運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1955-05-18 第22回国会 衆議院 予算委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年五月十八日(水曜日)     午前十時三十九分開議  出席委員    委員長 牧野 良三君    理事 上林山榮吉君 理事 重政 誠之君    理事 中曽根康弘君 理事 小坂善太郎君    理事 西村 直己君 理事 赤松  勇君    理事 今澄  勇君       井出一太郎君    宇都宮徳馬君       北村徳太郎君    小枝 一雄君       小島 徹三君    河本 敏夫君       纐纈 彌三君    楢橋  渡君       福田 赳夫君    藤本 捨助君       古井 喜實君    眞崎 勝次君       松浦周太郎君    三浦 一雄君       村松 久義君    米田 吉盛君       相川 勝六君    愛知 揆一君       植木庚子郎君    倉石 忠雄君       篠田 弘作君    周東 英雄君       綱島 正興君    平野 三郎君       福永 一臣君    阿部 五郎君       伊藤 好道君    久保田鶴松君       志村 茂治君    田中織之進君       田中 稔男君    福田 昌子君       武藤運十郎君    柳田 秀一君       岡  良一君    小平  忠君       杉村沖治郎君    中村 時雄岩  出席国務大臣         法 務 大 臣 花村 四郎君         外 務 大 臣 重光  葵君         大 蔵 大 臣 一萬田尚登君         文 部 大 臣 松村 謙三君         農 林 大 臣 河野 一郎君         通商産業大臣  石橋 湛山君         運 輸 大 臣 三木 武夫君         建 設 大 臣 竹山祐太郎君        国 務 大 臣 大久保留次郎君         国 務 大 臣 杉原 荒太君         国 務 大 臣 高碕達之助君  出席政府委員         内閣官房長官 松本 瀧藏君         大蔵事務官         (主税局長)  渡辺喜久造君         食糧庁長官   清井  正君  委員外出席者         外務省参事官  石井  喬君         通商産業事務官         (通商局輸入課         長)      生駒  勇君         専  門  員 小林幾次郎君         専  門  員 園山 芳造君         専  門  員 小竹 豊治君     ――――――――――――― 五月十八日  委員齋藤憲三君、楢橋渡君、野澤清人君、橋本  龍伍君及び春日一幸君辞任につき、その補欠と  して井出一太郎君、眞崎勝次君、周東英雄君、  倉石忠雄君及び中村時雄君が議長の指名で委員  に選任された。 五月十八日  昭和三十年度予算編成に関する陳情書  (第一二四号)を本委員  会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和三十年度一般会計予算  昭和三十年度特別会計予算  昭和三十年度政府関係機関予算     ―――――――――――――
  2. 牧野良三

    牧野委員長 これより会議を開きます。  昭和三十年度一般会計予算外二案を一括して議題といたします。質疑を継続いたします。綱島正興君。  綱島さんにお諮りいたします。農林をちょっとおくらして、大蔵経審を先にやっていただけませんか。
  3. 綱島正興

    綱島委員 どのくらいおくれましょうか。
  4. 牧野良三

    牧野委員長 二十分。そうすれば必ず十一時に御出席を請います。
  5. 綱島正興

    綱島委員 ただいま委員長からの御注文もございまして、大蔵経審を先にしろということでございますから、大体その点で質問を進めることにいたします。まず経審長官大蔵大臣にただしておきたいのであります。この答え経審長官から出た答えでありますけれども、その事柄については、大蔵大臣経審長官ともに責任のある事柄と思いますので、お尋ねをいたします。  本委員会において、芳賀委員から先日、三十年度予算の中で農業予算が削減されていることは、食糧増産六カ年計画の初年度からこのことがくずれておるのではないかという意味質問があったのに対して、予算ワクに制限されておるために、緩急の度に応じ本年度からの予算は多少押えるが、明年度よりは増産計画に力を注ぐつもりだ、こういう答えをしておられるようでありますが、これに間違いございませんか。
  6. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 先般の委員会でさよう答弁をいたしましたことは、間違いありません。
  7. 綱島正興

    綱島委員 この考え方については大蔵大臣も御同意見でございますか。
  8. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 同じ考えで来ております。
  9. 綱島正興

    綱島委員 そこで両大臣お尋ねをいたしますが、予算ワクというものはいかような理由で制限されたかということでございます。三十九年度は二十八年度末の外貨支払い超過等も三億円前後になるであろうと予見されておりました。御承知通り十一億ドルに及ぶ輸入超過が予見されておったのであります。そういうような事情で、たとい特需が八億五、六千万ドル予見されたといたしても、大体支払い超過として三億ドル前後のものは必ずやらなくちゃならない、こういう予見が立っておった時期でございます。それがちょうど二十九年度予算編成の当時でございます。おまけに二十八年度は、御承知でございましょう、二十八年度の六月から七月の当初にかけて、九州から中国、四国、和歌山あたりに至る大風水害、六十年目に一つといわれるくらいの大風水害が起りました。それから十三号台風愛知から三重、和歌山、滋賀、京都、静岡等非常なる目も当てられないような大災害が起ったし、ことには凍霜害が東北地方に続発いたしました。七月一日には北海道の大風水害が起りました等のことから、非常な国家支出をいたさなければならぬような事情と相なりまして、この災害対策のために、予算においても五、六百億を費さなければならぬような事情になり、地方庁が費した分をも加えれば一千億も計上したであろう。予算総額は実に二千億円といわれておるのであります。こういうような二つの事情貿易逆調事情、それから従って起る外貨支払い超過事情、それから六十年に一回といわれるほどの大風水害事情から、この予算が非常に制約されてこなくちゃならない。支出はふえるが、しかしながら貿易逆調事情から、どうしてもデフレ政策をとらなくちゃならないという非常な窮屈な事情から、二十九年度は御承知通り九千九百九十八億円という予算を編成いたしまして、そうしてその結果、こういうような大災害に遭遇したにかかわらず、二十九年度のこの予算の実行をいたした結果は、大体三億ドルから四億ドルの受け取り超過という大勢を持ち来たしたことは、御存じの通りであります。しかるに、今年こそは増産均衡政策でもとられねばならぬ、拡大均衡政策をとられねばならぬのに、何の理由で今年も先ほど答えにある通り予算ワクに制約されるのか。そのワク原因はどこにあるか、これを一つ御両所にお尋ねいたしたい。
  10. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。なぜ一兆円という予算規模をとつたかという御質問であります。それに対して、特に国際収支の上から二十九年度末においては、三億ドル以上の受け取り超過にもなっておるじゃないか、もうそういうふうな予算ワクに制約されることもなく、必要な拡大生産をやってもいいじゃないかという御質問であったかと思うのであります。従いまして御指摘の一番問題の点は、国際収支において三億四千四百万ドルの受け取り超過でありますが、これが一体どういう内容のものかということが、一番御説明申し上げるポイントかと思うのであります。これをしさい考えますと、なるほど三億四千四百万ドルの受過にはなっておるのでありますが、それがほんとう日本経済力国際競争力に対応してよくなって、そうして輸出が伸びた結果であるかといえば、そうでないのでありまして、この三億四千四百万ドルのうちには、おそらく一億二千万ドル程度の短期の借入金でふくらんでおる。それから御承知のように船を安く海外に輸出して、これも砂糖とリンクして補償しておる。そういうような特殊な手段によって輸出が出ている。これはことしの三月限りでやめたのでありますが……。さらにその輸出超過のうちには、インドネシアに対する債権というものが相当額ある。ほんとう日本経済力輸出が増大した額というものは、そう大きなものではないのであります。さらにそういう事態のもとにおいて、輸出願のうちには特需が約六億ドルあるのであります。それが三十年度においては、四億二千万ドル程度に減ることも考慮しなければならぬ。そうしてみると、日本経済の地固めという意味は、国際経済に対して競争力を持ち得る基礎を作るというのが完成をいたしていないのでありますから、ここで手をゆるむれば再び国際競争に対してひけをとるという日本経済情勢にあるという結果から、この一兆円というものをなお堅持する必要があるという態度を私はとったのであります。
  11. 綱島正興

    綱島委員 経審長官も同じですか。
  12. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 ただいま大蔵大臣説明いたしましたことについては、全く同感でございます。
  13. 綱島正興

    綱島委員 大体今説明されたことは。予算委員はそのくらいのことはみな知っておるのですよ。査問の内容がどういうものに触れてきているかということを、もう少しよいセンス答えていただきたい。時間の制約がございますので、こういう子供に話すようなことを言うてもらったのじゃ非常に迷惑いたすのであります。問題はどこにあるかというと、砕いてお話いたします。砕いて言わなければおわかりにならぬかもしれぬ。昨年も一兆円、今度の予算も一兆円でございます。先ほど申し上げましたように、昨年においては風水害による特別な支出があるのであります。それであるのに、昨年の公共事業農業生産その他いずれの面を通しましても、このたび提出されておる予算と比べますと、実はみな今年度予算の方が大体減額いたされておるのであります。増額されておるのは防衛庁費だけであります。この金額は同じであるが、そのワク説明だけではどうしても受け取れないことは、同じ金額でどうして各省予算がこれだけ減ってきたか、その原因をはっきりしてもらいたい。これは計算でわかる。本質的な議論をここからしでいかなければならぬのだから、どういうわけでそういうものが減ってきたか、これを一つ具体的に伺いたい。
  14. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 同じ一兆円予算でみな減っておるじゃないかというお話でありますが、そういうことはないのでありまして、減ったところもありますが、ふえておるところもむろんあるのであります。どちらかと申しますれば、特に風水害の点についての御議論でありますが、二十九年度予算におきましては、二十八年度において非常な風水害があったので、自然風水害費用はたくさん計上しておることは申すまでもありません。三十年度は特に災害復旧費等は、そういう風水害の現実の情勢から減額になっておるわけであります。
  15. 綱島正興

    綱島委員 それではこちらから言いましょう。防衛庁費をふやして他の分はほとんど減しておる、これはどういう方針によるのですか、それを伺いたい。あなたの御説明によると、ワクに制約される理由は、日本外貨受け取り等は大体黒字になったけれども、これは実は正常な生産からきたものではない。だから一兆円の予算を堅持しなくちゃならぬというのですが、正常生産にはまる反対の方向にあるものについて予算増額して、正常生産に沿うものは予算減額して、一体あなたの言われた議論が通るかどうか、この点を伺いたい。
  16. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お示しのように防衛庁費増加いたしております。しかしこれは防衛分担金減額でまかなっておるのでありまして、全体の防衛に関する支出、これは前年度の千三百二十七億に変りはないのであります。
  17. 綱島正興

    綱島委員 そこで、防衛分担金というものは御承知通り両国合せていろいろなものを支出いたしますが、基地補償であるとかあるいは漁業損害補償であるとか、それは国民生産を培養する点に近いものに還元さるる分もあるのであります。この生産に多少関係あるものの方を減して、一切生産関係ないものをふやすということで、千三百億だから同じことだという御議論は、一体それはどういう御議論であるか。前段の国民生活を保障するためにやむを得ざる処置だと言わるることと、一体これが同じ答えであるか、別人がここで唐突として答えておるのであるか、二重人格であるか思想の分裂であるか、この点を一つ、これはお二人ともお答えを願います。
  18. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答え申し上げます。防衛分担金は減って、それで防衛庁費はまかなっておるが、防衛庁費の方がより消費的で、日本経済に対して建設的な役目を果さぬじゃないかという御議論、これについては詳細に私も考えなくてはならぬと思うのですが、むろんそういう点もありましょう。しかしこれは一国が防衛を強化するときには、漸増は国力に応じてするのでありますが、漸増するときにはほんとうに率直に申して、ある程度やむを得ない。従って問題はやはり防衛力増加が適当であるかどうか、そういうことをすべきかどうかということにかかる問題ではないかと考えております。
  19. 綱島正興

    綱島委員 そこで防衛費の問題になりますが、実は国際防衛事情というものは第二次世界戦争からだいぶ変って参っております。第一次世界戦争、第二次世界戦争までは、戦争のときだけ連合体制をとった。第二次戦争後は戦争にならない、いわゆる冷戦時代国際連合連合体制をとり、防衛体制を作り上げて参っておるのであります。御承知通り、英国でも西ドイツでもその防衛費の大半はアメリカの援助に仰いでおる。実はこれは民主党の諸君がよく選挙等で言われたことでありますが、独立国である以上独立防衛力を持たなければならない、こういう意見があったようで、ちょっとこれはしろうとには何だかそういうふうに聞えるようなところがあります。この思想は、しさいに観察すれば、ちょうど上野の彰義隊議論と同じような議論である。第二次世界戦争から防衛体制は変っておる。防衛に対する防衛費負担の割合は、すべて国際間の共同負担体制をとり、経済力の余裕のあるものがこれを負担するような体制にだんだん変っておるのであります。問題は今の共同防衛費に対する交渉において、一体どういう経過をとられたか、選挙前は共同防衛費減額するのだ、こういうことを公約しておる。なるほど共同防衛費減額したが、日本減額した以上にアメリカ減額させておる。このはね返り日本の最も被害のひどい基地だとか、水産業者補償というものを減額される結果に相なるのであります。こういうものの被害増加こそすれ、減少する傾向にはございません。だんだんこの農漁民たち被害増加する大勢にあるが、それに対して共同防衛費減額してくる、これは一体どういう思想であるか、日本減額するならまだしもだが、アメリカ減額させる、一体こういう考え方はどこから出てきたのであるか、全く時代と逆行する考え方でありますが、これはどういうお考えでかようなことを処置されましたか。   〔「外務大臣はどうした」と呼ぶ者あり〕
  20. 牧野良三

    牧野委員長 外務大臣は御了解を得まして今外務委員会に参りました。
  21. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは私は外務大臣からお答えするのがいいと思いますが、私から一応お答えをいたしておきます。これはやはり条約に基いて防衛分担金について取りきめがありまして、従ってこの防衛分担金については合意が必要になってくる。そしてこちらとしてはなるべくこれを少くするという態度をとるのが、私は当然ではないかと思っております。
  22. 綱島正興

    綱島委員 先ほどから詳しく申し上げた通り防衛費国際分担体制というものにだんだん変っておるのであります。その世界の趨勢に逆行した線で交渉を進められたというのは、どういうつもりでさようなことをされたか、そして日本防衛庁費をふやして、少しばかり軍隊に似たようなものを作ってみたところが、現在の国際間の武力からいうならばこれは問題にならない。終戦当時の竹やり部隊にも比すべきものである。そういうものに費用をかけて——これは国内における共産党の跳梁その他が予見されぬこともないから、これらに対する措置としてならば必要であるが、それなら今のだけで過分であります。これをふやして、そして他の今年から始めなければならぬ増産計画等を全部画餅に帰して、これで一体国政を担当したということが言えるかどうか、どういうお考えであるか。従って一兆のワクに縛られたからという理由ではなしに、これは皆さんが下手な政策を立てたからすべての予算被害をこうむったので、あなた方のやり方が悪いから公共事業費でも何でもすっかり——はなはだしきは社会保障を一生懸命やると言っておきながら、援護費を六億も切ってみたり、生活保護費を九億も切ってみたり、結核対策費を三億も切ってみたり、そして言うことがおかしい。軍人恩給を幾らかふやしたからそのはね返りでこれが整理されるからいいとか、ただいまの状態はだんだん失業者が続出して、生活保護などは恩給を少しばかりやったことでカバーできるようななまやさしいような状態ではない。そういうことをそういう言葉であなた方が言うておるとすれば、あなた方自身現代政治家としてのセンスがあるかどうか、そういうことを私は疑わざるを得ない。これはまじめに考えていただきたい。下級軍人恩給をふやしたから生活保護費が減っていい、そういうような考え方が一体両立するかどうか。その他の公共事業費食糧増産費のごときは片っ端から切っていっている。昨年の大災害をこうむった年以上に、あなた方はこれを減額しておられる。すなわちあなた方の政策は、一昨年の六十年ぶりと称されている大災害以上の災害を、日本国児経済に来たしたという事実は争われぬので、これに対する基本の御理論を伺います。これは経審長官からどうすれば一体経済の再建ができるのかというようなことを合理的に説明してもらいたい。どういう御意見でありますか。
  23. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お答え申し上げます。いろいろやるべき政策はたくさんございますが、防衛費というものにつきましては、私どもは六カ年計画を立てます上におきまして、国力に順応してこれを増減いたしたい、こう存ずるわけであります。従前のごとく防衛費仮想敵国を置いてどうこうというような考えは全然持ちませんで、国力に順応したものをもって防衛費といたしたい、こういう所存でございます。  それから将来の経済計画性を持たせます上におきまして、まずもって増加する人口にどうして職を与えるか、どうして経済を自立するか、そして年年減少すべき特需関係をいかにして補っていくか、こういうふうなことから勘考いたしまして、どうしても日本産業輸出振興重点を置かなければならぬ。こういうふうなことから輸出振興重点を置くということで、明年度予算もこれに準じて作ったわけなんでありますが、もっともただいま御質問米麦等食糧品増産ということにつきましても、これはない金をいろいろやりくりいたしまして、二十九年度に輸入いたしておりました米麦輸入高をこれ以上ふやさないで、農地が荒廃するに向って減産するものも補い、同時に増加する人口に対しても同じだけの米を配給いたしたい、こういうふうな計算のもとに計算を立てたわけなのでございます。以上をもちまして私のお答えといたします。
  24. 綱島正興

    綱島委員 そういうことは、質問をしようと思っておったことにも触れたようですけれども、元来お尋ねした本論はどういうところにあるかというと、今のような予算を編成して国力に相応した防衛費増額というのだが、国力に相応した防衛費増額ならば、他の生産予算に道連れして増額されるなら聞えるのですが、生産予算減額しておいてそうしてしかも防衛費だけ増額して、それで道連れした防衛体制の確立という議論はどうしても受け取れない。これは一体どういうおつもりでありますか。食糧は足らぬようにはしないとかなんとか言っておられるけれども、そんなことはうそっぱちであって、それはあとからやかましくお尋ねをしますが、一体これはどういうことですか。国費負担する上において国費負担増額できて、そうし生産予算増額するから国防費増額していくというのなら、それは御議論通りであるけれども、生産予算片っ端から減額する。そうして防衛費だけをふやしておいて、それが国力に相応した防衛体制というのは一体どういう御議論であるか、その辺をもう少し詳しく伺いたい。
  25. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。防衛庁費だけふやして、あと片っ端から切ってしまっているというふうにお考えになっているようでありますが、必ずしもそうではないのでありまして、防衛庁費自体、同じ一兆円で従来の内政費に向っておった金まで、防衛庁費に食っているわけではないのであります。そして先ほどからお話失業対策というようなのが今日非常に必要ではないか、これもその通りでありまして、そういう点についても本年は相当の増額をいたして、失業対策に遺憾ないように考えているわけであります。それから先ほど生活保護費にしても減っているではないか、こう仰せでありますが、実際は実質増加をいたしているわけでございます。これは赤字の関係がある結果からそうなるのでありまして、おそらく十億程度は私は実質には増加になっていると思います。ですからそういうふうにすべて予算を切ってしまって、そうして防衛庁費をふやしているというようにはお考え下さらないように、かように考えております。
  26. 綱島正興

    綱島委員 それなら片っ端から伺いますが、これは何時間たっても——そういう少しばかりふやしたのをふやしたというような議論をされると、これはまるで何か例外ばかりをあげて議論をするようなことで、才取り議論みたいになって困るのです。大体基本線で御議論を願わないと、そういうふまじめな議論では困るのです。それはふやしたのもあります。二億とか三億ふえたのがあります。たとえば失業対策費などはふえている。しかし大体私が申し上げましたのは、生産に資する予算減額されているということを申し上げたのですよ。生産に資する予算減額されて、そうして国力に相応する防衛費拡大ということは意味がとれない。それから今ふえておらないと言うのだが、それはどういうことであなたはそういうことを申されますか。二十九年度において七百四十二億円を防衛庁費に計上いたして、二百二十七億円が繰り越しになって、実質上はそのうち五百十五億円しか使っておりません。それに対してあなた方は百二十五億を防衛庁費にまた加えることに共同声明を出しておる。おまけに百五十四億八千万円を予算外契約負担ができる費目として共同声明をしておる。これは去年の予算編成の当時から見れば、実費上は相当額増額であるということは争えない事実であります。共同分担金総額は同じであっても、共同分担金のほかの百五十四億八千万円は確かに昨年にはない。ことに昨年度からの二百二十七億円というものをこの中に入れてしまっておる。それから去年の防衛庁費の七百四十二億円に対して百二十五億というものを増額することにしておられる。こういうことでありながら、ふえてはおらぬということをあえてしらを切られるのはどういう理由か。一体国会というものを何と心得ておられるのであるか。もう一ぺんこの点を明瞭にお答えを願いたい。
  27. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えをいたします。私が申したのは、防衛庁費は前年度に比べて百二十五億ふえておる、これはもうその通りでございまして、これは数字が示しておる。ただ昨年に比べて内政費から特に回して防衛庁費をふやしてはない、こういうふうに申し上げたわけであります。
  28. 牧野良三

    牧野委員長 農林大臣出席されております。
  29. 綱島正興

    綱島委員 防衛庁費は幾ら尋ねても同じような答えで、これ以上尋ねても同じことでございます。同じでないのは百五十四億八千万円が前年度と同じでない。去年はこんなものはありません。百五十四億八千万円くらいはものの数じゃないと考えておられるかもしれないが、そういうお答えでは事実をしいるものであって、答えにはなりません。なりませんけれども、これ以上問うてみてもこの点はもう時間つぶしのようでありますから次の質問に移ることにいたします。  もう一つお尋ねしますが、この委員会でこれは経審長官答えられておるのでありますが、鉱工業生産重点を置いて三一%を増産する、人口増加に対応して貿易振興が必要であるからして、この点から見れば農業生産に対して重点主義が薄れがちになる、こういうお答えをしておられますが、これが大体あなたの考えておられる六カ年計画の、つまり今年度予算基本思想をなす考え方であるかどうか、伺います。
  30. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お答え申し上げます。多数に増加する人口に対して、これに一定の職業を与えていくということになりますと、どうしても今後鉱工生産の三一%くらい六カ年間にふやしていかなければならないということになりますから、それがために施設、資金、各方面からこれを論じまして、そちらに重点を置きますと幾らか農業の方は薄れがちになる、といって、私はそのときに申し上げた通りに、第一次産業である農水産業を決して等閑に付すものでないという考え方でございます。
  31. 綱島正興

