○久保田(鶴)
委員 窪谷さんは局長として
お答えになりましたが、あなたも当時を御存じじゃない。どなたかからお聞きになってそうした答えをしていらっしゃる。あなたは当時は大阪の財務局の局長か何かをしていらっしゃって、当時のことを御存じじゃない。私がいろいろ伺っておりますことを皆さんよく御存じじゃない。知らなくて、でたらめなことをこの
予算委員会において
答弁をされることは困るので、一応教えてあげますから聞いて下さい。
戦時中に兵器生産の必要上、
政府が半ば強制的に国民から買い上げた貴金属、ダイヤ類である。従ってこれが
使用するに至らずして終戦となり、占領軍によって接収されたのであります。また平和発効前にはこれが保管を
日本政府に移官された。さらに平和発効と同時にこの処理権は完全に
日本政府に移管された。ところがこの貴金属並びにダイヤモンド等については、十六
国会以来行政監察特別
委員会において約一年にわたる詳細な調査を
なし、また買い上げ状況、保管状況、さらに接収当時の状況等については綿密なる調査を行なった。そこで
委員会を開くこと八回、十数人の証人を喚問し、また公法、私法等、の専門学者の意見をも聞き、その結果この処理については、きわめて慎重に取り扱わねばならぬという結論に達したのである。その
理由の第一は、国民の意思の尊重である。貴金属、ダイヤ類は国民にとっては、非常に大切にされていたものである。特に婦人にとっては命から二番目のものと言われておる。これを半ば強制的に買い上げたものが、戦争完遂には役に立たずして、そのままうやむやに葬り去られんとすることは、またこうした印象を与えることは国民感情上絶対に許せない問題である。これが第一であります。
第二には、不正の追及である。この不正の追及については、これらの貴金属やあるいはダイヤの買い上げ 保管、接収等の問題については、非常に多くの不正があったのであります。はなはだしいものといたしましては、皇室から払い下げられました白金とダイヤの宝冠が行方不明になった。従ってこの問題については行監においていろいろ調べたところ、大阪で二十一カラットの菊花の御紋章入りのケースに入ったダイヤモンドを発見することができた。その他数えますとこれは際限がございません。そこでこれを処理する前に、一応これらの不正の事実を国民の前に明らかにせねばならぬということになった、これが第二の
理由であります。
第三には法律上の問題である。これが貴金属、ダイヤモンドの
所有権の帰属等については、公法上、私法上幾多の問題があるので、これらの点についても法律上判然とさせねばならぬということであります。
第四には、
日本政府の移管後の調査あるいはその鑑定上の問題であります。
日本政府が引き渡しを受けた後これを調査した。その調査に当らせたものは、当時これらの払い下げ等について醜い運動を起していた。全国の貴金属商から組織されました組合の幹部を当らせて、大蔵省はきわめて低い評価をさせている。その間幾多の奇怪千万なことが次々とあったのであります。当時の行監の証言に現われておることはこういうようなことです。従って占領軍の行なったこの調査、
アメリカから専門家を呼んでMPが拳銃を持って厳重な監視のもとに綿密なる調査を行われましたが、
日本のそれは机の上に放り出されましたダイヤ、これは大臣御存じでございましょう、あなたが日銀総裁当時に行われたことですから……。はなはだしいものについてはダイヤが机の上に放り出されてころがっておる。それを大蔵省の役人がうしろに立ってはおりますけれ
ども、これら業者との間において、その払い下げ運動にあらゆる手を尽しておる。だから大蔵省の役人は十分業者に取り入られておりますから、そのズボンのすそに悪いものをしのばせまして、そうしてころがったダイヤを拾うような格好をして、これをいいものとすり変えますことは、むずかしいことではなかったのであります。このようにきわめてずさんなものであった。現に不正がこうした意味において行われておる。だから市中にはあれだけりっぱなものがたくさん出ているのです。銀座あたりの貴金属店を呼んでその店に飾ってありますものを——これはいろいろ百万円以上のものもございますが、こうしたものをどこから手に入れたのだ、こう聞いてみますと答えられなかった。答えられないはずである。これは不正な品以外には、正常なルートでは決して入らないのであります。従って元軍需省の役人で、現在ある局におる人でありますが、当時はダイヤ横流しに
関係のある人たちが、常に業者と飲み歩いておる。そうした場所やあるいはその
金額等は、こちらではちゃんと調べ上げてあります。そうした不正があるからこそ、あのように立派なものが店に出ておるのであります。御
承知と思いますが、前の総理大臣
吉田さんの令嬢和子さんが渡米の際の豪勢な首飾り、また佐藤榮作さんの奥さんがこれまた盗まれまして、ずいぶん問題になりました二百万円からのダイヤモンド、これは普通のルートでは得がたいものである。こうしたものを外国から買うなり、あるいは外国から取り寄せたか、あるいはおみやげにもらったのか、あるいはその他横流しの品物を知らないで買われたものか、あるいはまたどこからかごきげん伺いに持ってこられたものか、私はそんなことは知りません。しかし普通では買えない品物であることだけはこれは間違いない。とにかく以上のような各種の観点から、行監におきましてはこの処理に関しまして、最も厳正かつ公平にせねばならぬ、こういうことになったのです。従って一般国有財産の処理のような例によらずして、国民の納得する結論になるように考慮したい、こう思っている。当時国民の愛国心に訴えまして戦争完遂
目的としてしたことであるのであります。せめて戦争犠牲者の援護のために
使用することこそが最も適切であるとの結論に行監ではなったのであります。こういうふうなことから、今決議を御存じないのに知っているとか申されましたが、その決議はこういうことを決議いたしております。一、このダイヤモンドの
所有権は国家に帰属せしめること。二には、交易営団等におきまして当時買い上げに協力して損失を受けた者に対しましては、これを立証せしめて補償すること。三には、ダイヤは適宜換価処分すること。但し、現品については業者を除く専門家によって再評価をすること。四、換価処分した収入金をもって戦争犠牲者のために支出すること。五は、これが支出については
国会議員等をもって構成する
委員会を設けて
審議すること等が決議せられました。もっともこれが立法化については議員立法とすることといたしまして、前
国会におきましては本
委員会外の各党の代表者二十一名から、この接収解除ダイヤモンドの処理等に関する法難案を大蔵
委員会に提出されまして大蔵
委員会に付託、遂に三回の
審議を終ったときに御
承知のように解散となったのであります。従って
審議未了となったのでありますが、当時
政府はこのダイヤモンド処理については他の貴石類のほかに金、銀、白金等も合せてこれが処理に関し接収貴金属等の処理に関する法律案として提出し、ともに大蔵
委員会において
審議中であったのであります。しかるに
政府は、この法律案の
内容をなすその貴金属については幾多の問題があり、当時この法律案の成立までには、さらに慎重なる
審議をいたさなければならないという意向であったのでありますが、これについて先ほどいろいろ答えられましたこと等は私は間違っていると申すのであります。従って第一に この問題について当時の行政監察特別
委員会におきましては、当
国会における行政監察特別
委員会と異なるとはいえ、その構成員は大体同様な
委員でありますから、当
国会においても、本
委員会にこうした問題に対しておそらく反対される方々はなかろうとわれわれは
考えるのでございますが、申しましたような点等についてでたらめなことを申されずに一応具体的に答えてもらいたいと思うのであります。