○岡
委員 私は日本社会党を代表いたしまして、
昭和三十
年度一般会計、特別会計及び
政府関係機関の
予算につき、
政府原案並びに本日上林山榮吉君外三十一名の御
提出にかかる
修正部分に対しまして、遺憾ながらその撤回を要求し、ここに編成替を要求するの動議を
提出いたすものであります。
去る四月二十五日、
政府原案が本院に
提出されましてより一カ月有余、われわれは鋭意その
審議を進めて参ったのでありますが、今般突如として民主、自由両党の妥協の成立によりまして
共同の
修正案が
提出されました。保守政権温存のためには国民の世論を顧みるいとまもないというあまりにも無原則、無定見の妥協に対しては、世論がきびしく批判をいたしておりますから、この際私から申し上げることは差し控えたいと存じます。
さてわれわれの組みかえ動議の内容でありますが、大体
政府は、国民所得の推定において二十九
年度六兆一千九百七十億円、三十
年度は六兆三千二百三十億円と二%強の増加を見込んでいるにもかかわらず、
一般会計予算規模を両
年度ともに一兆円のワクで押えているのでありますが、二十九
年度から本
年度にかけて平均物価は約四%下落しておりますから、実質的には国民所得の増加は名目上の二%増と物価下落による四%増を合せて六%の増加となるのであります。従って本
年度一般会計予算規模は、必ずしも一兆円のワクを固持することなく、国民所得の増額に見合って、二%から六%までの増額を行なっても、ことさらに
財政インフレを引き起す誘因とはならないのであります。
われわれの組みかえ案はこの点に着目して、もちろん消費的支出の多い
一般会計予算は一兆円のワクに抑えましたが、生産的支出や投資的支出の多い
財政投融資関係では、国民所得の伸びに正比例した郵便貯金、簡易保険等の増額を見込みまして、これらを原資として
財政投融資の増額をはかったのであります。今回の両党
妥協案は、この点については、むしろわれわれの方針に屈服したものとも言えるでありましょう。しかしそれにいたしましても、減税、
一般歳出、
財政投融資の各項目ともきわめてずさんであって、とうてい国家
予算として採用できるものではないのであります。たとえば減税において年所得五十万円以下の法人税率を三五%に引き下げると改正しておりますが、年所得五十万円とは全く零細規模の法人であって、中小法人の税率の引き下げの主たる対象は少くとも中小企業等協同組合法でいう中小企業体すなわち
資本金一千万円以下の法人を対象とすべきであります。
しかもこの
共同修正案の本質は、すでに明らかにされた通り、防衛
関係予算は歳出千三百二十七億円、
予算外契約百五十四億円、過
年度繰越金約二百七十億円を加えると、合計千七百五十億円をこえる多額な防衛費を
予算上の鉄則として動かし得なかった点にあるのであります。これに対しわれわれの組めかえ案は、第一に
歳入面においては、減税一千億円に及ぶ税制改革を行い、一方では租税特別
措置法における大法人に対する不当なる課税減免を大幅に廃止し、結局
租税収入では
政府案よりも十億円減収とし、
歳入規模を九千九百八十六億円に組みかえるものであります。
第二に、歳出面においては、防衛
関係費では一千二十七億円を
削減し、
一般行政費では
政府案よりも冗費を節約して二百五十二億円を減額する。一方では、社会保障
関係費並びに文教
関係費、公共事業、食糧増産対策費
関係において、資料に明らかにしたような
理由で、それぞれ最低必要経費を増額計上したものであります。また地方交付税交付金の交付率を二二%から二七%に引き上げまして、新規に三百十七億円を計上し、
政府が計上している赤字二百億円を埋め、地方道路税、木材引取税、自転車荷車税のごとき悪税に
反対いたしまして、これの廃止による百二十億円の減収を補わんとするものであります。また旧軍人恩給については、文官恩給との不均衡を是正し、特に下士官兵に対する支給額を引き上げるために、
政府案に比べて二十億円増額せんとするものであって、これは
共同修正案のごとく、現行恩給法の強化を目ざすものでなく、恩給法を将来は全国民に対する国民年令制度に切りかえていく過渡的手段といたしたのであります。また本
