こういう大事なときに、将来おそろしい公債政策というものを含んだこの案をどうしてお認めになったのか、一つお考えを聞かしていただきたい。
  299. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えいたします。ただいま自由党の政策はインフレ政策だと言われましたが、私は自由党の政策がインフレ政策とは考えておりません。きわめて健全な政策と考えておるわけであります。その点においては、根本的に出発から違うのであります。ただ問題は、今御指摘のように、国際情勢等から見て非常に安心できない、警戒を要する、このことについては、私は依然としてそのような考えを持っておるのであります。従ってインフレにしないという点については、今後あらゆる手を打てばよろしいので、何も手をあげてインフレの来るのを持つ必要はごうもない。また特に財政は税金である、財政からインフレが来ることは私はないと思っている。これは税金ですべてまかなっておる。あとは問題は金融の問題、これは来れば金融の方からインフレが来る。これについては、私は確信をもってインフレを防ぎ得ると思っている。
  300. 石村英雄

    石村委員 大蔵大臣の御確信でわれわれは安心もできないわけですが、あまり議論してもなんですから。しかし、とにかく大蔵大臣にお考えを正直に申していただきたいのですが、自由党公債政策というものをはっきり打ち出しておるわけなのです。私は、これは非常に重大な政策の転換だと思います。このことは、ただインフレにならないようにしさえすればいいと簡単に割り切って処置できる問題ではないと思います。一たん公債に踏み出すならば、私は必ずインフレになってくるのが、従来の歴史から見ましても、当然な運命だと思います。今日の通貨制度は管理通貨で、最近のインフレにつきましても、もう始末がつかなくなる危険性を制度においても非常にはらんでおるわけなのです。大蔵大臣として、金融公債政策というものについては慎重なる態度をお願いするとともに、もっとはっきりと御答弁を願いたかったのでございます。しかし、今度こういうように自由党と民主党が一緒に提携して修正案を作ったという点で、大蔵大臣は、まあ保守合同ということでお認めになったのではないかと思います。保守勢力の合同と申せば行き過ぎかもしれませんが、保守勢力の結集という意味で、大蔵大臣は涙をのんだか何か知りませんが、この方針をお認めになったのではないかと思いますが、ただ一言、その点についてお考えを正直に述べていただきたいのであります。
  301. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。私はこの予算の成立ということだけが一ぱいでありまして、そのほかのことは何にも考えていない。特に保守合同なんかということは、私は一年生で何にもわかりません。
  302. 石村英雄

    石村委員 最後に一言お尋ねいたしておきます。提案者は今度の減税で、これは七月からの実行ですが、平年度、来年度にどの程度税収入が減るとお見通しになっていらっしゃいますか。
  303. 野田卯一

    ○野田(卯)委員 大体百四十一億円という見通しでございます。
  304. 石村英雄

    石村委員 そういたしますと、税収も減る、一方軍事費も、御承知のように予算外契約関係があって、今後さらに大きくふえなければならぬ、また今度の修正案に恩給の増加もあるわけなのですが、これも平年度化すれば相当な増額をするでございましょう。現在の一般会計一般職員の給与は千二百億余りですが、恩給は八百億を越す、八百五十億にも六十億にもなるのではないかと思いますが、こういう状態では、来年度においてはもう露骨に公債政策をとらざるを得ぬことになるのではないか、私はこう判断いたしておりますが、提案者はどうお考えになっていらっしゃいますか。来年度は、やはり今度と同じような程度の財政投融資関係の処置で十分まかなえるという見地に立っていらっしゃいますか、どうですか。
  305. 野田卯一

    ○野田(卯)委員 私は、もちろん来年度税収が今度の減税によって減って参りますし、歳出の増もあると思います。それに対しましては、やはり今後の財政経済政策を適切に運営し、経済の基盤を強化することによって、十分これを解決していけるのではないかと確信をいたしております。
  306. 石村英雄