    綱島委員 これは実は非常な大問題であります。これはほんとうを言えば、第二次世界戦争後の経済構造に対する大転換期に来ていることに対するつんぼさじきの考え方である。まじめに思い出していただきたいのでありますが、一九五二年の八月であったと思いますが、オブザーバー紙に連載されたわれわれの将来への回顧、リシンキング・アワー・ヒューチュアーといいう題をごらんになったであろうと思います。あれにどういうことが書いてあるかというと、食糧増産が非常に必要なることが書いてある。英国でさえその点に努力いたしまして、大体黒字経済を打ち出して参ったことは御存じでございましょう。日本と英国との食糧事情というものは非常に違うのであります。ことに第二次世界戦争後著しく貿易上に変化を来たしたものは、旧植民地はみんな工業化してきたということ、これはアメリカのポイント・フォア政策、ことにソビエトの旧植民地に対する赤化政策に対応したおそらくは絶対不動の政策であろうと思う。この政策の結果いやが上にも未開発地域は工業化して参るのであります。そこでどういう問題が起ってくるかというと、従来の原料割安の製品割高時代は消滅いたしまして、原料割高の製品割安時代が出現してきました。それは植民地に鉱工業が起って参りますために、現地の価が高くなった当然の結果でございます。その情勢をいやが上にも助成するような政策であるポイント・フォア政策が行われている。英国の技術援助政策にしても、また日本のそれに似た政策にいたしましてもこの情勢世界にかわらぬと思う。ここに実は非常な日本の労働問題、失業問題、農業問題という交錯点があるのであります。これを閑却してこの六カ年計画等を立てられることは、第二次世界戦争後の世界経済の構造に対してはまったく逆行的政策ではないかと私どもには考えられる。これについての御所見をいま一ぺん伺います。
  32. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お答え申し上げます。ただいまの御意見は一面の御意見として一つの理屈があると存じますが、私どもの今考えておりますところは、現在日本がこの狭い国土において増加する人口を吸収するのには、現状におきましてかれこれ五〇%近く、四十何%の人たちが農業方面に吸収されております。これ以上さらに第一次産業である農業方面には増加する人口を吸収せしむることはむずかしい。従いまして増加する人口を吸収せしむるには、鉱工方面に力を注いでいかなければならぬ。そしてその方面において人口の吸収をはかりたい、こういうのが私の主眼でございます。イギリスの例で申しますと、イギリスは御承知のごとく従前は電工業及び商業方面が発達いたしておりまして、農業はほとんど閑却されていたわけですが、今後イギリスはおいおい農業方面に力を入れる、というのはちょうど日本と逆だ、こう存じております。これはイギリスの例を申し上げるわけでありますが、そう申しましても私は決して日本の農業食糧増産というものを等閑に付すものではないことを再び申し上げておきます。
  33. 綱島正興

    綱島委員 昭和二十八年の食料の輸入超過は大体五億ドル弱でございます。四億八千万ドルくらいです。輸入は実に七億ドルをこえ、輸出はわずかに二億二、三千万ドルを超えないのであります。そのときの輸入超過は十一億ドルでございます。ところが、デフレーションの結果、大体食糧以外の輸入超過は格好がついてきた。食糧輸入超過は、なるほど昨年の非常な国際間の豊作によって幾らか価格が下ったために、ドル支払いはちょっとばかり減ったようでございます。けれども輸入量は増加いたしております。この日本情勢において五億ドル前後の食糧輸入をいたし、それから特需減額して、従来からいえば八億ドルもあったものが四億ドル幾らになって、それがもっと減ってなくなってしまったら一体十億ドル前後というものを鉱工業でカバーすることができるかどうか、それが問題なんです。  それからもう一つ、農業の人口をふやすということは困難だという御意見のようでございますが、これは易々たることだと私どもは思っております。先ごろ農林委員会でヤンセンという国際的な干拓のオーソリティを呼んで検討をいたしました。御承知でございましょう。ヤンセンの報告も多分ごらんになったでございましょう。日本のこの水田を開発することは易々たるものであると答えておる。日本の干拓機械というものが全部アメリカ式のベビー的な機械を用いておる。アメリカのような、干拓の何ら必要のない地域の機械をまねてやっているから適格性がないのだ、こういうことに尽きるのである。また日本の国土をごらんなさい。汽車に乗って旅行してもすぐわかる。いやしくも米のできそうな濃尾平野であるとか、信濃川であるとか、筑豊平野であるとか、全部これはかつてのもっことくわでした干拓ばかりで、それ以外にはございません。全部これは干拓、水面でございます。オランダは毎年三十メートルを干拓いたしているが、日本円に換算いたしますと、反当り十万円でできておるのであります。しかもオランダには石が一つもない。ライン川の上流から石を輸入している。石炭も一つもない。全部これは輸入である。さようなことで、さように安くできるのに、日本は大体このごろは反当二十三万円かかっている。これは一体どういうところから来るかというと、機械力の利用が非常におくれておる、これを指摘しておる。何ら研究することなくして、四〇%ないし五〇%の人口を有する日本の農民の増加は不可能である、こういう結論を出されたということは、私は実は、事を断ずることいかにすみやかにしていかに浅薄であるか、一体あなた方の考え方というものは、国民の経済基本線からまことにずれておる、こう思うのである。国際情勢からも非常にずれておるが、日本の立地条件からも非常にずれておる、こういうことを申し上げなくちゃならないのであります。これは断じて、どんなことをいたしても、食糧増産をいたして、食糧輸入を減額いたさない限り、こんりんざい日本経済は、成り立ちません。これが成り立つとお思いになるなら、一体貿易面からどういう事情で成り立つか、こういう点を一つ説明をお願いいたします。
  34. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お答え申し上げます。決して私は六年間に食糧増産をしないというわけではございませんで、米穀におきましても六カ年間に千三百幾万石を増加いたしたい、この計画で進んでおります。ただ申し上げました通りに、比重的に申しまして、どっちに重点を置いて人口を吸収するかといえば、鉱工業方面及び第三次産業の方に主として人口を吸収いたしたい。農村にこれ以上の負担をかけてたくさんの人を入れるということはむずかしかろう、こういうわけなのでございます。
  35. 綱島正興

    綱島委員 どうもちょっと頭のズレがありはせぬかと思うのですが、一体植民地が全部工業化してきたという大勢はお認めでございましょう。従って日本が生き残っていくためには、あなたのおっしゃる通り貿易の増進もいたさねばならぬのだが、一体何が輸出できるかという問題であります。すべて工業化して参りますと、商工業というものは全部旧植民地、未開発地域でやることになります。これは早晩必ずなってくる。綿糸紡績のごときものは、あるいは日本が輸入しなければならぬようになるかもしれない。これは日本の農村の少女たちよりはパキスタンの娘たちの手間賃の方が安いからであります。必ずこうなってくる。そうすると日本から輸出し得るものは程度の高い精密工業のようなものに限定されてくる。国の特色ある品物もしくは程度の高い製品ということに必ず限定されてくる。これは、あなたもお読みになったというが、英国のオブザーバー紙に連載されて、精密な計算もしております。こういうことになってくるので、勢い貿易の幅というものが非常に狭くなってきて、精密工業の範囲に限定されてくるということになるのである。そうして精密工業の特質といたしましては、雇用量の減少でございます。粗放工業は労働力吸収力が強いのでございます。精密工業になるに従って雇用力は減退いたして参ります。製品に対する労働賃金の占むるパーセンテージというものは、だんだん減少して参るのであります。人口だけをこの点に吸収するというお考え方が一体科学的な考え方か、一体どういうお考えであるか、この点をもう一つ伺います。
  36. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 鉱工業の製品というものにつきましては、ひとり精密産業だけでなくして、いろいろな中小工業もあります。また基礎工業もあります。いろいろな各方面の産業におきましてこれを吸収いたしたい、こういう所存でございます。
  37. 綱島正興

    綱島委員 これは今でさえ逆輸入で非常に困っている。国民経済はこの点から非常な圧迫を受けんとしているので、ドッジから遺憾ながら竹馬経済と言われても、仕方なしに特需等に依存する点が非常に多いのであります。一日も早くこの点は脱却いたさなければならぬことは御同意だろうと思う。鉱工業の中小的なものにも吸収するというが、これは国内消費以上には上らないのであります。今申し上げる通り国際輸出というものは早晩消滅してくる傾向にある、少くとも逓減してくる傾向にあることは間違いない。国内の消費をただ充足するためには、国際間におけるところの一定量の外貨獲得の源泉を封鎖しておいて、そのことだけができるというならば、一体一兆円の限定思想と根本的に衝突するのでございませんか。平気でそういうことをあなた言われますが、自分が一体何を言っているのか、継続して考えてもらわないと、そっちの答えはそっち、こっちの答えはこっちで、まるでチャランポランなお答えでは困る。精密な科学的に統一されたお答えでないと、ここで予算を制約するときの御議論と、今の工業力は中小企業でも何でもふやしていけばいいという御議論と、それで考え方の統一がとれていますか、そういうことが六カ年計画の基礎を培養する経済思想でありますかどうかということを伺います。
  38. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 鉱工生産というものは、輸出をやりますにつきましては、造船にいたしましても、プラント輸出にいたしましても、また雑貨、おもちゃ、カン詰というふうな家内工業的の精密的な事業もこれに入っているということを御説明申し上げたのであります。
  39. 牧野良三

    牧野委員長 綱島君に申し上げます。農林大臣がおいでになっておるのですが、あなたの時間がだんだん迫って参りました。どうぞ……。
  40. 綱島正興

    綱島委員 今お伺いします。質問をしてみるけれども、一向まじめな答弁をしないで、まるでめちゃくちゃな高等小学校の訓導みたいな話で、どうにも話が進まぬのです。
  41. 牧野良三

    牧野委員長 お困りだろうと思いますから、御注意申し上げます。
  42. 綱島正興

    綱島委員 こういうことは大へん困ります。(笑声)実はこの点についてもう少し突き入って質問をいたしたいのでありますが、これは警告をいたしておきます。あなたのように鉱工業というものは中小企業もあればというような、そんなことはだれも知っている。そんなことを言う必要はない。そんなことを知らないで代議士に当選する者は一人もおらぬ。もっと質問の要点を答えてもらいたい。そういう答え方、そういう考え方でまた国策を立てられたらたまりません。それこそ被害甚大であります。  もう一つお尋ねをいたしますが、これは農林大臣とあなたと両方にお尋ねをいたします。先ほどあなたが言われたが、今年もやはり食糧増産はするのだ。——これは全然打ち切っていないことは間違いございません。今年の予算で、土地改良で百一万石、耕種改善で二十万石、総計百二十一万石を増産する、人口増加による欠乏量の拡大は、八十万石であるから、差引四十万石の欠乏量の縮小になる、こういう答えをしておられるが、あなたもその通りにお考えでございますか。
  43. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 同様でございます。
  44. 綱島正興

    綱島委員 農林大臣はいかがですか。
  45. 河野一郎

    ○河野国務大臣 さようでございます。
  46. 綱島正興

    綱島委員 そういう考えで農政をやられてはたまりません。詳しく申し上ぐるまでもないが、大体大きなアウトラインだけを申し上げますと、農民の保有量は三千六百万石であります。洪出量は二千三、四百万石から三千万石でございます。そのほかに、大体やみ米と思えるようなものが千五百万石くらいはございましょう。そのほか雑穀換算というものがあります。バレイショ、カンショ、雑穀等、これも千五百万石を下らぬでしょう。そういたしますと大体一億一千万石以上の食糧生産されておるのであります。従って一人の頭割りの消費量は大体一石二斗くらいに該当いたします。百二十万人くらいは人口がふえておるようであるが、かりにこれを譲って百万人としても、百二十万石の欠乏量が拡大いたして参るのであります。その上につぶれ地というものがございます。これは近年大体三万町歩から三万五、六千町歩に及んでおる。しかもこのつぶれ地は都会近接地に多くございますので、多くは上田でございます。実収三石にも及び、供出標準割当量も三石五、六斗に及ぶような地域になるのであります。これを換算いたしますと、つぶれ地によっての減収はどんなに少く見ても九十万石を下らないのであります。そういたしますとこの人口増加とつぶれ地で、どんなに少く見ても二百万石の欠乏の拡大は免れないのであります。百二十一万石を増産して四十万石の欠乏量の縮小になるという御議論は一体どういうところから出てくるのか。つぶれ地なんていうものを予見外に置いて六カ年計画等を立てられたかどうか、これを伺います。
  47. 河野一郎

    ○河野国務大臣 お答えいたします。ただいまのお話にもありますけれども、それは米だけについてお答え申し上げましたので、もちろんほかの方面についても増産をはかりますし、品種改良その他をいたしますから、今綱島さんのお話通りにはいかないと思っております。
  48. 綱島正興

    綱島委員 大体農林省の計画はみな米換算でできておるのでありまして、米だけをそれだけふやすというお話でありますが、これは今の予算では不可能でございます。大体予算の数額を申し上げますと、一万石増収するには補助金で大体一億三、四千万円、融資で八、七千万円、二億二、三千万円なければ一万石の増収というものは数年を通じてできないのであります。一体今の増産のために組んだ予算は幾らでありますか。どういう数字からそういう数字が出て参るか。ただあなたがここだけでそういうことをおっしゃったって、そういうことは通らないのであります。それを明確にお答えを願います。
  49. 河野一郎

    ○河野国務大臣 今明確な数字を持っておりませんから、いずれ事務当局から詳細な数字は農林委員会で御説明を申し上げます。
  50. 綱島正興

    綱島委員 どうも何をお尋ねいたしましてもまるで手ごたえがないようなことで、これでは実際農民も困るだろうが、国民も困りまして、かようなことが継続して参りますと、ほとんど国会なんていうものはだてで質問をしておるようで、こういうことを幾ら言うても何にもならぬということになりはしませんか。こういうことで一体国会が通していかれるものなら、予算委員会に私はあまり来たことはないが、珍しいところだと私はあきれてしまっている。こういう答弁で百五十日もこんなことをやっていたら、神経衰弱になってしまうだろう。
  51. 牧野良三

    牧野委員長 どうぞお察しを願います。まことに委員長はたまりません。(笑声)
  52. 綱島正興

    綱島委員 次に経審長官に伺っておきますが、離島振興というものがございまして、この予算は、大体国内の人口、面積、こういうものが離島と同一であれば国費負担は大体十八億円くらいに該当するようでございます。ところが従来は大体四億二、三千万円しかこれに国費支出されていない。今年度これに大体二十五億円を支出したいということで、それぞれその向きの予算の準備を審議会においてはいたしておったのでございますが、出てきたものを見るとまことに軽少な予算である。こういう離島のような、三十年間も四十年間も、本土から見れば面積比、人口比に対して大体三分の一しか支出してなかった地域に対して、どういうわけで依然として今日もなおこういう体制を維持していこうとされますか、この点を経審長官に伺います。
  53. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 離島振興についてお答え申し上げます。これは非常に私は重大な問題と存じております。同時に将来日本の動力が原子力に変らんとするときには、日本の離島というものは今から非常に考えていかなければならぬことだ、こう存じております。今までの予算から見ますと、大体四百億円を支出し、そのうち国庫の負担が二百四十億円となり、一年に約二十五億円ということが予定されておったようでありますが、昨年度、一昨年度を見ますと、二十八年度には約八億円しか出ていない、二十九年度は十二億出ております。こういうことになっておりますが、本年度におきましては、港湾と道路と漁港と電気を引き入れるために大体四億三千万円というものを見ておりまして、昨年の四億四千万円に比べますと、一千万円減じたことはまことに残念に存じますけれども、国内におきますところの電力とか、漁港、道路等に使用します支出から見ますと、この予算は非常に手厚く見られておるのでございます。けれどもなお今後各省の予算を定めます上におきます予算工作上、できるだけ離島の方には各方面の施設に金を回して、昨年度と変らぬ程度に持っていきたい、こういう所存でございます。
  54. 牧野良三

    牧野委員長 綱島君、時間が参りましたから、質問をしかるべく願います。
  55. 綱島正興

    綱島委員 しかしその時間のうちに何だかわけのわからぬ答弁のために費した時間が半分以上ですよ。もう少しやります。  離島の漁港でございますが、これは昔の非常な旧態依然たる漁港でございます。ところが船型が離島はみな大きくなるのであります。これは離島の船よりもむしろ本土の船がみな寄港するようになっておるのに、役に立たぬということは、国土の開発の上から非常な損害でございます。その他電気導入でも、あるいは簡易水道がございませんために、寄港いたすこともできない。電気がないために製氷設備ができないから、漁港の機能を全うすることができない等のいろいろな事情がございます。予算委員会でございますから詳しくは申し上げません。けれどもこれはどうしてももっと別にお考えを願わにゃならぬと思います。特に農林大臣は、漁港、電気導入その他土地改良についてすべて関係がありますので、この点について御留意を願いたいと思います。  なお実はたくさんお尋ねをせにゃならぬことがありましたが、今日お尋ねをして私は一つも満足な答えを得ていない。答えを得たとすれば、閣僚諸君というものは非常に程度の低いものの考え方計画を立てておられるという、その答えを得ただけで、そのほかには何一つとして——数字なども間違った数字が多かったようでありますが、これはあえて申し上げませんけれども、もうちっと勉強してもらって、なるほどこの内閣もやっているんだなと思えるようにやってもらわないと、いよいよ出て、いよいよまずい。問えば問うに従って絶妙不思議なる非科学的なお答えだけを拝聴するのでは、これは国民の名において承知しかねるのです。もうちっと勉強してもらわにゃならぬ。私も用意をしてきておる質問が相当ございますが、なるほど農林大臣が言われる通り農林委員会に詳しいことは譲りもいたしましょう。これを要するに鉱工業生産だけで、一体この重点主義だけで日本の国民経済を立て直すことは不可能である。食糧輸入が輸入の大宗を占めておる。世界は大体商工業があらゆる地点で発達いたして参りましたから、商工業によっての輸出は早晩途絶される、その点から失業問題の続発が生れてくる、特に工業が精密化されるに従って雇用量が減退して参りますために、その点からも失業問題が続発して参る。こういう点から輸入の大宗を占むる食糧の輸入をまず打ち切らなくちゃならぬ。日本ではできます。これができないというなら計画をお立てにならぬがよろしい。こんなことは何でもない。ことに機械力が発達した今日なんでこれができないものですか。これはどうしてもやらなくちゃならない。従って日本の輸人超過を押えるには食糧自給を早急に実現しなくちゃならぬ。従ってそういう点から言えば、このたびの予算というものはゼロで落第であります。明年からやるなんというものではありません。ことに災害復旧とかそれらのものは、一年置くと百億でできるものが百五十億になるのであります。収穫は減ってしまう。二重の負担を受けるのであります。百姓というものは何も言う言葉を持たない。新聞などには百姓のためにはかると、おみやげだということをよく言う。これは低能者が言うのです。世界情勢を知らぬ者がさような愚かなることを広言してはばからない。こういうことに乗って大蔵省の連中がいろいろ変な計画を立てる。それから経審の人たちに、国内の中小企業をだんだん開発していくことで増産していって、国民経済を確立しようというような考えがもしありとするならば、これは非常な笑いごとでございますから、さようなお考えをなさらぬように、このことを特に委員として私はそれこそ国民の負託ににおいて警告をいたして、私の質問を終ることにいたします。
  56. 牧野良三

    牧野委員長 それでは正一時より再開することとし、暫時休憩いたします。    午前十一時五十一分休憩      ————◇—————    午後二時七分開議
  57. 牧野良三

    牧野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、赤松勇君より議事進行に関し発言を求められております。これを許します。赤松君。
  58. 赤松勇

    ○赤松委員 この際、防衛長官と、それから高碕国務大臣に、念のため御質問をばしておきたいことがございます。それは、あと質問にも関連をしまするから議事進行の発言を求めたのです。先般、五月七日の本委員会におきまして、私は防衛長官に対しまして、いわゆる防衛六カ年計画なるものがあるのかどうか、あるいはそれにかわる計画というものがあるのかないのか、こういう点を質問いたしました。その際、防衛長官は、いまだその計画はない、私は、それが公文書でなくても、何らかの形で米軍側に、あるいはアメリカ政府にそういうものをば提示したのではないか、ございません、こういう御答弁でございました。しかるに本日、自由党の綱島君の質問に対しまして、高碕国務大臣は、防衛六カ年計画に従って防衛計画をば進めるということを先ほど御答弁されておるのでございます。これは高碕国務大臣のおっしゃることがほんとうなのか、あるいは防衛長官のおっしゃることがほんとうなのか、もし防衛長官のおっしゃることがほんとうで、高碕国務大臣のおっしゃることがほんとうでないということになって参りまするならば、まことに重大な発言でございまして、同じ政府部内におきまして、二人の国務大臣がそれぞれ異なった答弁をするというに至りましては、私ども黙っておられません。この点につきまして、まず防衛長官よりお伺いをしたいと思います。
  59. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 今の御質問お答え申し上げます。  この委員会におきまして私たびたび申し上げましたように、防衛庁におきましても、当然の職責といたしまして、政府のきめております、つまり経済六カ年計画に見合う長期防衛計画を立てるということを政府としてきめておりますので、従って防衛庁におきまして、今その長期計画なるものについて研究中でございます。このことは、前にも赤松委員お答え申し上げましたが、今でも同様のお答えをするのが実情に——ありのままのことでございます。
  60. 赤松勇