年度産米に対する生産者価格は、あらゆる農業団体が一致して要求し、かつ本院農林
委員会も決議している通り、石当り一万二千四百円といたしまして、消費者価格との差額を供出数量全体について全額国庫負担することにして、そのうち
一般会計では二百五十九億円だけを負担せんとするものであります。また住宅対策費においては、われわれは
政府の公団新設には絶対
反対いたします。なぜなれば、公団は高額所得者向きの高級住宅のみを建設せんとするものであって、現在の住宅政策に最も要求されている所得の低い勤労者
諸君に対し、家賃の安い住宅の供給は二の次と相なっているからであります。従ってわれわれは、公団に対する投資をやめて、これを国営住宅建設に組みかえるものであります。なお
政府は、公務員
諸君の給与については、人事院勧告を全く無視しておるのでありますが、われわれは
ベース・アップはさておいて、 当面の給与の不均衡だけは是正するため、地域給全般、東北及び裏日本各県の寒冷地手当を増額いたしまして、かつ期末手当と勤勉手当をそれぞれ合計して、年間三カ月分に増額するため、新たに百七十一億円を計上いたしたのであります。
第三に
財政投融資計画については、原資は、国民所得の伸びに見合う郵便貯金等の
資金の増加を見込みまして、これを第一に、本
年度に限り地方債の元利支払いのうち、三百七十億円だけを二カ年間支払いを繰り延べし、第二に、開銀、
農林漁業金融公庫、その他資料に列挙した対象に対してそれぞれ融資せんとするものであります。
このようにわれわれの組みかえ案は、
歳入においては、国民の租税負担の公平を期し、歳出においては、防衛
関係費を機動性ある治安力の
限界に押え、かつ各経費の不公正を是正して、わが国経済の自立と拡大再生産のための基礎固めをせんとするものであります。慎重なる御検討の上御賛意を賜わりまするよう期待をいたすものであります。
なお
政府原案並びにその一部に対する両党の
共同修正案に対し、撤回を求め、その趣旨を説明申し上げたいのであります。
予算の
修正という以上、当然まず
修正の内容、すなわち政策の打ち合せがあり、その
財源のめどが検討され、最後に金額がはじき出されるものと承知しておったのでありますが、今度の
共同修正案では、これが全くその逆をいきまして、縁日商人よろしくの取引により、まずその総ワクがきまり、さらにこれが減税六十七億、
財政投融資六十億、
一般歳出八十八億と項目別に仕切られ、ぶんどり合戦のような騒ぎの
あとで、最後の仕上げは大蔵官僚の手にゆだねるという、全く前代末聞の
修正が突如として現われたのであります。保持政権温存のためには、国会の
予算審議権、ひいては国家の経済や国民の生活を左右する国の
予算の権威を顧みないという、その不見識、不誠意に対しましては世論がごうごうの非難を放っていることは、皆さんも御存じの通りであります。
その内容の矛盾については、さきにもいささか触れましたが、要は何ら
政府原案の本質を変えるに至るものではなく、いわば再軍備の道を行く親馬に連れ立って、選挙民に尾を振って行く子馬の道行きにすぎないのであります。このような観点からいたしまして、われわれがこの両案の撤回を求める
理由の第一は、これらの
予算案が全く独立国たるの面目を失い、
自主性を欠くものであって、独立を念願するわが国の国務をこのような
予算案で執行することはとうてい忍びないとするところにあるのであります。この事実を明らかにするものは、繰り返し本
委員会においても指摘されたように、その
防衛分担金削減の交渉てんまつであります。
予算の編成権は、申し上げるまでもなく重大なる国務であるとして、憲法にも明らかに示されておるのであります。しかるにこのたびの
予算編成の
過程、特に分担金
削減の交渉を通じ、心ある国民が
政府の
自主性に対し疑義を持つに至ったことは、まことに取り返しのつかぬ痛根事と存ずるのであります。
鳩山内閣は、第一次の組閣の当初におきましても、すでに