    石村委員 それではこの程度でやめておきます。
  307. 牧野良三

  308. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 私は昭和三十年度一般会計予算修正案外二件に対しまして、総理大臣以下関係閣僚並びに民主、自由両党の代表にそれぞれお尋ねをいたしたいと思うのであります。  まず総理大臣にお尋ねいたしたいことは、午前の総括質問のときのお答えを聞いておったのでありますが、そのお答えによりますと、総理大臣はこの民主、自由両党の修正案をお認めになってお答えになっておられたのであります。私はそれであったなればいま少し早く――こうした民主、自由両党の修正案政府が認めておるのでありましたならば、政府がみずからの原案を撤回して、いま少しく早くこれをわれわれ社会党の者にもこういうふうな案にかえたいということを発表して、そうしてわれわれにも十分の検討を与えさして、これを審議すべきじゃないかと思うのでございます。いやしくも予算審議におきまして、二百十五億というような莫大なる金を、予算をかえるのにつきまして、ただいま私どもはこの予算の組みかえをちょうだいしたのであります。これでただいま左派社会党のわれわれの同志石村君が質問をいたしました。そうして私がここに質問をして、これで民主、自由両党の諸君が押し切ってこの予算案を通過せしめようとするのである。総理大臣が当院におきまして、本委員会の当初においても述べられておる。民主主義政治の確立である、こういうことを申されておるのでありますが、自由党や民主党の諸君は、五月の末ごろからこの民主、自由両党で妥協工作を始めまして、今日までもうすでに八日間も研究をしてやってきたのでありましょう。この間予算委員会におきましては、ほとんど予算委員会が正常な状態において開かれ、審議されたことがないのであります。私どもはこの予算委員会に出てきて、ただここに持ちぼけを食わされておることが数回、さらにこの間の三日、四日の分科会におきましては、第一分科会初め第三、第四いずれもほとんど出席者がない。政府委員も出てきておりません。   〔委員長退席、重政委員長代理着席〕 こういうような状態であります。ところがその予算分科会というものは、すでに本予算に基いて行われたところの予算分科会であります。ところがこのたびこの二百十五億の大修正を行われたこの予算については分科会も何もありはせぬ。ただ、今自由、民主両党の代表者がここで説明をして、そうして私どもが今与えられたこの資料によって若干の質問をいたしまして、それでこれが三十年度予算として通ってしまうのであります。それで国民が果して納得するでありましょうか。私は、きわめてこの衆議院を軽視しておるというか、予算を軽視しておるというか、院外におけるところの自由、民主両党のやみ取引によってこの国家予算を成立させていくのであると断言しても間違いがないと思いますが、この点につきまして総理大臣の御所見はいかがでございましょう。
  309. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 自由党と民主党との妥協も御承知の通りようやくにしてまとまったようなわけで、最初の間においてはその間の開きが強くて、なかなか同意のできないような案で始まったものですから、数日間はそれに使われたわけです。そこであなた方に御迷惑をかけたことはまことに相済みませんが、これはやむを得ないのです。やはり、この予算案の原案の精神をくつがえさない程度において妥協ができたのでありますから、われわれは妥協ができないでもって、そうして政治に三カ月ぐらいの空白々作ることは避け得られたということは、政局の大局の土から見れば喜ばしいことだと考えておるのであります。
  310. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 私どもに迷惑をかけたというようなことは、これはわれわれは何とも思わぬのであります。けれども、これでは国民が納得しないでありましょう。わずか一時間でこの本年度予算修正されて通過するのである。それではとうていわれわれがこれを十分審議ずるということはできないじゃありませんか。なるほど政治の空白を埋めるために自由党と民主党が妥協をしたということも、それは民主党の総裁である総理大臣とすれば、それもいいかもしれませんけれども、しかし国民を対象にして、この予算をそんな簡単な、一時間ぐらいでこれを片づけてしまって通過させるということは、いかにもこの予算審議を軽視しておるとはおぼしめしになりませんですか。
  311. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 修正は国会において十分の手続を費して通るのでありますから、国民もこれに対して少しも不満はないものと思っております。
  312. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 十分の手続を尽す、それは確かに手続を経ておるでありましょう。経ておるでありましょうけれども審議を尽せといって尽しようがないじゃありませんか。これについて今大体の説明があっただけで、今まで三日、四日に行われた分科会の審議というものは、ほとんどそれは新たになるわけでありましょう。さらにこれから分科会を開いて、この修正に基くところのこの分科研究をするということはないじゃありませんか。
  313. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 この程度の修正は、この程度の審議によって十分であると思っております。
  314. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 そこでしからば、あなたはこの予算委員会の当初におきまして、大幅な修正あるいは組みかえが行われる場合においては重大なる決意をもって処する、こういうことを申されたのでありますが、私はこの二百十五億というような修正は、これは非常に大幅な修正であると思うのであります。この点につきまして先ほどのお答えを聞いておりますというと、その精神において別に大へんなことはない、こういうことを仰せられておるのでありますが、そうすると、あなたの閣僚が作ったところの原案とこの修正案と、両者はいずれがよいと思っておるか。この修正案の方がよいと思っておるのでありますか、いかがでありますか。
  315. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は、原案の精神がくつがえされておりませんから、この程度の修正は政局の大局から見てのむべきものと診断したのであります。
  316. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 原案と比較して私は尋ねておる。どちらがいいか。さらにあなたはこの原案を少くとも本年の予算審議の当初において本院に提出いたして、今日まで審議を長い間続けてきたとするなれば、少くとも原案の通過に努力すべきではないかと思いますが、その点について努力をなさいましたか、いかがでございますか。少くとも私はあなたは原案がいいとお考えになっておるのだろうと思う。それにもかかわらず、こういうふうな修正が出てきて、今日これが通過せんとしておるのでありますが、原案を通すことについていかような御努力を払われましたか、それを伺いたい。
  317. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 自由党との妥協は――原案の通過にあることはもとよりでありますけれども自由党との妥協が実を結ばなければ原案は通過しないということは、これはあなたも御承知の通りであります。原案が通過しなければ政局に二、三カ月の空白ができますから、それは非常に嘆かわしいことだと考えまして、原案の精神がくつがえされざる範囲内における修正ですから、これに同意をした次第であります。
  318. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 わかりました。そうすると、結局は自由党との妥協、すなわちあなたが言われておるところの保守合同をするためにこの修正案をのむに至ったのだ、こういう結論になるのでありますか。
  319. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 政局の大局の上から、予算案を通過させることが国のためになると思ったのであります。保守勢力の結集もまた将来の政局の安定のために、これは尽力しなければならない重大な問題だと思いました。
  320. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 これはきわめて額の小さいもので、先ほど総理お答えになられてお認めになられておるのですが、二百万円の憲法調査会費の計上であります。総理は憲法第九条は改正すべきものであるということを、総理就任の当初に述べられておったのであります。ところが、先般私が総理に伺いましたところが、今日は自衛隊法ができたから憲法はもう改正しなくてもいいのだという、こういうことを述べられた。私はそれは本末転倒であるということの若干の総理との間に問答を行なったのでありますが、そういたしますと、総理はこの憲法第九条を改正しようとする当初の御意思にやはり返られたのでありましょうか。それとも依然としてこの憲法第九条は改正する意思はないのだが、他の点において改正しようとなさるお考えなのでありましょうか、その辺はいかがでありましょうか。
  321. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は占領中にでき上ったところの憲法は、改正をした方がいいということは一貫して申して参りました。ただ九条を改正する必要はないということを私が申したようにただいまおっしゃいましたが、そういう事実はありません。九条の改正はやはり今日でも疑問がある個条でありますから、明瞭に改正した方がいいと思います。自衛軍のために兵力を持つことができるということは、自衛隊法なんかによりまして、何といいますか国民の輿論というものが変ってきたと思いますから、非常な必要性は薄らいだかとは思いますけれども、しかしながら疑問のある条文でありますから、これは明瞭に自衛のためならば兵力は持ってもいいということが、憲法上明白になることを望んではおります。
  322. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 もうその点を多く論争しても時間がありません。ただ一言私は総理に申し上げて御意見を伺っておきたいのですが、自衛のためであれば軍を持っても差しつかえがない、こういうことを大体において言われておるのでありますが、私はこの憲法第九条を改正するということは、しからば侵略のためにも軍隊が持てるように改正しようということなのでありますかどうか。自衛のためならいいという解釈が出るのであったならば、何も九条を改正しなくともいいじゃないかと思う。しかるにもかかわらず疑問が起ってきてはいけない、それだから憲法を改正するというわけなのであったなれば、侵略のためにも軍備が持てるように改正しようというお気持なのでありますか。それといま一つは、しからば明治憲法は、軍備をいろいろに規定しておりますが、侵略のための軍備ということで、あれは明治憲法に規定されておったものと御解釈になりますか。私は、おそらくそうではなくして、明治憲法といえども日本国の自衛のための軍備であったろうと思う。ただこれの使用を非常に誤まったためにそういうふうにとられたのである。従って、自衛のための軍隊が差しつかえないのであるなれば、何も改正の必要はないと思いますが、憲法九条を改正しようというのは侵略のためにも差しつかえないような憲法にしようというお考えでございますか。
  323. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 侵略のための軍隊を持つ必要は全然ないと考えます。むろん憲法を改正する場合には、自衛のために兵力を持つということを明瞭に記載することが必要だと思っております。
  324. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 もう総理大臣けっこうでございます。  大蔵大臣に尋ねますが、大蔵大臣は去る四日の第一分科会におきまして、日本の現状下におきましては、この政府提案の予算案が最も妥当適切なるものである、自分はこれを変更する意思はない、こういうことを申された。当予算委員会においても、予算説明においてはやはり同様な意見を述べられておったのであります。ことにあなたは、四日の分科会で私が、今民主、自由両党で昭和三十年度予算につきまして何か非常な修正をするやに聞いておるが、あなたはそれについて何らかの協議を受けたか、それに関知したことがあるかとあなたにお尋ねしたところが、自分は何らそれに関知したことはない、全然知らない、こういうことを申されたのでありますが、この民主、自由両党の修正案をお知りになったのはいつでございますか。
  325. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 両党の間でそういう折衝があるということは、私、いつかということはありません、承知いたしておりましたが、私にどうということはなかったわけであります。