    ○赤松委員 ただいま、先般の私に対する御答弁と同じような答弁がございましたが、計画はない、それを目下研究中である、こういう御答弁であります。高碕国務大臣は、六カ年計画に基いて防衛計画を進めていくのだ、こういう御答弁でありました。すでに計画があるのだ、六カ年計画ができておるのだというところの御答弁でございましたが、この点は高碕国務大臣いかがでございますか。
  61. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お答え申し上げます。経済六カ年計画におきましては、防衛費というものは経済力に順応して順次これを増減していきたい、こういう考えでおりまして、経済六カ年計画の中には、防衛費というものについては大体の見越しはつけておるわけでございます。防衛計画は、防衛庁が中心になって責任を持ってきめるべき問題でありますので、その内容等についてはまだ査定されていないということは事実であります。
  62. 赤松勇

    ○赤松委員 それでは先ほどの答弁とは違うではありませんか。先ほどは六カ年計画というものを口にされている。今聞きますと、経済六カ年計画の中に防衛計画をば織り込んでいくのだ、こういうような御答弁でございますが、前の答弁とはそれは違っております。この点につきまして、なお私はあなたにお尋ねしたいのでございますが、議事進行について発言をしておりますので、次の機会にあなたに御質問をしたいと思うのでございます。もう一度お尋ねしておきますが、防衛六カ年計画に基いて——あなた、さっきそうおっしゃった、私速記を調べてみた、ちゃんとそう速記に載っておる。そういたしますと、あなたのおっしゃったことは間違いであった、こういうことになるのでございますが、それでよろしゅうございますか。速記にちゃんと載っておるのです。調べてみなさい
  63. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 経済六カ年計画というものを私がやっておりますから、経済六カ年計画に基いてということになっておるはずでありますが、あるいはもしそういうふうな、防衛六カ年計画を立てたということになれば、それは私の言葉違いだと思いますから取り消します。
  64. 赤松勇

    ○赤松委員 また質疑のときに後ほど継続することといたしまして、議事進行に対する私の質問はこれで終ります。
  65. 牧野良三

  66. 武藤運十郎

    ○武藤委員 一般的な諸問題につきましては同僚諸君に譲りまして、私はただ一点綱紀粛正についてお尋ねをいたしたいと思います。大蔵大臣、法務大臣、通産大臣並びに農林大臣の所見を伺いたいのです。  大体最近における政府機関はたががゆるんでいると思います。通産行政にいたしましても、交通行政にいたしましても、あるいは税務行政にいたしましても、はなはだ弛緩をしておることは事実であります。そこでこれを引き締めていただきたいと思うのでありますが、時間が制約をされておりますので、私は問題を、最近起っております外国産コンニャク原料の輸入、なかんずく委託加工の問題につきまして所見を伺いたいと思います。  今までコンニャク原料の輸入につきましてはいろいろ問題を起しております。二年前にもこの委員会で非常に問題になって、当局はその非を認めまして、今後は十分に注意をするということを言明いたしたのであります。ところがわれわれが見ておりますと、その後におきましても次から次へと不正輸入——名称の詐称あるいはその他の方法によりまして不正な輸入が行われております。しかもその不正な輸入の陰には、必ず役人が介在をしております。通産省の役人、ここに地方通商局の役人あるいは大蔵省の役人、ことに関税関係の役人、あるいは前の役人というようなものが必ず介在をしておるのが事実であります。そういう点からみますと、どうしてもこれは徹底的にこの際明らかにして、今後はそのようなことが起らないことをわれわれは期さなければならないと考えるのであります。  まず外産コンニャク原料の委託加工の問題であります。これは私が申し上げるまでもありませんけれども、主として中国あるいはインドネシアからコンニャク原料を輸入いたしまして、これを内地に売るということですが、委託加工の場合は、外国から持ってきまして申請者が保税工場あるいは保税倉庫というものを許可をとりまして、そこで精粉をしてこれをまた元に送り返す。従って無関税、無為替ということになっておるのであります。従いましてこの委託加工で一番重要な問題は、入ってきた原料が一体これを精粉して何パーセントの粉ができるかということが重要な問題であります。今まで中国産の原料を精粉いたしました実績を見ますと、すべて六〇%以上の精粉ができております。六〇%以下ということはまずございません。このことは業界におきましても公知の事実でありますし、これに接触を持っているところの大蔵農林両当局の役人におきましても必ず知っているわけであります。また知らなければならないはずであります。ことにこのことを憂えました生産農民、たとえば群馬県におきましては、コンニャク原料の約七〇%を全国産のうちに占めておるのでありますけれども、そこから昭和二十九年二月十五日に通産、農林両省に陳情をいたしております。表題は、「外産コンニャクの加工貿易阻止に関する陳情書」として、「最近貿易業者の間において外産コンニャクを輸入してこれを精粉加工して輸出するいわゆる加工仲介貿易の申請を提出していることは、すでに生産農家の仄聞するところでありまます。しかしてこれが加工貿易は現在外貨の割当なき外産コンニャクの輸入を合法的に実施せんとする意図にほかならないと思料するのであって、絶対に生産農家の拱手傍観し得ざる重大事であります。よって関係当局に対し、左記理由により、保税工場など加工貿易に関する許可については、絶対にこれを実施せざるよう生産農家の総点において善処方を陳情する次第であります。」  こうしまして、記として「一、加工貿易といえども外産輸入は国内産価格を圧迫し、生産農家の経営を危殆に湘せしむるおそれがある。二、保税工場としてもコンニャク精粉の国内流出に対する厳重監視は困難である。三、」—これは注意してもらいたいのですが、「加工貿易申請の外産荒粉の精粉歩合は低位に過ぎ、余剰が国内に流されるおそれが多分にある。四、輸出先のコンニャク需要に恒久性ある場合は、貿易振興上国内産を輸出に振り向けることが外貨獲得のために得策である。昭和二十九年二月十五日 群馬県蒟蒻生産協会長 白田一郎」こういう陳情書を持ちまして、代表者が通産、農林大蔵その他の諸官庁に参ったはずでございます。そしてそのときに、特にこの中国産につきましては精粉歩どまりが六〇%以上あるんだから、これより低いもので許可されるようなことがありますならば、その歩合の差額というものは国内に流されるからこれは非常に危険である。無為替、無関税の輸入が、すなわち密輸が合法的に行われることになるんだということで、強くこのことを念を押して申し上げたはずでございます。ことに通産省におきましては、農水産課に参りまして担当官にこのことを具体的にお話をしております。ところが最近におきまして、この加工の問題で通産省が許可をしたものが五件ございます。合計百トンでございますが、これがいずれも四〇%で許可を与えておる。非常にこれはおかしいと考える。問題が起りまして清水税関でこれを調べておりますけれども、それを聞き伝えて驚いただろうと思います。最後に輸入を企てまして、委託加工の許可をとって入れました尾道の清水万蔵商店というところへ税関の方が参って、入ってきた品物をあわてて製粉をしてみた、試験をしてみたわけです。試験をしてみると、驚くべし六〇%出ておる。ところが通産省に対するこの清水商店の申請は、これは非常に阻悪品であるから歩どまりも低い、三三・七五%の低歩どまりが申請をされ、それを許可しておる。この一事をみましても、いかに通産省というものがずさんな許可を与えておるか、知っておりながら知らない顔をして、許可をしているのではないかという疑いが非常に濃厚になるのであります。しかも加工賃は一トンわずかに一万七千円から二万一千円にすぎません。もしこの六〇%と四〇%の差二〇%を横流しいたしますと、十トンについて百七十万円、百トンなら千七百万円という巨利をだれか特定の人が得ることになるわけであります。しかもこれが無為替、無関税で入るわけになるわけでございますけれども、こういうことが行われております。あとから私はそのことについての具体的な証拠をあげてみたいと思うのでありますが、こういう委託加工に関する問題について、農林大蔵省当局はいかなる御所見を持っておられるか、まずその点を伺いたいと思うのです。
  67. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。今御指摘の問題につきましては、大蔵省としては、税関におきましてこういう商品の搬入、搬出、加工作業等の場合におきまして、厳密に届出等をさせまして、そしてこれを管理いたしておるわけでございますが、このコンニャクの加工輸入につきまして、私の聞いておるところでは、監督管理において注意が十分でなかったように聞いております。これは非常に遺憾に存じております。今後一層これらの監督を厳にいたしまして、同時に今お話の歩どまりの点については、やはり前もってそれぞれの税関におきまして、どういうものについてはどういう歩どまりが多いというような調査を、当然しておかなければならないだろうと考えております。
  68. 河野一郎

    ○河野国務大臣 お答えいたします。コンニャクの生産につきましては非常に重要に考えまして、国内産につきまして極力奨励をいたしておる立場でございますので、万一委託加工から御指摘のように不正品が国内に流れ出まして、これが国内の生産に圧迫を与えるというような事態が起こりますことは、はなはだ遺憾のことと考えまして、十分取締りを厳重にしていただくように念願しておる次第であります。
  69. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 お答えいたします。御承知のようにコンニャクは国内においては十四万円の相場です。輸入すればたった三万円です。そういうべらぼうな差があるということがいろいろの問題を起す原因であるように思います。現在は農林省、通産省等と連絡いたしまして、国内の相場が十四万円をこえれば輸入させる。今のところは十四万弱くらいのところで安定しておりますから輸入はさせておりません。とにかく価格にそういうえらい相違があるということは、これは一つ根本的に考え直さなければならないところであると思います。現在は、そういうわけですから、輸入はさせておりません。ただ御指摘のように、委託加工あるいは中継加工というものをさせておりますが、これは保税倉庫でありまして、特に保税倉庫も監督できるということを主眼にしまして、どこにも許しておりません。非常に地域を限定して特に監督をするようにしております。私の知っておる限りにおいては、精粉以外の飛び粉とかいろいろあるそうでありますが、そういうものも委託者に返還させる、あるいは償還するというような方法を厳重に講じておる、かように私は承知しております。その監督はむろん大蔵省の税関でやっておるわけであります。
  70. 武藤運十郎

    ○武藤委員 輸入の問題が出ましたからちょっと伺いますが、大体コンニャク原料の輸入につきましては、私どもが今までここ数年来見ておりますと、農林省というものは農民の立場に立ちまして輸入反対のようであります。ところが通産省は業者なかんずく生産地に関係のない、主として関四方面の業者の圧力もありまして、輸入賛成というような立場をとっておられるように見受けております。ところが通産省の方はどうも力が強くて、農林省の方が押されぎみであって、いつも輸入しようじゃないかという意見の方が強いようですが、今度は河野農林大臣は非常に強い人ですから、負けないで一つがんばっていただきたい。  それからもう一つ、これはうそだろうと思うのですが、石橋大蔵大臣が(笑声)——石橋通産大臣が五百トンのコンニャク原料の輸入を許可するという話が飛んでおる。多分選挙区が静岡だから、静岡県の大きな業者に押されて、政治資金か何かの関係で許すことになったのじゃないかというようなうわさでありますけれども、私はそれを信じません。昔から火のないところには煙も立たないということもありますので、どういういきさつがありますのか。これは一つ腹を立てないで、石橋通産大臣からいきさつを御説明いただきたいと思います。
  71. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 武藤君は信じないと言うのですから、あえて追及しませんが、ずいぶんけしからんことをいわれるものだと思います。全然ありません。聞いてもおりません。ただ私忘れましたが、この春ごろどこか繊維業の方ののりが困る、それは原料がやはりコンニャクだというので、コンニャクがいかにも高過ぎるから、コンニャクを入れてもらいたいというようなことをどこかから聞きましたが、それはそのままになりまして、別段何も具体化しておりません。その話もどこから聞いたか私は忘れたような状態であります。   〔委員長退席、中曽根委員長代理着席〕
  72. 武藤運十郎

    ○武藤委員 委託加工の問題にもどりますが、先ほど大蔵大臣から監督その他について手落ちがあって、これから気をつけるという遺憾の意を表されましたが、私どもの見るところでは、けさほど大蔵省からいろいろな書類を受け取りましたけれども、なるほど委託加工の問題について、保税倉庫へ搬入しこれを搬出するというようなことについては、驚くべき手をかけてやっておりますが、一番重要なことは、私が先ほど申しましたように、歩どまりの問題なんです。ですからコンニャクの原料が入りましたならば、それを一定量、一貫目でも二貫目でもいいと思うのですがとりまして、そうして歩どまり試験というものを一番最初にやるべきだと思うのです。その結果六〇%出るとかあるいは四〇%しか出ないとかいうことになりますれば、こんなめんどうな書類や手数をかけなくても、でき上ってからそれを見て、そのパーセンテージの量がほぼあればそれでいいと思うのです。ところが搬入、搬出その他については繁文褥礼と思われるくらいのいろいろな手数をかけておりますけれども、一番最初に歩どまり試験というものを今まで一回もしておりません。でき上った最後の成分について委託を受けたもの、あるいは下請の工場で、四一%でございました。四〇%しかございませんということだけを見て、そうかという判を押しておるようです。これでは幾ら手をかけましても、監督の点から行きますと、仏を作って魂を入れないということになるのではないかと思うのです。今までの扱い方というものは、すべて最初に歩どまり試験というものをしておらなかったと思うのであります。通産省へ提出された委託加工契約書によりますと、保税工場所轄の派出官吏が、歩どまりをその都度確認するということになっておりますが、すべてこれは済んだあとで、そうですがといってめくら判を押した確認だろうと思うのです。それについて何かもう少し注意を払ったという御説明があれば承わりたいと思うのです。
  73. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。今御指摘のように、保税倉庫の取締りといいますか、監督官吏が取り締る、それがあるいは一律になっておるのじゃないかというような感じも私はいたします。ですから、今お話のように、コンニャクというようなものについては、歩どまりはどうかというようなところをまず取り上げていく、そういうふうにすればいいというふうに今後十分考えてみますが、その歩どまりについて、どういうふうになっておるか、私そこまでは十分承知いたしておりません。必要がありますれば、政府委員主税局長が来ておりますから、御説明申し上げてよろしゅうございますか。
  74. 武藤運十郎

    ○武藤委員 それでは主税局長から……。
  75. 渡辺喜久造

    ○渡辺政府委員 税関の事務のやり方につきまして、いろいろ書面で提出いたしましたように、品物が入ったときの数量を調べるとか、あるいは出るときの数量を調べるとか、そういうことはやっておりながら、肝心の歩どまり検査をまず当初にやらないで、仏作って魂入れずじゃないかというような御非難につきましては、実は非常に遺憾でございますが、われわれも従来のやり方につきましてそういう点があったということを遺憾ながら認めざるを得ません。従いまして今後の問題につきましては、十分御趣旨に沿いましてこういうことが繰り返されないように注意して参りたい、かような考えを持っております。
  76. 武藤運十郎

    ○武藤委員 今後のことはあとで伺いますが、非常におかしいと思うのです。こんなことは子供でもわかることです。端的に申しますと、つまらぬことにたいへん手数をかけて、一番重要なことを抜いておるということです。こんなことは、普通不正を監督するという考えのもとに行われるとすれば、まず第一に気がつかなければならぬことだし、当然しなければならぬことである。これが行われていないというところに、私はやはり税関というものが、何かその間に変なことがあるのじゃないかということを十分に想像ができると思うのです。この点につきまして、大蔵省当局は税関についていかなる調べをしておるか、いかなる疑いを持っているか、このままでいいと考えておるのか。これからのことは別ですが、今までのような、かようなずさんな、無責任なやり方について、何かそこに汚職というようなものがあると考えないのか、不思議に思わないのか、何らかの処置をとっているのか、そういう点について伺います。
  77. 渡辺喜久造

    ○渡辺政府委員 今お話のような点につきましては、過般いろいろ御注意もございましたので、名古屋税関の方の特にその人事を監督しておる者を派遣いたしまして、そうした角度から、これは今の業務の方の扱いについての問題とは別にしまして、並行しましてその問題をいろいろ調べてみましたが、業務のやり方につきまして十分行き届いていない点のあるということにつきましては認められ、われわれも非常に遺憾に存じておりますが、そうしたいわゆる汚職的な問題につきましては、そういう事実は全然ないということを相当自信を持って申し上げ得ると思っております。
  78. 武藤運十郎

    ○武藤委員 汚職の事実はないということを確言されておりますけれども、なお今後問題が進行しまして、さような事実がどんどん出てきたらば、具体的にはどういう責任をとられますか。これは大臣に聞きましょう。
  79. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 それは具体的にできたときにその重要性に応じて考えてみたいと考えております。
  80. 武藤運十郎

    ○武藤委員 さらに大蔵当局に聞きたいのですが、今は歩どまりの問題ですけれども、なおここに問題とすべきものは、入ってきた原料の性質でございます。通産省に提出された書類には、たとえばイリス・ルートという名前がついております。それから粉になっておる場合にはパウダーと言っております。税関の方でもそのことは書類が回送されて知っておるはずです。ところが最近二回にわたって入港いたしまして、すでに精粉済みになった原料を児ますと、これはいずれも粉末状態です。根ではなくしてパウダーと言うべきものであります。明らかにそうです。これは税関にもサンプルは取ってあるようですからおわかりになると思うのですけれども、ルートである場合とパウダーである場合とは、非常にパーセンテージが違うのであります。ルートである場合には六〇%くらい、それからパウダーになりますとこれは際限がありませんけれども、おそらく七、八〇%から九〇%までは歩どまりがよいということが言われておるわけでありますが、どうして税関では、イリス・ルートという名前で入ってきたものがパウダーであるにもかかわらず、これを通関をさせておるか。一見すればわかるのでありまして、大蔵省から出ました説明書を見ますと、それは粉末状態であるけれども、性質は同じものだから通関をさせたという弁解がついておりますが、私はそんなものじゃないと思う。コンニャクの原料である点については同じ性質かもしれませんけれども、ルートである場合とパウダーである場合には非常に違うわけです。これは品目違反かと考えるのでありますけれども、何ゆえにそれを黙ってルートとして通関をさせておるかということを伺いたい。ここにも疑うべき点が非常に多いと思うのですが、お聞きしたいと思います。
  81. 渡辺喜久造

    ○渡辺政府委員 コンニャクの原料として入って参りましたものが、いろいろな名前で入ってくることは御承知通りだと思います。従いまして今問題になっておりますものにつきましても、一応コンニャクのイリス・ルートといいますか、そういう姿になっている場合と、それからちょうどイモの切りぼしのような格好になっておりまして、これがほしてある、あるいはそれが相当小さな格好に砕けているといったような格好——あるいはそれがイリス・パウダーじゃないかというお話かもしれませんが、そういったいろいろな姿で品物が入ってくるのでございますが、一応税関といたしましては、その姿の程度でございますと、同じような税番になっておりますので、従いましてその同じ税番としてこれを取り扱った次第であります。ただ問題は、その場合におのずから歩どまりの問題が違うといったような点につきまして、もう少し細心の注意を払うべきではないかという御批判につきましては、確かにいろいろまだ注点すべき点が多々あったのじゃないか、かように考えて遺憾に存じております。
  82. 武藤運十郎

    ○武藤委員 通産省に伺いますが、委託加工貿易について許可された状況は、先般通産省から提出されました通り、委託加工貿易が四件八〇トン、中継加工貿易が一件二〇トン、これだけでありますか。
  83. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 私の報告を受けておる限りでは、それだけでございます。
  84. 武藤運十郎

    ○武藤委員 通産大臣に重ねて伺いますが、これを見ますと、昨年一月から現在まで約一年間にわたって申請され、許可したものが五件、そのうち四件までは同じ人で静岡県です。一つは尾道だそうです。どういうわけで特定の地域の特定業者だけに許可をするのであるか、その理由を承わりたい。非常に独占をされている形が出ておりますし、そういうところに弊害や不正がひそむのではないかということを私どもは心配をしておるわけであります。
  85. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 私どもの承知しておりますところでは、設備の関係、保税倉庫の関係で、先ほど申しましたように地域等を限定しておりますので、自然その業者が集中してくる、こういうことであります。
  86. 武藤運十郎

    ○武藤委員 今の御答弁は承服いたしかねますけれども、この点はこまかくなりますからあとに送ります。  次に、委託加工貿易を許可する理由というものはどこにあるのかということを、これも通産大臣に承わりたい。先ほど私が冒頭に申し上げましたように、全国の生産者からは明確な理由を付してこれはやめてもらいたいということを再々陳情しております。それから工賃による外貨の獲博というふうなことも考えられますが、先ほど申しましたように、一トンについてわずかに一万七千円ないし二万一千円というふうな非常なわずかなものであります。しかももしこれが横流れをするというようなことになりますと、十トンで百七十万円というような不都合が起っておる。ことに中国では食用コンニャクというものは従来需要があったためしがない。まあ肥料にするか、あるいは漢方薬に出すそうでありますけれども、これもほとんど大した量ではない。こういうふうな莫大なものを委託加工をする、そうしてその精粗を中共でまた引き受けて食用コンニャクを作る必要というのは全然ないそうです。通産省では何ゆえにこういう問題が起ることを承知しておりながら許可するのか。しかもこの一年間におきましても許可が出ましたものはわずかに五件であります。申請者にいたしますと四件が同じ石川君である。これは同じものであります。あとは尾道の清水君です。人間にして二人、件数にして五件、これだけにすぎない。こんなものについてなぜこういう制度を置いておかなければならないのか、なお今後続けなければならないのか、その必要な理由一つ承わりたい。
  87. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 かような委託加工というような制度は、コンニャクだけでなく、ほかにも行われておるのであります。大体加工賃……(武藤委員「コンニャクについて聞いているのだ」と呼ぶ)ですからコンニャクと金額の問題はとにかくとして、加工ということの商売をやらせておるのであります。従ってこれはだれに許すとか許さぬじゃない。申請をしてくれば一般にこれを許すということになっております。ただその場合保税倉庫の関係がありますから、審査して資格によってこれを許しておる、こういうことであります。われわれとしてはただ加工ということをやらせようというだけのことであります。ただそれが横流れをするとかいうことは、これは取締りの問題でありますから、保税倉庫で十分取り締っておるものとわれわれは考えております。
  88. 武藤運十郎