防衛分担金削減の意志を示唆されているのでありまして、昨年十二月下旬から本年新春早々にわたりまして、アリソン大使あるいはラドフォード提督など米国側の要路の人々との間に瀬踏みの話し合いが行われておったことは、すでに報道されておるのであります。
さらに総選挙に臨むや、
鳩山総理みずから、分担金は二百億
削減し、うち百億はこれを住宅建設等に回したいと言明しておられるのであります。
総理は、本
委員会において言を右左にしておられるが、
責任ある一国の
総理として、
総理大臣のためにも、このような態度は私のとらないところであります。しかもこのような御発言があったればこそ、アリソン大使からのあの警告的な非公式の申し入れが参っておる。これまた本
委員会の追及に際して否定をされておられるようではありまするが、すでに権威ある新聞、雑誌によって全国民の周知しているところであり、これを否定しようとする
政府の態度そのものが、
自主性の喪失を示すものと申し上げたいのであります。その非公式な申し入れによれば、防衛費は九百億を基準額として、これをこゆる部分の半額だけは分担金の
削減に応じようというのであり、加えて当時ヘンゼル国防次官補やスタッセン対外活動本部
長官があわただしく往来をいたされて、わが国の防衛努力に露骨なる不満を表明しておられるという事実も アメリカの意図を察するに余りありというべきであります。いよいよ三月下旬重光外務大臣並びに一
萬田大蔵大臣は、アリソン、ハル、テーラー氏ら米側首脳部と会談を始められ、二週日以上の日を費して、四月十一日、分担金は五百五十八億から百四十三億
削減するが、
条件として防衛庁費の増額、ジェット機滑走路の拡張、ジェット戦闘機の国内組み立て、あるいは部品の製造等を要求されておられるようである。これでは事実上。防衛
関係費の総ワクは千三百二十七億を四十五億上回る結果となる。そこで
政府は周章ろうばいをしまして、結局四月十五日、ほとんど
アメリカ側の防衛要求をのんで、ただ形の上だけ千三百二十七億のワクを維持し得たにすぎなかったのであります。従って十九日発表された日米
共同声明は、その間の消息を雄弁に物語るものであって、分担金は前
年度に比べて百五十三億削るが、米軍使用のジェット機滑走路の拡張のため、飛行場拡大の施設費を二十八億増して八十億とし、分担金増額は三百八十億と相なっておるのであります。
防衛庁費は八百六十八億と前
年度に比べて百二十六億を増加し、なほ百五十四億円の
予算外契約を義務づけられ、これに前
年度繰越金二百三十七億円を使い切ることともなれば、防衛費だけでも総額は千二百四十八億にも達せんとするのであります。
その間重光外務大臣の渡米がワシントンから拒否されたり、一方では一
萬田大蔵大臣の辞職説が飛び出すという始末であって、
政府の面目は内外ともにまるつぶれと相なったのであります。一体このような事実をもってしても、
政府は
予算編成の
自主性われにありと言い切れるのでありましょうか。
この一連の経過が物語るものは、一つは、日本
政府の
防衛分担金削減交渉というものが、安保条約、行政協定、MSA協定のワク内で行われる限りは、日本国の
政府は絶対に主導権を持つことができないというきびしい現実であります。言葉をかえて言うならば、
政府のいう
防衛分担金の
削減なるものも、その本体はつまるところ日米
共同防衛の名のもとに実施されておるところの、日米
共同防衛の名のもとに実施されておるところの、アメリカの極東に対する軍事計画によって左右され、決定をされるものであるというこの動かしがたい事実であります。
このようにして、わが国
予算において最も大きな幅を占める防衛
関係費が、日本国
政府の権限と
責任においては決定いたしかねる。これこそ不当なる内政干渉を甘受するものとも言うべきであって、独立を待望する国民の断じて承認し得ないところであります。
次に、
政府原案並びに
共同修正案に対し撤回を求める第二の
理由として、この
予算の執行によって、わが国の安全と平和をむしろ危うくするであろうという点を指摘いたさなければならないのであります。