  326. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 私はさらに大蔵大臣に尋ねますが、少くともこの第二十二回特別国会におきまして最も重要問題はこの予算問題である、しかも、あなたも総理大臣もその当初においては、その修正は絶対にもう認めないというようなかたい信念でやってきておる。それが、いつ知ったということはないというようなことを今言われておるのですが、あなたは、もしもそういう話があったなれば、自分の方から進んで出て行って、その修正事項に対して調査研究をして、そうして少くとも原案の正しいことを説いてそれの通過に努力すべきが、あなたの責任上当然とるべき道ではなかったかと思うけれども、その点はあなたはどう考えますか。
  327. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 全くお説の通りでありまして、私はできるだけそういうふうに努力をいたしたのでありますが、全般の見地からやむを得ない、かように考えておるのであります。
  328. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 努力したのであるがというが、それはいつ努力されたのです。あなたはこの間四日の日までは知らないというのだが、それではいつこれを知っていつから努力されたのですか、それを聞きたい。
  329. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私が努力するというのは、原案の通過についてあらゆる努力を払ったわけであります。
  330. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 そのあらゆる努力をしたというのはどういう努力なのですか。民主党の三木総務会長と自党の大野総務会長とが――別に予算の問題ではないのだ、要するに先ほどどなたかが言ったように、何だかバナナ屋だとかいうことで、四百二十億を半分ずつにしようじゃないかといって、三百十五億で手打ちをして、その内容を今度は適当に分配した、こういう話をいずれの新聞も報道しておりますし、今まで質問された方もみなそう申しておるのですが、あなたはそのときにさようなことはよくないということで折衝されたことがあるのですか、ないのですか。ただ努力したと言うけれども、どういう努力をなさったのですか。
  331. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。私はこの委員会、本会議の公けの席上で正しく自分の原案を主張して参ったわけであります。
  332. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 公けの場所といえば自由、民主両党の会合だけをあなたは公けの会合と申しておるのですが、少くとも予算に関する場合においては、予算委員会こそ公けの会場なのであって、そんな院外におけるやみ取引の場所は公けの会場ではないのですが、あなたの公けの会場において民主、自由両党に向ってその実現に努力したというのはどういうことなのですか、伺いたい。たとえば三木総務会長なり自由党の大野総務会長に会って、じゅんじゅんとあなたがこの原案の重要性を説いて、そしてそういう修正をしてもらいたくないというような折衝をなさったことがあるかないかということです。
  333. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私がただいま申し上げましたのは公けの席であくまで原案の支持を主張したということでありまして、そういうようなプライベートにいろいろとお頼みをしたということはないということであります。
  334. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 そういたしますと、あなたは少くとも今までこの委員会において自分の編成された予算が正しいのだ、日本の現状下においてはきわめて適切であることを主張してきた。その予算が不本意に二百十五億も修正された――それとも、あなたは不本意ではないのかどうか、まずその点を伺いましょう。この修正というものにあなたは賛成なんですか、反対なんですか、それを伺いましょう。
  335. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。御同意申しておるわけです。
  336. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 その同意をしたということは、編成した原案よりもこの修正案の方がよいのでそれで同意した、こういうことなのですか。
  337. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答え申します。よいか悪いかということは、私はいろいろな考え方から考えなくてはいけないと思うのです。予算を通すという全局といいますか、大局に立った場合は、私はこれがよいと考えるのであります。また予算の個々のいろいろなものを考える場合におきましては、私の予算を主張するのがいいと思うのでありますが、今言ったように全体の見地に立てば、総括してみた場合は同点もやむを得ない、こういうふうに考えた次第であります。
  338. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 どうも大蔵大臣答弁はすっきりしないのですが、全体について修正されたこの予算は――あなたの予算も全体なんですが、あなたは自分の方がいいと思うのですが、どちらがいいと思うのですか。それだけでいいのです。あまりこまかいことをおっしゃっていただかなくてけっこうなんです。同感されたというのは、やはり民主、自由両党のいわゆる保守合同のために賛成した、こういうようなあなたの談話を新聞は発表しておるのですが、その点はいかがでございますか。
  339. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。私が申し上げる全体というのは、予算全体という意味よりもまだ広いのでありまして、予算を通過するというところまでを考えての上での同意であります。
  340. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 大蔵大臣に重ねて伺います。あなたは少くとも主管の大蔵大臣として自分の信念を持って編成したところのこの予算が二百十五億も修正を受けた今日、あなたはこれをおのみになったような状態になって――果してのんでいるのかどうかわかりませんが、まだ予算が通過するまで時間がありますが、この予算が通過したときには、あなたは少くとも自分が今日までこの予算委員会においてわれわれの質問に答えて原案の正しいことを強調して参ったその責任上、あなたは大蔵大臣の職を辞職する考えはございませんか、責任を負う意思はございませんか。
  341. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私はこの修正は私の考えている予算の本質を欠いてはいないと思うのであります。これは先ほど提案者の御説明によりましても原案をよりよくするために、その意思をもってこういう修正がされたということを申されておりますが、実際に今度の修正の根本的な点を考えましても減税が出ております。これは私も減税を言っております。これは量の問題でありまして、比較的な問題であると思う。それから投融資がなるほど四十億ふえておりますがこれは必ずしも産業のいわゆる地固めといいますか、あるいは将来の経済発展の基盤を作っていく意味における投融資、こういうものにはなっております。大体この投融資も中小企業の関係において従来不足しておったという皆様の御批判のところに入っている。こういうふうに見て参りますと、若干歳出においてふえている点において私はいろいろ考えがあるのでありますが、大局の上からやむを得ないと考えております。これはインフレ的な点が私は若干ある――インフレという言葉を使うのはおかしいですが、しかしこの点は金融の面でも十分カバーできることでありまして、全体として見た場合に、それほど自分の予算の本質をくつがえされていない、かように考えているわけであります。
  342. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 それでは大蔵大臣に伺いますが、昭和三十年度の産業資金は三千三百億円というようになっておりまして、昭和二十九年度よりも二千百億円の増加である。そうしてこの増加の割合を見ますと、設備資金が七%で七百三十億、運転資金が二%で千二百七十三億、こういうことになっておるのでありますが、一方におきまして金融債の百七十億のうぬ百四十一億と、国鉄の百五十五億のうちの四十五というものを公募債に肩がわりする、こういうことになっておるのでありますが、そうするとここに百八十六億というものが公募債の増加になるわけなのであります。そこで経済審議庁の発表したところによりますと、日本の昭和三十年度の社債の引き受け見込みというものは二百二十億であるということになっているのですが、そこへさらにこの百八十六億の公募をして、果してこれが消化されるでありましょうか、その点はいかがですか。
  343. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答え申します。従来の金融市場におきまして、社債その他の公募はすべて自主的にやらしておったのでございます。今日においてもそうであります。私は先ほどからしばしば申し上げましたように、預貯金の増加が相当見るべきものが今後に期待される。同時に日本経済の基盤がよほど整備されて無用の資金の需要が減りました。ですからその資金需給関係から見ても、私は今回のこの公社債の公募がふえた程度消化しないとは考えておりませんが、しかし先ほど申しましたように特に鉄道公債となりますと、よほど慎重な態度で臨まなければならぬと思っております。従いまして、そういうふうに資金は集まるが、しかしそういう資金の需要になかなかマッチしないというような情勢があれば、今回は御審議を願って法律的措置もとって、そうして資金流れを規制する準備を一応持っておりますから、私は十分できる、かように考えておるわけであります。
  344. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 しかし今までの実績からいいますと、国有鉄道並びに電電公社あたりのこの公債消化力というものは、一カ月に約十億、年間百二十億であります。昨年におきましても百五十億のそれを三十億も不足しておるわけであります。そういうような状態でありまして、本年の国鉄のこの社債募集が八十億のところへ四十五億入れれば百二十五億になる。今までのそれすらも消化できないところへ、こういうふうに増加していきましたなれば、私は過去の実績に徴して消化できないのじゃないかと思いますが、その点は過去の実績と照らし合せていかがでしょう。
  345. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 いろいろと御心配をかけてほんとに相済まぬと思っております。私の考えでは、この金融市場あるいはまた日本の経済の情勢がよほど違ってきたということをぜひお答えを願いたい。終戦以来、特にドッジ・ライン以来といってもいいかもしれません。あるいは朝鮮事変によって若干物価は上りましたが、それ以後の日本経済の苦しい過程を経過してきて、ことに最近のデフレ政策の結果、やっと今日になって日本経済を再建し得る情勢が各方面に現われてきた。これが特に金融的には金融の正常化が進んでおる。金利も全面的に引き下げが可能になっておるのでありまして、今日の状況では必ずしも私は従来の例ばかりをとることも当らない。まして今後先ほど申し上げましたように金融機関その他が十分御協力下さることは申すまでもありませんから、何も私はいろいろの措置をとらぬでもいいと思いますが、しかしそれがいかぬ場合は、今申しましたような法的な措置準備をしておる、いわゆる宝刀は持っておる、こういうような形にあるのでありますから、御心配はありがたく感謝いたしますが、私はできるだろう、かように考えております。
  346. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 郵政大臣と運輸大臣に伺いますが、ただいま私が大蔵大臣にお尋ねしたように、国鉄公募債は本年百二十五億になるわけであります。そうして今までの国鉄並びに電電公社の公債の応募能力というものは月額十億くらいしかないのでありますが、本年こういう増額がありましても、これが消化されるものと運輸大臣はお考えになりますか。さらに電電公社のそれは七十五億でありますが、ここに金融債が百四十一億も出るということになりますと、公募債と金融債との金利の差も起ってきまして、公募債よりも金融債の方に応ずる人が多くなってきはせぬかと思うのであります。それでなくてすらも今まで消化能力がないところへもってきて、そういうふうに金利にさやがついてくるのでありますが、それで心配ないと安心せられておられますか、いかがでありますか。
  347. 三木武夫