    ○武藤委員 なるほど加工ということはほかにもあるかもしれません。取締りの問題と言われますけれども、今大蔵当局が関税関係を代表して非常に手落ちがあるということを述べております。実際問題としてこれを取り締ることはむずかしいが、非常に弊害が起っておる。だから私どもはこういうものは全然必要がなかろうと思う。ことに私が申し上げましたように、横流れによる利益というものが工賃を十倍もオーバーしておるというようなものでございます。保税倉庫がない、保税工場がないからそういう条件によって許可をしたのだと言われますけれども、全国に数千の業者がおりまして、りつぱに保税工場、保税倉庫として通用する設備建物を持っておるものが非常に多いのですけれども、実際許可しないのは、あなたが言われるような理由よりも、税関が遠いとか陸揚げが不便だからという理由をかなり言われております。こういうふうに特定の業者だけに許されていることについても、私は何ゆえにこういうへんぱな取扱いがされておるかという点について、通産当局の扱いが果して適正であるかどうかということを疑うわけでございます。ことに通産相に伺いたいのは、委託加工の許可申請を出す場合に、委託加工契約書というものを添付して出します。御承知通りでありますが、その委託加工契約書というものには、歩どまりが何パーセントであるということが書かれておりますから、その書かれた率が果して事実であるかどうかということを、前もって許可を出す前に調べなければならぬと私は思う。これは先ほど申しました現物についての大蔵当局、関税当局の払うべき注意と同じだと思うのでありますけれども、六〇%シナ粉が出ることは業界の通念であります。先ほども申しましたように、関係官も必ず熟知しているのです。しかるにその歩どまりについての審査を実際には行なっておらない。ただ出されたものについてめくら判を押しておる。それで許可したという実情であろうと思う。なぜそういうようなずさんな扱いをしておるのか。ことに委託加工契約書に基いて申請書が出るときには、すでにサンプルというものは届いている。この第何号の見本に基いて許可を求めるということが書かれておりまして、もし通産省がほんとうに六〇%か四〇%か、歩どまりを調べようとするならば、即座にできることなんです。現物はきていなければならぬ。申請書に書いてある、それを行わないで知らぬ顔をして、三三%ないし四〇%で許可しておるのはどういうわけであるか。ことに許可をする官庁は通産省でございますけれども、通産省の係官も知っておりますが、特に農林省所管の特産課におきましては知っているはずでございます。ですからこの見本に基いて検査をするなりあるいは農林省当局、生産者、業者の団体に問い合せるとか、いろいろ必要ななすべき処置をすべきだったと思うのでありますが、そういうことが一切行われておらないのはどういうわけでありますか。
  89. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 何ゆえにパーセンテージを四〇%としたか。これは技術上の問題ですから私は存じませんが、むろん研究した上で行なったものと考えております。なお技術上の問題については、必要があれば政府委員からお答えいたします。
  90. 生駒勇

    ○生駒説明員 お答え申し上げます。ただいまの問題に関しましては、通産省といたしましては、内部においてどういう条件でやるかという点について、担当各課に相談はむろんいたしますが、同時に先ほど大臣から御説明申し上げましたように、出ました飛び粉その他の問題につきましては、滅却または返還をする。こういう条件が三省の間で取りかわされておりますだけに、大体その線に沿いまして、歩どまりその他が出ました場合におきましても、これを滅却または返還するという、最後の処理が可能であるという前提におきまして許可をいたしておりますために、事前に品質その他についての検討をやっておらなかったということは事実でございます。
  91. 武藤運十郎

    ○武藤委員 先ほど来申し上げましたように、このコンニャク原料については非常に不正が多いということは通産、農林両省よく知っているわけである。しかるに今政府委員説明を聞くと、あとで処理ができるからやらなかったということであり、それが当りまえのような口吻でございまするけれども、私は税関吏の場合と同じように最初にやるべきものと考える。これが万全の処置であって、同時に当然の処置であろうと思うのですが、このことについての通産当局の御意見を承わりたい。
  92. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 いろいろ技術的の問題がありまして、私も実はよく知らないで今日までおりました。もし手落ちがあれば今後直します。
  93. 武藤運十郎

    ○武藤委員 これは重ねて申しますけれども技術的問題じゃない、四〇%出るか六〇%出すかということは技術の問題でありますけれども、それを事前に許可する前に歩どまり試験をやるかどうかということは技術的のものではない、事務的のものであると考えます。それをやらなかったことは当りまえと考えているのか、これは間違っておったと考えるのか。もし当りまえであったと考えるならば、どうもはなはだ普通の常識から考えまして不都合だと思いますので、そこにいろいろな請託、汚職があるのではないかということが想像されるのでありますけれども、もう一度御意見を承わりたい。
  94. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 第一に申し上げますが、請託とか汚職とかいうものは絶対にないと信じております。万一ありましたら、それぞれその処置をいたします。  それから今の契約書にあります歩どまりを四〇%見、政府委員が御答弁申し上げましたように、あとのものは全部これを税関に提供して処理をするということになっているから、もしその処理が行われればそれでもいいわけでございましょう。しかしながらなおあなたのおっしゃる通り前にそれぞれの現物を検査して歩どまりをはっきり突きとめて契約をするということになれば一層いいことと存じます。ですからこれは今後できるだけさような方向へ研究をしてやるように、いたしたいと思います。
  95. 河野一郎

    ○河野国務大臣 農林省といたしましては、今の歩どまりにつきましては合議を受けるということになっておりませんので、これに対しての農林省は発言をすると申しますか、措置をすることはできない状態になっております。そこでただ希望として全部飛んでおる粉まで掃き取ってこれを全部向うへ出してしまうようにという希望を申し添えてある、これは従来の行政の措置であるということになっておるようであります。でありますから、今だんだんのお話でございますが、今後必要によりまして国内の生産品に影響があるということももちろんでございますから、今武藤さんの御指摘のように、今後におきましては十分注意をいたしますということを申し上げて、御了解を得たいと思います。
  96. 武藤運十郎

    ○武藤委員 汚職の事実はないということを言われておりますが、初めから汚職があるということを言う者はありません。しかしこれはいずれ検察当局でも手をつけておりまするから明らかになると思います。ここでは打ち切っておきます。  そこで伺いたいのですがどうでしょうか、今までの例を見ますと、コンニャクに関する委託加工というものは百害あって一利ないと思う。過去一年において行われたものでありましても、百トン行われたとしておりますけれども、どうも加工賃というものは非常にわずかなものです。非常に善意に解釈すれば、税関にもあるいはコンニャク原料並びに精粉についての方法なり、品物の鑑別なりについての専門的な知識を持っている人がいないじゃないかと私は考える。それから委託加工制度については、生産者はもちろん業者も、ごく一部の者を除きましてはほとんど全部がこれに反対しておる。しかも先ほど私が申しましたように、この委託加工の制度を利用しました者が、日本中で一年間に二人です。わずかに五件にすぎない。こういうものを非常な弊害を見ながら残しておくということは、その必要がないじゃないか、この際コンニャクに関しましては委託加工制度というものをやめてしまったらどうか。それが国の経済貿易に影響するということはほとんどない、むしろそれに基く弊害の方が大きい、全生産農民、消費者、業者というものは非常に迷惑をこうむっておる。この際一つ廃止ということにしたらどうかと思うのでありますけれども、通産、農林両当局の御意見を承わりたい。
  97. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 そうですね。お話しのように大したものじゃありませんから、やめてもけっこうと思います。なお一つ研究してやりましょう。
  98. 河野一郎

    ○河野国務大臣 農林省といたしましては、通産大臣の御答弁でそういうことになれば好ましいことだと考えております。
  99. 武藤運十郎

    ○武藤委員 これは委託加工の問題ではありませんが、外産コンニャク原料の輸入について、一番最初に、今のところ価格も安定しているから輸入をする段階ではないというふうに言われました。私も賛成であります。ほぼ需要供給の関係も、最近増産をされまして国内産で間に合っていくと思うのです。価格は十四万円というのは今の値段でない、これは二年ぐらい前の価格です。最近は生産費を償う金額とすれば、生産農民から申しまするとどうしても十六万円以上でなければいかぬということを言っておるようです。ですから私は十四万円という尺度には承服をいたしかねますけれども、今のところはこれが十四万円が十六万円になりましても、どうしてもこれを入れなければならぬというような実情ではないのでありますから、このコンニャク原料の輸入というものは当分やらないという方針をお立てになるがいいと思います。それから万一非常に価格が上って参りまして、二十万円をこすというような場合に許可することがある場合には、まずもって三省で協議をなさる、それから二年前に問題が起りましたときに、申し合せを関係代議士など関係各官庁とも相談をしてきめたものでありますけれども、御承知通り生産者や業者の団体、そういうものにも相談して、全同業者に公平明朗にやらせるということに申し合せができておるのでありますけれども、こういう点に関する農林、通産両当局の御所見を承わりたいと思います。
  100. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 輸入は、現に御承知のように輸入するときには協議の上するということになっておりますから、今後むろんそういたします。なお国内の価格が非常に高くなるということは、いずれにしても好ましくないことでありますから、さっきも申し上げましたように、それは農業保護ということもむろん必要でありますが、しかし輸入すればわずかに三万円のものが、国内では、今お話じゃ十六万円もするということでは、どうしても不自然で、そこに何か起るのでありますから、どうか国内の農産物も国際価格に相当対抗できるようなところまで持っていくようにしたいものだと考えるわけであります。
  101. 河野一郎

    ○河野国務大臣 ただいま通産大臣から御答弁になりました通りに、国内のコンニャク生産を阻害しないように十分心がけて参りたい、なお手続において変更する場合には、明朗に取り扱うということのその趣旨を体して善処して参りたい、こう考えております。
  102. 武藤運十郎

    ○武藤委員 そうしますと、結論としては当分の実情におきましては、外産コンニャク原料の輸入はしないというふうに承わってよろしゅうございますか。
  103. 河野一郎

    ○河野国務大臣 お答えいたします。その通りでけっこうであります。
  104. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 ただいま農林大臣が言われた通り、現状においては輸入する意思はございません。
  105. 武藤運十郎

    ○武藤委員 最後に法務大臣に伺いたいのでありますけれども、私が先ほど指摘いたしましたように、税関吏、通産官吏などに汚職があるのではないかという疑いが非常に濃厚です。これは私の方でもいろいろな観点から資料をあげまして明らかにしたいと思いますが、検察当局におきましても十分適正な取調べをし、いただきたいと思います。それから現に清水の税関ではすでに問題が起っておりまして、検察当局もこれに関与しておるようです。そういう諸点につきまして今後十分適正な取締り調査をしていただきたいと思いますが、法務大臣の所見を伺いたい。
  106. 花村四郎

    ○花村国務大臣 コンニャク問題を中心として汚職がありますかどうですか聞いておりませんが、もしさような事実がありとすれば、これはもう仮借なく厳重に取締りをやって参りますることに、あえてちゅうちょをせざるものであります。何らかさような不正事実を指摘して申し入れになられまするならば、またその線に沿うてしかるべく取締りをいたしたいと存じます。  なお静岡の話が出ましたが、静岡において御承知のごとく密輸入に関する事件が起きておりますが、これはただいま捜査を進めておるような次第でございまするが、もし詳細なる報告をお求めになるということでありますれば、資料も参っておりますから申し上げてもよろしいと存じます。
  107. 武藤運十郎

    ○武藤委員 質問を打ち切ります。
  108. 中曽根康弘

    ○中曽根委員長代理 中村時雄岩。
  109. 中村時雄

    中村(時)委員 予算委員会の概念的ないろいろな問題は先輩に譲りますが、その前に私は具体的な問題で各関係大臣お尋ねをするわけですが、各関係大臣に対してそのあげ足をとるか、あるいはそれを攻撃するとかという意味ではなくして、ほんとうに真剣にこの問題をお互いが研究をしたいという謙虚な立場からお尋ねをしたいと思っております。  そこでまず第一に外務大臣に対しまして移民問題に関し一、二お尋ねをしたいと思うのであります。   〔中曽根委員長代理退席、重政委員長代理着席〕 移民問題の重要性ということは、常に外務省あるいは農林省等において唱えてきておるのでありますが、その実績を見てみますと、たとえば二十七、二十八、二十九年度の三カ年において総計八百六十八家族、五千三百四名というものの移民送出を行なっております。ところが、たとえば昭和八年のときの移民送出は二万三千人であります。当時私もその移民の一人として送出をされて行ったものでありますが、その移民送出の実態からはるかにかけ離れまして——現在の状態を見てみますと、各省の関係機関がその内部機構に重点を置きまして、完全なる移民行政の方向をとっていないという行き方が、多くの人々から指弾されているわけであります。このことはおそらく外務大臣も十分御存じの通りだと思っております。しかも昨日農林省、外務省を中心にいたしまして、昭和二十九年七月二十日の海外移住に関する事務調整についての閣議決定という六項目の調整がなされているはずであります。そうしてそこにおいての話し合いは、移住局の設定あるいは審議会等の決定を行なったと聞いておりますが、現在並びに将来において、このような状態の中で外務大臣は移民行政としてどういうお考え方を持っていらしゃるかを、まず概念的にお聞きをしたいと思っております。
  110. 重光葵

    ○重光国務大臣 移民問題がわが国の人口問題の処理の一端としても重要であるということは申すまでもございません。そしてそのことにつきまして移民政策に重きを置くという政府の意向も十分に申し上げて、御説明をいたしておいたところでございます。この移民問題につきましては、これは御承知通りに古い歴史がございます。日米関係の過去において最もむずかしい問題も移民問題でございました。さようなわけで、この移民問題を扱うのには非常に注意をいたさなければなりません。特に移民を送り出す先、つまり受け入れ国の情勢ということをよほどよく見きわめて、そうして移民を送り出さなければその結果は決して成功するというわけには参りません。最近受け入れ態勢が非常によくなりまして、特に中南米において非常に情勢が好転して参りましたので、これに対しては十分に選抜された移民を、しかもなるべく多数送り出すということにしなければならぬと考えて、その施策をいたしておる次第でございます。
  111. 中村時雄

    中村(時)委員 概念的なお考えで移民をたくさん送るという構想を持たれていらっしゃるのですが、それでは今言った人数の問題あるいは予算も裏づけを見てみますと、実際の予算の裏づけといたしましては、移民振興費として五億円前後のものなのであります。そのうちの大半というものは、御存じのようにその渡航旅費なんであります。事業内枠として行われるものはわずかの金額、事実それを一人当りに換算いたしてみましても大体七千五百円ぐらいにしかならない。ところが国内の開拓事業においてすらも百万円を投資しておるわけなんです。こういう状態の中で、これだけの大きなギャップを持った中で、実際に外務大臣は移民行政が重大なものであるかどうかという考え方に対して、一点お聞きいたしておきたいと思っております。
  112. 重光葵

    ○重光国務大臣 重要な政策であると思って、これはできるだけ推進しようと考えておる次第でございます。
  113. 中村時雄

    中村(時)委員 重要な政策であると口では言われるのですが、その裏づけになる予算を見てみましても、今言ったような現状なんです。それに対して外務大臣はそのような重要なものであると言っておるにもかかわらず、予算の裏づけがこういう状態である。そこで大蔵大臣はどのような考え方を持っていらっしゃるかお尋ねをしたい。   〔重政委員長代理退席、委員長着席〕
  114. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 移民が今日必要なことは言うまでもありません。確かに財政当局としてはやはり全体の上からできるだけのことをいたしたのでありますが、ああいう結果になったというふうに御了承を願いたいと思います。
  115. 中村時雄

    中村(時)委員 重大である、できるだけのことはしたとおっしゃる。それではそのような結果が現地においてどのような状態で現われてきたかということを、もう少し突っ込んでお話をしてみたいと思うのであります。戦後において現在まで、中心として移民を送っておったところはアマゾン流域、これは七〇%ぐらい送っております。特にその中でフォードランディアのゴム園あるいはベルテーラ、そういう方面に送っておるわけです。ところが聞くところによると、非常に移民外交は好転したとおっしゃいますが、この地域において今後移民はなるべく入れないということを、私たちは聞いておるのであります。もしこれが事実とするならば、どういう理由でこれが入れないのか。あるいは今後においてその転換策としてボリビア、ドミニカ、そういう方向にこの移民を送出しようとしておりますが、この事実はどうでありますか。
  116. 重光葵

    ○重光国務大臣 アマゾン地域において、アマゾン移民の危機というようなことが報道せられておりましたことは、私どもも承知いたしております。その報道は少しく大げさに失しておるようであります。しかしながら現地の営農指導、営農作物の選定、移民の受け入れ機関及び移民の選考等に、なお大いに改善の余地があるということは、どうしても認めなければなりません。そうしてアマゾン地区は御承知通りに、これはブラジル政府の植民地として政府が予算をもってこれを経営しておるのでございますが、私どもの持っておる報告によりますと、ブラジル政府のその植民地計画予算が非常に制限されておるために、この日本移民も従ってその制限を受けて相当窮屈な、また不完全な点があるように報告を受けております。しかしこの問題につきましては、政府としては向うの受け入れ機関に指導員をできるだけ配置をして、そうしてアマゾン移民の指導を行なっておるのでございますが、それも予算関係上十分であるとは決して申されません。そこでこのアマゾン地区の問題についても、なお改善の余地があるものとして今後一そう努力をいたしたい、こう考えております。
  117. 中村時雄

    中村(時)委員 先ほど外務大臣は、外交方針としても非常に移民の問題は好転しておるとおっしゃるし、またアマゾン地区においても非常に拡大された、これが宣伝されておるようにおっしゃいますけれども、それではお尋ねしますけれども、たとえば三月三十日以後、要するにアフリカ丸が出たあとですが、その後においてアマゾン地区の移民の受け入れ方ができるかどうかということをお尋ねしておきます。
  118. 重光葵

    ○重光国務大臣 その受け入れば可能だそうでございます。
  119. 中村時雄

    中村(時)委員 もしもその受け入れが不可能であって、本年度にできなかった場合の責任はどういうふうにお考えになりますか。
  120. 重光葵

    ○重光国務大臣 今まで予定しておりました移民は全部受け入れることになっているそうでございます。
  121. 中村時雄

    中村(時)委員 私がなぜそれを言うかといいますと、あなたは外交関係において相手の連邦政府がこれを受け入れるような立場になっていると言っております。いずれこのことはあとでいろいろ詳しくお尋ねしたいと思っておりますが、私の調査した範囲、あるいはあちらからの手紙によりますと、そういう意味とは大分趣きが異なっておるのであります。というのは、あちらの方といたしましては、現在セアラ州の難民救済のためにまず第一に外人は入れない、これの救済、自分の地元の住民を助けたい、これは当然のことと思います。あるいは現在インフレのために移民の受け入れが非常にむずかしくなってきております。そういう理由に基いて一応アマゾンの、特に私はフォートランディアあるいはベルテーラのことを言っておるのでありますが、その地区における移民はおそらく入れないのではないかと私は思っているのです。
  122. 重光葵

    ○重光国務大臣 私の先ほど申したのが少し誤解を受けたかと思います。私の申したのは、中南米全般にわたって移民の受け入れ態勢が好転している、こういうことを申し上げたので、これは本会議においても私は報告しておいたわけであります。それには変りはないのでございます。そしてそれがために各国に移民の割当をやっているということで、特にアマゾン地区のことについて申し上げたわけではないのでございます。アマゾン地区については先ほどもちょっと申し上げた通りに、ブラジルの植民計画として相当な制限を受けているということを申し上げて、それか一つの困難に数えているわけでございます。今ベルテーラ、フォードランディアの地区は、最近のブラジル国の政策で国内移民を優先しているということで、足踏みしていることは事実で、多分これらのことを今申されたのであろうと考えます。
  123. 中村時雄

    中村(時)委員 だから先ほどから言っているのです。中南米と言ってぼかしてしまいましたけれども、今言ったアマゾン移民の最も重点を注いでおったのは、フォードランディアゴム園、ベルテーラであったわけです。あなたは外交移民は重大だ重大だと言っておきながら、その事実、内容すらほんとうにわかっていない、非常に疑わしいのですけれども、一応続けて参ります。そうすると、ベルテーラ、そういう地区がいけないという立場から、あるいは今度の移民をボリビア、ドミニカの方に送るというような計画を持っていらっしゃるかどうか。
  124. 重光葵

    ○重光国務大臣 今回の移民の計画はもう報告を申し上げた通りでございます。今多分そこに資料も持っておりますので、それを申し上げてもよろしゅうございますが、全部で中南米六千足らずになっております。それがブラジルその他の地区に割り付けられております。数字が御入用ならば、その数字を申し上げます。
  125. 中村時雄

    中村(時)委員 数字はわかっておって、そこが重大であるから言っているわけです。その大半のアマゾン流域には七〇%以上が行っているわけです。だからどうしてもこれが主体になる。ところが今言ったアマゾン流域の二地区が、特に大きなウエートを持っているが、その二地区から今シャット・アウトを食っている。そのシャット・アウトと関連させるために、今言ったドミニカとかボリビアとか、そういう方向に今の移民というものを転換さしているのではないかということを聞いているのです。
  126. 重光葵

    ○重光国務大臣 ボリビア、ドミニカ等にも移民を送るということに相なっていることは事実であります。
  127. 中村時雄

    中村(時)委員 それではボリビアとかドミニカとか、そういう国力の弱い所、あるいはかつて日本人が行っていない所、そういう所に新しく送るというような場合に、結果においてどういうふうになるか、その責任を外務省でとりますかどうか。
  128. 重光葵

    ○重光国務大臣 それはむろん受け入れ態勢を十分に調査して、将来のことも考えて送ることは申すまでもないことでございます。
  129. 中村時雄

    中村(時)委員 今申しました概略の中からも一つの問題がここに惹起されてくるわけです。片一方の連邦政府が受け入れを云々とおっしやいますが、現在までの日本がその移民を送るところの機構、同町に向うが受け入れるところの機構、そういうものに関して現在の機構が正しい行き方であるかどうかということをお尋ねします。
  130. 重光葵