総理は口を開けば、独立国には固有なる権利として自衛権がある。従ってこの権利を裏づける自衛力の存在は当然であると申されている。しかし独立国、自衛権、自衛力というこの三段論法も、わが国の不完全独立という実態において、その大前提が虚実上すでにくずれているのであります。不完全なる独立国あるいは植民地が他国の意を迎え、これに強制されて築いた防衛力なるものがいかなる運命をたどったかは、すでに幾多の歴史的事実が物語っておるのであります。もちろん私は独立が先か、防衛が先か、ここで卵と鶏の
あと先を論じようとは思いませんが、ただ
政府が独立のためと称して抱いている自衛という卵が平和の鳩の卵ではなくして、さい疑を象徴するヘビの卵であることを国民は憂えているのであります。インドのネール首相は全国民に告げて、持てる大国のさい疑心こそ、今日の国際緊張の根本の原因である、しかし、持たざる国にとってはこのようなことば関知する必要もないことである、と喝破いたしておる。英国を代表して長く対日
理事会の席に連なったマクマホーン・ボール氏も、アメリカの対日政策の根本は、いかにして日本を反共の防壁たらしめるかにあると忠告をしているのであります。しかしアジア・アフリカ
会議において、アジア・アフリカ三十余カ国は、戦争によって国際紛争を解決しない、同時に大国の
あと押しで他国を脅威するような個別的、集団的防衛をしてはならないと、はっきり宣言をいたしているのであります。わが国の平和憲法の精神は、このようにして今日独立を念願するアジア・アフリカの決定的な世論と相なっているのであります。われわれは今こそこの
情勢を率直大胆に認識いたまして、いたずらに大国のしり馬に乗ってさい疑の鬼となるよりは、むしろ憲法に対する誇りと自信を持って、この平和の精神を守るべきであります。平和と独立を愛好するアジアの隣人とともに、平和の道を探永すべきであると信ずるのであります。しかるに
鳩山総理は、不用意にも、台湾海峡に危機の迫る
事態において、原子兵器を使用しようというワシントンにおけるダレス言明に呼応して、東京においては日本の基地に原子兵器の貯蔵もやむなしという
鳩山言明をあえてされているのであります。
防衛分担金の交渉の
過程においても分担金
削減とは何のゆかりもないジェット機の組み立てや、滑走路の拡張を承認する羽目に陥り、あるいは科学文化の費用はこれを軒並みに抑えながら、軍用マイクロウエーヴの増設や兵器の技術研究に必要なる
予算として七億円を増加いたしまして、十三億六千万円を計上しているのであります。このようにして自衛隊の性格は、今や語らずといえ
ども、おのずから本来の自衛の目的から攻撃的性格に変貌して参ったのであります。今試みに、アジア全土と全人口について見ましても、その三〇%から四〇%が、あるいはインドを中心とする中立国、または中国を中心とする共産圏に属し、
政府のいう自由陣営なるものは大韓民国、中華民国、タイ、フィリピン、これに日本を加えて、その領土、その人口においてはアジア全体の二〇%以下にすぎないのであります。しかも、この共産圏と中立国が平和の約束をくさびとして、いよいよ友好協力の
関係を進めているのであります。このような
情勢のもとにおいて、いわゆる自由主義諸国なるものが依然として自由の名において大国から強制された軍事的義務の重圧に苦しんでいるのであります。これは日本の悲劇のみにはとどまらず、実にアジアの悲劇と申さねばなりません。アジアの平和が世界の平和のいしずえである限り、日本もよろしく今日の大局に開眼し、真に平和と独立の大道につくべきであると思うのであります。このような
意味において、本
予算の執行は、アジアの動向を無視し、アジアの平和を愛好する友人を裏切り悔いを百年の後に残すものであって、とうてい日本社会党は賛意を表しかねるのであります。
第三点として、公約違反の
責任を究明いたさなくてはならないのであります。
政府の最大の公約は、民生を圧迫しない限度において防衛力を整備しようという第一次組閣以来の言明、さらには
防衛分担金を
削減して民生の安定に充てようというこの公約が、とうとう守られなかった点にあるのであります。これが守られなかったばかりか、四月十五日の日米