    ○三木国務大臣 努力を要すると思います。しかし大蔵大臣責任を持って努力するということでございますので、消化できるという見通しでございます。
  348. 重政誠之

    ○重政委員長代理 杉村君に申し上げます。あと五分間であなたの時間は参りますから……。
  349. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 今のお答弁はきわめて心配なんですが、もしそれが消化できなかったときには、運輸省はどうなるのですか。
  350. 三木武夫

    ○三木国務大臣 ただいま申し上げましたごとく消化できるという見通しの上に立っております。
  351. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 郵政大臣はいかがですか。
  352. 松田竹千代

    ○松田国務大臣 電電公社の公募債は七十五億になっておりますが、これは十分消化できる見込みでございます。昨年度は未消化の分がございましたが、それにかんがみて、今度は消化できるという見込みのために七十五億ということになっておるのでございますから、確実に消化できると考えております。
  353. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 あなたは昨年度は未消化があったけれども、本年は消化できるだろうと思って七十五億というふうに予算に組んだというのですが、それはこの予算修正前のことでありまして、この予算修正によりまして、先ほど申しましたように国鉄の分が四十五億も公募債となり、さらに百四十一億の金融債が出るということになりますと、昨年ですらも今あなたがおっしゃるように消化がし切れなかった。そこへもってきて金融債が出れば、金利の差が出てきて、あなたの方のそれよりも、こちらの利潤のよろしい方へ人が応ずるということになれば、より以上消化できなくなると思いますが、その点に対するところの御心配はございませんか。
  354. 松田竹千代

    ○松田国務大臣 当初の政府の原案におきましては、金融債引き受け二十億円を見積っておったのであります。これは今度の修正の結果、その金を地方債の方に回わすことになっております。そういう関係で万一その七十五億がどうしても消化できないような場合においては、われわれの方でこのたび御審議を願って、まだ委員会通過の運びに至っておりませんけれども、その法案の御協賛を願えまするならば、二十億の地方債に回わしました金もありますので、ワク広げができまするあかつきにおきましては、それがどうしても消化できない場合においては、大蔵省とも話し合って、それをもある程度回し得ることもできるかと考えております。
  355. 重政誠之

    ○重政委員長代理 杉村君、約束の時間はあと二分です。
  356. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 次に河野農林大臣に伺います。あなたは農林水産委員会におきまして、野党三派――これは自由党の代表にも後に伺いますが、農業協同組合整備促進事業費補助として二億五千百三十万三千円、この問題につきまして、民主党を除く自由、両派社会党はこれに修正を加えました。ということは、農業会から農業協同組合にかわるのにつきまして、再評価によって生ずるところの政府への納付金が六億五千万になるのであります。これではまことに農民はどうも困ってしまうのじゃないかというようなことで、これが昭和三十年度の農林水産委員会におきまして問題になりまして、自由党、社会党でこれに対して修正を加えた。五億一千五百十五万八千円を増額すべし、こういうことが三派できまったのであります。これに対して農林大臣からも御趣旨に沿うようにいたしますという御答弁があったのでありますが、このたびの修正予算につきましては、これに対するせっかくの公約が一厘半毛も載っておらないのであります。   〔重政委員長代理退席、委員長着席〕 ところがこれは本日の予算修正の説明を聞いただけでわかりません。あるいはこの書類だけでは、先ほど総理に伺うときに申し上げたように、私どもは全く何もわからないですよ。内容がわからないのだからこまかいことはあるいは間違えるかもしれない。しかしながら天下の新聞が公表しておるのだから、これが間違いないだろうと思う。予算委員よりも新聞の方に先に発表になっているのですが、このうらには小鳥の巣を作るために、額は小さいのだけれども五百万円、こういうようなものまでがこのたびの修正案に載っておるのですよ。自由党と民主党のこの修正案というものは、われわれが下手にものをいうと、国民はよくわからないから、自由党、民主党が大へんいい案をやってくれた、こういうように国民を惑わせる修正案なんです。しかしたとい幾らでも減税をするということはわれわれもけっこうなんですけれども、国家の予算という大乗的見地に立ったときに、こんな小鳥の巣を作るようなものにまで、自由、民主両党の諸君が五百万円も増加しておる。それにもかかわらず全国の、日本の人口の三分の二を占める農民、日本の経済というものはほとんど農民の犠牲において行われておると申し上げても過言でないと思う。この農民の六億五千万というような莫大な金を委員会で農林大臣は公約までされておるのであります。それが実現されない。少しもこれを認められておられないじゃないですか。それから苗の育成の費用、水稲の――水の稲の育成等についてのそれがやはり何も認められていないじゃないですか。自由党、両派社会党はみな認めておる――これは特に私が稲なんと言うのは、わからない人がおる、百姓でない人がおるからわからないだろうから言うのですが、こういうものについても、自由党、民主党の諸君は――民主党だけは反対して社会党は認めておる。これにも一銭も入っていないのだが、あなたはあの公約があるこの際、こういうような大修正の行われるときに、あなたも民主党の大幹部であるのですが、これを一言何とか言わなかったのでしょうか。これらの点はいかがでありましょうか、一つお答えが願いたいのです。
  357. 河野一郎

    ○河野国務大臣 ただいまの六億五千万円の復活につきましては、これは杉村さんの何かお考え違いで、私はその三派の共同修正案に対しては一度も所見を申し上げたことはないのでございます。それがあるなしをここで言うのではありません。しかしその点は私が公約を無視したということでは一つお考え直しをいただきたい。但し今年の最初予算に組んでありました一億数百万円をさらに六億になぜふやさなかったかということにつきましては、御趣旨はごもっともでございますが、最初に私が申し上げました通りに、これはこれで打ち切ったのではないのでございまして、将来財政の許す限り考えて参りたいということで、この原案にありますように一億数千万円の予算を組んだ次第でございます。その点はあしからず御了承をいただきたいのであります。  ただいまつけ加えて申し上げますが、巣箱のことについて非常に今お話でございましたが、この巣箱は野党三派の当時の修正案の中にも入っておるようでございますので、これは杉村さんから自由党と民主党だけをおっしゃらぬで、社会党もこれには非常に興味を持っておられる問題でございます。私はその点に敬意を表している次第でございます。御了承をいただきたいと思います。
  358. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 あと一点。最後に自由党の代表に伺います。これは答えたくてうずうずしているようですから、委員長、ちょっと答えさして下さい。今私が申し上げましたこの農林水産委員会では、ただいま申し上げましたところの農業協同組合整備促進事業費の補助、これを五億一千五百十五万八千円の増額、並びに水稲健苗育成費補助、これを二億九千四百万円、それから指定病害虫防除費補助、これも四億一千九百万円、こういうようにいずれもあなたの方の政党が、わが社会党と、大いに野党で皆さん一緒にやりましょうといって、われわれ社会党を誘って、こういう修正をされた。ところが今度この二百十五億のいわゆる大修正予算案については何もこれに入っていないのです。ただ入れてあるのは、今の巣箱が入っておる。鳥の巣の箱を五百万円、これはきわめて日本の農民にとっては重要な問題なんですが、どうしてあなた方は、それにわれわれと同調したときのような気持になって、民主党と一緒になって話ができるのだったら、これにもう少し手を加えなかったのですか。この点を伺いたい。
  359. 野田卯一