    ○重光国務大臣 私は正しいと思っております。ただし不十分だと思っております。
  131. 中村時雄

    中村(時)委員 私はそこで大きに見解を異にするわけですが、私は現在の移民の終局の目的は、移住して行った人たち、——農民が主として営農に成功することであろうと思う。そういたしました場合に、その機構の内容考えた場合現在行なっている機構を——海外協会によってこの移民の送出が行われている。昔は御存じのように海興というのがありまして、一人の移民をあっせんいたしますと、一人に対しまして三十五円ずつ私たちもとられた。まるで人身売買のかっこうです。今度はそういうものの肩がわりといたしまして、海外協会なるものができておりますが、その人たちの構成は昔の海興の方々が中心になってやっているようであります。そういう人たちが主として外務省を中心としていろいろな輸送をやっていく、その過程において、たとえば今までこの移住される一人に対して大体十万円前後の金が出ている。これは貸付であります。その貸付資金に対しましても、今までの回収度合いを考えていくと、ほとんど回収ができていない。もしこれができるとするならば、その裏面はどこにあるかといえば、出て行くときに前もって一年間の利子をみずからがピンをはねているということなんだ。それをもって回収したと言っていらっしゃる。一般の銀行においてすらもその回収をする場合には、仕事のできた結果において一年後なら一年後にその利子を取る。ところが先取りまでしてやっている。こういう公的な事業に対して、こういう機構がこういう手段をとっていることが、果して正しいかどうかということをお尋ねしたい。
  132. 重光葵

    ○重光国務大臣 その詳細の点は私ははなはだなんでございますが、十分承知をいたしておりません。ちょうど関係官がここにおりますから、それに説明させようと思いますのでお許しを願いたいと思います。
  133. 石井喬

    ○石井説明員 私からお答え申し上げます。ただいま海外協会連合会の構成メンバーがもとの海興員ではないかというお話でしたが、私の知る限りでは、実務に当っておられる方の中に海興に関係しておられる方はいないと記憶しております。それから利子の前取りというお話がございました。これは私ども非常に気にしておる点でございまして、実は現在の財政法によりまして、三月末日に利子を徴収しなければならないことになっております。ところが三月末日に船中にある人々につきましては、向うに到着が三月末日を過ぎるという関係で徴収時期がおくれるので、私どもそういう人々につきましては、船の出る前にもらっております。しかしこれはただいま御指摘の通りに非常に不合理だと思いますので、ただいま大蔵省といろいろ話をいたしまして、はっきりした格好をとりたいというふうに考えておる次第でございます。
  134. 中村時雄

    中村(時)委員 その利子並びに元利償還の問題が出ましたから、ついでに関連して一、二これは御注意までに言うておきますけれども、せっかくそこまで考えるんだったら、現在の為替管理に非常に無理があるということ。現在ブラジルは非常にインフレ的傾向を持っておる。事実現在ドル勘定をやっておるのですから、二十七年度には二十八クルゼイロになっておる、二十八年度には四十二クルゼイロになっておる、三十九年度に九十クルゼイロになっておる。このようにインフレ傾向は非常に高くなっておる。それを今の契約でやっておって、数カ月たって向うで利子返還をやるということを考えておるならば、当然幾らたっても利子あるいは返還金というものはでき得ないという結果が出てくるのではないか。そこで一点お尋ねしておきたいのは、現在までの返還金というものはどの程度でき上っておるか、それについてお答え願いたい。
  135. 石井喬

    ○石井説明員 お答え申し上げます。ただいままでのところは、貸付金の元本につきましては、まだ回収時期の到達しておるものはございませんので、回収はございません。ただ中に一、二みずから進んで返したものがございます。そういうものはございますが、それ以外の一般のものにつきましては、まだ時期がきておりませんので返っておりません。それから利子につきましては、御指摘の通り、その回収状況は非常に悪うございます。営農成績のよいところから多少返ってきておりますが、全体としての率は非常に残念ながら悪いということを申し上げておきます。
  136. 中村時雄

    中村(時)委員 政府もそのように実際に返還金も利子も非常に返還率は悪いということを率直に認めていらっしやるが、一体その原因がどこにあるか。たとえばいいと思って皆さんが返り出されておる、それが当然そういうふうに利子あるいは返還もできるという前提に立ってやられているにもかかわらず、その結果が出てこないということは、どこかに欠陥が出てきておるからで、その欠陥に対してどういうふうなお考えを持っておるかお伺いいたします。
  137. 石井喬

    ○石井説明員 送りました移民がなかなか思う通り成功いたしません。まだ一、二年ではございますが、当初予想のようになかなか成功しておりませんことは事実でございます。これはしかしながら向うへ参りまして、非常に早害がありましたとか、あるいは雨が多かったとか、まいた種が枯れてしまったとかいうようなことによりまして、成果を上げておらない次第でございます。それと、何と申しましても現地の農法になれませんので、当初の間はなかなかうまくいかないというようなことも大きな原因かと思います。しかしだんだん落ちついて参りますれば、うまくいくようになるのではないか。それからただいまお話がありました利子の点でございますが、これは実は据置期間中に利子の回収を、するというのは、私どもも非常に無理ではないかと思っております。できますならば、据置期間中の利子は免除いたしまして、据置期間が過ぎましてから元金を返します際に、一緒に返すというふうに制度を改めたいと思って、ただいま大蔵省と話し合いをいたしておる最中であります。
  138. 中村時雄

    中村(時)委員 今のような御答弁があったわけでありますが、大蔵大臣はその利子を返還期日まで無利子にする御意思を持っておられるか。
  139. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 とくと検討してみたいと思います。
  140. 中村時雄

    中村(時)委員 このような外交移民が非常に重要であると言いながら、事実行って着手した者はほとんど成功していないという実情であります。そこでその実情の原因がどこにあるかという問題に関しても、真剣に心底から考えていないから、こういう問題が起ってくると思う。たとえば現在受け入れる方の機構といたしましては、これは松原あるいは辻という個人が連邦政府と結んで契約をやっておることは御存じの通りであります。たとえばその契約は農務省移植母院と日本移民ブラジル入国特許取得人辻小太郎氏との間に調印された取りきめ、このような状態で一般の移民は送り出されておるのであります。そこでこのような個人を対象にして、相手の連邦政府とのこのような受け入れの契約に基いてやっていくとすれば、当然相手の政府といたしましても、たとえば大統領が交代いたしますと、その方針の打ち出し方も変ってくるでありましょう、あるいはまたこれらに伴う事業費というものはほとんど出てこないような状態である。個人でやるとすれば、少くとも道路をつけるとか、家を建てるとか、そういう方法が当然手厚く行われなくては、その一つの営農というものはでき上らない。同時にまた政府と政府の協定となれば、ある程度の責任を政府にまかせることができるでありましょうが、しかし今のような現状では、個人を対象にしておるから、こういう欠陥が出てきておる。それに対して外務大臣はこの連邦政府と日本政府との間における協定に基く設定を行い、たとえばイタリアのようにその責任を政府がとるというところまで考えられるかどうかということをお尋ねいたします。
  141. 重光葵

    ○重光国務大臣 さようなことを十分に考究して、政府と政府との話し合いにも発展させたいと考えております。
  142. 中村時雄

    中村(時)委員 そのような移民行政が、移民を軽々しく出す、案民のようなつもりできておるのは、そういうところからです。しかるにそういう苦しい現状であるにもかかわらず、一方においては各省でその予算のぶんどりをやるとか、あるいは今言った移住局設置のためにどういう方法をとるとか、あるいは審議会を内閣に設けるとか、外務省に設けるといって、その局そのものを膨大にしていきさえすれば、これによって非常に都合がいいのではないかという内部的機構のために終始しておる。事実移住局を作られるということは、むろん移住局を作るためには設置法の問題が起ってくる、あるいは予算を伴うような問題ですから、法的根拠に基いて行われると思いますが、そういうように国内的の整備だけを考えるけれども、一番の両点はあくまでも移民なんであります。この移民が成功するかしないかということが、すなわち外交方針の一つの目標になっておる。ということは、外務省においてはその窓口をどうするか、すなわち政府と政府の協定をどう取り上げていくか、あるいはその人数をどのように取り扱っていくか、そういうことが最も重点になるべきであって、たとえば今言ったような膨大な予算を付帯するところの移住局を作って、官僚的なシステムをいじっていくということではないはずです。あなたが真剣にこれを考えるならば、当然そこまで入ってみなければならぬ、私はそう考える。そこで外務大臣は真剣にこれを重大な問題であるというお取り上げ方をしておられるならば、現地に対するところのそういう問題をもっとよく研究をしてもらいたい。ただ安易なつもりで今育ったような機構いじりをしたり、官僚の一つの派閥抗争になったりするのではなくて、ほんとうの姿を打ち出していただきたいと思うが、その決意のほどをお答え願いたい。
  143. 重光葵

    ○重光国務大臣 まことにその御主張も私はあるかと思います。しかし全く今言われたような趣旨でもって私どもはやって、そうしてまず移民の政策ほんとうに取り上げて、これを実行に移し得る中心機関をこしらえるつもりで、移住局をこしらえておるのであります。これがなければりっぱな移民を送り出し、また向うの移民を育成するということがほんとうにできないのであります。そこでなけなしの財源をそういうことにも使わなければならない。そこでわずかの予算でございますが、今輸送の能力の限りを尽して、そして移民を送り出そうという真剣な努力をいたしておるつもりでございます。
  144. 中村時雄

    中村(時)委員 私は、それではその実態の一部を、向うからの現地に入植された人の報告を、その中心のところだけをここで一つ読み上げてみますが、これは名前も一応申し上げませんけれども、「出発のときには、三百六十円ぐらい、一日働いて、家もあり、電気もある、土地も五町歩ぐらいという話で、私たちも一応この考えに乗ったのであります。だが発行されたパンフレットの内容と合せて見ましたとき、その中で合致しているものは、たった一つ水道だけであります。一日の日当が内地の金にして百三十五円です。米は一升四百匁三十五円で安く、砂糖二百六十匁、一キロが四十二円五十銭、油も、石油も、牛肉、パンも内地と変りなく、ただいまは赤字続きであります。家も四家、十五間、七間の家に、床板もなく土間の上で寝ているような次第で、一年間で持参してきた食物、金がなくなってしまうような不安定な生活をしております。その筋の人たちに聞いても、辻小太郎氏とか領事館に話さなければとか言って大へん困りました。われわれの手で自費費用にてベレンまでは話しに出かけもできず、日本政府、辻小太郎氏に一ぱい食わされてきたことが初めてわかりましたが、私も故郷に帰れることもできず、がまんはしておりますが、質素な生活で、不自由を忍んで、自立の暁を、一年間の義務年限を待っております。」こういうふうに書かれております。すなわちこのことは、外務省の単なる移民を棄民として取り扱っているというよりほかないということなんです。このことは大矢省三氏にしましてもいろいろな角度から追及されているにかかわらず、今育ったように、機構を整備してりっぱなことをしていこうと考えていらっしゃるのか。その機構を整備してりっぱなことをせられるという基本的なことは、何をりっぱなことをやろうとするのでありますか。
  145. 重光葵

    ○重光国務大臣 今の御報告はどういう性質のものか私にはよくわかりませんが、非常に困難なる状況を克服して、移民を受け入れることにおいて漸次成功しつつあるということも事実であると思います。さような困難なこともあろうかと思います。それらを克服するために、そしてりっぱに移民が成功するために、われわれは今申します通りに、なけなしの金をそういうことにすべて使っていきたい、こういうつもりで今やっておるわけであるということを申し上げます。
  146. 中村時雄

    中村(時)委員 なけなしの金を使ってその機構を大きくするということがえらいのじゃ決してないと思うのです。問題はそんなことを言っておるよりも、たとえば現地におけるところの問題をよく考えてもらいたい。外務省における窓口というものは、今言ったように、政府との協定を考えていくということ、さらには移民の数をどのようにして受け入れるかということが、その年休でなくてはならない。あとのことは、たとえば現地における土壌調査の問題であるとか、あるいは連邦政府と単独的に個人がこういう契約をしているのですから、それに対する処分のためにはどのような調査方針を立てるとか、あるいはそういう困った者に対して、個人を対象にしている以上は、日本の政府においてこの責任が出てくるのですから、それに基いてどのような行為をとるのか、そういう事柄の方がより重大な問題であろうと思う。だからそういう意味において、外務省の一つの感覚、考え方、移民行政は外務省において全部一手でやりたいとか、あるいは農林省において云々と言ったとか、そういうことよりも、そういう現実の上に立って、今後ともプランを立てていただきたいということを要望しておく次第であります。  外務大臣に対しましては、その内容が大体おわかりであろうと思いますし、今後善処せられるであろうという考え方を持っているのでありますが、最後に一点、この移民の悲惨な状態に対して、外務大臣は、今後においてそういう仕事の問題を中心に考えてはかられるかどうかということをお尋ねしておきたい。
  147. 重光葵

    ○重光国務大臣 むろんさような移民の状況を十分に調査して、その困難を緩和するように、仕事の点などについて十分検討してみたいと思っております。
  148. 中村時雄

    中村(時)委員 それに伴っておそらく予算の裏づけやいろいろな問題が出てくると思いますが、大蔵大臣もこれに対して積極的にその意思があるかどうかをお聞きしたい。
  149. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 予算の許す限り、特に来年度以降においては積極的に考えていきたいと考えております。
  150. 中村時雄

    中村(時)委員 次に農林大臣に、食管制度と集荷問題に対して一、二お尋ねいたします。それと同町に減収加算の問題に関して、時間があれば具体的にお尋ねします。まだ時間がありましたら小作料の問題、砂糖の問題等について一、二御質問しておきたいと思います。  まず第一に今度の新制度の中において、食糧庁の昭和三十年産米の集荷事前売り渡し申し込み制に関する件というその中において、生産者の自主的売り渡しを集荷業者の活動によって促進することを基調とし、地方行政庁、関係農業機関がこれに全面的に協力する態勢であると説明してあるのであります。しかるに他方において、食管法第三条第二項の生産者の政府への売り渡し義務に関する規定は、そのままに存続されているこういう格好になっているわけであります。つまり従来の食管法は改正しないで、予約買付制度を実施するわけであります。そこで一方では自主的売り渡しと言って、他方においては義務売り渡しということを言っておるのですが、これは明白に論理的矛盾があると考えるだけではなくて、法律的にも大きな疑義が出てくるのであります。というのは、売り渡し義務は、相手先あるいは数量等については、生産者側には全く自由選択の余地がない不随意契約でありますけれども、自主的売り渡しにおいては、相手先については選択の余地はないけれども、数量については自由選択を認めたところの普通契約に近い内容のものと思うのです。これに関してどうお考えになっておりますか。
  151. 河野一郎

    ○河野国務大臣 三条の一項と今回の予約売り渡し制度との間には、ただいま御指摘のような懸念も起こることは私も了承しておるのであります。しかし何と申しましても、米の現在の状態におきまして、一方に配給の責任を持ちます政府といたしましては、万全の処置をとらなければならない関係にありますし、しかも一方農民の側に対しましては、従来の集荷制度に非常に無理がありますので、この間を調整して参るという便宜な処置として今回の措置をとりたい、こういうことでございまして、これをまた別の角度から申しますれば、農民諸君の自主的な御協力によって所期の目的を達成いたしたいという含みでございます。
  152. 中村時雄

    中村(時)委員 便利な制度ではなくて、ずるい制度だと思う。もちろん食管法のそれでは、 第三条の第一項の「米穀ノ生産者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ生産シタル米穀ニシテ命令ヲ以テ定ムルモノヲ政府二売渡スベシ」という規定中の命令によりということになっておる。ところが一方今度の制度の方を見てみますと、食糧管理制度の実態を、政令をもって自主的に売り渡しとなっております。そこでお尋ねしたいのですが、今言った食管法に規定されておる事実を、片一方で政令に基いて、法律というものをそういうふうに曲げることができるかという問題についてお尋ねしたいのであります。
  153. 河野一郎

    ○河野国務大臣 便宜上食管長官から答弁させますから御了承願います。
  154. 清井正

    ○清井政府委員 ただいま御質問のありました法律上の問題でありますが、自主的売り渡しという点につきましては、ただいま農林大臣が御説明申し上げた通りでございます。三条一項には「命令ノ定ムル所ニ依リ」という、命令をもって定むる数量のものという趣旨の規定があるわけでございますが、ただいまは、その命令によりまして売り渡しの政令が出ているわけであります。御承知通り、それは法律の委任によって政令が出ておりまして、その政令で現在は供出割当をいたしておるわけでございますが、その供出割当のところが、今回は自主的売り渡しと申しますか、生産者の申し込みによりまして、申し込みしたものを命令をもって定むる三条二項の数量にするというところに、自主的な意味があるわけでございます。そういうふうに法律に基く委任による政令、それによる現在の売り渡し制度の姿が変りまして、上からの供出割当が下からの自主的売り渡しになる。その売り渡し申し込みをしたものが命令をもって定むる数量になるというわけでありまして、その点は、現にございます政令によれば、供出割当によりまして知事が市町村長に割り当て、市町村長が生産者に割り当てまして、その割り当てをしたものが三条一項の「命令ヲ以テ定ムルモノ」になるわけでありまして、同じ趣旨のことが今回の政令にも書かれるという形によりまして、自主的売り渡しということが三条一項の命令云々ということに、法律的には規定される、こういうことになるのじゃないかと考えております。
  155. 中村時雄

    中村(時)委員 あなたのように政令をもって定めて、法律を変革することができるというような裏づけをするなれば、今後大へんな問題が起ってくる。事実この問題は、少くとも食管法の本質的な問題といたしましても、以前に社会党内閣の際に事前割当制をやった際でも、食糧確保臨時措置法を作って当てはめてやった。あるいは自由党内閣の場合においても、そういう問題を取り上げたわけで、たとえば手続法の制定を考えておったはずであります。ところがどうしてそれが取り上げられなかったかというと、内容の問題ではなくて手続の問題であった、それで一応これがパスしていったわけなんです。ところが今度は手続じゃなくて本質的な問題に変ってくるわけなんです。そのような場合に、このような政令によって、法律という根拠をある意味でゆがめていくことができるとするならば、これは大きな問題が起ってくると思うのですが、これに対してどういうお考えを持っていらっしゃるか。
  156. 河野一郎

    ○河野国務大臣 ただいま御説明申し上げた通りでありますが、御指摘のように、法律を変えてやることも一つの方法である。そういうふうにした方がいいという御意見もあります。しかし御承知通り、この制度を制定いたしますこと、ないしはまたこの制度によって運用いたして参りますことが、非常に早々の際でもございますし、食糧のことで遅滞を許さぬ関係になっておりますので、今回はこういうふうにいきたいということで考えているのでございます。ただし、われわれといたしましては、予算を通じ、その他のいろいろの制度等につきましては、十分国会の御了承を得てやって参りたいと考えております。
  157. 中村時雄

    中村(時)委員 それでは河野農林大臣は、これがあまり妥当でないし、また将来いろいろな影響を及ぼすというような場合には、別途の法律あるいは措置でも何でもいいんですが、そういう方法をとってもいいというお考えを持っていらっしゃるわけですか。
  158. 河野一郎

    ○河野国務大臣 さようでございます。
  159. 中村時雄

    中村(時)委員 それからこの政令は、一年限りの臨時特例という意向のようでありますけれども、暫定措置とした理由、それはどういうわけでこういうことになったのですか。
  160. 河野一郎

    ○河野国務大臣 これは一ぺん今年実施いたしてみまして、十分万全を期してやるつもりでありますけれども、先般来申し上げております通り食糧政策につきましては事情がいろいろ変って参ります。またこういうことを申し上げますと、すぐに自由販売とか、ないしはまた外国かというようなことを御想像になるかもしれませんが、そういうことでなしに、直接に国内の需給の関係とか、米が麦に移行するとかいうようなこと等で、食糧全体に関しての事情が変りますので、これらの点を十分勘案いたしまして、来年はまたこれをさらに補足して最善の政策にして参るということも考えておる次第であります。
  161. 中村時雄

    中村(時)委員 そのような臨時法で、そのような安易な考え方で、果してこれが成功するかどうかということは、また別の角度からお尋ねするとして、次にこの制度による場合の集荷の責任者、これについて二、三お尋ねしておきたい。  まず最終責任者というものは当然政府であると私は思うのでありますが、それに対してどういうお考えを持っておるか、しこうして直接責任者は一体だれなのか、これをお尋ねしたいと思います。
  162. 河野一郎

    ○河野国務大臣 お答え申し上げます。御指摘の通り政府でございます。
  163. 中村時雄

    中村(時)委員 食糧庁のあの項目中において、申し込みの取りまとめは集荷業者がこれを行い、一括して政府と売買契約を締結する、と書かれてある。すなわち政府との一括売買契約は全販連が締結するというのですか、あるいは契約の当事者というものは政府と生産者であるのか、または政府と集荷団体であるのか、その点に関してお尋ねいたします。
  164. 河野一郎

    ○河野国務大臣 政府と全販連でございますが、全販連は生産者の委任を受けて政府と契約をいたします。
  165. 中村時雄

    中村(時)委員 そういたしますと、代理契約という格好でやっていくわけですか。
  166. 清井正

    ○清井政府委員 ただいま御指摘の通り生産者が集荷団体に売り渡しの委任をいたしますから、代理でございます。法的には生産者の代理によって全販連が政府と契約をいたすということになるわけです。
  167. 中村時雄

    中村(時)委員 代理契約をするということになったら、法律的効果というものは農民に帰属すると思うのだが、農民の責任においてこの問題は取り上げられてくるわけですか。
  168. 清井正

    ○清井政府委員 法律的責任者はだれかと申しますと、売り渡し義務を持ちますのは法律的には生産者ということになるのでございます。ただ先ほど大臣の申されましたのは、全体の集荷をいたさなければなりませんから、そういう意味において全体的に政府が責任を持つということをおっしゃったのでありますが、法律的には生産者ということに相なるわけであります。
  169. 中村時雄

    中村(時)委員 そうすると、先ほど言ったように、自主的な一つの供出の方向を打ち立てながら、事実は、この責任制度においては生産者におっかぶせて、その集荷機構であるところの農協とかは責任を持たなくともよいということに法律的にはなってくるのですか、そう解釈してよろしゅうございますか。
  170. 清井正