共同声明ですでに述べましたごとく、日本の自衛隊を漸進的に増強することとし、来年以降日本の努力のより大きな部分を防衛目的に振り向けるという約束をいたし、とりあえず、百五十四億の
予算外契約を背負い込んでしまったのであります。このことは単なる公約違反の
責任のみではありません。独立を待望し、きゅう然として
政府の言明を支持した全国民に対し、まことに冷水三斗の思いを与えたのでありまして、この点における
政府の
責任は公約違反以上に重大であると申さねばなりません。元来
政府が選挙に当って公約された各種の事業を最小限に実現しようといたしましても、少くとも百億以上防衛
関係費を
削減しなくてはできない相談であることは常識でもわかるのであります。従ってこの一角が失われるとともに、
政府の公約は全面的に挫折し、経済六カ年計画そのものも第一
年度においてすでに当初の計画がくずされるという羽目に立ち至っておるのであります。たとえば
政府は四十二万戸の住宅建設を約束した。しかしふたをあけてみれば、
政府資金によるものは十七万五千戸にすぎないのであって、しかも三万戸の増築分を加えてようやく数字のつじつまを合せているのである。六万戸の公営住宅にしたところで、今日の地方
財政の苦境から見て百億に近い負担にたえられるかどうか、その計画の達成もまたまことに危ぶまれている実情であります。今日全国の住宅不足三百万戸といわれ、国民が旱天に慈雨のごとく待ち設けた四十二万戸の住宅建設が、まずこのように羊頭を掲げて狗肉を売るの結果と相なり果てたのであります。
政府はまた社会保障の強化を公約しておられる。本
年度予算においても社会保障
関係費は一千億をこえたと自負されておられるのである。しかしその
予算の内容たるや、生活保護法に基く扶助費と失業対策諸費がその半ばをこえているのであります。生活保護や失業
関係費の
予算増加とは、言いかえれば国民生活の貧困の度合いがそれだけ増大したことを示すものであって、むしろ
政府の失政を証明するものにほかならないのであります。日本における社会保障の強化は、現在行われている社会保険諸制度の整備にあることは常識と相なっているのでありまするが、
政府管掌の健康保険が、治療医学の進歩、利用度の向上、あるいはその制度
運営の改善等によって、療養給付費が著しく増大した。その結果、
財政収支に赤字が生じまするというので、その穴埋めを直ちに労働者やその家族や、医者や、事業主の犠牲に転嫁して顧みないというのであります。これでは社会保障の強化どころか、社会保障の百歩の後退であって、ここにも重大な公約違反の事実を指摘いたさねばならないのであります。
公共事業費、災害復旧費、食糧増産費等においても
削減が無慈悲に行われまして、治山、治水の計画もこれでは当初の予定が狂ってしまっているのであります。人口増加による百万石の増加分はとうていこのような増産計画によってはまかない切れるものではないのであります。しかも
予算編成当時における
与党の強引さに押されまして、予備費が著しく食い込まれ、本年は雨が多いと伝えられておりますが、災害発生に対してはきわめて危険千万なる
予算的空白の状態が出現をいたしているのであります。
政府はまた低額所得者に対する減税を公約して参りました。なるほど本
年度の減税総額三百九十四億、しこうして給与所得者の税金は全体で約百七億の減と相なっております。しかし一方では油税については約二百億、砂糖消費税については六十四億と間接税が過大に見積られ、消費の抑制を唱える
政府が、かえって間接税の増徴をねらおうというまことに
予算的な矛盾を平気で犯しておられるのであります。しかもこの程度の減税では、夫婦子供三人の月収三万円のサラリーマン家庭ではわずかに六百五十円前後の減税でありまするが、一方株式の配当所得に対する減税は
政府原案で半減され、
修正案によってさらに優遇をされんといたしております。まことに不公平千万と申さねばなりません。
一方
資本蓄積に名をかって法人税は二%引き下げておりまするが、これは貸し倒れ
準備金や、価格変動