    ○野田(卯)委員 巣箱の問題が非常に取り上げられておりますが、これは有益鳥獣保護費というのをお示しになっておるのだと思いますが、これは森林害虫駆除費の補助でありまして、有益鳥につきましては、現在スギタマバエとかその他いろいろな害虫がばっこしております。それが一番大きな原因は、それに対する天敵であるところの有益鳥がいなくなってしまったということでありまして、有益鳥は保護したい、こういう意味合いから、別に巣箱ではなしに、禁猟区の設定その他の措置をとるために若干金が要りますのと、またその他スギタマバエ等の駆除費に充てるために五百万円を計上した、かような次第に相なっておるのであります。  なお水稲健稲育成のための経費が一厘も載っていないじゃないかという点につきましては、御承知の農業生産力増強施設復旧費補助金というのが今回一億九千万円増額になっておりますが、その中に水稲健苗育成補助費といたしまして、一億四千六百万円を計上いたしております。しかしながらこの一億四千六百万円で決してわれわれは満足をいたしておるわけではございません。非常に不満足でありますけれども、いろいろな関係予算全体の立場から、これに落ちつかざるを得なかったという点であります。また農薬等の問題につきましても、今回の修正案には載っておりませんが、これまたきわめて重要なる問題だと考えておりますが、いろいろな予算全体の圧縮の点から、この問題につきましては、いろいろな病虫害の発生いたしました異常災害の場合におきましては、御承知のように予備金等の支出によってこれを補てんする方法も開けておるのであります。なおそういう場合でなくして、普通の病虫害に対する農薬の補助につきましては、これは薬自体に対する補助がいいのか、あるいはそういう防除組織を強化する方がいいかという点が問題になりまして、この際といたしましては、乏しい財源の中から分けるといたしましては、防除組織を強化する、これをしっかり作り上げるという方に経費を盛ったような次第であります。その他の点につきましても、お示しのように、われわれとしては非常に不満足でありまして、これにつきましては将来適当な措置を講じなければならぬじゃないか、かように自由党の者としては考えておる次第でございます。
  360. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 もうこれ以上聞いてみたところが、今内容のことをいろいろ申されますけれども、何もこまかいものはないので、われわれは読売新聞の記事や日本経済新聞の記事を見て言っておる。実に心細い予算委員会なんですよ。こういうことで、この日本の昭和三十年度予算が、たった私と石村君の一時間余りの質問で何らこまかい検討もできないで、これが日本の三十年度予算として衆議院を通過するということは、国民の名においてはなはだ残念であることを私はここに付言をいたしまして、私の質問を終ります。(拍手)
  361. 牧野良三

    牧野委員長 これにて修正案に対する質疑は終局いたしました。 のこの際一言申し上げます。国会第五十七条の三の規定によりますれば、予算総額の増額修正については内閣に対して意見を述べる機会を与えなければならないということになっております。よって政府においては修正案中の予算総額の増額修正に関し、御意見がありますれば、この際お述べを願いたいと存じます大蔵大臣萬田尚登君。
  362. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 昭和三十年度予算につきましては先般来御審議を願っていたところでありますが、本日自由党及び民主党から修正案提出せられたのであります。この修正案によりますれば、一般会計予算規模は歳入歳出とも九千九百十四億円となり、政府原案に対し八十二億円減少と相なるのでありますが、特別会計予算のうち予算総額の増額修正となりますものは特定道路整備事業特別会計でありまして、この修正は本会計における資金運用部からの借入金を五億円増額して、ほぼ同額程度の事業費の増額をはかるものでありますが、諸般の情勢にかんがみましてやむを得ないものと考えるのであります。  次に政府関係機関予算につきましては国民金融公庫、住宅金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫において政府資金資金運用部借入金に振りかえられたこと等によりまして、借入金利息等が若干増加し、予算総額は増加することになっております。さらに日本国有鉄道におきまして建設費を五億円増額修正し、これを資金運用部からの長期借入金の増加によりまかなうこととなっております。これらの増額は今日諸般の情勢にかんがみましてやむを得ないものと考えます。
  363. 牧野良三

    牧野委員長 これより予算三案に対する編成替を求めるの動議及び修正案並びに政府原案を一括して討論に付します。宇都宮徳馬君。
  364. 宇都宮徳馬

    ○宇都宮委員 私は日本民主党を代表し、ここに議題となっております三十年度予算各案につき、民主、自由両党共同修正案、それを除く政府原案に賛成し、両派社会党の組みかえ動議に反対いたすものであります。  わが国の一般会計予算昭和二十七年度以来九千億円台にとどまり、三十年度政府提出予算案の歳出歳入もともに九千九百九十六億円であり、昭和二十九年度予算案に比し、わずかに一億円の増加にすぎないのであります。修正案によると一般会計規模は九千九百十四億円となり、若干の縮小であります。また政府資金の散布超過は剰余金四百八億円の歳入繰り入れ及び食管特別会計、外国為替特別会計の散布超過を推定して、大体七百億円程度と見込まれております。二十九年度一般特別両会計の散布超過一千二百億円に比べますと著しい減少であります。人口及び経済活動の自然膨張からくる予算の当然の増を計算に入れれば、相当な引き締め予算であると言い得るのであります。しかし財政規模を現在の程度にとどめることは国民大多数の要望であり、財政規模の膨張によって増税あるいはインフレーションがやってくることを望んでいる国民は一人もいないのであります。さらに日本経済健全化のためにも財政規模をこの程度にとどめることが強く要請せられております。現在は朝鮮ブームに引き続くややルーズな財政によって不健全になった日本の経済の整理期とも言えるのであります。いわば地固めの時期であります。いわゆる拡大均衡の政策が直ちに行われるならば輸出品価格の高騰となり、輸入のみ増大して、昨年度の前半において起ったようなあの国際収支の急激な悪化を再び引き起すことは明瞭であります。今年度予算の最大の眼目は、国民の絶対的要請である一兆円以内予算のワクを、その第四年度目に困難な情勢に抗してよく維持し得た点にあると信じます。それゆえ正直に申しますと、本年度予算の骨組みは、同じ一兆円以内予算である二十九年度予算の骨組みを、大体において踏襲するのやむなきに至っております。自由党が若干の共同修正を行なって本予算案に賛成するのは、まことに当然のことであると存じます。しかしながら政府がこの一兆円以内予算の骨組みに、日本民主党の方針による政策的肉づけを行わんとした苦心と努力は、これを十分に認めるものであります。すなわち社会保障関係費として失業対策費四十六億円の増加を初め、下級軍人遺族の公務扶助料単価引き上げ、厚生保険特別会計への繰り入れ増加、また児童保護費、育英事業費等が、その内容の改善とともに増額せられております。さらに住宅対策費でありますが、戦災に焼かれた日本人の不幸の象徴ともいうべき住宅の著しい不足を緩和するため、一般会計から二百十八億円――うち修正案によりますと四十五億円は資金運用部の融資に振りかえられましたが、二百十八億円の支出が計上され、それに資金運用部及び簡易保険の住宅金融公庫、新たに設けられる住宅公団に対する投融資、その上勤労者厚生住宅の三十億円を加えますと、住宅対策の総資金量は四百二十四億に達するのであります。これは本予算案の大きな特色であり、住宅不足を嘆く多くの国民とともに喜びにたえないところであります。また失業対策とも関連いたしまして、道路費が約六十億増額せられております。この道路費の増加は当然地方財政の負担増を結果いたしますゆえに、揮発油税のうちトン当り二千円とさらに増徴する二千円を加えて、地方道路税となし、地方財政の安定をはかっているのも、この予算案の一特徴と存じます。そしてこれらの増額せられた経費の見合いとしては、昨年度の災害減少による災害復旧事業費の自然減ともいうべき百三十億円減を初め、物価の下落による公共事業費の自然減等が充てられる形になっていますが、それ以外に各官省の交際費等が大幅に、といってもその絶対額はもちろん少いけれども、大幅に減少いたしておりますのは、組閣早々公邸廃止の措置を決した鳩山内閣の意のあるところが察せられ、注目に値すると存ずるのであります。  次に歳入の面において特に注点すべきことは、所得税の基礎控除額を八万円に引き上げること、給与所得控除、生命保険控除の限度額を引き上げることによって、低額所得者中心に二百七十億程度の減税を行わんとしていることであります。また輸出所得税控除の限度額を引き上げ、預金利子に課税を免除すること等によりまして、輸出振興と同時に、資本蓄積の増をはかっている点も注意すべきところであります。また砂糖、バナナ等特殊な輸入品の超過利潤を吸収し、産業投資特別会計を通じ、基礎産業合理化資金を提供せんとする特殊物資処理特別会計の新設も、三十年度予算の新しい面であります。  以上申し述べましたことによって明らかな通り、一兆円以内という限られたワク内においては、予算案の豊富な政策的肉づけはもとより困難ではありますが、しかし極力冗費を省き、住宅対策、失業対策の重視、保険財政、地方財政の健全化等、緊要の問題に力を注ぎ、かつ低額所御者の減税、さらに民間住宅建設の促進、輸出振興、資本蓄積のためにも、それぞれ減税を行わんとする政府予算編成の態度及び方向に対して、全幅の賛意を表するものであります。  なお防衛支出金及び防衛庁予算についてでありますが、本予算は昨年度に比し、防衛支出金が百二十五億円減少し、同じ額だけ防衛庁予算を増額いたしております。これは日米安全保障条約の趣旨により、米国駐留軍の減少を日本の自衛力が補充する当然の結果と存じます。外国軍隊の不法な侵入を容易ならしめない目的で自衛力を持つことは、独立国として絶対必要と信ずるがゆえに、社会党の組みかえ案に賛意を表することはできません。私が政府にこの際要望いたしたいのは、米駐留軍と日本の自衛力が完全に交代し得る時期及びその時期における自衛力の編成及び限界を国民に示し、国民の納得と協力を得ることであります。  最後に私は、本予算案編成の背景、国際的背景ともいうべきものを考察してみたいと存じます。  今日は朝鮮戦争の砲火が静まってからすでに三年余、仏印休戦が成立してからも一年近くの月日がたっております。サンフランシスコ条約は朝鮮戦争の砲声を背にして締結せられたのでありますが、現在の世界は冷静を取り戻しつつあり、ひとりソ連の政治家が国際緊張の緩和を唱えているだけではなく、自由主義陣営なかんずく英仏の政治家も、真剣に平和共存の可能性を検討していることは事実であります。仏印休戦あるいは来たるべき四巨頭会談に至る経過をよく観察してみれば、これを疑うことはできません。かような情勢において日本政府がソ連と戦争状態終結の努力をすることは、当然過ぎるほど当然であり、一般国民の要望するところであります。  政府が苦しい財政の中で、社会保障の諸政策をきわめて重視しつつ、ソ連、中共に対して国交調整の手を差し伸べておるのは、きわめて賢明な態度といわなければなりません。政府は自信を持って進んでいただきたい。  修正案について意見を申し述べますが、この案の根本は預金利子の免税によって、市中銀行に集中すると予想せらるる資金を目当てに、資金運用部及び簡易保険資金引き受けの金融債及び国鉄公債市中銀行に引き受けさせ、さらに資金運用部の運用の改善によって資金を浮かし、総額二百十五億の預金部資金その他の余裕によって、一般会計財政投資百五十五億を引き受けさせ、それによって浮び上る一般会計の余裕をもって八十八億円を他の一般会計の必要な支出増に振り向け、残り六十七億円を減税に振り向けんとするものであります。換言すれば一般会計財政投資を百五十五億円、資金運用部、簡保資金六十億の財政投資、この二つの財政投資をこの市中銀行肩がわりし、それを減税及び社会保障的経費等の増加に振り向けると同時に、資金運用部の六十億は農業、中小企業金融等に振り向けようとする、こう申してもよろしいと存じます。これは市中銀行預金集中が予想される限り適切な措置と存じ、賛成するものであります。  以上をもって私の賛成討論を終る次第であります。(拍手)
  365. 牧野良三