    ○清井政府委員 先ほど申しました通り、法律的には責任者は政府に売り渡す当の生産者でありますが、その間単協、あるいは経済連、県販連等が立ちまして政府といろいろ契約を結び、あるいは集荷の指導、あるいはこの間に関するいろいろな指導奨励をいたしておるわけでありますので、全般的責任と申しますれば、これは政府も負いますし、関係団体も負いますが、最終責任者は法律的には生産者である。しかし実際問題としては、個人の生産者が直接政府に売り渡すわけではありませんで、単位協同組合に委託をして売るということになりますので、そういう関係において、生産者から取りまとめる農業関係団体等がお互いに協力いたしまして、この制度を推進していくということになりますから、そういう意味においては責任はあるわけであります。法律上の責任と実際上の責任とはいろいろ問題がありますが、法律上の責任は生産者といわざるを得ないと思うのであります。
  171. 中村時雄

    中村(時)委員 回りくどいことを一一言わなくても、そのくらいのことは各委員にもみなわかると思うのですが、要は、問題はたったこれだけなんです。政府の責任においてやっていく、続いて法律的な根拠に基けば生産者の責任でもってやっていく、これははっきりしている。そうすると生産者と政府の責任であって集荷団体である農協は、法的には責任がないかということなんです。
  172. 清井正

    ○清井政府委員 政府に売り渡す義務としては、法的には責任はないわけでございます。
  173. 中村時雄

    中村(時)委員 私はこれに関連して農業委員会予算について質問しておきたいのですが、三十年度予算において、昨年度に比しまして十四億円に近い削減となっていることは御存じの通りであります。そこでこの内容は、技術職員に対して三分の一の補助をやっていたのを削除いたしまして、今度はまた事務職員に対する全額国庫補助を二分の一に減らしてしまったのであります。この考え方の基礎というものは、食糧供出等の国家的事務が大幅に減ったという見地に立っておるのであると私は考えるのでございますが、政府は食糧供出の責任を、今言ったように、系統農業団体に転嫁すると同時に、農業委員会については今後その活動をあまり期待しないというのであるかどうかということをお尋ねしたい。
  174. 河野一郎

    ○河野国務大臣 そういうことは毛頭考えておりません。予算関係は、そういう経由でこれを地力の交付税に移譲いたしましたり、ないしは農林予算から削減したりいたしたのではないのでございます。一にかかって一兆円予算ワクの中でやりましたから、そういうことになったのでございます。
  175. 中村時雄

    中村(時)委員 そうしたら、交付金のうちから農業委員会というものに負担をせしめるという、そういう一つの強制する権限を政府は狩っておるのですか。
  176. 河野一郎

    ○河野国務大臣 その点につきましては、昨日この委員会において自治庁長官からお答えになった通り御了承願いたいと思います。
  177. 中村時雄

    中村(時)委員 私はその自治庁長官のを聞いていないものですから……。(河野国務大臣「速記録を見ていただきたい」と呼ぶ)それでは一応勉強いたしまして、あと質問いたします。  次に去る五月の十一日、農協と、すなわち都道府県の農協中央会あるいは経済連等が別紙のような強硬なる決議を行なっております。その決議中に、われわれの要請が実現されないときには、われわれは事前売り渡し申し込み制度に協力することはできないとなっております。米価及びこれらの奨励措置について種々の要求を行なっているのですが、この三連の協力なくしてはおそらく予約制度は私は成功しないだろうと思っております。同時にまた本来予約集荷制度というものは大体農協側から提唱されておったので、現行割当供出制度に自信を失ったところの政府が窮余の一策として採用するに至ったものであろうと私は思っております。それゆえに農協は本来これらの計画の育成に非常な熱意を持ってきたはずであります。それについて農民の世論の支持がなかったならばこれもできない、しかし農民の協力を得るためには、どうしても農民を納得さすところの米価ということが問題になってくるわけであります。そこで政府が閣議決定でその要綱を発表しておりましたが、それはきわめて抽象的であって、私は何らの具体性も認められないし、また目下農林大蔵両省間において交渉中のごときは、私は全く農民の期待を裏切るものであろうと思っております。それに対して農協側はついに先年のこの態度——今まで政府側にこの供出制度というものの緩和を一生懸命希望しておったものが、急変いたしまして、そしてその結果農協側の要求の中心となったものは、第一に米価を一万二千五百円にすること、続いて米価の公表時期を五月中にすること、買い入れ価格の一割を米価の予約奨励金にすること、四番目に、予約数量は所得税金免とすること、五番目に、買い入れ価格の三割の前渡し金を行うこと、そこで私はこの五つの項目から考えまして、まず第一に農林大臣お尋ねしたいのは、大臣は米価は豊凶事情が判明してから決定するお考えだということを、ちょっと聞いたことがあるのですが、それに対してどういうふうなお考えを持っていらっしゃるか。   〔「もう五分しかない」と呼ぶ者あり〕
  178. 牧野良三

    牧野委員長 中村さん。時間が来ましたから適当に……。
  179. 河野一郎

    ○河野国務大臣 ただいま御朗読になりました趣旨は私も十分に伺っております。御意見のように、農業団体の協力がなければこの制度は十分に満足に完遂することはできないと思っております。従いまして農協初め各農業団体の御要望の趣旨を、十分に尊重いたしまして善処いたしたいということで、今せっかく政府部内において検討中でございます。今御指摘の五月中に決定するということにつきましても、その趣旨も体して努力いたしております。ただ私が先般、今決定するがよろしいか、秋に豊凶の見通しがついた上できめる方がよろしいかということについては、いろいろ意見があるということを申しました。その点見はすなわち、これら農業団体の先輩の諸君の中にいろいろ意見があるのでございます。そういうわけでございますから、先般の大会は大会として、その心意はむろん尊重いたしますが、いずれをとるが農民のためであるか。公正なる農民の利益を擁護するためには、いずれをとるが正しいかということについて検討中でございまして、それにつきましてはいずれ米価審議会の懇談会等の御意見を尊重してその処置をとりたい、こう考えておる次第でございます。
  180. 中村時雄

    中村(時)委員 時間が非常に切迫しているので、もう一歩突っ込んでおきたいのですがそれもできないような状況になっております。そこで大蔵大臣に一言お聞きしておきたいのは、予算米価は現在九千七百三十九円というように打ち出しているのです。ところが農民の要求は、今言ったように二千七百六十一円高という方向をとっているわけですが、これに関してどのようなお考えを持っていらっしゃるか。
  181. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 予算米価は今お話のような価格をとって予算を組んでおりますが、将来米価が具体的にきまった場合に、さらに考えていきたいと思います。
  182. 中村時雄

    中村(時)委員 その場合にある程度の幅も考えられるということですね。そう了承してよろしいですか。
  183. 河野一郎

    ○河野国務大臣 予算米価はあくまでも予算米価でございまして、予算米価で政府が決定するならば、すぐ決定するのでございますけれども、先ほど申し上げましたように、予算米価にあらずして、妥当なる米価、諸般の情勢を考慮いたしまして、いつどのくらいにきめたらよろしいか、すなわち現在は予算でございますけれども、これを豊凶もしくは将来の生産費の状態等を考慮して、九月にきめるがよろしいか、ないしは今きめていくとすればどうするかということ等について、両省の間に今せっかく協議中でございますから、御了承いただきたいと思います。
  184. 中村時雄

    中村(時)委員 私は予約買付制度を早期に決定するということは、農林行政として河野さんが常に考えている価格構成の、一つの供出制度から農業政策に大きな変革をもたらすというところに大きな期待を持っておったわけです。これは非常な大きな変革であります。ところが事実においては、まだそこのところが戸惑いしていらっしゃるように思います、その辺の処置を早くやっていただかないと、将来の集荷制度に対して非常に大きな問題になる、このことを一つ御注意申し上げておきたいと思います。  同時に大蔵大臣は、今農林大臣がおっしゃったように、農林大臣のニュアンスというものはある程度の幅を考えていらっしゃるように伺ったのですが、それについて同様のお考えを持っていらっしゃるかどうか。
  185. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 それは米価についての幅でございますか。
  186. 中村時雄

    中村(時)委員 そうです。
  187. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 農林大臣どういうようにお考えになっておりますか……。(中村(時)委員農林大臣に聞きなさい農林大臣今おっしゃったじゃないですか。私が知らなかった場合には議事録を読めと言われるくらいですよ。そこにいらっしゃった方がわからないというのはどういうことです。」と呼ぶ)大へん失礼でありますが、質問をはっきりお聞きしましてお答えしましよう、こう考えていたわけでございます。それで今農林大臣お答えした通りであります。
  188. 中村時雄

    中村(時)委員 それでは農林大臣答え通りに私も了承いたします。  最後に一点、河野農林大臣に減収加算の問題に関してお尋ねをしたい。昨十七日農林委員会において、河野農林大臣は、減収加算の支払いに関する答弁に窮して、委員会は政府側の意思統一を求めるために、当日は議事を中止のやむなきに至ったのであります。そこで政府は本日九後半より閣僚懇談会を開いて協議をしたはずでありますが、減収加算についていかなる結論を得られたかお聞きします。
  189. 河野一郎

    ○河野国務大臣 今朝各関係大臣集まりまして協議をいたしましたが、まだ結論に達しておりません。また委員会終了後にあらためて協議をすることにいたしております。まだお答えを申し上げる段階に至っておりません。
  190. 中村時雄

    中村(時)委員 それは昨日農林委員会で言ったのとは……。いろいろありますが、時間がありませんから追究いたしませんが……。(「追究しろ」と呼ぶ者あり)時間をくれれば……。
  191. 牧野良三

    牧野委員長 お静かに願います。
  192. 中村時雄

    中村(時)委員 そこでまず第一の問題といたしまして、農林大臣はこの概算払いに対して責任を持って一応概算払いができ得る、またこういう方向を打ち出すという考え方を持っていらっしゃるかどうか。
  193. 河野一郎

    ○河野国務大臣 すみませんが、もう一ぺん……。
  194. 中村時雄

    中村(時)委員 減収加算に対して、あなたは減収加算を支払うだけの考え方を持っていらっしゃるかどうか。時間がないから結論だけをあせったのですが、たとえば減収加算というものは、今まで大体百四十円ということを考えておった。その百四十円というものを支給される考えありやなしや。
  195. 河野一郎

    ○河野国務大臣 減収加算につきましては、その経過並びに現状等につきましては御承知と思います。米について減収加算をどういうふうに取り扱うかということにつきましては、これもまたいろいろ意見があります。従いまして、私といたしましては、減収加算につきましてどういうふうにこれを善処して参るかということについて、せっかく大蔵当局と協議中でございまして、今御指摘のような数字を、そのまま受け入れてやることが妥当であるかどうかということにつきましても、せっかく今協議中でございますので、御了承願います。
  196. 中村時雄

    中村(時)委員 減収加算の問題に関して、百四十円というものが妥当であるかどうかというような問題だけが残ったのであって、ある程度そこに加算額を考えていらっしゃるわけですね、そう理解していいですか。
  197. 河野一郎

    ○河野国務大臣 先ほどお答え申し上げましたように、その減収加算についてどうするかということを、今協議中でありますとお答えしたのでございます。なおまた百四十円という話が出ましたからあとお答えをしたのでございまして、この二つのお答えの間を関連づけて結論をお出しになりませんように。いずれにいたしましても、明日の農林委員会理事会には出席いたしまして、私は意見を申し上げますから、それまで御猶予をいただきたい、こう思うのであります。
  198. 中村時雄

    中村(時)委員 それはちょっと河野農林大臣おかしいのですが、きのうのお話では、減収加算を支払うとすれば、食管特別会計の予備費の中から払ってもよいという御返答があった。これに対して事実そういうお考えは持っていらっしゃるかどうか。
  199. 河野一郎

    ○河野国務大臣 昨日お答えいたしました通りに、払うということになれば、そういう会計的処置で支払いをいたします。
  200. 中村時雄

    中村(時)委員 現実にこの予算書を見てみますと、約三百億円ここにあります。ところがこれは予算書の内容から考えまして、普通の予備費、一般会計の予備費は、不時の支出に充てるために大体使用されることがほとんど毎年ですけれども、ところが食管特別会計の予備費というものは、同特別会計の損益計算ということを中心にして表わしているのではないか、私はこのように考えているのですが、この考え方に対してどうお考えですか。
  201. 清井正

    ○清井政府委員 ただいまの問題は、食管特別会計の中に入っております予備費の性格は、一般会計の場合と同様に不時の費用に充てるための予備費ということになっておりまして、三百億の予備費を含みまして収入支出のバランスが合っておるのでございます。従いまして、予算が確定いたしますれば、三百億円の支出金額はあるということになるのでございまして、一般会計の予備費と同様の性格を持った予備費でございます。
  202. 中村時雄

    中村(時)委員 そういたしますと、特別会計はそのような使用用途をやっていきますと、ただちに穴があいてくるはずです。その穴があいたものをどのように処置するか。あるいはまたこの特別会計を今言ったような方向に振り当てていいと考えるかどうか。それを妥当とみなされるかどうかということを、大蔵大臣に一点お聞きしたい。
  203. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。そのことはきまってないのであります。
  204. 中村時雄

    中村(時)委員 農林大臣はそのように決定すればそうやるとおっしゃったのですが、きまってないものをやるというのはおかしいと思うのです。そこでこの穴埋めに対しまして、私はおそらく一般会計から繰り入れるか、あるいは消費者米価を上げていくか、そういうふうな方向をとるか、最後には特別会計の含み資産を食うかというような結論が出てくると思うのです。それに対してどのような取扱いを考えていらっしゃるか。
  205. 河野一郎

    ○河野国務大臣 これはどこまでも予算でございまして、御承知通り、これから先に大量のものを買いますし、また売るのでございます。しかし売り渡し価格につきましては、これはもちろん今より上げるということは考えておりませんけれども、しかしこれらの経理について、合理的に運営することによって相当な幅が出る場合も予想されますので、どこまでもこれは予定でございますから、具体的な事実になればおのずからまた事情は違ってくる、こういうように考えるのであります。
  206. 牧野良三

    牧野委員長 この程度でどうぞ…。
  207. 中村時雄

    中村(時)委員 時間がありませんし、各委員の熱心なお勧めもありますので、以下は農林委員会においてやっていくことにいたします。
  208. 牧野良三

    牧野委員長 篠田弘作君。
  209. 篠田弘作

    ○篠田委員 私は重光副総理に対しまして、北海道開発問題に対する政府の所見を伺いたいと思います。  御承知通り、戦後の日本の再建にとりまして最も大きな問題は、人口問題と食糧問題だろうと思うのでありますが、今日北海道におきましては、現在まだ七十五万町歩の未開墾地が残っておるわけであります。これは現在の全国の耕地の五百万町歩に比較いたしまして、実に一割五分の膨大な面積であります。しかしながら現在までにおよそ八十万町歩というものがすでに開墾されまして、残っておる耕地というものは非常に条件の悪い、あるいは酸性土壌であるとか泥炭地でありまして、これには排水、客土いろいろな農業土木を必要とするのであります。これを個人の力によって開発するということは容易なことではありません。そこで自由党の内閣の当時におきましても、北海道総合開発というものは、国家的な見地に立ちまして、特別な機構、特別な法律をつくりまして、党の政策にもこれを取り上げておったのでありますが、民主党の内閣におきまして、この日本再建の基盤であるところの北海道の総合開発というものに対してどういうふうなお考えを持っておられるか、これを明確にお伺いしたいと思います。
  210. 重光葵

    ○重光国務大臣 今御指摘の通りに、人口問題、食糧問題等の解決の一助として北海道の開発をするということは、現内閣においても非常に重要なことと考えております。目下前内閣時代よりの第一次開発五カ年計画を遂行しておる次第でございます。前の計画を十分に実現したいと思っておるのでございます。電源開発、道路、港湾、河川の整備、食糧増産等に努力をいたしておる次第でございまして、前年度の百四十二億の予算に対して、本年度は百五十二億の予算を計上して、その事業を完成いたしておる次第でございます。
  211. 篠田弘作

    ○篠田委員 予算の面において昨年度よりも十億多いというお話でありますが、これからの開発というものは、非常に重点的になされなければならないと瞬時に、十億の増加では、前年度からやっておりましたいろいろな計画というものを達成していく上において不足じゃないか、私はこういうふうに考えます。それと同時に、自由党内閣当時にやっておりました計画を踏襲されておるというようなお話でありますけれども、これはそのまま是認されておるのか、さらに一歩躍進的に民主党政府としてこれをもっと大きく開発されるお考えであるのかどうか、これを一つ伺っておきたいと思います。
  212. 重光葵

    ○重光国務大臣 従来の方針をさらに完璧なものとして進めたいという考え方でございます。何分財政上の制約もございますので思う通りには参りませんけれども、あらゆる努力を尽して進みたいと考えます。
  213. 篠田弘作

    ○篠田委員 ただいま重光副総理のお話で、財政的になかなか思う通りにいかない、しかし従来の計画に対してさらに強力なものにしていきたいということでありますが、食糧問題また人口問題から申しまして、現在の北海道の四百四十万の人口を、今重光副総理の言われましたような、あらゆる面の総合開発をすることによって一千万にふやすことは容易であると思う。でありますから、最も早道な人口解決の問題であり、また移民の問題から見ましても、北海道の開発ということは緊急を要すると私は思います。  予算の裏づけでありますが、一萬田大蔵大臣は北海道総合開発に対して関心を持っておられるかどうか、あるいはまた研究をされておるかどうか。研究をされておるとするならば、どのくらいの経費を何カ年くらいつぎ込んだならば、北海道の総合開発が、いわゆる国策に沿った形において開発できると考えておられるか。これをお伺いしたいのであります。
  214. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。私は北海道の総合的開発はほんとうに必要であると思う。これは単に食糧増産ばかりでなく、ただいまお話のように、人口問題の解決の上からも思い切って北海道の開発をやりたい、これはもう私実は前からの一つの持論でもありまして、北海道の開発についてのいろいろの事業は、私個人としても非常に関係を持っておるような次第であります。従いまして、これは政府の問題でありますが、先ほど副総理のお話がありましたように、政府としても非常な関心を払っておる。今度の予算編成につきましても、北海道の総合的開発には特に意を配るという一項目がございまして、今度の予算では、むろんはなはだ満足すべきものではないと思いますが、全体のバランスの上から見ましても、北海道の総合開発には特に増額をいたしまして、配慮を加えておるわけであります。  なお今後の北海道の開発はどのくらい年限がかかって、どのようになるか、これは今ここでほんとうに正しいことを申し上げるだけの準備を持っておりません。大体二十六年に北海道総合開発についての大きな計画があったように私は思っておるのですが、それが今までのところ思うようには進行していないだろうと思います。しかし三十年以降におきましては、大体その計画にしても残事業がどのくらいになりましょうか、おそらく千億とかいうところじゃないかと思っておるのでありますが、そうしてみると、三十年以降数年後には、大体所期の目的の達成ができるのではなかろうか、またそういうふうに努力すべきだ、こういうふうに私は考えております。
  215. 篠田弘作

    ○篠田委員 副総理も大蔵大臣も北海道の開発の重要性を十分にお考えになっておるということはわかりましたが、しかし重要であるということであれば、そこにおのずから開発の基準とかあるいは目安というものがなければならないのであって、財政の都合がつかないからといってそれを漫然として送るということは、これは私は承服できない。そこでわれわれのときにも、北海道総合開発五カ年計画というものを作っておったのでありますが、鳩山内閣におかれても、何かそういったような目安のつくような計画を北海道に対してやっておられるかどうか、その計画にあわせて財政的な措置をするというお考えがあるかどうか、それをお伺いしたい。
  216. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。私の考えでは、経審で今回策定しております六カ年計画に、当然北海道の総合開発が具体的に起案されると考えております。
  217. 篠田弘作

    ○篠田委員 次に、竹山建設大臣にお伺いいたしたいと思います。ただいまお聞きの通り副総理も、また大蔵大臣も、北海道総合開発について十分なる認識を持ち、またその促進をやりたい、こういうふうに言っておられる。しかるに北海道におきましては、国道でありましても、四、五月の雪解け時期にはもうトラックが埋まって通れない。これは内地の方においても非常に悪い道路があるが、北海道は非常に悪い。交通運輸の便のないところに生産が興りようがありません。そういう意味で大きな希望を持たれ、また役割を持っておる北海道の道路に対して、重点的な施策をされる考えであるか。あるいはまたガソリン税の配分はどういうふうになっておるか。また道路に対して、将来ともガソリン税だけでその措置をやっていかれる考えであるかどうか、それをお伺いしたい。
  218. 竹山祐太郎

    ○竹山国務大臣 北海道の道路の問題は、特に気候的な条件等からいたしまして、特別に考えなければならぬということは篠田委員お話通り考えております。  そこで本年度予算におきましても、北海道に対しまする国費負担は、道路につきまして四十六億円計上をいたしておりまして、前年に比べて約十億円の増額をいたしたつもりであります。これは御期待に沿うほど十分とは申しかねますけれども、前内閣以来の道路五カ年計画の線に沿いまして、できるだけ重点的にいたしたつもりであります。なお国道につきましては全額政府の負担において進めるつもりでありますから、前年度以上に進行の速度を早めたいと考えておりますが、これには今回地方の財政の状況がきわめて悪くなりましたので、政府の予算の執行を裏打ちするために、地方道路税というものを新たに作りまして、これで地方の負担——また別個の地方の国道以外の小さい道路を直すための財源に供給をいたすことにいたしまして、あわせて北海道の道路につきましても一段と進めたいと考えております。  なお今お話のありました道路に対するガソリン税の問題については、篠田委員委員長の当時非常な御努力をいただいて、この制度が前進をいたしたものでありまして、われわれとしてはその当時以来の趣旨を一貫いたしまして、道路五カ年計画をできるだけすみやかに進めたいという考えでありますが、何しろ財政全体の状況からいたしまして、ガソリン税以外の財政収入に非常な大きな期待を払うことは今日の場合困難でありますが、政府全体としてできるだけのことはいたしておるつもりであります。  なお北海道に対するガソリン税の配付はどうなるかというお話でありますが、これは六大都市方面など自動車の多い地方からは非常な苦情を聞いておりますけれども、そういうことはある程度全体の道路計画を進める意味におきまして、北海道の方へは今申すような四十六億の配付で、われわれとしては努力をいたしておるつもりであります。
  219. 篠田弘作