準備金、退職
準備金を持つ大企業だけが、臨時
措置等も加わって実効税率は大きく軽減をされ、ここにも中小企業との間に大きな不公平が生れているのであります。なお一万九千円以下の非課税所得者は、約七百万に達すると申しておりまするが、これらはもちろん税制の改革によっては何らの恩恵に浴することはできないのでありまするけれ
ども、社会保障の後退によって、彼らは生活水準の切り下げを強要されているという事実をわれわれは見のがすことができないのであります。このようにして低額所御者の減税という公約も、事実においては十分に果され得なかったのであります。
これを要するに大国の強制による防衛
関係費の不当なる重圧と、一兆
予算とのワクに締めつけられまして、住宅建設も減税も食糧増産も社会保障も、
政府の公約が、全く雲散霧消をいたしたのでありまして、国民の政治不信の声はすでにおおいがたいものがあるのであります。しかも一方では産業合理化に名をかって、鉄鋼三百二十四億、機械八日二十三億、セメント三百十億、硫安二百十六億、石炭四百九十億と巨額にのぼる
財政投融資が、惜しげもなく三年、五年の間にわが国の基幹産業の大手筋に投じられようとしております。
一体アメリカとはこと変ったわが国の低い産業的立地
条件、あるいは現在の重い防衛負担のもとにおいて、一体
資本主義の
政府の手で遂行される産業の合理化なるものが、完全雇用と拡大均衡を実現できるものであるのかどうか、完全失業者はすでに本
年度における
政府予想を上回って六十三万人が八十万人をこえている始末であります。このように合理化政策は、ひっきょう独占
資本の強化と、大衆の貧困をもたらすことが、
資本主義社会の論理的帰結であることは経済学のいろはと申さねばなりません。われわれはかかる観点から、この
予算は明らかに公然たる軍事的性格を持つ、大衆収奪の
予算であると申し上げざるを得ないのであります。
しかもこの一週間余にわたる民主、自由両党の
予算折衝なるものこそ、いよいよ、日本の保守勢力がその主人たちに対する忠勤ぶりをはっきりと国民の前に示されたものであります。
一億
予算のワクが事実上くずれた。
公債政策が実施
段階に入った。来
年度以後の消費々出が増大をするインフレの懸念がある。地固め
予算の構想がくつがえされる。こうして
大蔵大臣がなんと陳弁されようとも、あなたの当初の
予算編成の方針はその根本においてくつがえされたのである。しかしこのような一大臣の
責任をこえた厳然たる政治的事実、それこそわれわれにとっても、国民にとっても重大なのであります。それはこの無原則、無定見なる妥協、その結果生まれた
共同修正を通じて、日本における保守勢力の合同へのスプリング・ボートがいよいよ築かれたということであります。合図をかけるものはだれであるか、合図をかけるものはこの国の主人公と、そして
政府並びに日本の保守勢力の主人公であります。この主人たちこそは日本の保守勢力の結集を政局の安定の名のもとに待ちもうけておるのであります。しかしこれらの主人公にとって政局の安定とは公然たる再軍備の強行のためのものにすぎないのであります。
このようにして、今日国民は、
鳩山内閣の行かんとする道もまた、かつて吉田
政府の歩んで参った道であることを知るに至っておるのであります。国民はこのたびの公約違反のごときも再軍備を意図する
諸君の予定のプログラムであったことを見抜き始めておるのであります。
総理はしばしば占領行政の行き過ぎ是正が、わが国独立の要件であると申されておるのでありまするが、占領行政の行き過ぎ是正とは、現在日本につきまとっておるこの強制された再軍備の重圧を取り除くことではないのでありましょうか。知らず知らずの間に日本の独立と平和と繁栄を虫ばんでおるこの悪霊は、日本の保守勢力につきまとう宿命的な必然の悪であると
総理の良心は感じておられるでありましょうか。しかし目ざめた日本の国民はもはや運命論者ではないのであります。あらゆる苦難を乗り越えて真に日本の独立と平和と繁栄のために戦い進むであろうことをここに心から申し上げまして、私の説明を終ります。(拍手)