    牧野委員長 西村直己君。
  366. 西村直己

    西村(直)委員 ただいま議題となっております昭和三十年度予算三案そのものに対しまして、私は自由党を代表して自民両党提案の共同修正案に賛成いたします。両派社会党の組みかえ動議には遺憾ながら反対いたします。  私はまず政府提案の原案に対して批判を加えまして、自由党立場を明らかにいたして、修正案の賛成の理由も述べてみたいと思います。そして各位の御了解を得たいのでありますが、その前提として一言、二言両鳩山内閣の政局収拾に対する態度について不満足であり、また御意見も申し上げ、批判もいたしておきたいと思うのであります。  従来御存じの通り世間で言っておりますが、わが党内閣は何といってもとにかく信念がはっきりしておった。鳩山内閣を見ておるとどうもふらふらで、場当りで、御都合主義で、迎合主義だ、こういう批判は相当聞くのであります。これはどっから来るのかと私はいろいろ考えてみたんでありますが、これは一つは百八十五という比較多数という点もあろうと思うのでありますが、もう一つ掘り下げてみますと、比較多数ということに対しての認識そのものが十分でないという点じゃないかと私は思う。言いかえれば国民は強力でかつ明朗な民主政治を望んでおる。内外の時局は非常に動いております。一刻も政府は存在しなければならぬときに、比較多数党であれば何といっても国会乗り切りは困難である。この点において政府は真剣になって考えをめぐらさなければならぬ。ところが残念ながら組閣当初に当りましても勇ましく単独内閣の進軍ラッパを吹いちゃった。何とかなるだろうといって国会へ出てきて、鳩山さんここでいろいろ各党から御質問を受けて、国会をどうして乗り切れるのかと聞かれると、どうにも何ともなりませんという御答弁が多い。それじゃ国民が不安で、またどこへどうなっていくのかわからぬという気持が一ぱいになってくると私は思うのであります。そこで少数党内閣であるとこれをはっきりと反省と認識をされて、鳩山さんが謙虚な気持とおっしゃるから、一つ謙虚にその点を十分に反省されていかないと、今後ともこういった不安、動揺というものは私は増してくるのではないかと思うのであります。一つの道としては、積極的に進んで野党に対して堂々と所信を披瀝して、協力を積極的に求めるのも一つの方法であったけれども、単独で首班指名を受けるとぱっと勇ましく組閣をしてしまった。そこで自分の方でとにかく予算を作って、しかも一応政府の原案というものを見ると、党内の事情から三百億もかぶされて、総花主義的なへんてこな予算になった。そうして国会に臨んできた。ここに出発の誤まりがあった。少数党内閣が生きていく道にはもう一つ道がある。道というのは、それは堂々と天下に共鳴を得るような基本的な政策を真正直に打ち出して共鳴を受けまして、まかり間違えば玉砕してもいいではないか、それくらいな決意を持ってお立ちになればいいと思う。残念ながらそれだけの気魄もないから、私は場当りの御都合の迎合主義だという感じがする。  もっとはっきり申し上げますと、内閣自体にも欠点があります。鳩山総理は上の方におられて友愛精神をお説きになります、そうしてこの友愛という構想から、だれとでも仲よくしょうといって、甘いお感じを持っておられる。極端なことを言うと、共産党の人とまで仲よくしましょうという調子でやっておられる。そうしてその下にあるところの経済閣僚は、私は少くとも今度の予算審議に当って平仄が合ってなかったような気がする。一萬田さんは、さっきの答弁を通じますと、かなりわが党の政策に同調されているが、それまではデフレの親玉であるという、金融機関の代弁者的な性格というものを露骨に出している。石橋さんという方はインフレの親玉、高碕経審長官というのは、何かえたいがわからない六カ年計画をでっち上げて、一応計画経済をやるような顔をしておられる。それで今度は重光さんは、官僚政治と秘密外交という線を出している。河野さんは横紙破りの成策をとられておる。こういうふうに、内閣自体がでこぼこだから、予算の編成あるいは予算審議過程におきましても、矛盾と撞着が出てくるし、外交方針におきましても、あいまいもこ、いわゆる二また外交であるとか、二重外交であるとかいうような問題が出てくる。それで私どもが一番心配しておりますのは、この二重、二また外交におきまして、健全保守の立場をとらんとする民主党政府が、共産党までのしり馬に乗るという点、これには私どもは少しあぜんとしておる。いわゆる反共政策というものはもっとしっかり打ち出してもらわなければならない、こういう点を考えるのであります。これらの点におきまして、私どもは友愛精神もけっこうでございます。しかしながら行き当りばったりや御都合主義――なるほど予算は今日これで通りましょう。しかしどうもさっきの一萬田さんのお話を聞いておっても、予算予算としてとにかく通してもらうのだという行き当りばったり主義が出てくると、極端なことを言うと食い逃げだということになる。私などは、そういう意味からいきましても、ほんとうに保守結成ということを言われるならばいわゆる基本的な命題というものをもっと政府自身がはっきり打ち出さなければだめなんです。そうして初めて少数党内閣の生きていく道が開ける。この基盤がゆるんでおる。ゆるんでおるから、これから内閣がどっちへいくかわらない。そうすると国定は非常に不安、動揺してくるのであります。この点を一つ十分にまず考えていただきたい。従って私どもはこの機会にはっきり申し上げます。これからも健全野党の立場をとって、嶋山内閣がふらふらしないように、予算においてはとにかくわが党の基本政策をのんでいただいて、筋金をふらふら内閣に一本通したつもりでございます。これからもいわゆる基本的な法案の場合に筋金を入れまして、そうして健全野党を続行して参るということを、まず前提にはっきり申し上げたいと思います。(拍手)  そこで今度は予算の内容でございます。まずこの一兆円予算のワクの問題であります。これは小笠原大蔵大臣が、なるほど一兆円予算のワクをとりましたけれども、これは実質的な意味が失われているということを、一つ私ははっきり申し上げたいのであります。一兆円のワクは、膨張していこうという財政に対してかんぬきをかける。この意味では昨年は確かに意味があった。二十九年度予算におきましては、御存じの通り二十八年度の冷害、災害があって、やむを得ない財政膨張の結果、わが国の経済が少しインフレ状態に入ってきたから、国際収支も悪い。そこでこれを食いとめるために一兆円という一つのワクを設けた。このためには、そのかわりに小笠原大蔵大臣当時には、相当それに対するいろいろな準備の手を打っております。言いかえれば、防衛分担金削減、公共事業費再査定をやっております。人員整理にともかく取りかかる、補助金の整理、地方平衡交付金制度の改変をやった、警察制度の改変、こういうふうに財政に関する相当大きな変革、準備をやって、しかもその効果というものは、相当程度国際収支の改善等において上っておることは、事実がこれを示しておるのであります。ところが今回の一万田さんの一兆円の予算、これは一応一兆円のワクを取り上げた。しかしこれに対して準備が十分であったでありましょうか。国民経済に対して、インフレにならないようにという意味においての心理的効果は、確かに私も認めますが、それ以上に三十年度の場合におきましては、客観情勢が変ってきております。資金散布超過の面におきましても、去年と今年とでは千二百億の開きがあるのであります。でありますから、そこに無理が起ってきておる。この予算には無理が起ってきておるのであります。窮屈が起ってきておるのであります。そこで均衡が破れる。われわれはこれを超デフレ財政と比較しなければならぬようなことになったわけであります。だから世間では一兆円はよいけれども、何とかの一つ覚え、こういう悪口も出てくるのであります。やはりそのときの客観状勢を十分に考えた上での一兆円でなければならないとわれわれは主張したいのであります。早い話を申し上げますと、三十年度においては当然地方交付税交付金が二〇%から二二%に上るとか、あるいは児童の自然増加によって当然義務教育の費用がふえてくる、あるいは恩給費、国債費等も数百億円合せて上るのであります。これをどこに求めようかというならば、どうしたってそれは防衛分担金削減、平和回復連合国財産処理等の大幅の削減をしなければならないが、それができなかった。  そこでそのしわ寄せがどこへいったか。まず第一は、防衛庁の後年度へのいわゆる国庫債務負担行為百五十四億八千万円というやつが飛び出してきたのであります。なるほど去年も債務負担は八十数億あったけれども、今年は倍になった。おそらく一兆円のワクがこういった自然増加のものにしわ寄せがなければ、あるいは防衛折衝の結果、この一部は本年度予算に出てくるのを三十二年度までにほうり込むという無理をやっております。第二は食管会計の赤字、これをインベントリー・ファイナンスの食いつぶしをやっておる。しかもその上にとうとう予算審議過程において、減収加算という問題を突き詰められて、三十三億、何だかえたいがわからず、財源のないままに、ともかくきんちゃくの底から出しますといって大蔵大臣答弁させられた。これは大蔵大臣としては、われわれが時間があってさらに追及して参りますれば、責任問題です。補正をしなければならぬ問題であります。こういうふうに考えて参りますと、これらの点からもう一つの補正の目的がすでに頭を出しかかっておるのであります。第三番目は、いわゆる一兆円のワクというけれども、ウインドー・ドレッシングをやっておることは、たびたびこの席で皆さんがおっしゃっておる。専売益金の三十億とか、あるいはバナナや砂糖のごとき特殊物資のいわゆる輸入利潤の納付金、これらはみな特別会計に追い込んで、そうしてウインドウ・ドレッシングでやっておる。ここでも準備が足りないで意味がない。さらに予備金というものを八十億に減らしておる。災害が起ったならばどうするか、すぐ補正の問題が出てくる。民主党さんでは、とにかく二百億の予算を分け取りしていって、党内で政府に押し寄せた結果、予備金は切っちゃう、雑件はかなり食い込んでもう弾力性がない、弾力性がないところへ持ってきて、国会で何とかなるだろうという程度で出してきておる。だからわが党はそれじゃこうしなさいといって筋金入りの一つの方針を与えた、つらいけれども結局はそれをのまなければならなかった。これが今回の予算折衝であります。  それからもう一つ、この機会を通じてはっきり申し上げておかなければならぬのは、防衛折衝の問題であります。鳩山さんはたびたび言われましたように、選挙の最中に、私どもは選挙で勝つならば、必ずや防衛支出金は大幅に減らして、そうしてそのお金でもって住宅を建ててあげます――何と申しますか、きわめて国民の耳裡に入りやすいことでつったのであります。票を集めたのであります。しかしこれは実際できない仕事、そこでこれは政策にはならぬで希望になってしまったわけであります。むしろこの結果重光外務大臣の渡米拒否の問題から発展しては、内閣が外務委員会でいわゆる戒告の決議を受けるという、国際政治の上ではちょっと格好の悪い状態にまで入ってしまったのであります。行政協定や安保条約に基く防衛分担金の問題は、わが党の時代でもなかなか苦労した問題でございますけれども、この意気込み、いわゆる鳩山内閣が何とかなるだろうという甘い考えではなくて、防衛関係費は去年通り千三百二十七億円のワクに抑えられてしまった。しかもその上に残念なことには、日米共同声明という大きなおみやげをもらったわけであります。このおみやげの内容は、申し上げるまでもなくまずこれから問題になって参りますところの飛行場基地の拡張等の施設費の増、それから交付金の基準額を一億五千五百万ドルにぴしゃっと抑えられてしまったということ、三十一年度以降の防衛支出金の削減交渉をかなり困難にしてしまったということ、それから三十一年度以降の防衛力漸増を明文で義務づけられてしまったこと、しかもその上に三十二年度までにわたった百五十四億の予算外の国庫負担の契約をしておる。こういうような大きな責任、しかもそのあいまいもことした公約と、この折衝との板ばさみになった鳩山内閣としては、この席でもって、いや、それは鳩山内閣の政治責任であって、法律上の拘束はもちろんございませんし、将来次の内閣がやって下さればいいと思っておりますという程度の甘い答弁で、国際信義を裏切るような説明をされておる。こういう点に私どもは非常に不満があるのであります。防衛折衝は、これは失敗であったとはっきり私どもは認めざるを得ないのであります。  特にこの際私は、総理と防衛庁長官に真剣になってお考え願いたいのは、このように日米間の安全保障体制や国内防衛体制を増強していく、そうすると後年度予算編成については、ある程度のワクがはまりやすいのであります。ところが民主党や民主党政府としては、自衛軍備というものを盛んに言っておる。自主防衛体制という言葉を使っておる。自主という言葉を使っておる以上は、自分はこう行くのだ、国民に対して今後防衛はこうなるのだということを、もっとはっきりお示しになる必要があるのではないか。ただこま切れ的にそのつど、そのつど大体の折衝を重ねていくという形はお破りになって、自主防衛体制という以上は、少くとも一年の子供が学校に入ったら、三年になったらどのくらいの教科書を使うぐらいのことははっきりお示しにならなければ、国民にいかに防衛思想を鼓吹なさろうとしても、これは魂が入ってこない。その点ははっきり御認識を願いたい。  それから三番目に内政の点であります。これは今申し上げましたように、防衛費を削減して公約等の予算に回すことができなくなり、わずかに公約の実行されましたのは、歳入において減税、歳出におきましては住宅建設費の増額と失業対策費の増額、これも失業保険費は足りません、おそらく補正になるでありましょうが、この失業対策費の増額等で公約の一部履行はしております。ところが、あとのこのしわ寄せをどこにやったかというと、災害復旧費を中心とした治山治水、食糧増産対策費で、合計百四十五億円を削減しておるのであります。だから公約違反のしわ寄せを農山漁村の犠牲と地方財政を顧みないところにけつを持っていったのであります。そうしてわずかに一兆円のつじつまを合わしております。  これらの、ずっと今申し上げました三つ四つの点をこの政府原案について結論的に申し上げますと、この予算案は無理に一兆円のワクをかぶせて、防衛費関係では前年度の総ワクと変らないものを持ってきて、しかも後年度に大きな荷物を背負った。内政費においては、政府の六カ年計画に伴うところの経済拡大の基盤に対しては、何ら見るべきものを与えていない。いわゆる超デフレと申しますか、不況予算の性格がここに現われてきたわけであります。  でありますから、わが党といたしましては、これに対してどうしても修正を加えたい、大幅に基本的にいじりたいという考え方から、そこに組みかえ案というものを一応考えたのであります。私どもが主張いたしますのは、二十八年度は、先ほど申し上げましたように、六十年ぶりの大風水害、冷害で非常な被害を受けた。二十九年度には国力の回復と国際収支の改善を目的として、一応一兆億の緊縮の予算を組んで、その結果として国際収支は三億四千万ドルぐらいの黒字になり、国際的に国力は強くなりました。その反面、国民に対しましては犠牲は相当大きかった。そこでわれわれとしては、民力滋養の必要ということが今日強く感ぜられるのであります。一萬田蔵相は、たしか第一次内閣のときでありましたかに、八合目で国民にミルクを与える、こう言っておりましたけれども、私どもはこの予算を通して見ると、国民を七合目に引きずり落して、ミルクじゃなくて、脱脂ミルクを無理に飲ませるというような感じがする。そこのところを一萬田さんは地固めと言っておるわけでありますが、実際は地固めでなくて、地くずれになって、国際収支は五月になると赤字になっております。下渡り手形もふえております。繊維その他の商社の滞貨とか倒産の問題が出ております。農村にも不況の形が入ってきておりましょう。御承知の通り郵便貯金、農協の貯金は減ってきております。こう考えて参りますと、失業者は去年の五十数万に対して、ことしは同じ月で、一年たつと、八十何万になっております。不況が深刻化しておるということははっきりしております。政府は六カ年計画の初年度だと言って、たとえば農林大臣は土地改良費はここで一応大幅に切っても、来年はやってやると言うけれども、そこにデフレをとって、急激に断層をもって、がけを上って来年景気拡大に入るということはできないのであります。やはり国民経済、国民生活の運行は徐々でなければならない。でありますから私どもは今年度のいわゆる地くずし予算と申しますか、政府が地固め予算と言っておる中に、一応景気拡大の種はまかなければならない、まかなくてはいけないという意味から、組みかえ案というものを出したのであります。  このままでほうっておきますと、結論的に申しますと、超デフレ政策は、結局産業経済を萎縮する、民生の不安定を招来する、暫定予算が続いたために、揚げ超が続きやすい、国際収支が悪くなって、手持ち外貨が減るであろう、こういうところから、われわれとしては基本原則としてインフレはもちろん避けるが、本年度予算からせめて拡大均衡の基盤だけは養うようにしたい、これがためにはわが党が民力滋養として一千億の減税を主張しておりましたが、それに近い線の減税政策を入れながら、同時に民力滋養、貯蓄や資本蓄積の増強をはかる方針をとり、その増強されましたいわゆる蓄積、国民貯蓄というものの一定割合を産業公債等の産業計画の資金の中に確保して、そうして合理化による拡大均衡をはかろう、そうしてなお緊急やむを得ない部分だけについては民生安定、食糧増産等のために多少の歳出の増を行う、この大きな方針のもとに一般会計財政投融資を通じまして四百二十億の組みかえ案を出したのであります。  これが御存じの通り自民両党の折衝に入った結果、今日共同提案されましたような修正案になったのであります。その間自民両党の間におきましては、財政投融資資金は原則として税金で負担すべきではない、これははっきり約束ができました。減税による国民貯金の増強策を立てること、これもできました。増額預金量の一定割合は財政投融資資金に活用するために資金委員会法を作る、そしてその範囲内において金融機関公債金融債等を保有せしむる、こういう方針を両党で合致して決定した。そうしてその結果、数字においては二百十五億を、御存じの通り減税、歳出、財政投融資に分けて今日修正案提出いたしているわけであります。従って私ども自由党といたしましては、民主党あるいは政府がお考えになる以上に、さらに大規模な減税をやることによって、消費に流れやすい資金貯蓄増強に振り向けて、その一部を公債金融債等に振り向ける、これは私どもは決してインフレというものでなくてむしろ、健実なる景気拡大の大きな方針であろうと思うのであります。この大原則は、民主党も政府もおのみになったわけであります。従って、インフレを避けながら、拡大均衡の基盤というもの、礎石というものを一兆円予算にぶち込んだ、これは国民経済を健全に発展拡大するために、国民諸君は十分御了解し賛成をしてくれるものと思うのであります。そういう意味で私は、政府の原案の欠点をはっきりさせ、その前提になる政局収拾に対してもっときぜんたる態度をおとりになる必要があると思う。同時に今度は政府の原案に対して、私が如上に申し上げた趣旨から、修正案というものが提案されたわけで、これに賛成を申し上げる次第であります。  最後に社会党の組みかえ要求であります。これは申し上げるまでもなく、財源を防衛費削減に求めておるのであります。これは毎年この席で繰り返していらっしゃって、私も革新陣営がやがては統一されて政権にも近づこうというときに、もう少しリアリスティックな方法で、国民が納得できるような方法で、財源を捻出するような知恵が働かないかと思って期待をしておるのでありますが、やはり今日依然として、何とかの一つ覚えという調子でやっておられることは残念であります。この意味で、残念ながら両党の組みかえ案には賛成ができないのであります。  以上が私の理由であります。(拍手)
  367. 牧野良三