    ○篠田委員 ガソリン税を一万一千円に、二千円だけ値下げして、地方道路の道路利用税というものを、四千円を新設するというふうにいわれております。しかしながらこれはガソリン税において二千円の値下げをするといっても、道路利用税というものを新たに四千円新設するということになれば、結局においてガソリン税を二千円値上げしたという結果になるのであって、決してガソリン税の値下げにはならない、私はこういうふうに考えます。むしろこの点に非常なごまかしがあるのじゃないか。ガソリン税を二千円しか値下げをしないで、道路利用税というものを四千円取るということは、私はこの点にごまかしがあると思う。  それから問題は、道路についてガソリン税以上の収入というものがあまり見込まれないという建設大臣お話でありましたが、道路などという一般国民が全体的に利用するものを、一部業者の負担だけにおいて処置していくということは、これは私は誤まりじゃないかと思います。ただいま竹山大臣から言われましたが、私の建設委員長のときにこの問題が起りましたが、そのときの考え方は、一般予算の中から道路費というものをもちろん見積っていく、しかし、全国の国道あるいは地方道というものの新設なりあるいはまた復旧なりというものが、予算では少い。そこで道路を利用する主として運輸業者、その中からガソリン税を取りまして、一般予算で足りないところを補強していくということが目的であったのであります。しかるにそれが逆になりまして、一般予算からは道路の費用を全部取ってしまって、ガソリンだけの、一部の業者の負担というもので日本全国の道路を作るということは、これは私は考えとして誤まっておるのじゃないか、こういうふうに思うのですが、その点はどうでありましょうか。
  220. 竹山祐太郎

    ○竹山国務大臣 お答えをいたします。前段の、ガソリン税を二千円値下げをして、地方道路税四千円をガソリンにかけることはごまかしじゃないかという御質問でありますが、決してさような考えでいたしたわけではありません。昨年、御承知のように、ガソリン税を一万三千円といたしまして、その三分の二を政府の予算に計上をして、三分の一を地方に譲与をするというのが、前年度予算の建前でありましたが、これには御承知のように、いろんな論議が起りまして、結局のところ一万三千円のうち実質的に一万一千円を政府の五カ年計画予算に充当をいたしまして、二千円分を地方の道路費に譲与をいたしたわけでありますが、これは法律的にも制度的にも非常にこんがらかりまして、実際事業を進める上におきましても非常な混乱をいたしましたので、この建前をはっきりいたしますために、今回、前年度と同じ額の一万一千円を本来のガソリン税といたしまして、政府が収めて、これを五カ年計画の道路財源といたしますほかに、今申し上げた前年度の二千円の分と——お話通り、確かに二千円は地方道路税に増徴をいたしまして、合せて四千円の分を地方道路税に移したわけであります。決してごまかす気持はありませんので、昨年の制度をより合理的に調整をいたしたつもりであります。この二千円の増徴につきましては、いろいろ御意見もあろうかと思いますが、問題は、昨年の実情からいたしましても、政府が道路費を計上いたして、地方に交付をいたしましても、地方財政が非常に窮迫をいたして参りまして、当然負担すべき地方の負担分というものが持てない県がだんだんに出て参りまして、予期する道路の改良が計画通り進みません。こういう事態は将来は直るでありましょうが、ここ一、二年地方財政の窮迫に対処して、一方においては道路の計画的な改良を一日も早くして、道路利用者のために効果をあらしめるためには、この際といたしましては、延長だけにとらわれないで、五カ年計画の完遂はくずしませんけれども、その計画の範囲内におきまして、政府の補助率を一方において引き上げまして、国道につきましては、従来三分の二を四分の三にし、なおその直轄分担金は政府が一応持つことにいたします等、またその次の段階の道路につきましては、従来二分の一でありましたものを三分の二に引き上げまして、これだけでも本年度予算において、地方の道路負担は約六十億以上減額をいたして、道路の事業がやれるようにいたしたほかに、今申す四千円分の約七十二億の地方道路税を新たに創設をいたしましたのは、この七十三億によりまして、政府の意図いたします五カ年計画の道路の改良はもちろん、その他の小さな道路の改良及び道路の維持、補修等の財源の一部にこれを充てることにいたしたわけでありますから、この両方を合せますと、今年度は約百三十億以上の分が、地方の道路全体の分におきまして、地方の負担は軽減をされて、しかも計画通りの道路の実行をいたす考えであります。そういうような地方財政の面が起って参りましたので、当時、御計画をいただいたガソリン税の創設当時のお考えから見れば、あるいは若干もっとできるじゃないかというお考えも起りましょうけれども、これはわれわれとしては、道路はできるだけ早くたくさんやりたいのはやまやまでありますけれども、何しろ破綻に瀕しておる地方財政の現実の前には、かような処置をいたさざるを得ないというために、地方道路税を作りまして、道路の改良を促進いたして参りたいと考えておるようなわけでありまして、この点は業者の諸君にはまことに相済まぬとは思いますけれども、それだけ早く道路の改良が進行いたしますことは、道路利用者の諸君の要求に応ずるわけでありますから、この際は早く道路を直すということで一つ御了承いただきたいとわれわれとしましては考えておるようなわけであります。なおガソリン税で全部やることは、当初の意図するところではないというお考えもよくわれわれはわかるわけでありますが、何しろ今の財政の状況からいたしまして、一般財源から非常に多くの期待を持つということは困難な事態でありますが、しかし全体を見ますと、三十年度の中央、地方を通じての道路の予算は約五百億になろうと思うのであります。従って決してこれは全部をガソリン税でやっておるというわけではありませんので、その点は一つ御了承をいただきたいと思います。  なおガソリン税につきましては、できるだけきっちりやる意味におきまして、二十九年度におきましては、当初の予算よりもガソリン税収入が約三十数億円増す結果になっておりますので、これは一般決算と同様に、決算額の剰余は一年置いて三十一年度の道路費に計上をする等、できるだけ道路財源の確保には最善の努力をいたして考えておるような次第であります。
  221. 篠田弘作

    ○篠田委員 ただいま竹山建設大臣お話を承わっておりますと、ガソリン税だけで道路の整備をするのではなくて、それ以外にも一般財源から道路整備の費用は出ておりますから、今年度において約五百億ぐらいになる、こういうふうに了承していいのですか。
  222. 竹山祐太郎

    ○竹山国務大臣 これは地方予算、中央の予算を全部合せますと、事業量として約五百億円ぐらいになります。
  223. 篠田弘作

    ○篠田委員 地方の予算を合せてというお話でありますが、ガソリン税創設の当時の建設省における計画というか、政府における計画は、これらの創設によりまして全国の一級国道は五年以内にこれによって全部舗装される、二級国道は十年以内に全部舗装する、二・四メートル以上の地方道というものは十五年以内に全部舗装するということが、ガソリン税創設の当時の目的であったと私は記憶しております。そういう意味で今の建設大臣のおっしゃる、いわゆる財政の面についてはわれわれも十分な理解を持っておるのでありますが、建設大臣のお言葉の中に大体計画通り行くと思うというお話がありましたが、今申しました国道並びに地方道の舗装の問題は、ガソリン税というものだけで計画通り行くかどうか。  それからいま一つお伺いしたいことは、これは大蔵省の問題にも関連がありますけれども、最初大蔵省は、ガソリン税というものが今年度において幾ら上るかというあるいは明年度の見通しはどうかということについては、明確な答弁をしておらない。われわれが聞きましたときにはしなかった。それはなぜであるかというと、ガソリン税全部を道路費に出さないで、幾らか含み的財源として残しておきたいという意図があったのではないか、これは私の想像でありますが、そういうふうに考えておったのであります。しかしガソリン税だけによって道路の整備をするということになれば、ガソリン税全部を道路費用に出してもらわなければ、最初の目的というものは達成されないと思います。そこで大蔵省は正直にガソリン税を全部出しておるかどうか、あるいはまた正直にガソリン税を全部道路費用に回すとするならば、私は道路税というようなものを新設しなくても目的は達成し縛るのではないか、こういうふうな考え方を持っておりますが、これを一つ建設大臣にお伺いいたします。
  224. 竹山祐太郎

    ○竹山国務大臣 先ほども触れましたように、問題はお話通り決算で実際に二十九年度にガソリン税収入がふえたということは事実であります。それが三十億円余であります。これは今度お作りくださったあの法律を改正いたしまして、決算額に余分な収入があった場合は、これを全部翌々年度の道路財源に振り向けるという法律の改正をいたしまして、はっきりいたすつもりで、これは昨日の閣議で決定をいたしておるようなわけでありますから、御安心を願いたいと思います。  それから五カ年計画が十分できるかというお話でありますが、われわれは前にきめられました五カ年計画はあくまで堅持をしてやりたいと計画もいたしております。少し変ります点は、昨年に比べまして本年度予算では国道の改良の方がもう少し進む計画にいたしておりまして、前計画は完全に行き得る自信を持っております。
  225. 篠田弘作

    ○篠田委員 建設大臣の御説明は、最初の計画よりもさらに進むというお話でありまして、その通り実行されれば非常にけっこうだと思います。ぜひ実現できるようにしていただきたいと私は思います。  その次に三木運輸大臣にお伺いしたいのでありますが、ただいま私が建設大臣大蔵大臣、あるいは副総理に対して質問したと同様の趣旨であります。北海道は御承知通り非常に大きな地積を持っております。東北と新潟県を合せたくらいの面積を持っておる。しかるにその道路網というより運輸綱は非常に微々としております。特に鉄道の延長は私の記憶によりますと全部で一万キロとかいう話であります。こういうことでは未開発資源の開発ということはなかなかできないと思うのであります。そこで新線の問題につきましては、もちろんいろいろと予算上の都合もあると思いますが、戦争中に取りはずしました線路の復元、あるいはすでにトンネルを掘ったり、あるいはまた路盤を作ったり、そういうことをした路線が何年間も投げられておるというような実情であります。たとえば札沼線のごときはすでに路盤も庁舎もプラットホームも、あるいは場所によりましては倉庫までついておる、あるいは橋も全部できておる。あとはまくら木とレールさえ並べればいいという状態にあるにもかかわらず——これは復元線でありますが、そのままになっておる。復元線というものは新設線とは違いまして、一度あったものを取りはずしたのでありますから、人情の上から申しましてもまた徳義の上から申しましても、戦争という事由によって取り去られたものは、戦争の終結とともに可及的すみやかにそれを敷設してやるということが必要だと思います。あるいはまた日勝線のごときなんかはトンネルもできておる、路盤もできておる。しかるにいわゆる線路の敷設だけは三年も四年も投げてある。こういうことはわれわれが考えると非常に不経済だと思う。またそういう地方民の要望から見ましても私はまことに気の毒であると思う。こういう問題について運輸大臣はどういうふうに考えておられるか、これをお尋ねいたします。
  226. 三木武夫

    ○三木国務大臣 北海道があれだけ広大な面積に無限の資源を持っておるし、人口その他の点から考えて鉄道の新線建設に重点を置くべきだという御意見には全く同感であります。特に北海道は力を入れていきたいと思っております。全体の新線は八百八十キロ、三十線が予定されております。そのうち北海道は六線、二百十八キロ、その中に今御指摘の札沼線あるいは日勝線も含まれておるわけでありまして、札沼線の場合は今お話のように戦争中に営業を停止したわけでありますが、今半分は工事が終って営業を開始しております。これはできる限り早く復元したいと考えております。このうち二線は完成して四線が残っておるわけでありますが、四線については、遠宇線は今工事を続行中であります。他の線については工事を促進する意味において測量をいたしておる。御承知のように今年度予算も前年度の当初予算と同様二十五億円である。この資金運用部資金二十五億円では、新線を促進する意味においては不足であることは、御承知通りだと思うのでありますが、全体の財政投融資の点のにらみ合せからもしまして、こういう程度になったわけでありますので、この二十五億円という範囲内において、必要でしかも工事を続行しておるようなところは、できる限り続けてやっていかなければならない。いろいろな点を勘案して二十五億円という新線の資金を最も有効に使いたい。その使う方法は建設審議会にもお諮りをして、そうして公正な一つの途をきめたい、こう考えておる次第でございます。
  227. 篠田弘作

    ○篠田委員 北海道の鉄道問題につきましては、運輸大臣の御説明で私は大体了承いたしますが、青函連絡の運賃が、実際問題として鉄道運賃に比較いたしまして約三倍半くらい高い。これはずいぶん前から陳情されておりましたが、値下げの問題は実現しておりません。この問題につきまして、道民はあらゆる意味においてこの運賃の値下げを要望しているのでありますが、なぜ距離に比較して三倍半も高くなければならないか。あるいは将来この問題について道民の希望に沿った一つの値下げを行う意思があるかどうか、これを一つお伺いしておきたい。
  228. 三木武夫

    ○三木国務大臣 輸送原価等の点からもいろいろあるのでしょうけれども、これは検討を加えることにいたしたいと思います。
  229. 篠田弘作

    ○篠田委員 次に大久保開発庁長官お尋ねしたいと思います。それはただいままで論じてきたように、北海道の開発というものは非常に必要である。しかしその中でも食糧並びに人口問題とにらみ合せまして、農業開発が最も重点的に行われなければならないと思います。農業開発のうちで一番効果のある問題といたしましては、石狩水域を中心とするところの泥炭地の開発というものが一般の注目を浴びております。私は最近ワシントンに参りまして世界銀行を訪れまして、この北海道の泥炭地の開発という問題について話をいたしましたときに、世界銀行でも非常に乗り気になりまして、特に北海道の農業開発、泥炭地開発のためには、農業技術部長のデフリースを北海道に派遣するという約束をしてくれました。その後デフリースが北海道に参りまして視察をして、北海道の農業というものは非常に有望である、これはちょうどオランダの農業と匹敵すべきものであるということを申しまして、非公式ではありましたけれども、デフリースがアメリカに帰りましたときに、当時の開発庁長官であった緒方副総理の部屋を訪れまして、来年度北海道の農業開発のために五百万ドルを融資してもよろしいという内諾を与えて帰ったのであります。しかるにその後この問題は新聞にも出ませんし、またどういうふうになっておるか。アメリカ予算の新年度である七月ももう間近に迫っておるわけでありますから、この問題について世界銀行からどういうことを言ってきておるか、あるいはこの問題について大久保長官は何か報告を受けられたかどうか、あるいは努力されたか、これを一つ説明願いたいと思います。
  230. 大久保留次郎

    ○大久保国務大臣 ただいまの御質問お答えいたします。今申されましたアメリカ世界銀行のデフリースさんが、ちょうど今東京に来ております。きのうも会いました。やはり北海道の地区に対して世界銀行から金を貸し出すことについて、考えは変っておりません。今回は北海道よりもむしろ愛知県の方に重きを置いて調べに来たようでありますけれども、変っておりませんようであります。従ってそのうちに実行に移し得るものと信じております。ただこのことを実行するにつきまして必要なことは、アメリカからの余剰物資の買付問題であります。この問題が解決すると同時に世界銀行の方もおそらく解決するのではないか。承わりますれば、余剰物資の方の交渉も、実は政府からアメリカに人をやってまで解決しようかと思っておったのでありますけれども、そこまでやらぬでも、こちらにおいて解決の見込みがだんだんつきかかっておるということであります。従って北海道の農地開発の資金も、それらによって相当充実し得るものと信じております。
  231. 篠田弘作

    ○篠田委員 デフリースがちょうど東京に来ておるそうで、長官お話になるのには持ってこいの機会であると思います。また向うの意思も、北海道の農業開発について世界銀行の融資をするという考え方は変っておらない。これはまことにけっこうなことでありますから、ぜひわれわれのときに内諾を与えていった五百万ドルというものを獲得していただくように、御努力願いたいと思います。  その次に河野農林大臣に対して御質問いたします。去年の十五号台風によりまして、北海道における風倒木は六千三百万石に上っております。層雲峡だけでも千三百万石に上っておりまして、この処理の問題につきましては、おそらく林野庁といたしましても、地元営林局といたしましても、非常に苦労していることと思うのであります。しかしながら北海道の有名な造材業者でありましても、一年に十万石、十五万有という造材をやり得る能力を持っているものは、これは非常に大きな造材業者でありまして、農林省が幾ら馬力をかけましても、六千三百万石という風倒木を数年に処理するということは不可能じゃないか。そうすればこの大部分の風倒木というものはやがて腐ってしまう。国家の貴重なる木材資源を腐らせるということは、国家的に見て非常に不経済であるから、どうせ腐らすものならば、ただでもいいから民間に払い下げたらどうか、こういう議論が、北海道におきましては官庁にも民間にもあります。しかしながら問題は去年でありまして、風倒木をすでに買い付けた人もあるでありましょう。買う契約をしている人もあるでありましょう。買ったものに対して、今後ただくれてやるというような、木材業界を混乱させるような措置は、農林省としてはとうていできるものではないと私は考えておりますが、しかしながら腐らせるということがわかっている以上は、特別な措置をしなければいけない。売り渡すにしましても、ほとんど非常な勉強と申しますか、値下げをしなければいけないであろう、こういうふうに考えております。また風倒木が一時パルプ業者とか製紙業者といったような、大きな木材を消費する業者に押しつけられるということは、これは明らかであります。それは運輸の面におきましても、貯木の面におきましても、そういうふうに考えられるのでありますが、こういう業者の側から見るならば、天災によって、必要のないものを一時に押しつけられるということになるのでありますから、木材代金の延納といったような、あるいはその金利の引き下げというものについては、私は特段の考慮が払われなければならないと考えております。これに対する農林大臣の御説明をお伺いしたい。
  232. 河野一郎

    ○河野国務大臣 風倒木の問題につきましては、ただいま御指摘の通り、一時に大量を処理しなければならぬ問題が起ってきたわけでございますので、これにつきましては、たとえばお話通りに貯木をするとか、ないしはまたこれに消毒をするとか、いろいろなことはしておりますけれども、それにいたしましても、なかなか所期の目的を達することは困難でございます。従ってただいま御指摘のような問題が起るのでございますが、これらにつきましてはいろいろめんどうな問題がそれからそれへと起ってくるわけでございますから、それらの点を十分考慮いたしまして、地元の方々の御意見も十分尊重いたしまして善処するように指導して参りたい、こう考えております。
  233. 篠田弘作

    ○篠田委員 具体的ないろいろな計画については、林野庁もやっておられることだと思うのでありますが、今の農林大臣の御説明は少し抽象的に過ぎはしないかという考え方も抱くわけであります。しかし十分善処するということで一応了解しておきます。  北海道の木材業者は近年その実力が非常に低下している。これは一般の認むるところでありますが、こういう風倒木というような問題とからみ合せまして、国の裏づけによるところの業者の育成というようなものをどういうふうに考えられているか、これを一つお開きしたい。
  234. 河野一郎

    ○河野国務大臣 ただいまお答え申し上げましたのは抽象的で恐縮でございますが、実はいろいろな問題がありますので、一々の事例につきましてお話があります際には、それに対して地元の要望等も十分考慮して——お示しの通りのことでありますから、いろいろな問題が起っております。たとえば初めと非常に違って値が下ってきてしまった、買手がつかないというようなことも、その通りあるようでございます。さればといって、この輸送につきましても、政府の予算通りではなかなか運べないという問題が一方には起って参ります。というようなことでございますから、抽象的にお答え申し上げたのでございますが、今お話のようにパルプの関係等につきましても実は問題があるようでございます。それらにつきましては、専門家の専門的意見を十分考慮におきまして、そうして善処して参りたいという趣旨でございますから、どうか御了解願いたいと思います。
  235. 篠田弘作

    ○篠田委員 次に北海道の漁業問題でありますが、サケとか、あるいはマスの流し綱が、今年までに北緯四十七度以南に限られておった。しかし北緯四十七度では魚が非常に少いのであって、その以南中に千六、七百ぱいもの漁船がうようよしておる。これではとうてい日本の零細漁業は成り立たない。御承知通り日本は一年間の水揚げにおきましては、すでに四百万トンを超過いたしまして、世界の一年間の水揚げの千六百万トンから見まして二五%以上とっておる。水産国としては世界一でありますけれども、漁民から見ますと、船一隻の漁獲が年に七トン半、漁民一人あたりが二トンということになっておりまして、非常に、零細漁民であります。そういう場合に、千六百隻もの船を魚の少い四十七度以南にうようよさせておくということは、私は非常に大きな問題だと思う。ある意味におきましては、魚のいるところで漁獲をさせないで、魚のいないところにそういうことをさせておくということは、これは人為的な不漁を漁民にしいるものではないかというふうにも考えられるのであります。今年度におきまして四十八度ということに漁区は拡張されておりますけれども、一度くらいの拡張ではこれはどうにもならない。そこで業者も漁民も、みなこの問題については農林省に対して非常な陳情をしていると思います。私たちも、これは業者の言う通り五十一度まで拡張するかどうかということは別問題といたしましても、少くとも五十度くらいまでの拡張は必要ではないか、こういうふうに思っております。これに対する農林大臣の御所見を伺いたいと思います。
  236. 河野一郎

    ○河野国務大臣 四十七度線の問題につきましては、御指摘の通りいろいろ陳情もございましたので、ことしはさしあたり四十八度まで許可いたしたのでございます。しかしこの問題は、一方また反対の側からは今までは一度の空間があったのでございますけれども、全たく接触して参りましたので、これ以上ふやすことは困るという運動もありますし、かたがたいたしますが、私といたしましては、この北洋の問題だけに限らず、日本全体の水産、たとえば以西の底引き網でありますとか、その他マグロ、カツオでありますとか、全体の漁業の問題につきまして一つ根本的に考えなければならぬじゃなかろうか。先ほども港湾の問題について御指摘がありました。これらにつきましても、船の型も変って参りますし、漁撈につきましても、順次大型に変り、遠洋に変りつつあることでございますから、これらを総括的にくるめて、この国会終了後専門家の水産に関する基本的な調査会を作って、これによって結論を出して日本の水産全体についての一つの方向をきめていただくということにしていきたいと思っておるのでございますが、そういう際に当然取り上げられて問題になることと考えておるわけでございまして、そういう専門家の意見を十分尊重して善処して参りたい、こう考えております。
  237. 篠田弘作