  368. 福田昌子

    福田(昌)委員 私は社会党を代表いたしまして、両派社会党の共同組みかえになります三十年度一般会計予算特別会計予算政府関係機関予算の三案の組みかえに賛成をいたします。そして政府の原案、また今日提案になりました民自両党の修正案反対をいたします。  私が両派社会党の組みかえ案に賛成いたしまするおもなる理由は、国家の再建発展のためには、まず国土の保全、民生の安定が第一でありまして、そのためには不要不急の予算の支出をできるだけ抑制するのは当然のことでなければなりません。この考え方のもとに、まず社会党案におきましては、四人家族の月収二万円までは無税にいたしまして、ことに低額所得者を中心にいたしまして減税措置をはかったことであります。また他面社会保障関係予算、ことに生活保護法、社会保障費、社会保険費あるいはまた結核対策費、失業対策費、児童福祉費その他一般の社会保障関係の増額をはかりまして、また公共事業費の増額ことに治山治水費、災害復旧費、食糧増産対策費などを増加いたしたことであります。供米の生産者価格を引き上げ、消費者価格を据え置きましたこと、また公務員の給与、ことに期末手当の増額をはかったことなどは、当然の措置といわなければなりません。このために一方不必要な防衛関係予算削減をはかり、防衛支出金全額を削除いたしまして、防衛庁費は当面の食糧、給与以外のものはすべてこれを削減いたしまして、約千二百億の財源を浮かせ、前述いたしました項目の予算の主たる代り財源にいたしましたことは、まことに時宜を得た処置といえます。かくすることによりまして初めて民生は安定いたし、平和国家の再建ができるのであります。それゆえに私は両派の共同組みかえ案に賛成をいたす次第であります。  これに反しまして、政府の原案及び民自両党の修正案にはどうしても賛成するわけに参らないのであります。政府原案は、防衛分担金削減のその交渉の経緯からいたしましても、またその後発表されました日米共同声明からいたしましても、予算編成権の自主性を失墜いたしておりまして、その上に再軍備を増強させ、しかも将来にわたっての再軍備強化の重荷と義務を負わせたのであります。そして米軍への従属性を一そう強化した予算であるという点におきましても、まず賛成できません。しかも予算案全体といたしましては、デフレを促進して、しかもその中でインフレの要因をはらんでおり、その意味においてきわめて不安定なデフレ予算であるということがいえます。さらにまた政府も認めておりまするように、拡大均衡の糸口も見出されませず、その地固めの意義もほとんど見出されないという点であります。しかもさらに注意しなければならない点は政府発表の経済六カ年計画を少しも反映いたしていない、むしろこの予算案に合せて、政府の六カ年計画の当初の計画が修正されたというようにさえ考えられるのであります。またさらには教育を圧迫いたし、科学技術の軍事化を強要した予算であるという点でございます。さらにまた地方財政を圧迫いたしておる点は大いに注目しなければなりません。さらにまた民生安定の点から見まするならば、結核対策費は削減いたし、社会保険は被保険者の負担を強化いたしまして、その社会保障の精神を大いに後退させております。一般に社会保障関係のものは軒並みに圧迫されておるのでございます。さらにはまた農山村、漁村を無視いたしておりまして、つまりこの予算案は、民生の不安定――女、子供を無視いたしまして、さらにまた農漁村を蔑視した予算であるといわなければならないのでございます。羊頭狗肉と申したいところでございますが、それよりももっとひどいところの、たとえばパンを要求しておりまする大衆に小石を与えるような、全く不人情な欺瞞的予算であるという点であります。かような意味合いにおきまして、私どもは国民の名において政府の原案に賛成することができなかったのであります。(拍手)  次に今日その御説明がございました民自両党の共同修正案を見ますと、その修正案の成立は全くやみ取引でありまして、しかも自由党主張の四百三十億とゼロの民主党案の中をとりまして、最も大切な数字の検討、財源の捻出につきましては、全く検討いたしませずして、まことに残念なちょうど博徒のお手打式のようなやり方で、その中をとりまして二百十五億と妥協いたしたことでございます。このことは、はなはだ失礼でございますが、公党といたしまして全くあきれ果てた態度といわなければなりません。こういう修正案財源をどういう形で今後調達されるかは、これは国民のひとしく大きな関心事であったのでございますが、御説明を伺いますと、結局はその財源措置一般会計から財源を捻出いたしますために、資金運用部資金財政投融資肩がわりさせ、そのしわ寄せをさらに市中銀行金融債消化に転嫁したということであります。昨年度国鉄公社債でさえも今なお不消化であるという状態でありますのに、さらに四十五億の国鉄公社債の増加を見ましたことは、この公社債の市中銀行消化が可能であるかどうかは、運輸大臣自身さえもただいま、先ほどの答弁において危ぶまれておるのでございます。この一点だけを見ましてもこの予算の将来というものはきわめて危うげなものであるといわなければならないのでございます。しかもかくのごとき方法をとりますことは、今後予想されまする防衛費の増額に、有力な便宜を提供することを保証したことになるのでありまして、たとえば軍事公債などを発行するというような場合も考えられて参るのでありまして、全く心配にたえない点であります。    〔私語する者多し〕
  369. 牧野良三

    牧野委員長 静粛に願います。
  370. 福田昌子

    福田(昌)委員 また減税政策におきましても、平年度においては、自由党は一千億、民主党は五百億の減税をするということを、選挙の際にはスローガンとして宣伝しておられましたが、この減税政策は、両党の修正案によりますと、大体四百億以下の減税措置である。しかもその減税の内容は主として大資本家の利子課税の減税と、大口所得者の減税が主でありまして、零細な三人世帯二万円の月収では、わずかに三百円足らずの減税にすぎない。しかも一方お酒やたばこや砂糖というような間接税は増収いたしまして、大衆課税の増加をはかるということは、結局減税を装いながら、低額な勤労所得階級に対しては増税をしいるもの以外ではないという点でございます。民主党、自由党両党の減税政策なるものは全く欺瞞的政策にほかならないということが言えるのでございます。  さらにまた地方財政に対しましてはこの上ない圧迫を見せておるのでありまして、地方自治体では地方交付税交付金の交付率の増加をこそこぞって主張しておりますにもかかわりませず、交付率の引き上げをやらないばかりではない、交付金の総額をさえ減少いたしておるという点でございます。もっとも一部専売納付金の減額で補うといたしましても、結局は自民両党の政策といたしまして、ますます地方財政を圧迫し、結局地方行政を強い中央集権下におさめ、間もなく知事公選の廃止というようなことをも打ち出して参ろうし、内務省の復活などが意図されておるかに想像される点でございます。  さらに詳細に一、二点を検討いたしますと、内閣官房費をさらに二百万円増額いたしましたことは、これはただいまも民主党の方から御説明がありましたように、憲法改正の調査のために使用されるということでございまして、かくいたしまして結局は再軍備態勢を憲法で義務づけまして、さらにはまた保守連繋の――強力な保守提携の具に供しようという意図にほかならないと言えるのでございます。  かようにいたしまして、当初の政府提出いたしました予算の性格と規模とは大いに変更させられたのでありますが、かような大幅な修正をいたしますならば、今日低賃金に悩でんおります一方、公務員その他の勤労者の給与ベースの引き上げ、期末手当の引き上げ等に多少とも顧慮が払われますならば、これはまた何をか言わんやでありますが、かような点につきましては全然一べつさえも払われていないということは、私どもといたしましてさらにさらに遺憾な点であります。  これを要しまするに、この妥協案は、政府原案よりも一そう国民経済と国民生活に大いなるマイナスを背負い込ませまして、地方財政をさらに圧迫し、防衛力の増強を将来にまで責任を持たせたことであります。もっと大切な点は、この民自両党の共同修正案によりまして、将来に公債政策の端緒を開いたという点であるのでございます。従いましてこの修正案はまさに政府原案の改悪でありまして、健全財政と民生の安定、日本の独立とをますます遠方に追いやることになった予算であるということが言えます。またこういう予算修正に賛成されました政府は、全く面目まるつぶれと申さなければならないのでありますが、先ほどの政府御当局の御答弁によりますと、あまり責任もお感じになっておられない、また政府自体の面目のつぶれたことに対しましても、一向に羞恥を感じておられないように見えるのでございます。かようなことは結局鳩山内閣御自身が、当初から予算編成自主性も具体性も持ち合せず、ましてや計画性も信念もなかったということを現わしておる以外の何ものでもないのでございまして、ただ政府にありますものは政権の座に長くすわりたいこと、内閣の延命策以外にはないと言われても仕方がないと言えるのでございます。  以上の意味合いにおきまして、私は両派社会党の共同組みかえ案に賛成いたし、政府原案及び民自両党の修正案反対いたすものでございます。(拍手)
  371. 牧野良三

    牧野委員長 川上貫一君。
  372. 川上貫一

    ○川上委員 私はただいま上程されております三十年度予算案に対して、政府原案並びに民自両党の修正案反対し、両派社会党提出の組みかえ案に賛成の意見を述べます。  第一に、政府の原案と修正案は、国民の要求を無視しておる。国民生活の保障と安定という政策を放棄しておる。その事実は予算案の全体にわたって枚挙にいとまがないと私は思うのでありますけれども、特に二、三の例をあげてみれば、たとえば減税、こう言うておりますけれども、実際には国民所得の増加ということを理由にして、政府原案では前年度よりも二百十数億、修正案では約百五十億の増徴を見込んでおります。国民の要求する税制の改革は考えられておりません。地方財政の破綻と赤字については、これは非常にひどいのでありますけれども予算案はどちらもこの補てんを地方税の増徴と公務員の首切りに求めておると言うても過言ではないと思う。もっとひどいのは、政府は石炭鉱業合理化臨時措置法や地方財政再建促進特別法、あるいは地方自治法の改正などを提案しておるのでありますが、この結果は中小の炭鉱が破壊されることはもちろん、多数の失業者を作り出し、いわゆるデフレ政策なるものと相待って、厖大な失業群が予想されておるにもかかわらず、これに対応する中小業の救済や失業対策の経費は、ほとんど眼中に置かれてないのではないかと言うてもよろしい。このことは健康保険に対する赤字の問題でも同様だと思う。すなわちすべてを健康保険法の改悪と労働者の掛金の増加と保険給付を削ることだけに求めておるといわなければならぬ。さらに災害復旧費に至ってはこれは非常にひどいのであって、ほとんど大幅に打ち切っておるのであります。農林関係では食糧増産対策費を削減して、土地改良費には大削減を加えておる。そればかりではなく新規事業は全くこれを打ち切ってしもうた。その上食管会計では赤字を理由にして、実際は米価の実質的な引き下げと、陰に消費者価格の引き上げをなさなければならぬような予算を組んである。同時に黄変米の配給についてはこれを廃止するという考えを持っておらぬ。結核対策費を削減してある。公務員の全面的要求であるベース・アップや諸手当の要求は頭からこれを無視してある。いわんや四十二万戸の住宅建設に至っては大へんひどいのである。いわばペテン師的なやり方の結果になっておる。政府の公約が、文字通りこれは羊頭狗肉であったということを暴露する結果になってしもうたと言うても過言ではない。こういう工合でありますから、軍人恩給を増加すると言うておる。ところが一方では全く差し迫った国民の要求であるところの、生活保護や医療保護に対しては決して心を配っていない、あるいは減額し、あるいはこれを打ち切り、あるいははなはだしいのになりますと、これは御承知の通り、療養の自力もない気の毒な結核患者から、ほんのわずかばかりの保健婦までも取り上げてしまおうというような、こういうむごいやり方を押しつけてあるのが予算だ。  以上はただ一、二の例にすぎません。要するに私は政府原案並びに修正案は、これだけの事実をあげてみても国民の要求を全く無視しておるものであるということを言わなければならぬと思う。しかし特に私がここで指摘したいと思うことは、このような予算案は保守政権の政策の当然の結果である。すなわち国民の要求に応ずる予算を編成することはできないのだ。今日日本の政治に私は三つの基本的な態度があると思う。その一つはすべてのことをあげてアメリカにたよるという態度、いま一つの態度は、アメリカにたよるのではなく、反対に国民にたよる、国民の希望と要求を基礎にし、国民の力をほんとうに信頼し、その力にたよって日本の平和と独立と民生の安定をかちとろうという、この二つの態度だ。われわれの態度はもちろん第二の態度でありますが、民主党、自由党両党の態度は第一の態度であると私は言わなければならぬと思う。この第一の態度はアメリカの戦争政策にたよる態度、アジアに対するアメリカの侵略政策に奉仕する態度、この態度こそ政府原案並びに両党の修正案を一貫するところの性格の根底をなしておるということを明らかにしなければならぬ。その典型的な形が予算案に現われておるところの防衛費関係だ。政府は緊縮政策などと言われておりますけれども、防衛関係費などは少しも緊縮されておらぬ。増加の一途をたどっておる。しかもそのうしろにひそむものは防衛計画であって、これはアメリカのさしがねなんだということを言わなければならぬ。現にアリソン・アメリカ大使は、二月の三日にいわゆるアリソン覚書なるものを政府に出しておる。その内容は、第一に、防衛分担金削減は、日本政府が支出する防衛費の増額につれて考慮する、第二は、日本の防衛費が九百億をこえた額だけを減額をする、第三には、三十年度予算が内政費を増額するならば当然に防衛費の増額も考えなければならぬ、こういう内容のものであるということが伝えられておるのであります。これは単なる覚書だけに終ったかというと、そうでない。本年度予算を見ればわかる。防衛関係費の予算外契約まで加えますと、この覚書の内容と全く一致している。ちっとも数字が違わない。そればかりではない。基地については原爆基地としての拡張を、アメリカの言いなりに政府は承諾されたと私は思う。今後自衛隊の漸増を承諾されたのも明らかに日米共同声明である。このような約束ができるまで政府は三十年度予算案を編成することができなかった。聞くところによると、予算閣議が五回にわたって流会しておる。ここに予算の根本的性格がないだろうか。ここにこそこの予算の根本的性格があるのではないか。ここにこの国民の要求と生活を無視する予算の性格があって、これが保守政党といわれる政党の政策の根底であるということを指摘しておきたいのです。こういうありさまでありますから、財政投融資計画を見ましても、アメリカのひどいひもつきである余剰小麦資金を繰り込んである。その上に民自両党の共同修正に際しては、国民の預貯金の一定の割合を政府の指定する用途に使うところの資金委員会を作るという、この構想を織り込んである。これは一見何でもないように見えますけれども、他の同僚委員諸君も指摘された通り、このような安易な財源調達の道をわざわざここに開こうということは、その裏側に財政規模の膨脹ということと、今後ますます増大する莫大な軍事費を、この有力な財源によってまかなっていこうという突破口をここに予想しておるものであるということを、どうしても考えなければならぬ。そういう工合でありますから、この予算案の性格は政府提出の諸法案によっても裏づけられておる。地方財政再建促進特別措置法案、地方自治法の改悪、石炭鉱業合理化法案等はさきに述べました。そのほかに国防会議構成法案がある。秘密保護法を拡大しようとしておる。失業保険法の改悪がある。輸出入取引法の一部改正があり、さらに重要なる問題は、本年度の防衛関係費の取りきめを契機として、日本全土がアメリカの原爆基地にされてきたということであります。このような平和と独立を放棄し、国土と国民の生活を破壊し、祖国と日本民族をますます隷属に陥れる予算案には絶対賛成することができません。これが反対理由であります。  次に両派社会党提出の組みかえ案でありますが、この組みかえ案は住宅対策費や、文教関係費は政府原案とあまり変りません。また政界を腐敗させたところの外航船舶建造利子補給費は認めてあるようでおります。さらに財政投融資資金計画は大体において政府案とあまり多く違わないように思うのでありますが、これらの点については国民の要求に完全にこたえたものとは言えないでありましょう。けれども、この組みかえ案には社会保障関係、農林関係、災害復旧関係の経費が全部増額されております。特に公務員の諸給与及び地方交付税交付金の増額が盛られております。また少額所得者の免税点を大幅に引き上げると同時に、法人税の累進制を認めております。利子及び配当所得に対する減免をしません。その他消費税の一部を削減しております。しかし特別に私が重要な問題としてここに指摘しなければならぬことば、政府原案における隷属再軍備政策の背骨である防衛分担金の全額を削除してあるということ、防衛庁費を大幅に削って、予算外契約の全部を削り去ってあるということ、このことは当面する国民の要求にこたえ、アメリカへの隷属を断ち切り、再軍備を阻止し、政治を平和、独立、民生安定の方向へ切りかえる端諸を開こうとするものであるといわなければならぬと思います。この点において組みかえ案は国民の要求に沿うところの政治の方向に向って一歩踏み出すものである。もちろんこの政治を実現することは決してなまやさしいことではないかもしれません。しかしながらわれわれはお互いに手をとって、国民とともにどうしてもこの道を切り開いていかなければならぬ。また必ずこの道は切り開くことができるであろうということをわれわれは確信しておるのであります。それゆえにわれわれはそのためにこそ一そう献身するであろうということをここにはっきりと明らかにして、両派社会党の組みかえ案に賛成するものであります。
  373. 牧野良三

    牧野委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより採決に入ります。  まず日本社会党両派の共同提案として、赤松勇君外十六名より提出されました昭和三十年度一般会計予算外二案の編成替を求めるの動議を採決いたします。右の動議に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  374. 牧野良三

    牧野委員長 起立少数。よって赤松勇君外十六名より提出せられました昭和三十年度一般会計予算外二案の編成替を求めるの動議は否決せられました。  次に日本民主党及び自由党共同提案として、上林栄吉君外三十一名より提出せられました昭和三十年度一般会計予算外二案の修正案を採決いたします。  右の修正案に賛成の諸君の起立を願います。   〔賛成者起立〕
  375. 牧野良三

    牧野委員長 起立多数。よって上林山榮吉君外三十一名より提出せられました昭和三十年度一般会計予算外二案の修正案は可決いたしました。  次にただいま可決されました修正部分を除いて各原案を一括して採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  376. 牧野良三

    牧野委員長 起立多数。よって昭和三十年度一般会計予算昭和三十年度特別会計予算及び昭和三十年度政府関係機関予算修正部分を除いていずれも原案の通りに決しました。  これにて昭和三十年度一般会計予算昭和三十年度特別会計予算及び昭和三十年度政府関係機関予算の三案は、いずれも修正議決いたしました。  委員会報告書の作成につきましては、先例によりまして委員長に御一任を願いたいと存じまするが、御異議はございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  377. 牧野良三

    牧野委員長 御異議なしと認め、さように取り計らいたいと存じます。  これにて予算三案に対する議事は終了いたしました。  この際ごあいさつを申し上げます。去る五月四日審議を開始いたしまして以来、委員諸君は連日御精励熱心に質疑をお重ね下さいまして、審議を尽され、また六月分暫定予算をも議了して、本日ここに総予算審議を終了いたすことのできましたのは、委員長といたしまして感謝にたえません。厚くお礼を申し上げまする。簡単ながら謝意を表してごあいさつといたします。(拍手)  本日はこれにて散会いたします。    午後七時三分散会      ――――◇―――――