    ○篠田委員 次に石橋通産大臣にお伺いいたしたいと思います。日本経済の再建にとりまして見のがすことのできない問題に地下資源の開発があると思います。特に石油の問題につきましては、これはほとんど外国から仰いでおる関係上まことに重要だと思うのであります。現在一年間に産する全国の石油の生産量というものは一体幾らあるか。一年間に外国から輸入しておる石油の量並びに価格は幾らであるか、これを一つお伺いいたしたいと思います。
  238. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 私がただいま記憶しているところでは、全体の量は九百五十万キロリットル、そのうち国産は三十五万キロリットル見当であります。
  239. 篠田弘作

    ○篠田委員 輸入量が九百五十万キロリットルであって、国内の生産がわずか三十数万キロリットルであるということになりますと、九百万キロリットル以上のものを外国から輸入していることになります。今日ドル不足ということが非常な日本の悩みとなっており、学術の研究のために外国へ行きたい人も外国へ行けないというような、そういうような状況のときに五百五十万キロリットルも輸入しているという事態は、やむを得ないといえばやむをえないけれども、私は政府の努力が足りないのではないか、こういうように考えるわけであります。それはなせかと申しますと、私の聞くところによりますと、イラン、イラクあたりでは七千メートルぐらいまでボーリングしている。アメリカにおきましては大体四千メートルぐらいまでボーリングし、海中においては七千メートルのボーリングをしている。その平均は大体四千メートルである。こういうことがいわれております。しかるに日本におきましては、一番深く掘ったのが先般の西山油田でありまして三千百メートルである。それから大会社のやっているところのボーリングは大体千五、六百メートル、先般山形県の八橋鉱業といいますか、あそこで非常に大きな油田が発見されましたが、これも千五百メートルぐらいで油層に突き当っている。そういう点から見ていきまして、個人で採掘しているものはわずかに七、八百メートルどまりで、それ以上は掘る力がないから、学術的にはあるということが立証されているにもかかわらず、資金難のためにそれを放棄するというようなのが現在の石油の発掘の状態であります。こういうことを考えてみたときに、九百五十万キロリットルも輸入しなければならぬ日本において、石油の発掘ということはもっと国家的に考えてはどうか、石油は電気と同じでありますから、あるいはそれ以上であるかもしれませんが、とにかく石油の発掘事業に対して政府はどういう考えを持っているか、それを一つお聞きしたいと思います。
  240. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 御承知のように前内閣時代におきましても、石油の五カ年計画というようなものができました。私どももその計画を追いまして、さらに大いに馬力をかけてやろう、こう考えている次第であります。
  241. 篠田弘作

    ○篠田委員 大いに馬力をかけてやるという石橋通産大臣の意気はまことに壮とすべきものがある。私は大いにその意気には賛成します。しかしながら、大いにがんばると言いながら今年度における石油発掘に対する補助金はわずかに三億円である。この三億円というものをばらばらにもらいましても、補助金だけでボーリングはできないのでありまして、それに何倍するところの自己資金が必要である。しかるにその自己資金が都合がつくという人はきわめて少いのである。実際補助金というものが効果的に使われておらない。八百メートル、九百メートル掘って、みな投げられている。こういうことからいうと、三億円の補助金も、このままにすると私は海に捨てるような結果になりはしないか、それを心配するものであります。そこでこの三億円の補助金というものを、実際には補助金としないで政府出資金といたしまして、石油の開発を統一する、そうしてその資金の効率化をはかるというような面から見まして、石油あるいは天燃ガスというようなものに限った一つの開発会社のようなものを作る意向はないかどうか、これを一つお伺いしたいと思います。
  242. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 お説のように、石油の試掘のために特殊の開発会社を作るという考えは持っておりまして、その研究はしておったのでありますが、ただ予算編成までには間に合いませんでしたので、とりあえず三億円の補助金ということにしてあるわけであります。
  243. 篠田弘作

    ○篠田委員 発掘会社を作るという意向はあるけれども、間に合わないから三億円の補助を出した。そうしますと、私がお尋ねしたいのは、どうせ作るという意思があるならば、この三億円を出資金にして、そうして民間資本もそこに導入して、今言われたような九百五十万キロリットル、金に直して幾らになるか、全額をあとで通産大臣からお聞きしたいと思うのでありますが、そういう膨大なところの輸入をしておる際でありますから、もっと政府が勉強して、三億円を十億円くらいにしても、政府の出資金によって早くそれを作り上げるということが、私は日本の石油を開発する意味において必要である、ぜひそれを早くおやりになったらどうか、こう思うのであります。問題は、この補助金というものを用資金に直す意思があるがどうか、また法律上、直せるものであるかどうか、これを一つお伺いしたい。
  244. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 先ほどお尋ねの輸入の金額は一億七千万ドルということであります。なお開発会社のことは目下研究いたしておりますが、これは今の予算そのままでは出資にはなりませんが、予算の士において出資にできるということに、そういう条件をつけていけばなるわけであります。
  245. 篠田弘作

    ○篠田委員 次に石炭の問題についてちょっとお伺いしたいと思います。  今日の石炭界が非常な不況にあえいでいるということは周知の事実であります。これによって中小炭鉱は続々と破産をしております。そういうときに当りまして、政府は企業整備ということに努力をしておられるわけでありますが、中小炭鉱を大炭鉱の出資金によって買い取る、こういう計画があるそうでありますが、大炭鉱は果してそういうことに賛成しているかどうか。あるいはまた買い取るとすれば、その資金の面はどういうふうにするか、こういう点についてお尋ねしたいと思います。  それから私は去年ドイツに行きまして、ドイツの石炭鉱業というものについて聞いて参ったのでありますが、石炭を燃料だけに使うという考え方は、もはや古いのではないか。そこで大いに石炭鉱業を興しまして、繊維であるとか薬品であるとか塗料であるとか、あるいは顔料であるとか、あらゆる日本の国内における必需品を生産して、燃料だけとしての石炭を見ないで石炭鉱業に道を開いていくならば、この不況の対策はできるのじゃないかと思いますが、これに対する通産大臣の御意見を承わりたい。
  246. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 石炭鉱業の現在の行き詰まりは非常な差し迫った問題になっておりますので、お話のように石炭を原料として使って化学工業等を興すことはぜひやりたいと考えますし、またことに石炭の中の低品質炭の利用ということも考えてやるようにいたしておりますけれども、現在行き詰まりの石炭をすぐ救うのには、時間的になかなか間に合いませんから、そこでとにかくこの際企業整備を行わなければならぬ、かようなことでいわゆる合理化合理化と申しておりますが、それをやっておるわけであります。
  247. 牧野良三

    牧野委員長 篠田君、時間がだんだん進みます。どうぞよろしく願います。
  248. 篠田弘作

    ○篠田委員 わかりました。  次に、副総理もおられますが、時間の都合もありますから松村文部大臣だけにお伺いいたします。今日の日本の教育というものは、どうも中心がないように思われる。それで日本の将来を背負うところの第二の国民に対しまして、自分の国を理解する、あるいは人道的な立場に立って日本人としての歩くべき道を教えるということは、当然であります。しかるに中小学校におきましては、修身というものは反動的であるからいけないといって、今の場合行われていない。それから日本の子供でありながら、日本の歴史を知らない、日本の地理が教えられておらない。逆に男の子供に裁縫を教えたり料理を教えたりしておる。(笑声)こういうことは、敗戦当時でありまして何か進駐軍からの圧力でも非常に大きかったときは、別問題でありますけれども、今日になれば、もはや再検討を要する時期に立っておると思います。こういう状態でどうして日本人の自覚を呼び起し、また愛国心を養成することができるかということになりますと、私どもは非常に心配であります。時代に適合した道徳とか、あるいは人類を千古に貫く一つの人倫の道とかいうものは、これは敗戦国とか戦勝国とか、あるいは何々の主義の国であるというようなことによっては私は変らない、こういうように考えるわけであります。これに対しまして政府は現在の教育制度というものを、どういうふうに考えておられるか、将来どういうふうに直そうとしておられるか、それをちょっとお伺いしたいと思います。
  249. 松村謙三

    ○松村国務大臣 お答えをいたします。お話通りに修身、地理、歴史、これはやはり教育基本法にも書いてありますが、十分に取り入れてやらなくちゃならぬと思っております。幸いに私の前任者である安藤君のときに、これを独立した科目とはいたしませんけれども、社会科のうちへ取り入れまして、そしてこの四月から実行するように指令を出しております。私もちょうどその交代期でありましたが、前任者の方針を踏襲いたしまして、現にそれを漸次整備してやることにいたしております。
  250. 篠田弘作

    ○篠田委員 次に文部大臣にお伺いしたいのは、最近私学の入学に関する寄付金というものが漸次増加の傾向にあります。十万、二十万の寄付金はざらでありますが、中には公然と五十万、六十万という法外な寄付金を要求しておる私立大学があります。私のところへもいろいろ手紙が来ておりますが、こういうことは私は非常に親泣かせであるし、また実際教育本来の立場から言っても非常に邪道である、こういうふうに考えるのであります。昔は教育という問題は非常に篤志家の社会事業というような面もありましたが、今日はもちろんそういうことを要求するというのではありません。必要があればどんどん国家的な見地から補助も必要でありましょう。しかしながら教育を金もうけのようにやっておるという学校が非常に多いということは、将来日本を背負う青年に対して教育の機会均等を与えるという意味からいっても、私は等閑に付すべき問題でないと思います。証拠が必要ならば幾らでも私は持って参りますけれども、こういうことは国家将来のためにほんとうに憂うべきことである。また教育の営利化という問題は、ぜひ抑制しなければならない問題であると私は思っております。これに対する文部大臣の御所尾を承わりたい。
  251. 松村謙三

    ○松村国務大臣 お話のような弊害のありますことは、これは認めます。それでこれを漸次直していかなくちゃなりませんが、そういうことの公然行われるに至りましたのは、戦災の復旧のことその他においてやむを得ざる事情もあったろうと思います。それにつきまして私学に対する振興の助成も、今度の予算にも盛ってありますが、これが完全に行われていきますようになりますと、自然にこれらの弊風も除去できるように指導もいたしたいと考えております。現に教育委員会におきましても私学振興に関する諮問をいたしておりまして、それらの問題も含めて適正に解決をいたしたいと存じております。
  252. 篠田弘作

    ○篠田委員 戦災後の復旧の問題について、私学を復興させるために寄付金をとったということは、これはうなずけることであります。しかしながらそれが惰性となりまして、復興後において、その味をしめて依然としてそれを改めないというような行き方については、まことに寒心にたえない。そういう意味におきまして、もちろんやむを得ない面もあるでありましょうし、また十分に是正反省せしめる面もあると思うのでありますから、その点は文部大臣において十分に善処していただきたい、こういうふうに考えます。  最後に私は花村法務大臣に対して質問したいと思うのであります。それは選挙の取締りの問題でありますが、先般行われました衆議院の総選挙の前々日であります。北海道の岩内におきまして北教組後志地区協議会というものが、十五号台風によって被害を受けた岩内町の罹災児童に対しまして、見舞金と称して衆議院議員投票日の前々日二月二十五日に、中学校が二つ、小学校が三つ、罹災児童三千三百八十六名に対して、受け持ち教員から生徒一人当り四百円ずつ手交したのであります。いわゆるお見舞金を出したのであります。名前は見舞金ということになっておりますけれども、投票日の前々日に一人当り四百円の見舞金を三千何百人にも出すということは、私は、これは行き過ぎじゃないか、こういうふうに考えております。二十五日には罹災児童が約五割交付を受けております。その後、父兄の来ない者に対しましては、児童を通じて家庭に届けております。見舞金交付に当っては、大体ガリ版刷りで、こういう手紙を出しております。「謹啓余寒厳しき折柄皆々様には罹災後の御不自由にも拘らず、郷土復帰に御努力のことと推察申上げます。つきましてはかねて全道各地からいただいておりました災害見舞金を明二十五日午前十一時東小学校に於ておあげ致したいと存じますので、誠に御多忙中とは存じますが、印鑑御持参の上御来校下されたく御案内申上げます。昭和三十年二月二十四日、北海道教職員組合、罹災父兄各位」こういう手紙を出しております。この見舞金は、昨年の十二月の上旬に長野県で開催されました日教組の大会の際に、台風見舞金の配分が決定いたしまして、北海道に四百四十五万円割当がありました。うち岩内町には百四十四万円が割当てられておるのであります。こういうような状態でありまして、選挙前のことでありますから、町内一般からも批判が起って、これを受け取らなかった父兄もあります。また、これは確かに選挙運動ではないかという批判も起っております。警察でも一応取り調べはしたようでありましたが、その後これが問題になったということを聞きません。またこの岩内町におきましては、大火と同時に各方面から贈られましたいろいろな品物を学校の先生をして配らせている。配るときに、社会党左派の代議土の名前を特に言いまして、この代議士の贈りものであると言って配って、問題を起したこともある。こういうような教職員組合の行き過ぎというものは、法律の解釈は私にはよくわからないのでありますが、法務省としてどういうふうに考えておられるか。  それから、これは地方選挙のときに方々で行われた問題でありますが、メーデー前夜祭という名目で映画の入場券を配布し、その半分に一党一派の宣伝をするような印刷をいたしまして、これを無料で配布いたしております。ある場所では、北海道の場合には北教組の印鑑をそれに押している。実に公然たる私は買収運動が行われていると思う。あるいは炭労その他の労働組合の統一候補に対しては、組合の幹部が公然と組合員を訪問して、統一候補に入れない者は除名すると言ったり、あるいは商店街に行きまして、統一候補を応援しない場合には、今後お前のところから品物を買わぬといってボイコットしている、こういう事例が非常に多くある。これが警察の問題になり、検察庁の問題になっているのはわずかであります。これが選挙違反であるかどうか。選挙違反であるとするならば、むしろ公明選挙をこわしているものはこういう連中であると、私は痛感するのでありますが、その取締りに対して花村法務大臣はどういうふうに考えておられるか、これをお伺いしたい。
  253. 花村四郎

    ○花村国務大臣 お答えいたします。第一の罹災生徒一人当り四百円の見舞金を支給したという事実でございますが、この事実に対しましては、所轄札幌検察庁より法務省へ報告が参っております。そこでこの種行為が選挙違反になるかどうかという問題でございますが、少くとも特定候補者の当選を得る目的をもって、しかも父兄である選挙民にその金が贈られたという事実でありませんと、ただ子供に災害見舞金を四百円与えたというだけでは、選挙違反にならぬという結論に相なろうと思いますが、しかしその後に物品を特定候補の名前を付けて配ったというようなお話がありましたが、そういう事実がもしありとすれば、それは選挙違反に相なりますことは当然であります。  それから第二の事実として、メーデーの前夜祭の名目で映画入場券を無料で配布し、その半分に一党一派に対する宣伝並びに他党の排撃のスローガンを刷り込んで選挙運動をしたという事実でございます。これについては何らの報告が参っておりませんので、従ってはっきりしたことは申し上げられないのでありますけれども、もしかりにかかる事実があったと仮定して考えてみますのに、義務教育諸学校における教育の政治的中立の確保に関する臨時措置法というのがございますが、この法律によりますと、教職員の団体を通じ、特定の政党等を支持させもしくは反対させる教育を行うことを教職員に対し教唆扇動することを禁じているものでありますから、従ってこの教唆扇動の事実のない限りは選挙違反にはならぬ、こういう結論に相なるのでございます。  第三といたしまして、ただいま申し上げましたようなメーデー前夜祭の名目で映画入場券を無料で配布したというのでありますが、これについては、先ほども申し上げましたように特定候補に当選を得せしむる目的をもってこういう文書、入場券等を配布したということに相なりませんと、これまた買収罪を構成せぬ、こういうことに相なる次第であります。
  254. 篠田弘作

    ○篠田委員 法務大臣はちょっと考え違いをしておられるのじゃないかと私は思います。岩内地方の大火のありました直後に、全国から集まった見舞品を学校中心に配らせましたときに、先生が父兄に対して、これは某代議士の贈りものであるということを言って配った事実があるのであります。これも町の相当批判になった。ところが子供に見舞を贈ったのではなく、今手紙を読んだように、子供を通じて父兄に呼びかけてその見舞を渡したのであって、子供の小づかいにやったのではありません。父兄に取りにこいという手紙を子供に託したのであります。見舞金を贈るとしても、岩内の大火になったのは、御承知通り昨年の十五号台風であります。なぜ選挙の前々日を目がけてそれを贈らなければならなかったか。ここにわれわれは大きな問題があると思う。特定候補といいましても、選挙には名前を言わなくても、公認候補というものがあって、その選挙区に一人なり二人なりの特定候補と同じ者があるわけです。そういうことでありますから、名前を指さなければ特定候補にならないのか。それならば、北海道第四区においては自由党公認候補は僕一人である、自由党の見舞金を諸君みんな来い、やるぞといって三千人も四千人もにもし見舞金を渡したという場合に、一体選挙違反になるのかならないのか、これを一つお伺いしておきます。
  255. 花村四郎

    ○花村国務大臣 ただいまお話のありましたように、特定した候補者の名前が出ておるということでありますならば、これはもちろん選挙違反になりまするし、また、たとい特定候補の名前が出ておらなんでも、その言葉のうちで特定候補を支持したものと認め得られる事情でもそこにありますれば、これはもちろん特定候補を支持したと同一に見て、やはり選挙違反になりますることはもう当然であります。しかし先ほどは、四百円の金を渡すのに特定候補の名前を指示したというお話がありませんでしたから、従って私は先ほどのような解釈をした次第でございます。
  256. 篠田弘作

    ○篠田委員 金を渡すときに特定候補の名前をもちろん言っておりません。そのくらいのことは常識でわかることであります。そういうことでなしに、去年の大火の見舞のときに全国から集まった——それはいつ選挙があるかわからぬときであったにかかわらず、それを渡すときに特に社会党左派の代議士の名前を二人並べて、全国から集まった見舞品を贈るときにこれは某々代議士の見舞品である、そういって贈った。これが岩内町において大問題になった。であるからその当時から北教組、日教組の性格から見て、何党の何候補と見ていることは自明の理である。だれでも知っている。天下周知の事実である。選挙の前々日に父兄に呼びかけて三千何百人と漏れなく見舞品を配ったというところに、これは弁護士論でもやれば長くなるだろうと思うのですが、常識としてそれを選挙違反にみな見ておる。こういう国民の常識を外にして、法律論だけをやっておるということになりますと問題になると思うが、法務省においてさらにこれを追及する意思があるかないか、それだけ一つお伺いしておきます。
  257. 花村四郎

    ○花村国務大臣 それは先ほども申し上げましたように、さような事実のありますることの報告はありましたが、その後の報告のないところを見ますと、やはり特定候補を支持せざりしゆえんをもって多分捜査を進めなかったのではなかろうかとこう解釈できますが、しかしそういう事実がもしありとするならば、もちろん捜査をすることにやぶさかではございません。
  258. 篠田弘作

    ○篠田委員 大体捜査をやっていただくことにしていただきたいと思います。  その次に、組合の統一候補を推さない場合には組合を除名する、あるいは商店街に対してボイコットする、統一候補というものの名前は——これはどんなに多くても数は限られておる、こういうような場合には選挙違反になりますかなりませんか。
  259. 花村四郎

    ○花村国務大臣 それは公職選挙法二百二十五条三号の選挙の自由を妨害したという罪に該当するおそれがあると申し上げてよろしいと思います。
  260. 篠田弘作

    ○篠田委員 もうこれで大体質問を打ち切りますが、おそれですか該当しておるのですか。また該当しておるとすれば、今後そういうものを積極的に捜査もし、やっていく意思があるかどうか。われわれの場合におきますと、わずかに知り合いが知り合いのうちを訪問しても戸別訪問ということで、自白をしなければ一週間や十日間置かれる。しかるに大きな組合の圧力をもって堂々と選挙違反を起していても、おそれぐらいでもってそのまま放任しておくということになると、今後力のある者はどんどん選挙違反を起す、いわゆる大魚を逸して小さなざこをすくうということになると思うのですが、それに対するあなたの所見はどうですか。
  261. 花村四郎

    ○花村国務大臣 それは選挙の自由を妨害したという事実が明瞭でありますならば、もちろん選挙違反に問われることは当然でございます。ただいまおっしゃられた事柄が果して自由の妨害になるかどうか、それがはっきりいたしませんからここで断定するわけには参りませんが、もしそういうことにはっきりして参りますならば、選挙違反に相なりますることは当然であります。
  262. 篠田弘作

    ○篠田委員 それでは大体このくらいで打ち切ります。
  263. 牧野良三

    牧野委員長 この場合松村文部大臣より発言を求められております。これを許します。松村文部大臣
  264. 松村謙三

    ○松村国務大臣 先刻の私の答弁にもしも誤解があってはなりませんから、ちょっとお答えを重ねて申し上げます。私学において多額の寄付金を取るという御質問に対して私はこれを肯定いたしましたが、誤解があってはなりませんから申し上げておきます。それは私学のほんの一部でございまして、有力な私学の大部分においてはそういう弊はないのが多うございますから、これは世間にどの学校もそういう寄付金を取るというふうに誤解されては事実と違っておりますので、蛇足でございますけれども一言申し添えておきます。
  265. 牧野良三

    牧野委員長 了承いたしました。  この際委員の皆さん並びに政府に申し上げたいと存じます。明日と明後日と二日間公聴会を行います。この公聴会は十分尊重の実をあげたいと存じますから、委員諸君はもちろんでありますが、政府におきましても大臣、御都合のつきまする方の御出席を請いたいと同時に、御出席のできるとできないとにかかわりませず、政務次官は皆さんぜひ御出席になるようにお取り計らいを願いたいと存じます。  なお公聴会の明日の分の柴谷要君は明後日になり、明後日の分の滝田実君は明日になりました。この点は訂正いたしておきます。  本日はこの程度にいたしまして、明日午前十時より、ただいま申し上げる公聴会を開きます。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時三十九分散会